(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】HIV感染に対する組合せ療法およびその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20241219BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20241219BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241219BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20241219BHJP
C07K 16/10 20060101ALI20241219BHJP
C12N 9/99 20060101ALI20241219BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20241219BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20241219BHJP
C12N 15/10 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
A61K39/395 S
A61P31/18
A61P43/00 121
A61K31/496
C07K16/10 ZNA
C12N9/99
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/10 200Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535995
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-08-14
(86)【国際出願番号】 US2022081724
(87)【国際公開番号】W WO2023114951
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521396042
【氏名又は名称】ヴィーブ、ヘルスケア、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】VIIV HEALTHCARE COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】ロバート、フェリス
(72)【発明者】
【氏名】ヘザー、マドセン
(72)【発明者】
【氏名】チー、ハンフェイ
【テーマコード(参考)】
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA02
4C085AA14
4C085BA69
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG01
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086DA34
4C086DA38
4C086GA14
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA52
4C086MA55
4C086NA05
4C086NA14
4C086NA15
4C086ZB33
4C086ZC55
4C086ZC75
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA29
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の治療法または治療、クリア、予防もしくは治癒の方法に関する。本開示は、HIVの治療および/またはHIV感染細胞のクリアランスに使用するための、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩と、CD4結合部位(CD4bs)結合性タンパク質との組合せを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とするヒトにおいてヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染を治療するための方法であって、
治療有効量の:
(a)ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩を含む第1の薬剤;ならびに、
(b)少なくとも1種の広域中和抗体またはその抗原結合性断片を含む第2の薬剤
を投与することを含む、方法。
【請求項2】
第1の薬剤が、ホステムサビルまたはその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の薬剤が、テムサビルまたはその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第2の薬剤が、HIV gp160、HIV gp120およびHIV gp41からなる群から選択される少なくとも1種のHIVエンベロープ糖タンパク質に結合する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
第2の薬剤が、HIV gp120に結合する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
第2の薬剤が、2G12、2F5、3BC176、3BNC60、3BNC1-17、4E10、8ANC131、8ANC195、10E8、10-1074、12A12、35022、b12、B2530、CH01-04、CH103、CH31、HJ16、M66.6、N6、N6LS、N6-DE、N6-LAGA、NIH45-46、PG9、PG16、PGDM1400、PGT121、PGT128、PGT135、PGT141-PGT145、PGT151、PGV04、VRC01、VRC01-LS、VRC07、VRC07-523、VRC07-LSおよびZ13からなる群から選択される少なくとも1種の薬剤である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第2の薬剤が、
配列番号1と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むCDRH1のアミノ酸配列と、配列番号2と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むCDRH2のアミノ酸配列と、配列番号3と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むCDRH3のアミノ酸配列とを有する重鎖相補性決定領域(CDRH)、および、
配列番号4と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むCDRL1のアミノ酸配列と、配列番号5と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むCDRL2のアミノ酸配列と、配列番号6と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むCDRH3のアミノ酸配列とを有する軽鎖相補性決定領域(CDRL)
を含む、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
第2の薬剤が、配列番号7と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する重鎖可変領域(V
H)を含む、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
第2の薬剤が、配列番号8と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域(V
L)を含む、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
単離されたモノクローナル抗体が、M428L変異およびN434S変異を含む組換え定常ドメインをさらに含む、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
単離されたモノクローナル抗体が、S239D変異およびI332E変異を含む組換え定常ドメインをさらに含む、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
単離されたモノクローナル抗体が、L235A変異およびG237A変異を含む組換え定常ドメインをさらに含む、請求項7~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
第2の薬剤が、
配列番号1のCDRH1のアミノ酸配列と、配列番号2のCDRH2のアミノ酸配列と、配列番号3のCDRH3のアミノ酸配列とを有する重鎖相補性決定領域(CDRH)、および、
配列番号4のCDRL1のアミノ酸配列と、配列番号5のCDRL2のアミノ酸配列と、配列番号6のCDRH3のアミノ酸配列とを有する軽鎖相補性決定領域(CDRL)
を含む、単離されたモノクローナル抗体(N6)またはその抗原結合性断片である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
第2の薬剤が、
配列番号1のCDRH1のアミノ酸配列と、配列番号2のCDRH2のアミノ酸配列と、配列番号3のCDRH3のアミノ酸配列とを有する重鎖相補性決定領域(CDRH)、
配列番号4のCDRL1のアミノ酸配列と、配列番号5のCDRL2のアミノ酸配列と、配列番号6のCDRH3のアミノ酸配列とを有する軽鎖相補性決定領域(CDRL)、ならびに、
M428L変異およびN434S変異を含む組換え定常ドメイン
を含む、単離されたモノクローナル抗体(N6LS)またはその抗原結合性断片である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
第2の薬剤が、
配列番号1のCDRH1のアミノ酸配列と、配列番号2のCDRH2のアミノ酸配列と、配列番号3のCDRH3のアミノ酸配列とを有する重鎖相補性決定領域(CDRH)、
配列番号4のCDRL1のアミノ酸配列と、配列番号5のCDRL2のアミノ酸配列と、配列番号6のCDRH3のアミノ酸配列とを有する軽鎖相補性決定領域(CDRL)、ならびに
S239D変異およびI332E変異を含む組換え定常ドメイン
を含む、単離されたモノクローナル抗体(N6-DE)またはその抗原結合性断片である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
第2の薬剤が、
配列番号1のCDRH1のアミノ酸配列と、配列番号2のCDRH2のアミノ酸配列と、配列番号3のCDRH3のアミノ酸配列とを有する重鎖相補性決定領域(CDRH)、
配列番号4のCDRL1のアミノ酸配列と、配列番号5のCDRL2のアミノ酸配列と、配列番号6のCDRH3のアミノ酸配列とを有する軽鎖相補性決定領域(CDRL)、ならびに、
L235A変異およびG237A変異を含む組換え定常ドメイン
を含む、単離されたモノクローナル抗体(N6-LAGA)またはその抗原結合性断片である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
抗原結合性断片が、Fv、Fab、F(ab’)
2、scFvまたはscFV
2断片である、請求項7~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1種のインテグラーゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩を含む、治療有効量の第3の薬剤を投与することをさらに含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
第3の薬剤が、ラルテグラビル、エルビテグラビル、ドルテグラビル、ビクテグラビルおよびカボテグラビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
第3の薬剤が、ラルテグラビルまたはカボテグラビルである、請求項18~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
第3の薬剤が、カボテグラビルである、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
第1の薬剤がテムサビルであり、第2の薬剤がN6LSであり、かつ、第3の薬剤がカボテグラビルである、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
第1の薬剤がテムサビルであり、第2の薬剤がN6-DEであり、かつ、第3の薬剤がカボテグラビルである、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
第1の薬剤、第2の薬剤および第3の薬剤の各々が、医薬組成物の形態である、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
第1の薬剤が、第2の薬剤を投与する前に投与される、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
ヒトに、約1mg/kg体重~約100mg/kg体重の第1の薬剤を、1日1回、1日2回または1日3回、経口投与することを含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
ヒトに、約1mg/kg体重~約100mg/kg体重の第1の薬剤を、1日1回、1日2回または1日3回、非経口投与することを含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
ヒトが、ヒト免疫不全ウイルス1(HIV-1)感染と診断される、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
ヒトが、以前に1または2以上の異なるHIV治療モダリティで治療されている、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
ヒトに、請求項1~23のいずれか一項に記載の第1の薬剤を含む第1の医薬組成物と、請求項1~23のいずれか一項に記載の第2の薬剤を含む第2の医薬組成物とを投与することを含む、HIVの治療に使用するための組合せ。
【請求項31】
ヒトに、第1の医薬組成物が、第2の医薬組成物を投与する前に投与される、請求項30に記載の使用のための組合せ。
【請求項32】
ヒトに、約1mg/kg体重~約100mg/kg体重の第1の医薬組成物が、1日1回、1日2回または1日3回、経口投与される、請求項30~31のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項33】
ヒトに、約1mg/kg体重~約100mg/kg体重の第1の医薬組成物が、1日1回、1日2回または1日3回、非経口投与される、請求項30~31のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項34】
請求項18~23のいずれか一項に記載の第3の薬剤を含む第3の医薬組成物を投与することをさらに含む、請求項30~33のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項35】
請求項30に記載の第1の医薬組成物と、請求項30に記載の第2の医薬組成物と、任意選択で、請求項34に記載の第3の医薬組成物とを含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年12月17に提出された米国仮特許出願第63/290,758号の利益を主張するものであり、その開示内容は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、配列表を含み、この配列表は、コンピュータ可読形態でXMLファイルフォーマットにて電子的に提出されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。2022年12月15日に作成された上記XMLファイルは、名前が「70090WO01_SeqList_Updated_5Dec2022」で、サイズが15,605バイトである。
【0003】
発明の分野
本発明は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染を治療、予防または治癒する方法に関する。特に、本発明は、薬物の組合せを使用して、HIV感染細胞を治療、クリアランス、予防または治癒する方法に関する。いくつかの実施形態において、組合せは、HIV感染の治療、クリア、予防および/または治癒のための治療または予防用途において、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩を含む薬剤と、CD4結合部位結合性タンパク質または広域中和抗体を含む薬剤とを含む。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
後天性免疫不全症候群(AIDS)を引き起こすウイルスであるヒト免疫不全ウイルス(HIV)は、世界で最も深刻な公衆衛生上の課題の1つである。HIVは、依然として重大な医学上の問題であり、流行が始まって以来、7930万人がHIVに感染し、3630万人がHIVで死亡している。2020年末の時点で、世界全体で、3770万人がHIVに罹患していた。世界中で15~49歳の成人の推定0.7%がHIVに罹患しているが、しかし、流行による負担が国や地域によって大きく異なる状態が続いている。
【0005】
レトロウイルスであるHIVは、感染宿主細胞内で新規なウイルス粒子(ビリオン)が集合することにより複製する。これらの新規なビリオンは、感染宿主細胞(現在は産生細胞として知られている)を離れ、他の感受性のある宿主細胞に感染を拡げる。産生細胞内でのビリオンの形態形成は、3つの段階:集合、出芽および成熟に分けることができる。集合段階では、ビリオンは、gp160ウイルスエンベロープ(ENV)タンパク質を含む、感染性に必要とされる構成要素の全てをパッケージングする。ENVは、ビリオンを標的細胞に融合させるための膜内在性タンパク質である。パッケージング過程の一部として、ENVタンパク質は、感染産生細胞のER(endoplasmic reticulum)膜に共翻訳的に挿入され、次いで、細胞分泌経路を通って移動し、この経路において、グリコシル化され、3量体複合体へと集合し、膜貫通型(gp41)および表面型(gp120)サブユニットへと、細胞プロテアーゼのフューリンによってプロセシングされ、小胞輸送を介して形質膜へと運ばれる(Sundquist,W.I.、& Kraeusslich,H.G.(2012).HIV-1 assembly,budding,and maturation.Cold Spring Harbor perspectives in medicine、2(7)、a006924)。このように、集合過程が進んでいくと、感染宿主細胞は、HIVに特徴的なENVを細胞表面上に提示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
感染細胞の表面に提示されたENVは、抗体媒介性感染細胞死を生じ得る抗体の認識によるクリアランスにおいて魅力的な標的となる可能性がある。しかし、感染細胞の表面上のENVは、シス発現した宿主CD4受容体との相互作用によって影響され、複数のコンフォメーションを呈することで、抗体の認識の低下が生じる可能性がある。そのため、感染宿主細胞で発現したENVに対する抗体の認識を向上する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
一態様では、ヒトHIVを治療または予防する方法であって、以下の群:CD4bs結合性タンパク質;gp120結合性タンパク質;広域中和抗体またはその抗原結合性断片;ホステムサビルまたはその薬学的に許容される塩;テムサビルまたはその薬学的に許容される塩;および、インテグラーゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩から選択される、治療有効量の2種または3種以上の薬剤を投与することを含む、方法が提供される。
【0008】
一態様では、それを必要とするヒトにおいてHIV感染を治療または予防するための方法であって、治療有効量の:(a)ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩を含む第1の薬剤;ならびに(b)少なくとも1種の広域中和抗体またはその抗原結合性断片を含む第2の薬剤を投与することを含む、方法が提供される。
【0009】
一態様では、それを必要とするヒトにおいてHIV感染を治療または予防するための方法であって、治療有効量の:(a)ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩を含む第1の薬剤;(b)少なくとも1種の広域中和抗体またはその抗原結合性断片を含む第2の薬剤;ならびに(c)少なくとも1種のインテグラーゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩を含む第3の薬剤を投与することを含む、方法が提供される。
