(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ナトリウムイオン電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20241219BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20241219BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20241219BHJP
H01M 10/054 20100101ALI20241219BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/587
H01M4/36 Z
H01M10/054
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537382
(86)(22)【出願日】2022-05-20
(85)【翻訳文提出日】2024-06-20
(86)【国際出願番号】 CN2022094097
(87)【国際公開番号】W WO2023221088
(87)【国際公開日】2023-11-23
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524304976
【氏名又は名称】香港時代新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CONTEMPORARY AMPEREX TECHNOLOGY (HONG KONG) LIMITED
【住所又は居所原語表記】LEVEL 19, CHINA BUILDING, 29 QUEEN’S ROAD CENTRAL, CENTRAL, CENTRAL AND WESTERN DISTRICT, HONG KONG, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 全国
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ ▲倩▼
(72)【発明者】
【氏名】叶 永煌
(72)【発明者】
【氏名】▲喩▼ 春▲鵬▼
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼ ▲ジン▼▲軒▼
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 佳▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】肖 得▲雋▼
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ02
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL13
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM06
5H029HJ02
5H029HJ04
5H029HJ05
5H029HJ08
5H029HJ09
5H029HJ19
5H050AA02
5H050BA15
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB12
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA08
5H050HA09
5H050HA19
(57)【要約】
本願は、ナトリウムイオン電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を提供する。前記ナトリウムイオン電池は、正極シートと、負極シートと、セパレータとを含み、正極シートは、正極集電体と、正極集電体の少なくとも1つの表面に設けられた正極活物質層とを含み、負極シートは、負極集電体と、負極集電体の少なくとも1つの表面に設けられた負極活物質層とを含み、セパレータは、正極シートと負極シートとの間に設けられ、正極活物質層の空隙率α、負極活物質層の空隙率βおよびセパレータの空隙率γは、0≦(β-α)/γ≦1.5、かつα≦γを満たす。本願のナトリウムイオン電池は、正極活物質層の空隙率、負極活物質層の空隙率β及びセパレータの空隙率γを同時に制御することにより、ナトリウムイオン電池の充電及び放電性能を向上させ、これによりナトリウムイオン電池の容量性能及び充放電パワーを向上させることができる。
選択図
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体と、前記正極集電体の少なくとも1つの表面に設けられた正極活物質層とを含む正極シートと、
負極集電体と、前記負極集電体の少なくとも1つの表面に設けられた負極活物質層とを含む負極シートと、
前記正極シートと前記負極シートとの間に設けられたセパレータと、を含み、
前記正極活物質層の空隙率α、前記負極活物質層の空隙率β及び前記セパレータの空隙率γは、0≦(β-α)/γ≦1.5、且つα≦γを満たす、
ナトリウムイオン電池。
【請求項2】
0.4≦(β-α)/γ≦1.0である、
請求項1に記載のナトリウムイオン電池。
【請求項3】
前記正極活物質層の空隙率αは、20%≦α≦40%を満たし、選択可能的に、28%≦α≦38%を満たし、及び/又は、
前記負極活物質層の空隙率βは、40%≦β≦66%を満たし、選択可能的に、45%≦β≦58%を満たし、及び/又は、
前記セパレータの空隙率γは、30%≦γ≦55%を満たし、選択可能的に、33%≦γ≦50%を満たす、
請求項1又は2に記載のナトリウムイオン電池。
【請求項4】
前記正極活物質層の圧縮密度PD1と前記負極活物質層の圧縮密度PD2は、0.44≦PD1/PD2≦2.3を満たし、
選択可能的に、前記正極活物質層の圧縮密度PD1は、0.8≦PD1≦1.7を満たし、さらに選択可能的に、0.9≦PD1≦1.6を満たし、さら選択可能的に、1.1≦PD1≦1.5を満たし、及び/又は
前記負極活物質層の圧縮密度PD2は、0.7≦PD2≦1.8を満たし、選択可能的に、0.8≦PD2≦1.3を満たし、さらに選択可能的に、0.9≦PD2≦1.0を満たす、
請求項1~3のいずれか1項に記載のナトリウムイオン電池。
【請求項5】
前記正極活物質層は正極活物質を含み、前記負極活物質層は負極活物質を含み、前記正極活物質のグラム容量CAP1と前記負極活物質のグラム容量CAP2は下記の関係を満たし、
【数4】
ただし、h1は前記ナトリウムイオン電池が0%のSOCであるときの前記正極活物質層の厚さを示し、h2は前記ナトリウムイオン電池が0%のSOCであるときの前記負極活物質層の厚さを示し、
選択可能的に、前記正極活物質のグラム容量CAP1は、110mAh/g≦CAP1≦160mAh/gを満たし、さらに選択可能的に、120mAh/g≦CAP1≦155mAh/gを満たし、及び/又は、
前記負極活物質のグラム容量CAP2は、300mAh/g≦CAP2≦360mAh/gを満たし、さらに選択可能的に、320mAh/g≦CAP2≦355mAh/gを満たす、
請求項4に記載のナトリウムイオン電池。
【請求項6】
前記負極活物質層は、負極活物質を含み、前記負極活物質は、人造黒鉛、天然黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、シリコン系材料、スズ系材料及びナトリウム合金のうちの1種類又は複数種類を含み、
選択可能的に、前記負極活物質はハードカーボンを含む、
請求項1~5のいずれか1項に記載のナトリウムイオン電池。
【請求項7】
前記負極活物質層は、負極活物質を含み、前記負極活物質の粒径分布は、0.5≦(Dv90-Dv10)/Dv50≦2を満たし、
選択可能的に、1μm≦Dv50≦20μm、さらに選択可能的に、5μm≦Dv50≦15μmを満たす、
請求項1~6のいずれか1項に記載のナトリウムイオン電池。
【請求項8】
前記正極活物質層は、分子式がNa
2MFe(CN)
6である正極活物質を含み、Mは、Mg、K、Ca、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu及びZnのうちの1種類又は複数種類を含み、且つFeに対するMのモル比が0.95~1.05を満たす、
請求項1~7のいずれか1項に記載のナトリウムイオン電池。
【請求項9】
前記セパレータの厚さは、5μm~15μmを満たし、選択可能的に7μm~13μmを満たす、
請求項1~8のいずれか1項に記載のナトリウムイオン電池。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のナトリウムイオン電池を含む、
電池モジュール。
【請求項11】
請求項10に記載の電池モジュールを含む、
電池パック。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか1項に記載のナトリウムイオン電池と、請求項10に記載の電池モジュール又は請求項11に記載の電池パックとを含む、
電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電池分野に関し、具体的には、ナトリウムイオン電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、エネルギー密度が高く、サイクル寿命が長いため、二次電池の主な市場を占めている。現在、多くの先端エネルギー貯蔵システムはリチウムイオン電池技術を採用している。それにもかかわらず、リチウムイオン電池の価格の変動、特にリチウム資源の消費及び将来の不足に伴い、電池分野において、世界的に増加しているエネルギー貯蔵需要を満たすための代替製品又は技術を求める必要に迫られている。
