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特表2024-547028RBM3発現を増加する方法及び作用薬
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】RBM3発現を増加する方法及び作用薬
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0793 20100101AFI20241219BHJP
   C12N 5/0797 20100101ALI20241219BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20241219BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 31/712 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 31/7125 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20241219BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241219BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20241219BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20241219BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20241219BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20241219BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20241219BHJP
【FI】
C12N5/0793 ZNA
C12N5/0797
C12Q1/686 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/09 110
A61K45/00
A61K48/00
A61K31/7088
A61K31/712
A61K31/7125
A61K35/76
A61P25/00
A61P25/28
A61P25/16
A61P25/24
A61P25/22
A61P43/00 105
C12N15/113 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536408
(86)(22)【出願日】2022-12-19
(85)【翻訳文提出日】2024-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2022086740
(87)【国際公開番号】W WO2023117965
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】2118495.7
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2215713.5
(32)【優先日】2022-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524229244
【氏名又は名称】フライエ ウニベルシテート ベルリン
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】プロイスナー,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ハイト,フローリアン
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QQ79
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR55
4B063QR62
4B063QR77
4B063QS25
4B063QS33
4B063QX01
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA57Y
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA83X
4B065AA83Y
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA23
4B065CA44
4C084AA13
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA57
4C084MA58
4C084MA59
4C084MA60
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA121
4C084ZA122
4C084ZA151
4C084ZA152
4C084ZA161
4C084ZA162
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA12
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZC02
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA12
4C087ZA15
4C087ZA16
(57)【要約】
【課題】
RBM3のポイズンエクソン、エクソン3a、又はそのスプライス部位を標的化することによって、RNA結合モチーフタンパク質3(RBM3)の発現を増加することができる作用薬(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、CRISPR/Casベースの塩基編集システム)を提供する。
【解決手段】
細胞においてRBM3の発現を増加する方法、対象においてRMB3発現によって影響を受ける疾患を治療又は予防する方法、或いは対象に神経保護治療を提供する方法もまた開示される。
【選択図】図4B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞におけるRBM3コード化成熟mRNAのナンセンス介在分解を阻害する方法であって、前記細胞を作用薬に曝露することを含み、前記作用薬は、得られる成熟mRNAにエクソン3aが取り込まれないようにpre-mRNAのスプライシングを変更するように、RBM3のpre-mRNAの領域とハイブリダイズすることができる、方法。
【請求項2】
前記細胞が哺乳動物細胞であり、任意に前記細胞がマウス細胞又はヒト細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞が、神経細胞、星状膠細胞、乏突起膠細胞、小膠細胞、上衣細胞又は脳幹細胞である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
生体外(in vitro)又はエクスビボ(ex vivo)での方法である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
生体内(in vivo)での方法である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
対象においてRMB3発現によって影響を受ける疾患を予防又は治療する、或いは対象に神経保護を提供する方法であって、前記対象に作用薬を投与することを含み、前記作用薬が、得られる成熟mRNAにエクソン3aが取り込まれないようにpre-mRNAのスプライシングを変更するように、RBM3のpre-mRNAの領域とハイブリダイズすることができる、方法。
【請求項7】
前記治療又は処置が:
神経疾患及び/又は新生児低酸素性虚血性脳症、頭部外傷、若しくは脳卒中である疾患;
アルツハイマー病、パーキンソン病、プリオン病、前頭側頭型認知症、タウオパシー、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、及び血管性認知症から任意に選択される神経変性疾患;
心臓外科手術若しくは誘導された昏睡中に任意に起こる神経学的損傷;又は
鬱病若しくは不安
に対するものである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記領域がエクソン3a内の領域、エクソン3aのスプライス部位にわたる領域、エクソン3aの上流の250ヌクレオチド内に位置する領域、及びエクソン3aの下流の250ヌクレオチド内に位置する領域から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記領域がスプライシングエンハンサーエレメントを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記領域が配列番号27に相当する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記領域が配列番号29に相当する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記領域が配列番号15に相当する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記領域が、配列番号16、17、19、21、23、及び25からなる群から選択される配列番号に相当する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記領域がエクソン3aの5’スプライス部位にわたる、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記領域が、配列番号6の257~269、258~269、259~269、260~269、261~269、262~269、263~269、264~269、265~269、266~269、若しくは267~269位のヌクレオチド、及び/又は配列番号33の1~2、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、1~8、1~9、1~10、1~11、若しくは1~12位のヌクレオチドを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記領域がエクソン3aの3’スプライス部位にわたる、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
前記領域が、配列番号6の1及び2、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、1~8、1~9、若しくは1~10位のヌクレオチド、及び/又は配列番号32の136~147、137~147、138~147、139~147、140~147、141~147、142~147、143~147、144~147、若しくは145~147位のヌクレオチドを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記作用薬がアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)である、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ASOが、請求項8に記載の領域のすべて若しくは一部に相補的又は本質的に相補的である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記作用薬が、前記領域のすべて又は一部に100%相補的であるASOである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ASOが、10~30ヌクレオチド長さ、任意に25ヌクレオチドの長さ、任意に15、16、17、18若しくは19ヌクレオチドの長さ、又は任意に19ヌクレオチドの長さである、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記ASOが、配列番号40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、83、84、85、86及び87のうちの1つを含む、又はからなる、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記ASOが、配列番号51、52、53、54、55、56及び57のうちの1つを含む、又はからなる、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記ASOが、配列番号34、35、36、37、38、39、69及び70のうちの1つを含む、又はからなる、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記ASOがLNA、RNA又はDNAヌクレオチドを含む、請求項19から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記ASOが、交互のLNA及びRNAヌクレオチドを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ASOが、交互のLNA及びDNAヌクレオチドを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記ASOが、交互のRNA及びDNAヌクレオチドを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記ASOが、任意にホスホロチオエート結合である主鎖修飾を含む、請求項19から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記ASOが、任意に2’-O-メトキシエチル(MOE)修飾である糖部位修飾を含む、請求項19から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記ASOが、2’-O-メトキシエチル(MOE)修飾及びホスホロチオエート結合を含む、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
前記ASOが、完全に2’-O-メトキシエチル修飾及び完全にホスホロチオエート修飾されている、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記ASOが、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴヌクレオチドであるか、又はホスホロジアミデートモルホリノオリゴヌクレオチドを含む、請求項19から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記細胞若しくは対象に導入又は投与されるASOをコードする導入遺伝子から、前記ASOを発現することを含む、請求項18から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記ウイルスベクターが組換えAAVベクターである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
請求項19から33のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)。
【請求項37】
細胞においてRBM3コード化成熟mRNAのナンセンス介在分解を阻害する方法であって、前記細胞を作用薬に曝露することを含み、前記作用薬が請求項36に記載のASOである、方法。
【請求項38】
対象においてRMB3発現によって影響を受ける疾患を予防又は治療する、或いは対象に神経保護を提供する方法であって、前記対象に作用薬を投与することを含み、前記作用薬が請求項36に記載のASOである、方法。
【請求項39】
前記治療又は処置が:
神経疾患及び/又は新生児低酸素性虚血性脳症、頭部外傷、若しくは脳卒中である疾患;
アルツハイマー病、パーキンソン病、プリオン病、前頭側頭型認知症、タウオパシー、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、及び血管性認知症から任意に選択される神経変性疾患;又は
心臓外科手術若しくは誘導された昏睡中に任意に起こる神経学的損傷;又は
鬱病若しくは不安
に対するものである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
請求項1から35又は37から39のいずれか一項に従って、RBM3コード化成熟mRNAのナンセンス介在分解(NMD)を阻害する方法で使用される、或いはRMB3発現によって影響を受ける疾患を治療若しくは予防する、又は神経保護治療を提供する方法で使用される、作用薬。
【請求項41】
請求項1から35又は37から39のいずれか一項に従って、RBM3コード化成熟mRNAのナンセンス介在分解(NMD)を阻害する方法で使用される、或いはRMB3発現によって影響を受ける疾患を治療若しくは予防する、又は神経保護治療を提供する方法で使用される医薬品の製造における作用薬の使用。
【請求項42】
細胞においてRBM3の発現を増加することができるアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を同定する方法であって:
i)前記RBM3遺伝子のpre-mRNAの領域を標的化するASOを同定する工程であって、前記領域が、エクソン3a内の領域、エクソン3aのスプライス部位にわたる領域、エクソン3aの上流の250ヌクレオチド内に位置する領域、及びエクソン3aの下流の250ヌクレオチド内に位置する領域から選択される、工程;
ii)工程i)で同定された前記ASOを前記細胞に送達する工程;及び
iii)工程ii)の前記細胞におけるRBM3の発現レベルを測定する工程
を含む、方法。
【請求項43】
iv)任意にASO又はDMSOであるコントロールで処理された細胞におけるRBM3の発現レベルと、工程iii)で測定された発現レベルを比較する工程をさらに含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
発現の前記レベルが、RT-qPCR又はウェスタンブロット法によって測定される、請求項42又は43に記載の方法。
【請求項45】
請求項19から24のいずれか一項に記載のASOをコードする、任意にベクターである、任意にウイルスベクターである、発現コンストラクト。
【請求項46】
請求項45に記載の発現コンストラクトを含む、宿主細胞。
【請求項47】
RBM3の遺伝子からエクソン3aを除去するガイドRNA対であって、第1ガイドRNAがエクソン3aの上流のゲノム配列とハイブリダイズすることができ、且つ第2ガイドRNAがエクソン3aの下流のゲノム配列とハイブリダイズすることができる、ガイドRNA対。
【請求項48】
前記第1ガイドRNAが配列番号11又は配列番号12を含み、且つ前記第2ガイドRNAが配列番号13を含む、請求項47に記載のガイドRNA対。
【請求項49】
対象のゲノムDNAにおいてコードされるRNAスプライス部位を変更するためのCRISPR/Casベースの塩基編集システムであって、
前記CRISPR/Casベースの塩基編集システムが融合タンパク質と、少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)とを含み、
前記融合タンパク質がCasタンパク質及び塩基編集ドメインを含み、
前記少なくとも1つのgRNAが、RBM3の遺伝子における領域とハイブリダイズすることができ、及び
前記領域が:
(i)配列番号32の146~147位のヌクレオチドに位置するスプライス部位が変更されるように、配列番号32の136~147、137~147、138~147、139~147、140~147、141~147、142~147、143~147、144~147、145~147、若しくは146~147位のヌクレオチド、又はその相補的配列;
(ii)配列番号6の106~107位のヌクレオチドに位置するスプライス部位が変更されるように、配列番号6又はその相補的配列;或いは
(iii)配列番号33の最初の2つのヌクレオチドに位置するスプライス部位が変更されるように、配列番号33の1~2、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、1~8、1~9、1~10、1~11、若しくは1~12位のヌクレオチド、又はその相補的配列;
を含み、
任意に、前記標的領域とハイブリダイズする前記gRNA、又は前記gRNAのターゲティングドメインが、16、17、18、19、20、又は21ヌクレオチドの長さである、CRISPR/Casベースの塩基編集システム。
【請求項50】
前記領域が、配列番号32の最後の2つのヌクレオチドに位置するスプライス部位が変更されるように、配列番号32の136~147、137~147、138~147、139~147、140~147、141~147、142~147、143~147、144~147、若しくは145~147位のヌクレオチド、又はその相補的配列を含み、前記領域がさらに、配列番号6の1及び2、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、1~8、1~9、1~10、1~11、1~12、1~13、1~14、若しくは1~15位のヌクレオチド、又はその相補的配列を含む、請求項49に記載のCRISPR/Casベースの塩基編集システム。
【請求項51】
前記領域が、配列番号33の最初の2つのヌクレオチドに位置するスプライス部位が変更されるように、配列番号33の1~2、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、1~8、1~9、1~10、1~11、若しくは1~12位のヌクレオチド、又はその相補的配列を含み、前記領域がさらに、配列番号6の254~269、255~269、256~269、257~269、258~269、259~269、260~269、261~269、262~269、263~269、264~269、265~269、266~269、又は267~269位のヌクレオチドを含む、請求項49に記載のCRISPR/Casベースの塩基編集システム。
【請求項52】
前記領域が、配列番号6の106~17位のヌクレオチドにわたり、且つ配列番号6の106~107位のヌクレオチドに位置するスプライス部位が変更されるように、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20の隣接ヌクレオチドを含む、請求項49に記載のCRISPR/Casベースの塩基編集システム。
【請求項53】
前記標的領域が、配列番号90、91、及び92から選択され、
任意に、前記少なくとも1つのgRNAが、配列番号90、91、及び92のRNA均等物である配列若しくはその相補的配列を含む、又はからなる、請求項49又は50に記載のCRISPR/Casベースの塩基編集システム。
【請求項54】
前記ゲノムDNAにおいてコードされるRNAスプライス部位の変更によって、得られる成熟mRNAにエクソン3aが取り込まれない、請求項49から53のいずれか一項に記載のCRISPR/Casベースの塩基編集システム。
【請求項55】
前記Casタンパク質がCas9を含み、任意に前記Casタンパク質がCas9ニッカーゼを含む、請求項49から54のいずれか一項に記載のCRISPR/Casベースの塩基編集システム。
【請求項56】
前記塩基編集ドメインが、シチジンデアミナーゼドメイン又はアデノシンデアミナーゼドメインを含む、請求項49から55のいずれか一項に記載のCRISPR/Casベースの塩基編集システム。
【請求項57】
RBM3の前記遺伝子における領域とハイブリダイズすることができるガイドRNAをコードする単離核酸であって、配列番号90、91若しくは92から選択される配列、又はその相補的配列を含む、単離核酸。
【請求項58】
請求項49から56のいずれか一項に記載のCRISPR/Casベースの塩基編集システムをコードする、単離ポリヌクレオチド。
【請求項59】
前記ポリヌクレオチドが、前記融合タンパク質をコードする第1ポリヌクレオチド及び前記少なくとも1つのgRNAをコードする第2ポリヌクレオチドを含む、請求項58に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項60】
請求項58又は59に記載の単離ポリヌクレオチドを含む、任意にベクターである、任意にウイルスベクターである、発現コンストラクト。
【請求項61】
請求項58又は59に記載の単離ポリヌクレオチド、或いは請求項60に記載の発現コンストラクトを含む、細胞。
【請求項62】
請求項49から56のいずれか一項に記載のCRISPR/Casベースの塩基編集システム、請求項57から59に記載の単離ポリヌクレオチド、又は請求項60に記載の発現コンストラクトを含む、組成物。
【請求項63】
対象においてRMB3発現によって影響を受ける疾患を予防又は治療する、或いは対象に神経保護を提供する方法であって、前記対象に、請求項49から56のいずれか一項に記載のCRISPR/Casベースの塩基編集システム、請求項57から59に記載の単離核酸、請求項60に記載の発現コンストラクト、又は請求項62に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項64】
前記治療又は処置が:
神経疾患及び/又は新生児低酸素性虚血性脳症、頭部外傷、若しくは脳卒中である疾患;
アルツハイマー病、パーキンソン病、プリオン病、前頭側頭型認知症、タウオパシー、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、及び血管性認知症から任意に選択される神経変性疾患;又は
心臓外科手術若しくは誘導された昏睡中に任意に起こる神経学的損傷;又は
鬱病若しくは不安
に対するものである、請求項63に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年12月20日出願の英国特許第2118495.7号及び2022年10月24日出願の英国特許第2215713.5号からの優先権を主張し、その内容及び要素がすべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は一般に、RNA結合モチーフタンパク質3(RBM3)の発現を増加する方法及び物質、並びにその目的のための、例えば疾患の療法及び予防に使用される作用薬(agent)に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
冬眠及び低体温において、全体的なタンパク質合成及び細胞代謝はダウンレギュレートされるが、低温は、低温ショックタンパク質として知られるタンパク質の小さなサブセットの発現も誘発する(Peretti, D. et al. Nature 518, 236-239 (2015))。これらの中で、RNA結合モチーフタンパク質3(RBM3)及び低温誘導性RNA結合タンパク質(CIRP、CIRBPとしても知られる)は、脳において高レベルで発現される低温ショックタンパク質である1,2,30,31。RBM3及びCIRPB(及び他のRNA結合タンパク質,RBP)は、mRNAのスプライシング、安定性及び輸送を調節し、遺伝子発現(GE)の重要な調節因子である。
【0004】
RBM3及びCIRPBの進化的保存及び極端な温度感受性にもかかわらず、低温誘導された転写物発現の機構的根拠は、長い間謎のままだった。遺伝子発現の世界的解析から、温度依存性遺伝子発現のコントロールの世界的機構として、ナンセンス介在mRNA分解(NMD)と連関する温度調節選択的スプライシング(AS)が示された
【0005】
