(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】中枢性無呼吸の検出
(51)【国際特許分類】
A61B 5/08 20060101AFI20241219BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A61B5/08
A61B5/00 102A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537518
(86)(22)【出願日】2022-12-20
(85)【翻訳文提出日】2024-08-16
(86)【国際出願番号】 US2022082072
(87)【国際公開番号】W WO2023122622
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518441830
【氏名又は名称】メディカル インフォーマティクス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】ウォー,ジェイミー エル.エス.
(72)【発明者】
【氏名】パテル,ラージェン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】サヘバ アヌジ アミット
(72)【発明者】
【氏名】ルシン,クレイグ
【テーマコード(参考)】
4C038
4C117
【Fターム(参考)】
4C038SS09
4C038ST01
4C038ST04
4C038SV00
4C038SV03
4C038SX07
4C117XB01
4C117XB04
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4C117XE17
4C117XE24
4C117XE52
4C117XJ17
4C117XJ45
(57)【要約】
既存の無呼吸モニタは、胸部インピーダンス信号から心臓アーティファクトを区別することができず、したがって、呼吸の休止を検出することができないので、既存の無呼吸モニタは、臨床的に重要な無呼吸事象を検出することができない。特に、新生児の設定において改善されている無呼吸検出を提供するシステム及び方法が開示される。開示されている技術は、胸部インピーダンス信号から心臓アーティファクトをフィルタリングして除去し、無呼吸事象の確率を決定することを可能とする。その次に、無呼吸事象の検出を使用して、警報をトリガし、患者の自動的な物理的刺激を開始し又はその双方を行うことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の無呼吸を検出する方法であって、当該方法は、
前記患者と関連するベッドサイドモニタリング機器から胸部インピーダンス生理学的データ及び心臓生理学的データを受信するステップと、
前記心臓生理学的データを使用して心臓位相をモデル化するステップと、
前記心臓位相の表現及び前記胸部インピーダンス生理学的データに基づいて、心臓アーティファクトの周波数領域近似又は時間領域近似を計算するステップと、
前記胸部インピーダンス生理学的データから前記心臓アーティファクトを除去し、フィルタリングされている胸部インピーダンスデータを生成するステップと、
前記フィルタリングされている胸部インピーダンスデータに基づいて、無呼吸事象の確率を計算するステップと、
時間的な期間にわたる前記無呼吸事象の前記確率に基づいて、基準のセットを満たしていることに応答する警報指標を生成するステップと、を含む、
方法。
【請求項2】
前記無呼吸事象に応答する前記患者の自動的な物理的刺激をトリガするステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記無呼吸事象の長さを計算するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記患者についての無呼吸事象を記録するステップと、
グラフィカルユーザインターフェイスに無呼吸事象に関する履歴情報を送信するステップと、
前記患者についての前記記録されている無呼吸事象に関する集約的な情報を計算するステップと、
前記グラフィカルユーザインターフェイスに前記記録されている無呼吸事象に関する前記集約的な情報を送信するステップと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記患者についての無呼吸事象を記録するステップは、前記無呼吸事象と関連する酸素飽和度及び心拍数のデータを記録するステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ベッドサイドモニタリング機器から心拍数の測定値及び酸素飽和度の測定値を受信するステップをさらに含み、
基準の前記セットは、心拍数及び酸素飽和度の基準を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記患者は新生児である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
患者の無呼吸事象を検出するための患者モニタリングシステムであって、当該患者モニタリングシステムは、
前記患者と関連するとともに、胸部インピーダンス生理学的データ及び心臓生理学的データを生成するベッドサイドモニタリング機器と、
コンピュータシステムと、を含み、前記コンピュータシステムは、
前記胸部インピーダンス生理学的データ及び前記心臓生理学的データを受信し、
前記心臓生理学的データを使用して心臓位相をモデル化し、
前記心臓位相の表現及び前記胸部インピーダンス生理学的データに基づいて、心臓アーティファクトの周波数領域近似又は時間領域近似を計算し、
前記胸部インピーダンス生理学的データから前記心臓アーティファクトを除去し、フィルタリングされている胸部インピーダンスデータを生成し、
前記フィルタリングされている胸部インピーダンスデータに基づいて、無呼吸事象の確率を計算し、そして、
時間的な期間にわたる前記無呼吸事象の前記確率に基づいて、基準のセットを満たしていることに応答する警報指標を生成する、ようにプログラムされる、
患者モニタリングシステム。
【請求項9】
前記コンピュータシステムは、さらに、
前記患者の自動的な物理的刺激をトリガするようにプログラムされる、請求項8に記載の患者モニタリングシステム。
【請求項10】
前記コンピュータシステムは、さらに、
