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特表2024-5471015-ヒドロキシメチルフルフラール(5-HMF)水溶液の製造方法
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  • 特表-5-ヒドロキシメチルフルフラール(5-HMF)水溶液の製造方法 図1
  • 特表-5-ヒドロキシメチルフルフラール(5-HMF)水溶液の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】5-ヒドロキシメチルフルフラール(5-HMF)水溶液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 307/48 20060101AFI20241219BHJP
   B01D 11/04 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C07D307/48
B01D11/04 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537841
(86)(22)【出願日】2022-12-06
(85)【翻訳文提出日】2024-08-21
(86)【国際出願番号】 EP2022084586
(87)【国際公開番号】W WO2023117406
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】2114335
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100228175
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充紀
(72)【発明者】
【氏名】ジャカン マルク
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス エスパダ パストール マリア
(72)【発明者】
【氏名】ラルミエ キム
(72)【発明者】
【氏名】ロルセ エレーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ダン ティ ビック ゴック
【テーマコード(参考)】
4D056
【Fターム(参考)】
4D056AB19
4D056AC03
4D056AC04
4D056AC07
4D056AC08
4D056AC13
4D056BA03
4D056BA04
4D056CA13
4D056CA17
4D056CA18
4D056CA33
4D056CA39
4D056DA01
4D056DA02
4D056DA05
(57)【要約】
本発明は、5-ヒドロキシメチルフルフラール(5-HMF)の水溶液を製造するための方法であって、以下の工程を連続して含む方法に関する。a)5-HMFおよびジメチルスルホキシド(DMSO)を含有している給送物を、逆洗工程c)からの中間水性逆抽出物と接触させる工程、b)有機溶媒による液-液抽出、続いて、水性溶媒による逆洗工程c);5-HMFおよび溶媒を豊富に含む有機ラフィネートを得る。ラフィネートは、次いで、濃縮工程d)を経て、次に水蒸気蒸留工程e)を経て、5-HMFの水溶液を得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5-ヒドロキシメチルフルフラール(5-HMF)の水溶液を製造するための方法であって、以下の工程を含む方法:
- 工程a):5-HMFおよびジメチルスルホキシド(DMSO)を含んでいる供給原料(1)を、中間水性逆抽出物(9)、有利には工程c)から得られた中間水性逆抽出物(9)の少なくとも一部分と接触状態に置く;少なくとも1つの水性混合物(3)を得る、
- 工程b):工程a)の終結の際に得られた混合物(3)の抽出溶媒(4)の存在中での液-液抽出;水性ラフィネート(5)と、中間有機抽出物(6)とを生じさせる、およびその後の、
- 水性溶媒(7)で逆洗浄する工程c):中間水性逆抽出物(9)と、5-HMFおよび有機溶媒を含んでいる有機ラフィネート(8)とを生じさせる、
- 工程d):有機溶媒の少なくとも一部を除去することによって工程c)から得られた有機ラフィネート(8)を濃縮する;濃縮済み有機抽出物(10)と、有機溶媒を含んでいる流れ(11)とを生じさせ、当該濃縮済み有機抽出物は、5-HMFを、好ましくは40重量%以上の含有率で、および残留有機溶媒を、好ましくは60重量%以下の含有率で含んでいる、
- 水蒸気蒸留工程e):工程d)から得られた濃縮済み有機抽出物(10)を水の存在中で蒸留することによって実行する;5-HMFの水溶液(12)と、有機溶媒を含んでいる流れ(13)とを生じさせる。
【請求項2】
工程b)からの中間有機抽出物(6)を逆洗工程c)に給送する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程d)における有機溶媒の気化を、大気圧でまたは減圧下に、好ましくは0.1~0.01MPaの圧力で、優先的には減圧下に0.09~0.01MPaの圧力で実行する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程d)における液の温度を、130℃未満に保持し、好ましくは100℃未満に保持し、より好ましくは70℃未満に保持する、請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
工程d)の終結の際に得られた濃縮済み有機抽出物(10)の5-HMF含有率は、濃縮済み有機抽出物の重量に相対して、最低40重量%、好ましくは最低50重量%、より好ましくは最低60重量%、かつ、濃縮済み有機抽出物の重量に相対して、好ましくは95重量%以下、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下であり、残留有機溶媒含有率は、濃縮済み有機抽出物の重量に相対して、最低5重量%、好ましくは最低10重量%、かつ、濃縮済み有機抽出物の重量に相対して、好ましくは60重量%以下、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
水性流(14)を水蒸気蒸留工程e)に給送する、請求項1~5のいずれか41つに記載の方法。
【請求項7】
工程e)を、大気圧でまたは減圧下に、特に、0.1MPa~0.001MPaの圧力で、好ましくは減圧下0.08~0.005MPaの圧力で実行する、請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
工程e)を、蒸留塔において、好ましくは140℃未満、好ましくは130℃未満、好ましくは120℃未満、好ましくは110℃未満、好ましくは100℃未満の塔底温度で実行する、請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
抽出溶媒(4)を、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、チオフェン、アニソールおよびトルエンから選び、大いに好ましくはメチルイソブチルケトンである、請求項1~8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
