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特表2024-547016ヒト上皮成長因子受容体結合分子およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ヒト上皮成長因子受容体結合分子およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20241219BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241219BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241219BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20241219BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241219BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20241219BHJP
   G01N 33/531 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N7/01
C12N5/10
C12P21/08
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
A61K48/00
A61P35/00
A61K35/12
A61K39/395 D
A61K39/395 E
A61K39/395 N
A61K39/395 T
G01N33/53 D
G01N33/531 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536307
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 CN2022100888
(87)【国際公開番号】W WO2022268178
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】202110705939.8
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523247795
【氏名又は名称】浙江納米抗体技術中心有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG NANOMAB TECHNOLOGY CENTER CO. LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 加国
(72)【発明者】
【氏名】劉 祥箴
(72)【発明者】
【氏名】朱 偉民
(72)【発明者】
【氏名】孫 艶
(72)【発明者】
【氏名】丁 娜
(72)【発明者】
【氏名】銭 其軍
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B064DA13
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA88X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA98X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA13
4C084MA52
4C084MA56
4C084MA58
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA13
4C085AA14
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG04
4C085GG08
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087NA14
4C087ZB26
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、ヒト上皮成長因子受容体結合分子およびその使用を提供する。本発明のヒト上皮成長因子受容体結合分子は、抗ヒト上皮成長因子受容体単一ドメイン抗体を含み、前記単一ドメイン抗体の相補性決定領域CDRは、SEQ ID NO:1に示されるCDR1と、SEQ ID NO:2に示されるCDR2と、SEQ ID NO:3に示されるCDR3と、を含む。本発明は、前記結合分子をコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含有する核酸構築物、および対応するファージ、宿主細胞、医薬組成物、製造方法、非診断方法並びに使用を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗ヒト上皮成長因子受容体単一ドメイン抗体を含有するヒト上皮成長因子受容体結合分子であって、前記単一ドメイン抗体の相補性決定領域CDRは、CDR1、CDR2およびCDR3を含み、ここで、CDR1は、SEQ ID NO:1に示される配列を含み、CDR2は、SEQ ID NO:2に示される配列を含み、また、CDR3は、SEQ ID NO:3に示される配列を含み、ここで、
SEQ ID NO:1は、Xであり、ここで、XはGであり、Xは、S、F、G、LまたはRであり、Xは、G、T、V、P、A、SまたはIであり、Xは、F、LまたはDであり、Xは、T、S、E、D、LまたはIであり、Xは、I、D、SまたはTであり、Xは、Q、Y、HまたはFであり、XはAまたはTであり、
SEQ ID NO:2は、Xであり、ここで、Xは、I、LまたはVであり、Xは、H、T、F、AまたはSであり、Xは、Q、G、S、P、T、IまたはNであり、Xは、G、T、D、A、SまたはYであり、Xは、G、H、EまたはNであり、Xは、S、E、K、D、GまたはAであり、Xは、T、H、I、K、Sまたはなしであり、Xは、S、T、I、Pまたはなしであり、
SEQ ID NO:3は、X10111213141516171819202122232425であり、ここで、Xは、N、S、A、KまたはHであり、Xは、V、I、R、K、AまたはLであり、Xは、V、Y、S、D、L、TまたはNであり、Xは、P、H、L、V、S、KまたはYであり、Xは、P、Y、S、R、TまたはAであり、Xは、L、P、T、F、A、SまたはDであり、Xは、R、P、F、S、A、IまたはDであり、Xは、V、D、G、AまたはYであり、Xは、Y、N、T、R、Fまたはなしであり、X10は、P、A、W、Eまたはなしであり、X11は、S、H、L、Yまたはなしであり、X12は、F、D、N、Lまたはなしであり、X13は、Y、Vまたはなしであり、X14は、I、Gまたはなしであり、X15は、Gまたはなしであり、X16は、Y、Aまたはなしであり、X17はGまたはなしであり、X18はGまたはなしであり、X19はGまたはなしであり、X20はEまたはなしであり、X21はVまたはなしであり、X22はRまたはなしであり、X23はYまたはなしであり、X24はEまたはなしであり、X25はYまたはなしである、ヒト上皮成長因子受容体結合分子。
【請求項2】
前記単一ドメイン抗体のCDR1は、SEQ ID NO:4~12のいずれかに示される配列を含み、CDR2は、SEQ ID NO:13~21のいずれかに示される配列を含み、また、CDR3は、SEQ ID NO:22~30のいずれかに示される配列を含み、
好ましくは、前記単一ドメイン抗体は、以下の群a1乃至群a9のいずれかに、SEQ
ID NOで示されるCDR1、CDR2、およびCDR3を含有する、ことを特徴とする請求項1に記載のヒト上皮成長因子受容体結合分子。
【表1】
【請求項3】
前記単一ドメイン抗体のFR領域には、SEQ ID NO:31~82から選ばれるいずれか一つのVHHのFR領域、および/または、
前記単一ドメイン抗体VHHは、SEQ ID NO:31~82のいずれかに示され、または、SEQ ID NO:31~82のいずれかのアミノ酸配列との、少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を具備し、および/または、
前記ヒト上皮成長因子受容体結合分子は、1つ、2つもしくは複数の前記単一ドメイン抗体を含む1価もしくは多価の単一ドメイン抗体、多重特異性単一ドメイン抗体、重鎖抗体もしくはその抗原結合フラグメント、抗体もしくはその抗原結合フラグメントである、ことを特徴とする請求項1または2に記載のヒト上皮成長因子受容体結合分子。
【請求項4】
ポリヌクレオチドであって、前記ポリヌクレオチドは、
(1)請求項1~3のいずれか1項に記載のヒト上皮成長因子受容体結合分子のコード配列と、
(2)(1)の相補的な配列と、
(3)(1)または(2)のいずれかの配列における5~50bpのフラグメントと、から選ばれる、ことを特徴とするポリヌクレオチド。
【請求項5】
核酸構築物であって、前記核酸構築物は、請求項4に記載のポリヌクレオチドを含み、好ましくは、前記核酸構築物は、組換えベクターまたは発現ベクターである、ことを特徴とする核酸構築物。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載のヒト上皮成長因子受容体結合分子を含むファージであって、好ましくは、前記ヒト上皮成長因子受容体結合分子は、前記ファージの表面に表示されるファージ。
【請求項7】
宿主細胞であって、前記宿主細胞は、
(1)請求項1~3のいずれか1項に記載のヒト上皮成長因子受容体結合分子を発現し、および/または、
(2)請求項4に記載のポリヌクレオチドを含み、および/または、
(3)請求項5に記載の核酸構築物を含む、ことを特徴とする宿主細胞。
【請求項8】
ヒト上皮成長因子受容体結合分子の生成方法であって、ヒト上皮成長因子受容体結合分子の生成に適する条件下で請求項7に記載の宿主細胞を培養することと、任意選択可能に、培養物から前記ヒト上皮成長因子受容体結合分子を精製することとを含む、ヒト上皮成長因子受容体結合分子の生成方法。
【請求項9】
医薬組成物であって、請求項1~3のいずれか1項に記載のヒト上皮成長因子受容体結合分子と、請求項4に記載のポリヌクレオチドと、請求項5に記載の核酸構築物と、請求項6に記載のファージまたは請求項7に記載の宿主細胞と、薬学的に許容される賦形剤と、を含み、好ましくは、前記医薬組成物は、がんの治療に用いられる、医薬組成物。
【請求項10】
がんの予防または治療のための薬の調製における請求項1~3のいずれか1項に記載のヒト上皮成長因子受容体結合分子の使用。
【請求項11】
医薬治療効果の評価やがんの診断に使用されるヒト上皮成長因子受容体の検出キットであって、前記キットは、請求項1~3のいずれか1項に記載のヒト上皮成長因子受容体結合分子と、請求項4に記載のポリヌクレオチドと、請求項5に記載の核酸構築物と、請求項6に記載のファージまたは請求項7に記載の宿主細胞と、を含み、
好ましくは、前記キットは、ヒト上皮成長因子受容体と、単一ドメイン抗体、抗体、またはその抗原結合フラグメントとの結合を検出するための試薬をさらに含み、
さらに好ましくは、前記試薬は、酵素結合免疫反応法により前記結合を検出するための試薬である、ヒト上皮成長因子受容体の検出キット。
【請求項12】
試料中のヒト上皮成長因子受容体の存在状況を検出するための非診断方法であって、前記方法は、請求項1~3のいずれか1項に記載のヒト上皮成長因子受容体結合分子を用いて試料とインキュベートすることと、試薬中のヒト上皮成長因子受容体の存在状況を確定するように、ヒト上皮成長因子受容体の、単一ドメイン抗体、抗体、またはその抗原結合フラグメントとの結合を検出することとを含む、試料中のヒト上皮成長因子受容体の存在状況を検出するための非診断方法。
【請求項13】