【0003】
ナトリウム元素とリチウム元素は、元素周期表における同一の主族の元素であり、物理化学的性質が近い。そして、ナトリウム元素は、自然界における貯蔵量が豊富であり、特に海洋において巨大な貯蔵量を有し、電池の活性イオンとして用いられることにより、リチウム資源不足の問題を解決することができる。
【0004】
しかしながら、ナトリウムイオンの半径及び相対原子質量がいずれも大きいため、活性イオンとして電池に適用された場合、ナトリウムイオン電池の性能、例えば充放電効率が比較的悪い。そのため、優れた性能のナトリウムイオン電池を得るために、ナトリウムイオン電池の性能を改善する必要に迫られている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ナトリウムイオン電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を提供することを目的とする。
【0006】
本願の第1の態様は、正極シートと、負極シートと、セパレータとを含み、正極シートは、正極集電体と、正極集電体の少なくとも1つの表面に設けられた正極活物質層とを含み、負極シートは、負極集電体と、負極集電体の少なくとも1つの表面に設けられた負極活物質層とを含み、セパレータは、正極シートと負極シートとの間に設けられ、正極活物質層の空隙率α、負極活物質層の空隙率βおよびセパレータの空隙率γは、0≦(β-α)/γ≦1.5、かつα≦γを満たすナトリウムイオン電池を提供する。
【0007】
これにより、本願は、正極活物質層の空隙率、負極活物質層の空隙率β及びセパレータの空隙率γを同時に制御して、0≦(β-α)/γ≦1.5、且つα≦γを満たすように制御する。それにより、充電時に、正極活物質層中のナトリウムイオンが正極シートから脱離し、セパレータを介して速やかに移動して負極活物質層中に挿入することができ、ナトリウムイオンが負極活物質層に十分且つ速やかに受け入れられることにより、ナトリウムイオン電池の容量を向上させる。放電時には、負極活物質層中のナトリウムイオンが負極シートから脱離し、速やかにセパレータを介して移動して正極活物質層に挿入することができる。ナトリウムイオンが正極活物質層に十分かつ速やかに受け入れられることにより、ナトリウムイオン電池の容量を向上させ、ナトリウムイオン電池の容量が向上するとともに、ナトリウムイオン電池の充放電性能が向上するので、ナトリウムイオン電池の容量性能および充放電パワーが向上する。
【0008】
いずれの実施形態においても、0.4≦(β-α)/γ≦1.0である。正極活物質層の空隙率、負極活物質層の空隙率βおよびセパレータの空隙率γが上記範囲を満たすと、ナトリウムイオン電池の充放電性能をより向上させることができる。
【0009】
いずれの実施形態においても、正極活物質層の空隙率αは、20%≦α≦40%を満たし、選択可能的に、28%≦α≦38%を満たす。
【0010】
これにより、本願の正極活物質層の空隙率αが上記範囲を満たす場合、正極活物質層の空隙率が適度であり、正極活物質層からのナトリウムイオンの脱離に寄与するとともに、正極活物質層へのナトリウムイオンの挿入に寄与し、且つ電解液が正極活物質層に十分に浸潤することができ、正極活物質層界面の濡れ性を向上させることができる。
【0011】
いずれの実施形態においても、負極活物質層の空隙率βは、40%≦β≦66%を満たし、選択可能的に、45%≦β≦58%を満たす。
【0012】
これにより、本願の負極活物質層の空隙率が上記範囲を満たす場合、負極活物質層の空隙率βが適度であり、負極活物質層からのナトリウムイオンの脱離に寄与するとともに、負極活物質層へのナトリウムイオンの挿入に寄与し、且つ電解液が負極活物質層に十分に浸潤することができ、負極活物質層界面の濡れ性を向上させることができる。
【0013】
いずれの実施形態においても、セパレータの空隙率γは、30%≦γ≦55%を満たし、選択可能的に、33%≦γ≦50%を満たす。
【0014】
このように、本願のセパレータの空隙率が上記範囲を満たす場合、セパレータの空隙率γが適度であり、ナトリウムイオンがセパレータを介して正極活物質層または負極活物質層に移動することに有利である。
【0015】
いずれの実施形態においても、正極活物質層の圧縮密度PD1と負極活物質層の圧縮密度PD2とは、0.44≦PD1/PD2≦2.3を満たす。
【0016】
これにより、本願は、正極活物質層の圧縮密度PD1と負極活物質層の圧縮密度PD2とのマッチングを制御し、0.44≦PD1/PD2≦2.3を満たす。充電時に、正極活物質層から脱離したナトリウムイオンが負極活物質層に十分に挿入される。放電時に、負極活物質層から脱離したナトリウムイオンが正極活物質層に十分に挿入される。正極シートと負極シートの動力学的性能がマッチングし、イオン脱離の速度とイオン挿入の速度がほぼ等しく、正極シートと負極シートのうちの一方の電極シートの動力学的性能が悪いことによる桶理論の効果を低減する。これにより、濃度分極による性能損失及びエネルギー密度損失などの問題を低減し、ナトリウムイオン電池の充放電パワーを向上させることができる。
【0017】
いずれの実施形態でも、正極活物質層の圧縮密度PD1は、0.8≦PD1≦1.7を満たし、選択可能的に、0.9≦PD1≦1.6を満たし、さらに選択可能的に、1.1≦PD1≦1.5を満たす。
【0018】
これにより、本願の正極活物質層の圧縮密度PD1が相対的に適度であるため、正極活物質層の厚さを適切に低減することができ、ナトリウムイオン伝導経路を短縮してナトリウムイオン電池の充放電パワーを向上させるとともに、濃度分極現象によるナトリウム析出やナトリウムデンドライト等の問題を低減することができる。
【0019】
いずれの実施形態においても、負極活物質層の圧縮密度PD2は、0.7≦PD2≦1.8を満たし、選択可能的に、0.8≦PD2≦1.3を満たし、さらに選択可能的に、0.9≦PD2≦1.0を満たす。
【0020】
これにより、本願の負極活物質層の圧縮密度PD2が相対的に適度であるため、負極活物質層の厚さを適切に低減することができ、ナトリウムイオン伝導経路を短縮してナトリウムイオン電池の充放電パワーを向上させるとともに、ナトリウムイオンを負極活物質層に十分に挿入させることができるので、濃度分極現象によるナトリウム析出やナトリウムデンドライト等の問題を低減することができる。
【0021】
いずれの実施形態においても、正極活物質層は、正極活物質を含み、負極活物質層は、負極活物質を含み、正極活物質のグラム容量CAP1と負極活物質のグラム容量CAP2は下記の関係を満たす。
【0022】
【0023】
ただし、h1はナトリウムイオン電池が0%のSOCであるときの正極活物質層の厚さを示し、h2はナトリウムイオン電池が0%のSOCであるときの負極活物質層の厚さを示す。
【0024】
これにより、本願は、正極活物質のグラム容量CAP1と負極活物質のグラム容量CAP2との間が上記関係を満たすように調整する場合、正極活物質のグラム容量CAP1が負極活物質のグラム容量CAP2よりも小さいことを保証することができる。正極活物質から脱離したナトリウムイオンが基本的に負極活物質に挿入され、ナトリウムイオンが負極活物質の表面に蓄積されにくく、ナトリウムイオンが負極シートの表面に堆積して金属ナトリウムを形成することによるナトリウム析出のリスクを低減することができるとともに、ナトリウム析出による金属ナトリウムがセパレータを突き破ってナトリウムイオン電池の内部短絡を引き起こすリスクを低減することができ、それにより、ナトリウムイオン電池のサイクル性能を向上させることができる。
【0025】
負極活物質のグラム容量CAP2は、正極活物質のグラム容量CAP1よりもわずかに向上するが、高すぎることはなく、例えば2≦CAP2/CAP1≦3であり、それにより、負極活物質のグラム容量CAP2が高すぎて正極シートの冗長エネルギー密度が低下するリスクを低減し、ナトリウムイオン電池のエネルギー密度を向上させることができる。
【0026】
いずれの実施形態においても、正極活物質のグラム容量CAP1は、110mAh/g≦CAP1≦160mAh/gを満たし、さらに選択可能的に、120mAh/g≦CAP1≦155mAh/gを満たす。正極活物質のグラム容量CAP1が上記範囲を満たすと、ナトリウムイオン電池の容量性能を向上させることができる。
【0027】
いずれの実施形態においても、負極活物質のグラム容量CAP2は、300mAh/g≦CAP2≦360mAh/gを満たし、さらに選択可能的に、320mAh/g≦CAP2≦355mAh/gを満たす。
【0028】
これにより、本願の負極活物質のグラム容量CAP2が上記範囲を満たす場合、ナトリウムイオン電池の容量性能を向上させることができ、且つ、正極活物質から脱離したナトリウムイオンが負極活物質に基本的に挿入できることを保証し、ナトリウムイオン電池のサイクル性能を向上させることができる。
【0029】
いずれの実施形態においても、負極活物質層は負極活物質を含み、負極活物質は人造黒鉛、天然黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、シリコン系材料、スズ系材料及びナトリウム合金のうちの1種類又は複数種類を含み、選択可能的に、負極活物質はハードカーボンを含む。
【0030】
これにより、本願では、上記負極活物質を採用することはナトリウムイオンの移動に有利であり、特にハードカーボンを負極活物質として採用する場合、ハードカーボンの層間距離が相対的に大きく、ナトリウムイオンの脱離挿入速度が相対的に速いため、ナトリウムイオン電池の充放電パワーを向上させることができる。
【0031】
いずれの実施形態においても、負極活物質層は負極活物質を含み、負極活物質の粒径分布は、0.5≦(Dv90-Dv10)/Dv50≦2を満たす。