逆洗工程c)における水性溶媒(7)の中間有機抽出物(6)に相対する重量比(重量/重量)は、0.04~5、好ましくは0.07~3、より好ましくは0.1~1である、請求項1~9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
工程a)の上流で、糖を5-HMFに脱水する工程を含み、当該工程を、好ましくは、1種または複数種の糖を含んでいる糖供給原料を、DMSOおよび酸性脱水触媒と接触状態に置くことによって行い、その際の温度は、好ましくは50~150℃、好ましくは60~140℃、好ましくは70~130℃、より好ましくは80~120℃であり、好ましくは、その際の圧力は、1~0.001MPa、より好ましくは0.1~0.01MPaである、請求項1~10のいずれか41つに記載の方法。
【請求項12】
方法内で生じた水-DMSO混合物を処理する工程f)を含み、水性流出物の製造を可能にし、当該水性流出物を、全体的に若しくは部分的に逆洗工程c)において、および/または工程e)において用いてよい、請求項1~11のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5-ヒドロキシメチルフルフラール(5-HMF)の水溶液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
5-HMFは、バイオマスから生ずる有利な化合物であり、多くの分野、とりわけ製薬、農芸化学、またはスペシャリティ化学において利用することができる。長年にわたり、糖類の脱水による5-HMFの製造が知られており、多くの調査研究の対象を形成してきた。膨大な脱水条件が存在し、とりわけ、例えば以下の方法について言及され得る:
- 5-HMFは、水性媒体中で一般には酸触媒の存在中で得ることができる。この酸触媒により、C6糖(特にフルクトース)を脱水して5-HMFを与えることが可能となるが、5-HMFの再水和も触媒してギ酸およびレブリン酸を与え、このことは、収率に対し非常に有害である。
- 5-HMFはまた、非水性の極性プロトン性媒体中でも、メタノール、エタノール、または酢酸等の溶媒を用いおよび酸触媒の存在中で得ることができる。これらの条件下では5-HMFは、使用される反応媒体に依存して5-HMFのエーテルまたはエステル誘導体との混合物として得られる。これらの副生物の形成は、酸性媒体中における5-HMFの反応溶媒との反応に起因する。
- 特許文献1には、酸触媒の存在中で溶媒としてメタノールまたはエタノールを用いた糖の脱水による5-HMFの合成について記載されている。このケースにおいて、前記触媒の存在はまた5-HMFのアルコールとのエーテル化反応をも触媒して、5-HMFおよび溶媒として使用されるアルコールに依存してそのメチルまたはエチルエーテル形態の混合物を与える。
- 5-HMFは、極性非プロトン性媒体中においても酸触媒を用いてまたは用いずに製造されることもできる。ジメチルスルホキシド(DMSO)の使用についてより詳細に言及され得る。DMSOは、酸触媒を用いてまたは用いずに非常に良い収率でかつ上記に挙げた望ましくない反応を伴わずに5-HMFを製造することを可能にする。
【0003】
さらに、合成媒体が何であっても(水、メタノール、DMSO等)、5-HMFの製造中にフミン類と呼ばれるポリマー性副生成物が形成される(非特許文献1)。
【0004】
DMSO等の媒体中での5-HMFの合成は、5-HMFをその(エーテル形態ではなくむしろ)アルコール形態において、非常に良い収率で得ることを可能にするため、特に有利である。そうではあるものの、DMSO(またはいずれかの他の極性非プロトン性溶媒)の物理化学的性質は、当業者に既知の通常の方法による5-HMFからの分離を非常に困難にする。
【0005】
5-HMFをDMSOから単離するための1つの知られている方法は、特許文献2に記載されるような液液抽出とその後の抽出物の結晶化である。出願人は既に、特許文献3の主題であった特許文献2に記載の方法の改善を提案している。この改善は、とりわけ水逆洗工程を加えて逆洗水を任意のろ過工程へとリサイクルすることによって、抽出工程を改変することに基づく。この改善は、5-HMFの純度を、その意図される生成物の収率の損失を伴わずに高めることを可能にし、および5-HMF結晶化工程をより好ましい条件下で行うことを可能にする。
【0006】
それでも特許文献3によって提供された改善にもかかわらず、5-HMF結晶化は依然としてコストのかかる操作である。5-HMFの高い製造コストはその使用を制限し、コストが節約された方法の開発が必要とされる。
【0007】
本出願人は、5-HMFを結晶化形態ではなく水溶液の形態で回収することを可能とする方法を発見し、種々の用途における5-HMFの利用のための、またはDMSO若しくは抽出溶媒のいずれにおいても行うことのできなかったさらなる変換のための新しい可能性を広げた。さらに、本発明による方法は、このように5-HMFを水溶液中で回収することを可能にすると同時に、操作コストと吐水量、つまりは前記方法の環境への影響を限定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2007/104514号
【特許文献2】仏国特許発明第2669635号明細書
【特許文献3】仏国特許発明第1758605号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】van Dam, H.E.; Kieboom, A.P.G.; van Bekkum, H. (1986), The Conversion of Fructose and Glucose in Acidic Media: Formation of Hydroxymethylfurfural, In: Starch - Starke, vol. 38, No. 3, pages 95-101
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の概要)
本発明の1つの主題は、5-HMFの水溶液を製造するための方法に関する。
【0011】
より詳細には、本発明は、5-ヒドロキシメチルフルフラール(5-HMF)の水溶液を製造するための方法に関し、前記方法は、以下の工程を含む:
- 工程a):5-HMFおよびジメチルスルホキシド(DMSO)を含んでいる供給原料を、中間水性逆抽出物、有利には工程c)から得られる中間水性逆抽出物の少なくとも一部分と接触状態に置く;少なくとも1つの水性混合物を得る、
- 工程b):工程a)の終結の際に得られた水性混合物の抽出溶媒の存在中での液-液抽出;水性ラフィネートと、中間有機抽出物とを生じさせる、その後の、
- 工程c):水性溶媒で逆洗浄する:中間水性逆抽出物と、5-HMFおよび有機溶媒を含む有機ラフィネートとを生じさせる、
- 工程d):有機溶媒の少なくとも一部を除去することによって工程c)から得られる有機ラフィネートを濃縮する;濃縮済み有機抽出物と、有機溶媒を含んでいる流れとを生じさせ、当該濃縮済み有機抽出物は、5-HMFを、好ましくは40重量%以上の含有率で、および残留有機溶媒を、好ましくは60重量%以下の含有率で含んでいる、
- 水蒸気蒸留工程e):工程d)から得られた濃縮済み有機抽出物を水の存在中で蒸留することによって実行される;5-HMFの水溶液と、有機溶媒を含んでいる流れとを生じさせる、
- 任意選択の工程f):本方法内で生じた水-DMSO混合物を処理する;水性流出物の製造を可能にし、当該水性流出物は、逆洗工程c)においておよび/または工程e)において全体的に若しくは部分的に用いられてよい。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態の説明)
