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特表2024-547058リン鉄スラグを用いたリン酸鉄の製造方法、リン酸鉄及びその応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】リン鉄スラグを用いたリン酸鉄の製造方法、リン酸鉄及びその応用
(51)【国際特許分類】
   C01B 25/37 20060101AFI20241219BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20241219BHJP
   C22B 3/12 20060101ALI20241219BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20241219BHJP
   C22B 3/46 20060101ALI20241219BHJP
   C22B 1/02 20060101ALI20241219BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20241219BHJP
   H01M 10/54 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C01B25/37 Z
C22B7/00 C
C22B3/12
C22B3/44 101A
C22B3/46
C22B1/02
H01M4/58
H01M10/54
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537008
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 CN2022138064
(87)【国際公開番号】W WO2024001059
(87)【国際公開日】2024-01-04
(31)【優先権主張番号】202210735393.5
(32)【優先日】2022-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524167304
【氏名又は名称】湖北虹潤高科新材料有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUBEI HONGRUN HIGH-TECH NEW MATERIALS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】North Of Binjiang 2nd Road And East Of North 4th Road,Gedian Development Zone Ezhou,Hubei 436070(CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】徐 善皖
(72)【発明者】
【氏名】李 錦
(72)【発明者】
【氏名】李 文杰
(72)【発明者】
【氏名】郭 米艶
【テーマコード(参考)】
4K001
5H031
5H050
【Fターム(参考)】
4K001AA10
4K001BA22
4K001CA11
4K001DB08
4K001DB18
4K001DB23
5H031AA00
5H031BB00
5H031BB01
5H031BB02
5H031BB09
5H031EE03
5H031HH03
5H031HH06
5H031RR02
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA12
5H050GA14
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA10
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
リン鉄スラグを用いたリン酸鉄の製造方法は、リン鉄スラグをアルカリ液に添加して、反応させた後に固液分離して、濾滓と、メタアルミン酸イオン及びリン酸イオンを含有する第1濾液とを得て、第1濾液に酸溶液を添加して、脱アルミニウム反応を行い、反応が終了した後に固液分離して、リン酸イオンを含有する第2濾液を得るステップと、濾滓と酸溶液とを混合して脱炭素反応を行ってから、固液分離して、炭素滓と、鉄イオン、チタンイオン及び銅イオンを含有する第3濾液とを得るステップと、第3濾液に金属鉄を添加して、脱チタン・脱銅反応を行ってから、固液分離して、第一鉄イオンを含有する第4濾液を得るステップと、酸化剤と、第2濾液と、第4濾液とを混合して反応させ、反応が終了した後、固液分離及び焼結を順に行って、リン酸鉄を得るステップと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン鉄スラグをアルカリ液に添加して、反応させた後に固液分離して、濾滓と、メタアルミン酸イオン及びリン酸イオンを含有する第1濾液とを得て、前記第1濾液に酸溶液を添加して、脱アルミニウム反応を行い、前記脱アルミニウム反応が終了した後に固液分離して、リン酸イオンを含有する第2濾液を得るステップ(a)と、
ステップ(a)で得られた前記濾滓と酸溶液とを混合して脱炭素反応を行ってから、固液分離して、炭素滓と、鉄イオン、チタンイオン及び銅イオンを含有する第3濾液とを得るステップ(b)と、
ステップ(b)で得られた前記第3濾液に金属鉄を添加して、脱チタン・脱銅反応を行ってから、固液分離して、第一鉄イオンを含有する第4濾液を得るステップ(c)と、
酸化剤と、ステップ(a)で得られた前記リン酸イオンを含有する第2濾液と、ステップ(c)で得られた前記第一鉄イオンを含有する第4濾液とを混合して反応させ、前記反応が終了した後、固液分離及び焼結を順に行って、リン酸鉄を得るステップ(d)と、を含み、
