(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】FGFR関連骨修復及び骨形成の障害の処置のためのカテキンの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/353 20060101AFI20241219BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20241219BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241219BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20241219BHJP
【FI】
A61K31/353
A61P19/08
A61P43/00 111
A23L33/10 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536419
(86)(22)【出願日】2022-12-19
(85)【翻訳文提出日】2024-08-01
(86)【国際出願番号】 EP2022086563
(87)【国際公開番号】W WO2023117847
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(71)【出願人】
【識別番号】520053762
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・シテ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS CITE
(71)【出願人】
【識別番号】515028470
【氏名又は名称】フォンダシオン・イマジネ
【氏名又は名称原語表記】FONDATION IMAGINE
(71)【出願人】
【識別番号】591140123
【氏名又は名称】アシスタンス ピュブリク-オピトー ドゥ パリ
【氏名又は名称原語表記】ASSISTANCE PUBLIQUE - HOPITAUX DE PARIS
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ルジェ-マル,ロランス
(72)【発明者】
【氏名】モリス,アン
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
【Fターム(参考)】
4B018MD60
4B018ME05
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA96
4C086ZC02
(57)【要約】
本発明は、FGFRに関連した骨修復及び骨形成及び骨の質の障害の処置のための方法に関する。本発明者らは、FGFR3シグナル伝達の異常な活性化が、多くの仮骨における偽関節の存在、及び骨粗鬆症の骨に類似した骨構造によって特徴付けられる、軟骨低形成症の下顎骨における、骨の形成及び修復プロセスを損なうことを確認するデータを提供する。興味深いことには、カテキンを用いての処置は、異常な骨の形成及び修復を部分的に回復させる。したがって、本発明は、治療有効量の少なくとも1つのカテキンを被検者に投与する工程を含む、それを必要とする被検者におけるFGFRに関連した骨修復及び骨形成の処置のための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量の少なくとも1つのカテキンを被検者に投与する工程を含む、それを必要とする被検者におけるFGFR3関連骨修復及び骨形成の障害を処置する方法。
【請求項2】
前記被検者が、小児又は成人である、請求項1の方法。
【請求項3】
前記カテキンが(+)-カテキンである、請求項1の方法。
【請求項4】
前記カテキンが(-)-カテキンである、請求項1の方法。
【請求項5】
前記カテキンが(+)-エピカテキンである、請求項1の方法。
【請求項6】
前記カテキンが(-)-エピカテキンである、請求項1の方法。
【請求項7】
前記被検者がFGFR機能獲得型突然変異を有する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
FGFR機能獲得型突然変異が、FGFR関連骨格疾患である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
FGFR関連骨格疾患が、軟骨低形成症(HCH)、軟骨無形成症(ACH)、タナトフォリック骨異形成症(TD)、発達遅延と黒色表皮腫を伴う重度軟骨無形成症(SADDAN)、ムエンケ症候群、黒色表皮腫を伴うクルーゾン症候群、低身長症、又は頭蓋縫合早期癒合症である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
FGFR関連骨格疾患が、軟骨低形成症(HCH)である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
FGFR3関連骨格疾患が、軟骨無形成症(ACH)である、請求項9記載の方法。
【請求項12】
FGFR3関連骨格疾患が、頭蓋縫合早期癒合症である、請求項9記載の方法。
【請求項13】
頭蓋縫合早期癒合症が、黒色表皮腫を伴うクルーゾン症候群(CAN)である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
FGFR3関連骨格疾患が、ムエンケ症候群である、請求項9記載の方法。
【請求項15】
FGFR機能獲得型突然変異がFGFR2関連骨格疾患である、請求項7記載の方法。
【請求項16】
FGFR2関連骨格疾患が、クルーゾン症候群、ジャクソン・ワイス症候群、アペール症候群、頭蓋縫合早期癒合症、ファイファー症候群、尖頭合指症V型、及びベアスティーブンソン皮膚回転症候群である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記被検者に、活性原薬としての治療有効量のカテキンと少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含んでいる医薬組成物で投与される、請求項1の方法。
【請求項18】
前記被検者に、治療有効量のカテキンを含んでいる食品組成物で投与される、請求項1の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野:
本発明は、FGFR関連骨修復及び骨形成及び骨の質の障害の処置のための方法及び医薬組成物に関する。
【0002】
発明の背景:
線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)は、骨形成に関与する重要な遺伝子である。FGFR機能獲得型突然変異に連関している、頭蓋縫合早期癒合症及び軟骨異形成症を有する患者は、頭蓋顔面及び下顎の形成異常を呈する(Kolar JC 2017)。FGFR2関連狭頭症(例えばクルーゾン症候群、アペール症候群、及びファイファー症候群)は、1つ以上の頭蓋縫合の癒合を伴い、その結果、両眼隔離症、眼球突出、中顔面低形成、及び下顎前突症を伴う、可変性の頭蓋形成異常が起こる、片側又は両側冠状頭蓋縫合早期癒合症の存在によって特徴付けられる。FGFR3関連頭蓋縫合早期癒合症(例えばムエンケ症候群及びクルーゾン症候群及び黒色表皮腫)は、頭蓋顔面異常、すなわち、片側又は両側冠状頭蓋縫合早期癒合症、及び中顔面低形成を示す。FGFR3関連軟骨異形成、例えば軟骨無形成症、発達遅延と黒色表皮腫を伴う重度軟骨無形成症(SADDAN)、及び軟骨低形成症(HCH)は、短い手足、頭蓋底異常、巨頭症、聴覚消失、中顔面低形成、及び下顎前突症によって特徴付けられる。顎顔面及び脳神経外科手術が、頭蓋顔面及び頭蓋骨異常を修正するために、頭蓋縫合早期癒合症及び軟骨異形成を有するこれらの患者のために適応される。骨治癒プロセスは、機構的安定性に応じて、2つの異なる方法で起こる。安定な骨折の治癒は、膜性骨化を介して起こる。対照的に、不安定な骨折の治癒は、内軟骨性骨化の制御下にある。この場合、大きな軟骨テンプレートが、骨折骨片間の間隙内に形成され、これが骨によって置換されることにより、骨折の2つの末端は架橋される。
