(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】パワーモジュールおよびパワーモジュールを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20241219BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536490
(86)(22)【出願日】2022-11-30
(85)【翻訳文提出日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2022083853
(87)【国際公開番号】W WO2023117345
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】マレキ,ミラド
(72)【発明者】
【氏名】バイヤー,ハラルト
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA05
5H770AA21
5H770DA44
5H770JA10X
5H770QA01
5H770QA05
5H770QA08
(57)【要約】
パワーモジュール(1)は、少なくとも1つの基板(2)と、基板(2)上に配置された少なくとも1つのスイッチングデバイス(3)と、電力を伝送するための少なくとも1つの電力経路(6)と、スイッチングデバイス(3)を制御および/または監視するための少なくとも1つの補助経路(7、10)とを備え、補助経路(7、10)は、電気的に並列に接続された2つ以上のコネクタ(8、11、20)を備える少なくとも1つの接続部分(9、12、17、18、19)を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーモジュール(1)であって、
少なくとも1つの基板(2)と、前記基板(2)上に配置された少なくとも1つのスイッチングデバイス(3)と、前記少なくとも1つのスイッチングデバイス(3)に電力を供給するための少なくとも1つの電力経路(6)と、前記スイッチングデバイス(3)を制御および/または監視するための少なくとも1つの補助経路(7、10)とを備え、前記少なくとも1つの補助経路(7、10)が、電気的に並列に接続された2つ以上のコネクタ(8、11、20)を備える少なくとも1つの接続部分(9、12、17、18、19)を備え、
前記パワーモジュール(1)が、対応する補助経路(7、10)を有するいくつかのスイッチングデバイス(3)を備え、前記対応する補助経路(7、10)のうちの少なくとも1つが、並列コネクタ(8、11、20)を有する接続部分(9、12、17、18、19)を備え、前記対応する補助経路(7、10)のうちの少なくとも別の1つが、並列コネクタ(8、11、20)を有する接続部分(9、12、17、18、19)を備えるか、または単一のコネクタを有する接続部分(13)を備え、前記コネクタ(8、11、20)の数が、前記対応する補助経路(7、10)内で異なる、パワーモジュール(1)。
【請求項2】
並列コネクタ(8、11、20)を有する前記少なくとも1つの接続部分(9、12、17、18、19)が、電気的に並列に接続された少なくとも3つのコネクタ(8、11、20)を備える、請求項1に記載のパワーモジュール。
【請求項3】
前記コネクタ(8、11、20)のうちの少なくとも1つが、ワイヤボンド、リボン、またはクリップの形態である、先行する請求項のいずれかに記載のパワーモジュール。
【請求項4】
並列コネクタ(8、11、20)を有する前記接続部分(9、12、17、18、19)内のコネクタ(8、11、20)の前記数が、前記接続部分(9、12、17、18、19)内の前記コネクタ(8、11、20)の各々と同じ長さおよび同じ直径の単一のコネクタ(8、11、20)を有する前記補助経路(7、10)のインダクタンスと比較して、前記補助経路(7、10)のインダクタンスが少なくとも10%低減されるようである、先行する請求項のいずれかに記載のパワーモジュール。
【請求項5】
前記スイッチングデバイス(3)が、スイッチングを制御するためのゲートを備え、前記補助経路(7)が前記ゲートへの電気接続である、先行する請求項のいずれかに記載のパワーモジュール。
【請求項6】
前記スイッチングデバイス(3)が、前記スイッチングデバイス(3)を監視するための補助端子(16)を備え、前記補助経路(10)が、前記スイッチングデバイス(3)のエミッタ、コレクタ、ソース、またはドレインに前記補助端子(16)を接続する、先行する請求項のいずれかに記載のパワーモジュール。
【請求項7】
前記対応する補助経路(7、10)が同じ機能を有し、前記機能が、前記スイッチングデバイス(3)のゲート、ソース、ドレイン、エミッタ、またはコレクタへの接続である、先行する請求項のいずれかに記載のパワーモジュール。