前記リン鉄スラグは、廃棄されたリン酸鉄リチウム電池からリチウムを抽出した後に得られた廃棄物を含み、前記リン鉄スラグは、リン酸鉄、水酸化アルミニウム、金属アルミニウム、炭素、金属銅、銅の酸化物及びチタンの酸化物を含む、リン鉄スラグを用いたリン酸鉄の製造方法。
【請求項2】
ステップ(a)では、前記リン鉄スラグと前記アルカリ液との質量比は、1:3~10であり、好ましくは、1:4~6であり、
好ましくは、ステップ(a)では、前記アルカリ液の質量分率は、8%~20%であり、
好ましくは、ステップ(a)では、前記アルカリ液は、水酸化ナトリウム溶液及び/又は水酸化カリウム溶液を含み、
好ましくは、ステップ(a)では、前記リン鉄スラグと前記アルカリ液との反応中に、混合物の温度は、30~80℃であり、前記反応の時間は、1~3時間である、請求項1に記載のリン鉄スラグを用いたリン酸鉄の製造方法。
【請求項3】
ステップ(a)では、前記酸溶液に用いられる酸は、硫酸、塩酸、リン酸及び硝酸のうちの少なくとも1種を含み、好ましくは、リン酸であり、
好ましくは、ステップ(a)では、前記酸溶液の質量分率は、30%~85%であり、
好ましくは、ステップ(a)では、混合物のpHが5.0~7.5、より好ましくは6.8~7.1になるまで前記酸溶液を添加する、請求項1に記載のリン鉄スラグを用いたリン酸鉄の製造方法。
【請求項4】
ステップ(b)では、前記濾滓中の鉄元素と前記酸溶液中の水素イオンとのモル比は、1:3.1~4であり、
好ましくは、ステップ(b)では、前記酸は、硫酸、塩酸、硝酸及びリン酸のうちの少なくとも1種を含み、
好ましくは、ステップ(b)では、前記酸溶液の質量モル濃度は、1~3mol/kgであり、
好ましくは、ステップ(b)では、前記脱炭素反応中の混合物の温度は、60~80℃であり、
好ましくは、ステップ(b)では、前記脱炭素反応の時間は、1~3時間であり、より好ましくは、1~1.5時間である、請求項1に記載のリン鉄スラグを用いたリン酸鉄の製造方法。
【請求項5】
ステップ(c)では、前記脱チタン・脱銅反応中の混合物の温度は、75~85℃であり、
好ましくは、ステップ(c)では、前記脱チタン・脱銅反応中の混合物のpHが2~4.2になると、前記固液分離を行う、請求項1に記載のリン鉄スラグを用いたリン酸鉄の製造方法。
【請求項6】
ステップ(d)では、前記酸化剤は、過酸化水素水、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム及び過硫酸カリウムのうちの少なくとも1種を含み、
好ましくは、ステップ(d)では、前記第4濾液中の第一鉄イオンと前記過酸化水素水中の過酸化水素とのモル比は、1:0.55~0.75である、請求項1に記載のリン鉄スラグを用いたリン酸鉄の製造方法。
【請求項7】
ステップ(d)では、前記第2濾液中のリン酸イオンと前記第4濾液中の第一鉄イオンとのモル比は、1.05~1.5:1である、請求項1に記載のリン鉄スラグを用いたリン酸鉄の製造方法。
【請求項8】
ステップ(d)では、前記反応中の混合物の温度は、80~95℃であり、
好ましくは、ステップ(d)では、前記反応の時間は、2~6時間であり、
好ましくは、ステップ(d)では、前記焼結の温度は、550~700℃である、請求項1に記載のリン鉄スラグを用いたリン酸鉄の製造方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のリン鉄スラグを用いたリン酸鉄の製造方法により製造され、
好ましくは、前記リン酸鉄の鉄/リン比は、0.96~0.98である、リン酸鉄。
【請求項10】
請求項9に記載のリン酸鉄を含有する、リチウムイオン電池の正極材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2022年6月27日に提出された、出願番号が202210735393.5で、発明の名称が「リン鉄スラグを用いたリン酸鉄の製造方法、リン酸鉄及びその応用」の中国特許出願の優先権を主張し、その開示内容は参照により本願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、リチウムイオン電池の技術分野に関し、具体的には、リン鉄スラグを用いたリン酸鉄の製造方法、リン酸鉄及びその応用に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、中国の新エネルギー自動車の発展に伴い、新エネルギー自動車の核心部品である動力電池の販売量が年々増加するが、それに伴って大量の廃棄電池も発生している。従来の物理的方法は、リン酸鉄リチウム廃棄物の性能を回復することが難しい。リン酸鉄リチウム電池の回収は、通常、付加価値の高いリチウム元素を優先的に抽出し、リチウムを抽出した後に生成した大量のリン鉄スラグは、一般的に産業廃棄物又はセメント工場の充填材として低価値で処理される。リン鉄スラグに含まれる大量の鉄元素及びリン元素が有効に回収利用されないことは、巨大な資源の浪費を引き起こす。したがって、プロセスが簡単で、制御しやすく、環境に優しいリン酸鉄の回収製造方法を開発することは、グリーン産業チェーンの構築に特に重要である。
【0004】
高い金属不純物の含有量は、現在、リン鉄スラグの回収利用に存在する主な問題であり、従来の回収方法は、主にアルミニウム不純物の除去に関与し、他の不純物元素、例えばチタン、銅などの不純物の除去はほとんど関与しない。
【0005】
例えば、特許文献CN113753873Aには、廃棄されたリン鉄スラグを用いた低アルミニウム不純物の花弁状リン酸鉄の製造方法が開示されており、リン鉄スラグ中のアルミニウム不純物とリン酸鉄の溶解度の違いに基づいて選択的にアルミニウムを除去し、該方法の系は、酸性系であり、アルミニウム不純物の除去のみに関し、リン鉄スラグ中のチタン不純物や銅不純物を除去することができない。製造されたリン酸鉄製品には、大量のチタン不純物と銅不純物が含まれており、一定の限定性がある。
【0006】
