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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】内部表面電気化学的処理電極
(51)【国際特許分類】
   C25F 7/00 20060101AFI20241219BHJP
   C25F 3/16 20060101ALI20241219BHJP
   B23H 3/06 20060101ALI20241219BHJP
   B23H 5/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C25F7/00 W
C25F3/16 C
C25F7/00 K
C25F7/00 L
C25F7/00 M
B23H3/06
B23H5/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535997
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-08-09
(86)【国際出願番号】 AU2022051472
(87)【国際公開番号】W WO2023108197
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】2021904085
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521444941
【氏名又は名称】スリーディーエム・バイオメディカル・ピーティーワイ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ディーン・クラウアー
【テーマコード(参考)】
3C059
【Fターム(参考)】
3C059AA02
3C059DA05
3C059DC01
3C059DC02
3C059EA08
(57)【要約】
金属物品の内部表面を電気化学的処理流体と接触させるように構成される電気化学的処理電極が、柔軟性伝導性本体と、柔軟性伝導性本体に接続され、柔軟性伝導性本体の概して外方へ延び、電気化学的処理流体を柔軟性伝導性本体の周りに位置付けるように構成される複数の柔軟性要素とを備え、複数の柔軟性要素は、柔軟性伝導性本体の概して外方へ延びる複数の伝導性繊維または非伝導性繊維を含み、複数の伝導性繊維または非伝導性繊維は、電極が使用中であるとき、金属物品の内部表面に接触するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属物品の内部表面を電気化学的処理流体と接触させるように構成される電気化学的処理電極であって、
柔軟性伝導性本体と、
前記柔軟性伝導性本体に接続され、前記柔軟性伝導性本体の概して外方へ延び、電気化学的処理流体を前記柔軟性伝導性本体の周りに位置付けるように構成される複数の柔軟性要素と
を備え、
前記複数の柔軟性要素は、前記柔軟性伝導性本体の概して外方へ延びる複数の伝導性繊維または非伝導性繊維を含み、前記複数の伝導性繊維または非伝導性繊維は、前記電極が使用中であるとき、前記金属物品の前記内部表面に接触するように構成される、電気化学的処理電極。
【請求項2】
前記柔軟性要素は、複数のワイヤ、帯状片、コード、フィラメント、毛、棘、繊維、ウィスカ、または剛毛を含む、請求項1に記載の電気化学的処理電極。
【請求項3】
前記柔軟性要素は、伝導性要素、非伝導性要素、またはそれらの混合を含む、請求項1または2に記載の電気化学的処理電極。
【請求項4】
前記複数の伝導性繊維または非伝導性繊維は、炭素繊維、金属ワイヤ、またはそれらの混合のうちの少なくとも1つを含む伝導性繊維を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の電気化学的処理電極。
【請求項5】
前記複数の伝導性繊維または非伝導性繊維は、ファイバガラス、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(Kevlar(登録商標))、またはそれらの混合のうちの少なくとも1つを含む非伝導性繊維を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の電気化学的処理電極。
【請求項6】
前記複数の柔軟性要素は、圧縮係合、ウィービング、粘着、溶接、嵌め込み、くさび作用、埋め込み、接合、係留、またはそれらの組み合わせを通じて前記柔軟性伝導性本体に接続される、請求項1から5のいずれか一項に記載の電気化学的処理電極。
【請求項7】
前記柔軟性要素は、前記柔軟性伝導性本体との接続へと留め付け、圧着、押し付け、または結び付けされる、請求項6に記載の電気化学的処理電極。
【請求項8】
前記柔軟性要素は少なくとも1つの柔軟性シートまたは柔軟性本体を含む、または、
前記電極は、好ましくは、前記複数の柔軟性要素から延びる、または、前記複数の柔軟性要素の近接、間、および/もしくは周りに配置される、前記柔軟性伝導性本体に接続される少なくとも1つの柔軟性シートまたは柔軟性本体をさらに備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の電気化学的処理電極。
【請求項9】
前記柔軟性シートまたは前記柔軟性本体は、少なくとも1つの発泡体、スポンジ、または繊維材料を含む、請求項8に記載の電気化学的処理電極。
【請求項10】
前記柔軟性シートまたは前記柔軟性本体は、前記電極および前記複数の柔軟性要素にわたって延びるように構成された、前記電極および前記複数の柔軟性要素を包囲する発泡体またはスポンジを備える、請求項8または9に記載の電気化学的処理電極。
【請求項11】
前記複数の柔軟性要素の近接および/または間に位置付けられる複数の伝導性粒子をさらに備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の電気化学的処理電極。
【請求項12】
前記伝導性本体は、
金属ワイヤであって、好ましくは磁石ワイヤ、または、
炭素繊維のワイヤもしくは長尺本体
を備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の電気化学的処理電極。
【請求項13】
前記柔軟性伝導性本体は、それ自体の長さに沿って長手方向軸を定める長尺柔軟性伝導性本体を備え、前記複数の柔軟性要素は、前記柔軟性伝導性本体に接続され、前記柔軟性伝導性本体の前記長手方向軸から概して径方向外方へ延びる、請求項1から12のいずれか一項に記載の電気化学的処理電極。
【請求項14】
前記長尺柔軟性伝導性本体は、捩じられるかまたは他の方法で撚り合わせられる少なくとも2つの長尺ワイヤを備え、前記複数の柔軟性要素は、前記少なくとも2つの長尺ワイヤ間の圧縮係合を通じて前記柔軟性伝導性本体に接続される、請求項13に記載の電気化学的処理電極。
【請求項15】
前記長尺柔軟性伝導性本体は少なくとも1つの引っ張りバネを備え、前記柔軟性要素は、前記バネの隣接のコイル間の圧縮係合を通じて前記柔軟性伝導性本体に接続される、請求項13に記載の電気化学的処理電極。
【請求項16】
前記伝導性本体は、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、もしくは任意の他の伝導性金属ワイヤ、または、炭素繊維のワイヤもしくは長尺本体を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の電気化学的処理電極。
【請求項17】
前記伝導性本体は、非電気的に接続された表面同士にわたる絶縁性の被覆またはスリーブを含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の電気化学的処理電極。
【請求項18】
前記絶縁性の被覆またはスリーブは、誘電性被覆を備え、好ましくはポリマ被覆を備え、より好ましくはエナメルまたはウレタンの被覆を備える、請求項17に記載の電気化学的処理電極。
【請求項19】
前記伝導性本体は、前記柔軟性本体の表面から外方へ延びる前記柔軟性要素を含む柔軟性本体を備え、好ましくは、球、玉、棒、またはパイプを備える、請求項1から12のいずれか一項に記載の電気化学的処理電極。
【請求項20】
前記柔軟性本体は内部空洞を含み、好ましくは中空である、請求項19に記載の電気化学的処理電極。
【請求項21】
金属物品の内部表面を電気化学的に処理するための装置であって、
請求項1から20のいずれか一項に記載の少なくとも1つの電気化学的処理電極と、
前記電極の前記柔軟性要素と前記金属物品の内部表面上とに電気化学的処理流体を提供するように構成される電気化学的処理流体供給源と、
電源と
を備え、
前記電気化学的処理電極は前記電源の端子に接続され、前記金属物品は前記電源の他方の端子に接続される、装置。
【請求項22】
前記電気化学的処理流体供給源は、電気化学的処理流体を前記電極と前記金属物品の内部表面上とに送り込むポンプを備える、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記電気化学的処理電極の中に位置付けられる少なくとも1つの流体出口を含む電気化学的処理流体送り込み導管をさらに備える、請求項21または22に記載の装置。
【請求項24】
前記電気化学的処理電極の中に位置付けられる少なくとも1つの流体出口を含む冷却剤導管をさらに備える、請求項21から23のいずれか一項に記載の装置。
【請求項25】
前記金属物品の前記内部表面にわたる電気化学的処理電極の移動を駆動するための引き付け装置をさらに備える、請求項21から24のいずれか一項に記載の装置。
【請求項26】
金属物品の内部表面を電気化学的に処理する方法であって、
請求項1から20のいずれか一項に記載の電気化学的処理電極を電源の端子に電気的に接続するステップと、
前記金属物品を前記電源の他方の端子に電気的に接続するステップと、
少なくとも前記金属物品の内部表面を、好ましくは電解質である電気化学的処理流体と接触させるステップと、
電気化学的処理電流が前記電源の前記端子間に印加される間に、前記電気化学的処理電極を前記金属物品の前記内部表面にわたって移動させるステップであって、前記複数の伝導性繊維または非伝導性繊維の少なくとも一部分が前記金属物品の前記内部表面と接触する、ステップと、
それによって前記内部表面を電気化学的に処理するステップと
を含む方法。
【請求項27】
前記電気化学的処理電極の前記柔軟性伝導性本体は負の端子に接続される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記内部表面は、導路、中空、空洞、開口、開放、導管、トンネル、ダクト、管、パイプ、水路、スリット、深溝、室、轍、脈管、溝、谷、貫通孔、漏斗、または樋などの少なくとも1つの表面を含む、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
前記内部表面は導路またはダクトの一部であり、前記柔軟性要素の長さは、前記導路または前記ダクトの径方向の寸法を補完する長さを有するように選択される、請求項26から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記内部表面は、2mmから5mmまでの間、好ましくは0.5mmから5mmまでの間、好ましくは4mmから10mmまでの間、より好ましくは4mmから8mmまでの間の直径を有する導路またはダクトの一部である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記電気化学的処理電極は、前記柔軟性伝導性本体の引っ張り係合を通じて前記内部表面にわたって移動させられる、請求項26から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記電気化学的処理電極は、前記金属物品の前記内部表面にわたって移動するとき、前記内部表面と接触している、または、前記内部表面のすぐ傍にある、請求項26から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記内部表面にわたる前記電気化学的処理電極の移動の速度を制御するために、前記電気化学的処理電極を線形アクチュエータに接続するステップをさらに含む、請求項26から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記電気化学的処理電極は、前記内部表面を所望の仕上げへと電気化学的に処理するために、前記金属物品の前記内部表面にわたる少なくとも2回の通過で、好ましくは複数の通過で移動させられる、請求項26から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記内部表面にわたる前記電気化学的処理電極の移動は、各々の通過の間に前の移動と反対の方向で前記内部表面にわたって戻るように引っ張られることを含む、請求項26から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記電源は、交流、直流、またはパルス状の電圧または電流が制御される電力供給部を備える、請求項26から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記電気化学的処理流体は、前記電気化学的処理電極を濡らす量で送り込まれる、請求項26から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記電気化学的処理加工は、電解研磨、電解清浄、陽極酸化処理、パーカライジング、または酸洗いのうちの少なくとも1つを含む、請求項1から37のいずれか一項に記載の電気化学的処理電極、装置、または方法。
