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特表2024-547057環状RNAを使用した細胞の再プログラム化のための組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】環状RNAを使用した細胞の再プログラム化のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20241219BHJP
   C12N 5/074 20100101ALI20241219BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20241219BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20241219BHJP
   C12N 5/079 20100101ALI20241219BHJP
   C12N 5/077 20100101ALI20241219BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 15/87 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20241219BHJP
   C12N 5/078 20100101ALN20241219BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20241219BHJP
   C12N 9/22 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N5/074
C12N5/0783
C12N5/071
C12N5/079
C12N5/077
C12N15/09 100
C12N15/87 Z
C12N15/12
C12N5/078
C12N15/113 Z
C12N9/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536988
(86)(22)【出願日】2022-12-19
(85)【翻訳文提出日】2024-07-11
(86)【国際出願番号】 US2022081898
(87)【国際公開番号】W WO2023122517
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】63/291,645
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521445708
【氏名又は名称】エレベートバイオ テクノロジーズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】カーペンター,メリッサ
(72)【発明者】
【氏名】ナラヤン,サントッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ティール,オースティン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,イン ミランダ
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA03
4B065CA44
(57)【要約】
本開示は、iPSCを作製する方法であって、1つ以上の再プログラム化因子をコードする1つ以上の環状RNAに浮遊状態の細胞(例えば、CD34+細胞又は他の血液細胞)を接触させること、及び再プログラム化されたiPSCが入手される条件下に細胞を維持することを含む方法を提供する。一部の実施形態において、環状RNAは、(Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、c-Myc、又はL-Mycから選択される再プログラム化因子、又はその断片若しくはバリアントをコードする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工多能性幹細胞(iPSC)を作製する方法であって、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、c-Myc、又はL-Mycから選択される少なくとも1つの再プログラム化因子、又はその断片若しくはバリアントをコードする環状RNAに浮遊状態の血液細胞を接触させること、及び前記iPSCが入手される条件下に前記細胞を維持することを含む方法。
【請求項2】
前記血液細胞が、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、及び臍帯血単核細胞(CBMC)から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記血液細胞が、T細胞及びNK細胞から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
人工多能性幹細胞(iPSC)を作製する方法であって、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、c-Myc、又はL-Mycから選択される少なくとも1つの再プログラム化因子、又はその断片若しくはバリアントをコードする環状RNAに浮遊状態のCD34+細胞を接触させること、及び前記iPSCが入手される条件下に前記細胞を維持することを含む方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの再プログラム化因子が、ヒト又はヒト化再プログラム化因子である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの再プログラム化因子がOct3/4であり、前記Oct3/4が、配列番号7のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記環状RNAが、配列番号8の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの再プログラム化因子がKlf4であり、前記Klf4が、配列番号9又は10のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記環状RNAが、配列番号11の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの再プログラム化因子がSox2であり、Sox2が、配列番号12のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記環状RNAが、配列番号13の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの再プログラム化因子がNanogであり、前記Nanogが、配列番号14又は15のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記環状RNAが、配列番号16の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの再プログラム化因子がLin28Aであり、前記Lin28Aが、配列番号17のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記環状RNAが、配列番号18の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの再プログラム化因子がc-Mycであり、前記c-Mycが、配列番号19又は20のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記環状RNAが、配列番号21の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの再プログラム化因子がL-Mycであり、前記L-Mycが、配列番号22~24のいずれか1つのアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記環状RNAが、配列番号25の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記環状RNAが、実質的に非免疫原性である、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記環状RNAが、1つ以上のM-6-メチルアデノシン(mA)残基を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記環状RNAが、約200ヌクレオチド~約5,000ヌクレオチドを含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記環状RNAが、タンパク質コード配列に作動可能に連結された配列内リボソーム進入部位(IRES)を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記環状RNAが、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、c-Myc、又はL-Mycから選択される2つ以上の再プログラム化因子をコードする、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記方法が、Oct4又はその断片若しくはバリアントをコードする第1の環状RNA、Sox2又はその断片若しくはバリアントをコードする第2の環状RNA、Klf4又はその断片若しくはバリアントをコードする第3の環状RNA、C-Myc又はその断片若しくはバリアントをコードする第4の環状RNA、Lin28又はその断片若しくはバリアントをコードする第5の環状RNA、及びNanog又はその断片若しくはバリアントをコードする第6の環状RNAに前記細胞を接触させることを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びc-Mycからなる再プログラム化因子の群のうちの1つ以上、又はその断片若しくはバリアントをコードする1つ以上の環状RNAに前記細胞を接触させることを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
人工多能性幹細胞(iPSC)を作製する方法であって、Oct4をコードする第1の環状RNA、Sox2をコードする第2の環状RNA、Klf4をコードする第3の環状RNA、C-Mycをコードする第4の環状RNA、Lin28をコードする第5の環状RNA、及びNanogをコードする第6の環状RNAからなる6つの環状RNAに浮遊状態の血液細胞又はCD34+細胞を接触させること、及び前記iPSCが入手される条件下に前記細胞を維持することを含む方法。
【請求項28】
人工多能性幹細胞(iPSC)を作製する方法であって、Oct4をコードする第1の環状RNA、Sox2をコードする第2の環状RNA、及びKlf4をコードする第3の環状RNAからなる3つの環状RNAに浮遊状態の血液細胞又はCD34+細胞を接触させること、及び前記iPSCが入手される条件下に前記細胞を維持することを含む方法。
【請求項29】
Nanog、Lin28、及びc-Mycのいずれかをコードする環状RNAに前記血液細胞又はCD34+細胞を接触させることを含まない、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
人工多能性幹細胞(iPSC)を作製する方法であって、Oct4をコードする第1の環状RNA、Sox2をコードする第2の環状RNA、及びKlf4をコードする第3の環状RNAからなる3つの環状RNA、及びC-Mycをコードする第4の環状RNAに浮遊状態の血液細胞又はCD34+細胞を接触させること、及び前記iPSCが入手される条件下に前記細胞を維持することを含む方法。
【請求項31】
Nanog又はLin28のいずれかをコードする環状RNAに前記血液細胞又はCD34+細胞を接触させることを含まない、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
人工多能性幹細胞(iPSC)を作製する方法であって、Oct4をコードする第1の環状RNA、Sox2をコードする第2の環状RNA、及びKlf4をコードする第3の環状RNAからなる3つの環状RNA、及びNanogをコードする第4の環状RNA、及びLin 28をコードする第5の環状RNAに浮遊状態の血液細胞又はCD34+細胞を接触させること、及び前記iPSCが入手される条件下に前記細胞を維持することを含む方法。
【請求項33】
c-Mycをコードする環状RNAに前記CD34+細胞を接触させることを含まない、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記細胞が、E3、K3、B18Rから選択されるいかなる因子にも接触しない、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記細胞が、いかなるマイクロRNA(miR)にも接触しない、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記細胞が、E3、K3、B18R、1つ以上のマイクロRNA(miR)、又はこれらの組み合わせから選択される1つ以上の因子に接触しない、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記miRが、miR302a、miR302b、miR302c、miR302d、及びmiR367を含む、35又は36に記載の方法。
【請求項38】
前記細胞が、前記少なくとも1つの環状RNAと直接接触する、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記細胞が、前記少なくとも1つの環状RNAの各々に1回接触する、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記少なくとも1つの環状RNAの各々に前記細胞を2、3、4回、又はそれ以上接触させることを含む、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記少なくとも1つの環状RNAの各々に前記細胞を4回未満接触させることを含む、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記少なくとも1つの環状RNAの各々に前記細胞を2~4回接触させることを含む、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記少なくとも1つの環状RNAの各々の濃度が、少なくとも3pg RNA/細胞である、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記少なくとも1つの環状RNAの各々の濃度が、約5pg RNA/細胞~約15pg RNA/細胞である、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記細胞の前記接触が、エレクトロポレーションにより実施される、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
E3、K3、又はB18Rから選択される1つ以上のウイルスタンパク質をコードするRNAポリヌクレオチドに前記細胞を接触させることを更に含む、請求項1~26又は38~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
(a)前記B18Rが、配列番号26の配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有し;
(b)前記E3が、配列番号27の配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有し;及び/又は
(c)前記K3が、配列番号28の配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する、
請求項46に記載の方法。
【請求項48】
1つ以上のマイクロRNA(miR)に前記細胞を接触させることを更に含む、請求項1~26又は38~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記miRが、miR302a、miR302b、miR302c、miR302d、及びmiR367から選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
(i)1つ以上の線状RNAでiPSCを作製する方法と比較した培養の終わりに存在する再プログラム化されたiPSCの数の増加;及び/又は
(ii)1つ以上の線状RNAでiPSCを作製する方法と比較した再プログラム化中の1時点以上における細胞死の減少
のうちの1つ以上を生じさせる、請求項1~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
(i)1つ以上の線状RNAでiPSCを作製する方法と比較した培養の終わりに存在する再プログラム化されたiPSCの数の増加;及び
(ii)1つ以上の線状RNAでiPSCを作製する方法と比較した再プログラム化中の1時点以上における細胞死の減少
の各々を生じさせる、請求項1~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
請求項1~51のいずれか一項に記載の方法を使用して作製されるiPSC。
【請求項53】
請求項52に記載のiPSCから誘導される分化細胞。
【請求項54】
前記分化細胞が、筋細胞、神経系細胞、中枢神経系細胞、眼細胞、軟骨細胞、骨細胞、腱細胞、腎細胞、心筋細胞、肝細胞、膵島細胞、角化細胞、T細胞、又はNK細胞である、請求項53に記載の分化細胞。
【請求項55】
細胞のゲノムの再プログラム化及び編集方法であって、
(i)タンパク質コード配列を含む組換え環状RNAに前記細胞を接触させることであって、前記タンパク質コード配列が少なくとも1つの再プログラム化因子をコードすること、及び
(ii)前記細胞のDNA又はRNAの編集能を有する酵素、又はそれをコードする核酸に前記細胞を接触させること
を含む方法。
【請求項56】
細胞のゲノムの再プログラム化及び編集方法であって、
(i)タンパク質コード配列を含む組換え環状RNAであって、前記タンパク質コード配列が少なくとも1つの再プログラム化因子をコードする、組換え環状RNA、及び
(ii)前記細胞のDNA又はRNAの編集能を有する酵素、又はそれをコードする核酸
に同時に前記細胞を接触させることを含む方法。
【請求項57】
前記少なくとも1つの再プログラム化因子が、ヒト又はヒト化再プログラム化因子である、請求項55又は56に記載の方法。
【請求項58】
前記少なくとも1つの再プログラム化因子がOct3/4であり、前記Oct3/4が、配列番号7のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する、請求項55~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記組換え環状RNAが、配列番号8の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項60】
前記少なくとも1つの再プログラム化因子がKlf4であり、前記Klf4が、配列番号9又は10のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する、請求項55~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記組換え環状RNAが、配列番号11の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記少なくとも1つの再プログラム化因子がSox2であり、Sox2が、配列番号12のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する、請求項55~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記組換え環状RNAが、配列番号13の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記少なくとも1つの再プログラム化因子がNanogであり、前記Nanogが、配列番号14又は15のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する、請求項55~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記組換え環状RNAが、配列番号16の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記少なくとも1つの再プログラム化因子がLin28Aであり、前記Lin28Aが、配列番号17のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する、請求項55~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記組換え環状RNAが、配列番号18の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記少なくとも1つの再プログラム化因子がc-Mycであり、前記c-Mycが、配列番号19又は20のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する、請求項55~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記組換え環状RNAが、配列番号21の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記少なくとも1つの再プログラム化因子がL-Mycであり、前記L-Mycが、配列番号22~24のいずれか1つのアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する、請求項55~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記組換え環状RNAが、配列番号25の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記環状RNAが、実質的に非免疫原性である、請求項55~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記環状RNAが、1つ以上のM-6-メチルアデノシン(mA)残基を含む、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記環状RNAが、約200ヌクレオチド~約5,000ヌクレオチドを含む、請求項55~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記環状RNAが、前記タンパク質コード配列に作動可能に連結された配列内リボソーム進入部位(IRES)を含む、請求項55~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記環状RNAが、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、c-Myc、又はL-Mycから選択される2つ以上の再プログラム化因子をコードする、請求項55~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
Oct4又はその断片若しくはバリアントをコードする第1の環状RNA、Sox2又はその断片若しくはバリアントをコードする第2の環状RNA、Klf4又はその断片若しくはバリアントをコードする第3の環状RNA、C-Myc又はその断片若しくはバリアントをコードする第4の環状RNA、Lin28又はその断片若しくはバリアントをコードする第5の環状RNA、及びNanog又はその断片若しくはバリアントをコードする第6の環状RNAに前記細胞を接触させることを含む、請求項55又は56に記載の方法。
【請求項78】
Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、c-Myc、及びL-Myc、又はその断片若しくはバリアントをコードする1つ以上の環状RNAに前記細胞を接触させることを含む、請求項55又は56に記載の方法。
【請求項79】
前記細胞が、E3、K3、B18R、又は任意のマイクロRNA(miR)から選択されるいかなる補助的因子にも接触しない、請求項55~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記細胞が、前記少なくとも1つの環状RNAと直接接触する、請求項55~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記細胞が、前記少なくとも1つの環状RNAの各々と1回接触する、請求項55~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記環状RNAの各々のうちの前記少なくとも1、2、3、4つ、又はそれ以上に前記細胞を接触させることを含む、請求項55~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記少なくとも1つの環状RNAの各々に前記細胞を4回未満接触させることを含む、請求項55~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記少なくとも1つの環状RNAの各々に前記細胞を2~4回接触させることを含む、請求項55~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記少なくとも1つの環状RNAの濃度が、少なくとも3pg RNA/細胞である、請求項55~84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記少なくとも1つの環状RNAの濃度が、約5pg RNA/細胞~約15pg RNA/細胞である、請求項55~85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記細胞の前記接触が、エレクトロポレーションにより実施される、請求項55~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
前記エレクトロポレーションが、Neon(登録商標)エレクトロポレーションシステムを使用する、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
E3、K3、又はB18Rから選択される1つ以上のウイルスタンパク質をコードするRNAポリヌクレオチドに前記細胞を接触させることを含む、請求項55~78又は80~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
(a)前記B18Rが、配列番号26の配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有し;
(b)前記E3が、配列番号27の配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有し;及び/又は
(c)前記K3が、配列番号28の配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する、
請求項89に記載の方法。
【請求項91】
miR302a、miR302b、miR302c、miR302d、及びmiR367から選択されるマイクロRNA(miR)に前記細胞を接触させることを含む、請求項55~78又は80~90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
前記細胞が、E3、K3、B18Rから選択されるいかなるウイルスタンパク質にも接触しないか、又はmiR302a、miR302b、miR302c、miR302d、及びmiR367から選択されるいかなるマイクロRNA(miR)にも接触しない、請求項55~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
前記酵素が、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、アルゴノートエンドヌクレアーゼ(NgAgo)、構造ガイド型エンドヌクレアーゼ(SGN)、RNAガイド型ヌクレアーゼ(RGN)、RNAに作用するアデノシンデアミナーゼ(ADAR)、又はこれらの修飾された若しくはトランケートされたバリアントである、請求項55~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記RGNが、Cas9ヌクレアーゼ、Cas12(a)ヌクレアーゼ(Cpf1)、Cas12bヌクレアーゼ、Cas12cヌクレアーゼ、TrpB様ヌクレアーゼ、Cas13aヌクレアーゼ(C2c2)、Cas13bヌクレアーゼ、Cas14ヌクレアーゼ又はこれらの修飾された若しくはトランケートされたバリアントから選択されるCasヌクレアーゼである、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記RGNがCas9ヌクレアーゼであり、前記Cas9ヌクレアーゼが、化膿レンサ球菌(S. pyogenes)又は黄色ブドウ球菌(S. aureus)から単離又は誘導される、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記RGNが、APG05083.1、APG07433.1、APG07513.1、APG08290.1、APG05459.1、APG04583.1、及びAPG1688.1、APG05733.1、APG06207.1、APG01647.1、APG08032.1、APG05712.1、APG01658.1、APG06498.1、APG09106.1、APG09882.1、APG02675.1、APG01405.1、APG06250.1、APG06877.1、APG09053.1、APG04293.1、APG01308.1、APG06646.1、APG09748、APG07433.1、APG00969、APG03128、APG09748、APG00771、APG02789、APG09106、APG02312、APG07386、APG09980、APG05840、APG05241、APG07280、APG09866、及びAPG00868のうちのいずれか1つから選択される、請求項93に記載の方法。
【請求項97】
ガイドRNA、又はそれをコードする核酸に前記細胞を接触させることを更に含む、請求項55~96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
前記細胞が、前記酵素又はそれをコードする前記核酸に接触する前に前記環状RNAに接触する、請求項55又は57~97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項99】
前記細胞が、前記酵素又はそれをコードする前記核酸に接触した後に前記組換え環状RNAに接触する、請求項55又は87~97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
前記細胞が、前記細胞のDNA又はRNAの編集能を有する酵素、又はそれをコードする核酸、及びガイドRNA、又はそれをコードする核酸に接触する、請求項55~99のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
前記酵素が前記細胞のDNAの編集能を有し、前記酵素と前記ガイドRNAとが、前記細胞との接触前にリボ核タンパク質として複合体化する、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記細胞の前記接触が、エレクトロポレーションにより実施される、請求項55~101のいずれか一項に記載の方法。
【請求項103】
請求項55~102のいずれか一項に記載の方法により生成される細胞。
【請求項104】
細胞の再プログラム化方法であって、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びc-Mycからなる6つの再プログラム化因子をコードする1つ以上の環状RNAに細胞を接触させることを含む方法。
【請求項105】
Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びc-Mycからなる群からの再プログラム化因子を各々がコードする6つの環状RNAに細胞を接触させることを含む、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
前記環状RNA又は線状RNAのいずれか1つが、脂質ナノ粒子にコンジュゲートされる、請求項104又は105に記載の方法。
【請求項107】
前記細胞が、E3、K3、B18R、又は1つ以上のマイクロRNA(miR)から選択される1つ以上の因子に接触しない、請求項104~106のいずれか一項に記載の方法。
【請求項108】
前記環状RNAが、前記細胞にとって外因性である、請求項1~51、55~102、又は104~107のいずれか一項に記載の方法。
【請求項109】
請求項104~108のいずれか一項に記載の方法により生成される細胞。
【請求項110】
再プログラム化因子をコードする1つ以上の外因性環状RNAを含む体細胞であって、前記再プログラム化因子が、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びc-Mycからなる群から選択される、体細胞。
【請求項111】
前記体細胞が1つ以上の外因性環状RNAを含み、前記1つ以上の環状RNAが、各々、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びc-Mycから選択される再プログラム化因子をコードする、請求項110に記載の体細胞。
【請求項112】
前記体細胞が6つの外因性環状RNAを含み、各環状RNAが、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びc-Mycのうちの1つをコードする、請求項110に記載の体細胞。
【請求項113】
前記体細胞が5つの外因性環状RNAを含み、各環状RNAが、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、及びLin28のうちの1つをコードする、請求項110に記載の体細胞。
【請求項114】
前記体細胞が4つの外因性環状RNAを含み、各環状RNAが、Oct3/4、Klf4、Sox2、及びc-Mycのうちの1つをコードする、請求項110に記載の体細胞。
【請求項115】
前記体細胞が3つの外因性環状RNAを含み、各環状RNAが、Oct3/4、Klf4、及びSox2のうちの1つをコードする、請求項110に記載の体細胞。
【請求項116】
1つ以上のCD34+細胞を含む浮遊培養液であって、前記CD34+細胞が、再プログラム化因子をコードする1つ以上の外因性circRNAを含む、浮遊培養液。
【請求項117】
前記CD34+細胞が、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びc-Mycからなる群から選択される1つの再プログラム化因子を各々がコードする6つの外因性circRNAを含む、請求項116に記載の浮遊培養液。
【請求項118】
前記CD34+細胞が、E3、K3、B18R、又はマイクロRNA(miR)から選択される補助的因子をコードする外因性核酸を含まない、請求項116又は117に記載の浮遊培養液。
【請求項119】
Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びc-Mycからなる前記再プログラム化因子をコードする1つ以上の環状RNAを含む組成物。
【請求項120】
Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びc-Mycからなる前記再プログラム化因子をコードする2つ以上の環状RNAを含む組成物。
【請求項121】
Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びc-Mycからなる前記再プログラム化因子のうちの1つを各々がコードする6つの環状RNAを含む組成物。
【請求項122】
Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、及びLin28からなる前記再プログラム化因子のうちの1つを各々がコードする5つの環状RNAを含む組成物。
【請求項123】
Oct3/4、Klf4、Sox2、及びc-Mycからなる前記再プログラム化因子のうちの1つを各々がコードする4つの環状RNAを含む組成物。
【請求項124】
Oct3/4、Klf4、及びSox2からなる前記再プログラム化因子のうちの1つを各々がコードする3つの環状RNAを含む組成物。
【請求項125】
請求項119~124のいずれか一項に記載の組成物を含むキット。
【請求項126】
請求項119~124のいずれか一項に記載の組成物を含む細胞。
【請求項127】
真核細胞である、請求項126に記載の細胞。
【請求項128】
哺乳類細胞である、請求項127に記載の細胞。
【請求項129】
ヒト細胞である、請求項128に記載の細胞。
【請求項130】
CD34+細胞、T細胞、又はNK細胞である、請求項126~128のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項131】
Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びc-Myc、又はL-Mycのいずれか一方から選択される1つ以上の再プログラム化因子をコードする1つ以上の環状RNAを含むCD34+細胞。
【請求項132】
前記再プログラム化因子が、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びc-Mycの6つ全てからなる、請求項131に記載のCD34+細胞。
【請求項133】
前記再プログラム化因子が、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びL-Mycの6つ全てからなる、請求項131に記載のCD34+細胞。
【請求項134】
前記再プログラム化因子が、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、及びLin28からなる、請求項131に記載のCD34+細胞。
【請求項135】
前記再プログラム化因子が、Oct3/4、Klf4、Sox2、及びc-Mycからなる、請求項131に記載のCD34+細胞。
【請求項136】
前記再プログラム化因子が、Oct3/4、Klf4、及びSox2からなる、請求項131に記載のCD34+細胞。
【請求項137】
SSEA-3、SSEA-4、TRA-1-60、TRA-1-81、TRA-2-49/6E、アルカリホスファターゼ、Sox2、E-カドヘリン、UTF-1、Oct4、Rex1、Nanog、又はこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのステムネスマーカーを呈する、請求項131~136のいずれか一項に記載のCD34+細胞。
【請求項138】
前記1つ以上の環状RNAが、前記細胞にとって外因性である、請求項131~137のいずれか一項に記載のCD34+細胞。
【請求項139】
1つ以上の遺伝子修飾を更に含む、請求項131~138のいずれか一項に記載のCD34+細胞。
【請求項140】
前記1つ以上の遺伝子修飾が遺伝子ノックアウトを含む、請求項139に記載のCD34+細胞。
【請求項141】
前記1つ以上の遺伝子修飾が遺伝子ノックインを含む、請求項139又は140に記載のCD34+細胞。
【請求項142】
請求項131~141のいずれか一項に記載のCD34+細胞から誘導された人工多能性幹細胞(iPSC)。
【請求項143】
前記細胞が低免疫原性である、請求項142に記載のiPSC。
【請求項144】
請求項142又は143に記載のiPSCから生成された分化細胞。
【請求項145】
疾患又は病態を治療する方法であって、それを必要としている対象に請求項142又は143に記載のiPSC又は請求項126に記載の分化細胞を投与することを含む方法。
【請求項146】
体細胞を分化転換させる方法であって、1つ以上の外因性環状RNAに前記細胞を接触させることを含む方法。
【請求項147】
請求項146に記載の方法により作製される分化転換細胞。
【請求項148】
人工多能性幹細胞(iPSC)から細胞を分化させる方法であって、1つ以上の環状RNAに前記iPSCを接触させることを含む方法。
【請求項149】
請求項148に記載の方法により作製される分化細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本願は、2021年12月20日に出願された米国仮特許出願第63/291,645号に対する優先権を主張するものであり、この内容は全体として参照により本明細書に援用される。
【0002】
電子的に提出されたテキストファイルに関する記載
[0002] 本明細書と共に電子的に提出されたテキストファイルの内容は、全体として参照により援用される:配列表のコンピュータ可読形式複製物(ファイル名:ELVT_015_01WO_SeqList_ST26.xml、サイズ50.8KB、作成日2022年11月16日)。
