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特表2024-547019視覚検査のための方法、システム、及びデバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】視覚検査のための方法、システム、及びデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/12 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
A61B3/12
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024536313
(86)(22)【出願日】2022-05-02
(85)【翻訳文提出日】2024-07-22
(86)【国際出願番号】 US2022027284
(87)【国際公開番号】W WO2023113854
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】17/554,703
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520477485
【氏名又は名称】ザ・トラスティーズ・オブ・インディアナ・ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エルスナー、アン、イー.
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AA13
4C316AB09
4C316AB11
4C316AB16
4C316FA04
4C316FB21
4C316FY07
(57)【要約】
視覚機能の評価を改善し、所与の眼球が潜在的に到達し得る視覚機能を識別するための現在の方法の制限を克服するための方法、システム、及びデバイス。視覚刺激及び光学測定構成要素を含む複数の眼球検査、及びその結果を組み合わせて、網膜源とは区別される水晶体及び角膜などの光学源に起因する視力低下の原因を特定及び定量化する方法。視力低下の潜在的で矯正可能な光学的原因を特定し、眼球の瞳孔の大きさなどの生理学的限界を克服することによって、白内障又は角膜手術などによる治療の視覚上の利点は、医学的介入を必要とする網膜病変とは区別される。デバイス及び方法は、視覚機能の予測値及び光学的構成要素及び神経的構成要素の両方を含む変動源を含むメトリクスを提供し、治療をガイドし、臨床試験を改善する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
視覚に悪影響を及ぼす一方で、網膜の状態とは無関係な因子を定量化又は最小化しながら、瞳孔を有する眼球の視覚機能を測定するシステムであって、
(a)前記眼球の前記瞳孔を通して前記網膜に光を投射し、前記瞳孔を通して前記光の大部分を通過させて、高い空間周波数又は低いコントラストを含む視覚刺激を正確に送信しながら前記網膜に到達する光の量の個人差を排除することができる光学設計を有する視覚ディスプレイと、
(b)前記網膜及び網膜下構造を撮像し、前記網膜の状態及び網膜構造の位置に関する詳細を提供するためのNIR又は長可視波長撮像デバイスと、
(c)前記視覚ディスプレイからの前記視覚刺激と網膜像とを比較して、固視点の軌跡として既知であり、他の分野では、偏心視域として既知である、前記網膜の標的の前記軌跡を提供するプロセッサと、を備え、
(d)前記プロセッサが、前記NIR又は長可視波長撮像デバイスによって提供される一連の網膜像から、経時的な前記固視点の軌跡の前記ばらつきを判定し、
(e)前記プロセッサが、画像処理に基づいて前記網膜像を分析し、撮像パラメータに従って前記固視点の軌跡における前記網膜及び網膜下構造の状態を報告し、
(f)前記視覚刺激の前記位置で前記網膜に到達する前記光の波面の前記眼球の前記瞳孔の面での偏差に基づいて、検査されている視覚機能を評価する波面測定システムを備え、
(g)前記プロセッサが、波面測定値から前記眼球の光学系から生じる波面誤差を判定し、
(h)前記視覚ディスプレイの前記波面誤差を矯正し、前記網膜の前記視覚刺激の焦点の改善を実現するように1又は複数の適応光学系部を制御する制御機構を備え、
(i)前記プロセッサが、前記波面測定値に基づいて前記網膜の前記視覚刺激の前記焦点を調整し、矯正済み及び矯正不可能な波面収差を評価し、
(j)前記視覚刺激に関する判定を記録する応答機構を備え、
(k)前記制御機構が、可視波長ディスプレイの前記視覚刺激の1又は複数のパラメータを制御し、
(l)前記プロセッサが、b、c、d、e、g、i、及びjの結果に従って、前記視覚ディスプレイ又は最終出力で使用される前記パラメータを計算する、
システム。
【請求項2】
前記視覚ディスプレイの前記光が、直径約3mmの瞳孔を通して投射され、高空間周波数刺激を送信するのに十分な開口数を提供する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
撮像デバイスが、前記網膜を横切って照明を走査することにより、又は一連の照明領域を前記網膜に投射することにより前記網膜を照明し、前記網膜からの光が同期して検出される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
撮像デバイスが、共焦点撮像を提供し、代替的に、照明ビーム及び検出読み出しが、空間的又は時間的に変位している状態で、多重散乱光撮像を提供する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記プロセッサが、画像内又は経時的に2つ以上の方向の照明に対して検出オフセットを有する画像を分析する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記プロセッサが、NIR又は長波長可視照明以外の異なる照明波長の画像を分析する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記プロセッサが、前記眼球から戻る前記光の強度以外の特性、蛍光、コヒーレンス、又は偏光などを、各位置で又はより広い領域のいずれかにわたって集合的に分析する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記波面についての測定デバイスが、シャックハルトマンセンサシステムである、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記波面についての測定デバイスが、長波長可視照明又はNIR照明を使用する、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記波面についての測定デバイスが、球面及び円柱のみに限定されない視覚に影響を与える収差の仕様を可能にするのに十分な解像度を有するが、回折限界撮像を生成するために必要な適応光学系を制御するために必要なものよりも低コスト又は低解像度であるように考案されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記波面測定システムが、信号対雑音比を改善するためにセンサと同期した照明を変調することを含むがこれに限定されず、波面収差の前記測定に必要な前記光を減少させるように時間的に変調される、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記波面測定システムが、前記視覚ディスプレイとは別個の照明源を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
波面測定デバイスが、約3mmの瞳孔の前記波面収差を報告する、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
波面測定デバイスが、約3mmの瞳孔の前記波面収差を報告し、球面収差、円柱収差、及び特定の他の低次収差について矯正された量を報告する、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
波面測定デバイスが、約3mmの瞳孔の前記波面収差を報告し、球面収差、円柱収差、その他の低次収差、及び高次収差について適応光学系によって矯正された量を報告する、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
波面測定デバイスが、約3mmの瞳孔の前記波面収差を報告し、涙液層及び水晶体などの前眼部の健康に関する臨床データ又は他のデータと関連して、球面収差、円柱収差、その他の低次収差、及び高次収差について適応光学系によって矯正された量を報告する、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
波面測定デバイスが、約3mmの瞳孔の前記波面収差を報告し、涙液層及び水晶体などの前眼部の健康に関する臨床データ又は他のデータと関連して、球面収差、円柱収差、その他の低次収差、及び高次収差の適応光学系によって矯正された量を報告し、測定された前記視覚機能の前記中心的傾向及びばらつきを精緻化する、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記視覚ディスプレイからの前記網膜への前記焦点は、適応光学系によって改善され、前記改善は、前記波面測定システムの前記測定値によって定量化される、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記視覚ディスプレイからの前記網膜への前記焦点は、適応光学系によって改善され、前記適応光学系の制御パラメータは、補助測定によって指定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
撮像デバイスが、偏心固視及び網膜ランドマークの決定を可能にするために、視野角度8度~60度の広視野を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
撮像デバイスが、8度未満の視野角度の拡大視野を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項23】
前記視覚機能の測定値が、矯正することができない前記波面収差の前記視覚機能への影響のデータベース又はモデルを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項24】
前記波面測定システムの照明が、前記視覚ディスプレイによって実施される、請求項1に記載のシステム。
【請求項25】
請求項1に記載のシステムであって、しかし、前記視覚機能の測定値が、入力測定値のいずれもが、同時様式で、同じデバイス内で測定されず、又は代替測定値又は補助測定値が入力され、b、c、d、e、g、i、若しくはj、画像内若しくは経時的に2つ以上の方向の照明に対する検出オフセット、及びNIR若しくは長波長可視照明以外の異なる照明波長の画像のセットに制約される場合、視覚機能測定値中央的傾向及びばらつきに与える影響のデータベース又はモデルを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項26】
視覚に悪影響を及ぼす一方で、網膜の状態とは無関係な因子を定量化又は最小化しながら、視覚機能を測定する方法であって、
(a)眼球の瞳孔を通して前記網膜に光を投射し、前記瞳孔を通して前記光の大部分を通過させて、高い空間周波数又は低いコントラストを含む視覚刺激を正確に送信しながら個人差を排除することと、
(b)前記網膜及び網膜下構造をNIR又は長可視波長光で撮像して、前記網膜の健康状態及び網膜構造の位置に関する詳細を提供することと、
(c)視覚ディスプレイから受信した前記視覚刺激と網膜像とを比較して、固視点の軌跡として既知であり、他の分野では、偏心視域として既知である、前記網膜の標的の前記軌跡を提供することと、
(d)一連の網膜像から、凝視安定性として既知である、経時的な前記固視点の軌跡のばらつきを判定することと、
(e)前記網膜像を分析し、撮像パラメータに従って前記固視点の軌跡における前記網膜及び網膜下構造の状態を報告することと、
(f)波面収差を測定して、前記視覚刺激の前記位置で前記網膜に到達する前記光について波面の前記眼球の前記瞳孔の面での偏差を評価することと、
(g)波面測定値から前記眼球の光学系の前記網膜の焦点を判定することと、
(h)前記視覚刺激の前記網膜でのより良好な焦点を実現するために前記視覚ディスプレイの波面誤差を矯正することと、
(i)矯正済み及び矯正不可能な波面収差をオペレータに報告し、視覚機能測定値を解釈するためにこの情報を使用することと、
(j)前記視覚刺激についての患者による判定を記録することと、
(k)前記患者の応答又は所定のシーケンスに基づいて前記視覚刺激の1又は複数のパラメータを制御することと、
(l)b、c、d、e、g、i、及びjの結果と、事前データを含む、測定されている前記視覚機能のモデルとに従って、前記視覚ディスプレイ又は最終出力で使用される前記パラメータを計算し、すべてが協働して、所与の眼球が潜在的に到達し得る前記視覚機能を特定し、前記測定は、網膜の状態とは無関係である視覚に悪影響を及ぼす因子を定量化し、前記網膜の状態及び潜在的状態を記述する中心的傾向及びばらつきのメトリクスを生成するように最適化されていることと、
を含む、方法。
【請求項27】
前記視覚機能が、網膜治療が成功した場合又は水晶体混濁などの無関係な因子の除去が実現された場合の視力に対する予測値を含み、前記視覚機能のメトリクスは、中心的傾向及びばらつきの測定値を含み、網膜の状態が改善されていると結論付けるために超えなければならない上限を特定し、前記視覚機能のメトリクスは、網膜の状態が悪化していないと結論付けるために超えなければならない下限を含む、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府資金による研究開発の記載
本発明は、国立衛生研究所によって授与されたEY030829の下で政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0002】
関連出願
本出願は、2021年12月17日に出願された「視覚検査のための方法、システム、及びデバイス」と題する米国特許出願第17/554703号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
視力やその他の視覚機能は、網膜疾患や症状のある患者の管理の指針となる。このような視覚機能の検査は、治療法を検討するための臨床試験のエンドポイントとしても役立つ。視力又は他の視覚機能を測定するために印刷された検査表や電子検査表は、標準化されており、使いやすく、広く配布することができるため、一般的に使用されているが、網膜の状態を評価する目的においては不正確である。このような検査表は、迷光、透過率の不十分さ、涙液層、角膜、又は水晶体の問題による鮮明な焦点の欠如など、光学的要因によって眼球の性能を低下させる要因を最小限に抑えたり、定量化したりすることができない。
【0004】
追加の光学的要因には、特に屈折誤差の矯正が視覚機能検査表を使用した測定と同時でない場合や、網膜下液などによって標的位置の網膜の平面が変化するために誤っている場合など、適切な屈折の欠如が含まれるが、これらに限定されない。さらに、視力検査表を用いた方法では、瞳孔の大きさを制御することができない。瞳孔の大きさは個人によって大きく異なり、加齢とともに瞳孔が小さくなることが多いため、網膜を透過する光の量が大幅に減少する可能性がある。光学的劣化の原因が1又は複数存在する場合、光が眼球に入り得る角度と光を透過できる瞳孔の断面を最小にするためにピンホールを設けるという一般的な臨床的治療法は、光の透過率にさらに大きなばらつきをもたらす可能性がある。検査表を使用する方法は、視覚刺激を網膜に位置合わせする眼球の固視位置を制御又は指定せず、視覚機能測定に役立つ網膜の領域に関する情報の欠如につながる。さらに、検査表は、凝視安定性が欠如している場合に視覚に影響を与える固視の安定性を指定していない。
