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  • 特表-粒子音響ダンパーパウチ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】粒子音響ダンパーパウチ
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/162 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
G10K11/162
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535975
(86)(22)【出願日】2022-11-21
(85)【翻訳文提出日】2024-08-14
(86)【国際出願番号】 EP2022082579
(87)【国際公開番号】W WO2023110297
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】21215327.4
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512099884
【氏名又は名称】オートニアム マネジメント アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Autoneum Management AG
【住所又は居所原語表記】Schlosstalstrasse 43, CH-8406 Winterthur, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】クロエ エピナート
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061AA07
5D061AA16
5D061AA22
5D061AA29
(57)【要約】
密封されて囲いを提供するパウチ、及び前記囲いの内部で充填材を形成するルース粒子を有する、乗り物パネルの振動を局所的に減衰させ、かつ前記乗り物パネルによって放射される騒音を低減するための粒子音響ダンパーであって、前記パウチが、少なくとも1層のスパンボンド繊維ウェブを有することを特徴とする、粒子音響ダンパー。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
密封されて囲いを提供するパウチ、及び前記囲いの内部で充填材を形成するルース粒子を有する、乗り物パネルの振動を局所的に減衰させ、かつ前記乗り物パネルによって放射される騒音を低減するための粒子音響ダンパーであって、前記パウチが、少なくとも1つの層のスパンボンドポリオレフィン繊維ウェブを有することを特徴とする、粒子音響ダンパー。
【請求項2】
前記スパンボンド繊維ウェブが、ポリオレフィン、好ましくはポリエチレン、より好ましくは高密度ポリエチレン、より好ましくはフラッシュスパンプレキシフィラメント状高密度ポリエチレン繊維ウェブで作られている、請求項1に記載の粒子音響ダンパー。
【請求項3】
前記繊維ウェブが、全体的に接着し、紙状の材料を形成している、請求項1又は2に記載の粒子音響ダンパー。
【請求項4】
接着層をさらに有して、縁で少なくとも1つの繊維ウェブをラミネート及び/又はシールして前記粒子のための囲いを形成する閉じたパウチにする、請求項1~3のいずれか一項に記載の粒子音響ダンパー。
【請求項5】
前記接着層が、エチレン酢酸ビニル、分枝ポリエチレン、アクリレート、エポキシ、ポリアミド、及びポリウレタンの少なくとも1つを主成分とする、請求項5に記載の粒子音響ダンパー。
【請求項6】
前記パウチが、2層のスパンボンドポリオレフィン繊維ウェブから形成されており、前記層のうちの少なくとも一方の層が、少なくともフィラーとしてのルース粒子の容積のキャビティを形成しており、かつ他方の層が、充填されたキャビティを覆い、かつ周囲の縁に接着してキャビティを封止している、請求項1~5のいずれか一項に記載の粒子音響ダンパー。
【請求項7】
前記パウチが、球状、又はピラミッド3次元形状、好ましくは円形、楕円形、若しくは少なくとも3つの角を有する角のある形状、好ましくは少なくとも3つから最大8つの角を有する角のある形状のうちの1つである底面を有するピラミッド3次元形状に形成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の粒子音響ダンパー。
【請求項8】
前記ルース粒子が、高密度材料、好ましくは高密度金属、好ましくは鉄、ニッケル、亜鉛、スチール、若しくは合金、又は高密度金属の混合物から形成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の粒子音響ダンパー。
【請求項9】
前記ルース粒子が、異なる高密度材料を主成分とする粒子を混合して形成されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の粒子音響ダンパー。
【請求項10】
前記ルース粒子が、リサイクル又は再生されたものである、請求項9に記載の粒子音響ダンパー。
【請求項11】
1つの前記パウチの粒子の合計重量が、100グラム未満、好ましくは5~100グラム、好ましくは30~70グラムである、請求項1~10のいずれか一項に記載の粒子音響ダンパー。
【請求項12】
少なくとも1つの発泡層又はフェルト層を有する自動車ノイズ減衰トリム部品であって、前記層が、請求項1~10のいずれか一項に記載の粒子音響ダンパーを少なくとも1つ備えることを特徴とし、ここで、前記粒子音響ダンパーパウチが、前記乗り物の振動する面と接触する接触面を有し、前記接触面と反対の面が、前記ルース粒子の少なくとも一部と接触しており、それによって前記繊維ウェブが、振動エネルギーを、振動する前記面から、前記容器内の前記ルース粒子に伝達し、かつ第2の外面が、少なくとも1つの前記発泡層又はフェルト層と接触又は接続している、自動車ノイズ減衰トリム部品。
【請求項13】
前記ルース粒子が、20pm~1250pm、好ましくは、250pm~1000pm、好ましくは150pm~900pmのメジアン粒子径を有する、請求項12に記載の自動車ノイズ減衰トリム部品。
【請求項14】
フェルト層である少なくとも1つの層を備え、前記フェルト層が、繊維及び/又はフィラメントを有し、かつさらに熱硬化性又は熱可塑性バインダーを有する、請求項12又は請求項13に記載の自動車ノイズ減衰トリム部品。
【請求項15】
