IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エヴォヴ リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】膜装置用バッフル
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/20 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
B01D61/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536193
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-07-18
(86)【国際出願番号】 GB2022053269
(87)【国際公開番号】W WO2023111589
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】2118427.0
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523343662
【氏名又は名称】エヴォヴ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】アシュワース クレア
(72)【発明者】
【氏名】ブリザートン-リウ カンシェン
(72)【発明者】
【氏名】ジョシ オムカー
(72)【発明者】
【氏名】フィリプス トリスタン
(72)【発明者】
【氏名】ピュー トーマス
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA07
4D006HA21
4D006JA14A
4D006JA14C
4D006JA18A
4D006JA18C
4D006JA30A
4D006JA30B
4D006JA30C
4D006MA02
4D006PA01
4D006PB02
4D006PB70
4D006PC11
(57)【要約】
膜装置用のバッフルが記載される。この膜装置は、水濾過などのため、膜と、原液流入口と、原液流出口とを含む。バッフルは近位端及び遠位端を含み、近位端が膜装置の原液流入口に向かい、遠位端が膜装置の原液出口に向かうように、バッフルは膜の少なくとも一部に沿って延在するように操作可能である。バッフルは、第1の形状部分及び第2の形状部分を含む。第1の形状部分は、第2の形状部分よりも高いアスペクト比を有し、第1の形状部分は、第2の形状部分よりもバッフルの近位端の近くに配置される。バッフルの製造方法、及び上記バッフルを含む膜装置も記載される。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜装置用のバッフルであって、前記膜装置が、水濾過などのため、膜と、原液流入口と、原液流出口とを含み、
前記バッフルは、近位端及び遠位端を含み、前記近位端が前記膜装置の前記原液流入口に向かい、前記遠位端が前記膜装置の前記原液出口に向かうように、前記バッフルが前記膜の少なくとも一部に沿って延在するように操作可能であり、
前記バッフルは、第1の形状部分及び第2の形状部分を含み、前記第1の形状部分は、前記第2の形状部分よりも高いアスペクト比を有し、前記第1の形状部分は、前記第2の形状部分よりも前記バッフルの前記近位端の近くに配置される、バッフル。
【請求項2】
前記バッフルの前記第1及び/又は第2の形状部分が、独立して、前記形状部分の長手方向長さに沿って実質的に連続的に変化する横寸法を有する形状を含み、及び/又は前記形状部分の前記長手方向長さに沿って変動する横寸法を有する形状を含む、請求項1に記載のバッフル。
【請求項3】
前記長手方向長さに沿った前記変動する横寸法が、実質的に同様の形状の繰り返し形状要素を含む、請求項2に記載のバッフル。
【請求項4】
前記形状要素が、らせん状の輪郭、及び/又は交互に狭くなり広くなる輪郭を含む、請求項3に記載のバッフル。
【請求項5】
前記第1及び/又は第2の形状部分が先細りする形状を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のバッフル。
【請求項6】
前記第1及び/又は第2の形状部分が円錐形状を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のバッフル。
【請求項7】
前記第1の形状部分が少なくとも0.2、例えば少なくとも0.3のアスペクト比を含む、及び/又は前記第1の形状部分が最大12、例えば最大10のアスペクト比を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のバッフル。
【請求項8】
前記第2の形状部分が少なくとも0.05、例えば少なくとも0.1のアスペクト比を含む、及び/又は前記第2の形状部分が最大11、例えば最大9のアスペクト比を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のバッフル。
【請求項9】
前記第1の形状部分が、少なくとも1及び/又は最大10のアスペクト比を有する形状要素を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のバッフル。
【請求項10】
前記第2の形状部分が、少なくとも0.5及び/又は最大9アスペクト比を有する形状要素を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のバッフル。
【請求項11】
前記第1の形状部分が、少なくとも0.3及び/又は最大0.9のアスペクト比を含む実質的に連続的に変化する横寸法を有する形状を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のバッフル。
【請求項12】
前記第2の形状部分が、少なくとも0.1及び/又は最大0.6のアスペクト比で実質的に連続的に変化する横寸法を有する形状を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のバッフル。
【請求項13】
前記第1及び第2の形状部分が隣接する、請求項1~12のいずれか一項に記載のバッフル。
【請求項14】
前記バッフルが、隣接する形状部分の間で間隔をあけて配置されるスペーサー部分を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のバッフル。
【請求項15】
前記バッフルが2組の第1及び第2の形状部分を含み、それぞれの組が、少なくとも1つの第1及び少なくとも1つの第2の形状部分を含み、前記形状部分がスペーサー部分によって間隔があけられる、請求項14に記載のバッフル。
【請求項16】
前記バッフルが、支持体であって、前記膜表面に隣接し、前記膜表面から形状部分まで間隔をあけるように操作可能な支持体を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載のバッフル。
【請求項17】
膜と、原液流入口と、原液流出口と、請求項1~16のいずれか一項に記載のバッフルとを含む膜装置であって、前記近位端が前記膜装置の原液流入口に向かい、前記遠位端が前記膜装置の前記原液出口に向かうように、前記バッフルが前記膜の少なくとも一部に沿って延在する、膜装置。
【請求項18】
前記膜が管状膜である、請求項17に記載の膜装置。
【請求項19】
前記バッフル及び/又は膜が、前記バッフル又は膜基材の上に配置されたコーティングを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載のバッフル又は膜装置。
【請求項20】
膜と、原液流入口と、原液流出口と、バッフルとを含む膜装置であって、前記バッフルの近位端が前記膜装置の前記原液流入口に向かい、遠位端が前記膜装置の前記原液出口に向かうように、前記バッフルが前記膜の少なくとも一部に沿って延在し、前記バッフル及び/又は膜が、前記バッフル又は膜基材の上に配置されたコーティングを含む、膜装置。
【請求項21】
前記コーティングが親水性剤及び/又は超親水性剤を含む、請求項19又は20に記載のバッフル又は膜装置。
【請求項22】
前記コーティングが、親水性剤を含む第1のコーティング層と、超親水性剤を含む第2のコーティング層とを含む、請求項19~21のいずれか一項に記載のバッフル又は膜装置。
【請求項23】
前記コーティングが少なくとも部分的に架橋し、超親水性剤を含む、請求項19~22のいずれか一項に記載のバッフル又は膜装置。
【請求項24】
前記コーティングが、存在する場合、親水性剤又はその前駆体、及び/又は前記超親水性剤又はその前駆体を含むコーティング組成物から形成される、請求項19~23のいずれか一項に記載のバッフル又は膜装置。
【請求項25】
前記バッフル/膜基材があらかじめ処理された基材であり、そのため前記バッフル/膜基材は、親水性表面を形成するための親水化が行われている、請求項19~24のいずれか一項に記載のバッフル又は膜装置。
【請求項26】
前記バッフル/膜基材が親水性材料を含む、請求項19~25のいずれか一項に記載のバッフル又は膜装置。
【請求項27】
前記親水性剤が二次元材料及び/又はナノ粒子材料を含む、請求項20~26のいずれか一項に記載のバッフル又は膜装置。
【請求項28】
前記親水性剤が、グラフェン系材料、金属有機構造体材料、シリセン、ゲルマネン、スタネン、ホウ素-窒化物、適切にはh-窒化ホウ素、炭素窒化物、金属-有機ナノシート、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、ポリマー/グラフェンエアロゲル、及び/又は正に帯電したポリマーを含む、請求項20~27のいずれか一項に記載のバッフル又は膜装置。
【請求項29】
前記親水性剤又はそれらの混合物中の隣接格子面間のd間隔が、少なくとも0.34nm、例えば少なくとも0.34nm、又は少なくとも0.4nm、又は少なくとも0.45nm、又は少なくとも0.6nm、及び/又は最大5000nm、又は最大1000nm、又は最大500nm、又は最大50nm、又は最大10nm、又は最大5nm、又は最大1.5nmである、請求項20~28のいずれか一項に記載のバッフル又は膜装置。
【請求項30】
前記超親水性剤及び/又は親水性剤が、ポリマー電解質又はそれらの前駆体などの(コ)ポリマー若しくはオリゴマーを含む、請求項20~29のいずれか一項に記載のバッフル又は膜装置。
【請求項31】
超親水性(コ)ポリマー及び/又は親水性(コ)ポリマーが、ヒドロゲルを含む、又は水と接触するとヒドロゲルを形成するように操作可能である、請求項30に記載のバッフル又は膜装置。
【請求項32】
請求項19~31のいずれか一項に記載のバッフル又は膜装置、前記親水性剤、超親水性剤、若しくはそれらの前駆体、コーティング、及び/又は皮膜形成剤は、存在する場合、少なくとも部分的に架橋する、又は少なくとも部分的に架橋するように操作可能である。
【請求項33】
前記コーティングが、前記バッフル/膜基材と第1のコーティング層との間、及び/又は第1のコーティング層と第2のコーティング層との間に中間層を含む、請求項19~32のいずれか一項に記載のバッフル又は膜装置。
【請求項34】
前記コーティングが、二次元材料の少なくとも2つの層を含む層状構造を含み、前記二次元材料がグラフェン又はその誘導体を含む、請求項19~33のいずれか一項に記載のバッフル又は膜装置。
【請求項35】
前記コーティングが、二次元材料の少なくとも2つの層を含む層状構造を含み、前記二次元材料が遷移金属ジカルコゲニドを含む、請求項19~34のいずれか一項に記載のバッフル又は膜装置。
【請求項36】
前記コーティングが金属有機構造体(MOF)を含む、請求項19~35のいずれか一項に記載のバッフル又は膜装置。
【請求項37】
前記MOFが、コーティング中の連続相である、又はフレーク及び/又は粒子の形態である、請求項36に記載のバッフル又は膜装置。
【請求項38】
前記MOFが、-NH、-Br、-Cl、-I、-(CH-CH(ここでnは1~10である)、例えばCHCHCHO-、CHCHCHCHO-、ben-C、メチル、-COOH、及び/又は-OHの1つ以上から選択される官能基を含む、請求項36又は37に記載のバッフル又は膜装置。
【請求項39】
前記MOFが、アミン、アルデヒド、アルキン、及び/又はアジドの1つ以上から選択される官能基を含む、請求項36~38のいずれか一項に記載のバッフル又は膜装置。
【請求項40】
前記コーティングの前記二次元材料が、高エネルギー放射線、例えばレーザー放射線、化学物質、加熱、熱、及び/又は圧力などを前記二次元材料に使用することによって処理された二次元材料である、請求項34~39のいずれか一項に記載のバッフル又は膜装置。
【請求項41】
前記膜装置が、多孔質セラミック部材を含む膜を含み、前記多孔質セラミック部材が、コーティングを支持するように操作可能な第1の支持部分を含み、第2の支持部分をさらに含み、前記第2の支持部分が、前記第1の支持部分のD75平均孔径よりも大きいD75平均孔径を有し、前記第2の支持部分が、≧10%の多孔度パーセント値を有する格子構造を含み、前記多孔質セラミック部材が、≧100kPa(1bar)の原液印加圧力に耐えるように操作可能な引張強度を有する、請求項17~40のいずれか一項に記載の膜装置。
【請求項42】
前記バッフルが:
a.付加製造によって前記バッフルを製造すること、
を含む方法によって製造される、請求項1~40のいずれか一項に記載のバッフル。
【請求項43】
請求項1~40のいずれか一項に記載のバッフルの製造方法であって:
a.付加製造によって前記バッフルを製造すること、
を含む、方法。
【請求項44】
前記付加製造が、SLAなどの液槽光重合である、請求項42又は43に記載のバッフル又は方法。
【請求項45】
請求項1~40のいずれか一項に記載の膜及びバッフルを含む、請求項17~42のいずれか一項に記載の膜装置の部品のキット。
【請求項46】
原液流組成物からの成分の分離方法であって:
a.原液流が前記バッフルに接触するように、原液流組成物を請求項17~41のいずれか一項に記載の膜装置中に導入することと;
b.前記膜装置の前記膜を通過して透過液組成物中まで、前記原液流からの成分の少なくとも一部を分離することと、
を含む、方法。
【請求項47】
前記原液流が、ジュース、例えば高固形分ジュース;ミルク;糖含有原液;生産水/廃水;重要な金属を含有する原液;及び/又は酵素を含む、請求項1~46のいずれか一項に記載のバッフル、膜装置、又は方法。
【請求項48】
請求項17~41のいずれか一項に記載の膜装置を含む、水処理モジュール。
【請求項49】
請求項48に記載の水処理モジュールを含む、水処理装置。
【請求項50】
藻類の濃縮、高固形分ジュースの濃縮、ミルクからのタンパク質の分離、生産水/廃水の浄化、酵素の濃縮;精糖、例えば糖原液からの炭酸カルシウムの分離;リチウム、タングステン、金、及び/又は銀などの重要な金属の抽出のための、請求項1~49のいずれか一項に記載のバッフル、膜装置、水処理モジュール、又は水処理装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜装置用バッフルに関する。特に、本発明は、適切には水処理のための、管状膜用のバッフルに関する。
【背景技術】
【0002】
化学殺菌、太陽殺菌、沸騰、沈殿、及び蒸留などの従来の水処理方法は、世界の人口の運搬可能な水の必要量に低コストで適合するには不十分である。この問題に取り組むために、一般に、限外濾過(UF)、精密濾過(MF)、ナノ濾過(NF)、及び逆浸透(RO)を含む圧力駆動の膜に基づく水処理技術などのより進歩した技術が確立され工業化されている。熱入力、化学添加剤、及び還元性媒体の再生の利用を回避することの利点が得られることによって、これらの方法により水処理産業が非常に改善されている。
【0003】
膜濾過は、原理上、大きな熱入力がなく、化学添加剤がより少なく、使用済み媒体の再生の必要性がより少ないため、別の水処理技術よりも好都合である。圧力駆動膜プロセスは、食品及び石油産業の廃棄物処理から海水淡水化まで種々の用途に及ぶ、微粒子、イオン、微生物、細菌、及び天然有機材料を除去するための水処理において最も広く使用されている膜技術である。
【0004】
しかしながら、水処理のために現行の膜システムを使用する場合、高濃度の粒子層が膜表面の近くに形成され、これによって、膜を透過する場合に抵抗が生じる。時間がたつと、この層の濃度が増加し、このため膜を透過する水の抵抗がさらに増加し、それによって時間が経過すると流束が低下する。さらに、持続的な流束によって、膜付近の粒子濃度が絶えず増加する。しばらくすると、膜表面における粒子濃度は、膜表面の近くで急激な濃度勾配が存在するのに十分な高さになる。この結果として、粒子は膜表面から原液流全体に拡散する。最終的には、対流による粒子の輸送速度(原液流全体から膜表面へ)と、拡散(膜表面から原液流全体へ)との間で平衡に達し、これによって流束は、初期流束よりはるかに低いレベルであるが、安定化する。この現象は濃度分極(CP)として知られており、膜付近の高濃度の領域は濃度分極(CP)層と呼ばれる。CP層は、典型的には可逆的であり、流れが確立される場合にのみ存在するが、時間がたつと、圧縮されることがあり、膜を不可逆的に汚染し始め、流束にさらに影響することがある。
【0005】
濃度分極の影響を軽減するために、膜システム中にバッフルを取り付けることができる。バッフルを使用する場合、膜表面付近の速度は、そのようなバッフルを使用しない膜よりも速くなる。これによって、膜表面上に高剪断が生じ、これは、膜表面上の粒子のあらゆる堆積物の除去に役立ち、濃度分極層の厚さも減少させ、結果として、全体的により高い流束が得られる。
【0006】
しかしながら、膜とともに使用される現行のバッフルは、膜の長さに沿って大きな圧力低下を生じさせることが分かっており、その結果として、膜の長さを通過する流束が不均一になる。
【0007】
