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特表2024-547102高純度の5-ヒドロキシメチルフルフラール(5-HMF)水溶液の製造方法
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  • 特表-高純度の5-ヒドロキシメチルフルフラール(5-HMF)水溶液の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】高純度の5-ヒドロキシメチルフルフラール(5-HMF)水溶液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 307/46 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
C07D307/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537842
(86)(22)【出願日】2022-12-06
(85)【翻訳文提出日】2024-08-21
(86)【国際出願番号】 EP2022084588
(87)【国際公開番号】W WO2023117407
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】2114337
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100228175
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充紀
(72)【発明者】
【氏名】ジャカン マルク
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス エスパダ パストール マリア
(72)【発明者】
【氏名】ラルミエ キム
(72)【発明者】
【氏名】ロルセ エレーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ダン ティ ビック ゴック
(57)【要約】
本発明は、5-ヒドロキシメチルフルフラール(5-HMF)水溶液を製造するための方であって、以下の工程を含む方法に関する:-工程a):5-HMFおよびジメチルスルホキシド(DMSO)を含有している給送物を、工程c)からの中間水性逆抽出物と接触させる;水性混合物を得る、-工程b):抽出溶媒の流れによる水性混合物の液-液抽出;水性ラフィネートと、中間有機抽出物とを生じさせる、-工程c):中間有機抽出物の水性溶媒による逆洗浄:中間水性逆抽出物と、有機ラフィネートとを生じさせる、および-工程d):工程c)の終わりに得られた有機ラフィネートの水性流による液-液逆抽出;有機流出物と、水性逆抽出物とを生じさせる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5-ヒドロキシメチルフルフラール(5-HMF)の水溶液を製造するための方法であって、以下の工程を含む方法:
- 工程a):5-HMFおよびジメチルスルホキシド(DMSO)を含んでいる供給原料(1)を、中間水性逆抽出物(9)、有利には工程c)から得られた中間水性逆抽出物(9)の少なくとも一部分と接触状態に置く;少なくとも1つの水性混合物(3)を得る、
- 工程b):抽出溶媒の流れ(4)の存在中での工程a)の終結の際に得られた水性混合物(3)の液-液抽出;水性ラフィネート(5)と、中間有機抽出物(6)とを生じさせる、
- 工程c):中間有機抽出物(6)の水性溶媒(7)による逆洗浄:中間水性逆抽出物(9)と、5-HMFおよび有機溶媒を含む有機ラフィネート(8)とを生じさせる、
- 工程d):工程c)の終結の際に得られた有機ラフィネート(8)の水性流(10)による液-液逆抽出;有機流出物と、水性逆抽出物(11)とを生じさせる。
【請求項2】
工程d)において行われる逆抽出は、工程c)の終結の際に得られた有機ラフィネート(8)の水性流(10)による向流抽出である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程d)を行う際の温度は、0~60℃、好ましくは15~30℃である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程d)において、水性流(10)の有機ラフィネート(8)に相対する重量割合は、0.5~5、好ましくは1.0~3.0、好ましくは1.5~2.5である、請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
