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特表2024-547050ブレーキシステムを運転するための方法、車両のためのブレーキシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ブレーキシステムを運転するための方法、車両のためのブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/92 20060101AFI20241219BHJP
   B60T 8/72 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B60T8/92
B60T8/72
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536530
(86)(22)【出願日】2022-12-21
(85)【翻訳文提出日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2022087300
(87)【国際公開番号】W WO2023118338
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】102021215004.7
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】シュスター,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ハーグ,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】レーフェルマン,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】マルカルト,マルティン
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246BA02
3D246DA01
3D246GA01
3D246GB35
3D246GB37
3D246HA02A
3D246HA43A
3D246HA64A
3D246HA94A
3D246HC01
3D246JB53
3D246LA10Z
3D246LA33Z
3D246LA52Z
3D246MA03
3D246MA19
3D246MA23
(57)【要約】
一次ブレーキアクチュエータ(2)および二次ブレーキアクチュエータ(3)を有するブレーキシステム(1)を運転するための方法並びにブレーキシステム(1)。この方法において、前記一次ブレーキアクチュエータ(2)を用いて第1のブレーキプリセット(6a,11a)に基づいてブレーキ圧を調整し、前記二次ブレーキアクチュエータ(3)の制御器(16)または別の制御器(10,21)によって、前記一次ブレーキアクチュエータ(2)を用いて調整されたブレーキ圧(13)を読み込む。次いで、前記二次ブレーキアクチュエータ(3)の前記制御器(16)または別の制御器(10,21)を用いて、算出された前記ブレーキ圧(13)の第1の妥当化(202)を、前記二次ブレーキアクチュエータ(3)の前記制御器(16)または前記別の制御器(10,21)に供給された第2のブレーキプリセット(6b、11b)によって行う。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次ブレーキアクチュエータ(2)および二次ブレーキアクチュエータ(3)を有するブレーキシステム(1)を運転するための方法において、
前記一次ブレーキアクチュエータ(2)を用いて第1のブレーキプリセット(6a,11a)に基づいてブレーキ圧を調整し、
前記二次ブレーキアクチュエータ(3)の制御器(16)または別の制御器(10,21)によって、前記一次ブレーキアクチュエータ(2)を用いて調整されたブレーキ圧(13)を読み込み、
前記二次ブレーキアクチュエータ(3)の前記制御器(16)または前記別の制御器(10,21)を用いて、算出された前記ブレーキ圧(13)の第1の妥当化(202)を、前記二次ブレーキアクチュエータ(3)の前記制御器(16)または前記別の制御器(10,21)に供給された前記第2のブレーキプリセット(6b、11b)によって行う、
ブレーキシステム(1)を運転するための方法。
【請求項2】
前記第1の妥当化が否定的であるときに、前記二次ブレーキアクチュエータ(3)の制御器(16)または別の制御器(10,21)を用いて前記第2のブレーキプリセット(6b,11b)および減速信号(14)を考慮して第2の妥当化(204,205)を行う、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1のブレーキプリセット(6a,11a)並びに前記第2のブレーキプリセット(6b,11b)が同一であって、特に前記第1のブレーキプリセット(6a,11a)並びに前記第2のブレーキプリセット(6b,11b)の供給源が同一である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記第1のブレーキプリセット(6a,11a)および前記第2のブレーキプリセット(6b,11b)が、運転者に依存する(6a,6b)かまたは運転者に依存しない(11a,11b)ブレーキプリセットであることを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記減速信号(14)を有する前記ブレーキプリセット(6b,11b)の前記第2の妥当化が否定的である(205)ときに、前記第2の妥当化(204,205)を用いて前記一次ブレーキアクチュエータ(2)の周辺に故障の割り当て(206,208)を行う(208)ことを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記故障の割り当て(206,208)に応じて、車両を制動するための相応の代替リアクション(207,209)を生ぜしめ、第1の代替リアクション(209)としてブレーキ圧調整を前記二次ブレーキアクチュエータ(3)によって行いかつ/または前記二次ブレーキアクチュエータ(3)によって続行することを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記減速信号(14)を有する前記ブレーキプリセット(6b,11b)の前記第2の妥当化が肯定的である(204)ときに、前記第2の妥当化(204,205)を用いて、前記二次ブレーキアクチュエータ(3)の周辺、特にブレーキ圧算出の周辺、圧力センサ(12)の周辺または圧力センサ信号(13)の周辺で故障の割り当て(206,208)を行うことを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項8】
