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▶ 9351-0618 ケベック インコーポレイティドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】熱伝導板
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/02 20060101AFI20241219BHJP
   F28F 21/08 20060101ALI20241219BHJP
   F28D 15/04 20060101ALI20241219BHJP
   H01L 23/427 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
F28D15/02 101H
F28F21/08 A
F28F21/08 E
F28D15/04 C
F28D15/04 G
H01L23/46 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536400
(86)(22)【出願日】2022-12-15
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 CA2022051825
(87)【国際公開番号】W WO2023108279
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】63/290,752
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524228971
【氏名又は名称】9351-0618 ケベック インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】マフムードレザ サリム シラジー
(72)【発明者】
【氏名】リュック フレシェット
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136CC12
(57)【要約】
蒸気チャンバを含む熱伝導板が、ケーシングの離隔配置された壁の間に画定された空洞の内部に蒸気コア及びウィッキング層を配設することと、空洞の内部に作動流体を注入することと、空洞に真空を適用することと、によって製造される。空洞に真空を適用した後に、離隔配置された壁の周辺は、空洞内に作動流体と蒸気コアとウィッキング層とを封止するために、互いに冷間溶接される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気チャンバを有する熱伝導板を製造する方法であって、
蒸気コア及びウィッキング層を取得することと、
ケーシングの離隔配置された壁の間に画定された空洞の内部に前記蒸気コア及び前記ウィッキング層を配設することと、
前記空洞の内部に作動流体を注入することと、
前記空洞に真空を適用することと、
前記空洞に前記真空を前記適用することの後に、前記空洞内に前記作動流体と前記蒸気コアと前記ウィッキング層とを封止するために、前記離隔配置された壁の周辺を互いに冷間溶接することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記空洞に前記真空を前記適用することが、真空チャンバ内に前記蒸気コア、前記ウィッキング層、及び前記ケーシングを配設することと、前記真空チャンバに真空を適用することと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記空洞に前記真空を前記適用することが、前記空洞の内部に前記作動流体を前記注入することの前に、真空下で前記真空チャンバの内部に前記蒸気コア、前記ウィッキング層、及び前記ケーシングを配置することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第2のウィッキング層を取得することと、
前記ウィッキング層と前記第2のウィッキング層との間に前記蒸気コアを閉囲することと、を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記空洞の内部に前記蒸気コア及び前記ウィッキング層を前記配設することが、2つの異なる材料のクラッディングである前記離隔配置された壁によって画定された前記空洞の内部に前記蒸気コア及び前記ウィッキング層を配設することを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記離隔配置された壁によって画定された前記空洞の内部に前記蒸気コア及び前記ウィッキング層を前記配設することが、アルミニウム銅クラッディングケーシング又はステンレス鋼銅クラッディングケーシングである前記離隔配置された壁によって画定された前記空洞の内部に前記蒸気コア及び前記ウィッキング層を配設することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記作動流体を前記注入することが、前記ケーシングの第1のケーシング部分によって画定された窪み部分の上に水を注入することを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、前記第1のケーシング部分の上に前記蒸気コア及び前記ウィッキング層を配設することを含み、かつ、前記作動流体を前記注入することが、前記ウィッキング層に前記作動流体を注入することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記蒸気コア及び前記ウィッキング層を前記取得することが、金属フォーム、焼結金属粉末、及び/又は1つ以上の金属メッシュの層である前記ウィッキング層を取得することを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記離隔配置された壁のうちの一方に前記ウィッキング層を接合することを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
第1のサブアセンブリを取得するために、前記離隔配置された壁のうちの一方に前記ウィッキング層を固定することと、
第2のサブアセンブリを取得するために、前記離隔配置された壁のうちの他方に前記第2のウィッキング層を固定することと、
前記第1のサブアセンブリと前記第2のサブアセンブリとの間に前記蒸気コアを閉囲することと、を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記冷間溶接することの前に、前記蒸気コア、前記ウィッキング層、及び前記ケーシングを、エルボを画定する形状に曲げることを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記冷間溶接することの後に、前記蒸気コア、前記ウィッキング層、及び前記ケーシングを、エルボを画定する形状に曲げることを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記蒸気コアを前記取得することが、疎水性多孔質層、ナイロンメッシュ、ポリマーメッシュ、及び/又はピラーである前記蒸気コアを取得することを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記蒸気コアが、複数の蒸気コアストリップを含み、かつ、前記ウィッキング層が、ウィッキング層ストリップを含み、前記方法は、前記蒸気コアストリップ及び前記ウィッキング層ストリップを、前記空洞の内部で互いの間に間隔を置いて配置されるように配設することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