pre-mRNAの選択的スプライシングから、異なるmRNAアイソフォームが導かれる。NMD経路は、未成熟終止コドン(PTC)をコードするmRNAアイソフォームを認識し、分解のためにこれらのmRNAを標的化し、したがって、遺伝子発現レベルのスプライシング制御(splicing-controlled)調節が可能となる。NMD誘導アイソフォームはRNA結合タンパク質にしばしば見出され、CIRBPの熱誘導PTC含有アイソフォームによって、低温誘導CIRBP発現が説明される。世界的な解析において、種々のRNA結合タンパク質(RBP)の温度制御NMDアイソフォームが、RBM3の熱誘導NMDアイソフォームと共に同定された(Neumann A., “Leveraging RNA-sequencing data to obtain insights about mRNA splicing: from daily rhythms to secretory adaptations and cryptic splice sites” thesis, Appendix I publication 6, 2019)。Neumannらは、温度調節された(temperature-regulated)NMDエクソンを有する60を超えるRBPを報告している。Preussnerら(“Rhythmic gene expression is controlled by alternative splicing triggering nonsense mediated decay”, Abstract submitted at the 24th Annual meeting of the RNA Society, 2019)は、NMD誘導性スプライシングアイソフォームに干渉することによってRBM3及びCIRBPの発現レベルを変化させる方法の確立を目標とすることを考察している。
【0006】
CIRBPは、概日リズム睡眠ホメオスタシスから炎症及び癌の範囲にわたる多様な機能を有し8-11、RBM3は、低体温の神経保護作用と強く関連する12。RBM3の神経保護機能は、低酸素性虚血性脳障害13、神経毒への曝露14及び神経変性疾患(例えば、プリオン感染及びアルツハイマー型マウス)15を含む、独立したシステムにおいて確認されている。さらに具体的には、低体温を誘導することによって、又はレンチウイルス送達によって達成されるRBM3過剰発現の結果、アルツハイマー病のマウスモデルにおいて、及びマウスにおけるプリオン病の経過全体にわたってシナプス保護が得られると同時に、行動上の欠陥及び神経細胞の脱落を予防し、並びに著しく生存時間が引き延ばされる15
【0007】
治療的低体温は、新生児低酸素性虚血性脳症から頭部外傷、脳卒中において、及び成人における心臓外科手術中など、神経保護のための診療において広範に使用される。
【0008】
ヒトにおける低体温誘導神経保護のメカニズムは完全には理解されていない。さらに、ヒトにおける誘導冷却はリスクがないわけではなく、凝血、肺炎等の罹患率が高く、集中治療セットアップを必要とする。
【0009】
本発明は、上記の考察を踏まえて考案された。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
本発明は、低体温の誘導を必要とすることなく、RBM3のレベルを増加することに関する。本発明者らは、以前に実験的に特徴付けられていない、温かい温度でRBM3 mRNAのアイソフォームに含まれるエクソンを同定し、このエクソンが、RBM3のナンセンス介在分解を担っており、したがって温かい温度でRBM3発現の減少が引き起こされることを確認した。
【0011】
このエクソン又はそのスプライス部位を標的化する作用薬は、冷却する必要なくRBM3の発現を増加する。様々なかかる作用薬が本明細書において記述される。
【0012】
Perettiら15は、アルツハイマー病及びプリオン病のマウスモデルにおいてRBM3の発現を誘導するためのレンチウイルスベクターの使用を記述しているが、この記事は、RBM3の低温誘導を担うメカニズムと関係しておらず、RBM3の選択的スプライシングアイソフォームは同定されていない。
【0013】
Neumann(“Leveraging RNA-sequencing data to obtain insights about mRNA splicing: from daily rhythms to secretory adaptations and cryptic splice sites”, Appendix I publication 6, 2019)は、異なる温度でNMDアイソフォームを特徴付け、RBM3などの種々の未注釈のRNA結合タンパク質のNMDバリアントを同定している。RBM3のNMDバリアントは、エクソン3と4の間にそれがあることを示す模式図でのみ説明されるNMDエクソンを含む(図S2A)。温かい温度に対する低温でのその包含頻度(スプライスされたパーセント,PSI)がごく低かったため(dPSI<15%,図S2の説明文参照)、NMDエクソンの包含は、有意なスプライシング事象として同定されなかった。さらに、RBM3 NMDエクソンの包含レベルは、38℃でわずか約3%PSIであり(図S2B)、それは世界的解析で報告された最も低いレベルであり、他のRBP熱誘導NMDエクソンは38℃で20%を超える、又は60%さえも超えるPSIを有した(図2DにおけるhnRNP DL及びCIRBP)。Neumannは、RBM3の相対的発現に対するこのエクソンの包含を防ぐ効果を開示しておらず、このエクソンの具体的な配列又は位置を開示していない。
【0014】
Neumannらは、RBM3のエクソン3とエクソン4の間のエクソンを同定していない。Neumannらにおいて同定される、RBM3に関する選択的スプライシング事象は、選択的末端エクソンであるが、これらは、温度依存性であると同定されなかった(「方向付けなし(undirected)」とマークされた、表EV1のシート3参照)。
【0015】
Llorianら32は、分化中の大動脈平滑筋における他の遺伝子の中でRBM3の選択的スプライシングを研究している。それは、フランキングポイズンエクソンとしてRBM3のイントロン3及び4を記述し、分化細胞におけるイントロンの保持の増加を示す。著者らは、RBM3 mRNAのレベルに対する選択的スプライシングの効果を調べておらず、選択的スプライシングに対する温度の役割を調べておらず、エクソンの包含を確認又は調査していない。
【0016】
本発明の発明者らは、エクソン3及び4の間のNMD誘導エクソンが意外なことに、高温でのその低い包含レベルにもかかわらず、RBM3の温度制御発現を支配することを同定した。RBM3発現の劇的な増加(3~4倍)が、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどのRBM3 pre-mRNAの選択的スプライシングに影響を及ぼすことができる作用薬によって達成されて、本明細書に記載され、且つ実施例で実証されるこのエクソンの包含が防止される。
【0017】
一態様において、本発明は、細胞においてRBM3コード化成熟mRNAのナンセンス介在分解を阻害する方法であって、細胞を作用薬に曝露することを含み、その作用薬が、pre-mRNAのスプライシングを変更するようにRBM3のpre-mRNAの領域とハイブリダイズすることができ、その結果得られた成熟mRNAにおいて、エクソン3aが取り込まれない、方法を提供する。その方法は、生体外(in vitro)又はエクスビボ(ex vivo)での方法であり得る。一部の実施形態において、その方法は生体内(in vivo)での方法である。細胞は哺乳動物細胞、例えば、霊長類細胞であり得て、任意に細胞は、マウス細胞又はヒト細胞であり得る。細胞は好ましくは、神経細胞、星状膠細胞、乏突起膠細胞、小膠細胞、上衣細胞又は脳幹細胞である。
【0018】
本明細書で使用される「曝露(する)」という用語は、作用薬が細胞に入るような様式で、若しくはかかる条件下にて、作用薬(例えば、ASO)に細胞を曝露すること、又は細胞に作用薬を送達することを意味する。例えばJuliano et al.,Bioconjug Chem. 2012 Feb. 15; 23(2):147-57(本明細書にその全体が組み込まれる)を参照のこと。作用薬(例えば、ASO)は、細胞の内部に送達され、細胞核に入る。作用薬は細胞に対して外来性である。一実施形態において、細胞に入るベクター(例えば、ウイルスゲノム、プラスミド、人工染色体)と細胞を接触させる。その細胞において、ベクターは、例えば細胞ゲノムから、又は外来性核酸から、細胞におけるASOの発現を引き起こす。ASOは、生体内又は生体外で細胞に導入することができる。
【0019】
「ハイブリダイズすることができる」-ハイブリダイゼーションアッセイは当技術分野で公知であり、一般に、相補的核酸プローブ(例えば、標識プローブを用いた、in situハイブリダイゼーション、ノーザンブロット法及び関連技術)の使用を伴う。一部の実施形態において、ハイブリダイゼーションアッセイは蛍光標識プローブなどの標識プローブを用いたin situハイブリダイゼーションアッセイである。
【0020】
17~30塩基のオリゴヌクレオチドに適切な選択的ハイブリダイゼーション条件は、6×SSC中で42℃にて一晩ハイブリダイゼーションすることと、42℃から65℃への一連の上昇温度にて6×SSC中で洗浄することと、を含む。指定の配列相同性の核酸分子間のハイブリダイゼーションを達成するのに必要なストリンジェントな条件を計算する一般式は(Sambrook et al., 1989):Tm=81.5℃+16.6Log[Na]+0.41(%G+C)-0.63(ホルムアミド%)-二重鎖中の600/♯塩基対(bp)。
【0021】
別の態様において、本発明は、対象におけるRMB3発現によって影響を受ける疾患の治療又は予防方法であって、対象に作用薬を投与することを含み、その作用薬が、pre-mRNAのスプライシングを変更するようにRBM3のpre-mRNAの領域とハイブリダイズすることができ、その結果得られた成熟mRNAにおいて、エクソン3aが取り込まれない、方法を提供する。一態様において、対象において神経保護を増加する方法であって、対象に作用薬を投与することを含み、その作用薬が、pre-mRNAのスプライシングを変更するようにRBM3のpre-mRNAの領域とハイブリダイズすることができ、その結果得られた成熟mRNAにおいて、エクソン3aが取り込まれない、方法を提供する。
【0022】
本発明の作用薬は、エクソン3aのすべて、又は一部の取り込みを防ぐことが可能であり得る。
【0023】
本明細書で使用される、「発現」は、遺伝子発現又はタンパク質発現であり得て、したがってRBM3の転写物のレベル又はRBM3のタンパク質レベルを定量化することによって測定され得る。RBM3の発現を測定する例示的な方法は、以下の「方法」セクションに述べられる。
【0024】
本発明の方法及び作用薬を用いて、神経疾患などの疾患が治療若しくは予防され得て、及び/又はその疾患は、新生児低酸素性虚血性脳症、頭部外傷、若しくは脳卒中;不安若しくは鬱病;アルツハイマー病、パーキンソン病、プリオン病、前頭側頭型認知症、タウオパシー、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、及び血管性認知症から任意に選択される神経変性疾患;又は任意に心臓外科手術中に起こる神経学的損傷、若しくは誘導された昏睡(誘導された昏睡)である。
【0025】
一部の実施形態において、RBM3のpre-mRNAの領域は:エクソン3a内の領域、エクソン3aのスプライス部位にわたる領域、エクソン3aの上流の250ヌクレオチド内に位置する領域、及びエクソン3aの下流の250ヌクレオチド内に位置する領域から選択される。一部の実施形態において、領域は、エクソン3aの上流の200ヌクレオチド内、又はエクソン3aの下流の200ヌクレオチド内位置する。その領域は、エクソン3aの上流の10、20、30、40、50、60、70、80、90又は100ヌクレオチド内であり得る。その領域は、エクソン3aの下流の10、20、30、40、50、60、70、80、90又は100ヌクレオチド内であり得る。その領域は、エクソン3aの上流の110、120、130、140、150、160、170、180、190又は200ヌクレオチド内であり得る。その領域は、エクソン3aの下流の110、120、130、140、150、160、170、180、190又は200ヌクレオチド内であり得る。その領域は、エクソン3aの上流の210、220、230、240又は250ヌクレオチド内であり得る。その領域は、エクソン3aの下流の210、220、230、240又は250ヌクレオチド内であり得る。その領域は、エクソン3aの上流又は下流であり得て、RBM3遺伝子の注釈付きイントロン3に相当する。
【0026】
一部の実施形態において、その領域は、スプライスエンハンサー要素を含む。例えば、一部の実施形態において、領域は、配列番号27、好ましくは配列番号29に相当する。他の実施形態において、領域は、配列番号15、16、17、19、21、23、又は25に相当する。
【0027】
一部の実施形態において、領域は、エクソン3aの5’スプライス部位にわたる。特定の実施形態において、領域は、配列番号6の257~269、258~269、259~269、260~269、261~269、262~269、263~269、264~269、265~269、266~269、若しくは267~269位のヌクレオチド、及び/又は配列番号33の1~2、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、1~8、1~9、1~10、1~11、若しくは1~12位のヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、領域は、配列番号5の259~271、260~271、261~271、262~271、263~271、264~271、265~271、266~271、267~271、268~271、又は269~271位のヌクレオチドを含む。
【0028】
一部の実施形態において、領域は、エクソン3aの3’スプライス部位にわたる。一部の実施形態において、領域は、配列番号6の1及び2位、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、1~8、1~9若しくは1~10位のヌクレオチド及び/又は配列番号32の136~147、137~147、138~147、139~147、140~147、141~147、142~147、143~147、144~147、若しくは145~147位のヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、領域は、配列番号5の1及び2位、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、1~8、1~9、又は1~10位のヌクレオチドを含む。
【0029】
特定の実施形態において、作用薬はアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)である。この場合には、細胞においてRBM3コード化成熟mRNAのナンセンス介在分解を阻害する方法、神経保護を増加する方法及び/又は本発明に従って疾患を治療若しくは予防する方法はさらに、前記細胞又は対象に導入又は投与されるASOをコードする導入遺伝子からASOを発現させることをさらに含み得る。好ましくは、ウイルスベクターは組換えAAVベクターである。
【0030】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載のASOを提供する。本発明によるASOをコードする発現コンストラクトも提供される。好ましくは、発現コンストラクトはベクター又はウイルスベクターである。発現コンストラクトを含む宿主細胞も提供される。
【0031】
「アンチセンスオリゴヌクレオチド」-本明細書で使用される「アンチセンスオリゴヌクレオチド」、「ASO」及び「アンチセンスオリゴマー」という用語は、区別なく使用され、且つワトソン-クリック型塩基対又はゆらぎ塩基対(G-U)によって、標的核酸(例えば、pre-mRNA)配列とハイブリダイズする、ヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを意味する。
【0032】
好ましくは、ASOは、本明細書に記載のRBM3のpre-mRNAの領域のすべて若しくは一部に相補的又は本質的に相補的である。
【0033】
ASOは、pre-mRNAとハイブリダイズするのに適切な、且つスプライシングの変更に有効な、いずれかの長さであり得る。一部の実施形態において、ASOは10~30ヌクレオチドの長さである。好ましくは、ASOは25ヌクレオチドの長さであるか、又はASOは、15、16、17、18若しくは19ヌクレオチドの長さである。特定の実施形態において、ASOは19ヌクレオチドの長さである。特定の実施形態において、ASOは8~300、好ましくは18~30ヌクレオチドの長さであり、より好ましくは、ASOは、20、21、22、23、24又は25ヌクレオチドの長さである。具体的な実施形態において、ASOは、30~40、41~50、又は51~300ヌクレオチドの長さである。
【0034】
DNA配列が、例えば図面又は配列番号を参照して本明細書で指定されている場合、文脈で特に必要とされていない限り、それが存在する場合にTがUで置換されている、「RNA同等物」は、必要な変更を加えて開示されることは理解されよう。
【0035】
本発明の目的での、「~に相補的」、「配列番号Xに表されるヌクレオチド配列の相補的配列」は、シャルガフの法則(A⇔T又はU;G⇔C)に従って、その相補的ヌクレオチドによってヌクレオチドを置き換え、5’から3’方向に、つまり表されるヌクレオチド配列の反対方向に配列を読み取ることによって、表されるヌクレオチド配列から誘導することができるヌクレオチド配列である。
【0036】
ポリヌクレオチド(例えば、オリゴヌクレオチド、ASO、mRNA、gRNA等)は互いに「相補的」であり、2つの一本鎖ポリヌクレオチド間で逆平行配置でハイブリダイゼーションが起こる。
【0037】
「~に本質的に相補的」-ASOは、標的配列に対する正確な配列相補性又は近い相補性(例えば、本質的に相補的であり、標的配列に結合し、且つRBM3 pre-mRNAのスプライシングを変更するのに十分な相補性を有する)を有し得る。
【0038】
ASOが、スプライセオソームの複合体又はスプライセオソームの成分又はトランス調のpre-mRNAへの結合をブロック又は阻害し得るいずれかの場合に;ASOは、それらが標的核酸(例えば、pre-mRNA転写物)に結合(ハイブリダイズ)し、生理学的条件下にてハイブリダイズしたままの状態であるようにデザインされる。
【0039】
通常、ASOは、目的の(標的)核酸配列以外の部位とハイブリダイズする場合には、それらは、標的核酸ではない限られた数の配列に(標的核酸以外のわずかな部位に)ハイブリダイズする。ASOが他の部位に結合し、「オフターゲット」効果を引き起こす尤度(likelihood)が限られるように、ASOのデザインでは、標的核酸配列、又はゲノム若しくは細胞RNA/トランスクリプトームにおける他の位置での十分に類似の核酸配列の出現が考慮に入れられる。
【0040】
作用薬(例えば、ASO)は、標的配列におけるすべての核酸塩基とハイブリダイズする必要はなく、それがハイブリダイズする核酸塩基は、隣接又は非隣接塩基であり得る。介在又は隣接セグメントがハイブリダイゼーション事象(例えば、ループ構造又はヘアピン構造が形成し得る)に関与しないように、ASOは、標的核酸の1つ又は複数のセグメントにわたってハイブリダイズし得る。特定の実施形態において、ASOは、標的核酸における非隣接核酸塩基とハイブリダイズする。例えば、ASOがハイブリダイズしない1つ又は複数の核酸塩基によって分離される、標的核酸における核酸塩基と、ASOがハイブリダイズすることができる。
【0041】
このように、作用薬(例えば、ASO)は、エクソン3と4の間の領域内の配列の少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10の隣接ヌクレオチド(nt)と相補的である相補性の配列を含み得る。一部の実施形態において、相補性の配列は、エクソン3a内の配列の少なくとも8、少なくとも9又は少なくとも10の隣接ヌクレオチドと相補的である。一部の実施形態において、相補性の配列は、エクソン3aのスプライス部位にわたる少なくとも8、少なくとも9又は少なくとも10の隣接ヌクレオチドと相補的である。一部の実施形態において、相補性の配列は、スプライスエンハンサーエレメントの少なくとも8、少なくとも9又は少なくとも10の隣接ヌクレオチドと相補的である。
【0042】
「相補性」(1つのポリヌクレオチドがもう1つのポリヌクレオチドと相補的である程度)は、一般に認められる塩基対規則に従って、互いに水素結合を形成すると予想される反対の鎖における塩基の割合(例えば、パーセンテージ)の点から数量化することができる。オリゴマー化合物、例えば、ASO又はgRNAの配列は、ハイブリダイズする、その標的核酸の配列と100%相補的である必要はない。特定の実施形態において、「本質的に相補的」なASOは、それらが標的化される標的核酸配列内の標的領域に対して少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約99%の配列相補性を含み得る。
【0043】
例えば、オリゴマー化合物の20核酸塩基のうち18塩基が標的領域に対して相補的であり、したがって、特異的とハイブリダイズするであろう、ASOは、90パーセントの相補性に相当する。この例において、残存する非相補的核酸塩基は、相補的核酸塩基と共にまとまりとなるか、又は相補的核酸塩基と散在し得て、互いに隣接する、又は相補的核酸塩基と隣接する必要はない。標的核酸と完全な相補性の2つの領域によってフランキングされる4つの非相補的核酸塩基を有する、18核酸塩基の長さであるASOは、標的核酸との全体的な相補性77.8%を有し、したがってこの範囲内にあるだろう。
【0044】
標的領域のセンス鎖とハイブリダイズすることができるASOを考慮する場合、センス又はアンチセンス領域の長さ全体が長いほど、これらの領域と、相当する標的領域(そのの相補的配列)との相補性又は配列同一性の必要条件の厳密性が低くなることは認識されよう。
【0045】
しかしながら、対象の核酸は、標的核酸の相当する部分と100%の配列同一性を有する共に、約19個の連続したヌクレオチド、特に約25ヌクレオチドの配列を含むことが好ましい。
【0046】
「に相当する」-1つの配列における、ある位置でのヌクレオチド若しくはヌクレオチド配列又は領域が、それらが最適にアラインされた場合に、類似の特定のヌクレオチド配列におけるヌクレオチド若しくはヌクレオチド配列又は領域の位置に相当する。通常、相当する領域は、高度の配列同一性を共有する。
【0047】
「最適アライメント」-2つの配列の最適アライメントは、The European Molecular Biology Open Software Suite (EMBOSS, Rice et al., 2000, Trends in Genetics 16(6): 276-277;例えば、https://www.ebi.ac.uk/Tools/emboss/のWorld Wide Webを参照)におけるNeedleman-Wunsch大域的アライメントアルゴリズム(Needleman and Wunsch, 1970, J Mol Biol 48(3):443-53)に従って、デフォルト設定(ギャップ開始ペナルティ=10(ヌクレオチドに対して)/10(タンパク質に対して)及びギャップ伸長ペナルティ=0.5(ヌクレオチドに対して)/0.5(タンパク質に対して))を用いて、長さ全体にわたって2つの配列をアラインすることによって見出される。ヌクレオチドに関して、使用されるデフォルトのスコアマトリックスはEDNAFULLであり、タンパク質に関しては、デフォルトのスコアマトリックスはEBLOSUM62である。
【0048】
「配列同一性」-本発明の目的のために、パーセンテージで表される2つの関連するヌクレオチド又はアミノ酸配列の配列同一性は、比較される位置の数によって割られた同一残基(×100)を有する、最適にアラインされた2つの配列における位置の数を意味する。ギャップ、つまり残基が1つの配列に存在するが、もう一方の配列には存在しない場合に、アライメントにおける位置は、非同一残基を有する位置とみなされる。
【0049】
一部の実施形態において、ASOは、1、2、若しくは3個の置換を任意に有する、配列番号40、41、42、43、44、45、46、47、48、49及び50のうちの1つを含む、又はからなる。一部の実施形態において、ASOは、1、2、若しくは3個の置換を任意に有する、配列番号51、52、53、54、55、56及び57のうちの1つを含む、又はからなる。特定の実施形態において、ASOは、1、2、若しくは3個の置換を任意に有する、配列番号34、35、36、37、38、39、69及び70のうちの1つを含む、又はからなる。
【0050】
一部の実施形態において、ASOは、1、2、若しくは3個の置換を任意に有する、配列番号40、41、42、43、44、46、47、48、49、50、83、84、85、86及び87のうちの1つを含む、又はからなる。
【0051】
一部の実施形態において、ASOは、1、2、若しくは3個の置換を任意に有する、配列番号83、84、85及び87のうちの1つを含む、又はからなる。
【0052】
特定の実施形態において、ASOは、1、2、若しくは3個の置換を任意に有する、配列番号44、46、47、48、83、84、85、86及び87のうちの1つを含む、又はからなる。
【0053】
本明細書に記載のASOは、LNA、RNA又はDNAヌクレオチドを含み得る。一部の実施形態において、ASOは、交互の(alternating)LNA及びRNAヌクレオチドを含む。他の実施形態において、ASOは、交互のLNA及びDNAヌクレオチドを含む。具体的な実施形態において、ASOは、交互のRNA及びDNAヌクレオチドを含む。
【0054】
一部の実施形態において、ASOは、任意にホスホロチオエート結合である主鎖の修飾を含む。一部の実施形態において、ASOは、任意に2’-O-メトキシエチル(MOE)修飾である、糖部位の修飾を含む。好ましくは、ASOは、2’-O-メトキシエチル(MOE)修飾及びホスホロチオエート結合を含む。具体的な実施形態において、ASOは完全に2’-O-メトキシエチル修飾及び完全にホスホロチオエート修飾される。一部の実施形態において、ASOは2’-O-メチル修飾を含む。一部の実施形態において、ASOは完全に2’-O-メチル及び完全にホスホロチオエート修飾される。
【0055】
特定の実施形態において、ASOは、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴヌクレオチドであるか、又はホスホロジアミデートモルホリノオリゴヌクレオチドを含む。
【0056】
別の態様において、本発明は、細胞においてRBM3コード化成熟mRNAのナンセンス介在分解を阻害する方法であって、細胞を作用薬に曝露することを含み、その作用薬が本明細書に記載のASOである、方法を提供する。
【0057】
別の態様において、対象におけるRMB3発現によって影響を受ける疾患の治療又は予防方法であって、対象に作用薬を投与することを含み、その作用薬が本明細書に記載のASOである、方法が提供される。対象において神経保護を増加する方法であって、対象に作用薬を投与することを含み、その作用薬が本明細書に記載のASOである方法も提供される。
【0058】