この説明を通して、表現「…と…との間」は、言及されている限界値を包含するとして理解されるべきであることが特定される。
【0013】
本発明の目的のために、提示される種々の実施形態は、単独でまたは互いとの組み合わせで用いられてよく、その組み合わせにいかなる制限もない。
【0014】
本発明の目的のために、所与の工程についてのパラメータの種々の範囲、例えば圧力範囲および温度範囲は、単独でまたは組み合わせで用いられることができる。例えば、本発明の目的のために、圧力値の好適な範囲は、温度値のより好適な範囲と組み合わされることができる。
【0015】
本発明のより良好な理解のために、方法の種々の要素を表示するために図面に出現する参照符号が以下で言及されるが、このことが図1および2に例示される特定の実施形態への限定とはみなされない。
【0016】
(5-HMFへの糖脱水の任意選択の工程)
有利には、本発明による工程a)に導入される、5-HMFおよびジメチルスルホキシド(DMSO)を含んでいる供給原料(1)は、5-HMFへの糖脱水の工程の間に得られることができ、この工程は、非常に有利には、本発明による工程a)の上流に配置され、1種または複数種の糖を含んでいる糖供給原料をDMSOおよび酸性脱水触媒と接触状態に置くことによって行われ、5-HMFおよびDMSOを少なくとも含んでいる流出物を生じさせ、当該流出物は、有利には、混合工程a)に導入される本発明による方法の供給原料(1)に相当する。本発明による方法は、場合によっては、5-HMFへの糖脱水の工程をこのように含んでよく、この工程は、工程a)の上流に配置される。
【0017】
用語「酸性脱水触媒」は、糖の5-HMFへの脱水を誘発することのできる、有機または無機の、均一または不均一のブレンステッド酸から選ばれる任意のブレンステッド酸触媒を意味する。
【0018】
好ましくは、酸性脱水触媒は、DMSO中pKa:0~5.0、好ましくは0.5~4.0、より好ましくは1.0~3.0を有するブレンステッド酸である。前記pKa値は、F.G. Bordwellらによる論文(J. Am. Chem. Soc., 1991, 113, 8398-8401)に定義される通りである。
【0019】
好ましくは、酸性脱水触媒は、HF、HCl、HBr、HI、HSO、HSO、HPO、HPO、HNO、HNO、HWO、HSiW1240、HPW1240、(NH(W1240)・xHO、HSiMo1240、HPMo1240、(NHMo24・xHO、HMoO、HReO、HCrO、HSnO、HSiO、HBO、HClO、HBF、HSbF、HPF、HFOP、ClSOH、FSOH、HN(SOF)、HIO、BF、AlCl、Al(OTf)、FeCl、ZnCl、SnCl、CrCl、CeCl、ErCl、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸、レブリン酸、メタンスルフィン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミン、安息香酸、パラ-トルエンスルホン酸、4-ビフェニルスルホン酸、リン酸ジフェニル、およびリン酸水素1,1’-ビナフチル-2,2’-ジイルから選ばれる。好ましくは、酸性脱水触媒は、HCl、HSO、HPO、HPO、HNO、AlCl、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルフィン酸、メタンスルホン酸、およびトリフルオロメタンスルホン酸から選ばれる。
【0020】
用語「糖」は、6個の炭素原子を含有する糖(ヘキソース)を示すが、これは、オリゴ糖および単糖の形態での5個の炭素原子を含有する糖(ペントース)の供給原料における存在を除外しない。特に、用語「糖」は、単独のまたは混合物としてのブドウ糖またはフルクトース、スクロース、およびまた、セロビオース、マルトース、セルロース、またはさらにはイヌリン等のオリゴ糖を示す。
【0021】
用いられる糖供給原料は、固体形態の糖であってもまたは糖水溶液であってもよい。例として、スクロースは、一般に、固体の形態で製造されるが、単独のまたは混合物としてのブドウ糖またはフルクトースは、一般に、水溶液(シロップ)の形態で、例えば70重量%の糖で製造される。
【0022】
任意選択の脱水工程は、50~150℃、好ましくは60~140℃、好ましくは70~130℃、より好ましくは80~120℃の温度で実行される。好ましくは、任意選択の脱水工程は、1~0.001MPa、好ましくは0.1~0.01MPaの圧力で実行される。圧力および温度の条件に応じて、反応媒体は、混合物の泡立ち点よりも上または下にある。用語「泡立ち点」は、最初の気泡が液中に見られる圧力および温度の条件を示す。反応媒体が混合物の泡立ち点よりも上である場合、蒸気相が反応器から取り出されることができ、場合によっては精留され、および凝縮されて凝縮物を形成し、この濃縮物は、水-DMSO混合物を処理するための任意選択の工程f)へと送られることができる。
【0023】
好ましくは、酸性脱水触媒は、モルパーセント(モル%)として表される酸/糖で示される触媒の糖供給原料に相対するモル比:0.01~10モル%、好ましくは0.05~8モル%、好ましくは0.1~6モル%、好ましくは0.2~5モル%、より好ましくは0.3~4モル%、大いに好ましくは0.5~3モル%で脱水工程に導入される。
【0024】
有利には、任意選択の脱水工程の終結の際に得られた流出物は、5-HMFおよびDMSOを含む。DMSOは、一般に、脱水工程から得られ、かつ本発明による方法の工程a)において処理される流出物の30重量%~95重量%、好ましくは40重量%~90重量%、好ましくは50重量%~90重量%、より好ましくは55重量%~85重量%を表す。
【0025】
5-HMFは、任意選択の脱水工程から得られかつ本発明による方法の工程a)において処理される流出物の1重量%超、好ましくは10重量%超、好ましくは15重量%超、かつ、好ましくは50重量%未満、好ましくは40重量%未満、より好ましくは30重量%未満を表す。
【0026】
さらに、任意選択の脱水工程からの前記流出物は、工程a)において中間水性逆抽出物(9)と混合される前でも水を含有してよい。前記水は、脱水工程に由来してよい:例えば、糖の5-HMFへの脱水反応中に水が形成される(生じる5-HMFのモルあたり3モルの水が生じる)。この水は、実用上の理由のために、糖シロップが、例えば、水中約70重量%で用いられるケースにおいて、糖と共に導入されたものである場合もある。有利には、任意選択の脱水工程の間に、水-DMSO混合物が蒸気相において回収されてよい。前記水-DMSO混合物は、有利には、任意選択の工程f)に送られる。こうして、任意選択の脱水工程から得られ、供給原料(1)として工程a)に導入される流出物は、一般には0.1重量%~30重量%、好ましくは0.1重量%~15重量%、より好ましくは0.1重量%~10重量%の割合で水を含有してよい。
【0027】
任意選択の脱水工程から得られ、供給原料(1)として工程a)に導入される流出物は、不純物、特にフミン類を含有する場合もある。用語「フミン類」は、5-HMFの合成中に形成されるすべての望ましくないポリマー性化合物を指す。特に、フミン類は、転化された糖供給原料の30重量%未満、好ましくは20重量%未満を表す。
【0028】
