(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】リチウム希土類ハロゲン化物を調製するプロセス
(51)【国際特許分類】
C01F 17/36 20200101AFI20241219BHJP
【FI】
C01F17/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537824
(86)(22)【出願日】2022-12-15
(85)【翻訳文提出日】2024-08-14
(86)【国際出願番号】 EP2022086174
(87)【国際公開番号】W WO2023117698
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523287012
【氏名又は名称】スペシャルティ オペレーションズ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ブライダ, マルク-ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】トス, レカ
【テーマコード(参考)】
4G076
【Fターム(参考)】
4G076AA06
4G076AB04
4G076BA23
4G076BA43
4G076BC01
4G076CA02
4G076DA30
(57)【要約】
本発明は、固体電解質として又は電気化学デバイスにおいて使用され得る新規なリチウム希土類ハロゲン化物に関する。本発明は、そのようなリチウム希土類ハロゲン化物を合成するための溶液ベースのプロセスに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式(I):
Li
6-3x-myRE
xT
yX
6 (I)
(式中、
- Xは、ハロゲンであり;
- mは、元素Tの原子価であり、
- 0<x+(m/3)y<2;好ましくは0.8≦x+(m/3)y≦1.5;より好ましくは0.95≦x+(m/3)y≦1.25であり;
- 0≦y≦0.8;好ましくは0.1≦y≦0.7;より好ましくは0.2≦y≦0.6であり;
- REは、1種以上の希土類金属を表し;希土類金属は、互いに異なり;及び
- Tは、Zr、Hf、Al、Zn、Mg、Ca、Sr、Bi、Nb、Fe及びTaからなる群から選択される)
に従う固体材料を調製するプロセスであって、
a)ハロゲン化リチウムと、少なくとも1種の水和された希土類金属ハロゲン化物と、任意選択的にTのハロゲン化物とを溶媒に溶解させて、溶液を得る工程
を含むプロセス。
【請求項2】
固体材料は、以下の式(II)~(V):
Li
6-3x-myRE1
aRE2
bT
yX
6 (II)
(式中、a+b=xであり、ここで、0.05≦a≦0.95且つ0.0<b≦0.95;好ましくは0.5≦a≦0.9且つ0.05<b≦0.5である);
Li
6-3x-myRE1
aRE2
bRE3
cT
yX
6 (III)
(式中、a+b+c=xであり、ここで、0.05≦a≦0.95、0.0<b≦0.95且つ0.0<c≦0.95であり、0.05≦b+cである);
Li
6-3x-myRE1
aRE2
bRE3
cRE4
dT
yX
6 (IV)
(式中、a+b+c+d=xであり、ここで、0.05≦a≦0.95、0.0<b≦0.95、0.0<c≦0.95且つ0.0<d≦0.95であり、0.05≦b+c+dである);
Li
6-3x-myRE1
aRE2
bRE3
cRE4
dRE5
eT
yX
6 (V)
(式中、a+b+c+d+e=xであり、ここで、0.05≦a≦0.95、0.0<b≦0.95、0.0<c≦0.95、0.0<d≦0.95且つ0.0<e≦0.95であり、0.05≦b+c+d+eである)
の化合物のいずれか1つであり、式中、
- Xは、ハロゲンであり、
- mは、元素Tの原子価であり;
- 0<x+(m/3)y<2;好ましくは0.8≦x+(m/3)y≦1.5;より好ましくは0.95≦x+(m/3)y≦1.25であり;
- 0≦y≦0.8;好ましくは0.1≦y≦0.7;より好ましくは0.2≦y≦0.6であり;
- RE1は、Y、Yb、Ho及びErからなる群から選択され;
- RE2は、Yb、Ho、Gd、Er、Sm、Dy、La、Nd、Ce及びTbからなる群から選択され;
- RE3は、Ho、Gd、Er、Sm、Dy、La、Nd、Ce及びTbからなる群から選択され;
- RE4は、Er、Gd、Sm、Dy、La、Nd、Ce及びTbからなる群から選択され;及び
- RE5は、Gd、Sm、Dy、La、Nd、Ce及びTbからなる群から選択され;RE1、RE2、RE3、RE4及びRE5は、異なり;並びに
- Tは、Zr、Hf、Al、Zn、Mg、Ca、Sr、Bi、Nb、Fe及びTaからなる群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
ハロゲン化リチウムは、LiCl、LiBr、LiF及びLiIからなる群から選択される、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
水和された希土類金属ハロゲン化物は、YCl
3・6H2O、ErCl
3・6H2O、YbCl
3・6H2O、GdCl
3・6H2O、LaCl
3・6H2O、YBr
3・6H2O、ErBr
3・6H2O、YbBr
3・6H2O、GdBr
3・6H2O、LaBr
3・6H2O、(Y、Yb、Er)Cl
3・6H2O及び(La、Y)Cl
3・6H2Oからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
Tのハロゲン化物は、ZrCl
4である、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
溶媒は、アルコール、ニトリル及びエーテルからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
アルコールは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール及びブタノールからなる群から選択され、好ましくはエタノールである、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
エーテルは、テトラヒドロフランである、請求項6に記載のプロセス。
【請求項9】
ニトリルは、アセトニトリルである、請求項6に記載のプロセス。
【請求項10】
溶媒は、乾燥溶媒である、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
工程a)は、化学量論量のハロゲン化リチウム及び少なくとも1種の水和された希土類金属ハロゲン化物を用いて行われる、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
b)固体材料を得るために、工程(a)で得られた溶液から溶媒の少なくとも一部を除去する工程
を更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
c)工程(b)で得られた固体材料を焼成する工程
を更に含む、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
