(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】耳感染症を治療するための医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7036 20060101AFI20241219BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20241219BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20241219BHJP
A61K 31/58 20060101ALI20241219BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241219BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20241219BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A61K31/7036
A61P31/04
A61K31/496
A61K31/58
A61P43/00 121
A61K47/44
A61K47/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536463
(86)(22)【出願日】2022-12-19
(85)【翻訳文提出日】2024-08-13
(86)【国際出願番号】 EP2022086649
(87)【国際公開番号】W WO2023117900
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510000976
【氏名又は名称】インターベット インターナショナル ベー. フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100216839
【氏名又は名称】大石 敏幸
(74)【代理人】
【識別番号】100228980
【氏名又は名称】副島 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,シャロン・クルーズ
(72)【発明者】
【氏名】ウェインガーテン,アラン
(72)【発明者】
【氏名】フリーハーフ,キース
(72)【発明者】
【氏名】ティリー,ジュリアン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA22
4C076BB26
4C076CC32
4C076EE03G
4C076EE51
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC60
4C086DA12
4C086EA09
4C086GA02
4C086GA12
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA23
4C086MA55
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB35
4C086ZC75
(57)【要約】
開示されているのは、動物における耳感染症を1回投与で治療するための新規医薬組成物であり、ここで、該医薬組成物は、ゲンタマイシン抗生物質、ポサコナゾール抗真菌薬及びモメタゾン抗炎症薬を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の耳感染症を治療するための医薬組成物であって、
(a)有効量のゲンタマイシン又はその薬学的に許容される塩;
(b)有効量のポサコナゾール;
(c)有効量のモメタゾン又はその薬学的に許容される塩;及び、
(d)薬学的に許容される担体;
を含む、前記医薬組成物。
【請求項2】
ゲンタマイシン又はその薬学的に許容される塩の前記有効量が、約0.40~約1.00%w/vの量である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
ポサコナゾールの前記有効量が、約0.15~約0.35%w/vの量である、請求項1-2のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項4】
モメタゾン又はその薬学的に許容される塩の前記有効量が、約0.15~約0.35%w/vの量である、請求項1-3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
増粘剤をさらに含む、請求項1-4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記組成物が、懸濁液である、請求項1-5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記薬学的に許容される担体が鉱油である、請求項1-6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記ゲンタマイシンが硫酸ゲンタマイシンである、請求項1-7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記モメタゾンが、モメタゾンフランカルボン酸エステル一水和物である、請求項1-8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記増粘剤が可塑化炭化水素ゲルである、請求項5-9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記可塑化炭化水素ゲルが、95%鉱油中の5%ポリエチレンである、請求項5-10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記増粘剤が、約25%~40%w/vの量で存在している、請求項5-11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
