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特表2024-547075ユーザ臨床解釈に基づく電気生理学的(EP)マップポイント調整
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  • 特表-ユーザ臨床解釈に基づく電気生理学的(EP)マップポイント調整 図1
  • 特表-ユーザ臨床解釈に基づく電気生理学的(EP)マップポイント調整 図2A
  • 特表-ユーザ臨床解釈に基づく電気生理学的(EP)マップポイント調整 図2B
  • 特表-ユーザ臨床解釈に基づく電気生理学的(EP)マップポイント調整 図2C
  • 特表-ユーザ臨床解釈に基づく電気生理学的(EP)マップポイント調整 図3
  • 特表-ユーザ臨床解釈に基づく電気生理学的(EP)マップポイント調整 図4A
  • 特表-ユーザ臨床解釈に基づく電気生理学的(EP)マップポイント調整 図4B
  • 特表-ユーザ臨床解釈に基づく電気生理学的(EP)マップポイント調整 図4C
  • 特表-ユーザ臨床解釈に基づく電気生理学的(EP)マップポイント調整 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ユーザ臨床解釈に基づく電気生理学的(EP)マップポイント調整
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/367 20210101AFI20241219BHJP
【FI】
A61B5/367
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537129
(86)(22)【出願日】2022-11-20
(85)【翻訳文提出日】2024-07-17
(86)【国際出願番号】 IB2022061184
(87)【国際公開番号】W WO2023119005
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】17/555,629
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】マサルワ・ファディ
(72)【発明者】
【氏名】セゲブ・メイタル
(72)【発明者】
【氏名】アルトマン・シガル
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127GG05
4C127HH13
4C127HH16
4C127LL08
(57)【要約】
一例では、方法は、心臓腔の表面の少なくとも一部の電気生理学的(EP)マップを受信することを含み、EPマップは、表面上の複数のそれぞれの位置にオーバーレイされた複数のEP値を含む。入力デバイスを使用してユーザによってEPマップ上にマークされた臨床入力が識別される。EP値のうちの1つ以上は、臨床入力と一致するように自動的に調整される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気生理学的マッピングのためのシステムであって、
心臓腔の表面の少なくとも一部の電気生理学的(EP)マップを記憶するように構成されたメモリであって、前記EPマップは、前記表面上の複数のそれぞれの位置にオーバーレイされた複数のEP値を含む、メモリと、
プロセッサと、を備え、前記プロセッサは、
入力デバイスを使用してユーザによって前記EPマップ上にマークされた臨床入力を受信し、
前記臨床入力と一致するように前記EP値のうちの1つ以上を自動的に調整するように構成されている、システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記臨床入力と一致するように前記位置のうちの1つ以上を調整するようにさらに構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記臨床入力は、1つ以上の興奮経路を示す、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記1つ以上の興奮経路は、前記EPマップを表示するタッチスクリーンを使用して前記EPマップ上に電子的に描画される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記プロセッサは、電位図上の関心ウィンドウ(WOI)を調整し、前記調整されたWOIに基づいて前記電位図に注釈を付けることによって、前記EP値を調整するように構成されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記臨床入力は、前記EPマップ上の1つ以上の領域を示す、