焼成は、約100℃~約500℃で少なくとも1時間にわたって行われる、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
工程a)~c)の少なくとも1つは、不活性雰囲気下で行われる、請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年12月23日出願の欧州特許出願公開第21306918.0号に対する優先権を主張し、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、固体電解質として又は電気化学デバイスにおいて使用され得るリチウム希土類ハロゲン化物に関する。本発明は、そのようなリチウム希土類ハロゲン化物を合成するための溶液ベースのプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
先行技術文献:
特許文献:
- 特許文献1:米国特許出願公開第2020/0328453A1号明細書
- 特許文献2:中国特許出願公開第11178597A号明細書
非特許文献:
- 非特許文献1:Roman Schlemm,Seoseiha Muy,Nils Prinz,Ananya Banik,Yang Shao-Horn,Mirijam Zobel,Wolfgng G.Zeier,Adv.Energy Mater.,2020,10,1903719
【0004】
リチウム電池は、その高いエネルギー及び電力密度のため、携帯エレクトロニクス及び電気自動車に電力を供給するために使用されている。従来のリチウム電池は、有機溶媒中に溶解したリチウム塩から構成される液体電解質を利用する。前述のシステムは、有機溶媒が可燃性であるため、安全性の問題を提起する。リチウムデンドライトが生じ、液体電解質媒体を通過すると、短絡を引き起こし、熱を生成し、それは、重傷につながる事故をもたらす可能性がある。電解質溶液は、引火性液体であるため、電池に使用される場合に漏洩、発火等の発生の懸念がある。そのような懸念を考慮して、より高度な安全性を有する固体電解質の開発は、次世代リチウム電池のための電解質として期待される。
【0005】
不燃性の無機固体電解質は、安全性の問題に対する解決策を提供する。更に、その機械的安定性は、リチウムデンドライト形成を抑制し、自己放電及び加熱問題を予防し、且つ電池の寿命を延ばすのに役立つ。
【0006】
ガラス及びガラスセラミックの電解質は、その高いイオン伝導率及び機械的特性のため、リチウム電池用途にとって有利である。これらの電解質は、ペレット化し、コールドプレスによって電極材料に取り付けることができ、それは、高温組み立て工程の必要性を排除する。高温焼結工程をなくすことで、リチウム電池でリチウム金属アノードを使用することに対する問題の1つが取り除かれる。全固体リチウム電池の使用の普及のため、リチウムイオンに対して高い伝導率を有する固体状態電解質に対する需要が増大している。
【0007】
無水希土類金属ハロゲン化物とリチウムハロゲン化物との反応を含むリチウム希土類ハロゲン化物の調製のために、複数のプロセスが存在する。例えば、リチウム希土類ハロゲン化物は、メカノケミカルミリング又は固相合成によって合成された。特許文献1は、粉砕、混合及びその後のミリングにより、無水希土類金属をハロゲン化リチウムと反応させることを開示している。非特許文献1は、無水希土類金属ハロゲン化物及びハロゲン化リチウムから出発するリチウム希土類ハロゲン化物のメカノケミカルミリング、それに続く結晶化ルート及び古典的な固相合成の合成方法を開示している。特許文献2は、完全溶液ルートによるLi3YCl6の合成を開示している。これにより、乾燥した(すなわち無水の)YCl3が塩化リチウムと共にエタノールに溶解され、200℃~400℃の焼結工程後に活物質上にLi3YCl6コーティングが形成される。
【0008】
しかしながら、出発物質としての無水希土類金属ハロゲン化物は、製造コストが高い。
【0009】
したがって、上述した欠点を示さないリチウム希土類ハロゲン化物を調製するプロセスが求められている。特に、安価な前駆体を使用してリチウム希土類ハロゲン化物を調製することが求められている。
【発明の概要】
【0010】
本発明の課題は、無水希土類ハロゲン化物前駆体から出発して合成されたアルカリ希土類ハロゲン化物と同様の性能を示す、安価な水和された希土類ハロゲン化物前駆体を使用して、アルカリ希土類ハロゲン化物を合成するプロセスを提供することである。
【0011】
ここで、上述した課題が本発明によるプロセスによって解決され得ることが見出された。
【0012】
[項目1]本発明は、以下の一般式(I):
Li6-3x-myRExTyX6 (I)
(式中、
- Xは、ハロゲンであり;
- mは、元素Tの原子価であり;
- 0<x+(m/3)y<2;好ましくは0.8≦x+(m/3)y≦1.5;より好ましくは0.95≦x+(m/3)y≦1.25であり;
- 0≦y≦0.8;好ましくは0.1≦y≦0.7;より好ましくは0.2≦y≦0.6であり;
- REは、1種以上の希土類金属を表し;希土類金属は、互いに異なり;及び
- Tは、Zr、Hf、Al、Zn、Mg、Ca、Sr、Bi、Nb、Fe及びTaからなる群から選択される)
に従う固体材料を調製するプロセスであって、
a)ハロゲン化リチウムと、少なくとも1種の水和された希土類金属ハロゲン化物と、任意選択的にTのハロゲン化物とを溶媒に溶解させて、溶液を得る工程
を含むプロセスに関する。
【0013】
[項目2]固体材料は、以下の式(II)~(V):
Li6-3x-myRE1aRE2bTyX6 (II)
(式中、a+b=xであり、ここで、0.05≦a≦0.95且つ0.0<b≦0.95;好ましくは0.5≦a≦0.9且つ0.05<b≦0.5である);
Li6-3x-myRE1aRE2bRE3cTyX6 (III)
(式中、a+b+c=xであり、ここで、0.05≦a≦0.95、0.0<b≦0.95且つ0.0<c≦0.95であり、0.05≦b+cである);
Li6-3x-myRE1aRE2bRE3cRE4dTyX6 (IV)
(式中、a+b+c+d=xであり、ここで、0.05≦a≦0.95、0.0<b≦0.95、0.0<c≦0.95且つ0.0<d≦0.95であり、0.05≦b+c+dである);
Li6-3x-myRE1aRE2bRE3cRE4dRE5eTyX6 (V)
(式中、a+b+c+d+e=xであり、ここで、0.05≦a≦0.95、0.0<b≦0.95、0.0<c≦0.95、0.0<d≦0.95且つ0.0<e≦0.95であり、0.05≦b+c+d+eである)
の化合物のいずれか1つであり、式中、
- Xは、ハロゲンであり、
- 0<x+(m/3)y<2;好ましくは0.8≦x+(m/3)y≦1.5;より好ましくは0.95≦x+(m/3)y≦1.25であり;
- 0≦y≦0.8;好ましくは0.1≦y≦0.7;より好ましくは0.2≦y≦0.6であり;
- RE1は、Y、Yb、Ho及びErからなる群から選択され;
- RE2は、Yb、Ho、Gd、Er、Sm、Dy、La、Nd、Ce及びTbからなる群から選択され;
- RE3は、Ho、Gd、Er、Sm、Dy、La、Nd、Ce及びTbからなる群から選択され;
- RE4は、Er、Gd、Sm、Dy、La、Nd、Ce及びTbからなる群から選択され;及び
- RE5は、Gd、Sm、Dy、La、Nd、Ce及びTbからなる群から選択され;RE1、RE2、RE3、RE4及びRE5は、異なり;並びに
