(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】アルカリ性金属酸化物と酸性化金属酸化物とがブレンドされた活物質
(51)【国際特許分類】
H01M 4/36 20060101AFI20241219BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20241219BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20241219BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20241219BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20241219BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20241219BHJP
H01M 10/36 20100101ALI20241219BHJP
H01M 4/42 20060101ALI20241219BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20241219BHJP
【FI】
H01M4/36 E
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/48
H01M4/485
H01M4/58
H01M10/36 A
H01M4/42
H01M10/052
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535972
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-07-01
(86)【国際出願番号】 US2022052254
(87)【国際公開番号】W WO2023114081
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518172439
【氏名又は名称】ヒーリー,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【氏名又は名称】松山 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,ペイジ・エル
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ04
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL11
5H029AM07
5H029DJ16
5H029HJ01
5H029HJ05
5H029HJ10
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA29
5H050CB13
5H050DA13
5H050FA17
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA10
(57)【要約】
本開示の電池セル(100)は、亜鉛アノード(106)、およびアルカリ性電池化学材料と組み合わせた酸性化金属酸化物ナノ材料を有するカソード(104)を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛を含むアノード(106)、
非酸性金属酸化物および酸性金属酸化物を含むカソード(104)、ここで
前記酸性金属酸化物は、20nm未満の粒径を有し、前記酸性金属酸化物は、pH<5、およびハメット関数H0>-12を有し、前記pHは、前記酸性金属酸化物を水に5重量%で懸濁させたときに測定され、
前記酸性金属酸化物は、1重量%~15重量%の範囲であり、
前記非酸性金属酸化物は、85重量%~99重量%の範囲であり、前記酸性金属酸化物とは異なる金属酸化物である、ならびに
前記アノード(106)と前記カソード(104)との間に配置された電解質(108)
を含む、電池セル(100)。
【請求項2】
前記非酸性金属酸化物がマンガンを含む、請求項1に記載の電池セル(100)。
【請求項3】
前記非酸性金属酸化物が、リチウムマンガン酸化物、リチウムマンガンニッケル酸化物、マンガンニッケル酸化物、二酸化マンガン、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、およびニッケルマンガンコバルト酸化物のうちの1つである、請求項2に記載の電池セル(100)。
【請求項4】
前記非酸性金属酸化物が、リチウムチタン酸化物、酸化チタン、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、およびニッケルコバルトアルミニウム酸化物のうちの1つである、請求項1に記載の電池セル(100)。
【請求項5】
前記非酸性金属酸化物が、二硫化鉄である、請求項1に記載の電池セル(100)。
【請求項6】
前記酸性金属酸化物が、8重量%~15重量%の範囲である、請求項1に記載の電池セル(100)。
【請求項7】
前記酸性金属酸化物が、1重量%~8重量%の範囲である、請求項1に記載の電池セル(100)。
【請求項8】
前記酸性金属酸化物が、SnOx/Gの形態であり、Oxは全酸素であり、Gは少なくとも1つの電子吸引性表面基であり、/は前記SnOxと前記少なくとも1つの電子吸引性表面基とを区別する、請求項1に記載の電池セル(100)。
【請求項9】
前記電解質(108)が、アルカリ性電解質である、請求項1に記載の電池セル(100)。
【請求項10】
電池セル(100)の放電容量を増大させる方法であって、前記電池セル(100)は、亜鉛を含むアノード(106)、カソード(104)、および前記アノード(106)と前記カソード(104)との間に配置された電解質(108)を含み、前記方法は、
非酸性金属酸化物を酸性金属酸化物とブレンドして、前記カソードの活物質を形成する工程と、
前記電池セル(100)を構築する工程と
を含み、
前記酸性金属酸化物は、20nm未満の粒径を有し、前記酸性金属酸化物は、pH<5、およびハメット関数H0>-12を有し、前記pHは、前記酸性金属酸化物を水に5重量%で懸濁させたときに測定され、
前記酸性金属酸化物は、1重量%~15重量%の範囲であり、
前記非酸性金属酸化物は、85重量%~99重量%の範囲であり、前記酸性金属酸化物とは異なる金属酸化物である、方法。
【請求項11】
使用のために前記電池セル(100)を提供する工程をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記非酸性金属酸化物が、マンガンを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記非酸性金属酸化物が、リチウムマンガン酸化物、リチウムマンガンニッケル酸化物、マンガンニッケル酸化物、二酸化マンガン、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、およびニッケルマンガンコバルト酸化物のうちの1つである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記非酸性金属酸化物が、リチウムチタン酸化物、酸化チタン、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、およびニッケルコバルトアルミニウム酸化物のうちの1つである、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記非酸性金属酸化物が、二硫化鉄である、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記酸性金属酸化物が、8重量%~15重量%の範囲である、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記酸性金属酸化物が、1重量%~8重量%の範囲である、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記酸性金属酸化物が、MnOx/Gの形態であり、Mnは金属であり、Oxは全酸素であり、Gは少なくとも1つの電子吸引性表面基であり、/は前記MnOxと前記酸性金属酸化物とを区別する、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記電解質(108)が、アルカリ性電解質である、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記酸性金属酸化物が、酸化スズである、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、これに限定されないが、電池などの、化学エネルギー貯蔵およびパワーデバイスに有用な材料および構築方法の分野にある。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物は、酸素が金属に結合していて、MmOxの一般式を有する化合物である。それらは天然において見出されるが、人工的に合成することができる。合成金属酸化物において、合成方法は、その酸/塩基の特性を含めて、表面の性質に広範な影響を及ぼし得る。表面の特質における変化は酸化物の特性を変えることがあり、その触媒活性や電子移動度のようなことに影響を与える。しかし、表面が反応性を制御する機構は必ずしも十分には特徴づけられておらず、または十分に理解されてもいない。例えば、光触媒において、表面のヒドロキシル基は伝導帯から化学吸着した酸素分子への電子の移動を促進すると考えられている。
【0003】
表面特性の重要性にもかかわらず、金属酸化物の文献は、学術論文と特許の両方とも、エネルギー貯蔵およびパワー用途を改善するために、新規なナノスケールの結晶質形態の金属酸化物を創製することに主に集中している。金属酸化物の表面特性は無視され、化学触媒の文献以外では、既知の金属酸化物の表面を制御するかまたは変化させて性能目標を達成することには、ごくわずかの革新しか向けられていない。
【0004】
化学触媒反応の文献は、主に、炭化水素のクラッキングなどの大規模な反応のために多くの場合用いられる、純粋な硫酸(18.4M H2SO4)よりも高い酸性度である「超酸」の創製に集中している。超酸性は、慣用のpHスケールでは測定することができず、代わりにハメット数で定量化される。ハメット数(H0)は、pHスケールをゼロ未満の負の数に拡張するものとして考えることができる。純粋な硫酸は-12のH0を有する。
【0005】
しかし、超酸性度が強すぎる多くの反応系および多くの用途がある。例えば、超酸性度はシステムの構成要素を劣化させるか、または望ましくない副反応を触媒することがある。しかし、酸性度は、反応性と速度特性の向上または電子移動度の向上をもたらすために、これらと同じ用途において依然として有用な場合がある。
【0006】
電池の文献において、酸性基は電池に有害であり、金属の集電体やハウジングを攻撃し、他の電極構成要素を劣化させる可能性があることが教示されている。さらに、先行技術において、活性な触媒電極の表面が電解質の分解をもたらし、その結果としてセルの内部でガスが発生し、最終的にセルの故障をもたらす可能性があることが教示されている。
【0007】
少なくともその表面上で酸性ではあるが、超酸性ではなく、アノードおよび/またはカソード内に配置されている合成金属酸化物を有する電池実装の必要性が存在する。さらに、既存の電池構築技術を更新して、本開示に従って利用可能な新規材料を最大限に活用し、ならびに既知の材料を用いたそのような構築技術を使用して実現できる利点および改善を活用すべきである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
超高容量電池セルの実施形態は、少なくとも4000mAhr/gのリチウム化容量を有し、20重量%~40重量%の範囲のナノ粒子サイズの金属酸化物を含有する層と、20重量%~40重量%の範囲のナノ粒子サイズの導電性カーボンとを含む電極を含む。特定の実施形態では、金属酸化物および導電性カーボンは、それぞれ33重量%である。さらなる実施形態では、金属酸化物および導電性カーボンは、それぞれ20重量~25重量%である。さらなる特定の実施形態では、金属酸化物および導電性カーボンは、それぞれ21重量%である。電極は、アノードまたはカソードとして配置することができる。
【0009】
電池セルは、ナノ粒子サイズの導電性カーボンも含み、ナノ粒子サイズの金属酸化物を含む層に隣接して配置された少なくとも1つの他の層を含むことができる。いくつかの実施形態では、この他の層は、ナノ粒子サイズの金属酸化物を含有する層の上と下の両方にある。ナノ粒子サイズの金属酸化物は、少なくともその表面上で、水中にて5重量%で測定したときにpH<5、およびハメット関数>-12を有する酸性化金属酸化物(以下、酸性化金属酸化物、または「AMO」)であってもよい。他の実施形態では、酸性化されていない、実質的に酸性化されていない、または酸性基で官能化されていない金属酸化物(以下、非酸性化金属酸化物、または「非AMO」)を、セルまたは電池の構築に使用することができる。総称して、AMOおよび非AMOは、単に金属酸化物と呼んでもよい。
【0010】
本開示は、AMO、非AMOに対応する材料、および両方を使用する用途について説明する。用途には、電池電極材料、触媒として、光起電または光活性構成要素として、およびセンサーが含まれるが、これらに限定されない。AMOおよび非AMO、ならびにどちらかを含むデバイスを作製するための技術をさらに開示する。開示されたAMOは、任意に、それらの有用性を高めるために酸性種と組み合わせて使用してよい。
【0011】
本出願は、AMOおよび非AMOを含む電極を含む高容量電気化学セルについてさらに記載する。金属酸化物および金属酸化物を含む電気化学セルを調製するための技術がさらに開示されている。任意に、開示された金属酸化物は、導電性材料と組み合わせて使用して、電極を形成してよい。形成された電極は、対応する対電極として金属リチウムと従来のリチウムイオン電極と共に使用すると有用である。開示された金属酸化物は、任意に、それらの有用性を高めるために酸性種と組み合わせて使用してよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、本開示は、低い活物質(すなわち、金属酸化物)担持量の層状電極構造を提供する。場合によっては、80重量%未満の活物質を電極に使用する。これは、活物質の担持量を最大化しようとする従来の電気化学セル技術とは対照的であり、活物質の担持量は、約80重量%以上、例えば90重量%または95重量%または99重量%であり得る。高い活物質担持量は、従来の電気化学セル技術において容量を増加させるのに有用であり得るが、本出願の発明者らは、活物質担持量を減らすことにより、本開示による種々の実施形態を用いてより高いセル容量が実際に可能になることを見出した。そのような容量の増加は、活物質の担持レベルがより低い場合には追加の物理的容積が利用できることがあるため、シャトルイオン(すなわち、リチウムイオン)をより多く吸収することが可能になることにより、少なくとも部分的には達成できる。そのような容量の増加は、より多くの活性部位がシャトルイオンを吸収することが可能になり、追加の材料マスによる活性部位の遮断が少なくなることによって、代替的にまたは追加的に、少なくとも部分的に達成され得る。
