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特表2024-547091耐熱性を有する表面処理銅箔、これを含む銅箔積層板及びプリント配線板
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  • 特表-耐熱性を有する表面処理銅箔、これを含む銅箔積層板及びプリント配線板 図1
  • 特表-耐熱性を有する表面処理銅箔、これを含む銅箔積層板及びプリント配線板 図2
  • 特表-耐熱性を有する表面処理銅箔、これを含む銅箔積層板及びプリント配線板 図3A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】耐熱性を有する表面処理銅箔、これを含む銅箔積層板及びプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   C25D 5/10 20060101AFI20241219BHJP
   C25D 5/16 20060101ALI20241219BHJP
   C25D 7/06 20060101ALI20241219BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20241219BHJP
   C23C 22/24 20060101ALI20241219BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20241219BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20241219BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C25D5/10
C25D5/16
C25D7/06 A
C23C28/00 C
C23C22/24
B32B15/08 J
H05K1/03 630H
H05K1/03 610G
H05K1/09 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537474
(86)(22)【出願日】2022-07-25
(85)【翻訳文提出日】2024-06-20
(86)【国際出願番号】 KR2022010869
(87)【国際公開番号】W WO2023120855
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0185373
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515059290
【氏名又は名称】ロッテエナジーマテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソ、チュン ウ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、チャン ヨル
(72)【発明者】
【氏名】ソン、キドク
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ウン シル
【テーマコード(参考)】
4E351
4F100
4K024
4K026
4K044
【Fターム(参考)】
4E351AA02
4E351BB30
4E351DD04
4E351DD08
4E351DD54
4E351DD55
4E351GG01
4E351GG07
4F100AB13D
4F100AB17A
4F100AB17B
4F100AB18C
4F100AB31B
4F100AB33A
4F100AK01E
4F100AK18E
4F100AT00E
4F100BA05
4F100BA07
4F100DC21C
4F100DD07C
4F100DE01B
4F100DE01C
4F100GB43
4F100JB02D
4F100JJ03
4F100JK06
4F100YY00
4K024AA05
4K024AA09
4K024AB04
4K024AB09
4K024BA09
4K024BB11
4K024BC02
4K024CA01
4K024CA03
4K024CA06
4K024DB03
4K024DB04
4K024GA12
4K024GA16
4K026AA06
4K026AA12
4K026AA22
4K026BA06
4K026BB10
4K026CA13
4K026CA20
4K026DA03
4K026EB07
4K044AA06
4K044AB02
4K044BA06
4K044BA10
4K044BA15
4K044BA21
4K044BB05
4K044BB14
4K044BC02
4K044BC04
4K044BC14
4K044CA16
4K044CA18
4K044CA53
4K044CA62
(57)【要約】
