(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】電気自動車用の自動調整ドラムブレーキ
(51)【国際特許分類】
F16D 51/22 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
F16D51/22 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537594
(86)(22)【出願日】2022-04-19
(85)【翻訳文提出日】2024-06-20
(86)【国際出願番号】 CN2022087578
(87)【国際公開番号】W WO2023159731
(87)【国際公開日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】202210176378.1
(32)【優先日】2022-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519196254
【氏名又は名称】唐澤交通器材(泰州)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】孫浙勇
(72)【発明者】
【氏名】唐文貴
(72)【発明者】
【氏名】曹玉栄
(72)【発明者】
【氏名】陳双秋
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA03
3J058AA07
3J058AA13
3J058AA17
3J058AA37
3J058BA57
3J058CA02
3J058CC06
3J058CC58
3J058CC66
3J058DA15
3J058FA01
(57)【要約】
本発明は、ブレーキチャンバハウジング部品、摩擦シュー部品、カムシャフト、ロッカーアーム、トグル機構、および自動調整機構を含む電気自動車用の自動調整ドラムブレーキを開示する。ブレーキチャンバハウジング部品の内側に摩擦シュー部品が設けられ、カム本体の外側に歯状構造が設けられ、トグル機構によりカムシャフトを回転させ、自動調整機構は元の位置に留まり、トグル機構に対して同じ角度でスライド回転する。トグル機構とブレーキチャンバハウジング部品の間にリセットスプリングが設けられ、トグル機構はリセットスプリングの作用下で復帰し、カムシャフトは自動調整機構の調整により角度を維持する。トグル機構と自動調整機構は、ラチェットホイールによってカム本体の外側に設けられた歯状構造に適合するように調整される。これにより、長期間の摩耗により既存のブレーキのシュー部品とホイールハブの間の隙間が大きくなり、ブレーキ隙間調整が適時かつ正確に行われず、手触りが重いという問題が解決される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキチャンバハウジング部品(10)、摩擦シュー部品(20)、カムシャフト(30)、およびロッカーアーム(40)を含む電気自動車用の自動調整ドラムブレーキであって、
前記ブレーキチャンバハウジング部品(10)の内側に摩擦シュー部品(20)が設けられ、前記摩擦シュー部品(20)の第1端部は、ブレーキチャンバハウジング部品(10)のセンタリングシャフト(11)に回転可能に取り付けられ、第2端部はカムシャフト(30)の一端のカム部(31)に当接し、前記カムシャフト(30)の他端のカム本体(32)はブレーキチャンバハウジング部品(10)の貫通穴(12)内に枢接され、前記ロッカーアーム(40)とカム本体(32)の端部は、ブレーキチャンバハウジング部品(10)の外側に着脱可能に固定されており、前記カム本体(32)の外側に歯状構造(33)が設けられ、
前記電気自動車用の自動調整ドラムブレーキは、トグル機構(50)と自動調整機構(60)をさらに含み、前記トグル機構(50)によりカムシャフト(30)を回転させ、前記自動調整機構(60)は元の位置に留まり、トグル機構(50)に対して同じ角度でスライド回転し、前記トグル機構(50)とブレーキチャンバハウジング部品(10)の間にリセットスプリング(70)が設けられ、前記トグル機構(50)はリセットスプリング(70)の作用下で復帰し、前記カムシャフト(30)は自動調整機構(60)の調整により角度を維持することを特徴とする、
