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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】好中球エキソサイトーシス阻害剤
(51)【国際特許分類】
   C07D 249/08 20060101AFI20241219BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20241219BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241219BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241219BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241219BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20241219BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241219BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20241219BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241219BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 31/4196 20060101ALI20241219BHJP
   C07D 403/06 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20241219BHJP
   C07D 403/14 20060101ALI20241219BHJP
   C07D 403/10 20060101ALI20241219BHJP
   C07K 14/00 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
C07D249/08 520
A61K9/51
A61K9/16
A61K47/24
A61K47/28
A61K9/127
A61K47/69
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P29/00
A61P37/02
A61P11/00
A61P1/04
A61P17/00
A61P13/12
A61K31/4196
C07D403/06 CSP
A61K31/454
C07D403/14
C07D403/10
C07K14/00 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536085
(86)(22)【出願日】2022-12-15
(85)【翻訳文提出日】2024-08-08
(86)【国際出願番号】 IL2022051340
(87)【国際公開番号】W WO2023112038
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】63/289,771
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524226357
【氏名又は名称】イミュニクス ファーマ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ドラモンド,ダリル シー
(72)【発明者】
【氏名】サルペーター,セス ジョナ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA31
4C076AA65
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB16
4C076BB29
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC17
4C076CC27
4C076DD63H
4C076DD70H
4C076EE41
4C076FF21
4C076FF36
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC60
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA38
4C086MA41
4C086MA52
4C086MA60
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZA68
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZC41
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045EA20
4H045FA50
(57)【要約】
本発明は、化合物およびそれを含む組成物に関する。さらに、好中球関連疾患または状態の処置および予防を必要とする対象における好中球関連疾患または状態の処置および予防などのための使用方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の立体異性体またはその塩を含む化合物であって、前記化合物が、式I:
【化1】

または、式:
【化2】

(式中:
Aは、メチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、線状もしくは分岐C-C10アルキル基、置換もしくは非置換の線状もしくは分岐C-C10アルキル基、置換C-C10アルキル基、1つ以上の炭素環を含む任意に置換されたC-C10シクロアルキル基、1つ以上のヘテロ原子を含む任意に置換されたC-C10アルキル基、C-C10ハロアルキル基、置換C-C10ハロアルキル基、C-C10アルキルヒドロキシ基、ハロ基、C-C10アルコキシ基、C-C10シクロアルキル基、置換C-C10シクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、二環式芳香族環、不飽和脂肪族環、二環式脂肪族環またはそれらの組み合わせを表し;
Yは、存在しないか、またはN、NH、NR、CH、HCR、CH、S、SHおよびOからなる群から選択され;
nは、0~5の整数であり;
Xは、水素であるか、またはハロ基、メチル基、イソプロピル基、C-C10アルキル基、置換C-C10アルキル基、アルコキシ基、アミノ基およびヒドロキシ基からなる群から選択される置換基を表し;
各Rは、独立して存在しないか、または1つ以上の置換基を表し、それぞれ独立して、メチル基、イソプロピル基、C-C10アルキル基、置換C-C10アルキル基、ハロ、オキソ、-NO、アミノ、ヒドロキシ、-CN、-OH、-CONH、-CONR’、-CNNR’、-CSNR’、-CONH-OH、-CONH-NH、-NHCOR、-NHCSR、-NHCNR、-NC(=O)OR、-NC(=O)NR’、-NC(=S)OR’、-NC(=S)NR’、-SOR’、-SOR’、-SR’、-SOOR’、-SON(R’)、-NHNR’、-NNR’、C-Cハロアルキル、任意に置換されたC-Cアルキル、-NH、-NR’R’、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、ヒドロキシ(C-Cアルキル)、ヒドロキシ(C-Cアルコキシ)、アルコキシ(C-Cアルキル)、アルコキシ(C-Cアルコキシ)、C-Cアルキル-NR’、C-Cアルキル-SR’、-CONH(C-Cアルキル)、-CON(C-Cアルキル)、-COH、-COR’、-OCOR、-OCOR’、-OC(=O)OR’、-OC(=O)NR’、-OC(=S)OR’、-OC(=S)NR’、-OR’、-NR’R’、またはそれらの組み合わせのいずれか1つを含み;各R’は、独立して水素を表すか、または価数によって許容される場合、任意に置換されたC-C10アルキル、任意に置換されたC-C10シクロアルキル、任意に置換されたC-C10ヘテロシクリル、任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換されたアリール、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、オキソ、シアノ、任意に置換されたC-C10アルキル、またはそれらの任意の組み合わせを含む群から選択され;
およびRは、それぞれ独立して、水素、酸素、C-C20アルキル基、任意に置換された線状もしくは分岐C-C20アミノアルキル基、任意に1つ以上のヘテロ原子を含む任意に置換された線状、分岐もしくは環式C-C20アルキル基、置換C-C20アルキル基、C-C20ハロアルキル基、置換C-C20ハロアルキル基、任意に1つ以上の複素環を含む脂肪族線状もしくは分岐C-C20アミノアルキル基を含む群から選択されるか、またはRおよびYは、任意に置換された4~8員環を形成するように相互接続されるか、またはRおよびRは、任意に1つ以上のヘテロ原子を含む任意に置換された4~8員環を形成するように相互接続されるか、またはそれらの任意の組み合わせであり;
は、水素であるか、または存在しないか、またはメチル基、イソプロピル基、C-C10アルキル基、置換C-C10アルキル基、C-C10ハロアルキル基、置換C-C10ハロアルキル基、C-C10アルキルヒドロキシ基、ハロ基、C-C10アルコキシ基、アミノ基、チオアルコキシ基、チオアルキル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アリル基、C-C10エーテル基、ビニル基、シアノ基、ニトロ基、C-C10アルキルアミノ基、C-C10アルキルアミド基、C-C10シクロアルキル基、置換C-C10シクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、二環式芳香族環、不飽和環、二環式脂肪族環、それらの任意の組み合わせを表し、またはRおよびAは、任意に置換された4~8員環を形成するように相互接続され;または、RおよびYは、任意に置換された4~8員環を形成するように相互接続され、
は、存在しないか、水素であるか、またはメチル基、イソプロピル基、C-C10アルキル基、置換C-C10アルキル基、C-C10ハロアルキル基、置換C-C10ハロアルキル基、C-C10アルキルヒドロキシ基、ハロ基、C-C10アルコキシ基、C-C10シクロアルキル基、置換C-C10シクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、二環式芳香族環、不飽和脂肪族環、二環式脂肪族環、もしくはそれらの組み合わせを表し、またはRおよびRは、任意に置換された4~8員環を形成するように相互接続されている)によって表される、化合物。
【請求項2】
およびRが、酸素である場合、YがNである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化合物が、式IIa:
【化3】

または式IIb:
【化4】

(式中:
およびRは、それぞれ独立して、水素を含む群から選択されるか、またはメチル基、イソプロピル基、C-C10アルキル基、置換C-C10アルキル基、C-C10ハロアルキル基、置換C-C10ハロアルキル基、C-C10アルキルヒドロキシ基、ハロ基、C-C10アルコキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アリル基、C-C10エーテル基、ビニル基、C-C10アルキルアミノ基、C-C10アルキルアミド基、C-C10シクロアルキル基、置換C-C10シクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、二環式芳香族環、不飽和脂肪族環、二環式脂肪族環またはそれらの任意の組み合わせを表し;
nは、0~5の範囲の整数であり;
およびRは、それぞれ独立して、水素を含む群から選択されるか、またはメチル基、イソプロピル基、C-C10アルキル基、置換C-C10アルキル基、C-C10ハロアルキル基、置換C-C10ハロアルキル基、C-C10アルキルヒドロキシ基、ハロ基、C-C10アルコキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アリル基、C-C10エーテル基、ビニル基、C-C10アルキルアミノ基、C-C10アルキルアミド基、C-C10シクロアルキル基、置換C-C10シクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、二環式芳香族環、不飽和脂肪族環、二環式脂肪族環、それらの任意の組み合わせを表すか、またはRおよびRは、任意に置換された4~8員環を形成するように相互接続されている)によって表される、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
前記化合物が、式IIIa:
【化5】

または式IIIb:
【化6】

によって表される、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物が、式:
【化7】

(式中、Aは、メチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、線状または分岐C-C10アルキル基、1つ以上の炭素環を含む任意に置換されたC-C10シクロアルキル基、線状または分岐C-C10アルキル基、線状または分岐鎖の置換C-C10アルキル基を含む群から選択され、
およびRは、それぞれ独立して、水素、任意に1つ以上の窒素原子を含む任意に置換された線状、分岐または環式C-C20アルキル基;任意に置換されたC-C20アルキル基;任意に置換された線状または分岐C-C20アルキル-アミノアルキル基;1つ以上の窒素原子を含み、C-C10アルキル基、環式または非環式C-C10アルキルアミノ基、および環式または非環式C-C10アミノアルキル基から独立して選択される1つ以上の置換基によって任意に置換されている、線状、分岐または環式C-C20アミノアルキル基を含む群から選択され、またはRおよびRは、C-C10アルキル基、環式または非環式C-C10アルキルアミノ基、および環式もしくは非環式C-C10アミノアルキル基、またはそれらの任意の組み合わせから独立して選択される1つ以上の置換基で任意に置換された1つ以上の4~8員環を形成するように相互接続されており;RおよびRのうちの少なくとも1つは、1つ以上の窒素原子を含む分岐または環式C-C20アルキル基;任意に置換された線状または分岐C-C20アルキル-アミノアルキル基;1つ以上の窒素原子を含み、C-C10アルキル基、環式または非環式C-C10アルキルアミノ基、および環式または非環式C-C10アミノアルキル基から独立して選択される1つ以上の置換基によって任意に置換されている、線状、分岐または環式C-C20アミノアルキル基のいずれか1つである)によって表される、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
前記化合物が、式IVa:
【化8】

または式IVb:
【化9】

(式中:
およびR10は、それぞれ独立して、水素を含む群から選択されるか、またはメチル基、イソプロピル基、C-C10アルキル基、置換C-C10アルキル基、C-C10ハロアルキル基、置換C-C10ハロアルキル基、C-C10アルキルヒドロキシ基、ハロ基、C-C10アルコキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アリル基、C-C10エーテル基、ビニル基、C-C10アルキルアミノ基、C-C10アルキルアミド基、C-C10シクロアルキル基、置換C-C10シクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、二環式芳香族環、不飽和脂肪族環、二環式脂肪族環、それらの任意の組み合わせを表すか、またはRおよびR10は、1つ以上の任意に置換された4~8員環を形成するように相互接続され;
mは、0~7の範囲の整数であり;
11およびR12は、それぞれ独立して、水素を含む群から選択されるか、またはメチル基、イソプロピル基、C-C10アルキル基、置換C-C10アルキル基、C-C10ハロアルキル基、置換C-C10ハロアルキル基、C-C10アルキルヒドロキシ基、ハロ基、C-C10アルコキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アリル基、C-C10エーテル基、ビニル基、C-C10アルキルアミノ基、C-C10アルキルアミド基、C-C10シクロアルキル基、置換C-C10シクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、二環式芳香族環、不飽和脂肪族環、二環式脂肪族環、それらの任意の組み合わせを表すか、または、R11およびR12は、任意に置換された4~8員環を形成するように相互接続されている)によって表される、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
前記化合物が、式:
【化10】

、または式:
【化11】

(式中、nは、1~3であり;各Yは、独立してCHR’またはNR’であり;R’は、存在しないか、または1つ以上の置換基であって、それぞれ任意に1つ以上の窒素原子を含む任意に置換された線状、分岐もしくは環式C-C20アルキル基;任意に置換されたC-C20アルキル基;任意に置換された線状もしくは分岐C-C20アルキル-アミノアルキル基;1つ以上の窒素原子を含み、C-C10アルキル基、環式もしくは非環式C-C10アルキルアミノ基、および環式もしくは非環式C-C10アミノアルキル基から独立して選択される1つ以上の置換基によって任意に置換されている、線状、分岐もしくは環式C-C20アミノアルキル基;ハロ、オキソ、-NO、アミノ、ヒドロキシ、-CN、-OH、-CONH、-CONR’、-CNNR’、-CSNR’、-CONH-OH、-CONH-NH、-NHCOR、-NHCSR、-NHCNR、-NC(=O)OR、-NC(=O)NR’、-NC(=S)OR’、-NC(=S)NR’、-SOR’、-SOR’、-SR’、-SOOR’、-SON(R’)、-NHNR’、-NNR’、C-Cハロアルキル、任意に置換されたC-Cアルキル、-NH、-NR’R’、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、ヒドロキシ(C-Cアルキル)、ヒドロキシ(C-Cアルコキシ)、アルコキシ(C-Cアルキル)、アルコキシ(C-Cアルコキシ)、C-Cアルキル-NR’、C-Cアルキル-SR’、-CONH(C-Cアルキル)、-CON(C-Cアルキル)、-COH、-COR’、-OCOR、-OCOR’、-OC(=O)OR’、-OC(=O)NR’、-OC(=S)OR’、-OC(=S)NR’、-OR’、-NR’R’、またはそれらの組み合わせを含む群から独立して選択される置換基を表し;各R’は、独立して水素を表すか、または任意に置換されたC-C10アルキル、任意に置換されたC-C10シクロアルキル、任意に置換されたC-C10ヘテロシクリル、任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換されたアリール、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、オキソ、シアノ、任意に置換されたC-C10アルキル、またはそれらの組み合わせを含む群から選択される)によって表される、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
Aが、tert-ブチルである、請求項5~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
前記化合物が、式:
【化12】

によって表される、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
R’が、存在しないか、または1つ以上の置換基であって、それぞれ1つ以上の窒素原子を含む任意に置換された環式C-C脂肪族環;任意に置換された線状、分岐または環式C-C20アルキル基;1つ以上の窒素原子を含み、C-C10アルキル基、環式または非環式C-C10アルキルアミノ基および環式または非環式C-C10アミノアルキル基から独立して選択される1つ以上の置換基によって任意に置換されている、線状、分岐または環式C-C20アミノアルキル基;ハロ、オキソ、-NO、アミノ、ヒドロキシ、-CN、-OH、-CONHを含む群から独立して選択される置換基を表す、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
R’が、1つ以上の窒素原子を含む任意に置換された環式C-C脂肪族環であり、前記任意に置換された環式C-C脂肪族環が、窒素原子を介して結合している、請求項9または10に記載の化合物。
【請求項12】
前記化合物が、
【化13】

および
【化14】
からなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
前記化合物が、その任意のシスまたはトランス異性体を含む、T1、T3およびT4からなる群から選択される、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
前記化合物が、T3である、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
前記化合物が、Z異性体である、請求項12~14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
コアおよびシェルを含むナノ粒子であって、前記シェルが、脂質層を含み、前記コアが、請求項1~15のいずれか一項に記載の化合物を含む、ナノ粒子。
【請求項17】
前記脂質層が、リン脂質およびステロールを含む、請求項16に記載のナノ粒子。
【請求項18】
前記ナノ粒子が、リポソームまたはミセルの形態である、請求項16または17に記載のナノ粒子。
【請求項19】
前記ナノ粒子が、50ナノメートル(nm)~500nmのサイズを特徴とする、請求項16~18のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項20】
配列番号1~13から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドをさらに含む、請求項16~19のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項21】
配列番号9のアミノ酸配列を含むペプチドを含む、請求項20に記載のナノ粒子。
【請求項22】
前記ペプチドが、前記シェルの外側に結合している、請求項20または21に記載のナノ粒子。
【請求項23】
前記ペプチドが、前記シェルの外側に共有結合的にコンジュゲートされている、請求項22に記載のナノ粒子。
【請求項24】
前記ペプチドが、チオール-マレイミド反応によって前記シェル中のマレイミドにコンジュゲートされたC末端システイン残基をさらに含む、請求項22または23に記載のナノ粒子。
【請求項25】
医薬組成物であって、請求項1~15のいずれか一項に記載の化合物または請求項16~24のいずれか一項に記載のナノ粒子と、薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項26】
好中球関連疾患または状態の処置に使用するための、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
罹患または損傷した組織または部位への好中球の蓄積に関連する疾患または状態の処置に使用するための、請求項25または26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記疾患または状態が、癌、炎症性疾患または状態および炎症性自己免疫疾患または状態からなる群から選択される、請求項26または27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記疾患または状態が、炎症性疾患または状態である、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記炎症性疾患または状態が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、炎症性腸疾患(IBD)、腹膜炎、および炎症性皮膚障害または疾患から選択される、請求項28または29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記炎症性疾患または状態が、IBDである、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記疾患または状態が、癌である、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記癌が、腎臓癌、肝細胞癌(HCC)および頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)からなる群から選択される、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記癌が、腎臓癌であり、任意に前記腎臓癌が、腎細胞癌(RCC)を含む、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
全身投与、静脈内投与、皮下投与、局所投与、直腸投与、経口投与、腫瘍内投与、および炎症部位への局所投与のうちの少なくとも1つのために製剤化される、請求項25~34のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項36】
好中球関連疾患または状態の処置を必要とする対象において好中球関連疾患または状態を処置する方法であって、請求項25~35のいずれか一項に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項37】
前記疾患または状態が、癌、炎症性疾患または状態、および炎症性自己免疫疾患または状態からなる群から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記疾患または状態が、炎症性疾患または状態である、請求項36または37に記載の方法。
【請求項39】
前記炎症性疾患または状態が、COPD、IBD、および腹膜炎から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記炎症性疾患または状態が、IBDである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記疾患または状態が、癌であり、任意に前記癌が、腎臓癌である、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
前記疾患または状態が、炎症性皮膚疾患である、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
前記投与することが、全身投与、静脈内投与、皮下投与、局所投与、直腸投与、経口投与、腫瘍内投与、および炎症部位への局所投与のいずれか1つを含む、請求項36~42のいずれか一項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年12月15日に出願された米国仮特許出願第63/289,771号の優先権の利益を主張し、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
電子配列表の参照
電子配列表(IMUX-P-003-PCT SQL.xml、サイズ:12,970バイトおよび作成日:2022年12月11日)の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、好中球病理の分野におけるものである。
【背景技術】
【0004】
好中球は、広範囲の感染性、炎症性および自己免疫性の状態、ならびに癌における強力なエフェクター細胞である。ある特定の例では、細胞傷害性炎症を引き起こす細胞としての好中球の自然な役割は、有害な結果をもたらす可能性がある。制御されない好中球分泌は、大きな危険となる。過剰な好中球媒介性組織損傷を特徴とする疾患は、好中球エフェクター機能を一時的に阻害することができるが、好中球細胞死および好中球減少症を引き起こさない治療薬を必要とする。好中球を死滅させずにエフェクター機能を阻害する必要性のバランスをとることができる治療法が大いに必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、本明細書に開示される式のいずれか1つによって表される化合物を提供する。化合物を含む組成物および化合物を含むナノ粒子も提供される。好中球関連疾患または状態を処置する方法も提供される。
【0006】
第1の態様によれば、本明細書に提供される式のいずれか1つによって表される化合物が提供される。
【0007】
別の態様によれば、任意の立体異性体またはその塩を含む化合物が提供され、化合物は、式I:
【化1】
(I)
または、式:
【化2】

(式中:
Aは、メチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、線状もしくは分岐C-C10アルキル基、置換もしくは非置換の線状もしくは分岐C-C10アルキル基、置換C-C10アルキル基、1つ以上の炭素環を含む任意に置換されたC-C10シクロアルキル基、1つ以上のヘテロ原子を含む任意に置換されたC-C10アルキル基、C-C10ハロアルキル基、置換C-C10ハロアルキル基、C-C10アルキルヒドロキシ基、ハロ基、C-C10アルコキシ基、C-C10シクロアルキル基、置換C-C10シクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、二環式芳香族環、不飽和脂肪族環、二環式脂肪族環、またはそれらの組み合わせを表し;
Yは、存在しないか、またはN、NH、NR、CH、HCR、CH、S、SH、およびOからなる群から選択され;
nは、0~5の整数であり;
Xは、水素であるか、またはハロ基、メチル基、イソプロピル基、C-C10アルキル基、置換C-C10アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、およびヒドロキシ基からなる群から選択される置換基を表し;
各Rは、独立して存在しないか、または1つ以上の置換基を表し、それぞれ独立して、メチル基、イソプロピル基、C-C10アルキル基、置換C-C10アルキル基、ハロ、オキソ、-NO、アミノ、ヒドロキシ、-CN、-OH、-CONH、-CONR’、-CNNR’、-CSNR’、-CONH-OH、-CONH-NH、-NHCOR、-NHCSR、-NHCNR、-NC(=O)OR、-NC(=O)NR’、-NC(=S)OR’、-NC(=S)NR’、-SOR’、-SOR’、-SR’、-SOOR’、-SON(R’)、-NHNR’、-NNR’、C-Cハロアルキル、任意に置換されたC-Cアルキル、-NH、-NR’R’、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、ヒドロキシ(C-Cアルキル)、ヒドロキシ(C-Cアルコキシ)、アルコキシ(C-Cアルキル)、アルコキシ(C-Cアルコキシ)、C-Cアルキル-NR’、C-Cアルキル-SR’、-CONH(C-Cアルキル)、-CON(C-Cアルキル)、-COH、-COR’、-OCOR、-OCOR’、-OC(=O)OR’、-OC(=O)NR’、-OC(=S)OR’、-OC(=S)NR’、-OR’、-NR’R’、またはそれらの組み合わせのいずれか1つを含み;各R’は、独立して水素を表すか、または価数によって許容される場合、任意に置換されたC-C10アルキル、任意に置換されたC-C10シクロアルキル、任意に置換されたC-C10ヘテロシクリル、任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換されたアリール、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、オキソ、シアノ、任意に置換されたC-C10アルキル、またはそれらの任意の組み合わせを含む群から選択され;
およびRは、それぞれ独立して、水素、酸素、C-C20アルキル基、任意に置換された線状もしくは分岐C-C20アミノアルキル基、任意に1つ以上のヘテロ原子を含む任意に置換された線状、分岐もしくは環式C-C20アルキル基、置換C-C20アルキル基、C-C20ハロアルキル基、置換C-C20ハロアルキル基、任意に1つ以上の複素環を含む脂肪族線状もしくは分岐C-C20アミノアルキル基を含む群から選択されるか、またはRおよびYは、任意に置換された4~8員環を形成するように相互接続されるか、またはRおよびRは、任意に1つ以上のヘテロ原子を含む任意に置換された4~8員環を形成するように相互接続されるか、またはそれらの任意の組み合わせであり;
は、水素であるか、または存在しないか、またはメチル基、イソプロピル基、C-C10アルキル基、置換C-C10アルキル基、C-C10ハロアルキル基、置換C-C10ハロアルキル基、C-C10アルキルヒドロキシ基、ハロ基、C-C10アルコキシ基、アミノ基、チオアルコキシ基、チオアルキル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アリル基、C-C10エーテル基、ビニル基、シアノ基、ニトロ基、C-C10アルキルアミノ基、C-C10アルキルアミド基、C-C10シクロアルキル基、置換C-C10シクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、二環式芳香族環、不飽和環、二環式脂肪族環、それらの任意の組み合わせを表し、またはRおよびAは、任意に置換された4~8員環を形成するように相互接続され;または、RおよびYは、任意に置換された4~8員環を形成するように相互接続され、
は、存在しないか、水素であるか、またはメチル基、イソプロピル基、C-C10アルキル基、置換C-C10アルキル基、C-C10ハロアルキル基、置換C-C10ハロアルキル基、C-C10アルキルヒドロキシ基、ハロ基、C-C10アルコキシ基、C-C10シクロアルキル基、置換C-C10シクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、二環式芳香族環、不飽和脂肪族環、二環式脂肪族環、もしくはそれらの組み合わせを表し、またはRおよびRは、任意に置換された4~8員環を形成するように相互接続されている)によって表される。
【0008】
いくつかの実施形態によれば、RおよびRが酸素である場合、YはNである。
【0009】
いくつかの実施形態によれば、化合物は、式IIa:
【化3】

