(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】重縮合によるポリアミドの連続製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 69/04 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
C08G69/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535840
(86)(22)【出願日】2022-12-14
(85)【翻訳文提出日】2024-08-09
(86)【国際出願番号】 FR2022052352
(87)【国際公開番号】W WO2023111455
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブリフォー,チエリー
(72)【発明者】
【氏名】サイヤール,ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】パイヤーレ,セリア
【テーマコード(参考)】
4J001
【Fターム(参考)】
4J001DA01
4J001DB01
4J001DB03
4J001DC12
4J001DC13
4J001DC15
4J001EA07
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4J001EB04
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4J001EB37
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4J001EC45
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4J001EC47
4J001GA12
4J001GB02
4J001GB03
4J001GB11
4J001GC05
(57)【要約】
本発明は、以下の連続工程a)及びb)を含む、縮合によるポリアミドの連続製造方法に関する。工程a)ポリアミドモノマーを含む混合物を、押出機又はコニーダー内で溶融する工程であって、モノマーが水を一切添加せずに前記押出機又はコニーダーに送られる工程と、工程b)前記工程a)の後に得られた前記混合物の重縮合反応を横型ミキサー反応器内で行う工程と、を含み、前記工程a)及び工程b)は、大気圧に近い圧力で行われる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続工程a)及びb)を含む、縮合によるポリアミドの連続製造方法であって、
工程a)ポリアミドモノマーを含む混合物を押出機又はコニーダー内で溶融する工程であって、前記ポリアミドモノマーが水を添加せずに前記押出機又はコニーダーに送られる工程、と、
工程b)工程a)の後に得られた前記混合物の重縮合反応を横型ミキサー反応器内で行う工程、とを含み、
工程a)及びb)は、大気圧に近い圧力で行われる、方法。
【請求項2】
前記方法に従って製造されるポリアミドは、脂肪族、脂環式、アリール脂肪族、芳香族又は半芳香族ポリアミドである、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリアミドは、特に、ポリアミド11、11/B10、11/BI/BT、B10、B12、MXD10、MXD.6、11/10T、11/BACT/10T、BACT/10Tの中から選択される、ことを特徴とする先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
工程a)における前記混合物は、添加剤を含む、ことを特徴とする先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記添加剤は、少なくとも1つの触媒、少なくとも1つの安定剤、少なくとも1つの酸化防止剤、少なくとも1つの連鎖制限剤及び少なくとも1つの消泡剤を含む、ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
特に共回転する、好ましくは少なくとも2本のスクリュー、好ましくは2本のスクリューを有する押出機内で工程a)を行う、ことを特徴とする先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程a)の排出温度を160℃~300℃とするように、前記押出機又はコニーダー内でモノマーの混合物を加熱してモノマーの混合物の溶融を行う、ことを特徴とする先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程a)の後に得られた前記混合物を、事前脱揮することなく、工程b)で前記横型ミキサー反応器に供給する、ことを特徴とする先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記横型ミキサー反応器は、好ましくは共回転する撹拌要素を含む少なくとも2つの軸を含む、ことを特徴とする先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記横型ミキサー反応器の撹拌軸を加熱する、ことを特徴とする先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ポリアミドの凝固温度よりも最大で50℃高い温度、及び/又はこの凝固温度よりも5℃以上高い温度、好ましくは240℃~310℃の温度で、工程b)における重縮合反応を行う、ことを特徴とする先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
不活性ガスのフラッシング下で、好ましくは向流で工程b)を行う、ことを特徴とする先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法を実施するためのシステムであって、横型ミキサー反応器の投入部に直接接続された前記押出機又はコニーダーを含み、特に、前記横型ミキサー反応器と前記押出機又はコニーダーとの間で中間脱揮装置を含まない、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、重縮合によるポリアミドの連続製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドは、ジアミンと二酸の重縮合によって製造されることが多い。これらの重縮合反応は、一般的に、連続又はバッチプロセスを使用して反応器内で行われる。
【0003】
一般的には、第1工程では、ジカルボン酸とジアミンモノマーから塩を形成する。この塩を、任意で水溶液として、反応器内に入れ、十分な粘度の混合物が得られるまで加圧下で加熱する。この工程では、最初に添加された水及び重縮合反応中に形成された水を反応器から完全に又は部分的に除去する。反応器から出た混合物の粘度は、一般的に不十分であるため、重合度を高め、特に押出を意図したポリアミドを得るための追加の工程が必要である。この後の工程は、しばしば後縮合と呼ばれる熱処理工程である。これは、任意で減圧下で、溶融状態又は固体状態で連続式又はバッチ式反応器内で行うことができる。