電気自動車用の自動調整ドラムブレーキ。
【請求項2】
前記トグル機構(50)はロッカーアーム(40)に設けられた第1ラチェット装置(51)であり、前記自動調整機構(60)はブレーキチャンバハウジング部品(10)に設けられた第2ラチェット装置(61)であり、前記第1ラチェット装置(51)は、第1ラチェットホイール(52)と第1圧縮バネ(53)を含み、前記第2ラチェット装置(61)は、第2ラチェットホイール(62)と第2圧縮バネ(63)を含み、前記第1ラチェットホイール(52)と第2ラチェットホイール(62)は、それぞれ歯状構造(33)と適合しており、
前記ロッカーアーム(40)の一端にブレーキワイヤー接続部(41)が設けられ、他端に固定穴(42)が設けられ、前記固定穴(42)の内側に第1異形溝(43)が設けられ、前記第1異形溝(43)の一側の開口部は、固定穴(42)に連通しており、前記ブレーキチャンバハウジング部品(10)の一側に第2異形溝(13)が設けられ、前記第2異形溝(13)の一側の開口部は、貫通穴(12)に連通しており、
前記第1ラチェット装置(51)は第1異形溝(43)内に設置され、前記第2ラチェット装置(61)は第2異形溝(13)内に設置されていることを特徴とする、請求項1に記載の電気自動車用の自動調整ドラムブレーキ。
【請求項3】
前記第1ラチェットホイール(52)および第2ラチェットホイール(62)には、それぞれラチェット歯(524)、(624)、および位置決めピボット(520)、(620)が設けられ、前記ラチェット歯(524)、(624)は歯状構造(33)と噛み合い、前記第1異形溝(43)と第2異形溝(13)内に位置決め穴溝構造(430)、(130)が設けられ、前記位置決めピボット(520)、(620)は、位置決め穴溝構造(430)、(130)と適合していることを特徴とする、請求項2に記載の電気自動車用の自動調整ドラムブレーキ。
【請求項4】
前記第1ラチェットホイール(52)の第1側面(521)は第1異形溝(43)の一側面に密着しており、前記第1ラチェットホイール(52)の第2側面(522)に圧縮バネ制限部(523)が設けられ、前記第1圧縮バネ(53)は、圧縮バネ制限部(523)と第1異形溝(43)との間に当接し、前記第2ラチェットホイール(62)には、第1側面(621)、第2側面(622)、および圧縮バネ制限部(623)が設けられていることを特徴とする、請求項2に記載の電気自動車用の自動調整ドラムブレーキ。
【請求項5】
前記第1異形溝(43)に第1バッフル(44)が設けられ、前記第1バッフル(44)は第1異形溝(43)を覆い、前記第2異形溝(13)は第2バッフル(14)で覆われることを特徴とする、請求項2に記載の電気自動車用の自動調整ドラムブレーキ。
【請求項6】
前記第1ラチェットホイール(52)と第2ラチェットホイール(62)は、カムシャフト(30)に沿って上下に鏡面対称構造で配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の電気自動車用の自動調整ドラムブレーキ。
【請求項7】
前記カム本体(32)は、上下二段の歯状構造を備え、中間部が円柱形構造であり、端部に周方向の環状溝(34)が設けられ、前記環状溝(34)内には、ロッカーアーム(40)に係合する係止具(80)が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の電気自動車用の自動調整ドラムブレーキ。
【請求項8】
前記ブレーキチャンバハウジング部品(10)には、ラグ構造(15)がさらに設けられ、前記ラグ構造(15)にブレーキワイヤー装着構造が設けられ、前記ブレーキワイヤー装着構造は、ロッカーアーム(40)のワイヤー押さえ構造(41)とともに手動摩耗隙間調整構造を形成することを特徴とする、請求項1に記載の電気自動車用の自動調整ドラムブレーキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車または電気自動車用のブレーキの分野に関し、特に電気自動車用の自動調整ドラムブレーキに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドラムブレーキでは、ロッカーアームの回転によりカムシャフトを回転させ、両側にあるシュー部品を駆動して開いて、ブレーキドラムに密着させ、ブレーキドラムとシュー群の間の摩擦により、車輪の回転が止まる。