【0032】
これにより、本願の負極活物質の粒径分布と平均粒径寸法との差が大きくなりすぎることはなく、正極活物質から脱離したナトリウムイオンが負極活物質に挿入される過程において、負極活物質におけるナトリウムイオンの移動経路が接近するため、ナトリウムイオンが負極活物質に均一に挿入され、濃度分極が発生するリスクを低減することができる。
【0033】
いずれの実施形態においても、1μm≦Dv50≦20μmであり、さらに選択可能的に、5μm≦Dv50≦15μmである。
【0034】
いずれの実施形態においても、正極活物質層は、分子式がNa2MFe(CN)6である正極活物質を含み、Mは、Mg、K、Ca、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu及びZnのうちの1種類又は複数種類を含み、且つFeに対するMのモル比が0.95~1.05を満たす。
【0035】
いずれの実施形態においても、セパレータの厚さは、5μm~15μmを満たし、選択可能的に7μm~13μmを満たす。
【0036】
これにより、本願のセパレータの厚さが上記範囲を満たす場合、セパレータの厚さが適度であり、ナトリウムイオンの伝送経路が相対的に短いので、ナトリウムイオン電池の充放電パワーを向上させることができる。また、セパレータが一定の厚さ及び機械的強度を維持することもできるので、セパレータが薄すぎることによりナトリウムイオン電池に内部短絡を発生して自己放電が過大になるなど起こりうる問題を低減することができる。
【0037】
これにより、本願の正極活物質は、構造の安定性が比較的高く、ナトリウムイオンの脱離及び挿入に有利である。
【0038】
本願の第2の態様は、本願の第1の態様のいずれか1つの実施形態に係るナトリウムイオン電池を含む電池モジュールをさらに提供する。
【0039】
本願の第3の態様は、本願の第2の態様による電池モジュールを含む電池パックをさらに提供する。
【0040】
本願の第4の態様は、本願の第1の態様のいずれか1つの実施形態に係るナトリウムイオン電池と、本願の第2の態様のいずれか1つの実施形態に係る電池モジュールと、本願の第3の態様に係る電池パックを含む電力消費装置をさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
本願の実施例の技術案をより明確に説明するために、以下、本願の実施例に必要な図面を簡単に紹介する。以下に説明される図面は本願のいくつかの実施例のみであることは明確である。当業者にとって、創造的な労働をしない前提であっても、図面に基づいて他の図面を得ることもできる。
【0042】
【
図1】本発明の一つの実施形態に係るナトリウムイオン電池の模式図である。
【0043】
【
図2】
図1に示す本願の一つの実施形態に係るナトリウムイオン電池の分解図である。
【0044】
【
図3】本願の一つの実施形態に係る電池モジュールの模式図である。
【0045】
【
図4】本願の一つの実施形態に係る電池パックの模式図である。
【0046】
【
図5】
図4に示す本願の一つの実施形態に係る電池パックの分解図である。
【0047】
【
図6】本願の一つの実施形態に係る電力消費装置の模式図である。
【0048】
なお、符号の説明は以下の通りである。
【0049】
1 ナトリウムイオン電池
11 外装
111 トップカバーアセンブリ
112 ハウジング
12 電極アセンブリ
10 電池モジュール
20 電池パック
21 上ケース
22 下ケース
30 電力消費装置
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本願のナトリウムイオン電池、電池モジュール、電池パックおよび電力消費装置を具体的に開示した実施形態を詳細に説明する。しかし、必要でない詳細な説明を省略する場合がある。例えば、既知の事項の詳細な説明や、実質的に同一の構成の重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本願を十分に理解するために提供されるものであり、特許請求の範囲に記載された主題を限定することを意図するものではない。
【0051】
本願において開示される「範囲」は、下限及び上限の形式で規定され、所定範囲は、1つの下限及び1つの上限を選定することによって規定され、選定された下限及び上限は、特別な範囲の境界を限定している。このように限定される範囲は、端値を含む又は端値を含まない範囲であってもよく、任意に組み合わせてもよく、即ち、任意の下限は任意の上限と組み合わせて範囲を形成してもよい。例えば、特定のパラメータに対して60~120及び80~110の範囲を挙げられると、60~110及び80~120の範囲も予想されると理解される。また、最小範囲値1及び2と、最大範囲値3、4及び5が挙げられた場合、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4及び2~5の範囲は、全て予想されてもよい。本願において、他の説明がない限り、数値範囲「a~b」は、aからbの間の任意の実数の組み合わせの略語で表され、a及びbはいずれも実数である。例えば、数値範囲「0~5」は、本明細書においては「0~5」の間の実数すべてを挙げていることを示し、「0~5」は、これらの数値の組合せの略表記である。また、あるパラメータが2以上(≧2)の整数という表記は、当該パラメータが、例えば、整数2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などであることを開示することに相当している。
【0052】
特に説明がない限り、本願のすべての実施形態及び選択可能的な実施形態は、互いに組み合わせて新しい技術案を形成してもよい。特に説明がない限り、本願のすべての技術的特徴及び選択可能的な技術的特徴は、互いに組み合わせて新しい技術案を形成してもよい。
【0053】
特に説明がない限り、本願のすべての工程は、順に行われてもよいし、ランダムに行われてもよいが、順に行われることが好ましい。例えば、上記方法が工程(a)及び(b)を含むことは、上記方法が順に行われる工程(a)及び(b)を含むことであってもよく、順に行われる工程(b)及び(a)を含むことであってもよいことを表す。例えば、上記方法が工程(c)をさらに含んでもよいと言及する場合、工程(c)は、任意の順序で上記方法に加えられてもよいことを表す。例えば、上記方法は、工程(a)、(b)及び(c)を含んでもよく、工程(a)、(c)及び(b)を含んでもよく、工程(c)、(a)及び(b)などを含んでもよい。
【0054】
特に説明がない限り、本願に記載されている「備える」及び「含む」は、開放式であることを意味し、また、閉鎖式であってもよい。例えば、「備える」及び上記「含む」は、挙げられていない他の成分をさらに「備える」又は「含む」こと、又は挙げられている成分のみを「備える」又は「含む」ことを表すことができる。
【0055】
特に説明がない限り、本願において、用語「又は」は包括的なものである。例えば、「A又はB」という語句は、「A、B、又はAとBの両方」を表す。より具体的には、以下のいずれの条件も満たされる。Aが真(又は存在)であり且つBが偽(又は存在しない)であり、Aが偽(又は存在しない)であり且つBが真(又は存在する)であり、又はAとBの両方が真である(又は存在する)。
【0056】
ナトリウムイオン電池におけるナトリウムイオンを活性イオンとし、充電過程において、ナトリウムイオンが正極活物質から脱離してセパレータを介して負極活物質に入るとともに、電子が外部回路を介して正極シートから負極シートへ流れ、放電過程は上記充電過程と逆である。ナトリウムイオンのイオン半径が大きいため、充放電過程においてイオン伝送経路に対する要求が高く、要求が満たされない場合、ナトリウムイオンの伝送効率が低くなり、ナトリウムイオン電池の充放電パワーを低下させる可能性がある。
【0057】
ナトリウムイオン電池の充放電パワーを向上させるために、発明者は、ナトリウムイオンの伝送効率を向上させる観点から、正極シート及び負極シートにおける材質の空隙率を調整して、ナトリウムイオンの円滑な移動を保証し、ナトリウムイオンの伝送効率を向上させる。次に、本願を詳細に説明する。
【0058】
[ナトリウムイオン電池]
【0059】
第1の態様において、本願の実施例はナトリウムイオン電池を提供する。該ナトリウムイオン電池は、正極シート、負極シート及びセパレータを含む。セパレータは、正極シートと負極シートとの間に設けられる。
【0060】
[正極シート]
【0061】
正極シートは、正極集電体と、正極集電体の少なくとも1つの表面に設けられ、正極活物質を含む正極活物質層とを含む。
【0062】
例として、正極集電体は、その自体の厚さ方向に、対向する2つの表面を有し、正極活物質層は、正極集電体の対向する2つの表面のいずれか一方または両方に設けられる。
【0063】
いくつかの実施例において、正極集電体は、金属箔又は複合集電体を用いることができる。例えば、金属箔としては、アルミニウム箔を用いることができる。複合集電体は、高分子材料基層と、高分子材料基層の少なくとも一方の表面に形成された金属層とを含むことができる。複合集電体は、高分子材料基材(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)等の基材)上に金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金等)を形成することにより形成することができる。
【0064】
いくつかの実施例において、正極活物質は、当該分野で周知の電池に用いられる正極活物質を採用することができる。例示的に、正極活物質は、ナトリウム遷移金属酸化物、ポリアニオン型化合物及びプルシアンブルー系化合物のうちの1種類又は複数種類を含むことができる。