【0005】
多数の光学デバイスは、視覚ディスプレイに1又は複数の設計特徴を提供して、これらのディスプレイ特徴から、眼球の機能の評価に影響を与える情報を制御又は特定する。網膜機能と密接に関連する視力については、高解像度ディスプレイ及び情報を組み合わせるモデルを含むこれらのディスプレイ因子のすべてが網膜機能の判定に関連する。正確な刺激及び文字の数などの因子は、視力検査を含む視覚検査の性能に影響を及ぼす。読み取り能力を推定する上では重要である可能性はあるが、網膜の状態を評価する際には、このような検査では精度を損なう可能性がある。視力及び他の視覚機能の精度及び検査効率を改善するために使用されるモデルには、手順の詳細及び刺激パラメータが含まれている。しかしながら、これらのモデルは、モデル内の視覚機能の測定値に対する光学及び性能因子の中心的傾向及びばらつきに対する影響を適切に最小化又は特定していない。上記の非網膜因子の測定及びモデルは、網膜の視覚機能及び治療で実現し得る潜在的な視覚を特定するために必要である。
【0006】
本発明は、関連技術におけるこれらの既知の欠陥のいくつかを改善及び解決することを意図している。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、眼球の視覚機能及び治療による改善の可能性をより正確に特定するために、臨床試験において眼科医療従事者や研究者が診断用に使用するために設計された方法、システム、及びデバイスに関する。方法、システム、及びデバイスは、操作の簡単さ、患者の快適さ、及び効率性を実現する。方法、システム、及びデバイスは、視力低下の原因を特定するために必要な広範囲の情報を提供するのに適しており、これは処置の決定に影響を及ぼす。本システムは、いくつかのサブシステムを有し、それらを合わせることで向上した精度を提供し、サブシステムの機能の一部のみを実施するシステムよりも大幅に低いコストで製造することができ、又はより良好な精度及び効率を提供することができる。デバイス及びシステムは、最新のコンピュータ技術と容易にインターフェースして、意思決定に使用されるデータベースを増強し、又は処置決定のための意思決定のために外部データベースに情報を送信することができる。
【0008】
本開示の技術は、特に老眼に関連する問題を顕著にする典型的な壁掛け用の検査表又はコンピュータスクリーンよりもはるかに高度なデバイス及び方法を提供する。誤差及びばらつきは、これらのアーチファクトの直接的な結果であり、ソフトウェア又はアルゴリズムだけでは克服することができず、その多くは、特定の刺激や視標、刺激提示のアルゴリズム、又は患者の疲労、患者が使用する基準、若しくは認知障害などの検査因子など、特定の刺激又は視力表に対処することが提案されている。例えば、Lesmesの米国特許第10758120号明細書を参照されたい。本開示の技術革新は、以下の特徴のうちの1又は複数を組み合わせることによって、これらの問題の多くを改善する。
【0009】
本発明は、1)ビデオレート及び患者には見えない近赤外網膜撮像を使用した固視点位置の評価を提供する。固視させ、視覚機能検査を実施するために使用される網膜の部分が位置特定される。人間の眼球は頻繁に動くため、ほぼビデオレートか、それより速い網膜撮像を行わなければ、網膜の状態に対する視覚刺激の位置を知ることはできない。壁掛け検査表やコンピュータスクリーンでは、この関連性を証明できない。したがって、治療のために考慮されている網膜の部分が実際に測定された性能の根拠となる位置にあるかどうかは分からない。ビデオレート網膜撮像では、この位置が決定される。さらに、眼球運動に対して比較的速い網膜撮像がなければ、眼球に動揺があるかどうか、及び視覚標的が網膜にわたって不鮮明であるかどうか、又は眼球が視覚標的の検出又は認識を可能にするのに十分な長さの位置にあるかどうかを判定することはできない。本明細書で使用される場合、ビデオレートは、少なくとも毎秒10フレームの画像キャプチャ又は表示レートを含む。
【0010】
他の波長又はカラー画像の代わりに、網膜ランドマーク及び構造を視覚化する網膜像を提供するための照明源としての近赤外光の広範な使用は、Elsner,A.E.らによるInfrared Imaging of Sub-retinal Structures in the Human Ocular Fundus,Vision Res、第36巻第1号(1996)、191~205項(Elsnerらによる、1996)で広く論じられている。いくつかの実装形態が発明者A.E.Elsnerによって実証されている。例えば:Elsner,A.E.、Burns,S.A.、Hughes,G.W.、及びWebb,R.H.(1992).Reflectometry with a scanning laser ophthalmoscope.Applied optics,31(19)、3697~3710.(Elsnerらによる、1992)及びElsner,A.E.らによる、Multiply scattered light tomography:Vertical cavity surface emitting laser array used for imaging subretinal structure,Lasers and Light in Ophthalmology,1998(Elsnerらによる、1998a)を参照されたい。
【0011】
各実施態様は固有の特徴を有するが、多数の方法によって得られた網膜の高品質画像は、眼疾患における網膜の状態に関する情報を提供しながら、網膜上への視覚刺激の投射と組み合わせるのに適しており、例えば、光点で走査し、網膜から戻ってくる光を一度に1か所ずつ同期して検出する:Hartnett,M.E.及びElsner,A.E、Characteristics of Exudative Age-related Macular Degeneration Determined In Vivo with Confocal and Indirect Infrared Imaging,Ophthalmology,103巻第1号(1996年1月),58~71項(Hartnettらによる、1996a);及びHartnett,M.Eらによる、Deep Retinal Vascular Anomalous Complexes in Advanced Age-related Macular Degeneration,Ophthalmology,第103巻第12号(1996年12月)、2042~2053項(Hartnettらによる、1996b)。固視及び視覚刺激の患者の網膜上の位置は、発明者A.E.Elsner及び共同研究者:Remky,A.、Elsner,A.E.、Morandi,A.J.、Beausencourt,E.、及びTrempe,C.L.(2001)によって、よく視覚化されている。Blue-on-yellow perimetry with a scanning laser ophthalmoscope:small alterations in the central macula with aging.Journal of the Optical Society of America.A,Optics,image science,and vision,18(7)、1425~1436;(Remkyらによる、2001);.Remky,A.、及びElsner,A.E.(2005).Blue on yellow perimetry with scanning laser ophthalmoscopy in patients with age related macular disease.The British journal of ophthalmology,89(4)、464~469(Remkyらによる、2005);及びMoraes,L.、Elsner,A.E.、Kunze,C.、Suzuki,H.、Nehemy,M.B.、Soriano,D.S.、及びKara-Jose、N.(2007).Avaliacao da perimetria macular em pacientes com degeneracao macular relacionada a idade por meio do oftalmoscopio de rastreamento a laser-Evaluation of macular perimetry in patients with age-related macular degeneration using the scanning laser ophthalmoscope.Arquivos brasileiros de oftalmologia,70(5),844~850(Moraesらによる、2007).
【0012】
走査された光ストリップと、一次元又は二次元アレイのいずれかと同期した検出とからなる近赤外照明使用して網膜を撮像するために、本発明者によって同様の方法が使用されている:例えば、米国特許第7331669号明細書、米国特許第7831106号明細書、米国特許第8237835号明細書、及び米国特許第8488895号明細書を参照されたい。網膜の近赤外画像は、本明細書に記載されるように、網膜上の固視点の軌跡及び刺激の位置が、Elsner,A.E.、Petrig,B.L.、Papay,J.A.、Kollbaum,E.J.、Clark,C.A.、及びMuller,M.S.(2013)によって示される近赤外又は長波長可視照明を使用して明確に記録されるように、視覚ディスプレイと組み合わされる。Fixation stability and scotoma mapping for patients with low vision.Optometry and vision science:official publication of the American Academy of Optometry,90(2)、164~173(Elsnerらによる、2013)及びElsner,A.E.、Papay,J.A.、Johnston,K.D.、Sawides,L.、de Castro,A.、King,B.J.、Jones,D.W.、Clark,C.A.、Gast,T.J.、及びBurns,S.A.(Elsnerらによる、2020)、Cones in ageing and harsh environments:the neural economy hypothesis.Ophthalmic&physiological optics:The Journal of the British College of Ophthalmic Opticians(Optometrists),40(2),88~116(Elsnerらによる、2020).
【0013】
本発明は、2)同じビデオレート近赤外網膜撮像を使用した凝視安定性の評価を提供する。患者の眼球運動は、経時的に取得された網膜像を位置合わせすることによって分析される。
【0014】
本発明3)は、網膜から戻る光の波面センサ測定によって収集された角膜、水晶体、又は瞳孔に見られる病的状態又は加齢状態に起因するものを含む、球面及び円柱に限定されないが、他の光学的誤差を含む、患者の眼球の光学的誤差を識別する。これらの誤差は、網膜上の複雑なぼけの原因となる波面収差から生じ、視力低下が網膜疾患によるものか、白内障又は涙液層の不良などの前眼部の問題によるものかを判定することを困難にする。加齢は、患者の網膜上の視覚刺激をぼかすこれらの光学誤差を増加させることが長い間周知であり、眼鏡に見られるような球面又は円柱矯正を単に追加するだけではぼやけを容易に改善することはできない。例えば、McLellan,J.S.、Marcos,S.、及びBurns,S.A.(2001);Investigative ophthalmology&visual science,42(6)、1390~1395によって報告されているように、人間の眼球の単色波収差の加齢に伴う変化をどのように測定できるかを参照されたい。したがって、本開示は、コストを削減し、眼球の状態を分析する精度を改善する、老化した眼球の視覚的性能又は機能の根底にある要因の特性評価の改善を強調する方法及び/又は装置を含む1又は複数の実施形態を提供する。
【0015】
本発明4)は、上記項目3で上述した波面測定値を使用して、球面及び円柱に限定されない、患者の眼球の主な光学誤差の視覚機能の測定中に、適応光学系を用いた対物矯正を提供する。本発明はまた、矯正につながる測定値の精度の推定値及び予測される矯正の成功を提供する。これにより、網膜上に正確に集束された指向性光ビームを使用して視覚機能検査を実施することが可能になり、これによりただの標準的な球面と円柱の矯正や、滲出性眼疾患の結果として網膜が隆起している場合にしばしば著しい誤差を生じる習慣的屈折で実現され得るものよりも優れた完全な結果を提供する。この特徴は、本質的に、球面及び円柱のみを含む自動屈折器ではなく、自動屈折器にはない他の特徴と組み合わせて使用された場合にさらに高い精度を提供する。
【0016】
高次収差の矯正を提供するために必要な光学矯正、またそれゆえに、高空間解像度での高コントラストに依存する視覚機能の測定を改善するために必要な光学矯正は、著者及び同僚のBurns,S.A.、Marcos,S.、Elsner,A.E.、及びBara,S.(2002)による眼底の波面矯正撮像の使用前には不可能であった。Contrast improvement of confocal retinal imaging by use of phase-correcting plates.Optics letters,27(6),400~402.以前の機器は、眼底画像及び視覚刺激を提供したが、視力を検査するのに十分な空間解像度を欠いていたことが、Timberlake及び同僚のTimberlake,G.T.、Mainster,M.A.、Peli,E.、Augliere,R.A.、Essock,E.A.、及びArend,L.E.によって最初に示された(1986)。Reading with a macular scotoma.I.Retinal location of scotoma and fixation area.Investigative ophthalmology&visual science,27(7)、1137~1147.
【0017】
上述及び引用した球面及び円柱を超える屈折矯正のための上記の既知の従来の方法では、網膜像と組み合わせて波面測定デバイスが使用されている。構成要素のコスト及び複雑さを低減するための実施形態では、画像内の情報を使用して眼球の光学的品質を定量化することが可能である。これは、球面構成要素の屈折誤差を調べるために行われてきた。Clark CA、Mueller M、Petrig B、Elsner AE、Refractive Error Across the Posterior Pole Using a Novel Retinal Imaging Technique.Association for Research in Vision and Ophthalmology,1007/A570,2010(Clarkらによる、2010);Clark CA、Elsner AE、Muller MS、Petrig BL.Peripheral Refraction Across The Posterior Pole Using Structured Illumination.ARVO Annual Meeting,Investigative Ophthalmology&Visual Science 52(14),2717~2717,2011(Clarkらによる、2011);Elsner AE,Muller MS,Petrig BL,Papay JA,Christopher CA,Jovan A,Haggerty BP.Toward Low Cost Imaging:A Laser Scanning Digital Camera.Bio-Optics:Design and Application(BODA)2011 paper:BWA1(Elsner etらによる、2011).
