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特表2024-547053シリコ-アルミン酸マトリクスおよびゼオライトをベースとする担体を含む触媒、その調製並びに炭化水素供給原料の水素化分解法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】シリコ-アルミン酸マトリクスおよびゼオライトをベースとする担体を含む触媒、その調製並びに炭化水素供給原料の水素化分解法
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/16 20060101AFI20241219BHJP
   C10G 47/16 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B01J29/16 M
C10G47/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536981
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-08-19
(86)【国際出願番号】 EP2022085090
(87)【国際公開番号】W WO2023117475
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】2114114
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100228175
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充紀
(72)【発明者】
【氏名】デュブレイユ アンヌ-クレール
(72)【発明者】
【氏名】ランベール アーノルド
(72)【発明者】
【氏名】リヴァラン ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】ピルングリューバー ゲアハルト
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA03A
4G169BA03B
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BA20A
4G169BA20B
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BC57A
4G169BC60B
4G169BC65A
4G169BC68B
4G169CC05
4G169DA06
4G169EA02Y
4G169EC03Y
4G169EC06Y
4G169EC15Y
4G169EC18Y
4G169EC21Y
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB14
4G169ZA04A
4G169ZA05A
4G169ZA05B
4G169ZA06A
4G169ZA19A
4G169ZA22A
4G169ZA23A
4G169ZA25A
4G169ZA32A
4G169ZD03
4G169ZE05
4G169ZF02B
4H129AA02
4H129CA08
4H129KC10Y
4H129KC14X
4H129KC15Y
4H129KC17X
4H129KD13X
4H129KD16Y
4H129KD18X
4H129KD21X
4H129KD24Y
4H129NA23
4H129NA37
(57)【要約】
本発明は、周期表の第VIB族および第VIII族の元素によって形成される群から単独でまたは混合物として選ばれる少なくとも1種の水素化/脱水素元素と、少なくとも1種のゼオライトおよび1種の無定形シリカ-アルミナとを含む担体を含む触媒であって、ゼオライトの酸点分布指数(ASDI)は、0.15を超え、酸点の密度(H/D交換により決定される)は、0.05~1mmol/gであり、担体は、径6nm~11nmの細孔内に発現した細孔容積(窒素ポロシメトリにより測定)が0.5mL/g未満であり、0.003MPaの圧力下で水銀置換により測定された粒体密度が0.93g/mLを超え、タップ充填密度(TPD)が0.5g/mL超かつ0.65g/mL未満である触媒を記載する。本発明のさらなる主題は、シリカ前駆体と特定のアルミナ前駆体を混合することによってシリカ-アルミナゲルを調製する少なくとも1回の工程を含む、前記触媒を調製する方法、および前記触媒の存在下で炭化水素原料を水素化分解する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期律表の第VIB族および第VIII族からの元素によって形成される群から単独でまたは混合物として選ばれる少なくとも1種の水素化/脱水素元素と、少なくとも1種のゼオライトおよび少なくとも1種の無定形シリカ-アルミナを含んでいる担体とを含んでいる触媒であって、担体は、以下を有する、触媒:
- 窒素ポロシメトリによって測定され、径が6nm~11nmである細孔内に発現された細孔容積は、0.5mL/g未満である、
- 粒体密度は、0.003MPaの圧力下での水銀変位によって測定されて、0.93g/mL超である、
- タップ充填密度(TPD)は、0.5g/mL超かつ0.65g/mL未満である。
【請求項2】
第VIII族からの元素の触媒中の含有率は、前記触媒の全重量に相対する酸化物の重量で0.03重量%~15重量%、好ましくは酸化物の重量で0.5重量%~10重量%、大いに好ましくは酸化物の重量で1.0重量%~8重量%であり、第VIB族からの元素の触媒中の含有率は、前記触媒の全重量に相対する酸化物の重量で1重量%~50重量%、好ましくは酸化物の重量で5重量%~40重量%、よりなおさら好ましくは酸化物の重量で10重量%~35重量%である、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
第VIII族からの元素は、ニッケルであり、第VIB族からの元素は、タングステンである、請求項1または2に記載の触媒。
【請求項4】
ゼオライトは、Y、USY、VUSY、SDUSY、モルデナイト、ベータ、EU-1、EU-2、EU-11、Nu-87、ZSM-48またはZBM-30のゼオライトから選ばれる、請求項1または3に記載の触媒。
【請求項5】
ゼオライトは、Y、超安定Y(USY)、高超安定Y(VUSY)または脱アルミニウム超安定Y(SDUSY)のゼオライトから選ばれる、請求項4に記載の触媒。
【請求項6】
ゼオライトの酸点分布指数(ASDI)は、H/D交換によって決定されて、0.15超である、請求項1~5のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項7】
ゼオライトは、径が50nm超である細孔内に発現され、窒素物理吸着によって測定される容積を有し、当該容積は、全細孔容積の15%未満、好ましくは10%未満を表す、請求項1~6のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項8】
担体は、窒素物理吸着によって測定され、径が6nm超かつ11nm未満である細孔内に含有される細孔容積0.05~0.45mL/g、好ましくは0.1~0.35mL/gを有する、請求項1~7のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項9】
担体は、バインダも含み、当該バインダは、アルミナ、シリカ-アルミナ、粘土、チタン酸化物、ホウ素酸化物およびジルコニアによって形成される群から選ばれる少なくとも1種の耐火性酸化物からなり、これらは、単独でまたは混合物として利用され、好ましくは、バインダは、アルミナである、請求項1~8のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項10】
触媒中のシリカ-アルミナの重量含有率は、前記触媒の全重量に相対して一般に1重量%~99重量%、有利には10重量%~85重量%、好ましくは40重量%~75重量%である、請求項1~9のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項11】
触媒中のゼオライトの重量含有率は、前記触媒の全重量に相対して一般に0.1重量%~30重量%、有利には0.2重量%~20重量%、好ましくは0.5重量%~10重量%、より好ましくは1重量%~9重量%、よりなおさら好ましくは1.5重量%~8重量%である、請求項1~10のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1つに記載の触媒を調製するための方法であって、少なくとも以下の工程を含む方法:
a) シリカ前駆体をアルミナ前駆体と混合することによってシリカ-アルミナゲルを調製する工程;前記アルミナ前駆体は、以下を有している:
・ 分散性指数:15%~70%、
・ ナトリウム含有率:アルミナ前駆体の全質量に相対して0.003重量%~2重量%、
・ 硫黄含有率:アルミナ前駆体の全質量に相対して0.005重量%~2重量%、
b) 少なくとも1種のゼオライトを、工程a)から得られたシリカ-アルミナゲルと混合する工程;前記ゼオライトの酸点分布指数(ASDI)は、H/D交換によって測定されて、0.15超である、
c) 得られた混合物を、任意選択にアルミン酸バインダの存在中で成形する工程、
d) 成形された材料を乾燥させる少なくとも1回の工程、
e) 乾燥済み材料の熱処理および/または水熱処理の少なくとも1回の工程;担体を得る、
f) 周期律表の第VIB族からの元素および周期律表の第VIII族からの非貴金属元素によって形成される群から選ばれる少なくとも1種の水素化/脱水素元素を担体上に導入する工程、
g) 含浸済み担体を乾燥させる少なくとも1回の工程、および
e) 場合による、含浸・乾燥済み担体の熱処理および/または水熱処理の少なくとも1回の工程;前記触媒を得る。
【請求項13】
少なくとも1種の炭化水素供給原料を水素化分解するための方法であって、当該炭化水素供給原料は、好ましくは液状の形態にあり、当該炭化水素供給原料の化合物の最低50重量%の沸点は、300℃超かつ650℃未満であり、当該水素化分解は、請求項1~11のいずれか1つに記載の触媒または請求項12に記載の調製方法に従って調製された触媒の存在中で行われ、その際の温度は、200℃~480℃であり、その際の全圧は、1MPa~25MPaであり、炭化水素供給原料の容積あたりの水素の容積の比は、80~5000リットル/リットルであり、その際の毎時空間速度(HSV)は、反応器に充填される触媒の容積あたりの炭化水素供給原料、好ましくは液状にある炭化水素供給原料の容積流量の比によって定義されて、0.1~50h-1である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ-アルミン酸マトリクスおよびゼオライトをベースとする担体を含んでいる触媒、並びにこれを使用する水素化転化方法に関する。
【0002】
この方法の目的は、本質的に、中間留出物、すなわち、初期沸点が150℃以上であり、最終沸点が、残渣の初期沸点未満、例えば350℃未満、あるいはほかに390℃未満である留分を製造することにある。
【背景技術】
【0003】
重質石油留分の水素化分解は、精製において頻繁に用いられる方法であり、余剰ではあるが容易にはアップグレードできない重質供給原料から、石油精製業者がそれらの生産を需要構造に適合させるために求めているより軽質な画分、例えば、ガソリン、ジェット燃料および軽質ガスオイルを生じさせることを可能にする。一定の水素化分解法により、油のための優れた基剤を提供する場合がある高度に精製された残渣を得ることも可能になる。接触分解と比較して、接触水素化分解の利点は、非常に良質の中間留出物(ジェット燃料およびガスオイル)を提供することにある。逆に、製造されたガソリンは、接触分解から得られるものよりもはるかに低いオクタン価を有する。
【0004】
水素化分解は、以下の3つの主要な要素からその柔軟性を引き出す方法である:用いられる操作条件、使用される触媒のタイプおよび炭化水素供給原料の水素化分解が1回の工程または2回の工程で行われてよいという事実。
【0005】
触媒の触媒活性がより高いほど、供給原料の転化効率がより高くなる。それ故に、非常に活性な触媒は、供給原料の同じレベルの転化を維持しながら、活性の低い触媒よりも低い温度で用いられてよく、これにより、触媒の寿命を延ばし、操作コストを削減することが可能となる。触媒の単位容積あたりの触媒活性は、前記触媒のタップ充填密度(tapped packing density;以下に定義されるTPD)と単位質量あたりのその触媒活性との積である。所与の反応器容積に導入される触媒の質量に関連する操作コストを最小限に抑えるために、前記触媒が単位質量あたりの高い触媒活性および低いTPDを有することが有利である。炭化水素供給原料の最適な転化は、それ故に、高い触媒活性と最適化されたTPDとの間の妥協点の主部である。
【0006】