【背景技術】
【0003】
背景
[0003] 人工多能性幹細胞(iPSC)により、創薬及びヘルスケアに変容がもたらされている。iPSCは、研究及び/又は治療目的で必要な様々なヒト細胞型の発生を可能にする胚様の多能性状態に戻るよう体細胞を再プログラム化することによって生じる。
【0004】
[0004] iPSCは、典型的には1つ以上の再プログラム化因子(例えば、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、c-Myc、及び/又はL-Myc)を体細胞に導入することによって誘導される。再プログラム化因子は標準的な手法を用いて細胞に導入できるが、そうした手法は様々な欠点に見舞われている。例えば、自己複製性のRNAシステムは、自己複製能力のあるRNAレプリコンを使用する。かかる複製ベクターは、性質上、ゲノム組込みの危険性がある。mRNAベースの再プログラム化は骨の折れる作業であり、mRNA分子の代謝回転は速いため、mRNAの複数回のトランスフェクションが関わる。外因性mRNAはまた免疫原性でもあるため、免疫回避因子(例えば、インターフェロン経路の阻害薬)及び/又は修飾ヌクレオチドを用いて毒性を最小限に抑える必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005] よって、当該技術分野では、iPSCを作製するための改良された組成物及び方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
[0006] 一部の実施形態において、本開示は、人工多能性幹細胞(iPSC)を作製する方法であって、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、c-Myc、又はL-Mycから選択される少なくとも1つの再プログラム化因子、又はその断片若しくはバリアントをコードする環状RNAに浮遊状態の血液細胞を接触させること、及びiPSCが入手される条件下に細胞を維持することを含む方法を提供する。一部の実施形態において、血液細胞は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、及び臍帯血単核細胞(CBMC)から選択される。一部の実施形態において、血液細胞は、T細胞及びNK細胞から選択される。
【0007】
[0007] 一部の実施形態において、本開示は、人工多能性幹細胞(iPSC)を作製する方法であって、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、c-Myc、又はL-Mycから選択される少なくとも1つの再プログラム化因子、又はその断片若しくはバリアントをコードする環状RNAに浮遊状態のCD34+細胞を接触させること、及びiPSCが入手される条件下に細胞を維持することを含む方法を提供する。
【0008】
[0008] 一部の実施形態において、少なくとも1つの再プログラム化因子は、ヒト又はヒト化再プログラム化因子である。一部の実施形態において、少なくとも1つの再プログラム化因子はOct3/4であり、ここでOct3/4は、配列番号7のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する。一部の実施形態において、環状RNAは、配列番号8の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む。
【0009】
[0009] 一部の実施形態において、少なくとも1つの再プログラム化因子はKlf4であり、ここでKlf4は、配列番号9又は10のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する。一部の実施形態において、環状RNAは、配列番号11の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む。
【0010】
[0010] 一部の実施形態において、少なくとも1つの再プログラム化因子はSox2であり、ここでSox2は、配列番号12のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する。一部の実施形態において、環状RNAは、配列番号13の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む。
【0011】
[0011] 一部の実施形態において、少なくとも1つの再プログラム化因子はNanogであり、ここでNanogは、配列番号14又は15のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する。一部の実施形態において、環状RNAは、配列番号16の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む。
【0012】
[0012] 一部の実施形態において、少なくとも1つの再プログラム化因子はLin28Aであり、ここでLin28Aは、配列番号17のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する。一部の実施形態において、環状RNAは、配列番号18の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む。
【0013】
[0013] 一部の実施形態において、少なくとも1つの再プログラム化因子はc-Mycであり、ここでc-Mycは、配列番号19又は20のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する。一部の実施形態において、環状RNAは、配列番号21の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む。
【0014】
[0014] 一部の実施形態において、少なくとも1つの再プログラム化因子はL-Mycであり、ここでL-Mycは、配列番号22~24のいずれか1つのアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する。一部の実施形態において、環状RNAは、配列番号25の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む。
【0015】
[0015] 一部の実施形態において、環状RNAは、実質的に非免疫原性である。一部の実施形態において、環状RNAは、1つ以上のM-6-メチルアデノシン(m6A)残基を含む。一部の実施形態において、環状RNAは、約200ヌクレオチド~約5,000ヌクレオチドを含む。
【0016】
[0016] 一部の実施形態において、環状RNAは、タンパク質コード配列に作動可能に連結された配列内リボソーム進入部位(IRES)を含む。一部の実施形態において、環状RNAは、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、c-Myc、又はL-Mycから選択される2つ以上の再プログラム化因子をコードする。
【0017】
[0017] 一部の実施形態において、本方法は、Oct4又はその断片若しくはバリアントをコードする第1の環状RNA、Sox2又はその断片若しくはバリアントをコードする第2の環状RNA、Klf4又はその断片若しくはバリアントをコードする第3の環状RNA、C-Myc又はその断片若しくはバリアントをコードする第4の環状RNA、Lin28又はその断片若しくはバリアントをコードする第5の環状RNA、及びNanog又はその断片若しくはバリアントをコードする第6の環状RNAに細胞を接触させることを含む。
【0018】
[0018] 一部の実施形態において、本方法は、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びc-Mycからなる再プログラム化因子の群のうちの1つ以上、又はその断片若しくはバリアントをコードする1つ以上の環状RNAに細胞を接触させることを含む。
【0019】
[0019] 一部の実施形態において、本開示は、人工多能性幹細胞(iPSC)を作製する方法であって、Oct4をコードする第1の環状RNA、Sox2をコードする第2の環状RNA、Klf4をコードする第3の環状RNA、C-Mycをコードする第4の環状RNA、Lin28をコードする第5の環状RNA、及びNanogをコードする第6の環状RNAからなる6つの環状RNAに浮遊状態の血液細胞又はCD34+細胞を接触させること、及びiPSCが入手される条件下に細胞を維持することを含む方法を提供する。
【0020】
[0020] 一部の実施形態において、本開示は、人工多能性幹細胞(iPSC)を作製する方法であって、Oct4をコードする第1の環状RNA、Sox2をコードする第2の環状RNA、及びKlf4をコードする第3の環状RNAからなる3つの環状RNAに浮遊状態の血液細胞又はCD34+細胞を接触させること、及びiPSCが入手される条件下に細胞を維持することを含む方法を提供する。一部の実施形態において、本方法は、Nanog、Lin28、及びc-Mycのいずれかをコードする環状RNAにCD34+細胞を接触させることを含まない。
【0021】
[0021] 一部の実施形態において、本開示は、人工多能性幹細胞(iPSC)を作製する方法であって、Oct4をコードする第1の環状RNA、Sox2をコードする第2の環状RNA、及びKlf4をコードする第3の環状RNAからなる3つの環状RNA、及びC-Mycをコードする第4の環状RNAに浮遊状態の血液細胞又はCD34+細胞を接触させること、及びiPSCが入手される条件下に細胞を維持することを含む方法を提供する。一部の実施形態において、本方法は、Nanog又はLin28のいずれかをコードする環状RNAにCD34+細胞を接触させることを含まない。
【0022】
[0022] 一部の実施形態において、本開示は、人工多能性幹細胞(iPSC)を作製する方法であって、Oct4をコードする第1の環状RNA、Sox2をコードする第2の環状RNA、及びKlf4をコードする第3の環状RNAからなる3つの環状RNA、及びNanogをコードする第4の環状RNA、及びLin 28をコードする第5の環状RNAに浮遊状態の血液細胞又はCD34+細胞を接触させること、及びiPSCが入手される条件下に細胞を維持することを含む方法を提供する。一部の実施形態において、本方法は、c-Mycをコードする環状RNAにCD34+細胞を接触させることを含まない。
【0023】
[0023] 一部の実施形態において、細胞は、E3、K3、B18Rから選択されるいかなる因子にも接触しない。一部の実施形態において、細胞は、いかなるマイクロRNA(miR)にも接触しない。一部の実施形態において、細胞は、E3、K3、B18R、1つ以上のマイクロRNA(miR)、又はこれらの組み合わせから選択される1つ以上の因子に接触しない。一部の実施形態において、miRは、miR302a、miR302b、miR302c、miR302d、及びmiR367を含む。
【0024】
[0024] 一部の実施形態において、細胞は、少なくとも1つの環状RNAと直接接触する。一部の実施形態において、細胞は、少なくとも1つの環状RNAの各々に1回接触する。一部の実施形態において、本方法は、少なくとも1つの環状RNAの各々に細胞を2、3、4回、又はそれ以上接触させることを含む。一部の実施形態において、本方法は、少なくとも1つの環状RNAの各々に細胞を4回未満接触させることを含む。一部の実施形態において、本方法は、少なくとも1つの環状RNAの各々に細胞を2~4回接触させることを含む。
【0025】
[0025] 一部の実施形態において、少なくとも1つの環状RNAの各々の濃度は、少なくとも3pg RNA/細胞である。一部の実施形態において、少なくとも1つの環状RNAの各々の濃度は、約5pg RNA/細胞~約15pg RNA/細胞である。
【0026】
[0026] 一部の実施形態において、細胞の接触は、エレクトロポレーションにより実施される。
【0027】
[0027] 一部の実施形態において、本方法は、E3、K3、又はB18Rから選択される1つ以上のウイルスタンパク質をコードするRNAポリヌクレオチドに細胞を接触させることを更に含む。一部の実施形態において、(a)B18Rは、配列番号26の配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有し;(b)E3は、配列番号27の配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有し;及び/又は(c)K3は、配列番号28の配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する。一部の実施形態において、本方法は、1つ以上のマイクロRNA(miR)に細胞を接触させることを更に含む。一部の実施形態において、miRは、miR302a、miR302b、miR302c、miR302d、及びmiR367から選択される。
【0028】
[0028] 一部の実施形態において、本方法は、(i)1つ以上の線状RNAでiPSCを作製する方法と比較した培養の終わりに存在する再プログラム化されたiPSCの数の増加;及び/又は(ii)1つ以上の線状RNAでiPSCを作製する方法と比較した再プログラム化中の1時点以上における細胞死の減少のうちの1つ以上を生じさせる。一部の実施形態において、本方法は、(i)1つ以上の線状RNAでiPSCを作製する方法と比較した培養の終わりに存在する再プログラム化されたiPSCの数の増加;及び(ii)1つ以上の線状RNAでiPSCを作製する方法と比較した再プログラム化中の1時点以上における細胞死の減少の各々を生じさせる。
【0029】
[0029] 一部の実施形態において、本開示は、本明細書に記載される方法によって作製されたiPSCを提供する。一部の実施形態において、本開示は、本明細書に記載されるiPSCから誘導された分化細胞を提供する。一部の実施形態において、分化細胞は、筋細胞、神経系細胞、中枢神経系細胞、眼細胞、軟骨細胞、骨細胞、腱細胞、腎細胞、心筋細胞、肝細胞、膵島細胞、角化細胞、T細胞、又はNK細胞である。
【0030】
[0030] 一部の実施形態において、本開示は、細胞のゲノムの再プログラム化及び編集方法であって、(i)タンパク質コード配列を含む組換え環状RNAに細胞を接触させることであって、タンパク質コード配列が少なくとも1つの再プログラム化因子をコードすること、及び(ii)細胞のDNA又はRNAの編集能を有する酵素、又はそれをコードする核酸に細胞を接触させることを含む方法を提供する。
【0031】
[0031] 一部の実施形態において、本開示は、細胞のゲノムの再プログラム化及び編集方法であって、(i)タンパク質コード配列を含む組換え環状RNAであって、タンパク質コード配列が少なくとも1つの再プログラム化因子をコードする、組換え環状RNA、及び(ii)細胞のDNA又はRNAの編集能を有する酵素、又はそれをコードする核酸に細胞を同時に接触させることを含む方法を提供する。
【0032】
[0032] 一部の実施形態において、少なくとも1つの再プログラム化因子は、ヒト又はヒト化再プログラム化因子である。
【0033】
[0033] 一部の実施形態において、少なくとも1つの再プログラム化因子はOct3/4であり、ここでOct3/4は、配列番号7のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する。一部の実施形態において、組換え環状RNAは、配列番号8の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む。
【0034】
[0034] 一部の実施形態において、少なくとも1つの再プログラム化因子はKlf4であり、ここでKlf4は、配列番号9又は10のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する。一部の実施形態において、組換え環状RNAは、配列番号11の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む。
【0035】
[0035] 一部の実施形態において、少なくとも1つの再プログラム化因子はSox2であり、ここでSox2は、配列番号12のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する。一部の実施形態において、組換え環状RNAは、配列番号13の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む。
【0036】
[0036] 一部の実施形態において、少なくとも1つの再プログラム化因子はNanogであり、ここでNanogは、配列番号14又は15のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する。一部の実施形態において、組換え環状RNAは、配列番号16の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む。
【0037】
[0037] 一部の実施形態において、少なくとも1つの再プログラム化因子はLin28Aであり、ここでLin28Aは、配列番号17のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する。一部の実施形態において、組換え環状RNAは、配列番号18の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む。
【0038】
[0038] 一部の実施形態において、少なくとも1つの再プログラム化因子はc-Mycであり、ここでc-Mycは、配列番号19又は20のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する。一部の実施形態において、組換え環状RNAは、配列番号21の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む。
【0039】
[0039] 一部の実施形態において、少なくとも1つの再プログラム化因子はL-Mycであり、ここでL-Mycは、配列番号22~24のいずれか1つのアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する。一部の実施形態において、組換え環状RNAは、配列番号25の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む。
【0040】
[0040] 一部の実施形態において、環状RNAは、実質的に非免疫原性である。一部の実施形態において、環状RNAは、1つ以上のM-6-メチルアデノシン(m6A)残基を含む。一部の実施形態において、環状RNAは、約200ヌクレオチド~約5,000ヌクレオチドを含む。
【0041】
[0041] 一部の実施形態において、環状RNAは、タンパク質コード配列に作動可能に連結された配列内リボソーム進入部位(IRES)を含む。一部の実施形態において、環状RNAは、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、c-Myc、又はL-Mycから選択される2つ以上の再プログラム化因子をコードする。
【0042】
[0042] 一部の実施形態において、本方法は、Oct4又はその断片若しくはバリアントをコードする第1の環状RNA、Sox2又はその断片若しくはバリアントをコードする第2の環状RNA、Klf4又はその断片若しくはバリアントをコードする第3の環状RNA、C-Myc又はその断片若しくはバリアントをコードする第4の環状RNA、Lin28又はその断片若しくはバリアントをコードする第5の環状RNA、及びNanog又はその断片若しくはバリアントをコードする第6の環状RNAに細胞を接触させることを含む。一部の実施形態において、本方法は、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、c-Myc、及びL-Myc、又はその断片若しくはバリアントをコードする1つ以上の環状RNAに細胞を接触させることを含む。
【0043】
[0043] 一部の実施形態において、細胞は、E3、K3、B18R、又は任意のマイクロRNA(miR)から選択されるいかなる補助的因子にも接触しない。一部の実施形態において、細胞は、少なくとも1つの環状RNAと直接接触する。一部の実施形態において、細胞は、少なくとも1つの環状RNAの各々と1回接触する。一部の実施形態において、本方法は、環状RNAのうちの少なくとも1つの各々に細胞を2、3、4回、又はそれ以上接触させることを含む。一部の実施形態において、本方法は、少なくとも1つの環状RNAの各々に細胞を4回未満接触させることを含む。一部の実施形態において、本方法は、少なくとも1つの環状RNAの各々に細胞を2~4回接触させることを含む。
【0044】
[0044] 一部の実施形態において、少なくとも1つの環状RNAの濃度は、少なくとも3pg RNA/細胞である。一部の実施形態において、少なくとも1つの環状RNAの濃度は、約5pg RNA/細胞~約15pg RNA/細胞である。
【0045】
[0045] 一部の実施形態において、細胞の接触は、エレクトロポレーションにより実施される。
【0046】
[0046] 一部の実施形態において、本方法は、E3、K3、又はB18Rから選択される1つ以上のウイルスタンパク質をコードするRNAポリヌクレオチドに細胞を接触させることを含む。一部の実施形態において、(a)B18Rは、配列番号26の配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有し;(b)E3は、配列番号27の配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有し;及び/又は(c)K3は、配列番号28の配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する。一部の実施形態において、本方法は、miR302a、miR302b、miR302c、miR302d、及びmiR367から選択されるマイクロRNA(miR)に細胞を接触させることを含む。
【0047】
[0047] 一部の実施形態において、細胞は、E3、K3、B18Rから選択されるいかなるウイルスタンパク質にも接触しないか、又はmiR302a、miR302b、miR302c、miR302d、及びmiR367から選択されるいかなるマイクロRNA(miR)にも接触しない。
【0048】
[0048] 一部の実施形態において、酵素は、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、アルゴノートエンドヌクレアーゼ(NgAgo)、構造ガイド型エンドヌクレアーゼ(SGN)、RNAガイド型ヌクレアーゼ(RGN)、RNAに作用するアデノシンデアミナーゼ(ADAR)、又はこれらの修飾された若しくはトランケートされたバリアントである。一部の実施形態において、RGNは、Cas9ヌクレアーゼ、Cas12(a)ヌクレアーゼ(Cpf1)、Cas12bヌクレアーゼ、Cas12cヌクレアーゼ、TrpB様ヌクレアーゼ、Cas13aヌクレアーゼ(C2c2)、Cas13bヌクレアーゼ、Cas14ヌクレアーゼ又はこれらの修飾された若しくはトランケートされたバリアントから選択されるCasヌクレアーゼである。一部の実施形態において、RGNはCas9ヌクレアーゼであり、Cas9ヌクレアーゼは、化膿レンサ球菌(S. pyogenes)又は黄色ブドウ球菌(S. aureus)から単離又は誘導される。一部の実施形態において、RGNは、APG05083.1、APG07433.1、APG07513.1、APG08290.1、APG05459.1、APG04583.1、及びAPG1688.1、APG05733.1、APG06207.1、APG01647.1、APG08032.1、APG05712.1、APG01658.1、APG06498.1、APG09106.1、APG09882.1、APG02675.1、APG01405.1、APG06250.1、APG06877.1、APG09053.1、APG04293.1、APG01308.1、APG06646.1、APG09748、APG07433.1、APG00969、APG03128、APG09748、APG00771、APG02789、APG09106、APG02312、APG07386、APG09980、APG05840、APG05241、APG07280、APG09866、及びAPG00868のうちのいずれか1つから選択される。
【0049】
[0049] 一部の実施形態において、本方法は、ガイドRNA、又はそれをコードする核酸に細胞を接触させることを更に含む。
【0050】
[0050] 一部の実施形態において、細胞は、酵素又はそれをコードする核酸に接触する前に環状RNAに接触する。一部の実施形態において、細胞は、酵素又はそれをコードする核酸に接触した後に組換え環状RNAに接触する。一部の実施形態において、細胞は、細胞のDNA又はRNAの編集能を有する酵素、又はそれをコードする核酸、及びガイドRNA、又はそれをコードする核酸に接触する。一部の実施形態において、酵素は細胞のDNAの編集能を有し、ここで酵素とガイドRNAとは、細胞との接触前にリボ核タンパク質として複合体化する。一部の実施形態において、細胞の接触は、エレクトロポレーションにより実施される。
【0051】
[0051] 一部の実施形態において、本開示は、本明細書に記載される方法により生成された細胞を提供する。
【0052】
[0052] 一部の実施形態において、本開示は、細胞の再プログラム化方法であって、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びc-Mycからなる6つの再プログラム化因子をコードする1つ以上の環状RNAに細胞を接触させることを含む方法を提供する。一部の実施形態において、本方法は、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びc-Mycからなる群からの再プログラム化因子を各々がコードする6つの環状RNAに細胞を接触させることを含む。
【0053】
[0053] 一部の実施形態において、環状RNA又は線状RNAのいずれか1つは、脂質ナノ粒子にコンジュゲートされる。一部の実施形態において、細胞は、E3、K3、B18R、又は1つ以上のマイクロRNA(miR)から選択される1つ以上の因子に接触しない。
【0054】
[0054] 一部の実施形態において、本開示は、再プログラム化因子をコードする1つ以上の環状RNAを含む単離された体細胞を含む組成物を提供し、ここで再プログラム化因子は、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びc-Mycからなる群から選択される。
【0055】
[0055] 一部の実施形態において、体細胞は1つ以上の環状RNAを含み、ここで1つ以上の環状RNAは、各々、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びc-Mycから選択される再プログラム化因子をコードする。一部の実施形態において、体細胞は6つの環状RNAを含み、ここで各環状RNAは、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びc-Mycのうちの1つをコードする。一部の実施形態において、体細胞は5つの環状RNAを含み、ここで各環状RNAは、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、及びLin28のうちの1つをコードする。一部の実施形態において、体細胞は4つの環状RNAを含み、ここで各環状RNAは、Oct3/4、Klf4、Sox2、及びc-Mycのうちの1つをコードする。一部の実施形態において、体細胞は3つの環状RNAを含み、ここで各環状RNAは、Oct3/4、Klf4、及びSox2のうちの1つをコードする。
【0056】
[0056] 一部の実施形態において、本開示は、1つ以上のCD34+細胞を含む浮遊培養液を提供し、ここでCD34+細胞は、再プログラム化因子をコードする1つ以上のcircRNAを含む。一部の実施形態において、CD34+細胞は、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びc-Mycからなる群から選択される1つの再プログラム化因子を各々がコードする6つのcircRNAを含む。一部の実施形態において、CD34+細胞は、E3、K3、B18R、又はマイクロRNA(miR)から選択される補助的因子をコードする外因性(exogneous)核酸を含まない。
【0057】
[0057] 一部の実施形態において、環状RNAは、細胞にとって外因性である。
【0058】
[0058] 一部の実施形態において、本開示は、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びc-Mycからなる再プログラム化因子をコードする1つ以上の環状RNAを含む組成物を提供する。一部の実施形態において、本開示は、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びc-Mycからなる再プログラム化因子をコードする2つ以上の環状RNAを含む組成物を提供する。一部の実施形態において、本開示は、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びc-Mycからなる再プログラム化因子のうちの1つを各々がコードする6つの環状RNAを含む組成物を提供する。一部の実施形態において、本開示は、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、及びLin28からなる再プログラム化因子のうちの1つを各々がコードする5つの環状RNAを含む組成物を提供する。一部の実施形態において、本開示は、Oct3/4、Klf4、Sox2、及びc-Mycからなる再プログラム化因子のうちの1つを各々がコードする4つの環状RNAを含む組成物を提供する。一部の実施形態において、本開示は、Oct3/4、Klf4、及びSox2からなる再プログラム化因子のうちの1つを各々がコードする3つの環状RNAを含む組成物を提供する。
【0059】
[0059] 一部の実施形態において、本開示は、本明細書に記載される組成物を含むキットを提供する。一部の実施形態において、本開示は、本明細書に記載される組成物を含む細胞を提供する。一部の実施形態において、細胞は、真核細胞である。一部の実施形態において、細胞は、哺乳類細胞である。一部の実施形態において、細胞は、ヒト細胞である。一部の実施形態において、細胞は、CD34+細胞、T細胞、又はNK細胞である。
【0060】
[0060] 一部の実施形態において、本開示は、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びc-Myc、又はL-Mycのいずれか一方から選択される1つ以上の再プログラム化因子をコードする1つ以上の環状RNAを含むCD34+細胞を提供する。一部の実施形態において、再プログラム化因子は、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びc-Mycの6つ全てからなる。一部の実施形態において、再プログラム化因子は、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びL-Mycの6つ全てからなる。一部の実施形態において、再プログラム化因子は、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、及びLin28からなる。一部の実施形態において、再プログラム化因子は、Oct3/4、Klf4、Sox2、及びc-Mycからなる。一部の実施形態において、再プログラム化因子は、Oct3/4、Klf4、及びSox2からなる。一部の実施形態において、細胞は、SSEA-3、SSEA-4、TRA-1-60、TRA-1-81、TRA-2-49/6E、アルカリホスファターゼ、Sox2、E-カドヘリン、UTF-1、Oct4、Rex1、Nanog、又はこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのステムネスマーカーを呈する。一部の実施形態において、1つ以上の環状RNAは、細胞にとって外因性である。
【0061】
[0061] 一部の実施形態において、CD34+は、1つ以上の遺伝子修飾を更に含む。一部の実施形態において、1つ以上の遺伝子修飾は遺伝子ノックアウトを含む。一部の実施形態において、1つ以上の遺伝子修飾は遺伝子ノックインを含む。
【0062】
[0062] 一部の実施形態において、本開示は、本明細書に記載されるCD34+細胞から誘導された人工多能性幹細胞(iPSC)を提供する。一部の実施形態において、細胞は低免疫原性である。
【0063】
[0063] 一部の実施形態において、本開示は、本明細書に記載されるiPSCから生成された分化細胞を提供する。
【0064】
[0064] 一部の実施形態において、本開示は、疾患又は病態を治療する方法であって、それを必要としている対象に本明細書に記載されるiPSC又は分化細胞を投与することを含む方法を提供する。
【0065】
[0065] 一部の実施形態において、本開示は、体細胞を分化転換させる方法であって、1つ以上の外因性環状RNAに細胞を接触させることを含む方法を提供する。一部の実施形態において、本開示は、本明細書に記載される方法によって作製される分化転換細胞を提供する。
【0066】
[0066] 一部の実施形態において、本開示は、人工多能性幹細胞(iPSC)から細胞を分化させる方法であって、1つ以上の環状RNAにiPSCを接触させることを含む方法を提供する。一部の実施形態において、本開示は、本明細書に記載される方法によって作製される分化細胞を提供する。
【0067】
[0067] 本発明の他の目的、利点及び特徴は、以下の明細書から明らかになるであろう。
【0068】
図面の簡単な説明
[0068] 本特許又は出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含んでいる。本特許又は特許出願公報のカラー図面による写しは、請求に応じて、必要な手数料が支払われた場合に、当局により提供されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1】[0069]化学合成又はインビトロ転写(IVT)を用いて生成した線状RNAを環状化することによる環状RNAの生成の例示的プロトコルを示す概略図である。初めに、線状RNAを調製する。次に、フランキング配列に特異的なプライマーを使用して増幅することにより、線状RNAの5’末端をリン酸化する。続いてT4 RNAリガーゼを使用して5’末端と3’末端とをライゲートする。環状RNAを精製するか、又は線状副産物を酵素で変性させる。次に環状RNAを細胞に接触させてもよく(例えば、それにトランスフェクトしてもよく)、及び/又は脂質ナノ粒子にコンジュゲートしてもよい。
図2A】[0070]図2A図2Gは、線状RNAを環状化する例示的方法を示す概略図である。これには、5’リン酸と3’-OH末端の酵素的ライゲーション(図2A);
図2B】[0070]リン酸とOH末端の化学的ライゲーション(5’又は3’末端をリン酸化してもよい)(図2B);
図2C】[0070]3’チオホスフェートとトシル化した5’末端の化学的ライゲーション(図2C);
図2D】[0070]3’-チオホスフェートとヨウ化した5’末端の化学的ライゲーション(図2D);
図2E】[0070]3’-アルデヒドと50オキソアミンの化学的ライゲーション(オキシム環状化)(図2E);
図2F】[0070]5’-又は3’-アジドと3’-又は5’-アルキンの化学的ライゲーション(クリック環状化)(図2F);
図2G】[0070]金属キレート化による環状化(M=Zn2+又はFe2+、(=テルピリジン))(図2G)が含まれる。
図3】[0071]線状RNAを環状化する例示的方法を示す概略図である。図示されるイントロン-エクソンコンストラクトでは、リボザイムの折り畳みに決定的に重要な構造エレメントを保存するようにしてT4ファージTd遺伝子のグループI触媒イントロンを2つに分ける。次にエクソン断片2(E2)をエクソン断片1(E1)の上流にライゲートし、エクソン-エクソンジャンクションの間におよそ1.1kb長のコード領域を挿入する。スプライシングの間に、グアノシンヌクレオチドの3’ヒドロキシル基がエステル転移反応で5’スプライス部位に会合する結果、介在領域が環状化し、3’イントロンが切り出されることになる。
図4】[0072]浮遊状態のCD34+細胞の再プログラム化についてのタイムライン及びプロセスのスキームを提供する。
図5】[0073]CD34+細胞再プログラム化の間におけるiPSCコロニー形成の代表的な画像を提供する。
図6A】[0074]図6A図6Cは、様々な量のC14再プログラム化カクテルで再プログラム化した後のTra-1-81+及びOct4+細胞の免疫蛍光画像を提供する。図6Aは、0及び2日目にトランスフェクトした5.2pgのC14カクテルで浮遊状態のCD34+細胞を処理することにより作り出されたiPSCの画像を提供する。
図6B】[0074]図6Bは、0日目及び2日目にトランスフェクトした13pgのC14カクテルで浮遊状態のCD34+細胞を処理することにより作り出されたiPSCの画像を提供する。
図6C】[0074]図6Cは、0日目、1日目、2日目、及び3日目にトランスフェクトした5.2pgのC14カクテルで浮遊状態のCD34+細胞を処理することにより作り出されたiPSCの画像を提供する。
図7】[0075]circRNAによる再プログラム化iPSCクローンの継代1代目の代表的な位相差画像を提供する。
図8】[0076]1ステップ編集及び再プログラム化同時プロトコルのTra-1-81+及びOct4+染色結果を示す。
図9】[0077]1ステップ同時再プログラム化及び編集プロトコルから誘導されたiPSCクローンの代表的な位相差画像を提供する。
図10】[0078]2ステップ編集及び再プログラム化プロトコルのTra-1-81+及びOct4+染色結果を示す。
図11】[0079]浮遊状態のCD34+細胞の再プログラム化についてのタイムライン及び実験計画のスキームを提供する。
図12A】[0080]C14(図12A)circRNAカクテルを使用したCD34+細胞再プログラム化の形態学的進行を示す位相差画像を提供する。
図12B】[0080]C6(図12B)circRNAカクテルを使用したCD34+細胞再プログラム化の形態学的進行を示す位相差画像を提供する。
図12C】[0080]C11(図12C)circRNAカクテルを使用したCD34+細胞再プログラム化の形態学的進行を示す位相差画像を提供する。
図13A】[0081]図13A図13Bは、CD34+細胞再プログラム化の結果を示す。図13Aは、様々なプレーティング密度でのiPSC様コロニーのプレートの代表的な画像を提供する。
図13B】[0081]図13Bは、異なるcircRNAカクテルによる再プログラム化中、初期(8日目~10日目)に観察される再プログラム化効率の比較を提供する。
図14】[0082]CD34+細胞のエレクトロポレーションプロトコルを最適化するための実験計画のスキームを提供する。
図15】[0083]IncuCyteイメージングにより決定したときのエレクトロポレーション後のnGFPタンパク質発現の動態を示す。
図16】[0084]エレクトロポレーションによる初回トランスフェクション翌日のnGFPタンパク質レベルのフローサイトメトリー分析を例証する。
図17】[0085]IncuCyteにより分析したときのRNAiMAX(50ng/24ウェル)によるRNAトランスフェクション後の線維芽細胞(HDF)におけるnGFPタンパク質発現の結果を提供する。
図18】[0086]IncuCyteにより分析したときのNeon(登録商標)(250ng/6ウェル)を使用した浮遊培養細胞のRNAトランスフェクション後のCD34+細胞におけるnGFPタンパク質発現の結果を提供する。
図19】[0087]浮遊状態のCD34+細胞の再プログラム化についての再プログラム化因子数の減少を評価するための実験計画のスキームを提供する。
図20A】[0088]図20A図20Bは、再プログラム化カクテルC6、C5、C4、及びC3で生成したiPSCクローンの位相差画像を示す。図20Aは、再プログラム化カクテルC6、C5、C4、及びC3での時間の経過に伴う形態学的進行を例証するiPSCクローンの位相差画像を示す。
図20B】[0088]図20Bは、C6、C5、C4、及びC3再プログラム化カクテルによる14日目のiPSC形態の比較を示す。
図21】[0089]2つの異なる濃度のC6カクテルで再プログラム化したiPSCクローンの位相差画像を示す。
図22】[0090]S6又はL6再プログラム化カクテルの2回のトランスフェクションによる再プログラム化後にiPSCクローン形成がないことを実証する位相差画像を示す。
図23】[0091]14日目にS6又はL6再プログラム化カクテルでiPSCクローン形成がないことと比較した、C6再プログラム化カクテルで再プログラム化したiPSCクローンの位相差画像を示す。
図24A】[0092]図24A図24Bは、異なる再プログラム化カクテル及びその濃度で実現した再プログラム化効率を示す。図24Aは、様々な再プログラム化カクテルで観察されるCD34+細胞についての再プログラム化効率を提供する。