動物の耳に、請求項1-12のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含む、動物における耳感染症を治療する方法。
【請求項14】
前記組成物が、1回投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記動物が、イヌである、請求項13-14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記動物が、ネコである、請求項13-15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記耳感染症が、Staphylococcus pseudintermedius、beta-hemolytic Streptococcus canis、Streptococcus spp.、緑膿菌、大腸菌、Proteus mirabilis Proteus spp.、Enterococcus spp.又はMalassezia pachydermatisのうちの1以上によって引き起こされる、請求項13-16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1-12のいずれか1項に記載の医薬組成物を含む、複数用量容器。
【請求項19】
前記複数用量容器は、約10用量~約100用量含み、好ましくは、少なくとも20用量含む、請求項18に記載の複数用量容器。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
外耳炎は、耳介を含む外耳道の炎症性疾患である。外耳炎は、急性又は慢性(3ヶ月以上続く持続性又は再発性の耳炎)であり得る。外耳炎は、1又は複数の病因が関与している可能性がある。耳炎に罹患したイヌの外耳道から最も一般的に分離される細菌は、ブドウ球菌属種である。耳炎に一般に関連する他の細菌としては、シュードモナス属、プロテウス属、腸球菌属、連鎖球菌属及び大腸菌などがある。ブドウ球菌やシュードモナスなど一部の細菌は、バイオフィルムを生成することがあり、これらは、適切な治療にもかかわらず感染の持続をもたらし得るが、それは、抗菌薬療法が感染症の清浄化に有効であるためには、バイオフィルムを破壊する必要があるからである。マラセチア酵母も、イヌの外耳炎によくみられる別の成分である。一部のイヌは、マラセチア属種に対してアレルギー反応を示し、強い不快感や掻痒感を引き起こす。耳感染症の効果的な治療には、感染と炎症性変化の治療に加えて、そもそも耳炎を発症させた根本的な要因を確認することが含まれる。外耳炎に対しては局所療法が主な治療法であるが、個々の患者にとって、抗炎症療法や抗菌剤療法の全身的使用が適応となることもある。耳炎を患っている殆どのイヌは、その原因にかかわらず、抗炎症療法が有効である。グルココルチコイドは、短期間使用して痛みや腫れを軽減させることが可能であり、従って、コンプライアンスが改善されて、耳清浄化や投薬するために役に立つ。グルココルチコイドは、さらに、バイオフィルム形成を破壊し、慢性的な耳性変化の発生を予防するのにも役立ち得る。耳疾患を管理するためにグルココルチコイドを長期投与したり依存したりすることは、必要でない限り推奨されない。一般に、外耳炎の治療に対する第一線の治療として抗生物質の全身投与は、推奨されない。「J. Bajwa, Can Vet J. 2019 Jan; 60(1): 97-99, the Merck Veterinary Manual, 8th Edition, 1998, pp 372-376」及び「Aziz et al, Asian Pacific Journal of Tropical Biomedicine,Volume 6, Issue 5, 2016, pp 390-395」を参照されたい。
【0002】
Otomax(登録商標)(硫酸ゲンタマイシン、吉草酸ベタメタゾン、及び、クロトリマゾール軟膏)は、ゲンタマイシンに対して感受性の細菌及び/又は酵母(Malassezia pachydermatis)に関連するイヌの急性及び慢性の外耳炎の治療に適応がある。Otomax(登録商標) Otic Ointmentは、1グラムあたり、硫酸ゲンタマイシン(USP、3mgのゲンタマイシン塩基に相当)、吉草酸ベタメタゾン(USP、1mgのベタメタゾンに相当)及び10mgのクロトリマゾール(USP)を、可塑化炭化水素ゲルを含む鉱油ベースのシステムの中に含む。Otomax(登録商標)は、1日2回、7日間投与する。1993年6月9日に承認された「NADA 140-896 Otomax(登録商標)」を参照されたい。
【0003】
Mometamax(登録商標) Otic Suspension(ゲンタマイシン硫酸塩、モメタゾンフランカルボン酸エステル一水和物、及び、クロトリマゾール;耳懸濁液)は、酵母(Malassezia pachydermatis)及び細菌(Pseudomonas spp.[緑膿菌を包含する]、コアグラーゼ陽性ブドウ球菌、Enterococcus faecalis、Proteus mirabilis、及び、β型溶血性連鎖球菌)の感受性株によるイヌの外耳炎の治療に適応がある。Mometamax(登録商標) Otic Suspensionは、1グラムあたり、硫酸ゲンタマイシン(3mgのゲンタマイシン塩基に相当)、モメタゾンフランカルボン酸エステル一水和物(1mgのモメタゾンフランカルボン酸エステルに相当)及び10mgのクロトリマゾールを、可塑化炭化水素ゲルを含む鉱油ベースのシステムの中に含む。Mometamax(登録商標)は1日1回、7日間投与する。Mometamax(登録商標)の製品添付文書及び「NADA 141-177 Freedom of Information Summary, January 9, 2003」を参照されたい。