【0003】
骨折の治癒は、初期の出血及び炎症、間葉系細胞の動員及び増殖、それに続く軟骨性仮骨の形成、及び仮骨による軟骨性仮骨の徐々の置換を含む、細胞事象カスケードの関与する複雑なプロセスである。多種多様な増殖因子/サイトカインが、骨格の発達及び恒常性を調節し、そしてまた、骨折の治癒も調節し得る。チロシンキナーゼ受容体(RTK)は、骨の修復に役割を果たしていることは周知である。チロシンキナーゼ受容体の中でも、FGFR3は、軟骨性仮骨の形成及び骨による置換を調節する。軟骨異形成マウスモデル(FgfrY367C/+)では、FGFR3機能獲得型突然変異は、不安定な脛骨骨折における骨の再生を損ない、そして仮骨内の偽関節表現型を誘発する(Julien et al 2020)。
【0004】
骨格の修復及び骨の形成の理解は、外科的骨切除術又は外傷性骨折後の骨治癒を改善するために使用しようとする治療法の開発にとって必須である。下顎骨の形成及び修復におけるFGFRの正確な機能は、依然として解明されていない。顎顔面骨格では、下顎骨は顔面の最大かつ最強の骨であり、異常な成長の発生は、顎-下顎骨の不均衡及びそれに続く歯咬合の異常及び顔面の成長の攪乱の原因である。2つの骨化プロセスが、下顎骨の発達を制御し、1)軟骨内骨化が下顎頭軟骨及びメッケル軟骨の形成を調節し、2)膜性骨化が、骨間枝の形成及び伸長を制御する。
【0005】
下顎骨の形成及び修復中の異常なFGFのシグナル伝達を調べるために、本発明者らは、軟骨低形成症マウスモデル(Fgfr3N534K/+)を研究した。軟骨低形成症マウスモデルは、軟骨低形成症の下顎骨顔面特色、すなわち、巨頭症及び下顎前突症を示す。成体軟骨低形成症マウスの下顎骨の不安定型骨折が実施され、仮骨修復の形成が、様々な重要な修復時点で分析された。本発明者らのデータは、FGFR3のシグナル伝達の異常な活性化が、多くの仮骨における偽関節の存在によって特徴付けられる、軟骨低形成症の下顎骨における、骨の形成及び再吸収、骨の質及び骨の修復プロセスを損なうことを確認する。興味深いことには、テオブロマ・カカオ(Theobroma cacao)から単離されたフェノール化合物のカテキンでの処置は、仮骨の欠損骨の修復を一部回復し、偽関節を伴うことなく骨体積/総体積を増加させる。
【0006】
発明の要約:
本発明は、FGFRに関連した骨修復及び骨形成及び骨の質の障害の処置のための方法及び医薬組成物に関する。特に、本発明は、特許請求の範囲によって定義される。
【0007】
発明の詳細な説明:
本発明は、治療有効量の少なくとも1つのカテキンを被検者に投与する工程を含む、それを必要とする被検者におけるFGFRに関連した骨修復及び骨形成の障害の処置法に関する。
【0008】
本発明はまた、治療有効量の少なくとも1つのカテキンを被検者に投与する工程を含む、それを必要とする被検者における欠損した骨の修復を回復する方法にも関する。
【0009】
本明細書において使用する「被検者」又は「患者」という用語は、哺乳動物、例えばげっ歯類、ネコ、イヌ及び霊長類を示す。特に、本発明に記載の被検者はヒトである。特に、本発明に記載の被検者は成人である。特に、本発明に記載の被検者は、小児、10代の若者、又は高齢者である。いくつかの実施態様では、患者は15歳未満である。いくつかの実施態様では、患者は10歳未満である。いくつかの実施態様では、患者は7歳未満である。いくつかの実施態様では、患者は5歳未満である。いくつかの実施態様では、患者は3歳未満である。いくつかの実施態様では、患者は成人である。いくつかの実施態様では、被検者は15歳を超えている。いくつかの実施態様では、被検者は20歳を超えている。いくつかの実施態様では、被検者は25歳を超えている。いくつかの実施態様では、被検者は30歳を超えている。いくつかの実施態様では、被検者は35歳を超えている。
【0010】
本明細書において使用する「骨」という用語は、殆どの脊椎動物において骨格の一部を構成する堅い組織である。骨は、身体の様々な器官を保護し、赤血球及び白血球を生成し、ミネラルを貯蔵し、身体のための構造及び支えを提供し、そして可動性を可能とする。骨は多種多様な形状及びサイズになり、そして複雑な内部構造及び外部構造を有する。それらは、軽量であるが強くかつ硬く、そして複数の機能を果たす。骨組織(骨性組織)は、一種の特殊な結合組織である硬い組織である。それは内部にハチの巣のようなマトリックスを有し、これは骨に剛直性を与えるのに役立つ。骨組織は、様々な種類の骨細胞からなる。骨芽細胞及び骨細胞は、骨の形成及びミネラル化に関与し;破骨細胞は、骨組織の再吸収に関与している。修飾された(平板化した)骨芽細胞は、骨表面上に保護層を形成するライニング細胞となる。骨組織のミネラル化マトリックスは、オセインと呼ばれる主にコラーゲンの有機成分と、様々な塩からなる骨ミネラルの無機成分を有する。骨組織は、2種類のミネラル化組織、すなわち、皮質骨及び海綿(cancellous)骨(海綿骨(trabecular)とも呼ばれる)である。骨に見られる他の種類の組織としては、骨髄、骨内膜、骨膜、神経、血管の成長板、及び関節軟骨が挙げられる。
【0011】
本明細書において使用する「骨の形成」、「骨形成」又は「骨化」という用語は、骨形成プロセスに関する。前駆細胞が骨芽細胞株を形成した後、それらは、増殖、マトリックスの成熟、及びミネラル化と呼ばれる、細胞分化の3つの発達段階で進行する。その発生学的起源に基づいて、事前に軟骨が形成されることなく骨化中心において直接骨芽細胞へと分化する間葉系細胞において起こる膜内骨化と、骨組織ミネラル化がまず軟骨の形成を通して形成される軟骨内骨化と呼ばれる、2種類の骨化が存在する。膜内骨化では、骨の発生は直接起こる。このプロセスでは、間葉系細胞は、細胞凝集中心又は一次骨化中心の形成において、胚性結合組織内に高い血管新生を有する領域中に増殖する。この細胞は、周辺において骨マトリックスを合成し、間葉系細胞は、骨芽細胞へと分化し続けるだろう。その後に、骨は再成形され、成熟した層板骨によって置換されるだろう。軟骨内骨化は、一次骨化中心を形成し、軟骨は、軟骨細胞の増殖及び軟骨基質の沈着によって伸長する。この形成後、軟骨中心領域における軟骨細胞は、成熟と共に肥大軟骨細胞へと進行し始める。一次骨化中心が形成された後、髄腔は骨端に向かって増殖し始める。その後、後続段階の軟骨内骨化は、骨のいくつかの帯域で起こるだろう。
【0012】
いくつかの実施態様では、本発明の処置は、外科的骨切除術又は外傷性骨折後の骨治癒を改善する。
【0013】
本明細書において使用する「外科的骨切除術」という用語は、外科医が、損傷を受けた関節の近くの骨の楔を除去するか又は時には付け足す、手順を指す。これにより、損傷された軟骨のある領域から、より多くの又はより健康な軟骨がある領域へと重量がシフトする。本明細書において使用する「骨の治癒」又は「骨折の治癒」又は「骨の修復(骨修復)」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、身体が骨折の修復を促進する、増殖性の生理学的プロセスを指す。骨治癒プロセスは、3つの重複する段階を有する。