したがって、どのように低コストでリン鉄スラグ中の不純物金属元素を高度に除去して、低不純物含有量のリン酸鉄を製造するかは、重要な意義を有する。
【0007】
これに鑑みて、本発明を提案する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の第1目的は、リン鉄スラグを用いたリン酸鉄の製造方法を提供することであり、該方法は、リン鉄スラグ中のアルミニウム不純物、炭素不純物、チタン不純物及び銅不純物を効果的に除去することができ、製造されたリン酸鉄中の不純物の含有量が低く、さらに、該方法は、プロセスが簡単で、制御しやすく、コストが低いなどの利点を有する。
【0009】
本発明の第2目的は、不純物の含有量が低く、品質が高いリン酸鉄を提供することである。
【0010】
本発明の第3目的は、リチウムイオン電池の正極材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的を達成するために、以下の技術的手段を用いる。
【0012】
本発明は、以下のステップ(a)~ステップ(d)を含むリン鉄スラグを用いた(無水)リン酸鉄の製造方法を提供する。
【0013】
ステップ(a)では、リン鉄スラグをアルカリ液(アルカリを含有する水溶液)に添加して、前記リン鉄スラグ中の水酸化アルミニウムと金属アルミニウム(アルミニウム単体)を前記アルカリ液と反応させて溶解させ、前記リン鉄スラグ中の鉄を前記アルカリ液中の水酸化物イオンと反応させて水酸化鉄沈殿を生成する。反応が終了した後、固液分離して、濾滓と、(本発明に記載の含有は、いずれも「含む」という意味を指し、他のイオン又は成分を含む可能性がある)メタアルミン酸イオン及びリン酸イオンを含有する第1濾液とを得る。
【0014】
ここで、前記リン鉄スラグは、廃棄されたリン酸鉄リチウム電池からリチウムを抽出した(リチウム元素を抽出した)後に得られた廃棄物を含み、前記リン鉄スラグは、リン酸鉄、水酸化アルミニウム、金属アルミニウム、炭素、金属銅、銅の酸化物及びチタンの酸化物を含む。
【0015】
ここで、前記濾滓の主な成分は、水酸化鉄、炭素(単体)、金属銅(銅単体)、銅の酸化物及びチタンの酸化物を含む。
【0016】
前記第1濾液中のアニオンは、メタアルミン酸イオン、リン酸イオン及び水酸化物イオンを含む。
【0017】
該ステップ(a)における反応原理は、以下のとおりである。
FePO+3OH→Fe(OH)+PO 3-
Al(OH)+OH→AlO +2HO;
2Al+2HO+2OH→2AlO +3H↑。
【0018】
該ステップにより、リン鉄スラグ中のリン元素及びアルミニウム元素と、鉄元素、チタン元素、銅元素及び炭素元素との分離を実現することができ、後続の不純物除去及びリン酸鉄の合成反応を容易にする。
【0019】
その後、メタアルミン酸イオン及びリン酸イオンを含有する前記第1濾液に酸溶液(酸を含有する水溶液)を添加して脱アルミニウム反応を行い、前記第1濾液中のメタアルミン酸イオンと前記酸溶液中の水素イオンとが反応して水酸化アルミニウム沈殿を生成する。前記脱アルミニウム反応が終了した後、固液分離して、リン酸イオンを含有する第2濾液を得て、使用に備える。
【0020】
ここで、リン酸イオンを含有する前記第2濾液を得るとともに、水酸化アルミニウム濾滓も得る。該ステップにおいて、アルミニウム不純物は、水酸化アルミニウム沈殿として析出し、固液分離後に脱アルミニウムの目的が達成される。
【0021】
該ステップにおける反応原理は、HO+AlO +H→Al(OH)↓を含む。
【0022】
前記第2濾液中のアニオンは、主にリン酸イオンである。
【0023】
ステップ(b)では、ステップ(a)で得られた前記濾滓と酸溶液とを混合して脱炭素反応を行ってから、固液分離して、炭素滓(主な成分は、炭素単体及び銅単体である)と、鉄イオン、チタンイオン及び銅イオンを含有する第3濾液とを得る。
【0024】
ここで、前記濾滓中の水酸化鉄沈殿と銅の酸化物は、酸と反応して溶解し、鉄イオンと銅イオンを生成する。同時に、前記濾滓中のチタンの酸化物は、一部が酸溶液に溶解し、他の一部(未溶解のチタンの酸化物)が炭素単体及び銅単体とともに沈殿として析出し、固液分離後に炭素と鉄、チタンの分離を実現することができる。
【0025】
ステップ(c)では、ステップ(b)で得られた前記鉄イオン、チタンイオン及び銅イオンを含有する第3濾液に金属鉄(鉄単体、例えば、鉄粉又は鉄皮)を添加して、脱チタン・脱銅反応を行ってから、固液分離して、第一鉄イオンを含有する第4濾液を得る。
【0026】
ここで、第一鉄イオンを含有する前記第4濾液を得るとともに、主な成分が金属銅(銅単体)とメタチタン酸(TiO(OH)、水和二酸化チタンとも呼ばれる)である混合濾滓も得る。
【0027】
該ステップ(c)における反応原理は、以下を含む。
Fe+Cu2+→Cu+Fe2+
Fe+2H→Fe2++H↑;
Ti4++3HO→TiO(OH)+4H
【0028】
該ステップ(c)では、金属鉄を添加することにより、第3濾液中の残留酸を中和し、第3濾液のpH値を高めるとともに、第3濾液中の第一鉄イオンの含有量を高めることができる。また、チタン不純物に対して、加水分解によりメタチタン酸沈殿を形成して、脱チタンの目的を達成し、銅不純物に対して、置換反応を行うことにより脱銅の目的を達成する。したがって、ステップ(c)における固液分離は、銅不純物及びチタン不純物と鉄との分離を実現することができる。
【0029】
本発明のいくつかの具体的な実施形態において、ステップ(c)では、反応が完全になるように過剰の金属鉄を添加してもよく、このとき、上記混合濾滓には、少量の金属鉄がさらに含まれる。
【0030】
ステップ(d)では、酸化剤と、ステップ(a)で得られた前記リン酸イオンを含有する第2濾液と、ステップ(c)で得られた前記第一鉄イオンを含有する第4濾液とを混合して反応させ、前記反応が終了した後、固液分離及び焼結を順に行って、リン酸鉄を得る。
