(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】寸法形状モデルの基準系における測定装置の姿勢を計算するための方法
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
G01C15/00 103Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536330
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 EP2022087582
(87)【国際公開番号】W WO2023118488
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Hilti Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100, 9494 Schaan, Liechtenstein
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】トーマス グローア
(57)【要約】
本発明は、複数の境界面、F-1、F-2、F-3、F-4を有する測定環境12内に設置され、測定ビームを有する距離測定ユニットと、少なくとも1つの角度測定ユニットとを有する測定装置11の姿勢を、測定環境の少なくとも境界面、F-1、F-2、F-3、F-4を表す寸法形状モデルの基準系において、測定装置11との通信のために接続され、姿勢を計算するためのアルゴリズムを有するマイクロコントローラによって計算するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の境界設定面(F-1、F-2、F-3、F-4)を有する測定環境(12)内に設置され、測定ビーム(26)を有する距離測定ユニット(42)と、少なくとも1つの角度測定ユニット(43、45)とを含む測定装置(11)の姿勢を、前記測定環境(12)の少なくとも前記境界設定面(F-1、F-2、F-3、F-4)をマッピングする寸法形状モデルの基準系において、前記測定装置(11)への通信接続を有し、前記姿勢を計算するためのアルゴリズムを含むマイクロコントローラ(84)によって計算するための方法であって、
前記寸法形状モデルからポリラインを作成するステップであって、前記ポリラインは、重力方向(33)に垂直な前記境界設定面(F-1、F-2、F-3、F-4)の水平測線を表し、少なくとも3つのラインセクション(LP1、LP2、LP3、LP4)を備える、ステップ(S10)と、
前記測定装置(11)のN個の異なる配向において前記測定装置(11)を用いてN回、N≧4の測定を実行するステップであって、前記距離測定ユニット(42)の前記測定ビーム(26)は、少なくとも2つの異なる境界設定面(F-1、F-2、F-3、F-4)上に前記N個の異なる配向で入射し、N個の異なる測定点(MP-1、MP-2、MP-3、MP-4、MP-5)を定義し、前記測定装置(11)の前記N個の配向のそれぞれにおいて、水平角(HPhi-1、HPhi-2、HPhi-3、HPhi-4、HPhi-5)及び水平距離(HD-1、HD-2、HD-3、HD-4、HD-5)が、それぞれの測定点と前記測定装置(11)との間で測定値として特定される、ステップ(S20)と、
前記姿勢を計算する前記アルゴリズムを実行するステップであって、前記アルゴリズムは、少なくとも4つのステップのシーケンスを備え、前記ステップは、第1のステップ、第2のステップ、第3のステップ、第4のステップ、第5のステップ、及び第6のステップから選択され、
(1)前記第1のステップにおいて、前記N個の測定点(MP-1、MP-2、MP-3、MP-4、MP-5)のうちの3つの測定点と、前記ポリラインの3つのラインセクションとが選択され、前記測定点(MP-1、MP-2、MP-3、MP-4、MP-5)とラインセクション(LP1、LP2、LP3、LP4)との間の割り当てが前記アルゴリズムの開始前に実行されなかった場合、前記選択された3つの測定点と選択された3つのラインセクションとが互いに割り当てられ(S30)、
(2)前記第2のステップにおいて、前記選択された3つの測定点の前記測定値及び前記選択された3つのラインセクションの座標を用いて、前記測定装置(11)の前記姿勢に対する可能な解の数が特定され(S40)、1つの解又は2つの解が存在する場合、前記選択された3つの測定点のうちの少なくとも2つの測定座標が、前記寸法形状モデルの前記基準系において特定され、
(3)前記第3のステップにおいて、
-前記シーケンスの前記第2のステップにおいて解が特定されなかった場合(S40においてゼロ)、前記方法は前記シーケンスの前記第6のステップにより継続され、
-前記シーケンスの前記第2のステップにおいて解が特定された場合(S40において1つ)、前記測定装置のための中間姿勢が前記測定座標及び測定値から計算され、指定された品質基準を満たす前記N個の測定点のうちのそれらの測定点が適格測定点として特定され(S50)、前記方法は前記シーケンスの前記第5のステップにより継続され、
-前記シーケンスの前記第2のステップにおいて2つの解が特定された場合(S40において2つ)、第1の試験姿勢及び第2の試験姿勢が前記測定座標及び測定値から計算され、各場合における前記第1の試験姿勢及び第2の試験姿勢について、指定された品質基準を満たす前記N個の測定点のうちのそれらの測定点が、それぞれ第1の適格測定点又は第2の適格測定点として特定され(S60)、前記方法は前記シーケンスの前記第4のステップにより継続され、
(4)前記第4のステップにおいて、前記第1の試験姿勢及び前記第2の試験姿勢は、指定された比較基準に基づいてそれらの適合性に関して比較され(S70)、
-前記第1の試験姿勢及び前記第2の試験姿勢のうちの1つがより適切であると評価された場合(S70におけるI)、この試験姿勢は前記中間姿勢として定義され(S80)、前記方法は前記シーケンスの前記第5のステップにより継続され、
-前記第1の試験姿勢も前記第2の試験姿勢もより適切であると評価されない場合(S70におけるII)、前記方法は前記シーケンスの前記第6のステップにより継続され、
(5)前記第5のステップにおいて、姿勢が前記測定装置に対して格納されているかどうかがチェックされ(S90)、
-姿勢が前記測定装置のために格納されていない場合(S90においていいえ)、前記シーケンスの前記第3のステップ(S50)又は前記第4のステップ(S80)において特定された前記中間姿勢が、前記測定装置のための前記姿勢として定義されるか、又は更新された姿勢が、前記適格測定点を用いて計算され、前記測定装置のための前記姿勢として定義され(S100)、前記方法は前記シーケンスの前記第6のステップにより継続され、
-姿勢が前記測定装置のために格納されている場合(S90においてはい)、前記シーケンスの前記第3のステップ(S50)又は前記第4のステップ(S60)において特定された前記中間姿勢が、指定された更なる比較基準に基づいて前記格納された姿勢と比較され(S110)、前記中間姿勢がより適切であると評価される場合(S110においてI)、前記中間姿勢が前記姿勢として定義されるか、又は更新された姿勢が前記適格測定点を用いて計算され、前記測定装置のための姿勢として定義され(S120)、前記方法は前記シーケンスの前記第6のステップにより継続され、前記中間姿勢がより適切ではないと評価された場合(S110においてII)、前記方法は前記シーケンスの前記第6のステップにより継続され、
