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特表2024-546933高密度物品に膨張させたペースト加工された超高分子量ポリエチレン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】高密度物品に膨張させたペースト加工された超高分子量ポリエチレン
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20241219BHJP
   C08J 9/00 20060101ALI20241219BHJP
   C08J 9/26 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
C08J5/18
C08J9/00 A
C08J9/26 CES
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535861
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-07-01
(86)【国際出願番号】 US2022052245
(87)【国際公開番号】W WO2023114080
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】63/290,154
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】スペンサー ディー.ジャックマン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン ジェイ.ストリッド
(72)【発明者】
【氏名】ガイ エー.スブリグリア
【テーマコード(参考)】
4F071
4F074
【Fターム(参考)】
4F071AA15
4F071AA81
4F071AA87
4F071AF08Y
4F071AF09
4F071AF15Y
4F071AF20
4F071AF30Y
4F071AH19
4F071BB08
4F071BC01
4F071BC12
4F074AA17
4F074AB01
4F074CB34
4F074CC02Y
4F074CC02Z
4F074CC04Z
4F074DA08
4F074DA36
4F074DA53
(57)【要約】
ペースト加工された超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)ポリマー、及び高結晶性の超高分子量ポリエチレンポリマーから高密度UHMWPEフィルムを形成する方法が提供される。ここで記載するUHMWPEフィルムは、1)乾燥した多孔質UHMWPEテープを圧縮し、次にUHMWPEポリマーの溶融温度を超える温度で延伸すること、2)乾燥した多孔質UHMWPEテープを圧縮せずにUHMWPEポリマーの融点を超える温度で膨張させること、又は3)乾燥した多孔質UHMWPEテープをUHMWPEポリマーの融点未満の温度で膨張させて多孔質膜を形成し、その後に、UHMWPEポリマーの融点を超える温度で多孔質膜を圧縮して高密度フィルムを形成することによって製造することができる。この高密度フィルムは、高密度フィルムの特性を高めるために、さらに二軸延伸することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高密度超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)フィルムであって、
約135℃~約143℃での第一の吸熱、
約145℃~約155℃での第二の吸熱、及び、
360nm~780nmで測定して少なくとも約90%の全光透過率
を備える、高密度超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)フィルム。
【請求項2】
前記UHMWPEフィルムは機械方向(MD)のマトリックス引張強度が少なくとも200MPaである、請求項1記載の高密度UHMWPEフィルム。
【請求項3】
前記UHMWPEフィルムは横断方向(TD)のマトリックス引張強度が少なくとも400MPaである、請求項1又は請求項2記載の高密度UHMWPEフィルム。
【請求項4】
マトリックス引張強度MD:TDの比は約1:5~約5:1である、請求項1~3のいずれか1項記載の高密度UHMWPEフィルム。
【請求項5】
前記UHMWPEフィルムはCO透過度、O透過度又はN透過度が10バーレル未満である、請求項1~4のいずれか1項記載の高密度UHMWPEフィルム。
【請求項6】
前記UHMWPEフィルムは厚さが0.0005mm~1mmである、請求項1~5のいずれか1項記載の高密度UHMWPEフィルム。
【請求項7】
前記高密度UHMWPEフィルムは、分子量が約2,000,000g/モル~約10,000,000g/モルであり、融解エンタルピーが190J/gを超えるUHMWPEポリマーから形成されたものである、請求項1~6のいずれか1項記載の高密度UHMWPEフィルム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項記載の高密度UHMWPEフィルムを含む複合材。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項記載の高密度UHMWPEフィルムを含む物品。
【請求項10】
高密度UHMWPEフィルムを形成する方法であって、
分子量が少なくとも2,000,000g/モルであり、融解エンタルピーが少なくとも190J/gであるUHMWPEポリマーから乾燥した多孔質UHMWPEテープを形成すること、
前記乾燥した多孔質UHMWPEテープをUHMWPEポリマーの溶融温度より低い温度で圧縮すること、及び、
前記UHMWPEテープをUHMWPEポリマーの溶融温度より高い温度で少なくとも2方向に延伸して、高密度UHMWPEフィルムを形成すること、
を含み、前記高密度UHMWPEフィルムは、
約135℃~約143℃での検出可能な第一の吸熱、及び、
約145℃~約155℃での検出可能な第二の吸熱、
を備えている、方法。
【請求項11】
前記高密度UHMWPEフィルムは、250nm~800nmで測定して少なくとも約98%の全光透過率を備える、請求項10記載の方法。
【請求項12】
形成工程は、
粉末としてのUHMWPEポリマー及び潤滑剤を含むペーストを提供すること、
前記ペーストをテープに成形すること、
前記潤滑剤を除去して、乾燥した多孔質UHMWPEテープを形成すること、及び
前記テープを延伸して、高密度UHMWPEフィルムを形成すること、
を含む、請求項10又は11記載の方法。
【請求項13】
圧縮されたUHMWPEテープを延伸する工程は、140℃~170℃の温度で、約0.1%~20,000%/秒の速度で行われる、請求項10~12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記高密度UHMWPEフィルムは、さらに、機械方向マトリックス引張強度の横断方向マトリックス引張強度に対する比が約1:5~約5:1であり、マトリックス引張強度が少なくとも500×500(MD×TD)MPaであり、CO、O又はN透過度が0.01~10バーレルであり、水蒸気透過係数が0.02g・mm/m/日未満である、請求項10~13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
高密度UHMWPEフィルムを形成する方法であって、
分子量が少なくとも2,000,000g/モルであり、融解エンタルピーが少なくとも190J/gであるUHMWPEポリマーから乾燥した多孔質UHMWPEテープを形成すること、及び、
前記乾燥した多孔質UHMWPEテープをUHMWPEポリマーの溶融温度を超える温度で少なくとも2方向に延伸して、高密度UHMWPEフィルムを形成すること、
を含み、前記高密度UHMWPEフィルムは、
約135℃~約143℃での第一の検出可能な吸熱、及び、
約145℃~約155℃での第二の検出可能な吸熱、
を備える、方法。
【請求項16】
形成工程は、
粉末としてのUHMWPEポリマー及び潤滑剤を含むペーストを提供すること、
前記ペーストをテープに成形すること、
前記潤滑剤を除去して、乾燥した多孔質UHMWPEテープを形成すること、及び、
前記テープを延伸して、高密度UHMWPEフィルムを形成すること、
を含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