1.炎症は、骨折直後に始まり、数日間続く。骨折すると、領域への出血が起こり、骨折部位での炎症及び血液凝固が起こる。これは、新しい骨を生成するための初期の構造的安定性及びフレームワークを提供する。
2.骨の生成は、炎症によって形成された凝血が、線維性組織及び軟骨(軟かい仮骨として知られる)で置換されると開始される。治癒が進行するにつれて、軟かい仮骨は、硬い骨(硬い仮骨として知られる)で置換され、これは骨折から数週間後にx線で可視化できる。
3.骨治癒の最終期である骨リモデリングは、数か月間続く。リモデリングでは、骨は形成され続け、そして緻密になり、その元来の形状に戻る。さらに、領域内の血液循環は改善する。一旦適切な骨治癒が起こると、体重負荷(例えば起立又は歩行)は骨のリモデリングを推進する。
【0014】
いくつかの実施態様では、被検者は骨折に罹患している。本明細書において使用する「骨折」という用語は、骨の連続性における部分的又は完全な破壊が存在する、医学的容態を指す。より重度の症例では、骨は、いくつかの破片へと壊れる場合がある。
【0015】
いくつかの実施態様では、本発明の少なくとも1つのカテキンは、骨の密度又は骨の体積/総体積(BV/TV)を増加させる。本明細書において使用する「骨の密度」又は「骨の体積/総体積」(BV/TV)という用語は、骨組織内の骨ミネラルの量である。
【0016】
いくつかの実施態様では、本発明の少なくとも1つのカテキンを使用して、骨粗鬆症を処置することができる。本明細書において使用する「骨粗鬆症」という用語は、骨が時と共に非常に薄くかつもろくなることを引き起こす、骨組織/骨密度の悪化によって特徴付けられる、骨疾患である。
【0017】
本明細書において使用する「頭蓋顔面の異常」という用語は、頭部及び顔面の骨の成長における、多様な群の変形を指す。異常は、「不規則性」又は「正常とは異なる」を意味する医学用語を指す。これらの異常は、生誕時(先天性)に存在し、数多くのバリエーションがある。軽度であるものもあり、重度かつ手術を必要とするものもある。
【0018】
本明細書において使用する「頭蓋縫合早期癒合症」という用語は、年少乳児の頭蓋骨における線維性縫合の1つ以上が、骨へと変わり(骨化)、それにより頭蓋骨の成長パターンが変化することによって早期に癒合している容態を指す。それは、顔面-頭蓋-狭窄症として知られる、顔面骨格の成長異常と関連し得るか、又はさらには多形性症候群の枠内にさえ該当し得る。
【0019】
本明細書において使用する下顎又は下顎骨(jawbone)としても知られる「下顎骨(mandible)」という用語は、ヒト顔面骨格内の最大かつ最強かつ最も下の骨である。それは下顎を形成し、下歯を適所に保つ。下顎骨は、上顎骨の下にある。それは、頭蓋骨の唯一動くことのできる骨である(中耳の小骨を見下ろす)。それは、側頭下顎骨関節部によって側頭骨に接続されている。
【0020】
いくつかの実施態様では、被検者は、FGFRに関連した骨修復及び骨形成の障害を罹患しているか又は罹患するだろう。いくつかの実施態様では、被検者は、FGFRの機能獲得型突然変異を有する。
【0021】
本明細書において使用する「FGFRに関連した骨修復及び骨形成及び骨の質の障害」又は「FGFRに関連した骨修復及び骨形成の障害」という用語は、骨修復及び骨形成における、手順の欠陥を指す。FGFRに関連した骨の修復障害は、骨の異常な修復を指す。
【0022】
本明細書において使用する「線維芽細胞増殖因子(FGF)」という用語は、細胞シグナル伝達タンパク質の一ファミリーに関する;それらは、多種多様なプロセスに関与し、最も顕著には動物細胞における正常な発達のための必須成分として関与している。それらの機能におけるあらゆる不規則性により、一連の発達異常が起こる。これらの増殖因子は典型的には、細胞表面受容体を活性化する、細胞外を起源とする、全身性又は局所性に循環している分子として作用する。FGFの明確な特性は、それらが共受容体ヘパリン及び硫酸ヘパリンに結合することである。したがって、いくつかは、硫酸ヘパリンプロテオグリカンを含有している組織の細胞外マトリックスに捕捉され、損傷又は組織リモデリング時に局所的に放出される。
【0023】
本明細書において使用する「線維芽細胞増殖因子受容体」(FGFR)という用語は、線維芽細胞増殖因子(FGF)タンパク質ファミリーのメンバーに結合する受容体に関する。これらの中のいくつかの受容体は、病状に関与している。明確に異なる膜性FGFRが、脊椎動物において同定され、それらの全てが、チロシンキナーゼスーパーファミリーに属する:FGFR1(線維芽細胞増殖因子受容体1も参照)(=CD331)、FGFR2(線維芽細胞増殖因子受容体2も参照)(=CD332)、FGFR3(線維芽細胞増殖因子受容体3も参照)(=CD333)、FGFR4(線維芽細胞増殖因子受容体4も参照)(=CD334)、FGFRL1(線維芽細胞増殖因子受容体様1も参照)及びFGFR6。
【0024】
いくつかの実施態様では、被検者は、FGFR3の機能獲得型突然変異を有する。
【0025】
本明細書において使用する「FGFR3」、「FGFR3チロシンキナーゼ受容体」及び「FGFR3受容体」という用語は、本明細書全体を通して同義語として使用され、FGFR3の全ての天然アイソフォームを指す。FGFR3の例示的なヒトアミノ酸配列は配列番号1によって示される。
【化1】
【0026】
本明細書において使用する「FGFR3機能獲得型突然変異」、「恒常的に活性であるFGFR3受容体変異体」、「恒常的に活性なFGFR3の突然変異体」又は「恒常的活性を示しているFGFR3突然変異体」という表現は同義語として使用され、生物学的活性を示している(すなわち下流シグナル伝達をトリガーする)、及び/又はFGFリガンドの存在下で対応する野生型受容体の生物学的活性よりも高い生物学的活性を示している、該受容体の突然変異体を指す。本発明に記載の恒常的に活性であるFGFR3変異体は特に、(残基は、線維芽細胞増殖因子受容体3アイソフォーム1の前駆体(806アミノ酸長)におけるそれらの位置に応じて番号が付けられている):84位のセリン残基がリジンで置換されている突然変異体(本明細書では以下においてS84Lと命名される);200位のアルギニン残基がシステインで置換されている突然変異体(本明細書では以下においてR200Cと命名される);248位のアルギニン残基がシステインで置換されている突然変異体(本明細書では以下においてR248Cと命名される);249位のセリン残基がシステインで置換されている突然変異体(本明細書では以下においてS249Cと命名される);250位のプロリン残基がアルギニンで置換されている突然変異体(本明細書では以下においてP250Rと命名される);262位のアスパラギン残基がヒスチジンで置換されている突然変異体(本明細書では以下においてN262Hと命名される);268位のグリシン残基がシステインで置換されている突然変異体(本明細書では以下においてG268Cと命名される);278位のチロシン残基がシステインで置換されている突然変異体(本明細書では以下においてY278Cと命名される);279位のセリン残基がシステインで置換されている突然変異体(本明細書では以下においてS279Cと命名される);370位のグリシン残基がシステインで置換されている突然変異体(本明細書では以下においてG370Cと命名される);371位のセリン残基がシステインで置換されている突然変異体(本明細書では以下においてS371Cと命名される);373位のチロシン残基がシステインで置換されている突然変異体(本明細書では以下においてY373Cと命名される);380位のグリシン残基がアルギニンで置換されている突然変異体(本明細書では以下においてG380Rと命名される);381位のバリン残基がグルタメートで置換されている突然変異体(本明細書では以下においてV381Eと命名される);391位のアラニン残基がグルタメートで置換されている突然変異体(本明細書では以下においてA391Eと命名される);540位のアスパラギン残基がリジンで置換されている突然変異体(本明細書では以下においてN540Kと命名される);終止コドンが、塩基置換に因り排除されている突然変異体、特に終止コドンが、アルギニン、システイン、グリシン、セリン、又はトリプトファンコドンにおいて突然変異している突然変異体(本明細書では以下においてそれぞれX807R、X807C、X807G、X807S及びX807Wと命名される);650位のリジン残基が別の残基、特にメチオニン、グルタメート、アスパラギン又はグルタミンで置換されている突然変異体(本明細書では以下においてK650M、K650E、K650N及びK650Qと命名される);528位のメチオニン残基がイソロイシンで置換されている突然変異体(本明細書では以下においてM528Iと命名される);538位のイソロイシン残基がバリンで置換されている突然変異体(本明細書では以下においてI538Vと命名される);540位のアスパラギン残基がセリンで置換されている突然変異体(本明細書では以下においてN540Sと命名される);540位のアスパラギン残基がトレオニンで置換されている突然変異体(本明細書では以下においてN540Tと命名される)からなる群より選択される。典型的には、本発明に記載の恒常的に活性なFGFR3変異体は、N540K、K650N、K650Q、M528I、I538V、N540S、N540T又はA391E突然変異体である。
【0027】
いくつかの実施態様では、被検者は、FGFR3関連骨格疾患を患っている。
【0028】
本明細書において使用する「FGFR3関連骨格疾患」という用語は、FGFR3の異常に増加した活性化によって、特に恒常的に活性なFGFR3受容体の突然変異体、特に上記のような恒常的に活性なFGFR3受容体の突然変異体の発現によって引き起こされた、骨疾患を意味することを意図する。
【0029】
いくつかの実施態様では、FGFR3関連骨格疾患は好ましくは、FGFR3関連軟骨異形成及びFGFR3関連頭蓋縫合早期癒合症である。
【0030】
本明細書において使用する「FGFR3関連軟骨異形成」は、低身長症、例えば軟骨低形成症(HCH)、タナトフォリック骨異形成症(TD)I型、タナトフォリック骨異形成症II型、軟骨無形成症(ACH)、及びSADDAN(発達遅延と黒色表皮腫を伴う重度軟骨無形成症)を含むがこれらに限定されない。
【0031】
特に、FGFR3関連骨格疾患は低身長症である。
【0032】
本明細書において使用する「低身長症」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、遺伝子的条件又は医学的条件から起こる、短い縫合を指す。低身長症は一般的には、147cm以下の成人の身長として定義される。
【0033】
特に、FGFR3関連骨格疾患は、軟骨低形成症(HCH)である。
【0034】
本明細書において使用する「軟骨低形成症」(HCH)という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、不釣り合いに短い縫合、四肢短縮、及び身体の未発達の部分と比較して大きく見える頭部に関する。
【0035】
いくつかの実施態様では、FGFR3関連軟骨異形成は、FGFR3受容体のN540K、K650N、K650Q、M528I、I538V、N540S又はN540Tの恒常的に活性な突然変異体の発現によって引き起こされる軟骨低形成症である。
【0036】
特に、FGFR3関連骨格疾患は、軟骨無形成症(ACH)である。
【0037】
本明細書において使用する「軟骨無形成症」(ACH)という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、手及び足は短いが、胴体は典型的には正常な長さであり、拡大した頭部及び突出した前頭部を有する、遺伝子欠損に関する。
【0038】
特に、FGFR3関連骨格疾患は、タナトフォリック骨異形成症(TD)である。
【0039】
本明細書において使用する「タナトフォリック骨異形成症」(TD)という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、不釣合に小さな胸郭、極めて短い手足、及び手足上の余分な皮膚のひだによって特徴付けられる重度の骨格の欠損に関する。
【0040】
いくつかの実施態様では、FGFR3関連骨格疾患は、FGFR3関連頭蓋縫合早期癒合症である。いくつかの実施態様では、FGFR3関連頭蓋縫合早期癒合症は、遺伝性疾患又は孤発性疾患に相当する。
【0041】
特に、FGFR3関連頭蓋縫合早期癒合症は、FGFR3受容体のP250Rの恒常的に活性な突然変異体の発現によって引き起こされる、ムエンケ症候群である。
【0042】
特に、FGFR3関連頭蓋縫合早期癒合症は、FGFR3受容体のA391Eの恒常的に活性な突然変異体の発現によって引き起こされる、黒色表皮腫を伴うクルーゾン症候群(CAN)である。
【0043】
本明細書において使用する「頭蓋縫合早期癒合症」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、被検者の頭蓋骨の線維性縫合の1つ以上が、骨へと変わること(骨化)によって早期に融合し、それにより、頭蓋骨の成長パターンは変化している、容態に関する。「黒色表皮腫を伴うクルーゾン症候群」(CAN)は非常に稀な頭蓋縫合早期癒合症である。
【0044】
本明細書において使用する「黒色表皮腫」という用語は、茶色から黒色で、境界の不明瞭な、ビロードのような質感の皮膚の色素沈着に関する。
【0045】
特に、被検者は、FGFR2の機能獲得型突然変異を患っている。
【0046】
本明細書において使用する「FGFR2」、「FGFR2チロシンキナーゼ受容体」及び「FGFR2受容体」は、本明細書全体を通して同義語として使用され、FGFR2の全ての天然のアイソフォームを指す。
【0047】
本明細書において使用する「FGFR2の機能獲得型突然変異」、「恒常的に活性なFGFR2受容体変異体」、「恒常的に活性なFGFR2の突然変異体」又は「恒常的活性を示すFGFR2突然変異体」という表現は同義語として使用され、生物学的活性(すなわち下流シグナル伝達をトリガーする)、及び/又はFGFリガンドの存在下で対応する野生型受容体の生物学的活性よりも高い生物学的活性を示している、該受容体の突然変異体を指す。本発明に記載の恒常的に活性であるFGFR2変異体は特に、(残基は、線維芽細胞増殖因子受容体3アイソフォーム1の前駆体(806アミノ酸長)におけるそれらの位置に応じて番号が付けられている)からなる群より選択される。特に、FGFR2の突然変異は、FGFR2における、290位のトリプトファン残基がシステインで置換されている突然変異体(本明細書では以下においてW290Cと命名される)、321位のアスパラギン酸残基がアラニンで置換されている突然変異体(本明細書では以下においてD321Aと命名される)、340位のチロシン残基がシステインで置換されている突然変異体(本明細書では以下においてY340Cと命名される)、342位のシステイン残基がアルギニンで置換されている突然変異体(本明細書では以下においてC342Rと命名される)、342位のシステイン残基がセリンで置換されている突然変異体(本明細書では以下においてC342Sと命名される)、342位のシステイン残基がトリプトファンで置換されている突然変異体(本明細書では以下においてC342Wと命名される)、549位のアスパラギン残基がヒスチジンで置換されている突然変異体(本明細書では以下においてN549Hと命名される)、641位のリジン残基がアルギニンで置換されている突然変異体(本明細書では以下においてK641Rと命名される)を含む。アペール症候群、クルーゾン症候群、ジャクソン・ワイス症候群、ベアスティーブンソン皮膚回転症候群、及びファイファー症候群を含む、ヒト骨格発生におけるいくつかの重度な異常は、線維芽細胞増殖因子受容体2における突然変異の存在に関連している。全部ではなくても大半のファイファー症候群(PS)の症例は、線維芽細胞増殖因子受容体2遺伝子の新規突然変異によっても引き起こされ、線維芽細胞増殖因子受容体2の突然変異は、リガンド特異性を支配する鉄則の1つを破壊することが近年示された。すなわち、線維芽細胞増殖因子受容体の2つのスプライス突然変異型であるFGFR2c及びFGFR2bは、非典型的なFGFリガンドに結合しそして活性化される能力を獲得した。このようなリガンド特異性の低下により異常なシグナル伝達が起こり、これらの疾患症候群の重度の表現型は、線維芽細胞増殖因子受容体2の異所性のリガンド依存性活性化から生じることを示唆する。