蒸気チャンバを有する熱伝導板であって、
その間に空洞を画定する第1のケーシング及び第2のケーシングと、
コアアセンブリであって、
前記第1のケーシングの内側に隣接するウィッキング層と、
蒸気コアと、を有し、前記ウィッキング層及び前記蒸気コアが前記空洞内に受容されている、コアアセンブリと、
前記空洞内の作動流体と、を備え、
前記第1のケーシングの第1の周辺フランジが、前記第1のケーシング及び前記第2のケーシングの完全な連続した周囲に沿って前記第2のケーシングの第2の周辺フランジに封止接合されており、前記第1のケーシングが、前記第1の周辺フランジ及び前記第2の周辺フランジを介して前記第2のケーシングに連接されている、熱伝導板。
【請求項17】
前記第1のケーシング及び前記第2のケーシングが、2つの異なる材料のクラッディングを含む、請求項16に記載の熱伝導板。
【請求項18】
前記2つの異なる材料が、アルミニウム及び銅を含み、前記第1のケーシングの前記内側及び前記第2のケーシングの内側が、前記銅によって画定されている、請求項17に記載の熱伝導板。
【請求項19】
前記2つの異なる材料のうちの一方の融点が、前記2つの異なる材料のうちの他方の熱間溶接温度未満である、請求項17に記載の熱伝導板。
【請求項20】
前記ウィッキング層が、金属フォーム、焼結金属粉末、及び/又は1つ以上の金属メッシュの層を含む、請求項16から19のいずれか一項に記載の熱伝導板。
【請求項21】
前記蒸気コアが、疎水性多孔質層、ナイロンメッシュ、ポリマーメッシュ、及び/又はピラーを含む、請求項16から20のいずれか一項に記載の熱伝導板。
【請求項22】
前記蒸気コアの融点が、前記第1のケーシングの熱間溶接温度未満である、請求項21に記載の熱伝導板。
【請求項23】
前記ウィッキング層が、前記第1のケーシングに接合されており、第2のウィッキング層が、前記第2のケーシングに接合されており、前記蒸気コアが、前記ウィッキング層と前記第2のウィッキング層との間に配設されている、請求項16から22のいずれか一項に記載の熱伝導板。
【請求項24】
前記ウィッキング層が、複数のウィッキング層ストリップを含み、かつ、前記蒸気コアが、複数の蒸気コアストリップを含み、前記ウィッキング層ストリップ及び前記蒸気コアストリップが、前記空洞内で互いの間に間隔を置いて配置されている、請求項16から22のいずれか一項に記載の熱伝導板。
【請求項25】
電気機器に電力供給するための電力モジュールであって、
内部容積を有する筐体と、
前記筐体の前記内部容積内に位置するバッテリと、
ヒートシンクと、
熱伝導板であって、前記バッテリが、前記熱伝導板を介して前記ヒートシンクと熱交換関係にあり、前記熱伝導板が、
その間に空洞を画定する第1のケーシング及び第2のケーシングと、
コアアセンブリであって、
前記第1のケーシングの内側に隣接するウィッキング層と、
蒸気コアと、を有し、前記ウィッキング層及び前記蒸気コアが前記空洞内に受容されている、コアアセンブリと、
前記空洞内の作動流体と、を有する、熱伝導板と、を備え、
前記第1のケーシングの第1の周辺フランジが、前記第1のケーシング及び前記第2のケーシングの完全な連続した周囲に沿って前記第2のケーシングの第2の周辺フランジに封止接合されており、前記第1のケーシングが、前記第1の周辺フランジ及び前記第2の周辺フランジを介して前記第2のケーシングに連接されている、電力モジュール。
【請求項26】
前記ウィッキング層が、前記第1のケーシングに接合されており、第2のウィッキング層が、前記第2のケーシングに接合されており、前記蒸気コアが、前記ウィッキング層と前記第2のウィッキング層との間に配設されている、請求項25に記載の電力モジュール。
【請求項27】
前記ウィッキング層が、複数のウィッキング層ストリップを含み、かつ、前記蒸気コアが、複数の蒸気コアストリップを含み、前記ウィッキング層ストリップ及び前記蒸気コアストリップが、前記空洞内で互いの間に間隔を置いて配置されている、請求項25に記載の電力モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本出願は、2021年12月17日に出願された米国特許出願第63/290752号の優先権を主張し、その全容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、熱伝達デバイスに関し、より具体的には、2つのコンポーネントの間で熱を伝達するように動作可能なヒートパイプに関する。
【背景技術】
【0003】
電気自動車及び他のタイプの電気機器は、1つ以上の電気バッテリによって駆動され得る。各バッテリは、典型的には、互いに動作可能に接続される複数のセルを含む。そのようなバッテリは、バッテリから電力が引き出されるときに熱を発生する。いくつかの場合では、バッテリの温度が最大温度閾値を超えているときに(高い周囲温度によって引き起こされ得る)、バッテリを動作させることにより、バッテリの性能が妨げられ得、いくつかの場合では、バッテリが損傷し得る。加えて、バッテリが最低温度閾値を下回る温度で動作するときに、バッテリの性能が低下し得る。バッテリの温度をより良く調節する試みがなされているが、それでもなお改善が求められている。
【発明の概要】
【0004】
一態様では、蒸気チャンバを有する熱伝導板を製造する方法であって、蒸気コア及びウィッキング層を取得することと、ケーシングの離隔配置された壁の間に画定された空洞の内部に蒸気コア及びウィッキング層を配設することと、空洞の内部に作動流体を注入することと、空洞に真空を適用することと、空洞に真空を適用した後、空洞内に作動流体と、蒸気コア及びウィッキング層とを封止するために、離隔配置された壁の周辺を互いに冷間溶接することと、を含む、方法が提供される。
【0005】
上記で定義される、本明細書に記載される方法は、全体又は一部、及び任意の組み合わせで、以下の工程/特徴のうちの1つ以上を更に含んでもよい。
【0006】