【0065】
上記ナトリウム遷移金属酸化物の例として、ナトリウム遷移金属酸化物はNa1-xCuhFekMnlM1
mO2-yであってもよく、ここで、M1はLi、Be、B、Mg、Al、K、Ca、Ti、Co、Ni、Zn、Ga、Sr、Y、Nb、Mo、In、Sn及びBaのうちの1種類又は複数種類であり、0<x≦0.33、0<h≦0.24、0≦k≦0.32、0<l≦0.68、0≦m<0.1、h+k+l+m=1、0≦y<0.2である。
【0066】
上記ナトリウム遷移金属酸化物の別の例として、ナトリウム遷移金属酸化物はNa0.67Mn0.7NizM2
0.3-zO2であってもよく、M2はLi、Mg、Al、Ca、Ti、Fe、Cu、Zn及びBaのうちの1種類又は複数種類であり、0<z≦0.1である。
【0067】
上記ナトリウム遷移金属酸化物のさらに別の例として、ナトリウム遷移金属酸化物はNaaLibNicMndFeeO2であってもよく、0.67<a≦1、0<b<0.2、0<c<0.3、0.67<d+e<0.8、b+c+d+e=1である。
【0068】
上記ポリアニオン型化合物の一例として、ポリアニオン型化合物はA1
fM3
g(PO4)iOjX1
3-jであってもよく、AはH、Li、Na、K及びNH4のうちの1種類又は複数種類であり、M3はTi、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、V、Cu及びZnのうちの1種類又は複数種類であり、X1はF、Cl及びBrのうちの1種類又は複数種類であり、0<f≦4、0<g≦2、1≦i≦3、0≦j≦2である。
【0069】
上記ポリアニオン型化合物の別の例として、ポリアニオン型化合物は、NanM4PO4X2であってもよく、M4は、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びZnのうちの1種類又は複数種類であり、X2は、F、Cl及びBrのうちの1種類又は複数種類であり、0<n≦2であり、NaPM5
q(SO4)3であってもよく、M5は、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びZnのうちの1種類又は複数種類であり、0<p≦2であり、0<q≦2である。
【0070】
上記ポリアニオン型化合物のさらに別の例として、ポリアニオン型化合物はNasMntFe3-t(PO4)2(P2O7)であってもよく、0<s≦4、0≦t≦3、例えばtは0、1、1.5、2又は3である。
【0071】
上記プルシアンブルー系化合物の一例として、プルシアンブルー系化合物はAuM6
v[M7(CN)6]w・xH2Oであってもよく、ここで、AはH+、NH4
+、アルカリ金属カチオン及びアルカリ土類金属カチオンのうちの1種類又は複数種類であり、M6及びM7はそれぞれ個別に遷移金属カチオンのうちの1種類又は複数種類であり、0<u≦2、0<v≦1、0<w≦1、0<x<6である。例えば、AはH+、Li+、Na+、K+、NH4
+、Rb+、Cs+、Fr+、Be2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+及びRa2+のうちの1種類又は複数種類であり、M6及びM7はそれぞれ個別にTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sn及びWのうちの1種類又は複数種類の遷移金属元素のカチオンである。好ましくは、AはLi+、Na+及びK+のうちの1種類又は複数種類であり、M6はMn、Fe、Co、Ni及びCuのうちの1種類又は複数種類の遷移金属元素のカチオンであり、M7はMn、Fe、Co、Ni及びCuのうちの1種類又は複数種類の遷移金属元素のカチオンである。
【0072】
さらに、正極活物質層は、分子式がNa2MFe(CN)6である正極活物質を含み、Mは、Mg、K、Ca、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu及びZnのうちの1種類又は複数種類を含み、且つFeに対するMのモル比が0.95~1.05を満たす。
【0073】
上記実施例の正極活物質は、構造安定性が比較的高く、且つナトリウムイオンの脱離及び挿入に有利である。例示的に、Feに対するMのモル比は0.95、1.0又は1.05であり、もちろん、上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0074】
いくつかの実施例において、選択可能的に、正極活物質層は、接着剤を含んでもよい。例として、接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びフッ素含有アクリレート樹脂のうちの少なくとも1種類を含んでもよい。
【0075】
いくつかの実施例において、選択可能的に、正極活物質層は、導電剤を含んでもよい。例として、導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの少なくとも1種類を含んでもよい。
【0076】
いくつかの実施例において、正極シートを作成するための、例えば正極活物質、導電剤、接着剤及び任意の他の成分を含む上記成分を溶媒(例えばN-メチルピロリドン)に分散させて正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレス等の工程を経て正極シートを得ることにより、正極シートを作成することができる。
【0077】
[負極シート]
【0078】
負極シートは、負極集電体と、負極集電体の少なくとも1つの表面に設けられ、負極活物質を含む負極活物質層とを含む。
【0079】
例として、負極集電体は、その厚さ方向に、対向する2つの表面を有し、負極活物質層は、負極集電体の対向する2つの表面のいずれか一方または両方に設けられる。
【0080】
いくつかの実施例において、負極集電体は、金属箔又は複合集電体を用いることができる。例えば、金属箔片として、銅箔を用いることができる。複合集電体は、高分子材料基材と、高分子材料基材の少なくとも一方の表面に形成された金属層とを含むことができる。複合集電体は、高分子材料基材(例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)等の基材)上に金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金等)を形成することにより形成することができる。
【0081】
いくつかの実施例において、負極活物質は、当該分野で公知の電池に用いられる負極活物質を採用することができる。例として、負極活物質は、人造黒鉛、天然黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、シリコン系材料、スズ系材料およびナトリウム合金などのうちの少なくとも1種類を含むことができる。ケイ素系材料は、ケイ素単体、ケイ素酸化物、ケイ素-炭素複合体、ケイ素-窒素複合体及びケイ素合金から選択される少なくとも1種類であってもよい。スズ系材料は、スズ単体、スズ酸素化合物及びスズ合金から選択される少なくとも1種類であってもよい。本願はこれらの材料に限定されず、電池負極活物質として使用可能な他の従来の材料を使用してもよい。これらの負極活物質は、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
いくつかの実施例において、負極活物質はハードカーボンを含んでもよい。ハードカーボンの層間距離が相対的に大きく、ナトリウムイオンの脱離と挿入速度が相対的に速いため、ナトリウムイオン電池の充放電パワーを向上させることができる。
【0083】
いくつかの実施例では、負極活物質の粒径分布は、0.5≦(Dv90-Dv10)/Dv50≦2を満たす。負極活物質の粒径分布と平均粒径寸法との差は過度に大きくならず、正極活物質から脱離したナトリウムイオンが負極活物質に挿入される過程において、負極活物質におけるナトリウムイオンの移動経路が接近するので、ナトリウムイオンが負極活物質に均一に挿入されて、濃度分極が発生するリスクを低減することができる。例示的に、負極活物質がハードカーボンである場合、ハードカーボンにおけるナトリウムイオンの移動経路が接近するので、ナトリウムイオンがハードカーボンに均一に挿入されることができる。負極活物質のDv50の数値は、負極活物質のメジアン粒度を意味する。具体的には、ある具体的なDv50の数値は、総体積の50%を占める粒子の直径が当該数値より大きく、他の総体積の50%を占める粒子の直径が当該数値より小さいことを表す。負極活物質のDv50の値は、GB/T19077-2016に規定された方法を参照して測定することができる。Dv10の数値は、粒子中の体積分布における10%に対応する粒度を表し、具体的には、粒子における総体積の10%を占める粒子直径が該数値より大きく、他の総体積の90%を占める粒子直径が該数値より小さいことを表す。負極活物質のDv10の値は、GB/T19077-2016に規定された方法を参照して測定することができる。Dv90の数値は、粒子中の体積分布における90%に対応する粒度を表し、Dv90の数値は、総体積の90%を占める粒子の直径が該数値より大きく、総体積の10%を占める粒子の直径が該数値より小さいことを表す。負極活物質のDv90の値は、GB/T19077-2016に規定された方法を参照して測定することができる。
【0084】