【0048】
いくつかの実施態様では、被検者は、FGFR2関連骨格疾患を患っている。
【0049】
本明細書において使用する「FGFR2関連骨格疾患」という用語は、FGFR2の異常に増加した活性化によって、特に、恒常的に活性なFGFR2受容体の突然変異体、特に、上記のような恒常的に活性なFGFR2受容体の突然変異の発現によって引き起こされる、頭蓋縫合早期癒合症と呼ばれる骨格疾患を意味することを意図する。FGFR2関連骨格疾患は、クルーゾン症候群、ジャクソン・ワイス症候群、アペール症候群、頭蓋縫合早期癒合症、ファイファー症候群、尖頭合指症V型、及びベアスティーブンソン皮膚回転症候群に関する。
【0050】
本明細書において使用する「処置」又は「処置する」という用語は、予防的処置又は防止的処置、並びに、治癒的で患者の容態を改善する処置又は疾患修飾的処置(疾患に罹るリスクがあるか又は疾患に罹っていることが疑われる患者、並びに、病気であるか又は疾患若しくは医学的容態を患っていると診断されている患者の処置を含む)の両方を指し、これは臨床的再発の抑制も含む。障害又は再発している障害の1つ以上の症状を予防、治癒、その発症を遅延、その重症度を低減、又は寛解するために、あるいは、このような処置を行なわなかった時に予想される生存期間を超えて被験者の生存期間を延長するために、医学的障害を有するか又は最終的に障害に罹る可能性のある被験者に処置が投与され得る。「治療処方計画」によって、病気の処置のパターン、例えば療法中に使用される投薬パターンを意味する。治療処方計画は、誘導処方計画及び維持処方計画を含み得る。「誘導処方計画」又は「誘導期間」という語句は、疾患の初期処置に使用される治療処方計画(又は治療処方計画の一部)を指す。誘導処方計画の一般的目標は、処置処方計画の初期期間中に患者に高いレベルの薬物を提供することである。誘導処方計画は、(部分的に又は全体に)「負荷処方計画」を使用し得、これは医師が維持処方計画中に使用するであろうよりも多くの用量の薬物を投与すること、医師が維持処方計画中に薬物を投与するであろうよりも頻繁に薬物を投与すること、又はその両方を含み得る。「維持処方計画」又は「維持期間」という語句は、例えば、患者が長期間(数か月又は数年間)にわたり寛解を保つために、病気の処置中に患者の維持のために使用される、治療処方計画(又は治療処方計画の一部)を指す。維持処方計画は、連続的療法(例えば、定期的な間隔で、例えば1日1回、週1回、月1回、年1回などに薬物を投与)又は断続的療法(例えば、間断的処置、断続的処置、再発時における処置、又は特定の予め決定された基準[例えば、疾患の徴候など]の到達時の処置)を使用し得る。
【0051】
本明細書において使用する「予防すること」という用語は、このような用語が適用される障害又は容態の発症を遅延又は予防することを目的としている、予防法又は予防プロセスを特徴付けることを意図する。
【0052】
遺伝子又は核酸の表現の脈絡で使用される場合の「発現」という用語は、遺伝子に含まれる情報から、遺伝子産物への変換を指す。遺伝子産物は、遺伝子の直接的な転写産物(例えばmRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造RNA、又は任意の他の種類のRNA)又はmRNAの翻訳によって産生されたタンパク質(すなわちFGFR3)であり得る。
【0053】
本明細書において使用する「カテキン」という用語は、一般式(I):
【化2】
を有する、一種の天然フェノール及び抗酸化剤である、フラバン-3-オールである。
【0054】
カテキンは植物の二次代謝物であり、そして、フラボノイド化学物質ファミリーの一部であるフラバン-3-オール(又は単にフラバノール)に属する。カテキンは、2つのベンゼン環(A環及びB環と呼ばれる)と、C3上にヒドロキシル基を有するジヒドロピランヘテロ環(C環)を有する。A環は、レゾルシノール部分に類似しているが、B環は、カテコール部分に類似している。分子のC2及び3上には2つの不斉中心が存在する。それ故、カテキンは、4つのジアステレオ異性体を有する:異性体の中の2つは、トランス立体配置であり、カテキンと呼ばれ、他の2つは、シス立体配置であり、エピカテキンと呼ばれる。最もよく見られるカテキン異性体は(+)-カテキンである。他の立体異性体は(-)カテキン又はent-カテキンである。最もよく見られるエピカテキン異性体は(-)エピカテキン(L-エピカテキン、エピカテコール、(-)-エピカテコール、1-アカカテキン(acacatechin)、1-エピカテコール、エピ-カテキン、2,3-シス-エピカテキン、又は(2R,3R)-(-)-エピカテキンの名称でも知られる)である。カテキンを産生するか、合成するか、又は抽出する方法は、当業者には周知である。
【0055】
いくつかの実施態様では、カテキン異性体は、(+)-カテキン(2R,3S)である。本明細書において使用する「(+)-カテキン」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、以下の式:
【化3】
を有する。
【0056】
いくつかの実施態様では、カテキン異性体は、(-)-カテキン(2S,3R)である。本明細書において使用する「(-)-カテキン」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、以下の式:
【化4】
を有する。
【0057】
いくつかの実施態様では、エピカテキン異性体は、(+)-エピカテキン(2R,3S)である。本明細書において使用する「(+)-エピカテキン」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、以下の式:
【化5】
を有する。
【0058】
いくつかの実施態様では、エピカテキン異性体は、(-)-エピカテキン(2R,3R)である。本明細書において使用する「(-)-エピカテキン」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、(2R,3R)-2-(3,4-ジヒドロフェニル)-3,4-ジヒドロ―2H-クロメン-3,5,7-トリオールを指し、以下の式:
【化6】
を有している。
【0059】