【0031】
ここで、前記リン酸鉄は、無水リン酸鉄である。
【0032】
該ステップ(d)における反応原理は、以下を含む。
第一鉄イオンと酸化剤とが反応して第二鉄イオンを生成し、酸化剤が過酸化水素水である場合、反応式は、2Fe2++H+2H→2Fe3++2HO;
Fe3++PO 3-+2HO→FePO・2HO;
FePO・2HO→FePO+2HOである。
【0033】
本発明は、廃棄されたリン鉄スラグを原料とし、コストが低く、資源の浪費を避け、環境に優しいなどの利点を有する。
【0034】
また、該方法は、リン鉄スラグ中のアルミニウム不純物、炭素不純物、チタン不純物及び銅不純物を効果的に除去することができ、脱アルミニウム、脱炭素、脱チタン及び脱銅を行った後、製造されたリン酸鉄中の不純物の含有量が低く、品質が高く、付加価値が高く、該リン酸鉄は、動力用リン酸鉄リチウムの前駆体とすることができる。
【0035】
好ましくは、ステップ(a)では、前記リン鉄スラグと前記アルカリ液との質量比は、1:3~10であり、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10のうちのいずれか1つのポイント値又はいずれか2つの間の範囲値を含むが、これらに限定されず、より好ましくは、1:4~6である。
【0036】
好ましくは、ステップ(a)では、前記アルカリ液の質量分率(アルカリを含有する水溶液中のアルカリの質量分率)は、8%~20%であり、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%のうちのいずれか1つのポイント値又はいずれか2つの間の範囲値を含むが、これらに限定されない。
【0037】
好ましくは、ステップ(a)では、前記アルカリ液は、水酸化ナトリウム溶液及び/又は水酸化カリウム溶液を含む。
【0038】
好ましくは、ステップ(a)では、前記リン鉄スラグと前記アルカリ液との反応中に、混合物の温度は、30~80℃であり、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、78℃のうちのいずれか1つのポイント値又はいずれか2つの間の範囲値を含むが、これらに限定されず、前記反応の時間は、1~3時間であり、1.5時間、2時間、2.5時間のうちのいずれか1つのポイント値又はいずれか2つの間の範囲値を含むが、これらに限定されない。
【0039】
上記パラメータを用いることにより、水酸化アルミニウムと金属アルミニウムの溶解を促進することに有利であり、脱アルミニウム効率の向上に有利である。
【0040】
好ましくは、ステップ(a)では、前記酸溶液に用いられる酸は、硫酸、塩酸、リン酸及び硝酸のうちの少なくとも1種を含み、より好ましくは、リン酸である。
【0041】
ここで、リン酸中のリン酸イオンは、後続のリン酸鉄の合成反応の原料とすることができる。
【0042】
好ましくは、ステップ(a)では、前記酸溶液の質量分率(酸を含有する水溶液中の酸の質量分率)は、30%~85%であり、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%のうちのいずれか1つのポイント値又はいずれか2つの間の範囲値を含むが、これらに限定されない。
【0043】
好ましくは、ステップ(a)では、酸溶液を混合物のpHが5.0~7.5になるまで添加し、このpHは、5.2、5.5、5.8、6.0、6.3、6.5、6.8、7.0、7.2のうちのいずれか1つのスポット値又はいずれか2つの間の範囲値を含むが、これらに限定されず、より好ましくは、6.8~7.1である。
【0044】
本発明のいくつかの具体的な実施形態において、ステップ(a)では、前記脱アルミニウム反応中の混合物の温度は、15~80℃であり、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃のうちのいずれか1つのポイント値又はいずれか2つの間の範囲値を含むが、これらに限定されない。
【0045】
上記パラメータを用いることにより、水酸化アルミニウムの沈殿を促進することに有利であり、脱アルミニウム効果を向上させる。
【0046】
好ましくは、ステップ(b)では、前記濾滓中の鉄元素と前記酸溶液中の水素イオンとのモル比は、1:3.1~4であり、1:3.2、1:3.3、1:3.4、1:3.5、1:3.6、1:3.7、1:3.8、1:3.9のうちのいずれか1つのポイント値又はいずれか2つの間の範囲値を含むが、これらに限定されない。
【0047】
好ましくは、ステップ(b)では、前記酸は、硫酸、塩酸、硝酸及びリン酸のうちの少なくとも1種を含み、より好ましくは、硫酸、塩酸及び硝酸のうちの少なくとも1種であり、この3種の酸は、コストがより低い。
【0048】
好ましくは、ステップ(b)では、前記酸溶液の質量モル濃度(酸を含有する水溶液中の酸の質量モル濃度)は、1~3mol/kgであり、1.3mol/kg、1.5mol/kg、1.8mol/kg、2.0mol/kg、2.3mol/kg、2.5mol/kg、2.8mol/kg、3mol/kgのうちのいずれか1つのポイント値又はいずれか2つの間の範囲値を含むが、これらに限定されない。
【0049】
好ましくは、ステップ(b)では、前記脱炭素反応中の混合物の温度は、60~80℃であり、63℃、65℃、68℃、70℃、73℃、75℃、78℃のうちのいずれか1つのポイント値又はいずれか2つの間の範囲値を含むが、これらに限定されない。
【0050】
好ましくは、ステップ(b)では、前記脱炭素反応の時間は、1~3時間であり、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間のうちのいずれか1つのポイント値又はいずれか2つの間の範囲値を含むが、これらに限定されず、より好ましくは、1~1.5時間である。