前記無呼吸事象の長さを計算するようにプログラムされる、請求項8に記載の患者モニタリングシステム。
【請求項11】
前記コンピュータシステムは、さらに、
前記患者についての無呼吸事象を記録し、
ユーザインターフェイスに無呼吸事象に関する履歴情報を送信し、
前記患者についての前記記録されている無呼吸事象に関する集約的な情報を計算し、そして、
前記ユーザインターフェイスに前記記録されている無呼吸事象に関する前記集約的な情報を送信する、ようにプログラムされる、請求項8に記載の患者モニタリングシステム。
【請求項12】
前記コンピュータシステムは、さらに、前記無呼吸事象と関連する酸素飽和度及び心拍数のデータを記録するようにプログラムされる、請求項11に記載の患者モニタリングシステム。
【請求項13】
前記コンピュータシステムは、さらに、前記ベッドサイドモニタリング機器から心拍数の測定値及び酸素飽和度の測定値を受信するようにプログラムされ、
基準の前記セットは、心拍数及び酸素飽和度の基準を含む、請求項8に記載の患者モニタリングシステム。
【請求項14】
前記患者は新生児である、請求項8に記載の患者モニタリングシステム。
【請求項15】
患者の無呼吸事象を検出するためのソフトウェアが格納されている非一時的な記憶媒体であって、前記ソフトウェアが実行されるときに、前記ソフトウェアは、コンピュータシステムが、
前記患者と関連するベッドサイドモニタリング機器から胸部インピーダンス生理学的データ及び心臓生理学的データを受信し、
前記心臓生理学的データを使用して心臓位相をモデル化し、
前記心臓位相の表現及び前記胸部インピーダンス生理学的データに基づいて、心臓アーティファクトの周波数領域近似又は時間領域近似を計算し、
前記胸部インピーダンス生理学的データから前記心臓アーティファクトを除去し、フィルタリングされている胸部インピーダンスデータを生成し、
前記フィルタリングされている胸部インピーダンスデータに基づいて、無呼吸事象の確率を計算し、そして、
時間的な期間にわたる前記無呼吸事象の前記確率に基づいて、基準のセットを満たしていることに応答する警報指標を生成する、ようにさせる、
非一時的な記憶媒体。
【請求項16】
前記ソフトウェアが実行されるときに、前記ソフトウェアは、さらに、前記コンピュータシステムが、
前記患者の自動的な物理的刺激をトリガするようにさせる、請求項15に記載の非一時的な記憶媒体。
【請求項17】
前記ソフトウェアが実行されるときに、前記ソフトウェアは、さらに、前記コンピュータシステムが、
前記無呼吸事象の長さを計算するようにさせる、請求項15に記載の非一時的な記憶媒体。
【請求項18】
前記ソフトウェアが実行されるときに、前記ソフトウェアは、さらに、前記コンピュータシステムが、
前記患者についての無呼吸事象を記録し、
ユーザインターフェイスに無呼吸事象に関する履歴情報を送信し、
前記患者についての前記記録されている無呼吸事象に関する集約的な情報を計算し、そして、
前記ユーザインターフェイスに前記記録されている無呼吸事象に関する前記集約的な情報を送信する、ようにさせる、請求項15に記載の非一時的な記憶媒体。
【請求項19】
前記ソフトウェアが実行されるときに、前記ソフトウェアは、さらに、前記コンピュータシステムが、前記無呼吸事象と関連するSpO
2及び心拍数のデータを記録するようにさせる、請求項18に記載の非一時的な記憶媒体。
【請求項20】
前記ソフトウェアが実行されるときに、前記ソフトウェアは、さらに、前記コンピュータシステムが、
前記ベッドサイドモニタリング機器から心拍数の測定値及び酸素飽和度の測定値を受信するようにさせ、
基準の前記セットは、心拍数及び酸素飽和度の基準を含む、請求項15に記載の非一時的な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
この特許出願は、2021年12月21日付けで出願された"中枢性無呼吸の検出"と題される米国仮特許出願第63/265,817号に基づく優先権を主張する。先行出願の開示は、この特許出願の一部と考えられ、参照によりこの特許出願に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本発明は、無呼吸(apnea)の検出の技術分野に関し、特に、中枢性無呼吸(central apnea)の検出に関する。
【背景技術】
【0003】
無呼吸は、呼吸(breathing)の一時的な休止(temporary cessation)である。無呼吸は、発達のどの段階においても起こる場合があり、特に、早産児(premature infants)によくみられ、早産児(prematurity)の無呼吸(apnea of prematurity (AOP))と呼ばれる場合がある。AOPは、成人の睡眠時無呼吸(adult sleep apnea)とは全く異なる。AOPは、発達障害(developmental disorder)であるが、早産児(immature infants)における無呼吸の傾向(propensity)の背後にある理由は、完全には明らかではない。AOPの病因(pathogenesis)は、ほとんど理解されていないが、低酸素症状態(hypoxia)及び高炭酸ガス症状(hypercapnia)に対する未熟な肺反射(immature pulmonary reflexes)及び呼吸反応(breathing responses)は、AOPの発生又は重症度(severity)に寄与している可能性がある。また、併存する因子又は病態によっても悪化する(exacerbated)場合がある。
【0004】
AOPは、重要な且つ一般的な臨床的問題(clinical problem)であり、しばしば、新生児集中治療処置室(Neonatal Intensive Care Unit (NICU))の退院における律速プロセス(rate-limiting process)となる。既存の胸部インピーダンスモニタリング(chest impedance monitoring)を使用して臨床的に重要な新生児の無呼吸(neonatal apnea)のエピソード(episodes)を正確に検出することは、臨床的に不可欠である。
【0005】