逆抽出工程d)において加えられる水性流(10)中の水の量は、逆洗工程c)において加えられる水性溶媒(7)中の水の量よりも多い、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
逆抽出工程d)において導入される水性流(10)は、最低95重量%の水、好ましくは最低98重量%の水を含む、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
水性流出物(13)の除去による工程d)から得られた水性逆抽出物(11)の濃縮の工程e)を含み、5-HMFを含んでいる濃縮済み水溶液(12)を生じさせる、請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
抽出溶媒を、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、チオフェン、アニソールおよびトルエンから選び、大いに好ましくはメチルイソブチルケトンである、請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
逆洗工程c)において、水性溶媒(7)の中間有機抽出物(6)に相対する重量比は、0.04~5、好ましくは0.07~3、より好ましくは0.1~1である、請求項1~8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
工程a)の上流で、糖を5-HMFに脱水する任意選択の工程を含み、好ましくは、1種または複数種の糖を含んでいる糖供給原料を、好ましくは50~150℃の温度、好ましくは1~0.001MPaの圧力で、DMSOおよび酸性脱水触媒と接触状態に置くことによって行う、請求項1~9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
方法内で生じた水-DMSO混合物を処理する任意選択の工程f)を含み、処理済み水性流出物を生じさせ、当該水性流出物は、全体的に若しくは部分的に逆洗工程c)においておよび/または工程e)において用いられてよい、請求項1~10のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5-ヒドロキシメチルフルフラール(5-HMF)の高純度水溶液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
5-HMFは、バイオマスから生ずる有利な化合物であり、多くの分野、とりわけ製薬、農芸化学、またはスペシャリティ化学において利用することができる。長年にわたり、糖類の脱水による5-HMFの製造が知られており、多くの調査研究の対象を形成してきた。膨大な脱水条件が存在し、とりわけ、例えば以下の方法について言及され得る:
- 5-HMFは、水性媒体中で一般には酸触媒の存在中で得ることができる。この酸触媒により、C6糖(特にフルクトース)を脱水して5-HMFを与えることが可能となるが、5-HMFの再水和も触媒してギ酸およびレブリン酸を与え、このことは、収率に対し非常に有害である。
- 5-HMFはまた、非水性の極性プロトン性媒体中でも、メタノール、エタノール、または酢酸等の溶媒を用いおよび酸触媒の存在中で得ることができる。これらの条件下に、5-HMFは、使用される反応媒体に依存して5-HMFのエーテルまたはエステル誘導体との混合物として得られる。これらの副生物の形成は、酸性媒体中における5-HMFの反応溶媒との反応に起因する。特許文献1には、酸触媒の存在中で溶媒としてメタノールまたはエタノールを用いた糖の脱水による5-HMFの合成について記載されている。このケースにおいて、前記触媒の存在は、5-HMFのアルコールとのエーテル化反応をも触媒して、5-HMFおよび溶媒として使用されるアルコールに依存してそのメチルまたはエチルエーテル形態の混合物を与える。
- 5-HMFは、極性非プロトン性媒体中においても酸触媒を用いてまたは用いずに製造されることもできる。ジメチルスルホキシド(DMSO)の使用についてより詳細に言及され得る。DMSOは、酸触媒を用いてまたは用いずに非常に良い収率でかつ上記に挙げた望ましくない反応を伴わずに5-HMFを製造することを可能にする。
【0003】