前記故障の割り当て(206,208)に応じて、車両を制動するための相応の代替リアクション(207,209)を生ぜしめ、特に前記圧力センサ信号(13)を考慮してブレーキ圧調整を行う限り、第2の代替リアクション(207)として、前記二次ブレーキアクチュエータ(3)を用いてブレーキ圧調整を停止することを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
特性曲線および/または特性マップ(17)の第1の形式を用いて前記第1の妥当化(202)を行い、前記特性曲線および/または特性マップ(17)の第1の形式によって、ブレーキ圧(13)と第2のブレーキプリセット(6b,11b)との間の関係が決定されている、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記特性曲線および/または特性マップ(19,20)の第2の形式を用いて前記第2の妥当化(204,205)を行い、前記特性曲線および/または特性マップ(19,20)の第2の形式によって、車両減速度(13)と第2のブレーキプリセット(6b、11b)との間の関係が決定されている、請求項2記載の方法。
【請求項11】
前記一次ブレーキアクチュエータ(2)によって設定された、その時点における故障信号(8)の検査(203)を行うことを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記別の制御器が、車両内部の別の制御器(10)または車両外部の別の制御器(21)である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
少なくとも前記ブレーキ圧(13)、前記減速信号(14)、および前記第1または第2のブレーキプリセット(6a,6b,11a,11b)を、評価のために、通信手段(7)、特に車両外部のまたは車両内部の通信手段を介して前記別の制御器(10,21)に供給するか、あるいは、これらが前記別の制御器(10,21)に既に存在していることを特徴とする、請求項12記載の方法。
【請求項14】
一次ブレーキアクチュエータ(2)および二次ブレーキアクチュエータ(3)を有する、車両のためのブレーキシステム(1)において、
前記一次ブレーキアクチュエータ(2)を用いて第1のブレーキプリセット(6a,11a)に基づいてブレーキ圧が調整可能であり、
前記二次ブレーキアクチュエータ(3)の制御器(16)または別の制御器(10,21)によって、前記一次ブレーキアクチュエータ(2)を用いて調整されたブレーキ圧(13)が読み込み可能であって、
前記二次ブレーキアクチュエータ(3)の前記制御器(16)または別の制御器(10,21)を用いて、算出された前記ブレーキ圧(13)の第1の妥当化(202)が、前記二次ブレーキアクチュエータ(3)の前記制御器(16)または前記別の制御器(10,21)に供給された第2のブレーキプリセット(6b、11b)によって実施可能である、
車両のためのブレーキシステム(1)。
【請求項15】
第1の妥当化が否定的であるときに、第2の妥当化(204,205)が、前記二次ブレーキアクチュエータ(3)の制御器(16)または前記別の制御器(10,21)を用いて前記第2のブレーキプリセット(6b,11b)および減速信号(14)を考慮して実施可能である、請求項14記載のブレーキシステム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
特許文献1には、電気機械式のブレーキ倍力装置およびホイールスリップ制御装置を有する液圧式の車両ブレーキ装置を操作するための方法が開示されている。本発明は、ブレーキペダルが操作されていない状況で、例えば車両速度を制限するためにまたは先行車両に対する車間距離調整のためにまたは駐車する際に、ブレーキ倍力装置を有する車両ブレーキ装置を操作することを提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】独国特許出願公開第102009001135号明細書
【発明の概要】
【0003】
本発明は、ブレーキシステムを運転するための方法並びにブレーキシステムに由来する。このブレーキシステムは、一次ブレーキアクチュエータおよび二次ブレーキアクチュエータを有している。一次ブレーキアクチュエータによって、第1のブレーキプリセットに基づいてブレーキ圧が調整される。さらに二次ブレーキアクチュエータの制御器または別の制御器によって、一次ブレーキアクチュエータによって調整されたブレーキ圧が読み込まれる。二次ブレーキアクチュエータの制御器または別の制御器によって、二次ブレーキアクチュエータの制御器または別の制御器に供給された第2のブレーキプリセットを有する算出されたブレーキ圧の第1の妥当化が実施される。
【0004】
第1のブレーキアクチュエータは、電動機式の液圧調整器の形式で、例えばプランジャまたは電気式のブレーキ倍力装置の形式であり得る。プランジャまたはブレーキ倍力装置は、液圧式のピストンシリンダ装置、例えばマスタブレーキシリンダを介して、調整部材がモータ動力によってしゅう動せしめられることによって、ブレーキ圧を発生させることができる。第2のブレーキアクチュエータは、ESP等の走行安定化システムにおいてまたはトラクションコントロールの範囲内で使用される、例えば液圧装置であってよい。ブレーキプリセットは、その時点における走行状況において車両がどの程度強く減速されるべきかを示すものであってよい。この場合、ブレーキプリセットは運転者によって行われてよく、運転者は制動しようとする意図、特にどのくらい強く制動したいかの程度をブレーキインプットエレメントの操作によって予め設定する。ブレーキインプットエレメントは、例えばレバー、ペダルまたはその他のインプットエレメントであってよい。同様に、ブレーキプリセットは、車両の制御器から、例えば自動追従走行、山道走行アシストまたは一般的に車両安定化のための制御器から発せられ得る。それにより、運転者に依存するブレーキプリセットも、また運転者に依存しないブレーキプリセットも可能である。
【0005】
