(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ウインドシールドおよびウインドシールドアセンブリ
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20241219BHJP
C03C 17/34 20060101ALI20241219BHJP
B32B 17/10 20060101ALI20241219BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20241219BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C03C27/12 L
C03C17/34 Z
C03C27/12 Z
B32B17/10
B32B7/023
B60J1/00 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536239
(86)(22)【出願日】2022-01-04
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 CN2022070125
(87)【国際公開番号】W WO2023130214
(87)【国際公開日】2023-07-13
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516151818
【氏名又は名称】フーイャォ グラス インダストリー グループ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ツォ,ファイ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ジエリン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,シャオロン
(72)【発明者】
【氏名】ルー,グオシュイ
(72)【発明者】
【氏名】福原 康太
【テーマコード(参考)】
4F100
4G059
4G061
【Fターム(参考)】
4F100AA12D
4F100AA19D
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4F100JN06D
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4F100JN08E
4F100JN10D
4F100JN18D
4F100JN18E
4F100YY00D
4F100YY00E
4G059AA01
4G059AC06
4G059EA04
4G059EA05
4G059EA07
4G059EA12
4G059EB04
4G059GA02
4G059GA04
4G059GA12
4G061AA01
4G061AA20
4G061AA26
4G061BA02
4G061CB03
4G061CB19
4G061CD03
4G061CD18
(57)【要約】
ウインドシールド(100)およびウインドシールドアセンブリ(1000)が提供される。ウインドシールド(100)は、外側ガラス板(10)、ポリマー中間層(30)、および内側ガラス板(20)を備え、内側ガラス板(20)は、対向する第3の表面(21)および第4の表面(22)を有し、第3の表面(21)はポリマー中間層(30)に面しており、ウインドシールド(100)は、情報収集領域(S1)および非情報収集領域(S2)を含む。第4の表面(22)には反射増強層(40)が設けれており、反射増強層(40)は、情報収集領域(S1)および非情報収集領域(S2)を覆い、反射増強層(40)は、380nm~780nmのP偏光に対する非情報収集領域(S2)の反射率を向上させるために用いられる。情報収集領域(S1)には最外層の媒質層(50)がさらに設けられており、最外層の媒質層(50)は、第4の表面(22)から離れた反射増強層(40)の表面に設けられており、最外層の媒質層(50)および反射増強層(40)は、780nm~980nmの近赤外線に対する情報収集領域(S1)の透過率を向上させるために用いられる。このウインドシールドは、ライダーの信号に対して高透過率を有するとともに、ヘッドアップディスプレイ機能を実現できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウインドシールドであって、
外側ガラス板、ポリマー中間層、および内側ガラス板を備え、前記ポリマー中間層は、前記外側ガラス板と前記内側ガラス板との間に挟まれており、前記外側ガラス板は、対向する第1の表面および第2の表面を有し、前記第2の表面は前記ポリマー中間層に面しており、前記内側ガラス板は、対向する第3の表面および第4の表面を有し、前記第3の表面は前記ポリマー中間層に面しており、前記ウインドシールドは、情報収集領域および非情報収集領域を含み、
前記第4の表面には反射増強層が設けれており、前記反射増強層は、前記情報収集領域および前記非情報収集領域を覆い、前記反射増強層は、380nm~780nmのP偏光に対する前記非情報収集領域の反射率を向上させるために用いられ、
前記情報収集領域には最外層の媒質層がさらに設けられており、前記最外層の媒質層は、前記第4の表面から離れた前記反射増強層の片側の表面に設けられており、前記最外層の媒質層および前記反射増強層は、780nm~980nmの近赤外線に対する前記情報収集領域の透過率を向上させるために用いられる、
ことを特徴とするウインドシールド。
【請求項2】
前記反射増強層は100nm~500nmの厚さを有し、前記反射増強層は少なくとも1つの積層構造を含み、前記積層構造は、前記第4の表面から前記外側ガラス板から離れる方向に向かって、順次に堆積された高屈折率層および低屈折率層を含み、前記高屈折率層は1.7~2.7の屈折率を有し、前記低屈折率層は1.3~1.6の屈折率を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のウインドシールド。
【請求項3】
前記高屈折率層は複数の高屈折率サブ層を含み、または、前記反射増強層は少なくとも2つの積層構造を含み、複数の前記高屈折率層は、少なくとも1つの第1の高屈折率層および少なくとも1つの第2の高屈折率層を含み、前記第1の高屈折率層は単層の高屈折率サブ層であり、前記第2の高屈折率層は複数の高屈折率サブ層を含み、
および/または、
前記低屈折率層は複数の低屈折率サブ層を含み、または、前記反射増強層は少なくとも2つの積層構造を含み、複数の前記低屈折率層は、少なくとも1つの第1の低屈折率層および少なくとも1つの第2の低屈折率層を含み、前記第1の低屈折率層は単層の低屈折率サブ層であり、前記第2の低屈折率層は複数の低屈折率サブ層を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載のウインドシールド。
【請求項4】
少なくとも1つの前記第2の高屈折率層は、順に積層された第1の高屈折率サブ層および第2の高屈折率サブ層を含み、前記第1の高屈折率サブ層は、前記第2の高屈折率サブ層よりも前記第4の表面に近く、前記第1の高屈折率サブ層は1.7~2.04の屈折率を有し、前記第2の高屈折率サブ層は2.05~2.7の屈折率を有する、
ことを特徴とする請求項3に記載のウインドシールド。
【請求項5】
前記第1の高屈折率サブ層の材料はSiO
xN
yであり、1<x≦3、1<y<3であり、前記第1の高屈折率サブ層は27nm~51nmの厚さを有し、前記第2の高屈折率サブ層は45nm~60nmの厚さを有する、
ことを特徴とする請求項4に記載のウインドシールド。
【請求項6】
前記最外層の媒質層は10nm~140nmの厚さを有し、前記最外層の媒質層は少なくとも1つの媒質サブ層を含み、前記媒質サブ層は1.4~2.7の屈折率を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のウインドシールド。
【請求項7】
いずれか1つの前記媒質サブ層は2.0~2.7の屈折率を有し、媒質サブ層の材料はZnSnO
x、ZnAlO
x、TiO
x、NbO
x、SiN
x、ZrO
x、ZrSiN
xのうちの少なくとも一種である、
ことを特徴とする請求項6に記載のウインドシールド。
【請求項8】
いずれか1つの前記媒質サブ層は2.2~2.7の屈折率を有し、前記最外層の媒質層は10nm~70nmの厚さを有する、
ことを特徴とする請求項6に記載のウインドシールド。
【請求項9】
前記情報収集領域は、入射角65°で入射される780nm~980nmの近赤外線に対して80%以上の透過率を有し、前記非情報収集領域は、入射角65°で入射される380nm~780nmのP偏光に対して20%以上の反射率を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のウインドシールド。
【請求項10】
入射角65°で入射される波長629nmのP偏光に対する前記非情報収集領域の反射率がY1であり、入射角65°で入射される波長529nmのP偏光に対する前記非情報収集領域の反射率がY2であり、入射角65°で入射される波長469nmのP偏光に対する前記非情報収集領域の反射率がY3であり、
|Y1-Y2|≦2.5%、|Y2-Y3|≦2.5%、|Y1-Y3|≦2.5%である、
ことを特徴とする請求項1に記載のウインドシールド。
【請求項11】
前記Y1は20%以上であり、前記Y2は20%以上であり、前記Y3は20%以上である、
ことを特徴とする請求項10に記載のウインドシールド。
【請求項12】
前記ウインドシールドは疎水層をさらに備え、前記疎水層は、前記反射増強層から離れた前記最外層の媒質層の片側の表面に積層されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のウインドシールド。
【請求項13】
前記疎水層は110°より大きい水接触角を有する、
ことを特徴とする請求項12に記載のウインドシールド。
【請求項14】
前記疎水層は、0.3Jm
-2以下の表面エネルギーを有し、1.6以下の屈折率を有する、
ことを特徴とする請求項12に記載のウインドシールド。
【請求項15】
ウインドシールドアセンブリであって、
ライダーと、ヘッドアップディスプレイ投影装置と、請求項1から14のいずれか一項に記載のウインドシールドとを備え、
前記ライダーは、780nm~980nmの近赤外線を放出しおよび受けるために用いられ、前記近赤外線は前記信号取得領域を通過し、前記ヘッドアップディスプレイ投影装置は、380nm~780nmのP偏光を発生するために用いられ、前記P偏光は前記非信号取得領域に入射される、
ことを特徴とするウインドシールドアセンブリ。
【請求項16】
前記ヘッドアップディスプレイ投影装置によって発生されたP偏光は、少なくとも90%のP偏光成分を含む、
ことを特徴とする請求項15に記載のウインドシールドアセンブリ。
【請求項17】
前記ライダーによって放出された近赤外線は、少なくとも50%のP偏光成分を含む、
ことを特徴とする請求項15に記載のウインドシールドアセンブリ。
【請求項18】
前記ヘッドアップディスプレイ投影装置によって発生されたP偏光は、100%のP偏光成分を含み、前記ライダーによって放出された近赤外線は、100%のP偏光成分を含む、
ことを特徴とする請求項15に記載のウインドシールドアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、ガラス製品の技術分野に関し、特にウインドシールドおよびウインドシールドアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
自動運転技術の発展及び自動車のフロントガラスの付加機能に対するニーズのハイエンド化に伴い、自動車のフロントガラスには、例えば、ヘッドアップディスプレイ(HUD)機能、電気加熱による除霜・除曇機能、赤外線反射断熱機能、紫外線遮断機能など、より多くの機能が付与されている。
【0003】
ライダーは、レーザービームを放出することでターゲットの位置、速度などの特徴量を検出するレーダーシステムである。ライダーは、高い検出精度と高い正確さなどの特徴があるので、自動運転の分野でかけがえのない役割を果たしている。ライダーを自動車に取り付ける方法は、外付け式および内蔵式という2種がある。外付け式の取り付けは、通常、ライダーを自動車のルーフ、ボンネット、フェンダー、またはフロントグリルなどに取り付けることを指す。このような取り付け方法では、ライダーが外部の空気にさらされるため、ライダーの精度が雨、風、ほこり、高温、低温などの天気、環境の質量に影響される。内蔵式の取り付けはライダーを自動車の運転室内に取り付けることを指し、天気および環境の影響を避けることができる。
【0004】
内蔵式で取り付けられるライダーの場合、ライダーによって放出されおよび受けられる波長905nmまたは波長1550nmの信号は、いずれもフロントガラスを通過する必要がある。しかし、現在、断熱のニーズを満たすために用いられるフロントガラスは、780~2500nmの赤外線に対して高い遮断率を有するので、ライダーの正常な作業および高精度測定の要求を満たすことができない。
【発明の概要】
【0005】
本出願の目的は、ライダーの信号に対して高い透過率を有し、内蔵式ライダーの使用要求を満たすとともに、ヘッドアップディスプレイ機能を実現できるウインドシールド及びウインドシールドアセンブリを提供することである。