本発明はさらに、RBM3コード化成熟mRNAのナンセンス介在分解(NMD)を阻害する方法で使用される、RMB3発現によって影響を受ける疾患の治療若しくは予防方法で使用される、又は本明細書に記載のように対象において神経保護を増加する方法で使用される、作用薬を提供する。一部の実施形態において、作用薬はASOである。
【0059】
別の態様において、RBM3コード化成熟mRNAのンセンス介在分解(NMD)を阻害する方法で使用される医薬品の製造における作用薬の使用、RMB3発現によって影響を受ける疾患の治療若しくは予防方法で使用される医薬品の製造における作用薬の使用、又は本明細書に記載のように対象において神経保護を増加するための医薬品の製造における作用薬の使用が提供される。
【0060】
更なる態様において、細胞においてRBM3の発現を増加することができるアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を同定する方法であって、i)RBM3遺伝子のpre-mRNAの領域を標的化するASOを同定する工程であって、その領域が、エクソン3a内の領域、エクソン3aのスプライス部位にわたる領域、エクソン3aの上流の250ヌクレオチド内に位置する領域、及びエクソン3aの下流の250ヌクレオチド内に位置する領域から選択される工程;ii)工程i)で同定されたASOを細胞に送達する工程;及びiii)工程ii)の細胞においてRBM3の発現レベルを測定する工程;を含む方法が提供される。特定の実施形態において、その方法はさらに:iv)任意にASO又はDMSOであるコントロールで処理された細胞におけるRBM3の発現のレベルと、工程iii)で測定された発現のレベルを比較する工程を含む。好ましくは、発現のレベルは、RT-qPCR又はウェスタンブロット法によって測定される。
【0061】
別の態様において、本発明は、そこからエクソン3aを除去するように、RBM3の遺伝子における領域とハイブリダイズすることができる少なくとも1つのgRNAなど、本明細書に記載のCRISPR/Casベースのシステムを提供する。
【0062】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載のスプライス部位の1つ又は複数を編集するように、RBM3の遺伝子における領域とハイブリダイズすることができる少なくとも1つのgRNAなど、本明細書に記載のCRISPR/Casベースの塩基編集システムを提供する。
【0063】
別の態様において、RBM3の遺伝子からエクソン3aを除去するためのガイドRNA対が提供され、第1ガイドRNAは、エクソン3aの上流のゲノム配列とハイブリダイズすることができ、且つ第2ガイドRNAは、エクソン3aの下流のゲノム配列とハイブリダイズすることができる。一部の実施形態において、第1ガイドRNAは、配列番号11又は配列番号12を含み、第2ガイドRNAは配列番号13を含む。
【0064】
一部の実施形態において、gRNAは、上記で定義される領域のすべて若しくは一部と相補的又は本質的に相補的である。特定の実施形態において、gRNAは、前記領域に対して80%、85%、90%、95%又は100%相補的である。特定の実施形態において、gRNAは前記領域に100%相補的である。
【0065】
CRISPR/Caシステムをコードする、発現コンストラクト又はコンストラクトの組合せも提供される。好ましくは、発現コンストラクトはベクター又はウイルスベクターである。
【0066】
別の態様において、本発明は、対象におけるRMB3発現によって影響を受ける疾患を治療若しくは予防する、又は対象に神経保護治療を提供する方法であって、本明細書に記載のCRISPR/Casベースの塩基編集システム、又はそのシステムをコードする発現コンストラクトを対象に投与することを含む方法を提供する。
【0067】
本発明は、かかる組合せが明らかに容認できない、又は特別に避けられる場合を除いては、記載の態様及び好ましい特徴の組合せを含む。
【0068】
発明の詳細な説明
RBM3
IS1-RNPL及びRNPLとしても知られるRNA結合モチーフタンパク質3(RBM3)は、低下した温度に応じてアップレギュレートされる低温ショックタンパク質である。RBM3は、進化上、高度に保存されたRNA結合タンパク質である。
【0069】
ヒトRBM3遺伝子(NCBI遺伝子ID:5935)は、染色体X48574484-48581162、GRCh38.p13プライマリーアセンブリに位置し、157アミノ酸長さのRBM3タンパク質をコードする(NCBI参照配列:NP_006734.1)。マウスRBM3遺伝子はNCBI遺伝子ID:19652を有する。
【0070】
RBM3は、骨髄及び脳組織などの組織において発現する(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene?Db=gene&Cmd=ShowDetailView&TermToSearch=5935#gene-expression)。異なるアイソフォームをコードすると予測される、複数の選択的にスプライスされた転写物バリアントが特徴付けられている。
【0071】
本明細書において、「RBM3」とは、いずれかの種からのRBM3を意味し、且ついずれかの種からのRBM3のアイソフォーム、断片、バリアント又は相同体を包含する。特定の実施形態において、その種はヒト(Homo sapiens)である。一部の実施形態において、種はマウス(ハツカネズミ(Mus musculus))である。
【0072】
RBM3の「バリアント又は相同体」又はそのコード核酸とは、ヒト配列に機能的に対応し、且つその2つが最適にアラインすることができるような、高度の配列類似性又は同一性、及び本明細書に記載の同定された相当する領域を共有する、関連する種における天然RBM3を意味する。
【0073】
pre-mRNAの選択的スプライシング
大部分のスプライスされていない真核生物pre-mRNAはタンパク質コーディングエクソン及び介在非コーディングイントロンからなる。pre-mRNAスプライシング中、イントロンは、pre-mRNAから切断され、エクソンが連結されて、成熟mRNAが形成され、次いでそれがタンパク質へと翻訳される。イントロンとエクソンとの境界が、イントロン-エクソンジャンクションにてスプライス部位(ss)によってマークされる。
【0074】
複数の異なる成熟mRNAが形成されるように、95%を超えるヒトのマルチエクソン遺伝子をスプライスすることができる(Pan, Q. et al. (2008), Deep surveying of alternative splicing complexity in the human transcriptome by high-throughput sequencing., Nature genetics, 40(12), pp. 1413-5. doi: 10.1038/ng.259.; Barbosa-Morais, N. L. et al. (2012) The evolutionary landscape of alternative splicing in vertebrate species., Science 338(6114), pp. 1587-93. doi:10.1126/science.1230612; Merkin, J. et al. (2012) Evolutionary dynamics of gene and isoform regulation in Mammalian tissues., Science. 338(6114), pp. 1593-9. doi:10.1126/science.1228186.)。構成的スプライシングと対照的に、mRNAアイソフォーム1つのみが遺伝子から作られる場合、このプロセスは選択的スプライシング(AS)と呼ばれる。ASは、主な5つのカテゴリーに分類される:選択的5’又は3’スプライス部位(A5ss/A3ss)を使用することによるエクソンの短縮、カセットエクソンのスキッピング(SE)、2つの連続したエクソンのいずれか1つのスキッピング、及びもう一方(相互に排他的なエクソン,MXE)の同時包含、又はイントロンの保持(RI)。
【0075】
選択的スプライシング因子は、スプライセオソームの成分と相互作用することによってASを調節し、特定のスプライス部位の利用を促進又は抑制することができる。これらのトランス作用性タンパク質因子は、その配列内のシス調節エレメントにてpre-mRNAに結合する。シス調節エレメントは、その位置及び調節のタイプに基づいて4つのカテゴリーに分けられる:イントロン内スプライシングエンハンサー(ISE)、エクソン内スプライシングエンハンサー(ESE,どちらもss利用を促進する)、イントロン内スプライシングサイレンサー(ISS)及びエクソン内スプライシングサイレンサー(ESS,どちらもss利用を抑制する)(Black, D. L. (2003) Mechanisms of Alternative Pre-Messenger RNA Splicing, Annual Review of Biochemistry. pp. 291-336. doi: 10.1146/annurev.biochem.72.121801.161720.)。
【0076】
mRNAレベルをコントロールし、したがってタンパク質レベルをコントロールする選択的スプライシング事象の一例は、RNA結合タンパク質において高度に保存されたエクソンである。転写物に包含された場合に、これらのエクソンは、ナンセンス介在分解(NMD)経路を経てmRNAの分解を導く。したがって、これらのエクソンの包含を防ぐことによって、mRNAのナンセンス介在分解(NMD)を阻害することができ、RNA結合タンパク質のmRNA及びタンパク質レベルを増加することができる。
【0077】
本明細書におけるすべての実施形態において、「mRNA」、「RNA」又は「転写物」の言及は、一次転写物(pre-mRNA)であり得るメッセンジャーRNA分子、又は成熟mRNAと呼ばれる、pre-mRNAのプロセシング及びスプライシングの産物を意味する。Pre-mRNAは、スプライスされておらず、したがってイントロンを含む。
【0078】
ナンセンス介在分解(NMD)
ナンセンス介在mRNA分解(NMD)は、真核生物のRNA分解経路であり、それを介して一組のNMD因子が、異常な状況に位置する翻訳終止コドンを含有するmRNAアイソフォームを認識及び分解する。これらのコドンは未成熟終止コドン(PTC)と呼ばれる。PTC含有mRNAアイソフォームはしばしば、ポイズン(poison)アイソフォームと呼ばれる。
【0079】
ポイズンアイソフォームは頻繁に、RNA結合タンパク質において見出され、選択的スプライシングによって、PTC含有エクソン、ポイズンエクソンの、転写物への包含が導かれる。CIRBPの熱誘導ポイズンエクソンは、低温誘導CIRBP発現の説明を提供する
【0080】
PTC認識はmRNAの翻訳中に起こり、mRNAを最終的に分解するためにいくつかのタンパク質を必要とする。これらのタンパク質としては、UPF1、UPF2及びUPF3及びSMG6及びSMG5~SMG7などのNMD因子が挙げられる。NMDのプロセスは、より詳細にLykke-Andersen, S. & Jensen, T. H. Nature Reviews Molecular Cell Biology 16, 665 (2015)に記述されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0081】
翻訳の阻害剤を用いて、分解が起こる前にポイズンmRNAアイソフォームが安定化され得て、したがってポイズンmRNAアイソフォームの蓄積及び検出が可能となる。翻訳の例示的な阻害剤はシクロヘキシミド(CHX)である。その代わりとして、NMDは、UPF1、及び/又はMG6及びSMG7などのNMDにおいて役割を果たす他のタンパク質をノックダウンすることによって阻害され得る。
【0082】
RBM3エクソン3a
RBM3ポリペプチド(NP_006734.1)をコードするヒトRBM3の成熟mRNAは、GenBank受入番号NM_006743.5において定義され、7つの注釈付きエクソンからなる。エクソン3(配列番号1)は、NM_006743.5のヌクレオチド207~313にわたり、エクソン4(配列番号2)は、NM_006743.5のヌクレオチド314~419にわたる。
【0083】
RBM3ポリペプチドアイソフォーム1(NP_001159881.1)をコードするマウスRBM3の成熟mRNAは、GenBank受入番号NM_001166409.2で定義され、7つの注釈付きエクソンからなる。エクソン3(配列番号3)は、NM_001166409.2のヌクレオチド362~468にわたり、エクソン4(配列番号4)は、NM_001166409.2のヌクレオチド469~568にわたる。
【0084】
本発明者らは、本明細書でエクソン3aと呼ばれる、以前に注釈されていないエクソンの、RBM3転写物への包含を導く選択的スプライシング事象を同定した。エクソン3aはPTCを含有し、転写物のナンセンス介在分解(NMD)を誘導し、したがってRBM3のmRNAレベル及びタンパク質レベルが低減される。本発明者らはさらに、温かい温度でエクソン3aの包含が誘導されることを同定した。
【0085】
エクソン3aは、RBM3の注釈付きイントロン3内に、注釈付きエクソン3及び4の間に位置する。表1から、マウス及びヒトゲノム上にマッピングされたエクソン3aの配列が実証される。2つの配列は高い(91%)配列同一性を共有する。
【0086】
本発明は、スプライシングを調節し、それによって、成熟RBM3 mRNAへのエクソン3a(又は少なくともその関連PTC)の取り込みを回避する方法を提供する。エクソン3aの取り込みの回避とは、エクソン3aのすべて又は一部が成熟RBM3 mRNAに取り込まれないことを意味する。実施例3に記載のように、エクソン3aの配列(例えば、配列番号6及び配列番号5)の107位に選択的な内部3’ssが存在し、したがって、本発明の作用薬及び方法によって、配列番号5の108~271位のヌクレオチド又は配列番号6の108~269位のヌクレオチドが取り込まれない(それらはスキップされる)成熟mRNAが導かれ得る。したがって、本発明の作用薬によって、エクソン3aのすべて又はエクソン3aの一部、例えば配列番号6の108~269位のヌクレオチドのスキッピングが生じ得る。
【0087】
【表1】
【0088】
特定の実施形態において、種はヒト(Homo sapiens)であり、したがって「エクソン3a」は配列番号6を意味する。
【0089】
一部の実施形態において、種はマウス(ハツカネズミ)であり、したがって「エクソン3a」は配列番号5を意味する。
【0090】
RBM3は、種全体にわたって高度に保存されている(ZhouRBetal. Oncotarget. 2017; 8(13): 22235-22250)。RBM3の高い進化的保存を考慮して、エクソン3aは、既知のアライメント技術を用いて他の種のゲノム上にマッピングされ得る。
【0091】
したがって、本明細書で使用される「エクソン3a」は、ヒトRBM3遺伝子のエクソン3aの配列(配列番号6)又はマウスRBM3遺伝子のエクソン3aの配列(配列番号5)を含み得て、或いは配列番号6又は配列番号5の相同体若しくは他のバリアントである配列を含み得る。請求される本発明の文脈において、RBM3エクソン3aは通常、関連する細胞又は対象に対してネイティブである。
【0092】
エクソン3aの検出
RBM3のmRNAにおけるエクソン3aの存在は、エクソン3aの上流及び下流の配列に相補的であるPCRプライマーを使用することによって、例えばエクソン3及び4又は5、或いはエクソン3aの上流及び下流のイントロン配列に結合することによって検出され得る。上記で論述されるように、翻訳の阻害を用いて、NMDを介した分解が起こる前に、エクソン3a含有mRNAアイソフォームが安定化され得る。
【0093】
したがって、別の態様において、PCRプライマー対が提供される。一部の実施形態において、PCRプライマーはフォワードプライマー(5’-TCATCACCTTCACCAACCCA(配列番号7))及びリバースプライマー(5’-TCTAGAGTAGCTGCGACCAC(配列番号8))である。一部の実施形態において、PCRプライマーは、マウスRBM3遺伝子用にデザインされた、フォワードプライマー(5’-TCATCACCTTCACAAACCCA(配列番号9))及びリバースプライマー(5’-GTGGTCGCAGTTACTCTAGA(配列番号10))である。
【0094】
ゲノム編集
RBM3エクソン3aを欠損している細胞系を作成するために、又は本明細書に記載の疾患を予防若しくは治療するための療法として、ゲノム編集が用いられ得る。種々のゲノム編集技術、例えばCRISPR/Cas9が用いられて、RBM3の遺伝子からエクソン3aが除去され得る。ガイドRNA対を用いて、エクソン3aが除去され得る。エクソン3aを欠損している遺伝子操作細胞は、例えば実施例5の具体的な実施形態で示すように、低温でさえ、RBM3のより高い発現を示し得る。
【0095】
別の態様において、エクソン3aを欠損している遺伝子操作細胞が提供される。特定の実施形態において、遺伝子操作細胞におけるRBM3の発現は、野生型(又は他のコントロール)細胞におけるRBM3の発現と比較して高い。一部の実施形態において、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃、又は41℃でのRBM3の発現は、野生型(又は他のコントロール)細胞におけるRBM3の発現と比較して、遺伝子操作細胞において高い。
【0096】
一態様において、RBM3の遺伝子からクソン3aを除去するためのガイドRNA対が提供され、任意に第1ガイドRNAは、エクソン3aの上流の遺伝子とハイブリダイズすることができ、第2ガイドRNAは、エクソン3aの下流の遺伝子とハイブリダイズすることができる。一部の実施形態において、第1ガイドRNAは配列番号11又は配列番号12を含み、第2ガイドRNAは配列番号13を含む。
【0097】
塩基編集
CRISPR介在塩基編集を用いて、RBM3エクソン3aのスプライス部位が変更され得て、その結果、永久的にエクソンが排除される(非取り込み)。
【0098】
Casタンパク質がgRNAの3’末端と複合体を形成する。CRISPRベースのシステムの特異性は、2つの因子:ターゲティング配列及びプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)に応じて異なる。標的化又は認識配列は、gRNAの5’末端に位置し、且つプロトスペーサーとして知られる正確なDNA配列にて宿主DNA(標的核酸又は標的DNA)上で塩基対と対をなすように設計される。gRNAの認識配列を単に交換することによって、Casタンパク質は、新しいゲノム標的に方向付けされ得る。PAM配列は、変更されるべきDNA上に位置し、且つCasタンパク質によって認識される。Casタンパク質のPAM認識配列は、種特異的であり得る。
【0099】
当技術分野でよく知られているように(例えば、Kluesner, Mitchell G., et al. “CRISPR-Cas9 cytidine and adenosine base editing of splice-sites mediates highly-efficient disruption of proteins in primary and immortalized cells.” Nature communications 12.1 (2021): 1-12参照)、塩基エディタ(base editor)は、塩基編集ドメインに融合されたCasタンパク質からなる遺伝子編集酵素のクラス、例えばヌクレオチドデアミナーゼドメインに融合されたCas9ニッカーゼである。原則として、塩基エディタは、gRNAによってガイドされるゲノムにおける標的領域に局在化する。一旦結合すると、Cas9複合体は、非結合鎖に取って代わり、ssDNA Rループを形成する。Rループは、繋ぎ止められたデアミナーゼドメインにアクセス可能な状態となり、それによって、シチジンデアミナーゼ塩基エディタ(CBE,C:G→T:A)がC→Uに脱アミノ化し、Tのように塩基対合し、及びアデノシンデアミナーゼ塩基エディタ(ABE,A:T→G:C)がA→Iに脱アミノ化し、Gのように塩基対合する。次いで、コアCas9ニッカーゼによる未編集鎖の同時ニッキングは、DNA修復を刺激し、新たに脱アミノ化された塩基がDNA重合の鋳型として使用され、それによって、DNAの両方の鎖における編集が防がれる。
【0100】
治療的塩基編集の例が、例えば国際公開第2022081612A1号に開示されている。
【0101】
一部の実施形態において、塩基編集ドメインは、アデノシンデアミナーゼ塩基エディタ(ABE)を含む。アデニン塩基エディタとしては、例えば、その野生型及び変異体を含むecTadAが挙げられる。アデノシンデアミナーゼ塩基エディタは、Gaudelli et al. (Nature 2017, 551, 464-471), Koblan et al. (Nature Biotech.2018, 36, 843-846), Richter et al. (Nature Biotech.2020, 38, 883-891)、及びGaudelli et al. (Nature Biotech.2020, 38, 892-900)に記載されており、それぞれが参照により本明細書に組み込まれる。
【0102】
一部の実施形態において、塩基編集ドメインはシチジンデアミナーゼドメインを含む。シチジンデアミナーゼドメインは、DNA塩基シトシンをウラシルへ変換することができる。一部の実施形態において、シチジンデアミナーゼドメインとしては、アポリポタンパク質B mRNA編集酵素、触媒ポリペプチド様(APOBEC)ファミリーデアミナーゼが挙げられる。一部の実施形態において、シチジンデアミナーゼドメインとしては、APOBEC1デアミナーゼ、APOBEC2デアミナーゼ、APOBEC3Aデアミナーゼ、APOBEC3Bデアミナーゼ、APOBEC3Cデアミナーゼ、APOBEC3Dデアミナーゼ、APOBEC3Fデアミナーゼ、APOBEC3Gデアミナーゼ、APOBEC3Hデアミナーゼ、又はその組合せが挙げられる。一部の実施形態において、シチジンデアミナーゼドメインはAPOBEC1デアミナーゼを含む。一部の実施形態において、シチジンデアミナーゼドメインはラットAPOBEC1デアミナーゼを含む。一部の実施形態において、シチジンデアミナーゼ酵素(例えば、rAPOBEC1)をdCasのN末端と融合させて、BE1と呼ばれる塩基編集酵素が産生され得る。
【0103】
一部の実施形態において、CRISPR/Casベースの塩基編集システムは、触媒活性を伴わないdCas9など、Cas9タンパク質を含む。Cas9タンパク質は、核酸を切断するエンドヌクレアーゼであり、且つCRISPR遺伝子座によってコードされ、II型CRISPRシステムに関与する。Cas9分子は、1つ又は複数のgRNAと、且つgRNA分子と共に、相互作用し得て、標的ドメインを含む部位、特定の実施形態においてPAM配列を含む部位に局在化する。例えば、形質転換アッセイを用いて、PAM配列を認識する、Cas9分子の能力を決定することができる。一部の実施形態において、Cas9タンパク質は、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)に由来する。一部の実施形態において、Cas9タンパク質は、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)に由来する。
【0104】
一部の実施形態において、Cas9タンパク質は、ヌクレアーゼ活性が低下又は不活化されるように変異され得る。
【0105】
野生型Cas9は、DNAを切断する2つの活性部位(RuvC及びHNHヌクレアーゼドメイン)を有し、二重らせんの各鎖に対して1つを有する。しかしながら、RuvC又はHNHヌクレアーゼドメインの触媒不活化のために、DNAの一方の鎖のみを切断することができるCas9のニッカーゼバリアント(例えば、Addgene,プラスミド番号(♯)48873)は容易に入手可能である。したがって、特定の実施形態において、Casタンパク質はCas9ニッカーゼを含む。好ましい実施形態において、Casタンパク質は、S.アウレウス(S. aureus)Cas9 D10Aニッカーゼを含む。別の実施形態において、Casタンパク質はS.アウレウス(S. aureus)Cas9 H840Aニッカーゼを含む。
【0106】
エンドヌクレアーゼ活性を伴わない不活化Cas9タンパク質(「dCas9」とも呼ばれる「iCas9」)が、gRNAによって、細菌、酵母、及びヒト細胞における遺伝子に標的化され、立体障害を介して遺伝子発現がサイレンシングされ得る。ヌクレアーゼ活性を低減又は不活化する、S.ピオゲネス(S. pyogenes)Cas9配列に関する例示的な変異としては:D10A、E762A、H840A、N854A、N863A及び/又はD986Aが挙げられる。ヌクレアーゼ活性を不活化する、S.アウレウス(S. aureus)Cas9配列に関する例示的な変異としては、D10A及びN580Aが挙げられる。
【0107】
Cas9タンパク質又は変異Cas9タンパク質は、細菌又は古細菌種、例えばストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、又はナイセリアメニンギティディス(Neisseria meningitidis)に由来し得る。一部の実施形態において、Casタンパク質又は変異Cas9タンパク質は、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ブレビバチルス属(Brevibacillus)、コルネバクター属(Corynebacter)、サテレラ属(Sutterella)、レジオネラ属(Legionella)、フランシセラ属(Francisella)、トレポネーマ属(Treponema)、フィリファクター属(Filifacto)、ユーバクテリウム属(Eubacterium)、ラクトバシラス属(Lactobacillus)、バクテロイデス属(Bacteroides)、フラビイボラ属(Flaviivola)、フラボバクテリウム(Flavobacterium)、スフェロヘータ属(Sphaerochaeta)、アゾスピリラム属(Azospirillum)、グルコンアセトバクター属(Gluconacetobacter)、ナイセリア属(Neisseria)、ロゼブリア属(Roseburia)、パルビバクラム属(Parvibaculum)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ニトラティフラクター属(Nitratifractor)、マイコプラスマ属(Mycoplasma)、又はカンピロバクター属(Campylobacter)の細菌属に由来するCas9タンパク質である。一部の実施形態において、Cas9タンパク質又は変異Cas9タンパク質は、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、フランシセラ・ノビサイダ(Francisella novicida)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、ナイセリアメニンギティディス(Neisseria meningitidis)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、トレポネーマ・デンティコラ(Treponema denticola)、ブレビバチルス・ラテロスポルス(Brevibacillus laterosporus)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、コリネバクテリウム・ジフテリア(Corynebacterium diphtheria)、ユーバクテリウム・ベントリオサム(Eucobacterium ventriosum)、ストレプトコッカス・パステウリアヌス(Streptococcus pasteurianus)、ラクトバチルスファルシミニス(Lactobacillus farciminis)、スフェロヘータ・グロブス(Sphaerochaeta globus)、アゾスピリラム属(Azospirillum)、グルコンアセトバクター・ジアゾトロフィカス(Gluconacetobacter diazotrophicus)、ナイセリア・シネレア(Neisseria cinerea)、ロゼブリア・インテスティナリス(Roseburia intestinalis)、パルビバクラム・ラバメンティボランス(Parvibaculum lavamentivorans)、ニトラティフラクター・サルスギニス(Nitratifractor salsuginis)及びカンピロバクター・ラリ(Campylobacter lari)を含む群から選択される。