長期間使用すると、ブレーキワイヤーは弾性力の作用により長くなり、同時にシュー部品が長期間磨耗すると、ホイールハブとの隙間が大きくなり、このとき、通常、ブレーキ性能が低下し、ブレーキの故障が発生する。ブレーキワイヤーのネジを手動で調整してブレーキワイヤーを締め付けたり、ブレーキを交換したりすることが多いが、ブレーキ隙間を手動で調整する場合、適時性と精度を確保するのは困難である。
【0003】
ブレーキ隙間自動調整装置は自動車分野で広く使用されている。しかし、従来技術では、電気自動車、三輪車、自動二輪車には、ドラムブレーキがほとんど使われていない。
【0004】
例えば、中国特許第CN106050999Bには、ブレーキ隙間を自動調整する機能を有するクランク装置が開示されている。前記クランク装置では、駆動アームと従動アームでクランクを構成し、従動アームと駆動アームは、いずれもカムシャフトに取り付けられており、従動アームはカムシャフトに固定的に接続され、駆動アームはカムシャフトに移動可能に接続され、駆動アームにラチェット機構が設けられ、ラチェットホイールの中心にネジ穴が設けられ、従動アームに調整スクリューが設けられ、調整スクリューはラチェットホイールのネジ穴にねじ込まれている。ラチェット構造、調整スクリュー、およびハブブレーキカバーの位置制限ブロックを組み合わせて使用することにより、ハブブレーキのブレーキ隙間を自動調整し、駆動アームが設定角度に移動すると、駆動アームのラチェット爪レバーの先端部が位置制限ブロックに接触し、ラチェット爪レバーが回転して、ラチェット爪がラチェットホイール上で1歯移動する。
【0005】
このような駆動-従動クランクに設計されたラチェット装置は、構造が複雑で重量があり、位置制限ブロックと組み合わせって調整するため、制動時の抵抗が大きく、手触りが重い。また、調整スクリューは真っ直ぐな棒状の部品であり、カムシャフトを中心とした駆動-従動クランクの回転は円周運動であるため、回転角度調整時にスタック現象が発生し、後からシュー群の摩耗隙間を調整するのに不便である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術の欠点を考慮して、本発明は、長期間の摩耗により既存のブレーキのシュー部品とホイールハブの間の隙間が大きくなり、ブレーキ隙間調整が適時かつ正確に行われず、手触りが重いという問題を解決する、電気自動車用の自動調整ドラムブレーキを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記の技術的目的は、以下の技術的手段によって達成される。
【0008】
本発明は、ブレーキチャンバハウジング部品、摩擦シュー部品、カムシャフト、およびロッカーアームを含む電気自動車用の自動調整ドラムブレーキである。前記ブレーキチャンバハウジング部品の内側に摩擦シュー部品が設けられ、前記摩擦シュー部品の第1端部は、ブレーキチャンバハウジング部品のセンタリングシャフトに回転可能に取り付けられ、第2端部はカムシャフトの一端のカム部に当接し、前記カムシャフトの他端のカム本体はブレーキチャンバハウジング部品の貫通穴内に枢接され、前記ロッカーアームとカム本体の端部は、ブレーキチャンバハウジング部品の外側に着脱可能に固定されており、前記カム本体の外側に歯状構造が設けられている。前記電気自動車用の自動調整ドラムブレーキは、トグル機構と自動調整機構をさらに含む。前記トグル機構によりカムシャフトを回転させ、前記自動調整機構は元の位置に留まり、トグル機構に対して同じ角度でスライド回転し、前記トグル機構とブレーキチャンバハウジング部品の間にリセットスプリングが設けられ、前記トグル機構はリセットスプリングの作用下で復帰し、前記カムシャフトは自動調整機構の調整により角度を維持する。
【0009】