長期高温信頼性を有し、伝送損失が少ないため高周波箔として適する表面処理銅箔が開示される。本発明は、銅原箔の少なくとも一面に形成されたCu又はCu合金粒子を含む1次粒子層と、前記1次粒子層上に形成されたZn粒子を含む2次粒子層とを含む表面処理層を有する表面処理銅箔であって、前記2次粒子層は、複数のZn粒子が群集して形成された粒子集合体(cluster)からなることを特徴とする表面処理銅箔を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅原箔の少なくとも一面に形成されたCu又はCu合金粒子を含む1次粒子層と、前記1次粒子層上に形成されたZn粒子を含む2次粒子層とを含む表面処理層を有する表面処理銅箔であって、
前記2次粒子層は、複数のZn粒子が群集して形成された粒子集合体(cluster)からなることを特徴とする、表面処理銅箔。
【請求項2】
前記粒子集合体は、前記第1粒子層上で不連続に分布することを特徴とする、請求項1に記載の表面処理銅箔。
【請求項3】
前記表面処理銅箔の表面処理層は、表面粗さ(R)が1.0μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の表面処理銅箔。
【請求項4】
前記粒子集合体は、表面処理銅箔の5μm×5μmの面積に平均で2個以上分布していることを特徴とする、請求項1に記載の表面処理銅箔。
【請求項5】
前記粒子集合体は、表面処理銅箔の5μm×5μmの面積に15個以下で分布していることを特徴とする、請求項1に記載の表面処理銅箔。
【請求項6】
前記2次粒子層の粒子サイズは、前記1次粒子層の粒子サイズよりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の表面処理銅箔。
【請求項7】
前記1次粒子層の平均粒子サイズは100nm未満であり、前記2次粒子層の粒子集合体の平均サイズは0.5μm~2.0μmであることを特徴とする、請求項6に記載の表面処理銅箔。
【請求項8】
前記表面処理層のZn濃度が2000μg/dm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の表面処理銅箔。
【請求項9】
前記表面処理層のZn濃度が3500μg/dm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の表面処理銅箔。
【請求項10】
前記第2粒子層上に防錆層をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の表面処理銅箔。
【請求項11】
前記防錆層はクロムを含むことを特徴とする、請求項1に記載の表面処理銅箔。
【請求項12】
前記銅原箔は電解銅箔であることを特徴とする、請求項1に記載の表面処理銅箔。
【請求項13】
樹脂基板上に、請求項1~10のいずれか一項に記載の表面処理銅箔が積層されている、銅箔積層板。
【請求項14】
前記樹脂基板はPTFE基板であることを特徴とする、請求項13に記載の銅箔積層板。
【請求項15】
前記銅箔積層板は、接着強度の高温劣化率が10%未満であることを特徴とする、請求項13に記載の銅箔積層板。
【請求項16】
請求項14~16のいずれか一項に記載の銅箔積層板を用いて形成された、プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理銅箔に関し、より詳細には、樹脂基板における長期高温信頼性を有し、伝送損失が少ないため高周波回路への使用に適する表面処理銅箔、これを含む銅箔積層板及びプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
電気/電子機器の小型化、軽量化が加速化するに伴い、基板上に形成された印刷回路が微細化、高集積化、小型化しつつあり、これにより、印刷回路基板に使用される銅箔にも様々な物性が要求されている。
【0003】
それらに使用されるフレキシブル(flexible)基板、高密度実装用多層基板、高周波回路基板など(以下、これらを総称して「回路基板」又は「プリント配線板」という。)の製造に使用される基板用複合材は、導体(銅箔)とそれを支持する絶縁基板(樹脂フィルムを含む。)で構成され、絶縁基板は、導体間の絶縁を確保し、部品を支持する程度の強度を有する。
【0004】
絶縁基板と銅箔との接着強度を向上させるために、銅箔の表面に粗化粒子を付着させ、アンカー効果によって接着力を向上させるのが一般的である。しかしながら、高周波回路用の銅箔は、低粗度の表面処理銅箔が要求されるため、このような方式では樹脂基板との接着強度を確保し難いという問題点がある。特に、銅箔と絶縁基板との接着面は、加熱接合のような高温工程又は高温環境への露出によってなされるが、銅箔と基板との接着強度の高温信頼性の確保が非常に難しい実情である。
【0005】
このような問題点を解決するために、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂のような耐熱性樹脂基板を使用し、従来のCu粒子層に様々な合金層によって耐熱性を付与しようとする試みがあってきた。