例示的には、負極活物質がハードカーボンであることを例として、バイオマス前駆体麦わらを原料とし、空気環境下で高温加熱して1回目の乾燥を行い、1回目の乾燥後に粉砕し、その後、粉砕された麦わらを無酸素環境下で加熱して2回目の乾燥を行い、2回目の乾燥後、研磨機器を用いてボールミルで乾燥された麦わらを粉砕し、そのうち、所定の数の割合で3種類の異なる粒径(例えば、50mm、20mm、5mm)のボールミルためのビーズを用いて研磨し、研磨後に所望の粒径分布のハードカーボンを得る過程により、その粒径分布が上記範囲を満たすように制御する。その他の負極活物質の粒径分布の調整も上記方法を参照して行うことができる。
【0085】
いくつかの実施例において、負極活物質のメジアン粒度は、1μm≦Dv50≦20μmを満たす。
【0086】
負極活物質の平均粒径が上記範囲を満たすと、ナトリウムイオンの脱離挿入経路を短縮することができ、ナトリウムイオン電池の初回クーロン効率を保証することができる。例示的には、負極活物質がハードカーボンである場合、ハードカーボンは相対的に大きい層間距離を有するのみ、ナトリウムイオンの脱離挿入速度が速く、ナトリウムイオン電池の充放電パワーの向上に有利であるとともに、ハードカーボンの粒径を上記範囲に制御することにより、ナトリウムイオンの脱離挿入経路を短縮することができる。選択可能的に、5μm≦Dv50≦15μmであり、例示的に、Dv50は、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、11μm、12μm、13μm、14μm、15μm、16μm、17μm、18μm、19μm又は20μmであってもよい。
【0087】
いくつかの実施例において、選択可能的に、負極活物質層は接着剤を含んでもよい。接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)から選択される少なくとも1種類であってもよい。
【0088】
いくつかの実施例において、選択可能的に、負極活物質層は導電剤を含んでもよい。導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーから選択される少なくとも1種類であってもよい。
【0089】
いくつかの実施例において、選択可能的に、負極活物質層は、増粘剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na))などの他の助剤を含んでもよい。
【0090】
いくつかの実施例において、例えば負極活物質、導電剤、接着剤及び任意の他の成分を含む、負極シートを作成するための上記成分を溶媒(例えば脱イオン水)に分散させて負極スラリーを形成し、負極スラリーを負極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレス等の工程を経て負極シートを得ることにより、負極シートを作成することができる。
【0091】
[セパレータ]
【0092】
本願では、セパレータの種類は特に限定されず、良好な化学的安定性および機械的安定性を有する任意の公知の多孔質構造セパレータを選択することができる。
【0093】
いくつかの実施例において、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンから選択される少なくとも1種類であってもよい。セパレータは、単層フィルムであってもよいし、多層複合フィルムであってもよく、特に限定されない。セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料は、同一であってもよいし、異なっていてもよく、特に限定されない。
【0094】
いくつかの実施例では、正極シート、負極シート及びセパレータは、巻回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリを製造することができる。
【0095】
いくつかの実施例において、セパレータの厚さは5μm~15μmを満たす。
【0096】
セパレータの厚さが上記範囲を満たす場合、セパレータの厚さが適度であり、ナトリウムイオンの伝送経路が相対的に短く、ナトリウムイオン電池の充放電パワーを向上させることができ、また、セパレータが一定の厚さ及び機械的強度を保持することで、セパレータが薄すぎることに起因してナトリウムイオン電池が内部短絡を発生して自己放電が過度に大きいなどの問題を低減できる。選択可能的に、セパレータの厚さは、7μm~13μmであり、例示的に、セパレータの厚さは、5μm、6μm、7μm、8μm、9μm、10μm、11μm、12μm、13μm、14μm又は15μmであってもよく、セパレータの厚さは、上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもいい。
【0097】
いくつかの実施例において、正極活物質層の空隙率α、負極活物質層の空隙率β及びセパレータの空隙率γは、0≦(β-α)/γ≦1.5、且つα≦γを満たす。
【0098】
正極活物質層の空隙率αとは、正極活物質層中の空隙体積が正極活物質の総体積に占める割合である。負極活物質層の空隙率βとは、負極活物質層中の空隙体積が負極活物質の総体積に占める割合である。セパレータの空隙率γとは、セパレータの空隙体積がセパレータの総体積に占める割合である。
【0099】
上記各空隙率の測定は、GB/T24586-2009における空隙率測定方法を参照して行うことができる。例えば、米国Micromeritics社のAccuPyc II 1340型全自動真密度測定器を用いて測定することができる。該測定方法は、サンプル(例えば、正極シート)から直径が14mmである30枚のウェハを採取し、ガス吸着の原理に基づいて、例えばヘリウムガス又は窒素ガスの不活性ガスを媒体として、直径が14mmである30枚のウェハの真体積を測定し、その後、ウェハの面積、厚さ及び数量に基づいて算出された正極シートの見かけ体積と真体積との関係に基づいて、空隙率を算出することを含む。負極シートの空隙率及びセパレータの空隙率の測定方式は、正極シートの空隙率の測定方式と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0100】
(β-α)/γ<0である場合、セパレータの空隙率が相対的に高く、セパレータに多くの孔道を有するため、電解液がセパレータを通過するサイフォン効果は弱くなり、電解液の還流が間に合わず、ナトリウムイオンが電解液を介して対向する電極シートに十分に遊離することができず、また、セパレータが高い空隙率を有するため、セパレータの絶縁効果が悪く、正極シートと負極シートとを効果的に絶縁分離することが困難であり、且つナトリウムイオン電池の自己放電が大きい。
【0101】
(β-α)/γ>1.5である場合、セパレータの空隙率が比較的小さく、ナトリウムイオンの移動速度がセパレータによって制限され、例えば、ナトリウムイオンが正極シートから脱離した後に負極シートに挿入される過程がセパレータの空隙率によって制限され、セパレータがナトリウムイオンの移動に十分な孔道を提供することが難しく、ナトリウムイオン電池の充放電パワーが制限される。
【0102】
本願の実施例は、正極活物質層の空隙率、負極活物質層の空隙率β及びセパレータの空隙率γに対して、0≦(β-α)/γ≦1.5、且つα≦γを満たすように制御することで、充電時に、正極活物質層におけるナトリウムイオンが正極シートから脱離し、セパレータを介して速やかに移動して負極活物質層に挿入することができ、ナトリウムイオンが負極活物質層に十分且つ速やかに受け入れられ、ナトリウムイオン電池の容量を向上させる。放電時には、負極活物質層中のナトリウムイオンが負極シートから脱離し、速やかにセパレータを介して移動して正極活物質層に挿入することができ、ナトリウムイオンが正極活物質層に十分かつ速やかに受け入れられることにより、ナトリウムイオン電池の容量を向上させる。それによって、ナトリウムイオン電池の容量を向上させると共に、ナトリウムイオン電池の充放電性能が向上するので、ナトリウムイオン電池の容量性能および充放電性能が向上する。選択可能的に、0.4≦(β-α)/γ≦1.0であり、例示的に、(β-α)/γは、0、0.1、0.2、0.25、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、0.95、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、または1.5であってもよく、(β-α)/γは、上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0103】
いくつかの実施例において、正極活物質層の空隙率αは、20%≦α≦40%を満たす。正極活物質層の空隙率αが上記範囲を満たす場合、正極活物質層の空隙率が適度であり、正極活物質層からのナトリウムイオンの脱離に寄与するとともに、正極活物質層へのナトリウムイオンの挿入に寄与し、且つ、電解液が正極活物質層に十分に浸潤することができ、正極活物質層界面の濡れ性を向上させることができる。選択可能的に、28%≦α≦38%であり、例示的に、αは20%、25%、28%、30%、32%、35%、38%、39%又は40%であってもよく、αは上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0104】
いくつかの実施例において、負極活物質層の空隙率βは、40%≦β≦66%を満たす。負極活物質層の空隙率が上記範囲を満たす場合、負極活物質層の空隙率βが適度であり、負極活物質層からのナトリウムイオンの脱離に寄与するとともに、負極活物質層へのナトリウムイオンの挿入に寄与し、電解液が負極活物質層に十分に浸潤することができ、負極活物質層界面の濡れ性を向上させることができる。選択可能的に、45%≦β≦58%であり、例示的に、βは40%、43%、45%、50%、55%、58%、60%、62%又は66%であってもよく、βは上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0105】