より少ない資本コスト及び運転費で新しい清浄な水資源を生成し既存の水資源を保護するためには、改善され調節可能なファウリング抵抗性、より少ないエネルギー入力でのより高い収率、より長い寿命、並びに改善された化学的及び機械的抵抗性が要求される。
【0008】
したがって、これらの要求を満たすための性質を有する、有効な水処理のための改善された膜システム及び処理技術が望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の態様の目的は、前述の問題又は別の問題の1つ又はいくつかに対処することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によると、水濾過などのため、膜と、原液流入口と、原液流出口とを含む膜装置用のバッフルであって、
バッフルは、近位端及び遠位端を含み、近位端が膜装置の原液流入口に向かい、遠位端が膜装置の原液出口に向かうように、バッフルは膜の少なくとも一部に沿って延在するように操作可能であり、
バッフルは、第1の形状部分及び第2の形状部分を含み、第1の形状部分は、第2の形状部分よりも高いアスペクト比を有し、第1の形状部分は、第2の形状部分よりもバッフルの近位端の近くに配置される、バッフルが提供される。
【0011】
本発明の第2の態様によると、バッフル、適切には本発明の第1の態様によるバッフルであって:
a.付加製造によってバッフルを製造すること、
を含む方法によって製造される、バッフルが提供される。
【0012】
本発明の第3の態様によると、バッフル、適切には本発明の第1又は第2の態様によるバッフルの製造方法であって:
a.付加製造によってバッフルを製造すること、
を含む、方法が提供される。
【0013】
本発明の第4の態様によると、膜と、原液流入口と、原液流出口と、本発明の第1から第3の態様のいずれかによるバッフルとを含む膜装置であって、近位端が膜装置の原液流入口に向かい、遠位端が膜装置の原液出口に向かうように、バッフルは膜少なくとも一部に沿って延在する、膜装置が提供される。
【0014】
本発明の第5の態様によると、膜と、本発明の第1から第3の態様のいずれかによるバッフルとを含む膜装置の一部のキットが提供される。
【0015】
本発明の第6の態様によると、原液流組成物から成分を分離する方法であって:
a.原液流がバッフルに接触するように、原液流組成物を本発明の第4の態様による膜装置中に導入することと;
b.膜装置の膜を通過して透過液組成物中まで、原液流からの成分の少なくとも一部を分離することと、
を含む、方法が提供される。
【0016】
本発明の第7の態様によると、本発明の第4の態様による膜装置を含む水処理モジュールが提供される。
【0017】
本発明の第8の態様によると、本発明の第7の態様による水処理モジュールを含む水処理装置が提供される。
【0018】
有利には、第1の部分が第2の部分よりも高いアスペクト比を有し、第1の部分が第2の部分よりもバッフルの近位端の近くに配列される、本発明の第1から第8の態様のいずれかによるバッフルを使用することで、原液のクロスフロー速度(したがって、膜上の剪断)を膜の遠位端に向けて増加させることができる。この膜表面上の剪断によって、膜の遠位端に向かう流束を改善して、この領域中で低下した膜透過圧力を補償することができ、したがって、膜の長さ全体で流束をより均一にすることができる。さらに、膜の遠位端に向かうクロスフロー速度が増加することで、膜表面付近の粒子をより効率的に除去することもでき、したがって、この領域はファウリングが起こりにくくなり、この領域が本来より小さい圧力を有することを考慮すると、このことは特に有利となる。
【0019】
同量の流束及び原液流量の場合に、膜の長さ全体で均一な設計パラメーターを有するバッフルよりも、本発明によるバッフルの使用によって、膜を横断する圧力低下を小さくすることもできる。
【0020】
有利には、本発明によるバッフルは、比エネルギー消費量(又はSEC)として知られる生成される透過液の単位体積当たりに必要とされるエネルギーが、膜の全体にわたって均一なアスペクト比を有するバッフルで必要となるエネルギーよりも少なくなりうる。
【0021】
このようなバッフルは、膜表面におけるクロスフロー速度(したがって剪断)の増加を促進する形状パラメーターを有する。膜のサイズは、製造者と用途の種類との間で変動するので、この形状パラメーターは、膜の直径で正規化して、「アスペクト比」という無次元の用語を得ることができる。アスペクト比が低下すると、クロスフロー速度の向上の程度が増加し、その結果として膜の表面における剪断が改善されることで、膜表面付近に蓄積した粒子の濃度が流体力学的に低下し、CP及びファウリングの激しさが軽減され、したがって流束を改善することができることが分かった。
【0022】
膜とともに使用される現在市販のバッフルは、膜の長さに沿って均一なアスペクト比を有し、これらによって、膜の長さに沿って大きな圧力低下が生じる。膜の近位端では膜の遠位端よりも大きな圧力が生じるが、クロスフロー速度は膜の長さ全体で変化しない。したがって、流束は膜透過圧力の増加とともに増加するので、形成される圧力勾配の全体的な影響によって、膜の長さ全体で不均一な流束が生じ、膜の最遠位端では、より低い流束が得られる。膜の長さ全体で均一で低いアスペクト比を有するバッフルを使用することで、膜の遠位端に向かうクロスフロー速度を増加させることができるが、圧力低下もさらに増加しうる。
【0023】
本発明では、アスペクト比の変化を導入することによって、バッフルを異なる用途及び装置に適合させることができる。アスペクト比が近位端から遠位端まで段階的に低下する場合、遠位端に向かってクロスフロー速度を段階的に増加させることができる。クロスフロー速度の増加によって、この領域における不十分な膜透過圧力を補償することができ、したがって膜の長さ全体でより均一な流束を実現することができる。
【0024】
流体をバッフルに接触させると、流体流の方向及び/又は速度が変化するなど、膜装置中の流体流に影響が生じるように、バッフルを操作可能としうる。バッフルは、膜表面付近のクロスフロー速度を高めることによって膜表面における剪断が増加するように操作可能となりうる。
【0025】
第1及び第2の形状部分は、膜表面におけるクロスフロー速度に影響を与えるように操作可能となりうる。
【0026】
第1の形状部分よりも低いアスペクト比を含むバッフルの第2の形状部分は、バッフルの第1の形状部分よりも速いクロスフロー速度が得られるように操作可能としうる。
【0027】
バッフルは、あらゆる適切な形状を含むことができる。バッフルの形状部分は、独立して、実質的に連続的に変化する横寸法、例えば形状部分の長手方向長さに沿った直径、例えば形状部分の近位端から形状部分の遠位端まで実質的に連続的に減少する横寸法を有する形状を含むことができ;及び/又は形状部分の長手方向長さに沿って変動する横寸法を有する形状を含むことができる。
【0028】
その長手方向長さに沿って変動する横寸法を有する形状部分は、少なくとも2つの形状要素を含むことができ、例えば、実質的に同様の形状の反復形状要素を含むことができる。本明細書において使用される場合、「実質的に同様の形状」は、反復要素が、寸法の長さの変化、例えば、長手方向寸法の長さの変化を除いて実質的に同じ形状のものであることを意味する。
【0029】
形状部分及び/又は反復形状要素は、らせん状の輪郭、及び/又は交互に狭くなり広くなる輪郭を含むことができる。
【0030】
実質的に連続的に変化する横寸法を有する形状部分などの形状部分は、円錐形状などの先細りする形状を含むことができる。
【0031】
本明細書において使用される場合、「アスペクト比」は、「バッフルの長手方向軸に沿って測定される隣接するバッフル要素の出発点の間の距離の、形状部分の出発点の横断面における膜の直径に対するもの」、又は「形状部分と膜表面との間の間隙(例えば環状の間隙)の、形状部分の横断面における膜の直径に対する比」として定義することができる。
【0032】
第1の形状部分は、少なくとも0.2、例えば少なくとも0.3のアスペクト比を含むことができる。第1の形状部分は、最大12、例えば最大10のアスペクト比を含むことができる。第1の形状部分は、0.2~10、例えば0.3~10のアスペクト比を含むことができる。
【0033】
第2の形状部分は、少なくとも0.05、例えば少なくとも0.1のアスペクト比を含むことができる。第2の形状部分は、最大11、例えば最大9のアスペクト比を含むことができる。第2の形状部分は、0.05~11、例えば0.1~9のアスペクト比を含むことができる。
【0034】
形状部分が形状要素を含む場合、アスペクト比は、バッフルの長手方向軸に沿って測定される隣接するバッフル要素の出発点の間の距離の、形状部分の出発点の横断面における膜の直径に対する比として定義することができる。
【0035】
第1の形状部分が形状要素を含む場合、アスペクト比は少なくとも1となりうる。第1の形状部分が形状要素を含む場合、アスペクト比は最大10となりうる。第1の形状部分が形状要素を含む場合、アスペクト比は1~10となりうる。
【0036】
第2の形状部分が形状要素を含む場合、アスペクト比は少なくとも0.5となりうる。第2の形状部分が形状要素を含む場合、アスペクト比は最大9となりうる。第2の形状部分が形状要素を含む場合、アスペクト比は0.5~9となりうる。
【0037】
形状部分が、実質的に連続的に変化する横寸法を有する形状、例えば円錐形状を含む場合、アスペクト比は、形状部分と膜表面との間の間隙(例えば環状の間隙)の、形状部分の横断面における膜の直径に対する比として定義することができる。
【0038】
第1の形状部分が、実質的に連続的に変化する横寸法を有する形状を含む場合、アスペクト比は少なくとも0.3となりうる。第1の形状部分が、実質的に連続的に変化する横寸法を有する形状を含む場合、アスペクト比は最大0.9となりうる。第1の形状部分が、実質的に連続的に変化する横寸法を有する形状を含む場合、アスペクト比は0.3~0.9となりうる。
【0039】
第2の形状部分が、実質的に連続的に変化する横寸法を有する形状を含む場合、アスペクト比は少なくとも0.1となりうる。第2の形状部分が、実質的に連続的に変化する横寸法を有する形状を含む場合、アスペクト比は最大0.6となりうる。第2の形状部分が、実質的に連続的に変化する横寸法を有する形状を含む場合、アスペクト比は0.1~0.6となりうる。
【0040】
アスペクト比は、バッフルの長手方向長さ、及び/又は勾配に従う形状部分に沿って、例えば直線勾配に沿って、指数関数的勾配に沿って、及び/又は多項式勾配に沿って変動することができる。バッフルのアスペクト比は、バッフルの近位端からバッフルの遠位端まで低下しうる。有利には、この配置によって、膜内でクロスフロー速度の勾配を生じさせることができ、それによって、遠位端におけるクロスフロー速度が増加し、その結果得られる高剪断によって、この領域における流束の改善が促進され、低い膜透過圧力が補償され、より均一な流束が得られる。
【0041】
好ましくは、第1及び/又は第2の形状部分は、らせん状の輪郭を含む。らせん状の輪郭によって、摂動及び流れの分離の導入が多すぎることなく膜の中に原液流が移動する経路の平均長さが増加する。これは、この輪郭は、出口に向けて流れを案内することができ、したがってクロスフロー速度が増幅されるだけでなく、膜の表面もより十分に利用できるからである。
【0042】
第1及び第2の形状部分及び/又は形状要素は、一体に形成されるなど、隣接させることができる。
【0043】
バッフルは、第1及び第2の形状部分の間、及び/又は形状要素の間などの、隣接する形状部分の間で間隔をあけて配置されるスペーサー部分を含むことができる。スペーサー部分は、少なくとも形状部分に対して、膜表面におけるクロスフロー速度に実質的に影響を与えるように操作可能な形状を実質的に含まなくてよい。バッフルは、少なくとも1つのスペーサー部分、例えば少なくとも2つ、例えば少なくとも3つ、例えば少なくとも4つのスペーサー部分を含むことができる。有利には、スペーサーの存在によって、圧力低下を減少させながら、形状部分により得られるクロスフロー速度の増加による利点を依然として得ることができる。
【0044】
バッフルは、第1及び第2の形状部分の組を含むことができ、それぞれの組は、少なくとも1つの第1及び少なくとも1つの第2の形状部分を含み、形状部分の組はスペーサー部分によって分離される。バッフルは、少なくとも2つの形状部分の組、例えば少なくとも3つ、又は少なくとも4つの組を含むことができる。第1及び/又は第2の部分のアスペクト比は、異なる組の間では異なっていてよい。
【0045】
スペーサー部分は、あらゆる適切な長さのものであってよい。スペーサー部分は、バッフルの全長の最大70%、例えば最大50%、例えば最大30%に沿って延在することができる。
【0046】
バッフルは、膜表面に隣接し、膜表面から形状部分まで間隔をあけるように操作可能な支持体を含むことができる。支持体は、少なくとも形状部分に対して、膜表面におけるクロスフロー速度に実質的に影響を与えるように操作可能な形状を実質的に含まなくてよい。バッフルは、少なくとも1つのスペーサー部分、例えば少なくとも2つ、例えば少なくとも3つ、例えば少なくとも4つのスペーサー部分を含むことができる。
【0047】
バッフルは、バッフルから半径方向に延在する支持体を含むことができる。バッフルは、実質的に同じ側面に沿ってバッフルから半径方向に延在する少なくとも2つ、例えば少なくとも3つの支持体を含むことができる。バッフルは、3つの実質的に均等に間隔をあけて半径方向に延在する支持体を同じ側面上に含むことができる。
【0048】
バッフルは、あらゆる適切な長さ、例えば最大400cm、例えば最大80cm、例えば最大10cmを有することができる。
【0049】
バッフルは、付加製造又は射出成形などのあらゆる適切な製造方法によって製造することができる。好ましくは、バッフルは付加製造によって製造される。
【0050】
付加製造技術は、あらゆる適切な3D印刷技術であってよい。例えば、本発明のいずれかの態様によるバッフルは、液槽光重合、例えばステレオリソグラフィ(SLA);デジタルライトプロセッシング;二光子重合;二色光重合;インクジェット印刷;結合剤噴射印刷;ダイレクトインクライティング;三次元印刷;選択的レーザー焼結;選択的レーザー溶融;ラミネート製造法(laminated object manufacturing)、及び/又は溶融堆積モデリングを用いて印刷することができる。
【0051】
好ましくは、本発明のいずれかの態様によるバッフルは、SLAなどの液槽光重合を用いる付加重合によって製造される。
【0052】
バッフルは、あらゆる適切な材料を含むことができる。バッフルは、ポリマー材料、セラミック材料、複合材料、無機-有機材料、及び/又は金属材料を含むことができる。
【0053】
本発明のいずれかの態様によるバッフルは、UV硬化した熱硬化性前駆体材料;ポリカーボネートをベースとする材料、例えばAccura 5530、Accura 60、Accura 55;アクリロニトリルブタジエンスチレンをベースとする材料、例えばRenshape SL7820、Somos Watershed XC 11122、Accura Xtreme White 200、Somos 14120;ポリプロピレンをベースとする材料、例えばSomos 9120、Acurra 25、Samos NeXT;ポリエチレンをベースとする材料、例えばVisiJet SL Flex;エポキシをベースとする材料、例えばEpoxy SL5170;アクリルをベースとする材料、例えばAccura Xtreme、Accura Xtreme 200、又はそれらのあらゆる組み合わせから選択される材料から形成することができる。
【0054】
有利には、バッフルは、加工の改善された容易さ及び/又は低コストで製造することができる。
【0055】
上記膜は基材を含むことができる。
【0056】
膜は、ポリマー基材、無機フィラーを含むポリマー基材、セラミック基材、複合基材、金属基材、例えば金属メッシュ基材、無機基材、無機-有機基材、例えばフィラメント織物、例えばモノフィラメント織物又はマルチフィラメント織物、及び/又は不織基材、及び/又はキャスト基材を含むことができる。
【0057】
ポリアクリロニトリル(PAN);ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリ(エーテル)スルホン(PES)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスルホン(PSf)、ポリプロピレン(PP)、酢酸セルロース(CA)、ポリ(ピペラジン-アミド)、ポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、塩素化ポリ塩化ビニル(CPVC)、ポリ(フタラジノンエーテルスルホンケトン)(PPESK)、ポリアミド-尿素、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ(フタラジノンエーテルケトン);薄膜複合多孔質膜(TFC)から選択される材料からポリマー多孔質基材を形成することができ、適切にはTFCは、多孔質ポリマー支持膜上にその場で重合させた超薄「バリア」層を含み、例えば、ポリスルホン(PSf)膜上に形成される界面合成されたポリアミドの市販のポリアミドから誘導されるTFC、及び/又は別のTFC、例えばポリ(ピペラジン-アミド)/ポリ(ビニル-アルコール)(PVA)、ポリ(ピペラジン-アミド)/ポリ(フタラジノンビフェニルエーテルスルホン(PPBES)、加水分解セルローストリアセテート(CTA)/酢酸セルロース(CA)のTFCである。
【0058】
好ましくは、ポリマー多孔質基材はポリエチレンテレフタレートから形成される。
【0059】