試薬中のヒト上皮成長因子受容体の検出、医薬治療の効果の評価、またはがんの診断のためのキットの調製における請求項1~3のいずれか1項に記載のヒト上皮成長因子受容体結合分子の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医学またはバイオ医薬品技術の分野に関し、より具体的には、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)結合分子およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト上皮成長因子受容体(EGFR、epidermal growth factor receptor、EGFR、ErbB-1またはHER1と略称される)は、上皮成長因子受容体(HER)ファミリーのメンバーの1つである。該ファミリーには、HER1(erbB1、EGFR)、HER2(erbB2、NEU)、HER3(erbB3)およびHER4(erbB4)が含まれる。EGFRは正常な上皮細胞の表面に発現しており、頭頸部がん、乳がん、膀胱がん、卵巣がん、腎臓がん、結腸がん、非小細胞肺がんなどを含む、多くの固形腫瘍細胞にEGFRの高発現または異常発見があり、特に肺がんは、アジアの肺がん集団でのEGFR変異率が50%に達する可能性がある(Seshacharyulu Pなど、Expert Opin Ther Targets、2012;16:15-31)。EGFRは、腫瘍の標的療法の一般的な標的である。
【0003】
EGFRは、細胞膜の表面にあり、EGFやTGFαが含まれるリガンドに結合することで活性化される。活性化後、EGFRは単量体から二量体に変換されるが、活性化前にも二量体が存在するという証拠もある。EGFRは、ErbB受容体ファミリーの他のメンバーとの重合によって活性化される可能性もある。二量体化後、EGFRは、Y992、Y1045、Y1068、Y1148、およびY1173などの活性化部位が含まれる細胞内に位置するキナーゼ経路を活性化し、自己リン酸化は、MAPK、Akt、およびJNK経路が含まれる下流のリン酸化を導くことができる。EGFRは、腫瘍細胞の増殖、血管新生、腫瘍浸潤、転移、およびアポトーシスの阻害に関連する。EGFRの下流には、主に2つのシグナル伝達経路がある。1つは、Ras/Raf/MEK/ERK-MAPK経路であり、もう一つはPI3K/Akt/mTOR経路である(
1718593404403_0
.Pharmacological research、2014:79:34-74.)。
【0004】
現在、世界中で、販売が承認されたEGFRモノクローナル抗体は、セツキシマブ、パニツムマブ、ネシツムマブ、およびニモツズマブの4種類である。主に直腸がん、頭頸部がんの治療に使用される。研究によると、EGFRの細胞外セグメントは、突然変異が発生しやすく、薬剤耐性が起こされやすい。ナノボディ結合エピトープは、scFv抗体結合エピトープよりもはるかに小さく、突然変異の影響が小さく、EGFRの効果的な抗腫瘍活性をある程度向上させることができる。かつ、ナノボディには、高い安定性、強力な浸透性、および広い結合エピトープという天然な利点があり(Muyldermans
S.Annu Rev Biochem.2013;82:775-97.)、EGFRの膜近傍のナノボディについては、あまり研究されていない。優れた特異性、遮断活性、臨床効果を備えて、製造しやすく、コストが低く、薬剤負担を軽減できる、新規な抗ヒト上皮成長因子受容体ナノボディの開発は、解決すべき喫緊の課題となっている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、新規な抗ヒト上皮成長因子受容体結合分子及びその使用を提供することにある。
【0006】
本発明の第1態様では、抗ヒト上皮成長因子受容体単一ドメイン抗体を含むヒト上皮
成長因子受容体結合分子を提供し、前記単一ドメイン抗体の相補性決定領域CDRは、CDR1、CDR2およびCDR3を含み、ここで、CDR1は、SEQ ID NO:1に示される配列を含み、CDR2は、SEQ ID NO:2に示される配列を含み、また、CDR3は、SEQ ID NO:3に示される配列を含む。
【0007】
1つまたは複数の実施形態において、SEQ ID NO:1は、Xであり、ここで、XはGであり、Xは、S、F、G、LまたはRであり、Xは、G、T、V、P、A、SまたはIであり、Xは、F、LまたはDであり、Xは、T、S、E、D、LまたはIであり、Xは、I、D、SまたはTであり、Xは、Q、Y、HまたはFであり、Xは、AまたはTである。
【0008】
1つまたは複数の実施形態において、SEQ ID NO:1は、Xであり、ここで、Xは、Gであり、Xは、FまたはLであり、Xは、T、PまたはAであり、Xは、FまたはLであり、Xは、S、E、D、LまたはIであり、Xは、DまたはTであり、Xは、Yであり、Xは、AまたはTである。
【0009】
1つまたは複数の実施形態において、CDR1は、SEQ ID NO:4~12のいずれかに示される配列を含む。好ましくは、CDR1は、SEQ ID NO:5、7、8、9、11のいずれかに示される配列を含む。
【0010】
1つまたは複数の実施形態において、SEQ ID NO:2は、Xであり、ここで、Xは、I、L、Vであり、Xは、H、T、F、AまたはSであり、Xは、Q、G、S、P、T、IまたはNであり、Xは、G、T、D、A、SまたはYであり、Xは、G、H、EまたはNであり、Xは、S、E、K、D、GまたはAであり、Xは、T、H、I、K、Sまたはなしであり、Xは、S、T、I、Pまたはなしである。
【0011】
1つまたは複数の実施形態において、SEQ ID NO:2は、Xであり、ここで、Xは、IまたはLであり、Xは、T、F、AまたはSであり、Xは、G、S、P、TまたはIであり、Xは、T、D、AまたはSであり、Xは、GまたはEであり、Xは、E、K、DまたはGであり、Xは、T、H、I、K、Sまたはなしであり、Xは、S、T、IまたはPである。
【0012】
1つまたは複数の実施形態において、CDR2は、SEQ ID NO:13~21のいずれかに示される配列を含む。好ましくは、CDR2は、SEQ ID NO:14、16、17、18、20のいずれかに示される配列を含む。
【0013】
1つまたは複数の実施形態において、SEQ ID NO:3は、X10111213141516171819202122232425であり、ここで、Xは、N、S、A、KまたはHであり、Xは、V、I、R、K、AまたはLであり、Xは、V、Y、S、D、L、TまたはNであり、Xは、P、H、L、V、S、KまたはYであり、Xは、P、Y、S、R、TまたはAであり、Xは、L、P、T、F、A、SまたはDであり、Xは、R、P、F、S、A、IまたはDであり、Xは、V、D、G、AまたはYであり、Xは、Y、N、T、R、Fまたはなしであり、X10は、P、A、W、Eまたはなしであり、X11は、S、H、L、Yまたはなしであり、X12は、F、D、N、Lまたはなしであり、X13は、Y、Vまたはなしであり、X14は、I、Gまたはなしであり、X15は、Gまたはなしであり、X16は、Y、Aまたはなしであり、X17は、Gまたはなしであり、X18は、Gまたはなしであり、X19は、Gまたはなしであり、X20は、Eまたはなしであり、X21は、Vまたはなしであり、X22は、Rまたはなしであり、X
23は、Yまたはなしであり、X24は、Eまたはなしであり、X25は、Yまたはなしである。
【0014】
1つまたは複数の実施形態において、SEQ ID NO:3は、X10111213141516171819202122232425であり、ここで、Xは、N、S、AまたはKであり、Xは、I、KまたはAであり、Xは、Y、D、LまたはTであり、Xは、H、L、V、SまたはKであり、Xは、P、S、RまたはTであり、Xは、P、F、A、SまたはDであり、Xは、R、P、F、SまたはIであり、Xは、V、D、GまたはAであり、Xは、Y、N、T、RまたはFであり、X10は、P、A、Wまたはなしであり、X11は、S、H、Lまたはなしであり、X12は、F、D、N、Lまたはなしであり、X13は、Y、Vまたはなしであり、X14は、I、Gまたはなしであり、X15は、Gまたはなしであり、X16は、Y、Aまたはなしであり、X17は、Gまたはなしであり、X18は、Gまたはなしであり、X19は、Gまたはなしであり、X20は、Eまたはなしであり、X21は、Vまたはなしであり、X22は、Rまたはなしであり、X23は、Yまたはなしであり、X24は、Eまたはなしであり、X25は、Yまたはなしである。
【0015】
1つまたは複数の実施形態において、CDR3は、SEQ ID NO:22~30のいずれかに示される配列を含む。好ましくは、CDR3は、SEQ ID NO:23、25、26、27、29のいずれかに示される配列を含む。
【0016】
1つまたは複数の実施形態において、前記抗ヒト上皮成長因子受容体単一ドメイン抗体は、ヒト上皮成長因子受容体の膜近傍の領域IIIまたはIVにおける特異性単一ドメイン抗体である。
【0017】
1つまたは複数の実施形態において、前記単一ドメイン抗体のCDR1は、SEQ ID NO:4~12のいずれかに示される配列を含み、CDR2は、SEQ ID NO:13~21のいずれかに示される配列を含み、また、CDR3は、SEQ ID NO:22~30のいずれかに示される配列を含む。
【0018】
1つまたは複数の実施形態において、前記単一ドメイン抗体は、以下の群a1乃至群a9のいずれかのSEQ ID NOで示されるCDR1、CDR2、およびCDR3を含有する。
【表1】
【0019】
1つまたは複数の実施形態において、前記単一ドメイン抗体VHHのFR1は、SEQ ID NO:31~82のいずれかのVHHのFR1から選ばれることができ、VHHのFR2は、SEQ ID NO:31~82のいずれかのVHHのFR2から選ばれることができ、VHHのFR3は、SEQ ID NO:31~82のいずれかのVHHのFR3から選ばれることができ、VHHのFR4は、SEQ ID NO:31~82のいずれかのVHHのFR4から選ばれることができる。
【0020】
1つまたは複数の実施形態において、前記単一ドメイン抗体のFR領域は、SEQ ID NO:31~82から選ばれるいずれかのVHHのFR領域である。
1つまたは複数の実施形態において、前記単一ドメイン抗体VHHは、SEQ ID NO:31~82のいずれかに示される。好ましくは、前記単一ドメイン抗体は、SEQ
ID NO:40~82のいずれかに示される。
【0021】
1つまたは複数の実施形態において、前記ヒト上皮成長因子受容体結合分子は1本、2本または複数本の本明細書に記載の抗ヒト上皮成長因子受容体単一ドメイン抗体を含む一価または多価の単一ドメイン抗体、多重特異性単一ドメイン抗体、重鎖抗体またはその抗原結合断片、抗体またはその抗原結合断片である。
【0022】
1つまたは複数の実施形態において、前記多価の単一ドメイン抗体または多重特異性単一ドメイン抗体はリンカーにより複数の単一ドメイン抗体に連結される。前記リンカーはGとSから選ばれ1-15のアミノ酸からなる。
【0023】
1つまたは複数の実施形態において、前記重鎖抗体の抗原結合断片は一本鎖重鎖抗体である。
【0024】
1つまたは複数の実施形態において、前記重鎖抗体はラクダ科動物の重鎖抗体または軟骨魚類の重鎖抗体である。
【0025】
1つまたは複数の実施形態において、前記重鎖抗体はさらに重鎖定常領域を含む。
【0026】
1つまたは複数の実施形態において、前記重鎖定常領域は、ラクダ重鎖抗体の定常領域であり、CH2とCH3を含む。1つまたは複数の実施形態において、前記CH2とCH3は、IgG1またはIgG4のCH2およびCH3などのヒトIgG FcのCH2およびCH3である。好ましくは、前記重鎖定常領域は、IgG4のCH2およびCH3であり、そのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:83に示される。
【0027】
1つまたは複数の実施形態において、前記重鎖定常領域は軟骨魚類の重鎖抗体の定常領域であり、CH1、CH2、CH3、CH4およびCH5を含む。
【0028】
1つまたは複数の実施形態において、前記抗体は重鎖可変ドメインの抗体として前記抗ヒト上皮成長因子受容体単一ドメイン抗体を含む。
【0029】
1つまたは複数の実施形態において、前記抗体はさらに軽鎖可変ドメイン、重鎖定常ドメインおよび軽鎖定常ドメインを含む。
【0030】
1つまたは複数の実施形態において、抗体の抗原結合断片はFab、F(ab’)2、Fv、scFvから選ばれる。
【0031】
1つ又は複数の実施形態において、本発明の何れか1つの実施形態に係る結合分子はキメラ抗体又は完全ヒト抗体であり、好ましくは完全ヒト抗体である。
【0032】