第1のブレーキプリセットおよび第2のブレーキプリセットがブレーキシステム内に存在していて、この第1および第2のブレーキプリセットがそれぞれ別個に第1のブレーキアクチュエータ並びに第2のブレーキアクチュエータに提供されるようになっていれば、好適である。第1のブレーキアクチュエータ若しくは第2のブレーキアクチュエータにブレーキプリセットが別個に割り当てられていることによって、ブレーキ圧へのブレーキプリセットの切換えの妥当化が可能であり、この場合、特にブレーキシステム全体のためのより高められたフェールセーフが得られる。それにより、特に否定的な妥当化においてブレーキシステム内に存在する故障に適切に反応することができる。このような形式のフェールセーフは、いわゆるブレーキバイワイヤシステムのために特に重要である。ブレーキバイワイヤシステムは、運転者に依存するブレーキプリセットを切換えるが、運転者に依存するブレーキプリセットは、通常は、その時点におけるそれぞれのブレーキアクチュエータに電子的にのみ伝送される。この場合、運転者自身による、特に運転者の筋力による液圧式のブレーキ圧発生はもはや企図されていないことが多い。
【0006】
この方法の実施形態では、第1の妥当化が否定的である場合、第2の妥当化が二次ブレーキアクチュエータの制御器または別の制御器によって行われる。第2の妥当化の枠内で、車両の減速信号が第2のブレーキプリセットを考慮して検査される。第1の妥当化の枠内で、ブレーキシステム内で得られた第1のブレーキ圧が、その時点における第2のブレーキプリセットに適合しないという結果になることを前提とすれば、続いて、その時点における減速信号を検査することにより、その結果から故障の割り当てが行われる。このことは、故障の割り当てにおいてブレーキシステムの適切なフォールバックレベルを呼び出すことができ、それにより、このブレーキシステムの運転時に高められた安全性が得られる、という利点を有している。
【0007】
この方法の実施形態では、第1のブレーキプリセットおよび第2のブレーキプリセットが同一である。この場合、第1のブレーキプリセット並びに第2のブレーキプリセットの供給源は同一であってよい。同一の供給源とは、運転者に依存するブレーキプリセットにおいて、例えば運転者によるペダル操作の大きさを予め設定する同一のセンサであると解釈されてよい。同様に、冗長性を高めるために同じ値を算出するが、2つの独立したセンサを介して算出することが可能である。運転者に依存しないブレーキプリセットにおいて、第1のブレーキプリセット並びに第2のブレーキプリセットは1つの制御器の同じ機能に由来し得る。
【0008】
既に前述したように、第1のブレーキプリセットおよび第2のブレーキプリセットは、運転者に依存するブレーキプリセットであっても、また運転者に依存しないブレーキプリセットであってもよい。このことは、この方法を用いることができるシステムの多様性を高める。
【0009】
この方法の別の形態では、減速信号を有するブレーキプリセットの第2の妥当化が否定的であるときに、第2の妥当化を用いて一次ブレーキアクチュエータの周辺に故障の割り当てを行うことができる。優勢的なブレーキ圧が、二次ブレーキアクチュエータの制御器または別の制御器に存在するブレーキプリセットに適合せず、さらに、その時点における減速信号が、二次ブレーキアクチュエータの制御器または別の制御器に存在するブレーキプリセットにも適合しない場合、故障の割り当てのために、一次ブレーキアクチュエータの周辺に故障が存在することが前提とされてよい。このことは、一次ブレーキアクチュエータと二次ブレーキアクチュエータとの相互作用により、可能な故障事態を制限することができ、それにより補正のための適切な手段の可能性を提供し、ひいてはブレーキシステムの安全性を高めるという点で有利である。
【0010】
好適な形式で、一次ブレーキアクチュエータの周辺の故障の割り当てに応じて、車両を制動するための相応の代替リアクションが生ぜしめられ得る。第1の代替リアクションとは、ブレーキ圧調整が二次ブレーキアクチュエータによって行われかつ/または二次ブレーキアクチュエータによって継続される、ということであり得る。したがって、一次ブレーキアクチュエータが故障しても、なお十分なブレーキングを実施することができるか若しくはブレーキングを継続することができ、それによって安全性が高められる。
【0011】
別の実施形態では、減速信号を有するブレーキプリセットの第2の妥当化が肯定的であれば、第2の妥当化を用いて、二次ブレーキアクチュエータの周辺、特にブレーキ圧算出の周辺、圧力センサの周辺または圧力センサ信号の周辺で故障の割り当てが行われる。それにより、第1および第2の妥当化によって、二次ブレーキアクチュエータの周辺に故障を突き止めることができ、これはブレーキスステムをそれでもさらに使用できるようにするために重要である。
【0012】
好適にはさらに、故障の割り当てに応じて、車両を制動するための相応の代替リアクションを生ぜしめ、特に前記圧力センサ信号を考慮してブレーキ圧調整を行う限り、第2の代替リアクションとして、二次ブレーキアクチュエータを用いてブレーキ圧調整が停止されるようになっている。これによって、二次ブレーキアクチュエータが少なくとも部分的に故障している場合に、二次ブレーキアクチュエータの使用の停止が可能となるか、またはブレーキ圧調整のための圧力信号を使用する、二次ブレーキアクチュエータの少なくとも該当する部分領域の使用の停止が可能となる。
【0013】
この方法の実施形態では、第1の妥当化が特性曲線および/または特性マップの第1の形式を用いて行われ、この特性曲線および/または特性マップの第1の形式によってブレーキ圧と第1または第2のブレーキプリセットとの間の関係が決定されている。記憶されたおよび/または算出された特性曲線若しくは特性マップによって、第1および/または第2のブレーキプリセットにおいて予測される、予測されるブレーキ圧を車両に記憶することができる。
【0014】
別の実施形態では、第2の妥当化が特性曲線および/または特性マップの第2の形式を用いて行われ、この特性曲線および/または特性マップの第2の形式によって、車両減速度と第1または第2のブレーキプリセットとの間の関係が決定されている。記憶されたおよび/または算出された特性曲線若しくは特性マップによって、第1および/または第2のブレーキプリセットにおいて予測される、予測される減速度を車両に記憶することができる。
【0015】
この方法の枠内で、一次ブレーキアクチュエータによって設定された、その時点における故障信号の検査を行うことができる。したがって、一次ブレーキアクチュエータ自体が既に故障していることはまず除外されてよく、このことは通信チャンネルを介して既に二次ブレーキアクチュエータにも示されている。これによって、故障が予め伝達されていない場合でも、故障状況は明確に発見され、適切に検知され、かつ処理され得る。予め伝達された故障が存在していない場合、上記方法におけるように監視が作動する。