【0004】
Posatex(登録商標) Otic Suspension(オルビフロキサシン、モメタゾンフランカルボン酸エステル一水和物、及び、ポサコナゾール;懸濁液)は、酵母(Malassezia pachydermatis)及び細菌(コアグラーゼ陽性ブドウ球菌、緑膿菌、及び、Enterococcus faecalis)の感受性株に関連するイヌの外耳炎の治療に使用される動物薬である。Posatex(登録商標) Otic Suspensionは、1グラムあたり、10mgのオルビフロキサシン、モメタゾンフランカルボン酸エステル一水和物(1mgのモメタゾンフランカルボン酸エステルに相当)及び1mgのポサコナゾールを含む。Posatex(登録商標)は、1日1回7日間投与する。「NADA 141-266 FOI, dated February 18, 2010」及びWO 2006/020689を参照されたい。
【0005】
Neptra(登録商標)(米国では、Claro(登録商標)として知られている)は、2種の微生物〔Staphylococcus pseudintermedius(細菌)、及び、Malassezia pachydermatitis(酵母)〕によって引き起こされる短期間又は再発性の耳感染症(外耳炎)を患っているイヌの治療に使用される動物薬である。Neptra(登録商標)は、3種の活性物質を含む:フロルフェニコール、テルビナフィン、モメタゾン。1用量(1mL)のNeptraは、16.7mgのフロルフェニコール、16.7mgの塩酸テルビナフィン(14.9mgのテルビナフィン塩基に相当)及び2.2mgのモメタゾンフランカルボン酸エステルを含む。Neptra(登録商標)は、さらに、賦形剤として、炭酸プロピレン、プロピレングリコール、エタノール(96%)、Macrogol 8000及び精製水も含む。該製品は、1mLの溶液を含む1回使い切りの密封チューブに入れられて提供される。Neptra(登録商標)の推奨用量は、感染した耳1つにつき1回回用量の容器(即ち、溶液1mL)である。Neptra(登録商標)は、動物及びヒトの両方に対して重篤な眼刺激性の可能性があると考えられている。「EMA/560411/2019, EMEA/V/C/004735, European Medicines Agency, updated October 2019」及び「the NOAH Compendium (http://www.noahcompendium.co.uk), accessed September 24, 2021」を参照されたい。Neptra(登録商標)は、Claro(登録商標) otic solutionとも称される。「NADA 141-440 Freedom of Information Summary, September 20, 2015」を参照されたい。
【0006】
Osurnia(登録商標)は、3種の活性物質〔テルビナフィン、フロルフェニコール、及び、酢酸ベタメタゾン〕を含む動物薬である。Osurnia(登録商標)は、Staphylococcus pseudintermedius(細菌)及びMalassezia pachydermatitis(酵母)による短期間又は再発性の耳感染症(外耳炎)を治療するために使用される。Osurnia(登録商標) otic gelは、1mLあたり、オフホワイトからわずかに黄色の半透明のゲルの中に、10mgのフロルフェニコール、10mgのテルビナフィン及び1mgの酢酸ベタメタゾン(0.9mgのベタメタゾン塩基に相当)を含む。該製品は、賦形剤として、ブチルヒドロキシトルエン(E321)、ヒプロメロース、レシチン、オレイン酸、炭酸プロピレン及びグリセロールホルマールを含有している。Osurnia(登録商標)による治療には、7日間隔で2回の投与が必要である。「EMA/315814/2014, EMEA/V/C/003753, European Medicines Agency, June 2014」を参照されたい。
【0007】
Neptra(登録商標)及びOsurnia(登録商標)は、イヌにおける、細菌(Staphylococcus pseudintermedius)及び酵母(Malassezia pachydermatis)の感受性株に関連した外耳炎の治療に使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】J. Bajwa, Can Vet J. 2019 Jan; 60(1): 97-99, the Merck Veterinary Manual, 8th Edition, 1998, pp 372-376
【非特許文献2】Aziz et al, Asian Pacific Journal of Tropical Biomedicine,Volume 6, Issue 5, 2016, pp 390-395
【非特許文献3】NADA 140-896 Otomax(登録商標)
【非特許文献4】NADA 141-177 Freedom of Information Summary, January 9, 2003
【非特許文献5】NADA 141-266 FOI, dated February 18, 2010
