(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】含水量が増加された固体電解質材料
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0562 20100101AFI20241219BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20241219BHJP
C01B 25/08 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01M10/052
C01B25/08 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537124
(86)(22)【出願日】2022-12-20
(85)【翻訳文提出日】2024-08-19
(86)【国際出願番号】 US2022053568
(87)【国際公開番号】W WO2023122124
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521320667
【氏名又は名称】ソリッド パワー オペレーティング, インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン イー.フランシスコ
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル オバーウェッター
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ03
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM12
5H029CJ02
5H029CJ08
5H029HJ00
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ19
5H029HJ20
(57)【要約】
本開示に記載されるのは、高含水量を有する固体電解質材料である。電解質材料は、Li、T、X、A、O、及び任意選択的にYを含んでもよく、ここで、Tは、P、As、Si、Ge、Al及びBからなる群から選択された少なくとも1種の元素であり;Xと、存在する場合にYは、ハロゲン又は擬ハロゲンであり;Aは、S、Se及びNからなる群から選択される少なくとも1種の元素である。電解質材料は、一般的に、製造中に電解質前駆体を所定量の水に曝露することによって製造される。固体電解質材料の製造方法、固体電解質材料の製造方法及び固体電解質材料を含む電気化学セルも本開示に記載される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、
前記正極と負極との間に配置された電解質材料と、
を含み、
前記電解質材料は、一般式:
Li
7-w-zPS
6-w-z-vO
vX
wY
z
(式中、X及びYはそれぞれ、ハロゲン及び擬ハロゲンのうちの1種以上であり;
0≦w≦2;
0≦z≦2;及び
0<v≦1である。)
を有する、
電気化学セル。
【請求項2】
X及びYが、それぞれ、F、Cl、Br、I、BF
4、BH
4、NO
2及びNO
3からなる群から選択される、請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項3】
前記電解質材料が、975±25cm
-1、690±25cm
-1、及び525±25cm
-1に吸収ピークを有するFT-IRスペクトルを有する、請求項1又は2に記載の電気化学セル。
【請求項4】
前記電気化学セルが、一般式Li
7-w-zPS
6-w-zX
wY
zを有する電解質材料を含む電気化学セルと比較して、より高い放電容量を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項5】
前記電気化学セルが、一般式Li
7-w-zPS
6-w-zX
wY
zを有する電解質材料を含む電気化学セルと比較して、より高い第1サイクル効率を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項6】
前記電気化学セルが、少なくとも約88%の第1サイクル効率を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項7】
前記電気化学セルが、一般式Li
7-w-zPS
6-w-zX
wY
zを有する電解質材料を含む電気化学セルと比較して、より低い充電抵抗を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項8】
電解質材料を製造する方法であって、以下のものを含む混合物をミリングすることを含む方法:
複数の電解質前駆体であって、1種以上のリチウム(Li)含有材料を含む複数の電解質前駆体;
1種以上のリン(P)含有材料;
ハロゲン化物又は擬ハロゲン化物;
1種以上の溶媒;及び
水。
【請求項9】
前記電解質前駆体が、硫黄(S)含有材料を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記電解質前駆体が、ハロゲン化物含有材料又は擬ハロゲン化物含有材料のうちの1種以上を更に含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記ミリングの後に前記混合物を加熱することを更に含む、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記加熱が、前記混合物の結晶化をもたらして前記電解質材料を形成する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記混合物が、少なくとも100ppmの水を含む、請求項8~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記混合物が、約250ppmの水を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記混合物が、約500ppmの水を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記混合物が、約1000ppmの水を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記混合物が、約100,000ppmの水を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記水が、前記ミリングの前に前記溶媒に添加される、請求項8~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記複数の電解質前駆体のうちの少なくとも1種が無水物である、請求項8~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
添加される水の量が、前記複数の電解質前駆体に含まれる水の量と、前記溶媒に含まれる水の量とに基づいて予め決定される、請求項8~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記溶媒が、低極性の非プロトン性溶媒である、請求項8~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記溶媒が、キシレン、トルエン、ベンゼン、ヘプタン及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記溶媒が、エーテル、エステル、ニトリル又はアルコールを含む、請求項8~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
電気化学セルであって、
正極;
電解質材料;及び
負極;
を含み、
ここで、
前記電解質材料が、前記正極と前記負極との間に配置されており、
前記電解質材料が、請求項8~23のいずれか一項に記載の方法によって製造される、
電気化学セル。
【請求項25】
固体電解質材料であって、
Li、T、X、A、O、及び任意選択的にY、を含み、
ここで、Tは、P、As、Si、Ge、Al及びBからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり;
Xと、存在する場合にYは、ハロゲン又は擬ハロゲンであり;
Aは、S、Se及びNからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり;
前記電解質材料は、約975cm
-1±25cm
-1、690cm
-1±25cm
-1、及び525cm
-1±25cm
-1にFT-IRピークを有する、
固体電解質材料。
【請求項26】
TがPである、請求項25に記載の固体電解質材料。
【請求項27】
XがClである、請求項25又は26に記載の固体電解質材料。
【請求項28】
AがSである、請求項25~27のいずれか一項に記載の固体電解質材料。
【請求項29】
前記材料が、式Li
7-w-zPS
6-w-z-vO
vX
wY
zによって表される、請求項25~27のいずれか一項に記載の固体電解質材料。
【請求項30】
0<v≦1である、請求項29に記載の固体電解質材料。
【請求項31】
前記固体電解質材料が、
図2に示すFT-IRを有する、請求項29に記載の固体電解質材料。
【請求項32】
存在する酸素の量が、40ppm~1000ppmの水への曝露に基づく、請求項29に記載の固体電解質材料。
【請求項33】
前記電解質材料を含む電気化学セルが、0ppmのH
2Oで合成された、酸素成分を欠く同じ電解質材料を含む電気化学セルと比較して、より高い放電容量を有する、請求項29~32のいずれか一項に記載の固体電解質材料。
【請求項34】
前記電解質材料を含む電気化学セルが、0ppmのH
2Oに曝露された、酸素成分を欠く同じ電解質材料を含む電気化学セルと比較して、より高い第1サイクル効率(FCE)を有する、請求項29~33のいずれか一項に記載の固体電解質材料。
【請求項35】
前記電解質材料を含む電気化学セルが、0ppmのH
2Oに曝露された、酸素成分を欠く同じ電解質材料を含む電気化学セルと比較して、より低い抵抗上昇を有する、請求項29~34のいずれか一項に記載の固体電解質材料。
【請求項36】
前記電解質材料が、少なくとも1×10
-4mS/cm
2のイオン伝導度を有する、請求項25~35のいずれか一項に記載の固体電解質材料。
【請求項37】
固体電解質材料を製造する方法であって、
以下の反応:
XLi
2S
(Appm H2O)+YP
2S
5(Bppm H2O)+
ZLi
X(Cppm H2O)+W溶媒
(Dppm H2O)→
Li
6P
S5-EO
ECl+W溶媒
[式中、E=(X
*A)+(Y
*B)+(Z
*C)+(W
*D)
A、B、C及びD=単位質量当たりのH
2Oのppm、及び
Z、Y、Z及びW=単位質量である。]
に従って反応物を混合して、式Li
6PS
5-EO
EClの固体電解質材料を生成させることと、
各前駆体及び溶媒の水のppmを制御して、高いイオン伝導度を有するとともに、高ニッケル含有量カソードに対して低い反応性を有する電解質材料を生成することと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許協力条約(PCT)出願は、2021年12月20日に出願された米国仮特許出願第63/291,835号「Solid-State Electrolyte Materials Having Increased Water Content」に関連し、その優先権を主張するものであり、その全内容があらゆる目的のために参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0002】