乗り物の振動する前記面と接着する面と反対側の発泡層又はフェルト層の面に、1又はそれより多くの追加の層をさらに有している、請求項12~14のいずれか一項に記載の自動車ノイズ減衰トリム部品。
【請求項16】
少なくとも1又はそれより多くの追加の前記層が、発泡層若しくはフェルト層、フィルム層、フォイル層、孔充填材含有量の熱可塑性エラストマー層、装飾層、例えば不織又はカーペット層、又はこれらの層の任意の組み合わせの少なくとも1つである、請求項15に記載の自動車ノイズ減衰トリム部品。
【請求項17】
前記自動車ノイズ減衰トリム部品が乗り物に取り付けられたときに、少なくとも1つの層が振動する乗り物パネルと接触する、インナーダッシュ、アウターダッシュ、バッテリーリッドサイレンサー、若しくはバッテリーインシュレーターとしての、タフテッドカーペット、ニードルパンチカーペット、フロック加工表面カーペット、及びダイロールカーペットの少なくとも1つを備えたカーペットシステムとしての、又はトランクのトリム部品若しくはエンジンルームのトリム部品としての、請求項12~16のいずれか一項に記載の粒子音響ダンパーを含むノイズ減衰トリム部品を使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子音響ダンパー、粒子音響ダンパー等の製造方法、及び粒子音響ダンパーを有する自動車トリム部品に関する。
【背景技術】
【0002】
乗り物のノイズの発生源は多く、特にパワートレイン、ドライブライン、タイヤ(路面によって生じる)、ブレーキ、及び風を含む。特に、パワートレイン及びタイヤによって発生したノイズは、通常のディーゼル車及びガソリン車、並びに電気駆動装置を搭載した車に関して、100Hzから10kHzまでに渡り得る、かなり広い周波数範囲を包含することもある。
【0003】
一般的に、低周波数のノイズは、100Hz~600Hzの周波数範囲を包含すると考えられ得る。それは、いわゆる「固体伝搬」ノイズが支配的である。ここでは、振動は、発生源(例えば、パワートレイン又はタイヤ)によって、客室の周囲のパネルに様々な構造的な経路を介して伝達され、そして、そのようなパネルがノイズを客室自体の中に放射する。一方で、一般的に、中高周波数ノイズは、600Hz~10kHzの周波数範囲を包含すると考えられ得る。それは、「気体伝搬ノイズ」が支配的である。この場合は、振動は発生源(例えば、パワートレイン又はタイヤ)によって、客室の周囲のパネルに音波を介して伝達され、そして、そのようなパネル等がノイズを客室自体の中に放射する。乗客の快適さのために、十分に低い室内ノイズレベルが、低周波数と中高周波数との両方において確保されていることが必要である。
【0004】
乗り物内の気体伝搬中高周波数ノイズの減衰のために、ダッシュインナーシステム又はフロアカーペットシステムのようなノイズ減衰トリム部品の使用が知られている。
【0005】
一般的に、ノイズ減衰トリム部品は、その音響遮断性及び/又は吸収特性により、中高周波数の空気電波ノイズを効果的に低減することができる。音響遮断性は、発生源によって放射され、かつそれに作用する音響エネルギーを反射する部品の能力に関連し、一方、音響吸収性は、発生源によって放射され、かつそれに作用するする音響エネルギーを分散させる部品の能力に関連する。
【0006】
【0007】
ノイズ減衰トリム部品の音響遮断及び吸収特性は、一般的にそれに含まれる材料に由来し、また部品自体の中のその配置に由来する。特に、中高周波数の優れた遮断及び/又は吸収を獲得するために、部品は、有利には、低密度多孔質で、かつ乗り物本体に面する部分の側面に配置されている材料層を有することができる。部品が乗り物に導入されるとき、この層は乗り物本体と接触して設置される。この層は、低密度で繊維質の材料又は発泡部材からなっていてよい。中高周波数範囲において、所望のノイズ減衰を獲得するために、追加の層が必要であることもある。しかしながら、現在のノイズ減衰トリム部品は、一般的に、低周波数固体伝搬ノイズを効果的に遮断することができない。
【0008】
この理由から、低周波数固体伝搬ノイズを遮断するために、伝統的に、高分子粘弾性材料(例えば、アスファルトベースの材料)を有する減衰パッドを使用している。これらの減衰パッドは乗り物本体に積層される。それらは一般的に、その振動減衰特性によって、低周波数固体伝搬ノイズを低減することに非常に有効である。
【0009】
振動減衰は、それが適用される構造(例えば、乗り物を形成するホワイトボディ)の振動を低減する部品の能力に関連する。
【0010】
しかしながら、粘弾性減衰パッドは、中高周波数の範囲のノイズの遮断について非常に劣っている。したがって、現在、全ての周波数範囲に渡る十分なノイズ遮断を達成するために、2つの異なるタイプの部品、すなわち、中高周波数のためのノイズ減衰トリム部品と低周波数のための振動減衰パッドを組み合わせる必要が一般的にある。
【0011】
これは、乗り物組立プロセスに複雑さ及びコストを追加する。特に、乗り物本体の振動を減衰するための減衰パッドは、それに積層されなければならず、すなわち、それらは乗り物本体に非常に強く接着していなければならない。この理由のため、減衰パッドは一般的に、最初に手動で乗り物組立ラインに沿って乗り物本体に配置され、そして加熱下で、硬化され、乗り物本体に積層される。あるいは、減衰材料は、所定の領域で直接に乗り物本体に吹き付けられることもある。これらの工程の両方は、複雑であり、時間がかかり、かつ重大な投資を必要とし、したがって、車両組立工程の複雑さ及び乗り物の生産コストを増加させる。さらに、それらは車両の組立工程をゆっくりにさせる。一方で、ノイズ減衰トリム部品は、単に組立ラインに沿って乗り物本体に単にそれらを配置する容易な方法で、乗り物に導入することができる。
【0012】
更に、一般的に振動減衰パッドの製品に使用される材料は、自動車産業におけるそれらの利用に関して、性能の問題を提示し得る。乗り物本体の振動を減少させるために、自動車業界で使用される減衰パッド(又は散布された減衰材料)は、それらが有する材料(例えば、アスファルト主成分材料)の粘弾特性に、一般的に依存し、それは温度に非常に敏感であり得る。結果として、減衰パッドは狭い周波数範囲にわたってのみ、よく機能し得る。しかしながら、乗り物本体の温度は、-30℃以下から+80℃以上まで、非常に幅広い範囲でさまざまである。さらに、伝統的な減衰材料、例えばアスファルトに基づく材料は、自動車のライフタイム内に、経年劣化し、脆くなり、かつ減衰特性を劣化する傾向にある。
【0013】
【0014】