いくつかの実施形態では、空洞に真空を適用することが、真空チャンバ内に蒸気コア、ウィッキング層、及びケーシングを配設し、真空チャンバに真空を適用することを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、空洞に真空を適用することが、空洞の内部に作動流体を注入する前に、真空下で真空チャンバの内部に蒸気コア、ウィッキング層、及びケーシングを配置することを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、本方法は、第2のウィッキング層を取得することと、ウィッキング層と第2のウィッキング層との間に蒸気コアを閉囲することと、を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、空洞の内部に蒸気コア及びウィッキング層を配設することが、2つの異なる材料のクラッディングである離隔配置された壁によって画定された空洞の内部に蒸気コア及びウィッキング層を配設することを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、離隔配置された壁によって画定された空洞の内部に蒸気コア及びウィッキング層を配設することが、アルミニウム銅クラッディングケーシング又はステンレス鋼銅クラッディングケーシングである離隔配置された壁によって画定された空洞の内部に蒸気コア及びウィッキング層を配設することを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、作動流体を注入することが、ケーシングの第1のケーシング部分によって画定された窪み部分の上に水を注入することを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、本方法は、第1のケーシング部分の上に蒸気コア及びウィッキング層を配設することを含み、作動流体を注入することが、ウィッキング層に作動流体を注入することを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、蒸気コア及びウィッキング層を取得することが、金属フォーム、焼結金属粉末、及び/又は1つ以上の金属メッシュの層であるウィッキング層を取得することを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、本方法は、離隔配置された壁のうちの一方にウィッキング層を接合することを含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、本方法は、第1のサブアセンブリを取得するために、離隔配置された壁のうちの一方にウィッキング層を固定することと、第2のサブアセンブリを取得するために、離隔配置された壁のうちの他方の壁に第2のウィッキング層を固定することと、第1のサブアセンブリと第2のサブアセンブリとの間に蒸気コアを閉囲することと、を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、本方法は、冷間溶接の前に、蒸気コア、ウィッキング層、及びケーシングを、エルボを画定する形状に曲げることを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、本方法は、冷間溶接の後に、蒸気コア、ウィッキング層、及びケーシングを、エルボを画定する形状に曲げることを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、蒸気コアを取得することが、疎水性多孔質層、ナイロンメッシュ、ポリマーメッシュ、及び/又はピラーである蒸気コアを取得することを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、蒸気コアが、複数の蒸気コアストリップを含み、ウィッキング層が、複数のウィッキング層ストリップを含み、本方法は、蒸気コアストリップ及びウィッキング層ストリップを空洞の内部で互いの間に間隔を置いて配置されるように配設することを含む。
【0020】
別の態様では、蒸気チャンバを有する熱伝導板であって、間に空洞を画定する第1のケーシング及び第2のケーシングと、コアアセンブリであって、第1のケーシングの内側に隣接するウィッキング層と、蒸気コアと、を有し、ウィッキング層及び蒸気コアが空洞内に受容されている、コアアセンブリと、空洞内の作動流体と、を備え、第1のケーシングの第1の周辺フランジが、第1のケーシング及び第2のケーシングの完全な連続した周辺に沿って第2のケーシングの第2の周辺フランジに封止接合されており、第1のケーシングが、第1の周辺フランジ及び第2の周辺フランジを介して第2のケーシングに連接されている、熱伝導板が提供される。
【0021】
上記で定義される、本明細書に記載される熱伝導板は、全体又は一部、及び任意の組み合わせで、以下の特徴のうちの1つ以上を更に含んでもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、第1のケーシング及び第2のケーシングが、2つの異なる材料のクラッディングを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、2つの異なる材料が、アルミニウム及び銅を含み、第1のケーシングの内側及び第2のケーシングの内側が、銅によって画定される。
【0024】
いくつかの実施形態では、2つの異なる材料のうちの一方の融点が、2つの異なる材料のうちの他方の熱間溶接温度未満である。
【0025】
いくつかの実施形態では、ウィッキング層が、金属フォーム、焼結金属粉末、及び/又は1つ以上の金属メッシュの層を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、蒸気コアが、疎水性多孔質層、ナイロンメッシュ、ポリマーメッシュ、及び/又はピラーを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、蒸気コアの融点が、第1のケーシングの熱間溶接温度未満である。
【0028】
いくつかの実施形態では、ウィッキング層が、第1のケーシングに接合されており、第2のウィッキング層が、第2のケーシングに接合されており、蒸気コアが、ウィッキング層と第2のウィッキング層との間に配設されている。
【0029】
いくつかの実施形態では、ウィッキング層が、複数のウィッキング層ストリップを含み、蒸気コアが、複数の蒸気コアストリップを含み、ウィッキング層ストリップ及び蒸気コアストリップが、空洞内で互いの間に間隔を置いて配置されている。
【0030】
また別の態様では、電気機器に電力供給するための電力モジュールであって、内部容積を有する筐体と、筐体の内部容積内に位置するバッテリと、ヒートシンクと、熱伝導板であって、バッテリが、熱伝導板を介してヒートシンクと熱交換関係にあり、熱伝導板が、間に空洞を画定する第1のケーシング及び第2のケーシングと、コアアセンブリであって、第1のケーシングの内側に隣接するウィッキング層と、蒸気コアと、を有し、ウィッキング層及び蒸気コアが空洞内に受容されている、コアアセンブリと、空洞内の作動流体と、を有する、熱伝導板と、を備え、第1のケーシングの第1の周辺フランジが、第1のケーシング及び第2のケーシングの完全な連続した周囲に沿って第2のケーシングの第2の周辺フランジに封止結合されており、第1のケーシングが、第1の周辺フランジ及び第2の周辺フランジを介して第2のケーシングに連接されている、電力モジュールが提供される。
【0031】
上記で定義される、本明細書に記載される電力モジュールは、全体又は一部、及び任意の組み合わせで、以下の特徴のうちの1つ以上を更に含んでもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、ウィッキング層が、第1のケーシングに接合されており、第2のウィッキング層が、第2のケーシングに接合されており、蒸気コアが、ウィッキング層と第2のウィッキング層との間に配設されている。
【0033】