【0004】
これらのプロセスは、比較的長い反応時間(数時間程度)を必要とするだけでなく、該方法の異なる工程(塩の合成、反応器内での重縮合、及び後縮合)で、異なる反応器間での材料の複数回の移送も必要とする。
【0005】
後縮合工程が固体状態で行われる場合、得られるモル質量の均一性が低く、安定性も低くなる。最後に、これらの条件下では、反応時間が非常に長くなり、エネルギーコストが高くなり、したがって製造コストが高くなる。
【0006】
塩水溶液の形でモノマーを供給することは、特に化学量論を制御するために日常的に使用されている。しかしながら、この解決策は、重縮合工程の最後に十分な粘度を得るために大量の水を脱揮する必要があり、したがって大量のエネルギーと大型の装置が必要になるため、経済的に不利である。
【0007】
これらのプロセスを改善するためのさまざまな代替案が文献に記載されている。
【0008】
これらの代替案のうちのいくつかは、一般的にバッチプロセスを使用して反応器内でプレポリマーを製造する工程と、その後にポリアミドのモル質量を増加させるために減圧下で押出機内で行われる後縮合工程とを含む。後縮合工程の最適化が可能であるが、これらのプロセスは、工業規模で実施するのが難しい材料の移送と処理操作を必要とするため、時間がかかり、コストがかかる。更に、等化学量論に近い鎖末端を含む、各バッチで粘度と鎖末端含有量が安定しているプレポリマーを単離することは、工業的に達成するのが困難である。多くの場合、この困難さを解決するためには、二酸又はジアミン末端プレポリマーの使用が必要であり、大量の流体モノマーを押出機に供給する必要があり、特に操作が減圧下で行われる場合、押出機内での混合が困難になり、モノマーが大幅に失われる。上記方法は、出願EP0410649に具体的に記載されている。
【0009】
押出機内での単一の縮合工程では、モノマーを押出機の投入部に直接供給することにより、得られるモル質量は制限されたままであり、このタイプの装置での滞留時間が短い(典型的に5分未満)ため、良好な条件下で、特に押出によって製品を変換するために必要なモル質量を下回ることが多い。上記方法は、出願EP0410650に具体的に記載されており、得られる溶液の最大固有粘度は0.35dL/gであり、これはわずか4400g/molのMn値に相当する。
【0010】
出願EP2877516は、共回転する少なくとも2つの供給スクリューを備えた1つの同じ押出機でポリアミドモノマーからのすべての反応工程及び重縮合工程を行うことを提案している。これには、少なくとも2つの縮合水の脱揮ゾーンを使用する必要があり、量又は変動のいずれの点でもモノマー損失の管理が困難になる。更に、押出機の始動時に製品の粘度が低いため、第1脱揮ゾーンへの材料の搬送管理が複雑になる。また、高粘度の製品が得られる滞留時間に達成するためには、大型の二軸スクリュー押出機(L/D≧50)又はメンテナンスが複雑な多軸スクリュー押出機を使用する必要があるが、どちらの場合も、工業規模で実施するのが難しい高価な方法になる。最後に、押出機のバレルによる加熱効率は低く、水の脱揮には大量のエネルギーが必要である。これは、このような装置が、散逸した機械的エネルギーを介して製品に必要なエネルギーのほとんどを提供するように設計されるためである。しかし、すべての反応工程及び重縮合工程を行うために使用される押出機では、装置内の製品の平均粘度が低いため、このようなエネルギーは低いレベルである。
【0011】
本開示の目的は、実施が簡単であり、製造エネルギーの点でコストが低く、サイクル時間が短いポリアミドの製造方法を提案することである。
【0012】
発明の概要
【0013】
したがって、本発明の主題は、以下の連続工程a)及びb)を含む、縮合によるポリアミドの連続製造方法である。工程a)において、ポリアミドモノマーを含む混合物を押出機又はコニーダー内で溶融し、モノマーが水を一切添加せずに押出機又はコニーダーに送られるものである。
【0014】
工程b)において、工程a)の後に得られた混合物の重縮合反応を横型ミキサー反応器内で行い、この方法は、大気圧に近い圧力で行われる。
「大気圧に近い圧力」とは、大気圧と大気圧+100mbarの間の圧力、有利には大気圧と大気圧+50mbarの間の圧力、より有利には大気圧と大気圧+10mbarの間の圧力を意味する。
【0015】
有利には、モノマーは、水を添加せずに押出機又はコニーダーに添加される。その結果、従来技術の方法では通常添加される水の蒸発などのいくつかの工程を省くことができ、したがって、この蒸発に必要な加熱エネルギー、ひいてはこの方法のサイクル時間を制限することができる。更に、水蒸気のエントレインメントを制限することでモノマー損失の低減が可能になる。
【0016】
更に、別の利点として、脱揮全体が工程b)で発生するため、溶融用の押出機又はコニーダーに供給されるエネルギーの低減、及びモノマー損失の制限に寄与する。
【0017】
また、別の利点として、この方法が大気圧に近い圧力で行われるため、減圧下で行われる方法と比較して、製造に必要なエネルギーの低減、脱揮時のモノマー損失の制限、ひいては製造コストの制限にも寄与する。
【0018】
また、減圧下で行われる方法と比較して、空気が重縮合反応器に侵入した場合にポリマーが酸化により劣化するのを防止し、反応器の汚れを制限することができる。減圧下で行われる方法の使用には多くの予防措置が必要であるため、実施が困難である。
【0019】
モノマーとともに追加の水が供給されないという事実、及び操作が大気圧に近い圧力で行われるという事実により、有利には、設備を小型化することができ、特に、従来技術で提案されている解決策よりも有利な、設備投資に対するポリアミドの製造速度の達成を可能にすることができる。
【0020】
また、押出機内で重縮合反応を行うのではなく、ミキサー反応器内で重縮合反応を行うことにより、液体/気体界面のより良好な更新が可能になり、したがって重縮合水などの揮発性化合物のより効率的な脱揮が可能になる。
【0021】
この脱揮は、押出機とは異なり、ミキサー反応器がスクリューに沿って連続気相を有するという事実によって更に促進される。一般的には、ミキサー反応器内の液相の割合は、ミキサー反応器内の最初利用可能なスペースの20~75%である。
【0022】
また、EP2877516に記載されている押出機で行われる重縮合とは異なり、ミキサー反応器は、機械的混合エネルギーの消散によって製品の制御されない加熱を制限することで重縮合中の熱入力をより適切に制御し、これは、ポリアミドの熱劣化のリスクを軽減する。更に、ミキサー反応器は、より長い滞留時間、有利には5分よりも長い、好ましくは15分よりも長いことを可能にする。その結果、この方法により、有利には、品質の安定性及び達成可能な粘度の点で、より優れた製品の品質が得られる。
【0023】
この方法により、有利には、ミキサー反応器からの排出部で行われる後続の追加の後縮合工程、例えば固体状態での後縮合を行うことなく、高モル質量を有するポリアミドが得られる。