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記1つ以上の領域は、前記EPマップを表示するタッチスクリーンを使用して前記EPマップ上に電子的に描画される、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記1つ以上の領域における前記EP値の信頼レベル閾値を調整することによって前記EP値を調整するように構成されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記識別された臨床入力に関連して、どの前記EP値を考慮すべきかを決定するために、事前定義された包含基準を適用することによって、前記臨床入力を識別するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記EP値は、局所興奮時間(LAT)、双極電位、及び単極電位のうちの1つである、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記入力デバイスは、タッチスクリーン、コンピュータマウス、及びトラックボールのうちの1つである、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
電気生理学的マッピングのための方法であって、
心臓腔の表面の少なくとも一部の電気生理学的(EP)マップを受信することであって、前記EPマップは、前記表面上の複数のそれぞれの位置にオーバーレイされた複数のEP値を含む、受信することと、
入力デバイスを使用してユーザによって前記EPマップ上にマークされた臨床入力を識別することと、
前記EP値のうちの1つ以上を、前記臨床入力と一致するように自動的に調整することと、
を含む方法。
【請求項13】
前記臨床入力と一致するように前記位置のうちの1つ以上を調整することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記臨床入力は、1つ以上の興奮経路を示す、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記1つ以上の興奮経路は、前記EPマップを表示するタッチスクリーンを使用して前記EPマップ上に電子的に描画される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記EP値を調整することは、電位図上の関心ウィンドウ(WOI)を調整し、前記調整されたWOIに基づいて前記電位図に注釈を付けることを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記臨床入力は、前記EPマップ上の1つ以上の領域を示す、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記1つ以上の領域は、前記EPマップを表示するタッチスクリーンを用いて前記EPマップ上に電子的に描画される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記EP値を調整することは、前記1つ以上の領域における前記EP値の信頼レベル閾値を調整することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記臨床入力を識別することは、前記識別された臨床入力に関連して、どの前記EP値を考慮するべきかを決定するために、事前定義された包含基準を適用することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記EP値は、局所興奮時間(LAT)、双極電位、及び単極電位のうちの1つである、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
前記入力デバイスは、タッチスクリーン、コンピュータマウス、及びトラックボールのうちの1つである、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、電気生理学的マッピングに関し、特に、心臓電気生理学的マップの手動支援編集に関する。
【背景技術】
【0002】
電気生理学的マップの解釈を支援する編集ツールは特許文献において以前に提案されている。例えば、米国特許第8,478,393号は、一定期間にわたる臓器表面の電気活動を表す電気生理学データを可視化する方法を説明する。この期間内の間隔が、ユーザの選択に応じて選択される。ユーザによる間隔の選択に応答して、ユーザが選択した間隔についての生理学的情報の視覚的表現が、少なくとも1つの方法をデータに適用することによって生成される。この視覚的表現は、器官の表面の所定の領域のグラフ表示上に空間的に表される。
【図面の簡単な説明】