【0006】
本出願はウインドシールドを提供する。ウインドシールドは、外側ガラス板、ポリマー中間層、および内側ガラス板を備え、ポリマー中間層は、外側ガラス板と内側ガラス板との間に挟まれており、外側ガラス板は、対向する第1の表面および第2の表面を有し、第2の表面はポリマー中間層に面しており、内側ガラス板は、対向する第3の表面および第4の表面を有し、第3の表面はポリマー中間層に面しており、ウインドシールドは、情報収集領域および非情報収集領域を含む。第4の表面には反射増強層が設けれており、反射増強層は、情報収集領域および非情報収集領域を覆い、反射増強層は、380nm~780nmのP偏光に対する非情報収集領域の反射率を向上させるために用いられる。情報収集領域には最外層の媒質層がさらに設けられており、最外層の媒質層は、第4の表面から離れた反射増強層の片側の表面に設けられており、最外層の媒質層および反射増強層は、780nm~980nmの近赤外線に対する情報収集領域の透過率を向上させるために用いられる。
【0007】
反射増強層は100nm~500nmの厚さを有し、反射増強層は少なくとも1つの積層構造を含み、積層構造は、第4の表面から外側ガラス板から離れる方向に向かって、順次に堆積された高屈折率層および低屈折率層を含み、高屈折率層は1.7~2.7の屈折率を有し、低屈折率層は1.3~1.6の屈折率を有する。
【0008】
高屈折率層は複数の高屈折率サブ層を含み、または、反射増強層は少なくとも2つの積層構造を含み、複数の高屈折率層は、少なくとも1つの第1の高屈折率層および少なくとも1つの第2の高屈折率層を含み、第1の高屈折率層は単層の高屈折率サブ層であり、第2の高屈折率層は複数の高屈折率サブ層を含み、
および/または、
低屈折率層は複数の低屈折率サブ層を含み、または、反射増強層は少なくとも2つの積層構造を含み、複数の低屈折率層は、少なくとも1つの第1の低屈折率層および少なくとも1つの第2の低屈折率層を含み、第1の低屈折率層は単層の低屈折率サブ層であり、第2の低屈折率層は複数の低屈折率サブ層を含む。
【0009】
少なくとも1つの第2の高屈折率層は、順に積層された第1の高屈折率サブ層および第2の高屈折率サブ層を含み、第1の高屈折率サブ層は、第2の高屈折率サブ層よりも第4の表面に近く、第1の高屈折率サブ層は1.7~2.04の屈折率を有し、第2の高屈折率サブ層は2.05~2.7の屈折率を有する。
【0010】
第1の高屈折率サブ層の材料はSiOxNyであり、1<x≦3、1<y<3であり、第1の高屈折率サブ層は27nm~51nmの厚さを有し、第2の高屈折率サブ層は45nm~60nmの厚さを有する。
【0011】
最外層の媒質層は10nm~140nmの厚さを有し、最外層の媒質層は少なくとも1つの媒質サブ層を含み、媒質サブ層は1.4~2.7の屈折率を有する。
【0012】
いずれか1つの媒質サブ層は2.0~2.7の屈折率を有し、媒質サブ層の材料はZnSnOx、ZnAlOx、TiOx、NbOx、SiNx、ZrOx、ZrSiNxのうちの少なくとも一種である。
【0013】
いずれか1つの媒質サブ層は2.2~2.7の屈折率を有し、最外層の媒質層は10nm~70nmの厚さを有する。
【0014】
情報収集領域は、入射角65°で入射される780nm~980nmの近赤外線に対して80%以上の透過率を有し、非情報収集領域は、入射角65°で入射される380nm~780nmのP偏光に対して20%以上の反射率を有する。
【0015】
入射角65°で入射される波長629nmのP偏光に対する非情報収集領域の反射率がY1であり、入射角65°で入射される波長529nmのP偏光に対する非情報収集領域の反射率がY2であり、入射角65°で入射される波長469nmのP偏光に対する非情報収集領域の反射率がY3である。|Y1-Y2|≦2.5%、|Y2-Y3|≦2.5%、|Y1-Y3|≦2.5%である。
【0016】
Y1は20%以上であり、Y2は20%以上であり、Y3は20%以上である。
【0017】
ウインドシールドは疎水層をさらに備え、疎水層は、反射増強層から離れた最外層の媒質層の片側の表面に積層されている。
【0018】
疎水層は110°より大きい水接触角を有する。
【0019】
疎水層は、0.3Jm-2以下の表面エネルギーを有し、1.6以下の屈折率を有する。
【0020】
本出願はウインドシールドアセンブリを提供する。ウインドシールドアセンブリは、ライダーと、ヘッドアップディスプレイ投影装置と、上記のウインドシールドとを備える。ライダーは、780nm~980nmの近赤外線を放出しおよび受けるために用いられ、近赤外線は信号取得領域を通過し、ヘッドアップディスプレイ投影装置は、380nm~780nmのP偏光を発生するために用いられ、P偏光は非信号取得領域に入射される。
【0021】
ヘッドアップディスプレイ投影装置によって発生されたP偏光は、少なくとも90%のP偏光成分を含む。
【0022】
ライダーによって放出された近赤外線は、少なくとも50%のP偏光成分を含む。
【0023】
ヘッドアップディスプレイ投影装置によって発生されたP偏光は、100%のP偏光成分を含み、ライダーによって放出された近赤外線は、100%のP偏光成分を含む。
【0024】
本出願は、ウインドシールド及びウインドシールドアセンブリを提供する。反射増強層を設け、局所的に最外層の媒質層を追加することにより、380nm~780nmのP偏光に対するウインドシールドの反射率を増加させるだけではなく、780nm~980nmの近赤外線に対するウインドシールドの透過率を増加させることができ、従って、ウインドシールドをライダー及びヘッドアップディスプレイ投影装置と組み合わせて使用することができ、ライダーの高精度の測定を実現し、ヘッドアップディスプレイ画像の赤色、緑色、青色という3色がより均一化され、ライダーが最大120°の水平視野角(Field of View、FOV)内で正常に作業できることを保証し、ライダーの検出範囲と検出精度を向上させ、内蔵式ライダーの作業の安定性と正確性を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本出願の第1の実施例で提供されるウインドシールドの断面図である。
【
図2】
図1に示されるウインドシールドの上面図である。
【
図3】
図1に示されるウインドシールドにおける反射増強層の三例の構造を示す概略図である。
【
図4】
図1に示されるウインドシールドにおける最外層の媒質層の構造を示す概略図である。
【
図5】本出願の第2の実施例で提供されるウインドシールドの断面図である。
【
図6】本出願の実施例で提供されるウインドシールドアセンブリの構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面と結び合わせて本出願の内容をさらに説明する。
【0027】
図1および
図2を参照すると、
図1は、本出願の第1の実施例で提供されるウインドシールド100の断面図であり、
図2は、
図1に示されるウインドシールド100の上面図である。ウインドシールド100は、順に積層された、合わせガラス、反射増強層40、および最外層の媒質層50を備える。合わせガラスは、順に積層された、外側ガラス板10、ポリマー中間層30、および内側ガラス板20を備える。ポリマー中間層30は、外側ガラス板10と内側ガラス板20との間に挟まれている。内側ガラス板20は、ウインドシールド100が車両に取り付けられた後、車両の内部に向いている。反射増強層40は内側ガラス板20に積層され、最外層の媒質層50は反射増強層40に積層されている。
【0028】
ウインドシールド100は、情報収集領域S1および非情報収集領域S2を含み、情報収集領域S1と非情報収集領域S2とは重なっていない。情報収集領域S1は、情報収集システム(図示せず)の情報収集に信号透過の窓領域を提供するために用いられる。ウインドシールド100が車両に取り付けられた後、情報収集システムは車両の内部に設けられ、情報収集システムによって放出され及び/又は受けられる信号は、ウインドシールド100の情報収集領域S1を透過する。本出願における情報収集システムは、ライダー、光学センサー、赤外線カメラ、可視光カメラ等を含むが、これらに限定されなく、本実施例では、ライダーを情報収集システムの例として説明する。非情報収集領域S2の少なくとも一部の領域は、ヘッドアップディスプレイ(Head Up Display、HUD)に用いられ、すなわち、HUD領域として走行速度、ダイナミックなナビゲーション、交通安全警告、ビジネス街情報等の情報を表示するために用いられる。ウインドシールド100の面積に対する情報収集領域S1の面積の割合は最大20%であり、ウインドシールド100の面積に対する非情報収集領域S2の面積の割合は最小50%である。
【0029】
外側ガラス板10は、対向する第1の表面11および第2の表面12を有し、第2の表面12はポリマー中間層30に面しており、内側ガラス板20は、対向する第3の表面21および第4の表面22を有し、第3の表面21はポリマー中間層30に面している。ウインドシールド100が車両に取り付けられた後、内側ガラス板20の第4の表面22は、車両の内部に取り付けられた情報収集システムに面している。
【0030】
反射増強層40は内側ガラス板20の第4の表面22に積層され、反射増強層40は、情報収集領域S1および非情報収集領域S2を覆っている。具体的には、反射増強層40は、対向する第1側の表面41および第2側の表面42を有し、第1側の表面41は、内側ガラス板20の第4の表面22に付着し、第2側の表面42は、第4の表面22から離れている。本出願では、反射増強層40は、380nm~780nmのP偏光に対する非情報収集領域S2の反射率を向上させるために用いられる。第4の表面22に反射増強層40を設けることにより、380nm~780nmのP偏光に対する非情報収集領域S2の反射率を向上させ、入射角65°で入射される380nm~780nmのP偏光に対する非情報収集領域S2の反射率を20%以上とし、従って、鮮明でゴーストのないヘッドアップディスプレイ機能を実現することができる。
【0031】
1つの実施例では、入射角65°で入射される波長629nmのP偏光(赤色P偏光)に対する非情報収集領域S2の反射率がY1であり、入射角65°で入射される波長529nmのP偏光(緑色P偏光)に対する非情報収集領域S2の反射率がY2であり、入射角65°で入射される波長469nmのP偏光(青色P偏光)に対する非情報収集領域S2の反射率がY3であり、|Y1-Y2|≦2.5%、|Y2-Y3|≦2.5%、|Y1-Y3|≦2.5%である。すなわち、赤色、緑色、青色という3色のP偏光に対する非情報収集領域S2の反射率のうち、任意2つの反射率の差が2.5%以下となるように制御する。これにより、HUD画像の赤色、緑色、青色という3色をより均一にすることができる。いくつかの実施例では、Y1≧20%、Y2≧20%、Y3≧20%である。
【0032】
情報収集領域S1には最外層の媒質層50がさらに設けられており、最外層の媒質層50は少なくとも情報収集領域S1を覆い、最外層の媒質層50は、第4の表面22から離れた反射増強層40の第2側の表面42に設けられている。最外層の媒質層50は、反射増強層40に積層された後、反射増強層40と共同で、780nm~980nmの近赤外線に対して反射低減効果を有する反射低減構造を形成することにより、780nm~980nmの近赤外線に対する情報収集領域S1の透過率を向上させ、入射角65°で入射される780nm~980nmの近赤外線に対する情報収集領域S1の透過率を80%以上にし、ライダーの正常な作業及び高精度測定の要求を満たすことができる。
【0033】
最外層の媒質層50は少なくとも1つの媒質サブ層を含み、媒質サブ層は1.4~2.7の屈折率を有する。最外層の媒質層50は、1つの媒質サブ層のみであってもよく、多層の媒質サブ層であってもよい。媒質サブ層の材料は、SiO2、SiOxNy、ZnSnOx、ZnAlOx、TiOx、NbOx、SiNx、ZrOx、ZrSiNxのうちの少なくとも1種を採用する。好ましくは、最外層の媒質層50は10nm~140nmの厚さを有し、すなわち、媒質サブ層の合計厚さは10nm~140nmである。最外層の媒質層50は、入射角0°~60°、0°~65°、さらには0°~74°で入射される780nm~980nmの近赤外線に対する情報収集領域S1の透過率を向上させることができるので、ライダーは、最大120°の水平FOV内で正常に作業することができる。
【0034】
本出願では、反射増強層40は少なくとも1つの積層構造を含み、積層構造は、第4の表面から外側ガラス板から離れる方向に向かって、順次に堆積された高屈折率層および低屈折率層を含み、高屈折率層は1.7~2.7の屈折率を有し、低屈折率層は1.3~1.6の屈折率を有する。反射増強層40に積層構造を設けることにより、380nm~780nmのP偏光に対する反射率を向上させることができる。具体的には、例えば、反射増強層40が1つの積層構造を含むことができ、すなわち、第4の表面22/高屈折率層/低屈折率層という構造が形成されている。または、反射増強層40が2つの積層構造を含むことができ、すなわち、第4の表面22/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層という構造が形成されている。または、反射増強層40が3つの積層構造を含むことができ、すなわち、第4の表面22/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層という構造が形成されている。または、反射増強層40が4つの積層構造を含むことができ、すなわち、第4の表面22/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層という構造が形成されている。または、反射増強層40が5つの積層構造を含むことができ、すなわち、第4の表面22/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層という構造が形成されている。さらには、反射増強層40がより多くの積層構造を含むことができる。