無呼吸は、速やかな医学的処置(immediate medical attention)を必要とする重篤な臨床事象(serious clinical events)である。しかし、無呼吸のモニタリング、特に、新生児(neonatal infants)のための既存のモニタリングは、数多くの重篤な事象を見逃すという点で不十分である。この理由により、それらの既存のモニタリングは、無呼吸を認識できないことが多く、したがって、乳児が呼吸していないという事実に注意するようにNICU職員に警告する警告信号をそのNICU職員提供できない。
【0006】
このようにして、当該技術分野において、無呼吸の改善された検出を提供する技術が必要である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
この明細書に組み込まれ、この明細書の一部を構成する複数の添付の図面は、本発明と一致する装置及び方法の実装を図示し、発明の詳細な説明と共に、本発明と一致する利点及び原理を説明するのに役立つ。
【0008】
【
図1】ある1つの実施形態にしたがって無呼吸事象(apnea event)の指標を表示するためのグラフィカルユーザインターフェイスを図示しているスクリーンショットである。
【
図2】ある1つの実施形態にしたがって無呼吸事象の指標を表示するためのグラフィカルユーザインターフェイスを図示しているスクリーンショットである。
【
図3】ある1つの実施形態にしたがって無呼吸事象を検出するための技術を図示しているフローチャートである。
【
図4】ある1つの実施形態にしたがって医療環境における任意のデータを収集し、保管し(archiving)、及び処理するためのシステムを図示しているブロック図である。
【
図5】
図4のシステムにおいて使用するためのコンピュータサーバを図示しているブロック図である。
【
図6】ある1つの実施形態にしたがって無呼吸事象を追跡するためのグラフィカルユーザインターフェイスを図示しているスクリーンショットである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の記載の中では、本発明の完全な理解を提供するために、説明の目的で、数多くの具体的な細部を記載する。しかしながら、当業者には、それらの具体的な細部を使用することなく本発明を実施することが可能であるということが明らかであろう。他の例では、本発明を不明瞭にすることを避けるために、ブロック図の形態で構造及びデバイスを示している。添字のない数字への言及は、言及されている数字に対応する添字の例のすべてに言及すると理解される。さらに、この開示の中で使用される文言は、主に、可読性及び教授の目的のために選択されており、発明の主題を規定し又は限定する目的では選択されていない場合があり、そのような発明の主題を決定するには請求項の記載に頼る必要がある。この明細書において"ある1つの実施形態"又は"ある実施形態"に言及するときは、その実施形態に関連して説明されている特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態の中に含まれるということを意味し、"ある1つの実施形態"又は"ある実施形態"に複数回言及するときは、必ずしも、すべてが同じ実施形態に言及していると理解されるべきではない。
【0010】
以下の説明のうちのいくつかは、ソフトウェア又はファームウェアに関連する用語で書かれているが、複数の実施形態は、必要に応じて、ソフトウェア、ファームウェア、及びハードウェアの任意の組み合わせを含むソフトウェア、ファームウェア、又はハードウェアによって、この明細書の中で説明されている特徴及び機能を実装してもよい。デーモン、ドライバ、エンジン、モジュール、又はルーチンへの言及は、その実施形態のいずれかのタイプの実装への限定を示唆するものと考えられるべきではない。
【0011】
無呼吸(apnea)は、数秒以内に医学的処置(medical attention)を必要とする重篤な臨床事象(serious clinical event)であり、早産児では非常によくみられる。新生児(newborns)は、呼吸パターンが不規則になり、一度に数秒の間にわたり呼吸が停止する傾向がある。いずれの事象が臨床的に重要であるかをどのように決定するかは、医師によって異なる。一般的な経験則では、(a) 呼吸の休止(cessation of breathing)が20秒よりも長く持続する場合、或いは、(b) 呼吸の休止が10秒よりも長く持続し、且つ、徐脈(bradycardia)(心臓の減速)又は酸素飽和度の低下(oxygen desaturation)のいずれかを伴う場合には、無呼吸が臨床事象であると考える。新生児(neonates)の場合には、徐脈は、典型的には、心拍数が毎分100よりも小さくなると定義され、酸素飽和度の低下は、典型的には、SpO2が80%よりも小さくなると定義される。徐脈及び飽和度の低下は、呼吸の休止を伴わずに生起する場合がある。新生児の有意な呼吸の休止事象の開始又は終了から一定の期間の中で、これらの生命に関するしきい値を超えるときに、さらなる悪化(further deterioration)が生じている可能性が高い。
【0012】
臨床的な無呼吸(clinical apneas)は、出生時の体重が1500gよりも小さな乳児の半数よりも多くに、及び、出生時の体重が1000gよりも小さな乳児のほぼすべてに発生する。無呼吸は、低酸素血症(hypoxemia)、低血糖症(hypoglycemia)、神経系の損傷(neurological injury)、又は敗血症(sepsis)等の数多くの他の臨床的な問題の原因又は結果となっている場合がある。無呼吸は、また、超早産で生まれた(were born very preterm)が、それ以外には臨床的な病理がない(otherwise have no clinical pathology)乳児における未熟な神経系(immature neurological system)の共通の兆候(common manifestation)である。閉塞性無呼吸(obstructive apnea)、中枢性無呼吸(central apnea)、及び混合性無呼吸(mixed apnea)の3つのタイプの無呼吸は、早産児(premature infants)でよくみられる。閉塞性無呼吸は、気道の閉塞であり、典型的には、乳児のもがくような動き又は激しい動き(struggling or thrashing movements)を伴う。中枢性無呼吸は、呼吸ドライブの休止(cessation of respiratory drive)であり、その乳児は、呼吸しようと努力することなく、通常は、極度に静止したままである。