【0016】
好適な形式で、別の制御器は、車両内部のまたは車両外部の別の制御器であってよい。これによって、そうでなければ本来2つの制御器に分割されて存在する、例えば共通に使用される制御器等の別の構成の制御器を使用することも可能である。同様に、上位の車両コンピュータまたは車両制御器を使用することができる。同様に、外部のコンピュータまたは外部の制御器を使用して、この方法を少なくとも部分的に車両の外で、例えばクラウドで実行することも考えられる。
【0017】
この方法の実施形態では、少なくともブレーキ圧、減速信号および、第1または第2のブレーキプリセットを、評価のために、通信手段、特に車両外部のまたは車両内部の通信手段を介して別の制御器に供給するか、または、これが別の制御器に既に存在している。
【0018】
本発明はさらに、一次ブレーキアクチュエータおよび二次ブレーキアクチュエータを有する、車両のためのブレーキシステムに関し、この場合、一次ブレーキアクチュエータを用いて第1のブレーキプリセットに基づいてブレーキ圧が調整可能であり、二次ブレーキアクチュエータの制御器または別の制御器によって、一次ブレーキアクチュエータを用いて調整されたブレーキ圧が読み込み可能であって、二次ブレーキアクチュエータの制御器または別の制御器を用いて、算出されたブレーキ圧の第1の妥当化が、二次ブレーキアクチュエータの制御器または別の制御器に供給された第2のブレーキプリセットによって実施可能である。
【0019】
このブレーキシステムの実施形態では、第1の妥当化が否定的であるときに、第2の妥当化が、二次ブレーキアクチュエータの制御器または別の制御器を用いて第2のブレーキプリセットおよび減速信号を考慮して実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】車両のブレーキシステムを示す図である。
図2】車両のブレーキシステムを運転するための方法のフローチャートである。
図3】ブレーキ圧若しくは減速信号に関連したブレーキプリセットを示す特性曲線である。
図4】ブレーキ圧若しくは減速信号に関連したブレーキプリセットを示す特性曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、車両のブレーキシステム1の概略図を示す。ブレーキシステム1は、一次ブレーキアクチュエータ2並びに二次ブレーキアクチュエータ3を有している。一次ブレーキアクチュエータ2は、例えば車両のホイールブレーキ内のブレーキ圧を作動液によって発生させることができる電気機械式のブレーキアクチュエータ2であってよい。このような液圧は、例えば自動車のマスタブレーキシリンダ内で発生させることができる。このようなマスタブレーキシリンダに、通常は液圧的に二次ブレーキアクチュエータ3が後置接続されている。このような二次ブレーキアクチュエータ3は、例えばブレーキ圧変調ユニットの液圧ユニットであってよい。ブレーキ圧変調ユニットとは、例えばESPシステムであると解釈されてよい。一次ブレーキアクチュエータとは、接続されたホイールブレーキで同様にブレーキ圧上昇を生ぜしめ得る電気作動式のプランジャピストンであると解釈されてもよい。ブレーキ倍力装置とは異なり、このようなプランジャシステムにおいて電気作動式のプランジャと運転者とが一緒に、少なくとも通常運転中に複数のホイールブレーキを操作することはない。運転者はむしろペダルシミュレータを操作し、それによってブレーキプリセット/制動要求を生ぜしめ、この場合、このブレーキプリセットは電気作動式のプランジャによってホイールブレーキにおいて実行される。
【0022】
ブレーキシステムは、運転者に依存してブレーキ圧を提供することも、また運転者とは無関係にブレーキ圧を提供することもできる。
【0023】
運転者に依存しないブレーキプリセットにおいては、ブレーキプリセットは車両のシステム10によって生ぜしめられる。この場合、通常はシステム側の制動要求が実現される。例えばこのようなシステムは、特に山道走行支援、渋滞後続走行または自動追従走行である。例えばブレーキペダルを介して運転者によって行われるブレーキ操作は、制動作用に直接に変換されないが、もちろん考慮され得る。この場合、システム10は、ブレーキシステム1と等位のシステム10、例えば適切な車間距離検出センサ装置および周辺検出センサ装置を備えた運転者アシストシステム、または上位のシステム10、例えばブレーキシステムおよび運転者アシストシステムを有しているかまたは通信手段を介してこのシステム10に接続されかつ通信する車両全体のコントロールシステムであってよい。
【0024】
運転者に依存するブレーキプリセットにおいて、一次ブレーキアクチュエータ2によってまたは二次ブレーキアクチュエータ3によって生ぜしめられたブレーキ圧は、例えばブレーキペダル4の操作を介した運転者による操作エレメント4の操作に依存する。そして、この操作は、一次ブレーキアクチュエータ2および/または二次ブレーキアクチュエータ3を用いて相応のブレーキ圧に変換される。運転者による制動要求プリセットは、別の操作エレメント4、例えば回転ノブ、スライダまたはレバーを介して行われてもよい。
【0025】
操作エレメント4を介してのブレーキプリセットは、運転者による操作エレメント4の操作の程度として提供されることができ、適切なセンサ装置を用いてコントロールユニット5によって算出される。運転者プリセットを算出するための値は、例えば移動距離および/または操作力であってよい。同様に、運転者プリセットを算出するための値は、移動距離および/または操作力に由来する値であってよいかまたはこれらの値から導き出され得る。
【0026】
コントロールユニット5は、運転者に依存するブレーキプリセットを、一次ブレーキアクチュエータ2および二次ブレーキアクチュエータ3のそれぞれの制御器15および16に、一次ブレーキアクチュエータ2の制御器15への運転者プリセット6aの形で、若しくは二次ブレーキアクチュエータ3の制御器16への運転者プリセット6bの形で転送する。この場合、ブレーキプリセット6a,6bは、同一の値であって、冗長性のために一次ブレーキアクチュエータ2および二次ブレーキアクチュエータ3にそれぞれその都度供給される。
【0027】
別のシステム10は、運転者に依存しないブレーキプリセット11a,11bを、一次ブレーキアクチュエータ2および二次ブレーキアクチュエータ3のそれぞれの制御器15,16に、一次ブレーキアクチュエータ2の制御器15への運転者プリセット11aの形で若しくは二次ブレーキアクチュエータ3の制御器16への運転者プリセット11bの形で転送する。ブレーキプリセット11a,11bも同一の値であって、冗長性のために一次ブレーキアクチュエータ2および二次ブレーキアクチュエータ3にその都度供給される。
