(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】電気化学装置およびそれを含む電子装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20241219BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20241219BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/052
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537493
(86)(22)【出願日】2021-12-31
(85)【翻訳文提出日】2024-06-20
(86)【国際出願番号】 CN2021143871
(87)【国際公開番号】W WO2023123427
(87)【国際公開日】2023-07-06
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514257398
【氏名又は名称】東莞新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】DONGGUAN AMPEREX TECHNOLOGY LIMITED
【住所又は居所原語表記】No.1 Industrial West Road,Songshan Lake High-tech Industrial Development Zone, Dongguan City, Guangdong Province, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徐春瑞
(72)【発明者】
【氏名】▲許▼▲艶▼▲艶▼
(72)【発明者】
【氏名】唐超
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AJ12
5H029AK01
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL12
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ07
(57)【要約】
本発明は、電気化学装置およびそれを含む電子装置に関する。本発明にかかる電気化学装置は、負極と、正極と、電解液とを含む。上記正極は、集電体と上記集電体に位置する正極活物質層とを含み、上記正極活物質層は正極活物質を含む。上記電解液は添加剤Aを含み、上記添加剤AはLiPO2F2を含む。上記正極の活性比表面積をX m2/gとし、上記電解液の重量に対して上記LiPO2F2の重量百分率をY%としたとき、上記X、Yは、0.005≦X/Y≦2を満たす。本発明にかかる電気化学装置は、サイクル特性、貯蔵特性、過充電特性が向上し、インピーダンスが低減されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極と、正極と、電解液とを含む電気化学装置であって、
前記正極は、集電体と前記集電体に位置する正極活物質層とを含み、前記正極活物質層は正極活物質を含み、
前記電解液は添加剤Aを含み、前記添加剤AはLiPO
2F
2を含み、
前記正極の活性比表面積をX m
2/gとし、前記電解液の重量に対して前記LiPO
2F
2の重量百分率をY%としたとき、前記XとYは、0.005≦X/Y≦2を満たす、電気化学装置。
【請求項2】
(i)前記Xは、0.01≦X≦0.1を満たすことと、
(ii)前記Yは、0.01≦Y≦2を満たすことと、
(iii)前記XとYは、0.005≦X/Y≦1を満たすことと、
のうちの少なくとも1つの条件を満たす、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項3】
前記電解液は、ビニレンカーボネートをさらに含み、
前記電解液の重量に対して、前記ビニレンカーボネートの重量百分率をZ%としたとき、Zは、0.01~6である、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項4】
Z/Yは、0.01~600である、請求項3に記載の電気化学装置。
【請求項5】
前記電解液は、フルオロエチレンカーボネートをさらに含み、
前記フルオロエチレンカーボネートは、前記電解液の重量に対して、重量百分率で0.01%~5%である、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項6】
前記電解液は、添加剤Bをさらに含み、
前記添加剤Bは、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、テトラフルオロホウ酸リチウム、B
4Li
2O
7、Li
3BO
3、CF
3LiO
3S、ヘキサフルオロリン酸リチウムおよび過塩素酸リチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である、および/または、
前記添加剤Bは、前記電解液の重量に対して、重量百分率で0.01%~16%である、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項7】
前記正極活物質はM元素を含み、
前記M元素は、Fe、Mn、Al、Ca、K、Na、Mg、TiおよびZnからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項8】
前記ビニレンカーボネートの重量をW1gとし、前記負極の重量をW2gとしたとき、W1/W2は、0.001~0.031である、請求項3に記載の電気化学装置。
【請求項9】
前記電解液は、S=O官能基含有化合物をさらに含み、
前記S=O官能基含有化合物は、1,3-プロパンスルトン、エチレンスルファート、メチレンメタンジスルホナート、プロペンスルトン、4-メチル-1,3,2-ジオキサチオラン-2,2-ジオキシド、1,4-ブタンスルトンおよび1,2,6-オキサジチアン-2,2,6,6-テトラオキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種である、および/または、