本開示は、固体電解質材料に関する。したがって、本開示は、電子工学、化学、及び材料科学の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
固体電池技術の開発は、液体電解質ベースの電池で知られている欠点に基いて、同時に、電池式デバイスの爆発的な成長を受けて、進められている。Li6PS5Clなどのアルジロダイト様材料(Argyrodite-like materials)を含むリチウム系固体電解質は、その高いイオン伝導度から、広く研究されている。しかしながら、アルジロダイト様材料などの電解質は、カソード材料に対しても反応性が高い。一般的に、電解質中の硫黄は、ニッケルカソードの近くに配置されると、ニッケルと反応して硫化ニッケルを形成し、カソードの表面を劣化させる。これは、カソード材料のイオン/電子分離の低下と、電気化学的性能の低下とをもたらし得る。
【0004】
電解質前駆体のため、電解質材料の合成中は水の存在を避ける。したがって、電解質前駆体の劣化を低減し、それによってイオン伝導度を最大化するために、水が存在しない電解質材料の製造が追及されてきた。
【0005】
高いイオン伝導度を有する、かつカソード材料との反応性が低い、固体電解質材料が必要とされている。特に上記の所見を考慮して、本開示の様々な態様が考案された。
【発明の概要】
【0006】
本発明に記載されるのは、Li、T、X、A、O、及び任意選択的にY、を含む固体電解質材料であって、Tが、P、As、Si、Ge、Al及びBからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり;Xと、存在する場合、Yとは、ハロゲン又は擬ハロゲンであり;Aは、S、Se、及びNからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり;電解質材料は、約975cm
-1±25cm
-1、690cm
-1±25cm
-1、及び525cm
-1±25cm
-1にFT-IRピークを有する固体電解質材料である。いくつかの実施形態において、TはPである。いくつかの実施形態において、XはClである。いくつかの実施形態において、AはSである。いくつかの実施形態において、固体電解質材料は、式Li
7-w-zPS
6-w-z-vO
vX
wY
zにより表される。いくつかの態様において、0<v≦1である。いくつかの実施形態において、固体電解質材料は、
図2に示されるようなFT-IRスペクトルを有し得る。いくつかの実施形態において、固体電解質材料中に存在する酸素の量は、40~1000ppmの水への曝露に基づく。いくつかの実施形態において、上記電解質材料を含む電気化学セルは、0ppmのH
2Oで合成された、酸素成分を欠く同じ電解質材料を含む電気化学セルと比較して、より高い放電容量を有する。いくつかの実施形態において、上記電解質材料を含む電気化学セルは、0ppmのH
2Oに曝露された、酸素成分を欠く同じ電解質材料を含む電気化学セルと比較して、より高い第1サイクル効率(FCE)を有する。いくつかの実施形態において、上記電解質材料を含む電気化学セルは、0ppmのH
2Oに曝露された、酸素成分を欠く同じ電解質材料を含む電気化学セルと比較して、より低い抵抗上昇を有する。
【0007】
本明細書に更に記載されるのは、以下の反応:
XLi2S(Appm H2O)+YP2S5(Bppm H2O)+
ZLiX(Cppm H2O)+W溶媒(Dppm H2O)→
Li6PS5-EOECl+W溶媒
[式中、E=(X*A)+(Y*B)+(Z*C)+(W*D)であり、A、B、C及びD=単位質量当たりのH2Oのppmであり、Z、Y、Z及びW=単位質量である。]
に従って反応物を混合して、式Li6PS5-EOEClの固体電解質材料を生成させることと、各前駆体及び溶媒の水のppmを制御して、高いイオン伝導度を有するとともに、高ニッケル含有量カソードに対して低い反応性を有す、電解質材料を生成させることとを含む、固体電解質材料を製造する方法である。
【0008】
本明細書に更に記載されるのは、正極と、正極と負極との間に配置された電解質材料とを含む電気化学セルであって、電解質材料が、一般構造Li7-w-zPS6-w-z-vOvXwYz(式中、X及びYは、それぞれハロゲン又は擬ハロゲンのうちの1種以上であり、0≦w≦2、0≦z≦2、及び0<v≦1である)を有する、電気化学セルである。いくつかの実施形態において、X及びYはそれぞれ、F、Cl、Br、I、BF4、BH4、NO2、NO3及びこれらの混合物からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、電解質材料は、約975±25cm-1、690±25cm-1及び525±25cm-1に吸収ピークを有するFT-IRスペクトルを有する。いくつかの実施形態において、電気化学セルは、一般式Li7-w-zPS6-w-zXwYzを有する材料と比較して、より高い放電容量を有する。いくつかの実施形態において、電気化学セルは、一般式Li7-w-zPS6-w-zXwYzを有する材料と比較して、より高い第1サイクル効率を有する。いくつかの実施形態において、電気化学セルは、少なくとも約88%の第1サイクル効率を有する。いくつかの実施形態において、電気化学セルは、一般式Li7-w-zPS6-w-zXwYzを有する材料と比較して、より低い充電抵抗を有する。いくつかの実施形態において、電解質材料は、少なくとも1×10-4mS/cm2のイオン伝導度を有し得る。
【0009】
本明細書に更に含まれるのは、正極と、正極と負極との間に配置された電解質材料とを含む電気化学セルであって、電解質材料が、Li、S及びPを含む、電気化学セルである。いくつかの実施形態において、電解質材料は、ハロゲン又は擬ハロゲンのうちの少なくとも1種を更に含む。
【0010】
本明細書に更に記載されるのは、電解質材料を製造する方法であって、複数の電解質前駆体であって、該電解質前駆体が1種以上のリチウム(Li)含有材料を含む、複数の電解質前駆体と;1種以上のリン(P)含有材料と;ハロゲン化物又は擬ハロゲン化物と;1種以上の溶媒と;水と、を含む混合物をミリング(milling)することを含む、方法である。いくつかの実施形態において、電解質前駆体は、硫黄(S)含有材料を更に含む。いくつかの実施形態において、電解質前駆体は、ハロゲン化物含有材料又は擬ハロゲン化物含有材料のうちの1種以上を更に含む。いくつかの実施形態において、本方法は、ミリング後に混合物を加熱することを更に含む。いくつかの態様において、加熱は、混合物の結晶化をもたらして電解質材料を形成し得る。いくつかの実施形態において、混合物は、少なくとも100ppmの水、約250ppmの水、約500ppmの水、約1000ppmの水、又は約100,000ppmの水を含み得る。いくつかの実施形態において、水は、ミリングの前に溶媒に添加される。いくつかの実施形態において、複数の電解質前駆体のうちの少なくとも1種は無水物である。いくつかの実施形態において、添加される水の量は、複数の電解質前駆体に含まれる水の量と、溶媒に含まれる水の量とに基づいて予め決定される。いくつかの実施形態において、溶媒は、低極性の非プロトン性溶媒である。いくつかの態様では、溶媒は、キシレン、ベンゼン、トルエン、ヘプタン及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。いくつかの追加の態様において、溶媒は、エーテル、エステル、ニトリル、ケトン、又はアルコールを含み得る。
【0011】
本明細書に更に記載されるのは、正極と、電解質材料と、負極とを含む電気化学セルであって、電解質材料が、正極と負極との間に配置され、電解質材料が、複数の電解質前駆体であって、該電解質前駆体が1種以上のリチウム(Li)含有材料を含む、複数の電解質前駆体と;1種以上のリン(P)含有材料と;ハロゲン化物又は擬ハロゲン化物と;1種以上の溶媒と;水とを含む混合物をミリングすることを含む方法によって製造される、電気化学セルである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本開示の固体電解質材料を製造するプロセスのフローチャートを示す。
【0013】
【
図2】
図2は、0ppm、100ppm、250ppm、500ppm及び1000ppmの含水量を有する本開示の電解質材料のFT-IRプロットを示す。
【0014】
【
図3A】
図3Aは、0ppm、100ppm、250ppm、500ppm及び1000ppmの含水量を有する本開示の電解質材料の性能特性を示すグラフである。
【
図3B】
図3Bは、0ppm、100ppm、250ppm、500ppm及び1000ppmの含水量を有する本開示の電解質材料の性能特性を示すグラフである。
【
図3C】
図3Cは、0ppm、100ppm、250ppm、500ppm及び1000ppmの含水量を有する本開示の電解質材料の性能特性を示すグラフである。
【0015】
【
図4】
図4は、本開示のプロセスによって製造された固体電解質材料のX線回折測定のプロットを示す。
【0016】
【
図5】
図5は、本開示のプロセスによって製造された固体電解質材料のX線回折測定のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明が開示及び記載される前に、本発明は、本明細書に開示される特定の方法、組成物、又は材料に限定されず、当業者によって認識されると思われる、それらの均等物にまで拡張されることが理解されるべきである。本明細書で用いられる用語法は、特定の実施形態を記載することのみを目的として使用され、限定することを意図するものではないことも理解されるべきである。
【0018】
濃度、量及び他の数値データは、本明細書において範囲形式で表現又は提示され得る。そのような範囲形式は、単に便宜上及び簡潔さのために使用され、範囲の限界として明示的に列挙された数値を含むだけでなく、その範囲内に包含される全ての個々の数値又は部分範囲も、各数値及び部分範囲が明示的に列挙されているかのように含むように、柔軟に解釈されるべきであることを理解されたい。例示として、「約2~約50」の数値範囲は、2~50の明示的に列挙された値だけでなく、示された範囲内の個々の値及び部分範囲も含むと解釈されるべきである。したがって、この数値範囲には、2、2.4、3、3.7、4、5.5、10、10.1、14、15、15.98、20、20.13、23、25.06、30、35.1、38.0、40、44、44.6、45、48などの個々の値、及び1~3、2~4、5~10、5~20、5~25、5~30、5~35、5~40、5~50、2~10、2~20、2~30、2~40、2~50などの部分範囲が含まれる。この同じ原理は、最小値又は最大値として1つの数値のみを記載している範囲に適用される。更に、そのような解釈は、記載されている範囲又は特徴の幅にかかわらず適用されるべきである。
【0019】
本明細書で使用されるとき、用語「約」は、所与の値が端点の「少し上」又は「少し下」であることができることを定めることによって、数値範囲の端点に柔軟性を与えるために使用される。例えば、端点は、列挙された値の10%、8%、5%、3%、2%、又は1%以内であることができる。更に、便宜上及び簡潔さのために、「約50mg/mL~約80mg/mL」の数値範囲は、「50mg/mL~80mg/mL」の範囲も支持すると理解されるべきである。端点はまた、FDA、USPなどの適切な規制機関によって許容される変動性に基づき得る。
【0020】
本開示において、用語「包含する」、「含有する」及び/又は「有する」は、含む/含むことを意味すると理解され、オープンエンドの用語である。