【非特許文献6】EMA/560411/2019, EMEA/V/C/004735, European Medicines Agency, updated October 2019
【非特許文献7】the NOAH Compendium (http://www.noahcompendium.co.uk), accessed September 24, 2021
【非特許文献8】NADA 141-440 Freedom of Information Summary, September 20, 2015
【非特許文献9】EMA/315814/2014, EMEA/V/C/003753, European Medicines Agency, June 2014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これらの動物薬の欠点は、それらの活性化合物の一部が、外耳炎を引き起こす細菌又は真菌と闘うのに最適ではないことである。
【0011】
安全で、幅広い抗菌効果を有し、感染した各耳に1回投与される、動物の耳炎を治療するための組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、いくつかの有利な特性を示す医薬組成物を形成する、選択された活性化合物の組み合わせを特定した。従って、本発明は、
(a)有効量のゲンタマイシン又はその薬学的に許容される塩;
(b)有効量のポサコナゾール;
(c)有効量のモメタゾン又はその薬学的に許容される塩;及び、
(d)薬学的に許容される担体;
を含む、動物の耳感染症を治療するための医薬組成物を対象とする。
【0013】
本発明は、ゲンタマイシン、ポサコナゾール及びモメタゾンを含む医薬組成物を対象とする。この組成物は、動物(特に、イヌ)の耳性感染症の治療において有用である。
【0014】
高濃度のこれら3種の活性成分(ゲンタマイシン、モメタゾンフランカルボン酸エステル、ポサコナゾール)の類いない組合せと賦形剤により、単回投与で耳の感染症を治療するための安定で有効な製品が得られる。
【0015】
特許請求されている医薬組成物は、耳感染症を治療するのに使用される既知医薬品と比較して、いくつかの有利点を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
有利点
3種の活性化合物を含む特許請求されている組成物の主な利点は、動物/イヌの耳感染症を治療又は治癒するのに1回の投与しか必要としないことである。加えて、請求されている組成物は、その組成物の取り扱い時に潜在的な有害な安全性の懸念がない安定な懸濁液として製剤することができる。
【0017】
特許請求されている組成物は、Otomax(登録商標)、Mometamax(登録商標)、Posatex(登録商標)及びOsurnia(登録商標)などの、治療を達成するために複数回投与することが必要な先行技術の耳の治療と比較して、単回投与の治療として投与することができる。
【0018】
特許請求されている組成物を動物の耳に投与した場合、ゲンタマイシン耐性菌の拡散を防ぐのに充分な量のゲンタマイシンが、耳道内に残る。
【0019】
特許請求されている組成物において使用される抗生物質であるゲンタマイシンは、フロフェニコール(Neptra(登録商標)及びOsurnia(登録商標)において使用されている抗生物質)よりも広い抗菌スペクトルを有する。モメタゾンフランカルボン酸エステルは、ベタメタゾン(Osurnia(登録商標)の抗炎症成分)よりも高い抗炎症効力を示し、持続時間も長い。
【0020】
特許請求されている医薬組成物は、自己保存型製剤であり、従って、保存剤を必要としない。この製剤は、棚上で長期間安定なままである。加速経時変化試験に基づいて、この医薬組成物は、棚上で36ヶ月間安定なままであることが確認されている。この医薬組成物は、複数回開閉可能な複数用量ボトル内で貯蔵することもできる。一旦ユーザーが開けると、該医薬組成物は、3ヶ月間安定であることが実証されている。この特徴は、該製剤を投与する場合、獣医師に利便性を提供する。また、最大20匹の動物を治療することが可能な複数用量容器は、各動物の治療中に発生する包装廃棄物の量を低減させる。
【0021】
特許請求されている製剤の臨床反応は、迅速(7日以内)で、少なくとも1ヶ月間持続する。
【0022】
医薬品有効成分(API)は、治療後45日間耳内に残存する。
【0023】
ゲンタマイシン、モメタゾンフランカルボン酸エステル及びポサコナゾール耳用懸濁液は、イヌにおける、ゲンタマイシンに対して感受性のある細菌(Streptococcus spp.、Staphylococcus pseudintermedius、beta-hemolytic Streptococcus canis、緑膿菌、大腸菌、Proteus spp.、Proteus mirabilis、Enterococcus spp)の感受性株及びポサコナゾールに対して感受性の真菌(Malassezia pachydermatis)に関連する外耳炎の治療に使用される。特許請求されている製剤は、複数種の細菌及び真菌による耳感染症に対して、有効である。
【0024】
ゲンタマイシンは、Micromonospora purpurea又はM.echinosporaによる発酵によって産生される広域スペクトルアミノグリコシド抗生物質である。ゲンタマイシンは、4つの主成分(C1、C1a、C2、及び、C2a)といくつかの副成分からなる抗生物質複合体である。この薬剤は、細菌の30Sリボソームサブユニットに不可逆的に結合する。特定的には、この抗生物質は、30Sサブユニット内の16S rRNAとS12タンパク質の間に留まる。これにより、翻訳開始複合体への干渉し、mRNAの誤読を引き起こし、それにより、タンパク質合成を阻害し、殺菌効果をもたらす。「Pubchem https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Gentamicin」を参照されたい。