【0018】
さらに、眼底画像内の情報は、網膜カメラのオートフォーカスを提供する。この技術は、Burns,S.A.、Elsner,A.E.、Sapoznik,K.A.、Warner,R.L.、及びGast,T.J.(2019)に記載されているセンサレス適応光学系(AO)として既知である。Adaptive optics imaging of the human retina Progress in retinal and eye research,68,1~30(Burnsらによる、2019).場合によっては、網膜像はセンサとして機能する。黒及び白の縞などの空間パターンを照明に注入することによって、上記のClarkの参考文献に記載されている眼底画像のコントラストが改善される。したがって、実際にはセンサ、すなわち網膜像及び計算が存在する。網膜上へのパターンの投射は、点走査及び線走査の両方で実現されてきたが、広視野画像の使用や、固視点との既知の空間的関係を有する網膜像の特定の部分に基づく波面誤差の計算はされてこなかった。適応光学系で矯正される網膜上の領域は、中心窩又は固視点に位置する場合もあれば、そうでない場合もあり、すなわち、視覚刺激は偏心的に視認されるか、又は周辺視野が検査される。この計算の品質は、眼球の光学的品質の尺度であり、その結果が、潜在的な視覚性能のばらつきや評価に使用され得る。適応光学系による矯正後の眼底画像の計算に基づいて、眼球に動きがあっても、繰り返し測定することで、この光学的品質を定量化する。次いで、フィードバックループは、眼底画像、画像からの計算、及び適応光学系からなる。例えば、Clark、2010;Clark、2011;Elsner、2011を参照されたい。
【0019】
中心窩からの距離である網膜偏心度及びコントラストを含む視覚刺激の要因を考慮すると、特定のアルゴリズムと共に、視覚機能検査の感度を改善できることは周知である(Hahn,G.A.、Messias,A.、Mackeben,M.、Dietz,K.、Horwath,K.、Hyvarinen,L.、Leinonen,M.、及びTrauzettel-Klosinski,S.(2009)。Parafoveal letter recognition at reduced contrast in normal aging and in patients with risk factors for AMD.Graefe’s archive for clinical and experimental ophthalmology-Albrecht von Graefes Archiv fur klinische und experimentelle Ophthalmologie,247(1),43~51.視覚刺激の中心窩からの距離は、網膜撮像によって定量化される。眼球の光学系を通って網膜上に投射される視覚刺激のコントラストの測定は、波面測定の使用によって改善される。コスト及び複雑さを低減するために、構造化照明の有無にかかわらず、網膜像からの計算を使用して、網膜上の視覚刺激のコントラストに関する情報を提供することもできる。コスト及び複雑さを低減する別の方法は、視覚ディスプレイを波面センサの照明として使用することである。現在のところ電流センサの感度が限られているため、視覚機能測定中の網膜上の視覚刺激のコントラストの同時測定にはNIR照明が好ましい。なぜなら、可視波長の照明は非常に明るくなければならず、視覚機能タスクの妨げになっていたからである。しかしながら、開示された実施形態のうちの1又は複数では、視覚ディスプレイは、可視範囲の波長を有する視覚刺激と、波面センサ又は網膜撮像方法のいずれかによるコントラストの測定とを交使用して、波面誤差を推定するための照明源として使用される。1又は複数の実施形態では、近赤外(NIR)よりも短い波長の光が使用される。別の実施形態では、波面センサ又は網膜像のための照明の時間変調を使用して、信号対雑音比を改善するための周波数ベースの検出方式を提供することもできる。他の実施形態では、周波数に基づくホモダイン及びヘテロダイン検出のより複雑な方式が、信号対雑音比を改善するために使用される。
【0020】
最近の拡張現実(AR)及び仮想現実(VR)デバイス以外では、球面及び円柱を超える屈折矯正を提供した以前の製品は、波面情報及び矯正を、矯正デバイスに対して眼球の瞳孔の位置をしっかりと位置決めしない通常の眼鏡レンズやコンタクトレンズに適用することができないため、これまでのところ、限られた市場しか見出されていなかった。AR又はVR用などのヘッドセット又は実験用デバイスなどの高価なデバイスは、位置決め機構を有することができ、眼内レンズは、瞳孔に対するそれらの位置決めによりこの(高次屈折)情報を利用することができる。
【0021】
本発明5)は、器具の固定サイズの瞳孔を介して視覚標的を網膜に投射し、理想的な瞳孔サイズと比較した場合、又は瞳孔を介して網膜に到達する光の量に基づいて、患者の自然な瞳孔サイズの個人差による大きなばらつきを低減する。
【0022】
瞳孔サイズの違いにより、網膜に到達する光の量が増減するだけでなく、眼球の入射瞳孔における開口数の違いや焦点深度の違いにより、光学スループットも変化する。視覚標的のこの投射方法は公知の技術であり、多種多様な用途で使用され、網膜像と視覚刺激の投射の両方を与える眼底撮像を提供するデバイスの多くのバージョンで使用されている。これには、点を走査する照明の一部として視覚刺激を組み込む両方のデバイスを含む。追加情報については以下の参考文献を参照されたい:Timberlake,G.T.、Mainster,M.A.、Peli,E.、Augliere,R.A.、Essock,E.A.、及びArend,L.E.(1986).Reading with a macular scotoma.I.Retinal location of scotoma and fixation area.Investigative ophthalmology&visual science,27(7),1137~1147、又はElsnerらによる線走査(2020)、及びRossi,E.A、Weiser,P、Tarrant,J.、及びRoorda,A(2007)らによる、点走査し、高次光学収差の矯正を含む。Visual performance in emmetropia and low myopia after correction of high-order aberrations.Remkyらによる、2001;Remkyらによる、2005;及びMoraesらによる、2007のように、網膜像を生成するために点を走査する場合、又は網膜像を生成するために線を走査する場合に(Elsnerらによる、2013)、網膜像と視覚刺激が別々の照明チャンネルによって提供されることにJournal of vision,7(8),14(Rossiらによる、2007)は言及している。いくつかの実施形態は、米国特許第7331669号明細書、米国特許第7831106号明細書、米国特許第8237835号明細書、及び米国特許第8488895号明細書に記載されている。
【0023】
本発明6)は、共焦点及び多重散乱光による網膜像の分析を提供し、又は照明と検出との間の時間差又は位置差(時間的若しくは空間的検出オフセット)を調整し、すなわち撮像モードを提供する。異なる撮像モードは、米国特許第7331669号、米国特許第7831106号、米国特許第8237835号、及び米国特許第8488895号に記載されているように、共焦点又は多重散乱光撮像、及び異なる撮像モードからの情報の組合せを使用することによって、その位置での網膜の状態を明確にして、視覚検査において患者によって使用される固視点での正確な病変を詳述する。検出オフセットのさらなる例としては、各位置での合計に対する各画像内の強度差の画像内の各位置での比率、より大きなオフセットを有する画像に対する共焦点画像強度の強度の画像内の各位置における比率、及び特定の位置又は画素よりも広い領域を集約する同様の計算が挙げられるが、これらに限定されない。走査型レーザ検眼鏡(SLO)、多重散乱光断層撮影装置、レーザ走査型デジタルカメラ、及びデジタル光検眼鏡による赤外線撮像は、迅速かつ非侵襲的に眼球を見るための反射率測定技術を実施するために使用されてきた。当初は、走査レーザデバイスを用いて実施された、眼底の網膜下構造の赤外線及び近赤外撮像は、網膜下沈着物、視神経頭、網膜血管、脈絡膜血管、体液貯留、色素沈着過剰、萎縮、及びブルッフ膜の破損を明らかにすることができた。赤外光は、可視光よりも吸収が少なく、より長い距離にわたって散乱する可能性がある。フラッド照明では、これらの特徴は、同じ鮮明さでは観察されず、より少ない数である。吸収が比較的少ないことは、最小限の光を照明源として使用できるという利点がある。しかし、反射光と散乱光とは何らかの様式で分離され、関心対象の特徴を際立たせるために使用される光をユーザが利用できるようにしなければならない。
【0024】
このような特徴を検出し、局在化する方法は、発明者及び同僚達の先行技術:Elsnerらによる、1996;1998a;Elsner,A.Eらによる、Foveal Cone Photopigment Distribution:Small Alterations Associated with Macular Pigment Distribution,Investigative Ophthalmology&Visual Science,第39巻第12号(1998年11月),2394~2404項;Hartnettらによる、1996a;Hartnettらによる、1996b;Remkyらによる;2005;及びElsnerらによる、2020が例として挙げられる。具体的には、取得された網膜像が中心窩を中心とする黄斑のみである場合、近赤外照明を伴う正常な眼球に存在する唯一の特徴は、網膜血管及び脈絡膜血管、並びに中心窩などからの潜在的な表面反射である。単色画像では、任意の電子信号に固有のノイズを超えて、画像強度にこれらの特徴との違いがあれば、病変として解釈される。視野が十分に広い、又はこの特徴を組み込むための器具に対する眼球の位置決めのいずれかに起因して、視神経乳頭も画像内にある場合、網膜の強度変化はまた、このような構造の位置及び状態を定義する。Hartnettらによる、1996a;Elsnerらによる、1996、及びMiura,Mらによる、Grading of Infrared Confocal Scanning Laser Tomography and Video Displays of Digitized Color Slides in Exudative Age-Related Macular Degeneration,Retina,第22巻第3号(2002),300~308項は、赤外線照明を使用したそのようなモノクロ画像が、カラー写真を使用した方法よりも特定の特徴の検出に優れていることを示している。
【0025】
本発明はさらに、7)独自の統計分析を使用して、上記のすべての構成要素1~6の組合せを含む潜在的な視覚を測定するための新規のシステムを提供する。本開示は、例えば平均値などの中心傾向の尺度を用いたメトリックと、加えて、例えば分散などのばらつきのメトリックを提供し、視力低下の交絡理由の有意性を報告する。例えば、波面誤差からの報告は、白内障において視覚測定値がどのように制限されるかを示す。独自の統計分析は、上記の様々な情報源からの情報を組み合わせて、予測される性能に境界線を敷く。例えば、特定の眼球が網膜治療で実現することができる潜在的な視覚を判定するために、中心的傾向(予測値)と、光学的誤差、固視データ、他のデータを含むばらつきとから導出される信頼限界などの境界線がある。測定され、矯正可能であると判定された収差を使用して、潜在的な視覚の上限及び下限が、視力の特性評価に広く使用されている最小視角の対数(LogMAR)のような測定で実現できる。サンプル方法は、タンブリングEである標的や、Eが指し示す可能性のある4つの方向を含むが、患者の反応は1つしか許されないような(4択強制選択)パラダイムがあるが、これだけに限らない。統計分析は、光学的及び神経的、そして他の要因が独立しているかどうか、又はそれらが相互作用するものとしてモデル化されなければならないかどうかの判定を含む。
【0026】
モデルの重要な趣旨は、変数が独立しており、全体的な分散が個々の要因の分散の合計であるかどうかを判定するためのデータの集合を含む。逆に、モデルは、光学的要因が矯正された後に、予測される視覚機能性能を計算するために、使用されなければならない2つ以上の変数の分散の単純な加算を超える関数を必要とする場合がある。さらに、各変数は、ガウス分布よりも複雑な関数を有していてもよく、分散は、平均値を中心に対称でなく、平均値に対して線形にスケーリングされないような様式で分布していてもよい。組み合わせた分散は、信頼上限及び信頼下限を計算するために使用される。これらの信頼限界、すなわち視覚機能テストスコアを解釈するために使用される境界は、構成要素因子の分散を組み合わせる関数に応じて、広くなったり狭くなったりする。上限は、網膜治療が成功とみなされるために、又は長期測定において改善としてカウントされるために視覚機能測定値が超えなければならない値に相当する。下限は、視覚機能が超えなければならない値であり、又は経過観察で悪化していないとみなされる値に相当する。これらの値は、光学的な影響、凝視安定性、又は他の要因の重要な評価を欠く、視覚の獲得又は喪失した線などの現在のメトリクスに関連し得る。
【0027】
本発明の上述の態様及びそれらを得る様式は、添付の図面と併せて本発明の実施形態の以下の説明を参照することによってより明らかになり、本発明自体がよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、視覚ディスプレイからの光が投射される瞳孔を有する選択された組織を示す眼球の概略図である。
図2図2は、眼球の収差を矯正する波面測定サブシステムを含む、視覚機能を測定するために使用される光学撮像システムの概略図である。
図3図3は、波面測定サブシステムを含まない、視覚機能を測定するために使用される光学撮像システムの概略図である。
図4図4は、可視波長ディスプレイを照明源として使用する波面測定サブシステムを含む視覚機能を測定するために使用される光学撮像システムの概略図である。
図5図5は、光学収差測定のハルトマンシャック法を使用する場合の視覚機能を判定するデバイスの例示的な実施形態の概略図である。
図6A図6Aは、経年劣化及び屈折誤差の影響を示す、近赤外(NIR)波長測定からの低次収差及び高次収差(LOA)のサンプルグラフ表示を示す図である。
図6B図6Bは、経年劣化及び屈折誤差の影響を示す、近赤外(NIR)波長測定からの低次収差及び高次収差(LOA)のサンプルグラフ表示を示す図である。
図6C図6Cは、経年劣化及び屈折誤差の影響を示す、近赤外(NIR)波長測定からの低次収差及び高次収差(LOA)のサンプルグラフ表示を示す図である。