【請求項8】
前記対応する補助経路(7、10)の前記コネクタ(8、11、20)が、対応する要素の間に接続され、前記要素が、前記スイッチングデバイス(3)の接点および金属パターン(4、14)から選択される、先行する請求項のいずれかに記載のパワーモジュール。
【請求項9】
ハーフブリッジを形成するローサイドスイッチングデバイスおよびハイサイドスイッチングデバイスを備え、前記接続部分(9、12、17、18、19)が、前記ハイサイドスイッチングデバイスおよび前記ローサイドスイッチングデバイスの対応する補助経路(7、10)内に設けられる、先行する請求項のいずれかに記載のパワーモジュール。
【請求項10】
前記スイッチングデバイス(3)のうちの少なくとも1つが、いくつかの補助経路(7、10)を備え、前記補助経路(7、10)のうちの少なくとも2つが、並列コネクタ(8、11、20)を有する接続部分(9、12、17、18、19)を備え、前記並列コネクタ(8、11、20)の前記数が、前記補助経路(7、10)内で異なり、または前記補助経路(7、10)のうちの1つが、並列コネクタ(8、11、20)を有する接続部分(9、12、17、18、19)を備え、前記補助経路(7、10)のうちの別の1つが、並列コネクタ(8、11、20)を有する接続部分(9、12、17、18、19)を備えない、先行する請求項のいずれかに記載のパワーモジュール。
【請求項11】
前記接続部分(9、12、17、18、19)が、別々の金属パターン(4)を相互接続し、前記別々の金属パターン(4)が、同じ基板(2)または異なる基板(2)上に配置される、先行する請求項のいずれかに記載のパワーモジュール。
【請求項12】
前記スイッチングデバイス(3)のうちの少なくとも1つが接点(5)を備え、前記接続部分(9、12、17、18、19)が、前記接点(5)および金属パターン(4)を相互接続する、先行する請求項のいずれかに記載のパワーモジュール。
【請求項13】
パワーモジュール(1)を製造するための方法であって、初期パワーモジュールの電磁特性を指定することであって、前記電磁特性が前記少なくとも1つの補助経路のインダクタンスであり、前記初期パワーモジュールが、少なくとも1つの基板(2)と、前記基板(2)上に配置された少なくとも1つのスイッチングデバイス(3)と、前記少なくとも1つのスイッチングデバイス(3)に電力を供給するための少なくとも1つの電力経路(6)と、前記スイッチングデバイス(3)を制御および/または監視するための少なくとも1つの補助経路(7、10)とを備え、前記初期パワーモジュールが、少なくとも1つの接続部分(9、12、17、18、19)を備える、指定することと、
それによって前記初期パワーモジュールの前記インダクタンスが調整される値を定義することと、
その中で前記接続部分(9、12、17、18、19)が電気的に並列に接続された2つ以上のコネクタ(8、11、20)を備えるパワーモジュール(1)を製造することであって、コネクタ(8、11、20)の数が、前記電磁特性が前記初期パワーモジュール(1)に関して前記定義された値によって調整されるように選択される、製造することと
を含む、方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの接続部分(9、12、17、18、19)内のコネクタ(8、11、20)の前記数が、前記少なくとも1つの補助経路(7、10)の前記インダクタンスが少なくとも5%低減されるように選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記パワーモジュール(1)が、対応する補助経路(7、10)を備えるいくつかのスイッチングデバイス(3)を備え、前記接続部分(9、12、17、18、19)内のコネクタ(8、11、20)の前記数が、前記対応する補助経路(7、10)のゲートインダクタンスが、前記対応する補助経路(7、10)の前記インダクタンスの平均値から最大10%異なるように調整されるように選択される、請求項13または14のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パワーモジュールおよびパワーモジュールを製造するための方法に関する。パワーモジュールは、例えば、電気自動車(EV:electric vehicle)のモータ駆動装置または電力変換装置などのパワーエレクトロニクス用途に使用することができる。パワーモジュールは、パワー半導体モジュールであり得る。パワーモジュールは、高電圧パワーモジュールであってもよい。
【背景技術】
【0002】