(6)前記第6のステップにおいて、指定された終了基準に基づいて、更なるシーケンスが実行されるかどうかが決定され(S130)、
-更なるシーケンスが実行される場合(S130においてI)、前記方法は前記シーケンスの前記第1のステップにより継続され、
-更なるシーケンスが実行されず、姿勢が前記測定装置のために定義される場合(S130におけるII)、前記方法は終了し、
-更なるシーケンスが実行されず、姿勢が前記測定装置のために定義されない場合(S130におけるIII)、姿勢が前記測定装置のために計算されることなく、前記方法は終了する、ステップと、
を有する方法。
【請求項2】
以下の基準、前記ポリラインまでの前記測定点の最大距離、前記ポリラインのラインセクションへの前記測定点の一意の割り当て、及び前記ポリラインの前記ラインセクションへの前記測定ビームの最大入射角、のうちの少なくとも1つが、前記シーケンスの前記第3のステップにおいて前記品質基準として用いられる、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
以下の基準、前記適格測定点の数、前記ポリラインに沿った前記適格測定点の分布、前記適格測定点が広がる前記表面の表面積、及び試験姿勢の推定精度、のうちの少なくとも1つが、前記シーケンスの前記第4のステップにおいて前記比較基準として用いられる、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
以下の基準、前記適格測定点の数、前記ポリラインに沿った前記適格測定点の分布、前記適格測定点が広がる前記表面の表面積、及び姿勢の推定精度、のうちの少なくとも1つが、前記シーケンスの前記第5のステップにおいて前記更なる比較基準として用いられる、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
以下の基準、シーケンスの最小数M、適格測定点の最小数、前記測定点の数に対する前記適格測定点の数のパーセンテージ最小値、前記適格測定点が広がる前記表面の前記表面積のための絶対最小値、及び前記ポリゴンラインによって囲まれる前記ポリゴンの前記表面積に対する前記適格測定点が広がる前記表面の前記表面積のパーセンテージ最小値、のうちの少なくとも1つが、前記シーケンスの前記第6のステップにおいて前記終了基準として用いられる、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリラインの作成中に、容認できない測定領域が定義され、前記容認できない測定領域に割り当てられる前記ポリラインの前記ラインセクションは、容認できないラインセクションとして定義され、前記シーケンスの前記第1のステップにおいて前記3つのラインセクションの前記選択から除外される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
以下の測定領域、窓開口部、ドア開口部、ガラス板、前記寸法形状モデルが前記測定環境(12)から逸脱する領域、及び前記測定のためにアクセス不能又は不適切な領域、のうちの少なくとも1つが、容認できない測定領域として定義される、ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
容認できないラインセクションとは異なるラインセクションへの前記割り当てが、前記シーケンスの前記第3のステップにおいて品質基準として用いられる、ことを特徴とする請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記N回の測定は、前記測定装置(11)を用いてオペレータによって手動で実行され、前記測定点(MP-1、MP-2、MP-3、MP-4、MP-5)は、前記オペレータによって前記ポリラインの前記ラインセクションに割り当てられる、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記N回の測定は、前記測定装置(11)を用いて前記マイクロコントローラ(84)によって実行され、前記測定点(MP-1、MP-2、MP-3、MP-4、MP-5)は、前記オペレータによって前記ポリラインの前記ラインセクションに割り当てられる、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記N回の測定は、前記測定装置(11)を用いてオペレータによって手動で実行され、前記シーケンスの前記第1のステップにおいて実行される前記割り当ては、前記マイクロコントローラ(84)によってランダムに又は選択基準を用いて実行される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記N回の測定は、前記測定装置(11)を用いて前記マイクロコントローラ(84)によって実行され、前記シーケンスの前記第1のステップにおいて実行される前記割り当ては、前記マイクロコントローラ(84)によってランダムに又は選択基準を用いて実行される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
以下の基準、前記測定装置(11)の回転方向における前記ラインセクションのシーケンス、前記ラインセクションの長さ、及び前記ポリラインまでの前記測定点の距離、のうちの少なくとも1つが、前記選択基準として用いられ、前記距離は、前記測定値及び前記測定装置のための開始姿勢を用いて計算される、ことを特徴とする請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記測定装置(11)は、カメラユニット(47)を含み、カメラ画像は、前記カメラユニット(47)によって、前記測定装置(11)の前記N個の配向のそれぞれにおいて作成され、前記カメラ画像は、前記測定装置(11)の前記それぞれの配向に割り当てられる、ことを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の、寸法形状モデルの基準系における測定装置の姿勢を計算するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トータルステーションは、角度及び距離測定ユニットを有し、角度及び距離測定を実行する測定装置である。角度及び距離測定値は、トータルステーションの基準系において測定され、更に、位置の絶対特定のために外部基準系にリンクされる必要がある。
【0003】
外部基準系における測定装置の姿勢を計算するための公知の方法において、ターゲットオブジェクトは既知の制御点に位置決めされ、制御点の座標は測定装置の基準系において測定される。外部基準系における制御点の座標は既知であるため、測定装置の位置及び向き(姿勢)は、外部基準系及び測定装置の基準系における制御点の座標を用いて計算することができる。
【0004】
