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特表2024-547048自動車のブレーキ設備を運転する方法、制御装置、ブレーキ設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】自動車のブレーキ設備を運転する方法、制御装置、ブレーキ設備
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/12 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
B60T7/12 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536528
(86)(22)【出願日】2022-12-05
(85)【翻訳文提出日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2022084360
(87)【国際公開番号】W WO2023117385
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】102021214996.0
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ハーグ,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】レーフェルマン,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】マルカルト,マルティン
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246BA02
3D246DA02
3D246GB15
3D246GC11
3D246HA84A
3D246HB07A
3D246HB24A
3D246MA14
(57)【要約】
本発明は、自動車(2)のブレーキ設備(1)を運転する方法であって、ブレーキ設備(1)は、動作制御可能なブレーキ力倍力装置(4)と、ブレーキペダル(3)とを有し、ブレーキ力倍力装置(4)を、ブレーキペダル(3)の操作に応じて、ブレーキ設備(1)内に液圧を発生させるべく動作制御し、自動車(2)を、自動車(2)の停止状態について監視し、ブレーキペダル(3)の操作ストロークを、予め決めた限界値の超過について監視し、かつ停止状態と限界値超過とを認識すると、ブレーキ設備(1)内に存在している液圧を維持するホールド機能をアクティベートする方法に関する。自動車(2)の少なくとも1つの状態変数を求め、かつ限界値を少なくとも1つの状態変数に応じて予め決めるようにした。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(2)のブレーキ設備(1)を運転する方法であって、前記ブレーキ設備(1)は、動作制御可能なブレーキ力倍力装置(4)と、ブレーキペダル(3)とを有し、
前記ブレーキ力倍力装置(4)を、前記ブレーキペダル(3)の操作に応じて、前記ブレーキ設備(1)の液圧を発生させるべく動作制御し、
前記自動車(2)を、前記自動車(2)の停止状態について監視し、
前記ブレーキペダル(3)の操作ストロークを、予め決めた限界値の超過について監視し、かつ
停止状態と限界値超過とを認識すると、前記ブレーキ設備(1)内に存在している前記液圧を維持するホールド機能をアクティベートする、
方法において、
前記自動車(2)の少なくとも1つの状態変数を求め、かつ
前記限界値を少なくとも1つの前記状態変数に応じて予め決める、
ことを特徴とする、自動車のブレーキ設備を運転する方法。
【請求項2】
前記自動車(2)の車両重量を状態変数として求めることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記車両重量の車軸毎の配分を求めることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ブレーキ設備(1)のホイールブレーキ装置(9)の少なくとも1つの制動特性値(CP値)を状態変数として求めることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