当該技術分野で知られている粒子衝撃ダンパーは、キャビティ内に封入された粒状材料で作られた粒子を採用し、これは既存の構成の一部になり、又は衝撃感受性機器に組み込まれ得る。振動応力及びそれに伴う材料疲労を低減するために、それらは使用される。この種の粒子衝撃ダンパーのバージョンは、例えば地震地域の建物の柱に、又はコンピューターのマザーボードに導入される。この種の粒子衝撃ダンパーは、剛性プレート構造の充填されたキャビティとして、又は充填された硬質容器、例えば金属缶として、開示されている。
【0015】
乗り物のノイズを減衰するためにも、これらの解決方法を用いることができることは排除できないが、これらは非常に大きくかつ非常に重いため、乗り物に容易に組み込むことができない。
【0016】
振動のホットスポットは、主要な乗り物のフローリングパネル上に、フローリングトリムシステムの真下に、内部ダッシュトリム部品の背面のファイアーウォールパネルに、又はトランクカバレッジの真下に発生し、これらは、乗り物に組み込まれているバランスの取れたノイズマネジメントを妨害する。ここで、このバランスの取れたノイズマネジメントは、ノイズの吸収及び/又は遮断特性を有するソフトトリム部品によって維持されている。その利用可能スペースは、部品の厚さによって制限され、硬い容器内に設置することは、これらの部品の全体的な特性を低下させることがある。粒子で満たされたキャビティのあるプレートを使用する選択肢は、必要なスペースだけでなく乗り物の重量をも増加させることもあり、価値のある提案ではない。さらに、硬いプレート又は容器を使用することは、使用されるソフトトリム部品に必要な他の特性を妨げ得る。例えば、車内へ入るときの踏破特性は、固い容器又はプレートによって解決され得る。
【0017】
その他の構造で粒子音響ダンパーを作る試みは、容器の破損及び/又は非常に微細な粒子の漏れのため失敗し、減衰機能を損なうだけでなく、周囲を汚した。
【0018】
したがって、公知の従来のシステムの問題点を克服することができ、特に、乗り物において、局所的なホットスポットでの振動を低減することができ、かつ単独で使用され、又はトリム部品に組み込んで使用され得る粒子音響ダンパーを提供することが目的である。
【0019】
密封されて囲いを提供するパウチ、及び上記囲いの内部で充填材を形成するルース粒子を有する、乗り物パネルの振動を局所的に減衰させ、かつ上記乗り物パネルによって放射される騒音を低減するための粒子音響ダンパーであって、上記パウチが少なくとも1層のスパンボンドポリオレフィン繊維ウェブを有することを特徴とする、粒子音響ダンパー。
【0020】
驚くべきことに、スパンボンド繊維ウェブで作られたパウチ形状の粒子音響ダンパーは、それが置かれる隣接表面との良好な適合性を可能にし、それによって隣接表面の振動エネルギーをルース粒子に伝達し、他方で、粒子を密閉して維持し、かつ圧縮力や摩耗に耐えるために十分な強度を持つ。
【0021】
囲いとは、パウチの材料に囲まれた閉じた空間の意味で定義される。パウチとは、バッグ又はソフトパウチとして定義されてもよい。
【0022】
好ましくは、パウチは、それ自体の上で折りたたまれ、縁の周囲を接着して閉じたフランジを形成する繊維ウェブ材料の単層で形成されたものである。別の方法として、パウチは2つの層の繊維ウェブ材料で形成されることができ、それによって少なくとも1層は覆われて、充填剤を含むキャビティを形成し、第2の層は上に積層され、かつ接触領域上で他の層にラミネート又は接着される。
【0023】
好ましくは、ルース粒子は使用される接着剤と接触せず、又は接着される繊維ウェブの領域から離れている。パウチを閉じる前又は後に、パウチは、切断又は打ち抜きによって、主繊維ウェブストックから分離されていてもよい。パウチが切り取られる形状は、円形、楕円形、又は少なくとも3つの角を持つ形状、好ましくは3~8つの角を持つ形状のような基本的な形状であってもよい。6角形やハニカム形状のような角のある形状は無駄を省くという利点があり、他方で、丸や楕円の形状は、クッションのように、3次元のパウチの形状を保つのに適している。
【0024】
繊維ウェブ材料は、撥水性と防水性を同時に備えるので、水が浸透してルース粒子に干渉することができない。同時に、パウチは、隣接する表面に馴染むために十分に柔軟であり、パウチ内のルース粒子に、隣接する表面の振動を伝える最適な接触を保証し、それによって振動ノイズを減衰させる。
【0025】
【0026】
好ましくは、ポリオレフィン繊維ウェブは、ポリエチレン、好ましくは高密度ポリエチレン(HDPE)、さらに好ましくはフラッシュスパンプレキシフィラメント(plexifilament)HDPE繊維ウェブで形成される。
【0027】
本明細書で使用する「プレキシフィラメント」という用語は、ランダムな長さの多数の細いリボン状のフィルムフィブリル要素の、三次元の一体型ネットワーク又はウェブを意味する。通常、これらは約4マイクロメートル未満の平均膜厚、約25マイクロメートル未満のフィブリル幅の中央値を有する。平均的なフィルムフィブリルの断面積は、数学的に円形面積に換算すると、約1マイクロメートルから約25マイクロメートルの有効直径をもたらす。プレキシフィラメント状構造では、フィルムフィブリル要素は、構造体の長さ、幅、厚さを通して、さまざまな場所で不規則な間隔で断続的に結合及び分離をして、連続的な3次元ネットワークを形成する。
【0028】
ポリエチレンフィルムフィブリルのプレキシフィラメント状ストランドから作られた不織布シートが知られている。Bladesらの米国特許3,081,519号は、ポリエチレンフィルムフィブリルのプレキシフィラメント状ストランドのフラッシュ紡糸を開示している。Steuberの特許3,169,899号は、移動するレシーバーにこのようなストランドを堆積させて不織布シートを形成することを開示している。複数の位置から堆積させたストランドを組み立てる方法は、Kneeの米国特許3,402,227号によって開示されている。フラッシュ紡糸されたプレキシフィラメント状ストランドを堆積させ、それらをシート状に成形するための改良された方法は、Pollockらの米国特許3,497,918号によって開示されている。接着シートはDavidの米国特許3,532,589号によって開示されている。
【0029】
本発明によるフラッシュ紡糸ポリエチレンプレキシフィラメント状繊維ウェブの一例は、デラウェア州ウィルミントンのE. I. du Pont de Nemours and Company(「DuPont」)によってTYVEK(商標)スパンボンドオレフィンシート材料として販売されている市販のシート材料であってもよい。TYVEKシートは、熱接着して軽量シートを形成したフラッシュスパンポリエチレンから作られ、好ましい解決方法である。TYVEK(商標)シートの材料は、高密度ポリエチレンから作られている。一般に市販されるTYVEK(商標)シートは、布よりも紙のような外観と堅さを有する。