混合性無呼吸は、典型的には、閉塞性事象で始まり、その次に、中枢性無呼吸に変化する。これに対して、中枢性無呼吸がまた閉塞性無呼吸になる場合があるという症例(evidence)があり、そのため、一部の情報源は、それらの2つのタイプの区別をあまり厳密に行うべきではないと示唆している。多くの場合には、無呼吸は、徐脈(bradycardia)(心拍数の有意な低下)と組み合わせられるか、又は、徐脈を誘発する。徐脈、酸素飽和度の低下、又はその双方を伴うときに、これらの無呼吸は、速やかな医学的処置(immediate medical attention)を必要とするとともに、関連する病理の調査(investigation for associated pathology)を必要とする重篤な臨床事象(serious clinical events)である。さらに、中枢性無呼吸は、呼吸の制御が未熟であることを示す(indicate immaturity of control of respiration)と考えられ、NICUからの退院(discharge)は、典型的には、無呼吸が3日乃至8日の間にわたって存在しなくなるまで延期される。これらの規制が存在する結果として、乳児が自宅にいると、モニタリングデバイス及び臨床医(clinicians)なしで、それらの乳児が無呼吸エピソードを発症するであろう可能性を減少させることによって、それらの乳児は、安全に退院できるようになる。
【0013】
ベッドサイドモニタは、胸部インピーダンス(chest impedance (CI))生理学的データ(physiological data)の連続的なモニタリングに基づいて、無呼吸を検出するように試みる。心電図(electrocardiogram (ECG))をモニタリングするのに使用される電極を使用して、(例えば、52.6[kHz]等の)小さな高周波電圧を胸部に印加し、結果として得られる高周波電流を測定する。測定されるインピーダンスZは、印加される電圧Vを観測される電流で割った値に等しい。測定されるインピーダンスは、典型的には、50乃至300オームの範囲の中に存在し、筋肉、皮膚、他の組織、及び電極と皮膚との間の接触の導電率(conductivity)に関連する。乳児が呼吸しているときに、インピーダンスは、各々の呼吸とともに変動する。中枢性無呼吸の事象の場合には、呼吸が休止するため、胸部インピーダンスの変化は減少する。一方で、心臓の拍動(beating of the heart)は、また、心臓の鼓動(heartbeat)が胸部(thorax)から血液を送り出す(pumps blood)たびに、インピーダンスの変動を引き起こす。このようにして、無呼吸事象の際であっても、胸部インピーダンスは変動し、呼吸として検出するためのしきい値に達する場合があり、モニタの無呼吸警報を阻止する(foiling the monitor’s apnea alarm)。
【0014】
新生児のより柔軟な胸郭(more malleable rib cage)は、心拍とともに動くので、新生児(neonates)の場合の呼吸の休止の検出は、特に困難である。胸部インピーダンスリード(chest impedance leads)は、胸郭径の結果として生じる変化を呼吸と誤認する(mistake the resulting change in rib cage diameter for respiration)場合がある。現在の無呼吸検出器は、この問題に対処してはおらず、そのため、これらの場合には、臨床医は、徐脈等の患者のその後の悪化を示す警報に頼る必要がある。
【0015】
これらの心臓アーティファクト(cardiac artifacts)の結果として、中枢性の新生児の無呼吸のエピソードのうちのいくつかは、完全に見逃され、それらのエピソードのうちのいくつかは、深刻である。複数の研究のうちの一部は、従来の無呼吸モニタが、胸部インピーダンス信号における心臓アーティファクトのために、極端な無呼吸事象であっても10%以上を見逃しているということを発見している。
【0016】
以下で説明されている複数の技術は、呼吸(respiration)を測定するのに使用される胸部インピーダンス波形(chest impedance waveform)からこれらの心臓アーティファクトを除去する。リアルタイムの生理学的データに関して以下で説明するが、遡及的分析(retrospective analysis)のために履歴生理学的データに同じ技術を使用してもよい。
【0017】
無呼吸事象の検出が増加することに起因して、特定の実施形態においては、無呼吸事象の際に早産児(premature infant)を刺激するのに自動化された対話を利用してもよい。
【0018】
以下の開示は、中枢性無呼吸の検出を改善するための技術を説明する。より具体的には、呼吸速度(respiration rate)をモニタリングするのに使用される標準CI信号を分析して、拍動する心臓から生じる胸部インピーダンス信号への寄与をフィルタリングして取り除き(filter out the contribution)、呼吸休止事象の指標を示す。
【0019】
図1は、ある1つの実施形態にしたがったグラフィカルユーザインターフェイス100を図示しているスクリーンショットであり、そのグラフィカルユーザインターフェイス100の中には、中枢性無呼吸の指標が表示される。グラフィカルユーザインターフェイス100の中に、CI波形110及びECG波形120の2つの波形レーンを図示している。
図1の中の例示的な波形データは、医学的に正確であることを意図してはいない。この例では、CI波形110が平坦ではないにもかかわらず、患者は、ライン130によって示される無呼吸状態(apnea condition)を経験している。そのCI波形は、ECG波形120によって図示されている心臓の鼓動(heartbeat)の結果として経験している変動である。これは、双方の波形が同じレートで周期的に反復することが理由であるということが知られている。複数の実施形態のうちのいくつかにおいて、可聴警報(audible alarm)の指標及び視覚的警報(visual alarm)の指標のうちの一方又は双方は、ライン130に示されている指標に加えて、無呼吸状態が存在するという決定に応答して生成されてもよい。他の実施形態においては、自動応答をトリガして、乳児(infant)を物理的に刺激してもよく、その自動応答は、無呼吸事象の休止を引き起こすことができる。
【0020】