【請求項39】
金属物品の内部表面を電気化学的処理流体と接触させるように構成される電気化学的処理電極であって、
柔軟性伝導性本体と、
前記柔軟性伝導性本体に接続され、前記柔軟性伝導性本体の概して外方へ延び、電気化学的処理流体を前記柔軟性伝導性本体の周りに位置付けるように構成される複数の柔軟性要素と
を備え、
前記柔軟性要素は少なくとも1つの柔軟性シートまたは柔軟性本体を含む、または、
前記電極は、好ましくは、前記複数の柔軟性要素から延びる、または、前記複数の柔軟性要素の近接、間、および/もしくは周りに配置される、前記柔軟性伝導性本体に接続される少なくとも1つの柔軟性シートまたは柔軟性本体をさらに備える、電気化学的処理電極。
【請求項40】
前記柔軟性シートまたは前記柔軟性本体は、少なくとも1つの発泡体、スポンジ、または繊維材料を含む、請求項39に記載の電気化学的処理電極。
【請求項41】
前記柔軟性シートまたは前記柔軟性本体は、前記電極および前記複数の柔軟性要素にわたって延びるように構成された、前記電極および前記複数の柔軟性要素を包囲する発泡体またはスポンジを備える、請求項39または40に記載の電気化学的処理電極。
【請求項42】
金属物品の内部表面を電気化学的に処理する方法であって、
請求項39から41のいずれか一項に記載の電気化学的処理電極を電源の端子に電気的に接続するステップと、
前記金属物品を前記電源の前記他方の端子に電気的に接続するステップと、
少なくとも前記金属物品の内部表面を、好ましくは電解質である電気化学的処理流体と接触させるステップと、
電気化学的処理電流が前記電源の前記端子間に印加される間に、前記電気化学的処理電極を前記金属物品の前記内部表面にわたって移動させるステップであって、前記複数の伝導性繊維または非伝導性繊維の少なくとも一部分が前記金属物品の前記内部表面と接触する、ステップと、
それによって前記内部表面を電気化学的に処理するステップと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の相互参照
本出願は、2021年12月16日に出願されたオーストラリア仮特許出願第2021904085号からの優先権を主張し、この特許出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれるものと理解される。
【0002】
本発明は、一般的に、金属物体の内表面または内部表面を電気化学的に処理および/または加工するように構成される電気化学的処理電極と、関連する電気化学的処理装置および方法とに関する。本発明は、特には電気化学的処理することに適用可能であり、具体的には、付加製造(3D印刷)される金属合金を電解研磨することに適用可能であり、以後において、その例示の適用に関連して本発明を開示することが便利である。しかしながら、本発明が、付加製造(3D印刷)される金属および金属合金に特に限定されることはなく、内部表面または内表面の電気化学的処理を必要とする様々な製造方法から製作される幅広い様々な金属の(金属および金属合金)物品に適用できることは、理解されるべきである。
【背景技術】
【0003】
本発明の背景の以下の説明は、本発明の理解を容易にするように意図されている。しかしながら、この説明が、言及された材料のいずれも、本出願の優先日において、発行されていたか、知られていたか、または、通常の一般的な知識の一部であったことの認識または承認ではないことは、理解されるべきである。
【0004】
金属物品の付加製造は、設計および構成において相当の自由を提供する。ここで、いくつかの技術が、電子ビーム溶融法(EBM)、直接金属レーザ焼結法(DMLS)、選択加熱焼結法(SHS)、および選択レーザ溶融法(SLM)を含め、金属物品を3D印刷するのに利用可能である。しかしながら、これらの付加製造技術の多くは、仕上げを必要とする高い表面粗さを伴う表面を有する物品を製作する。
【0005】
電気化学的処理技術は、表面を選択的に処理するために使用できる。例えば、電解研磨技術が、このような3D印刷表面の表面粗さを低減するために使用できる。1つの適切な電解研磨システムが国際特許公開WO2020/206492で教示されている。この電解研磨システムは、3D印刷された金属物品の外面を電解研磨するために従来の電極を使用することができるが、内部表面は、それらの内部表面の寸法、形、および接近不可能性のため、問題となり得る。この問題は、空洞、中空、導路、または開口などのより複雑な内部構造が3D印刷設計に組み込まれる、付加製造が提供する設計の自由によってより深刻にされ得る。そのため、これらの種類の内部通路の仕上げが非常に問題となる可能性がある。
【0006】
空洞、中空、導路、または開口などの内部構造を適切に処理および加工するときの同様の問題は、電解清浄、陽極酸化処理、パーカライジング、および酸洗いなどの他の電気化学的処理においても直面させられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2020/206492
【特許文献2】WO2009/105802
【特許文献3】AU2013242795A1
【特許文献4】AU2017204328A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そのため、内部の空洞、空間、中空、導路、または開口を有する金属物品の内部表面/内部通路を電気化学的に処理するように構成される代替の電極または向上した電極を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、熱交換器またはエンジン部品などの金属物品または金属製品の中の空洞、中空、導路、または開口の内部表面を電気化学的に処理するように構成される電極を提供する。電気化学的処理は、電力供給部(交流または直流)が表面を処理するために使用される任意の電気化学的加工であり得る。適切な電気化学的処理加工は、電解研磨、電解清浄、陽極酸化処理、パーカライジング、および酸洗いを含む。様々な実施形態において、本発明は、付加製造(3D印刷)される金属部品などの金属部品の内部表面を電解研磨するのに特に適用可能である。
【0010】
本発明の第1の態様が提供するのは、金属物品の内部表面を電気化学的処理流体と接触させるように構成される電気化学的処理電極であって、
柔軟性伝導性本体と、
柔軟性伝導性本体に接続され、柔軟性伝導性本体の概して外方へ延び、好ましくは概して径方向外方へ延び、電気化学的処理流体を柔軟性伝導性本体の周りに位置付けるように構成される複数の柔軟性要素と
を備え、
複数の柔軟性要素は、柔軟性伝導性本体の概して外方へ延びる複数の伝導性繊維または非伝導性繊維を含み、複数の伝導性繊維または非伝導性繊維は、電極が使用中であるとき、金属物品の内部表面に接触するように構成される、電気化学的処理電極である。
【0011】
第1の態様の電極は柔軟性伝導性本体を備え、複数の伝導性繊維または非伝導性繊維を含む柔軟性要素が、柔軟性伝導性本体に接続され、柔軟性伝導性本体へと延びる。柔軟性伝導性本体は、概して軸方向の軸に沿って延び、複数の柔軟性要素が柔軟性伝導性本体およびその軸の概して外方へ延び、好ましくは概して径方向外方へ延びる。柔軟性要素は、電極が付加製造された金属物品などの金属物品の中の空洞、中空、導路、または開口へと挿入されて中を移動させることができるように、弾性的に変形するのに十分な柔軟性となるように設計される。好ましくは複数の柔軟性要素である複数の柔軟性要素は、電解質にそれ自体を通じて電流を伝導させて、電気化学的に処理される金属物品の中の空所、中空、導路、または開口の中の内部表面の電気化学的処理を容易にするように、電解質などの電気化学的処理流体を伝導性本体の周りで保持するために使用される。より具体的には、複数の柔軟性要素は、電気化学的に処理される金属物品の中の中空、導路、または開口の中にあるとき、電解質などの電気化学的処理流体を伝導性本体の周りで保持する。柔軟性要素の柔軟性は、電極を金属物品の内部空洞、空間、中空、導路、または開口の中に挿入させ、次に、そこでの輪郭、突起、または他の特徴内およびその周りを通過させることができる一方で、電気化学的処理流体を柔軟性伝導性本体の周りになおも位置付ける/保持することができる。
【0012】
柔軟性要素は、柔軟性伝導性本体を、電気化学的に処理される金属物品の表面から離間させるようにも作用する。表面の電気化学的処理のための電流は、柔軟性伝導性本体を通じ、次に、電極にまたはその表面上に存在する電解質などの電気化学的処理流体を通じて提供される。柔軟性要素が非伝導性である場合、柔軟性要素はこの離間する機能を支援する。柔軟性要素が伝導性である場合、柔軟性要素は、柔軟性伝導性本体から電解質へ、そして処理面への電流の伝達を支援することができる。非伝導性要素と伝導性要素(例えば、繊維または剛毛-以下を参照されたい)との混合がある場合、非伝導性要素は、典型的には、伝導性要素を処理面から離間させることを支援するために伝導性要素より長い。
【0013】
ここでも、本発明の電気化学的処理が、電力供給部(交流または直流)が表面を処理するために使用される任意の電気化学的加工であり得ることは、理解されるべきである。適切な電気化学的処理加工は、電解研磨、電解清浄、陽極酸化処理、パーカライジング、および酸洗いを含む。
【0014】
様々な実施形態において、本発明は、付加製造(3D印刷)される金属部品などの金属部品の内部表面を電解研磨するために特に適用可能である。電極は、国際特許公開WO2020/206492において教示されている本出願者の電解研磨システムで特に良好に機能し、この特許公開の内容は、この参照により本明細書に組み込まれると理解されるべきである。WO2020/206492の電解研磨システムで使用されるとき、ワイヤは、必要とされる大きな電流を運ぶように設計でき、エナメル(ワイヤ被覆)溶融点は、デューティサイクルおよび待機/冷却時間によって管理することができる。
【0015】
複数の柔軟性要素は、柔軟性伝導性本体の概して外方へ延び、好ましくは概して径方向外方へ延びる。柔軟性要素は、各々の柔軟性伝導体を曲げさせるか、捩じらせるか、または他の方法で変形させ、その後にその元の延びた状態へと戻るように回復させるために、好ましくは弾性的であり、つまり、いくつかの機械的記憶を有する。これは、電極を空洞の中の輪郭、突起、または他の特徴(例えば、小さいフランジ)内およびその周りにおいて挿入させ、その後、内部でより大きい通路を電気化学的処理させるために拡大させることができる。
【0016】
電気化学的処理流体は、電気化学的処理加工において使用される任意の流体であり得る。電気化学的処理流体は、好ましくは伝導性流体である。例えば、電極が電解研磨のために使用される場合、電解研磨電解質が使用され得る。電解研磨電解質は、以下においてより詳細に説明されているように、任意の適切な伝導性液体であり得る。
【0017】
柔軟性要素は、任意の適切な帯状片または繊維などを含み得る。いくつかの実施形態では、柔軟性要素は、複数のワイヤ、帯状片、コード、フィラメント、毛、棘、繊維、ウィスカ、または剛毛を備える。
【0018】