膜は、無機-有機多孔質マトリックス基材を含むことができる。無機-有機多孔質マトリックス基材は、多孔質有機ポリマー基材中に含まれる無機粒子を含むことができる。無機-有機多孔質マトリックス基材は、ポリスルホン(PSf)多孔質膜を有するジルコニアナノ粒子から選択することができる。有利には、無機-有機多孔質マトリックス基材によって、良好な機械的強度を有する、製造が容易で低コストの基材の組み合わせを得ることができる。無機-有機多孔質基材、例えば、ポリスルホン(PSf)を有するジルコニアナノ粒子によって、有利には高い透過性を得ることができる。別の無機-有機多孔質基材は、1つ以上の種類の無機粒子を含む薄膜ナノ複合基材;金属ベースの発泡体、例えばアルミニウム発泡体、銅発泡体、鉛発泡体、ジルコニウム発泡体、スズ発泡体、及び金発泡体;有機マトリックス中に無機フィラーを含み有機-無機混合マトリックスを形成する混合マトリックス基材から選択することができる。
【0060】
基材は、無機であってよく、ステンレス鋼メッシュ、銅メッシュ、合金メッシュ、アルミニウムメッシュ、例えばセラミック基材、例えばアルミナ基材、炭化ケイ素基材、及び/又はジルコニア基材、例えば酸化チタン基材、例えばゼオライト、好ましくは金属メッシュ及びアルミナ基材から選択することができる。
【0061】
有利には、多孔質ポリマー基材及び金属、メッシュの形態の基材によって、改善された加工の容易さ及び/又は低コストを実現することができる。
【0062】
膜は、親水性及び/又は超親水性の材料を含むことができる。
【0063】
親水性及び/又は超親水性の材料は、膜基材材料中に混入することができる。したがって、基材は親水性材料を含むことができる。親水性材料は、膜基材材料中にあらかじめブレンドすることができる。親水性材料は、転相、押出成形、又は界面重合などの方法を用いて混入することができる。
【0064】
有利には、ポリマー基材の表面処理によって、基材上に後に塗布されるコーティング層の接着性及び均一性を改善することができる。上記親水性及び/又は官能性がポリマー基材上に存在することで、より堅牢な機械的完全性、より均一な構造、及び改善された連続性を有する活性層が得られる。上記親水性及び/又は官能性によって、改善されたフィルター寿命及び安定性が得られることも分かっている。表面処理によって、高い透過性など、性質を改善することもできる。
【0065】
基材中に混入可能な親水性材料は、酢酸セルロース、第4級化ポリエーテルスルホン、ポリ乳酸、ポリエチレンイミン、ポリエーテルイミド、ポリビニルピロリドン、及び/又はポリ(ビニルアルコール)から選択することができる。
【0066】
バッフル及び/又は膜は、コーティングを含むことができる。コーティングは、分離効果が得られるように操作可能となりうる。したがって、コーティングは、分離される材料の一部の通過を選択的に促進しながら別の材料の通過が減少するように操作可能となりうる。
【0067】
膜と、原液流入口と、原液流出口と、バッフルとを含む膜装置であって、近位端が膜装置の原液流入口に向かい、遠位端が膜装置の原液出口に向かうように、膜の少なくとも一部に沿ってバッフルが延在し、バッフル及び/又は膜が、バッフル又は膜基材上に配置されたコーティングを含む、膜装置も提供される。
【0068】
上記コーティングは、親水性剤及び/又は超親水性剤を含むことができる。コーティングは、親水性剤を含む第1のコーティング層と、超親水性剤を含む第2のコーティング層とを含むことができる。第2のコーティング層は、第1のコーティング層の少なくとも一部の上に配置することができる。
【0069】
超親水性剤を含むコーティングは、原液流に面する膜の表面上に配置することができる。
【0070】
コーティングは、少なくとも部分的に架橋させることができ、超親水性剤を含むことができる。
【0071】
コーティングは、コーティング組成物から形成することができ、例えば、親水性剤及び/又は超親水性剤を含む、及び/又は少なくとも部分的に架橋し超親水性剤を含むコーティングは、親水性剤が存在する場合は親水性剤又はその前駆体、及び/又は超親水性剤又はその前駆体を含むコーティング組成物から形成することができる。
【0072】
コーティングが取り付けられるように操作可能なバッフル/膜基材の表面は、親水性であってよい。基材表面に対する水の接触角は、≦65°、例えば≦60°、好ましくは≦55°であってよい。
【0073】
バッフル/膜基材は、あらかじめ処理された基材であってよい。基材は、コーティング配合物を加える前に処理することができる。例えば、基材表面は、親水性表面を形成するための親水化が行われていてよい。上記基材処理は、官能基の付加、適切にはグラフト、及び/又は親水性添加剤の添加を含むことができる。付加される官能基は、ヒドロキシル基、ケトン基、アルデヒド基、カルボン酸基、及びアミン基の1つ以上から選択することができる。好ましくはヒドロキシル基又はカルボン酸基。
【0074】
官能基のグラフトは、プラズマ処理、コロナ放電、酸化還元反応、放射線、UV-オゾン処理、及び/又は化学処理によって行うことができる。プラズマ処理の一例は、基材に対して酸素プラズマを30秒間使用することである。
【0075】
処理された基材の一例は、プラズマ処理によって導入されたポリエーテルスルホン基材上のグラフトされたヒドロキシル基である。基材の官能基は、物理的及び/又は化学的結合などで隣接するコーティング層の官能基と相互作用するように操作可能となりうる。例えば、上記グラフトされたヒドロキシル基は、エステル化を介してコーティング層中のカルボキシル化された親水性セルロース系材料と反応するように、又は中間層中のシロキサン成分と反応するように操作可能となりうる。
【0076】
これに加えて、又はこれとは別に、表面処理は、親水性材料を基材材料中に混入することによって行うことができる。したがって、基材は、親水性材料を含むことができる。
【0077】
基材中に混入可能な親水性材料は、酢酸セルロース、第4級化ポリエーテルスルホン、ポリ乳酸、ポリエチレンイミン、ポリエーテルイミド、ポリビニルピロリドン、及び/又はポリ(ビニルアルコール)を含むことができる。
【0078】
親水性材料は、基材材料中にあらかじめブレンドすることができる。親水性材料は、転相、押出成形、及び/又は界面重合などの方法を用いて混入することができる。
【0079】
基材は、基材の重量を基準として≧1%、例えば≧5重量%、又は≧7重量%の親水性材料を含むことができる。基材は、基材の重量を基準として≦50%、例えば≦35重量%、又は≧25重量%の親水性材料を含むことができる。基材は、基材の重量を基準として1~50%、例えば5~35重量%、又は7~25重量%の親水性材料を含むことができる。
【0080】
有利には、ポリマー基材の表面処理によって、基材上に後に塗布されるコーティング層の接着性及び均一性を改善することができる。上記親水性及び/又は官能性がポリマー基材上に存在することで、より堅牢な機械的完全性、より均一な構造、及び改善された連続性を有するコーティング層を得ることができる。上記親水性及び/又は官能性によって、改善された寿命及び/又は安定性を得ることもできる。表面処理によって、高い透過性など、性質を改善することもできる。
【0081】
親水性剤は、基材の表面エネルギーよりも低い表面張力を有する材料であってよい。
【0082】
親水性剤、及び/又は親水性剤を含むコーティング層は、≦65°、例えば≦60°、又は≦55°、例えば≦50°の接触角を有することができる。
【0083】
親水性剤、及び/又は親水性剤を含むコーティング層は、適切には、超親水性剤、又は超親水性剤を含むコーティング層よりも大きい接触角を有する。
【0084】
親水性剤又はその前駆体は、高分子電解質、ポリドパミン、及び/又はポリエチレンイミン、又はそれらの前駆体などの(コ)ポリマー又はオリゴマーを含むことができる。
【0085】
親水性剤(コ)ポリマーは分岐していてもよい。
【0086】
親水性剤(コ)ポリマーは、少なくとも5,000Da、例えば少なくとも10,000Da、又は少なくとも15,000Daの重量平均分子量(Mw)を有することができる。親水性剤(コ)ポリマーは、最大50,000Da、例えば最大40,000Da、又は最大30,000Daの重量平均分子量(Mw)を有することができる。親水性剤(コ)ポリマーは、5,000~50,000Da、例えば10,000~40,000Da、又は15,000~30,000Daの重量平均分子量(Mw)を有することができる。
【0087】
親水性剤(コ)ポリマーは、ビニルピロリドン、ビニルアルコール、アリルアミン、エチレンイミン、塩化アリルアンモニウム、ビニルアミン、リジン、キトサン、シランをベースとするもの、及び/又はその誘導体;アクリル、例えば水溶性アクリル;アクリルアミド(例えば、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸 - AMPSを含むコポリマー);及び/又はヒドロキシアルキルメタクリレート、例えばヒドロキシエチルメタクリレート(例えばポリHEMA)、及びそれらのコポリマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸、及び/又は2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸とのコポリマーから形成することができる。
【0088】
親水性ポリマーは、アクリルアミド及びアクリル酸モノマーとポリ塩化アリルアンモニウムとから形成されるコポリマーであってよい。
【0089】
親水性剤は、二次元材料及び/又はナノ粒子材料を含むことができる。
【0090】
親水性剤は、グラフェン系材料、金属有機構造体材料、シリセン、ゲルマネン、スタネン、窒化ホウ素、適切にはh-窒化ホウ素、窒化炭素、金属-有機ナノシート、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、ポリマー/グラフェンエアロゲル、及び/又は正に帯電したポリマーを含むことができる。
【0091】
グラフェン系材料は、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、水和グラフェン、アミノ系グラフェン、アルキルアミン官能化酸化グラフェン、アンモニア官能化酸化グラフェン、アミン官能化還元酸化グラフェン、オクタデシルアミン官能化還元酸化グラフェン、及び/又はポリマーグラフェンエアロゲル、好ましくは酸化グラフェンを含むことができる。
【0092】
親水性剤は、1nm~100,000nm、例えば10nm~50,000nm、又は100nm~15,000nm、好ましくは500nm~14,000nmの平均小板サイズを有することができる。
【0093】
親水性剤は、1nm~15,000nm、好ましくは100nm~14,000nmの小板サイズ分布D50を有することができる。グラフェン系材料は、5nm~15,000nm、好ましくは100nm~14,000nmの小板サイズ分布D90を有することができる。
【0094】
親水性剤は、1%~70%、例えば5%~60%、又は10%~50%、好ましくは15%~55%の酸素原子含有量を有することができる。
【0095】
適切には、親水性剤、好ましくは酸化グラフェンなどのグラフェン系材料は、ヒドロキシル基、カルボン酸基、及び/又はエポキシド基を含む。ヒドロキシル基及び/又はカルボン酸基の官能基を好ましくは有する親水性剤の酸素含有量は、最大60%の酸素原子パーセント値、例えば最大50%又は最大45%の酸素原子パーセント値であってよい。適切には、酸素含有量は、20~25%又は25~45%である。有利には、酸素含有量が25~45%である場合、コーティング組成物の安定性を維持するために界面活性剤が不要となる場合がある。好ましくは、酸素含有量は、25~40%の酸素原子パーセント値である。このような範囲によって、界面活性剤などの別の安定化成分が存在しないにもかかわらず、コーティング組成物の安定性を改善することができ、プライマー層との相互作用を向上させることができる。酸素含有量は、ThermoFisher ScientificのK-AlphaグレードのX線光電子分光法(XPS)によって特徴づけることができる。
【0096】
親水性剤の酸素含有量は、最大50%の酸素原子パーセント値であってよい。
【0097】
親水性剤の酸素含有量は、25~45%であってよい。
【0098】
親水性剤のサイズ分布は、材料の少なくとも30重量%が、1nm~5,000nmの間、例えば1~750nm、100~500nm、100~400nm、500~1000nm、1000~3000nm、1000~5000nm、1500~2500nm、又は500~1500nm、好ましくは100~3000nmの間の直径を有し、より好ましくは少なくとも40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、最も好ましくは少なくとも80重量%又は少なくとも90重量%又は95重量%又は98重量%又は99重量%がこのような直径を有するようなサイズ分布であってよい。親水性剤のサイズ及びサイズ分布は、透過型電子顕微鏡(TEM、JEM-2100F、日本電子株式会社、日本)を用いて測定することができる。
【0099】
親水性剤は、単層又は多層の粒子、好ましくは単層の形態であってよい。親水性剤の粒子は、1、2、又は数層の親水性剤から形成されてよく、ここで数層は3~20層の間として定義することができる。適切には、親水性剤は、1~15層、例えば2~10層、又は5~15層を含むことができる。適切には、親水性剤の少なくとも30重量%が、1~15層、例えば1~10層、又は5~15層を含み、より好ましくは少なくとも40重量%、50重量%、60重量%、70重量%及び最も好ましくは少なくとも80重量%又は少なくとも90重量%又は95重量%又は98重量%又は99重量%がこのような数の層を含む。親水性剤中の層の数は、原子間力顕微鏡(AFM又は透過型電子顕微鏡(TEM))(TT-AFM、AFM workshop Co.、CA、USA)を用いて測定することができる。
【0100】
適切には、超親水性剤又はそれらの混合物中の隣接格子面間のd間隔は、0.34nm~5000nm、例えば0.34~1000nm、又は0.4~500nm、又は0.4~250nm、例えば0.4~200nm、又は0.4~150nm、又は0.4~100nm、又は0.4~50nm、又は0.4~25nm、又は0.4~10nm、又は0.4~8nm、例えば0.4~7nm、0.45~6nm、0.50~5nm、又は0.55~4nm、又は0.6~3nm、例えば0.6~2.5nm、0.6~1nm、0.6~2nm、又は0.6~1.5nmである。
【0101】
超親水性剤、コーティング層、又はコーティング組成物の水接触角、適切には超親水性剤を含む第2のコーティング層の水接触角は、≦25°、例えば≦20°、例えば≦15°、好ましくは≦10°であってよい。本明細書において使用される場合、水接触角はASTM D7334-08に準拠して測定した。
【0102】
超親水性剤、又はコーティング層の水接触角、適切には超親水性剤を含む第2のコーティング層の水接触角は、≦20°であってよい。
【0103】
超親水性剤は、ポリマー電解質又はそれらの前駆体などの(コ)ポリマー又はオリゴマーを含むことができる。
【0104】
超親水性(コ)ポリマー及び/又は親水性(コ)ポリマーは、ヒドロゲルを含むことができ、又は水と接触するとヒドロゲルを形成するように操作可能であってよい。
【0105】
超親水性剤(コ)ポリマーは、モノマーであって、ビニルモノマー、例えばスチレンスルホネート塩、ビニルエーテル(メチルビニルエーテルなど)、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)、酢酸ビニル(VAc);シラン系モノマー及び/又はその誘導体;アクリルモノマー、例えば(ヘテロ)脂肪族(アルク)アクリレート、アクリル酸及びその塩、ビスフェノールアクリル、フッ素化アクリレート、メタクリレート、多官能性アクリレート、メタクリル酸ヒドロキシエトキシエチル(HEEMA)、ヒドロキシジエトキシエチルメタクリレート(HDEEMA)、メタクリル酸メトキシエチル(MEMA)、メタクリル酸メトキシエトキシエチル(MEEMA)、メタクリル酸メトキシジエトキシエチル(MDEEMA)、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、アクリル酸(AA)、PEGアクリレート(PEGA)、PEGメタクリレート(PEGMA)、PEGジアクリレート(PEGDA)、PEGジメタクリレート(PEGDMA)、ビス(トリメチルシリルオキシ)メチルシリルプロピルグリセロールメタクリレート(SiMA)、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、メタクリル酸6-アセチルチオヘキシル、アクリル酸無水物、[2-(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、アクリル酸2-(4-ベンゾイル-3-ヒドロキシフェノキシ)エチル、アクリル酸ベンジル、又はそれらのトリメタクリレート、ジメタクリレートトリブロック誘導体;チオール官能化アクリレートモノマー、例えばチオール官能化(メタ)アクリレート;塩化アクリロイル;アクリロニトリル;マレイミド;アクリルアミド系モノマー、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド;N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、N-イソプロピルAAm(NIPAAm)、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)、4-アクリロイルモルホリン;炭水化物モノマー;ポリ酸及び/又はポリオール、例えばマレイン酸(例えばビニルエーテルを有するマレイン酸(例えば、ナトリウムで部分的に中和されているGantrez))、エチレングリコール(EG);ゼラチンメタクリロイル;及び/又はエピクロロヒドリン(ECH)、N,N’-メチレン-ビス-アクリルアミド(ビス)及び/又はジビニルスルホン(DVS)などの架橋剤を場合により有するメタクリル化ヒアルロン酸などのモノマーから形成されてよい。
