(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】コーティングされた亜酸化セリウム粒子及びその火炎溶射熱分解による調製
(51)【国際特許分類】
C01F 17/235 20200101AFI20241219BHJP
A61Q 17/00 20060101ALI20241219BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20241219BHJP
A61K 8/23 20060101ALI20241219BHJP
A61K 8/26 20060101ALI20241219BHJP
A61K 8/29 20060101ALI20241219BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20241219BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C01F17/235
A61Q17/00
A61K8/19
A61K8/23
A61K8/26
A61K8/29
A61K8/25
A61K8/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536493
(86)(22)【出願日】2022-12-20
(85)【翻訳文提出日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2022087057
(87)【国際公開番号】W WO2023118188
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレリー・ジャンヌ-ローズ
(72)【発明者】
【氏名】アンリ・サマン
(72)【発明者】
【氏名】マリア・ロウロウディ
(72)【発明者】
【氏名】イアニス・デリギアンナキス
【テーマコード(参考)】
4C083
4G076
【Fターム(参考)】
4C083AB171
4C083AB211
4C083AB221
4C083AB241
4C083BB25
4C083CC02
4C083CC19
4C083DD17
4C083EE12
4C083EE17
4G076AA02
4G076AB12
4G076BA33
4G076BF05
4G076CA02
4G076CA26
4G076CA28
4G076DA16
(57)【要約】
本発明は、コーティングされた亜酸化セリウム粒子、コーティングされた酸化セリウム粒子又は亜酸化セリウム粒子を火炎溶射熱分解技術によって調製するプロセス、そのようなプロセスから得られる酸化セリウム粒子、そのような粒子を含む組成物、及びそれらの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)式(I’):
CeO
2-x (I’)
の少なくとも1つの亜酸化セリウムで構成されるコア(1)であって、式中、xは、厳密に0~2の間の非整数を表す、コア(1)と;
(ii)前記コア(1)の表面を覆う上部コーティング層(2)であって、式(II):
M’
pO
q (II)
の少なくとも1つの化合物で構成され、式中:
M’は、セレン、並びに元素周期表の4、13、及び14列の元素から選択される元素であり;
pは、1以上の整数を表し;
qは、0以上の整数を表す、上部コーティング層(2)と
を含む粒子。
【請求項2】
pは、1~4に及ぶ、好ましくは1若しくは2に等しい、より優先的には1に等しい整数を表し;及び/又は
qは、0~4に及ぶ整数を表す
ことを特徴とする、請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
前記元素M’は、セレン、チタン、アルミニウム、及び元素周期表の14列の元素から;好ましくは、セレン、チタン、アルミニウム、炭素、及びケイ素から;より優先的には炭素及びケイ素から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の粒子。
【請求項4】
式(II)の前記化合物は、炭素、SiO
2、SnO
2、及びAl
2O
3から;好ましくは炭素及びSiO
2から選択されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項5】
前記粒子のモル原子比(Ce/M’)は、厳密に0.2よりも大きく;好ましくは1以上;より優先的には1~10の範囲内であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項6】
透過型電子顕微鏡法によって測定される前記上部コーティング層(2)の数平均厚さd
mは、1~20nm、好ましくは1~10nm、より優先的には2~6nmの範囲内であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項7】
透過型電子顕微鏡法によって求められる前記粒子の数平均径は、4~5000nm、好ましくは10~3000nm、より優先的には30~1000nmの範囲内であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項8】
前記粒子の前記上部コーティング層(2)は、前記コア(1)の表面の少なくとも90%を被覆する;好ましくは、前記コア(1)の表面全体を被覆することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項9】
(i)式(I):
CeO
2-x (I)
の少なくとも1つの酸化セリウムで構成されるコア(1)であって、式中、xは、0に等しいか、又は厳密に0~2の間の非整数を表す、コア(1)と;
(ii)前記コア(1)の表面を覆う上部コーティング層(2)であって、式(II):
M’
pO
q (II)
の少なくとも1つの化合物で構成され、式中:
M’は、セレン、並びに元素周期表の4、13、及び14列の元素から選択される元素であり;
pは、1以上の整数を表し;
qは、0以上の整数を表す、上部コーティング層(2)と
を含む、1つ以上のコーティングされた酸化セリウム粒子又は亜酸化セリウム粒子を調製する方法であって:
少なくとも以下のステップ:
a.可燃性溶媒又は可燃性溶媒の混合液中に1つ以上のセリウム前駆体を加えることによって、組成物(A)を調製するステップと;次いで
b.火炎溶射熱分解装置(10)内で、式(I)の酸化セリウムの凝集体が得られるまで、組成物(A)及び酸素含有ガス(G)を注入することによって火炎を形成するステップと;次いで
c.元素M’又は式(II)の元素M’酸化物で構成される上部コーティング層(2)が、前記酸化セリウムの凝集体の表面上に得られるまで、元素M’の1つ以上の前駆体を含む組成物(B)を注入するステップと
を含み;
前記火炎溶射熱分解装置(10)は、前記装置内に存在する酸素の量が制御されるように外気から隔離されている、方法。
【請求項10】
組成物(A)は、好ましくは、以下の可燃性溶媒:2-エチルヘキサン酸、トルエン、無水エタノール、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルの少なくとも2つを含む、可燃性溶媒の混合液を含み;より優先的には、前記可燃性溶媒混合液は、前記可燃性溶媒混合液の総容量に対して、少なくとも5容量%の2-エチルヘキサン酸、少なくとも5容量%のトルエン、少なくとも5容量%の無水エタノール、及び少なくとも5容量%のジエチレングリコールモノブチルエーテルからなることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記元素M’は、セレン、チタン、アルミニウム、及び元素周期表の14列の元素から;好ましくは、セレン、チタン、アルミニウム、炭素、及びケイ素から;より優先的には炭素及びケイ素から選択されることを特徴とする、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
一緒に、又は別々に:
モル原子比(Ce/M’)
injectedは、0.25以上、好ましくは0.25~120の範囲、より優先的には0.25~99の範囲、さらに優先的には1~80の範囲;さらに良好には2~20の範囲内であり;及び/又は
ステップbは、火炎溶射熱分解装置(10)の第1のチャンバ(20)内で実行され、ステップcは、前記第1のチャンバ(20)と流体連通する前記装置(10)の第2のチャンバ(30)内で実行され;及び/又は
組成物(B)は、1種以上の溶媒を含み、好ましくは、前記溶媒は、水以外の極性プロトン性溶媒から;より優先的には(C
1~C
8)アルカノールから選択され;より良好には前記溶媒はエタノールであり;及び/又は
ステップbの間に注入される酸素含有ガス(G)のモル量は、厳密には、組成物(A)を化学量論比で酸素と反応させるのに必要な酸素含有ガスのモル量未満である
ことを特徴とする、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記火炎投射熱分解装置(10)は、好ましくは、窒素、メタン、アルゴン、水素、硫化水素、及びアンモニアから;より優先的には窒素、メタン、水素、及びアルゴンから;さらに優先的には窒素及びアルゴンから、さらに良好には窒素から選択される不活性ガス(G2)によって加圧されることを特徴とする、請求項9~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項9~13のいずれか一項に記載の方法を介して得られることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項15】
請求項1~8のいずれか一項に記載の1つ以上の粒子を含む組成物、好ましくは化粧品。
【請求項16】