図24B】[0092]図24Bは、様々な濃度のC6再プログラム化カクテルで観察されるCD34+細胞についての再プログラム化効率を提供する。
図25】[0093]様々な濃度のC6カクテルによるトランスフェクション後の多能性マーカーTra-1-81(緑色)及びOCT4(赤色)に関する染色を示す。
図26】[0094]C3、C4、又はC5カクテルによるトランスフェクション後の多能性マーカーTra-1-81(緑色)及びOCT4(赤色)に関する染色を示す。
図27】[0095]20代まで細胞継代した長期インビトロ培養条件におけるcirc-RNAによる再プログラム化iPSCを特徴付けるための実験計画の概略図を提供する。
図28A】[0096]図28A図28Bは、再プログラム化カクテルC14、C6、C4、及びC3で生成したiPSCクローンの位相差画像を示す。図28Aは、再プログラム化カクテルC14、C6、及びC4での細胞継代10、15、及び20代目における混合ドナーCD34+細胞から誘導されたiPSCクローンの形態を例証する位相差画像を示す。
図28B】[0096]図28Bは、再プログラム化カクテルC6、C4、及びC3での細胞継代10、15、及び20代目における単一ドナーCD34+細胞から誘導されたiPSCクローンの形態を例証する位相差画像を示す。
図29A】[0097]図29A図29Bは、Incucyteにより分析したときの再プログラム化カクテルC14、C6、C4及びC3で臍帯血CD34+細胞から誘導したiPSCの生存率の結果を提供する。図29Aは、Incucyteにより分析したときの、再プログラム化カクテルC14、C6、及びC4で混合ドナー臍帯血CD34+細胞から誘導したiPSCの4~20代にわたる細胞継代各回の生存率の結果を提供する。
図29B】[0097]図29Bは、Incucyteにより分析したときの、再プログラム化カクテルC6、C4、及びC3で単一ドナー臍帯血CD34+細胞から誘導したiPSCの4~18代にわたる細胞継代各回の生存率の結果を提供する。
図30A】[0098]図30A図30Bは、Incucyteにより分析したときの再プログラム化カクテルC14、C6、C4及びC3で臍帯血CD34+細胞から誘導したiPSCの集団倍加時間の結果を提供する。図30Aは、Incucyteにより分析したときの、再プログラム化カクテルC14、C6、及びC4で混合ドナー臍帯血CD34+細胞から誘導したiPSCの5~20代にわたる細胞継代各回の集団倍加時間の結果を提供する。
図30B】[0098]図30Bは、Incucyteにより分析したときの、再プログラム化カクテルC6、C4、及びC3で単一ドナー臍帯血CD34+細胞から誘導したiPSCの4~20代にわたる細胞継代各回の集団倍加時間の結果を提供する。
図31A】[0099]図31A図31Bは、Incucyteにより分析したときの再プログラム化カクテルC14、C6、C4及びC3で臍帯血CD34+細胞から誘導したiPSCの累積集団倍化数の結果を提供する。図31Aは、Incucyteにより分析したときの、再プログラム化カクテルC14、C6、及びC4で混合ドナー臍帯血CD34+細胞から誘導したiPSCの開始時細胞継代5~8代目から細胞継代20代目までの累積集団倍化数の結果を提供する。
図31B】[0099]図31Bは、Incucyteにより分析したときの、再プログラム化カクテルC6、C4、及びC3で単一ドナー臍帯血CD34+細胞から誘導したiPSCの4~20代にわたる細胞継代各回の累積集団倍化数の結果を提供する。
図32】[0100]C14、C6、C4又はC3カクテルで再プログラム化した後の、内胚葉についてはマーカーSOX17及びFOXA2、中胚葉についてはT(ブラキュリ)及びFOXA2並びに外胚葉についてはPAX6に関するDAPIを対比染色とした3つの一次胚葉細胞層の染色の例示的な蛍光画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0070】
詳細な説明
概要
[0101] 本開示は、細胞の再プログラム化のための組成物及び方法であって、1つ以上の再プログラム化因子をコードする環状RNAポリヌクレオチド(circRNA)に細胞を接触させることを含む方法を提供する。様々な実施形態において、本明細書に開示される方法は、意外にも、少ないトランスフェクション回数及び最小限の再プログラム化因子の使用で再プログラム化が起こることを可能にする効率的な再プログラム化を提供する。重要なことに、本開示の方法のこうした特徴により、血液細胞(例えば、CD34+細胞、T細胞、B細胞、NK細胞、NKT細胞、末梢血単核球、臍帯血単核球)を含め、トランスフェクションが困難な細胞を浮遊培養液中で直接再プログラム化することが可能になる。血液細胞はトランスフェクション抵抗性であることが公知であるため、これは再プログラム化技術における大きな進歩である。Warren et al., Molecular Therapy. 2019;27(4):729-734を参照のこと。本明細書に示されるとおり、線維芽細胞のようによりロバストな細胞型をトランスフェクトするために先行技術で利用されている苛酷な方法は、CD34+細胞の再プログラム化における使用には好適でない。更に、本明細書に開示される方法は、線状RNA種には機能しない-むしろ本発明者らは、意外にも、circRNAがこうした感受性のある細胞を独特に再プログラム化可能であることを実証する。本開示は、細胞の再プログラム化及び編集を同時に行うための方法及び組成物であって、(i)1つ以上の再プログラム化因子をコードするcircRNA;(ii)細胞のDNA又はRNAの編集能を有する酵素;及び(iii)任意選択でガイドRNAポリヌクレオチドに細胞を接触させることを含む方法及び組成物を更に提供する。かかる同時の再プログラム化及び編集を用いると、血液由来細胞(例えば、CD34+細胞)を環状RNAを使用して浮遊培養液中で直接再プログラム化及び編集し得る。
【0071】
[0102] 本明細書に記載されるcircRNAポリヌクレオチドを利用する再プログラム化方法は、現在当該技術分野において公知の再プログラム化方法に優る利点を提供する。本明細書において実証されるとおり、再プログラム化因子をコードするcircRNAを使用すると、予想外にも、細胞の再プログラム化に必要な外因性因子の総数が減少する。例えば、本明細書に記載される方法は、再プログラム化因子Oct3/4、Sox2、Klf4、cMyc、Nanog、及びLin28をコードするcircRNAに細胞を接触させることにより細胞再プログラム化を実現し、E3、K3、及びB18Rを含めたウイルスタンパク質(Kogut et al., Nat Commun 9, 745 (2018). https://doi.org/10.1038/s41467-018-03190-3;Poleganov et al., Hum Gene Ther. 2015 Nov;26(11):751-66. doi: 10.1089/hum.2015.045)及び/又はmiR302(Ying et al. Methods Mol Biol. 2018;1733:283-304. doi: 10.1007/978-1-4939-7601-0_23を参照のこと)及びmiR367(Anokye-Danso et al. Cell Stem Cell. 2011;8:376-388;Kogut et al., Nat Commun 9, 745 (2018)を参照のこと)を含めた外因性miRNAなど、追加の補助的因子は必要ない。本明細書に開示される再プログラム化方法は、補助的因子を必要としないものであり、必要な試薬の数が減少することによりiPSCの製造コストが低下するのみならず、こうした補助的因子の導入が及ぼす可能性のある望ましくない効果が回避されることにより、生成されるiPSCの安全性もまた向上する(例えば、ある種のマイクロRNAの発現及び腫瘍発生におけるその関与について記載するVentura and Jacks, MicroRNAs and cancer: short RNAs go a long way. Cell 2009; 586-91;及び白血病細胞株におけるmiR302/367クラスターの過剰発現について記載するYu et al. Human microRNA clusters: genomic organization and expression profile in leukemia cell lines. Biochem Biophys Res Commun 2006; 349:59-68を参照のこと)。
【0072】
[0103] 更には、本開示は、これまでに記載されているものと比べて減少した数の再プログラム化因子の数を使用した浮遊状態のCD34+細胞の再プログラム化の成功について記載する。例えば、本開示は、Oct3/4、Sox2、及びKlf4による(Nanog、Lin28A又はLIN28B、及び/又はc-Mycのない)、Oct3/4、Sox2、Klf4、及びcMycによる(Nanog又はLin28A又はLin28Bのない)、及びOct3/4、Sox2、Klf4、Nanog、及びLin28A又はLIN28Bによる(c-Mycのない)再プログラム化の成功を実証する。必要となる補助的因子の数の減少に加えて、本開示は、CD34+細胞を含めた血液細胞の浮遊状態での再プログラム化を成功させるために必要なトランスフェクション回数の減少について記載する。これらの改良点の各々により、再プログラム化のための製造プロセスの実現可能性及び成功率が亢進し、重要なことには、出発細胞集団にかかるストレスが減少する。
【0073】
[0104] 更には、本明細書に記載される組成物及び方法によれば、ウイルス又は組込みプラスミドを使用する必要なしに、浮遊状態の細胞の「フットプリントフリーな」再プログラム化が可能となる。このように、本明細書に記載される組成物及び方法によれば、当該技術分野で利用可能なものと比べてより容易な安全iPSC技術の製造が可能となる。これまでに記載されている再プログラム化方法は、ウイルスベクター又はDNAプラスミドを利用して必要なトランス遺伝子を血液細胞に送達する。こうしたウイルスは、細胞に残り続けるか、又はゲノムに組み込まれるかのいずれかであり、従って安全性への懸念から、その臨床使用は限られている。DNAプラスミドもまたゲノムに組み込まれ得るため、製造不良が数多く起こり得る。RNAを送達すれば、細胞の「フットプリントフリーな」再プログラム化の可能性が開かれるが、これまでに記載されているRNAを利用する方法は、浮遊細胞では不成功に終わっている。詳細には、血液細胞はカチオン性試薬によるトランスフェクションに抵抗性である傾向があり、これがRNAポリヌクレオチドによるその再プログラム化の重大な障害を成し、ここでは典型的には、RNAがコードするトランス遺伝子の発現を持続させるため、培養物を複数回トランスフェクトする必要がある(Chong, Yeap and Ho, Transfection types, methods and strategies: a technical review (2021) PeerJ 9:e11165)。エレクトロポレーションは、血液細胞への効率的なmRNA送達を実現することができるが、RNAポリヌクレオチドを繰り返し投与する必要があるときには、この手順の苛酷さが同様の困難を引き起こす。
【0074】
[0105] 最近になって、末梢血CD34+細胞から分化させることのできる内皮前駆細胞のmRNA再プログラム化が報告されているが、これは2~4週間の接着細胞培養での分化過程及び再プログラム化を必要とする。従って、真の血液系統で機能するRNAベースの再プログラム化プロトコルがなおも必要とされており、しかし未だ対処されていない。
【0075】
[0106] 本開示は、浮遊状態の血液細胞(例えば、CD34+細胞)の再プログラム化を例示する。浮遊培養液中での再プログラム化は、当該技術分野において公知の接着培養方法に優る多くの利点を提供する。例えば、浮遊状態で成長させることのできる細胞は、調達が容易である。臍帯血バンクを含め、特定のハプロタイプ、血液型、年齢等を利用可能な血液バンクは数多くある。更に、本明細書に記載される方法によれば、接着培養で成長させることが必要な生検試料から入手される細胞に頼るのでなく、患者採血から直接入手した細胞の再プログラム化が可能となる。そのため、より広範囲のドナーから細胞を調達できると見込まれ、幅広い健常ドナーの選択が可能となり、既存のゲノム異常がある出発細胞型(例えば皮膚線維芽細胞)が使用される可能性が最小限となる。更には、高齢者からの線維芽細胞は再プログラム化が難しいことが示されている(Narayan et al. OCT4 and SOX2 Work as Transcriptional Activators in Reprogramming Human Fibroblasts. Cell Rep. 2017;20(7):1585-1596. doi:10.1016/j.celrep.2017.07.071);しかしながら、そのような年齢と血液細胞の再プログラム化との相関は見出されていない(Hokayem et al. Blood Derived Induced Pluripotent Stem Cells (iPSCs): Benefits, Challenges and the Road Ahead. J Alzheimers Dis Parkinsonism. 2016 Oct;6(5):275. doi: 10.4172/2161-0460.1000275. Epub 2016 Oct 25)。採血から直接供給材料を入手すると、時間、試薬コスト、患者に対する侵襲性もまた減少し、再プログラム化されたiPSCの入手に成功するために出発材料が受けなければならない操作の程度も減少する。例えば、多くの接着細胞型(例えば、線維芽細胞、角化細胞、内皮前駆細胞)は、再プログラム化前に特徴付けて、インビトロで数代の継代にわたり拡大培養しなければならない。
【0076】
[0107] 更には、本開示の方法によれば、circRNAで再プログラム化されたiPSCの長期繁殖が可能となる(実施例7及び8を参照のこと)。本開示の方法により生成されたiPSCは、その形態が安定していて、生存し続け、一定の速度で細胞分裂を起こし、複数回の細胞継代後にも、及び長期細胞培養条件下でも、ESCと緊密に類似する細胞アイデンティティを維持している(実施例7を参照のこと)。これらのiPSCはまた、遺伝的にも及び後成的にも安定性したままである(実施例8を参照のこと)。
【0077】
[0108] 特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本開示が属する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。本明細書における詳細な説明で使用される用語は、詳細な実施形態を説明することを目的としているに過ぎず、限定するように意図するものではない。
【0078】
[0109] 文脈上特に指示がない限り、本明細書に記載される様々な特徴を任意の組み合わせで使用できることが具体的に意図される。その上、一部の実施形態において、本明細書に示される任意の特徴又は特徴の組み合わせを除外し、又は省くことができる。更に例示すれば、例えば、ある特定のアミノ酸がA、G、I、L及び/又はVであり得ると本明細書に指示される場合、その文言はまた、そのアミノ酸がこれらの1つ又は複数のアミノ酸のいずれか部分的な一組、例えばA、G、I又はL;A、G、I又はV;A又はG;Lのみ等であり得ることも、かかる部分的な組み合わせの各々が本明細書に明示的に示されたものとして指示している。その上、かかる文言はまた、指定されるアミノ酸の1つ以上がディスクレームされ得ることも指示している。例えば、一部の実施形態においてアミノ酸はA、G又はIでない;Aでない;G又はVでない等であり、かかる可能なディスクレーマーの各々が本明細書に明示的に示されたものとする。
【0079】
[0110] 本明細書において言及される全ての刊行物、特許出願、特許、GenBank又は他の受託番号及び他の参考文献は、あらゆる目的から全体として参照により援用される。
【0080】
一般的方法
[0111] 本発明の実施には、特に指示されない限り、細胞培養、分子生物学(組換え技法を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学及び免疫学の従来技法が用いられることになり、それらは当業者の技能の範囲内にある。かかる技法については、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, third edition (Sambrook et al., 2001) Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis (P. Herdewijn, ed., 2004);Animal Cell Culture (R. I. Freshney), ed., 1987);Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.);Handbook of Experimental Immunology (D. M. Weir & C. C. Blackwell, eds.);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J. M. Miller & M. P. Calos, eds., 1987);Current Protocols in Molecular Biology (F. M. Ausubel et al., eds., 1987);PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullis et al., eds., 1994);Current Protocols in Immunology (J. E. Coligan et al., eds., 1991);Short Protocols in Molecular Biology (Wiley and Sons, 1999);Manual of Clinical Laboratory Immunology (B. Detrick, N. R. Rose, and J. D. Folds eds., 2006);Immunochemical Protocols (J. Pound, ed., 2003);Lab Manual in Biochemistry: Immunology and Biotechnology (A. Nigam and A. Ayyagari, eds. 2007);Immunology Methods Manual: The Comprehensive Sourcebook of Techniques (Ivan Lefkovits, ed., 1996);Using Antibodies: A Laboratory Manual (E. Harlow and D. Lane, eds.,1988)などの文献に十分に説明されている。
【0081】
定義
[0112] 本明細書及び添付の特許請求の範囲における説明には、以下の用語を使用する。
【0082】
[0113] 単数形「ある(a)」、「ある(an)」、及び「その(the)」には、文脈上特に明確に指示されない限り、複数形も同様に含まれることが意図される。
【0083】
[0114] ポリヌクレオチド又はポリペプチドの長さ、用量、時間、温度などの量など、測定可能な値に言及するときに本明細書で使用されるとおりの用語「約」は、指定される量から±20%、±10%、±5%、±1%、±0.5%、又は更には±0.1%の変動を包含することが意味される。
【0084】
[0115] 本明細書で使用されるとき、「及び/又は」は、関連する列挙されている項目のうちの1つ以上の任意の可能なあらゆる組み合わせ、並びに別様に解釈されるときには組み合わせの欠如(「又は」)を指し、及びそれを包含する。
【0085】
[0116] 本明細書で使用されるとき、「環状RNA」又は「circRNA」は、より良く知られている線状RNAと異なり、共有結合的に閉じた連続ループを形成するある種の一本鎖RNAを指す。本明細書では、任意のタンパク質名の前に「circ」が付くと、それはその遺伝子をコードする環状RNAを指す。RNAは、細胞において、細胞性スプライシング機構により環状化されてもよい。例えば、環状RNAは、プレmRNAスプライシング機構が「バックスプライシング」によりスプライスドナーを上流のスプライスアクセプターにつなぎ合わせ、それによって共有結合的に連結された末端を有する環状RNAが作製されることにより生成されてもよい。或いは、環状RNAは、インビトロで、例えば、インビトロ転写(IVT)によって産生された線状RNAの環状化により生成されてもよい。インビトロRNA環状化のための一般的な戦略は3つある:臭化シアン又は同様の縮合剤を使用した化学的方法、RNA又はDNAリガーゼ(例えば、T4 RNAリガーゼI又はII)を使用した酵素的方法、及び自己スプライシング型イントロンを使用したリボザイム方法。グループI触媒性イントロンの入れ替えを利用するリボザイム方法は、長鎖RNAの環状化に適用可能であり、補因子としてGTP及びMg2+を加えるだけで十分である。このイントロン入れ替え-エクソン(permuted intron-exon:PIE)スプライシング戦略は、半分のイントロン配列が隣接した部分的エクソンが融合したものからなる。インビトロでは、これらのコンストラクトは、グループI触媒性イントロンに特徴的な二重エステル転移反応を起こすが、エクソンが既に融合しているため、それらは、共有結合的に5’から3’に連結された環として切り出される(図3を参照のこと)。線状RNAを環状化する実例的なプロトコルを図1に提供し、実例的な線状RNA環状化戦略の一覧を図2A図2Gに提供する。
【0086】
[0117] 用語「線状RNA」及び「線状mRNA」は、文脈に基づけば当業者には明らかであろうとおり、本明細書では同義的に使用される。
【0087】
[0118] 本明細書で使用されるとき、「多能性」は、様々な異なる条件下で、2つ以上の分化細胞型に分化する能力、及び全3つの胚葉に特徴的な細胞型に分化する能力を備えた細胞を指す。一部の実施形態において、多能性は、1つ以上の多能性幹細胞マーカーの発現がエビデンスとなり得る。
【0088】
[0119] 本明細書で使用されるとき、用語「人工多能性幹細胞」及び「iPSC」は、様々な分化した(即ち、複能性又は非多能性の)体細胞から生成される多能性細胞を指す。iPSCは、遺伝学的にはそのそれぞれの元の分化した体細胞と実質的に同一であり、培養下で無限に自己再生する能力及び他の細胞型に分化する能力を含め、より高い能力の細胞、例えば胚性幹(ES)細胞などと同様の特徴を示す。一部の実施形態において、iPSCは、ES細胞と類似した形態学的特性(即ち、円形、大きい核小体及び乏しい細胞質)及び成長特性(即ち、倍加時間)を呈する。一部の実施形態において、iPSCは、多能性細胞特異的マーカー(例えば、Oct-4、SSEA-3、SSEA-4、Tra-1-60、Tra-1-81、但しSSEA-1は除く)を発現する。
【0089】
[0120] 本明細書で使用されるとき、「分化細胞」又は「体細胞」は、その天然の形態では、本明細書においてこの用語が定義されるとおりの多能性ではない任意の細胞である。用語「体細胞」はまた、複能性(例えば、2つ以上の細胞型を作り出すことができる)であるが、しかし多能性(例えば、3胚葉全てから細胞を作り出すことができる)ではない前駆細胞も包含する。
【0090】
[0121] 用語「再プログラム化」は、本明細書で使用されるとき、体細胞、複能性細胞又は前駆細胞など、細胞の分化状態を変化させる過程を指す。一部の実施形態において、細胞の再プログラム化は、細胞を第1の細胞型から第2の細胞型へと変換することを含み得る。一部の実施形態において、再プログラム化は、分化細胞の表現型を多能性表現型へと変化させることを含み得る。一部の実施形態において、再プログラム化とは、iPSCが分化細胞へと変換される「誘導性分化」又は「転写因子の指図による分化」の過程を指し得る。
【0091】
[0122] 本明細書で使用されるとき、用語「再プログラム化因子」は、細胞の再プログラム化を促進する任意の因子又は因子の組み合わせを指す。再プログラム化因子は、例えば、転写因子であり得る。分化細胞からiPSCを作り出すための実例的な再プログラム化因子としては、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、c-Myc、及びL-Mycが挙げられる。再プログラム化された細胞を作り出すための実例的な再プログラム化因子及びそれらの組み合わせについては、表1及び表3に提供する。
【0092】
[0123] 本明細書で使用されるとき、「分化転換」は、一つの体細胞型が第2の体細胞型へと直接変換されるある種の細胞再プログラム化を指す。一部の実施形態において、分化転換は、第1の細胞型の体細胞が中間の多能性状態又は前駆細胞型を経ることなく第2の細胞型の体細胞へと変換される「直接の再プログラム化」又は「直接の細胞運命変換」を指し得る。
【0093】
[0124] 本明細書で使用されるとき、「配列内リボソーム進入部位」又は「IRES」は、キャップ非依存的な翻訳の開始を可能にするRNAエレメントである。IRESは、例えば、ウイルスIRES又は哺乳類IRES(例えば、ヒトIRES)であり得る。
【0094】
[0125] 「ヌクレオチド三リン酸」又は「NTP」は、窒素含有塩基が5炭糖(リボース又はデオキシリボースのいずれか)に結合していて、その糖に3つのリン酸基が結合しているものを含む分子である。
【0095】
[0126] 本明細書で使用されるとき、「修飾されたNTP」とは、そのNTPを含む核酸に有利に働く特性を付与するため化学的に修飾されているNTPである。かかる有利に働く特性としては、例えば、免疫原性の低下、安定性の増加、化学的官能性、又は結合親和性の変更を挙げることができる。
【0096】
[0127] 用語「修飾されたRNA」(例えば、「修飾された線状RNA」又は「修飾された環状RNA」)は、1つ以上の修飾されたNTPを含むRNA分子を記載するために使用される。
【0097】
[0128] 用語「ベクター」は、核酸(即ち、DNA又はRNA分子)用の担体を指し、核酸を細胞に導入するために使用することができる。「発現ベクター」は、タンパク質又はRNA(例えば、環状RNA)をコードする配列及びその配列が細胞で発現するために必要な必須調節領域を含むベクターである。一部の実施形態において、タンパク質又はRNAをコードする配列は、ベクター内で別の配列に作動可能に連結されている。用語「作動可能に連結されている」は、タンパク質又はRNAをコードする配列が発現するために必要な調節配列が核酸分子内でタンパク質又はRNAの発現のエフェクター配列に対して適切な位置に置かれていることを意味する。
【0098】
[0129] 本明細書で使用されるとき、用語「脂質ナノ粒子」及び「LNP」は、サブミクロン範囲の脂質ベースの粒子を記載する。LNPは、リポソームの構造特性を有してもよく、及び/又は別の非二分子層型の構造を有してもよい。LNPは、核酸(例えば、DNA又はRNA分子)にコンジュゲートしてもよく、細胞への核酸の送達に使用し得る。
【0099】
[0130] 用語「バリアント」は、本明細書で使用されるとき、参照ポリヌクレオチド又はポリペプチド配列、例えば天然ポリヌクレオチド又はポリペプチド配列の突然変異体、即ち参照ポリヌクレオチド又はポリペプチド配列と100%未満の配列同一性を有するものを指す。言い換えれば、バリアントは、参照ポリペプチド配列と比べて少なくとも1個のアミノ酸の違い(例えば、アミノ酸置換、アミノ酸挿入、アミノ酸欠失)又は参照ポリヌクレオチド、例えば天然ポリヌクレオチド又はポリペプチド配列と比べて少なくとも1個の核酸の違い(例えば、核酸置換、核酸挿入、核酸欠失)を含む。例えば、バリアントは、完全長天然ポリヌクレオチド配列と50%又はそれ以上、60%又はそれ以上、又は70%又はそれ以上の配列同一性、例えば、完全長天然ポリヌクレオチド配列と75%又は80%又はそれ以上の同一性、85%、90%、又は95%又はそれ以上など、例えば、98%又は99%の同一性を有するポリヌクレオチドであり得る。別の例として、バリアントは、完全長天然ポリペプチド配列と70%又はそれ以上の配列同一性、例えば、完全長天然ポリペプチド配列と75%又は80%又はそれ以上の同一性、85%、90%、又は95%又はそれ以上など、例えば、98%又は99%の同一性を有するポリペプチドであり得る。バリアントにはまた、参照配列、例えば天然配列の断片と70%又はそれ以上の配列同一性、例えば天然配列と75%又は80%又はそれ以上の同一性、85%、90%、又は95%又はそれ以上など、例えば、98%又は99%の同一性を共有する参照配列、例えば、天然配列のバリアント断片も含まれ得る。
【0100】
[0131] 2つ以上の核酸配列又はアミノ酸配列の間の配列類似性又は同一性を決定する方法は、当該技術分野において公知である。例えば、配列類似性又は同一性は、Smith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2, 482 (1981)の局所配列同一性アルゴリズムを使用するか、Needleman & Wunsch J Mol. Biol. 48, 443 (1970)の配列同一性アラインメントアルゴリズムによるか、Pearson & Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85, 2444 (1988)の類似性検索方法によるか、これらのアルゴリズムのコンピューター化された実装(Genetics Software Package、Genetics Computer Group, 575 Science Drive, Madison, WIのGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)によるか、Devereux et al. Nucl. Acid Res. 12, 387-395 (1984)によって記載されるBest Fit配列プログラム、又は目視検査により決定し得る。
【0101】
[0132] 別の好適なアルゴリズムは、Altschul et al. J. Mol. Biol. 215, 403-410, (1990)及びKarlin et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 5873-5787 (1993)に記載されるBLASTアルゴリズムである。特に有用なBLASTプログラムは、Altschul et al. Methods in Enzymology, 266, 460-480 (1996); blast.wustl/edu/blast/README.htmlから得られたWU-BLAST-2プログラムである。WU-BLAST-2では幾つかの検索パラメータが用いられ、それらは任意選択でデフォルト値に設定される。パラメータは動的な値であり、特定の配列の組成及び目的の配列の検索が行われる特定のデータベースの組成に応じてプログラムそれ自体によって確立される;しかしながら、感度を増加させるためにこれらの値を調整してもよい。更に、追加の有用なアルゴリズムは、Altschul et al, (1997) Nucleic Acids Res. 25, 3389-3402によって報告されるとおりのギャップ付きBLASTである。特に指示されない限り、パーセント同一性は、本明細書では、インターネットアドレス:blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgiで利用可能なアルゴリズムを用いて決定する。
【0102】
環状RNA
[0133] 本明細書には、環状RNAが提供される。詳細な実施形態において、環状RNAは、(単独で、又は他の再プログラム化因子との組み合わせで)分化細胞をiPSCに再プログラム化する能力を有する、iPSCを分化細胞に分化させる能力を有する、及び/又はある分化細胞型を別の分化細胞型に分化させる能力を有する再プログラム化因子をコードする。
【0103】
[0134] 一部の実施形態において、環状RNAは、約200ヌクレオチド~約5,000ヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、環状RNAは約200~約1,000ヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、環状RNAは約1,000ヌクレオチド~約2,500ヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、環状RNAは約2,500ヌクレオチド~約5,000ヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、環状RNAは約5,000ヌクレオチド超を含む。
【0104】
[0135] 一部の実施形態において、環状RNAは、1つ以上のオープンリーディングフレームを含む。一部の実施形態において、環状RNAは、1つ以上のタンパク質コード配列を含む。一部の実施形態において、環状RNAは、オープンリーディングフレーム、及び/又はタンパク質コード配列を含まない。
【0105】
[0136] 環状RNAが2つ以上のタンパク質コード核酸配列を含む実施形態において、各配列は、2Aペプチドなど、自己切断型ペプチドをコードする配列によって分離されていてもよい。例示的な2Aペプチドとしては、限定はされないが、EGRGSLLTCGDVEENPGP(配列番号1)、ATNFSLLKQAGDVEENPGP(配列番号2)、QCTNYALLKLAGDVESNPGP(配列番号3)、及びVKQTLNFDLLKLAGDVESNPGP(配列番号4)が挙げられる。一部の実施形態において、各タンパク質コード核酸配列は、IRESによって分離されていてもよい。
【0106】
[0137] 環状RNAは、線状mRNAの効率的な翻訳に必要な5’側の7-メチルグアノシンキャップ構造を欠いている。従って、環状RNAが翻訳されるように、リボソームを動員する代替的な機構を使用し得る。例えば、開始因子又はリボソームそれ自体に直接結合している配列内リボソーム進入部位(IRES)が使用されてもよい。よって、一部の実施形態において、環状RNAは、配列内リボソーム進入部位(IRES)を含む。一部の実施形態において、IRESは真核生物リボソームと会合する。一部の実施形態において、IRESは、タンパク質コード核酸配列に作動可能に連結される。
【0107】
[0138] IRES配列の例としては、多種多様なウイルスに由来する配列、例えばピコルナウイルスUTR(脳心筋炎ウイルス(EMCV)など)のリーダー配列、ポリオリーダー配列、A型肝炎ウイルスリーダー、C型肝炎ウイルスIRES、ヒトライノウイルス2型IRES、口蹄疫ウイルスのIRESエレメント、ジアルジアウイルスIRESなどが挙げられる。種々非ウイルス性IRES配列もまた使用することができ、限定はされないが、酵母のIRES配列、並びにヒトアンジオテンシンII 1型受容体IRES、線維芽細胞成長因子IRES、血管内皮成長因子IRES、及びインスリン様成長因子2 IRESが挙げられる。本明細書に記載される環状RNAに使用するのに好適な追加のIRES配列としては、http://iresite.org/で利用可能なデータベースに記載されるものが挙げられる。
【0108】
[0139] 一部の実施形態において、環状RNAは、タンパク質コード配列に隣接するイントロンエレメントを含む。イントロンエレメントが細胞性スプライシング機構によるバックスプライシングを受けると、共有結合的に閉じた環状RNAが生じ得る。よって、一部の実施形態において、環状RNAは、タンパク質コード配列の5’側に位置する第1のイントロンエレメントと、タンパク質コード配列の3’側に位置する第2のイントロンエレメントとを含む。
【0109】
[0140] 一部の実施形態において、環状RNAは、線状RNAを環状化することにより生成される。一部の実施形態において、線状RNAは、例えばそれが自己スプライシング型イントロンを含む場合に自己環状化し得る。環状RNAは5’又は3’末端を有しないため、エキソヌクレアーゼ介在性の分解に抵抗性を持つことができ、細胞内で多くの線状RNAよりも安定性が高いものであり得る。
【0110】
[0141] 一部の実施形態において、イントロンエレメントは、任意の公知の1つ又は複数のイントロンエレメントから、任意の組み合わせで、及び任意の倍数及び/又は比で選択される。イントロンエレメントの例としては、circBase環状RNAデータベース(Glazar et al. RNA 20:1666-1670 (2014);及びwww.circbase.org)及びRybak-Wolf et al. Mol. Cell 58(5):870-885 (2015)(各々、全体として参照により本明細書に援用される)に記載されるものが挙げられる。一部の実施形態において、イントロンエレメントは、哺乳類イントロン又はその断片である。一部の実施形態において、イントロンエレメントは、非哺乳類イントロン(例えば、自己スプライシンググループIイントロン、自己スプライシンググループIIイントロン、スプライセオソームイントロン、又はtRNAイントロン)、又はその断片である。
【0111】
[0142] 一部の実施形態において、環状RNAは、環状RNAからのタンパク質コード配列の安定性及び/又は翻訳を改善する1つ以上の追加のエレメントを含む。例えば、一部の実施形態において、環状RNAはコザック配列を含み得る。コザックコンセンサス配列の一例は、RCC(AUG)G(配列番号5)である(ここでは開始コドンを括弧でくくり、及び-3位の「R」はプリン(A又はG)を表す)。コザックコンセンサス配列の別の例はRXY(AUG)(配列番号6)である(ここでRはプリン(A又はG)であり、YはC又はGのいずれかであり、及びXは任意の塩基である)。
【0112】
[0143] 一部の実施形態において、環状RNAは、第1のイントロンエレメントと、タンパク質コード配列と、第2のイントロンエレメントとを含む。一部の実施形態において、環状RNAは、IRESとタンパク質コード配列とを含む。一部の実施形態において、環状RNAは、第1のイントロン配列と、IRESと、タンパク質コード配列と、第2のイントロン配列とを含む。
【0113】
[0144] 一部の実施形態において、環状RNAは、再プログラム化因子(例えば、転写因子)をコードする配列を含む。一部の実施形態において、環状RNAは、第1のイントロンエレメントと、再プログラム化因子をコードする配列と、第2のイントロンエレメントとを含む。
【0114】
[0145] 一部の実施形態において、環状RNAは、IRESと再プログラム化因子をコードする配列とを含む。一部の実施形態において、環状RNAは、第1のイントロン配列と、IRESと、再プログラム化因子をコードする配列と、第2のイントロン配列とを含む。一部の実施形態において、環状RNAは、IRESと再プログラム化因子をコードする配列とを含む。一部の実施形態において、環状RNAは、第1のイントロンエレメントと、IRESと、再プログラム化因子をコードする配列と、第2のイントロンエレメントとを含む。米国特許出願公開第2020/0080106号(これは参照により本明細書に援用される)もまた参照のこと。環状RNAはまた、修飾された塩基及び/又はNTPも含み得る。一部の実施形態において、環状RNAは、修飾されたNTPを含む。一部の実施形態において、環状RNAは、修飾された環状RNAである。
【0115】
[0146] 修飾塩基としては、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニン及びグアニンの6-メチル及び他のアルキル誘導体、アデニン及びグアニンの2-プロピル及び他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミン及び2-チオシトシン、5-ハロウラシル及びシトシン、5-プロピニルウラシル及びシトシン並びにピリミジン塩基の他のアルキニル誘導体、6-アゾウラシル、シトシン及びチミン、5-ウラシル(プソイドウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシル及び他の8-置換アデニン類及びグアニン類、5-ハロ特に5-ブロモ、5-トリフルオロメチル及び他の5-置換ウラシル類及びシトシン類、7-メチルグアニン及び7-メチルアデニン、2-F-アデニン、2-アミノ-アデニン、8-アザグアニン及び8-アザアデニン、7-デアザグアニン及び7-デアザアデニン及び3-デアザグアニン及び3-デアザアデニンなど、合成及び天然塩基が挙げられる。更なる修飾塩基としては、三環式ピリミジン類、例えば、フェノキサジンシチジン(1H-ピリミド[5,4-b][1,4]ベンゾキサジン-2(3H)-オン)、フェノチアジンシチジン(1H-ピリミド[5,4-b][1,4]ベンゾチアジン-2(3H)-オン)、置換フェノキサジンシチジンなどのG-クランプ(例えば、9-(2-アミノエトキシ)-H-ピリミド[5,4-b][1,4]ベンゾキサジン-2(3H)-オン)、カルバゾールシチジン(2H-ピリミド[4,5-b]インドール-2-オン)、ピリドインドールシチジン(H-ピリド[3’,2’:4,5]ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2-オン)などが挙げられる。修飾塩基としてはまた、プリン又はピリミジン塩基が他のヘテロサイクル、例えば7-デアザ-アデニン、7-デアザグアノシン、2-アミノピリジン及び2-ピリドンに置き換えられているものも挙げることができる。