本発明はさらにポリヌクレオチドを提供し、
(1)本明細書の実施形態のいずれかに記載の単一ドメイン抗体または本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片のコード配列;
(2)(1)の相補配列;
(3)(1)または(2)のいずれかの配列の5-50bpの断片
から選ばれる。
【0033】
1つ又は複数の実施形態において、前記断片がプライマーである。
本発明はさらに、本明細書に記載のポリヌクレオチドを含む核酸コンストラクト(核酸構築物)を提供する。
【0034】
1つ又は複数の実施形態において、前記核酸コンストラクトが組換えベクター又は発現ベクターである。
本発明はまた、本明細書の実施形態のいずれかに記載のヒト上皮成長因子受容体結合分子のファージを提供する。
【0035】
1つまたは複数の実施形態において、前記ヒト上皮成長因子受容体結合分子は前記ファージ表面に提示される。
【0036】
本発明はさらに宿主細胞を提供し、
(1)本明細書の実施形態のいずれかに記載のヒト上皮成長因子受容体結合分子を発現すること;
(2)本明細書に記載のポリヌクレオチドを含むこと;および/または
(3)本明細書に記載の核酸コンストラクトを含むことから選ばれる。
【0037】
本発明はまた、ヒト上皮成長因子受容体結合分子を産生する方法であって、ヒト上皮成長因子受容体結合分子(例えば一価または多価の単一ドメイン抗体、多重特異性単一ドメイン抗体、重鎖抗体、抗体またはその抗原結合断片)の産生に適した条件で本明細書に記載の宿主細胞を培養すること、および任意選択で、培養物から前記ヒト上皮成長因子受容体結合分子を精製することを含む方法を提供する。
【0038】
本発明はさらに医薬組成物を提供し、本明細書の実施形態のいずれかに記載のヒト上皮成長因子受容体結合分子、ポリヌクレオチド、核酸コンストラクト、ファージまたは宿主細胞、および薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0039】
1つまたは複数の実施形態において、前記医薬組成物は、がんの治療に用いられる。
【0040】
1つまたは複数の実施形態において、前記がんは、ヒト上皮成長因子受容体関連がんである。好ましくは、前記がんは、頭頸部がん、乳がん、膀胱がん、卵巣がん、腎臓がん、結腸がん、非小細胞肺がんなどから選ばれる。
【0041】
本発明は、がんの予防または治療のための薬の調製における本明細書のいずれかの実施形態に記載のヒト上皮成長因子受容体結合分子の使用をさらに提供する。
【0042】
1つまたは複数の実施形態において、前記がんは、ヒト上皮成長因子受容体関連がんである。好ましくは、前記がんは、頭頸部がん、乳がん、膀胱がん、卵巣がん、腎臓がん、結腸がん、非小細胞肺がんなどから選ばれる。
【0043】
本発明は、がんを治療または予防するための方法をさらに提供し、前記方法は、治療有効量の、本発明のいずれかの実施形態に記載のヒト上皮成長因子受容体結合分子、または本発明のいずれかの実施形態に記載のヒト上皮成長因子受容体結合分子を含有する医薬組成物を、必要な患者に与えることを含む。
【0044】
1つまたは複数の実施形態において、前記がんは、ヒト上皮成長因子受容体関連がんである。好ましくは、前記がんは、頭頸部がん、乳がん、膀胱がん、卵巣がん、腎臓がん、結腸がん、非小細胞肺がんなどから選ばれる。
【0045】
本発明はまた、薬物治療の効果評価またはがん診断に使われるヒト上皮成長因子受容体検出キットを提供し、前記キットは本明細書の実施形態のいずれかに記載のヒト上皮成長因子受容体結合分子、ポリヌクレオチド、核酸コンストラクト、ファージ、宿主細胞を含む。
【0046】
1つまたは複数の実施形態において、前記キットは単一ドメイン抗体、抗体、またはその抗原結合断片へのヒト上皮成長因子受容体の結合を検出するための試薬をさらに含む。前記試薬は例えば酵素結合免疫反応法によって前記結合を検出する試薬である。
【0047】
1つまたは複数の実施形態において、前記結合検出試薬は、例えばビオチンなどヒト上皮成長因子受容体結合分子に結合することができるの検出可能な標識である。前記検出可能な標識は前記ヒト上皮成長因子受容体結合分子に結合され、またはに個別にキットに存在する。
【0048】
本発明は、試料中のヒト上皮成長因子受容体の存在を検出するための非診断的方法であって、本明細書のいずれかの実施形態に記載のヒト上皮成長因子受容体結合分子を試料
と共にインキュベートすることと、ヒト上皮成長因子受容体の、単一ドメイン抗体、抗体またはその抗原結合断片への結合を検出し、それによって試料中のヒト上皮成長因子受容体の存在を決定することとを含む方法も提供する。前記検出は酵素結合免疫反応法による検出である。
【0049】
本発明はさらに、試料中のヒト上皮成長因子受容体の検出、薬物治療の効果の評価、またはがん診断のためのキットの調製における、本明細書の実施形態のいずれかに記載のヒト上皮成長因子受容体結合分子の応用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1図1において、AおよびBは、それぞれEGFR hisタンパク質およびEGFR-領域IIIのタンパク質についてのアルパカ抗血清力価の検出図である。
図2図2において、A~Dは、それぞれVHH-IgG4抗体と、EGFREGFR細胞外セグメント完全長タンパク質、領域I+IIタンパク質、領域IIIタンパク質、領域IVタンパク質との結合状況を示す。領域I+IIに結合するE009抗体を除き、他の抗体はすべてEGFR細胞外セグメントの領域IIIおよび領域IVに結合する。
図3図3は、VHH-IgG4抗体がEGFR抗原への結合をめぐってEGFと競合した場合のELISA検出結果である。
図4図4は、VHH-IgG4抗体と、EGFR 領域IIIのタンパク質を過剰発現する293T安定トランスフェクション細胞株との結合の検出結果である。
図5図5は、VHH-IgG4抗体と、SKOV3腫瘍細胞株との結合の検出結果である。
図6図6は、VHH-IgG4抗体と、Aspc-1腫瘍細胞株との結合の検出結果である。
図7図7は、A~Cがそれぞれ抗体E002、E005、E008であるメンブレンプロテオームアレイ(MPA)スクリーニングの結果図である。 図中、IC50とEC50の単位はnMである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明者は、広範かつ詳細な研究、および大量のスクリーニングにより、抗ヒト上皮成長因子受容体単一ドメイン抗体を含むヒト上皮成長因子受容体結合分子を発見する。本発明のヒト上皮成長因子受容体結合分子は、EGFR抗原の膜近傍の領域IIIまたは領域IVに高特異性で結合でき、アフィニティと生物活性が高く、免疫原性が低く、構造が安定しており、創薬可能性に優れる。本発明は、単一ドメイン抗体を簡便に生成できる。
【0052】
抗体
本明細書において、「ヒト上皮成長因子受容体結合分子」または「EGFR結合分子」は、ヒト上皮成長因子受容体と特異的に結合するタンパク質であり、抗体、抗体の抗原結合フラグメント、重鎖抗体、ナノボディ、ミニ抗体、アフィボディ、受容体の標的結合領域、細胞接着分子、リガンド、酵素、サイトカイン、およびケモカインが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
「ヒト上皮成長因子受容体の膜近傍の領域III」(EGFR 領域IIIと略称される)は、ヒト上皮成長因子受容体のアミノ酸311~480の領域である(uniprot、P00533-1、C311-L480)。
【0054】
「ヒト上皮成長因子受容体の膜近傍の領域IV」(EGFR 領域IVと略称される)は、ヒト上皮成長因子受容体のアミノ酸481~645の領域である(uniprot
、P00533-1、F481-S645)。
【0055】
本明細書において、用語「抗体」は、モノクローナル抗体(免疫グロブリンFc領域を有する完全長抗体を含む)、マルチエピトープ特異性を有する抗体組成物、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、ダイアボディ、一本鎖分子、及び抗体断片(特に、抗原結合断片、例えば、Fab、F(ab’)2及びFv)を含む。本明細書において、用語「免疫グロブリン」(Ig)と「抗体」は互いに代用できる。
【0056】
基本的な4本鎖抗体ユニットは2本の同じ軽鎖(L)と2本の同じ重鎖(H)により構成されるヘテロ四量体糖タンパク質である。IgM抗体は5個の基本的なヘテロ四量体ユニット及びJ鎖と呼ばれるその他のポリペプチドからなり、10個の抗原結合部位を含む。IgA抗体は2-5個の基本的な4本鎖ユニットを含み、J鎖と重合して、多価集合体が形成できる。IgGの場合、4本鎖ユニットは通常約150,000ダルトンである。各軽鎖は1つの共有ジスルフィド結合により重鎖と連結され、2本の重鎖は1つ又は複数のジスルフィド結合により互いに連結されるが、ジスルフィド結合の数が重鎖のアイソタイプによって決定される。各重鎖と軽鎖との間は規則的な間隔の鎖間ジスルフィド架橋を更に有する。各重鎖はN-末端に可変ドメイン(VH)を有し、更に3つ(各α及びγ鎖に対しては、CH1、CH2とCH3である)及び4つ(μ及びεアイソタイプに対しては、CH1、CH2、CH3とCH4である)の定常ドメイン(CH)、およびCH1ドメインとCH2ドメインの間のヒンジ領域(Hinge)を有する。各軽鎖はN-末端に可変ドメイン(VL)を有し、更にその他端に定常ドメインを有する(CL)。VLはVHと整列し、CLは重鎖の第1定常ドメイン(CH1)と整列している。特定のアミノ酸残基は軽鎖と重鎖可変ドメインとの間に界面が形成されると考えられる。対となるVHとVLは一緒に1つの抗原結合部位を形成する。抗体の種々のクラスの構造及び特性について、Basic and Clinical Immunology、第8版、Daniel P. Sties、Abba I. Terr及びTristram G. Parsolw編集、Appleton & Lange、Norwalk、CT、1994、71ページ及び第6章を参照する。任意の脊椎動物種に由来する軽鎖は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列によって、κ及びλと呼ばれる異なる2種のうちの1種に割り当てることができる。免疫グロブリンは、それらの重鎖定常ドメイン(CH)のアミノ酸配列によって、種々のクラス又はアイソタイプに割り当てることができる。免疫グロブリンは、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMの5種類があり、それぞれα、δ、ε、γ及びμと呼ばれる重鎖を有する。γ及びαクラスは、CH配列及び機能の比較的に小さい相違によって、更に、例えば、ヒトに発現されるIgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2のサブクラスに分けられる。
本明細書に記載の「重鎖抗体」はラクダ科生物または軟骨魚類生物由来の抗体である。上記の4鎖抗体と比べ、重鎖抗体は、軽鎖および重鎖定常領域1(CH1)を欠如し、可変領域(VHH)および他の定常領域からなる重鎖を2つのみ含み、可変領域は、ヒンジ領域構造に類似する構造によって定常領域と連結されている。ラクダ科動物の重鎖抗体の各重鎖は、1つの可変領域(VHH)及び2つの定常領域(CH2及びCH3)を含み、軟骨魚類の重鎖抗体の各重鎖は、1つの可変領域及び5つの定常領域(CH1-CH5)を含む。重鎖抗体の抗原結合断片はVHHと一本鎖重鎖抗体を含む。重鎖抗体は、ヒトIgG Fcの定常領域との融合により、ヒトIgG FcのCH2およびCH3を有することができる。
【0057】
本明細書において、用語「単一ドメイン抗体」、「抗ヒト上皮成長因子受容体単一ドメイン抗体」、「重鎖抗体の重鎖可変領域ドメイン」、「VHH」、「ナノボディ」は互いに交換して使用でき、いずれもヒト上皮成長因子受容体を特異的に認識し、それに結合する単一ドメイン抗体を指す。単一ドメイン抗体は重鎖抗体の可変領域である。通常、単一ドメイン抗体は3つのCDRと4つのFRを含む。好ましくは、本発明の単一ドメイン抗体はSEQ