【0035】
少なくとも1つの高屈折率層は、少なくとも2つの高屈折率サブ層を含み、および/または、少なくとも1つの低屈折率層は、少なくとも2つの低屈折率サブ層を含む。本出願における「Aおよび/またはB」は、A、B、AおよびBという3つの方案を含む。
【0036】
具体的には、1つの実施例では、高屈折率層は複数の高屈折率サブ層を含む。「複数」とは、2つ以上を意味する。すなわち、反射率増加層40が1つの積層構造を含む場合、1つの積層構造における高屈折率層は、複数の高屈折率サブ層を含む。増反射層40が2つ以上の積層構造を含む場合、各積層構造における高屈折率層は、いずれも複数の高屈折率サブ層を含む。
【0037】
もう1つの実施例では、反射増強層40は少なくとも2つの積層構造を含む。すなわち、反射増強層40が2つ以上の積層構造を含む場合、反射増強層40は複数の高屈折率層を含み、複数の高屈折率層は第1の高屈折率層および第2の高屈折率層を含み、第1の高屈折率層は少なくとも1つあり、第2の高屈折率層は少なくとも1つある。第1の高屈折率層は単層の高屈折率サブ層であり、第2の高屈折率層は複数の高屈折率サブ層を含む。
【0038】
具体的には、1つの実施例では、低屈折率層は複数の低屈折率サブ層を含む。すなわち、反射増強層40が1つの積層構造を含む場合、1つの積層構造における低屈折率層は、複数の低屈折率サブ層を含む。反射増強層40が2つ以上の積層構造を含む場合、各積層構造における低屈折率層は、いずれも複数の低屈折率サブ層を含む。
【0039】
もう1つの実施例では、反射増強層40は少なくとも2つの積層構造を含む。すなわち、反射増強層40が2つ以上の積層構造を含む場合、反射増強層40は複数の低屈折率層を含み、複数の低屈折率層は第1の低屈折率層および第2の低屈折率層を含み、第1の低屈折率層は少なくとも1つあり、第2の低屈折率層は少なくとも1つある。第1の低屈折率層は単層の低屈折率サブ層であり、第2の低屈折率層は複数の低屈折率サブ層を含む。
【0040】
好ましくは、反射率増加層40は、100nm~500nmの厚さを有する。
【0041】
図3を参照すると、
図3は、
図1に示されるウインドシールド100における反射増強層40の三例の具体的な構造を示す概略図である。
図3の(a)は、1つの積層構造、すなわち、高屈折率層A/低屈折率層Bを含む反射増強層40を示す。高屈折率層Aは2つの高屈折率サブ層を含み、すなわち、高屈折率層Aは順に積層された第1の高屈折率サブ層A1および第2の高屈折率サブ層A2を含む。第1の高屈折率サブ層A1は、第2の高屈折率サブ層A2よりも第4の面22に近い。本実施例では、第1の高屈折率サブ層A1は第4の表面22に付着し、第2の高屈折率サブ層A2は第1の高屈折率サブ層A1に積層されている。第1の高屈折率サブ層A1は1.7~2.04の屈折率を有し、第2の高屈折率サブ層A2は2.05~2.7の屈折率を有する。好ましくは、第1の高屈折率サブ層A1の材料はSiO
xN
yであり、1<x≦3、1<y<3であり、第1の高屈折率サブ層A1は27nm~51nmの厚さを有し、第2の高屈折率サブ層A2は45nm~60nmの厚さを有する。
図3の(b)は、1つの積層構造、すなわち、高屈折率層A/低屈折率層Bを含む反射増強層40を示す。
図3の(c)は、2つの積層構造、すなわち、高屈折率層A/低屈折率層B/高屈折率層A/低屈折率層Bを含む反射増強層40を示す。
【0042】
本出願では、高屈折率層の材料は、SiNx、SiAlNx、SiBNx、SiTiNx、SiZrNx、TiOx、NbOx、ZrOx、SiNxOy、SiBNxOy、SiTiNxOy、SiAlNxOy、SiZrNxOy、ZnOx、ZnAlOx、ZnOx、ZnSnOx、のうちのいずれか1種を採用できる。低屈折率層の材料は、SiOx、SiBOx、SiTiOx、SiAlOx、SiZrOxのうちのいずれか1種を採用でき、低屈折率層は35nm~60nmの厚さを有する。
【0043】
図4を参照すると、
図4は、
図1に示されるウインドシールド100における最外層の媒質層50の構造を示す概略図である。
図4において、(a)は、1つの媒質サブ層のみである最外層の媒質層50の構造を示す概略図であり、(b)は、2つの媒質サブ層を有する高屈折率層50の構造を示す概略図である。
図4の(a)に示されるように、最外層の媒質層50は、1層の媒質サブ層511のみであり、媒質サブ層511は2.2~2.7の屈折率および10nm~70nmの厚さを有する。
図4の(b)に示されるように、最外層の媒質層50は、2層の媒質サブ層、すなわち、第1の媒質サブ層521および第2の媒質サブ層522を含む。第1の媒質サブ層521および第2の媒質サブ層522は、10nm~140nmの合計厚さを有し、第1の媒質サブ層521は、反射増強層40の第2側の表面42と直接接触し、第1の媒質サブ層521は2.0~2.7の屈折率を有し、第2の媒質サブ層522は、反射増強層40の第2側の表面42から離れて設けられており、第2の媒質サブ層522は2.2~2.7の屈折率を有する。これに限定されなく、本出願では、別の例として、最外層の媒質層50は1つの媒質サブ層のみであり、1つの媒質サブ層は1.4~1.6、または1.7~2.0の屈折率を有する。さらに別の例として、最外層の媒質層50は2つの媒質サブ層を含み、1層の媒質サブ層は1.4~1.9の屈折率を有し、もう1層の媒質サブ層は2.0~2.7の屈折率を有する。理解できるように、別の実施例では、最外層の媒質層50は、例えば3層、5層、8層などの複数層の媒質サブ層を含むことができる。
【0044】
図5は、本出願の第2の実施例で提供されるウインドシールド100の断面図である。本実施例のウインドシールド100は疎水層60をさらに備え、且つ疎水層60が反射増強層40から離れた最外層の媒質層50の片側の表面に積層されている点で、
図1のウインドシールド100と異なる。具体的には、
図5のウインドシールド100は、順に積層された、外側ガラス板10、ポリマー中間層30、内側ガラス板20、反射増強層40、高屈折率層50、および疎水層60を含む。疎水層60は、110°より大きい水接触角および50nm未満の厚さを有し、疎水、防汚等の機能を有し、さらには指紋防止効果を有する。
【0045】
いくつかの実施例では、疎水層60は、ゾル-ゲル法によって調製された有機ポリマーフィルム層であり、例えば、疎水層60の材料は、防指紋(anti-fingerprint、AF)材料であってもよい。AF材料は、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、トリデカフルオロトリエトキシシラン、デカトリフルオロプロピルトリメトキシシラン(decatrifluoropropyltrimethoxysilane)、ドデカフルオロヘプチルプロピルトリメトキシシラン(dodecafluoroheptylpropyltrimethoxysilane)、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロドデシルシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、または3,3,3-トリフルオロプロピルトリクロロシランのうちの少なくとも1種であってもよい。
【0046】
いくつかの実施例では、疎水層60の材料は、低い表面エネルギーを有するAF材料であり、例えば、0.3Jm-2以下の表面エネルギーおよび1.6以下の屈折率を有するAF材料である。低い表面エネルギーを有する材料を使うことで、防指紋効果により優れる。
【0047】
本出願のいくつかの実施例では、外側ガラス板10及び内側ガラス板20のうちの少なくとも1つは超透明ガラス(超クリアガラス)である。好ましくは、外側ガラス板10及び内側ガラス板20の両方も超透明ガラスである。超透明ガラスの全鉄含有量は0.015%wt以下であり、超透明ガラスの可視光透過率は91%以上である。超透明ガラスを採用することは、ライダーによって放出されおよび受けられる780nm~980nmの近赤外線に対するウインドシールド100の透過率を向上させて、ライダーの検出精度を向上させることに有利である。ポリマー中間層30は、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、及びイオン性中間膜(SGP)のうちの少なくとも1種であってもよい。
【0048】
図6を参照すると、本出願の実施例は、ウインドシールド100、ライダー200、およびヘッドアップディスプレイ投影装置300を備えるウインドシールドアセンブリ1000をさらに提供する。ライダー200およびヘッドアップディスプレイ投影装置300の両方は、車両の内部に取り付けられている。ライダー200は、780nm~980nmの近赤外線を放出し及び受けるために用いられる。近赤外線は信号取得領域S1を通過する。本実施例では、ライダー200によって放出された近赤外線は、最外層の媒質層50、増加反射層40、内側ガラス板20、ポリマー中間層30、および外側ガラス板10を順に透過して車両の外部に到達する。受けられる近赤外線は、外側ガラス板10、ポリマー中間層30、内側ガラス板20、反射増強層40および最外層の媒質層50を順に透過し、最終的に車両の内部に位置するライダー200によって受けられる。ヘッドアップディスプレイ投影装置300は、380nm~780nmのP偏光を発生させるために用いられ、P偏光は非信号取得領域S2に入射される。本実施例では、P偏光は非信号取得領域S2に位置する反射増強層40に入射される。
【0049】
信号取得領域S1の最外層の媒質層50は反射増強層40とともに反射低減構造を形成することにより、780nm~980nmの近赤外線に対する信号取得領域S1の透過率を向上させる。近赤外線は、P偏光成分およびS偏光成分を含む。ライダーの検出精度をさらに向上させるために、近赤外線は、少なくとも50%のP偏光成分を含むことが好ましく、具体的には、例えば、50%、55%、60%、70%、80%、90%、95%、100%などのP偏光成分を含む。より好ましくは、近赤外線は100%のP偏光成分を含む。100%のP偏光成分を含むことは、ライダーによって放出される近赤外線が純粋なP偏光であることを意味し、これは、完全にまたはほぼ完全にP偏光であると理解することができる。
【0050】
非信号取得領域S2の反射増強層40は、380nm~780nmのP偏光を反射することができる。ヘッドアップディスプレイ画像の鮮明度及びコントラストを向上させるために、好ましくは、ヘッドアップディスプレイ投影装置によって発生されるP偏光は、少なくとも90%のP偏光成分を含み、具体的には、例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%のP偏光成分を含む。より好ましくは、ヘッドアップディスプレイ投影装置によって発生されるP偏光は、100%のP偏光成分を含み、100%のP偏光成分を含むことは、ヘッドアップディスプレイ投影装置によって発生されるP偏光が純粋なP偏光であることを意味し、これは、完全にまたはほぼ完全にP偏光であると理解することができる。
【実施例】
【0051】
以下、反射増強層40および最外層の媒質層50の具体例をもってウインドシールド100を説明する。
【0052】
Rf(λ)-θは、第4の表面側から入射角θで入射される波長λのP偏光に対するウインドシールドの非情報収集領域の反射率を示す。本出願では、Rf(469nm)-65°、Rf(529nm)-65°、Rf(629nm)-65°、すなわち、第4の表面側から入射角65°で入射される波長469nm、529nm、または629nmのP偏光に対する非情報収集領域の反射率を例とする。
【0053】
L、a、bは、CIE Labカラーモデルに従って、ウインドシールド100の第1の表面11で検出された反射色を示す。Lは輝度値であり、aは赤-緑の色度値であり、bは黄-青の色度値である。
【0054】
TLは、ISO 9050規格に従って検出および計算された可視光透過率を示す。可視光の波長範囲は380nm~780nmである。
【0055】
T(λ)-θは、入射角θで入射される波長λの近赤外線に対するウインドシールドの情報収集領域の透過率を示す。本出願では、T(905)-θ°、T(905)-15°、T(905)-30°、T(905)-45°、T(905)-60°、T(905)-65°、すなわち、それぞれ入射角0°、15°、30°、45°、60°、65°で入射される波長905nmの近赤外線に対する情報収集領域の透過率を例とする。
<実施例1>
【0056】