いくつかの実施態様では、(-)-エピカテキンは実質的に純粋な(-)-エピカテキンである。本明細書において使用する「実質的に純粋な」という用語は、関連物質の不純物などの不純物が全く存在しないこと、又はほぼ完全に存在しないことを指す。例えば、(-)-エピカテキン組成物が、実質的に純粋であると言われる場合、検出可能な関連物質の不純物は全く存在しないか、又は単一の関連物質の不純物が検出される場合には、それは0.1重量%以下の量で存在するか、又は複数の関連物質の不純物が検出される場合には、それらは、0.6重量%以下の量の凝集物で存在する。本発明に記載の実質的に純粋な(-)-エピカテキンは、インビボ及び/又はインビトロで、FGFR3の下流シグナル伝達経路の機能的活性化を阻害又は排除することができる。実質的に純粋な(-)-エピカテキンは、FGFR3の下流シグナル伝達経路の機能的活性化を少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約30%、好ましくは少なくとも約40%、好ましくは少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約70、75若しくは80%、さらに好ましくは85、90、95、若しくは100%、又は好ましくは少なくとも約300%又は好ましくは少なくとも約500%阻害し得る。
【0060】
いくつかの実施態様では、被検者は、治療有効量のカテキンを含んでいる医薬組成物で投与される。
【0061】
本明細書において使用する「投与すること」又は「投与」という用語は、物質(それは体外に存在しているので)(例えばカテキン)を被検者に、例えば経口送達(例えば瓶を用いた処置)、粘膜、皮内、静脈内、皮下、筋肉内送達、及び/又は、本明細書に記載であるか若しくは当技術分野において公知である任意の他の物理的送達法によって、注射するか又は別の方法で物理的に送達する作用を指す。疾患又はその症状が処置される場合、物質の投与は典型的には、疾患又はその症状の発症後に行なわれる。疾患又はその症状が予防される場合、物質の投与は典型的には、疾患又はその症状の発症前に行なわれる。
【0062】
「治療有効量」は、所望の治療結果を達成するのに必要な用量及び期間において有効な量を指す。薬物の治療有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別、及び体重、並びに、個体において薬物が所望の応答を惹起する能力などの要因に応じて変更されてもよい。治療有効量はまた、抗体又は抗体部分のあらゆる毒性作用又は有害作用よりも、治療的に有益な効果がまさる量でもある。薬物についての効果的な用量及び用量処方計画は、処置される予定の疾患又は容態に依存し、当業者によって決定され得る。当技術分野における通常の技能を有する医師は、必要とされる医薬組成物の有効量を決定及び処方し得る。例えば、医師は、所望の治療効果を達成するのに必要とされるよりも低いレベルで、医薬組成物に使用される薬物の用量を開始し得、そして所望の効果が達成されるまで用量を徐々に増加し得る。一般的には、本発明の組成物の適切な用量は、特定の用量処方計画に従って治療効果を発生するのに有効な最低の用量である化合物の量であろう。このような有効な用量は一般的には、上記の要因に依存する。例えば、治療用途のための治療有効量は、疾患の進行を安定化させるその能力によって測定され得る。当業者は、被検者の体格、被検者の症状の重症度、及び選択される具体的な組成物又は投与経路などのこのような要因に基づいて、このような量を決定することができるだろう。薬物の治療有効量の例示的で非制限的な範囲は、約0.1~100mg/kg、例えば約0.1~50mg/kg、例えば約0.1~20mg/kg、例えば約0.1m~10mg/kg、例えば約0.5、例えば約0.3、約1、約3mg/kg、約5mg/kg、又は約8mg/kgである。投与は、例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内、又は皮下であり得、例えば標的部位の近くに投与され得る。上記の処置法及び使用法における用量の処方計画は、最適な所望の応答(例えば治療応答)がもたらされるように調整される。例えば、単一のボーラスが投与されても、数回の分割用量が経時的に投与されても、又は用量は、治療状況の緊急性によって指示される通りに比例的に減少又は増加させてもよい。いくつかの実施態様では、処置の有効性は、治療中に、例えば所定の時点でモニタリングされる。非制限的な例として、本発明に記載の処置は、本発明の薬剤の1日量として、1日あたり約0.1~100mg/kg、例えば0.2、0.5、0.9、1.0、1.1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、45、50、60、70、80、90若しくは100mg/kgの量で、処置開始後1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39若しくは40日目の少なくとも1日に、又は代替的には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20週目の少なくとも1週目において、又はその任意の組合せで、1回量若しくは分割用量を24、12、8、6、4若しくは2時間毎に、又はその任意の組合せを使用して提供されてもよい。
【0063】
いくつかの実施態様では、患者には、活性原薬として治療有効量のカテキンと少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含んでいる、医薬組成物で投与される。
【0064】
本明細書において使用する「活性原薬」又は「活性成分」という用語は同義語として使用される。本明細書において使用する「医薬組成物」という用語は、担体及び/又は賦形剤などの他の物質を含む、本明細書に記載の組成物又はその薬学的に許容される塩を指す。ここに提供されるような医薬組成物は典型的には、薬学的に許容される担体を含む。
【0065】
本明細書において使用する「薬学的に許容される担体」という用語は、所望の特定の剤形に適しているような、ありとあらゆる溶媒、希釈剤、又は他の液体ビヒクル、分散剤、又は懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤、又は乳化剤、保存剤、固体結合剤、潤滑剤などを含む。レミントン薬科学、第16版、E. W. Martin(Mack Publishing社、ペンシルバニア州イーストン、1980)は、医薬組成物の製剤化に使用される様々な担体及びその調製のための公知の技術を開示している。
【0066】
薬学的に許容される担体又は賦形剤は、任意の種類の無毒性の固体、半固体、又は液体の充填剤、希釈剤、封入剤材料、又は製剤化補助剤を指す。典型的には、医薬組成物は、注射することのできる製剤にとって許容可能であるビヒクルを含有している。これらは、特に、等張性で無菌の食塩水溶液(リン酸一ナトリウム又は二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム若しくは塩化マグネシウムなど、又はこのような塩の混合物)、又は場合に応じて滅菌水若しくは生理食塩水が添加されると、注射溶液の復元を可能とする乾燥した、特に凍結乾燥させた組成物であり得る。注射用途に適した医薬剤形は、無菌水性液剤又は分散剤;ゴマ油、ピーナッツ油、又は水性プロピレングリコールを含む製剤;及び、無菌注射液剤若しくは分散剤の即時調製のための無菌粉末を含む。全ての場合において、剤形は無菌でなければならず、容易にシリンジが扱える程度まで流動性でなければならない。それは製造及び保存の条件下で安定でなければならず、そして細菌及び真菌などの微生物の汚染作用から防御されていなければならない。無菌注射液剤は、本発明の薬剤を、必要な量で、必要とされるような上記に列挙されている他のいくつかの成分と共に適切な溶媒中に取り込み、続いて、滅菌ろ過することによって調製される。一般的には、分散剤は、基本分散媒体と、上記に列挙されたものの中から必要とされる他の成分とを含有している無菌ビヒクルに、様々な滅菌された活性成分を取り込むことによって調製される。無菌注射液剤の調製のための無菌粉末の場合、好ましい調製法は、真空乾燥技術及び凍結乾燥技術であり、これにより、以前に滅菌ろ過されたその溶液から活性成分と任意の追加の所望の成分の粉末が生じる。