【0024】
本発明の方法の他の特徴は、以下で指定される。
-この方法で製造されるポリアミドは、脂肪族、脂環式、アリール脂肪族、芳香族又は半芳香族ポリアミドである。
-ポリアミドは、特に、ポリアミド11、11/B10、11/BI/BT、B10、B12、MXD10、MXD.6、11/10T、11/BACT/10T、BACT/10Tの中から選択される。
PA11は、11-アミノウンデカン酸(A11)の重縮合によって得られるポリアミドである。
11/B10は、11-アミノウンデカン酸(A11)と、ビス-(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)-メタン(又は3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン)(BMACM又はMACMとも呼ばれる)(この明細書ではBと呼ばれる)及びセバシン酸(10)との縮合によって得られるコポリアミドである。
11/BI/BTは、11-アミノウンデカン酸(A11)及びビス-(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)-メタン(又は3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン)(BMACM又はMACMとも呼ばれる)(この明細書ではBと呼ばれる)と、イソフタル酸(I)及びテレフタル酸(T)との重縮合によって得られるコポリアミドである。
B10は、ビス-(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)-メタン(又は3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン)(BMACM又はMACMとも呼ばれる)(この明細書ではBと呼ばれる)とセバシン酸(10)との重縮合によって得られるホモポリアミドである。
B12は、ビス-(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)-メタン(又は3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン)(BMACM又はMACMとも呼ばれる)(この明細書ではBと呼ばれる)とドデカン二酸(12)との重縮合によって得られるホモポリアミドである。
MXD10は、メタキシリレンジアミンとセバシン酸(10)との重縮合によって得られるホモポリアミドである。
MXD6は、メタキシリレンジアミンとアジピン酸(6)との重縮合によって得られるホモポリアミドである。
11/10Tは、11-アミノウンデカン酸(A11)と、デカンジアミン(10)及びテレフタル酸(T)との重縮合によって得られるコポリアミドである。
BACT/10Tは、ビス-(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)-メタン(又は3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン)(BMACM又はMACMとも呼ばれる)(この明細書ではBと呼ばれる)と、デカンジアミン(10)及びテレフタル酸(T)との重縮合によって得られるコポリアミドである。
11/BACT/10Tは、11-アミノウンデカン酸(A11)と、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(BAC)、テレフタル酸(T)及びデカンジアミン(10)との重縮合によって得られるコポリアミドである。
-工程a)における混合物は、添加剤を含む。
-添加剤は、少なくとも1つの触媒、少なくとも1つの安定剤、少なくとも1つの酸化防止剤、少なくとも1つの連鎖制限剤及び少なくとも1つの消泡剤を含む。
-特に共回転する、好ましくは少なくとも2本のスクリュー、より好ましくは2本のスクリューを有する押出機内で工程a)を行う。
-押出機又はコニーダー内で、モノマーの混合物を工程a)の排出温度が160℃~300℃となるように加熱することによって、モノマーの混合物の溶融を行う。
-工程a)で得られた混合物を、事前脱揮することなく、工程b)でミキサー反応器に供給する。
-ミキサー反応器は、好ましくは共回転する撹拌要素を含む少なくとも2つの軸を含む。
-ミキサー反応器の撹拌軸を加熱する。
-ポリアミドの凝固温度よりも最大で50℃高い温度、及び/又はこの凝固温度よりも5℃以上高い温度、好ましくは240℃~310℃の温度で、工程b)における重縮合反応を行う。
-不活性ガスのフラッシング下で、好ましくは向流で工程b)を行う。
【0025】
別の態様では、本発明は、本発明の方法を実施するためのシステムにも関し、このシステムは、ミキサー反応器の投入部に直接接続された押出機又はコニーダーを含み、特に、ミキサー反応器と押出機又はコニーダーとの間で中間脱揮装置を含まない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の方法を実施するためのシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の他の特徴、態様、目的及び利点は、以下の説明を読むことでより明確に理解されるであろう。
【0028】
本明細書で使用されている「…から…まで」及び「…と…の間」という表現は、示された各限界を含むものと解釈されることが明記されている。
【0029】
本発明の方法は、少なくとも前述の2つの連続工程a)及びb)を含む。この方法は、これら2つの工程a)及びb)の前又は後の工程を含んでもよいが、工程a)とb)の間で中間工程を含まない。
【0030】
本発明の方法は、特に脂肪族、脂環式、アリール脂肪族、芳香族又は半芳香族ポリアミドに適用することができる。
【0031】
工程a):ポリアミドモノマーを含む混合物の溶融
【0032】
工程a)において、モノマーを含む混合物を押出機又はコニーダー内で溶融温度に達成させる。上記モノマーは水を添加せずに押出機又はコニーダーに供給されるものである。
【0033】
言い換えれば、押出機又はコニーダーに供給されるポリアミドモノマーは、水に溶解されないか、又はより一般的には溶媒に溶解されない。
【0034】
したがって、好ましくは、工程a)で使用される混合物は、非常に低い水含有量、典型的には混合物の全重量に対して2重量%未満、特に1重量%未満の水含有量を有する。
【0035】
工程a)の後に存在し得る水は、本質的にはモノマーの溶融後の可能な縮合開始に由来する。
【0036】
モノマー
【0037】
ポリアミドモノマーは、ポリアミドの形成に適したモノマーである。それらは、脂肪族、脂環式、アリール脂肪族又は芳香族であってもよい。これらのモノマーは、無水塩、又は塩基又は遊離酸の形態であってもよい。それらの形態に関係なく、モノマーは、水又は溶媒を添加せずに押出機又はコニーダーに導入される。
【0038】