公知の制御点を用いる測定装置の姿勢の計算は、ターゲットオブジェクトを制御点に位置決めしなければならないという欠点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、姿勢の計算が制御点なしで可能であるような、寸法形状モデルの基準系における測定装置の姿勢の計算を簡略化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、独立請求項1に記載の特徴による方法の発明に従って達成される。効果的な改善された構成は従属請求項において規定されている。
【0007】
複数の境界設定面を有する測定環境内に設置され、測定ビームを有する距離測定ユニットと、角度測定ユニットとを有する測定装置の姿勢を、測定環境の少なくとも境界設定面を表す寸法形状モデルの基準系において、測定装置との通信接続を有し、姿勢を計算するためのアルゴリズムを有するマイクロコントローラによって計算するための方法は、本発明による以下のステップ、
寸法形状モデルからポリラインを作成するステップであって、ポリラインは、重力方向に垂直な境界設定面の水平測線を表し、少なくとも3つのラインセクションを備える、ステップと、
測定装置のN個の異なる配向において測定装置を用いてN回、N≧4の測定を実行するステップであって、距離測定ユニットの測定ビームは、少なくとも2つの異なる境界設定面上にN個の異なる配向で入射し、N個の異なる測定点を定義し、測定装置のN個の配向のそれぞれにおいて、水平角及び水平距離が、それぞれの測定点と測定装置との間で測定値として特定される、ステップと、
姿勢を計算するアルゴリズムを実行するステップであって、アルゴリズムは、少なくとも3つのステップのシーケンスを備え、ステップは、第1のステップ、第2のステップ、第3のステップ、第4のステップ、第5のステップ、及び第6のステップから選択され、
(1)第1のステップにおいて、N個の測定点のうちの3つの測定点と、ポリラインの3つのラインセクションとが選択され、測定点とラインセクションとの間の割り当てがアルゴリズムの開始前に実行されなかった場合、選択された3つの測定点と選択された3つのラインセクションとが互いに割り当てられ、
(2)第2のステップにおいて、選択された3つの測定点の測定値及び選択された3つのラインセクションの座標を用いて、測定装置の姿勢に対する可能な解の数が特定され、1つの解又は2つの解が存在する場合、選択された3つの測定点のうちの少なくとも2つの測定座標が、寸法形状モデルの基準系において特定され、
(3)第3のステップにおいて、
-シーケンスの第2のステップにおいて解が特定されなかった場合、方法はシーケンスの第6のステップにより継続され、
-シーケンスの第2のステップにおいて解が特定された場合、測定装置のための中間姿勢が測定座標及び測定値から計算され、指定された品質基準を満たすN個の測定点のうちのそれらの測定点が適格測定点として特定され、方法はシーケンスの第5のステップにより継続され、
-シーケンスの第2のステップにおいて2つの解が特定された場合、第1の試験姿勢及び第2の試験姿勢が測定座標及び測定値から計算され、各場合における第1の試験姿勢及び第2の試験姿勢について、指定された品質基準を満たすN個の測定点のうちのそれらの測定点が、それぞれ第1の適格測定点又は第2の適格測定点として特定され、方法はシーケンスの第4のステップにより継続され、
(4)第4のステップにおいて、第1の試験姿勢及び第2の試験姿勢は、指定された比較基準に基づいてそれらの適合性に関して比較され、
-第1の試験姿勢及び第2の試験姿勢のうちの1つがより適切であると評価された場合、この試験姿勢は中間姿勢として定義され、方法はシーケンスの第5のステップにより継続され、
-第1の試験姿勢も第2の試験姿勢もより適切であると評価されない場合、方法はシーケンスの第6のステップにより継続され、
(5)第5のステップにおいて、姿勢が測定装置に対して格納されているかどうかがチェックされ、
-姿勢が測定装置のために格納されていない場合、シーケンスの第3のステップ又は第4のステップにおいて特定された中間姿勢が、測定装置のための姿勢として定義されるか、又は更新された姿勢が、適格測定点を用いて計算され、測定装置のための姿勢として定義され、方法はシーケンスの第6のステップにより継続され、
-姿勢が測定装置のために格納されている場合、シーケンスの第3のステップ又は第4のステップにおいて特定された中間姿勢が、指定された更なる比較基準に基づいて格納された姿勢と比較され、
中間姿勢がより適切であると評価される場合、中間姿勢が姿勢として定義されるか、又は更新された姿勢が適格測定点を用いて計算され、測定装置のための姿勢として定義され、方法はシーケンスの第6のステップにより継続され、
中間姿勢がより適切ではないと評価された場合、方法はシーケンスの第6のステップにより継続され、
(6)第6のステップにおいて、指定された終了基準に基づいて、更なるシーケンスが実行されるかどうかが決定され、
-更なるシーケンスが実行される場合、方法はシーケンスの第1のステップにより継続され、
-更なるシーケンスが実行されず、姿勢が測定装置のために定義される場合、方法は終了し、
-更なるシーケンスが実行されず、姿勢が測定装置のために定義されない場合、姿勢が測定装置のために計算されることなく、方法は終了する、ステップと、
を含む。
【0008】
寸法形状モデルの基準系における測定装置の姿勢を計算するための本発明による方法の実行は、マイクロコントローラによって制御される。マイクロコントローラは、通信リンクを介する測定装置との通信接続を有し、測定装置の姿勢を計算するためのアルゴリズムを有する。測定装置は、複数の境界設定面を有する測定環境内に設置され、測定ビームを有する距離測定ユニットと、少なくとも1つの角度測定ユニットとを有する。
【0009】
本発明による方法の開始時に、重力方向に垂直な境界設定面の水平測線を表し、少なくとも3つのラインセクションを備えるポリラインが、寸法形状モデルから作成される。
【0010】
本発明による方法の更なるステップにおいて、少なくとも4つの異なる測定が、様々な配向において測定装置を用いて実行され、測定ビームは、測定環境の少なくとも2つの異なる境界設定面に入射し、各配向における測定点を定義する。測定点と測定装置との間の水平角及び水平距離は、各測定点に対する測定値として特定される。測定装置の姿勢を特定することができる精度又は品質は、測定に用いられる測定点の数が増加するにつれて、及び境界設定面の数が増加するにつれて、向上させることができる。
【0011】
本発明による方法の次のステップにおいて、測定装置の姿勢を計算するためのアルゴリズムが実行される。アルゴリズムは、第1、第2、第3、第4、第5、及び第6のステップから選択される、少なくとも3つのステップのシーケンスを備え、シーケンスは、1回又は複数回実行することができる。
【0012】
シーケンスの第1のステップにおいて、N個の測定点のうちの3つの測定点及びポリラインの3つのラインセクションが選択され、アルゴリズムの開始前に測定点とラインセクションとの間の割当てが実行されなかった場合、選択された3つの測定点及び選択された3つのラインセクションが互いに割り当てられる。
【0013】
シーケンスの第2のステップにおいて、測定装置の姿勢に対する可能な解の数が、選択された3つの測定点の測定値及び選択された3つのラインセクションの座標を用いて特定される。1つの解又は2つの解が存在する場合、選択された3つの測定点のうちの少なくとも2つの測定座標が、寸法形状モデルの基準系において特定される。
【0014】