【0051】
上記パラメータを用いることにより、炭素と鉄、チタン、銅との分離に有利である。
【0052】
好ましくは、ステップ(c)では、前記脱チタン・脱銅反応中の混合物の温度は、75~85℃であり、76℃、77℃、78℃、79℃、80℃、82℃、83℃、84℃のうちのいずれか1つのポイント値又はいずれか2つの間の範囲値を含むが、これらに限定されない。
【0053】
好ましくは、ステップ(c)では、前記脱チタン・脱銅反応中の混合物のpHが2~4.2になると、前記固液分離を行う。前記pHは、2.3、2.5、2.8、3.0、3.2、3.5、3.7、3.9のうちのいずれか1つのポイント値又はいずれか2つの間の範囲値を含むが、これらに限定されない。
【0054】
上記パラメータを用いることにより、銅不純物及びチタン不純物と鉄との分離の実現に有利である。
【0055】
好ましくは、ステップ(d)では、前記酸化剤は、過酸化水素水、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム及び過硫酸カリウムのうちの少なくとも1種を含み、より好ましくは、過酸化水素水である。
【0056】
好ましくは、ステップ(d)では、前記第4濾液中の第一鉄イオンと前記過酸化水素水中の過酸化水素とのモル比は、1:0.55~0.75であり、1:0.58、1:0.6、1:0.62、1:0.65、1:0.68、1:0.7、1:0.73のうちのいずれか1つのポイント値又はいずれか2つの間の範囲値を含むが、これらに限定されない。該モル比を用いることにより、第一鉄イオンを完全に酸化させるとともに、コストを節約することができる。
【0057】
好ましくは、ステップ(d)では、前記第2濾液中のリン酸イオンと前記第4濾液中の第一鉄イオンとのモル比は、1.05~1.5:1であり、1.1:1、1.15:1、1.2:1、1.25:1、1.3:1、1.35:1、1.4:1、1.45:1のうちのいずれか1つのポイント値又はいずれか2つの間の範囲値を含むが、これらに限定されない。
【0058】
好ましくは、ステップ(d)では、前記反応中の混合物の温度は、80~95℃であり、83℃、85℃、88℃、90℃、93℃のうちのいずれか1つのポイント値又はいずれか2つの間の範囲値を含むが、これらに限定されない。
【0059】
上記モル比及び反応温度を用いることにより、より品質の高いリン酸鉄を得ることに有利である。
【0060】
好ましくは、ステップ(d)では、前記反応の時間は、2~6時間であり、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間のうちのいずれか1つのポイント値又はいずれか2つの間の範囲値を含むが、これらに限定されない。
【0061】
好ましくは、ステップ(d)では、前記焼結の温度は、550~700℃であり、570℃、590℃、600℃、620℃、650℃、680℃、700℃のうちのいずれか1つのポイント値又はいずれか2つの間の範囲値を含むが、これらに限定されない。
【0062】
ここで、焼結の目的は、リン酸鉄中の結晶水を除去することである。焼結前に、得られた生成物は、リン酸鉄二水和物であり、焼結により高温脱水を行って無水リン酸鉄が得られる。
【0063】
本発明のいくつかの具体的な実施形態において、前記固液分離後、前記焼結前に、前記固液分離後の固体材料を洗浄及び乾燥するステップをさらに含む。
【0064】
本発明は、上記リン鉄スラグを用いたリン酸鉄の製造方法により製造されるリン酸鉄をさらに提供する。
【0065】
該リン酸鉄中の不純物の含有量が低く、品質が高く、かつそのコストが低い。
【0066】
好ましくは、前記リン酸鉄の鉄/リン比は、0.96~0.98であり、0.963、0.964、0.965、0968、097、0.972、0.974、0975、0.978のうちのいずれか1つのポイント値又はいずれか2つの間の範囲値を含むが、これらに限定されない。
【0067】
本発明は、上記リン酸鉄を含有するリチウムイオン電池の正極材料をさらに提供する。
【0068】
上記リン酸鉄を用いることにより、コストを低くするように制御するとともに、低不純物含有量のリン酸鉄は、リチウムイオン電池の電気化学性能の向上に有利である。
【発明の効果】
【0069】
従来技術に比べて、本発明の効果は、以下のとおりである。
(1)本発明に係るリン鉄スラグを用いたリン酸鉄の製造方法は、一連の不純物除去操作により、リン鉄スラグ中のアルミニウム不純物、炭素不純物、チタン不純物及び銅不純物を効果的に除去することができ、製造されたリン酸鉄中の不純物の含有量が低い。
(2)本発明に係るリン鉄スラグを用いたリン酸鉄の製造方法は、廃棄されたリン鉄スラグを原料とし、コストが低く、資源の浪費を避け、環境に優しいなどの利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
以下、本発明の具体的な実施形態又は従来技術における技術的解決手段をより明確に説明するために、具体的な実施形態又は従来技術の説明に必要な図面を簡単に紹介する。明らかに、以下の説明における図面は、本発明のいくつかの実施形態に過ぎず、当業者にとっては、創造的な労働をしない前提で、さらにこれらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
図1】本発明の実施例1に係る無水リン酸鉄のXRDチャートである。
図2】本発明の実施例1に係る無水リン酸鉄の50000倍拡大のSEM図である。