さらなる改良としては、前記トグル機構はロッカーアームに設けられた第1ラチェット装置であり、前記自動調整機構はブレーキチャンバハウジング部品に設けられた第2ラチェット装置であり、前記第1ラチェット装置は、第1ラチェットホイールと第1圧縮バネを含み、前記第2ラチェット装置は、第2ラチェットホイールと第2圧縮バネを含み、前記第1ラチェットホイールと第2ラチェットホイールは、それぞれ歯状構造と適合している。前記ロッカーアームの一端にブレーキワイヤー接続部が設けられ、他端に固定穴が設けられ、前記固定穴の内側に第1異形溝が設けられ、前記第1異形溝の一側の開口部は、固定穴に連通しており、前記ブレーキチャンバハウジング部品の一側に第2異形溝が設けられ、前記第2異形溝の一側の開口部は、貫通穴に連通している。前記第1ラチェット装置は第1異形溝内に設置され、前記第2ラチェット装置は第2異形溝内に設置されている。
【0010】
さらなる改良としては、前記第1ラチェットホイールおよび第2ラチェットホイールには、それぞれラチェット歯および位置決めピボットが設けられ、前記ラチェット歯は歯状構造と噛み合い、前記第1異形溝と第2異形溝内に位置決め穴溝構造が設けられ、前記位置決めピボットは位置決め穴溝構造と適合している。
【0011】
さらなる改良としては、前記第1ラチェットホイールの第1側面は第1異形溝の一側面に密着しており、前記第1ラチェットホイールの第2側面に圧縮バネ制限部が設けられ、前記第1圧縮バネは圧縮バネ制限部と第1異形溝との間に当接し、前記第2ラチェットホイールには、第1側面、第2側面、および圧縮バネ制限部が設けられている。
【0012】
さらなる改良としては、前記第1異形溝に第1バッフルがさらに設けられ、前記第1バッフルは第1異形溝を覆うように適合され、前記第2異形溝は第2バッフルで覆われる。
【0013】
さらなる改良としては、前記第1ラチェットホイールと第2ラチェットホイールは、カムシャフトに沿って上下に鏡面対称構造で配置されている。
【0014】
さらなる改良としては、前記カム本体は、上下二段の歯状構造を備え、中間部が円柱形構造であり、端部に周方向の環状溝が設けられ、前記環状溝内には、ロッカーアームに係合する係止具が設けられている。
【0015】
さらなる改良としては、前記ブレーキチャンバハウジング部品には、ラグ構造がさらに設けられ、前記ラグ構造にブレーキワイヤー装着構造が設けられ、前記ブレーキワイヤー装着構造は、ロッカーアームのワイヤー押さえ構造とともに手動摩耗隙間調整構造を形成する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は以下の有益な効果を有する。
【0017】
1、組み合わされたトグル機構と自動調整機構、リセットスプリングとカムシャフトの間の相互作用により、摩擦シュー部品が摩耗した後にカムシャフトは復帰しないようにする。一方、ロッカーアームが復帰することで、摩擦シュー組が摩耗した後にブレーキドラムとの隙間を補償して、その隙間を一定に保持し、ブレーキロッカーアームが常に有効かつ制御可能な範囲内にあることを保証し、摩擦シュー部品とホイールハブの間の通常の隙間を常に維持し、摩擦シュー部品が摩耗した後は、前進方向にブレーキをかけることで自動的に調整でき、摩耗隙間の調整は柔軟で、迅速かつ正確で、ライダーの安全を確保し、より使いやすくなる。
【0018】
2、トグル機構と自動調整機構はロッカーアームに設けられ、ブレーキチャンバハウジング部品のラチェット装置とカムシャフトの歯状構造と適合しており、ブレーキを調整するプロセスは柔軟、迅速、正確で、タイムリーである。ラチェット装置は、開口した異形溝に嵌め込まれたラチェットホイールと圧縮バネで構成され、構造が強固で安定しており、振動および緩衝機能を備える。隙間を一定に保つことで、隙間が小さすぎることによるスタックを効果的に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】電気自動車用の自動調整ドラムブレーキの構造模式図である。
【
図2】電気自動車用の自動調整ドラムブレーキの断面図である。
【
図3】電気自動車用の自動調整ドラムブレーキの分解模式図である。
【
図4】電気自動車用の自動調整ドラムブレーキのトグル機構と自動調整機構の位置を示す模式図である。
【
図5】電気自動車用の自動調整ドラムブレーキのトグル機構と自動調整機構の構造模式図である。