パワーモジュールは、例えば、シリコン、炭化ケイ素、窒化ガリウム、または他の半導体デバイスを備える場合がある。パワーモジュールは、炭化ケイ素デバイスおよび窒化ガリウムデバイスなどの広バンドギャップデバイスを備える場合がある。半導体デバイスは、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:insulated gate bipolar transistor)またはパワーMOSFETまたはMISFETトランジスタなどのスイッチングデバイスであってもよい。
【0003】
特開2016-46279A号、米国特許出願公開第4,692,789号、特開2008263675A号、独国特許出願公開第102010000951A1号、米国特許出願公開第11018109B2号、欧州特許出願公開第2645414A2号、および国際特許出願公開第2021/033565A1号は、パワー半導体モジュールを開示している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の実施形態は、改善された電磁気挙動を有するパワーモジュールに関する。
本開示の第1の態様によれば、パワーモジュールは、少なくとも1つの基板と、基板上に配置された少なくとも1つのスイッチングデバイスと、スイッチングデバイスに電力を供給するための少なくとも1つの電力経路と、スイッチングデバイスを制御および/または監視するための少なくとも1つの補助経路とを備え、補助経路は、電気的に並列に接続された2つ以上のコネクタを備える少なくとも1つの接続部分を備える。電力経路はまた、スイッチングデバイスから外部に電力を供給するための経路であり得る。
【0005】
パワーモジュールは、正DC(「DC+」)端子および負DC(「DC-」)端子などの電力端子を備える場合がある。特定のモジュールの場合、出力(AC)端子も存在する場合がある。電力経路は、スイッチングデバイスと電力端子との間で電流を運ぶ。
【0006】
その上、パワーモジュールは、デバイスを監視および制御するための1つまたは複数の補助経路に接続された補助端子を備える場合がある。デバイスは、外部から制御されるか、または内部の制御デバイスによって制御される場合がある。そのような内部の制御デバイスは、例えば、インテリジェントパワーモジュール内に存在する場合がある。
【0007】
例として、補助経路は、スイッチングデバイスのゲートへの接続などのための信号経路であってもよく、関連する補助端子を有するエミッタ、コレクタ、ソース、および/またはドレインの間の接続であってもよい。補助端子を通って補助経路内を流れる電流は、電力経路内の電流よりもはるかに低い。一例として、補助経路内の電流は1アンペアを下回る場合がある。電力端子を通って流れる電流は、例えば数百アンペアであり得る。
【0008】
スイッチングデバイスは、例えば、IGBT、MOSFETS、またはMISFETSの形態であり得る。パワーモジュールは、例えば、ハーフブリッジを形成するように電気的に接続された第1のスイッチングデバイスおよび第2のスイッチングデバイスを備える場合がある。
【0009】
コネクタは、例えば、ワイヤボンド、リボン、および/またはクリップの形態であり得る。異なる形態が1つの接続部分において組み合わされることも可能である。コネクタは、金属パターンおよび/もしくはスイッチングデバイスの接点に直接接続される場合があり、かつ/または互いに重ねて接続される場合がある。一例として、コネクタは、積み重ねられたボンドワイヤまたはリボンの形態であり得、最下部のコネクタのみが金属パターンまたはスイッチングデバイスに直接接続される場合がある。その上、コネクタのうちの1つまたは複数が金属パターンのセクションの形態であることも可能である。セクションは、狭い金属経路であり得る。一例として、ワイヤボンド、リボン、またはクリップは、金属パターンのセクションと並列に接続される場合がある。
【0010】
接続部分は、電気的に並列に接続された少なくとも2つのコネクタを備える場合がある。接続部分は、電気的に並列に接続された少なくとも3つのコネクタを備える場合がある。例として、接続部分は、並列に接続された4つまたは10個のコネクタを備える場合がある。
【0011】
一般的なパワーモジュール設計では、1つの単一ワイヤボンドのみが補助経路内の金属パターンおよび/または接点の相互接続に使用され、いくつかのワイヤボンドが電力経路内の金属パターンの相互接続に使用される場合がある。補助経路では、電力経路とは対照的に、低電流のみが補助経路に印加されるので、相互接続のための単一のワイヤでほとんどの場合十分である。しかしながら、単一ボンドワイヤの同等の小さい断面積は、例えばゲート信号の振動、および高速スイッチングに特に関連する場合があるスイッチング損失につながる寄生インダクタンスを高める可能性がある。
【0012】