柔軟性要素は、伝導性要素、非伝導性要素、またはそれらの混合を備え得る。具体的な実施形態では、柔軟性要素のうちの少なくとも一部は、複数の柔軟性伝導性要素を備え、好ましくは伝導性繊維を備える。様々な繊維が使用できる。実施形態では、複数の伝導性繊維または非伝導性繊維は、複数の炭素繊維、金属繊維、またはそれらの混合を備える伝導性繊維を含み得る。任意の適切な高温の伝導性繊維が使用できることは、理解されるべきである。いくつかの実施形態では、柔軟性要素のうちの一部または全部は、繊維などの複数の非伝導性要素を備える。非伝導性繊維の例は、ファイバガラス、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(Kevlar)、またはそれらの混合のうちの少なくとも1つを含む。任意の適切な高温の非伝導性繊維が使用できることは、理解されるべきである。実施形態では、複数の伝導性繊維または非伝導性繊維は、ファイバガラス、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(Kevlar)、またはそれらの混合のうちの少なくとも1つを備える複数の非伝導性繊維を含む。いくつかの実施形態では、柔軟性要素は、伝導性繊維または非伝導性繊維の一方を備え得る。いくつかの実施形態では、柔軟性要素は、伝導性繊維/要素および非伝導性繊維/要素の混合を備える。
【0019】
例示の実施形態では、柔軟性要素は複数の炭素繊維を含む。適切な炭素繊維の一例は、一方向の450gsm炭素繊維を備える。
【0020】
例示の実施形態では、柔軟性要素は複数のファイバガラス繊維を含む。適切なファイバガラスの一例は、一方向の250gsmファイバガラスを備える。
【0021】
例示の実施形態では、柔軟性要素は複数のKevlar(ポリパラフェニレンテレフタルアミド)繊維を備える。適切なKevlar繊維の一例は、一方向の3.2またはアラミド(ポリパラフェニレンテレフタルアミド-Kevlar)を備える。
【0022】
柔軟性要素の寸法は、電気化学的処理を受ける金属物品の導路またはダクトの寸法に適合するように典型的には構成される。いくつかの実施形態では、柔軟性要素は、処理される内部表面へと延び、より好ましくは、処理される内部表面に近接するように延びる(接触はしない)寸法とされる。例えば、各々の柔軟性伝導体の長さは、典型的には、導路またはダクトの径方向の寸法を補完する長さを有するように選択される。いくつかの実施形態では、内部表面は、2mmから5mmの間の直径を有する導路またはダクトの一部である。いくつかの実施形態では、導路またはダクトは、例えば、パイプ、または、オイルもしくはガスのパイプラインなどのパイプラインといった、0.5mmから5mmまでの直径を有し得る。いくつかの実施形態では、内部表面は、2mmから20mmまでの間、好ましくは4mmから10mmまでの間、より好ましくは4mmから8mmまでの間の直径を有する導路またはダクトの一部である。しかしながら、加工が最小で繊維の幅まで行われ得ることは、理解されるべきである。他の実施形態では、柔軟性要素の長さは、電気化学的処理を受ける金属物品の導路またはダクトの半径に実質的に合致するような寸法とされる。ここで、柔軟性要素の長さは、典型的には、導路もしくはダクトの半径と典型的には同じであるか、または、導路もしくはダクトの半径より若干大きい。
【0023】
柔軟性要素、具体的には複数の伝導性繊維または非伝導性繊維が、電極が使用中であるときに金属物品の内部表面に接触するように構成されることを留意することは、重要である。そのため、本発明の電極は、動作中に加工物から電気的に絶縁される必要がない。複数の伝導性繊維または非伝導性繊維などの柔軟性要素は、動作中に、つまり、金属物品の内部表面を電気化学的に処理するとき、金属物品/加工物の内部表面に接触することができるように構成される。
【0024】
金属物品の導路またはダクトの内部の寸法/直径が一定でない可能性があり、そのため、各々の柔軟性要素の長さが、最大の直径に、または、いくつかの場合では実質的な/主の直径に、合うように設計され、柔軟要素の移動および柔軟性が、異なる寸法/直径の金属物品の導路またはダクトにおける表面を電気化学的に処理するために使用できることは、理解されるべきである。
【0025】
柔軟性要素は、伝導性本体の外方へ延びる均一の長さを有する必要がない。柔軟性要素は、柔軟性伝導性本体の周囲の周りで同じ長さを有する必要がない、または、柔軟性伝導性本体の軸方向長さに沿って同じ長さを有する必要がない。
【0026】
実施形態では、柔軟性要素は伝導性本体について異なる長さを有することができる。例えば、非伝導性要素と伝導性要素(繊維または剛毛など)との混合がある場合、非伝導性要素は、典型的には、伝導性要素を処理面から離間させることを支援するために伝導性要素より長い。いくつかの実施形態では、炭素繊維などの伝導性要素といった柔軟性要素の第1のセットが、ファイバガラスまたはポリパラフェニレンテレフタルアミド(Kevlar)繊維などの非伝導性繊維といった柔軟性要素の第2のセットより短い長さを有する。ここでも、より長いファイバガラス/Kevlar繊維は、スパークまたは短絡の事象を低減するために、より短い炭素繊維が電気化学的に処理される表面から適切に離間されることを確保する。
【0027】
いくつかの実施形態では、柔軟性要素の長さ、好ましくは径方向の長さは、伝導性本体の周囲の周りで変化してもよい。ここで、伝導性本体の周囲の周りの第1の区域または区分が、伝導性本体の周囲の周りの第2の区域または区分より長い長さを有してもよい。その長さは、電極が電気化学的に処理するように構成される具体的な空洞または内部開口の形または構成に合致するように構成され得る。これは、規則的または不規則な多角形などとして成形されるなど、成形された径方向断面を電極に提供することができる。例には、三角形、台形、六角形などがある。
【0028】
柔軟性要素は、任意の適切な取り付け手段または構成を使用して、柔軟性伝導性本体に接続させることができる。例えば、柔軟性要素は、圧縮係合、ウィービング、粘着、溶接、嵌め込み、くさび作用、埋め込み、接合、係留、またはそれらの組み合わせを通じて柔軟性伝導性本体に接続され得る。圧縮係合は様々な形態を取ることができる。いくつかの実施形態では、柔軟性要素は、柔軟性伝導性本体との接続へと留め付け、圧着、押し付け、または結び付けされる。
【0029】
具体的な実施形態では、長尺柔軟性伝導性本体は、捩じられるかまたは他の方法で撚り合わせられる少なくとも2つの長尺ワイヤを備え、複数の柔軟性要素は、少なくとも2つの長尺ワイヤ間の圧縮係合を通じて柔軟性伝導性本体に接続される。捩じられたワイヤの使用は、電極を形成/製造するとき、柔軟性要素を2つのワイヤ間に素早く固定させることを可能にする。他の実施形態では、柔軟性要素はバネで保持される。このような実施形態では、長尺柔軟性伝導性本体は少なくとも1つの引っ張りバネを備え、柔軟性要素は、バネの隣接のコイル間の圧縮係合を通じて柔軟性伝導性本体に接続される。なおも他の実施形態では、柔軟性要素は柔軟性伝導性本体にはんだ付け、溶接、または接着させられる。なおも他の実施形態では、柔軟性要素は柔軟性伝導性本体に押し付けまたは圧着させられる。
【0030】
電極は、金属物品の対象の内部表面を電気化学的に処理することを支援するために、柔軟性要素に加えてさらなる特徴を含み得る。
【0031】
第1の態様の電極の実施形態では、柔軟性要素は、少なくとも1つの柔軟性シートまたは柔軟性本体を含む、および/または備える。いくつかの実施形態では、電極は、好ましくは、複数の柔軟性要素から延びる、または、複数の柔軟性要素の近接、間、および/もしくは周りに配置される、柔軟性伝導性本体に接続される少なくとも1つの柔軟性シートまたは柔軟性本体をさらに備える。いくつかの実施形態では、柔軟性シートまたは柔軟性本体は、柔軟性伝導性本体に接続され、柔軟性伝導性本体の概して外方へ延び、電気化学的処理流体を柔軟性伝導性本体の周りに位置付けるように構成される複数の柔軟性要素を備える。
【0032】
本発明の具体的な実施形態では、電気化学的処理電極は、金属物品の内部表面を電気化学的処理流体と接触させるように構成され、電極は、
柔軟性伝導性本体と、
柔軟性伝導性本体に接続され、柔軟性伝導性本体の概して外方へ延び、電気化学的処理流体を柔軟性伝導性本体の周りに位置付けるように構成される複数の柔軟性要素と
を備え、
柔軟性要素は少なくとも1つの柔軟性シートまたは柔軟性本体を含む、または、
電極は、好ましくは、複数の柔軟性要素から延びる、または、複数の柔軟性要素の近接、間、および/もしくは周りに配置される、柔軟性伝導性本体に接続される少なくとも1つの柔軟性シートまたは柔軟性本体をさらに備える。
【0033】
柔軟性シートまたは柔軟性本体は、典型的には、柔軟性要素で形成され、柔軟性要素に近接して配置され、柔軟性要素の中に配置され、および/または、柔軟性要素によって包囲され、追加の伝導体と、いくつかの例では、電気化学的処理手順において使用される電解質などの任意の電気化学的処理流体を運ぶための吸着体との両方として作用する。例えば、1つまたは複数の発泡体、スポンジ、または繊維材料など、任意の適切な柔軟性シートまたは柔軟性本体が使用できる。柔軟性シート/柔軟性本体が発泡体を備える場合、天然発泡体またはポリマ発泡体など、任意の適切な発泡体が使用できる。実施形態では、発泡体は、Intek(登録商標)PFI-1120高温発泡体などの高温発泡体を備える。同様に、織り材料、不織材料を含め、任意の適切な繊維材料が使用できる。実施形態では、織物は、ファイバガラスに基づく繊維、炭素繊維に基づく繊維、またはZOPINの1.0g/cm3など、高温繊維を備える。柔軟性シートは、電気化学的処理流体を運ぶために使用され、処理される金属に依存して金属物品の前記内部表面の電気化学的処理を支援するために好ましくは伝導性であり得る。例えば、柔軟性シートはニッケル合金にとって伝導性であり得る。他の実施形態では、柔軟性シートは、例えばアルミニウム合金にとって、非伝導性であり得る。一実施形態では、柔軟性シートまたは柔軟性本体は、電極および複数の柔軟性要素にわたって延びるように構成された、電極および複数の柔軟性要素を包囲する発泡体要素を備える。発泡体要素は、電極および複数の柔軟性要素の周りで延びる鞘状体または他の取り囲み本体を好ましくは備える。複数の柔軟性要素は、好ましくは発泡体材料中へと延び、それによって、導電性経路/要素を発泡体材料の中に提供する。しかしながら、柔軟性シートまたは柔軟性本体が、柔軟性伝導性本体の周りの柔軟性シートまたは柔軟性本体に接続し得る、または柔軟性シートまたは柔軟性本体を他の方法で位置付けし得る様々な他の手段を使用して、電極にわたって延び、電極を包囲するように構成されてもよいことは、理解されるべきである。
【0034】
いくつかの実施形態では、電極は、複数の柔軟性要素の近接および/または間に位置付けられる複数の伝導性粒子をさらに備える。伝導性粒子は、空洞の中で電気化学的に処理される内部表面とのさらなる接触点を追加するために、電解質などの電気化学的処理流体の中で混合することができる追加の伝導体手段を提供する。
【0035】
柔軟性伝導性本体は、柔軟性要素が上に接続され得る任意の適切な柔軟性本体を備え得る。
【0036】
多くの実施形態では、柔軟性伝導性本体は、それ自体の長さに沿って長手方向軸を定めるワイヤなどの長尺柔軟性伝導性本体を備える。そのため、柔軟性要素は、柔軟性伝導性本体に電気的に接続され、柔軟性伝導性本体の長手方向軸から概して外方へ、好ましくは概して径方向外方へ延びる。これらの実施形態では、伝導性本体は、好ましくは金属ワイヤを備え、より好ましくは磁石ワイヤを備える。他の実施形態では、伝導性本体は炭素繊維のワイヤまたは長尺本体を備える。しかしながら、例えば、良好な伝導性と耐腐食性とを呈するステンレス鋼、金、銅、アルミニウム、または任意の他の金属もしくは伝導性材料といった、任意の伝導性金属がワイヤのために使用され得ることは、理解されるべきである。
【0037】
伝導性本体が金属ワイヤまたは同様のものを備える場合、その伝導性本体は、非電気的に接続された表面にわたる絶縁性の被覆またはスリーブを含み得る。この絶縁性の被覆またはスリーブは、誘電性被覆を備え、好ましくはポリマ被覆を備え、より好ましくはエナメルまたはウレタンの被覆を備えることができる。様々な誘電性被覆がワイヤにおいて使用できる。いくつかの従来のワイヤ被覆は、電解研磨電解質などのほとんどの電気化学的処理流体にとってすでに不活性であるため、適切である。被覆またはスリーブが不適切である場合、そのワイヤは適切な被覆で再被覆できることは、理解されるべきである。他の実施形態では、磁石ワイヤなどの適切な金属ワイヤに、必要に応じて、例えば不活性のウレタンまたは同様のものなど、適切な誘電性の被覆またはスリーブを追加することができる。