【0106】
超親水性剤(コ)ポリマーは、≧2,000g/mol、例えば≧4,000g/mol、又は≧6,000g/molの分子量(Mw)を有することができる。例えば、最大≦30,000g/mol、例えば最大≦20,000g/mol、又は最大≦15,000g/mol。例えば2,000~30,000g/mol、例えば4,000~20,000g/mol、又は6,000~15,000g/mol。
【0107】
超親水性剤(コ)ポリマーは、≧6,000g/molの分子量(Mw)を有することができる。
【0108】
超親水性剤(コ)ポリマーは、2,000~30,000g/molの分子量(Mw)を有することができる。
【0109】
コーティング又はコーティング組成物は、線状及び/又は親水性のポリマー(例えばPVPなど)などの皮膜形成剤を含むことができる。皮膜形成剤は、多糖又はその誘導体、例えばセルロース又はその誘導体、例えばメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、アルギン酸ナトリウム;アクリル(コ)ポリマー;ビニル(コ)ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸フタル酸ビニル;ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン(PEI);及び/又はポリ(エチレン)オキシドから選択することができる。好ましくは、皮膜形成剤は、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの水溶性皮膜形成剤を含む。
【0110】
コーティング組成物中の皮膜形成剤の量は、コーティング組成物の乾燥重量を基準として≦10重量%、例えば≦5重量%、例えば≦4重量%、≦3.5重量%、≦3重量%、≦2.5重量%、好ましくは≦2重量%であってよい。
【0111】
親水性剤、超親水性剤、若しくはそれらの前駆体、コーティング層、及び/又は皮膜形成剤は、存在する場合、少なくとも部分的に架橋させることができ、又は少なくとも部分的に架橋するように操作可能であってよい。親水性剤、超親水性剤、若しくはそれらの前駆体、皮膜形成剤、及び/又はコーティング層は、追加の架橋剤を用いることによって少なくとも部分的に架橋させることができる。そのため、親水性剤、超親水性剤、及び/又は皮膜形成剤を含むコーティング組成物は、追加の架橋剤をさらに含むことができる。親水性剤、超親水性剤、若しくはそれらの前駆体、コーティング層、及び/又は皮膜形成剤は、少なくとも部分的に自己架橋させることができ、又は先に自己架橋するように操作可能であってよい。
【0112】
親水性、超親水性の(コ)ポリマー、若しくはそれらの前駆体、及び/又は皮膜形成剤(コ)ポリマーは、存在する場合、適切には(コ)ポリマーの全モノマーの≧0.5重量%、又は≧0.8重量%、又は≧1重量%の量の架橋剤又はその残基から形成されてよい。例えば、(コ)ポリマーの全モノマーの最大≦15重量%、最大≦10重量%又は最大≦5重量%。例えば、(コ)ポリマーの全モノマーの0.5~15重量%、又は0.8~10重量%、又は1~5重量%。
【0113】
コーティング組成物は、乾燥重量組成物を基準として≧0.5%、例えば≧0.8重量%、又は≧1重量%の量の架橋剤を含むことができる。例えば、乾燥重量組成物を基準として最大≦15%、例えば最大≦10重量%又は最大≦5重量%。例えば、乾燥重量組成物を基準として0.5~15%、例えば0.8~10重量%又は1~5重量%。
【0114】
超親水性(コ)ポリマーは、(コ)ポリマーの全モノマーの≧0.5重量%の量の架橋剤から形成することができる。
【0115】
親水性、超親水性の(コ)ポリマー、若しくはそれらの前駆体、及び/又は皮膜形成剤(コ)ポリマーは、存在する場合、適切には(コ)ポリマーの全モノマーの0.5~15重量%の量の架橋剤又はその残基から形成することができる。
【0116】
架橋剤は、多官能性アクリル又はビニルモノマー、二価の金属イオン、多官能性カルボジイミド、多官能性アジリジン、シラン;多官能性エポキシド、及び/又は多官能性イソシアネート、又はそれらの残基であってよい。
【0117】
架橋剤は、テトラメチルエチレンジアミン、メチレンビス-アクリルアミド、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレートN-イソプロピルアクリルアミド;N,N-ジエチルアクリルアミド、エピクロロヒドリン(ECH)、N,N’-メチレン-ビス-アクリルアミド(BIS)、ジビニルスルホン(DVS)、クエン酸、ジシステインペプチド、ジチオスレイトール(DTT)、グルタルアルデヒド;酵素的架橋、例えばトランスグルタミナーゼ、及び西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)と過酸化水素との組み合わせ、又はそれらの残基を含むことができる。
【0118】
親水性剤、超親水性剤、若しくはそれらの前駆体、及び/又は皮膜形成剤は、存在する場合、架橋するように操作可能な官能基、又はその残基を含むことができる。例えば、親水性剤、超親水性剤、若しくはそれらの前駆体、及び/又は皮膜形成剤は、存在する場合、酸官能性、例えばカルボン酸官能性、又はそれらの残基を含むことができる。コーティング層中、架橋密度は、少なくとも2モル%、例えば少なくとも5モル%、又は少なくとも10モル%の架橋性官能基であってよい。
【0119】
架橋密度は、少なくとも2モル%の架橋性官能基であってよい。
【0120】
本明細書において使用される場合、架橋密度は、以下の方法によって測定した。平衡に到達するまで、ポリマーを溶媒中で膨潤させた。膨潤したゲルを単離し、重量を測定した。真空乾燥によって溶媒を除去した後に、膨潤用溶媒及びポリマーの重量を求めた。次に以下の式を適用した:
架橋密度、1グラム当たりの網目鎖=[ln(1-Vp)+(Vp)+X(Vp)^2]/{Dp(Vo)[(Vr)^(1/3)-(Vp)/2]}
式中、
Vp=膨潤したポリマー中のポリマーの体積分率
X=Hugginsポリマー-溶媒相互作用定数
Dp=ポリマーの密度(g/cm^3)
Vo=溶媒のモル体積(cm^3/mol)
Do=溶媒の密度(g/cm^3)
ここで、
Vp=1/(1+Q)であり、
式中、Qは、膨潤したポリマー中の溶媒の重量と(XDp)ポリマーの重量(XDo)との比である。
【0121】
超親水性剤は、(メタ)アクリル酸(コ)ポリマー;及び/又はスチレンスルホネート酸(コ)ポリマーから選択される高分子電解質(コ)ポリマーであってよく、酸の少なくとも一部は適切な塩の形態である。
【0122】
超親水性剤は、ポリ(スチレン-alt-マレイン酸)ナトリウム、キトサン-g-ポリ(アクリル酸)コポリマーナトリウム;2-プロペン酸,2-メチル、ナトリウムを有するポリマー;及び/又は2-メチル-2((1-オキソ-2-プロペン-1-イル)アミノ)-1-プロパンスルホネートから選択される高分子電解質コポリマーであってよい。
【0123】
超親水性剤は、例えばテトラ(エチレングリコール)ジメタクリレートによって、例えばフリーラジカル重合を介して架橋させたカルボキシメチルセルロース(CMC)、及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)ヒドロゲル(適切には上記酸の少なくとも一部は適切な塩の形態、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウムである);例えばN,N’-メチレンビスアクリルアミド及び/又はアルギン酸ナトリウムによって、例えばテンプレート共重合又はUV光を用いて架橋させた、又はN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)及び/又は過硫酸アンモニウム(APS)によってUV光を用いて架橋させたポリ(エチレングリコール)-コ-ポリ(ε-カプロラクトン)(PEG-コ-PCL)を有するN-イソプロピルアクリルアミド(NIPAAm)、例えばアルギネート及びアルギネート誘導体;3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、N,N-ジメチルアクリルアミド、3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン1-ビニル-2-ピロリジノン、及び/又は2-ヒドロキシエチルメタクリレート(TRIS-DMA-NVP-HEMAコポリマーヒドロゲル)から選択される(コ)ポリマーヒドロゲルを含むことができる。
【0124】
親水性剤及び超親水性剤と関連して本明細書において使用される場合、ヒドロゲルは、ポリマー鎖間の物理的及び/又は化学的架橋の存在と、適切には無視できない量、例えばポリマー組成物の全重量の少なくとも10%の量の水の存在とを特徴とする不溶性ポリマーネットワークを意味することができる。親水性剤及び/又は超親水性剤は、水と接触すると水和ヒドロゲルを形成するように操作可能な脱水ヒドロゲルの形態であってよい。
【0125】
超親水性剤は、ポリ(スチレンスルホネート塩)及び/又はポリアクリル酸塩を含むことができる。
【0126】
親水性剤及び超親水性剤と関連して本明細書において使用される場合、「用語」前駆体は、当業者に周知の方法を用いて親水性剤又は超親水性剤を形成するように操作可能な化合物を意味する。例えば、前駆体は、光イニシャライザー(photo-initialiser)を伴うUV光、熱処理などを用いた化学的又は物理的架橋の後に親水性剤又は超親水性剤を形成するオリゴマー、又はあらかじめ架橋させたポリマーであってよい。例えば、前駆体は、アクリルアミド及びアクリル酸モノマーとポリ(塩化アリルアンモニウム)との混合物を含み、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド(AIBA)を開始剤として含み、N,N’-メチレンビスアクリルアミド(MBAM)を架橋剤として含むことができる。この混合物は、テンプレート重合によりコーティング層中に親水性剤を形成するように操作可能であるので、親水性剤前駆体と見なすことができる。適切な前駆体の別の例としては、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)と混合されたポリエチレングリコール(PEG)が挙げられ、これは光開始剤を用いてUV光によって、コーティング層中に親水性剤を形成するように操作可能である。
【0127】
コーティング組成物は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)などの適切なpH範囲に組成物を維持するよう操作可能な緩衝剤を含むことができる。コーティング組成物のpHは、8~9、例えば8~8.5であってよい。
【0128】
コーティング、適切には第1のコーティング層の厚さは、1nm~2000nmであってよい。
【0129】
超親水性剤を含むコーティング層の厚さは最大100umであってよい。
【0130】
コーティングは、バッフル/膜基材と第1のコーティング層との間、及び/又は第1のコーティング層と第2のコーティング層との間に中間層を含むことができる。
【0131】
中間層は、シラン又はその誘導体、タンニン酸、ドパミン又はその誘導体、及び/又はドパミンペプチド;アミン;ジアミン;メタクリレート;エポキシ;メチル、イソブチル、フェニル、オクチル、又はビニル、クロロアルキル;ビニルベンジルアミノをベースとする接着促進剤;有機チタネート、有機ジルコネート、有機アルミネートなどの有機金属;塩素化又は塩素フリーのポリオレフィン;ポリオールをベースとする接着促進剤;及び/又はポリエステルをベースとする接着促進剤から選択される接着促進剤を含むことができる。
【0132】
接着促進剤は、アクリレート及び/又はメタクリレート官能性シラン、アルデヒド官能性シラン、アミノ官能性シランなどのシランをベースとする接着促進剤;例えば、アミノアルコキシシラン、無水物官能性シラン、アジド官能性シラン、カルボキシレートホスホネート及び/又はスルホネート官能性シラン、エポキシ官能性シラン、エステル官能性シラン、ハロゲン官能性シラン、ヒドロキシル官能性シラン、イソシアネート及び/又はマスクされたイソシアネート官能性シラン、ホスフィン及び/又はホスフェート官能性シラン、硫黄官能性シラン、ビニル及び/又はオレフィン官能性シラン、多官能性及び/又はポリマーシラン、UV活性及び/又は蛍光性シラン、及び/又はキラルシラン、トリヒドロシランを含むことができる。
【0133】
接着促進剤は3-アミノプロピルトリメトキシシランを含むことができる。
【0134】
コーティングされたバッフル/膜は:
a.場合により、物理的洗浄、化学的処理、放射線処理、プラズマ処理、及び/又は熱処理により基材を処理することによって、基材を作製することと;
b.場合により、上記基材を中間層コーティング組成物に接触させて中間層を形成することと;
c.基材を、親水性剤又はその前駆体を含み、場合により超親水性剤又はその前駆体をさらに含むコーティング組成物に接触させて、コーティング層を形成することと;
d.場合により、上記コーティング層を中間層コーティング組成物に接触させて、中間層を形成することと;
e.ステップ(c)において、超親水性剤を基材に接触させなかった場合、上記コーティングされた基材を、超親水性剤又はその前駆体を含むコーティング組成物に接触させて、さらなるコーティング層を形成することと、
によって形成することができる。
【0135】
コーティングされたバッフル/膜は:
a.場合により、物理的洗浄、化学的処理、放射線処理、プラズマ処理、及び/又は熱処理により基材を処理することによって、基材を作製することと;
b.場合により、上記基材を中間層コーティング組成物に接触させて、中間層を形成することと;
c.場合により、上記基材を、親水性剤又はその前駆体を含むコーティング組成物に接触させて、コーティング層を形成することと;
d.場合により、上記コーティング層を中間層コーティング組成物に接触させて、中間層を形成することと;
e.上記の場合によりコーティングされた基材を、超親水性剤又はその前駆体を含むコーティング組成物に接触させて、コーティング層を形成することと;
によって形成することができ、
超親水性剤を含む上記コーティング層は、少なくとも部分的に架橋する。
【0136】
コーティングは、二次元材料の少なくとも2つの層を含む層状構造を含むことができ、この二次元材料はグラフェン又はその誘導体を含む。コーティングは、グラフェン又はその誘導体を含むコーティング組成物から形成することができる。
【0137】
グラフェン又はその誘導体は、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、水和グラフェン及びアミノ系グラフェン、アルキルアミン官能化酸化グラフェン、アンモニア官能化酸化グラフェン、アミン官能化還元酸化グラフェン、オクタデシルアミン官能還元酸化グラフェン、及び/又はポリマーグラフェンエアロゲルの1つ以上から選択することができる。好ましくは、グラフェン又はその誘導体は酸化グラフェンである。グラフェン及びその誘導体は、Sigma-Aldrichから商業的に入手することができる。
【0138】
適切には、グラフェン又はその誘導体、好ましくは、酸化グラフェンは、ヒドロキシル基、カルボン酸基、及び/又はエポキシド基を含む。グラフェン又はその誘導体、好ましくは酸化グラフェンの酸素含有量は、0%~60%の酸素原子パーセント値、例えば0%~50%又は0%~45%の酸素原子パーセント値であり得る。適切には、酸素含有量は20%~25%又は25%~45%である。有利には、含水量が25%~45%の間である場合、組成物中に界面活性剤は存在しないことがある。好ましくは、酸素含有量は30%~40%の酸素原子パーセント値である。このような範囲によって、別の安定化成分が存在しないにもかかわらず、改善された安定性を得ることができる。適切には、グラフェン又は誘導体が還元酸化グラフェンである場合、酸素含有量は5%~20%の酸素原子パーセント値である。酸素含有量は、X線光電子分光法(XPS)によって特徴づけることができる。
【0139】
グラフェン又はその誘導体、適切には酸化グラフェンは、任意選択的にさらなる官能基で置換することができる。この任意選択の官能基は、グラフト化官能基であり得、好ましくはグラフェン又はその誘導体に既に存在するヒドロキシル基、カルボン酸基、及びエポキシド基との反応によってグラフトすることができる。官能化は、共有結合修飾と、非共有結合修飾とを含む。共有結合修飾方法は、求核置換反応、求電子置換反応、縮合反応、及び付加反応にサブカテゴライズすることができる。任意選択の官能基の例は、アミン基;脂肪族アミン基、例えば長鎖(例えばC18~C50)脂肪族アミン基;ポルフィリン官能化第2級アミン基、及び/又は3-アミノ-プロピルトリエトキシシラン基である。グラフェン又はその誘導体は、アミノ基、適切にはグラフト化アミノ基を含むことができ、好ましくは酸化グラフェンを含むことができる。このような官能化によって、鉄酸の改善された選択的ふるい分けを行うことができる。
【0140】