【0116】
[0147] 一部の実施形態において、環状RNAは、修飾された骨格を含む。修飾されたRNA骨格の例としては、ホスホロチオエート類、キラルホスホロチオエート類、ホスホロジチオエート類、リン酸トリエステル類、アミノアルキルリン酸トリエステル類、メチル及び他のアルキルホスホン酸塩であって、3’-アルキレンホスホン酸塩、5’-アルキレンホスホン酸塩及びキラルホスホン酸塩を含めたもの、ホスフィネート類、ホスホルアミデート類であって、3’-アミノホスホルアミデート及びアミノアルキル-ホスホルアミデート類、チオノホスホロアミデート類、チオノアルキルホスホネート類、チオノアルキル(thionoalkyl)-リン酸トリエステル類、通常の3’-5’連結を有するセレノホスフェート類及びボラノホスフェート類を含めたもの、これらの2’-5’連結された類似体、及び1つ以上のインターヌクレオチド連結が3’から3’、5’から5’又は2’から2’への連結である逆の極性を有するものを含むものが挙げられる。
【0117】
[0148] 一部の実施形態において、環状RNAは、活性、細胞分布又は細胞取込みを亢進させる1つ以上の部分又はコンジュゲートをRNAに化学的に連結することにより修飾し得る。例えば、環状RNAは、インターカレーター、レポーター分子、ポリアミン、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、オリゴマーの薬力学的特性を亢進させる基、又はオリゴマーの薬物動態特性を亢進させる基にコンジュゲートし得る。一部の実施形態において、環状RNAは、コレステロール、脂質、リン脂質、ビオチン、フェナジン、葉酸塩、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、又は色素にコンジュゲートし得る。薬力学的特性を亢進させる基としては、RNA取込みを改善する基、オリゴマーの分解抵抗性を亢進させる基、及び/又はRNAとの配列特異的ハイブリダイゼーションを強化する基が挙げられる。薬物動態特性を亢進させる基としては、オリゴマー取込み、分布、代謝又は排泄を改善する基が挙げられる。環状RNAはまた、活性薬物物質、例えば、アスピリン、ワルファリン、フェニルブタゾン、イブプロフェン、スプロフェン、フェンブフェン、ケトプロフェン、(S)-(+)-プラノプロフェン、カルプロフェン、ダンシルサルコシン、2,3,5-トリヨード安息香酸、フルフェナム酸、フォリン酸、ベンゾサイアジアザイド、クロロチアジド、ジアゼピン、インドメタシン(indomethicin)、バルビツール酸塩、セファロスポリン、サルファ剤、抗糖尿、抗菌薬又は抗生物質にもコンジュゲートし得る。一部の実施形態において、環状RNAは、脂質ナノ粒子(LNP)にコンジュゲートされる。
【0118】
[0149] 一部の実施形態において、環状RNAは、複合体の一部である。一部の実施形態において、複合体は、環状RNA及び脂質ナノ粒子(LNP)を含む。一部の実施形態において、環状RNAとLNPとはコンジュゲートされる。一部の実施形態において、環状RNAとLNPとは共有結合的にコンジュゲートされる。一部の実施形態において、環状RNAとLNPとは非共有結合的にコンジュゲートされる。一部の実施形態において、本明細書に記載される方法は、LNPと複合体化した1つ以上の環状RNAに細胞を接触させることを含む。
【0119】
[0150] LNPは、例えば、1つ以上のカチオン性脂質、非カチオン性脂質、及び/又はPEG修飾された脂質を含み得る。一部の実施形態において、LNPは、以下のカチオン性脂質:C12-200、DLin-KC2-DMA、DODAP、HGT4003、ICE、HGT5000、又はHGT5001のうちの少なくとも1つを含み得る。一部の実施形態において、LNPは、コレステロール及び/又はPEG修飾された脂質を含む。一部の実施形態において、LNPは、DMG-PEG2Kを含む。一部の実施形態において、LNPは、以下:C12-200、DOPE、コレステロール、DMG-PEG2K;DODAP、DOPE、コレステロール、DMG-PEG2K;HGT5000、DOPE、コレステロール、DMG-PEG2K、HGT5001、DOPE、又はDMG-PEG2Kのうちの1つを含む。一部の実施形態において、LNPは、ポリエチレンイミン(PEI)を含む。
【0120】
[0151] 一部の実施形態において、環状RNAは、実質的に非免疫原性である。一部の実施形態において、環状RNAは、それが1つ以上のインターフェロン調節遺伝子(例えば、www.interferome.orgに記載される1つ以上の遺伝子)の発現又は活性を誘導しない場合に非免疫原性と見なされる。一部の実施形態において、インターフェロン調節遺伝子は、IFN-α、IFN-β、及び/又はTNF-αから選択される。環状RNAには、その免疫原性を低減するため、様々な修飾を作ることができる。例えば、一部の実施形態において、環状RNAは、1つ以上のM-6-メチルアデノシン(mA)、5-メチル-シトシン(5mC)、又はプソイドウリジン残基を含むように修飾し得る。
【0121】
[0152] 一部の実施形態において、本明細書に記載される環状RNAは、線状RNAと比べて免疫原性が低い。例えば、一部の実施形態において、環状RNAは、1つ以上のインターフェロン調節遺伝子の発現及び/又は活性を実質的に誘導しない。一部の実施形態において、環状RNAが誘導する1つ以上のインターフェロン調節遺伝子の発現及び/又は活性は、線状RNAと比べて約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又は約100%低い。
【0122】
[0153] 一部の実施形態において、本明細書に記載される環状RNAは、線状RNAと比べて長い細胞半減期を有する。例えば、環状RNAは、線状RNAと比べて約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又は約100%、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍又はそれ以上長い半減期を有し得る。一部の実施形態において、環状RNAは、線状RNAと比べて約4時間、約12時間、約18時間、約24時間、約2日、約3日、約4日、約5日、約10日、又は約10日長い半減期を有し得る。
【0123】
[0154] 一部の実施形態において、環状RNAは、細胞内で複製しない。一部の実施形態において、環状RNAは、ゲノム組込みのリスクがない。そのため、本明細書に記載される環状RNAは、細胞のゲノムDNAが環状RNA組成物による修飾を受けないまま保たれる「フットプリントフリーな」細胞修飾を提供する。
【0124】
[0155] 環状RNAは、当該技術分野において公知の任意の好適な方法を用いて生成されてもよい。一部の実施形態において、環状RNAは、インビトロ転写(IVT)を用いて、標準プロトコルに従い、及び/又は市販のキット(例えば、ThermoFisher(登録商標)からのMAXIscript(登録商標)又はMEGAscript(登録商標)キット)を使用することにより生成される。例えば、実例的なIVTプロトコルでは、精製された線状DNA鋳型(即ち、本明細書に記載されるとおりの環状RNAをコードするDNA分子)、リボヌクレオチド三リン酸、DTT及びマグネシウムイオンを含む緩衝系、及び環状RNAの作製に適切なファージRNAポリメラーゼが使用される。DNA鋳型には、ファージポリメラーゼが結合してRNA合成を開始させるところである二本鎖プロモーター領域が含まれる。反応条件(例えば、ヌクレオチド塩の種類、転写緩衝液中の塩の種類及び濃度、酵素濃度及びpH)は、最適化な収率を実現するため、使用される詳細なポリメラーゼ及び一組の成分全体に合わせて最適化される。大規模なIVT反応では、20μl反応液中で1マイクログラムの鋳型当たり最大120~180μgのRNAを作製することができる。一部の実施形態において、環状RNAは、標準プロトコルに従い、RNA合成を用いて生成されてもよい。
【0125】
[0156] RNAを環状化する様々な方法が当該技術分野において公知である。例えば、線状RNAの環状化についての実例的なプロトコルを図1に提供し、実例的な線状RNA環状化戦略の一覧を図2A図2Gに提供する。一部の実施形態において、RNAは、例えば、それが自己スプライシング型イントロンを含む場合には自己環状化する。
【0126】
[0157] また、本明細書には、本明細書に記載される環状RNAをコードする核酸(即ち、DNA分子)、及びそれを含むベクターも提供される。
【0127】
再プログラム化因子をコードする環状RNA
[0158] 一部の実施形態において、環状RNAは、再プログラム化因子をコードする。一部の実施形態において、再プログラム化因子は、ヒト又はヒト化再プログラム化因子である。一部の実施形態において、再プログラム化因子は、転写因子である。
【0128】
[0159] 一部の実施形態において、再プログラム化因子は、例えば、表1に掲載される再プログラム化因子のいずれか1つであり得る。一部の実施形態において、再プログラム化因子は、表1に掲載される再プログラム化因子のいずれか1つの断片又はバリアントである。一部の実施形態において、再プログラム化因子は、表1に掲載される再プログラム化因子のいずれか1つと少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0129】
【表1】
【0130】
【表2】
【0131】
【表3】
【0132】
[0160] 一部の実施形態において、再プログラム化因子は、以下の再プログラム化因子:Oct4、Sox2、Klf4、c-Myc、Lin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、Nanog、Sall4、Utf1、p53、p21、p16Ink4a、GLIS1、L-Myc、TGF-β、MDM2、REM2、サイクリンD1、SV40ラージT抗原、DOT1L、CX43、MBD3、SIRT6、TCL1a、RARy、SNAIL、Lrh-1、又はRCOR2のいずれか1つ、又はこれらの組み合わせである。一部の実施形態において、再プログラム化因子は、以下の再プログラム化因子:Oct4、Sox2、Klf4、c-Myc、Lin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、Nanog、Sall4、Utf1、p53、p21、p16Ink4a、GLIS1、L-Myc、TGF-β、MDM2、REM2、サイクリンD1、SV40ラージT抗原、DOT1L、CX43、MBD3、SIRT6、TCL1a、RARy、SNAIL、Lrh-1、又はRCOR2のいずれか1つ、又はこれらの組み合わせの断片又はバリアントである。
【0133】
[0161] 一部の実施形態において、再プログラム化因子は、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、c-Myc、及び/又はL-Mycのいずれか1つ、又はその断片若しくはバリアントである。一部の実施形態において、再プログラム化因子は、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、及び/又はc-Myc、又はその断片若しくはバリアントである。一部の実施形態において、再プログラム化因子は、Oct3/4、Klf4、及び/又はSox2又はその断片若しくはバリアントである。一部の実施形態において、再プログラム化因子は、Oct3/4、Klf4、Sox2、及び/又はc-Myc、又はその断片若しくはバリアントである。一部の実施形態において、再プログラム化因子は、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、及び/又はLin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、又はその断片若しくはバリアントである。一部の実施形態において、再プログラム化因子は、ヒト又はヒト化再プログラム化因子である。
【0134】
[0162] 一部の実施形態において、環状RNAは、再プログラム化因子Oct3/4をコードする。一部の実施形態において、コードされるOct3/4は、配列番号7のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一の配列を有する。一部の実施形態において、環状RNAは再プログラム化因子Oct3/4をコードし、配列番号8の核酸配列を含むか、又はそれからなる。一部の実施形態において、環状RNAは、再プログラム化因子Oct3/4をコードし、配列番号8と少なくとも90%又は少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一の核酸配列を含む。
【0135】
[0163] 一部の実施形態において、環状RNAは、再プログラム化因子Klf4をコードする。一部の実施形態において、コードされるKlf4は、配列番号9又は10のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一の配列を有する。一部の実施形態において、環状RNAは再プログラム化因子Klf4をコードし、配列番号11の核酸配列を含むか、又はそれからなる。一部の実施形態において、環状RNAは、再プログラム化因子Klf4をコードし、配列番号11と少なくとも90%又は少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一の核酸配列を含む。
【0136】
[0164] 一部の実施形態において、環状RNAは、再プログラム化因子Sox2をコードする。一部の実施形態において、Sox2は、配列番号12のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一の配列を有する。一部の実施形態において、環状RNAは再プログラム化因子Sox2をコードし、配列番号13の核酸配列を含むか、又はそれからなる。一部の実施形態において、環状RNAは再プログラム化因子Sox2をコードし、配列番号13と少なくとも90%又は少なくとも95%。96%、97%、98%、又は99%同一の核酸配列を含む。
【0137】
[0165] 一部の実施形態において、環状RNAは、再プログラム化因子Nanogをコードする。一部の実施形態において、Nanogは、配列番号14又は15のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一の配列を有する。一部の実施形態において、環状RNAは、再プログラム化因子Nanogをコードし、配列番号16の核酸配列を含むか、又はそれからなる。一部の実施形態において、環状RNAは、再プログラム化因子Nanogをコードし、配列番号16と少なくとも90%又は少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一の核酸配列を含む。
【0138】
[0166] 一部の実施形態において、環状RNAは、再プログラム化因子Lin28Aをコードする。一部の実施形態において、Lin28Aは、配列番号17のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一の配列を有する。一部の実施形態において、環状RNAは再プログラム化因子Lin28Aをコードし、配列番号18の核酸配列を含むか、又はそれからなる。一部の実施形態において、環状RNAは、再プログラム化因子Lin28Aをコードし、配列番号18と少なくとも90%又は少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一の核酸配列を含む。
【0139】
[0167] 一部の実施形態において、環状RNAは、再プログラム化因子c-Mycをコードする。一部の実施形態において、c-Mycは、配列番号19又は20のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一の配列を有する。一部の実施形態において、環状RNAは再プログラム化因子c-Mycをコードし、配列番号21の核酸配列を含むか、又はそれからなる。一部の実施形態において、環状RNAは再プログラム化因子c-Mycをコードし、配列番号21と少なくとも90%又は少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一の核酸配列を含む。
【0140】
[0168] 一部の実施形態において、環状RNAは、再プログラム化因子L-Mycをコードする。一部の実施形態において、L-Mycは、配列番号22~24のいずれか1つのアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一の配列を有する。一部の実施形態において、環状RNAは再プログラム化因子L-Mycをコードし、配列番号25の核酸配列を含むか、又はそれからなる。一部の実施形態において、環状RNAは再プログラム化因子L-Mycをコードし、配列番号25と少なくとも90%又は少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一の核酸配列を含む。
【0141】
[0169] 一部の実施形態において、環状RNAは、2つ以上のタンパク質コード核酸配列を含む。例えば、環状RNAは、3、4、5、又は6つのタンパク質コード配列を含み得る。一部の実施形態において、タンパク質コード配列のうちの少なくとも1つは、再プログラム化因子(例えば、転写因子)をコードする。一部の実施形態において、環状RNAは、表3の組み合わせ1~106のいずれか1つに係る再プログラム化因子の組み合わせをコードする2、3、4、5、又は6つのタンパク質コード配列を含む。
【0142】
[0170] 一部の実施形態において、環状RNAは2つ以上のタンパク質コード配列を含み、ここでタンパク質コード配列のうちの少なくとも1つは、再プログラム化因子をコードする。一部の実施形態において、環状RNAは2つ以上のタンパク質コード配列を含み、ここでタンパク質コード配列のうちの少なくとも1つは、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、c-Myc、又はL-Mycの1つ以上、又はその断片若しくはバリアントをコードする。一部の実施形態において、環状RNAは2つ以上のタンパク質コード配列を含み、ここでタンパク質コード配列の各々は、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、c-Myc、及びL-Mycから選択される再プログラム化因子、又はその断片若しくはバリアントをコードする。
【0143】
[0171] 一部の実施形態において、環状RNAは、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、c-Myc、又はL-Mycをコードする配列を含む。一部の実施形態において、環状RNAは、第1のイントロンエレメントと、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、c-Myc、又はL-Mycをコードする配列と、第2のイントロンエレメントとを含む。
【0144】
[0172] 一部の実施形態において、環状RNAは、IRESと、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、c-Myc、又はL-Mycをコードする配列とを含む。一部の実施形態において、環状RNAは、第1のイントロンエレメントと、IRESと、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、c-Myc、又はL-Mycをコードする配列と、第2のイントロンエレメントとを含む。
【0145】
補助的因子をコードするRNAポリヌクレオチド
[0173] 一部の実施形態において、本開示は、細胞の再プログラム化を助ける外因性因子をコードするRNAポリヌクレオチド(例えば、線状RNAポリヌクレオチド又は環状RNA)を提供する。一部の実施形態において、外因性因子は、マイクロRNA(miRNA)又は長鎖非コードRNA(例えば、LINcRNA-ROR)など、RNAである。miRNA302(a~d)クラスター及びmiR367などのmiRNAは、再プログラム化因子と併せて使用したとき、再プログラム化効率を改善することが示されている(米国特許第8,791,248号;米国特許第8,852,940号;Poleganov et al., Human Gene Therapy.Nov 2015.751-766を参照のこと)。例えば、miRNAは、miRNA302ファミリー(例えば、miR302d、miR302a、miR302c及びmiR302b)、miR367、miR766、miR200c、miR369、miR372、Let7、miR19a/b)のいずれか1つ又はその断片若しくはバリアントであり得る。
【0146】
[0174] 一部の実施形態において、補助的因子は、circBIRC6、circCORO1C、又はcircMAN1A2など、ヒト幹細胞(例えば、ヒトESC)で濃縮されている環状RNAである。circBIRC6、circCORO1C及びcircMAN1A2。これらの環状RNAは、「miRスポンジ」として働くと考えられている。このように、これらの因子は、多能性関連転写因子NANOG、SOX2及びOCT4の発現を抑制することが公知のある種のmiRNA(例えばmiR34a及び/又はmiR145)に対抗して作用することにより、多能性の促進において調節的役割を有し得る(Yu et al. Nat Commun 8, 1149 (2017))。
【0147】
[0175] 一部の実施形態において、補助的因子は、自然免疫応答を阻害する1つ以上のウイルスタンパク質である。ウイルスタンパク質は、例えば、RIG-1(レチノイン酸誘導性遺伝子I)又はPKR(プロテインキナーゼR)経路の阻害薬であり得る。例示的ウイルスタンパク質を以下の表2に提供する。本明細書に記載される方法で使用するのに好適な例示的ウイルスタンパク質としては、限定はされないが、ワクシニアウイルス由来のB18R、E3、又はK3が挙げられる。例示的B18R配列を配列番号26として提供する。一部の実施形態において、B18Rタンパク質は、配列番号26と少なくとも90%、又は少なくとも95%同一の配列を有する。例示的E3配列を配列番号27として提供する。一部の実施形態において、E3タンパク質は、配列番号27と少なくとも90%、又は少なくとも95%同一の配列を有する。例示的K3配列を配列番号28として提供する。一部の実施形態において、K3タンパク質は、配列番号28と少なくとも90%、又は少なくとも95%同一の配列を有する。
【0148】
【表4】
【0149】
環状RNA組成物
[0176] 一部の実施形態において、本開示は、再プログラム化因子をコードする環状RNAの組成物を提供する。一部の実施形態において、この組成物は、緩衝液を更に含む。緩衝液は、例えば、1~10mMクエン酸ナトリウムを含み得る。一部の実施形態において緩衝液のpHは、約2、約2.5、約3、約3.5、約4、約4.5、約5、約5.5、約6、約6.5、約7、約7.5、約8、約8.5、約9、約9.5、約10、約10.5、約11、約11.5、又は約12である。一部の実施形態において、緩衝液のpHは、約6.5である。
【0150】
[0177] 一部の実施形態において、組成物は2つ以上の環状RNAを含み、各々が、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、c-Myc、及びL-Mycから選択される再プログラム化因子をコードする。一部の実施形態において、組成物は2つ以上の環状RNAを含み、各々が、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、及びc-Mycから選択される再プログラム化因子をコードする。一部の実施形態において、組成物は2つ以上の環状RNAを含み、各々が、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、及びLin28(例えば、Lin28A又はLin28B)から選択される再プログラム化因子をコードする。一部の実施形態において、組成物は2つ以上の環状RNAを含み、各々が、Oct3/4、Klf4、Sox2、及びc-Mycから選択される再プログラム化因子をコードする。一部の実施形態において、組成物は2つ以上の環状RNAを含み、各々が、Oct3/4、Klf4、及びSox2から選択される再プログラム化因子をコードする。一部の実施形態において、組成物は2つ以上の環状RNAを含み、各々が、表3に提供される組み合わせから選択される再プログラム化因子をコードする。表3では、各行が環状RNAの異なる組み合わせを表し、ここで「X」は、その環状RNAを細胞に接触させることを指示している。例えば、組み合わせ1番では、組成物は、Oct3/4をコードする環状RNAとKlf4をコードする環状RNAとを含む。組み合わせ104番では、組成物は、Oct3/4、Klf4、Sox2、及びNanog、Lin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、及びL-Mycをコードする環状RNAを含む。
【0151】
【表5】
【0152】
【表6】
【0153】
【表7】
【0154】
【表8】
【0155】
[0178] 一部の実施形態において、組成物は2つの環状RNAを含み、その一方はOct3/4をコードし、その他方は、Klf4、Sox2、Lin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、Nanog、及びc-Myc又はL-Mycからなる群から選択される再プログラム化因子をコードする。一部の実施形態において、組成物は2つの環状RNAを含み、各々が、Oct3/4及びLin28(例えば、Lin28A又はLin28B)から選択される再プログラム化因子、又はその断片若しくはバリアントをコードする。一部の実施形態において、組成物は2つの環状RNAを含み、各々が、Oct3/4及びSox2から選択される再プログラム化因子、又はその断片若しくはバリアントをコードする。
【0156】
[0179] 一部の実施形態において、組成物は3つの環状RNAを含み、各々が、Oct3/4、Klf4、Sox2からなる群から選択される再プログラム化因子又はその断片若しくはバリアントをコードする。一部の実施形態において、組成物は、Nanog、Lin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、及び/又はc-Mycから選択される再プログラム化因子又はその断片若しくはバリアントをコードする環状RNAを含まない。一部の実施形態において、組成物は3つの環状RNAからなり、各々が、Oct3/4、Klf4、Sox2からなる群から選択される再プログラム化因子又はその断片若しくはバリアントをコードする。一部の実施形態において、組成物は3つの環状RNAを含み、各々が、Oct3/4、Klf4、Lin28(例えば、Lin28A又はLin28B)からなる群から選択される再プログラム化因子又はその断片若しくはバリアントをコードする。一部の実施形態において、組成物は、Nanog、Sox2、及び/又はc-Mycから選択される再プログラム化因子又はその断片若しくはバリアントをコードする環状RNAを含まない。一部の実施形態において、組成物は3つの環状RNAからなり、各々が、Oct3/4、Klf4、Lin28(例えば、Lin28A又はLin28B)からなる群から選択される再プログラム化因子又はその断片若しくはバリアントをコードする。一部の実施形態において、組成物は3つの環状RNAを含み、各々が、Oct3/4、Sox2、Lin28(例えば、Lin28A又はLin28B)からなる群から選択される再プログラム化因子又はその断片若しくはバリアントをコードする。一部の実施形態において、組成物は、Nanog、Klf4、及び/又はc-Mycから選択される再プログラム化因子又はその断片若しくはバリアントをコードする環状RNAを含まない。一部の実施形態において、組成物は3つの環状RNAからなり、各々が、Oct3/4、Sox2、Lin28(例えば、Lin28A又はLin28B)からなる群から選択される再プログラム化因子又はその断片若しくはバリアントをコードする。
【0157】
[0180] 一部の実施形態において、組成物は4つの環状RNAを含み、各々が、Oct3/4、Klf4、Sox2、及びc-Mycからなる群から選択される再プログラム化因子又はその断片若しくはバリアントをコードする。一部の実施形態において、組成物は、Nanog及び/又はLin28(例えば、Lin28A又はLin28B)から選択される再プログラム化因子又はその断片若しくはバリアントをコードする環状RNAを含まない。一部の実施形態において、組成物は4つの環状RNAからなり、各々が、Oct3/4、Klf4、Sox2、及びc-Mycからなる群から選択される再プログラム化因子又はその断片若しくはバリアントをコードする。一部の実施形態において、組成物は5つの環状RNAを含み、各々が、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、及び/又はLin28(例えば、Lin28A又はLin28B)からなる群から選択される再プログラム化因子又はその断片若しくはバリアントをコードする。一部の実施形態において、組成物は、c-Mycをコードする環状RNA又はその断片若しくはバリアントを含まない。一部の実施形態において、組成物は5つの環状RNAからなり、各々が、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、及び/又はLin28(例えば、Lin28A又はLin28B)からなる群から選択される再プログラム化因子又はその断片若しくはバリアントをコードする。一部の実施形態において、組成物は6つの環状RNAを含み、各々が、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、c-Mycからなる群から選択される再プログラム化因子又はその断片若しくはバリアントをコードする。一部の実施形態において、組成物は6つの環状RNAからなり、各々が、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、c-Mycからなる群から選択される再プログラム化因子又はその断片若しくはバリアントをコードする。
【0158】
[0181] 一部の実施形態において、組成物は、1つ以上の再プログラム化因子をコードする1つ以上の環状RNAを含み、更に、細胞の再プログラム化を助け得る少なくとも1つの追加の補助的因子を含む。一部の実施形態において、組成物は、補助的因子をコードするRNAポリヌクレオチド(例えば、線状RNAポリヌクレオチド又は環状RNA)を更に含む。一部の実施形態において、補助的因子は、miRNA(例えば、miRNA302ファミリー(例えば、miR302d、miR302a、miR302c及びmiR302b)、miR367、miR766、miR200c、miR369、miR372、Let7、miR19a/b)、長鎖非コードRNA(例えば、LINcRNA-ROR)、及び外因性circRNA(例えば、circBIRC6、circCORO1C、又はcircMAN1A2、circBIRC6、circCORO1C及びcircMAN1A2)、又はウイルスタンパク質(例えば、表2に記載されるもの)から選択される。一部の実施形態において、組成物は、1つ以上の再プログラム化因子をコードする1つ以上の環状RNAからなり、細胞の再プログラム化を助け得る補助的因子をコードするいかなる追加のRNAポリヌクレオチド(例えば、線状RNAポリヌクレオチド又は環状RNA)も含まない。
【0159】
細胞の再プログラム化方法
[0182] 一部の実施形態において、本開示は、体細胞の再プログラム化方法を提供する。一部の実施形態において、本開示は、iPSCを作製するための体細胞の再プログラム化方法を提供する。詳細な実施形態において、本開示は、iPSCを作製するための浮遊培養液中での体細胞の再プログラム化方法を提供する。一部の実施形態において、iPSCを作製する方法は、本明細書に記載される環状RNAの少なくとも1つ又はその組成物に体細胞を接触させること(例えば、浮遊培養液中の細胞を接触させること)及び再プログラム化された細胞(例えば、iPSC)が入手される条件下に細胞を維持することを含む。本明細書では、本明細書に記載される方法により細胞に導入される環状RNAは、細胞にとって外因性である。換言すれば、細胞へと導入される環状RNAは、それが導入される細胞に天然では存在しない。
【0160】
[0183] 一部の実施形態において、体細胞は、原核細胞である。一部の実施形態において、体細胞は、真核細胞である。一部の実施形態において、体細胞は、動物細胞である。一部の実施形態において、体細胞は、哺乳類細胞(例えば、マウス、ウシ、サル、ブタ、ウマ、ヒツジ、又はヒト細胞)である。一部の実施形態において、体細胞は、ヒト細胞である。一部の実施形態において、体細胞は、酵母、真菌、又は植物細胞である。
【0161】
[0184] 一部の実施形態において、体細胞は、線維芽細胞、末梢血由来細胞、内皮前駆細胞、臍帯血由来細胞、肝細胞、角化細胞、メラニン細胞、脂肪組織由来細胞、又は尿由来細胞(例えば、腎上皮前駆細胞)である。一部の実施形態において、細胞は、上皮細胞、内皮細胞、神経細胞、脂肪細胞、心臓細胞、骨格筋細胞、免疫細胞、肝臓細胞、脾細胞、肺細胞、循環血液細胞、胃腸細胞、腎細胞、軟骨細胞、眼細胞、神経系細胞、中枢神経系細胞、骨細胞、骨髄細胞、前駆細胞、又は膵細胞である。一部の実施形態において、細胞は、限定はされないが、脳、肝臓、肺、腸、胃、腸、脂肪、筋肉、子宮、皮膚、脾臓、内分泌器官、骨等を含め、任意の体細胞組織から単離される。
【0162】
[0185] 一部の実施形態において、体細胞は、接着細胞である。一部の実施形態において、細胞は、非接着細胞である。一部の実施形態において、浮遊細胞培養液中で再プログラム化される体細胞。一部の実施形態において、体細胞は、血液細胞(例えば、T細胞、B細胞、NK細胞、NKT細胞、末梢血単核球、又は臍帯血単核球)である。一部の実施形態において、血液細胞は、浮遊細胞培養液中で再プログラム化される。一部の実施形態において、体細胞は、T細胞又はNK細胞である。一部の実施形態において、T細胞又はNK細胞は、浮遊細胞培養液中で再プログラム化される。一部の実施形態において、体細胞は、CD34+細胞である。一部の実施形態において、CD34+細胞は、浮遊細胞培養液中で再プログラム化される。
【0163】
[0186] 一部の実施形態において、体細胞は、環状RNA又はその組成物に1回接触する。一部の実施形態において、体細胞は、複数の異なる環状RNA又はその1つ以上の組成物に1回接触する。一部の実施形態において、体細胞は、少なくとも2つの異なる環状RNA又はその1つ以上の組成物(例えば、2、3、4、5、又は6つの環状RNA又はその1つ以上の組成物)に1回接触する。一部の実施形態において、接触は浮遊培養液中で実施される。一部の実施形態において細胞は、環状RNAに2回以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10回)接触する。一部の実施形態において細胞は、複数の環状RNAに2回以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10回)接触する。一部の実施形態において、体細胞は、環状RNA又はその組成物に2~6回接触する。一部の実施形態において、体細胞は、環状RNA又はその組成物に2回接触する。一部の実施形態において、体細胞は、環状RNA又はその組成物に3回接触する。一部の実施形態において、体細胞は、環状RNA又はその組成物に4回接触する。一部の実施形態において、体細胞は、環状RNA又はその組成物に4回未満接触させる。一部の実施形態において、接触は、有効な間隔で実施される。有効な間隔とは、例えば、1日1回、隔日に1回、3日に1回、週1回、2週間に1回、又は月1回であり得る。一部の実施形態において、環状RNAは、再プログラム化過程が続く間にわたって細胞に接触させるため、従って接触は、再プログラム化過程全体を通じて連続している。一部の実施形態において、体細胞は、複数の環状RNAに(例えば、浮遊培養液中で)1回以上接触し、ここで接触回数は、少なくとも2つの環状RNAについて異なる。例えば、一部の実施形態において、体細胞は、複数の環状RNAに(例えば、浮遊培養液中で)接触し、ここで細胞は、環状RNAのうちの少なくとも1つに2回以上接触し、細胞は、少なくとも1つの他の環状RNAに1回のみ接触する。一部の実施形態において、体細胞は、複数の環状RNAに(例えば、浮遊培養液中で)接触し、ここで細胞は、環状RNAのうちの少なくとも1つに3回以上接触し、細胞は、少なくとも1つの他の環状RNAに1回のみ又は2回のみ接触する。
【0164】
[0187] 一部の実施形態において、接触は、環状RNAを細胞にトランスフェクトすることを含む。様々な実施形態において、本明細書に記載される方法は、circRNA又はその組成物に細胞を直接接触させることを含む。換言すれば、インビトロで合成又は製造された環状RNAを、ウイルスベクター又はDNAプラスミドの助けを借りずに細胞と直接接触させる(及びそれによって細胞に導入する)。
【0165】
[0188] 一部の実施形態において、細胞を再プログラム化する方法(例えば、iPSCを作製する方法)は、環状RNA又はその組成物に体細胞を接触させることを含み、ここでRNAは、少なくとも3pg/細胞の濃度で存在する。一部の実施形態において、RNAは、約3pg/細胞~約15pg/細胞、約4pg/細胞~約15pg/細胞、約5pg/細胞~約15pg/細胞、約6pg/細胞~約15pg/細胞、約7pg/細胞~約15pg/細胞、約8pg/細胞~約15pg/細胞、約9pg/細胞~約15pg/細胞、約10pg/細胞~約15pg/細胞、約11pg/細胞~約15pg/細胞、約12pg/細胞~約15pg/細胞、約13pg/細胞~約15pg/細胞、又は約14pg/細胞~約15pg/細胞の濃度で存在する。一部の実施形態において、RNAは、約3pg/細胞~約14pg/細胞、約4pg/細胞~約14pg/細胞、約5pg/細胞~約4pg/細胞、約6pg/細胞~約14pg/細胞、約7pg/細胞~約14pg/細胞、約8pg/細胞~約14pg/細胞、約9pg/細胞~約14pg/細胞、約10pg/細胞~約14pg/細胞、約11pg/細胞~約14pg/細胞、約12pg/細胞~約14pg/細胞、又は約13pg/細胞~約14pg/細胞の濃度で存在する。一部の実施形態において、RNAは、約3pg/細胞~約13pg/細胞、約4pg/細胞~約13pg/細胞、約5pg/細胞~約13pg/細胞、約6pg/細胞~約13pg/細胞、約7pg/細胞~約13pg/細胞、約8pg/細胞~約13pg/細胞、約9pg/細胞~約13pg/細胞、約10pg/細胞~約13pg/細胞、約11pg/細胞~約13pg/細胞、又は約12pg/細胞~約13pg/細胞の濃度で存在する。一部の実施形態において、RNAは、約3pg/細胞~約12pg/細胞、約4pg/細胞~約12pg/細胞、約5pg/細胞~約12pg/細胞、約6pg/細胞~約12pg/細胞、約7pg/細胞~約12pg/細胞、約8pg/細胞~約12pg/細胞、約9pg/細胞~約12pg/細胞、約10pg/細胞~約12pg/細胞、又は約11pg/細胞~約12pg/細胞の濃度で存在する。一部の実施形態において、RNAは、約3pg/細胞~約11pg/細胞、約4pg/細胞~約11pg/細胞、約5pg/細胞~約11pg/細胞、約6pg/細胞~約11pg/細胞、約7pg/細胞~約11pg/細胞、約8pg/細胞~約11pg/細胞、約9pg/細胞~約11pg/細胞、又は約10pg/細胞~約11pg/細胞の濃度で存在する。一部の実施形態において、RNAは、約3pg/細胞~約10pg/細胞、約4pg/細胞~約10pg/細胞、約5pg/細胞~約10pg/細胞、約6pg/細胞~約10pg/細胞、約7pg/細胞~約10pg/細胞、約8pg/細胞~約10pg/細胞、又は約9pg/細胞~約10pg/細胞の濃度で存在する。一部の実施形態において、RNAは、約3pg/細胞~約9pg/細胞、約4pg/細胞~約9pg/細胞、約5pg/細胞~約9pg/細胞、約6pg/細胞~約9pg/細胞、約7pg/細胞~約9pg/細胞、又は約8pg/細胞~約9pg/細胞の濃度で存在する。一部の実施形態において、RNAは、約3pg/細胞~約8pg/細胞、約4pg/細胞~約8pg/細胞、約5pg/細胞~約8pg/細胞、約6pg/細胞~約8pg/細胞、又は約7pg/細胞~約8pg/細胞の濃度で存在する。一部の実施形態において、RNAは、約3pg/細胞~約7pg/細胞、約4pg/細胞~約7pg/細胞、約5pg/細胞~約7pg/細胞、又は約6pg/細胞~約7pg/細胞の濃度で存在する。一部の実施形態において、RNAは、約3pg/細胞~約6pg/細胞、約4pg/細胞~約6pg/細胞、又は約5pg/細胞~約6pg/細胞の濃度で存在する。一部の実施形態において、RNAは、約3pg/細胞~約5pg/細胞、又は約4pg/細胞~約5pg/細胞の濃度で存在する。一部の実施形態において、RNAは、約3pg/細胞~約4pg/細胞の濃度で存在する。一部の実施形態において、RNAは、約1pg/細胞、2pg/細胞、3pg/細胞、4pg/細胞、5pg/細胞、6pg/細胞、7pg/細胞、8pg/細胞、9pg/細胞、10pg/細胞、11pg/細胞、12pg/細胞、13pg/細胞、14pg/細胞、又は約15pg/細胞の濃度で存在する。