【0025】
モメタゾンは、グルココルチコイド系の合成ステロイドホルモンである。グルココルチコイドホルモンは、強力な抗炎症薬である。それは、さらに、鎮痒作用及び血管収縮作用も示す。それは、乾癬やアトピー性皮膚炎などのコルチコステロイド反応性皮膚疾患の治療において、局所的に使用される。モメタゾンフランカルボン酸エステルは、化学名「9,21-ジクロロ-11(β),17-ジヒドロキシ-16(α)-メチルプレグナ-1,4-ジエン-3,20-ジオン 17-(2 フロエート)」を有する抗炎症性コルチコステロイドである。水には実質的に溶解せず;メタノール、エタノール及びイソプロパノールにはわずかに溶解し;アセトン及びクロロホルムには溶解し;及び、テトラヒドロフランには溶解しやすい。オクタノールと水の間の分配係数は、5000を超える。モメタゾンは、様々な水和物形態、結晶形態及びエナンチオマー形態で存在することができ、例えば、一水和物として存在し得る。
【0026】
ポサコナゾールは、抗真菌活性を有する広域スペクトルの第二世代トリアゾール化合物である。ポサコナゾールは、チトクロームP450依存性酵素である14-αデメチラーゼ酵素を強力に阻害する。14-α-デメチラーゼを阻害することで、ラノステロールから真菌細胞壁の重要な成分であるエルゴステロールへの変換を妨げる。エルゴステロール合成の阻害は、真菌細胞膜の組成と完全性を変化させ、膜透過性を変化させ、そして、最終的には、真菌細胞の溶解へと至る。他のアゾール系抗真菌薬と比較して、ポサコナゾールは、ステロール14-αデメチラーゼを著しく強力に阻害する。Pubchemを参照されたい。
【0027】
有効成分、即ち、ゲンタマイシン、ポサコナゾール又はモメタゾンの有効量は、1回の投与で動物の耳の耳感染症を治療するのに必要な有効成分の量である。
【0028】
薬学的に許容される担体は、有効成分を患者の体表面又は体内の必要な場所に運ぶことが可能で、製剤の他の成分と適合性のある物質である。薬学的に許容される担体の例は、鉱油、イソプロピルミリステートグリセロール、ジメチルアセトアミド、モノチオグリセロール、ポリソルベート、プロピレングリコール、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、トリアセチン、酢酸セルロース、ミリスチン酸イソプロピル、シリカ、ステアリルアルコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、油、水又はそれらの混合物である。
【0029】
鉱油は、透明で無臭の液体であり、さまざまな化粧品やパーソナルケア製品の中の一般的な成分である。鉱油は、高度に精製され(refined)、精製され(purified)、加工された石油から作られる。米国薬局方「Reference 1443952」及び「CAS # 8012-95-1」を参照されたい。鉱油は、液体パラフィン油としても知られている〔例えば、CAS番号:8042-47-5;一般に、Drakeol(登録商標)6VR(Penreco)、Marcol(登録商標)52(Exxon Mobile)、及び、Klearol(登録商標)(Sonneborn)として入手可能〕。
【0030】
粘度向上剤としても知られている増粘剤は、本発明による組成物に組み込むことが可能であり、そして、そのような増粘剤としては、限定するものではないが、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース、ラポナイト、及び、セルロースエーテルの水溶性塩(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースナトリウム)、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、カルボマー、及び、ポビドンなどを挙げることができる。アカシア、カラヤガム、キサンタンガム、アラビアガム及びトラガントガムなどの天然ガムも使用することができる。他の増粘剤としては、コロイド状ケイ酸アルミニウムマグネシウム又は微粉化シリカなどがあり、これらは、食感をさらに改善するために増粘剤の一部として使用することができる。本発明の組成物は、25%~45%w/vの増粘剤を含むことができる。
【0031】
好ましい増粘剤は、可塑化炭化水素ゲルであるPlastibase(登録商標)50W(Bristol-Myers Squibb)である。Plastibase(登録商標)50Wは、95%鉱油中に5%のポリエチレンを含む。ポリエチレンは、分子量が大きく融点が高い不活性炭化水素である。それは、該鉱油の粘度を高め、従って、医薬製品の粘度を高めるための増粘剤として使用される。もう一つの好ましい増粘剤は、Pioneer(登録商標)PLW可塑化炭化水素ゲル(Hansen & Rosenthal)である。
【0032】
最小発育阻止濃度(MIC)は、培養において目に見える細菌の発育を阻止する抗菌薬の最低濃度として定義される。治療上、この値は、抗菌薬が有効であるとみなされるために感染部位で超えなければならない濃度を推定するために使用される。
【0033】