その上、寄生インダクタンスは、例えば、ゲート信号内の振動を引き起こし、それによってスイッチング周波数を制限する要因を提示する。SiCパワーMOSFETSなどの炭化ケイ素(SiC:silicon carbide)ベースのパワーモジュールを使用する用途では、高いスイッチング周波数が利用可能なので、例えば、単一ボンドワイヤはこれらの用途における制限要因となり得る。並列コネクタの数が増加すると、寄生インダクタンスが低減されるので、利用可能なスイッチング周波数をより良好に利用または増強することができる。
【0013】
一般に、補助経路内に並列コネクタを設けることにより、スイッチングデバイスの少なくとも1つの電磁特性は、電磁挙動を改善するように調整または構成される場合がある。電磁特性は、寄生インダクタンス、補助経路の自己インダクタンス、均一なスイッチング挙動、ノイズ感受性、およびパワーモジュール内の別のスイッチングデバイスに対する少なくとも1つのスイッチングデバイスのスイッチング性能のうちの少なくとも1つであり得る。接続部分内の並列コネクタの数は、特性が事前定義された値によって調整され得るように選択される場合がある。一例として、事前定義された値は、単一のコネクタのみを有する接続部分についての特性の値に対する相対的または絶対的な差であり得る。一例として、単一のコネクタは、並列コネクタの各々と同じ長さおよび同じ直径を有する場合がある。単一のコネクタが、並列コネクタの各々とは異なる長さおよび/または異なる直径を有することも可能である。
【0014】
接続部分は、接続部分が一定数のコネクタを並列に取り付けることを可能にするように構成可能であり得る。一例として、並列コネクタが固定されるメタライゼーションまたはパッドは、少なくとも2つのコネクタを電気的に並列に取り付けるための十分な空間を提供することができ、基板の主面に沿って互いの傍らに配置される。一例として、互いの傍らに配置された10個の並列コネクタに十分な空間が提供される場合がある。並列コネクタの少なくともいくつかが互いの上方に配置され、並列コネクタのいくつかが互いの傍らに配置されることも可能である。一例として、接続部分内の並列コネクタの数は、例えばゲートインダクタンスなどの補助経路の寄生インダクタンスが、接続部分内の単一のコネクタのみを有する補助経路のインダクタンスと比較して少なくとも5%低減されるようなものであり得る。インダクタンスは、例えば、少なくとも10%低減される場合がある。一例として、4つの並列コネクタが設けられる場合がある。
【0015】
パワーモジュールは、少なくとも2つの補助経路を備える場合があり、各々が並列に接続されたいくつかのコネクタを有する少なくとも1つの接続部分を備える。接続部分内のコネクタの数は同じであり得る。接続部分内のコネクタの数が異なることも可能である。一例として、補助経路のインダクタンスが互いに調整されるように、または補助経路の寄生インダクタンスの必要な個別の低減に応じて調整されるように、コネクタの数が選択される場合がある。
【0016】
パワーモジュールは、いくつかのスイッチングデバイスを備える場合がある。スイッチングデバイスは、対応する補助経路を有する場合がある。一例として、スイッチングデバイスの各々は、ゲート接点につながる補助経路を有する場合がある。さらなる例として、スイッチングデバイスの各々は、ソース、ドレイン、エミッタ、および/またはコレクタを補助端子に接続する1つまたは複数の補助経路を有する場合がある。同じ機能を有する補助経路は、「対応する」補助経路と呼ばれる。一例として、ゲートスイッチング経路は対応する補助経路である。補助ソース経路も対応する補助経路である。
【0017】
並列コネクタの数は、異なるスイッチングデバイス用の対応する補助経路ごとに異なる場合がある。一例として、スイッチングデバイスの一方について、ゲート補助経路内の並列コネクタの数は、他方のスイッチングデバイスよりも多い場合がある。スイッチングデバイスの一方が補助経路内に並列コネクタを備え、スイッチングデバイスの他方が対応する補助経路内に並列コネクタを備えない、すなわち、単一のコネクタのみを備えることも可能である。
【0018】
スイッチングデバイスの他方は、並列コネクタまたは単一のコネクタのみを有する接続部分を備える場合がある。コネクタの数は、対応する補助経路の接続部分ごとに異なる場合がある。
【0019】
対応する補助経路内のコネクタは、対応する要素に直接接続される場合がある。要素は、スイッチングデバイスの接点および金属パターンのうちの少なくとも1つであり得る。一例として、対応する補助経路内のコネクタは、それぞれのスイッチングデバイス上の接点および金属パターンに直接接続される場合がある。対応する補助経路内のコネクタは、同じ金属パターンに接続される場合がある。一例として、コネクタはゲート金属パターンに接続される場合がある。
【0020】
対応する補助経路内のスイッチングデバイスについて、並列コネクタの数が同じであることも可能である。
【0021】