いくつかの実施形態では、ウィッキング層が、複数のウィッキング層ストリップを含み、蒸気コアが、複数の蒸気コアストリップを含み、ウィッキング層ストリップ及び蒸気コアストリップが、空洞内で互いの間に間隔を置いて配置されている。
【0034】
本改善に関する多くの更なる特徴及びそれらの組み合わせは、本開示を読むと、当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】車両のバッテリ冷却システムの概略図である。
図2図1のバッテリ冷却システムとともに使用される、一実施形態による熱伝導板の三次元部分切断図である。
図3図2の一部分の拡大図である。
図4図2の熱伝導板の層状構造を例解する概略断面図である。
図5】熱交換のプロセスを例解する図2の熱伝導板の概略断面図である。
図6A図2の熱伝導板を製造する工程を例解する概略側面図である。
図6B図2の熱伝導板を製造する工程を例解する概略側面図である。
図6C図2の熱伝導板を製造する工程を例解する概略側面図である。
図7】別の実施形態による層状構造を例解する概略断面図である。
図8】別の実施形態による熱伝導板の上面図である。
図9図8の線A-Aに沿ってとられた図8の熱伝導板の断面図である。
図10】熱伝導板を製造する方法を例解するフローチャートである。
図11A】代替実施形態による熱伝導板の側面図である。
図11B】代替実施形態による熱伝導板の側面図である。
図11C】代替実施形態による熱伝導板の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
ここで図1を参照すると、車両10の内部で使用され得る電力モジュールが示されており、車両10の1つ以上の電気バッテリ12(図1には1つのみが示されている)を冷却するための冷却システム20を含む。冷却システム20は、バッテリからの熱を吸収するために、又はバッテリ12に熱を移送するためにバッテリ12と熱交換関係にある熱伝導板30を含む。本実施形態では、熱伝導板30は、熱が伝導によってバッテリ12と熱伝導板30との間で移送され得るように、バッテリ12に熱接触している。
【0037】
特定の一実施形態では、熱伝導板30は、それぞれ、図1に実線及び破線で描画されるように、熱伝達位置と熱絶縁位置との間で選択的に移動され得る。図示されていないが、アクチュエータは、熱伝導板30とバッテリ12との間に位置して、熱伝達位置と熱絶縁位置との間の熱伝導板30の移動を与え得る。ただし、本明細書に記載される冷却システム20及び熱伝導板30は、任意のタイプのバッテリ及び/又はバッテリパックの熱管理を含む、他の用途で使用されてもよいことを理解されたい。それらは、例えば、熱伝導板30の切り替え可能又は移動可能な部分を含まなくてもよい。
【0038】
冷却システム20のヒートシンク22は、熱伝導板30を介してバッテリ12から熱を引き出すために使用され得る。ヒートシンク22は、熱交換のために動作可能な任意の好適なデバイスであり得る。ヒートシンク22は、例えば、フィン、冷却液を流す導管などを含み得る。ヒートシンク22は、熱伝導板30を介してバッテリ12に熱を提供するための代替構成の熱源であってもよい。
【0039】
ここで図2~4を参照し、熱伝導板30をより詳細に記載する。描画される実施形態では、熱伝導板30は、凝縮器セクションと称され得る第1のセクション31と、蒸発器セクションと称され得る第2のセクション32と、を含み、描画される実施形態では、概して、熱伝導板30がL字形状を有するように第1のセクション31を横断する。図11A~11Cを参照して以下に記載するように、他の好適な形状が代替的に使用されてもよいことが理解されよう。第1のセクション31及び第2のセクション32がエルボを介して連接されている形状が企図される。ある特定の実施形態では、このエルボは、熱伝導板の第1のセクションと第2のセクションとの間におよそ90度(例えば、90度±10%)の内角を画定し得るが、この角度は、90度±10%とは異なって(例えば、より大きい又はより小さい)もよい。第1のセクション31は、第1のセクション31と第2のセクション32との間の交点によって画定された軸を中心として、第2のセクション32に対して枢動可能であり得る。第1のセクション31は、図1に示される熱伝達位置と熱絶縁位置との間で移動され得る。第2のセクション32は、図1に示されるようにバッテリと当接関係に設置されている場合には、バッテリ12と接触し得る。図2に描画される熱伝導板30は、熱伝導板30のL字形状を形成するための屈曲をこの板に有するが、本明細書に記載される熱伝導板30はまた、平(すなわち、非屈曲)板であってもよいことを理解されたい。
【0040】
より具体的に図3及び4を参照すると、熱伝導板30は、層状構造100を有する。層状構造100は、第1のケーシング部分101及び第2のケーシング部分102(以下、単に第1のケーシング101及び第2のケーシング102と称される)からなる外側エンベロープ又はケーシングを含む。第1のケーシング101と第2のケーシング102との間に空洞103が画定される。空洞103は、代替的に、蒸気チャンバ又は蒸気コアと称され得る。第1のケーシング101は、以下に更に詳細に記載するように、熱伝導板30の周辺33に沿って第2のケーシング102に連接されている。より具体的には、第1のケーシング101の第1の周辺フランジ101Aは、第1のケーシング101及び第2のケーシング102の完全な連続した周囲に沿って、第2のケーシング102の第2の周辺フランジ102Aに隣接し、封止固定されている。第1のケーシング101は、第1の周辺フランジ101A及び第2の周辺フランジ102Aを介して第2のケーシング102に連接されている。第1のケーシング101及び第2のケーシング102がこの様態で連接される様態に関する更なる詳細が、以下に提供される。
【0041】
本開示のコンテキストでは、「封止固定された」という表現は、第1の周辺フランジ101A及び第2の周辺フランジ102Aが永続的な様態で互いに固定されていることを意味する。言い換えれば、第1の周辺フランジ101Aと第2の周辺フランジ102Aとの間の接合は、永続的であり、空洞103の内部の圧力が空洞103の外部の環境の圧力変動に関わらず一定のままであるように、密封を形成する。この永続的な接合は、以下で考察されるように、第1の周辺フランジ101A及び第2の周辺フランジ102Aを単体の異なる部分にすることによって作成されてもよい。
【0042】
更に図3及び4を参照すると、示される実施形態では、空洞103は、第1のケーシング101が、窪み部分を画定するように第1の周辺フランジ101Aからオフセットしている第1の壁101Bを有することによって画定される。第2のケーシング102は、第2の周辺フランジ102Aからオフセットし得る第2の壁102B(図4)を有する。第1のケーシング101が、第1のケーシング101及び第2のケーシング102のそれぞれの第1の周辺フランジ101A及び第2の周辺フランジ102Aを介して第2のケーシング102に固定されている場合、第1の壁101B及び第2の壁102B(例えば、図4を参照)は、互いに離隔配置されている。したがって、空洞103は、第1の壁101Bと第2の壁102Bとの間に画定される。第1の壁101Bと第2の壁102Bとの間の空間を作成するために、第1の壁101B及び第2の壁102Bのうちの一方のみが、この一方の対応する第1の周辺フランジ101A及び第2の周辺フランジ102Aからオフセットしてもよいことが理解されよう。いくつかの場合では、第1の壁101B及び第2の壁102Bの両方が、第1の周辺フランジ101A及び第2の周辺フランジ102Aからオフセットしている。