【0067】
いくつかの実施態様では、被検者に、治療有効量のカテキンを含んでいる食品組成物で投与される。
【0068】
典型的には、食品組成物は、有効量のカテキンを含んでいる(例えば瓶を用いての処置)、食品製品、食品添加物、食品成分、機能性食品、医療食、健康補助食品、栄養補助食品、栄養サプリメント、又は経口調製物を含むか又はからなる。いくつかの実施態様では、食品組成物は、完全な食品組成物、食品サプリメント、栄養補助組成物などから選択される。本発明の組成物は、食品成分及び/又はフィード成分として使用されてもよい。食品成分は、用途及び/又は適用形態及び/又は投与形態に応じて、液体の剤形であっても、又は固体の剤形であってもよい。本発明の食品組成物は、有効量のカテキンを食品の基剤に添加することなどの公知の方法を使用して作製され得る。本発明の食品製品、食品添加物、食品成分、機能性食品、医療食、健康補助食品、栄養補助食品、栄養サプリメント、又は経口調製物は、固体であっても、半固体であっても、又は液体であってもよい。それは、食品製品又は食品サプリメントの形態、例えば錠剤、ゲル剤、散剤、カプセル剤、ドリンク剤、棒状体などの形態であり得る。例えば、該組成物は、小袋に包装された粉末の剤形であってもよく、これは水、フルーツジュース、牛乳、又は別の飲料に溶かすことができる。
【0069】
本明細書において使用する「食品」という用語は、追加の栄養摂取又は食品サプリメント組成物を必要としない、液体(すなわち飲み物)、固体、又は半固体の食事組成物、特に全体が食品の組成物(食品代用物)を指す。食品サプリメント組成物は、他の手段によって栄養の摂取を完全に代用しない。本明細書において使用する「食品製品」、「食品添加物」、「食品成分」又は「フィード成分」という用語は、機能性食品若しくは食料品であるか又は機能性食品若しくは食料品に栄養サプリメントとして添加することのできる、調合物を含む。「栄養食品」又は「栄養補助食品」又は「機能性食品」によって、健康にとって有益な効果を有しているか、又は生理的機能を向上させることのできる、成分を含有している、食料品を意味する。「食品サプリメント」によって、通常の食品の食事を完遂する目的を有する食料品を意味する。食品サプリメントは、それらが単独で若しくは少量で組合せとして摂取される場合には、栄養分又は栄養効果若しくは生理学的効果を有している他の物質の濃縮された発生源である。本明細書において使用する「機能性食品」という用語は、食料品及び最近開発された対応する製品を要約し、その重要性は、それらが栄養及び味覚についてだけではなく、特定の成分の物質についても価値があることに帰する。本発明によると、健康の中期及び長期維持及び促進が重要である。これに関して、治療以外の用途が好ましい。しかしながら、健康の予防的な側面及び促進、並びに、製品の食品の特徴は、機能性食品という用語によって最もよく明らかとなる。多くの場合、これらは、各種取り合わせ及び選択(本発明においても該当するように)、精製、濃縮、添加によってもますます蓄積された製品に関する。特に錠剤又は丸剤の剤形の、単離された活性な物質は含まれない。機能性食品の法律上の定義はないが、この領域に関心を持つ患者の大半は、それらは、基本的な栄養効果を超えた特定の健康効果を有するとして販売されている食品であるということに同意する。したがって、機能性食品は、食品に特定の機能、例えば純粋な栄養効果以外の医学的利点又は生理学的利点を付与する構成成分又は成分(例えば本明細書に記載のもの)をそれらに取り込んでいる、通常の食品である。
【0070】
いくつかの実施態様では、食品組成物は、機能性飲み物又は治療用飲み物、喉の渇きを癒す飲み物、又は通常の飲み物である、飲み物である。例えば、本発明の組成物は、一成分として、清涼飲料、フルーツジュース、又は乳清タンパク質を含んでいる飲料、健康茶、ココア飲料、牛乳飲料、及び乳酸菌飲料、ヨーグルト及び飲むヨーグルト、チーズ、アイスクリーム、かき氷、及びデザート、菓子、ビスケット、ケーキ、及びケーキの素、スナック食品、バランスのとれた食品及び飲料、果物の詰め物、飾りの糖蜜(care glaze)、チョコレートパンの詰め物、チーズケーキの風味のある詰め物、フルーツ味のケーキの詰め物、ケーキ及びドーナツのアイシング、インスタントパンの詰め物のクリーム、クッキー用の詰め物、すぐ使用できるパンの詰め物、カロリーを低減させた詰め物、成人用栄養飲料、酸性化大豆/ジュース飲料、無菌/レトルトチョコレート飲料、バーミックス、粉末飲料、カルシウム強化大豆/プレーン及びチョコレートミルク、カルシウム強化コーヒー飲料に使用され得る。
【0071】
本発明の食品製品、食品添加物、食品成分、機能性食品、医療食、健康補助食品、栄養補助食品、栄養サプリメント、又は経口調製物を含む、食品組成物は典型的には、担体又はビヒクルを含む。「担体」又は「ビヒクル」は、投与に適した物質を意味し、これには、当技術分野において公知である任意のこのような物質、例えば、無毒性であり、そして該組成物の任意の構成成分に有害に相互作用しない、任意の液体、ゲル、溶媒、液体希釈剤、可溶化剤などが挙げられる。栄養的に許容される担体の例としては、例えば、水、塩溶液、アルコール、シリコン、ワックス、黄色ワセリン、植物油、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、リポソーム、糖、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、界面活性剤、ケイ酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸モノグリセリド及びジグリセリド、ペトロエトラル(petroethral)脂肪酸エステル、ヒドロキシメチル-セルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。いくつかの実施態様では、本発明の食品製品、食品添加物、食品成分、機能性食品、医療食、健康補助食品、栄養補助食品、栄養サプリメント、又は経口調製物を含む組成物は、保護親水コロイド(例えばガム、タンパク質、加工デンプン)、結合剤、フィルム形成剤、封入剤/材料、壁/殻材料、マトリックス化合物、コーティング剤、乳化剤、表面活性剤、可溶化剤(油、脂肪、ワックス、レシチンなど)、吸着剤、担体、充填剤、等位複合体、分散剤、湿潤剤、加工補助剤(溶媒)、流動剤、味覚マスキング剤、増量剤、ジェル化剤、ゲル形成剤、抗酸化剤、及び抗微生物剤を含有している。該組成物はまた、従来の薬学的な添加剤及び補助剤、賦形剤及び希釈剤を含有していてもよく、これには、水、任意の起源のゼラチン、植物性ゴム、リグニンスルホン酸塩、タルク、糖、デンプン、アラビアゴム、植物油、ポリアルキレングリコール、芳香剤、保存剤、安定化剤、乳化剤、緩衝剤、潤滑剤、着色剤、湿潤剤、充填剤などが挙げられるがこれらに限定されない。全ての場合において、このようなさらなる成分は、目的のレシピエントに対するその適切性に関して選択されるだろう。
【0072】
本発明は、以下の図面及び実施例によってさらに説明されるだろう。しかしながら、これらの実施例及び図面は、いずれにしても、本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【
図1A】骨折から14日後の下顎骨のマイクロコンピューター断層撮影スキャン分析。仮骨の体積は、未処置Fgfr3
N534K/+と比較して処置されたFgfr3