実施例1のウインドシールド100は、順に積層された、合わせガラス、反射増強層40、最外層の媒質層50、および疎水層60を備える。合わせガラスは、順に積層された、外側ガラス板10、ポリマー中間層30、および内側ガラス板20を備える。外側ガラス板10及び内側ガラス板20は、いずれも厚さ2.1mmの超クリアガラスであり、ポリマー中間層30は、厚さ0.76mmのポリビニルブチラール(Polyvinyl butyral、PVB)である。
【0057】
反射増強層40は、マグネトロンスパッタリング成膜ラインによりコーティング堆積を行うことで作製される。具体的に、内側ガラス板20の第4の表面22から離れる方向に沿って、第4の表面22に第1の高屈折率サブ層SiOxNy(屈折率n=1.71、消光係数(extinction coefficient)k=0.00185、厚さ50.2nm)、第2の高屈折率サブ層TiOx(厚さ52.7nm)、低屈折率層SiO2(厚さ117nm)を順に積層して堆積する。
【0058】
最外層の媒質層50は、マグネトロンスパッタリング成膜ラインおよびマスキング板により、局所的なコーティング堆積を行うことで作製される。具体的に、情報収集領域S1内の低屈折率層SiO2上に、1層の媒質サブ層Nb2O5(厚さ36.6nm)を直接的に堆積する。
【0059】
疎水層60については、反射増強層40および最外層の媒質層50を含む合わせガラスを作製した後、第4の表面22に1層の疎水層60をスプレーし、また、疎水層60を乾燥させる。疎水層60の材料は、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランであり、疎水層60の厚さは15nmである。疎水層60は、情報収集領域S1の最外層の媒質層50および非情報収集領域S2の反射増強層40を覆う。
<比較例1>
【0060】
比較例1はウインドシールドを提供し、比較例1のウインドシールドには最外層の媒質層50及び疎水層60が設けられていないという点で実施例1のウインドシールド100と異なる。
【0061】
実施例1及び比較例1のウインドシールドの光学指標を測定する。ウインドシールドの非情報収集領域S2に対して、P偏光反射率、可視光反射色、可視光透過率等をそれぞれ検出し、ウインドシールドの情報収集領域S1に対して、異なる入射角で入射される905nmの近赤外線の透過率を検出し、その結果を表1に記録する。
【0062】
【0063】
表1から分かるように、実施例1及び比較例1のいずれにおいても、非情報収集領域S2のP偏光反射率は20%より大きく、良好なヘッドアップディスプレイ機能を実現できる。特に、赤色(629nm)、緑色(529nm)及び青色(469nm)のP偏光に対する非情報収集領域S2の反射率も、いずれも20%より大きく、且つ互いの反射率の差は2.5%以下であることにより、ヘッドアップディスプレイ(HUD)領域において、HUD画像の赤色、緑色、青色という3色がより均一化される。また、非情報収集領域S2において、緑色(529nm)のP偏光に対する反射率は、赤色(629nm)または青色(469nm)のP偏光に対する反射率よりも大きい。非情報収集領域S2の反射色Lab値および可視光透過率TLは、ウインドシールドが自動車使用の安全要求を満たすことができるとともに、外部からウインドシールドを見たときにウインドシールドが見栄えの良いライトブルーを呈することができることをさらに示している。
【0064】
また、比較例1と比べて、実施例1のウインドシールドでは、情報収集領域S1において最外層の媒質層50が追加して設けられているため、情報収集領域S1は、入射角0°~65°で入射される905nmの近赤外線に対して80%より大きい高透過率を有する。比較例1の情報収集領域S1は、入射角0°~65°で入射される905nmの近赤外線に対してすべて80%未満の透過率を有する。また、入射される905nmの近赤外線に対する比較例1の情報収集領域S1の透過率は、入射角が大きくなるにつれて大幅に減少し、さらに70%より小さい。最外層の媒質層50は実施例1の反射増強層40とともに反射低減構造を形成することにより、入射角0°~65°で入射される905nmの近赤外線に対する実施例1の情報収集領域S1の透過率を8.1%~17.5%向上させる。これにより、ライダーが最大120°の水平視野角(FOV)内で正常に作業できることを満足させるので、ライダーの検出範囲と検出精度を向上させ、内蔵式ライダーの作業の安定性と正確性を実現できる。
【0065】
また、比較例1と比べて、実施例1のウインドシールドには、疎水層60がさらにコーティングされているため、実施例1のウインドシールドは、汚れおよび指紋を防止する機能を有し、ウインドシールドの清浄度を向上させることができる。
<実施例2>
【0066】
実施例2のウインドシールド100は、順に積層された、合わせガラス、反射増強層40、最外層の媒質層50、および疎水層60を備える。合わせガラスは、順に積層された、外側ガラス板10、ポリマー中間層30、および内側ガラス板20を備える。外側ガラス板10及び内側ガラス板20はいずれも、厚さ2.1mmの超クリアガラスであり、ポリマー中間層30は、厚さ0.76mmのポリビニルブチラールである。
【0067】
反射増強層40は、マグネトロンスパッタリング成膜ラインによりコーティング堆積を行うことで作製される。具体的に、第4の表面22から離れる方向に沿って、第4の表面22に、高屈折率層SiOxNy(屈折率n=1.71、消光係数k=0.00185、厚さ27.6nm)、低屈折率層SiO2(厚さ56.5nm)、高屈折率層TiOx(厚さ57.3nm)、低屈折率層SiO2(厚さ120.5nm)を順に積層して堆積する。
【0068】
最外層の媒質層50は、マグネトロンスパッタリング成膜ラインおよびマスキング板により、局所的なコーティング堆積を行うことで作製される。具体的に、情報収集領域S1内の低屈折率層SiO2上に、1層の媒質サブ層TiOx(厚さ25.5nm)を直接的に堆積する。
【0069】
疎水層60については、反射増強層40および最外層の媒質層50を含む合わせガラスを作製した後、第4の表面22に1層の疎水層60をスプレーし、また、疎水層60を乾燥させる。疎水層60の材料は、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランであり、疎水層60の厚さは15nmである。疎水層60は、情報収集領域S1の最外層の媒質層50および非情報収集領域S2の反射増強層40を覆う。
<比較例2>
【0070】
比較例2はウインドシールドを提供し、、比較例2のウインドシールドには最外層の媒質層50及び疎水層60が設けられていないという点で実施例2のウインドシールド100と異なる。
【0071】
実施例2及び比較例2のウインドシールドの光学指標を測定する。ウインドシールドの非情報収集領域S2に対して、P偏光反射率、可視光反射色、可視光透過率等をそれぞれ検出し、ウインドシールドの情報収集領域S1に対して、異なる入射角で入射される905nmの近赤外線の透過率を検出し、その結果を表2に記録する。
【0072】
【0073】
表2から分かるように、実施例2及び比較例2のいずれにおいても、非情報収集領域S2のP偏光反射率は20%より大きく、良好なヘッドアップディスプレイ機能を実現できる。特に、赤色(629nm)、緑色(529nm)及び青色(469nm)のP偏光に対する非情報収集領域S2の反射率も、いずれも20%より大きく、且つ互いの反射率の差は2.5%以下であることにより、ヘッドアップディスプレイ(HUD)領域において、HUD画像の赤色、緑色、青色という3色がより均一化される。また、非情報収集領域S2において、緑色(529nm)のP偏光に対する反射率は、赤色(629nm)または青色(469nm)のP偏光に対する反射率よりも大きい。非情報収集領域S2の反射色Lab値および可視光透過率TLは、ウインドシールドが自動車使用の安全要求を満たすことができるとともに、外部からウインドシールドを見たときにウインドシールドが見栄えの良いライトブルーを呈することができることをさらに示している。
【0074】
また、比較例2と比べて、実施例2のウインドシールドでは、情報収集領域S1において最外層の媒質層50が追加して設けられているため、情報収集領域S1は、入射角0°~65°で入射される905nmの近赤外線に対して80%より大きい高透過率を有する。比較例2の情報収集領域S1は、入射角0°~65°で入射される905nmの近赤外線に対してすべて80%未満の透過率を有する。また、入射される905nmの近赤外線に対する比較例2の情報収集領域S1の透過率は、入射角が大きくなるにつれて大幅に減少し、さらに70%より小さい。最外層の媒質層50は実施例1の反射増強層40とともに反射低減構造を形成することにより、入射角0°~65°で入射される905nmの近赤外線に対する実施例2の情報収集領域S1の透過率を8.3%~16.8%向上させる。これにより、ライダーが最大120°の水平視野角(FOV)内で正常に作業できることを満足させるので、ライダーの検出範囲と検出精度を向上させ、内蔵式ライダーの作業の安定性と正確性を実現できる。
【0075】
また、比較例2と比べて、実施例2のウインドシールドには、疎水層60がさらにコーティングされているため、実施例2のウインドシールドは、汚れおよび指紋を防止する機能を有し、ウインドシールドの清浄度を向上させることができる。
<実施例3>
【0076】
実施例3のウインドシールド100は、順に積層された、合わせガラス、反射増強層40、および最外層の媒質層50を含む。合わせガラスは、順に積層された、外側ガラス板10、ポリマー中間層30、および内側ガラス板20を備える。外側ガラス板10及び内側ガラス板20は、いずれも厚さ2.1mmの超クリアガラスであり、ポリマー中間層30は、厚さ0.76mmのポリビニルブチラールである。
【0077】
反射増強層40は、マグネトロンスパッタリング成膜ラインによりコーティング堆積を行うことで作製される。具体的に、第4の表面22から離れる方向に沿って、第4の表面22に、高屈折率層SiOxNy(屈折率n=1.71、消光係数k=0.00185、厚さ27.7nm)、低屈折率層SiO2(厚さ38.9nm)、第1の高屈折率サブ層SiNx(厚さ17.5nm)、第2の高屈折率サブ層TiOx(厚さ47.7nm)、低屈折率層SiO2(厚さ124.9nm)を順に積層して堆積する。
【0078】
最外層の媒質層50は、マグネトロンスパッタリング成膜ラインおよびマスキング板により、局所的なコーティング堆積を行うことで作製される。具体的に、情報収集領域S1内の低屈折率層SiO2上に、第1の媒質サブ層ZnSnOx(厚さ14.3nm)、第2の媒質サブ層TiOx(厚さ17.2nm)を直接的に堆積する。
<比較例3>
【0079】
比較例3ウインドシールドを提供し、比較例3のウインドシールドには最外層の媒質層50が設けられていない点で実施例3のウインドシールド100と異なる。
【0080】
実施例3及び比較例3のウインドシールドの光学指標を測定する。ウインドシールドの非情報収集領域S2に対して、P偏光反射率、可視光反射色、可視光透過率等をそれぞれ検出し、ウインドシールドの情報収集領域S1に対して、異なる入射角で入射される905nmの近赤外線の透過率を検出し、その結果を表3に記録する。
【0081】
【0082】
表3から分かるように、実施例3及び比較例3のいずれにおいても、非情報収集領域S2のP偏光反射率は20%より大きく、良好なヘッドアップディスプレイ機能を実現できる。特に、赤色(629nm)、緑色(529nm)及び青色(469nm)のP偏光に対する非情報収集領域S2の反射率も、いずれも20%より大きく、且つ互いの反射率の差は1.7%以下であることにより、ヘッドアップディスプレイ(HUD)領域において、HUD画像の赤色、緑色、青色という3色がより均一化される。また、非情報収集領域S2において、緑色(529nm)のP偏光に対する反射率は、赤色(629nm)または青色(469nm)のP偏光に対する反射率よりも大きい。非情報収集領域S2の反射色Lab値および可視光透過率TLは、ウインドシールドが自動車使用の安全要求を満たすことができるとともに、外部からウインドシールドを見たときにウインドシールドが見栄えの良いライトブルーを呈することができることをさらに示している。
【0083】
また、比較例3と比べて、実施例3のウインドシールドでは、情報収集領域S1において最外層の媒質層50が追加して設けられているため、情報収集領域S1は、入射角0°~65°で入射される905nmの近赤外線に対して80%より大きい高透過率を有する。比較例3の情報収集領域S1は、入射角0°~65°で入射される905nmの近赤外線に対して最大80.2%の透過率を有する。また、入射される905nmの近赤外線に対する比較例3の情報収集領域S1の透過率は、入射角が大きくなるにつれて大幅に減少し、さらに70%より小さい。最外層の媒質層50は実施例3の反射増強層40とともに反射低減構造を形成することにより、入射角0°~65°で入射される905nmの近赤外線に対する実施例3の情報収集領域S1の透過率を6.1%~15.9%向上させる。これにより、ライダーが最大120°の水平視野角(FOV)内で正常に作業できることを満足させるので、ライダーの検出範囲と検出精度を向上させ、内蔵式ライダーの作業の安定性と正確性を実現できる。
<実施例4~6>
【0084】