【0166】
[0189] 一部の実施形態において、環状RNAは、脂質媒介性トランスフェクションを用いて細胞にトランスフェクトされる。脂質媒介性トランスフェクションは、エンドサイトーシスによる核酸の能動的取込みを刺激する。例示的脂質媒介性トランスフェクション試薬は、Lipofectamine(登録商標)(例えば、ThermoFisher(登録商標)からのLipofectamine(登録商標)RNAiMAX(登録商標))である。一部の実施形態において、細胞のトランスフェクション方法は、(i)RNA及びトランスフェクション試薬を別個のチューブにおいて希釈するステップ、(ii)RNAをトランスフェクション試薬と合わせて複合体を形成するステップ、(iii)複合体を細胞に加えるステップ、(iv)細胞をタンパク質発現に関してアッセイするステップを含む。細胞におけるタンパク質発現の検出は、とりわけ、ウエスタンブロット分析、免疫細胞化学、及び蛍光媒介検出(例えば、FACS)を含め、幾つかの技法により実現することができる。
【0167】
[0190] 一部の実施形態において、接触は、環状RNA又はその組成物を細胞にエレクトロポレーションすることを含む。エレクトロポレーションは、核酸が高濃度で存在する溶液中に細胞がある間に、細胞膜に一過性に穴を開けることによって核酸を送達する。一部の実施形態において、エレクトロポレーションには、Neon(登録商標)エレクトロポレーションシステムを使用する。
【0168】
[0191] 一部の実施形態において、接触は、細胞をcircRNA-LNP複合体とインキュベートすることを含む。
【0169】
[0192] 一部の実施形態において、接触は、バリスティックトランスフェクション(即ち、遺伝子銃又は微粒子銃トランスフェクション)、マグネトフェクション、ペプチド媒介性トランスフェクション(Sigma-AldrichのN-TER(商標)トランスフェクションシステムなど、非共有結合性ペプチド/RNAナノ粒子ベースのトランスフェクションか、又はペプチドをRNAに共有結合的に取り付けることによるかのいずれか)、及び/又はマイクロインジェクションなど、1つ以上の技法を含む。順次又は同時に用いられるこれらの技法の組み合わせもまた用いることができる。
【0170】
[0193] 一部の実施形態において、細胞を再プログラム化する方法(例えばiPSCを作製する方法)は、再プログラム化因子(例えば、転写因子)をコードする少なくとも1つの環状RNAに体細胞を接触させること、及び再プログラム化された細胞(例えばiPSC)が入手される条件下に細胞を維持することを含む。再プログラム化因子は、例えば、表1に示される再プログラム化因子のいずれかであり得る。一部の実施形態において、細胞は複数の環状RNAに接触し、ここで各環状RNAは、表1に示される再プログラム化因子から選択される再プログラム化因子をコードする。
【0171】
[0194] 一部の実施形態において、本開示は、細胞を再プログラム化する方法を提供し、ここで細胞は、以下の表3Aに示されるとおりの組み合わせ1~106のいずれか1つに係る環状RNAの組み合わせに接触させる。
【0172】
【表9】
【0173】
【表10】
【0174】
【表11】
【0175】
【表12】
【0176】
[0195] 一部の実施形態において、本開示は、浮遊状態の細胞を再プログラム化する方法であって、上記の表3Aに示されるとおりの組み合わせ1~106のいずれか1つに係る環状RNAの組み合わせに細胞を接触させることを含む方法を提供する。一部の実施形態において、かかる組み合わせ(即ち、組み合わせ1~106のうちの1つ)の環状RNAは、浮遊状態の細胞に複数回接触させる。一部の実施形態において、かかる組み合わせ(即ち、組み合わせ1~106のうちの1つ)の環状RNAのうちの少なくとも1つは、浮遊状態の細胞に複数回接触させて、かかる組み合わせの環状RNAのうちの少なくとも1つは、浮遊状態の細胞に1回接触させる。一部の実施形態において、かかる組み合わせの環状RNAの1つ以上は、浮遊状態の細胞に1回、2回、3回、又は4回接触させる。
【0177】
[0196] 一部の実施形態において、本開示は、血液細胞(例えば、T細胞、B細胞、NK細胞、NKT細胞、末梢血単核球、臍帯血単核球、CD34+細胞)を再プログラム化する方法であって、上記の表3Aに示されるとおりの組み合わせ1~106のいずれか1つに係る環状RNAの組み合わせに細胞を接触させることを含む方法を提供する。一部の実施形態において、血液細胞は、T細胞である。一部の実施形態において、かかる組み合わせ(即ち、組み合わせ1~106のうちの1つ)の環状RNAは、浮遊状態のT細胞に複数回接触させる。一部の実施形態において、かかる組み合わせ(即ち、組み合わせ1~106のうちの1つ)の環状RNAのうちの少なくとも1つは、浮遊状態のT細胞に複数回接触させて、かかる組み合わせの環状RNAのうちの少なくとも1つ他のものは、浮遊状態のT細胞に1回接触させる。一部の実施形態において、かかる組み合わせの環状RNAの1つ以上は、浮遊状態のT細胞に1回、2回、3回、又は4回接触させる。
【0178】
[0197] 一部の実施形態において、血液細胞は、NK細胞である。一部の実施形態において、かかる組み合わせ(即ち、組み合わせ1~106のうちの1つの環状RNA)は、浮遊状態のNK細胞に複数回接触させる。一部の実施形態において、かかる組み合わせ(即ち、組み合わせ1~106のうちの1つ)の環状RNAのうちの少なくとも1つは、浮遊状態のNK細胞に複数回接触させて、かかる組み合わせの環状RNAのうちの少なくとも1つは、浮遊状態のNK細胞に1回接触させる。一部の実施形態において、かかる組み合わせの環状RNAの1つ以上は、浮遊状態のNK細胞に1回、2回、3回、又は4回接触させる。
【0179】
[0198] 一部の実施形態において、本開示は、浮遊状態のCD34+細胞を再プログラム化する方法であって、上記の表3Aに示されるとおりの組み合わせ1~106のいずれか1つに係る環状RNAの組み合わせにCD34+細胞を接触させることを含む方法を提供する。一部の実施形態において、かかる組み合わせ(即ち、組み合わせ1~106のうちの1つ)の環状RNAは、浮遊状態のCD34+細胞に複数回接触させる。一部の実施形態において、かかる組み合わせ(即ち、組み合わせ1~106のうちの1つ)の環状RNAのうちの少なくとも1つは、浮遊状態のCD34+細胞に複数回接触させて、かかる組み合わせの環状RNAのうちの少なくとも1つの他のものは、浮遊状態のCD34+細胞に1回接触させる。一部の実施形態において、かかる組み合わせの環状RNAの1つ以上は、浮遊状態のCD34+細胞に1回、2回、3回、又は4回接触させる。
【0180】
[0199] 一部の実施形態において、再プログラム化因子は、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、c-Myc、又はL-Mycである。一部の実施形態において、再プログラム化因子は、Oct3/4である。一部の実施形態において、再プログラム化因子は、Klf4である。一部の実施形態において、再プログラム化因子は、Sox2である。一部の実施形態において、再プログラム化因子は、Nanogである。一部の実施形態において、再プログラム化因子は、Lin28(例えば、Lin28A又はLin28B)である。一部の実施形態において、再プログラム化因子は、c-Mycである。一部の実施形態において、再プログラム化因子は、L-Mycである。
【0181】
[0200] 一部の実施形態において、細胞を再プログラム化する方法(例えばiPSCを作製する方法)は、2つ以上の環状RNAに体細胞を接触させることであって、各環状RNAが、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、c-Myc、及びL-Mycから選択される再プログラム化因子をコードすること、及び再プログラム化された細胞(例えば、iPSC)が入手される条件下に細胞を維持することを含む。一部の実施形態において、細胞は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10個、又はそれ以上の環状RNAであって、各々が、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、c-Myc、又はL-Mycから選択される再プログラム化因子をコードする環状RNAに接触させる。
【0182】
[0201] 一部の実施形態において、細胞を再プログラム化する方法(例えば、iPSCを作製する方法)は、再プログラム化因子Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、及びc-Mycをコードする6つの環状RNAに体細胞を接触させることを含む。一部の実施形態において、細胞を再プログラム化する方法(例えば、iPSCを作製する方法)は、再プログラム化因子Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、及びL-Mycをコードする6つの環状RNAに体細胞を接触させることを含む。
【0183】
[0202] 一部の実施形態において、細胞を再プログラム化する方法(例えば、iPSCを作製する方法)は、再プログラム化因子Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、及びLin28(例えば、Lin28A又はLin28B)をコードする5つの環状RNAに体細胞を接触させることを含む。一部の実施形態において、本方法は、c-Myc又はL-Mycをコードする環状RNAに体細胞を接触させることを含まない。
【0184】
[0203] 一部の実施形態において、細胞を再プログラム化する方法(例えば、iPSCを作製する方法)は、再プログラム化因子Oct3/4、Klf4、Sox2、及びc-Mycをコードする4つの環状RNAに体細胞を接触させることを含む。一部の実施形態において、細胞を再プログラム化する方法(例えば、iPSCを作製する方法)は、再プログラム化因子Oct3/4、Klf4、Sox2、及びL-Mycをコードする4つの環状RNAに体細胞を接触させることを含む。一部の実施形態において、本方法は、Nanog及び/又はLin28(例えば、Lin28A又はLin28B)をコードする環状RNAに体細胞を接触させることを含まない。
【0185】
[0204] 一部の実施形態において、細胞を再プログラム化する方法(例えば、iPSCを作製する方法)は、再プログラム化因子Oct3/4、Klf4、及びSox2をコードする3つの環状RNAに体細胞を接触させることを含む。一部の実施形態において、本方法は、Nanog、Lin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、c-Myc、及び/又はL-mycをコードする環状RNAに体細胞を接触させることを含まない。
【0186】
[0205] 一部の実施形態において、体細胞を再プログラム化する(例えば、iPSCを作製する)方法は、1つ以上の再プログラム化因子をコードする1つ以上の環状RNAに体細胞を接触させることを含み、更に、細胞の再プログラム化を助け得る補助的因子をコードする少なくとも1つの追加のRNAポリヌクレオチド(例えば、線状RNAポリヌクレオチド又は環状RNA)に細胞を接触させることを含む。一部の実施形態において、補助的因子は、miRNA(例えば、miRNA302(a~d)、miR367、miR766、miR200c、miR369、miR372、Let7、miR19a/b)、長鎖非コードRNA(例えば、LINcRNA-ROR)、及び外因性circRNA(例えば、circBIRC6、circCORO1C、又はcircMAN1A2、circBIRC6、circCORO1C及びcircMAN1A2)、又はウイルスタンパク質(例えば、表2に記載されるもの)から選択される。一部の実施形態において、体細胞を再プログラム化する(例えば、iPSCを作製する)方法は、1つ以上の再プログラム化因子をコードする1つ以上の環状RNAに体細胞を接触させることを含み、更に、ビタミンC、バルプロ酸、CHIR99021、パルネート(Parnate)、SB431542、PD0325901、BIX-01294、リチウム マキサジラン、8-Br-cAMP、A-83-01、チアゾビビン(Tiazovivin)、Y-27632、EPZ004777、及びDAPTから選択される少なくとも1つの追加の外因性因子に細胞を接触させることを含む。
【0187】
[0206] 一部の実施形態において、体細胞を再プログラム化する(例えば、iPSCを作製する)方法は、1つ以上の再プログラム化因子をコードする1つ以上の環状RNAに体細胞を接触させることを含み、細胞の再プログラム化を助け得る補助的因子をコードする任意の追加のRNAポリヌクレオチド(例えば、線状RNAポリヌクレオチド又は環状RNA)に細胞を接触させることを含まない。一部の実施形態において、体細胞を再プログラム化する(例えば、iPSCを作製する)方法は、1つ以上の再プログラム化因子をコードする1つ以上の環状RNAに体細胞を接触させることを含み、細胞の再プログラム化を助ける補助的因子に細胞を接触させることを含まない。
【0188】
[0207] 細胞を再プログラム化する方法において使用される一部の実例的なRNAの組み合わせを以下の表4に示す。表4では、各行が、細胞と接触させることのできる異なる組み合わせを表し、ここで「X」は、そのRNAを細胞に接触させることを指示している。例えば、組み合わせ1番では、細胞は、再プログラム化因子をコードする環状RNAに接触させる。組み合わせ15番では、細胞は、再プログラム化因子をコードする環状RNA、いかなるタンパク質又はmiRNAもコードしない環状RNA、miRNAをコードする環状又は線状RNA、及びウイルスタンパク質をコードする環状又は線状RNAに接触させる。
【0189】
【表13】
【0190】
[0208] 接触は、トランスフェクション、エレクトロポレーション、及び/又はcircRNA-LNP複合体の使用によるなど、上記に記載される方法のいずれによっても実施し得る。一部の実施形態において、接触は、再プログラム化因子をコードする環状RNAなど、1つ以上の環状RNAと共に細胞をインキュベートすることを含む。
【0191】
[0209] 一部の実施形態において、iPSCの作製方法は、再プログラム化されたiPSCが入手される条件下に細胞を維持することを含み得る。かかる条件は当業者に公知であり、細胞型によって異なり得る。一例として、初めに、体細胞を適切な培地が入ったフラスコに入れ、circRNAと接触させる当日(0日目)にそれが約75%~約90%コンフルエントとなるようにし得る。次に細胞をcircRNAと(例えば、トランスフェクションにより)接触させ得る。トランスフェクトされた細胞を培養皿に入れ、一晩インキュベートし得る。次の10~14日間、必要に応じて培地を交換し得る。一部の実施形態では、培地に1つ以上の追加の薬剤を補足して細胞の再プログラム化を亢進させ得る。iPSCコロニーの出現に関して細胞をモニタしてもよく、iPSCコロニーをピッキングし、拡大培養のため別の皿に移し替える。
【0192】
[0210] iPSCの多能性を確認するため、単離したクローンを1つ以上の幹細胞マーカーの発現に関して試験することができる。幹細胞マーカーは、例えば、Oct4、Lin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、SOX2、SSEA4、SSEA3、TRA-1-81、TRA-1-60、CD9、Nanog、Fbxl5、Ecatl、Esgl、Eras、Gdf3、Fgf4、Cripto、Daxl、Zpf296、Slc2a3、Rexl、Utfl、及びNat1から選択することができる。かかるマーカーの発現の検出方法としては、例えば、RT-PCR及びコードされるポリペプチドの存在を検出する免疫学的方法を挙げることができる。
【0193】
[0211] 一部の実施形態において、細胞の多能性は、細胞が3胚葉の各々の細胞に分化する能力を測定することにより確認される。一部の実施形態において、免疫無防備状態のげっ歯類における奇形腫形成を用いて、単離されたクローンの多能性の性質を判定することができる。
【0194】
[0212] 一部の実施形態において、circRNA再プログラム化では、(線状RNAベースの手法と比較したとき)iPSC再プログラム化を実現するのに必要なトランスフェクションの頻度が低く、及び/又はその回数が少ない。例えば、circRNA再プログラム化では、線状RNAベースの手法と比較したとき、再プログラム化を実現するのに必要なトランスフェクションが約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又は約100%少なくて済み得る。
【0195】
[0213] 一部の実施形態において、circRNA再プログラム化によると、線状RNAベースの手法と比較して再プログラム化効率が亢進する。「再プログラム化効率」とは、出発細胞集団からのiPSC生成の定量的又は定性的尺度を指す。再プログラム化効率の読取り値としては、再プログラム化プロトコル中の特定の時点で(コロニー形成速度の評価として)又は再プログラム化プロトコルの完了時に(特定のプロトコルの間に生成されたiPSCコロニーの総数の評価として)存在するiPSCコロニー数の定量化が挙げられる。iPSCコロニーは、定量的に(多能性マーカーに関して染色し、染色された細胞の数をカウントすることによるなど)又は定性的に形態学的特徴(例えば、コロニー中の各細胞が多かれ少なかれ均一な形状及び直径を有し、コロニーが明確に定められた境界を含み、且つiPSCコロニー内の細胞が高い核対細胞質比及び顕著な核小体を含むような密に詰まった細胞)の評価によって同定することができる。再プログラム化効率としてはまた、様々な再プログラム化プロトコル間でのiPSCコロニーの相対的成熟度の評価も挙げることができる。iPSCコロニーの成熟は、上記に指摘した形態学的特徴により決定することができる。
【0196】
[0214] 再プログラム化効率の増加とは、2つ以上の再プログラム化プロトコルを比較したときの再プログラム化効率についての1つ以上の読取り値の増加を指す。例えば、及び本実施例に詳述するとおり、circRNAがコードする再プログラム化因子で再プログラム化すると、線状RNAがコードする再プログラム化因子による再プログラム化と比較して再プログラム化効率が増加する。
【0197】
[0215] 一部の実施形態において、再プログラム化効率の増加は、初回再プログラム化プロトコルの終わりに存在する総iPSCコロニー数の、2回目及び/又は3回目の再プログラム化プロトコルの終わりに存在する総iPSCコロニー数と比較した増加を含む。一部の実施形態において、再プログラム化効率の増加は、初回再プログラム化プロトコル中の特定の時点で存在する総iPSCコロニー数の、2回目及び/又は3回目の再プログラム化プロトコル中の同じ時点で存在する総iPSCコロニー数と比較した増加(即ち、iPSCコロニー形成速度の増加)を含む。
【0198】
細胞の分化転換方法
[0216] 本明細書には、環状RNAを使用した細胞の分化転換方法が提供される。一部の実施形態において、細胞を第1の細胞型から第2の細胞型に直接変換する方法は、本明細書に記載されるとおりの環状RNA又はその組成物に細胞を接触させること、及び細胞が第2の細胞型に変換される条件下に細胞を維持することを含む。一部の実施形態において、細胞は中間的な多能性状態には入らない。一部の実施形態において、細胞は第1の細胞型から第2の細胞型に直接変換され、前駆細胞になることはない。
【0199】
[0217] 一部の実施形態において、環状RNAは、細胞を第1の細胞型から第2の細胞型に分化転換させる能力を有する1つ以上の分化転換因子をコードする。一部の実施形態において、再プログラム化因子(例えば、表1にある再プログラム化因子)は、所与のコンテクストでは、又は他の分化転換因子と組み合わせて使用されるときには分化転換因子として機能することができる。例えば、Sox2は、体細胞からiPSCへの再プログラム化で使用されるとき再プログラム化因子として機能するが、第1の体細胞(例えば、線維芽細胞)から第2の体細胞(例えば、神経幹細胞又は心筋細胞)への分化転換において使用されるときには分化転換因子として機能する。一部の実施形態において、環状RNAは、MyoD、C/EBPα、C/EBPβ、Pdx1、Ngn3、Mafa、Pdx1、Hnf4α、Foxa1、Foxa2、Foxa3、Ascl1(別名Mash1)、Brn2、Myt1l、miR-124、Brn2、Myt1l、Ascl1、Nurr1、Lmx1a、Ascl1、Brn2、Myt1l、Lmx1a、FoxA2、Oct4、Sox2、Klf4及びc-Myc、Tbx5、Mef2c、Gata-4、及び/又はMesp1をコードする。一部の実施形態において、環状RNAは、表1に掲載される1つ以上の再プログラム化因子をコードする。
【0200】
[0218] 一部の実施形態において、第1の細胞型は、iPSCである。一部の実施形態において、第1の細胞型は、分化した線維芽細胞である。
【0201】
[0219] 一部の実施形態において、第2の細胞型は、筋細胞、ニューロン、心筋細胞、肝細胞、腎細胞、軟骨細胞、骨細胞、島細胞、角化細胞、T細胞、又はNK細胞である。一部の実施形態において、第2の細胞型は、筋細胞、ニューロン、心筋細胞、肝細胞、膵島細胞、角化細胞、T細胞、又はNK細胞である。
【0202】
[0220] 一部の実施形態において、細胞を第1の細胞型から第2の細胞型に直接変換する方法は、細胞を複数の環状RNAに接触させることを含み、ここで各環状RNAは、表5に掲載される組み合わせのうちの1つに係る分化転換因子をコードする。
【0203】
[0221] 一部の実施形態において、細胞を第1の細胞型から第2の細胞型に直接変換する方法は、細胞を複数の環状RNAに接触させることを含み、ここで各環状RNAは、表5に掲載される分化転換因子をコードする。一部の実施形態において、細胞は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10個、又はそれ以上の環状RNAに接触する。
【0204】
[0222] 一部の実施形態において、細胞を第1の細胞型から第2の細胞型に直接変換する方法は、細胞を2つの環状RNAに接触させること、及び細胞が第2の細胞型に変換される条件下に細胞を維持することを含む。一部の実施形態において、第1及び第2の環状RNAは、各々、表5に掲載される分化転換因子をコードし、ここで第1及び第2の環状RNAは、同じ分化転換因子をコードしない。
【0205】
[0223] 一部の実施形態において、細胞を第1の細胞型から第2の細胞型に直接変換する方法は、細胞を3つの環状RNAに接触させること、及び細胞が第2の細胞型に変換される条件下に細胞を維持することを含む。一部の実施形態において、第1、第2、及び第3の環状RNAは、各々、表5に掲載される分化転換因子をコードし、ここで第1、第2、及び第3の環状RNAは、同じ分化転換因子をコードしない。
【0206】
[0224] 一部の実施形態において、細胞を第1の細胞型から第2の細胞型に直接変換する方法は、細胞を4つの環状RNAに接触させること、及び細胞が第2の細胞型に変換される条件下に細胞を維持することを含む。一部の実施形態において、第1、第2、第3、及び第4の環状RNAは、各々、表5に掲載される分化転換因子をコードし、ここで第1、第2、第3、及び第4の環状RNAは、同じ分化転換因子をコードしない。
【0207】
[0225] 一部の実施形態において、細胞を第1の細胞型から第2の細胞型に直接変換する方法は、細胞を5つの環状RNAに接触させること、及び細胞が第2の細胞型に変換される条件下に細胞を維持することを含む。一部の実施形態において、第1、第2、第3、第4、及び第5の環状RNAは、各々、表5に掲載される分化転換因子をコードし、ここで第1、第2、第3、第4及び第5の環状RNAは、同じ分化転換因子をコードしない。
【0208】
[0226] 一部の実施形態において、細胞を第1の細胞型から第2の細胞型に直接変換する方法は、細胞を6つの環状RNAに接触させること、及び細胞が第2の細胞型に変換される条件下に細胞を維持することを含む。一部の実施形態において、第1、第2、第3、第4、第5、及び第6の環状RNAは、各々、表5に掲載される分化転換因子をコードし、ここで第1、第2、第3、第4、第5及び第6の環状RNAは、同じ分化転換因子をコードしない。
【0209】
[0227] 一部の実施形態において、細胞を第1の細胞型から第2の細胞型に直接変換する方法は、細胞を7つの環状RNAに接触させること、及び細胞が第2の細胞型に変換される条件下に細胞を維持することを含む。一部の実施形態において、第1、第2、第3、第4、第5、及び第6の環状RNAは、各々、表5に掲載される分化転換因子をコードし、ここで第1、第2、第3、第4、第5、及び第6の環状RNAは、同じ分化転換因子をコードしない。
【0210】
[0228] 一部の実施形態において、細胞を第1の細胞型から第2の細胞型に直接変換する方法は、細胞を複数の環状RNAに接触させること、及び細胞が第2の細胞型に変換される条件下に細胞を維持することを含む。一部の実施形態において、環状RNAの各々は、各々、表5に掲載される分化転換因子をコードし、ここで環状RNAのいずれも、同じ分化転換因子をコードしない。
【0211】
[0229] 一部の実施形態において、細胞は、表5に掲載される1つ以上の再プログラム化因子をコードする環状RNAに接触させる。一部の実施形態において、細胞を表5に示されるとおりの第1の細胞型から表5に示されるとおりの第2の細胞型に直接変換する方法は、表5に掲載される1つ以上の再プログラム化因子をコードする環状RNAに細胞を接触させること、及び細胞が第2の細胞型に変換される条件下に細胞を維持することを含む。第1の細胞型は、例えば、表5に掲載される細胞型のいずれかであり得る。第2の細胞型は、例えば、表5に掲載される細胞型のいずれかであり得る。
【0212】
[0230] 一部の実施形態において、本開示は、1つ以上の環状RNAを含む組成物を提供し、ここで各環状RNAは、表5に掲載される分化転換因子の1つ以上をコードする。一部の実施形態において、本開示は、複数の環状RNAを含む組成物を提供し、各環状RNAが、表5に掲載される分化転換因子の少なくとも1つをコードする。
【0213】
[0231] 一部の実施形態において、細胞の分化転換方法は、1つ以上の環状RNAに細胞を接触させることを含み、ここで環状RNAの各々は、表5に掲載される分化転換因子をコードする。一部の実施形態において、細胞の分化転換方法は、1つ以上の環状RNAに細胞を接触させることを含み、ここで環状RNAの各々は、表5に掲載される分化転換因子をコードし、ここで細胞は、表5に掲載される「第1の細胞型」のいずれか1つである。
【0214】
[0232] 一部の実施形態において、細胞の分化転換方法は、表5に示される任意の組み合わせ番号の列Aに掲載される第1の細胞型を、その同じ分化転換組み合わせの列Bに示される対応する1つ又は複数の分化転換因子に接触させることにより、その同じ組み合わせ番号の列Cに示される第2の細胞型を作製することを含み、ここで列Bに示される少なくとも1つの分化転換因子は、環状RNAによってコードされる。一部の実施形態において、所与の分化転換組み合わせについて列Bに示される1つ又は複数の分化転換因子の全てが、1つ以上の環状化されたRNAによってコードされる。一部の実施形態において、第1の細胞型は、組み合わせ番号1~151のいずれか1つについて列Bに掲載される分化転換因子を使用して第2の細胞型に分化転換される。一部の実施形態において、第1の細胞型は、組み合わせ番号1~151のいずれか1つについて列Aに掲載される細胞型のいずれか1つである。一部の実施形態において、第2の細胞型は、組み合わせ番号1~151のいずれか1つについて列Cに掲載される第2の細胞型のいずれか1つである。
【0215】
【表14】
【0216】
【表15】
【0217】
【表16】
【0218】
【表17】
【0219】
【表18】
【0220】
【表19】
【0221】
【表20】
【0222】
[0233] 接触は、上記に記載される方法のいずれによっても(例えば、トランスフェクション、エレクトロポレーション、及び/又はcircRNA-LNP複合体の使用による)実施し得る。
【0223】
[0234] 一部の実施形態において、細胞は、環状RNAに1回接触する。一部の実施形態において細胞は、環状RNAに2回以上、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10回接触する。一部の実施形態において、接触は、有効な間隔で実施される。有効な間隔は、例えば、1日1回、隔日に1回、3日に1回、週1回、2週間に1回、又は月1回であり得る。
【0224】
[0235] 上記に説明したとおり、細胞を第1の細胞型から第2の細胞型に直接変換する方法は、細胞が第2の細胞型に変換される条件下に細胞を維持することを含み得る。かかる条件は当業者に公知であり、細胞型によって異なり得る。一例として、細胞を1つ以上の環状RNAに接触させた後、任意選択で様々な再プログラム化因子を補足した標準培地中でそれらの細胞を培養することができる。細胞をモニタして、形態、及び第2の細胞型に特徴的なマーカーの存在を観察することになる。
【0225】
[0236] また、本明細書には、本明細書に記載される方法を用いて作製される分化転換細胞も提供される。
【0226】
[0237] また、本明細書には、分化転換細胞を含む組成物も提供され、ここで分化転換細胞は、分化転換因子をコードする1つ以上の環状RNAを含む。一部の実施形態において、分化転換因子は、表5に掲載される分化転換因子又は分化転換因子の組み合わせのいずれか1つである。一部の実施形態において、分化転換細胞は、表5に掲載される第2の細胞型のいずれか1つである。一部の実施形態において、分化転換細胞は、表5に掲載される第1の細胞型のうちのいずれか1つである第1の細胞型から誘導される。
【0227】
環状RNAを使用したiPSCの分化
[0238] また、本明細書に記載される方法を用いて作製されるiPSCも提供される。一部の実施形態において、iPSCは、Oct4、SOX2、Lin28、SSEA4、SSEA3、TRA-1-81、TRA-1-60、CD9、Nanog、Fbxl5、Ecatl、Esgl、Eras、Gdf3、Fgf4、Cripto、Daxl、Zpf296、Slc2a3、Rexl、Utfl、及びNat1のうちの1つ以上を発現する。
【0228】
[0239] また、本明細書には、本明細書に記載される方法を用いて作製されるiPSCから誘導された分化細胞も提供される。iPSCの分化方法は、当業者に公知である。一部の実施形態において、分化細胞は、筋細胞、神経系細胞、中枢神経系細胞、眼細胞、軟骨細胞、骨細胞、腱細胞、心筋細胞、肝細胞、腎細胞、膵島細胞、角化細胞、T細胞、又はNK細胞である。一部の実施形態において、分化細胞は、限定はされないが、例えば-筋肉、神経、眼、軟骨、骨、結合組織、心臓、肝臓、腎臓、膵臓、皮膚、又は造血系統に属する細胞型である。
【0229】
[0240] 一部の実施形態において、本明細書に記載されるiPSC(又は本明細書に記載されない方法を用いて作製されたiPSC)は、分化因子をコードする1つ以上の環状RNAにiPSCを接触させることにより分化させてもよい。例えば、一部の実施形態において、iPSCは、T細胞など、目的の細胞型へとiPSCを分化させる能力を有する分化因子をコードする環状RNA、又はそれをコードするDNA分子に接触させる。一部の実施形態において、分化因子は、RORA、HLF、MYB、KLF4、ERG、SOX4、LUC、HOXA9、HOXA10、及びHOXA5から選択される。一部の実施形態において、iPSCは、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、又は少なくとも11個の環状RNAに接触し、ここで各環状RNAは、RORA、HLF、MYB、KLF4、ERG、SOX4、LUC、HOXA9、HOXA10、及びHOXA5から選択される分化因子をコードする。一部の実施形態において、iPSCは、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、又は少なくとも5個の環状RNAに接触し、ここで各環状RNAは、HOXA9、ERG、RORA、SOX4、又はMYBから選択される分化因子をコードする。一部の実施形態において、iPSCは、複数の環状RNAに接触し、ここで各環状RNAは、HOXA9、ERG、RORA、SOX4、又はMYBのうちの少なくとも1つをコードする。一部の実施形態において、iPSCは、少なくとも1つの環状RNAに接触し、ここでcircRNAは、表6に掲載される分化因子の1つ以上をコードする。一部の実施形態において、iPSCは、加えてEZH1 shRNAに接触する。EZH1 shRNAが発現すると、系統限定的な造血前駆細胞から多リンパ系の潜在能力のある前駆細胞への切替えが容易になり得る。
【0230】
[0241] 一部の実施形態において、iPSCはCD34+CD38-細胞に分化する。一部の実施形態において、以下の分化因子のうちの1つ以上をコードする環状RNAの1つ以上にiPSCを接触させると、iPSCがCD34+CD38-細胞に分化する:RORA、HLF、MYB、KLF4、ERG、SOX4、LUC、HOXA9、HOXA10、又はHOXA5。
【0231】
[0242] 一部の実施形態においてCD34+CD45+骨髄前駆細胞を、RORA、HLF、MYB、KLF4、ERG、SOX4、LUC、HOXA9、HOXA10、又はHOXA5の1つ以上をコードする環状RNA、又はそれをコードするDNA分子に接触させる。一部の実施形態においてCD34+CD45+骨髄前駆細胞を、HOXA9、ERG、RORA、SOX4、又はMYBの1つ以上をコードする環状RNA、又はそれをコードするDNA分子に接触させる。一部の実施形態において、上記に記載されるとおりiPSCを1つ以上の環状RNAに接触させると、CD34+CD45+細胞がCD34+CD38-細胞に分化転換する。一部の実施形態において、接触後に生じる細胞は、赤血球系及びリンパ系の潜在能力のある自己再生性HSPC(造血幹細胞・前駆細胞)である。
【0232】
[0243] 一部の実施形態において、本明細書に記載される方法を用いて作製されるiPSCは、再プログラム化因子をコードするウイルスベクターの使用又は再プログラム化因子をコードする線状RNAのトランスフェクションなど、従来方法を用いて作製されるiPSCと比較したとき、より若い。本明細書に記載されるとき、「より若い」とは、従来方法と比較したとき(即ち、約9日又はそれ以上)、その細胞がより速く(即ち、トランスフェクション後約5、約6、約7、又は約8日以内に)再プログラム化されることを指す。
【0233】
[0244] 一部の実施形態において、本iPSCは、従来方法を用いて作製されるiPSCと比較したとき、1つ以上のバイオマーカーを異なるレベルで発現する。例えば、一部の実施形態において、本iPSCは、従来方法を用いて作製されるiPSCと比較したとき、細胞ストレス及び/又は細胞死(アポトーシス)に関連するマーカーの発現レベルがより低い。例えば、一部の実施形態において、本iPSCは、1つ以上の熱ショックタンパク質又はカスパーゼの発現レベルがより低い。
【0234】
[0245] 一部の実施形態において、本iPSCのゲノムは、従来方法を用いて作製されるiPSCと比較したとき、異なる後成的修飾を有する。例えば、一部の実施形態において、本iPSCは、変化したレベルのDNAメチル化及び/又はヒストン修飾を含み得る。
【0235】
[0246] 一部の実施形態において、T細胞の有効性を改善することのできる因子をコードする1つ以上の環状RNA(又はそれをコードするDNA分子)にT細胞を接触させる。これに関連して、有効性の改善とは、免疫腫瘍学セッティングで使用されるとき、T細胞の生存、及び/又はその抗腫瘍活性を促進することを指す。例えば、T細胞は、IL-12、IL-18、IL-15、又はIL-7をコードする1つ以上の環状RNAに接触させてもよい。
【0236】
[0247] 一部の実施形態において、T細胞は、T細胞が腫瘍組織にホーミングする能力を改善する1つ以上の環状RNA(又はそれをコードするDNA分子)に接触させる。例えば、T細胞は、CXCR2、CCR2B、又はヘパラナーゼをコードする1つ以上の環状RNAに接触させてもよい。
【0237】
[0248] 一部の実施形態において、T細胞は、生存の改善及び/又はセントラルメモリー表現型へのスイッチングの促進を助ける1つ以上の環状RNA(又はそれをコードするDNA分子)に接触させる。例えば、T細胞は、Suv39h1をコードする1つ以上の環状RNAに接触させてもよい。
【0238】
細胞のゲノムの再プログラム化及び編集のための組み合わせ方法
[0249] iPSCの生成方法をそのゲノム編集方法と組み合わせることにより、iPSCの診断力及び治療力が亢進する。本明細書で使用されるとき、用語「ゲノム編集」及び「ゲノムを編集すること」は、細胞の核酸(例えば、DNA又はRNA)の特異的遺伝子座の修飾を指す。ゲノム編集は、罹患患者に由来する、病変の原因となる遺伝子突然変異を修正することができ、同様に無疾患の野生型細胞(iPSCなど)に特異的突然変異を誘導するために使用することもできる。よって、本開示は、細胞のゲノムの再プログラム化及び編集のための組み合わせ方法を提供する。一部の実施形態において、本明細書に記載される環状RNAは、細胞のゲノムの再プログラム化及び編集方法において使用し得る。
【0239】
[0250] ゲノム編集は、例えば、遺伝子修飾領域に二本鎖DNA切断を誘導することを含み得る。一部の実施形態において、ターゲティングベクターを補足することにより、DNAの遺伝子座が外因性の配列に置き換えられる。以下の酵素:ジンクフィンガーヌクレアーゼ、ホーミングエンドヌクレアーゼ、TALEN(転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ)、NgAgo(アルゴノートエンドヌクレアーゼ)、SGN(構造ガイド型エンドヌクレアーゼ)、RGN(RNAガイド型ヌクレアーゼ)、又はこれらの修飾された若しくはトランケートされたバリアントのうちのいずれか1つを使用して細胞のDNAを編集し得る。一部の実施形態において、RNAガイド型ヌクレアーゼは、国際公開第2019/236566号(例えば、APG05083.1、APG07433.1、APG07513.1、APG08290.1、APG05459.1、APG04583.1、及びAPG1688.1 RNAガイド型ヌクレアーゼ)、国際公開第2021/030344号(例えば、APG05733.1、APG06207.1、APG01647.1、APG08032.1、APG05712.1、APG01658.1、APG06498.1、APG09106.1、APG09882.1、APG02675.1、APG01405.1、APG06250.1、APG06877.1、APG09053.1、APG04293.1、APG01308.1、APG06646.1、APG09748、及びAPG07433.1 RNAガイド型ヌクレアーゼ)、及び国際公開第2020/139783号(APG00969、APG03128、APG09748、APG00771、APG02789、APG09106、APG02312、APG07386、APG09980、APG05840、APG05241、APG07280、APG09866、APG00868 RNAガイド型ヌクレアーゼ)(これらの各々は、本明細書において全体として参照により援用される)のいずれか1つに開示されるRNAガイド型ヌクレアーゼである。一部の実施形態において、RNAガイド型ヌクレアーゼは、Cas9ヌクレアーゼ、Cas12(a)ヌクレアーゼ(Cpf1)、Cas12bヌクレアーゼ、Cas12cヌクレアーゼ、TrpB様ヌクレアーゼ、Cas13aヌクレアーゼ(C2c2)、Cas13bヌクレアーゼ、Cas14ヌクレアーゼ又はこれらの修飾された若しくはトランケートされたバリアントである。
【0240】
[0251] 一部の実施形態において、Cas9ヌクレアーゼを使用して細胞のゲノムを編集する。Cas9は、2つの推定ヌクレアーゼドメイン、HNH及びRuvC様を有する大型の多機能タンパク質である。HNH及びRuvC様ドメインは、それぞれ、crRNAの相補的な20ヌクレオチド配列及びその相補鎖の反対側のDNA鎖を切断する。CRISPR-Cas9システムの幾つかのバリアントが存在し、それらのバリアントのいずれか1つを本明細書に開示される方法において使用し得る:(1)元のCRISPR-Cas9システムは、シングルRNAによって導かれる野生型Cas9ヌクレアーゼが惹起するDNA二本鎖切断を誘導することにより機能する。(2)Cas9 HNHドメイン又はRuvC様ドメインのいずれかの突然変異によって生成されるCas9のニッカーゼバリアント(D10A突然変異体)は、対を成すガイドRNAによって導かれる。(3)特異性が亢進したCas9の操作されたヌクレアーゼバリアント(eSpCas9)。(4)触媒的に不活性なデッドCas9(dCas9)バリアントは、両方のドメイン(HNH及びRUvC様)を突然変異させることによって生成される。dCas9は、転写抑制因子又は活性化因子と合わせて一つにすると、内因性遺伝子の転写を修飾することができ(CRISPRa又はCRISPRi)、又は蛍光タンパク質と融合すると、ゲノム遺伝子座を画像化するために使用することができる。(5)CRISPR-Cas9をシチジンデアミナーゼと融合すると、シチジンからウリジンへの直接の変換を誘導する、ひいてはDNA二本鎖切断を回避するバリアントが生じる。一部の実施形態において、Cas9ヌクレアーゼは、化膿レンサ球菌(S. pyogenes)又は黄色ブドウ球菌(S. aureus)から単離され、又はそれに由来する。