【0021】
本明細書で使用されるとき、「擬ハロゲン」及び「擬ハロゲン化物」は、その化学的性質がハロゲン元素及びハロゲン化物イオンに類似する化合物を指す。用語「擬ハロゲン」及び「擬ハロゲン化物」は、それぞれ「スーパーハロゲン」又は「スーパーハロゲン化物」と互換的に使用され得る。
【0022】
本明細書に記載されるのは、所定量の水を用いて合成された固体電解質材料であって、水にほとんど又は全く曝露せずに合成された同様の電解質材料と比較して、より優れた性能特性を有する固体電解質材料である。いくつかの好ましい実施形態において、本明細書に記載される電解質材料は、放電容量、効率及び充電抵抗に関して、より優れた性能を示す。
【0023】
本開示の固体電解材料は、リチウムアルジロダイト様材料、又はその水和物若しくは溶媒和物であってもよい。リチウムアルジロダイト様材料は、当該技術分野において一般的に知られ、かつ記載されており、一般構造Li+
(12-n-y)Tn+A2-
(6-y)X-
(y)を有する。いくつかの実施形態において、固体電解質材料は、Li3PS4、Li7PS6、Li7P3S11、Li4PS4X及びLi7P2S8Xを含んでもよく、式中、Xはハロゲン又は擬ハロゲンである。
【0024】
一般的に、リチウムアルジロダイト様材料などの電解質材料は、水がほとんど又は全く存在しない状態で合成することが望ましい。製造プロセス中の水への暴露は、電解質材料の中に酸素を導入し、酸素は、電解質材料中の硫黄及び/又はリンなどの原子を置換し、かつ/又は架橋酸素結合を硫黄(例えば、S-O-S)又はリン(例えば、P-O-P)と形成し得る。結果として得られる酸素化(oxygenated)電解質材料は、無酸素(oxygen-free)電解質材料よりも大幅に低い、場合によっては1桁以上低い(例えば、1000分の1低い)、イオン伝導度を有する。したがって、電解質材料は、一般的に、湿度及びガス含有量が高度に制御された乾燥した無酸素環境で製造される。
【0025】
更に、酸素の存在は、硫黄との反応性が高いニッケル及びコバルトなどの特定のカソード材料との反応性を低下させる。硫黄含有電解質とニッケル含有カソードとを含む電気化学セルでは、ニッケルが硫黄と反応して硫化ニッケルを形成する。反応が続くと、硫化ニッケル及び他の副生成物がカソード材料をイオン的に隔離し、電池セルの性能を低下させる場合がある。
【0026】
しかしながら、予想外かつ驚くべきことに、所定量の水を用いて電解質材料を合成することにより、電解質材料を含む電気化学セルの性能の1つ以上の態様が改善され得ることが見出された。水は、固体電解質前駆体のミリング中に存在し、電解質合成中に、リチウム-酸素種及びH2Sに変換される。したがって、合成された電解質材料は、微量の水を含有するか、又は水を全く含有しない。すなわち、本発明者らは、最初は臨界電流密度が大きく低下するが、電解質材料の酸素含有量を更に増加させると、イオン伝導度が上昇し、無酸素電解質材料のイオン伝導度に近づくことを見出した。さらに、本開示の電解質材料を使用して製造された電気化学セルは、驚くべきことに、無酸素電解質材料で製造された電気化学セルと比較して、より大きな第1サイクル効率を有することが見出された。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、性能の向上は、カソード材料と電解質材料との間の界面接触の改善に起因する可能性がある。加えて、固体電解質材料は、それ自体とカソード材料との間により安定した界面を形成し、その結果、カソード材料の劣化が低減される可能性がある。電解質材料自体が、特に酸素含有カソード材料との界面を形成し得る表面付近に、ある程度の量の酸素を含有する場合、反応のための駆動力が低減され、したがって、界面反応が少なくなる。
【0027】
したがって、本開示の電解質材料は、高いイオン伝導度を維持することと、ニッケルなどのカソード材料による活性を低減することとの間で、驚くべき、予想外のバランスをとる。
【0028】
I.電解質材料
本開示の固体電解質材料は、リチウム(Li)、T、X、A及び酸素(O)を含む。いくつかの実施形態において、固体電解質材料は、Yも含み得る。いくつかの実施形態において、固体電解質材料は、式Li7-w-zTA6-w-z-vOvXwYz(式中、0≦w≦2、0≦z≦2及び0<v≦2である)により表すことができる。
【0029】
いくつかの実施形態において、Tは、リン(P)、ヒ素(As)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。非限定的な例において、Tはリンである。
【0030】
いくつかの実施形態において、Xと、存在する場合にYは、ハロゲン又は擬ハロゲンであることができる。いくつかの実施形態において、X及び/又はYがハロゲンである場合、ハロゲンは、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)又はこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。いくつかの実施形態において、X及び/又はYが擬ハロゲンである場合、擬ハロゲンとしては、水素化ホウ素(BH4
-)、フルオロホウ酸(BF4
-)、アザニド(NH2
-)、三酸化窒素(NO3
-)、シアン化物(CN-)、水酸化物(OH-)、チオシアン酸(SCN-)、水硫化物(SH-)及び当該技術分野において公知の他の擬ハロゲン並びにこれらの組み合わせが挙げられる。非限定的な例において、Xは塩素である。
【0031】
いくつかの実施形態において、Aは、硫黄(S)、セレン(Se)及び窒素(N)からなる群から選択される少なくとも1つの元素であってもよい。非限定的な例において、Aは硫黄である。
【0032】
本開示の固体電解質材料は、電解質材料中の酸素の存在に起因する固有のFT-IRシグナルを有し得る(例えば、
図2参照)。いくつかの実施形態において、本開示の電解質材料のFT-IRスペクトルは、約975cm
-1±25cm
-1、約690cm
-1±25cm
-1及び約525cm
-1±25cm
-1にピークを有し得る。いくつかの非限定的な例において、固体電解質材料は、
図2に示されるようなFT-IRスペクトルを有し得る。
【0033】
本開示の固体電解質材料は、固有のX線回折パターン(XRD)を有し得る。例えば、Li5.5PS4.5Clを含む本開示の固体電解質材料は、2θ=15.6°±0.5°、18.0°±0.5°、25.5°±0.5°、29.9°±0.5°及び31.5°±0.5°にピークを有し得る。別の例として、LiClを含む本開示の固体電解質材料は、2θ=34.8°±0.5°にピークを有し得る。更に別の例として、Li2Sを含む本開示の固体電解質材料は、2θ=27.2°±0.5°にピークを有し得る。
【0034】
上記のように、酸素は、合成プロセスの間に水の存在によって電解質材料に組み込まれる。いくつかの実施形態において、固体電解質材料に組み込まれる酸素の量及び合成プロセス中に存在する水の量は、予め決定することができる。
【0035】
いくつかの態様において、固体電解質材料中に存在する酸素の量は、合成プロセス中の40~5000ppmの水への曝露に基づき得る。したがって、固体電解質材料中に存在する酸素の量は、約40ppmの水~100ppmの水、約100ppmの水~約200ppmの水、約200ppmの水~約300ppmの水、約300ppmの水~約400ppmの水、約400ppmの水~約500ppmの水、約500ppmの水~約600ppmの水、約600ppmの水~約700ppmの水、約700ppmの水~約800ppmの水、約800ppmの水~約900ppmの水、約900ppmの水~約1000ppmの水、約1000ppmの水~約2000ppmの水、約2000ppmの水~約3000ppmの水、約3000ppmの水~約4000ppmの水、又は約4000ppmの水~約5000ppmの水への曝露に基づき得る。いくつかの態様において、固体電解質材料中に存在する酸素の量は、約40ppmの水~約200ppmの水、約40ppmの水~約300ppmの水、約40ppmの水~約400ppmの水、約40ppmの水~約500ppmの水、約40ppmの水~約600ppmの水、約40ppmの水~約700ppmの水、約40ppmの水~約800ppmの水、約40ppmの水~約900ppmの水、約40ppmの水~約1000ppmの水、約40ppmの水~約2000ppmの水、約40ppmの水~約3000ppmの水、約40ppmの水~約4000ppmの水、約3000ppmの水~約5000ppmの水、約2000ppmの水~約5000ppmの水、約1000ppmの水~約5000ppmの水、約900ppmの水~約5000ppmの水、約800ppmの水~約5000ppmの水、約700ppmの水~約5000ppmの水、約600ppmの水~約5000ppmの水、約500ppmの水~約5000ppmの水、約400ppmの水~約5000ppmの水、約300ppmの水~約5000ppmの水、約200ppmの水~約5000ppmの水、又は約100ppmの水~約5000ppmの水への曝露に基づき得る。更に別の態様では、固体電解質材料中に存在する酸素の量は、約40ppmの水、100ppmの水、200ppmの水、300ppmの水、400ppmの水、500ppmの水、600ppmの水、700ppmの水、800ppmの水、900ppmの水、1000ppmの水、2000ppmの水、3000ppmの水、4000ppmの水、又は約5000ppmの水への曝露に基づき得る。いくつかの実施形態において、固体電解質材料中に存在する酸素の量は、約5000ppm超の水への曝露に基づき得る。いくつかの非限定的な例において、固体電解質材料中に存在する酸素の量は、約100ppmの水、約250ppmの水、約500ppmの水、又は約1000ppmの水への曝露に基づき得る。なお更なる実施形態では、固体電解質材料中に存在する酸素の量は、少なくとも約40ppmの水、少なくとも約100ppmの水、少なくとも約200ppmの水、少なくとも約300ppmの水、少なくとも約400ppmの水、少なくとも約500ppmの水、少なくとも約600ppmの水、少なくとも約700ppmの水、少なくとも約800ppmの水、少なくとも約900ppmの水、少なくとも約1000ppmの水、少なくとも約2000ppmの水、少なくとも約3000ppmの水、少なくとも約4000ppmの水、又は少なくとも約5000ppmの水への曝露に基づき得る。
【0036】
いくつかの追加の態様において、固体電解質材料中に存在する酸素の量は、合成プロセス中の約40~約100,000ppmの水への曝露に基づき得る。固体電解質材料中に存在する酸素の量は、約40ppm~約100ppm、約100ppm~約500ppm、約500ppm~約1,000ppm、約1,000ppm~約5,000ppm、約5,000ppm~約10,000ppm、約10,000ppm~約25,000ppm、約25,000ppm~約50,000ppm、約50,000ppm~約75,000ppm、又は約75,000ppm~約100,000ppmの曝露に基づき得る。追加の態様において、固体電解質材料中に存在する酸素の量は、約100ppm~約500ppm、約100ppm~約1,000ppm、約100ppm~約5,000ppm、約100ppm~約10,000ppm、約100ppm~約25,000ppm、約100ppm~約50,000ppm、約100ppm~約75,000ppm、約100ppm~約100,000ppm、約500ppm~約100,000ppm、約1,000ppm~約100,000ppm、約5,000ppm~約100,000ppm、約10,000ppm~約100,000ppm、約25,000ppm~約100,000ppm、約50,000ppm~約100,000ppm、又は約75,000ppm~約100,000ppmの曝露に基づき得る。いくつかの例では、固体電解質材料中に存在する酸素の量は、約40ppm、約100ppm、約500ppm、約1,000ppm、約5,000ppm、約10,000ppm、約25,000ppm、約50,000ppm、約75,000ppm、又は約100,000ppmの曝露に基づき得る。