本発明のいずれかの態様によるグラフェン又はその誘導体は、1nm~5000nm、例えば50nm~750nmの間、100nm~500nm、100nm~400nmのサイズを有するフレークの形態であり得る。本発明のいずれかの態様によるグラフェン又はその誘導体は、100nm~3500nm、例えば200nm~3000nm、300nm~2500nm、又は400nm~2000nm、好ましくは500nm~1500nmのサイズを有するフレークの形態であり得る。本発明いずれかの態様によるグラフェン又はその誘導体は、500nm~4000nm、500nm~3500nm、500nm~3000nm、750nm~3000nm、1000nm~3000nm、例えば1250nm~2750nm又は好ましくは1500nm~2500nmのサイズを有するフレークの形態であり得る。適切には、グラフェンフレーク又はその誘導体のサイズ分布は、グラフェンフレーク又はその誘導体少なくとも30重量%が、1nm~5000nmの間、例えば1nm~750nmの間、100nm~500nm、100nm~400nm;又は100nm~3500nmの間、例えば200nm~3000nm、300nm~2500nm、又は400nm~2000nm、好ましくは500nm~1500nm;又は500nm~4000nmの間、500nm~3500nm、500nm~3000nm、750nm~3000nm、1000nm~3000nm、例えば1250nm~2750nm、又は好ましくは1500nm~2500nmの直径を有するようなサイズ分布であり得、より好ましくは少なくとも40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、最も好ましくは少なくとも80重量%又は少なくとも90重量%又は95重量%又は98重量%又は99重量%が、上記の直径を有するようなサイズ分布であり得る。グラフェンフレーク又はその誘導体のサイズ及びサイズ分布は、透過型電子顕微鏡(TEM、JEM-2100F、JEOL Ltd.、日本)を用いて求めることができる。
【0141】
グラフェン又はその誘導体は、単層又は多層の粒子であり得、好ましくは単層の形態であり得る。グラフェンフレーク又はその誘導体は、単層、2層、又は数層のグラフェン又はその誘導体から形成することができ、ここで数層は3~20層の間として定義することができる。適切には、グラフェンフレーク又はその誘導体は、1~15層の間、例えば2~10層の間又は5~15層を含む。適切には、グラフェンフレーク又はその誘導体の少なくとも30重量%が、1~15層の間、例えば1~10層の間又は5~15層を含み、より好ましくは少なくとも40重量%、50重量%、60重量%、70重量%及び最も好ましくは少なくとも80重量%又は少なくとも90重量%又は95重量%又は98重量%又は99重量%が上記の層を含む。グラフェンフレーク又はその誘導体の層の数は、原子間力顕微鏡(AFM又は透過型電子顕微鏡(TEM))(TT-AFM、AFM workshop Co.、CA、USA)を用いて測定することができる。
【0142】
適切には、グラフェン又はその誘導体中の隣接格子面間のd間隔は、0.34nm~1000nm、例えば0.34nm~500nm、又は0.4nm~500nm、又は0.4nm~250nm、例えば0.4nm~200nm、又は0.4nm~150nm、又は0.4nm~100nm、又は0.4nm~50nm、又は0.4nm~25nm、又は0.4nm~10nm、又は0.4nm~5nm、例えば0.45nm~4nm、0.5nm~3nm、0.55nm~2nm、又は0.55nm~1.5nm、又は0.6nm~1.2nm、例えば0.6nm~1.1nm、0.6nm~1nm、0.6nm~0.9nm、又は0.6nm~0.8nmである。
【0143】
コーティングは、グラフェン又はその誘導体以外の材料、適切には二次元材料を含むことができる。例えば、コーティングの別の材料は、シリセン、ゲルマネン、スタネン、窒化ホウ素、適切にはh-窒化ホウ素、窒化炭素、金属-有機ナノシート、二硫化モリブデン、及び二硫化タングステン、ポリマー/グラフェンエアロゲルの1つ以上から選択することができる。
【0144】
コーティングの材料は、当業者に周知のあらゆる適切な方法を用いて生成することができる。二次元のシリセン、ゲルマネン及びスタネンは、超高真空下での表面支援エピタキシャル成長によって生成することができる。六角形の二次元h-窒化ホウ素は、機械的開裂、窒化ホウ素ナノチューブのアンジッピング、化学官能化及び音波処理、固相反応及び溶媒剥離及び音波処理などのいくつかの方法によって生成することができる。これらの方法の中で、化学的方法で最も高い収率が得られることが分かった。例えば、h-窒化ホウ素は、ホウ素及び窒化物源としてのボラジンを用いて単結晶遷移金属基材上に合成することができる。二次元窒化炭素は、メラミン及び炭素繊維の直接マイクロ波加熱によって製造することができる。金属有機構造体(MOF)は、100~140℃などの高温で成分を混合し、続いて濾過することによるその場ソルボサーマル合成法によって生成することができる。二次元二硫化モリブデンは、機械的剥離、液体剥離、及び化学的剥離などの幾つかの方法によって得ることができる。これらの方法の中で、化学的剥離は、高収率が得られることが分かった。一例は、遠心分離機及び濾過を用いて二硫化モリブデンを化学的に剥離するためにリチウムを用いる化学的剥離である。二次元二硫化タングステンは、タングステンの真空蒸着に続いて、硫黄を加えることによって熱アニールを行う堆積-熱アニール方法によって製造することができる。ポリマー/グラフェンエアロゲルは、ポリエチレングリコールをグラフトした酸化グラフェンを用いてカップリング及び引き続き凍結乾燥を行うことによって生成することができる。
【0145】
コーティング組成物を膜に塗布する方法は、グラフェン又はその誘導体を含むコーティング組成物を基材上に塗布することを含むことができる。方法は、重力堆積、真空蒸着、圧力堆積;印刷、例えば、インクジェット印刷、エアロゾル印刷、3D印刷、オフセットリソグラフィ印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷技術、パッド印刷;カーテンコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、並びに当業者に周知の別の印刷又はコーティング技術を用いて、コーティング組成物を基材上に接触させることを含むことができる。
【0146】
塗布方法のさらなる詳細は、公開されたPCT特許出願の国際公開第2019106344号パンフレット、特に、段落[47]~[49]及び[61]~[69](それぞれの両端の段落番号を含む)に開示されている。段落[47]~[49]及び[61]~[69](それぞれの両端の段落番号を含む)の内容全体は、すべて参照により本明細書に援用される。
【0147】
コーティング組成物は、液体媒体とグラフェン又はその誘導体とを含む液体組成物であり得る。本発明のコーティング組成物は、溶媒を含むか、非溶媒を含むか、又は無溶媒であり得、UV硬化性組成物、eビーム硬化性組成物などであり得る。本発明に使用するための液体組成物として、例えば溶液、分散液、又は懸濁液として配合される場合、適切な担体液体又は溶媒は水性又は有機であり得、したがって別の成分が選択される。例えば、液体担体は、水、又は有機溶媒、例えばエタノール、テルピネオール、ジメチルホルムアミドN-メチル-2-ピロリドン、イソプロピルアルコール、鉱油、エチレングリコール、又はそれらの混合物を含むことができ、任意選択的に、組成物の性能及び/又はレオロジーを向上させる別の材料、例えば、バインダー、乾燥剤、酸化防止剤、還元剤、潤滑剤、可塑剤、ろう、キレート剤、界面活性剤、顔料、脱泡剤、及び増感剤のいずれか1つ以上を含むことができる。
【0148】
コーティング組成物のさらなる詳細は、公開されたPCT特許出願の国際公開第2019106344号パンフレット、特に、段落[51]~[60](両端の段落番号を含む)に開示されている。段落[51]~[60](両端の段落番号を含む)の内容全体は、すべて参照により本明細書に援用される。
【0149】
コーティングは、二次元材料の少なくとも2つの層を含む層状構造を含むことができ、この二次元材料は遷移金属ジカルコゲニドを含む。コーティングは、遷移金属ジカルコゲニドを含むコーティング組成物から形成することができる。
【0150】
遷移金属ジカルコゲニドは式(I)

(I)
によるものであってよく、ここでMは、Mo、W、Nb、及びNiなどの遷移金属原子であり;
Xは、カルコゲン原子、好ましくはS、Se、又はTeであり;
0<a≦1及び0<b≦2である。
【0151】
遷移金属ジカルコゲニドは、MoS、MoSe、WS、WSe、Mo1-a、Mo1-aSe、MoSSe2-b、WSSe2-b、若しくはMo1-aSe2-b(ここで0<a≦1及び0<b≦2である)、又はそれらの組み合わせの1つ以上から選択することができる。好ましくは、遷移金属ジカルコゲニドは、MoS、WS、MoSe、WSeから選択される。最も好ましくはMoS及びWSから。このような遷移金属ジカルコゲニドは、ACS Materialより市販されている。
【0152】
遷移金属ジカルコゲニドは、1nm~5000nm、例えば50~750nm、75nm~500nm、100nm~400nm、例えば130nm~300nm、150nm~290nm、又は160nm~280nm、適切には170nm~270nm、180nm~260nm、又は好ましくは190nm~250nmの間の平均サイズを有するフレークの形態であってよい。適切には、遷移金属ジカルコゲニドフレークのサイズ分布は、遷移金属ジカルコゲニドフレークの少なくとも30重量%が、1nm~5000nmの間、例えば50~750nm、75nm~500nm、100nm~400nm、例えば130nm~300nm、150nm~290nm、又は160nm~280nm、適切には170nm~270nm、180nm~260nm、又は好ましくは190nm~250nmの間の直径を有し、より好ましくは少なくとも40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、最も好ましくは少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%又は95重量%又は98重量%又は99重量%がこのような直径を有するようなサイズ分布である。これらの遷移金属ジカルコゲニドのサイズ及びサイズ分布は、透過型電子顕微鏡(TEM、JEM-2100F、日本電子株式会社、日本)を用いて測定することができる。
【0153】
例えば、試料を横断する二次元層の横方向サイズは、透過型電子顕微鏡(TEM、JEM-2100F、日本電子株式会社、日本)を用いて測定することができ、同じサイズのナノシート(M)の数(N)を測定することができる。次に平均サイズは式1:
【数1】
によって計算することができ、ここでMはナノシートの直径であり、Nは直径Mのサイズの数である。
【0154】
遷移金属ジカルコゲニドは、単層又は多層の粒子又はフレーク、好ましくは単層の形態であってよい。遷移金属ジカルコゲニドフレークは、1、2、又は数層の遷移金属ジカルコゲニドから形成されてよく、ここで数層は3~100層の間として定義することができる。適切には、遷移金属ジカルコゲニドフレークは、1~100層の間、例えば2~75層、又は5~50層又は10~25層の間を含む。適切には、遷移金属ジカルコゲニドの少なくとも30重量%が、1~30層の間、例えば5~30層、又は5~10層の間を含み、より好ましくは少なくとも40重量%、50重量%、60重量%、70重量%及び最も好ましくは少なくとも80重量%又は少なくとも90重量%又は95重量%又は98重量%又は99重量%がこのような数の層を含む。これらの遷移金属ジカルコゲニドフレーク中の層の数は、原子間力顕微鏡(AFM又は透過型電子顕微鏡(TEM))(TT-AFM、AFM workshop Co.、CA、USA)を用いて測定することができる。
【0155】
適切には、遷移金属ジカルコゲニド又はそれらの混合物中の隣接格子面間のd間隔は、0.34nm~5000nm、例えば0.34nm~1000nm、又は0.4~500nm、又は0.4~250nm、例えば0.4~200nm、又は0.4~150nm、又は0.4~100nm、又は0.4~50nm、又は0.4~25nm、又は0.4~10nm、又は0.4~8nm、例えば0.4~7nm、0.45~6nm、0.50~5nm、又は0.55~4nm、又は0.6~3nm、例えば0.6~2.5nm、0.6~1nm、0.6~2nm、又は0.6~1.5nmである。
【0156】
コーティングは、それらの遷移金属ジカルコゲニド以外の材料、適切には二次元材料を含むことができる。例えば、コーティングの別の材料は、シリセン、ゲルマネン、スタネン、窒化ホウ素、適切にはh-窒化ホウ素、窒化炭素、金属-有機ナノシート、グラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、官能化酸化グラフェン、及びポリマー/グラフェンエアロゲルの1つ以上から選択することができる。
【0157】
塗布方法のさらなる詳細は、公開PCT特許出願の国際公開第2019/122828号パンフレットの、特に段落[73]~[77](両端の段落番号を含む)に開示されている。この段落[73]~[77](両端の段落番号を含む)の内容全体が参照により本明細書にすべて援用される。
【0158】
コーティング組成物のさらなる詳細は、公開PCT特許出願の国際公開第2019/122828号パンフレットの、特に段落[46]~[61](両端の段落番号を含む)に開示されている。この段落[46]~[61](両端の段落番号を含む)の内容全体が参照により本明細書にすべて援用される。
【0159】
コーティングは、金属有機構造体(MOF)を含むことができる。コーティングは、MOFを含むコーティング組成物から形成することができる。
【0160】
本発明のいずれかの態様の金属有機構造体材料は、一次元、二次元、又は三次元であり得る。好ましくは、MOFは多孔質である。MOFは、二次構成単位(SBU)のネットワーク、又は金属イオンコア/金属サブユニットクラスターコアノード、及びSBU又はノードを接続する有機リンカー(又は配位子)を含むことができる。
【0161】
MOFは、コーティング中の連続層中に存在することができ、又はフレーク及び/又は粒子の形態であり得る。第1の支持部分の存在下で合成されたMOFは連続相の形態であり得る。第1の支持部分に接触する前に形成されるMOFは、フレーク及び/又は粒子の形態であり得る。
【0162】
MOFのサブユニットであるSBU又はノードは、1つ以上の遷移金属カチオン、例えば、Cr(III)、Fe(II)、Fe(III)、Al(III)、Co(II)、Ru(III)、Os(III)、Hf(IV)、Ni、Mn、V、Sc、Y(III)、Cu(II)、Cu(I)、Zn(II)、Zr(IV)、Cd、Pb、Ba、Ag(I)、Au、AuPd、Ni/Co、ランタニド、アクチニド、例えば、Lu、Tb(III)、Dy(III)、Ho(III)、Er(III)、Yb(III)の1つ以上から選択される金属を含むことができる。好ましくは、Cr(III)、Fe(II)、Fe(III)、Al(III)、Co(II)、Ru(III)、Os(III)、Hf(IV)、Ni、Mn、V、Sc、Y(III)、Cu(II)、Cu(I)、Zn(II)、Zr(IV)、Cd、Pb、Ba、Ag(I)、Ni/Co、ランタニド、アクチニド、例えばLu、Tb(III)、Dy(III)、Ho(III)、Er(III)、Yb(III)。より好ましくは、Cr(III)、Fe(II)、Fe(III)、Al(III)、Co(II)、Hf(IV)、Ni、Mn、V、Sc、Y(III)、Cu(II)、Cu(I)、Zn(II)、Zr(IV)、Cd、Pb、Ag(I)、Ni/Co、ランタニド、アクチニド、例えば、Lu、Tb(III)、Dy(III)、Ho(III)、Er(III)、Yb(III)、より好ましくは、Cr(III)、Fe(II)、Fe(III)、Al(III)、Co(II)、Hf(IV)、Ni、Mn、V、Y(III)、Cu(II)、Cu(I)、Zn(II)、Zr(IV)、Cd、Ag(I)、Ni/Co、ランタニド、アクチニド、例えば、Lu、Tb(III)、Dy(III)、Ho(III)、Er(III)、Yb(III)。二次構成単位(SBU)は、3、4、5、6、8、9、10、11、12、15、又は16の伸張点を含むことができる。
【0163】
SBU又はノードは、遷移金属カルボン酸塩クラスターであり得る。SBU又はノードは、Zn4O(COO)6、Cu2(COO)4、Cr3O(H2O)3(COO)6、及びZr6O4(OH)10(H2O)6(COO)6)、Mg2(OH2)2(COO)、RE4(μ3-O)2(COO)8、RE4(μ3-O)2(ここで、REは、Y(III)、Tb(III)、Dy(III)、Ho(III)、Er(III)、及び/又はYb(III))である)からなる群から選択される1つ以上であり得る。SBUの構造は、当業者に周知の方法を用いてX線回折によって同定することができる。
【0164】
本発明における使用に適切な有機リンカーとしては、水処理、分子分離、及び生物濾過に関連する用途のためのMOFの形成に使用するために機能しうるものが挙げられる。このようなリンカーによって、金属コアに対して強い結合を形成することができ、大きな孔径を得ることができ、高い多孔度を得ることができ、選択的吸収及び/又は容量を得ることができる。
【0165】
MOFの有機リンカーは、広範囲の有機分子、例えば、1つ以上のカルボキシレートリンカー;N-複素環式リンカー;ホスホネートリンカー;スルホネートリンカー、メタロリンカー、例えばカルボキシレート-メタロリンカー;並びにそれらのび混合物及び誘導体から形成することができる。
【0166】
有機リンカーは、ジトピックリンカー、トリトピックリンカー、テトラトピックリンカー、ヘキサトピックリンカー、オクタトピックリンカーの1つ以上を含むことができる。有機リンカーは、非対称リンカーを含むことができる。
【0167】
本発明における使用に適切なMOFとしては、水処理、分子分離、生物濾過、及び関連の用途に使用されるように機能できるものが挙げられる。適切なMOFは、好ましくは水安定性及び化学安定性を有する。MOFは、水不溶性リンカー、及び/又は溶媒安定性リンカー、及び/又はSBUとリンカーとの間の強い共有結合、及び/又はSBUとリンカーとの間の複数の共有結合を有することができる。水安定性及び化学安定性は、水及び/又は化学物質の存在下でMOFがリンカー及びSBUに完全に分解することがないことを意味することができる。適切なMOFは、リンカーとSBU又はノードとの間に共有結合を有することができ、及び/又はリンカーとSBU又はノードとの間に配位結合を有することができる。