さらに、合成媒体が何であっても(水、メタノール、DMSO等)、5-HMFの製造中にフミン類と呼ばれるポリマー性副生成物が形成される(非特許文献1)。
【0004】
DMSO等の媒体中での5-HMFの合成は、5-HMFをその(エーテル形態ではなくむしろ)アルコール形態において、非常に良い収率で得ることを可能にするため、特に有利である。そうではあるものの、DMSO(またはいずれかの他の極性非プロトン性溶媒)の物理化学的性質は、当業者に既知の通常の方法による5-HMFからの分離を非常に困難にする。
【0005】
5-HMFをDMSOから単離するための1つの知られている方法は、特許文献2に記載されるような液液抽出とその後の抽出物の結晶化である。出願人は、既に、特許文献3の主題であった特許文献2に記載の方法の改善を提案している。この改善は、とりわけ水逆洗工程を加えて逆洗水を任意のろ過工程へとリサイクルすることによって、抽出工程を改変することに基づく。この改善は、5-HMFの純度を、その意図される生成物の収率の損失を伴わずに高めることを可能にし、5-HMF結晶化工程をより好ましい条件下で行うことを可能にする。
【0006】
それでも特許文献3によって提供された改善にもかかわらず、5-HMF結晶化は依然としてコストのかかる操作である。5-HMFの高い製造コストはその使用を制限し、コストが節約された方法の開発が必要とされる。
【0007】
本出願人は、5-HMFを結晶化形態ではなく水溶液の形態で回収することを可能とする方法を発見し、種々の用途における5-HMFの利用のための、またはDMSO若しくは抽出溶媒のいずれにおいても行うことのできなかったさらなる変換のための新しい可能性を広げた。さらに、本発明による方法は、このように5-HMFを水溶液中で回収することを可能にすると同時に、操作コストと吐水量、つまりは前記方法の環境への影響を限定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2007/104514号
【特許文献2】仏国特許発明第2669635号明細書
【特許文献3】仏国特許発明第1758605号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】van Dam, H.E.; Kieboom, A.P.G.; van Bekkum, H. (1986), The Conversion of Fructose and Glucose in Acidic Media: Formation of Hydroxymethylfurfural, In: Starch - Starke, vol. 38, No. 3, pages 95-101
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の概要)
本発明の1つの主題は、5-HMFの高純度水溶液を製造するための方法に関する。
【0011】
より詳細には、本発明は、5-ヒドロキシメチルフルフラール(5-HMF)の水溶液を製造するための方法に関し、前記方法は、以下の工程を含む:
- 工程a):5-HMFおよびジメチルスルホキシド(DMSO)を含んでいる供給原料を、工程c)から有利に得られる中間水性逆抽出物の少なくとも一部分と接触状態に置く;少なくとも1つの水性混合物を得る、
- 工程b):抽出溶媒の流れの存在中での工程a)の終結の際に得られた水性混合物の液-液抽出;水性ラフィネートと、中間有機抽出物とを生じさせる、
- 工程c):中間有機抽出物を水性溶媒で逆洗浄する:中間水性逆抽出物と、5-HMFおよび有機溶媒を含む有機ラフィネート(8)とを生じさせる、
- 工程d):工程c)の終結の際に得られた有機ラフィネートを水性流で液-液逆抽出する;有機流出物と、水性逆抽出物とを製造する。
【0012】
5-HMFの水溶液の製造方法は、場合によっては、水性流出物の除去によって工程d)から得られる水性逆抽出物を濃縮する工程e)を含んでもよく、5-HMFを含んでいる濃縮済み水溶液を生じさせる。場合によっては、それは、方法内で生じた水-DMSO混合物を処理する工程f)も含み、処理済み水性流出物を生じさせ、これは、全体的に若しくは部分的に逆洗工程c)においておよび/または逆抽出工程d)において用いられてよい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態の説明)
この説明を通して、表現「…と…との間」は、言及されている限界値を包含するとして理解されるべきであることが特定される。