- Tは、Zr、Hf、Al、Zn、Mg、Ca、Sr、Bi、Nb、Fe及びTaからなる群から選択される、項目1に記載のプロセス。
【0014】
[項目3]ハロゲン化リチウムは、LiCl、LiBr、LiF及びLiIからなる群から選択される、項目1又は2に記載のプロセス。
【0015】
[項目4]水和された希土類金属ハロゲン化物は、YCl3・6H2O、ErCl3・6H2O、YbCl3・6H2O、GdCl3・6H2O、LaCl3・6H2O、YBr3・6H2O、ErBr3・6H2O、YbBr3・6H2O、GdBr3・6H2O、LaBr3・6H2O、(Y、Yb、Er)Cl3・6H2O及び(La、Y)Cl3・6H2Oからなる群から選択される、項目1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【0016】
[項目5].Tのハロゲン化物は、ZrCl4である、項目1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【0017】
[項目6].溶媒は、アルコール、ニトリル及びエーテルからなる群から選択される、項目1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【0018】
[項目7].アルコールは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール及びブタノールからなる群から選択され、好ましくはエタノールである、項目6に記載のプロセス。
【0019】
[項目8]エーテルは、テトラヒドロフランである、項目6に記載のプロセス。
【0020】
[項目9]ニトリルは、アセトニトリルである、項目6に記載のプロセス。
【0021】
[項目10]溶媒は、乾燥溶媒である、項目1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【0022】
[項目11]工程a)は、化学量論量のハロゲン化リチウム及び少なくとも1種の水和された希土類金属ハロゲン化物を用いて行われる、項目1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【0023】
[項目12]b)固体材料を得るために、工程a)で得られた溶液から溶媒の少なくとも一部を除去する工程
を更に含む、項目1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【0024】
[項目13]c)工程b)で得られた固体材料を焼成する工程
を更に含む、項目12に記載のプロセス。
【0025】
[項目14]焼成は、約100℃~約500℃で約30分~約4時間にわたって行われる、請求項13に記載のプロセス。
【0026】
[項目15]工程a)~c)の少なくとも1つは、不活性雰囲気下で行われる、項目1~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【0027】
定義
本明細書の全体にわたり、文脈上他の意味に解すべき場合を除いて、用語「含む(comprise)」若しくは「包含する(include)」又は「含む(comprises)」、「含んでいる」、「包含する(includes)」、「包含している」などの変形は、述べられた要素若しくは方法工程又は要素若しくは方法工程の群の包含を意味するが、任意の他の要素若しくは方法工程又は要素若しくは方法工程の群の排除を意味しないと理解されるであろう。好ましい実施形態によれば、用語「含む」及び「包含する」並びにそれらの変形は、「のみからなる」を意味する。
【0028】
本明細書で用いる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、文脈がそうでないと明確に示されない限り、複数の態様を包含する。用語「及び/又は」は、意味「及び」、「又は」及びまたこの用語と関係する要素の他の可能な組み合わせを全て包含する。
【0029】
用語「~」は、限界点を含むと理解されるべきである。比、濃度、量及び他の数値データは、本明細書では、範囲形式で示され得る。そのような範囲形式は、単に便宜上及び簡潔さのために用いられること並びに範囲の限界点として明示的に列挙された数値を包含するのみならず、各数値及び部分範囲が明示的に列挙されるかのように、その範囲内に包含される個々の数値又は部分範囲を全て包含すると柔軟に解釈されるべきであることが理解されるべきである。例えば、約120℃~約150℃の温度範囲は、約120℃~約150℃の明示的に列挙された限界点のみならず、125℃~145℃、130℃~150℃等などの部分範囲並びに例えば122.2℃、140.6℃及び141.3℃などの明記された範囲内の小数点数などの個々の量も包含すると解釈されるべきである。特に、「約」という用語は、指定された数値の±10%、好ましくは±5%、最も好ましくは±2%を意味する。
【0030】
本明細書で用いる場合、用語「結晶相」は、結晶特性、例えばX線回折(XRD)によって測定されるような明確に定められたx線回折ピークを示す材料又は材料の分画を指す。
【0031】
本明細書で用いる場合、用語「ピーク」は、バックグラウンドよりも実質的に大きいピーク強度を有する、強度v、度(2Θ)のXRD粉末パターンのx軸上の(2Θ)位置を指す。一連のXRD粉末パターンピークにおいて、主ピークは、分析中の化合物又は相に関係している最高強度のピークである。第2の主ピークは、第2の最高強度のピークである。第3の主ピークは、第3の最高強度のピークである。
【0032】
本明細書で用いる場合、用語「水和された希土類ハロゲン化物」は、REX・6H2Oを指し、REは、少なくとも希土類金属を指し、Xは、ハロゲンを指す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、式(I):
Li6-3x-myRExTyX6 (I)
(式中、
- Xは、ハロゲンであり;
- mは、元素Tの原子価であり;
- 0<x+(m/3)y<2;好ましくは0.8≦x+(m/3)y≦1.5;より好ましくは0.95≦x+(m/3)y≦1.25であり;
- 0≦y≦0.8;好ましくは0.1≦y≦0.7;より好ましくは0.2≦y≦0.6であり;
- REは、1種以上の希土類金属を表し;希土類金属は、互いに異なり;及び
- Tは、Zr、Hf、Al、Zn、Mg、Ca、Sr、Bi、Nb、Fe及びTaからなる群から選択されるが、
y=0であり、REが2種の希土類金属を表す場合、一方の希土類金属がYであるとき、他方は、Gd、Yb、Ho、Er、Dy、Ce、Tb及びNdからなる群から選択されることを条件とする)
の固体材料を調製するプロセスに関する。
【0034】
本発明の第1の実施形態では、y=0であり、固体材料は、式(Ia):
Li6-3xRExX6 (Ia)
(式中、
- Xは、ハロゲンであり;
- 0<x<2;好ましくは0.8≦x≦1.5;より好ましくは0.95≦x≦1.25であり;及び
- REは、1種以上の希土類金属を表し;希土類金属は、互いに異なるが、REが2種の希土類金属を表す場合、一方がYであるとき、他方は、Gd、Yb、Ho、Er、Dy、Ce、Tb及びNdからなる群から選択されることを条件とする)
のものである。
【0035】
