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特表2024-547098抗体とムテインとからなる融合タンパク質
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】抗体とムテインとからなる融合タンパク質
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20241219BHJP
   C07K 14/55 20060101ALI20241219BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20241219BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20241219BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20241219BHJP
   C12N 15/26 20060101ALN20241219BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K14/55
C07K16/28
A61K38/20
A61K38/19
A61P35/00
A61K48/00
A61K47/68
C12N15/62 Z
C12N15/26
C12N15/13
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537810
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-08-13
(86)【国際出願番号】 CU2022050012
(87)【国際公開番号】W WO2023116951
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】CU-2021-0104
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509352381
【氏名又は名称】セントロ デ インミュノロヒア モレキュラル
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カサデスス パソス、アナ ビクトリア
(72)【発明者】
【氏名】エルナンデス ガルシア、テイズ
(72)【発明者】
【氏名】レオン モンソン、カレト
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076CC27
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA41
4C084CA53
4C084DA14
4C084MA56
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZB261
4C084ZB262
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA72
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、バイオテクノロジー及び免疫腫瘍学の分野に関する。リンカーを介して免疫グロブリンに連結されたインターロイキン2アゴニストムテインを含む融合タンパク質が開示される。これらの融合タンパク質は、抗体がADCC及びCDCを行う能力を同時に維持し、さらに、制御性T細胞を拡大することなくNK細胞及びCD8+を活性化することによる、非α IL-2ムテインに基づく他の同様のものと比較した場合のそれらの優れた特性を考慮すると、がんの治療に有用である。これらの特性の収束は、親抗体よりも、さらにはそれらの非αムテインとの組合せよりも優れた抗腫瘍特性を有する融合タンパク質をもたらす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IgG1又はIgG3アイソタイプの免疫グロブリンに連結されたインターロイキン2(IL-2)アゴニストムテインを含む融合タンパク質であって、該免疫グロブリンがFcγ受容体及び補体カスケード分子によって認識される、融合タンパク質。
【請求項2】
抗原結合部位及びサイトカインに関して二価の分子を特徴とする、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
ムテインのIL-2受容体のα鎖に結合する能力が少なくとも2桁違いで影響を受ける、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
ムテインがリンカーによって免疫グロブリンに結合されている、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
ムテインが免疫グロブリンの重鎖に結合する、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
ムテインが免疫グロブリンのカルボキシ末端に結合する、請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
ムテインが、配列番号16~43を含む群から選択される配列を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
リンカーが、(GlySer)ThrGly(配列番号44)及び(GlySer)n(配列番号45)を含む群から選択されるアミノ酸配列によって形成され、nが、1~5の値を有する断片GlySerの繰り返しの数である、請求項4に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
IgG1又はIgG3サブクラスが、それぞれ配列番号11もしくは12の配列を含むか、又は配列番号11もしくは12に対して97%を超える同一性を有する、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
免疫グロブリンの軽鎖が、配列番号9に対応する配列を有するヒトκアイソタイプである、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
免疫グロブリンの軽鎖が、配列番号10に対応する配列を有するヒトλアイソタイプである、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
標的腫瘍抗原が、CD20、CD19、NGcGM3、PDL1、Her1、Her2及びEpcamを含む群から選択される、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
0.5mg/ml~20mg/mlの濃度範囲の請求項1~12のいずれか一項に記載の融合タンパク質と、許容される医薬ビヒクルとを含む医薬組成物。
【請求項14】
がんの治療における請求項13に記載の医薬組成物の使用。
【請求項15】
皮下、筋肉内又は腫瘍内注射のための、請求項1~12のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする核酸分子の使用。
【請求項16】
請求項13に記載の医薬組成物を0.01mg/Kg~0.6mg/Kg体重の用量範囲で皮下、静脈内、皮内、筋肉内又は腹腔内投与することを含む、治療を必要とする対象の治療方法。
【請求項17】
医薬組成物の投与が、7日~8週間の間隔で、週に1~3回の投与で1~30サイクル行われる、請求項16に記載の治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジー及び免疫腫瘍学の分野に関する。特に、本発明は、腫瘍上に発現される抗原に特異的な抗体に融合したインターロイキン2(IL-2)の非αムテインアゴニストから構成され、エフェクタ機能を動員することができる融合タンパク質を記載する。