水平に対する前記自動車(2)の傾き角を状態変数として求めることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記傾き角を前記自動車(2)のナビゲーションシステムの地図データに応じて求めることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ホールド機能を調整すべく、前記ホールド機能のアクティベート時に前記ブレーキ設備(1)内に存在している前記液圧を、前記ブレーキ力倍力装置(4)により、予め決めた値の分だけ上昇させ、上昇させた前記液圧を維持することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ホールド機能のアクティベート後、前記ブレーキペダル(3)の前記操作ストロークのさらなる増大時、前記ブレーキ設備(1)内の前記液圧を一定に保つことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ブレーキペダル(3)は、前記ブレーキ設備(1)から機械的に連結解除されており、かつ前記ブレーキペダル(3)の前記操作ストロークのさらなる増大を、前記ホールド機能がディアクティベートされるまで、考慮せずにおくことにより、前記液圧を一定に保つことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ブレーキペダル(3)は、前記液圧を調整すべく前記ブレーキ設備(1)に機械的に連結されており、かつ前記ブレーキ力倍力装置(4)を、前記ブレーキペダル(3)の前記操作によって変更された液圧を補償すべく動作制御することにより、前記液圧を一定に保つことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記ホールド機能のアクティベート後、視覚的な、聴覚的なかつ/または触覚的な確認を、特に前記自動車(2)の運転者に対面した表示装置上で出力することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
自動車(2)のブレーキ設備(1)用の制御装置(11)であって、前記制御装置(11)は、特に、請求項1から11までのいずれか一項に記載の方法を実施すべく構成されていることを特徴とする制御装置。
【請求項13】
動作制御可能なブレーキ力倍力装置(4)と、ブレーキペダル(3)とを備える自動車用のブレーキ設備(1)であって、請求項12に記載の制御装置(11)を特徴とするブレーキ設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のブレーキ設備を運転する方法であって、ブレーキ設備は、動作制御可能なブレーキ力倍力装置と、ブレーキペダルとを有し、ブレーキ力倍力装置を、ブレーキペダルの操作に応じて、ブレーキ設備の液圧を発生させるべく動作制御し、自動車を、自動車の停止状態について監視し、ブレーキペダルの操作ストロークを、予め決めた限界値の超過について監視し、かつ停止状態と限界値超過とを認識すると、ブレーキ設備内に存在している液圧を維持するホールド機能をアクティベートする方法に関する。
【0002】
さらに本発明は、この種の方法を実施する制御装置およびこの種の制御装置を備えるブレーキ設備に関する。
【背景技術】
【0003】
冒頭で挙げた形態の方法は、従来技術において公知である。例えば特許文献1において、ブレーキ力を車両操縦者によるブレーキペダルの操作に依存せず保つヒルホルダ(Hillholder)機能を有する車両のブレーキ設備を制御する方法であって、車両操縦者の足の動き(ひいてはブレーキペダルの操作ストロークの増大)により付加的な力をブレーキペダルに加えることで機能をオンにする方法が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第1690764号明細書
【発明の概要】
【0005】
請求項1の特徴を備える本発明に係る方法は、自動車の少なくとも1つの状態変数を求め、かつ限界値を少なくとも1つの状態変数に応じて予め決めることを特徴とする。この場合、状態変数によって、特に、ホールド機能のアクティベート時の、ホールドのために必要な液圧が特徴付けられている。状態変数に依存した、つまり可変の限界値により、こうして有利には、この液圧がいつでも確実に達成されていることが保証されている。つまり、特に、自動車を確実にホールドするための、最小限必要な液圧が、確定されており、かつホールド機能のアクティベート時に調整されている。自動車は、いつでも確実にホールドされる。さらに、こうして構成部品、例えばブレーキ力倍力装置等の構成部品保護が達成されている。それというのも、ブレーキ設備の液圧回路内に、不必要に高い液圧が形成され、かつ保たれることがないからである。ブレーキ力倍力装置に、つまり有利には、もはや必要以上に負荷がかかることはない。好ましくは、ホールド機能は、改めての限界値超過時にディアクティベートされる。これにより、有利には、ホールド機能のステータスは、運転者によりいつでも変更可能、あるいは影響を及ぼすことが可能であることが保証されている。同じく、好ましくは、付加的または代替的に、運転者によるクラッチペダルおよび/またはアクセルペダルの操作も、ホールド機能のためのディアクティベート判定基準として援用可能であり、その結果、運転者は、有利には、発進動作時、補助される。ホールド機能のディアクティベートは、このために、好ましくは、予め決めた時間的な遅延を伴って、または液圧の漸進的な解消を伴って実施される。