【0010】
一態様では、HIVの治療または予防に使用するための組合せであって、ヒトに、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩を含む第1の薬剤を含む第1の医薬組成物、ならびに、少なくとも1種の広域中和抗体またはその抗原結合性断片を含む第2の薬剤を含む第2の医薬組成物を投与することを含む、組合せが提供される。いくつかの実施形態では、使用のための組合せは、少なくとも1種のインテグラーゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩を含む第3の薬剤を含む第3の医薬組成物を投与することをさらに含む。
【0011】
一態様では、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩を含む第1の薬剤を含む第1の医薬組成物と、少なくとも1種の広域中和抗体またはその抗原結合性断片を含む第2の薬剤を含む第2の医薬組成物と、任意選択で、少なくとも1種のインテグラーゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩を含む第3の薬剤を含む第3の医薬組成物とを含む、キットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】HIV感染細胞へのbnAb結合の平均蛍光強度(mean fluorescent intensity:MFI)の、テムサビルによる増強を示す図である。
【
図2】bnAbが結合したHIV感染細胞のパーセンテージの、テムサビルによる増強を示す図である。
【
図3】HIV感染初代細胞に対する抗体依存性エフェクター細胞媒介性細胞傷害(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity:ADCC)の、テムサビルによる用量依存的な増強を示す図である。
【
図4】テムサビルが、エフェクター細胞の非存在下では、HIV感染初代細胞の細胞死を引き起こさないことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
定義
他に定義されない限り、本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が関係する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと類似または同等の方法および材料を本発明の実施に使用できるが、適切な方法および材料は、以下に記載されている。
【0014】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許およびその他の参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0015】
さらに、材料、方法および実施例は、例示に過ぎず、限定を意図するものではない。本発明の1または2以上の実施形態の詳細は、以下の添付の説明に記述されている。本発明の他の特徴、目的および利点は、本明細書の説明および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【0016】
HIV
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は、さらに明記しない限り、HIV-1を意味することを意図する。本発明はまた、HIV-2に対しても、またはHIV-1/HIV-2二重感染を有する患者に対しても効果的である可能性がある。ヒト免疫不全ウイルスタイプ1(HIV-1)感染およびその結果生じる後天性免疫不全症候群(AIDS)は、抗HIV-1治療剤を開発するための多大な努力にもかかわらず、依然として世界規模の公衆衛生上の脅威となっている。エンベロープウイルスHIV-1は、幅広い防御機構の陰に隠れて液性認識から逃れている。主要なHIV-1エンベロープタンパク質(HIV-1 Env)は、約160kDの糖タンパク質(gp160)である。感染の間、宿主細胞のプロテアーゼは、gp160をgp120およびgp41へと切断する。gp41は膜内在性タンパク質であるのに対して、gp120は成熟ウイルスから突出している。gp120は、CD4結合部位によって宿主細胞受容体CD4に結合する。gp120およびgp41は共にHIV-1エンベロープスパイクを形成し、このスパイクは中和抗体の標的となる。HIV-1 Envに結合する広域中和抗体が特定されており、これには、gp120のCD4結合部位に特異的に結合し、HIV-1株を高パーセンテージで中和できる、N6LS抗体が含まれる。
【0017】
結合性タンパク質
用語「CD4結合部位(CD4bs)結合性タンパク質」は、本明細書で使用する場合、HIVエンベロープ糖タンパク質gp120のCD4結合部位に結合できる、抗体およびその他のタンパク質構築物、例えば、ドメインを指す。用語「CD4bs結合性タンパク質」、「CD4bs結合ドメイン」および「抗原結合性タンパク質」は、本明細書で互換的に使用される。この用語は、天然の同族リガンドまたは受容体を含まない。いくつかの実施形態では、gp120上のCD4結合部位に結合し、HIV-1を中和する、モノクローナル抗体およびその抗原結合性断片が、本明細書で提供される。
【0018】
抗体
本明細書で、用語「抗体」は、免疫グロブリン様ドメインを有する分子(例えば、IgG、IgM、IgA、IgDまたはIgE)を指す最も広い意味で使用され、モノクローナル抗体、組換え抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体を含む多重特異性抗体およびヘテロコンジュゲート抗体;単一可変ドメイン(例えば、ドメイン抗体(DAB))、抗原結合抗体断片、Fab、F(ab’)2、Fv、ジスルフィドによって連結したFv、単鎖Fv、ジスルフィドによって連結したscFv、ダイアボディ、TANDABSなど、ならびに、前述のいずれかの修飾バージョンを含む(代替的な「抗体」フォーマットの概要に関しては、HolligerおよびHudson、Nature Biotechnology、2005、Vol 23、No.9、1126~1136参照)。
【0019】
用語「完全な抗体または免疫グロブリン(full antibody or immunoglobulin)」、「抗体または免疫グロブリンの全体(whole antibody or immunoglobulin)」、あるいは、「無傷の抗体または免疫グロブリン」は、本明細書で互換的に使用され、およそ150,000ダルトンの分子量を有するヘテロ4量体糖タンパク質を指す。無傷の抗体は、ジスルフィド共有結合によって連結された2つの同一な重鎖(HC)および2つの同一な軽鎖(LC)から構成されている。このH2L2構造は、折り畳まれて、「Fab」断片として知られる2つの抗原結合性断片、および、「Fc」結晶化可能フラグメント(crystallizable fragment)を含む3つの機能性ドメインを形成する。Fab断片は、アミノ末端の可変重鎖(VH)または可変軽鎖(VL)の可変ドメイン、ならびに、カルボキシ末端のCH1(重鎖)およびCL(軽鎖)の定常ドメインから構成されている。Fc断片は、対になったCH2およびCH3領域の2量体形成で形成される2つのドメインから構成されている。Fcは、免疫細胞上の受容体への結合によって、あるいは、古典的補体経路の最初の構成要素であるC1qへの結合によって、エフェクター機能を誘発し得る。抗体の5つのクラスIgM、IgA、IgG、IgEおよびIgDは、それぞれμ、α、γ、εおよびδと呼ばれる異なる重鎖のアミノ酸配列によって定義され、各重鎖がΚまたはλ軽鎖のいずれかと対を形成し得る。血清中の抗体の大部分は、IgGクラスに属し、ヒトIgGには4つのアイソタイプが存在し(IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4)、その配列は、主としてそのヒンジ領域で異なっている。
【0020】
完全ヒト抗体は、様々な方法を使用して、例えば、酵母ベースのライブラリーまたはヒト抗体のレパートリーを産生できるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を使用して得ることができる。目的の抗原に結合するヒト抗体を表面に提示する酵母は、FACS(Fluorescence-Activated Cell Sorting)ベースの方法を使用して、あるいは標識抗原使用ビーズ上への捕捉によって選択できる。ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現するように修飾したトランスジェニック動物を目的の抗原で免疫化して、抗原特異的ヒト抗体を、B細胞選別手法を使用して単離することができる。次いで、これらの手法を使用して産生したヒト抗体は、望ましい特性、例えば、親和性、開発可能性および選択性に関して特徴付けられ得る。
【0021】
代替的な抗体フォーマットとしては、代替的なスキャフォールドが挙げられ、抗原結合性タンパク質の1または2以上のCDRを、適切な非免疫グロブリンタンパク質スキャフォールドまたは骨組み、例えば、アフィボディ、SpAスキャフォールド、LDL受容体クラスAドメイン、アビマー(例えば、米国特許出願公開第2005/0053973号、同上第2005/0089932号、同上第2005/0164301号参照)またはEGFドメインの上に配置できる。
【0022】
用語「広域中和抗体」(broadly neutralizing antibody:bnAb)は、ウイルス付着および細胞への侵入を、HIVエンベロープ糖タンパク質(Env)(例えば、gp160、gp120、gp41)への結合を介して阻害する抗体と定義され、その阻害は、非限定的な例としては、HIV-1エンベロープ偽型ウイルスおよびウイルス分離株の大規模なパネル(100超)の50%超、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上において、インビトロでの感染を50%阻害するものである。例えば、米国公開特許出願第20120121597号;Burtonら、Broadly Neutralizing Antibodies to HIV and Their Role in Vaccine Design.Annu Rev Immunol.2016年5月20日;34:635~59を参照されたい。
【0023】
例えば、広域中和抗体としては、2G12、2F5、3BC176、3BNC60、3BNC117、4E10、8ANC131、8ANC195、10E8、10-1074、12A12、35022、b12、B2530、CH01-04、CH103、CH31、HJ16、M66.6、N6、N6LS、NIH45-46、PG9、PG16、PGDM1400、PGT121、PGT128、PGT135、PGT141-PGT145、PGT151、PGV04、VRC01、VRC01-LS、VRC07、VRC07-523、VRC07-LS、Z13または本明細書で開示される任意の他の広域中和抗体を挙げることができるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、広域中和抗体は、HIVエンベロープ糖タンパク質に結合する。いくつかの実施形態では、広域中和抗体は、gp160、gp120およびgp41からなる群から選択されるHIVエンベロープ糖タンパク質に結合する。一実施形態では、広域中和抗体は、HIVエンベロープ糖タンパク質gp41に結合する。いくつかの実施形態では、広域中和抗体はgp120に結合する。いくつかの実施形態では、広域中和抗体は、gp120に結合し、HIV-1を中和する。VRC07-523の例は、J.Virol、88(21):12669~12682ページ(2014年11月)に記述されている。3BNC1 17の例は、米国公開第20140212458号に記述されている。NIH45-46の例は、米国公開第20150274813号に記述されている。PGV04の例は、米国公開第20130251726号に記述されている。b12の例は、米国公開第20160009789号に記述されている。CH31の例は、米国公開第20130251726号に記述されている。CH103の例は、米国公開第20140212458号に記述されている。別の実施形態では、HIVエンベロープ糖タンパク質にgp120-gp41境界面で結合する抗体が提供される。かかる抗体としては、8ANC195、35022、およびPGT151から選択される抗体が挙げられるが、これらに限定されない。8ANC195の例は、米国公開第20150361160号に記述されている。35022の例は、米国公開第20160022803号に記述されている。PGT151の例は、米国公開第20150152167号に記述されている。別の実施形態では、これらに限定されないが、4E10、10E8、2F5およびZ13e1を含む、gp41 MPER(membrane-proximal external region)に結合する抗体が提供される。4E10の例は、米国公開第20160009789号に記述されている。10E8の例は、PCT公開出願第WO2013070776号に記述されている。2F5の例は、米国公開第20150158934号に記述されている。Z13e1の例は、米国公開第20120269821号に記述されている。
【0024】
いくつかの実施形態では、広域中和抗体は、VRC01、VRC01-LS、N6、N6LS、N6-DE、N6-LAGA、VRC07およびVRC07-523からなる群から選択される。VRC01の開示の例は、米国特許第8,637,036号に記述されている。VRC01-LSの開示の例は、WO2012/106578に記述されている。N6およびN6LSの開示の例は、WO2016/196975に記述されている。VRC07およびVRC07-523の開示の例は、米国特許第8,637,036号、米国特許公開第2014/0322163A1号、WO2016/196975およびWO2017/79479に記述されている。
【0025】
抗原結合部位
抗原結合部位は、抗原結合性タンパク質上の抗原に特異的に結合できる部位を指し、単一可変ドメインである場合もあれば、あるいは、標準的な抗体に見出され得る対になったVH/VLドメインである場合もある。また、単鎖Fv(ScFv)ドメインが抗原結合部位を提供する場合もある。
【0026】
CDR
「CDR」は、抗原結合性タンパク質の相補性決定領域のアミノ酸配列と定義される。これらは、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の超可変領域である。免疫グロブリンの可変部分には、3つの重鎖のCDR(またはCDR領域)および3つの軽鎖のCDR(またはCDR領域)が存在する。したがって、「CDR」は、本明細書で使用する場合、3つの重鎖のCDRすべて、3つの軽鎖のCDRすべて、重鎖および軽鎖のCDRすべて、または少なくとも2つのCDRを指す。
【0027】
本明細書を通して、完全長抗原結合配列内、例えば、抗体の重鎖の配列または抗体の軽鎖の配列内の可変ドメイン配列および可変ドメイン領域におけるアミノ酸残基は、Kabatナンバリング規則に従ってナンバリングされる。同様に、実施例で使用される用語「CDR」、「CDRL1」、「CDRL2」、「CDRL3」、「CDRH1」、「CDRH2」、「CDRH3」は、Kabatナンバリング規則に従う。さらなる情報に関しては、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第4版、U.S.Department of Health and Human Services、National Institutes of Health(1987)を参照されたい。
【0028】
可変ドメイン配列および完全長抗体配列内のアミノ酸残基に対する代替的なナンバリング規則が存在することは当業者には明らかであろう。また、CDR配列に対する代替的なナンバリング規則、例えば、Chothiaら(1989)Nature 342:877~883に記述されているナンバリング規則も存在する。抗原結合性タンパク質の構造およびタンパク質の折り畳みによっては、他の残基がCDR配列の一部と見なされることになり得、当業者にそのように理解されるであろう。
【0029】
当業者が利用可能な他のCDR配列に対するナンバリング規則としては、「AbM」(University of Bath)および「contact」(University College London)方法が挙げられる。
【0030】
以下の表1は、各CDRまたは結合ユニットに対する各ナンバリング規則を使用した一定義を表す。表1において、Kabatナンバリングスキームが、可変ドメインのアミノ酸配列のナンバリングを行うのに使用される。CDR定義のいくつかは、使用する個々の刊行物によって異なる場合があることに留意されたい。
【0031】
【0032】
CDRバリアント
CDRは、1以上のアミノ酸の置換、欠失または付加によって修飾され得、バリアント抗原結合性タンパク質は非修飾タンパク質の生物学的特徴を実質的に保持する。
【0033】
CDR H1、H2、H3、L1、L2、L3の各々は、単独で修飾され得るか、あるいは任意の変更または組合せで任意の他のCDRと組み合わせて修飾され得ることが理解されるであろう。一実施形態では、CDRは、最大3アミノ酸、例えば、1または2アミノ酸、例えば、1アミノ酸の置換、欠失または付加によって修飾される。典型的には、修飾は、置換、特に保存的置換、例えば、以下の表2に示されるようなものである。
【0034】
【0035】
例えば、バリアントCDRにおいて、代替的な定義、例えば、KabatまたはChothiaの一部としてCDRを構成する隣接残基は、保存的アミノ酸残基で置換され得る。
【0036】
上記のバリアントCDRを含む、かかる抗原結合性タンパク質は、本明細書では「機能性CDRバリアント」と呼ばれ得る。
【0037】
エピトープ
用語「エピトープ」は、本明細書で使用する場合、抗原結合性タンパク質の特定の結合ドメイン(パラトープとしても知られている)と接触する抗原の部分を指す。エピトープは直鎖状エピトープであっても、あるいはコンフォメーションエピトープ/不連続エピトープであってもよい。コンフォメーションエピトープまたは不連続エピトープは、抗原の一次配列において他の配列で分離されている(すなわち、連続した配列内にない)ポリペプチド鎖の三次折り畳みで集合するアミノ酸残基を含む。これらの残基は、ポリペプチド鎖の異なる領域からのものである場合があるが、しかし、抗原の三次元構造において近接している。多量体抗原の場合において、コンフォメーションエピトープまたは不連続エピトープは、異なるペプチド鎖からの残基を含み得る。エピトープ内に含まれる特定の残基は、コンピュータモデリングプログラムによって、または当技術分野で知られている方法、例えば、X線結晶構造解析で得られた三次元構造によって決めることができる。エピトープマッピングは、Methods in Molecular Biology「Epitope Mapping Protocols」、Mike SchutkowskiおよびUlrich Reineke(524巻、2009)ならびにJohan RockbergおよびJohan Nilvebrant(1785巻、2018)などの刊行物に記載されているように、当業者に知られている様々な手法を使用して実施できる。例示的な方法は、ペプチドベースアプローチ、例えば、一連の重複ペプチドの結合をELISAなどの手法を使用してスクリーニングするペプスキャン、あるいは、ファージ上などでペプチドまたはタンパク質の変異体の大規模ライブラリーをインビトロディスプレイする方法を含む。詳細なエピトープ情報は、X線結晶構造解析、溶液核磁気共鳴(NMR)分光法およびcryo-EM(cryogenic-electron microscopy)を含む構造学的手法によって決めることができる。変異誘発、例えば、アラニンスキャニングは、結合消失分析がエピトープマッピングに使用される効果的なアプローチである。別の方法は、水素/重水素交換(HDX)を、タンパク質分解およびLC-MS(liquid-chromatography mass spectrometry)分析と組み合わせて不連続エピトープまたはコンフォメーションエピトープを特徴付けるものである。
【0038】
同一性パーセント
クエリー核酸配列と、対象核酸配列との間の「同一性パーセント(Percent identity)」または「同一性パーセント(%)(% identity)」は、パーセンテージとして表現される「同一性」値であり、これは、ペアワイズグローバル配列アラインメントが適切なアルゴリズム(例えば、Needleman-WunschもしくはGenePAST/KERR)またはソフトウェア(例えば、DNASTAR LasergeneもしくはGenePAST/KERR)を使用して実施された後にクエリー配列の全長にわたって、適切なアルゴリズム(例えば、BLASTN、FASTA、Needleman-Wunsch、Smith-Waterman、LALIGN、もしくはGenePAST/KERR)またはソフトウェア(例えば、DNASTAR Lasergene、GenomeQuest、EMBOSS needleもしくはEMBOSS infoalign)を使用して計算される。重要なことに、クエリー核酸配列は、本明細書、特に1または2以上の請求項で開示される核酸配列によって記載され得る。