シーケンスの第3のステップにおいて、シーケンスの第2のステップにおいて特定された解の数に依存して、以下の3つの場合が判別される。解なし(ゼロ)、1つの解(1)、又は2つの解(2)。
シーケンスの第2のステップにおいて解が特定されなかった場合、本発明による方法はシーケンスの第6のステップにより継続される。
シーケンスの第2のステップにおいて1つの解が特定された場合、測定装置のための中間姿勢が測定座標及び測定値から計算され、指定された品質基準を満たすN個の測定点のうちのそれらの測定点が適格測定点として特定され、本発明による方法はシーケンスの第5のステップにより継続される。
シーケンスの第2のステップにおいて2つの解が特定された場合、第1の試験姿勢(第1の解)及び第2の試験姿勢(第2の解)が測定座標及び測定値から計算され、各場合における第1の試験姿勢及び第2の試験姿勢について、指定された品質基準を満たすN個の測定点のうちのそれらの測定点が、それぞれ第1の適格測定点又は第2の適格測定点として特定され、本発明による方法はシーケンスの第4のステップにより継続される。
【0015】
シーケンスの第4のステップは、2つの解がシーケンスの第2のステップにおいて特定された場合にのみ実行される。第1の試験姿勢及び第2の試験姿勢として指定される2つの解は、互いに比較されなければならない。シーケンスの第4のステップにおいて、第1の試験姿勢及び第2の試験姿勢は、それらの適合性に関して指定された比較基準に基づいてマイクロコントローラによって比較され、ここで2つの場合が判別される。第1の試験姿勢及び第2の試験姿勢のうちの1つがより適切であると評価された場合、この試験姿勢は中間姿勢として定義され、本発明による方法はシーケンスの第5のステップにより継続される。第1の試験姿勢も第2の試験姿勢もより適切であると評価されない場合、本発明による方法はシーケンスの第6のステップにより継続される。
【0016】
シーケンスの第5のステップは、シーケンスの第3のステップ又は第4のステップにおいて特定された中間姿勢を更に処理するために用いられる。シーケンスの第5のステップにおいて、以下の2つの場合が判別される。
本発明による方法の適用範囲において、姿勢が測定装置のために格納されていない場合、中間姿勢が測定装置の姿勢として定義されるか、又は、更新された姿勢が適格測定点を用いて計算され、測定装置のための姿勢として定義される。
本発明による方法の適用範囲において、姿勢が測定装置のために格納されている場合、中間姿勢は、指定された更なる比較基準に基づいて格納された姿勢と比較される。中間姿勢がより適切であると評価された場合、中間姿勢が姿勢として定義されるか、又は、更新された姿勢が適格測定点を用いて計算され、測定装置のための姿勢として定義され、本発明による方法はシーケンスの第6のステップにより継続される。中間姿勢がより適切ではないと評価された場合、本発明による方法はシーケンスの第6のステップにより継続される。
【0017】
シーケンスの第6のステップにおいて、指定された終了基準に基づいて、第1~第6のステップの更なるシーケンスが実行されるかどうかが決定され、ここで3つの場合が判別される。更なるシーケンスが実行される場合、本発明による方法はシーケンスの第1のステップにより継続される。更なるシーケンスが実行されず、姿勢が測定装置のために定義される場合、本発明による方法は終了する。更なるシーケンスが実行されず、姿勢が測定装置のために定義されない場合、姿勢が測定装置のために特定されることなく、本発明による方法は終了する。
【0018】
好ましくは、以下の基準のうちの少なくとも1つが、シーケンスの第3のステップにおいて品質基準として用いられる。ポリラインまでの測定点の最大距離、ポリラインのラインセクションへの測定点の一意の割り当て、及びポリラインのラインセクションへの測定ビームの最大入射角。ポリラインまでの距離が最大距離未満である場合、及び/又は測定点をポリラインのラインセクションに一意に割り当てることができる場合、及び/又は割り当てられたラインセクションへの測定ビームの入射角が最大入射角未満である場合、測定点は、第3のステップにおいて適格測定点として指定され、入射角は、割り当てられた境界設定面の法線ベクトルに対して測定される。
【0019】
好ましくは、以下の基準のうちの少なくとも1つが、シーケンスの第4のステップにおいて比較基準として用いられる。適格測定点の数、ポリラインに沿った適格測定点の分布、適格測定点が広がる表面の表面積、及び試験姿勢の推定精度。試験姿勢は、その適格測定点の数がより多い場合、及び/又はその適格測定点がポリラインのより多くのラインセクションにわたって分布している場合、及び/又はその適格測定点が広がる表面の表面積がより大きい場合、及び/又はその推定精度がより高い場合、第4のステップにおいてより適切であると評価される。
【0020】
好ましくは、以下の基準のうちの少なくとも1つが、シーケンスの第5のステップにおいて更なる比較基準として用いられる。適格測定点の数、ポリラインに沿った適格測定点の分布、適格測定点が広がる表面の表面積、及び姿勢の推定精度。中間姿勢は、その適格測定点の数がより多い場合、及び/又はその適格測定点がポリラインのより多くのラインセクションにわたって分布している場合、及び/又はその適格測定点が広がる表面の表面積がより大きい場合、及び/又はその推定精度がより高い場合、第5のステップにおいてより適切であると評価される。
【0021】
好ましくは、以下の基準のうちの少なくとも1つが、シーケンスの第6のステップにおいて終了基準として用いられる。シーケンスの最小数M、適格測定点の最小数、測定点の数に対する適格測定点の数のパーセンテージ最小値、適格測定点が広がる表面の表面積のための絶対最小値、及びポリゴンラインによって囲まれるポリゴンの表面積に対する適格測定点が広がる表面の表面積のパーセンテージ最小値。
【0022】
シーケンスは、シーケンスの最小数Mに達する場合、及び/又は適格測定点の数が最小数よりも大きい場合、及び/又は適格測定点の数と測定点の数との間の比がパーセンテージ最小値よりも大きい場合、及び/又は適格測定点が広がる表面の表面積が絶対最小値よりも大きい場合、及び/又は適格測定点が広がる表面の表面積とポリゴンの表面積との間の比がパーセンテージ最小値よりも大きい場合、終了する。
【0023】
容認できない測定領域は、好ましくは、ポリラインの作成中に定義され、容認できない測定領域に割り当てられるポリラインのラインセクションは、容認できないラインセクションとして定義され、シーケンスの第1のステップにおいて3つのラインセクションの選択から除外される。
【0024】
以下の測定領域のうちの少なくとも1つが、特に好ましくは、容認できない測定領域として定義される。窓開口部、ドア開口部、ガラス板、寸法形状モデルが測定環境から逸脱する領域、及び測定のためにアクセス不能又は不適切な領域。
【0025】
容認できないラインセクションとは異なるラインセクションへの割り当ては、特に好ましくは、シーケンスの第3のステップにおいて品質基準として用いられる。
【0026】
第1の好ましい変形例において、N回の測定は、測定装置を用いてオペレータによって手動で実行され、測定点は、オペレータによってポリラインのラインセクションに割り当てられる。第1の変形例は、手動変形例として指定され、測定及び割り当てがオペレータによって実行される。
【0027】