「感受性」MICブレイクポイントは、臨床微生物学において、ある細菌分離株が所与の抗菌薬に対して感受性であることを示すために適用される、インビボで決定される値(μg/mL)である。感受性の指定は、その微生物に起因する感染症が推奨される投与計画で適切に治療され得ることを意味するカテゴリーである。抗菌薬に対する感受性は、適切な薬剤選択の指針とするために、獣医師が使用する。
【0034】
本発明の実施形態では、ゲンタマイシン又はその薬学的に許容される塩の有効量は、約0.40~約1.00%w/vの量である。
【0035】
本発明の実施形態では、ポサコナゾールの有効量は、約0.15~約0.35%w/vの量である。
【0036】
本発明の実施形態では、モメタゾン又はその薬学的に許容される塩の有効量は、約0.15~約0.35%w/vの量である。
【0037】
本発明の実施形態では、該医薬組成物は、増粘剤又は粘度向上剤をさらに含む。
【0038】
本発明の実施形態では、該増粘剤は、可塑化炭化水素ゲルである。
【0039】
本発明の実施形態では、該可塑化炭化水素ゲルは、95%鉱油中の5%ポリエチレンである。
【0040】
本発明の実施形態では、該増粘剤は、約25%~40%w/v、約25%~45%w/v、約28%~35%w/v又は約40%の量で存在している。
【0041】
本発明の実施形態では、該医薬組成物は、懸濁液である。
【0042】
本発明の実施形態では、該薬学的に許容される担体は、鉱油である。
【0043】
代替の実施形態では、該薬学的に受容可能な担体は、グリセロール、ジメチルアセトアミド、モノチオグリセロール又はそれらの混合物である。
【0044】
代替の実施形態では、該薬学的に許容される担体は、グリセロール、ポリソルベート、プロピレングリコール、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、水又はそれらの混合物である。
【0045】
代替の実施形態では、該薬学的に許容される担体は、トリアセチン、酢酸セルロース、モノチオグリセロール又はそれらの混合物である。
【0046】
代替の実施形態では、該薬学的に許容される担体は、ミリスチン酸イソプロピル、シリカ、ステアリルアルコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル又はそれらの混合物である。
【0047】
本発明の実施形態では、該ゲンタマイシンは、硫酸ゲンタマイシンである。
【0048】
本発明の実施形態では、該モメタゾンは、モメタゾンフランカルボン酸エステル一水和物である。
【0049】
本発明の実施形態では、該医薬組成物は、複数用量容器中で長期間貯蔵された場合に、安定である。
【0050】
本発明に関連して、長期間とは、約36ヶ月である。
【0051】
本発明の別の実施形態では、該医薬組成物は、複数用量容器中に貯蔵される。
【0052】
本発明の実施形態では、該複数用量容器は、約10用量~約100用量含み、好ましくは、少なくとも20用量含む。
【0053】
本発明の代替の実施形態は、動物における耳感染症を治療する方法であり、ここで、該方法は、該動物の耳に、上記医薬組成物のいずれかを投与することを含む。
【0054】
本発明の実施形態では、該医薬組成物は、1回投与される。
【0055】
本発明の実施形態では、該動物は、イヌである。
【0056】
本発明の実施形態では、該動物は、ネコである。
【0057】
本発明の実施形態では、該耳感染症は、Staphylococcus pseudintermedius、beta-hemolytic Streptococcus spp.、緑膿菌、大腸菌、Proteus spp.、Enterococcus spp.又はMalassezia pachydermatisのうちの1以上によって引き起こされる。
【実施例】
【0058】
実施例
実施例1 - 医薬組成物の調製
該医薬製剤の175L(153kg)バッチを、以下のプロセスに従って製造した:
1. パラフィン液の約80%を主配合タンクに装入した;
2. パラフィン液の約8%をプレミックス容器に装入した;
3. 段階2のプレミックスタンクに必要量の硫酸ゲンタマイシンを装入した;ホモジナイザーを用いて約5分間混合させた;
4. モメタゾンを添加した;
(A) 必要量のモメタゾンフランカルボン酸エステル一水和物を秤量して5L容ボトルに入れた;
(B) そのボトルに2kgの鉱油(パラフィン液)を加え、モメタゾンフランカルボン酸エステル一水和物が充分に分散するまで振盪した;
(C) ボトルの内容物をプレミックス容器に移した;
(D) ボトルを1kgの鉱油(パラフィン液)で3回濯ぎ、その濯ぎ液をプレミックス容器に移した;
(E) プレミックスタンクの内容物をホモジナイザーを用いて約5分間混合させた;
5. 必要量のポサコナゾールをプレミックス容器に装入した;ホモジナイザーを用いて約5分間混合させた;
6. プレミックスを混合しながら主配合タンクに装入した;プレミックスタンクをパラフィン液の一部で濯ぎ、その濯ぎ液を主配合タンクに加えた;
7. インライン循環式ホモジナイザーを用いて、主配合タンクを最低60分間ホモジナイズした;
8. 混合しながら、必要量の可塑化炭化水素ゲルをバッチに連続的に装入した;約18分間混合を続けた;主配合タンクの製品温度を35℃以下に維持した;
9. バルク懸濁液を低剪断撹拌機で混合し続けながら、インライン循環式ホモジナイザーを用いて最低70分間の均質化を開始した;
10. 段階9の完了後、充填中のバルク懸濁液を低剪断撹拌機で混合し続けた;
11. バッチをHDPEボトルに充填し、キャップで閉栓した。
【0059】
【0060】
実施例2 - パイロット耳デプレッション試験におけるゲンタマイシン濃度