【背景技術】
【0002】
抗体又は抗体断片に融合したサイトカインで構成されるバイオ医薬品である免疫サイトカイン(ICs)は、がんの治療のための魅力的な免疫療法ツールであるが、その使用は他の疾患にも拡大されている。
【0003】
IL-2は、Tリンパ球の強力な活性化因子であり、NK細胞及びそれらのADCC(抗体依存性細胞傷害)の刺激因子である(Hank et al.(1990)J Biol Response Mod.9:5-14)。この理由から、この種の融合タンパク質の生成において最も使用されるサイトカインの1つとなっている。実際に、臨床的進歩の大部分が、IL-2を腫瘍抗原に特異的な抗体に融合させたもので為されてきた(Sondel,P.M.and S.D.Gillies.(2012)Antibodies.1(2):149-171)。第II相臨床試験での有望な結果にもかかわらず、(Albertini,M.R.et al.(2012)Cancer Immunol Immunother.61(12):2261-2271;Danielli,R.,et al.(2015)Cancer ImmunolImmunother.64(8):999-1009;Kaufman,L.(2014)Journal of Clinical Oncology.32(15);Lansigan,F.et al.(2016)Blood.128(22):620)、これらのICは、高い毒性プロファイル(Panelli,M.C.et al.(2004)J Transl Med.2(1):17;Skrombolas,D.and J.G.Frelinger.(2014)Expert Rev Clin Immunol.10(2):207-217;Klein,C.,et al.(2017)Oncoimmunology.6(3):e1277306)及び潜在的に抗腫瘍活性を阻害することができる制御性T細胞の拡大(Ahmadzadeh,M.and S.A.Rosenberg.(2006)Blood.107(6):2409-2414;Jensen,H.K.,et al.(2009)Clin Cancer Res.15(3):1052-1058;Fournier,P.,et al.(2011)Int J Oncol.38(6):1719-1729;Gubbels,J.A.,et al.(2011)Cancer Immunol Immunother.60(12):1789-1800;Pretto,F.,et al.(2014)Cancer Immunol Immunother.63(9):901-910;Sim,G.C.,et al.(2014)J Clin Invest.124(1):99-110;Lansigan,F.et al.(2016)Blood.128(22):620)のような、組換えIL-2と同様の有害作用を保持する。さらなる制限は、高親和性IL-2受容体との相互作用のために、最適未満の生体内分布及び腫瘍への標的化に関連する(Klein,C.,et al.(2017)Oncoimmunology.6(3):e1277306;Waldhauer,I.,et al.(2021)Mabs.13(1):1913791)。この状況は、IL-2受容体のα鎖に結合する能力が低下しているか又は能力を全く有さず、次に、免疫細胞の特定のサブセットを刺激し、毒性を減少させるように合理的に設計された、IL-2の突然変異体(非αムテイン)に基づくICの開発を促進した(Runbeck,E.,et al.(2021)Antibodies.(Basel)10(1))。
【0004】
これらのICの中には、IL-2受容体のα鎖への結合を無効にし、エフェクタCD8+T細胞及びNK細胞の拡大を促進し、制御性T細胞の選択的増殖を促進しない変異F42A、Y45A、L72Gの存在を特徴とする、IL-2vに基づくものを含む群がある。これらの融合タンパク質は、完全長IgG(IgG1)のフォーマットを有し、CDC(補体依存性細胞傷害)及びADCCなどの古典的な抗体エフェクタ機能を有しないが、サイトカインに関して一価又は単機能性である。この群の中には、その重鎖の1つのC末端を介してIL-2v変異体の1分子に融合された癌胎児性抗原(CEA)に対する特異的抗体からなる、ICセルグツズマブアムナロイキン(CEA-IL2v)がある(Klein,C.,y cols.(2017)Oncoimmunology.6(3):e1277306)。
【0005】
このセットには、線維芽細胞活性化タンパク質αに特異的なIC Simlukafusp alfa(FAP-IL2v)(Waldhauer,I.,et al.(2021)Mabs.13(1):1913791)及びプログラム死1(PD-1)分子を認識するIC抗PD1-IL2v(Klein,C.,et al.(2019)Cancer Res.79(13 Suppl):Abstractnr 1552)も含まれる(Klein,C.,et al.(2019)Cancer Res.79(13 Suppl):Abstract nr 1552)。
【0006】
一方で、変異L80F、R81D、L85V、I86Y、I92Fを特徴とするIL-2の変異体(sum-IL-2)を含む、EGFR(上皮成長因子受容体)に特異的なIC Erb-Sum-IL2が報告されている。野生型サイトカインに関するこの一連の変化は、ムテイン(変異タンパク質)と受容体のα鎖及びβ鎖との結合の減少ならびに相互作用の増大をそれぞれ決定する。これは、活性化CD8+T細胞への良好な結合を調節し、制御性T細胞への結合は調節しない。このICは、一方のアームにsum-IL2モノマーを含み、他方のアームに抗EGFR Fabを含むヘテロ二量体Fc融合タンパク質として提示される。抗原結合部位及びサイトカインに関するこの一価ICについて、腫瘍微小環境における制御性T細胞と比較したCD8+T細胞の選択的な拡大が記載されているが、ADCC及びCDCなどの抗体の古典的なエフェクタ機能を動員する能力は報告されていない(Sun,Z.,et al.(2019)Nat Commun.10(1):3874)。
【0007】
先に記載された背景情報を考慮して、本出願の発明者らは、抗原結合部位及びサイトカインに関して二機能性分子にするために、その設計が、抗体エフェクタ機能を動員する能力を有するIgG抗体の重鎖のカルボキシル末端へのIL-2アゴニストムテイン(IL2非α)の融合に基づく、がん治療のためのICのタイプを作製した。驚くべきことに、このタイプの分子は、直接溶解、ADCC及び/又はCDCを実行する抗体の能力を維持するか又は同時に改善し、さらに、制御性T細胞を拡大することなくNK及びCD8+T細胞を活性化することによって、非αムテインに基づく他の同様の分子よりも優れた特性を有する。これらの特性の収束は、親抗体よりも、さらにはそれらのIL2非αとの組合せよりも優れた抗腫瘍特性を有する融合タンパク質をもたらす。最後に、本発明に列挙される融合タンパク質のフォーマット及び組成は、抗体部分の可変領域に関連する生物学的活性を妨げない。これは、アポトーシスを誘導する又はエフェクタ機能とは無関係に細胞傷害性を誘導する能力にも当てはまる。
【発明の概要】
【0008】
一実施形態では、本発明の主題は、IgG1又はIgG3アイソタイプの免疫グロブリンに結合したIL-2アゴニストムテイン(非αムテイン)を含むことを特徴とする融合タンパク質であり、前記免疫グロブリンは、Fcγ受容体及び補体カスケード分子によって認識される。この免疫サイトカインは、抗原結合部位及びサイトカインに関して二価の分子であることを特徴とする。そのようなムテイン及び前記免疫グロブリンは、リンカーを介して連結される。特に、IL-2受容体のα鎖に結合するムテインの能力は、少なくとも2桁の大きさ(2桁違い)で影響を受け、ムテインは、前記免疫グロブリンの各重鎖のカルボキシ末端を介して免疫グロブリンに結合する。特に、非αムテインは、配列番号16~43を含む群から選択される配列を有する。