可視線並びに/又は紫外線、UV-A及び/若しくはUV-Bから皮膚、好ましくはヒト皮膚を保護するのに使用される、請求項15に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティングされた亜酸化セリウム粒子、火炎溶射熱分解技術によるコーティングされた酸化セリウム粒子又は亜酸化セリウム粒子の調製プロセス、そのようなプロセスから得られる酸化セリウム粒子、そのような粒子を含む組成物、及びそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物は、特にその光学特性のため、多くの用途(化粧品、塗料、ワニス、電子機器、ゴム等)に用いられている。特に、紫外線から表面を保護するために、及び/又は周囲光を電気に変換するために、その光吸収特性及び/又は光散乱特性が用いられている。
【0003】
しかしながら、金属酸化物は、経時的に特に不安定になるという欠点を抱えている。例として、酸化亜鉛は、これを含む組成物又は大気の水分に由来する水の存在下で、水酸化亜鉛に、又はさらにはZn2+イオンに分解する可能性がある。そのような分解は、水中での酸化亜鉛の部分的又はさらに完全な溶解をもたらし、及び酸化亜鉛の所望の性質を大幅に低減させるか、又はさらに排除する作用がある。
【0004】
この不安定性は、金属酸化物が光防護性の化粧用組成物に用いられる場合に、特に問題となる。実際、金属酸化物が分解するのに伴い、紫外線保護は低下する。
【0005】
金属酸化物を、特にゾル-ゲルプロセスを用いて、シリカでコーティングすること、又は金属酸化物上にフルオロ化合物をグラフトすることが考えられている。しかしながら、これらの解決手段は、完全に満足のいくものではない。ゾル-ゲルプロセスによってシリカでコーティングされた金属酸化物は、一般に、光学特性が、コーティングされていない粒子よりも劣る。グラフト化技術に関して、フルオロ化合物の使用は、環境に有害であり、及びユーザに有害であり得る。
【0006】
また、金属酸化物粒子を調製するために火炎溶射熱分解(FSP)法を用いることが知られている。
【0007】
火炎溶射熱分解又はFSPは、制御された形態を有する種々の金属(例えば、SiO2、Al2O3、B2O3、ZrO2、GeO2、WO3、Nb2O5、SnO2、MgO、ZnO)の単一若しくは混合酸化物の超微細粉末の合成、及び/又は種々の基材上への堆積のために本質的に開発された今日周知の方法であり、これは、一般に、有機又は無機の、好ましくは可燃性の噴霧可能な液体の形態の、多種多様な金属前駆体から開始して実行される。火炎中に噴霧された液体は、消費されると、特に、当該種々の基材上に火炎それ自体によって投射される金属酸化物ナノ粒子を放出する。この方法の原理は、例えば、Johnson Mattheyによる(非特許文献1)という表題の最近(2011年)の刊行物において想起されていた。また、FSPプロセス及び反応器の多数の変形例が、例えば、以下の特許又は特許出願に記載されている:(特許文献1)、(特許文献2)、(特許文献3)、(特許文献4)、(特許文献5)、(特許文献6)、(特許文献7)、(特許文献8)、(特許文献9)、(特許文献10)、(特許文献11)、(特許文献12)、(特許文献13)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5958361号明細書
【特許文献2】米国特許第2268337号明細書
【特許文献3】国際公開第01/36332号パンフレット又は米国特許第6887566号明細書
【特許文献4】国際公開第2004/005184号パンフレット又は米国特許第7211236号明細書
【特許文献5】国際公開第2004/056927号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2005/103900号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2007/028267号パンフレット又は米国特許第8182573号明細書
【特許文献8】国際公開第2008/049954号パンフレット又は米国特許第8231369号明細書
【特許文献9】国際公開第2008/019905号パンフレット
【特許文献10】米国特許出願公開第2009/0123357号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2009/0126604号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2010/0055340号明細書
【特許文献13】国際公開第2011/020204号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Johnson Mattheyによる“Flame Spray Pyrolysis: a Unique Facility for the Production of Nanopowders”,Platinum Metals Rev.,2011,55,(2),149-151
【0010】
しかしながら、金属酸化物の調製に利用されるこの方法は、特に、金属酸化物粒子の経時的な安定性、より具体的にはその耐水性を向上させるように、完全なものにする余地がある。より詳細には、これらの調製プロセスは、中間酸化数を有する金属の酸化物、又は金属亜酸化物を容易に、及び多数得ることを可能にしない。さらに、これらの知られているプロセスに従って調製された中間酸化数を有する金属の酸化物、及び金属亜酸化物は、経時的に安定ではなく、酸化して周囲空気と接触すると、最大酸化数を非常に迅速に与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ゆえに、経時的に良好な安定性、特に良好な耐水性を有すると同時に、光、より詳細には紫外線の吸収及び/又は散乱の点で良好な光学特性を維持する金属酸化物粒子を開発すること;並びにそのような粒子の調製を可能にするプロセスを開発することが真に必要とされている。
【0012】
加えて、そのような粒子を調製するプロセス、特に、経時的に良好な安定性を有し、及び光、より詳細には紫外線の吸収及び/又は散乱に関して良好な光学特性を有する、中間酸化数の金属酸化物、及び金属亜酸化物の粒子を調製するプロセスを開発することも関心事である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの目的は、本発明により達成され、その1つの主題は特に、特にコア/シェル構造を有するCe-M’亜酸化型の、亜酸化セリウム粒子であり:
(i)式(I’):
CeO2-x (I’)
(式中:
- xは、厳密に0~2の間の非整数を表す)
の少なくとも1つの亜酸化セリウムで構成されるコア1と;
(ii)前記コア1の表面を覆う上部コーティング層2であって、式(II):
M’pOq (II)
(式中:
- M’は、セレン、並びに元素周期表の4、13、及び14列の元素から選択される元素であり;
- pは、1以上の整数を表し;
- qは、0以上の整数を表す)の少なくとも1つの化合物で構成される上部コーティング層2と
を含む。
【0014】
本発明に従うコーティングされた酸化セリウム粒子は、組成物、特に水性組成物に製剤化されている場合であっても、水の存在下で経時的にほとんど分解しないことが見出された。
【0015】
より詳細には、本発明に従う亜酸化セリウム粒子は、経時的に特に安定であることが観察されている(すなわち、粒子は、その亜酸化物状態のままである)。
【0016】
また、本発明に従う酸化セリウム粒子は、光の吸収及び/又は散乱に関して良好な光学特性を有することが見出された。より詳細には、本発明に従う酸化セリウム粒子は、高いUV吸収と、低い可視散乱又は高い可視散乱とを有するため、水の存在下での耐性に基づく利益を享受しつつ、日焼け止め等の使用及び/又は視覚的外観の改変を可能にする。
【0017】
加えて、本発明に従うコーティングされた酸化セリウム粒子を含む組成物は、特にロングUV-A線及びショートUV-A線に対して、良好な遮蔽力を示した。
【0018】
さらに、本発明のコーティングされた酸化セリウム粒子を含む組成物は、特に高い透明度を有し、これは、組成物がコーティング上に、特に皮膚上に塗布されてから乾燥した場合に、有利であることが証明され得る。
【0019】
加えて、本発明に従うコーティングされた酸化セリウム粒子は、疎水性コーティングを必要としないため、広い製剤範囲にわたって(例えば、完全に水性の製剤及び/又は界面活性剤を含まない製剤に)使用可能である。こうして得られた製剤が最終的に水(洗面台排水、湖水、又は海水)に入った場合に、(洗面台の縁上、パイプの壁上、又は岩石上での)不適切な堆積物のリスクがさらに低減する。
【0020】
また、本発明は、
(i)式(I):
CeO2-x (I)
(式中:
- xは、0に等しいか、又は厳密に0~2の間の非整数を表す)の少なくとも1つの酸化セリウムで構成されるコア1と;
(ii)前記コア1の表面を覆う上部コーティング層2であって、式(II):
M’pOq (II)
(式中:
- M’は、セレン、並びに元素周期表の4、13、及び14列の元素から選択される元素であり;
- pは、1以上の整数を表し;
- qは、0以上の整数を表す)の少なくとも1つの化合物で構成される上部コーティング層2と
を含む、元素M’の、特にコア/シェル構造を有するCe-M’(亜)酸化型の酸化物でコーティングされた酸化セリウム粒子又は亜酸化セリウム粒子を調製するプロセスであって:
少なくとも以下のステップ:
a.可燃性溶媒又は可燃性溶媒の混合液中に1つ以上のセリウム前駆体を加えることによって、組成物(A)を調製するステップと;次いで
b.火炎溶射熱分解装置10内で、式(I)の酸化セリウムの凝集体が得られるまで、組成物(A)及び酸素含有ガス(G)を注入することによって火炎を形成するステップと;次いで
c.元素M’又は式(II)の元素M’酸化物で構成される上部コーティング層2が、前記酸化セリウムの凝集体の表面上に得られるまで、元素M’の1つ以上の前駆体を含む組成物(B)を注入するステップと
を含み;
前記火炎溶射熱分解装置10は、前記装置内に存在する酸素の量が制御されるように外気から隔離されている、プロセスに関する。
【0021】