【0108】
ベクター及び核酸
一部の実施形態において、CRISPR/Cas融合タンパク質は、融合タンパク質及び任意にgRNAをコードする核酸(例えば、ベクター、コンストラクト)から提供され得る。CRISPR/Casベースの塩基編集システムをコードするベクターは、例えばAddgeneから市販されている(例えば、pCMV-ABE7.10,https://www.addgene.org/102919/参照)。gRNA発現のためのクローニング部位を含むベクターの例としては、gRNA発現カセットを含有する修飾ABE7.10バージョン(例えば、Escobar, Helena, et al. “Base editing repairs an SGCA mutation in human primary muscle stem cells.” JCI insight 6.10 (2021)に記載のABE7.10_4.1及びABE7.10_3.1と呼ばれるもの)が挙げられる。
【0109】
編集される領域
一態様において、対象のゲノムDNAにおいてコードされるRNAスプライス部位を変更するための、CRISPR/Casベースの塩基編集システムが提供される。CRISPR/Casベースの塩基編集システムは、融合タンパク質と少なくとも1つのgRNAを含み、融合タンパク質はCasタンパク質及び塩基編集ドメインを含み、少なくとも1つのgRNAが、RBM3の遺伝子における領域(つまり、標的領域)とハイブリダイズすることができる。
【0110】
一部の実施形態において、その領域は、RBM3のエクソン3aの3’スプライス部位にわたる領域である。
【0111】
他の実施形態において、その領域は、RBM3のエクソン3aの5’スプライス部位にわたる領域である。
【0112】
さらに他の実施形態において、その領域は、エクソン3aのヌクレオチド107位にあるRBM3のエクソン3aの内部選択的スプライス部位にわたる領域である。
【0113】
一部の実施形態において、CRISPR/Casベースの塩基編集システムは、3’スプライス部位にわたる領域を標的化する1つのgRNA、5’スプライス部位にわたる領域を標的化するgRNA、及び/又はエクソン3aの内部選択的スプライス部位を標的化するgRNAを含む。
【0114】
本明細書に記載のシステムを用いて塩基編集され得るスプライス部位は、以下の配列において太字で示される:
【化1】

【化2】

は、エクソン3aの3’スプライス部位の直前のスプライスアクセプターである。
【化3】

は、エクソン3aの内部プライス部位(ヌクレオチド106~107)である。
【化4】

は、エクソン3aの5’スプライス部位の直後のスプライスドナーである。
【0115】
gRNA
上記で説明されるように、CRISPR/Casベースの塩基編集システムは少なくとも1つのgRNAを含む。gRNAはRBM3遺伝子を標的化する。gRNAは本明細書に記載のRBM3遺伝子の領域に結合し、標的化し得る。gRNAは、RBM3遺伝子におけるRNAスプライス部位を標的化し得る。gRNAは、CRISPR/Casベースの塩基編集システムの標的化を提供する。gRNAは、2つの非コードRNA:crRNA及びtracrRNAの融合物であり得る。gRNAは、通常20ヌクレオチドの領域にわたる、目的のDNA標的との相補的な塩基対合(base pairing)を通じて、目的のDNA配列を標的化し得る。tracrRNAは、Casヌクレアーゼの結合足場(binding scaffold)としての役割を果たす。
【0116】
編集のためにスプライス部位が選択されていたとしても、多くの異なる特定の標的領域、及び特定のgRNAが、その変化をもたらすために使用され得ることは、当業者によって理解されるだろう。これは、選択されるCRISPR/Casベースの塩基編集システムによって利用されるPAM部位(例えば、「NGG」)、及びその部位からの「編集窓の距離」、並びに行うことが決定された編集に応じて異なるだろう。本明細書における開示内容及び一般的な知識を考慮に入れて、当業者は、適切なgRNA及びシステムを選択することができるだろう。
【0117】
「標的領域」とは、CRISPR/Casベースの遺伝子編集システムが標的化及び結合する、標的遺伝子の領域を意味する。ゲノムにおける標的配列を標的化する(標的配列とハイブリダイズする)gRNAの部分は、「ターゲティング配列」又は「ターゲティング部分」又は「ターゲティングドメイン」と呼ばれ得る。「プロトスペーサー」又は「gRNAスペーサー」とは、CRISPR/Cas9ベースの遺伝子編集システムが標的化及び結合する、標的遺伝子の領域を意味し得て;「プロトスペーサー」又は「gRNAスペーサー」は、ゲノムにおける標的化された配列に相補的であるgRNAの部分も意味し得る。gRNAはgRNA足場を含み得る。gRNA足場は、gRNAへのas9の結合を促進し、エンドヌクレアーゼ活性を促進し得る。gRNA足場は、gRNAが標的化する配列に相当するgRNAの部分に従うポリヌクレオチド配列である。総合すると、gRNA標的化部分及びgRNA足場は1つのポリヌクレオチドを形成する。
【0118】
gRNAは、適切なプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)がそれに続く場合に、例えば、標的遺伝子の標的領域の約10~約20ヌクレオチドとハイブリダイズすることができるのに十分に、標的領域に対して相補的であるターゲティングドメインを、その5’末端に含み得る。ゲノムにおいて、標的領域又はプロトスペーサーに続いて、プロトスペーサーの3’末端にPAM配列がある。
【0119】
gRNAのターゲティングドメインは、標的DNAの標的領域に完全に相補的である必要はない。一部の実施形態において、gRNAのターゲティングドメインは、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチドなどの長さにわたって標的領域に、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は少なくとも99%相補的である(又は、標的領域と比較して1、2又は3ミスマッチを有する)。
【0120】
通常、標的DNA領域とハイブリダイズする、crRNA又はgRNAのターゲティングドメイン若しくは部分は、16、17、18、19、20、又は21ヌクレオチドの長さ、より好ましくは17~20ヌクレオチドの長さ、任意に20ヌクレオチドの長さである。
【0121】
CRISPR/Casベースの塩基編集システム、並びに関連材料及び方法の実施例
一態様において、対象のゲノムDNAにおいてコードされるRNAスプライス部位を変更するための、CRISPR/Casベースの塩基編集システムを提供し、
CRISPR/Casベースの塩基編集システムは、融合タンパク質及び少なくとも1つのガイドRNA(gRNA)を含み、
融合タンパク質は、Casタンパク質及び塩基編集ドメインを含み、
その少なくとも1つのgRNAは、RBM3の遺伝子における領域とハイブリダイズすることができ、
その領域は:
(i)配列番号32の146~147位のヌクレオチドに位置するスプライス部位が変更されるように、配列番号32の136~147、137~147、138~147、139~147、140~147、141~147、142~147、143~147、144~147、145~147、又は146~147位のヌクレオチド、又はその相補的配列;
(ii)配列番号6の106~107位のヌクレオチドに位置するスプライス部位が変更されるように、配列番号6又はその相補的配列;或いは
(iii)配列番号33の最初の2つのヌクレオチドに位置するスプライス部位が変更されるように、配列番号33の1~2、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、1~8、1~9、1~10、1~11、又は1~12位のヌクレオチド又はその相補的配列;
を含み、
任意に、gRNA、又は標的領域とハイブリダイズするgRNAのターゲティングドメインが、16、17、18、19、20、又は21ヌクレオチドの長さである。
【0122】
一実施形態において、その領域は、配列番号32の少なくとも2つのヌクレオチドに位置するスプライス部位が変更されるように、配列番号32の136~147、137~147、138~147、139~147、140~147、141~147、142~147、143~147、144~147、又は145~147位のヌクレオチド、又はその相補的配列を含み、その領域はさらに、配列番号6の1及び2、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、1~8、1~9、1~10、1~11、1~12、1~13、1~14、又は1~15位のヌクレオチド、又はその相補的配列を含む。
【0123】
一実施形態において、その領域は、配列番号33の最初の2つのヌクレオチドに位置するスプライス部位が変更されるように、配列番号33の1~2、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、1~8、1~9、1~10、1~11、又は1~12位のヌクレオチド、又はその相補的配列を含み、その領域はさらに、配列番号6の254~269、255~269、256~269、257~269、258~269、259~269、260~269、261~269、262~269、263~269、264~269、265~269、266~269、又は267~269位のヌクレオチドを含む。
【0124】
一実施形態において、その領域は、配列番号6の106~17位のヌクレオチドにわたり、且つ配列番号6の106~107位のヌクレオチドに位置するスプライス部位が変更されるように、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20の隣接ヌクレオチドを含む。
【0125】
したがって、一部の実施形態において、本明細書に開示のCRISPR/Casベースの塩基編集システムは、エクソン3aのスキッピングを促進する、「AA」又は「GG」へと「AG」(スプライスアクセプター)を変換することによって、スプライス部位を変更するためのシステムである。他の実施形態において、CRISPR/Casベースの塩基編集システムは、エクソン3aのスキッピングを促進する、「GC」又は「AT」へと「GT」(スプライスドナー)を変換することによって、スプライス部位の変更を可能にする。
【0126】
コード又は非コードDNA鎖上のアデノシン又はシチジン塩基編集を用いて、Rbm3エクソン3aの3’スプライス部位(ヒトにおける配列番号32又はマウスにおける配列番号30の最後の2つのヌクレオチド)、Rbm3エクソン3aの5’スプライス部位(ヒトにおける配列番号33又はマウスにおける配列番号31の最初の2つのヌクレオチド)及び/又は配列番号6(ヒト)若しくは配列番号5(マウス)における106~107位の内部3’スプライス部位が変更され得る。
【0127】
一部の実施形態において、塩基編集ドメインは、配列番号32の146~147位の「AG」を「GG」に変換する、アデノシンデアミナーゼ塩基エディタを含む。
【0128】
一部の実施形態において、gRNAは、エクソン3aの3’スプライス部位にわたる領域とハイブリダイズする。具体的な実施形態において、gRNAは、配列TTCTaGGGGGTGGAGGGCAG(配列番号90)又はその相補的配列を含み、任意にその配列は1、2又は3個のヌクレオチド置換を有する。
【0129】
一部の実施形態において、配列番号90は、配列番号32の146~147位の「AG」を「GG」に変換する、アデノシンデアミナーゼ塩基エディタと共に使用される。
【0130】
一部の実施形態において、塩基編集ドメインは、エクソン3aの内部スプライス部位(ヌクレオチド106~107)の「AG」を変換するアデノシンデアミナーゼ塩基エディタを含む。
【0131】
一部の実施形態において、gRNAはエクソン3aの3’スプライス部位にわたる領域とハイブリダイズする。具体的な実施形態において、gRNAは、配列CTACTACCTAAGCCCAAGGC(配列番号91)又はその相補的配列を含み、任意にその配列は1、2又は3個のヌクレオチド置換を有する。かかるgRNA配列は、逆DNA鎖に結合し、AGに相補的である「C」を標的化し得る。
【0132】
一部の実施形態において、塩基編集ドメインは、エクソン3aの5’スプライス部位のすぐ後の
【化5】

スプライスドナーを変換するアデノシンデアミナーゼ塩基エディタを含む。
【0133】
一部の実施形態において、gRNAは、このスプライス部位にわたる領域とハイブリダイズする。具体的な実施形態において、gRNAは、配列CTTACATCTTGACTGAACTC(配列番号92)又はその相補的配列を含み、任意にその配列は1、2又は3個のヌクレオチド置換を有する。かかるgRNA配列は、逆DNA鎖に結合し、ABE又はCBEを用いて、GTに相補的である「C」又は「A」を標的化し得る。
【0134】
したがって、一実施形態において、標的領域は、配列番号90、91、及び92から選択され、且つ少なくとも1つのgRNAが、配列番号90、91、及び92のRNA均等物である配列若しくはその相補的配列を含む、又はからなる。
【0135】
一実施形態において、ゲノムDNAにおいてコードされるRNAスプライス部位を変更した結果、得られる成熟mRNAにおいてエクソン3aは取り込まれない。
【0136】
一実施形態において、Casタンパク質はCas9を含み、任意にCasタンパク質はCas9ニッカーゼを含む。
【0137】
一実施形態において、塩基編集ドメインは、シチジンデアミナーゼドメイン又はアデノシンデアミナーゼドメインを含む。
【0138】
一実施形態において、RBM3の遺伝子における領域とハイブリダイズすることができるガイドRNAをコードし、且つ発現することができる単離核酸が提供され、その単離核酸は、配列番号90、91又は92、又はその相補的配列から選択される配列を含む。
【0139】
gRNAなどの、本明細書に記載のCRISPR/Casベースの塩基編集システムをコードする1つ又は複数の単離ポリヌクレオチドもまた提供される。
【0140】
一実施形態において、そのポリヌクレオチドは、融合タンパク質をコードする第1ポリヌクレオチド及び少なくとも1つのgRNAをコードする第2ポリヌクレオチドを含む。
【0141】
上述のCRISPR/Casシステムをコードする単離ポリヌクレオチドを含む、任意にベクターであり、任意にウイルスベクターである、発現コンストラクトも提供される。
【0142】
単離ポリヌクレオチド又は発現コンストラクトを含む細胞も提供される。
【0143】
CRISPR/Casベースの塩基編集システム、単離ポリヌクレオチド、又は発現コンストラクトを含む組成物も提供される。
【0144】
CRISPR/Casベースの塩基編集システムを使用する方法
別の態様において、細胞におけるRBM3コード化成熟mRNAのナンセンス介在分解を阻害し、及び/又は細胞におけるRBM3の発現を増加する方法であって、エクソン3aのスプライス部位を変更するように、本明細書に記載のCRISPR/Casベースの塩基編集システム、又はCRISPR/Casベースの塩基編集システムをコードするポリヌクレオチドに細胞を曝露することを含む、方法が提供される。
【0145】
別の態様において、対象におけるRMB3発現によって影響を受ける疾患を治療若しくは予防し、又は対象に神経保護治療を提供する方法であって、CRISPR/Casベースの塩基編集システム、単離核酸、発現コンストラクト、又は上述の組成物を対象に投与することを含む方法が提供される。
【0146】
一実施形態において、治療又は処置は:
神経疾患及び/又は新生児低酸素性虚血性脳症、頭部外傷、若しくは脳卒中である疾患;
アルツハイマー病、パーキンソン病、プリオン病、前頭側頭型認知症、タウオパシー、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、及び血管性認知症から任意に選択される神経変性疾患;又は
心臓外科手術若しくは誘導された昏睡中に任意に起こる神経学的損傷;又は
鬱病若しくは不安;に対するものである。
【0147】
RBM3の発現を誘導することができる作用薬
本発明の種々の態様に従って、一部の実施形態において、作用薬は、RBM3 pre-mRNAの選択的スプライシングを阻害する(エクソン3aの包含を阻害する)ことができる作用薬である。特定の実施形態において、作用薬は、エクソン3のスキッピングを誘導することができる作用薬である。作用薬は、細胞に対して外因性であり得る。
【0148】
作用薬は通常、pre-mRNA転写物の特定の領域に結合し、pre-mRNAのスプライシングを調節又は変更することができる。
【0149】
本発明の種々の態様に従って、一部の実施形態において、得られる成熟mRNAにおけるエクソン3と4の間に未成熟終止コドン(PTC)が包含されないように、pre-mRNAのスプライシングを変更するために、作用薬をRBM3のpre-mRNAの領域とハイブリダイズすることができる。一部の実施形態において、作用薬は、得られる成熟mRNAにおけるエクソン3と4の間に未成熟終止コドン(PTC)が包含されないように、pre-mRNAのスプライシングを変更するために、RBM3のpre-mRNAに相補的である。特定の実施形態において、スプライシングは、得られる成熟mRNAにエクソン3aが取り込まれない(スキップされる)ように変更される。
【0150】
本発明の種々の態様に従って、一部の実施形態において、作用薬は、RBM3のゲノム配列においてコードされるRNAスプライス部位の変更に有用である。したがって、しかるべき場合に、「作用薬」とは、本明細書に記載のCRISPR/Casベースの塩基編集システム、本明細書に記載のガイドRNA、又は本発明のCRISPR/Casベースの塩基編集システムをコードするポリヌクレオチド/発現コンストラクトを意味し得る。標的スプライス部位が本明細書に開示のシステムによって「変更」されることが示される場合、適切な条件下にて標的ゲノムDNAを含む細胞に導入する場合に、かかるシステムはスプライス部位の変更に適応される、且つスプライス部位を変更することができると理解される。
【0151】
一部の実施形態において、作用薬は、ワトソン-クリック型塩基対又はゆらぎ塩基対(G-U)によって標的核酸(例えば、pre-mRNA)配列とハイブリダイズすることができる。作用薬は、標的配列に対する正確な配列相補性又は近い相補性を有し得て、例えば、本質的に相補的(例えば、標的配列に結合し、且つpre-mRNAのスプライシングを変更するのに十分な相補性)であり得る。作用薬(例えば、gRNA)は、標的配列に対する正確な配列相補性又は近い相補性を有し得て、例えば、本質的に相補的(例えば、標的配列に結合し、且つスプライス部位の変更を可能にするのに十分な相補性)であり得る。
【0152】
本明細書において、「得られる成熟mRNA」とは、pre-mRNAのスプライシングの産物を意味する。それは必ずしも、成熟mRNAのすべてを意味するわけではなく、作用薬は、成熟mRNAの少なくとも一部が上記の特性を有するようにスプライシングを変更し得る。
【0153】
一部の実施形態において、作用薬は、pre-mRNAにおけるエクソン3a又はそのスプライス部位にわたる領域とハイブリダイズすることができる(又は相補的である)作用薬である。特定の実施形態において、作用薬は、pre-mRNAにおけるエクソン3aの3’スプライス部位にわたる領域とハイブリダイズすることができる(又は相補的である)作用薬である。一部の実施形態において、作用薬は、pre-mRNAにおけるエクソン3aの5’スプライス部位にわたる領域とハイブリダイズすることができる(又は相補的である)作用薬である。特定の実施形態において、作用薬は、エクソン3aの上流の250ヌクレオチド以内に位置する領域とハイブリダイズすることができる(又は相補的である)。特定の実施形態において、作用薬は、エクソン3aの下流の250ヌクレオチド以内に位置する領域とハイブリダイズすることができる(又は相補的である)。
【0154】
一部の実施形態において、作用薬は、エクソン3aの上流の200ヌクレオチド内に位置する領域とハイブリダイズすることができる(又は相補的である)。一部の実施形態において、作用薬は、エクソン3aの下流の200ヌクレオチド内に位置する領域とハイブリダイズすることができる(又は相補的である)。その領域は、エクソン3aの上流の10、20、30、40、50、60、70、80、90又は100ヌクレオチド内であり得る。その領域は、エクソン3aの下流の10、20、30、40、50、60、70、80、90又は100ヌクレオチド内であり得る。その領域は、エクソン3aの上流の110、120、130、140、150、160、170、180、190又は200ヌクレオチド内であり得る。その領域は、エクソン3aの下流の110、120、130、140、150、160、170、180、190又は200ヌクレオチド内であり得る。その領域は、エクソン3aの上流の210、220、230、240又は250ヌクレオチド内であり得る。その領域は、エクソン3aの下流の210、220、230、240又は250ヌクレオチド内であり得る。その領域は、エクソン3aの上流又は下流であり得て、RBM3遺伝子の注釈付きイントロン3に相当し、例えば、以下の表3に示す配列に相当する領域であり得る。
【0155】
一部の実施形態において、作用薬は、核酸及び/又は核酸類似体、例えばオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドである。一部の実施形態において、作用薬は、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)である。
【0156】
本開示の一実施形態は、RBM3のナンセンス介在mRNA分解(NMD)を阻害する、ポリヌクレオチドを含む組成物など、核酸及び/又は核酸類似体を含む組成物である。
【0157】
核酸又はポリヌクレオチドは通常、pre-mRNA転写物の特異的領域とハイブリダイズすることができ、スプライシングを調節又は変更することができるアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)である。ASOは、選択的スプライス部位を標的化し、スプライセオソームによってその使用をブロックし得る。一部の実施形態において、ASOは、エクソン3aの5’スプライス部位若しくは3’スプライス部位の近傍の、又はエクソン3aの5’スプライス部位若しくは3’スプライス部位にオーバーラップする調節配列を標的化する。ヒト及びマウスエクソン3aの5’スプライス部位でのエクソンのライゲーションは、表1及び図1E図4Aも参照)に示す配列の最後のヌクレオチドで起こる。3’スプライス部位でのエクソンのライゲーションは、表1及び図1Eに示すエクソン3aの配列の最初のヌクレオチドでのライゲーションである。
【0158】
作用薬(例えば、ASO)は、pre-mRNAにおけるシス調節エレメントへのトランス作用因子の結合を妨げ得る。したがって、作用薬は、エクソン3aの包含を促進又は誘導するシス調節エレメント(スプライシングエンハンサーエレメント)を標的化し得る。特定の実施形態において、作用薬は、スプライシングエンハンサーエレメントを標的化する(例えば、スプライシングエンハンサーエレメントとハイブリダイズすることができる)。
【0159】
スプライシングエンハンサーエレメントは、本明細書に記載のようにエクソン3a内に位置し得る。
【0160】
スプライシングエンハンサーエレメントは、本明細書に記載のようにエクソン3aの上流又は下流の領域に位置し得る。好ましくは、スプライシングエンハンサーエレメントは、エクソン3aの上流又は下流の250ヌクレオチド内に位置する。スプライシングエンハンサーエレメントは、RBM3遺伝子の注釈付きイントロン3に相当する、エクソン3とエクソン4の間の領域に位置し得る。一部の実施形態において、スプライシングエンハンサーエレメントは、エクソン3aの上流の200ヌクレオチド内に位置する。一部の実施形態において、スプライシングエンハンサーエレメントは、エクソン3aの下流の200ヌクレオチド内に位置する。スプライシングエンハンサーエレメントは、エクソン3aの上流の10、20、30、40、50、60、70、80、90又は100ヌクレオチド内にあり得る。スプライシングエンハンサーエレメントは、エクソン3aの下流の10、20、30、40、50、60、70、80、90又は100ヌクレオチド内にあり得る。スプライシングエンハンサーエレメントは、エクソン3aの上流の110、120、130、140、150、160、170、180、190又は200ヌクレオチド内にあり得る。スプライシングエンハンサーエレメントは、エクソン3aの下流の110、120、130、140、150、160、170、180、190又は200ヌクレオチド内にあり得る。スプライシングエンハンサーエレメントは、エクソン3aの上流の210、220、230、240又は250ヌクレオチド内にあり得る。スプライシングエンハンサーエレメントは、エクソン3aの下流の210、220、230、240又は250ヌクレオチド内にあり得る。
【0161】
スプライシングエンハンサー及びサイレンサーなどの調節因子は、RBM3遺伝子の領域に沿って変異誘発をスクリーニングし、野生型遺伝子に関する各変異の転写物におけるエクソン3aの包含レベルを測定することによって同定され得る。例示的な方法は実施例3に記述される。
【0162】
別の態様において、RBM3の転写物におけるエクソン3aの包含をコントロールすることができるシス調節エレメントを同定する方法が提供される。その方法は、
i)エクソン3a内の領域、RBM3遺伝子におけるエクソン3aの上流の250ヌクレオチド内の領域、又はエクソン3aの下流の250ヌクレオチド内の領域において一組のヌクレオチドを変異又は欠失する工程、
ii)転写物におけるエクソン3aの包含レベルを測定する工程、及び
iii)野生型遺伝子の転写物における包含レベルと、工程ii)の包含レベルを比較する工程、を含む。エクソン3aの包含レベルは、スプライシング感受性RT-PCRによって測定され得る。
【0163】
特定の実施形態において、作用薬(例えば、ASO)は、スプライシングエンハンサーエレメントを含む領域を標的化する。具体的な実施形態において、その領域は:M2、M2-2、M2-2、M2-3、M2-4、M2-6、M2-7及びM2-9、M4、及びM4-7から選択される。一部の実施形態において、領域はM4-7である。一部の実施形態において、領域はM2-9である。他の実施形態において、その領域は「M2コア」領域(配列番号88)又は「M4コア」領域(配列番号89)に相当する。表2は、各領域の配列、配列番号及び位置を提供する。
【0164】