【0043】
代替実施形態では、第1の壁101Bと第2の壁102Bとの間にスペーサが挟まれ、空洞103を形成する空間を第1の壁101Bと第2の壁102Bとの間に作成するようになっていてもよい。ただし、板が、板の最大厚さにある、多孔質層105及び104の上方にある場合に、1つ以上のスペーサのみが必要とされ得る。周辺フランジにおいて、2つのケーシング部分101及び102は、冷間溶接のために直接接触したままである。いくつかの場合では、スペーサは、第1の周辺フランジ101A及び/又は第2の周辺フランジ102Aにおける第1のケーシング101及び/又は第2のケーシング102の厚さの増加に対応し得る。
【0044】
熱伝導板30はまた、第1のケーシング101及び第2のケーシング102によって形成された外側ケーシング内に画定された空洞103内に、第1のウィッキング層104及び第2のウィッキング層105を含むコアアセンブリを含む。第1のウィッキング層104は、第1のケーシング101に隣接して配設されている。第2のウィッキング層105は、第2のケーシング102に隣接して配設されている。コアアセンブリは、第1のウィッキング層104と第2のウィッキング層105との間に配設された蒸気コア106を更に含む。したがって、挟まれたコアサブアセンブリは、第1のケーシング及び第2のケーシング102の壁の内面の間に画定された空洞103を満たし、挟まれたコアサブアセンブリは、第1のウィッキング層104、蒸気コア106、及び第2のウィッキング層105から構成されている。
【0045】
理解されるように、第1のウィッキング層104及び第2のウィッキング層105は、任意の形状及び/又は寸法であってもよく、例えば、チャネル形状及びマイクロメートル(約1mm未満の寸法を有する)であってもよい。第1のウィッキング層104及び第2のウィッキング層105は各々、0.3mm~2mm、より具体的には0.5mm~1.5mm、より好ましくは約1mm(±10%)の厚さを有し得る。それらは、連続したリッジ又は不連続なフィンで形成され得る。フィンの間の空間は、相互接続されたマイクロチャネルの二次元アレイを形成する。ウィッキング構造は、銅スクリーンメッシュ、焼結粉末、金属フォーム、及び/又は金属繊維を含み得る。ウィッキング構造は、ケーシングに接合され得る。第1のウィッキング層104及び第2のウィッキング層105は、金属織網、多孔質金属焼結粉末、又は繊維束であり得る。第1のウィッキング層104及び第2のウィッキング層105によって画定された細孔のサイズは、厚さよりも小さくてもよく、30ミクロン~500ミクロンの範囲であってもよい。それらは、焼結金属粉末、スクリーン、及び溝付きウィックを含み得る。第1のウィッキング層104及び第2のウィッキング層105は、親水性材料から作製されることによって、又は親水性になるように処理されることによってのいずれかで、親水性であり得る。酸素プラズマ、水素還元、及び熱酸化、化学酸化などの、ウィッキング層を親水性にするための任意の好適なプロセスが企図される。ウィッキング層は、ケーシング上で焼結され得る。ウィッキング層は、多層の金属メッシュを含み得る。ウィッキング層を、ピラー又はマイクロチャネルのアレイで形成することができ、それらの間の空間は、液体を吸い上げるように機能する。液体がウィッキング層104、105に存在するとき、メニスカスが形成され得、メニスカスは、液体の表面張力に起因する毛細管圧力を生成する。親水性ウィッキング層の場合、液体は、ウィッキング層に、かつ液体が蒸発しているゾーンに向かって引き込まれ得る。小さい細孔サイズは、液体の輸送を強化し得る毛細管圧力を増加させる。ウィッキング層の浸透性はまた、細孔サイズ、及び細孔又はマイクロチャネルに沿った流路の蛇行によって影響を受け得る。ウィッキング層は、細孔サイズに対する高い比率の浸透性を有し得る。高い親水性(流体の低い接触角)がまた、望ましい場合がある
【0046】
蒸気コア106は、多孔性を有する任意の好適な材料で作製され得る。蒸気コア106は、ナイロン(例えば、ナイロンメッシュ)などのポリマー材料を含み得る。蒸気コア106を空洞103の内部のスペーサとして使用して、図1に示されるように熱伝導板30が曲がったときに、第1のウィッキング層104と第2のウィッキング層105との間の距離を維持し得る。蒸気コア106は、ステンレス鋼などの金属で作製され得る。蒸気コア106は、銅で作製され得る。蒸気コア106は、第1のウィッキング層104及び第2のウィッキング層105によって画定された細孔よりも大きい細孔を画定して、作動流体(例えば、水)が第1のウィッキング層104及び第2のウィッキング層105に引き込まれ、蒸気コア106を解放して、蒸気の連続的な流れを可能にすることを確実にし得る。いくつかの実施形態では、作動流体は、アルコール、アセトン、又はメタノールであり得る。流体の任意の好適な組み合わせが、作動流体として使用されてもよい。このプロセスは、図5を参照して以下に更に詳細に記載される。蒸気コア106は、疎水性材料から作製されることによって、又は疎水性になるように処理されることによってのいずれかで、疎水性であり得る。例えば、蒸気コア106は、疎水性コーティングでコーティングされ得る。蒸気コア106を疎水性にする任意の好適なプロセスが企図される。蒸気コア106は、2つのウィッキング層の間の距離を維持するために、空洞103に沿って分布する複数のポスト又はピラーを含み得る。蒸気コア106は、ウィッキング層104、105に接合され得る。蒸気コア106が接合されている場合、蒸気コア106は、蒸気チャンバ内の圧力が周囲圧力を超える場合に、ケーシング101、102が外向きに変形することを防止し得る。このことは、封止された板が、周囲圧力に対応する飽和温度、例えば大気圧で100℃、を上回って加熱されるときに生じ得る。
【0047】
第1のケーシング101及び第2のケーシング102は、銅で作製され得る。ただし、銅は、非常に高価なかつ高密度の材料であり、これらの理由から銅の使用を制限しようとする努力がなされている。代替実施形態では、第1のケーシング101は、銅クラッド(例えば、アルミニウム又はステンレス鋼を伴う銅)で作製され得る一方、第2のケーシング102は薄い銅シートである。より厚い銅クラッドは、熱伝導板30に剛性を提供し得る。いくつかの実施形態では、第1のケーシング101及び第2のケーシング102のうちの1つは、バッテリパックのケーシングの1つの壁などの、バッテリパックの一部であり得る。
【0048】