カルボン酸官能基とアミン官能基の両方を含む1つのモノマー、即ちアミノ酸系のモノマーだけを使用してもよいし、一方がアミン官能基を2つ持つモノマーで、他方がカルボン酸官能基を2つ又はそのカルボン酸無水物を持つモノマーである少なくとも2つのモノマーを使用してもよいし、C3~C6ラクタム系のモノマーを使用してもよいし、これらの異なるモノマーの混合物を使用してもよい。
【0039】
アミノ酸モノマーとは、アミン官能基とカルボン酸官能基を持つ、一般的に2~40個の炭素原子を有する炭化水素鎖を含む分子を意味する。
【0040】
アミノ酸モノマーの中では、特に、6-アミノヘキサン酸、5-アミノペンタン酸、7-アミノヘプタン酸、11-アミノウンデカン酸、又は12-アミノドデカン酸が挙げられる。
【0041】
ジアミンモノマーとは、アミン官能基を2つ持つ、一般的に2~40個の炭素原子を有する炭化水素鎖を含む分子を意味する。
【0042】
ジアミンモノマーは、特に、1,4-テトラメチレンジアミン、1,5-ペンタメチレンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、オクタン-1-エチレンジアミン、デカンメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、ビス-(4-アミノフェニル)メタン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2’-ジメチル-4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、2,2,4又は2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、あるいは又は、これらのジアミンの混合物の中から選択されてもよい。
【0043】
ジアミンモノマーは、好ましくは、デカンメチレンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2’-ジメチル-4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、又はこれらのジアミンの混合物の中から選択されてもよい。
【0044】
ジカルボン酸モノマーとは、炭化水素鎖を含み、一般的に2~40個の炭素原子を有し、カルボン酸官能基を2つ持つ分子を意味する。
【0045】
使用できるジカルボン酸モノマーとしては、特に、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、1,12-ドデカン二酸、ジオレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、5-スルホイソフタル酸、1,4-シクロヘキサン二酸、1,3-シクロヘキサン二酸、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0046】
使用できるジカルボン酸モノマーとしては、好ましくは、セバシン酸、1,12-ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0047】
C3~C6ラクタム系モノマーとは、3~6個の炭素原子を有する炭素環に含まれるアミドを意味する。例えば、カプロラクタムが挙げられる。
【0048】
工程a)で使用される混合物は、アミノ酸、二酸/二酸モノマー対、又はC3~C6ラクタム系モノマーの中から選択される1つ以上のモノマーを含んでもよい。
【0049】
モノマーを押出機又はコニーダーに投入する前に、不活性ガス雰囲気下、又は不活性ガス、特に窒素ガスのフラッシング下で保管することが好ましく、これにより、押出機又はコニーダーへの酸素ガスの侵入を防ぎ、それによって、プロセス全体を通じて、モノマー、又はオリゴマー、プレポリマー若しくはポリマーの酸化のリスクを軽減する。任意で、それらに対して事前に脱揮工程を行ってもよい。
【0050】
モノマーを異なる状態で押出機又はコニーダーに供給してもよい。モノマーは、固体状態又は液体状態であってもよい。
【0051】
例えば、反応器に供給されるジアミンモノマーが液体状態であり、ジカルボン酸モノマーが固体状態であってもよい。
【0052】
塩又はプレポリマーを事前に製造する工程は必要がない。選択されたモノマーを押出機又はコニーダーに直接供給してもよい。
【0053】
好ましくは重量測定式の固体用投与システムを使用して、固体状態のモノマーを、一般的に設定流量に対して1%以内、好ましくは0.5%、より好ましくは0.1%の精度で計量する。
【0054】
不活性ガス、好ましくは窒素ガスのフラッシング下で、好ましくは無水の形態でそれらを使用してもよい。
【0055】
空気圧ローダーを介してそれらを押出機又はコニーダーに装填してもよく、任意で、不活性ガス、好ましくは窒素ガスを好ましくは無水の形態で使用する少なくとも1つの工程を含む不活性化段階を伴う。
【0056】
任意で、それらを特に容器に保管する場合、事前に不活性化してもよい。
【0057】
単一の投入部又は異なる投入部を介して固体状態のモノマーを押出機又はコニーダーに供給してもよい。
【0058】
同じ系のモノマーの混合物、例えば、二酸又はジアミンを固体形態で使用することも可能である。
【0059】
液体用投与システムを使用して、液体形態のモノマーを、一般的に設定流量に対して1%以内、好ましくは0.5%、より好ましくは0.1%の精度で計量してもよい。好ましくは、質量流量計を備えた容積式ポンプを使用してそれらを装填する。
【0060】
不活性ガス、好ましくは窒素ガスのフラッシング下で、好ましくは無水の形態でそれらを使用してもよい。
【0061】
任意で、それらを特に容器に保管する場合、事前に不活性化してもよい。
【0062】
単一の注入点又は異なる注入点を介して液体形態のモノマーを供給してもよい。
【0063】
特に、任意でスタティックミキサーの後に、単一の注入点を介して、又は好ましくは異なる注入点を介して複数の液体形態のモノマーを注入することが可能である。
【0064】
同じ系のモノマーの混合物、例えば、二酸又はジアミンを液体形態で使用することも可能である。
【0065】
好ましくは、別々の投入部を介して固体状態及び液体状態のモノマーを押出機又はコニーダーに供給する。
【0066】
常温で固体状態のモノマーを事前に溶融した後に押出機又はコニーダーに装填してもよい。この場合、それらをそれらの溶融温度よりも高い温度、特に5℃高い温度、特に10℃高い温度に加熱する。
【0067】
常温で液体状態のモノマーを常温で又は加熱後に押出機又はコニーダーに供給してもよい。
【0068】
押出機又はコニーダー
【0069】
「押出機」又は「コニーダー」という用語は、本明細書では通常の意味で使用されており、当業者によく知られている装置を指す。
【0070】