【0013】
記載された金属酸化物には、ナノ粒子形態などのナノ材料の形態のものが含まれ、これらは、単分散または実質的に単分散であってよく、例えば、100nm未満の粒径を有する。開示されたAMOは、特定の濃度(例えば、5重量%)などで、水に懸濁したとき、または乾燥後に水に再懸濁したときに、7未満(例えば、0~7の間)などの低pHを示し、少なくともAMOの表面上で、-12より大きい(つまり、超酸性ではない)ハメット関数H0をさらに示す。
【0014】
AMOの表面は、任意に、酸性種または他の電子吸引性種などにより官能化されてもよい。合成および表面官能化は、金属酸化物が適切な前駆体から合成されているときに金属酸化物の表面を官能化させる「シングルポット(single-pot)」水熱法で達成し得る。いくつかの実施形態では、このシングルポット法は、金属酸化物自体を合成するために必要なものを超える酸性化のための追加の1つまたは複数の工程を全く必要とせず、所望の表面酸性度を有する(しかし超酸性ではない)AMO材料をもたらす。
【0015】
任意に、SO4、PO4、ハロゲン(Br、Clなど)などの強力な電子吸引基(「EWG」)を単独または相互に組み合わせて使用して、表面官能化を行ってよい。表面の官能化はまた、SO4、PO4、またはハロゲンよりも弱いEWGを用いて行ってもよい。例えば、合成金属酸化物は、アセテート基(CH3COO)、オキサレート基(C2O4)、およびシトレート基(C6H5O7)基で表面官能化してもよい。
【0016】
酸性種は金属集電体およびハウジングを攻撃し、他の電極構成要素の劣化を引き起こす可能性があり、活性な触媒電極表面は、電解質分解、セル内のガス発生、および最終的にはセル故障をもたらす可能性があるため、電池においては、酸性種は望ましくないという従来の知識にも関わらず、発明者らは、酸性種および成分が、電池電極にAMO材料を使用する電池に有利であり得ることを発見した。
【0017】
例えば、金属酸化物と酸性種の組合せまたは使用により、得られる材料、システム、またはデバイスの性能を向上させ、デバイスの容量、サイクル特性、および寿命を向上させることができる。一例として、酸性電解質または本明細書に記載する酸性種を含む電解質を使用する電池は、非酸性化電解質または酸性種を欠く電解質を使用する同様の電池よりも、最大100mAh/g以上大きいなど、かなりの容量増加を示す。いくつかの実施形態では、50~300mAh/gの間の容量において改善が達成され得る。加えて、酸性化電解質または酸性種を含む電解質を有する電池を使用して、最大1000mAh/g以上の絶対容量を達成することができる。さらに、電池のサイクル寿命は、電池のサイクル寿命が最大100回以上の充放電サイクルまで延長されるなど、酸性電解質または酸性種を含む電解質の使用により改善され得る。
【0018】
例示的な電池セルは、第1の電極、例えば、金属酸化物(任意にAMOナノ材料であってよい)、導電性材料、およびバインダーを含む第1の電極と、第2の電極、例えば金属リチウムを含む第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に配置された電解質とを含む。任意に、金属酸化物は、第1の電極の80重量パーセント未満を構成してよい。例示的な電解質には、溶媒中に溶解した金属塩を含む電解質、固体電解質、およびゲル電解質が含まれる。任意に、セパレータが第1の電極と第2の電極の間に配置されていてよい。
【0019】
加えてまたは代わりに、それ自体が酸性であるか、有機酸などの酸性種を含む、カソードまたはアノードなどの電極を含む電池も有益であり得、これも電池技術の従来の教示に反する。例えば、酸性電極または電極内に酸性種を組み込んだ電池は、性能を向上させ、容量、サイクル特性、寿命を向上させ得る。最大100mAh/g以上の容量増加を達成することができる。電池のサイクル寿命はまた、電池のサイクル寿命が最大100サイクル以上延長される場合など、酸性電極または酸性種を含む電極の使用により改善され得る。一例として、酸性電極または酸性種を含む電極は、電極の成分を5重量%で水に懸濁させた(または乾燥後に水に再懸濁させた)場合などに、7未満のpH(ただし、超酸性ではない)を示すことがある。
【0020】
本開示に対応する電極は、導電性材料を含む第1の層のセットおよび金属酸化物を含む第2の層のセットを含む層状構造を含み得る。任意に、第1の層のセットおよび第2の層のセットは、交互の構成で提供されてもよい。任意に、第1の層のセットおよび第2の層のセットは、独立して1~20の層を含んでよい。任意に、第1の層のセットおよび第2の層のセットは、独立して1μm~50μmの間、2μm~25μmの間、3μm~20μmの間、4μm~15μmの間、または5μm~10μmの間の厚さを有する。任意選択により、金属酸化物は、5~90重量パーセントの間の第2の層のセット、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、または90重量パーセントの第2の層のセットを含んでよい。任意に、導電性材料およびバインダーは、それぞれ独立して、5~90重量パーセントの間の第1の層のセット、例えば、25、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、または90重量パーセントの第1の層のセットを含んでよい。
【0021】
第1の電極は、第1の電極の最大95重量パーセント、第1の電極の最大80重量パーセント、第1の電極の最大70重量パーセント、第1の電極の1~50重量パーセントの間、第1の電極の1~33重量パーセントの間、第1の電極の15~25重量パーセントの間、第1の電極の55~70重量パーセントの間、第1の電極の20~35重量パーセントの間、第1の電極の5~15重量パーセントの間の金属酸化物を、任意に含んでよい。第1の電極の金属酸化物重量パーセントの特定の例には、1%、5%、11%、12%、13%、14%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、60%、61%、62%、63%、64%、65%などが含まれる。限定されることなく、電極の担持量(金属酸化物のパーセント)は、1~95%、10~80%、20~70%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、または80~100%の範囲であってもよい。種々の実施形態では、担持値は、±1%、2%、5%、または10%まで変動し得る。任意に、導電性材料およびバインダーは、それぞれ独立して、第1の電極の残りの大部分を構成してよい。例えば、導電性材料およびバインダーは、それぞれ独立して、第1の電極の10~74重量パーセントの間を構成する。任意に、導電性材料およびバインダーは、それぞれ一緒になって、第1の電極の20~90重量パーセントの間を構成する。任意に、AMOナノ材料を、グラファイト、コバルト酸リチウムなどの従来のリチウムイオン電極に、1~10重量%のドーパントとして添加してよい。
【0022】
本明細書に記載の電極には、種々の材料が有用である。金属酸化物の例には、リチウム含有酸化物、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マンガン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化ビスマス、またはこれらのいずれかの組合せが含まれるが、これらに限定されない。任意に、酸化物はAMOの形態であってよい。本明細書に記載されるように、金属酸化物は、Cl、Br、BO3、SO4、PO4、NO3、CH3COO、C2O4、C2H2O4、C6H8O7、またはC6H5O7から選択される1つまたは複数の電子吸引基を任意に含み、および/またはこれらの1つまたは複数の電子吸引基によって任意に表面官能化されている。導電性材料の例としては、1つまたは複数のグラファイト、導電性カーボン、カーボンブラック、ケッチェンブラック、またはポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリスチレンスルホネート(PSS)、PEDOT:PSS複合材料、ポリアニリン(PANI)、またはポリピロール(PPY)などの導電性ポリマーが挙げられる。
【0023】
いくつかの実施形態では、AMOナノ材料を含む電極は、他の電極と組み合わせて使用されて、セルを形成する。例えば、そのようなセルの第2の電極は、グラファイト、金属リチウム、ナトリウム金属、コバルト酸リチウム、チタン酸リチウム、マンガン酸リチウム、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)、リン酸鉄リチウム、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)、AMOナノ材料、またはこれらのいずれかの組合せを含んでもよい。ある特定の実施形態では、第1の電極はSnO2(AMOまたは非AMO形態で)を含み、第2の電極は、金属リチウムを含む。
【0024】
本明細書に記載の電極には、種々の材料が有用である。金属酸化物の例には、リチウム含有酸化物、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マンガン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化ビスマス、またはこれらのいずれかの組合せが含まれるが、これらに限定されない。任意に、酸化物はAMOの形態であってよい。本明細書に記載されるように、金属酸化物は、Cl、Br、BO3、SO4、PO4、NO3、CH3COO、C2O4、C2H2O4、C6H8O7、またはC6H5O7から選択される1つまたは複数の電子吸引基を任意に含み、および/またはこれらの1つまたは複数の電子吸引基によって任意に表面官能化されている。導電性材料の例としては、1つまたは複数のグラファイト、導電性カーボン、カーボンブラック、ケッチェンブラック、またはポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリスチレンスルホネート(PSS)、PEDOT:PSS複合材料、ポリアニリン(PANI)、またはポリピロール(PPY)などの導電性ポリマーが挙げられる。
【0025】
種々の実施形態では、高容量電池セルは、金属酸化物ナノ材料、導電性材料、およびバインダーを含む第1の電極と、第2の電極と、第1の電極と第2の電極の間に配置された電解質と、を含み、金属酸化物ナノ材料が第1の電極の5~15、20~35、または55~70重量パーセントを構成し、金属酸化物ナノ材料は、0~15重量%の酸化鉄、および85~100重量%の酸化スズを含む。いくつかの実施形態では、金属酸化物は、1つまたは複数の電子吸引基を含み、および/またはこれらの電子吸引基によって表面官能化され、導電性材料は、1つまたは複数のグラファイト、導電性カーボン、カーボンブラック、ケッチェンブラック、およびポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリスチレンスルホネート(PSS)、PEDOT:PSS複合材料、ポリアニリン(PANI)、またはポリピロール(PPY)などの導電性ポリマーを含み、第2の電極は金属リチウムを含む(comprise)かまたは含む(include)。
【0026】
このような大容量電池セルは、故障なしで100~1000回の充放電サイクルのサイクル寿命、および2V~4Vの間のアセンブリ時の開回路電圧を示し得る。任意に、第1の電極は、導電性材料を含む第1の層のセットおよび金属酸化物ナノ材料を含む第2の層のセットを含む層状構造を含み、第1の層のセットおよび第2の層のセットが交互の構成で提供され、第1の層のセットは、1~20の間の層を含み、第2の層のセットは、1~20の間の層を含み、第1の層のセットおよび第2の層のセットは、独立して1μm~50μmの間の厚さを有し、金属酸化物ナノ材料は、5~70重量パーセントの間の第2の層のセットを構成してよい。
【0027】
さらなる例として、スラリーを使用して電極が形成されている電池も有益であり得、電池技術の従来の教示に反し得る。本明細書に記載されているように、金属酸化物は、1つまたは複数のバインダー化合物、溶媒、添加剤(例えば、導電性添加剤または酸性添加剤)、および/または任意に、他の湿式処理材料を含む金属酸化物のスラリーを最初に形成することにより、電池電極に形成してもよい。スラリーは、電極を形成するために、導電性材料または集電体上に堆積させてもよい。そのようなスラリーおよび/または溶媒は、任意に、酸性であってもよくまたは酸性種を含んでもよく、やはり、このことにより、得られる電池の容量、サイクル特性、および寿命の改善が可能になることがある。任意に、金属酸化物材料、バインダー、添加剤などを残して、溶媒のすべてまたは一部を蒸発させてもよい。得られた材料は(AMOを使用する場合に)、例えば、5重量%で水に懸濁させた(または乾燥後に水に再懸濁させた)ときに、7未満のpH(しかし超酸性ではない)を有するなど、それ自体の酸性度を示してもよい。
【0028】
金属酸化物を作製するために種々の技術を使用し得る。任意に、金属酸化物を作製する工程は、金属塩、エタノール、および水を含む溶液を形成する工程と、溶液に酸を添加することにより溶液を酸性化させる工程と、溶液に水性塩基を添加することにより溶液を塩基性化させる工程と、溶液から沈殿物を収集する工程と、沈殿物を洗浄する工程と、沈殿物を乾燥させる工程とを含む。
【0029】
任意に、電極を作製する工程は、第2の導電性材料を含む導電層など、電極層の上にさらなる導電層を堆積させる工程をさらに含んでよい。任意に、導電層を堆積させる工程は、第2の導電性材料、第2のバインダー、および第2の溶媒を使用して導電性スラリーを形成する工程と、電極層上に導電性スラリー層を堆積させる工程と、第2の溶媒の少なくとも一部を蒸発させて、導電層を形成する工程とを含んでよい。任意に、電極を作製する工程は、導電性材料を含む1~20の追加の導電層、および金属酸化物を含む1~20の追加の電極層を形成する工程を含んでよい。例えば、電極は、第2の導電性材料を含む第1の層のセットおよび金属酸化物を含む第2の層のセットを含む層状構造を含んでもよく、第1の層のセットおよび第2の層のセットが交互の構成で提供される。例示的な層は、1μm~50μmの間の厚さを独立して有する層を含む。例示的な層は、10~90重量パーセントの間の金属酸化物を含む層を含む。例示的な層は、5~85重量パーセントの間の導電性材料および/またはバインダーを独立して含む層を含む。
【0030】
この態様の方法を使用して形成された電極は、最大80重量パーセンの金属酸化物含有量を有し得る。この態様の方法を使用して形成された電極は、電極の10~70重量パーセントの間の導電性材料および/またはバインダー含有量を有し得る。
【0031】
上記のように、酸性種は、電極または電解質などの電池の構成要素のいずれかに添加剤として任意に含まれてもよい。任意に、本開示による金属酸化物を含む電池は、酸性種が溶媒に溶解している、電極間に配置された電解質を含んでもよい。そのような電解質は、さらに、本明細書では酸性化電解質と称すこともある。電解質は、LiPF6、LiAsF6、LiClO4、LiBF4、LiCF3SO3、およびこれらの組合せなど、溶媒に溶解した1つまたは複数のリチウム塩を任意で含んでもよい。電解質は、電極を隔てるスペース(すなわち、電極間)に配置されてもよく、同様に、電極の細孔に染み込むまたは浸透することもでき、および/またはセパレータなどの電極間に任意に配置されていてよいいずれかの材料または構造の細孔に染み込むまたは浸透することもできることが理解されるであろう。