【0028】
運転者に依存するブレーキプリセット6a,6bの場合も、また運転者に依存しないブレーキプリセット11a,11bの場合も、以下ではブレーキプリセットに関する話である。
【0029】
一次ブレーキアクチュエータ2および二次ブレーキアクチュエータ3の制御器15,16は、通信システム7、例えば通信バス7を介して互いに接続されている。このような通信システム7を介して、関与したブレーキアクチュエータ2,3が直接的に信号を相互に交換し得る。したがって例えば一次ブレーキアクチュエータ2が故障状態8を二次ブレーキアクチュエータ3に直接に伝送し得る。一次ブレーキアクチュエータ2が二次ブレーキアクチュエータ3に故障状態8を伝送すると、例えば従来では一次ブレーキアクチュエータ2によってまたは一次ブレーキアクチュエータ2で実行されたブレーキングが二次ブレーキアクチュエータ3によって引き継がれるかまたは続行され得る。このような機能は、(Hydraulic Boost Compensation HBC「油圧ブースト補正HBC」とも呼ばれる。
【0030】
ブレーキ介入は、通常は車両において車両速度の変化、つまり加速度および/または減速度の形で明らかになる。加速度および/または減速度は、加速度センサ9によって検出することができる。加速度センサ9の加速度信号14は、通信システム7を介して車両の異なる箇所に提供され、つまり一次ブレーキアクチュエータ2および/または二次ブレーキアクチュエータ3のそれぞれの制御器15若しくは16にも提供され得る。
【0031】
ここに記載した使用において、二次ブレーキアクチュエータ3によって一次ブレーキアクチュエータ2の故障が検知される。特にこのような検知は、故障状態8の伝送とは無関係に一次ブレーキアクチュエータ2自体によって行われる。
【0032】
二次ブレーキアクチュエータ3の制御器16で、一次ブレーキアクチュエータ2によって発生されたブレーキ圧13が監視される。この場合、一次ブレーキアクチュエータ2によって発生されたブレーキ圧は、ブレーキシステム1のマスタブレーキシリンダ内で発生された圧力13を検出できるブレーキシステム1の圧力センサ12によって算出することができる。
【0033】
次いで、検出されたブレーキ圧は、二次ブレーキアクチュエータ3の制御器16で、運転者に依存するまたは運転者に依存しない、その時点におけるブレーキプリセット6b,11bと比較され得る。このような形式の比較は、例えば特性マップによって、または前もって車両に記憶された特性曲線によって行うことができる。このような特性マップまたはこのような特性曲線は、必ずしも車両に固定的に設けられている必要はなく、運転中でも更新されるかまたは所定の間隔を保って例えば点火時または検査時に更新され得る。同様に、このような形式の特性曲線または特性マップの適合は、車両の走行モードの選択を介して行われ得る。したがって、車両は例えば車両のセレクタスイッチを介してスポーツモードでおよび快適モードで運転され得る。
【0034】
特性曲線17の一例は図3に示されている。図3は、ブレーキ圧13とブレーキプリセット6a,6b,11a,11bとの間の特性曲線の推移を示す。始めに、ブレーキプリセット6a,6b,11a,11bが増大するにつれてブレーキ圧13は上昇し、一次ブレーキアクチュエータ2がもはやブレーキ圧上昇を続けることができなくなると、圧力レベルに達する。この場合、調整圧力18に達したともいえる。このような特性曲線17は、運転者に依存するブレーキプリセット6a,6bおよび運転者に依存しないブレーキプリセット11a,11bのために同一であってよいが、互いに異なっていてもよい。ここでは、例えば特性曲線17だけが示されている。
【0035】
一次ブレーキアクチュエータ2によってブレーキプリセット6a,11aを用いて調節されたブレーキ圧13が、特性曲線17または特性マップを用いて予測された目標ブレーキ圧と異なっている場合、これは、ブレーキシステム1の故障を示唆する。
【0036】
一方ではこの場合、一次ブレーキアクチュエータ2の欠陥および/または故障が存在し得る。他方ではこの場合、圧力センサ12に故障が存在し、圧力センサ12の信号伝送に故障が存在しおよび/または二次ブレーキアクチュエータ3内の圧力センサ12の信号処理に故障が存在し得る。
【0037】
以下に、どのようにして故障の割り当てを行うことができるか、次いでその故障の割り当てが、相応の代替リアクションを生ぜしめるかについて説明する。
【0038】
センサ9によって算出された車両減速度14が考慮され得る。車両減速度14は、二次ブレーキアクチュエータ3のブレーキ要求プリセット6b若しくは11bで分析される。このような形式の分析のために、二次ブレーキアクチュエータ3の制御器16に提供可能な別のブレーキプリセット6b,11bが、車両減速度14と共に妥当化され得る。この場合、妥当化は、特性曲線および/または特性マップを用いて行われる。減速度14とブレーキプリセット6a,6b,11a,11bとの間の関係を示す減速ブレーキプリセット特性曲線19の一例が図4に示されている。言い換えれば、ブレーキプリセット6a,6b,11a,11bが存在する場合の予測された車両減速度14が示されており、この場合、ブレーキプリセットは、運転者に依存し得るか(6a,6b)または運転者に依存し得ない(11a,11b)。図示の特性曲線19は、より高いブレーキプリセットにおいて勾配が高くなるにつれて上昇し、ブレーキ圧の特性曲線に関して上述したように、一次ブレーキアクチュエータ2の調整圧力に従ってプラトーに達し得る。
【0039】
別の特性曲線20を用いて、車両減速度14がブレーキプリセット6b,11bに適合するかどうか、言い換えれば妥当化が所定の公差/所定の公差のマージンの範囲内で行われ得るかどうかの検査が明確にされる。特性曲線19とは異なり、特性曲線20では、車両の実際の走行状態を表す別の値が考慮されている。この場合、特性曲線の演算または決定に別の値を導入してよい。このような値として、特に車両重量、支配的なブレーキ摩擦係数、路面傾斜および路面摩擦係数が考慮される。これらの値は、しばしば実際の走行状況を反映する車両の推定値として提供される。これらの値はしばしば推定値であるので、特性曲線の所定の公差のマージンが必要となる。
【0040】
以下に図2を用いて、ブレーキシステム1を運転するための方法のプロセスを説明する。
【0041】