【0006】
本発明の好ましい一発展形によれば、自動車の車両重量を状態変数として求めるようになっている。車両重量を状態変数として求めることで、有利には、自動車が、高荷重時、例えば高積載、つまり、自動車の空重量を大幅に上回る総重量時にも、ホールド機能により確実にホールドされることが保証されている。
【0007】
特に好ましくは、車両重量の車軸毎の配分を求めるようになっている。車軸毎に車両重量の配分を求めることで、液圧を必要に応じて、それぞれの前車軸または後車軸に割り当てられたホイールブレーキ装置に分配する、特に有利な可能性が提供されている。特に、より強い荷重がかかっている車軸のホイールブレーキ装置には、より高い圧力が印加される。
【0008】
本発明の好ましい一発展形によれば、ブレーキ設備のホイールブレーキ装置の少なくとも1つの制動特性値(CP値)を状態変数として求めるようになっている。制動特性値は、ブレーキ力の、ホイールブレーキ装置の必要な作動力に対する比を表し、一般に、ホイールブレーキ装置のブレーキライニングの摩擦値に対する乗数として表示される。摩擦値は、例えばブレーキライニングの摩耗状態および/または温度に依存している。一般に、自動車の各ホイールには、固有のホイールブレーキ装置が割り当てられている。特に好ましくは、これらのホイールブレーキ装置の各々のために、制動特性値を求める。それぞれの制動特性値を求めることで、有利には、それぞれのホイールブレーキ装置の運転状態、特に摩耗状態を考慮することが保証されている。こうして、例えば、減少されてしまう可能性がある制動作用が、自動車がホールド機能のアクティベート時にそれにもかかわらず確実にホールドされるように限界値を上昇させることにより、補償される。
【0009】
特に好ましくは、水平に対する自動車の傾き角を状態変数として求めるようになっている。傾き角を求めることで、自動車が、周囲条件によらず、特に強い傾斜地でも確実にホールドされるという利点が生じる。水平とは、ここでは、重力が作用する方向に対して垂直な方向と解される。自動車、あるいは自動車が存在している走路の傾きが、大きければ大きいほど、一般に、確実なホールドのために必要な液圧は、大きい。好ましくは、傾きは、慣性センサにより求められる。自動車が登り坂を前進しているときにホールド状態に至ったとき、自動車が平地でホールド状態に至ったときよりも大きな車両重量の部分が、後車軸に載荷される。これに対して、自動車が下り坂を前進しているときにホールド状態に至ったときは、より大きな車両重量の部分は、前車軸に載荷される。好ましくは、それゆえ、自動車の一般的な前進方向に関する傾きの方向も考慮し、前述のように車軸毎に車両重量を求める場合のように、液圧を相応に必要に応じて車軸に分配する。特に好ましくは、有利な妥当性チェックのために、付加的に実際の車両重量およびその車軸毎の分布を求める。
【0010】
本発明の好ましい一発展形によれば、傾き角を自動車のナビゲーションシステムの地図データに応じて求めるようになっている。これにより、傾き角は、自動車の付加的なセンサを必要とすることなく、またはそのセンサデータを評価する必要なく、特に有利に、かつ簡単に求められる。特に、その際、自動車の計画された走行ルートも考慮され、その結果、自動車の一般的な前進方向に関する傾きの方向も考慮されている。
【0011】
特に好ましくは、ホールド機能を調整すべく、ホールド機能のアクティベート時にブレーキ設備内に存在している液圧を、ブレーキ力倍力装置により、予め決めた値の分だけ上昇させ、上昇させた液圧を維持するようになっている。これにより、ホールド機能のアクティベートを認識する、特に有利な可能性が提供されている。例えば、こうしてホールド機能のアクティベートは、液圧あるいはその時間的な推移の監視だけで認識可能であり、かつ/または、特に自動車の運転者に対して、例えば視覚的にまたは聴覚的に知らせることが可能であり、これにより、アシスタンスシステムによる、ホールド機能のアクティベートを担う制御装置の相応のアクティベート信号を検証することができる。こうして特に、アシスタンスシステムに、例えば制御装置により、ホールド機能がアクティベートされたと伝達されるものの、実際には、例えばブレーキ設備内の機能不全に基づき、アクティブではないケースのために、有利な信頼性照会が提供される。こうして、運転者が、ホールド機能がアクティベートされたと思い込んでしまったがゆえに、過誤によりブレーキペダルを放してしまうことは防止される。ブレーキペダルが例えばブレーキ力倍力装置とともに直接的に機械的にブレーキ設備の主ブレーキシリンダのピストンに、液圧を変更すべく作用する場合、液圧の上昇時、ブレーキ力倍力装置により、ブレーキペダル反力は、減少され、ブレーキペダルは、沈む。