【0241】
[0252] Cas9、及び他のRNAガイド型ヌクレアーゼは、特異的遺伝子座を標的化するためにRNAガイド配列(「ガイドRNA」又は「gRNA」)を必要とする。一部の実施形態において、gRNAは、シングルガイド(「sgRNA」)である。sgRNAは、スペーサー配列と足場配列とを含み得る。スペーサー配列は標的切断配列と相補的で、そこに酵素を向かわせる。足場領域はRNAガイド型ヌクレアーゼ酵素に結合する。
【0242】
[0253] 細胞のRNAの編集に使用し得る例示的酵素としては、限定はされないが、ADAR(RNAに作用するアデノシンデアミナーゼ)ファミリーの酵素が挙げられる。例えば、酵素は、ヒトADAR1、ADAR2、又はADAR3、又はこれらの修飾された若しくはトランケートされたバリアントであり得る。一部の実施形態において、酵素は、sqADAR2など、イカ(例えば、アメリカケンサキイカ(Loligo pealeii))由来のADAR、又はその修飾された若しくはトランケートされたバリアントであり得る。一部の実施形態において、酵素は、C.エレガンス(C. elegans)由来(例えば、ceADAR1又はceADAR2)又はキイロショウジョウバエ(D. melanogaster)由来(例えば、dADAR)のADAR、又はこれらの修飾された若しくはトランケートされたバリアントであり得る。
【0243】
[0254] 一部の実施形態において、細胞のゲノムの再プログラム化及び編集方法は、(i)タンパク質コード配列を含む環状RNAに細胞を接触させることであって、タンパク質コード配列が少なくとも1つの再プログラム化因子をコードすること、及び(ii)細胞のDNA又はRNAの編集能を有する酵素に細胞を接触させることを含む。
【0244】
[0255] 一部の実施形態において、細胞のゲノムの再プログラム化及び編集方法は、(i)タンパク質コード配列を含む環状RNAであって、タンパク質コード配列が少なくとも1つの再プログラム化因子をコードする、環状RNA、及び(ii)細胞のDNA又はRNAの編集能を有する酵素をコードする核酸に細胞を接触させることを含む。
【0245】
[0256] 一部の実施形態において、細胞は、酵素又はそれをコードする核酸に接触する前に環状RNAに接触する。一部の実施形態において、細胞は、酵素又はそれをコードする核酸に接触した後に環状RNAに接触する。一部の実施形態において、細胞は、酵素又はそれをコードする核酸に接触するのとほぼ同じ時点で環状RNAに接触する。
【0246】
[0257] 一部の実施形態において、細胞のゲノムの再プログラム化及び編集方法は、ガイドRNAをコードする核酸、又はガイドRNAに細胞を接触させることを更に含む。
【0247】
[0258] 細胞のゲノムの再プログラム化及び編集のための組成物は、例えば、環状RNA(又はそれをコードするDNA分子)とDNA又はRNAの編集能を有する酵素(又はそれをコードするDNA又はRNA分子)とを含み得る。一部の実施形態において、環状RNAは、タンパク質コード配列を含む。一部の実施形態において、環状RNAはタンパク質をコードしない。一部の実施形態において、環状RNAは、circBIRC6(配列番号29)、circCORO1C(配列番号30)、又はcircMAN1A2(配列番号31)である。
【0248】
細胞のゲノムの分化転換及び編集のための組み合わせ方法
[0259] 本明細書に記載される環状RNAはまた、細胞のゲノムの分化転換及び編集方法においても使用し得る。よって、本明細書には、細胞のゲノムの分化転換及び編集のための組成物及び方法が提供される。
【0249】
[0260] 一部の実施形態において、細胞のゲノムの分化転換及び編集方法は、(i)タンパク質コード配列を含む環状RNAであって、タンパク質コード配列が少なくとも1つの分化転換因子をコードする、環状RNA、及び(ii)細胞のDNA又はRNAの編集能を有する酵素に細胞を接触させることを含む。一部の実施形態において、分化転換因子は、表5に掲載されるもののいずれかから選択される。
【0250】
[0261] 一部の実施形態において、細胞のゲノムの分化転換及び編集方法は、(i)タンパク質コード配列を含む環状RNAであって、タンパク質コード配列が少なくとも1つの分化転換因子をコードする、環状RNA、及び(ii)細胞のDNA又はRNAの編集能を有する酵素をコードする核酸に細胞を接触させることを含む。
【0251】
[0262] 細胞のゲノムを分化転換及び編集する方法においてDNA又はRNAの編集に使用される酵素は、上記に挙げた酵素のいずれかであり得る。
【0252】
[0263] 一部の実施形態において、細胞は、酵素又はそれをコードする核酸に接触する前に環状RNAに接触する。一部の実施形態において、細胞は、酵素又はそれをコードする核酸に接触した後に環状RNAに接触する。一部の実施形態において、細胞は、酵素又はそれをコードする核酸に接触するのとほぼ同じ時点で環状RNAに接触する。
【0253】
[0264] 一部の実施形態において、細胞のゲノムの分化転換及び編集方法は、ガイドRNAをコードする核酸、又はガイドRNAに細胞を接触させることを更に含む。
【0254】
[0265] 細胞のゲノムの分化転換及び編集のための組成物は、例えば、環状RNA(又はそれをコードするDNA分子)とDNA又はRNAの編集能を有する酵素(又はそれをコードするDNA又はRNA分子)とを含み得る。一部の実施形態において、環状RNAは、タンパク質コード配列を含む。一部の実施形態において、環状RNAはタンパク質をコードしない。一部の実施形態において、環状RNAは、circBIRC6(配列番号29)、circCORO1C(配列番号30)、又はcircMAN1A2(配列番号31)である。一部の実施形態において、環状RNAは、本明細書に開示される再プログラム化因子をコードする。一部の実施形態において、環状RNAは、1つ以上のOct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、c-Myc、及びL-Mycをコードする。一部の実施形態において、環状RNAは、表5に掲載される分化転換因子の1つ以上をコードする。
【0255】
追加的な方法
[0266] 当業者は理解するであろうとおり、本明細書に記載される環状RNA、及び関連する組成物は、以下の方法のうちの1つ以上に有用であり得る。
【0256】
[0267] 一部の実施形態において、本明細書には、線状RNAを使用した方法と比較したとき細胞死の減少を生じさせる細胞の再プログラム化方法であって、本明細書に記載されるとおりの環状RNA、複合体、ベクター、又は組成物に細胞を接触させること、及びタンパク質が発現する条件下に細胞を維持することを含む方法が提供される。一部の実施形態において、再プログラム化によって誘導される細胞死は、線状RNAを使用した再プログラム化方法と比べて少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%又はそれ以上減少する。一部の実施形態において、細胞は環状RNAの組み合わせに接触し、ここで環状RNAの組み合わせは、(i)circOct3/4、circKlf4、circSox2、circNanog、circLin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、及びcirc c-Myc;(ii)circOct3/4、circKlf4、circSox2、circNanog、及びcircLin28(例えば、Lin28A又はLin28B);(iii)circOct3/4、circKlf4、circSox2、circNanog、circLin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、及びcircL-Myc;(iv)circOct3/4、circKlf4、circSox2、circNanog、及びcircLin28(例えば、Lin28A又はLin28B);(v)circOct3/4、circKlf4、circSox2、及びcircC-Myc;(vi)circOct3/4、circKlf4、circSox2、及びcircL-Myc;又は(vii)circOct3/4、circKlf4、及びcircSox2から選択される。一部の実施形態において、細胞は、circMyoDに接触する。
【0257】
[0268] また、本明細書には、再プログラム化からピッキングまでの時間を減少させる方法であって、本明細書に記載される環状RNA、複合体、ベクター又は組成物に細胞を接触させること、及びタンパク質が発現する条件下に細胞を維持することを含む方法も提供され、ここで再プログラム化からピッキングまでの時間は、線状RNAを使用した再プログラム化方法と比べて減少する。本明細書で使用されるとき、用語「ピッキング」は、機械的解離によるiPSCコロニーの手作業での選択を指す。一部の実施形態において、この時間は、線状RNAを使用した再プログラム化方法と比べて少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%又はそれ以上減少する。一部の実施形態において、細胞は環状RNAの組み合わせに接触し、ここで環状RNAの組み合わせは、(i)circOct3/4、circKlf4、circSox2、circNanog、circLin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、及びcirc c-Myc;(ii)circOct3/4、circKlf4、circSox2、circNanog、及びcircLin28(例えば、Lin28A又はLin28B);(iii)circOct3/4、circKlf4、circSox2、circNanog、circLin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、及びcircL-Myc;(iv)circOct3/4、circKlf4、circSox2、circNanog、及びcircLin28(例えば、Lin28A又はLin28B);(v)circOct3/4、circKlf4、circSox2、及びcircC-Myc;(vi)circOct3/4、circKlf4、circSox2、及びcircL-Myc;又は(vii)circOct3/4、circKlf4、及びcircSox2から選択される。一部の実施形態において、細胞は、circMyoDに接触する。
【0258】
[0269] また、本明細書には、細胞の再プログラム化を達成するために誘導するトランスフェクションの回数を減少させる方法であって、本明細書に記載される環状RNA、複合体、ベクター、又は組成物に細胞を接触させること、及びタンパク質が発現する条件下に細胞を維持することを含む方法も提供される。一部の実施形態において、トランスフェクションの回数は、線状RNAを使用した方法と比べて減少する。一部の実施形態において、細胞の再プログラム化を誘導するためのトランスフェクションの回数は、1、2、3、4、5、6、又は7回である。一部の実施形態において、トランスフェクションの回数は、線状RNAを使用した方法と比べて少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%又はそれ以上減少する。一部の実施形態において、細胞は環状RNAの組み合わせに接触し、ここで環状RNAの組み合わせは、(i)circOct3/4、circKlf4、circSox2、circNanog、circLin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、及びcirc c-Myc;(ii)circOct3/4、circKlf4、circSox2、circNanog、及びcircLin28(例えば、Lin28A又はLin28B);(iii)circOct3/4、circKlf4、circSox2、circNanog、circLin28、及びcircL-Myc;(iv)circOct3/4、circKlf4、circSox2、circNanog、及びcircLin28(例えば、Lin28A又はLin28B);(v)circOct3/4、circKlf4、circSox2、及びcircC-Myc;(vi)circOct3/4、circKlf4、circSox2、及びcircL-Myc;又は(vii)circOct3/4、circKlf4、及びcircSox2から選択される。一部の実施形態において、細胞は、circMyoDに接触する。
【0259】
[0270] また、本明細書には、細胞におけるタンパク質発現の持続時間を増加させる方法であって、本明細書に記載される環状RNA、複合体、ベクター、又は組成物に細胞を接触させること、及びタンパク質が発現する条件下に細胞を維持することを含む方法も提供される。一部の実施形態において、タンパク質発現の持続時間は、同じタンパク質をコードする線状RNAによる細胞のトランスフェクションを含む方法と比べて増加する。一部の実施形態において、タンパク質発現の持続時間は、同じタンパク質をコードする線状RNAによる細胞のトランスフェクションを含む方法と比べて少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%又はそれ以上増加する。一部の実施形態において、タンパク質発現の持続時間は、同じタンパク質をコードする線状RNAによる細胞のトランスフェクションを含む方法と比べて少なくとも1時間、少なくとも4時間、少なくとも8時間、少なくとも12時間、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、又はそれ以上増加する。一部の実施形態において、細胞は環状RNAの組み合わせに接触し、ここで環状RNAの組み合わせは、(i)circOct3/4、circKlf4、circSox2、circNanog、circLin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、及びcirc c-Myc;(ii)circOct3/4、circKlf4、circSox2、circNanog、及びcircLin28(例えば、Lin28A又はLin28B);(iii)circOct3/4、circKlf4、circSox2、circNanog、circLin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、及びcircL-Myc;(iv)circOct3/4、circKlf4、circSox2、circNanog、及びcircLin28(例えば、Lin28A又はLin28B);(v)circOct3/4、circKlf4、circSox2、及びcircC-Myc;(vi)circOct3/4、circKlf4、circSox2、及びcircL-Myc;又は(vii)circOct3/4、circKlf4、及びcircSox2から選択される。一部の実施形態において、細胞は、circMyoDに接触する。
【0260】
[0271] また、本明細書には、細胞の再プログラム化効率を改善する方法であって、本明細書に記載される環状RNA、複合体、ベクター、又は組成物に細胞を接触させること、及びタンパク質が発現する条件下に細胞を維持することを含む方法も提供され、ここで細胞の再プログラム化の有効性は、線状RNAが使用される細胞の再プログラム化方法と比べて増加する。一部の実施形態において、細胞の再プログラム化効率は、線状RNAが使用される方法と比べて少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%又はそれ以上増加する。細胞の再プログラム化効率の亢進は、限定はされないが、細胞死の減少、IFN-γ分泌によって測定したときの免疫応答誘導性ストレスの減少、ストレス応答遺伝子誘導の減少を含め、定性的及び/又は定性的評価に基づいて観察し得る。一部の実施形態において、細胞は環状RNAの組み合わせに接触し、ここで環状RNAの組み合わせは、(i)circOct3/4、circKlf4、circSox2、circNanog、circLin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、及びcirc c-Myc;(ii)circOct3/4、circKlf4、circSox2、circNanog、及びcircLin28(例えば、Lin28A又はLin28B);(iii)circOct3/4、circKlf4、circSox2、circNanog、circLin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、及びcircL-Myc;(iv)circOct3/4、circKlf4、circSox2、circNanog、及びcircLin28(例えば、Lin28A又はLin28B);(v)circOct3/4、circKlf4、circSox2、及びcircC-Myc;(vi)circOct3/4、circKlf4、circSox2、及びcircL-Myc;又は(vii)circOct3/4、circKlf4、及びcircSox2から選択される。一部の実施形態において、細胞は、circMyoDに接触する。
【0261】
[0272] また、本明細書には、再プログラム化後に形成される再プログラム化された細胞コロニーの数を増加させる方法であって、環状RNA、複合体、ベクター、又は組成物に細胞を接触させること、及びタンパク質が発現する条件下に細胞を維持することを含む方法も提供され、ここで再プログラム化後に形成される再プログラム化された細胞コロニーの数は、線状RNAが使用される細胞の再プログラム化方法と比べて増加する。一部の実施形態において、再プログラム化された細胞コロニーの数は、線状RNAが使用される方法と比べて少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%又はそれ以上増加する。一部の実施形態において、コロニーの数の増加は、転写因子をコードする1つ以上のcircRNAによるトランスフェクション後約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、又は約20日で観察し得る。一部の実施形態において、細胞は環状RNAの組み合わせに接触し、ここで環状RNAの組み合わせは、(i)circOct3/4、circKlf4、circSox2、circNanog、circLin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、及びcirc c-Myc;(ii)circOct3/4、circKlf4、circSox2、circNanog、及びcircLin28(例えば、Lin28A又はLin28B);(iii)circOct3/4、circKlf4、circSox2、circNanog、circLin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、及びcircL-Myc;(iv)circOct3/4、circKlf4、circSox2、circNanog、及びcircLin28(例えば、Lin28A又はLin28B);(v)circOct3/4、circKlf4、circSox2、及びcircC-Myc;(vi)circOct3/4、circKlf4、circSox2、及びcircL-Myc;又は(vii)circOct3/4、circKlf4、及びcircSox2から選択される。一部の実施形態において、細胞は、circMyoDに接触する。
【0262】
[0273] また、本明細書には、細胞を浮遊状態で再プログラム化する方法であって、本明細書に記載される環状RNA、複合体、ベクター、又は組成物に浮遊状態の細胞を接触させること、及びタンパク質が発現する条件下に細胞を維持することを含む方法も提供される。一部の実施形態において、細胞はCD34を発現する(即ち、細胞はCD34+である)。一部の実施形態において、細胞は環状RNAの組み合わせに接触し、ここで環状RNAの組み合わせは、(i)circOct3/4、circKlf4、circSox2、circNanog、circLin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、及びcirc c-Myc;(ii)circOct3/4、circKlf4、circSox2、circNanog、及びcircLin28(例えば、Lin28A又はLin28B);(iii)circOct3/4、circKlf4、circSox2、circNanog、circLin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、及びcircL-Myc;(iv)circOct3/4、circKlf4、circSox2、circNanog、及びcircLin28(例えば、Lin28A又はLin28B)(v)circOct3/4、circKlf4、circSox2、及びcircC-Myc;(vi)circOct3/4、circKlf4、circSox2、及びcircL-Myc;又は(vii)circOct3/4、circKlf4、及びcircSox2から選択される。一部の実施形態において、細胞は、circMyoDに接触する。
【0263】
[0274] また、本明細書には、再プログラム化されたコロニーの形態学的成熟度を改善する方法であって、本明細書に記載される環状RNA、複合体、ベクター、又は組成物に浮遊状態の細胞を接触させること、及びタンパク質が発現する条件下に細胞を維持することを含む方法も提供され、ここで形態学的成熟度は、線状RNAが使用される細胞の再プログラム化方法と比べて改善する。改善する形態学的成熟度としては、例えば、より密に詰まったコロニー、より多くの細胞が均一な形状及び直径を有するコロニー、明確に定められた境界を含むコロニー、及びより高い核対細胞質比及び/又は顕著な核小体を含むiPSCコロニー内の細胞を挙げることができる。一部の実施形態において、再プログラム化されたコロニーの形態学的成熟度は、線状RNAが使用される方法と比べて少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%又はそれ以上改善する。一部の実施形態において、細胞は環状RNAの組み合わせに接触し、ここで環状RNAの組み合わせは、(i)circOct3/4、circKlf4、circSox2、circNanog、circLin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、及びcirc c-Myc;(ii)circOct3/4、circKlf4、circSox2、circNanog、及びcircLin28(例えば、Lin28A又はLin28B);(iii)circOct3/4、circKlf4、circSox2、circNanog、circLin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、及びcircL-Myc;(iv)circOct3/4、circKlf4、circSox2、circNanog、及びcircLin28(例えば、Lin28A又はLin28B);(v)circOct3/4、circKlf4、circSox2、及びcircC-Myc;(vi)circOct3/4、circKlf4、circSox2、及びcircL-Myc;又は(vii)circOct3/4、circKlf4、及びcircSox2から選択される。一部の実施形態において、細胞は、circMyoDに接触する。
【0264】
[0275] また、本明細書には、1つ以上のCD34発現細胞を含む浮遊培養液も提供され、ここでCD34発現細胞は、再プログラム化因子をコードする1つ以上のcircRNAを含む。一部の実施形態において、再プログラム化因子は、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、c-Myc、及びL-Mycから選択される。
【0265】
[0276] また、本明細書には、体細胞からiPSCへの間葉上皮転換(MET)を誘導する方法であって、再プログラム化因子をコードする1つ以上の環状RNAに体細胞を接触させることを含む方法も提供される。
【0266】
[0277] また、本明細書には、体細胞からiPSCへの間葉上皮転換(MET)を誘導する方法であって、再プログラム化因子をコードする1つ以上の環状RNAに体細胞を接触させることを含む方法も提供される。
【0267】
組成物、及び細胞
[0278] また、本明細書には、環状RNAを含む組成物も提供される。一部の実施形態において、組成物は、(i)環状RNA及び(ii)担体を含む。一部の実施形態において、組成物は、(i)環状RNAをコードするベクター及び(ii)担体を含む。好適な担体としては、例えば、滅菌水、滅菌緩衝溶液(例えば、リン酸塩、クエン酸塩又は酢酸塩等で緩衝された溶液)、滅菌培地、ポリアルキレングリコール類、水素化ナフタレン(例えば、生体適合性ラクチドポリマー)、ラクチド/グリコリドコポリマー又はポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーが挙げられる。一部の実施形態において、担体は、ラクトース、マンニトール、ポリエチレングリコールなどのポリマーを共有結合性に取り付けるための物質、金属イオンとの錯体又はポリ乳酸などのポリマー化合物の特定の調製物内若しくはその上への材料の取込み、ポリグリコール酸、ヒドロゲル又はリポソーム上、マイクロエマルション、ミセル、単層又は多層小胞、赤血球断片又はスフェロプラストを含み得る。一部の実施形態において、担体のpHは、約6.0~約7.0の範囲など、5.0~8.0の範囲である。一部の実施形態において、担体は、塩成分(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム)、又は溶液を例えば等張性にする他の成分を含む。更に、担体は、ウシ胎仔血清、成長因子、ヒト血清アルブミン(HSA)、ポリソルベート80、糖類又はアミノ酸など、追加の成分を含み得る。好適なベクターとしては、プラスミド(例えば、DNAプラスミド)及びウイルスベクターが挙げられる。
【0268】
[0279] また、本明細書には、本明細書に記載されるとおりの環状RNA又は組成物を含む細胞も提供される。一部の実施形態において、細胞は、原核細胞である。一部の実施形態において、細胞は、真核細胞である。一部の実施形態において、細胞は、哺乳類細胞(例えば、マウス、ウシ、サル、ブタ、ウマ、ヒツジ、又はヒト細胞)である。一部の実施形態において、細胞は、ヒト細胞である。
【0269】
キット
[0280] 細胞の再プログラム化のためのキット及びiPSCの作製のためのキットもまた提供される。一部の実施形態において、キットは、本明細書に記載されるとおりの少なくとも1つの環状RNAを含む。一部の実施形態において、キットは、環状RNAを収容する容器を含む。一部の実施形態において、キットは複数の容器を含み、ここでは各容器が環状RNAを含む。一部の実施形態において、キットは、複数の環状RNA分子を含む容器を含み、ここでは各環状RNA分子がタンパク質をコードする。一部の実施形態において、キットはまた、細胞を再プログラム化するための少なくとも1つの環状RNAの使用に関する一組の説明書も含む。
【0270】
[0281] 一部の実施形態において、キットは1つ以上の環状RNAを含み、ここで各環状RNAは、少なくとも1つのタンパク質をコードする。一部の実施形態において、キットは、miRNAをコードする線状又は環状RNAを更に含み得る。一部の実施形態において、キットは、(i)各環状RNAがタンパク質をコードする1つ以上の環状RNA、(ii)任意選択で、いかなるタンパク質又はmiRNAもコードしない環状RNA(例えば、circBIRC6、circCORO1c、circMAN1A2)、(iii)任意選択で、miRNAをコードする線状又は環状RNAの各々を収容する単一の容器を含み得る。一部の実施形態において、キットは複数の容器を含んでもよく、ここで各容器は、(i)タンパク質をコードする少なくとも1つの環状RNA、(ii)任意選択で、いかなるタンパク質又はmiRNAもコードしない環状RNA、又はそれをコードするDNA分子、(iii)任意選択で、miRNAをコードする線状又は環状RNAのうちの1つを含む。一部の実施形態において、キットはまた、細胞を再プログラム化するための少なくとも1つの環状RNAの使用に関する一組の説明書も含む。
【0271】
[0282] 一部の実施形態において、体細胞の再プログラム化及び/又はiPSCの生成のためのキットが提供される。一部の実施形態において、キットは、再プログラム化因子(例えば、転写因子)をコードする少なくとも1つの環状RNAを含む。一部の実施形態において、キットは、環状RNAを収容する容器を含む。一部の実施形態において、キットは複数の容器を含み、ここでは各容器が環状RNAを含む。一部の実施形態において、キットは、複数の環状RNA分子を含む容器を含み、ここでは各環状RNA分子が転写因子をコードする。一部の実施形態において、キットはまた、体細胞の再プログラム化及び/又はiPSCの生成のための少なくとも1つの環状RNAの使用に関する一組の説明書も含む。
【0272】
[0283] 一部の実施形態において、キットは1つ以上の環状RNAを含み、ここでは各環状RNAが、少なくとも1つの再プログラム化因子をコードする。再プログラム化因子は、例えば、表1に掲載される再プログラム化因子のいずれか1つであり得る。一部の実施形態において、キットは、いかなるタンパク質又はmiRNAもコードしない環状RNA、又はそれをコードするDNA分子を更に含み得る。一部の実施形態において、キットは、miRNAをコードする線状又は環状RNA、又はそれをコードするDNA分子を更に含み得る。一部の実施形態において、キットは、(i)各環状RNAが再プログラム化因子をコードする1つ以上の環状RNA、(ii)任意選択で、いかなるタンパク質又はmiRNAもコードしない環状RNA(例えば、circBIRC6、circCORO1c、circMAN1A2)、(iii)任意選択で、miRNAをコードする線状又は環状RNAの各々を収容する単一の容器を含み得る。一部の実施形態において、キットは複数の容器を含んでもよく、ここでは各容器が、(i)再プログラム化因子をコードする少なくとも1つの環状RNA、(ii)任意選択で、いかなるタンパク質又はmiRNAもコードしない環状RNA(例えば、circBIRC6、circCORO1c、circMAN1A2)、(iii)任意選択で、miRNAをコードする線状又は環状RNAのうちの1つを含む。一部の実施形態において、キットはまた、細胞の再プログラム化及び/又はiPSCの生成のための少なくとも1つの環状RNAの使用に関する一組の説明書も含む。
【0273】
[0284] 一部の実施形態において、細胞の分化転換のためのキットが提供される。一部の実施形態において、キットは、再プログラム化因子(例えば、転写因子)をコードする少なくとも1つの環状RNAを含む。一部の実施形態において、キットは、環状RNAを収容する容器を含む。一部の実施形態において、キットは複数の容器を含み、ここでは各容器が環状RNAを含む。一部の実施形態において、キットは、複数の環状RNA分子を含む容器を含み、ここでは各環状RNA分子が、分化転換因子をコードする配列を含む。一部の実施形態において、キットはまた、細胞の分化転換のための少なくとも1つの環状RNAの使用に関する一組の説明書も含む。
【0274】
[0285] 一部の実施形態において、キットは1つ以上の環状RNAを含み、ここで各環状RNAは、少なくとも1つの分化転換因子をコードする配列を含む。分化転換因子は、例えば、表5に掲載される分化転換因子のいずれか1つであり得る。一部の実施形態において、キットは、いかなるタンパク質又はmiRNAもコードしない環状RNAを更に含み得る。一部の実施形態において、キットは、miRNAをコードする環状RNAを更に含み得る。一部の実施形態において、キットは、(i)各環状RNAが分化転換因子をコードする1つ以上の環状RNA、(ii)任意選択で、いかなるタンパク質又はmiRNAもコードしない環状RNA、(iii)任意選択で、miRNAをコードする環状RNAの各々を収容する単一の容器を含み得る。一部の実施形態において、キットは複数の容器を含んでもよく、ここでは各容器が、(i)分化転換因子をコードする少なくとも1つの環状RNA、(ii)任意選択で、いかなるタンパク質又はmiRNAもコードしない環状RNA、(iii)任意選択で、miRNAをコードする環状RNAのうちの1つを含む。一部の実施形態において、キットはまた、細胞における分化転換因子の発現のための少なくとも1つの環状RNAの使用に関する一組の説明書も含む。
【0275】
[0286] 一部の実施形態において、キットは複数の環状RNAを含み、ここで各環状RNAは、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、c-Myc、及びL-Mycから選択される再プログラム化因子、又はこれらの組み合わせをコードする。環状RNAの各々は、別個の容器に提供されてもよく、又は単一の容器に提供されてもよい。
【0276】
[0287] 一部の実施形態において、キットは複数の環状RNAを含み、ここで環状RNAの各々は、Oct3/4、Sox2、及びKlf4から選択される再プログラム化因子、又はこれらの組み合わせをコードする。環状RNAの各々は、別個の容器に提供されてもよく、又は単一の容器に提供されてもよい。
【0277】
[0288] 一部の実施形態において、キットは複数の環状RNAを含み、ここで環状RNAの各々は、Oct3/4、Sox2、c-Myc、及びKlf4から選択される再プログラム化因子、又はこれらの組み合わせをコードする。環状RNAの各々は、別個の容器に提供されてもよく、又は単一の容器に提供されてもよい。
【0278】
[0289] 一部の実施形態において、キットは複数の環状RNAを含み、ここで環状RNAの各々は、Oct3/4、Sox2、L-Myc、及びKlf4から選択される再プログラム化因子、又はこれらの組み合わせをコードする。環状RNAの各々は、別個の容器に提供されてもよく、又は単一の容器に提供されてもよい。
【0279】
[0290] 一部の実施形態において、キットは複数の環状RNAを含み、ここで各環状RNAは、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、及びLin28(例えば、Lin28A又はLin28B)から選択される再プログラム化因子、又はこれらの組み合わせをコードする。環状RNAの各々は、別個の容器に提供されてもよく、又は単一の容器に提供されてもよい。
【0280】
[0291] 一部の実施形態において、キットは複数の環状RNAを含み、ここで各環状RNAは、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、及びc-Mycから選択される再プログラム化因子、又はこれらの組み合わせをコードする。環状RNAの各々は、別個の容器に提供されてもよく、又は単一の容器に提供されてもよい。
【0281】
[0292] 一部の実施形態において、キットは複数の環状RNAを含み、ここで各環状RNAは、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28(例えば、Lin28A又はLin28B)、及びL-Mycから選択される再プログラム化因子、又はこれらの組み合わせをコードする。環状RNAの各々は、別個の容器に提供されてもよく、又は単一の容器に提供されてもよい。
【0282】
[0293] 一部の実施形態において、キットは、環状化される能力を有する線状RNA、又はそれをコードするDNA配列を含み得る。一部の実施形態において、キットは、RNA又はDNAリガーゼ、又はMg2+及びグアノシン5’三リン酸(GTP)など、線状RNAを環状化するための1つ以上の試薬を更に含み得る。
【0283】
[0294] 一部の実施形態において、キットは、(i)OCT4をコードする環状RNA及び緩衝液(例えば、1~10mMクエン酸ナトリウム、pH6.5)を含む容器;(ii)SOX2をコードする環状RNA及び緩衝液(例えば、1~10mMクエン酸ナトリウム、pH6.5)を含む容器;(iii)KLF4をコードするcirRNA及び緩衝液(例えば、1~10mMクエン酸ナトリウム、pH6.5)を含む容器;及び(iv)それのための包装及び説明書を含む。キットは、c-MYC又はL-MYCをコードする環状RNA及び緩衝液(例えば、1~10mMクエン酸ナトリウム、pH6.5)を含む容器;LIN28(例えば、Lin28A又はLin28B)をコードするcirRNA及び緩衝液(例えば、1~10mMクエン酸ナトリウム、pH6.5)を含む容器;NANOGをコードするcirRNA及び緩衝液(例えば、1~10mMクエン酸ナトリウム、pH6.5)を含む容器;又はこれらの組み合わせを更に含み得る。
【0284】
[0295] 一部の実施形態において、キットは、(i):(a)表3に掲載されるいずれか1つ以上の環状化された再プログラム化因子の組み合わせのうちの1つ又は複数の環状RNA再プログラム化因子であって、各々が個々に別個の容器含まれるか、又はかかる因子の2つ以上が単一又は複数の容器に一緒に組み合わされる、因子;及び(ii)それのための包装及び説明書を含む。
【0285】
[0296] 一部の実施形態において、キットは、(i):表3に掲載されるいずれか1つ以上の環状化された再プログラム化因子の組み合わせのうちの1つ又は複数の環状RNA再プログラム化因子であって、各々が個々に別個の容器含まれるか、又はかかる因子の2つ以上が単一又は複数の容器に一緒に組み合わされ;及び表3のそれぞれ環状化された再プログラム化因子及び/又は環状RNA、それぞれ、緩衝液中に懸濁される、因子;及び(iii)それのための包装及び説明書を含む。
【0286】
[0297] 上記に記載するキットのいずれにおいても、環状RNAは、緩衝液を更に含む組成物中に提供されてもよい。緩衝液は、例えば1~10mM クエン酸ナトリウムを含み得る。一部の実施形態において、緩衝液のpHは、約6.5など、約2~約12の範囲である。
【0287】
【表21】
【0288】
【表22】
【0289】
【表23】
【0290】
【表24】
【0291】
【表25】
【0292】
【表26】
【0293】
【表27】
【0294】
【表28】
【0295】
【表29】
【0296】
更なる番号付けされる実施形態
[0298] 更なる番号付けされる本開示の実施形態は、以下のとおりである。
【0297】
[0299] 実施形態1.人工多能性幹細胞(iPSC)を作製する方法であって、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、c-Myc、又はL-Mycから選択される少なくとも1つの再プログラム化因子、又はその断片若しくはバリアントをコードする環状RNAに浮遊状態の血液細胞を接触させること、及びiPSCが入手される条件下に細胞を維持することを含む方法。
【0298】
[0300] 実施形態2.血液細胞が、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、及び臍帯血単核細胞(CBMC)から選択される、実施形態1に記載の方法。
【0299】
[0301] 実施形態3.血液細胞が、T細胞及びNK細胞から選択される、実施形態1に記載の方法。
【0300】
[0302] 実施形態4.人工多能性幹細胞(iPSC)を作製する方法であって、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、c-Myc、又はL-Mycから選択される少なくとも1つの再プログラム化因子、又はその断片若しくはバリアントをコードする環状RNAに浮遊状態のCD34+細胞を接触させること、及びiPSCが入手される条件下に細胞を維持することを含む方法。
【0301】
[0303] 実施形態5.少なくとも1つの再プログラム化因子が、ヒト又はヒト化再プログラム化因子である、実施形態1~4のいずれか一つに記載の方法。
【0302】
[0304] 実施形態6.少なくとも1つの再プログラム化因子がOct3/4であり、Oct3/4が、配列番号7のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する、実施形態1~5のいずれか一つに記載の方法。
【0303】
[0305] 実施形態7.環状RNAが、配列番号8の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む、実施形態3に記載の方法。
【0304】
[0306] 実施形態8.少なくとも1つの再プログラム化因子がKlf4であり、Klf4が、配列番号9又は10のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する、実施形態1~5のいずれか一つに記載の方法。
【0305】
[0307] 実施形態9.環状RNAが、配列番号11の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む、実施形態8に記載の方法。
【0306】