本発明によって得られる固体材料は、中性の電荷である。式(I)/(Ia)は、元素分析によって決定される実験式(グロス式)であることが理解される。したがって、式(I)は、固体材料中に存在する全ての相にわたって平均化された組成を規定する。
【0036】
17種の希土類元素は、セリウム(Ce)、ジスプロシウム(Dy)、エルビウム(Er)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、ホルミウム(Ho)、ランタン(La)、ルテチウム(Lu)、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、スカンジウム(Sc)、テルビウム(Tb)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びイットリウム(Y)である。
【0037】
Xは、F、Cl、I及びBrからなる群から選択されるハロゲンであり、Xは、好ましくは、Cl又はBrである。
【0038】
式(Ia)において、0≦x≦2;好ましくは0.8≦x≦1.5;より好ましくは0.95≦x≦1.25である。特に、xは、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.1、1.3、1.4及び1.5又はこれらの値から作られる任意の範囲である。
【0039】
本発明によって得られる固体材料は、非晶質(ガラス)及び/又は結晶化(ガラスセラミック)であり得る。固体材料の一部のみが結晶化し得る。固体材料の結晶化部分は、1つのみの結晶構造を含み得るか又は複数の結晶構造を含み得る。固体材料中のアモルファス成分と結晶成分の含有量は、「RSC Adv.,2019,9,14465」に記載されているように、典型的な参照材料であるAl2O3結晶を用いた全粉末パターンフィッティング(WPPF)法を使用して評価することができる。本発明によって得られる固体材料は、好ましくは、ガラス相からなるフラクションを含む。
【0040】
式(I)/(Ia)の化合物の組成は、とりわけ、例えばX線回折(XRD)及び誘導結合プラズマ-質量分析法(IPC-MS)など、当業者に周知の技法を用いる化学分析によって決定され得る。
【0041】
好ましくは、REの平均イオン半径、すなわち希土類金属の平均イオン半径の値は、0.938Å未満のイオン半径値(Å)を示す。REを構成する希土類金属(例えば、RE1及びRE2)のそれぞれがこの条件を満たす必要はない。平均半径は、化合物中の希土類(6配位数のRE3++)の半径の算術平均として定義することができる。例えば、本発明によれば、平均半径は、
- 0.904Å(RE1がY(90モル%)であり、RE2がGd(10モル%)である);
- 0.895Å(RE1がY(50モル%)であり、RE2がEr(50モル%)である)
であり得る。
【0042】
本発明によって得られる固体材料は、以下の式(II):
Li6-3x-myRE1aRE2bTyX6 (II)
(式中、
- Xは、ハロゲンであり;
- mは、元素Tの原子価であり;
- 0<x+(m/3)y<2;好ましくは0.8≦x+(m/3)y≦1.5;より好ましくは0.95≦x+(m/3)y≦1.25であり;
- 0≦y≦0.8;好ましくは0.1≦y≦0.7;より好ましくは0.2≦y≦0.6であり;
- a+b=xであり、ここで、0.05≦a≦0.95且つ0.0<b≦0.95;好ましくは0.5≦a≦0.9且つ0.05<b≦0.5であり;
- RE1は、Y、Yb、Ho及びErからなる群から選択され;
- RE2は、Yb、Ho、Gd、Er、Sm、Dy、La、Nd、Ce及びTbからなる群から選択され、RE1及びRE2は、異なり;及び
- Tは、Zr、Hf、Al、Zn、Mg、Ca、Sr、Bi、Nb、Fe及びTaからなる群から選択されるが、
y=0であり、RE1がYである場合、RE2は、Gd、Yb、Ho、Er、Dy、Ce、Tb及びNdからなる群から選択されることを条件とする)
を有し得る。
【0043】
y=0である場合、固体材料は、以下の式(IIa):
Li6-3xRE1aRE2bX6 (IIa)
(式中、
- Xは、ハロゲンであり;
- 0<x<2;好ましくは0.8≦x≦1.5;より好ましくは0.95≦x≦1.25であり;
- a+b=xであり、ここで、0.05≦a≦0.95且つ0.0<b≦0.95;好ましくは0.5≦a≦0.9且つ0.05<b≦0.5であり;
- RE1は、Y、Yb、Ho及びErからなる群から選択され;及び
- RE2は、Gd、Y、Yb、Ho、Er、Sm、Dy、Ce、Tb、La及びNdからなる群から選択され、RE1及びRE2は、異なるが、
RE1がYである場合、RE2は、Gd、Yb、Ho、Er、Dy、Ce、Tb及びNdからなる群から選択されることを条件とする)
を有する。
【0044】
好ましくは、REの平均イオン半径、すなわち希土類金属RE1及びRE2の平均イオン半径値は、0.938Å未満のイオン半径値(Å)を示す。
【0045】
好ましくは、本発明によって得られる式(II)/(IIa)の固体材料は、以下の通りであり得る。
【0046】
【0047】
固体材料は、以下の式(III):
Li6-3x-myRE1aRE2bRE3cTyX6 (III)
(式中、
- Xは、ハロゲンであり;
- mは、元素Tの原子価であり;
- 0<x+(m/3)y<2;好ましくは0.8≦x+(m/3)y≦1.5;より好ましくは0.95≦x+(m/3)y≦1.25であり;
- 0≦y≦0.8;好ましくは0.1≦y≦0.7;より好ましくは0.2≦y≦0.6であり;
- a+b+c=xであり、ここで、0.05≦a≦0.95、0.0<b≦0.95且つ0.0<c≦0.95であり、0.05≦b+cであり;
- RE1は、Y、Yb、Ho及びErからなる群から選択され;
- RE2は、Yb、Ho、Gd、Er、Sm、Dy、La、Nd、Ce及びTbからなる群から選択され;
- RE3は、Ho、Gd、Er、Sm、Dy、La、Nd、Ce及びTbからなる群から選択され;RE1、RE2及びRE3は、異なり;及び
- Tは、Zr、Hf、Al、Zn、Mg、Ca、Sr、Bi、Nb、Fe及びTaからなる群から選択される)
の化合物であり得る。
【0048】
y=0の場合、固体材料は、以下の式(IIIa):
Li6-3xRE1aRE2bRE3cX6 (IIIa)
(式中、
- Xは、ハロゲンであり;
- 0<x<2;好ましくは0.8≦x≦1.5;より好ましくは0.95≦x≦1.25であり;
- a+b+c=xであり、ここで、0.05≦a≦0.95、0.0<b≦0.95且つ0.0<c≦0.95であり、0.05≦b+cであり;
- RE1は、Y、Yb、Ho及びErからなる群から選択され;
- RE2は、Yb、Ho、Gd、Er、Sm、Dy、La、Nd、Ce及びTbからなる群から選択され;及び
- RE3は、Ho、Gd、Er、Sm、Dy、La、Nd、Ce及びTbからなる群から選択され;RE1、RE2及びRE3は、異なる)
の化合物である。
【0049】
好ましくは、REの平均イオン半径、すなわち希土類金属RE1、RE2及びRE3の平均イオン半径の値は、0.938Åより小さいイオン半径値(Å)を示す。
【0050】
好ましくは、本発明によって得られる式(III)/(IIIa)の固体材料は、以下の通りであり得る。
【0051】
【0052】