【0003】
本開示は、図面と併せて、本開示の実施例の以下の詳細な説明からより完全に理解されるであろう。
図1】本開示の一実施形態による、電気生理学的(electrophysiological、EP)マッピングのシステムの模式的な描写図である。
図2A】本開示の一実施形態による、伝搬経路(2A及び2B)及び領域マーキング(2C)のユーザ臨床入力がオーバーレイされた模式的な絵画的EPマップである。
図2B】本開示の一実施形態による、伝搬経路(2A及び2B)及び領域マーキング(2C)のユーザ臨床入力がオーバーレイされた模式的な絵画的EPマップである。
図2C】本開示の一実施形態による、伝搬経路(2A及び2B)及び領域マーキング(2C)のユーザ臨床入力がオーバーレイされた模式的な絵画的EPマップである。
図3】本開示の一実施形態による、ヒント付き経路と一致するように再計算された注釈時間とともに、臨床入力としてユーザから提供されたヒント付き興奮経路の模式図である。
図4A】本開示の一実施形態による、ヒント付き経路と整合するように、図3に示す注釈時間を再計算するステップの模式図である。及び
図4B】本開示の一実施形態による、ヒント付き経路と整合するように、図3に示す注釈時間を再計算するステップの模式図である。及び
図4C】本開示の一実施形態による、ヒント付き経路と整合するように、図3に示す注釈時間を再計算するステップの模式図である。及び
図5】本開示の別の一実施形態による、ユーザ臨床入力を使用してEPマップのデータ点を調整するための方法を模式的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0004】
概要
カテーテルベースの電気生理学的(EP)マッピング技術は、心臓の左心房などの器官の様々なタイプのEPマップを生成することができる。局所興奮時間(local activation time、LAT)マップ、双極電位マップ、又は単極電位マップなどの心臓EPマップは、心臓腔表面上の場所から電位図を取得することによって作成される。次いで、LAT(又は電位)などのEP値が、これらの場所の電位図から導出される。そのような場所、及び以下で「データ点」と呼ばれるそれぞれのEP値は、次いで、典型的には色を使用し、心臓腔の3Dマップの上にオーバーレイされる。
【0005】
実際には、取得された膨大な数のデータ点の分析は、EPマップにおいて誤った結果をもたらす可能性がある。EPマップにおける誤差は、取得中(例えば、低い信号対雑音比、カテーテルによる心臓壁の機械的歪み)、及び分析段階(例えば、興奮の誤った時間注釈)などの様々な困難に起因する。
【0006】
例えば、LAT注釈のいくつかは、複雑なアルゴリズムにおいて不正確になる可能性がある。不正確さを軽減するために、LAT一貫性アルゴリズムが、不正確なLATを識別するために使用されてもよく、一度識別されると、不正確なLATは、マップを着色するために使用されない。LAT補正は、EP信号にわたって関心ウィンドウ(window of interest)(WOI-LAT推定に使用される心周期の一部)を変更すること、及び/又はLAT一貫性アルゴリズムにおける閾値を調整することに基づいてもよい。さらに、上記の方法のいずれも、外れ値のEP値をEPマップに組み込むことを妨げない。
【0007】
したがって、典型的には、医師はしばしば、観察時に不正確さを手動で補正する。医師によるこのような手動補正は、面倒かつ時間がかかる。さらに、最新の多電極カテーテルでは取得されるデータ点の数が増加するため、医師が手動補正を行うことはますます非実用的になる。
【0008】
以下に説明される本開示の例は、医師が提供する臨床入力を利用して、EPマップの特定の部分の精度を改善する方法及びシステムを提供する。例えば、熟練した医師からの臨床入力を使用して、通常は同じ医師が手動で行う補正を自動化できる。開示された技術は、医師に正確な手動補正を入力させるのではなく、医師が行う高レベルの洞察に依存しており、通常は医師がEPマップ上に特定の一般的な臨床的に意味のある傾向を入力できるようにし(例えば、マップを表示するタッチスクリーン上に描く)、その後、ポイントがこれらの観察された「全体的な」傾向と一致するようにマップを自動的に調整する。
【0009】
一例では、医師は、臨床的に観察されたEP波の伝播方向を示す方向曲線を描き得る。その矢印に沿って自動的に計算されたLATは、この追加入力に基づいて、より正確なLATを提供するために再計算され得る。矢印の場所及び方向は、臨床的に重要な領域におけるLATマップを改善するために、開示された技術及びアルゴリズムによって使用されてもよい。
【0010】