実施例4のウインドシールドは、実施例1のウインドシールドとほぼ同じであり、実施例4のウインドシールドの最外層の媒質層50の材料がSiOxNy(屈折率n=1.71、消光係数k=0.00185、厚さ78.5nm)であるという点で異なる。
【0085】
実施例5のウインドシールドは、実施例1のウインドシールドとほぼ同じであり、実施例5のウインドシールドの最外層の媒質層50が2つの媒質サブ層を含み、第1の媒質サブ層の材料がTiOx(厚さ13.4nm)であり、第2の媒質サブ層の材料がSiOxNy(屈折率n=1.71、消光係数k=0.00185、厚さ55.4nm)であるという点で異なる。
【0086】
実施例6のウインドシールドは、実施例1のウインドシールドとほぼ同じであり、実施例6のウインドシールドの最外層の媒質層50が2つの媒質サブ層を含み、第1の媒質サブ層の材料がZnSnOx(厚さ8.1nm)であり、第2の媒質サブ層の材料がSiO2(厚さ98.9nm)であるという点で異なる。
【0087】
実施例4~6のウインドシールドの光学指標を測定する。ウインドシールドの情報収集領域S1に対して、異なる入射角での905nmの近赤外線の透過率を測定し、その結果を表4に記録する。
【0088】
【0089】
表4から分かるように、実施例1と比べて、入射角65°で入射された905nmの近赤外線に対する実施例4~6の情報収集領域S1の透過率が80%未満であるものの、比較例1と比べて、入射角0°~60°で入射された905nmの近赤外線に対する実施例4~6の情報収集領域S1の高透過率が80%より高く、入射角0°~60°で入射された905nmの近赤外線に対する比較例1の情報収集領域S1の透過率がすべて80%より小さい。また、入射される905nmの近赤外線に対する比較例1の情報収集領域S1の透過率は、入射角が大きくなるにつれて大幅に減少し、さらに70%より小さい。最外層の媒質層50は実施例4~6の反射層40とともに反射低減構造を形成することにより、入射角0°~60°で入射される905nmの近赤外線に対する実施例4~6の情報収集領域S1の透過率を2.6%~14.1%向上させる。これにより、ライダーの検出範囲と検出精度を向上させ、内蔵式ライダーの作業の安定性と正確性を実現できる。
【0090】
以上の内容は、本出願のウインドシールドの具体的な説明であるが、本出願は、上述した具体的な実施形態の内容によって限定されないので、本出願の技術的なポイントに基づくすべての改良、同等の変更、置き換え等は、本出願の保護範囲に属する。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、ガラス製品の技術分野に関し、特にウインドシールドおよびウインドシールドアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
自動運転技術の発展及び自動車のフロントガラスの付加機能に対するニーズのハイエンド化に伴い、自動車のフロントガラスには、例えば、ヘッドアップディスプレイ(HUD)機能、電気加熱による除霜・除曇機能、赤外線反射断熱機能、紫外線遮断機能など、より多くの機能が付与されている。
【0003】
ライダーは、レーザービームを放出することでターゲットの位置、速度などの特徴量を検出するレーダーシステムである。ライダーは、高い検出精度と高い正確さなどの特徴があるので、自動運転の分野でかけがえのない役割を果たしている。ライダーを自動車に取り付ける方法は、外付け式および内蔵式という2種がある。外付け式の取り付けは、通常、ライダーを自動車のルーフ、ボンネット、フェンダー、またはフロントグリルなどに取り付けることを指す。このような取り付け方法では、ライダーが外部の空気にさらされるため、ライダーの精度が雨、風、ほこり、高温、低温などの天気、環境の質量に影響される。内蔵式の取り付けはライダーを自動車の運転室内に取り付けることを指し、天気および環境の影響を避けることができる。
【0004】
内蔵式で取り付けられるライダーの場合、ライダーによって放出されおよび受けられる波長905nmまたは波長1550nmの信号は、いずれもフロントガラスを通過する必要がある。しかし、現在、断熱のニーズを満たすために用いられるフロントガラスは、780~2500nmの赤外線に対して高い遮断率を有するので、ライダーの正常な作業および高精度測定の要求を満たすことができない。
【発明の概要】
【0005】
本出願の目的は、ライダーの信号に対して高い透過率を有し、内蔵式ライダーの使用要求を満たすとともに、ヘッドアップディスプレイ機能を実現できるウインドシールド及びウインドシールドアセンブリを提供することである。
【0006】
本出願はウインドシールドを提供する。ウインドシールドは、外側ガラス板、ポリマー中間層、および内側ガラス板を備え、ポリマー中間層は、外側ガラス板と内側ガラス板との間に挟まれており、外側ガラス板は、対向する第1の表面および第2の表面を有し、第2の表面はポリマー中間層に面しており、内側ガラス板は、対向する第3の表面および第4の表面を有し、第3の表面はポリマー中間層に面しており、ウインドシールドは、情報収集領域および非情報収集領域を含む。第4の表面には反射増強層が設けれており、反射増強層は、情報収集領域および非情報収集領域を覆い、反射増強層は、380nm~780nmのP偏光に対する非情報収集領域の反射率を向上させるために用いられる。情報収集領域には媒質層がさらに設けられており、媒質層は、第4の表面から離れた反射増強層の片側の表面に設けられており、媒質層および反射増強層は、780nm~980nmの近赤外線に対する情報収集領域の透過率を向上させるために用いられる。
【0007】
反射増強層は100nm~500nmの厚さを有し、反射増強層は少なくとも1つの積層構造を含み、積層構造は、第4の表面から外側ガラス板から離れる方向に向かって、順次に堆積された高屈折率層および低屈折率層を含み、高屈折率層は1.7~2.7の屈折率を有し、低屈折率層は1.3~1.6の屈折率を有する。
【0008】
高屈折率層は複数の高屈折率サブ層を含み、または、反射増強層は少なくとも2つの積層構造を含み、複数の高屈折率層は、少なくとも1つの第1の高屈折率層および少なくとも1つの第2の高屈折率層を含み、第1の高屈折率層は単層の高屈折率サブ層であり、第2の高屈折率層は複数の高屈折率サブ層を含み、
および/または、
低屈折率層は複数の低屈折率サブ層を含み、または、反射増強層は少なくとも2つの積層構造を含み、複数の低屈折率層は、少なくとも1つの第1の低屈折率層および少なくとも1つの第2の低屈折率層を含み、第1の低屈折率層は単層の低屈折率サブ層であり、第2の低屈折率層は複数の低屈折率サブ層を含む。
【0009】
少なくとも1つの第2の高屈折率層は、順に積層された第1の高屈折率サブ層および第2の高屈折率サブ層を含み、第1の高屈折率サブ層は、第2の高屈折率サブ層よりも第4の表面に近く、第1の高屈折率サブ層は1.7~2.04の屈折率を有し、第2の高屈折率サブ層は2.05~2.7の屈折率を有する。
【0010】
第1の高屈折率サブ層の材料はSiOxNyであり、1<x≦3、1<y<3であり、第1の高屈折率サブ層は27nm~51nmの厚さを有し、第2の高屈折率サブ層は45nm~60nmの厚さを有する。
【0011】
媒質層は10nm~140nmの厚さを有し、媒質層は少なくとも1つの媒質サブ層を含み、媒質サブ層は1.4~2.7の屈折率を有する。
【0012】
いずれか1つの媒質サブ層は2.0~2.7の屈折率を有し、媒質サブ層の材料はZnSnOx、ZnAlOx、TiOx、NbOx、SiNx、ZrOx、ZrSiNxのうちの少なくとも一種である。
【0013】
いずれか1つの媒質サブ層は2.2~2.7の屈折率を有し、媒質層は10nm~70nmの厚さを有する。
【0014】
情報収集領域は、入射角65°で入射される780nm~980nmの近赤外線に対して80%以上の透過率を有し、非情報収集領域は、入射角65°で入射される380nm~780nmのP偏光に対して20%以上の反射率を有する。
【0015】
入射角65°で入射される波長629nmのP偏光に対する非情報収集領域の反射率がY1であり、入射角65°で入射される波長529nmのP偏光に対する非情報収集領域の反射率がY2であり、入射角65°で入射される波長469nmのP偏光に対する非情報収集領域の反射率がY3である。|Y1-Y2|≦2.5%、|Y2-Y3|≦2.5%、|Y1-Y3|≦2.5%である。
【0016】
Y1は20%以上であり、Y2は20%以上であり、Y3は20%以上である。
【0017】
ウインドシールドは疎水層をさらに備え、疎水層は、反射増強層から離れた媒質層の片側の表面に積層されている。
【0018】
疎水層は110°より大きい水接触角を有する。
【0019】
疎水層は、0.3Jm-2以下の表面エネルギーを有し、1.6以下の屈折率を有する。
【0020】
本出願はウインドシールドアセンブリを提供する。ウインドシールドアセンブリは、ライダーと、ヘッドアップディスプレイ投影装置と、上記のウインドシールドとを備える。ライダーは、780nm~980nmの近赤外線を放出しおよび受けるために用いられ、近赤外線は情報収集領域を通過し、ヘッドアップディスプレイ投影装置は、380nm~780nmのP偏光を発生するために用いられ、P偏光は非情報収集領域に入射される。
【0021】
ヘッドアップディスプレイ投影装置によって発生された偏光は、少なくとも90%のP偏光成分を含む。
【0022】
ライダーによって放出された近赤外線は、少なくとも50%のP偏光成分を含む。
【0023】
ヘッドアップディスプレイ投影装置によって発生された偏光は、100%のP偏光成分を含み、ライダーによって放出された近赤外線は、100%のP偏光成分を含む。
【0024】
本出願は、ウインドシールド及びウインドシールドアセンブリを提供する。反射増強層を設け、局所的に媒質層を追加することにより、380nm~780nmのP偏光に対するウインドシールドの反射率を増加させるだけではなく、780nm~980nmの近赤外線に対するウインドシールドの透過率を増加させることができ、従って、ウインドシールドをライダー及びヘッドアップディスプレイ投影装置と組み合わせて使用することができ、ライダーの高精度の測定を実現し、ヘッドアップディスプレイ画像の赤色、緑色、青色という3色がより均一化され、ライダーが最大120°の水平視野角(Field of View、FOV)内で正常に作業できることを保証し、ライダーの検出範囲と検出精度を向上させ、内蔵式ライダーの作業の安定性と正確性を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本出願の第1の実施例で提供されるウインドシールドの断面図である。
【
図2】
図1に示されるウインドシールドの上面図である。
【
図3】
図1に示されるウインドシールドにおける反射増強層の三例の構造を示す概略図である。
【
図4】
図1に示されるウインドシールドにおけ
る媒質層の構造を示す概略図である。
【
図5】本出願の第2の実施例で提供されるウインドシールドの断面図である。
【
図6】本出願の実施例で提供されるウインドシールドアセンブリの構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面と結び合わせて本出願の内容をさらに説明する。
【0027】
図1および
図2を参照すると、
図1は、本出願の第1の実施例で提供されるウインドシールド100の断面図であり、
図2は、
図1に示されるウインドシールド100の上面図である。ウインドシールド100は、順に積層された、合わせガラス、反射増強層40、およ
び媒質層50を備える。合わせガラスは、順に積層された、外側ガラス板10、ポリマー中間層30、および内側ガラス板20を備える。ポリマー中間層30は、外側ガラス板10と内側ガラス板20との間に挟まれている。内側ガラス板20は、ウインドシールド100が車両に取り付けられた後、車両の内部に向いている。反射増強層40は内側ガラス板20に積層され
、媒質層50は反射増強層40に積層されている。
【0028】
ウインドシールド100は、情報収集領域S1および非情報収集領域S2を含み、情報収集領域S1と非情報収集領域S2とは重なっていない。情報収集領域S1は、情報収集システム(図示せず)の情報収集に信号透過の窓領域を提供するために用いられる。ウインドシールド100が車両に取り付けられた後、情報収集システムは車両の内部に設けられ、情報収集システムによって放出され及び/又は受けられる信号は、ウインドシールド100の情報収集領域S1を透過する。本出願における情報収集システムは、ライダー、光学センサー、赤外線カメラ、可視光カメラ等を含むが、これらに限定されなく、本実施例では、ライダーを情報収集システムの例として説明する。非情報収集領域S2の少なくとも一部の領域は、ヘッドアップディスプレイ(Head Up Display、HUD)に用いられ、すなわち、HUD領域として走行速度、ダイナミックなナビゲーション、交通安全警告、ビジネス街情報等の情報を表示するために用いられる。ウインドシールド100の面積に対する情報収集領域S1の面積の割合は最大20%であり、ウインドシールド100の面積に対する非情報収集領域S2の面積の割合は最小50%である。
【0029】
外側ガラス板10は、対向する第1の表面11および第2の表面12を有し、第2の表面12はポリマー中間層30に面しており、内側ガラス板20は、対向する第3の表面21および第4の表面22を有し、第3の表面21はポリマー中間層30に面している。ウインドシールド100が車両に取り付けられた後、内側ガラス板20の第4の表面22は、車両の内部に取り付けられた情報収集システムに面している。