図6D図6Dは、経年劣化及び屈折誤差の影響を示す、近赤外(NIR)波長測定からの低次収差及び高次収差(LOA)のサンプルグラフ表示を示す図である。
図7A図7Aは、波面収差を記録する1つの方法を示し、若年患者と高齢患者との間の違いを示す図である。
図7B図7Bは、波面収差を記録する1つの方法を示し、若年患者と高齢患者との間の違いを示す図である。
図8A図8Aは、波面収差を記録する別の方法を示し、瞳孔平面における波面収差のプロットにおける若年患者と高齢患者との間の違いを示す図である。
図8B図8Bは、波面収差を記録する別の方法を示し、瞳孔平面における波面収差のプロットにおける若年患者と高齢患者との間の違いを示す図である。
図9A図9Aは、波面収差による文字Eの予測される劣化コントラストを表したもので、遠視の若年者の眼球と近視の高齢者の眼球とを比較したものである。
図9B図9Bは、波面収差による文字Eの予測される劣化コントラストを表したもので、遠視の若年者の眼球と近視の高齢者の眼球とを比較したものである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に記載される本発明の実施形態は、網羅的であること、又は本発明を以下の詳細な説明に開示される正確な形態に限定することを意図するものではない。むしろ、実施形態は、当業者が本発明の原理及び実施を認識及び理解することができるように選択及び説明される。
【0030】
図1は、視覚ディスプレイなどの視覚刺激を提供する光源からの光が投射される瞳孔16、視覚刺激の投射並びに、網膜及び網膜下構造の撮像のための焦点の標的面としての網膜面12、角膜26、水晶体24、及び他の前眼部構造を含む選択された組織を示す眼球10の概略図を示す。本明細書で使用される場合、「視覚ディスプレイ」は、患者の眼球に指向され、患者の眼球によって受け取られる可視又は非可視光画像を送信するデバイスを説明するために使用される。一旦眼球によって受け取られると、患者は、視力を含むがこれに限定されない視覚機能の1又は複数の態様を判定するタスクを引き受ける。
【0031】
眼球の様々な組織の状態に応じて、強い不要な反射及び潜在的な不要な光散乱の位置、病的状態又は加齢による収差及び透過性の欠如が、眼球10の前眼部22に現れる網膜像に悪影響を及ぼす。望ましくない反射は、網膜像、潜在的な望ましくない光散乱収差の位置、及び病的状態又は加齢による透過性の欠如に悪影響を及ぼす。前眼部22は、一般に、瞳孔16、水晶体24、及び角膜26に、又はそれらの近くに位置する。糖尿病性黄斑浮腫や滲出性加齢黄斑変性症などを含むがこれらに限定されない網膜疾患により、網膜の1又は複数の部分が隆起することで焦点面が瞳孔面に近づき、習慣的な屈折に誤差が生じる可能性がある。これは、以前は網膜上で焦点が合っていた視覚刺激でも、現在はぼやけてしまうこととなる。そのような網膜焦点の欠如は、網膜の場所によって程度が異なり得る。このデフォーカスの影響は、網膜にも損傷がない限り、光学的に矯正することができる。潜在的な視覚機能を正確に特定することができるように、光学的効果と神経的効果とを区別しなければならない。
【0032】
光学的効果を神経的効果と区別するために、潜在的な視覚機能を測定するための本明細書に記載のデバイス及びシステムは、臨床試験において網膜疾患の管理をガイドし、網膜疾患の治療を評価するのに特に適している。記載されたデバイス及びシステムは、網膜14(図1参照)に影響を与え、視覚機能の測定に影響を与え、及び治療で得られる潜在的な視覚に影響を与える主な因子を特定する。デバイス及びシステムは非接触システムを含み、眼球の瞳孔を拡張させるための点眼薬を必要としない。
【0033】
図1を参照すると、視覚刺激からの実質的にすべての所定量の光は、照明経路18に沿って眼球16の瞳孔を通して投射される。視覚刺激の焦点面12は網膜14であり、特に視力が最大になる網膜内の層である。網膜機能を検査するために注意を要する主な場所の1つは、正常な眼球において最良の視力及び色覚を提供する中心窩11であり、管理上の判定及び臨床試験の結果において重要な組織である。網膜に到達するためには、角膜26及び水晶体24によって光が集束されなければならず、そのどちらかが、加齢、疾患、外傷、又は治療に関連する有害事象に起因して透明性を失っているか、或いは光学系を劣化させている可能性がある。
【0034】
照明経路18に悪影響を与える条件はいくつかあり、例えば、加齢に伴って自然に起こる、瞳孔の縮小による網膜に到達する光の量の減少などがある。瞳孔サイズはまた、瞳孔を収縮させる薬物又は神経学的状態などの他の条件の結果としても減少する。また瞳孔サイズが約3mmより大きいと、瞳孔面にわたって変化する焦点のために、照明経路18と検出経路20との両方の焦点に悪影響を与える。
【0035】
さらに、光は、角膜26、水晶体24、又は前眼部22の任意の部分のそれら状態に応じて、それらを完全に通過できない可能性がある。例えば、前眼部は、組織の変化や収差を含む多数の位置又は領域を含むことができ、これらは正常な眼球機能を変化させる可能性があり、病的状態又は加齢による望ましくない光散乱、又は他の収差及び透過性の欠如をもたらす可能性がある。網膜に到達する光の量と焦点の精度との両方が、視覚機能の測定に影響を及ぼす。
【0036】
光を制限する小さな瞳孔が存在すると、網膜に関する情報が不正確にレンダリングされる可能性がある。角膜26、水晶体24、又は前眼部22の他の位置は、透過率が低下しているか、又は網膜14上に光を集束させることができない可能性がある。網膜14の構造は、疾患又は外傷によって変化する可能性があり、その結果、網膜が隆起して、隆起した構造間の距離が短くなり、角膜26に近づきすぎて、1又は複数の位置で最適な焦点を実現することができない。これらの因子のすべてはまた、光が撮像デバイスへの途中でそれらを通って出なければならないときに、検出経路20に沿って取り込まれる網膜14の画像の品質を低下させる可能性がある。異なる条件下での網膜14の画像は、網膜ランドマークと、瞳孔16を通して投射される視覚刺激の位置とを比較することによって、網膜14の状態、固視点の軌跡、及び固視の安定性を示す。網膜像は、視覚刺激と中心窩11又は網膜14上の他の位置との相対位置を決定する。
【0037】
図2は、本発明による光学撮像視覚ディスプレイシステム40の一実施形態を示す図である。近赤外(NIR)イメージャ60は、光を眼球10に指向し、光が網膜に指向されてそこに焦点が合うようにして、正確な画像を提供する。当業者は、様々な異なる構成がこの機能を果たすことができることを認識するであろう。異なる実施形態では、NIRイメージャは、Elsnerらによる、1992;;the Heidelberg Spectralis(Heidelberg Engineering、Heidelberg、Germany);米国特許第7331669号明細書、米国特許7831106号明細書、又は米国特許第8237835号;及びthe Eidon Camera(iCare、Vantaa、フィンランド)のような、点走査システム又は線走査システムである。好ましい実施形態では、NIR照明は、視覚機能測定で使用される判断を妨げない程度に十分に暗い。米国特許第7331669号、第7831106号、及び第8237835号はそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
網膜からNIRイメージャ60に戻る光は、網膜14の画像を生成するのに十分な精度で網膜上に集束され、可視波長ディスプレイ70で投射された標的の位置と比較するために、明確に集束された優れた画像を提供する。NIRイメージャ60の照明及び検出特性は、Elsnerら、2020又は米国特許第7331669号明細書、米国特許第7831106号明細書、米国特許第8237835号明細書、及び米国特許第8488895号明細書に記載されているように、共焦点及び多重散乱光撮像の両方を提供する。プロセッサ100は、コンピュータ、マイクロコンピュータ、及び電子制御デバイスを含むがこれらに限定されない、1又は複数のプロセッサを含む。異なる実施形態では、プロセッサ100は、受信データを記憶するためのメモリを含むか、又はデータを送信するための送信機を含む。他の実施形態では、メモリ又は送信機は、プロセッサ100の外部に配置される。プロセッサ100はまた、NIRイメージャ60の特性が、眼球を透過する光とNIRイメージャ60用のセンサの特性との両方の撮像を可能にするように、データ収集及び制御線101を介してイメージャ60を制御する。画像又は画像データのパラメータは、強度、利得、撮像モード、偏光特性、波長、網膜上の照明の幅、又は透過光波の視野を含むが、これらに限定されず、オペレータによって選択可能である。オペレータは、制御線102を介してプロセッサ100に結合されたユーザインターフェース104などの入力デバイスを通して、制御線102を介してイメージャ60の機能を調整する。選択されたパラメータは、プロセッサ100、その内部メモリ、又は接続されたメモリに記憶若しくは記録され、視覚機能の判定を行う際に使用される。本明細書で使用される場合、ユーザインターフェースとは、オペレータ若しくは患者が、現在若しくは保存された画像の視覚的画像の表示、保存されたデータ、結果若しくは規範値の視覚化、音声若しくは音声コマンド、タッチスクリーンコマンド、ユーザ選択可能ボタン、又は現在若しくは保存された情報に基づいて試験検査手順若しくは結果を選択、表示、又は制御するために使用される他の機能を使用して、システム40と相互作用すること、又はシステム40を制御することを可能にする1又は複数のデバイスを意味する。
【0039】
同様に制御線106を介してプロセッサ100によって制御される可視波長ディスプレイ70は、瞳孔16を通して眼球10内に所定の量や所定の種類の光を指向する様式で網膜14に向けて指向される光出力を送信する。プロセッサ100と可視波長ディスプレイ70との間には、可視波長ディスプレイの出力を調整する可視ディスプレイコントローラ72が接続されている。他の実施形態では、可視ディスプレイコントローラ72は含まれず、プロセッサ100は、可視ディスプレイコントローラ72の機能を調整するように構成される。有指向性の光は、1又は複数の実施形態では、ケーラー照明としても既知であるマクスウェル視野を使用して指向され、したがって、網膜14上の照明が識別可能であり、一貫して再現可能であり、単一の患者又は複数の患者のいずれかについて、一方の眼球から次の眼球まで一定にされるような様式で指向される。ディスプレイ70は、一実施形態では、デジタル光プロジェクタ、液晶ディスプレイスクリーン、シリコン上の液晶、カソード発光ディスプレイ、エレクトロルミネセンスディスプレイ、フォトルミネセンスディスプレイ、プラズマディスプレイパネル、白熱ディスプレイ、発光ダイオード、それらの組合せ、又は視覚刺激を投射する任意の同様の光学ディスプレイを含むがこれらに限定されない、一次元又は二次元ディスプレイを含む。異なる実施形態では、視覚刺激は、プロセッサ100の内部又は外部に配置されたメモリに記憶された1又は複数の所定の画像である。
【0040】
プロセッサ100は、ディスプレイ70の表示された画像を制御する制御線106を介して、メモリに生成又は記憶された視覚刺激を投射するためのコマンドを送信し、これには、視覚刺激の1又は複数のパターン、パターンの強度、表示される画像のタイミング、画像の動き、網膜上のディスプレイの位置、及び画像の色が含まれるが、これらに限定されない。同じくプロセッサ100によって制御線107を介して制御される、波面測定システム75のための追加の可視又はNIR照明の出力は、ビームシェーパ及びコンバイナ130によって可視波長ディスプレイ70からの光の出力と組み合わされる。
【0041】
プロセッサ100は、この光源、すなわち可視波長ディスプレイ75のパラメータである、画像、パターン、強度、タイミング、動き、網膜上の位置、及び色を含むがこれらに限定されない、を制御する。可視波長ディスプレイ70の光出力と波面測定システム75の照明とを組み合わせた光は、調整可能な1又は複数の光学素子を含む適応光学系部90に指向される。適応光学系90の調整は、制御線105によって適応光学系のコントローラ95によって制御可能であり、その結果、網膜14上の照明の焦点は、球面及び円柱のみを矯正することによって実現されるものよりも良く改善される。適応光学系コントローラ95は、制御線103を介してプロセッサ100によって制御される。この組み合わされた光出力は、ビームコンバイナ120から眼球に指向され、ビームコンバイナ110でNIRイメージャ60からの光と組み合わされる。NIRイメージャ60、可視波長ディスプレイ70、及び波面測定システム75の照明の3つの光源すべてからの光は、すべて眼球の瞳孔を通って指向され、網膜上に集束され、可視波長ディスプレイ70及び波面測定システムの照明は、適応光学系部90によって集束される。NIRイメージャ60は、NIRイメージャ60及び波面測定システム80の両方と通信するプロセッサ100からの制御を介して、内部構成要素によって集束される。網膜14から戻る光は、眼球10の瞳孔16を通過する。瞳孔を通して投射される光の量は、波面測定データ、NIR画像強度、又は患者の網膜からの画像データ又は測定値の他の特徴から計算される。加えて、眼球から戻り、プロセッサによって分析される光の特性には、蛍光、コヒーレンス、又は偏光が含まれるが、これらに限定されず、各位置で、又はより広い領域のいずれかにわたって集合的に含まれる。
【0042】
Williamsらの米国特許第7416305号明細書(Williamsらによる)は、Williamsが網膜の画像が適応光学系によって改善されて適応光学系なしで網膜から受信される画像よりも高いコントラスト画像を提供する高解像度画像でなければならないことを必要とするという点で本発明とは区別される。しかしながら、本開示では、網膜の画像は高解像度画像である必要はなく、受信画像は適応光学系によって改善される必要はない。Williamsらによると、適応光学系は、計算された波収差を使用して網膜の高解像度、高コントラスト画像を提供するように調整された補償光学デバイスとして機能する。対照的に、本開示の適応光学系90は、網膜上の視覚刺激の質を改善し、網膜イメージャNIRイメージャ60を変更しないように動作する。
【0043】