任意選択の脱水工程は、種々の実施形態により実行されてよい。それ故に、この工程は、有利には、バッチ式または連続式で実行されてよい。糖供給原料の添加は、バッチ方法の場合には漸進的(フェドバッチ)であってよく、または連続方法の場合には直列の異なるCSTR反応器(Continuously Stirred Tank Reactor連続撹拌槽型反応器)において段階分けされていてよい。本方法は、閉鎖型反応チャンバまたは半開放型反応器において実行されることができる。
【0029】
(混合工程a))
本発明による方法は、供給原料(1)、場合によっては脱水工程からの供給原料(1)を、中間水性逆抽出物(9)の少なくとも一部分と接触状態に置く(または混合する)、工程a)を含み、少なくとも1つの水性混合物(3)を得る。有利には、中間水性逆抽出物(9)は、本発明による方法の工程c)から得られる。
【0030】
好ましくは、5-HMFは、本発明による方法の工程a)に導入される供給原料(1)の1重量%超、好ましくは10重量%超、好ましくは15重量%超、かつ、好ましくは50重量%未満、好ましくは40重量%未満、より好ましくは30重量%未満を表す。
【0031】
好ましくは、DMSOは、工程a)に導入される供給原料(1)の30重量%~95重量%、好ましくは40重量%~90重量%、好ましくは50重量%~90重量%、より好ましくは55重量%~85重量%を表す。
【0032】
工程a)に導入される供給原料(1)は、水を、好ましくは0.1重量%~30重量%、好ましくは0.1重量%~15重量%、より好ましくは0.1重量%~10重量%の割合で含有してもよい。
【0033】
供給原料(1)は、場合によっては、フミン類を含有する可能性もある。フミン類は、特に、供給原料(1)の30重量%未満、好ましくは20重量%未満を表す。
【0034】
中間水性逆抽出物(9)または中間水性逆抽出物(9)の部分は、有利には、工程c)から得られる。それは、水、DMSO、および場合による5-HMFを含む。有利には、前記中間水性逆抽出物(9)は、60重量%超の水、好ましくは70重量%超の水、および好ましくは80重量%超の水を含有する。
【0035】
有利には、工程a)の終結の際に得られる水性混合物(3)は、10重量%~90重量%の水、好ましくは20重量%~80重量%の水、より好ましくは40重量%~75重量%の水を含有する。
【0036】
好ましくは、工程a)は、0~60℃、好ましくは10~30℃の温度、一般には室温、すなわち、18~25℃で実行される。
【0037】
工程a)は、場合によっては、水性流、例えば逆洗工程c)において用いられる水性溶媒の部分を給送されてもよい。
【0038】
工程a)の間の含水率を高めることによって、例えば、中間水性逆抽出物(9)の少なくとも一部分を導入することによって、供給原料(1)中に存在する場合があるフミン類のいくらかは、析出除去させることができる。前記供給原料(1)の中間水性逆抽出物(9)の少なくとも一部分との接触から得られる混合物は、こうして有利には、液-固分離工程に供され、懸濁固体粒子から分離された液体と、フミン類を含み、好ましくは方法から除外される固体残渣とを得るようにすることができる。こうした任意選択の液-固分離工程は、このように、析出したフミン類の除去を可能にする。得られた液体の少なくとも一部は、その後有利には、液-液抽出工程b)に送られ、有利には、工程b)に送られる液の前記一部(または全部)は、水性混合物(3)に相当する。混合物中の析出済みフミン類の量が少ない(例えば1重量%以下の)場合、液-固分離工程は、任意選択である。この任意選択の液-固分離工程は、好ましくは、0~60℃、好ましくは10~30℃、好ましくは15~25℃の温度、および一般には室温(すなわち、18~25℃)で行われる。任意選択の液-固分離工程は、単純な固-液分離であり、当業者に知られている任意の方法を介して、例えばフィルタープレス、ベルトフィルター、浄化器、デカンタ、または遠心分離機、例えばプレート型遠心分離機により実行されてよい。好ましくは、液-固分離工程は、ろ過であり、好ましくはフィルタープレスにより実行される。
【0039】
(抽出工程b))
本発明による方法は、抽出溶媒(4)の存在中での、工程a)の終結の際に得られた水性混合物(3)の液-液抽出の工程b)を含み、水性ラフィネート(5)と、中間有機抽出物(6)とを生じさせるようにする。
【0040】
工程b)において実行される液-液抽出は、有利には、水性混合物を有機抽出溶媒で洗浄することに相当する。好ましくは、工程b)において実行される液-液抽出は、工程a)において得られた水性混合物(3)の抽出溶媒による向流抽出である。この技術は、当業者には周知である。抽出は、例えば、ミキサ-デカンタアレイ、ランダム充填物または構造化充填物で満たされたカラム、プラグ流カラム、あるいはほかに撹拌型カラムにおいて実行されることができる。
【0041】
液-液抽出工程b)は、有利には、0~60℃、好ましくは5~50℃、好ましくは10~40℃、より好ましくは15~30℃の温度で、および一般には室温(すなわち、18~25℃)で実行される。
【0042】
抽出溶媒の水性混合物(3)に相対する重量割合(重量/重量)は、好ましくは0.2~5、好ましくは1~3、より好ましくは1.5~2.5である。
【0043】
工程b)に導入される抽出溶媒は、水非混和性有機溶媒から選ばれ、逆洗工程c)において2つの液相を形成するようにする。この特性は、方法に用いられる供給原料、逆抽出水および抽出溶媒の流量の相対的割合に大きく依存する。
【0044】
非限定的な態様において、抽出溶媒は、好ましくは、塩素化有機溶媒、エーテル類、エステル類、ケトン類、および芳香族化合物から選ばれる。好ましくは、抽出溶媒は、以下C1~C10と記される1~10個の炭素原子を含有する塩素化溶媒、2~10個の炭素原子を含有する(C2~C10)エーテル、4~10個の炭素原子を含有する(C4~C10)エステル、3~10個の炭素原子を含有する(C3~C10)ケトン、1~10個の炭素原子を含有する(C1~C10)アルデヒド、またはC4~C10芳香族化合物である。好ましくは、抽出溶媒は、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、チオフェン、アニソール、およびトルエンから選ばれる。大いに好ましくは、抽出溶媒は、メチルイソブチルケトンである。
【0045】
有利には、抽出溶媒は、以下のために選ばれる:
- 5-HMFとの非常に高い揮発性における相違を持たせて、工程d)におけるその除去を容易にしかつ5-HMFの分解を制限する、すなわち、工程d)において、5-HMFの分解を回避しかつ工程e)において除去すべき残留溶媒の量を最小限にする気化速度を持たせる一方で同時に、工程e)において濃縮された有機抽出物が水と接触状態に置かれた時に液相分離が起こらないことを確実にするように、かつ
- 工程e)において、水との不均一共沸混合物、好ましくは溶媒リッチな、すなわち、50重量%超の溶媒、好ましくは60重量%超の溶媒、より好ましくは70重量%超の溶媒を有するものを形成するように選ばれる。有利には、水/抽出溶媒混合物の前記共沸混合物の沸点は、水の沸点よりも顕著に低く、好ましくは水の沸点よりも最低5℃低く、好ましくは水の沸点よりも最低8℃低く、好ましくは水の沸点よりも最低10℃低い。
【0046】