【0037】
いくつかの実施形態において、本開示の固体電解質材料は、一般式Li(7-w-z)PS(6-w-z)XwYz(式中、X及びYは、それぞれハロゲン又は擬ハロゲンであり、0≦w≦2、0≦z≦2、及びw+z=2である)を有する固体電解質材料と比較して、改善された性能を有し得る。いくつかの追加の実施形態において、本開示の固体電解質材料は、0ppmのH2Oを用いて合成された、かつ/又は酸素成分を欠く、同じ電解質材料と比較して、改善された性能を有し得る。改善された性能の測定基準としては、放電容量、第1サイクル効率及びより低い充電抵抗が挙げられる。
【0038】
いくつかの実施形態において、本開示の固体電解質材料は、一般的に、一般式Li(7-w-z)PS(6-w-z)XwYz(式中、X及びYは、それぞれハロゲン又は擬ハロゲンであり、0≦w≦2、0≦z≦2、及びw+z=2である)を有する固体電解質材料と比較して、より低いイオン伝導度を有する。いくつかの追加の実施形態において、本開示の固体電解質材料は、0ppmのH2Oを用いて合成された、酸素成分を欠く同じ電解質材料と比較して、より低いイオン伝導度を有し得る。しかしながら、上述した他の測定基準における改善は、多くの用途において、このイオン伝導度の損失を上回る。いくつかの実施形態において、本開示の固体電解質のイオン伝導度は、少なくとも約1×10-6mS/cm2であることができる。いくつかの態様において、本開示の固体電解質のイオン伝導度は、少なくとも約1×10-5mS/cm2、少なくとも約1×10-4mS/cm2、又は少なくとも約1×10-3mS/cm2であることができる。
【0039】
II.固体電解質材料の製造方法
セクションIで説明した固体電解質材料は、以下の反応に従って反応物を混合することによって合成することができる。
αLi2A(appmの水)+βT2A5(bppmの水)+γLiX(cppmの水)+
δLiY(dppmの水)+ε溶媒(eppmの水)→
Li7-w-zTA6-w-z-vOvXwYz+ε溶媒
式中、v=(α*a)+(β*b)+(γ*c)+(δ*d)+(ε*e)であり、
a、b、c、d及びe=1モル当たりの水のppmであり、
α、β、γ、δ及びε=モルである。
【0040】
反応物A、T、X及びYの種は、上記のセクションIに記載されるものであることができる。いくつかの好ましい実施形態では、反応種は無水物であってもよく、すなわち、反応種は、それぞれ又は集合的に0ppmの含水量を有してもよい。他の実施形態では、反応種は、それぞれ又は集合的に0ppm超の含水量を有してもよい。電解質材料の所望の酸素含有量を達成するために反応中にどれだけの水を添加するかを判定するために、反応物の含水量を考慮してもよい。本明細書で使用されるとき、「反応物」及び「反応種」という用語は、「前駆体」又は「電解質前駆体」という用語と互換的に使用され得る。
【0041】
溶媒は、極性の低い任意の非プロトン性溶媒であってよい。いくつかの実施形態において、溶媒は、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アルカン(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン)、シクロアルカン(例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン)、クロロホルム、ジエチルエーテル及びこれらの組み合わせのうちの1つ以上を含んでもよい。いくつかの態様では、溶媒は、電解質材料前駆体又は最終的な電解質材料と接触したときに硫化水素ガスを発生する傾向が低くなり得る。好ましくは、溶媒は、ミリングプロセスの少なくとも一部の間、又はミリングプロセス全体の間、液体状態のままであってもよい(以下のセクションIIIを参照)。溶媒は、0ppm以上の含水量を有してもよい。いくつかの実施形態において、電解質材料の所望の酸素含有量を達成するために、水が溶媒に添加されてもよい。いくつかの追加の実施形態において、反応は、上記の溶媒から選択される1種以上の共溶媒の使用を含み得る。
【0042】
溶媒は、エーテルを含み得る。本明細書に記載の方法における使用に適したエーテルの例としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジメトキシエタン(DME)、ジオキサン、アニソール及びこれらの組み合わせ、並びに当該技術分野で公知の他のエーテルが挙げられる。
【0043】
溶媒は、エステルを含み得る。本明細書に記載の方法における使用に適したエステルの例としては、酢酸エチル、酪酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酪酸ブチル及びプロパン酸ブチル及びにこれらの組み合わせ、並びに当該技術分野で公知の他のエステルが挙げられる。
【0044】
溶媒は、ニトリルを含み得る。本明細書に記載の方法における使用に適したニトリルの例としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル及びこれらの組み合わせ、並びに当該技術分野で公知の他のニトリルが挙げられる。
【0045】
溶媒は、アルコールを含み得る。本明細書に記載の方法における使用に適したアルコールの例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、イソブタノール及びこれらの組み合わせ、並びに当該技術分野で公知の他のアルコールが挙げられる。
【0046】
溶媒は、ケトンを含み得る。本明細書に記載の方法における使用に適したケトンの例としては、アセトン、シクロヘキサノン、ジアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びこれらの組み合わせ、並びに当該技術分野で既知の他のケトンが挙げられる。
【0047】
各反応物及び溶媒の水のppmは、高いイオン伝導度と、ニッケル含有量が高いカソードなどのカソードに対する低い反応性とを有する電解質材料を生成するように制御することができる。
【0048】
いくつかの態様では、混合物(すなわち、反応物と溶媒)の総含水量は、40~5000ppmの水であることができる。したがって、混合物の総含水量は、約40ppmの水~100ppmの水、約100ppmの水~約200ppmの水、約200ppmの水~約300ppmの水、約300ppmの水~約400ppmの水、約400ppmの水~約500ppmの水、約500ppmの水~約600ppmの水、約600ppmの水~約700ppmの水、約700ppmの水~約800ppmの水、約800ppmの水~約900ppmの水、約900ppmの水~約1000ppmの水、約1000ppmの水~約2000ppmの水、約2000ppmの水~約3000ppmの水、約3000ppmの水~約4000ppmの水、又は約4000ppmの水~約5000ppmの水であることができる。いくつかの態様において、混合物の総含水量は、約40ppmの水~約200ppmの水、約40ppmの水~約300ppmの水、約40ppmの水~約400ppmの水、約40ppmの水~約500ppmの水、約40ppmの水~約600ppmの水、約40ppmの水~約700ppmの水、約40ppmの水~約800ppmの水、約40ppmの水~約900ppmの水、約40ppmの水~約1000ppmの水、約40ppmの水~約2000ppmの水、約40ppmの水~約3000ppmの水、約40ppmの水~約4000ppmの水、約3000ppmの水~約5000ppmの水、約2000ppmの水~約5000ppmの水、約1000ppmの水~約5000ppmの水、約900ppmの水~約5000ppmの水、約800ppmの水~約5000ppmの水、約700ppmの水~約5000ppmの水、約600ppmの水~約5000ppmの水、約500ppmの水~約5000ppmの水、約400ppmの水~約5000ppmの水、約300ppmの水~約5000ppmの水、約200ppmの水~約5000ppmの水、又は約100ppmの水~約5000ppmの水であることができる。更に別の態様では、混合物の総含水量は、約40ppmの水、100ppmの水、200ppmの水、300ppmの水、400ppmの水、500ppmの水、600ppmの水、700ppmの水、800ppmの水、900ppmの水、1000ppmの水、2000ppmの水、3000ppmの水、4000ppmの水、又は約5000ppmの水であることができる。いくつかの実施形態において、混合物の総含水量は、約5000ppm超の水であることができる。いくつかの非限定的な例において、混合物の総含水量は、約100ppmの水、約250ppmの水、約500ppmの水、又は約1000ppmの水であることができる。なお更なる実施形態では、混合物の総含水量は、少なくとも約40ppmの水、少なくとも約100ppmの水、少なくとも約200ppmの水、少なくとも約300ppmの水、少なくとも約400ppmの水、少なくとも約500ppmの水、少なくとも約600ppmの水、少なくとも約700ppmの水、少なくとも約800ppmの水、少なくとも約900ppmの水、少なくとも約1000ppmの水、少なくとも約2000ppmの水、少なくとも約3000ppmの水、少なくとも約4000ppmの水、又は少なくとも約5000ppmの水であることができる。
【0049】
いくつかの追加の態様において、混合物の総含水量は、約40~約100,000ppmの水であることができる。混合物の総含水量は、約40ppm~約100ppm、約100ppm~約500ppm、約500ppm~約1,000ppm、約1,000ppm~約5,000ppm、約5,000ppm~約10,000ppm、約10,000ppm~約25,000ppm、約25,000ppm~約50,000ppm、約50,000ppm~約75,000ppm、又は約75,000ppm~約100,000ppmであることができる。追加の態様において、混合物の総含水量は、約100ppm~約500ppm、約100ppm~約1,000ppm、約100ppm~約5,000ppm、約100ppm~約10,000ppm、約100ppm~約25,000ppm、約100ppm~約50,000ppm、約100ppm~約75,000ppm、約100ppm~約100,000ppm、約500ppm~約100,000ppm、約1,000ppm~約100,000ppm、約5,000ppm~約100,000ppm、約10,000ppm~約100,000ppm、約25,000ppm~約100,000ppm、約50,000ppm~約100,000ppm、又は約75,000ppm~約100,000ppmであることができる。いくつかの例では、混合物の総含水量は、約40ppm、約100ppm、約500ppm、約1,000ppm、約5,000ppm、約10,000ppm、約25,000ppm、約50,000ppm、約75,000ppm、又は約100,000ppmであることができる。
【0050】
反応は、一般的に、アルゴン(Ar)又は窒素(N2)ガスを含むか、あるいは、アルゴン又は窒素ガスからなる、不活性雰囲気中で起こる。いくつかの実施形態において、不活性雰囲気は、0ppmの含水量を有し得る。これは、固体電解質材料に添加される水の量を制御し、過剰な水が固体電解質材料と反応するのを防ぐ効果がある。他の実施形態では、雰囲気は0ppm超の含水量を有し得る。