例えば、WOIを移動させたり、又はLATを決定するためにより小さいWOIを定義したりすることで、精度は向上し得る。新しいWOIは、医師によって提供される矢印の方向ならびに隣接するLATに基づいて決定されてもよい。矢印の方向はまた、外れ値を選択するときに臨床入力が考慮されるように、LAT一貫性アルゴリズムへの入力を提供してもよい。
【0011】
一例では、プロセッサは、ヒント興奮経路の形態のユーザ臨床入力を有するEPマップを受信する。プロセッサは、データ点をソートする(各データ点は、図4Aに示すように、EPマップ上の位置におけるEP値から成る)。次いで、プロセッサは、区分的回帰を実行することによって経路をセグメント化し、最適なLAT興奮経路を見出す。プロセッサは、各データ点についてWOIを調整し、調整されたWOIの再計算された注釈(例えば、LAT注釈)を使用して、より正確なEPマップを生成し、重要な点として、臨床入力と一致するEPマップを生成する。
【0012】
別の例では、医師は、臨床的に特定の特徴を有すると観察された領域を囲み得る。この臨床入力は、マッピングを向上させるために使用され得る。例えば、LAT一貫性アルゴリズムの感度は、領域の分類に基づいて調整されてもよい。一例では、この特徴は瘢痕組織である。この場合、円で囲まれた領域内の点は、外れ値として分類されなくてもよい。本技術は、マップ上の非公式な描画形態で与えられるユーザ洞察に基づいてEPマップ編集を自動化することにより、短時間で膨大な数のデータ点を取得する多電極カテーテルシステムのマップ品質を向上させる。
【0013】
典型的には、プロセッサは、プロセッサが、上で概略されるプロセッサ関連ステップ及び機能の各々を実施することを可能にする特定のアルゴリズムを含むソフトウェアにプログラム化されている。
【0014】
医師に提供される前述のインタラクティブなグラフィカル手段、及び医師の非公式(例えば、手描き)入力を実装するためのアルゴリズムを使用し、EPマップ精度を高めることにより、開示された技術は、医師によるEPマップの解釈を支援し、したがって、診断カテーテル法で要求されるような複雑な診断タスクの迅速化かと品質の向上を図り得る。
【0015】
システムの説明
図1は、本開示の一実施形態による、電気生理学的(EP)マッピングのシステム21の模式的な描写図である。図1は、患者25の心臓23のEPマッピングを実行するために、マッピングPentaray(登録商標)カテーテル29を使用している医師27を示す。カテーテル29は、その遠位端に、機械的に可撓性であり得る1つ以上のアーム20を備え、各アームに1つ以上の電極22が連結されている。マッピング手順中に、電極22は、心臓23の組織から及び/又は心臓23の組織への単極信号及び/又は双極信号を取得及び/又は注入する。プロセッサ28は、電気的インターフェース35を介してこれらの信号を受信し、これらの信号に含まれる情報を使用してEPマップ31を構築し、EPマップ31は、プロセッサ28によってメモリ33に記憶される。処置中及び/又は処置後に、プロセッサ28は、ディスプレイ26上にEPマップ31を表示し得、ディスプレイ26は、図2A図2Cに示すように、医師27が、興奮経路及び瘢痕領域をマーキングするなど、EPマップ31上に臨床入力をマーキングできるタッチスクリーンであってもよい。代替的又は追加的に、医師27は、例えばマウス又はトラックボール37の形態の任意の他の適切な入力デバイスを使用して臨床入力をマークしてもよい。
【0016】
EPマップ31は、LATマップ、双極電位マップ、又は別のマップタイプであり得る。図2及び図3に記載されるように、EPマップ31の品質は、信頼レベルを導出して提示する開示技術を使用することによって改善される。
【0017】
処置中に、追跡システムを使用して感知電極22のそれぞれの場所を追跡することで、信号の各々とその信号を取得した場所とを関連付けることができる。例えば、その開示が参照により本明細書に援用される米国特許第8,456,182号に記載されている、Biosense-Webster(Irvine California)製のActive Catheter Location(ACL)システムを使用してもよい。ACLシステムでは、プロセッサは、感知電極22の各々と患者25の皮膚に連結されている複数の表面電極24との間で測定されたインピーダンスに基づいて、電極のそれぞれの場所を推定する。例えば、3つの表面電極24を患者の胸部に連結し、別の3つの表面電極を患者の背部に連結してもよい。例示しやすいように、1本の表面電極のみを図1に示す。患者の心臓23内部の電極22と表面電極24との間に電流が流される。プロセッサ28は、表面電極24で測定して得られた電流振幅間(又はこれらの振幅によって示されるインピーダンス間)の比及び患者の身体上の電極24の既知の位置に基づいて、患者の心臓内のすべての電極22の推定される場所を計算する。こうして、プロセッサは、電極22から受信した任意の所与のインピーダンス信号と信号が取得された場所とを関連付けることができる。