【0009】
特定の実施形態では、リンカーは、(GlySer)ThrGly(配列番号44)及び(GlySer)(配列番号45)を含む群から選択されるアミノ酸配列から構成され、ここで、nはGlySer断片の繰り返しの数であり、1~5の値を有する。
【0010】
特定の実施形態では、免疫グロブリン重鎖は、ヒトIgG1又はIgG3サブクラスに属し、かつ配列番号11もしくは12の配列を含むか、又は配列番号11もしくは12と97%を超える同一性を有する。
【0011】
特定の実施形態では、免疫グロブリンの軽鎖は、ヒトκアイソタイプに属することを特徴とし、かつ配列番号9に対応する配列を有する。
【0012】
特定の実施形態では、免疫グロブリンの軽鎖は、ヒトλアイソタイプに属することを特徴とし、かつ配列番号10に対応する配列を有する。
【0013】
本発明の免疫サイトカインは、腫瘍抗原を認識することをさらに特徴とし、その中には、CD20、CD19、NGcGM3、PDL1、Her1、Her2及びEpcamが含まれる。
【0014】
さらなる実施形態では、本発明は、0.5mg/ml~20mg/mlの濃度範囲の本明細書に記載の融合タンパク質と薬学的に許容されるビヒクルとを含む医薬組成物に関する。
【0015】
さらに、本発明は、本発明において開示される融合タンパク質のがんの治療における使用に関する。特に、皮下、筋肉内又は腫瘍内注射のための、本発明の融合タンパク質をコードする核酸分子の使用に関する。
【0016】
さらなる実施形態では、本発明は、0.01mg/Kg~0.6mg/Kg重量の用量範囲での本発明の医薬組成物の皮下、静脈内、皮内、筋肉内又は腹腔内投与を含む、治療を必要とする対象のための治療方法に関する。特に、前記医薬組成物の投与は、週に1~3回で1~30サイクル実施され、サイクル間の時間は7日~8週間である。
【0017】
ICの説明
一実施形態では、本発明の目的は、抗原結合部位及びサイトカインに関して二機能性分子にするために、抗体の古典的エフェクタ機能を動員する能力を有する免疫グロブリンの重鎖に結合した、受容体のα鎖に対する結合親和性が少なくとも2桁低下している(Leon et al.(2018)Semin Oncol.45(1-2):95-104)、IL-2アゴニスト非αムテイン(非αムテイン)に基づく融合タンパク質又はICである。
【0018】
本発明で使用される「融合タンパク質」という用語は、ペプチドリンカーを介して連結された、抗体のアミノ酸配列と、異種ポリペプチド又はタンパク質、すなわち、通常は抗体の一部ではないポリペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列とを含むポリペプチドを指す。
【0019】
本明細書で使用される免疫サイトカイン(IC)という用語は、サイトカインに結合する抗体フォーマットを指す。そのようなサイトカインは、重鎖のカルボキシ末端でリンカーによって抗体に融合される。
【0020】
「融合タンパク質」及び「IC」という用語は、本発明では互換的に使用される。
【0021】
本発明に記載されるICの一部を形成するムテインは、少なくとも2桁の大きさ(2桁違い)で、制御性T細胞において構成的に発現される高親和性受容体、具体的にはα鎖に対するそれらの結合能によって影響を受ける。本発明の融合タンパク質は、他の非αムテインベースのICが有しない特性である、直接溶解、ADCC及び/又はCDCなどのエフェクタ機能を動員しながら、制御性T細胞を拡大することなくNK及びCD8+T細胞を活性化する能力を示す。これらのムテインは、本明細書では非αムテインと呼ばれる。
【0022】
特に、IC抗体部分は、そのアミノ酸配列がそれぞれ配列番号11及び配列番号12として同定されるものと97%を超える同一性を有するIgG1又はIgG3の天然又は修飾対立遺伝子変異体に対応し、Fcγ受容体及び補体分子に結合するヒトIgG1又はIgG3サブクラスの免疫グロブリンである。したがって、それらはADCC及びCDCの活性と適合性である。本発明の融合タンパク質の一部を形成する抗体の軽鎖の定常領域は、ヒトκ又はλアイソタイプのものであり、それらの配列は配列番号9及び配列番号10に記載されている。一方で、抗体部分の可変領域は、マウス、ヒト化又は完全ヒトであり得、ADCC及びCDCを奏する能力を有する免疫グロブリンに由来し得る。本発明のICの抗体部分の可変領域は、CD20、CD19、ガングリオシドNGcGM3、PDL1、Her1、Her2、及びEpcamなどのヒト腫瘍において発現される抗原を認識する。
【0023】
本発明に記載の非αムテインは、柔軟なリンカーペプチド(GlySer)ThrGly(配列番号44)又は(Gly4Ser)n(配列番号45)を介して各抗体重鎖のカルボキシル末端に結合しており[ここで、nはGly4Ser断片の繰り返しの数である]、制御性T細胞の拡大を損ない、CD8+及びNKエフェクタT細胞を選択的に拡大する能力を有する。
【0024】
非αムテインは、以前に米国特許第9,206,243 B2号及び米国特許出願第2019/0315826 A1号に開示されている配列番号16~43に記載されているもの、又は以前に国際公開第2012107417号に開示されているIL-2v(配列番号40)及び配列番号41~43に記載されているその変異体のいずれかであり得る。分子免疫学センター(Center for Molecular Immunology)で作製された配列番号16~21に記載されるムテインはIL-2アゴニストであり、制御性T細胞において構成的に発現される高親和性受容体へのそれらの結合能は少なくとも2桁の大きさ(2桁違い)で影響を受ける。野生型IL-2に関するそれらの改変の結果として、それらは、NK及びメモリCD8+T細胞のエフェクタ集団を選択的に拡大することができ、天然IL-2のアゴニスト作用を有し、動物モデルにおいて天然IL-2よりも大きい抗腫瘍効果を有する(米国特許第9,206,24309号)。IIL2非α K35E、IL2非α K35Q及びIL2非α K35Dムテイン(配列番号22~39)は、異なる宿主系における発現を促進し、IL-2受容体の異なる鎖と非αムテインとの相互作用プロファイルと適合性である点突然変異を含む、米国特許第9,206,243号に記載されている方法で得られたIL2非αの変異体である(Rojas,G.,et al.(2015)J Mol Recognit.28(4):261-268)。IL-2v突然変異体及びその変異体(配列番号40~43)は、制御性T細胞の選択的拡大を妨げ、エフェクタTCD8+及びNK細胞の拡大を促進する、受容体のα鎖への結合を妨げる野生型IL-2に関する突然変異を含む(Klein,C.,et al.(2017)Oncoimmunology.6(3):e1277306)。
【0025】
要約すると、本発明の融合タンパク質のフォーマットは、抗体の古典的なエフェクタ機能(直接溶解、ADCC及びCDC)の維持又は改善を保証し、これは、制御性T細胞に対するエフェクタ細胞の選択的増殖の誘導からなる、非αムテインの特定の免疫調節特性と一致する。
【0026】
医薬組成物
本発明のIC対象物は、そのための種々の適切な医薬組成物及び薬学的に許容されるビヒクルの一部を形成する活性成分として見出され得る。前記医薬組成物中の活性成分の濃度は、0.5mg/ml~20mg/ml、好ましくは1mg/ml~10mg/mlの範囲であり、又は凍結乾燥されている。
【0027】
薬学的に許容されるビヒクルには、生理食塩水、pH中性リン酸緩衝生理食塩水などが含まれるが、これらに限定されない。他の緩衝剤、分散剤、及び患者への送達に適した非毒性の不活性物質が本発明の組成物に含まれ得る。組成物は、投与に適した溶液であり得、通常無菌であり、望ましくない粒子を含まない。