【0030】
【0031】
乗り物は、ヒーターをつけて運転中に寒冷地に置かれたり、完全な太陽光の下に置かれたりして、大きな温度変化にさらされる可能性があるので、密閉された材料の囲い内に閉じ込められた空気は、温度又は気圧に依存して収縮又は膨張する。特に膨張すると、シーリングが壊れ、粒子がこぼれて、結局は、減衰効果が失われる可能性がある。逆に、空気が収縮すると、囲い内の空間の減少により、粒子の移動が妨げられ得る。
【0032】
驚くべきことに、本発明によるスパンボンド繊維ウェブ、好ましくは、HDPEスパンボンド繊維ウェブは、通気性材料特性により圧力のバランスをとることができるだけでなく、その材料が空気を取り込んで元の形状に戻り、十分な空間を保証して減衰材としての粒子の利点を十分に発揮することも分かった。さらに、この材料は柔軟でもあるため、乗り物フロアの表面の小さな凹凸に適応して、フロアの振動をルース粒子に伝達することができる。
【0033】
この材料は通気性があるが、繊維状材料内の微細な穿孔は、粒子が漏れるのを防ぐのに十分に小さいだけでなく、この材料は、最初に繊維状材料に装填された粒子の進出を防止するのに十分に強固である。比較可能な標準的な不織布材料は、最初は粒子の大部分を保持するのに十分に閉じていたとしても、時間の経過とともに、粒子の詰まりによって構造体に小さな穴が開くことがある。
【0034】
好ましくは、繊維ウェブは、30~250g/m、好ましくは40~200g/mの面積重量を有していてもよい。
【0035】
繊維ウェブの厚さは、好ましくは10μm~1mm、好ましくは40μm~500μm、最も好ましくは50μm~200μmである。スパンボンド繊維ウェブの製造工程に起因して、厚さは与えられた範囲内で実質的に変化してもよい。
【0036】
【0037】
スパンボンド材料は、部分的に又は点状に接着されていても、若しくは完全に接着されていてもよい。好ましくは、ウェブの層間剥離、又は繊維ウェブ構造内の粒子の詰まり若しくは滞留を防止するために、完全に接着された材料を使用する。
【0038】
驚くべきことに、本発明によるスパンボンド繊維ウェブで作られた音響粒子ダンパーのパウチは、圧縮されることができるが、初期形状に戻る。これは、粒子音響ダンパーのパウチの利点に使用され得る。製造時にパウチの少なくとも片側をボウルのような形状に形成することによって、振動減衰中の粒子の自由な流れにとってより有効な3次元の囲いを作ることができる。好ましくは、両側がボウル形状であり、パウチ内の3次元空間を拡大する。好ましくは、形状は円形若しくは楕円形の球体、又はピラミッド球体である。全てのタイプの粒子音響ダンパーの形状が実現可能だが、外表面の少なくとも1つの領域は、減衰させるための材料に隣接する表面との表面接触を形成できなければならない。ファイバーウェブパウチと重量のあるルース粒子フィラーの組み合わせは、良好な作動をする粒子音響ダンパーを保証する。好ましくは、減衰させる面に接触する面は、少なくとも部分的に袋の下にあり、それによって重力は全体的な接触を向上させ得る。
【0039】
<粒子フィラー>
良好なノイズ減衰にとって、好ましくは、少なくとも1500kg/mの材料密度を有するルース粒子が使用される。
【0040】
ルース粒子は、好ましくは、高材料密度を有する材料から作られ、好ましくは少なくとも1500kg/m、好ましくは3000kg/m以上である。材料は金属、好ましくはスチール、亜鉛、ニッケル、若しくは鉄、又は合金、若しくは高密度材料の混合物の少なくとも1つであってもよい。使用される材料は、粒子音響ダンパーとしてパウチの中で使用中に劣化することを防止するために処理されていてもよい。
【0041】
粒子はパウチ又は囲いの中で、独立していること(ルース(loose)であること)が必要である。好ましくは、ルース粒子はパウダー状、金属球若しくは不規則な金属クラスター又はナゲットである。粒子は平均的なサイズの範囲内でランダムな形状及びサイズを有していてもよい。不規則な形状及びサイズは、全体的なノイズ軽減及び周波数帯域幅を改善し得る。
【0042】
【0043】
本発明におけるノイズ減衰トリム部品において、低周波数、例えば100Hzから600Hzにおける振動減衰効果は、乗り物本体の振動エネルギーがパウチ内のルース粒子に伝達され、摩擦又は非弾性的な衝突によって、そのエネルギーが散逸することで、達成され得る。
【0044】
パウチ内のルース粒子が摩擦又は非弾性衝突によって振動エネルギーを散逸させるのに最も効果的な周波数範囲は、粒子径の統計分布を適切に選択することによって調整してもよい。
【0045】
「粒子径」の用語は、個々の粒子に言及する場合、現行のISO 13322-2に従って測定された面積相当円直径として定義される。1つのパウチ内の粒子は、異なる粒子径を有していてもよい。現行のISO 13322-2に従って測定された個々の粒子の粒子径から、パウチ内の粒子の粒子径の統計的分布は、例えばISO 9672-2の現行版の表示に従って推測されていてもよい。
【0046】
以下、「粒子径」の用語は、パウチ内の粒子の集合体について言及する場合、パウチ内の粒子径の統計分布の中央値D50を指すものと解される。
【0047】
さらに、「粒子径分布幅」又は「分布幅」の用語は、パウチ内の粒子の集合体に言及する場合、D10は粒度統計分布から計算された10%サイズ、D90は90%サイズとして、S=(D90-D10)/D50の式から計算された量Sを指すものと解される。粒子径分布幅は、粒度統計分布が中央値D50を中心にどの程度分散しているかを示す評価基準である。
【0048】
【0049】
好ましくは、パウチ内の粒子は、50μm~1250μm、好ましくは150μm~1000μm、好ましくは200μm~700μmのメジアン粒子径を有する。
【0050】
好ましくは、パウチ内の粒子は、2.5以下、好ましくは1.5以下、好ましくは1以下の粒子径分散幅を有する。
【0051】
【0052】
一体化された粒子音響ダンパーを有する自動車トリム部品は、1より多くのパウチを有していてもよい。
【0053】
乗り物パネル、例えばフロアパネルにおいて、異なる領域において、振動の周波数成分は異なっていてもよい。ある領域では、主に低周波数、例えば250Hz以下で振動することもあり、ある他の領域では、主に高周波数、例えば250Hzで振動することもある。ある領域では、振動はより広帯域であることもあり、ある他の領域では、限られた周波数範囲により集中されることもある。