【0032】
本明細書に記載のAMO、電極、および電解質に関し有用な酸性種の例には、カルボン酸などの有機酸が含まれるが、これらに限定されない。酸性種の例には、水中で-10~7の間、-5~6の間、1~6の間、1.2~5.6の間、または約4のpKaを示すものが含まれる。有機酸の特定の例としては、例えば、シュウ酸、炭酸、クエン酸、マレイン酸、メチルマロン酸、ギ酸、グルタル酸、コハク酸、メチルコハク酸、メチレンコハク酸、シトラコン酸、酢酸、安息香酸が挙げられる。有機酸の例としては、ジカルボン酸、例えば
【0033】
【化1】
の式
(式中、Rは、置換または非置換C1~C20炭化水素、例えば、置換または非置換アルキル基、置換または非置換アルケニル基、置換または非置換芳香族または複素芳香族、置換または非置換アミンである)を有するものが挙げられる。有機酸の例としては、
【0034】
【化2】
の式
(式中、Lは、置換または非置換アルキレン基、置換または非置換アリーレン基、置換または非置換ヘテロアリーレン基、置換または非置換アミンなどの置換または非置換C1~C20二価炭化水素である)を有するものも挙げられる。有機酸としては、有機酸無水物、例えば
【0035】
【化3】
の式
(式中、R
1およびR
2は、独立して、置換または非置換C1~C20炭化水素、例えば、置換または非置換アルキル基、置換または非置換アルケニル基、置換または非置換芳香族基または複素芳香族基、置換または非置換アミンである)を有するものを挙げることができる。任意に、R
1およびR
2は環を形成することができる。有機酸無水物の例には、上述の有機酸のいずれかの無水物が含まれる。特定の有機酸無水物としては、グルタル酸無水物、無水コハク酸、メチルコハク酸無水物、無水マレイン酸、およびイタコン酸無水物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
電解質とAMO電極のいずれかまたは両方の酸性種の有用な濃度には、0重量%~10重量%、0.01重量%~10重量%、0.1重量%~10重量%、1重量%~5重量%、または3重量%~5重量%が含まれる。
【0037】
有用な溶媒としては、例えば、炭酸エチレン、炭酸ブチレン、炭酸プロピレン、炭酸ビニレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、およびそれらの混合物など、リチウムイオン電池システムで使用されるようなものが挙げられる。他の有用な溶媒は、当業者には理解されるであろう。任意に、酸性種と金属塩が溶媒に溶解して電解質を形成する場合、電解質自体は酸性状態(すなわち、pH7未満)を示す。
【0038】
本明細書に記載の電池および電極に有用なバインダーの例としては、スチレンブタジエンコポリマー(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル、ポリアクリル酸(PAA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアミドイミド(ΡΑI)、およびこれらのいずれかの組合せが挙げられる。任意に、導電性ポリマーがバインダーとして有用な場合がある。
【0039】
本明細書に記載のAMOおよび電極で有用な添加剤の他の例には、導電性添加剤が含まれるが、これらに限定されない。導電性添加剤の例としては、グラファイト、導電性カーボン、カーボンブラック、ケッチェンブラック、およびポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリスチレンスルホネート(PSS)、PEDOT:PSS複合材料、ポリアニリン(PANI)、およびポリピロール(PPY)などの導電性ポリマーが挙げられる。導電性添加剤は、例えば、電極中に、0より高く35重量%、40重量%程度、またはそれ以上の重量パーセントなどのいずれの好適な濃度にて存在してもよい。任意に、導電性添加剤は、電極中に、1重量%~95重量%、1重量%~35重量%、1重量%~25重量%、5重量%~40重量%、10重量%~40重量%、15重量%~40重量%、20重量%~40重量%、25重量%~40重量%、30重量%~40重量%、35重量%~40重量%、40重量%~45重量%、40重量%~50重量%、40重量%~55重量%、40重量%~60重量%、40重量%~65重量%、40重量%~70重量%、40重量%~75重量%、40重量%~80重量%、40重量%~85重量%、40重量%~90重量%、または40重量%~95重量%の範囲で存在してよい。
【0040】
電池の作製方法も本明細書に記載されている。電池作製の方法の例は、金属酸化物ナノ材料を作製する工程と、ナノ材料の第1の電極、またはナノ材料を含む第1の電極を形成する工程と、1つまたは複数の金属塩を溶媒に溶解することにより電解質を形成する工程と、電解質を第1の電極と第2の電極との間に配置する工程とを含む。電池作製の方法の別の例は、金属酸化物ナノ材料を作製する工程と、ナノ材料および1つまたは複数の金属塩の第1の電極、またはナノ材料および1つまたは複数の金属塩を含む第1の電極を形成する工程と、電解質を第1の電極と第2の電極との間に配置する工程とを含む。
【0041】
本明細書では、電池にて使用するための電解質も開示されている。例えば、開示された電解質は、第1の電極および第2の電極を含む電池において有用である。電解質の例は、溶媒と、溶媒に溶解した1つまたは複数の金属塩とを含む。任意に、1つまたは複数の金属塩とは異なる酸性種などの酸性種を、溶媒に溶解させてよい。
【0042】
上記のように、有機酸および/または有機酸無水物を含む酸性種など、様々な酸性種が開示された電解質に有用である。有機酸の例としては、シュウ酸、酢酸、クエン酸、マレイン酸、メチルマロン酸、グルタル酸、コハク酸、メチルコハク酸、メチレンコハク酸、シトラコン酸、またはこれらのいずれかの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。有機酸無水物の例としては、グルタル酸無水物、無水コハク酸、メチルコハク酸無水物、無水マレイン酸、イタコン酸無水物、またはこれらのいずれかの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。他の酸性種の例は上記の通りである。有用な酸性種には、-10~7の間、-5~6の間、1~6の間、1.2~5.6の間、または約4のpKaを示すものが含まれるが、これらに限定されない。酸性種は、0.01重量%~10重量%、0.1重量%~10重量%、1重量%~5重量%、または3重量%~5重量%などのいずれかの好適な濃度にて、電解質中に任意に存在してもよい。
【0043】
LiPF6、LiAsF6、LiClO4、LiBF4、LiCF3SO3などのリチウム金属塩は、開示された酸性化電解質の有用な成分であり得ることが理解されるであろう。溶媒の例としては、炭酸エチレン、炭酸ブチレン、炭酸プロピレン、炭酸ビニレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。溶媒の例は、リチウムイオン電池などの金属イオン電池に有用な場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】例示的なリチウムイオン電池セルの簡略化された断面図である。
【
図2】電解質がセパレータによって実質的に含まれているリチウムイオン電池セルの別の簡略化された断面図である。
【
図3】複数のセルを含むリチウムイオン電池の概略図である。
【
図4】Liに対してサイクルされた場合の市販の非AMOスズのサイクリックボルタモグラムと比較した、本明細書に開示された方法により調製されたAMOスズのサイクリックボルタモグラムにおける違いを示す。
【
図5】AMO酸化スズの全反射率が市販の非AMO酸化スズの全反射率と異なることを示す。
【
図6】本明細書に開示された合成方法から内因的に生じる表面官能化を示すX線光電子分光法(XPS)データである。示される数値は、%による原子濃度である。右端の列には、水溶液中に5重量%で分散したときに測定された、合成ナノ粒子の対応するpHを列記する。
【
図7】官能化のために異なる基を使用することを除いて同一条件下で合成されたAMOナノ粒子間の形態の違いを示す電子顕微鏡画像を提供する。
【
図8】2つの異なる総反応時間を有することを除いて同一条件下で合成されたAMOナノ粒子の形態および性能の違いを示す。
【
図9】サイクルの際の球状AMOおよび細長い(針状またはロッド状)AMO間のリチウムに対する挙動の違いを示す代表的な半電池データを提供する。
【
図10】強い(リン含有)電子吸引基および弱い(酢酸)電子吸引基の両方を使用して合成されたAMOナノ粒子の表面のX線光電子分光分析を提供し、酢酸基に会合した結合よりもリンの原子濃度が高いことを示す。
【
図11A】異なるAMOの可視光活性劣化データを示すデータを提供する。
【
図11B】異なるAMOの紫外光活性劣化データを示すデータを提供する。
【
図12】2つのAMOを比較するグラフであり、一方は一次(単回使用)電池用途で使用するためにより高い容量を有し、他方は二次(充電可能)電池用途で使用するためにより高いサイクル特性を有する。
【
図13】充放電容量データおよびクーロン効率データを提供し、AMOが電池構成要素の劣化またはガスの発生なしに電池性能を向上させることができることを示す。
【
図14】標準電解質系、酸性化電解質系、および塩基性化電解質系におけるAMOの容量およびサイクルデータを示す。
【
図15】AMO、および酸性化が溶媒洗浄によって除去された同じAMOの容量およびサイクルデータを示す。
【
図16】本開示に従って構築され、釘刺し試験を受けたセルの温度および電圧のプロットである。
【
図17A】本開示に従って構築され、過充電試験を受けたセルの温度および電圧のプロットである。
【
図18】本開示の態様による例示的なカソードの側面図である。
【
図19】標準的な構築技術と本開示による構築技術との比較を用いて種々の金属酸化物のリチウム化容量を比較した棒グラフである。
【
図20】本開示による様々な量のAMO酸化スズとブレンドされた活物質としてのMnO2の電圧対エネルギーのグラフである。
【
図21】本開示の態様によるアルカリ性AMO電池の側面断面図である。
【
図22】二酸化マンガンとブレンドされた本開示の酸性化SnO
2を含むアルカリセルの放電容量と従来のアルカリ性電極の放電容量とを比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
定義
本開示の目的のために、以下の用語は以下の意味を有する。
【0046】
酸性酸化物-学術文献において一般的に用いられる用語であり、非金属元素と酸素との二元化合物を指す。一例は二酸化炭素、CO2である。一部のメタロイド(例えば、Si、Te、Po)の酸化物も、純粋な分子状態で弱酸性の特性を有する。
【0047】
酸性化金属酸化物(「AMO」)-本明細書において用いられる用語であり、金属元素と酸素との二元化合物を意味し、この二元化合物は、その天然の鉱学的状態の酸性度よりも高い酸性度を有し、またハメット関数、H0>-12(超酸性ではないこと)を有するように合成または変性されている。また平均粒径は、天然の鉱物学的状態での粒径よりも小さい。天然に存在する鉱物学的形態は、本発明のAMO材料の範囲内に含まれない。しかし、最も豊富に天然に存在する(等価の化学量論の)鉱物学的形態よりも酸性ではあるが超酸性ではない合成金属酸化物は、本開示の範囲内に含まれ、本開示において議論されている他の特定の条件を満たす場合に、それはAMO材料であると言うことができる。
【0048】
酸性-学術文献において一般的に用いられる用語であり、水溶液中で7未満のpHを有する化合物を指す。
【0049】
電子吸引基(「EWG」)-電子密度をそれ自体に引き付ける原子または分子基。EWGの強度は、化学反応における既知の挙動に基づいている。例えば、ハロゲンは強いEWGであることが知られている。アセテートなどの有機酸基は、電子吸引性が弱いことが知られている。
【0050】
ハメット関数-高濃度の酸性溶液および超酸における酸性度を定量化する追加の手段であり、酸性度は以下の式によって定義される、すなわち、H0=pKBH++log([B]/[BH+])。このスケールでは、18.4モルの純粋なH2SO4は、-12のH0値を有する。純粋な硫酸についてのH0=-12という値はpH=-12と解釈してはならず、そうではなく、それは存在するその酸の化学種が、弱塩基にプロトンを付加する能力によって測定されるときに、1012mol/Lの架空の(理想の)濃度におけるH3O+と同等のプロトン付加能力を有することを意味する。ハメット酸性度関数は、その方程式において水を回避する。本明細書では、AMO材料と超酸とを区別する定量的手段を提供するために使用される。ハメット関数は比色試薬試験および昇温脱離法の結果と相関させることができる。
【0051】
層状構造-本明細書で使用される「層状構造」という用語は、間に少なくとも1つの界面を有する個別の材料堆積物(同じ材料であってもなくてもよい)から構成される電池セルを意味する。界面は構築中に存在する場合があるが、本明細書で指定されているように、最終生成物では効果的に減少または排除される。
【0052】
低担持量-活物質または活物質を含む混合層であり、活物質は10重量%~80重量%の範囲の量で存在する。
【0053】
金属酸化物-学術文献において一般的に用いられる用語であり、金属元素と酸素の二元化合物を指す。周期表におけるそれらの位置に応じて、金属酸化物はそれらの純粋な分子状態において、弱塩基性から両性(酸性の特性と塩基性の特性の両方を示すこと)にまで及ぶ。弱塩基性金属酸化物は、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、ルビジウム、ストロンチウム、インジウム、セシウム、バリウムおよびテルルの酸化物である。両性酸化物はベリリウム、アルミニウム、ガリウム、ゲルマニウム、アスタチン、スズ、アンチモン、鉛およびビスマスの酸化物である。
【0054】
単分散-互いに実質的に分離していて、大きな粒子のグレインとして凝集していない均一なサイズの粒子を特徴とする。
【0055】
pH-学術文献において一般的に用いられる関数の数値スケールであり、水溶液の酸性またはアルカリ性を特定するものである。これはヒドロニウムイオン[H3O+]の濃度の負の対数である。本明細書で使用されるとき、それは水溶液中に懸濁したナノ粒子の相対的酸性度について記載する。
【0056】
表面の官能化-材料の表面に小さな原子または分子の基が結合すること。
【0057】
超酸-100%のH2SO4よりも酸性で、H0<-12のハメット関数を有する物質。
好適な実施形態の詳細な説明