中心窩に網膜損傷を有する患者は、中心窩の周辺にある固視点の位置を使用することが多いので、固視点の位置及び固視点の位置に応じて得られる視覚機能検査のための対物光学系矯正を使用する必要性が実証される。さらに、周辺視野を検査する場合、視覚刺激は中心窩から離れている。一般的に、中心窩は、視覚機能検査の実施中に、正常な眼球では固視されるであろう場所のことであるが、網膜損傷を有する患者においては、固視の位置は、中心窩から離れていることが多い。この位置に対応する光学的誤差は、以前の眼科検査や屈折検査で記録されている可能性は低い。これらの軸外光学誤差を主観的な屈折によって測定することは困難である。しかし、従来技術では、適応光学系の使用による焦点の改善が、視覚刺激を固定するために中心窩を使用するすなわち軸上視と、偏心視であるすなわち軸外視との両方において、視覚機能検査のパフォーマンスを向上させることが実証されている。Rossiらによる、2007及びLewis,P.、Baskaran,K.、Rosen,R.、Lundstrom,L.、Unsbo,P.、及びGustafsson,J.(2014).Objectively determined refraction improves peripheral vision.それぞれ、Optometry and vision science:official publication of the American Academy of Optometry,91(7)、740~746.特に、Lewisらは、周辺位置での視覚機能のために客観的に決定された屈折を使用することが重要であることを教示している。しかしながら、これらの偏心位置での波面収差は、視野が狭い網膜撮像機器では、光学測定中に機器が特定の位置に向けられ、正確な位置に保持されない限り、測定することができない。より広い視野、ビデオレートの網膜撮像が使用されない限り、この位置決め及び正確な光学測定は、患者による眼球運動により困難である。潜在的な位置の広い範囲にわたる測定と正確な位置決めという要件は、高解像度高解像度を有する単一の網膜撮像デバイスを記載し、波面測定システムを1つだけ有するWilliamsの米国特許第7416305号明細書との違いの1つである。このシステムでは、偏心視での使用をサポートするために正確な位置決めを行いながら、十分に広い網膜領域にわたって詳細な波面測定を行うことはできない。高解像度の極限では、回折限界撮像が人間の網膜で可能であるが、その視野は通常の光学系を持つ眼球ではせいぜい約2度に制限される。Burnsらによる2019及び同僚達、及びWilliamsによって記載された以前の方法は、偏心固視点の位置にわたる高解像度画像や、末梢視覚刺激の検査に適応光学系を使用するのに十分な広い視野の網膜撮像システムを有していない。
【0044】
したがって、本開示は、眼球の撮像から生じる単一の特徴に依存しない。その代わりに、限定はしないが、広視野を有する網膜撮像特徴を含む知覚された特徴の組合せを使用して、波面測定と組み合わせた固視点の位置及び安定性を決定する。Williamsのもののような波収差が補償されている高解像度画像は、本開示で使用される種類の情報を提供しない。例えば、Williamsでは、光学補償を実現することができる網膜像のサイズは、上述のように、患者が固視動揺を有するか、又は偏心視を使用する場合、固視点を局在化するには面積が小さすぎる等平面パッチに制限されなければならない。小さな網膜領域はまた、網膜ランドマーク又は網膜状態に関する情報も不完全なものを提供する。したがって、Williamsの方法は、Williamsによって生成された高解像度画像の視野が小さすぎるために使用することができない。
【0045】
加えて、高解像度網膜像の使用は、網膜像を生成するための多重散乱光の使用を妨げる。なぜなら、画像内の高い空間周波数情報は、拒絶されるのではなく共焦点開口を通過する光に主に見られるからである。さらに、本発明では、網膜上の視覚刺激の改善は、視覚機能検査での潜在的な性能と、光学的又は他の要因によって課される制限を判定するための統計的フレームワーク、すなわち統計モデルに組み込まれるが、Williamsの発明は、屈折矯正手術で使用するための実装、又はデフォーカス及び乱視を超えて現実世界の視覚を改善するコンタクトレンズを製造するための実装に向けられたものである。最後に、Williamsは、波面測定の技術が照明用の点光源に限定され、ハルトマンシャックセンサの方法を特に使用すると明記している。対照的に、本方法は、Liang及び同僚:Liang J、Grimm B、Goelz S、Bille JFによって1994年に記載されているようなハルトマンシャック法に限定されない。Objective measurement of wave aberrations of the human eye with the use of a Hartmann-Shack wave-front sensor.J Opt Soc Am(A)1994;11:1949~57。他の手法の例としては、ハルトマンシャック法と比較する、レーザ光線追跡法、空間分解屈折率計が挙げられる。Moreno-Barriuso E,Marcos S,Navarro R,Burns SA.Comparing laser ray tracing,the spatially resolved refractometer,and the Hartmann-Shack sensor to measure the ocular wave aberration.Optom Vis Sci.2001年3月;78(3):152-6.doi:10.1097/00006324-200103000-00007.PMID:11327676、及びピラミッド波面検知方法は、例えば、Singh NK、Jaskulski M、Ramasubramanian V、Meyer D、Reed O、Rickert ME、Bradley A、Kollbaum PSによる、Validation of a Clinical Aberrometer Using Pyramidal Wavefront Sensing.Optom Vis Sci.2019年10月;96(10):733-744.doi:10.1097/OPX.0000000000001435.PMID:31592956.に記載されている。
【0046】
本発明は、一実施形態では波面センサの照明に点光源を使用するが、他の実施形態では可視波長ディスプレイ70又は網膜像を使用して必要な波面補償を計算する。他の実施形態では、ハルトマンシャックセンサ、又は網膜上の視覚ディスプレイの焦点を矯正するためのピラミッド波面検知方法などの他の方法が使用される。本発明はまた、予測される性能を計算するために使用される視覚性能の低下の原因を特定し、明確にするために統計モデルで使用するための波面矯正からのデータを報告する。
【0047】
眼球10から戻ってくるNIR光は、ビームコンバイナ110を通過し、NIRイメージャ60に戻され、そこで網膜14の画像が形成される。網膜像を含む眼底画像は、記憶及び分析のためにデータ収集及び制御線101を介してプロセッサ100に送信される。網膜上の可視波長刺激の投射の座標の位置は既知であるため、NIR画像は、網膜上の可視波長刺激の位置を既知の網膜ランドマークに登録する手段を提供する。これらには、網膜血管、視神経乳頭、乳頭周囲萎縮、中心窩光反射、萎縮、出血、新生血管膜、網膜上膜並びに神経膠症、色素変化、及び偏光変化が含まれるが、これらに限定されない。これにより、偏心視域としても既知である固視点の軌跡、固視動揺としても既知である、固視点の軌跡のばらつきを提供する。網膜像は、可視波長ディスプレイが焦点を合わせている網膜上の位置における網膜の状態に関する情報をさらに提供する。網膜上の視覚刺激の位置に関する固視情報及び網膜状態情報は、プロセッサ100及びユーザインターフェース104を使用して、グラフィックオーバーレイとして表示されるか、数値データベースとしてコンピュータによって数値的に記憶されるか、又はその両方が行われる。
【0048】
NIRイメージャ60に指向されることを意図されていない眼球10から戻ってくる光は、ビームコンバイナ110から離れてビームコンバイナ120に指向される。波面測定システム75の可視照明又はNIR照明からの波長範囲の光は、データ収集及び制御線108を介してプロセッサ100にデータを提供する可視又はNIR波面測定システム80に指向され、瞳孔面22で測定された網膜14から戻る光の光学収差を定量化する。他の実施形態では、NIR又は長波長可視照明以外の異なる照明波長の画像のデータは、プロセッサに指向される。波面測定システム80はまた、タイミング、利得、各測定に含まれるサンプルの数、各測定に含まれるサンプルの位置を含むがこれらに限定されず、プロセッサ100による波面測定システム80の正確な制御を可能にするために、データ収集及び制御線108を介してプロセッサ100にハードウェア及び/又はソフトウェア関連データを通信し、プロセッサのコマンドの下で測定によって制御されるか、又はプロセッサに送信されるデータの取得に続く後処理によって制御されるかを問わない。この波面測定データは、プロセッサ100によって最適化され、視覚刺激の焦点を網膜上に合わせるために十分に正確な情報を提供する一方で、十分に薄暗く、又は視覚機能の測定を妨害するほどの可視照明を同時に導入しない。
【0049】
適応光学系90の制御ループは、網膜14上の波面測定システム75の照明の焦点の測定に基づいて、波面測定システム80、プロセッサ100、適応光学系のコントローラ95、及び適応光学系90によって形成される。波面収差が計算され、適応光学系によって矯正可能なものが矯正可能として識別され、記録され、データとしてデータベースに保存される。さらに、矯正することができないか、又は矯正するのが現実的ではなく、光学的な誤差が残るものも矯正不可能なものとして識別され、記録され、データとして保存される。
【0050】
特定のタイプの収差、すなわち非常に高次の収差は容易に矯正することができず、許容可能な視力矯正を行う必要はない。本開示は、費用効果の高い解決策を提供し、すなわち、大きな視覚的誤差を排除し、多くの場合、まったく矯正できないか、又は許容範囲内の価格では矯正できない残留誤差を定量化する。その結果、本開示は、現実世界では眼鏡では得られないであろう、又は得られない、コンタクトレンズでは提供困難で、又は眼内レンズインプラント(IOL)でさえ提供することが困難な、これまでに最高の焦点を目指すものではない。したがって、本開示は、1又は複数の実施形態において、ミラー及び光学設計を使用して、低次収差及びいくつかの高次波面誤差の矯正を提供する。いくつかの実施形態では、適応光学系が利用され、それは、撮像光線を傾斜させてそれらが指向されるべき場所に戻るように十分に移動する。多くのミラーの微調整にかかる過剰なコストは、非常に高次の収差の矯正を非現実的にし、これらのうちの一部は涙液層と共に経時的に急速に変化する。
【0051】
応答機構150は、標的が見えたかどうか、文字が指している方向、及び色はどうかを含むがこれらに限定されない患者による可視波長刺激に関する判断を報告し、プロセッサに入力を提供する。一実施形態では、応答機構150は患者によって操作される。別の実施形態では、応答機構は、患者の応答を入力するオペレータ用のユーザインターフェース104である。
【0052】
標的が正しく見えているかどうかに関する判定は、次に、視覚機能の測定のために、プロセッサ100によって次の可視波長刺激を制御するために使用される。この次の可視波長刺激は、1又は複数の実施形態では、患者の応答又は所定のシーケンスに基づく。プロセッサ100と通信するデータベース200は、現在の応答、過去の応答、及び視覚機能の判定に関連する任意のデータを記憶する。プロセッサ100は、制御線101を介して受信したNIRイメージャ60からの網膜像をさらに処理して、標的の位置における網膜14の状態を特定する。網膜の状態には、共焦点撮像や多重散乱光撮像からの結果が含まれ、血液又は色素の欠陥による不規則な網膜又は網膜下吸収を示す信号振幅の変化、及び網膜下構造の隆起又は肥厚、又は血管を通る血球又は他の粒子の動きを示す計算が示される。データベース200は、網膜像、網膜上の標的の位置、固視の安定性、網膜像データからの網膜像又は人工知能の処理からの結果、網膜の状態、標的の位置での網膜の状態、中心的傾向及びばらつきの両方を含む測定された視覚機能からの結果、矯正前の波面誤差、及び矯正可能な波面誤差対矯正不可能な波面誤差を含む、システムからの結果を含む。
【0053】
データベースはまた、限定はしないが、カラー眼底写真、走査レーザ検眼鏡検査、走査レーザ検眼鏡検査からの血管マップ、光干渉断層法、光干渉断層法血管造影法、又は適応光学系と共に使用されるこれらのいずれかなどの他の機器からの網膜状態、他の機器からの波面収差又は光学測定値、年齢、性別、診断、治療履歴、及び視覚機能の他の測定値からの結果、を含む他の関連する臨床データ及び人口統計データを含む。
【0054】
モデル210は、プロセッサ100と通信しており、データベース200に記憶されたデータを使用して、視覚機能の中心的傾向及びばらつきの統計的推定値を提供し、それによって実現され得る潜在的な視覚の範囲が定量化される。中心的傾向は、そのデータセット内の中心位置を識別することによってデータセットを記述しようと試みる単一の値である。これには、小さな瞳孔、角膜又は涙液層の光学系の不良、白内障の水晶体、屈折の不良に起因する不正確な焦点面、及び他の要因などの光学的要因とは無関係な要因も含まれ、開示されたシステムによる測定中に、網膜の状態や治療による改善の可能性をより正確に判断するために、これらの要因のいくつかを軽減することができる。一実施形態では、中心的傾向のメトリックは平均であり、ばらつきのメトリックは分散であり、特定の確率、例えば95%信頼限界だけ信頼限界から外れる確率に応じて設定することができる信頼上限及び信頼下限の形で、視力低下の交絡理由の有意性の統計的限界を提供する。さらに、波面誤差からの報告は、白内障において視覚測定値がどのように制限されるかを示す。
【0055】
独自の統計分析は、上記の様々な情報源からの情報を組み合わせて、予測される性能に境界線を敷く。例えば、特定の眼球が網膜治療で潜在的に実現できる可能性のある視力に対処するために、光学的誤差、固視点データ、及び他のデータを含む中心的傾向(予測値)とばらつきとから導出された信頼限界などから境界が決定される。測定され、矯正可能であることが分かった収差を使用して、潜在的に実現可能な視力の上限及び下限が決定される。例えば、視力の測定値に基づくLogMAR測定では、1つの方法には、タンブリングEと4つの代替強制選択とが含まれる。統計分析は、光学的及び神経的、そして他の要因が独立しているかどうか、又はそれらが相互作用するものとしてモデル化されなければならないかどうかの判定を含む。モデルの重要な趣旨は、変数が独立しており、全体的な分散が個々の要因の分散の合計に等しいかどうかを判定するためのデータの集合を含む。システムは、網膜治療の成功した場合の視力の予測値、又は水晶体混濁などの無関係な因子の排除が実現され得るかどうかを含むこの状態を定量化する。
【0056】