または式IIb:
【化4】

(式中、
およびRは、それぞれ独立して、水素を含む群から選択されるか、またはメチル基、イソプロピル基、C-C10アルキル基、置換C-C10アルキル基、C-C10ハロアルキル基、置換C-C10ハロアルキル基、C-C10アルキルヒドロキシ基、ハロ基、C-C10アルコキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アリル基、C-C10エーテル基、ビニル基、C-C10アルキルアミノ基、C-C10アルキルアミド基、C-C10シクロアルキル基、置換C-C10シクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、二環式芳香族環、不飽和脂肪族環、二環式脂肪族環、またはそれらの任意の組み合わせを表し;
nは、0~5の範囲の整数であり;
およびRは、それぞれ独立して、水素を含む群から選択されるか、またはメチル基、イソプロピル基、C-C10アルキル基、置換C-C10アルキル基、C-C10ハロアルキル基、置換C-C10ハロアルキル基、C-C10アルキルヒドロキシ基、ハロ基、C-C10アルコキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アリル基、C-C10エーテル基、ビニル基、C-C10アルキルアミノ基、C-C10アルキルアミド基、C-C10シクロアルキル基、置換C-C10シクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、二環式芳香族環、不飽和脂肪族環、二環式脂肪族環、それらの任意の組み合わせを表すか、またはRおよびRは、任意に置換された4~8員環を形成するように相互接続されている)によって表される。
【0010】
いくつかの実施形態によれば、化合物は、式IIIa:
【化5】

または式IIIb:
【化6】

によって表される。
【0011】
いくつかの実施形態によれば、化合物は、式:
【化7】

(式中、Aは、メチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、線状または分岐C-C10アルキル基、1つ以上の炭素環を含む任意に置換されたC-C10シクロアルキル基、線状または分岐C-C10アルキル基、線状または分岐鎖の置換C-C10アルキル基を含む群から選択され、
およびRは、それぞれ独立して、水素、任意に1つ以上の窒素原子を含む任意に置換された線状、分岐または環式C-C20アルキル基;任意に置換されたC-C20アルキル基;任意に置換された線状または分岐C-C20アルキル-アミノアルキル基;1つ以上の窒素原子を含み、C-C10アルキル基、環式または非環式C-C10アルキルアミノ基、および環式または非環式C-C10アミノアルキル基から独立して選択される1つ以上の置換基によって任意に置換されている、線状、分岐または環式C-C20アミノアルキル基を含む群から選択され、またはRおよびRは、C-C10アルキル基、環式または非環式C-C10アルキルアミノ基、および環式もしくは非環式C-C10アミノアルキル基、またはそれらの任意の組み合わせから独立して選択される1つ以上の置換基で任意に置換された1つ以上の4~8員環を形成するように相互接続されており;RおよびRのうちの少なくとも1つは、1つ以上の窒素原子を含む分岐または環式C-C20アルキル基;任意に置換された線状または分岐C-C20アルキル-アミノアルキル基;1つ以上の窒素原子を含み、C-C10アルキル基、環式または非環式C-C10アルキルアミノ基、および環式または非環式C-C10アミノアルキル基から独立して選択される1つ以上の置換基によって任意に置換されている、線状、分岐または環式C-C20アミノアルキル基のいずれか1つである)によって表される。
【0012】
いくつかの実施形態によれば、化合物は、式IVa:
【化8】

または式IVb:
【化9】

(式中、
およびR10は、それぞれ独立して、水素を含む群から選択されるか、またはメチル基、イソプロピル基、C-C10アルキル基、置換C-C10アルキル基、C-C10ハロアルキル基、置換C-C10ハロアルキル基、C-C10アルキルヒドロキシ基、ハロ基、C-C10アルコキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アリル基、C-C10エーテル基、ビニル基、C-C10アルキルアミノ基、C-C10アルキルアミド基、C-C10シクロアルキル基、置換C-C10シクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、二環式芳香族環、不飽和脂肪族環、二環式脂肪族環、それらの任意の組み合わせを表すか、またはRおよびR10は、1つ以上の任意に置換された4~8員環を形成するように相互接続され;
mは、0~7の範囲の整数であり;
11およびR12は、それぞれ独立して、水素を含む群から選択されるか、またはメチル基、イソプロピル基、C-C10アルキル基、置換C-C10アルキル基、C-C10ハロアルキル基、置換C-C10ハロアルキル基、C-C10アルキルヒドロキシ基、ハロ基、C-C10アルコキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アリル基、C-C10エーテル基、ビニル基、C-C10アルキルアミノ基、C-C10アルキルアミド基、C-C10シクロアルキル基、置換C-C10シクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、二環式芳香族環、不飽和脂肪族環、二環式脂肪族環、それらの任意の組み合わせを表すか、または、R11およびR12は、任意に置換された4~8員環を形成するように相互接続されている)によって表される。
【0013】
いくつかの実施形態によれば、化合物は、式:
【化10】

、または式:
【化11】

(式中、nは、1~3であり;各Yは、独立してCHR’またはNR’であり;R’は、存在しないか、または1つ以上の置換基であって、それぞれ任意に1つ以上の窒素原子を含む任意に置換された線状、分岐もしくは環式C-C20アルキル基;任意に置換されたC-C20アルキル基;任意に置換された線状もしくは分岐C-C20アルキル-アミノアルキル基;1つ以上の窒素原子を含み、C-C10アルキル基、環式もしくは非環式C-C10アルキルアミノ基、および環式もしくは非環式C-C10アミノアルキル基から独立して選択される1つ以上の置換基によって任意に置換されている、線状、分岐もしくは環式C-C20アミノアルキル基;ハロ、オキソ、-NO、アミノ、ヒドロキシ、-CN、-OH、-CONH、-CONR’、-CNNR’、-CSNR’、-CONH-OH、-CONH-NH、-NHCOR、-NHCSR、-NHCNR、-NC(=O)OR、-NC(=O)NR’、-NC(=S)OR’、-NC(=S)NR’、-SOR’、-SOR’、-SR’、-SOOR’、-SON(R’)、-NHNR’、-NNR’、C-Cハロアルキル、任意に置換されたC-Cアルキル、-NH、-NR’R’、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、ヒドロキシ(C-Cアルキル)、ヒドロキシ(C-Cアルコキシ)、アルコキシ(C-Cアルキル)、アルコキシ(C-Cアルコキシ)、C-Cアルキル-NR’、C-Cアルキル-SR’、-CONH(C-Cアルキル)、-CON(C-Cアルキル)、-COH、-COR’、-OCOR、-OCOR’、-OC(=O)OR’、-OC(=O)NR’、-OC(=S)OR’、-OC(=S)NR’、-OR’、-NR’R’、またはそれらの組み合わせを含む群から独立して選択される置換基を表し;各R’は、独立して水素を表すか、または任意に置換されたC-C10アルキル、任意に置換されたC-C10シクロアルキル、任意に置換されたC-C10ヘテロシクリル、任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換されたアリール、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、オキソ、シアノ、任意に置換されたC-C10アルキル、またはそれらの組み合わせを含む群から選択される)によって表される。
【0014】
いくつかの実施形態によれば、Aは、tert-ブチルである。
【0015】
いくつかの実施形態によれば、化合物は、式:
【化12】

によって表される。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、R’は、存在しないか、または1つ以上の置換基であって、それぞれ1つ以上の窒素原子を含む任意に置換された環式C-C脂肪族環;任意に置換された線状、分岐または環式C-C20アルキル基;1つ以上の窒素原子を含み、C-C10アルキル基、環式または非環式C-C10アルキルアミノ基および環式または非環式C-C10アミノアルキル基から独立して選択される1つ以上の置換基によって任意に置換されている、線状、分岐または環式C-C20アミノアルキル基;ハロ、オキソ、-NO、アミノ、ヒドロキシ、-CN、-OH、-CONHを含む群から独立して選択される置換基を表す。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、R’は、1つ以上の窒素原子を含む任意に置換された環式C-C脂肪族環であり、任意に置換された環式C-C脂肪族環は、窒素原子を介して結合している。
【0018】
いくつかの実施形態によれば、化合物は、
【化13】
および
【化14】

からなる群から選択される。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、化合物は、その任意のシスまたはトランス異性体を含むT1、T3およびT4からなる群から選択される。いくつかの実施形態によれば、化合物は、T1、T3、およびT4からなる群から選択される。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、化合物は、T3である。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、化合物は、Z異性体である。
【0022】
別の態様によれば、コアおよびシェルを含むナノ粒子が提供され、シェルは脂質層を含み、コアは本発明の化合物を含む。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、脂質層は、リン脂質およびステロールを含む。
【0024】
いくつかの実施形態によれば、ナノ粒子は、リポソームまたはミセルの形態である。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、ナノ粒子は、50ナノメートル(nm)~500nmのサイズを特徴とする。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、ナノ粒子は、配列番号1~13から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドをさらに含む。
【0027】
いくつかの実施形態によれば、ナノ粒子は、配列番号9を含む。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、ペプチドは、8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸(Doa)残基にコンジュゲートされる。
【0029】
いくつかの実施形態によれば、ナノ粒子は、配列番号1~13から選択されるアミノ酸配列を含む少なくとも4つのペプチドを含む分岐足場を含むペプチド多量体を含む。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、ペプチドは、シェルの外側に結合している。
【0031】
いくつかの実施形態によれば、ペプチドは、シェルの外側に共有結合的にコンジュゲートされる。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、ペプチドは、チオール-マレイミド反応によって、シェル中のマレイミドにコンジュゲートされたC末端システイン残基をさらに含む。
【0033】
別の態様によれば、本発明の化合物または本発明のナノ粒子と、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物が提供される。
【0034】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、好中球関連疾患または状態の処置に使用するためのものである。
【0035】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、罹患または損傷した組織または部位への好中球の蓄積に関連する疾患または状態の処置に使用するためのものである。
【0036】
いくつかの実施形態によれば、疾患または状態は、癌、炎症性疾患または状態、および炎症性自己免疫疾患または状態からなる群から選択される。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、疾患または状態は、炎症性疾患または状態である。
【0038】
いくつかの実施形態によれば、炎症性疾患または状態は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、炎症性腸疾患(IBD)、腹膜炎、および炎症性皮膚障害または疾患から選択される。
【0039】
いくつかの実施形態によれば、炎症性疾患または状態は、IBDである。
【0040】
いくつかの実施形態によれば、疾患または状態は、癌である。
【0041】
いくつかの実施形態によれば、癌は、腎臓癌、肝細胞癌(HCC)、および頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)からなる群から選択される。
【0042】
いくつかの実施形態によれば、癌は、腎臓癌である。いくつかの実施形態によれば、腎臓癌は、腎細胞癌(RCC)を含む。
【0043】
いくつかの実施形態によれば、組成物は、全身投与、静脈内投与、皮下投与、局所投与、直腸投与、経口投与、腫瘍内投与、および炎症部位への局所投与のうちの少なくとも1つのために製剤化される。
【0044】
別の態様によれば、好中球関連疾患または状態の処置を必要とする対象において好中球関連疾患または状態を処置する方法であって、本発明の医薬組成物を対象に投与することを含む、方法が提供される。
【0045】
いくつかの実施形態によれば、疾患または状態は、癌、炎症性疾患または状態、および炎症性自己免疫疾患または状態からなる群から選択される。
【0046】
いくつかの実施形態によれば、疾患または状態は、炎症性疾患または状態である。
【0047】
いくつかの実施形態によれば、炎症性疾患または状態は、COPD、IBD、および腹膜炎から選択される。
【0048】
いくつかの実施形態によれば、炎症性疾患または状態は、IBDである。
【0049】
いくつかの実施形態によれば、疾患または状態は、癌である。いくつかの実施形態によれば、癌は、腎臓癌である。
【0050】
いくつかの実施形態によれば、疾患または状態は、炎症性皮膚状態である。
【0051】
いくつかの実施形態によれば、投与することは、全身投与、静脈内投与、皮下投与、局所投与、直腸投与、経口投与、腫瘍内投与、および炎症部位への局所投与のいずれか1つを含む。
【0052】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および/または科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載の方法および材料と類似または同等の方法および材料を本発明の実施形態の実施または試験に使用することができるが、例示的な方法および/または材料を以下に記載する。矛盾する場合、定義を含む特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は、例示にすぎず、必ずしも限定することを意図するものではない。
【0053】
本発明のさらなる実施形態および適用可能性の全範囲は、以下に与えられる詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明および具体例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、本発明の趣旨および範囲内の様々な変更および修正がこの詳細な説明から当業者に明らかになるので、単なる例示として与えられていることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】化合物T1~T7の化学構造の画像である。
図2A】刺激されたヒト好中球の脱顆粒プロセスに対する、E異性体およびZ異性体の両方における化合物T1、T3およびT4の効果を示す棒グラフである。
図2B】刺激されたマウス好中球の脱顆粒プロセスに対する、E異性体およびZ異性体の両方における化合物T1、T3およびT4の効果を示す棒グラフである。脱顆粒のマーカーであるCD11bの平均蛍光強度(MFI)が提供される。MFIレベルを、対照のPMA刺激後の蛍光に対して正規化する。
図3A】刺激されたヒト好中球による活性酸素種(ROS)産生に対する、E異性体およびZ異性体の両方における化合物T1、T3およびT4の効果を示す棒グラフである。
図3B】刺激されたマウス好中球による活性酸素種(ROS)産生に対する、E異性体およびZ異性体の両方における化合物T1、T3およびT4の効果を示す棒グラフである。
図4】PMAによって誘導された好中球NETosisに対するT1およびT3化合物の効果を示す線グラフである。ステラジン(Ste)は、以前に同定された好中球ROS阻害剤であり、陽性対照として使用される。
図5】LPS誘導性炎症に対するT3のインビボ効果を示す棒グラフである。遊離化合物T3、リポソーム内に組み込まれたT3および標的化リポソーム内に組み込まれたT3(TENN-T3)を、LPS刺激後の表面好中球CD11bレベルに対するそれらの効果について試験した。CD11b染色のMFIを、LPS刺激後の好中球CD11bレベルに対して正規化した。***p<0.001。
図6A】:様々な製剤中のT3および空の標的化ナノ粒子(TENN)で処置したDSS大腸炎モデルマウスの結腸長の棒グラフである。
図6B】(上)健常対照マウスおよびTENN-T3投与ありおよびなしのDSS処置大腸炎マウス由来の結腸におけるROSレベルを表す発光の顕微鏡写真である。白い矢印は、正の発光シグナルを指す。(下)発光の棒グラフ定量化である。DSS処置マウスにおける発光は、対照(DSS処置なし)と比較して増加するが、TENN-T3は、ROSレベルを低下させる。
図6C】様々な濃度のTENN-T3で処置したDSS大腸炎モデルマウスにおける結腸長の棒グラフである。シクロスポリンA(Cyclo)を陽性対照として使用した。
図7】RENCA注射Balb/Cマウスにおける腫瘍成長の線グラフである。注射の2週間後(0日目)、腫瘍が100mmに達したら、マウスを、陽性対照としてのTENN-T3または抗PD-L1抗体で処置した。腫瘍サイズを1日おきに測定した(各群N=6)。0日目に、各マウスの腫瘍サイズをその元の腫瘍サイズに対して正規化した。腫瘍成長速度は、0日目のサイズの百分率として与えられる。したがって、0日目に、すべてのマウスを100%の腫瘍サイズでプロットする。
図8A】化合物T1の産生のための合成機構の概要である。
図8B】化合物T1の産生のための合成機構の概要である。
図8C】式IVの化合物の産生のための合成機構の概要である。
図9A】化合物T3の産生のための合成機構の概要である。
図9B】式IIa~IIIcの化合物の産生のための合成機構の概要である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
第1の態様により、本明細書に記載の式I~式IVbのいずれか1つによって表される化合物が提供される。
【0056】
別の態様により、本明細書に記載の式Iによって表される化合物が提供される。別の態様により、本明細書に記載の式IIによって表される化合物が提供される。別の態様により、本明細書に記載の式IIaによって表される化合物が提供される。別の態様により、本明細書に記載の式IIbによって表される化合物が提供される。別の態様により、本明細書に記載の式IIIによって表される化合物が提供される。別の態様により、本明細書に記載の式IIIaによって表される化合物が提供される。別の態様により、本明細書に記載の式IIIbによって表される化合物が提供される。別の態様により、本明細書に記載の式IIIcによって表される化合物が提供される。別の態様により、本明細書に記載の式IVによって表される化合物が提供される。別の態様により、本明細書に記載の式IVaによって表される化合物が提供される。別の態様により、本明細書に記載の式IVbによって表される化合物が提供される。別の態様により、図1に提供される化合物が提供される。
【0057】
別の態様により、本発明の化合物を含むナノ粒子が提供される。
【0058】
別の態様により、本発明の化合物を含む組成物が提供される。別の態様により、本発明のナノ粒子を含む組成物が提供される。
【0059】
別の態様により、本発明の化合物を投与し、それにより疾患または状態を処置することを含む、疾患または状態を処置、予防または改善する方法が提供される。
【0060】
別の態様により、本発明の医薬組成物を投与し、それにより疾患または状態を処置することを含む、疾患または状態を処置、予防または改善する方法が提供される。
【0061】
別の態様により、疾患または状態の処置、予防または改善に使用するための本発明の化合物または組成物が提供される。
【0062】
化合物
いくつかの実施形態によれば、本発明は、任意の立体異性体および/またはその任意の塩を含む化合物を提供し、化合物は、式I:
【化15】

または式:
【化16】

(式中、Aは、メチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、C-C10アルキル基、置換C-C10アルキル基、C-C10ハロアルキル基、線状または分岐C-C10アルキル基、置換または非置換の線状または分岐C-C10アルキル基、1つ以上の炭素環を含む任意に置換されたC-C10シクロアルキル基、1つ以上のヘテロ原子を含む任意に置換されたC-C10アルキル基、置換C-C10ハロアルキル基、C-C10アルキルヒドロキシ基、ハロ基、C-C10アルコキシ基、C-C10シクロアルキル基、置換C-C10シクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、二環式芳香族環、不飽和環、脂肪族環、脂肪族環、またはそれらの組み合わせを表し;nは0~5の整数であり;Yは存在しないか、またはN、NH、NR、HCR、CH、C(R、CH、S、SHおよびOからなる群から選択され;Xは、水素であるか、またはハロ基、メチル基、イソプロピル基、C-C10アルキル基、置換C-C10アルキル基、アルコキシ基、アミノ基およびヒドロキシ基からなる群から選択される置換基を表し;各Rは、独立して存在しないか、または1つ以上の置換基を表し、それぞれ独立して、メチル基、イソプロピル基、C-C10アルキル基、置換C-C10アルキル基、ハロ、オキソ、-NO、アミノ、ヒドロキシ、-CN、-OH、-CONH、-CONR’、-CNNR’、-CSNR’、-CONH-OH、-CONH-NH、-NHCOR、-NHCSR、-NHCNR、-NC(=O)OR、-NC(=O)NR’、-NC(=S)OR’、-NC(=S)NR’、-SOR’、-SOR’、-SR’、-SOOR’、-SON(R’)、-NHNR’、-NNR’、C-Cハロアルキル、任意に置換されたC-Cアルキル、-NH、-NR’R’、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、ヒドロキシ(C-Cアルキル)、ヒドロキシ(C-Cアルコキシ)、アルコキシ(C-Cアルキル)、アルコキシ(C-Cアルコキシ)、C-Cアルキル-NR’、C-Cアルキル-SR’、-CONH(C-Cアルキル)、-CON(C-Cアルキル)、-COH、-COR’、-OCOR、-OCOR’、-OC(=O)OR’、-OC(=O)NR’、-OC(=S)OR’、-OC(=S)NR’、-OR’、-NR’R’、またはそれらの組み合わせのいずれか1つを含み;各R’は、独立して水素を表すか、または価数によって許容される場合、任意に置換されたC-C10アルキル、任意に置換されたC-C10シクロアルキル、任意に置換されたC-C10ヘテロシクリル、任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換されたアリール、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、オキソ、シアノ、任意に置換されたC-C10アミノアルキル、任意に置換されたC-C10ヒドロキシアルキル、またはそれらの任意の組み合わせを含む群から選択され;
およびRは、それぞれ独立して、水素、酸素、C-C20アルキル基、任意に置換された線状または分岐C-C20アミノアルキル基、任意に1つ以上のヘテロ原子を含む任意に置換された線状、分岐または環式C-C20アルキル基、置換C-C20アルキル基、C-C20ハロアルキル基、置換C-C20ハロアルキル基、任意に1つ以上の複素環を含む脂肪族線状または分岐C-C20アミノアルキル基を含む群から選択されるか、またはRおよびYは、任意に置換された4~8員環を形成するように相互接続されるか、またはRおよびRは、任意に1つ以上のヘテロ原子を含む任意に置換された4~8員環を形成するように相互接続されるか、またはそれらの任意の組み合わせであり;Rは、存在せず、水素であり、メチル基、イソプロピル基、C-C10アルキル基、置換C-C10アルキル基、C-C10ハロアルキル基、置換C-C10ハロアルキル基、C-C10アルキルヒドロキシ基、ハロ基、C-C10アルコキシ基、アミノ基、チオアルコキシ基、チオアルキル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アリル基、C-C10エーテル基、ビニル基、シアノ基、ニトロ基、C-C10アルキルアミノ基、C-C10アルキルアミド基、C-C10シクロアルキル基、置換C-C10シクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、二環式芳香環、脂肪族不飽和環を表し、二環式脂肪族環、それらの任意の組み合わせを表し、またはRおよびYは、任意に置換された4~8員環を形成するように相互接続され;または、RおよびAは、任意に置換された4~8員環を形成するように相互接続され;Rは、存在しないか、水素であるか、またはメチル基、イソプロピル基、C-C10アルキル基、置換C-C10アルキル基、C-C10ハロアルキル基、置換C-C10ハロアルキル基、C-C10アルキルヒドロキシ基、ハロ基、C-C10アルコキシ基、C-C10シクロアルキル基、置換C-C10シクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、二環式芳香族環、不飽和脂肪族環、二環式脂肪族環、もしくはそれらの組み合わせを表すか、またはRおよびRは、任意に置換された4~8員環を形成するように相互接続されている)によって表される。
【0063】
いくつかの実施形態では、Rは、水素であるか、またはメチル基、イソプロピル基、C-C10アルキル基、置換C-C10アルキル基、C-C10ハロアルキル基、置換C-C10ハロアルキル基、C-C10アルキルヒドロキシ基、ハロ基、C-C10アルコキシ基、アミノ基、チオアルコキシ基、チオアルキル基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アリル基、C-C10エーテル基、ビニル基、シアノ基、ニトロ基、C-C10アルキルアミノ基、C-C10アルキルアミド基、C-C10シクロアルキル基、置換C-C10シクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、二環式芳香族環、脂肪族不飽和環、二環式脂肪族環、それらの任意の組み合わせを表す。いくつかの実施形態では、RおよびAは、任意に置換された4~8員環を形成するように相互接続される。
【0064】
いくつかの実施形態では、Yが存在しない場合、RおよびRは存在しない。
【0065】
いくつかの実施形態では、RおよびRが酸素である場合、YはNである。
【0066】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、式IIaまたはIIbによって表される化合物(その任意の立体異性体を含む)を提供する。いくつかの実施形態では、化合物は、式IIa:
【化17】

または式IIb:
【化18】

(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素を含む群から選択されるか、またはメチル基、イソプロピル基、C-C10アルキル基、置換C-C10アルキル基、C-C10ハロアルキル基、置換C-C10ハロアルキル基、C-C10アルキルヒドロキシ基、ハロ基、C-C10アルコキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アリル基、C-C10エーテル基、ビニル基、C-C10アルキルアミノ基、C-C10アルキルアミド基、C-C10シクロアルキル基、置換C-C10シクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、二環式芳香族環、不飽和脂肪族環、二環式脂肪族環、またはそれらの任意の組み合わせを表し;nは、0~5の範囲の整数であり;RおよびRは、それぞれ独立して、水素を含む群から選択されるか、またはメチル基、イソプロピル基、C-C10アルキル基、置換C-C10アルキル基、C-C10ハロアルキル基、置換C-C10ハロアルキル基、C-C10アルキルヒドロキシ基、ハロ基、C-C10アルコキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アリル基、C-C10エーテル基、ビニル基、C-C10アルキルアミノ基、C-C10アルキルアミド基、C-C10シクロアルキル基、置換C-C10シクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、二環式芳香族環、不飽和脂肪族環、二環式脂肪族環、それらの任意の組み合わせを表すか、または、RおよびRは、任意に置換された4~8員環を形成するように相互接続されている)によって表される。いくつかの実施形態では、nは、0~4、0~3または0~2の範囲の整数である。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、nは、0、1、2、3、4または5である。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0067】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、式IIIaまたはIIIbによって表される化合物(その任意の立体異性体を含む)を提供する。いくつかの実施形態では、化合物は、式IIIa:
【化19】

または式IIIb:
【化20】

(式中、n、R、RおよびRは本明細書の上に記載される通りである)によって表される。
【0068】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、式IIIcによって表される化合物を提供する。いくつかの実施形態では、化合物は、式IIIc:
【化21】