いくつかの実施例では、セパレータの空隙率γは、30%≦γ≦55%を満たす。セパレータの空隙率が上記範囲を満たすと、セパレータの空隙率γが適度であり、ナトリウムイオンがセパレータを介して正極活物質層または負極活物質層に移動するのに有利である。選択可能的に、33%≦γ≦50%であり、例示的に、γは30%、32%、33%、35%、40%、45%、50%、52%又は55%であってもよく、γは上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0106】
上記各実施例において、正極活物質層、負極活物質層及びセパレータは、それぞれの空隙率の相互作用により、一方の電極シートから脱離したナトリウムイオンを他方の電極シートに十分に挿入することを促すことができ、さらにナトリウムイオン電池の充放電パワーを保証することができる。
【0107】
いくつかの実施例では、正極活物質層の圧縮密度PD1と負極活物質層の圧縮密度PD2は、0.44≦PD1/PD2≦2.3を満たす。
【0108】
圧縮密度は、活物質層の体積に対する活物質層の重量の比であり、活物質層の圧縮密度を調整することにより活物質の配列を調整することができる。活物質層の体積は、活物質層の厚さと活物質層の厚さとの積である。
【0109】
本願の実施例は、正極活物質層の圧縮密度PD1と負極活物質層の圧縮密度PD2にマッチングさせるように調整し、両者の間に0.44≦PD1/PD2≦2.3を満たし、充電時に、正極活物質層から脱離したナトリウムイオンが負極活物質層に十分に挿入され、放電時に、負極活物質層から脱離したナトリウムイオンが正極活物質層に十分に挿入される。正極シートと負極シートの動力学的性能がマッチングし、イオン脱離の速度とイオン挿入の速度がほぼ等しく、正極シートと負極シートのうちの一方の電極シートの動力学的性能が悪いことによる桶理論の効果を低減する。これにより、濃度分極による性能損失及びエネルギー密度損失などの問題を低減し、ナトリウムイオン電池の充放電パワーを向上させることができる。選択可能的に、1.1≦PD1/PD2≦1.9であり、例示的に、PD1/PD2は、0.44、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、1.0、1.2、1.5、1.8、2.0、2.1、2.2又は2.3であってもよく、或いは、PD1/PD2は、上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0110】
選択可能的に、正極活物質層の圧縮密度PD1は、0.8≦PD1≦1.7を満たす。
【0111】
正極活物質層の圧縮密度PD1を相対的に適度なものとすることで、正極活物質層の厚さを適度に薄くすることができ、ナトリウムイオン伝送経路を短縮してナトリウムイオン電池の充放電パワーを向上させるとともに、濃度分極現象によるナトリウムの析出やナトリウムデンドライト等の問題を低減することができる。また、上記圧縮密度の範囲を満たす正極活物質層は、ナトリウムイオン電池の容量性能を向上させ、内部抵抗を減少させ、ナトリウムイオン電池のサイクル寿命を延長させるのに有利である。選択可能的に、0.9≦PD1≦1.6であり、さらに選択可能的に、1.1≦PD1≦1.5であり、例示的に、PD1は、0.8、0.85、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.65または1.7であってもよく、又はPD1は、上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0112】
負極活物質層の圧縮密度PD2は、0.7≦PD2≦1.8を満たす。
【0113】
負極活物質層の圧縮密度PD2を相対的に適度なものとすることにより、負極活物質層の厚さを適度に薄くすることができ、ナトリウムイオン伝送経路を短縮してナトリウムイオン電池の充放電パワーを向上させるとともに、ナトリウムイオンを負極活物質層に十分に挿入させることができるので、濃度分極現象によるナトリウム析出等の問題を低減することができる。選択可能的に、0.8≦PD2≦1.3であり、さらに選択可能的に、0.9≦PD2≦1.0であり、例示的に、PD2は、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7又は1.8であってもよく、PD2は、上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0114】
いくつかの実施例において、正極活物質層は正極活物質を含み、負極活物質層は負極活物質を含む。正極活物質のグラム容量CAP1と負極活物質のグラム容量CAP2は下記の関係を満たす。
【0115】
【0116】
ここで、h1は、ナトリウムイオン電池が0%の充電状態(State Of Charge、SOC)であるときの正極活物質層の厚さを示し、h2は、ナトリウムイオン電池が0%のSOCであるときの負極活物質層の厚さを示す。0%のSOCは、ナトリウムイオン電池が完全に放電したことを示す。異なるSOC状態において正極活物質層又は負極活物質層の厚さが変化する可能性があり、特に負極活物質層はSOCの増加に伴って厚さが増加する。
【0117】
グラム容量とは、ナトリウムイオン電池内部で活物質の質量に対する活物質の放出できる電気容量の比である。グラム容量は、ミリアンペア時1グラム(mA・h/g)で表すことができる。
【0118】
本願の実施例は、正極活物質のグラム容量CAP1と負極活物質のグラム容量CAP2とが上記関係を満たすように調整する場合、正極活物質のグラム容量CAP1が負極活物質のグラム容量CAP2よりも小さいことを保証することができ、正極活物質から脱離したナトリウムイオンが基本的に負極活物質に挿入され、ナトリウムイオンが負極活物質の表面に蓄積されにくいので、ナトリウムイオンが負極シートの表面に堆積して金属ナトリウムを形成することによるナトリウム析出のリスクを低減することができるとともに、ナトリウム析出による金属ナトリウムがセパレータを突き破ってナトリウムイオン電池の内部短絡を引き起こすリスクを低減することができ、それによりナトリウムイオン電池のサイクル性能を向上させることができる。
【0119】
また、負極活物質のグラム容量CAP2は、正極活物質のグラム容量CAP1よりも若干向上されているが、高すぎることはなく、例えば2≦CAP2/CAP1≦3であり、それにより、負極活物質のグラム容量CAP2が高すぎて正極シートの冗長エネルギー密度が低下するリスクを低減することができ、ナトリウムイオン電池のエネルギー密度を向上させることができる。
【0120】
いくつかの実施例において、正極活物質のグラム容量CAP1は、110mAh/g≦CAP1≦160mAh/gを満たす。
【0121】
正極活物質のグラム容量CAP1が上記範囲を満たすと、ナトリウムイオン電池の容量性能を向上させることができる。選択可能的に、120mAh/g≦CAP1≦155mAh/gであり、例示的に、CAP1は、110mAh/g、115mAh/g、120mAh/g、125mAh/g、130mAh/g、135mAh/g、140mAh/g、150mAh/g、155mAh/gまたは160mAh/gであってもよく、CPA1は、上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0122】
いくつかの実施例において、負極活物質のグラム容量CAP2は、300mAh/g≦CAP2≦360mAh/gを満たす。
【0123】
負極活物質のグラム容量CAP2が上記範囲を満たすと、ナトリウムイオン電池の容量性能を向上させることができるとともに、正極活物質から脱離したナトリウムイオンが負極活物質に基本的に挿入できることを保証し、ナトリウムイオン電池のサイクル性能を向上させることができる。選択可能的に、320mAh/g≦CAP2≦355mAh/gであり、例示的に、CAP2は、300mAh/g、310mAh/g、320mAh/g、325mAh/g、330mAh/g、335mAh/g、340mAh/g、345mAh/g、350mAh/gまたは355mAh/gであってもよく、CPA2は、上記の任意の2つの数値からなる範囲であってもよい。
【0124】
[電解質]
【0125】
電解質は、正極シートと負極シートとの間でイオンを伝導する役割を果たす。本願は電解質の種類を具体的に限定せず、必要に応じて選択することができる。電解質は、例えば、液状、ゲル状または全固体であってもいい。
【0126】
いくつかの実施形態では、電解質は電解液を用いる。電解液は、電解質塩および溶媒を含んでいる。
【0127】
いくつかの実施形態では、電解質塩は、NaPF6、NaClO4、NaBCl4、NaSO3CF3及びNa(CH3)C6H4SO3から選択される少なくとも1種類であってもよい。
【0128】
いくつかの実施形態では、溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ブチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、1,4-ブチロラクトン、スルホラン、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン及びジエチルスルホンから少なくとも1種類であってもよい。
【0129】
いくつかの実施形態では、選択可能的に、電解液は添加剤をさらに含んでもいい。例えば、添加剤は、負極成膜添加剤、正極成膜添加剤を含んでもよく、例えば、電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温又は低温性能を改善する添加剤などの、電池のある性能を改善できる添加剤を含んでもよい。