触媒のTPDは、それらの組成、それらの多孔質テクスチャおよびそれらの幾何学的形状に関連する。水素化分解法において用いられる水素化分解触媒は、すべて、酸機能を水素化機能と組み合わせた二機能タイプのものである。酸機能は、一般に100m/gから800m/gまでの範囲にわたる大きな表面積を有し、表面酸度を有する担体によって提供され、例えば、ハロゲン化(とりわけ塩素化またはフッ素化)アルミナ、ホウ素およびアルミニウムの酸化物の組み合わせ、無定形シリカ-アルミナおよびゼオライトがある。水素化機能は、元素周期律表の第VIII族からの1種または複数種の金属によって、または周期律表の第VIB族からの少なくとも1種の金属と第VIII族からの少なくとも1種の金属との組み合わせによって提供される。
【0007】
2つの酸機能と水素化機能との間の平衡は、触媒の活性および選択性を支配するパラメータの1つである。弱い酸機能および強い水素化機能が与える触媒は、あまり活性ではなく、一般に高温(390~400℃以上)、および低い給送空間速度(HSVは、触媒の単位容積あたりかつ時間あたりの処理対象の供給原料の容積で表されて、一般に2以下である)で操作するが、このものは、中間留出物について非常に良好な選択性を有している。逆に、強い酸機能および弱い水素化機能が与える触媒は、活性であるが、このものは、中間留出物についてより悪い選択性を有する。
【0008】
従来の水素化分解触媒の1つのタイプは、中程度に酸性の無定形担体、例えばシリカ-アルミナをベースとする。これらの系は、良質の中間留出物、および場合によってはオイルベースを製造するために用いられる。アルミン酸マトリクス中のゼオライトからなる担体は、より酸性の担体であり、中間留出物の取得も可能にするが、一般に選択性の低下を伴う。「複合材」触媒担体は、高度に酸性の1種または複数種のゼオライト、例えばUSYゼオライトと、中程度に酸性の無定形マトリクス、例えばシリカ-アルミナとの混合物からなり、このものは、中間の活性および選択性を有する。
【0009】
これらの触媒の性能品質は、それらの物理化学的特性、より具体的にはそれらのテクスチャ特性と密接に関連している。
【0010】
特許文献1には、水素化分解触媒および水素化分解法におけるその使用が記載されており、前記触媒は、水素化/脱水素元素、Yゼオライトおよびシリカ-アルミナマトリクスを含み、この触媒は、マクロ細孔の含有率が低下した特定の細孔分布、特に、径が500Åより大きい細孔内に含有される、水銀ポロシメトリによって測定される細孔容積0.01mL/g未満および触媒の高いTPD(0.85g/mLより大きい)を有する。
【0011】
特許文献2には、その一部について、ゼオライトおよびアルミノケイ酸塩マトリクスをベースとする担体上のドープされた(P、BまたはSi)水素化分解触媒であって、マクロ細孔の含有率が低下し、径が500Åより大きい細孔内に含有される細孔容積は、水銀ポロシメトリによって測定されて、0.1mL/g未満である水素化分解触媒、並びに前記触媒を使用する水素化分解/水素化転化および水素化処理の方法が記載されている。
【0012】
特許出願(特許文献3)には、水素化分解触媒および水素化分解法におけるその使用が記載されており、前記触媒は、元素周期律表の第6族および第8族~第10族からの元素から選ばれる少なくとも1種の金属と、モレキュラーシーブ、好ましくはYゼオライト、アルミナ、およびシリカ-アルミナを含んでいる担体とを含む。サイズが6~11nmである細孔内に発現された担体のナノ細孔容積は、0.5~0.9mL/gであり、担体のメソ細孔容積(サイズが2~50nmである細孔)は0.7~1.2mL/gである。最後に、担体の粒体密度は、0.7~0.9g/mLである。これらの特性を有する触媒担体の使用により、これらの特性を有さない従来の触媒担体の使用と比較して、より高い活性およびより良好な中間留出物の収率を得ることが可能になる。
【0013】
特許出願(特許文献4および5)には、水素化分解触媒および水素化分解法におけるその使用が記載されており、前記触媒は、担体、無定形シリカ-アルミナおよび安定化Yゼオライトを含み、安定化Yゼオライトは、0.02~0.12の酸点分布指数(acid site distribution index:ASDI)を有し、前記ゼオライト中のマクロ細孔の容積は、前記ゼオライト並びに周期律表の第6族および第8族~第10族からの元素から選ばれる少なくとも1種の金属の全細孔容積の15%~25%を占める。
【0014】
特許出願(特許文献6)には、水素化分解触媒および水素化分解法におけるその使用が記載されており、前記触媒は、担体と、第6族および第8族からの少なくとも1種の金属と、酸点密度(H/D交換によって決定される)0.350~0.650mmol/g、および酸点分布指数(ASDI)0.05~0.15を有する最低10重量%のUSYゼオライトとを含み、酸点密度およびASDIは、FTIR赤外分光法による酸性ヒドロキシル基の80℃でのH/D交換によって決定される。この酸度の組み合わせを有するゼオライトの使用により、121℃-288℃留分についての改善された選択性および60%転化律での改善された活性を得ることが可能となる。
【0015】
最後に、特許出願(特許文献7)には、Yゼオライトおよび無定形無機酸化物を含んでいる担体が記載されており、前記担体が有する単峰性細孔分布は、メソ細孔4~50nmの範囲内に単一の狭いピークが存在することと、担体のTPDが0.35~0.50g/mLであることと、径が4~50nmである細孔内に発現された細孔容積が、0.4mL/gより大きく、全細孔容積の最低50%を占めることを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】仏国特許第2863913号明細書
【特許文献2】欧州特許第1830959号明細書
【特許文献3】国際公開第2015/164334号
【特許文献4】国際公開第2016/069071号
【特許文献5】国際公開第2016/069073号
【特許文献6】米国特許出願公開第2016/0296922号明細書
【特許文献7】国際公開第2005/084799号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
予想外にも、本出願人は、特定の多孔度部を有する触媒担体であって、少なくとも1種のシリカ-アルミナおよび前記ゼオライトを含んでいる前記触媒担体は、従来技術の触媒と比較して、水素化分解法においてそれが用いられる場合に中間留出物についての選択性の観点から改善された触媒性能品質をもたらすことを実証した。特に、前記担体の特定の多孔度部は、前記シリカ-アルミナを調製するための方法から、非常に特定的には、シリカ-アルミナゲルの合成に用いられるアルミナ前駆体の特徴から生じる。
【0018】
好適な実施形態において、本出願人は、特定の多孔度部を有する触媒担体であって、少なくとも1種のシリカ-アルミナおよび前記ゼオライトを含んでいる前記触媒担体において特定の酸度を有するゼオライトの使用により、従来技術の触媒と比較して、水素化分解法においてそれが用いられる場合に、中間留出物についての選択性の観点だけでなく活性の観点からも改善された触媒性能品質がもたらされることを実証した。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(本発明の説明)
(特徴付け技術)
以下では、化学元素の族は、CAS分類に従って与えられる(CRC Handbook of Chemistry and Physics、出版元CRC Press、編集長D. R. Lide、第81版、2000-2001)。例えば、CAS分類による第VIII族は、新IUPAC分類による8、9および10列の金属に対応する。
【0020】
ゼオライト、アルミナ前駆体、触媒の担体中の種々の原子含有率は、蛍光X線、原子吸光分光法、または誘導結合プラズマ(inductively coupled plasma:ICP)分光法によって、測定される値に最も適した方法を用いて測定される。
【0021】
本説明において、IUPAC協定に従って、用語「ミクロ細孔」は、その径が2nm未満である細孔を意味すると理解される;「メソ細孔」は、その径が2nm超かつ50nm未満である細孔を意味し、「マクロ細孔」は、その径が50nm以上である細孔を意味すると理解される。
【0022】
ゼオライト、担体または触媒の用語「比表面積」は、論文「The Journal of the American Chemical Society,60,309(1938)」に記載されているBrunauer-Emmett-Teller法から確立された規格ASTM D 3663-78に従って窒素吸着によって決定されるBET比表面積を意味する。
【0023】
窒素吸着によって測定される細孔分布は、Barrett-Joyner-Halenda(BJH)モデルによって決定された。BJHモデルによる窒素吸脱着等温線は、E. P.Barrett,L. G.JoynerおよびP. P. HalendaによるThe Journal of the American Chemical Society,73,373(1951)に記載されている。本発明の以下の開示において、用語「窒素細孔容積」(N2 Vpore)は、P/P0=0.99(窒素がすべての細孔を充填したと認められる圧力)についての窒素吸着によって測定される容積を意味すると理解される。
【0024】
ミクロ多孔度(径が2nm未満である細孔)の定量分析は、「t」法(Lippens-De Boer法、1965)によって実行される。この方法は、F. Rouquerol,J. RouquerolおよびK. Singによって書かれた刊行物「Adsorption by Powders and Porous Solids.Principles,Methodology and Applications」、Academic Press,1999に記載されているような、出発窒素吸着等温線の変換に対応する。
【0025】
担体および触媒の「水銀細孔容積」(Hg Vpore)は、規格ASTM D4284-83に従う水銀圧入ポロシメトリによって、4000バール(400MPa)の最大圧力で、表面張力485ダイン/cmおよび接触角140°を用いて測定される容積を意味すると理解される。Jean CharpinおよびBernard Rasneurによって書かれた刊行物「Techniques de l’ingenieur,traite analyse et caracterisation」[エンジニアの技術、分析および特性評価論文]、 ページ 1050-1055の推奨に従って、ぬれ角は、140°に等しいとした。この値以上になると水銀がすべての粒子間空隙を充填することとなる値は、0.2MPaに設定され、この値を超えると、水銀がサンプルの細孔に侵入すると考えられる。より良好な精度を得るために、細孔容積の値は、サンプル上の測定された水銀圧入ポロシメトリによって測定された細孔容積の値から、0.2MPaに相当する圧力について同じサンプル上の測定された水銀圧入ポロシメトリによって測定された細孔容積の値を減算しものに対応する。
【0026】
平均径(平均D(Hg))は、36Å~1000Åの範囲内で、この径未満のサイズのすべての細孔が水銀細孔容積(Hg Vpore)の50%を構成するような径であるとして定義される。
【0027】
窒素吸着または水銀ポロシメトリによって測定された細孔分布を説明するために、V(<xnm)およびV(>xnm)は、径が、それぞれに、xnm未満またはxnm超である細孔内に発現される容積を規定する。V(x-ynm)は、径がxnm~ynmである細孔内に発現される容積を規定する。
【0028】
細孔分布をより良好に特徴付けるために、以下の細孔分布基準が規定され、水銀ポロシメトリによって測定される:
- 容積V1は、径が平均径マイナス3nm未満である細孔内に含有される容積に対応する;
- 容積V2は、径が平均径マイナス3nm以上かつ平均径プラス3nm未満である細孔内に含有される容積に対応する;
- 容積V3は、径が平均径プラス3nm以上である細孔内に含有される容積に対応する;
- 容積V4は、径が平均径マイナス1.5nm未満である細孔内に含有される容積に対応する;
- 容積V5は、径が平均径マイナス1.5nm以上かつ平均径プラス1.5nm未満である細孔内に含有される容積に対応する;
- 容積V6は、径が平均径プラス1.5nm以上である細孔内に含有される容積に対応する。
【0029】
粒体密度は、式gd=M/Vによって得られ、Mは、質量であり、Vは、サンプルの容積である。サンプルのこの容積Vは、サンプルが0.003MPaの圧力下に水銀に浸漬される時に変位される容積を測定することによって決定される。
【0030】
担体および触媒のタップ充填密度(TPD)は、J. F. Le Pageらによる研究「Applied Heterogeneous Catalysis」、Technip, Paris, 1987に記載されているようにして測定される。許容可能な寸法を有するメスシリンダは、連続添加によって充填され、各添加の間に、触媒は、一定の容積が達成されるまでシリンダを振盪することによってタップされる。この測定は、一般に、高さ対径の比が5:1に近いシリンダ内の1000mLのタップされた触媒で行われる。この測定は、好ましくは、自動化された機器、例えば、Quantachrome(登録商標)によって販売されているAutotap(登録商標)機器で行われてよい。