本明細書では、高容量電気化学セルおよびそのようなセル用の電極などのセル構成要素について説明する。開示された電気化学セルおよび電極は、AMOまたは非AMOナノ材料であってもよい金属酸化物を含み、高容量を示す。実施形態では、金属酸化物は、30%未満の重量パーセントなど、電極において比較的低い担持量(重量パーセント)で提供され、電極の残りの大部分は導電性材料およびバインダーを含む。このような少ない担持量でも、AMOナノ材料の場合は10,000mAh/gを超える容量が観察されている。電極は、層状構成または非層状構成で提供されてもよい。層状構成の例には、AMOナノ材料を含む個別の層、および低担持量含有層またはAMO非含有層が含まれる。他の実施形態では、非AMO金属酸化物は、同じまたは異なる材料の他の非AMO金属酸化物と積層してもよい。さらなる実施形態では、層は、同じ層状構造内にAMOおよび非AMO金属酸化物の両方を含んでもよい。しかし、電極の層化は、任意であり、層状電極と非層状電極の両方において高容量が観察される。
【0058】
ここで
図1を参照すると、リチウムイオン電池セル100が簡略化された断面図で示されている。セル100は、ケーシングまたは容器102を備えてもよい。いくつかの実施形態では、ケーシング102はポリマーまたは合金である。ケーシング102は、セル100の内容物を、隣接したセルから、汚染から、および損傷またはセル100が設置されているデバイスの他の構成要素による損傷から、化学的および電気的に隔離する。完全な電池は、直列および/または並列構成で配置された複数のセルを含んでもよい。電池は、当該技術分野で知られているように、複数のセルを結合するさらなるケーシングまたは固定機構を有してもよい。
【0059】
セル100は、カソード104およびアノード106を提供する。セル100の内容物は、カソード104とアノード106との間に、セル100の外部にある伝導経路が提供されると、化学反応を起こす。化学反応の結果として、アノード106で電子が提供され、これらの電子は、電池の外部に設けられた回路(負荷と呼ばれることもある)を介してカソード104に流れる。基本レベルでは、セル100の放電中には、回路を通って流れる電子を供給して、アノード106を含む材料が酸化される。アノード106により放出される電子のレシピエントとして、カソード104を含む材料は還元される。
【0060】
セル100内では、放電中には、金属カチオンは電解質108を通ってアノード106からカソード104に移動する。リチウム系電池の場合、金属カチオンはリチウムカチオン(Li+)であり得る。電解質108は、有機溶媒中のリチウム塩(例えば、炭酸エチレン中のLiClO4)などの液体電解質であり得る。当該技術分野で知られている他のリチウム系電解質/溶媒の組合せを使用してもよい。場合によっては、電解質108は、ポリエチレンオキシド中のリチウム塩などの固体電解質であり得る。任意に、電解質はポリマー電解質を含んでもよい。電解質の例には、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2017/0069931号に記載されている電解質が含まれる。
【0061】
セパレータ110は、電極104、106間の接触を防ぐために使用されてもよい。セパレータ110は、リチウムイオンおよび電解質108に対して透過性であるが、セル100の内部短絡を防止するために、別様に導電性ではない多孔質層材料であり得る。当該技術分野で知られているように、セパレータ110は、ガラス繊維を含むか、場合により半結晶構造を有するポリマーを含んでもよい。集電体などの追加の構成要素も、セル100に含まれてもよいが、
図1には示されていない。
【0062】
アノード104、カソード106、電解質108、およびセパレータ110が一緒になって完全なセル100を形成する。セパレータ110は多孔質であるため、電解質108はセパレータ110に流れ込み得るか、またはセパレータ110に含まれ得る。通常の動作条件下では、セパレータ110が多孔性であることにより、イオン(Li+)が電解質108を介して電極104、106間を流れることが可能になる。当該技術分野で知られているように、セパレータは、熱の過剰または暴走発熱反応に曝された場合に、内部細孔構造を溶融させて閉鎖し、セルをシャットダウンするように構築することができる。
【0063】
ほとんどのリチウム系電池は、いわゆる二次電池である。二次電池は、セルの化学的または構造的完全性が許容限度を下回るまで、何度も放電および再充電を行うことができる。本開示によるセルおよび電池は、一次電池(例えば、単回使用)および二次電池の両方であると見なされる。
【0064】
二次電池(または二次電池の一部)であるセル100の場合、セル100は、単独で、または複数のセルが同時に(および場合により、同じ並列または直列回路において)再充電される完全なシステムの構成要素として、再充電し得ることを理解するべきである。
【0065】
充電を行うために、セル100に逆電圧を印加する。リチウム電池を効果的に再充電するための種々のスキームを使用することができることを理解すべきである。定電流、可変電流、定電圧、可変電圧、部分デューティサイクルなどを使用し得る。本開示は、特許請求の範囲に記載されていない限り、特定の充電方法に限定されることを意図するものではない。セル100の充電中、要素115は、カソード104とアノード106との間で印加され、カソード105からアノード106に電子を供給し、化学反応が起こることを可能にする電圧源を表す。リチウムイオンは、電解質108およびセパレータ110を介して、カソード104からアノード106へと折り返す。
【0066】
例として、カソード104またはアノード106は、本開示に従って独立して金属酸化物を含むことができる。金属酸化物は、ナノ材料であり、おそらく実質的に単分散であり、AMOまたは非AMOのいずれかの形態であってもよい。AMO材料をカソードとして使用する場合、アノードは、リチウム金属またはグラファイトなどのリチウムインターカレーション材料に対応してもよい。非AMOカソードはまた、リチウム金属またはリチウムインターカレーション材料に対応し得るアノードと対にしてもよい。任意で、電解質108は、酸性種をリチウム塩と共に有機溶媒に溶解させて含んでもよい。電解質108における酸性種の使用に加えて、またはその代替として、電極(すなわち、カソード104またはアノード106)は、AMOおよび酸性種を任意で含んでもよい。シュウ酸は、例示的な酸性種である。
【0067】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、カソード104またはアノード106および/または電解質108中の酸性種の存在は、リチウムイオンに対するAMO材料の表面親和性を改善し、このことにより、放電中にリチウムイオンを吸収する能力が改善され、酸性種を欠くか、または塩基性化電極または電解質(すなわち、塩基性種を含む)を有する同様のセルと比較して、容量が全体的に改善されると考えられる。あるいは、またはさらに、酸性種の存在により、カソード104でのリチウム吸収のための追加の活性部位が可能になり得る。
【0068】
図1は正確な縮尺ではないことを理解すべきである。
図2に示されるように、ほとんどの用途において、セパレータ110は電極104、106間のスペースの大部分またはすべてを占有し、電極104、106と接触している。そのような場合、電解質108はセパレータ110内に含まれる(ただし、アノードまたはカソードの細孔または表面に侵入することもある)。
図2もまた、必ずしも正確な縮尺ではない。セルの実際の幾何学的形状は、比較的薄くて平らなパウチから、キャニスター型の構造、ボタンセルなどにまで及ぶことができる。巻回型またはボビン型またはピン型組立体などのセル構築技術を使用してもよい。
【0069】
当該技術分野で知られている集電体および他の構成要素(図示せず)も、セル100を商業的に利用可能なパッケージに形成するために見込むことができる。全体の形状または幾何学的形状は変化することがあるが、セルまたは電池は通常、ある場所または断面で、接触するのではなく分離した電極104、106を含み、電解質108および場合によりセパレータ110を電極104、106の間に有する。セルはまた、アノードとカソードの複数の層があるように構築してもよい。セルは、2つのカソードが単一のアノードの反対側にあるように、または逆もまた同様に構成してもよい。
【0070】
特定の目的のために意図された機能的または動作可能な電池は、特定の用途のニーズに従って配置された複数のセルを備えてもよい。そのような電池の例を
図3に概略的に示す。ここで、電池300は、電圧を増加させるために直列に配置された4つのリチウムセル100を含む。示されているスタックと並行して4つのセル100の追加スタックを設けることにより、この電圧で容量を増やすことができる。直列に配置されるセル100の数を変えることにより、異なる電圧を達成することができる。
【0071】
正極306は、電池300のケーシング302の外側でアクセス可能であってもよい。負極304も設けられる。電極304、306の物理的形状因子は、用途によって変化し得る。種々のバインダー、接着剤、テープ、および/または他の固定機構(図示せず)を電池ケーシング302内で使用して、他の構成要素を安定させることができる。リチウム技術に基づいた電池は、一般に、いずれの方向でも動作可能、再充電可能、および貯蔵可能である(二次電池の場合)。上述のように、セル100は種々の異なる幾何学的形状をとってもよい。したがって、
図3は、電池300の特定の物理的形状因子を表すことを意図したものではない。
【0072】
電池300は、電池300のケーシング302内に正極308とリチウムセル100の間に配置する種々の補助回路308もまた備えてもよい。他の実施形態では、補助回路は、正極306とリチウム電池100の間に配置する代わりに、またはそれらに加えて、負極304とリチウム電池100の間に配置する。補助回路308は、短絡保護、過充電保護、過熱シャットダウン、および電池300、セル100、および/または電池300に取り付けられたなんらかの負荷を保護するための当技術分野で知られている他の回路を含んでもよい。
【0073】
カソード104、アノード106、および電解質用に選択された材料の組成は、セル100およびそれが一部を形成するいずれの電池の性能にとっても重要であり得る。本開示との関係において、AMOの種々の例およびそれらの製造方法が、これに関して提供される。これらのAMOは、ハーフセル、セル、および電池におけるアノードまたはカソードを形成するのに使用するために好適である。本開示のAMOは、別様に、既存のアノード組成物、カソード組成物、電解質配合物、およびセパレータ組成物を含む既知のリチウムセル技術に対応している。他の実施形態では、AMOの場合に利用されるのと同じかもしくは異なる製造、構築、または形成方法を採用することができるが、非AMO材料を使用する。
【0074】
本開示によるセルまたは電池用に選択されたアノード106の材料は、カソード104の材料よりも電気陰性度が低く、カソード材料を好適に補完し得ることが理解されるであろう。特定の一実施形態では、開示されたAMOは、金属リチウムアノードを有するセルにおけるカソードとして有用である。
【0075】
本開示の種々の実施形態では、カソード104は、酸性であるが超酸性ではない表面を有するAMO材料を含む。これは、リチウムコバルトまたはリチウムマンガン材料などのカソードとして以前から知られており、利用されている材料とは対照的であろう。本開示のAMO材料およびそれらの製造方法を以下に記載する。他の実施形態では、アノード106は、酸性であるが超酸性ではない表面を有する本開示のAMO材料を含む。
【0076】
金属酸化物の表面は理想的には金属中心および酸素中心の配列であり、酸化物の結晶構造に従って整列している。実際には、その配列は不完全であり、空孔、歪みを生じやすく、表面付着物の影響を受けやすい。とにかく、露出した金属中心はすべてカチオン性であり(正に荷電していて)、電子を受容することができ、したがって、定義によりルイス酸点として機能する。酸素中心はアニオン性であり(負に荷電していて)、電子を供与するルイス塩基点として作用する。このことが、良く知られた金属酸化物の表面の両性をもたらす。
【0077】
通常の大気条件下では、存在する水蒸気は金属酸化物の表面に分子状(水和)または解離状(ヒドロキシル化)のいずれかで吸着する。OH-種とH+種の両方とも酸化物の表面上に吸着することができる。負に荷電したヒドロキシル種は、金属のカチオン(ルイス酸、電子受容)中心に結合し、H+は酸素のアニオン(ルイス塩基、電子供与)中心に結合する。両方の吸着により、金属酸化物表面に同じ官能基-ヒドロキシル-の存在がもたらされる。
【0078】
これらの表面のヒドロキシル基は、プロトンを放出するかまたは受容することができるので、ブレンステッド酸、またはブレンステッド塩基のいずれかとして機能することができる。個々のヒドロキシル基がプロトン供与体またはプロトン受容体となる傾向は、それが結合する金属カチオンまたは酸素アニオンの配位によって影響を受ける。酸素空孔などの金属酸化物表面の欠陥、または他の化学種による表面基への配位は、すべてのカチオンとアニオンが等しく配位されているのではないことを意味する。酸点、塩基点は、数および強度が様々である。酸化物の表面にわたって広く「総計」すると、このことによって表面には全体的な酸性または塩基性の特質を与えることができる。
【0079】
ルイス酸点およびルイス塩基点(それぞれ露出した金属カチオンおよび酸素アニオンからのもの)ならびにブレンステッド酸点およびブレンステッド塩基点(表面のヒドロキシル基からのもの)の量および強度は、金属酸化物に広範な有用性と機能性を付加し、化学反応とデバイス用途の両方における金属酸化物の使用を付加する。これらの点は金属酸化物の化学反応性に大きく寄与するものである。それらは、他の化学基、さらには追加の金属酸化物が結合することができるアンカー点として機能することができる。また、それらは表面電荷、親水性および生体適合性に影響を与える場合がある。
【0080】
金属酸化物の表面を変化させる1つの方法は、表面官能化としての既知のプロセスにおいて小さな化学基または電子求引基(「EWG」)を結合させることである。EWGは水酸化物結合の分極を誘導し、水素の解離を促進する。例えば、より強いEWGは、より分極した結合をもたらし、ひいてはより酸性のプロトンをもたらすはずである。ルイス点の酸性度は、その点への電子の供与を促進する分極を誘起させることによって増大させることができる。そのようにして作製した化合物を水中に置くと、酸性のプロトンは解離し、したがって、水のpH測定値を低下させるだろう。
【0081】
液体の酸/塩基の系ではなく固体の酸/塩基の系で作用させるとき、幾分不正確ではあるが、滴定、pH試験紙、pHプローブを利用する従来のpH測定方法を使用して、水溶液中に分散した金属酸化物の酸性度を評価することができる。これらの測定は、比色試薬、赤外分光法、および昇温脱離のデータを含むがこれらに限定されない技術を使用して補完することができ、それによって金属酸化物表面の酸性化した性質を確立することができる。表面の基は、X線光電子分光法を含むがこれに限定されない標準的な分析技術によって検査することができる。
【0082】
表面の官能化は、合成後に達成することができ、これには、金属酸化物を酸性溶液に曝すか、または所望の官能基を含む蒸気に曝すことが含まれるが、これらに限定されるものではない。それはまた固相法によって達成することもでき、固相法では、金属酸化物を所望の官能基を含む固体と共に混合および/または粉砕する。しかし、これらの方法はすべて、金属酸化物自体を合成するのに必要な工程を超える1つまたは複数の追加の表面官能化工程を必要とする。