【0051】
反応は、約6秒間~約200時間にわたって起こり得る。いくつかの実施形態において、反応は、6秒間、15秒間、30秒間、1分間、5分間、15分間、30分間、1時間、2時間、4時間、12時間、24時間、48時間、100時間、200時間又は200時間超にわたって起こり得る。当業者は、反応の持続時間が、エネルギー入力、温度、反応物の粒径、溶媒種などのいくつかの変数によって影響され得ることを理解するであろう。
【0052】
最終的な電解質材料は、不純物を含み得る。いくつかの実施形態において、不純物は、固体電解質材料に完全には組み込まれなかった反応物を含み得る。いくつかの例では、不純物は、LiX(式中、Xはハロゲン又は擬ハロゲンである)、Li2S、又は他の反応物を含み得る。
【0053】
通常、乾燥状態で合成された電解質材料は、環境中の水及び/又は空気と反応し、電解質中のリン種及び硫黄種と酸素との結合を引き起こし、硫黄をH2Sの形態で放出する。この反応は、電解質材料を劣化させる。驚くべきことに、固体電解質材料の合成に水の形態の酸素を組み込み、硫黄原子の一部を酸素で置換することによって、電解質と水/空気との間の反応を遅くすることができることが見出された。
【0054】
更に、固体電解質材料中の酸素の存在は、電解質と高ニッケル含有カソードとの間の反応を遅くする。電解質が高濃度のニッケルを有するカソードの表面に接触すると、電解質中の硫黄がニッケルと反応して硫化ニッケル(NiS)を形成する。この反応は、電解質とカソードとの両方を劣化させる。驚くべきことに、固体電解質材料中の硫黄原子を酸素で置換することによって、電解質材料及びカソードの反応性が低下し、その結果、電解質とカソードとの両方の劣化が遅くなることが見出された。
【0055】
いくつかの実施形態において、固体電解質及び/又はカソードの劣化速度は、電気化学セルが経時的に充電及び放電されるときの電気化学セルの容量を測定することによって決定され得る。いくつかの更なる実施形態では、固体電解質及び/又はカソードの劣化速度は、電気化学セルの第1サイクル効率を測定することによって決定され得る。
【0056】
III.電解質材料の製造方法
図1は、本開示の固体電解質組成物を製造するプロセスのフローチャートを示す。プロセス100は、準備ステップ110から始まり、ここで前駆体合成、精製及び装置準備等の任意の準備動作が行われ得る。任意の初期準備の後、プロセス100はステップ120に進み、ここで、セクションI及びIIに記載のものなどの、リチウムを含む材料、リンを含む材料、硫黄を含む材料、セレンを含む材料、窒素を含む材料及びこれらの混合物を、1種以上の溶媒及び/又は他の液体と組み合わせることができる。いくつかの材料は、複数のカテゴリに分類され得る。例えば、硫化リチウム(Li
2S)は、リチウムを含む材料及び硫黄を含む材料とみなされ得る。いくつかの実施形態において、材料のそれぞれは、粉末、顆粒、ペレット、レンガ、フレーク、又は当該技術分野で公知の他の乾燥若しくは固体形態として提供することができる。例のいくつかにおいて、材料のそれぞれは、粉末形態で提供することができる。材料が粉末形態で提供される場合、それらは、結晶質粉末、非晶質粉末、又はその両方として提供され得る。1種以上の溶媒は、セクションIIに記載されるような1種以上の低極性の非プロトン性溶媒であってもよい。
【0057】
いくつかの実施形態において、リチウムを含む材料としては、リチウム金属、硫化リチウム(Li2S)、塩化リチウム(LiCl)、窒化リチウム(Li3N)、水素化ホウ素リチウム(LiBH4)、フルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、リチウムアミド(LiNH2)、硝酸リチウム(LiNO3)及びこれらの混合物が挙げられる。
【0058】
いくつかの実施形態において、硫黄を含む材料としては、元素硫黄、五硫化リン(P2S5)及び一般化学式P4Sx(式中、3≦x≦10である)を有する硫化リンなどの硫化リン、硫化リチウム(Li2S)、アルカリ金属硫化物、アルカリ土類金属硫化物、硫化ホウ素(B2S3)、硫化アルミニウム(Al2S3)、三硫化アンチモン(Sb2S3)、五硫化アンチモン(Sb2S5)、硫化ゲルマニウム(Ge2S3)、三硫化ケイ素(Si2S3)、硫化銅(CuS)、二硫化銅(CuS2)、硫化亜鉛(ZnS)、硫化鉄(FeS2)、硫化スズ(SnS)及びこれらの混合物が挙げられる。いくつかの例では、一般化学式P4Sx(式中、3≦x≦10である)を有する硫化リンとしては、P4S3、P4S4、P4S5、P4S6、P4S7、P4S8、P4S9、P4S10又はこれらの組み合わせが挙げられる。更なる例では、アルカリ金属硫化物としては、硫化ナトリウム(Na2S)、硫化カリウム(K2S)、硫化ルビジウム(Rb2S)及び硫化セシウム(Cs2S)が挙げられる。更なる例において、アルカリ土類金属硫化物としては、硫化ベリリウム(BeS)、硫化カルシウム(CaS)、硫化マグネシウム(MgS)、硫化ストロンチウム(SrS)及び硫化バリウム(BaS)が挙げられる。いくつかの実施形態において、リンを含む材料としては、元素リン、五硫化リン(P2S5)などの硫化リン、五酸化リン(P2S5)などの酸化リン、及び一般化学式P4Sx(式中、3≦x≦10である)を有する硫化リン、三塩化リン(PCl3)及び五塩化リン(PCl5)などの塩化リン、オキシ塩化リン(POCl3)、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0059】
いくつかの実施形態において、セレンを含む材料としては、硫化セレン(Se2S)、二硫化セレン(SeS2)及びこれらの混合物が挙げられる。
【0060】
反応化合物の比率及び量は、反応化合物及び1種以上の溶媒の含水量が、固体電解質材料の所望の酸素含有量を達成するように予め決定される限り、特に限定されなくてもよい。添加される溶媒の量は、反応化合物のそれぞれの含水量に基づいて、及び溶媒の含水量に基づいて予め決定され得る。したがって、添加される溶媒の量は、最終的な電解質材料中の所望の酸素含有量を達成するように調整することできる。更に、電解質材料の所望の酸素含有量を達成するために、溶媒に、又は反応化合物と溶媒との混合物に、水を添加してもよい。共溶媒及びポリマーなどの追加の材料を、このステップ120の際に添加してもよい。
【0061】
次に、ステップ130において、セクションI及びIIに記載のように固体電解質を製造するために、組成物は、所定の時間及び所定の温度で混合及び/又はミリングすることができる。混合は、当業者に公知の方法によって達成することができる。いくつかの非限定的な例において、混合は、遊星ボールミル機又はアトライターミルを使用して達成される。混合時間は、固体電解質材料を生成するための前駆体の適切な均質化及び反応が可能である限り、特に限定されない。混合温度は、適度な混合が可能であり、前駆体が気体状態になるほど高くなければ、特に限定されない。
【0062】
いくつかの実施形態において、適切な混合は、約-20℃~約200℃の温度で約6秒間~約200時間にわたって達成され得る。当業者は、適切な混合に必要な時間は、エネルギー入力、温度、前駆体の粒径、溶媒種などの種々の要因に影響され得ることを理解するであろう。いくつかの態様では、適切な混合は、約6秒間、30秒間、1分間、5分間、10分間、30分間、1時間、2時間、3時間、6時間、12時間、24時間、36時間、48時間、100時間、200時間、又は200時間超で達成できる。いくつかの例では、適切な混合は、約10分~約48時間後に達成できる。いくつかの追加の態様において、適切な混合は、約-20℃~約0℃、約0℃~約25℃、約25℃~約50℃、約50℃~約75℃、約75℃~約100℃、約100℃~約125℃、約125℃~約150℃、約150℃~約175℃、又は約175℃~約200℃の温度で達成できる。
【0063】
ステップ130の前に水を導入し、組成物を0ppm超の水と共にミリング/混合することによって、得られる電解質材料は、酸素の表面層のみを含有する組成物とは対照的に、組成物全体にわたって均一に分布した酸素を含有する。
【0064】
次に、ステップ140において、組成物は、アルゴン若しくは窒素などの不活性雰囲気中で、又は真空下で、所定の時間及び所定の温度で乾燥されてもよい。乾燥は、静的乾燥操作又は好ましくは撹拌乾燥操作のいずれかで行うことができる。乾燥に続いて、任意のステップ150において熱処理が行われてもよい。熱処理の温度は、本開示の固体電解質材料の結晶相を生成するのに必要な温度以上、又はイオン伝導度若しくはリチウム金属との相溶性を増強するのに必要な温度以上であれば、特に限定されない。熱処理ステップ150から得られる材料は、単相であってもよく、他の結晶相、ガラス相及び少量の前駆体相も含んでもよい。
【0065】
一般的に、熱処理時間が所望の組成物及び相の生成を可能にする限り、熱処理時間は限定されない。時間は、例えば、約1分~約24時間の範囲内であることができる。いくつかの態様において、熱処理は、約1分間、10分間、30分間、1時間、2時間、4時間、6時間、約12時間、約18時間又は約24時間にわたって実施することができる。更に、熱処理は、不活性ガス雰囲気(例えば、アルゴン又は窒素)中、還元雰囲気(例えば、水素)中、又は真空下で、実施されてもよい。熱処理ステップ150は、所望の組成及び相が初期の混合及び乾燥ステップ中に達成される場合には、完全に省略されてもよい。
【0066】
IV.電気化学セル
本明細書に記載される固体電解質材料は、固体電気化学セルにおいて使用され得る。固体電解質材料は、固体電解質材料層において正極と負極との間に配置されていてもよい。固体電解質材料層は、約10体積%~約100体積%の濃度で本開示の固体電解質材料を含み得る。いくつかの実施形態において、固体電解質材料層中の本開示の固体電解質材料の濃度は、約10体積%~約20体積%、約20体積%~約30体積%、約30体積%~約40体積%、約40体積%~約50体積%、約50体積%~約60体積%、約60体積%~約70体積%、約70体積%~約80体積%、約80体積%~約90体積%、又は約90体積%~約100体積%であることができる。いくつかの追加の実施形態において、固体電解質材料層中の本開示の固体電解質材料の濃度は、約10体積%~約30体積%、約10体積%~約40体積%、約10体積%~約50体積%、約10体積%~約60体積%、約10体積%~約70体積%、約10体積%~約80体積%、約10体積%~約90体積%、約20体積%~約100体積%、約30体積%~約10体積%、約40体積%~約100体積%、約50体積%~約100体積%、約60体積%~約100体積%、約70体積%~約100体積%、又は約80体積%~約100体積%であることができる。また更なる実施形態では、固体電解質材料層中の本開示の固体電解質材料の濃度は、約10体積%、20体積%、30体積%、40体積%、50体積%、60体積%、70体積%、80体積%、90体積%、又は約100体積%であることができる。
【0067】
いくつかの実施形態において、固体電解質材料層は、バインダー又は他の改質剤を含み得る。いくつかの態様では、バインダーは、ポリ塩化ビニル、ポリアニリン、ポリ(メチルメタクリレート)、ニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリフッ化ビニリデン、自己修復ポリマー、ポリエチレンオキシド、又は当該技術分野で公知の他のバインダー、及びこれらの組み合わせを含み得る。
【0068】