有利には、その後の工程において生じる有機溶媒流は、抽出溶媒として抽出工程b)にリサイクルされてよい。これらの有機溶媒流は、方法の実施中に生じたかもしれない不純物を含有している可能性がある。有利には、その後の工程において生じる有機溶媒流は、例えば定期的に、蒸留されてよく、前記不純物の蓄積を回避するようにする。
【0047】
工程b)により、一方で、5-HMFが枯渇している水性流を、他方で、5-HMFに富んだ有機流を得ることがこのように可能となり、当該水性流は、水性ラフィネート(5)と呼ばれ、供給原料中に最初に含有されていたDMSOの大部分を含有しており、当該有機流は、中間有機抽出物(6)と呼ばれ、最初に供給原料(1)に含有されていた5-HMFの大部分と、抽出溶媒とを含有する。この中間有機抽出物(6)は、DMSOを含有してもよい。好ましくは、前記中間有機抽出物は、好ましくは、5-HMFおよびDMSOを、5-HMF/DMSO重量比50/50~95/05、好ましくは55/45~90/10、好ましくは60/40~85/15、より好ましくは65/35~80/20で含有する。
【0048】
有利には、中間有機抽出物(6)は、逆洗工程c)に直接的に送られる。
【0049】
(逆洗工程c))
本発明による方法は、有利には、中間有機抽出物(6)を、水性溶媒(7)により逆洗する工程c)を含み、中間水性逆抽出物(9)と、5-HMFおよび有機溶媒を含む有機ラフィネート(8)とを生じさせる。中間水性逆抽出物(9)は、有利には、部分的にまたは全体的に工程a)に送られる。有機溶媒は、特に、少なくとも部分的に、抽出溶媒から構成され、場合によっては、DMSOを、好ましくは少量で含んでよい。
【0050】
工程c)における水性溶媒の導入は、当業者の一般的知識に従って逆洗を実行するように実行される。水性溶媒の導入は、水性溶媒の量が、コストを削減するためにできるだけ少ないが、しかし、有機ラフィネート(8)中の低いDMSOの重量含有率、DMSOの重量含有率:好ましくは5-HMFの重量に相対して20.0重量%以下、優先的には5-HMFの重量に相対して15.0重量%以下、好ましくは5-HMFの重量に相対して0.01重量%~15.0重量%、大いに好ましくは5-HMFの重量に相対して0.01重量%~10.0重量%を確実にするために十分であるように実行される。
【0051】
有利には、工程c)において導入される水性逆洗溶媒は、95重量%超の水、好ましくは98重量%超の水を含む(100%が最大である)。水性溶媒は、場合によっては、DMSOを含んでよい。逆洗効率は全て、水性逆洗溶媒中に存在するDMSOの量が低いほど、より高くなる。好ましくは、水性溶媒は、DMSO、好ましくは1.0重量%未満のDMSO、より好ましくは0.1重量%未満のDMSOを含んでよい。有利には、水性逆洗溶媒は、方法内で生じた水-DMSO混合物を処理する任意選択の工程f)に由来する。本発明の好適な実施形態において、工程b)において生じた水およびDMSOから構成される水性ラフィネート(5)は、有利には、特に蒸留を含む任意選択の工程f)において処理される。この任意選択の工程f)からこうして得られた水リッチ蒸留物は、有利には、工程c)において水性逆洗溶媒として用いられる;前記水リッチ蒸留物は、残留量のDMSO、好ましくは1重量%未満、好ましくは0.1重量%未満のDMSOを含有してもよい。蒸留物中の残留量のDMSOは、任意選択の工程f)の蒸留が、特に10段よりも多い蒸留段数および好適な再沸騰および環流速度により、より効率よく実行されるほど比例的に低くなる。
【0052】
逆洗工程c)は、有利には、水性溶媒(7)に対して向流での、工程b)において得られた有機流、特に、中間有機抽出物(6)の液-液抽出である。この技術は、当業者に周知である。抽出は、例えば、ミキサ-デカンタアレイ、ランダム充填物または構造化充填物で満たされたカラム、プラグ流カラム、あるいはほかに撹拌カラムにおいて実行されることができる。
【0053】
工程c)は、好ましくは、0~60℃、好ましくは5~50℃、好ましくは10~40℃、より好ましくは15~30℃の温度で、および一般には室温(すなわち、18~25℃)で実行される。
【0054】
水性溶媒の中間有機抽出物(6)に相対する重量比(重量/重量)は、好ましくは0.04~5、好ましくは0.07~3、より好ましくは0.1~1である。
【0055】
工程c)は、水性流と、有機ラフィネート(8)とを生じさせ、当該水性流は、有利には、DMSOに富んでおり、中間水性逆抽出物(9)と呼ばれ、好ましくは、最低60重量%の水、好ましくは最低80重量%の水を含有し,当該有機ラフィネート(8)は、有利にはDMSOが枯渇している。前記中間水性逆抽出物(9)は、有利には、部分的にまたは好ましくは全体的に工程a)に送られる。得られた有機ラフィネート(8)のDMSO重量含有率は、好ましくは5-HMFの重量に相対して20.0重量%以下、好ましくは5-HMFの重量に相対して15.0重量%以下、好ましくは5-HMFの重量に相対して5.0重量%以下、好ましくは5-HMFの重量に相対して4.0重量%以下、好ましくは5-HMFの重量に相対して3.0重量%以下である。
【0056】
本発明によると、工程c)において生じた有機ラフィネート(8)は、濃縮工程d)に送られる。
【0057】
(濃縮工程d))
本発明による方法は、工程c)から得られた有機ラフィネート(8)を、有機溶媒の一部の除去によって濃縮する工程d)を含み、5-HMFおよび残留有機溶媒を含んでいる濃縮済み有機抽出物(10)と、有機溶媒を含み、好ましくはそれからなる流れ(11)とを生じさせ、前記有機溶媒は、有利には、全体的にまたは部分的に抽出溶媒および任意選択にDMSOから構成される。
【0058】
好ましくは、有機溶媒を含んでいる流れれ(11)は、全体的にまたは部分的に抽出工程b)にリサイクルされる。
【0059】
好ましくは、工程d)において、有機溶媒の一部の除去は、気化によって、例えば大気圧において若しくは減圧下での蒸留塔において、エバポレータにおいて、または当業者には知られている任意の方法を介して実行される。
【0060】
この好適な実施形態によると、有機溶媒の気化は、有利には、大気圧でまたは減圧下に、好ましくは0.1~0.01MPaの圧力で、優先的には減圧下0.09~0.01MPaの圧力で実行され、液の温度を制限し、ひいては5-HMFの分解を制限するようにする。好ましくは、液の温度は、130℃未満に保持され、好ましくは100℃未満に保持され、より好ましくは70℃未満に保持される。これらの温度を達成するために適用されるべき減圧レベルは、当然、有機溶媒、より特定的には用いられる抽出溶媒および有機溶媒気化率に依存する。
【0061】
好適な実施形態において、溶媒の気化は、多重効用蒸発法若しくは機械的蒸気再圧縮法によって、または当業者に知られている任意の他の方法によって実行され、溶媒蒸発法に関連する操作コストを削減する一方で意図される生成物、すなわち、5-HMFの分解のリスクを制限するようにする。例えば、三重効用蒸発法のケースにおいて、液温度は、第1効用において130℃未満、第2効用において100℃未満、および第3効用において70℃未満に保持される。それ故に、液相の温度は、5-HMFが有機溶媒中に濃縮されるにつれて漸進的に低くなり、分解のあらゆるリスクを制限する。
【0062】