乾燥したUHMWPEテープを延伸する工程は、140℃~170℃の温度で、約0.1%~20,000%/秒の速度で行われる、請求項15又は16記載の方法。
【請求項18】
前記高密度UHMWPEフィルムは、さらに、機械方向マトリックス引張強度の横断方向マトリックス引張強度に対する比が約1:5~約5:1であり、マトリックス引張強度が少なくとも200×200(MD×TD)MPaであり、CO、O又はN透過度が 0.01~10バーレルである、請求項15~17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
高密度UHMWPEフィルムを形成する方法であって、
(a)分子量が少なくとも2,000,000g/モルであり、融解エンタルピーが少なくとも190J/gであるUHMWPEポリマーから多孔質UHMWPEテープを形成すること、
(b)前記多孔質UHMWPEテープを多孔質UHMWPEテープの溶融温度より低い温度で膨張させて多孔質膜を形成すること、及び、
(c)前記多孔質UHMWPE膜を少なくとも1MPaの圧力で圧縮して、高密度UHMWPEフィルムを形成すること、
を含み、前記高密度UHMWPEフィルムは、
約135℃~約143℃での第一の吸熱、
約145℃~約155℃での第二の検出可能な吸熱、
を備える、方法。
【請求項20】
(d)前記高密度UHMWPEフィルムをUHMWPEポリマーの溶融温度より高い温度で延伸することをさらに含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
延伸及び圧縮工程は同時に行われる、請求項19又は請求項20記載の方法。
【請求項22】
圧縮後の延伸工程は約140℃~約170℃の温度で行われる、請求項19~21のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
前記高密度UHMWPEフィルムは、さらに、機械方向マトリックス引張強度の横断方向マトリックス引張強度に対する比が約1:5~約5:1であり、マトリックス引張強度が少なくとも200×200(MD×TD)MPaであり、水蒸気透過係数が0.21g-mm/m/日未満である、請求項19~22のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
延伸工程は二軸又は半径方向延伸を含む、請求項10~23のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年12月16日に提出された仮出願番号第63/290,154号の利益を主張するものであり、この仮出願は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本開示は、一般に、ペースト加工された超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)ポリマーに関し、より具体的には、高結晶性の超高分子量ポリエチレンポリマーから高密度フィルムを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
超高分子量ポリエチレンは当該技術分野でよく知られている。超高分子量ポリエチレンから作られた物品は、靭性、衝撃強度、耐摩耗性、低摩擦係数、ガンマ耐性ならびに溶媒及び腐食性化学物質による攻撃に対する耐性などの特性を備えている。超高分子量ポリエチレンは、その好ましい特性のために、関節プロテーゼの耐荷重部品、振動減衰パッド、液圧シリンダ、スキー、スキーポール、ゴーグルフレーム、保護ヘルメット、登山用具を含む(これらに限定されない)スポーツ用具、航空宇宙の特殊用途など、様々な用途に利用されている。
【0004】
UHMWPEポリマーは、圧縮成形、ラム押出、ゲル紡糸及び焼結によって加工することができる。しかしながら、幾つかの従来のプロセスは、UHMWPEポリマーの高粘度のために、高レベルの溶媒を必要とすること、及び/又は、加工に費用がかかり又は加工に時間がかかるなど、1つ以上の望ましくない特徴又は特性を有する。したがって、当該技術分野では、UHMWPE中間体(例えば、テープ又は膜)を作製するためのペースト加工が求められており、その後、高強度、優れたバリア特性、光学的均一性、低ヘイズ及び透明性などの優れた機械的特性及び任意の特性を有する高密度フィルムに加工される。
【発明の概要】
【0005】
要旨
本明細書において、ペースト加工された超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)ポリマーから形成された高密度フィルム、及び高結晶性超高分子量ポリエチレンポリマーからこれらのフィルムを形成するための方法が提供される。
【0006】
第一の実施形態(「実施形態1」)によれば、約135℃~約143℃での第一の吸熱、約145℃~約155℃での第二の吸熱、及び360nm~780nmで測定して少なくとも約90%の全光線透過率を備えた高密度超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)フィルムが提供される。
【0007】
実施形態2は、UHMWPEフィルムが、機械方向(MD)のマトリックス引張強度が少なくとも200MPaである、実施形態1の高密度UHMWPEフィルムである。
【0008】
実施形態3は、UHMWPEフィルムが、横断方向(TD)のマトリックス引張強度が少なくとも400MPaである、実施形態1又は2の高密度UHMWPEフィルムである。
【0009】
実施形態4は、マトリックス引張強度MD:TDの比が約1:5~約5:1である、実施形態1~3のいずれかの高密度UHMWPEフィルムである。
【0010】
実施形態5は、UHMWPEフィルムが10バーレル未満のCO透過度又はO透過度又はN透過度を有する、実施形態1~4のいずれかの高密度UHMWPEフィルムである。
【0011】
実施形態6は、UHMWPEフィルムの厚さが0.0005mm~1mmである、実施形態1~5のいずれかの高密度UHMWPEフィルムである。
【0012】
実施形態7は、高密度UHMWPEフィルムは、分子量が約2,000,000g/モル~約10,000,000g/モルであり、融解エンタルピーが190J/gを超えるUHMWPEポリマーから形成される、実施形態1~6のいずれかの高密度UHMWPEフィルムである。
【0013】
実施形態8は、実施形態1~7のいずれかの高密度UHMWPEフィルムを含む複合材である。
【0014】
実施形態9は、実施形態1~8のいずれかの高密度UHMWPEフィルムを含む物品である。
【0015】
第十の実施形態(「実施形態10」)によれば、分子量が少なくとも2,000,000g/モルであり、融解エンタルピーが少なくとも190J/gであるUHMWPEポリマーから乾燥した多孔質UHMWPEテープを形成すること、乾燥した多孔質UHMWPEテープをUHMWPEポリマーの溶融温度より低い温度で圧縮すること、及びUHMWPEテープをUHMWPEポリマーの溶融温度より高い温度で少なくとも2方向に延伸して高密度UHMWPEフィルムを形成することを含む高密度UHMWPEフィルムを形成する方法が提供される。高密度UHMWPEフィルムは、約135℃~約143℃での第一の検出可能な吸熱と、約145℃~約155℃での第二の検出可能な吸熱とを含む。
【0016】
実施形態11は、高密度UHMWPEフィルムが、250nm~800nmで測定して少なくとも約98%の全光透過率を備える、実施形態10の方法である。
【0017】
実施形態12は、形成工程が、粉末としてのUHMWPEポリマー及び潤滑剤を含むペーストを提供すること、前記ペーストをテープに成形すること、潤滑剤を除去して乾燥した多孔質UHMWPEテープを形成すること、及び前記テープを延伸して高密度UHMWPEフィルムを形成することを含む、実施形態10又は11の方法。
【0018】
実施形態13は、圧縮されたUHMWPEテープを延伸する工程が、140℃~170℃の温度で、約0.1%~20,000%/秒の速度で行われる、実施形態10~12の方法。
【0019】
実施形態14は、高密度UHMWPEフィルムが、さらに、機械方向マトリックス引張強度/横断方向マトリックス引張強度比が約1:5~約5:1であり、マトリックス引張強度が少なくとも500×500(MD×TD)MPaであり、CO、O又はN透過度が0.01~10バーレルであり、水蒸気透過係数が0.02g-mm/m/日未満である、実施形態10~13の方法である。
【0020】