【0054】
【0055】
驚くべきことに、音響粒子減衰パウチは、接触する範囲での振動を減衰することができ、そこでこの振動が非常に高いレベル(例えば、ピーク)を示す高周波数において、特にこれらのピークが900Hzまでの低及び中周波数範囲にある場合に、特に有効である。特定の不愉快な周波数において高レベルの振動(ピーク)のあるホットスポットは、したがって、振動スポットに本発明におけるパウチを設置することによって低減され得る。
【0056】
好ましい実施形態では、各々がルース粒子を充填されている複数の個別のパウチを有するシートを使用して、比較的広い周波数範囲にわたって比較的大きい面積を減衰することができる。
【0057】
【0058】
好ましくは、1つのパウチ内の粒子の合計重量は、5g~100gであり、好ましくは8g~70gであり、より好ましくは10g~60gである。
【0059】
驚くべきことに、パウチ1つあたりの重量が小さい値であっても、乗り物本体の低周波の固体伝搬振動を効果的に低減することができる。さらに驚くべきことに、本発明による音響粒子ダンパーパウチと同じ重量である、乗り物パネルに接着された従来の減衰パッドは、この粒子ダンパーパウチよりも騒音低減効果が小さい。各50gの粒子ダンパーパウチ3個、又は各50gの従来のアスファルトダンパーパッチ3個を、同じ3箇所にそれぞれ配置した場合の比較では、従来のダンパーが1.2dbの騒音低減であったのに対し、パウチは2dbの騒音低減を示し、従来のダンパーより0.8db騒音低減が増加した。したがって、粒子ダンパーは、重量を減らして従来のダンパーを置き換えることができる。さらに、スパンボンド繊維ウェブと粒子の分離が可能であり、両方の材料が再利用され又は再度リサイクルされ得るので、本発明による音響粒子ダンパーパウチは、リサイクルが容易である。
【0060】
【0061】
パウチの容積をさらに小さくし、かつ減衰性能を高めるために、好ましくは材料密度の高い粒子が用いられ、好ましくは少なくとも1500kg/m以上、より好ましくは3000kg/m以上である。
【0062】
【0063】
水平面又は90°垂直面までの傾斜面に設置した場合に、本発明による粒子音響ダンパーは最も効果的である。好ましくは、パウチの形状は、接触面の勾配及びその形状に適合させて、片側で振動面と接触し、反対側でルース粒子の少なくとも一部と接触する表面を最適化する。
【0064】
【0065】
好ましくは、パウチは接着剤で閉じられ、密封され、及び/又はラミネートされており、好ましくはラミネートされた端面の柔軟性を保つ接着剤が使用される。好ましくは、熱活性化又は圧力活性化接着剤が使用され、好ましくは、アクリルアミド、ポリウレタン、アクリレート、エポキシ、ポリアミド、エチレンビニルアセテート、又は分枝のポリエチレンを主成分とする接着剤が使用される。より好ましくは、ポリウレタン又はポリアミドを主成分とする接着剤が使用される。
【0066】
接着剤は、繊維ウェブ上のコーティングとして提供され、パウチの形成中に活性化され、又はパウチの製造中に適用され得る。例えば、感熱性又は感圧性の接着剤フィルム層が使用され得る。
【0067】
【0068】
パウチの製造は2段階プロセスで実施することができ、それによって第1段階では、本発明による繊維ウェブの第1層が、1又はそれより多くのキャビティを有するトレイ上に載せられ(ドレープされ)、各キャビティの壁に載せられることにより、繊維ウェブは、任意に熱的に、形成される。所定の重量又は体積のルース粒子が、第1繊維ウェブの上の各キャビティに充填される。充填されたキャビティを覆うために、第2の繊維ウェブが使用される。2つの繊維ウェブは、キャビティの縁に沿って互いにラミネートされて、粒子が充填された囲いを形成する。ラミネート中又はラミネート後に、切断ブレード又はパンチによってパウチを分離して、減衰パウチを作成することができる。
【0069】
材料を様々な形状に切断して、振動するプレートと接触する最終表面を最適化することができる。あるいは、繊維ウェブをパウチ状に折り畳み、充填のために密閉される範囲を開放した状態で接触面をラミネートすることによって、パウチを製造することもできる。充填し、解放部を密閉することによって、パウチを最終的に閉じる。
【0070】
【0071】
あるいは、パウチは大きなストリップ又はシートに一体化され、あらかじめ定義された領域に一体化された減衰パウチを備えた自動車トリム部品を作成するための金型への、減衰パウチの配置が最適化される。
【0072】
【0073】
例えば、単一のパウチ、好ましくは間隔をあけて配置された複数のパウチを備えたストリップ、又はそのシートの表面上に無作為に若しくは意図的に配置された複数のパウチを有するシートを金型内に配置し、発泡層又はフェルト層のいずれか、好ましくは射出発泡層と組み合わせ、隣接する層の少なくとも1つの表面と積層又は材料接続してもよい。
【0074】
【0075】
車内及び車外にある振動のホットスポット、例えば、エンジン若しくはギアの周囲、バッテリーボックスの上若しくは内部、ダッシュエリアの内側若しくは外側、フロア、トランクの内部、又はヘッドライナーに、減衰パウチは配置され又は接着されてもよい。パウチは非常に小さいので、新しいトリム部品に直接導入してもよく、独立した解決方法として後から追加して、予期せぬ振動のホットスポットを減らしてもよい。
【0076】
【0077】
あるいは、パウチは自動車トリム部品に機械的又は物質的に接続して、少なくとも1つの表面が、振動する乗り物パネルの表面、好ましくは振動のホットスポットに接触できるようにしてもよい。
【0078】
好ましくは、パウチの小領域のみが吊り下げられた状態でトリム部分に取り付けられ、これによって、粒子への重力がパウチと表面の接触を促して、パウチは振動する表面に自由に横たわることができる。
【0079】
1つの実施形態では、パウチはピラミッド状(図1E)の又は類似の形状を有し、それによって、ピラミッドの先端が周囲の材料と一体化し、かつ、例えば、金型発泡によって、ピラミッドの先端を保持するよう挟み込んでいてもよい。先端は、曲げられ、発泡部材に引っ掛けられ、パウチの吊り下げフックとして機能してもよい。
【0080】
【0081】
好ましくは、本発明によるノイズ減衰トリム部品は、複数の音響粒子ダンパーパウチを有する。粒子音響ダンパーのパウチの数は、所望の減衰性能と、重量、スペース、及びコストの制約に基づいて定義される。粒子音響ダンパーの数を増やすと、性能は向上するが、重量、コスト、及び製造工程の複雑さが増加する。