ID NO:1に示されるCDR1、SEQ ID NO: 2に示されるCDR2、およびSEQ ID NO: 3に示されるCDR3を含む。単一ドメイン抗体は最も小さい機能性抗原結合断片である。通常、軽鎖および重鎖定常領域1(CH1)を天然に欠如した抗体を取得してから、抗体重鎖の可変領域をクローニングし、1つの重鎖可変領域のみからなる単一ドメイン抗体を構築する。
【0058】
2つ以上の単一ドメイン抗体を含む結合分子は、多価単一ドメイン抗体であり;2つ以上の異なる特異性単一ドメイン抗体を含む結合分子は、多重特異性単一ドメイン抗体である。多価の単一ドメイン抗体または多重特異性単一ドメイン抗体はリンカーにより複数の単一ドメイン抗体に連結される。前記リンカーは通常、GとSから選ばれ1-15のアミノ酸からなる。
【0059】
本明細書において、重鎖抗体および抗体は、抗体の異なる組み合わせ方式を区別することを意図している。構造的に類似性を有するため、下記抗体に対する構造説明は軽鎖に関する内容以外は、重鎖抗体に適用する。
【0060】
抗体の「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の重鎖又は軽鎖のアミノ基末端ドメインである。重鎖及び軽鎖の可変ドメインはそれぞれ「VH」及び「VL」と呼ばれる。これらのドメインは通常、抗体の最も可変できる部分(同じタイプのその他の抗体)であり、抗原結合部位を含む。
【0061】
用語「可変」は、可変ドメインにおける特定のセグメントが抗体の間で配列が広範囲に異なることを意味する。可変ドメインは、抗原結合を媒介して、特定抗体の、その特定抗原に対する特異性を限定する。しかしながら、可変性は、可変ドメイン全てのアミノ酸スパンにわたって均一に分布しているわけではない。代わりに、超可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメント(軽鎖及び重鎖可変ドメインのどちらにもある)に集中し、即ち、それぞれ重鎖可変領域のHCDR1、HCDR2、HCDR3及(重鎖抗体において、CDR1、CDR2、CDR3と略称してもよい)び軽鎖可変領域のLCDR1、LCDR2、LCDR3である。可変ドメインにおけるより高度に保存された部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ4つのFR領域(FR1、FR2、FR3及びFR4)を含み、通常、βプリーツシート構造を採用するが、環状連結を形成すると共に場合によってβプリーツシート構造の一部を形成する3つのHVRにより連結される。各鎖におけるHVRは、FR領域により非常に近い距離で保持されており、且つ他方の鎖におけるHVRと一緒に抗体の抗原結合部位の形成を促進する。通常、軽鎖可変領域の構造はFR1-LCDR1-FR2-LCDR2-FR3-LCDR3-FR4であり、重鎖可変領域の構造はFR1-HCDR1-FR2-HCDR2-FR3-HCDR3-FR4である。定常ドメインは、抗体と抗原との結合に直接的に関与しないが、例えば、抗体依存性細胞に仲介される細胞毒性における抗体の関与などの、様々なエフェクター機能を示している。
【0062】
「Fc領域」(結晶性断片領域)または「Fcドメイン」または「Fc」は、抗体重鎖のC末端領域を指し、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)に位置するFc受容体への結合、または古典的補体系の第1成分(C1q)への結合を含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介する。IgG、IgAおよびIgD抗体アイソタイプにおいて、Fc領域は、抗体の2本の重鎖のCH2ドメインおよびCH3ドメインに由来する2つの同一のタンパク質断片から構成され;IgMおよびIgEのFc領域は、各ポリペプチド鎖に3つの重鎖定常ドメイン(CHドメイン2-4)を含む。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は、様々であり得るが、ヒトIgG重鎖のFc領域は、一般的に、例えば、Kabatにおけるように、重鎖の位置C226またはP230のアミノ酸残基からカルボキシル末端までの配列セグメントとして定義され、その番号付けはEUインデックスに従う。本明細書において、Fc領域は天然配列Fcまたは変異体Fcであり得る。
【0063】
「抗体断片」は無傷抗体の一部、好ましくは無傷抗体の抗原結合領域及び/又は可変領域を含む。抗体断片は抗体の抗原結合断片が好ましい。抗体断片の例として、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFv断片や、ダイアボディや、線状抗体や、一本鎖抗体分子や、scFv-Fc断片や、抗体断片により形成される多重特異性抗体や、化学的修飾又はリポソームに組込まれることにより半減期が増加可能な任意の断片が挙げられる。抗体のパパイン消化は
、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片、ならびに1つの残りの「Fc」断片を産生し、その名称は容易に結晶化する能力を反映している。Fab断片は完全な軽鎖及び重鎖可変ドメイン(VH)と1本の重鎖第1定常ドメイン(CH1)により構成される。各Fab断片は抗原結合に関して1価であり、即ち、単一の抗原結合部位を有する。抗体のペプシン処理は、1つの大型F(ab’)2断片を生じ、これは、ジスルフィド結合によって連結された2つのFab断片にほぼ相当し、異なる抗原結合活性を有し、且つ依然として抗原を架橋することができる。Fab’断片は、CH1ドメインのカルボキシ基末端に幾つかのその他の残基(抗体ヒンジ領域に由来する1つ又は複数のシステインを含む)が付加されているため、Fab断片と異なる。F(ab’)2抗体断片は、元来対となるFab’断片として産生され、Fab’断片の間にヒンジシステインがある。抗体断片のその他の化学カップリングは既に知られている。Fc断片はジスルフィド結合により一体に保持されている2本の重鎖のカルボキシ基末端部分を含む。抗体のエフェクター機能はFc領域における配列によって決定されるが、該領域は幾つかの種類の細胞に発見されたFc受容体(FcR)により認識された領域でもある。
【0064】
「Fv」は完全な抗原認識及び結合部位を含む最小抗体断片である。この断片は、堅く、非共有的に会合した1つの重鎖および1つの軽鎖可変領域ドメインの二量体からなる。これら2つのドメインのフォールディングから、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に抗原特異性を付与する6つの超可変ループ(各々重鎖および軽鎖からの3つのループ)を生じる。しかしながら、単一可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)でさえ、完全結合部位より低い親和性ではあるが、抗原を認識し、結合する能力を有する。「一本鎖Fv」は「sFv」又は「scFv」と略され、抗体VH及びVLドメインを含むと共に1本のポリペプチド鎖に連結される抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドはVHとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーを更に含み、sFvを所望の抗原結合構造に形成させる。
【0065】
本明細書において、用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集団により得られた抗体であり、即ち、天然に発生できる少量で存在可能な突然変異及び/又は翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化)を除き、集団を構成する各抗体が同様である。モノクローナル抗体は高度的な特異性を持ち、単一の抗原部位に対応するものである。ポリクローナル抗体製剤(異なる決定基(エピトープ)に対応する異なる抗体を代表的に含む)に対して、各モノクローナル抗体は抗原における単一の決定基に対応する。これらの特異性の他に、モノクローナル抗体の優位性は、ハイブリドーマの培養によって合成されるため、その他の免疫グロブリンに汚染されていないことである。修飾語「モノクローナル」は、抗体が実質的に均質な抗体の集団により得られた特徴を示し、任意の特定方法による抗体の産生を要請すると解釈するものではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法、ファージディスプレイ法、組換えDNA法、及び一部若しくは全体のヒト免疫グロブリン遺伝子座又はヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子を有する動物からヒト又はヒト様抗体を生成するための技術、単細胞シーケンシング法を含む様々な技術によって生成され得る。
【0066】
本明細書において、モノクローナル抗体は、「キメラ」抗体を含み、これは、所望の生物学的活性を示す限りにおいて、重鎖及び/または軽鎖の一部が、特定の種に由来する、または特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一または相同である一方、鎖の残部は、別の種に由来する、または別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一または相同であり、並びに、このような抗体の断片である。
【0067】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最低限の配列を含むキメラ抗体である。従って、「ヒト化抗体」は、通常、可変ドメインフレームワーク領域がヒト抗体に発見された配列と交換した非ヒト抗体である。通常、ヒ
ト化抗体において、抗体全体(CDRを除く)は、ヒト由来のポリヌクレオチドによりコードされ、又はこのような抗体(CDRを除く)と同じである。CDR(その一部又は全部が非ヒト生体に由来する核酸によりコードされる)がヒト抗体可変領域のβ-プリーツシート骨格に移植されて抗体が産生されるが、その特異性は移植されるCDRによって決定される。このような抗体を産生する方法は本分野において周知されており、例えば、遺伝子操作された免疫系を有するマウスを利用して作製する。本発明において、抗体、単一ドメイン抗体、重鎖抗体等はいずれも、各抗体のヒト化変異体を含む。
【0068】
「ヒト抗体」は、ヒトから産生された抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有し、及び/又は本願に開示されたヒト抗体を産生するための任意の技術を利用して産生されるような抗体である。このヒト抗体の定義は非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を明らかに排除した。ヒト抗体は、ファージ提示ライブラリーを含む、本分野における様々な既存技術を利用して産生してもよい。
【0069】
一部の実施形態において、本発明は、本発明のいずれかの抗ヒト上皮成長因子受容体単一ドメイン抗体と、ヒト上皮成長因子受容体単一ドメイン抗体の同じエピトープ(例えば、ヒト上皮成長因子受容体の膜近傍の領域III、IV)に結合する単一ドメイン抗体、重鎖抗体、抗体またはそれらの抗原結合フラグメント、即ち、本発明のいずれかの単一ドメイン抗体と交差競合して、ヒト上皮成長因子受容体に結合することができる単一ドメイン抗体、重鎖抗体、抗体またはその抗原結合フラグメント、をさらに提供する。
【0070】
本発明において、単一ドメイン抗体のCDR1は、SEQ ID NO:1に示される配列を含み、SEQ ID NO:1は、Xであり、ここで、Xは、Gであり、Xは、S、F、G、LまたはRであり、Xは、G、T、V、P、A、SまたはIであり、XはF、LまたはDであり、Xは、T、S、E、D、LまたはIであり、Xは、I、D、SまたはTであり、Xは、Q、Y、HまたはFであり、Xは、AまたはTである。好ましくは、Xは、Gであり、Xは、FまたはLであり、Xは、T、PまたはAであり、Xは、FまたはLであり、Xは、S、E、D、LまたはIであり、Xは、DまたはTであり、Xは、Yであり、Xは、AまたはTである。1つまたは複数の実施形態において、CDR1は、SEQ ID NO:4~12のいずれかに示される配列を含む。
【0071】