前記S=O官能基含有化合物は、前記電解液の重量に対して、重量百分率で0.01%~5%である、請求項1に記載の電気化学装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の電気化学装置を含む、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー貯蔵分野に関し、具体的に、電気化学装置およびそれを含む電子装置、特に、リチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、リチウムイオン電池は、電気自動車、家電製品、エネルギー貯蔵装置などの分野に広く使用されており、エネルギー密度が高く、メモリー効果がないなどの利点から、徐々に上記分野で主流の電池となっている。特に、電気自動車、マイクロパワーおよびエネルギー貯蔵業界は急速に発展しているため、リチウムイオン電池の応用に広範な市場を提供している。正極材料であるリン酸鉄リチウム自体の特性により、それによって構成される電池は、安全性が高く、使用寿命が長く、高温特性が高く、コストが低く、環境に優しい特徴がある。従って、上記電池は、他の種類のリチウムイオン電池に比べて大きな優位性および応用の先行きを持っている。上記電池は相対的に寿命が長いものの、動力電池とエネルギー貯蔵分野における電池の使用寿命に対する要求がますます高くなっており、如何にリチウムイオン電池の貯蔵特性、サイクル特性、安全特性、反応速度論(kinetics)的特性を低コストでさらに向上させるかという課題は依然として重要な価値を持っている。
【0003】
電解液の最適化によりリン酸鉄リチウム電池の寿命と安全特性を向上させることは、高いコストパフォーマンスを有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施例は、関連分野に存在する問題の少なくとも1つを少なくともある程度で解決するために、電気化学装置を提供する。本発明の実施例は、さらに、当該電気化学装置を含む電子装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施例において、本発明は電気化学装置を提供し、上記電気化学装置は、負極と、正極と、電解液とを含む。上記正極は、集電体と上記集電体に位置する正極活物質層とを含み、上記正極活物質層は正極活物質を含む。上記電解液は添加剤Aを含み、上記添加剤AはLiPO2F2を含む。上記正極の活性比表面積(active specific surface area)をX m2/gとし、上記電解液の重量に対して上記LiPO2F2の重量百分率をY%としたとき、上記X、Yは、0.005≦X/Y≦2を満たす。
【0006】
一実施例において、XとYは、
(i)Xは、0.01≦X≦0.1を満たすことと、
(ii)Yは、0.01≦Y≦2を満たすことと、
(iii)XとYは、0.005≦X/Y≦1を満たすことと、
のうちの少なくとも1つの条件を満たす。
【0007】
一実施例において、上記電解液は、ビニレンカーボネートをさらに含み、上記電解液の重量に対して、上記ビニレンカーボネートの重量百分率をZ%としたとき、Zは0.01~6である。
【0008】
いくつかの実施例において、Z/Yは0.5~600である。
【0009】
いくつかの実施例において、上記電解液は、フルオロエチレンカーボネートをさらに含み、上記フルオロエチレンカーボネートは、上記電解液の重量に対して、重量百分率で0.01%~5%である。
【0010】
いくつかの実施例において、上記電解液は、添加剤Bをさらに含み、
上記添加剤Bは、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、テトラフルオロホウ酸リチウム、B4Li2O7、Li3BO3、CF3LiO3S、ヘキサフルオロリン酸リチウムおよび過塩素酸リチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である、および/または、
上記添加剤Bは、上記電解液の重量に対して、重量百分率で0.01%~16%である。
【0011】
いくつかの実施例において、上記正極活物質はM元素を含み、上記M元素はFe、Mn、Al、Ca、K、Na、Mg、TiおよびZnからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0012】
いくつかの実施例において、上記ビニレンカーボネートの重量をW1gとし、上記負極の重量をW2gとしたとき、W1/W2は0.001~0.031である。
【0013】
いくつかの実施例において、上記電解液は、S=O官能基含有化合物をさらに含み、
上記S=O官能基含有化合物は、1,3-プロパンスルトン、エチレンスルファート、メチレンメタンジスルホナート、プロペンスルトン、4-メチル-1,3,2-ジオキサチオラン-2,2-ジオキシド、1,4-ブタンスルトンおよび1,2,6-オキサジチアン-2,2,6,6-テトラオキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種である、および/または、
上記S=O官能基含有化合物は、上記電解液の重量に対して、重量百分率で0.01%~5%である。
【0014】
別の一実施例において、本発明は、本発明の実施例に記載の電気化学装置を含む電子装置を提供する。
【0015】
本発明が提供する電気化学装置は、サイクル特性、高温貯蔵特性が向上し、充電特性とエネルギー効率に優れている。
【0016】
本発明の実施例の他の態様および利点については、後述の説明で部分的に説明および示されるか、本発明の実施例の実施を通じて説明され得る。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施例は、以下に詳細に説明される。本発明の実施例は、本願を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0018】
なお、本明細書では、量、比率および他の数値を範囲の形式で示すことがある。このような範囲の形式は、便利さと簡潔さのために使用されることを理解すべきである。当該範囲の形式は、範囲制限として明示的に指定される数値を含むだけでなく、その範囲内に含まれるすべての個別の数値またはサブ範囲を、各数値およびサブ範囲を明示的に指定するように含むことを柔軟に理解すべきである。
【0019】
発明を実施するための形態および請求の範囲において、用語「のうちの一方」、「のうちの1つ」、「のうちの1種」または他の類似な用語によって接続される項目のリストは、挙げられた項目のうちのいずれかを意味することができる。例えば、項目AおよびBを挙げた場合、「AおよびBのうちの一方」という文言は、Aのみ、またはBのみを意味する。別の実施例において、項目A、BおよびCを挙げた場合、「A、BおよびCのうちの一方」という文言は、Aのみ、Bのみ、またはCのみを意味する。項目Aは、1つの素子または複数の素子を含んでもよい。項目Bは、1つの素子または複数の素子を含んでもよい。項目Cは、1つの素子または複数の素子を含んでもよい。
【0020】