【0039】
クエリー配列は、対象配列と100%同一であってもよく、あるいは対象配列に対してある特定の整数までのアミノ酸またはヌクレオチドの変化を含み、その結果、同一性パーセント(%)が100%未満となってもよい。例えば、クエリー配列は、対象配列と少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または、少なくとも99%同一である。核酸配列の場合、かかる変化は、1以上のヌクレオチド残基の欠失、置換または挿入を含み、上記変化は、クエリー配列の5’末端位置または3’末端位置で生じ得るか、あるいは、これらの末端位置の間の任意の位置においてクエリー配列のヌクレオチド残基内にて個別でまたはクエリー配列内の1もしくは2以上の連続した群で散らばって生じ得る。アミノ酸配列の場合、かかる変化は、1以上のアミノ酸残基の欠失、置換(保存的置換および非保存的置換を含む)または挿入を含み、上記変化は、クエリー配列のアミノ末端位置またはカルボキシ末端位置で生じ得るか、あるいは、これらの末端位置の間の任意の位置においてクエリー配列のアミノ酸残基内にて個別でまたはクエリー配列内の1もしくは2以上の連続した群で散らばって生じ得る。
【0040】
抗体配列の場合、同一性パーセント(%)は、CDRを含むクエリー配列の全長にわたって決めることができる。あるいは、例えば、全てのCDRが対象配列と100%同一であり、同一性パーセント(%)の変動がクエリー配列の残りの部分、例えば、フレームワーク配列にあるため、CDR配列が固定され、無傷である場合、同一性パーセント(%)は、1もしくは2以上または全てのCDRを除外し得る。バリアント配列は、非修飾タンパク質の生物学的特徴を実質的に保持している。
【0041】
配列の変動(Sequence variation)
VHもしくはVL(またはHCもしくはLC)配列は、最大10アミノ酸の置換、付加または欠失を有するバリアント配列であり得る。例えば、バリアント配列は、最大9、8、7、6、5、4、3、2または1アミノ酸の置換、付加または欠失を有し得る。
【0042】
HC配列は、最大20%の配列の変動を有するバリアント配列であり得る。
【0043】
LC配列は、最大20%の配列の変動を有するバリアント配列であり得る。
【0044】
配列の変動は、例えば、CDRがVHもしくはVL(またはHCもしくはLC)配列で同じであり、変動がVHもしくはVL(またはHCもしくはLC)配列の残りの部分にあるため、CDR配列が固定され、無傷である場合、1もしくは2以上または全てのCDRを除外し得る。
【0045】
典型的には、変動は、置換、特に保存的置換、例えば、表2に示されるようなものである。バリアント配列は、非修飾タンパク質、例えば、N6の生物学的特徴を実質的に保持している。
【0046】
Fc修飾
Fc操作方法が、抗体の機能的特性または薬物動態特性を修飾するのに適用できる。エフェクター機能は、Fc領域に変異を生じさせて変化させることができ、該変異は、C1qまたはFcγ受容体への結合を増加または減少させ、補体依存性細胞傷害(complement-dependent cytotoxicity:CDC)活性を含む抗体媒介性補体活性化、または、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性を修飾する。また、抗体のグリコシル化パターンを修飾することで、エフェクター機能を変化させることもできる。抗体のインビボ半減期は、FcのFcRn(胎児性Fc受容体)への結合に影響を及ぼす変異を加えることで変化させることができる。
【0047】
エフェクター機能
用語「エフェクター機能」は、本明細書で使用する場合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体媒介性補体活性化、例えば、補体依存性細胞傷害(CDC)、補体依存性細胞媒介性食作用(complement-dependent cell-mediated phagocytosis:CDCP)、抗体依存性補体媒介性細胞溶解(antibody dependent complement-mediated cell lysis:ADCML)、および、Fc媒介性食作用(Fe-mediated phagocytosis)または抗体依存性細胞性食作用(antibody-dependent cellular phagocytosis:ADCP)を含む抗体媒介性効果のうちの1または2以上を指す。
【0048】
抗原結合性タンパク質または抗体のFc領域と、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、FcγRIII(CD16)、FcRn、C1q、およびII型Fc受容体を含む様々なFc受容体(FcR)との間の相互作用は、抗原結合性タンパク質または抗体のエフェクター機能を媒介すると考えられる。重要な生物学的効果は、エフェクター機能の結果であり得る。通常、エフェクター機能を媒介するには、抗原結合性タンパク質または抗体の抗原への結合が必要であり、全ての抗原結合性タンパク質または抗体があらゆるエフェクター機能を媒介するわけではない。
【0049】
エフェクター機能は、例えば、以下を含む多くの手法で評価できる:FcγRIIIを介してナチュラルキラー(NK)細胞によって媒介されるか、またはFcγRIを介して単球/マクロファージによって媒介される、標的細胞を被覆した抗体のADCCエフェクター機能の評価、あるいはC1qを介して補体カスケードによって媒介される、標的細胞を被覆した抗体のCDCエフェクター機能の評価。例えば、本発明の抗原結合性タンパク質のADCCエフェクター機能は、ナチュラルキラー細胞アッセイにおいて評価できる。かかるアッセイの例は、Shieldsら、2001、The Journal of Biological Chemistry、276巻、6591~6604ページ;Chappelら、1993、The Journal of Biological Chemistry、268巻、25124~25131ページ;Lazarら、2006、PNAS、103;4005~4010に見出すことができる。
【0050】
CDC機能を決めるためのアッセイの例は、J Imm Meth、1995、184:29~38に記載されているものを含む。エフェクター機能(例えば、FcRn結合、FcγRsおよびC1q結合、CDC、ADCML、ADCC、ADCP)への変異の影響は、例えば、Grevysら、J Immunol.2015年6月1日;194(11):5497~5508、またはTamら、Antibodies 2017、6(3);Monnetら、2014 mAbs、6:2、422~436に記載されているように評価できる。
【0051】
本明細書を通して、Fc領域、抗体配列または完全長抗原結合性タンパク質配列におけるアミノ酸残基は、EUインデックスナンバリング規則に従ってナンバリングされる。
【0052】
エフェクター機能の増強
特定の変異を含むヒトIgG1定常領域は、Fc受容体への結合を増強することが示されている。場合によっては、これらの変異はまた、以下で記載するように、エフェクター機能、例えば、ADCCおよびCDCを増強することが示されている。本発明の抗原結合性タンパク質は、以下の変異のいずれかを含み得る。
【0053】
CDCの増強:Fc操作は、補体ベースのエフェクター機能を増強するのに使用され得る。例えば、(IgG1を参照した場合)、K326W/E333S;S267E/H268F/S324T;およびIgG1/IgG3クロスサブクラスは、C1q結合を増加させることができる;E345R(Diebolderら、Science 2014;343:1260~1293)およびE345R/E430G/S440Yは、予め形成されたIgG6量体(Wangら、Protein Cell.2018年1月;9(1):63~73)をもたらす。
【0054】
ADCCの増強:Fc操作は、ADCCを増強するのに使用できる。例えば、(IgG1を参照した場合)、F243L/R292P/Y300L/V305I/P396L;S239D/I332E;およびS298A/E333A/K334Aは、FcγRIIIa結合を増加させ;S239D/I332E/A330Lは、FcγRIIIa結合を増加させ、FcγRIIb結合を減少させ;G236A/S239D/I332Eは、FcγRIIaへの結合を改善し、FcγRIIa/FcγRIIb結合比(活性化/阻害比)を改善し、マクロファージによる抗体被覆標的細胞の食作用を増強する。非対称で、一方の重鎖にはL234Y/L235Q/G236W/S239M/H268D/D270E/S298A変異を含み、反対の重鎖にはD270E/K326D/A330M/K334Eを含むFcは、FcγRIIIa F158(低親和性対立遺伝子)およびFcγRIIIa V158(高親和性対立遺伝子)に対する親和性を増加させるが、阻害性FcγRIIbに対する結合親和性を増加させない(Mimotoら、2013)。
【0055】
ADCPの増強:Fc操作は、ADCPを増強するのに使用できる。例えば、(IgG1を参照した場合)、G236A/S239D/I332Eは、FcγRIIa結合を増加させ、FcγRIIIa結合を増加させる(Richards Jら、Mol.Cancer Ther.2008;7:2517~2527)。
【0056】
同時結合の増加:Fc操作は、FcRとの同時結合を増加させるのに使用できる。例えば、(IgG1を参照した場合)、S267E/L328Fは、FcγRIIb結合を増加させ;N325S/L328Fは、FcγRIIa結合を増加させ、FcγRIIIa結合を減少させる(Wangら、2018)。
【0057】
エフェクター機能の減少
ヒト定常領域のいくつかのアイソタイプ、特に、IgG4およびIgG2アイソタイプは、本質的に以下の機能を欠いている:a)古典的経路による補体の活性化;およびb)ADCC。抗原結合性タンパク質の重鎖の定常領域への様々な修飾は、望ましいエフェクター特性に応じてエフェクター機能を変化させるために実施され得る。Fc受容体への結合を減少させ、エフェクター機能、例えば、ADCCおよびCDCを減少させる特定の変異を含むIgG1定常領域が記載されている(Duncanら、Nature 1988、332;563~564;Lundら、J.Immunol.1991、147;2657~2662;Chappelら、PNAS 1991、88;9036~9040;BurtonおよびWoof、Adv.Immunol.1992、51;1~84;Morganら、Immunology 1995、86;319~324;Hezarehら、J.Virol.2001、75(24);12161~12168)。
【0058】
本発明の一実施形態では、抗原結合性タンパク質のエフェクター機能、例えば、ADCCおよび/またはCDCが減少するような定常領域を含む抗原結合性タンパク質が提供される。かかる一実施形態では、重鎖の定常領域は、IgG2もしくはIgG4アイソタイプの自然発生的に無効化された定常領域または変異IgG1定常領域を含み得る。適切な修飾の例は、EP0307434に記載されている。一例は、235位および237位(EUインデックスナンバリング)でのアラニンとの置換、すなわち、L235AおよびG237A(一般的に「LAGA」変異と呼ばれる)を含む。別の例は、234位および235位(EUインデックスナンバリング)でのアラニンとの置換、すなわち、L234AおよびL235A(一般的に「LALA」変異と呼ばれる)を含む。EP2691417およびUS8969526に記載されているさらなる例は、IgG1 Fcでは、LALA変異(EUインデックスナンバリング)と組み合わせたP329GまたはP329Rを含み、IgG4 Fc(EUインデックスナンバリング)では、S228PおよびL235Eと組み合わせたP329GまたはP329Rを含む。
【0059】
FcRn結合の追加または増加により半減期を増加させる変異
「半減期」は、抗原結合性タンパク質の血清中濃度が元の値の半分に達するのに必要とされる時間を指す。タンパク質の血清中半減期は、Kimら、1994、Eur.J.of Immuno.24:542~548に記載されている方法に従って薬物動態研究によって測定できる。この方法に従って、放射性標識タンパク質は、マウスに静脈内注射し、例えば、注射後約3分間~約72時間、時間に対する血漿中濃度を、定期的に測定する。分子の薬物動態分析および半減期の決定のための他の方法は、当業者にはよく知られているであろう。
【0060】
本発明の抗原結合性タンパク質は、定常ドメインまたはその断片のFcRnに対する親和性が増加するアミノ酸修飾を有し得る。治療および診断用IgG抗体および他の生物活性分子の半減期(すなわち、血清中半減期)の増加は、これらの分子の投与量および/または投与頻度の減少を含む多くの利点を有する。一実施形態では、本発明の抗原結合性タンパク質は、以下のアミノ酸修飾の1または2以上を有するIgG定常ドメインの全てまたは一部(FcRn結合部分)を含む。
【0061】
例えば、IgG1を参照した場合、M252Y/S254T/T256E(一般的に「YTE」変異と呼ばれる)およびM428L/N434S(一般的に「LS」変異と呼ばれる)は、pH6.0でのFcRn結合を増加させる(Wangら、2018)。
【0062】
半減期はまた、T250Q/M428L、V259I/V308F/M428L、N434A、およびT307A/E380A/N434A変異(IgG1およびKabatナンバリングに準拠した場合)によっても増強され得る(Monnetら)。
【0063】
半減期およびFcRn結合はまた、H433KおよびN434F変異(一般的に「HN」または「NHance」変異と呼ばれる)の導入によっても延長され得る(IgG1を参照した場合)(WO2006/130834)。
【0064】
WO00/42072には、変化したFcRn結合親和性を有するバリアントFc領域を含むポリペプチドであって、そのFc領域のアミノ酸位置238、252、253、254、255、256、265、272、286、288、303、305、307、309、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、386、388、400、413、415、424、433、434、435、436、439および447(EUインデックスナンバリング)における1または2以上のアミノ酸修飾を含む、ポリペプチドを開示する。
【0065】
WO02/060919は、野生型IgG定常ドメインに対して1または2以上のアミノ酸修飾を含むIgG定常ドメインを含んでなる修飾されたIgGであって、野生型IgG定常ドメインを有するIgGの半減期と比較して増加した半減期を有し、1または2以上のアミノ酸修飾が、位置251、253、255、285~290、308~314、385~389および428~435の1または2以上に存在する、修飾されたIgGを開示する。
【0066】
Shieldsら(2001、J Biol Chem;276:6591~604)は、ヒトIgG1抗体のFc領域内の残基を変化させるのにアラニンスキャニング変異誘発を使用し、次いで、ヒトFcRnへの結合を評価した。アラニンに変えたときにFcRnへの結合を効果的に抑止した位置は、I253、S254、H435およびY436を含む。結合の減少がさほど顕著に示されなかった他の位置は以下の通りである:E233~G236、R255、K288、L309、S415およびH433。いくつかのアミノ酸位置が、アラニンに変えたときにFcRn結合の改善を示した;それらの中でも注目すべきは、P238、T256、E272、V305、T307、Q311、D312、K317、D376、E380、E382、S424およびN434である。多くの他のアミノ酸位置は、FcRn結合において、わずかな改善(D265、N286、V303、K360、Q362およびA378)を示したか、あるいは変化を示さなかった(S239、K246、K248、D249、M252、E258、T260、S267、H268、S269、D270、K274、N276、Y278、D280、V282、E283、H285、T289、K290、R292、E293、E294、Q295、Y296、N297、S298、R301、N315、E318、K320、K322、S324、K326、A327、P329、P331、E333、K334、T335、S337、K338、K340、Q342、R344、E345、Q345、Q347、R356、M358、T359、K360、N361、Y373、S375、S383、N384、Q386、E388、N389、N390、K392、L398、S400、D401、K414、R416、Q418、Q419、N421、V422、E430、T437、K439、S440、S442、S444およびK447)。
【0067】
FcRn結合の改善に関して最も顕著な効果は、組合せバリアントで見出された。pH6.0では、E380A/N434Aバリアントは、ネイティブなIgG1と比較して、FcRnへの結合がE380Aの場合は2倍であり、N434Aの場合は3.5倍であるのに対して、8倍超優れていることが示された。このバリアントにT307Aを加えると、ネイティブなIgG1と比較して結合が12倍改善した。一実施形態では、本発明の抗原結合性タンパク質は、E380A/N434A変異を含み、FcRnへの結合が増加している。
【0068】
Dall’Acquaら(2002、J Immunol.;169:5171~80)は、マウスFcRnに対するヒトIgG1のヒンジ-Fc断片ファージディスプレイライブラリーのランダム変異誘発およびスクリーニングを記載している。彼らは、位置251、252、254~256、308、309、311、312、314、385~387、389、428、433、434および436のランダム変異誘発を開示していた。IgG1-ヒトFcRn複合体の安定性は、Fc-FcRn境界面を横断する帯状の領域に位置している残基(M252、S254、T256、H433、N434およびY436)を置換した場合に大きく改善し、周辺の残基、例えば、V308、L309、Q311、G385、Q386、P387およびN389を置換した場合に、より低い程度であるが改善する。ヒトFcRnへの親和性が最も高いバリアントは、M252Y/S254T/T256E変異(「YTE」変異)と、H433K/N434F/Y436H変異とを組み合わせることで得られ、野生型IgG1と比較して親和性の57倍の増加を示した。かかる変異ヒトIgG1のインビボでの挙動は、野生型IgG1と比較して、カニクイザルにおいて血清中半減期のほぼ4倍の増加を示した。
【0069】
したがって、本発明は、FcRnへの結合が最適化された抗原結合性タンパク質を提供する。好ましい実施形態では、抗原結合性タンパク質は、上記抗原結合性タンパク質のFc領域内に1以上のアミノ酸修飾を含み、上記修飾は、Fc領域の226、227、228、230、231、233、234、239、241、243、246、250、252、256、259、264、265、267、269、270、276、284、285、288、289、290、291、292、294、297、298、299、301、302、303、305、307、308、309、311、315、317、320、322、325、327、330、332、334、335、338、340、342、343、345、347、350、352、354、355、356、359、360、361、362、369、370、371、375、378、380、382、384、385、386、387、389、390、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、403、404、408、411、412、414、415、416、418、419、420、421、422、424、426、428、433、434、438、439、440、443、444、445、446および447からなる群から選択されるアミノ酸位置における修飾である。
【0070】
さらに、様々な刊行物は、FcRn結合ポリペプチドを分子へ導入すること(WO97/43316、US5869046、US5747035、WO96/32478およびWO91/14438)によって、あるいは分子をFcRn結合親和性が保存されているが他のFc受容体への親和性が大きく減少している抗体と融合すること(WO99/43713)または抗体のFcRn結合ドメインと融合すること(WO00/09560、US4703039)によって修飾された半減期を有する生理活性分子を得るための方法を記載している。
【0071】
抗体の細胞傷害および半減期の両方を改善するためのFcRn親和性増強Fcバリアントが、pH6.0でのスクリーニングにおいて同定された。選択されたIgGバリアントは、低フコシル化分子として産生され得る。得られたバリアントは、hFcRnマウスにおいて、向上した血清中持続性および保存され増強されたADCCを示す(Monnetら)。例示的なバリアントは、以下を含む(IgG1およびKabatナンバリングに準拠した場合):