【0018】
図1に示す例示的な図示は、単に概念を明確にするために選んだものである。電圧信号の測定に基づく方法など、その他の追跡方法を使用することができる。Lasso(登録商標)カテーテル(Biosense Webster製)、又はバスケットカテーテルなどの他の種類の検出カテーテルが、同等に用いられてもよい。物理的接触センサは、測定中に、電極22の各々と心臓腔の内面との間の接触品質を推定するために、マッピングカテーテル29の遠位端に取り付けられ得る。
【0019】
プロセッサ28は、典型的には、本明細書に記載されている機能を実行するようにプログラムされたソフトウェアとともに汎用コンピュータを備える。特に、プロセッサ28は、図3に含まれている本明細書に開示される専用のアルゴリズムを実行し、これは、以下でさらに記載のように、プロセッサ28が本開示のステップを行うことを可能にする。ソフトウェアは、例えばネットワークを介して電子形式でコンピュータにダウンロードされてもよく、あるいは、代替的又は追加的に、磁気メモリ、光学メモリ、又は電子メモリなどの非一時的な有形媒体に提供及び/又は格納されてもよい。
【0020】
AN EPマップとマークされたユーザ臨床入力
上述したように、LAT値及びフィルタリング状態(LAT一貫性)などのいくつかの取得された点属性は、多くの場合、医師の臨床診断及び観察を考慮に入れない数学的アルゴリズムによって決定される。例えば、いくつかの不整脈では、リエントリ経路内の点のLAT値の自動計算が不正確であり、これは、誤った色付け及び一貫性決定につながり得る。
【0021】
典型的には、ユーザは、問題のある各点を手動で反復し、それらを手動で修正する(例えば、注釈を修正するか、又は一貫性外れ値分類を変更する)。このプロセスは面倒であり、点が複数の場合には、ユーザがすべてを見つけられない可能性がある。
【0022】
特定の領域における一般的な波の伝搬方向などの臨床医師のヒントを利用すると、このプロセスを自動化し、アルゴリズムがより良い結果を得るのに役立ち得る。本開示では、研究の臨床的理解に基づく様々な医師ガイドライン/ヒントを、LAT一貫性及び地図注釈アルゴリズムなどのポイント関連アルゴリズムにどのように組み込むかを説明する。
【0023】
本開示は、2つのタイプの臨床ヒントを考慮する。
1.直接的。この場合、医師は、(ユーザ臨床観察に基づいて)波の伝搬方向又はブロックのラインについてのヒントを提供する1つ以上の方向曲線をマップ表面上に描く。これらの曲線を使用すると、曲線(経路)上の最も近い場所によって決定される各点に対して、より厳密なWOI(又は場合によっては固定されたWOI位置)を有することで、マップ注釈アルゴリズムを改善できる。新しいWOIは、ヒント及び隣接点注釈に基づいて計算される。追加的に、方向曲線は、現在のLAT一貫性アルゴリズムの入力として機能し、したがって、統計的領域値だけでなく臨床値を考慮することによって、各点の外れ値の決定を改善できる。具体的には、これらの曲線は、LAT一貫性アルゴリズムの第2段階で使用される、より信頼性の高い伝導経路を構築するのに役立つ。
2.領域。この場合、臨床ヒントはマップ表面上の特定の領域にあり、例えば、(2a)内のすべての点が瘢痕とみなされる瘢痕エリア、(2b)内の点が外れ値として分類されることのない高レベルの確実性エリアなど、この領域の基礎となる点を分類するのに役立ついくつかの方法で解釈できる。
【0024】
図2A図2Cは、本開示の一実施形態による、伝搬経路(それぞれ、図2A及び図2B上の204及び214)及び領域226マーキング(図2C上の224)のユーザ臨床入力がオーバーレイされた模式的な絵画的EPマップである。
【0025】
図2AのEPマップ202(LATマップ)において、医師は、臨床入力としてヒント付き興奮経路204を描き、LAT値がそれらの経路に沿って一貫している(例えば、単調に増加している)と予想した。
【0026】
同様に、LATマップでもある図2BのEPマップ212において、医師は、臨床入力としてヒント付き興奮経路214を描き、LAT値もこの半円形経路に沿って一貫している(例えば、単調に増加している)と予想した。
【0027】
LATマップ又は電位マップとすることができる図2CのEPマップ222において、医師は、臨床入力としてヒント付き領域226をマークするために閉曲線224を描く。これは、領域226がマップ表面上にあると予想され、以下のような、この領域の基礎となる点を分類するのに役立ついくつかの方法で解釈できる。
-すべての含まれる点が瘢痕とみなされる瘢痕エリア226