【0006】
しかしながら、このような合金層は、エッチング速度を低下させ、伝送損失の増加を招いており、また、ある程度耐熱性を有しはするが、長期高温信頼性の確保が難しいという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような従来技術の問題点を解決するために、本発明は、高温で樹脂基板と高い接着強度を有し、接着強度の長期高温信頼性を有し、高周波箔として好適な表面処理銅箔、これを含む銅箔積層板、及びこれを含むプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の技術的課題を達成するために、本発明は、銅原箔の少なくとも一面に形成されたCu又はCu合金粒子を含む1次粒子層と、該1次粒子層上に形成されたZn粒子を含む2次粒子層とを含む表面処理層を有する表面処理銅箔であって、前記2次粒子層は、複数のZn粒子が群集して形成された粒子集合体(cluster)からなることを特徴とする表面処理銅箔を提供する。
【0009】
本発明において、前記粒子集合体は、前記第1粒子層上で不連続に分布してよい。
【0010】
本発明において、前記表面処理銅箔の表面処理層は、表面粗さ(Rz)が1.0μm以下であってよい。
【0011】
本発明において、前記粒子集合体は、表面処理銅箔の5μm×5μmの面積に、平均で2個以上15個以下で分布してよい。
【0012】
本発明において、前記2次粒子層の粒子サイズは、前記1次粒子層の粒子サイズよりも大きくてよい。
【0013】
本発明において、前記1次粒子層の平均粒子サイズは、100nm未満であることが好ましい。また、本発明において、前記2次粒子層の粒子集合体は、平均サイズが0.5μm~2.0μmであることが好ましい。
【0014】
本発明において、前記表面処理層のZn濃度が2000μg/dm以上であることが好ましく、3500μg/dm以下であることが好ましい。
【0015】
本発明の表面処理銅箔は、前記第2粒子層上に防錆層をさらに含んでよく、前記防錆層はクロムを含むことが好ましい。
【0016】
本発明において、前記銅原箔は電解銅箔であることが好ましい。
【0017】
また、上記の他の技術的課題を達成するために、本発明は、上記の表面処理銅箔が樹脂基板上に積層された銅箔積層板を提供する。このとき、前記樹脂基板は、PTFE基板であってよい。
【0018】
本発明において、銅箔積層板は、接着強度の高温劣化率が10%未満であることが好ましい。
【0019】
また、本発明は、前述の銅箔積層板を用いて形成されたプリント配線板を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高温で樹脂基板との高い接着強度を有し、接着強度の長期高温信頼性を有し、高周波箔として適する表面処理銅箔、これを含む銅箔積層板及びこれを含むプリント配線板を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施例に係る表面処理銅箔の断面を撮影した電子顕微鏡写真である。
図2】本発明の一実施例に係る表面処理銅箔の表面を撮影した電子顕微鏡写真である。
図3A】実施例によって製造された表面処理銅箔の表面を観察した電子顕微鏡写真である。
図3B】比較例によって製造された表面処理銅箔の表面を観察した電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書に記載する実施例と図面に示す構成は、本発明の最も好ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想を全て代弁するものではなく、よって、本出願時点においてそれらを代替し得る様々な均等物と変形例があり得ることを理解すべきである。以下では、添付の図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
【0023】
本発明の表面処理銅箔は、原箔、該原箔の少なくとも一面の1次粒子層、及び該1次粒子層上の2次粒子層を含む。さらに、本発明の表面処理銅箔は、前記2次粒子層上に防錆層をさらに含んでよい。
【0024】
図1及び図2はそれぞれ、本発明の一実施例に係る表面処理銅箔の断面構造及び表面構造を撮影した電子顕微鏡写真である。
【0025】
図1を参照すると、原箔10の一側表面に、1次粒子層20及び2次粒子層30からなる複層構造の表面処理層が形成されている。図1の写真から、1次粒子層20は原箔表面の実質的な全ての領域をカバーしているが、2次粒子層30は1次粒子層20上に不連続に分布していることが分かる。
【0026】
図2を参照すると、相対的に明るく見える平均サイズ0.5μm~2μmの粒子集合体(Cluster)からなる2次粒子層30と、2次粒子層の背景をなす暗く見える0.1μm未満サイズの微細粒子からなる1次粒子層20を確認することができる。ここで、1次粒子層はCu粒子で構成され、2次粒子層はZn粒子で構成されている。
【0027】