第十五の実施形態(「実施形態15」)によれば、高密度UHMWPEフィルムを形成する方法が提供され、この方法は、分子量が少なくとも2,000,000g/モルであり、融解エンタルピーが少なくとも190J/gであるUHMWPEポリマーから乾燥した多孔質UHMWPEテープを形成すること、乾燥した多孔質UHMWPEテープを UHMWPEポリマーの溶融温度を超える温度で少なくとも二方向に延伸して高密度UHMWPEフィルムを形成することを含み、ここで、前記高密度UHMWPEフィルムは、約135℃~約 143℃での第一の検出可能な吸熱、及び、約145℃~約155℃での第二の検出可能な吸熱を備える。
【0021】
実施形態16は、形成工程が、粉末としてのUHMWPEポリマー及び潤滑剤を含むペーストを提供すること、前記ペーストをテープに成形すること、前記潤滑剤を除去して乾燥した多孔質UHMWPEテープを形成すること、及び前記テープを延伸して高密度UHMWPEフィルムを形成することを含む、実施形態15の方法である。
【0022】
実施形態17は、乾燥したUHMWPEテープを延伸する工程が、140℃~170℃の温度で、約0.1%~20,000%/秒の速度で行われる、実施形態15又は16の方法である。
【0023】
実施形態18は、高密度UHMWPEフィルムが、さらに、機械方向マトリックス引張強度/横断方向マトリックス引張強度の比が約1:5~約5:1であり、マトリックス引張強度が少なくとも200×200(MD×TD)MPaであり、CO2、O2又はN2透過度が0.01~10バーレルである、実施形態15~17の方法である。
【0024】
第十九の実施形態(「実施形態19」)によれば、(a)分子量が少なくとも2,000,000g/モルであり、融解エンタルピーが少なくとも190J/gであるUHMWPEポリマーから多孔質UHMWPEテープを形成すること、ここで、前記多孔質UHMWPEテープ、(b)前記多孔質UHMWPEテープを前記多孔質UHMWPEテープの溶融温度より低い温度で膨張(エキスパンド、膨張、延伸または発泡)させて多孔質膜を形成すること、及び(c)前記多孔質UHMWPE膜を少なくとも1MPaの圧力で圧縮して、約135℃~約143℃の第一の吸熱及び約145℃~約155℃の第二の検出可能な吸熱を備えた、高密度UHMWPEフィルムを形成することを含む、高密度UHMWPEフィルムを形成する方法が提供される。
【0025】
実施形態20は、(d)高密度UHMWPEフィルムをUHMWPEポリマーの溶融温度より高い温度で延伸することをさらに含む、実施形態19の方法。
【0026】
実施形態21は、延伸工程及び圧縮工程が同時に行われる、実施形態19又は20の方法。
【0027】
実施形態22は、圧縮後の延伸工程が約140℃~約170℃の温度で行われる、実施形態19~21の方法。
【0028】
実施形態23は、前記高密度UHMWPEフィルムがさらに、機械方向マトリックス引張強度/横断方向マトリックス引張強度の比が約1:5~約5:1であり、マトリックス引張強度が少なくとも200×200(MD×TD)MPaであり、そして水蒸気透過係数が0.21g-mm/m2/日未満である、実施形態19~22の方法。
【0029】
実施形態24は、前記延伸工程が二軸延伸又は半径方向延伸を含む、実施形態10~23の方法。
【0030】
前述の実施形態は、まさに実施形態であり、本開示によって別途提供される発明概念のいずれかの範囲を制限又は狭めるものとして解釈されるべきではない。複数の例が開示されているが、例示的な例を示して説明する以下の詳細な説明から、さらに他の実施形態が当業者に明らかになるであろう。したがって、図面及び詳細な説明は、制限的な性質ではなく、例示的な性質として考えられるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図面の簡単な説明
本発明の利点は、本発明の以下の詳細な開示を考慮すると、特に添付の図面と併せて考えると明らかになる。
【0032】
図1図1は、本明細書に記載されるすべての実施例のUHMWPE粉末の示差走査熱量測定 (DSC)サーモグラムであり、232.9J/gの融解エンタルピーを示している。
【0033】
図2図2は、例1のUHMWPE高密度フィルムに関連する2つの区別される融点を示す示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムである。
【0034】
図3図3は、例2のUHMWPE高密度フィルムに関連する2つの区別される融点を示す示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムである。
【0035】
図4図4は、例3aのUHMWPE高密度フィルムに関連する2つの区別される融点を示す示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムである。
【0036】
図5図5は、例1、2及び4bで記載したUHMWPE高密度フィルムの窒素、酸素及び二酸化炭素ガスに対する比較透過度のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
詳細な説明
定義と用語
本開示は、限定的に解釈されるべきものではない。例えば、本出願で使用されている用語は、当該分野の当業者がそのような用語に帰属する意味の関係で広く解釈されるべきである。
【0038】
不正確な用語に関しては、「約」及び「およそ」という用語は、記載された測定値を含む測定値、及び記載された測定値に合理的に近い測定値も含む測定値を指すために互換的に使用できる。記載された測定値に合理的に近い測定値は、関連技術の当業者によって理解され、容易に確認されるように、記載された測定値から合理的に小さな量だけ逸脱している。このような逸脱は、例えば、測定誤差、測定及び/又は製造装置の較正における差異、測定値の読み取り及び/又は設定における人為的エラー、他の構成要素に関連する測定値の差異を考慮して性能及び/又は構造パラメータを最適化するために行われた小さな調整、特定の実装シナリオ、人又は機械による対象物の不正確な調整及び/又は操作、及び/又は同様のものに起因することができる。関連技術の当業者がそのような合理的に小さな差異の値を容易に確認できないと判断された場合には、「約」及び「およそ」という用語は、記載された値の+又は-10%を意味すると理解することができる。
【0039】
様々な実施形態の説明
当業者は、本開示の様々な態様が、意図された機能を発揮するように構成された任意の数の方法及び装置によって実現できることを容易に理解するであろう。また、本明細書で参照される添付の図面は、必ずしも縮尺どおりに描かれているわけではなく、本開示の様々な態様を説明するために誇張されている場合があることにも留意すべきであり、その点において、図面は限定的なものとして解釈されるべきではない。
【0040】
本開示は、高密度の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)フィルム、これらのフィルムを含む物品及び複合材、ならびにUHMWPEポリマーのペースト加工によってテープ又は膜を製造し、その後、高密度フィルムの形成に適した処理条件(例えば、加熱圧縮又は二軸延伸、又は、二軸延伸と組み合わせた加熱圧縮)に供される、高密度UHMWPE物品を製造する方法に関する。
【0041】
UHMWPEフィルムは、平均分子量(Mw)が少なくとも約2,000,000g/モルであり、結晶度が高い超高分子量ポリエチレンポリマーから形成されうる。例示的な実施形態において、UHMWPEポリマーは平均分子量が約2,000,000g/モル~約10,000,000g/モル、約4,000,000g/モル~約10,000,000g/モル、約4,000,000g/モル~約8,000,000g/モルの範囲であることができ、又は平均分子量がこれらの端点に含まれる任意の他の範囲であることができる。
【0042】
UHMWPEポリマーは高い結晶度を有することができる。UHMWPEポリマーの結晶化度は、示差走査熱量測定(DSC)によって測定されうる。本明細書で使用されるときに、「高結晶性」又は「高度に結晶性」という語句は、DSCで測定して190J/gを超える第一の融解エンタルピーを有するUHMWPEポリマーを表すことを意図している。別の実施形態において、UHMWPEポリマーは、195J/g、200J/g、205J/g、210J/g、215J/g、220J/g、225J/g、又は230J/gを超える第一の融解エンタルピーを有する。
【0043】