【0082】
好ましくは、本発明によるトリム部品は、最大30個の粒子音響ダンパーパウチ、好ましくは4個~30個の粒子音響ダンパーパウチ、より好ましくは8個~20個の粒子音響ダンパーパウチを含んでいてもよい。
【0083】
驚くべきことに、粒子音響ダンパーの充填量がそれぞれ100g以下であるので、同じ表面を減衰させるために使用される従来のダンパーと比較して、満足のいく減衰効果を得るために必要な重量は全体的にはるかに少なく、その結果、自動車の重量が減少し、これによって自動車のエネルギー消費量が減少する。
【0084】
【0085】
粒子音響ダンパーをトリム部品に組み込むによって、その位置を事前に定義することができ、トリム部品の取り付け時に粒子音響ダンパーの正しい位置が保証される。粒子音響ダンパーは、乗り物本体が最も振動する場所、いわゆる「振動のホットスポット」に、好ましくは配置される。技術分野でよく知られた、実験的及び/又はシミュレーションの技術によって、上記のような振動のホットスポットは特定することができる。乗り物の本体パネルには、複数の振動のホットスポットがあり、これらは異なる周波数範囲に関連しうる。単一の粒子音響ダンパー内のルース粒子の質量は、振動の強度に適応していてもよい。
【0086】
本発明によるノイズ減衰トリム部品は、好ましくは、主に水平な乗り物の本体パネル(例えば、乗り物フロア)に取り付けられるが、他の向きの乗り物の本体パネル(例えば、自動車のダッシュパネル)にも取り付けて、又は部品が乗り物に取り付けられ、容器内のルース粒子が、その重力負荷の下で、繊維ウェブが乗り物本体の振動表面に接触している領域において、少なくとも部分的に繊維ウェブと接触させて、機能してもよい。
【0087】
本発明によるノイズ減衰トリム部品に組み込まれている粒子音響ダンパーは、全て、サイズ、形状、粒子の種類、及び含有率について同じ特性を持っていてもよく、また、乗り物に取り付けられたときに、部品が取り組まれている乗り物の本体パネルの振動並びに乗り物本体の形状及び/又はトリム部品に適応するために、これらは異なっていてもよい。
【0088】
【0089】
本発明によるトリム部品では、ルース粒子を部分的に充填されている粒子音響ダンパーは、少なくともの1つの発泡層又はフェルト層に組み込まれる。
【0090】
発泡層はオープンセルフォームのあらゆる種類から形成されていてもよく、好ましくはこの層はポリウレタン発泡部材で製造されている。好ましくは25kg/m~120kg/m、好ましくは35kg/m~80kg/m、好ましくは45kg/m~70kg/mの密度を、発泡部材は有する。
【0091】
フェルト層はファイバー、例えばステープルファイバー、並びに/又はフィラメント及び熱可塑性バインダー材料を有する繊維質層であってもよい。
【0092】
再生繊維、リサイクル繊維、及び/若しくはバージン繊維の組み合わせ、人工繊維、無機繊維、並びに/又は天然繊維が使用され得る。
【0093】
例えば、フェルト層は、綿の再生糸、合成繊維の再生糸、ポリエステルの再生糸、天然繊維の再生糸、および合成繊維と天然繊維の混合再生糸からなる群から選択される少なくとも1つの材料で作られる再生繊維を有する。
【0094】
再生糸のタイプは、少なくとも51質量%の対象材料が含まれていることで定義され、49質量%は他の供給源からの繊維であってもよい。例えば、再生ポリエステルは少なくとも51質量%のポリエステル系繊維を含む。あるいは、再生材料は、異なる合成繊維及び天然繊維の混合物であってもよく、この場合、1つの種類に限られない。
【0095】
好ましくは、ポリアミド(ナイロン)、例えばポリアミド6若しくはポリアミド66、ポリエステル、例えばポリエステル、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、若しくはポリトリメチレンテレフタラート(PTT)のコポリマー、ポリオレフィン、例えばポリプロピレン、並びにポリスチレン、例えばポリエチレン及びミネラルファイバーのコポリマーからなる群から選択される少なくとも1つの材料、好ましくは、ガラス繊維、再生ガラス繊維、玄武岩繊維、炭素繊維のいずれかから、繊維又はフィラメントは製造される。
【0096】
好ましくは、フェルト層は自己捲縮繊維、好ましくは中空自己捲縮繊維を有する。
【0097】
フェルト層は、熱硬化性バインダー、例えばフェノール樹脂又はエポキシ樹脂を主成分とするバインダー、又はポリエステル、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエステルのコポリマー、ポリオレフィン、例えばポリプロピレン若しくはポリエチレン、ポリ乳酸(PLA)、及びポリアミド、例えばポリアミド6若しくはポリアミド66からなる群から選択される少なくとも1つの材料を有する熱可塑性バインダーを含んでいてもよい。
【0098】
好ましくは、バインダー材料は、繊維、フレーク、又は粉末の形状である。より好ましくは、バインダー材料は一成分の繊維又は二成分の繊維の1つである。
【0099】
粒子音響ダンパーを構成する発泡層又はフェルト層の厚さは、一般的に一定ではなく、主に乗り物内の空間制限に依存する。厚さは2mm~100mmで選択できるが、多くの場合、5mm~40mmである。カーペット又はインナーダッシュの一部としての層の従来の厚さの平均は、通常10mm~30mmであり、例えば平均約20mmである。
【0100】
好ましくは、粒子音響ダンパーを埋め込むフェルト層又は発泡層の面積重量は、200g/m~2000g/m、好ましくは800g/m~1600g/mである。
【0101】
本発明による自動車ノイズ減衰トリム部品は、自動車の振動パネルと接触する表面とは反対側の表面に、1又はそれより多くの追加の層を有していてもよい。追加の層は、少なくとも1つの別の多孔質層、好ましくは上記で定義した材料で選択された発泡体又はフェルトとすることができる。加えて又は代替的に、追加の層は、フィルム、重層材料として業界で知られている高密度材料層、高充填剤含有量の熱可塑性エラストマー材料、装飾層、例えば不織布若しくはカーペット層、又はこのような層の任意の組み合わせのうちの1つであってもよい。
【0102】
あるいは、振動する乗り物パネルに接触する発泡層又はフェルト層の表面に、スクリム層が配置されてもよい。このような不織布又はスクリム層の厚さは、パウチの接触面が乗り物の振動面に接触できなくなるような高さをもたらすものであってはならない。
【0103】