[0308] 実施形態10.少なくとも1つの再プログラム化因子がSox2であり、Sox2が、配列番号12のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する、実施形態1~5のいずれか一つに記載の方法。
【0307】
[0309] 実施形態11.環状RNAが、配列番号13の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む、実施形態10に記載の方法。
【0308】
[0310] 実施形態12.少なくとも1つの再プログラム化因子がNanogであり、Nanogが、配列番号14又は15のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する、実施形態1~5のいずれか一つに記載の方法。
【0309】
[0311] 実施形態13.環状RNAが、配列番号16の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む、実施形態12に記載の方法。
【0310】
[0312] 実施形態14.少なくとも1つの再プログラム化因子がLin28Aであり、Lin28Aが、配列番号17のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する、実施形態1~5のいずれか一つに記載の方法。
【0311】
[0313] 実施形態15.環状RNAが、配列番号18の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む、実施形態14に記載の方法。
【0312】
[0314] 実施形態16.少なくとも1つの再プログラム化因子がc-Mycであり、c-Mycが、配列番号19又は20のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する、実施形態1~5のいずれか一つに記載の方法。
【0313】
[0315] 実施形態17.環状RNAが、配列番号21の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む、実施形態16に記載の方法。
【0314】
[0316] 実施形態18.少なくとも1つの再プログラム化因子がL-Mycであり、L-Mycが、配列番号22~24のいずれか1つのアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する、実施形態1~5のいずれか一つに記載の方法。
【0315】
[0317] 実施形態19.環状RNAが、配列番号25の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む、実施形態18に記載の方法。
【0316】
[0318] 実施形態20.環状RNAが、実質的に非免疫原性である、実施形態1~19のいずれか一つに記載の方法。
【0317】
[0319] 実施形態21.環状RNAが、1つ以上のM-6-メチルアデノシン(m6A)残基を含む、実施形態20に記載の方法。
【0318】
[0320] 実施形態22.環状RNAが、約200ヌクレオチド~約5,000ヌクレオチドを含む、実施形態1~21のいずれか一つに記載の方法。
【0319】
[0321] 実施形態23.環状RNAが、タンパク質コード配列に作動可能に連結された配列内リボソーム進入部位(IRES)を含む、実施形態1~22のいずれか一つに記載の方法。
【0320】
[0322] 実施形態24.環状RNAが、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、c-Myc、又はL-Mycから選択される2つ以上の再プログラム化因子をコードする、実施形態1~23のいずれか一つに記載の方法。
【0321】
[0323] 実施形態25.Oct4又はその断片若しくはバリアントをコードする第1の環状RNA、Sox2又はその断片若しくはバリアントをコードする第2の環状RNA、Klf4又はその断片若しくはバリアントをコードする第3の環状RNA、C-Myc又はその断片若しくはバリアントをコードする第4の環状RNA、Lin28又はその断片若しくはバリアントをコードする第5の環状RNA、及びNanog又はその断片若しくはバリアントをコードする第6の環状RNAに細胞を接触させることを含む、実施形態1~5のいずれか一つに記載の方法。
【0322】
[0324] 実施形態26.Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びc-Mycからなる再プログラム化因子の群のうちの1つ以上、又はその断片若しくはバリアントをコードする1つ以上の環状RNAに細胞を接触させることを含む、実施形態1~5のいずれか一つに記載の方法。
【0323】
[0325] 実施形態27.人工多能性幹細胞(iPSC)を作製する方法であって、Oct4をコードする第1の環状RNA、Sox2をコードする第2の環状RNA、Klf4をコードする第3の環状RNA、C-Mycをコードする第4の環状RNA、Lin28をコードする第5の環状RNA、及びNanogをコードする第6の環状RNAからなる6つの環状RNAに浮遊状態のCD34+細胞を接触させること、及びiPSCが入手される条件下に細胞を維持することを含む方法。
【0324】
[0326] 実施形態28.人工多能性幹細胞(iPSC)を作製する方法であって、Oct4をコードする第1の環状RNA、Sox2をコードする第2の環状RNA、及びKlf4をコードする第3の環状RNAからなる3つの環状RNAに浮遊状態のCD34+細胞を接触させること、及びiPSCが入手される条件下に細胞を維持することを含む方法。
【0325】
[0327] 実施形態29.Nanog、Lin28、及びc-Mycのいずれかをコードする環状RNAにCD34+細胞を接触させることを含まない、実施形態28に記載の方法。
【0326】
[0328] 実施形態30.人工多能性幹細胞(iPSC)を作製する方法であって、Oct4をコードする第1の環状RNA、Sox2をコードする第2の環状RNA、及びKlf4をコードする第3の環状RNAからなる3つの環状RNA、及びC-Mycをコードする第4の環状RNAに浮遊状態のCD34+細胞を接触させること、及びiPSCが入手される条件下に細胞を維持することを含む方法。
【0327】
[0329] 実施形態31.Nanog又はLin28のいずれかをコードする環状RNAにCD34+細胞を接触させることを含まない、実施形態30に記載の方法。
【0328】
[0330] 実施形態32.人工多能性幹細胞(iPSC)を作製する方法であって、Oct4をコードする第1の環状RNA、Sox2をコードする第2の環状RNA、及びKlf4をコードする第3の環状RNAからなる3つの環状RNA、及びNanogをコードする第4の環状RNA、及びLin 28をコードする第5の環状RNAに浮遊状態のCD34+細胞を接触させること、及びiPSCが入手される条件下に細胞を維持することを含む方法。
【0329】
[0331] 実施形態33.c-Mycをコードする環状RNAにCD34+細胞を接触させることを含まない、実施形態32に記載の方法。
【0330】
[0332] 実施形態34.細胞が、E3、K3、B18Rから選択されるいかなる因子にも接触しない、実施形態1~33のいずれか一つに記載の方法。
【0331】
[0333] 実施形態35.細胞が、いかなるマイクロRNA(miR)にも接触しない、実施形態1~33のいずれか一つに記載の方法。
【0332】
[0334] 実施形態36.細胞が、E3、K3、B18R、1つ以上のマイクロRNA(miR)、又はこれらの組み合わせから選択される1つ以上の因子に接触しない、実施形態1~33のいずれか一つに記載の方法。
【0333】
[0335] 実施形態37.miRが、miR302a、miR302b、miR302c、miR302d、及びmiR367を含む、35又は36に記載の方法。
【0334】
[0336] 実施形態38.細胞が、少なくとも1つの環状RNAと直接接触する、実施形態1~37のいずれか一つに記載の方法。
【0335】
[0337] 実施形態39.細胞が、少なくとも1つの環状RNAの各々に1回接触する、実施形態1~38のいずれか一つに記載の方法。
【0336】
[0338] 実施形態40.少なくとも1つの環状RNAの各々に細胞を2、3、4回、又はそれ以上接触させることを含む、実施形態1~38のいずれか一つに記載の方法。
【0337】
[0339] 実施形態41.少なくとも1つの環状RNAの各々に細胞を4回未満接触させることを含む、実施形態1~38のいずれか一つに記載の方法。
【0338】
[0340] 実施形態42.少なくとも1つの環状RNAの各々に細胞を2~4回接触させることを含む、実施形態1~38のいずれか一つに記載の方法。
【0339】
[0341] 実施形態43.少なくとも1つの環状RNAの各々の濃度が、少なくとも3pg RNA/細胞である、実施形態1~42のいずれか一つに記載の方法。
【0340】
[0342] 実施形態44.少なくとも1つの環状RNAの各々の濃度が、約5pg RNA/細胞~約15pg RNA/細胞である、実施形態1~42のいずれか一つに記載の方法。
【0341】
[0343] 実施形態45.細胞の接触が、エレクトロポレーションにより実施される、実施形態1~44のいずれか一つに記載の方法。
【0342】
[0344] 実施形態46.E3、K3、又はB18Rから選択される1つ以上のウイルスタンパク質をコードするRNAポリヌクレオチドに細胞を接触させることを更に含む、実施形態1~26又は38~45のいずれか一つに記載の方法。
【0343】
[0345] 実施形態47.(a)B18Rが、配列番号26の配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有し;(b)E3が、配列番号27の配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有し;及び/又は(c)K3が、配列番号28の配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する、実施形態46に記載の方法。
【0344】
[0346] 実施形態48.1つ以上のマイクロRNA(miR)に細胞を接触させることを更に含む、実施形態1~26又は38~47のいずれか一つに記載の方法。
【0345】
[0347] 実施形態49.miRが、miR302a、miR302b、miR302c、miR302d、及びmiR367から選択される、実施形態48に記載の方法。
【0346】
[0348] 実施形態50.(i)1つ以上の線状RNAでiPSCを作製する方法と比較した培養の終わりに存在する再プログラム化されたiPSCの数の増加;及び/又は(ii)1つ以上の線状RNAでiPSCを作製する方法と比較した再プログラム化中の1時点以上における細胞死の減少のうちの1つ以上を生じさせる、実施形態1~49のいずれか一つに記載の方法。
【0347】
[0349] 実施形態51.(i)1つ以上の線状RNAでiPSCを作製する方法と比較した培養の終わりに存在する再プログラム化されたiPSCの数の増加;及び(ii)1つ以上の線状RNAでiPSCを作製する方法と比較した再プログラム化中の1時点以上における細胞死の減少の各々を生じさせる、実施形態1~49のいずれか一つに記載の方法。
【0348】
[0350] 実施形態52.実施形態1~51のいずれか一つに記載の方法を用いて作製されるiPSC。
【0349】
[0351] 実施形態53.実施形態52に記載のiPSCから誘導される分化細胞。
【0350】
[0352] 実施形態54.筋細胞、神経系細胞、中枢神経系細胞、眼細胞、軟骨細胞、骨細胞、腱細胞、腎細胞、心筋細胞、肝細胞、膵島細胞、角化細胞、T細胞、又はNK細胞である、実施形態53に記載の分化細胞。
【0351】
[0353] 実施形態55.細胞のゲノムの再プログラム化及び編集方法であって、(i)タンパク質コード配列を含む組換え環状RNAに細胞を接触させることであって、タンパク質コード配列が少なくとも1つの再プログラム化因子をコードすること、及び(ii)細胞のDNA又はRNAの編集能を有する酵素、又はそれをコードする核酸に細胞を接触させることを含む方法。
【0352】
[0354] 実施形態56.細胞のゲノムの再プログラム化及び編集方法であって、(i)タンパク質コード配列を含む組換え環状RNAであって、タンパク質コード配列が少なくとも1つの再プログラム化因子をコードする、組換え環状RNA、及び(ii)細胞のDNA又はRNAの編集能を有する酵素、又はそれをコードする核酸に細胞を同時に接触させることを含む方法。
【0353】
[0355] 実施形態57.少なくとも1つの再プログラム化因子が、ヒト又はヒト化再プログラム化因子である、実施形態55又は56に記載の方法。
【0354】
[0356] 実施形態58.少なくとも1つの再プログラム化因子がOct3/4であり、Oct3/4が、配列番号7のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する、実施形態55~57のいずれか一つに記載の方法。
【0355】
[0357] 実施形態59.組換え環状RNAが、配列番号8の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む、実施形態59に記載の方法。
【0356】
[0358] 実施形態60.少なくとも1つの再プログラム化因子がKlf4であり、Klf4が、配列番号9又は10のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する、実施形態55~57のいずれか一つに記載の方法。
【0357】
[0359] 実施形態61.組換え環状RNAが、配列番号11の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む、実施形態60に記載の方法。
【0358】
[0360] 実施形態62.少なくとも1つの再プログラム化因子がSox2であり、Sox2が、配列番号12のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する、実施形態55~57のいずれか一つに記載の方法。
【0359】
[0361] 実施形態63.組換え環状RNAが、配列番号13の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む、実施形態62に記載の方法。
【0360】
[0362] 実施形態64.少なくとも1つの再プログラム化因子がNanogであり、Nanogが、配列番号14又は15のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する、実施形態55~57のいずれか一つに記載の方法。
【0361】
[0363] 実施形態65.組換え環状RNAが、配列番号16の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む、実施形態64に記載の方法。
【0362】
[0364] 実施形態66.少なくとも1つの再プログラム化因子がLin28Aであり、ここでLin28Aが、配列番号17のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する、実施形態55~57のいずれか一つに記載の方法。
【0363】
[0365] 実施形態67.組換え環状RNAが、配列番号18の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む、実施形態66に記載の方法。
【0364】
[0366] 実施形態68.少なくとも1つの再プログラム化因子がc-Mycであり、c-Mycが、配列番号19又は20のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する、実施形態55~57のいずれか一つに記載の方法。
【0365】
[0367] 実施形態69.組換え環状RNAが、配列番号21の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む、実施形態68に記載の方法。
【0366】
[0368] 実施形態70.少なくとも1つの再プログラム化因子がL-Mycであり、L-Mycが、配列番号22~24のいずれか1つのアミノ酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する、実施形態55~57のいずれか一つに記載の方法。
【0367】
[0369] 実施形態71.組換え環状RNAが、配列番号25の核酸配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を含む、実施形態70に記載の方法。
【0368】
[0370] 実施形態72.環状RNAが、実質的に非免疫原性である、実施形態55~57のいずれか一つに記載の方法。
【0369】
[0371] 実施形態73.環状RNAが、1つ以上のM-6-メチルアデノシン(m6A)残基を含む、実施形態72に記載の方法。
【0370】
[0372] 実施形態74.環状RNAが、約200ヌクレオチド~約5,000ヌクレオチドを含む、実施形態55~73のいずれか一つに記載の方法。
【0371】
[0373] 実施形態75.環状RNAが、タンパク質コード配列に作動可能に連結された配列内リボソーム進入部位(IRES)を含む、実施形態55~74のいずれか一つに記載の方法。
【0372】
[0374] 実施形態76.環状RNAが、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、c-Myc、又はL-Mycから選択される2つ以上の再プログラム化因子をコードする、実施形態55~75のいずれか一つに記載の方法。
【0373】
[0375] 実施形態77.Oct4又はその断片若しくはバリアントをコードする第1の環状RNA、Sox2又はその断片若しくはバリアントをコードする第2の環状RNA、Klf4又はその断片若しくはバリアントをコードする第3の環状RNA、C-Myc又はその断片若しくはバリアントをコードする第4の環状RNA、Lin28又はその断片若しくはバリアントをコードする第5の環状RNA、及びNanog又はその断片若しくはバリアントをコードする第6の環状RNAに細胞を接触させることを含む、実施形態55又は56に記載の方法。
【0374】
[0376] 実施形態78.Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、c-Myc、及びL-Myc、又はその断片若しくはバリアントをコードする1つ以上の環状RNAに細胞を接触させることを含む、実施形態55又は56に記載の方法。
【0375】
[0377] 実施形態79.細胞が、E3、K3、B18R、又は任意のマイクロRNA(miR)から選択されるいかなる補助的因子にも接触しない、実施形態55~78のいずれか一つに記載の方法。
【0376】
[0378] 実施形態80.細胞が、少なくとも1つの環状RNAと直接接触する、実施形態55~79のいずれか一つに記載の方法。
【0377】
[0379] 実施形態81.細胞が、少なくとも1つの環状RNAの各々と1回接触する、実施形態55~80のいずれか一つに記載の方法。
【0378】
[0380] 実施形態82.環状RNAの各々のうちの少なくとも1、2、3、4つ、又はそれ以上に細胞を接触させることを含む、実施形態55~80のいずれか一つに記載の方法。
【0379】
[0381] 実施形態83.少なくとも1つの環状RNAの各々に細胞を4回未満接触させることを含む、実施形態55~80のいずれか一つに記載の方法。
【0380】
[0382] 実施形態84.少なくとも1つの環状RNAの各々に細胞を2~4回接触させることを含む、実施形態55~80のいずれか一つに記載の方法。
【0381】
[0383] 実施形態85.少なくとも1つの環状RNAの濃度が、少なくとも3pg RNA/細胞である、実施形態55~84のいずれか一つに記載の方法。
【0382】
[0384] 実施形態86.少なくとも1つの環状RNAの濃度が、約5pg RNA/細胞~約15pg RNA/細胞である、実施形態55~85のいずれか一つに記載の方法。
【0383】
[0385] 実施形態87.細胞の接触が、エレクトロポレーションにより実施される、実施形態55~86のいずれか一つに記載の方法。
【0384】
[0386] 実施形態88.エレクトロポレーションが、Neon(登録商標)エレクトロポレーションシステムを使用する、実施形態87に記載の方法。
【0385】
[0387] 実施形態89.E3、K3、又はB18Rから選択される1つ以上のウイルスタンパク質をコードするRNAポリヌクレオチドに細胞を接触させることを含む、実施形態55~78又は80~88のいずれか一つに記載の方法。
【0386】
[0388] 実施形態90.(a)B18Rが、配列番号26の配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有し;(b)E3が、配列番号27の配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有し;及び/又は(c)K3が、配列番号28の配列、又はそれと少なくとも90%又は少なくとも95%同一の配列を有する、実施形態89に記載の方法。
【0387】
[0389] 実施形態91.miR302a、miR302b、miR302c、miR302d、及びmiR367から選択されるマイクロRNA(miR)に細胞を接触させることを含む、実施形態55~78又は80~90のいずれか一つに記載の方法。
【0388】
[0390] 実施形態92.細胞が、E3、K3、B18Rから選択されるいかなるウイルスタンパク質にも接触しないか、又はmiR302a、miR302b、miR302c、miR302d、及びmiR367から選択されるいかなるマイクロRNA(miR)にも接触しない、実施形態55~88のいずれか一つに記載の方法。
【0389】
[0391] 実施形態93.酵素が、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、アルゴノートエンドヌクレアーゼ(NgAgo)、構造ガイド型エンドヌクレアーゼ(SGN)、RNAガイド型ヌクレアーゼ(RGN)、RNAに作用するアデノシンデアミナーゼ(ADAR)、又はこれらの修飾された若しくはトランケートされたバリアントである、実施形態55~82のいずれか一つに記載の方法。
【0390】
[0392] 実施形態94.RGNが、Cas9ヌクレアーゼ、Cas12(a)ヌクレアーゼ(Cpf1)、Cas12bヌクレアーゼ、Cas12cヌクレアーゼ、TrpB様ヌクレアーゼ、Cas13aヌクレアーゼ(C2c2)、Cas13bヌクレアーゼ、Cas14ヌクレアーゼ又はこれらの修飾された若しくはトランケートされたバリアントから選択されるCasヌクレアーゼである、実施形態93に記載の方法。
【0391】
[0393] 実施形態95.RGNがCas9ヌクレアーゼであり、Cas9ヌクレアーゼが、化膿レンサ球菌(S. pyogenes)又は黄色ブドウ球菌(S. aureus)から単離又は誘導される、実施形態94に記載の方法。
【0392】
[0394] 実施形態96.RGNが、APG05083.1、APG07433.1、APG07513.1、APG08290.1、APG05459.1、APG04583.1、及びAPG1688.1、APG05733.1、APG06207.1、APG01647.1、APG08032.1、APG05712.1、APG01658.1、APG06498.1、APG09106.1、APG09882.1、APG02675.1、APG01405.1、APG06250.1、APG06877.1、APG09053.1、APG04293.1、APG01308.1、APG06646.1、APG09748、APG07433.1、APG00969、APG03128、APG09748、APG00771、APG02789、APG09106、APG02312、APG07386、APG09980、APG05840、APG05241、APG07280、APG09866、及びAPG00868のうちのいずれか1つから選択される、実施形態93に記載の方法。
【0393】
[0395] 実施形態97.ガイドRNA、又はそれをコードする核酸に細胞を接触させることを更に含む、実施形態55~96のいずれか一つに記載の方法。
【0394】
[0396] 実施形態98.細胞が、酵素又はそれをコードする核酸に接触する前に環状RNAに接触する、実施形態55又は57~97のいずれか一つに記載の方法。
【0395】
[0397] 実施形態99.細胞が、酵素又はそれをコードする核酸に接触した後に組換え環状RNAに接触する、実施形態55又は87~97のいずれか一つに記載の方法。
【0396】
[0398] 実施形態100.細胞が、細胞のDNA又はRNAの編集能を有する酵素、又はそれをコードする核酸、及びガイドRNA、又はそれをコードする核酸に接触する、実施形態55~99のいずれか一つに記載の方法。
【0397】
[0399] 実施形態101.酵素が細胞のDNAの編集能を有し、酵素とガイドRNAとが、細胞との接触前にリボ核タンパク質として複合体化する、実施形態100に記載の方法。
【0398】
[0400] 実施形態102.細胞の接触がエレクトロポレーションにより実施される、実施形態55~101のいずれか一つに記載の方法。
【0399】
[0401] 実施形態103.実施形態55~102のいずれか一つに記載の方法により生成される細胞。
【0400】
[0402] 実施形態104.細胞の再プログラム化方法であって、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びc-Mycからなる6つの再プログラム化因子をコードする1つ以上の環状RNAに細胞を接触させることを含む方法。
【0401】
[0403] 実施形態105.Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びc-Mycからなる群からの再プログラム化因子を各々がコードする6つの環状RNAに細胞を接触させることを含む、実施形態104に記載の方法。
【0402】
[0404] 実施形態106.環状RNA又は線状RNAのいずれか1つが脂質ナノ粒子にコンジュゲートされる、実施形態104又は105に記載の方法。
【0403】
[0405] 実施形態107.細胞が、E3、K3、B18R、又は1つ以上のマイクロRNA(miR)から選択される1つ以上の因子に接触しない、実施形態104~106のいずれか一つに記載の方法。
【0404】
[0406] 107A.環状RNAが細胞にとって外因性である、請求項1~51、55~102、又は104~107のいずれか一項に記載の方法。
【0405】
[0407] 実施形態108.実施形態104~107Aのいずれか一つに記載の方法により生成される細胞。
【0406】
[0408] 実施形態109.再プログラム化因子をコードする1つ以上の外因性環状RNAを含む体細胞であって、再プログラム化因子が、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びc-Mycからなる群から選択される、体細胞。
【0407】
[0409] 実施形態110.体細胞が1つ以上の外因性環状RNAを含み、1つ以上の環状RNAが、各々、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びc-Mycから選択される再プログラム化因子をコードする、実施形態109に記載の体細胞。
【0408】
[0410] 実施形態111.体細胞が6つの外因性環状RNAを含み、各環状RNAが、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びc-Mycのうちの1つをコードする、実施形態109に記載の体細胞。
【0409】
[0411] 実施形態112.体細胞が5つの外因性環状RNAを含み、各環状RNAが、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、及びLin28のうちの1つをコードする、実施形態109に記載の体細胞。
【0410】
[0412] 実施形態113.体細胞が4つの外因性環状RNAを含み、各環状RNAが、Oct3/4、Klf4、Sox2、及びc-Mycのうちの1つをコードする、実施形態109に記載の体細胞。
【0411】
[0413] 実施形態114.体細胞が3つの外因性環状RNAを含み、各環状RNAが、Oct3/4、Klf4、及びSox2のうちの1つをコードする、実施形態109に記載の体細胞。
【0412】
[0414] 実施形態115.1つ以上のCD34+細胞を含む浮遊培養液であって、CD34+細胞が、再プログラム化因子をコードする1つ以上の外因性circRNAを含む、浮遊培養液。
【0413】
[0415] 実施形態116.CD34+細胞が、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びc-Mycからなる群から選択される1つの再プログラム化因子を各々がコードする6つの外因性circRNAを含む、実施形態115に記載の浮遊培養液。
【0414】
[0416] 実施形態117.CD34+細胞が、E3、K3、B18R、又はマイクロRNA(miR)から選択される補助的因子をコードする外因性(exogneous)核酸を含まない、実施形態115又は116に記載の浮遊培養液。
【0415】
[0417] 実施形態118.Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びc-Mycからなる再プログラム化因子をコードする1つ以上の環状RNAを含む組成物。
【0416】
[0418] 実施形態119.Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びc-Mycからなる再プログラム化因子をコードする2つ以上の環状RNAを含む組成物。
【0417】
[0419] 実施形態120.Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びc-Mycからなる再プログラム化因子のうちの1つを各々がコードする6つの環状RNAを含む組成物。
【0418】
[0420] 実施形態121.Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、及びLin28からなる再プログラム化因子のうちの1つを各々がコードする5つの環状RNAを含む組成物。
【0419】
[0421] 実施形態122.Oct3/4、Klf4、Sox2、及びc-Mycからなる再プログラム化因子のうちの1つを各々がコードする4つの環状RNAを含む組成物。
【0420】
[0422] 実施形態123.Oct3/4、Klf4、及びSox2からなる再プログラム化因子のうちの1つを各々がコードする3つの環状RNAを含む組成物。
【0421】
[0423] 実施形態124.実施形態118~123のいずれか一つに記載の組成物を含むキット。
【0422】
[0424] 実施形態125.実施形態118~123のいずれか一つに記載の組成物を含む細胞。
【0423】
[0425] 実施形態126.真核細胞である、実施形態125に記載の細胞。
【0424】
[0426] 実施形態127.哺乳類細胞である、実施形態126に記載の細胞。
【0425】
[0427] 実施形態128.ヒト細胞である、実施形態127に記載の細胞。
【0426】
[0428] 実施形態129.CD34+細胞、T細胞、又はNK細胞である、実施形態125~128のいずれか一つに記載の細胞。
【0427】
[0429] 実施形態130.Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びc-Myc、又はL-Mycのいずれか一方から選択される1つ以上の再プログラム化因子をコードする1つ以上の環状RNAを含むCD34+細胞。
【0428】
[0430] 実施形態131.再プログラム化因子が、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びc-Mycの6つ全てからなる、実施形態130に記載のCD34+細胞。
【0429】
[0431] 実施形態132.再プログラム化因子が、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、Lin28、及びL-Mycの6つ全てからなる、実施形態130に記載のCD34+細胞。
【0430】
[0432] 実施形態133.再プログラム化因子が、Oct3/4、Klf4、Sox2、Nanog、及びLin28からなる、実施形態130に記載のCD34+細胞。
【0431】
[0433] 実施形態134.再プログラム化因子が、Oct3/4、Klf4、Sox2、及びc-Mycからなる、実施形態130に記載のCD34+細胞。
【0432】
[0434] 実施形態135.再プログラム化因子が、Oct3/4、Klf4、及びSox2からなる、実施形態130に記載のCD34+細胞。
【0433】
[0435] 実施形態136.SSEA-3、SSEA-4、TRA-1-60、TRA-1-81、TRA-2-49/6E、アルカリホスファターゼ、Sox2、E-カドヘリン、UTF-1、Oct4、Rex1、Nanog、又はこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのステムネスマーカーを呈する、実施形態130~135のいずれか一つに記載のCD34+細胞。
【0434】
[0436] 実施形態137.1つ以上の環状RNAが、細胞にとって外因性である、実施形態130~136のいずれか一つに記載のCD34+細胞。
【0435】
[0437] 実施形態138.1つ以上の遺伝子修飾を更に含む、実施形態130~137のいずれか一つに記載のCD34+細胞。
【0436】
[0438] 実施形態139.1つ以上の遺伝子修飾が遺伝子ノックアウトを含む、実施形態138に記載のCD34+細胞。
【0437】
[0439] 実施形態140.1つ以上の遺伝子修飾が遺伝子ノックインを含む、実施形態138又は139に記載のCD34+細胞。
【0438】
[0440] 実施形態141.実施形態130~140のいずれか一つに記載のCD34+細胞から誘導された人工多能性幹細胞(iPSC)。
【0439】
[0441] 実施形態142.細胞が低免疫原性である、実施形態141に記載のiPSC。
【0440】
[0442] 実施形態143.実施形態141又は142に記載のiPSCから生成される分化細胞。
【0441】
[0443] 実施形態144.疾患又は病態を治療する方法であって、それを必要としている対象に実施形態141又は142に記載のiPSC又は実施形態126に記載の分化細胞を投与することを含む方法。
【0442】
[0444] 実施形態145.体細胞を分化転換させる方法であって、1つ以上の外因性環状RNAに細胞を接触させることを含む方法。
【0443】
[0445] 実施形態146.実施形態145に記載の方法によって作製される分化転換細胞。
【0444】
[0446] 実施形態147.人工多能性幹細胞(iPSC)から細胞を分化させる方法であって、1つ以上の環状RNAにiPSCを接触させることを含む方法。
【0445】
[0447] 実施形態148.実施形態147に記載の方法によって作製される分化細胞。
【実施例
【0446】
実施例
[0448] 本明細書にあくまでも例示を目的として含まれる以下の例は、限定することを意図するものではない。
【0447】
実施例1:CD34+細胞の浮遊状態での環状RNA再プログラム化
[0449] CD34+細胞を浮遊状態で再プログラム化することの実現可能性を評価する実験を実施した。この再プログラム化実験のタイムライン及びプロセスの概略図を図4に提供する。環状化されたRNAの例示的配列を配列番号8、11、13、16、18、及び21に提供し、以下の表6に詳述する。
【0448】
【表30】
【0449】
[0450] 簡潔に言えば、臍帯血由来のCD34+細胞を、5つのサイトカイン-SCF、FLT3L、TPO、IL-3、及びIL-6(各100ng/mL)を含有するSCGM培地(Cellgenix)において3日間(-3日目から0日目まで)拡大した。0日目、各条件につき0.5×10細胞をペレット化し、洗浄し、エレクトロポレーションによるトランスフェクションのため100~120μLの緩衝液に再懸濁した。1600V、10msパルス幅、3パルスに設定したNeon(登録商標)エレクトロポレーターで細胞をエレクトロポレーションした。RNAカクテル(C14及びC6)を2つの濃度:5.2pg/細胞及び13pg/細胞でCD34細胞に送達した。これらの濃度は、より低いRNA/細胞比(2.6pg/細胞)を使用し、CD34+細胞再プログラム化が不成功に終わった以前の実験(データは示さず)に基づき選択した。この実験で使用したRNAカクテルは、以下の成分を含む:
(a)C14カクテル-OCT4、SOX2、KLF4、cMYC、NANOG及びLIN28A(OSKMNL)を別個にコードする6つのcircRNA+E3/K3/B18R(EKB)をコードする線状RNA+5つのmiR(miR302a、-b、-c、-d及びmiR367)
(b)C6カクテル=OCT4、SOX2、KLF4、cMYC、NANOG及びLIN28A(OSKMNL)を別個にコードする6つのcircRNA。
【0450】
[0451] 6つの再プログラム化因子OSKMNLの化学量論は、3:1:1:1:1:1である。トランスフェクション頻度及びカクテルの各々で送達されるRNA量を表7に示す。
【0451】
【表31】
【0452】
[0452] 0日目にOSKMを発現するセンダイウイルス(Cytotune 2.0キット)で形質導入したCD34+細胞(0.5×10)を陽性対照として使用した。陰性対照には、他のトランスフェクションと同時に行ったモックトランスフェクション(RNアーゼ及びDNアーゼ不含水)(1日1回で6日間(表7の群14)又は隔日1回で4日間(表7の群13))並びにトランスフェクトしなかったCD34細胞が含まれた。対照は全て、0.5×10 CD34+細胞で実施した。
【0453】
[0453] トランスフェクション後に毎回、10μMのROCK阻害薬Y27632を含有する完全SCGM培地に細胞を再懸濁し、24ウェル非接着性プレートに播種した。最終回のトランスフェクションを終えた翌日、対照(SeV、モック、及びCD34+単独細胞)を含めた条件毎に、細胞数及び生存能力を決定した。細胞は全て、完全SCGM培地(サイトカイン含有)及び10μMのY27632が入ったiMatrix-511コートした12ウェル組織培養処理済みプレートにプレーティングした。プレーティングした細胞は、5%O2(低酸素インキュベーター)で成長させた。
【0454】
[0454] 4~6日目、各ウェルから培地の半分(1ml)をサイトカイン不含の1mlのSCGM培地に交換した。4日目の交換培地には、10μMのY27632が含まれた。残りの日の交換培地には、10μMのY27632は含まれなかった。7日目、各ウェルから培地の半分(1ml)を1mlのPSC培地(iM511上で成長させる細胞にはNutristem hPSC-XF又はVtn上で成長させる細胞にはStemfit培地)に交換した。8日目以降、iPSCコロニーがピッキングできる状態になるまで、各ウェルの培地全てを2mlのPSC培地に交換した。
【0455】
[0455] 初めに、6日目~7日目(SeVについて)及び8日目(C14について)までにiPSC様コロニーに似た小さい凝集塊が観察された。11日目までに、circRNA条件のうちの3つ(上の3行)に細胞クラスターが観察された。これらのクラスターは増殖及びサイズ成長し続け、iPSC形態を呈した。図5を参照のこと。
【0456】
[0456] 再プログラム化の22~23日目、培養物を固定し、多能性マーカーTra-1-81及びOCT4で染色し、IncuCyteを使用して全ウェル画像をスキャンした。iPSCコロニーは、多能性マーカーに関して陽性染色Tra-1-81+及びOct4+を示した。5.2pg(群1)又は13pg(群5)のいずれかのC14カクテルを使用してトランスフェクションを2回行った(0日目及び2日目に実施した)培養物は(図6A及び図6B)、より大きい面積のTra-1-81/Oct4ダブルポジティブ細胞を示した。5.2pg(群3)のC14カクテルの4日連日のトランスフェクション(図6C)によってもまた、TRA-1-81及びOCT4陽性のiPSCコロニーが生じた。
【0457】
[0457] circRNAで再プログラム化した継代1代目のiPSCクローンの代表的な位相差画像を図7に示す。circRNAで再プログラム化したCD34細胞から誘導されたこれらのiPSCクローンは、培養下でのピッキング及び拡大が可能であった。
【0458】
[0458] これらの結果は、再プログラム化因子をコードするcircRNAを使用したCD34+細胞の浮遊状態での再プログラム化を実証している。C14カクテルは、1)0日目及び2日目のトランスフェクション、又は2)1、2、3及び4日目のトランスフェクションのいずれによってもCD34細胞の再プログラム化に成功した。再プログラム化効率は、SeV再プログラム化(群11)と同様であったことから、circRNA再プログラム化のロバスト性が更に実証される。モックエレクトロポレーション(×2)と、続くSeV再プログラム化では、多量の細胞死が生じたものの、なおもiPSCコロニーが生じた。これは、エレクトロポレーション手順それ自体は、iPSC再プログラム化の開始及び進行の点で禁忌でないことを示唆している。