さらに、UHMWPEポリマーは、エチレンのホモポリマー、又はエチレンと少なくとも1つのコモノマーとのコポリマーであることができる。UHMWPEコポリマーを形成するために使用されうる適切なコモノマーとしては、限定するわけではないが、3~20個の炭素原子を有するアルファオレフィン又は環状オレフィンが挙げられる。適切なコモノマーの非限定的な例としては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、シクロヘキセン、及び炭素原子が20個以下であるジエン(例えば、ブタジエン又は1,4-ヘキサジエン)が挙げられる。コモノマーは、UHMWPEコポリマー中に、約0.001モル%~約10モル%、約0.01モル%~約5モル%、約0.1モル%~約1モル%、又はこれらの端点内に含まれる任意の他の量で存在することができる。
【0044】
さらに、UHMWPEフィルムは、使用されるUHMWPEポリマーに関連する第一の吸熱が約135℃~約143℃であることができる。「融解温度」、「溶融温度」及び「融点」という用語は、本明細書において互換的に使用できることに留意されたい。少なくとも1つの例示的な実施形態において、UHMWPEポリマーは融点がおよそ140℃である。その後のUHMWPEポリマーの再溶融は、約127℃~約137℃の温度で起こる。
【0045】
前述のように、UHMWPEポリマー粒子は、米国特許第9,926,416B2号明細書に記載された一般的な方法に従って、最初に適切な潤滑剤(例えば、イソパラフィン系炭化水素)と混合される。その後、潤滑化されたポリマー粒子は、フィブリル構造が存在する(すなわち、フィブリルが存在する)テープに加工される。加熱圧縮、二軸延伸又はそれらの組み合わせを使用して高密度UHMWPEフィルムを形成する前に、テープを乾燥させうる(潤滑剤を除去するため)。高密度化条件は、残留フィブリル構造の存在を示す検出可能なDSC吸熱ピークを保持するように制御されうる。さらに、UHMWPEフィルムは、フィルム内のフィブリルに関連する約145℃~約155℃、又は約150℃ の吸熱を備えることができる。示差走査熱量測定(DSC)は、UHMWPEポリマーの溶融温度(結晶相)を識別するために使用できる。このおよそ150℃のピーク(又は吸熱)は、UHMWPE高密度フィルム内にフィブリルが存在することを示している。図2~4は、2つの区別されるピークを示す、本発明によるUHMWPEフィルムのDSCサーモグラフを示している。約150℃ の吸熱ピークは、従来の加工されたUHMWPE多孔質膜、テープ又はフィルムには存在しないことを理解されたい。
【0046】
本明細書で提供される高密度UHMWPEフィルムは、優れた光学特性を有することができる。例えば、フィルムは、360nm~780nmで測定して、全光透過率が少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約94%、少なくとも約96%、又は少なくとも約98%であることができる。幾つかの例示的な実施形態において、フィルムは、360nm~780nmで測定して、全光透過率が約90%~約98%であることができ、又は、これらの端点に含まれる任意の光透過率であることができる。
【0047】
同様に、高密度フィルムは、360nm~780nmで測定して、平均ヘイズ率が5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、又は1%未満であることができる。幾つかの例示的な実施形態において、フィルムは、360nm~780nmで測定して、平均ヘイズ率が約1%~約5%であることができ、又は、これらの端点に含まれる任意の平均ヘイズ率であることができる。
【0048】
UHMWPEポリマーから形成された高密度フィルムは、機械方向(MD)のマトリックス引張強度(MTS)が少なくとも約100MPa、少なくとも約200MPa、少なくとも約300MPa、少なくとも約400MPa、少なくとも約600MPa、又は少なくとも約800MPaであることができる。例示的な実施形態において、膜は、機械方向のマトリックス引張強度が約200MPa~約800MPa、約400MPa~約800MPa、又は約600MPa~約800MPaであることができる。
【0049】
高密度UHMWPEフィルムは、横断方向(TD)のマトリックス引張強度(MTS)が少なくとも約100MPa、少なくとも約200MPa、少なくとも約400MPa、少なくとも約500MPa、少なくとも約600MPa、又は少なくとも約800MPaである。例示的な実施形態において、フィルムは、横断方向のマトリックス引張強度が約400MPa~約800MPa、又は約400MPa~約600MPaである。
【0050】
高密度UHMWPEフィルムは、MD:TDとして測定される平均マトリックス引張強度の比が約1:5~約 5:1、約1:3~約3:1、又は約1:2~約 2:1である。
【0051】
本発明の1つの実施形態による高密度UHMWPEフィルムは、低いCO、O又はN透過度を示すバリアフィルム又は膜として利用することができる。例えば、高密度UHMWPEフィルムはCO透過度が10.0バーレル未満、5バーレル未満、1.0バーレル未満、又は0.1未満であり、ここで、1.0バーレル(barrer)は3.35×10-16モル・m/(s・m・Pa)である。同様に、高密度UHMWPEフィルムはN2透過度が10.0バーレル未満、5.0バーレル未満、1.0バーレル未満、0.1未満、又は0.05バーレル未満であることができる。さらに、高密度UHMWPEフィルムはO2透過度が10.0バーレル未満、5.0バーレル未満、1.0バーレル未満、0.1未満、又は0.01バーレル未満であることができる。CO、O又はN透過度は、上記の値から形成される任意の範囲内にあり、例えば、高密度フィルムは、0.01~10バーレル、0.1~8バーレル又は0.1~6バーレルのCO、O又はN透過度を有することができることが理解される。
【0052】
本発明の実施形態による高密度UHMWPEフィルムは、0.01~1g-mm/m/日、0.01~0.5g-mm/m/日、又は0.01~0.25g-mm/m/日の水蒸気透過性を有することができる。
【0053】
UHMWPEポリマーから形成された高密度フィルムは平均厚さが約1mm未満、約0.1mm未満、約0.01mm未満、約0.001mm未満、又は0.0005mm未満であることができる。例示的な実施形態において、高密度フィルムは厚さが約0.0005~約1mm、約0.001~約1mm、約0.001~約0.1mm、約0.001~約0.01mmであることができ、又はこれらの範囲内に含まれる厚さであることができる。
【0054】
本開示はさらに、高密度UHMWPEフィルムを含む物品及び複合材に関する。物品は、フィルム、繊維、チューブ又は三次元の自立構造の形態であることができる。例示的な実施形態において、物品はフィルムである。複合材は二層以上の層を有することができる。複合材料は、本発明の高密度UHMWPEフィルムの複数の層を含むか、又は、限定するわけではないが、高密度ポリエチレン(HDPE)、UHMWPE、ポリエステル、ポリウレタン、フルオロポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、グラスファイバー及びそれらの任意の組み合わせを含む材料から作られた、多孔質及び非孔質であることができる1つ以上の他のポリマー層(例えば、高密度プラスチックシート、織物、不織布、電界紡糸膜又はその他の多孔質膜)を含むことができる。
【0055】
UHMWPE樹脂は、粒子状、例えば粉末の形で提供することができる。UHMWPE粉末は、約100nm未満の粒子サイズを有する個々の粒子から形成することができる。典型的に、粉末は、約5~約250ミクロン、又は約10~約200ミクロンのサイズを有する粒子のクラスターとして供給される。例示的な実施形態において、クラスターは、個々の粒子まで、個々の粒子を含む、可能な限り小さいサイズを有することができる。
【0056】
本明細書に記載のUHMWPEフィルムは、少なくとも以下の方法によって製造することができる:(1)テープ圧縮し、その後のUHMWPEポリマーの溶融温度を超える約140℃~約170℃又は約150℃~約160℃で延伸すること、(2)圧縮せずに多孔質乾燥テープをUHMWPEポリマーの溶融温度を超える約140℃~約170℃又は約150℃~約160℃で膨張させること。(3)多孔質UHWPE膜をUHMWPEポリマーの溶融温度を超える約140℃~約170℃又は約150℃~約160℃で圧縮すること、又は、UHMWPEポリマーの溶融温度を超える約140℃~約170℃又は約150℃~約160℃での膨張と組み合わせること。