本発明に従うプロセスは、特に経時的に安定であり、及び良好な耐水性を有する、元素M’に基づく無機材料の層でコーティングされた酸化セリウム粒子及び亜酸化セリウム粒子を得ることを可能にすることが見出された。
【0022】
さらに、従来のコーティングプロセスと異なり、本発明に従うプロセスは、上部コーティング層の存在にも拘わらず、コアの良好な固有の性能品質を維持するという利点を有する。実際、上部コーティング層の特定の性質に起因して、所与の粒子質量について、酸化セリウム又は亜酸化セリウムの特性を低減させること、及び/又は当該特性に悪影響を及ぼすことなく、前記酸化セリウム又は亜酸化セリウムの割合を引き下げることが可能である。
【0023】
ゆえに、本発明のプロセスは、安定な酸化セリウム粒子及び亜酸化セリウム粒子を調製することを可能にすると同時に、酸化セリウム又は亜酸化セリウムの良好な光学特性を維持するために従来必要であった粒子の量の増大に起因する欠点を回避する。
【0024】
また、本発明は、本発明に従う1つ以上の亜酸化セリウム粒子を含む組成物、好ましくは化粧用組成物に関する。
【0025】
本発明は、必ずしも一定の縮尺ではない添付の図面によって示されるがこれに全く限定されない例として与えられる実施形態の詳細な説明を検討することによって、より明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に従う式(II)の化合物でコーティングされた式(I’)の亜酸化セリウム粒子の断面図である。
【
図2】本発明に従う粒子を調製するための火炎溶射熱分解装置の概略図である。
【
図3】本発明の別の実施形態に従う粒子を調製するための火炎溶射熱分解装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の他の特徴、態様、及び利点は、下記の説明及び実施例を読むことにより、さらに明確に明らかになるであろう。
【0028】
本明細書において、特に指示がない限り、
- 表現「少なくとも1つ」は、表現「1つ以上」と均等であり、及びこれと置き換えることができ;
- 表現「~」は、表現「~に及ぶ範囲」と均等であり、及びこれと置き換えることが可能であり、及び限界点が含まれることを意味し;
- 表現「厳密に~の間」は、表現「厳密に~の範囲」と均等であり、及びこれと置き換えることが可能であり、及び限界点が含まれないことを意味し;
- 表現「ケラチン物質」は、特に、皮膚及びヒトケラチン線維、例えば毛髪を示し;
- コア1は、「ハート」又は「コア」とも呼ばれ;
- 上部コーティング層2は、「外層」、「ケーシング」、「コーティング」、又は「シェル」とも呼ばれ;
- 本発明の目的のために、用語「元素周期表の第3列の元素」は、スカンジウム及びイットリウムを意味する。換言すれば、ランタニドファミリー及びアクチニドファミリーの元素は、本発明の意味の範囲内で元素周期表の第3列の元素に属さず;
- 用語「アルキル」は、「アルキルラジカル」、すなわち、直鎖又は分岐状のC1~C10、特にC1~C8、より詳細にはC1~C6、優先的にはC1~C4炭化水素系基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、又はtert-ブチルを意味し;
- 用語「アリール」基は、6~22個の炭素原子を含む単環式又は縮合若しくは非縮合多環式の炭素系基であって、その少なくとも1つの環が芳香族である基を意味し、優先的には、アリール基は、フェニル、ビフェニル、ナフチル、インデニル、アントラセニル、又はテトラヒドロナフチル、好ましくはフェニルであり;
- 用語「アリーレート」基は、1つ以上のカルボキシレート-C(O)O-基を含むアリール基、例えば、ナフタレート又はナフテネートを意味し;
- 用語「錯体化金属」は、金属原子が「金属錯体」又は「配位化合物」を形成し、中心原子に対応する金属イオン、すなわちMが、1つ以上の電子供与体(配位子)に化学的に結合していることを意味し;
- 用語「配位子」は、配位する有機化学基又は化合物を意味する。すなわち、これは、少なくとも1つの炭素原子を含み、金属Mと配位結合することができ、一旦配位又は錯体化すると、所定の数の電子を持つ配位球の原理に対応する金属化合物(内部錯体又はキレート)をもたらす-Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,“Metal-Complex Dyes”,2005,pages 1-42参照。より詳細には、配位子は、誘起効果及び/若しくはメソメリー効果を介して電子供与性の少なくとも1つの基を含む有機基、より詳細には少なくとも1つのアミノ、ホスフィノ、ヒドロキシ、若しくはチオール電子供与性基を担持する有機基であるか、又は配位子は、特に「アルジェンゴ」型(イミダゾール-2-イリデン)の、持続性カルベンであるか、若しくは少なくとも1つのカルボニル基を含む。より詳細には、配位子として、以下のものを挙げることができる:i)少なくとも1つのリン-P<原子を含有するもの、すなわちトリフェニルホスフィン等のホスフィン、ii)アセチルアセトン又はβ-ジケトン等、式R-C(X)-CR’R’’-C(X)-R’’’(式中、R及びR’’’は、互いに同一であっても異なってもよく、直鎖又は分岐(C1~C6)アルキル基を表し、R’及びR’’は、互いに同一であっても異なってもよく、水素原子であるか、又は直鎖若しくは分岐(C1~C6)アルキル基を表し、優先的には、R’及びR’’は、水素原子を表し、Xは、酸素原子、硫黄原子、又は基N(R)(式中、Rは、水素原子又は直鎖若しくは分岐C1~C6)アルキル基を表す)のバイデンデート配位子、iii)乳酸、グリコール酸、酒石酸、クエン酸、及びマレイン酸、並びにアリーレート、例えばナフタレート等、式[HO-C(O)]n-A-C(O)-OHの(ポリ)ヒドロキシカルボン酸配位子及びその脱プロトン化形態(式中、Aは、nの値がゼロの場合に一価の基を表すか、又はnが1以上である場合に多価の基を表し、これは、任意選択的に、1つ以上のヘテロ原子が挟まれており、及び/若しくは任意選択的に、特に1つ以上のヒドロキシル基で置換されている1~20個の炭素原子を含む炭化水素に基づく飽和若しくは不飽和の、環状若しくは非環状の芳香族若しくは非芳香族であり:好ましくは、Aは、1つ以上のヒドロキシル基で任意選択的に置換されている一価(C1~C6)アルキル基又は多価(C1~C6)アルキレン基を表し、nは、0~10の整数(両端値を含む)を表し、好ましくは、nは、0~5、例えば0、1、又は2である)、並びにiv)2~5つのヒドロキシル基を含むC2~C10ポリオール配位子、特にエチレングリコール又はグリセロール;より詳細には、カルボキシ、カルボキシレート、又はアミノ基を有する配位子;特に、アセテート、(C1~C6)アルコキシレート、(ジ)(C1~C6)アルキルアミノ、及びアリーレート、例えば、ナフタレート又はナフテネート基から選択される配位子;
- 用語「可燃性」は、二酸素及びエネルギーと共に、発熱化学反応:燃焼において消費される液体化合物又は気体を意味する。特に、液体可燃物は、プロトン性溶媒、特に、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール(ispropanol)、又はn-ブタノール等);エステル(メチルエステル等)、及びアセテートから誘導されるもの(2-エチルヘキシルアセテート等)、酸(2-エチルヘキサン酸(EHA)等)、非環状エーテル(エチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、メチルtert-アミルエーテル(MTAE)、メチルtert-ヘキシルエーテル(MTHE)、エチルtert-ブチルエーテル(ETBE)、エーテルtert-アミルエーテル(ETAE)、又はジイソプロピルエーテル(DIPE)等)、環状エーテル(テトラヒドロフラン(THF)等)、芳香族炭化水素、又はアレーン(キシレン等)、非芳香族炭化水素から特に選択される非プロトン性溶媒;並びにこれらの混合液から選択される。可燃物は、アセチレン、メタン、プロパン、又はブタン等の液化炭化水素;及びそれらの混合液から任意選択的に選択され得る。
【0029】
コーティングされた亜酸化セリウム粒子
特にコア/シェル構造を有するCe-M’亜酸化型の、亜酸化セリウム粒子は:
(i)式(I’):
CeO2-x (I’)
(式中:
- xは、厳密に0~2の間の非整数を表す)
の少なくとも1つの亜酸化セリウムで構成されるコア1と;
(ii)前記コア1の表面を覆う上部コーティング層2であって、式(II):
M’pOq (II)
(式中:
- M’は、セレン、並びに元素周期表の4、13、及び14列の元素から選択される元素であり;
- pは、1以上の整数を表し;
- qは、0以上の整数を表す)の少なくとも1つの化合物で構成される上部コーティング層2と
を含む。
【0030】
本発明に従えば、式(I’)の非整数xは、厳密に0~2の間に含まれる。ゆえに、xは、式(I’)において、0(ゼロ)でも2でもあり得ない。換言すれば、酸化セリウムCeO2(x=0)及び純元素セリウム(x=2)は、式(I’)の亜酸化セリウムの範囲内に含まれない。
【0031】
好ましくは、コア1は、結晶状態にある。
【0032】
コア1の結晶状態及びその組成は、例えば従来のX線回折法によって、決定することができる。
【0033】
有利には、本発明に従う粒子のコア1は、結晶一次亜酸化セリウム粒子の1つ以上の凝集体からなる。換言すると、コア1は、いくつかの亜酸化セリウムマイクロ結晶からなる。
【0034】
図1に従うコーティングされた亜酸化セリウム粒子は、式(I’)の亜酸化セリウムで構成された平均径D
mのコア1を含む。
【0035】
また、
図1に従うコーティングされた亜酸化セリウム粒子は、式(II)の化合物で構成され、コア1の表面を完全にコーティングし、及び平均厚さd
mの上部コーティング層2を含む。
【0036】