【0014】
本発明の目的のために、提示される種々の実施形態は、単独でまたは互いとの組み合わせで用いられてよく、その組み合わせにいかなる制限もない。
【0015】
本発明の目的のために、所与の工程についてのパラメータの種々の範囲、例えば圧力範囲および温度範囲は、単独でまたは組み合わせで用いられることができる。例えば、本発明の目的のために、圧力値の好適な範囲は、温度値のより好適な範囲と組み合わされることができる。
【0016】
本発明のより良好な理解のために、方法の種々の要素を表示するために添付図面に現れる参照符号が以下で言及されるが、このことが本発明または図1に図示され下記にさらに詳細に記載される特定の実施形態への限定を構成することはない。
【0017】
(糖脱水の任意選択の工程)
有利には、本発明による工程a)において導入される、5-HMFおよびジメチルスルホキシド(DMSO)を含んでいる供給原料(1)は、5-HMFへの糖脱水の工程の間に得られることができ、この工程は、非常に有利には、本発明による工程a)の上流に配置され、1種または複数種の糖を含んでいる糖供給原料をDMSOおよび酸性脱水触媒と接触状態に置くことによって行われ、5-HMFおよびDMSOを少なくとも含んでいる流出物を生じさせ、当該流出物は、有利には、混合工程a)において導入される本発明による方法の供給原料(1)に相当する。本発明による方法は、場合によっては、5-HMFへの糖脱水の工程をこのように含んでよく、この工程は、工程a)の上流に配置される。
【0018】
用語「酸性脱水触媒」は、糖の5-HMFへの脱水を誘発することのできる、有機または無機の、均一または不均一のブレンステッド酸から選ばれる任意のブレンステッド酸触媒を意味する。
【0019】
好ましくは、酸性脱水触媒は、DMSO中pKa:0~5.0、好ましくは0.5~4.0、より好ましくは1.0~3.0を有するブレンステッド酸である。前記pKa値は、F.G. Bordwellらによる論文(J. Am. Chem. Soc., 1991, 113, 8398-8401)に定義される通りである。
【0020】
好ましくは、酸性脱水触媒は、HF、HCl、HBr、HI、HSO、HSO、HPO、HPO、HNO、HNO、HWO、HSiW1240、HPW1240、(NH(W1240)・xHO、HSiMo1240、HPMo1240、(NHMo24・xHO、HMoO、HReO、HCrO、HSnO、HSiO、HBO、HClO、HBF、HSbF、HPF、HFOP、ClSOH、FSOH、HN(SOF)、HIO、BF、AlCl、Al(OTf)、FeCl、ZnCl、SnCl、CrCl、CeCl、ErCl、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸、レブリン酸、メタンスルフィン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミン、安息香酸、パラ-トルエンスルホン酸、4-ビフェニルスルホン酸、リン酸ジフェニル、およびリン酸水素1,1’-ビナフチル-2,2’-ジイルから選ばれる。好ましくは、酸性脱水触媒は、HCl、HSO、HPO、HPO、HNO、AlCl、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルフィン酸、メタンスルホン酸およびトリフルオロメタンスルホン酸から選ばれる。
【0021】
用語「糖」は、6個の炭素原子を含有する糖(ヘキソース)を示すが、これは、オリゴ糖および単糖の形態での5個の炭素原子を含有する糖(ペントース)の供給原料中の存在を除外しない。特に、用語「糖」は、単独のまたは混合物としてのグルコースまたはフルクトース、スクロース、およびまた、オリゴ糖、例えば、セロビオース、マルトース、セルロースまたはさらにはイヌリンを示す。
【0022】
用いられる糖供給原料は、固体形態の糖であってもまたは糖水溶液であってもよい。例として、スクロースは、一般に、固体の形態で製造されるが、単独のまたは混合物としてのグルコースまたはフルクトースは、一般に、水溶液(シロップ)の形態で、例えば70重量%の糖で製造される。
【0023】