【0083】
AMO材料の合成および表面官能化は、金属酸化物を適切な前駆体から合成しているときに金属酸化物の表面を官能化させる「シングルポット」水熱合成法またはそれと同等の方法で達成し得る。EWGを含む前駆体の塩を可溶化させ、得られた溶液を、第二のEWGを含む酸を用いて酸性化させる。この酸性化した溶液を塩基性化させて、その塩基性化した溶液を加熱し、次いで洗浄する。乾燥工程によって固体のAMO材料が生成する。
【0084】
例として、AMO形態の酸化スズの好ましい実施形態を、以下のシングルポット法を使用して合成し、同時に表面官能化させた。
【0085】
1.最初に、7グラム(7g)の塩化スズ(II)二水和物(SnCl2・2H2O)を、35mLの無水エタノールと77mLの蒸留水との溶液中に溶解させる。
【0086】
2.得られた溶液を30分間撹拌する。
【0087】
3.7mLの1.2M HClを滴加によって添加して溶液を酸性化し、得られた溶液を15分間撹拌する。
【0088】
4.1Mの水性塩基を溶液のpHが約8.5になるまで滴加によって添加し、溶液を塩基性化する。
【0089】
5.次いで、得られた不透明な白色の懸濁液を湯浴(約60~90℃)の中に少なくとも2時間にわたって撹拌しながら置く。
【0090】
6.次いで、懸濁液を蒸留水で洗浄し、無水エタノールで洗浄する。
【0091】
7.洗浄した懸濁液を空気中で100℃にて1時間乾燥させ、次いで空気中で200℃にて4時間アニールする。
この方法によって、塩素で表面官能化されたスズのAMOが得られ、そのpHは、5重量%で水溶液中に室温にて再懸濁して測定すると、約2である。定義により、そのハメット関数は、H0>-12である。ここではフラスコなどの開放系について記述しているが、オートクレーブなどの閉鎖系を用いてもよい。
【0092】
上記で開示されたシングルポット法を利用して、複数のAMOが合成された。下の表1は、使用された前駆体および酸について記載する。場合によっては、ドーパントを同様に利用する:
【0093】
【表1】
いくつかの実施形態では、電子求引基は、6以下の炭素鎖長および/または200以下の有機質量(AMU)を有する。いくつかの実施形態では、電子求引基は、8以下または10以下の炭素鎖長および/または500以下の有機質量を有する。
【0094】
この方法のパラメータは変更することできることが理解されるであろう。これらのパラメータには、試薬の種類と濃度、酸および塩基の種類と濃度、反応時間、温度および圧力、撹拌速度および時間、洗浄工程の回数と種類、乾燥および焼成の時間と温度、ならびに乾燥および焼成中のガスへの曝露が含まれるが、これらに限定されない。変形形態は、単独で、またはいずれかの組合せで、場合により実験計画手法を使用して実施してもよい。さらに、他の金属酸化物合成方法、-例えば、噴霧熱分解法、気相成長法、電着法、固相法、および水熱プロセスまたはソルボサーマルプロセス法-は、本明細書で開示された方法と同様または類似の結果を達成するために有用であり得る。
【0095】
AMOナノ材料の調製には、様々なアニーリング条件が有用である。アニーリング温度の例は、300℃未満、例えば100℃~300℃であり得る。例示的なアニーリング時間は、約1時間~約8時間以上の範囲であり得る。アニーリングは、様々な大気条件下で行ってもよい。例えば、大気圧の空気中でアニーリングを行ってもよい。アニーリングは、高圧下(大気圧より高い)または減圧下(大気圧より低いまたは真空中)で行ってもよい。あるいは、不活性ガス(例えば、窒素、ヘリウム、またはアルゴン)下または酸化性ガス(例えば、酸素または水)の存在下など、制御された雰囲気中でアニーリングを行ってもよい。
【0096】
AMOナノ材料の調製には、様々な乾燥条件が有用である。乾燥温度の例は、50℃~150℃であり得る。例示的な乾燥時間は、約0.5時間~約8時間以上の範囲であり得る。乾燥は、様々な大気条件下で行ってよい。例えば、大気圧の空気中で乾燥を行ってもよい。乾燥は、高圧下(大気圧より高い)または減圧下(大気圧より低いまたは真空中)で行ってもよい。あるいは、不活性ガス(例えば、窒素、ヘリウム、またはアルゴン)下または酸化性ガス(例えば、酸素または水)の存在下など、制御された雰囲気中で乾燥を行ってもよい。
【0097】
本開示のAMOナノ材料の性能特性は、酸性化されていない金属酸化物ナノ粒子の性能特性とは異なる。一例として、
図4は、リチウムに対してサイクルされた場合の市販の非AMOスズのサイクリックボルタモグラムと比較した、シングルポット法により調製されたAMOスズのサイクリックボルタモグラムにおける違いを示す。例えば、表面官能化AMO材料は、非AMO材料よりも優れた可逆性を示す。AMO材料のCVに明確なピークが存在することは、充電/放電中に複数の電子移動ステップが発生していることを示し得る。例えば、高電圧のピークはAMO材料の直接的な酸化/還元を示し得るが、一方、低電圧のピークはAMO材料の材料構造の変化(つまり、合金化)に起因し得る。
【0098】
別の例として、
図5は、AMO酸化スズの全反射率が市販の非AMO酸化スズの全反射率と異なることを示す。データは、AMOがより低いバンドギャップを有し、したがって、本開示によるアノードとしての使用に加えて、光起電システムの構成要素としてより望ましい特性を有することを示している。
【0099】
AMO材料は一般式
MmOx/G
(式中、
MmOxは金属酸化物であり、mは1以上5以下であり、xは1以上21以下であり;
Gは水酸化物ではない少なくとも1つのEWGであり、
/は金属酸化物とEWGとの間に単に区別をつけ、2つの間の決まった数的な関係または比率を示していない)
を有すると考えることができる。
Gは、単一の種類のEWGを表してもよく、または2つ以上の種類のEWGを表してもよい。
【0100】
例示的なAMOは、酸性化酸化スズ(SnxOy)、酸性化二酸化チタン(TiaOb)、酸性化酸化鉄(FecOd)、および酸性化酸化ジルコニウム(ZreOf)である。例示的な電子吸引基(「EWG」)は、Cl、Br、BO3、SO4、PO4およびCH3COOである。本開示によれば、特定の金属またはEWGにかかわらず、AMO材料は酸性であるが、しかし超酸性ではなく、水溶液中に5重量%で懸濁したときにpH<7となり、少なくともその表面上でH0>-12のハメット関数を有する。
【0101】
AMO材料の構造は結晶質または非晶質(またはこれらの組合せ)であってもよく、単独で利用するか、または互いに組み合わせて複合材料として利用してもよく、非酸性化金属酸化物と、または当該技術分野で知られている他の添加剤、バインダーまたは導電性助剤と共に利用してもよい。換言すれば、本開示のAMOを利用して作製されたアノードは、他の材料を含んでも含まなくてもよい。一実施形態では、AMOを導電性材料上に積層してカソード104を形成することができる。いくつかの実施形態では、AMO材料は、グラファイトまたは導電性カーボン(またはそれらの均等物)などの導電性助材に、10重量%~80重量%の範囲および90重量%~95重量%を超える範囲で添加してもよい。好ましい実施形態では、AMOは、10重量%、33重量%、50重量%、および80重量%で添加される。
【0102】
利用可能な表面積全体の量を最大化するために、AMOはナノ微粒子の形態(すなわち、サイズが1ミクロン未満)であって、実質的に単分散になっているべきである。より好ましくは、ナノ微粒子のサイズは100nm未満であり、さらにより好ましくは20nm未満または10nm未満である。非AMO金属酸化物を利用する他の実施形態では、材料はそれでもナノ粒子形態であってもよく、実質的に単分散であってもよい。この場合も、ナノ粒子のサイズは100nm未満であり、好ましくは20nm未満または10nm未満であり得る。
【0103】
混合金属AMOにおいては、単一の酸化物または二元酸化物に加えて別の金属または金属酸化物が存在しており、これらの混合金属AMOは、ハーフセル、セル、および電池で利用されるアノードを形成する際に実施化された。これらの混合金属AMOは、一般式
MmNnOx/GおよびMmNnRrOx/G
(式中、
Mは金属であり、mは1以上5以下であり;
Nは金属であり、nはゼロよりも大きく5以下であり;
Rは金属であり、rはゼロよりも大きく5以下であり;
Oはすべての金属に会合した合計の酸素であり、xは1以上21以下であり;
/は金属酸化物と電子求引性表面基との間に単に区別をつけ、2つの間の決まった数的な関係または比率を示していない;
Gは水酸化物ではない少なくとも1つのEWGである)
を有すると考えることができる。
Gは、単一の種類のEWGを表してもよく、または2つ以上の種類のEWGを表してもよい。
【0104】
ゼオライトが最も顕著な例である、いくつかの先行技術の混合金属酸化物系は、強い酸性度を示すが、単一の酸化物それぞれは強い酸性度を示さない。本開示の混合金属AMOの好ましい実施形態は、どの実施形態も、単一のMmOx/G形態において酸性(超酸性ではない)である少なくとも1つのAMOを含んでいなければならないという点で、先行技術の混合金属酸化物系とは異なる。好ましい混合金属および金属酸化物系はSnxFecOy+dおよびSnxTiaOy+bであり、式中、y+dおよびy+bは整数値または非整数値であってもよい。
【0105】
別の実施形態では、混合金属AMO材料は、1つの改変を伴うシングルポット法により製造する、すなわち、合成は、1つではなく、2つの金属前駆体の塩をいずれかの割合で用いて開始する。例えば、シングルポット法の工程1は以下のように変更してもよい、すなわち、最初に、3.8gの塩化スズ(II)二水和物(SnCl2・2H2O)および0.2gの塩化リチウム(LiCl)を、20mLの無水エタノールと44mLの蒸留水の溶液に溶解させる。
【0106】
表1に示した金属前駆体の塩を、どのような割合で使用することもできる。それらの金属前駆体の塩は、所望の生成物に応じて、同一のアニオン基または異なるアニオン基を有することができ、合成中の異なる時点で導入することができ、または固体として導入するか、もしくは溶媒中に導入することができる。いくつかの実施形態では、第1の金属前駆体の塩を、得られるAMOの一次構造(すなわち、より大きな割合)に使用してもよく、第2(および任意に第3)の金属前駆体の塩を、得られるAMOのドーパントとして、または微量成分として添加してもよい。
【0107】
シングルポット法を用いた実験により、7つの注目すべき知見がもたらされた。第1に、すべてのケースにおいて、表面官能化と酸性度の両方が、合成後に生成するのではなく内因的に生じる(
図6を参照されたい)。先行技術の表面官能化法とは異なり、シングルポット法は、金属酸化物自体を合成するために必要なものを超える表面官能化のための追加の1つまたは複数の工程を全く必要とせず、またそれはヒドロキシル含有有機化合物または過酸化水素を利用しない。
【0108】
第2に、この方法は広範囲の金属酸化物およびEWGにわたって広く一般化することができる。本開示の方法を使用して、鉄、スズ、アンチモン、ビスマス、チタン、ジルコニウム、マンガン、およびインジウムの金属酸化物を合成し、同時にクロリド、サルフェート、アセテート、ニトレート、ホスフェート、シトレート、オキサレート、ボレート、およびブロミドを用いて表面官能化させた。スズと鉄、スズとマンガン、スズとマンガンと鉄、スズとチタン、インジウムとスズ、アンチモンとスズ、アルミニウムとスズ、リチウムと鉄、およびリチウムとスズの混合金属AMOも合成した。加えて、ハロゲンおよびSO4より弱いEWGを用いて表面官能化を達成することができ、この表面官能化によりそれでもなお、酸性であるが超酸性ではない表面を生成させることができる。例えば、この方法は、アセテート(CH3COO)、オキサレート(C2O4)、およびシトレート(C6H5O7)で表面官能化したAMOを合成するためにも使用された。様々な実施例について以下説明する。
【0109】
第3に、EWGとナノ粒子のその他の特性、例えば、サイズ、形態(例えば、板状、球状、針状またはロッド状)、酸化状態、および結晶化度(非晶質、結晶質、またはこれらの混合)との間には相乗的な関係がある。例えば、表面官能化のために異なるEWGを使用したことを除いて同一条件下で合成されたAMOナノ粒子間において、形態の違いが発生する可能性がある(
図7を参照されたい)。表面官能化は、ナノ粒子の寸法を「固定」して、それらの成長を停止させるように作用し得る。この固定作用は、正確な合成条件に応じて、ナノ粒子の1つの寸法でのみ発生する場合があり、または2つ以上の寸法で発生する場合がある。
【0110】
第4に、AMOの特質は合成の条件および手順に対して非常に敏感である。例えば、2つの異なる総反応時間を有することを除いて同一条件下で合成された場合、AMOナノ粒子の形態および性能の違いが発生する可能性がある(
図8および9を参照されたい)。実験計画手法を使用して最良または最適な合成の条件および手順を決定し、それにより望ましい特性または特性の組合せをもたらすことができる。
【0111】
第5に、前駆体の塩に存在するアニオンと酸に存在するアニオンの両方が、AMOの表面官能化に寄与する。好ましい一実施形態では、スズのAMOの合成に塩化スズ前駆体および塩酸を使用する。これらの粒子の性能は、塩化スズ前駆体および硫酸を使用する実施形態、または硫酸スズ前駆体および塩酸を使用する実施形態とは異なる。したがって、いくつかの実施形態では、前駆体のアニオンと酸のアニオンを一致させることが好ましい。
【0112】
第6に、弱いEWGを有する前駆体および強いEWGを有する酸を利用する場合、またはその逆の場合、強い吸引性をもつアニオンが表面官能化を支配する。これにより、より広範な合成の可能性が開かれ、前駆体の塩と酸の両方では容易に利用できないイオンを用いて官能化を行うことができる。また、強いEWGと弱いEWGの両方を用いる混合官能化を行う可能性もある。一例では、酢酸スズ前駆体とリン酸を使用してスズのAMOを合成する。表面のX線光電子分光分析は、アセテート基に会合した結合よりもリンの原子濃度が高いことを示す(
図10を参照されたい)。
【0113】
第7に、最後として、開示された方法は、AMOの合成の一般的な手順であるが、合成手順および条件は、様々な用途に望ましいと思われるサイズ、形態、酸化状態、および結晶状態を得るために調整してもよい。一例として、触媒用途は、可視光でより活性なAMO材料(
図11Aを参照されたい)または紫外光でより活性な材料(
図11Bを参照されたい)を必要とする場合がある。
【0114】
別の例では、AMO材料は電池電極として使用してもよい。一次(単回使用)電池の用途においては、最高容量をもたらす特性を有するAMOを必要とする場合があるが、一方、二次(再充電可能な)電池の用途においては、同じAMOであるが最高のサイクル特性をもたらす特性を有するAMOを必要とする場合がある。
図12では、塩素含有AMOおよび硫黄含有AMOを含む、AMO材料で構成された2つの異なる電池のサイクル特性を比較する。AMO材料は、電池構成要素の劣化またはガスの発生なしに電池性能を向上させることができる(
図13を参照されたい)。これは、先行技術が教示することとは正反対である。
【0115】