【0031】
ベーマイトゲルの分散性指数は、3600Gで10分にわたるポリプロピレン管中の遠心分離によって分散させられ得る解膠済みアルミナゲルの重量百分率として規定される。分散性は、10%のベーマイトを、ベーマイトの質量に相対して10%の硝酸も含有している水の懸濁液に分散させることによって測定される。懸濁液は、次いで、3600Gのrpmで10分にわたって遠心分離される。回収されたセジメントは、100℃で終夜乾燥させられ、次いで、秤量される。分散性指数は、DIで示され、以下の計算によって得られる:DI(%)=100%-乾燥したセジメントの質量(%)。
【0032】
ベーマイトゲルの結晶子の寸法は、PANalytical X’Pert Pro回折計を用いるX線回折によって測定される。当該回折計は、反射で操作し、CuKα線(λKα1=1.5406Å、λKα2=1.5444Å)を用いる後方モノクロメーターを備えている。結晶子の寸法は、参考文献「Scherrer after sixty years:A survey and some new results in the determination of crystallite size」、J.I.Langford and A.J.C.Wilson,Appl.Cryst.,11,102-113(1978)に記載されているScherrer式を用いて、2つの結晶学的方位[020]および[120]に沿って測定される。
【0033】
ゼオライトの単位格子の格子パラメータa0、すなわち格子定数は、規格ASTM 03942-80に従うX線回折によって測定される。
【0034】
ゼオライトのブレンステッド酸度は、ピリジンの吸着および連続的な熱脱着とそれに続く赤外(FTIR)分光法によって測定される。この方法は、論文C.A.Emeis,Journal of Catalysis,141,347(1993)に記載されているように、酸性固体、例えばゼオライトを特徴付けるために従来から用いられている。分析の前に、ゼオライト粉末は、16mm径のペレットの形態に圧縮され、二次真空下に450℃で活性にされる。活性化ペレットと接触させた気相中のピリジンの導入および熱脱着の工程は、150℃で行われる。150℃での熱脱着の後にFTIRによって検出されるピリジニウムイオンの濃度は、ゼオライトのブレンステッド酸度に対応し、マイクロモル/gゼオライトで表される。
【0035】
ブレンステッド酸点の分布および酸点分布指数(ASDI)は、論文E.J.M.Hensen et al.,J.Phys.Chem.C,114,8363-8374(2010)に記載された方法に従って、H/D交換およびその後にIR分光法によって決定される。IR測定の前に、サンプルは、400~450℃で、真空(<1×10-5Torr)下に1時間にわたって熱活性化させられる。サンプルは、次いで、重水素化ベンゼンを導入して、80℃で接触(平衡)させることによってアッセイされる。接触の前後にIRスペクトルが記録され、ヒドロキシル(OH)/ジュウテロキシル(OD)の領域を分析する。
【0036】
ブレンステッド酸点の密度は、2676cm-1(第1の高周波OD(HF)、2653cm-1(第2の高周波OD(HF’)、2632および2620cm-1(第1の低周波OD(BF)、2600cm-1(第2の低周波OD(BF’))を中心とする寄与の面積を積分することによって決定される。ブレンステッド酸点の密度は、mmol/gゼオライトで表される。酸点分布指数(ASDI)は、ゼオライト中に存在する超活性酸点の含有率を表し、以下のように決定される:
ASDI=(HF’+LF’)/(HF+LF)
本文の残りの部分において、たとえこれが明示的に述べられていなくても、酸点分布および酸点密度は、ブレンステッド酸点に関連する。
【0037】
本文の残りの部分において、表現「AとBとの間の、またはA~Bの(of between A and B)」および「AとBとの間、またはA~B(between A and B)」は、同等であり、間隔の両限界値(A、B)は、記載された値の範囲に含まれることを意味する。もしそのようになっていなかったならば、および両限界値が記載された範囲に含まれなかったならば、そのような説明が本発明によって与えられることになる。
【0038】
本発明の目的のために、所与の工程についての種々のパラメータの範囲、例えば、圧力範囲および温度範囲は、単独でまたは組み合わせで用いられてよい。例えば、本発明の目的のために、好適な圧力値の範囲は、より好適な温度値の範囲と組み合わされ得る。
【0039】
(発明の概要)
本発明の1つの主題は、周期律表の第VIB族および第VIII族からの元素によって形成される群から単独でまたは混合物として選ばれる少なくとも1種の水素化/脱水素元素と、少なくとも1種のゼオライトおよび少なくとも1種の無定形シリカ-アルミナを含んでいる担体とを含んでいる触媒であって、担体は、以下を有する、触媒である:
- 窒素ポロシメトリによって測定され、径が6nm~11nmである細孔内に発現された細孔容積は、0.5mL/g未満である、
- 0.003MPaの圧力下での水銀変位によって測定される粒体密度は、0.93g/mL超である、
- タップ充填密度(TPD)は、0.5g/mL超かつ0.65g/mL未満である。
【0040】
本発明のさらなる主題は、前記触媒を調製するための方法に関し、当該方法は、シリカ前駆体をアルミナ前駆体と混合することによってシリカ-アルミナゲルを調製する少なくとも1回の特定の工程を含み、当該アルミナ前駆体は、特定の特徴を有し、特に、以下を有する:
- 分散性指数は、15%~70%である、
- ナトリウム含有率は、アルミナ前駆体の全質量に相対して0.003重量%~2重量%である、
- 硫黄含有率は、アルミナ前駆体の全質量に相対して0.005重量%~2重量%である;
上記工程の後に、前記シリカ-アルミナゲルを、特定の特性を有するゼオライトと混合する工程が続けられる。
【0041】
本発明の別の主題は、前記触媒の存在中で炭化水素供給原料を水素化分解するための方法にある。
【0042】
本発明の1つの利点は、これらの特性を有さない従来技術の触媒の使用と比較して、炭化水素供給原料を水素化分解するための方法においてそれが用いられる場合に、中間留出物についてより良好な活性およびより良好な選択性を得ることを可能にする触媒を提供することにある。
【0043】
(発明の詳細な説明)
本発明による触媒は、周期律表の第VIB族および第VIII族からの元素によって形成される群から単独でまたは混合物として選ばれる少なくとも1種の水素化/脱水素元素を含む。
【0044】
好ましくは、第VIII族からの元素は、鉄、コバルト、ニッケルから選ばれ、単独でまたは混合物として利用され、好ましくはニッケルおよびコバルトから、大いに好ましくはニッケルから選ばれる。
【0045】
好ましくは、第VIB族からの元素は、タングステンおよびモリブデンから選ばれ、単独でまたは混合物として利用され、好ましくはタングステンである。
【0046】
好ましくは、本発明による触媒が含む活性相は、第VIB族からの少なくとも1種の金属、好ましくはタングステン、および第VIII族からの少なくとも1種の金属、好ましくはニッケルを含み、好ましくはそれらからなる。
【0047】
以下の金属の組み合わせが好適である:ニッケル-モリブデン、コバルト-モリブデン、ニッケル-タングステン、コバルト-タングステン、大いに好ましくは:ニッケル-タングステン。3種の金属の組み合わせを用いることも可能であり、例えばニッケル-コバルト-モリブデンがある。
【0048】
第VIII族からの元素の触媒中の含有率は、有利には、前記触媒の全重量に相対する酸化物の重量で0.03重量%~15重量%、好ましくは酸化物の重量で0.5重量%~10重量%、大いに好ましくは酸化物の重量で1.0重量%~8重量%である。
【0049】
第VIB族からの元素の触媒中の含有率は、有利には、前記触媒の全重量に相対する酸化物の重量で1重量%~50重量%、好ましくは酸化物の重量で5重量%~40重量%、よりなおさら好ましくは酸化物の重量で10重量%~35重量%である。
【0050】
本発明による触媒は、場合によっては、少なくとも1種のドーピング元素を含んでよく、当該ドーピング元素は、触媒上に堆積され、リン、ホウ素およびケイ素によって形成される群から選ばれる。このケースにおいて、ホウ素、ケイ素およびリンの質量による含有率は、酸化物の形態で、0重量%~15重量%、好ましくは0重量%~10重量%、よりなおさら有利には0重量%~5重量%である。
【0051】
よりなおさら好ましくは、触媒は、このタイプのドーピング元素を含有しない。
【0052】
本発明による触媒は、場合によっては、第VIIB族からの少なくとも1種の元素、好ましくはマンガンを含んでもよい。このケースにおいて、第VIIB族からの元素の重量含有率は、酸化物または金属の形態にある化合物の好ましくは0.005%~20%、好ましくは0.5%~10%である。
【0053】
本発明による触媒は、場合によっては、第VB族からの少なくとも1種の元素、好ましくはニオブを含んでもよい。このケースにおいて、第VIIB族からの元素の重量含有率は、酸化物または金属の形態にある化合物の好ましくは0.005%~40%、好ましくは0.5%~20%である。
【0054】
(担体)
本発明による触媒が含む担体は、少なくとも1種のゼオライトおよび少なくとも1種の無定形シリカ-アルミナを含んでいる。
【0055】
好ましくは、前記担体は、少なくとも1種のゼオライト、少なくとも1種の無定形シリカ-アルミナおよび場合によるバインダからなる。
【0056】
本発明による触媒の担体に用いられるゼオライトは、Y、USY、VUSY、SDUSY、モルデナイト、ベータ、EU-1、EU-2、EU-11、Nu-87、ZSM-48またはZBM-30のゼオライト、好ましくはY、超安定Y(USY)、高超安定Y(VUSY)、または脱アルミニウム超安定Y(SDUSY)ゼオライトおよびベータゼオライトから単独でまたは混合物として選ばれる。大いに好ましくは、ゼオライトは、Y、超安定Y(USY)、高超安定Y(VUSY)および脱アルミニウム超安定Y(SDUSY)のゼオライトから選ばれる。
【0057】
これらの呼称である、USY、VUSYおよびSDUSYは、文献において一般的であるが、本発明のゼオライトの特徴をそのような呼称に限定するものではない。
【0058】
前記ゼオライトは、有利には、分類「Atlas of Zeolite Framework Types,6th revised edition」、Ch.Baerlocher,L.B.McCusker,D.H.Olson,6th Edition,Elsevier,2007,Elsevierにおいて定義されている。
【0059】
好ましくは、前記ゼオライトの酸点分布指数(ASDI)は、H/D交換によって測定されて、0.15超、かつ、好ましくは0.4未満、好ましくは0.17超、優先的には0.19超、大いに好ましくは0.20~0.35、よりなおさら好ましくは0.20~0.28である。
【0060】
好ましくは、前記ゼオライトの酸点密度は、(H/D交換によって測定されて)0.05~1mmol/g、好ましくは0.3~0.8mmol/g、好適には0.35~0.65mmol/g、大いに好ましくは0.5~0.6mmol/gである。
【0061】
好ましくは、前記ゼオライトの酸度は、ってピリジンの熱脱着を赤外線によるモニタリングをすることによって測定されて、100マイクロモル/g超、好ましくは150マイクロモル/g超、好適には160~800マイクロモル/g、より好ましくは180~400マイクロモル/g、よりなおさら好ましくは190~350マイクロモル/gである。
【0062】
好ましくは、本発明による触媒担体に用いられるゼオライトは、以下を有する:
- 全SiO/Alモル比は、8超、好ましくはおよそ10~150、好適には12~120、よりなおさら好ましくは20~80である、
- アルカリまたはアルカリ土類の金属カチオンおよび/または希土類カチオンの含有率、好ましくはナトリウムの含有率は、1100℃で焼成されたゼオライト上で決定されて、0.2重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、好適には0.05重量%未満である、
- 単位格子の格子パラメータa0は、24.10×10-10~24.45×10-10m、好ましくは24.15×10-10~24.40×10-10m、好適には24.20×10-10~24.38×10-10m、よりなおさら好ましくは24.24×10-10~24.35×10-10mである、
- 比表面積は、BET法によって決定されて、400m/g超、好ましくは550m/g超、好適には700m/g超、よりなおさら好ましくは850m/g超である、