本発明によって得られる固体材料は、以下の式(IV):
Li6-3x-myRE1aRE2bRE3cRE4dTyX6 (IV)
(式中、
- Xは、ハロゲンであり;
- mは、元素Tの原子価であり;
- 0<x+(m/3)y<2;好ましくは0.8≦x+(m/3)y≦1.5;より好ましくは0.95≦x+(m/3)y≦1.25であり;
- 0≦y≦0.8;好ましくは0.1≦y≦0.7;より好ましくは0.2≦y≦0.6であり;
- a+b+c+d=xであり、ここで、0.05≦a≦0.95、0.0<b≦0.95、0.0<c≦0.95且つ0.0<d≦0.95であり、0.05≦b+c+dであり;
- RE1は、Y、Yb、Ho及びErからなる群から選択され;
- RE2は、Yb、Ho、Gd、Er、Sm、Dy、La、Nd、Ce及びTbからなる群から選択され;
- RE3は、Ho、Gd、Er、Sm、Dy、La、Nd、Ce及びTbからなる群から選択され;
- RE4は、Er、Gd、Sm、Dy、La、Nd、Ce及びTbからなる群から選択され;RE1、RE2、RE3及びRE4は、異なり;及び
- Tは、Zr、Hf、Al、Zn、Mg、Ca、Sr、Bi、Nb、Fe又はTaからなる群から選択される)
の化合物であり得る。
【0053】
y=0である場合、固体材料は、以下の式(IVa):
Li6-3xRE1aRE2bRE3cRE4dX6 (IVa)
(式中、
- Xは、ハロゲンであり;
- 0<x<2;好ましくは0.8≦x≦1.5;より好ましくは0.95≦x≦1.25であり;
- a+b+c+d=xであり、ここで、0.05≦a≦0.95、0.0<b≦0.95、0.0<c≦0.95且つ0.0<d≦0.95であり、0.05≦b+c+dであり;
- RE1は、Y、Yb、Ho及びErからなる群から選択され;
- RE2は、Yb、Ho、Gd、Er、Sm、Dy、La、Nd、Ce及びTbからなる群から選択され;
- RE3は、Ho、Gd、Er、Sm、Dy、La、Nd、Ce及びTbからなる群から選択され;及び
- RE4は、Gd、Er、Sm、Dy、La、Nd、Ce及びTbからなる群から選択され;RE1、RE2、RE3及びRE4は、異なる)
の化合物である。
【0054】
好ましくは、REの平均イオン半径、すなわち希土類金属RE1、RE2、RE3及びRE4の平均イオン半径の値は、0.938Åより小さいイオン半径値(Å)を示す。
【0055】
好ましくは、本発明によって得られる式(IV)/(IVa)の固体材料は、以下の通りであり得る。
【0056】
【0057】
本発明によって得られる固体材料は、以下の式(V):
Li6-3x-myRE1aRE2bRE3cRE4dRE5eTyX6 (V)
(式中、
- Xは、ハロゲンであり、
- mは、元素Tの原子価であり、
- 0<x+(m/3)y<2;好ましくは0.8≦x+(m/3)y≦1.5;より好ましくは0.95≦x+(m/3)y≦1.25であり;
- 0≦y≦0.8;好ましくは0.1≦y≦0.7;より好ましくは0.2≦y≦0.6であり;
- a+b+c+d+e=xであり、ここで、0.05≦a≦0.95、0.0<b≦0.95、0.0<c≦0.95、0.0<d≦0.95且つ0.0<e≦0.95であり、0.05≦b+c+d+eであり;
- RE1は、Y、Yb、Ho及びErからなる群から選択され;
- RE2は、Yb、Ho、Gd、Er、Sm、Dy、La、Nd、Ce及びTbからなる群から選択され;
- RE3は、Ho、Gd、Er、Sm、Dy、La、Nd、Ce及びTbからなる群から選択され;
- RE4は、Er、Gd、Sm、Dy、La、Nd、Ce及びTbからなる群から選択され;及び
- RE5は、Gd、Sm、Dy、La、Nd、Ce及びTbからなる群から選択され;RE1、RE2、RE3、RE4及びRE5は、異なり;並びに
- Tは、Zr、Hf、Al、Zn、Mg、Ca、Sr、Bi、Nb、Fe及びTaからなる群から選択される)
の化合物であり得る。
【0058】
y=0である場合、固体材料は、以下の式(Va):
Li6-3xRE1aRE2bRE3cRE4dRE5eX6 (Va)
(式中、
- Xは、ハロゲンであり;
- 0<x<2;好ましくは0.8≦x≦1.5;より好ましくは0.95≦x≦1.25であり;
- a+b+c+d+e=xであり、ここで、0.05≦a≦0.95、0.0<b≦0.95、0.0<c≦0.95、0.0<d≦0.95且つ0.0<e≦0.95であり、0.05≦b+c+d+eであり;
- RE1は、Y、Yb、Ho及びErからなる群から選択され;
- RE2は、Yb、Ho、Gd、Er、Sm、Dy、La、Nd、Ce及びTbからなる群から選択され;
- RE3は、Ho、Gd、Er、Sm、Dy、La、Nd、Ce及びTbからなる群から選択され;
- RE4は、Er、Gd、Sm、Dy、La、Nd、Ce及びTbからなる群から選択され;及び
- RE5は、Gd、Sm、Dy、La、Nd、Ce及びTbからなる群から選択され;RE1、RE2、RE3、RE4及びRE5は、異なる)
の化合物である。
【0059】
好ましくは、REの平均イオン半径、すなわち希土類金属RE1、RE2、RE3、RE4及びRE5の平均イオン半径の値は、0.938Åより小さいイオン半径値(Å)を示す。
【0060】
好ましくは、本発明によって得られる式(V)/(Va)の固体材料は、以下の通りであり得る。
【0061】
【0062】
好ましくは、本発明によって得られる固体材料は、Li3YCl6、Li3Y0.9Gd0.1Cl6;Li3Y0.3Er0.3Yb0.3Gd0.1Cl6、Li2.7Y1Gd0.1Cl6;Li3Y0.5Er0.5Cl6;Li3Y0.45Er0.45Gd0.1Cl6;及びLi3Y0.45Er0.45La0.1Cl6からなる群から選択される。
【0063】
本発明によって得られる固体材料は、好ましくは、0.05μm~10μmに含まれるD50を有する粒径の分布を有する粉末形態であり得る。粒径は、SEM画像解析又はレーザー回折解析で評価することができる。
【0064】
D50は、粒度分布の分野で用いられる通常の意味を有する。Dnは、粒子のn%がDn未満である直径を有する粒子の直径に対応する。D50(メジアン)は、50%での累積分布に対応するサイズ値と定義される。これらのパラメータは、通常、機器ソフトウェアによって予め定められた標準的な手順を用いて、レーザー回折計で得られる、液体中の固体材料の粒子の分散系の直径の容積での分布から決定される。レーザー回折計は、レーザー回折の技法を用いて、レーザー光線が分散した微粒子サンプルを通過するときに散乱される光の強度を測定することにより、粒子のサイズを測定する。レーザー回折計は、例えば、Malvernによって製造されるMastersizer 3000であり得る。
【0065】
D50は、とりわけ、超音波下での処理後に測定され得る。超音波下での処理は、液体中の固体材料の分散系中に超音波プローブを挿入することと、分散系を超音波処理にかけることとを含み得る。
【0066】
本発明は、少なくともハロゲン化リチウムと、少なくとも水和された希土類金属ハロゲン化物とを溶媒に溶解させて、溶液を得ることを含む、固体材料、特に先に表した式(I)、(Ia)、(II)、(IIa)、(III)、(IIIa)、(IV)、(IVa)、(V)及び(Va)の固体材料を製造する方法であって、このようなハロゲン化物において希土類金属が互いに異なり、任意選択的にジルコニウム、ハフニウム、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ビスマス、ニオブ、鉄又はタンタルのハロゲン化物である、方法にも関する。