【0057】
テープ圧縮及び溶融膨張を超える方法において、潤滑された湿潤テープを形成し、湿潤テープを乾燥させて、分子量が少なくとも2,000,000g/モルで、融解エンタルピーが少なくとも190J/gであるUHMWPEポリマーから乾燥した多孔質UHMWPEテープを形成することによって、UHMWPEポリマーから高密度UHMWPEフィルムを製造できる。この乾燥した多孔質UHMWPEテープは、UHMWPEポリマーの溶融温度より低い温度、約120℃~約135℃又は約125℃~約130℃で圧縮され、高密度UHMWPEテープが形成される。次に、この高密度テープは、UHMWPEポリマーの溶融温度より高い温度、約140℃~約170℃又は約150℃~約160℃で延伸される。
【0058】
UHMWPEポリマーから乾燥した多孔質UHMWPEテープを形成するには、粉末としてのUHMWPEポリマー及び潤滑剤を含むペーストを調製し、次にペーストをテープに成形し、潤滑剤を除去して乾燥した多孔質UHMWPEテープを形成する。
【0059】
ペーストを形成するには、まず粉末としてのUHMWPEポリマーを軽質鉱油などの潤滑剤と混合する。他の適切な潤滑剤としては、可燃性、蒸発速度及び経済的考慮に応じて選択される脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素などが挙げられる。本明細書で使用されるときに、「潤滑剤」という用語は、プロセス条件でポリマーの溶媒ではない非圧縮性流体からなる加工助剤を表すことを意図していることが理解される。流体とポリマーの表面の相互作用は、均質な混合物を作ることができるようなものである。また、潤滑剤の選択は特に限定されず、潤滑剤の選択は主に安全性と利便性の問題であることにも留意すべきである。潤滑剤は、1ml/100g~約100ml/100g又は約10ml/100g~約70ml/100gの割合でUHMWPEポリマーに添加することができる。1つの実施形態において、潤滑剤を添加し、混合物をUHMWPEポリマーの溶融温度より低い温度で、潤滑剤でポリマーのクラスターの内部を濡らすのに十分な時間 (つまり、滞留時間)維持する。「十分な時間」とは、粒子が自由流動性の粉末に戻るのに十分な時間として記載することができる。別の実施形態において、潤滑剤を添加して UHMWPEポリマーと混合し、混合物は自由流動性であり、滞留時間を必要としない。
【0060】
潤滑剤が粒子の表面に均一に分布した後(例えば、クラスターの内部を濡らした後)に、混合物は自由流動性の粉末のような状態に戻る。例示的な実施形態において、混合物は、UHMWPEポリマーの溶融温度又は潤滑剤の沸点のいずれか低い方の温度より低い温度に加熱される。潤滑剤がクラスターの内部を適切に濡らすのに十分な時間がある限り、ポリマーを濡らすために様々な時間及び温度を使用できることを理解されたい。
【0061】
潤滑化されると、ペーストは、ポリマーの溶融温度を超えることなく、固体形状又はプリフォームに加工されうる。例示的な実施形態において、プリフォームは、繊維、チューブ、テープ、シート又は三次元の自立構造であることができる。潤滑化された粒子は、ポリマーの溶融温度より低い温度に加熱され、粒子間の接続を形成して固体形状を作成するのに十分な圧力及びせん断が加えられる。圧力及びせん断を加える方法の非限定的な例としては、ラム押出、典型的にペースト押出、又は潤滑剤が存在する場合のペースト加工、及び場合により行われるカレンダ加工が挙げられる。
【0062】
例示的な実施形態において、潤滑化されたUHMWPEポリマーをカレンダ加工して、凝集性のある可撓性テープを生成する。本明細書で使用するときに、「凝集性」という用語は、さらなる処理に十分な強度があるテープを表すことが意図される。カレンダ加工は、約115℃~約135℃、又は約125℃~約130℃で行われる。形成されたテープは、長さが不定で、厚さが約1mm未満である。テープは、厚さが約0.01mm~約1mm、約0.08mm~約0.5mm、又は0.05mm~0.2mmである又はさらに薄いテープを形成することができる。例示的な実施形態において、テープは厚さが約0.05mm~約0.2mmである。
【0063】
次の工程において、潤滑剤を除去して、乾燥した多孔質テープを形成することができる。潤滑剤として鉱油が使用される例において、潤滑剤は、テープをヘキサン又は他の適切な溶媒中で洗浄することによって除去されうる。洗浄溶媒は、潤滑剤に対する優れた溶解性を有し、樹脂の融点未満で除去されるのに十分な揮発性を有するように選択される。潤滑剤が十分な揮発性を有するならば、潤滑剤は洗浄工程なしで除去することができ、又は熱及び/又は真空によって除去することができる。その後、テープは、必要に応じて、典型的に空気乾燥によって乾燥される。しかしながら、サンプルの加熱温度がUHMWPEポリマーの融点未満である限り、従来のいずれの乾燥方法を使用してもよい。
【0064】
乾燥した多孔質UHMWPEテープ又は高密度UHMWPEフィルムは、膨張に適したサイズに切断され、次いで、UHMWPEポリマーの溶融温度を超える温度、約140℃~約170℃、又は約150℃~約160℃の温度で少なくとも2方向に延伸されて高密度UHMWPEフィルムを形成することができ、ここで、高密度UHMWPEフィルムは、約135℃~約143℃の第一の検出可能な吸熱と、約145℃~約155℃の第二の検出可能な吸熱とを有する。延伸は、20,000%/秒、又は約0.1%~20,000%/秒の速度で行うことができる。
【0065】
別の代替案において、分子量が少なくとも2,000,000g/モルで、融解エンタルピーが少なくとも190J/gであるUHMWPEポリマーから多孔質UHMWPEテープを形成することによって、圧縮せずに高密度UHMWPEフィルムを形成することができる。
【0066】
次に、多孔質UHMWPEテープを、多孔質UHMWPEテープの溶融温度を超える温度、約140℃~約170℃、又は約150℃~約160℃で延伸して、約135℃~約143℃での第一の吸熱と、約145℃~約155℃での第二の検出可能な吸熱を備えた高密度UHMWPEフィルムを形成することができる。
【0067】
さらに別の代替案において、高密度UHMWPEフィルムは、多孔質UHMWPE膜を圧縮し、その後、UHMWPEポリマーの溶融温度を超える温度で延伸して又はしないで形成されうる。多孔質UHMWPE膜は、米国特許第9,926,416号(B2)明細書に記載されているように形成されうる。
【0068】
別の実施形態において、多孔質UHMWPEテープは、多孔質UHMWPEテープの溶融温度より低い温度、約100℃~約135℃で、又は約120℃~約130℃で延伸され、その後又は同時に少なくとも1MPaの圧力で圧縮され、それによって約135℃~約143℃での第一の吸熱及び約145℃~約155℃での第二の検出可能な吸熱を備えた高密度UHMWPEフィルムを形成することができる。この高密度フィルムは、UHMWPEポリマーの溶融温度を超える温度、約140℃~約170℃又は約150℃~約160℃での延伸と組み合わせることができる。
【0069】
延伸は、一軸又は二軸の延伸のいずれでも、最大20,000%/秒、又は約0.1%~20,000%/秒の速度で行うことができる。
【0070】
上記の方法によって得られた高密度UHMWPEフィルムは、優れた機械的特性と、高強度、光学的均一性、低ヘイズ、透明性などの任意の特性を示す。
【0071】
試験方法
以下に特定の方法及び装置について説明しているが、当業者が適切と判断する他の方法又は装置を代わりに利用することができる。
【0072】
接触厚さ測定
厚さは、サンプルを花崗岩ブロックの上に平らに置き、6.35mmの金属プレートを備えた手動のミツトヨ厚さゲージ(Mitutoyo Corporation、川崎市、日本)を使用して測定した。
【0073】
面積当たりの質量測定
面積当たりの質量測定は、機械的特性評価に使用したドッグボーンサンプルの重量を量り、この質量(グラム)をドッグボーンの既知の面積(平方メートル)で割ることによって行った。
【0074】
DSC測定