特に、「押出機」とは、圧縮された材料をダイに押し込んで材料を変化させる押出加工、即ち(熱)機械的プロセスに使用できる装置を意味する。より具体的には、押出機は、押出機本体と呼ばれるシリンダー内で回転する少なくとも1本のエンドレススクリューと、材料に接触するライナーとで構成され、押出機本体自体は、複数の熱調節ゾーンで構成される。このエンドレススクリューは、スクリューの全長にわたってスクリューと壁の間のシールを確保する。押出機では、各搬送スクリューは、移動方向に次々に続く異なる要素で構成される。これらの異なる要素は、回転軸に並んで配置される。共回転押出機では、すべての搬送スクリューが同じ方向に回転し、これは、押出機の排出部から見て時計回りの方向に対応する場合が多い。これらの要素は、同じラインに並んで配置される。押出機を構成するさまざまな搬送スクリューは、すべて同じ直径を持ち、この直径は、一般的に搬送スクリューの長さに沿って一定のままである。ほとんどの場合、この直径は、6~134mmの範囲である。一般的には、移動方向を横断する同一平面に配置される要素は、すべて同じである。
搬送スクリューの回転速度は、押出機の種類に依存するが、押出機を構成するすべてのスクリューで同じである。一般的には、スクリューの回転速度は、押出機の種類に応じて10rpm~1200rpmである。
【0071】
本発明の方法を実施するのに適した押出機の例としては、特に、ClextralのEvolumシリーズ、CoperionのZSKシリーズ、又はCoperionのSTSシリーズが挙げられる。
【0072】
「コニーダー」も、当業者によく知られている装置である。押出機とは異なり、コニーダーは一般的に、回転しながら前後に移動する1つのエンドレススクリューのみを有し、スクリューの特定の箇所でのみスクリューと壁の間をシールする。
【0073】
本発明の方法を実施するのに適したコニーダーの例としては、特に、XindaのSJWシリーズ、BUSS AGのMDKシリーズ、又はBUSS AGのCOMPEOシリーズが挙げられる。
【0074】
押出機又はコニーダーのスクリューの直径Dは、原材料の流量に応じて変化する。それは、好ましくは40mm以上、より好ましくは100mm以上である。
【0075】
L/D比(Lは押出機又はコニーダーのスクリューの長さを指定し、Dはスクリューの直径を指定する)は、好ましくは30以上、好ましくは40以上である。
【0076】
スクリューの回転速度は、流量とL/D比に応じて大幅に変化する。それは、好ましくは600rpm以上、より好ましくは800rpm以上、更に好ましくは1000rpm以上である。
【0077】
好ましくは、混合は、好ましくは共回転する、好ましくは少なくとも2本のスクリュー、より好ましくは2本のスクリューを含む押出機内で行われる。これにより、モノマーを含む反応混合物を効率的に混合し、スクリューの軸に沿って押出機の投入部から排出部まで搬送し、異なる温度ゾーンを徐々に通過させてモノマーの混合物を溶融することができる。
【0078】
スクリューの構成要素は、材料の主たる搬送又は供給されたモノマーの主たる混合のいずれかを可能にするシーケンスを形成するように選択される。好ましくは、これらのシーケンスは、固体モノマーの最終投入点の下流に、連続的に更新される材料の蒸気防止プラグが形成されるように選択される。
【0079】
押出機又はコニーダーは、電気的手段又は熱交換流体などの加熱手段を含み、電気的手段が好ましい。これらの加熱手段は、工程a)で熱エネルギーの形で混合物に伝達される機械的エネルギーに加えて提供される。
【0080】
押出機又はコニーダー内で、ポリアミドモノマーを含む混合物を、工程a)の排出温度が、特に160℃~300℃、好ましくは200℃~280℃となるように、加熱することによって混合物の溶融を行う。
【0081】
好ましくは、押出機又はコニーダーの投入部と排出部の間で、スクリューの軸に沿った温度勾配を適用する。
【0082】
不活性ガス、好ましくは窒素ガスのフラッシング下で、特に押出機又はコニーダー内の反応混合物の移動方向に対して向流方向に混合を行ってもよい。
【0083】
工程a)で使用される混合物は、添加剤を更に含んでもよい。
【0084】
添加剤は、当業者によく知られている、ポリアミドに使用される従来の添加剤から選択されてもよい。
【0085】
例えば、それらは、触媒、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、潤滑剤、無機充填剤、難燃剤、核剤、着色剤、強化繊維、ワックス、及びそれらの混合物の中から選択されてもよい。
【0086】
有利には、それらは、触媒、安定剤、酸化防止剤、連鎖制限剤、消泡剤、及び/又はそれらの混合物の中から選択される。
【0087】
特に、触媒は、オルトリン酸、次亜リン酸、又は亜リン酸であってもよい。安定剤は、次亜リン酸ナトリウム、亜リン酸塩、又はフェノールであってもよい。連鎖制限剤は、酢酸、ステアリン酸又は安息香酸であってもよい。消泡剤は、シリコーン油であってもよい。
【0088】
特に1つ以上の投入部を介して、添加剤を液体及び/又は固体形態で押出機又はコニーダーに添加してもよい。それらを更に、単独又は混合物として、1つ以上のモノマーと混合して添加してもよい。
【0089】
別の実施形態では、添加剤のすべて又は一部を液体形態でミキサー反応器に注入し、残りを押出機に供給してもよい。それらを好ましくはミキサー反応器の最初の2/5内に、より好ましくは気相を排出するための第1オリフィスの上流に注入する。
【0090】
液体形態の添加剤の押出機への注入
【0091】
液体形態の添加剤を1つ以上の注入点を介して、好ましくはインジェクターを使用して添加する。
【0092】
液体の添加剤を常温で、溶融せずに加熱された状態で、又は溶融した状態で注入してもよい。更に、それらを水溶液の形態で添加してもよい。
【0093】
いくつかの液体形態の添加剤を任意で事前にスタティックミキサー内で混合した後に、1つの注入点で液体形態で注入してもよい。好ましくは、それらを1つ以上の注入点を介して注入する。
【0094】
1つ以上の添加剤又は一部の液体形態の添加剤を任意で事前にスタティックミキサー内で混合した後に、1つ以上の液体モノマー又は一部の液体モノマーと混合して1つ以上の供給点で添加してもよい。
【0095】
これらの液体形態の添加剤を、不活性ガス、好ましくは窒素ガスのフラッシング下で、好ましくは無水で使用してもよく、不活性ガス、好ましくは窒素ガスが充填された、好ましくは無水のヘッドスペースで使用してもよい。
【0096】
固体形態の添加剤の押出機への装填
【0097】
固体形態の添加剤を、好ましくは重量測定式の固形物投入装置による計量後に押出機又はコニーダーに供給する。
【0098】
それらを、設定値に対して1%以内、好ましくは0.5%以内、より好ましくは0.1%以内の精度で添加する。
【0099】
これらの固体形態の添加剤を、不活性ガス、好ましくは窒素ガスのフラッシング下で、好ましくは無水で使用してもよい。
【0100】
空気圧ローダーを介してそれらを押出機又はコニーダーに装填してもよく、任意で、不活性ガス、好ましくは窒素ガスを好ましくは無水の形態で使用する少なくとも1つの工程を含む不活性化段階を伴う。
【0101】
任意で、それらを特に容器に保管する場合、事前に不活性化してもよい。
【0102】
固体形態の添加剤のすべて又は一部を押出機又はコニーダーに添加する前に、固体形態の他の添加剤又はモノマーと事前に混合してもよい。
【0103】