【0067】
1種以上のハロゲン化リチウムを特に使用することができる。
【0068】
固体材料、特に先に表した式(I)、(Ia)、(II)、(IIa)、(III)、(IIIa)、(IV)、(IVa)、(V)及び(Va)に従う固体材料は、溶液ベースのプロセスによって製造される。
【0069】
本発明は、先に表した固体材料、特に一般式(I)、(Ia)、(II)、(IIa)、(III)、(IIIa)、(IV)、(IVa)、(V)及び(Va)に従う固体材料を調製するプロセスであって、
a)ハロゲン化リチウムと、少なくとも水和された希土類金属ハロゲン化物と、任意選択的にジルコニウム、ハフニウム、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ビスマス、ニオブ、鉄又はタンタルのハロゲン化物とを溶媒に溶解させて、溶液を得る工程
を含むプロセスに関する。
【0070】
工程a)における各元素の組成比は、固体材料が製造されるときに原料化合物の量を調整することによって制御することができる。前駆体及びそれらのモル比は、好ましくは、目標化学量論に従って選択される。目標化学量論は、副反応及び他の損失なしの完全転化の条件下で前駆体の適用量から得られる、元素Li、RE、T及びX間の比を定める。
【0071】
ハロゲン化リチウムは、1つ以上の硫黄原子及び1つ以上のリチウム原子又は代わりに1つ以上のハロゲン含有イオン基及び1つ以上のリチウム含有イオン基を含む化合物を指す。特定の好ましい態様では、ハロゲン化リチウムは、ハロゲン原子及びリチウム原子から構成され得る。好ましくは、ハロゲン化リチウムは、LiCl、LiBr、LiF及びLiIである。
【0072】
水和された希土類金属ハロゲン化物とは、化合物を構成する他の原子への化学結合(例えば、イオン結合又は共有結合)を介してF、Cl、Br又はIなどの1つ以上のハロゲン原子を含む化合物を指す。特定の好ましい態様では、ハロゲン化合物は、F、Cl、Br、Iの1つ以上又はそれらの組み合わせと、1つ以上の希土類金属原子とを含み得る。非限定的な例としては、YCl3・6H2O、ErCl3・6H2O、YbCl3・6H2O、GdCl3・6H2O、LaCl3・6H2O、YBr3・6H2O、ErBr3・6H2O、YbBr3・6H2O、GdBr3・6H2O及びLaBr3・6H2Oを適切に挙げることができる。水和された混合希土類ハロゲン化物REX3も前駆体として使用することができ、非限定的な例は、(Y、Yb、Er)Cl3・6H2O及び(La、Y)Cl3・6H2Oである。水和された希土類金属ハロゲン化物化合物は、好ましくは、YCl3・6H2O、ErCl3・6H2O、YbCl3・6H2O、GdCl3・6H2O、LaCl3・6H2O、YBr3・6H2O、ErBr3・6H2O、YbBr3・6H2O、GdBr3・6H2O、LaBr3・6H2O、(Y、Yb、Er)Cl3・6H2O及び(La、Y)Cl3・6H2Oからなる群から選択される。
【0073】
特に希土類金属が互いに異なる、1種以上の水和された希土類金属ハロゲン化物を使用することが完全に可能である。
【0074】
好ましくは、ハロゲン化リチウム及び水和された希土類ハロゲン化物は、0.5μm~400μmに含まれる平均粒径を有する。粒径は、SEM画像解析又はレーザー回折解析で評価することができる。
【0075】
工程a)の溶液に、例えばジルコニウム、ハフニウム、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ビスマス、ニオブ、鉄又はタンタルなど、リチウム空孔を形成するためのドーパント、好ましくは電荷が異なるドーパントを添加することも可能である。工程a)の溶液に添加される、F、Cl、Br又はIなどの1つ以上のハロゲン原子を含む任意のジルコニウム、ハフニウム、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ビスマス、ニオブ、鉄又はタンタルのハロゲン化物がこの目的に適している。好ましくは、ZrCl4が工程a)の溶液に添加される。
【0076】
工程a)の溶液は、1種以上の溶媒を含む。溶媒は、ハロゲン化リチウム及び水和された希土類金属ハロゲン化物を溶解するプロトン性溶媒又は非プロトン性溶媒から適切に選択することができる。
【0077】
好ましくは、溶媒は、アルコール、エーテル又はニトリルから選択される。
【0078】
好ましいアルコールは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール及びブタノールである。より好ましくは、溶媒は、エタノールである。
【0079】
好ましいエーテルは、テトラヒドロフラン、ジオキサン及びメチルtert-ブチルエーテルであり、より好ましくは、エーテルは、テトラヒドロフランである。
【0080】
好ましいニトリルは、アセトニトリル及びベンゾニトリルであり、より好ましくは、ニトリルは、アセトニトリルである。
【0081】
好ましくは、溶媒は、乾燥溶媒である。溶媒は、乾燥剤又は蒸留法などの当技術分野で公知の任意の方法によって乾燥させることができる。好ましくは、溶媒は、分子ビーズによって乾燥される。溶媒は、予め乾燥され得るか、又は溶媒は、前駆体を溶解した後に乾燥され得る。好ましくは、前駆体を溶解させた後に溶媒が乾燥される。
【0082】
工程a)では、少なくとも1種の水和された希土類金属ハロゲン化物を溶媒に溶解させることに特に制限はない。好ましくは、溶解は、混合物を数分間振とうすることによって行われる。
【0083】
工程a)では、温度に特に制限はないが、好ましくは、工程a)では、温度は、約0℃~約60℃、より好ましくは約5℃~約50℃、更に好ましくは約15℃~約30℃、最も好ましくは室温程度である。
【0084】
工程(a)は、不活性雰囲気下で行われることが好ましい。不活性雰囲気とは、不活性ガス、すなわち反応条件で有害な化学反応を起こさないガスの使用を指す。不活性ガスは、一般に、空気中の酸素及び水分での酸化及び加水分解反応など、望ましくない化学反応が起こることを回避するために使用される。そのため、不活性ガスは、特定の化学反応において、存在する他の試薬と化学反応しないガスを意味する。本開示に関連して、用語「不活性ガス」は、固体材料前駆体と反応しないガスを意味する。「不活性ガス」の例としては、凝縮を含めて1000ppm未満の液体及び浮遊形態の水を含む窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素、ネオン、キセノン、O2が挙げられるが、それらに限定されない。ガスは、加圧することもできる。不活性雰囲気は、乾燥N2、乾燥アルゴン又は乾燥空気などの不活性ガスを含む(乾燥は、凝縮を含めて、800ppm未満の液体及び浮遊形態の水を有するガスを指す場合がある)。
【0085】
そのような条件において、ハロゲン化リチウム及び水和された希土類ハロゲン化物は、所定の時間にわたって反応する。
【0086】
好ましくは、一般式(I)、(Ia)、(II)、(IIa)、(III)、(IIIa)、(IV)、(IVa)、(V)及び(Va)に従う固体材料を製造するプロセスは、固体材料を得るために、工程(a)で得られた溶液から溶媒の少なくとも一部を除去する工程(b)を更に含む。