図2は、グラフィカルユーザインターフェイス100と同様のある1つの実施形態にしたがったグラフィカルユーザインターフェイス200を図示しているスクリーンショットである。この例では、グラフ220は、ある1つの例示的なCI波形であり、グラフ230は、フォト容積脈波データ(photoplethysmogram data)から決定される心拍数(heart rate)を示し、グラフ240は、ECGデータから決定される心拍数を示し、グラフ250は、フォト容積脈波データから決定されるSpO
2データを示し、グラフ260は、CI波形のみに基づいて計算される呼吸数(respiration rate)を示す。この例では、患者が呼吸を止め(ceased breathing)、徐脈及び酸素飽和度の低下の基準(bradycardia and oxygen desaturation criteria)を満たしているということを示す無呼吸事象は、水平線210が示すように示される。ある1つの実施形態において、無呼吸事象は、呼吸の休止が識別されているとともに徐脈及び酸素飽和度の低下が生起している(例えば、20秒等の)しきい値時間の後にのみ開始するものとして示される。これは、介入なしに終了する短い無呼吸事象に対する迷惑な警報指標を減少させる。
【0021】
図1及び
図2は共に、無呼吸事象の存在を示す情報のリアルタイム表示を図示しているが、研究又は臨床目的のためにリアルタイムデータが保管される(archived)複数の実施形態のうちのいくつかは、履歴患者データを調査し(investigate historical patient data)、そのデータを分析し、その履歴データの中の無呼吸事象の存在を示す能力を提供することが可能である。そのような履歴調査は、気付かれなかった(unnoticed)以前の無呼吸(prior apneas)を検出し、患者の健康を評価するためのより良い情報を臨床医に提供するのに有用である場合がある。
【0022】
明確にするために、以下の説明は、無呼吸事象である呼吸の休止の事象(cessation of breathing events)に焦点を当てる。一方で、複数の異なる医療関係者は、他の要因を伴わない呼吸の休止であるか、或いは、徐脈又は酸素飽和度の低下等の1つ又は複数の他の要因と組み合わせられる呼吸の休止であると、無呼吸事象を定義してもよい。システムは、必要に応じて、これらの追加的な要因のうちの任意の組み合わせについて構成されてもよい。例えば、患者は、しきい値時間よりも長く呼吸を停止する場合があるが、正常な心拍数及び酸素飽和度を維持する場合があり、この場合には、以下で説明されるシステムの構成のうちのいくつかは、無呼吸事象を示さない場合がある。以下で説明されるシステムの実施形態は、臨床担当者が、無呼吸事象を決定するのに使用される基準の組み合わせを選択することを可能とすることができる。
【0023】
中枢性無呼吸検出器(central apnea detector)への入力は、CI波形、ECG波形、及び心拍数と酸素飽和度(SpO2)のバイタルを含んでもよい。信号の各々は、要求される場合には、データアーティファクトを除去するためにクリーニングを受けることができる。
【0024】
以下で説明されているように、心臓の動きを捕捉する(例えば、ECG信号等の)任意の信号との間での自身の共有位相(周波数の進行)に基づいて、胸部インピーダンスの心臓アーティファクト成分(cardiac artifact component)を識別することが可能である。最初のステップは、心臓位相(cardiac phase)の進行(progression)をモデル化することである。このモデル化は、心臓の動きを捕捉する(captures heart movement)いずれかの信号を使用して、複数の方法で行われてもよい。例えば、心臓位相は、フォト容積脈波波形(photoplethysmogram waveform)に適用されるヒルベルト変換の位相を利用することによって計算されてもよい。
【0025】
ある1つの実施形態において、心臓位相を決定するために、標準ピーク/トラフ検出(standard peak/trough detection)を実行して、各々の心臓サイクルで生じるECG信号の中のRピークを発見する。心臓位相信号φは、各々のRピーク時間において位相を0に設定し(setting the phase to 0 at each R peak time)、そして、連続するRピークの各々のセットの間にあるサンプルについて位相が2π=0ラジアンまで時間とともに直線的に増加するようにする(having the phase increase linearly with time to 2π=0 radians for samples in between each set of consecutive R peaks)ことによって、任意の所定の時間における心臓の周波数(heart's frequency)をモデル化するように作成される。このようにして、N個のサンプルを含むデータのセグメントについての心臓位相信号φは、N×1ベクトル
【数1】
となる。
【0026】
心臓位相に対応するとともに測定される胸部インピーダンス信号(measured chest impedance signal)CIinitの成分(すなわち、心臓アーティファクト)は、その次に、決定される心臓位相の関数であるCIinitのフーリエ級数近似を使用して、抽出されてもよい。以下の説明は、フーリエ級数に関して書かれているが、他の周波数又は時間領域の分析及び近似技術を使用してもよい。
【0027】
フーリエ級数近似(Fourier series approximation)は、1×MベクトルH=[1 2 … M]として格納されるM個の高調波(harmonics)を使用する。
【0028】
複数の実施形態のうちのいくつかにおいて、M=3は、クリーン化されているCIの中に含まれる周波数成分を十分に捕捉するが、必要に応じて他の数の高調波を使用してもよい。
【0029】
これは、N×Mの心臓位相高調波行列(cardiac phase harmonic matrix)φH
【数2】
をもたらし、各々の列は、心臓アーティファクトのフーリエ級数表現の特定の高調波(particular harmonic)の心臓位相進行(cardiac phase progression)を表す。
【0030】