【表2】
【0165】
【表3】
【0166】
特定の実施形態において、作用薬(例えば、ASO)は、エクソン3aのスプライス部位にわたる領域を標的化する。特定の実施形態において、領域は、エクソン3aの5’スプライス部位にわたり、例えば領域は、配列番号5の259~271、260~271、261~271、262~271、263~271、264~271、265~271、266~271、267~271、268~271、又は269~271位のヌクレオチド(nt)を含み得る。したがって、ヒトエクソン3aにおける領域は、配列番号6の257~269、258~269、259~269、260~269、261~269、262~269、263~269、264~269、265~269、266~269又は267~269位のntを含み得る。一部の実施形態において、領域は、エクソン3aの3’スプライス部位にわたる。その領域は、配列番号5の1及び2、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、1~8、1~9、又は1~10位のヌクレオチドを含み得る。したがって、ヒトエクソン3aにおける領域は、配列番号6の1及び2、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、1~8、1~9、又は1~10位のntを含み得る。一部の実施形態において、領域は、配列番号6の1及び2、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、1~8、1~9、又は1~10位のnt及び/又は配列番号32の136~147、137~147、138~147、139~147、140~147、141~147、142~147、143~147、144~147、又は145~147位のヌクレオチドを含む。領域は、配列番号5の1及び2、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、1~8、1~9、又は1~10位のnt及び/又は配列番号30の117~127、118~127、119~127、120~127、121~127、122~127、123~127、124~127、125~127、又は126~127位のntを含み得る。
【0167】
一部の実施形態において、作用薬(例えば、ASO)は、エクソン3aの上流の250ヌクレオチド内又はエクソン3aの下流の250ヌクレオチド内の領域を標的化する。これらの上流及び下流領域は、イントロン3領域であり得る(表3に示す)。作用薬は、表3に記載の上流又は下流領域のうちの1つの領域内のスプライシングエンハンサーエレメントを標的化する。特定の実施形態において、作用薬は、配列番号30、31、32又は33内の領域を標的化し、好ましくはその領域はスプライシングエンハンサーエレメントを含む。
【0168】
【表4】
【0169】
本明細書におけるすべての実施形態において、「1つの(an)mRNA」又は「その(the)mRNA」の言及は、1つ又は複数の(少なくとも1つの)mRNA分子を意味し、「1つの(a)pre-mRNA」又は「その(the)pre-mRNA」の言及は、1つ又は複数の(少なくとも1つの)pre-mRNA分子を意味する。
【0170】
ASOは、標的mRNA(例えば、pre-mRNA)、糖部位、及びモノマーを連結する主鎖上に存在する相補的核酸塩基とハイブリダイズすることができる、核酸塩基を含むヌクレオチドで作成されたポリヌクレオチドである。ASOという用語は、標的mRNA(例えば、pre-mRNA)上の相補的核酸塩基とハイブリダイズすることができる核酸塩基を含むが、ペプチド核酸(PNA)などの糖部位を含まない、オリゴマー分子も具体化する。
【0171】
一部の実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)は合成オリゴヌクレオチドである。ASOは、人工、修飾、非天然オリゴヌクレオチドであり得て、つまり天然RNA若しくはDNAポリヌクレオチド又はヌクレオチドと比較して、1つ又は複数の化学修飾を含む。したがって、ASOは、天然ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、修飾ヌクレオチド、又は前述の2若しくは3個のいずれかの組合せで構成され得る。「天然ヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドを含む。「修飾ヌクレオチド」という用語は、修飾若しくは置換された糖基を有し、及び/又は修飾された主鎖を有するヌクレオチドを含む。本明細書に記載の方法及び組成物と適合性である、ASO又はASOの構成要素の化学修飾は当業者には明らかであり、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,258,109B2号、米国特許第5,656,612号、米国特許出願公開第2012/0190728号及びDiasand Stein, Mol. Cancer Ther. 2002, 1, 347-355に記載されている。
【0172】
ASOは、2’-O-4’-Cメチレン架橋(LNA,ロック核酸)ヌクレオチドを有する修飾ヌクレオチドを含み得る。ASOは、RNA及び/又はDNAヌクレオチドを含み得る。ASOは、LNAヌクレオチドと非修飾ヌクレオチドの組合せを含み得る。ASOは、LNAヌクレオチドとRNAヌクレオチドの組合せを含み得る。アンチセンス核酸は、LNAヌクレオチドとDNAヌクレオチドの組合せを含み得る。その組合せは、交互のLNA及びRNA、交互のLNA及びDNA、又は交互のRNA及びDNAであり得る。さらに好ましいオリゴヌクレオチド修飾は、2’-ヒドロキシル基が糖の環の3’又は4’炭素原子に連結し、それによって二環式糖部位が形成される、ロック核酸(LNA)を含む。
【0173】
スプライシングエンハンサーエレメント又はスプライス部位にてRBM3のpre-mRNAを標的化する例示的なASOは表4に示される。一部の実施形態において、ASOは、表4に示す配列番号のうちの1つを含む。一部の実施形態において、ASOは、配列番号34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、69及び70のうちの1つを含み、任意にその配列は、1、2、又は3個のヌクレオチド置換を有する。一部の実施形態において、ASOは、1、2、又は3個の置換を任意に有する、配列番号40、41、42、43、44、46、47、48、49、50、83、84、85、86及び87のうちの1つを含む、又はからなる。一部の実施形態において、ASOは、1、2、又は3個の置換を任意に有する、配列番号83、84、85及び87のうちの1つを含む、又はからなる。特定の実施形態において、ASOは、1、2、又は3個の置換を任意に有する、配列番号44、46、47、48、83、84、85、86及び87のうちの1つを含む、又はからなる。
【0174】
一部の実施形態において、ASOは配列番号60を含み、任意にその配列は1、2、又は3個のヌクレオチド置換を有する。
【0175】
【表5】
【0176】
【表6】
【0177】
M2Dの配列は、ヒトとマウスの間で100%保存されており、そのため配列番号45及び46は同一である。ASOが、配列番号45及び46の両方を含んで本明細書に列挙される場合、この重複なく、相当するリスト(つまり、配列番号46のみ)が必要な変更を加えて開示されることは認識されるだろう。
【0178】
本発明は、対象におけるRBM3発現によって影響を受ける疾患を治療又は予防する方法において使用される、配列番号34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56又は57を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する。ASOは、1、2、又は3個のヌクレオチド置換を有する、配列番号34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56又は57を含み得る。一部の実施形態において、ASOは配列番号60を含み、任意にその配列は1、2、又は3個のヌクレオチド置換を有する。
【0179】
本発明は、対象におけるRBM3発現によって影響を受ける疾患を治療又は予防する方法において使用される、配列番号34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、83、84、85、86又は87を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する。
【0180】
ASOは、1、2、又は3個のヌクレオチド置換を有する、配列番号34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、83、84、85、86又は87を含み得る。
【0181】
一部の実施形態において、使用されるASOは、配列番号40、41、42、43、44、46、47、48、49、50、83、84、85、86及び87のうちの1つを含む、又はからなる。
【0182】
一部の実施形態において、使用されるASOは、配列番号83、84、85及び87のうちの1つを含む、又はからなる。
【0183】
特定の実施形態において、使用されるASOは、配列番号44、46、47、48、83、84、85、86及び87のうちの1つを含む、又はからなる。
【0184】
本明細書に記載のASOのいずれかは、天然ヌクレオチドに存在する、リボース若しくはデオキシリボースを含む糖部位、又はモルホリン環を含有する糖部位など、修飾された糖部位を含有し得る。修飾糖部位の非制限的な例としては、2’置換、例えば2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル(MOE)、2’-O-アミノエチル、2’-フルオロ(2’F);N3’->P5’ホスホロアミダート、2’ジメチルアミノオキシエトキシ、2’ジメチルアミノエトキシエトキシ、2’-グアニジニウム、2’-O-グアニジニウムエチル、カルバメート修飾糖、及び二環式修飾糖が挙げられる。一部の実施形態において、糖部位の修飾は、2’-O-メチル、2’-フルオロ及び2’-O-メトキシエチル(MOE)から選択される。
【0185】
本明細書に記載のASOは、オリゴマーの構成要素を連結する主鎖構造も含む。「主鎖構造」及び「オリゴヌクレオチド結合(linkage)」という用語は区別なく使用され得て、ASOのモノマー間の連結を意味する。天然オリゴヌクレオチドにおいて、主鎖は、オリゴマーの糖部位を連結する3’-5’リン酸ジエステル結合を含む。本明細書に記載のASOの主鎖構造又はオリゴヌクレオチド結合としては(限定されないが)、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレルロアート(phosphoroselerloate)、ホスホロジセレノアート(phosphorodiselenoate)、ホスホロアニロチオアート(phosphoroanilothioate)、ホスホラニラダート(phoshoraniladate)、ホスホロンミダート(phosphoronmidate)等が挙げられる。一部の実施形態において、主鎖修飾は、ホスホロチオエート結合である。例えば、LaPlanche et al. Nucleic Acids Res. 14:9081 (1986); Stec et al. J. Am. Chem. Soc. 106:6077 (1984), Stein et al. Nucleic Acids Res. 16:3209 (1988), Zon et al. Anti Cancer Drug Design 6:539 (1991); Zon et al. Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, pp. 87-108 (F. Eckstein, Ed., Oxford University Press, Oxford England (1991))■ Stec et al. U.S. Pat. No. 5,151,510; Uhlmann and Peyman Chemical Reviews 90:543 (1990)を参照のこと。
【0186】
一部の例において、ASOの各モノマーは、同様に未修飾であるか、又は修飾されており、例えばASOの主鎖の各結合は、ホスホロチオエート結合を含み、又は各リボース糖部位は2’-O-メトキシエチル(MOE)修飾を含む。ASOのモノマー成分のそれぞれに存在する修飾は、「均一な修飾」と呼ばれ、ASOは「完全修飾」と呼ばれる。一部の例において、異なる修飾の組合せが望まれる場合があり、例えば、ASOが、ホスホロジアミデート結合と、モルホリン環(モルホリノ)を含む糖部位との組合せを含み得る。ASOに対する異なる修飾の組合せは、「混合修飾」又は「混合化学(mixed chemistry)」と呼ばれる。
【0187】
一部の実施形態において、ASOは1つ又は複数の主鎖修飾を含む。一部の実施形態において、ASOは1つ又は複数の糖部位修飾を含む。一部の実施形態において、ASOは1つ又は複数の主鎖修飾及び1つ又は複数の糖部位修飾を含む。一部の実施形態において、ASOはMOE修飾及びホスホロチオエート主鎖を含む。一部の実施形態において、ASOは2’-O-メチル修飾及びホスホロチオエート主鎖を含む。一部の実施形態において、ASOはホスホロジアミデートモルホリノ(PMO)を含む。一部の実施形態において、ASOはペプチド核酸(PNA)を含む。一部の実施形態において、ASOはリボフラノシル又は2’デオキシリボフラノシル修飾を含む。一部の実施形態において、ASOは2’4’-拘束(constrained)2’O-メチルオキシエチル(cMOE)修飾を含む。一部の実施形態において、ASOは、cEt2’,4’-拘束2’-OエチルBNA修飾を含む。
【0188】
ASOのリン酸主鎖を修飾して、ペプチド核酸分子を産生することができる。本明細書で使用される、「ペプチド核酸」又は「PNA」という用語は、核酸ミミック(mimic)、例えば、デオキシリボースリン酸主鎖が偽ペプチド(pseudopeptide)主鎖によって置換され、且つ天然核酸塩基4つのみが保持される、DNAミミックを意味する。PNAの天然主鎖は、低イオン強度の条件下にて、DNA及びRNAとの特異的なハイブリダイゼーションを可能にすることが示されている。PNAオリゴマーの合成は、例えば標準固相ペプチド合成プロトコルを用いて実施することができる。
【0189】
アンチセンス核酸は、モルホリノオリゴヌクレオチドとして製剤化することもできる。かかる実施形態では、オリゴヌクレオチド試薬のオリゴヌクレオチドの各サブユニットのリボシド部位が、モルホリン部位へと変換される。モルホリノはまた、例えば、ペプチド結合型モルホリノ、ホスホロジアミデートモルホリノ等として修飾され得る。
【0190】
他の実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ペプチド(例えば、生体内(in vivo)で宿主細胞受容体を標的化する)などの官能基、又は細胞膜若しくは血液脳関門を横切る輸送を促進する作用薬に連結することができる。開示のオリゴヌクレオチド試薬はまた、オリゴヌクレオチド試薬の生体内での薬理学的特性を向上させる化学部位(例えば、コレステロール)で修飾され得る。開示のオリゴヌクレオチドは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Nagata et al. Nat Biotechnol (2021) https://doi.org/10.1038/s41587-021-00972-xに記載のDNA/RNAヘテロ二本鎖オリゴヌクレオチド(HDO)としても形成され得る。RNA鎖の5’末端でのコレステロール又はα-トコフェロールへの抱合は、皮下又は静脈内投与後にHDOがCNSに到達することを可能にすることが示されている(Nagata et al. 2021)。
【0191】
本明細書に記載のASOのいずれか又はASOのいずれかの構成要素(例えば、核酸塩基、糖部位、主鎖)は、ASOの所望の特性若しくは活性を達成するために、又はASOの望ましくない特性若しくは活性を低減するために修飾され得る。例えば、mRNA(例えば、pre-mRNA)上の標的配列への結合親和性を高め;非標的配列への結合を低減し;細胞ヌクレアーゼ(つまり、RNase H)による分解を低減し;細胞内及び/又は細胞の核内へのASOの取り込みを向上させ;ASOの薬物動態学又は薬力学を変化させ;ASOの半減期を調節するために、ASO又はASOの1つ若しくは複数の成分が修飾され得る。
【0192】
一部の実施形態において、ASOは、MOE-ホスホロチオエート-修飾ヌクレオチドで構成される。かかるヌクレオチドで構成されるASOは、本明細書に開示される方法に特によく適しており;かかる修飾を有するオリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼ分解に対して有意に高められた耐性、及び増加したバイオアベイラビリティを有することが示されており、それによって、本明細書に記載の一部の実施形態において、例えば経口、髄腔内、全身送達に適している。例えば、髄腔内注入後23に中枢神経系全体に十分に分布される、FDA承認薬ヌシネルセン(nusinersen)22を参照のこと。
【0193】
ASOなどのオリゴヌクレオチドを合成する方法は当業者には公知である。その代わりとして又はさらに、ASOは、商業的供給元から入手され得る。
【0194】
他の方法
別の態様において、細胞においてRBM3の発現を増加することができるアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を同定する方法が提供される。その方法は:
i)エクソン3a内の領域、エクソン3aのスプライス部位にわたる領域、エクソン3aの上流の250ヌクレオチド内に位置する領域、及びエクソン3aの下流の250ヌクレオチド内に位置する領域、又は本明細書に記載の領域から選択される領域内で、RBM3遺伝子のpre-mRNAの領域を標的化するASOを同定する工程と、
ii)工程i)で同定されたASOを細胞に送達する工程と、
iii)工程ii)の細胞におけるRBM3の発現レベルを測定する工程と、を含む。任意に、その方法はさらに:
iv)コントロールASO又はDMSOで処理された細胞におけるRBM3の発現レベルと、工程iii)で測定された発現レベルを比較する工程を含む。RBM3の発現のレベルは、転写物レベル又はタンパク質レベルであり得る。発現のレベルは、RT-qPCR又はウェスタンブロット法によって測定され得る。
【0195】
別段の指定がない限り、一本鎖核酸(例えば、mRNA、オリゴヌクレオチド、ASO等)配列の左巻き末端は5’末端であり、一本鎖若しくは二本鎖核酸配列の左巻き方向は、5’方向とも呼ばれる。同様に、核酸配列(一本鎖又は二本鎖)の右巻き末端又は方向は、3’末端又は方向である。一般に、核酸における基準点に対する5’である領域又は配列は「上流」と呼ばれ、核酸における基準点に対する3’である領域又は配列は「下流」と呼ばれる。一般に、開始(initiation又はstart)コドンは5’付近に位置し、終止コドンは3’末端付近に位置する。
【0196】
特定の態様において、細胞においてRBM3コード化成熟mRNAのナンセンス介在分解を阻害する方法、細胞においてRBM3の発現を増加/誘導する方法、及び細胞においてRBM3コード化pre-mRNAのスプライシングを調節する方法が提供される。各方法は、作用薬を細胞に曝露することを含み、その作用薬は、本明細書に記載のように、得られる成熟mRNAにエクソン3aが取り込まれないように、pre-mRNAのスプライシングを変更するために、RBM3のpre-mRNAの領域とハイブリダイズすることができる。
【0197】
本明細書に記載のように、細胞においてRBM3コード化成熟mRNAのナンセンス介在分解を阻害する方法、細胞においてRBM3の発現を増加/誘導する方法、及び細胞においてRBM3コード化pre-mRNAのスプライシングを調節する方法は、RBM3の発現のレベルを増加することを目的とする。一部の実施形態において、その方法は生体外(in vitro)で実施される。特定の実施形態において、その方法は、冷却することなく実施され、好ましくは、その方法は、≧34℃、≧35℃、≧36℃、又は≧37℃の温度で実施される。他の実施形態において、これらの方法はそれぞれ、冷却して実施され、好ましくは、その方法は、≦35℃、≦34℃、≦33℃又は≦32℃の温度で実施される。一部の実施形態において、細胞は中枢神経系の細胞である。一部の実施形態において、細胞は神経細胞、好ましくは1次ニューロンであり、より好ましくは一次海馬神経細胞である。一部の実施形態において、細胞は、星状膠細胞、乏突起膠細胞、小膠細胞、上衣細胞又は脳幹細胞である。特定の実施形態において、細胞はマウス又はヒト細胞である。一部の実施形態において、細胞は生体外(in vitro)又はエクスビボ(ex vivo)の細胞である。
【0198】
本明細書で使用される、「発現」は、遺伝子発現又はタンパク質発現であり得て、したがってRBM3の転写物のレベル又はRBM3のタンパク質レベルを定量化することによって測定され得る。
【0199】
遺伝子発現は、例えば、RBM3をコードするmRNAの検出によって決定することができる。mRNAレベルを測定又は定量化する方法は当技術分野でよく知られており、例えば、RT-PCR、定量的リアルタイムPCR(RT-qPCR)、マイクロアレイ解析、ノーザンブロット解析、RNase保護解析、又は例えばRio, D.C., RNA: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2011(その全体が本明細書に組み込まれる)に記載の他のいずれかの適切な方法が挙げられる。
【0200】
タンパク質発現は、例えばタンパク質の検出によって、例えば当業者によく知られている抗体ベースの方法、例えばウェスタンブロット解析、免疫組織化学、免疫細胞化学、フローサイトメトリー、ELISA、及び質量分析法、又は例えば、Link, A. J., Proteomics: A Cold Spring Harbor Laboratory Course Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2009(その全体が本明細書に組み込まれる)に記載の他のいずれかの適切な方法などによって決定することができる。
【0201】
本明細書で使用される、「NMDを阻害する」という用語は、NMDが起こる程度を(一部又は完全に)低減することを意味する。NMDを阻害した結果、RBM3のmRNAレベルが増加する。例えば、RBM3コード化成熟mRNAのNMDを阻害すると、RBM3のmRNAの量が測定可能に増加する。本明細書で使用される、「RBM3のmRNA」又は「RBM3 mRNA」は、RBM3遺伝子のすべてのmRNAアイソフォーム(転写物)を含み、RBM3のmRNAのレベルは、スプライシング感受性ではないRBM3特異的なPCRプライマーを使用して測定され得る。かかるプライマー対の例を実施例5の表6に示す。
【0202】
NMDを阻害した結果、作用薬若しくはASOの非存在下/処置の非存在下でのRBM3 mRNAレベル(例えば、作用薬又はASOが細胞に存在しない、総レベル)と比較して、又はコントロールASOでの処置が行われたRBM3 mRNAレベル(例えば、コントロールASOが細胞に存在する、総レベル)と比較して、RBM3 mRNAレベルが5%以上、例えば9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%、175%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、500%、550%、600%、650%、700%、750%、800%、850%、900%、1000%又はそれ以上増加する。NMDを阻害した結果、作用薬若しくはASOの非存在下/処置の非存在下でのRBM3 mRNAレベル(例えば、作用薬又はASOが細胞に存在しない、総レベル)と比較して、又はコントロールASOでの処置が行われたRBM3 mRNAレベル(例えば、コントロールASOが細胞に存在する、総レベル)と比較して、RBM3 mRNAレベルが1.01、1.05、1.10、1.25、1.50、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10倍又はそれ以上増加する。
【0203】
エクソン3aの包含を阻害することによるRBM3コード化成熟mRNAのNMDの阻害によって、エクソン3aを含有しないmRNAアイソフォームのレベルが増加する、つまりエクソン3aが取り込まれない(エクソン3aがスキッピングされた)成熟mRNA、又はエクソン3及び4が介在エクソンなしで互いにスプライシングされた成熟mRNAが生じる。かかるmRNAのレベルは、スプライシング感受性PCRプライマーを使用して測定され得る。エクソン3aの包含を阻害することによりNMDを阻害した結果、作用薬若しくはASOの非存在下/処置の非存在下でのレベル(例えば、作用薬又はASOが細胞に存在しない、総レベル)と比較して、又はコントロールASOでの処置が行われたレベル(例えば、コントロールASOが細胞に存在する、総レベル)と比較して、5%以上、例えば9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%、175%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、500%、550%、600%、650%、700%、750%、800%、850%、900%、1000%又はそれ以上、かかるmRNAのレベルが増加する。NMDを阻害した結果、作用薬若しくはASOの非存在下/処置の非存在下でのレベル(例えば、ASOが細胞に存在しない、総レベル)と比較して、又はコントロールASOでの処置が行われたレベル(例えば、コントロールASOが細胞に存在する、総レベル)と比較して、かかるmRNAのレベルが1.01、1.05、1.10、1.25、1.50、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10倍又はそれ以上増加する。
【0204】
エクソン3aの包含を阻害することによるNMDの阻害によって、エクソン3aの包含頻度(inclusion frequency)が減少する。エクソン3aの包含頻度は、「スプライスされたパーセント」(PSI)として定量化され得て、それは、エクソン3aが、RBM3のアイソフォームのすべての存在量を超えて取り込まれる、mRNAのアイソフォームの存在量(abundance)の割合に相当する(×100%)。2つの条件間でのPSIの差は、「dPSI」と呼ばれ、減算によって計算される(dPSI(%)=PSIコントロール-PSI処置)。翻訳阻害剤を使用して、エクソン3a含有mRNAが安定化され得て、したがってエクソン3a含有mRNAの蓄積及び検出が可能となる。翻訳の例示的な阻害剤はシクロヘキシミド(CHX)である。エクソン3aの包含を阻害することによるNMDの阻害によって、作用薬若しくはASOの非存在下/処置の非存在下での包含レベル(例えば、作用薬又はASOが細胞に存在しない、PSI)と比較して、又はコントロールASOが細胞に存在する、包含レベル(PSI)と比較して、エクソン3aの包含頻度(PSI)が減少し、その減少は、1%以上、例えば2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、又はそれ以上である。
【0205】