本発明において、単一ドメイン抗体のCDR2は、SEQ ID NO:2に示される配列を含み、SEQ ID NO:2は、Xであり、ここで、Xは、I、LまたはVであり、Xは、H、T、F、AまたはSであり、Xは、Q、G、S、P、T、IまたはNであり、Xは、G、T、D、A、SまたはYであり、Xは、G、H、EまたはNであり、Xは、S、E、K、D、GまたはAであり、Xは、T、H、I、K、Sまたはなしであり、Xは、S、T、I、Pまたはなしである。好ましくは、Xは、IまたはLであり、Xは、T、F、AまたはSであり、Xは、G、S、P、TまたはIであり、Xは、T、D、AまたはSであり、Xは、GまたはEであり、Xは、E、K、DまたはGであり、Xは、T、H、I、K、Sまたはなしであり、Xは、S、T、IまたはPである。1つまたは複数の実施形態において、CDR2は、SEQ ID NO:13~21のいずれかに示される配列を含む。
【0072】
本発明において、単一ドメイン抗体のCDR3は、SEQ ID NO:3に示される配列を含み、SEQ ID NO:3は、X10111213141516171819202122232425であり、ここで、Xは、N、S、A、KまたはHであり、Xは、V、I、R、K、AまたはLであり、Xは、V、Y、S、D、L、TまたはNであり、Xは、P、H、L、V、S、KまたはYであり、Xは、P、Y、S、R、TまたはAであり
、Xは、L、P、T、F、A、SまたはDであり、Xは、R、P、F、S、A、IまたはDであり、Xは、V、D、G、AまたはYであり、Xは、Y、N、T、R、Fまたはなしであり、X10は、P、A、W、Eまたはなしであり、X11は、S、H、L、Yまたはなしであり、X12は、F、D、N、Lまたはなしであり、X13は、Y、Vまたはなしであり、X14は、I、Gまたはなしであり、X15は、Gまたはなしであり、X16は、Y、Aまたはなしであり、X17はGまたはなしであり、X18は、Gまたはなしであり、X19は、Gまたはなしであり、X20は、Eまたはなしであり、X21は、Vまたはなしであり、X22は、Rまたはなしであり、X23は、Yまたはなしであり、X24は、Eまたはなしであり、X25は、Yまたはなしである。好ましくは、Xは、N、S、AまたはKであり、Xは、I、KまたはAであり、Xは、Y、D、LまたはTであり、Xは、H、L、V、SまたはKであり、Xは、P、S、RまたはTであり、Xは、P、F、A、SまたはDであり、Xは、R、P、F、SまたはIであり、Xは、V、D、GまたはAであり、Xは、Y、N、T、RまたはFであり、X10は、P、A、Wまたはなしであり、X11は、S、H、Lまたはなしであり、X12は、F、D、N、Lまたはなしであり、X13は、Y、Vまたはなしであり、X14は、I、Gまたはなしであり、X15は、Gまたはなしであり、X16は、Y、Aまたはなしであり、X17は、Gまたはなしであり、X18は、Gまたはなしであり、X19は、Gまたはなしであり、X20は、Eまたはなしであり、X21は、Vまたはなしであり、X22は、Rまたはなしであり、X23は、Yまたはなしであり、X24は、Eまたはなしであり、X25は、Yまたはなしである。1つまたは複数の実施形態において、CDR3は、SEQ ID NO:22~30のいずれかに示される配列を含む。
1つまたは複数の実施形態において、前記単一ドメイン抗体のCDR1は、SEQ ID NO:5、7、8、9、11のいずれかに示される配列を含有し、CDR2は、SEQ ID NO:14、16、17、18、20のいずれかに示される配列を含有し、CDR3は、SEQ ID NO:23、25、26、27、29のいずれかに示される配列を含む。
【0073】
1つまたは複数の実施形態において、前記単一ドメイン抗体は、表1の群a1乃至群a9のいずれかのSEQ ID NOで示されるCDR1、CDR2、およびCDR3を含有する。
【0074】
【表2】
【0075】
好ましくは、a2、a4、a5、a6、a8から選ばれるいずれかの群に示されるCDR1、CDR2、およびCDR3を含有する。
【0076】
1つまたは複数の実施形態において、前記単一ドメイン抗体VHHのFR1は、SEQ ID NO:31~82のいずれかのVHHのFR1から選ばれることができ、VHHのFR2は、SEQ ID NO:31~82のいずれかのVHHのFR2から選ばれることができ、VHHのFR3は、SEQ ID NO:31~82のいずれかのVHHのFR3から選ばれることができ、VHHのFR4は、SEQ ID NO:31~82のいずれかのVHHのFR4から選ばれることができる。
【0077】
好ましい実施形態において、本発明の単一ドメイン抗体VHHのFR領域は、SEQ
ID NO:31~82から選ばれるいずれかのVHHのFR領域である。さらに好ましくは、このような抗体のCDRは、前述群a1乃至群a9のいずれかの群から選ばれる。1つまたは複数の実施形態において、前記単一ドメイン抗体VHHは、SEQ ID NO:31~82のいずれかに示される。好ましくは、前記単一ドメイン抗体は、SEQ
ID NO:31~38、40~46、57~82のいずれかに示される。
【0078】
本明細書に記載のヒト上皮成長因子受容体結合分子は、1つ、2つもしくは複数の本明細書に記載の抗ヒト上皮成長因子受容体単一ドメイン抗体を含む1価もしくは多価の単一ドメイン抗体、多重特異性単一ドメイン抗体、重鎖抗体もしくはその抗原結合フラグメント、抗体もしくはその抗原結合フラグメントであってもよい。前記重鎖抗体は、ラクダ重鎖抗体や軟骨魚重鎖抗体の定常領域など重鎖定常領域をさらに含む。好ましくは、前記
重鎖定常領域は、SEQ ID NO:83に示される。
【0079】
本発明はさらに前記抗体誘導体と類似体を含む。「誘導体」及び「類似体」とは、本発明の抗体と相同な生物学機能又は活性を基本的に保持するタンパク質を指す。本発明の誘導体或いは類似体は、()1つ又は複数のアミノ酸残基に置換基を有するポリペプチド、または(ii)成熟したポリペプチドがその他の化合物(例えば、ポリエチレングリコールなどの、ポリペプチドの半減期を延長する化合物)に融合して形成されたポリペプチド、或いは(iii)付加されたアミノ酸配列が当該ポリペプチド配列に融合されて形成されたポリペプチド(例えば、リーダー配列、分泌配列、当該ポリペプチドを精製するための配列又はタンパク質構成配列、或いは6Hisタグと形成された融合タンパク質)であってもよい。本明細書に教示されるように、これらの誘導体及び類似体は、当業者の周知範囲である。
【0080】
抗体活性に実質的な影響を与えない前提で、当業者は本発明の配列に対して1個以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個以上)のアミノ酸を変更して、前記抗体又はその機能性断片配列の変異体を得ることができる。これらの変異体は、1つ又は複数の(通常は1-50個であり、好ましくは1-30個であり、より好ましくは1-20個であり、最も好ましくは1-10個である)アミノ酸が欠如、挿入及び/又は置換され、及びC末端及び/又はN末端に1つ又は複数の(通常は20個以下であり、好ましくは10個以下であり、より好ましくは5個以下である)アミノ酸が付加されることで得られたものを含むが、これらに限定されない。本分野において、近い特性又は類似的な特性を持つアミノ酸で性保存的な置換した場合、通常、タンパク質の機能が変化することはない。例えば、可変領域のFR及び/又はCDR領域で類似する特性を有するアミノ酸を置換する。保存的な置換できるアミノ酸残基は本分野で周知されている。このような置換されたアミノ酸残基は、遺伝暗号によってコードされてもされなくてもよい。また、例えば、C末端及び/又はN末端に1つ又は複数のアミノ酸が付加された場合でも、通常、タンパク質の機能が変化することはない。これらは本発明により請求される範囲内に含まれると見なされる。
【0081】
本明細書に記載される抗体の変異型には、相同配列、保存的変異体、対立遺伝子変異体、天然変異体、誘導変異体、および高または低ストリンジェンシー条件下で本発明の抗体をコードするDNAとハイブリダイズできるDNAによってコードされるタンパク質、および本発明の抗体に対する抗血清を用いて得られるポリペプチドまたはタンパク質を含む。
【0082】
幾つかの実施形態において、本発明に係る変異体の配列はその由来配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有してもよい。本発明に係る配列同一性は配列分析ソフトウエアを利用して測定できる。例えば、デフォルト引数を使用するコンピュータプログラムBLAST、特にBLASTP又はTBLASTNが挙げられる。本発明は、それらのCDRが本明細書で同定されるCDRと90%を超える(好ましくは95%を超え、最も好ましくは98%を超える)相同性を有する限り、CDRを有する抗体重鎖可変領域を有する分子をさらに含む。
【0083】
例えば、本分野でよく知られているハイブリドーマ技術など、本分野の常用方法により本発明の抗体を製造してもよい。例えば、本分野でよく知られているファージディスプレイ技術など、本分野の常用方法により本発明の重鎖抗体を製造してもよい。または、本発明の抗体または重鎖抗体は他の細胞系で発現してもよい。本発明の抗体をコードする配列で適切な哺乳動物宿主細胞を変換してもよい。変換は、例えば、ポリヌクレオチドをウイルス(又はウイルスベクター)にパッケージングしてウイルス(又はベクター)で宿主細胞に対して形質導入を行うことなどを含む、任意の既知方法を採用してもよい。使用される変換工程は変換する宿主によって決定される。ヘテロポリヌクレオチドを哺乳動物細胞に導入するための方法は本分野においてよく知られており、デキストランにより仲介されるトランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレンにより仲介されるトラン
スフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、ポリヌクレオチドのリポソームへのカプセル化、及びDNAの細胞核への直接マイクロインジェクションなどを含む。発現するための宿主として利用できる哺乳動物細胞系は本分野においてよく知られており、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)から入手できる様々な不死化細胞系を含むが、これらに限定されず、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞がん細胞(例えば、HepG2)などを含むが、これらに限定されない。特に好ましい細胞系は、高発現レベルを有するとともに、基本的なヒト上皮成長因子受容体結合特性を有する抗体を産生する細胞系を特定することで選定する。
【0084】
核酸
本発明はさらに、前記抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドを提供する。本明細書は重鎖可変領域、軽鎖可変領域、重鎖、軽鎖及び各CDRをコードするポリヌクレオチドを提供する。本発明のポリヌクレオチドはDNA形態又はRNA形態であってもよい。DNA形態はcDNA、ゲノムDNA又は人工合成DNAを含む。DNAは一本鎖又は二本鎖であってもよい。DNAはコード鎖又は非コード鎖であってもよい。
【0085】
当業者に理解されるように、遺伝コードの縮重により大量の核酸を製造できるが、このような核酸の全ては本発明の抗体又はその抗原結合断片をコードする。従って、特定のアミノ酸配列が既に同定された場合、当業者はタンパク質をコードするアミノ酸配列を改変しない方式で1つ又は複数のコドンを簡単に修飾する配列により、任意数の異なる核酸を製造できる。したがって、本発明は、上記ポリヌクレオチド配列とハイブリダイズし、且つ2つの配列間で少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%の同一性を有するポリヌクレオチドにも関する。本発明は、特に、本発明のポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドに関する。本発明において、「ストリンジェントな条件」とは、(1)例えば0.2×SSC、0.1%SDS、60℃など低いイオン強度および高い温度でのハイブリダイゼーションおよび溶出;または(2)例えば50%(v/v)ホルムアミド、0.1%子ウシ血清/0.1%Ficoll、42℃など変性剤によるハイブリダイゼーション;または(3)2つの配列間の同一性が少なくとも90%以上であり、より好ましくは95%以上である場合のみハイブリダイゼーションが発生する。さらに、ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドは、成熟ポリペプチドと同じ生物学的機能および活性を有する。