【0038】
伝導性本体は、必ずしも本発明のすべての実施形態において長尺ワイヤを備えない。いくつかの実施形態では、伝導性本体は、柔軟性本体の表面から外方へ延びる柔軟性要素を含む、球、玉、棒、またはパイプなどの柔軟性本体を備え得る。その柔軟性本体は、発泡体、スポンジ、または繊維などの任意の適切な柔軟性材料から形成できる。その伝導性本体は内部空洞を含むことができ、したがって中空であり得る。いくつかの実施形態では、伝導性本体は球を備え、複数の柔軟性要素は、伝導性本体から延びる少なくとも1つのリブ、フランジ、または帯状片を備える。他の実施形態では、柔軟性本体は、柔軟性本体の表面から外方へ延びる複数の柔軟性伝導性繊維を備える柔軟性要素を伴う球、玉、棒、またはパイプを備える。それらの複数の柔軟性伝導性繊維は、嵌め込み、粘着、締め付け、留め付け、または圧接などを含む任意の適切な手段を使用して、柔軟性本体に接続され得る。
【0039】
本発明の第2の態様が提供するのは、金属物品の内部表面を電気化学的に処理するための装置であって、
本発明の第1の態様による少なくとも1つの電気化学的処理電極と、
電極の柔軟性要素と金属物品の内部表面とに電気化学的処理流体を提供するように構成される電気化学的処理流体供給源と、
電源と
を備え、
電気化学的処理電極は電源の端子に接続され、金属物品は電源の他方の端子に接続される、装置である。
【0040】
本発明のこの第2の態様は、本発明の第1の態様の電気化学的処理電極を含む電気化学的処理装置を提供する。この構成では、金属物品は、電気化学的処理回路の陽極などの一方の電極を提供し、本発明の第1の態様の電気化学的処理電極は、電気回路を完成させるために、陰極などの他方の電極を提供する。電気化学的処理流体は、選択された表面の電気化学的処理を容易にする電極の柔軟性要素の中の電極の伝導性本体の周りで伝導性媒体として作用する。
【0041】
ここでも、本発明の電気化学的処理が、電力供給部(交流または直流)が表面を処理するために使用される任意の電気化学的加工であり得ることは、理解されるべきである。適切な電気化学的処理加工は、電解研磨、電解清浄、陽極酸化処理、パーカライジング、および酸洗いを含む。
【0042】
装置は、電極の柔軟性要素と金属物品の内部表面上とに電気化学的処理流体を提供するように構成される電気化学的処理流体供給源を好ましくはさらに備える。電解質などの電気化学的処理流体は、少なくとも金属物品の内部表面に好ましくは送り込まれる。実施形態では、電気化学的処理流体供給源は、電気化学的処理流体を電極と金属物品の内部表面上とに送り込む流体ポンプまたは他の流体コンベヤであり得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、電気化学的処理流体供給源は、例えば、電気化学的処理流体を保持する容器または他の流体保持用の入物といった、金属物品が浸漬され得る貯留部であり得る。
【0043】
電気化学的処理流体は、電気化学的処理加工において使用される任意の流体であり得る。電気化学的処理流体は、好ましくは伝導性流体である。例えば、この第2の態様の装置が電解研磨装置を備える場合、電解研磨電解質が使用され得る。電解研磨電解質は、任意の適切な伝導性液体であり得る。好ましい形態では、電解研磨電解質はH3PO4を含む。電解研磨電解質は、水またはC1~C4アルコールに基づく溶液においてリン酸を含む溶液を好ましくは備える。電解研磨電解質は、唯一の成分の酸として、または、他の酸といった他の化学物質との組み合わせで、リン酸(H3PO4)の溶液を備え得る。例えば、電解研磨電解質の実施形態が、硫酸(H2SO4)、塩酸(HCl)のうちの1つまたは複数との組み合わせで、および、水またはC1~C4アルコールのうちの1つまたは複数との組み合わせで、リン酸を含んでもよい。1つの形態において、電解液はリン酸の85%水性溶液を備える。しかしながら、組成は、イオン含有量と、電圧、電流、および電解研磨電解質の温度を含む他の変数とに依存する。
【0044】
例示の実施形態では、電解研磨電解質は食品等級(安全性)の電解質浴である。任意の適切な伝導性液体が使用できる。実施形態では、電解研磨電解質は、水またはC1~C4アルコールのうちの1つとの組み合わせでリン酸を備える。実施形態では、電解研磨電解質は水性リン酸溶液を備える。
【0045】
酸の溶液濃度、具体的にはリン酸の溶液濃度は、電解質において、1%~90%(つまり、100mlの水における1g~90gの化合物)、好ましくは10%~90%で変化し得る。溶液濃度は、処理される金属物品の種類(例えば、ステンレス鋼、コバルト-クロミウム合金、Ni-Cr合金、アルミニウムまたはAl合金、チタンまたはTi合金など)と、電解処理時間とに依存する。一実施形態では、85%リン酸溶液が使用される。
【0046】
電気化学的処理流体は、任意の有用な手段によって電気化学的流体供給源から対象の金属物品の内部表面に適用され得る。いくつかの実施形態では、金属物品は電気化学的処理流体に浸漬される。いくつかの実施形態では、電気化学的処理流体はパイプまたは導管を通じて内部表面上に送り込まれる。これらの実施形態では、装置は、電極の中に位置付けられる少なくとも1つの流体出口を含む電気化学的処理流体送り込み導管をさらに含む。これは、電気化学的処理流体を、対象である内部表面上へと電極の近接に送り込ませることができる。装置は、電極の中に位置付けられる少なくとも1つの流体出口を含む冷却剤導管も含み得る。ここでも、これは、冷却剤を、対象である内部表面上へと電極の近接に送り込ませることができる。実施形態では、電解質または冷却剤のための溶液は、好ましくは柔軟性伝導性本体と並列に接続されるシリコーン管などの導管を介して、電極へと送り込まれる。例えば、柔軟性伝導性本体がバネを備える場合、各々の導管は、バネシステムの中心またはその下に位置付けられ得る。
【0047】
冷却剤および電気化学的処理流体は、ポンプ、注射器、ピストン、または同様のものを含め(限定されることはない)、任意の適切な流体移動システムを使用して汲み上げられ得る。いくつかの実施形態では、電気化学的処理流体または冷却のための溶液は、ポンプ、注射器、ピストン、または同様のもので、導路または通路へと送り込まれる。
【0048】
電気化学的処理電極は、内部表面を徐々に電気化学的に処理するために、金属物品における空洞を通じて典型的には引っ張られまたは他の方法で移動させられる。多くの実施形態では、この移動は、金属物品の内部表面にわたる電極の移動を駆動するための適切な引き付け装置を用いて作動または駆動させることができる。引き付け装置の例には、線形アクチュエータまたはウインチなどがある。
【0049】
電気化学的処理電源または電気化学的処理発生装置は、両方の電極(つまり、陰極/電気化学的処理電極および陽極/金属物品)を電気的に接続するために、適切な交流、直流、またはパルス状の電力供給部(制御された電圧または電流)が使用されることを典型的には含む。
【0050】
電気化学的処理加工のために使用される特定の電流および電流密度は、意図されている具体的な印加および処理体制に依存する。当業者が、電気化学的処理加工に関する技術における通常の一般的な知識に基づいて、最も適切なパラメータを適用することができることは、理解されるべきである。
【0051】
電流は、直流のみ、交流のみ、方形波パルス直流、正弦波パルス状直流、またはそれらの混合であり得る。パルス状直流波形が使用される場合、印加された電流波形が古典的な交流ではなく、正確に直流ではないことは、理解されるべきである。波形は、交流電流またはパルス状直流方形波のいずれかである方形波形電流として特徴付けられ得る。いくつかの実施形態では、パルス状直流方形波形は、ピークまたは印加された電流の位相と比較してより長いゼロ電流位相を有する。いくつかの実施形態では、電流は直流電流を備える。
【0052】
電圧の成形された波形は、方形波、正弦、パルス状、またはそれらの組み合わせのうちの1つであり得る。いくつかの実施形態では、成形された波形電流は、好ましくは方形波パルスであるパルス幅変調(PWM)波形を備え、好ましくは可変不感時間を有する。いくつかの実施形態では、方形波パルスは可変不感時間を有する。いくつかの実施形態では、パルス状方形波形は、ピークまたは印加された電圧の位相と比較してより長いゼロ電流位相を有する。
【0053】
本発明の第3の態様が提供するのは、金属物品の内部表面を電気化学的に処理する方法であって、
本発明の第1の態様による電気化学的処理電極を電源の端子に電気的に接続するステップと、
金属物品を電源の他方の端子に電気的に接続するステップと、
少なくとも金属物品の内部表面を電気化学的処理流体と接触させるステップと、
電気化学的処理電流が電源の端子間に印加される間に、電気化学的処理電極を金属物品の内部表面にわたって移動させるステップであって、複数の伝導性繊維または非伝導性繊維の少なくとも一部分が金属物品の内部表面と接触する、ステップと、
それによって内部表面を電気化学的に処理するステップと
を含む方法である。
【0054】
本発明のこの第3の態様は、第1の態様の電気化学的処理電極を使用して金属物品を電気化学的に処理する方法を提供する。ここでも、本発明の電気化学的処理が、電力供給部(交流または直流)が表面を処理するために使用される任意の電気化学的加工であり得ることは、理解されるべきである。適切な電気化学的処理加工は、電解研磨、電解清浄、陽極酸化処理、パーカライジング、および酸洗いを含む。
【0055】
具体的な実施形態では、本発明の第3の態様は、第1の態様の電解研磨電極を使用して金属物品を電解研磨する方法を提供する。ここで、方法は、
本発明の第1の態様による電気化学的処理電極を電解研磨電源の負の端子に電気的に接続するステップと、
金属物品を電解研磨電源の正の端子に電気的に接続するステップと、
少なくとも金属物品の内部表面を電解研磨電解質と接触させるステップと、
電解研磨電流が正の端子と負の端子との間に印加される間に金属物品の内部表面にわたって電極を移動させるステップと、
それによって内部表面を電解研磨するステップと
を含む、金属物品の内部表面を電解研磨することの1つである。
【0056】
この電解研磨技術は、表面粗さの低減を達成するために、粗い内部表面を伴う金属物品に適用させることができる。電解研磨は、不均一な質感のない結果として生じる表面仕上げ、および/または、初期の表面粗さの値と比較して相当により低い表面粗さの値を呈することを目指している。表面粗さを定量化するための適切な計測方法には、表面触針形状測定(RaおよびRzのパラメータが形状(線)から導き出せる)および3D光学表面形状測定(SaおよびSzのパラメータが表面積から導き出せる)を含む。
【0057】
任意の適切な金属物品が、本発明のこの第3の態様の電気化学的処理方法を用いて処理することができ、様々な金属を含む。例には、鉄、鉄含有合金(例えば、工具鋼H13、炭素鋼(普通)、およびステンレス鋼)、アルミニウムおよびアルミニウム含有合金、チタンおよびチタン含有合金、クロミウムおよびクロミウム含有合金、銅合金、黄銅合金、ニオブがある。いくつかの実施形態では、本発明で処理される適切に製造された金属物品はクロミウム含有金属合金を備えることができる。先に示されているように、これらの合金には、ステンレス鋼などの鉄-クロミウム合金、ニッケル-クロミウム(ニッケル-クロム)およびその合金、コバルト-クロミウム合金、コバルト-クロミウム-モリブデン合金がある。好ましい実施形態では、製造された金属物品はコバルト-クロミウム合金を備える。
【0058】
実施形態では、金属物品は、電気化学的処理回路の陽極を提供し、本発明の第1の態様の電気化学的処理電極は、電気回路を完成させるために、陰極を提供する。電気化学的処理電極への電気接続は、典型的には電気化学的処理電極の柔軟性伝導性本体を介しており、柔軟性伝導性本体は電源の負の端子に接続される。しかしながら、金属洗浄またはパーカライジングについては極性を反対にできることは、理解されるべきである。
【0059】
電極は、金属物品または製品の中の空洞、中空、導路、または開口の内部表面を電気化学的に処理するように構成される。内部空洞は様々な構成を有し得る。この意味において、内部表面は、導路、中空、空洞、開口、開放、導管、トンネル、ダクト、管、パイプ、水路、スリット、深溝、室、轍、脈管、溝、谷、貫通孔、漏斗、または樋などのうちの任意の1つまたは複数の少なくとも1つの表面を含み得る。
【0060】