固体電解質材料層は、約1μm~約1000μmの厚さを有し得る。いくつかの実施形態において、固体電解質材料層は、約1μm~約5μm、約5μm~約10μm、約10μm~約15μm、約15μm~約20μm、約20μm~約25μm、約25μm~約30μm、約30μm~約35μm、約35μm~約40μm、約40μm~約45μm、約45μm~約50μm、約50μm~約100μm、約100μm~約200μm、約200μm~約300μm、約300μm~約400μm、約400μm~約500μm、約500μm~約600μm、約600μm~約700μm、約700μm~約800μm、約800μm~約900μm、又は約900μm~約1000μmの厚さを有し得る。いくつかの追加の実施形態において、固体電解質材料層は、約1μm~約10μm、約1μm~約15μm、約1μm~約20μm、約1μm~約25μm、約1μm~約30μm、約1μm~約35μm、約1μm~約40μm、約1μm~約45μm、約1μm~約50μm、約1μm~約100μm、約1μm~約200μm、約1μm~約300μm、約1μm~約400μm、約1μm~約500μm、約1μm~約600μm、約1μm~約700μm、約1μm~約800μm、約1μm~約900μm、約5μm~約1000μm、約10μm~約1000μm、約15μm~約1000μm、約20μm~約1000μm、約25μm~約1000μm、約30μm~約1000μm、約35μm~約1000μm、約40μm~約1000μm、約45μm~約1000μm、約50μm~約1000μm、約100μm~約1000μm、約200μm~約1000μm、約300μm~約1000μm、約400μm~約1000μm、約500μm~約1000μm、約600μm~約1000μm、約700μm~約1000μm、又は約800μm~約1000μmの厚さを有し得る。更に別の実施形態では、固体電解質材料層は、1μm、5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm、100μm、200μm、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、900μm、又は約1000μmの厚さを有し得る。
【0069】
電気化学セルは、正極を備え得る。正極は、アルミニウム、ニッケル、チタン、ステンレス鋼及び炭素を含む材料から形成され得る。いくつかの実施形態において、正極は、正極集電体と正極複合体とを含み得る。正極複合体は、正極活物質と、バインダーと、導電性添加剤とを含み得る。いくつかの態様において、正極活物質は、金属酸化物、金属リン酸塩、金属硫化物、硫黄、硫化リチウム、酸素、空気、又は当該技術分野で公知の他の材料を含み得る。正極活物質は、約1μm~約1000μmの厚さを有し得る。正極活物質は、本開示の固体電解質材料を約5体積%~約80体積%の濃度で更に含み得る。いくつかの追加の態様において、正極バインダーは、ポリ塩化ビニル、ポリアニリン、ポリ(メチルメタクリレート)、ニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリフッ化ビニリデン、又は当該技術分野で公知の他のバインダー及びこれらの組み合わせを含み得る。更に追加の態様において、導電性添加剤は、炭素(例えば、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、炭素繊維、グラフェンなど)、金属粒子、フィラメント、若しくは他の構造体、又は当該技術分野で知られている他の導電性添加剤及びこれらの組み合わせを含み得る。
【0070】
電気化学セルは、負極を備え得る。負極は、銅、ニッケル、ステンレス鋼、又は炭素を含む材料から形成され得る。負極は、負極活物質と、バインダーと、導電性添加剤とを含み得る。いくつかの実施形態において、負極活物質は、リチウム金属、リチウム合金、ケイ素、スズ(Sn)、黒鉛状炭素、硬質炭素を含んでもよく、本明細書に記載の固体電解質組成物などの固体電解質組成物を更に含み得る。負極活物質は、本開示の固体電解質材料を約5体積%~約80体積%の濃度で含み得る。負極活物質は、約1μm~約1000μmの厚さを有し得る。負極に用いられるバインダーとしては、例えば、正極に用いられるものと同様の材料が挙げられる。負極に用いられる導電性添加剤としては、正極に用いられるものと同様の材料が挙げられる。
【0071】
電気化学セルの放電容量は、放電サイクル中に電池から放電される電気の量を指す。いくつかの実施形態において、本開示の固体電解質材料を含む電気化学セルは、一般式Li(7-w-z)PS(6-w-z)XwYz(式中、X及びYはそれぞれハロゲン又は擬ハロゲンであり、0≦w≦2、0≦z≦2、及びw+z=2である)を有する固体電解質材料を含む電気化学セルと比較して、より高い放電容量を有し得る。いくつかの追加の実施形態において、本開示の固体電解質材料を含む電気化学セルは、0ppmのH2Oで合成された、酸素成分を欠く同じ電解質材料を含む電気化学セルと比較して、より高い放電容量を有する。なお更なる実施形態において、本開示の固体電解質材料を含む電気化学セルの放電容量は、少なくとも約100mAh/gであることができる。いくつかの態様において、放電容量は、少なくとも約110mAh/g、少なくとも約120mAh/g、又は少なくとも約130mAh/gであることができる。いくつかの追加の態様において、放電容量は、約100mAh/g~約105mAh/g、約105mAh/g~約110mAh/g、約110mAh/g~約115mAh/g、約115mAh/g~約120mAh/g、約120mAh/g~約125mAh/g、約125mAh/g~約130mAh/g、又は約130mAh/g超であることができる。
【0072】
電気化学セルの第1サイクル効率は、第1充電容量に対する第1放電容量の比として定義される。いくつかの実施形態において、本開示の固体電解質材料を含む電気化学セルは、一般式Li6PS5Clを有する固体電解質材料を含む電気化学セルと比較して、より高い第1サイクル効率を有し得る。いくつかの追加の実施形態において、本開示の固体電解質材料を含む電気化学セルは、0ppmのH2Oで合成された、酸素成分を欠く同じ電解質材料を含む電気化学セルと比較して、より高い第1サイクル効率を有し得る。更なる実施形態において、第1サイクル効率は、約85%超、約86%超、約87%超、約88%超、約89%超、約90%超、約91%超、約92%超、約93%超、約94%超、約95%超、約96%超、約97%超、約98%超、又は約99%超であることができる。いくつかの態様では、第1のサイクル効率は、約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は約99%であることができる。例示的な実施形態において、本開示の固体電解質材料を含む電気化学セルは、88%超の第1サイクル効率を有する。
【0073】
いくつかの実施形態において、本開示の固体電解質材料を含む電気化学セルは、一般式Li(7-w-z)PS(6-w-z)XwYz[式中、X及びYは、それぞれハロゲン又は擬ハロゲンであり、0≦w≦2、0≦z≦2、及びw+z=2である]を有する固体電解質材料を有する電気化学セルと比較して、より高い充電抵抗を有し得る。いくつかの追加の実施形態において、本開示の固体電解質材料を含む電気化学セルは、0ppmのH2Oで合成された、酸素成分を欠く同じ電解質材料と比較して、より高い充電抵抗を有し得る。なお更なる実施形態において、固体電解質材料を含む電気化学セルの充電抵抗は、約4分~約6分であることができる。いくつかの態様において、固体電解質材料を含む電気化学セルの充電抵抗は、約4Ω~約4.5Ω、約4.5Ω~約5Ω、約5Ω~約5.5Ω、又は約5.5Ω~約6Ωであることができる。いくつかの追加の態様において、充電抵抗は、約4Ω、4.25Ω、4.5Ω、4.75Ω、5Ω、5.25Ω、5.5Ω、5.75Ω、又は6Ωであることができる。
【0074】
例示的な実施形態
実施形態1:正極と、この正極と負極との間に配置された電解質材料とを含む電気化学セルであって、電解質材料が、一般構造Li7-w-zPS6-w-z-vOvXwYz(式中、X及びYは、それぞれ、ハロゲン及び擬ハロゲンのうちの1種以上であり;0≦w≦2;0≦z≦2;及び0<v≦1である)を有する、電気化学セル。
【0075】
実施形態2:X及びYがそれぞれ、F、Cl、Br、I、BF4、BH4、NO2及びNO3からなる群から選択される、実施形態1に記載の電気化学セル。
【0076】
実施形態3:電解質材料が、975±25cm-1、690±25cm-1、及び525±25cm-1に吸収ピークを有するFT-IRスペクトルを有する、実施形態1又は実施形態2に記載の電気化学セル。
【0077】
実施形態4:電気化学セルが、一般式Li7-w-zPS6-w-zXwYzを有する電解質材料を含む電気化学セルと比較して、より高い放電容量を有する、実施形態1~3のいずれか1つに記載の電気化学セル。
【0078】
実施形態5:電気化学セルが、一般式Li7-w-zPS6-w-zXwYzを有する電解質材料を含む電気化学セルと比較して、より高い第1サイクル効率を有する、実施形態1~4のいずれか1つに記載の電気化学セル。
【0079】
実施形態6:電気化学セルが、少なくとも約88%の第1サイクル効率を有する、実施形態1~5のいずれか1つに記載の電気化学セル。
【0080】
実施形態7:電気化学セルが、一般式Li7-w-zPS6-w-zXwYzを有する電解質材料を含む電気化学セルと比較して、より低い充電抵抗を有する、実施形態1~6のいずれか1つに記載の電気化学セル。
【0081】
実施形態8:電解質材料を製造する方法であって、以下のものを含む混合物をミリングすることを含む方法:
複数の電解質前駆体であって、1種以上のリチウム(Li)含有材料を含む複数の電解質前駆体;
1種以上のリン(P)含有材料;
ハロゲン化物又は擬ハロゲン化物;
1種以上の溶媒;及び
水。
【0082】
実施形態9:電解質前駆体が、硫黄(S)含有材料を更に含む、実施形態8に記載の方法。
【0083】
実施形態10:電解質前駆体が、ハロゲン化物含有材料又は擬ハロゲン化物含有材料のうちの1種以上を更に含む、実施形態8又は実施形態9に記載の方法。
【0084】
実施形態11:ミリング後に混合物を加熱することを更に含む、実施形態8~10のいずれか1つに記載の方法。
【0085】
実施形態12:加熱が混合物の結晶化をもたらして電解質材料を形成する、実施形態11に記載の方法。
【0086】
実施形態13:混合物が、少なくとも100ppmの水を含む、実施形態8~12のいずれか1つに記載の方法。
【0087】
実施形態14:混合物が、約250ppmの水を含む、実施形態13に記載の方法。
【0088】
実施形態15:混合物が、約500ppmの水を含む、実施形態13に記載の方法。
【0089】
実施形態16:混合物が、1000ppmの水を含む、実施形態13に記載の方法。
【0090】
実施形態17:混合物が、約100,000ppmの水を含む、実施形態13に記載の方法。
【0091】
実施形態18:水が、ミリングの前に溶媒に添加される、実施形態8~17のいずれか一項に記載の方法。
【0092】
実施形態19:複数の電解質前駆体のうちの少なくとも1種が無水物である、実施形態8~18のいずれか1つに記載の方法。
【0093】
実施形態20:添加される水の量が、複数の電解質前駆体に含まれる水の量と溶媒に含まれる水の量とに基づいて予め決定される、実施形態8~19のいずれか1つに記載の方法。
【0094】
実施形態21:溶媒が、低極性の非プロトン性溶媒である、実施形態8~20のいずれか1つに記載の方法。
【0095】
実施形態22:溶媒が、キシレン、トルエン、ベンゼン、ヘプタン及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態21に記載の方法。