運転者は、このことを触覚的なフィードバックとして知覚し、その結果、運転者は、ホールド機能がアクティベートされたと確信し、彼の足をブレーキペダルから外すことができる。ブレーキ設備が、ブレーキペダルが機械的にはピストンに連結されておらず、ブレーキペダル力シミュレータに連結されているだけの「ブレーキバイワイヤ」式のブレーキ設備として形成されている場合、ブレーキペダル反力は、液圧の上昇時、ブレーキペダル力シミュレータにより、好ましくは自動的に減少される。運転者には、ホールド機能のアクティベートが、つまりここでも、変更されるブレーキペダル力特性によりブレーキペダルにおいて表示される。
【0012】
本発明の好ましい一発展形によれば、ホールド機能のアクティベート後、ブレーキペダルの操作ストロークのさらなる増大時、ブレーキ設備内の液圧を一定に保つようになっている。これにより、ブレーキ設備の構成部品のための、特に有利な持続的な構成部品保護が保証されている。冒頭で説明したように、可変の限界値により、既に、自動車を確実にホールドするための、最小限必要な液圧が、確定されており、かつ調整されている。ホールド機能がアクティベートされている限り、液圧のさらなる、車両の確実なホールドのためにはいずれにしても不必要な上昇が許容されないことにより、例えばブレーキ力倍力装置、またはブレーキ設備のその他のコンポーネントに不必要に負荷がかからないことが保証されている。
【0013】
特に好ましくは、ブレーキペダルが、ブレーキ設備から機械的に連結解除されており、かつブレーキペダルの操作ストロークのさらなる増大を、ホールド機能がディアクティベートされるまで、考慮せずにおくことにより、液圧を一定に保つようになっている。これにより、前述の構成部品保護が、特に有利に達成される。ブレーキペダルが、ブレーキ設備から機械的に連結解除されている場合、いわゆる「ブレーキバイワイヤ」式のブレーキ設備が存在している。既に前述したように、この場合、ブレーキペダルは、ブレーキペダル力シミュレータに連結されているだけであり、ブレーキペダル力シミュレータは、ブレーキペダルの操作ストロークを求め、例えば制御装置に、ブレーキ力倍力装置を動作制御すべく伝送する。ホールド機能がアクティベートされている限り、この操作ストロークの変更は、考慮せずにおく。好ましくは、ペダル力シミュレータは、仮に操作ストロークが増大されても、引き続き、ブレーキペダル反力をブレーキペダルの操作ストロークに応じて提供し、その結果、自動車の運転者にとって、ブレーキペダル特性の慣れない変更は、感じ取られ得ない。しかし、ブレーキ力倍力装置は、もはや液圧のさらなる上昇のためには動作制御されない。それというのも、このことは、自動車を確実にホールドするためには不必要であるからである。
【0014】
本発明の好ましい一発展形によれば、ブレーキペダルは、液圧を調整すべくブレーキ設備に機械的に連結されており、かつブレーキ力倍力装置を、ブレーキペダルの操作によって変更された液圧を補償すべく動作制御することにより、液圧を一定に保つようになっている。これにより、前述の構成部品保護が、同じく特に有利に達成される。ブレーキペダルが、ブレーキ設備に機械的に連結されていることにより、ブレーキペダルの操作ストロークが増大されるとき、まず液圧が上昇される。ここでは、この上昇が、ブレーキ力倍力装置、例えば電気機械式のブレーキ力倍力装置による補助力が同程度減少されることによって補償される閉ループ制御レベルが設けられている。こうして、運転者にとって、ペダル力特性の慣れない変更は、感じ取られ得ず、同時にブレーキ設備は、有利には、付加的な不必要な負荷から保護される。代替的には、ブレーキ力倍力装置は、操作ストロークが、予め決めた別の限界値を超えて、かつ/または予め決めた持続時間の間、増大され、その結果、液圧の僅かなかつ/または短期的な上昇が、許容されて初めて、動作制御され、その結果、ブレーキ力倍力装置は、操作ストロークのまだ極めて小さな変化のたびに動作制御される必要がない。このことも、有利には構成部品保護に寄与する。
【0015】
特に好ましくは、ホールド機能のアクティベート後、視覚的な、聴覚的なかつ/または触覚的な確認を、特に自動車の運転者に対面した表示装置上で出力するようになっている。これにより、運転者に対してアクティベートについて遅滞なく情報提供がなされるという利点が生じる。運転者は、フィードバックにより、ホールド機能がアクティベートされたと確信し、彼の足をブレーキペダルから外すことができる。
【0016】
請求項12の特徴を備える自動車のブレーキ設備用の本発明に係る制御装置は、制御装置が、特に、本発明に係る方法を実施すべく構成されていることを特徴とする。このことから、既に挙げた利点が生じる。
【0017】