工程d)は、気化質量比率(または蒸発率):最低50%、好ましくは最低60%、好ましくは最低70%、好ましくは最低75%、好ましくは最低80%、好ましくは最低85%、好ましくは最低90%、かつ、より好ましくは最大99%で実行される。気化質量比率は、工程c)からの有機ラフィネート(8)の質量に相対する気化される有機溶媒の質量(より特定的には、有機ラフィネート(8)の質量の量に相対する流れ(11)の質量の量)に相当する。有利には、気化率は、抽出溶媒に応じて5-HMFを分解しないように、しかしまた工程e)において除去されるべき残留溶媒の量を最小限にする一方で同時に、工程e)において濃縮済み有機抽出物(10)が水と接触状態に置かれる時に液相分離が起こらないことを確実にする(すなわち、液相が単相のままであることを確実にする)ように規定される。
【0063】
本発明により、特に、工程d)および先行する工程a)、b)およびc)の操作条件の全ての組み合わせによって、工程d)の終結の際に得られた濃縮済み有機抽出物(10)の5-HMF含有率は、非常に有利には、濃縮済み有機抽出物の重量に相対して最低40重量%、好ましくは最低50重量%、好ましくは最低60重量%、かつ好ましくは濃縮有機抽出物の重量に相対して95重量%以下、好ましくは90重量%以下、好ましくは85重量%以下である。換言すれば、濃縮済み有機抽出物(10)の残留有機溶媒含有率は、好ましくは、濃縮済み有機抽出物の重量に相対して最低5重量%、好ましくは最低10重量%、かつ、好ましくは濃縮済み有機抽出物(10)の重量に相対して60重量%以下、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。
【0064】
有利には、工程d)の間に気化された有機溶媒は、流れ(11)を形成し、当該流れ(11)は、有機溶媒を含み、好ましくはそれからなり、好ましくは、抽出工程b)にリサイクルされる。
【0065】
有利には、濃縮済み有機抽出物(10)は、水蒸気蒸留工程e)に送られる。
【0066】
(水蒸気蒸留工程e))
本発明による方法は、工程d)からの濃縮済み有機抽出物(10)を水の存在中で蒸留することによって実行される水蒸気蒸留工程e)を含み、5-HMFの水溶液(12)と、有機溶媒を含み、好ましくはそれからなる流れ(13)とを生じさせる。
【0067】
水蒸気蒸留工程e)は、有利には、工程d)の間に除去されなかった残留有機溶媒が少なくとも部分的に除去されることを可能にする。工程e)の間に除去される残留有機溶媒、すなわち、流れ(13)は、有利には、単独でまたは工程d)からの有機溶媒を含んでいる流れ(11)との混合物として抽出工程b)にリサイクルされてよい。
【0068】
有利には、水性流(14)は、水蒸気蒸留工程e)に給送する。工程e)において導入される水性流(14)は、好ましくは95重量%超の水、より好ましくは98重量%超の水を含有する。
【0069】
本発明の特定の実施形態において、水性流(14)は、純水であり,場合によっては、本方法に対して外部であり、これは、工程e)において生じた5-HMF水溶液(12)中の残留DMSO含有率を一層さらに最小化させる。
【0070】
本発明の別の特定の実施形態において、本方法内で単離された水は、工程e)に給送するために用いられ、本方法の操作コストおよびその環境への影響を限定することを可能にする。典型的には、本方法が供給原料(1)の調製を包含し、脱水工程用の糖供給原料が水中70重量%の糖シロップであるならば、脱水工程の終結の際に、生じた5-HMFの重量(トン)当たり約1トンの水(供給原料水および脱水反応中に生じた水)が回収される。この水は、環境に放出される前に処理される必要がある。本発明による方法は、有利には、脱水工程からの前記水を用いて、工程e)の終結の際に、好ましくは30重量%以上に、優先的には40重量%以上に濃縮された5-HMFの水溶液を生じさせることができ、ひいては方法の再処理コストおよびその環境への影響を低減させることができる。
【0071】
有利には、工程e)に導入される水性流(14)は、任意選択の工程f)において生じた蒸留物の少なくとも一部分、場合によっては全部に相当してよい。前記蒸留物は、場合によっては、残留量のDMSOを含有してよい。
【0072】
有利には、工程e)の間に、本方法において用いられる抽出溶媒は、水との不均質共沸混合物を形成し、前記共沸混合物は、好ましくは、抽出溶媒に富み、好ましくは50重量%超の抽出溶媒、好ましくは60重量%超の抽出溶媒、好ましくは70重量%超の抽出溶媒を含む。有利には、前記水/抽出溶媒共沸混合物の沸点は、水の沸点よりも顕著に低く、好ましくは水の沸点よりも最低5℃低く、好ましくは水の沸点よりも最低8℃低く、好ましくは水の沸点よりも最低10℃低い。
【0073】
それ故に、濃縮済み有機抽出物(10)を水性流(14)と接触状態に置いた後に、濃縮済み有機抽出物(10)中に含有される残留有機溶媒は、5-HMFの分解を伴わずに容易に除去されてよい。
【0074】
水蒸気蒸留工程e)は、大気圧でまたは減圧下に、特に、0.1MPa~0.001MPaの圧力で、好ましくは減圧下0.08~0.005MPaの圧力で実行されてよい。有利には、水蒸気蒸留工程は、減圧下に、特に、0.1MPa~0.001MPa、好ましくは0.08MPa~0.005MPaの圧力で実行され、5-HMFの分解を伴わずに残留有機溶媒の除去を容易にするようにする。
【0075】
有利には、水蒸気蒸留工程e)は、蒸留塔において、好ましくは140℃未満、好ましくは130℃未満、好ましくは120℃未満、好ましくは110℃未満、好ましくは100℃未満の塔底温度で実行され、5-HMFの分解を伴わずに残留有機溶媒の除去を容易にするようにする。
【0076】
1つの特定の実施形態において、濃縮済み有機抽出物(10)および水性流(14)は、蒸留塔への導入の前に混合され、混合物は、蒸留塔の中間点に導入される。
【0077】
別の特定の実施形態において、濃縮済み有機抽出物(10)は、蒸留塔の上部に、好ましくは蒸留塔の上半分に導入される一方、水性溶媒は、蒸留塔の下部に、好ましくは蒸留塔の下半分に導入される。その後、蒸留塔内で濃縮済み有機抽出物と水性流との混合が実行される。
【0078】
水と抽出溶媒との間の不均質共沸混合物の形成を前提とすると、蒸留塔の塔頂蒸気の凝縮により、2つの液相:有利には環流物として塔に戻されてよい水リッチ相および有利には抽出工程b)にリサイクルされてよい有機溶媒リッチ相が発生する。
【0079】
本発明によると、工程e)の終結の際に得られた5-HMF水溶液(12)の5-HMFの量は、最低30重量%、好ましくは最低40重量%、かつ、好ましくは90重量%未満、好ましくは85重量%未満、好ましくは80重量%未満であり、この割合(%)は、工程e)の終結の際に得られた5-HMF水溶液の重量に相対する5-HMFの重量によって与えられる。
【0080】
本発明による方法により、このように、5-HMFの水溶液の製造が可能になり、この溶液のDMSO重量含有率は、非常に有利には5-HMFの重量に相対して10重量%以下、好ましくは5-HMFの重量に相対して5重量%以下、好ましくは5-HMFの重量に相対して3重量%以下である。
【0081】
(水-DMSO混合物を処理する任意選択の工程f))
本発明による方法は、本発明による方法の工程によって生じた水-DMSO混合物を処理する任意選択の工程f)を含んでよく、水性流出物(蒸留物としても知られる)を生じさせ、このものは、この水性流出物は全体的に若しくは部分的に、逆洗工程c)においておよび/または工程e)において用いられてよい。この工程は、DMSOリッチな流れ(16)と、不純物流(17)とを生じさせてもよい。
【0082】
任意選択の工程f)の終結の際に生じた水性流出物中のDMSOの残留量は、すべて、より低い。蒸留が当業者の知識に従って効率的な態様で行われているからである。