【0030】
反射増強層40は内側ガラス板20の第4の表面22に積層され、反射増強層40は、情報収集領域S1および非情報収集領域S2を覆っている。具体的には、反射増強層40は、対向する第1側の表面41および第2側の表面42を有し、第1側の表面41は、内側ガラス板20の第4の表面22に付着し、第2側の表面42は、第4の表面22から離れている。本出願では、反射増強層40は、380nm~780nmのP偏光に対する非情報収集領域S2の反射率を向上させるために用いられる。第4の表面22に反射増強層40を設けることにより、380nm~780nmのP偏光に対する非情報収集領域S2の反射率を向上させ、入射角65°で入射される380nm~780nmのP偏光に対する非情報収集領域S2の反射率を20%以上とし、従って、鮮明でゴーストのないヘッドアップディスプレイ機能を実現することができる。
【0031】
1つの実施例では、入射角65°で入射される波長629nmのP偏光(赤色P偏光)に対する非情報収集領域S2の反射率がY1であり、入射角65°で入射される波長529nmのP偏光(緑色P偏光)に対する非情報収集領域S2の反射率がY2であり、入射角65°で入射される波長469nmのP偏光(青色P偏光)に対する非情報収集領域S2の反射率がY3であり、|Y1-Y2|≦2.5%、|Y2-Y3|≦2.5%、|Y1-Y3|≦2.5%である。すなわち、赤色、緑色、青色という3色のP偏光に対する非情報収集領域S2の反射率のうち、任意2つの反射率の差が2.5%以下となるように制御する。これにより、HUD画像の赤色、緑色、青色という3色をより均一にすることができる。いくつかの実施例では、Y1≧20%、Y2≧20%、Y3≧20%である。
【0032】
情報収集領域S1には媒質層50がさらに設けられており、媒質層50は少なくとも情報収集領域S1を覆い、媒質層50は、第4の表面22から離れた反射増強層40の第2側の表面42に設けられている。媒質層50は、反射増強層40に積層された後、反射増強層40と共同で、780nm~980nmの近赤外線に対して反射低減効果を有する反射低減構造を形成することにより、780nm~980nmの近赤外線に対する情報収集領域S1の透過率を向上させ、入射角65°で入射される780nm~980nmの近赤外線に対する情報収集領域S1の透過率を80%以上にし、ライダーの正常な作業及び高精度測定の要求を満たすことができる。
【0033】
媒質層50は少なくとも1つの媒質サブ層を含み、媒質サブ層は1.4~2.7の屈折率を有する。媒質層50は、1つの媒質サブ層のみであってもよく、多層の媒質サブ層であってもよい。媒質サブ層の材料は、SiO2、SiOxNy、ZnSnOx、ZnAlOx、TiOx、NbOx、SiNx、ZrOx、ZrSiNxのうちの少なくとも1種を採用する。好ましくは、媒質層50は10nm~140nmの厚さを有し、すなわち、媒質サブ層の合計厚さは10nm~140nmである。媒質層50は、入射角0°~60°、0°~65°、さらには0°~74°で入射される780nm~980nmの近赤外線に対する情報収集領域S1の透過率を向上させることができるので、ライダーは、最大120°の水平FOV内で正常に作業することができる。
【0034】
本出願では、反射増強層40は少なくとも1つの積層構造を含み、積層構造は、第4の表面から外側ガラス板から離れる方向に向かって、順次に堆積された高屈折率層および低屈折率層を含み、高屈折率層は1.7~2.7の屈折率を有し、低屈折率層は1.3~1.6の屈折率を有する。反射増強層40に積層構造を設けることにより、380nm~780nmのP偏光に対する反射率を向上させることができる。具体的には、例えば、反射増強層40が1つの積層構造を含むことができ、すなわち、第4の表面22/高屈折率層/低屈折率層という構造が形成されている。または、反射増強層40が2つの積層構造を含むことができ、すなわち、第4の表面22/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層という構造が形成されている。または、反射増強層40が3つの積層構造を含むことができ、すなわち、第4の表面22/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層という構造が形成されている。または、反射増強層40が4つの積層構造を含むことができ、すなわち、第4の表面22/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層という構造が形成されている。または、反射増強層40が5つの積層構造を含むことができ、すなわち、第4の表面22/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層という構造が形成されている。さらには、反射増強層40がより多くの積層構造を含むことができる。
【0035】
少なくとも1つの高屈折率層は、少なくとも2つの高屈折率サブ層を含み、および/または、少なくとも1つの低屈折率層は、少なくとも2つの低屈折率サブ層を含む。本出願における「Aおよび/またはB」は、A、B、AおよびBという3つの方案を含む。
【0036】
具体的には、1つの実施例では、高屈折率層は複数の高屈折率サブ層を含む。「複数」とは、2つ以上を意味する。すなわち、反射率増加層40が1つの積層構造を含む場合、1つの積層構造における高屈折率層は、複数の高屈折率サブ層を含む。増反射層40が2つ以上の積層構造を含む場合、各積層構造における高屈折率層は、いずれも複数の高屈折率サブ層を含む。
【0037】
もう1つの実施例では、反射増強層40は少なくとも2つの積層構造を含む。すなわち、反射増強層40が2つ以上の積層構造を含む場合、反射増強層40は複数の高屈折率層を含み、複数の高屈折率層は第1の高屈折率層および第2の高屈折率層を含み、第1の高屈折率層は少なくとも1つあり、第2の高屈折率層は少なくとも1つある。第1の高屈折率層は単層の高屈折率サブ層であり、第2の高屈折率層は複数の高屈折率サブ層を含む。
【0038】
具体的には、1つの実施例では、低屈折率層は複数の低屈折率サブ層を含む。すなわち、反射増強層40が1つの積層構造を含む場合、1つの積層構造における低屈折率層は、複数の低屈折率サブ層を含む。反射増強層40が2つ以上の積層構造を含む場合、各積層構造における低屈折率層は、いずれも複数の低屈折率サブ層を含む。
【0039】
もう1つの実施例では、反射増強層40は少なくとも2つの積層構造を含む。すなわち、反射増強層40が2つ以上の積層構造を含む場合、反射増強層40は複数の低屈折率層を含み、複数の低屈折率層は第1の低屈折率層および第2の低屈折率層を含み、第1の低屈折率層は少なくとも1つあり、第2の低屈折率層は少なくとも1つある。第1の低屈折率層は単層の低屈折率サブ層であり、第2の低屈折率層は複数の低屈折率サブ層を含む。
【0040】
好ましくは、反射率増加層40は、100nm~500nmの厚さを有する。
【0041】
図3を参照すると、
図3は、
図1に示されるウインドシールド100における反射増強層40の三例の具体的な構造を示す概略図である。
図3の(a)は、1つの積層構造、すなわち、高屈折率層A/低屈折率層Bを含む反射増強層40を示す。高屈折率層Aは2つの高屈折率サブ層を含み、すなわち、高屈折率層Aは順に積層された第1の高屈折率サブ層A1および第2の高屈折率サブ層A2を含む。第1の高屈折率サブ層A1は、第2の高屈折率サブ層A2よりも第4の面22に近い。本実施例では、第1の高屈折率サブ層A1は第4の表面22に付着し、第2の高屈折率サブ層A2は第1の高屈折率サブ層A1に積層されている。第1の高屈折率サブ層A1は1.7~2.04の屈折率を有し、第2の高屈折率サブ層A2は2.05~2.7の屈折率を有する。好ましくは、第1の高屈折率サブ層A1の材料はSiO
xN
yであり、1<x≦3、1<y<3であり、第1の高屈折率サブ層A1は27nm~51nmの厚さを有し、第2の高屈折率サブ層A2は45nm~60nmの厚さを有する。
図3の(b)は、1つの積層構造、すなわち、高屈折率層A/低屈折率層Bを含む反射増強層40を示す。
図3の(c)は、2つの積層構造、すなわち、高屈折率層A/低屈折率層B/高屈折率層A/低屈折率層Bを含む反射増強層40を示す。
【0042】
本出願では、高屈折率層の材料は、SiNx、SiAlNx、SiBNx、SiTiNx、SiZrNx、TiOx、NbOx、ZrOx、SiNxOy、SiBNxOy、SiTiNxOy、SiAlNxOy、SiZrNxOy、ZnOx、ZnAlOx
、ZnSnOx、のうちのいずれか1種を採用できる。低屈折率層の材料は、SiOx、SiBOx、SiTiOx、SiAlOx、SiZrOxのうちのいずれか1種を採用でき、低屈折率層は35nm~60nmの厚さを有する。
【0043】
図4を参照すると、
図4は、
図1に示されるウインドシールド100におけ
る媒質層50の構造を示す概略図である。
図4において、(a)は、1つの媒質サブ層のみであ
る媒質層50の構造を示す概略図であり、(b)は、2つの媒質サブ層を有する
媒質層50の構造を示す概略図である。
図4の(a)に示されるように
、媒質層50は、1層の媒質サブ層511のみであり、媒質サブ層511は2.2~2.7の屈折率および10nm~70nmの厚さを有する。
図4の(b)に示されるように
、媒質層50は、2層の媒質サブ層、すなわち、第1の媒質サブ層521および第2の媒質サブ層522を含む。第1の媒質サブ層521および第2の媒質サブ層522は、10nm~140nmの合計厚さを有し、第1の媒質サブ層521は、反射増強層40の第2側の表面42と直接接触し、第1の媒質サブ層521は2.0~2.7の屈折率を有し、第2の媒質サブ層522は、反射増強層40の第2側の表面42から離れて設けられており、第2の媒質サブ層522は2.2~2.7の屈折率を有する。これに限定されなく、本出願では、別の例として
、媒質層50は1つの媒質サブ層のみであり、1つの媒質サブ層は1.4~1.6、または1.7~2.0の屈折率を有する。さらに別の例として
、媒質層50は2つの媒質サブ層を含み、1層の媒質サブ層は1.4~1.9の屈折率を有し、もう1層の媒質サブ層は2.0~2.7の屈折率を有する。理解できるように、別の実施例では
、媒質層50は、例えば3層、5層、8層などの複数層の媒質サブ層を含むことができる。
【0044】
図5は、本出願の第2の実施例で提供されるウインドシールド100の断面図である。本実施例のウインドシールド100は疎水層60をさらに備え、且つ疎水層60が反射増強層40から離れ
た媒質層50の片側の表面に積層されている点で、
図1のウインドシールド100と異なる。具体的には、
図5のウインドシールド100は、順に積層された、外側ガラス板10、ポリマー中間層30、内側ガラス板20、反射増強層40、
媒質層50、および疎水層60を含む。疎水層60は、110°より大きい水接触角および50nm未満の厚さを有し、疎水、防汚等の機能を有し、さらには指紋防止効果を有する。
【0045】
いくつかの実施例では、疎水層60は、ゾル-ゲル法によって調製された有機ポリマーフィルム層であり、例えば、疎水層60の材料は、防指紋(anti-fingerprint、AF)材料であってもよい。AF材料は、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、トリデカフルオロトリエトキシシラン、デカトリフルオロプロピルトリメトキシシラン(decatrifluoropropyltrimethoxysilane)、ドデカフルオロヘプチルプロピルトリメトキシシラン(dodecafluoroheptylpropyltrimethoxysilane)、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロドデシルシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、または3,3,3-トリフルオロプロピルトリクロロシランのうちの少なくとも1種であってもよい。
【0046】
いくつかの実施例では、疎水層60の材料は、低い表面エネルギーを有するAF材料であり、例えば、0.3Jm-2以下の表面エネルギーおよび1.6以下の屈折率を有するAF材料である。低い表面エネルギーを有する材料を使うことで、防指紋効果により優れる。
【0047】
本出願のいくつかの実施例では、外側ガラス板10及び内側ガラス板20のうちの少なくとも1つは超透明ガラス(超クリアガラス)である。好ましくは、外側ガラス板10及び内側ガラス板20の両方も超透明ガラスである。超透明ガラスの全鉄含有量は0.015%wt以下であり、超透明ガラスの可視光透過率は91%以上である。超透明ガラスを採用することは、ライダーによって放出されおよび受けられる780nm~980nmの近赤外線に対するウインドシールド100の透過率を向上させて、ライダーの検出精度を向上させることに有利である。ポリマー中間層30は、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、及びイオン性中間膜(SGP)のうちの少なくとも1種であってもよい。
【0048】