【0028】
治療的使用及び治療
本発明に記載されるICの新規性は、IgG1又はIgG3免疫グロブリン及び非αムテインに基づく二機能性融合タンパク質における、制御性T細胞よりもメモリTCD8+及びNK細胞などのエフェクタ細胞を選択的に拡大し、活性化する能力、ならびに直接溶解、ADCC及びCDCなどの抗体の典型的なエフェクタ機能を維持又は増強する能力の収束からなる。この同時実行性は、これまでに記載されている非αムテインに基づくICのいずれについても記載されていない。さらに、IC分子あたり2つの非α IL-2ムテイン分子の存在は、融合タンパク質の固有の免疫調節活性を増加させることを可能にする。これは、内皮細胞上の高親和性受容体との非相互作用に起因する毒性の潜在的な減少にさらに寄与する。Fc領域は、とりわけ、プロテインAを用いたアフィニティクロマトグラフィによって高度に精製された融合タンパク質を得る可能性を提供し、これは、循環中のこれらの薬剤の半減期を増加させ、ひいては治療有効性を増加させながら、それらを様々な経路(皮下、静脈内、皮内、筋肉内、腹腔内)によって可溶性タンパク質として投与することを可能にする。
【0029】
本発明のICは、それぞれ合計0.7及び42mgに相当する0.01mg/Kg重量~0.6mg/Kg重量の用量範囲で、好ましくは皮下又は静脈内経路で、対象に適用される(これらの対象は、ヒトなどの脊椎動物である)。ICは、週に1~3回の頻度で1~30サイクルにわたって患者に投与される。投与サイクル間の時間は7日~8週間である。
【0030】
さらに、これらのICのために本発明で用いられる送達戦略はまた、mRNA及びそれらをコードする形質導入粒子の注射などの遺伝子治療アプローチによる生成物の注射を含み得る。
【0031】
これらの分子の免疫調節特性を考慮すると、抗原特異的抗腫瘍応答の増強に加えて、全身免疫刺激能は、様々なタイプのがんを有する患者における他の標的に対する治療との組合せの可能性を支持する。同様に、他の免疫調節剤ならびに化学療法及び放射線療法などの古典的腫瘍治療との組合せも可能である。特に、このタイプのバイオ医薬品は、B細胞リンパ増殖性障害、例えば非ホジキンリンパ腫(NHL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、バーキットリンパ腫(BL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、濾胞性リンパ腫、低悪性度リンパ腫、辺縁体リンパ腫(MZL)、重症リンパ形質細胞性リンパ腫(PL)、B細胞リンパ増殖症候群、進行期固形腫瘍、頭頸部腫瘍、脳腫瘍、成人及び小児神経膠腫、膵臓がん、食道がん、非小細胞肺がん、ならびに鼻咽頭腫瘍の治療において使用することができる。
【0032】
このように、上述のICは、現在がんの治療に使用されている、抗体及びIL-2の保護作用を増強する治療最前線を構成することが意図されている。この効果は、重要な抗腫瘍機構であるADCC及びCDC活性を同時に有し、制御性T細胞ではなく細胞傷害性T細胞及びNK細胞を選択的に拡大することができる融合タンパク質の生成に関連し、より効率的な抗腫瘍免疫応答、したがって腫瘍成長の遅延及び治療される個体の生存延長をもたらす。さらに、使用されるIL-2ムテインによって保証されるより低いレベルの毒性は、野生型サイトカインを用いた治療と比較して成功の確率を高める。このすべてが、治療患者における平均余命及び生活の質の向上につながる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1A】IC IgG-IL2非αのスキームの表示。
図1B】IC IgG-IL2非αのフォーマットの表示。
図2A】形質導入されたCHO細胞の上清中のICの発現の評価。
図2B】一過性にトランスフェクトされた懸濁液中のHEK293T細胞におけるICの発現の評価。
図2C】一過性にトランスフェクトされた懸濁液中のHEK293T細胞におけるICの発現の評価。
図2D】一過性にトランスフェクトされた懸濁液中のHEK293T細胞におけるICの発現の評価。
図2E】形質導入されたCHO細胞の上清中のICの発現の評価。
図2F】形質導入されたCHO細胞の上清中のICの発現の評価。
図3A】非還元条件下での抗CD20-IgG1h-IL2非α(IC1)のドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)。
図3B】還元条件下での抗CD20-IgG1h-IL2非α(IC1)のドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)。
図4A】非還元条件下でのヒトIgGに対する特異的抗体を用いたウェスタンブロットによるIC1及び単純対照の免疫同定。
図4B】還元条件下でのヒトIgGに対する特異的抗体を用いたウェスタンブロットによるIC1及び単純対照の免疫同定。
図4C】非還元条件下でのIL-2に対する特異的抗体を用いたウェスタンブロットによるIC1及び単純対照の免疫同定。
図5A】TSKゲル3000カラムでのIC1のサイズ排除高速液体クロマトグラフィ(SEC-HPLC)分析。
図5B】TSKゲル3000カラムでのリツキシマブのサイズ排除高速液体クロマトグラフィ(SEC-HPLC)分析。
図6A】非還元条件下でのIC抗CD20-IgG2a-IL2非α(IC7)のSDS-PAGE。
図6B】還元条件下でのIC抗CD20-IgG2a-IL2非α(IC7)のSDS-PAGE。
図7】非還元条件下での、IL-2に対する特異的抗体を用いたウェスタンブロットによるIC7及び単純対照の免疫同定。
図8】TSKgel 3000カラムでのIC7のSEC-HPLC分析。
図9A】非還元条件下でのIC抗NGcGM3-IL2非α(IC8)のSDS-PAGE。
図9B】還元条件下でのIC抗NGcGM3-IL2非α(IC8)のSDS-PAGE。
図10】非還元条件下での、IL-2に対する特異的抗体を用いたウェスタンブロットによるIC8及び単純対照の免疫同定。
図11】TSKgel 3000カラムでのIC8(1)及び14F7m(2)のSEC-HPLC分析。
図12】非還元条件下での、ヒトIgGに対する特異的抗体を用いたウェスタンブロットによるIC4及び単純対照の免疫同定。
図13A】RTX抗体及びIC1によるEL4-huCD20+細胞株の認識。
図13B】マウスRTX-IgG2a抗体及びIC7によるEL4-huCD20+細胞株の認識。
図14A】IC1による腫瘍細胞上のCD20分子の認識。
図14B】コンジュゲートの平均蛍光強度(MFI)に対するRTX及びIC1のMFIの比。
図15】IC1によるCDCの誘導。
図16】IC1によるアポトーシスの誘導。
図16A】IC1で処理したRamos細胞における初期アポトーシス。
図16B】IC1で処理したRamos細胞におけるアポトーシス(すべてのアネキシンV+細胞の合計)。
図16C】IC1で処理したRamos細胞におけるカスパーゼ3の活性化。
図17A】IC1によるADCCの誘導。
図17B】IC1による健常ドナーからのB細胞(CD19+)のインビトロ枯渇。
図17C】IC1によるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を有する患者からのB細胞(CD19+)のインビトロ枯渇。
図18A】ELISAによって測定されたIC8によるNGcGM3ガングリオシドの認識。
図18B】フローサイトメトリによって測定されたIC8によるNGcGM3ガングリオシドの認識。
図19】IC8による補体非依存性細胞傷害の誘導。
図20A】CTLL-2細胞株の増殖アッセイによって測定された、IC1のIL2非α型活性。