【0130】
[外装]
【0131】
いくつかの実施形態では、ナトリウムイオン電池は、外装を含み得る。該外装は、上記電極アセンブリ及び電解質を封止するために用いられる。
【0132】
いくつかの実施例において、ナトリウムイオン電池の外装は、硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、スチールケースなどのハードパッケージであってもよい。ナトリウムイオン電池の外装は、例えばバグソフトパッケージのソフトパッケージであってもよい。ソフトパッケージの材質はプラスチックでもよく、プラスチックとしては、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート及びポリブチレンサクシネート等が挙げられる。本願では、ナトリウムイオン電池の形状は特に限定されず、円柱形、角形又は他の任意の形状であってもよい。例えば、
図1および
図2は、例としての角型構造のナトリウムイオン電池1である。
【0133】
いくつかの実施形態では、ナトリウムイオン電池1は、外装11を含む。外装11は、トップカバーアセンブリ111と、ハウジング112とを含む。正極シート、負極シート及びセパレータからなる電極アセンブリ12は、ハウジング112内に収容され、ハウジング112内には、電解質がさらに収容されている。正極シート又は負極シートはタブを含む。ナトリウムイオン電池1の充放電過程において、金属イオンは、正極シートと負極シートとの間に往復して挿入及び脱離する。電解質は、正極シートと負極シートとの間でイオンを伝導する役割を果たす。セパレータは、正極シートと負極シートとの間に設けられ、主に正負極の短絡を防止する役割を果たすとともに、活性イオンを通過させることができる。具体的には、このナトリウムイオン電池1は、巻回式または積層式の電池であってもよいが、これに限定されない。
【0134】
選択可能的に、ハウジング112は、底板と、底板に接続される側板とを含み、底板と側板とが囲んで収容キャビティを形成する。ハウジング112は、収容キャビティに連通する開口を有し、トップカバーアセンブリ111は、収容キャビティを密閉するように開口を覆って設けられる。正極シート、負極シート及びセパレータは、巻回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリ12を形成することができる。電極アセンブリ12は、収容キャビティ内にパッケージングされる。電解液は、電極体12に浸潤される。ナトリウムイオン電池1に含まれる電極アセンブリ12の数量は1つ又は複数であってもよく、当業者は具体的な実際のニーズに応じて選択することができる。
【0135】
いくつかの実施形態では、ナトリウムイオン電池1は、電池として組み立てられ得る。電池は、電池モジュールであってもよいし、電池バックであってもよい。例えば、電池モジュールに含まれるナトリウムイオン電池1の数量は1つ又は複数であってもよく、具体的な数は電池モジュールの応用及び容量に応じて当業者が選択することができる。
【0136】
図3は、一例としての電池モジュール10である。
図3を参照して、電池モジュール10において、複数のナトリウムイオン電池1は、電池モジュール10の長手方向に沿って順に並設されていてもよい。もちろん、他の任意の方式で配置してもよい。さらに、この複数のナトリウムイオン電池1を締結具により固定してもよい。選択可能的に、電池モジュール10は、複数のナトリウムイオン電池1が収容される収容空間を有する外部ハウジングをさらに備えてもよい。
【0137】
いくつかの実施例では、上記電池モジュール10は、電池パックに組み立てられてもよく、電池パックに含まれる電池モジュール10の数量は、1つ又は複数であってもよく、具体的な数量は、電池パックの用途及び容量に応じて当業者が選択することができる。もちろん、電池パックは、複数のナトリウムイオン電池1から直接構成されていてもよい。
【0138】
図4及び
図5は、例としての電池パック20である。
図4及び
図5を参照すると、電池パック20は、電池ケースと、電池ケース内に配置された複数の電池モジュール10を含むことができる。電池ケースは、上ケース21と下ケース22とを含み、上ケース21は、下ケース22を覆って設けられ、電池モジュール10を収容するための密閉空間を形成することができる。複数の電池モジュール10は、任意の方法で電池ケースに配置されてよい。
【0139】
また、本願は、電力消費装置をさらに提供し、電力消費装置は、本願が提供するナトリウムイオン電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの少なくとも1種類を含む。上記ナトリウムイオン電池、電池モジュール、又は電池パックは、上記電力消費装置の電源として用いてもよく、上記電力消費装置のエネルギー貯蔵ユニットとして用いてもよい。前記電力消費装置は、移動機器(例えば、携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば、純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどを含んでもよいが、これらに限定されない。前記電力消費装置としては、その使用ニーズに応じてナトリウムイオン電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0140】
図6は、例としての電力消費装置30である。この電力消費装置30は、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車等である。該電力消費装置30のナトリウムイオン電池に対する高パワー及び高エネルギー密度の要求を満たすために、電池パック又は電池モジュールを採用することができる。他の例としての装置は、携帯電話、タブレットコンピュータ、ノートパソコンなどであってもよい。この装置は、通常、薄型化が求められており、ナトリウムイオン電池を電源として用いることができる。
【0141】
実施例
【0142】
以下、本願の実施例を説明する。以下に説明する実施例は例示的なものであり、本願を説明するためのものに過ぎず、本願を限定するものとして理解することはできない。実施例において具体的な技術又は条件が明記されていないものは、本分野の文献に記載の技術又は条件に従って、又は製品の明細書に従って行う。使用される試薬又は機器は、メーカーを明記していないものであり、いずれも市販品から入手可能な通常の製品である。
【0143】
実施例1
【0144】
1.正極シートの作成
【0145】
正極集電体として、厚さ10μmのアルミニウム箔を用いる。
【0146】
正極活物質Na2MnFe(CN)6、導電剤Super P、接着剤ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を質量比96:2.5:1.5で混合し、溶媒であるN-メチルピロリドン(NMP)に入れ、真空ミキサーの作用下で均一に撹拌し、正極スラリーを得る。このスラリーにおける固形分は60重量%である。
【0147】
上記のように作成された正極スラリーを厚さ8μmのアルミニウム箔に塗布し、乾燥等の工程を経た後、正極シートを得る。
【0148】
正極シートの空隙率の測定過程は、正極シートから直径が14mmである30枚のウェハを採取し、ガス吸着の原理に基づいて、ヘリウムガスを媒体として用い、米国Micromeritics社のAccuPyc II 1340型全自動真密度測定器を用いて30枚のウェハの真体積を測定し、その後、ウェハの面積、厚さ及び数量に基づいて正極シートの見かけ体積と真体積との関係を算出し、空隙率を算出する。
【0149】
2.負極シートの作成
【0150】
正極集電体として厚さ6μmの銅箔を用いる。
【0151】
負極活物質、導電剤としてのSuper P、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC))、接着剤としてのスチレンブタジエンゴムエマルジョン(SBR))を質量比97:0.7:1.8:0.5で混合し、溶媒の脱イオン水に入れ、真空ミキサーの作用下で均一に攪拌し、負極スラリーを得る。この負極スラリーにおける固形分は56重量%である。
【0152】
上記のように作成された負極スラリーを厚さ8μmの銅箔に塗布し、乾燥等の工程を経た後、負極シートを得る。
【0153】
負極シートの空隙率の測定過程は、負極シートから直径が14mmである30枚のウェハを採取し、ガス吸着の原理に基づいて、ヘリウムガスを媒体として、米国Micromeritics社のAccuPyc II 1340型全自動真密度測定器を用いて30枚のウェハの真体積を測定し、その後、ウェハの面積、厚さ及び数量に基づいて負極シートの見かけ体積と真体積との関係を算出し、空隙率を算出する。
【0154】
3、電解質の作成
【0155】
含水量<10ppmのアルゴン雰囲気のグローブボックス中で、十分に乾燥させたナトリウム塩(NaPF6)を、体積比が20:20:60であるエチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及びジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒に溶解させた後、添加剤であるビニレンカーボネート(VC)を添加し、均一に混合し、電解液を得る。ここで、ナトリウム塩の濃度は1mol/Lである。
【0156】
4.セパレータの作成
【0157】