第2の好ましい変形例において、N回の測定は、測定装置を用いてマイクロコントローラによって実行され、測定点は、オペレータによってポリラインのラインセクションに割り当てられる。第2の変形例は、半手動変形例として指定され、測定が自動的に実行され、割り当てがオペレータによって実行される。
【0028】
第3の好ましい変形例において、N回の測定は、測定装置を用いてオペレータによって手動で実行され、シーケンスの第1のステップにおいて実行される割り当ては、マイクロコントローラによってランダムに又は選択基準を用いて実行される。第3の変形例は、半自動変形例として指定され、測定がオペレータによって実行され、割り当てがマイクロコントローラによって実行される。
【0029】
第4の好ましい変形例において、N回の測定は、測定装置を用いてマイクロコントローラによって実行され、シーケンスの第1のステップにおいて実行される割り当ては、マイクロコントローラによってランダムに又は選択基準を用いて実行される。第4の変形例は、完全自動変形例として指定され、測定及び割り当てがマイクロコントローラによって実行される。
【0030】
以下の基準のうちの少なくとも1つが、特に好ましくは、選択基準として用いられる。測定装置の回転方向におけるラインセクションのシーケンス、ラインセクションの長さ、及びポリラインまでの測定点の距離。距離は、測定値及び測定装置のための開始姿勢を用いて計算される。
【0031】
測定装置は、特に好ましくは、カメラユニットを有し、カメラ画像は、カメラユニットによって、測定装置のN個の配向のそれぞれにおいて作成され、カメラ画像は、測定装置のそれぞれの配向に割り当てられる。
【0032】
以下に、図面を参照しながら本発明の実施例を説明する。図面では実施例を原寸通りに示すことは必ずしも意図しておらず、むしろ、図面は、略図的に、及び/又は説明のために有用であれば僅かに変形して表している。ここでは、本発明の一般的な概念から逸脱することなく、実施例の形態及び詳細に関連する様々な修正及び変更を行うことができることを考慮に入れるべきである。本発明の一般的な概念は、以下に示し、説明する好ましい実施例の正確な形態又は詳細に限定されたり、特許請求の範囲の技術的特徴と比較して限定される要旨に限定されたりしない。所与の寸法範囲に対して、言及された制限内の値もまた制限値として開示されるものとし、所望に応じて使用及び請求され得る。簡単にするために、以下では、同じ若しくは類似の部品、又は同一若しくは類似の機能を有する部品に対して同一の参照符号を用いる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】測定環境内に設置され、通信リンクを介して操作コントローラに接続される測定装置を示す図である。
【
図2B】
図1の測定装置の概略構造を示すブロック図である。
【
図3A】
図1の操作コントローラの前側を示す平面図である。
【
図3B】
図1の操作コントローラの概略構造を示すブロック図である。
【
図4】測定環境の様々な境界設定面に対して測定装置を用いて複数の測定を実行することを示す図である。
【
図5】ポリラインが測定環境の寸法形状モデルからどのように作成されるかを示す、操作コントローラのスクリーンショットを示す図である。
【
図6A】測定装置の姿勢を計算するための本発明による方法を示すフロー図である。
【
図6B】測定装置の姿勢を計算するための本発明による方法を示すフロー図である。
【
図7】容認できない測定領域を有するポリラインが寸法形状モデルからどのように作成されるかを示す、操作コントローラのスクリーンショットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、測定環境12におけるその位置及び向き(姿勢)が本発明による方法を用いて特定される測定装置11と、操作コントローラ13とを示している。「測定装置」は、測定タスクを実行することを対象とした全ての装置の総称である。実施例において、トータルステーションとして設計される測定装置11は、通信リンク14を介して操作コントローラ13に接続することができる。
【0035】
測定環境12は、寸法形状モデルにマッピングされる。CADサポートにより作成される測定環境12の構築モデルは、寸法形状モデルとして用いることができる。代替として、測定環境12は、レーザスキャナによってスキャンされ、測定環境12の寸法形状モデルをスキャンデータから作成することができる。寸法形状モデルは、測定環境12を完全に又は部分的にのみマッピングすることができる。距離測定のための反射面又は散乱面として用いられる測定環境12の表面は、本願にとって決定的なものである。
【0036】
測定装置11の姿勢は、寸法形状モデルの基準系において本発明による方法を用いて計算される。本発明による方法は、測定装置11を用いて特定される少なくとも4つの測定点の測定値と、ポリラインとして指定される境界設定面の水平測線とを用いる。
【0037】
【0038】
測定装置11はトータルステーションとして設計され、測定ヘッド21と、メインハウジング22と、充電式バッテリ23とを含む。測定ヘッド21は、射出窓25を有するハウジング24と、測定ビーム26を出射する、ハウジング24内に配置される距離測定ユニットとを備える。測定ビーム26は、射出窓25を通ってハウジング24から出射し、測定環境の境界設定面上に測定点を生成することができる。
【0039】
メインハウジング22は、U字形に形成され、ベースハウジング27と、第1の側部28と、第2の側部29とを備える。測定ヘッド21は、第1の側部28と第2の側部29との間に配置され、枢動軸30を中心として枢動自在にされている。メインハウジング22は、回転軸32を中心として回転プラットフォーム31に対して回動自在にされている。
【0040】
アジマスモータユニット及び第1の角度測定ユニットは、ベースハウジング27に配置され、アジマスモータユニットは、メインハウジング22が回転軸32を中心として移動することを可能にし、第1の角度測定ユニットは、測定ビーム26の方向が水平面において特定されることを可能にする。昇降モータユニット及び第2の角度測定ユニットは、第1の側部28において配置され、昇降モータユニットは、測定ヘッド21が枢動軸30を中心として移動することを可能にし、第2の角度測定ユニットは、測定ビーム26の方向が垂直面において特定されることを可能にする。測定装置11を完全に自動化するために、回転軸32が重力方向33と平行に延在するように測定装置11を水平調整することを可能にする水平調整ユニットをベースハウジング27に設けることができる。
【0041】
図2Bは、測定装置11の概略構成をブロック図として示している。測定装置11は、電子機器ユニット41、距離測定ユニット42、方位角を測定するための第1の角度測定ユニット43、アジマスモータユニット44、仰角を測定するための第2の角度測定ユニット45、昇降モータユニット46、及びカメラユニット47を含む。
【0042】
電子機器ユニット41は、マイクロコントローラ48と、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び読み取り専用メモリ(ROM)を含むことができるメモリ回路49と、通信回路50と、I/Oインターフェース51とを備える。マイクロコントローラ48は、メモリ回路49及び通信回路50と通信することができ、測定装置11の制御及び調整のために設計されている。