図20B】CTLL-2細胞株の増殖アッセイによって測定された、IC7及びIC8のIL2非α型活性。濃度値は、各試料に含まれる非α IL-2部分を指す。
図21A】IC1によって誘導されるNK細胞活性化の表面マーカ、CD16の測定。
図21B】IC1によって誘導されるNK細胞活性化の表面マーカ、CD69の測定。
図21C】IC1によって誘導されるNK細胞活性化の表面マーカ、CD107aの測定。
図22】EL4-huCD20モデルにおけるIC7の抗腫瘍効果。
図22A】高用量での親抗体との比較。
図22B】親抗体とIL2非αムテインとの組合せ(等モル量)との比較。
図23】EL4-huCD20モデルにおけるIC1の抗腫瘍効果。
図23A】高用量リツキシマブとの比較。
図23B】等モル量のリツキシマブとの比較。
図23C】腫瘍細胞で再度チャレンジした生存動物におけるIC1の長期保護効果。
図23D】3LL-D122モデルにおける等モル量の抗体及びIL2非αムテインに関するIC8の抗腫瘍効果。
図24】EL4-hCD20腫瘍を担持するC57BL/6マウスにおけるIC1によるインビボ免疫調節。
図24A】CD8+T細胞の絶対数。
図24B】NK1.1+CD3-細胞の絶対数。
図24C】FOXP3+CD4+/CD8+細胞の割合。
図24D】FOXP3+CD4+/NK1.1+CD3+細胞の割合。
図24E】FOXP3+CD4+T細胞の絶対数。
【実施例
【0034】
本発明を以下の例及び図面によってさらに詳述する。しかしながら、これらの例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0035】
例1.ICの設計及び取得。
抗原結合部位に関して二価の分子からなり、変異IL-2部分に関して二機能性であり、完全長IgGフォーマットに基づくヒトICを設計した。具体的には、IC1、IC2、IC3、IC4、IC5及びIC6は、図1(A~B)に表されているようなフォーマットに対応する。
【0036】
IC1及びIC2はヒトCD20分子に特異的であり、それらの可変領域の配列は、B細胞リンパ増殖性障害に対する受動療法における主要なモノクローナル抗体であるリツキシマブの配列である(Pierpont,T.M.,et al.(2018)Front Oncol 8:163;Sehn,L.H.&G.Salles.(2021)N Engl J Med.384(9):842-858)。これらのICの各々の軽鎖は、VL可変領域(配列番号1)及びヒトCκ定常領域(配列番号9)によって形成される。重鎖は、配列番号2のVH可変領域と、それに続く、カルボキシ末端に融合したリンカーペプチド(GlySer)3ThrGly(配列番号44)を有するヒトIgG1定常領域(配列番号11)と、その後にIL2非α分子(IC1については配列番号21、IC2については配列番号37)とによって構成される。IL-2の突然変異体を含むこの特異性のICは、これまで記載されていない。
【0037】
IC3及びIC4は、正常組織には存在しないか又は少量しか検出されない、NGcGM3ガングリオシドに特異的である(Varki,A.(2009)Glycoconj J 26(3):231-245)。それらの可変領域の配列は、現在、進行期固形腫瘍の治療のための臨床試験中である(EC-IICRDEC168)、14F7hT抗体の配列である。両方のICの軽鎖は、VL可変領域(配列番号3)及びヒトCκ定常領域(配列番号9)によって形成される。重鎖は、配列番号4のVH可変領域と、それに続く、カルボキシル末端に融合したリンカーペプチド(Gly4Ser)3ThrGly(配列番号44)を有するヒトIgG1定常領域(配列番号11)と、その後に続くIL2非α分子(IC3については配列番号21、IC4については配列番号37)とからなる。これまで、この抗体に基づくICは得られておらず、NGcGM3ガングリオシドに特異的な他のICも得られていない。
【0038】
IC5及びIC6はEGFR受容体を認識し、それらの可変領域の配列は、上皮起源の腫瘍の治療に広く使用されている抗体ニモツズマブ(米国特許第5,891,996 B2号)の配列に対応する(Crombet T,et al.(2002)Int J Cancer 101(6):567-75 Ramos-Suzarte M et al(2012)Cancer Biol Ther 13(8):600-5 Suarez Martinez G and BencomoYanes A.(2014)Biotecnol APL[Internet]31(2):159-167,Crombet T.(2014)Handbook of therapeutic antibodies.1679-94)。軽鎖は、VL可変領域(配列番号5)及びヒトCκ定常領域(配列番号9)から構成される。重鎖は、配列番号6の配列のVH可変領域と、それに続く、カルボキシ末端に融合したリンカーペプチド(GlySer)ThrGly(配列番号44)を有するヒトIgG1定常領域(配列番号11)と、その後に続くIL2非α分子(IC5については配列番号21、IC6については配列番号37)とから構成される。
【0039】
完全マウスIgGフォーマットに基づいて、抗原結合部位に関して二価であり、変異IL-2部分に関して二機能性である他の2つのICを並行して設計した(図1A~B)。
【0040】
IC7はヒトCD20分子に特異的であり、その可変領域の配列はリツキシマブの配列である。軽鎖は、VL可変領域(配列番号1)及びCκマウス定常領域(配列番号13)から構成される。重鎖は、配列番号2のVH可変領域と、それに続く、カルボキシル末端に融合したリンカーペプチド(Gly4Ser)3ThrGly(配列番号44)を有するマウスIgG2aの定常領域(配列番号15)と、それに続くIL2非α分子(配列番号21)とから構成される。
【0041】
IC8は、NGcGM3ガングリオシドに特異的である。その可変領域の配列は、14F7hTのマウス祖先である14F7抗体(米国特許第6,429,295 B1号)の配列である。軽鎖は、VL可変領域(配列番号7)及びCκマウス定常領域(配列番号13)によって形成される。重鎖は、配列番号8のVH可変領域と、それに続く、カルボキシ末端に融合したリンカーペプチド(GlySer)ThrGly(配列番号44)を有するマウスIgG1の定常領域(配列番号14)と、その後にIL2非α分子(配列番号21)とから構成される。
【0042】
ヒトICを得るために、リツキシマブ、ニモツズマブ又は14F7hT抗体の軽鎖の可変領域をコードする遺伝子を、ヒトCκ定常領域遺伝子を含むベクターpFUSE(Ckh)にクローニングし、したがって、それぞれの軽鎖をコードする遺伝子を構築した。
【0043】
続いて、そのN末端を介してリンカーペプチド(GlySer)ThrGly(配列番号44)に融合したIL2非αムテイン(配列番号21又は配列番号37)をコードする遺伝子セグメントを、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用することによって増幅し、次に、EcoRV/XbaIを、EcoRV部位の挿入のために予め改変されたベクターpFUSE(IgG1h)にクローニングした。得られた遺伝子構築物において、PCRによって予め増幅された対応するVH遺伝子をEcoRI/NheIにクローニングした。
【0044】
IC1重鎖及び軽鎖遺伝子(抗CD20)をpLV-CMV-IRES-Neoベクターに独立してクローニングして、それぞれの移入ベクターを作製し、それを用いて本発明者らはレンチウイルス形質導入粒子の入手へと進んだ。組換え安定クローンの生成のために、先に得られたレンチウイルス粒子をCHO-K1細胞に形質導入した。ヒトFc領域に対する特異的ELISAを使用して、IC1融合タンパク質(抗CD20)を、形質導入CHOK1細胞の上清において検出した(図2A)。
【0045】