2次粒子層の粒子集合体は、個別粒子が0.5μm未満のサイズを有するが、1次粒子層よりは2~5倍以上と非常に大きい粗いZn粒子がブドウの房の形態で群集した構造をなしていることが分かる。また、2次粒子層をなすZn粒子は、単一粒子の形態であるものも一部観察されるが、大部分は2つ以上又は3つ以上の粒子が群集して粒子集合体(Cluster)をなしていることが分かる。このような粒子集合体は平均で0.5μm~2μmのサイズを有していることが分かる。本発明において、粒子集合体は局部的な領域に形成され、一部は、相互間に孤立している。
【0028】
以下では、本発明の原箔、1次粒子層、2次粒子層、防錆層、及びそれらの製造方法を詳しく説明する。
【0029】
A.原箔
【0030】
本発明において、銅原箔は、表面処理や防錆処理がされていない銅箔のことを指す。銅原箔としては公知の如何なる銅箔も使用可能である。一具現例によれば、未処理銅箔は、電解銅箔又は圧延銅箔であってよい。
【0031】
本発明において、原箔の厚さは特に限定されないが、表面処理銅箔をプリント配線板に使用する場合に、原箔の厚さは、例えば6μm~35μm、好ましくは7μm ~17μmであってよい。
【0032】
本発明において、原箔は、35kgf/mm~60kgf/mm、35kgf/mm~50kgf/mm、又は35kgf/mm~45kgf/mmの引張強度を有することが好ましい。
【0033】
また、本発明において、原箔は、銅箔積層板又はプリント配線板の成形のためのプリプレグ(Prepreg)との接合過程において、高温プレス前後の原箔の機械的物性が一定に維持されることが好ましい。本発明において、原箔は、プレス前後の結晶粒の変化が非常に小さい。
【0034】
例えば、原箔は、常温における引張強度値に対して、4.9Mpaの圧力及び220℃の温度で所定時間熱処理後の引張強度値の変化率が5%未満、又は3%未満であってよい。また、前記原箔は、常温における延伸率に対する、4.9Mpaの圧力及び220℃の温度で所定時間熱処理後の延伸率の変化率が5%未満、又は3%未満であってよい。
【0035】
B.1次粒子層(ノジュール層)
【0036】
本発明において、1次粒子層は、原箔の一面又は両面に形成されてよい。本発明の表面処理層の形成のための表面処理方法は特に限定されず、例えば、原箔を電解メッキして表面処理層を形成することができる。電解液としては、銅塩5~60g/L及びエチレンジアミンテトラ酢酸二ナトリウム(EDTA-2Na)50~200g/Lを含んでいる水溶液を、例えばpH 1~8(例えば、pH 6~7)に調整したものを使用することができる。銅塩の種類には、硫酸銅(CuSO)、硝酸銅(Cu(NO)、塩化銅(CuCl)、酢酸銅(Cu(CHCOO))などを挙げることができ、添加剤としては、クエン酸(C)、エチレンジアミンテトラ酢酸(C1016)、ニトリルトリ酢酸(CNO)、クエン酸ナトリウム(CNa)、酒石酸(C)からなる群から選ばれる少なくとも1種を使用することができるが、これに限定されるものではない。電解メッキは、例えば、不溶性電極を陽極とし、未処理原箔を陰極として電解液に浸漬し、25~45℃の液温度及び0.5~10A/dmの電流密度において、例えば5~20秒間電解させてなってよいが、これに限定されるものではない。
【0037】
本発明において、1次粒子層は、平均粒径が100nm以下である微細銅粒子からなることが好ましい。例えば、1次粒子層の微細銅粒子は、平均粒径が10nm~100nm、20nm~100nm、又は50nm~100nmであってよい。本発明において、銅粒子の平均粒径は、走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope,SEM)イメージを得、イメージ分析によって銅粒子の粒径を測定して計算できるが、総100個の粒子の測定値を平均することによって計算されてよい。前記1次粒子層の微細銅粒子の平均粒径がこの範囲に含まれる場合、樹脂基板との接着強度に優れ、伝送損失が少ないので、高周波箔として好適であり得る。
【0038】
C.2次粒子層
【0039】
2次粒子層は、1次粒子層が形成された表面処理箔を電解メッキして形成することができる。電解液としては、亜鉛1~5g/L、リン酸1~5g/Lを含む水溶液を使用し、表面処理箔を陰極として電解液に浸漬し、25~45℃の液温度及び1~3A/dmの電流密度において、例えば、5~10秒間電解させてなってよいが、これに限定されるものではない。
【0040】
D.防錆層
【0041】
本発明において、前記2次粒子層上には防錆層が形成されてよい。防錆層はクロム(Cr)を含んでよい。防錆層には、クロムに代えて又は加えてニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、コバルト(Co)、チタニウム(Ti)、スズ(Sn)などの金属が含まれてよい。
【0042】