【
図6】電気自動車用の自動調整ドラムブレーキのロッカーアームの構造模式図である。
【
図7】電気自動車用の自動調整ドラムブレーキのブレーキチャンバハウジングの構造模式図である。
【
図8】電気自動車用の自動調整ドラムブレーキのカムシャフトの構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の理解を深めるために、以下に添付の図面を参照して本発明をさらに詳細に説明するが、本実施形態は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の保護範囲を限定するものではない。説明される実施形態は、本発明の実施形態の一部にすぎず、すべての実施形態ではないことは明らかである。本発明の実施形態に基づいて、創造的な努力なしに当業者によって得られる他のすべての実施形態は、本発明の保護範囲に含まれるものとする。
【0021】
以下、添付の図面および実施形態を参照して本発明をさらに詳細に説明する。
【0022】
図1~3は、一実施形態の電気自動車用の自動調整ドラムブレーキを示す。前記電気自動車用の自動調整ドラムブレーキは、ブレーキチャンバハウジング部品10、摩擦シュー部品20、カムシャフト30、およびロッカーアーム40を含む。前記ブレーキチャンバハウジング部品10の内側に摩擦シュー部品20が設けられ、前記摩擦シュー部品20の第1端部は、ブレーキチャンバハウジング部品10のセンタリングシャフト11に回転可能に取り付けられ、第2端部はカムシャフト30の一端のカム部31に当接し、前記カムシャフト30の他端のカム本体32はブレーキチャンバハウジング部品10の貫通穴12内に枢接され、前記ロッカーアーム40とカム本体32の端部は、ブレーキチャンバハウジング部品10の外側に着脱可能に固定されており、前記カム本体32の外側に歯状構造33が設けられている。前記電気自動車用の自動調整ドラムブレーキは、トグル機構50と自動調整機構60をさらに含む。前記トグル機構50によりカムシャフト30を回転させ、前記自動調整機構60は元の位置に留まり、トグル機構50に対して同じ角度でスライド回転し、前記トグル機構50とブレーキチャンバハウジング部品10の間にリセットスプリング70が設けられ、前記トグル機構50はリセットスプリング70の作用下で復帰し、前記カムシャフト30は自動調整機構60の調整により角度を維持する。このような構造のトグル機構、自動調整機構、およびカムシャフトを組み合わせることにより、摩擦シュー部品20を少し開いた状態に維持し、摩擦シュー部品20の磨耗によって生じるブレーキ隙間を補償調整することで、手動調整が不要なアジャストフリー機能を実現する。
【0023】
図4、5に示すように、前記トグル機構50はロッカーアーム40に設けられた第1ラチェット装置51であり、前記第1ラチェット装置51は、第1ラチェットホイール52と第1圧縮バネ53を含み、前記自動調整機構60はブレーキチャンバハウジング部品10に設けられた第2ラチェット装置61であり、前記第2ラチェット装置61は第2ラチェットホイール62と第2圧縮バネ63を含み、前記第1ラチェットホイール52、第2ラチェットホイール62には、歯状構造33と噛み合うラチェット歯524、624がそれぞれ設けられている。前記ロッカーアーム40の一端にブレーキワイヤー接続部41が設けられ、他端に固定穴42が設けられ、前記固定穴42の内側に第1異形溝43が設けられ、前記第1異形溝43の一側の開口部は、固定穴42に連通しており、前記第1ラチェット装置51は第1異形溝43内に設置され、ラチェット歯524は開口部を通過してカムシャフト30の歯状構造33と噛み合う。前記ブレーキチャンバハウジング部品10の一側に第2異形溝13が設けられ、前記第2異形溝13の一側の開口部は、貫通穴12に連通している。前記第2ラチェット装置61は第2異形溝13内に設置されている。
【0024】