逆に、異なる実施形態では、モデルは、光学的要因が矯正された後に、予測される視覚機能性能を計算するために、使用されなければならない2つ以上の変数の分散の単純な加算を超える関数を必要とする。さらに、各変数は、ガウス分布よりも複雑な関数を有していてもよく、分散は、平均値を中心に対称でなく、平均値に対して線形にスケーリングされないような様式で分布していてもよい。組み合わせた分散は、信頼上限及び信頼下限を計算するために使用される。これらの信頼限界、すなわち視覚機能テストスコアを解釈するために使用される境界は、構成要素因子の値及び分散を組み合わせる関数に応じて、広くなったり狭くなったりする。上限は、定義により、網膜治療が成功とみなされるために、又は長期測定において改善としてカウントされるために視覚機能測定値が超えなければならない値に相当する。下限は、定義により、視覚機能が超えなければならない値であり、又は経過観察で悪化していないとみなされる値に相当する。下限はまた、視覚を経時的に維持することが目標である場合に、治療が有効であるとみなされるためには、視覚機能が超えなければならない値でもある。これらの値は、光学的な影響、凝視安定性、又は他の要因の重要な評価を欠く、視覚の獲得又は喪失した線などの現在のメトリクスに関連し得る。
【0057】
本発明は、以下の特徴を有する:1)ビデオレート及び患者には見えない近赤外網膜撮像を使用した固視点位置の評価を提供する。2)同じビデオレート近赤外網膜撮像を使用した凝視安定性の評価を提供する。3)網膜から戻る光の波面センサ測定によって収集された、角膜、水晶体、又は瞳孔に見られる病的状態又は加齢状態に起因するものを含む、球面及び円柱に限定されない患者の眼球の光学誤差を識別する。4)適応光学系を用いて上記項目3で上述した波面測定値を使用して、球面及び円柱に限定されない、患者の眼球の主な光学誤差の視覚機能の測定中に、対物矯正を提供する。5)瞳孔サイズの個人差による大きなばらつきを低減するために、器具の固定サイズの瞳孔を介して網膜上に視覚標的を投射する。6)共焦点及び多重散乱光による網膜像の分析を提供し、異なる撮像モードは、米国特許第7331669号、米国特許第7831106号、米国特許第8237835号、及び米国特許第8488895号に記載されているように、共焦点又は多重散乱光撮像、及び異なる撮像モードからの情報の組合せを使用することによって、その位置での網膜の状態を明確にして、視覚検査において患者によって使用される固視点での正確な病変を詳述する、7)独自の統計分析を使用して、上記のすべての構成要素1~6の組合せを含む潜在的な視覚を測定するための新規のシステムを提供する。
【0058】
図3は、本発明による光学撮像視覚ディスプレイシステム50の別の実施形態を示す図である。近赤外(NIR)イメージャ60、すなわち撮像デバイスは、光を眼球10に指向し、光が網膜に指向されてそこに焦点が合うようにして、正確な画像を提供する。当業者は、様々な異なる構成がこの機能を果たすことを認識するであろう。異なる実施形態では、NIRイメージャは、点走査システムであるか、Elsnerらによる、1992;及びthe Heidelberg Spectralis(Heidelberg Engineering、Heidelberg、ドイツ);及び米国特許第7331669号明細書、米国特許7831106号明細書、又は米国特許第8237835号;及びthe Eidon Camera(iCare,Vantaa,フィンランド)に記載されているような、線走査システムである。撮像デバイス60が、網膜を横切って照明を走査することにより、又は一連の照明領域を網膜上に投射することにより網膜を照明し、網膜からの光が同期して検出される。一実施形態では、撮像デバイス60は、偏心固視及び網膜ランドマークの決定を可能にするために、広視野、すなわち約8度~60度の視野角度を有する。網膜からNIRイメージャ60に戻る光は、網膜14の画像を生成するのに十分な精度で網膜上に集束され、可視波長ディスプレイ70で投射された標的の位置と比較するために、明確に集束された優れた画像を提供する。NIRイメージャ60の照明及び検出特性は、Elsnerらによる、2020に記載されているように、共焦点及び多重散乱光撮像の両方を提供する。画像を計算するために使用される画像又はデータは、コンピュータ、マイクロコンピュータ、及び電子制御デバイスを含む1又は複数のプロセッサからなるプロセッサ100に指向される。異なる実施形態では、プロセッサ100は、受信データを記憶するためのメモリを含むか、又はデータを送信するための送信機を含む。他の実施形態では、メモリ又は送信機は、プロセッサ100の外部に配置される。プロセッサ100はまた、NIRイメージャ60の特性が、眼球を透過する光とNIRイメージャ60用のセンサの特性との両方の撮像を可能にするように、データ収集及び制御線101を介してイメージャ60を制御する。特性は、強度、利得、撮像モード、偏光特性、波長、網膜上の照明の幅、又は透過光波の視野を含むが、これらに限定されず、オペレータによって選択可能である。オペレータは、制御線102を介してプロセッサ100に結合されたユーザインターフェース104などの入力デバイスを通して、制御線102を介してイメージャ60の機能を調整する。選択されたパラメータは、プロセッサ100に記憶又は記録され、視覚機能の判定を行う際に使用される。
【0059】
同様に制御線106を介してプロセッサ100によって制御される可視波長ディスプレイ70は、瞳孔16を通して眼球10内に既知の量や既知の種類の光を指向する様式で網膜14に向けて指向される光出力を有する。有指向性の光は、1又は複数の実施形態では、ケーラー照明としても既知であるマクスウェル視野を使用して指向され、したがって、網膜14上の照明が識別可能であり、一貫して再現可能であり、単一の患者又は複数の患者のいずれかについて、一方の眼球から次の眼球まで一定にされるような様式で指向される。ディスプレイ70は、一実施形態では、デジタル光プロジェクタ、液晶ディスプレイスクリーン、シリコン上の液晶、カソード発光ディスプレイ、エレクトロルミネセンスディスプレイ、フォトルミネセンスディスプレイ、プラズマディスプレイパネル、白熱ディスプレイ、発光ダイオード、それらの組合せ、又は視覚刺激を投射する任意の同様の光学ディスプレイを含むがこれらに限定されない、一次元又は二次元ディスプレイを含む。異なる実施形態では、視覚刺激は、プロセッサ100の内部又は外部に配置されたメモリに記憶された1又は複数の所定の画像である。本明細書で使用される場合、一次元ディスプレイは、網膜を横切って走査される単一の線を送信する。
【0060】
プロセッサ100は、ディスプレイ70の表示された画像を制御する制御線106を介して、メモリに生成又は記憶された視覚刺激を投射するためのコマンドを送信し、これには、視覚刺激のパターン、パターンの強度、表示される画像のタイミング、画像の動き、網膜上のディスプレイの位置、及び画像の色が含まれるが、これらに限定されない。可視波長ディスプレイ70の出力は、ビーム整形及びコンバイナ構成要素135を介して適応光学系部90に光を送信し、調整可能な1又は複数の光学素子によって波面誤差を矯正する。適応光学系部90は、制御線105を介して適応光学系のコントローラ95によって制御される。適応光学系のコントローラ95は、制御線103を介してプロセッサ100によって制御される。
【0061】
適応光学系90の調整は、制御線105を介して適応光学系のコントローラ95によって制御可能であり、その結果、網膜14上の照明の焦点は、球面及び円柱のみを矯正することによって実現されるものよりも良く改善される。この組み合わされた光出力は、ミラー、ビームスプリッタ、又はフィルタ125から眼球に指向され、ビームコンバイナ110でNIRイメージャ60からの光と組み合わされる。NIRイメージャ60及び可視波長ディスプレイ70の両方からの光は、眼球の瞳孔を通って指向され、可視波長ディスプレイ70と共に、適応光学系部90によって網膜上に集束される。NIRイメージャ60は、NIRイメージャ60と通信しているプロセッサ100からの制御を介して内部構成要素によって集束される。網膜14から戻る光は、眼球10の瞳孔16を通過する。
【0062】
眼球10から戻ってくるNIR光は、ビームコンバイナ110を通過し、NIRイメージャ60に戻され、そこで網膜14の画像が形成される。網膜像を含む眼底画像は、記憶及び分析のためにデータ収集及び制御線101を介してプロセッサ100に送信される。網膜上の可視波長刺激の投射の座標の位置は既知であるため、上記のように、NIR画像は、網膜上の可視波長刺激の位置を既知の網膜ランドマークに登録する手段を提供する。これにより、偏心視域としても既知である固視点の軌跡、固視動揺としても既知である、固視点の軌跡のばらつきを提供する。網膜像は、可視波長ディスプレイが焦点を合わせている網膜上の位置における網膜の状態に関する情報をさらに提供する。網膜上の視覚刺激の位置に関する固視情報及び網膜状態情報は、プロセッサ100及びユーザインターフェース104を使用して、グラフィックオーバーレイとして表示されるか、コンピュータに数値的に記憶されるか、又はその両方が行われる。
【0063】
NIRイメージャ60に指向されることを意図されていない眼球10から戻ってくる光は、ビームコンバイナ110から離れて、ミラー、ビームスプリッタ、又はフィルタ125に指向される。NIRイメージャ60はまた、網膜14から戻る光の光学収差を定量化するために、データ収集及び制御線101を介してプロセッサ100にデータを提供する。これは、NIRイメージャ60に照明及びセンサが含まれているが、追加の照明源及びセンサがないため、センサレス適応光学系として既知である(Burnsらによる、2019)。一実施形態では、網膜上の標的の位置は、プロセッサ100を使用して、光学矯正データをその位置のサンプルに限定するために使用され、例えば、これらは網膜の高さが異なる可能性があるため、視覚刺激が投射される領域外を含む網膜の一部にわたって平均化するよりも正確である。本発明は、Williamsらの固有の制限である網膜の狭い視野に限定されないため、網膜上の特定の位置に正確な焦点を提供するために、サンプリングされる網膜の領域を最適化することができる。
【0064】
本発明では、網膜の病理学的特徴を識別することができ、これは、そのような病理学的特徴が、ある網膜位置での視覚機能検査の際の網膜14上の好ましい焦点面を、別の網膜位置における場合よりも変化させ得るので重要である。別の実施形態では、波面誤差は、別のデバイス、又は特定の眼球が潜在的に実現することができる視力の測定値、のいずれからか事前に計算され、NIRイメージャによって決定された網膜上の標的の位置が、プロセッサ100によって波面誤差の矯正を指定するために使用され、その後、制御線103を介して適応光学系のコントローラ95に送信される。一実施形態では、波面誤差計算のための信号強調は、Clarkらによる、2010、2011;Elsnerらによる、2011に記載されているように、構造化照明を使用することによって生成される。これは、NIRイメージャが、点走査システムであるか、Elsnerらによる、1992;;the Heidelberg Spectralis(Heidelberg Engineering、Heidelberg、ドイツ、);米国特許第7331669号明細書、米国特許7831106号明細書、又は米国特許第8237835号;及びthe Eidon Camera(iCare,Vantaa,フィンランド)に記載されているような、線走査システムであるかにかかわらず、実現される。後者は、低コストかつ迅速な照明線のオンとオフの切り替えを可能にし、これは、網膜上の関心領域からサンプリングするための眼球を介した光伝達のフーリエ解析やその他の解析を容易にする矩形波回折格子を提供する。NIRイメージャ60の網膜から戻った光の量は、眼底色素沈着の影響がほとんどないため瞳孔径に依存し、それにより、Elsnerらによる、2013に記載されているように、図2図4、及び図5の波面測定システムがない場合の患者の瞳孔径を報告する。
【0065】
適応光学系90の制御ループは、網膜14上のNIRイメージャ60からの焦点の測定値に基づいて、NIRイメージャ60又はデータベース200内のデータ、プロセッサ100、適応光学系のコントローラ95、及び適応光学系90によって形成される。波面収差が計算され、適応光学系によって矯正することができるものが報告され、また、矯正することができないか、又は矯正することが現実的ではなく、残留光学系誤差をもたらすものも報告される。一実施形態では、NIRイメージャ60の照明は時間的に変調され、その後、NIRイメージャ60の検出機構における周波数ベースの検出方式が、改善された信号対雑音比を実現するために使用される。代替としては、照明の単純なフリッカ、並びに周波数に基づくNIRイメージャ60によるホモダイン及びヘテロダイン検出のより複雑な方式が挙げられる。一実施形態では、波面測定のためのNIR照明は、視覚標的の網膜位置、固視動揺、又は網膜状態を判定するためのより最適な網膜像を生成するために使用されるNIR照明のパターンと時間的に交互に行われる。好ましい実施形態では、NIR照明は、視覚機能測定で使用される患者によって行われる判断を妨げない程度に十分に暗い。好ましい実施形態では、焦点及び波面誤差計算からのデータは、波面誤差に起因する低次収差及び高次収差、並びに網膜焦点の推定誤差を記述する様式で報告される。応答機構150は、標的が見えたかどうか、文字が指している方向、及び色はどうかを含むがこれらに限定されない、患者によって知覚される可視波長刺激に関して患者によって行われた判断を報告し、プロセッサに入力を提供する。一実施形態では、応答機構は患者によって操作される。別の実施形態では、応答機構は、患者の応答を入力するオペレータ用のユーザインターフェース104である。
【0066】
標的が正しく見えているかどうか、すなわち正しく識別されているかどうかに関する判定は、次に、視覚機能の測定のために、プロセッサ100によって次の可視波長刺激を制御するために使用される。プロセッサ100と通信するデータベース200は、現在の応答、過去の応答、及び視覚機能の判定に関連する任意のデータを記憶する。プロセッサ100は、制御線101を介して受信したNIRイメージャ60からの網膜像をさらに処理して、標的の位置における網膜14の状態を特定する。網膜の状態には、共焦点撮像や多重散乱光撮像からの結果が含まれ、血液若しくは色素の欠陥による不規則な網膜又は網膜下吸収を示す信号振幅の変化、及び網膜下構造の隆起若しくは肥厚、又は血管を通る血球又は他の粒子の動きを示す計算が示される。データベース200は、網膜像、網膜上の標的の位置、固視の安定性、網膜像データからの網膜像又は人工知能の処理からの結果、網膜の状態、標的の位置での網膜の状態、中心的傾向及びばらつきの両方を含む測定された視覚機能からの結果、矯正前の波面誤差、及び矯正可能な波面誤差対矯正不可能な波面誤差を含む、システムからの結果を含む。