一実施形態では、添加剤のすべて又は一部を、押出機又はコニーダーに添加するために、好ましくは固体の他の添加剤又はモノマーと混合してもよい。
【0104】
一実施形態では、添加剤を事前に混合し、その後、単一の供給点を介して押出機又はコニーダーに添加してもよい。
【0105】
別の実施形態では、それぞれが添加剤又は添加剤の混合物を含有する複数の容器によって供給される供給ライン内で混合を行ってもよく、混合物が供給ライン内で1つ以上のスタティックミキサーによって形成される。
【0106】
別の実施形態では、複数の添加剤を押出機又はコニーダーに別々に添加する。言い換えれば、別々の供給点を介して各添加剤を押出機又はコニーダーに添加する。
【0107】
工程a)と工程b)の間では、停止又は始動などの方法の移行段階中に、押出機又はコニーダーから出た材料の流れを、ミキサー反応器に入る前にパージに向けることが可能である。
【0108】
したがって、押出機は、その排出部で、好ましくは更新されない容積が最小限である複数のバルブのシステム、又は好ましくは三方弁を含む。
【0109】
押出機又はコニーダーからミキサー反応器への材料の移送は、重力下で、又は任意でギアポンプによって行われてもよい。
【0110】
工程a)の後に得られた生成物は、溶融状態のモノマーの混合物であり、液相を形成する。
【0111】
混合条件及び使用されるモノマーによっては、工程a)で既に重縮合反応が開始された可能性がある。この場合、工程a)から得られた生成物は、非常に低いモル質量のプレポリマーを含む可能性がある。ISO 307:2019規格に従って測定されたプレポリマーのm-クレゾール中の固有粘度は、一般的に厳密に0.40dL/g未満であり、好ましくは0.30dL/g以下、より好ましくは0.25dL/g以下である。
【0112】
工程a)の後に得られた生成物は、本質的に水蒸気からなる蒸気相を含む可能性がある。これは主に、重縮合反応が溶融工程で既に開始されている場合に、溶融工程で生成された縮合水に由来する。
【0113】
好ましくは、押出機又はコニーダーは、特に重縮合反応によって生成された水用の水排出装置を2つ未満、より好ましくはまったく含んでいない。上記装置は、本明細書の残りの部分では脱揮装置とも呼ばれる。これにより、水分除去の際の、溶融状態で蒸気形態に変化したモノマーの飛沫同伴を防ぎ、それによって、工程a)の後に押出機から出る際にモノマーの化学量論が維持され、したがって、工程b)で使用されるミキサー反応器内の重縮合反応用の混合物内でモノマーの化学量論が維持される。更に、脱揮装置への材料の搬送管理が不要になる(この搬送は、押出機内の製品の低粘度によって困難になる)ため、方法が簡素化され、製品の品質が向上する。最後に、押出機内の水の脱揮には、押出機の中心に向かって大量のエネルギーを伝達する必要が生じるが、押出機の加熱効率は設計上低く、更に、溶融製品の粘度が低いため、スクリューによって伝達される機械的エネルギーは非常に低い。
【0114】
有利には、モノマーの混合物の化学量論及び/又は転化率は、押出機内で制御することができる。特に、工程a)から得られた生成物の鎖末端の測定を、単離することなく、また材料の再循環ループなしに、押出機又はコニーダーから出た液相に対して直接的に行ってもよい。好ましくは、液相の流れ内に配置された測定プローブを使用して、近赤外分光法(NIR)によってこの測定を行う。測定結果に応じて、押出機又はコニーダーへのモノマーの投入流量及び/又は添加剤の流量を、好ましくは自動的に調整して、所望の化学量論及び/又は転化率を得ることができる。好ましくは、液体モノマーの流量を変更することによって調整を行う。
【0115】
押出機又はコニーダー内のモノマーの滞留時間は、押出機又はコニーダーの流量、特性、及び/又は動作パラメータに応じて変化してもよい。好ましくは3分以下、より好ましくは2分以下、更に好ましくは1分以下である。
【0116】
工程b):重縮合
【0117】
材料の流れ、即ち工程a)の後に得られた生成物を、特に押出機又はコニーダーとミキサー反応器の間の材料の流れを中断することなく、ミキサー反応器に直接供給する。
【0118】
特に、工程a)で得られた混合物を、事前脱揮することなく、工程b)でミキサー反応器に供給する。
【0119】
押出機又はコニーダー内で混合された溶融状態のモノマーは、ミキサー反応器内で反応を続ける。
【0120】
工程b)で使用されるミキサー反応器は、特に反応器-仕上げ装置(ポリアミドの仕上げ工程を行う)として、ポリアミドの合成に従来使用されている反応器である。本発明で使用できるミキサー反応器の例は、特に出願EP1436073、US8376607、及びEP0715882に記載されている。
【0121】
より具体的には、ミキサー反応器は、典型的には水平軸を備えた反応器である。これは、一般的には、横型円筒形反応器又は楕円形断面を備えた横型反応器である。
【0122】
反応器の長さと直径を選択し、溶融状態、即ち液体の反応混合物の流量を調整及び制御して、反応器内の滞留時間を調整し、それによって所望の移動速度を得ることができる。
【0123】
ミキサー反応器の長さは、反応器の内径の約3倍であってもよい。
【0124】
ミキサー反応器は、部分的に液相で満たされる。一般的には、ミキサー反応器の液相で満たされる割合は、特に液相と気相の間の界面の更新を促進し、したがって重縮合中に形成される水を除去するために、反応器内の当初利用可能なスペースの20~75%である。
【0125】
ミキサー反応器は、1つ以上の撹拌機を含む。撹拌機は、反応器内で回転できるように水平に取り付けられる。例えば、アルキメデススクリュー、ケージ型撹拌機、又は軸に取り付けられた連続ディスク(透かし模様の有無は問わない)などであってもよい。撹拌機の直径は、通常、反応器ミキサーの内径よりもわずかに小さい。撹拌機の軸は、仕上げ反応器の軸からオフセットしてもよい。これにより、特に反応器内での気相の循環が可能になる。この循環は、例えば、撹拌機のディスクに穴を開けることによっても確保できる。複数の撹拌機を使用する場合、撹拌機の構造は互いに異なってもよい。
【0126】
撹拌機の回転速度は、例えば5~100rpmであってもよい。
【0127】
撹拌機は、ミキサー反応器内の区画を画定する複数のディスクを含んでもよい。例えば、撹拌機は、5~15枚のディスクを含んでもよい。ミキサー反応器の最後の区画は、軸の最後のディスクとミキサー反応器の垂直端壁の間のスペースに対応する。
【0128】
ミキサー反応器は、好ましくはセルフクリーニング式である。より具体的には、好ましくは共回転する2つの軸を含む反応器である。特に、BUSS-SMS-CANZLERが販売するREACOMタイプのミキサー反応器、又はLIST TECHNOLOGY AGが販売するLIST CRP/TCPタイプのミキサー反応器であってもよい。
【0129】
製造されたポリアミドの凝固温度よりも高い温度、好ましくはこの凝固温度よりも5℃以上高い温度、より好ましくはこの凝固温度よりも10℃以上高い温度で、工程b)を行う。
【0130】
重縮合反応器の加熱温度を、合成される生成物の固有の重縮合速度に応じて調整してもよい。