図3】本発明の実施例1に係る無水リン酸鉄の200000倍拡大のSEM図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下、図面及び具体的な実施形態を参照しながら、本発明の技術的手段を明確かつ完全に説明するが、当業者であれば、以下に説明する実施例は、本発明の一部の実施例であり、全部の実施例ではなく、本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではないと理解すべきである。本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的な労働をせずに得られる全ての他の実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属する。実施例において具体的な条件を明記されていないものは、通常の条件又はメーカーが提案する条件に従う。使用される試薬又は機器のメーカーが明記されていないものは、いずれも市場から獲得できる通常の製品である。
【0072】
本発明の以下の各実施例及び各比較例に係るリン鉄スラグは、いずれも廃棄されたリン酸鉄リチウム電池からリチウムを抽出した後に得られた廃棄物であり、リン鉄スラグの主な成分は、リン酸鉄、水酸化アルミニウム、金属アルミニウム、炭素、金属銅、銅の酸化物及びチタンの酸化物を含む。
実施例1
【0073】
本実施例に係るリン鉄スラグを用いたリン酸鉄の製造方法は、以下のステップ(1)~(5)を含む。
【0074】
ステップ(1)では、100gのリン鉄スラグを取り、質量分率が14%のNaOH溶液に入れて、スラリー化して分散させて、反応させ、反応温度が50℃であり、リン鉄スラグとNaOH溶液との質量比が1:3であり、2時間反応させた後、固液分離して、濾滓と、メタアルミン酸イオン及びリン酸イオンを含有する第1濾液とを得た。
【0075】
ステップ(2)では、ステップ(1)で得られたメタアルミン酸イオン及びリン酸イオンを含有する第1濾液に質量分率が85%のリン酸を添加して、混合物のpH値を7.0±0.1に調整して、脱アルミニウム反応を行い、反応終了後に固液分離して、水酸化アルミニウムの濾滓、及びリン酸イオンを含有する第2濾液(使用に備える)を得た。
【0076】
ステップ(3)では、ステップ(1)で得られた濾滓を質量モル濃度が3mol/kgの硫酸溶液に添加して溶解して、脱炭素反応を行い、濾滓中の鉄元素と硫酸溶液中の水素イオンとのモル比は、1:3.6であり、反応温度は、80℃であり、1時間反応させた後、固液分離して、炭素滓と、鉄イオン、チタンイオン及び銅イオンを含有する第3濾液とを得た。
【0077】
ステップ(4)では、ステップ(3)で得られた鉄イオン、チタンイオン及び銅イオンを含有する第3濾液に鉄粉を添加して、脱チタン・脱銅反応を行い、反応温度は、80℃であり、混合物のpH値が4.0±0.2になるまで反応させ、固液分離して、第一鉄イオンを含有する第4濾液と、金属銅及びメタチタン酸を含有する混合濾滓とを得た。
【0078】
ステップ(5)では、過酸化水素水と、ステップ(2)で得られたリン酸イオンを含有する第2濾液とを均一に混合してリン酸塩溶液を調製した後、該リン酸塩溶液をステップ(4)で得られた第一鉄イオンを含有する第4濾液に滴下して、リン酸鉄を合成する反応を行い、第2濾液中のリン酸イオンと第4濾液中の第一鉄イオンとのモル比は、1.1:1であり、第4濾液中の第一鉄イオンと前記過酸化水素水中の過酸化水素とのモル比は、1:0.6であり、反応温度は、95℃であり、3時間反応させてから、固液分離し、そして、順に洗浄、乾燥、焼結(焼結温度が600℃)を行って、鉄/リン比が0.9637の無水リン酸鉄を得た。
【0079】
ステップ(1)で得られた、メタアルミン酸イオンとリン酸イオンを含有する第1濾液(即ち、脱アルミニウム前)、及びステップ(2)で得られたリン酸イオンを含有する第2濾液(即ち、脱アルミニウム後)中のリン元素及びアルミニウム元素の含有量の検出結果を以下の表1に示す。
【0080】
表1 脱アルミニウム前後のリン元素及びアルミニウム元素の含有量の比較
【表1】
【0081】
ステップ(3)で得られた鉄イオン、チタンイオン及び銅イオンを含有する第3濾液(即ち、銅、チタンを除去する前)、及びステップ(4)で得られた第一鉄イオンを含有する第4濾液(即ち、銅、チタンを除去した後)中の銅元素及びチタン元素の含有量の検出結果を以下の表2に示す。
【0082】
表2 銅、チタン除去前後の銅元素及びチタン元素の含有量の比較
【表2】
【0083】
ステップ(5)で得られた無水リン酸鉄中の不純物元素(金属元素)の含有量の検出結果を以下の表3に示す。
【0084】
表3 無水リン酸鉄中の不純物元素の含有量
【表3】
【0085】
表3の検出結果から分かるように、無水リン酸鉄中の全ての不純物元素の含有量は、いずれも100ppm未満である。
【0086】
ステップ(5)で得られた無水リン酸鉄に対してXRD検出を行い、結果を図1に示す。図1から分かるように、本発明で得られた無水リン酸鉄は、FePO(JCPDFカード番号:29-0715)であり、表3の検出された不純物元素の種類及び含有量により計算すると、本実施例で製造されたリン酸鉄の純度は、99.74%であり、不純物の総含有量は、0.26%である。
【0087】
ステップ(5)で得られた無水リン酸鉄に対してSEM検出を行い、結果を図2及び図3に示す。図2は、リン酸鉄を50000倍に拡大したSEM図であり、図3は、リン酸鉄を200000倍に拡大したSEM図であり、本発明で得られた無水リン酸鉄のミクロ構造は、ナノシート構造であり、一次粒子の粒径は、約400nmであることが分かる。
実施例2
【0088】
本実施例に係るリン鉄スラグを用いたリン酸鉄の製造方法は、以下のステップ(1)~(5)を含む。
【0089】
ステップ(1)では、100gのリン鉄スラグを取り、質量分率が8%のKOH溶液に入れて、スラリー化して分散させて、反応させ、反応温度が35℃であり、リン鉄スラグとKOH溶液との質量比が1:10であり、3時間反応させた後、固液分離して、濾滓と、メタアルミン酸イオン及びリン酸イオンを含有する第1濾液とを得た。
【0090】