図4を参照すると、第1のケーシング部分101及び第2のケーシング102は各々、2つの層を含み、すなわち、第1のケーシング部分101は、空洞103に面する第1の内側層107と、空洞103の外部の環境に面する第1の外側層108と、を含む。同様に、第2のケーシング102は、空洞103に面する第2の内側層109と、環境に面する第2の外側層110と、を含む。本実施形態では、第1の内側層107及び第2の内側層109は、銅で作製されており、第1の外側層108及び第2の外側層110は、アルミニウムで作製されている。第1の内側層107及び第2の内側層109は、高い熱伝導率を有し、かつ空洞103に流れる作動流体に曝露されるため、腐食に好適に耐性を有する、任意の材料で作製され得ることが理解されよう。例えば、ニッケルが内側層107、109に使用され得る。以下で理解されるように、第1のケーシング101及び第2のケーシング102の内側を画定するように選択される材料は、冷間溶接に好適であるべきである。第1の外側層108及び第2の外側層110は、高い熱伝導率を有する任意の材料で作製され得る。いくつかの実施形態では、第1の外側層108及び第2の外側層110の厚さが、熱伝達に対する小さい抵抗を提供するのに十分に小さい場合、熱伝導率は、より小さくてもよい。したがって、第1のケーシング101及び第2のケーシング102は、アルミニウム銅クラッドなどのクラッド材料で作製され得る。示される実施形態では、第1のケーシング101及び第2のケーシング102の厚さは、第1の外側層108及び第2の外側層110(例えば、アルミニウム)の約95%で構成されており、第1の内側層107及び第2の内側層109(例えば、銅)の約5%で構成されている。例えば、第1のケーシング部分101の厚さが1cmである場合、第1の外側層108の厚さは、9.5mmであり得、第1の内側層107の厚さは、0.5mmであり得る。ある特定の実施形態では、第1の内側層107及び第2の内側層109の厚さは、50~100ミクロンであり得る。本明細書において、「約」という表現は、「約10」が9~11の範囲を含むような、プラス又はマイナス10%のバリエーションを意味する。本実施形態では、第1の内側層107及び第2の内側層109の各々の厚さは、約50~100ミクロンである。アルミニウムのより厚い層を伴う銅の薄い層を含む第1のケーシング部分101及び第2のケーシング部分102を有することは、熱伝導板30の熱性能を損なうことなく、熱伝導板30の製造のための費用便益を提供し得る。
【0049】
示される実施形態では、第1の内側層107及び第2の内側層109は、第1のケーシング101と第2のケーシング102とのそれぞれの周辺フランジ101A、102Aを介した接合プロセスの後に、第1の内側層107及び第2の内側層109が互いに接触し得るように、熱伝導板30の周辺33までずっと延在する。ただし、いくつかの他の実施形態では、第1の内側層107及び第2の内側層109は、空洞103のみと重なり合ってもよく、熱伝導板30の周辺33には、第1の内側層107及び第2の内側層109がなくてもよい。そのような場合、第1の外側層108及び第2の外側層110は、第1のケーシング部分101及び第2のケーシング部分102の接合後に互いに接触し得る。
【0050】
ここで、図5を参照して、上述されている熱伝導板30の異なるコンポーネント、熱伝導板30の動作をここで記載する。
【0051】
熱伝導板30は、蒸発器セクションとも称される第1の端部30Aを有し、第1の端部30Aは、熱が除去される熱コンポーネント(例えば、バッテリ)と接触し得る。凝縮器セクションとも称される第2の端部30Bは、ヒートシンクと接触して熱を取り出し得る。熱伝導板30は、第1の端部30Aから第2の端部30Bに熱を移動させるように動作可能である。この目的で、作動流体は、第1のウィッキング層104及び第2のウィッキング層105に液体形態で存在する。熱伝導板はまた、第2の端部30Bから第1の端部30Aに向けて熱を移動させてもよいことが理解されよう。そのような場合、第2の端部30Bは、蒸発器セクションとして機能し、第1の端部30Aは、凝縮器セクションとして機能する。熱に曝露されると、作動流体は、気相で蒸発し、矢印A1に沿って、蒸気コア106を含む空洞103に向かって移動する。次いで、気相の作動流体は、蒸気コア106に沿った矢印A2に沿って、熱伝導板30の第2の端部30Bに向かって移動する。第2の端部30Bは第1の端部30Aよりも低温であることから、作動流体は、凝縮して液相に戻り、矢印A3に沿って第1のウィッキング層104及び第2のウィッキング層105によって吸収される。次いで、作動流体は、毛細管作用によって、第1のウィッキング層104及び第2のウィッキング層105に沿って移動し、矢印A4に沿って移動して第1の端部30Aに向かって戻り、プロセスは、再び開始する。したがって、熱伝導板30は、作動流体を蒸発させることによって第1の端部30Aから熱を除去し、作動流体を凝縮させることによって第2の端部30Bに熱を伝達する。これらの相変化は、熱が第1の端部30Aから第2の端部30Bに移動することをもたらす。コンポーネント(すなわち、バッテリ)を冷却する代わりに加熱しなければならない用途において、その場合には、液体及び蒸気の流れの逆挙動及び方向は、板構造に変更を加えることなく、逆転される。
【0052】
ここで図6A~6Cを参照すると、熱伝導板30を製造する工程が示されている。図6Aに示される実施形態では、第1のウィッキング層104は、第1のサブアセンブリを取得するために、第1のケーシング101の内側に接合されている。この時点で、作動流体Fは、第1のウィッキング層104の内部に注入され得る。図6Bに示されるように、第2のウィッキング層105は、第2のサブアセンブリを取得するために、第2のケーシング102の内側に接合され得る。作動流体Fは、第1のウィッキング層104及び第2のウィッキング層105の一方又は両方に注入され得ることが理解されよう。次いで、蒸気コア106を、2つのサブアセンブリの間に挿入する。図6Cに示されるように、真空を作成して、第1のケーシング部分101と第2のケーシング部分102との間に画定された空洞から空気を除去し得、2つのサブアセンブリを、第1のケーシング部分101及び第2のケーシング部分102の周辺を介して互いに接合し得る。図6Aに示されるように、作動流体の注入は、第1のウィッキング層104上に作動流体を注入することによって行われ得る。いくつかの場合では、作動流体は、第1のウィッキング層104、第2のウィッキング層105、及び蒸気コア106を含むコアアセンブリ全体にわたって注入され得る。図6Bに示されるように、空洞103の内部にコアアセンブリを配設することは、2つのケーシング部分101、102の間にコアアセンブリを配設することを含み得る。このことは、作動流体の注入の後又は前に行われ得る。図6Cに示されるように、冷間溶接プロセスは、第1のケーシング部分101のケーシング部分101及び第2のケーシング部分102の周辺フランジ101A、102Aが互いに接触するまで、第2のケーシング102を矢印A5に沿って第1のケーシング部分101に向けて移動させることを含み得る。冷間溶接プロセスは、任意の好適な冷間溶接プロセスを含み得る。
【0053】
図7を参照すると、熱伝導板230のための層状構造200の別の実施形態が示されている。簡潔さのために、上述した層状構造100とは異なる要素のみが、以下に本明細書に記載される。
【0054】
層状構造200は、第1のケーシング101の内側に隣接して位置するウィッキング層204を含む。ウィッキング層204は、第1のケーシング101(又は第2のケーシング102)の内側に接合され得る。層状構造200は、ウィッキング層204と第2のケーシング102との間に挟まれた蒸気コア106を含む。したがって、示される実施形態では、1つの層のみのウィッキング材料が使用される。