発明を実施するための形態および請求の範囲において、用語「のうちの少なくとも一方」、「のうちの少なくとも1つ」、「のうちの少なくとも1種」または他の類似な用語によって接続される項目のリストは、挙げられた項目の任意の組み合わせを意味することができる。例えば、項目AおよびBを挙げた場合、「AおよびBのうちの少なくとも一方」という文言は、Aのみ、Bのみ、またはAおよびBを意味する。別の実施例において、項目A、BおよびCを挙げた場合、「A、BおよびCのうちの少なくとも一方」という文言は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびB(Cを取り除く)、AおよびC(Bを取り除く)、BおよびC(Aを取り除く)、またはA、BおよびCの全部を意味する。項目Aは、1つの素子または複数の素子を含んでもよい。項目Bは、1つの素子または複数の素子を含んでもよい。項目Cは、1つの素子または複数の素子を含んでもよい。
【0021】
一、電気化学装置
いくつかの実施例において、本発明は電気化学装置を提供し、上記電気化学装置は、負極と、正極と、電解液とを含む。
【0022】
いくつかの実施例において、上記正極は、集電体と上記集電体に位置する正極活物質層とを含み、上記正極活物質層は正極活物質を含み、上記電解液は添加剤Aを含み、上記添加剤AはLiPO2F2を含み、上記正極の活性比表面積をX m2/gとし、上記電解液の重量に対して上記LiPO2F2の重量百分率をY%としたとき、上記X、Yは、0.005≦X/Y≦2を満たす。
【0023】
いくつかの実施例において、上記X、Yは、0.005≦X/Y≦1または0.015≦X/Y≦1を満たす。いくつかの実施例において、X/Yは0.005、0.0075、0.01、0.02、0.05、0.08、0.10、0.15、0.3、0.5、0.8、1、1.5、2またはこれらのいずれか2つの数値からなる範囲である。
【0024】
いくつかの実施例において、上記Xは0.01~0.1である。いくつかの実施例において、上記Xは0.01、0.015、0.02、0.05、0.08、0.1またはこれらのいずれか2つの数値からなる範囲である。
【0025】
いくつかの実施例において、上記Yは0.01~2である。いくつかの実施例において、Yは、0.01、0.03、0.05、0.06、0.1、0.14、0.16、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0、1.1、1.2、1.4、1.6、1.8、2またはこれらのいずれか2つの数値からなる範囲である。
【0026】
いくつかの実施例において、上記電解液は、ビニレンカーボネートをさらに含み、上記電解液の重量に対して、上記ビニレンカーボネートの重量百分率をZ%としたとき、Zは0.01~6である。
【0027】
いくつかの実施例において、Zは0.01、0.05、0.08、0.1、0.2、0.5、0.8、0.01、1、1.5、2、2.5、2.8、3、3.5、3.8、4、4.5、4.8、5、5.5、5.8、6またはこれらのいずれか2つの数値からなる範囲である。
【0028】
いくつかの実施例において、Z/Yは0.5~600である。いくつかの実施例において、Z/Yは0.5~50である。いくつかの実施例において、Z/Yは0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、10、20、40、50、100、150、200、300、350、400、450、500、550、600またはこれらのいずれか2つの数値からなる範囲である。
【0029】
いくつかの実施例において、上記電解液は、フルオロエチレンカーボネートをさらに含む。いくつかの実施例において、上記フルオロエチレンカーボネートは上記電解液の重量に対して、重量百分率で0.01%~5%である。いくつかの実施例において、上記フルオロエチレンカーボネートは上記電解液の重量に対して、重量百分率で0.01%、0.05%、0.07%、0.1%、0.15%、0.3%、0.8%、1%、1.2%、1.5%、1.8%、2%、2.2%、2.5%、2.8%、3%、3.2%、3.5%、3.8%、4%、4.5%、4.8%、5%またはこれらのいずれか2つの数値からなる範囲である。
【0030】
いくつかの実施例において、上記電解液、添加剤Bをさらに含み、上記添加剤Bは、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、テトラフルオロホウ酸リチウム、B4Li2O7、Li3BO3、CF3LiO3S、ヘキサフルオロリン酸リチウムおよび過塩素酸リチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0031】
いくつかの実施例において、上記添加剤Bは上記電解液の重量に対して、重量百分率で0.01%~16%である。いくつかの実施例において、上記添加剤Bは上記電解液の重量に対して、重量百分率で0.01%、0.04%、0.06%、0.08%、0.1%、0.15%、0.2%、0.5%、0.8%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%またはこれらのいずれか2つの数値からなる範囲である。
【0032】
いくつかの実施例において、上記ビニレンカーボネートの重量をW1gとし、上記負極の重量をW2gとしたとき、W1/W2は0.001~0.031である。
【0033】
いくつかの実施例において、W1/W2は0.001、0.006、0.008、0.01、0.02、0.025、0.031またはこれらのいずれか2つの数値からなる範囲である。
【0034】
いくつかの実施例において、上記電解液は、S=O官能基含有化合物をさらに含み、上記S=O官能基含有化合物は、1,3-プロパンスルトン、エチレンスルファート、メチレンメタンジスルホナート、プロペンスルトン、4-メチル-1,3,2-ジオキサチオラン-2,2-ジオキシド、1,4-ブタンスルトンおよび1,2,6-オキサジチアン-2,2,6,6-テトラオキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0035】
いくつかの実施例において、上記S=O官能基含有化合物は上記電解液の重量に対して、重量百分率で0.01%~5%である。いくつかの実施例において、上記S=O官能基含有化合物は上記電解液の重量に対して、重量百分率で0.01%、0.03%、0.05%、0.08%、0.1%、0.12%、0.15%、0.2%、0.5%、0.8%、1%、1.5%、1.8%、2.0%、2.5%、2.8%、3%、5%またはこれらのいずれか2つの数値からなる範囲である。
【0036】
いくつかの実施例において、上記正極活物質はM元素を含み、上記M元素はFe、Mn、Al、Ca、K、Na、Mg、TiおよびZnからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0037】