心臓アーティファクトのフーリエ級数近似(cardiac artifact Fourier series approximation)の周波数成分Fは、心臓位相から計算することができ、N×2M行列
【数3】
となる。
【0031】
その次に、上記の心臓アーティファクトの周波数成分(cardiac artifact frequency components)及び胸部インピーダンス信号(chest impedance signal)を使用して、心臓アーティファクトのフーリエ級数係数を求めることができる。それらのフーリエ級数係数は、2M×1ベクトル
【数4】
として表されてもよい。
【0032】
心臓アーティファクトのフーリエ級数係数は、
【数5】
として計算される。
【0033】
心臓アーティファクトCI
artの近似式は、その次に、
【数6】
として計算されてもよい。
【0034】
心臓アーティファクトCIartは、その次に、測定される胸部インピーダンス信号から除去されてもよく、フィルタリングされている胸部インピーダンス信号CIfilt=CIinit-CIartを生成する。
【0035】
心臓アーティファクトが胸部インピーダンスから除去されると、フィルタリングされている胸部インピーダンスの標準的な信号処理技術と心拍数及び酸素飽和度(oxygen saturation)のバイタルのしきい値処理とを使用して、呼吸の休止、徐脈、及び酸素飽和度の低下の事象を識別することが可能である。フィルタリングされている胸部インピーダンス信号の中でほとんど肺の動きがない(標準偏差が小さい)ときに、新生児は、呼吸していないと考えられ、呼吸の休止の事象が識別される。
【0036】
無呼吸事象の確率(apnea event probability)は、
【数7】
のようなフェルミ関数(Fermi function)を使用して推定されてもよい。
【0037】
上記の式において、σは、CI
filtの標準偏差である。上記のフェルミ関数のパラメータは、例示的であり、本の一例であるにすぎない。他のフェルミ関数又は他のタイプの関数を使用して、CI
filtに基づいて無呼吸の確率を計算してもよい。複数の実施形態のうちのいくつかにおいて、無呼吸事象の確率が、あらかじめ決定されているしきい値を超えるときに、システムがトリガされ、そのシステムは、
図1及び
図2に図示されているグラフィカルユーザインターフェイス等のグラフィカルユーザインターフェイスに無呼吸事象の警報指標(alarm indication of an apnea event)を表示する。さらに、定義されている期間にわたる相対的な無呼吸事象の確率に基づいて、警報基準のセットを開発してもよい。加えて、徐脈及び酸素飽和度の低下のうちの1つ又は複数が無呼吸基準と考えられる実施形態においては、心拍数及びSpO
2データの測定の結果を上記で計算される確率と組み合わせて、警報指標をトリガしてもよい。
【0038】
呼吸の休止事象の開始又は終了の定義されている期間の中で、これらのバイタルしきい値に達する(these vital thresholds are passed)ときに、徐脈及び酸素飽和度の低下の事象を伴う呼吸の休止を識別する。ここで説明されている技術は、小児及び成人における無呼吸事象を決定するのに使用されてもよいが、心拍数及び酸素飽和度の低下等の特定の基準は、非新生児群においては異なる場合がある。
【0039】
無呼吸事象を検出するための結果として得られる改良されているシステムは、既存の無呼吸検出システムにおいて患者の心臓の鼓動によってマスクされる無呼吸事象の見逃しを回避する。
【0040】
図3は、ある1つの実施形態にしたがって無呼吸事象を検出し、その無呼吸事象に対して自動的に作用するための技術300を図示しているフローチャートである。ブロック310において、システムは、患者に取り付けられている複数のセンサからリアルタイムCI及び心臓データを受信する。ブロック320において、上記で説明されているように、(例えば、ECG等の)心臓データの位相分析を実行して、位相信号Φ(phase signal Φ)及び心臓アーティファクトの位相高調波行列ΦH(cardiac artifact phase harmonic matrix ΦH)を生成する。ブロック330において、上記で説明されているアルゴリズムを使用して、胸部インピーダンス(chest impedance)の心臓アーティファクト成分CI
art(cardiac artifact component CI
art)を計算する。その次に、ブロック340において、測定されている胸部インピーダンスCI
init(measured chest impedance CI
init)から心臓アーティファクト成分CI
art(cardiac artifact component CI
art)を減算することによって、フィルタリングされている胸部インピーダンスCI
filt(filtered chest impedance CI
filt)を計算する。ブロック350において、フィルタリングされている胸部インピーダンスCI
filtが、呼吸休止を示す場合に、
図1及び
図2に図示されているグラフィカルユーザインターフェイス等のグラフィカルユーザインターフェイスにおいて、可聴警報として又は警報を生成するための当該技術分野において知られている任意の他の方法で、警報をトリガしてもよい。複数の実施形態のうちのいくつかにおいて、上記で説明されているように計算される無呼吸事象の確率が、あらかじめ定義されている継続期間にわたって、あらかじめ定義されているしきい値に達するか又はそのあらかじめ定義されているしきい値を超えるか、或いは、基準のセットを満たす場合に、呼吸休止を検出してもよい。複数の実装のうちのいくつかにおいて、厳密な時間しきい値を使用するのではなく、しきい値を満たす全体的な期間を評価する。例えば、1秒だけ離れてしきい値を満たす2つの12秒の期間が存在する場合に、それらの2つの区画を組み合わせて、25秒にわたる1回の呼吸の休止事象としてもよい。
【0041】
ブロック350において呼吸休止が検出されない場合に、その技術は、ブロック310においてCI及び心臓データの受信を継続する。ブロック350において呼吸の休止が検出される場合に、ブロック360において警報が発せられる(signaled)。ブロック370において、利用可能である場合に、振動の生成、空気の吹き付け、又は患者に呼吸を再開させることが可能である他の物理的刺激の開始等の自動動作を行って、無呼吸事象に応答して患者を物理的に刺激してもよい。技術300を実装するシステムが、無呼吸事象に関するしきい値の評価の一部として、徐脈及び酸素飽和度の低下のうちの1つ又は複数を使用するように構成される場合に、技術300は、患者モニタから受信する心拍数及びSpO