【0043】
通信回路50は、送信機52及び受信機53を含み、通常は無線信号を用いる操作コントローラ13とのデータ情報の項目、例えば、距離測定値、方位角値、及び仰角値の通信及び交換のために設計されている。好ましい一実施例において、通信リンク14は無線であるが、通信回路50と操作コントローラ13との間にケーブルを接続することもできる。I/Oインターフェース51は、マイクロコントローラ48と各種ドライバ及びセンサとの間のインターフェースである。
【0044】
距離測定ユニット42は、測定ビーム26を生成するレーザエミッタ56と、レーザエミッタ56に電流を供給するレーザドライバ57と、光センサ58と、受信機インターフェース59とを備える。光センサ58は、境界設定面において反射される測定ビーム26の少なくとも一部を受光し、光センサ58によって出力される電流信号は、受信機インターフェース59に案内される。増幅及び復調後、信号は、受信機インターフェース59からI/Oインターフェース51を介してマイクロコントローラ48に送信される。
【0045】
第1の角度測定ユニット43は、水平面におけるレーザエミッタ56の方向(方位角)を特定し、それをI/Oインターフェース51を介してマイクロコントローラ48に送信される電気出力信号に変換する第1の角度エンコーダ61を備える。アジマスモータユニット44は、測定装置11のメインハウジング22を回転軸32を中心として移動させるアジマスモータ62と、マイクロコントローラ48のコマンドをアジマスモータ62の必要なアンペア数に変換するアジマスモータドライバ63とを備える。
【0046】
第2の角度測定ユニット45は、垂直面におけるレーザエミッタ56の方向(仰角)を特定し、それをI/Oインターフェース51を介してマイクロコントローラ48に送信される電気出力信号に変換する第2の角度エンコーダ64を備える。昇降モータユニット46は、測定ヘッド21を枢動軸30を中心として移動させる昇降モータ65と、マイクロコントローラ48のコマンドを昇降モータ65の必要なアンペア数に変換する昇降モータドライバ66とを備える。
【0047】
カメラユニット47は、イメージセンサ67と、画像情報の項目の計算を担うグラフィックスプロセッサ(GPU)68とを備える。
【0048】
図3A及び
図3Bは、
図1の操作コントローラ13の前側を平面図(
図3A)で示し、操作コントローラ13の概略構造をブロック図(
図3B)で示している。
【0049】
操作コントローラ13は、タブレットコンピュータとして具現化され、ハウジング71、タッチスクリーン72、バッテリ73、例えば音量調節ボタン、オン/オフボタン、及びディスプレイ制御ボタンの複数のボタン74、例えば動作状態、データストレージ状態、及びバッテリ状態のための複数のディスプレイ75、例えばドッキング、データストレージ、及びUSBのための複数のポート76、並びにカードスロット77を備える。
【0050】
図3Bは、操作コントローラ13の概略構造をブロック図として示している。操作コントローラ13は、電子機器ユニット81と、ディスプレイユニット82と、ユーザ操作入力ユニット83とを備える。
【0051】
電子機器ユニット81は、マイクロコントローラ84と、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、及びバルクメモリ(BULK)を備えることができるメモリ回路85と、通信回路86と、I/Oインターフェース87とを備える。マイクロコントローラ84は、メモリ回路85及び通信回路86と通信することができ、操作コントローラ13の制御及び調整のために設計されている。バルクメモリは、カードスロット77に挿入可能なSDメモリカード、又は、ポート76の1つ、例えばUSBポートを介して操作コントローラ13に接続可能な外部ストレージ装置であってもよい。
【0052】
通信回路86は、送信機88及び受信機89を含み、通常は無線信号を用いる測定装置11との通信のために設計されている。測定装置11は、距離測定値、方位角値、及び仰角値を、通信リンク14を介して操作コントローラ13に送信する。
【0053】
ディスプレイユニット82は、ディスプレイ91と、I/Oインターフェース87に接続され、ディスプレイ91に正しいインターフェース及びデータ信号を提供するディスプレイドライバ回路92とを備える。ユーザ制御入力ユニット83は、キーボード93と、I/Oインターフェース87に接続され、正しいインターフェース及びデータ信号をキーボード93に供給するキーボードドライバ94とを備える。
【0054】
図4は、測定環境12の様々な境界設定面に対して測定装置11を用いて複数の測定を実行することを略図で示している。測定環境12は、4つの境界設定面F-1、F-2、F-3、F-4を形成する4つの壁を有する。
【0055】
測定装置11は第1の配向に配向され、測定ビーム26は第1の境界設定面F-1上に第1の測定点MP-1を生成する。距離値及び角度値は、第1の測定点MP-1について、距離及び角度測定によって特定される。本発明による方法は、以下では水平距離及び水平角と称する、重力方向33に垂直な水平面における距離及び角度値を必要とする。
【0056】
水平角及び水平距離を得るために、測定装置11は、測定を開始する前に、水平調整ユニット47によって水平調整することができ、その結果、測定距離及び角度値は水平角及び水平距離に対応し、又は測定装置11は三次元値を測定し、それから水平角及び水平距離を導出する。第1の水平角HPhi-1及び第1の水平距離HD-1が、第1の測定点MP-1に対する第1の測定値として特定される。
【0057】
測定装置11は、第1の配向から第2の配向にオフセットされ、測定ビーム26は、第2の測定点MP-2に配向され、第2の水平角HPhi-2及び第2の水平距離HD-2が、第2の測定値として特定される。測定装置11は、第2の配向から第3の配向にオフセットされ、測定ビーム26は、第3の測定点MP-3に配向され、第3の水平角HPhi-3及び第3の水平距離HD-3が、第3の測定値として特定される。測定装置11は、第3の配向から第4の配向にオフセットされ、測定ビーム26は、第4の測定点MP-4に配向され、第4の水平角HPhi-4及び第4の水平距離HD-4が、第4の測定値として特定される。
【0058】
本発明による方法について、測定点は、少なくとも2つの異なる境界設定面上に配置されなければならない。実施例において、第1及び第2の測定点MP-1、MP-2は第1の境界設定面F-1上にあり、第3の測定点MP-3は第2の境界設定面F-2上にあり、第4の測定点MP-4は第3の境界設定面F-3上にあり、その結果、4つの測定点MP-1、MP-2、MP-3、MP-4は、3つの異なる境界設定面上に配置される。
【0059】
測定装置11の姿勢を計算することができる精度を高めるために、測定環境12の可能な限り多くの境界設定面上に測定点を配向し、それらを空間角度にわたって可能な限り均一に分布させることが有利である。この目的のために、測定装置11は第5の配向にオフセットさせることができ、測定ビーム26は、第4の境界設定面F-4上にある第5の測定点MP-5に配向させることができ、第5の水平角HPhi-5及び第5の水平距離HD-5が第5の測定値として特定される。
【0060】