いくつかの実施例において、上記正極活物質は、リン酸鉄リチウムおよびリン酸マンガン鉄リチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0038】
いくつかの実施例において、上記正極活物質層は、導電剤をさらに含む。いくつかの実施例において、上記導電剤は、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、アセチレンブラック、グラフェン、ケッチェンブラックおよびカーボンブラックのうちの少なくとも1種を含む。
【0039】
いくつかの実施例において、上記正極活物質層は、バインダーをさらに含む。いくつかの実施例において、上記バインダーは、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴム、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、エチレンオキシド含有ポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(1,1-ジフルオロエチレン)、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル酸(エステル)化スチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂およびナイロンのうちの少なくとも1種を含む。
【0040】
いくつかの実施例において、上記集電体は、銅箔およびアルミ箔のうちの少なくとも1種を含む。
【0041】
いくつかの実施例において、上記正極は、当分野の公知の調製方法によって調製されることができる。例えば、上記正極は、正極活物質と導電剤と粘着剤とを溶媒に混合して活物質組成物を調製し、当該活物質組成物を集電体に塗布することにより得られることができる。いくつかの実施例において、上記溶媒はN-メチルピロリドン等を含んでもよいが、これに限定されない。
【0042】
いくつかの実施例において、上記電気化学装置は、電気化学反応を起こす任意の装置を含む。
【0043】
いくつかの実施例において、上記電気化学装置は、上記正極と負極との間に位置するセパレーターをさらに含む。
【0044】
いくつかの実施例において、上記電気化学装置はリチウム二次電池である。
【0045】
いくつかの実施例において、上記リチウム二次電池は、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウム重合体二次電池またはリチウムイオン重合体二次電池、全固体二次リチウム電池を含むが、これらに限定されない。
【0046】
負極
いくつかの実施例において、本発明にかかる電気化学装置に用いられる負極の材料、構成およびその製造方法は、従来技術に公開された任意の技術を含んでもよい。いくつかの実施例において、負極は、US特許出願US9812739Bに記載の負極であり、その全部の内容が援用により本発明に組み込まれている。
【0047】
いくつかの実施例において、負極は、集電体と当該集電体に位置する負極活物質層とを含む。いくつかの実施例において、負極活物質層は負極活物質を含む。いくつかの実施例において、負極活物質は、リチウム金属、構造化されたリチウム金属、構造化されたリチウム金属、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、ハードカーボン、ソフトカーボン、ケイ素、ケイ素-炭素複合体、ケイ素酸素材料(例えば、SiO、SiO2)、Li-Sn合金、Li-Sn-O合金、Sn、SnO、SnO2、スピネル構造を有するリチウム化TiO2-Li4Ti5O12、Li-Al合金またはそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0048】
いくつかの実施例において、負極活物質層は、粘着剤を含む。いくつかの実施例において、粘着剤は、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、エチレンオキシド含有ポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(1,1-ジフルオロエチレン)、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル酸(エステル)化スチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂またはナイロンを含むが、これらに限定されない。
【0049】
いくつかの実施例において、負極活物質層は、導電材料を含む。いくつかの実施例において、導電材料は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンファイバー、金属粉、金属ファイバー、銅、ニッケル、アルミニウム、銀またはポリフェニレン誘導体を含むが、これらに限定されない。
【0050】
いくつかの実施例において、集電体は、銅箔、ニッケル箔、ステンレス箔、チタン箔、ニッケルフォーム、銅フォームまたは導電性金属で被覆された高分子基材を含むが、これらに限定されない。
【0051】
いくつかの実施例において、負極は、活物質と導電材料と粘着剤とを溶媒に混合して活物質組成物を調製し、当該活物質組成物を集電体に塗布することにより得ることができる。
【0052】
いくつかの実施例において、溶媒は、脱イオン水、N-メチルピロリドンを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0053】
いくつかの実施例において、全固体二次リチウム電池における負極は、金属リチウム箔である。
【0054】
セパレーター
いくつかの実施例において、本発明にかかる電気化学装置に用いられるセパレーターの材料、形状は特に限定されることなく、任意の従来技術に公開された技術であってもよい。いくつかの実施例において、セパレーターは、本発明の電解液に安定な材料で形成された重合体または無機物などを含む。
【0055】
例えば、セパレーターは、基材層と表面処理層とを含んでもよい。基材層は、多孔質構造を有する不織布、フィルムまたは複合フィルムであり、基材層の材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、およびポリイミドからなる群より選ばれる少なくとも1種である。具体的に、ポリプロピレン多孔質膜、ポリエチレン多孔質膜、ポリプロピレン不織布、ポリエチレン不織布またはポリプロピレン-ポリエチレン-ポリプロピレン多孔質複合フィルムを用いてもよい。
【0056】
基材層の少なくとも1つの表面上に表面処理層が設けられており、表面処理層は、重合体層または無機物層であってもよく、重合体と無機物とを混合してなる層であってもよい。
【0057】