P230T/V303A/K322R/N389T/F404L/N434S;P228R/N434S;Q311R/K334R/Q342E/N434Y;C226G/Q386R/N434Y;T307P/N389T/N434Y;P230S/N434S;P230T/V305A/T307A/A378V/L398P/N434S;P23OT/P387S/N434S;P230Q/E269D/N434S;N276S/A378V/N434S;T307A/N315D/A330V/382V/N389T/N434Y;T256N/A378V/S383N/N434Y;N315D/A330V/N361D/A387V/N434Y;V259I/N315D/M428L/N434Y;P230S/N315D/M428L/N434Y;F241L/V264E/T307P/A378V/H433R;T250A/N389K/N434Y;V305A/N315D/A330V/P395A/N434Y;V264E/Q386R/P396L/N434S/K439R;E294del/T307P/N434Y(ここで、「del」は欠失を示す)。
【0072】
ドメイン
用語「ドメイン」は、ポリペプチドの残りの部分とは独立して三次構造を保持する折り畳まれたポリペプチド構造を指す。一般的に、ドメインは、ポリペプチドの個別の機能特性を担っており、多くの場合、タンパク質および/またはドメインの残りの部分の機能を損なうことなく、他のポリペプチドに追加、除去または移動され得る。
【0073】
単一可変ドメイン
用語「単一可変ドメイン」は、抗体可変ドメインに特徴的な配列を含む折り畳まれたポリペプチドドメインを指す。したがって、単一可変ドメインは、VH、VHHおよびVLなどの完全な抗体可変ドメイン、および修飾抗体可変ドメイン、例えば、1もしくは2以上のループが抗体可変ドメインに特徴的ではない配列で置き換えられているもの、あるいは短縮されているかまたはN末端もしくはC末端の延長を含む抗体可変ドメイン、ならびに、完全長ドメインの結合の活性および特異性を少なくとも保持する可変ドメインの折り畳まれた断片を含む。本明細書に定義される単一可変ドメインは、異なる可変領域またはドメインとは独立して、抗原またはエピトープに結合できる。「ドメイン抗体」または「DAB」は、ヒト「単一可変ドメイン」と同じものと考えることができる。単一可変ドメインは、ヒト単一可変ドメインであり得るが、しかし、他の種、例えば、げっ歯類(例えば、WO00/29004で開示されるもの)、テンジクザメおよびラクダ科VHH由来の単一可変ドメインも含む。ラクダ科VHHは、自然発生的に軽鎖を欠いた重鎖のみの抗体を産生する、ラクダ、ラマ、アルパカ、ヒトコブラクダ、およびグアナコを含む種由来の免疫グロブリンの単一可変ドメインポリペプチドである。かかるVHHドメインは、当技術分野で利用可能な標準的な手法に従ってヒト化でき、かかるドメインは、「単一可変ドメイン」であると考えられる。
【0074】
タンパク質スキャフォールド
抗原結合性断片は、1または2以上のCDRを、非抗体タンパク質スキャフォールド上に配置することによって提供され得る。「タンパク質スキャフォールド」としては、本明細書で使用する場合、免疫グロブリン(Ig)スキャフォールド、例えば、4鎖または2鎖抗体であり得るIgGスキャフォールド、抗体のFc領域のみを含み得るIgGスキャフォールド、抗体の1または2以上の定常領域を含み得るIgGスキャフォールド、定常領域がヒトまたは霊長類由来であり得るIgGスキャフォールド、あるいは、ヒトおよび霊長類の定常領域の人工キメラであり得るIgGスキャフォールドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
タンパク質スキャフォールドは、Igスキャフォールド、例えば、IgG、またはIgAスキャフォールドであり得る。IgGスキャフォールドは、無傷の抗体のドメイン(すなわち、CH1、CH2、CH3、VH、VL)の一部または全てを含み得る。抗原結合性タンパク質は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4またはIgG4PEから選択されるIgGスキャフォールドを含み得る。例えば、スキャフォールドはIgG1であり得る。スキャフォールドは、抗体のFc領域もしくはその一部からなるか、またはこれを含むことができる。
【0076】
タンパク質スキャフォールドは、CTLA-4、リポカリン、プロテインA由来分子、例えば、プロテインAのZドメイン(アフィボディ、SpA)、Aドメイン(アビマー/マキシボディ);熱ショックタンパク質、例えば、GroElおよびGroES;トランスフェリン(trans-body);アンキリン反復タンパク質(DARPin);ペプチドアプタマー;Cタイプレクチンドメイン(テトラネクチン);ヒト□-クリスタリンおよびヒトユビキチン(affilin);PDZドメイン;ヒトプロテアーゼインヒビターのサソリ毒クニッツタイプドメイン;ならびにフィブロネクチン/アドネクチンからなる群から選択されるスキャフォールドの誘導体であり得、抗原、例えば、gp120のCD4結合部位への結合を得るためにタンパク質操作に供されている。
【0077】
付着阻害剤(Attachment inhibitor)
本明細書で使用する場合、「付着阻害剤」は、HIVの外表面上のgp120タンパク質に結合して、HIVがCD4+ Tリンパ球(CD4細胞)に結合し、これに侵入するのを防ぐ、および/または、HIV感染CD4細胞の外表面上に発現するgp120タンパク質に結合する小分子薬のクラスを指す。付着阻害剤の例としては、テムサビルおよびホステムサビルが挙げられる。
【0078】
テムサビル
本明細書で使用する場合、テムサビルは、1-(4-ベンゾイルピペラジン-1-イル)-2-[4-メトキシ-7-(3-メチル-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-3-イル]エタン-1,2-ジオンまたはUS7,354,924に開示される化合物(I)を指す。
【0079】
【0080】
ホステムサビル
本明細書で使用する場合、ホステムサビルは、1-ベンゾイル-4-[2-[4-メトキシ-7-(3-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1イル)-1-[(ホスホノオキシ)メチル]-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-3-イル]-1,2-ジオキソエチル]-ピペラジンまたはUS7,745,625;US8,168,615;およびUS8,461,333に開示される化合物(II)を指す。
【0081】
【0082】
ホステムサビルは、テムサビルに代謝されるプロドラッグ(リン酸メチルがHに置き換えられた)である。非ホスホン化化合物は、1-ベンゾイル-4-[2-[4-メトキシ-7-(3-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-3-イル]-1,2-ジオキソエチル]-ピペラジンである。
【0083】
産生細胞
本明細書で使用する場合、「産生細胞」は、HIVの標的となり感染する細胞群を指す。次いで、この細胞群はHIVの複製を促進する。CD4+ Tリンパ球およびマクロファージは、この産生細胞のカテゴリーに該当する。
【0084】
プロドラッグ
本明細書で使用する場合、「プロドラッグ」は、薬物分子の生体可逆性の誘導体を指し、該誘導体は、酵素的および/または化学的変換をインビボで受けて、活性薬物を放出し、次いで、この活性薬物が望ましい薬理効果を発揮することができるものである。
【0085】
医薬組成物
本明細書で使用する場合、用語「医薬組成物」は、医薬用途に適した組成物を意味する。本明細書に記載される抗原結合性タンパク質、抗体、阻害剤およびインテグラーゼ阻害剤は、本明細書に記載されるヒト疾患の治療における使用のための医薬組成物に組み込まれ得る。一実施形態では、医薬組成物は、抗原結合性タンパク質と、1または2以上の薬学的に許容される担体および/または賦形剤とを含む。
【0086】
薬学的に許容される塩
本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容される塩」は、対象化合物の望ましい生物活性を保持し、望ましくない毒性効果の発生が最小限である塩を指す。これらの薬学的に許容される塩は、化合物の最終の単離および精製中にその場で調製してもよいし、あるいは、遊離酸または遊離塩基の形態の精製した化合物を適切な塩基または酸それぞれと別々に反応させることによって調製してもよい。
【0087】
薬学的に許容される塩としては、特に、Berge,J.Pharm.Sci.、1977、66、1~19に記載されているもの、または編集者P H StahlおよびC G Wermuth、Handbook of Pharmaceutical Salts;Properties,Selection and Use、第2版Stahl/Wermuth:Wiley- VCH/VHCA、2011に列挙されているものが挙げられる。
【0088】
適切な薬学的に許容される塩としては、酸または塩基付加塩を挙げることができる。本発明の適切な薬学的に許容される塩としては、塩基付加塩が挙げられる。
【0089】
代表的な薬学的に許容される塩基付加塩としては、アルミニウム、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール(TRIS、トロメタミン)、アルギニン、ベネタミン(benethamine)(N-ベンジルフェネチルアミン)、ベンザチン(N,N’-ジベンジルエチレンジアミン)、ビス-(2-ヒドロキシエチル)アミン、ビスマス、カルシウム、クロロプロカイン、コリン、クレミゾール(1-pクロロベンジル-2-ピロリルジン(pyrrolildine)-1’-イルメチルベンズイミダゾール)、シクロヘキシルアミン、ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、ジエチルトリアミン、ジメチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ドーパミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、L-ヒスチジン、鉄、イソキノリン、レピジン、リチウム、リジン、マグネシウム、メグルミン(N-メチルグルカミン)、ピペラジン、ピペリジン、カリウム、プロカイン、キニーネ、キノリン、ナトリウム、ストロンチウム、t-ブチルアミン、および亜鉛が挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
治療有効量
本明細書で使用する場合、用語「治療有効量」または「有効量」は、投与される化合物の量を指し、該量は、病態を予防する、あるいは、治療される障害の症状の1または2以上をある程度緩和するものである。本明細書での使用に適した医薬組成物としては、活性成分が意図した目的を達成するのに十分な量で含まれる組成物が挙げられる。治療有効量を決めることは、特に本明細書に提供される詳細な説明を考慮すれば、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0091】
治療(Treat)
本明細書で使用する場合、治療法の文脈での用語「治療」、「治療する(treating)」または「治療する(treat)」は、特定の病態を軽減すること、病態の症状を排除または軽減すること、病態の進行、浸潤、または拡散を遅延または排除すること、ならびに、以前罹患していたヒトにおける病態の再発を軽減または遅延することを指す。本発明は、いくつかの病態を治療するためのそれを必要とする哺乳類(例えば、ヒト)における医薬の調製のための本発明の化合物または組成物の使用をさらに提供する。
【0092】
予防(Prevent)
本明細書で使用する場合、治療法の文脈での用語「予防」、「予防する(preventing)」または「予防する(prevent)」は、特定の病態または病態の症状を防止すること、あるいは、先行する感染の発生において病態の再発を防止することを指す。本発明は、いくつかの病態を予防するためのそれを必要とする哺乳類(例えば、ヒト)における医薬の調製のための本発明の化合物の使用をさらに提供する。
【0093】
中和(Neutraliza)
本明細書で使用する場合、用語「中和する(neutralize)」または「中和する(neutralizing)」は、インビトロまたはインビボで、抗原結合性タンパク質の存在下のHIV抗原、例えば、ENVまたはgp120の生物活性を、抗原結合性タンパク質の非存在下の抗原の活性と比較して低下させることを指す。HIVの中和は、HIVの受容体との相互作用を介してウイルス侵入を防ぐことによるものであり得る。
【0094】
HIV抗原認識
本明細書で使用する場合、用語「HIV抗原認識」、「抗原認識」、または「ENV検出」は、CD4bs結合性タンパク質による感染細胞の表面上のENVへの結合を指す。
【0095】
クリアランス(Clearance)
本明細書で使用する場合、用語「クリアランス」、「クリアランスする(clear)」または「クリアランスする(clearing)」は、HIV感染細胞の殺傷を指す。一例として、一実施形態では、「クリアランス」は、単独または1もしくは2以上の他の化合物との組合せでの治療的投与または投与の組合せが、ウイルスを産生できる複製能のあるHIVゲノムを保有する細胞の除去、排除、または殺傷を誘導することを指す。クリアランスは、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)試験で測定されるHIV DNAのレベルの減少として反映され得る。クリアランスはまた、治療的介入を中止したときのHIVウイルスの検出の遅延としても反映され得る。
【0096】
治癒(Cure)
本明細書で使用する場合、治療法の文脈での用語「治癒」、「治癒する(curing)」または「ウイルス寛解(viral remission)」は、定められた期間の間、ヒト免疫不全ウイルスもしくは症状、または症状もしくはウイルスの進行を根絶、停止、休止または終結することを指す。一例として、一実施形態では、「治癒」または「治癒を行う(curing)」は、単独または1もしくは2以上の他の化合物との組合せでの治療的投与または投与の組合せが、ヒト免疫不全ウイルスの持続的なウイルス制御(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)試験、bDNA(branched chain DNA)試験または核酸配列ベース増幅(NASBA)試験で血漿ウイルス血症が検出されないレベル)を、他の治療的介入なしに誘導し維持する(最低でも2年後に)ことを指す。以上のPCR、bDNAおよびNASBA試験は、当業者に知られている手法およびよく知られている手法を使用して実施される。一例として、ヒト免疫不全ウイルスもしくは症状、または症状もしくはウイルスの進行の根絶、停止、休止または終結は、最低2年間持続し得る。
【0097】
非経口
本明細書で使用する場合、治療法の文脈での用語「非経口の(parenteral)」または「非経口で(parenterally)」は、医薬化合物または組成物の経口投与以外の投与経路を指す。本明細書での使用に適した非経口投与経路は、注射、注入、移植、あるいは、消化管以外の他の何らかの経路を含む。非経口注射投与経路は、静脈内、筋肉内および皮下注射投与経路を含む。
【0098】
閉じたコンフォメーション(Closed Conformation)
本明細書で使用する場合、用語「閉じたコンフォメーション」、「状態1のコンフォメーション(state 1 conformation)」、「融合前コンフォメーション」または「プレトリガー状態(pre-triggered state)」は、中和抗体の認識からの回避をもたらすN-結合型グリカンで多量に覆われた外表面が露出しているCD4受容体結合の前のHIV ENV3量体構築の状態を指す。CD4受容体との相互作用は、ENVの構造の再編成と、中間の開いた状態へのコンフォメーション遷移とを引き起こし、ひいては閉じたコンフォメーションでは遮蔽されていた共受容体結合部位およびエピトープの露出が生じることとなる。
【0099】
発明の説明
HIVの治療を行う方法
本発明の方法は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)を治療、クリアランス、中和、予防または治癒するために使用され得る。一態様では、本発明は、HIVを治療または予防する方法であって、以下の群:CD4bs結合性タンパク質;gp120結合性タンパク質;広域中和抗体またはその抗原結合性断片;ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩;ならびに、インテグラーゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩から選択される、治療有効量の2種または3種以上の薬剤を投与することを含む、方法を提供する。
【0100】
一態様では、それを必要とするヒトにおいてHIV感染を治療または予防するための方法であって、治療有効量の:(a)ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩を含む第1の薬剤;ならびに、(b)少なくとも1種の広域中和抗体またはその抗原結合性断片を含む第2の薬剤を投与することを含む、方法が提供される。
【0101】
一態様では、それを必要とするヒトにおいてHIV感染を治療または予防するための方法であって、治療有効量の:(a)ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩を含む第1の薬剤;(b)少なくとも1種の広域中和抗体またはその抗原結合性断片を含む第2の薬剤;ならびに、(c)少なくとも1種のインテグラーゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩を含む第3の薬剤を投与することを含む、方法が提供される。
【0102】
いくつかの実施形態では、それを必要とするヒトにおいてHIV感染を治療または予防するための方法であって、治療有効量の:(a)ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩を含む第1の薬剤;ならびに、(b)少なくとも1種の広域中和抗体またはその抗原結合性断片を含む第2の薬剤を投与することを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、第1の薬剤は、ホステムサビルまたはその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、第1の薬剤は、テムサビルまたはその薬学的に許容される塩である。
【0103】
いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、HIV gp160、HIV gp120およびHIV gp41からなる群から選択される少なくとも1種のHIV糖タンパク質に結合する少なくとも1種の広域中和抗体またはその抗原結合性断片である。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の広域中和抗体は、HIV gp160に結合する。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の広域中和抗体は、HIV gp120に結合する。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の広域中和抗体は、HIV gp41に結合する。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、2G12、2F5、3BC176、3BNC60、3BNC1-17、4E10、8ANC131、8ANC195、10E8、10-1074、12A12、35022、b12、B2530、CH01-04、CH103、CH31、HJ16、M66.6、N6、N6LS、N6-DE、N6-LAGA、NIH45-46、PG9、PG16、PGDM1400、PGT121、PGT128、PGT135、PGT141-PGT145、PGT151、PGV04、VRC01、VRC01-LS、VRC07、VRC07-523、VRC07-LSおよびZ13からなる群から選択される少なくとも1種の抗体である。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、N6、N6LS、N6-DE、N6-LAGA、VRC01、VRC01-LS、VRC07、VRC07-523およびVRC07-LSからなる群から選択される少なくとも1種の抗体である。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、N6、N6LS、N6-DE、VRC01、VRC01-LS、VRC07、VRC07-523およびVRC07-LSからなる群から選択される少なくとも1種の抗体である。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、N6、N6LSおよび本明細書で開示されるADCC変異のいずれか1つを有するN6またはN6LSからなる群から選択される、少なくとも1種の抗体である。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、配列番号1と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むCDRH1のアミノ酸配列と、配列番号2と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むCDRH2のアミノ酸配列と、配列番号3と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むCDRH3のアミノ酸配列とを有する重鎖相補性決定領域(CDRH)、および、配列番号4と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むCDRL1のアミノ酸配列と、配列番号5と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むCDRL2のアミノ酸配列と、配列番号6と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むCDRH3のアミノ酸配列とを有する軽鎖相補性決定領域(CDRL)を含む、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片である。ある実施形態では、第2の薬剤は、配列番号7と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片である。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、配列番号8と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片である。いくつかの実施形態では、単離されたモノクローナル抗体は、M428L変異およびN434S変異を含む組換え定常ドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、単離されたモノクローナル抗体は、S239D変異およびI332E変異を含む組換え定常ドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、単離されたモノクローナル抗体は、L235A変異およびG237A変異を含む組換え定常ドメインをさらに含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、配列番号1のCDRH1のアミノ酸配列と、配列番号2のCDRH2のアミノ酸配列と、配列番号3のCDRH3のアミノ酸配列とを有する重鎖相補性決定領域(CDRH)、および、配列番号4のCDRL1のアミノ酸配列と、配列番号5のCDRL2のアミノ酸配列と、配列番号6のCDRH3のアミノ酸配列とを有する軽鎖相補性決定領域(CDRL)を含む、単離されたN6モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片である。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、配列番号1のCDRH1のアミノ酸配列と、配列番号2のCDRH2のアミノ酸配列と、配列番号3のCDRH3のアミノ酸配列とを有する重鎖相補性決定領域(CDRH);配列番号4のCDRL1のアミノ酸配列と、配列番号5のCDRL2のアミノ酸配列と、配列番号6のCDRH3のアミノ酸配列とを有する軽鎖相補性決定領域(CDRL);ならびに、M428L変異およびN434S変異を含む組換え定常ドメインを含む、単離されたN6LSモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片である。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、配列番号1のCDRH1のアミノ酸配列と、配列番号2のCDRH2のアミノ酸配列と、配列番号3のCDRH3のアミノ酸配列とを有する重鎖相補性決定領域(CDRH);配列番号4のCDRL1のアミノ酸配列と、配列番号5のCDRL2のアミノ酸配列と、配列番号6のCDRH3のアミノ酸配列とを有する軽鎖相補性決定領域(CDRL);ならびに、S239D変異およびI332E変異を含む組換え定常ドメインを含む、単離されたN6-DEモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片である。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、配列番号1のCDRH1のアミノ酸配列と、配列番号2のCDRH2のアミノ酸配列と、配列番号3のCDRH3のアミノ酸配列とを有する重鎖相補性決定領域(CDRH);配列番号4のCDRL1のアミノ酸配列と、配列番号5のCDRL2のアミノ酸配列と、配列番号6のCDRH3のアミノ酸配列とを有する軽鎖相補性決定領域(CDRL);ならびに、L235A変異およびG237A変異を含む組換え定常ドメインを含む、単離されたN6-LAGAモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片である。いくつかの実施形態では、抗原結合性断片は、Fv、Fab、F(ab’)2、scFvまたはscFV2断片である。
【0105】
いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1種のインテグラーゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩を含む、治療有効量の第3の薬剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、第3の薬剤は、ラルテグラビル、エルビテグラビル、ドルテグラビル、ビクテグラビルおよびカボテグラビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤である。いくつかの実施形態では、第3の薬剤は、ラルテグラビルまたはカボテグラビルである。いくつかの実施形態では、第3の薬剤は、カボテグラビルである。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、本明細書で開示される定常ドメインにおける1以上のFc修飾を有するN6である。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、N6LSである。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、N6-DEである。いくつかの実施形態では、第1の薬剤はテムサビルであり、第2の薬剤はN6LSおよびN6-DEからなる群から選択され、かつ、第3の薬剤はカボテグラビルである。ある実施形態では、第1の薬剤はテムサビルであり、第2の薬剤はN6LSであり、かつ、第3の薬剤はカボテグラビルである。いくつかの実施形態では、第1の薬剤はテムサビルであり、第2の薬剤はN6-DEであり、かつ、第3の薬剤はカボテグラビルである。いくつかの実施形態では、第1の薬剤はホステムサビルであり、第2の薬剤はN6LSであり、かつ、第3の薬剤はカボテグラビルである。いくつかの実施形態では、第1の薬剤はホステムサビルであり、第2の薬剤はN6-DEであり、かつ、第3の薬剤はカボテグラビルである。
【0106】
いくつかの実施形態では、上記の実施形態のいずれか1つに従う方法は、第1の薬剤、第2の薬剤および第3の薬剤の各々が、医薬組成物の形態である。いくつかの実施形態では、第1の薬剤は、第2の薬剤を投与する前に投与される。いくつかの実施形態では、本方法は、ヒトに、約1mg/kg体重~約100mg/kg体重の第1の薬剤を、1日1回、1日2回または1日3回、経口投与することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、ヒトに、約1mg/kg体重~約100mg/kg体重の第1の薬剤を、1日1回、1日2回または1日3回、非経口投与することを含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、ヒトは、ヒト免疫不全ウイルス1(HIV-1)感染と診断される。いくつかの実施形態では、ヒトは、以前に1または2以上の異なるHIV治療モダリティ(modality)で治療されている。いくつかの実施形態では、ヒトは、高活性抗レトロウイルス療法(highly active antiretroviral therapy:HAART)と名付けられた抗レトロウイルス薬の組合せの治療レジメンで治療されている。いくつかの実施形態では、ヒトは、最新の抗レトロウイルス療法(antiretroviral therapy:ART)で治療されている。
【0108】
一態様では、本発明は、それを必要とするヒトにおいてHIVを治療または予防する方法であって、ヒトに、治療有効量の:(a)ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩を含む第1の薬剤;ならびに、(b)CD4bs結合性タンパク質、gp120結合性タンパク質およびインテグラーゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩からなる群から選択される第2の薬剤を投与することを含む、方法を提供する。
【0109】
一態様では、本発明は、それを必要とするヒトにおいてHIVを治療または予防する方法であって、ヒトに、治療有効量の:(a)ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩を含む第1の薬剤;(b)少なくとも1種のCD4bs結合性タンパク質を含む第2の薬剤;ならびに、(c)少なくとも1種のインテグラーゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩を含む第3の薬剤を投与することを含む、方法を提供する。
【0110】
一態様によれば、本発明は、それを必要とするヒトにおいてHIV感染を治療する方法であって、ヒトに、治療有効量の、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩を投与すること、ならびに、連続して、治療有効量のCD4bs結合性タンパク質を投与することを含み、CD4bs結合性タンパク質が、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩の後に投与される、方法を提供する。
【0111】
別の態様によれば、本発明は、それを必要とするヒトからHIV感染細胞をクリアランスする方法であって、治療有効量の、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩、ならびに、治療有効量のCD4bs結合性タンパク質を投与することを含む、方法を提供する。HIV感染細胞をクリアランスする方法の一実施形態では、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩、ならびに、CD4bs結合性タンパク質の投与は、同時である。HIV感染細胞をクリアランスする方法の一実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩の後に投与される。
【0112】
別の態様によれば、本発明は、それを必要とするヒトにおいてHIV感染を予防する方法であって、ヒトに、治療有効量の、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩を投与すること、ならびに、連続して、治療有効量のCD4結合部位(CD4bs)結合性タンパク質を投与することを含み、CD4bs結合性タンパク質が、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩の後に投与される、方法を提供する。
【0113】
別の態様によれば、本発明は、それを必要とするヒトにおいてHIV感染を中和する方法であって、ヒトに、治療有効量の、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩を投与すること、ならびに、連続して、治療有効量のCD4結合部位(CD4bs)結合性タンパク質を投与することを含み、CD4bs結合性タンパク質が、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩の投与の後に投与される、方法を提供する。
【0114】
別の態様によれば、本発明は、それを必要とするヒトにおいてHIV感染を治癒する方法であって、ヒトに、治療有効量の、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩を投与すること、ならびに、連続して、治療有効量のCD4結合部位(CD4bs)結合性タンパク質を投与することを含み、CD4bs結合性タンパク質が、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩の投与の後に投与される、方法を提供する。
【0115】
いくつかの実施形態では、少なくとも1種の薬剤は、テムサビルまたはホステムサビルである。一実施形態では、少なくとも1種の薬剤は、テムサビルである。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の薬剤は、ホステムサビルである。いかなる理論または作用機序にも拘束されるものではないが、テムサビルまたはホステムサビルは、gp120ウイルスの受容体を遮断することで作用し、ウイルスが、宿主CD4+細胞へ付着する最初の段階を妨げ、そして、宿主CD4+細胞へ侵入するのを防ぐ可能性がある。いくつかの実施形態では、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩の投与は、経口または非経口である。本方法の一実施形態では、テムサビルの投与は、非経口である。いくつかの実施形態では、ホステムサビルの投与は、経口である。いくつかの実施形態では、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩は、1mg/kg体重~100mg/kg体重の用量(dose)の範囲で投与される。いくつかの実施形態では、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩の用量は、100mg~1200mgである。本方法の一実施形態では、ホステムサビルの用量は、600mgである。いくつかの実施形態では、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩の投与は、1日1回の用量の投与(a daily dose)、1日2回の用量の投与(a twice-daily dose)、または、1日3回の用量の投与(a three times daily dose)である。いくつかの実施形態では、投与は、1日2回の用量の投与である。いくつかの実施形態では、投与は、1日1回の用量の投与である。本方法の一実施形態では、投与は、1日3回の用量の投与である。
【0116】
いくつかの実施形態では、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩は、gp120を宿主細胞膜表面上にロックする。いくつかの実施形態では、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩は、gp120を閉じたコンフォメーションにロックする。いくつかの実施形態では、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩は、細胞膜結合CD4が、宿主細胞で発現したgp120と相互作用するのを妨げる。いくつかの実施形態では、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩は、CD4bs結合性タンパク質の結合を可能とするか、または促進する。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質のHIV感染宿主細胞への結合は、フローサイトメトリーによって平均蛍光強度(MFI)を使用して測定される。
【0117】
いくつかの実施形態では、本方法は、gp120結合性タンパク質を含む。gp120結合性タンパク質は、HIVビリオンまたは感染宿主細胞上に見出されるgp120に結合する。いくつかの実施形態では、gp120結合性タンパク質は、CD4bs結合性タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、少なくとも1種のCD4bs結合性タンパク質である。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、抗体またはその結合性断片である。いくつかの実施形態では、抗体は、広域中和抗体またはその結合性断片である。いくつかの実施形態では、広域中和抗体は、N6、N6LS、N6-DEおよびN6-LAGAからなる群から選択される。
【0118】
いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、配列番号1と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むCDRH1のアミノ酸配列と、配列番号2と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むCDRH2のアミノ酸配列と、配列番号3と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むCDRH3のアミノ酸配列とを有する重鎖相補性決定領域(CDRH);および、配列番号4と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むCDRL1のアミノ酸配列と、配列番号5と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むCDRL2のアミノ酸配列と、配列番号6と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むCDRL3のアミノ酸配列とを有する軽鎖相補性決定領域(CDRL)を含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、配列番号7からなる群から選択される配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含む重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、配列番号8からなる群から選択される配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含む軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、配列番号9、11、13および14からなる群から選択される配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含む重鎖(HC)のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、配列番号10および12からなる群から選択される配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含む軽鎖(LC)のアミノ酸配列を含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質抗体は、完全長免疫グロブリンCD4bs結合性タンパク質を含む。本方法の一実施形態では、完全長免疫グロブリンCD4bs結合性タンパク質は、フラグメント結晶化可能領域(fragment crystallizable region)または「Fc」領域または「定常領域」を含む。定義された抗体のいずれかのFcは、抗体のインビボ半減期を最適化するために、1または2以上のアミノ酸置換を含み得る。IgG Abの血清中半減期は、胎児性Fc受容体(FcRn)によって調節される。いくつかの実施形態では、抗体は、FcRnへの結合を増加させるアミノ酸置換を含む。いくつかのかかる置換は、当業者に知られており、例えば、IgG定常領域のT250QおよびM428L(例えば、Hintonら、J Immunol、176:346~356、2006参照);M428LおよびN434S(「LS」変異、例えば、Zalevskyら、Nature Biotechnology、28:157~159、2010参照);N434A(例えば、Petkovaら、Int.Immunol、18:1759~1769、2006参照);T307A、E380AおよびN434A(例えば、Petkovaら、Int.Immunol、18:1759~1769、2006参照);ならびに、M252Y、S254TおよびT256E(例えば、Dall’Acquaら、J.Biol.Chem.、281:23514~23524、2006参照)における置換などが知られている。開示される抗体および抗原結合性断片は、上記で列挙された置換のいずれかを含むFcポリペプチドに連結され得、例えば、FcポリペプチドはM428L置換およびN434S置換を含み得る。いくつかの実施形態では、抗体は、非修飾定常ドメインと比較して胎児性Fc受容体への結合を向上させる修飾を含む組換え定常ドメインを含み、該組換えドメインは、M428L変異およびN434S変異を含むIgG1定常ドメインである。
【0121】