【0168】
適切なMOFは、高表面積及び/又は大きな孔径を有することができる。MOFは、少なくとも10m/g、例えば100~9,000m/g、好ましくは10~8,000m/g、又は500~8,000m/gの表面積を有することができる。表面積は、周知のBrunauer,Emmett and Teller(BET)技術を用いて測定することができる。適切には多孔質のフレーク又は粒子の形態である本発明のいずれかの態様によるMOFは、0.1nm~~1000nm、0.1~950nm、0.2~900nm、0.2~850nm、好ましくは0.2~800nm、0.3~700nm、好ましくは0.4~650nm、0.4~550nm、0.5~500nm、0.5~450nm、0.2nm~~100nm、例えば0.2nm~90nmの間、0.3~75nm、0.4~50nm、例えば0.4~40nm、0.4nm~30nm、又は0.4nm~20nm、適切には0.4nm~15nm、0.4nm~10nmの平均孔径を有することができる。
【0169】
MOFは、ピラー層MOFを含むことができる。適切には、ピラー層MOF中、2Dシートは、ジピリジルリンカーなどの有機リンカーの足場として機能する。有利には、これによって、-SO 2-基などの種々の官能基をMOF中に組み込むことが可能となる。-SO 2-基を使用することで、極性環境を誘導し、CO2などの強い酸性ゲストとの強い酸塩基相互作用を誘導することができる。さらに、-CH=CH-と比較して-N=N-などの異なるピラーリンカー基によって、HO及びメタノールに対して異なる選択性が得られる。
【0170】
MOFは官能基を含むことができる。適切には1つ以上の有機リンカーの上に官能基を含むMOFによって、MOFは、特に、水処理、分子分離、及び生物濾過に関連する用途に適合させることができる。前記官能基によって、選択性を得ることができ、及び/又は高い吸着容量又は高い流束速度のために孔径を増加させることができる。官能基は、-NH、-Br、-Cl、-I、-(CH-CH(ここでnは1~10である)、例えば、CHCHCHO-、CHCHCHCHO-、ben-C、メチル、-COOH、-OHからなる群の1つ以上から選択することができる。例えば、MOFは、IRMOF、例えば、IRMOF-1、IRMOF-2、IRMOF-3、IRMOF-4、IRMOF-5、IRMOF-6、IRMOF-7、IRMOF-8、IRMOF-9、IRMOF-10、IRMOF-16、IRMOF-11、IRMOF-12、IRMOF-13、IRMOF-14、IRMOF-15;及び/又はCAU、例えば、CAU-10-OH、CAU-10-NH、CAU-10-H、CAU-10-CH;及び/又はMIL-125-NH2;及び/又はUiO-66(Zr)-(CH3)2であり得る。
【0171】
コーティングは、サイズ排除濾過、ファウリング抵抗性、及び/又は吸着、例えばサイズ排除及びファウリング抵抗性が得られるように使用可能となりうる。
【0172】
MOFの孔径は、異なる種のMOF又は異なる長さを有する異なる有機リンカーを用いることによって調節可能である。例えば、MOFの孔径は、少なくとも0.6nm(例えばZIF-78)、例えば少なくとも0.8nm(例えばZIF-81)、又は少なくとも0.9nm(例えばZIF-79)又は少なくとも1.2nm(例えばZIF-69)、又は少なくとも1.3nm(例えばZIF-68)、又は少なくとも1.6nm(例えばZIF-82)、例えば少なくとも1.8nm(例えばZIF-70)、又は少なくとも1.8nm(例えばIRMOF-10)、又は少なくとも2.8nm(例えばMOF-177)であり得る。
【0173】
MOFは、1個のフェニル環を含む元のリンカーの1つ以上を、2、3、4、5、6、7、9、10、又は11個のフェニル環を含むリンカーで置き換えることによって適合させたMOF-74を含むことができる。このような適合によって、それぞれ、孔径を約1.4nmから約2.0nmまで、約2.6nmまで、約3.3nmまで、約4.2nmまで、約4.8nmまで、約5.7nmまで、約7.2nmまで、約9.5nmまで変化させることができる。
【0174】
MOFは疎水性であり得る。疎水性MOFは、MIL-101(Cr)、NiDOBDC、HKUST-1、Al(OH)(2,6-ndc)(ndcは、ナフタレンジカルボキシレート(naphthalendicarboxylate)である)、MIL-100-Fe、UiO-66、ZIFファミリー、例えば、ZIF 71、ZIF 74、ZIF-1、ZIF-4、ZIF-6、ZIF-11、ZIF-9、及びZIF 8の1つ以上から選択することができる。有利には、このようなMOFを使用することで、膜のファウリング抵抗性を改善することができる。
【0175】
MOFは、吸着を促進するMOF、例えばUiO-66又はUiO-66-NH2、好ましくはUiO-66-NH2を含むことができ、これは、吸着剤と及びカチオン染料との間の好都合な静電相互作用のためにアニオン染料よりも効率的に水溶液からカチオン染料を吸着することが分かっている。特に、UiO-66-NH2は、UiO-66よりも、カチオン染料に対してはるかに高い吸着容量、及びアニオン染料に対して低い吸着容量が得られることが分かっている。
【0176】
MOFはナノチャネルを含むことができ、適切にはMOFは、ナノチャネルを含むフレーク又は粒子の形態である。平均ナノチャネル直径は、0.2~100nm、例えば0.2nm~90nmの間、0.3nm~75nm、0.4nm~50nm、例えば0.5nm~40nm、0.5nm~30nm、又は0.5nm~20nm、適切には0.5nm~15nm、0.5nm~10nm、又は好ましくは0.5nm~8nmであり得る。
【0177】
MOFは、アミン、アルデヒド、アルキン、及び/又はアジドの1つ以上から選択される官能基を含むことができる。MOFの細孔は、アミン、又はアルデヒド、又はアルキン、又はアジド官能基の共有合成後修飾方法などのリンカー及び/又は二次構成単位/ノード上の修飾方法、適切には合成後の修飾方法によって、選択的ふるい分けのため、及びより高い効率を得るために修飾することができる。特定の用途のために、特定の官能基をMOFに導入することができる。例えば、-NH2をUiO-66に加えてUiO-66-NH2を形成することで、鉄酸の吸着が改善されることが分かっており、例えば、コーティングと第1の支持部分との間に適合性の相互作用を形成するために、ジメチルジオキシランを用いた酸化によってスルホンを有する基がイソIRMOF-16に加えられる。
【0178】
本発明のMOFは、要求される性質により合成することができ、又は商業的供給元から購入することができる。適切な市販の金属有機構造体材料は、BASF、Sigma-Aldrich、又はStrem Chemicalsから購入することができる。
【0179】
本発明のためのMOFを合成するために使用される方法は、当技術分野において従来通りのものであり、ソルボサーマル合成、マイクロ波支援合成、電気化学的合成などであり得る。
【0180】
MOFの粒度を制御するために、MOFの合成中にモジュレーターを使用することができ、モジュレーターは安息香酸であり得る。
【0181】
MOFは、互いに緻密化及び相互作用又は溶融が起こってコーティングを形成する結晶化連続相又は粒子若しくはフレークの形態であり得る。好ましくは、MOFは粒子又はフレークの形態である。
【0182】
MOFフレーク又は粒子のサイズ分布は、MOFフレーク又は粒子の少なくとも30重量%が、1nm~10000nmの間、例えば2~7500nmの間、5nm~5000nm、10nm~4000nm、例えば15nm~3500nm、20nm~3000nm、又は25nm~3000nm、適切には30nm~2500nm、40nm~2500nm、又は好ましくは50nm~2500nmのサイズを有し、より好ましくは少なくとも40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、及び最も好ましくは少なくとも80重量%又は少なくとも90重量%又は95重量%又は98重量%又は99重量%が上記のサイズを有するようなサイズ分布であり得る。MOFのサイズ及びサイズ分布は、透過型電子顕微鏡(TEM、JEM-2100F、JEOLLtd.、日本)を用いて測定することができる。
【0183】
例えば、MOFの試料にわたる二次元層の横方向サイズは、透過型電子顕微鏡(TEM、JEM-2100F、JEOL Ltd.、日本)、及び測定された同じサイズのナノシート(M)の数(N)を用いて測定することができる。次に平均サイズは式1:
【数2】
によって計算することができ、ここで、Mはナノシートの直径であり、Nは直径Mを有するサイズの数である。
【0184】
コーティングは、コーティングの性質を調節するための添加剤を含むことができ、例えば別の金属;及び/又は繊維、例えば金属酸化物ナノストランド;及び/又はドーパント、例えばAu、Fe、Cu、Cu(OH)、Cd(OH)、及び/又はZr(OH)を含むことができる。このような添加剤は、MOFの孔径及びチャネル構造を制御するため、及び/又は高い水流束速度のためのナノチャネルを形成するために膜に加えることができる。0.1~1000nmの直径を有する連続繊維又は短繊維などのあらゆる種類の適切な繊維を膜内に混入することができる。例えば0.1~850nm、0.5~500nm、又は0.5~100nm、0.75~75nm、好ましくは、0.75~50nm。適切には、繊維は、機械的除去又は溶解などによって使用前に除去される。
【0185】
塗布方法のさらなる詳細は、公開されたPCT特許出願の国際公開第2019/186134号パンフレット、特に段落[117]、[118]、及び[126]~[130](両端の段落番号を含む)に開示されている。段落[117]、[118]、及び[126]~[130](両端の段落番号を含む)の内容全体は、すべて参照により本明細書に援用される。
【0186】
コーティング組成物のさらなる詳細は、公開されたPCT特許出願の国際公開第2019/186134号パンフレット、特に段落[97]~[116](両端の段落番号を含む)に開示されている。段落[97]~[116](両端の段落番号を含む)の内容全体は、すべて参照により本明細書に援用される。
【0187】
コーティングは、コーティングの生成中に繊維を使用することによって形成されたナノチャネルをさらに含むことができる。有利には、製造プロセス中に0.5nm~1000nmの直径を有する連続繊維又は短繊維を混入し、続いて繊維を除去することによって、コーティング中にナノチャネルが存在することで、水流束が大幅に増加することが分かっている。
【0188】
コーティング中のナノチャネルは、1~750nm、例えば1~500nm、又は1~250nm、例えば1~150nm、又は1~100nm、例えば1~50nm、又は1~25nm、例えば1~10nm、又は好ましくは1~5nmの直径を有することができる。
【0189】
コーティングの二次元材料は、処理された二次元材料であってよい。二次元材料は、コーティングの形成後に処理することができる。この処理は、高エネルギー放射線、例えばレーザー放射線、化学物質、加熱、熱、及び/又は圧力を二次元材料に使用することなどによって、二次元材料の官能基に変化を生じさせることができる。
【0190】
放射線、例えばレーザー放射線、マイクロ波放射線、UV放射線、Eビーム放射線、プラズマ処理、電子放射線、軟X線放射線、ガンマ放射線、アルファ放射線;化学的処理、加圧処理、及び/又は熱処理、好ましくは、レーザー放射線及び/又はプラズマ処理に二次元材料を曝露することによって、二次元材料を処理することができ、適切には還元することができる。
【0191】
コーティングは、少なくとも1つの層が引き続く層の堆積前に処理された複数のコーティング層を含むことができる。好ましくは、それぞれの層は、引き続く層の堆積前に処理された。複数のコーティング層を含むコーティング層の層は、処理の種類及び/又は処理の程度に関して異なる処理を行うことができた。したがって、少なくとも1つの層は、別の層とは異なる官能性を有する二次元材料を含むことができる。例えば、層は、コーティング層の上部から、基材に隣接するコーティング層の底部に向けて、二次原材料中の還元レベルが低下する勾配を含むことができる。この勾配は、逆方向で形成することができる。
【0192】
上記の勾配の存在によって、コーティングと基材との間の接着性を高めることができ、膜全体のファウリング抵抗性を増加させることもできる。
【0193】
基材上の二次元材料の処理によって、二次元材料の官能基中に変化を生じさせることができ、例えば、官能基の数、種類、及び/又は分布の変化を生じさせることができる。例えば、処理によって二次元材料を還元することができ、及び/又は二次元材料に官能基を加えることで二次元材料を官能化することができる。
【0194】
二次元材料を官能化するためのその二次元材料の処理により、例えば二次元材料に存在するヒドロキシル基、カルボン酸基、及び/又はエポキシド基との反応によって、二次元材料の官能基を加えたり、変化させたりすることができる。官能化としては、共有結合性修飾及び非共有結合性修飾が挙げられる。共有結合性修飾方法は、求核置換反応、求電子置換反応、縮合反応、及び付加反応にさらに分類することができる。
【0195】
放射線、例えばレーザー放射線、マイクロ波放射線、UV放射線、Eビーム放射線、プラズマ処理、電子放射線、軟X線放射線、ガンマ放射線、アルファ放射線;化学的処理、及び/又は熱処理に二次元材料を曝露することによって、二次元材料を処理することができ、適切には還元することができる。好ましくは、レーザー放射線及びプラズマ処理。
【0196】
化学還元GO(CRGO)、熱還元酸化グラフェン(TRGO)又は放射線還元酸化グラフェン(RRGO)を形成するために、基材上の二次元材料の化学処理、熱処理、又は放射線処理を使用することができる。
【0197】
処理された膜の親水性は、処理.後に表面上に残存する官能基又は極性原子のパーセント値、例えば酸素又は窒素によって制御することができる。
【0198】
膜は、多孔質セラミック部材を含むことができ、この多孔質セラミック部材は、コーティングを支持するように操作可能な第1の支持部分を含み、第2の支持部分をさらに含み、第2の支持部分は、第1の支持部分のD75平均孔径よりも大きいD75平均孔径を有し、第2の支持部分は、≧10%の多孔度パーセント値を有する格子構造を含み、多孔質のセラミック部材は、≧100kPa(1bar)の原液印加圧力に耐えるように操作可能な引張強度を有する。多孔質セラミック部材を含む膜は、多孔質セラミック部材上で支持されるコーティングをさらに含むことができ、特に、このコーティングは、第1の支持部分の少なくとも一部にわたって延在する。例えば、第2の支持部分の格子構造は、≧15%、例えば≧25%又は≧40%の多孔度パーセント値を有することができる。
【0199】
有利には、多孔質セラミック部材を含む膜は、付加製造された多孔質セラミック格子構造のためにより薄い壁を有することができ、そのため、膜構造の充填密度を高めることができ、膜内により多くの活性表面積を形成することができる。より薄い膜の壁によって、デッドエンド細孔の減少、蛇行する経路の減少、及び膜を通過する流束の増加も得られる。
【0200】
第1の支持部分は、≧10μm、例えば≧20μm、≧30μm、≧40μm、例えば≧50μmの平均厚さを有することができる。第1の支持部分は、≦1000μm、例えば≦800μm、≦600μm、≦400μm、例えば≦200μmの平均厚さを有することができる。第1の支持部分は、10μm~1000μm、例えば20~800μm又は30~600μm、例えば40~400μm又は50~200μm、例えば50~150μm又は50~100μmの間の平均厚さを有することができる。本明細書において言及される場合、第1の支持部分は、原液入口側と透過液出口側との間のセラミック表面を意味することができる。
【0201】
第2の支持部分は、透過液収集箇所に向けて実質的な層流が得られるように操作可能であってよい。
【0202】
第2の支持部分は、乱流経路を含むことができる。有利には、これによって、流体内容物がより十分に均一化される。
【0203】
本発明の膜装置は、原液流チャネル、適切には複数の原液流チャネル、例えば、複数の実質的に直線状、及び場合により実質的に平行の原液流チャネルを含むことができる。原液流チャネルは実質的に円筒形であってよい。
【0204】
原液流チャネルの平均幅/直径は、≧0.1mm、例えば≧0.3mm又は≧0.5mmであってよい。この状況における「幅」は、チャネルの最大横寸法を意味することが意図される。原液流チャネルの平均幅/直径は、≦10mm、例えば≦7mm又は≦5mmであってよい。原液流チャネルの平均幅/直径は、0.1~10mm、例えば0.3~7mm又は0.5~5mmであってよい。
【0205】
膜は、少なくとも2つの原液流チャネルであって、それらの長さの少なくとも一部に沿って、第1及び第2の支持部分によって間隔があけられた、例えば2つの第1の支持部分の間に配置された1つの第2の支持部分を有する上記2つの第1の支持部分によって間隔があけられた、少なくとも2つの原液流チャネルを含むことができる。
【0206】
膜は、≦14mm、例えば≦10mm又は≦7mmの平均ピッチなどのチャネルピッチを含むことができる。膜は、≧0.13mm、例えば≧0.36mm又は≧0.59mmの平均ピッチなどのチャネルピッチを含むことができる。膜は、0.13mm~14mm、例えば0.36mm~10mm又は0.59~7mmの平均ピッチなどのチャネルピッチを含むことができる。本明細書において使用される場合、「チャネルピッチ」は、原液チャネルの中心点から測定される2つの隣接原液チャネル間の距離を意味する。
【0207】
膜は、≧200m/m、例えば≧350m/m、例えば≧500m/mのコーティング充填密度などの膜充填密度を有することができる。