任意選択の脱水工程は、50~150℃、好ましくは60~140℃、好ましくは70~130℃、より好ましくは80~120℃の温度で実行される。好ましくは、任意選択の脱水工程は、1~0.001MPa、好ましくは0.1~0.01MPaの圧力で実行される。圧力および温度の条件に応じて、反応媒体は、混合物の泡立ち点よりも上または下にある。用語「泡立ち点」は、最初の気泡が液中に見られる圧力および温度の条件を示す。反応媒体が混合物の泡立ち点よりも上である場合、蒸気相は、反応器から取り出されることができ、場合によっては精留され、凝縮されて凝縮物を形成し、この濃縮物は、水-DMSO混合物を処理するための任意選択の工程f)へと送られることができる。
【0024】
好ましくは、酸性脱水触媒は、モルパーセント(モル%)として表される酸/糖で示される触媒の糖供給原料に相対するモル比:0.01~10モル%、好ましくは0.05~8モル%、好ましくは0.1~6モル%、好ましくは0.2~5モル%、より好ましくは0.3~4モル%、大いに好ましくは0.5~3モル%で脱水工程に導入される。
【0025】
有利には、任意選択の脱水工程の終結の際に得られた流出物は、5-HMFおよびDMSOを含む。DMSOは、一般に、脱水工程から得られ、かつ本発明による方法の工程a)において処理される流出物の30重量%~95重量%、好ましくは40重量%~90重量%、好ましくは50重量%~90重量%、より好ましくは55重量%~85重量%を表す。
【0026】
5-HMFは、任意選択の脱水工程から得られかつ本発明による方法の工程a)において処理される流出物の1重量%超、好ましくは10重量%超、好ましくは15重量%超、かつ、好ましくは50重量%未満、好ましくは40重量%未満、より好ましくは30重量%未満を表す。
【0027】
さらに、任意選択の脱水工程からの前記流出物は、工程a)において中間水性逆抽出物(9)と混合される前でも水を含有してよい。前記水は、脱水工程に由来してよい:例えば、糖の5-HMFへの脱水反応中に水が形成される(生じる5-HMFのモルあたり3モルの水が生じる)。この水は、実用上の理由のために、糖シロップが、例えば、水中約70重量%で用いられるケースにおいて、糖と共に導入されたものである場合もある。有利には、任意選択の脱水工程の間に、水-DMSO混合物が蒸気相に回収されてよい。前記水-DMSO混合物は、有利には、任意選択の工程f)に送られる。こうして、任意選択の脱水工程から得られかつ供給原料(1)として工程a)において導入される流出物は、一般には0.1重量%~30重量%、好ましくは0.1重量%~15重量%、より好ましくは0.1重量%~10重量%の割合で水を含有してよい。
【0028】
任意選択の脱水工程から得られかつ供給原料(1)として工程a)において導入される流出物は、不純物、特にフミン類を含有する場合もある。用語「フミン類」は、5-HMFの合成中に形成されるすべての望ましくないポリマー性化合物を指す。特に、フミン類は、転化された糖供給原料の30重量%未満、好ましくは20重量%未満を表す。
【0029】
任意選択の脱水工程は、種々の実施形態により実行されてよい。それ故に、この工程は、有利には、バッチ式または連続式で実行されてよい。糖供給原料の添加は、バッチ方法のケースにおいて漸進的(フェドバッチ)であってよく、または連続方法のケースにおいて直列の異なるCSTR反応器(Continuously Stirred Tank Reactor連続撹拌槽型反応器)において段階分けされていてよい。本方法は、閉鎖型反応チャンバまたは半開放型反応器において実行されることができる。
【0030】
(混合工程a))
本発明による方法は、任意選択に脱水工程からの供給原料(1)を、中間水性逆抽出物(9)の少なくとも一部分と接触状態に置く工程a)を含み、水性混合物(3)を得る。有利には、中間水性逆抽出物(9)は、本発明による方法の工程c)から得られる。
【0031】
好ましくは、5-HMFは、本発明による方法の工程a)において導入される供給原料(1)の1重量%超、好ましくは10重量%超、好ましくは15重量%超、かつ、好ましくは50重量%未満、好ましくは40重量%未満、より好ましくは30重量%未満を表す。
【0032】
好ましくは、DMSOは、工程a)において導入される供給原料(1)の30重量%~95重量%、好ましくは40重量%~90重量%、好ましくは50重量%~90重量%、より好ましくは55重量%~85重量%を表す。
【0033】
工程a)において導入される供給原料(1)は、水を、好ましくは0.1重量%~30重量%、好ましくは0.1重量%~15重量%、より好ましくは0.1重量%~10重量%の割合で含有してもよい。
【0034】
供給原料(1)は、場合によっては、フミン類を含有する可能性もある。フミン類は、特に、供給原料(1)の30重量%未満、好ましくは20重量%未満を表す。