-含まれるデータ点が外れ値として分類されることのない高レベルな確実性エリア226
【0028】
ヒント付き興奮経路のユーザ臨床入力を使用してaN lat MAPを改善する
図3は、本開示の一実施形態による、ヒント付き経路と一致するように再計算された注釈時間(307、309)とともに、臨床入力としてユーザから提供されたヒント付き興奮経路304の模式図である。
【0029】
図示のように、ヒント付き興奮経路304の近傍に3つのデータ点306が存在し、データ点306は、図2のマップ202及び212等のLATマップ上のそれぞれの場所における興奮時間t、t、及びtである。デフォルトのWOI310(例えば、持続時間130ミリ秒)内の3つのそれぞれの電位図上の自動的に計算された注釈305は、時間がt>tとともに単調に増加しないため、ヒント付き興奮経路と一致しない。
【0030】
開示される技術は、ヒント付き興奮経路を使用して、デフォルトWOI310をより短いWOI320(例えば、WOI310の130ミリ秒よりも短い持続時間)に調整し、注釈時間を再計算する。
【0031】
図示のように、2つの注釈時間307は、WOIの変化によって変化しない。しかしながら、誤った注釈時間305は、アルゴリズムによって注釈309であると正しく見出され、これは、時間が経路に沿って単調に増加し、t<tであるので、ヒント付き興奮経路と一致する。
【0032】
ヒント付き興奮経路のユーザ臨床入力を使用してlat MAPを改善するためのアルゴリズム
図4A図4Cは、本開示の一実施形態による、ヒント付き経路と整合するように、図3に示すような注釈時間を再計算するステップの模式図である。
【0033】
図4Aは、臨床入力としてユーザによって提供されるヒント付き興奮経路404を示す。経路404は、LATマップ400上に描かれており、図2Bの経路214と概ね同様である。図示のように、アルゴリズムは、ヒント付き経路に基づいて再度検討(例えば、興奮時間の再計算)に関連するEP値を選択する(406)ために特定の基準を使用している。これらの選択された点は、(曲線に沿って)曲線の近傍にあり、ヒント付き曲線からのそれらの距離は、アルゴリズムパラメータのうちの1つとして定義される閾値よりも小さい(この閾値は、事前設定され得、又は利用可能なデータ点に従って自動的に計算され得る)。次に、選択されたデータ点は曲線に投影され、曲線内の位置に従って並べ替えられる(曲線の始点に最も近いものが時間的に早いものとなる)。
【0034】
予想され得るように、経路404は粗雑であり、図4Bに示されるように、アルゴリズムは、回帰モデルを使用して、ヒント付き経路404よりも正確な調整された興奮経路(414)を生成する(例えば、セグメント(410))。これは、経路414は再度検討のために選択されたLATデータ点(406)に基づいているが、調整では統計的に外れ値408が無視されるためである。
【0035】
図4Cに示される結果では、曲線404上の各位置に対して、アルゴリズムが有効なWOI420を提供し、(図3に示されるように)有効なWOIに基づいて再検討されたデータ点の注釈時間が計算され、注釈時間(307、309)が図3で再計算されるときに、ユーザの臨床入力と一致するEPマップを生成するために使用される。
【0036】
ヒント付き興奮経路のユーザ臨床入力を使用してEP MAPを改善する方法
図5は、本開示の別の一実施形態による、ユーザ臨床入力を使用してEPマップのデータ点を調整する方法を模式的に示すフローチャートである。提示された例によれば、アルゴリズムは、臨床入力受信ステップ502において、プロセッサ28が心臓の少なくとも一部のEPマップ(例えば、LATマップ)を、マップ上のユーザ臨床入力(例えば、描画されたヒント付き興奮経路)とともに受信することから始まるプロセスを実行する。
【0037】
次に、臨床入力タイプチェックステップ504において、プロセッサは、臨床入力タイプが、例えば興奮経路及び/又は閉領域であるかどうかをチェックする。
【0038】
臨床入力が領域と考えられる場合、割り当てステップ506は、領域の分類に基づくLAT一貫性アルゴリズムの感度の調整を含み得る。これにより、領域内のデータ点を外れ値として分類されることから除外し得る。分類は、(各点において)回帰直線を中心とするWOIを使用して行われ、更新されたWOIの外側にあるすべての点は、外れ値とみなされるべきである(図4C参照)。別の例では、そのような領域内のすべての点を瘢痕とみなし得る。
【0039】
考慮される臨床入力が1つ以上のヒント付き興奮経路である場合、ステップ508は、図4に記載されるアルゴリズムを実行して、任意のヒント付き興奮経路に沿ったEPマップの一貫性を保証し、外れ値データ点を識別することを含み得る。
【0040】