(式中、R13は水素であるか、またはメチル基、イソプロピル基、C-C10アルキル基、置換C-C10アルキル基、C-C10ハロアルキル基、置換C-C10ハロアルキル基、C-C10アルキルヒドロキシ基、ハロ基、C-C10アルコキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アリル基、C-C10エーテル基、ビニル基、C-C10アルキルアミノ基、C-C10アルキルアミド基、C-C10シクロアルキル基、置換C-C10シクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、二環式芳香族環、不飽和脂肪族環、二環式脂肪族環、またはそれらの任意の組み合わせを表し、Rは本明細書の上に記載される通りである)によって表される。
【0069】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、式IV、IVaまたはIVbによって表される化合物(その任意の立体異性体を含む)を提供する。いくつかの実施形態によれば、化合物は、式IV:
【化22】

(式中、Aは、メチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、線状または分岐C-C10アルキル基、1つ以上の炭素環を含む任意に置換されたC-C10シクロアルキル基、線状または分岐C-C10アルキル基、線状または分岐鎖の置換C-C10アルキル基を含む群から選択され、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、任意に1つ以上の窒素原子を含む任意に置換された線状、分岐または環式C-C20アルキル基;任意に置換されたC-C20アルキル基;任意に置換された線状または分岐C-C20アルキル-アミノアルキル基;1つ以上の窒素原子を含み、C-C10アルキル基、環式または非環式C-C10アルキルアミノ基、および環式または非環式C-C10アミノアルキル基から独立して選択される1つ以上の置換基によって任意に置換されている、線状、分岐または環式C-C20アミノアルキル基を含む群から選択され、またはRおよびRは、C-C10アルキル基、環式または非環式C-C10アルキルアミノ基、および環式もしくは非環式C-C10アミノアルキル基、またはそれらの任意の組み合わせから独立して選択される1つ以上の置換基で任意に置換された1つ以上の4~8員環を形成するように相互接続されており;RおよびRのうちの少なくとも1つは、1つ以上の窒素原子を含む分岐または環式C-C20アルキル基;任意に置換された線状または分岐C-C20アルキル-アミノアルキル基;1つ以上の窒素原子を含み、C-C10アルキル基、環式または非環式C-C10アルキルアミノ基、および環式または非環式C-C10アミノアルキル基から独立して選択される1つ以上の置換基によって任意に置換されている、線状、分岐または環式C-C20アミノアルキル基のいずれか1つである)によって表される。
【0070】
いくつかの実施形態では、化合物は、式IVによって表され、式中、Aは、C2-C10分岐または線状アルキルを表し、Rは、任意に存在せず、RおよびRのうちの少なくとも1つは、1つ以上の窒素原子を含み、C-C10アルキル基、環式または非環式C-C10アルキルアミノ基、および環式または非環式C-C10アミノアルキル基から独立して選択される1つ以上の置換基によって任意に置換された線状、分岐または環式C-C20アミノアルキル基である。いくつかの実施形態では、化合物は、式IVによって表され、式中、Aは、C2-C10分岐または線状アルキルを表し、Rは、任意に存在せず、RおよびRのうちの少なくとも1つは、1、2または3つの窒素原子を含み、C-C10アルキル基、環式または非環式C-C10アルキルアミノ基および環式または非環式C-C10アミノアルキル基から独立して選択される1つ以上の置換基によって任意に置換されたC-C20アミノアルキル基である。いくつかの実施形態では、化合物は、式IVによって表され、式中、Aは、C2-C10分岐または線状アルキルを表し、Rは、任意に存在せず、RおよびRのうちの少なくとも1つは、1つ以上の脂肪族環を含む環式(例えば、多環式)C-C20アミノアルキル基であり、各環は、1、2または3つの窒素原子を含み、C-C10アルキル基、環式または非環式C-C10アルキルアミノ基および環式または非環式C-C10アミノアルキル基から独立して選択される1つ以上の置換基によって任意に置換されている。
【0071】
いくつかの実施形態では、「立体異性体」という用語は、化合物のシス異性体および/またはトランス異性体を包含する。
【0072】
いくつかの実施形態では、化合物は、式IVa:
【化23】

または式IVb:
【化24】

(式中:RおよびR10は、それぞれ独立して、水素を含む群から選択されるか、またはメチル基、イソプロピル基、C-C10アルキル基、置換C-C10アルキル基、C-C10ハロアルキル基、置換C-C10ハロアルキル基、C-C10アルキルヒドロキシ基、ハロ基、C-C10アルコキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アリル基、C-C10エーテル基、ビニル基、C-C10アルキルアミノ基、C-C10アルキルアミド基、C-C10シクロアルキル基、置換C-C10シクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、二環式芳香族環、不飽和脂肪族環、二環式脂肪族環、それらの任意の組み合わせを表すか、またはRおよびR10は、任意に置換された4~8員環を形成するように相互接続され;mは、0~7の範囲の整数であり;R11およびR12は、それぞれ独立して、水素を含む群から選択されるか、またはメチル基、イソプロピル基、C-C10アルキル基、置換C-C10アルキル基、C-C10ハロアルキル基、置換C-C10ハロアルキル基、C-C10アルキルヒドロキシ基、ハロ基、C-C10アルコキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アリル基、C-C10エーテル基、ビニル基、C-C10アルキルアミノ基、C-C10アルキルアミド基、C-C10シクロアルキル基、置換C-C10シクロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、二環式芳香族環、不飽和脂肪族環、二環式脂肪族環、それらの任意の組み合わせを表すか、または、R11およびR12は、任意に置換された4~8員環を形成するように相互接続されている)によって表される。いくつかの実施形態では、mは、0~6、0~5、0~4、0~3または0~2の範囲の整数である。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、mは、0、1、2、3、4、5、6または7である。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0073】
いくつかの実施形態では、化合物は、式:
【化25】

(式中、AおよびRは、本明細書に記載の通りであり、R’は、存在しないか、または1つ以上の置換基であって、それぞれ任意に1つ以上の窒素原子を含む任意に置換された線状、分岐もしくは環式C-C20アルキル基;任意に置換されたC-C20アルキル基;任意に置換された線状もしくは分岐C-C20アルキル-アミノアルキル基;1つ以上の窒素原子を含み、C-C10アルキル基、環式もしくは非環式C-C10アルキルアミノ基、および環式もしくは非環式C-C10アミノアルキル基から独立して選択される1つ以上の置換基によって任意に置換されている、線状、分岐もしくは環式C-C20アミノアルキル基;ハロ、オキソ、-NO、アミノ、ヒドロキシ、-CN、-OH、-CONH、-CONR’、-CNNR’、-CSNR’、-CONH-OH、-CONH-NH、-NHCOR、-NHCSR、-NHCNR、-NC(=O)OR、-NC(=O)NR’、-NC(=S)OR’、-NC(=S)NR’、-SOR’、-SOR’、-SR’、-SOOR’、-SON(R’)、-NHNR’、-NNR’、C-Cハロアルキル、任意に置換されたC-Cアルキル、-NH、-NR’R’、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、ヒドロキシ(C-Cアルキル)、ヒドロキシ(C-Cアルコキシ)、アルコキシ(C-Cアルキル)、アルコキシ(C-Cアルコキシ)、C-Cアルキル-NR’、C-Cアルキル-SR’、-CONH(C-Cアルキル)、-CON(C-Cアルキル)、-COH、-COR’、-OCOR、-OCOR’、-OC(=O)OR’、-OC(=O)NR’、-OC(=S)OR’、-OC(=S)NR’、-OR’、-NR’R’、またはそれらの組み合わせを含む群から独立して選択される置換基を表し;各R’は、独立して水素を表すか、または任意に置換されたC-C10アルキル、任意に置換されたC-C10シクロアルキル、任意に置換されたC-C10ヘテロシクリル、任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換されたアリール、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、オキソ、シアノ、任意に置換されたC-C10アルキル、またはそれらの組み合わせを含む群から選択される)によって表される。
【0074】
いくつかの実施形態では、化合物は、式:
【化26】

(式中、nは1~3であり、各Yは独立してCHR’またはNR’であり、R’は本明細書に記載の通りである)によって表される。いくつかの実施形態では、最大2つのYは、NR’である。いくつかの実施形態では、各Yは、CHR’である。いくつかの実施形態では、Aは、tert-ブチルである。
【0075】
いくつかの実施形態では、化合物は、式:
【化27】

(式中、RおよびR’は本明細書に記載の通りである)によって表される。いくつかの実施形態では、化合物は、本明細書の上に記載される通りであり、R’は、存在しないか、または1つ以上の窒素原子を含む任意に置換された環式C-C脂肪族環;任意に置換された線状、分岐または環式C-C20アルキル基;1つ以上の窒素原子を含み、C-C10アルキル基、環式または非環式C-C10アルキルアミノ基、および環式または非環式C-C10アミノアルキル基から独立して選択される1つ以上の置換基によって任意に置換されている、線状、分岐または環式C-C20アミノアルキル基;ハロ、オキソ、-NO、アミノ、ヒドロキシ、-CN、-OH、-CONHを含む群からそれぞれ独立して選択される1つ以上の置換基を表す。いくつかの実施形態では、化合物は本明細書の上に記載される通りであり、R’は、1つ以上の窒素原子を含む任意に置換された環式C-C脂肪族環であり、前記任意に置換された環式C-C脂肪族環は、窒素原子を介して結合している。
【0076】
いくつかの実施形態では、化合物は、
【化28】