【0086】
本発明の抗体のヌクレオチドの全長配列或いはその断片は、通常、PCR増幅法、組換え法または人工合成の方法により得られる。特に断片の長さが短い場合、人工合成方法により関連配列を合成してもよい。通常、複数の小さい断片を合成した後に、これらを結合して長い配列の断片を得る。さらに、重鎖のコード配列と発現タグ(6Hisなど)を融合して融合タンパク質を形成することもできる。
【0087】
関連の配列を取得すると、組換え法により関連配列を大量に得ることができる。通常、それをベクターにクローニングして、細胞に導入した後に、通常の方法により増殖した宿主細胞から分離して関連配列を得る。本発明に係る生体分子(核酸、タンパク質等)には、単離された形態で存在する生体分子も含まれる。現在、化学合成だけにより、本発明のタンパク質(又はその断片、あるいはその誘導体)をコードするDNA配列を得ることができる。その後、当該DNA配列を本分野における既知の様々な既存DNA分子(例えば、ベクター)と細胞に導入する。また、化学合成により突然変異を本発明のタンパク質配列に導入してもよい。
【0088】
したがって、本発明はさらに、上記の適切なDNA配列および適切なプロモーターまたは制御配列を含む、発現ベクターおよび組換えベクターなどの核酸構築物に関する。これ
らのベクターは、タンパク質を発現させるように、適切な宿主細胞の形質転換に利用できる。ベクターは、通常、プラスミドの維持及び外因性ヌクレオチド配列のクローンと発現に使用される配列を含む。前記配列(幾つかの実施形態において「隣接配列」と総称される)は通常、1つ又は複数の下記ヌクレオチド配列、即ち、プロモーター、1つ又は複数のエンハンサー配列、複製起点、転写終結配列、供与体及び受容体スプライス部位を含む完全イントロン配列、ポリペプチド分泌に利用されるリーダー配列をコードする配列、リボソーム結合部位、ポリアデニル化配列、発現しようとする抗体をコードする核酸を挿入するためのマルチコネクソン領域及び任意の標識エレメントを含む。
【0089】
宿主細胞は、細菌細胞などの原核細胞、酵母細胞などの下等真核細胞、または哺乳類細胞などの高等真核細胞であり得る。代表的な例としては、大腸菌、ストレプトマイセス、サルモネラ・ティフィムリウムなどの細菌細胞、酵母などの真菌細胞、ミバエS2又はSf9などの昆虫細胞、CHO、COS7、293細胞などの動物細胞などが挙げられる。
【0090】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は例えば様々なキラー細胞など、当技術分野で知られている様々な機能細胞であり得、サイトカイン誘導キラー細胞(CIK)、樹状細胞刺激サイトカイン誘導キラー細胞(DC-CIK)、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、γδT細胞、ナチュラルキラー細胞(NK)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、リンホカイン活性化キラー細胞(LAK)、CD3AK細胞(抗CD3モノクローナル抗体キラー細胞)およびCAR-T/TCR-T細胞を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、前記キラー細胞はT細胞またはNK細胞である。例示的なNK細胞は初代NK細胞、NK細胞株(例えばNK92)およびNKT細胞を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、前記NK細胞は初代NK細胞である。例示的なT細胞は末梢血Tリンパ球、細胞傷害性キラーT細胞(CTL)、ヘルパーT細胞、サプレッサー/制御性T細胞、γδT細胞、サイトカイン誘導性キラー細胞(CIK)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)などの混合細胞集団のT細胞を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、前記T細胞は末梢血Tリンパ球とTIL由来のT細胞から選ばれる。組換えDNAによる宿主細胞の形質転換は、当業者に周知の従来の技術で行うことができる。宿主が大腸菌などの原核生物である場合、DNAを取り込むことができるコンピテントセルを指数増殖期後に採取でき、当技術分野で周知の手順を用いてCaCl2法で処理することができる。もう1つの方法はMgCl2を利用することである。必要な場合、形質転換はエレクトロポレーション法で行うこともできる。宿主が真核生物である場合、リン酸カルシウム共沈法などのDNAトランスフェクション法、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、リポソームパッケージングなどの通常機械方法生体してもよい。
【0091】
得られた形質転換体は通常の方法で培養し、本発明の遺伝子がコードするポリペプチドを発現させることができる。培養に使用される培地は、使用される宿主細胞によって、様々な通常の培地から選べても良い。宿主細胞の成長に適する条件で培養する。宿主細胞が適切な細胞密度まで増殖した後、適切な方法(温度変換や化学誘導など)によって選択されたプロモーターを誘導し、さらに一定期間細胞を培養する。
【0092】
上記方法におけるポリペプチドは、細胞内、または細胞膜に発現され、又は細胞外に分泌される。必要に応じて、その物理的、化学的、及びその他の特性を利用して、様々な分離方法で組換えタンパク質を分離および精製してもよい。これらの方法は、当業者に周知するものである。これらの方法は、通常の再生処理、タンパク質沈殿剤による処理(塩析方法)、遠心分離、浸透殺菌、超音波処理、超遠心分離、分子ふるいクロマトグラフィー(ゲル濾過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及びその他の様々な液体クロマトグラフィー技術、並びにこれらの方法の組合せを含むが、これらに限定されない。
【0093】
治療的使用と医薬組成物
ナノボディライブラリを構築することにより、発明者はEGFRタンパク質に結合できる複数のナノボディを発見かつ発現して精製する。タンパク質レベルアフィニティ検出、タンパク質結合エピトープ解析、リガンド競合アッセイ、種交差アッセイ、細胞レベルアフィニティ検出、腫瘍細胞EGFR結合検出、Membrane Proteome Arrayスクリーニング、および組織交差反応などを通して、これらの抗体の抗原や細胞への結合能力や医薬の安全性を検証する。
【0094】
そのため、本明細書に記載の抗体のすべての態様は、本明細書に記載の種々の病態および疾患の予防または治療のための医薬を調製することに用いられ、前記病態および疾患、特に病態は、ヒト上皮成長因子受容体を発現する細胞に関する病態および疾患である。一部の実施形態において、前記病態および疾患はがんであり、頭頸部がん、乳がん、膀胱がん、卵巣がん、腎臓がん、結腸がん、非小細胞肺がんなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0095】
本明細書に記載の医薬組成物は本明細書に記載の結合分子、および薬学的に許容される賦形剤、を含み、前記賦形剤は希釈剤、ベクター、可溶化剤、乳化剤、防腐剤及び/又はアジュバントを含むが、これらに限定されない。賦形剤は、好ましくは、用いられる用量および濃度において受容者に毒性はない。このような賦形剤としては、食塩水、緩衝液、グルコース、水、グリセロール、エタノール、およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、医薬組成物は、例えば、組成物のpH値、浸透性、粘度、清澄度、色、等張性、におい、無菌性、安定性、溶解又は放出速度、吸収又は浸透を改善、維持又は保留するための物質を含んでもよい。これらの物質は既存技術でよく知られている。所望の投与経路、送達方式及び必要とされる用量によって最適な医薬組成物を決定する。
【0096】
インビボで投与する医薬組成物は、通常、無菌製剤の形態で提供する。無菌ろ過膜によりろ過することで殺菌を実現する。組成物を凍結乾燥する場合、凍結乾燥及び再構成の前に又はその後にこの方法により殺菌する。本発明の医薬組成物は非経口送達で使用してもよい。非経口投与に利用される組成物は凍結乾燥の形態又は溶液で保存できる。例えば、生理食塩水、グルコースおよびその他の添加物を含む水溶液を用いて通常の方法により調製することができる。非経口組成物は、通常、無菌アクセスポートを有する容器、例えば皮下注射針によって穿通可能な栓を有する静脈内溶液バッグ、またはバイアルに入れられる。或いは、組成物は吸入又は消化器(例えば、経口)送達で使用してもよい。前記薬学的に許容される組成物は本分野の技術により製造する。その他の医薬組成物は当業者にとって明らかであり、持続的に又は制御的に放出される送達調製物に抗体が含まれる調製物を含む。幾つかのその他の持続的又は制御可能な送達方式を提供するための技術(例えば、リポソームベクター、生分解性微粒子又は多孔質ビーズ及びデポ注射)も当業者によく知られている。
【0097】
医薬組成物は、調製されると、溶液、懸濁液、ゲル、乳液、固体、結晶、或いは脱水又は凍結乾燥粉末の形態で無菌バイアルに保存される。前記調製物はレディー・ツー・ユースの形態又は投与直前再構成の形態(例えば、凍結乾燥)のいずれで保存できる。本発明は単回用量投与単位を生成するための試薬キットを更に提供する。本発明の試薬キットは乾燥タンパク質を有する第1容器と含水調製物を有する第2容器をそれぞれ含む。本発明の幾つかの実施形態において、シングルチャンバー及びマルチチャンバープレフィルドシリンジ(例えば、液体用シリンジ及び凍結乾燥用シリンジ)を含む試薬キットを提供する。
【0098】
本発明は、本発明の何れか1つの実施形態に係る結合分子又はその医薬組成物を投与することで、患者(特に患者のヒト上皮成長因子受容体関連疾患)を治療する方法を提供する。本明細書において、用語「患者」、「被験者」、「個体」、「対象」は互いに交換し
て使用できるが、任意の生体を含み、好ましくは動物であり、より好ましくは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、イヌ、ネコ、ウサギなど)であり、最も好ましくはヒトである。「治療」は、被験者に対して本明細書に記載される治療方案を採用して、少なくとも1つの陽性治療効果(例えば、がん細胞数減少、腫瘍体積減少、がん細胞の周辺器官への浸潤速度低下又は腫瘍転移又は腫瘍成長の速度低下)を得ることである。患者を有効的に治療する治療方案は様々な要素(例えば、患者の疾患状態、年齢、体重及び療法の被験者の抗がん反応を活性化させる能力)によって変更する。
【0099】
採用しようとする本発明の結合分子を含む医薬組成物の治療有効量は、例えば、治療程度及び目標によって決定される。当業者に理解されるように、治療に使用される適切な用量レベルは部分的に送達される分子、適応症、投与経路及び患者の大きさ(体重、体表又は器官の大きさ)及び/又は状況(年齢及び一般健康状況)によって変化する。幾つかの実施形態において、最適の治療効果を得るために、臨床医が投薬量を設定して、投与経路を改変してもよい。例えば1日当たり約10μg/kg体重-約50μg/kg体重である。
【0100】
投与頻度は使用される調製物における結合分子の薬物動態パラメータに依存する。代表的には、臨床医は組成物を所望の効果を実現する投薬量まで投与する。従って、組成物は1回用量として投与してもよく、或いは2回以上の用量(必要とされる分子を同じ量で含んでもよく又は含まなくてもよい)として経時的に、または移植デバイス又はカテーテルを介して連続注入として投与してもよい。
【0101】
医薬組成物の投与経路は、持続放出システムによるかまたは移植デバイスによる、例えば、経口、静脈内、腹膜内、脳内(脳実質内)、脳室内、筋肉内、眼内、動脈内、門脈又は病巣内の経路による注射を通じた公知の方法に従う。
【0102】
診断、検出及び試薬キット