IC2(抗CD20)を、pFUSEベクターにおける軽鎖及び重鎖をコードする遺伝子構築物に対応するプラスミドDNAからの一過性発現によって得た(図2B)。
【0046】
IC3及びIC4(抗NGcGM3)を、pFUSEベクター中の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子構築物に対応するプラスミドDNAを用いた一過性発現によって得た。HEK293T細胞をこれらの遺伝子構築物で一過性にトランスフェクトし、IC発現を、ヒトFc領域に対する特異的ELISAを使用して7日後に検証した(図2C)。
【0047】
IC5及びIC6(抗EGFR)は、pFUSEベクター中の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子構築物に対応するプラスミドDNAを用いたHEK293T細胞の一過性発現によって得た。懸濁液中で増殖させ、PEIでトランスフェクトしたHEK293T細胞の上清を、ヒトFc領域に対する特異的ELISAによって評価し、融合タンパク質の存在を確認した(図2D)。
【0048】
マウスICを得るために、リツキシマブ抗体の軽鎖の可変領域をコードする遺伝子、又は14F7を、マウスCκ定常領域遺伝子を含むベクターpFUSE(Ckm)にクローニングし、それぞれの軽鎖をコードする遺伝子を構築した。
【0049】
IC7(抗CD20)の場合、重鎖遺伝子を、リツキシマブのVH領域(配列番号2)、マウスIgG2aのCH領域(配列番号15)、連結ペプチド(GlySer)ThrGly(配列番号44)をコードする遺伝子セグメント及びIL2非α分子(配列番号21)のPCRアセンブリによって得た。pFUSEベクターに含まれる得られた重鎖遺伝子及び軽鎖遺伝子をPCRによって増幅し、pLV-CMV-IRES-Neoベクターに独立してクローニングした。このようにして、得られた移入ベクターを使用して、CHO-K1細胞の形質導入にさらに使用されるレンチウイルス粒子を作製した。マウスFc領域に対する特異的ELISAを使用して、IC7(抗CD20)融合タンパク質を、形質導入CHOK1細胞の上清において検出した(図2E)。
【0050】
IC8(抗NGcGM3)については、そのN末端を介してリンカーペプチド(GlySer)ThrGlyに融合したIL2非αムテイン(配列番号21)をコードする遺伝子セグメントをPCRによって増幅し、EcoRV/XbaIを、EcoRV部位の挿入のために予め改変されたpFUSEベクター(マウスIgG1)にクローニングした。得られた遺伝子構築物において、予めPCRによって増幅された遺伝子VH14F7をEcoRI/NheIにクローニングした。pFUSEベクターに含まれる重鎖及び軽鎖遺伝子をPCRによって増幅し、pLV-CMV-IRES-Neoベクターに独立してクローニングした。このようにして、得られた移入ベクターを使用して、CHO-K1細胞の共形質導入にさらに使用されるレンチウイルス粒子を作製した。マウスFc領域に対する特異的ELISAを使用して、IC8融合タンパク質(抗NGcGM3)を、形質導入CHOK1細胞の上清において検出した(図2E)。
【0051】
例2.ICは、インタクトでかつ機能性のタンパク質として発現される。
組換えCHO-K1クローンの培養上清から、本発明者らは、IC抗CD20-IL2非α(IgG1h)(IC1)、抗CD20-IL2非α(マウスIgG2a)(IC7)及び抗NGcGM3-IL2非α(マウスIgG1)(IC8)の精製へと進んだ。ゲル濾過を使用して、プロテインA捕捉工程及びその後の分取規模での分子排除クロマトグラフィを行った。次いで、精製タンパク質のサイズ及び免疫化学的同一性を評価した。ICは、その電気泳動移動度が非還元条件については180kDaのおおよその理論的サイズに対応するタンパク質として発現され(図3A図6A及び図9A)、還元条件では、理論的サイズに対応する移動度を有する組換え分子の両方の鎖の存在が観察されることが確認された:IL2非αムテインの存在に起因して、重鎖については約65kDa(15kDa)、及び軽鎖については25kDa(図3B図6B及び図9B)。抗体部分の同一性を、ヒトIgGに特異的なウェスタンブロットアッセイを実施することによって検証し(図4A~B及び図12)、ICの構造におけるサイトカインの存在を、ヒトIL-2に対する特異的抗体を用いた同じ技術によって証明した(図4C図7及び図10)。融合タンパク質の純度を、TSK3000カラムを用いて、分析規模でSEC-HPLCによって分析した(図5A図8及び図11)。それらはIgG抗体(150kDa)と比較してより高い分子量を有するので、参照mAbよりも短い保持時間を示した(図5A~B及び図11)。高い割合のモノマー種(>95%)も観察され、それらの高い純度を示唆した(図5A図8及び図11)。
【0052】
例3:ICは、抗体部分に対応する生物学的活性をインビトロで保存及び増強する。
抗体部分が、得られた抗CD20 ICの構造において活性であるかどうかを決定するために、親分子又は参照分子に関して等モル量を用いてインビトロ実験を行った。IC抗CD20-IL2非α(IgG1h)(IC1)及び抗CD20-IL2非α(IgG2aマウス)(IC7)によるヒトCD20分子の認識を、その膜上に高レベルのヒトCD20を発現するマウス腫瘍細胞株EL4-huCD20を使用して、フローサイトメトリによって決定した(Di Gaetano,N.,et al.(2003)J Immunol.171(3):1581-1587)。IC1及びリツキシマブ(陽性対照)によるEL4-huCD20細胞の認識レベル、ならびにIC7及びその親抗体(Rtx-IgG2a)の認識レベルは類似していた(図13A~B)。上記の結果は、両方のICがヒトCD20分子に結合してこれを認識する能力を実証している。ICによるEL4親細胞株の認識は陰性であり、これは、EL4-huCD20マウスリンパ腫細胞株で観察された標識の特異性を裏付ける(図13A~B)。さらに、CD20を発現するバーキットリンパ腫の2つのヒト細胞株を評価した。図14A及びBが示すように、これらの株の各々について、リツキシマブと比較したIC1の認識パターンの違いは見られなかった。標識の特異性は、無関係なICを認識しないこと、及びIC1がCD20非発現Tリンパ腫であるJurkat細胞に結合できないことによって支持される(図14A~B)。
【0053】
補体カスケードの活性化は、リツキシマブのインビボ治療活性について提案された機構の1つである(Smith,M.R.(2003)Oncogene.22(47):7359-7368;Seyfizadeh,N.,et al.(2016)Crit Rev Oncol Hematol.97:275-290)。この理由から、IC1がRamos腫瘍細胞株に対してCDCを実行する能力を、ヨウ化プロピジウム(PI)の組み込みを介してフローサイトメトリによって評価した。1:5の最終希釈度のヒトAB血清を補体源として使用した。3つの独立した試料について得られた陽性PI細胞の割合(%)の平均値±標準偏差を表示した(図15)。6nMのIC1は、リツキシマブで観察された細胞傷害効果を保持した。
【0054】
無関係のICは、試験した濃度で細胞傷害性を誘導しなかった(図15)。この結果は、この活性が、同様のフォーマットの他のICについて生じているので(Gillies,S.D.,et al.(2005)Blood.105(10):3972-3978;Gillies,S.D.,et al.(1999)Cancer Res.59(9):2159-2166)、この分子については影響を受けないことを示している。
【0055】