先に説明されているように、柔軟性要素は、電気化学的に処理中の内部空洞の形および構成のために好ましい寸法および構成とされる。例えば、内部表面が導路またはダクトの一部である場合、柔軟性要素の長さは、導路またはダクトの径方向の寸法を補完する長さを有するように選択される。その導路またはダクトは任意の寸法を有することができる。ここでも、柔軟性要素は、柔軟性伝導性本体の周囲の周りで同じ長さを有する必要はない、または、柔軟性伝導性本体の軸方向長さに沿って同じ長さを有する必要はない。
【0061】
電極が、金属物品の中の、任意の具体的な寸法の導路、中空、または空洞の内部表面を電気化学的に処理するように構成され得ることは、理解されるべきである。いくつかの実施形態では、内部表面は、2mmから5mmの間の直径を有する導路またはダクトの一部である。いくつかの実施形態では、導路またはダクトは、例えば、パイプ、または、オイルもしくはガスのパイプラインなどのパイプラインといった、0.5mmから5mmまでの直径を有し得る。いくつかの実施形態では、内部表面は、2mmから20mmまでの間、好ましくは4mmから10mmまでの間、より好ましくは4mmから8mmまでの間の直径を有する導路またはダクトの一部である。具体的な実施形態では、最小で2mmの直径で、最大で8mmまでの内部導路が、導路寸法に適合するために作られた電極で電気化学的に処理された。ここでも、加工が最小で繊維の幅まで行われ得ることは、理解されるべきである。
【0062】
電気化学的処理電極は、内部表面を徐々に電気化学的に処理するために、金属物品における空洞を通じて典型的には引き付けまたは他の方法で移動させられる。実施形態では、電気化学的処理電極は、柔軟性伝導性本体の引っ張り係合を通じて内部表面にわたって移動させられる。電気化学的処理電極は、好ましくは、金属物品の内部表面にわたって移動するとき、内部表面と接触している、または、内部表面のすぐ傍にある(つまり、近接している)。しかしながら、いくつかの実施形態では、電極は、例えば、電極が空洞の中で横方向に移動、転回、または他の方法で操縦される場合、前記移動中に表面から離間させるように移動させられるように構成され得ることは、理解されるべきである。同様に、電極および/または柔軟性要素が内部表面/処理面に近接しているが、直接的な接触にない場合、電気化学的処理が可能である。電解質は、電極から金属物品の内部表面/処理面への間に電気的接続が形成される媒体を提供するために、これらの例では使用される。ここでも、多くの実施形態において、柔軟性要素、特に非伝導性柔軟性要素は、柔軟性伝導体本体および(適用可能な場合)伝導性柔軟性要素を、金属物品の内部表面/処理面から離間させるために使用される。電気化学的処理電極は、内部表面にわたる単一の通過で移動させることができる。いくつかの実施形態では、電気化学的処理電極は、内部表面を所望の度合いおよび/または性質へと電気化学的に処理するために、金属物品の内部表面にわたる、少なくとも2回の通過で、好ましくは複数の通過で移動させられる。ここで、内部表面にわたる電気化学的処理電極の移動は、各々の通過の間に前の移動と反対の方向で内部表面にわたって戻るように引っ張られることを含み得る。これは、その表面を徐々に電気化学的に処理するために、内部表面にわたる循環的な移動を作り出す。
【0063】
多くの実施形態では、この移動は、金属物品の内部表面にわたる電気化学的処理電極の移動を駆動するための適切な引き付け装置を用いて作動または駆動させることができる。いくつかの実施形態では、方法は、内部表面にわたる電気化学的処理電極の移動の速度を制御するために、電気化学的処理電極をウインチまたは他の線形アクチュエータに接続するステップをさらに含む。これは、不均一な表面処理/表面仕上げが達成されることを可能にする。ここで、制御された引き付け方法は、導路の各々の区域が同じ時間の長さにわたって同じ電流の量で影響されることを確保するために、ステッピングモータまたは線形アクチュエータを使用して用いられる。
【0064】
電源または発生装置は、両方の電極(つまり、陰極/電気化学的処理電極および陽極/金属物品)を分極させるために使用される適切な交流、直流、またはパルス状の電力供給部(制御された電圧または電流)を典型的には含む。いくつかの実施形態では、電源は、直流またはパルス状の電圧または電流の制御される電力供給部を備える。
【0065】
装置が表面を電解研磨するために使用される場合、電気化学的処理電流は、
少なくとも1つの電解研磨体制であって、各々の電解研磨体制は、少なくとも2A/cm2の電流密度と、2Hz~300kHzの周波数、少なくとも0Vの最小電圧、および0.5~500Vの間の最大電圧を有する成形波形を備える電圧とを備える、少なくとも1つの電解研磨体制
を備える電流体制で適用され得る。
【0066】
ここでも、本発明の方法が電解研磨のために使用されるとき、方法は、国際特許公開WO2020/206492において教示されている本出願者の電解研磨システムで良好に機能する。この電解研磨/仕上げ方法を使用するとき、加工の信頼できる再現性を伴って、粒子除去の正確な予測が電解研磨のステップ/プログラムへと書き込まれ得る。
【0067】
本発明の第2の態様について説明されているように、電気化学的処理流体は、具体的な電気化学的処理加工において使用される任意の適切な流体であり得る。例えば、電解研磨について、電解研磨電解質が使用でき、任意の適切な伝導性液体を含み得る。第2の態様に関連して説明されている電気化学的処理流体の組成、特徴、および選択が、本発明の第3の態様に同様に当てはまることは、理解されるべきである。
【0068】
電解研磨適用について、電解研磨電解質のpHは、その組成に依存して1から14の間であり得る。いくつかの実施形態では、本発明の電解研磨方法を実施中の電解研磨電解質のpHは、好ましくは1.0から7.0までの間であり、より好ましくは1.0から3.0までの間である。一実施形態では、電解研磨電解質のpHは約1.5である。
【0069】
電解研磨電解質の温度は、-25~350℃において維持され、好ましくは0~150℃において維持され、より好ましくは50~100℃において維持され、なおもより好ましくは60~90℃において維持されるべきである。ここでも、電解研磨電解質の温度は電解研磨電解質の組成に依存する。例えば、リン酸溶液が85%に達するとき、電解研磨電解質は粘性がある。したがって、電解研磨電解質の温度がより高くなると、電解質はより良好に機能する。伝導は、より低い濃度においてより良好であるが、結果的に生じる金属物品の結果的に生じる光沢はそれほど良好ではない。電流密度が温度依存であり、電解研磨電解質の濃度および組成に基づいて変化し、そのため温度に基づいて変化することも、理解されるべきである。
【0070】
処理温度範囲を維持するために、冷却方法が通常は必要とされる。金属物品は、限定されることはないが、ヒートシンク、気体流れ、または液体流れの冷却を含む、様々な方法を通じて冷却され得る。電解研磨電解質などの電気化学的処理流体は、典型的には、熱交換器への電解質の流れまたは熱交換器を通じての電解質の流れによって、好ましくは50~100℃の間の温度で維持され、より好ましくは60~90℃の間の温度で維持される。いくつかの実施形態では、電気化学的処理流体へと向けられるファンなどの対流冷却手段が使用され得る。しかしながら、好ましい実施形態では、熱交換器が電気化学的処理流体に浸漬され得る。例えば、小さい規模(研究室または開発の規模)では、熱交換器は、電極と電解研磨電解質とを含むビーカが浸漬させられる水/氷水の浴を備え得る。大きい規模(つまり、商業用/産業用の加工)では、熱交換器は、適切な冷却/熱交換ユニットを用いた電気化学的処理流体の再循環およびその冷却を備えてもよい。また、1つまたは複数のフィルタが、金属/金属酸化物の破片を電解研磨電解質から収集するために使用されてもよい。
【0071】
実施形態では、電気化学的処理流体は、電気化学的処理電極を濡らす量で送り込まれる。この点において、電極および/または処理される金属物品の内部表面は、電気化学的処理流体の中に完全に浸漬されないが、金属物品の内部表面にわたって電気化学的処理流体が広がる程度まで濡らされる。そのため、金属物品の内部表面を電気化学的に処理する電極および関連の方法は、電気化学的処理電極および処理表面を、動作する電気化学的処理流体の中に完全に浸漬することを必ずしも必要としない。金属物品の内部表面にわたって広がるのに十分に電極を濡らし、動作のために十分であるより少ない量の電気化学的処理流体が、電気化学的処理電極へと送り込まれ得る。比較において、ほとんどの先行技術の構成が、電気化学的処理流体による液没、または、完全な導路の電気化学的処理流体(電解質)の充填を必要とすることは、留意されている。
【0072】
電気化学的処理後の化学洗浄が、金属の表面の上にある遊離した材料の化合物を除去するために必要とされてもよく、適用可能な場合、自然な不動態層を金属合金の周りに再形成させるために必要とされてもよい。
【0073】
本発明の電気化学的処理方法は、金属物品が電気化学的処理流体に浸漬される従来の電気化学的処理区画で実施され得る、または、ブラシが適用される電気化学的処理技術など、非浸漬技術で実施され得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、電気化学的処理流体は電気化学的処理区画に含まれる。電解研磨適用について、金属物品は電解研磨電解質に浸漬され、電解研磨は、電解質の範囲の中、および、電解研磨電解質を保持する入物/容器の中で行われる。この種類の従来の電解研磨において、金属物品は、電解質の浴において、電力供給部の正の端子に接続され、それによって陽極になる。本発明の第1の態様の電解研磨の電極は、陰極であり、電力供給部の負の端子に接続されることで、イオン伝導のための陰極になる。その電解研磨電極は、先に説明されているような内部空洞を通じて引き付けられる。
【0075】
液没での電解研磨または表面仕上げでは、本発明の方法で使用される電流密度は、機器および適用に基づいて選択することができる。
【0076】
他の実施形態では、電気化学的処理流体は、金属物品の内部表面への流体流れ/金属物品の内部表面にわたる流体流れとして適用される。電解研磨について、この技術は、非液没電解研磨として知られており、概して、電極に近接する出口を伴う導管を通じてなどによって、金属物品の対象の内部表面に適用される電解研磨電解質の流れと、伝導性電極を包囲する表面を電解研磨するために、電解研磨電解質に浸漬された、表面にわたって移動する伝導性電解研磨電極とを伴う。
【0077】
この非液没方法では、金属物品は、電力供給部の正の端子に接続され、それによって陽極になる。本発明の第1の態様の電解研磨電極を備える陰極は、電力供給部の負の端子に接続される。電解研磨電極は、先に詳述されているように構成され、金属物品の内部表面の選択部分と係合させられる。
【0078】
使用中、電解質は、陰極の一部および金属物品の表面を浸漬するために、金属物品の表面の選択部分へと送り込まれ(典型的には、貯留部から汲み上げられ)、それによって、金属物品の表面に電解研磨区画を形成する。冷却剤が電解研磨領域を冷却するために供給され得る。この電解研磨技術の例は、特許公報WO2009/105802、AU2013242795A1、およびAU2017204328A1において教示されており、それらの内容は、この参照により本明細書に組み込まれると見なされるべきである。
【0079】
非液没の電解研磨または表面仕上げでは、本発明の方法で使用される電流密度は、機器および適用に基づいて選択することができる。
【0080】
本発明の方法によって処理される金属物品および装置の寸法(部品寸法)が、印加される電流体制として拡張可能であり、所望の出力電流/電流密度を達成するために、複数のインバータモバイルバッテリを並列で動作させることができる制御システムを使用して印加されることは、理解されるべきである。そのため、本発明の方法は、電気化学的処理装置の寸法と、印加される電流体制を印加するためのインバータとを拡大することで、ゴルフボールの寸法の一部および自動車の寸法の一部を電気化学的に処理するために同様に適用することもできる。
【0081】
本発明の第4の態様が提供するのは、金属物品の内部表面を電気化学的処理流体と接触させるように構成される電気化学的処理電極であって、
柔軟性伝導性本体と、
柔軟性伝導性本体に接続され、柔軟性伝導性本体の概して外方へ延び、電気化学的処理流体を柔軟性伝導性本体の周りに位置付けるように構成される複数の柔軟性要素と
を備え、
柔軟性要素は少なくとも1つの柔軟性シートまたは柔軟性本体を含む、または、