好ましい実施形態では、本発明によるトリム部品はスプリングマスシステムであり、低密度のソフトデカップリング層及び高密度のクローズド重質層によって形成される。これによって、ルース粒子で部分的に充填されている粒子音響ダンパーは、デカップラーである発泡体層又はフェルト層に含まれ、これによって、部品が乗り物に組み込まれたときにデカップラーは振動する乗り物の本体パネルに接触するように配置される。好ましくは、質量層又は重量層は500g/m~6500g/mの面積重量を有する。最終的に、トリム部分は、重質層、例えば補強層及び/又はカーペット層、例えば不織布若しくはタフトカーペットの表面の上に、さらなる層を有していてもよい。例えばインナーダッシュトリム部品、アウターダッシュトリム部品、及び/又は自動車の客室のフロア部品を形成するために、このような部品は成形してもよく、フロント又はリアトランク領域に使用されてもよい。
【0104】
好ましくは、重質層は、エチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマー、ポリエステル、ポリエチレンテレフタラート、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、熱可塑性エラストマー、熱可塑性ゴム、及びポリ塩化ビニル(PVC)、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される1つの熱可塑性プラスチック材料を含む。さらに、材料の密度を高めるために、重質層は、85重量%までの無機充填材を含んでいてもよい。
【0105】
本実施形態において、本発明によるトリム部品は、例えば、被覆スクリム層、音響スクリム層、装飾トップ層、タフテッド又は不織布カーペット層等の追加の層を層全体の最上部に含んでいてもよい。
【0106】
この場合において、トリム部品は、少なくとも分離及び減衰に基づいてノイズを減衰することができ、一方で、ヘビー層の上に追加の多孔質層を含むことによって、吸音に基づいてノイズを減衰させることもできる。
【0107】
他の好ましい実施形態は、本発明による粒子音響ダンパーを有する発泡又はフェルト層を含むトリム部品であり、さらに、粒子音響ダンパーを有する層より高い空気流抵抗、好ましくは500Ns・m~4000Ns・m、を備える粒子音響ダンパーを有する発泡又はフェルト層の上に、少なくとも1つの異なる繊維多孔質層を含み、減衰特性に追加してノイズ吸収性を上昇させ得る。
【0108】
他の好ましい実施形態は、本発明による粒子音響ダンパーを含むオープンセル発泡層を有する、かつ、さらに、500Ns・m~4000Ns・mの空気流抵抗である第2の多孔質繊維層及びこれら2層の間に中間フィルム若しくはスクリム層を有するトリム部品である。この実施形態において、部品が乗り物に導入されると、本発明による粒子音響ダンパーを有するオープンセル発泡層は、乗り物本体に接触し、一方で、多孔質層は客室に面している。中間層又はスクリムの存在によって、トリム部品の中高周波数帯の減衰特性が強化され、一方で、表層の多孔質層は、常に中高周波数において良好な吸収特性を保証する。
【0109】
上記の全ての実施例によって、100Hz~10kHzの周波数範囲において、ノイズの良好な減衰、分離及び/又は吸収減衰が達成され得る。
【0110】
【0111】
本発明によるトリム部品は、従来技術範囲において公知の下記方法で製造することができる。
【0112】
例えば、本発明によるトリム部品の製造は、以下に記載の工程に従って実施することができる。
【0113】
パウチの製造は2段階プロセスで行われてもよく、第1段階では、本発明による繊維ウェブの第1層が、1又はそれより多くのキャビティを有するトレイ上に載せられ、繊維ウェブは、任意に、熱的に、各キャビティの壁に載ることによって形成され得る。所定の重量又は体積のルース粒子が、第1繊維ウェブの上の各キャビティに充填される。第2の繊維ウェブは充填されたキャビティを覆うために使用される。それらの2つの繊維ウェブは、キャビティの縁に沿って互いに密封されて、粒子が充填された囲いを形成する。ラミネート間又は後に、パウチはカッティングブレード又はパンチによって分離されて、減衰パウチが製造される。材料をさまざまな形状に切断して、振動するプレートと接触する最終表面を最適化してもよい。繊維ウェブをパウチ状に折り畳み、かつ接触面をラミネートすることによって、パウチを製造してもよい。充填し、最後に開口部をシールして、パウチを閉じる。全工程は、成形、充填、及び閉鎖の連続工程で行われてもよい。
【0114】
接着工程は、当該技術分野で周知の技術、例えば接着又は熱融着を用いて実施することができる。第1工程で作られたキャビティの残りの部分の縁の周りに小さなフランジがあることで、接着工程を容易に実行し得る。しかしながら、このフランジがなくても接着は可能である。
【0115】
別の工程では、部品が乗り物に取り付けられたときに、部分的に乗り物本体に面する、その外面の区画を有し、上記の工程で製造されたルース粒子が充填された粒子音響ダンパーに適合する形状の凹部を、その外面のこの区画に有するフェルト又は発泡層を有するトリム部品が製造される。
【0116】
トリム部品は、トリム部品の成形中にすでに形成された凹部を有していてもよく、成形前又は成形後に別の工程で凹部が切り出されていてもよい。
【0117】
代替プロセスでは、粒子音響ダンパーを金型内に配置し、例えばインモールド発泡プロセス又はインジェクションファイバープロセスを使用して、粒子音響ダンパーを含有するトリム部品が直接に製造される。
【0118】
客室のスペースに適合させるために、この第4工程で製造されるトリム部品は3次元の複雑な形状を有していてもよい。
【0119】
この工程は、当該技術分野で公知の標準的な製造方法で実施してもよい。例えば、バリア重質層は、最初に真空成形によって成形され、その後、バック発泡されてもよく、バック発泡ツールは、粒子音響ダンパーの形状に適合する突起を提示する。この後、例えば多孔質フェルト若しくは発泡層又はニードルパンチ若しくはタフテッドカーペット等の重質層の上に、さらに層を追加してもよい。
【0120】
最終的に、追加の工程で、隣接する層の凹部に挿入することによって、粒子音響ダンパーは多孔質層に埋め込まれる。
【0121】
粒子音響ダンパーの凹部への挿入は、好ましくは自動化された方法で行われるが、手動で行うこともできる。
【0122】
パウチの縁の周囲にあるフランジによって、パウチが隣接する層に沈み込まないので、挿入工程が容易になり得る。しかしながら、このフランジがなくても、パウチをトリム部品に適切にかつ正確に組み込むことができる。
【0123】