図13に、AMOナノ材料電極対リチウム金属のハーフセルとして構成された電池の充放電サイクル特性を示し、これは、有効な容量と格別なクーロン効率を維持しながら、最大900回の充放電サイクルのサイクル特性を示している。このような長いサイクル特性は、特にリチウム金属参照電極に対しては格別であり、なぜなら、リチウム金属は、少ないサイクル数でもデンドライトを成長させ、デンドライトが拡大し、これにより危険かつ壊滅的な電池セルの故障がもたらされる可能性があるということが知られているからである。
【0116】
本開示によれば、完全なセルにおいて、開示されたAMOを含むアノード106は、既知の電解質108およびコバルト酸リチウム(LiCoO2)などの既知の材料を含むカソード104と共に利用することができる。同様に、セパレータ110を含む材料は、当該技術分野で現在知られているものから引き出すことができる。別の実施形態では、アノード106は、既知の電解質108と共に開示された非AMO金属酸化物を含んでもよく、カソード104は、既知の材料を含み、および/または既知の方法に従って構築される。
【0117】
完全なセルにおいて、開示されたAMOを含むカソード104は、本開示のAMOのものよりも低い電気陰性度を示す、既知の電解質108および銅箔上の炭素などの既知の材料を含むアノード106と共に利用することができる。同様に、セパレータ110および電解質108を含む材料は、上述のように当該技術分野で現在知られているものから引き出すことができる。別の実施形態では、カソード104は、既知の電解質108と共に開示された非AMO金属酸化物を含んでもよく、アノード106は、既知の材料を含み、および/または既知の方法に従って構築される。
【0118】
種々の層化および他の強化技術を展開して、セル100に電力を供給するためのリチウムイオンを保持する能力を最大化し得る。本開示による電池は、二次(例えば、充電式)電池として展開できるが、一次電池としても機能することができることも理解されるべきである。本開示のアノードおよびカソードは、可逆電池化学に適しているが、本明細書に記載されるように構築されたセルまたは電池は、一次セルまたは電池として十分に展開され得る。
【0119】
電池産業において、「フォーメーション」という言葉は、電池が使用可能になる前に製造施設で行われる電池の初期充電または放電を示すために使用される。フォーメーションプロセスは一般に非常に遅く、製造されたままの活物質をセルサイクルにより利用しやすい形態に変換することに向けられた複数のサイクルを必要とする場合がある。これらの変換は、活物質の構造、形態、結晶化度、および/または化学量論の変更であり得る。
【0120】
本開示に従って構成されたセルおよび電池は、いくつかの実施形態では、初期形成を必要とせず、したがって、一次セルまたは電池としてすぐに使用することができる。他の場合、制限形成または急速形成を使用してもよい。さらに、本開示のセルおよび電池を、再充電することを意図しない一次電池として展開することにより、安全性の問題は、電池サイクル中により頻繁に発生することが当該技術分野で知られているが、リチウム電池の化学に固有であると思われるこの安全性の問題のいくつかが軽減される。しかし、初期の一次放電の後、本明細書にて開示されたセルおよび電池は、任意に、最大で数十、数百、さらには数千サイクルなどの多くの充放電サイクルを受ける場合がある二次電池システムとしての使用に好適である。
【0121】
本開示による他の実施形態では、カソード104は、非AMO形態の酸化スズ(SnO2)のナノ粒子を含む。酸化スズナノ粒子は、実質的に単分散であってもよい。本開示の実施形態によれば、二酸化チタン(TiO2)、酸化鉄(FeO、Fe2O3、Fe3O4)、または別の金属酸化物を、酸化スズの代わりに置き換えてもよい。既知の電解質108、アノード106、およびセパレータ110、または本開示に別様に記載されているものは、そのような実施形態で利用することができる。
【0122】
本開示のAMOおよび非AMO金属酸化物を使用して、他の電池構造が可能であることが理解されるであろう。例えば、電池は、本開示の金属酸化物(おそらく単分散ナノ粒子形態)を含む第1の電極、第2の電極、および第1の電極と第2の電極の間に配置された電解質を含むことができる。例として、リチウムイオン電池において、第1の電極は、カソードまたはアノードとして動作してもよい。例えば、カソードとしての動作において、第2の電極は、リチウム金属、グラファイト、または別のアノード材料に対応し得る。別の例として、アノードとしての動作において、第2の電極は、LiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2、または別のカソード材料に対応し得る。第2の電極に有用な材料としては、グラファイト、リチウム金属、ナトリウム金属、コバルト酸リチウム、チタン酸リチウム、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)、リン酸鉄リチウム、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)、またはこれらのいずれかの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0123】
本明細書に開示されたAMO材料を、電極内におけるAMO材料の0.01重量%~10重量%の間の量、または例えば約1重量%、5重量%または10重量%の量などで、従来のリチウムイオンセルのアノードおよび/またはカソードにドーパントとして添加してもよいことが理解されよう。開示されたAMO材料は、リチウム原子を貯蔵する驚くべき容量を提供し、これらの材料を従来のリチウムイオンセル電極に加えることにより、これらの複合材料の能力を提供する。特定の一例として、電極はLiCoO2とAMOとを含む。別の例として、電極は、グラファイトなどの炭素質材料とAMOとを含む。
【0124】
本開示の金属酸化物は、任意に、バインダー、酸性電解質、または酸性電解質添加剤などの酸性成分と共に使用してもよい。本開示のAMO材料は、アノード、カソード、ハーフセル、完全なセル、一体型電池、または他の構成要素との関係にあってもよい。本発明者らは、驚くべきことに、AMO材料を含む電池に有機酸または有機酸無水物などの酸性成分および/または酸性種を含めると、酸性種を含まない電池に比べて容量が増加することを見出した。酸性種は、金属集電体およびハウジングを劣化させ、他の電極構成要素の劣化を引き起こすことがあるので、ここでも、先行技術は、これらの種の使用に反対することを教示している。
【0125】
図14に示すように、標準電解質を有する、塩基性化電解質を有する、および酸性化電解質を有するということを除き、同じ材料および構造で形成されたAMO系の電池のサイクル特性の比較データを提供する。電池には以下の構造が含まれていた、すなわち、すべてのカソードは同じAMO材料を含んでいた;すべてのアノードはリチウム金属であった;標準電解質は、1MのLiPF
6を含む炭酸ジメチレンと、炭酸ジエチレンと、炭酸エチレンとの1:1:1の混合物であった;酸性化電解質は、3重量%の無水コハク酸を含む標準電解質であった;塩基性化電解質は、3重量%のジメチルアセトアミドを含む標準電解質であった。すべての電池は、同じ放電率でサイクルした。図示されているように、酸性化電解質系を備えた電池は最高のサイクル能力を示し、最大サイクル数を超えても最高の容量を維持する。
【0126】
図15は、酸性化電解質を含み、一方の電池のAMO材料は、溶媒で洗浄することにより脱酸させることを除いて、同じ電池構造を有する2つの異なる電池についての追加の比較サイクル特性データを提供する。電池には以下の構造が含まれていた、すなわち、カソードはAMO材料を含んでいた;電解質は、1MのLiPF
6および3重量%の無水コハク酸を含む炭酸ジメチレンと、炭酸ジエチレンと、炭酸エチレンとの1:1:1の混合物であった;アノードはリチウム金属であった。電池は、同じ放電率でサイクルした。酸性化AMO材料を備えた電池は、サイクル数に対して容量保持率が高いことを示し、AMOの酸性化された表面が酸性化電解質と相互作用し、性能が向上することを示している。
【0127】
現時点では、リチウム電池は一定の状況において安全上のリスクがあると認識されている。例えば、航空会社の規制では、現在、貨物倉に持ち込まれるリチウム電池の部分放電を義務付けている。リチウム電池を使用するデバイスにおいて、暴走発熱反応から生じる火災が報告されている。さらに、一般的に配備されている消火システムおよび装置では、リチウム火災を消火するのは困難であり得る。このような理由によって、金属リチウムではなくリチウム含有化合物が多くの商用電池セルにおいて使用されている。
【0128】
しかし、リチウム金属ではなくリチウム含有化合物をアノードにおいて使用すると、放電時に反応してカソードに吸収するのに利用できるリチウムの量が制限される場合があり、したがって、そのようなセルの容量も制限される場合がある。しかし、本明細書にて開示するAMO材料は、放電中に多くのリチウムを吸収するだけでなく、安全特性も向上していることを示す。例えば、AMO材料をカソードおよびリチウム金属電極に含む電池セルを、釘刺し試験、短絡試験、および過電圧試験などの安全性試験にかけると、電池は良好に機能し、火災または爆発の許容できないリスクをもたらすようには思われない。これは、AMOがセルまたは電池内のリチウム金属を不動態化するためであり得る。アノードとして固体または純粋なリチウムを使用しても、本開示のAMOをカソードとして使用するデバイスは、火災または爆発の許容できないリスクをもたらすとは思われない。新規の安全性の結果は、いくつかの実施形態では、従来のリチウムイオン動作電圧>3.0Vと比較して<1.5Vである、本開示に従って構築されたセルの低い動作電圧に起因する場合もある。
【0129】
本開示によるAMO(SnO2)を含むカソードを備えたいくつかのセルを構築した。カソードは、AMO(SnO2)、ケッチェンブラック(KB)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、およびポリアリールアミド(PAA)の体積比63/10/26.1/0.9の組成物から調製した。この組成物の両面層は、片面あたり4mg/cm2で調製した。これらの層のうち6つがカソードを構成した。調製されたカソードの面積は、9×4cm2であった。セパレータはTargray Technology International, Inc.から入手し、これは、厚さ25μmのポリプロピレン層を含んでいた。セパレータの面積は、9.4×4.4cm2であった。電解質は、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、およびジメチルカーボネートの体積比1/1/1の溶媒中の1MのLiPF6から調製した。アノードは、面積が9.2×4.2cm2、厚さ50μmのリチウム金属の層であった。
【0130】
構築されたセルのうち2つを、安全性試験の前に放電し、これらのセルの実際の容量は1.7Ah、比容量は1575mAh/g SnO2であることが見出された。
【0131】
図16は、上記のように構築され、釘刺し試験を受けたセルの温度および電圧のプロットである。試験は室温で実施し、事象(火災など)は観察されなかった。また、温度および電圧は安定なままであることがわかる。
【0132】
図17Aは、上記のように構築され、過充電試験を受けたセルの温度および電圧のプロットである。1Aの電流を印加した。セルからのガス放出を除いて、試験期間にわたって有害事象は観察されなかった。
図17Bは、試験の開始に焦点を合わせた
図17Aの過充電試験のプロットである。
【0133】
貫通試験の目的のために構築された例は、本明細書の開示全体に関して限定することを意図していないことを理解すべきである。本開示に従って、種々のサイズ、容量、および材料のセルおよび電池を構築し得る。本開示のAMOを利用すると、そのような安全性が最終的にリチウム不動態化、低電圧、または他の要因によるものであるかどうかにかかわらず、そのような電池は本明細書で実証される安全性の向上の利益を享受するであろう。
【0134】
カソードとしてAMO材料を、電極としてリチウムを組み込んで構築された電気化学セルの実施形態では、壊滅的で破壊的な故障を生じることなく、最大900回以上の充放電サイクルを成功裏に受けることが試験されている。換言すれば、カソードとしてAMO材料を、電極としてリチウムを組み込んで構築された電気化学セルの実施形態では、最大900回以上の充放電サイクルを成功裏に受け、依然として電荷を保持し、有用な容量を維持することが試験されている。
【0135】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、リチウム電池にAMO系のカソード材料を使用することにより提供される安全性の向上は、AMO材料が金属リチウムを不動態化し、樹枝状結晶の形成を防ぐ能力から生じ得る。本発明者らは、サイクル時に、金属リチウムアノードが成長するようにも樹枝状結晶を形成するようにも見えなかったが、金属リチウムアノードがより柔らかく、より低い結晶性を示す構造を呈することを観察した。いくつかの実施形態では、金属リチウムアノードは、本明細書に記載の電気化学セルの構成要素としてサイクルなどにより不動態化され、その後この電気化学セルから除去され、異なるカソードを備えた新しい電気化学セルにおける電極として使用されてもよい。加えて、本開示に従って構築されたセルは、1~2ボルトの間などの低い動作電圧を利用し、これは、通常約3~4.2ボルトで動作するリチウム電池セルまたはリチウムイオン電池セルの典型的な電圧と対照的である。そのような動作電圧の差は、開示されたセルの安全性を部分的に説明し得る。
【0136】
本開示に従ってリチウムをアノードとして使用するセルまたは電池の構造に関して、いくつかの実施形態では、アノード全体(100%)が金属リチウムである。金属リチウムは、アノードのわずかな百分率が、測定可能にはセルまたは電池の性能に影響を及ぼさない微量元素および不純物を含み得るという点で、実質的に純粋であればよい。種々の実施形態では、アノードは、少なくとも50%、55%、60%、65%、75%、80%、85%、90%、または95%の金属リチウムを含む。
【0137】
本開示の目的のために、「金属リチウム」という用語は、その中性原子状態(すなわち、非イオン状態)のリチウムを指す。金属リチウムという用語は、リチウムイオンおよびリチウム化合物を含む、他の形態のリチウムと区別することを目的としている。金属リチウムという用語は、リチウムと他の元素、化合物、または物質の混合物など、リチウム原子を含む混合物中に存在する中性原子リチウムを指すことがある。金属リチウムという用語は、リチウムと1つまたは複数の他の金属を含む金属混合物など、リチウム合金中に存在する中性原子リチウムを指すことがある。金属リチウムという用語は、リチウムと1つまたは複数の他の材料を含む複合構造中に存在する中性原子リチウムを指すことがある。金属リチウムを含む(comprising)かまたは含む(including)電極は、リチウムに加えて他の材料を含んでもよいが、金属リチウムがそのような電極の活物質に対応し得ることが理解されよう。場合によっては、電気化学セルのアノードは、金属リチウムを含む。
【0138】