ラチェット装置、トーションスプリング、およびカムシャフトの歯状構造を組み合わせることにより、カムシャフト30をある角度で回転させ、摩擦シュー部品20を押し広げてブレーキをかけると、ロッカーアームはリセットスプリングの作用下で復帰し、摩擦シュー部品が摩耗すると、カムシャフトは自動調整機構の作用下で復帰せず、シュー部品の摩耗により増加したブレーキ隙間を自動調整して補償する。第2異形溝13の一側の開口部は、貫通穴12に連通しており、前記第1異形溝43の一側の開口部は、固定穴42に連通している。これにより、そこに設置されたラチェットホイールは、カムシャフトの歯状構造と確実に噛み合うことができる。
【0025】
図4~7に示すように、第1ラチェットホイール52、第2ラチェットホイール62には、それぞれ位置決めピボット520、620が設けられ、前記第1異形溝43、第2異形溝13内に位置決め穴溝構造430、130が設けられ、前記位置決めピボット520、620は、位置決め穴溝構造430、130と適合している。前記第1ラチェットホイール52の第1側面521は、第1異形溝43の一側面に密着しており、前記第1ラチェットホイール52の第2側面522に圧縮バネ制限部523が設けられ、前記第1圧縮バネ53は、圧縮バネ制限部523と第1異形溝43の他方の側面との間に当接する。前記第2ラチェットホイール62には、第1ラチェットホイール52に対応するように、第1側面621、第2側面622、および圧縮バネ制限部623が設けられている。前記第1ラチェットホイール52、第2ラチェットホイール62は、カムシャフト30に沿って上下に鏡面対称構造で配置されている。
【0026】
これにより、ラチェットホイールは異形溝に強固に接続されており、制動と復帰が確実になる。制動時には、第1圧縮バネは圧縮バネ制限部523と第1異形溝43の他方の側面との間に当接し、第1ラチェットホイール52の第1側面521は第1異形溝43の一側面に密着し、ラチェット歯520は、ロッカーアーム40によりカムシャフト30の歯状構造33を動かして、カムシャフト30を回転させ、このとき、第1圧縮バネ53は、ラチェットホイール52を安定させて支持する役割を果たす。第2ラチェットホイール62は、ブレーキチャンバハウジング部品10の第2異形溝13内に設置され、第1ラチェットホイール52と上下対称である。制動時には、ロッカーアーム40がカムシャフト30を動かして共に回転するため、ブレーキチャンバハウジング部品10は動かず、その結果、第2ラチェットホイール62を元の位置に維持するには、滑り歯はカムシャフト30に対して元の位置を維持する必要がある。このとき、第2圧縮バネ63は、第2ラチェットホイール62の滑り歯を振動させる役割を果たす。
【0027】
制動が完了すると、ロッカーアーム40は、リセットスプリング70の反力により復帰し、第1ラチェットホイール52の滑り歯は、第1圧縮バネ53とリセットスプリング70の作用により復帰し、このとき、第1圧縮バネ53は、第1ラチェットホイール52の滑り歯を振動させる役割を果たす。ロッカーアーム40の復帰時にカムシャフト30が小角度回転した後、第2ラチェットホイール62は第2異形溝13の一側面に密着し、その後、カムシャフト30の歯状構造と噛み合って係止して、カムシャフト30の回転と復帰を防止することで、摩擦シュー部品20は、制動によって生じる磨耗隙間を補償することができる。ここで、第2圧縮バネ63は、第2ラチェットホイール63がロッカーアームの復帰時に小角度回転した後に噛み合うことに緩衝作用を奏する。つまり、摩耗隙間が小さすぎて歯の1ピッチ未満の場合、歯は滑らず、圧縮バネによって緩衝されるため、ブレーキ隙間が一定に保たれ、隙間調整が小さすぎることによるスタックを効果的に防ぐことができる。従って、ここでの第2ラチェットホイール62、第2圧縮バネ63、および第2異形溝13の構造寸法は、必要に応じて設定される。
【0028】
図3に示すように、前記第1異形溝43に第1バッフル44がさらに設けられ、前記第1バッフル44は第1異形溝43を覆うように適合され、第2バッフル14は前記第2異形溝13を覆うように適合されている。このような設計により、構造がより強固になり、信頼性が高く、崩壊しにくくなる。
【0029】
図8に示すように、カム本体32は、上下二段の歯状構造33を備え、中間部が円柱形構造であり、端部に周方向の環状溝34が設けられ、前記環状溝34内には、ロッカーアーム40に係合する係止具80が設けられている。ブレーキの全体的な接続が強固で信頼性があり、組み立てやメンテナンスが容易である。