図6を参照すると、本出願の実施例は、ウインドシールド100、ライダー200、およびヘッドアップディスプレイ投影装置300を備えるウインドシールドアセンブリ1000をさらに提供する。ライダー200およびヘッドアップディスプレイ投影装置300の両方は、車両の内部に取り付けられている。ライダー200は、780nm~980nmの近赤外線を放出し及び受けるために用いられる。近赤外線は
情報収集領域S1を通過する。本実施例では、ライダー200によって放出された近赤外線は
、媒質層50、増加反射層40、内側ガラス板20、ポリマー中間層30、および外側ガラス板10を順に透過して車両の外部に到達する。受けられる近赤外線は、外側ガラス板10、ポリマー中間層30、内側ガラス板20、反射増強層40およ
び媒質層50を順に透過し、最終的に車両の内部に位置するライダー200によって受けられる。ヘッドアップディスプレイ投影装置300は、380nm~780nmのP偏光を発生させるために用いられ、P偏光は非
情報収集領域S2に入射される。本実施例では、P偏光は非
情報収集領域S2に位置する反射増強層40に入射される。
【0049】
情報収集領域S1の媒質層50は反射増強層40とともに反射低減構造を形成することにより、780nm~980nmの近赤外線に対する情報収集領域S1の透過率を向上させる。近赤外線は、P偏光成分およびS偏光成分を含む。ライダーの検出精度をさらに向上させるために、近赤外線は、少なくとも50%のP偏光成分を含むことが好ましく、具体的には、例えば、50%、55%、60%、70%、80%、90%、95%、100%などのP偏光成分を含む。より好ましくは、近赤外線は100%のP偏光成分を含む。100%のP偏光成分を含むことは、ライダーによって放出される近赤外線が純粋なP偏光であることを意味し、これは、完全にまたはほぼ完全にP偏光であると理解することができる。
【0050】
非情報収集領域S2の反射増強層40は、380nm~780nmのP偏光を反射することができる。ヘッドアップディスプレイ画像の鮮明度及びコントラストを向上させるために、好ましくは、ヘッドアップディスプレイ投影装置によって発生される偏光は、少なくとも90%のP偏光成分を含み、具体的には、例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%のP偏光成分を含む。より好ましくは、ヘッドアップディスプレイ投影装置によって発生される偏光は、100%のP偏光成分を含み、100%のP偏光成分を含むことは、ヘッドアップディスプレイ投影装置によって発生される偏光が純粋なP偏光であることを意味し、これは、完全にまたはほぼ完全にP偏光であると理解することができる。
【実施例】
【0051】
以下、反射増強層40および媒質層50の具体例をもってウインドシールド100を説明する。
【0052】
Rf(λ)-θは、第4の表面側から入射角θで入射される波長λのP偏光に対するウインドシールドの非情報収集領域の反射率を示す。本出願では、Rf(469nm)-65°、Rf(529nm)-65°、Rf(629nm)-65°、すなわち、第4の表面側から入射角65°で入射される波長469nm、529nm、または629nmのP偏光に対する非情報収集領域の反射率を例とする。
【0053】
L、a、bは、CIE Labカラーモデルに従って、ウインドシールド100の第1の表面11で検出された反射色を示す。Lは輝度値であり、aは赤-緑の色度値であり、bは黄-青の色度値である。
【0054】
TLは、ISO 9050規格に従って検出および計算された可視光透過率を示す。可視光の波長範囲は380nm~780nmである。
【0055】
T(λ)-θは、入射角θで入射される波長λの近赤外線に対するウインドシールドの情報収集領域の透過率を示す。本出願では、T(905)-0°、T(905)-15°、T(905)-30°、T(905)-45°、T(905)-60°、T(905)-65°、すなわち、それぞれ入射角0°、15°、30°、45°、60°、65°で入射される波長905nmの近赤外線に対する情報収集領域の透過率を例とする。
<実施例1>
【0056】
実施例1のウインドシールド100は、順に積層された、合わせガラス、反射増強層40、媒質層50、および疎水層60を備える。合わせガラスは、順に積層された、外側ガラス板10、ポリマー中間層30、および内側ガラス板20を備える。外側ガラス板10及び内側ガラス板20は、いずれも厚さ2.1mmの超クリアガラスであり、ポリマー中間層30は、厚さ0.76mmのポリビニルブチラール(Polyvinyl butyral、PVB)である。
【0057】
反射増強層40は、マグネトロンスパッタリング成膜ラインによりコーティング堆積を行うことで作製される。具体的に、内側ガラス板20の第4の表面22から離れる方向に沿って、第4の表面22に第1の高屈折率サブ層SiOxNy(屈折率n=1.71、消光係数(extinction coefficient)k=0.00185、厚さ50.2nm)、第2の高屈折率サブ層TiOx(厚さ52.7nm)、低屈折率層SiO2(厚さ117nm)を順に積層して堆積する。
【0058】
媒質層50は、マグネトロンスパッタリング成膜ラインおよびマスキング板により、局所的なコーティング堆積を行うことで作製される。具体的に、情報収集領域S1内の低屈折率層SiO2上に、1層の媒質サブ層Nb2O5(厚さ36.6nm)を直接的に堆積する。
【0059】
疎水層60については、反射増強層40および媒質層50を含む合わせガラスを作製した後、第4の表面22に1層の疎水層60をスプレーし、また、疎水層60を乾燥させる。疎水層60の材料は、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランであり、疎水層60の厚さは15nmである。疎水層60は、情報収集領域S1の媒質層50および非情報収集領域S2の反射増強層40を覆う。
<比較例1>
【0060】
比較例1はウインドシールドを提供し、比較例1のウインドシールドには媒質層50及び疎水層60が設けられていないという点で実施例1のウインドシールド100と異なる。
【0061】
実施例1及び比較例1のウインドシールドの光学指標を測定する。ウインドシールドの非情報収集領域S2に対して、P偏光反射率、可視光反射色、可視光透過率等をそれぞれ検出し、ウインドシールドの情報収集領域S1に対して、異なる入射角で入射される905nmの近赤外線の透過率を検出し、その結果を表1に記録する。
【0062】
【0063】
表1から分かるように、実施例1及び比較例1のいずれにおいても、非情報収集領域S2のP偏光反射率は20%より大きく、良好なヘッドアップディスプレイ機能を実現できる。特に、赤色(629nm)、緑色(529nm)及び青色(469nm)のP偏光に対する非情報収集領域S2の反射率も、いずれも20%より大きく、且つ互いの反射率の差は2.5%以下であることにより、ヘッドアップディスプレイ(HUD)領域において、HUD画像の赤色、緑色、青色という3色がより均一化される。また、非情報収集領域S2において、緑色(529nm)のP偏光に対する反射率は、赤色(629nm)または青色(469nm)のP偏光に対する反射率よりも大きい。非情報収集領域S2の反射色Lab値および可視光透過率TLは、ウインドシールドが自動車使用の安全要求を満たすことができるとともに、外部からウインドシールドを見たときにウインドシールドが見栄えの良いライトブルーを呈することができることをさらに示している。
【0064】
また、比較例1と比べて、実施例1のウインドシールドでは、情報収集領域S1において媒質層50が追加して設けられているため、情報収集領域S1は、入射角0°~65°で入射される905nmの近赤外線に対して80%より大きい高透過率を有する。比較例1の情報収集領域S1は、入射角0°~65°で入射される905nmの近赤外線に対してすべて80%未満の透過率を有する。また、入射される905nmの近赤外線に対する比較例1の情報収集領域S1の透過率は、入射角が大きくなるにつれて大幅に減少し、さらに70%より小さい。媒質層50は実施例1の反射増強層40とともに反射低減構造を形成することにより、入射角0°~65°で入射される905nmの近赤外線に対する実施例1の情報収集領域S1の透過率を8.1%~17.5%向上させる。これにより、ライダーが最大120°の水平視野角(FOV)内で正常に作業できることを満足させるので、ライダーの検出範囲と検出精度を向上させ、内蔵式ライダーの作業の安定性と正確性を実現できる。
【0065】
また、比較例1と比べて、実施例1のウインドシールドには、疎水層60がさらにコーティングされているため、実施例1のウインドシールドは、汚れおよび指紋を防止する機能を有し、ウインドシールドの清浄度を向上させることができる。
<実施例2>
【0066】
実施例2のウインドシールド100は、順に積層された、合わせガラス、反射増強層40、媒質層50、および疎水層60を備える。合わせガラスは、順に積層された、外側ガラス板10、ポリマー中間層30、および内側ガラス板20を備える。外側ガラス板10及び内側ガラス板20はいずれも、厚さ2.1mmの超クリアガラスであり、ポリマー中間層30は、厚さ0.76mmのポリビニルブチラールである。
【0067】
反射増強層40は、マグネトロンスパッタリング成膜ラインによりコーティング堆積を行うことで作製される。具体的に、第4の表面22から離れる方向に沿って、第4の表面22に、高屈折率層SiOxNy(屈折率n=1.71、消光係数k=0.00185、厚さ27.6nm)、低屈折率層SiO2(厚さ56.5nm)、高屈折率層TiOx(厚さ57.3nm)、低屈折率層SiO2(厚さ120.5nm)を順に積層して堆積する。
【0068】
媒質層50は、マグネトロンスパッタリング成膜ラインおよびマスキング板により、局所的なコーティング堆積を行うことで作製される。具体的に、情報収集領域S1内の低屈折率層SiO2上に、1層の媒質サブ層TiOx(厚さ25.5nm)を直接的に堆積する。
【0069】
疎水層60については、反射増強層40および媒質層50を含む合わせガラスを作製した後、第4の表面22に1層の疎水層60をスプレーし、また、疎水層60を乾燥させる。疎水層60の材料は、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランであり、疎水層60の厚さは15nmである。疎水層60は、情報収集領域S1の媒質層50および非情報収集領域S2の反射増強層40を覆う。
<比較例2>
【0070】
比較例2はウインドシールドを提供し、、比較例2のウインドシールドには媒質層50及び疎水層60が設けられていないという点で実施例2のウインドシールド100と異なる。
【0071】
実施例2及び比較例2のウインドシールドの光学指標を測定する。ウインドシールドの非情報収集領域S2に対して、P偏光反射率、可視光反射色、可視光透過率等をそれぞれ検出し、ウインドシールドの情報収集領域S1に対して、異なる入射角で入射される905nmの近赤外線の透過率を検出し、その結果を表2に記録する。
【0072】
【0073】
表2から分かるように、実施例2及び比較例2のいずれにおいても、非情報収集領域S2のP偏光反射率は20%より大きく、良好なヘッドアップディスプレイ機能を実現できる。特に、赤色(629nm)、緑色(529nm)及び青色(469nm)のP偏光に対する非情報収集領域S2の反射率も、いずれも20%より大きく、且つ互いの反射率の差は2.5%以下であることにより、ヘッドアップディスプレイ(HUD)領域において、HUD画像の赤色、緑色、青色という3色がより均一化される。また、非情報収集領域S2において、緑色(529nm)のP偏光に対する反射率は、赤色(629nm)または青色(469nm)のP偏光に対する反射率よりも大きい。非情報収集領域S2の反射色Lab値および可視光透過率TLは、ウインドシールドが自動車使用の安全要求を満たすことができるとともに、外部からウインドシールドを見たときにウインドシールドが見栄えの良いライトブルーを呈することができることをさらに示している。
【0074】
また、比較例2と比べて、実施例2のウインドシールドでは、情報収集領域S1において媒質層50が追加して設けられているため、情報収集領域S1は、入射角0°~65°で入射される905nmの近赤外線に対して80%より大きい高透過率を有する。比較例2の情報収集領域S1は、入射角0°~65°で入射される905nmの近赤外線に対してすべて80%未満の透過率を有する。また、入射される905nmの近赤外線に対する比較例2の情報収集領域S1の透過率は、入射角が大きくなるにつれて大幅に減少し、さらに70%より小さい。媒質層50は実施例2の反射増強層40とともに反射低減構造を形成することにより、入射角0°~65°で入射される905nmの近赤外線に対する実施例2の情報収集領域S1の透過率を8.3%~16.8%向上させる。これにより、ライダーが最大120°の水平視野角(FOV)内で正常に作業できることを満足させるので、ライダーの検出範囲と検出精度を向上させ、内蔵式ライダーの作業の安定性と正確性を実現できる。
【0075】
また、比較例2と比べて、実施例2のウインドシールドには、疎水層60がさらにコーティングされているため、実施例2のウインドシールドは、汚れおよび指紋を防止する機能を有し、ウインドシールドの清浄度を向上させることができる。
<実施例3>
【0076】