コア1の数平均径Dmは、例えば透過電子顕微鏡法(TEMと略記される)によって、求めることができる。好ましくは、本発明に従う粒子のコア1の数平均径Dmは、3~5000nm、より優先的には10~3000nm、さらに優先的には30~1000nmの範囲内である。
【0037】
本発明に従うコーティングされた亜酸化セリウム粒子は、コア1の表面を覆い、式(II)の化合物で構成される上部コーティング層2を含む。
【0038】
有利には、上部コーティング層2は、コア1の表面の少なくとも90%を覆う。より優先的には、上部コーティング層2は、コア1の表面全体を覆う。
【0039】
上部コーティング層によるコアの被覆度は、例えばSTEM-EDX分析と組み合わせたTEM-BF又はSTEM-HAADFタイプの視覚的分析によって、求めることができる。
【0040】
分析は各々、統計的粒子数、特に少なくとも20個の粒子で実行される。粒子は、粒子の一部を形成するあらゆる金属(コア又は上部コーティング層のいずれにあるかに拘わらない)以外の金属製の金属グリッド上に堆積される。例えば、グリッドは銅製である。
【0041】
TEM-BF及びSTEM-HAADF画像の視覚的分析は、コントラストに基づいて、コーティングが粒子のコアを完全に取り囲むか否かの推測を可能にする。20個(以上)の画像の各々を分析することによって、コアの被覆度をそこから推測してから、平均を取ることによって、平均被覆度を求めることが可能である。
【0042】
STEM-EDX分析により、コーティングが実際に元素M’を主に、又は排他的に含有することを確認することが可能となる。このために、粒子の縁部で(少なくとも20個の粒子について)ポインティングを行う必要がある。当該ポインティングにより、元素M’が明らかになる。
【0043】
また、STEM-EDX分析は、コアがセリウムを含有することを実証することができる。このために、粒子の中心部で(少なくとも20個の粒子について)ポインティングを行う必要がある。当該ポインティングにより、セリウム及び元素M’が明らかになる。
【0044】
本発明に従えば、元素M’は、セレン、並びに元素周期表の4、13、及び14列の元素から選択される。
【0045】
ゆえに、本発明に従えば、元素M’はセリウムとは異なる。
【0046】
好ましくは、元素M’は、セレン、チタン、アルミニウム、及び元素周期表の14列の元素から選択される。
【0047】
より優先的には、元素M’は、セレン、チタン、アルミニウム、炭素、及びケイ素から選択される。
【0048】
特に最も好ましくは、元素M’は、炭素及びケイ素から選択される。
【0049】
好ましい実施形態に従えば、元素M’はケイ素である。
【0050】
本発明の別の実施形態に従えば、元素M’は炭素である。
【0051】
好ましくは、整数pは、1~4に及ぶ。より優先的には、整数pは、1又は2に等しく、さらに良好には、pは1に等しい。
【0052】
好ましくは、整数qは、0~4に及ぶ。より優先的には、整数qは、厳密に0よりも大きい。さらに優先的には、整数qは、1~4に及ぶ。
【0053】
好ましくは、式(II)の化合物は、炭素、SiO2、SnO2、及びAl2O3から選択される。
【0054】
より優先的には、式(II)の化合物は、炭素及びSiO2から選択される。
【0055】
本発明に従う粒子のコア1中の式CeO2-xの酸化セリウムは、非化学量論的な中間酸化数を有する。
【0056】
本発明の目的のために、用語「中間酸化数」は、0(含まれない)と金属元素の最大酸化数(含まれない)との間の酸化数を意味する。
【0057】
より一般的には、酸化数は、整数であれば、化学量論的な中間酸化数と称される。例えば、化学量論的な中間酸化数を有する金属元素が鉄であれば、酸化鉄は、FeO及びFe3O4であり得る。別の例として、化学量論的な中間酸化数を有する金属元素が銅であれば、酸化銅はCu2Oであり得る。
【0058】
酸化数が整数でなければ、表現「非化学量論的な中間酸化数」が用いられる。金属元素は、非化学量論的な中間酸化数を有する場合、金属元素亜酸化物と称される。例えば、非化学量論的な中間酸化数を有する金属元素が鉄であれば、亜酸化鉄は、式FeO1-xの化合物、式Fe3O4-xの化合物、及び式Fe2O3-xの化合物であり得る。別の例として、非化学量論的な中間酸化数を有する金属元素が銅であれば、亜酸化銅は、式CuO1-xの化合物及び式Cu2O1-xの化合物であり得る。
【0059】
本発明の好ましい実施形態に従えば、粒子は:
- 式(I’)の亜酸化セリウムCeO2-xで構成されるコア1(式中、xは、厳密に0~2の間の非整数を表す)と;
- 前記コア1の表面を被覆する上部コーティング層2であって、炭素、SiO2、SnO2、及びAl2O3、優先的にはSiO2から選択される式(II)の化合物で構成される上部コーティング層2と
を含む。
【0060】
本発明の別の特に好ましい実施形態に従えば、粒子は:
- 式(I’)の亜酸化セリウムCeO2-xで構成されるコア1(式中、xは、厳密に0~2の間の非整数を表す)と;
- 前記コア1の表面を被覆する上部コーティング層2であって、炭素及びSiO2、優先的にはSiO2から選択される式(II)の化合物で構成される上部コーティング層2と
を含む。
【0061】
また、上部コーティング層の数平均厚さdmは、透過電子顕微鏡法によって求めることができる。
【0062】
好ましくは、上部コーティング層の数平均厚さdmは、1~20nm、より優先的には1~10nm、さらに優先的には2~6nmの範囲内である。
【0063】
有利には、上部コーティング層2は、アモルファスである。
【0064】
有利には、上部コーティング層2は、透明である。
【0065】
有利には、本発明に従う粒子は、セリウム及び元素M’を、特定のモル原子比(Ce/M’)で含む。
【0066】
当該比は、一方では本発明に従う粒子中に存在するセリウムのモル量、他方では本発明に従う粒子中に存在する元素M’のモル量に対応する。
【0067】
当該比は、以下の2つの方法のうちの1つに従う分光測定によって求めることができる。第1の方法に従えば、粉末を広げ、そしてX線蛍光測定研究をX線分光計により実行して、そこから金属比を推測する。別の方法に従えば、本発明の粒子は、予め酸中に溶解される。次いで、得られた材料に対してICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析)によって元素分析を実行して、そこから金属比を推測する。
【0068】
好ましくは、本発明に従う粒子のモル原子比(Ce/M’)は、厳密に0.2よりも大きく;より優先的には1以上であり;さらに優先的には1~100の範囲内にあり;さらに良好には1~10の範囲内にあり、さらに良好には1.5~10の範囲内にある。
【0069】
また、本発明に従う粒子の数平均径は、透過電子顕微鏡法によって求めることができる。好ましくは、本発明に従う粒子の数平均径は、4~5000nm;より優先的には10~3000nm;さらに優先的には30~1000nmの範囲内である。
【0070】
好ましくは、本発明に従う粒子のBET比表面積は、1m2/g~200m2/gの間、より優先的には30~100m2/gの間である。
【0071】
また、本発明の特定の実施形態に従えば、本発明に従うコーティングされた粒子は、任意選択的に、上部コーティング層2を被覆し、及び少なくとも1つの疎水性有機化合物を含む、追加のコーティング層を含んでもよい。
【0072】
追加のコーティング層中に含まれる疎水性有機化合物は、より優先的には、シリコーン、特に少なくとも1つの脂肪鎖を含むシリコーン、少なくとも6つの炭素原子を含む炭素系誘導体、特に脂肪酸エステル;及びそれらの混合物から選択される。
【0073】
追加のコーティング層は、液体経路又は固体経路を介して生成することができる。液体経路を介して、ヒドロキシル官能基は、コーティングを形成することとなる化合物の反応性官能基(典型的には、シリコーンのシラノール官能基又は炭素系脂肪物質の酸官能基)と反応する。固体経路を介して、粒子は、疎水性物質を含む液体又はペースト状化合物と接触して配置される。
【0074】
好ましくは、本発明に従うコーティングされた粒子は、以下に記載される本発明の調製プロセスによって得られる。
【0075】
コーティングされた粒子を調製するプロセス
本発明の別の主題は、元素M’の酸化物、特にコア/シェル構造を有するCe-M’(亜)酸化物タイプの酸化物でコーティングされた、以下の式(I)の酸化セリウム粒子又は亜酸化セリウム粒子を調製するプロセスであって、少なくとも、組成物(A)を調製するステップa.と、次いで火炎を形成するステップb.と、組成物(B)を注入するステップc.とを含むプロセスに関する。
【0076】
本発明に従う調製プロセスによって調製することができる元素M’の酸化物でコーティングされた(亜)酸化セリウム粒子は:
(i)式(I):
CeO2-x (I)
(式中:
- xは、0に等しいか、又は厳密に0~2の間の非整数を表す)の少なくとも1つの酸化セリウムで構成されるコア1と;
(ii)前記コア1の表面を覆う上部コーティング層2であって、式(II):
M’pOq (II)
(式中:
- M’は、セレン、並びに元素周期表の4、13、及び14列の元素から選択される元素であり;
- pは、1以上の整数を表し;
- qは、0以上の整数を表す)の少なくとも1つの化合物で構成される上部コーティング層2と
を含む。
【0077】
上記式(I)の(亜)酸化セリウムの粒子は:
- 前述の式(I’)の亜酸化セリウムCeO2-xで構成されるコア1(式中、xは、厳密に0~2の間の非整数を表す)を含む、本発明に従う亜酸化セリウム粒子と;
酸化セリウムCeO2(xは0に等しい)で構成されるコア1を含む酸化セリウム粒子と
を含む。
【0078】
本発明に従うプロセスのステップa.は、1つ以上のセリウム前駆体を、可燃性溶媒又は可燃性溶媒の混合液中に加えることによって、組成物(A)を調製することからなる。
【0079】
本発明に従って用いることができるセリウム前駆体及び可燃性溶媒は、火炎溶射熱分解で従来用いられているセリウム前駆体及び可燃性溶媒から選択することができる。
【0080】