米国で実施されたゲンタマイシンに関する最小発育阻止濃度(MIC)試験によると、ゲンタマイシン耐性緑膿菌の最高MICは、64μg/mLである。耳垢中のゲンタマイシン濃度を評価するため、耳デプレッション試験を実施した。耳垢中で検出されたゲンタマイシン濃度は、ゲンタマイシン耐性緑膿菌に対して有効であるのに充分な高濃度であることが確認された。
【0061】
【0062】
実施例3 イヌの耳感染症の治療における医薬組成物の有効性
本試験の目的は、8.6mg/mLのゲンタマイシン、2.1mg/mLのモメタゾンフランカルボン酸エステル及び2.6mg/mLのポサコナゾールを含有する耳科用懸濁医薬組成物(実施例1に記載されているように調製したもの)である研究用動物医薬品(investigational veterinary product)(IVP)の単回投与(0.8mL)の細菌性及び/又は真菌性外耳炎に対する有効性及び安全性を、複数の所在地において顧客所有のイヌで評価することであった。有効性は、登録されている製品(Osurnia(登録商標)、Elanco Europe Ltd.)(対照製品)と比較した。
【0063】
材料及び方法
このGCPに準拠したマルチセンターフィールド試験は、陽性-対照試験で、治験責任医師は盲検化された。それは、外耳炎に罹患している顧客所有の316匹のイヌで実施した。153匹はIVPで治療し、163匹に対照製品で治療した。平均して、各治療群の動物は5.7歳で、体重は24.1kg(IVP群)及び22.4kg(CP群)であった。試験日(SD)0日目に、OTIS-3採点基準(「Nuttall and Bensignor, Vet Dermatol 2014; 25: 530」を参照されたい)を用いて少なくとも片方の耳で少なくとも5の耳診察スコアを呈した動物を組み入れるのに適格であるとした。SD0日目に、身体検査、耳の検査(ottic scoring)、スワブサンプリング及び炎症を起こした耳の治療を行った。SD7日目、14±2日目、28±2日目及び42±2日目に、身体検査及び耳スコアリングを実施した。対照群の動物も、SD7日目に、製造元の指示に従った治療を受けた。耳スワブサンプルは、SD28±2日目に採取した。SD7日目及び14±2日目では、治療失敗の場合にのみ耳スワブサンプルを採取し、SD42±2日目では、再発の場合にのみ耳スワブサンプルを採取した。耳炎が悪化した場合は、SD7日目以降の任意の時点でも、耳スワブサンプルを採取した。
【0064】
主な有効性の基準は、治療成功率であり、これは、以下のように定義された: 総スコアが、SD14日目で4以下、及び、SD28日目で3以下。SD28日目で治療成功ではなかったイヌ、又は、SD28日目より前に試験から離脱したイヌ(耳炎の代替治療が必要なため)は、「治療失敗」に分類された。第2の有効性基準は、中間治療成功率(SD14日目で、スコア4以下)、再発率(SD42日目で、スコア5以上)、及び、SD28日目で、微生物学的治癒率とした。
【0065】
結果
ゲンタマイシン、モメタゾンフランカルボン酸エステル及びポサコナゾール耳用懸濁液剤で治療されたイヌに関し、SD28日目における治療成功率は、89.5%であった。この割合は、Osurnia(登録商標)で治療されたイヌにおける治療成功率87.2%と比較して、有意に非劣性であった(p<0.0001)。SD14日目における中間治療成功率は、ゲンタマイシン、モメタゾンフランカルボン酸エステル及びポサコナゾール耳用懸濁液で治療されたイヌで、93.7%であった。この割合は、Osurnia(登録商標)で治療されたイヌにおける中間治療成功率90.2%と比較して、有意に非劣性であった(p<0.0001)。SD28日目で治療成功であったイヌのSD42日目での再発率は、ゲンタマイシン、モメタゾンフランカルボン酸エステル及びポサコナゾール耳用懸濁液で治療されたイヌで、4.7%であった。この割合は、Osurnia(登録商標)で治療されたイヌでの再発率1.7%と比較して、有意に非劣性(p=0.0002)であった。SD28日目における微生物学的治癒率は、ゲンタマイシン、モメタゾンフランカルボン酸エステル及びポサコナゾール耳用懸濁液で治療されたイヌでは、Malassezia pachydermatisに対しては、81.1%であり、Staphylococcus pseudintermediusに対しては、73.5%であった。Osurnia(登録商標)で7日間の間隔で2回治療されたイヌにおいては、SD28の微生物学的治癒率は、Malassezia pachydermatisに対しては、83.8%であり、Staphylococcus pseudintermediusにたいしては、90%であった。緑膿菌、大腸菌、S.canis及びP.mirabilisに対する微生物学的治癒率は、IVP群では、60%~100%の範囲であり、CP群では、42.9%~100%の範囲であった。
【0066】
結論
8.6mg/mLのゲンタマイシン、2.1mg/mLのモメタゾンフランカルボン酸エステル及び2.6mg/mLのポサコナゾールを含有する新規耳用懸濁液を0.8mLの単回用量として投与した結果、イヌの外耳炎に対して有効であり、試験用量における忍容性及び安全性は良好であった。Osurnia(登録商標)による2回の治療(SD0日目及びSD7日目)と比較した場合、SD28日目の治療成功率、SD14日目の中間治療成功率及びSD42日目の総合治療成功率に関して、有意な非劣性を示した。
【0067】
ゲンタマイシン、モメタゾン及びポサコナゾールを含むIVP医薬組成物に関するこれらの結果は、対照製品(Osurnia(登録商標))の結果が7日間隔で2回の投与を必要としたのに対し、1回のみの投与で達成された。
【0068】
実施例3 - 安定性