【0067】
データベース200はまた、限定はしないが、カラー眼底写真、走査レーザ検眼鏡検査、光干渉断層法、光干渉断層法血管造影法、又は適応光学系と共に使用されるこれらのいずれかなどの他の機器からの網膜状態、他の機器からの波面収差又は光学測定値、年齢、性別、診断、治療履歴、及び視覚機能の他の測定値からの結果を含む他の関連する臨床データ及び人口統計データを含む。これらのデータは、波面誤差の計算を改善するために使用することができる。
【0068】
モデル210は、プロセッサ100と通信しており、データベースに記憶されたデータを使用して、視覚機能の中心的傾向及びばらつきの統計的推定値を提供し、それによって実現され得る潜在的な視覚の範囲が上記のように定量化される。中心的傾向は、そのデータセット内の中心位置を識別することによってデータセットを記述しようと試みる単一の値である。これには、小さな瞳孔、角膜又は涙液層の光学系の不良、白内障の水晶体、屈折の不良に起因する不正確な焦点面、及び他の要因などの光学的要因とは無関係な要因も含まれ、開示されたシステムによる測定中に、網膜の状態や治療による改善の可能性をより正確に判断するために、これらの要因のいくつかを軽減することができる。視覚タスクの性能の上限及び下限は、図2の実施形態と同様に計算され使用される。
【0069】
図4は、本発明による光学撮像視覚ディスプレイシステム40の別の実施形態を示す図である。上述のようないくつかの実施形態を有するNIRイメージャ60は、光を眼球10に指向し、光が網膜に指向されてそこに焦点が合うようにして、正確な画像を提供する。機能は、説明した特定の変更を除いて、図2及び図3の機能と同様である。
【0070】
網膜からNIRイメージャ60に戻る光は、網膜14の画像を生成するのに十分な精度で網膜上に集束され、可視波長ディスプレイ70で投射された標的の位置と比較するために、明確に集束された優れた画像を提供する。Elsnerらによる、2020及び図2の他の説明に記載されているように、NIRイメージャ60の照明及び検出特性は、共焦点及び多重散乱光撮像の両方を提供する。画像を計算するために使用される画像又はデータは、コンピュータ、マイクロコンピュータ、及び電子制御デバイスを含む1又は複数のプロセッサからなるプロセッサ100に指向される。異なる実施形態では、プロセッサ100は、受信データを記憶するためのメモリを含むか、又はデータを送信するための送信機を含む。他の実施形態では、メモリ又は送信機は、プロセッサ100の外部に配置される。プロセッサ100はまた、NIRイメージャ60の特性が、眼球を透過する光とNIRイメージャ60用のセンサの特性との両方の撮像を可能にするように、データ収集及び制御線101を介してイメージャ60を制御する。特性は、強度、利得、撮像モード、偏光特性、波長、網膜上の照明の幅、又は透過光波の視野を含むが、これらに限定されず、オペレータによって選択可能である。オペレータは、制御線102を介してプロセッサ100に結合されたユーザインターフェース104などの入力デバイスを通して、制御線102を介してイメージャ60の機能を調整する。選択されたパラメータは、プロセッサ100に記憶又は記録され、視覚機能の判定を行う際に使用される。
【0071】
同様に制御線106を介してプロセッサ100によって制御される可視波長ディスプレイ70は、瞳孔16を通して眼球10内に既知の量や既知の種類の光を指向する様式で網膜14に向けて指向される光出力を有する。有指向性の光は、1又は複数の実施形態では、ケーラー照明としても既知であるマクスウェル視野を使用して指向され、したがって、網膜14上の照明が識別可能であり、一貫して再現可能であり、単一の患者又は複数の患者のいずれかについて、一方の眼球から次の眼球まで一定にされるような様式で指向される。ディスプレイ70は、一実施形態では、デジタル光プロジェクタ、液晶ディスプレイスクリーン、シリコン上の液晶、カソード発光ディスプレイ、エレクトロルミネセンスディスプレイ、フォトルミネセンスディスプレイ、プラズマディスプレイパネル、白熱ディスプレイ、発光ダイオード、それらの組合せ、又は視覚刺激を投射する任意の同様の光学ディスプレイを含むがこれらに限定されない、一次元又は二次元ディスプレイを含む。異なる実施形態では、視覚刺激は、プロセッサ100の内部又は外部に配置されたメモリに記憶された1又は複数の所定の画像である。
【0072】
プロセッサ100は、ディスプレイ70の表示された画像を制御する制御線106を介して、メモリに生成又は記憶された視覚刺激を投射するためのコマンドを送信し、これには、視覚刺激のパターン、パターンの強度、表示される画像のタイミング、画像の動き、網膜上のディスプレイの位置、及び画像の色が含まれるが、これらに限定されない。
【0073】
可視波長ディスプレイ70の光出力は、ビーム整形及びコンバイナ135によって、調整可能な1又は複数の光学素子を含む適応光学系部90に指向される。適応光学系90の調整は、制御線105によって適応光学系のコントローラ95によって制御可能であり、その結果、網膜14上の照明の焦点は、球面及び円柱のみを矯正することによって実現されるものよりも良く改善される。適応光学系のコントローラ95は、制御線103を介してプロセッサ100によって制御される。この光出力は、ビームコンバイナ120から眼球に指向され、そこでビームコンバイナ110でNIRイメージャ60からの光と組み合わされる。NIRイメージャ60及び可視波長ディスプレイ70の両光源からの光は、眼球の瞳孔を通って指向され、可視波長ディスプレイ70と共に、適応光学系部90によって網膜14上に集束される。NIRイメージャ60は、NIRイメージャ60及び波面測定システム80の両方と通信するプロセッサ100からの制御を介して、内部構成要素によって集束される。網膜14から戻る光は、眼球10の瞳孔16を通過する。
【0074】
眼球10から戻ってくるNIR光は、ビームコンバイナ110を通過し、NIRイメージャ60に戻され、そこで網膜14の画像が形成される。網膜像を含む眼底画像は、記憶及び分析のためにデータ収集及び制御線101を介してプロセッサ100に送信される。網膜上の可視波長刺激の投射の座標の位置は既知であるため、NIR画像は、網膜上の可視波長刺激の位置を既知の網膜ランドマークに登録する手段を提供する。これらには、網膜血管、視神経乳頭、乳頭周囲萎縮、中心窩光反射、萎縮、出血、新生血管膜、網膜上膜並びに神経膠症、色素変化、及び偏光変化が含まれるが、これらに限定されない。これにより、偏心視域としても既知である固視点の軌跡、固視動揺としても既知である、固視点の軌跡のばらつきを提供する。網膜像は、可視波長ディスプレイが焦点を合わせている網膜上の位置における網膜の状態に関する情報をさらに提供する。網膜上の視覚刺激の位置に関する固視情報及び網膜状態情報は、プロセッサ100及びユーザインターフェース104を使用して、グラフィックオーバーレイとして表示されるか、コンピュータに数値的に記憶されるか、又はその両方が行われる。NIRイメージャ60に指向されることを意図されていない眼球10から戻ってくる光は、ビームコンバイナ110から離れてビームコンバイナ120に指向される。可視波長ディスプレイ70からの波長範囲の光は、データ収集及び制御線108を介して、プロセッサ100にデータを提供する可視又はNIR波面測定システム80に指向され、瞳孔面22で測定された網膜14から戻る光の光学収差を定量化する。波面測定システム80はまた、タイミング、利得、各測定に含まれるサンプルの数、各測定に含まれるサンプルの位置を含むがこれらに限定されず、プロセッサ100による波面測定システム80の正確な制御を可能にするために、データ収集及び制御線108を介してプロセッサ100にハードウェア及び/又はソフトウェア関連データを通信し、プロセッサのコマンドの下で測定によって制御されるか、又はプロセッサに送信されるデータの取得に続く後処理によって制御されるかを問わない。
【0075】
適応光学系90の制御ループは、網膜14上の可視波長ディスプレイ70からの照明の焦点の測定に基づいて、波面測定システム80、プロセッサ100、適応光学系のコントローラ95、及び適応光学系90によって形成される。波面収差が計算され、適応光学系によって矯正することができるものが報告され、また、矯正することができないか、又は矯正することが現実的ではなく、残留光学系誤差をもたらすものも報告される。一実施形態では、可視波長ディスプレイ70からの照明は時間的に変調され、その後可視又はNIR波面測定システム80の検出機構における周波数ベースの検出方式が、改善された信号対雑音比を実現するために使用される。代替としては、照明の単純なフリッカ、並びに周波数に基づく可視又はNIR波面測定システム80によるホモダイン及びヘテロダイン検出のより複雑な方式が挙げられる。一実施形態では、波面測定のための照明は、視覚機能を検査するために使用されるパターンと時間的に交互に行われる。好ましい実施形態では、NIRイメージャ60のNIR照明は、視覚機能測定で使用される判断を妨げない程度に十分に暗い。同様に、好ましい一実施形態では、NIRイメージャ60のNIR照明は、波面測定値にも視覚機能測定値にも干渉しないように、可視波長ディスプレイ70の波長範囲と重複しない。好ましい実施形態では、焦点及び波面誤差計算からのデータは、波面誤差に起因する低次収差及び高次収差、並びに網膜焦点の推定誤差を記述する様式で報告される。
【0076】
応答機構150は、標的が見えたかどうか、文字が指している方向、及び色はどうかを含むがこれらに限定されない患者による可視波長刺激に関する判断を報告し、プロセッサに入力を提供する。一実施形態では、応答機構150は患者によって操作される。別の実施形態では、応答機構は、患者の応答を入力するオペレータ用のユーザインターフェース104である。
【0077】
標的が正しく見えているかどうかに関する判定は、次に、視覚機能の測定のために、プロセッサ100によって次の可視波長刺激を制御するために使用される。この次の可視波長刺激は、患者の応答又は視覚標的の所定のシーケンスに基づくことができる。プロセッサ100と通信するデータベース200は、現在の応答、過去の応答、及び視覚機能の判定に関連する任意のデータを記憶する。プロセッサ100は、制御線101を介して受信したNIRイメージャ60からの網膜像をさらに処理して、標的の位置における網膜14の状態を特定する。網膜の状態には、共焦点撮像や多重散乱光撮像からの結果が含まれ、血液若しくは色素の欠陥による不規則な網膜又は網膜下吸収を示す信号振幅の変化、及び網膜下構造の隆起若しくは肥厚、又は血管を通る血球又は他の粒子の動きを示す計算が示される。データベース200は、網膜像、網膜上の標的の位置、固視の安定性、網膜像データからの網膜像又は人工知能の処理からの結果、網膜の状態、標的の位置での網膜の状態、中心的傾向及びばらつきの両方を含む測定された視覚機能からの結果、矯正前の波面誤差、及び矯正可能な波面誤差対矯正不可能な波面誤差を含む、システムからの結果を含む。
【0078】
データベースはまた、限定はしないが、カラー眼底写真、走査レーザ検眼鏡検査、光干渉断層法、光干渉断層法血管造影法、又は適応光学系と共に使用されるこれらのいずれかなどの他の機器からの網膜状態、他の機器からの波面収差又は光学測定値、年齢、性別、診断、治療履歴、及び視覚機能の他の測定値からの結果を含む他の関連する臨床データ及び人口統計データを含む。モデル210は、プロセッサ100と通信しており、データベースに記憶されたデータを使用して、視覚機能の中心的傾向とばらつきの統計的推定値を提供し、上記のように、実現される可能性のある潜在的な視覚の範囲が定量化されるようにする。中心的傾向は、そのデータセット内の中心位置を識別することによってデータセットを記述しようと試みる単一の値である。これには、小さな瞳孔、角膜又は涙液層の光学系の不良、白内障の水晶体、屈折の不良に起因する不正確な焦点面、及び他の要因などの光学的要因とは無関係な要因も含まれ、開示されたシステムによる測定中に、網膜の状態や治療による改善の可能性をより正確に判断するために、これらの要因のいくつかを軽減することができる。一実施形態では、中心的傾向のメトリックは平均であり、ばらつきは分散であり、特定の確率、例えば95%信頼限界だけ信頼限界から外れる確率に応じて設定することができる信頼上限及び信頼下限の形で、視力低下の交絡理由の有意性の統計的限界を提供する。さらに、波面誤差からの報告は、白内障において視覚測定値がどのように制限されるかを示す。視覚タスクの性能の上限及び下限は、図2の実施形態と同様に計算され使用される。
【0079】
図5は、ハルトマンシャックセンサを使用した波面測定を用いて、光学収差の測定を実施しながら視覚機能を判定するための光学撮像及び視覚ディスプレイシステム40の別の実施形態を示す図である。NIR又は可視波長イメージャ64は、デジタルミラー(DMD)と、Muller MS,Elsner AEに見られるような垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)である照明源とを備えたデジタル光プロジェクタ(DLP)として示されている。Confocal Retinal Imaging Using a Digital Light Projector with a Near Infrared VCSEL Source.Proc SPIE Int Soc Opt Eng.2018年2月;10546:105460G.doi:10.1117/12.2290286.PMID:29899586;PMCID:PMC5995569.この実施形態では照明とパターン生成とに関して別のDLPを使用する可視波長ディスプレイ74は、網膜14への正確な合焦を実現するために波面収差を矯正するための可視又はNIR波面測定システム82の制御下で、追加の集束レンズ250によって適応光学系90に指向される。NIR又は可視波長イメージャ64からの照明は、一連のレンズ250とビームコンバイナ120とを使用して、可視波長ディスプレイ74からの照明と組み合わされる。周知のハルトマンシャック法は、Burnsらによる、2019に記載されているように、小型レンズアレイを通過する網膜から戻る光をサンプリングすることによって生成される瞳孔面内に集束された点のアレイの強度及び位置を評価する可視又はNIR波面測定システム82を使用することによって実装される。
【0080】