無機物層は、無機粒子とバインダーとを含み、無機粒子は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化チタン、二酸化ハフニウム、酸化錫、二酸化セリウム、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、炭化ケイ素、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム及び硫酸バリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種または複種の組み合わせである。バインダーは、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンの共重合体、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリヘキサフルオロプロピレンからなる群より選ばれる1種または複種の組み合わせである。重合体層は、重合体を含み、重合体の材料は、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、アクリル酸エステルの重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリフッ化ビニリデン、及びポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)のうちの少なくとも1種を含む。
【0058】
電解質
いくつかの実施例において、本発明の実施例の電解液に用いられる電解質は従来技術で知られている電解質であってもよく、電解質は、例えばLiClO4、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiSO3F、LiN(FSO2)2などの無機リチウム塩、例えばLiCF3SO3、LiN(FSO2)(CF3SO2)、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、環状1,3-ヘキサフルオロプロパンジスルホンイミドリチウム、環状1,2-テトラフルオロエタンジスルホンイミドリチウム、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)、LiC(CF3SO2)3、LiPF4(CF3)2、LiPF4(C2F5)2、LiPF4(CF3SO2)2、LiPF4(C2F5SO2)2、LiBF2(CF3)2、LiBF2(C2F5)2、LiBF2(CF3SO2)2、LiBF2(C2F5SO2)2などのフッ素含有有機リチウム塩、例えばリチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート、トリス(オキサラト)リン酸リチウム、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウムなどのジカルボン酸錯体含有リチウム塩等を含むが、これらに限定されない。なお、上記した電解質は、1種類を単独で用いてもよく、2種類または2種類以上を同時に用いてもよい。例えば、いくつかの実施例において、電解質は、LiPF6とLiBF4との組み合わせを含む。いくつかの実施例において、電解質は、LiPF6、または、LiBF4などの無機リチウム塩とLiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2などのフッ素含有有機リチウム塩の組み合わせを含む。いくつかの実施例において、電解質の濃度は、0.8~3mol/Lの範囲内であり、例えば、0.8~2.5mol/Lの範囲内であり、0.8~2mol/Lの範囲内であり、1~2mol/Lの範囲内であり、0.5~1.5mol/Lの範囲内であり、0.8~1.3mol/Lの範囲内であり、0.5~1.2mol/Lの範囲内であり、または、例えば、1mol/L、1.15mol/L、1.2mol/L、1.5mol/L、2mol/Lまたは2.5mol/Lである。
【0059】
二.電子装置
本発明にかかる電子装置は、本発明の実施例による電気化学装置を用いた任意の装置であってもよい。
【0060】
いくつかの実施例において、電子装置は、ノートパソコン、ペン入力型コンピューター、モバイルコンピューター、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯型ファクシミリ、携帯型コピー機、携帯型プリンター、ステレオヘッドセット、ビデオレコーダー、液晶テレビ、ポータブルクリーナー、携帯型CDプレーヤー、ミニCD、トランシーバー、電子ノートブック、計算機、メモリーカード、ポータブルテープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、オートバイ、電動アシスト自転車、自転車、照明器具、おもちゃ、ゲーム機、時計、電動工具、フラッシュ、カメラ、大型家庭用ストレージバッテリー、またはリチウムイオンコンデンサーなどを含むが、これらに限定されない。
【0061】
以下、リチウムイオン電池を例として挙げて、具体的な実施例を参照して、リチウムイオン電池の調製を説明する。当業者であれば、本発明に記載の調製方法は例に過ぎず、他の任意の適切な調製方法は、いずれも本発明の範囲内にあることを理解すべきである。
【0062】
実施例
以下、本発明にかかるリチウムイオン電池の実施例および比較例の特性評価を説明する。
【0063】
一.リチウムイオン電池の調製
(1)電解液の調製
含水率が10ppm未満のアルゴン雰囲気のグローブボックス内で、エチレンカーボネート(EC)、メチルエチルカーボネート(EMC)およびジエチルカーボネート(DEC)をEC:EMC:DEC=35:40:25の質量比で混合した後、添加剤を加えて、十分に撹拌した後にLiPF6を入れて、均一に混合して電解液を得た。ここで、LiPF6は電解液の重量に対して、重量百分率で12.5%であった。電解液に用いられる添加剤の具体的な種類および含有量は、以下の表に示した。本発明に記載の電解液における各物質の含有量は、いずれも電解液の重量に対するものとして算出された。
【0064】
(2)正極の調製
正極活物質であるリン酸鉄リチウム材料(LFP)、導電剤である導電性カーボンブラック(Super P)、バインダーであるポリフッ化ビニリデンを96.3:1.5:2.2の重量比で混合して、N-メチルピロリドン(NMP)を入れて、真空攪拌機によって均一に攪拌して、正極スラリーを得た。ここで、正極スラリーの固形分含有量は72wt%であった。その後、正極スラリーを正極集電体であるアルミ箔に均一に塗布し、アルミ箔を85℃下で乾燥させ、冷間プレスし、裁断し、スリッティングした後、85℃の真空条件下で4時間乾燥して、正極を得た。
【0065】
(3)負極の調製