腫瘍細胞でのアポトーシスは、臨床でのリツキシマブの治療作用を説明するために提案された機構の別の1つである(Smith,M.R.(2003)Oncogene.22(47):7359-7368;Seyfizadeh,N.,et al.(2016)Crit Rev OncolHematol.97:275-290)。ホスファチジルセリン曝露は、アポトーシスの初期段階を特徴付ける事象である(Koopman,G.,et al.(1994)Blood.84(5):1415-1420)。原形質膜の外側単層におけるこのリン脂質の曝露を、IC1で処理したRamos細胞において評価した。ホスファチジルセリンレベルを、アネキシンVで標識することによってフローサイトメトリによって測定した。3つの試料について得られた平均値±標準偏差を表示した。初期アポトーシスの細胞は、アネキシンV+/PI-標識を提示したものとして同定した(図16A);後期アポトーシスの細胞は、アネキシンV+/PI+標識細胞であり、アポトーシスはこれら2つの集団の和として定義した(図16B)。驚くべきことに、IC1はリツキシマブよりも優れた効果を有していた(図16A~B)。ホスファチジルセリン曝露が非アポトーシス事象で起こり得ることを考慮して、後期アポトーシスのマーカとしてのカスパーゼ3活性化をさらに評価した。カスパーゼ3の17/19kDa活性断片を、特定のウサギ血清及びAlexa Fluor-488結合ウサギ抗血清を用いたフローサイトメトリによって決定した。3つの独立した試料について得られた活性カスパーゼ3細胞の割合の平均値±標準偏差を表示した。Ramos細胞を6nMのIC1と共に48時間インキュベートすると、この酵素の活性化が誘導された(図16C)。
【0056】
ADCCは、リツキシマブの抗腫瘍作用を担う機構のもう1つである(Smith,M.R.(2003)Oncogene.22(47):7359-7368;Seyfizadeh,N.,et al.(2016)Crit Rev OncolHematol.97:275-290)。IC1がADCCを媒介する能力を、細胞損傷の尺度として、標的細胞(Ramos)によって放出されたLDH酵素の活性の評価によって決定した。この実験は、エフェクタ細胞:標的細胞の比(10:1)及び非活性化エフェクタ細胞の使用に関してリツキシマブの最適未満の設定で行った。末梢血単核細胞(PMBC)をエフェクタ細胞として使用し、Ramosを標的細胞として使用した。図17Aに示すように、IC1は、リツキシマブ及びリツキシマブとIL2非αとの組合せに関してより高い割合の特異的溶解を誘導した。誘導された細胞傷害性は濃度依存的であった。
【0057】
Ramos細胞に対するADCCの誘導におけるIC1の優位性を考慮して、PBMCを標的細胞及びエフェクタ細胞の供給源として、非ホジキンリンパ腫患者から悪性細胞(CD19+)をインビトロで排除するその能力を検討した。この実験では、PBMCをIC及びリツキシマブ(18nM)と共に24時間インキュベートし、PBMC内のB細胞の割合をフローサイトメトリによって測定した。図17Bに示すように、IC1及びリツキシマブは、健常ドナー由来の正常B細胞を死滅させることができた。特に、IC1のみが、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫患者のPBMC内のCD19+細胞の割合を有意に減少させた(図17B)。これは、リツキシマブに対する耐性が不全又は非最適なADCCに関連する患者においてこのIC1を使用する可能性を示している。
【0058】
マウス免疫サイトカイン抗NGcGM3-IL2非α(IC8)は、親抗体14F7と同様に、ELISAによってガングリオシドNGcGM3を認識した。結合の特異性は、アイソタイプ対照として使用した無関係のmAbの非反応性によって支持される(図18A)。固相免疫酵素アッセイの補完として、フローサイトメトリ実験を行った。高レベルのガングリオシドNGcGM3を発現するL1210マウス腫瘍細胞を使用した(Roque-Navarro,L.,et al.(2008)Mol Cancer Ther.7(7):2033-2041)。IC8は、14F7抗体と同様に、この腫瘍細胞株に結合することができた(図18B)。
【0059】
次に、本発明者らは、以前に14F7について記載された(Roque-Navarro,L.,et al.(2008)Mol Cancer Ther.7(7):2033-2041)、L1210細胞におけるエフェクタ機能とは無関係の細胞傷害活性を評価することに進んだ。このために、PIによる核DNA標識に対する膜透過性の増加を細胞死の指標として分析した。驚くべきことに、非生存細胞の割合は、IC抗NeuGcGM3-IL2非αについて、処理なしの細胞及び親抗体と比較してより高かった(図19)。
【0060】
例4.ICは非α IL-2部分の機能性を保持する。
ICのIL2非α部分に対応するインビトロ生物学的活性を、IL-2Rの高親和性変異体を発現するIL-2依存性マウス細胞株CTLL-2の増殖アッセイで評価した(図20A~B)。図20に示される濃度値は、各試料に含まれる非α IL-2部分を指す。
【0061】
ムテイン及びICとのCTLL-2細胞のインキュベーションは、それらの増殖の刺激をもたらした。すべての場合に、増殖の程度は濃度依存的挙動を示した。この結果は、IL2非α部分が融合タンパク質との関連においてその機能性を維持することを実証している(図20A~B)。
【0062】
例5.ICはNK細胞活性化を促進する
NK細胞の活性化はADCCにとって重要な工程であり、さらに、これらの細胞は、IL2非αムテインの抗腫瘍機能の重要なメディエータであることが示されている(Carmenate,T.,et al.(2013)J Immunol.190(12):6230-6238)。アッセイを設定した20時間後、IC1がNK細胞を活性化する能力を、1:10の比の標的(Ramos)細胞及びエフェクタ(PMBC)細胞の存在下で、6.6nMで決定した。IC1で処理した試料のNK細胞集団では、リツキシマブと比較して表面マーカCD16の発現のより大きな減少が観察され(図21A)、これは、この細胞型のより高い活性化を示す(Bowles,J.A.and G.J.Weiner.(2005)J Immunol Methods.304(1-2):88-99)。同様に、CD69発現の増加がNK細胞活性化の証拠として検証され、この効果はリツキシマブの存在下でも観察された(図21B)。リソソーム脱顆粒に関連する表面マーカであるCD107aの発現は、他の処理と比較して、IC1と共にインキュベートした細胞で3倍増加した(図21C)。まとめると、これらの結果は、リツキシマブ抗体と比較して、この融合タンパク質で処理した細胞におけるADCC活性に関連するNK細胞のより大きな活性化を実証しており、これはおそらくIL2非αによって提供される増強効果によるものであり得る。
【0063】
例6.ICは優れた抗腫瘍効果を有する。
抗体への非αムテインの融合が優れた抗腫瘍効果をもたらし得るという概念を実証するために、本発明者らは、マウスIgG2aバージョンのリツキシマブ及び対応するIL2非αベースのIC(IC7)の抗腫瘍活性を比較した。このために、C57BL/6マウスに2.5×10個のEL4-huCD20+細胞を静脈内接種し、続いて20μgのIC7の3回の注射(1、4及び7日目)又は以前の試験で治療効果が実証されている(Abes,R.,et al.(2010)Blood.116(6):926-934;Casadesus,A.V.,et al.(2020)Oncoimmunology.9(1):1770565)、200μgの親抗体抗CD20 IgG2aの5回の投与(1、4、7、10及び13日目)で腹腔内処置した。興味深いことに、低用量(20ug)のIC7による処置は、高用量のIgG2aバージョンのリツキシマブを投与されたマウスで得られたものと同様の生存率を可能にした(図22A)。しかしながら、20ugのIC7と等モル用量の抗体及び等モル量のL2非αムテインとのその組合せは、抗腫瘍効果を有しなかった(図22B)。