電極は、好ましくは、複数の柔軟性要素から延びる、または、複数の柔軟性要素の近接、間、および/もしくは周りに配置される、柔軟性伝導性本体に接続される少なくとも1つの柔軟性シートまたは柔軟性本体をさらに備える、電気化学的処理電極である。
【0082】
この第4の態様の実施形態では、電極は柔軟性伝導性本体を備え、柔軟性要素が、柔軟性伝導性本体に接続されるか、または柔軟性伝導性本体に延びる。柔軟性要素は少なくとも1つの柔軟性シートまたは柔軟性本体を含む、または、電極は、好ましくは、複数の柔軟性要素から延びる、または、複数の柔軟性要素の近接、間、および/もしくは周りに配置される、柔軟性伝導性本体に接続される少なくとも1つの柔軟性シートまたは柔軟性本体をさらに備える。本発明の第1の態様に関連する本発明の特徴の上記の開示が、本発明のこの第4の態様に同様に当てはまることは、理解されるべきである。
【0083】
柔軟性シートまたは柔軟性本体は、典型的には、柔軟性要素で形成され、柔軟性要素に近接して配置され、柔軟性要素の中に配置され、および/または、柔軟性要素によって包囲され、追加の伝導体と、いくつかの例では、電気化学的処理手順において使用される電解質などの任意の電気化学的処理流体を運ぶための吸着体との両方として作用する。例えば、1つまたは複数の発泡体、スポンジ、または繊維材料など、任意の適切な柔軟性シートまたは柔軟性本体が使用できる。柔軟性シート/柔軟性本体が発泡体を備える場合、天然発泡体またはポリマ発泡体など、任意の適切な発泡体が使用できる。実施形態では、発泡体は、Intek(登録商標)PFI-1120高温発泡体などの高温発泡体を備える。同様に、織り材料、不織材料を含め、任意の適切な繊維材料が使用できる。実施形態では、織物は、ファイバガラスに基づく繊維、炭素繊維に基づく繊維、またはZOPINの1.0g/cm3など、高温繊維を備える。柔軟性シートは、電気化学的処理流体を運ぶために使用され、処理される金属に依存して金属物品の前記内部表面の電気化学的処理を支援するために好ましくは伝導性であり得る。例えば、柔軟性シートはニッケル合金にとって伝導性であり得る。他の実施形態では、柔軟性シートは、例えばアルミニウム合金にとって、非伝導性であり得る。一実施形態では、柔軟性シートまたは柔軟性本体は、電極および複数の柔軟性要素にわたって延びるように構成された、電極および複数の柔軟性要素を包囲する発泡体要素を備える。発泡体要素は、電極および複数の柔軟性要素の周りで延びる鞘状体または他の取り囲み本体を好ましくは備える。複数の柔軟性要素は、好ましくは発泡体材料中へと延び、それによって、導電性経路/要素を発泡体材料の中に提供する。しかしながら、柔軟性シートまたは柔軟性本体が、柔軟性伝導性本体の周りの柔軟性シートまたは柔軟性本体に接続し得る、または柔軟性シートまたは柔軟性本体を他の方法で位置付けし得る様々な他の手段を使用して、電極にわたって延び、電極を包囲するように構成されてもよいことは、理解されるべきである。
【0084】
本発明の第5の態様が提供するのは、金属物品の内部表面を電気化学的に処理するための装置であって、
本発明の第4の態様による少なくとも1つの電気化学的処理電極と、
電極の柔軟性要素と金属物品の内部表面上とに電気化学的処理流体を提供するように構成される電気化学的処理流体供給源と、
電源と
を備え、
電気化学的処理電極は電源の端子に接続され、金属物品は電源の他方の端子に接続される、装置である。
【0085】
本発明の第2の態様に関連する本発明の特徴の上記の開示が、本発明のこの第5の態様に同様に当てはまることは、理解されるべきである。
【0086】
本発明の第6の態様が提供するのは、金属物品の内部表面を電気化学的に処理する方法であって、
本発明の第4の態様による電気化学的処理電極を電源の端子に電気的に接続するステップと、
金属物品を電源の他方の端子に電気的に接続するステップと、
少なくとも前記金属物品の内部表面を、好ましくは電解質である電気化学的処理流体と接触させるステップと、
電気化学的処理電流が前記電源の前記端子間に印加される間に、前記電気化学的処理電極を前記金属物品の前記内部表面にわたって移動させるステップであって、前記複数の伝導性繊維または非伝導性繊維の少なくとも一部分が前記金属物品の前記内部表面と接触する、ステップと、
それによって内部表面を電気化学的に処理するステップと
を含む方法である。
【0087】
本発明の第3の態様に関連する本発明の特徴の上記の開示が、本発明のこの第6の態様に同様に当てはまることは、理解されるべきである。
【0088】
ここで、本発明は、本発明の具体的な好ましい実施形態を示している添付の図面の図を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0089】
図1】本発明の実施形態による電気化学的処理電極の正面図である。
図2図1に示されている電気化学的処理電極の斜視図である。
図3A】柔軟性繊維の混合を含む、本発明の一実施形態による電気化学的処理電極の正面図である。
図3B】電気化学的処理電極の混合した炭素繊維およびKevlar繊維の実施形態を示す、図3Aの円Aの第1の詳細図である。
図3C】柔軟性繊維の混合を含む、本発明の別の実施形態による電気化学的処理電極の正面図である。
図3D】電気化学的処理電極の混合した炭素繊維およびKevlar繊維の実施形態を示す、図3Cの円A1の第2の詳細図である。
図4A】バネに基づく繊維接続器を含む、本発明の一実施形態による電気化学的処理電極の斜視図である。
図4B】バネに基づく繊維接続器を含む、本発明の一実施形態による電気化学的処理電極の正面図である。
図4C】電気化学的処理電極の混合した炭素繊維、Kevlar、およびファイバガラスの実施形態を示す、図4Bの円Bの詳細図である。
図5A】柔軟性スポンジ鞘状体を含む、本発明の一実施形態による電気化学的処理電極の斜視図である。
図5B図5Aの円Cの詳細図である。
図6A】アルミニウムワイヤを含む柔軟性ファイバガラスシートを含む、本発明の一実施形態による電気化学的処理電極の斜視図である。
図6B図6Aの断面D-Dに沿っての電気化学的処理電極の詳細図である。
図7A】本発明の実施形態による、球に成形された電気化学的処理電極の図である。
図7B】本発明の実施形態による、球に成形された電気化学的処理電極の図である。
図8図1図4Cのうちの1つに示された電気化学的処理電極を含む電気化学的処理装置の概略図である。
図9図1図4Cのうちの1つに示されているような電気化学的処理電極を含む浸漬電気化学的処理装置の概略図である。
図10図1図4Cのうちの1つに示されているような電気化学的処理電極を含む、非液没電気化学的処理装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0090】
本発明は、熱交換器またはエンジン部品など、付加製造された(3D印刷された)金属物品または製品の中の空洞、中空、導路、または開口の内部表面を電気化学的に処理するために使用できる電極、関連する電気化学的処理システム、および方法を提供する。
【0091】
本発明の電気化学的処理が、電力供給部(交流または直流)が表面を処理するために使用される任意の電気化学的加工であり得る。適切な電気化学的処理加工は、電解研磨、電解清浄、陽極酸化処理、パーカライジング、および酸洗いを含む。しかしながら、以下の材料は電解研磨用途の文脈で例示されている。本発明が、この用途に限定されず、様々な電気化学的処理加工に適用できることは、理解されるべきである。
【0092】
図1および図2は、本発明の一実施形態による電気化学的処理電極100を示している。図示されているように、電気化学的処理電極100は、2つの主要な区域、すなわち、
(1)例えば、部分的に剥がされた磁石ワイヤまたは同様のものなど、柔軟性伝導性ワイヤ111、112の2つの長尺撚線から形成された柔軟性伝導性本体110と、
(2)柔軟性伝導性本体110に接続され、柔軟性伝導性本体110の概して径方向外方へ延びる複数の柔軟性要素120と
を備える。図示されている実施形態では、柔軟性要素120は、接続帯域122において柔軟性伝導性ワイヤ111、112の伝導性表面に直接的に接触する炭素繊維の剛毛または撚線を備える。しかしながら、後で説明されるように、柔軟性要素は、任意の適切な柔軟性繊維とでき、また、非伝導性繊維を備え得る、および/または非伝導性繊維と混ぜられ得る。
【0093】
各々の炭素繊維は、柔軟性伝導性ワイヤ111、112の2つの長尺撚線の間に配置されることで接続帯域122の中の所定の位置で固定され、次に、それらのワイヤは、柔軟性伝導性ワイヤ111、112の間に炭素繊維剛毛を留め付ける、または他の方法で圧縮係合するために、炭素繊維剛毛の周りで捩じられる。したがって、この伝導性繊維の実施形態では、電流が、柔軟性伝導性本体110を通じ、接続帯域122を通じ、複数の柔軟性要素120を通じて、適用表面へと流れることができ、さらに電気化学的に処理される金属物品を通じて流れ、金属物品の内部表面の電気化学的処理を容易にすることができる(以下に示す)。
【0094】
柔軟性伝導性本体110は、柔軟性伝導性本体の周りに電気化学的処理流体を位置付けるようにも機能する。この実施形態では、密に離間された複数の剛毛の使用は、電気化学的に処理される金属物品の中の中空、導路、または開口の中にあるとき、電解質などの電気化学的処理流体を伝導性本体110の周りで保持するために、隣接の要素および表面領域を一緒に提供する。ここで、複数の剛毛は、電気化学的処理流体の通過流体、典型的には、粘性の流体がそれら剛毛と表面および内部で相互作用する柔軟性ブラシを形成する。
【0095】
柔軟性要素120の寸法は、典型的には、電気化学的処理を受ける金属物品の導路またはダクトの寸法に適合するように典型的には構成され、柔軟性要素120の長さは、典型的には、導路またはダクトの半径と典型的には同様である、または、導路またはダクトの半径より若干大きい。柔軟性要素120は、電極100が金属物品の中の空洞、中空、導路、または開口へと挿入されて中を移動させることができるように、弾性的に変形するのに十分な柔軟性となるように設計される。図示されている柔軟性要素120は、一方向性平面に沿って22mmの長さを有する炭素繊維剛毛と、一方向性平面に隣接する200mmの長さの帯状片とを備える。しかしながら、任意の適切な伝導性で、好ましくは弾性で、柔軟性の帯状片、フィラメント、ウィスカ、または繊維などが使用できることは、理解されるべきである。例えば、柔軟性要素120は、複数の炭素繊維、金属繊維、または、異なる種類の伝導性および弾性の繊維の混合も備え得る。
【0096】
図3A図3Dに示されているように、いくつかの実施形態は、伝導性柔軟性要素120(例えば、炭素繊維)と混ぜられ、柔軟性伝導性本体110の概して径方向外方へ延びる複数の非伝導性繊維121をさらに含む。非伝導性繊維121の例は、図3Cおよび図3Dに示されているようなファイバガラス、図3Bに示されているようなポリパラフェニレンテレフタルアミド(Kevlar)、または、図4Cに示されているようなポリパラフェニレンテレフタルアミド(Kevlar)とファイバガラスとの混合を含む。しかしながら、任意の適切な高温の非伝導性繊維が使用できることは、理解されるべきである。非伝導性繊維121は、伝導性繊維120と同じ接続配置を使用して、接続帯域122の中の所定の位置で固定される。例えば、図3Bおよび図3Dでは、非伝導性繊維121は、柔軟性伝導性ワイヤ111、112の2つの長尺撚線のワイヤ捩じれの間に保持される。図4Bでは、非伝導性繊維121は、バネ伝導性本体125の巻き間で保持されている。
【0097】
図3Bおよび図3Dでは、炭素繊維撚線120が非伝導性繊維121(図3Dではファイバガラス繊維、図3BではKevlar)より短い長さを有することは、留意されるべきである。より長い非伝導性繊維は、スパークまたは他の高電圧放出の種類の事象を低減するために、より短い伝導性炭素繊維が電気化学的に処理される表面から適切に離間されることを確保する。
【0098】
図1および図2に示されている柔軟性伝導性本体110は、それ自体の長さに沿って長手方向軸X-Xを定める2つの長尺柔軟性ワイヤ111、112を備える。そのため、複数の柔軟性要素120が、柔軟性伝導性本体110に電気的に接続され、柔軟性伝導性本体110の長手方向軸X-Xの概して径方向外方へ延びる。ここでも、ステンレス鋼、金、銅、アルミニウム、または、良好な伝導性および耐腐食性を呈する任意の他の金属もしくは伝導性材料などの金属ワイヤなど、任意の適切な伝導性ワイヤが使用され得る。図1および図2では、長尺柔軟性ワイヤ111、112は、ポリウレタンの優れた誘電特性と、ナイロンオーバーコートの堅牢性および耐溶媒性とを組み合わせた、Beldsol二重絶縁磁石ワイヤ(Belden Cableから入手可能)などの磁石ワイヤを備える。