- 全細孔容積は、P/P0=0.99での窒素物理吸着によって決定されて、0.2mL/g未満、好ましくは0.3~0.7mL/g、好適には0.5~0.65mL/gである、
- 径が2nm未満である細孔内で発現され、窒素物理吸着によって測定される容積は、全細孔容積の20%~95%、好ましくは40%~80%、好適には50%~65%を表す、
- 径が2nm超かつ50nm未満である細孔内で発現され、窒素物理吸着によって測定される容積は、全細孔容積の最低5%、好ましくは最低10%、好適には15%~70%、よりなおさら好ましくは20%~50%を表す、
- 径が8nm超である細孔内に発現され、窒素物理吸着によって測定された容積は、全細孔容積の最低0.1%、好ましくは最低1%、よりなおさら好ましくは最低5%を表す、
- 径が50nm超である細孔内に発現され、窒素物理吸着によって測定される容積は、全細孔容積の15%未満、好ましくは10%未満を表す容積。非常に好適な実施形態において、ゼオライトはマクロ細孔を欠いている。
【0063】
ゼオライトの前記特徴は、本発明による触媒の担体の合成において用いられるゼオライトの特徴である。
【0064】
ゼオライトがY、USY、VUSYまたはSDUSYのゼオライトであるケースにおいて、上記に規定された特定の特徴を有する触媒担体に用いられるゼオライトは、有利には、Yゼオライト、好ましくは合成後の全Si/Al原子比が2.3~2.8であり、有利には合成後にNaY型にあるYゼオライトから調製される。前記Yゼオライトは、有利には、1回または複数回のイオン交換工程を受けた後に1回または複数回の脱アルミニウム工程を受ける。1回または複数回のイオン交換により、粗合成Yゼオライト中のカチオン位置に存在する周期律表の第IA族および第IIA族に属するアルカリカチオンをNH カチオンと、好ましくはNaカチオンをNH カチオンと、部分的または完全に置換することが可能になる。
【0065】
NH カチオンによるアルカリカチオンの部分的または全体的な交換は、前記アルカリカチオンの80%から100%、好ましくは85%から99.5%、より好ましくは88%から99%のNH カチオンとの交換を意味すると理解される。1回または複数回のイオン交換工程の終わりに、Yゼオライト中のアルカリカチオンの残存量、好ましくはNaカチオンの残存量は、Yゼオライト中に最初に存在するアルカリカチオン、好ましくはNaカチオンの量に相対して、有利には0%~20%、好ましくは0.5%~15%、好適には1.0%~12%である。
【0066】
好ましくは、この工程は、アンモニウムの塩素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩または酢酸塩から選ばれる少なくとも1種のアンモニウム塩を含有している溶液による複数のイオン交換を実施して、ゼオライト中に存在するアルカリカチオン、好ましくはNaカチオンを少なくとも部分的に除去するようにする。好ましくは、アンモニウム塩は、硝酸アンモニウムNHNOである。
【0067】
望まれるアルカリカチオン/アルミニウム比、好ましくはNa/Al比は、イオン交換溶液のNH 濃度、イオン交換温度およびイオン交換の回数を調節することによって得られる。イオン交換溶液のNH 濃度は、有利には、0.01mol・L-1と12mol・L-1との間、好ましくは1.00mol・L-1と10mol・L-1との間で変動する。イオン交換工程の温度は、有利には20~100℃、好ましくは60~95℃、好適には60~90℃、より好ましくは60~85℃、よりなおさら好ましくは60~80℃である。イオン交換の回数は、有利には1回と10回との間、好ましくは1回と4回との間で変動する。
【0068】
得られた前記Yゼオライトは、次いで、1回または複数回の脱アルミニウム処理工程を受けてよい。前記1回または複数回の脱アルミニウム工程は、有利には、当業者に知られている方法のいずれかによって行われてよい。好ましくは、脱アルミニウムは、任意選択に水蒸気(または「スチーム処理」)の存在中での熱処理によって、および/または1回または複数回の酸攻撃によって行われ、当該酸攻撃は、有利には、水性の無機または有機の酸溶液による処理によって行われる。
【0069】
好ましくは、脱アルミニウム工程は、熱処理とそれに続く1回若しくは複数回の酸攻撃、または1回若しくは複数回の酸攻撃のみを実施する。
【0070】
好ましくは、任意選択に蒸気の存在中での熱処理は、記Yゼオライトが供され、これが行われる際の温度は、200~900℃、好ましくは300~900℃、よりなおさら好ましくは400~750℃である。前記熱処理の継続期間は、有利には0.5時間以上、好ましくは0.5時間~24時間、大いに好ましくは1時間~12時間である。熱処理が水の存在中で行われるケースにおいて、熱処理中の蒸気の容積割合(%)は、有利には5%~100%、好ましくは20%~100%、大いに好ましくは40%~100%である。蒸気ではない任意の容積部分は、空気から形成される。蒸気および場合による空気から形成されるガスの流量は、有利には、Yゼオライトの重量(g)あたり0.2L・h-1~10L・h-1である。
【0071】
熱処理により、処理されたゼオライトの全Si/Al原子比を不変に保ちながら、Yゼオライトの構造からのアルミニウム原子の抽出が可能になる。
【0072】
蒸気の存在中での熱処理の工程は、有利には、本発明による方法において用いられ、特許請求されたような特徴を有する触媒の担体を実装するのに適したYゼオライトを得るのに必要な回数だけ繰り返されてよい。
【0073】
任意選択に蒸気の存在中での熱処理の工程の後に、有利には酸攻撃工程が行われる。蒸気の存在中での熱処理の工程からアルミン酸デブリが生じ、アルミン酸デブリは、脱アルミニウム済みゼオライトの多孔度部を部分的にブロックする場合があり、前記酸攻撃により、このようなアルミン酸デブリを部分的または完全に除去することが可能になる;酸攻撃により、脱アルミニウム済みゼオライトの多孔度部のブロックがないようにすることが可能になる。
【0074】
酸攻撃は、有利には、場合によっては事前に熱処理を受けたYゼオライトを、鉱酸または有機酸を含有している水溶液に懸濁させることによって行われてよい。鉱酸は、硝酸、硫酸、塩酸、リン酸またはホウ酸であってもよい。有機酸は、ギ酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、マロン酸、リンゴ酸、乳酸、または任意の他の水溶性有機酸であってよい。溶液中の鉱酸または有機酸の濃度は、有利には、0.01mol・L-1と2.0mol・L-1との間、好ましくは0.5mol・L-1と1.0mol・L-1との間で変動する。酸攻撃工程の温度は、有利には20~100℃、好ましくは60~95℃、好適には60~90℃、より好ましくは60~80℃である。酸攻撃の継続期間は、有利には5分~8時間、好ましくは30分~4時間、好適には1時間~2時間である。
【0075】
任意選択に蒸気の存在中での熱処理の1回または複数回の工程および場合による酸攻撃の工程の終結の際に、前記Yゼオライトを改変するための方法は、有利には、Yゼオライト中のカチオン位置に依然として存在するアルカリカチオン、好ましくはNaカチオンの少なくとも部分的または完全な交換の工程を含む。イオン交換工程は、上記のイオン交換工程と同様にして行われる。
【0076】
任意選択に蒸気の存在中での熱処理の1回または複数回の工程および場合による酸攻撃工程および場合によるアルカリカチオン、好ましくはNaカチオンの部分的または完全な交換の工程の終結の際に、前記Yゼオライトを改変するための方法は、焼成工程を含んでよい。前記焼成により、ゼオライトの多孔度部内に存在する有機種、例えば、酸攻撃工程によって、またはアルカリカチオンの部分的若しくは完全な交換の工程によって供給される有機種を除去することが可能になる。さらに、前記焼成工程により、Yゼオライトのプロトン型を生じさせ、その適用の目的のために酸度をそれに付与することが可能になる。
【0077】
焼成は、有利には、マッフル炉または管状炉において、乾燥空気下または不活性雰囲気下、掃引床または横断床内で行われてよい。焼成温度は、有利には200~800℃、好ましくは450~600℃、好適には500~550℃である。焼成保持の継続期間は、有利には1~20時間、好ましくは6~15時間、好適には8~12時間である。
【0078】
それ故に、得られた前記Yゼオライト、好ましくは、USYゼオライトは、有利には、酸点分布指数(ASDI):0.15超、酸点密度(H/D交換によって決定される):0.05~1mmol/g、および上で定義された特徴を有する。
【0079】
好ましくは、担体中のゼオライトの重量含有率は、一般に、前記担体の全重量に相対して0.1重量%~60重量%、好ましくは1重量%~30重量%、好適には2重量%~15重量%、より好ましくは3重量%~12重量%、よりなおさら好ましくは4重量%~10重量%である。
【0080】
本発明によると、担体は、無定形シリカ-アルミナも含む。
【0081】
担体中のシリカ-アルミナの重量含有率は、前記担体の全重量に相対して、好ましくは1重量%~99.9重量%、好ましくは20重量%~98重量%、好適には40重量%~96重量%である。
【0082】
シリカ-アルミナ中のシリカ(SiO)の質量含有率は、5重量%~95重量%、好ましくは10重量%~70重量%、好適には15重量%~60重量%、よりなおさら好ましくは20重量%~50重量%である。
【0083】
本発明による触媒を調製するための方法によれば、前記無定形シリカ-アルミナは、シリカ前駆体の、特許請求される特徴を有する特定のアルミナ前駆体との反応によって得られ、以下に詳述される調製方法によると、シリカ-アルミナゲルを得ること、ゼオライトとのその成形、並びに上記の担体の特徴に到達することを可能にする熱処理および水熱処理が記載される。
【0084】
本発明によれば、担体は、以下を有する:
- 窒素物理吸着によって測定され、径が6nm~11nmである細孔内に含有される細孔容積は、0.5mL/g未満である、
- 粒体密度は、0.003MPaの圧力下での水銀変位によって測定されて、0.93g/mL超である、
- タップ充填密度(TPD)は、0.5g/mL超かつ0.65g/mL未満である。
【0085】
好適には、担体の、窒素物理吸着によって測定され、径が6nm超かつ11nm未満である細孔内に含有される細孔容積は、0.05~0.45mL/g、好ましくは0.1~0.35mL/gである。
【0086】
好ましくは、担体の粒体密度は、0.003MPaの圧力下に水銀変位によって測定されて、0.95~1.5g/mL、好適には0.96~1.2g/mLである。
【0087】
好ましくは、担体のタップ充填密度(TPD)は、0.53~0.62g/mLである。
【0088】
本発明による触媒の前記担体は、有利には,以下の特徴も有する:
- 比表面積は、BET法によって決定されて、100~600m/g、好ましくは150~450m/g、よりなおさら好ましくは250~400m/gである、
- 全細孔容積は、窒素ポロシメトリによって測定されて、0.45mL/g超、好ましくは0.5~1mL/g、よりなおさら好ましくは0.6~0.7mL/gである、
・ その結果、径が2nm超かつ50nm未満である細孔内に発現され、窒素物理吸着によって測定される容積は、全細孔容積の99.9%未満、好ましくは40%~99.5%、好適には80%~99%を表す、および
・ その結果、径が2nm未満である細孔内に発現され、窒素物理吸着によって測定される容積が、全細孔容積の最低0.1%、好ましくは0.2%~50%、好適には0.5%~30%、よりなおさら好ましくは0.8%~15%を表す、
- 全細孔容積は、水銀ポロシメトリによって測定されて、0.45mL/g超、好ましくは0.5~1mL/g、よりなおさら好ましくは0.5~0.75mL/gである、
- 水銀ポロシメトリによって測定され、径が14nm超である細孔内に含有される細孔容積は、0.35mL/g未満、好ましくは0.25mL/g未満である、
- 水銀ポロシメトリによって測定される、径が16nm超である細孔内に含有される細孔容積は、0.3mL/g未満、好ましくは0.2mL/g未満である、
- 水銀ポロシメトリによって測定される、径が20nm超である細孔内に含有される細孔容積は、0.15mL/g未満、好ましくは0.1mL/g未満である、
- 水銀ポロシメトリによって測定される、径が50nm超である細孔内に含有される細孔容積は、0.01mL/g未満、好ましくは0.005mL/g未満であり、好適には、この容積は、0である、
- 水銀ポロシメトリによって測定される、径が4~50nmである細孔のドメインにおける多峰性細孔サイズ分布、すなわち、少なくとも2つの別個のピークまたは1つの広いピークを1つ若しくは複数の肩部とともに有する;4~50nm、好ましくは5~20nm、よりなおさら好ましくは6~16nmの平均細孔径を有する、
- 上に定義される容積V2対全細孔容積の比;これらの2つの容積は、水銀ポロシメトリによって測定される;0.8未満、好ましくは0.7未満、よりなおさら好ましくは0.2~0.6、