【0055】
ここで図8及び9を参照すると、熱伝導板の別の実施形態が330に示されている。熱伝導板330は、本明細書で上述した第1のケーシング101及び第2のケーシング102を含む。本実施形態では、蒸気コアは、複数の蒸気コアストリップ306を含み、ウィッキング層は、複数のウィッキング層ストリップ304を含む。蒸気コアストリップ306及びウィッキング層ストリップ304は、図9に示されるように、互いの間に間隔を置いて配置されている。ウィッキング層ストリップ304の各々は、蒸気コアストリップ306のうちのそれぞれのものに隣接して配設されている。したがって、ウィッキング層及び蒸気コアのスタガ配置は、第1のケーシング部分101及び第2のケーシング部分102に垂直な方向に沿ってではなく、第1のケーシング部分101及び第2のケーシング部分102に平行な平面内で達成されている。ウィッキング層ストリップ304及び蒸気コアストリップ306は、熱伝達の方向に平行な成分を有する方向に延在する。
【0056】
示される実施形態では、熱伝導板は、不均一であり、かつウィッキング材料及び蒸気コア材料の両方を包含する、単一の層を有する。示される実施形態では、ストリップ304、306は、熱輸送の方向に、すなわち、蒸発器端部と熱伝導板の凝縮器端部との間に延在する。
【0057】
いくつかの実施形態では、ウィッキング材料のストリップ304が2つの壁と接触し得、それによって、外力を支持し、蒸気コアの高さを維持することから、蒸気コアストリップ306に材料が必要でない場合がある。言い換えると、蒸気コアストリップ306は、材料がなくてもよい。したがって、液体及び蒸気は、互いの上にある平面とは対照的に、同じ平面内で循環し得る。これにより、厚さが低減され得る。熱流束は高くない場合があるが、厚さ及びコストが重要であることから、バッテリにとってこのことは興味深い場合がある。
【0058】
ここで図10を参照すると、熱伝導板30、230、330を製造する方法が1000に示されている。方法1000は、1002において、蒸気コア106、306及びウィッキング層104、204、304を取得することと、1004において、2つのケーシング部分101、102の間の空洞の内部に蒸気コア106、306及びウィッキング層104、204、304を配設することと、1006において、空洞の内部に作動流体Fを注入することと、1008において、空洞に真空を適用することと、1010において、空洞に真空を適用した後、第1のケーシング部分101及び第2のケーシング部分102の周辺を互いに冷間溶接して、空洞の内部の作動流体を封止することと、を含む。1008において、空洞に真空を適用する工程は、例えば、蒸気コア、ウィッキング層、及びケーシングを真空チャンバの内部に配置し、真空チャンバ内に真空を適用し、次いで、1006において、空洞の内部に作動流体Fを注入することを含み得る。ただし、代替実施形態では、例えばケーシングの全体を真空チャンバ内に配置しないことを含めて、空洞内の真空を代替的に適用してもよいことを理解されたい。
【0059】
図3に描画される実施形態では、方法1000は、第2のウィッキング層105を取得することと、第1のウィッキング層104と第2のウィッキング層105との間に蒸気コア106を閉囲することと、を含む。このことは、第1のサブアセンブリを作成するために、第1のウィッキング層104を第1のケーシング部分101に固定(例えば、接合)することと、第2のサブアセンブリを取得するために、第2のウィッキング層105を第2のケーシング部分102に固定することと、第1のサブアセンブリと第2のサブアセンブリとの間に蒸気コア106を閉囲することと、を含み得る。
【0060】
代替的に、図7に示されるように、単一のウィッキング層204のみが使用されて、第1のケーシング部分101に接合されているのに対して、蒸気コア106は、第2のケーシング部分102に隣接して配設されている。作動流体Fは、単一のウィッキング層204及び/又は蒸気コア106に注入され得る。蒸気コア106は、第2のケーシング部分102に接合され得る。第1のケーシング部分101及び第2のケーシング部分102は、交換可能であり得る。熱流束(加熱及び冷却)が両方とも同じ側にある場合、ウィッキング層204は、その側にのみ必要とされ得る。この構成により、コストが削減され、熱伝導板が薄くなり得る。
【0061】
本明細書で使用される「冷間溶接」は、接触溶接又は接触接合プロセスを意味すると理解され、2つの金属(この場合は、ケーシングの壁の周辺フランジ101A、102A)を融合するか、又は別様に接合するためにほとんど又はまったく熱が使用されない。熱間溶接(すなわち、アーク溶接、レーザー溶接、ろう付け、はんだ付けなどの融接)プロセスとは異なり、冷間溶接によって接合される金属は、熱によって溶融しない。代わりに、冷間溶接を反応させるために使用されるエネルギーは、熱ではなく圧力の形態で届く。したがって、本明細書で使用される冷間溶接プロセスを、例えば室温を含み得る、低温で実行することができる。したがって、ケーシングの壁101B、102Bの周辺フランジ101A、102Aを冷間溶接するために使用されるプロセスは、結果として、本熱伝導板内の作動流体(水であり得る)が沸騰して急速に蒸発することを回避するなどのために、摂氏100度よりもはるかに低い温度で実行される。作動液の挿入量は、蒸発量に、デバイスの適正な動作に必要とされる所望の最終量を加えたものの総和である。したがって、冷間溶接を使用してデバイスを封止することにより、第1の封止工程が高温で行われることから、2つの工程で封止を必要とする典型的な蒸気チャンバとは異なり、デバイスが封止プロセスの前に作動流体で満たされることが可能になり得る。
【0062】
示される実施形態では、1008において、空洞103に真空を適用することは、真空チャンバVCに蒸気コア、ウィッキング層、及びケーシングを配設し、真空チャンバVCに真空を適用することを含む。1010における周辺、すなわち、離隔配置された壁101B、102Bの周辺フランジ101A、102A、の冷間溶接は、任意の好適な冷間溶接プロセスを使用して周辺を冷間溶接することを含み得る。1004において、空洞103の内部の蒸気コア及びウィッキング層を配設することは、アルミニウム銅又はステンレス鋼銅クラッディングであり得る、2つの異なる材料のクラッディングである離隔配置された壁によって画定された空洞103の内部に蒸気コア及びウィッキング層を配設することを含み得る。1006において作動流体を注入することは、第1のケーシング部分101によって画定された窪み部分の上に水を注入することを含み得る。作動流体は、第1及び/又はウィッキング層104、105のそれぞれのケーシング部分101、102に固定されると、第1及び/又はウィッキング層104、105に注入され得る。上下逆であっても、作動流体は、表面張力のためにウィッキング層に残存し得る。いくつかの実施形態では、作動流体は、第1のウィッキング層104及び第2のウィッキング層105の両方に注入される。蒸気コア及びウィッキング層は、第1のケーシング部分101上に配設され得、1006において、作動流体を注入することは、蒸気コア及びウィッキング層に作動流体を注入することを含み得る。1002において、蒸気コア及びウィッキング層を取得することは、金属フォーム、焼結金属粉末、及び/又は1つ以上の金属メッシュの層である第1のウィッキング層104及び第2のウィッキング層105を取得することを含み得る。第1のウィッキング層104は、離隔配置された壁101B、102Bのうちの一方に接合され得、第2のウィッキング層105は、離隔配置された壁101B、102Bのうちの他方に接合され得る。1002において、蒸気コア106を取得することは、疎水性多孔質層、ナイロンメッシュ、ポリマーメッシュ、及び/又はピラーである蒸気コア106を取得することを含み得る。