および
【化29】

(それらの任意の立体異性体を含む)からなる群から選択される。
【0077】
いくつかの実施形態では、化合物は、
【化30】

である。
【0078】
いくつかの実施形態では、化合物は、
【化31】

である。
【0079】
いくつかの実施形態では、化合物は、
【化32】

(T7)
である。
【0080】
いくつかの実施形態では、化合物は、
【化33】

である。
【0081】
いくつかの実施形態では、化合物は、
【化34】

である。
【0082】
いくつかの実施形態では、化合物は、
【化35】
(T3)
である。
【0083】
いくつかの実施形態では、化合物は、
【化36】

である。
【0084】
いくつかの実施形態では、化合物は、T1、T2およびT4が選択される。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物のZ(またはシス)異性体である。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物のE(またはトランス)異性体である。いくつかの実施形態では、化合物は、T1 Z異性体である。いくつかの実施形態では、化合物は、T1 E異性体である。いくつかの実施形態では、化合物は、T3 Z異性体である。いくつかの実施形態では、化合物は、T3 E異性体である。いくつかの実施形態では、化合物は、T4 Z異性体である。いくつかの実施形態では、化合物は、T4 E異性体である。ZおよびE異性体は、炭素環の外側に見られる炭素-炭素二重結合を指すことが当業者によって理解されるであろう。T1~T7のそれぞれは、炭素環の外側にある炭素-炭素二重結合を1つのみ含有する。
【0085】
ここで、化合物T1の産生のための2つの異なる合成機構を提供する図8Aおよび図8Bを参照する。これらの機構の両方を使用して、実質的に純粋なZまたはE異性体をもたらすように液体クロマトグラフィー(例えば、当技術分野で周知のキラル液体クロマトグラフィーカラムを使用することによって)によって分離することができるZ異性体とE異性体との混合物として、両方がT1化合物を作り出すことができる。
【0086】
図8Cは、式IVの化合物の産生のための一般的な合成機構を提供する。各合成工程の例示的な反応条件を本明細書の下に提供する。
工程1:1(1当量)、2(1.05当量)、KCO(1.05当量)、アセトン、還流、18時間。
工程2:4(1当量)、16(1.5当量)、KCO(2当量)、CuI(0.1当量)、DMSO、80℃、20時間。
工程3は、図8Bに示すように実行される。
工程4:14(1当量)、MeNH.HCl(2当量)、MeOH、還流、18時間
工程5:15(1当量)、H(1気圧)、PtO(10%w/w)、HCl(12M/HO、18当量)、MeOH、室温、6時間。
【0087】
化合物T3の産生のための合成機構を提供する図9Aも参照する。Z異性体およびE異性体の両方を(INT-1段階で)産生し、次いで、液体クロマトグラフィー(例えば、当技術分野で周知のキラル液体クロマトグラフィーカラムを使用することによって)によって分離して、INT-1の実質的に純粋なZ異性体またはE異性体をもたらすことができる。Z/E INT-1のそれぞれを、図9Aに示される合成工程に従ってさらに反応させて、T3の実質的に純粋なZまたはE異性体をもたらすことができる。
【0088】
図9Bは、式IIa~IIIcの化合物の産生のための非限定的な一般的合成機構を提供する。各合成工程の例示的な反応条件を本明細書の下に提供する。
【0089】
工程1および2は、本明細書の上に記載されるように実行される。
【0090】
工程3.14(1当量)、4-ブロモ-1-メチルピペリジン(1.1当量)、KCO(2.6当量)、ジオキサン、100℃、20時間。
【0091】
工程4:NaBr(0.11当量)、DMF、150℃、24時間。
【0092】
いくつかの実施形態では、化合物は、好中球の機能または活性の阻害剤である。いくつかの実施形態では、化合物は、好中球エキソサイトーシス阻害剤である。いくつかの実施形態では、化合物は、好中球を阻害する。いくつかの実施形態では、好中球を阻害することは、好中球活性化を阻害することを含む。いくつかの実施形態では、好中球を阻害することは、好中球脱顆粒を阻害することを含む。いくつかの実施形態では、好中球を阻害することは、好中球エキソサイトーシスを阻害することを含む。いくつかの実施形態では、好中球を阻害することは、活性酸素種(ROS)産生を阻害することを含む。いくつかの実施形態では、ROS産生は、ROS分泌である。いくつかの実施形態では、好中球を阻害することは、好中球媒介性死滅を阻害することを含む。いくつかの実施形態では、好中球を阻害することは、好中球媒介性細胞傷害を阻害することを含む。いくつかの実施形態では、好中球を阻害することは、プロテアーゼ分泌を阻害することを含む。いくつかの実施形態では、好中球を阻害することは、NET産生を阻害することを含む。いくつかの実施形態では、好中球を阻害してもNET産生は阻害されない。いくつかの実施形態では、好中球を阻害することは、炎症を阻害することを含む。いくつかの実施形態では、化合物は、SYTL1に対するRAB27aの結合を阻害する。Ras関連タンパク質Rab-27a(RAB27a)は、好中球エキソサイトーシスに必須の小型GTPアーゼである。シナプトタグミン様タンパク質1(SYTL1)は、JFC1としても知られており、輸送、ドッキングおよびエキソサイトーシスを調節するRab27aエフェクターである。いくつかの実施形態では、化合物は、Nexinhib20と少なくとも同程度に有効である。いくつかの実施形態では、化合物は、Nexinhib20よりも優れている。いくつかの実施形態では、化合物は、トリフルオペラジン(ステラジン)と少なくとも同程度に有効である。いくつかの実施形態では、化合物は、トリフルオロピペラジン(ステラジン)よりも優れている。
【0093】
ナノ粒子
いくつかの実施形態によれば、本発明は、本発明の化合物を含むナノ粒子を提供する。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、コアを含む。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、シェルを含む。いくつかの実施形態では、コアは、シェルに面する。いくつかの実施形態では、シェルは、脂質層である。いくつかの実施形態では、コアは、水性である。いくつかの実施形態では、コアは、親水性である。いくつかの実施形態では、シェルは、脂質層を含み、コアは、本明細書の上に記載されるような化合物を含む。いくつかの実施形態では、脂質層は、リン脂質を含む。いくつかの実施形態では、化合物は、シェル中にある。いくつかの実施形態では、化合物は、コア中にある。いくつかの実施形態では、化合物は、水性コアに溶解される。いくつかの実施形態では、化合物は、水溶液に溶解され、ナノ粒子に負荷される。いくつかの実施形態では、化合物は、水溶液に溶解され、コアに負荷される。いくつかの実施形態では、化合物の一部は、シェル中にあり、化合物の一部は、コア中にある。いくつかの実施形態では、化合物の疎水性部は、シェル中にある。いくつかの実施形態では、疎水性部は、疎水性部分である。いくつかの実施形態では、化合物の親水性部は、コア中にある。いくつかの実施形態では、親水性部は、親水性部分である。
【0094】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、ナノ粒子に負荷される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される化合物は、ナノ粒子によって担持される(例えば、シェルとの相互作用によって)。
【0095】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、サブミクロンサイズの粒子である。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、50nm~500nm、70nm~500nm、80nm~500nm、100nm~500nm、50nm~200nm、70nm~200nm、80nm~200nm、100nm~200nm、50nm~150nm、70nm~150nm、80nm~150nm、100nm~150nm、50nm~100nm、70nm~100nm、80nm~100nm、80nm~130nm、90nm~150nm、90nm~120nm、100nm~130nm、130nm~150nm、150nm~200nm、200nm~300nm、80nm~300nm、50nm~300nm、50nm~80nm、80nm~150nmの粒度を特徴とし、その間の任意の範囲を含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、約100nmの平均サイズを含む。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、70~150nmの平均サイズを含む。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、100~150nmの平均サイズを含む。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、80~100nmの平均サイズを含む。ナノ粒子のサイズは、当技術分野で公知の任意の方法、例えば粒子の流体力学的直径を決定するための動的光散乱(DLS)および正確な幾何学的ナノ粒子サイズを決定するための透過型電子顕微鏡法(TEM)によって決定することができる。
【0096】
いくつかの実施形態によれば、ナノ粒子のサイズは、50~1000、100~1000、200~1000、250~1000、300~1000、500~1000、600~1000、700~1000、50~900、100~900、200~900、250~900、300~900、500~900、600~900、700~900、50~800、100~800、200~800、250~800、300~800、500~800、600~800、700~800、50~600、100~600、200~600、250~600、300~600、500~600または50~200nmの範囲内である。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、ナノ粒子は、ナノスフェアおよびナノロッドから選択される。本明細書で使用される場合、「ナノスフェア」という用語は、球形を有するナノ粒子を指す。「ナノロッド」という用語は、棒状の形状を有するナノ粒子を指す。いくつかの実施形態によれば、ナノ粒子は、リポソームである。他の実施形態によれば、ナノ粒子は、ポリマーナノ粒子である。さらなる実施形態によれば、ポリマーナノ粒子は、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)を含む。さらなる実施形態によれば、ナノ粒子は、金属ナノ粒子である。いくつかの実施形態によれば、ナノ粒子は、DSPE-PEGナノ粒子である。いくつかの実施形態によれば、ナノ粒子は、DSPE-PEG-マレイミドナノ粒子である。いくつかの実施形態によれば、PEGは、3400である。いくつかの実施形態によれば、PEGは、2000である。いくつかの実施形態によれば、PEGは、5000である。特定の実施形態によれば、ナノ粒子は、蛍光標識されている。いくつかの実施形態によれば、ナノ粒子は、PEGで修飾されている。いくつかの実施形態によれば、ナノ粒子は、PLGAコアを含む。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、反応剤でコーティングされる。いくつかの実施形態では、反応剤は、ペプチド、ペプチド多量体またはペプチド複合体をナノ粒子にコンジュゲートさせるのに好適である。コンジュゲーションのための反応性基は、当技術分野で周知であり、そのような例を本明細書で以下に提供する。いくつかの実施形態によれば、反応性基は、結合基または捕捉基である。いくつかの実施形態では、結合基または捕捉基は、ペプチドまたはリンカーもしくはスペーサーを結合または捕捉するためのものである。いくつかの実施形態では、反応性基は、ストレプトアビジン(SA)である。いくつかの実施形態では、SAは、ビオチンを含むペプチド/多量体/複合体を結合させるためのものである。いくつかの実施形態では、反応性基は、チオールである。いくつかの実施形態では、チオールは、システインを含むペプチド/多量体/複合体に結合するためのものである。いくつかの実施形態では、システインは、遊離シスチンである。いくつかの実施形態では、システインは、リンカー中にある。いくつかの実施形態では、連結は、マレイミド連結である。
【0097】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、少なくとも50nm、少なくとも60nm、少なくとも70nm、少なくとも80nm、少なくとも90nm、または少なくとも100nmの直径を特徴とし、それらの間の任意の値を含む。各可能性は、別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、多くとも130nm、多くとも150nm、多くとも170nm、多くとも180nm、多くとも200nm、多くとも250nm、多くとも300nmの直径を特徴とし、それらの間の任意の値を含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0098】
いくつかの実施形態では、脂質層は、リン脂質およびステロールを含む。いくつかの実施形態では、ステロールは、コレステロールを含む。いくつかの実施形態では、リン脂質は、双性イオン脂質、アニオン性脂質またはPEG化脂質(それらの任意の組み合わせを含む)を含む。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、リポソームまたはミセルの形態である。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、リポソームである。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、ミセルである。
【0099】
いくつかの実施形態では、脂質は、1つ以上のリン脂質であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、リン脂質は、リポソーム形成脂質である。本明細書で使用される場合、「リポソーム形成脂質」という用語は、転移温度(Tm)を超える温度で水溶液に分散または溶解すると、安定なリポソームを形成するように自己集合するリン脂質を包含する。本明細書で使用される場合、Tmという用語は、リン脂質が固体(ゲル相とも呼ばれる秩序相)から流体(流体結晶相とも呼ばれる不規則相)への相転移を受ける温度を指す。Tmはまた、相転移中に熱容量の最大変化が起こる温度(または温度範囲)を指す。
【0100】
いくつかの実施形態では、脂質層および/またはナノ粒子は、45~70、45~65、45~60、45~55、45~50、50~70、50~65、50~60、50~55、55~70、55~65、55~60、60~70、60~65または65~70モル百分率のリン脂質を含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、脂質層は、50~65モル百分率のリン脂質を含む。いくつかの実施形態では、脂質層は、50~65モル百分率のリン脂質を含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、化合物をカプセル化する。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、親水性コアを含み、化合物は、コア中にある。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、疎水性コアを含み、化合物は、コア中にある。いくつかの実施形態では、化合物は、ナノ粒子の表面と会合している。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物の側鎖によってナノ粒子の表面に連結またはコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物の側鎖によってナノ粒子のシェルに埋め込まれている。
【0102】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、本明細書の上に記載されるような複数のナノ粒子を含む組成物を提供する。
【0103】
いくつかの実施形態では、本発明のナノ粒子は、0.6未満、0.5未満、0.3未満、0.2未満、または0.1未満の多分散指数を特徴とし、それらの間の任意の値を含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、本発明のナノ粒子は、0.1未満の多分散指数を特徴とする。
【0104】
いくつかの実施形態では、本発明のナノ粒子は、0.001~0.3、0.001~0.2、0.001~0.1、0.005~0.3、0.005~0.2、0.005~0.1、0.01~0.3、0.01~0.2、0.01~0.1、0.05~0.3、0.05~0.2または0.05~0.1の多分散指数を特徴とし、それらの間の任意の値および範囲を含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、本発明のナノ粒子は、本明細書の上に記載されるようなメジアンサイズを特徴とし、0.001~0.3、0.001~0.2、0.001~0.1、0.005~0.3、0.005~0.2、0.005~0.1、0.01~0.3、0.01~0.2、0.01~0.1、0.05~0.3、0.05~0.2または0.05~0.1の多分散指数をさらに特徴とし、それらの間の任意の値および範囲を含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0105】
いくつかの実施形態では、本発明のナノ粒子の少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも97重量%は、50nm~500nm、50nm~300nm、50nm~200nm、80nm~200nm、80nm~100nm、80nm~150nm、80nm~130nm、100nm~150nm、150nm~200nm、200nm~250nm、250nm~300nmの範囲の粒度を特徴とし、それらの間の任意の値および範囲を含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0106】
「粒度」および「粒径」という用語は、本明細書では互換的に使用され、液体組成物内のナノ粒子(例えば、ナノ粒子の表面上の2点間の最大直線距離)の平均断面サイズを指す。いくつかの実施形態では、「平均断面サイズ」という用語は、例えば粒子の少なくとも70%、80%、90%もしくは95%の平均、またはいくつかの実施形態では、複数のナノ粒子のメジアンサイズのいずれかを指し得る。いくつかの実施形態では、「平均断面サイズ」という用語は、複数のナノ粒子の数平均を指す。いくつかの実施形態では、「平均断面サイズ」という用語は、実質的に球形のナノ粒子の平均直径を指し得る。
【0107】
いくつかの実施形態では、本発明のナノ粒子は、脂質ベースの粒子であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、本発明のナノ粒子は、リポソームであるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、リポソームは、脂質二重層によって囲まれた内部コアを有する小胞を指し、薬物担体として広く使用されている。これは、良好な生体適合性、低い毒性、免疫系活性化の欠如ならびに疎水性化合物および親水性化合物の両方を組み込む能力などのその独自の特徴に大きく起因する。本明細書に記載されるように、リポソームは、典型的には、排他的ではないが、リン脂質、ステロール、例えばコレステロールおよび他の脂質を含む実質的に球形の脂質二重層から構成される人工小胞として当技術分野で公知である。
【0108】
いくつかの実施形態では、「小胞」および「担体」は、同義であり、コアおよびコアをカプセル化または封入するシェルを含む粒子(例えば、本発明のナノ粒子)を指す。いくつかの実施形態では、本発明のナノ粒子は、コアおよびコアをカプセル化または封入するシェルを含む。いくつかの実施形態では、コアは、中空コア、または固体もしくは液体材料で充填されたコアである。いくつかの実施形態では、本発明のナノ粒子は、球形または任意の他の幾何学的形状を有し得る。いくつかの実施形態では、本発明のナノ粒子は、単層または多層膜(または脂質層)を含む。いくつかの実施形態では、本発明のナノ粒子は、1つ以上の異なるタイプのナノ粒子を含む。いくつかの実施形態では、「異なるタイプ」とは、異なる活性剤(例えば、本発明の化合物)をカプセル化するリポソームを指すことを意味する。いくつかの実施形態では、「異なるタイプ」とは、異なる構造および構成のリポソームを指すことを意味する。
【0109】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示するリポソームは、小単層小胞(SUV)、大単層小胞(LUV)、多層小胞(MLV)、多小胞性小胞(MVV)、大多小胞性小胞(LMVV(巨大多小胞性小胞、「GMV」という用語で呼ばれることもある)、オリゴラメラ小胞(OLV)などからなる群から選択される小胞のいずれか1つまたは組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、リポソームは、大型単層ベシクル(LUV)である。医薬リポソーム組成物を調製し、特徴付ける方法は、当分野で公知である(例えば、Lasic D.Liposomes:From physics to applications,Elsevier,Amsterdam 1993;G.Greroriadis(編)、Liposome Technology,3編、vol.1-3,CRC Press,Boca Raton,2006;Hong et al.,米国特許第8,147,867号明細書を参照されたく、これはあらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0110】
いくつかの実施形態では、リポソームは、適正なパッキングパラメータを特徴とする。本明細書および当技術分野で使用される場合、「パッキングパラメータ」は、所与の脂質組成の相対的な尺度であり、脂質頭部基と脂質炭化水素鎖との間のサイズ関係、負荷およびコレステロールなどの安定剤の存在などの要因に依存する。また、パッキングパラメータは一定でなくてもよいことにも留意されたい。いくつかの実施形態では、パラメータは、疎水性鎖の体積、親水性頭部基の断面積および疎水性鎖の長さのそれぞれに影響を与える様々な条件に依存する。これらに影響を及ぼし得る要因としては、溶媒の特性、溶媒の温度および溶媒のイオン強度が挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
いくつかの実施形態では、適正なパッキングパラメータは、0.3~1の範囲、例えば、0.3、0.5、0.7、0.9または1であり、それらの間の任意の値および範囲を含む。
【0112】
本明細書で使用される「コア」という用語は、シェルとは異なる組成を有する粒子の中心部を指す。いくつかの実施形態では、コアは、シェルによって封入される。いくつかの実施形態では、コアは、シェルの内側部に結合される。いくつかの実施形態では、コアは、シェルによって封入された本明細書の上に記載されるような化合物を含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、コアは、液体である。いくつかの実施形態では、コアは、水溶液を含む。いくつかの実施形態では、コアは、本明細書に記載されるような化合物の水溶液を含む。いくつかの実施形態では、コアは、その中に実質的に位置する本明細書に記載の化合物を含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、本発明の複数のナノ粒子を含む組成物が存在し、ナノ粒子は、同じまたは異なる。いくつかの実施形態では、「異なるナノ粒子」とは、異なる活性剤(例えば、本発明の化合物)をカプセル化する粒子を指すことを意味する。
【0115】
いくつかの実施形態では、シェルは、脂質層であるか、またはそれを含む。いくつかの実施形態では、シェルは、膜の形態である。いくつかの実施形態では、シェルは、1つ以上の脂質層を含む。いくつかの実施形態では、シェルは、脂質二重層を含む。本明細書で使用される「シェル」という用語は、コアとは異なる組成を有する粒子の外側部を指す。
【0116】
いくつかの実施形態では、脂質層は、リン脂質を含む。いくつかの実施形態では、リン脂質は、単一のリン脂質種または複数の化学的に異なるリン脂質を包含する。いくつかの実施形態では、リン脂質は、リポソーム形成脂質であるか、またはそれを含み、リポソーム形成脂質は、本明細書の上に記載される通りである。
【0117】
いくつかの実施形態では、リポソーム形成脂質のうちの少なくとも1つは、1つまたは2つのC14~C24炭化水素尾部、典型的には、アシル鎖、アルキル鎖またはアルケニル鎖)を有するリン脂質であり、完全に飽和している脂質から、完全に、部分的にまたは非水素化脂質である変動する不飽和度を有する(したがって、飽和レベルは、形成されたリポソームの剛性に影響を与え得る(典型的には、飽和鎖を有する脂質から形成されたリポソームは、特にシス二重結合を有する不飽和鎖が存在する同じ鎖長の脂質から形成されたリポソームよりも剛性が高い)。いくつかの実施形態では、リポソーム形成脂質のうちの少なくとも1つは、1つまたは2つのC14~C20、C16~C20またはC16~C18炭化水素尾部を有するリン脂質であり、それらの間の任意の値および範囲を含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、リポソーム形成脂質のうちの少なくとも1つは、完全に飽和している。
【0118】
さらに、脂質膜は、天然源(例えば、天然に存在するリン脂質)、半合成または完全合成脂質、および電気的に中性、負電荷または正電荷であってもよい。
【0119】
いくつかの実施形態では、初代リポソーム形成リン脂質は、約40℃超、約45℃超、約50℃超、約52℃超のTmを特徴とし、その間の任意の範囲を含む。
【0120】
いくつかの実施形態では、リン脂質を形成するリポソームは、1つ以上の飽和および/または不飽和炭化水素尾部を含む。いくつかの実施形態では、各炭化水素尾部は、独立して、14~24、16~24、17~24、17~20、14~17、20~24、18~20個の炭素原子を含み、その間の任意の範囲を含む。いくつかの実施形態では、脂質の炭化水素尾部は、同じまたは異なる化学組成を有する。
【0121】
いくつかの実施形態では、リン脂質は、水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルエタノールアミン(DSPE)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)または卵スフィンゴミエリン(ESM)である。いくつかの実施形態では、リン脂質は、HSPCである。いくつかの実施形態では、リン脂質は、DSPCである。いくつかの実施形態では、リン脂質は、HSPCとDSPCとの組み合わせである。本明細書で使用される「リン脂質」という用語は、リポソームを形成することができる任意の1つのリン脂質またはリン脂質の組み合わせを指す。中性リン脂質としては、ジアシルホスファチジルコリン、ジアルキルホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、およびジアシルホスファチジルエタノールアミンが挙げられ得る。卵、大豆もしくは他の植物源から得られるもの、または部分的もしくは完全に合成されたもの、または可変脂質鎖長および不飽和のものを含む、ホスファチジルコリン(PC)は、本発明の組成物における使用に好適である。ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、DSPE、水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、大豆ホスファチジルコリン(大豆PC)、卵ホスファチジルコリン(卵PC)、水素添加卵ホスファチジルコリン(HEPC)、およびジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)を含むが、これらに限定されない合成、半合成および天然生成物ホスファチジルコリンは、リポソームの調製における使用に好適なホスファチジルコリンである。荷電リン脂質は、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、またはN-スクシニル-ホスファチジルエタノールアミン、N-グルタリル-ホスファチジルエタノールアミン、およびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミンなどのヘッドグループ修飾脂質を含むことができる。
【0122】
いくつかの実施形態では、脂質層は、1つ以上のステロールを含む。ステロールの非限定的な例としては、β-シトステロール、β-シトスタノール、スチグマステロール、スチグマタノール、カンペステロール、カンペスタノール、エルゴステロール、アベナステロール、ブラシカステロール、フコステロール、コレステロール(CHOL)、ヘミコハク酸コレステリルおよび硫酸コレステリル、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0123】
いくつかの実施形態では、ステロールは、植物由来ステロール、すなわち、植物ステロールである。この実施形態によれば、ステロールは、β-シトステロール、β-シトスタノール、スチグマステロール、スチグマスタノール、カンペステロール、カンペスタノール、エルゴステロール、アベナステロール、ブラシカステロール、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0124】
いくつかの実施形態では、脂質層および/またはナノ粒子は、30~55、33~55、35~55、37~55、40~55、43~55、45~55、47~55、50~55、53~55、30~53、33~53、35~53、37~53、40~53、43~53、45~53、47~53、50~53、30~50、33~50、35~50、37~50、40~50、43~50、45~50、47~50、30~47、33~47、35~47、37~47、40~47、43~47、45~47、30~45、33~45、35~45、37~45、40~45、43~45、30~43、33~43、35~43、37~43、40~43、30~40、33~40、35~40、37~40、30~37、33~37、35~37、30~35、33~35または30~33モル百分率のステロールを含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、脂質層は、33~50モル百分率のステロールを含む。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、33~50モル百分率のステロールを含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、リポソームは、肝臓および脾臓によるリポソームクリアランスを減少させることによって循環の寿命を延ばすため、または貯蔵中の凝集に対するリポソームの安定性を改良するためにリポソーム製剤に使用することができるポリマーコンジュゲート脂質を含む。ポリマーコンジュゲート脂質は、ポリ(エチレングリコール)コンジュゲート(ペグ化)リン脂質(PEG-脂質)、例えば、PEG(モル重量2,000)メトキシ-ポリ(エチレングリコール)-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロール(PEG(2000)-ジステアロイルグリセロール、PEG-DSG)、PEG(モル重量2,000)1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000](PEG(モル重量2,000)-ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン、PEG-DSPEまたはDSPE-PEG)、またはPEG(モル重量2,000)N-パルミトイル-スフィンゴシン-1-{スクシニル[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000]}(PEG-セラミド)を含み得る。PEG-脂質構成成分中のPEG部の分子量はまた、1,500~5,500g/molで変動し得るが、好ましくは約2,000MWである。いくつかの実施形態では、PEGは、PEG3400である。いくつかの実施形態では、PEGは、約5000のMWを含む。脂質アンカーへのコンジュゲーションに使用される他のポリマーとしては、ポリ(2-メチル-2-オキサゾリン)(PMOZ)、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)(PEOZ)、ポリアミドオリゴマー、ポリサルコシン、ポリ-N-ビニルピロリドン(PVP)、ポリグリセロール、ポリ(ヒドロキシエチルL-アスパラギン)(PHEA)、およびポリ(ヒドロキシエチルL-グルタミン)(PHEG)が挙げられ得る。
【0126】
いくつかの実施形態では、本発明のナノ粒子は、有効量(例えば、治療有効量)の本明細書の上に記載されるような化合物をカプセル化する。いくつかの実施形態では、本発明のナノ粒子は、疾患の処置または予防に利用するのに十分な本発明の化合物(本明細書では、活性化合物または活性薬剤とも呼ばれる)の負荷を特徴とする。
【0127】
いくつかの実施形態では、中に化合物を含むリポソームを生成するプロセスは、(a)ポリアニオンのアンモニウムまたは置換アンモニウム塩から構成される捕捉剤を含有するリポソームを調製する工程と、(b)続いてリポソームの外側から捕捉剤を除去して、脂質膜を横切る電気化学的勾配を形成する工程と、(c)化合物がリポソームに入り、残りのリポソーム内ポリアニオンとの対応する塩として安定化されるのに有効な条件下で、カプセル化されることが望ましい活性化合物を添加する工程と、を含む。リポソームの内部に捕捉剤を含有するリポソーム組成物は、捕捉剤の溶液中でリポソームを形成することによって作製することができる。捕捉剤の膜貫通濃度勾配は、リポソーム形成後または薬物の負荷(捕捉)前のいずれかで、リポソームの外側の捕捉剤の除去またはリポソームの希釈によってリポソーム全体に形成することができる。
【0128】
いくつかの実施形態では、リポソームの内部の塩形態は、ポリアニオン、例えばクエン酸塩、硫酸塩、スクロセオクタサルフェート、硫酸デキストラン、スラミン、ポリリン酸塩またはイノシトールヘキサホスフェートである。いくつかの実施形態では、薬物のリポソーム内塩を沈殿またはゲル化させて、投与時の薬物の保持を改良する。
【0129】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、有効量(例えば、治療有効量)の本明細書に記載の化合物を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、治療有効量の本明細書に記載の化合物を含む医薬組成物である。
【0130】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」または「有効量」は、所望の治療結果を達成するために、必要な投与量および期間で有効な量を指す。治療剤の治療有効量は、障害または状態の性質および特定の薬剤に依存し、当業者に公知の標準的な臨床技術によって決定することができる。本明細書で使用される場合、「治療活性剤」という用語は、対象に投与されたときに治療活性を示す化学物質を表す。
【0131】
いくつかの実施形態では、本発明のナノ粒子(例えば、リポソーム)は、薬学的に許容される成分(リン脂質および/またはステロールなど)またはその薬学的に許容される塩から構成される。
【0132】
本発明は、少なくとも部分的には、本発明の化合物がナノ粒子、特に脂質ベースのナノ粒子(すなわち、リポソーム)に容易に負荷され得るという驚くべき発見に基づく。本発明の化合物の独自の構造は、治療有効用量の化合物を容易に負荷することができるように、ナノ粒子への効果的な負荷を可能にする。これらの化合物は、ナノ粒子(すなわち、リポソーム)に効率的かつ高度に負荷され得るという点で、当技術分野で公知の他の類似の化合物よりも有用性が高く優れている。