N534K/+において未変化である。処置されたFgfr3
N534K/+下顎骨の骨の体積/総体積は増加している。
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001。
【
図1B】骨折から28日後の下顎骨のマイクロコンピューター断層撮影スキャン分析。仮骨の体積は、未処置Fgfr3
N534K/+と比較して処置されたFgfr3
N534K/+において減少している。処置されたFgfr3
N534K/+下顎骨の骨の体積/総体積は増加している。
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001。
【0074】
実施例:
定義:
本明細書において使用する「FGFR3N534K/+」という用語は、軟骨低形成症マウスモデルに関する。突然変異型マウスは、成長の異常、成長板の異常、軟骨結合の部分的欠失、脊柱前弯を伴う、軟骨低形成症の臨床特色を示す。成体軟骨低形成症動物の骨の骨密度は減少し、骨構造は、高齢におけるより高い骨折リスクと共に、骨粗鬆症の骨のいくつかの特徴を有する。
【0075】
本明細書において使用する「FGFR3Y367C/+」という用語は、ヒト軟骨無形成症表現型を再現するマウスモデルに関する。軟骨無形成症の臨床的な特徴(例えば、大後頭孔のサイズの減少に関連した低身長症、下顎骨の形成不全、聴覚障害、椎間板の異常、軟骨細胞の異常な増殖及び分化、並びに絨毛形成障害)(Pannier et al. 2009, 2010, Mugniery et al 2012, Di Rocco et al 2014, Biosse Duplan et al 2016, Komla Ebri et al 2016, Martin et al 2018)。本明細書において使用する「FGFR3A385E/+」という用語は、記憶の欠陥が観察された、黒色表皮腫を伴うクルーゾン症候群マウスモデルに関する。
【0076】
結果
I-軟骨低形成症(Fgfr3N534K/+)マウスモデルにおける下顎骨修復の試験
下顎骨修復が、軟骨低形成症マウスモデル(Fgfr3N534K/+)において研究された。実験は、6週令の成体動物において実施され、マウスを4つの重要な時点において安楽死させた:骨修復中(骨折から10日後、14日後、21日後)、及び通常の骨治癒プロセスの終了時、すなわち骨折から28日後。
【0077】
垂直的な下顎骨骨折が、Fgfr3N534K/+及びFgfr3+/+マウスの上行枝領域に実施された。これは、軟骨内の骨修復プロセスの分析を可能とする、不安定化な下顎骨骨折プロトコールである。異なる重要な修復段階に相当するFgfr3N534K/+及びFgfr3+/+下顎骨骨折の4つのバッチ(n=100)を研究した(10日目、14日目、21日目、28日目)。II型(増殖性軟骨)、X型(肥大軟骨)、及びI型(骨)コラーゲンの免疫標識を使用して、本発明者らは、軟骨内プロセスが攪乱されていることを観察し、本発明者らは、Fgfr3+/+と比較してFgfr3N534K/+において、遅延した軟骨の再吸収、肥大した軟骨細胞領域のサイズの減少、及び修復仮骨内の骨形成異常を認めた。これらのデータを完了させるために、本発明者らは、(骨折後)28日目にアルシアンブルー/ピクロシリウス染色を使用した、仮骨の組織形態計測的分析を実施した。本発明者らは、Fgfr3N534K/+マウスにおいて偽関節(仮骨内の線維症)の存在を観察し、一方、本発明者らは、Fgfr3+/+仮骨において骨の100%を観察した。28日目に新規に形成された骨の質を考えて、本発明者らは、4等級の修復を定義し、そしてそれらの修復等級(1~4)に従ってマウスを分類した。欠陥のある修復は、Fgfr3+/+と比較してFgfr3N534K/+において有意である(データは示されていない)。
【0078】
骨の微小構造を分析するために、本発明者らは、マイクロコンピューター断層撮影スキャンを実施した。本発明者らは、Fgfr3
+/+と比較してFgfr3
N534K/+において10日目から28日目に仮骨形成の微小構造の変化を観察した。骨の体積/総体積(BV/TV)は、対照と比較して突然変異体において、10日目(-23%、p<0.05)、14日目(-14%、p<0.01)、21日目(-14.9%、p<0.005)、及び28日目(-5.8%、p、0.05)において有意に減少している(
図1A及び1B)。
【0079】
ここで、本発明者らは、Fgfr3機能獲得型は、軟骨低形成症マウスの不安定な下顎骨骨折モデルにおいて、骨の修復及び質を損なったと結論付けた。本発明者らは、1)骨の形成は、骨粗鬆症の骨のいくつかの特徴を有する、変化した骨の構造であること、及び2)仮骨内の偽関節の形成を観察し、よって、軟骨内骨化が、下顎骨内で重度に攪乱されていることが確認される。
【0080】
II-(-)-エピカテキン治療アプローチを用いた下顎骨の形成及び修復の改善
異常なFGFシグナル伝達に対抗する現在の治療アプローチは、数多く多様であり、これには、FGFR3の下流のシグナル伝達経路を標的化するエピカテキンを含む(Martin et al, 2020)。
【0081】
軟骨低形成症マウス(Fgfr3
N534K/+)を、0日目(下顎骨の骨折)から14日目又は28日目まで、(-)-エピカテキンを用いて処置した(0.3mg/kgで皮下注射、週3回)。骨修復分析は、骨折後14日目(
図1A)及び28日目(
図1B)にマイクロコンピューター断層撮影スキャンによって評価された。
【0082】
仮骨の体積の有意な減少が、骨折後28日目に、未処置マウス(n=14)と比較して、処置された軟骨低形成症マウス(n=9)において観察されている(-39.8%、p<0.01)。骨の体積/総体積は、未処置の軟骨低形成症マウス(n=7)と比較して処置された軟骨低形成症マウス(n=7)において骨折後14日目(+19%、p<0.05)、及び未処置の軟骨低形成症マウス(n=14)と比較して軟骨低形成症マウス(n=9)において骨折後28日目(+6.3%;p<0.05)において増加している。
【0083】
FGFR3の機能獲得型突然変異は、下顎骨の不安定な骨折モデルにおいて、骨の形成、骨の質及び修復を攪乱した。仮骨は、マイクロコンピューター断層撮影スキャンによる骨の定量分析によって明らかになったように、軟骨低形成マウスにおいて異常である。骨の体積/総体積は、野生型と比較して軟骨低形成マウスにおいて有意に減少している。
【0084】
マウスのバッチの下顎骨骨修復の比較分析(Fgfr3
+/+、Fgfr3
N534K/+、及びFgfr3
N534K/++(-)-エピカテキン)は、軟骨低形成マウスにおける異常な骨の形成及び修復、並びに、下顎骨の骨修復におけるエピカテキンによる処置の有益な効果を強調した。完全な骨の治癒(等級1)は、9匹中1匹に観察された。骨の連続性の回復が、しかし軽度な骨の欠損の存在が(等級2)、9匹中6匹に観察され、仮骨の存在が、しかし部分的な骨の不連続性を伴うもの(等級3)が、9匹中2匹に観察された(
図1C)。本発明者らは、骨折後28日目に、処置された軟骨低形成症マウスにおいて偽関節を観察しなかった。これらの結果は、(-)-エピカテキンの処置の有益な効果を実証する。
【0085】
結論
要するにこれらのデータは、(-)-エピカテキンを用いての処置が、FGFR3に関連した軟骨異形成の状況における、下顎骨の形成及び修復を改善するという概念実証を提供する。
【0086】
参考文献:
本出願全体を通して、様々な参考文献は、本発明が属する技術分野の最新技術を記載する。これらの参考文献の開示は、本開示への参照によりここに組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】