この運転状況においては、一次ブレーキアクチュエータ2だけが圧力発生のタスクを担うことを前提とする。
【0042】
第1のステップ201で、ブレーキプリセット6b,11bおよびブレーキ圧13を監視するための周辺条件が二次ブレーキアクチュエータ3内に存在するかどうかについて検査される。このような周辺条件は、圧力センサ12が正常に機能する状態、一次ブレーキアクチュエータ2の制御器におけるブレーキプリセット6a,11aの妥当性若しくは二次ブレーキアクチュエータ3の制御器におけるブレーキプリセット6b,11bの妥当性であってよく、ブレーキプリセットの監視を無効にするかまたは誤った結果を招く(例えば一次ブレーキアクチュエータの停止および効率低下)車両の走行状態は除外され得る。このような走行状態では、ブレーキプリセットとブレーキ圧との間の予め設定された依存性、およびひいてはブレーキプリセットおよび車両減速度の予め設定された依存性も初めから得られない。
【0043】
ステップ202で、二次ブレーキアクチュエータ3で算出されたその時点におけるブレーキ圧13が、二次ブレーキアクチュエータ3の制御器16に存在する、その時点における別のブレーキプリセット6b,11bに適合するかどうかについて検査される。これは、前述のように、その時点における特性曲線17および/または特性マップを用いて行われる。特性曲線17および/または特性マップを介して、ブレーキ圧13とブレーキプリセット6b,11bとの間の関係が車両に記憶される。ブレーキ圧プリセット6b,11bおよびブレーキ圧13の監視は、持続的に制御器16で作動され得る。
【0044】
二次ブレーキアクチュエータ3内の監視機能において、時間フィルタまたは追加的な作動条件、例えば二次ブレーキアクチュエータ3内のポンピング作動またはバルブ作動が考慮されてよい。二次ブレーキアクチュエータ3内の複数のポンプおよび/または複数のバルブの駆動制御は、圧力ピークでまたは短時間、監視を妨害し得る正常でない圧力値を生ぜしめる。
【0045】
別のブレーキプリセット6b,11bと特性曲線17および/または特性マップを用いて記憶されたブレーキ圧との間に相違が存在すると、方法はステップ203に進む。相違は所定の限界内で許容されることもでき、これは例えば相違のための閾値の形で記憶され得る。この場合、相異のための閾値を超えてからはじめて、この方法はステップ203に続く。公差/閾値は、図3には図示されていない。
【0046】
ステップ203で、一次ブレーキアクチュエータ2自体の側に既に故障信号8が存在するかどうかが検査される。故障信号8が存在しなければ、この方法は、2つの異なる分岐に進んでよい。一次ブレーキアクチュエータ側に故障信号8が既に存在する場合、この方法は終了される。この場合、次いで二次ブレーキアクチュエータ3が別のブレーキプリセット6b、11bを介してブレーキ圧調整を引き継ぐかまたは既に引き継いでいることが可能である。
【0047】
続いている2つの分岐204,206および207若しくは205,208および209において、この時点における走行状況がこの時点における車両減速度14を用いて、前述のように加速度センサ9で算出され、かつ考慮される。この場合、ブレーキプリセット6b、11bに適合する車両減速度14が優勢であるかどうか(ステップ204)、またはこの時点における車両減速度がブレーキプリセット6b,11bと相違しているかどうか(ステップ205)が検査される。
【0048】
その時点における車両減速度14がブレーキプリセット6b,11bに適合していれば(ステップ204)、二次ブレーキアクチュエータ3の周辺で故障が検知される(ステップ206)。特に、ブレーキ圧13のブレーキ圧算出における故障が検知され得る。この場合、ブレーキプリセット6b、11bと測定されたブレーキ圧13との間に相違が存在しているが、車両減速度14はブレーキプリセット6b、11bに適合していることに注意する必要がある。したがって、一次ブレーキアクチュエータ2の領域内に故障が存在しないことが前提とされてよい。この場合、故障の割り当ては故障した圧力センサ12を示唆するか、または圧力センサ12の信号処理に故障が存在することを示唆する。
【0049】
続いて(ステップ207)、第1の代替リアクションが生ぜしめられ、この第1の代替リアクションで二次ブレーキアクチュエータ3の継続運転は中断されるか、または二次ブレーキアクチュエータ3が圧力センサ12の信号に重ねられる限りは、少なくともその範囲内で中断される。
【0050】
しかしながら、二次ブレーキアクチュエータ3の継続運転は、ブレーキシステム1内に押し込まれたブレーキ液体積に関連してブレーキシステム内で発生された圧力を示すp-V特性曲線を用いてさらに行うことができる。したがって、一次ブレーキアクチュエータ2によってもたらされた体積Vは、例えば一次アクチュエータ2の制御ストロークから算出することができる。同様に、この状況において正常である一次アクチュエータ2のトルク推定を行うことができる。これらの挙げられた値を介して、必要のある場合には二次アクチュエータを運転するために使用され得る圧力推定が行われ得る。一例として、例えばESP内のビークルホールドまたはスタビリティー介入のための、ESP内の標準的な圧力発生法のような機能が挙げられる。
【0051】
この時点における車両減速度14がブレーキプリセット6b,11bに適合しなければ(ステップ205)、一次ブレーキアクチュエータ2の周辺に故障が検知される(ステップ208)。この状況では、ブレーキ圧13もブレーキプリセットのための車両減速度14も適合しない。
【0052】
続いて(ステップ209)第2の代替リアクションが生ぜしめられ、この第2の代替リアクションによって、ブレーキ圧調整が二次ブレーキアクチュエータ3によって行われ、もはや一次ブレーキアクチュエータ2によっては行われない。この場合、二次ブレーキアクチュエータ3によるブレーキ圧調整は、別のブレーキプリセット6b、11bに基づいている。
【0053】
これまで記載した実施形態では、ブレーキ圧13の監視およびブレーキ圧の妥当化は、二次ブレーキアクチュエータ3の制御器16でのブレーキプリセット6b、11bによって行われることが前提とされていた。
【0054】
しかしながら別の実施形態では、二次ブレーキアクチュエータ3および対応配設されたブレーキ圧センサ12によって算出される、一次ブレーキアクチュエータ2によって生ぜしめられたブレーキ圧13が、ブレーキプリセット6b、11bに適合するかどうかの分析が、二次ブレーキアクチュエータ3の制御器16としての別の制御器でも行われることが可能である。
【0055】