補助経路内の並列コネクタの数は、補助経路の特性、例えば寄生インダクタンス内の均一化が実現されるように選択される場合がある。一例として、均一化は、異なる補助経路内の寄生インダクタンスが、これらの補助経路内の寄生インダクタンスの平均値から10%以上異ならないようであり得る。
【0022】
パワーモジュールは、ハーフブリッジを形成するハイサイドスイッチングデバイスおよびローサイドスイッチングデバイスを備える場合がある。並列コネクタを備える接続部分は、例えば、ローサイドスイッチングデバイスのゲートに接続された補助経路内に存在する場合がある。ハイサイドスイッチングデバイスの場合、単一のワイヤボンドのみが補助経路内に存在する場合があり、または接続内のワイヤボンドの数は、ローサイドスイッチングデバイスの場合よりも少ない場合がある。あるいは、ただ1つのコネクタによる初期寄生インダクタンスの違いに応じて、接続内のワイヤボンドの数は、ハイサイドデバイスの場合がローサイドデバイスの場合と同じかまたはそれより多い場合がある。
【0023】
パワーモジュールは、いくつかの補助経路を備えるスイッチングデバイスを備える場合がある。一例として、補助経路は、スイッチングデバイスのゲート、ソース、ドレイン、エミッタ、またはコレクタに接続された補助経路のうちの2つ以上であり得る。補助経路のうちの少なくとも2つは、並列コネクタを有する接続部分を備える場合があり、並列コネクタの数は補助経路ごとに異なる。補助経路のうちの1つが並列コネクタを有する接続部分を備え、補助経路のうちの別の1つが並列コネクタを有する接続部分を備えないことも可能である。一例として、ゲート経路はいくつかの並列コネクタを備える場合があり、ソース補助経路は単一のコネクタのみを備える場合がある。コネクタの数は、例えば、インダクタンスおよびコストのための最適化されたバランスを取得するために別々に選択される場合がある。
【0024】
本開示のさらなる態様によれば、パワーモジュールを製造するための方法は、電磁特性を指定することと、それによって電磁特性が変更される値を定義することとを含む。方法は、少なくとも1つの基板と、基板上に配置された少なくとも1つのスイッチングデバイスと、少なくとも1つのスイッチングデバイスとの間で電力を供給するための少なくとも1つの電力経路と、スイッチングデバイスを制御および/または監視するための少なくとも1つの補助経路とを備えるパワーモジュールを設けることをさらに含み、少なくとも1つの補助経路は、電気的に並列に接続された2つ以上のコネクタを備える少なくとも1つの接続部分を備え、コネクタの数は、電磁特性が定義された値によって変更されるか、または所望の値に調整されるように選択される。
【0025】
必要なコネクタの数は、例えば、製品開発におけるサンプルに関するシミュレーションまたは測定によって決定される場合がある。一例として、初期パワーモジュールが設けられる場合があり、初期パワーモジュールの電磁特性の値が決定される場合がある。初期パワーモジュールは、少なくとも1つの基板と、基板上に配置された少なくとも1つのスイッチングデバイスと、少なくとも1つのスイッチングデバイスに電力を供給するための少なくとも1つの電力経路と、スイッチングデバイスを制御および/または監視するための少なくとも1つの補助経路とを備える場合がある。補助経路は、単一のコネクタまたはいくつかの並列コネクタを有する接続部分を備える。電磁特性を調整するための値が定義される場合がある。接続部分内の並列コネクタの数が調整され、したがって電磁特性の所望の調整を実現するように構成される場合がある。一例として、初期パワーモジュールと比較して、並列コネクタの数が増やされる場合がある。
【0026】
結果として得られるパワーモジュールは、上記で開示されたパワーモジュールの任意の機能特性および/または構造特性を有する場合がある。
【0027】
パワーモジュールの電磁特性は、標遊インダクタンス、相互結合転流、および1つまたは複数のゲート経路の自己インダクタンスを記述するゲートインダクタンスのうちの少なくとも1つによって記述される場合がある。電磁特性、特にゲートインダクタンスは、振動の発生、したがってスイッチング周波数、およびパワーモジュール内の別のスイッチングデバイスに対する少なくとも1つのスイッチングデバイスの均一なスイッチング挙動に関与する。特性の定義された値は、電磁特性の値を減少または増加させる量であり得る。一例として、量はパーセンテージまたは絶対値であり得る。
【0028】
一例として、電磁特性は、初期パワーモジュール内の補助経路についてのゲートインダクタンスであり得、インダクタンス値の減少が必要とされる1つまたは複数の補助経路が識別される。その後、1つまたは複数のコネクタがこれらの補助経路内に追加される。
【0029】
接続部分内のコネクタの数は、補助経路のインダクタンスが事前定義された値の近くまたは下に設定されるように選択される場合がある。一例として、補助経路、例えばゲート経路のインダクタンスは、接続部分内に単一のコネクタのみを有する補助経路のインダクタンスと比較して、少なくとも5%または少なくとも10%低減される場合がある。