【0087】
例えば、使用される溶媒の総重量の少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%又は90%~95%又は96%~99%などのこれらの値の間に含まれる任意の範囲を除去するために、溶媒の少なくとも一部を除去することが完全に可能である。溶媒除去は、デカンテーション、濾過、遠心分離、乾燥又はそれらの組み合わせなど、当技術分野で用いられる公知の方法によって実施され得る。
【0088】
好ましくは、乾燥が溶媒除去の方法として選択される場合、温度は、選択された溶媒の沸騰温度未満で且つ選択された溶媒の蒸気分圧の関数として選択される。
【0089】
継続時間は、1秒~100時間、好ましくは1時間~20時間である。そのような低継続時間は、例えば、噴霧乾燥によるなど、フラッシュ蒸発を用いることによって得られ得る。
【0090】
溶媒の除去は、窒素又はアルゴンなどの不活性ガスの雰囲気下で行うことができる。不活性ガスの露点は、好ましくは、-20℃以下、特に好ましくは-40℃以下である。圧力は、0.0001Pa~100MPa、好ましくは0.001Pa~20MPa、好ましくは0.01Pa~20MPaであり得る。とりわけ、圧力は、とりわけ超真空技術を用いることによって0.0001Pa~0.001Paの範囲であり得る。とりわけ、圧力は、プライマリー真空技術を用いることによって0.01Pa~0.1MPaの範囲であり得る。
【0091】
工程a)又は工程b)後に固体材料を加熱することも完全に可能である。加熱又は熱処理は、とりわけ、上で得られた非晶化粉末混合物(ガラス)を結晶質の固体材料又はガラスと結晶質との混合物(ガラスセラミック)に変換することが可能である。
【0092】
熱処理は、50℃~700℃の範囲の温度で特に1分~100時間、好ましくは30分~20時間、より好ましくは1.5~2.5時間の範囲、最も好ましくは2時間にわたって行われる。好ましくは、熱処理は、100℃~400℃の範囲、好ましくは150℃~350℃の範囲、最も好ましくは300℃の温度で行われる。熱処理は、高温で直接開始され得るか、又は1℃/分~20℃/分に含まれる速度で昇温して開始され得る。熱処理は、空気急冷、又は加熱温度からの自然冷却、又は1℃/分~20℃/分に含まれる速度での温度の制御された昇温によって終了することができる。
【0093】
そのような処理は、乾燥N2又は乾燥アルゴンなどの不活性ガスを含む(乾燥は、凝縮を含めて、800ppm未満の液体及び浮遊形態の水を含むガスを指す場合がある)不活性雰囲気下で行うことができる。好ましくは、不活性雰囲気は、酸素及び水分の接近を最小限にするために、好ましくは排除するために使用される保護ガス雰囲気である。
【0094】
加熱時の圧力は、標準圧又は減圧下であり得る。雰囲気は、窒素及びアルゴンなどの不活性ガスであり得る。不活性ガスの露点は、好ましくは、-20℃以下であり、-40℃以下が特に好ましい。圧力は、0.0001Pa~100MPa、好ましくは0.001Pa~20MPa、好ましくは0.01Pa~20MPaであり得る。とりわけ、圧力は、とりわけ超真空技術を用いることによって0.0001Pa~0.001Paの範囲であり得る。とりわけ、圧力は、プライマリー真空技術を用いることによって0.01Pa~0.1MPaの範囲であり得る。
【0095】
好ましくは、一般式(I)、(Ia)、(II)、(IIa)、(III)、(IIIa)、(IV)、(IVa)、(V)及び(Va)に従う固体材料を製造するプロセスは、工程(b)で得られた固体材料を焼成する工程(c)を更に含む。
【0096】
焼成は、約100℃~約500℃、好ましくは約200℃~約400℃、より好ましくは約250℃~約350℃、最も好ましくは約300℃の温度において、約30分~約4時間、好ましくは約1時間~約3時間、より好ましくは約2時間、好ましくは5℃/分の昇温で行われる。好ましくは、焼成は、真空下で行われる。
【0097】
特に工程b)、工程c)後又は熱処理後、固体材料を所望の粒子サイズ分布に処理することも可能である。必要に応じて、本発明によるプロセスによって得られた固体材料は、粉末に粉砕(例えば、ミリング)される。
【0098】
ミリングは、約100rpm~1000rpmで特に10分~80時間、より好ましくは約4時間~40時間にわたって機械ミリングによって行うことができる。機械ミリング法では、回転ボールミル、タンブリングボールミル、振動ボールミル及び遊星ボールミル等などの様々な方法を用いることができる。機械ミリングは、ZrO2などのボールを用いて又は用いずに行われ得る。
【0099】
好ましくは、前記粉末は、動的光散乱又は画像解析によって測定されるように、100μm未満、より好ましくは10μm未満、最も好ましくは5μm未満の粒度分布のD50値を有する。
【0100】
好ましくは、前記粉末は、動的光散乱又は画像解析によって測定されるように、100μm未満、より好ましくは10μm未満、最も好ましくは5μm未満の粒度分布のD90値を有する。とりわけ、前記粉末は、1μm~100に含まれる粒度分布のD90値を有する。
【0101】
参照により本明細書に組み込まれる任意の特許、特許出願及び刊行物の開示が、ある用語を不明確にし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【実施例】
【0102】
以下の実施例は、本発明を説明するのに役立つが、限定する性質を有しない。
【0103】
X線回折
粉末のXRDディフラクトグラムは、CuX線管(1.5406ÅのCu Kalpha波長)を用いたBragg BrentanoジオメトリでのXRDゴニオメーターで取得した。セットアップは、異なる光学的配置において、すなわち可変又は固定の発散スリット又はSollerスリットで使用され得る。Panalytical製のモノクロメータ又はBragg Brentano HD光学系のような一次側のフィルタリングデバイスも使用し得る。可変発散スリットが使用される場合、典型的な照射面積は、10mm×10mmである。試料ホルダーをスピナーにロードし;回転速度は、典型的には、取得中、60rpmである。管設定は、可変スリット取得について40kV/30mAで、入射Bragg Brentano HD光学系を用いた固定スリット取得について45kV/40mAで動作していた。取得工程は、1工程当たり0.017°であった。角度範囲は、典型的には、2シータ以上で5°~90°である。総取得時間は、典型的には、30分以上であった。粉末は、空気中水分との反応を防ぐためにカプトンフィルムで覆われている。
【0104】
導電率測定
導電率は、500MPaで動作する一軸プレスを使用して行われるペレットに関して取得した。ペレット化は、湿気のないアルゴン雰囲気で満たされたグローブボックス内で実験室スケールの一軸プレスを使用して行った。集電体として2枚のカーボン紙箔(MersenのPapyex軟質黒鉛N998 Ref:496300120050000、厚さ0.2mm)を使用する。測定は、手動スプリングを使用して閉じたスウェージロックセルで行う。インピーダンススペクトルは、Biologic VMP3デバイスで取得し、温度の制御は、Binder気候チャンバによって確保する。2つの測定間で温度が平衡化できるように、2時間の持続時間を設定する。インピーダンス分光法は、10mVの振幅、1MHz~1kHzの周波数の範囲でPEISモードにおいて取得する(10回ごとに25ポイント、周波数ポイントごとに平均50回の測定)。電子伝導率は、1Vの電位差を2分間印加し、得られた電流を測定してペレットの電子抵抗を抽出することによって得られる。