【0131】
重縮合反応を特に、大気圧に近い圧力で、240℃~310℃の温度で行ってもよい。
【0132】
ミキサー反応器のバレルの壁、好ましくはその回転軸を加熱することによって加熱を行う。好ましくは、ミキサー反応器の加熱を熱交換流体によって行う。好ましくは、回転軸を、ミキサー反応器のバレルの壁の温度以上の温度に加熱する。
【0133】
ミキサー反応器内の溶融材料の滞留時間は、5分以上、好ましくは10分以上、より特には15分以上である。好ましくは、滞留時間は、60分以下、好ましくは50分以下、更に特には40分以下である。
【0134】
工程a)で得られた生成物から得られる反応器内の液相のレベルは、反応器内の初期の自由容積よりも好ましくは20%大きく、より好ましくは25%大きく、更に好ましくは35%大きい。
【0135】
反応器内の液相のレベルは、好ましくは75%未満、より好ましくは65%未満、更に好ましくは55%未満である。
【0136】
ミキサー反応器内の液相のレベルを、目視評価及び/又は反応器の直接計量によって測定し、及び/又は、レベルプローブ及び/又はリアクターの投入/排出の重量測定(マスバランス)によって監視することができる。
【0137】
主にミキサー反応器内で生成されるが、場合によっては溶融工程a)でも生成される縮合水は、不活性ガス流によって、好ましくは向流で除去するのが有利である。
【0138】
好ましくは、不活性ガス、好ましくは窒素ガスの注入を1つ以上の供給点で行う。不活性ガスをミキサー反応器の気相又は液相に注入してもよく、好ましくは気相に注入する。好ましくは、内部ガスの流れは、液体反応混合物の流れと反対の平行方向に起こる。この場合、不活性ガスを、好ましくは反応器の長さの最後の4/5に注入し、より好ましくはミキサー反応器の最後から2番目の区画に注入し、より有利にはミキサー反応器の最後の区画に注入する。ミキサー反応器に注入する前に不活性ガスを加熱してもよい。ミキサー反応器に注入する前に不活性ガスの湿度含有量を調整してもよい。
【0139】
ミキサー反応器は、好ましくは反応液の流れの方向に対して不活性ガス供給点の上流に、ミキサー反応器から気相を排出するための1つ以上のオリフィスを含む。この場合、気相を排出するためのオリフィスは、好ましくは反応器の最初の2/5内に、より好ましくは反応器の2番目と3番目の区画の間に配置される。
【0140】
反応器に供給される不活性ガス、特に窒素ガスの流量は、水蒸気希釈倍率Fが1.40未満、好ましくは1.20未満、より好ましくは1.10未満であるように定義される。
【0141】
【0142】
気相は、一般的に、不活性ガス、縮合水、及び重縮合からの残留揮発性化合物で構成され、残留揮発性化合物は、特に添加剤、モル質量が1000g/mol未満のオリゴマー、アミノ酸、ジアミン、環状化合物の中から単独で又は混合物として選択される。
【0143】
特に、アミノ酸系のモノマーのみを含むポリアミド組成物の場合、化合物は、オリゴマー、アミノ酸、環状二量体及び添加剤の混合物から構成される。
【0144】
反応器混合物には、好ましくは大気圧に近い圧力で重縮合反応器の排出部での気相を管理する、脱揮ラインと呼ばれる装置を装備することができる。
【0145】
好ましくは、ミキサー反応器は、大気圧に近い圧力で脱揮ラインに接続された気相排出オリフィスを含む。
【0146】
有利には、脱揮ラインは、ミキサー反応器内の圧力を大気圧に近い値に調整することを可能にする、制御弁と呼ばれる装置を含む。
【0147】
有利には、脱揮ラインは、オリゴマーの軟化温度よりも高い温度、好ましくはオリゴマーの溶融温度よりも高い温度である。
【0148】
脱揮ラインの温度は、120~300℃、好ましくは180~300℃、より好ましくは180~250℃である。
【0149】
好ましくは、ミキサー反応器は、好ましくは同じである少なくとも2つの脱揮装置を含み、両方とも同じオリフィスによって反応器に接続され、一度に1つだけが作動するため、一方から他方に切り替えることによって、プロセスを中断することなく洗浄することができる。
【0150】
したがって除去される水蒸気及びモノマー又はオリゴマーなどの他の揮発性化合物は、従来の蒸留システムによって分離することができる。この分離により回収されたモノマー及び/又はオリゴマーは、単独で又は他の非リサイクルモノマーとの混合物として、押出機に戻るように循環してもよい。
【0151】
1つ以上のジアミンを含むポリアミドの合成の場合、ミキサー反応器から出た気相は、特にこれらのジアミンのうちの1つ以上を含んでもよい。
【0152】
好ましくは、ミキサー反応器の気相排出オリフィスと脱揮ラインの間では、気相に含まれるジアミン又はジアミンの混合物を他の化合物から分離する分縮器を配置する。分縮器から排出されるジアミン単独又は他のジアミンとの混合物の質量流量は、工程a)で供給されるジアミンの総質量流量と比較して10%以下であり、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、有利には1%以下である。
【0153】
その後、回収されたジアミン又はジアミン混合物を容器に向かって導き、任意で、工程a)の投入時にモノマーとして、好ましくはリサイクルされていないジアミン又はジアミン混合物との混合物として再利用するようにその組成を変更するために、例えば精留塔でその後の処理を受ける。
【0154】
回収されたジアミン又はジアミン混合物を、追加の処理なしに、好ましくは反応器の最初の2/8に、より好ましくはミキサー反応器の最初の1/8に、より有利には工程a)から得られた生成物を供給するために使用された反応器スクリューと同じレベルで、ミキサー反応器にリサイクルすることも可能である。
【0155】
分縮器の設定温度は、90℃~200℃、好ましくは95℃~200℃、より好ましくは100℃~150℃、より有利には100℃~120℃である。
【0156】
有利には、ミキサー反応器の気相排出オリフィスと分縮器との間にデミスター又はベッド液滴セパレーターを挿入する。
【0157】
その後、脱揮ラインを通過する気相をラインの終端で冷却し、そこでその成分の全部又は一部が気体状態から液体状態及び/又は固体状態に変化する。この操作を、気相に含まれる最も揮発性の高い化合物の凝縮温度よりも低い温度の凝縮器で行ってもよい。好ましくは、気相のスクラビングは、溶媒、好ましくは水で行われる。この目的のために、スプレーカラム、サイクロンスプレースクラバー、充填床スクラバー、プレートスクラバーなどの直列に接続された1つ以上の装置を、並流、向流、又はクロスフローで使用することが可能である。
【0158】
その後、溶媒中にコロイド状に可溶化又は分散した化合物を分離するために、及び/又は溶媒から固体を分離するために、得られた相を処理してもよい。凝固、凝集、電気凝固沈殿、吸着、イオン交換、デカンテーション、遠心分離、濾過、浮選などのいくつかの方法が当業者に知られている。
【0159】
生成物を、ミキサー反応器のバレル内に形成された排出口を介して、垂直排出単軸又は二軸スクリューによってミキサー反応器から取り出してもよい。排出口は、ミキサー反応器の下流端の壁の1つ、又はミキサー反応器の垂直端壁に配置されてもよい。