最後に、EPマップ提示ステップ510において、プロセッサ28は、医師による臨床観察とより一致するEPマップを作成する際にすべての臨床入力が使用された後に、更新されたEPマップを提示する。上述したように、開示された技術を使用して、EPマップ補正は、高レベルの臨床入力を提供する医師によって行われ、医師の側での綿密で面倒な手作業を必要としない。
【0041】
図5に示されている例示的なフローチャートは、純粋に概念を明確にする目的で選択されたものである。他の例では、ある点で衝突するいくつかの電位波を示唆する図、又は瘢痕領域もしくは低速伝導領域を示すためにある程度の厚さを有する経路を選択するなど、他のタイプの臨床入力が考慮されてもよい。
【実施例1】
【0042】
心臓腔の表面の少なくとも一部の電気生理学的(EP)マップ(310)を受信することを含む方法であって、EPマップは、表面上の複数のそれぞれの位置にオーバーレイされた複数のEP値を含む。入力デバイス(26、37)を使用してユーザによってEPマップ上にマークされた臨床入力(204、214、224)が識別される。EP値のうちの1つ以上は、臨床入力(204、214、224)と一致するように自動的に調整される。
【実施例2】
【0043】
臨床入力(204、214、226)と一致するように位置のうちの1つ以上を調整することを含む、請求項1に記載の方法。
【実施例3】
【0044】
臨床入力は、1つ以上の興奮経路(204、214)を示す、請求項1に記載の方法。
【実施例4】
【0045】
1つ以上の興奮経路(204、214)は、EPマップ(31)を表示するタッチスクリーン(26)を使用してEPマップ(31)上に電子的に描画される、請求項3に記載の方法。
【実施例5】
【0046】
EP値を調整することは、電位図上の関心ウィンドウ(WOI)(310)を調整し、調整されたWOI(320)に基づいて電位図に注釈を付ける(307、309)ことを含む、請求項3に記載の方法。
【実施例6】
【0047】
臨床入力は、EPマップ(31)上の1つ以上の領域(226)を示す、請求項1に記載の方法。
【実施例7】
【0048】
1つ以上の領域(226)は、EPマップ(31)を表示するタッチスクリーン(26)を使用してEPマップ(31)上に電子的に描画される、請求項6に記載の方法。
【実施例8】
【0049】
EP値を調整することは、1つ以上の領域(226)におけるEP値の信頼レベル閾値を調整することを含む、請求項7に記載の方法。
【実施例9】
【0050】
臨床入力(204、214、226)を識別することは、識別された臨床入力(204、214、226)に関連して、どのEP値を考慮するべきかを決定するために、事前定義された包含基準を適用することを含む、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【実施例10】
【0051】
EP値は、局所興奮時間(LAT)、双極電位、及び単極電位のうちの1つである、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【実施例11】
【0052】
入力デバイスは、タッチスクリーン(26)、コンピュータマウス、及びトラックボール(37)のうちの1つである、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【実施例12】
【0053】
メモリ(33)及びプロセッサ(28)を含むシステム。メモリ(33)は、心臓腔の表面の少なくとも一部の電気生理学的(EP)マップ(31)を記憶するように構成され、EPマップ(31)は、表面上の複数のそれぞれの位置にオーバーレイされた複数のEP値を含む。プロセッサ(28)は、(i)入力デバイス(26、37)を使用してユーザによってEPマップ(31)上にマークされた臨床入力(204、214、226)を受信し、(ii)臨床入力(204、214、226)と一致するようにEP値のうちの1つ以上を自動的に調整するように構成される。
【0054】
上に記載される実施例は例として挙げたものであり、本開示は本明細書の上記で特に図示及び記載されるものに限定されない点が理解されよう。むしろ、本開示の範囲は、上述した様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、ならびに前述の説明を読んで当業者が思いつくであろう、先行技術には開示されていないそれらの変形及び修正を含む。参照により本特許出願に組み込まれた文献は、本出願の不可欠な部分とみなされるべきであり、ただし、これらの組み込まれた文献においていずれかの用語が、本明細書で明示的又は暗黙的になされた定義と矛盾する方法で定義されている限り、本明細書の定義のみが考慮されるべきである。
【0055】
〔実施の態様〕