本開示の目的のために、金属リチウムは、(少なくとも電池またはセルの構築時に)他の元素と反応せず化合物を形成していないリチウムを意味すると解釈され得る。いくつかの実施形態では、アノードの一部は金属リチウムであり得、アノードの一部は、他の元素と反応してリチウム化合物を形成する種々の百分率のリチウムを含むリチウム化合物であり得る。金属リチウムは、アノードのリチウム化合物部分に対してアノード上またはアノード内で幾何学的に分離されるように配置されてもよい。
【0139】
ここで
図18を参照すると、本開示の態様によるカソード1800の斜視図を示す。
図18は正確な縮尺ではない。カソード1800は、AMO形態の33.3%のSnO
2を含む。AMOは上記の方法に従って調製した。NMP溶媒を使用してケッチェンブラックEC-300J(SA:~800m
2/g)のスラリーを調製し、厚さ10μmの銅箔1802にコーティングして、カーボン層1804を形成した。スラリー組成は、80重量%のケッチェンブラック、および20重量%のPVDFであった。コーティングされたテープを真空オーブンで100℃にて乾燥させた。
【0140】
SnO2(AMO)、ケッチェンブラックおよびPVDFをそれぞれ33.3重量%で混合し、NMP溶媒を加えてスラリーを調製し、ケッチェンブラックコーティング銅箔(1802、1804)の一部にコーティングして、カーボン/SnO2層1806を形成した。得られたテープを真空オーブンで100℃にて乾燥させ(一晩)、室温でカレンダー処理した。テープの厚さは、SnO2コーティング領域およびケッチェンブラック(のみの)コーティング領域でマイクロメーターを使用して測定した。ケッチェンブラック層1804の厚さは約8μmであり、電極層1806の厚さは約2μmである。箔層1802は約10μmであり、約18μmのカソード1800の総厚を与える。
【0141】
カレンダーテープは、ケッチェンブラック(のみの)領域およびSnO2コーティング領域で円形ディスクに打ち抜いた。ケッチェンブラックディスクの重量をSnO2ディスクから差し引いて、電極材料の総質量を求めた。試験されたあるセル型の場合、電極材料の総質量は0.0005g(ケッチェンブラックディスク重量を差し引いた後)で、活物質の含有量は0.000167g(総質量の33.3%)である。
【0142】
カソード1800のいくつかの重要な要素は、(1)カーボンアンダーコートを使用した層化(2)アンダーコートとトップコートの両方でのケッチェンブラック高表面積カーボンの使用(3)33%活物質トップコート、および(4)薄い(約2um)トップコート層である。これらのパラメータはすべて、さらに開発され得る。
【0143】
いくつかの実施形態では、ケッチェンブラック以外のカーボンを使用する。PVDF以外のバインダーを使用してもよい。カソードは、1つまたは複数の層で構築されてもよい。活物質の百分率は、33%超または33%未満であってもよい。1つまたは複数の層の厚さは、2um超または2um未満であってもよい。様々な集電体を使用して、セル構造を最適化してもよい。
【0144】
上記の例は、これまで最適な性能および容量を促進すると考えられていたよりも低い電極内の活物質担持量の一例を提供することを理解すべきである。前述のように、活性担持量の従来の選好は、90%、95%であり、または可能な場合はそれを超える。本実施形態によれば、活性担持量は80%w/w未満であり得る。いくつかの実施形態では、活性担持量百分率の計算は、電極の種々の導電層を含む合計活性担持量であり得る。例えば、33%のより高い(ただし、先行技術の教示によればまだ低い)活物質担持量を有する層を、活物質をほとんどまたは全く含まない導電層と組み合わせると、電極全体の総活物質担持量の23%を提供し得る。種々の実施形態では、電極の総活物質担持量は最大63%未満である。別の実施形態では、活物質担持量は、合計で23%~33%の間である。さらに別の実施形態では、活物質担持量は、合計で11%~14%の間である。
【0145】
本開示による材料(例えば、AMO SnO2)が示す比エネルギー密度は、化石燃料のエネルギー密度と同等である。これは、先行技術の科学文献では不可能であると教示されている。本開示の方法に従って電極および電池として構築された場合、非AMO金属酸化物(例えば、酸化スズ、二酸化チタン、および/または酸化鉄)でも同じ効果が観察される。これは、これらの材料の活物質としての動作機構が、現在既知であるものまたは教示されているものの範囲外であることを示唆している。
【0146】
本明細書に記載されているように、非AMO金属酸化物は、先行技術によって教示されているものよりも大幅に低い活物質担持量で電極として構築することができる。例えば、活性担持量は、50重量%未満、例えば30~40重量%、20~25重量%、または特に21重量%または33重量%であってもよい。電極の形成は、所望の厚さに達するまで活物質の複数の層を繰り返し塗布することによって行われてもよい。導電性カーボンも、活物質と積層してもよい。導電性カーボンは、活物質と同じかまたは異なる担持密度で塗布してもよい。例えば、活物質および導電性カーボンは両方とも20~25重量%、例えば21重量%で存在してもよい。いくつかの実施形態では、活物質を複数の薄い層で塗布すると、単一のより厚い層よりも性能が向上することが判明している。
【0147】
ここで
図19を参照すると、標準的な構築技術と本開示による構築技術との比較を用いて種々の金属酸化物のリチウム化容量を比較した棒グラフが示されている。AMO酸化スズ、AMO酸化鉄、および非AMO酸化スズでは、最初に、高活物質担持量およびその他の標準的な構築技術を使用した。AMO酸化スズ粒径は、5nmオーダーであった。非AMO酸化スズ粒径は、20nmオーダーであった。
【0148】
AMO酸化スズを標準的な構築技術で利用した場合、リチウム化容量は約2000mAh/gであった。活物質担持量が低い電極(例えば、およそ21重量%)として、ナノ粒子導電性カーボン(同じくおよそ21重量%)と層状に配置して構築した場合、リチウム化容量は10,000mAh/g超に増加した。同じ試験を行ったとき、AMO酸化鉄を使用した場合、2000mAh/g弱からおよそ8000mAh/gに増加した。驚くべきことに、非AMO酸化スズも2000mAh/g未満から6000mAh/g超に増加した。高容量構築方法を使用した場合の平均増加は約314%であった。
【0149】
本開示の実施形態によれば、材料のブレンドは、電極(例えば、アノードおよび/またはカソード)、セル、および電池の構築において活性として利用することができる。例示的な実施形態によれば、酸化スズAMOなどの本開示のAMOは、LiCOO2、FeS2、MnO2などの材料および/または他の既知の電池活物質とブレンドして、性能を向上させることができる。
【0150】
AMOは、電池電極およびその他の用途で使用するための活物質を生成するために、既知の方法に従って、非酸性化金属酸化物とブレンドすることができる。AMOは、単純な機械的混合またはミリングによって、非酸性化金属酸化物とブレンドすることができる。機械的混合またはミリングは、乾燥状態または湿潤状態のいずれかで実行することができる。それらは、混合物の均一性および分散性を制御および強化するために、適切な界面活性剤を用いてブレンドすることができる。ブレンドは、乾燥材料としてまたは湿潤懸濁液として使用することができる。ブレンドを使用して、圧縮、スラリーからのキャスト、または印刷によって電極を形成することができる。
【0151】
図20は、本開示による様々な量のAMOスズとブレンドされた活物質としてのMnO2の電圧対エネルギーのグラフである。活性としてのMnO
2のみのベースライン、ならびに本開示に従って2、5、および8%の酸化スズAMOを組み込んだブレンドが示されている。見てわかるように、すべてのブレンドはエネルギーの増加をもたらす。本開示に従って、わずか8%のAMOにより50%を超えるエネルギー増加がもたらされる。
【0152】
前述のように、金属酸化物は塩基性であることが予想され、特に電池活物質として使用される金属酸化物は塩基性であることが知られている。酸性材料を中性または塩基性材料とブレンドすることでエネルギー密度が向上することは予想外である。これは、酸と塩基が互いに中和し、それによって酸単独でまたは塩基単独で提供する可能性のある固有の性能特性が失われるという、一般に受け入れられている化学的な考え方に反する。酸性成分および塩基性成分の存在が正の効果および相乗効果をもたらすというのは、特に予想外の結果である。しかし、AMOおよび非AMO活性の正の効果の程度と最適な比率は、必ずしも線形または予測可能ではない。個々のAMOと非AMO活性の多くの可能性のあるタイプのうちの1つとの各ブレンドにおいて、エネルギー密度を高めるための最適なポイントを実験的に決定する必要がある。とはいえ、幅広い活性にわたって利点を観察することができる。
図20で試験され、示されているブレンドおよび範囲は、例示的なものである。他の実施形態では、AMOは、活物質の<1%、1~5%、5~10%、10~20%、10~30%、30~40%、50~99%、または>99%の範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、正確な比率は、最終製品(例えば、材料、電極、セル、電池など)の所望のコスト対エネルギーに基づいて導出される。
【0153】
正確な比率(AMO/非AMO)は、形成する必要がある電極のタイプ、サイズ、および物理的/機械的特性に基づいて導出することもできる。正確な比率は、所望の電気的性能に基づいて導出することもできる。AMO対非AMOの比率が低いほど、非AMO単独の電圧プロファイルにより類似した電圧プロファイルを示す。比率が高いほど、AMO単独の電圧プロファイルにより類似した電圧プロファイルを示す。これにより、AMO/非AMOブレンドには、電池業界には現在存在しない、特定の電子使用ケースを標的とする固有の調整可能性が備わる。したがって、いずれかの所与の用途に対するAMO対非AMOの正確な比率は、所望の電気的性能、エネルギー密度、およびコストの固有のブレンドを表す。
【0154】
出願人は、複数の異なるAMOおよび非AMOブレンドを試験し、本開示による種々のAMOを、リチウムマンガン酸化物、リチウムマンガンニッケル酸化物、およびマンガンニッケル酸化物などの非AMOと共に加えることで正の効果が得られることを見出した。リチウムチタン酸化物および酸化チタン、リン酸鉄リチウムおよびリン酸鉄、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物およびニッケルコバルトアルミニウム酸化物、ならびにリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物およびニッケルマンガンコバルト酸化物でも機能するブレンド方法が示されている。また、本開示のAMO/非AMOブレンドは、一次用途と二次用途の両方で有用であると判断されており、それぞれで性能の向上が観察されることも理解されるべきである。
【0155】
いくつかの実施形態では、電極または活物質ブレンドは、特定されたAMOおよび非AMOのみで構成される。いくつかの実施形態では、電極の活物質は、特定されたAMOと非AMOのみで構成されるが、電極には追加のカーボン、導体、および非活性成分を含めてもよい。他の実施形態では、電極または活物質ブレンドは、特定されたAMOおよび非AMO、ならびに当技術分野で既知の他の材料を含んでもよい。
【0156】
さらに別の実施形態では、本開示によるAMOは、いわゆるアルカリ電池で使用される活物質に組み込まれるか、またはこの活物質とブレンドしてもよい。このような電池化学には、「AA」、「AAA」、「C」、「D」などの標準的な電池サイズ、および消費者が慣れ親しんでいる他の標準的なサイズの電池において幅広い用途が見出されている。典型的には、このような電池は、標準的なアルカリ化学で使用される場合、一次放電電池である。しかし、本開示およびAMOアルカリ性ブレンド活物質には、一次放電系および二次放電系に用途が見出される場合がある。
【0157】
ここで
図21を参照すると、アルカリ化学に基づく例示的な電池2200の側面断面図が示されている。電池2200は、負極端子2204から物理的に隔置された正極端子2202を含むことができる。アノード2206は、集電体2208を介して負極端子2204に電気的に接続することができる。カソード2210は、セパレータ2212によってアノード2206から隔置され、正極端子2202に電気的に接続されている。いくつかの実施形態には、短絡を誘発することなく、外側ケーシング2216内の適切な位置に内部構成要素を保持する保護エンドキャップ2214が含まれる(例えば、エンドキャップ2214は非導電性であり、内部電池化学のいずれかによる劣化に対して耐性があり得る)。通気孔、ならびに当技術分野で知られている他の安全構成要素および構造構成要素などの他の物理的特徴を含めてもよいが、簡潔にするために示されていない。
【0158】
ここで
図22を参照すると、二酸化マンガンとブレンドした本開示の10重量%の酸性化SnO
2を含むアルカリセル(セルの残りはZnアノードおよびアルカリ性(塩基性)電解質である)は、従来のアルカリ性電極と比較して放電容量の向上を示す。先行技術のアルカリ化学では、アノードは亜鉛粉末などの亜鉛ベースの材料、および水酸化カリウム電解質などの塩基性電解質を含み得る。先行技術のカソードは、場合によりカーボン粉末とブレンドされた二酸化マンガン(MnO
2)を含み得る。他の化学では、リチウムを組み込んで、リチウムマンガン酸化物(LMO)セルまたは電池およびカーボネート電解質を提供することができる。本開示の実施形態によれば、アノード2206は、亜鉛を含むことができ、水酸化カリウムなどの電解質も含有することができる。カソード2210は、本明細書で開示されているように、AMOとブレンドされたまたは組み合わせた二酸化マンガンもしくはLMOを含むことができる。
【0159】
MnO2またはLMOまたは他のアルカリ化学材料とブレンドすることができるAMOのパーセンテージは、1~99%の範囲、例示的な実施形態として1%、2%、5%、8%、10%、および12%の範囲であってもよい。組み込まれたAMOの量を考慮すると、最終的な電池またはセルの性能向上の点で最も効果的なのは、8~14%の範囲であり得る。
【0160】
上述の例は、AA、AAA、C、および/またはDセルの代わりに使用を見出すことができる電池またはセルに関するものであるが、従来のアルカリ化学とのブレンドにおける本開示のAMOの使用は、それらの具体的な例または用途に限定されない。例えば、本開示のAMOのブレンドは、ボタンセル、標準9V電池、および他の形状因子で利用することができる。さらに、AMOは、スラリーキャスト、テープキャスト、圧縮ペレット、圧縮リング、または他の構築プロセスでマンガンまたはLMOカソード材料と組み合わせてもよい。本出願全体のすべての参考文献、例えば、発行または付与された特許または均等物を含む特許文書、特許出願公開、および非特許文献文書、またはその他の資料などは、参照により個別に組み込まれるかのように、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0161】
本明細書で言及されるすべての特許および刊行物は、本発明が関係する当業者の技術レベルを示している。本明細書に引用された参考文献は、場合によっては出願の時点において最新技術を示すためにその全体が参照により本明細書に組み込まれ、必要であれば、先行技術にある特定の実施形態を除外する(例えば、放棄する)ために、この情報を本明細書で使用することができることが意図されている。例えば、ある化合物がクレームされている場合、本明細書に開示された参考文献(特に参照された特許文書)に開示された特定の化合物を含む、先行技術において既知の化合物は、当該クレームに含まれることを意図していないことが理解されるべきである。