【0133】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、好中球に結合するペプチドをさらに含む。いくつかの実施形態では、ペプチドは、好中球標的化ペプチドである。いくつかの実施形態では、ペプチドは、ナノ粒子の表面に結合または連結されている。いくつかの実施形態では、ペプチドは、ナノ粒子のシェルに結合または連結されている。いくつかの実施形態では、ペプチドは、ナノ粒子の外側に結合または連結されている。いくつかの実施形態では、連結は、共有結合している。いくつかの実施形態では、外側は、コアに面していない側である。いくつかの実施形態では、ペプチドは、ナノ粒子に結合している。いくつかの実施形態では、ペプチドは、ナノ粒子に結合しており、ナノ粒子の外部の好中球と自由に相互作用する。
【0134】
いくつかの実施形態では、ペプチドは、活性化PEG脂質、例えば、マレイミド末端PEG-ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)にコンジュゲートされる。PEGリンカーは、1,500~5,000MWおよび1,900~3,600である。好ましくは、PEGリンカーは、凝集を防止するためまたは循環寿命を延ばすために使用されるPEG(例えば、2,000MW)よりも大きい(例えば、3,400MW)。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、DSPE-PEGを含む。いくつかの実施形態では、脂質層は、DSPE-PEGを含む。いくつかの実施形態では、活性化PEG脂質は、DSPE-PEGである。いくつかの実施形態では、DSPE-PEGは、マレイミド部分を含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、脂質層および/またはナノ粒子は、1~10、2~10、3~10、4~10、5~10、6~10、7~10、8~10、9~10、1~9、2~9、3~9、4~9、5~9、6~9、7~9、8~9、1~8、2~8、3~8、4~8、5~8、6~8、7~8、1~7、2~7、3~7、4~7、5~7、6~7、1~6、2~6、3~6、4~6、5~6、1~5、2~5、3~5、4~5、1~4、2~4、3~4、1~3、2~3または1~2モル百分率の活性化PEG脂質を含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、脂質層は、2~5モル百分率の活性化PEG脂質を含む。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、2~5モル百分率の活性化PEG脂質を含む。
【0136】
本明細書で使用される「好中球」という用語は、自然免疫系の重要な部分を形成する、哺乳動物において最も多い白血球のタイプを指す。好中球は、好塩基球および好酸球を有する多形核細胞(PMN)のファミリーの一部を形成する。好中球は、通常、血流中に見られる。特に細菌感染およびある特定の形態の癌の結果としての炎症の開始(急性)期の間、好中球は、炎症/腫瘍の部位に向かって移動する最初の免疫細胞の中の1つである。それらは、インターロイキン-8(IL-8)およびC5aなどの化学シグナルに従って、血管を通って、次いで間質組織を通って移動する。本明細書で使用される「好中球」という用語は、高密度好中球-HDNおよび低密度好中球(LDN)を含むが、これらに限定されない成熟、未成熟、高密度または低密度のいずれかのすべてのタイプの好中球を包含する。
【0137】
「ペプチド」という用語は、ペプチド結合、すなわち、あるアミノ酸のカルボキシル基と隣接するアミノ酸のアミノ基との間に形成される共有結合によって連結されたアミノ酸残基の短鎖を指す。「ペプチド」という用語は、最大50個のアミノ酸を有する短い配列を指す。50個のアミノ酸より長いアミノ酸モノマーの鎖は、「ポリペプチド」と呼ばれる。そのようなポリペプチドは、50個を超えるアミノ酸残基を有する場合、タンパク質、より具体的には低分子量または中分子量のタンパク質として分類することもできる。
【0138】
「ペプチド」という用語は、「ペプチド類似体」という用語も包含する。「ペプチド類似体」および「類似体」という用語は、本明細書では互換的に使用され、元のペプチドと少なくとも80%の同一性を有するペプチドの類似体を指し、類似体は元のペプチドの活性を保持する。したがって、「類似体」および「活性類似体」という用語は、互換的に使用され得る。「類似体」という用語は、親ペプチドのアミノ酸配列に置換、再編成、欠失、付加および/または化学修飾を含有するペプチドを指す。いくつかの実施形態によれば、ペプチド類似体は、元のペプチドと少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%の配列同一性を有する。一実施形態では、類似体は、元のペプチドと約70%~約95%、約80%~約90%または約85%~約95%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態によれば、本発明の類似体は、1つまたは2つの欠失、付加および/または置換が行われた元のペプチドの配列を含む。
【0139】
「ペプチド」という用語は、「ペプチド断片」という用語も包含する。「断片」という用語は、1つまたは2つのアミノ酸残基が欠失した元のペプチドまたはその類似体の断片を指し、断片は、元のペプチドまたは類似体の活性を保持する。したがって、「断片」および「活性断片」という用語は、互換的に使用され得る。
【0140】
アミノ酸の置換は、保存的置換または非保存的置換であり得る。非保存的置換は、任意の他のアミノ酸による1つのアミノ酸の置換を包含する。特定の一実施形態では、アミノ酸は、非天然アミノ酸で置換されている。
【0141】
「類似体」という用語は、「保存的類似体」という用語も包含する。当業者に公知のアミノ酸の保存的置換は、本発明の範囲内である。保存的アミノ酸置換は、あるアミノ酸を、同じタイプの官能基または側鎖、例えば脂肪族、芳香族、正電荷、負電荷を有する別のアミノ酸で置き換えることを含む。当業者は、個々の置換が「保存的に修飾された類似体」であり、改変により、アミノ酸が化学的に類似したアミノ酸で置換されることを認識するであろう。機能的に類似するアミノ酸を提供する保存的置換表は、当技術分野で周知である。保存的置換の1つの典型的な例を以下に提供する。
【0142】
以下の6つの群はそれぞれ、互いに保存的置換であるアミノ酸を含有する:(1)アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、(2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、(3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、(4)アルギニン(R)、リジン(K)、(5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)および(6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。他の実施形態では、保存的置換は、化学的に類似した非天然アミノ酸による置換を包含する。
【0143】
したがって、いくつかの実施形態では、類似体は、ペプチドの保存的類似体である。いくつかの実施形態によれば、本発明の保存的類似体は、1つまたは2つの保存的置換が行われた元のペプチドの配列を含む。別の実施形態によれば、類似体は、1つまたは2つの保存的置換が行われた元のペプチドのアミノ酸配列からなる。したがって、類似体は、1つまたは2つの保存的置換を有する元のペプチドのアミノ酸配列からなる。
【0144】
本明細書で使用される「アミノ酸」という用語は、天然または非天然アミノ酸のいずれかであり得るアミンおよびカルボン酸官能基の両方を含む有機化合物を指す。22個の天然アミノ酸は、アスパラギン酸(Asp)、チロシン(Tyr)、ロイシン(Leu)、トリプトファン(Trp)、アルギニン(Arg)、バリン(Val)、グルタミン酸(Glu)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、セリン(Ser)、アラニン(Ala)、グルタミン(Gln)、グリシン(Gly)、プロリン(Pro)、トレオニン(Thr)、アスパラギン(Asn)、リジン(Lys)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、システイン(Cys)、セレノシステイン(Sec)、およびピロリジン(Pyl)である。非天然アミノ酸の非限定的な例としては、ジアミノプロピオン酸(Dap)、ジアミノ酪酸(Dab)、オルニチン(Orn)、アミノアジピン酸、β-アラニン、1-ナフチルアラニン、3-(1-ナフチル)アラニン、3-(2-ナフチル)アラニン、γ-アミノ酪酸(GABA)、3-(アミノメチル)安息香酸、p-エチニル-フェニルアラニン、p-プロパルギル-オキシ-フェニルアラニン、m-エチニル-フェニルアラニン、p-ブロモフェニルアラニン、p-ヨードフェニルアラニン、p-アジドフェニルアラニン、p-アセチルフェニルアラニン、アジドノルロイシン、6-エチニル-トリプトファン、5-エチニル-トリプトファン、3-(6-クロロインドリル)アラニン、3-(6-ブロモインドリル)アラニン、3-(5-ブロモインドリル)アラニン、アジドホモアラニン、p-クロロフェニルアラニン、α-アミノカプリル酸、O-メチル-L-チロシン、N-アセチルガラクトサミン-α-トレオニン、およびN-アセチルガラクトサミン-α-セリンが挙げられる。一実施形態によれば、置換は、非天然アミノ酸による置換である。
【0145】
いくつかの実施形態では、ペプチドは、KFPDLDSRRLPHMSL(配列番号1)、LATTHMVFSPDH(配列番号2)、PSSNLESTPLSLL(配列番号3)、SSLMTTQLIATSI(配列番号4)、PELDSKPYFPPL(配列番号5)、ELVTASMPRPNN(配列番号6)、SLESSPMAQLPQ(配列番号7)、SELRSTPLLVPS(配列番号8)、LQIQSWSSSP(配列番号9)、STMTILGTGS(配列番号10)、TETSLRIVSTNP(配列番号11)、LSIVSGSALNHL(配列番号12)およびLTLVSERPMI(配列番号13)、またはそれらの塩からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドは、配列番号1~13からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドは、配列番号1~13からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる。いくつかの実施形態では、ペプチドは、配列番号1を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、ペプチドは、配列番号2を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、ペプチドは、配列番号3を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、ペプチドは、配列番号4を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、ペプチドは、配列番号5を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、ペプチドは、配列番号6を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、ペプチドは、配列番号7を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、ペプチドは、配列番号8を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、ペプチドは、配列番号9を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、ペプチドは、配列番号10を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、ペプチドは、配列番号11を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、ペプチドは、配列番号12を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、ペプチドは、配列番号13を含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、ペプチドは、配列番号1~8から選択されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、ヒト好中球に結合する。いくつかの実施形態では、ペプチドは、配列番号9~13から選択されるアミノ酸配列を含むか、またはそれからなり、マウス好中球に結合する。
【0146】
本明細書で使用される場合、「塩」という用語は、カルボキシル基の塩およびペプチド分子のアミノ基またはグアニジノ基の酸付加塩の両方を指す。カルボキシル基の塩は、当技術分野で公知の手段によって形成され得、無機塩、例えばナトリウム、カルシウム、アンモニウム、鉄または亜鉛塩など、および有機塩基との塩、例えばトリエタノールアミン、ピペリジン、プロカインなどのアミンと形成された塩などが挙げられる。例えば、酸付加塩としては、例えば酢酸またはシュウ酸などの鉱酸との塩が挙げられる。塩は、ここでは、カルシウム鉱物のヒドロゲル形成および/またはミネラル化を促進するためにペプチド溶液に添加されるイオン構成成分も記載する。
【0147】
本発明のペプチド、類似体および塩は、組換え方法および合成方法を含む当技術分野で公知の任意の方法によって産生され得る。合成方法としては、排他的固相合成、部分固相合成、フラグメント縮合、または古典的溶液合成が挙げられる。固相ペプチド合成手順は、当業者に周知である。ペプチドを産生するための合成方法としては、例えば、Fields G.B.,Noble R.,Int.J.Pept.Protein Res.,35:161-214,1990に記載されているFMOC固相ペプチド合成が挙げられるが、これに限定されない。
【0148】
いくつかの実施形態では、合成ペプチドは、分取高速液体クロマトグラフィーによって精製され、ペプチド配列は、当業者に公知の方法によるアミノ酸配列決定によって確認される。
【0149】
いくつかの実施形態では、当技術分野で周知の組換えタンパク質技術を使用して、本発明のペプチドおよびペプチド多量体(非分岐構造からなる)を生成する。
【0150】
いくつかの実施形態によれば、ペプチドは、多くとも500、450、400、350、300、250、200、150、100、90、80、70、60、50、45、40、35、30、25、20、15または10個のアミノ酸を含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、ペプチドは、多くとも100個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドは、多くとも50個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドは、多くとも30個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドは、最大30個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドは、多くとも20個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ペプチドは、多くとも15個のアミノ酸を含む。
【0151】
いくつかの実施形態によれば、ペプチドは、6~100、6~50、6~40、6~30、6~25、6~20、6~15、5~12、6~10、10~100、10~50、10~40、10~30、10~25、10~20、10~15、10~12、12~100、12~50、12~40、12~30、12~25、12~20、12~15、15~100、15~50、15~40、15~30、15~25または15~20個のアミノ酸を含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、ペプチドは、少なくとも6個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態によれば、ペプチドは、少なくとも8個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態によれば、ペプチドは、少なくとも10個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態によれば、ペプチドは、少なくとも12個のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態によれば、ペプチドは、少なくとも15個のアミノ酸を含む。
【0152】
いくつかの実施形態によれば、ペプチドは、溶解度を増加させることができる少なくとも1つの部分にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態によれば、ペプチドは、透過性を増加させることができる少なくとも1つの部分にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態によれば、ペプチドは、溶解度または透過性を増加させることができる少なくとも1つの部分にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つは、複数の部分である。いくつかの実施形態では、複数は、2である。いくつかの実施形態では、複数は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9または10である。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0153】
他の実施形態によれば、ペプチドは、少なくとも1つのリンカーまたはスペーサーにコンジュゲートされる。さらなる実施形態によれば、ペプチドは、溶解度または透過性を増加させることができる少なくとも1つの部分および任意に少なくとも1つのリンカーまたはスペーサーにコンジュゲートされる。なおさらなる実施形態によれば、ペプチドは、溶解度または透過性を増加させることができる少なくとも1つの部分および少なくとも1つのリンカーまたはスペーサーにコンジュゲートされる。なおさらなる実施形態によれば、ペプチドは、溶解度または透過性を増加させることができる少なくとも1つの部分および少なくとも1つのリンカーまたはスペーサーにコンジュゲートされ、溶解度または透過性を増加させることができる少なくとも1つの部分および少なくとも1つのリンカーまたはスペーサーは、互いに共有結合している。
【0154】
いくつかの実施形態では、リンカーは、アミノ酸リンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーは、化学的リンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーは、結合である。いくつかの実施形態では、結合は、共有結合である。いくつかの実施形態では、結合は、ペプチド結合である。いくつかの実施形態では、スペーサーは、アミノ酸スペーサーである。いくつかの実施形態では、リンカーまたはスペーサーは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸を含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、リンカーまたはスペーサーは、単一アミノ酸である。いくつかの実施形態では、リンカーまたはスペーサーは、多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、75、80、90または100個のアミノ酸を含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、リンカーまたはスペーサーは、多くとも1つのアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、リンカーまたはスペーサーは、多くとも10個のアミノ酸を含む。
【0155】
いくつかの実施形態では、リンカーは、システイン残基である。いくつかの実施形態では、リンカーは、リジン残基である。いくつかの実施形態では、リンカーは、ジペプチドリジン-アラニンの少なくとも1回の反復である。いくつかの実施形態では、リンカーは、ジペプチドKAの少なくとも2回の反復である。いくつかの実施形態では、リンカーは、ジペプチドKAの2回の反復である。いくつかの実施形態では、リンカーは、KAKA(配列番号16)を含むかまたはこれからなる。
【0156】
いくつかの実施形態では、第1のペプチドは、スペーサーによって第2のペプチドから分離される。いくつかの実施形態では、第1のペプチドは、リンカーによって第2のペプチドに連結される。いくつかの実施形態では、ペプチドは、スペーサーによって部分から分離される。いくつかの実施形態では、ペプチドは、リンカーによって部分に連結される。いくつかの実施形態では、第1の部分および第2の部分は、スペーサーによって分離される。いくつかの実施形態では、第1の部分および第2の部分は、リンカーによって連結される。いくつかの実施形態では、連結は、C末端連結である。いくつかの実施形態では、連結は、N末端連結である。いくつかの実施形態では、連結は、N末端連結ではない。いくつかの実施形態では、ペプチドのN末端への連結は存在しない。いくつかの実施形態では、ペプチドは、遊離N末端を含む。
【0157】
いくつかの実施形態によれば、ペプチドは、ペプチドのC末端を介して少なくとも1つの部分にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態によれば、ペプチドは、ペプチドのC末端を介して少なくとも1つのリンカーまたはスペーサーにコンジュゲートされる。いくつかの実施形態によれば、ペプチドのN末端は、修飾されていない。他の実施形態によれば、ペプチドは、そのN末端に遊離アミン基を有する。いかなる理論または機構にも束縛されるものではないが、ペプチドのN末端のアミン基が好中球への結合に関与し得ると推測される。
【0158】
溶解度を増加させることができる部分は、当技術分野で周知であり、任意のそのような部分を本発明のペプチドに用いてもよい。溶解度を増加させることができる部分としては、8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸(Doa)残基、任意の長さのポリエチレングリコール(PEG)、およびアミノ酸配列GGGS(配列番号17)またはGGGGS(配列番号18)を含むペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、部分は、DOA残基である。いくつかの実施形態では、部分は、PEGである。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号17の少なくとも1回の反復を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号18の少なくとも1回の反復を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号17の少なくとも1、2、3、4または5回の反復を含むかまたはこれからなる。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態では、リンカーは、配列番号18の少なくとも1、2、3、4または5回の反復を含むかまたはこれからなる。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0159】
具体的な実施形態によれば、溶解度を増加させることができる部分は、8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸(Doa)残基を含む。いくつかの実施形態によれば、ペプチドは、1、2、3、4または5つのDoa残基にコンジュゲートされる。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、ペプチドは、2つのDoa残基にコンジュゲートされる。さらなる実施形態によれば、Doa残基は、互いに、ペプチド配列および/またはリンカーに共有結合している。いくつかの実施形態によれば、ペプチドは、互いに共有結合した2単位のDoa残基にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、共有結合は、ペプチド結合である。いくつかの実施形態では、ペプチドおよび残基は、単一のアミノ酸鎖にある。
【0160】
本明細書で使用される「コンジュゲートされた」または「ペプチドコンジュゲート」という用語は、ペプチド部分が、少なくとも1つのペプチド性分子または非ペプチド性分子への共有化学結合によって、直接またはリンカーもしくはスペーサーを介してのいずれかで結合している(すなわち、結合または連結されている)分子を指す。
【0161】
「リンカー」および「スペーサー」という用語は、本明細書では互換的に使用され、共有結合し、したがって2つの分子を連結する任意の分子を指す。リンカーの非限定的な例は、アミノ酸、ペプチドまたは2つの連結された分子間の距離を可能にするために使用することができる任意の他の有機物である。具体的な実施形態によれば、リンカーは、柔軟なリンカーである。具体的な実施形態によれば、リンカーは、柔軟なペプチドである。さらなる具体的な実施形態によれば、リンカーは、少なくとも1つのグリシン残基を含む柔軟なペプチドである。特定の実施形態によれば、リンカーは、複数のリジン残基を含む。いくつかの具体的な実施形態によれば、リンカーは、3~12個のリジン残基を含む。特定の実施形態によれば、リンカーは、3-マレイミドプロピオン酸(Mpa)残基を含む。
【0162】
いくつかの実施形態によれば、配列番号1~13から選択される少なくとも1つのペプチドおよび溶解度を増加させることができる少なくとも1つの部分を含むペプチドコンジュゲートが、ナノ粒子に結合している。他の実施形態によれば、配列番号1~13から選択される少なくとも1つのペプチドおよび少なくとも1つのリンカーまたはスペーサーを含むペプチドコンジュゲートは、ナノ粒子に結合している。さらなる実施形態によれば、ペプチドコンジュゲートは、配列番号1~13から選択される少なくとも1つのペプチド、溶解度を増加させることができる少なくとも1つの部分および任意に少なくとも1つのリンカーまたはスペーサーを含む。なおさらなる実施形態によれば、ペプチドコンジュゲートは、配列番号1~13から選択される少なくとも1つのペプチド、溶解度を増加させることができる少なくとも1つの部分および少なくとも1つのリンカーまたはスペーサーを含む。なおさらなる実施形態によれば、ペプチドコンジュゲートは、溶解度を増加させることができる少なくとも1つの部分および少なくとも1つのリンカーまたはスペーサーを含み、溶解度を増加させることができる少なくとも1つの部分および少なくとも1つのリンカーまたはスペーサーは、互いに共有結合している。
【0163】
いくつかの実施形態によれば、ペプチドコンジュゲートは、配列番号1~13および1、2、3、4または5単位のDoa残基から選択される少なくとも1つのペプチドを含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。さらなる実施形態によれば、ペプチドコンジュゲートは、配列番号1~13および2、3、4または5単位のDoa残基から選択される少なくとも1つのペプチドを含み、Doa残基は、ペプチド配列および/またはリンカーに互いに共有結合している。
【0164】
さらなる実施形態によれば、ペプチドコンジュゲートは、配列番号1~13から選択される少なくとも1つのペプチド、少なくとも1つのDoa残基および少なくとも1つのMpa残基を含む。
【0165】
いくつかの実施形態によれば、ペプチドコンジュゲートは、溶解度を増加させることができる少なくとも1つの部分を含み、少なくとも1つの部分は、ペプチドのC末端を介してペプチドにコンジュゲートされる。いくつかの実施形態によれば、ペプチドコンジュゲートは、少なくとも1つのリンカーまたはスペーサーを含み、少なくとも1つのリンカーまたはスペーサーは、ペプチドのC末端を介してペプチドにコンジュゲートされる。いくつかの実施形態によれば、ペプチドコンジュゲートのN末端は、修飾されていない。他の実施形態によれば、ペプチドコンジュゲートは、そのN末端に遊離アミン基を有する。
【0166】
いくつかの実施形態によれば、ペプチドコンジュゲートは、式Vによる構造を有する:
ペプチド-Doa-Doa-C(式V)
(式中、「C」はシステイン残基であり、「ペプチド」は本発明のペプチドまたはその塩を表す)。いくつかの実施形態では、「ペプチド」は、本発明のペプチドまたはその塩を表す。
【0167】
いくつかの実施形態によれば、複数のペプチドを含むペプチド多量体は、ナノ粒子に結合している。
【0168】
いくつかの実施形態によれば、複数のペプチドは、複数の同じペプチドである。いくつかの実施形態によれば、複数のペプチドは、複数の異なるペプチドである。いくつかの実施形態によれば、ペプチドは、同一のまたは異なるペプチドである。いくつかの実施形態によれば、本発明は、本発明のペプチドまたはその塩から選択される複数の同一のまたは異なるペプチドを含むペプチド多量体を提供する。他の実施形態によれば、本発明は、ヒト好中球への標的化に使用するためのペプチド多量体を提供し、ペプチド多量体は、配列番号1~8またはその塩からなる群から選択される複数の同一のまたは異なるペプチドを含む。他の実施形態によれば、本発明は、マウス好中球への標的化に使用するためのペプチド多量体を提供し、ペプチド多量体は、配列番号9~13またはその塩からなる群から選択される複数の同一のまたは異なるペプチドを含む。
【0169】
「ペプチド多量体」および「多量体ペプチド」という用語は、本明細書では互換的に使用され、必ずしも隣接していない複数(少なくとも2つ、典型的には少なくとも3つ以上)のペプチドを含有する構築物を指す。
【0170】
いくつかの実施形態によれば、ペプチド多量体は、分岐分子である。他の実施形態によれば、ペプチド多量体は、非分岐分子である。他の実施形態によれば、ペプチド多量体は、線状分子である。他の実施形態によれば、ペプチド多量体は、環式分子である。
【0171】
いくつかの実施形態によれば、ペプチド多量体は、多くとも4、6、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、45または50個のペプチドを含む各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、ペプチド多量体は、少なくとも2、4、6、8、10、12、14または16個のペプチドを含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、ペプチド多量体は、2~20、2~16、2~14、2~12、2~10、2~8、2~6または2~4個の同一のまたは異なるペプチドを含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、ペプチド多量体は、2~20、2~16、2~14、2~12、2~10、2~8、2~6または2~4個のペプチドを含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、ペプチド多量体は、2~20個のペプチドを含む。いくつかの実施形態によれば、ペプチド多量体は、2~4つのペプチドを含む。いくつかの実施形態によれば、ペプチド多量体は、2つのペプチドを含む。いくつかの実施形態によれば、ペプチド多量体は、4つのペプチドを含む。いくつかの実施形態によれば、ペプチド多量体は、16個のペプチドを含む。具体的な実施形態によれば、ペプチド多量体は、4つの同一のまたは異なるペプチドを含む。
【0172】
いくつかの実施形態によれば、ペプチド多量体中のペプチドは、直接またはリンカーもしくはスペーサーを通して互いに共有結合している。他の実施形態によれば、ペプチド多量体中のペプチドは、直接またはリンカーもしくはスペーサーを通して足場に共有結合している。
【0173】
いくつかの実施形態によれば、ペプチド多量体は、複数の同一のまたは異なるペプチドコンジュゲートを含む。いくつかの実施形態によれば、ペプチド多量体は、配列番号1~8から選択される少なくとも1つのペプチドを含むペプチドコンジュゲートを含む。いくつかの実施形態によれば、ペプチド多量体は、配列番号9~13から選択される少なくとも1つのペプチドを含むペプチドコンジュゲートを含む。いくつかの実施形態によれば、ペプチド多量体は、配列番号1~8から選択される少なくとも1つのペプチドを含む2~20、2~16、2~14、2~12、2~10、2~8、2~6または2~4個の同一のまたは異なるペプチドコンジュゲートを含む。他の実施形態によれば、ペプチド多量体は、配列番号9~13から選択される少なくとも1つのペプチドを含む2~20、2~16、2~14、2~12、2~10、2~8、2~6または2~4個の同一のまたは異なるペプチドコンジュゲートを含む。具体的な実施形態によれば、ペプチド多量体は、4つの同一のまたは異なるペプチドコンジュゲートを含む。
【0174】
いくつかの実施形態によれば、ペプチド多量体中のペプチドコンジュゲートは、直接またはリンカーもしくはスペーサーを通して互いに共有結合している。他の実施形態によれば、ペプチド多量体中のペプチドコンジュゲートは、直接またはリンカーもしくはスペーサーを通して足場に共有結合している。さらなる実施形態によれば、ペプチド多量体中のペプチドコンジュゲートは、直接またはリンカーもしくはスペーサーを通して足場に非共有結合している。いくつかの実施形態によれば、足場は、分岐足場である。他の実施形態によれば、足場は、非分岐足場である。
【0175】
いくつかの実施形態によれば、ペプチドまたはペプチドコンジュゲートの各1つは、直接またはリンカーもしくはスペーサーを介してナノ粒子に結合している。いくつかの実施形態では、ペプチドモノマーは、直接またはリンカーもしくはスペーサーを介してナノ粒子に連結または結合している。いくつかの実施形態では、リンカーは、システイン残基である。いくつかの実施形態では、システイン残基のチオール基は、ナノ粒子上のマレイミドと反応する。他の実施形態によれば、ペプチドまたはペプチドコンジュゲートは、互いに共有結合しており、少なくとも1つのペプチド/ペプチドコンジュゲートは、直接またはリンカーもしくはスペーサーを介してナノ粒子に結合している。いくつかの実施形態によれば、ペプチドまたはペプチドコンジュゲートの各1つは、直接またはリンカーもしくはスペーサーを介して足場に結合している。他の実施形態によれば、ペプチドまたはペプチドコンジュゲートは、互いに共有結合しており、少なくとも1つのペプチド/ペプチドコンジュゲートは、直接またはリンカーもしくはスペーサーを介して足場に結合している。
【0176】
いくつかの実施形態によれば、足場は、ペプチド性またはポリペプチド性の足場である。他の実施形態によれば、ペプチド性またはポリペプチド性足場は、足場内の単一の位置で、または足場上の異なる位置でペプチドを互いに接続する。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、足場は、少なくとも1つのリジン(Lys)残基を含む。他の実施形態によれば、足場は、少なくとも3つのLys残基を含む。さらなる実施形態によれば、少なくとも3つのLys残基は、アミド結合によって一緒に結合して、分岐した多量体足場を形成する。いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのアミド結合は、あるLys残基のイプシロンアミンと別のLys残基のカルボキシ基との間に形成される。
【0177】
いくつかの実施形態によれば、ペプチド多量体は、分子Mpa-システインペプチドを含む。
【0178】
いくつかの実施形態によれば、ペプチド多量体は、スキーム:
【化37】