本発明の結合分子は、そのヒト上皮成長因子受容体に対する高親和性により測定に利用でき、例えば、測定と合わせて組織または細胞に発現するヒト上皮成長因子受容体を検出及び/又は定量する。例えば単一ドメイン抗体などの結合分子はヒト上皮成長因子受容体の疾患における作用のさらなる研究に利用できる。ヒト上皮成長因子受容体を検出する方法は大体次の通りである:細胞および/または組織試料を取得する;試料中のヒト上皮成長因子受容体のレベルを検出する。
【0103】
本発明のヒト上皮成長因子受容体はヒト上皮成長因子受容体に関連する疾患及び/又は病状を検出、診断又は監視するための診断目的に利用できる。本発明は当業者によく知られている代表的な免疫組織学方法により試料におけるヒト上皮成長因子受容体の存在を検出することを提供する。インビボ又はインビトロでヒト上皮成長因子受容体を検出できる。ヒト上皮成長因子受容体の存在検出に適する方法の実例はELISA、FACS、RIAなどを含む。
【0104】
診断応用について、通常、検出できる標識基により例えば単一ドメイン抗体などの結合分子を標識する。適切な標識基は、下記のもの、即ち、放射性同位体又は放射性核種(例えば、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、発蛍光団(例えば、FITC、ローダミン、ランタニドリン光剤)、酵素団(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光団、ビオチン団又は二次レポーターにより認識された予定ポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー配列、二次抗体に利用される結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)、MRI(磁気共鳴映像)またはCT(コンピュータ断層撮影)造影剤を含むが、これらに限定されない。タンパク質を標識するための各方法は本分野においてよく知られていると共に、本発明を実施できる。
【0105】
本発明の別の様態は本発明の抗体に対してヒト上皮成長因子受容体と競合的に結合する試験分子の存在の検出方法を提供する。前記測定の実例は、試験分子が存在する、又は存在しない場合の、ヒト上皮成長因子受容体を一定量で含む溶液における遊離抗体の量の検出に関する。遊離抗体(即ち、ヒト上皮成長因子受容体と結合していない抗体)の量の増加は、該抗体に対して試験分子がヒト上皮成長因子受容体と競合的に結合できることを示す。一実施形態において、標識基で抗体を標識する。或いは、試験分子を標識すると共に、抗体が存在する、又は存在しない場合に遊離試験分子の量を監視する。
【0106】
本発明はまた、ヒト上皮成長因子受容体のレベルを検出するための検出キットを提供し、このキットは、ヒト上皮成長因子受容体を認識する抗体、試料を溶解するための溶解媒体、検出に必要な一般的な試薬および緩衝液、例えば様々な緩衝液、検出用標識、検出用基質などを含む。当該検出キットは、体外診断装置であってもよい。
【0107】
下記は具体的な実施例により本発明を説明する。これらの実施例は説明するためのものであり、意図的に本発明の範囲を限定するものではない。実施例に使用される方法及び材料は別途で断りのない限り、本分野でよく知られている材料及び方法である。
【実施例
【0108】
実施例1、アルパカ免疫
1.1免疫原の調製。
uniprotで照会したヒト上皮成長因子受容体タンパク質配列(L25-S645、P00533-1)により、ヒトIgG Fcフラグメント配列と融合し、pCDNA3.4(Thermo)プラスミドの真核発現ベクターの合成と構築を南京ジェンスクリプト社に委託し、合成後のプラスミドをExpiCHOTM(Thermo Fisher)発現システムで発現させ、発現後に、5mLのProtein Aプレパックカラム(GE)を用いてワンステップアフィニティ精製を行い、精製後の試薬をPBSバッファーに交換し、SDS-PAGE電気泳動ゲルおよびHPLCによって純度を検定し、ELISAによって活性を検定した後、後続の免疫に用いるように、分包して-80°Cの冷凍庫で冷蔵した。
【0109】
1.2アルパカ免疫:
初回免疫抗原用量は400μgとし、アジュバント(GERBU FAMA)と均一に混合し、アルパカの背中への皮下注射の4箇所を選択し免疫させ、各箇所の免疫量は1mLとした。2回目から6回目の免疫:免疫抗原用量は200μgとし、アルパカの背中への皮下注射の4箇所を選択し免疫させ、各箇所の免疫量は1mLとした。各免疫の間隔は1週間であった。
【0110】
1.3免疫血清力価検出:
1.3.1タンパク質レベル力価検出
EGFR.His抗原(Acro、Cat#EGR-H522a)およびEGFR-V3-his tag抗原(Acro、Cat#EGI-H52H4)を4°Cで一晩コーティングし、ブロッキングして洗浄した後、段階希釈した血清をELISAプレートに添加してインキュベートした後、また、anti-llama IgG HRP(Abcam)抗体を用いてインキュベートし、洗浄後に、TMB発色溶液を添加して発色させ、2 M HClで反応を終了させ、その後、OD450ナノメートルでの吸光度値を、マイクロプレートリーダーによって検出した。図1に示される実験の結果により、アルパカの力価は6回の免疫で高いレベル(>512000)に達した。図1のAとBは、アルパカ免疫前後の血清のEGFR.HisおよびEGFR-V3-his tag抗原への結合力価をそれぞれ示した。
【0111】
実施例2、EGFRのナノボディ免疫ライブラリの構築とスクリーニング
(1)6回の免疫終了後、ラクダ末梢血リンパ球100mLを抽出し、かつ全RNAを抽出した。RNAは、TAKARA社のRNAiso試薬の説明書に従って抽出した。
【0112】
(2)RNAをテンプレートとし、oligo dTをプライマとして、第一鎖cDNAを、TAKARA社の逆転写酵素の説明書に従って、合成した。
【0113】
(3)PrimeSTARハイフィデリティDNAポリメラーゼを使用して、重鎖抗体の可変領域コード遺伝子をネスティッドPCRで取得した。ネスティッドPCRによって重鎖抗体の可変ドメインフラグメントを増幅した:
第1ラウンドPCR:
上流プライマ:GTCCTGGCTGCTCTTCTACAAGGC(SEQ ID
NO:84)
下流プライマ:GGTACGTGCTGTTGAACTGTTCC(SEQ ID NO:85)
【0114】
重鎖抗体ガイドペプチドと抗体CH2との間のフラグメントを増幅し、55°Cアニール処理、30サイクルを行い、約600bpのDNAフラグメントを、第2ラウンドPCRのテンプレートとして回収した。
第2ラウンドPCR:
上流プライマ:GATGTGCAGCTGCAGGAGTCTGGRGGAGG(SEQ ID NO:86)
下流プライマ:GGACTAGTGCGGCCGCTGGAGACGGTGACCTGGGT(SEQ ID NO:87)
【0115】
重鎖抗体のFR1領域と長短ヒンジ領域との間のフラグメント(長いフラグメントおよび短いフラグメント)を増幅し、55°Cアニール処理、30サイクルを行い、ターゲットフラグメントを回収し、その結果、該フラグメントのサイズは、約500bpであり、即ち、ナノボディ遺伝子電気泳動バンドは約500bpであることが示された。
【0116】
(4)ファージミドpME207およびPCR増幅生成物をそれぞれSfi IおよびNot Iダブルダイジェスト(NEB)で処理し、回収および定量後、T4 DNAリガーゼ(TaKaRa)を用いてモル比1:3で2つのフラグメントのライゲーションを行い、16°Cで一晩のライゲーションを行った。
【0117】
(5)ライゲーション生成物をエタノール中で沈殿させた後、100μLの滅菌水に溶解し、エレクトロポレーションを10回に分けて行い、大腸菌TG1を形質転換した。電撃培養後の細菌液100μLを多倍率で希釈し、アンピシリンLB培養プレートを塗布して、保存容量を計算し、残りの部分は、すべてアンピシリン2×YT培養プレートに塗布し、37°Cで13~16h反転して培養した。2×YT培地10mLで培養プレート上の細菌の芝生をこすった後、最終濃度25%のグリセロールを加え、分包し、後で使用するために-80°Cで保存した。保存容量のサイズは4.3×10であった。ライブラリの挿入率を検出するために、コロニーPCRのために48個のクローンをランダムに選択し、その結果、挿入率がすでに90%以上に達したことが示された。
【0118】
(6)計算された保存容量の結果により、保存容量の10倍の生細胞を200mLの2×YT(2%グルコース、100μg/mLアンピシリン含有)に接種し、OD600が0.5に達するまで、37℃、200r/minで培養し、補助ファージを、20:1の多重感染度に従って添加し、37℃で30min静置した後、37℃、200r/mi
nで、30min培養した。培養液を遠心分離し、2×YT200mL(100μg/mLのアンピシリンおよび50μg/mLのカナマイシン含有)で再懸濁沈澱を行い、37℃、250r/minで一晩培養した後、8000rpmで遠心分離して上清を取り、5×PEG/NaCl溶液を添加し、氷上で60min放置し、8000rpmで30min遠心分離し、5mLのPBSの中に再懸濁沈澱を行い、抗EGFR単一ドメイン抗体(VHH)免疫ライブラリが得られ、10μLを取って力価を測定し、残りは後で使用するために分包して-80°Cで保存した。
【0119】
(7)EGFR.Hisタンパク質を使用してファージライブラリのパンニングを行い、タンパク質をマイクロプレート上で2μg/mL、1ウェルあたり100μLでコーティングし、4°Cで一晩放置した。次の日、200μLの3%BSAを5つのウェルのそれぞれに添加し、室温で2時間ブロッキングした。2時間後にPBST(PBSには0.05%のツイーン20が含有される)で3回洗浄した。洗浄後、5%のスキムミルクで事前にブロッキングした100μLのファージ(2~3×1011 tfu免疫ラクダナノボディファージ表示遺伝子プール)を各ネガティブふるい穴に添加し、室温下で1.5時間作用させ、またネガティブふるいにかけた後の上清をターゲット抗原コーティング穴の中に移転し、室温下で1.5時間作用させた。結合していないファージを洗い除くように、PBST(PBSには0.05%のツイーン20が含有される)で12回洗浄した。EGFRに特異的に結合したファージを、Glycine(SIGMA)で解離し、溶出したファージをTris(Invitrogen、1M、PH8.0)で中和し、対数期でのTG1に感染させ、繁殖増幅後、次の「吸着-溶出」を行った。最後に、溶出したファージにTG1を含浸させ、IPTG(Thermo)によりTG1ナノボディの発現を誘導し、ELISAプレートをEGFRタンパク質とEGFR-DIII-AlpFcタンパク質でコーティングし、上清を取って、ELISA検出を行い、OD450>0.5のクローンを選択してシーケンシングを行った。
(8)配列解析後、EGFRタンパク質に結合できるクローンが合計182個得られた。
【0120】
実施例3、候補抗体発現精製
EGFRへの高い結合活性を持つナノボディの9つのVHH配列(その番号およびCDR1、CDR2、CDR3並びにVHH配列については、表6および7を参照)を選択し、pCDNA3.4-IgG4ベクターに構築し、VHH-IgG4の形態に構築し、その後、ExpiCHOTM(Thermo Fisher)発現システムで発現し、1週間発現した後に上清を取ってProtein A(GE)精製を行った。その後、Nanodropを用いてタンパク質の質量濃度を検出し、HPLCを用いてタンパク質の純度を検出した。得られたタンパク質の純度と収率は、後続の試験のニーズを満たした。
【0121】
実施例4、抗体の特性評価
タンパク質レベルアフィニティ検出:表面プラズモン共鳴法(SPR)を用いてヒトEGFR.His抗原に対する候補抗体の結合動態学およびアフィニティを測定した。精製された抗体をprotein Aであらかじめ固定化したセンサーチップに通し、抗体をprotein Aで捕捉し、次に5つの異なる濃度のEGFR.Hisタンパク質を移動相として使用し、結合時間と解離時間はそれぞれ30minと60minであった。結合速度(kon)、解離速度(koff)および平衡定数(KD)をBiacore Evaluation Software 2.0(GE)で解析した。ヒトEGFR 領域IIIに結合する抗体EC225を陽性コントロール(配列ソースhttps://go.drugbank.com/drugs/DB00002)として選んだ。SPR検出結果は下記表1に示された。