【0064】
ヒト抗体とマウスエフェクタ細胞、ならびにヒトIL-2とマウスIL-2受容体との間の交差反応性のために(Arenas-Ramirez,N.,et al.(2015)Trends Immunol.36(12):763-777)、本発明者らは免疫応答性マウスにおけるIC1の有効性を評価した。C57BL/6マウスに5×10個のEL4-huCD20細胞を静脈内接種し、その後、1、4及び7日目に20μgのIC1及び以前の試験で治療効果が証明されている(Di Gaetano,N.,et al(2003)J Immunol.171(3):1581-1587)、150μgのリツキシマブで腹腔内処置した(図23A)。リツキシマブと比較して7.5倍低い用量のIC1が抗体と同じ抗腫瘍効果を有することが観察された(図23A)。さらに、IC1と等モル量のリツキシマブ(20ug)は、ICとは異なり、抗腫瘍効果を有していなかった(図23B)。さらに、生存マウスを65日目にEL4-huCD20腫瘍細胞とIC1とによる先の処置にチャレンジさせた後、低用量でのICは、高用量のリツキシマブのマウスIgG2a変異体について記載された長期保護効果を維持することが確認された(Abes,R.,et al.(2010)Blood.116(6):926-934)(図23C)。
【0065】
対照に対する抗NGcGM3-IL2非α(IC8)の抗腫瘍効果を比較するために、C57BL/6マウスに、200μLの体積の3LL-D122の2×10個の細胞を0日目に皮下(sc)接種した。6日後、その付着を確認した後、等モル量の抗体、サイトカイン、及びIC(抗体については85μg、IL2非αについては16.6μg、IC8については100μg)を腹腔内投与した。処置を8及び10日目に繰り返した。IC8は、対照抗体14F7とは異なり、処置動物において腫瘍体積を減少させることができた(図23D)。
【0066】
例7.ICは、制御性T細胞よりもNK細胞及びCD8+細胞を選択的に拡大させる。
腫瘍状況における免疫細胞の特定の集団に対する非αムテインベースのICの効果を評価するために、例6に記載されているように、EL4hu-CD20腫瘍担持C57BL/6マウスを抗CD20-IL2非α(IC1)で処置した。腫瘍チャレンジの10日後、脾臓を取り出し、異なる細胞集団をフローサイトメトリによって分析した。IC1については、TCD8+(図24A)及びNK1.1+CD3-(図24B)細胞の有意な増加が観察されたが、リツキシマブ又はPBSによる処置については検証されなかった。IC1は、FOXP3+CD4+/TCD8+とFOXP3+CD4+/NK1.1+CD3-との比によって示されるように、制御性T細胞よりもエフェクタ細胞の拡大を促進したことは注目に値する(図24C~D)。エフェクタ細胞がより拡大しただけでなく、制御性T細胞の増加が観察されなかったことも注目に値する(図24E)。この結果は、IC1が、観察された優れた抗腫瘍効果に寄与し得る、制御性T細胞を損なう、エフェクタ細胞に有利な免疫調節を達成することを実証している。
【0067】
まとめると、以前の結果は、以前に記載されたフォーマットを有する非αムテインに基づくICの治療的優位性を指し示しており、証明された直接溶解効果、ADCC及び/又はCDCを有する抗CD20抗体と非α IL-2ムテインとの融合が、定性的又は定量的に異なる分子及び細胞機構の活性化をもたらし、抗体及び非αムテインの対照で得られる抗腫瘍応答よりも大きな抗腫瘍応答の増強を引き起こすことを示している。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15
図16
図17A
図17B
図17C
図18A
図18B
図19
図20A
図20B
図21A
図21B
図21C
図22A
図22B
図23A
図23B
図23C
図23D
図24A
図24B
図24C
図24D
図24E
【配列表】
2024547098000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-08-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IgG1又はIgG3アイソタイプの免疫グロブリンに連結されたインターロイキン2(IL-2)アゴニストムテインを含む融合タンパク質であって、該免疫グロブリンがFcγ受容体及び補体カスケード分子によって認識される、融合タンパク質。
【請求項2】
抗原結合部位及びサイトカインに関して二価の分子を特徴とする、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
ムテインのIL-2受容体のα鎖に結合する能力が少なくとも2桁違いで影響を受ける、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
ムテインがリンカーによって免疫グロブリンに結合されている、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
ムテインが免疫グロブリンの重鎖に結合する、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
ムテインが免疫グロブリンのカルボキシ末端に結合する、請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
ムテインが、配列番号16~43を含む群から選択される配列を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
リンカーが、(GlySer)ThrGly(配列番号44)及び(GlySer)n(配列番号45)を含む群から選択されるアミノ酸配列によって形成され、nが、1~5の値を有する断片GlySerの繰り返しの数である、請求項4に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
IgG1又はIgG3サブクラスが、それぞれ配列番号11もしくは12の配列を含むか、又は配列番号11もしくは12に対して97%を超える同一性を有する、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
免疫グロブリンの軽鎖が、配列番号9に対応する配列を有するヒトκアイソタイプである、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
免疫グロブリンの軽鎖が、配列番号10に対応する配列を有するヒトλアイソタイプである、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
標的腫瘍抗原が、CD20、CD19、NGcGM3、PDL1、Her1、Her2及びEpcamを含む群から選択される、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
0.5mg/ml~20mg/mlの濃度範囲の請求項1~のいずれか一項に記載の融合タンパク質と、許容される薬学的に許容されるビヒクルとを含む医薬組成物。
【請求項14】
がんの治療における請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
皮下、筋肉内又は腫瘍内注射のための医薬組成物の製造における、請求項1~のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする核酸分子の使用。
【請求項16】
治療を必要とする対象に0.01mg/Kg~0.6mg/Kg体重の用量範囲で皮下、静脈内、皮内、筋肉内又は腹腔内投与される請求項13に記載の医薬組成物
【請求項17】
医薬組成物の投与が、7日~8週間の間隔で、週に1~3回の投与で1~30サイクル行われる、請求項16に記載の医薬組成物
【国際調査報告】