DSCデータを、TA Instruments Discovery DSCを使用して、10℃/分の加熱速度で-50℃から200℃の温度範囲で収集した。樹脂サンプルの場合、約5mgの粉末をTA Instruments から入手可能な標準のパンと蓋の組み合わせに入れた。膜サンプルは、4mmのディスクをパンチして調製した。4mmのディスクをパンに平らに置き、蓋を折り曲げてパンと蓋の間に膜ディスクを挟んだ。融解エンタルピーデータを積分するために、80℃から180℃の線形積分スキームを使用した。その後の融解領域の逆重畳積分は、SeaSolve SoftwareのPeakFitソフトウェア(PeakFit v4.12 for Windows、Copyright 2003、SeaSolve Software Inc.)を使用して行った。標準条件を使用してベースラインをフィッティングし(データの逆にして「正」のピークを生成した後)、その後、観測されたデータを個々の融解成分に分解した。
【0075】
引張試験及びマトリックス引張強度(MTS)、弾性率及び靭性の計算
引張試験は、Instron(登録商標)ユニバーサル引張試験機 (Instron Corporation、米国マサチューセッツ州ノーウッド) を使用して、機械方向(MD)及び90°直交横断方向(TD)について実施した。ASTM D638-Vドッグボーン引張試験片を25mm間隔でグリップに固定し、クロスヘッド変位速度1.27mm/秒で試験を実施した。マトリックス引張強度(MTS)は、高度多孔質物品の引張強度を表すために使用され、次の式を使用して計算される。
【数1】
(上式中、TS=単軸引張試験からの引張強度であり、
ρsample=サンプルの嵩密度であり、
ρpe=PEの理論密度(0.95g/cmとする)である)
【0076】
弾性率は、試験中に荷重が検出された後に応力対ひずみプロットの連続する5つのポイントに引かれた最大の傾きとして計算した。
【0077】
靭性は、応力対ひずみプロットの下の領域を積分することによって計算した。
【0078】
ガス透過度の測定
透過度は、ASTM法D1434-82(プラスチックフィルム及びシートのガス透過性特性を決定するための標準試験方法)に従って、Lab Think Perme VacV2 透過性試験装置 (Labthink International, Inc.、マサチューセッツ州ボスト)を使用して測定した。サンプルは、フィルムを試験装置に挿入して試験し、様々な個別のガス(CO、N及びO)に対して試験した。測定されたガス透過率(GTR)は、各ガスの透過係数(cm3-cm/cm2-s-cmHg x 10-10又はバーレル(Barrer)単位)に変換され、所定の圧力によって厚さのある材料領域を通過するガスの速度を表す。
【0079】
水蒸気透過率の測定
材料の水蒸気透過率の測定は、ASTM法F―1249に従って実施した。材料の水蒸気透過率を試験するために使用した機器は、MOCON Permatran W 3/34 (MOCON/Modern Controls, Inc.、ミネソタ州ミネアポリス)であった。使用した透過物は100%RH水蒸気(49.157mmHg)であり、キャリアガスは100%窒素であり、乾燥しており、大気圧で、試験実施温度は37.8℃であった。サンプルは、試験領域が約0.1287cmになるように切り取られ、マスキングされ、機器の拡散セルに固定され、MOCON Permatran W 3/34 の説明書に従って調整された。水蒸気透過速度又は水蒸気透過率は、機器によってg/m2/日で報告された。各サンプルの水蒸気透過係数は、水蒸気透過速度に試験サンプルの厚さを掛けて計算された。結果はg-mm/m2/日で報告される。
【0080】
光学特性測定
全光透過率及びヘイズ%は、ASTM D1003-13(透明プラスチックのヘイズと光透過率の標準試験法)に従って決定した。入射光(T1)、試料を透過した全光(T2)、機器による散乱光(T3)、機器と試料による散乱光(T4)を、Jasco iln-725 積分球を備えたJasco v-670 UV-Vis-NIR分光光度計 (JASCO Deutschland GmbH、ドイツ、プフングシュタット)を使用して、360~780nmの波長範囲にわたって1nmステップで測定した。拡散光透過率(Td)、全光透過率(Tt)及びヘイズ%は、ASTM D1003-13に従って計算した。
【実施例
【0081】

以下の例は実験室規模で実施されたが、連続又は半連続プロセスに容易に適応できることは理解されるであろう。
【0082】
例1
粉末調製
分子量が約7,000,000g/モルであり、DSCで測定した融解エンタルピーが190J/gを超える超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)粉末(三井化学株式会社、WO2012053261に記載されているように製造)300gを、2リットルのスクリューキャップジャーに入れた。図1は、使用したUHMWPE粉末の典型的なDCSサーモグラムを示している。180mLのイソパラフィン系炭化水素潤滑剤(ISOPAR (商標) V、ExxonMobil Chemical Company、テキサス州スプリング)を加え、タンブラーを使用して室温で30rpmで15分間混合した。カレンダ加工の前に、混合物を60℃に予熱した。
【0083】
テープカレンダ加工
ロール間のギャップを0.2mmに設定した直径20.3cmのカレンダロールを121℃に予熱した。潤滑化されたポリマーをフィーダーでギャップに導入し、ライン速度2.0mpmで幅15.2cmの連続テープを製造した。テープは不透明で可撓性があり、厚さが約0.21mmであった。
【0084】
潤滑剤の除去
テープを、低芳香族炭化水素溶媒 (ISOPAR(商標) G、ExxonMobil Chemical Company、テキサス州スプリング)を含む大きな槽にロールツーロールで通して、Isopar V(商標)をIsopar(商標) Gで置換し、次いで50℃で乾燥させた。
【0085】
加熱圧縮
潤滑剤を除去した後、乾燥したテープを、ロール間のギャップを0.09mmに設定し、ライン速度0.3mpmで130℃に予熱した直径30.5cmのロールの間で再度カレンダ加工した。得られた圧縮されたテープは半透明で可撓性があった。
【0086】
二軸延伸
サンプルをテープから切り取り、Karo IV二軸延伸機(ドイツ、ジークスドルフのBruckner Group GmbHから市販)に入れ、以下の工程に従って同時に延伸した。
1.サンプルを145℃で120秒間予熱する
2.145℃で、カレンダ方向に37.5%/秒で9.5倍、横断方向(カレンダ方向に垂直)に37.5%/秒で9.5倍
【0087】
延伸された高密度UHMWPEフィルムに関連する2つの区別される融点を示す示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムは図2に含まれる。例1の物理特性、機械特性、ガス透過特性、水蒸気透過特性及び光学特性を図5及び表1に示す。
【0088】
例2
粉末調製
粉末調製を例1に記載した方法に従って行なった。
【0089】
テープカレンダ加工法
ロール間のギャップを0.16mmに設定した直径30.5cmのカレンダロールを124℃に予熱した。潤滑化されたポリマーをフィーダーでギャップに導入し、ライン速度 2.1mpmで幅15.2cmの連続テープを製造した。テープは不透明で可撓性があり、厚さが約0.17mmであった。
【0090】
潤滑剤の除去
潤滑剤の除去は、例1で記載した方法に従って実施した。
【0091】
二軸延伸:
サンプルは、例1で記載されるように二軸延伸されたが、以下の工程に従った。
1.サンプルを160℃で30秒間予熱する
2.160℃で、定速モードを使用して、カレンダ方向に28%/秒で2.5倍、横断方向 (カレンダ方向に垂直)に70%/秒で9.5倍
【0092】
延伸された高密度UHMWPEフィルムに関連する2つの区別される融点を示す示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムは図3に含まれる。例2の物理特性、機械特性及びガス透過特性を図5及び表1に示す。
【0093】
例3
多孔質膜の作成
多孔質ポリエチレン膜を、米国特許第9,926,416号(B2)明細書に従って作製した。膜は面積あたりの質量が14.7g/m、バブルポイント圧力が324kPaであり、ATEQエアフローが2.2cmの面積で1.2kPaで7 l/hrであり、カレンダ方向MTSが189MPaであり、横断方向MTSが183MPaであった。この膜は、その後のすべての処理で使用された。
【0094】
加熱圧縮
この膜を切断し、2層を交差させて積層し、次に2層のポリメチルペンテンフィルム(TPX(商標)、三井化学、東京、日本)の間にあるスチールオートクレーブプレート上に置き、テープで密封した。サンプルを真空に引き、その後、45分かけて温度及び圧力を上げた。異なる圧縮温度及びその後の処理で2つのサンプルを作成した。