【0105】
実施例1:YCl3・6H2Oを使用する乾式メカノケミストリーによる比較のLi3YCl6
前駆体の秤量及びサンプルの調製は、酸素及び水分のレベルが共に1ppm未満であるAr充満グローブボックス中で行った。典型的な実験では、30mLのガラス製バイアルを使用して、LiCl(≧99.9%、Sigma Aldrich、0.74g)及びYCl3・6H2O(≧99%、Sigma Aldrich、1.76g)を目標化学量論のLi3YCl6に従って秤量した。サンプルは、直径5mmのZrO2ボール66gが入っている45mLのZrO2ミリングジャーに注ぎ入れた。ジャーにVitonシールを装着し、ジャー内を密封した(ジャー内はAr雰囲気)。ジャーをグローブボックスから取り出し、遊星ボールミリング(Pluverisette 7プレミアムライン、Fritsch)内にセットした。メカノ合成は、各サイクルの合間に30分間の休止時間を入れて800rpmで10分間、165サイクル行った。メカノ合成が終わった後、ジャーをグローブボックス内に入れた。得られた灰色の粉末を回収した。XRDは、LiClとYCl3・6H2Oとの混合物と一致した。これは、反応が起こらなかったことを示唆している。
【0106】
灰色の粉末の輸送特性をペレット化後に測定した。
- 30℃で測定されたイオン伝導率:10-8S/cm未満
【0107】
実施例2:YCl3・6H2Oを使用する、不活性溶媒を用いた乾式メカノケミストリーによる比較のLi3YCl6
前駆体の秤量及びサンプルの調製は、酸素及び水分のレベルが共に1ppm未満であるAr充満グローブボックス中で行った。典型的な実験では、30mLのガラス製バイアルを使用して、LiCl(≧99.9%、Sigma Aldrich、0.74g)及びYC3・6H2O(≧99%、Sigma Aldrich、1.76g)を目標化学量論のLiLi3YCl6に従って秤量した。サンプルは、Φ5mmのZrO2ボール66gが入っている45mLのZrO2ミリングジャーに注ぎ入れた。次いで、2.5gの無水パラキシレンをボールと粉末の上から注ぎ入れた。ジャーにVitonシールを装着し、ジャー内を密封した(ジャー内はAr雰囲気)。ジャーをグローブボックスから取り出し、遊星ボールミリング(Pluverisette 7プレミアムライン、Fritsch)内にセットした。メカノ合成は、各サイクルの合間に30分間の休止時間を入れて800rpmで10分間、165サイクル行った。メカノ合成が終わった後、ジャーをグローブボックス内に入れた。生成物及びボールを、ガラス管中にそれら自体入れられた2つの30mLのガラスバイアル(キャップなし)内にセットした。管を閉じ、グローブボックスから取り出し、Buechi製のGlass Oven B-585中にセットした。p-キシレンを蒸発させるために、試料を5℃/分で昇温させた後に110℃で5時間真空乾燥した。得られた灰色の粉末を回収する。XRDは、LiClとYCl3・6H2Oとの混合物及び微量のLi3YCl6と一致する。これは、反応が起こらなかったことを示唆している。
【0108】
灰色の粉末の輸送特性をペレット化後に測定する。
- 30℃で測定されたイオン伝導率:10-8S/cm未満
【0109】
実施例3:エタノール中で無水YCl3を使用する、溶液ルートによる比較のLi3YCl6
前駆体の秤量及びサンプルの調製は、酸素及び水分のレベルが共に1ppm未満であるAr充満グローブボックス中で行った。典型的な実験では、30mLのガラス製バイアルを使用して、LiCl(≧99.9%、Sigma Aldrich、1.25g)、乾燥YCl3(≧99.9%、Sigma Aldrich、1.72g)及び無水エタノール(≧99%、Sigma Aldrich、20g)を目標化学量論のLi3YCl6に従って秤量した。前駆体を完全に溶媒和させるために混合物を数分間振とうした。その後、6gの溶液を別の10mLバイアルに移した。その後、この瓶をBuechi製のGlass Oven B-585中にセットし、取り出し、70℃で2時間真空乾燥した。得られた粉末を、真空下、300℃で2時間、5℃/分の昇温速度で焼成した。その後、粉末をXRDで分析し、導電率を測定した。XRDパターンは、LiCl不純物が存在するLi3YCl6相の形成と一致する。
【0110】
灰色の粉末の輸送特性をペレット化後に測定する。
- 30℃で測定されたイオン伝導率:2E-5S/cm
【0111】
実施例4:エタノール中でYCl3・6H2を使用する、溶液ルートによるLi3YCl6
前駆体の秤量及びサンプルの調製は、酸素及び水分のレベルが共に1ppm未満であるAr充満グローブボックス中で行った。典型的な実験では、30mLのガラス製バイアルを使用して、LiCl(≧99.9%、Sigma Aldrich、0.59g)、YCl3.6H2O(≧99.9%、Sigma Aldrich、1.41g)及び無水エタノール(≧99%、Sigma Aldrich、20g)を目標化学量論のLi3YCl6に従って秤量した。前駆体を完全に溶媒和させるために混合物を数分間振とうした。その後、6gの溶液を別の10mLバイアルに移した。その後、この瓶をBuechi製のGlass Oven B-585中にセットし、取り出し、70℃で2時間真空乾燥した。得られた粉末を、真空下、300℃で2時間、5℃/分の昇温速度で焼成した。その後、粉末をXRDで分析し、導電率を測定した。XRDパターンは、かなりの量のLiCl不純物が存在するLi3YCl6相の形成と一致する。
【0112】
灰色の粉末の輸送特性をペレット化後に測定する。
- 30℃で測定されたイオン伝導率:6E-6S/cm
【0113】
実施例5:乾燥エタノール中でYCl3・6H2Oを使用する、溶液ルートによるLi3YCl6
前駆体の秤量及びサンプルの調製は、酸素及び水分のレベルが共に1ppm未満であるAr充満グローブボックス中で行った。典型的な実験では、30mLのガラス製バイアルを使用して、LiCl(≧99.9%、Sigma Aldrich、0.59g)、YCl3.6H2O(≧99.9%、Sigma Aldrich、1.41g)及び無水エタノール(≧99%、Sigma Aldrich、20g)を目標化学量論のLi3YCl6に従って秤量した。前駆体を完全に溶媒和させるために混合物を数分間振とうした。その後、6gの溶液を別の10mLバイアルに移した。10gの分子ビーズを溶液に添加し、瓶をアルゴン充填グローブボックス内に3日間放置した。分子ビーズを取り除き、その後、瓶をBuechi製のGlass Oven B-585中にセットし、取り出し、70℃で2時間真空乾燥した。得られた粉末を、真空下、300℃で2時間、5℃/分の昇温速度で焼成した。その後、粉末をXRDで分析し、導電率を測定した。XRDパターンは、微量のLiCl不純物が存在するLi3YCl6相の形成と一致する。
【0114】
灰色の粉末の輸送特性をペレット化後に測定した。
- 30℃で測定されたイオン伝導率:2E-5S/cm
【国際調査報告】