- 好ましくは、上で定義された容積V3は、0.05mL/g超、好適には0.06mL/g超、よりなおさら好ましくは0.07~0.35mL/gである、
- 上で定義された容積V5と容積V2との間の比は、0.8未満、好ましくは0.7未満、よりなおさら好ましくは0.2~0.6である、
- 好ましくは、上で定義された容積V6は、0.05mL/g超、好適には0.1mL/g超、よりなおさら好ましくは0.15~0.5mL/gである。
【0089】
担体は、場合によっては、バインダを含んでもよい。
【0090】
前記バインダは、有利には、少なくとも1種の耐火性酸化物からなり、好ましくは、アルミナ、シリカ-アルミナ、粘土、チタン酸化物、ホウ素酸化物およびジルコニアによって形成される群から選ばれ、単独でまたは混合物として用いられる。好ましくは、バインダは、アルミナである。アルミナは、有利には、当業者に知られているその形態のいずれかであることができる。大いに好ましくは、アルミナは、アルファ、ロー、カイ、カッパ、エータ、ガンマ、シータおよびデルタのアルミナから組み立てられる群から選ばれ、好適にはガンマ、シータおよびデルタのアルミナから選ばれる。前記担体がアルミナを含むケースにおいて、本発明による触媒の担体中のアルミナの重量含有率は、前記担体の全重量に相対して好ましくは1重量%~70重量%、好ましくは2重量%~60重量%、よりなおさら好ましくは5重量%~50重量%である。
【0091】
(触媒の特徴)
本発明による前記触媒は、有利には、以下の特徴を有する。
- TPD;0.5~1.5g/mL、好ましくは0.55~1.2g/mL、よりなおさら好ましくは0.65~1g/mL、よりなおさら好ましくは0.7~0.85g/mL、
- 比表面積;BET法によって決定される;600m/g未満、好ましくは50~450m/g、よりなおさら好ましくは170~350m/g、
- 全細孔容積;窒素ポロシメトリによって測定される;0.2mL/g超、好ましくは0.25~0.80mL/g、よりなおさら好ましくは0.35~0.55mL/g、
- 全細孔容積;水銀ポロシメトリによって測定される;0.2mL/g超、好ましくは0.25~0.75mL/g、よりなおさら好ましくは0.3~0.55mL/g、
- 多峰性細孔サイズ分布;水銀ポロシメトリによって測定される;径が4~50nmである細孔のドメインにおける;すなわち、少なくとも2つの別個のピークを有するかまたは1つのブロードのピークを1つ若しくは複数の肩部とともに有している;平均細孔径は、4~50nm、好ましくは5~20nm、よりなおさら好ましくは6~16nmである、
- 上に定義された容積V2対全細孔容積の比;これら2つの容積は、水銀ポロシメトリによって測定される;0.8未満、好ましくは0.6未満、よりなおさら好ましくは0.2~0.55、
- 好ましくは、上で定義された容積V3は、0.04mL/g超、好適には0.05~0.45mL/g、よりなおさら好ましくは0.1~0.25mL/gである、
- 容積V5と容積V2との間の比;上で定義された;0.8未満、好ましくは0.6未満、よりなおさら好ましくは0.2~0.55、
- 好ましくは、容積V6;上で定義された;0.05mL/g超、好適には0.1mL/g超、よりなおさら好ましくは0.1~0.4mL/g、
- 好ましくは、径が14nm超である細孔内に含有される細孔容積;水銀ポロシメトリによって測定される;0.3mL/g未満、好ましくは0.2mL/g未満、
- 好ましくは、径が16nm超である細孔内に含有される細孔容積;0.25mL/g未満、好ましくは0.15mL/g未満、
-好ましくは、径が20nm超である細孔内に含有される細孔容積;水銀ポロシメトリによって測定される;0.15mL/g未満、好ましくは0.1mL/g未満、
- 径が50nm超である細孔内に含有される細孔容積;水銀ポロシメトリによって測定される;0.005mL/g未満、好ましくは0.003mL/g未満;好適には、この容積は0である、
- 径が50nm超である細孔内に含有される細孔容積対全細孔容積の比;これらの2つの容積は、水銀ポロシメトリによって測定される;2%未満、好ましくは1%未満であり、好適には、この比は、0である、
- 径が8nm超かつ20nm未満である細孔内に含有される細孔容積対全細孔容積の比;これらの2つの容積は、水銀ポロシメトリによって測定される;35%超、好ましくは40%~90%、よりなおさら好ましくは55%~75%である、
- 径が20nm超かつ50nm未満である細孔内に含有される細孔容積対全細孔容積の比;これらの2つの容積は、水銀ポロシメトリによって測定される;35%未満、好ましくは25%未満、よりなおさら好ましくは20%未満。
【0092】
触媒中の担体の重量含有率は、一般に、前記触媒の全重量に相対して5重量%超、有利には15重量%超、好ましくは40重量~95重量%、よりなおさら好ましくは65重量~90重量%である。
【0093】
触媒中のシリカ-アルミナの重量含有率は、一般に、前記触媒の全重量に相対して1重量%~99重量%、有利には10重量%~85重量%、好ましくは40重量%~75重量%である。
【0094】
前記担体がアルミン酸バインダを含むケースにおいて、触媒中のアルミナの重量含有率は、一般に、前記触媒の全重量に相対して0.5重量%~70重量%、有利には1重量%~60重量%、好ましくは3重量%~50重量%である。
【0095】
触媒中のゼオライトの重量含有率は、一般に、前記触媒の全重量に相対して0.1重量%~30重量%、有利には0.2重量%~20重量%、好ましくは0.5重量%~10重量%、より好ましくは1重量%~9重量%、よりなおさら好ましくは1.5重量%~8重量%である。
【0096】
(調製方法)
本発明の別の主題は、本発明による触媒を調製するための方法にある。
【0097】
特に、本発明の別の主題は、本発明による触媒を調製するための方法であって、少なくとも以下の工程を含む方法にある:
a) シリカ前駆体をアルミナ前駆体と混合することによってシリカ-アルミナゲルを調製する工程;前記アルミナ前駆体は、以下を有している:
・ 分散性指数:15%~70%、
・ ナトリウム含有率:アルミナ前駆体の全質量に相対して0.003重量%~2重量%、
・ 硫黄含有率:アルミナ前駆体の全質量に相対して0.005~2重量%、
b) 少なくとも1種のゼオライトを、シリカ-アルミナゲルと混合する工程;前記ゼオライトの酸点分布指数(ASDI)は、H/D交換によって測定されて、0.15超である、
c) 得られた混合物を、任意選択にアルミン酸バインダの存在中で成形する工程、
d) 成形された材料を乾燥させる少なくとも1回の工程、
e) 乾燥済み材料の熱処理および/または水熱処理の少なくとも1回の工程;担体を得る、
f) 周期律表の第VIB族からの元素および周期律表の第VIII族からの非貴金属元素によって形成される群から選ばれる少なくとも1種の水素化/脱水素元素を担体上に導入する工程、
g) 含浸済み担体を乾燥させる少なくとも1回の工程、および
e) 場合による、含浸・乾燥済み担体の熱処理および/または水熱処理の少なくとも1回の工程;前記触媒を得る。
【0098】
上記の担体の特性は、工程e)の終結の際に得られる担体に対応する。
【0099】
上記の触媒の特性は、工程g)および工程h)が行われるケースにおいて場合により工程h)の終結の際に得られる触媒に対応する。
【0100】
(工程a))
本発明によれば、前記方法は、シリカ前駆体をアルミナ前駆体と混合することによってシリカ-アルミナゲルを調製する工程a)を含み、前記アルミナ前駆体は、以下を有する:
- 分散性指数:15%~70%、好ましくは30%~70%、よりなおさら好ましくは50%~68%、
- ナトリウム含有率:アルミナ前駆体の全質量に相対して0.003重量%~2重量%、好ましくはアルミナ前駆体の全質量に相対して0.005重量%~1重量%、よりなおさら好ましくは0.006重量%~0.1重量%、
- 硫黄含有率:アルミナ前駆体の全質量に相対して0.005重量%~2重量%、好ましくはアルミナ前駆体の全質量に相対して0.01重量%~1重量%、よりなおさら好ましくは0.02重量%~0.2重量%。
【0101】
前記シリカ-アルミナゲルを調製する工程a)において特許請求された特徴を有するアルミナ前駆体の使用により、前記担体の特定の多孔度を得ることが可能となる。
【0102】
好ましくは、前記アルミナ前駆体は、結晶子から構成され、当該結晶子のサイズは、結晶学的方位[020]および[120]に沿ったX線回折におけるScherrer式によって得られ、それぞれに、2~20nmおよび2~35nmである。好ましくは、アルミナ前駆体の結晶学的方位[020]に沿う結晶子サイズは、2~15nmであり、結晶学的方位[120]に沿った結晶子サイズは。2~30nmである。
【0103】
アルミナ前駆体は、有利には、一般式Al・nHOの水和アルミナ化合物の群から選ばれてよい。アルミニウム水和物を用いることが特に可能であり、例えば、ハイドラジライト、ギブサイト、バイヤライト、ベーマイト、擬ベーマイトおよび無定形または本質的に無定形のアルミナゲルがある。より優先的に用いられるアルミニウム水和物Al・nHOはベーマイトである。
【0104】
前記アルミナ前駆体は、有利には、当業者に知られている方法のいずれかに従って調製されてよい。初期のアルミニウムベースの化合物の酸性または塩基性の性質に応じて、アルミニウム水和物は、塩基または酸を用いて沈殿させられ、例えば前記の塩酸、硫酸、水酸化ナトリウムまたは上述のアルミニウムの塩基性若しくは酸性の化合物から選ばれる。2つの反応物は、硫酸アルミニウムおよびアルミン酸ナトリウムであってよい。硫酸アルミニウムおよびアルミン酸ナトリウムを用いるアルファ-アルミナ一水和物の調製の例について、参照がなされてよいのは、特に特許US4154812である。
【0105】
シリカ前駆体は、水溶性アルカリ性ケイ酸塩、ケイ酸、ケイ酸ゾル、カチオン性ケイ素塩、例えば水和メタケイ酸ナトリウム、アンモニア型またはアルカリ型のLudox(登録商標)、ケイ酸第四級アンモニウムによって形成される群から選ばれてよい。シリカゾルは、当業者に知られている方法のいずれかに従って調製されてよい。好ましくは、脱カチオンオルトケイ酸溶液は、樹脂上のイオン交換によって水溶性アルカリ性ケイ酸塩から調製される。
【0106】
ケイ酸ゾルは、当業者に知られている方法のいずれかに従って調製されてよい。好ましくは、ケイ酸ゾルは、水溶液中のアルカリ性ケイ酸塩からイオン交換樹脂上のイオン交換によって調製される。ケイ酸ゾル中のSiOの含有率は、20~120g/L、好ましくは30~90g/L、よりなおさら好ましくは40~80g/Lである。
【0107】
本発明によるアルミナ前駆体は、有利には、激しく撹拌された反応器内に含有される水中に分散され、アルミナAl含有率:懸濁液の容積(L)あたり4~15g/L、好ましくは5~12g/L、好適には6~10g/Lを達成するようにする。この懸濁液は、有利には、硝酸により酸性化され、pH2~6、好ましくはpH3~5を達成するようにし、次いで、激しい撹拌を維持しながらシリカ前駆体が周囲温度で加えられる。
【0108】
得られた懸濁液は、次いで、有利には、40~95℃、優先的には50~70℃、よりなおさら好ましくは55~65℃の温度まで、10~180分、優先的には20~120分、よりなおさら好ましくは40~100分にわたって加熱される。懸濁液は、次いで、ろ過され、得られたシリカ-アルミナゲルは60%~85%の水を含有する。
【0109】
(工程b))
工程a)において得られたシリカ-アルミナゲルは、次いで、例えばブラベンダーニーダーにおいて、ゼオライトおよび場合によりバインダと混合および混練され、前記ゼオライトの酸点分布指数(ASDI)は、0.15超であり、押出可能なペーストを得る。
【0110】
前記ゼオライトは、上記の特徴も有する。
【0111】
押し出されるべきペーストの固形分を調節して押出可能にするために、主に固形の化合物、好ましくは酸化物または水和物が加えられてよい。水和物が好ましく用いられることになり、よりなおさら好ましくは、アルミン酸バインダの前駆体であるアルミニウム水和物である。
【0112】
バインダがアルミン酸バインダであるケースにおいて、工程b)において用いられるアルミナ前駆体は、有利には、工程a)において用いられるアルミナ前駆体と同一でも異なっていてもよい。
【0113】
(工程c))
成形工程c)は、例えば、押出、ペレット化、液滴凝固(油滴)法、回転プレート上の造粒または当業者に周知である任意の他の方法によって行われてよい。
【0114】
好ましくは、成形工程c)は、混練押出によって行われる。
【0115】
押出は、任意の従来の市販のツールにより行われてよい。混練から得られたペーストは、ダイを通して押し出され、例えばピストンまたは単軸若しくは二軸の押出機を用いる。この押出工程は、当業者に知られている任意の方法によって行われてよい。
【0116】
成形は、触媒の種々の成分の存在中で行われてもよい。
【0117】