【0030】
さらなる例として、パワーモジュールは、ゲート補助経路などの対応する補助経路を備えるいくつかのスイッチングデバイスを備える場合がある。スイッチングデバイスは電気的に並列に接続される場合がある。並列コネクタの数は、対応する補助経路の各々におけるインダクタンスが、対応する補助経路におけるインダクタンスの平均値から最大10%異なるように選択される場合がある。一例として、1つの補助経路内の並列コネクタの数が選択される場合があり、次いで、インダクタンスが第1の補助経路内のインダクタンスに可能な限り近くなるように、他の補助経路内の並列コネクタの数が選択される。それにより、均一なスイッチング挙動を実現することができる。
【0031】
本開示は、いくつかの態様および実施形態を含む。態様および実施形態のうちの1つに関して記載されたすべての特徴はまた、それぞれの特徴がこの文脈において明示的に言及されていない場合でも、他の態様および実施形態に関して本明細書に開示される。
【0032】
さらなる特徴、改良、および便宜は、図に関連する例示的な実施形態の以下の説明から明らかになる。図では、同じ構造および/または機能の要素は、同じ参照符号によって参照される場合がある。図に示された実施形態は例示的な表現であり、必ずしも縮尺通りに描かれていないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】一実施形態によるパワーモジュールの上面図である。
【
図2】
図1のパワーモジュールの詳細の斜視図である。
【
図3】さらなる実施形態によるパワーモジュールの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、パワーモジュール1の一実施形態の上面図を示す。パワーモジュール1は、パワー半導体デバイスの形態のスイッチングデバイス3が取り付けられた絶縁基板2を備える半導体モジュールである。パワーモジュール1は、ハーフブリッジパワーモジュールの形態であり得、例えば、自動車用途に使用される場合がある。パワーモジュール1は、例えば、基板2上に行の形態で配置され得るローサイドスイッチデバイスおよびハイサイドスイッチデバイスを備える場合がある。スイッチングデバイス3は、例えば、SiCパワーMOSFETであり得る。
図1では、説明のため、ローサイドデバイスおよび簡略化されたメタライゼーションパターンのみを示す。
【0035】
基板上には、パワーモジュール1の部品を電気的に接続するためのいくつかの金属パターン4が設けられる。一方では、デバイス3のコレクタおよびエミッタ(例えば、IGBT)またはドレインおよびソース接点(例えば、MOSFET)を電気的に相互接続する電力経路6のための電気接続が必要とされる。電力経路6は、電力端子15によって外部から接続される。他方では、監視または制御目的に使用され得る補助経路7、10のための電気接続が必要とされる。一例として、ゲートを電気的に接続するために補助経路7が設けられる場合があり、補助端子にソースを接続するための補助経路10が設けられる場合がある。
【0036】
基板レイアウトに応じて、補助回路の電気経路、すなわち補助経路7、10は、基板2の2つ以上の別々の金属パターン4によって提供される場合がある。金属パターン4は、例えばワイヤボンド、リボン、または、クリップなどの他のコネクタの形態のコネクタ8、11によって相互接続することができる。コネクタのうちの1つが狭い金属パターンとして形成されることも可能である。また、デバイス3上の金属パターン4と接点5との間の相互接続も、そのようなコネクタ8、11によって提供することができる。一例として、チップ上のゲート接点パッドは、ワイヤボンド接続によって金属パターン4に接続される場合がある。
【0037】
図2に示された一実施形態の詳細図において分かるように、第1の補助経路7は、2つの別々の金属パターン4の間に接続部分9を備え、接続部分9は3つ以上のコネクタ8によって形成される。図示された実施形態では、第1の補助経路7はゲート用の電気経路である。第1の補助経路7は、補助端子によって外部から接続される。別々の金属パターン4は、例えば、電力回路のソースパターンによって分離される場合がある。金属パターン4のうちの1つは、スイッチングデバイス3のゲート接点5に接続されるゲート金属パターン14である。接続部分9内のコネクタ8は、ワイヤボンドの形態である。コネクタ8は、互いに電気的に並列に接続される。図示された実施形態では、接続部分9は、ワイヤボンドの形態の10個のコネクタ8によって形成される。コネクタ8は互いの上の2つのレベルに配置される。5つのコネクタ8が第1のレベルに配置され、さらに5つのコネクタ8が第2のレベルで第1のコネクタ8の上に配置される。この配置は空間を安全にするのに役立つ。