請求項13の特徴を備える自動車用の本発明に係るブレーキ設備は、動作制御可能なブレーキ力倍力装置と、ブレーキペダルとを備え、かつ本発明に係る制御装置を特徴とする。好ましくは、ブレーキ力倍力装置は、電気機械式のブレーキ力倍力装置として形成されている。代替的には、ブレーキ力倍力装置は、負圧式あるいは真空式ブレーキ力倍力装置として形成されており、動作制御可能な真空ポンプを有している。このことからも、それぞれ、既に挙げた利点が生じる。
【0018】
さらなる好ましい特徴および特徴組み合わせは、先の説明および特許請求の範囲から看取可能である。以下に本発明について図面を基に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ブレーキ設備の概略図である。
図2】ブレーキ設備を運転する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、自動車2のブレーキ設備1の概略図を示している。ブレーキ設備1は、ブレーキペダル3を備え、ブレーキペダル3は、ブレーキ力倍力装置4に機械的に、例えば詳しくは図示しない入力ロッドを介して連結されている。ブレーキ力倍力装置4は、機械的にブレーキ設備1の主ブレーキシリンダ6のピストン5に連結されている。ピストン5は、双方向矢印7により略示するように、主ブレーキシリンダ6内で摺動自在に支持されている。ブレーキ設備1内、特に主ブレーキシリンダ6内と、主ブレーキシリンダ6から延びる管路内とには、液圧液体8が存在している。
【0021】
ブレーキ設備は、さらに4つのホイールブレーキ装置9を備え、ホイールブレーキ装置9は、自動車2のそれぞれ1つのホイール10に割り当てられている。ホイールブレーキ装置9の各々は、図示しないスレーブシリンダを有し、スレーブシリンダは、流体技術的に主ブレーキシリンダ6に接続されている。ブレーキ力倍力装置4を動作制御すべく、ブレーキ設備は、さらに制御装置11を備え、制御装置11は、ブレーキ力倍力装置4に通信技術的に接続されている。
【0022】
制御装置は、ブレーキ力倍力装置4の図示しない操作装置を、ピストン5を移動させるために動作制御すべく、形成されている。ブレーキ力倍力装置4は、この場合、特に電気機械式のブレーキ力倍力装置として形成されている。操作装置は、この場合、電気モータであり、電気モータは、例えば伝動機構を介して、ピストン5が電気モータの動作制御時に摺動されるように、ピストン5に機械的に連結されている。
【0023】
代替的には、ブレーキ力倍力装置4は、真空式ブレーキ力倍力装置として形成されており、真空ポンプを操作装置として有している。真空ポンプの好適な動作制御により、真空式ブレーキ力倍力装置の2つのダイヤフラム間の負圧は、ダイヤフラムの一方に機械的に連結されているピストン5が摺動されるように適合可能である。
【0024】
ピストン5がそこで摺動あるいは移動され、その結果、主ブレーキシリンダ6内の容積が縮小されると、これにより液圧液体8は、主ブレーキシリンダ6からホイールブレーキ装置9のスレーブシリンダ内に圧送される。つまり、ブレーキ設備1内の液圧は、スレーブシリンダを介してホイールブレーキ装置9に作用し、その結果、ホイールブレーキ装置9は、操作される。
【0025】
通常、ピストン5は、操作装置により、自動車2の運転者によるブレーキペダル3の操作に応じて移動される。運転者は、ブレーキペダル3の操作のために、ブレーキペダル力をブレーキペダル3に対して、特にブレーキ設備1内の液圧に依存しているブレーキペダル反力を克服すべく、加えなければならない。ブレーキペダル力とは、つまり、特に、液圧液体8を主ブレーキシリンダ6からスレーブシリンダ内に圧送するのに必要とされる力と解すべきである。
【0026】
ピストン5は、操作装置により、しかし、ブレーキペダルの操作とは独立的にも移動可能である。ブレーキ力倍力装置4の、ピストン5およびブレーキペダル3との機械的な連結に基づき、これにより、ブレーキペダル3の操作が一定であるとき、ブレーキペダル反力は、減少される。これに対応するブレーキペダル力も、相応に減少される。
【0027】
運転者が、ブレーキペダル力をもはやブレーキペダル3に加えなくなった後、ブレーキペダル3が、再び非操作の初期位置に復帰することを保証すべく、ブレーキペダル3には、特に、図示しない戻し装置が割り当てられており、戻し装置は、ブレーキペダル3をばね力により初期位置へ押し遣る。ばね力は、この場合、運転者がブレーキペダル3の操作時に克服しなければならないブレーキペダル反力の一部である。
【0028】
図示しない別の一実施例によれば、ブレーキペダル3は、代替的には、ブレーキペダル力シミュレータに機械的に連結されているだけであり、ブレーキペダル力シミュレータにより、ブレーキペダル反力は、特にブレーキ設備1内の液圧とは無関係に調整することも可能である。
【0029】