【0459】
実施例2:線維芽細胞の同時の再プログラム化及び遺伝子編集
[0459] B2M遺伝子の同時の再プログラム化(circRNAによる)及び編集によるB2M-/-iPSCの生成を実証するため、線維芽細胞(HDF)を使用して実験を実施した。
【0460】
[0460] 2つのプロトコルを比較した:(1)HDFの同時の再プログラム化及び編集を例証する1ステッププロトコル、及び(2)HDFの順次の編集及び再プログラム化を例証する2ステッププロトコル。
【0461】
[0461] 1ステッププロトコルについては、以前最適化したcircRNA再プログラム化プロトコル-即ち、0及び2日目にRNAiMAXトランスフェクション試薬を使用して2回のトランスフェクションを実施するプロトコルに従いHDFをcircRNAで再プログラム化した。C14再プログラム化カクテルを使用し、このカクテルは、再プログラム化因子OCT4、SOX2、KLF4、cMYC、NANOG及びLIN28A(OSKLMN)をコードする6つのcircRNA+E3/K3/B18Rをコードする線状mRNA+5つのマイクロRNA(miR302a、-b、-c、-d及びmiR367)を含んだ。LEG14 RNAガイド型ヌクレアーゼをコードするmRNAポリヌクレオチド(Life Edit Therapeutics、Morrisville, NC)及びB2M遺伝子を標的化するsgRNA(Life Edit Therapeutics、Morrisville, NC)をcircRNA再プログラム化カクテルと共にコトランスフェクトした。以下の3条件を試験した:
(a)ヌクレアーゼ/sgRNAのコトランスフェクションなし
(b)0日目にヌクレアーゼ/sgRNAをコトランスフェクトする(RE1)
(c)0及び2日目にヌクレアーゼ/sgRNAをコトランスフェクトする(RE2)
【0462】
[0462] RE1及びRE2の各々については、3つの異なる密度のHDF(各ウェル25K、50K及び75K)を同時に再プログラム化し、編集した。
【0463】
[0463] 2ステッププロトコルについては、初めにHDFに、RNAガイド型ヌクレアーゼとB2MターゲティングsgRNAとを含むRNP複合体をNeon(登録商標)エレクトロポレーターを使用してトランスフェクトした。3つの異なるセッティングを試験した(表9を参照のこと)。次にエレクトロポレーションしたHDFを培養下にプレーティングして最適なコンフルエンシーに至らせ(約6日)、circRNA再プログラム化のため、1ステッププロトコルに使用したのと同じ手順に従い6ウェルプレートに播種した。
【0464】
[0464] 再プログラム化の21日目、培養物を固定し、多能性マーカーTra-1-81及びOCT4で染色し、IncuCyteを使用して全ウェル画像をスキャンした。iPSCコロニーは、Tra-1-81-及びOct4に関して陽性染色を示した。図8は、1ステッププロトコルの染色結果を示す。図10は、2ステッププロトコルの染色結果を示す。
【0465】
[0465] 1ステップ(同時)及び2ステップ(順次)プロトコルの編集効率を、sgRNA標的部位(B2M遺伝子のエクソン1)の辺りの領域でインデルを示した%リードによって測定した。編集効率は、目的の領域のPCR増幅及び得られたアンプリコンについてのIluminaのMi-Seq NGSシステムを使用したシーケンシングにより決定した。1ステッププロトコルの結果を表8に示す。細胞を2回編集したとき(RE2)、全てのリードが多様なインデルを示したとおり、100%の編集効率が観察された。
【0466】
【表32】
【0467】
[0466] 1ステップ同時再プログラム化及び編集プロトコルから誘導された2つのiPSCクローンのB2Mアレルを更に分析した。結果は、この編集プロトコルによりヘテロ接合体クローン及びホモ接合体クローンの両方が生じたことを示している(データは示さず)。
【0468】
[0467] 2ステッププロトコルの結果を表9に示す。約3×10個のHDFに、RNAガイド型ヌクレアーゼとB2M遺伝子を標的化するsgRNAとを含むリボ核タンパク質(RNP)複合体をエレクトロポレーションした。編集した細胞を培養下で拡大し、C14 circRNAカクテルによる再プログラム化のため6ウェルプレートに3つの異なる密度(25K、50K及び75K)で播種した。溶解及び目的の領域のPCR増幅のためサブクローニングした16の異なる物理的に別個のクローンで(3つの異なるNeon(登録商標)パラメータについて)編集効率を決定した。IluminaのMi-Seq NGSシステムを使用してアンプリコンリードをシーケンシングした。表9に示されるとおり、3つ全てのエレクトロポレーションパラメータ条件で、B2M遺伝子の高い編集効率が生じた。
【0469】
【表33】
【0470】
[0468] 図9は、1ステップ同時再プログラム化及び編集プロトコルから誘導されたiPSCクローンの代表的な画像を提供する。これらのクローンは、典型的なiPSC形態を呈し、培養下で拡大することができる。RE1プロトコル(編集因子の1回の送達)から誘導されたクローンを上段に示す。RE2プロトコル(編集因子の2回の送達)から誘導されたクローンを下段に示す。
【0471】
[0469] これらのデータは、1ステップ(同時)及び2ステップ(順次)の両方の編集プロトコルが、編集された(B2M-/-又はB2M-/+)iPSCの生成に成功したことを実証する。1ステッププロトコルは、真の同時再プログラム化及び編集に相当する。編集因子(RNAガイド型ヌクレアーゼ+sgRNA)の1回のトランスフェクションにより、編集効率は50~70%となり、編集因子の2回のトランスフェクションにより、編集効率は約100%となった。2ステッププロトコルによってもまた、編集効率は約100%と極めて高くなった。
【0472】
実施例3:補助的因子のないCD34+細胞の浮遊状態でのcircRNA再プログラム化
[0470] CD34+細胞の浮遊状態でのC6 circRNAカクテル再プログラム化について、異なるトランスフェクションレジメンを試験する実験を実施した。このカクテルは、再プログラム化因子OCT4、SOX2、KLF4、cMYC、LIN28A、及びNANOG(OSKMLN)をコードするcircRNAのみを含有する。これらの実験の目標は、浮遊細胞を再プログラム化することの実現可能性を実証すること、及びcircRNAカクテルで再プログラム化するときE3/K3/B18R及びマイクロRNAは必要でないことを更に実証することであった。
【0473】
[0471] 図11は、これらの実験のタイミング及び実験計画の概略図を提供する。表10は、試験した条件の各々についての実験の詳細を提供する。C14及びC6カクテルに加えて、C11カクテル(OSKMLN再プログラム化因子をコードする6つのcircRNA+5つのマイクロRNAを含む)もまた試験した。
【0474】
【表34】
【0475】
[0472] 臍帯血由来のCD34+細胞に以下のカクテルのうちの1つをエレクトロポレーションすることにより、この細胞をiPSCへと再プログラム化した:
(a)C14カクテル-OCT4、SOX2、KLF4、cMYC、NANOG及びLIN28A再プログラム化因子(OSKMNL)を別個にコードするcircRNA+E3/K3/B18Rをコードする線状RNA+5つのmiR(miR302a、-b、-c、-d及びmiR367);
(b)C11カクテル-OCT4、SOX2、KLF4、cMYC、NANOG及びLIN28A再プログラム化因子(OSKMNL)を別個にコードする6つのcircRNA+5つのmiR(miR302a、-b、-c、-d及びmiR367);又は
(c)C6カクテル-OCT4、SOX2、KLF4、cMYC、NANOG及びLIN28A(OSKMNL)を別個にコードするcircRNA
【0476】
[0473] 6つの再プログラム化因子OSKMNLの化学量論は、3:1:1:1:1:1であった。
【0477】
[0474] 簡潔に言えば、臍帯血由来のCD34+細胞を、5つのサイトカイン-SCF、FLT3L、TPO、IL3及びIL6(各100ng/ml)を含有するSCGM培地(Cellgenix)において3日間(-3日目から0日目まで)拡大した。0日目、各条件につき0.5×10細胞をペレット化し、洗浄し、エレクトロポレーションによるトランスフェクションのため100~120μLの緩衝液に再懸濁した。RNAカクテルを導入するため、1600V、10msパルス幅、3パルスに設定したNeon(登録商標)エレクトロポレーターで細胞をエレクトロポレーションした。この実験の陰性対照には、1日1回で4日間実施したモックトランスフェクション(RNアーゼ、DNアーゼ不含水)、並びにトランスフェクトしていないCD34+細胞を含めた。両方の陰性対照とも、0.5×10個のCD34+細胞で実施した。トランスフェクション後に毎回、10μMのY27632を含有する完全SCGM培地に細胞を再懸濁し、24ウェル非接着性プレートに播種した。
【0478】
[0475] 最終回のトランスフェクションの翌日、対照(モックトランスフェクトした及びトランスフェクトしていないCD34+細胞)を含めた条件毎に、細胞数及び生存能力を決定した。細胞は全て、完全SCGM培地(サイトカイン含有)及び10μMのY27632が入ったiMatrix-511コートした12ウェル組織培養処理済みプレートにプレーティングした。細胞は、5%O(低酸素インキュベーター)で成長させた。
【0479】
[0476] 4~5日目、各ウェルから培地の半分(1ml)をサイトカイン不含の1ml SCGM培地+10μMのY27632培地に交換した。6日目、各ウェルから培地の半分(1ml)をサイトカイン不含の1ml SCGM培地及び10μMのY27632培地不含に交換した。7日目、各ウェルから培地の半分(1ml)を1mlのPSC培地(iM511上で成長させる細胞にはNutristem hPSC-XF又はVtn上で成長させる細胞にはStem fit培地)に交換した。8日目以降、iPSCコロニーをピッキングできる状態になるまで、各ウェルの培地全てを2mlのPSC培地に交換した。
【0480】
[0477] 図12A図12Cは、C14、C6、及びC11 circRNAカクテルを使用したCD34+細胞再プログラム化の形態学的進行を示す。4日目、ほとんどの条件から、小さい付着した細胞クラスターが観察された。7日目、全ての条件から、初期iPSC様コロニーが出現した。これらのクラスターは増殖及びサイズ成長し続け、iPSC形態を呈した。
【0481】
[0478] 図13Aは、Incucyteの分析モジュールにあるオブジェクトカウント機能を使用してセグメンテーションし及び同定した、C6(8pg)再プログラム化カクテルで再プログラム化したiPSCコロニーの6ウェルプレートの代表的な画像を提供する。図13Bは、異なるcircRNAカクテルによる再プログラム化時の初期(8日目~10日目)に観察される再プログラム化効率の比較を提供する。
【0482】
[0479] 試験した全ての条件で(C14、C11、C6及びC14+編集)、4~7日目までにCD34+細胞からiPSCコロニーが生じた。両方のトランスフェクションスケジュールとも(隔日で2回のトランスフェクション(図12)及び4日連日のトランスフェクション(データは示さず))、再プログラム化及びiPSCの生成が生じた。これらの条件の中でも、8pgのC6(2回の隔日トランスフェクション)によるとき、他の全ての条件と比較して最大数のiPSCコロニーが生じた(図13Bを参照のこと)。低い播種密度であっても(12.5K細胞もの低さ)、3日目にコロニーが観察された。8pgのC6カクテルでは、再プログラム化効率は約3%となった。
【0483】
実施例4:CD34+細胞におけるRNAエレクトロポレーションの最適化
[0480] CD34+細胞のエレクトロポレーションプロトコルを最適化する実験を実施した。線状mRNA対circRNA RNAのトランスフェクションを試験するとともに、Neon(登録商標)エレクトロポレーション(100μLチップ容積)とLonza Amaxa nucleofector(20μL容積)とを比較した。
【0484】
[0481] 実験的方法の概略図を図14に示す。簡潔に言えば、臍帯血由来のCD34+細胞を解凍し、5つのサイトカイン-SCF、FLT3L、TPO、IL-3及びIL-6(各100ng/ml)を含有するSCGM培地(Cellgenix)で3日間(-3日目から0日目まで)拡大培養した。0日目、CD34+細胞を収集し、洗浄し、Neon(登録商標)システム又はLonzaのNucleofactorを使用したエレクトロポレーションに好適な緩衝液中に再懸濁した。
【0485】
[0482] nGFP(0.25又は0.5ug)をコードする線状の修飾されていないmRNA(TriLink)又はcircRNA(修飾されていない)をNeon(登録商標)又はLonzaエレクトロポレーションシステムを使用してエレクトロポレーションした。トランスフェクションを2回、0日目及び2日目に実施した。Neon(登録商標)ベースのトランスフェクションについては、1×10細胞を洗浄し、Buffer Tに再懸濁し、Neon(登録商標)の100μlチップにより1600V、10msパルス幅、3パルスでエレクトロポレーションした。Lonzaベースのトランスフェクションについては、1×10細胞を洗浄し、製造者の指示どおり(4.5:1比)補足した20μlのP3 nucleofector溶液中に再懸濁した。Lonzaが推奨する浮遊細胞用のプログラムE0-100を使用して16ウェルキュベットにて細胞をエレクトロポレーションした。細胞を完全SCGM培地が入った非接着性プレートに直ちに移し替えた。
【0486】
[0483] エレクトロポレーション後1、2、3、4、及び5日目に100,000細胞を回収し、固定して、タンパク質発現を分析した。nGFPタンパク質発現はまた、浮遊状態の生細胞においてIncucyteリアルタイムイメージングプラットフォームも使用して測定し、並びに初回トランスフェクションの後にはフローサイトメトリーによっても(細胞レベルでのnGFP発現を測定するため)測定した。
【0487】
[0484] 図15は、IncuCyteイメージングにより決定したときのnGFPタンパク質発現の動態を示す。nGFPタンパク質レベルをIncucyteにより6時間毎に測定した。Lonza Amaxa nucleofectorではなく、Neon(登録商標)エレクトロポレーターでトランスフェクトしたRNA(線状又は環状)は、0日目の初回トランスフェクション後にnGFPタンパク質発現の有意なピークを生じた。2日目における2回目のトランスフェクション後、Neon(登録商標)エレクトロポレーターでトランスフェクトしたcircRNAのみが、nGFPタンパク質発現の高いピークを生じた。Neon(登録商標)エレクトロポレーターでトランスフェクトした線状mRNAは、2回目のトランスフェクション後に生じたピークは極めて低かった。Lonza Amaxa nucleofectorを使用すると、線状mRNA又はcircRNAのいずれのトランスフェクションも、何ら有意なnGFPタンパク質発現を生じなかった。
【0488】
[0485] 図16は、初回トランスフェクション翌日のnGFPタンパク質レベルのフローサイトメトリー分析を例証する。Neon(登録商標)エレクトロポレーターでRNAをトランスフェクトすると、Lonza Amaxa nucleofectorでRNAをトランスフェクトするのと比べてnGFPタンパク質レベルが高くなった。
【0489】
[0486] これらのデータは、少なくともこれらの条件下では、Neon(登録商標)システムを使用した臍帯血由来のCD34+細胞のエレクトロポレーションが、Lonzaの4D nucleoporatorによるエレクトロポレーションと比べて線状mRNA及びcircRNAの両方の送達においてより効率的であることを実証している。Neon(登録商標)システムを使用した2回のトランスフェクション後、circRNAでは、線状mRNAと比べてnGFPタンパク質レベルがはるかに高くなった(図15)。
【0490】
実施例5:レポータータンパク質発現により決定したときのRNアーゼR処理がcircRNA合成に及ぼす効果
[0487] RNアーゼR処理(circRNA作製過程の一部としての)が下流タンパク質発現及び/又は細胞生存能力に何らかの効果を及ぼすかどうかを決定する実験を実施した。
【0491】
[0488] 2つの細胞型-HDF及びCD34+細胞を使用した。nGFPをコードするcircRNAによるRNアーゼR処理を伴う又は伴わない単回トランスフェクションを実施した。nGFPをコードする線状mRNAを参照として使用した。トランスフェクション方法及び実験パラメータについては、表11に概要を示す。nGFP発現の読取りは、Incucyte(6時間毎)及びフローサイトメトリー(24時間毎、1~5日目)により実施した。
【0492】
【表35】
【0493】
[0489] 図17は、IncuCyteにより分析したときのRNAiMAX(50ng/24ウェル)によるRNAトランスフェクション後の線維芽細胞(HDF)のnGFPタンパク質発現の結果を提供する。線状mRNAをコードするnGFP、RNアーゼR処理を伴うcircRNAをコードするnGFP、又はRNアーゼR処理のないcircRNAをコードするnGFPの単回トランスフェクションをRNAiMAXを使用して実施した。トランスフェクション後、nGFPタンパク質レベルをIncuCyteにより6時間毎に測定した。線状mRNAトランスフェクションの結果、nGFPタンパク質が急激に増加して48時間前後にピークに達した後、続いて次の2日間で発現は急速に減少した。RNアーゼR処理を伴う及び伴わないcircRNAは、同様のタンパク質発現パターン-線状mRNAと比較して小幅なnGFPタンパク質レベルの増加を示し、これもまた48時間前後にピークに達した後、次の2日間で徐々に低下した。精製ステップとしてcircRNAをRNアーゼRで処理すると、circRNAプレップの純度が高くなり(約60%から約90%circRNAに、データは示さず)、ここで線維芽細胞でのタンパク質発現に対する効果は最小限であった。
【0494】
[0490] 図18は、IncuCyteにより分析したときのNeon(登録商標)(250ng/6ウェル)を使用したRNAトランスフェクション後のCD34細胞におけるnGFPタンパク質発現の結果を提供する。線状mRNAをコードするnGFP、RNアーゼR処理を伴うcircRNAをコードするnGFP、又はRNアーゼR処理を伴わないcircRNAをコードするnGFPをNeon(登録商標)エレクトロポレーターを使用してCD34+細胞にトランスフェクトした。1回のトランスフェクション後、nGFPタンパク質レベルをIncuCyteにより6時間毎に測定した。線維芽細胞での観察結果と対照的に、circRNAでは(RNアーゼR処理あり及びなしの両方で)、線状mRNAと比較してより高い、且つより長く続くタンパク質発現が生じた。RNアーゼR+circRNAとRNアーゼR-circRNAとの間のタンパク質レベルの差は最小限であった。
【0495】
実施例6:CD34+細胞を再プログラム化するための再プログラム化因子数の低減
[0491] c-Myc、Lin28A、及び/又はNanogが存在しないときのCD34+細胞の再プログラム化を評価する実験を実施した。また、C6カクテル(OCT4、SOX2、KLF4、c-MYC、NANOG及びLIN28A)の単回のトランスフェクションがCD34+細胞の再プログラム化に十分であったかどうかも評価した。circRNA再プログラム化因子による再プログラム化結果を線状mRNAカクテルと比較した。
【0496】
[0492] これらの実験で試験した条件について、表12に概要を示す。
【0497】
【表36】
【0498】
[0493] 試験した再プログラム化カクテルは、以下のとおりであった
(i)C6カクテル-OCT4、SOX2、KLF4、cMYC、NANOG及びLIN28A(OSKMNL)を別個にコードするcircRNA。これらの6つの再プログラム化因子OSKMNLの化学量論は、3:1:1:1:1:1である
(b)C5(cMyc脱落)-OCT4、SOX2、KLF4、NANOG及びLIN28A(OSKNL)を別個にコードするcircRNA。これらの5つの再プログラム化因子OSKNLの化学量論は、3:1:1:1:1:1である
(i)C4(Nanog及びLin28A脱落)-OCT4、SOX2、KLF4、及びcMYC(OSKM)を別個にコードするcircRNA。これらの4つの再プログラム化因子OSKMの化学量論は、3:1:1:1である
(ii)C3(cMyc、Nanog及びLin28A脱落)-OCT4、SOX2及びKLF4(OSK)を別個にコードするcircRNA。これらの3つの再プログラム化因子の化学量論は、3:1:1である。
(c)線状mRNA-Stemgent再プログラム化キットからのカクテル及びTrilinkから購入した線状mRNAを試験した-各々、6つの因子OCT4、SOX2、KLF4、cMYC、NANOG及びLIN28A(OSKMNL)をコードした
【0499】
[0494] Stemgent(S)、TriLink(L)、及びcircRNA(C)カクテル中の再プログラム化に使用した6つの因子は同一であることに留意されたい。しかしながら、これらの因子をコードするコンストラクトの総分子量は異なる。従って、このことが、トランスフェクション1回につき各細胞に送達される全RNA量に影響を与えた(表12に示されるとおり)。
【0500】
[0495] この実験プロトコルをまとめた概要を図19に示す。
【0501】
[0496] 簡潔に言えば、臍帯血由来のCD34+細胞を、5つのサイトカイン-SCF、FLT3L、TPO、IL3及びIL6(各100ng/mL)を含有するSCGM培地(Cellgenix)において3日間(-3日目から0日目まで)拡大した。0日目、各条件につき0.5×10細胞をペレット化し、洗浄し、エレクトロポレーションによるトランスフェクションのため100~120μLの緩衝液に再懸濁した。1600V、10msパルス幅、3パルスに設定したNeonエレクトロポレーターでエレクトロポレーションした。
【0502】
[0497] 陰性対照として、他のトランスフェクションと同時にモックトランスフェクション(RNアーゼ、DNアーゼ不含水による)を行った(表12の条件10)。トランスフェクトしなかったCD34+細胞もまた陰性対照として含めた(表12の条件11)。両方の対照とも、全ての試験条件と同じ数の細胞を有した(0.5×10細胞/条件)。この実験で使用した陽性対照は、Oct4、Sox2、Klf4、及びc-MycをコードするSeV Cytotune 2.0コード再プログラム化カクテルであった。
【0503】
[0498] トランスフェクション後に毎回、10μMのY27632を含有する完全SCGM培地に細胞を再懸濁し、24ウェル非接着性プレートに播種した。最終回のトランスフェクションを終えた当日(3日目)、対照(モック条件及びCD34単独条件)を含めた条件毎に細胞数及び生存能力を決定した。細胞は全て、完全SCGM培地(サイトカイン含有)及び10μMのY27632が入ったiMatrix-511コートした12ウェル組織培養処理済みプレートにプレーティングした。細胞は、5%O2(低酸素インキュベーター)で成長させた。
【0504】
[0499] 4~6日目、各ウェルから培地の半分(1mL)をサイトカイン不含の1mL SCGM培地に交換し、4日目までに限り培地に10μMのY27632を補足した。7日目、各ウェルから培地の半分(1mL)を1mLのPSC培地(iM511上で成長させる細胞にはNutristem hPSC-XF又はVtn上で成長させる細胞にはStemfit培地)に交換した。8日目以降、iPSCコロニーをピッキングできる状態になるまで、各6ウェルの培地全てを2mLのPSC培地に交換した。
【0505】
[0500] 図20Aに示されるとおり、C6カクテルでは、典型的なiPSC形態を有するコロニーを生じさせることに成功した。cMycをなおも含有したが、Nanog及びLin28Aは除外したC4カクテルでもまた、多数のiPSCコロニーが生じた(C6と同様)。重要なことに、両方ともc-Mycを除外したものであるC5及びC3カクテルによる再プログラム化では、再プログラム化効率がC6及びC4カクテルと比較して低いことが実証されたが、これらの条件でもiPSCコロニーは生じた。よって、C5及びC3培養物では、C6及びC4培養物と比較すると少ないコロニーが存在した。更なる結果を図20Bに示し、ここではC5、C4、及びC3カクテル全てがCD34+細胞を再プログラム化するが、c-Mycが存在しないと、コロニーが小さくなり、全体的な効率が下がるという観察を例証している。
【0506】
[0501] 図21は、C6 circRNAカクテルのトランスフェクションを1回のみ使用したCD34+再プログラム化の形態学的進行を示す。2つのRNA量-1細胞当たり8pg及び1細胞当たり3.2pgを試験した。1細胞当たり8pg RNAをトランスフェクトした培養物では、およそ8日目に接着細胞クラスターが出現し、サイズが増加し続けてiPSC様コロニーになった。しかしながら、1細胞当たり3.2pg RNAを1回トランスフェクトしたところ、CD34+細胞の再プログラム化の成功には至らなかった。これは、十分な濃度のRNAが使用されるのであれば、再プログラム化因子をコードするcircRNAの単回送達によってCD34+細胞を再プログラム化できることを実証している。
【0507】
[0502] 図22は、線状mRNAを使用したCD34+再プログラム化の形態学的進行を示す。ReproCell/StemgentのStemRNA第3世代再プログラム化キットからの再プログラム化RNAカクテル(S6、OSKMLN)及びTrilinkから購入した個別の線状mRNAを含む線状mRNAカクテル(L6、OSKMLN)を使用してCD34+細胞を再プログラム化した。0及び2日目に2回のトランスフェクションを行った。しかしながら、S6又はL6のいずれの培養物においても、iPSCコロニーは形成されなかった。C6カクテルで観察される形態学的進行とS6及びL6カクテルで観察される進行との間の比較を図23に提供する。
【0508】
[0503] 図24は、IncuCyteを使用して測定したCD34+細胞の再プログラム化効率を実証する。circRNAカクテルC6、C5、C4及びC3、並びにStemgent(S6)及びTrilink(L6)からの線状mRNAカクテルの再プログラム化効率を図24Aにおいて比較する。1回又は2回のトランスフェクションによるcircRNA C6カクテルを使用したCD34+細胞の再プログラム化を図24Bに示す。各トランスフェクションでの1細胞当たりのRNA量について2つの異なる量(3.2pg及び8pg)を試験した。高量のRNA量(8pg)によってのみ、C6カクテルによる1回のトランスフェクション後にiPSCが再プログラム化された ことに留意されたい。高量(8pg)及び低量(3.2pg)のRNA量は、2回のトランスフェクションでCD34+細胞を再プログラム化することが可能であった。
【0509】
[0504] 図25及び図26は、様々な濃度のC6カクテル(図25)及びC3、C4、C5カクテル(図26)でトランスフェクトした6ウェルプレートについての多能性マーカーTra-1-81(緑色)及びOCT4(赤色)に関する染色を示す。全ウェル画像をIncuCyteを使用して4倍でスキャンした。異なるウェルは、異なる播種密度を表している(左から右、上から下に:12.5k、25k、25k、50k、及び50k)。Tra-1-81-及びOct4ダブルポジティブ範囲が、推定iPSCコロニーである。
【0510】
[0505] これらの実験は、以下の結論を実証する:
【0511】
[0506] 1.circRNAを使用すると、因子数を最小限に抑えた再プログラム化が可能になる。c-Mycを除外すると(C5及びC3カクテル)、iPSCになるまでの形態学的進行速度並びに全体的な再プログラム化効率が、C6カクテル(OSKMLN)で観察される進行速度及び効率と比較して実に減少するが、これらのデータは、c-Mycが存在しなくてもCD34+細胞の再プログラム化が成功することを実証している。同様に、Nanog、Lin28及びc-Mycを除外すると(C3カクテル)、再プログラム化効率は減少したが、この減少は、C5カクテルと比較して重大というわけではなかった。換言すれば、C5及びC3は、その再プログラム化効率の点で比較的類似していた。たとえ効率が減少するとしても、C5及びC3の両方の培養物には、典型的なiPSC形態を有し且つ多能性マーカーを発現するコロニーが見出される可能性がある。
【0512】
[0507] 2.c-Mycを保持したままNanog及びLin28を除外すると(C4カクテル)、C6カクテルと同様の再プログラム化進行及び効率が示された。これは、circRNAが再プログラム化因子の送達に使用されるとき、CD34+細胞からiPSCへの再プログラム化にNanog及びLin28は必須でないことを示唆している。
【0513】
[0508] 3.c-Mycは、CD34+細胞における効率的なcircRNA再プログラム化を促進する。しかしながら、c-Mycが存在しないときにも、c-Mycを含有するカクテルと比較すると効率は下がるものの(iPSCコロニー形成速度が下がる、iPSCコロニー数が減る)、circRNA再プログラム化はなおも起こり得る(図20A及び図20Bを参照のこと)。
【0514】
[0509] 4.CD34+細胞は、C6カクテルの単回のトランスフェクションで再プログラム化することができる。これらの実験は、再プログラム化の成功を実現するためにRNA濃度が重要であることを実証している。1細胞当たり8pg RNAでは、再プログラム化は成功したが、1細胞当たり3.2pg RNAでは、iPSCコロニーは形成されなかった。
【0515】
[0510] 5.C6 circRNAカクテルに(モル量及び化学量論の点で)類似した線状mRNAカクテル(S6及びL6)は、類似のcircRNA再プログラム化カクテルに使用される同じトランスフェクション/エレクトロポレーションプロトコル(0日目及び2日目に2回のトランスフェクション)に従ったところ、CD34+細胞の再プログラム化に失敗した。これらの実験は、環状RNA再プログラム化がフットプリントフリーな浮遊培養再プログラム化に独特に好適であり、これらの環状RNAコンストラクトが、類似の線状mRNAコンストラクトと比較して有益な機能的効果を提供することを実証している。
【0516】
実施例7:長期培養におけるcircRNAで再プログラム化されたiPSCの特徴付け
[0511] 20代まで細胞継代した長期培養条件で前出の例に記載される方法により生成したiPSCを特徴付ける実験を実施した。実験プロトコルをまとめた概要を図27に示す。簡潔に言えば、circRNA再プログラム化カクテルの2回のエレクトロポレーション(0日目及び2日目)後、典型的には10~14日目の間にiPSCコロニーが出現し、18日目までにピッキングできる状態になった。個々のiPSCコロニーを手作業でピッキングし、特徴付けのため継代20代目までStemFit Basic 03培地で培養した。継代時、バーゼン液(Thermo Fisher)を使用してiPSCを剥がし、小さい凝集塊に解離させた。継代日にROCK阻害薬Y-27632を加え、翌日除去した。継代時には毎回、全てのクローンについて4日という一定の継代周期を可能にするような特定の密度でiPSCを播種した。形態、生存能力、集団倍加時間、及び3つの異なる胚葉への分化能力を判定した。これらの実験で各iPSCクローンに使用した再プログラム化条件を表13に規定する。
【0517】
【表37】
【0518】
[0512] 使用した様々なプロトコルの全体的な再プログラム化効率を表14に提供する。示されるとおり、C6、C4、及びC3カクテルでCD34+細胞の再プログラム化に成功することができ、C6及びC4でより高い再プログラム化効率が生み出された。
【0519】
【表38】
【0520】
[0513] 継代0代目の細胞を4~7日間成長させた後、継代した。後続の継代からの細胞は、4日毎に継代した。エレクトロポレーション後52~63日目の間に、その継代10代目のiPSC細胞培養物を回収し、染色し、OCT4、SSEA4、及びTRA 1-81発現に関してフローサイトメトリーにより分析した。この実験で使用した陽性対照は、Oct4、Sox2、Klf4、Myc、Nanog、Lin28及びSV40をコードするエピソームベクター由来の市販のiPSCであった(epiIPSC、A18945、Thermo Fisher)。293 T細胞を陰性染色対照として使用した。表15に示されるとおり、C14、C6、C4及びC3カクテルで再プログラム化すると、継代10代目で特徴付けたとき、OCT4、SSEA4、及びTRA 1-81(多能性マーカー)を発現するiPSCの割合が高い培養物につながった。
【0521】
【表39】
【0522】
[0514] 図28Aに示されるとおり、再プログラム化カクテルC14、C6、及びC4で混合ドナーCD34+細胞から誘導されたiPSCクローンは、典型的なiPSC形態のコロニーを生じ、これは継代20代目まで維持された。同様に、図28Bは、再プログラム化カクテルC6、C4、及びC3で単一ドナーCD34+細胞から誘導されたiPSCクローンが典型的なiPSC形態のコロニーを生じ、これが継代20代目まで維持されたことを示す。
【0523】
[0515] 更には、図29A及び図29Bに示されるとおり、iPSCクローンは、nucleocounter NC_200により分析したとき、長期培養での(即ち、20代の細胞継代にわたる)高い生存能力を呈した。「Alt」は、試料の表示に使用されるとき「隔日」を意味し、即ち上記に記載されるとおり、クローンが0日目及び2日目の2回のcircRNAエレクトロポレーションにより生成されたことを意味する。混合ドナー(図29A)臍帯血CD34+細胞から誘導されたiPSCクローンは、4代目~20代目までの毎回の細胞継代時に75~98%の生存率を維持し、ほとんどのクローンは90%を超える生存率を保った。2つのクローンが継代18代目におよそ85%の生存率であったことを除いては、単一ドナー(図29B)臍帯血CD34+細胞から誘導された全てのクローンが、4代目~18代目までの毎回の細胞継代時に一貫して90%を超える生存率であった。
【0524】
[0516] 加えて、図30A及び図30Bに示されるとおり、circRNA誘導iPSCは、長期培養にわたり、継代日毎の生存細胞数に基づき計算したとき一貫した集団倍加時間を呈した。混合ドナー(図30A)及び単一ドナー(図30B)臍帯血CD34+細胞から誘導されたiPSCクローンは、継代4代目から継代20代目まで、平均18~24時間で数が倍加したが、これは典型的なiPSC倍加時間と一致している。集団倍加時間を記録し始める継代数は、クローン間でばらつきがあったため(p5、p6及びp8から)、結果として図31Aで3群は平行線となった。混合ドナーCD34+細胞からのcircRNA誘導iPSCの累積集団倍化数は、図31Aに示されるとおり、一貫して継代20代目に60~80倍であった一方、単一ドナーCD34+細胞からのcircRNA誘導iPSCの累積集団倍化数は、図31Bに示されるとおり、一貫して継代20代目に70~80倍であった。
【0525】
[0517] その上、図32は、C14、C6、C4又はC3カクテルで再プログラム化した後、得られるiPSC細胞は、3つ全ての一次胚葉細胞層を生じることが可能であったことを示している。内胚葉はSOX17及びFOXA2を発現した。中胚葉はブラキュリ(T)を発現し、FOXA2を発現しなかった。外胚葉はPAX6を発現した。得られたiPSC培養物に関してRNAシーケンシング(RNA seq)解析もまた実施した。得られたiPSC培養物に関して3つの別個のRNA seqランを実施した。第1のシーケンシングランには、11個のVR1+VR2クローン並びにC14、C6、及びC4カクテルで再プログラム化した混合ドナーCD34+細胞からの9個のクローンからの試料が含まれた。第2及び第3のシーケンシングランには、各々、C6、C4及びC3カクテルで再プログラム化した単一ドナーCD34+細胞からの、デュプリケートでランを行った、10個のクローンからの試料が含まれ、臍帯血細胞を対照として使用した。セルネット(CELL net)解析を用いて試料をその調節シグネチャの発現に基づき細胞型に分類した。
【0526】
[0518] 全てのcircRNA誘導iPSCクローンが、CellNet解析により206個の遺伝子で構成されるESCの遺伝子調節ネットワーク(GRN)に基づき定義される胚性幹細胞(ESC)のシグネチャに対応する遺伝子シグネチャを有した。ESC GRNに関連するこれらの206個の遺伝子のうち、LIN28A、LIN28B、NANOG、POU5F1、及びSOX2の発現が全てのcircRNA誘導iPSC試料で高かった。主成分分析(PCA)及びピアソン相関により、バッチ効果はなかったことが確認され、C6、C4及びC3の間にクラスター形成は示されなかった(データは示さず)。
【0527】
[0519] まとめると、このデータは、本開示に記載されるとおりC14、C6、C4及びC3カクテルを使用して再プログラム化した、異なるドナーからのcircRNA再プログラム化iPSCが、複数回の細胞継代後にも、及び長期細胞培養条件下にあっても、その形態の点で安定しており、生存能力を保っていて、同様の速度で細胞分裂を起こし続け、ESCに極めて良く似た一貫した細胞アイデンティティを維持していることを示している。
【0528】
実施例8:circRNAで再プログラム化されたiPSCの遺伝的及び後成的安定性
[0520] 複数回の細胞継代及び長期培養後のcircRNAで再プログラム化したiPSCの遺伝的及び後成的安定性を評価する実験を実施した。circRNAで再プログラム化したiPSCクローン合計32個について、継代10代目でG分染法核型タイピングを実施し、32個のクローン中29個は正常核型であった。次に、これらの29個のクローンの核型を継代20代目で再び決定した。表16に要約するとおり、85%を超えるクローンが継代10代目及び20代目で正常核型を有したが、これは一般的に予想される割合である80%よりも高い。
【0529】
【表40】
【0530】
[0521] 発癌バリアントの検出のため、同じクローンに対して全ゲノムシーケンシングもまた実施した。表17にまとめるとおり、発癌TP53バリアントが見られたクローンは一つもなかった。更には、DNAメチル化の検出のため、同じクローンに対してバイサルファイトゲノムシーケンシングを実施し、表17に示されるとおり、全てのクローンが、親のDNAメチル化と一致するIGF2/H19インプリンティング制御領域にDNAメチル化を示した。
【0531】
【表41】
【0532】
[0522] まとめると、これらのデータは、circRNA誘導iPSCが長期インビトロ培養後に遺伝的にも後成的にも両方ともに安定していることを実証している。
【0533】
実施例9:circRNAによるiPSC再プログラム化の利点
[0523] 本明細書に提示する実験データに基づいて、circRNAによるiPSC再プログラム化の特徴を、センダイウイルス、エピソームベクター、及びmRNAによる再プログラム化など、他の再プログラム化方法と比較した。表18に、circRNAによるiPSC再プログラム化の利点をまとめる。circRNAによる再プログラム化は血液細胞に好適であり、ゲノム組込みのリスクがなく、iPSCにある外因的に導入された再プログラム化因子を除去する必要がなく(RNAは半減期が短いため、一たび送達されると、数日以内に速やかに除去される)、再プログラム化因子の組み合わせの一部としてp53を含める必要がなく、免疫回避を媒介するため追加の因子を使用する必要がなく、マイクロRNAを使用する必要がなく、及びmycを使用しない再プログラム化が可能であった。他の再プログラム化方法のうち、センダイウイルス及びエピソームベクターを使用すると、再プログラム化因子の除去が必要であった。センダイウイルス、エピソームベクター、及びmRNAを使用すると、効率的な再プログラム化のためにmycの使用が必要であった。更には、エピソームベクターを使用すると、ゲノム組込みのリスクがあった一方、mRNAの使用は、血液細胞の再プログラム化には好適でなく、免疫回避の媒介及び再プログラム化効率の亢進のために追加の因子を使用する必要があった。まとめると、エピソームベクター及びmRNAでのiPSC再プログラム化は複雑で法外に高く、一方、センダイウイルスでの再プログラム化は、眼及び中枢神経系の適応疾患における使用に制限されていることを示した。しかしながら、circRNAでのiPSC再プログラム化は、これらの制限を克服するのみならず、浮遊状態の血液細胞からの直接の再プログラム化もまた可能にし、従って優れた方法と見られる。
【0534】
【表42】
【0535】
[0524] 上記は本発明を例示するものであり、それを限定するものと解釈されるべきではない。本発明は、以下の特許請求の範囲により定義され、そこには特許請求の範囲の均等物が含まれる。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図3
図4
図5
図6A-6C】
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20A
図20B
図21
図22
図23
図24A
図24B
図25
図26
図27
図28A
図28B
図29A
図29B
図30A
図30B
図31A
図31B
図32
【配列表】
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【国際調査報告】