【0099】
各々の柔軟性ワイヤ111、112は、非電気的に接続された表面にわたって絶縁性の被覆またはスリーブ115を含む。この絶縁性の被覆またはスリーブ115は、例えば、エナメルまたはウレタンの被覆などのポリマ被覆として、誘電性被覆を備えてもよい。例示の被覆には、4228レッド絶縁ワニス、CRCウレタンシールコートがある。金属ワイヤなどの柔軟性伝導性本体110に絶縁性の被覆またはスリーブ115が供給される場合、その被覆は、柔軟性伝導性本体110と複数の柔軟性要素120との間の電気的な接触および接続を容易にするために、接続帯域122において伝導性本体の伝導性材料を露出するように接続帯域122において部分的に除去され得る(露出させるなど)ことは、理解されるべきである。
【0100】
柔軟性伝導性本体110は、端が電解研磨装置(図8および図9に示されているようなものであり、後で説明される)の電力供給部の適切な電気端子(陰極)に接続できるように、および、金属物品の必要な空洞、空所、導路、または開口を通じて延びることもできるように、十分な長さを有する。図3Cおよび図3Dに示されているように、3つ以上の柔軟性要素が、電源から電気を伝導するために、および、柔軟性要素120と非伝導性繊維121とを電気的に接続して固定するために、使用されてもよい。ここでは、柔軟性ワイヤ111、112、および112Aの3つのセットが使用されている。
【0101】
図示されている実施形態は、柔軟性伝導性ワイヤ111、112を捩じることによる圧縮係合を通じて柔軟性要素120が柔軟性伝導性本体110に接続されていることを示しているが、この伝導性の接続は、様々な他の適切な手段によって行うことができる。例えば、柔軟性要素120は、ウィービング、粘着、溶接、嵌め込み、くさび作用、埋め込み、接合、係留、またはそれらの組み合わせを通じて柔軟性伝導性本体に接続されてもよい。具体的な実施形態では、複数の柔軟性要素120は、柔軟性伝導性本体110との接続へと留め付け、圧着、押し付け、または結び付けされる。なおも他の実施形態では、複数の柔軟性要素120は柔軟性伝導性本体110に押し付け、圧着、はんだ付け、溶接、または接着させられる。
【0102】
図4A図4B、および図4Cは、柔軟性要素220がバネで保持されている電極200の実施形態を示している。ここでは、長尺柔軟性伝導性本体210の接続帯域220が少なくとも1つの引っ張りバネ225を備える。引っ張りバネ225は、接続帯域220を通じて延び、図1に示されている実施形態について説明されているように、電源(図示されていない)へと延びる柔軟性ワイヤ211、212に電気的に接続される。柔軟性要素220は、バネ225の隣接のコイル間の圧縮係合を通じて柔軟性伝導性本体に接続される。図示されている実施形態では、柔軟性要素220は、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(Kevlar)とファイバガラスとの混合と混ぜられる炭素繊維を備え、バネ225の隣接のコイルの間の圧縮係合を通じて柔軟性伝導性本体に接続もされる。
【0103】
図5A図7Bは、本発明の電極のさらなる実施形態および/または代替の実施形態を示している。
【0104】
図5Aおよび図5Bは、複数の柔軟性要素320を通じて柔軟性伝導性本体310に接続される発泡鞘状体330の形態で、少なくとも1つ柔軟性のシートまたは本体をさらに備える電極300の実施形態を示している。発泡鞘状体330は、接続帯域322の周りに配置された、接続帯域322を包囲する柔軟性本体を形成する。図5Bに示されているように、柔軟性要素は、電流を柔軟性伝導性本体310から発泡鞘状体330へと伝達させることができるように、発泡鞘状体330に埋め込まれる。ほとんどの実施形態では、発泡鞘状体330は、電解研磨手順で使用される電解研磨電解質など、任意の電気化学的処理流体を運ぶための吸着体を提供する。ここでも、電気化学的処理流体は、典型的には伝導性流体である。天然またはポリマの発泡体またはスポンジなど、任意の適切な発泡体材料が使用され得る。実施形態では、発泡体は、Intek(登録商標)PFI-1120高温発泡体(Trelleborg Applied Technologiesから入手可能)などの高温発泡体を備える。図示されている実施形態では、柔軟性要素320は、他の実施形態について先に説明されているように、柔軟性伝導性ワイヤ311、312を捩じることによって、圧縮係合を通じて柔軟性伝導性本体310に接続される炭素繊維を備える。ここで、柔軟性要素は、発泡鞘状体330を所定位置で保持し、例えば炭素繊維または金属要素を含めて伝導性である場合、柔軟性伝導性本体310から、電気化学的処理流体の充填/含有された発泡鞘状体330を通じて、電気化学的に処理される表面上への電流の流れを支援する。しかしながら、この伝導性接続が、先に説明されているような様々な他の適切な手段によって行うことができることは、理解されるべきである。他の実施形態では、発泡鞘状体330は繊維材料鞘状体で置き換えられてもよい。その繊維鞘状体は、織り繊維材料または不織繊維材料を含め、任意の適切な繊維から形成することができる。発泡鞘状体330と同様に、柔軟性鞘状態は、電解質を運ぶために使用でき(濡らすなどすることができ)、金属物品の前記内部表面の電気化学的処理を支援するために好ましくは伝導性であり得る。
【0105】
図6Aおよび図6Bは、柔軟性伝導性本体410の周りの接続帯域422において異なる長さのファイバガラス繊維長さを有するファイバガラスの柔軟性要素420をさらに備える電極400の実施形態を示している。柔軟性伝導性本体410は、図1に関連して説明されている捩じられたワイヤ実施形態と同様の構成を有する。しかしながら、ここで、ファイバグラス柔軟性要素120の径方向長さは伝導性本体410の周囲の周りで変化する。図示されているように、第1の区域420Aは第2の区域420Bより長い長さを有する。その長さは、電極が電気化学的に処理するように構成される具体的な空洞または内部開口の形または構成に合致するように構成され得る。
【0106】
図7Aおよび図7Bは、表面から延びる複数の柔軟性要素520を含む柔軟性の球または玉525を備える電極500の実施形態を示している。この実施形態では、柔軟性伝導性本体510は、一方の端において電源(図示されていない)に接続し、他方の端において柔軟性玉525に接続する柔軟性ワイヤ511および512を備える。柔軟性玉525は、いくらかの伝導性の性質を有し得る、典型的には高温発泡体といった発泡体の芯から形成される。発泡体は、処理される表面に適用され得る電気化学的処理流体を吸収および保持するために使用される。その発泡体の玉は、柔軟性玉525から外方へ延びる柔軟性要素520を形成する一連の同心のリブ、帯状片、またはフランジを備えるおよび/またはそこに取り付けられている。柔軟性要素520は、成形された形として形成された炭素繊維混合から形成される。柔軟性玉525は、柔軟性ワイヤ511および512から柔軟性玉の外面への電流の伝導を支援するために、ワイヤまたは繊維などの1つまたは複数の伝導性要素(図示されていない)を中に含み得る。他の実施形態では、柔軟性玉525が、内部空洞を含んでもよく、延いては中空であってもよく、その中に、例えば、伝導性本体の周りに電気化学的処理流体を保持するために使用される伝導性要素、例えば、ワイヤまたはバネといった、一連の柔軟性要素を中に含み、伝導性本体から柔軟性玉525の外面へと電流を伝導し得ることは、留意されるべきである。発泡体の形が、変化する内部通路の直径および形を通じて引き付けられるときに拡張および収縮する内部表面に沿って進むように形状記憶を有することは、理解されるべきである。
【0107】
最後に、図示されていないが、いくつかの実施形態では、複数の伝導性粒子が、複数の柔軟性要素の近接および/または間に位置付けられることは、理解されるべきである。伝導性粒子は、電気化学的に処理される内部表面に対する電解質の隙間を短くして空洞の中の回路の抵抗を最小限にするために電解質の中で混合することができる追加の伝導体手段を提供するか、または、この作業を実施するために低抵抗の電解質-繊維複合材を形成することができる。
【0108】
図8は、図1図7Cに示されている電極100、100A、100B、200、300、400、500を組み込むことができる一般的な電気化学的処理装置600の概略図を提供する。図示されている電気化学的処理装置600は、所望の電流波形(直流、直流パルス、または可変周波数交流)を短いパルスで送達することができるインバータ電力供給部630を備える。インバータ電力供給部630はコンピュータ制御装置(図示されていない)を含み得る。
【0109】
図示されている金属物品690は、電気化学的に処理される必要がある内部表面を含む内部導路692を含む。その金属物品690は、電力供給部630の一方の端子680の電気的に接続され、インバータ電力供給部630の他方の端子685は電気化学的処理電極100に接続される。電気化学的処理電極100は、図1との関連で説明および図示されている実施形態として図8に示されている。しかしながら、図1図7Cに示されている電極100、100A、100B、200、300、400、500の他の実施形態の各々が同様に使用できることは、理解されるべきである。電解質などの電気化学的処理流体が、電気回路を完成させるために、電極100および金属物品690に適用され得る。
【0110】
図8では明示的に示されていないが、装置600も、電気化学的処理流体供給源(図8では示されていない)によって提供される電極100上とその周りとに電気化学的処理流体を含む。その供給源は、電極100の柔軟性要素と金属物品690の内部表面上とに電気化学的処理流体を提供するように構成される。電気化学的処理流体供給源は、図10に関連して後で図示および説明されているようなポンプシステムであり得る、または、図9に関連して後で説明されているような浸漬するシステムであり得る。すでに説明されているように、電気化学的処理流体は、好ましくは、所望の電気化学的処理を容易にするために、電流を電極から処理される表面へと伝導することを支援する電解質などの伝導性流体である。
【0111】
電気化学的処理加工は、金属物品690と電極100との間に電流および電圧差を印加するために電力供給部630を使用し、電流が印加されている間に金属物品の内部表面にわたって電極100を移動させることで、行われる。この手順の間、金属物品690の内部表面は、電極100と金属物品690の内部表面との間に良好な電気的接触および伝導を提供するために、電解質などの電気化学的処理流体と接触させられる。
【0112】
図9は、図1図7Cに示されている電極100、100A、100B、200、300、400、500を組み込むことができる典型的な電解研磨装置700の概略図を提供する。図示されている電解研磨装置700は、電解研磨電解質740を位置付けるように構成される電解質貯留部720を有する電解区画710を備える。電解研磨装置700は、所望の電流波形(直流、直流パルス、または可変周波数交流)を短いパルスで送達することができるインバータ電力供給部730を備える。インバータ電力供給部730はコンピュータ制御装置735によって制御される。
【0113】
図示されている金属物品790は、電解研磨される必要がある内部表面を含む内部導路792を含む。金属物品790は、インバータ電力供給部730の正の端子785に電気的に接続され、インバータ電力供給部730の負の端子780は、電解質740を収容する容器も備える電解研磨電極100(陰極として作用する)に接続される。金属物品790は、電解研磨電解質740と完全な電気回路を形成する電解質740での貯留部720に吊り下げられる。
【0114】
電極100は、図1との関連で説明および図示されている実施形態として図9に示されている。しかしながら、図1図7Cに示されている電極100、100A、100B、200、300、400、500の他の実施形態の各々が同様に使用できることは、理解されるべきである。
【0115】
図示されていないが、電解研磨装置710は、電解研磨電解質740を攪拌/混合し、金属物品790および電極100の周りでの電解質740の均一な分配を確保するための混合回転子といった混合デバイスも備え得る。
【0116】