エクソン3aの包含を阻害することによるNMDの阻害によって、タンパク質のレベル、例えばRBM3の転写物のタンパク質産物レベルが増加する。例えば、エクソン3aの包含を阻害することによるRBM3コード化成熟mRNAのNMDの阻害によって、RBM3 mRNAから翻訳され得る総タンパク質の量が測定可能に増加する。タンパク質産物は、切断型(truncated)又は完全長タンパク質であり得る。一部の態様において、エクソン3aの包含を阻害することによるNMDの阻害によって、作用薬若しくはASOの非存在下/処置の非存在下でのRBM3タンパク質レベル(例えば、ASOが細胞に存在しない、RBM3タンパク質の発現レベル)又はコントロールASOでの処置が行われた場合のRBM3タンパク質レベルと比較して、5%以上、例えば9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、125%、150%、175%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、500%又はそれ以上、RBM3タンパク質レベルが増加する。一部の態様において、エクソン3aの包含を阻害することによるNMDの阻害によって、作用薬若しくはASOの非存在下/処置の非存在下でのRBM3タンパク質レベル、又はコントロールASOの存在下でのRBM3タンパク質レベルと比較して、1.01、1.05、1.10、1.20、1.25、1.3、1.35、1.40、1.45 1.50、1.55、1.60、1.65、1.70、1.75、1.80、1.85、1.90、1.95、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0倍又はそれ以上、タンパク質レベルが増加する。
【0206】
投与方法
一部の細胞によって取り込まれる「遊離」又は「裸の」ASOの送達、細胞膜透過性ペプチド(CPP,例えば、TAT及びアンテナペディアペプチド)にコンジュゲートされたASOの送達、細胞受容体取り込みのリガンドにコンジュゲートされたASO(例えば、ASO-コレステロールコンジュゲート、ASO-葉酸コンジュゲート、N-アセチルガラクトサミンコンジュゲート、ASO-インスリン様成長因子1コンジュゲート、ASO-RGDペプチドコンジュゲート、ASO-ボンベシンコンジュゲート等)の送達、ナノキャリアと結合されたASO(例えば、脂質ベースの担体、パーフルオロ炭素ナノ粒子と結合されたASO、ASO-抗体コンジュゲート等)の送達など、上記で参照されるJulianoらによって記述される方法など様々な方法のいずれかによって個体にASOを提供することができる。ASOなどの核酸を送達する他の方法は当技術分野で公知であり、限定されないが、コール酸(Manoharan et al.,Bioorg.Med. Chem. Let., 1994, 4, 1053-1060)、チオエーテル、例えばヘキシル-S-トリチルチオール(tritylthiol)(Manoharan et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 1992, 660, 306-309; Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let., 1993, 3, 2765-2770)、チオコレステロール(Oberhauser et al., Nucl. Acids Res., 1992, 20, 533-538)、脂肪族鎖、例えばドデカンジオール又はウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al, EMBOJ., 1991, 10, 1111-1118; Kabanov et al, FEBS Lett, 1990, 259, 327-330; Svinarchuk et al, Biochimie, 1993, 75, 49-54)、リン脂質、例えばジ-ヘキサデシル-racグリセロール又はトリエチルアンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-racグリセロ-3-H-ホスホネート(Manoharan et al. Tetrahedron Lett., 1995, 36, 3651-3654; Shea et al, Nucl. Acids Res., 1990, 18, 3777-3783)、ポリアミン又はポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al. Nucleosides & Nucleotides, 1995, 14, 969-973)、或いはアダマンタン酢酸(Manoharan et al. Tetrahedron Lett., 1995, 36, 3651-3654)、パルミチル部位(Mishra et al, Biochim. Biophys. Acta, 1995, 1264, 229- 237)、或いはオクタデシルアミン又はヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部位(Crooke et al, J. Pharmacol. Exp. Ther., 1996, 277, 923-937)との核酸コンジュゲートの形成を含む。
【0207】
疾患又は病状
本発明の方法及び作用薬は、RBM3発現によって影響を受ける可能性を有するいずれかの疾患の治療又は予防において有用であり得る。したがって、本発明は、対象においてRBM3発現によって影響を受ける疾患を治療又は予防する方法で使用される、本明細書に記載の作用薬を提供する。
【0208】
治療上の低体温法は、RBM3の発現を誘導することが知られており、本発明の方法及び作用薬は、治療的な低体温を誘導することによって治療又は予防される、いずれかの疾患若しくは病状の治療又は予防において有用であり得る。
【0209】
治療上の低体温は、現在まで研究されている最も強力な神経保護薬の1つである(Yenari M. & Han H., Neuroprotective mechanisms of hypothermia in brain ischaemia. Nature Reviews Neuroscience, 13, 267-278 (2012))。したがって、一部の実施形態において、疾患は、神経変性疾患又は神経学的損傷若しくは傷害である。一部の実施形態において、疾患は、鬱病又は不安である。一部の実施形態において、本発明の作用薬は、神経保護薬として使用される。例えば、本発明の作用薬は、心臓外科手術若しくは誘導された昏睡中に、又は新生児における低酸素性虚血性脳症の治療において使用され得て、或いは本明細書に記載の疾患若しくは病状を治療又は予防するために神経保護薬として使用され得る。神経保護薬は、神経保護を増加することができる作用薬である。
【0210】
一部の実施形態において、疾患は神経変性疾患である。特定の実施形態において、疾患は、アルツハイマー病、プリオン病、パーキンソン病、前頭側頭型認知症、筋萎縮性側索硬化症、タウオパシー、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、血管性認知症及び関連する障害である。
【0211】
RBM3の誘導又は過剰発現は、プリオン病及びアルツハイマー病の動物モデルにおいて保護的である(Peretti et al; Nature 518, pages 236-239 (2015), Peretti et al; Life Science Alliance vol. 4 no. 4 e202000884 (2021)。
【0212】
一部の実施形態において、疾患は神経学的損傷又は傷害である。特定の実施形態において、疾患は脳卒中、頭部又は脳損傷、脊椎損傷、新生児の低酸素性虚血性脳症である。一部の実施形態において、疾患は無酸素性脳損傷である。一部の実施形態において、疾患は、心拍停止によって起こる神経学的損傷である。特定の実施形態において、疾患は、心臓外科手術又は誘導された昏睡中に起こる神経学的損傷である。
【0213】
以下のセクションは、RBM3及び/又は誘導された低体温によって影響を受ける、疾患/病状に関連する更なる説明を提供する。
【0214】
治療的低体温は、一次障害を効率的に低減し、急性虚血(Yenari M & Han H、 2012)における二次障害及び脊椎損傷(SCI)を効率的に低減することができるだけでなく(Alkabie S, Boileau AJ (2015) The role of therapeutic hypothermia after traumatic spinal cord injury-a systematic review. World Neurosurg. doi:10.1016/j.wneu.2015.1009.1079)、慢性神経変性疾患の進行を遅らせることもできる(Salerian AJ, Saleri NG (2008) Cooling core body temperature may slow down neurodegeneration. CNS Spectr 13(3):227-229)。マウスモデルにおいて、冷却による、上流又は下流のメディエーターを誘導することによる、低体温及びRBM3の誘導は、プリオン病のマウス及びアルツハイマー病のマウスにおいて極めて神経保護的であり、シナプス数、記憶が回復し、脳細胞死が予防され、生存時間が増加する(Peretti et. al. Nature 2015; Bastide et al., 2017, Current Biology 27, 638-650; Peretti et al. Life Sci Alliance. 2021;4(4):e202000884. doi: 10.26508/lsa.202000884)。生体外において、2つの低温誘導性タンパク質CIRP及びRBM3の両方が、培養された1次ニューロン又は神経細胞様PC12細胞においてアポトーシスに対して機能する[Chip S, et al. (2011) Neurobiol Dis 43(2):388-396; Zhang HT, et al. (2015) Brain Res 1622:474-483; Kita H, et al. (2002) Hum Mol Genet 11(19):2279-2287; Zhu et al. Cell. Mol. Life Sci. (2016) 73:3839-3859)。
【0215】
Yenari M & Han H (2012)は、臨床研究によって、心拍停止が原因の無酸素性脳損傷(Bernard, S. A. et al. Treatment of comatose survivors of out-of-hospital cardiac arrest with induced hypothermia. N. Engl. J. Med. 346, 557-563 (2002); The Hypothermia after Cardiac Arrest Study Group. Mild therapeutic hypothermia to improve the neurologic outcome after cardiac arrest. N. Engl. J. Med. 346, 549-556 (2002))及び低酸素性虚血性新生児脳症(Gluckman, P. D. et al. Selective head cooling with mild systemic hypothermia after neonatal encephalopathy: multicentre randomised trial. Lancet 365, 663-670 (2005); Shankaran, S. et al. Whole-body hypothermia for neonates with hypoxic-ischemic encephalopathy. N. Engl. J. Med. 353, 1574-1584 (2005))を含む一部の臨床症状において、神経保護における治療的低体温の役割が証明されたことを論述している。上記の研究によって、脊椎損傷、神経変性疾患、無酸素性脳損傷及び低酸素性虚血性新生児脳症の治療及び予防におけるマウスモデルでの治療的低体温、実験的冷却又は過剰発現によって誘導されるRBM3の明確な役割が証明される。
【0216】
神経保護作用の他に、高いRBM3レベルが癌における長期の全生存期間と臨床的に関連している(Avila-Gomez P. et al., Cold stress protein RBM3 responds to hypothermia and is associated with good stroke outcome, Brain Communications, Volume 2, Issue 2, 2020, https://doi.org/10.1093/braincomms/fcaa078)。例えば、長期の全生存期間が、腸型胃癌(Ye FP et al. Med Sci Monit 2017; 23: 6033-41)、浸潤性乳癌(Kang et al., J Breast Cancer 2018; 21: 288-96)及び結腸癌(Jang HH et al., Anticancer Res 2017; 37: 1779-85)、及び転移性結腸直腸癌(Siesing C, et al. PLoS One 2017; 12: e0182512.)を有する患者において確認された。
【0217】
一部の実施形態において、疾患は癌である。特定の実施形態において、癌は胃癌、乳癌、結腸癌又は結腸直腸癌である。
【0218】
本発明は、疾患又は病状の治療又は予防のための方法及び組成物を提供する。
【0219】
病状の治療の文脈において本明細書で使用される「治療」という用語は一般に、いくらかの所望の治療効果、例えば、病状の進行の抑制が達成される、ヒト対象の処置及び療法に関し、且つ進行速度の低減、進行速度の停止、病状の後退、病状の回復、及び病状の治癒を含む。予防的措置(つまり、予防、阻止)としての治療も含まれる。
【0220】
一部の実施形態において、その方法はさらに、本明細書に記載の2種類の作用薬又は2種類のASOを対象に接触させる、導入する、送達する、又は投与することを含む。
【0221】
本発明による作用薬(例えば、ASO)の投与は、好ましくは「治療上有効な」又は「予防的に有効な」量での投与であり、これは、対象に利益を示すのに十分である。
【0222】
本発明で使用される「治療有効量」という用語は、望まれる治療レジメンに従って投与された場合に、妥当な利益/リスク比に見合う、一部の所望の治療効果をもたらすのに有効な作用薬(例えば、ASO)の量に関する。
【0223】
同様に、本発明で使用される「予防的に有効な量」という用語は、望まれる治療レジメンに従って投与された場合に、妥当な利益/リスク比に見合う、一部の所望の予防的効果をもたらすのに有効な作用薬(例えば、ASO)の量に関する。
【0224】
本明細書の文脈における「予防法」は、完全な成功、つまり完全な保護又は完全な阻止を説明すると理解すべきではない。むしろ本発明の文脈における予防法は、その特定の病状を遅らせる、軽減する、又は避けるのを助けることによって、健康を保つ目的で、症候性状態の検出に先立って施される措置を意味する。
【0225】
治療用途において、本発明の作用薬は好ましくは、当業者によく知られた薬剤として許容される1つ又は複数の他の成分、限定されないが、薬剤として許容される担体、補助剤、賦形剤、希釈剤、充填剤、緩衝剤、保存剤、酸化防止剤、滑沢剤、安定剤、可溶化剤、界面活性剤(例えば、湿潤剤)、マスキング剤、着色剤、香味剤、及び甘味剤と共に医薬品又は薬剤として製剤化される。
【0226】
本明細書で使用される「薬剤として許容される」という用語は、過度な毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症なく、当該の対象(例えば、ヒト)の組織と接触して使用するのに適した、健全な医学的判断内にあり、妥当な利益/リスク比に見合う、化合物、成分、材料、組成物、剤形等に関する。
【0227】
各担体、補助剤、賦形剤等はまた、製剤の他の成分と適合性であるという意味で「許容可能」でなければならない。
【0228】
適切な担体、補助剤、賦形剤等は、標準的な薬学テキスト、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences, 18th edition, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1990; and Handbook of Pharmaceutical Excipients, 2nd edition, 1994に記載されている。
【0229】
本発明はさらに、本明細書に記載の作用薬(例えば、ASO、ベクター)を含む組成物を提供する。組成物は好ましくは医薬組成物又は医薬品である。
【0230】
本明細書に開示の適切なアンチセンス核酸が、対象に投与され得る。例えば、アンチセンス核酸は、本明細書に記載のASOであり得る。一部の実施形態において、ASOは、導入遺伝子から、例えばアンチセンスRNA転写物として発現される。導入遺伝子は、対象においてアンチセンスRNA転写物を発現するように遺伝子操作されたDNA発現コンストラクトで対象に投与され得る。DNA発現コンストラクトは、直接、又はウイルスベクター(例えば、組換えAAV(rAAV)ベクター)若しくは他の適切なベクターを使用して投与され得る。遺伝子治療プロトコルに使用されているウイルスベクターとしては、限定されないが、レトロウイルス、他のRNAウイルス、例えばポリオウイルス又はシンドビスウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルス、SV40、ワクシニア、レンチウイルス及び他のDNAウイルスが挙げられる。代替方法としては、導入遺伝子はエクスビボ(ex vivo)で発現され得て、その結果得られるアンチセンスRNA転写物が対象に直接投与され得る。
【0231】
本明細書に開示される、いずれかの適切なポリヌクレオチド(例えば、CRISPR/Casベースの塩基編集システムをコードするポリヌクレオチド)が対象に投与され得る。例えば、本明細書に記載されるように一部の実施形態において、CRISPR/Casベースの塩基編集システムが1つ又は複数の導入遺伝子から発現され、対象においてCRISPR/Casベースの塩基編集システムを発現するように遺伝子操作されたDNA発現コンストラクトで対象に投与され得る。DNA発現コンストラクトは、直接又はウイルスベクター(例えば、組換えAAV(rAAV)ベクター)若しくは他の適切なベクターを使用して投与され得る。遺伝子治療プロトコルに使用されているウイルスベクターとしては、限定されないが、レトロウイルス、他のRNAウイルス、例えばポリオウイルス又はシンドビスウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルス、SV40、ワクシニア、レンチウイルス及び他のDNAウイルスが挙げられる。
【0232】
本明細書に開示されるように、アンチセンス核酸(それらを発現するために使用され得るDNA発現コンストラクトを含む)が、適切な経路によって投与され得る。療法での使用については、アンチセンス核酸(例えば、オリゴヌクレオチド)及び/又は他の治療薬の有効量が、目的の組織に作用薬を送達するいずれかの形式によって対象に投与され得る。一部の実施形態において、作用薬(例えば、ASO)は、髄腔内又は全身投与される。他の適切な投与経路としては、限定されないが、経口、非経口、筋肉内、静脈内、腹腔内、鼻腔内、舌下、気管内、吸入、皮下、経眼、経腟、及び経直腸投与が挙げられる。全身経路は経口及び非経口経路を含む。いくつかのタイプのデバイスが、吸入による投与のために定期的に使用される。これらのタイプのデバイスとしては、定量噴霧式吸入器(MDI)、呼吸作動式(breath-actuated)MDI、ドライパウダー吸入器(DPI)、MDI及びネブライザーと組み合わせたスペーサー/保持チャンバが挙げられる。
【0233】
経口投与に関しては、当技術分野でよく知られている薬剤として許容される担体と有効化合物を組み合わせることによって、作用薬を容易に製剤化することができる。かかる担体によって、処置される対象によって経口摂取される、錠剤、丸剤、糖衣丸、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤等として、開示の作用薬を製剤化することが可能となる。経口使用のための医薬製剤は、任意に所望の場合に、錠剤又は糖衣丸コアを得るために、適切な助剤を添加した後、得られた混合物を粉砕し、顆粒の混合物を処理して、固体賦形剤として得ることができる。適切な賦形剤は、特に充填剤、例えばラクトース、ショ糖、マンニトール、又はソルビトールなどの糖;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)などである。所望の場合には、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸、又はその塩、例えばアルギン酸ナトリウムなど、崩壊剤が添加され得る。任意に、経口製剤はまた、生理食塩水中で、又は内部酸条件を中和する緩衝液中で製剤化され得て、又は担体なしで投与され得る。
【0234】
経口で使用することができる医薬製剤としては、ゼラチン製の押し込み式カプセル、並びにゼラチン及びグリセロール又はソルビトールなどの可塑剤で製造された密閉ソフトカプセルが挙げられる。押し込み式カプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤及び/又はタルク若しくはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、及び任意に安定剤との混合物で有効成分を含有し得る。ソフトカプセル剤において、作用薬は、適切な液体、例えば脂肪油、流動パラフィン、又は液体ポリエチレングリコール中に溶解又は懸濁され得る。さらに、安定剤が添加され得る。経口投与用に製剤化される微小球も使用され得る。かかる微小球は、当技術分野において明確に定義されている。経口投与用の製剤は通常、かかる投与に適した投薬量である。
【0235】
口腔投与に関しては、組成物は、従来の方法で製剤化された錠剤又はトローチ剤の形を取り得る。
【0236】
吸入による投与に関して、本開示に従って使用される作用薬(例えば、アンチセンス核酸)は、適切な噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の適切なガスを使用して、加圧式パック又はネブライザーからエアロゾルスプレーの形態で便利に送達され得る。加圧式エアロゾルの場合、投薬単位は、計量された量を送達するバルブを提供することによって決定され得る。吸入器又は注入器(insufflator)で使用される、例えばゼラチン製のカプセル及びカートリッジは、化合物と、ラクトース又はデンプンなどの適切な粉末ベースとの粉末混合物を含有して製剤化され得る。
【0237】
それらを全身に送達することが望ましい場合に、作用薬(例えば、アンチセンス核酸)は、注入による、例えば、ボーラス注入又は持続注入による非経口投与用に製剤化され得る。注入用の製剤は、保存剤が添加された、例えばアンプル又は複数回量容器で単位剤形をとり得る。組成物は、油性若しくは水性賦形剤中の懸濁液、溶液又はエマルジョンなどの形態を取り得て、懸濁化剤、安定化剤及び/又は分散剤などの製剤化剤(formulatory agent)を含有し得る。
【0238】
対象
対象は動物又はヒトであり得る。対象は好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトである。対象は非ヒト哺乳動物であり得るが、より好ましくはヒトである。対象は男性又は女性であり得る。対象は患者であり得る。患者は、本明細書に記載の疾患/病状を有し得る。対象は、治療を必要とする疾患/病状と診断され得て、かかる疾患/病状を有すると疑われるか、又はかかる疾患/病状を発症するリスクがあり得る。
【0239】
配列
【0240】
【表7】
【0241】
【表8】
【0242】
【表9】
【0243】
【表10】
【0244】
【表11】
【0245】
ここで本発明の態様及び実施形態は、添付の図面に関して論述される。更なる態様及び実施形態は当業者には明らかであるだろう。この本文に記載のすべての文書は参照により本明細書に組み込まれる。
【0246】
上述の明細書に、又は以下の特許請求の範囲において、又は添付の図面において開示される特徴であって、その具体的な形態で、又は開示の機能を実施する手段の点から表される特徴、或いは必要に応じて開示の結果を得るための方法又はプロセスは、かかる特徴を別々に、又はかかる特徴のいずれかの組合せで、その多様な形態を現実化するために用いられ得る。
【0247】
本発明は、上述の例示的な実施形態と共に記述されているが、この開示内容を想定すれば、多くの等しい修飾及び変更が当業者には明らかであるだろう。したがって、上記の本発明の例示的な実施形態は、説明的及び非制限的であるとみなされる。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、上述の実施形態に様々な変更が加えられ得る。
【0248】
不確かさを回避するために、本明細書で提供される理論的説明は、読者の理解を高める目的で提供される。本発明者らは、これらの理論的説明のいずれかよっても束縛されることを望まない。
【0249】
本明細書で使用されるセクションの表題は、単に構造化する目的のためであり、記載の主題を制限すると解釈すべきではない。
【0250】
以下の特許請求の範囲を含めて、本明細書全体を通して、特に文脈で必要とされない限り、「含む(comprise)」及び「包含する(include)」という用語、並びに「含む(comprises)」、「含む(comprising)」及び「包含する(including)」などのバリエーションは、他のいずれかの整数若しくは工程、又は整数若しくは工程のグループの除外ではなく、指定の整数若しくは工程、又は整数若しくは工程のグループの包含を意味すると理解されるだろう。
【0251】
明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される、単数形の「1つ」、「1種類」及び「その」は、文脈に明確に別段の指定がない限り、複数指示物を包含することを留意しなければならない。範囲は、本明細書において「約」の1つの特定の値から、及び/又は、までの「約」の別の特定の値として表され得る。かかる範囲が表される場合、別の実施形態は、その1つの特定の値から、及び/又は、までの他の特定の値を包含する。同様に、先行の「約」の使用によって、値が近似値として表される場合、特定の値は別の実施形態を形成することが理解される。数値に関して「約」という用語は任意であり、例えば+/-10%を意味する。
【0252】
図面の概要
本発明の原理を説明する実施形態及び実験は、添付の図面に関して考察される。
【図面の簡単な説明】
【0253】
図1A】Rbm3イントロン3は、進化上保存された熱誘導ポイズンエクソンを含有する。図1Aは、Rbm3イントロン3内の新たなエクソン(E3a;7つの未成熟終止コドンを有する:PTC)を同定するSashimiプロットを示す。マウス一次肝細胞を翻訳阻害剤シクロヘキシミド(CHX,溶媒コントロールとしてのDMSO)と共に、又はなしで34℃若しくは38℃にてインキュベートし、RNAシーケンシングによって解析した。簡略化したエクソン-イントロン構造の下に、Sashimiプロットから、シーケンシング生リード数(y軸における)の分布が示される。エクソン-エクソンジャンクション(exon-exon junction)のリード数(reads)は、エクソンを連結する数によって示される。エクソン3aは、CHX中で38℃にて主に包含されることに留意のこと。下部に、胎盤種(placental species)わたって高い配列保存が示される。