2データから徐脈及び酸素飽和度の低下を検出するための
図3には図示されていない他の動作を含んでもよい。患者の自動的な物理的刺激が利用可能ではない場合に、臨床スタッフメンバーは、患者に近づいて、足の裏を軽くたたくか又は背中をこする等の触覚刺激を手動で提供してもよい。物理的刺激によって自発呼吸を開始しない場合には、無呼吸事象は、酸素吸入等の追加的な介入を必要とする場合がある。
【0042】
図4は、ある1つの実施形態にしたがって医療環境において任意のデータを収集し、保管し(archiving)、及び処理するためのシステム400を図示しているブロック図である。システム400は、"医療環境において任意のデータを収集し、保管し、及び処理するための分散グリッドコンピューティングプラットフォーム"と題する米国特許第10,8892,045号において詳細に説明されており、米国特許第10,8892,045号は、あらゆる目的のために、その全体が参照により組み込まれている。
【0043】
図示されているように、データ取得(DAQ)サーバ487、情報科学サーバ(informatics server(s))480、データベースサーバ485、HL7サーバ483、及びウェブサーバ490の5つのタイプのサーバが存在する。要求に応じて、任意の数の任意のタイプのサーバを配置してもよい。サーバ480-490のすべては、1つ又は複数の病院ネットワーク430を介して互いに接続するとともに、ベッドサイドモニタに接続する。単一の病院イーサネットネットワーク430として図示されているが、いずれかの望ましいネットワークプロトコル及び技術を使用して、任意の数の相互接続されているネットワークを使用することができる。
【0044】
また、ベッド410の中の患者の生理学的データ(physiological data)をモニタリングするための複数のベッドサイドモニタが病院ネットワーク430に接続されている。それらの複数のベッドサイドモニタは、病院ネットワーク430にディジタル生理学的データを配信することが可能であるネットワーク接続されているモニタ420A、ネットワークには直接的に接続されていないが、ディジタルデータを生成するシリアルデバイス420B、及び、ネットワークには直接的に接続されていないが、アナログデータを生成するアナログデバイス420Cを含んでもよい。通信ボックス440A及び440Bは、典型的には、ネットワークスイッチ450を介して、病院ネットワーク430に、シリアルデバイス420B及びアナログデバイス420Cをそれぞれ接続することを可能とする。加えて、分局460は、また、以下に説明されているように、データ操作及び時間同期を実行するために、ネットワークスイッチ450を介してネットワーク430に接続されてもよい。任意の数のベッドサイドモニタ420は、ベッド410の中の患者のために医師及び他の臨床スタッフが望ましいと決定するように使用されてもよい。
【0045】
図4は、病院ネットワーク430に直接的に又は間接的に接続されるベッドサイドモニタ及び関連する通信デバイスを図示し、システム400の一部として、インターネット又は他の通信技術によって間接的に病院ネットワーク430に接続されるホームモニタリングデバイス等の遠隔ベッドサイドモニタリングデバイスを使用してもよい。
【0046】
追加的に、病院ネットワーク430に直接的に又は間接的に1つ又は複数の研究用コンピュータ470を接続して、研究者が分析及び開発を実行するためにベッドサイドモニタ420から収集される集約データ(集約的な情報)にアクセスすることを可能としてもよい。
【0047】
ウェブサーバ490は、ハイパーテキストトランスポートプロトコル(HTTP)を使用してウェブブラウザインターフェイスを介して、ラップトップ495A、タブレット495B、又はスマートフォン495C等の個人用デバイスと通信するように構成される。
【0048】
ここで、
図5を参照すると、サーバ480-490のうちの1つとして使用するためのある1つの例示的なシステム500は、ブロック図の形態で図示されている。例示的なコンピュータ500は、選択的に、(例えば、キーボード、マウス、タッチスクリーン等の)入力デバイス又はシステム560及びディスプレイ570に接続されてもよいシステムユニット510を含む。(場合によっては、ハードディスクと称されることもある)プログラム記憶デバイス(PSD)580は、システムユニット510に含まれている。(示されていない)他のコンピューティングデバイス及び企業インフラストラクチャデバイスとの間でネットワークを介して通信するためのネットワークインターフェイス540は、また、システムユニットに含まれている。ネットワークインターフェイス540は、システムユニット510の中に含まれてもよく、又は、システムユニット510の外部に存在してもよい。いずれの場合も、システムユニット510は、ネットワークインターフェイス540に通信可能に結合されるであろう。プログラム記憶デバイス580は、これらには限定されないが、取り外し可能な媒体を含むソリッドステート記憶素子含む光学的及び磁気的のあらゆる形態を含む不揮発性記憶装置の任意の媒体を表し、システムユニット510の中に含まれてもよく、又は、システムユニット510の外部に存在してもよい。プログラム記憶デバイス580は、実行されるときにシステムユニット510を制御するソフトウェア、コンピュータ500が使用するデータ、又はそれらの双方の記憶のために使用されてもよい。
【0049】
システムユニット510は、(例が
図3に示されている)本開示にしたがった方法を実行するようにプログラムされてもよい。システムユニット510は、プロセッサユニット(PU)520、入力/出力(I/O)インターフェイス550、及びメモリ530を含む。プロセッサユニット520は、インテル社及び他の製造業者から入手可能であるマイクロプロセッサ等の任意のプログラム可能なコントローラデバイスを含んでもよい。メモリ530は、1つ又は複数のメモリモジュールを含んでもよく、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、プログラム可能な読み取り専用メモリ(PROM)、プログラム可能な読み取り書き込みメモリ、及びソリッドステートメモリを含んでもよい。当業者は、また、PU520が、また、例えば、キャッシュメモリを含む何らかの内部メモリを含んでいてもよいということを認識するであろう。