いくつかの実施形態では、定義された抗体のいずれかの定常領域は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を最適化するために、1または2以上のアミノ酸置換を含む。ADCCは、主に、一組の密接に関連したFcガンマ受容体(FcyR)を介して媒介される。いくつかの実施形態では、抗体は、FcyRIIIaへの結合を増加させる1または2以上のアミノ酸置換を含む。いくつかのかかる置換が当業者に知られており、例えば、IgG定常領域のS239DおよびI332E(例えば、Lazarら、Proc.Natl,Acad.Sci.U.S.A.、103:4005~4010、2006参照);S239D、A330LおよびI332E(例えば、Lazarら、Proc.Natl,Acad.Sci.U.S.A.、103:4005~4010、2006参照)における置換などが知られている。
【0122】
いくつかの実施形態では、上記の置換の組合せもまた含まれ、FcRnおよびFcyRIIIaへの結合が増加したIgG定常領域を生成する。組合せは、抗体の半減期およびADCCを増加させる。例えば、かかる組合せは、Fc領域内に以下のアミノ酸置換を有する抗体を含む:(1)S239D/I332EおよびT250Q/M428L;(2)S239D/I332EおよびM428L/N434S;(3)S239D/I332EおよびN434A;(4)S239D/I332EおよびT307A/E380A/N434A;(5)S239D/I332EおよびM252Y/S254T/T256E;(6)S239D/A330L/I332Eおよび250Q/M428L;(7)S239D/A330L/I332EおよびM428L/N434S;(8)S239D/A330L/I332EおよびN434A;(9)S239D/A330L/I332EおよびT307A/E380A/N434A;または(10)S239D/A330L/I332EおよびM252Y/S254T/T256E。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、感染細胞に対して直接細胞傷害性となるように、あるいは、自然防御、例えば、補体、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)またはマクロファージによる食作用を利用するように、修飾される。
【0123】
いくつかの実施形態では、抗体は、抗体断片である。いくつかの実施形態では、抗体断片は、Fab断片、F(ab’)2断片、単鎖Fvタンパク質(「scFv」)、ジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)、ダイアボディおよびTANDABSから選択される。本方法の一実施形態では、抗体断片は、scFvである。
【0124】
いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、非修飾定常ドメインと比較して胎児性Fc受容体への結合を向上させる修飾を含む組換え定常ドメインを含み、該組換えドメインは、M428L変異およびN434S変異(「LS」変異)を含むIgG1定常ドメインである。
【0125】
いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、非修飾定常ドメインと比較して抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)に影響を及ぼす修飾を含む組換え定常ドメインを含み、該組換えドメインは、S239D/I332E変異(「DE」変異)またはL235A/G237A変異(「LAGA」変異)を含むIgG1定常ドメインである。
【0126】
いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、N6、N6LS、N6-LAGAおよびN6-DEからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、N6である。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、N6LSである。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、N6-LAGAである。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、N6-DEである。
【0127】
いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩の投与の少なくとも30分後、少なくとも1時間後、少なくとも2時間後、少なくとも4時間後または少なくとも6時間後の時点で連続して投与される。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩の投与の少なくとも30分後の時点で投与される。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩の投与の少なくとも1時間後の時点で投与される。本方法の一実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩の投与の少なくとも2時間後の時点で投与される。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩の投与の少なくとも4時間後の時点で投与される。本方法の一実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩の投与の少なくとも6時間後の時点で投与される。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩の投与の少なくとも24時間後の時点で投与される。本方法の一実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩の投与の少なくとも48時間後の時点で投与される。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩の投与の少なくとも72時間後の時点で投与される。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩の投与の少なくとも96時間後の時点で投与される。理論に束縛されるものではないが、ヒトに、CD4結合部位(CD4bs)結合性タンパク質の投与の前に、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩を投与すると、CD4bs結合性タンパク質のHIV ENVへの結合が増強される。これは、ヒトに、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩を投与すると、ENV3量体の細胞内グリコシル化および/またはプロセシングが変化し、CD4bs結合性タンパク質の結合およびHIV抗原認識が促進されるためであると考えられる。また、ヒトに、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩を投与すると、ENV3量体が宿主細胞の表面膜にロックまたは固定されて、ENVの排出(shedding)が妨げられ、bnAbの結合(engagement)が促進されると考えられる。
【0128】
いくつかの実施形態では、本方法は、連続して投与した後に、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩、ならびに、CD4bs結合性タンパク質を同時に投与する第2の投与を少なくともさらに含む。
【0129】
様々な実施形態では、本方法は、少なくとも1種のインテグラーゼ阻害剤を投与することを含む。インテグラーゼ阻害剤、すなわち、INSTI(integrase strand transfer inhibitor)は、レトロウイルスの組込みを妨げることで機能する活性物質である。例示的な化合物としては、ラルテグラビル、エルビテグラビル、ドルテグラビル、ビクテグラビルおよびカボテグラビルが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、少なくとも1種のインテグラーゼ阻害剤は、カボテグラビルを含む。
【0130】
HIVの治療に使用するための組合せ
一態様では、本発明は、HIVの治療に使用するための医薬組成物であって、以下の群:CD4bs結合性タンパク質;gp120結合性タンパク質;ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩;ならびに、インテグラーゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩から選択される、2種または3種以上の薬剤を含む、医薬組成物を提供する。
【0131】
一態様では、本発明は、HIVの治療または予防に使用するための組合せであって、ヒトに、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩を含む第1の薬剤を含む第1の医薬組成物、ならびに、少なくとも1種の広域中和抗体またはその抗原結合性断片を含む第2の薬剤を含む第2の医薬組成物を投与することを含む、組合せを提供する。いくつかの実施形態では、HIVの治療または予防に使用するための組合せは、少なくとも1種のインテグラーゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩を含む第3の薬剤を含む第3の医薬組成物を投与することをさらに含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、第1の薬剤は、テムサビルまたはその薬学的に許容される塩である。さらなる他の実施形態では、第1の薬剤は、ホステムサビルまたはその薬学的に許容される塩である。
【0133】
いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、HIVエンベロープ糖タンパク質またはHIV gp120に結合する。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、2G12、2F5、3BC176、3BNC60、3BNC1-17、4E10、8ANC131、8ANC195、10E8、10-1074、12A12、35022、b12、B2530、CH01-04、CH103、CH31、HJ16、M66.6、N6、N6LS、N6-DE、N6-LAGA、NIH45-46、PG9、PG16、PGDM1400、PGT121、PGT128、PGT135、PGT141-PGT145、PGT151、PGV04、VRC01、VRC01-LS、VRC07、VRC07-523、VRC07-LSおよびZ13からなる群から選択される少なくとも1種の薬剤である。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、N6、N6LS、N6-DE、N6-LAGA、VRC01、VRC01-LS、VRC07、VRC07-523およびVRC07-LSからなる群から選択される少なくとも1種の抗体である。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、N6、N6LS、N6-DE、VRC01、VRC01-LS、VRC07、VRC07-523およびVRC07-LSからなる群から選択される少なくとも1種の抗体である。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、N6、N6LSおよび本明細書で開示されるADCC変異のいずれか1つを有するN6またはN6LSからなる群から選択される、少なくとも1種の抗体である。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、配列番号1と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むCDRH1のアミノ酸配列と、配列番号2と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むCDRH2のアミノ酸配列と、配列番号3と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むCDRH3のアミノ酸配列とを有する重鎖相補性決定領域(CDRH)、および、配列番号4と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むCDRL1のアミノ酸配列と、配列番号5と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むCDRL2のアミノ酸配列と、配列番号6と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むCDRH3のアミノ酸配列とを有する軽鎖相補性決定領域(CDRL)を含む、単離されたモノクローナル抗体または抗原結合性断片である。ある実施形態では、第2の薬剤は、配列番号7と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する重鎖可変領域(VH)を含む、単離されたモノクローナル抗体または抗原結合性断片である。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、配列番号8と少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、単離されたモノクローナル抗体または抗原結合性断片である。いくつかの実施形態では、単離されたモノクローナル抗体は、M428L変異およびN434S変異を含む組換え定常ドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、単離されたモノクローナル抗体は、S239D変異およびI332E変異を含む組換え定常ドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、単離されたモノクローナル抗体は、L235A変異およびG237A変異を含む組換え定常ドメインをさらに含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、配列番号1のCDRH1のアミノ酸配列と、配列番号2のCDRH2のアミノ酸配列と、配列番号3のCDRH3のアミノ酸配列とを有する重鎖相補性決定領域(CDRH)、および、配列番号4のCDRL1のアミノ酸配列と、配列番号5のCDRL2のアミノ酸配列と、配列番号6のCDRH3のアミノ酸配列とを有する軽鎖相補性決定領域(CDRL)を含む、単離されたN6モノクローナル抗体または抗原結合性断片である。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、配列番号1のCDRH1のアミノ酸配列と、配列番号2のCDRH2のアミノ酸配列と、配列番号3のCDRH3のアミノ酸配列とを有する重鎖相補性決定領域(CDRH);配列番号4のCDRL1のアミノ酸配列と、配列番号5のCDRL2のアミノ酸配列と、配列番号6のCDRH3のアミノ酸配列とを有する軽鎖相補性決定領域(CDRL);ならびに、M428L変異およびN434S変異を含む組換え定常ドメインを含む、単離されたN6LSモノクローナル抗体または抗原結合性断片である。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、配列番号1のCDRH1のアミノ酸配列と、配列番号2のCDRH2のアミノ酸配列と、配列番号3のCDRH3のアミノ酸配列とを有する重鎖相補性決定領域(CDRH);配列番号4のCDRL1のアミノ酸配列と、配列番号5のCDRL2のアミノ酸配列と、配列番号6のCDRH3のアミノ酸配列とを有する軽鎖相補性決定領域(CDRL);ならびに、S239D変異およびI332E変異を含む組換え定常ドメインを含む、単離されたN6-DEモノクローナル抗体または抗原結合性断片である。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、配列番号1のCDRH1のアミノ酸配列と、配列番号2のCDRH2のアミノ酸配列と、配列番号3のCDRH3のアミノ酸配列とを有する重鎖相補性決定領域(CDRH);配列番号4のCDRL1のアミノ酸配列と、配列番号5のCDRL2のアミノ酸配列と、配列番号6のCDRH3のアミノ酸配列とを有する軽鎖相補性決定領域(CDRL);ならびに、L235A変異およびG237A変異を含む組換え定常ドメインを含む、単離されたN6-LAGAモノクローナル抗体または抗原結合性断片である。いくつかの実施形態では、抗原結合性断片は、Fv、Fab、F(ab’)2、scFvまたはscFV2断片である。
【0135】
いくつかの実施形態では、使用のための組合せは、少なくとも1種のインテグラーゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩を含む第3の薬剤を含む、治療有効量の第3の医薬組成物を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、第3の薬剤は、ラルテグラビル、エルビテグラビル、ドルテグラビル、ビクテグラビルおよびカボテグラビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤である。いくつかの実施形態では、第3の薬剤は、ラルテグラビルまたはカボテグラビルである。いくつかの実施形態では、第3の薬剤は、カボテグラビルである。いくつかの実施形態では、第1の薬剤はテムサビルであり、第2の薬剤はN6LSおよびN6-DEからなる群から選択され、かつ、第3の薬剤はカボテグラビルである。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、本明細書で開示される定常ドメインにおける1以上のADCC変異を有するN6である。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、N6LSである。いくつかの実施形態では、第2の薬剤は、N6-DEである。
【0136】
いくつかの実施形態では、使用のための組合せは、ヒトに、第1の医薬組成物を、第2の医薬組成物を投与する前に投与することを含む。いくつかの実施形態では、ヒトに、約1mg/kg体重~約100mg/kg体重の第1の医薬組成物が、1日1回、1日2回または1日3回、経口投与される。いくつかの実施形態では、ヒトに、約1mg/kg体重~約100mg/kg体重の第1の医薬組成物が、1日1回、1日2回または1日3回、非経口投与される。
【0137】
一態様では、本発明は、HIVの治療に使用するための医薬組成物であって、(a)ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩を含む第1の薬剤と、(b)CD4bs結合性タンパク質、gp120結合性タンパク質およびインテグラーゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩からなる群から選択される第2の薬剤とを含む、医薬組成物を提供する。
【0138】
一態様では、本発明は、HIVの治療に使用するための医薬組成物であって、(a)ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩を含む第1の薬剤と、(b)少なくとも1種のCD4bs結合性タンパク質を含む第2の薬剤と、(c)少なくとも1種のインテグラーゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩を含む第3の薬剤とを含む、医薬組成物を提供する。
【0139】
別の態様によれば、本発明は、HIVの治療に使用するための組合せであって、治療有効量の、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩と、治療有効量のCD4bs結合性タンパク質とを含む、組合せを提供する。いくつかの実施形態では、HIVの治療における使用のために、ヒトに、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩が投与され、次いで、連続して、CD4bs結合性タンパク質が投与される。
【0140】
別の態様によれば、本発明は、HIV感染細胞のクリアランスに使用するための組合せであって、治療有効量の、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩と、治療有効量のCD4bs結合性タンパク質とを含み、ヒトに、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩と、CD4bs結合性タンパク質とが投与される、組合せを提供する。HIV感染細胞のクリアランスに使用するための組合せの一実施形態では、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩の投与と、CD4bs結合性タンパク質の投与とは、同時である。HIV感染細胞のクリアランスに使用するための組合せの一実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩の投与の後に投与される。
【0141】
別の態様によれば、本発明は、HIVの予防に使用するための組合せであって、治療有効量の、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩と、CD4bs結合性タンパク質とを含み、ヒトに、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩が投与され、次いで、連続して、CD4bs結合性タンパク質が投与される、組合せを提供する。