【0035】
中間水性逆抽出物(9)または中間水性逆抽出物(9)の部分は、有利には、工程c)から得られる。それは、水、DMSOおよび場合による5-HMFを含む。有利には、前記中間水性逆抽出物(9)は、60重量%超の水、好ましくは70重量%超の水、好ましくは80重量%超の水を含有する。
【0036】
有利には、工程a)の終結の際に得られた水性混合物(3)は、10重量%~90重量%の水、好ましくは20重量%~80重量%の水、より好ましくは40重量%~75重量%の水を含有する。
【0037】
好ましくは、工程a)は、0~60℃、好ましくは10~30℃の温度、一般には室温、すなわち、18~25℃で実行される。
【0038】
工程a)は、場合によっては、水性流、例えば逆洗工程c)において用いられる水性溶媒の部分を給送されてもよい。
【0039】
工程a)の間の含水率を高めることによって、例えば、中間水性逆抽出物(9)の少なくとも一部分を導入することによって、供給原料(1)中に存在する場合があるフミン類のいくらかは、析出除去させることができる。前記供給原料(1)の中間水性逆抽出物(9)の少なくとも一部分との接触から得られた混合物は、こうして有利には、液-固分離工程に供され、懸濁固体粒子から分離された液体と、フミン類を含み、好ましくは方法から除外される固体残渣とを得るようにすることができる。こうした任意選択の液-固分離工程は、このように、析出したフミン類の除去を可能にする。得られた液体の少なくとも一部は、その後有利には、液-液抽出工程b)に送られ、工程b)に有利に送られる液の前記一部(または全部)は、水性混合物(3)に相当する。この任意選択の液-固分離工程は、好ましくは、0~60℃、好ましくは10~30℃、好ましくは15~25℃の温度、および一般には室温(すなわち、18~25℃)で実行される。任意選択の液-固分離工程は、単純な固-液分離であり、当業者に知られている任意の方法を介して、例えばフィルタープレス、ベルトフィルター、浄化器、デカンタまたは遠心分離機、例えばプレート型遠心分離機により実行されてよい。好ましくは、液-固分離工程は、ろ過であり、好ましくはフィルタープレスにより実行される。
【0040】
(抽出工程b))
本発明による方法は、抽出溶媒の流れ(4)の存在中での、工程a)の終結の際に得られた水性混合物(3)の液-液抽出の工程b)を含み、水性ラフィネート(5)と、中間有機抽出物(6)とを生じさせるようにする。
【0041】
工程b)において実行される液-液抽出は、有利には、水性混合物を有機抽出溶媒で洗浄することに相当する。好ましくは、工程b)において実行される液-液抽出は、工程a)において得られた水性混合物(3)の抽出溶媒の流れによる向流抽出である。この技術は、当業者には周知である。抽出は、例えば、ミキサ-デカンタアレイ、ランダム充填物または構造化充填物で満たされたカラム、プラグ流カラム、あるいはほかに撹拌型カラムにおいて実行されることができる。
【0042】
抽出工程b)は、有利には、0~60℃、好ましくは5~50℃、好ましくは10~40℃、より好ましくは15~30℃の温度で、および一般には室温(すなわち、18~25℃)で実行される。
【0043】
抽出溶媒の流れの水性混合物(3)に相対する割合(重量/重量)は、好ましくは0.2~5、好ましくは1~3、より好ましくは1.5~2.5である。
【0044】
工程b)において導入される抽出溶媒は、水非混和性有機溶媒から選ばれ、特に逆洗工程c)および逆抽出工程d)において2つの液相を形成するようにする。この特性は、方法に用いられる供給原料、逆抽出水および抽出溶媒の流量の相対的割合に大きく依存する。
【0045】
非限定的な態様において、抽出溶媒は、好ましくは、塩素化有機溶媒、エーテル類、エステル類、ケトン類および芳香族化合物の系統から選ばれる。好ましくは、抽出溶媒は、以下C1-C10と記される1~10個の炭素原子を含有する塩素化溶媒、2~10個の炭素原子を含有する(C2-C10)エーテル、4~10個の炭素原子を含有する(C4-C10)エステル、3~10個の炭素原子を含有する(C3-C10)ケトン、1~10個の炭素原子を含有する(C1-C10)アルデヒドまたはC4-C10芳香族化合物である。好ましくは、抽出溶媒は、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、チオフェン、アニソールおよびトルエンから選ばれる。大いに好ましくは、抽出溶媒は、メチルイソブチルケトンである。