さらに、本発明に従って使用される担体は、当業者に周知であるように、添加剤により処理されていてもよく、前記担体の成形を容易にし、かつ/または最終的な機械的特性を改善する。言及が特になされてよいのは、添加剤の例として、セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、トール油、キサンタンガム、界面活性剤、凝集剤、例えばポリアクリルアミド、カーボンブラック、デンプン、ステアリン酸、ポリアクリルアルコール、ポリビニルアルコール、バイオポリマー、グルコース、ポリエチレングリコールなどである。
【0118】
担体は、好ましくは、種々の形状およびサイズの粒体の形態に成形される。それは、一般に、ねじれた多葉形または円筒形の押出物の形態で用いられるが、場合によっては、粉砕粉末、球、菱形、トーラス、ビーズまたはホイールの形態で製造・使用されてよい。しかしながら、担体は、径が0.5~5mm、より具体的には0.7~3mm、さらにより具体的には1.0~2.5mmである押出物の形態にあることが有利である。形状は、円筒形(中空であってもなくてもよい)、ねじれた円筒形、多葉形(例えば、2、3、4または5つの葉)または円環形である。三葉および四葉の形態が好ましく用いられるが、任意の他の形態が用いられてもよい。
【0119】
(工程d))
このようにして得られた成形済み担体は、次いで、当業者に知られている任意の技術に従って乾燥させられる。
【0120】
乾燥工程は、15~250℃、好ましくは30~200℃、よりなおさら好ましくは50~180℃の温度で、典型的には10分~24時間の継続期間にわたって行われる。より長い処理の継続期間は除外されないが、改善に寄与しない。乾燥工程は、有利には、不活性雰囲気下または酸素含有雰囲気下、大気圧または減圧で行われる。好ましくは、この乾燥工程は、大気圧で空気の存在中で行われる。
【0121】
(工程e))
乾燥済み担体は、次いで、当業者に知られている任意の技術に従って、熱処理および/または水熱処理の少なくとも1回の工程を受ける。水熱処理は、蒸気相または液相中の水との接触を意味すると理解される。この処理は、例えば、横断床、掃引床または静的雰囲気で実行されてよい。例えば、用いられるオーブンは、回転オーブンまたは放射状に横断される層を有する垂直オーブンであってよい。
【0122】
熱処理および/または水熱の処理は、250~1100℃の温度で、典型的には15分~10時間の継続期間にわたって、不活性雰囲気下または酸素含有雰囲気下に、場合によっては水の存在中で行われる。より長い処理の継続期間は、除外されないが、改善に寄与しない。熱または水熱の処理のいくつかの複合サイクルが行われ得る。
【0123】
本発明の好適な実施形態によると、乾燥済み材料は、空気および蒸気の存在中、600~1100℃、好ましくは650~950℃、よりなおさら好ましくは750~900℃の温度で、30分~5時間の継続期間にわたって、少なくとも1回の水熱処理を受ける。蒸気含有率は、乾燥空気の重量(kg)あたり水20~1000g、好ましくは乾燥空気の重量(kg)あたり水40~500g、好適には乾燥空気の重量(kg)あたり水100~350gである。
【0124】
本発明の別の好適な実施形態によると、乾燥済み材料は、250~700℃、好ましくは300~600℃、よりなおさら好ましくは350~550℃の温度で、30分~5時間の継続期間にわたって熱処理を受け、次いで、このように熱処理された担体は、空気および蒸気の存在中、600~1100℃、好ましくは650~950℃、よりなおさら好ましくは750~900℃の温度で、30分~5時間の継続期間にわたって水熱処理を受ける。蒸気含有率は、乾燥空気の重量(kg)あたり水20~1000gの水、好ましくは乾燥空気の重量(kg)あたり水40~500g、好適には乾燥空気の重量(kg)あたり水100~350gである。
【0125】
(工程f))
工程e)において得られた担体は、次いで、周期律表の第VIB族および第VIII族からの元素によって形成される群から選ばれる少なくとも1種の水素化/脱水素元素を前記担体上に導入する工程f)に供される。
【0126】
少なくとも1種の水素化/脱水素元素を導入する工程は、有利には、当業者に周知の任意の方法によって、特に、工程e)から得られた担体に、第VIB族および/または第VIII族からの元素の前駆体、場合によっては、リン、ホウ素およびケイ素によって形成される群から選ばれる少なくとも1種のドーピング元素の前駆体、並びに場合によっては、第VIIB族および/または第VB族からの少なくとも1種の元素の前駆体を含有している溶液を含浸させる1回または複数回の操作によって行われる。
【0127】
好ましくは、前記工程f)は、考慮される元素の前駆体を含有している溶液を乾式含浸させる方法によって行われる。
【0128】
第1の実施形態によると、第VIB族および/または第VIII族からの元素の前記前駆体、場合によるドーピング元素の前駆体、および場合による第VIIB族および第VB族からの元素の前駆体は、1回または複数回の共含浸工程によって前記担体上に堆積され、すなわち、前記前駆体は、前記担体上に同時に導入される。1回または複数回の共含浸工程は、優先的には、乾式含浸または過剰の溶液中の含浸によって実行される。この第1の実施形態がいくつかの共含浸工程の実施を含む場合、各共含浸工程の後に、好ましくは中間乾燥工程が行われ、その際の温度は、一般に200℃未満、有利には50~180℃、好ましくは60~150℃、大いに好ましくは75~140℃である。
【0129】
共含浸による好適な実施形態によると、含浸溶液は、好ましくは水溶液である。好ましくは、前記含浸水溶液は、溶液中にヘテロポリアニオンの形成を促進するpH条件下で調製される。例えば、前記含浸水溶液のpHは、1~5である。
【0130】
第2の実施形態によると、第VIB族からの1種または複数種の元素、第VIII族からの1種または複数種の元素、場合による1種または複数種のドーピング元素並びに場合による第VIIB族および第VB族からの1種または複数種の元素の前駆体は、任意の順序での連続の堆積によって工程e)から生じた担体上に導入される。堆積は、当業者に周知の方法に従って、乾式含浸、過剰含浸あるいはほかに堆積/沈殿によって行われてよい。この第2の実施形態において、中間乾燥工程は、2回の連続する含浸の間に実施されてよく、一般に、その際の温度は、200℃未満、有利には50~180℃、好ましくは60~150℃、大いに好ましくは75~140℃である。
【0131】
前記前駆体の堆積の様式にかかわらず、含浸溶液の組成物に用いられる溶媒は、前記前駆体を溶解させるように選ばれ、例えば、水または有機溶媒(例えばアルコール)がある。
【0132】
第3の実施形態において、第VIB族からの元素、第VIII族からの元素、場合によるリンおよび場合による第VIIB族および第VB族からの1種または複数種の元素から選ばれる1種または複数種の金属の前駆体の溶液は、工程b)の過程で加えられる。共混練は、有利には、ニーダ、例えば当業者に周知の「ブラベンダー」タイプのニーダにおいて行われる。
【0133】
用いられてよい第VIB族からの元素の前駆体は、当業者に周知である。
【0134】
使用がなされてよいのは、例として、モリブデン源の中で、酸化物および水酸化物、モリブデン酸およびその塩、特にアンモニウム塩、例えばモリブデン酸アンモニウム、七モリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸(HPMo1240)およびその塩、並びに場合によるケイモリブデン酸(HSiMo1240)およびその塩がある。モリブデンの供給源は、任意のヘテロポリ化合物、例えば、ケギン、欠損型ケギン、置換型ケギン、ドーソン、アンダーソンまたはストランドベルグのタイプのものであることもできる。使用が好ましくなされるのは、三酸化モリブデン、並びに、ケギン、欠損型ケギン、置換型ケギンおよびストランドベルグのタイプのヘテロポリ化合物である。
【0135】
例えば、使用がなされてよいのは、タングステンの供給源の中で、酸化物および水酸化物、タングステン酸およびその塩、特にアンモニウム塩、例えばタングステン酸アンモニウム、メタタングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸およびその塩、並びに場合によるケイタングステン酸(HSiW1240)およびその塩がある。タングステンの供給源は、任意のヘテロポリ化合物、例えば、ケギン、欠損ケギン、置換ケギンまたはドーソンのタイプのものであることもできる。使用が好ましくなされるのは、酸化物およびアンモニウム塩、例えば、メタタングステン酸アンモニウム、またはケギン、欠損ケギンまたは置換型ケギンのタイプのヘテロポリ化合物である。
【0136】
用いられてよい第VIII族からの元素の前駆体も当業者に周知である。それらは、有利には、第VIII族からの元素の酸化物、水酸化物、ヒドロキシ炭酸塩、炭酸塩、カルボン酸塩(例えば酢酸塩など)、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩およびハロゲン化物(例えば、塩化物、臭化物およびフッ化物など)から選ばれる。例えば、水酸化ニッケル、ヒドロキシ炭酸ニッケルまたは硝酸ニッケル、炭酸コバルトまたは水酸化コバルトが好適には用いられる。
【0137】
リン、ホウ素またはケイ素から選ばれるドーピング元素が存在するケースにおいて、リンの好適な供給源は、オルトリン酸HPOであるが、その塩およびエステル、例えば、リン酸アンモニウムも適している。リンは、例えば、リン酸と、窒素を含有している塩基性有機化合物、例えばアンモニア水、第一級および第二級のアミン、環状アミン、ピリジンおよびキノリンの系統の化合物並びにピロールの系統の化合物との混合物の形態で導入されてよい。リンは、第VIB族からの1種または複数種の元素と同時にケギン、欠損型ケギン、置換型ケギンまたはストランドベルグのタイプのヘテロポリアニオンの形態で導入されてもよく、例えば、タングストリン酸である。
【0138】
リン含有率は、本発明の範囲をこれが限定することなく、溶液中および/または担体上に混合された化合物、例えば、タングステン-リンまたはモリブデン-リンまたはモリブデン-タングステン-リンを形成するように調節される。これらの混合された化合物は、ヘテロポリアニオン、例えば、アンダーソンのヘテロポリアニオンであってもよい。
【0139】
ホウ素の供給源は、ホウ酸、好ましくはオルトホウ酸HBO、二ホウ酸アンモニウムまたは五ホウ酸アンモニウム、酸化ホウ素またはホウ酸エステルであってよい。ホウ素は、例えば、ホウ酸、過酸化水素水溶液、および窒素を含有している塩基性有機化合物、例えばアンモニア水、第一級および第二級のアミン、環状アミン、ピリジンおよびキノリンの系統の化合物並びにピロールの系統の化合物の混合物の形態で導入されてよい。ホウ素は、例えば、水/アルコール混合物中のホウ酸の溶液によって導入されてよい。
【0140】
ケイ素の多くの供給源が用いられてよい。それ故に、使用がなされてよいのは、オルトケイ酸エチルSi(OEt)、シロキサン、ポリシロキサン、シリコーン、シリコーンエマルジョン、ケイ酸ハリド、例えば、フルオロケイ酸アンモニウム(NHSiFまたはフルオロケイ酸ナトリウムNaSiFである。ケイモリブデン酸およびその塩、ケイタングステン酸およびその塩が有利には用いられてもよい。ケイ素は、例えば、水/アルコール混合物中の溶液中のケイ酸エチルの含浸によって加えられてよい。ケイ素は、例えば、水中に懸濁したシリコーンまたはケイ酸のタイプのケイ素化合物の含浸によって加えられてよい。
【0141】
本発明による触媒が第VB族からの少なくとも1種の元素も含むケースにおいて、用いられてよい第VB族からの元素の供給源は、当業者に周知である。例えば、ニオブの供給源の中で、使用がなされてよいのは、酸化物、例えば、五酸化二ニオブNb、ニオブ酸Nb・HO、水酸化ニオブおよびポリオキシニオブ酸塩、式Nb(OR1)(式中、R1は、アルキル基である)のニオブアルコキシド、シュウ酸ニオブNbO(HC、またはニオブ酸アンモニウムがある。使用が好ましくなされるのは、シュウ酸ニオブまたはニオブ酸アンモニウムである。
【0142】
本発明による触媒が第VIIB族からの少なくとも1種の元素も含むケースにおいて、用いられてよい第VIIB族からの元素の供給源は、当業者に周知である。使用が好ましくなされるのは、アンモニウム、硝酸および塩化物の塩である。
【0143】
(工程g))
工程f)から得られた含浸済み担体は、次いで、乾燥工程に供される。
【0144】
好ましくは、前記乾燥工程は、有利には250℃未満、好ましくは15~250℃、より優先的には30~220℃、よりなおさら優先的には50~200℃、一層より優先的には70~180℃の温度で、典型的には10分~24時間の継続期間にわたって行われる。より長い継続期間は、除外されないが、必ずしも改善に寄与するものではない。
【0145】