【0208】
充填密度は、当業者に周知のあらゆる適切な方法によって計算することができる。一般的に:
【数3】
である。
【0209】
例えば、膜が円筒形原液流チャネルを含む場合、充填密度は以下のように計算することができる;
寸法測定は以下の通りである:
=1つのチャネルの半径
L=チャネルの長さ
=セラミックフィルターの半径
=セラミックフィルターの長さ
C=2×π×r
V=L×π×r
C=チャネル周囲の長さ
=チャネルの長さ
N=チャネルの数
V=セラミックフィルターの体積
【数4】
【0210】
原液流チャネルは、多孔質セラミック部材の中まで延在することができ、適切には、多孔質セラミック部材/膜の一方の側から、部材/装置の実質的に反対側までなど、多孔質セラミック部材を通過して延在することができる。チャネルは円筒形チャネルであってよい。
【0211】
流動チャネルは、第1及び第2の支持部分と一体に形成されてよい。流動チャネルは、少なくとも部分的に第1の支持部分から形成されたチャネル壁を含むことができ、これは場合により、チャネルの内面の上に少なくとも部分的に配置されたコーティングを含むことができる。原液流チャネル壁は、第1の支持部材によって実質的に形成されてよく、場合により少なくとも部分的にその上に配置されたコーティングを有することができる。チャネルを通過する原液の流れは、任意選択のコーティング及び第1の支持部分を通過するように操作可能であってよく、それによって濾過されて、透過液が形成され、第2の支持部分を通過して、多孔質セラミック部材から透過液収集箇所まで流出することができる。第2の支持部分は、多孔質セラミック部材を通過して透過液収集箇所に到達するまでの二次透過液流路を得るためのシェルを有することができる。
【0212】
本明細書における「格子構造」という用語は、1つ以上の反復単位セルで構成される三次元構造を意味し、ここで、セルは、例えば隣接するセルに液体が流動できるように相互接続される。三重周期表面は、「格子」という用語の一部である。
【0213】
格子構造は、≧0.01mm、例えば≧0.1mm、又は≧0.25mmの単位セルサイズを有する単位セルを含むことができる。格子構造は、≦10mm、例えば≦7mm、又は≦5mmの単位セルサイズを有する単位セルを含むことができる。
【0214】
格子構造は、ダイヤモンド構造、立方構造、蛍石構造、オクテット構造、ケルビンセル構造、アイソトラス構造、ヘックスプリズムダイヤモンド(hex prism diamond)構造、切頂管(truncated tube)構造、切頂八面体構造、ウィア=フェラン(Weaire-Phelan)構造、体心立方構造、及び/又は面心立方構造を有する単位セルを含むことができる。場合により、格子構造は、ジャイロイド構造、シュワルツP(schwarz P)構造、シュワルツD(schwarz D)構造、シュワルツCLP(schwarz CLP)構造、シュワルツH(schwarz H)構造、splitP構造、ネオビウス(neovius)構造、又はダブルジャイロイド構造から選択されるTPMS構造を有する単位セルを含むことができる。
【0215】
第2の支持部分は、不均一な格子構造を含むことができる。不均一な格子は、格子構造全体の中で1つ以上の種類の単位セルが別の種類の単位セルとは異なる格子構造を意味する。格子の不均一性は、1つ以上の異なる構造の特徴により生じうる。例えば、格子の支柱の太さの違い;格子単位セルの空隙の違い;及び/又は格子単位セルの形状の違い。
【0216】
不均一な格子は、バイアス長さが変化する勾配、適切には直線勾配を有するジャイロイド構造;壁の厚さが変化する(直線)勾配を有するジャイロイド構造;及び/又は支柱の太さが変化する(直線)勾配を有するダイヤモンド格子構造を含むことができる。
【0217】
多孔質セラミック部材は、≧0.5MPa、例えば≧1MPa又は≧2MPa、場合により、2MPa~200GPの範囲の原液印加圧力に耐えるように操作可能な引張強度を有することができる。本明細書において使用される場合、「原液印加圧力に耐えるように操作可能」は、多孔質セラミック部材が、多孔質セラミック部材の構造を実質的に損傷することなく所定の圧力で膜に要求される実質的な機能が得られるように操作可能であることを意味する。本明細書において使用される場合、引張強度は、3点曲げ試験を用いて測定した。
【0218】
不均一な格子は、異なる格子セル形状を含むことができる。
【0219】
第2の支持部分が不均一な格子構造を含む場合、第2の支持部分の平均厚さは10~2000μmの間であってよい。
【0220】
有利には、不均一な格子は、強度が要求される領域のみでより厚くすることができ、したがって使用される材料の量を減少させることができる。厚さは、多孔度に対して直接影響し、より厚い領域はより小さい多孔度を有し、より薄い領域はより大きい多孔度を有する。より大きい多孔度は、液体が通過して移動する領域がより多いことを意味し、流束が増加し、そのために必要な領域のみを厚くすることは、多孔質セラミック部材全体で多孔度がより大きくなることを意味する。
【0221】
格子単位セルは、シェルを有して内部中空構造を形成することができる。この内部構造の少なくとも一部は、別のシェルを有する単位セルとともに一連の相互接続された空隙を形成することができる。この内部の一連の相互接続された空隙は、透過液が通過するためのさらなる導管が得られるように操作可能となりうる。有利には、相互接続される空隙によって、支持部分の全体の多孔度が増加しながら、必要な強度は維持される。相互接続される空隙は、約5~15%だけ第2の支持部分の多孔度を増加させることができ、例えば10%の多孔度の増加となりうる。適切には、第2の支持部分は、≧45%、例えば≧50%、又は≧55%の多孔度パーセント値を有することができる。内部の相互接続された空隙によって、さらに、膜の製造に使用される材料が減少し、重量及びコストが減少する。
【0222】
多孔質セラミック部材、第1の支持部分、及び/又は第2の支持部分は、アルミナ、チタニア、ジルコニア、炭化ケイ素、ハイドロキシアパタイト、シリケート、ゼオライト、金属酸化物、又はそれらの組み合わせを含むことができるセラミック材料を含む組成物から形成することができる。セラミック材料は、アルミナ、チタニア、ジルコニア、炭化ケイ素、ハイドロキシアパタイト、シリケート、ゼオライト、金属酸化物、又はそれらの組み合わせを含むことができる。第1及び第2の支持部分は、同じ又は異なるセラミック材料を含む。
【0223】
上記組成物は、さらに添加剤を含むことができる。例えば、組成物は、細孔形成剤(PFA)、例えば小麦粒子、デンプン、PMMA、ケシの実、及びおがくず、官能化剤、ナノ材料、金属有機構造体、及び/又は二次元材料、例えば遷移金属ジカルコゲニド及び/又は酸化グラフェンを含むことができる。
【0224】
第2の支持部分は、あらゆる適切なD75平均孔径を有することができる。好ましくは、第2の支持部分はマクロポーラスであってよい。第2の支持部分のD75平均孔径は、≧0.1mm、例えば≧0.2mm、例えば≧0.3mm、例えば≧0.4mmであってよい。第2の支持部分のD75平均孔径は、≦5mm、例えば≦4mm、例えば≦3mm、例えば≦2mm、例えば≦1mmであってよい。第2の支持部分のD75平均孔径は、約0.1~5mm、例えば約0.2~4mm、例えば約0.3~3mm、例えば約0.4~1mmであってよい。
【0225】
第1の支持部分は、あらゆる適切なD75平均孔径を有することができる。第1の支持部分のD75平均孔径は、使用されるセラミック組成物の成分、及びセラミック組成物の焼結方法によって決定されうる。第1の支持部分のD75平均孔径は、用途により0.05~20μmであってよい。例えば、第1の支持部分のD75平均孔径は、用途が粒子濾過、精密濾過、ナノ濾過、及び逆浸透濾過に関連するかどうかによって変化しうる。第1の支持部分は、典型的には微孔質であってよい。典型的には、第1の支持部分のD75平均孔径は、≧1μm、例えば≧2μm、例えば≧3μm、例えば≧5μmであってよい。第1の支持部分のD75平均孔径は、≦20μm、例えば≦15μm、例えば≦10μmであってよい。第1の支持部分のD75平均孔径は、約1~20μm、例えば約2~15μm、又は約3~10μmであってよい。
【0226】
75平均孔径は、水銀圧入ポロシメトリーなどの当業者に周知の方法により測定することができる。
【0227】
第1の支持部分は、≧5%の多孔度パーセント値、例えば≧10%、例えば≧15%の多孔度を有することができる。第1の支持部分は、≦50%の多孔度パーセント値、例えば≦40%、典型的には≦35%の多孔度を有することができる。第1の支持部分は、約5~50%の間の多孔度パーセント値、例えば10~40%、例えば15~35%の多孔度を有することができる。
【0228】
第2の支持部分は、≧45%、例えば≧50%、例えば≧55%、例えば≧60%の多孔度パーセント値を有することができる。第2の支持部分は、≦80%、例えば≦75%、例えば≦70%の多孔度パーセント値を有することができる。第2の支持部分は、約40~80%の間の多孔度パーセント値、好ましくは約60~80%、例えば70%の多孔度を有することができる。
【0229】
多孔度は、構造の実体積を、構造によって寸法的に占有される全体積で割って、パーセント値として表される、構造の空隙の測定値である。
【数5】
式中、Vは実体積であり、Vは全体積である。
【0230】
第1及び第2の支持部分は、連続構造を形成するように一体に形成されてよい。適切には、第1及び第2の支持部分は、付加製造によって一体に形成される。
【0231】
膜は:
a.多孔質セラミック部材の付加製造によって、第2の支持部分の格子構造の製造、及び第1の支持部分の形成を行うことと;
b.場合により、第1の支持部分からバインダーを除去して、第1の支持部分に細孔を形成することと;
c.場合により、適切には第1の支持部分の上に、コーティング組成物をコーティングすることによって、第1の支持部分の少なくとも一部にコーティングを塗布することと、
によって製造することができる。
【0232】
ステップ(a)において、第1の支持部分のマクロ構造を形成することができるが、第1の支持部分の細孔構造はステップ(b)において形成することができる。このようなプロセスでは、ステップ(a)は、グリーン部分の形成であると見なすことができる。ステップ(b)は、バインダー除去及び/又は焼結ステップであると見なすことができる。
【0233】
有利には、第1及び/又は第2の支持部分は、付加製造プロセスを用いて製造、適切には印刷することができ、好ましくは、第1及び第2の支持部分は、一体の支持構造を形成するように付加製造される。付加製造技術は、あらゆる適切なセラミック3D印刷技術であってよい。例えば、第1及び/又は第2の支持部分は、結合剤噴射印刷、ステレオリソグラフィ、デジタルライトプロセッシング、二光子重合、インクジェット印刷、ダイレクトインクライティング、三次元印刷、選択的レーザー焼結、選択的レーザー溶融、ラミネート製造法、又は溶融堆積モデリングを用いて印刷することができる。
【0234】
多孔質セラミック部材の付加製造によって、製造及び濾過の間にコーティングを支持するために必要な機械的強度を有する膜が得られながら、最終フィルター用途中に改善された流体流を得るための高い多孔度と高い充填密度とのバランスもとられる。
【0235】
本発明の膜では、コーティングを通過して水を押し出すために圧力を使用することができ、そこで汚染物質が分離され、水原液中に残存し、汚染されていない水は透過液側まで通過し、そこで、多孔質セラミック部材を通過して膜の出口まで押し出される。
【0236】
本明細書において言及される「シェルを有する」という用語は、特定の壁の厚さを有する構造の中空の固体部分を意味する。
【0237】
本明細書において「層状構造」という用語は、少なくとも2つの重なり合う層を有する構造を意味する。本明細書において「膜」という用語は、所望の溶解材料(溶質)、コロイド、又は微粒子の原液溶液からの分離を補助するために使用可能な多孔質バリアを意味する。これは、原液流と透過液流戸の間の界面を意味することができる。本明細書において「二次元材料」という用語は、少なくとも1つの寸法が100nm未満である材料を意味する。
【0238】
乱流はレイノルズ数(Re):
【数6】
によって測定される。
【0239】
ここで、ρは、流体の密度であり、uは流速であり、Lは特徴的線形寸法であり、μは流体の動的粘度である。
【0240】
バッフルは、管状膜などの膜の中に挿入されるように操作可能となりうる。管状膜などの膜は、バッフル中に挿入されるように操作可能となりうる。
【0241】
バッフルは、膜の一部のみに沿って延在するように操作可能となりうる。本発明のバッフルによって得られるクロスフロー速度の向上は、流れの運動量のためにバッフルの終点を通過する距離の間持続しうる。バッフルを通過した領域での圧力低下は、障害が少ないのでバッフルが存在する領域よりも比較的小さくなりうる。したがって、膜における高剪断の利点は、少ない圧力低下とともに実現されうる。
【0242】
バッフルは、膜の少なくとも40%、例えば少なくとも50%、例えば少なくとも60%に沿って延在するように操作可能となりうる。
【0243】
バッフルは、膜の最大90%、例えば最大80%、例えば最大70%に沿って延在するように操作可能となりうる。
【0244】
バッフルは、膜の40~90%,例えば50~80%、例えば60~70%に沿って延在するように操作可能となりうる。
【0245】
バッフルは、膜の実質的に全長に沿って延在するように操作可能となりうる。
【0246】
バッフルは、バッフルの長手方向長さに沿って実質的に均一な原液流流束が得られるように操作可能となりうる。
【0247】
バッフルは、バッフルの近位端よりもバッフルの遠位端に向かう原液流の速度が速くなるように操作可能となりうる。バッフルは、バッフルの遠位端よりもバッフルの近位端で圧力が高くなるように操作可能となりうる。
【0248】
膜装置用の上記バッフルは、膜の長手方向長さを通して一定のアスペクト比として第1又は第2の形状部分のアスペクト比を有するバッフルよりも、少なくとも5%、例えば10%、例えば少なくとも15%の比エネルギー消費量が減少するように操作可能となりうる。
【0249】
原液流は、藻類などの浮遊固体粒子を含む場合がある。浮遊固体粒子を含むあらゆる原液で、SECの減少と少ないファウリングとによる利点を得ることができる。原液流は、ジュース、例えば高固形分ジュース、例えば果汁;ミルク;糖含有原液;生産水/廃水;重要な金属を含有する原液;及び/又は酵素を含むことができる。原液流は、高固形分の原液流であってよい。原液流の固形分は、原液流の全重量を基準として最大40%であってよい。
【0250】
本発明によるバッフルは、エネルギー効率のよい方法で原液溶液から浮遊固体粒子を除去することが事実上必要な用途における管状膜中で使用するために操作可能となりうる。したがって、バッフルは、限定するものではないが、藻類の濃縮、高固形分ジュースの濃縮及び不純物除去、ミルクからのタンパク質の分離、生産水/廃水の浄化、酵素の濃縮;精糖、例えば糖原液からの炭酸カルシウムの分離;リチウム、タングステン、金、及び/又は銀などの重要な金属の抽出などの用途に使用するために操作可能となりうる。
【0251】
本明細書において使用される場合、「ナノ濾過」という用語は、流体混合物中の異なる成分を分離するために膜を利用する分離技術を意味することができる。ナノ濾過膜の孔径は1~100nmであってよい。
【0252】
本発明の目的のためには、脂肪族基は、炭化水素部分であって、直鎖(すなわち非分岐)、分岐、又は環状であり得、完全飽和であり得るか、又は1つ以上の不飽和単位を含み得るが、芳香族ではない炭化水素部分である。「不飽和」という用語は、1つ以上の二重結合及び/又は三重結合を有する部分を意味する。したがって、「脂肪族」という用語は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニルシクロアルケニル基、アルキニル基、又はシクロアルケニル基、並びにそれらの組み合わせを含むことが意図される。「(ヘテロ)脂肪族」という用語は、脂肪族基及び/又はヘテロ脂肪族基の両方を含む。
【0253】
脂肪族基は、任意選択的にC1~30脂肪族基であり、すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30個の炭素原子を有する脂肪族基である。任意選択的に、脂肪族基は、C1~15脂肪族であり、任意選択的にC1~12脂肪族であり、任意選択的にC1~10脂肪族であり、任意選択的にC1~8脂肪族であり、例えばC1~6脂肪族基である。適切な脂肪族基としては、直鎖又は分岐のアルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基、並びにこれらの混合物、例えば(シクロアルキル)アルキル基、(シクロアルケニル)アルキル基、及び(シクロアルキル)アルケニル基が挙げられる。
【0254】
本明細書において使用される場合、「アルキル」という用語は、脂肪族部分から1つの水素原子を除去することによって誘導される飽和の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を意味する。アルキル基は、任意選択的に「C1~20アルキル基」であり、すなわち、1~20個の炭素を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。したがって、このアルキルは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個の炭素原子を有する。任意選択的に、アルキル基は、C1~15アルキル、任意選択的にC1~12アルキル、任意選択的にC1~10アルキル、任意選択的にC1~8アルキル、任意選択的にC1~6アルキル基である。特に、「C1~20アルキル基」の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ペンチル、イソペンチル、n-ペンチル基、ネオペンチル、n-ヘキシル基、sec-ヘキシル、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-エイコシル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、n-ヘキシル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1-エチルブチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基などが挙げられる。