好ましくは、組成物(A)に含まれるセリウム前駆体は、セリウム(III)塩、セリウム(IV)塩、及びそれらの混合物から選択される。
【0081】
用いられるセリウム(III)塩及びセリウム(IV)塩は、無水形態又は水和形態であり得る。
【0082】
より優先的には、組成物(A)に含まれるセリウム前駆体は、エチルヘキサン酸セリウム(III)、酢酸セリウム(III)、塩化セリウム(III)、硝酸セリウム(III)、硫酸セリウム(IV)、ナフテン酸セリウム(IV)、及びそれらの混合物から選択される。
【0083】
より優先的には、組成物(A)に含まれるセリウム前駆体は、エチルヘキサン酸セリウム(III)、塩化セリウム(III)、硝酸セリウム(III)、及びそれらの混合物から選択される。
【0084】
好ましくは、可燃性溶媒は、プロトン性可燃性溶媒、非プロトン性可燃性溶媒、及びそれらの混合液;より優先的には、アルコール、エステル、酸、非環状エーテル、環状エーテル、芳香族炭化水素又はアレーン、非芳香族炭化水素、例えば液化炭化水素、例えば、アセチレン、メタン、プロパン、又はブタン、及びそれらの混合液;さらに好ましくは、2-エチルヘキシルアセテート、2-エチルヘキサン酸(EHA)、エチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、メチルtert-アミルエーテル(MTAE)、メチルtert-ヘキシルエーテル(MTHE)、エチルtert-ブチルエーテル(ETBE)、エーテルtert-アミルエーテル(ETAE)、ジイソプロピルエーテル(DIPE)、テトラヒドロフラン(THF)、キシレン、及びそれらの混合液から選択される。
【0085】
特に、可燃性溶媒は、少なくとも3つの炭素原子を含む非プロトン性可燃性溶媒及びその混合液;さらに良好には、キシレン、トルエン、テトラヒドロフラン、2-エチルヘキシルアセテート、2-エチルヘキサン酸(EHA)、及びこれらの混合液から選択され得る。
【0086】
本発明の特定の実施形態に従えば、組成物(A)は、好ましくは以下の可燃性溶媒:2-エチルヘキサン酸(EHA)、トルエン、無水エタノール、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルの少なくとも2つを含む、可燃性溶媒の混合液を含む。
【0087】
さらに良好には、組成物(A)は、2-エチルヘキサン酸(EHA)、トルエン、無水エタノール、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルからなる可燃性溶媒の混合液を含む。
【0088】
さらに良好には、組成物(A)は、可燃性溶媒の混合液の総容量に対して、少なくとも5容量%の2-エチルヘキサン酸(EHA)、少なくとも5容量%のトルエン、少なくとも5容量%の無水エタノール、及び少なくとも5容量%のジエチレングリコールモノブチルエーテルからなる可燃性溶媒の混合液を含む。
【0089】
有利には、組成物(A)中のセリウム前駆体の含有率は、組成物(A)の総質量に対して、1質量%~60質量%、好ましくは15質量%~30質量%である。
【0090】
また、本発明に従う調製プロセスは、組成物(A)及び酸素含有ガス(G)を火炎溶射熱分解(FSP)装置10に注入して火炎を形成するステップb.を含む。
【0091】
火炎溶射熱分解装置10について、
図2及び
図3を参照して、以下でより具体的に説明する。
【0092】
このステップb.の間に、組成物(A)及び酸素含有ガス(G)は、有利には、火炎溶射熱分解装置10に注入される。
【0093】
好ましくは、ステップb.の間に形成される火炎は、火炎内の少なくとも1つの点にて、2000℃以上の温度である。
【0094】
また、ステップb.は、任意選択的に、酸素及び1種以上の可燃性ガス、例えばメタンを含む「プレミックス」混合気体(P)の追加の注入を含んでもよい。この「プレミックス」混合気体(「支援火炎酸素」とも称される)は、組成物(A)及び酸素含有ガス(G)(すなわち「分散酸素」)から生じる火炎を点火及び維持することが意図される支援火炎の生成を可能にする。一方では組成物(A)の、ガス(G)との混合気体、及び他方ではプレミックス(P)は、別々に注入される。すなわち、組成物(A)の、酸素含有ガス(G)との混合気体は、ある管によって注入され、そしてプレミックス(P)は、別の管によって注入される。
【0095】
好ましくは、ステップb.の間に、組成物(A)、酸素含有ガス(G)、及び任意選択的な「プレミックス」混合気体(P)(存在する場合)は、反応管(「封入管」とも称される)に注入される。好ましくは、この反応管は、金属製又は石英製である。有利には、反応管は、30cm以上、好ましくは40cm以上、より優先的には50cm以上の高さを有する。優先的には、前記反応管の長さは、30cm~300cm、特に40cm~200cm、より詳細には45cm~100cm、例えば50cmである。
【0096】
一方では組成物(A)中に存在する溶媒の質量の、他方では酸素含有ガス(G)の質量に対する質量比は、以下のように定義される:
【0097】
まず、酸素含有ガス(「酸化性化合物」とも呼ばれる)の量は、一方では組成物(A)、すなわち可燃性溶媒及びセリウム前駆体の組合せ、並びに他方では酸素含有ガスが、燃焼反応において化学量論比で(ゆえに、酸化性化合物のいかなる過不足もない)一緒に反応することができるように算出される。
【0098】
この算出された量の酸素含有ガス(「算出された酸化剤」とも称される)から始めて、注入される酸素含有ガス(「注入される酸化剤」とも称される)の量をそこから導くための新しい計算が、以下の式に従って実行される:
注入される酸化剤=算出された酸化剤/φ
式中、φは、好ましくは1~2.2の間、より優先的には1.05~2の間、さらに優先的には1.1~1.8の間、さらに良好には1.2~1.4の間の補正係数である。
【0099】
この方法は、特に、An Introduction to Combustion:Concepts and Applications,3rd ed.;McGraw-Hill:New York,2012において、Turns,S.R.によって定義されている。
【0100】
好ましくは、ステップb.の間に注入される酸素含有ガス(G)のモル量は、厳密には、組成物(A)を化学量論比で酸素と反応させるのに必要な酸素含有ガスのモル量未満である。
【0101】
本発明に従う調製プロセスに用いることができる火炎溶射熱分解装置10は、1つ以上のチャンバを備えてよい。好ましくは、本発明に従う調製プロセスに用いることができる火炎溶射熱分解装置10は、いくつかのチャンバ、より優先的には2つのチャンバを備える。
【0102】
好ましくは、火炎溶射熱分解装置10は、例えば、窒素、メタン、アルゴン、水素、硫化水素、及びアンモニアから;より優先的には窒素、メタン、水素、及びアルゴンから;さらに優先的には窒素及びアルゴンから、さらに良好には窒素から選択される不活性ガス(G2)により加圧される。
【0103】
本発明の好ましい実施形態に従えば、火炎溶射熱分解装置10が、たった1つのチャンバを備える場合、前記火炎溶射熱分解装置10のチャンバは、例えば、窒素、メタン、アルゴン、水素、硫化水素、及びアンモニアから;好ましくは窒素、メタン、水素、及びアルゴンから;より優先的には窒素及びアルゴンから、さらに良好には窒素から選択される不活性ガス(G2)により加圧される。
【0104】
本発明の別の好ましい実施形態に従えば、火炎溶射熱分解装置10が、いくつかのチャンバを備える場合、前記火炎溶射熱分解装置10の第1のチャンバ20は、例えば、窒素、メタン、アルゴン、水素、硫化水素、及びアンモニアから;好ましくは窒素、メタン、水素、及びアルゴンから;より優先的には窒素及びアルゴンから、さらに良好には窒素から選択される不活性ガス(G2)により加圧される。
【0105】
好ましくは、火炎溶射熱分解装置10に注入される不活性ガス(G2)の流量は、5L/分~70L/分;より優先的には10L/分~50L/分に及ぶ。
【0106】
より優先的には、火炎溶射熱分解装置10に注入される窒素(G2)の流量は、5L/分~70L/分;より優先的には10L/分~50L/分に及ぶ。
【0107】
本発明の特に好ましい実施形態に従えば、補正係数φは、1~2.2、より優先的には1.05~2、さらに優先的には1.1~1.8、さらに良好には1.2~1.4である。火炎溶射熱分解装置10に注入される不活性ガス(G2)、より詳細には窒素の流量は、5L/分~70L/分;より優先的には10L/分~50L/分に及ぶ。
【0108】
また、本発明に従う調製プロセスは、元素M’又は元素M’酸化物で構成される上部コーティング層2が、前記酸化セリウムの凝集体の表面上に得られるまで、元素M’の1つ以上の前駆体を含む組成物(B)を注入することを含むステップc.を含む。
【0109】
前述のように、本発明に従えば、元素M’は、セレン、並びに元素周期表の4、13、及び14列の元素から選択される。
【0110】
ゆえに、本発明に従えば、元素M’はセリウムとは異なる。
【0111】
好ましくは、元素M’は、セレン、チタン、アルミニウム、及び元素周期表の14列の元素から選択される。
【0112】
より優先的には、元素M’は、セレン、チタン、アルミニウム、炭素、及びケイ素から選択される。
【0113】
特に最も好ましくは、元素M’は、炭素及びケイ素から選択される。
【0114】
好ましい実施形態に従えば、元素M’はケイ素である。
【0115】
本発明の別の実施形態に従えば、元素M’は炭素である。
【0116】
好ましくは、元素M’の前駆体は、少なくとも2つのM’原子及びいくつかのM’-炭素共有結合を含む。より優先的には、元素M’の前駆体は、少なくとも3つのM’原子及びいくつかのM’-炭素共有結合を含む。
【0117】