以下に図2に関し、自動車2のブレーキ設備1を運転する有利な方法について説明する。このために図2は、本方法をフローチャートで示している。特に、本方法により、自動車2が、ホールド機能をアクティベートしているときはいつでも、確実にホールドされていることが保証される。
【0030】
ステップS1において、本方法は、ブレーキ力倍力装置4が、ブレーキペダル3の操作に応じて、液圧をブレーキ設備1内に発生させるべく動作制御されることをもって開始する。本方法は、つまり、特にブレーキペダル3の操作が認識されると直ちにスタートする。本方法を実施するために、特に、ブレーキ力倍力装置4に割り当てられた制御装置11が使用される。
【0031】
ステップS2において、自動車2の少なくとも1つの状態変数を求め、状態変数に応じてブレーキペダル3の操作ストロークのための限界値を予め決める。状態変数として、好ましくは、自動車2の車両重量(特に車両重量の車軸毎の配分も)、複数のホイールブレーキ装置9のうちの1つもしくは複数のホイールブレーキ装置9の制動特性値および/または水平に対する自動車2の傾き角を求める。特に好ましくは、この場合、傾き角を自動車2のナビゲーションシステムの地図データに応じて求める。
【0032】
ステップS3において、自動車2を、自動車2の停止状態について監視し、かつブレーキペダル3の操作ストロークを、ステップS2において予め決めた限界値の超過について監視する。監視は、特に自動車2のセンサ、例えばホイール回転数センサ、またはブレーキペダルに割り当てられたストロークセンサの信号を基に実施する。
【0033】
これらの信号をその際、特に同時に捕捉し、かつ評価する。代替的には、まず、停止状態について監視し、停止状態が認識されれば、限界値超過についても監視する。引き続きブレーキペダル3が操作される限り、監視は、時間的に無制限に継続される。そうでなければ、本方法は、まず中止され、ブレーキペダル3が改めて操作されて初めて、継続される。
【0034】
停止状態も限界値超過も認識すると、ステップS4において、ホールド機能をアクティベートする。ホールド機能においては、ブレーキ設備1内に存在している液圧は、ブレーキペダル3の操作に依存せず維持される。本方法にとって、両前提のうちのどちらが最初に生じるかは、重要ではないが、ホールド機能が有意義にアクティベート可能であるには、両方が充足されていなければならない。
【0035】
ホールド機能がアクティベートされている限り、ブレーキペダル3の操作ストロークのさらなる増大時、ブレーキ設備1内の液圧は、好ましくは、一定に保たれる。ブレーキペダル3が、ブレーキ設備1から機械的に連結解除されている場合、液圧は、例えば、ブレーキペダル3の操作ストロークのさらなる増大を、ホールド機能がディアクティベートされるまで、考慮せずにおくことにより、一定に保たれる。これに対して、ブレーキペダル3が、液圧を調整すべくブレーキ設備1に機械的に連結されている場合、液圧は、特に、ブレーキ力倍力装置4を、ブレーキペダル3の操作によって変更された液圧を補償すべく動作制御することにより、一定に保たれる。
【0036】
ホールド機能を調整すべく、任意選択的なステップS5では、ホールド機能のアクティベート時にブレーキ設備1内に存在している液圧を、ブレーキ力倍力装置4により、予め決めた値の分だけ上昇させ、上昇させた液圧をその後維持する。ホールド機能のアクティベートとともに、つまり、既にブレーキペダル3の操作に応じて予め決めたあるいは調整した液圧を、好ましくは、急激に、または予め決めた変化勾配で、ブレーキ力倍力装置4による主ブレーキシリンダ6のピストン5の移動により、不釣り合いに上昇させ、このことは、ブレーキペダル3が機械的にピストン5あるいはブレーキ力倍力装置4に結合されている限り、運転者に対して、ブレーキペダル3の操作時、自動的に、ブレーキペダル反力の減少、特に飛躍的な減少として、触覚的にフィードバックされる。
【0037】
ブレーキペダル3が、ブレーキペダル力シミュレータに機械的に連結されているだけのブレーキバイワイヤ式のブレーキ設備の場合、ステップS5において、付加的にブレーキペダル反力は、運転者が同じく、説明した触覚的なフィードバックを受けるように、ブレーキペダル力シミュレータにより、液圧の上昇に対して比例的に減少される。
【0038】
この触覚的なフィードバックに対して代替的または付加的に、運転者に対して、ステップS5において、視覚的な(例えば画面上の報知としての、または自動車2のダッシュボード内の光技術的な信号による)、聴覚的な(例えば信号音による)、かつ/またはその他の触覚的な(例えばペダルまたはステアリングホイールの振動による)確認を出力する。
【0039】
本方法は、例えば運転者によるクラッチペダルおよび/またはアクセルペダルの操作が認識されると、ホールド機能がディアクティベートされるステップS6をもって終了する。ホールド機能のディアクティベートは、この場合、例えば発進動作を補助するために、好ましくは、予め決めた時間的な遅延を伴って、または液圧の漸進的な解消を伴って実施される。