【0038】
また、第2の補助経路10は、2つの別々の金属パターン4の間に接続部分12を備え、接続部分12は、互いに並列に接続されたいくつかのコネクタ11によって形成される。第2の補助経路は、補助端子16によって外部から接続される。第2の補助経路10は、補助ソース接続用の電気経路である。ここで、接続部分12は、ワイヤボンドの形態の4つのコネクタ11によって形成され、ワイヤボンドは互いの上の2つのレベルに配置される。各レベルは2つのワイヤボンドを備える。
【0039】
図示された実施形態では、異なる補助経路7、10内の接続部分9、12は、異なる数のコネクタ8、11を備える。接続部分9、12が同じ数のコネクタ8、11を備えることも可能である。コネクタ8、11の数は、経路ごとにある特定の値未満の寄生インダクタンスの低減の必要性に依存する場合がある。
【0040】
異なる実施形態では、コネクタ8、11は、例えばリボンの形態を有する場合がある。コネクタ8、11の材料は、例えば、銅、アルミニウム、金、銀、または対応する合金であり得る。ボンドワイヤの直径は、例えば、50μm~500μmであり得る。
【0041】
電力経路6内の並列コネクタは、電流搬送容量を増やすために使用されることが多いが、補助経路内の電流が低いので、並列コネクタは補助経路7、10内でこの目的のために必要とされない。
【0042】
しかしながら、補助経路7、10内の接続部分内にいくつかの並列コネクタを設けることにより、電磁挙動を改善することができ、より高速なスイッチングおよび損失の低減が可能になることが分かっている。一例として、補助経路7、10内の寄生インダクタンスを低減することができ、その結果、スイッチング中の振動が低減され、スイッチング損失が低減される。
【0043】
一例として、接続部分9、12内のコネクタ8、11の数は、接続部分内に単一のコネクタのみがある場合のインダクタンスと比較して、寄生インダクタンスが少なくとも10%低減されるように選択される場合がある。単一のコネクタは、並列コネクタ8、11の各々の同じ長さおよび同じ直径を有する場合がある。
【0044】
図1および
図2に示された実施形態では、デバイス3上のゲートパッドの形態の接点5とゲート金属パターン14との間の補助経路内の別の接続部分13は、ボンドワイヤの形態の単一のコネクタによって形成される。
【0045】
その上、いくつかの並列コネクタを備える接続部分は、同じ絶縁基板2に配置された金属パターン4および/またはチップ接点5の接続であり得る。接続部分が異なる絶縁基板に配置された金属パターン4および/またはチップ接点5を相互接続することも可能である。
【0046】
パワーモジュール1は、ハーフブリッジを形成するように接続された第1および第2のスイッチを備える場合がある。ハーフブリッジは、DC+端子とDC-端子との間に直列に接続された2つのスイッチを備える電気回路であり、AC端子は、ハイサイドスイッチのエミッタまたはソースおよびローサイドスイッチのコレクタまたはドレインに接続される。DC+端子に接続されたスイッチは、ハイサイド(HS:high side)スイッチと表記され、DC-端子に接続されたスイッチは、ローサイド(LS:low side)スイッチと表記される。
【0047】
接続部分9、12には、ローサイドデバイスのゲート信号経路などの補助経路7、10のみのための複数の並列コネクタ8、11を設け、ハイサイドデバイスのための複数の並列コネクタを有するそのような接続を設けないことが可能である。ローサイドデバイスおよびハイサイドデバイスの両方用の補助経路7、10のための複数の並列コネクタ8、11を有する接続部分9、12を設けることも可能である。この場合、コネクタの数は両方のサイドで同じであり得る。また、ハイサイドデバイス用の接続部分に、ローサイドデバイス用よりも多くのコネクタを設けることも可能である。
【0048】
一例として、ローサイドデバイス用の補助経路は、10本の並列ボンドワイヤとの接続を有する場合があり、ハイサイドデバイス用の補助経路は、2本のみの並列ボンドワイヤとの接続を有する場合がある。インダクタンスを減少させるために、10本の並列ボンドワイヤが設けられる場合がある。
【0049】
経路ごとの並列コネクタの数は、インダクタンスの最大許容値に従って、かつ均一化のために別々に決定される場合がある。一例として、これは、ハイサイドのゲート用のボンドワイヤの数が、ソース、ドレイン、エミッタ、またはコレクタを補助端子に接続する補助経路内のボンドワイヤの数よりも多くなり得ることにつながる場合がある。一例として、ゲート経路のためにいくつかの並列コネクタが設けられる場合があるが、補助ソースまたはドレイン経路には1つのコネクタのみが設けられる場合がある。
【0050】
図3は、パワーモジュール1のさらなる実施形態を上からの概略図で示す。