乾燥工程は、当業者に知られている任意の技術によって実行されてよい。それは、有利には、不活性雰囲気下または酸素含有雰囲気下または不活性ガスと酸素との混合物下に実行される。それは、有利には、大気圧または減圧で実行される。好ましくは、この工程は、大気圧で空気または窒素の存在中で行われる。
【0146】
(工程h)(任意選択))
工程g)から得られた含浸・乾燥済みの担体は、次いで、場合によっては、当業者に知られている任意の技術に従って、熱処理および/または水熱処理の工程に供され、本発明による前記触媒を得る。この処理は、例えば、横断床、掃引床または静的雰囲気中で実行されてよい。例えば、用いられるオーブンは、回転オーブンまたは放射状に横断される層を有する垂直オーブンであってよい。
【0147】
熱処理および/または水熱処理は、有利には250℃~1000℃、好ましくは300℃~600℃の温度で、不活性雰囲気下または酸素含有雰囲気下に、場合によっては、蒸気の存在中で行われる。この熱処理の継続期間は、一般に15分~10時間である。より長い継続期間は、除外されないが、必ずしも改善に寄与するものではない。蒸気含有率は、有利には、乾燥空気の重量(kg)あたり水0~100g、好ましくは乾燥空気の重量(kg)あたり水0~80gである。
【0148】
このようにして得られた本発明による触媒は、好ましくは、本発明による水素化分解法におけるその使用のために硫化処理に供され、処理対象の供給原料と接触させる前に、金属種を硫化物に少なくとも部分的に変換することを可能にする。本発明の触媒の第VIB族および第VIII族からの元素は、金属および/または酸化物および/または硫化物の形態で完全にまたは部分的に存在してよい。
【0149】
硫化によるこの活性化処理は、当業者に周知であり、文献に既に記載されている任意の方法によって、現場内(in situ)、すなわち反応器内、または現場外(ex situ)のいずれかで行われることができる。
【0150】
硫化剤は、HSガスまたは触媒を硫化する目的で炭化水素供給原料の活性化に用いられる任意の他の硫黄含有化合物である。前記硫黄含有化合物は、有利には、アルキルジスルフィド、例えばジメチルジスルフィド(dimethyl disulfide:DMDS)など、アルキルスルフィド、例えばジメチルスルフィド、n-ブチルチオール、tert-ノニルポリスルフィドタイプのポリスルフィド化合物、例えば、Arkemaによって販売されているTPS-37若しくはTPS-54など、または触媒の良好な硫化を得るために当業者に知られている任意の他の化合物から選ばれる。好ましくは、触媒は、硫化剤および炭化水素供給原料の存在中で、現場内硫化される。大いに好ましくは、触媒は、炭化水素供給原料にジメチルジスルフィドを添加したものの存在中、150~800℃、好ましくは250~600℃の温度で、現場内硫化される。
【0151】
本発明は、本発明による前記触媒を用いて炭化水素供給原料を水素化分解および/または水素化転化するための方法にも関する。
【0152】
(水素化分解法)
本発明の別の主題は、同様に、本発明の触媒の存在中で、少なくとも1種の炭化水素供給原料を水素化分解するための方法の主題を有し、当該炭化水素供給原料は、好ましくは液状の形態にあり、その中の最低50重量%の化合物が300℃超かつ650℃未満の沸点を有し、当該水素化分解する際の温度は、200℃~480℃であり、その際の全圧は、1MPa~25MPaであり、炭化水素供給原料の容積あたりの水素の容積の比は、80~5000リットル/リットルであり、その際の毎時空間速度(hourly space velocity:HSV)は、反応器に充填された触媒の容積あたりの炭化水素供給原料(好ましくは液状の液体にある)の容積流量の比によって定義されて、0.1~50h-1である。
【0153】
好ましくは、本発明による水素化分解法は、水素の存在中で実行され、その際の温度は、250~480℃、好適には320~450℃、大いに好ましくは330~435℃であり、圧力は、2~25MPa、好適には3~20MPaであり、その際の空間速度は、0.1~20h-1、好ましくは0.1~6h-1、好適には0.2~3h-1であり、導入される水素の量は、水素の容積(リットル)/炭化水素の容積(リットル)の容積比が100~3000NL/Lになるようにされる。
【0154】
よりなおさら好ましくは、本発明による水素化分解法は、水素の存在中で実行され、その際の温度は、300~400℃であり、圧力は、9~20MPaであり、空間速度は、0.2~3h-1であり、導入される水素の量は、水素の容積(リットル)/炭化水素の容積(リットル)の容積比が100~2000NL/Lになるようにされる。
【0155】
有利には、本発明による触媒は、1種または複数種の水素化処理触媒を含有している前処理セクションの後に、本発明による水素化分解法において用いられ、当該水素化処理触媒は、当業者に知られている任意の触媒であってよく、当該水素化処理触媒により、供給原料(以下を参照)中の一定の汚染物質、例えば、窒素、硫黄または金属の含有率を低下させることが可能になる。この前処理セクションの操作条件(HSV、温度、圧力、水素流量、液体、反応構成など)は、当業者の知識に応じて多種多様に変更されることができる。
【0156】
(供給原料)
非常に多様な供給原料が、本発明による水素化分解法によって処理され得る。本発明による水素化分解法において用いられる供給原料は、炭化水素供給原料であり、そのうちの化合物の最低50重量%の沸点は300℃超かつ650℃未満であり、好ましくは、そのうちの化合物の最低60重量%、好適には最低75重量%、より好ましくは、最低80重量%の沸点は300℃超かつ650℃未満である。
【0157】
供給原料は、有利には、LCO(Light Cycle Oil(ライトサイクルオイル)、接触分解ユニットから得られた軽質ガスオイル)、常圧留出物、減圧留出物、例えば、原油の直接蒸留から得られたガスオイルまたは転化ユニット、例えば、FCC、コーキングまたはビスブレーキングのユニットから得られたガスオイル、潤滑油基剤からの芳香族化合物の抽出のためのユニットに由来する供給原料または潤滑油基剤の溶媒脱ろうから得られた供給原料、AR(atmospheric residues:常圧残渣)および/またはVR(vacuum residues:減圧残渣)および/または脱れき油の固定床または沸騰床の脱硫または水素化転化の方法に由来する留出物、および脱れき油、またはフィッシャー・トロプシュ方法から得られたパラフィン、あるいはほかに、上述の供給原料の任意の混合物から選ばれる。言及がなされてよいのは、再生可能な起源の供給原料(例えば、植物油、動物性脂肪、リグノセルロース系バイオマスの水熱転化または熱分解からの油)、およびまたプラスチック熱分解油、並びにこれらの供給原料それら自体または上述の炭化水素供給原料との任意の混合物である。上記リストは、限定するものではない。前記供給原料が好ましく有する沸点T5は、300℃超、好ましくは340℃超であり、すなわち、供給原料中に存在する化合物の95%の沸点は、300℃超、好適には340℃超である。
【0158】
本発明による方法において処理される供給原料の窒素含有率は、有利には500重量ppm超、好ましくは500~10,000重量ppm、より好ましくは700~5000重量ppm、よりなおさら好ましくは1000~4000重量ppmである。本発明による方法において処理される供給原料の硫黄含有率は、有利には0.01重量%~5重量%、好ましくは0.2重量%~4重量%、よりなおさら好ましくは0.5重量%~3重量%である。
【0159】
供給原料は、場合によっては、金属を含有するかもしれない。本発明による方法において処理される供給原料のニッケルおよびバナジウムの合わせた含有率は、好ましくは10重量ppm未満、好適には5重量ppm未満、よりなおさら好ましくは1重量ppm未満である。
【0160】
供給原料は、場合によっては、アスファルテンを含有するかもしれない。アスファルテン含有率は、一般に3000重量ppm未満、好ましくは1000重量ppm未満、よりなおさら好ましくは200重量ppm未満である。
【0161】
有利には、水素化処理セクションの後に本発明による触媒が用いられる場合、本発明による触媒を用いる本発明による方法に注入される液中の窒素、硫黄、金属および/またはアスファルテンの含有率は、低下させられる。好適には、本発明による水素化分解法において処理される供給原料中の有機性窒素の含有率は、次いで、水素化処理の後に、0~200ppm、好ましくは0~50ppm、よりなおさら好ましくは0~30ppmである。硫黄含有率は、好ましくは1000ppm未満、好ましくは5~500ppm、よりなおさら好ましくは10~400ppmである。アスファルテン含有率は、好ましくは200ppm未満である一方で、金属(NiまたはV)の含有率は、1ppm未満である。
【0162】
本発明による水素化分解法は、供給原料を水素化処理するためのセクションと、本発明による触媒を用いる1基または複数基の水素化分解反応器との間に分画工程を含む場合がある。水素化処理セクションと、本発明による触媒を用いる1基または複数基の水素化分解反応器との間で(ガスおよび液)分画を伴わずに水素化分解法が行われる1つの実施形態(「1工程」法)において、水素化処理によって液から除去された窒素および硫黄は、NHおよびHSの形態で本発明による触媒を含有している1基または複数基の反応器に注入される。水素化分解法が、水素化処理セクションと、本発明による触媒を用いる水素化分解反応器の少なくとも1基との間で(ガスおよび液)分画を伴って行われる好適なケース(「2工程」法)において、分画の下流の液中のNH含有率は、0~100ppm、好ましくは0~50ppm、よりなおさら好ましくは0~20ppmであり、HS含有率は、0~1000ppm、好ましくは5~500ppm、よりなおさら好ましくは10~400ppmである。
【0163】
本方法は、未転化画分のリサイクルの有無にかかわらず、標的とされる供給原料の転化の程度に応じて、以下に記載されるように、1工程または2工程で行われることができる。好ましくは、本方法は、2工程で行われ、未転化画分のリサイクルを伴う。本発明による触媒は、単独でまたは別の水素化分解触媒との組み合わせで、水素化分解法の1または2工程の水素化分解反応器の少なくとも1基において非限定的に用いられることができる。好ましくは、本発明による触媒は、(ガスおよび液)分画の下流に位置する水素化分解反応器の少なくとも1基において用いられる。
【0164】
本発明による方法において用いられるこれらの操作条件により、一般に、沸点が340℃未満、さらに良好には370℃未満である生成物への通過毎の転化率:15重量%超、よりなおさら好ましくは20~100重量%を得ることが可能となる。
【0165】
「1工程」方法において、転化対象の供給原料は、水素化分解触媒上を1回通過する。得られた生成物は、製油所のガソリン、ケロセンまたはディーゼルのプールに直接的に加えられ、未転化画分は、オイルのための基剤として機能することができ、またはFCC法によって転化されることができる。
【0166】
「2工程」方法において、第1の水素化分解反応器からの出口のところで中間体分離が行われ、分解された生成物を第1の反応器で転化されなかった部分から分離することを可能にする。供給原料の未転化画分は、次いで、第2の水素化分解触媒を含有している第2の水素化分解反応器に送られ、供給原料の中間留出物への総転化率を高めるようにする。
【0167】
以下の実施例は、本発明を例証するものであるが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0168】
(実施例)
(実施例1:触媒C1(本発明に合致する)の調製)
(シリカ-アルミナゲルSA1の調製)
ベーマイトゲルG1の調製を、特許US4154812の実施例1に従って行い、噴霧乾燥させる。得られたベーマイトゲルG1は、以下の特徴を有する。
【0169】
【表1】
【0170】
このベーマイトゲル126gを、68%硝酸3.9gで酸性化した水1450gに分散させる。得られた懸濁液を、メカニカルスターラーを用いて周囲温度で撹拌する。1リットルのケイ酸ゾルの調製を、ゾル中SiO60gに相当する量を得るのに必要な濃度にケイ酸ナトリウム溶液を希釈して、これをイオン交換樹脂(事前に酸性化されている)に通すことによって行う。蠕動ポンプを用いて22mL/分の流量で得られたシリカゾルをベーマイト懸濁液に加える。混合物を、次いで、60℃に加熱し、次いで、1時間にわたって撹拌しながらこの温度で熟成させる。懸濁液を、次いで、焼結ブフナー型デバイス上でろ過して、シリカ-アルミナゲルSA1を得る。
【0171】
シリカ-アルミナゲルSA1上の蛍光X線測定が指し示すシリカ含有率は、全酸化物含有率(SiO+Al)に相対するSiOの重量%で表されて、32.2重量%である。
【0172】
このゲルSA1の強熱減量は、70.8%である。
【0173】
強熱減量は、材料の含水率に対応する;それは、1000℃での4時間にわたる熱処理の後の質量の損失を介して測定される。
【0174】
(ゼオライトZ1)
USY型のゼオライトZ1を用いる。これは、以下の特徴を有している。