より優先的には、元素M’の前駆体は、ヘキサ(ジ)(C1~C4)アルキルジシロキサン、例えばヘキサジメチルジシロキサン、(ジ)(トリ)(テトラ)(C1~C4)アルコキシシラン、例えばテトラエトキシシラン、ビス[(ジ)(トリ)アルコキシシリル](C1~C4)アルカン、例えば1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン又は1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、(C1~C4)アルコキシ(ジ)(トリ)(C1~C4)アルキルシラン、例えばメトキシトリメチルシラン、炭化水素ガス、例えばアセチレン、アルミニウム(ジ)(C1~C6)アルコキシレート、アルミニウム(ジ)(C1~C6)アルキルカルボキシレート、例えば水酸化二酢酸アルミニウム、(ポリ)(C1~C6)アルコキシレートスタンネート、(ポリ)(C1~C6)アルキルカルボキシレートスタンネート、例えばテトラアセテートスタンネート、及びそれらの混合物から選択される。
【0118】
さらに優先的には、元素M’の前駆体は、ヘキサジメチルジシロキサン、テトラエトキシシラン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、メトキシトリメチルシラン、及びそれらの混合物から選択される。
【0119】
本発明の特定の実施形態に従えば、組成物(B)に、例えば、窒素、メタン、アルゴン、水素、硫化水素、及びアンモニアから;好ましくは窒素、メタン、水素、及びアルゴンから;より優先的には窒素及びアルゴンから選択される不活性ガス(G3)を注入することができる。
【0120】
例えば、窒素を、ステップcの間に、その注入の前に、組成物(B)中にバブリングすることができる。その後、組成物(B)の注入流量は、当業者に公知の圧力の決定、例えばScott,D.W.;Messerly,J.F.;Todd,S.S.;Guthrie,G.B.;Hossenlopp,I.A.;Moore,R.T.;Osborn,A.G.;Berg,W.T.;McCullough,J.P.,Hexamethyldisiloxane:chemical thermodynamic properties and internal rotation about the siloxane linkage,J.Phys.Chem.,1961,65,1320-6によって規定されている方法によって制御することができる。
【0121】
好ましくは、本発明に従うプロセスのステップc.の間に注入される組成物(B)中の元素M’の前駆体の含有量は、組成物(B)の総容量に対して、1容量%~60容量%、より優先的には5容量%~30容量%である。
【0122】
有利には、組成物(B)はまた、1種以上の溶媒を含み得る。好ましくは、組成物(B)中に存在する溶媒は、水以外の極性プロトン性溶媒から選択され、より優先的には、(C1~C8)アルカノールから選択される。さらに優先的には、組成物(B)は、エタノールを含む。
【0123】
好ましくは、組成物(B)中に存在する溶媒は、ステップc.の火炎温度にて可燃性であり、好ましくは200℃~600℃、より優先的には300℃~400℃の温度にて可燃性である溶媒から選択される。さらに良好には、組成物(B)中に存在する溶媒は、周囲温度(25℃)以上、より優先的には50℃~120℃の沸点を有する。
【0124】
本発明に従うプロセスの間に、モル原子比(Ce/M’)injectedを算出することができる。当該比は、一方では、ステップb.の間に注入されるセリウム原子のモル量に、他方では、ステップc.の間に注入される元素M’のモル量に対応する。
【0125】
好ましくは、モル原子比(Ce/M’)injectedは、0.25以上、より優先的には0.25~120の範囲、さらに優先的には0.25~99の範囲、さらに良好には1~80の範囲;さらに良好には2~20の範囲内である。
【0126】
本発明に従えば、火炎溶射熱分解装置10は、前記装置10内に存在する酸素の量が制御されるように、より優先的には、前記装置10内に存在する酸素が前記ガス(G)のみに、任意選択的に混合物(P)に由来するように、外気から隔離される。換言すれば、大気二酸素は、燃焼チャンバに入って組成物(A)及び溶媒と反応することができない。
【0127】
好ましくは、ステップbは、火炎溶射熱分解装置10の第1のチャンバ20内で実行され、ステップcは、第1のチャンバ20と流体連通する前記装置10の第2のチャンバ30内で実行される。
【0128】
図2及び
図3に示すように、前記第2のチャンバ30は、第1のチャンバ20と連続して、前記第1のチャンバを拡張している。変形例として、2つのチャンバがパイプによって連結されるようにしてもよい。
【0129】
また、本発明は、上記の本発明に従う調製プロセスに従って得られた式(I)又は(I’)のコーティングされた(亜)酸化セリウム粒子に関する。
【0130】
火炎溶射熱分解装置
本発明の調製プロセスを実施するのに用いられ得る火炎溶射熱分解装置は、好ましくは、第1のチャンバと、第1のチャンバに流体連通又は連結している第2のチャンバと、第1のチャンバに開口し、及び第1の組成物(A)及び第1の酸素含有ガス(G)を送達することができる第1の供給部、例えば第1の管と、第1のチャンバに開口し、及び酸素及び1つ以上の可燃性ガスを含む混合物(P)を送達することができる第2の供給部、例えば第2の管とを含む注入システムであって、第1の供給部及び第2の供給部は互いに異なる、注入システムとを備える。
【0131】
また、装置は、元素M’の1つ以上の前駆体を含む第2の組成物(B)を第2のチャンバ中に送達することができる第3の供給部を備える。
【0132】
前記装置の第1のチャンバ及び第2のチャンバは、前記装置内に存在する酸素の量が制御されるように、より優先的には、前記第1及び第2のチャンバ内に存在する酸素が前記第1のガス(G)のみに、任意選択的に前記混合物(P)に由来するように、外気から隔離される。
【0133】
例えば、完全に非限定的に、第2のチャンバは、第1のチャンバと同軸であり、及び、例えば、前記第1のチャンバの延長部に配置される。
【0134】
有利には、第1の供給部及び第2の供給部は同軸であり、第2の供給部は第1の供給部を少なくとも部分的に取り囲む。
【0135】
一実施形態に従えば、第1のチャンバは、2つの別個の区画を備え、第1の区画は、注入システムが出現する第1の開口部と、第1の開口部の反対側の第2の開口部とを備え、第2の区画は、第1の区画を少なくとも部分的に取り囲み、及び外気から隔離されており、前記第2の区画は、第1の隔壁によって第1の区画から分離されている。
【0136】
例えば、第1の隔壁は、第1の区画中へのガスの通過を可能にするように、多孔質である。第2の区画は、例えば、窒素、メタン、アルゴン、水素、硫化水素、及びアンモニアから選択されるガスにより、又は加熱によって加圧される。
【0137】
例えば、装置は、第1のチャンバの第2の区画中に第2のガスを注入し、これにより前記第2の区画を加圧するように構成されたインジェクタを備える。
【0138】
一実施形態に従えば、第2のチャンバは、2つの別個の区画を備え、第1の区画は、第1のチャンバの第2の開口部と流体連通又は連結する第1の開口部と、第1の開口部の反対側の第2の開口部とを備え、第2の区画は、第1の区画を少なくとも部分的に取り囲み、及び外気から隔離されており、前記第2の区画は、第2の隔壁によって第1の区画から分離されており、及び第2の組成物(B)を第2のチャンバ中に供給するための供給部を備える。
【0139】
例えば、装置は、第2のチャンバの第2の区画中に第3のガスを注入し、これにより前記第2の区画を加圧するように構成された追加の供給部を備える。
【0140】
例えば、第2の隔壁は、第2の組成物(B)が第2のチャンバの第1の区画を通過することを可能にするように、多孔質であるか、又は穿孔されている。第2の区画は、例えば、窒素、メタン、アルゴン、水素、硫化水素、及びアンモニアから選択される第3のガス(G3)により、又は加熱によって加圧される。
【0141】
例えば、装置はまた、第2のチャンバの上方に配置され、及び粒子を止めると同時にガスを通過させるように構成された、例えば2つのチャンバと同軸の、収集システムを備える。言い換えれば、収集システムは、ガス透過性である。例えば、収集システムは、前記収集システムの内側に取り付けられた濾過システムと、収集システムの内側に負圧を生成するように構成された減圧システムとを備える。
【0142】
注入システム、第1のチャンバ、第2のチャンバ、及び収集システムは、装置の完全な漏れ防止を確実にして、前記装置中への外気のアクセスを防止することを可能にするように、例えばねじ止め又は溶接によって、アセンブルされる。
【0143】
完全に非限定的に、注入システム、第1のチャンバ、第2のチャンバ、及び収集システムは、筐体内に、装置の完全な漏れ防止を確実にして、前記筐体中への外気のアクセスを防止することを可能にするように配置される。筐体の内部は、減圧システムによって負圧下に置かれる。
【0144】
【0145】
火炎溶射熱分解装置10は、組成物(A)及び酸素含有ガス(G)を用いる第1のチャンバ20と、元素M’の1つ以上の前駆体を含む組成物(B)を用いる第2のチャンバ30とを備える。
【0146】
また、火炎溶射熱分解装置10は、第1のチャンバ20内に出現し、及び組成物(A)及び酸素含有ガス(G)を送達する第1の管42と、第1のチャンバ20内に出現し、及び酸素、及び1つ以上の可燃性ガス、例えばメタンを含む「予混合」混合物(P)を送達する第2の管44とを備える注入システム40を備える。第2の管44は、第1の管42から来る化合物の点火に必要な火炎を提供する。
【0147】
第1及び第2の管42、44は、互いに分離している。
【0148】
図示されているように、第1及び第2の管42、44は、同軸であり、第2の管44は、第1の管42を少なくとも部分的に取り囲む。
【0149】
完全に非限定的に、装置10の注入システム40はまた、第1のチャンバ20中への、不活性ガス、例えば窒素の追加供給部46を備える。追加供給部46は、多孔質部分の形態であってよく、そこから不活性ガスが、2~20バールの間(すなわち、2×105~20×105Paの間)の圧力にて出現し得る。