負極活物質である人造黒鉛、導電剤であるSuper P、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、バインダーであるスチレンブタジエンゴム(SBR)を96.4:1.5:0.5:1.6の重量比で混合して、脱イオン水を入れて、真空攪拌機によって負極スラリーを得た。ここで、負極スラリーの固形分含有量は54wt%であった。その後、負極スラリーを負極集電体である銅箔に均一に塗布し、銅箔を85℃下で乾燥させ、冷間プレスし、裁断し、スリッティングした後、120℃の真空条件下で12時間乾燥して、負極を得た。
【0066】
(4)セパレーターの調製
厚さ7μmのポリエチレン(PE)セパレーターを用いた。
【0067】
(5)リチウムイオン電池の調製
セパレーターが正極と負極との間に介在して隔離の役割を果たすように、正極と、セパレーターと、負極とを順に重ねて、巻いて、ベアセルを得た。タブを溶接した後、ベアセルを外装であるアルミニウムプラスチックフィルムに置いて、上記調製した電解液を、乾燥されたベアセルに注入した。真空パッケージ、静置、フォーメーション(0.02Cの定電流で3.3Vになるまで充電して、0.1Cの定電流で3.6Vになるまで充電する)、シェイピング、容量測定などの工程を経て、ソフトパックリチウムイオン電池(厚さ3.3mm、幅39mm、長さ96mm)を得た。
【0068】
二.試験方法
1.リチウムイオン電池のサイクル特性試験:
25℃サイクル特性試験
リチウムイオン電池を25℃の恒温器に置いて、30分間静置し、リチウムイオン電池を恒温にした。恒温になるリチウムイオン電池を1Cの定電流で電圧が3.65Vになるまで充電し、3.65Vの定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、1Cの定電流で電圧が2.5Vになるまで放電した。これは、1つの充放電サイクルであった。初回放電の容量を100%とし、放電容量が70%に減衰するまで充放電サイクルを繰り返し、試験を停止し、サイクル回数をリチウムイオン電池のサイクル特性の評価指標として記録した。
【0069】
45℃サイクル特性試験
45℃における電池のサイクル特性の試験方法は、試験温度が45℃である以外、上記した25℃サイクル特性試験とたいてい同じであった。
【0070】
2.リチウムイオン電池の高充電状態(100%SOC)での高温貯蔵試験:
リチウムイオン電池を25℃の恒温器に置いて、30分間静置し、リチウムイオン電池を恒温にした。1Cの定電流で3.65Vになるまで充電した後、3.65Vの定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、1Cの定電流で2.5Vになるまで放電し、放電容量をリチウムイオン電池の初期容量として記録した。そして、0.5Cの定電流で3.65Vになるまで充電した後、3.65Vの定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、マイクロメータによって電池の厚さを測定し、記録した。試験されたリチウムイオン電池を60℃の恒温器に移して90日間貯蔵した。この期間中、30日おきに電池の厚さを測定し、記録した。
【0071】
電池を25℃の恒温器に移して、60分間静置し、1Cの定電流で2.5Vになるまで放電し、放電容量をリチウムイオン電池の残存容量として記録した。1Cの定電流で3.65Vになるまで充電した後、3.65Vの定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、その後、1Cの定電流で2.5Vになるまで放電し、放電容量をリチウムイオン電池の回復可能容量として記録した。電池の厚さ(THK)、開回路電圧(OCV)およびインピーダンス(IMP)を測定した。1Cの定電流で電圧が2.5Vになるまでに放電し、回復放電容量を記録し、リチウムイオン電池の貯蔵残存容量維持率および回復可能容量維持率を算出し、リチウムイオン電池の高温貯蔵特性を評価する指標とした。
残存容量維持率=(90日間貯蔵した後の残存容量-電池の初期容量)/電池の初期容量*100%
回復容量維持率=(90日間貯蔵した後の回復可能容量-電池の初期容量)/電池の初期容量*100%
【0072】
3.リチウムイオン電池の低充電状態(0%SOC)での高温貯蔵試験:
リチウムイオン電池を25℃の恒温器に置いて、30分間静置し、リチウムイオン電池を恒温にした。1Cの定電流で3.65Vになるまで充電した後、3.65Vの定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、その後、1Cの定電流で2.5Vになるまで放電し、放電容量をリチウムイオン電池の初期容量として記録した。そして、マイクロメータによって電池の厚さを測定し、記録した。試験されたリチウムイオン電池を60℃の恒温器に移して、90日貯蔵した。その期間中、30日おきに電池の厚さを測定し、記録した。電池を25℃の恒温器に移して、60分間静置し、1Cの定電流で3.65Vになるまで充電し、定電圧で電流が0.05Cになるまで充電した後、1Cの定電流で2.5Vになるまで放電し、リチウムイオン電池の回復可能容量として放電容量を記録した。電池の厚さ(THK)、開回路電圧(OCV)およびインピーダンス(IMP)を測定した。1Cの定電流で電圧が2.5Vになるまでに放電し、リチウムイオン電池の貯蔵中の厚さの膨張率を算出して記録し、リチウムイオン電池の0%SOCでの高温貯蔵特性を評価する指標とした。
0%SOCでの貯蔵厚さ膨張率=(90日間貯蔵した後の厚さ-電池の初期厚さ)/電池の初期厚さ*100%
【0073】
4.リチウムイオン電池の直流抵抗DCR(-10℃)試験:
リチウムイオン電池を-10℃の高温低温ボックスに置いて、4時間静置し、リチウムイオン電池を恒温にした。0.1Cの定電流で3.65Vになるまで充電し、3.65Vの定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、10分間静置した。そして、0.1Cの定電流で2.5Vになるまで放電し、このステップにおける容量を、実際放電容量D0として記録した。そして、5分間静置し、0.1Cの定電流で3.65Vになるまで充電し、3.65Vの定電圧で電流が0.05Cになるまで充電した(電流はD0に対応する容量で算出されたものである)。10分間静置し、0.1Cの定電流で7時間放電し(電流はD0に対応する容量で算出されたものである)、この時の電圧V1を記録した。次に、1Cの定電流で1S放電し(100msでサンプリングし、電流はセルの公称容量に応じて算出されたものである)、この時の電圧V2を記録した。そして、セルの30%充電状態(SOC)に対応する直流抵抗(DCR)を算出し、計算式は以下の通りであった。
30%SOC DCR=(V2-V1)/1C