【0175】
【表2】
【0176】
(担体S1の成形)
シリカ-アルミナゲルSA1の218g、ゼオライトZ1の4gおよびベーマイトゲルG1の11.7gを、Zアームニーダーにおいて50rpmで混合・混練し、次いで、得られたペーストを2.5mm径の三葉ダイを通して押し出す。加えられたゼオライトZ1の量は、乾燥担体の全重量に相対するZ1の重量で5重量%の質量含有率に相当する。
【0177】
(担体S1の水熱処理)
換気オーブン中、20時間にわたって80℃で乾燥させた後、押出物を、450℃で2時間にわたって乾燥空気の重量(キログラム)あたり40g未満の水を含有している空気の流れの下に、次いで、800℃で2時間にわたって乾燥空気の重量(キログラム)あたり200gの水を含む蒸気の存在中で、水熱的に処理する。
【0178】
このようにして得られた担体S1の特徴を以下の表7にまとめる。
【0179】
(触媒C1(本発明に合致する)の調製)
触媒C1を、タングステンおよびニッケルの塩を含有している水溶液を担体S1に乾式含浸させることによって得る。タングステン塩は、メタタングステン酸アンモニウム(NH1240・4HOであり、ニッケル塩は、硝酸ニッケルNi(NO・6HOである。水飽和雰囲気中、周囲温度での10時間にわたる熟成の後に、含浸済み押出物を換気オーブン中、120℃で18時間にわたって乾燥させ、次いで、500℃で2時間にわたって、乾燥空気の重量(キログラム)あたり40g未満の水を含有している空気の流れ下に水熱的に処理する。
【0180】
このようにして得られた触媒C1の特徴を以下の表8にまとめる。
【0181】
(実施例2:触媒C2(比較例)の調製)
本発明に合致しない触媒C2の担体S2の調節を、以下の特徴を有する市販のPURAL(登録商標)SB3ベーマイトゲルを用いて行う。
【0182】
【表3】
【0183】
市販のPURAL(登録商標)SB3ベーマイトゲル115gを、68%硝酸3.9gで酸性化した水1450gに分散させる。得られた懸濁液を、周囲温度でメカニカルスターラーを用いて撹拌する。1リットルのケイ酸ゾルの調製を、ゾル中SiO60gに相当する量を得るのに必要な濃度にケイ酸ナトリウム溶液を希釈して、これをイオン交換樹脂(事前に酸性化されている)に通すことによって行う。得られたシリカゾルを、蠕動ポンプを用いて22mL/分の流量でベーマイト懸濁液に加える。混合物を、次いで、60℃に加熱し、次いで、1時間にわたって撹拌しながらこの温度で熟成させる。懸濁液を、次いで、焼結ブフナー型デバイス上でろ過して、シリカ-アルミナゲルSA2を得る。
【0184】
シリカ-アルミナゲルSA2上の蛍光X線測定が指し示すシリカ含有率は、全酸化物含有率(SiO+Al)に相対するSiOの重量%で表されて、32.0重量%である。
【0185】
ゲルSA2の強熱減量は、74.5%である。
【0186】
(担体S2の成形)
シリカ-アルミナゲルSA2の247g、上記で用いられたゼオライトZ1の4gおよびベーマイト11.6gを、次いで、Zアームニーダーにおいて50rpmで混練し、次いで、得られたペーストを2.5mm径の三葉ダイを通じて押し出す。加えられたゼオライトZ1の量は、乾燥担体の全重量に相対するZ1の重量で5%の質量含有率に相当する。
【0187】
(担体S2の水熱処理)
換気オーブン中20時間にわたる80℃での乾燥の後に、押出物を、450℃で2時間にわたって乾燥空気の重量(キログラム)あたり40g未満の水を含有している空気の流れの下に、次いで800℃で2時間にわたって乾燥空気の重量(キログラム)あたり200gの水を含む蒸気の存在中で水熱的に処理する。
【0188】
このようにして得られた担体S2の特徴を以下の表7にまとめる。
【0189】
(触媒C2(比較例)の調製)
触媒C2を、触媒C1の調製について記載されたものと同じプロトコルに従って担体S2に乾式含浸させることによって得る。このようにして得られた触媒C2の物理化学的特性を以下の表8にまとめる。
【0190】
(実施例3:触媒C3(比較例)の調製および成形)
(シリカ-アルミナゲルSA3の調製)
ベーマイトゲルG3の調製を、特許US6589908の実施例1に従って行い、噴霧乾燥させる。得られたベーマイトゲルG3は、以下の特徴を有する。
【0191】
【表4】
【0192】
このベーマイトゲル119gを、68%硝酸3.9gで酸性化した水1450gに分散させる。得られた懸濁液を、メカニカルスターラーを用いて周囲温度で撹拌する。1リットルのケイ酸ゾルの調製を、ゾル中SiO60gに相当する量を得るのに必要な濃度にケイ酸ナトリウム溶液を希釈して、これをイオン交換樹脂(事前に酸性化されている)に通すことによって行う。得られたシリカゾルを、蠕動ポンプを用いて22mL/分の流量でベーマイト懸濁液に加える。混合物を、次いで、60℃に加熱し、次いで、1時間にわたって撹拌しながらこの温度で熟成させる。懸濁液を、次いで、焼結ブフナー型デバイス上でろ過して、シリカ-アルミナゲルSA3を得る。
【0193】
シリカ-アルミナゲルSA3上の蛍光X線測定が指し示すシリカ含有率は、全酸化物含有率(SiO+Al)に相対するSiOの重量%で表されて、33.2重量%である。
【0194】
SA3の強熱減量は、72%である。
【0195】
(担体S3の成形)
シリカ-アルミナゲルSA3の226g、上記で用いられるゼオライトZ1の4gおよびベーマイト11.7gを、次いで、Zアームニーダーにおいて50rpmで混練し、次いで、得られたペーストを2.5mm径の三葉ダイを通して押し出す。加えられたゼオライトZ1の量は、乾燥担体の全重量に相対してZ1の重量で5%の質量含有率に相当する。
【0196】
(担体S3の水熱処理)
換気オーブン中20時間にわたる80℃での乾燥の後に、押出物を、450℃で2時間にわたって乾燥空気の重量(キログラム)あたり40g未満の水を含有している空気の流れの下に、次いで800℃で2時間にわたって乾燥空気の重量(キログラム)あたり200gの水を含む蒸気の存在中で水熱的に処理する。
【0197】
このようにして得られた担体S3の特徴を以下の表7にまとめる。
【0198】
(触媒C3(比較例)の調製)
触媒C3を、触媒C1の調製について記載されたものと同じプロトコルに従う担体S3の乾式含浸によって得る。このようにして得られた触媒C3の物理化学的特性を以下の表8にまとめる。
【0199】
(実施例4:触媒C4(比較例)の調製および成形)
実施例1に記載されたベーマイトゲルG1を、オートクレーブ中110℃に1時間にわたって加熱して、ろ過の後に、ゲルG1とは異なる特徴を有するゲルG4を得、これらの特徴を以下に示す。
【0200】
【表5】
【0201】
ベーマイトゲルG4の369gを、68%硝酸3.9gで酸性化した水1200gに分散させる。得られた懸濁液を、メカニカルスターラーを用いて周囲温度で撹拌する。1リットルのケイ酸ゾルの調製を、ゾル中SiO60gに相当する量を得るのに必要な濃度にケイ酸ナトリウム溶液を希釈して、これをイオン交換樹脂(事前に酸性化されている)に通すことによって行う。得られたシリカゾルを、蠕動ポンプを用いて22mL/分の流量でベーマイト懸濁液に加える。混合物を、次いで、60℃に加熱し、次いで、1時間にわたって撹拌しながらこの温度で熟成させる。懸濁液を、次いで、焼結ブフナー型デバイス上でろ過して、シリカ-アルミナゲルSA4を得る。
【0202】
シリカ-アルミナゲルSA4上の蛍光X線測定が指し示すシリカ含有率は、全酸化物含有率(SiO+Al)に相対するSiOの重量%で表されて、32.8重量%である。
【0203】
(担体S4の成形)
シリカ-アルミナゲルSA4(LOI=73.8%)264g、上記で用いられるゼオライトZ1の4gおよびベーマイト11.6gを、Zアームニーダーにおいて50rpmで混合・混練し、次いで、得られたペーストを2.5mm径の三葉ダイを通して押し出す。加えられたゼオライトZ1の量は、乾燥担体の全重量に相対してZ1の重量で5%の質量含有率に相当する。
【0204】
(担体S4の水熱処理)
換気オーブン中20時間にわたる80℃での乾燥の後に、押出物を、450℃で2時間にわたって乾燥空気の重量(キログラム)あたり40g未満の水を含有している空気の流れの下に、次いで800℃で2時間にわたって乾燥空気の重量(キログラム)あたり200gの水を含む蒸気の存在中で水熱的に処理する。
【0205】
このようにして得られた担体S4の特徴を以下の表7にまとめる。
【0206】
(触媒C4(比較例)の調製)
触媒C4を、触媒C1の調製について記載されたものと同じプロトコルに従う担体S4の乾式含浸によって得る。このようにして得られた触媒C4の物理化学的特性を以下の表8にまとめる。
【0207】
(実施例5:触媒C5の調製および成形)
(ゼオライトZ5)
以下の特徴を有するUSY型のゼオライトZ5を用い、これは、以下の特徴を有している;
【0208】
【表6】
【0209】
(担体S5の成形)
実施例1において用いられたシリカ-アルミナゲルSA1の207g、ゼオライトZ5の3.9gおよびベーマイト11.7gを、次いで、Zアームニーダーにおいて50rpmで混練し、次いで、得られたペーストを2.5mm径の三葉ダイを通して押し出す。加えられたゼオライトZ5の量は、乾燥担体の全重量に相対してZ5の重量で5%の質量含有率に相当する。
【0210】
(担体S5の水熱処理)
換気オーブン中20時間にわたる80℃での乾燥の後に、押出物を、450℃で2時間にわたって乾燥空気の重量(キログラム)あたり40g未満の水を含有している空気の流れの下に、次いで800℃で2時間にわたって乾燥空気の重量(キログラム)あたり200gの水を含む蒸気の存在中で水熱的に処理する。
【0211】
このようにして得られた担体S5の特徴を以下の表7にまとめる。
【0212】
(触媒C5(比較例)の調製)
触媒C5を、触媒C1の調製について記載されたものと同じプロトコルに従う担体S5の乾式含浸によって得る。このようにして得られた触媒C5の物理化学的特性を以下の表8にまとめる。
【0213】
異なる担体S1~S5および異なる触媒C1~C5の特徴を以下の表に列挙する。
【0214】
【表7】
【0215】
【表8】
【0216】
(実施例6:真空留出物の1工程水素化分解における触媒C1~C5の評価)
触媒C1~C5(その調製は、実施例1~5に記載されている)を用いて、事前に水素化処理された真空留出物の水素化分解を行い、その主な特徴を以下に与える。
【0217】
【表9】
【0218】
触媒C1~C5を、本発明の方法に従って、供給原料の上昇流を伴う固定床反応器を含んでいる等温試験パイロットユニットを使用することによって用いる。試験供給原料にジメチルジスルフィド(DMDS)およびアニリンをそれぞれ添加して、添加済み供給原料中に2.8重量%の硫黄および1250重量ppmの窒素を得て、本方法の水素化処理工程によって生じる硫化水素およびアンモニアの分圧をシミュレートする。
【0219】
各触媒の評価を別々に行い、水素化分解試験の前に、直留ガスオイルに4重量%のジメチルジスルフィド(DMDS)および2重量%のアニリンを添加したものを用いて硫化する。硫化を行う際の、HSV(HSV=時間空間速度)は、2h-1であり、H/供給原料の容積比は、1000NL/Lであり、全圧は、14MPaであり、温度は、350℃であり、6時間にわたる。
【0220】
硫化の後、操作条件を、水素化分解試験に用いられるものに調節する:HSV:1.5h-1、H/供給原料容積比:1000NL/L、全圧:14MPa。反応器の温度を、供給原料を用いて150時間後に370℃+画分の正味転化率70重量%を標的とするように調節する。
【0221】
触媒の性能品質は、沸点が370℃未満である生成物への正味転化率(NC_370-)および中間留出物(150-370℃留分)についての総選択性(GS_MD)によって表される。それらは、模擬蒸留結果に基づいて表される。
【0222】
沸点が370℃未満である生成物への正味転化率NC(NC_370-)は、以下によって定義される:
NC_370-=[(%370-流出物)-(%370--供給原料)]/[100-(%370--供給原料)]
式中、%370_流出物は、流出物中の沸点が370℃未満である化合物の質量含有率であり、
%370-供給原料は、供給原料中の沸点が370℃未満である化合物の質量含有率である。
【0223】
中間留出物についての総選択性(GS_MD)は、以下によって定義される:
GS_MD=(%150-370流出物)/(%370-流出物)
式中、%150-370流出物は、流出物中の沸点が150℃~370℃である化合物の質量含有率である。
【0224】
得られた触媒性能品質を以下の表10に与える。
【0225】
【表10】
【0226】
実施例6は、それ故に、炭化水素供給原料の水素化分解を行うために本発明による触媒C1を用いることの全利点を示す。具体的には、それにより、中間留出物についての高い総選択性(GS_MD)を維持しながら、触媒C2、C3、C4およびC5よりも低い温度で、沸点が370℃未満である生成物への正味の転化率(NC_370):70%を得ることが可能になる。
【国際調査報告】