【0150】
注入システム40から来る組成物(A)、酸素含有ガス(G)、及び可燃物(P)は、第1のチャンバ20内で焼却される。
【0151】
図示されているように、第1のチャンバ20は、2つの別個の区画22、24を備える。第1の区画22は、注入システム40が出現する第1の下部開口部22aと、第1の開口部22aの反対側の第2の上部開口部22bとを備える。
【0152】
第2の区画24は、第1の区画22を取り囲んでおり、外気から隔離されている。第2の区画24は、ガス透過性の隔壁26によって第1の区画22から分離されている。
【0153】
第2の区画24は、外気から隔離された閉鎖ハウジングを形成する上壁、下壁、及び側壁(参照せず)を備える。
【0154】
第2の区画24は、例えば、窒素、メタン、アルゴン、水素、硫化水素、及びアンモニアから選択されるガス(G2)により加圧される。ガス(G2)は、インジェクタ28を介して第2の区画24に注入される。例えば、インジェクタ28は、第2の区画24中に出現する単一の管を備える。変形例として、インジェクタ28は、第2の区画24中に出現する2本以上の管を備えてもよい。管は、第2の区画24の周囲にわたって均等に離間されていてもよいし、されていなくてもよい。
【0155】
2つの区画22、24を分離する隔壁26は、第1の区画22中へのガス(G2)の通過を許容するように構成されている。例えば、隔壁26は、多孔質材料製である。隔壁26の小孔は、例えば、10μm~100μmである。
【0156】
第1のチャンバ20は、例えば10cm~1mの高さH1を有する。
【0157】
第2のチャンバ30は、元素M’の1種以上の前駆体を含む組成物(B)を用いるように構成されている。
【0158】
図示されているように、第2のチャンバ30は、2つの別個の区画32、34を備える。第1の区画32は、第1のチャンバ20の第2の開口部22bと一致する第1の下部開口部32aと、第1の開口部32aとは反対側の第2の上部開口部32bとを備える。
【0159】
変形例として、第1の下部開口部32aは、第1のチャンバ20の第2の開口部22bから横方向にオフセットされていてもよい。第1のチャンバ20は、管によって第2のチャンバ30に連結されるようになっていてもよい。
【0160】
第2の区画34は、第1の区画32を取り囲んでおり、外気から隔離されている。第2の区画34は、ガス透過性の隔壁36によって第1の区画32から分離されている。
【0161】
第2の区画34は、外気から隔離された閉鎖ハウジングを形成する上壁、下壁、及び側壁(参照せず)を備える。
【0162】
第2の区画34には、第2のチャンバ30中に組成物(B)を供給するための供給部38が設けられている。
【0163】
供給部38は、例えば、窒素、メタン、アルゴン、若しくは水素から選択されるガス(G3)により、又は組成物(B)を加熱することによって加圧される。例えば、供給部38は、第2の区画34中に出現する単一の管を備える。変形例として、供給部38は、第2の区画34中に出現する2本以上の管を備える。管は、第2の区画34の周囲にわたって均等に離間されていてもよいし、されていなくてもよい。
【0164】
2つの区画32、34を分離する隔壁36は、第2の区画34から第1の区画32への組成物(B)の通過を許容するように構成されている。例えば、隔壁36は、分離隔壁36の1cm2あたり1~10個の穿孔の数で、約0.1mm~0.5mmの複数の穿孔(図示せず)を備える。
【0165】
第2のチャンバ30は、例えば10cm~1mの高さH2を有する。
【0166】
好ましくは、第1のチャンバ20の高さH1は、第2のチャンバ30の高さH2プラスマイナス10%に等しい。好ましくは、第1のチャンバ20の寸法は、第2のチャンバ30の寸法に等しい。
【0167】
また、火炎溶射熱分解装置10は、粒子を止めると同時にガスを通過させるように構成された収集システム50を備える。
【0168】
この場合、収集システム50は、2つのチャンバ20、30と同軸であり、及び第2のチャンバ30の上方に配置される。変形例として、収集システム50は、チャンバ20、30から横方向にオフセットされていてもよい。
【0169】
収集システム50は、1つ以上の側部隔壁52によって半径方向に、及び第2のチャンバ30中に出現する開口部54aを備える下壁54と、下壁54の反対側の上壁55とによって軸方向に範囲を定められる。
【0170】
また、収集システム50は、側壁52間の前記収集システムの内側に取り付けられた濾過システム56と、前記システム50の上壁55に取り付けられた減圧システム58、例えばポンプとを備える。
【0171】
ポンプ58は、チャンバ20、30を外気から隔離するように、収集システム50の内側に負圧を生成するように構成されている。有利には、収集システム50の内側の負圧は、0.5~0.8バール(すなわち、5×104Pa~8×104Pa)程度である。
【0172】
完全に非限定的に、収集システム50は、スペーサ60によって第2のチャンバ30から軸方向に離間されている。
【0173】
図2に示すように、注入システム40、第1のチャンバ20、第2のチャンバ30、及び収集システム50、又は存在する場合にはスペーサ60さえも、例えばねじ止め又は溶接によってアセンブルされて、装置10の、特にチャンバ20、30の完全な漏れ防止を確実にして、前記装置10中への外気のアクセスを防止することを可能にする。
【0174】
同じ要素が同じ参照符号を有する
図3に示される実施形態は、
図2に示される実施形態とは、注入システム40、第1のチャンバ20、第2のチャンバ30、及び収集システム50、又は存在する場合にはスペーサ60さえも、筐体70内に、装置10の、特にチャンバ20、30の完全な漏れ防止を確実にして、前記筐体70中への外気のアクセスを防止することを可能にするように配置されるという点においてのみ異なる。筐体70の内部は、ポンプ58によって負圧下に置かれる。
【0175】
装置の好ましい実施形態に従えば、前記装置は、注入システム40の中心/中央及び収集システム50の中心/中央を通過する対称軸Δを有する。より優先的には、装置は対称であり、及び特に円筒形であり、前記対称軸Δを通過する。
【0176】
組成物
本発明の別の主題は、上記の式(I’)の1つ以上のコーティングされた亜酸化セリウム粒子を含み、及び/又は好ましくは本発明に従う調製プロセスを介して得られる組成物、好ましくは化粧用組成物に関する。
【0177】
本発明に従う組成物は、ケラチン物質、好ましくは皮膚(特に顔)及び/又は毛髪に塗布されて、ケラチン物質を染色し、及び/又は補う(make up)ことが意図される。ケラチン物質を乾燥させる任意選択的なステップを実行してもよい。
【0178】
本発明に従う組成物は、種々の提示形態であり得る。ゆえに、本発明に従う組成物は、粉末(粉状)組成物、若しくは液体組成物の形態、又はミルク、クリーム、ペースト、若しくはエアロゾル組成物の形態であり得る。
【0179】
本発明に従う組成物は、特に化粧用組成物であり、すなわち、本発明の材料は、化粧品として許容される担体中にある。用語「化粧品として許容される担体」は、ケラチン物質、特に皮膚等のヒトケラチン物質への塗布に適した媒体を意味し、前記化粧用担体は、一般に、水若しくは水と1つ以上の有機溶媒との混合液、又は有機溶媒の混合液からなる。
【0180】
本発明に従う組成物は、有利には、水性組成物である。
【0181】
好ましくは、組成物は、特に、組成物の総質量に対して両端を含む5%~95%の含有量で水を含む。
【0182】
本発明の目的のために、用語「有機溶媒」は、化学的に修飾することなく別の物質を溶解させることができる有機物質を意味する。
【0183】
言及され得る有機溶媒の例として、低級C2~C6アルカノール、例えば、エタノール及びイソプロパノール;ポリオール及びポリオールエーテル、例えば、2-ブトキシエタノール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、並びにジエチレングリコールモノエチルエーテル及びモノメチルエーテルに加えて、芳香族アルコール、例えば、ベンジルアルコール又はフェノキシエタノール、並びにそれらの混合液が挙げられる。
【0184】
好ましくは、有機溶媒は、本発明に従う組成物中に、組成物の総質量に対して、約0.1質量%~40質量%(両端含む)、より優先的には約1質量%~30質量%、さらに詳細には5質量%~25質量%(両端含む)の含有量で存在する。
【0185】
本発明の組成物は、脂肪相を含有し得、及び直接又は逆エマルジョンの形態であり得る。
【0186】
本発明に従う組成物は、クリーム、乳状又はクリーム状のゲル等のシンプルエマルジョン又はコンプレックスエマルジョン(水中油型又はO/W、油中水型若しくはW/O、油中水中油型若しくはO/W/O、又は水中油中水型若しくはW/O/Wと略記されるもの)の形態で、当業者に周知の技術に従って調製され得る。
【0187】
本発明の特定の実施形態に従えば、本発明に従う組成物はまた、無水組成物の形態、例えば油の形態であり得る。用語「無水組成物」は、組成物の総質量に対して、2%質量未満の水、好ましくは1%質量未満の水、さらに優先的には0.5%質量未満の水を含有する組成物、そして実際には水を含まない組成物を意味する。この種の組成物では、存在し得る水は、組成物の調製中に加えられないが、混合成分によってもたらされる残留水に相当する。
【0188】
本発明に従う粒子は、乾燥形態(粉末、フレーク、プレート)であっても、分散液として、又は液体懸濁液として、又はエアロゾルとしてあってもよい。本発明に従う粒子は、そのまま用いることも、他の成分と混合して用いることもできる。
【0189】
好ましくは、本発明の組成物は、組成物の総質量に対して、0.1質量%~40質量%、より優先的には0.5質量%~20質量%、さらに優先的には1質量%~10質量%、さらに良好には1.5質量%~5質量%の本発明に従う粒子を含有する。
【0190】