本発明において、クロメート防錆処理の場合、クロム1~5g/lの電解液を使用し、25~35℃の液温度及び0.5A/dmの電流密度において1~5秒間メッキ後に水洗処理することによって行われてよい。
【0043】
本発明において、表面処理銅箔は、低誘電樹脂、ポリイミド、ハイドロカーボン又はポリテトラフルオロエチレンフィルムと接着して銅箔積層板として製造されてよい。
【0044】
本発明において、表面処理銅箔の表面粗さ(Rz)は、1.0μm未満であることが好ましく、より好ましくは、表面処理銅箔の表面粗さは0.85~0.95の範囲であるとよい。また、本発明において、表面処理銅箔の3D粗さ(Sa)は0.3以上であることが好ましく、より好ましくは0.3~0.35であるとよい。
【0045】
上述した表面処理銅箔は、樹脂基板上に積層されることによって銅箔積層板として使用可能であり、このような銅箔積層板はプリント配線板を製造するために用いられてよい。
【0046】
本発明において、表面処理銅箔は、低誘電樹脂、ポリイミド、ハイドロカーボン又はポリテトラフルオロエチレンのような樹脂基板と高い接着強度を示し、高温に長時間露出されても接着強度劣化の可能性は非常に低い。
【0047】
本発明の表面処理銅箔は、PTFE樹脂との接着強度が2.0kgf/cm以上、2.5kgf/cm以上、2.7kgf/cm以上、又は2.8kgf/cm以上であってよい。このとき、接着強度はJIS C6481に準拠して測定されてよい。
【0048】
本発明の表面処理銅箔は、PTFE樹脂のような樹脂基板との接着によって銅箔積層板を製造し後、1日経過時の接着強度値を基準にした、177゜Cの温度で10日経過後の接着強度の変化率に該当する接着強度劣化率(%)が、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下の値を有することが好ましい。
【実施例
【0049】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。ただし、これは、本発明の好ましい例示として提示されたものであり、いかなる意味でもこれによって本発明が限定されるものと解釈されることはない。
【0050】
実施例
【0051】
<実施例1>
【0052】
厚さ12μmの原箔(電解銅箔)を、銅10~20g/L、EDTA-2Na 100~200g/Lを含む水溶液に浸漬し、液温度25℃、pH 7、電流密度8A/dmの条件下で4秒間メッキし、1次粒子層(ノジュール層)を形成した。
【0053】
次いで、1次粒子層が形成された銅箔を、硫酸亜鉛(亜鉛濃度1~5g/L)、リン酸1~5g/Lの水溶液に浸漬し、3.5A/dmの条件下で6秒間2回処理し、2次粒子層を形成した。その後、表面処理された銅箔を、クロム2g/L濃度の水溶液に3秒浸漬後に水洗し、防錆層を形成した。次いで、防錆処理された銅箔をシランカップリング剤1~10g/Lの溶液に3秒間浸漬後に100℃温度の熱風で乾燥させ、表面処理銅箔を製造した。
【0054】
<実施例2>
【0055】
厚さ12μmの原箔を、銅10~20g/L、EDTA-2Na 100~200g/Lを含む水溶液に浸漬し、液温度25℃、pH 7、電流密度8A/dmの条件下で4秒間メッキし、1次粒子層(ノジュール層)を形成した。
【0056】
次いで、1次粒子層が形成された銅箔を、亜鉛1~5g/L、リン酸1~5g/Lの水溶液に浸漬し、2.5A/dmの条件下で6秒間2回処理し、2次粒子層を形成した。その後、表面処理された銅箔を、クロム2g/L濃度の水溶液に3秒浸漬後に水洗し、防錆層を形成した。次いで、防錆処理された銅箔をシランカップリング剤1~10g/Lの溶液に3秒間浸漬後に100℃温度の熱風で乾燥させ、表面処理銅箔を製造した。
【0057】
<比較例1>
【0058】
厚さ12μmの原箔を銅10~20g/L、EDTA-2Na 100~200g/Lを含む水溶液に浸漬し、液温度25℃、pH 7、電流密度8A/dmの条件下で4秒間メッキし、1次粒子層(ノジュール層)を形成した。
【0059】
次いで、1次粒子層が形成された銅箔を、亜鉛1~5g/L、リン酸1~5g/Lの水溶液に浸漬し、2.0A/dmの条件下で6秒間2回処理し、2次粒子層を形成した。その後、表面処理された銅箔をクロム2g/L濃度の水溶液に3秒浸漬後に水洗し、防錆層を形成した。次いで、防錆処理された銅箔をシランカップリング剤1~10g/Lの溶液に3秒間浸漬後に100℃温度の熱風で乾燥させ、表面処理銅箔を製造した。
【0060】
<比較例2>
【0061】
厚さ12μmの原箔を、銅10~20g/L、EDTA-2Na 100~200g/Lを含む水溶液に浸漬し、液温度25℃、pH 7、電流密度8A/dmの条件下で4秒間メッキし、1次粒子層(ノジュール層)を形成した。
【0062】
次いで、1次粒子層が形成された銅箔を、亜鉛1~5g/L、リン酸1~5g/Lの水溶液に浸漬し、0.5A/dmの条件下で40秒間2回処理し、2次粒子層を形成した。その後、表面処理された銅箔をクロム2g/L濃度の水溶液に3秒浸漬後に水洗し、防錆層を形成した。次いで、防錆処理された銅箔をシランカップリング剤1~10g/Lの溶液に3秒間浸漬後に100℃温度の熱風で乾燥させ、表面処理銅箔を製造した。