【0096】
実施形態23:溶媒が、エーテル、エステル、ニトリル又はアルコールを含む、実施形態8~20のいずれか1つに記載の方法。
【0097】
実施形態24:正極と、電解質材料と、負極とを含む電気化学セルであって、電解質材料が正極と負極との間に配置されており、電解質材料が、実施形態8~23のいずれか1つに記載の方法によって製造された、電気化学セル。
【0098】
実施形態25:Li、T、X、A、O、及び任意選択的にY、を含む固体電解質材料であって、Tが、P、As、Si、Ge、Al及びBからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり;Xと、存在する場合にYは、ハロゲン又は擬ハロゲンであり;Aは、S、Se及びNからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり;電解質材料は、約975cm-1±25cm-1、690cm-1±25cm-1、及び525cm-1±25cm-1にFT-IRピークを有する、固体電解質材料。
【0099】
実施形態26:TがPである、実施形態25に記載の固体電解質材料。
【0100】
実施形態27:XがClである、実施形態25又は実施形態26に記載の固体電解質材料。
【0101】
実施形態28:AがSである、実施形態25~27のいずれか1つに記載の固体電解質材料。
【0102】
実施形態29:材料が、式Li7-w-zPS6-w-z-vOvXwYzにより表される、実施形態25~28のいずれか1つに記載の固体電解質材料。
【0103】
実施形態30:0<v≦1である、実施形態29に記載の固体電解質材料。
【0104】
実施形態31:
図2に示されるようなFT-IRを有する、実施形態29又は実施形態30に記載の固体電解質材料。
【0105】
実施形態32:存在する酸素の量が、40ppm~1000ppmの水への曝露に基づく、実施形態29~31のいずれか1つに記載の固体電解質材料。
【0106】
実施形態33:電解質材料を含む電気化学セルが、0ppmのH2Oで合成された、酸素成分を欠く同じ電解質材料を含む電気化学セルと比較して、より高い放電容量を有する、実施形態29~32のいずれか1つに記載の固体電解質材料。
【0107】
実施形態34:電解質材料を含む電気化学セルが、0ppmのH2Oに曝露された、酸素成分を欠く同じ電解質材料を含む電気化学セルと比較して、より高い第1サイクル効率(FCE)を有する、実施形態29~33のいずれか1つに記載の固体電解質材料。
【0108】
実施形態35:電解質材料を含む電気化学セルが、0ppmのH2Oに曝露された、酸素成分を欠く同じ電解質材料を含む電気化学セルと比較して、より低い抵抗上昇を有する、実施形態29~34のいずれか1つに記載の固体電解質材料。
【0109】
実施形態36:電解質材料が少なくとも1×10-4mS/cm2のイオン伝導度を有する、実施形態25~35のいずれか1つに記載の固体電解質材料。
【0110】
実施形態37:固体電解質材料を製造する方法であって、
以下の反応:
XLi2S(Appm H2O)+YP2S5(Bppm H2O)+
ZLiX(Cppm H2O)+W溶媒(Dppm H2O)→
Li6PS5-EOECl+W溶媒
[式中、E=(X*A)+(Y*B)+(Z*C)+(W*D)であり、
A、B、C及びD=単位質量当たりのH2Oのppmであり、及び
Z、Y、Z及びW=単位質量である。]
に従って反応物を混合して、式Li6PS5-EOEClの固体電解質材料を生成させることと、
各前駆体及び溶媒の水のppmを制御して、高いイオン伝導度を有するとともに、高ニッケル含有量カソードに対して低い反応性を有する電解質材料を生成することと、
を含む、方法。
【実施例】
【0111】
実施例1:電解質材料の特性評価
固体電解質材料を、本明細書に記載されるプロセスに従って製造した。電解質材料は、電解質前駆体のうち、リンと硫黄とを含んでいた。電解質材料は、0ppm、100ppm、250ppm、500ppm及び1000ppmの含水量を有する前駆体を用いて合成した。フーリエ変換-赤外分光法(FT-IR)を実施して、これらの試料のそれぞれを特性評価した(
図2参照)。
図2に見られるように、電解質材料の含水量が増加するにつれて、約975cm
-1、690cm
-1及び525cm
-1におけるピークの大きさが増加する。ピークの帰属は不明であるが、ピークは本明細書に記載される材料に特徴的である。
【0112】
図2に示すように、電解質材料の含水量が増加するにつれて、S-O結合及びP-O結合に対応するピークの大きさも増加する。電解質材料の含水量が増加するにつれて、材料中の酸素の存在が増加する。
【0113】
実施例2:電解質材料の性能
実施例1の電解質材料について性能試験を実施した。性能試験の結果を
図3A~3Cに示す。
【0114】
図3Aは、充電サイクル1~12の後の電解質材料の放電容量をmAh/g単位で示す。100ppm、250ppm及び500ppmの水を有する電解質材料は、0ppm又は1000ppmの水を有する同じ電解質材料と比較したときに、より高い放電容量を有した。
【0115】
図3Bは、充電サイクル1~5の後の電解質材料の効率を示す。500ppm及び1000ppmの水を有する電解質材料は、0ppmの水を有する電解質材料と比較して、より高い第1サイクル効率(FCE)を有した。試験した全ての電解質材料は、少なくとも88%を超えるFCEを有していた。
【0116】
図3Cは、充電サイクル1~15の後の電解質材料の充電抵抗を示す。1000ppmの水を有する電解質材料は、0ppmの水を有する材料と比較して、抵抗の増加がわずかに低い。
【0117】
図4は、1000ppmの水を有する前駆体を用いて合成された電解質材料のXRDパターンを示す。
図4に示すXRDパターンから、電解質材料が、Li
5.5PS
4.5-xO
xClの電解質相とLiClの電解質相とを含む複合体であることが確認できる。Li
5.5PS
4.5-xO
xClは、15.4°、17.9°、25.4°、29.9°及び31.4°にピークを有する。LiClは34.7°にピークを有する。
【0118】
実施例3:100,000ppmの水を有する電解質材料
前駆体と、100,000ppmの水を有する溶媒とを用いて合成される電解質材料を、本開示の方法に従って製造した。
図5に示すXRDパターンから、電解質材料は、Li
5.5PS
4.5-xO
xClの電解質相と、Li
2Sの電解質相と、LiClの電解質相とを含む複合体であることが確認できる。Li
5.5PS
4.5-xO
xClは、15.7°、18.1°、25.6°、29.8°及び31.6°にピークを有する。Li
2Sは、27.2°にピークを有する。LiClは34.9°にピークを有する。
【手続補正書】
【提出日】2024-12-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0118
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0118】
実施例3:100,000ppmの水を有する電解質材料
前駆体と、100,000ppmの水を有する溶媒とを用いて合成される電解質材料を、本開示の方法に従って製造した。
図5に示すXRDパターンから、電解質材料は、Li
5.5PS
4.5-xO
xClの電解質相と、Li
2Sの電解質相と、LiClの電解質相とを含む複合体であることが確認できる。Li
5.5PS
4.5-xO
xClは、15.7°、18.1°、25.6°、29.8°及び31.6°にピークを有する。Li
2Sは、27.2°にピークを有する。LiClは34.9°にピークを有する。
本発明に関連する発明の実施形態の一部を以下に示す。
[実施形態1]
正極と、
前記正極と負極との間に配置された電解質材料と、
を含み、
前記電解質材料は、一般式:
Li
7-w-z
PS
6-w-z-v
O
v
X
w
Y
z
(式中、X及びYはそれぞれ、ハロゲン及び擬ハロゲンのうちの1種以上であり;
0≦w≦2;
0≦z≦2;及び
0<v≦1である。)
を有する、
電気化学セル。
[実施形態2]
X及びYが、それぞれ、F、Cl、Br、I、BF
4
、BH
4
、NO
2
及びNO
3
からなる群から選択される、[実施形態1]に記載の電気化学セル。
[実施形態3]
前記電解質材料が、975±25cm
-1
、690±25cm
-1
、及び525±25cm
-1
に吸収ピークを有するFT-IRスペクトルを有する、[実施形態1]又は[実施形態2]に記載の電気化学セル。
[実施形態4]
前記電気化学セルが、一般式Li
7-w-z
PS
6-w-z
X
w
Y
z
を有する電解質材料を含む電気化学セルと比較して、より高い放電容量を有する、[実施形態1]~[実施形態3]のいずれか一項に記載の電気化学セル。
[実施形態5]
前記電気化学セルが、一般式Li
7-w-z
PS
6-w-z
X
w
Y
z
を有する電解質材料を含む電気化学セルと比較して、より高い第1サイクル効率を有する、[実施形態1]~[実施形態4]のいずれか一項に記載の電気化学セル。
[実施形態6]
前記電気化学セルが、少なくとも約88%の第1サイクル効率を有する、[実施形態1]~[実施形態5]のいずれか一項に記載の電気化学セル。
[実施形態7]
前記電気化学セルが、一般式Li
7-w-z
PS
6-w-z
X
w
Y
z
を有する電解質材料を含む電気化学セルと比較して、より低い充電抵抗を有する、[実施形態1]~[実施形態6]のいずれか一項に記載の電気化学セル。
[実施形態8]
電解質材料を製造する方法であって、以下のものを含む混合物をミリングすることを含む方法:
複数の電解質前駆体であって、1種以上のリチウム(Li)含有材料を含む複数の電解質前駆体;
1種以上のリン(P)含有材料;
ハロゲン化物又は擬ハロゲン化物;
1種以上の溶媒;及び
水。
[実施形態9]
前記電解質前駆体が、硫黄(S)含有材料を更に含む、[実施形態8]に記載の方法。
[実施形態10]
前記電解質前駆体が、ハロゲン化物含有材料又は擬ハロゲン化物含有材料のうちの1種以上を更に含む、[実施形態8]又は[実施形態9]に記載の方法。
[実施形態11]
前記ミリングの後に前記混合物を加熱することを更に含む、[実施形態8]~[実施形態10]のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態12]
前記加熱が、前記混合物の結晶化をもたらして前記電解質材料を形成する、[実施形態11]に記載の方法。
[実施形態13]
前記混合物が、少なくとも100ppmの水を含む、[実施形態8]~[実施形態12]のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態14]
前記混合物が、約250ppmの水を含む、[実施形態13]に記載の方法。
[実施形態15]
前記混合物が、約500ppmの水を含む、[実施形態13]に記載の方法。
[実施形態16]
前記混合物が、約1000ppmの水を含む、[実施形態13]に記載の方法。
[実施形態17]
前記混合物が、約100,000ppmの水を含む、[実施形態13]に記載の方法。
[実施形態18]
前記水が、前記ミリングの前に前記溶媒に添加される、[実施形態8]~[実施形態17]のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態19]
前記複数の電解質前駆体のうちの少なくとも1種が無水物である、[実施形態8]~[実施形態18]のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態20]