一方では、車両に設けられた別の制御器、例えば本来では運転者アシスト機能を担当する制御器10、または選択的に例えば車両の中央コンピュータである上位の制御器がこの分析機能を引き受けることができる。分析を別の制御器で実施するために必要なデータ、例えばブレーキ圧13並びにブレーキプリセット6b、11bは、別の制御器10に、適切な通信チャンネル、例えば通信ネットワーク7(バスシステム)を介して提供されることが可能であり、同様に車両内のワイヤレスなデータ伝送が可能である。
【0056】
同様に、その時点における車両減速度がブレーキプリセット6b,11bに適合するかどうかの分析は、故障の割り当ての枠内で、別の制御器、例えば車両コンピュータ10および/または運転者アシスト制御器10で行われてよい。
【0057】
同様に、達成されたブレーキ圧13がブレーキプリセット6b,11bに相当するかどうかの分析が、車両の外で、例えば車両外部の制御器21またはコンピュータで行われることが考えられ、この場合、車両外部の制御器21またはコンピュータは車両の相応のデータを用いる。このようなデータは、達成されたブレーキ圧13、並びにブレーキプリセット6b、11bである。車両外部の制御器21またはコンピュータによっても、その時点における車両減速度がブレーキプリセット11b,6bに適合するかどうかの検査をすることができる。このために、制動要求プリセット6b,11bが、車両外部の制御器21またはコンピュータに直接に提供されてもよい。しかしながら同様に、ブレーキプリセット6b、11bがさらに二次ブレーキアクチュエータ3に提供され、この二次ブレーキアクチュエータ3から車両外部の制御器21またはコンピュータに伝送されることも可能である。車両外部の制御器、例えばクラウドへのデータ伝送は、適切な通信手段、例えばデータ接続部、インターネットを介して行われてよい。
【0058】
一次ブレーキアクチュエータ2が故障した場合の代替リアクションは、第1実施形態に示されているように、さらに、車両内部の別の制御器10でも、車両外部の制御器21またはコンピュータでも、二次ブレーキアクチュエータ3によって実施され得る。
【0059】
これは、ブレーキシステム1が、液圧式の調整器若しくはアクチュエータ以外に、つまり一次ブレーキアクチュエータ2および二次ブレーキアクチュエータ3以外に別のブレーキ構成要素を有している場合においても、同様に、代替リアクションのために考慮されてよい。このような形式の別のブレーキ構成要素は、例えば電気駆動可能なパーキングブレーキ、制動しようとする少なくとも1つのホイールに配置された電動機式のブレーキ、または回生時に制動作用を生ぜしめる電気自動車またはハイブリッド自動車の発電機であってもよい。
【0060】
これまで、減速信号14について説明していたが、この減速信号14は直接的に測定されて提供され得るものではなく、別の値、例えば慣性センサまたは車輪速センサでの測定から導き出されて提供され得るか、または位置決定システムから導き出されて提供されてもよい。
【0061】
要約すれば、2つのブレーキプリセット6a,6bまたは11a,11bがブレーキシステムの様々な箇所に提供され、次いでその時点におけるブレーキ圧によって妥当化され、並びに故障の割り当てのために、その時点における車両減速度によってさらに分析されるという事実が、一次ブレーキアクチュエータの故障が確実に検知され、適切な代替リアクションによって考慮され得るということを可能にする、ということが言える。
【0062】
一次ブレーキアクチュエータ2内のブレーキ圧の監視が固定され、それによって一次ブレーキアクチュエータ自体が、二次ブレーキアクチュエータ3によって算出されたブレーキ圧13に基づいて監視されることも考えられる。一次ブレーキアクチュエータに存在するブレーキプリセット6a、11aは、関数、例えば特性曲線に応じて一次ブレーキアクチュエータ2によって設定されるべき目標圧力に換算される。一次ブレーキアクチュエータ2は、二次ブレーキアクチュエータ3によって測定された圧力を受信する。一次ブレーキアクチュエータの内部の監視機能で、目標ブレーキ圧が達成された圧力と連続的に比較される。
【0063】
一次ブレーキアクチュエータ2内の監視機能において、時間フィルタまたは追加の作動条件、例えば二次ブレーキアクチュエータ3内のポンピングまたはバルブ活動性が考慮されてよい。二次ブレーキアクチュエータ内のポンピングおよび/またはバルブの駆動制御は、監視を妨害し得る圧力ピーク/短時間の正常でない圧力値を生ぜしめることがある。
【0064】
目標圧力と実際圧力との差が所定の閾値を上回るかまたは下回るということは、一次ブレーキアクチュエータ2がブレーキプリセットを変更できなかったかまたは変更が不十分であった、という意味である。この状況では、一次ブレーキアクチュエータの効率低下が必要となり、これに関連した、二次ブレーキアクチュエータへの引き継ぎが必要となる。一次ブレーキアクチュエータ2は自動的に効率低下し、これによって二次ブレーキアクチュエータ3への引き継ぎが開始される。
【符号の説明】
【0065】
1 ブレーキシステム
2 一次ブレーキアクチュエータ
3 二次ブレーキアクチュエータ
4 操作エレメント
5 コントロールユニット
6a,6b 運転者に依存するブレーキプリセット、運転者プリセット、ブレーキ圧プリセット
7 通信手段、通信システム、通信バス通信ネットワーク
8 故障状態、故障信号
9 加速度センサ
10 システム、別のシステム、車両コンピュータ、運転者アシスト制御器、別の制御器
11a,11b 運転者に依存しないブレーキプリセット、ブレーキ圧プリセット
12 圧力センサ、ブレーキ圧センサ
13 圧力、ブレーキ圧、圧力センサ信号
14 車両減速度、減速度、減速信号、加速度信号
15,16 制御器
17 特性曲線、特性マップ
19 減速ブレーキプリセット特性曲線
20 特性曲線
21 車両外部の制御器、別の制御器
201、202 ステップ、第1の妥当化
203 ステップ、検査
204 ステップ、第2の妥当化
205 ステップ、第2の妥当化、否定的
206 ステップ、故障の割り当て
207 ステップ、第1の代替リアクション
208 ステップ、故障の割り当て
209 ステップ、第2の代替リアクション
V 体積
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-06-18
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次ブレーキアクチュエータ(2)および二次ブレーキアクチュエータ(3)を有するブレーキシステム(1)を運転するための方法において、