(式中、Xは、カルボキシ酸、アミドまたはアルコール基および任意にリンカーまたはスペーサーから選択されるペプチドのC末端を表し、各「ペプチド」は、独立して、本発明のペプチドまたはその塩を表す)の分子を含む。
【0179】
いくつかの具体的な実施形態によれば、ペプチドのうちの少なくとも1つは、複数のコピーで存在する。いくつかの実施形態によれば、複数のコピーが連結され、それにより、マルチターゲットペプチド多量体が形成される。いくつかの実施形態によれば、ペプチドコピーは、リンカーを通して連結される。他の実施形態によれば、ペプチドコピーは、直接連結される。さらなる実施形態によれば、多量体は、直接およびリンカーを介しての両方で連結されたコピーを含む。
【0180】
いくつかの実施形態によれば、ペプチド多量体は、交互配列ポリマー構造B(X1X2X3...Xm)nBまたはブロックコポリマー構造B(X1)nZ(X2)nZ(X3)nZ...(Xm)n(式中、Bは1~10アミノ酸残基の任意選択の配列であり、nは各出現において、独立して、2~50の整数であり、mは3~50の整数であり、X1、X2...Xmのそれぞれは、本発明の同一のまたは異なるペプチドであり、各出現時のZは、1~4アミノ酸残基の結合またはスペーサーである)に配置された複数の好中球結合ペプチドを含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0181】
「ブロックコポリマー構造」という用語は、多量体に含有される単一のペプチドのすべてのコピーが隣接して配置されていることを意味する。
【0182】
いくつかの実施形態によれば、足場は、ポリエチレングリコール(PEG)分子または修飾PEG分子を含むか、またはそれらから形成される。ある特定の実施形態によれば、足場は、分岐PEG分子を含む。いくつかの実施形態によれば、分岐分子は、本発明のペプチドに結合するために利用可能な少なくとも2つの部位を含む。他の実施形態によれば、足場は、ペプチドに結合するために利用可能な2~100、3~90、4~60、5~50、6~40、7~35、8~30、9~25もしくは10~20または2~50個の部位を含む。
【0183】
いくつかの実施形態によれば、PEG分子は、ペプチドへの少なくとも2つの別個の接続を含む分岐分子である。他の実施形態によれば、PEGは、さらなるPEG分子に結合している。ある特定の実施形態によれば、複数のPEG分子が結合して、マルチアームPEG分子を提供する。ある特定の実施形態によれば、ペプチドは、NH2-PEG分子のアミノ基間に形成されたアミド結合を通してPEG足場に連結される。さらに他の実施形態によれば、少なくとも1つのペプチドは、Lys残基を通してPEG足場に連結される。
【0184】
いくつかの実施形態によれば、ペプチド多量体は、ペプチドまたはペプチドコンジュゲートに直接またはスペーサーもしくはリンカーを通して連結された少なくとも1つのLys残基を含む分岐足場を含む。具体的な実施形態によれば、ペプチド多量体は、ペプチドまたはペプチドコンジュゲートに直接またはスペーサーもしくはリンカーを通して連結された2つのLys残基を含む分岐足場を含む。さらなる具体的な実施形態によれば、ペプチド多量体は、ペプチドまたはペプチドコンジュゲートに直接またはスペーサーもしくはリンカーを通して連結されたアミノ酸配列Lys-Ala-Lys-Ala(KAKA、配列番号16)を含む分岐足場を含む。
【0185】
いくつかの実施形態によれば、ペプチド多量体は、ペプチド多量体に直接またはスペーサーもしくはリンカーを介して共有結合したビオチン部分をさらに含む。いくつかの実施形態によれば、ビオチンは、C末端を通してペプチド多量体に結合している。ビオチン部分は、蛍光検出および操作のためにペプチド多量体を利用可能にする。他の実施形態によれば、ペプチド多量体は、ビオチン部分をさらに含み、ビオチン部分は、ペプチド多量体に非共有結合している。いくつかの実施形態によれば、ペプチド多量体は、ペプチド多量体に直接またはスペーサーもしくはリンカーを介して結合したアビジン部分をさらに含む。いくつかの実施形態によれば、ペプチド多量体は、ペプチド多量体に直接またはスペーサーもしくはリンカーを介して結合したストレプトアビジン部分をさらに含む。さらなる実施形態によれば、ペプチド多量体は、ビオチン部分およびビオチン-アビジン相互作用を通して互いに結合したアビジン/ストレプトアビジン部分を含む。
【0186】
いくつかの実施形態によれば、多量体ペプチドは、ホモ多量体である。他の実施形態によれば、多量体ペプチドは、ヘテロ多量体である。
【0187】
本明細書で使用される場合、「ホモ多量体」という用語は、単一ペプチドの複数コピーを含む多量体ペプチドを指す。いくつかの実施形態によれば、多量体ペプチドは、2~20、2~16、2~14、2~12、2~10、2~8、2~6または2~4個の同一のペプチドを含む。
【0188】
本明細書で使用される「ヘテロ多量体」という用語は、少なくとも2つの異なるペプチドの1つ以上のコピーを含む多量体ペプチドを指す。「異なるペプチド」という用語は、異なる配列を有し、同じペプチドの2つのコピーではないペプチドを指す。いくつかの実施形態によれば、多量体ペプチドは、本発明の少なくとも2つの異なるペプチドの1つ以上のコピーを含む。具体的な実施形態によれば、多量体ペプチドは、本発明の少なくとも2つの異なるペプチドの1つ以上のコピーを含む。
【0189】
いくつかの実施形態によれば、ヘテロ多量体ペプチドは、2、3、4、5、6、7または8個の本発明の異なるペプチド配列またはその塩を含む。
【0190】
単一好中球結合ペプチドの4つのコピーを含むペプチド多量体は、ペプチドのモノマーよりも効率的に循環好中球に結合することが示されている。いかなる理論または機構にも束縛されるものではないが、少なくとも2つの実質的に異なるペプチドを含むヘテロ多量体ペプチドは、ホモ多量体ペプチドよりもさらに高い割合の好中球を標的とすると考えられる。
【0191】
いくつかの実施形態によれば、ヘテロ多量体ペプチドは、異なるペプチドのうちの少なくとも1つの2~20、2~10または2~5個のコピーを含む。他の実施形態によれば、ヘテロ多量体ペプチドは、異なるペプチドのうちの少なくとも2つの2~20、2~10または2~5個のコピーを含む。さらなる実施形態によれば、ヘテロ多量体ペプチドは、異なるペプチドのうちの少なくとも3つの2~20、2~10または2~5個のコピーを含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0192】
具体的な実施形態によれば、ペプチド多量体は、4つの分岐上に好中球結合ペプチドを提示する四量体ペプチドである。さらなる実施形態によれば、四量体中の少なくとも1つのペプチドは、そのN末端に遊離アミン基を有する。なおさらなる実施形態によれば、四量体中の好中球結合ペプチドの各1つは、N末端に遊離アミン基を有する。具体的な実施形態によれば、多量体ペプチドは、4つの分岐上に1つの好中球結合ペプチドの4つのコピーが存在する四量体ペプチドである。さらなる具体的な実施形態によれば、多量体ペプチドは、4つの分岐上に1つの好中球結合ペプチドの4つのコピーが存在する四量体ペプチドであり、好中球結合ペプチドのうちの少なくとも1つのコピーは、そのN末端に遊離アミン基を有する。さらなる実施形態によれば、多量体ペプチドは、4つの分岐上に1つの好中球結合ペプチドの4つのコピーが存在する四量体ペプチドであり、好中球結合ペプチドのコピーの各1つは、そのN末端に遊離アミン基を有する。
【0193】
いくつかの実施形態によれば、ペプチド多量体は、式VIによる構造を含む:
【化38】
式VI
式中、各「ペプチド」は、独立して、本発明のペプチドまたはその塩を表す。
【0194】
いくつかの実施形態では、ペプチド多量体は、式VIによる構造を含み、式中、各「ペプチド」は、独立して、本発明のペプチドまたはその塩を表し、少なくとも2つのペプチドは異なる。他の実施形態では、ペプチド多量体は、式VIによる構造を含み、式中、各「ペプチド」は、独立して、本発明のペプチドまたはその塩を表し、少なくとも3つのペプチドは異なる。他の実施形態では、ペプチド多量体は、式VIによる構造を含み、式中、各「ペプチド」は、独立して、異なるペプチド配列を表し、各ペプチド配列は、配列番号1~13またはその塩からなる群から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、ペプチド多量体は、式VIによる構造を含み、式中、各「ペプチド」は、独立して、本発明のペプチドまたはその塩を表し、少なくとも2つのペプチドは同一である。他の実施形態では、ペプチド多量体は、式VIによる構造を含み、式中、各「ペプチド」は、独立して、本発明のペプチドまたはその塩を表し、少なくとも3つのペプチドは同一である。さらに他の実施形態によれば、ペプチド多量体は、式VIによる構造を含み、式中、「ペプチド」は、本発明のペプチドまたはその塩を表す。他の実施形態では、ペプチド多量体は、式VIによる構造を含み、式中、各「ペプチド」は、独立して、本発明のペプチドまたはその塩を表し、4つのペプチドは同一である。
【0195】
いくつかの実施形態によれば、ペプチド多量体は、式VIIによる構造を含む:
【化39】
式VII
式中、各「ペプチド」は、独立して、本発明のペプチドまたはその塩を表す。
【0196】
いくつかの実施形態では、ペプチド多量体は、式VIIによる構造を含み、式中、各「ペプチド」は、独立して、本発明のペプチドまたはその塩を表し、少なくとも2つのペプチドは異なる。他の実施形態では、ペプチド多量体は、式VIIによる構造を含み、式中、各「ペプチド」は、独立して、本発明のペプチドまたはその塩を表し、少なくとも3つのペプチドは異なる。他の実施形態では、ペプチド多量体は、式VIIによる構造を含み、式中、各「ペプチド」は、独立して、異なるペプチド配列を表し、各ペプチド配列は、配列番号1~13またはその塩からなる群から選択される配列を含む。いくつかの実施形態では、ペプチド多量体は、式VIIによる構造を含み、式中、各「ペプチド」は、独立して、本発明のペプチドまたはその塩を表し、少なくとも2つのペプチドは同一である。他の実施形態では、ペプチド多量体は、式VIIによる構造を含み、式中、各「ペプチド」は、独立して、本発明のペプチドまたはその塩を表し、少なくとも3つのペプチドは同一である。さらに他の実施形態によれば、ペプチド多量体は、式VIIによる構造を含み、式中、「ペプチド」は、本発明のペプチドまたはその塩を表す。他の実施形態では、ペプチド多量体は、式VIIによる構造を含み、式中、各「ペプチド」は、独立して、本発明のペプチドまたはその塩を表し、4つのペプチドは同一である。
【0197】
いくつかの実施形態では、少なくとも2つのペプチド多量体を含むペプチド複合体は、ナノ粒子に結合している。本明細書で使用される場合、「ペプチド複合体」という用語は、必ずしも隣接していない複数(少なくとも2つ、典型的には少なくとも3つ以上)の同一のまたは異なるペプチド多量体を含有する構築物を指す。いくつかの実施形態によれば、ペプチド複合体は、少なくとも2つのペプチド多量体を含み、ペプチド多量体は、本発明の少なくとも1つのペプチドまたはその塩を含む。ある特定の実施形態によれば、本発明は、ヒト好中球への標的化に使用するためのペプチド複合体を提供し、ペプチド複合体は、少なくとも2つのペプチド多量体を含み、ペプチド多量体は、配列番号1~13から選択される配列を含む少なくとも1つのペプチドまたはその塩を含む。いくつかの実施形態によれば、ペプチド複合体中のペプチド多量体は、直接またはリンカーもしくはスペーサーを介して互いに共有結合している。いくつかの実施形態によれば、リンカーまたはスペーサーは、アミノ酸、ペプチドおよび2つの連結された分子間の距離を可能にするために使用され得る任意の他の有機物からなる群から選択されるが、これらに限定されない。他の実施形態によれば、ペプチド複合体中のペプチド多量体は、互いに非共有結合している。いくつかの実施形態によれば、ペプチド複合体中のペプチド多量体は、ビオチン-アビジン相互作用を通して互いに非共有結合している。いくつかの実施形態によれば、ペプチド複合体は、少なくとも2つのビオチン部分およびアビジン/ストレプトアビジン部分を含み、少なくとも2つのビオチン部分は、ペプチド多量体に共有結合しており、アビジン/ストレプトアビジン部分は、ビオチン部分に非共有結合している。具体的な実施形態によれば、ペプチド複合体は、4つのペプチド多量体およびアビジン/ストレプトアビジン部分を含み、ペプチド多量体の各1つは、ビオチン部分に共有結合しており、4つのペプチド多量体は、アビジン/ストレプトアビジン部分に非共有結合している。
【0198】
いくつかの実施形態によれば、ペプチドおよび/またはナノ粒子は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる国際特許公開WO2022003674に開示されているペプチドおよび/またはナノ粒子である。
【0199】
組成物
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、組成物中にある。いくつかの実施形態では、本発明のナノ粒子は、組成物中にある。いくつかの実施形態では、組成物は、医薬組成物である。いくつかの実施形態では、組成物は、本発明の化合物、その薬学的に許容される塩、またはその両方を含む。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、治療有効量の本発明の化合物および/またはその任意の薬学的に許容される塩および/またはその誘導体を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、本発明のナノ粒子、その薬学的に許容される塩、またはその両方を含む。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、治療有効量の本発明のナノ粒子および/または任意のその薬学的に許容される塩および/またはその誘導体を含む。いくつかの実施形態では、治療有効量は、少なくとも1つの症状の軽減、または本明細書の上に記載されるような疾患、障害もしくは状態の重症度の実質的な軽減および/もしくは進行の阻害に十分である。いくつかの実施形態では、治療有効量は、好中球を阻害するのに十分である。いくつかの実施形態では、治療有効量は、本明細書の下に記載されるように決定することができる。
【0200】
いくつかの実施形態では、本発明の1つ以上の化合物、例えばその任意の塩(例えば、薬学的に許容される塩)、任意の互変異性体および/または任意の立体異性体を含む組成物が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、本明細書の上に記載されるような化合物は、本発明の組成物(例えば、医薬組成物)内の唯一の活性成分である。
【0201】
薬学的に許容される塩の非限定的な例としては、酢酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、炭酸塩、ハロゲン化物(臭化物、塩化物、ヨウ化物、フッ化物など)、重酒石酸塩、クエン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、デカン酸塩、エデト酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、および乳酸塩またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0202】
いくつかの実施形態では、リポソーム組成物は、化合物の塩を含み、塩は、硫酸塩、クエン酸塩、スクロソファート、リン酸化もしくは硫酸化ポリオールとの塩、またはリン酸化もしくは硫酸化ポリアニオン性ポリマーとの塩である。いくつかの実施形態では、リポソーム組成物は、化合物の硫酸塩を含む。
【0203】
いくつかの実施形態では、組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤またはアジュバントを含む。本明細書で使用される場合、「担体」、「賦形剤」または「アジュバント」という用語は、活性薬剤ではない医薬組成物の任意の構成成分を指す。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、非毒性の不活性固体、半固体液体充填剤、希釈剤、封入材料、任意のタイプの製剤補助剤または単に滅菌水性媒体、例えば生理食塩水を指す。薬学的に許容される担体として機能し得る材料のいくつかの例は、ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのデンプン、セルロースおよびその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;トラガカント粉末;麦芽、ゼラチン、タルク;カカオバターおよび坐剤ワックスなどの賦形剤;落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールポリオールなどのポリオール;エステル、例えばオレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル、寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張食塩水、リンゲル液;エチルアルコールおよびリン酸緩衝液、ならびに医薬製剤に使用される他の非毒性の適合性物質である。本明細書において担体として機能し得る物質のいくつかの非限定的な例としては、糖、デンプン、セルロースおよびその誘導体、強化トラガカント、麦芽、ゼラチン、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、硫酸カルシウム、植物油、ポリオール、アルギン酸、パイロジェンフリー水、等張食塩水、リン酸緩衝液、ココアバター(坐剤基剤)、乳化剤、ならびに他の医薬製剤に使用される他の非毒性の薬学的に適合性の物質である。ラウリル硫酸ナトリウムなどの湿潤剤および潤滑剤、ならびに着色剤、香味剤、賦形剤、安定剤、酸化防止剤および保存剤も存在し得る。本明細書で企図される組成物を製剤化するために、任意の非毒性、不活性および有効な担体が使用され得る。これに関して好適な薬学的に許容される担体、賦形剤および希釈剤は、当業者に周知であり、例えば、The Merck Index、第13版、Budavari et al.,Eds.,Merck&Co.,Inc.,Rahway,N.J.(2001);CTFA(米国化粧品工業会)International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook、第10版(2004);および「Inactive Ingredient Guide」米国食品医薬品局(FDA)医薬品評価研究センター(CDER)管理局に記載されているものであり、これらのすべての内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明の組成物に有用な薬学的に許容される賦形剤、担体および希釈剤の例としては、蒸留水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、ハンクス溶液およびDMSOが挙げられる。これらの追加の不活性構成成分、ならびに有効な製剤および投与手順は、当技術分野で周知であり、Goodman and Gillman’s:The Pharmacological Bases of Therapeutics、第8版、Gilman et al.Eds.Pergamon Press(1990);Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Publishing Co.,Easton,Pa.(1990);およびRemington:The Science and Practice of Pharmacy、第21版、Lippincott Williams&Wilkins,Philadelphia,Pa.,(2005)などの標準的な教科書に記載されており、これらのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に記載の組成物はまた、リポソーム、ISCOMS、徐放性粒子、および血清中のペプチドまたはポリペプチドの半減期を増加させる他のビヒクルなどの人工的に作り出された構造に含有されてもよい。本明細書に記載のペプチドと共に使用するためのリポソームは、一般に中性および負に帯電したリン脂質およびステロール、例えばコレステロールを含む標準的な小胞形成脂質から形成される。脂質の選択は、一般に、リポソームサイズおよび血液中の安定性などを考慮して決定される。例えば、Coligan,J.E.et al,Current Protocols in Protein Science,1999,John Wiley&Sons,Inc.,New Yorkに概説されているように、リポソームを調製するための種々の方法が利用可能であり、また、米国特許第4,235,871号、同第4,501,728号、同第4,837,028号、および同第5,019,369号も参照されたい。
【0204】
担体は、合計で本明細書に提示される医薬組成物の約0.1重量%~約99.99999重量%を構成し得る。
【0205】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、疾患または障害の処置に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、好中球が病因に関与する医学的状態の処置に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、好中球関連疾患または状態の処置に使用するためのものである。
【0206】
いくつかの実施形態では、医学的状態は、疾患である。いくつかの実施形態では、医学的状態は、状態である。いくつかの実施形態では、医学的状態は、障害である。いくつかの実施形態では、医学的状態は、好中球関連疾患または状態である。いくつかの実施形態では、医学的状態は、好中球によって媒介される疾患または状態である。いくつかの実施形態では、医学的状態は、好中球によって悪化する疾患または状態である。いくつかの実施形態では、医学的状態は、好中球の蓄積に関連する疾患または状態である。いくつかの実施形態では、蓄積は、疾患組織または部位にある。いくつかの実施形態では、蓄積は、損傷した組織または部位におけるものである。いくつかの実施形態では、医学的状態は、癌、感染性疾患、炎症性疾患または障害および自己免疫疾患または障害からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、医学的状態は、癌である。いくつかの実施形態では、医学的状態は、炎症である。いくつかの実施形態では、医学的状態は、炎症性疾患または状態である。いくつかの実施形態では、炎症性疾患または状態は、自己免疫性炎症性疾患または状態である。
【0207】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、好中球関連疾患または状態の処置に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、罹患または損傷した組織または部位への好中球の蓄積に関連する疾患または状態の処置に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、疾患または状態は、癌、炎症性疾患または状態および炎症性自己免疫疾患または状態からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、疾患または状態は、炎症性疾患または状態である。いくつかの実施形態では、疾患または状態は、癌である。いくつかの実施形態では、疾患または状態は、炎症である。いくつかの実施形態では、炎症は、好中球誘導性炎症である。いくつかの実施形態では、疾患または状態は、皮膚疾患である。いくつかの実施形態では、炎症性疾患または状態は、炎症性皮膚疾患である。いくつかの実施形態では、皮膚疾患は、炎症性皮膚疾患である。いくつかの実施形態では、皮膚疾患は、好中球性皮膚疾患(ND)を含む。いくつかの実施形態では、NDは、皮膚層内の好中球蓄積を含む。いくつかの実施形態では、皮膚疾患は、スイート症候群(SS)、壊疽性膿皮症(PG)、リウマチ性好中球性皮膚炎、腸関連皮膚疾患関節炎症候群、角層下膿疱症(スネドン・ウィルキンソン)、急性全身性発疹性膿疱症(AGEP)、アロポー稽留性肢端皮膚炎連続症(ACH)、掌蹠膿疱症(PPP)、膿疱性細菌症(PB)、好中球性エクリン汗腺炎、化膿性汗腺炎(HS)、およびベーチェット病からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、皮膚疾患は、SS、PPP、PGおよびHSからなる群から選択される。
【0208】
いくつかの実施形態では、医学的状態は、好中球細胞外ネット(NETosis)の放出が病態生理学の一部である疾患である。いくつかの実施形態では、医学的状態は、過剰な好中球媒介性組織損傷を特徴とする疾患である。過剰な好中球媒介性組織損傷を特徴とする疾患の非限定的な例は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)および慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの肺疾患である。いくつかの実施形態では、医学的状態は、ARDSである。いくつかの実施形態では、医学的状態は、COPDである。いくつかの実施形態では、疾患は、COPDである。いくつかの実施形態では、医学的状態は、癌、炎症性疾患、状態または障害、および自己免疫疾患、状態または障害からなる群から選択される。いくつかの実施形態によれば、自己免疫疾患、状態または障害は、炎症性自己免疫疾患、状態または障害である。他の実施形態によれば、医学的疾患は、血栓症、アルツハイマー病および好中球媒介性皮膚疾患からなる群から選択される。いくつかの実施形態によれば、医学的状態は、好中球媒介性皮膚疾患である。いくつかの実施形態によれば、医学的状態は、癌である。いくつかの実施形態によれば、医学的状態は、炎症性状態である。いくつかの実施形態によれば、医学的状態は、炎症性疾患である。いくつかの実施形態によれば、炎症性疾患または状態は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、炎症性腸疾患(IBD)および腹膜炎から選択される。いくつかの実施形態によれば、炎症性疾患または状態は、COPDである。いくつかの実施形態によれば、炎症性疾患または状態は、IBDである。いくつかの実施形態によれば、IBDは、クローン病を含む。いくつかの実施形態によれば、IBDは、大腸炎を含む。いくつかの実施形態では、炎症性疾患または状態は、大腸炎である。いくつかの実施形態によれば、炎症性疾患または状態は、腹膜炎である。いくつかの実施形態では、IBDは、大腸炎およびクローン病を含む。いくつかの実施形態では、IBDは、大腸炎である。いくつかの実施形態では、大腸炎は、潰瘍性大腸炎である。
【0209】
いくつかの実施形態によれば、炎症性疾患は、好中球が病因に関与する疾患である。いくつかの実施形態によれば、炎症性疾患または障害は、腹膜炎、大腸炎、血管炎、アテローム性動脈硬化症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、気管支拡張症、好中球性喘息、関節リウマチ(RA)、狼瘡、嚢胞性線維症(CF)、敗血症、多発性硬化症、乾癬、および外傷性損傷からなる群から選択される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、疾患または障害は、全身性紅斑性狼瘡(SLE)である。いくつかの実施形態によれば、疾患または障害は、関節リウマチ(RA)である。いくつかの実施形態によれば、疾患または障害は、痛風である。いくつかの実施形態によれば、疾患または障害は、炎症性関節炎である。
【0210】
いくつかの実施形態によれば、疾患は、癌である。いくつかの実施形態では、癌は、固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、癌、は固形癌である。いくつかの実施形態では、癌は、血液癌である。いくつかの実施形態によれば、癌は、固形腫瘍癌および血液癌から選択される。いくつかの実施形態によれば、固形癌は、乳癌、肺癌、結腸癌、膵臓癌、肝臓癌、頭頸部癌、および腎臓癌からなる群から選択される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、血液癌は、白血病である。いくつかの実施形態によれば、癌は、肝臓癌である。いくつかの実施形態では、肝臓癌は、肝細胞癌(HCC)を含む。いくつかの実施形態では、癌は、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)を含む。いくつかの実施形態によれば、癌は、腎臓癌である。いくつかの実施形態では、腎臓癌は、腎細胞癌(RCC)、移行細胞癌(TCC)、およびウィルムス腫瘍から選択される。
【0211】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、医薬品として使用するためのものである。いくつかの実施形態では、組成物は、全身投与のために製剤化される。いくつかの実施形態では、組成物は、対象への投与のために製剤化される。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態では、組成物は、静脈内投与のために製剤化される。いくつかの実施形態では、組成物は、皮下投与のために製剤化される。いくつかの実施形態では、組成物は、局所投与のために製剤化される。いくつかの実施形態では、組成物は、経口投与のために製剤化される。いくつかの実施形態では、組成物は、直腸投与のために製剤化される。いくつかの実施形態では、組成物は、吸入用に製剤化される。いくつかの実施形態では、組成物は、腫瘍内投与のために製剤化される。いくつかの実施形態では、組成物は、炎症部位への局所投与のために製剤化される。
【0212】
本発明の医薬組成物は、任意の公知の方法によって投与され得る。対象に物質、化合物もしくは薬剤を「投与する」または化合物もしくは薬剤「の投与」という用語は、当業者に公知の種々の方法のうちの1つを使用して実施することができる。例えば、化合物または薬剤は、静脈内、動脈内、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、眼内、舌下、経口(摂取による)、鼻腔内(吸入による)、脊髄内、脳内、および経皮(例えば、皮膚管を通した吸収によって)投与することができる。化合物または薬剤はまた、化合物または薬剤の持続放出、遅延放出または制御放出を提供する、充電式もしくは生分解性ポリマーデバイスまたは他のデバイス、例えばパッチおよびポンプ、または製剤によって適切に導入することができる。投与することは、例えば、1回、複数回および/または1回以上の長期間にわたって実行することもできる。いくつかの実施形態では、投与は、自己投与を含む直接投与および薬物を処方する行為を含む間接投与の両方を含む。例えば、本明細書で使用される場合、患者に薬物を自己投与するように指示する、または別の医師に薬物を投与させる、および/または患者に薬物の処方箋を提供する医師は、患者に薬物を投与していることになる。
【0213】
いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、筋肉内、静脈内、動脈内、関節内または非経口などの侵襲的投与様式によって投与される。具体的な実施形態によれば、医薬組成物は、静脈内投与される。いくつかの実施形態によれば、組成物は、全身投与される。いくつかの実施形態によれば、組成物は、炎症部位に投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、対象への投与のために製剤化される。いくつかの実施形態によれば、組成物は、全身投与のために製剤化される。いくつかの実施形態によれば、組成物は、炎症部位への投与のために製剤化される。いくつかの実施形態では、組成物は、疾患部位への投与のために製剤化される。いくつかの実施形態では、組成物は、腫瘍内投与のために製剤化される。
【0214】
本発明による分子の治療有効量は、とりわけ、投与スケジュール、投与される分子の単位用量、分子が他の治療剤と組み合わせて投与されるかどうか、患者の免疫状態および健康状態、投与される分子の治療活性、ならびに治療医の判断に依存することが当業者には明らかであろう。本明細書で使用される場合、「治療有効量」は、ある期間にわたって処置されている障害に関連する1つ以上の症状を緩和するのに必要な分子の量を指す。
【0215】
本発明の分子の適切な投与量は、投与経路、分子のタイプ(ポリペプチド、ポリヌクレオチド、有機分子など)、患者の年齢、体重、性別または状態に応じて変動するが、最終的に医師によって決定される。有効量に到達する際の様々な考慮事項は、例えば、Goodman and Gilman’s:The Pharmacological Bases of Therapeutics,8th ed.,Pergamon Press,1990;およびRemington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1990に記載されている。