本発明の組成物は、単回塗布又は複数回塗布に用いられ得る。本発明の組成物の複数回塗布が意図される場合、本発明の粒子の含有率は、組成物の単回塗布が意図される場合よりも概して低い。
【0191】
本発明の目的のために、用語「単回塗布」は、組成物の単回塗布を意味し、この塗布は、必要に応じて、各塗布間の間隔を1時間以上空けて1日数回繰り返すか、又は1日1回塗布を行うことが可能である。
【0192】
本発明の目的のために、用語「複数回塗布」は、数回、一般的には2~5回繰り返される組成物の塗布を意味し、各塗布間の間隔を数秒間~数分間空けて行われる。複数回塗布は各々、必要に応じて、各塗布間の間隔を1時間以上空けて1日数回繰り返されてもよいし、又は1日1回行われてもよい。
【0193】
本発明の別の主題は、ケラチン物質、特に、皮膚等のヒトケラチン物質を、先で規定された組成物の、前記物質への塗布、好ましくは1~5回の逐次塗布によって処理して、層間で乾燥させるプロセスであり、塗布は噴霧等である。
【0194】
本発明の一実施形態に従えば、複数回塗布は、ケラチン物質に実行され、本発明の金属酸化物粒子を含む化粧用組成物の連続塗布間に、乾燥ステップを伴う。本発明の少なくとも1つの金属酸化物粒子を含む化粧用組成物の連続塗布間の乾燥ステップは、屋外で、又は人工的に、例えばヘアドライヤー等の熱風乾燥システムにより、実行され得る。
【0195】
本発明の他の主題は、本発明に従う組成物、好ましくは、可視線(すなわち400nm~800nmの波長)、及び/又は紫外線(すなわち100nm~400nmの波長)、UV-A線(すなわち320nm~400nmの波長)、及び/又はUV-B線(すなわち280nm~320nmの波長)、好ましくはUV-A線から皮膚、好ましくはヒト皮膚を保護するのに用いられる化粧用組成物である。本発明に従う組成物は、特にUV-A線(ロングUV-Aを含む)についてスペクトルが広い太陽放射を効果的にスクリーニングすることを可能にすると同時に、UV曝露下で経時的に特に安定である。
【0196】
本発明に従う組成物は、親水性、親油性、若しくは不溶性の有機UV遮蔽剤、及び/又は1種以上の無機顔料から選択される1種以上の追加のUV遮蔽剤を、本発明に従う金属酸化物粒子以外に任意選択的に含んでもよい。本発明に従う組成物は、優先的には、少なくとも1種の親水性、親油性、又は不溶性の有機UV遮蔽剤から構成される。
【0197】
また、本発明の主題は、特に制汗作用を有する、化粧用組成物又は医薬組成物の製剤化のための、或いは皮膚のpHを調節するための、或いは可視線及び/若しくは紫外線から皮膚を保護するか、又は皮膚の外観を改変することが意図される、前述の酸化セリウム粒子及び/又は前述の調製プロセスを介して得られる酸化セリウム粒子の使用である。
【0198】
本発明の別の主題は、ケラチン物質、特に皮膚を保護するための、UV-A及び/又はUV-B、好ましくはUV-A用の遮蔽剤としての、先で定義された1つ以上の酸化セリウム粒子の使用である。
以下の実施例は、本発明を例示する役割を果たすものであり、本質的に限定するものではない。
【実施例】
【0199】
実施例1:
1.1 第一段階では、エチルヘキサン酸セリウム(III)(500mM)から組成物(A)をキシレン中に調製した。
【0200】
次いで、コーティングされていない酸化セリウム粒子P1(より高い酸化数)を、先に調製した組成物(A)(本発明の範囲外)による従来のFSP Prep 1調製プロセスを介して調製した。
【0201】
Prep 1プロセスのパラメータは、以下の通りである:
- 比率(組成物(A)/O2)=5mL/分の組成物(A)及び5L/分のガス(O2)、
- 1L/分のメタン及び2L/分の二酸素の火炎を確実にするためのガス混合気体
- 10L/分の窒素の不活性ガス(G2)流を、FSP装置に注入する。
- φ=0.7を、酸素流量を調整するのに用いる。
【0202】
1.2 次いで、コーティングされていない亜酸化セリウム粒子P2を、先に調製した組成物(A)(本発明の範囲外)によるFSP Prep 2調製プロセスを介して調製した。
【0203】
Prep 2プロセスのパラメータは、以下の通りである:
- 比率(組成物(A)/O2)=5mL/分の組成物(A)及び5L/分のガス(O2)、
- 1L/分のメタン及び2L/分の二酸素の火炎を確実にするためのガス混合気体
- 20L/分の窒素の不活性ガス(G2)流を、FSP装置に注入する。
- φ=1.2を、酸素流量を調整するのに用いる。
【0204】
1.3 次いで、二酸化ケイ素P3でコーティングした亜酸化セリウム粒子を、キシレン中にエチルヘキサン酸セリウム(III)(400mM)を含む組成物(A)と、ヘキサジメチルジシロキサン(キシレン中100mM)及びエタノールを3:1の質量比で含む組成物(B)とによる、本発明に従うPrep 3調製プロセスを介して、ダブルチャンバFSP装置内で調製した(本発明)。
【0205】
Prep 3プロセスのパラメータは、以下の通りである:
- 組成物(A)及び酸素含有ガス(G)を、(組成物(A)/O2)比=5mL/分の組成物(A)及び5L/分のガス(O2)に従って、FSP装置の第1のチャンバに注入、
- 1L/分のメタン及び2L/分の二酸素の火炎を確実にするためのガス混合気体、
- 25L/分の窒素の不活性ガス(G2)の流を、ダブルチャンバFSP装置の第1のチャンバに注入、
- 組成物(B)を、3L/分の窒素流によって、FSP装置の第2のチャンバに注入する。
- φ=1.3を、酸素流量を調整するのに用いる。
【0206】
P3粒子を調製すると、得られた亜酸化セリウム粒子P3が結晶性であることが観察された。
【0207】
さらに、本発明に従うPrep 3プロセスに従って得られたP3粒子は、約5nm厚の最上層の二酸化ケイ素でコーティングされており、原子比(Ce/Si)particleが2である。
【0208】
粒子P3のBET比表面積は、62m2/gである。
【0209】
粒子P3は、数平均径が15nmである。
【0210】
粒子P1~P3の酸化を、X線回折によって監視した。
【0211】
1.4 次いで、粒子P1~P3の光学特性を評価した。
【0212】
本発明に従う粒子P3は、UV-A線を遮蔽する優れた力を有することが観察された。
【0213】
また、本発明に従う粒子P3は、コーティングされていない酸化セリウム粒子P1(本発明の範囲外)の遮蔽力よりも(等しい容量について)2.47倍大きいUV遮蔽力を有することが観察された。
【0214】
加えて、本発明に従う粒子P3は、コーティングされていない亜酸化セリウム粒子P2(本発明の範囲外)の遮蔽力よりも(等しい容量について)1.62倍大きいUV遮蔽力を有することが観察された。
【0215】
実施例2:
2.1 次いで、炭素でコーティングされた亜酸化セリウム粒子P4を、キシレン中にエチルヘキサン酸セリウム(III)(500mM)を含む組成物(A)と、アセチレンからなる組成物(B)とによる、本発明に従うPrep 4調製プロセスを介して、シングルチャンバFSP装置内で調製した(本発明)。
【0216】
Prep 4プロセスのパラメータは、以下の通りである:
- 組成物(A)及び酸素含有ガス(G)を、比(組成物(A)/O2)=5mL/分の組成物(A)及び5L/分のガス(O2)にて、FSP装置に注入
- 1L/分のメタン及び2L/分の二酸素の火炎を確実にするためのガス混合気体
- 50L/分の窒素の不活性ガス(G2)の流
- アセチレン(組成物(B))を、2.5L/分にてFSP装置に注入
- φ=1.9を、酸素流量を調整するのに用いる。
【0217】
2.2 炭素でコーティングされた亜酸化セリウム粒子P5を、キシレン中にエチルヘキサン酸セリウム(III)(500mM)を含む組成物(A)と、アセチレンからなる組成物(B)とによる、本発明に従うPrep 5調製プロセスを介して、ダブルチャンバFSP装置内で調製した(本発明)。
【0218】
Prep 5プロセスのパラメータは、以下の通りである:
- 組成物(A)及び酸素含有ガス(G)を、(組成物(A)/O2)比=5mL/分の組成物(A)及び5L/分のガス(O2)に従って、FSP装置の第1のチャンバに注入、
- 1L/分のメタン及び2L/分の二酸素の火炎を確実にするためのガス混合気体を、FSP装置の第1のチャンバに注入
- 25L/分の窒素の不活性ガス(G2)の流を、FSP装置の第1のチャンバに注入
- アセチレン(組成物(B))をFSP装置の第2のチャンバに、2.5L/分にて注入
- φ=1.6を、酸素流量を調整するのに用いる。
【0219】
粒子P4及びP5を調製すると、得られた亜酸化セリウム粒子P4及びP5が結晶性であることが観察された。
【0220】
さらに、本発明に従うPrep 4プロセスに従って得られた粒子P4は、約1.5nm厚の炭素の最上層でコーティングされており、原子比(Ce/C)particleが0.3である。
【0221】
粒子P4のBET比表面積は、74m2/gである。
【0222】
粒子P4は、数平均径が14nmである。
【0223】
本発明に従うPrep 5プロセスを介して得られた粒子P5は、約1nm厚の炭素の最上層でコーティングされており、原子比(Ce/C)particleが0.57である。
【0224】
粒子P5のBET比表面積は、70m2/gである。
【0225】
粒子P5は、数平均径が16nmである。
【0226】
粒子P4及びP5の酸化を、X線回折によって監視した。
【0227】
2.3 次いで、粒子P4及びP5の光学特性を評価した。
【0228】
本発明に従う粒子P4及びP5は、UV-A線を遮蔽する優れた力を有することが観察された。
【0229】
また、本発明に従う粒子P4は、コーティングされていない酸化セリウム粒子P1(本発明の範囲外)の遮蔽力よりも(等しい容量について)2.04倍大きいUV遮蔽力を有することが観察された。
【0230】
加えて、本発明に従う粒子P5は、コーティングされていない亜酸化セリウム粒子P1(本発明の範囲外)の遮蔽力よりも(等しい容量について)2.35倍大きいUV遮蔽力を有することが観察された。
【国際調査報告】