【0046】
有利には、その後の工程において生じる有機溶媒流は、有利には、抽出工程b)にリサイクルされてよい。これらの有機溶媒流は、方法内で生じる不純物を含有している可能性がある。有利には、有機溶媒、定期的に蒸留されてよく、前記不純物の蓄積を回避するようにする。
【0047】
本発明の好適な実施形態によると、抽出溶媒の流れは、本発明による方法の工程の1つから得られた流れを含み、好ましくはそれからなる。この好適な実施形態によると、抽出溶媒の流れは、有機流出物、有利には逆抽出工程d)から得られかつ抽出工程b)にリサイクルされる有機流出物の少なくとも一部分、好ましくは全部を含み、好ましくはそれからなり、有機流出物、有利には逆抽出工程d)から得られる有機流出物の一部分または全部は、場合によっては、フレッシュな抽出溶媒、すなわち、方法に対して外部の抽出溶媒と混合されて、工程b)において導入される抽出溶媒の流れを構成することができる。
【0048】
抽出工程b)により、一方で、5-HMFが枯渇した水性流を、他方で、5-HMFに富んだ有機流を、得ることがこのように可能になり、当該水性流は、水性ラフィネート(5)と呼ばれ、供給原料中に最初に含有されていたDMSOの大部分を含有し、当該有機流は、中間有機抽出物(6)と呼ばれ、供給原料(1)中に最初に含有されていた5-HMFの大部分と、抽出溶媒とを含有する。この中間有機抽出物(6)は、DMSOを含有してもよい。好ましくは、前記抽出物は、5-HMFおよびDMSOを、5-HMF/DMSO重量比50/50~95/05、好ましくは55/45~90/10、好ましくは60/40~85/15、より好ましくは65/35~80/20で含有する。
【0049】
有利には、中間有機抽出物(6)は、逆洗工程c)に送られる。
【0050】
(逆洗工程c))
本発明による方法は、有利には中間有機抽出物(6)の水性溶媒(7)による逆洗の工程c)を含み、中間水性逆抽出物(9)と、5-HMFおよび有機溶媒を含んでいる有機ラフィネート(8)とを生じさせる。有機溶媒は、特に、少なくとも部分的に、抽出溶媒から構成され、場合によっては、DMSOを、好ましくは少量で含んでよい。有利には、中間水性逆抽出物(9)は、部分的にまたは全体的に工程a)に送られる。
【0051】
工程c)における水性溶媒の導入は、当業者の一般的知識に従って逆洗を実行するように実行される。水性溶媒の導入は、水性溶媒の量が、コストを削減するためにできるだけ少ないが、有機ラフィネート(8)中の低いDMSOの重量含有率:好ましくは5-HMFの重量に相対して20.0重量%以下、優先的には5-HMFの重量に相対して15.0重量%以下、好ましくは5-HMFの重量に相対して0.01重量%~15.0重量%、好ましくは5-HMFの重量に相対して0.01重量%~10.0重量%を確実にするために十分であるように実行される。
【0052】
有利には、工程c)において導入される水性逆洗溶媒は、95重量%超の水、好ましくは98重量%超の水を含む(100%が最大である)。水性溶媒は、場合によっては、DMSOを含んでよい。逆洗効率は全て、水性逆洗溶媒中に存在するDMSOの量が低いほど、より高くなる。好ましくは、水性溶媒は、DMSO、好ましくは1.0重量%未満のDMSO、より好ましくは0.1重量%未満のDMSOを含んでよい。有利には、水性逆洗溶媒は、方法内で生じた水-DMSO混合物を処理する任意選択の工程f)および/または任意選択の濃縮工程e)に由来する。本発明の好適な実施形態において、工程b)において生じた水およびDMSOから構成される水性ラフィネート(5)は、有利には、特に蒸留を含む任意選択の工程f)において処理される。この任意選択の工程f)から得られた水リッチ蒸留物(7)は、有利には、工程c)において水性逆洗溶媒として用いられる;前記水リッチ蒸留物は、残留量のDMSO、好ましくは1重量%未満、好ましくは0.1重量%未満のDMSOを含有してもよい。蒸留物中の残留量のDMSOは、任意選択の工程f)の蒸留が、特に10段よりも多い蒸留段数および好適な再沸騰および環流速度により、より効率よく実行されるほど比例的に低くなる。
【0053】
逆洗工程c)は、有利には、導入された水性溶媒(7)に対して向流での、工程b)において得られた中間有機抽出物(6)の液-液抽出である。この技術は、当業者に周知である。抽出は、例えば、ミキサ-デカンタアレイ、ランダム充填物または構造化充填物で満たされたカラム、プラグ流カラム、あるいはほかに撹拌カラムにおいて実行されることができる。