実施例3のウインドシールド100は、順に積層された、合わせガラス、反射増強層40、および媒質層50を含む。合わせガラスは、順に積層された、外側ガラス板10、ポリマー中間層30、および内側ガラス板20を備える。外側ガラス板10及び内側ガラス板20は、いずれも厚さ2.1mmの超クリアガラスであり、ポリマー中間層30は、厚さ0.76mmのポリビニルブチラールである。
【0077】
反射増強層40は、マグネトロンスパッタリング成膜ラインによりコーティング堆積を行うことで作製される。具体的に、第4の表面22から離れる方向に沿って、第4の表面22に、高屈折率層SiOxNy(屈折率n=1.71、消光係数k=0.00185、厚さ27.7nm)、低屈折率層SiO2(厚さ38.9nm)、第1の高屈折率サブ層SiNx(厚さ17.5nm)、第2の高屈折率サブ層TiOx(厚さ47.7nm)、低屈折率層SiO2(厚さ124.9nm)を順に積層して堆積する。
【0078】
媒質層50は、マグネトロンスパッタリング成膜ラインおよびマスキング板により、局所的なコーティング堆積を行うことで作製される。具体的に、情報収集領域S1内の低屈折率層SiO2上に、第1の媒質サブ層ZnSnOx(厚さ14.3nm)、第2の媒質サブ層TiOx(厚さ17.2nm)を直接的に堆積する。
<比較例3>
【0079】
比較例3ウインドシールドを提供し、比較例3のウインドシールドには媒質層50が設けられていない点で実施例3のウインドシールド100と異なる。
【0080】
実施例3及び比較例3のウインドシールドの光学指標を測定する。ウインドシールドの非情報収集領域S2に対して、P偏光反射率、可視光反射色、可視光透過率等をそれぞれ検出し、ウインドシールドの情報収集領域S1に対して、異なる入射角で入射される905nmの近赤外線の透過率を検出し、その結果を表3に記録する。
【0081】
【0082】
表3から分かるように、実施例3及び比較例3のいずれにおいても、非情報収集領域S2のP偏光反射率は20%より大きく、良好なヘッドアップディスプレイ機能を実現できる。特に、赤色(629nm)、緑色(529nm)及び青色(469nm)のP偏光に対する非情報収集領域S2の反射率も、いずれも20%より大きく、且つ互いの反射率の差は1.7%以下であることにより、ヘッドアップディスプレイ(HUD)領域において、HUD画像の赤色、緑色、青色という3色がより均一化される。また、非情報収集領域S2において、緑色(529nm)のP偏光に対する反射率は、赤色(629nm)または青色(469nm)のP偏光に対する反射率よりも大きい。非情報収集領域S2の反射色Lab値および可視光透過率TLは、ウインドシールドが自動車使用の安全要求を満たすことができるとともに、外部からウインドシールドを見たときにウインドシールドが見栄えの良いライトブルーを呈することができることをさらに示している。
【0083】
また、比較例3と比べて、実施例3のウインドシールドでは、情報収集領域S1において媒質層50が追加して設けられているため、情報収集領域S1は、入射角0°~65°で入射される905nmの近赤外線に対して80%より大きい高透過率を有する。比較例3の情報収集領域S1は、入射角0°~65°で入射される905nmの近赤外線に対して最大80.2%の透過率を有する。また、入射される905nmの近赤外線に対する比較例3の情報収集領域S1の透過率は、入射角が大きくなるにつれて大幅に減少し、さらに70%より小さい。媒質層50は実施例3の反射増強層40とともに反射低減構造を形成することにより、入射角0°~65°で入射される905nmの近赤外線に対する実施例3の情報収集領域S1の透過率を6.1%~15.9%向上させる。これにより、ライダーが最大120°の水平視野角(FOV)内で正常に作業できることを満足させるので、ライダーの検出範囲と検出精度を向上させ、内蔵式ライダーの作業の安定性と正確性を実現できる。
<実施例4~6>
【0084】
実施例4のウインドシールドは、実施例1のウインドシールドとほぼ同じであり、実施例4のウインドシールドの媒質層50の材料がSiOxNy(屈折率n=1.71、消光係数k=0.00185、厚さ78.5nm)であるという点で異なる。
【0085】
実施例5のウインドシールドは、実施例1のウインドシールドとほぼ同じであり、実施例5のウインドシールドの媒質層50が2つの媒質サブ層を含み、第1の媒質サブ層の材料がTiOx(厚さ13.4nm)であり、第2の媒質サブ層の材料がSiOxNy(屈折率n=1.71、消光係数k=0.00185、厚さ55.4nm)であるという点で異なる。
【0086】
実施例6のウインドシールドは、実施例1のウインドシールドとほぼ同じであり、実施例6のウインドシールドの媒質層50が2つの媒質サブ層を含み、第1の媒質サブ層の材料がZnSnOx(厚さ8.1nm)であり、第2の媒質サブ層の材料がSiO2(厚さ98.9nm)であるという点で異なる。
【0087】
実施例4~6のウインドシールドの光学指標を測定する。ウインドシールドの情報収集領域S1に対して、異なる入射角での905nmの近赤外線の透過率を測定し、その結果を表4に記録する。
【0088】
【0089】
表4から分かるように、実施例1と比べて、入射角65°で入射された905nmの近赤外線に対する実施例4~6の情報収集領域S1の透過率が80%未満であるものの、比較例1と比べて、入射角0°~60°で入射された905nmの近赤外線に対する実施例4~6の情報収集領域S1の高透過率が80%より高く、入射角0°~60°で入射された905nmの近赤外線に対する比較例1の情報収集領域S1の透過率がすべて80%より小さい。また、入射される905nmの近赤外線に対する比較例1の情報収集領域S1の透過率は、入射角が大きくなるにつれて大幅に減少し、さらに70%より小さい。媒質層50は実施例4~6の反射層40とともに反射低減構造を形成することにより、入射角0°~60°で入射される905nmの近赤外線に対する実施例4~6の情報収集領域S1の透過率を2.6%~14.1%向上させる。これにより、ライダーの検出範囲と検出精度を向上させ、内蔵式ライダーの作業の安定性と正確性を実現できる。
【0090】
以上の内容は、本出願のウインドシールドの具体的な説明であるが、本出願は、上述した具体的な実施形態の内容によって限定されないので、本出願の技術的なポイントに基づくすべての改良、同等の変更、置き換え等は、本出願の保護範囲に属する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウインドシールドであって、
外側ガラス板、ポリマー中間層、および内側ガラス板を備え、前記ポリマー中間層は、前記外側ガラス板と前記内側ガラス板との間に挟まれており、前記外側ガラス板は、対向する第1の表面および第2の表面を有し、前記第2の表面は前記ポリマー中間層に面しており、前記内側ガラス板は、対向する第3の表面および第4の表面を有し、前記第3の表面は前記ポリマー中間層に面しており、前記ウインドシールドは、情報収集領域および非情報収集領域を含み、
前記第4の表面には反射増強層が設けれており、前記反射増強層は、前記情報収集領域および前記非情報収集領域を覆い、前記反射増強層は、380nm~780nmのP偏光に対する前記非情報収集領域の反射率を向上させるために用いられ、
前記情報収集領域に
は媒質層がさらに設けられており、前
記媒質層は、前記第4の表面から離れた前記反射増強層の片側の表面に設けられており、前
記媒質層および前記反射増強層は、780nm~980nmの近赤外線に対する前記情報収集領域の透過率を向上させるために用いられる、
ことを特徴とするウインドシールド。
【請求項2】
前記反射増強層は100nm~500nmの厚さを有し、前記反射増強層は少なくとも1つの積層構造を含み、前記積層構造は、前記第4の表面から前記外側ガラス板から離れる方向に向かって、順次に堆積された高屈折率層および低屈折率層を含み、前記高屈折率層は1.7~2.7の屈折率を有し、前記低屈折率層は1.3~1.6の屈折率を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のウインドシールド。
【請求項3】
前記高屈折率層は複数の高屈折率サブ層を含み、または、前記反射増強層は少なくとも2つの積層構造を含み、複数の前記高屈折率層は、少なくとも1つの第1の高屈折率層および少なくとも1つの第2の高屈折率層を含み、前記第1の高屈折率層は単層の高屈折率サブ層であり、前記第2の高屈折率層は複数の高屈折率サブ層を含み、
および/または、
前記低屈折率層は複数の低屈折率サブ層を含み、または、前記反射増強層は少なくとも2つの積層構造を含み、複数の前記低屈折率層は、少なくとも1つの第1の低屈折率層および少なくとも1つの第2の低屈折率層を含み、前記第1の低屈折率層は単層の低屈折率サブ層であり、前記第2の低屈折率層は複数の低屈折率サブ層を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載のウインドシールド。
【請求項4】
少なくとも1つの前記第2の高屈折率層は、順に積層された第1の高屈折率サブ層および第2の高屈折率サブ層を含み、前記第1の高屈折率サブ層は、前記第2の高屈折率サブ層よりも前記第4の表面に近く、前記第1の高屈折率サブ層は1.7~2.04の屈折率を有し、前記第2の高屈折率サブ層は2.05~2.7の屈折率を有する、
ことを特徴とする請求項3に記載のウインドシールド。
【請求項5】
前記第1の高屈折率サブ層の材料はSiO
xN
yであり、1<x≦3、1<y<3であり、前記第1の高屈折率サブ層は27nm~51nmの厚さを有し、前記第2の高屈折率サブ層は45nm~60nmの厚さを有する、
ことを特徴とする請求項4に記載のウインドシールド。
【請求項6】
前
記媒質層は10nm~140nmの厚さを有し、前
記媒質層は少なくとも1つの媒質サブ層を含み、前記媒質サブ層は1.4~2.7の屈折率を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のウインドシールド。
【請求項7】
いずれか1つの前記媒質サブ層は2.0~2.7の屈折率を有し、媒質サブ層の材料はZnSnO
x、ZnAlO
x、TiO
x、NbO
x、SiN
x、ZrO
x、ZrSiN
xのうちの少なくとも一種である、
ことを特徴とする請求項6に記載のウインドシールド。
【請求項8】
いずれか1つの前記媒質サブ層は2.2~2.7の屈折率を有し、前
記媒質層は10nm~70nmの厚さを有する、
ことを特徴とする請求項6に記載のウインドシールド。
【請求項9】
前記情報収集領域は、入射角65°で入射される780nm~980nmの近赤外線に対して80%以上の透過率を有し、前記非情報収集領域は、入射角65°で入射される380nm~780nmのP偏光に対して20%以上の反射率を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のウインドシールド。
【請求項10】
入射角65°で入射される波長629nmのP偏光に対する前記非情報収集領域の反射率がY1であり、入射角65°で入射される波長529nmのP偏光に対する前記非情報収集領域の反射率がY2であり、入射角65°で入射される波長469nmのP偏光に対する前記非情報収集領域の反射率がY3であり、
|Y1-Y2|≦2.5%、|Y2-Y3|≦2.5%、|Y1-Y3|≦2.5%である、
ことを特徴とする請求項1に記載のウインドシールド。
【請求項11】
前記Y1は20%以上であり、前記Y2は20%以上であり、前記Y3は20%以上である、
ことを特徴とする請求項10に記載のウインドシールド。
【請求項12】
前記ウインドシールドは疎水層をさらに備え、前記疎水層は、前記反射増強層から離れた前
記媒質層の片側の表面に積層されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のウインドシールド。
【請求項13】
前記疎水層は110°より大きい水接触角を有
し、前記疎水層は、0.3Jm
-2
以下の表面エネルギーを有し、1.6以下の屈折率を有する、
ことを特徴とする請求項12に記載のウインドシールド。
【請求項14】
前記媒質層は、1層の媒質サブ層のみであり、前記媒質サブ層は2.2~2.7の屈折率および10nm~70nmの厚さを有し、
又は、前記媒質層は、第1の媒質サブ層および第2の媒質サブ層を含み、前記第1の媒質サブ層および前記第2の媒質サブ層は、10nm~140nmの合計厚さを有し、前記第1の媒質サブ層は、前記反射増強層の第2側の表面と直接接触し、前記第1の媒質サブ層は2.0~2.7の屈折率を有し、前記第2の媒質サブ層は、前記反射増強層の第2側の表面から離れて設けられており、前記第2の媒質サブ層は2.2~2.7の屈折率を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のウインドシールド。
【請求項15】
ウインドシールドアセンブリであって、
ライダーと、ヘッドアップディスプレイ投影装置と、請求項1から14のいずれか一項に記載のウインドシールドとを備え、
前記ライダーは、780nm~980nmの近赤外線を放出しおよび受けるために用いられ、前記近赤外線は前記
情報収集領域を通過し、前記ヘッドアップディスプレイ投影装置は、380nm~780nmのP偏光を発生するために用いられ、前記P偏光は前記非
情報収集領域に入射される、
ことを特徴とするウインドシールドアセンブリ。
【国際調査報告】