【0216】
例えば、「薬学的に許容される」という用語は、連邦政府もしくは州政府の規制機関によって承認されていること、または動物、より具体的にはヒトにおける使用のために米国薬局方もしくは他の一般に認識されている薬局方に記載されていることを意味し得る。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、本明細書では医薬組成物の活性成分と呼ばれる。
【0217】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物を含む医薬組成物は、単位剤形である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、薬学の分野で周知の方法のいずれかによって調製される。いくつかの実施形態では、単位剤形は、錠剤、カプセル、ロゼンジ、ウェハ、パッチ、アンプル、バイアル、またはプレフィルドシリンジの形態である。
【0218】
加えて、インビトロアッセイは、任意に、最適な投与量範囲を特定するのを助けるために用いられ得る。製剤に用いられる正確な用量はまた、投与経路および疾患または障害の性質に依存し、施術者の判断および各患者の状況に従って決定されるべきである。有効用量は、インビトロまたはインビボ動物モデル試験バイオアッセイまたはシステムから導かれる用量応答曲線から推定することができる。いくつかの実施形態では、有効用量は、本明細書の上に記載されるように決定される。
【0219】
別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、任意の従来の経口、非経口または経皮剤形で投与される。
【0220】
薬学的に許容される塩
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、処置のために遊離形態で、または薬学的に許容される塩として存在することができる。
【0221】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、対象、例えばヒトに投与すると、本発明の化合物またはその阻害活性代謝産物もしくは残基を直接的または間接的のいずれかで提供することができる本発明の化合物の任意の非毒性塩を指す。例えば、「薬学的に許容される」という用語は、連邦政府もしくは州政府の規制機関によって承認されていること、または動物、より具体的にはヒトにおける使用のために米国薬局方もしくは他の一般的に認識されている薬局方に記載されていることを意味し得る。
【0222】
薬学的に許容される塩は、当技術分野で周知である。例えば、S.M.Berge et al.は、J.Pharmaceutical Sciences,1977,66,1-19に薬学的に許容される塩を詳細に記載している。本発明の化合物の薬学的に許容される塩としては、好適な無機および有機の酸および塩基から誘導されるものが挙げられる。これらの塩は、化合物の最終的な単離および精製中にその場で調製することができる。酸付加塩は、1)その遊離ベースの形態の精製化合物を好適な有機酸または無機酸と反応させることと、2)このようにして形成された塩を単離すること、によって調製することができる。
【0223】
薬学的に許容される非毒性の酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸もしくはマロン酸などの有機酸で、またはイオン交換などの当技術分野で使用される他の方法を使用することによって、形成されるアミノ基の塩である。他の薬学的に許容される塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、グルコン酸塩、ヘミスルホン酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パルモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。
【0224】
さらなる薬学的に許容される塩としては、適切な場合、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩およびアリールスルホン酸塩などの対イオンを使用して形成される非毒性アンモニウム、第四級アンモニウムおよびアミンカチオンが挙げられる。他の酸および塩基は、それ自体は薬学的に許容され得ないが、本発明の化合物およびそれらの薬学的に許容される酸または塩基付加塩を得る際の中間体として有用な塩の調製において用いられ得る。
【0225】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される化合物は、キラル化合物(すなわち、不斉炭素原子を有する)である。いくつかの実施形態では、ジアステレオマー、幾何異性体および個々の異性体は、本発明の範囲内に包含される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるキラル化合物は、ラセミ混合物の形態である。いくつかの実施形態では、キラル化合物は、不斉炭素原子がR配置を有する単一のエナンチオマーの形態である。いくつかの実施形態では、キラル化合物は、本明細書の上に記載されるように、不斉炭素原子がS配置を有する単一のエナンチオマーの形態である。
【0226】
いくつかの実施形態では、キラル化合物は、鏡像異性体純度が70%を超える単一の鏡像異性体の形態である。いくつかの実施形態では、キラル化合物は、鏡像異性体純度が80%を超える単一の鏡像異性体の形態である。いくつかの実施形態では、キラル化合物は、鏡像異性体純度が90%を超える単一の鏡像異性体の形態である。いくつかの実施形態では、キラル化合物は、鏡像異性体純度が95%を超える単一の鏡像異性体の形態である。
【0227】
いくつかの実施形態では、不飽和結合を含む本発明の化合物は、トランスまたはシス異性体の形態である。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、70%超、80%超、90%超、90~99%、95~99%、97~99%、95~97%の異性体純度を有する単一異性体の形態であり、その間の任意の範囲を含む。いくつかの実施形態では、キラル化合物は、95%を超える異性体純度を有するZ異性体の形態である。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、本明細書の上に記載されるようなシス異性体とトランス異性体との混合物を含む。
【0228】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される化合物は、非溶媒和形態および水和形態を含む溶媒和形態で存在することができる。一般に、溶媒和形態は、非溶媒和形態と同等であり、本発明の範囲内に包含される。本発明の特定の化合物は、複数の結晶形態または非晶質形態で存在し得る。一般に、すべての物理的形態は、本発明によって企図される使用について同等であり、本発明の範囲内にあることが意図される。
【0229】
「溶媒和物」という用語は、溶質(本明細書に記載のコンジュゲート)および溶媒によって形成され、それによって溶媒が溶質の生物学的活性を妨害しない、可変化学量論の錯体(例えば、ジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-など)を指す。好適な溶媒としては、例えば、エタノール、酢酸などが挙げられる。
【0230】
「水和物」という用語は、溶媒が水である、本明細書の上に定義される溶媒和物を指す。
【0231】
別段の指示がない限り、本明細書に示される構造はまた、構造のすべての異性体(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー、幾何、配座および回転)形態を含むことを意味する。例えば、各不斉中心のRおよびS配置、(Z)および(E)二重結合異性体、ならびに(Z)および(E)配座異性体が本発明に含まれる。当業者に理解されるように、置換基は、任意の回転可能な結合の周りを自由に回転することができる。したがって、本発明の化合物の単一の立体化学異性体ならびにエナンチオマー、ジアステレオマー、幾何学的、配座および回転混合物は、本発明の範囲内である。
【0232】
別段の指示がない限り、本発明の化合物のすべての互変異性形態は、本発明の範囲内である。
【0233】
さらに、別段の指示がない限り、本明細書に示される構造はまた、1つ以上の同位体濃縮原子の存在においてのみ異なる化合物を含むことを意味する。例えば、重水素もしくはトリチウムによる水素の置き換え、または13Cもしくは14C濃縮炭素による炭素の置き換えを除いて本構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。そのような化合物は、例えば、生物学的アッセイにおける分析ツールまたはプローブとして有用である。
【0234】
別の実施形態では、本発明の組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、丸剤、カプセル、粉末、ゲル、クリーム、軟膏、フォーム、ペースト、持続放出製剤などの形態をとる。別の実施形態では、本発明の組成物は、伝統的な結合剤および担体、例えばトリグリセリド、微結晶セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチンと共に坐剤として製剤化することができる。経口製剤は、標準的な担体、例えば医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含むことができる。好適な医薬担体の例は、E.W.MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。そのような組成物は、対象への適正な投与のための形態を提供するために、治療有効量の本発明のポリペプチド、好ましくは実質的に精製された形態のポリペプチドを好適な量の担体と共に含有する。
【0235】
使用方法
いくつかの実施形態によれば、本発明は、好中球関連疾患または状態を処置、予防または改善する方法をそれを必要とする対象に提供し、方法は、本明細書の上に記載される医薬組成物を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、疾患または状態は、それを必要とする対象におけるものである。いくつかの実施形態では、本方法は、化合物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、ナノ粒子を投与することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、組成物を投与することを含む。
【0236】
いくつかの実施形態では、疾患または状態は、癌、炎症性疾患または状態および炎症性自己免疫疾患または状態からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、疾患または状態は好中球関連疾患または状態である。いくつかの実施形態では、疾患または状態は、好中球の病態を特徴とする疾患または状態である。いくつかの実施形態では、疾患または状態は、好中球活性を特徴とする疾患または状態である。いくつかの実施形態では、疾患または状態は、好中球を特徴とする疾患または状態であり、好中球を阻害することによって処置可能な疾患または状態である。いくつかの実施形態では、好中球を阻害することは、好中球活性化を阻害することを含む。いくつかの実施形態では、好中球を阻害することは、好中球脱顆粒を阻害することを含む。いくつかの実施形態では、好中球を阻害することは、好中球NETosisを阻害することを含む。いくつかの実施形態では、好中球を阻害することは、好中球エキソサイトーシスを阻害することを含む。いくつかの実施形態では、好中球を阻害することは、活性酸素種(ROS)産生を阻害することを含む。いくつかの実施形態では、ROS産生は、ROS分泌である。いくつかの実施形態では、好中球を阻害することは、好中球媒介性死滅を阻害することを含む。いくつかの実施形態では、好中球を阻害することは、好中球媒介性細胞傷害を阻害することを含む。いくつかの実施形態では、好中球を阻害することは、プロテアーゼ分泌を阻害することを含む。いくつかの実施形態では、好中球を阻害することは、NET産生を阻害することを含む。いくつかの実施形態では、好中球を阻害してもNET産生は阻害されない。いくつかの実施形態では、好中球を阻害することは、炎症を阻害することを含む。いくつかの実施形態では、炎症は、対象にある。
【0237】
いくつかの実施形態では、癌は、高い好中球負荷を含む。いくつかの実施形態では、高い好中球負荷は、好中球数の増加、好中球の活性の増加またはその両方を含む。いくつかの実施形態では、好中球負荷は、好中球数とリンパ球数との比を含む。いくつかの実施形態では、好中球負荷を所定の閾値と比較する。いくつかの実施形態では、高い好中球負荷は、所定の閾値を超える。いくつかの実施形態では、好中球負荷は、それを必要とする対象から得られた生検で検査される。いくつかの実施形態では、好中球負荷は、腫瘍組織内で検査される。いくつかの実施形態では、好中球負荷は、腫瘍微小環境(TME)で検査される。
【0238】
いくつかの実施形態によれば、癌は、固形腫瘍癌および血液癌から選択される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、固形癌は、乳癌、肺癌、結腸癌、膵臓癌、肝臓癌、頭頸部癌、および腎臓癌からなる群から選択される。いくつかの実施形態によれば、血液癌は、白血病である。いくつかの実施形態によれば、癌は、腎臓癌である。いくつかの実施形態では、腎臓癌は、腎細胞癌(RCC)を含む。いくつかの実施形態では、癌は、肝細胞癌(HCC)を含む。いくつかの実施形態では、癌は、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)を含む。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0239】
いくつかの実施形態では、癌を処置することは、本明細書に開示される組成物および免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含む。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイント遮断を含む。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントは、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、プログラム細胞死タンパク質リガンド1(PD-L1)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0240】
いくつかの実施形態によれば、炎症性疾患は、好中球が病因に関与する疾患である。いくつかの実施形態によれば、炎症性疾患または障害は、腹膜炎、大腸炎、血管炎、アテローム性動脈硬化症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、気管支拡張症、好中球性喘息、関節リウマチ(RA)、狼瘡、嚢胞性線維症(CF)、敗血症、多発性硬化症、乾癬、および外傷性損傷からなる群から選択される。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。いくつかの実施形態によれば、疾患または障害は、全身性紅斑性狼瘡(SLE)である。いくつかの実施形態によれば、疾患または障害は、関節リウマチ(RA)である。
【0241】
いくつかの実施形態では、炎症性疾患または状態は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、炎症性腸疾患(IBD)、および腹膜炎から選択される。いくつかの実施形態では、炎症性疾患または状態は、COPDである。いくつかの実施形態では、炎症性疾患または状態は、IBDである。いくつかの実施形態では、炎症性疾患または状態は、腹膜炎である。いくつかの実施形態によれば、IBDは、クローン病を含む。いくつかの実施形態によれば、IBDは、大腸炎を含む。いくつかの実施形態では、炎症性疾患または状態は、大腸炎である。いくつかの実施形態では、大腸炎は、潰瘍性大腸炎(UC)である。
【0242】
いくつかの実施形態では、方法は、有効量の化合物、ナノ粒子、組成物またはそれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つを投与することを含む。いくつかの実施形態では、有効量は、5mg/kg体重のマウス用量のヒト等価物である。いくつかの実施形態では、マウス用量のヒト等価物は、投与経路に依存する。いくつかの実施形態では、有効量は、1.25~5mg/kg体重のマウス用量のヒト等価物である。いくつかの実施形態では、有効量は、2.5~5mg/kg体重のマウス用量のヒト等価物である。いくつかの実施形態では、有効量は、約0.4mg/kg体重である。いくつかの実施形態では、有効量は、約0.2mg/kg体重である。いくつかの実施形態では、有効量は、約0.1mg/kg体重である。
【0243】
化学的定義
化合物は、標準的な命名法を使用して記載される。他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0244】
本明細書に記載される化合物としては、別段の指示がない限りまたは文脈によって別途除外されない限り、それぞれが具体的に記載されているかのように、エナンチオマー、エナンチオマーの混合物、ジアステレオマー、互変異性体、ラセミ体および他の異性体、例えば、回転異性体が挙げられる。本明細書で提供される化合物は、キラル中心を含有し得ることを理解されたい。そのようなキラル中心は、(R-)または(S-)配置のいずれかであり得る。本明細書で提供される化合物は、エナンチオマー的に純粋であるか、またはジアステレオマーもしくはエナンチオマー混合物であり得る。本明細書で提供される化合物のキラル中心は、インビボでエピマー化を受け得ることが理解されるべきである。したがって、当業者は、その(R-)形態の化合物の投与が、インビボでエピマー化を受ける化合物について、その(S-)形態の化合物の投与と同等であることを認識するであろう。特に明記しない限り、化学結合が実線としてのみ示され、くさびまたは破線としては示されていない式は、各可能な異性体、例えば各エナンチオマー、ジアステレオマーおよびメソ化合物、ならびに異性体の混合物、例えばラセミ混合物またはスカレミック混合物を企図している。
【0245】
2つの文字または記号の間にないダッシュ(「-」)は、置換基の結合点を示すために使用される。例えば、-(C=O)NH2は、ケト(C=O)基の炭素を通して結合している。
【0246】
本明細書で使用される「置換された」という用語は、指定された原子または基上の任意の1つ以上の水素が、指定された原子の通常の原子価を超えず、得られる化合物が安定であるという条件で、示された基から選択される部分で置き換えられていることを意味する。例えば、置換基がオキソ(すなわち、=O)である場合、そのとき原子上の2つの水素が置き換えられる。例えば、オキソで置換されたピリジル基は、ピリジンである。置換基および/または変数の組み合わせは、そのような組み合わせが安定な化合物または有用な合成中間体をもたらす場合にのみ許容される。安定な活性化合物は、単離することができ、少なくとも1ヶ月の貯蔵寿命を有する剤形に製剤化することができる化合物を指す。活性化合物に対する安定な製造中間体または前駆体は、反応または他の使用に必要な期間内に分解しない場合は安定である。安定な部分または置換基は、使用に必要な期間内に分解、反応または崩壊しないものである。不安定部分の非限定的な例は、当業者に典型的に公知であり、特定可能であるように、ヘテロ原子を不安定な配置で組み合わせるものである。
【0247】
任意の好適な基は、安定な分子を形成し、本発明の所望の目的を満たす「置換された」または「任意に置換された」位置に存在し得、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、複素環、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、エステル、エーテル、ハロ、ヒドロキシ、ケト、ニトロ、シアノ、アジド、オキソ、シリル、スルホ-オキソ、スルホニル、スルホン、スルホキシド、スルホニルアミノ、またはチオールが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「置換された」という用語または「置換基」という用語は、1つ以上(例えば、2、3、4、5または6つ)の置換基に関連し、置換基は本明細書に記載の通りである。
【0248】
本明細書で使用される場合、置換基という用語は、ハロ、オキソ、アミノ、ヒドロキシ、-NO、-CN、-OH、-CONH、-CONR’、-CNNR’、-CSNR’、-CONH-OH、-CONH-NH、-NHCOR、-NHCSR、-NHCNR、-NC(=O)OR、-NC(=O)NR’、-NC(=S)OR’、-NC(=S)NR’、-SOR’、-SOR’、-SR’、-SOOR’、-SON(R’)、-NHNR’、-NNR’、C-Cハロアルキル、任意に置換されたC-Cアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、ヒドロキシ(C-Cアルキル)、ヒドロキシ(C-Cアルコキシ)、アルコキシ(C-Cアルキル)、アルコキシ(C-Cアルコキシ)、C-Cアルキル-NR’、C-Cアルキル-SR’、-CONH(C-Cアルキル)、-CON(C-Cアルキル)、-COH、-COR’、-OCOR、-OCOR’、-OC(=O)OR’、-OC(=O)NR’、-OC(=S)OR’、-OC(=S)NR’、OR’、-NR’R’、またはそれらの組み合わせを含み;各R’は、独立して水素を表すか、または価数によって許容される場合、任意に置換されたC-C10アルキル、任意に置換されたC-C10アミノアルキル、任意に置換されたC-C10ヒドロキシアルキル、任意に置換されたC-C10シクロアルキル、任意に置換されたC-C10ヘテロシクリル、任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換されたアリール、アミノ、ヒドロキシ、ハロ、オキソ、シアノ、任意に置換されたC-C10アルキル、またはそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される。
【0249】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、直鎖および分岐鎖基を含む脂肪族炭化水素を表す。「アルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、飽和または不飽和炭化水素も包含し、したがって、この用語はアルケニルおよびアルキニルをさらに包含する。
【0250】
「アルケニル」という用語は、少なくとも2つの炭素原子および少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する、本明細書で定義される不飽和アルキルを表す。アルケニルは、本明細書の上に記載されるように、1つ以上の置換基によって置換されていてもよく、または非置換であってもよい。
【0251】
「アルキニル」という用語は、本明細書で定義される場合、少なくとも2つの炭素原子および少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する不飽和アルキルである。アルキニルは、本明細書の上に記載されるように、1つ以上の置換基によって置換されていてもよく、または非置換であってもよい。
【0252】
「シクロアルキル」という用語は、環のうちの1つ以上が完全にコンジュゲートしたパイ電子系を有さない、全炭素単環式または縮合環(すなわち、隣接する炭素原子対を共有する環)基を表す。シクロアルキル基は、本明細書に示されるように、置換されていてもよく、または非置換であってもよい。
【0253】
「アリール」という用語は、完全にコンジュゲートしたパイ電子系を有する全炭素単環式または縮合環多環式(すなわち、隣接する炭素原子対を共有する環)基を表す。アリール基は、本明細書に示されるように、置換されていてもよく、または非置換であってもよい。
【0254】
「アルコキシ」という用語は、本明細書で定義されるO-アルキルおよび-O-シクロアルキル基の両方を表す。「アリールオキシ」という用語は、本明細書で定義される-O-アリールを表す。
【0255】
本明細書の一般式中のアルキル、シクロアルキルおよびアリール基のそれぞれは、1つ以上の置換基で置換されていてもよく、各置換基は、置換基および分子中のその位置に応じて、独立して、例えば、ハロゲン化物、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、チオール、チオアルコキシ、カルボキシ、アミド、アリールおよびアリールオキシであり得る。さらなる置換基も企図される。
【0256】
「ハロゲン化物」、「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を表す。「ハロアルキル」という用語は、1つ以上のハロゲン化物でさらに置換された、本明細書で定義されるアルキル基を表す。「ハロアルコキシ」という用語は、1つ以上のハロゲン化物でさらに置換された、本明細書で定義されるアルコキシ基を表す。「ヒドロキシル」または「ヒドロキシ」という用語は、-OH基を表す。「メルカプト」または「チオール」という用語は、-SH基を表す。「チオアルコキシ」という用語は、本明細書で定義される-S-アルキル基および-S-シクロアルキル基の両方を表す。「チオアリールオキシ」という用語は、本明細書で定義される-S-アリールおよび-S-ヘテロアリール基の両方を表す。「アミノ」という用語は、-NR’R’’基またはその塩を表し、R’およびR’’は、本明細書に記載の通りである。
【0257】
「ヘテロシクリル」という用語は、窒素、酸素および硫黄などの1つ以上の原子を環内に有する単環式または縮合環基を表す。環はまた、1つ以上の二重結合を有し得る。しかしながら、環は、完全にコンジュゲートしたπ電子系を有さない。代表例は、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリノなどである。
【0258】
「カルボキシ」という用語は、-C(O)OR’基またはそのカルボキシレート塩を表し、式中、R’は、本明細書で定義される水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール(環炭素を通して結合している)もしくはヘテロシクリル(環炭素を通して結合している)、または「カルボキシレート」である。
【0259】
「カルボニル」という用語は、-C(O)R’基を表し、R’は本明細書の上に定義される通りである。上記用語はまた、そのチオ誘導体(チオカルボキシおよびチオカルボニル)を包含する。
【0260】
「チオカルボニル」という用語は、-C(S)R’基を表し、R’は本明細書の上に定義される通りである。「チオカルボキシ」基は、-C(S)OR’基を表し、R’は本明細書で定義される通りである。「スルフィニル」基は、-S(O)R’基を表し、R’は本明細書で定義される通りである。「スルホニル」または「スルホネート」基は、-S(O)2R’基を表し、R’は本明細書で定義される通りである。
【0261】
「カルバミル」または「カルバメート」基は、-OC(O)NR’R’’基を表し、R’は本明細書で定義される通りであり、R’’はR’について定義される通りである。「ニトロ」基は、-NO2基を指す。本明細書で使用される「アミド」という用語は、C-アミドおよびN-アミドを包含する。「C-アミド」という用語は、これらの語句が本明細書の上に定義されているように、-C(O)NR’R’’末端基または-C(O)NR’-連結基を表し、式中、R’およびR’’は、本明細書で定義される通りである。「N-アミド」という用語は、これらの語句が本明細書の上に定義されるように、-NR’’C(O)R’末端基または-NR’C(O)-連結基を表し、式中、R’およびR’’は、本明細書で定義される通りである。
【0262】
「シアノ」または「ニトリル」基は、-CN基を指す。「アゾ」または「ジアゾ」という用語は、これらの語句が本明細書の上に定義されているように、-N=NR’末端基または-N=N-連結基を表し、R’は本明細書の上に定義される通りである。「グアニジン」という用語は、これらの語句が本明細書の上に定義されているように、-R’NC(N)NR’’R’’’末端基または-R’NC(N)NR’’-連結基を表し、式中、R’、R’’およびR’’’は本明細書で定義される通りである。本明細書で使用される場合、「アジド」という用語は、-N3基を指す。「スルホンアミド」という用語は、-S(O)2NR’R’’基を指し、R’およびR’’は本明細書で定義される通りである。
【0263】
「ホスホニル」または「ホスホネート」という用語は、-OP(O)-(OR’)2基を表し、R’は本明細書の上に定義される通りである。「ホスフィニル」という用語は、-PR’R’’基を表し、R’およびR’’は本明細書の上に定義される通りである。「アルキルアリール」という用語は、本明細書に記載のアリールで置換された、本明細書で定義されるアルキルを表す。例示的なアルキルアリールは、ベンジルである。
【0264】
「ヘテロアリール」という用語は、例えば窒素、酸素および硫黄などの1つ以上の原子を環内に有し、加えて、完全にコンジュゲートしたパイ電子系を有する単環式または縮合環(すなわち、隣接する原子対を共有する環)基を表す。本明細書で使用される場合、「ヘテロアリール」という用語は、芳香環を形成する少なくとも1つの原子がヘテロ原子である芳香環を指す。ヘテロアリール環は、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つおよび9つを超える原子によって形成させることができる。ヘテロアリール基は、任意に置換され得る。ヘテロアリール基の例としては、1つの酸素原子もしくは硫黄原子、または2つの酸素原子、または2つの硫黄原子、または最大4つの窒素原子、または1つの酸素原子もしくは硫黄原子と最大2つの窒素原子との組み合わせを含有する芳香族C3-8複素環基およびそれらの置換誘導体、ならびに例えば環形成炭素原子のうちの1つを介して結合されたベンゾ縮合誘導体およびピリド縮合誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、ヘテロアリールは、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジナール、ピラジニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニルまたはキノキサリニルの中から選択される。
【0265】