【0255】
本明細書において使用される場合、「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する直鎖又は分岐鎖の脂肪族部分から1つの水素原子を除去することによって誘導される基を意味する。本明細書において使用される場合、「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する直鎖又は分岐鎖の脂肪族の部分から1つの水素原子を除去することによって誘導される基を意味する。アルケニル基及びアルキニル基は、それぞれ、任意選択的に「C2~20アルケニル」及び「C2~20アルキニル」、任意選択的に「C2~15アルケニル」及び「C2~15アルキニル」、任意選択的に「C2~12アルケニル」及び「C2~12アルキニル」、任意選択的に「C2~10アルケニル」及び「C2~10アルキニル」、任意選択的に「C2~8アルケニル」及び「C2~8アルキニル」、任意選択的に「C2~6アルケニル」及び「C2~6アルキニル」基である。アルケニル基の例としては、エテニル、プロペニル、アリル、1,3-ブタジエニル、ブテニル、1-メチル-2-ブテン-1-イル、アリル、1,3-ブタジエニル、及びアレニルが挙げられる。アルキニル基の例としては、エチニル、2-プロピニル(プロパルギル)、及び1-プロピニルが挙げられる。
【0256】
本明細書において使用される場合、「脂環式」、「炭素環」、又は「炭素環式」という用語は、3~20個の炭素原子を有する飽和又は部分不飽和の環状脂肪族の単環式又は多環式の(縮合、架橋、及びスピロ縮合を含む)環系を意味し、すなわち、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個の炭素原子を有する脂環式基を意味する。任意選択的に、脂環式基は、3~15個、任意選択的に3~12個、任意選択的に3~10個、任意選択的に3~8個の炭素原子を有し、任意選択的に3~6個の炭素原子を有する。「脂環式」、「炭素環」、又は「炭素環式」という用語は、1つ以上の芳香環又は非芳香環、例えばテトラヒドロナフチル環と縮合する脂肪族環も含み、ここで結合点は脂肪族環上に存在する。炭素環式環は、多環式、例えば二環式又は三環式であり得る。脂環式基は、1つ以上の結合性又は非結合性アルキル置換基、例えば-CH-シクロヘキシルを有する脂環式環を含むことができることは認識されよう。特に、炭素環の例としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、バイシクル[2,2,1]ヘプタン、ノルボレン(norborene)、フェニル、シクロヘキセン、ナフタレン、スピロ[4.5]デカン、シクロヘプタン、アダマンタン、及びシクロオクタンが挙げられる。
【0257】
ヘテロ脂肪族基(ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、及びヘテロアルキニルを含む)は、1つ以上のヘテロ原子をさらに含む前述の脂肪族基である。したがって、ヘテロ脂肪族基は、任意選択的に2~21個の原子、任意選択的に2~16個の原子、任意選択的に2~13個の原子、任意選択的に2~11個の原子、任意選択的に2~9個の原子、任意選択的に2~7個の原子を含み、少なくとも1つの原子が炭素原子である。任意選択のヘテロ原子は、O、S、N、P、及びSiから選択される。ヘテロ脂肪族基が2つ以上のヘテロ原子を有する場合、ヘテロ原子は、同じ場合も異なる場合もある。ヘテロ脂肪族基は、置換又は非置換、分岐又は非分岐、環式又は非環式であり得、飽和、不飽和、又は部分不飽和の基を含むことができる。
【0258】
脂環式基は、3~20個の炭素原子を有する飽和又は部分不飽和で環状脂肪族の単環式又は多環式の(縮合、架橋、及びスピロ縮合を含む)環系であり、すなわち3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個の炭素原子を有する脂環式基である。任意選択的に、脂環式基は、3~15個、任意選択的に3~12個、任意選択的に3~10個、任意選択的に3~8個の炭素原子、任意選択的に3~6個の炭素原子を有する。「脂環式」という用語は、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、及びシクロアルキニル基を含む。脂環式基は、1つ以上の結合性又は非結合性アルキル置換基、例えば-CH-シクロヘキシルを有する脂環式環を含むことができることは認識されよう。特に、C3~20シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル、及びシクロオクチルが挙げられる。
【0259】
アリール基又はアリール環は、5~20個の炭素原子を有する単環式の又は多環式の環系であり、環系の少なくとも1つの環が芳香族であり、環系のそれぞれの環は3~12個の環の要素を含む。アリール基は、任意選択的に「C6~12アリール基」であり、6、7、8、9、10、11、又は12個の炭素原子で構成されるアリール基であり、単環式環基、又は二環式環基などの縮合環を含む。特に、「C6~10アリール基」の例としては、フェニル基、ビフェニル基、インデニル基、アントラシル基、ナフチル基、又はアズレニル基などが挙げられる。インダン、ベンゾフラン、フタルイミド、フェナントリジン、及びテトラヒドロナフタレンなどの縮合環もアリール基に含まれることに留意すべきである。
【0260】
本明細書において使用される場合、特にはっきりと明記されなければ、値、範囲、量、又はパーセント値を表すものなどのあらゆる数字は、「約」という用語が明確に現れない場合でも、「約」という単語が前に付けられるかのように読むことができる。本明細書において使用される場合、「約」という用語は、記載の値の±10%を意味する。
【0261】
単数形は複数形を含んでおり、逆もまた同様である。例えば、「1つの」バッフル、「1つの」膜などに本明細書において言及されるが、これらのそれぞれの1つ以上及びあらゆる別の構成要素を使用可能である。
【0262】
また、本明細書に示されるあらゆる数値範囲は、その中に包含されるあらゆる部分範囲を含むことが意図される。単数形は複数形を含んでおり、逆もまた同様である。
【0263】
本明細書において使用される場合、「上」、「上/上方に塗布された」、「上に延在する」、「上/上方に形成された」、及び「上/上方に提供された」という用語は、上に形成又は提供されるが、必ずしも表面に接触する必要はないことを意味する。例えば、基材の「上に形成された」コーティングは、その形成されたコーティングと基材との間に配置される同じ又は異なる組成の別のコーティングの存在を排除するものではない。
【0264】
本明細書において使用される場合、「含むこと」(comprising)及び「含む」(comprises)という用語は、「包含すること」(including)又は「含有すること」(containing)と同義であり、包括的である又は制限がなく、列挙されない追加の部材、要素、又は方法ステップを排除するものではない。さらに、本発明は「含む」に関して記載されているが、本明細書に詳細に示される本発明は、「から本質的になる」又は「からなる」として記載される場合もある。
【0265】
本明細書において使用される場合、「ポリマー」という用語は、オリゴマーと、ホモポリマーとコポリマーとの両方とを意味し、「ポリ」という接頭語は、2つ以上を意味する。含む、例えば、及び同様の用語は、例えば…を含むが、それに限定されるものではないことを意味する。
【0266】
本明細書において使用される場合、別の記載がなければ、「平均」は算術平均(mean average)を意味する。
【0267】
ある種類に関して複数の範囲が提供される場合、それぞれの範囲は、その種類の列挙される種のいずれか1つ以上に追加で独立して適用することもできる。
【0268】
本明細書に含まれるすべての特徴は、あらゆる組み合わせで前述の態様と組み合わせることができる。
【0269】
本発明のより十分な理解のため、及び本発明の態様を実行に移すことができる方法を示すために、これより例として以下の実験データ及び図が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0270】
図1A】比較用バッフル(100)の側面図を示している。
図1B】管状膜(108)内に配置された図1Aのバッフル(100)の側断面図を示している。
図1C】管状膜(108)内に配置された図1Aのバッフル(100)の一部切欠側面斜視図を示している。
図1D】管状膜(108)内に配置された図1Aのバッフル(100)のさらなる一部切欠側面斜視図を示している。
図2A】本発明の第1の実施形態によるバッフル(200)の側面図を示している。
図2B】管状膜(208)内に配置された図2Aのバッフル(200)の側断面図を示している。
図2C】管状膜(208)内に配置された図2Aのバッフル(200)の一部切欠側面斜視図を示している。
図2D】管状膜(208)内に配置された図2Aのバッフル(200)のさらなる一部切欠側面斜視図を示している。
図3A】本発明の第2の実施形態によるバッフル(300)の側面図を示している。
図3B】管状膜(308)内に配置された図3Aのバッフル(300)の側断面図を示している。
図3C】管状膜(308)内に配置された図3Aのバッフル(300)の一部切欠側面斜視図を示している。
図3D】管状膜(308)内に配置された図3Aのバッフル(300)のさらなる一部切欠側面斜視図を示している。
図4A】管状膜(408)内に配置された本発明の第3の実施形態によるバッフル(400)の側断面図を示している。
図4B】管状膜(408)内に配置された図4Aのバッフル(400)の側断面斜視図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0271】
図1A~D中に示される比較用バッフル(100)は、同じらせん形状の繰り返し形状(106)を有し、これらの形状のアスペクト比(a:b)はバッフルの近位端(102)からバッフルの遠位端(104)まで一定である。
【0272】
図2A~D中に示される本発明による第1の実施形態のバッフル(200)は、第1の形状部分(206a)及び第2の形状部分(206b)を含む。第1及び第2の形状部分のそれぞれは、実質的に同様のらせん形状の繰り返し形状要素を含む。第1の形状部分(206a)の形状要素におけるアスペクト比(a:b及びa’:b’)は、第2の形状部分(206b)の形状要素におけるアスペクト比よりも高く、そのためバッフルのアスペクト比は、バッフルの近位端(202)からバッフルの遠位端(204)まで段階的に低下する。バッフル(200)では、第1の形状部分(206a)におけるアスペクト比は2であり、第2の形状部分(206b)におけるアスペクト比は1.5である。
【0273】
図3A~D中に示される本発明による第2の実施形態のバッフル(300)は、第1の形状部分(306a)及び第2の形状部分(306b)を含む。第1及び第2の形状部分のそれぞれは、交互に狭くなり広くなる輪郭の形態の実質的に同様の形状の繰り返し形状要素を含む。第1の形状部分(306a)の形状要素におけるアスペクト比(a:b及びa’:b’)は、第2の形状部分(306b)の形状要素におけるアスペクト比よりも高く、そのためバッフルのアスペクト比は、バッフルの近位端(302)からバッフルの遠位端(304)まで段階的に低下する。バッフル(300)は、一連の間隔をあけた支持体の組(310)をさらに含み、それぞれの支持体の組は、バッフルの長手方向軸の周囲に均等に間隔をあけて配置される、同じ側面上に沿って3つの半径方向に延在する支持体を含む。バッフルが膜(308)内に配置されて、形状部分が膜表面から間隔があけられる場合に、支持体(310)は内側の膜表面に隣接する。
【0274】
図4A~D中に示される本発明による第3の実施形態のバッフル(400)は、第1の形状部分(406a)及び第2の形状部分(406b)を含む。第1及び第2の形状部分のそれぞれは、円錐形状の形態で実質的に連続的に変化する横寸法を有する。第1の形状部分(406a)におけるアスペクト比((2×a):b及び(2×a’):b’)は、第2の形状部分(406b)におけるアスペクト比よりも高く、そのためバッフルのアスペクト比は、バッフルの近位端(402)からバッフルの遠位端(404)まで連続的に低下する。
【実施例
【0275】
バッフルの製造
比較用バッフル(100)によるものであり、それぞれ1.3及び1.5のアスペクト比を有した比較用バッフル1及び2と、バッフル(200)による本発明のバッフルとを以下のように製造した:
プリンタ:Formlabs Form 3Lプリンタ
印刷方法:ステレオリソグラフィ(SLA)
樹脂:Tough 2000 V1(市販の感光性熱硬化性樹脂)
印刷層の高さ:100ミクロン
ステップ:
a)プリンタの準備をして、バッフルを印刷した。印刷後、印刷されたバッフルの表面上の液体樹脂を溶解させるトリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPM)の溶液中でバッフルを洗浄した。
b)過剰の洗浄用液体をバッフルの表面から拭き取り、それらの上にイソプロピルアルコール(IPA)を吹き付けて、液体樹脂の残留物をさらに除去した。過剰のIPAは拭き取った。
c)バッフルを60℃で20分間UV硬化させた。次に支持体を除去し、バッフルを水中で洗浄して、それらの試験に備えた。
【0276】
試験方法
Hydra-Cellダイアフラムポンプ(最大原液流:7.5L/分)を有するSterlitechクロスフローシステムを1bar TMPにおいて、7.5L/分の原液流で、室温で使用して、すべての試験を行った。
【0277】
すべての試験は、Micro240の中に収容した精密濾過PCI LMA02膜(2×32cmの管状膜、0.024mの面積)を用いて行った。原液流は、1重量%の乾燥藻類粉末(Sevenhillsより入手可能なクロレラ・ブルガリス(Chlorella Vulgaris))を含んだ。
【0278】
試験は、以下の手順により行った:
a)250gの乾燥藻類粉末を5kgの水と混合して、水中に5重量%の藻類を得た。この混合物をクロスフローシステムの原液タンク中に注いだ。
b)同じ種類の2つのPCI LMA02管状膜を膜ハウジング内に取り付けた。それぞれの管状膜の中にバッフルを挿入した。
c)バイパスバルブ及び保持液バルブを開放した。ポンプのスイッチを入れ、回転速度を最大まで徐々に増加させた。
d)バイパスバルブを徐々に閉じ、続いて、1barの膜透過圧力(原液及び保持液の圧力の平均)に到達するまで、保持液バルブを徐々に低下させた。膜を横断する圧力低下を、原液圧力と保持液圧力との差として測定した。
e)データロガー(1分に時間間隔を設定)を備えたはかりの上に載せたビーカー中に透過液を収集した。2.5Lの透過液が収集された後、システム中の藻類の濃度が10%に到達した。この段階で、10重量%の藻類を有する2.5Lの原液溶液を加えて、10重量%の藻類を有する5Lの溶液を原液タンク中に得た。次の2.5Lの透過液を除去した後、原液タンク中の藻類の濃度は20重量%に到達し、その時点で20重量%の藻類を有するさらなる2.5Lの原液溶液を加えて、原液タンクに補充した。
f)経時により必要な水力を、280分の終了時に除去された透過液の総量で割ることで、単位体積の透過液を生成するために消費される全エネルギー、すなわち比エネルギー消費量を求めた。
【数7】
ここで、
・ SEC=比エネルギー消費量
・ ΔP=圧力低下
・ Δt=時間間隔
・ Q=原液流量
・ V=収集した透過液体積。
【0279】
結果
それぞれ前述の運転条件で280分間運転した後に、以下の表中に示される4つの異なる構成の試験結果を得た。表から明らかなように、比エネルギー消費量は本発明によるバッフルの場合に最も少なかった。
【0280】
【表1】
【0281】
本出願に関連し本明細書と同時に又は先に出願され、本明細書とともに一般閲覧のために公開されるすべての論文及び文献に注目が向けられ、そのようなすべての論文及び文献の内容が、参照により本明細書に援用される。
【0282】
本明細書(あらゆる添付の請求項、要約書、及び図面を含む)に開示されるすべての特徴、及び/又はそのように開示されるいずれかの方法又はプロセスのすべてのステップは、そのような特徴及び/又はステップの少なくとも一部が互いに排他的となる組み合わせを除いたあらゆる組み合わせで組み合わせることができる。
【0283】
特に明記されなければ、本明細書(あらゆる添付の請求項、要約書、及び図面を含む)中に開示されるそれぞれの特徴は、同一、同等、又は同様の目的を果たす別の特徴によって置き換えることができる。したがって、特に明記されなければ、開示されるそれぞれの特徴は、包括的な一例の同等又は類似の特徴の単なる一例である。
【0284】
本発明は、以上の実施形態の詳細に限定されるものではない。本発明は、本明細書(あらゆる添付の請求項、要約書、及び図面を含む)に開示される特徴のあらゆる新規なもの若しくはあらゆる新規な組み合わせ、又はそのように開示されるいずれかの方法若しくはプロセスのステップのあらゆる新規なもの若しくはあらゆる新規な組み合わせに拡張される。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
【国際調査報告】