【0083】
本方法を介して生じた水-DMSO混合物は、特に、工程b)において生じた水性ラフィネート(5)を示し、場合によっては、本方法が糖の5-HMFへの脱水の任意選択の工程を組み込む場合には、そのような工程の結果として得られた水-DMSO混合物を示す。
【0084】
好ましくは、水-DMSO混合物を処理する任意選択の工程f)は、水-DMSO混合物を蒸発させて、任意の不純物(流れ(17))、特に、重質不純物、例えば、フミン類を除去するためのセクションと、その後の蒸留セクションとを含む。
【0085】
蒸発セクションは、好ましくは80~120℃、優先的には100~110℃の温度、および好ましくは0.002~0.020MPa、優先的には0.005MPa~0.010MPaの圧力で操作される。好ましくは、蒸発セクションは、薄膜エバポレータ(Thin Film Evaporator:TFE)を用いる。
【0086】
蒸留セクションは、有利には、蒸留塔またはいくつかの分離機器を用いる。好ましくは、任意選択の工程f)の蒸留セクションは、有利には、蒸留塔において操作され、その際の塔頂温度は、好ましくは25~60℃、優先的には45~55℃、例えば約50℃であり、その際の塔底温度は。好ましくは80~120℃、優先的には105~115℃、例えば約110℃であり、その際の圧力は、好ましくは0.001~0.05MPa、優先的には0.005~0.02MPa、より好ましくは0.008~0.012MPaであり、これに伴う環流比は、好ましくは0.01~0.50、より好ましくは0.05~0.10である。
【0087】
それ故に、工程b)において生じかつ水およびDMSOを含んでいる水性ラフィネート(5)と、場合による、任意選択の脱水工程において回収された水-DMSO混合物とは蒸発させられ、次いで、気相は、回収され、蒸留され、好ましくは減圧下に蒸留され、一方でのDMSOリッチな残渣(16)と、他方での水リッチな蒸留物(15)(水性流出物に相当する)とを生じさせる。用語「リッチ」は、ここでは、95重量%超、好ましくは98重量%超を意味する。水リッチ蒸留物、または水性流出物の一部または全部は、有利には、水性溶媒として工程c)にリサイクルされて逆洗工程を実行し、および/または水性流として水蒸気蒸留工程e)にリサイクルされてよい。前記水リッチ蒸留物は、全体的にまたは部分的に工程a)に導入される水としてリサイクルされてもよい。
【0088】
DMSOリッチ残渣は、有利には、直接的にまたは蒸留の後にかのどちらかで任意選択の脱水工程に導入されてよく、蓄積する可能性がある任意の重質生成物が除去されることを可能にする。
【0089】
以下に記載・添付される実施例および図面は、本発明を例示するが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0090】
(図面のリスト)
図1は、本発明による方法の特定の実施形態を図示する。5-HMF、DMSOおよびフミン類を含有している供給原料(1)は、工程a)に送られ、工程c)からの中間水性逆抽出物(9)と接触状態に置かれ、その後、析出したフミン類(2)は、液-固のろ過によって混合物から除去される。工程a)の終結の際に得られた水性混合物(3)は、抽出工程b)に送られ、工程d)およびe)からリサイクルされた抽出溶媒(4)と接触状態に置かれ、抽出溶媒を用いて水性混合物から5-HMFを抽出し、水性ラフィネート(5)と、中間有機抽出物(6)とを得る。中間有機抽出物(6)は、逆洗工程c)において水性溶媒(7)と接触状態に置かれる。得られた有機ラフィネート(8)は、工程d)において、流れ(11)を除去することにより濃縮され、流れ(11)は、工程b)にリサイクルされる。工程d)の終結の際に得られた濃縮済み有機抽出物(10)は、水蒸気蒸留工程e)において処理され、残留有機溶媒(13)を除去し、残留有機溶媒(13)は、工程b)へとリサイクルされ、5-HMFの水溶液(12)を得る。
【0091】
図2は、本発明による方法の別の特定の実施形態を図示し、方法内で生じた水-DMSO混合物、および特に水性ラフィネート(5)を処理する工程f)を含むことにおいて図1の実施形態とは異なり、水性流出物(15)、DMSOリッチ残渣(16)および不純物流(17)を生じさせ、水性流出物(15)の一部は、水性溶媒(7)として工程c)にリサイクルされ、水性流出物(15)の一部は、水性流(14)として水蒸気蒸留工程e)にリサイクルされる。
【0092】
(実施例)
(実施例1:本発明に合致する有機抽出物(8)の調製)
本発明による方法の利点のいくつかを実証するために、図1による方法を実施した結果をここに提示する。
【0093】
酸触媒(メタンスルホン酸)をDMSOと混合し、糖供給原料とのモル比(触媒/糖供給原料)が1モル%となるようにし、それらを120℃の温度とする。フルクトースを、70重量%の糖の水溶液(シロップ)の形態で、DMSO/フルクトースの質量比2.3で導入する。圧力を0.035MPaに維持する。これらの圧力および温度の条件下に、反応媒体は、混合物の泡立ち点よりも上であり、そのため、蒸気相を反応器から取り出すことができ、凝縮し、凝縮物を形成する。供給原料の漸進的な2時間の期間をかけた添加によって糖脱水工程をバッチ式で実行する。添加終了後さらに2時間にわたって、反応媒体を上に指し示された温度および圧力に維持する。
【0094】
脱水工程から得られた液状流出物は、74重量%のDMSO、21重量%の5-HMFおよび3重量%の水を含有し、関与したフルクトースに相対する5-HMFのモル収率81%を与える。反応媒体中に可溶なポリマー性化合物(フミン類と呼ばれる)を、5重量%の量で形成した。この脱水工程の間に、水-DMSO混合物を蒸気相中に回収する。前記水-DMSO混合物の組成は、DMSO32重量%および水68重量%である。この水-DMSO混合物を減圧下に蒸留して、痕跡量のみのDMSOを含有している水を生じさせる。
【0095】
供給原料(1)に相当する脱水工程からの液状流出物を、室温において水含有流と接触状態に置く工程a)に関与させ、1に等しいDMSO/水の質量比率を含有する混合物を得る。
【0096】
工程a)からの混合物を、細孔サイズが10μmであるポリプロピレンガーゼフィルタを備えたブフナーフィルター上で液-固分離工程に供する。この液-固分離工程を室温で実行する。液-固分離工程の間に、ろ過された混合物の重量(kg)当たり7.5gの「フミン類」固体残渣を、水性混合物(3)に相当する均質な液相と共に回収する。水性混合物(3)は、43重量%のDMSO、12重量%の5-HMFおよび43重量%の水から構成され、および不純物(約2重量%のフミン類)を含む。
【0097】
工程a)から得られた水性混合物(3)を、撹拌ガラスカラム(KeuhniまたはECRタイプ)における向流液-液抽出工程b)に供する。当該撹拌ガラスカラムは、高さ225mmおよび内径32mmの8個のセクションを含み、下方デカンタおよび上方デカンタも含有している。有効高さは、約1.8mであり、および合計のカラム高さは、2.60mである。合計容積は、約3リットルである。有機抽出溶媒は、メチルイソブチルケトン(methyl isobutyl ketone:MIBK)である。前記水性混合物(3)をデバイスの上部に導入し、上方に向かう有機相中に分散させる。カラム入り口流量を、DMSO-水相について2.2kg/hおよび有機抽出溶媒について4.1kg/hに設定する。MIBK溶媒の割合(重量/重量)は、工程a)から得られた水性混合物(3)に相対して1.9である。この工程b)において、温度は、20℃であり、撹拌速度は、300rpmである。