好ましくは、少なくともその外面の一部において、パウチは、それを埋め込む隣接層に接着される。これによって、トリム部品の製造工程中又は乗り物への取り付け中に、トリム部品から脱落するのを防ぐことができる。
【0124】
しかしながら、トリム部品からの脱落を回避するために、容器をトリム部品へ接着することは不要である。他の方法、例えば、容器を適切な方法で成形(例えば、樽型容器若しくは逆四角錐台のような形状の容器)すること、容器に何らかの機械的固定要素(例えば、棘若しくはフックの形状をした薄い外部突起)を設けること、又は少なくとも部分的な接着及び好ましい形状の組み合わせによっても、この効果は得ることができる。
【0125】
好ましくは、本発明によるトリム部品は、バッテリーリッド、エンクロージャ、内部ダッシュ、外部ダッシュ、又はカーペットシステム、例えば、タフテッドカーペット、ニードルパンチカーペット、フロック加工された表面を有するカーペット、若しくはディロアカーペットのためのノイズ減衰トリム部品であり、ここで、部品が乗り物に取り付けられたときに、ルース粒子で部分的に満たした粒子音響ダンパーを埋め込む層は、振動する乗り物の本体パネルに面するものである。
【0126】
【0127】
例えばフロアシステムでは、乗り物の設計段階でホットスポットが特定され、これらのスポットに単独で又はこれらのホットスポットに関連するトリム部分の下側の一部として、パウチが配置される。パウチは、例えば接着剤でこれらの専用領域に取り付けられてもよい。あるいは、下層若しくは全パーツの成形中又は下層付着層の発泡中に、パウチは部品に積層していてもよい。それによって、パウチと接触する下層は専用の空隙領域が形成して、使用中にパウチが圧縮された状態になることを防ぐ。好ましくは、適切な場所にパウチを配置することが簡単かつより経済的であるように、パウチは充填されたキャビティを有する2層繊維ウェブに一体化される。
【0128】
【0129】
驚くべきことに、2層ウェブの所定の位置にルース粒子を充填した囲いを有する2層繊維ウェブは、隣接する発泡層又はフェルト層のデカップリング機能に有益な効果を有し、この層が乗り物床材に留まり又は付着するのを防ぐ。スパンボンド繊維ウェブは、ガス透過性でもあるので、隣接する層は層の圧縮中に空気を交換することが可能でもある。
【0130】
本発明の異なる実施形態及び実施例を組み合わせることによっても、本発明のさらなる実施形態は記載から導き出すことができ、図に示す実施形態の記載からも導き出すことができる。図は概略的なものであり、必ずしも縮尺通りではない。
【0131】
【0132】
好ましくは、パウチの少なくとも1つの外面が自動車の振動面に面し、接触し、かつ接触面の反対側の面がパウチの内部のルース粒子の少なくとも一部と接触するような方法で、自動車トリム部品の少なくとも1つの層に、本発明による粒子音響ダンパーは少なくとも部分的に組み込まれる。好ましくは、パウチの少なくとも小さい部分が自動車用トリム部品の外側に張り出してもよい。驚くべきことに、振動減衰効果は、パウチが振動面に接触している面積よりも広い範囲に及んでいる。充填量が10g以下の小さなパウチでも、すでに測定可能な減衰効果が得られる。
【0133】
驚くべきことに、本発明による粒子音響ダンパーは、従来のアスファルトダンパーと同等又はそれ以上に、振動のホットスポットでの振動を低減することができる。これにより、局所的な振動のホットスポットを低減するためのより大きな減衰パッチの必要性が少なくなり、一方、従来のダンパーはもはや適用できないが、本発明によるパウチダンパーは小さなスペースであっても配置され得る。また、単一のホットスポットの後付けもより容易であり得る。
【0134】
凹凸構造の金属製カーフロアの3箇所に配置される3つの減衰パウチは、低周波数帯域で2dbまで低減することができることが示された。同じ重量で同じポイントに配置された3枚の従来の減衰パッドと比較して、これは、約0.8dbの増加であり、本発明による粒子音響ダンパーが従来のダンピング材料よりも優れていることを示している。これは、温度依存性がなく、かつ全体を接触させる必要がないという利点がある。
【0135】
さらに、本発明による音響ダンパーパウチは、接触する範囲の周波数ピークを減らすことができ、したがって、分離配置された又はラミネートスパボンド繊維ウェブゾーンを介して接触した、複数のより小さな囲いを配置した2層スパンボンド繊維ウェブは、従来のダンパーの代替としても機能することができることが証明された。低周波数範囲で同じ減衰を得るために、より低重量が必要であり、単一部品の重量を節約することは、最終的に自動車のCO2排出量を全体的に削減する。
【図面の簡単な説明】
【0136】
図1AからEは、本発明による減衰パウチのいくつかの可能な実施形態を示す。
【0137】
図1A図1B、及び図1Cは、本発明による繊維ウェブの第1(7)及び第2(6)層で作られる粒子音響ダンパー(1)を示している。図1Aは上方から見た図、いわゆる上面図を示し、一方で、図1B及び図1Cはパウチ1の断面を示す。範囲2はパウチを閉じ、かつローズ粒子4が満たされた内部の囲い3を形成する、密封され又は接着された範囲を指し示す。パウチの下部、ここでは第1層7は、ドレーピングによって予め形成されて、ルース粒子のためのキャビティを形成する。この予備成形は、下地パネル5とのより良く接触することができるクッションのような3D形状をも形成する。
【0138】
図1Bは、乗り物パネル5上のポーチの単独バージョンを示す。パウチ及び乗り物パネル5の間の接触面は、乗り物5の振動パネルとの接触面である繊維ウェブ7の外部面として定義され、繊維ウェブの反対面はルース粒子の少なくとも一部と接触し、乗り物パネルの振動エネルギーは、パウチ内の粒子に伝達され、粒子の移動によって放散される。
【0139】
粒子が入っていないパウチの残りの容積は空気で充填される。周囲と空気を交換するための繊維ウェブの機能によって、パウチの圧縮はしばらくして減圧されて、材料は驚くべきことに元の状態に戻る。したがって、パウチは、ルース粒子が自由に動くための十分な内部容積を常に維持する。
【0140】
【0141】
図1D及び図1D‘は、2に示した密封された範囲と別の形状を示している。図1Dの場合、材料はそれ自体に折りたたまれ、8は折りたたみ線を示している。図1Eは、ピラミッド型のパウチの一例であり、ここでピラミッドの先端は、隣接する層に組み込まれて、接続部を形成してもよく、この範囲でパウチの材料が挟み込まれて、囲いの残りの容積を形成しても、粒子がルース粒子ダンパーとして機能するには十分である。
図1
【国際調査報告】