図6A図6B図6C、及び図6Dは、経年劣化及び屈折誤差の影響を示す、NIR波長測定からの低次収差(LOA)及び高次収差(HOA)のサンプルグラフ表示を示す図である。これはまた、ピラミッド波面検知方法が本発明で使用できることを実証する。すなわち、波面収差の測定方法は、ハルトマンシャック法に限定されない。左上の図6Aは、30歳の患者の眼球から得られた結果で、この患者は正視であるが、若干の乱視があり、それでも低次収差は最小であると予測される(280)。右上の図6Bは、30歳の患者の眼球から得られた結果で、この患者は正視であり、若干の乱視があるが、加齢による水晶体の変化はほとんどないと予測されるため、高次収差は最小であると予測される(281)。左下の図6Cは、71歳の患者の眼球からの結果であり、近視であるため、大きな低次収差を有すると予測される(282)。右下の図6Dは、71歳の患者の眼球からの結果であるが、近視であり、水晶体及び涙液層の経年変化を有すると予測されるため、より大きな高次収差を有すると予測される(283)。左のプロットは、非点収差(垂直)、デフォーカス、非点収差(全体)、チルト(水平)、チルト(垂直)、及びピストンを示す。右のプロットは、クアドラフォイル(垂直)、非点収差(垂直)、球面収差、非点収差(全体)、トレフォイル(全体)、コマ(水平)、コマ(垂直)、及びトレフォイル(垂直)を示す。
【0081】
図7A及び図7Bは、波面収差を報告する別の方法を示し、点像分布関数として既知である、眼球によって網膜上に集束されるスポットからの計算された偏差についての若年患者(図7A)と高齢患者(図7B)との間の違いを示す。上側の若年者の眼球は、よりコンパクトな網膜上の光の分布を有し、より良好な焦点を示している。下側の高齢者の眼球は、コンパクトではない分布であり、単なるデフォーカスが生み出すよりも複雑な関数を有する。この場合もやはり、本発明のピラミッド波面検知方法は、すなわち、波面収差の測定方法は、ハルトマンシャック法に限定されないことを実証する。
【0082】
図8A及び図8Bは、波面収差を報告する別の方法を示し、瞳孔平面における波面収差のプロットにおける若年患者(図8A)と高齢患者(図8B)との間の違いを示す図である。上側の若年患者、すなわち図8Aは、瞳孔全体にわたって波面がかなり一定しているが、下側の高齢患者でより近視の患者、すなわち図8Bは、瞳孔の中心領域と周辺領域との間に顕著な差を有する。
【0083】
図9A及び図9Bは、波面収差による文字Eの予測される劣化コントラストの表現であり、正視である若年者の眼球(図9A)と、近視で高次の波面収差が増加したより高齢者の眼球(図9B)とを比較している。文字Eは、高齢患者の網膜にはあまり焦点が合わないと予測されるため、網膜が健康であっても視覚機能の低下が予測される。この場合もやはり、1又は複数の実施形態において、ピラミッド波面検知方法が使用されることを実証する。すなわち、波面収差の測定方法は、ハルトマンシャック法に限定されない。
【0084】
以上、本発明の原理を組み込んだ例示的な実施形態を本明細書に開示したが、本発明は開示された実施形態に限定されない。代わりに、本出願は、その通常の原理を使用して本発明の任意の変形、用途、又は応用を網羅することを意図している。さらに、本出願は、本発明が関連し、かつ添付の特許請求の範囲の範囲内にある当技術分野における公知の又は慣習の実施に範囲にある、本開示からの発展を網羅することを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
【手続補正書】
【提出日】2023-10-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
視覚に悪影響を及ぼす一方で、網膜の状態とは無関係な因子を定量化又は最小化しながら、瞳孔を有する眼球の視覚機能を測定するシステムであって、
(a)前記眼球の前記瞳孔を通して前記網膜に光を投射し、前記瞳孔を通して前記光の大部分を通過させて、高い空間周波数又は低いコントラストを含む視覚刺激を正確に送信しながら前記網膜に到達する光の量の個人差を排除することができる光学設計を有する視覚ディスプレイと、
(b)前記網膜及び網膜下構造を撮像し、前記網膜の状態及び網膜構造の位置に関する詳細を提供するためのNIR又は長可視波長撮像デバイスと、
(c)前記視覚ディスプレイからの前記視覚刺激と網膜像とを比較して、固視点の軌跡として既知であり、他の分野では、偏心視域として既知である、前記網膜の標的の前記軌跡を提供するプロセッサと、を備え、
(d)前記プロセッサが、前記NIR又は長可視波長撮像デバイスによって提供される一連の網膜像から、経時的な前記固視点の軌跡の前記ばらつきを判定し、
(e)前記プロセッサが、画像処理に基づいて前記網膜像を分析し、撮像パラメータに従って前記固視点の軌跡における前記網膜及び網膜下構造の状態を報告し、
(f)前記視覚刺激の前記位置で前記網膜に到達する前記光の波面の前記眼球の前記瞳孔の面での偏差に基づいて、検査されている視覚機能を評価する波面測定システムを備え、
(g)前記プロセッサが、波面測定値から前記眼球の光学系から生じる波面誤差を判定し、
(h)前記視覚ディスプレイの前記波面誤差を矯正し、前記網膜の前記視覚刺激の焦点の改善を実現するように1又は複数の適応光学系部を制御する制御機構を備え、
(i)前記プロセッサが、前記波面測定値に基づいて前記網膜の前記視覚刺激の前記焦点を調整し、矯正済み及び矯正不可能な波面収差を評価し、
(j)前記視覚刺激に関する判定を記録する応答機構を備え、
(k)前記制御機構が、可視波長ディスプレイの前記視覚刺激の1又は複数のパラメータを制御し、
(l)前記プロセッサが、b、c、d、e、g、i、及びjの結果に従って、前記視覚ディスプレイ又は最終出力で使用される前記パラメータを計算し、
(m)前記視覚機能の測定が、網膜治療が成功した場合又は水晶体混濁などの無関係な因子の除去が実現された場合の視力に対する予測値を含み、
(n)前記プロセッサが、中心的傾向及びばらつきの測定値を含む、視覚機能メトリクスの測定値を提供し、網膜の状態が改善されていると結論付けるために超えなければならない上限を特定し、前記視覚機能のメトリクスは、網膜の状態が悪化していないと結論付けるために超えなければならない下限を含む、
システム。
【請求項2】
前記視覚ディスプレイの前記光が、直径約3mmの瞳孔を通して投射され、高空間周波数刺激を送信するのに十分な開口数を提供する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
撮像デバイスが、前記網膜を横切って照明を走査することにより、又は一連の照明領域を前記網膜に投射することにより前記網膜を照明し、前記網膜からの光が同期して検出される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
撮像デバイスが、共焦点撮像を提供し、代替的に、照明ビーム及び検出読み出しが、空間的又は時間的に変位している状態で、多重散乱光撮像を提供する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記プロセッサが、画像内又は経時的に2つ以上の方向の照明に対して検出オフセットを有する画像を分析する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記プロセッサが、NIR又は長波長可視照明以外の異なる照明波長の画像を分析する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記プロセッサが、前記眼球から戻る前記光の強度以外の特性、蛍光、コヒーレンス、又は偏光などを、各位置で又はより広い領域のいずれかにわたって集合的に分析する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記波面についての測定デバイスが、シャックハルトマンセンサシステムである、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記波面についての測定デバイスが、長波長可視照明又はNIR照明を使用する、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記波面についての測定デバイスが、球面及び円柱のみに限定されない視覚に影響を与える収差の仕様を可能にするのに十分な解像度を有するが、回折限界撮像を生成するために必要な適応光学系を制御するために必要なものよりも低コスト又は低解像度であるように考案されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記波面測定システムが、信号対雑音比を改善するためにセンサと同期した照明を変調することを含むがこれに限定されず、波面収差の前記測定に必要な前記光を減少させるように時間的に変調される、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記波面測定システムが、前記視覚ディスプレイとは別個の照明源を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
波面測定デバイスが、約3mmの瞳孔の前記波面収差を報告する、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
波面測定デバイスが、約3mmの瞳孔の前記波面収差を報告し、球面収差、円柱収差、及び特定の他の低次収差について矯正された量を報告する、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
波面測定デバイスが、約3mmの瞳孔の前記波面収差を報告し、球面収差、円柱収差、その他の低次収差、及び高次収差について適応光学系によって矯正された量を報告する、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
波面測定デバイスが、約3mmの瞳孔の前記波面収差を報告し、涙液層及び水晶体などの前眼部の健康に関する臨床データ又は他のデータと関連して、球面収差、円柱収差、その他の低次収差、及び高次収差について適応光学系によって矯正された量を報告する、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
波面測定デバイスが、約3mmの瞳孔の前記波面収差を報告し、涙液層及び水晶体などの前眼部の健康に関する臨床データ又は他のデータと関連して、球面収差、円柱収差、その他の低次収差、及び高次収差の適応光学系によって矯正された量を報告し、測定された前記視覚機能の前記中心的傾向及びばらつきを精緻化する、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記視覚ディスプレイからの前記網膜への前記焦点は、適応光学系によって改善され、前記改善は、前記波面測定システムの前記測定値によって定量化される、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記視覚ディスプレイからの前記網膜への前記焦点は、適応光学系によって改善され、前記適応光学系の制御パラメータは、補助測定によって指定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
撮像デバイスが、偏心固視及び網膜ランドマークの決定を可能にするために、視野角度8度~60度の広視野を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
撮像デバイスが、8度未満の視野角度の拡大視野を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
前記視覚機能の測定値が、矯正することができない前記波面収差の前記視覚機能への影響のデータベース又はモデルを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項23】
前記波面測定システムの照明が、前記視覚ディスプレイによって実施される、請求項1に記載のシステム。
【請求項24】
請求項1に記載のシステムであって、しかし、前記視覚機能の測定値が、入力測定値のいずれもが、同時様式で、同じデバイス内で測定されず、又は代替測定値又は補助測定値が入力され、b、c、d、e、g、i、若しくはj、画像内若しくは経時的に2つ以上の方向の照明に対する検出オフセット、及びNIR若しくは長波長可視照明以外の異なる照明波長の画像のセットに制約される場合、視覚機能測定値中央的傾向及びばらつきに与える影響のデータベース又はモデルを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項25】
視覚に悪影響を及ぼす一方で、網膜の状態とは無関係な因子を定量化又は最小化しながら、視覚機能を測定する方法であって、
(a)眼球の瞳孔を通して前記網膜に光を投射し、前記瞳孔を通して前記光の大部分を通過させて、高い空間周波数又は低いコントラストを含む視覚刺激を正確に送信しながら個人差を排除することと、
(b)前記網膜及び網膜下構造をNIR又は長可視波長光で撮像して、前記網膜の健康状態及び網膜構造の位置に関する詳細を提供することと、
(c)視覚ディスプレイから受信した前記視覚刺激と網膜像とを比較して、固視点の軌跡として既知であり、他の分野では、偏心視域として既知である、前記網膜の標的の前記軌跡を提供することと、
(d)一連の網膜像から、凝視安定性として既知である、経時的な前記固視点の軌跡のばらつきを判定することと、
(e)前記網膜像を分析し、撮像パラメータに従って前記固視点の軌跡における前記網膜及び網膜下構造の状態を報告することと、
(f)波面収差を測定して、前記視覚刺激の前記位置で前記網膜に到達する前記光について波面の前記眼球の前記瞳孔の面での偏差を評価することと、
(g)波面測定値から前記眼球の光学系の前記網膜の焦点を判定することと、
(h)前記視覚刺激の前記網膜でのより良好な焦点を実現するために前記視覚ディスプレイの波面誤差を矯正することと、
(i)矯正済み及び矯正不可能な波面収差をオペレータに報告し、視覚機能測定値を解釈するためにこの情報を使用することと、
(j)前記視覚刺激についての患者による判定を記録することと、
(k)前記患者の応答又は所定のシーケンスに基づいて前記視覚刺激の1又は複数のパラメータを制御することと、
(l)b、c、d、e、g、i、及びjの結果と、事前データを含む、測定されている前記視覚機能のモデルとに従って、前記視覚ディスプレイ又は最終出力で使用される前記パラメータを計算し、すべてが協働して、所与の眼球が潜在的に到達し得る前記視覚機能を特定し、前記測定は、網膜の状態とは無関係である視覚に悪影響を及ぼす因子を定量化し、前記網膜の状態及び潜在的状態を記述する中心的傾向及びばらつきのメトリクスを生成するように最適化されていることと、
を含み、
前記視覚機能が、網膜治療が成功した場合又は水晶体混濁などの無関係な因子の除去が実現された場合の視力に対する予測値を含み、前記視覚機能のメトリクスは、中心的傾向及びばらつきの測定値を含み、網膜の状態が改善されていると結論付けるために超えなければならない上限を特定し、前記視覚機能のメトリクスは、網膜の状態が悪化していないと結論付けるために超えなければならない下限を含む、
方法。
【国際調査報告】