【0098】
工程b)の終結の際に、5-HMF枯渇水性ラフィネート(5)と、フラン化合物に富んだ中間有機抽出物(6)とを回収する。この5-HMF枯渇水性ラフィネート(5)は、約48重量%の水、48.5重量%のDMSO、0.4重量%の5-HMF、1.8重量%のMIBK、およびフミン不純物を含有し、中間有機抽出物(6)は、2.8重量%のDMSO、5.9重量%の5-HMF(5-HMF/DMSO重量比:約68/32)、および91.3重量%のMIBKを含有する。抽出収率は、5-HMFについて97%、およびDMSOについて13%である。
【0099】
液-液抽出工程b)から得られた中間有機抽出物(6)を、同じ抽出デバイス(Kuehniタイプの撹拌カラムまたはECR)における逆洗工程c)に供する。前記有機抽出物を21.5℃で純水相中に分散させる。カラム入り口流量を、有機抽出物について5kg/hおよび水相について1.5kg/hに設定する。水性逆洗溶媒として導入された水の中間有機抽出物に相対する割合(重量/重量)は、0.3である。
【0100】
逆洗工程c)の終結の際に、DMSO富化中間水性逆抽出物(9)と、有機ラフィネート(8)とを回収する。このDMSO富化中間水性逆抽出物(9)は、86重量%の水、7重量%のDMSO、5重量%の5-HMFおよび2重量%のMIBKを含有し、有機ラフィネート(8)は、4.3重量%の5-HMF、0.092重量%のDMSO(すなわち、5-HMFの重量に相対して2.1重量%のDMSO)および88重量%のMIBKを含有し、逆洗収率:5-HMFについて27重量%およびDMSOについて95重量%を与える。
【0101】
(実施例2:本発明による工程d)およびe)の実施)
実施例1により生じた有機ラフィネート(8)を、濃縮工程d)に送る。溶媒を減圧下に留去する。液の温度を60℃に設定し、減圧の圧力を0.02MPaに設定する。
【0102】
工程d)を、気化質量比95%で実行する。気化質量比は、工程c)からの有機ラフィネートの関与する質量に相対する気化された有機溶媒の質量に相当する。工程d)の終結の際に得られた濃縮済み有機抽出物の質量含有率は、5-HMF84重量%、DMSO2重量%およびMIBK9重量%である。濃縮済み有機抽出物の残留溶媒含有率11重量%(MIBK9%+DMSO2%の合計)が期待値(最低5重量%かつ60重量%以下)に従うのと同様に、濃縮済み有機抽出物の5-HMF含有率(84重量%)は、期待値(最低40重量%かつ95重量%以下)に従う。工程d)の終結の際に得られた濃縮済み有機抽出物は、フミン不純物も含む(5重量%)。回収された蒸留物は、本質的にMIBKおよび水を含有し、MIBKとの共沸混合物の形態で除去され、この共沸混合物は、凝縮の際に2つの非混和相に分離する。
【0103】
工程d)から得られた濃縮済み有機抽出物を、水/濃縮済み抽出物の質量割合0.95で純水と接触状態に置き、次いで、蒸留によって実行される水蒸気蒸留工程e)に送る。水蒸気蒸留工程e)を、35℃の塔底温度および0.01MPaの減圧下に実行し、5-HMFの分解を伴わずに水/MIBK共沸混合物の形態での残留MIBK有機溶媒の除去を容易にする。工程e)の終結の際に得られた5-HMF水溶液の組成は、5-HMF45重量%、水53.3重量%、DMSO1重量%(すなわち、5-HMFの重量に相対してDMSO2.2重量%)およびMIBK0.7重量%である。
【0104】
(実施例3:本発明による工程d)およびe)の実施)
実施例1により生じた有機ラフィネート(8)を、濃縮工程d)に送る。溶媒を減圧下に留去する。液の温度を60℃に設定し、減圧の圧力を0.02MPaに設定する。
【0105】
工程d)を、気化質量比93%で実行する。気化質量比は、工程c)からの有機ラフィネートの関与質量に相対する気化された有機溶媒の質量に相当する。工程d)の終結の際に得られた濃縮済み有機抽出物の質量含有率は、5-HMF59重量%、DMSO1重量%およびMIBK34重量%である。残留溶媒含有率35重量%(34%MIBK+1%DMSOの合計)が期待値(最低5重量%かつ60重量%以下)に従うのと同様に、濃縮済み有機抽出物の5-HMFの含有率(59重量%)は期待値(最低40重量%かつ95重量%以下)に従う。工程d)の終結の際に得られた濃縮済み有機抽出物は、フミン不純物も含む(約6重量%)。回収された蒸留物は、本質的にMIBKおよび水を含有し、MIBKとの共沸混合物の形態で除去され、この共沸混合物は、凝縮時に2つの非混和相に分離する。
【0106】
工程d)から得られた濃縮済み有機抽出物を、水/濃縮抽出物の質量割合0.83で純水と接触状態に置き、蒸留によって実行される水蒸気蒸留工程e)に進む。水蒸気蒸留工程e)を、49℃の塔底温度で、0.008MPaの減圧下に実行し、5-HMFの分解を伴わずに水/MIBK共沸混合物の形での残留MIBK有機溶媒の除去を容易にするようにする。工程e)の終結の際に得られた5-HMF水溶液の組成は、5-HMF42重量%、水56.5重量%、DMSO0.9重量%(すなわち、5-HMFの重量に相対してDMSO2.1重量%)、およびMIBK0.6重量%である。
【0107】
(実施例4:工程d)およびe)の実施)
実施例1より生じた有機ラフィネート(8)を濃縮工程d)に送る。溶媒を減圧下に留去する。液の温度を60℃に設定し、減圧の圧力を0.02MPaに設定する。
【0108】
工程d)を、工程c)からの有機ラフィネートの関与質量に相対する気化された有機溶媒の質量に相当する気化質量比率70%で実行する。工程d)の終結の際に得られた濃縮済み有機抽出物の質量含有率は、5-HMF15重量%、DMSO0.5重量%およびMIBK79重量%である。工程d)の終結の際に得られた濃縮済み有機抽出物は、フミン不純物(5.5重量%)も含む。工程d)の終結の際に得られた濃縮済み有機抽出物は、依然として、79.5重量%の残留溶媒(MIBK79%+DMSO0.5%)を含む。回収された蒸留物は、本質的にMIBKと、MIBKおよび水を含有し、共沸混合物の形態で除去し、これは、濃縮の際に2つの非混和相に分離する。
【0109】
濃縮済み有機抽出物の5-HMF含有率15重量%は、期待される値(最低40重量%かつ95重量%以下)よりも低い。濃縮済み有機抽出物の残留溶媒含有率は、79.5重量%(MIBK79%+DMSO0.5%の合計)であり、それ故に、期待される値(最低5重量%かつ60重量%以下)よりもかなり上である。
【0110】
工程d)から得られた濃縮済み有機抽出物を、水/濃縮済み抽出物の質量割合0.45で純水と接触状態に置き、蒸留によって実行される水蒸気蒸留工程e)に進む。水蒸気蒸留工程e)を、49℃の塔底温度で、0.008MPaの減圧下に実行し、5-HMFの分解を伴わずに水/MIBK共沸混合物の形での残留MIBK有機溶媒の除去を容易にするようにする。
【0111】
しかしながら、濃縮工程d)の終結の際に得られた濃縮済み有機抽出物と接触状態に置くことは、依然として、79.5重量%の有機溶媒(標的とされる60重量%限界値よりもかなり上の値)を含み、液相の相分離を誘導して互いに非混和性の水相および有機相を生じさせ、水蒸気蒸留工程e)を実行することができない。
【図面の簡単な説明】
【0112】
図1】本発明による方法の特定の実施形態を図示する。
図2】本発明による方法の別の特定の実施形態を図示する。
図1
図2
【国際調査報告】