【符号の説明】
【0040】
1 ブレーキ設備
2 自動車
3 ブレーキペダル
4 ブレーキ力倍力装置
5 ピストン
6 主ブレーキシリンダ
7 双方向矢印
8 液圧液体
9 ホイールブレーキ装置
10 ホイール
11 制御装置
S1 ステップ
S2 ステップ
S3 ステップ
S4 ステップ
S5 ステップ
S6 ステップ
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-06-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(2)のブレーキ設備(1)を運転する方法であって、前記ブレーキ設備(1)は、動作制御可能なブレーキ力倍力装置(4)と、ブレーキペダル(3)とを有し、
前記ブレーキ力倍力装置(4)を、前記ブレーキペダル(3)の操作に応じて、前記ブレーキ設備(1)の液圧を発生させるべく動作制御し、
前記自動車(2)を、前記自動車(2)の停止状態について監視し、
前記ブレーキペダル(3)の操作ストロークを、予め決めた限界値の超過について監視し、かつ
停止状態と限界値超過とを認識すると、前記ブレーキ設備(1)内に存在している前記液圧を維持するホールド機能をアクティベートする、
方法において、
前記自動車(2)の少なくとも1つの状態変数を求め、かつ
前記限界値を少なくとも1つの前記状態変数に応じて予め決める、
ことを特徴とする、自動車のブレーキ設備を運転する方法。
【請求項2】
前記自動車(2)の車両重量を状態変数として求めることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記車両重量の車軸毎の配分を求めることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ブレーキ設備(1)のホイールブレーキ装置(9)の少なくとも1つの制動特性値(CP値)を状態変数として求めることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
水平に対する前記自動車(2)の傾き角を状態変数として求めることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記傾き角を前記自動車(2)のナビゲーションシステムの地図データに応じて求めることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ホールド機能を調整すべく、前記ホールド機能のアクティベート時に前記ブレーキ設備(1)内に存在している前記液圧を、前記ブレーキ力倍力装置(4)により、予め決めた値の分だけ上昇させ、上昇させた前記液圧を維持することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ホールド機能のアクティベート後、前記ブレーキペダル(3)の前記操作ストロークのさらなる増大時、前記ブレーキ設備(1)内の前記液圧を一定に保つことを特徴とする、請求項1からまでのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ブレーキペダル(3)は、前記ブレーキ設備(1)から機械的に連結解除されており、かつ前記ブレーキペダル(3)の前記操作ストロークのさらなる増大を、前記ホールド機能がディアクティベートされるまで、考慮せずにおくことにより、前記液圧を一定に保つことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ブレーキペダル(3)は、前記液圧を調整すべく前記ブレーキ設備(1)に機械的に連結されており、かつ前記ブレーキ力倍力装置(4)を、前記ブレーキペダル(3)の前記操作によって変更された液圧を補償すべく動作制御することにより、前記液圧を一定に保つことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記ホールド機能のアクティベート後、視覚的な、聴覚的なかつ/または触覚的な確認を、特に前記自動車(2)の運転者に対面した表示装置上で出力することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
自動車(2)のブレーキ設備(1)用の制御装置(11)であって、前記制御装置(11)は、特に、請求項1からまでのいずれか一項に記載の方法を実施すべく構成されていることを特徴とする制御装置。
【請求項13】
動作制御可能なブレーキ力倍力装置(4)と、ブレーキペダル(3)とを備える自動車用のブレーキ設備(1)であって、請求項12に記載の制御装置(11)を特徴とするブレーキ設備。
【国際調査報告】