図1B】Rbm3エクソン3aの調節は、ヒトにおいて保存される。HEK293細胞は、方形波温度サイクル(12時間34℃/12時間38℃)で48時間予め同調化された(1B)。最後の24時間の間、細胞を4時間ごとにDMSO又はCHXで処理し、4時間後に収集し、スプライシング感受性RT-PCRによって解析した。
図1C】細胞を指定の温度で12時間インキュベートし(DMSO/CHX 最後の4時間)、スプライシング感受性RT-PCRによって解析した。対応のないt検定によって統計的有意性を決定し、アスタリスクによって示す:p値:p<0.05,**p<0.01,***p<0.001(n=3,平均±SD)。
図1D】Rbm3の遺伝子発現は、エクソン3aの包含と逆相関する。Rbm3に対する100万個当たりの転写物(TpM)値が、指定の時点で12時間インキュベートされたHEK293細胞からのRNAシーケンシングデータから誘導され、右のy軸にプロットされる(薄い灰色,n=2,平均±SD)。エクソン3aの包含レベルは1Cから誘導される。
図1E】配列番号5及び配列番号6の配列アライメントを示す。マウスRBM3エクソン3aが、GRCm39参照ゲノム染色体X8010684~8010414(配列番号5)に位置する。ヒトRBM3エクソン3aが、GRCh38参照ゲノム染色体X48575815~48576083(配列番号6)にある。両方の配列を表1に示す。
図1F】NMD因子のノックダウン及びレスキュー実験に応じてのRbm3エクソン3aの安定化を示す。シーケンシングデータをSRP08313517から得た17
図2A】Rbm3エクソン3aは、温度依存性のRBM3発現を制御する。CRISPR/CAS9は、Rbm3エクソン3aの除去を仲介した。上流のイントロンを標的化する2つのガイドRNA(#1,#2)のうちの1つが、下流イントロンを標的化するガイドRNA(#3)と同時トランスフェクトされた。以下に、HEK293のクローン選択(clonal selection)後のジェノタイピングPCRを示す。クローン選択後のpx459トランスフェクト細胞は、ネガティブコントロールとしての役割を果たす。
図2B】編集細胞系におけるRbm3レベルのRT-qPCR(2B)を示す。図2Aからのクローン細胞系を35℃又は40℃で24時間インキュベートした。単離RNAをqPCRによって調べ、Rbm3発現が、GAPDHレベルに対して示される(n=2~3)。
図2C】編集細胞系におけるRbm3レベルのウェスタンブロット(2C)解析を示す。2Cにおいて、独立した実験からのライセートをRbm3タンパク質発現について調べ、hnRNP Lは、ローディングコントロールとしての役割を果たした。
図2D】37℃又は39℃で24時間インキュベートされた編集細胞系におけるRbm3レベルのウェスタンブロット解析を示す。ライセートをRbm3タンパク質発現について調べ、hnRNP Lは、ローディングコントロールとしての役割を果たした。
図2E】モルホリノを用いたRbm3エクソン3aスプライシングの操作はRbm3発現レベルを直接コントロールする。エクソン3aの3’ss又は5’ssのいずれかをブロックするモルホリノを、HEK293細胞に37℃で48時間トランスフェクトした。Rbm3発現は、GAPDHレベルに対して示され、非標的化CTRLモルホリノに正規化される。対応のないt検定によって統計的有意性を決定し、アスタリスクによって示す:p値:**p<0.01(n>4)。
図2F】ブロッキングモルホリノを介したRbm3エクソン3a包含のブロッキングは、Rbm3タンパク質レベルを誘導する。HEK293細胞(2F)に、指定のモルホリノを48時間トランスフェクトした。HEK293細胞を最後の24時間、39℃にシフトした。Rbm3タンパク質レベルをウェスタンブロット法によって調べた。hnRNP L又はGAPDHはローディングコントロールとしての役割を果たした。
図2G】N2A細胞(2G)に、指定のモルホリノを48時間トランスフェクトした。N2A細胞を指定の温度(35℃、37℃又は39℃)で最後の24時間インキュベートした。
図2H】TG003によるCLK1/4キナーゼの阻害が、Rbm3発現に対する温度の作用を無効にする。Whippet誘導TpM値が、DMSO(35℃)に対して示される。これは、35℃対39℃の6時間DMSOと比較して、Rbm3レベルの差がほぼ2倍であることを明らかにする。これは、39℃から35℃へのシフト中にTG003を添加することによって本質的に消失することを留意のこと。Haltenhof et al,2020からのデータ。
図3A】ミニ遺伝子突然変異誘発によって、Rbm3エクソン3a包含をコントロールするシス調節エレメントのマッピングが可能となる。E3からE4の未短縮配列全体(上流の3’ss及び下流5’ssを含む)を含有するミニ遺伝子構造を示す。
図3B】Rbm3ミニ遺伝子は、温度制御されるエクソン3a包含を再現する。マウスのみからのミニ遺伝子、又はマウス及びヒトからのミニ遺伝子をHEK293(3B)にトランスフェクトし、12時間を超える時間、指定の温度でインキュベートした。エクソン3aの包含をスプライシング感受性PCRによって調べた。代表的なゲル画像を示す(上部)。アスタリスクは、エクソン3aにおける107位のヌクレオチドにて選択的3から誘導される産物をマークする。HEK293におけるNMDアイソフォーム形成の定量化を示す(下部)(n=3;対応のないt検定により誘導されたp値**p<0.01,***p<0.001)。
図3C】マウスのみからのミニ遺伝子、又はマウス及びヒトからのミニ遺伝子をマウスN2A細胞(3C)にトランスフェクトし、12時間を超える時間、指定の温度でインキュベートした。N2AにおけるNMDアイソフォーム形成の定量化を示す(n=3;対応のないt検定により誘導された**p<0.01,***p<0.001)。
図3D】マウスミニ遺伝子における調節因子の系統的突然変異スクリーニングを示す。ヒトβ-グロビンからの配列によって指定の配列(3D)を置き換えた(M3は、エクソン3aのヌクレオチド107にて内部選択的3’ssを含有し(アスタリスク及び線で示す)、M6は5’ssを含有し、残りの異性体はエクソン2配列を含有する)。加熱してエクソンスキッピングを生じる変異は灰色で強調される(M2及びM4)。
図3E】HEK293及びN2A細胞における、33℃及び39℃での変異体M1~M6におけるNMDエクソン包含の解析(3E)を示す。
図3F】M2領域の詳細な変異スクリーニングを示す。M2欠失(del)において、M2配列が除去される(及び置換されない)(3F)。M2-1からM2-9において、指定の配列がヒトβ-グロビン配列によって置換される。
図3G】39℃でHEK293に図3Fの各変異体をトランスフェクトした後の、代表的なPCRイメージを示す(3G)。エクソンスキッピング(M2、M2欠失、M2-2、M2-3、M2-4、M2-6、M2-7及びM2-9)を生じる変異は灰色で強調される。
図3H】M2領域(左に示す境界)及びM4領域(右に示す境界)の詳細な変異スクリーニングを示す。M2又はM4欠失(del)において、M2又はM4配列が除去される(及び置換されない)。M2-1からM2-9又はM4-1からM4-7において、指定の配列が、同じ相対的位置からのヒトβ-グロビンエクソン2配列によって置換される。上に、代表的なPCRイメージを示す。下に、検出されたアイソフォームの定量化を示す(n=2)。
図3I】指定のミニ遺伝子の温度応答を示す。3Iにおいて、本発明者らは、M2及びM4配列の置換を用いた。
図3J】3Jにおいて、本発明者らは、M2及びM4領域の進化上保存されたコアを欠失させた。簡潔には、M2-2及びM2-3は、ヒトとマウスの間で100%保存された。したがって、M2-2及びM2-3は、hRBM3ミニ遺伝子において次いで欠失する、M2エンハンサーのコア配列としてみなされる。M4領域については、M4-3は、保存された配列の中心領域である。したがって、M4-5及びM4-4の上流配列の一部は、hRBM3ミニ遺伝子におけるM4変異のコア配列として欠失した。
図3K】調節因子の系統的突然変異スクリーニングを示す。37℃及び39℃でのHEK293におけるE3a%の倍変化の分析(平均±SD,n=2)。
図4A】Rbm3発現をコントロールするオリゴヌクレオチドのスクリーニングを示す。エンハンサーエレメントM2-9(左下)、エンハンサーエレメントM4-7(右下)又は5’ssのいずれかを標的化するオリゴヌクレオチドがデザインされた。M2-9は、エクソン3aヌクレオチド42~71に相当し、M4-7は、ヌクレオチド152~171に相当する。
図4B】N2A細胞における効率的なRbm3誘導を示す。ASOは約24時間トランスフェクトされ、Rbm3誘導がCTRL ASO(表6参照)に対して、及びHPRT発現に対して測定された。39℃でのRbm3発現に対する、M2-9エレメントを標的化するオリゴヌクレオチドの効果を示す。
図4C】39℃でのRbm3発現に対する、M4-7エレメントを標的化するオリゴヌクレオチドの効果を示す。
図4D】39℃でのRbm3発現に対する、5’ssエレメントを標的化するオリゴヌクレオチドの効果を示す。
図4E】39℃でのRbm3発現(同じCTRL試料)に対する2つのオリゴヌクレオチド(MOEとM2D、MOEとM2A、及びM2DとM2A)の組合せの効果を示す。
図4F】非トランスフェクト細胞(N2A_37℃)での、追加のコントロールを含む、37℃でのRbm3発現に対するMOE及びM2Dの効果を示す。
図4G】非トランスフェクト細胞(N2A_37℃)での、追加のコントロールを含む、37℃でのRbm3発現に対するMOE+2の効果を示す。
図4H】M2Db配列に相当するモルホリノオリゴヌクレオチドは、用量依存的な様式(濃度:0.5、1及び3μM)で;37℃及び39℃の両方にてRBM3発現を誘導する(灰色で強調される)。モルホリノを48時間トランスフェクトした。
図4I】PS及びMOE修飾M2Daが、ヒトHEK293細胞においてRbm3発現を効率的に誘導する。M2Daは、RBM3発現を1.5倍誘導した。
図4J】M2DはRbm3 mRNA発現を誘導する。ASOが、ヒトヒーラ細胞において37℃又は40℃にて24時間トランスフェクトされた。Rbm3の誘導が、CTRL ASOに対して37℃で、及びGAPDH発現に対して測定された(平均±SD,n=3,個々のすべてのデータポイントが示される;対応のないt検定で誘導されたp値****p<0.0001)。
図5A】エクソン3Aを標的化するASOの生体内(in vivo)投与によって、RBM3発現が誘導され、冷却することなく脳におけるエクソン3A包含が低減される。M2D、M2Db、MOE+2及びM4D、スクランブルコントロールASO(SCRM)及びPBSのみで処理した後の、RBM3レベルを示すウェスタンブロットを示す。n=2匹のマウス/条件。脳室内注入によりスクランブル又はRBM3 ASO100μgをマウスに投与した。注入後3週間で、ウェスタンブロットによって海馬のRBM3レベルを解析した。
図5B図5Cのウェスタンブロットからの、PBS注入コントロールマウスに対するRBM3レベルの定量化を示す。マウス2匹/群。
図5C】ASO(300μg)が、生体内でRBM3タンパク質発現を誘導する。2匹の独立したマウス/病状からの海馬試料をウェスタンブロット(上)によって解析し、アクチン及びPBSに対してRBM3タンパク質を定量化した(下,n=2)。
図5D】M2、M4又は5’ssを標的化するASOは、生体内でE3a包含を低減する(用量300μg/マウス)。2匹の独立したマウス/病状からの小脳RNA試料をスプライシング感受性RT-PCRによって解析し、E3a%シグナルを定量化した(n=2)。
図6A】Rbm3エクソン3aは、温度依存性のRBM3発現をコントロールする(追加のデータ)。図2Aに関して、及び実施例2に記述されるように、RBM3 E3aのCRISPR/CAS9介在除去を実施した。CHX処理Hek293細胞におけるRT-PCRによって、RNAレベルでのΔE3aクローンにおけるE3aのCRISPR/CAS9介在除去が確認される。
図6B】編集細胞系におけるRbm3レベルのRT-qPCR(6B)解析を示す。6Aからのクローン細胞系を指定の温度で24時間インキュベートした。6Bにおいて、単離RNAをqPCRによって調べ、Rbm3発現がGapdhレベルに対して示される。
図6C】編集細胞系におけるRbm3レベルのウェスタンブロット(6C)解析を示す。代表的なウェスタンブロットが、検出されるRBM3タンパク質を示す。
図6D】編集細胞系におけるRbm3レベルのウェスタンブロット(6D)解析を示す。独立した実験からのライセートをRBM3タンパク質発現ついて調べ、hnRNP Lは、ローディングコントロールとしての役割を果たした(平均±SD,n=6(3/クローン,黒色/灰色で示される),個々のすべてのデータポイントを示す)。対応のないt検定によって統計的有意性が決定され、アスタリスクによって示されるp<0.05,***p<0.001,****p<0.0001。
図7A】ヒトRbm3発現を制御するオリゴヌクレオチドのスクリーニングを示す(表7に示すヒトASO)。M2-9、M4-7又は5’ssを標的化するASO(図7B参照)は、ヒトヒーラ細胞においてRbm3 E3a包含を防ぐ。ASOトランスフェクト細胞を40℃で24時間維持した。37℃及び40℃のコントロール試料を示す;CHXを最後の4時間添加した。スプライシング感受性RT-PCRによって、エクソン3aの包含を調べ、代表的なゲル及びホスフォイメージャー(phosphor imager)定量化を示す(平均±SD,n=3)。アスタリスクは、M4領域を標的化するすべてのASOによって促進される内部5’及び3’ssの使用をマークする。5’ssを標的化するASOは、内部5’ssの利用を誘導した(2つのアスタリスクによってマークされる)。
図7B】M2-9、M4-7又は5’ssを標的化するASOは、ヒトヒーラ細胞においてRbm3 E3aの包含を防ぐ。ASOトランスフェクト細胞を40℃で24時間維持した。37℃及び40℃のコントロール試料を示す;CHXを最後の4時間添加した。スプライシング感受性RT-PCRによって、エクソン3aの包含を調べた。定量化が示される(n=2;すべてのM2Dバリアント及びM2Eについて、n=5,M4Bについて、n=1)。アスタリスクは、M4領域を標的化するすべてのASOによって促進される内部5’及び3’ssの使用をマークする。M2D領域を標的化するすべてのバリアントが、37℃にてコントロール細胞で確認されるレベルよりも低いレベルまで、E3aの包含を防ぐことに留意のこと。
図7C図7Bにおけるエクソン3aの包含を定量化するために使用された代表的なゲルを示す。
図7D図7Bにおけるエクソン3aの包含を定量化するために使用された代表的なゲルを示す。
図8A】M2Dは、海馬RBM3レベルを上昇させ、生体内で非常に神経保護的である。実験デザインの概略図を示す。プリオン接種tg37+/-マウスに、M2D又はスクランブルASO200μgを接種後3週(w.p.i.)にて注入した。
図8B】スクランブルされたASO又はM2Dで処理されたプリオン感染マウスからの海馬ライセートのウェスタンブロットを示す。M2Dは、ASOの注入から9週後、接種後12週(w.p.i.)にて、スクランブル処理されたマウスと比較して、RBM3発現を2倍増加する。
図8C】スクランブル又はM2D-ASOでさらに処理された、正常な脳ホモジネート(NBH)又はプリオン処置マウスからのヘマトキシリン及びエオシン染色脳スライスの代表的なイメージを示す。スクランブル処理されたマウスがプリオン徴候に対して選別された際に、スライスを接種後12週にて調製した。M2Dは、CA1-3錐体細胞層の保存と共に海馬における顕著な神経保護、海馬全体の収縮からの保護、並びに海綿状変性の低減を付与する。
図8D】NBHに対してスクランブル処理及びM2D処理プリオンマウスにおける錐体神経細胞のNeuNカウントを示す。M2Dは、NBHマウスで見られるレベル付近まで神経保護を付与する。
図8E】NBH、スクランブル処理及びM2D処理プリオンマウスにおける海綿状態の半定量的スコアリングを示す。海綿状態の徴候を示さないセクションを0と評点付けし、重症の海綿状態を4と評点付けした(White et al., 2008)。M2Dは、スクランブル処理プリオンマウスと比較して海綿状態を有意に低減した。
【発明を実施するための形態】
【0254】
実施例
以下の実施例において、本発明者らは、本明細書においてエクソン3aと呼ばれる、予め注釈付けされていないRbm3エクソンが、RBM3の熱誘導されたスプライシング結合ナンセンス介在分解(NMD)の原因であることを実証する。本発明者らはさらに、RBM3の発現を制御するために標的化することができる特異的領域をマッピングする。RBM3発現の増加は、これらの領域を標的化するアンチセンスオリゴヌクレオチドによって達成された。
【0255】
実施例1:Rbm3イントロン3は、進化上保存された熱誘導ポイズンエクソンを含有する。
意外なことに、マウス一次肝細胞RNAシーケンシングデータの、より焦点を合わせた解析から、本発明者らの初期の包括的解析を免れた、進化上保存されたイントロン3内の未注釈のエクソン(エクソン3a,E3a)が明らかとなった(図1A)。このエクソンは、冷たい温度(34℃)にて存在せず、温かい温度(38℃)で検出可能であり、CHXにおけるエクソン3-エクソン3a及びエクソン3a-エクソン4ジャンクションリード数のより多い数(DMSO中で38℃にて67及び28に対して、CHX中で38℃にて290及び240)によって実証されるシクロヘキシミド(CHX)を介したNMD阻害で強く安定化し、より高いリード密度(read density)は、38℃のDMSOに対してCHXにおけるエクソン3aに相当する(図1A)。エクソン3aは7つの未成熟終止コドン(PTC)を含有する(図1A,上部)。
【0256】
高い進化的保存との一致(図1A,下部)、及びヒトにおけるほぼ同一のエクソン3a配列、温度制御されたRBM3エクソン3aの包含が、ヒトHEK293細胞において見出された(図1B、1C及び1E)。RBM3エクソン3aは、外部方形波温度リズムに急速に応答し(38℃のより高い温度に曝露して4時間以内に)(図1B)、したがって、概日体温リズムに応じてRBM3発現をコントロールすることができた9,16。さらに、エクソン3aの包含は、33℃~39℃の生理的に関連する温度範囲内で温度応答性であり(図1C及び1D)、高度に温度感受性のRBM3発現と相関する。RBM3エクソン3aの包含は、穏やかな熱ショック温度(39℃)で特に顕著であり、したがって、発熱(febrile)温度でRBM3発現の低減に関与し得る。
【0257】
エクソン3a内の7つのPTCの存在(図1A)及び翻訳阻害剤CHXの添加での強い安定化(NMDは、翻訳連結(translation-coupled)プロセスである)から、エクソン3aアイソフォームがNMD介在分解を受けることが示唆される。NMD経路による分解の更なる証拠を提供するために、本発明者らは、NMD因子ノックダウンに応じてのエクソン3a安定化を調べた17。UPF1は、PCT含有mRNAに結合し、SMG6及びSMG7などのNMD因子のリクルートメント、及びNMD活性化複合体へのその組み立て(assembly)を促進する。
【0258】
NMD介在分解と一致すると、RBM3エクソン3aアイソフォームは、UPF1、SMG6又はSMG7ノックダウンで安定化され、SMG6/7ダブルノックダウンで劇的に安定化される(NMDアイソフォーム約75%)(図1F)。エクソン3aの安定化は、レスキュー実験(si_Smg6+7+Smg7、si_Smg6+7+Smg6)において逆戻りされ得る。Smg6レスキュー試料における逆戻りが高いほど、試料は、エクソン3aアイソフォームのSMG7依存性NMD分解よりも顕著なSMG6依存性NMD分解を示す。
【0259】
要約すれば、エクソン3aの包含がより高い温度で確認され、NMD介在分解が起こることから、RBM3における未注釈のポイズンエクソン、エクソン3aが熱誘導スプライシング結合NMDの原因であると、これらのデータによって同定される。したがって、RBM3の低温誘導発現は、ポイズンエクソン3aの熱依存性包含に起因し得る。
【0260】
実施例2:Rbm3エクソン3aは温度依存性RBM3発現をコントロールする。
RBM3エクソン3aが温度制御されるRBM3発現に関与するかどうかを調べるために、CRISPR/Cas9介在ゲノム編集を用いて、RBM3エクソン3aを欠く細胞系を作成した。クローン選択後、別々のガイドRNA対sgRNA#2とsgRNA#3、及びsgRNA#1とsgRNA#3(図2A)から誘導された2つのホモ接合型細胞系が得られた。px459空ベクタートランスフェクト細胞から作製されたコントロール細胞系は、強い、温度制御RBM3 mRNA及びタンパク質発現を示したが、これはエクソン3aを欠く細胞系ではほぼ抑制された(図2B及び2C、及び図6B、6C及び6D)。加熱での強いエクソン3a包含と一致して(実施例1参照)、コントロール細胞系と比べて、エクソン3aを欠く細胞系におけるRBM3タンパク質発現の増加は、加熱でより顕著であるが(図2C及び2D);37℃でさえも、エクソン3aの除去はRBM3発現を誘導する(図2D)。
【0261】
重要なことには、E3aを欠く細胞系は、Rbm3温度感受性を失うだけでなく、コントロール細胞では低温のみで達成される一定の高いRbm3発現レベルを示した。これらのデータから、NMDに結合された温度制御選択的スプライシングは、生理的に関連する温度範囲でRbm3発現レベルを制御する主要なメカニズムである。Rbm3発現に対する温度の作用が、阻害されたCDC様キナーゼを有する条件において強く低減されるため(CLK;Haltenhof et al., 2020 及び図2H)、SRタンパク質の温度依存性リン酸化は、この調節に寄与する可能性がある(Preussner et. al., Body Temperature Cycles Control Rhythmic Alternative Splicing in Mammals. Mol. Cell 67, 433-446.e434 (2017). https://doi.org:10.1016/j.molcel.2017.06.006; Haltenhof et al., A Conserved Kinase-Based Body-Temperature Sensor Globally Controls Alternative Splicing and Gene Expression. Mol. Cell, 78, 57-69.e4 (2020))。
【0262】
次に、スプライス部位ブロッキングモルホリノを使用して、RBM3エクソン3aの包含をブロックし、遺伝子発現レベルに対する作用を直接測定した。エクソン3aの3’スプライス部位又は5’スプライス部位のいずれかを標的化するモルホリノが、HEK293においてRBM3 mRNAレベルを誘導し、mRNAレベルを10倍まで誘導したため、5’スプライス部位ブロッキングモルホリノはより強い作用を有する(図2E)。モルホリノはまた、39℃(図2F)及び37℃(図2G)でRBM3タンパク質発現を誘導し、E3aのスプライシングを標的化することによって、Rbm3発現をトランス(trans)に制御することができることが確認される。
【0263】
総合して、これらのデータは、スプライシング制御RBM3発現の強い証拠を提供し、冷却することなく、RBM3発現の治療的増加のための標的としてエクソン3aを同定する。
【0264】
実施例3:ミニ遺伝子突然変異誘発によって、Rbm3エクソン3a包含を制御するシス調節エレメントのマッピングが可能となる。
選択的スプライシング(非生産的)を操作する一方法は、アンチセンスオリゴヌクレオチドの使用である。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、広い治療的可能性を有し18,19、エクソンスキッピングを誘導するために使用されている20,21。したがって、最も強力なアンチセンスオリゴヌクレオチドのデザインには、徹底的なスクリーニングが必要である場合が多い。アンチセンスベースの治療法のための潜在的な標的部位を狭めるため、本発明者らは、ミニ遺伝子解析で開始した。ミニ遺伝子の状況において、ミニ遺伝子が翻訳されないため、NMDアイソフォームは分解されない。ミニ遺伝子によって、系統的突然変異誘発解析でシス調節エレメントを解読することが可能となる。
【0265】
RBM3エクソン3から4を含むヒト又はマウスゲノム配列(図3A)をミニ遺伝子にクローン化し、ヒトHEK293又はマウスニューロンN2A細胞にトランスフェクトした後、ミニ遺伝子スプライシングを解析した(図3B及び3C)。ミニ遺伝子のエクソン3a含有NMDアイソフォームが温かい温度で検出され(図3B)、内因性スプライシングと同様に、ミニ遺伝子スプライシングは段階的に温度に応答し(図3B,下部)、種間で識別不可能であり(図3C)、ミニ遺伝子が、温度制御選択的スプライシングに必要とされるすべてのシス調節エレメントを含有することを示している。エクソン3aに対して内部であり、且つエクソン3aのヌクレオチド107に位置する、選択的3’ss(参考のため、図1E参照)によって、図3Bにおいてアスタリスクによって示される、エクソン3aの一部、つまり108~271位のヌクレオチドの温度依存性の取り込みが起こる。
【0266】
50ヌクレオチド窓をヒトβ-グロビン配列で置き換える突然変異誘発のスクリーニングから、窓M2及びM4での2つの強いエンハンサーエレメントが明らかとなった(図3D及び3E)。本発明者らは、3’ssの下流の領域(M1)、内部3’ssに近い領域(M3)、及び5’ssの上流の領域(M6)におけるサイレンサーエレメントも同定した(図3D、3E及び3K)。興味深いことに、内部選択的3’スプライス部位(m3)又は5’スプライス部位(m6)を含む配列の変異後のみ、エクソン3aの包含が、冷たい温度で可能になる(図3EにおけるM3、M6)。したがって、これらの配列は、冷たい状態で(in cold)エクソン3aの包含を防ぐ、強いサイレンサーエレメントを含有する。それと対照的に、変異m2及びm4は、熱を加えた場合でさえ、エクソン3aの包含を防ぎ、したがって、エンハンサーエレメントがコードされる(図3EにおけるM2、M4)。重要なことには、m2配列の欠失もまた、エクソン3aの包含を止め、且つこれらの置換の結果、加熱状態でエクソンスキッピングが起こるため、より小さな置換(M2-1からM2-9)から、ヌクレオチド42~71内のエンハンサーエレメントの位置(図3F及び3GにおけるM2-2、M2-3、M2-4及びM2-9に相当する)が明らかとなった。M2又はM4エンハンサー配列の欠失(置換の代わりに)もまた、エクソン3aの包含を止め、且つより小さな置換から、第2の同様に強いエンハンサーエレメントとして、M4領域におけるヌクレオチド142~171内のエンハンサーエレメント及び具体的にはヌクレオチド152~171のエンハンサーエレメント(本明細書においてM4-7と呼ばれる)の位置が明らかとなった(図3H)。
【0267】
さらに、エンハンサーM2又はM4の変異(その進化上保存されたコアの欠失)は、温度に対するスプライシング応答を強力に低減する(図3I及び3J)。
【0268】
「M2コア」は、エクソン3aのヌクレオチド42~61位に位置し、且つ配列ggcgacgactggtcctgcat(配列番号88)に相当する。
【0269】
「M4コア」は、エクソン3aのヌクレオチド146~160位に位置し、且つ配列ggacctcgtgagtct(配列番号89)に相当する。
【0270】
エクソン3aのヌクレオチド42~71位(M2-9領域)及び152~171位(M4-7領域)の同定されたエンハンサーエレメントは、エクソン3aの包含を防ぐために標的化され得る。
【0271】