添加される水の量が、前記複数の電解質前駆体に含まれる水の量と、前記溶媒に含まれる水の量とに基づいて予め決定される、[実施形態8]~[実施形態19]のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態21]
前記溶媒が、低極性の非プロトン性溶媒である、[実施形態8]~[実施形態20]のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態22]
前記溶媒が、キシレン、トルエン、ベンゼン、ヘプタン及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、[実施形態21]に記載の方法。
[実施形態23]
前記溶媒が、エーテル、エステル、ニトリル又はアルコールを含む、[実施形態8]~[実施形態20]のいずれか一項に記載の方法。
[実施形態24]
電気化学セルであって、
正極;
電解質材料;及び
負極;
を含み、
ここで、
前記電解質材料が、前記正極と前記負極との間に配置されており、
前記電解質材料が、[実施形態8]~[実施形態23]のいずれか一項に記載の方法によって製造される、
電気化学セル。
[実施形態25]
固体電解質材料であって、
Li、T、X、A、O、及び任意選択的にY、を含み、
ここで、Tは、P、As、Si、Ge、Al及びBからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり;
Xと、存在する場合にYは、ハロゲン又は擬ハロゲンであり;
Aは、S、Se及びNからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり;
前記電解質材料は、約975cm
-1
±25cm
-1
、690cm
-1
±25cm
-1
、及び525cm
-1
±25cm
-1
にFT-IRピークを有する、
固体電解質材料。
[実施形態26]
TがPである、[実施形態25]に記載の固体電解質材料。
[実施形態27]
XがClである、[実施形態25]又は[実施形態26]に記載の固体電解質材料。
[実施形態28]
AがSである、[実施形態25]~[実施形態27]のいずれか一項に記載の固体電解質材料。
[実施形態29]
前記材料が、式Li
7-w-z
PS
6-w-z-v
O
v
X
w
Y
z
によって表される、[実施形態25]~[実施形態27]のいずれか一項に記載の固体電解質材料。
[実施形態30]
0<v≦1である、[実施形態29]に記載の固体電解質材料。
[実施形態31]
前記固体電解質材料が、図2に示すFT-IRを有する、[実施形態29]に記載の固体電解質材料。
[実施形態32]
存在する酸素の量が、40ppm~1000ppmの水への曝露に基づく、[実施形態29]に記載の固体電解質材料。
[実施形態33]
前記電解質材料を含む電気化学セルが、0ppmのH
2
Oで合成された、酸素成分を欠く同じ電解質材料を含む電気化学セルと比較して、より高い放電容量を有する、[実施形態29]~[実施形態32]のいずれか一項に記載の固体電解質材料。
[実施形態34]
前記電解質材料を含む電気化学セルが、0ppmのH
2
Oに曝露された、酸素成分を欠く同じ電解質材料を含む電気化学セルと比較して、より高い第1サイクル効率(FCE)を有する、[実施形態29]~[実施形態33]のいずれか一項に記載の固体電解質材料。
[実施形態35]
前記電解質材料を含む電気化学セルが、0ppmのH
2
Oに曝露された、酸素成分を欠く同じ電解質材料を含む電気化学セルと比較して、より低い抵抗上昇を有する、[実施形態29]~[実施形態34]のいずれか一項に記載の固体電解質材料。
[実施形態36]
前記電解質材料が、少なくとも1×10
-4
mS/cm
2
のイオン伝導度を有する、[実施形態25]~[実施形態35]のいずれか一項に記載の固体電解質材料。
[実施形態37]
固体電解質材料を製造する方法であって、
以下の反応:
XLi
2
S
(Appm
H2O
)+YP
2
S
5(Bppm
H2O)
+
ZLi
X(Cppm
H2O)
+W溶媒
(Dppm
H2O)
→
Li
6
P
S5-E
O
E
Cl+W溶媒
[式中、E=(X
*
A)+(Y
*
B)+(Z
*
C)+(W
*
D)
A、B、C及びD=単位質量当たりのH
2
Oのppm、及び
Z、Y、Z及びW=単位質量である。]
に従って反応物を混合して、式Li
6
PS
5-E
O
E
Clの固体電解質材料を生成させることと、
各前駆体及び溶媒の水のppmを制御して、高いイオン伝導度を有するとともに、高ニッケル含有量カソードに対して低い反応性を有する電解質材料を生成することと、
を含む、方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、
前記正極と負極との間に配置された電解質材料と、
を含み、
前記電解質材料は、一般式:
Li
7-w-zPS
6-w-z-vO
vX
wY
z
(式中、X及びYはそれぞれ、ハロゲン及び擬ハロゲンのうちの1種以上であり;
0≦w≦2;
0≦z≦2;及び
0<v≦1である。)
を有
し、
前記電解質材料が、975±25cm
-1
、690±25cm
-1
、及び525±25cm
-1
に吸収ピークを有するFT-IRスペクトルを有する、
電気化学セル。
【請求項2】
X及びYが、それぞれ、F、Cl、Br、I、BF
4、BH
4、NO
2及びNO
3からなる群から選択される、請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項3】
前記電気化学セルが、一般式Li
7-w-zPS
6-w-zX
wY
zを有する電解質材料を含む電気化学セルと比較して、より高い放電容量を有する、請求項1~
2のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項4】
前記電気化学セルが、一般式Li
7-w-zPS
6-w-zX
wY
zを有する電解質材料を含む電気化学セルと比較して、より高い第1サイクル効率を有する、請求項1
又は2に記載の電気化学セル。
【請求項5】
前記電気化学セルが、少なくとも約88%の第1サイクル効率を有する、請求項1
又は2に記載の電気化学セル。
【請求項6】
前記電気化学セルが、一般式Li
7-w-zPS
6-w-zX
wY
zを有する電解質材料を含む電気化学セルと比較して、より低い充電抵抗を有する、請求項1
又は2に記載の電気化学セル。
【請求項7】
電解質材料を製造する方法であって、以下のものを含む混合物をミリングすることを含む方法:
複数の電解質前駆体であって、1種以上のリチウム(Li)含有材料を含む複数の電解質前駆体;
1種以上のリン(P)含有材料;
ハロゲン化物又は擬ハロゲン化物;
1種以上の溶媒;及び
水。
【請求項8】
前記電解質前駆体が、硫黄(S)含有材料を更に含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記電解質前駆体が、ハロゲン化物含有材料又は擬ハロゲン化物含有材料のうちの1種以上を更に含む、請求項
7又は
8に記載の方法。
【請求項10】
前記ミリングの後に前記混合物を加熱することを更に含む、請求項
7又は8に記載の方法。
【請求項11】
前記加熱が、前記混合物の結晶化をもたらして前記電解質材料を形成する、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記混合物が、少なくとも100ppmの水を含む、請求項
7又は8に記載の方法。
【請求項13】
前記水が、前記ミリングの前に前記溶媒に添加される、請求項
7又は8に記載の方法。
【請求項14】
前記複数の電解質前駆体のうちの少なくとも1種が無水物である、請求項
7又は8に記載の方法。
【請求項15】
添加される水の量が、前記複数の電解質前駆体に含まれる水の量と、前記溶媒に含まれる水の量とに基づいて予め決定される、請求項
7又は8に記載の方法。
【請求項16】
前記溶媒が、低極性の非プロトン性溶媒である、請求項
7又は8に記載の方法。
【請求項17】
前記溶媒が、キシレン、トルエン、ベンゼン、ヘプタン及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
前記溶媒が、エーテル、エステル、ニトリル又はアルコールを含む、請求項
7又は8に記載の方法。
【請求項19】
電気化学セルであって、
正極;
電解質材料;及び
負極;
を含み、
ここで、
前記電解質材料が、前記正極と前記負極との間に配置されており、
前記電解質材料が、請求項
7又は8に記載の方法によって製造される、
電気化学セル。
【請求項20】
固体電解質材料であって、
Li、T、X、A、O、及び任意選択的にY、を含み、
ここで、Tは、P、As、Si、Ge、Al及びBからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり;
Xと、存在する場合にYは、ハロゲン又は擬ハロゲンであり;
Aは、S、Se及びNからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり;
前記電解質材料は、約975cm
-1±25cm
-1、690cm
-1±25cm
-1、及び525cm
-1±25cm
-1にFT-IRピークを有する、
固体電解質材料。
【請求項21】
TがPである、請求項
20に記載の固体電解質材料。
【請求項22】
XがClである、請求項
20又は
21に記載の固体電解質材料。
【請求項23】
AがSである、請求項
20又は21に記載の固体電解質材料。
【請求項24】
前記材料が、式Li
7-w-zPS
6-w-z-vO
vX
wY
zによって表される、請求項
20又は21に記載の固体電解質材料。
【請求項25】
0<v≦1である、請求項
24に記載の固体電解質材料。
【請求項26】
前記固体電解質材料が、
図2に示すFT-IRを有する、請求項
24に記載の固体電解質材料。
【請求項27】
存在する酸素の量が、40ppm~1000ppmの水への曝露に基づく、請求項
24に記載の固体電解質材料。
【請求項28】
前記電解質材料を含む電気化学セルが、0ppmのH
2Oで合成された、酸素成分を欠く同じ電解質材料を含む電気化学セルと比較して、より高い放電容量を有する、請求項
24に記載の固体電解質材料。
【請求項29】
前記電解質材料を含む電気化学セルが、0ppmのH
2Oに曝露された、酸素成分を欠く同じ電解質材料を含む電気化学セルと比較して、より高い第1サイクル効率(FCE)を有する、請求項
24に記載の固体電解質材料。
【請求項30】
前記電解質材料を含む電気化学セルが、0ppmのH
2Oに曝露された、酸素成分を欠く同じ電解質材料を含む電気化学セルと比較して、より低い抵抗上昇を有する、請求項
24に記載の固体電解質材料。
【請求項31】
前記電解質材料が、少なくとも1×10
-4mS/cm
2のイオン伝導度を有する、請求項
20又は21に記載の固体電解質材料。
【請求項32】
固体電解質材料を製造する方法であって、
以下の反応:
XLi
2S
(Appm H2O)+YP
2S
5(Bppm H2O)+
ZLi
X(Cppm H2O)+W溶媒
(Dppm H2O)→
Li
6P
S5-EO
ECl+W溶媒
[式中、E=(X
*A)+(Y
*B)+(Z
*C)+(W
*D)
A、B、C及びD=単位質量当たりのH
2Oのppm、及び
Z、Y、Z及びW=単位質量である。]
に従って反応物を混合して、式Li
6PS
5-EO
EClの固体電解質材料を生成させることと、
各前駆体及び溶媒の水のppmを制御して、高いイオン伝導度を有するとともに、高ニッケル含有量カソードに対して低い反応性を有する電解質材料を生成することと、
を含む、方法。
【国際調査報告】