【0095】
例3aを、1.7MPaの圧力を使用して155℃の温度で製造した。
【0096】
例3bを、1.7MPaの圧力を使用して160℃の温度で製造した。
【0097】
得られた高密度フィルムは透明で、検知可能な空気の流れはなかった。例3aのDSCサーモグラムを図4に示し、例3aの機械的特性を表1に示す。
【0098】
例4
例3a及び例3bとして形成された高密度フィルムは、さらに二軸延伸にかけられた。
二軸延伸
例3a及び例3bのセクションを切断し、例1で記載されるようにKaro IV二軸延伸機に配置し、これらの工程に従って延伸した。
例4a
a.サンプル(例3a)を155℃で30秒間予熱する
b.155℃で、カレンダ方向に3%/秒で3.0×、横断方向に3%/秒で 3.0×
2.例4b
a.サンプル(例3b)を155℃で30秒間予熱する
b.155℃で、カレンダ方向に3%/秒で2.0×、横断方向に3%/秒で 2.0×。
【0099】
例4bのガス及び水蒸気透過データを、図5及び表1に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
本出願の発明は、上記で、一般的にも、特定の実施形態に関しても説明されている。本発明は、好ましい実施形態であると考えられる実施形態で示されているが、当業者に知られている多種多様な代替例を、一般的な開示の範囲内で選択することができる。本発明は、以下に記載される請求項の記載を除き、他の点では限定されない。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-07-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0101
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0101】
本出願の発明は、上記で、一般的にも、特定の実施形態に関しても説明されている。本発明は、好ましい実施形態であると考えられる実施形態で示されているが、当業者に知られている多種多様な代替例を、一般的な開示の範囲内で選択することができる。本発明は、以下に記載される請求項の記載を除き、他の点では限定されない。
(態様)
(態様1)
高密度超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)フィルムであって、
約135℃~約143℃での第一の吸熱、
約145℃~約155℃での第二の吸熱、及び、
360nm~780nmで測定して少なくとも約90%の全光透過率
を備える、高密度超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)フィルム。
(態様2)
前記UHMWPEフィルムは機械方向(MD)のマトリックス引張強度が少なくとも200MPaである、態様1記載の高密度UHMWPEフィルム。
(態様3)
前記UHMWPEフィルムは横断方向(TD)のマトリックス引張強度が少なくとも400MPaである、態様1又は態様2記載の高密度UHMWPEフィルム。
(態様4)
マトリックス引張強度MD:TDの比は約1:5~約5:1である、態様1~3のいずれか1項記載の高密度UHMWPEフィルム。
(態様5)
前記UHMWPEフィルムはCO 透過度、O 透過度又はN 透過度が10バーレル未満である、態様1~4のいずれか1項記載の高密度UHMWPEフィルム。
(態様6)
前記UHMWPEフィルムは厚さが0.0005mm~1mmである、態様1~5のいずれか1項記載の高密度UHMWPEフィルム。
(態様7)
前記高密度UHMWPEフィルムは、分子量が約2,000,000g/モル~約10,000,000g/モルであり、融解エンタルピーが190J/gを超えるUHMWPEポリマーから形成されたものである、態様1~6のいずれか1項記載の高密度UHMWPEフィルム。
(態様8)
態様1~7のいずれか1項記載の高密度UHMWPEフィルムを含む複合材。
(態様9)
態様1~8のいずれか1項記載の高密度UHMWPEフィルムを含む物品。
(態様10)
高密度UHMWPEフィルムを形成する方法であって、
分子量が少なくとも2,000,000g/モルであり、融解エンタルピーが少なくとも190J/gであるUHMWPEポリマーから乾燥した多孔質UHMWPEテープを形成すること、
前記乾燥した多孔質UHMWPEテープをUHMWPEポリマーの溶融温度より低い温度で圧縮すること、及び、
前記UHMWPEテープをUHMWPEポリマーの溶融温度より高い温度で少なくとも2方向に延伸して、高密度UHMWPEフィルムを形成すること、
を含み、前記高密度UHMWPEフィルムは、
約135℃~約143℃での検出可能な第一の吸熱、及び、
約145℃~約155℃での検出可能な第二の吸熱、
を備えている、方法。
(態様11)
前記高密度UHMWPEフィルムは、250nm~800nmで測定して少なくとも約98%の全光透過率を備える、態様10記載の方法。
(態様12)
形成工程は、
粉末としてのUHMWPEポリマー及び潤滑剤を含むペーストを提供すること、
前記ペーストをテープに成形すること、
前記潤滑剤を除去して、乾燥した多孔質UHMWPEテープを形成すること、及び
前記テープを延伸して、高密度UHMWPEフィルムを形成すること、
を含む、態様10又は11記載の方法。
(態様13)
圧縮されたUHMWPEテープを延伸する工程は、140℃~170℃の温度で、約0.1%~20,000%/秒の速度で行われる、態様10~12のいずれか1項記載の方法。
(態様14)
前記高密度UHMWPEフィルムは、さらに、機械方向マトリックス引張強度の横断方向マトリックス引張強度に対する比が約1:5~約5:1であり、マトリックス引張強度が少なくとも500×500(MD×TD)MPaであり、CO 、O 又はN 透過度が0.01~10バーレルであり、水蒸気透過係数が0.02g・mm/m /日未満である、態様10~13のいずれか1項記載の方法。
(態様15)
高密度UHMWPEフィルムを形成する方法であって、
分子量が少なくとも2,000,000g/モルであり、融解エンタルピーが少なくとも190J/gであるUHMWPEポリマーから乾燥した多孔質UHMWPEテープを形成すること、及び、
前記乾燥した多孔質UHMWPEテープをUHMWPEポリマーの溶融温度を超える温度で少なくとも2方向に延伸して、高密度UHMWPEフィルムを形成すること、
を含み、前記高密度UHMWPEフィルムは、
約135℃~約143℃での第一の検出可能な吸熱、及び、
約145℃~約155℃での第二の検出可能な吸熱、
を備える、方法。
(態様16)
形成工程は、
粉末としてのUHMWPEポリマー及び潤滑剤を含むペーストを提供すること、
前記ペーストをテープに成形すること、
前記潤滑剤を除去して、乾燥した多孔質UHMWPEテープを形成すること、及び、
前記テープを延伸して、高密度UHMWPEフィルムを形成すること、
を含む、態様15記載の方法。
(態様17)
乾燥したUHMWPEテープを延伸する工程は、140℃~170℃の温度で、約 0.1%~20,000%/秒の速度で行われる、態様15又は16記載の方法。
(態様18)
前記高密度UHMWPEフィルムは、さらに、機械方向マトリックス引張強度の横断方向マトリックス引張強度に対する比が約1:5~約5:1であり、マトリックス引張強度が少なくとも200×200(MD×TD)MPaであり、CO 、O 又はN 透過度が 0.01~10バーレルである、態様15~17のいずれか1項記載の方法。
(態様19)
高密度UHMWPEフィルムを形成する方法であって、
(a)分子量が少なくとも2,000,000g/モルであり、融解エンタルピーが少なくとも190J/gであるUHMWPEポリマーから多孔質UHMWPEテープを形成すること、
(b)前記多孔質UHMWPEテープを多孔質UHMWPEテープの溶融温度より低い温度で膨張させて多孔質膜を形成すること、及び、
(c)前記多孔質UHMWPE膜を少なくとも1MPaの圧力で圧縮して、高密度UHMWPEフィルムを形成すること、
を含み、前記高密度UHMWPEフィルムは、
約135℃~約143℃での第一の吸熱、
約145℃~約155℃での第二の検出可能な吸熱、
を備える、方法。
(態様20)
(d)前記高密度UHMWPEフィルムをUHMWPEポリマーの溶融温度より高い温度で延伸することをさらに含む、態様19記載の方法。
(態様21)