【0122】
【表3】
【0123】
タンパク質結合エピトープ解析:ELISAを使用して、VHH-IgG4抗体とEGFR細胞外の各セグメントのタンパク質との結合状況を測定した。簡単に説明すると、EGFR his tagタンパク質とEGFR-V3-his tag抗原タンパク質をそれぞれ1μg/mLに希釈し、EGFR-D1D2(L25-A310、P00533-1(uniprot))、EGFR-D4(F481-S645、P00533-1(uniprot))his tag抗原をそれぞれ0.5μg/mLに希釈し、各希釈後の抗原を、1ウェルあたり100μLでELISAプレート上にコーティングし、4°Cで一晩放置した。次の日、PBST(0.5%のTWEEN(登録商標)-20が添加された)でプレートを2回洗浄した後、3%のBSAを用いて37℃下でプレートを1.5hブロッキングした。その後、PBSTでプレートを2回洗浄した後、測定すべき抗体を50nM、5nM、0.5nM、0.05nMに希釈し、EGFR his tagタンパク質およびEGFR-V3-his tag抗原でそれぞれコーティングされたプレートウェルに100μL/ウェルで添加し、抗体を2000nM、200nM、20nM、2nMに希釈し、EGFR his tagタンパク質およびEGFR-V3-his
tag抗原でそれぞれコーティングされたプレートウェルに100μL/ウェルで添加し、ELISAプレートを37°Cで1hインキュベートした。その後、PBSTでプレートを3回洗浄した後、1ウェルあたり100μLのHRP標識ヤギ抗ヒトIgG FC抗体(1:10000、Bethyl)を添加し、かつ37℃でさらに40minインキュベートした。その後、PBSTでプレートを4回洗浄した後、100μL/ウェルでTMB発色溶液を添加し、3~5min反応させ、100μL/ウェルで3Nの塩酸を添加して反応を終了させた。反応終了後、TecanマイクロプレートリーダーでOD450/650を選んで検出を行った。結果としては、図2と表2に示されるように、図2にお
けるA~Dは、EGFR his tagタンパク質、EGFR-D1D2タンパク質、EGFR-V3-his tag、EGFR-D4タンパク質への各抗体の結合状況がそれぞれ表示され、領域I+IIに結合するE009抗体を除き、他の抗体はEGFR細胞外セグメント領域IIIおよび領域IVに結合した。
【0124】
【表4】
【0125】
リガンド競合試験:ELISAを使用して、VHH-IgG4抗体がEGFR細胞外タンパク質への結合についてリガンドEGFと競合するかどうかを検定した。簡単に説明すると、EGFR his tagタンパク質をPBSで2μg/mLに希釈し、1ウェルあたり100μLの抗原をマイクロプレートに添加して、4°Cで一晩コーティングし、次の日、プレートをPBST(0.5%のTWEEN(登録商標)-20が添加された)で2回洗浄した後、3%のBSAでプレートを37°Cで1.5hブロッキングし、次にPBSTでプレートを2回洗浄した。Human EGF Protein、Mouse IgG2a Fc Tag(Acro、Cat#EGF-H525b、100μg)タンパク質を10μg/mLに希釈し、VHH-IgG4抗体を2000nMに希釈し、また4倍で8段階連続的に希釈し、各ウェルに50μLのEGFタンパク質および50μLの希釈抗体を添加し、マイクロプレートを37℃で1hインキュベートし、3回洗浄した後、1:3000で希釈したHRPヤギ抗マウスIgG(Goat anti-Mouse IgG)(H+L)抗体(Abcam、cat#ab205719)を各ウェルに添加し、37℃で40minインキュベートした後、PBSTでプレートを3回洗浄し、100μL/ウェルでTMB発色溶液を添加し、3~5min反応させ、100μL/ウェルで3Nの塩酸を添加して反応を終了させた。反応終了後、TecanマイクロプレートリーダーでOD450/650を選んで検出を行った。また、Graphprism 8.0ソフトウェアで用量-効果曲線を作成し、IC50を計算した。アイソタイプコントロール2は陰性コントロールであり、そのアミノ酸配列は、CN106046152A
におけるSEQ ID NO:2に示された。結果は図3に示された。
【0126】
種交差アッセイ:ELISAを使用して、マウスEGFR、サルEGFR、およびヒトEGFRタンパク質の細胞外セグメントへのVHH-IgG4抗体の結合状況を検定する。検出ステップは下記のとおりである。Mouse EGF R Protein、His Tagタンパク質(Acro、Cat#EGR-M5224)、Rhesus macaque EGF R Protein、His Tag(Acro、Cat#EGR-C52H1)をリン酸バッファーでそれぞれ1μg/mLに希釈し、その後、1ウェルあたり100μLで96ウェルマイクロプレートに添加して、4℃で一晩コーティングし、次の日、PBST(0.5%のTWEEN(登録商標)-20が添加された)でプレートを2回洗浄し、その後、3%のBSAを用いて37℃でプレートを1.5hブロッキングし、次にPBSTでプレートを2回洗浄した。VHH-IgG4抗体を50nMに希釈し、1ウェルあたり100μLを添加し、37℃で1hインキュベートした後、PBSTでプレートを3回洗浄し、次に、1ウェルあたり100μLのHRP標識ヤギ抗ヒトIgG FC抗体(1:10000、Bethyl)を添加し、かつ37℃でさらに40minインキュベートした。その後、PBSTでプレートを4回洗浄し、100μL/ウェルでTMB発色溶液を添加し、3~5min反応させ、100μL/ウェルで3Nの塩酸を添加して反応を終了させた。反応終了後、TecanマイクロプレートリーダーでOD450/650を選んで検出を行った。結果としては、表3に示されるように、領域IIIと結合するタンパク質は、すべてマウスEGFRタンパク質と結合した。
【0127】
【表5】
【0128】
細胞レベルアフィニティ検出:EGFR 領域III発現HEK293T細胞(すなわち、HEK293T EGFR-III細胞)を96ウェルプレートに敷設し、各ウェルに3×10細胞を敷設し、また、段階希釈後のVHH-IgG4抗体でHEK293T EGFR III細胞をインキュベートし、半時間インキュベートした後、検出用二次抗体anti-human IgG PE(Jackson Immuno Research、Code:109-117-008、Lot:145501)を添加してインキュベートし、その後、CytoFLEXフローサイトメトリーを使用して検出を行った。Graphprism8.0ソフトウェアによってカーブフィッティングを行い、抗体
のEC50を計算した。結果は図4に示された。図中のアイソタイプコントロール1は、陰性コントロールであり、そのアミノ酸配列は、CN106146653AにおけるSEQ ID NO:2に示された。
【0129】
(6)腫瘍細胞に対するEGFR結合検出:EGFRを発現するSKOV3およびAspc-1の2種類の腫瘍細胞をそれぞれ96ウェルプレートに敷設し、各ウェルに3×10細胞を敷設し、また、段階希釈後のVHH-IgG4抗体で腫瘍細胞をインキュベートし、氷上で半時間インキュベートした後、検出用二次抗体anti-human IgG PE(Jackson Immuno Research、Code:109-117-008、Lot:145501)を添加してインキュベートし、その後、CytoFLEXフローサイトメトリーを使用して検出を行った。カーブフィッティングによって抗体のEC50を計算した。結果はそれぞれ図5図6に示された。
【0130】
実施例6:Membrane Proteome Arrayスクリーニング(メンブレンプロテオームアレイスクリーニング)
Membrane Proteome Array(MPA)は、米国Integral molecular社が開発したメンブレンプロテオームアレイスクリーニングプラットフォームであり、彼らは、HEK293細胞のトランスフェクションにより、細胞表面に5300種類の異なるヒトメンブレンプロテオームを示し、FACSによって、これらのタンパク質における抗体の結合信号を検出し、したがって、検出すべき抗体の特異性を評価した。MPAスクリーニング結果(図7)によると、E002、E005とE008は、いずれも特異性に優れ(それぞれ図7のA、B、Cに示された)、標的タンパク質EGFRにのみ特異的に結合することがわかった。
【0131】
実施例7:組織交差反応
この試験は、主に上海細胞治療集団傘下の臨床試験検出センターによって完了した。この研究の目的は、ストレプトマイセスアビジンとビオチンを結合する免疫組織化学的染色法を用いて、いくつかの好ましい抗体が12または34種類の正常ヒト凍結組織(各組織はいずれも3つの異なる個体に由来した)との交差反応が存在するかどうかを評価することであった。プロセスは下記のとおりである。12種類または34種類の組織を凍結切片用に選択し、室温で乾燥させた後、アセトンで固定した。ブロッキングは、内因性ビオチンブロッキングキット(生工、E674001)の試薬AおよびBを使用して行われた。ビオチン標識抗体試薬を30minインキュベートし、洗浄後、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(Abcam、ab7403)を添加して、15minインキュベートした。DAB発色およびヘマトキシリン・エオジン二重染色を使用し、中性プラスチックで切片を封入し、顕微鏡検査のための自然空気乾燥を行った。陽性コントロールはAnti-EGFR抗体(Biotin)(Abcam)で、陰性コントロールはビオチン標識IgGアイソタイプコントロールであった。
【0132】
表4は、9つの標的EGFRのVHH-IgG4抗体と12種類の正常ヒト組織との組織交差反応結果を示した。9つのEGFRナノボディおよび購入した市販のEGFR抗体は、扁桃腺、子宮頸部扁平上皮、皮膚、胎盤に明らかな局在性が示される典型的な陽性反応が存在した。E008抗体の組織交差反応の範囲は比較的小さくて弱く、他の抗体は、扁桃腺、頸部扁平上皮、皮膚、胎盤組織との交差反応性に加えて、肝臓、腎臓、胆嚢などの組織との交差反応性が様々な程度で存在し、ここで、E007抗体の組織交差反応は、最も広範かつ強力であった。
【0133】
表5は、3つの標的EGFRのVHH-IgG4抗体と32種類の正常ヒト組織との組織交差反応結果を示した。3つの抗体組織の交差反応の結果はほぼ近く、大きな違いはなかった。陽性コントロール抗体反応の内皮細胞または扁平上皮細胞には、いずれも明確
な局在性が示される陽性反応が存在した。E008は、他の2つの抗体に比べて組織交差反応が少なかった。
【0134】

【表6】
【0135】
【表7】
【0136】
実施例8:VHH抗体配列一覧
9つのVHH抗体のCDR配列は表6に示され、9つのVHH抗体およびEC255コントロール抗体のアミノ酸配列は表7に示された。
【0137】
【表8】
【0138】
【表9】
【0139】
実施例9:VHH抗体のヒト化修飾改変とアフィニティ検出
ナノボディをヒト化する方法(J.Biol.Chem.2009;284:3273-3284)を参照し、CDR領域移植方法を使用して、EGFR抗原に結合した4つのVHH抗体E002、E003、E005、E006およびE008に対してヒト化修飾改変を行った。IgBLAST(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)データベースにおいて、E002、E003、E005、E
006、E008との相同性が高い生殖細胞系(germline)をテンプレートとしてスクリーニングした。各抗体の修飾抗体配列は表8に示された。表面プラズモン共鳴法(SPR)によって、ヒトEGFR.His抗原に対する修飾改変後のVHH抗体の結合動態学およびアフィニティを測定した。結果は表9に示され、修飾改変後の抗体のアフィニティが良好であった。
【0140】

【表10】
【0141】

【表11】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
2024547016000001.app
【国際調査報告】