【0162】
ある置換基群が本明細書で開示される場合、それらの基のすべての個々のメンバー、ならびに置換基を使用して形成することができるすべてのサブ基およびクラスが別々に開示されることが理解される。本明細書において、マーカッシュ群または他の群分けが使用される場合、当該群のすべての個々のメンバー、および当該群の可能なすべての組合せおよび副組合せが、本開示に個々に含まれる。本明細書で使用されるとき、「および/または」は、「および/または」で区切られたリスト内の項目の1つ、すべて、またはいずれかの組合せがリストに含まれることを意味する;例えば、「1、2および/または3」は「1」もしくは「2」もしくは「3」、または「1および2」もしくは「1および3」もしくは「2および3」、または「1、2および3」と同等である。
【0163】
他に記載がない限り、記載または例示された成分のすべての配合または組合せを使用して、本発明を実施することができる。材料の特定の名前は例示であることを意図しており、当業者は同じ材料に異なる名前を付けることができることが知られている。当業者は、過度な実験に頼ることなく、本発明の実施において、具体的に例示されたもの以外の方法、デバイス要素、出発材料、および合成方法を使用することができることを理解するであろう。そのような方法、デバイス要素、出発材料、および合成方法の、すべての技術的に既知の機能的均等物は、本発明に含まれることが意図されている。本明細書にて範囲が与えられている場合、例えば、温度範囲、時間範囲、または組成範囲、すべての中間体の範囲および部分範囲、ならびに与えられた範囲に含まれるすべての個々の値は、本開示に含まれることが意図されている。
【0164】
本明細書で使用されるとき、「含む(comprising)」は、「含む(including)」、「含む(containing)」、または「を特徴とする」と同義であり、包括的またはオープンエンドであり、追加の、列挙されていない要素または方法工程を除外するものではない。本明細書で使用されるとき、「からなる」は、クレーム要素に明記されていない、いかなる要素、工程、または成分をも除外する。本明細書で使用されるとき、「本質的に~からなる」は、クレームの基本的かつ新規な特性に実質的に影響を与えない材料または工程を除外するものではない。「含む」という用語の本明細書における詳細説明は、特に組成物の成分の説明において、またはデバイスの要素の説明においては、列挙された成分または要素から本質的に成り、それらからなる組成物および方法を包含すると理解される。本明細書に例示的に記載されている本発明は、本明細書に具体的に開示されていないいずれかの要素または制限がない場合でも、好適に実施することができる。
【0165】
使用されている用語および表現は、説明の用語として用いるものであり、限定ではなく、そのような用語および表現の使用においては、示されかつ記載されている特徴またはその一部の均等物を排除することを意図するものではなく、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲内で種々の変更が可能であることが認識される。したがって、本発明は、好ましい実施形態および任意の特徴によって具体的に開示されているが、本明細書に開示された概念の改変および変形は、当業者によって可能であり、そのような改変および変形は、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内であると考えられることが理解されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛を含むアノード(106)、
非酸性金属酸化物および酸性金属酸化物を含むカソード(104)、ここで
前記酸性金属酸化物は、100nm未満の粒径を有し、前記酸性金属酸化物は、pH<5、およびハメット関数H0>-12を有し、前記pHは、前記酸性金属酸化物を水に5重量%で懸濁させたときに測定され、
前記酸性金属酸化物は、前記カソード(104)の1重量%~15重量%に相当し、
前記非酸性金属酸化物は、前記カソード(104)の85重量%~99重量%に相当し、ならびに
前記アノード(106)と前記カソード(104)との間に配置された電解質(108)
を含む、電池セル(100)。
【請求項2】
前記非酸性金属酸化物がマンガンを含む、請求項1に記載の電池セル(100)。
【請求項3】
前記非酸性金属酸化物が、リチウムマンガン酸化物、リチウムマンガンニッケル酸化物、マンガンニッケル酸化物、二酸化マンガン、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、およびニッケルマンガンコバルト酸化物のうちの1つである、請求項2に記載の電池セル(100)。
【請求項4】
前記非酸性金属酸化物が、リチウムチタン酸化物、酸化チタン、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、およびニッケルコバルトアルミニウム酸化物のうちの1つである、請求項1に記載の電池セル(100)。
【請求項5】
前記非酸性金属酸化物が、二硫化鉄である、請求項1に記載の電池セル(100)。
【請求項6】
前記酸性金属酸化物が、前記カソード(104)の1重量%~8重量%に相当する、請求項1に記載の電池セル(100)。
【請求項7】
前記酸性金属酸化物が、MmOx/Gの形態であり、MmOxは金属酸化物であり、Mは金属であり、mは少なくとも1で5未満であり、Oは全酸素であり、xは少なくとも1で21未満であり、Gは少なくとも1つの電子吸引性表面基であり、そして/は前記金属酸化物と前記少なくとも1つの電子吸引性表面基とを区別する、請求項1に記載の電池セル(100)。
【請求項8】
前記電解質(108)が、アルカリ性電解質である、請求項1に記載の電池セル(100)。
【請求項9】
電池セル(100)の放電容量を増大させる方法であって、前記電池セル(100)は、亜鉛を含むアノード(106)、カソード(104)、および前記アノード(106)と前記カソード(104)との間に配置された電解質(108)を含み、前記方法は、
非酸性金属酸化物を酸性金属酸化物とブレンドして、前記カソードの活物質を形成する工程と、
前記カソード(104)中の前記活物質を用いて前記電池セル(100)を構築する工程と
を含み、
前記酸性金属酸化物は、100nm未満の粒径を有し、前記酸性金属酸化物は、pH<5、およびハメット関数H0>-12を有し、前記pHは、前記酸性金属酸化物を水に5重量%で懸濁させたときに測定され、
前記酸性金属酸化物は、前記カソード(104)の1重量%~15重量%に相当し、
前記非酸性金属酸化物は、前記カソード(104)の85重量%~99重量%に相当する、方法。
【請求項10】
前記非酸性金属酸化物が、マンガンを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記非酸性金属酸化物が、リチウムマンガン酸化物、リチウムマンガンニッケル酸化物、マンガンニッケル酸化物、二酸化マンガン、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、およびニッケルマンガンコバルト酸化物のうちの1つである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記非酸性金属酸化物が、リチウムチタン酸化物、酸化チタン、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、およびニッケルコバルトアルミニウム酸化物のうちの1つである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記非酸性金属酸化物が、二硫化鉄である、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記酸性金属酸化物が、前記カソード(104)の1重量%~8重量%に相当する、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記酸性金属酸化物が、MmOx/Gの形態であり、MmOxは金属酸化物であり、Mnは金属であり、mは少なくとも1で5未満であり、Oは全酸素であり、xは少なくとも1で21未満であり、Gは少なくとも1つの電子吸引性表面基であり、そして/は前記金属酸化物と前記少なくとも1つの電子吸引性表面基とを区別する、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記電解質(108)が、アルカリ性電解質である、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記酸性金属酸化物が、酸化スズ、酸化マンガン、酸化鉄、二酸化チタン、二酸化ジルコニウムまたはこれらの組合せを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
前記酸性金属酸化物が、酸化スズ、酸化マンガン、酸化鉄、二酸化チタン、または二酸化ジルコニウムを含む、請求項1に記載の電池セル(100)。
【請求項19】
前記酸性金属酸化物が、酸化スズ、酸化マンガン、酸化鉄、二酸化チタン、および二酸化ジルコニウムのうちの少なくとも一種を含む、混合金属酸化物を含む、請求項1に記載の電池セル(100)。
【請求項20】
前記酸素金属酸化物が酸性酸化マンガンを含み、そして非酸性金属酸化物が酸化マンガンを含む、請求項1に記載の電池セル(100)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0165
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0165】
使用されている用語および表現は、説明の用語として用いるものであり、限定ではなく、そのような用語および表現の使用においては、示されかつ記載されている特徴またはその一部の均等物を排除することを意図するものではなく、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲内で種々の変更が可能であることが認識される。したがって、本発明は、好ましい実施形態および任意の特徴によって具体的に開示されているが、本明細書に開示された概念の改変および変形は、当業者によって可能であり、そのような改変および変形は、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内であると考えられることが理解されるべきである。
[発明の態様]
[1]
亜鉛を含むアノード(106)、
非酸性金属酸化物および酸性金属酸化物を含むカソード(104)、ここで
前記酸性金属酸化物は、20nm未満の粒径を有し、前記酸性金属酸化物は、pH<5、およびハメット関数H0>-12を有し、前記pHは、前記酸性金属酸化物を水に5重量%で懸濁させたときに測定され、
前記酸性金属酸化物は、1重量%~15重量%の範囲であり、
前記非酸性金属酸化物は、85重量%~99重量%の範囲であり、前記酸性金属酸化物とは異なる金属酸化物である、ならびに
前記アノード(106)と前記カソード(104)との間に配置された電解質(108)
を含む、電池セル(100)。
[2]
前記非酸性金属酸化物がマンガンを含む、1に記載の電池セル(100)。
[3]
前記非酸性金属酸化物が、リチウムマンガン酸化物、リチウムマンガンニッケル酸化物、マンガンニッケル酸化物、二酸化マンガン、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、およびニッケルマンガンコバルト酸化物のうちの1つである、2に記載の電池セル(100)。
[4]
前記非酸性金属酸化物が、リチウムチタン酸化物、酸化チタン、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、およびニッケルコバルトアルミニウム酸化物のうちの1つである、1に記載の電池セル(100)。
[5]
前記非酸性金属酸化物が、二硫化鉄である、1に記載の電池セル(100)。
[6]
前記酸性金属酸化物が、8重量%~15重量%の範囲である、1に記載の電池セル(100)。
[7]
前記酸性金属酸化物が、1重量%~8重量%の範囲である、1に記載の電池セル(100)。
[8]
前記酸性金属酸化物が、SnOx/Gの形態であり、Oxは全酸素であり、Gは少なくとも1つの電子吸引性表面基であり、/は前記SnOxと前記少なくとも1つの電子吸引性表面基とを区別する、1に記載の電池セル(100)。
[9]
前記電解質(108)が、アルカリ性電解質である、1に記載の電池セル(100)。
[10]
電池セル(100)の放電容量を増大させる方法であって、前記電池セル(100)は、亜鉛を含むアノード(106)、カソード(104)、および前記アノード(106)と前記カソード(104)との間に配置された電解質(108)を含み、前記方法は、
非酸性金属酸化物を酸性金属酸化物とブレンドして、前記カソードの活物質を形成する工程と、
前記電池セル(100)を構築する工程と
を含み、
前記酸性金属酸化物は、20nm未満の粒径を有し、前記酸性金属酸化物は、pH<5、およびハメット関数H0>-12を有し、前記pHは、前記酸性金属酸化物を水に5重量%で懸濁させたときに測定され、
前記酸性金属酸化物は、1重量%~15重量%の範囲であり、
前記非酸性金属酸化物は、85重量%~99重量%の範囲であり、前記酸性金属酸化物とは異なる金属酸化物である、方法。
[11]
使用のために前記電池セル(100)を提供する工程をさらに含む、10に記載の方法。
[12]
前記非酸性金属酸化物が、マンガンを含む、10に記載の方法。
[13]
前記非酸性金属酸化物が、リチウムマンガン酸化物、リチウムマンガンニッケル酸化物、マンガンニッケル酸化物、二酸化マンガン、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、およびニッケルマンガンコバルト酸化物のうちの1つである、12に記載の方法。
[14]
前記非酸性金属酸化物が、リチウムチタン酸化物、酸化チタン、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、およびニッケルコバルトアルミニウム酸化物のうちの1つである、10に記載の方法。
[15]
前記非酸性金属酸化物が、二硫化鉄である、10に記載の方法。
[16]
前記酸性金属酸化物が、8重量%~15重量%の範囲である、10に記載の方法。
[17]
前記酸性金属酸化物が、1重量%~8重量%の範囲である、10に記載の方法。
[18]
前記酸性金属酸化物が、MnOx/Gの形態であり、Mnは金属であり、Oxは全酸素であり、Gは少なくとも1つの電子吸引性表面基であり、/は前記MnOxと前記酸性金属酸化物とを区別する、10に記載の方法。
[19]
前記電解質(108)が、アルカリ性電解質である、10に記載の方法。
[20]
前記酸性金属酸化物が、酸化スズである、10に記載の方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】