コンピュータ制御されるインバータ電力供給部730は、金属物品790と電極100との間に電流および電圧差を印加するために使用される。コンピュータ735は、具体的な金属物品790および研磨される包含する材料にとって最適となるようにあらかじめ決定された電圧/電流および周波数の範囲を含む印加電流体制を通じて、インバータ730(電源)をステップ制御するプログラムを実行する。所与の電解研磨電解質について、金属物品から除去される金属の量は、印加される電流の量と時間とに比例する。金属物品の形状などの他の因子が、電流の分布に影響し、結果として、局所的な領域で除去される金属の量に重要な影響を持つ。
【0117】
先に述べられているように、図1図7Cに示されている電極100、100A、100B、200、300、400、500と、図9に示されている電解研磨システム700とは、国際特許公開WO2020/206492において教示されている本出願者の電解研磨システムを使用/具現化することを特に良好に機能させる。WO2020/206492の電解研磨システムで使用されるとき、ワイヤは、必要とされる大きな電流を運ぶように設計でき、エナメル(ワイヤ被覆)溶融点は、デューティサイクルおよび待機/冷却時間によって管理することができる。
【0118】
電解研磨は、-25℃~200℃で、好ましくは0℃~150℃の範囲の温度で、電解研磨装置700の電解研磨電解質740で実施される。実施形態では、電解研磨電解質740は、約50℃~100℃で、好ましくは60℃~90℃の温度で保持される。電解研磨装置700は、電解研磨電解質740の温度を監視および制御するために、コンピュータ制御装置735または別の制御装置(図示されていない)に取り付けることができる組み合わされた温度プローブ/加熱および冷却のユニット(図示されていない)も含み得る。処理温度範囲を維持するために、冷却方法が通常は必要とされる。金属物品790は、限定されることはないが、ヒートシンク、気体流れ、または液体流れの冷却を含め、様々な方法を通じて冷却され得る。電解研磨電解質は、典型的には、熱交換器への電解質の流れまたは熱交換器を通じての電解質の流れによって、好ましくは50~100℃の間の温度で維持され、より好ましくは60~90℃の間の温度で維持される。
【0119】
電解研磨電解質740は、典型的にはC1~C4アルコールの水で希釈された85%濃度の、リン酸(H3PO4)に基づく溶液を好ましくは含む。しかしながら、電解研磨電解質740は他の成分を含んでもよい。例えば、いくつかの実施形態では、電解研磨電解質740は、硫酸(H2SO4)、塩酸(HCl)、もしくはそれらの組み合わせと組み合わせたリン酸(H3PO4)、および、水もしくはC1~C4アルコールの一方を含む。他の電解研磨電解質組成も可能である。電解研磨電解質740のpHは、その組成に依存して1から14の間であり得る。
【0120】
図10は、図1図4Cのうちの1つに示されているような電解研磨電極100、100A、100B、200を含む、非液没電気化学的処理装置800の概略図を示している。これらの実施形態では、電解研磨電解質は、電解質が貯留部(図示されていない)から送り込み導管852を通じて電解研磨電極100および金属物品へと送り込まれるポンプ850を使用して、金属物品890の表面上への流体流れとして適用される。このような電解研磨技術は、非液没電解研磨として知られており、概して、金属物品890の表面に適用される電解研磨電解質の流れを伴い、伝導性電極100は、伝導性電極100を包囲する表面を電解研磨するために、電解研磨電解質に浸漬されて、表面にわたって移動する。
【0121】
電極100は、図1との関連で説明および図示されている実施形態として図10に示されている。しかしながら、図1図7Cに示されている電極100、100A、100B、200、300、400、500の他の実施形態の各々が同様に使用できることは、理解されるべきである。
【0122】
この非液没方法では、金属物品890は、電力供給部830の一方の端子880に接続され、それによって陽極になる。図1および図2に示されている電解研磨電極100は、電力供給部830の他方の端子885に接続され、電解研磨システム800のための陰極として作用する。
【0123】
使用中、電解質は、電極100の一部および金属物品890の表面を浸漬するために、貯留部(電解質瓶854)から金属物品890の表面の選択部分へとポンプで送り込まれ、それによって、金属物品890の表面に電解研磨区画を形成する。いくつかの実施形態では、冷却剤も電解研磨領域を冷却するために供給され得る。ここでも、この電解研磨技術の例は、特許公報WO2009/105802、AU2013242795A1、およびAU2017204328A1において教示されている。
【0124】
この非液没方法では、電解質は、任意の有用な手段によって対象の金属物品の内部表面に適用され得る。図示されているように、電解質は、電極100の中に位置付けられる流体出口を含む電解質送り込み導管852を通じて内部表面上に送り込まれる。典型的には、導管は、出口またはノズル(図示されていない)が柔軟性要素120の中に位置付けられる状態で、柔軟性ワイヤ111、112に沿って、または柔軟性ワイヤ111、112と並行に配置される。これは、電解質を、対象である内部表面上へと電極100の近接に送り込ませることができる。装置800は、電極100の中、より具体的には柔軟性要素120の中に位置付けられる少なくとも1つの流体出口を含む冷却剤導管(図示されていない)も含み得る。ここでも、これは、冷却剤を、対象である内部表面上へと電極の近接に送り込ませることができる。冷却剤および電解質は、ポンプ、注射器、ピストン、または同様のものなど、任意の適切な流体移動システムを使用して汲み上げられ得る。
【0125】
各々の実施形態において、電解研磨電極100は、内部表面を徐々に研磨するために、金属物品における空洞を通じて引き付けまたは他の方法で移動させることができる。この移動は、線形アクチュエータ、ウインチ、または同様のものなど、適切な引き付け装置を使用して作動または駆動させることができる。
【0126】
使用中、金属物品790、890は、以下のステップを使用する、図9および図10に示されている装置を使用して、電解研磨され得る。
1.電極100の柔軟性伝導性本体110の端子端105が、電解研磨電源730、830の負の端子780、880に接続され、柔軟性伝導性本体110の引き付け端106が、適切な引き付け装置(図示されていない)に(適用可能な場合)取り付けられ得る。
2.金属物品790、890が電解研磨電源730、830の正の端子785、885に接続される。
3.次に、電解質が、浸漬を通じて(図8に示されている浸漬装置を使用する)、または、電解質送り込み導管852を介して(図9に示されている非液没装置を使用する場合)、金属物品790、890の導路792、892の内部表面と電極100とに適用される。
4.次に、電極100が、電解研磨電流が正の端子785、885と負の端子780、880との間に印加される間に、金属物品790、890の内部表面にわたって電極を移動させられる。ここで、電極100は、研磨される導路592を通じて、柔軟性伝導性本体110の引き付け端106からゆっくりと引っ張られる。他の通過が必要とされる場合、電解研磨電源730、830の負の端子780、880は柔軟性伝導性本体110の引き付け端106に接続でき、電極100は、反対方向において導路592を通じて戻るように引っ張られる。
【0127】
電解研磨電極100は、内部表面を所望の表面粗さに研磨するために、金属物品790、890の内部表面にわたる1回または複数回の通過で、好ましくは複数の通過で移動させることができる。ここで、導路592を通じた内部表面にわたる電解研磨電極100の移動は、各々の通過中に前の移動と反対の方向で内部表面にわたって戻るように引っ張られることを含み得る。これは、内部表面にわたる循環的な移動を作り出し、その表面を徐々に研磨する。
【0128】
先に説明されているように、柔軟性要素120は、電解研磨する内部空洞の形および構成のために好ましい寸法および構成とされる。例えば、内部表面が導路またはダクトの一部である場合、柔軟性要素120の長さは、導路またはダクトの径方向の寸法を補完する長さを有するように選択される。
【0129】
電解研磨電源または電解研磨発生装置730、830は、両方の電極(つまり、陰極/電解研磨電極および陽極/金属物品)を分極させるために使用される適切な交流、直流、またはパルス状の電力供給部(制御された電圧または電流)を典型的には含む。いくつかの実施形態では、電解研磨電源は、直流またはパルス状の電圧または電流の制御される電力供給部を備える。
【0130】
先に述べられているように、この電解研磨方法は、国際特許公開WO2020/206492において教示されている本出願者の電解研磨システムで良好に機能する。この電解研磨/仕上げ方法を使用することで、加工の信頼できる再現性を提供することを伴って、粒子除去の正確な予測を電解研磨のステップ/プログラムへと書き込ませることができる。
【0131】
電解研磨後の化学洗浄が、合金の表面の上にある遊離した材料の化合物を除去するために必要とされてもよく、適用可能な場合、自然な不動態層を金属合金の周りに再形成させるために必要とされてもよい。
【0132】
本発明の電解研磨の電極、装置、および方法は、様々な金属を電解研磨するために使用することができる。適切な金属の例には、鉄および鉄含有合金(工具鋼H13、炭素鋼(普通)、ステンレス鋼など)、アルミニウムおよびアルミニウム含有合金、チタンおよびチタン含有合金、クロミウムおよびクロミウム含有合金、銅合金、黄銅合金、ならびに/またはニオブがある。具体的には、本発明は、保護酸化物被覆を有するそれらの金属および金属合金を電解研磨するために使用できる。電解研磨方法が使用できる金属および金属合金の例には、ステンレス鋼、ニッケル-クロミウム(ニッケル-クロム)、ニッケル-クロム合金、コバルト-クロミウム合金、コバルト-クロミウム-モリブデン合金などのクロミウムに基づく金属合金、および、チタン、チタン合金、ニチノールなどのニッケル合金、アルミニウム、またはアルミニウム合金がある。
【0133】
当業者は、本明細書に説明されている本発明が、明確に説明されているもの以外の変更および改良を受けることを理解するものである。本発明が、本発明の精神および範囲の中にあるこのような変更および改良のすべてを含むことは、理解される。
【0134】
「comprise(~を備える)」、「comprises(~を備える)」、または「comprising(~を備えている)」という用語は、本明細書(特許請求の範囲を含む)において使用されている場合、述べられた特徴、整数、ステップ、または構成要素の存在を明示しているとして解釈されるが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップの存在を排除しない。
【符号の説明】
【0135】
100、100A、100B 電気化学的処理電極、電解研磨電極
105 端子端
106 引き付け端
110 柔軟性伝導性本体
111、112、112A 柔軟性伝導性ワイヤ、長尺柔軟性ワイヤ
115 絶縁性の被覆またはスリーブ
120 伝導性柔軟性要素、伝導性繊維、炭素繊維撚線
121 非伝導性繊維
125 バネ伝導性本体
200 電極
211、212 柔軟性ワイヤ
220 柔軟性要素
225 引っ張りバネ
300 電極
310 柔軟性伝導性本体
320 柔軟性要素
322 接続帯域
330 発泡鞘状体
400 電極
410 柔軟性伝導性本体
420 柔軟性要素
422 接続帯域
500 電極
511、512 柔軟性ワイヤ
520 柔軟性要素
525 柔軟性の球または玉
592 導路
600 電気化学的処理装置
630 インバータ電力供給部
680、685 端子
690 金属物品
692 内部導路
700 電解研磨装置、電解研磨システム
710 電解区画、電解研磨装置
720 電解質貯留部
730 インバータ電力供給部、電解研磨電源、電解研磨発生装置
735 コンピュータ制御装置
740 電解研磨電解質
780 負の端子
785 正の端子
790 金属物品
792 内部導路
800 電気化学的処理装置、電解研磨システム
830 電力供給部、電解研磨電源、電解研磨発生装置
850 ポンプ
852 送り込み導管
854 電解質瓶
880 負の端子
885 正の端子
890 金属物品
X-X 長手方向軸
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
【国際調査報告】