ステップ(2)では、ステップ(1)で得られたメタアルミン酸イオン及びリン酸イオンを含有する第1濾液に質量分率が40%の硫酸を添加して、混合物のpH値を6.5±0.1に調整して、脱アルミニウム反応を行い、反応終了後に固液分離して、水酸化アルミニウムの濾滓、及びリン酸イオンを含有する第2濾液(使用に備える)を得た。
【0091】
ステップ(3)では、ステップ(1)で得られた濾滓を質量モル濃度が1mol/kgの硫酸溶液に添加して溶解して、脱炭素反応を行い、濾滓中の鉄元素と硫酸溶液中の水素イオンとのモル比は、1:3.1であり、反応温度は、60℃であり、3時間反応させた後、固液分離して、炭素滓と、鉄イオン、チタンイオン及び銅イオンを含有する第3濾液とを得た。
【0092】
ステップ(4)では、ステップ(3)で得られた鉄イオン、チタンイオン及び銅イオンを含有する第3濾液に鉄粉を添加して、脱チタン・脱銅反応を行い、反応温度は、75℃であり、混合物のpH値が2.5±0.2になるまで反応させ、固液分離して、第一鉄イオンを含有する第4濾液と、金属銅及びメタチタン酸を含有する混合濾滓とを得た。
【0093】
ステップ(5)では、過酸化水素水と、ステップ(2)で得られたリン酸イオンを含有する第2濾液とを均一に混合してリン酸塩溶液を調製した後、該リン酸塩溶液をステップ(4)で得られた第一鉄イオンを含有する第4濾液に滴下して、リン酸鉄を合成する反応を行い、第2濾液中のリン酸イオンと第4濾液中の第一鉄イオンとのモル比は、1.5:1であり、第4濾液中の第一鉄イオンと前記過酸化水素水中の過酸化水素とのモル比は、1:0.55であり、反応温度は、80℃であり、4時間反応させてから、固液分離し、そして、順に洗浄、乾燥、焼結(焼結温度が700℃)を行って、鉄/リン比が0.9701の無水リン酸鉄を得た。
【0094】
検出及び計算により、該実施例のステップ(2)におけるAl除去率は、96.01%であり、ステップ(4)におけるCu除去率は、99.95%であり、ステップ(4)におけるTi除去率は、99.02%である。また、ステップ(5)で得られた無水リン酸鉄中の全ての不純物元素の含有量は、100ppm未満である。
実施例3
【0095】
本実施例に係るリン鉄スラグを用いたリン酸鉄の製造方法は、以下のステップ(1)~(5)を含む。
【0096】
ステップ(1)では、100gのリン鉄スラグを取り、質量分率が20%のNaOH溶液に入れて、スラリー化して分散させて、反応させ、反応温度が80℃であり、リン鉄スラグとNaOH溶液との質量比が1:5であり、1時間反応させた後、固液分離して、濾滓と、メタアルミン酸イオン及びリン酸イオンを含有する第1濾液とを得た。
【0097】
ステップ(2)では、ステップ(1)で得られたメタアルミン酸イオン及びリン酸イオンを含有する第1濾液に質量分率が60%の塩酸を添加して、混合物のpH値を5.5±0.1に調整して、脱アルミニウム反応を行い、反応終了後に固液分離して、水酸化アルミニウムの濾滓、及びリン酸イオンを含有する第2濾液(使用に備える)を得た。
【0098】
ステップ(3)では、ステップ(1)で得られた濾滓を質量モル濃度が2mol/kgの硝酸溶液に添加して溶解して、脱炭素反応を行い、濾滓中の鉄元素と硝酸溶液中の水素イオンとのモル比は、1:4であり、反応温度は、70℃であり、1.5時間反応させた後、固液分離して、炭素滓と、鉄イオン、チタンイオン及び銅イオンを含有する第3濾液とを得た。
【0099】
ステップ(4)では、ステップ(3)で得られた鉄イオン、チタンイオン及び銅イオンを含有する第3濾液に鉄粉を添加して、脱チタン・脱銅反応を行い、反応温度は、85℃であり、混合物のpH値が3.0±0.2になるまで反応させ、固液分離して、第一鉄イオンを含有する第4濾液と、金属銅及びメタチタン酸を含有する混合濾滓とを得た。
【0100】
ステップ(5)では、過酸化水素水と、ステップ(2)で得られたリン酸イオンを含有する第2濾液とを均一に混合してリン酸塩溶液を調製した後、該リン酸塩溶液をステップ(4)で得られた第一鉄イオンを含有する第4濾液に滴下して、リン酸鉄を合成する反応を行い、第2濾液中のリン酸イオンと第4濾液中の第一鉄イオンとのモル比は、1.3:1であり、第4濾液中の第一鉄イオンと前記過酸化水素水中の過酸化水素とのモル比は、1:0.75であり、反応温度は、90℃であり、4時間反応させてから、固液分離し、そして、順に洗浄、乾燥、焼結(焼結温度が550℃)を行って、鉄/リン比が0.9723の無水リン酸鉄を得た。
【0101】
検出及び計算により、該実施例のステップ(2)におけるAl除去率は、95.72%であり、ステップ(4)におけるCu除去率は、99.96%であり、ステップ(4)におけるTi除去率は、98.21%である。また、ステップ(5)で得られた無水リン酸鉄中の全ての不純物元素の含有量は、100ppm未満である。
比較例1
【0102】
本比較例に係るリン鉄スラグを用いたリン酸鉄の製造方法は、実施例1とほぼ同じであるが、ステップ(2)において、混合物のpH値を4.0±0.1に調整する点のみで実施例1と異なる。
【0103】
検出及び計算により、該比較例のステップ(2)におけるAl除去率は、42.32%であり、製造されたリン酸鉄の純度は、98.56%であり、不純物元素の総量は、1.44%である。
比較例2
【0104】
本比較例に係るリン鉄スラグを用いたリン酸鉄の製造方法は、実施例1とほぼ同じであるが、ステップ(4)において、反応温度を50℃に変える点のみで実施例1と異なる。
【0105】
検出及び計算により、該比較例のステップ(4)におけるCu除去率は、95.45%であり、Ti除去率は、64.20%であり、製造されたリン酸鉄の純度は、99.45%であり、不純物元素の総量は、0.55%である。
【0106】