【0074】
5.リチウムイオン電池のエネルギー変換効率RTE(25℃)試験:
リチウムイオン電池を25℃の恒温器に置いて、30分間静置し、リチウムイオン電池を恒温にした。0.5Cの定電流で2.5Vになるまで放電し、15分間静置した。0.5Cの定電流で3.65Vになるまで充電し、3.65Vの定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、60min静置した後、0.5Cの定電流で2.5Vになるまで放電した。上記した電流の大きさで充放電を3回連続して行い、充電エネルギーと放電エネルギーをそれぞれ記録した。そして、最後の1サイクルの充電エネルギーEcと放電エネルギーEdとを用いてエネルギー変換効率を算出した。
エネルギー変換効率=放電エネルギーEd/充電エネルギーEc*100%
【0075】
6.リチウムイオン電池の過充電試験:
25℃下で、電池を0.5Cで2.5Vになるまで放電した後、1Cの定電流で6.5Vになるまで充電し、6.5Vの定電圧で3時間充電し、電池の表面の温度変化を監視した(過充電試験の合格基準は、電池が発火、燃焼、爆発しないことである)。各実施例または比較例では、電池を10個試験し、試験に合格した電池の数を記録した。
【0076】
7.リチウムイオン電池の正極の活性比表面積試験:
リチウムイオン電池の正極を使用してボタン型電池(LFP//Li)を組み立てた。そして、正極活物質で塗布されたボタン型電池に対して10mVのステップポテンシャル(Step potential)を印加し、それを30秒間維持し、電流-時間曲線の積分に基づいて活性電極の電荷量Qを取得し、Q/10mVによりキャパシタンスCを取得した。
【0077】
キャパシタンス法によって活性比表面積を算出した(詳しくは、田昭武先生による「電気化学研究方法」参照)。
S1=C/(20uf)cm2
S=(S1×10-4)/M m2/g
【0078】
ここで、Sは、正極の活性比表面積であり、その単位がm2/gであり、X m2/gとして記された。S1は、正極の活性表面積であり、その単位がcm2であった。Cは測定サンプルのキャパシタンスであり、ufはキャパシタンス単位であるマイクロファラド(microfarad)であった。Mは電極(片面)の質量から集電体の質量を引いた後の塗布質量であり、その単位がgであった。20ufは、平滑な電極の1平方センチメートル当たりの電気二重層キャパシタンスであった。
【0079】
以下、Xは、正極の活性比表面積の数値を表した。
【0080】
A.表1は、関連する実施例および比較例における添加剤の種類と含有量、およびリチウムイオン電池の関連する特性パラメータを示す。
【0081】
【0082】
実施例1-1~1-12と比較例1-1との比較から分かるように、電解液に添加剤であるLiPO2F2を添加することにより、リチウムイオン電池のサイクル特性および貯蔵特性を著しく改善でき、かつ、リチウムイオン電池のインピーダンスを下げることができる。
【0083】
実施例1-1~1-12と比較例1-2の比較から分かるように、X/Yの値が大きすぎると(例えば、10である場合)、リチウムイオン電池のサイクル特性および貯蔵特性は著しく悪化する。X/Yを適切な範囲に制御することで、優れた貯蔵特性、サイクル特性および反応速度論的特性を確保することができる。本発明において、X/Yの範囲は、0.005~2であってもよい。
【0084】
B.表2は、関連する実施例および比較例における添加剤の種類と含有量、およびリチウムイオン電池の関連する特性パラメータを示す。ここで、実施例2-1~実施例2-12における電解液は、実施例1-4の電解液にビニレンカーボネート(VC)を入れて得られたものである。実施例2-1~実施例2-12における正極の活性比表面積は、実施例1-4における正極の活性比表面積と同じである。
【0085】
【0086】
上記特性試験の結果から分かるように、0.005≦X/Y≦2を満たす電解液にビニレンカーボネート(VC)をさらに入れることにより、リチウムイオン電池のサイクル特性および貯蔵特性を著しく向上させることができるが、そのインピーダンスが著しく変化しない。特に、Z/Yが0.5~300の範囲内にある場合、リチウムイオン電池のサイクル特性および貯蔵特性を著しく改善できる。
【0087】
ビニレンカーボネートは、黒鉛の表面に熱安定性と化学安定性に優れた固体電解質界面(SEI)膜を形成できる。これにより、黒鉛表面での溶媒の副反応を効果的に抑制するとともに、遷移金属の析出を抑制することができる。しかし、ビニレンカーボネートは、膜形成のインピーダンスが大きいため、含有量が高すぎると、電池充電際のリチウム析出および放電特性の悪化を招きやすい。ビニレンカーボネートを含む電解液にLiPO2F2を同時に導入することで、ビニレンカーボネートの分解を抑制し、相乗的に膜を形成することができる。ビニレンカーボネートとLiPO2F2との比率を制御することで、安定性がよく、インピーダンスが低いSEI膜を形成することができ、これにより、優れた貯蔵特性、サイクル特性および反応速度論的特性を確保することができる。したがって、本発明において、Z/Yの好ましい範囲は0.5~300である。
【0088】
C.表3は、関連する実施例および比較例における添加剤の種類と含有量、およびリチウムイオン電池の関連する特性パラメータを示す。実施例3-1~実施例3-8における電解液は、実施例2-3の電解液にフルオロエチレンカーボネート(FEC)を入れて得られたものである。実施例3-1~実施例3-8における正極の活性比表面積および電解液におけるLiPO2F2の濃度はいずれも、実施例2-3と同じである。
【0089】
【0090】
上記特性試験の結果から分かるように、0.005≦X/Y≦2を満たし、かつビニレンカーボネート(VC)を含む電解液にフルオロエチレンカーボネート(FEC)をさらに入れることにより、リチウムイオン電池のサイクル特性、貯蔵特性およびエネルギー変換効率を著しく向上させることができるが、そのインピーダンスが著しく変化しない。
【0091】
フルオロエチレンカーボネートは、黒鉛の表面に熱安定性と化学安定性に優れ、インピーダンスが低いSEI膜を形成できるので、黒鉛表面での溶媒の副反応を効果的に抑制するとともに、遷移金属の析出を抑制することができ、黒鉛負極における活性リチウムの損失を効果的に低減することができ、サイクルおよび貯蔵過程における容量維持率を著しく改善することができる。しかし、その含有量が高すぎると、電解液の粘度が増加し、反応速度論的特性が悪化しまう。また、その含有量が高すぎると、高温で分解してHFが多く発生し、貯蔵中にガスが発生するリスクをもたらす。したがって、本発明において、フルオロエチレンカーボネートの好ましい含有量は0.01%~5%である。
【0092】