実施例4:Rbm3発現を制御するオリゴヌクレオチドのスクリーニング
エンハンサーエレメントを含む領域として、M2におけるヌクレオチド42~71(M2-9)及びM4におけるヌクレオチド152~171(M4-7)を同定したミニ遺伝子解析に基づいて(実施例3)、これらの領域に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)が開発され、スクリーニングされた。さらに、エクソン3aの5’スプライス部位のブロッキングがRbm3タンパク質レベルを誘導することを示すモルホリノ実験に基づいて(実施例2及び図2E~2G参照)、エクソン3aの5’スプライス部位に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドがスクリーニングされた。図4Aは、M2-9を標的化する7つのオリゴヌクレオチドの配列、M4-7を標的化する4つのオリゴヌクレオチドの配列、及びエクソン3aの5’ssを標的化する3つのオリゴヌクレオチドの配列を示す。
【0272】
試験されたASOは、FDA承認薬ヌシネルセン(nusinersen)22と同様に、均一な2’-O-メトキシエチル(MOE)修飾塩基とホスホロチオエート(PS)修飾主鎖を併せ持ち、それによって、髄腔内注入後の中枢神経系全体への分布が可能となるはずである23。PS/MOE化学、並びにモルホリノ化学(実施例2で使用されるように)は、生体内での全身送達にも使用され得る24
【0273】
N2A細胞に、各PS/MOE修飾ASOを約24時間トランスフェクトし、Rbm3誘導が、コントロールPS/MOE修飾ASO(CTRL)に対して、及びHPRT発現に対して測定された。アンチセンスオリゴヌクレオチドの配列を表6に示す。
【0274】
【表12】
【0275】
【表13】
【0276】
M2領域におけるエンハンサーエレメントを標的化する、試験された7つすべてのASO、及びM4領域に対する試験された4つすべてのASOが、N2A細胞において39℃でRBM3レベルを増加し、M2D及びM4DASOバリアントで少なくとも2倍の増加であった(それぞれ図4B及び4C)。
【0277】
5’スプライス部位を標的化するASOもまた、2倍までRBM3レベルを増加した(MOE,図4D)。その効果は、延長されたASO MOElongA及びMOElongBによって改善されない。
【0278】
M2標的化(M2D)と5’ss標的化(MOE)ASOを合わせることによって、RBM3レベルが4倍を超えるレベルで増加した(図4E)。様々なM2標的化ASO(M2A)とMOEの組合せによって、RBM3レベルが約2倍増加し、M2AとM2Dの組合せもそうであった。
【0279】
選択されたASOの効果がそれより低い温度(37℃)で試験された。M2DとMOEのどちらも、37℃でさえRBM3レベルを約2倍増加する(図4F)。M2Dは、39℃でRBM3レベルのより高い増加を導き、それは、M2Dによって標的化されたエンハンサーエレメントが、温度が高いと、活性が高くなることを示す。重要なことには、M2D ASOは、37℃でコントロール細胞において確認されるレベルまで、40℃でRbm3発現を誘導し、また37℃でRbm3発現を2倍誘導している(図4J)。
【0280】
マウスN2A細胞もまた、MOE+2と呼ばれるMOEの2-ヌクレオチドシフトバリアントを保有するASOで処理された(表6参照)。M2D及びMOEのように、MOE+2は、37℃でRBM3発現を2倍誘導する(図4G)。
【0281】
要約すると、この実験から、エクソン3a M2、M4又は5’ssを標的化するASOは、N2A細胞においてRBM3のmRNA及びタンパク質レベルを増加することが実証され、ASOが生体内での適用に有望であると同定される。ASO M2D、M2Db、M4D及びMOE+2が、実施例7に記載の生体内での研究に選択された。
【0282】
マウスN2A細胞は、M2Dbの配列に相当する異なる修飾(モルホリノ;MO_M2Db)を保有するASOで処理された(表4に、また表6にも示す)。このASOは、37℃及び39℃にて用量依存的な様式でRBM3発現を誘導し、3μMにてRBM3発現の1.5倍を超える増加を達成する(図4H)。
【0283】
HEK293細胞に、PS及びMOE修飾M2Daもトランスフェクトした。M2Daは、37℃にてRBM3発現の1.5倍の増加を導いた(図4I)。
【0284】
ヒトヒーラ細胞におけるM2Dの効果と共に(図4J)、ヒトHEK293におけるこれらの実験は、エクソン3aM2を標的化するモルホリノ及び/又はPS及びMOE修飾ASOもまた、ヒト細胞においてRBM3の発現を有意に誘導することができることを示す。
【0285】
実施例5:ヒトRBM3においてエクソン3aの包含を制御する、ヒトASO配列のスクリーニング
ヒトrbm3エクソン3aのM2-9、M4-7又は5’ssを標的化するASOが、ミニ遺伝子解析に基づいてデザインされ、それを表7に示す。ASOスクリーニングを実施し、ヒーラ細胞におけるE3a包含を防ぐ、ヒトrbm3におけるそれぞれのエンハンサー又は5’ssを標的化する、いくつかのASOが同定された(図7A及び7B~7D、及び表7)。M4領域又は5’ssを標的化するASOによって、選択的3’又は5’スプライス部位が部分的に利用され、M2D領域を標的化するすべてのバリアントがE3a包含を定量的に止める(図7D)。
【0286】
このデータから、ヒトRBM3エクソン3a、具体的にM2-9領域を標的化するASOは、エクソン3aの包含の阻害に、及びヒト細胞におけるRBM3発現に有望な作用薬であり、且つ潜在的な治療的用途を有する。
【0287】
【表14】
【0288】
【表15】
【0289】
実施例6:実施例1~4で使用された材料及び方法
RNA-Seq解析及びバイオインフォマティクス
マウス一次肝細胞RNAからのシーケンシングデータをGSE158882下で登録する。Upf1、Smg6及びSmg7のノックダウン及びレスキュー後の、ヒーラ細胞からのシーケンシングデータをSRP083135から入手した17。STAR version 2.5.3a25を用いて、参照ゲノム(マウスに対してmm10,ヒトに対してhg38)に対するリードのマッピングを実施した。保存スコアをさらに表示するggsashimi26のカスタマイズ版を使用して、RBM3Sashimiプロットを作成した。ノックダウン及び欠失後のRBM3エクソン3aのスプライスされたパーセント(PSI)値を手作業で、ジャンクションリード数から計算した。
【0290】
組織培養細胞
HEK293T及びN2A細胞ストックを液体窒素中で維持し、初期継代アリコートを一定間隔で解凍した。マイコプラスマ(Mycoplasma)汚染を除外するために、PCRベースのアッセイを用いて、細胞形態を日常的に評価し、毎月チェックする。10%FBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むDMEM高グルコース中で、HEK293T細胞を培養した。10%FBS及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含む50%OptiMEM/50%OptiMEM Glutamax中でN2A細胞を培養した。上述のように(Peretti et al. Life Sci Alliance. 2021;4(4):e202000884. doi: 10.26508/lsa.202000884)、マウス海馬神経細胞を単離した。すべての細胞系を通常、37℃及び5%COに維持した。
【0291】
温度実験に関して、予め平衡化されたインキュベータ内に指定の時間、細胞を移動した。方形波温度サイクルで、本発明者らは、34℃及び38℃に設定された2つのインキュベータを使用し、細胞を12時間ごとに移動した27
【0292】
Rotifect(Roth)を用いたHEK293T又はN2A細胞のトランスフェクション(ミニ遺伝子又はCRISPRガイドのための)を製造元の説明書に従って実施した。シクロヘキシミド(Sigma)を最終濃度40μg/mlにて、又は溶媒コントロールとしてDMSOを使用した。
【0293】
モルホリノ実験では、細胞をシーディングし、製造元のマニュアルに従ってEndoporterを使用して、1日後にトランスフェクトした。モルホリノ(Rbm3 5’ss:GTCTCCCCTGCTACTACTTACATCT(配列番号36);3’ss:CCTCCACCCCCTAGAACAGAAGGCA(配列番号60);及び標準コントロール)及びEndoporterトランスフェクション試薬をGene Toolsから購入した。
【0294】
PS/MOE修飾アンチセンスオリゴヌクレオチド(1μl,100ng/μl)をMycrosynthから購入し、RotifectによってN2A細胞又はHEK293T細胞にトランスフェクトし(12ウェルプレート上で310細胞/ウェル)、次いで4時間後に、トランスフェクトされたN2A細胞を39℃(又は37℃)インキュベータ内に移し、24時間後にRNA抽出及びRT-qPCRを行った。
【0295】
マウスエクソン3a M2-9(MO_M2Db)を標的化するモルホリノを、37℃及び39℃で0.5、1及び3μMにて48時間、N2A細胞にトランスフェクトした。
【0296】
RT-PCR及びRT-qPCR
RT-PCRを上述のように行った28。簡潔には、RNATri(Bio&Sell)を用いてRNAを抽出し、RNA1μgを遺伝子特異的なRT反応で使用した。エクソン3における放射性標識されたフォワードプライマー(5’-TCATCACCTTCACCAACCCA(配列番号7))及びエクソン5におけるリバースプライマー(5’-TCTAGAGTAGCTGCGACCAC(配列番号8))で内因性RBM3スプライシングを解析した。
【0297】
ミニ遺伝子スプライシングの解析のために、RNAをさらにDNaseIで消化し、再精製した。ミニ遺伝子スプライシングをミニ遺伝子特異的なプライマーで調べた:
T7fwd:5’-GACTCACTATAGGGAGACCC(配列番号61);
BGHrev:5’-TAGAAGGCACAGTCGAGG(配列番号62)。
【0298】
qRT-PCRのために、1つのRT反応においてRbm3遺伝子特異的なプライマーをハウスキーピング遺伝子リバースプライマーと合わせた。次いで、Stratagene Mx3000P装置でBlue S’Green qPCR Kit Separate ROX(Biozym)を使用して、qPCRを96ウェル形式で実施した。qPCRを技術上の2つ組で実施し、平均値を用いて、ハウスキーピング遺伝子(ヒト:GAPDH;マウス:HPRT)に対して発現を正規化し;DCT、及びD(DCT)を異なる条件に対して算出した。
【0299】
【表16】
【0300】
CRISPR-Cas9編集細胞の作製及びRbm3発現の解析
HEK293細胞におけるゲノムエンジニアリングに関して、Rbm3のエクソン3aにフランキングする配列をsgRNA候補についてイン・シリコ(in silico)でBenchlingツールを使用して解析した。エクソンの上流及び下流の最高ランクの候補sgRNA29のオリゴヌクレオチド対を合成し、PX459ベクターでサブクローニングした。
sgRNA配列#1:5’-TGTGTCTGCTCGGGGCAGCG(配列番号11);
sgRNA配列#2:5’-CCTGTGAGTGGGCACTGCG(配列番号12);
sgRNA配列#3:5’-TCCTGATGAAGCCATTCTG(配列番号13)。
【0301】
製造元の説明書に従って、Rotifect(Roth)を使用して、6ウェルプレートでガイドRNA#3、及び#1又は#2のいずれかを細胞に同時トランスフェクトした。トランスフェクションから48時間後に、1μg/mlピューロマイシンでトランスフェクト細胞を選択し、希釈によってクローン細胞系を単離した29。DNA抽出バッファー(200mMトリス/HCl pH8.3,500mM KCl,5mM MgCl,HO中に0.1%ゼラチン)を使用して、ゲノムDNAを抽出し、DNAレベルでエクソンノックアウトを確認するために、切断部位の上流及び下流のイントロン(FWD:5’-ATCTGCAGAGGGACCTTGTC(配列番号63);REV:5’-CAGACTTGCCTGCATGATCC(配列番号64))におけるプライマー結合を用いてジェノタイピングPCRを実施した。有望なクローンにおいて、エクソン3における1つのフォワードプライマー及びエクソン4における1つのリバースプライマーを用いて、スプライシング感受性PCRによって、RNAを単離した後に、エクソンノックアウトがさらに確認された(データは示されていない)。Rbm3総発現レベルをRT-qPCR及びウェスタンブロットによって調べた。
【0302】
ウェスタンブロット
プロテアーゼ阻害剤ミックス(アプロチニン、ロイペプチン、バナデート(Vanadat)及びPMSF)が補充された溶解バッファー(20mMトリス(pH8.0)、2%NP-40(v/v)、0,01%デオキシコール酸ナトリウム(w/v)、4mM EDTA及び200mM NaCl)で、全細胞抽出物(WCE)を調製した。製造元の説明書に従ってRotiNanoquant(Roth)を使用して濃度を決定した。SDS-PAGE及びウェスタンブロット法は標準手順に従った。ImageQuant TLソフトウェアを使用して、ウェスタンブロットを定量化した。以下の抗体をウェスタンブロットに使用した:hnRNPL(4D11,Santa Cruz)、Rbm3(14363-1-AP,proteintech)、Gapdh(GT239,GeneTex)。
【0303】
ミニ遺伝子コンストラクト
HindIII及びXhoI部位を導入するPCR、及びpcDNA3.1(+)中へのライゲーションを用いて、クローニングを実施した。エクソン3の上流のイントロンにおけるフォワードプライマー(マウス:5’-AATTTAAGCTTctgtggctgtgcctggct(配列番号65);ヒト:5’-AACTTAAGCTTTCCGGCCACCCTTTGCTAC(配列番号66))、エクソン4の下流のイントロンにおけるリバースプライマー(マウス:5’-AATTTCTCGAGttcagacataggctcttaacatt(配列番号67);ヒト:5’-TAGACTCGAGATAGGCAACTCTCCCTCTCAC(配列番号68))及び鋳型としてヒト又はマウスDNA;を用いて、コンストラクトをクローニングした。
【0304】
mRbm3変異及びサブ変異クローニングのそれぞれについて、変異配列を欠失させるか、又はヒトβ-グロビンからの配列によって置換した(M3は3’ssを含有し、M6は5’を含有し、残りの異性体はエクソン2配列を含有する)。簡潔には、変異を導入するPCRプライマー対を用いてmRbm3ミニ遺伝子から、2つのDNA断片を増幅した。次いで、これら2つのDNA断片をPCRに鋳型として使用し、完全長mRbm3変異体を得た。すべてのミニ遺伝子配列が、シーケンシング(Microsynth SeqLab)によって確認された。
【0305】
実施例7:エクソン3Aを標的化するASOはマウスにおいてRBM3発現を誘導する
7.1 結果
忍容性の研究は、4つの異なるRBM3標的化ASO(M2D、M2Db、MOE+2及びM4D)及びスクランブルコントロール(SCRM)、並びにPBSコントロールのみの注入を含んだ。各ASOについてn=2である。サンプリング前の3週間、ASOの投与に伴う有害作用(不安定な歩調、体重減少、発作等)なく、用量30μg、100μg及び300μg/マウスはすべて忍容性がよかった。
【0306】
有効性:すべてのASOは、各用量でウェスタンブロットによって実証されるように、海馬におけるRBM3発現を1.5倍まで増加し(図5A、5B及び5C)、E3a包含レベルの低減と相関する(図5D)。
【0307】
ASOによって見られるこのアップレギュレーションは、冷却した場合のRBM3レベルと同様であり、複数のモデルにおいて神経が保護されることが示されている2-4。M2Dbで見られる作用の欠如は、このASOの安定性若しくは薬物動態学が原因で有効性を欠いているか、又は試験された数が少ないことが反映され得る。
【0308】
手短に言えば、RBM3エクソン3Aに対して異なる領域に相補的である、RBM3標的化ASO(M2D、MOE+2及びM4D)は、低体温で起こる同様なレベルまで、冷却することなくマウスにおいてRBM3発現を誘導する。
【0309】
参考文献
1. A. L. Southwell et al., In vivo evaluation of candidate allele-specific mutant huntingtin gene silencing antisense oligonucleotides. Molecular therapy: the journal of the American Society of Gene Therapy 22, 2093-2106 (2014).
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【0310】
7.2 材料及び方法
ASOの投与
すべてのASO(Merck)を滅菌PBS中で最終体積10μlに希釈し、指定の用量(30μg、100μg又は300μg)で左側脳室への脳室内注入によって、これをマウスに送達した。脳定位固定フレームに載せる前にイソフルランを使用して、最初にマウスに麻酔をかけた。露出された頭皮及び頭蓋骨の中心線に沿って切開した。ブレグマ(Bregma)から前方0.3mm及び側方1mmにて頭蓋骨に小さな穴をドリルで開けて、Hamilton 33Gニューロシリンジを、頭蓋骨の表面下3mmに下げ、ASOを1分間にわたり注入し、注入の中止から2分後にゆっくりと針を除去した。外科的回復前に、頭部創傷を接着剤で閉鎖した。サンプリング前の3週間、マウスを毎日モニターした。脊椎脱臼によってマウスを殺し、脳をすぐに解剖してチューブに入れ、液体窒素中でフラッシュ凍結した。採取された試料は:海馬、前頭前皮質及び小脳であった。
【0311】
試料の調製
プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤(Roche)が補充されたRIPAバッファー(50mMトリス(pH8),50mM NaCl,1%IGEPAL,0.5%デオキシコール酸ナトリウム,0.1%SDS)(Sigma)350μL中に氷上で海馬を溶解した。試料を4℃で超音波処理し、次いで13,000rpmにて10分間遠心して壊死組織片を除去した。ビシンコニン酸(BCA)アッセイ(Pierce)を用いて、タンパク質濃度を決定した。
【0312】
ウェスタンブロット法
ライセート15μgをSDS-PAGEによって分離し、0.2μmニトロセルロース膜上に移し、5%ウシ血清アルブミン(BSA)中でブロッキングした。膜をRBM3抗体(1:2000,Proteintech)と共に一晩インキュベートした。ローディングコントロールとしてアクチンを使用した(1:5000,細胞シグナル伝達)。BioRad ChemiDocでブロットをイメージングし、ImageJを使用して定量化した。
【0313】
実施例8:ASO処理は、海馬RBM3レベルを高め、且つ顕著に神経保護的である
神経変性の進行に対する、冷却及びRBM3過剰発現の効果(Peretti, 2015; Bastide, 2017. Curr. Biol. 27, 638-650, doi:10.1016/j.cub.2017.01.047; Peretti, 2021)、並びに多くの他の介入(Mallucci, 2003. Science (New York, N.Y.) 302, 871-874, doi:10.1126/science.1090187)の効果を試験するために、広範に使用されているモデルにおいて、プリオン病におけるASO介在E3a包含の治療的可能性を試験した。
【0314】
ヘミ接合tg37+/-マウスは、野生型レベルと比べて、プリオンタンパク質(PrP)を約3倍過剰発現する(Mallucci, 2002 EMBO J. 21, 202-210, doi:10.1093/emboj/21.3.202)。Rocky Mountain Laboratory(RML)プリオンを接種した場合に、これらのマウスは急速なインキュベーション時間を示し、接種後わずか12週で病に倒れ、海馬CA1-3領域などの脳全体に急速進行性の広範な神経変性を有する(Mallucci, 2002)。
【0315】
PBM3レベルをブーストするための初期の冷却(接種後3週にて)、又は海馬へのRBM3のレンチウイルス送達は、プリオン疾患tg37マウスとアルツハイマー病5xFADマウスの両方で顕著に神経保護するのに対して、RBM3のRNAiは、冷却の保護効果を無くす(Peretti, 2015)。
【0316】
冷却の非存在下でのE3aスキッピングを介したRBM3発現のASO介在誘導が同様に神経保護的であるかどうかに取り組むために、本発明者らは、M2D又はスクランブルされたASOコントロール200μgでプリオン疾患tg37マウス(n=8)を処置した(図8A;この用量は、100及び300μgの有効な用量の平均として選択された)。
【0317】
ASOは、本発明者らの以前の介入の時点と一致する、接種後3週にて単回脳室内注入によって送達された(初期の冷却、又はLV-RBM3,Peretti, 2005)。すべてのスクランブルASO処置マウスがプリオン病に倒れた場合に、M2D/スクランブルASOで処置されたマウスを接種後12週にて神経保護について解析した。顕著なことには、M2D ASOを単回投与した結果、接種後12週にて注入から9週後にスクランブル処理マウスよりも、RBM3レベルが2倍高くなった(図8B)。既に述べたように(Peretti, 2015)、RBM3のレベルが高いほど、顕著な神経保護と関連し:そのマウス6匹のうち5匹がこれらの領域の著しい神経細胞の脱落を示したスクランブルASO処置マウス(図8C及び8D)と比較して、M2D処置マウスの7/8が、海馬CA1-3領域における錐体神経細胞の広範な保存を示した(図8C及び8D)。M2D介在神経保護は、海綿状態の低減とも関連し、M2D処置マウス、スクランブル処置マウスと比較して顕著に低い海綿状態スコアを示した(図8E)。
【0318】
これらのデータから、M2Dの単回投与によって、冷却することなくRBM3の強力な、及び持続性の誘導が裏付けられ、上述のように9週で、急速進行性神経変性疾患の状況において顕著な神経保護が得られる。治療的低体温の代わりに、FDA承認化学を用いた、忍容性がよいASOの1回投与によるRBM3レベルを上昇する能力は、新生児の急性設定治療から、成人における心臓外科手術、脳卒中及び頭部外傷、変性疾患におけるより長期の神経保護まで、多様な状態における神経保護に対する強い意味合いを有する。急性設定において、このアプローチは、RBM3発現の神経保護をもたらす一方で、凝固問題、肺炎、及び観血的なモニタリングなど、集中治療及び冷却に伴う実質的なリスクを回避する。さらに、そのアプローチは神経変性の予防における著しいアピールを有する。ASOは、SMAを有する子供において非常に成功を収めており、成人の急速進行性神経変性疾患、ALSの治療に対して最近認可された(Miller, T. M. et al. Trial of Antisense Oligonucleotide Tofersen for SOD1 ALS. N Engl J Med 387, 1099-1110, doi:10.1056/NEJMoa2204705 (2022))。アルツハイマー病及び関連する認知症の疾患の研究において、その長期の発現を生じさせる、ASO送達を介したRBM3の神経保護作用の誘導は、やむを得ない治療的アプローチであり、特に老化に関連するこれらのタンパク質ミスフォールディング疾患の直接的及び間接的毒性作用に抵抗するための鍵である、神経細胞のレジリエンス及びシナプス再生が高められる。
【0319】
8.1実験の詳細
マウス
すべての動物作業は、英国内務省の規制に従い、動物[科学的処置]法(Animal [Scientific Procedures] Act)1986の下で、且つ研究のための動物の管理と使用に関する施設ガイドラインに従って実施された。すべての研究は、ケンブリッジ大学(University of Cambridge)Animal Welfare and Ethical Review Body (AWERB)によって倫理的に審査された。マウスは、12時間の明暗サイクル下にて動物2~5匹/ケージのグループで収容され、昼間(light phase)に試験された。水及びマウス標準固形飼料を無制限に与えた。ケージ番号によって、マウスをランダムに処置群に割り当てた。実験中、及び臨床的徴候が評価される際には、実験者は群の割り当てを知らされなかった。行動試験のために、形式的なランダム化は必要とされない、又は使用されなかった。手順はAnimal Research: Reporting of In Vivo Experiments (ARRIVE)ガイドラインに完全に準拠した。
【0320】
マウスのプリオン感染
記載のように(Mallucci, 2002)全身麻酔薬下にて、Chandler/RML(Rocky Mountain Laboratories)プリオンの1%脳ホモジネート30μLを、3週齢tg37+/-マウスに脳内接種した。Mallucci, 2002; Mallucci, 2003; Mallucci, 2007 Neuron 53, 325-335, doi:10.1016/j. Neuron.2007.01.005に定義されるように、スクレイピーの臨床的徴候を発症した場合には動物を間引いた。コントロールマウスには、1%正常脳ホモジネートを投与した。
【0321】
参考文献
本発明及び本発明に関する現況技術をより完全に説明及び開示するために、多くの出版物が上述されている。これらの参考文献の一部の完全な引用は以下に提供する。これらの参考文献のそれぞれの全体が本明細書に組み込まれる。
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32 Llorian, M. et al. The alternative splicing program of differentiated smooth muscle cells involves concerted non-productive splicing of post-transcriptional regulators. Nucleic Acids Research 44, 8933-8950 (2016).
【0322】
分子生物学の標準技術については、Sambrook, J., Russel, D.W.分子クローニング, A Laboratory Manual. 3 ed. 2001, Cold Spring Harbor, New York: Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照のこと。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図3A
図3B
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図3I
図3J
図3K
図4A
図4B
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図4G
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図4I
図4J
図5A
図5B
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図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
【配列表】
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【国際調査報告】