具体的な実施例を参照しながら本発明を説明・記述したが、以上の各実施例は、本発明の技術的手段を説明するためのものに過ぎず、制限するものではなく、当業者であれば、本発明の精神と範囲を逸脱せずに、前述した各実施例に記載された技術的手段を修正し、或いはそのうちの一部又は全ての技術的特徴に対して等価の代替を行うことができることを理解されたい。これらの修正及び代替は、対応する技術的手段の本質を本発明の各実施例の技術的手段の範囲から逸脱させるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲には、本発明の保護範囲内に入る全ての代替、修正が含まれることを意味する。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-06-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン鉄スラグをアルカリ液に添加して、反応させた後に固液分離して、濾滓と、メタアルミン酸イオン及びリン酸イオンを含有する第1濾液とを得て、前記第1濾液に酸溶液を添加して、脱アルミニウム反応を行い、前記脱アルミニウム反応が終了した後に固液分離して、リン酸イオンを含有する第2濾液を得るステップ(a)と、
ステップ(a)で得られた前記濾滓と酸溶液とを混合して脱炭素反応を行ってから、固液分離して、炭素滓と、鉄イオン、チタンイオン及び銅イオンを含有する第3濾液とを得るステップ(b)と、
ステップ(b)で得られた前記第3濾液に金属鉄を添加して、脱チタン・脱銅反応を行ってから、固液分離して、第一鉄イオンを含有する第4濾液を得るステップ(c)と、
酸化剤と、ステップ(a)で得られた前記リン酸イオンを含有する第2濾液と、ステップ(c)で得られた前記第一鉄イオンを含有する第4濾液とを混合して反応させ、前記反応が終了した後、固液分離及び焼結を順に行って、リン酸鉄を得るステップ(d)と、を含み、
前記リン鉄スラグは、廃棄されたリン酸鉄リチウム電池からリチウムを抽出した後に得られた廃棄物を含み、前記リン鉄スラグは、リン酸鉄、水酸化アルミニウム、金属アルミニウム、炭素、金属銅、銅の酸化物及びチタンの酸化物を含む、リン鉄スラグを用いたリン酸鉄の製造方法。
【請求項2】
ステップ(a)では、前記リン鉄スラグと前記アルカリ液との質量比は、1:3~10であり、
ステップ(a)では、前記アルカリ液の質量分率は、8%~20%であり、
ステップ(a)では、前記アルカリ液は、水酸化ナトリウム溶液及び/又は水酸化カリウム溶液を含み、
ステップ(a)では、前記リン鉄スラグと前記アルカリ液との反応中に、混合物の温度は、30~80℃であり、前記反応の時間は、1~3時間である、請求項1に記載のリン鉄スラグを用いたリン酸鉄の製造方法。
【請求項3】
ステップ(a)では、前記酸溶液に用いられる酸は、硫酸、塩酸、リン酸及び硝酸のうちの少なくとも1種を含み、
ステップ(a)では、前記酸溶液の質量分率は、30%~85%であり、
ステップ(a)では、混合物のpHが5.0~7.5になるまで前記酸溶液を添加する、請求項1に記載のリン鉄スラグを用いたリン酸鉄の製造方法。
【請求項4】
ステップ(b)では、前記濾滓中の鉄元素と前記酸溶液中の水素イオンとのモル比は、1:3.1~4であり、
ステップ(b)では、前記酸は、硫酸、塩酸、硝酸及びリン酸のうちの少なくとも1種を含み、
ステップ(b)では、前記酸溶液の質量モル濃度は、1~3mol/kgであり、
ステップ(b)では、前記脱炭素反応中の混合物の温度は、60~80℃であり、
ステップ(b)では、前記脱炭素反応の時間は、1~3時間である、請求項1に記載のリン鉄スラグを用いたリン酸鉄の製造方法。
【請求項5】
ステップ(c)では、前記脱チタン・脱銅反応中の混合物の温度は、75~85℃であり、
ステップ(c)では、前記脱チタン・脱銅反応中の混合物のpHが2~4.2になると、前記固液分離を行う、請求項1に記載のリン鉄スラグを用いたリン酸鉄の製造方法。
【請求項6】
ステップ(d)では、前記酸化剤は、過酸化水素水、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム及び過硫酸カリウムのうちの少なくとも1種を含み、
ステップ(d)では、前記第4濾液中の第一鉄イオンと前記過酸化水素水中の過酸化水素とのモル比は、1:0.55~0.75である、請求項1に記載のリン鉄スラグを用いたリン酸鉄の製造方法。
【請求項7】
ステップ(d)では、前記第2濾液中のリン酸イオンと前記第4濾液中の第一鉄イオンとのモル比は、1.05~1.5:1である、請求項1に記載のリン鉄スラグを用いたリン酸鉄の製造方法。
【請求項8】
ステップ(d)では、前記反応中の混合物の温度は、80~95℃であり、
ステップ(d)では、前記反応の時間は、2~6時間であり、
ステップ(d)では、前記焼結の温度は、550~700℃である、請求項1に記載のリン鉄スラグを用いたリン酸鉄の製造方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のリン鉄スラグを用いたリン酸鉄の製造方法により製造されリン酸鉄。
【請求項10】
前記リン酸鉄の鉄/リン比は、0.96~0.98である、請求項9に記載のリン酸鉄。
【請求項11】
請求項9に記載のリン酸鉄を含有する、リチウムイオン電池の正極材料。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0086
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0086】
ステップ(5)で得られた無水リン酸鉄に対してXRD検出を行い、結果を図1に示す。図1から分かるように、本発明で得られた無水リン酸鉄は、FePO4JCPDSカード番号:29-0715)であり、表3の検出された不純物元素の種類及び含有量により計算すると、本実施例で製造されたリン酸鉄の純度は、99.74%であり、不純物の総含有量は、0.26%である。
【国際調査報告】