【0142】
別の態様によれば、本発明は、HIVの中和に使用するための組合せであって、治療有効量の、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩と、CD4bs結合性タンパク質とを含み、ヒトに、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩が投与され、次いで、連続して、CD4bs結合性タンパク質が投与される、組合せを提供する。
【0143】
別の態様によれば、本発明は、HIVの治癒に使用するための組合せであって、治療有効量の、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩と、CD4bs結合性タンパク質とを含み、ヒトに、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩が投与され、次いで、連続して、CD4bs結合性タンパク質が投与される、組合せを提供する。
【0144】
いくつかの実施形態では、少なくとも1種の薬剤は、テムサビルまたはその薬学的に許容される塩である。使用のための組合せの一実施形態では、少なくとも1種の薬剤は、ホステムサビルまたはその薬学的に許容される塩である。
【0145】
いくつかの実施形態では、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩の投与は、経口または非経口である。いくつかの実施形態では、テムサビルの投与は、非経口である。いくつかの実施形態では、ホステムサビルの投与は、経口である。
【0146】
いくつかの実施形態では、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩は、1mg/kg体重~100mg/kg体重の用量(dose)の範囲で投与される。いくつかの実施形態では、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩の用量は、100mg~1000mgである。いくつかの実施形態では、ホステムサビルの用量は、600mgである。
【0147】
いくつかの実施形態では、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩の投与は、1日1回の用量の投与(a daily dose)、1日2回の用量の投与(a twice-daily dose)、または、1日3回の用量の投与(a three times daily dose)である。いくつかの実施形態では、投与は、1日2回の用量の投与である。いくつかの実施形態では、投与は、1日1回の用量の投与である。いくつかの実施形態では、投与は、1日3回の用量の投与である。
【0148】
いくつかの実施形態では、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩は、gp120を宿主細胞膜表面上にロックする。いくつかの実施形態では、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩は、gp120を閉じたコンフォメーションにロックする。使用のための組合せの一実施形態では、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩は、細胞膜結合CD4が、宿主細胞で発現したgp120と相互作用するのを妨げる。いくつかの実施形態では、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩は、CD4bs結合性タンパク質の結合を可能とするか、または促進する。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質のHIV感染宿主細胞への結合は、フローサイトメトリーによって平均蛍光強度(MFI)を使用して測定される。
【0149】
いくつかの実施形態では、使用のための組合せは、gp120結合性タンパク質を含む。gp120結合性タンパク質は、HIVビリオンまたは感染宿主細胞上に見出されるgp120に結合する。いくつかの実施形態では、gp120結合性タンパク質は、CD4bs結合性タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、少なくとも1種のCD4bs結合性タンパク質である。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、抗体またはその結合性断片である。いくつかの実施形態では、抗体は、広域中和抗体またはその結合性断片である。いくつかの実施形態では、広域中和抗体は、N6、N6LS、N6-DEおよびN6-LAGAからなる群から選択される。
【0150】
いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、配列番号1と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むCDRH1のアミノ酸配列と、配列番号2と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むCDRH2のアミノ酸配列と、配列番号3と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むCDRH3のアミノ酸配列とを有する重鎖相補性決定領域(CDRH)、および、配列番号4と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むCDRL1のアミノ酸配列と、配列番号5と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むCDRL2のアミノ酸配列と、配列番号6と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むCDRL3のアミノ酸配列とを有する軽鎖相補性決定領域(CDRL)を含む。
【0151】
いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、配列番号7からなる群から選択される配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含む重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列を含む。
【0152】
いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、配列番号8からなる群から選択される配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含む軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列を含む。
【0153】
いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、配列番号9、11、13および14からなる群から選択される配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含む重鎖(HC)のアミノ酸配列を含む。
【0154】
いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、配列番号10および12からなる群から選択される配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含む軽鎖(LC)のアミノ酸配列を含む。
【0155】
いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質抗体は、完全長免疫グロブリンCD4bs結合性タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、完全長免疫グロブリンCD4bs結合性タンパク質は、フラグメント結晶化可能領域または「Fc」領域または「定常領域」を含む。定義された抗体のいずれかのFcは、抗体のインビボ半減期を最適化するために、1または2以上のアミノ酸置換を含み得る。IgG Abの血清中半減期は、胎児性Fc受容体(FcRn)によって調節される。使用のための組合せの一実施形態では、抗体は、FcRnへの結合を増加させるアミノ酸置換を含む。いくつかのかかる置換は、当業者に知られており、例えば、IgG定常領域のT250QおよびM428L(例えば、Hintonら、J Immunol、176:346~356、2006参照);M428LおよびN434S(「LS」変異、例えば、Zalevskyら、Nature Biotechnology、28:157~159、2010参照);N434A(例えば、Petkovaら、Int.Immunol、18:1759~1769、2006参照);T307A、E380AおよびN434A(例えば、Petkovaら、Int.Immunol、18:1759~1769、2006参照);ならびにM252Y、S254TおよびT256E(例えば、Dall’Acquaら、J.Biol.Chem.、281:23514~23524、2006参照)における置換などが知られている。開示される抗体および抗原結合性断片は、上記で列挙された置換のいずれかを含むFcポリペプチドに連結され得、例えば、FcポリペプチドがM428L置換およびN434S置換を含み得る。使用のための組合せの一実施形態では、抗体は、非修飾定常ドメインと比較して胎児性Fc受容体への結合を向上させる修飾を含む組換え定常ドメインを含み、該組換えドメインは、M428L変異およびN434S変異を含むIgG1定常ドメインである。
【0156】
いくつかの実施形態では、定義された抗体のいずれかの定常領域は、ADCCを最適化するために、1または2以上のアミノ酸置換を含む。ADCCは、主に、一組の密接に関連したFcy受容体を介して媒介される。使用のための組合せの一実施形態では、抗体は、FcyRIIIaへの結合を増加させる1または2以上のアミノ酸置換を含む。いくつかのかかる置換が当業者に知られており、例えば、IgG定常領域のS239DおよびI332E(例えば、Lazarら、Proc.Natl,Acad.Sci.U.S.A.、103:4005~4010、2006参照);S239D、A330LおよびI332E(例えば、Lazarら、Proc.Natl,Acad.Sci.U.S.A.、103:4005~4010、2006参照)における置換などが知られている。
【0157】
いくつかの実施形態では、上記の置換の組合せもまた含まれ、FcRnおよびFcyRIIIaへの結合が増加したIgG定常領域を生成する。組合せは、抗体の半減期およびADCCを増加させる。例えば、かかる組合せは、Fc領域内に以下のアミノ酸置換を有する抗体を含む:(1)S239D/I332EおよびT250Q/M428L;(2)S239D/I332EおよびM428L/N434S;(3)S239D/I332EおよびN434A;(4)S239D/I332EおよびT307A/E380A/N434A;(5)S239D/I332EおよびM252Y/S254T/T256E;(6)S239D/A330L/I332Eおよび250Q/M428L;(7)S239D/A330L/I332EおよびM428L/N434S;(8)S239D/A330L/I332EおよびN434A;(9)S239D/A330L/I332EおよびT307A/E380A/N434A;または(10)S239D/A330L/I332EおよびM252Y/S254T/T256E。いくつかの例では、抗体またはその抗原結合性断片は、感染細胞に対して直接細胞傷害性となるように、あるいは、自然防御、例えば、補体、ADCCまたはマクロファージによる食作用を利用するように、修飾される。
【0158】
いくつかの実施形態では、抗体は、抗体断片である。使用のための組合せの一実施形態では、抗体断片は、Fab断片、F(ab’)2断片、単鎖Fvタンパク質(「scFv」)、ジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)、ダイアボディおよびTANDABSから選択される。使用のための組合せの一実施形態では、抗体断片は、scFvである。
【0159】
いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、非修飾定常ドメインと比較して胎児性Fc受容体への結合を向上させる修飾を含む組換え定常ドメインを含み、該組換えドメインは、M428L変異およびN434S変異(「LS」変異)を含むIgG1定常ドメインである。
【0160】
いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、非修飾定常ドメインと比較してADCCに影響を及ぼす修飾を含む組換え定常ドメインを含み、該組換えドメインは、S239D/I332E変異(「DE」変異)を含むIgG1定常ドメインである。
【0161】
いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、N6、N6LS、N6-LAGAおよびN6-DEからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、N6である。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、N6LSである。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、N6-LAGAである。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、N6-DEである。
【0162】
いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩の投与の少なくとも30分後、少なくとも1時間後、少なくとも2時間後、少なくとも4時間後および少なくとも6時間後からなる群から選択される時点で連続して投与される。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩の投与の少なくとも30分後の時点で投与される。使用のための組合せの一実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩の投与の少なくとも1時間後の時点で投与される。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩の投与の少なくとも2時間後の時点で投与される。使用のための組合せの一実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩の投与の少なくとも4時間後の時点で投与される。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩の投与の少なくとも6時間後の時点で投与される。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩の投与の少なくとも24時間後の時点で投与される。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩の投与の少なくとも48時間後の時点で投与される。使用のための組合せの一実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩の投与の少なくとも72時間後の時点で投与される。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩の投与の少なくとも96時間後の時点で投与される。
【0163】
いくつかの実施形態では、使用のための組合せは、連続して投与した後に、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩、ならびに、CD4bs結合性タンパク質を同時に投与する第2の投与を少なくともさらに含む。
【0164】
様々な実施形態では、本発明の組合せはまた、インテグラーゼ阻害剤をも包含し得る。インテグラーゼ阻害剤、すなわち、INSTI(integrase strand transfer inhibitor)は、レトロウイルスの組込みを妨げることで機能する活性物質である。例示的な化合物としては、ラルテグラビル、エルビテグラビル、ドルテグラビル、ビクテグラビルおよびカボテグラビルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0165】
他の態様
別の態様によれば、本発明は、上記に定義される、治療有効量の、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩、ならびに、治療有効量のCD4bs結合性タンパク質の、HIVの治療に使用するための医薬の製造における使用であって、HIVの治療に使用するために、ヒトに、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩が投与され、次いで、連続して、CD4bs結合性タンパク質が投与される、使用を提供する。
【0166】
別の態様によれば、本発明は、上記に定義される、治療有効量の、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩、ならびに、治療有効量のCD4bs結合性タンパク質の、HIVの治療に使用するための医薬の製造における使用であって、HIVの予防に使用するために、ヒトに、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩が投与され、次いで、連続して、CD4bs結合性タンパク質が投与される、使用を提供する。
【0167】
別の態様によれば、本発明は、上記に定義される、治療有効量の、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩、ならびに、治療有効量のCD4bs結合性タンパク質の、HIVの治療に使用するための医薬の製造における使用であって、HIVの中和に使用するために、ヒトに、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩が投与され、次いで、連続して、CD4bs結合性タンパク質が投与される、使用を提供する。
【0168】
別の態様によれば、本発明は、上記に定義される、治療有効量の、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩、ならびに、治療有効量のCD4bs結合性タンパク質の、HIVの治療に使用するための医薬の製造における使用であって、HIVの治癒に使用するために、ヒトに、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩が投与され、次いで、連続して、CD4bs結合性タンパク質が投与される、使用を提供する。
【0169】
別の態様によれば、本発明は、上記に定義される、治療有効量の、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩、ならびに、治療有効量のCD4bs結合性タンパク質の、HIV感染細胞のクリアランスに使用するための医薬の製造における使用を提供する。
【0170】
別の態様によれば、本発明は、治療有効量の、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩と、治療有効量のCD4bs結合性タンパク質とを含む、キットを提供する。
【0171】
いくつかの実施形態では、本発明は、それを必要とするヒトにおいてHIV感染を治療する方法であって、ヒトに、治療有効量の、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩、ならびに、治療有効量のCD4結合部位(CD4bs)結合性タンパク質を投与することを含み、CD4bs結合性タンパク質が、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩の投与の後に投与される、方法を提供する。
【0172】
いくつかの実施形態では、本発明は、それを必要とするヒトからHIV感染細胞をクリアランスする方法であって、治療有効量の、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩、ならびに、治療有効量のCD4bs結合性タンパク質を投与することを含む、方法を提供する。
【0173】
いくつかの実施形態では、本発明は、HIVの治療に使用するための組合せであって、治療有効量の、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩、ならびに、治療有効量のCD4bs結合性タンパク質を含み、ヒトに、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩が投与され、次いで、連続して、CD4bs結合性タンパク質が投与される、組合せを提供する。ある実施形態では、HIV感染細胞のクリアランスに使用するための組合せは、治療有効量の、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩、ならびに、治療有効量のCD4bs結合性タンパク質を含み、ヒトに、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩、ならびに、CD4bs結合性タンパク質が投与される。