【0063】
<比較例3>
【0064】
厚さ12μmの原箔を、銅10~20g/L、EDTA-2Na 100~200g/Lを含む水溶液に浸漬し、液温度25℃、pH 7、電流密度8A/dmの条件下で4秒間メッキし、1次粒子層(ノジュール層)を形成した。次いで、銅60~70g/L、硫酸120g/L、15A/dmの条件で3秒間、ノジュール脱落防止のためのカバーリングメッキをした。
【0065】
次いで、カバーリングメッキされた銅箔を、亜鉛1~5g/L、リン酸1~5g/Lの水溶液に浸漬し、0.3A/dmの条件下で6秒間2回処理し、2次粒子層を形成した。その後、表面処理された銅箔をクロム2g/L濃度の水溶液に3秒浸漬後に水洗し、防錆層を形成した。次いで、防錆処理された銅箔をシランカップリング剤1~10g/Lの溶液に3秒間浸漬後に100℃温度の熱風で乾燥させ、表面処理銅箔を製造した。
【0066】
<物性評価>
【0067】
実施例及び比較例で製造された各表面処理銅箔サンプルの物性を測定した。物性評価項目及び測定方法は次の通りである。
【0068】
a.粗さ
【0069】
実施例及び比較例で製造された表面処理銅箔に対して、表面粗さ測定機SURFCOM 1400D(TSK、東京精密)を用いてJIS B0601に準拠して銅箔の表面処理前後のそれぞれに対する10点平均粗さRを測定した。
【0070】
b.3次元粗さ
【0071】
実施例及び比較例で製造された表面処理銅箔に対して、3次元プロファイラー(3D Profiler)であるナノシステムズ社製NV-2200を用いて非接触方式で物体の微小な段差の形状を測定し、3次元粗さを測定した。
【0072】
c.1次粒子層の平均粒径
【0073】
実施例及び比較例で原箔の表面に1次粒子層を形成した直後に、その表面を走査電子顕微鏡を用いてFE-SEMイメージを撮影し、5μm×5μmの面積内の100個の銅粒子に対して粒径を測定し、それらの平均値を求めた。
【0074】
d.2次粒子層の平均粒径
【0075】
実施例及び比較例で2次粒子層を形成した直後に、その表面を走査電子顕微鏡を用いてFE-SEMイメージを撮影し、5μm×5μmの面積内の50個の2次粒子に対して粒径を測定し、それらの平均値を求めて平均粒径とした。
【0076】
e.接着強度(単位:kgf/cm)
【0077】
銅箔試験片を幅10mmで準備し、テフロン(登録商標)樹脂上に380℃でプレスしてサンプルを準備した。JIS C64718.1に準拠した90゜剥離法で接着強度を確認した。絶縁体は、製品名EA-2000(AGC社製)である厚さ50μmのテフロン(登録商標)製品を使用した。
【0078】
f.2次粒子層の粒子量
【0079】
表面処理銅箔10cm×10cmサンプルを準備し、塩酸過水溶液に浸漬し、1μm厚の表面を溶出させた後、その原液をICP分析法で測定し、2次粒子層(Zn)の粒子量を測定した。
【0080】
g.接着強度の高温劣化率
【0081】
テフロン(登録商標)樹脂に高温プレスして接着強度を確認したサンプルに対して、上の方法で接着強度を測定し、基準値とした。その後、当該サンプルを177゜C温度のオーブンで10日間保持したのち接着強度を測定し、基準値に対する変化率を、接着強度の高温劣化率(%)とした。
【0082】
下表1は、測定された物性値を並べた表である。
【0083】
【表1】
【0084】
図3A及び図3Bはそれぞれ、実施例1及び比較例2で製造された表面処理銅箔の表面を観察した電子顕微鏡写真である。図3を参照すると、実施例1において、表面に、下地の1次粒子層に比べて粗大な粒子で構成される粒子集合体構造の2次粒子層が形成されていることが確認できる。しかし、比較例2では、粒子集合体構造が発達していないことが分かる。これは、2次粒子ソースとして供給されたZnが別の層をなすよりは1次粒子層の粒子表面に均一に蒸着されたためと考えられる。このような現象は比較例3からも観察されたし、これによって劣化率が非常に低い値を示すことが分かる。一方、比較例1において粒子集合体構造が形成されたが、2次粒子層の粒子量が実施例1及び2に比べて低い値を示すことが分かり、このような要因が劣化率の急激な増加を招いたと考えられる。
【0085】
以上、本発明の好ましい実施例を詳細に説明してきたが、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者は、上述した実施例に対して、本発明の範疇から逸脱しない限度内で様々な変形が可能であることが理解できよう。したがって、本発明の権利範囲は、説明された実施例によって定められてはならず、後述する特許請求の範囲及びそれと均等なものによって定められるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、電解銅箔、銅箔積層板、及びプリント配線板に適用可能である。
図1
図2
図3A
図3B
【国際調査報告】