図5は、ポリラインが寸法形状モデルからどのように作成されるかを示す、操作コントローラ13のスクリーンショットを示している。測定環境12をマッピングする寸法形状モデルは、マイクロコントローラ84によってロードされ、2Dビューがディスプレイ91上に表示される。
【0061】
オペレータは、コーナー点を表す第1の点LP1、第2の点LP2、第3の点LP3、及び第4の点LP4を特定する。マイクロコントローラ84は、第1の点LP1と第2の点LP2との間の線を第1のラインセクションL1として定義し、第2の点LP2と第3の点LP3との間の線を第2のラインセクションL2として定義し、第3の点LP3と第4の点LP4との間の線を第3のラインセクションL3として定義し、第4の点LP4と第1の点LP1との間の線を第4のラインセクションL4として定義する。ポリラインは、第1のラインセクションL1、第2のラインセクションL2、第3のラインセクションL3、及び第4のラインセクションL4から形成される。
【0062】
第1のラインセクションL1は、第1の境界設定面F-1の水平測線を表し、第2のラインセクションL2は、第2の境界設定面F-2の水平測線を表し、第3のラインセクションL3は、第3の境界設定面F-3の水平測線を表し、第4のラインセクションL4は、第4の境界設定面F-4の水平測線を表す。
【0063】
図6A、Bは、測定装置の姿勢を計算するための本発明による方法をフロー図の形態で示している。寸法形状モデルの基準系における測定装置11の姿勢を計算するための本発明による方法の実行は、操作コントローラ13のマイクロコントローラ84によって制御される。
【0064】
マイクロコントローラ84は、通信回路86及び通信リンク14を介する測定装置11との通信接続を有し、測定装置11の姿勢を計算するためのアルゴリズムを含む。アルゴリズムを用いて測定装置11の姿勢を計算できるようにするには、測定環境12の寸法形状モデルからポリラインを作成しなければならず(
図5参照)、測定装置11を用いて少なくとも4つの異なる測定を実行しなければならない(
図4参照)。
【0065】
本発明による方法は、固定された制御点を用いる必要がなく、むしろ測定装置11を測定環境12の全ての境界設定面に配向することができるという利点を有する。姿勢の精度を向上させるために、測定環境12の可能な限り多くの境界設定面上に測定点を配向し、それらを立体角にわたって可能な限り均一に分布させることが有利である。
【0066】
オペレータは、重力方向33に垂直な境界設定面の水平測線を表し、少なくとも3つのラインセクションを備える寸法形状モデルからポリラインを作成する(ステップS10)。本発明による方法の次のステップにおいて、測定装置11を用いてN回、N≧4の異なる測定が実行される(ステップS20)。
【0067】
図6A及び
図6Bに示す本発明による方法の変形例において、最初にポリラインが作成され、次いで、少なくとも4つの測定が測定装置11を用いて実行される。代替として、測定を最初に実行し、次いでポリラインを作成することができるか、又は自動測定の場合には、2つのステップを同時に実行することもできる。
【0068】
測定は、ユーザによって手動で実行することができるか、又はマイクロコントローラ84が測定を実行させる。N回の測定のそれぞれは、測定装置11の異なる配向において実行される。距離測定ユニット42の測定ビーム26は、測定環境12の境界設定面のうちの1つの上に測定点を規定する。測定装置11は、各測定点に対して、測定点と測定装置11との間の水平角及び水平距離を測定値として特定する。N個の異なる測定点は、測定が測定環境12の少なくとも2つの異なる境界設定面上で実行されるように配置される必要がある。
図4は、4つの境界設定面F-1、F-2、F-3、及びF-4上に配置される5つの測定点MP-1、MP-2、MP-3、MP-4、及びMP-5を示している。
【0069】
本発明による方法は、姿勢を計算するためのアルゴリズムを実行することによって継続され、アルゴリズムは、少なくとも3つのステップのシーケンスを備え、ステップは、第1のステップ、第2のステップ、第3のステップ、第4のステップ、第5のステップ、及び第6のステップから選択される。
【0070】
シーケンスの第1のステップにおいて、N個の測定点のうちの3つの測定点及びポリラインの3つのラインセクションが選択され、アルゴリズムの開始前に測定点とラインセクションとの間の割当てが実行されなかった場合、選択された3つの測定点及び選択された3つのラインセクションが互いに割り当てられる(ステップS30)。
【0071】
選択された3つの測定点の測定値及び選択された3つのラインセクションの座標を用いるシーケンスの第2のステップにおいて、測定装置11の姿勢に対する可能な解の数が特定される(ステップS40)。1つの解又は2つの解が存在する場合、選択された3つの測定点のうちの少なくとも2つの測定座標が、寸法形状モデルの基準系において特定される。測定座標は、中間姿勢を計算するための方法の更なる過程において必要とされる。
【0072】
シーケンスの第3のステップは、以下の3つの場合を判別する。解なし、1つの解、及び2つの解。シーケンスの第2のステップにおいて解が特定されなかった場合(S40においてゼロ)、本発明による方法はシーケンスの第6のステップにより継続される。シーケンスの第2のステップにおいて1つの解が特定された場合(S40において1つ)、測定装置のための中間姿勢が測定座標及び測定値から計算され、指定された品質基準を満たすN個の測定点のうちのそれらの測定点が適格測定点として特定され(ステップS50)、本発明による方法はシーケンスの第5のステップにより継続される。シーケンスの第2のステップにおいて2つの解が特定された場合(S40において2つ)、第1の試験姿勢及び第2の試験姿勢が測定座標及び測定値から計算され、各場合における第1の試験姿勢及び第2の試験姿勢について、指定された品質基準を満たすN個の測定点のうちのそれらの測定点が、それぞれ第1の適格測定点又は第2の適格測定点として特定され(ステップS60)、本発明による方法は、シーケンスの第4のステップにより継続される。
【0073】
ステップS50において特定される中間姿勢は、本発明による方法の更なる過程において評価される測定装置11の姿勢(位置及び配向)を表す。ステップS60において特定された第1及び第2の試験姿勢は、本発明による方法の更なる過程において互いに比較される測定装置11の姿勢(位置及び配向)を表す。用語「中間姿勢」、「第1の試験姿勢」、及び「第2の試験姿勢」の使用により、数学的解の間の言語区別を可能にする。
【0074】
ステップS50又はステップS60において適格測定点を特定することができることを用いる品質基準として、以下の基準、ポリラインまでの測定点の最大距離、ポリラインのラインセクションへの測定点の一意の割り当て、及びポリラインのラインセクションに対する測定ビームの最大入射角のうちの少なくとも1つが用いられる。ポリラインが少なくとも1つの容認できないラインセクションを含む場合、容認できないラインセクションとは異なるラインセクションへの割り当てを用いることもできる。
【0075】
マイクロコントローラ84は、N個の測定点のそれぞれに対して、指定された品質基準を適用する。ポリラインまでの距離が最大距離未満である場合、及び/又は測定点をポリラインのラインセクションに一意に割り当てることができる場合、及び/又は割り当てられたラインセクションへの測定ビームの入射角が最大入射角未満である場合、測定点は適格測定点として指定される。入射角は、境界設定面の法線ベクトルに対して測定される。