厚さ7μmのポリエチレンフィルム(PE)をセパレータのベースフィルムとし、重量比93%:3%:4%のアルミナ、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)及びアクリル酸エステルを脱イオン水に加入し、真空ミキサーの作用下で均一に攪拌し、スラリーを得る。このスラリーにおける固形分は55重量%であった。得られたスラリーをベースフィルムの両面に片面2μmの厚さで均一に溶射し、セパレータを得る。
【0158】
セパレータの空隙率の測定過程は、セパレータから直径が14mmである30枚のウェハを採取し、ガス吸着の原理に基づいて、ヘリウムガスを媒体として用い、米国Micromeritics社のAccuPyc II 1340型全自動真密度測定器を用いて30枚のウェハの真体積を測定し、その後、ウェハの面積、厚さ及び数量に基づいて、セパレータの見かけ体積と真体積との関係を算出し、空隙率を算出する。
【0159】
5.ナトリウムイオン電池の作成
【0160】
正極シート、セパレータ(PP/PE/PP複合フィルム)、負極シートを順に積層して設置し、アルミプラスチックフィルムに包んで積層型セルを構成し、60℃で上記電解液0.3gをセルに注入し、アルミプラスチックフィルムを真空熱圧着してパッケージし、60℃で少なくとも6時間静置し、30℃まで降温し、30℃で電解質が硬化するまで少なくとも6時間静置し、その後、熱冷間プレス、化成などの工程を経て、ナトリウムイオン電池を得る。
【0161】
実施例2~12
【0162】
実施例2~実施例12は、正極活物質層、負極活物質層およびセパレータの空隙率の少なくとも1つが実施例1と異なる。
【0163】
実施例13~21
【0164】
実施例13~実施例21は、正極活物質層の圧縮密度および負極活物質層の圧縮密度の少なくとも一方が実施例1と異なる。
【0165】
実施例22~実施例26
【0166】
実施例22~実施例26は、正極活物質層の圧縮密度、グラム容量および厚さ、負極活物質層の圧縮密度、グラム容量および厚さの少なくとも1つが実施例1と異なる。
【0167】
実施例27~31
【0168】
実施例27~実施例31の負極活物質層における負極活物質の粒度は、実施例1と異なることである。
【0169】
比較例1
【0170】
比較例1と実施例1の相違点は、正極活物質層、負極活物質層及びセパレータの空隙率が異なることである。
【0171】
実施例1~実施例31及び比較例1の各物質及び関連パラメータを表1~3に示す。
【0172】
【0173】
【0174】
表2における正極活物質層の厚さh1は、ナトリウムイオン電池が0%の充電状態(State Of Charge、SOC)であるときの正極活物質層の厚さを示す。負極活物質層の厚さh2は、ナトリウムイオン電池が0%の充電状態(State Of Charge、SOC)であるときの負極活物質層の厚さを示す。
【0175】
【0176】
上記実施例の負極活物質の粒径分布(Dv90-Dv10)/Dv50の調節過程は、バイオマス前駆体麦わらを原料とし、まず空気環境下で200℃の高温炉内で前駆体を5h加熱し、1回目の乾燥を行って前駆体内部の水分を除去する。冷却後に粉砕し、その後、粉砕後の材料を無酸素環境下に置き、1600℃で5時間焼成し、冷却後、研磨機器を用いてボールミルでボールミル粉砕を行い、4時間ボールミル粉砕すると、所望の粒径分布のハードカーボンを得ることができ、そのうち、ボールミルためのビーズの粒径はそれぞれ50mm、20mm、5mmであり、上記ボールミルためのビーズの数量の比率は約5:30:55である。
【0177】
試験部分
【0178】
正極活物質層、負極活物質層及びセパレータの空隙率の測定
【0179】
GB/T 24586-2009空隙率の測定方法を参照すると、測定方法は、サンプルを入れたサンプルカップを真密度測定器に置き、測定システムを密閉し、ヘリウムガスを導入し、サンプル室と膨張室におけるガスの圧力を測定することにより、さらにボーアの定理(PV=nRT)に基づいて真の体積を計算し、測定対象サンプルの空隙率を得る。
【0180】
正極活物質層、負極活物質層の圧縮密度の測定方法
【0181】
25℃で、ナトリウムイオン電池を0.1C電流で0%のSOCまで放電した後、ナトリウムイオン電池を解体して正極シート、負極シート及びセパレータを分離する。解体した電極シートを60℃の送風乾燥箱内に60min放置し、電極シート上の電解液を完全に揮発させ、その後、電極シートを取り出して温度が室温まで下げた後、無水エタノールで電極シートを30min浸漬し、電極シート上に残った電解液を洗い落とし、続いて60℃の送風乾燥箱内に60min放置し、乾燥電極シートを得る。ボタン電極シート打ち抜き器を用いて直径14mmのウェハを打ち抜き、ウェハの面積をSとし、ウェハの重量W1、集電体の重量W2を秤量し、マイクロメーターで電極シートの厚さH1、集電体の厚さH2を測定する。
【0182】
電極シートの圧縮密度PD=(W1-W2)/((H1-H2)*S)、その単位がg/cm3である。
【0183】
ナトリウムイオン電池が0%のSOCであるときの活物質の厚さの測定
【0184】
ナトリウムイオン電池が0%のSOCである場合、正極シート又は負極シートをサンプルとし、マイクロメーターを用いて電極シートの厚さ方向に沿って少なくとも12個の異なる位置のシートの厚さを測定し、次に平均値を取り、平均値から集電体の厚さを引いて活物質の厚さを得る。
【0185】
負極活物質のDv10、Dv50、Dv90の測定
【0186】
レーザー回折粒度分布測定器(Malvern Mastersizer3000)を用いて、粒度分布レーザー回折法GB/T19077-2016に従って粒径分布を測定し、Dv10、Dv90、Dv50を得て、(Dv90-Dv10)/Dv50を算出する。
【0187】
Dv50試験を例として説明し、具体的には、負極活物質のDv50の試験方法は、(1)サンプル前処理:清潔なビーカーを取り、適量の試験サンプルを添加し、界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウムを滴下した後、脱イオン水を添加して分散剤とし、超音波処理(120W/5min)を行い、サンプルが分散剤に完全に分散することを保証する。(2)試験過程:LS-909レーザー粒度計(OMEC)を用いてDv50の測定を行う。サンプルを試料導入塔に注入した後、溶液とともに試験光路系へ循環させ、粒子がレーザビームの照射下で発する散乱光を受光し、そのエネルギー分布を測定し、粒子の粒度分布特徴(遮光度:8~12%)を得ることができ、最終的に材料のDv50値を得る。
【0188】
ナトリウムイオン電池のサイクル回数の測定
【0189】
ナトリウムイオン電池を含めたサイクル特性を、25℃で、0.5C/0.5Cの条件で評価する。
【0190】
具体的には、0.5Cの倍率で定電流定電圧によりでナトリウムイオン電池を充電し、充電カットオフ電圧3.75Vまで充電し、5分間静置した後、0.5の倍率で放電カットオフ電圧2Vまで定電流放電し、放電容量を記録し、さらに5分間静置し、このように繰り返す。放電容量が初期容量の80%以上となるサイクル回数を記録する。
【0191】
ナトリウムイオン電池の60sパルス放電パワーの測定
【0192】
25℃で、0.5Cの倍率で定電流定電圧によりナトリウムイオン電池を充電し、充電カットオフ電圧3.75Vまで充電し、5分間静置した後に特定のパワーで放電し、60s時に電池の電圧がちょうど2Vに達して放電を停止することを保証し、この時のパワーは60sパルス放電パワーである。
【0193】
ナトリウムイオン電池の60sパルス放電パワーを測定することにより、電池のパワー性能を特定することができる。
【0194】
試験結果
【0195】
本願のナトリウムイオン電池の充放電性能及びエネルギー密度を改善する作用を表4~表6に示す。
【0196】
【0197】
表4から分かるように、比較例1、実施例1~実施例12は、異なる空隙率の正極活物質層、負極活物質層及びセパレータを採用し、ナトリウムイオンの充放電過程においてナトリウムイオンの移動速度を制御することができ、0≦(β-α)/γ≦1.5、且つα≦γ、特に0.4≦(β-α)/γ≦1.5である場合、ナトリウムイオンの移動速度が速く、ナトリウムイオンの充放電パワーが高い。
【0198】
【0199】
表5から分かるように、実施例1、実施例13~実施例21は、正極活物質層の圧縮密度PD1及び負極活物質層の圧縮密度PD2を調整し、0.44≦PD1/PD2≦2.3、特に1.2≦PD1/PD2≦1.5である場合、正極活物質層と負極活物質層の動力学的性能がマッチングし、活物質から脱離したナトリウムイオンは、極性が反対である活物質に十分に挿入され、濃度分極による悪影響を低減し、且つナトリウムイオン電池の充放電パワーを向上させることができる。
【0200】
実施例23~実施例26は、同時に活物質層の圧縮密度、グラム容量及び厚さを調節して、ナトリウムイオン電池の性能を調節する。
【0201】
また、
【数3】
である場合に、ナトリウムイオン電池の性能は優れている。
【0202】
【0203】
表6から分かるように、実施例1、実施例27~実施例31は、負極活物質の粒度及び粒度分布を調整し、特に0.5≦(Dv90-Dv10)/Dv50≦2である場合、負極活物質の各箇所におけるナトリウムイオンの移動速度がほぼ一致し、移動経路が接近することを保証できる。これにより、ナトリウムイオンが負極活物質に均一に挿入され、濃度分極のリスクを低減することができる。
【0204】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。特に、各実施例に記載された各技術的特徴は、構造的な矛盾がない限り、任意に組み合わせることができる。本願は、本明細書に開示された特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に含まれるすべての技術案を含む。
【国際調査報告】