(1) 電気生理学的マッピングのための方法であって、
心臓腔の表面の少なくとも一部の電気生理学的(EP)マップを受信することであって、前記EPマップは、前記表面上の複数のそれぞれの位置にオーバーレイされた複数のEP値を含む、受信することと、
入力デバイスを使用してユーザによって前記EPマップ上にマークされた臨床入力を識別することと、
前記EP値のうちの1つ以上を、前記臨床入力と一致するように自動的に調整することと、
を含む方法。
(2) 前記臨床入力と一致するように前記位置のうちの1つ以上を調整することを含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記臨床入力は、1つ以上の興奮経路を示す、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記1つ以上の興奮経路は、前記EPマップを表示するタッチスクリーンを使用して前記EPマップ上に電子的に描画される、実施態様3に記載の方法。
(5) 前記EP値を調整することは、電位図上の関心ウィンドウ(window of interest)(WOI)を調整し、前記調整されたWOIに基づいて前記電位図に注釈を付けることを含む、実施態様3に記載の方法。
【0056】
(6) 前記臨床入力は、前記EPマップ上の1つ以上の領域を示す、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記1つ以上の領域は、前記EPマップを表示するタッチスクリーンを用いて前記EPマップ上に電子的に描画される、実施態様6に記載の方法。
(8) 前記EP値を調整することは、前記1つ以上の領域における前記EP値の信頼レベル閾値を調整することを含む、実施態様7に記載の方法。
(9) 前記臨床入力を識別することは、前記識別された臨床入力に関連して、どの前記EP値を考慮するべきかを決定するために、事前定義された包含基準を適用することを含む、実施態様1に記載の方法。
(10) 前記EP値は、局所興奮時間(LAT)、双極電位、及び単極電位のうちの1つである、実施態様1に記載の方法。
【0057】
(11) 前記入力デバイスは、タッチスクリーン、コンピュータマウス、及びトラックボールのうちの1つである、実施態様1に記載の方法。
(12) 電気生理学的マッピングのためのシステムであって、
心臓腔の表面の少なくとも一部の電気生理学的(EP)マップを記憶するように構成されたメモリであって、前記EPマップは、前記表面上の複数のそれぞれの位置にオーバーレイされた複数のEP値を含む、メモリと、
プロセッサと、を備え、前記プロセッサは、
入力デバイスを使用してユーザによって前記EPマップ上にマークされた臨床入力を受信し、
前記臨床入力と一致するように前記EP値のうちの1つ以上を自動的に調整するように構成されている、システム。
(13) 前記プロセッサは、前記臨床入力と一致するように前記位置のうちの1つ以上を調整するようにさらに構成されている、実施態様12に記載のシステム。
(14) 前記臨床入力は、1つ以上の興奮経路を示す、実施態様12に記載のシステム。
(15) 前記1つ以上の興奮経路は、前記EPマップを表示するタッチスクリーンを使用して前記EPマップ上に電子的に描画される、実施態様14に記載のシステム。
【0058】
(16) 前記プロセッサは、電位図上の関心ウィンドウ(WOI)を調整し、前記調整されたWOIに基づいて前記電位図に注釈を付けることによって、前記EP値を調整するように構成されている、実施態様14に記載のシステム。
(17) 前記臨床入力は、前記EPマップ上の1つ以上の領域を示す、実施態様12に記載のシステム。
(18) 前記1つ以上の領域は、前記EPマップを表示するタッチスクリーンを使用して前記EPマップ上に電子的に描画される、実施態様17に記載のシステム。
(19) 前記プロセッサは、前記1つ以上の領域における前記EP値の信頼レベル閾値を調整することによって前記EP値を調整するように構成されている、実施態様18に記載のシステム。
(20) 前記プロセッサは、前記識別された臨床入力に関連して、どの前記EP値を考慮すべきかを決定するために、事前定義された包含基準を適用することによって、前記臨床入力を識別するように構成されている、実施態様12に記載のシステム。
【0059】
(21) 前記EP値は、局所興奮時間(LAT)、双極電位、及び単極電位のうちの1つである、実施態様12に記載のシステム。
(22) 前記入力デバイスは、タッチスクリーン、コンピュータマウス、及びトラックボールのうちの1つである、実施態様12に記載のシステム。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図4C
図5
【国際調査報告】