実施例1の医薬組成物(上記表1を参照)を、加速条件下で、長期安定性について評価した。該組成物は、LDPEキャップの付いた35mL容の白色HDPEボトルに包装された。各ボトルからそれぞれ0.8mLずつ少なくとも20回用量分を取り出せるように、ボトルには、24mL以上を充填した。各用量の取り出しは、LDPEプレスインボトルアダプター(PIBA)を用いて、1.0mLシリンジで行った。
【0069】
該ボトルは、加速条件下(40℃/75%相対湿度(RH))、冷蔵条件下(5℃/周囲湿度)、及び、長期貯蔵条件下(30℃/65%RH、及び、30℃/75%RH)で、12カ月間維持した。
【0070】
各ボトルから、0ヶ月、6ヶ月及び12ヶ月の時点で、サンプルを採取した。サンプルは、外観、密度、粘度、含水量、粒度分布、重量変化、並びに、ゲンタマイシン、モメタゾンフランカルボン酸エステル及びポサコナゾールの識別及び分析について調べた。サンプルは、さらに、api粒子の形態(即ち、粒子がまだ結晶であるか)及びapi粒子の凝集についても評価した。
【0071】
サンプル用量の外観については、当初、滑らかで均一な白からオフホワイトの粘性懸濁液と記載された。安定性試験下では、該サンプルは、それぞれ、適用された各条件下で、試験期間中、この外観を維持した。
【0072】
該サンプルの初期密度値0.850g/mL及び0.900g/mL(Ph.Eur.2.2.5に従い20℃で測定)は、全ての条件下で、安定性試験期間中維持された。
【0073】
粘度(Brookfield粘度計で測定)は、当初800~2200センチポイズと測定された。該粘度は、安定性試験中、全ての条件でこの範囲に維持された。
【0074】
含水量は、Karl Fischer法で評価され、そして、当初は1.0%未満と測定された。加速条件及び長期条件では、含水量は、0.1%から0.4%へとわずかに増加した。このデータは、該組成物が、貯蔵寿命中に組成物の有効性と安全性に影響を与えるほど充分な水分を獲得しないことを示している。
【0075】
粒径は、レーザー回折法で測定した。D10、D50及びD90で測定された粒径分布は、加速条件下、冷蔵条件下及び長期条件下で、12ヶ月間をとおして一貫していた。該データは、D50の粒径分布が、冷蔵条件下、長期条件下及び加速条件下で、試験期間を通して安定していることを示している。
【0076】
光学顕微鏡データは、該粒子が結晶性であるかどうか(殆どが10μm以下)及び凝集体の数(即ち、250μmを超える粒子)を測定する。全てのサンプルについて、結晶性の基準は満たされており、加速条件下、冷蔵条件下及び長期条件下で、12ヶ月間を通して凝集物は確認されなかった。これらのデータは、加速条件下でも凝集体が形成されないことを示している。
【0077】
重量変化は、加速条件下、冷蔵条件下及び長期条件下において、12ヶ月間を通して0.5%未満であった。重量変化がないことは、容器閉鎖システムが包装材料として適切であることを示している。
【0078】
ポサコナゾールとモメタゾンフランカルボン酸エステルの識別及び分解は、UV検出器に連結した超高圧液体クロマトグラフィー(UPLC/UV)によって実施した。追跡されたポサコナゾールの分解生成物は、ギ酸エステルである。モメタゾンフランカルボン酸エステルについては、17-アルコールと化合物Eが追跡された。モメタゾンフランカルボン酸エステル及びポサコナゾールの特定された分解生成物も特定されていない分解生成物も、加速条件下、冷蔵条件下及び長期条件下で、12ヶ月間をとおして観察されなかった。
【0079】
ゲンタマイシンの識別及び分析は、微生物学的滴定により確認した。ゲンタマイシン分析は、加速条件下、冷蔵条件下及び長期条件下で、12ヶ月間をとおして、90%~105%に維持された。
【0080】
利用可能なデータは、該組成物が、重要な品質属性に関して有意な変化を示さないことを示している;特別な貯蔵条件は必要ない。
【0081】
実施例4 使用中安定性試験
シミュレートされた使用中条件下で最長3ヶ月間、実施例1の製剤の安定性を評価するために、使用中安定性試験を実施した。サンプルボトルは、初期充填量24mLを含んでいた。適切な量の製品を投与するため、ボトルの頸部にプレスインボトルアダプター(PIBA)を挿入して、製品をシリンジを介して投与することができるようにした。各ボトルを振盪した後、シリンジを用いて、0.8mLの製品を10のアリコートで取り出した(合計8mL)。その後、ボトルを30℃/65%RHで貯蔵し、3ヶ月後に試験を行った。初期サンプル及び3ヶ月サンプルの結果が、表2に要約されている。
【0082】
【0083】
使用中安定性試験は、実施例1の製剤の熟成サンプルに対しても、即ち、計画された24ヶ月の貯蔵期間の終了時にも、実施した。このバッチからのサンプルボトルは、前のバッチと同じ使用中手順に従った。各ボトルを振盪した後、シリンジを用いて、0.8mLの製品を10のアリコートで取り出した(合計8mL)。その後、ボトルを30℃/65%RHで24ヶ月間貯蔵し、計画された24ヶ月の貯蔵寿命の後、最大で3ヶ月後まで、試験を行った。結果は、表3に要約されている。
【0084】
【0085】
熟成サンプルでは低いゲンタマイシン分析値(92.5% LC)が観察されたが、それでも、この製品の期待される貯蔵寿命の範囲内であった。該試験により、ゲンタマイシン、モメタゾンフランカルボン酸エステル及びポサコナゾール耳用懸濁液が、HDPEボトルに入れられて計画された長期保存条件(30℃/65%RH)で貯蔵された場合、初回使用後及び貯蔵寿命後、最大3ヶ月間安定であることが示された。
【0086】
加速安定性データに基づいて、36ヶ月の貯蔵寿命が予想される。
【国際調査報告】