【0030】
前記二段の歯状構造33は、第1ラチェットホイール52、第2ラチェットホイール62のラチェット歯524、624と適合する反対方向のラチェット歯として設けることができる。このような構造は、滑り歯と噛み合い歯の伝達において、より便利かつ合理的であり、伝達は確実である。カム本体32は、二段の反対方向のラチェット歯に分割された全歯構造として構成することもできる。または、第1ラチェットホイール52と第2ラチェットホイールのラチェット歯524、624は、カムシャフト上の同じ方向の歯状構造と協働するために反対方向に配置されることもできる。
【0031】
より好ましくは、前記ブレーキチャンバハウジング部品10にラグ構造15がさらに設けられ、前記ラグ構造15にブレーキワイヤー装着構造が設けられ、前記ブレーキワイヤー装着構造は、ロッカーアーム40のワイヤー押さえ構造41とともに手動摩耗隙間調整構造を形成する。このように設置することで、手動隙間調整と自動隙間調整を組み合わせて調整することにより、製品の調整パフォーマンスがより便利で優れており、ライダーの安全を確保し、より使いやすく合理的になる。
【0032】
本発明の動作原理は次のとおりである。
【0033】
制動時には、ロッカーアーム40を揺動すると、力を受けた第1ラチェットホイール52の第1側面521は、第1異形溝43の一側面に密着し、第1ラチェットホイール52のラチェット歯524がカムシャフト30の歯状構造33と噛み合い力を受けることにより、カムシャフト30を回転駆動させる。第2ラチェットホイール62は第2圧縮バネ63の作用下でカムシャフト30とともに回転し、滑り歯はブレーキチャンバハウジング部品10に対して動かず、カムシャフト30の回転に影響を与えないため、カムシャフト30が回転するとともに、摩擦シュー部品20は押し広げられて、ブレーキ効果を達成する。
【0034】
制動が終了した後、ロッカーアーム40を解放し、ロッカーアーム40はリセットスプリング70のトーションスプリングにより復帰する。このとき、第1ラチェットホイールの第2側面522は、第1圧縮バネ53と接触しており、第1圧縮バネ53の作用により、第1ラチェットホイールの滑り歯がロッカーアーム40とともに回転して復帰し、ロッカーアーム40はブレーキ前の位置に戻る。第2ラチェットホイール62の第1側面621は、ブレーキチャンバハウジング部品10の第2異形溝13の側面に密着し、第2ラチェット歯624はカムシャフト30の歯状構造33と噛み合い、カムシャフト30の復帰を阻止する。カムシャフト30が復帰しないとき、シューは一定角度開いた状態となり、これによって、ブレーキ摩耗により増加した摩擦シュー部品20のブレーキ隙間を補償調整することができる。
【0035】
このように繰り返し、次回シューが摩耗した後、ドラムブレーキの動作原理は上記と同様となり、ロッカーアームは自動的に復帰し、シューは開いた状態を維持するため、メンテナンスフリーの目的を達成する。
【0036】
本発明の好ましい実施形態を開示しているが、これらに限定されるものではない。当業者であれば、上記の実施形態に基づいて本発明の精神を理解し、様々な拡張や変更を容易に行うことができるが、本発明の精神から逸脱しない限り、それらはすべて本発明の保護範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0037】
ブレーキチャンバハウジング部品10、摩擦シュー部品20、カムシャフト30、ロッカーアーム40、トグル機構50、自動調整機構60、リセットスプリング70、係止具80、センタリングシャフト11、貫通穴12、第2異形溝13、第2バッフル14、ラグ構造15、カム部31、カム本体32、歯状構造33、環状溝34、ブレーキワイヤー接続部41、固定穴42、第1異形溝43、第1バッフル44、第1ラチェット装置51、第1ラチェットホイール52、第1圧縮バネ53、第1側面521、第2側面522、圧縮バネ制限部523、第2ラチェット装置61、第2ラチェットホイール62、第2圧縮バネ63、第1側面621、第2側面622、圧縮バネ制限部623、ラチェット歯524、624、位置決めピボット520、620、位置決め穴溝構造430、130。
【国際調査報告】