【0174】
いくつかの実施形態では、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩、ならびに、CD4bs結合性タンパク質は、同時に(concurrently)、同時に(simultaneously)、別々に、または連続して投与される。ある実施形態では、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩、ならびに、CD4bs結合性タンパク質は、連続して投与され、CD4bs結合性タンパク質が、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩の投与の後に投与される。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の薬剤は、テムサビルまたはその薬学的に許容される塩である。他の実施形態では、少なくとも1種の薬剤は、ホステムサビルまたはその薬学的に許容される塩である。
【0175】
いくつかの実施形態では、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩は、経口または非経口で投与される。いくつかの実施形態では、テムサビルの投与は、非経口である。他の実施形態では、ホステムサビルの投与は、経口である。
【0176】
いくつかの実施形態では、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩は、1mg/kg体重~100mg/kg体重の用量(dose)の範囲で投与される。いくつかの実施形態では、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩の用量は、100mg~1200mgである。いくつかの実施形態では、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩は、1日1回、1日2回または1日3回、投与される。一実施形態では、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩は、1日2回、投与される。
【0177】
いくつかの実施形態では、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩は、CD4bs結合性タンパク質の結合を促進する。いくつかの実施形態では、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩は、gp120エンベロープ糖タンパク質(gp120 ENV)を閉じたコンフォメーションにロックする。
【0178】
いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、CD4bsに結合する抗体またはその結合性断片を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、広域中和抗体またはその結合性断片である。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、配列番号1と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むCDRH1のアミノ酸配列と、配列番号2と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むCDRH2のアミノ酸配列と、配列番号3と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むCDRH3のアミノ酸配列とを有する重鎖相補性決定領域(CDRH)、および、配列番号4と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むCDRL1のアミノ酸配列と、配列番号5と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むCDRL2のアミノ酸配列と、配列番号6と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含むCDRL3のアミノ酸配列とを有する軽鎖相補性決定領域(CDRL)を含む。
【0179】
いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、配列番号7と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含む重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、配列番号8と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含む軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列を含む。
【0180】
いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、配列番号9、11、13および14からなる群から選択される配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含む重鎖(HC)のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、配列番号10および12からなる群から選択される配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を含む軽鎖(LC)のアミノ酸配列を含む。
【0181】
ある実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、完全長免疫グロブリンCD4bs結合性タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、CD4bs結合性タンパク質抗体断片である。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質抗体断片は、Fab断片、F(ab’)2断片、単鎖Fvタンパク質(「scFv」)、ジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)、ダイアボディまたはTANDABSである。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質抗体断片は、scFvである。
【0182】
いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、非修飾定常ドメインと比較して胎児性Fc受容体への結合を向上させる修飾を含む組換え定常ドメインを含み、該組換えドメインは、M428L変異およびN434S変異を含むIgG1定常ドメインである。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、非修飾定常ドメインと比較して抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)に影響を及ぼす修飾を含む組換え定常ドメインを含み、該組換えドメインが、S239D/I332E変異またはL235A/G237A変異を含むIgG1定常ドメインである。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、N6、N6LS、N6-DEおよびN6-LAGAからなる群から選択されるモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、N6である。いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、N6LSである。
【0183】
いくつかの実施形態では、CD4bs結合性タンパク質は、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩の投与の少なくとも30分後、少なくとも1時間後、少なくとも2時間後、少なくとも4時間後および少なくとも6時間後の時点で投与される。いくつかの実施形態では、本方法は、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の追加の薬剤またはその薬学的に許容される塩を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法または組合せは、少なくとも1種のインテグラーゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩を含む第3の薬剤をさらに含む。
【0184】
いくつかの実施形態では、治療有効量の、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩、ならびに、治療有効量のCD4bs結合性タンパク質の、HIVの治療に使用するための医薬の製造における使用が提供される。いくつかの実施形態では、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩、ならびに、CD4bs結合性タンパク質は、ヒトに、同時に(concurrently)、同時に(simultaneously)、別々に、または連続して投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるいずれかの実施形態に従う、治療有効量の、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩、ならびに、治療有効量のCD4bs結合性タンパク質の、HIV感染細胞のクリアランスに使用するための医薬の製造における使用が提供される。
【0185】
一態様では、本発明は、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩を含む第1の薬剤を含む第1の医薬組成物と、少なくとも1種の広域中和抗体またはその抗原結合性断片を含む第2の薬剤を含む第2の医薬組成物と、任意選択で、少なくとも1種のインテグラーゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩を含む第3の薬剤を含む第3の医薬組成物とを含む、キットを提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、治療有効量の、ホステムサビルおよびテムサビルからなる群から選択される少なくとも1種の薬剤またはその薬学的に許容される塩と、治療有効量のCD4bs結合性タンパク質とを含む、キットを提供する。
【実施例】
【0186】
実施例1:抗ウイルス活性
概要
HIV-1実験室株HxB2を使用したヒトCD4+ T細胞の産生性感染によって細胞表面に発現したHIV-1エンベロープに対するbnAb N6、N6-DEおよびN6-LAGAの結合に関するテムサビルの効果を、フローサイトメトリーによって評価した。
【0187】
手順
標的細胞の調製およびHIV-1感染:末梢血単核球(peripheral blood mononuclear cells:PBMCs)を、健康なドナーから連続流白血球アフェレーシス(continuous-flow leukapheresis)によって取得し、ficoll-hypaque密度勾配遠心分離によって単離し、液体窒素の気相中で凍結保存した。PBMCsは、37℃水浴中で室温まで急速解凍し、2μg/mLのフィトヘマグルチニン-P(Sigma)を含むアッセイ培地(10%ウシ胎仔血清+30U/mL組換えIL-2を添加したRPMI 1640培地)において、37℃、5%CO2の加湿インキュベーター中で3日間培養した。CD4+ T細胞は、陰性選択によって単離し(Stemcell Technologies)、2回洗浄し、アッセイ培地を使用して最終密度1~2×106細胞/mLに再懸濁し、37℃、5%CO2で一晩インキュベートした。細胞を、500×gで10分間遠心分離し、アッセイ培地で5×106細胞/mLに再懸濁し、200μL(合計1×106細胞)を24ウェル組織培養処理プレートに分配した。ヒトPBMC細胞で以前増殖させたHIV-1実験室株HxB2ウイルスを、50μg/mLのDEAE-デキストランを含むアッセイ培地で希釈し、200μLを24ウェルプレート中の細胞に添加した。プレートを、1,200×gで1.5時間遠心分離し、感染細胞を回収し、50mLコニカルチューブにプールした。感染細胞を、2回洗浄し、最終密度1~2×106細胞/mLへとアッセイ培地に再懸濁し、37℃、5%CO2で3日間インキュベートした。
【0188】
HIV感染標的細胞のテムサビルおよびN6 bnAbでの処理:HIV感染細胞を、500×gで10分間遠心分離し、アッセイ培地で3×106細胞/mLに再懸濁し、50μL(合計150,000細胞)を96ウェルU底組織培養処理プレートに分配した。次いで、感染細胞培養物を、DMSOに0.5μMの最終濃度で溶解したテムサビルを使用して、または、ビヒクル対照としてDMSOのみを使用して処理し、アッセイプレートを37℃、5%CO2で16~24時間インキュベートした。N6 bnAb(N6、N6-DEおよびN6-LAGA)を、記載された配列に従ってChemPartnerによってHEK293細胞から産生した。抗体を、150mMアルギニン、50mM酢酸ナトリウム(pH5.5、150mM NaCl)からなるバッファーで溶出および希釈し、アッセイ培地で段階的に用量設定し、テムサビル処理細胞に50μg/mL~0.01μg/mLの最終濃度範囲で添加した。プレートを、37℃、5%CO2で30分間インキュベートした。
【0189】
フローサイトメトリー:アッセイプレートをインキュベーターから取り出し、細胞を、25℃にて500×gで2分間遠心分離することによってペレット化した。細胞を、2回洗浄し、各洗浄サイクルでは、200μLの氷冷洗浄バッファー(2%ウシ胎仔血清を含むリン酸緩衝生理食塩水)と混合し、25℃にて500×gで2分間遠心分離した。細胞を、1:2,000のLIVE/DEAD(商標)fixable aqua dead cell stain(Invitrogen)、1:400のBV786マウス抗ヒトCD4 mAb(クローンOKT4、BD Biosciences)および1:200のR-フィコエリトリンF(ab’)2断片ヤギ抗ヒトIgG(Jackson Immuno Research)を含む100μL氷冷洗浄バッファーで再懸濁し、4℃にて暗所で30分間インキュベートした。染色細胞を、上記したように洗浄バッファーで2回洗浄し、BD cytofix/cytoPerm(商標)で固定し透過処理した後、BD Perm/Wash(商標)バッファーで1:200に調製した50μLのFITC-抗HIV-1コア抗原(KC57、Beckman Coulter)を使用して4℃にて30分間細胞内染色した。染色細胞を、上記したように洗浄バッファーで2回洗浄し、Fortessaサイトメーター(BD Biosciences)上でデータ取得を行い、データをFlowJo v10.8ソフトウェア(Tree Star)を使用して、平均蛍光強度(MFI)により分析した。
【0190】
結果
0.5μMテムサビルでHIV感染細胞を24時間処理すると、DMSOのみで処理した細胞と比較して、CD4
+/p24
+細胞の細胞表面へのbnAb N6、N6-DEおよびN6-LAGAの結合が大幅に増加した(
図1)。また、0.5μMテムサビルで処理すると、DMSOのみで処理した細胞と比較して、結合したbnAbを含む細胞の総パーセンテージが顕著に増加した(
図2)。
【0191】
実施例2:抗体依存性細胞性細胞傷害
概要
3つのCD4結合部位bnAb、N6、N6-DEおよびN6-LAGAによって媒介されるHIV感染細胞の殺傷の、テムサビルによる増強を、ADCCアッセイで評価した。
【0192】
手順
標的およびエフェクター細胞の単離および調製:末梢血単核球(PBMCs)を、健康なドナーから連続流白血球アフェレーシスによって取得し、ficoll-hypaque密度勾配遠心分離によって単離し、液体窒素の気相中で凍結保存した。PBMCsを、37℃水浴中で室温まで急速解凍し、10%ウシ胎仔血清を添加したRPMI 1640培地に再懸濁した。標的細胞として、CD4+ Tリンパ球を、製造元の説明(StemCell Technologies)に従って免疫磁性陰性選択ビーズ(immunomagnetic negative selection beads)を使用して精製した。細胞を、フィトヘマグルチニン-P(Sigma;PHA-P;5μg/mL)を使用して37℃、5%CO2で72時間活性化し、次いで、10%ウシ胎仔血清+50U/mL組換えIL-2を添加したRPMI 1640培地で同じインキュベーション条件下で維持した。ナチュラルキラー(NK)エフェクター細胞を、製造元の説明(StemCell Technologies)に従って免疫磁性陰性選択ビーズを使用して自己PBMCから精製した。細胞を、10%ウシ胎仔血清を添加したRPMI 1640培地で維持し、ADCCアッセイの前に37℃、5%CO2にて24時間インキュベートした。
【0193】
標的細胞の感染:HIV-1実験室株IIIBを使用して、25μg/mLのDEAE-デキストランの存在下、25℃の24ウェルプレート中、1.5時間の1200×gスピン感染を行うことより、活性化CD4+ Tリンパ球を感染させた。感染細胞を、回収し、洗浄し、10%ウシ胎仔血清+50U/mL組換えIL-2を添加したRPMI 1640培地に再懸濁し、感染率が20%を超えるまで37℃、5%CO2で3日間インキュベートした。
【0194】
ADCCアッセイ:HIV感染CD4+ T細胞(標的)を、製造元の説明に従って細胞増殖色素とインキュベートし(eFluor670;eBioscience)、96ウェルU底プレートにプレーティングした。テムサビルを、DMSOに溶解し、10%ウシ胎仔血清を添加したRPMI 1640培地で希釈し、同じ培地で5倍ずつ段階的に用量設定し、50nM~0.08nMの用量範囲とした。感染細胞のパーセントの減少がN6およびテムサビルの抗ウイルス効果の結果である可能性を除外するために、ラルテグラビルを培養培地に添加してウイルスの拡散を防ぎ、これにより、感染細胞の排除の分析を、テムサビルおよびN6のウイルス感染の遮断効果と独立して行うことが可能となった。テムサビルを用量設定したものを、色素負荷標的細胞に添加し、アッセイプレートを、37℃、5%CO2で16~24時間インキュベートした。抗体を、アッセイプレートの適切なウェルに5μg/mLの最終濃度で添加し、室温で15分間インキュベートした。上記した標的およびエフェクター細胞の単離および調製に従って精製したNKエフェクター細胞を、3:1のエフェクター細胞対標的細胞の比で添加し、アッセイプレートを37℃、5%CO2で24時間インキュベートした。
【0195】
フローサイトメトリー:アッセイのADCCパートに続いて、細胞を、生存率色素(LiveDeadAqua;ThermoFisher)、抗CD3-BV421(クローンSP34-2;BDBiosciences、1:200最終濃度)および抗CD4-BV786(クローンOKT4;BD Bioscience、1:400最終濃度)と共に、室温で20~30分間インキュベートした。次いで、細胞に対するHIV-1 p24の細胞内染色を、Cytofix/Cytoperm Fixation/Permeabilization Kit(BD Biosciences)の使用、続いて、抗p24 mAb(FITC抗p24、クローンKC57;Beckman Coulter/Immunotech;1:200最終濃度)の添加により、室温で20~30分間行った。細胞を、5×104フローサイトメトリー粒子/mL(AccuCountブランク粒子;5.3μm;Spherotech)を含むPharmingen Stain Buffer(BSA)(BD Biosciences)に再懸濁した。サンプルを、Fortessaサイトメーター(BD Biosciences)上でデータ取得を行い、データをFlowJo v10.8ソフトウェア(Tree Star)を使用して分析した。特異的殺傷パーセンテージは、生きた標的細胞をゲーティングして以下の式で計算した:(標的細胞+エフェクター細胞の場合におけるp24+細胞のパーセンテージ(%))-(標的細胞+エフェクター細胞+Abの場合におけるp24+細胞のパーセンテージ(%))/(標的細胞のみで抗体もテムサビルも含まない場合におけるp24+細胞のパーセンテージ(%))。
【0196】
結果
テムサビルは、CD4結合部位bnAbによって媒介されるHIV感染細胞のNKによる殺傷を増強する(
図3)。Fc結合増強バージョンであるN6-DEは、最も大きい殺傷率を促進したが(最大75%)、一方、Fc結合減少バージョンであるN6-LAGAは、最も小さい殺傷量を示し(最大25%)、これにより、標的細胞のNK媒介性殺傷には、FcγRIIIB受容体の機能が直接関与していることが示された。エフェクター細胞をアッセイから排除した場合、殺傷の証拠は存在しなかった(
図4)。
【0197】
配列表
【0198】
【0199】
【0200】
【配列表】
【国際調査報告】