延伸及び圧縮工程は同時に行われる、態様19又は態様20記載の方法。
(態様22)
圧縮後の延伸工程は約140℃~約170℃の温度で行われる、態様19~21のいずれか1項記載の方法。
(態様23)
前記高密度UHMWPEフィルムは、さらに、機械方向マトリックス引張強度の横断方向マトリックス引張強度に対する比が約1:5~約5:1であり、マトリックス引張強度が少なくとも200×200(MD×TD)MPaであり、水蒸気透過係数が0.21g-mm/m /日未満である、態様19~22のいずれか1項記載の方法。
(態様24)
延伸工程は二軸又は半径方向延伸を含む、態様10~23のいずれか1項記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高密度超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)フィルムであって、
35℃~143℃での第一の吸熱、
45℃~155℃での第二の吸熱、及び、
360nm~780nmで測定して少なくとも90%の全光透過率
を備える、高密度超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)フィルム。
【請求項2】
前記UHMWPEフィルムは機械方向(MD)のマトリックス引張強度が少なくとも200MPaである、請求項1記載の高密度UHMWPEフィルム。
【請求項3】
前記UHMWPEフィルムは横断方向(TD)のマトリックス引張強度が少なくとも400MPaである、請求項1又は請求項2記載の高密度UHMWPEフィルム。
【請求項4】
マトリックス引張強度MD:TDの比は1:5~5:1である、請求項1~のいずれか1項記載の高密度UHMWPEフィルム。
【請求項5】
前記UHMWPEフィルムはCO透過度、O透過度又はN透過度が33.5×10 -16 (モル・m/(s・m ・Pa))(10バーレル未満である、請求項1~のいずれか1項記載の高密度UHMWPEフィルム。
【請求項6】
前記UHMWPEフィルムは厚さが0.0005mm~1mmである、請求項1~のいずれか1項記載の高密度UHMWPEフィルム。
【請求項7】
前記高密度UHMWPEフィルムは、分子量が2,000,000g/モル~10,000,000g/モルであり、融解エンタルピーが190J/gを超えるUHMWPEポリマーから形成されたものである、請求項1~のいずれか1項記載の高密度UHMWPEフィルム。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項記載の高密度UHMWPEフィルムを含む複合材。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項記載の高密度UHMWPEフィルムを含む物品。
【請求項10】
高密度UHMWPEフィルムを形成する方法であって、
分子量が少なくとも2,000,000g/モルであり、融解エンタルピーが少なくとも190J/gであるUHMWPEポリマーから乾燥した多孔質UHMWPEテープを形成すること、
前記乾燥した多孔質UHMWPEテープをUHMWPEポリマーの溶融温度より低い温度で圧縮すること、及び、
前記UHMWPEテープをUHMWPEポリマーの溶融温度より高い温度で少なくとも2方向に延伸して、高密度UHMWPEフィルムを形成すること、
を含み、前記高密度UHMWPEフィルムは、
35℃~143℃での検出可能な第一の吸熱、及び、
45℃~155℃での検出可能な第二の吸熱、
を備えている、方法。
【請求項11】
前記高密度UHMWPEフィルムは、250nm~800nmで測定して少なくとも98%の全光透過率を備える、請求項10記載の方法。
【請求項12】
形成工程は、
粉末としてのUHMWPEポリマー及び潤滑剤を含むペーストを提供すること、
前記ペーストをテープに成形すること、
前記潤滑剤を除去して、乾燥した多孔質UHMWPEテープを形成すること、及び
前記テープを延伸して、高密度UHMWPEフィルムを形成すること、
を含む、請求項10又は11記載の方法。
【請求項13】
圧縮されたUHMWPEテープを延伸する工程は、140℃~170℃の温度で、0.1%~20,000%/秒の速度で行われる、請求項10~11のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記高密度UHMWPEフィルムは、さらに、機械方向マトリックス引張強度の横断方向マトリックス引張強度に対する比が1:5~5:1であり、マトリックス引張強度が少なくとも500×500(MD×TD)MPaであり、CO、O又はN透過度が0.0335×10 -16 0.01)~33.5×10 -16 (モル・m/(s・m ・Pa))(10バーレル)であり、水蒸気透過係数が0.02g・mm/m/日未満である、請求項10~11のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
高密度UHMWPEフィルムを形成する方法であって、
分子量が少なくとも2,000,000g/モルであり、融解エンタルピーが少なくとも190J/gであるUHMWPEポリマーから乾燥した多孔質UHMWPEテープを形成すること、及び、
前記乾燥した多孔質UHMWPEテープをUHMWPEポリマーの溶融温度を超える温度で少なくとも2方向に延伸して、高密度UHMWPEフィルムを形成すること、
を含み、前記高密度UHMWPEフィルムは、
35℃~143℃での第一の検出可能な吸熱、及び、
45℃~155℃での第二の検出可能な吸熱、
を備える、方法。
【請求項16】
形成工程は、
粉末としてのUHMWPEポリマー及び潤滑剤を含むペーストを提供すること、
前記ペーストをテープに成形すること、
前記潤滑剤を除去して、乾燥した多孔質UHMWPEテープを形成すること、及び、
前記テープを延伸して、高密度UHMWPEフィルムを形成すること、
を含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
乾燥したUHMWPEテープを延伸する工程は、140℃~170℃の温度で、0.1%~20,000%/秒の速度で行われる、請求項15又は16記載の方法。
【請求項18】
前記高密度UHMWPEフィルムは、さらに、機械方向マトリックス引張強度の横断方向マトリックス引張強度に対する比が1:5~5:1であり、マトリックス引張強度が少なくとも200×200(MD×TD)MPaであり、CO、O又はN透過度が 0.0335×10 -16 0.01)~33.5×10 -16 (モル・m/(s・m ・Pa))(10バーレルである、請求項15~16のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
高密度UHMWPEフィルムを形成する方法であって、
(a)分子量が少なくとも2,000,000g/モルであり、融解エンタルピーが少なくとも190J/gであるUHMWPEポリマーから多孔質UHMWPEテープを形成すること、
(b)前記多孔質UHMWPEテープを多孔質UHMWPEテープの溶融温度より低い温度で膨張させて多孔質膜を形成すること、及び、
(c)前記多孔質UHMWPE膜を少なくとも1MPaの圧力で圧縮して、高密度UHMWPEフィルムを形成すること、
を含み、前記高密度UHMWPEフィルムは、
35℃~143℃での第一の吸熱、
45℃~155℃での第二の検出可能な吸熱、
を備える、方法。
【請求項20】
(d)前記高密度UHMWPEフィルムをUHMWPEポリマーの溶融温度より高い温度で延伸することをさらに含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
延伸及び圧縮工程は同時に行われる、請求項19又は請求項20記載の方法。
【請求項22】
圧縮後の延伸工程は140℃~170℃の温度で行われる、請求項19~20のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
前記高密度UHMWPEフィルムは、さらに、機械方向マトリックス引張強度の横断方向マトリックス引張強度に対する比が1:5~5:1であり、マトリックス引張強度が少なくとも200×200(MD×TD)MPaであり、水蒸気透過係数が0.21g-mm/m/日未満である、請求項19~20のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
延伸工程は二軸又は半径方向延伸を含む、請求項10、11、19又は20記載の方法。
【国際調査報告】