【0076】
シーケンスの第4のステップは、シーケンスの第2のステップにおいて2つの解が特定された場合にのみ実行され、第1及び第2の試験姿勢として指定されるこれら2つの解を互いに比較するために用いられる。シーケンスの第4のステップにおいて、第1の試験姿勢及び第2の試験姿勢は、それらの適合性に関して指定された比較基準に基づいてマイクロコントローラ84によって比較され(ステップS70)、ここで2つの場合が判別される。第1の試験姿勢及び第2の試験姿勢のうちの1つがより適切であると評価された場合(S70のI)、この試験姿勢は中間姿勢として定義され(ステップS80)、本発明による方法はシーケンスの第5のステップにより継続される。第1の試験姿勢も第2の試験姿勢もより適切であると評価されない場合(S70のII)、本発明による方法はシーケンスの第6のステップにより継続される。
【0077】
ステップS70において第1の試験姿勢と第2の試験姿勢とを比較することができることを用いる比較基準として、以下の基準、適格測定点の数、ポリラインに沿った適格測定点の分布、適格測定点が広がる表面の表面積、及び姿勢の推定精度のうちの少なくとも1つが用いられる。
【0078】
マイクロコントローラ84は、比較基準に基づいて、第1の試験姿勢(S50における第1の解)と第2の試験姿勢(S50における第2の解)とを互いに比較する。試験姿勢は、その適格測定点の数がより多い場合、及び/又はその適格測定点がポリラインのより多くのラインセクションにわたって分布している場合、及び/又はその適格測定点が広がる領域の表面積がより大きい場合、及び/又はその推定精度がより高い場合、より適切であると評価される。
【0079】
シーケンスの第5のステップにおいて、姿勢が測定装置のために格納されているかどうかがチェックされ(ステップS90)、ここで2つの場合が判別される。姿勢が測定装置のために格納されていない場合(S90のいいえ)、シーケンスの第3のステップ(S50)又は第4のステップ(S80)において特定された中間姿勢が、測定装置のための姿勢として定義されるか、又は更新された姿勢が、適格測定点を用いて計算され、測定装置のための姿勢として定義される(ステップS100)。適格測定点を用いる更新された姿勢の計算は、全ての適格測定点が考慮されるという利点を有し、それによって姿勢の精度を向上させることができる。
【0080】
姿勢が測定装置のために格納されている場合(S90のはい)、シーケンスの第3のステップ(S50)又は第4のステップ(S80)において特定された中間姿勢は、マイクロコントローラ84によって、特定の更なる比較基準に基づいて、格納された姿勢と比較され(ステップS110)、ここで2つの場合が判別される。中間姿勢がより適切であると評価された場合(S110のI)、中間姿勢が姿勢として定義されるか、又は、更新された姿勢が適格測定点を用いて計算され、測定装置11のための姿勢として定義され(ステップS120)、本発明による方法はシーケンスの第6のステップにより継続される。中間姿勢がより適切ではないと評価された場合(S110のII)、本発明による方法はシーケンスの第6のステップにより継続される。ステップS120において適格測定点を用いる更新された姿勢の計算は、全ての適格測定点が考慮されるという利点を有し、それによって姿勢の精度を向上させることができる。
【0081】
ステップS90において中間姿勢と格納された姿勢とを比較することができることを用いる更なる比較基準として、以下の基準、適格測定点の数、ポリラインに沿った適格測定点の分布、適格測定点が広がる表面の表面積、及び姿勢の推定精度のうちの少なくとも1つが用いられる。
【0082】
マイクロコントローラ84は、更なる比較基準に基づいて、中間姿勢と格納された姿勢とを互いに比較する。中間姿勢は、その適格測定点の数がより多い場合、及び/又はその適格測定点がポリラインのより多くのラインセクションにわたって分布している場合、及び/又はその適格測定点が広がる表面の表面積がより大きい場合、及び/又はその精度がより高い場合、より適切であると評価される。
【0083】
シーケンスの第6のステップにおいて、指定された終了基準に基づいて、更なるシーケンスが実行されるかどうかが決定され(ステップS130)、ここで3つの場合が判別される。更なるシーケンスが実行される場合(S130のI)、本発明による方法はシーケンスの第1のステップ(S30)により継続される。更なるシーケンスが実行されず、姿勢が測定装置のために定義される場合(S130のII)、姿勢はマイクロコントローラ84によって表示され(ステップS140)、本発明による方法は終了する。更なるシーケンスが実行されず、姿勢が測定装置のために定義されない場合(S130のIII)、姿勢が測定装置のために特定されなかったという情報がマイクロコントローラ84によって表示され(ステップS150)、本発明による方法は終了する。
【0084】
以下の基準のうちの少なくとも1つが、終了基準として用いられる。シーケンスの最小数M、適格測定点の最小数、測定点の数に対する適格測定点の数のパーセンテージ最小値、適格測定点が広がる表面の表面積のための絶対最小値、及びポリゴンラインによって囲まれるポリゴンの表面積に対する適格測定点が広がる表面の表面積のパーセンテージ最小値。
【0085】
マイクロコントローラ84は、シーケンスの最小数Mに達する場合、及び/又は適格測定点の数が最小数よりも大きい場合、及び/又は適格測定点の数と測定点の数との間の比がパーセンテージ最小値よりも大きい場合、及び/又は適格測定点が広がる表面の表面積が絶対最小値よりも大きい場合、及び/又は適格測定点が広がる表面の表面積とポリゴンの表面積との間の比がパーセンテージ最小値よりも大きい場合、終了基準を適用し、シーケンスの実行を終了する。
【0086】
図7は代替のポリラインを示す、操作コントローラ13の更なるスクリーンショットを示している。
図7のポリラインは、
図5のポリラインと同じ測定環境の寸法形状モデルから導出され、容認できない測定領域が定義されるという点で
図5のポリラインとは異なる。
【0087】
容認できない測定領域とは、寸法形状モデルが実際の測定環境から逸脱している領域、及び/又はその領域が測定装置11を用いる測定に対してアクセスできないか、若しくは不適切である領域を指す。容認できない測定領域の例は、ドア開口部、窓開口部、ガラス板、アクセス不能領域である可能性がある。
【0088】
オペレータは、第1の点LP1、第2の点LP2、第3の点LP3、及び第4の点LP4を特定し、加えてオペレータは、第3の点LP3と第4の点LP4との間の線上にある第5の点LP5を特定する。マイクロコントローラ84は、第1の点LP1と第2の点LP2との間の線を第1のラインセクションL1として定義し、第2の点LP2と第3の点LP3との間の線を第2のラインセクションL2として定義し、第3の点LP3と第5の点LP5との間の線を第4のラインセクションL4として定義し、第4の点LP4と第5の点LP5との間の線は容認できない測定領域として定義される。ポリラインは、第1のラインセクションL1、第2のラインセクションL2、第3のラインセクションL3、及び第4のラインセクションL4から形成される。
【国際調査報告】