【0063】
方法1000は、冷間溶接の前に、蒸気コア及びウィッキング層及びケーシングをL字形状に曲げることを含み得る。方法1000は、冷間溶接の後に、蒸気コア及びウィッキング層及びケーシングをL字形状に曲げることを含み得る。1010において、冷間溶接の後に曲げが実施される場合、2つのケーシング部分101、102のうちの一方は、曲げが2つのケーシング部分101、102のうちの一方を伸長させないように、熱伝導板30の第1のセクション31及び第2のセクション32(図2)との交差点にプリーツが備えられ得る。これらのプリーツは、アコーディオンとして機能し得る。
【0064】
1008における真空の適用は、真空チャンバVCの内部の空気の全てを除去するために行われ得る。このことは、空洞103の内部の圧力を低下させる効果を更に有し得、その結果、作動流体F(例えば、水)の蒸発温度が低下する。この時点で、第1のケーシング部分101の周辺は、第2のケーシング102の周辺に冷間溶接されて、第1のケーシング部分101と第2のケーシング102との間に画定された空洞103を封止し、それによって、作動流体Fを空洞103中に閉囲し得る。
【0065】
本実施形態では、2つの周辺フランジ101A、102Aは、熱伝導板30の完全な連続した周囲に沿って互いに接触している。結果として、フランジ101A、102Aの間に局所的な間隔を作成する充填チューブは必要ない。真空条件下での冷間溶接によって2つの周辺フランジ101A、102Aを接合することは、旧来の熱間溶接プロセスの後に必要とされる充填チューブの使用を回避することを可能にし得る。充填チューブの回避は、熱伝導板の周囲に沿った任意の鋭利な縁部又は突起のない熱伝導板30を提供し得る。したがって、熱伝導板30は、熱伝導板30がパウチセル内に位置し、鋭利な縁部の存在がパウチを損傷し得る環境での使用に、より好適であり得る。同様に、鋭利な縁部がないことによって、周囲のワイヤへの損傷が制限され得る。充填チューブの不在は、熱伝導板30とバッテリ12及びヒートシンク22との間の実効接触面積を増加させ得る。チューブの除去は、熱伝導板30の製造コストを低減し得る。
【0066】
ろう付けされた。冷間溶接は、2つのケーシングの間の界面における酸化物の存在を最小限に抑え、清浄な表面を提供し、2つのケーシングの間の封止の周囲全体に沿った高圧の適用を可能にし得る。
【0067】
この場合、クラッディング材料の2つの異なる材料のうちの一方の融点は、2つの異なる材料のうちの他方の溶接温度未満である。結果として、銅の熱間溶接又は旧来の溶接は、アルミニウムを溶融し、及び/又はケーシング内に封入された作動流体を蒸発させる可能性があるため、機能しない場合があり、したがって、望ましくない。したがって、蒸気コア106の融点は、第1のケーシング101の溶接温度未満である。結果として、第1のケーシング101を第2のケーシング102に熱間溶接することは、蒸気コア106が溶融し、かつ/又は内部の流体を蒸発させる可能性があることから、蒸気コア106に有害であり得る。冷間溶接は、作動流体の蒸発を制限し得るため、本実施形態で使用される。
【0068】
ここで図11A~11Cを参照すると、熱伝導板の代替実施形態が、それぞれ、430、530、630に示されている。簡潔さのために、上述した他の熱伝導板とは異なる特徴のみが、以下に記載される。熱伝導板430、530、630は、図4、7、及び8を参照して上述したように、熱伝導板30の層状構造のいずれかを含み得る。
【0069】
図11Aを参照すると、熱伝導板430は、U字形状を有し、蒸発器セクション431と、蒸発器セクション431のいずれの側にも互いに横方向に離隔配置されている2つの凝縮器セクション432と、を含む。2つの凝縮器セクション432の各々は、蒸発器セクション431のそれぞれの縁部から横方向に(この場合、上方に)延在する。蒸発器セクション431は、エルボを形成する断熱セクション433を介して凝縮器セクション432に接続されている。これらの断熱セクション433は、断熱セクション433において、熱が、熱伝導板430からの排出も、熱伝導板430による吸収もされないように熱絶縁され得る。示される実施形態では、断熱セクション433によって画定されたエルボは、蒸発器セクション431と凝縮器セクション432との間の角度をおよそ90度(例えば、90度±10%)で画定するが、他の好適な角度も使用され得る。
【0070】
図11Bを参照すると、熱伝導板530は、U字形状を有し、2つの蒸発器セクション531及び3つの凝縮器セクション532を含む。凝縮器セクション532のうちの1つは、2つの蒸発器セクション531の間に配設されており、2つの蒸発器セクション531と共平面である。他の2つの凝縮器セクション532は各々、2つの蒸発器セクション531のうちのそれぞれのものから横方向に延在する。断熱セクション533は、凝縮器セクション532のうちの2つを蒸発器セクション531に接続するために使用され、凝縮器セクション532が隣接する蒸発器セクション431に対してある角度で配設されるようにエルボを形成する。
【0071】
ここで図11Cを参照すると、熱伝導板630は、任意の好適な空間に適合するように調整され得る例示的な形状を有する。この場合、熱伝導板630は、断熱セクション633を介して互いに相互接続された5つの蒸発器セクション631及び1つの凝縮器セクション632を含み、少なくとも1つの凝縮器セクション632と少なくとも1つの蒸発器セクション631との間にエルボを画定する。また、より多くの凝縮器セクションが提供されてもよく、また、より少ないか、又はより多くの蒸発器セクションが使用されてもよい。本明細書では、5つの蒸発器セクション631の各々が、互いに平行であるが、異なる高さ(すなわち、それらは非共面である)にあり、凝縮器セクション632は、熱伝導板630の1つの側縁部で蒸発器セクション631まで概ね横方向に(及びこの場合は上方に)延在する。
【0072】
本書に記載される実施形態は、本技術の可能な実装態様の非限定的な例を提供する。本開示を検討すると、当業者は、本技術の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される実施形態に変更が加えられてもよいことを認識するであろう。また更なる修正が、本開示を考慮して当業者によって実装され得、その修正は、本技術の範囲内にあるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
【国際調査報告】