前記一次ブレーキアクチュエータ(2)を用いて第1のブレーキプリセット(6a,11a)に基づいてブレーキ圧を調整し、
前記二次ブレーキアクチュエータ(3)の制御器(16)または別の制御器(10,21)によって、前記一次ブレーキアクチュエータ(2)を用いて調整されたブレーキ圧(13)を読み込み、
前記二次ブレーキアクチュエータ(3)の前記制御器(16)または前記別の制御器(10,21)を用いて、算出された前記ブレーキ圧(13)の第1の妥当化(202)を、前記二次ブレーキアクチュエータ(3)の前記制御器(16)または前記別の制御器(10,21)に供給された第2のブレーキプリセット(6b、11b)によって行う、
ブレーキシステム(1)を運転するための方法。
【請求項2】
前記第1の妥当化が否定的であるときに、前記二次ブレーキアクチュエータ(3)の制御器(16)または別の制御器(10,21)を用いて前記第2のブレーキプリセット(6b,11b)および減速信号(14)を考慮して第2の妥当化(204,205)を行う、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1のブレーキプリセット(6a,11a)並びに前記第2のブレーキプリセット(6b,11b)が同一であって、特に前記第1のブレーキプリセット(6a,11a)並びに前記第2のブレーキプリセット(6b,11b)の供給源が同一である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記第1のブレーキプリセット(6a,11a)および前記第2のブレーキプリセット(6b,11b)が、運転者に依存する(6a,6b)かまたは運転者に依存しない(11a,11b)ブレーキプリセットであることを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記減速信号(14)を有する前記ブレーキプリセット(6b,11b)の前記第2の妥当化が否定的である(205)ときに、前記第2の妥当化(204,205)を用いて前記一次ブレーキアクチュエータ(2)の周辺に故障の割り当て(206,208)を行う(208)ことを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記故障の割り当て(206,208)に応じて、車両を制動するための相応の代替リアクション(207,209)を生ぜしめ、第1の代替リアクション(209)としてブレーキ圧調整を前記二次ブレーキアクチュエータ(3)によって行いかつ/または前記二次ブレーキアクチュエータ(3)によって続行することを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記減速信号(14)を有する前記ブレーキプリセット(6b,11b)の前記第2の妥当化が肯定的である(204)ときに、前記第2の妥当化(204,205)を用いて、前記二次ブレーキアクチュエータ(3)の周辺、特にブレーキ圧算出の周辺、圧力センサ(12)の周辺または圧力センサ信号(13)の周辺で故障の割り当て(206,208)を行うことを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項8】
前記故障の割り当て(206,208)に応じて、車両を制動するための相応の代替リアクション(207,209)を生ぜしめ、特に前記圧力センサ信号(13)を考慮してブレーキ圧調整を行う限り、第2の代替リアクション(207)として、前記二次ブレーキアクチュエータ(3)を用いてブレーキ圧調整を停止することを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
特性曲線および/または特性マップ(17)の第1の形式を用いて前記第1の妥当化(202)を行い、前記特性曲線および/または特性マップ(17)の第1の形式によって、ブレーキ圧(13)と第2のブレーキプリセット(6b,11b)との間の関係が決定されている、請求項1記載の方法。
【請求項10】
性曲線および/または特性マップ(19,20)の第2の形式を用いて前記第2の妥当化(204,205)を行い、前記特性曲線および/または特性マップ(19,20)の第2の形式によって、車両減速度(13)と第2のブレーキプリセット(6b、11b)との間の関係が決定されている、請求項2記載の方法。
【請求項11】
前記一次ブレーキアクチュエータ(2)によって設定された、その時点における故障信号(8)の検査(203)を行うことを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項12】
前記別の制御器が、車両内部の別の制御器(10)または車両外部の別の制御器(21)である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
少なくとも前記ブレーキ圧(13)、前記減速信号(14)、および前記第1または第2のブレーキプリセット(6a,6b,11a,11b)を、評価のために、通信手段(7)、特に車両外部のまたは車両内部の通信手段を介して前記別の制御器(10,21)に供給するか、あるいは、これらが前記別の制御器(10,21)に既に存在していることを特徴とする、請求項12記載の方法。
【請求項14】
一次ブレーキアクチュエータ(2)および二次ブレーキアクチュエータ(3)を有する、車両のためのブレーキシステム(1)において、
前記一次ブレーキアクチュエータ(2)を用いて第1のブレーキプリセット(6a,11a)に基づいてブレーキ圧が調整可能であり、
前記二次ブレーキアクチュエータ(3)の制御器(16)または別の制御器(10,21)によって、前記一次ブレーキアクチュエータ(2)を用いて調整されたブレーキ圧(13)が読み込み可能であって、
前記二次ブレーキアクチュエータ(3)の前記制御器(16)または別の制御器(10,21)を用いて、算出された前記ブレーキ圧(13)の第1の妥当化(202)が、前記二次ブレーキアクチュエータ(3)の前記制御器(16)または前記別の制御器(10,21)に供給された第2のブレーキプリセット(6b、11b)によって実施可能である、
車両のためのブレーキシステム(1)。
【請求項15】
第1の妥当化が否定的であるときに、第2の妥当化(204,205)が、前記二次ブレーキアクチュエータ(3)の制御器(16)または前記別の制御器(10,21)を用いて前記第2のブレーキプリセット(6b,11b)および減速信号(14)を考慮して実施可能である、請求項14記載のブレーキシステム(1)。
【国際調査報告】