【0050】
図6は、ある1つの実施形態にしたがって患者の無呼吸事象に関する履歴情報をモニタリングするためのある1つの例示的なグラフィカルユーザインターフェイス600を図示しているスクリーンショットである。各々の無呼吸事象は、上記で説明されているシステム及び技術を使用して検出され及び記録され、その次に、表示のためにグラフィカルユーザインターフェイス600に送信されてもよい。無呼吸事象に関する集約的な情報は、また、表示のためにグラフィカルユーザインターフェイス600に送信される。この例示的なグラフィカルユーザインターフェイス600において、第1の領域610は、直近の無呼吸事象の数に関する履歴情報、この例では、最後の無呼吸事象からの時間及び最後の24時間及び最後の5日間の無呼吸事象の数を提供する。"最後の24時間"及び"最後の5日間"の表示は、一例であるにすぎず、
図6に図示されている履歴期間に加えて、又は、それらの履歴期間の代わりに、他の有用な履歴期間を提供してもよい。第2の領域620は、最後の12時間における無呼吸事象の合計の長さに関する履歴情報を提供する。この例においては、SpO
2>Max SpO
2 Threshold及びSpO
2<Min SpO
2 Thresholdの2つのタイプの酸素飽和度(SpO
2)に関連する記録を表示する。同様に、HR>Max HR Threshold及びHR<Min HR Thresholdの2つのタイプの心拍数(HRに)関連する記録を表示する。第2の領域620には、
図6に図示されている情報に加えて又は
図6に図示されている情報の代わりに、他のタイプの履歴情報を表示してもよい。
【0051】
第1の領域610及び第2の領域620の下には、個々の無呼吸事象に関する履歴情報を提供する領域がある。この例のタイムライン650は、選択されている"時間ゼロ"までの24時間の期間における無呼吸事象の指標を提供する。タイムラインの上に一対のキャリパー640を配置して、タイムライン650の下の領域660の中に詳細な表示をするための特定のウィンドウを選択してもよい。エクスポートボタン630は、電子医療記録(EMR)システムに、選択されている時間ウィンドウに関する情報を運び出す(exporting)のを可能とする。
【0052】
詳細情報領域660の中に、各々の無呼吸事象に関する詳細が表示されてもよい。
図6に図示されているように、各々の事象について表示される情報は、呼吸休止の長さ、その事象に関連して指定されている期間の中で発生する最小HR、その事象に関連して指定されている期間の中で発生する最小酸素飽和度レベル、臨床医がシステムによって検出されている事象を実際の無呼吸事象であると判定しているか否か、圧迫、足を軽くたたく、又は介入なし等の無呼吸事象に応答して実行されている臨床介入のタイプ、閉塞性、中枢性、混合性、又は不明等の無呼吸事象のタイプの指定、及び事象の開始時間を含む。他の詳細な情報は、必要に応じて、ユーザインターフェイス600に提供されてもよい。
【0053】
図6の例示的なグラフィカルユーザインターフェイス600における領域及び領域の配置は、例示的であり、一例であるにすぎず、要求に応じて、他の領域及び領域の他の配置を提供してもよい。グラフィカルユーザインターフェイスの要素のうちのいくつかは、ドロップダウンタイプのユーザ対話要素として図示されているが、要求に応じて、他のタイプのユーザ対話要素を使用してもよい。色は、ユーザの操作性を改善するのに使用されてもよい。例えば、複数の実装のうちのいくつかにおいて、特定の無呼吸事象のタイムライン650の中のインジケータは、他のインジケータとは異なる色で表示されてもよく、一方で、詳細領域660の中の対応する行は、異なる色で強調表示され又は示されてもよい。
【0054】
開示されている患者モニタリングシステムのない臨床現場においては、看護師又は他の臨床職員は、1枚の紙にデータを手書きするか又はデータを電子形式にタイプすることによって、シフト中に発生する無呼吸事象をフローシートに手動で記録する。いずれの場合も、フローシートは、臨床的な注意を必要とし、人間の転写誤りの影響を受ける。開示されているシステムは、無呼吸事象情報を使用して臨床フローシートを自動的に記入する(automatically populating clinical flow sheets)ことを可能とし、これは、情報を記録する際のヒューマンエラーの可能性を減少させるとともに、看護師又は他の臨床職員の手作業を有意に減少させることが可能である。この臨床フローシートは、呼吸休止の長さ、開始時間、SpO2、及びHR情報を含んでもよい。臨床判断(clinical adjudication)、無呼吸のタイプ、及び臨床介入のタイプなどの他の項目は、依然として、看護師によって入力されてもよいが、可能なエントリのリストから選択することによって標準化される形態で入力されるであろう。例えば、臨床職員は、無呼吸事象の終了を検出し、したがって、無呼吸事象の長さを計算することは困難である場合があると報告する。無呼吸事象の開始及び終了の双方を自動的に検出することによって、開示されているシステムは、事象の長さを自動的に計算し、臨床職員の負荷をさらに減少させ、手動データ入力誤りを減少させることが可能である。
【0055】
臨床職員による検出に依存するのではなく、無呼吸事象に関する客観的データを収集し、既存の警報システムを改善することによって、無呼吸事象のより良好な追跡を提供することが可能である。この改善されている追跡は、誤警報をより少なくするのみならず、臨床現場では現時点では検出されない無呼吸事象の検出をもたらす。そのようなより良好なデータがもたらす結果の1つは、乳児の臨床滞在を減少させ、臨床施設及び親の双方の育児費用を減少させるとともに、乳児と親の双方の生活の質を改善することである。患者は、無呼吸のない一定時間が経過するまで解放されないことが多いため、例えば、無呼吸事象の誤警報を減少させることで、患者がより早期に解放されることを可能とする。
【0056】
特定の例示的な実施形態が詳細に説明され、添付の図面の中で図示されているが、そのような実施形態は、例示的なものであるにすぎず、あとに続く特許請求の範囲によって決定されるその基本的な範囲から離れることなく考案されたものではないということが理解されるべきである。
【国際調査報告】