いくつかの実施形態では、ヘテロアリール基は、ピロリル、フラニル(フリル)、チオフェニル(チエニル)、イミダゾリル、ピラゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、1,3-オキサゾリル(オキサゾリル)、1,2-オキサゾリル(イソオキサゾリル)、オキサジアゾリル、1,3-チアゾリル(チアゾリル)、1,2-チアゾリル(イソチアゾリル)、テトラゾリル、ピリジニル(ピリジル)ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、1,2,3-トリアジニル、1,2,4-トリアジニル、1,3,5-トリアジニル、1,2,4,5-テトラジニル、インダゾリル、インドリル、ベンゾチフェニル、ベンゾフラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾジオキソリル、アクリジニル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、フタラジニル、チエノチオフェニル、1,8-ナフチリジニル、他のナフチリジニル、プテリジニル、またはフェノチアジニルの中から選択される。ヘテロアリール基が2つ以上の環を含む場合、各追加の環は、飽和形態(ペルヒドロ形態)もしくは部分不飽和形態(例えば、ジヒドロ形態またはテトラヒドロ形態)、または最大不飽和(非芳香族)形態である。したがって、ヘテロアリールという用語は、2つの環が芳香族である二環式基および1つの環のみが芳香族である二環式基を含む。そのようなヘテロアリールの例としては、3H-インドリニル、2(1H)-キノリノニル、4-オキソ-1,4-ジヒドロキノリニル、2H-1-オキソイソキノリル、1,2-ジヒドロキノリニル、(2H)キノリニルN-オキシド、3,4-ジヒドロキノリニル、1,2-ジヒドロイソキノリニル、3,4-ジヒドロ-イソキノリニル、クロモニル、3,4-ジヒドロイソキノリニル、4-(3H)キナゾリノニル、4H-クロメニル、4-クロマノニル、オキシンドリル、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリニル、1,2,3,4-テトラヒドロ-キノリニル、1H-2,3-ジヒドロイソインドリル、2,3-ジヒドロベンゾ[f]イソインドリル、1,2,3,4-テトラヒドロベンゾ-[g]イソキノリニル、1,2,3,4-テトラヒドロベンゾ[g]イソキノリニル、クロマニル、イソクロマノニル、2,3-ジヒドロクロモニル、1,4-ベンゾ-ジオキサニル、1,2,3,4-テトラヒドロ-キノキサリニル、5,6-ジヒドロ-キノリル、5,6-ジヒドロイソキノリル、5,6-ジヒドロキノキサリニル、5,6-ジヒドロキナゾリニル、4,5-ジヒドロ-1H-ベンズイミダゾリル、4,5-ジヒドロ-ベンゾオキサゾリル、1,4-ナフトキノリル、5,6,7,8-テトラヒドロ-キノリニル、5,6,7,8-テトラヒドロ-イソキノリル、5,6,7,8-テトラヒドロキノキサリニル、5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリル、4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ベンズイミダゾリル、4,5,6,7-テトラヒドロ-ベンゾオキサゾリル、1H-4-オキサ-1,5-ジアザ-ナフタレン-2-オニル、1,3-ジヒドロイミジゾロ-[4,5]-ピリジン-2-オニル、2,3-ジヒドロ-1,4-ジナフトキノニル、2,3-ジヒドロ-1H-ピロール[3,4-b]キノリニル、1,2,3,4-テトラヒドロベンゾ[b]-[1,7]ナフチリジニル、1,2,3,4-テトラヒドロ-ベンゾ[b][1,6]-ナフチリジニル、1,2,3,4-テトラヒドロ-9H-ピリド[3,4-b]インドリル、1,2,3,4-テトラヒドロ-9H-ピリド[4,3-b]インドリル、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ-[3,4-b]インドリル、1H-2,3,4,5-テトラヒドロ-アゼピノ[3,4-b]インドリル、1H-2,3,4,5-テトラヒドロアゼピノ-[4,3-b]インドリル、1H-2,3,4,5-テトラヒドロアゼピノ[4,5-b]インドリル、5,6,7,8-テトラヒドロ[1,7]ナフチリジニル、1,2,3,4-テトラヒドロ-[2,7]-ナフチリジル、2,3-ジヒドロ[1,4]ジオキシノ[2,3-b]ピリジル、2,3-ジヒドロ[1,4]-ジオキシノ[2,3-b]ピリジル、3,4-ジヒドロ-2H-1-オキサ[4,6]ジアザナフタレニル、4,5,6,7-テトラヒドロ-3H-イミダゾ-[4,5-c]ピリジル、6,7-ジヒドロ[5,8]ジアザナフタレニル、1,2,3,4-テトラヒドロ[1,5]-ナフチリジニル、1,2,3,4-テトラヒドロ[1,6]ナフチリジニル、1,2,3,4-テトラヒドロ[1,7]ナフチリジニル、1,2,3,4-テトラヒドロ-[1,8]ナフチリジニルまたは1,2,3,4-テトラヒドロ[2,6]ナフチリジニルが挙げられる。いくつかの実施形態では、ヘテロアリール基は、任意に置換されている。一実施形態では、1つ以上の置換基は、それぞれ独立して、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、アルキルアミド、アシル、C1-6-アルキル、C1-6-ハロアルキル、C1-6-ヒドロキシアルキル、C1-6-アミノアルキル、C1-6-アルキルアミノ、アルキルスルフェニル、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、スルファモイルまたはトリフルオロメチルの中から選択される。
【0266】
ヘテロアリール基の例としては、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピロール、ピリジン、インドール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、イソオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ピラゾール、インダゾール、テトラゾール、キノリン、イソキノリン、ピリダジン、ピリミジン、プリンおよびピラジン、フラザン、1,2,3オキサジアゾール、1,2,3チアジアゾール、1,2,4チアジアゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、プテリジン、フェノキサゾール、オキサジアゾール、ベンゾピラゾール、キノリジン、シンノリン、フタラジン、キナゾリンおよびキノキサリンの非置換および一置換または二置換誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、置換基は、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、O-C1-6-アルキル、C1-6-アルキル、ヒドロキシ-C1-6-アルキルおよびアミノ-C1-6-アルキルである。
【0267】
本明細書で使用される場合、本明細書で互換的に言及される「ハロ」および「ハロゲン化物」という用語は、ハロゲンの原子、すなわちフッ素、塩素、臭素またはヨウ素を表し、本明細書ではフッ化物、塩化物、臭化物およびヨウ化物とも呼ばれる。
【0268】
「薬学的に許容される塩」は、親化合物がその無機および有機の薬学的に許容される酸または塩基付加塩を作製することによって修飾されている開示された化合物の誘導体である。本発明の化合物の塩は、従来の化学的方法によって、塩基性部分または酸性部分を含有する親化合物から合成することができる。一般に、そのような塩は、これらの化合物の遊離酸形態を化学量論量の適切な塩基(例えば、Na、Ca、MgまたはK水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩など)と反応させることによって、またはこれらの化合物の遊離塩基形態を化学量論量の適切な酸と反応させることによって、調製することができる。そのような反応は、典型的には、水中もしくは有機溶媒中、またはこれら2つの混合物中で実施される。一般に、実行可能な場合、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルのような非水性媒体が典型的である。本発明の化合物の塩は、化合物および化合物塩の溶媒和物をさらに含む。薬学的に許容される塩の例としては、アミンなどの塩基性残基の無機または有機酸塩、カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩または有機塩などが挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩としては、ヒトの消費に許容される塩、および例えば無機塩または有機塩から形成される親化合物の第四級アンモニウム塩が挙げられる。そのような塩の例としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸から誘導されるもの;および例えば、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、メシル酸、エシル酸、ベシル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、HOOC-(CH2)1-4-COOHなどの有機酸から調製された塩、または同じ対イオンを産生する異なる酸を使用して調製された塩が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる好適な塩のリストは、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,Mack Publishing Company,Easton,PA.,p.1418(1985)で見出され得る。
【0269】
本明細書で使用される場合、実質的に純粋とは、そのような純度を評価するために当業者によって使用される、例えば、薄層クロマトグラフィー(TLC)、核磁気共鳴(NMR)、ゲル電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および質量分析(MS)、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)などの標準的な分析方法によって決定される際に容易に検出可能な不純物が含まれていないように十分に均一であるか、またはさらなる精製が物質の酵素活性および生物学的活性などの物理的および化学的特性を検出可能に変化させないように十分に純粋であることを意味する。実質的に化学的に純粋な化合物を産生するための化合物の精製のための伝統的な方法および現代の方法の両方が当業者に公知である。しかしながら、実質的に化学的に純粋な化合物は、立体異性体の混合物であってもよい。
【0270】
一般
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、±10%を指す。
【0271】
「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する」という用語およびそれらの活用形は、「を含むが、これらに限定されない」を意味する。
【0272】
「からなる(consisting of)という用語は、「含み、これらに限定される(including and limited to)」を意味する。
【0273】
「本質的に、~からなる」という用語は、組成物、方法または構造が追加の成分、工程および/または部分を含み得るが、追加の成分、工程および/または部分が特許請求される組成物、方法または構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合に限ることを意味する。
【0274】
「例示的」という単語は、本明細書では「例、事例または例示としての役割を果たす」を意味するために使用される。「例示的」と記載された任意の実施形態は、必ずしも他の実施形態よりも好ましいもしくは有利であると解釈されるべきではなく、かつ/または他の実施形態からの特徴の組み込みを除外するべきではない。
【0275】
「任意に」という単語は、本明細書では「いくつかの実施形態で提供され、他の実施形態では提供されない」ことを意味するために使用される。本発明の任意の特定の実施形態は、そのような特徴が矛盾しない限り、複数の「任意選択の」特徴を含んでもよい。
【0276】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「a」および「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の言及を含む。例えば、「化合物」または「少なくとも1つの化合物」という用語は、それらの混合物を含む複数の化合物を含み得る。
【0277】
本出願を通して、本発明の様々な実施形態は、範囲形式で提示され得る。範囲形式での説明は、単に便宜および簡潔さのためのものであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、すべての可能な部分範囲およびその範囲内の個々の数値を具体的に開示したと見なされるべきである。例えば、1~6などの範囲の説明は、例えば1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの具体的に開示された部分範囲、ならびにその範囲内の個々の数、例えば1、2、3、4、5および6を有すると見なされるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0278】
本明細書において数値範囲が示されるときはいつでも、示された範囲内の任意の引用された数字(分数または整数)を含むことを意味する。第1の指示数と第2の指示数との「間の範囲/範囲(ranging/ranges between)」および第2の指示数「まで」の第1の指示数「からの範囲/範囲(ranging/ranges from)」という語句は、本明細書では互換的に使用され、第1および第2の指示数ならびにそれらの間のすべての分数および整数を含むことを意味する。
【0279】
本明細書で使用される場合、「方法」という用語は、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の分野の当業者に公知であるか、または当業者によって公知の様式、手段、技術および手順から容易に開発されるかのいずれかの、それらの様式、手段、技術および手順を含むが、これらに限定されない所与のタスクを達成するための様式、手段、技術および手順を指す。
【0280】
本明細書で使用される場合、「処置する」という用語は、状態の進行を抑止、実質的に阻害、遅延もしくは逆転させること、状態の臨床的もしくは審美的症状を実質的に改善すること、または状態の臨床的もしくは審美的症状の出現を実質的に予防することを含む。
【0281】
明確にするために別個の実施形態の文脈で説明されている本発明のある特定の特徴は、単一の実施形態では組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で記載されている本発明の様々な特徴はまた、別個に、または任意の好適な部分的組み合わせで、または本発明の任意の他の記載された実施形態で好適であるように提供されてもよい。様々な実施形態の文脈で説明されるある特定の特徴は、実施形態がそれらの要素なしでは動作不能でない限り、それらの実施形態の本質的な特徴と見なされるべきではない。
【0282】
本発明をその具体的な実施形態と併せて説明してきたが、多くの代替形態、修正形態および変形形態が当業者には明らかであることは明らかである。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨および広い範囲に含まれるすべてのそのような代替形態、修正形態および変形形態を包含することが意図されている。
【0283】
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許および特許出願は、あたかも個々の各刊行物、特許または特許出願が参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別に示されているのと同程度に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。加えて、本出願における任意の参考文献の引用または特定は、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることの承認として解釈されるべきではない。セクションの見出しが使用される限り、それらは、必ずしも限定的であると解釈されるべきではない。
【実施例
【0284】
一般に、本明細書で使用される命名法および本発明で利用される実験室手順としては、分子的、生化学的、微生物学的および組換えDNA技術が挙げられる。そのような技術は、文献で十分に説明されている。例えば、「Molecular Cloning:A laboratory Manual」 Sambrook et al.,(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」Volumes I-III Ausubel,R.M.,ed.(1994);Ausubel et al.,「Current Protocols in Molecular Biology」,John Wiley and Sons,Baltimore,Maryland(1989);Perbal,「A Practical Guide to Molecular Cloning」,John Wiley&Sons,New York(1988);Watson et al.,「Recombinant DNA」,Scientific American Books,New York;Birren et al.(編)「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」,Vols.1-4,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York(1998);米国特許第4,666,828号;同第4,683,202号;同第4,801,531号;同第5,192,659号および同第5,272,057号に記載されている方法論;「Cell Biology:A Laboratory Handbook」,Volumes I-III Cellis,J.E.,編(1994);Freshneyによる「Culture of Animal Cells-A Manual of Basic Technique」,Wiley-Liss,N.Y.(1994),第3版;「Current Protocols in Immunology」Volumes I-III Coligan J.E.,編(1994);Stites et al.(eds),「Basic and Clinical Immunology」(第8編),Appleton&Lange,Norwalk,CT(1994);Mishell and Shiigi(編)「Strategies for Protein Purification and Characterization-A Laboratory Course Manual」CSHL Press(1996)を参照されたく、これらのすべては参照により組み込まれる。他の一般的な参考文献がこの文書全体にわたって提供される。
【0285】
方法
脱顆粒アッセイ(ヒト好中球):5mLのヒト血液をEDTA含有管に採取した。好中球をFICCOL勾配で精製し、試料あたり100,000個の好中球を使用した。好中球刺激のために酢酸ミリスチン酸ホルボール(PMA、50nM)を添加した。試料をPMA単独または化合物(50μM)と共に、のいずれかで37℃で30分間培養し、次いで抗CD66b Abで染色して、好中球集団を検出し、抗CD11b Abで染色して脱顆粒を検出した後、FACSで評価した。Nexinhib20(50μM)を陽性対照として使用した。DMSOを陰性対照として使用した。CD11bの平均蛍光強度(MFI)をPMA刺激後のレベルに対して正規化した。
【0286】
脱顆粒アッセイ(マウス好中球):1mLのマウス血液をマウス心臓からEDTA含有管に採取した。好中球をFICCOL勾配で精製し、試料あたり100,000個の好中球を使用した。試料をPMA単独(50nM)または化合物(50μM)と共に、のいずれかで37℃で30分間培養し、次いで抗Ly6GAbで染色して、好中球集団を検出し、抗CD11bAbで染色して脱顆粒を検出した後、FACSで評価した。Nexinhib20(50μM)を陽性対照として使用した。DMSOを陰性対照として使用した。CD11bのMFIをPMA刺激後のレベルに対して正規化した。
【0287】
ROSアッセイ(ヒト好中球):5mLのヒト血液をEDTA含有管に採取した。赤血球(RBC)を溶解し、白血球(WBC)をスピンダウンおよび洗浄によって単離した。平均5,000個/ウェルのWBCを100nMのPMAで刺激し、5μMの濃度の化合物の存在下、37℃で30分間培養した。ルミノールをウェルに添加し、活性をルミネセンスプレートリーダー(サイクル#16、22.5分)で読み取った。Nexinhib20(5μM)およびDPI(1μM)を陽性対照として使用した。HBSS緩衝液またはDMSOを添加した緩衝液を陰性対照として使用した。発光シグナルを対照(DMSO単独)に対して正規化した。
【0288】
ROSアッセイ(マウス好中球):0.5mLのマウス血液をEDTA含有管に採取した。RBCを溶解し、WBCをスピンダウンおよび洗浄によって単離した。平均2,000個/ウェルのWBCを100nMのPMAで刺激し、5μMの濃度の化合物の存在下、37℃で30分間培養した。ルミノールをウェルに添加し、活性をルミネセンスプレートリーダー(サイクル#16、22.5分)で読み取った。Nexinhib20(5μM)およびDPI(1μM)を陽性対照として使用した。HBSS緩衝液またはDMSOを添加した緩衝液を陰性対照として使用した。発光シグナルを対照(DMSO単独)に対して正規化した。
【0289】
NETosisアッセイ:アッセイを以前に記載されたように実施した(Gupta et al.,「A High-Throughput Real-Time Imaging Technique To Quantify NETosis and Distinguish Mechanisms of Cell Death in Human Neutrophils.」、J Immunol.2018;200:869-879、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。簡潔には、ヒト好中球(2×10細胞/mL)を、核を染色するためにNUCLEAR-ID Red DNA色素と共にRTの暗所で5分間インキュベートした(Enzo Life Sciences,Inc.)。細胞を2回洗浄し、1mLのRPMI培地に再懸濁した。NUCLEAR-ID Red染色好中球を96ウェルフラットマイクロプレートに播種した(100μLあたり20,000個の好中球)。好中球NETosisの刺激は、PMA単独(50nM)、またはT1化合物(10μM)もしくはT3化合物(10μM)の存在下でPMAを用いて実行した。刺激されていない好中球は、陰性対照として機能した。トリフルオペラジン(ステラジン、100ng/ml)の存在下でPMAで刺激した好中球を陽性対照として使用した。0.1μMの最終濃度の膜不透過性dsDNA蛍光Sytox Green核酸染色剤(Life Technologies,Inc.)を、刺激と同時に播種細胞に添加した。好中球を、5%CO2、37℃の細胞インキュベーター内に位置するIncuCyte ZOOM(商標)プラットフォーム(Essen BioScience,Inc.)において、位相差、赤色(800ms曝露)および緑色(400ms曝露)チャネルを使用して、プレーティングの10分以内に画像化した。20倍乾式対物レンズを使用してウェルあたり別個の領域からの4つの画像セットを20~30分毎に8時間撮影した。赤色チャネルについては、半径10μm、蛍光閾値0.5赤色補正単位および面積15μm未満の物体を除外するためにフィルタを適用した。フィルタは、緑色チャネルを適用し、半径10μm、蛍光閾値1.00緑色補正単位および面積100μm未満の物体を除外した。緑色物体数を赤色物体数で割ったものは、全好中球のNETosisを通過する細胞の百分率を表す。リポソーム調製:2.5%のDSPE-PEG3400-マレイミドリポソームを250mMの硫酸アンモニウム中で調製した。リポソームをHSPC:コレステロール:DSPE-PEG-Mal:DilC18(5)-DSのモル比56.5:41:2.5:0.09で調製した。脂質を標準的なエタノール注入プロトコルによって調製し、押出後に、118.9nmの平均サイズおよび0.085の平均多分散性指数(DPI)を有することが見出された。
【0290】
LQIモノマーコンジュゲーション:リポソームをPBSに緩衝液交換し、空の非コンジュゲートリポソームを対照として保持した。LQIペプチド、LQIQSWSSSP(配列番号9)をC末端システイン(LQIQSWSSSPC、配列番号14)を含むように伸長させ、リポソームの表面のマレイミドと反応させて、ペプチドをリポソーム表面に共有結合させた。コンジュゲーション後、遊離マレイミドをL-システインでクエンチし、次いで、連結したリポソームを洗浄し、濾過した。
【0291】
リポソームへの活性薬物負荷:50mgの薬物を7.5%のデキストロースに溶解し、MES緩衝液でpHを約6に調整した。対照の「空の」リポソームには、10μlのMES緩衝液を添加した7.5%のデキストロースを依然として負荷した。負荷のために、リポソームを溶解した薬物と60℃で30分間混合し、次いで氷上で15分間冷却した。負荷したリポソームは、約135~145nmの範囲のサイズを有していた。負荷されなかった遊離薬物を、PD-10カラムによるサイズ排除を使用してリポソームから分離した。HPLCを使用して、最終リポソーム中の薬物およびコレステロール含有量を測定した。
【0292】
リポソーム内の薬物保持を監視するために、リポソームを4ヶ月間の貯蔵にわたって分析した。少量の漏出が観察されたが、4ヶ月を超えても脂質に対する薬物の相対量は、大きく変化しなかった。リポソーム組成物に関するデータを表1に提供する。
【0293】
【表1】
【実施例1】
【0294】
好中球活性化に対するT1、T3およびT4化合物のインビトロ効果
初期に、好中球活性化に対する化合物T1、T3およびT4のインビトロ効果を検査した。化合物の化学構造を図1に提示する。
【0295】
最初に、好中球をヒト血液から精製し、刺激せずに放置するか、または酢酸ミリスチン酸ホルボール(PMA)で刺激した。3つの化合物を未刺激細胞およびPMA刺激細胞の両方に添加し(50μM)、DMSOを陰性対照として使用した。各化合物の2つの異性体であるZおよびE異性体を検査した。PMA刺激後、好中球は、脱顆粒することが知られており、CD11bの表面発現の増加は、この現象の周知のマーカーである。T1(EおよびZ異性体)、T3(EおよびZ異性体)およびT4(Z異性体)による好中球の処理は、PMA誘導性脱顆粒を大幅に減少させた(図2A)。実際、T1 Z異性体およびT3 Z異性体は、CD11bレベルを非刺激好中球のレベルに戻すことができた。注目すべきことに、3つすべての分子のZ異性体は、E異性体よりも優れていた。Nexinhib-20は、脱顆粒を阻害することが知られており、T3のZ異性体は、Nexinhib-20と同程度に良好であった。マウス好中球を試験した場合、同様の結果が得られた(図2B)。
【0296】
好中球刺激は、活性酸素種(ROS)産生を増加させることも知られている。次に、好中球によるPMA誘導性ROS産生に対する化合物のインビトロ効果を検査した。予想通り、PMAの添加は、ヒト好中球においてROS産生を基底レベルの2~3倍に増加させた(図3A)。E異性体およびZ異性体の両方を含むすべての試験分子は、未処理の好中球におけるROS産生を大幅に減少させた。これは、分子が基底ROS産生さえも阻害することを実証する。T1(E異性体およびZ異性体)、T3(E異性体およびZ異性体)およびT4(Z異性体)もまた、PMA誘導性ROSの増加を大幅に減少させ、ROSレベルは、少なくとも非刺激好中球で観察されるレベルまで減少する(図3A)。T3 Z異性体は、最良のROS阻害を示し、PMA刺激後のレベルは、PMAなしの対照レベルよりも大幅に低かった。この阻害は、Nexinhib20によって産生される阻害に匹敵し、T3Zは、NAD(P)Hを阻害することによってROS産生をほぼ完全に消失させることが知られている阻害剤ジフェニルヨードニウム(DPI)とほぼ同じくらい強力であった(図3A)。同様の結果がマウスPMA刺激好中球で観察された(図3B)。
【0297】
脱顆粒に加えて、好中球は、好中球細胞外トラップ(NET)を放出することによって、病原体を細胞外で死滅させることができ、これはNETosisとして知られるプロセスである。PMAによって誘導されたNETosisの検査をIncucyte生細胞分析システムによって監視した(図4)。PMA処理は、処理の2時間後に開始して、NETosis陽性事象の着実な増加をもたらした。NETosisの公知の阻害剤であるトリフルオペラジン(Stelazineとして販売されている)は、PMA処理後に着実な減少をもたらした。対照的に、T1およびT3の両方は、初期にNETosisの増加を完全に阻害した。T1を使用した場合は4時間後、T3を使用した場合は5時間後にのみ増加が観察された。T3は、非常に遅い時点でのみNETosis事象のわずかな増加のみを示す対照と非常に類似していた(図4)。
【実施例2】
【0298】
炎症に対するT3のインビボ効果
次の目的は、炎症性疾患および癌におけるT3化合物のインビボ効果を検査することであった。T3化合物(Z異性体)を3つの組成物で調製した:(i)遊離分子(遊離薬物)としてのT3、(ii)リポソーム内のT3、および(iii)表面ペプチドによって好中球を標的とするリポソーム内のT3(TENN)。具体的には、リポソームを、LQI-ペプチドと呼ばれる配列LQIQSWSSSP(配列番号9)からなるペプチドに結合させた。このペプチドは、「Vols et al.,「Targeted nanoparticles modify neutrophil function in vivo」Front Immunol.2022年10月5日;13:1003871」に記載されているように、好中球に特異的に結合することが当技術分野で公知であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0299】
炎症のマウスモデルにおいて、T3の3つの組成物のインビボ効果を検査した。Balb/Cマウスに1mg/kgのLPSを腹腔内注射して、炎症および好中球毒性を誘導した。1時間後、T3-遊離分子、リポソーム内のT3および標的化リポソーム内のT3(TENN-T3)を、3mg/kg体重の最終濃度でIV投与した。3時間後、各マウスから0.5mLの血液を採取し、末梢血好中球の脱顆粒を表面CD11bレベルのフローサイトメトリー分析によって評価した(好中球はLy6G染色によって同定した)。LPSによって活性化された好中球は、毒性になり、脱顆粒し、その遊離形態のT3は、中程度であるが統計学的に有意ではない脱顆粒の減少を誘導した(図5)。リポソーム内のT3は、わずかに大きな減少しかもたらさず、これも統計学的に有意ではなかった。しかしながら、T3を含む標的化リポソーム(TENN-T3)は、50%を超える造粒の減少をもたらし、これは、遊離分子T3によってもたらされる減少の3倍を超えた。全体として、T3がインビボで好中球活性化を阻害し、標的化が効果を大幅に増強することは明らかである。
【0300】
次に、好中球細胞傷害性によって少なくとも部分的に引き起こされる疾患である大腸炎を処置するためのT3投与の能力をマウスモデルで試験した。C57BL/6マウスに3%のデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を飲料水中で5日間連続投与することにより大腸炎を誘導した。その3つの製剤中の2.5mg/kgのT3を5、7および9日目に投与した。DSSによる結腸炎誘導は、マウス結腸の顕著な短縮を引き起こした。非標的化リポソームに負荷された遊離T3またはT3は、空の標的化リポソームの陰性対照投与に匹敵した(図6A)。しかしながら、標的化リポソームに負荷されたT3(TENN-T3)は、結腸の顕著な伸長をもたらし、処置なし(DSSのみ)群と比較して平均約62%の改良を伴った。さらに、ルミノールに基づく生物発光イメージングによる結腸内のROSレベル(11日目に屠殺したマウス由来)の測定は、DSS単独群と比較して、TENN-T3-処置マウスの結腸内のROSレベルの有意な低下を示した(図6B)。
【0301】
より低用量のTENN-T3も試験した。標的化リポソームを5および7日目に投与し、マウスを10日目に屠殺し、結腸長を測定した。1.25mg/kg体重の用量は、公知の大腸炎処置であり、DSSモデルの陽性対照と考えられているシクロスポリン(7.5mg/kg体重)よりも良好に結腸長を改良することができた(図6C)。2.5mg/kgのTENN-T3の用量は、さらに大きな、統計学的に有意な効果を有した。
【実施例3】
【0302】
T3による癌のインビボ処置
好中球は、様々な癌促進作用を有することが知られている。したがって、固形腫瘍成長を阻害する手段としてのTENN-T3の治療可能性を検査した。Renca細胞は、腎皮質腺癌を有する雄マウスの腎臓から単離された上皮細胞である。したがって、Renca同系マウスモデルは、抗腫瘍薬の有効性を研究するために利用される腎臓癌モデルである。BALB/cマウスに100万個のRenca細胞の皮下注射を投与し、腫瘍を100mmのサイズまで成長させた。次いで、マウスを、TENN-T3(5mg/kg)で2週間の間週に2回、または抗PD-L1抗体(0.2mg/kg)で1日おきに処置した。驚くべきことに、TENN-T3は、ビヒクル処置単独と比較して、腫瘍細胞成長を約50%有意に阻害したことが見出された(図7)。この結果は、抗PD-L1抗体によって産生されたものと同等であった。
【0303】
本発明をその具体的な実施形態と併せて説明してきたが、多くの代替形態、修正形態および変形形態が当業者には明らかであることは明らかである。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨および広い範囲に含まれるすべてのそのような代替形態、修正形態および変形形態を包含することが意図されている。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
【配列表】
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【国際調査報告】