図1に示されたパワーモジュール1と比較して、スイッチングデバイス3上の接点5に接続された補助経路のうちの少なくともいくつかは、並列コネクタ20を有する接続部分17、18、19を備える。接点5はゲート接点であり得る。ここで、接続部分17、18、19内のコネクタ20の数は、個別のインダクタンスの均一化を実現するために、少なくとも2つのスイッチングデバイス3ごとに異なる。接点5から金属パターン4までの1つの補助経路内に、並列接続部分は設けられないが、単一のコネクタを備える別の接続部分13のみが設けられる。
【0051】
一般に、接続部分17、18、19、9、12は、いくつかのコネクタ20、8、11を互いに並列に電気的かつ機械的に取り付けるのに十分な空間が提供されるように構成可能である。図示された実施形態では、ゲート金属パターン14と各ゲート接点5の両方は、少なくとも3つのコネクタ20を並列に取り付けるのに十分な空間を提供する。
【0052】
図示された実施形態では、コネクタ20は、対応する要素、すなわち、それぞれのスイッチングデバイス3のゲート接点およびゲート金属パターン14に接続される。コネクタ20は、同じゲート金属パターン14に接続される。
【0053】
シミュレーションは、ハイサイド部分のゲート信号経路が変更されないままで、ローサイドパワーデバイス用のゲート信号経路内に複数の並列ボンドワイヤを設ける効果を示している。ボンドワイヤの数は、同じ補助経路内で変更された。
【0054】
両方のモジュール設計の電磁挙動は、有限要素シミュレーションによって計算された。電磁挙動を記述するいくつかの特性が分析された。ゲートインダクタンスは、ゲートに印加される電圧の増減、したがってスイッチング周波数を制限する振動の発生に影響を及ぼすゲート経路自体の自己インダクタンスを記述する。ここで、時間に対するゲート経路内の電流の変化は、誘導電圧および発生した振動の大きさに関連する。相互結合転流は、磁場、したがってゲートループ内の電圧の誘導を記述し、それは、時間に対する転流ループ内のDC+からDC+への、またはその逆の電流の変化によって提供される。ここで、一方では、平均値は、一般に結合インダクタンスの影響を記述し、すべてのデバイスのより速い(正のインダクタンス)またはより遅い(負のインダクタンス)スイッチングをもたらす。他方では、すべてのデバイスの単一結合インダクタンスの最大値と最小値との間の差は、差が異なる誘導電圧をもたらすので、個々のデバイスの互いに対するスイッチング速度の均一性にとって重要なパラメータである。ここで、小さい差はスイッチング挙動の良好な均一性に関係する。
【0055】
計算は、一方では、電力経路の自己インダクタンスである漂遊インダクタンスに対する、かつ結合インダクタンスにも対する複数の並列ボンドワイヤの導入の影響を無視できることを示す。計算は、他方では、スイッチング中の振動の発生に関与するゲートインダクタンスの大幅な減少を示す。ローサイドデバイスのゲートインダクタンスの以下の値が計算された。
【0056】
・1本のボンドワイヤ:24.82nH
・4本のボンドワイヤ:21.50nH
・10本のボンドワイヤ:21.01nH
これらの結果は、並列ボンドワイヤの数が増加すると、ローサイドデバイスのゲートインダクタンスが減少することを示す。ゲートインダクタンスは、4本のボンドワイヤを使用することによって13.4%低減することができ、ボンドワイヤの本数を増やすことでさらに低減することができる。ゲートインダクタンスは、最大15%低減される場合がある。
【0057】
複数の並列コネクタとの接続は、対応するまたはさらなるゲートインダクタンスの低減のために、基板の金属パターンとチップのゲートパッドとの間の相互接続にも使用することもできる。
【0058】
スイッチング挙動の均一化を向上させるために、パワー半導体デバイスごとに異なる数の並列コネクタを設けることも可能である。具体的には、
図3に示されたように、ゲート接点からメタライゼーションまでの補助経路内の並列コネクタの数は異なる場合がある。一例として、ゲート信号経路内のコネクタの数は、各デバイスのゲートインダクタンスが各スイッチングデバイス用の特定の値にできるだけ近くなるように選択される場合がある。
【0059】
さらに、ボンドワイヤなどの複数の並列コネクタは、補助エミッタ/ソースまたは補助コレクタ/ドレイン接続のような補助回路の他の電気経路に導入される場合がある。
【符号の説明】
【0060】
参照符号
1 パワーモジュール
2 基板
3 スイッチングデバイス
4 金属パターン
5 接点
6 電力経路
7 補助経路
8 コネクタ
9 接続部分
10 補助経路
11 コネクタ
12 接続部分
13 他の接続
14 ゲート金属パターン
15 電力端子
16 補助端子
17 接続部分
18 接続部分
19 接続部分
20 コネクタ
【国際調査報告】