【0160】
排出スクリューを、有利には反応器ミキサーのバレルの温度以上の温度に加熱する。二軸スクリューを使用する場合、これらは、直線状又は円錐形であってもよく、反応器の排出口に対して前後に、又は互いに同じ高さに配置されてもよい。
【0161】
その後、生成物をギアポンプによって処理することにより、反応器からの排出を調整する。直接切断又は有利には水槽内で生成物を冷却して得られたロッドの粒状化により小粒が得られるように、このギアポンプの下流に加熱されるダイを配置してもよい。
【0162】
任意で、ロッドと平行でロッドの移動方向とは反対方向に流れる空気流によって、小粒をインラインで乾燥させる。
【0163】
工程b)から得られた生成物の化学量論及び/又は転化率の測定を行ってもよい。特に、工程b)で得られた生成物の鎖末端の測定を、単離することなく、また材料の再循環ループなしに、ミキサー反応器から出た液相に対して直接的に行ってもよい。好ましくは、液相の流れ内に配置された測定プローブを使用して、近赤外分光法(NIR)によってこの測定を行う。
【0164】
ミキサー反応器から出た固体小粒に対してこの測定を行うことも可能である。好ましくは、近赤外分光法(NIR)によってこの測定を行う。
【0165】
所望の化学量論及び/又は転化率を得るために、測定結果に従って、モノマーの流量及び/又は添加剤の流量を、押出機又はコニーダーへの投入部及び/又はミキサー反応器内で、好ましくはミキサー反応器の最初の2/8に、より好ましくはミキサー反応器の最初の1/8に、より有利には工程a)から得られた生成物の供給点と同じミキサー反応器のスクリューレベルで、好ましくは自動的に調整してもよい。好ましくは、液体モノマーの流量を変更することによって調整を行う。
【0166】
所望の転化率を得るために、測定結果に従って、ミキサー反応器内の不活性ガス流の流量及び/又は湿度含有量も、好ましくは自動的に調整してもよい。
【0167】
有利には、本発明の方法により工程b)の後に得られたポリアミドは、ISO 307:2019規格に従って測定されたメタクレゾール溶液中の固有粘度が少なくとも0.80dL/g、好ましくは少なくとも1.10dL/g、より好ましくは少なくとも1.30dL/gである。
【0168】
有利には、本発明の方法により工程b)の後に得られたポリアミドは、ISO 307:2019規格に従って測定されたメタクレゾール溶液中の固有粘度が最大で2.50dL/g、より好ましくは最大で2.20dL/g、更に好ましくは最大で1.80dL/gである。
実施例
【0169】
以下の実施例では、以下の略語が使用されている。
A11は、11-アミノウンデカン酸に対応する。
DA10は、デカンジアミンに対応する。
Bは、ビス-(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)-メタン(又は3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシル-メタン)(BMACM又はMACMとも呼ばれる)に対応する。
Tは、テレフタル酸に対応する。
BACは、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンに対応する。そのシス異性体含有量が75%である。
【0170】
Werner & Pfleiderer社製の共回転二軸スクリュー押出機ZSK30(直径30ミリメートル、長さ38直径)には、供給ゾーンの開始位置に配置された2つの重量測定式計量フィーダーが装備されており、バレル4とバレル6に2つの注入点が設けられている。表2に示す条件下で電気加熱要素によってこの押出機の加熱を行った。脱揮シンクを用意していない。
【0171】
押出機の排出部は、熱交換流体によって加熱されるチューブを介して、LIST TECHNOLOGY AGが販売する、自由容積が7.4リットルのセルフクリーニング式ミキサー反応器LIST TCP4 CONTIに接続される。押出機の排出部とミキサー反応器の投入部の間での生成物の移送を重力下で行った。
【0172】
ミキサー反応器には、11個のチャンバーを形成する2つの共回転撹拌機が装備されており、ミキサー反応器の壁と2つの撹拌軸が熱交換流体によって同じ温度に加熱されたものである。生成物を1番目の区画から反応器ミキサーに供給した。反応器ミキサーからの生成物を、ミキサー反応器の垂直端壁に配置された排出口を介して、2つの垂直排出スクリューによって確実に取り出した。これらの排出スクリューの下流に配置されたギアポンプにより、排出物流の調整と加熱されたダイを通るように生成物の搬送が可能になった。得られたロッドを水槽内で冷却し、粒状化した。
【0173】
窒素ガスの流れを、反応器の9番目の区画の気相に向流で供給した。反応器の気相を4番目の区画で排気した。気相は、最初に熱交換流体によって加熱された分縮器を通過し、凝縮液は、4番目の区画で反応器に向かって導かれ、その後、気相は、電気加熱された下流の脱揮ラインに入った。熱交換流体によって加熱された全縮器は、この脱揮ラインの端部に配置された。
【0174】
モノマーの溶融とさまざまな添加剤の装填を押出機内で行った。モノマーは、組成物PA11(ポリマーA)、PA11/10T(ポリマーB)、PA11/B10(ポリマーC)、及びPA BACT/10T(ポリマーD)に対応した。
【0175】
二酸を固体形態で供給ホッパーに投入し、その質量流量を重量測定式フィーダーによって計量した。
【0176】
ジアミンを容器内で80℃に加熱し、その後、質量流量を制御するために質量流量計によってサーボ制御される容積式ポンプによってバレル6に注入した。ポリマーDの場合、2つのジアミン1,3-1
【0177】
BACとDA10を単一の注入点でバレル6に注入する前に、容器内で事前に混合した。
【0178】
液体形態の添加剤を注入によって押出機のバレル4に供給し、及び/又はミキサー反応器の1番目の区画に供給した。固体形態の添加剤を1つのモノマーとドライブレンドの形で添加した。供給条件は、表1に記載されている。実施例5では、2つの添加剤の混合物をバレル4の単一の注入点から押出機に注入した。
【0179】
【0180】
【0181】
【0182】
上記の表1~3で使用されている用語の意味は次のとおりである。
【0183】
「wt%」は、重量パーセントを示す。
【0184】
「レベル」は、工程a)の後に得られ、ミキサー反応器に供給される混合物が占めるミキサー反応器の自由容積の割合を指す。
【0185】
「滞留時間」は、ミキサー反応器内の滞留時間を指す。
【0186】
「希釈倍率」:反応器に供給される不活性ガス、特に窒素ガスの流量は、水蒸気希釈倍率Fが1.40未満、好ましくは1.20未満、より好ましくは1.10未満であるように定義される。
【0187】
【0188】
「ジアミン損失」は、脱揮ラインを備えた全縮器の排出部で回収されたジアミンモノマーの全重量を、押出機に供給されるジアミンモノマーの全重量と比較したものである。
【国際調査報告】