D.表4は、関連する実施例および比較例における添加剤の種類と含有量、およびリチウムイオン電池の関連する特性パラメータを示す。ここで、実施例4-1~実施例4-19における電解液は、実施例1-4の電解液に表4に示した添加剤を入れて得られたものである。実施例4-1~実施例4-19における正極の活性比表面積および電解液におけるLiPO2F2の濃度はいずれも、実施例1-4と同じである。
【0093】
【0094】
表5は、上記実施例および比較例におけるリチウムイオン電池の関連する特性パラメータを示す。
【0095】
【0096】
リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiDFOB)、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、B4Li2O7、Li3BO3、CF3LiO3S、およびヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)はいずれも、正負極の表面に熱安定性と化学安定性の良好な保護膜を形成することができる。これにより、電極と電解液との副反応を抑制し、優れたサイクル安定性、貯蔵安定性および反応速度論的特性、安全特性を実現することができる。また、LiFSIとLiTFSIは、高い熱安定性を有し、アニオンとカチオンの会合度が小さく、炭酸エステル系において高い溶解度と解離度を有する。一部または全部のLiPF6を代えて、LiFSIとLiTFSIを電解質として用いることにより、より良いサイクル特性、貯蔵特性、反応速度論的特性および安全特性を得ることができる。
【0097】
E.表6は、関連する実施例におけるリチウムイオン電池の組成および特性試験の結果を示す。実施例5-1および5-2における電解液の組成は、実施例1-4と同じである。実施例5-1および5-2における正極活物質の種類は、表6に示す。LFPはリン酸鉄リチウムを表し、LMFPはリン酸マンガン鉄リチウムを表す。
【0098】
【0099】
上記特性試験の結果から分かるように、LFPを正極活物質として用いた場合と比較して、LMFP、またはLMFPとLFPとの混合物を正極活物質として用いた場合に、リチウムイオン電池のサイクル特性および貯蔵特性は著しく変化しない。したがって、上記実施例における電解液は、LMFPまたはLFPとLMFPとの混合物を活物質として用いた正極にも適用可能である。
【0100】
F:表7は、関連する実施例におけるリチウムイオン電池の組成および特性試験の結果を示す。実施例6-1~6-11における電解液は、実施例1-3の電解液にVCを入れて得られたものである。実施例6-1~6-11における正極の活性比表面積および電解液におけるLiPO2F2の濃度はいずれも、実施例1-3と同じである。電解液におけるビニレンカーボネートの重量はW1gであり、負極の重量はW2gであり、W1/W2は単位質量あたりの負極におけるVCの含有量を表す。
【0101】
【0102】
上記特性試験の結果から分かるように、0.005≦X/Y≦2を満たす電解液にVCを入れることにより、リチウムイオン電池のサイクル特性、貯蔵特性を著しく向上させることができるが、インピーダンスが著しく変化しない。特に、W1/W2が0.001~0.031である場合、リチウムイオン電池のサイクル特性、貯蔵特性が著しく向上するとともに、インピーダンスも低下する。
【0103】
ビニレンカーボネートは、黒鉛の表面に熱安定性と化学安定性に優れたSEI膜を形成できる。これにより、黒鉛表面での溶媒の副反応を効果的に抑制するとともに、遷移金属の析出を抑制することができる。VCが十分な量であれば黒鉛表面に緻密な保護膜を形成することを確保できるが、その膜形成のインピーダンスが大きいため、含有量が高すぎると、電池充電際のリチウム析出および放電特性の悪化を招きやすい。したがって、本発明において、単位質量あたりの負極におけるVCの含有量は、好ましくは0.001~0.031である。
【0104】
G:表8は、関連する実施例におけるリチウムイオン電池の組成および特性試験の結果を示す。実施例7-1~7-12における電解液は、実施例6-7の電解液に下記S=O官能基含有化合物を入れて得られたものである。実施例7-1~7-12における正極の活性比表面積および電解液におけるLiPO2F2の濃度はいずれも、実施例6-7と同じである。電解液におけるビニレンカーボネートの重量はW1gであり、負極の重量はW2gであり、W1/W2は単位質量あたりの負極におけるVCの含有量を表す。
【0105】
表8における英字略称の総称は以下のとおりである。
DTD:エチレンスルファート
MMDS:メチレンメタンジスルホナート
PS:1,3-プロパンスルトン
【0106】
【0107】
表9は、上記実施例の特性試験の結果を示す。
【0108】
【0109】
上記特性試験の結果から分かるように、0.005≦X/Y≦2を満たす、および/またはW1/W2が0.001~0.031である電解液にS=O官能基含有化合物を入れることにより、リチウムイオン電池のサイクル特性、貯蔵特性および過充電試験特性を著しく向上させることができ、抵抗を下げることもできる。
【0110】
S=O官能基含有化合物は、正負極の表面に熱安定性と化学安定性の良好な保護膜を形成し、電極と電解液との副反応を抑制し、優れたサイクル安定性、貯蔵安定性(ガス発生の抑制と容量維持率の向上)および反応速度論的特性、安全特性を実現することができる。S=O官能基含有化合物の含有量が低すぎると、膜形成による保護が不十分になり、特性の向上が著しくなくなる。S=O官能基含有化合物の含有量が高すぎると、正負極の膜形成のインピーダンスが高いので、特性を向上せず、反応速度論が悪化しまう。したがって、本発明において、S=O官能基含有化合物の含有量は、好ましくは0.01%~5%である。
【0111】
明細書全体では、「いくつかの実施例」、「一部の実施例」、「一実施例」、「別の例」、「例」、「具体的な例」または「一部の例」による引用は、本発明の少なくとも1つの実施例または例が、当該実施例または例に記載した特定の特徴、構造、材料または特性を含むことを意味する。したがって、明細書全体の各箇所に記載された、例えば「いくつかの実施例において」、「実施例において」、「一実施例において」、「別の例において」、「一例において」、「特定の例において」または「例」は、必ずしも本発明における同じ実施例または例を引用するわけではない。また、本明細書における特定の特徴、構造、材料または特性は、任意の適切な方法で1つまたは複数の実施例または例に組み込まれることができる。
【0112】
例示的な実施例を示して説明したが、当業者は、上記した実施例が本願を制限するものとして解釈されるべきではなく、本発明の精神、原理および範囲から逸脱しない場合に実施例を変更、代替、修正することができることを理解すべきである。
【国際調査報告】