【0054】
工程c)は、一般的に、0~60℃、好ましくは5~50℃、好ましくは10~40℃、より好ましくは15~30℃の温度で、および一般には室温(すなわち、18~25℃)で実行される。
【0055】
水性溶媒の中間有機抽出物(6)に相対する質量比(重量/重量)は、好ましくは0.04~5、好ましくは0.07~3、より好ましくは0.1~1である。
【0056】
工程c)は、水性流と、有機ラフィネート(8)とを生じさせ、当該水性流は、DMSOに富んでおり、中間水性逆抽出物(9)と呼ばれ、好ましくは、最低60重量%の水、好ましくは最低80重量%の水を含有し,当該有機ラフィネート(8)は、有利にはDMSOが枯渇している。前記中間水性逆抽出物(9)は、有利には、部分的にまたは好ましくは全体的に混合工程a)に送られる。得られた有機ラフィネート(8)のDMSO重量含有率は、好ましくは5-HMFの重量に相対して20.0重量%以下、好ましくは5-HMFの重量に相対して15.0重量%以下、好ましくは5-HMFの重量に相対して5.0重量%以下、好ましくは5-HMFの重量に相対して4.0重量%以下、好ましくは5-HMFの重量に相対して3.0重量%以下である。
【0057】
本発明によると、工程c)において生じた有機ラフィネート(8)は、逆抽出工程d)に送られる。
【0058】
(逆抽出工程d))
本発明による方法は、有機ラフィネート(8)の水性流(10)による逆抽出の工程d)を含み、5-HMFを含んでいる水性逆抽出物(11)と、抽出溶媒を含んでいる有機流出物とを生じさせる。
【0059】
水性逆抽出物(11)は、5-HMFを、好ましくは有機化合物の全体に相対して、すなわち、5-HMF、DMSOおよび抽出溶媒の全体に相対して、40重量%以上、好ましくは50重量%以上の含有率で含む。
【0060】
有利には、本発明による方法は、非常に高純度の5-HMFの水性逆抽出物を生じさせ、非常に少量のフミン類、より特定的には痕跡量(すなわち、定量可能ではないか若しくはさらにはHPLC液体クロマトグラフィーによって検出されない量)のフミン類を含有するか、またはさらにはフミン類を含まない。
【0061】
水性流(10)は、工程d)において導入され、当業者の一般的知識に従い逆抽出を実施する。導入される水性流(10)の量は、コストを削減するため可能な限り低くなるように、しかし5-HMFの効率的な逆抽出を確実にするために十分であるように、調節される。好適には、工程d)に給送する有機ラフィネート(8)中に含有される5-HMFの最低90重量%、好ましくは最低95重量%、大いに好ましくは最低98重量%が逆抽出され、したがって、有利には水性逆抽出物(11)中に存在する。
【0062】
工程d)において行われる逆抽出は、好ましくは、工程c)の終結の際に得られた有機ラフィネート(8)の水性流(10)による向流抽出である。この技術は、当業者には周知である。抽出は、例えば、一連のミキサ-沈殿槽、バルク充填物または構造化充填物で満たされたカラム、パルスカラム、あるいは撹拌カラムにおいて行われてよい。
【0063】
逆抽出工程d)は、好ましくは、0~60℃、好ましくは5~50℃、好ましくは10~40℃、好ましくは15~30℃の温度で、より特定的には室温(すなわち、18~25℃)で行われる。
【0064】
水性流(10)の有機ラフィネート(8)に相対する割合(重量/重量)は、好ましくは0.5~5、好ましくは1.0~3.0、好ましくは1.5~2.5である。逆抽出工程d)において加えられる水性流中の水の量は、好ましくは、逆洗工程c)において加えられる水性溶媒中の水の量よりも多い。
【0065】
有利には、逆抽出工程d)において導入される水性流(10)は、最低95重量%の水、好ましくは最低98重量%の水を含む(100%が最大である)。水性流は、場合によっては、DMSOを含んでよい。好適には、水性流は、1.0重量%未満のDMSO、好ましくは0.1重量%未満のDMSOを含む。有利には、水性逆抽出溶媒は、方法内で生じた水-DMSO混合物の処理の任意選択の工程f)および/または任意選択の濃縮工程e)に少なくとも部分的に由来する。本発明の1つの特定の実施形態において、工程b)において生じた水およびDMSOから構成される水性ラフィネート(5)は、有利には、蒸留を特に含む任意選択の工程f)において処理され、この任意選択の工程f)の終結の際に得られた水リッチ蒸留物は、有利には、少なくとも部分的に、工程d)において水性逆抽出流として用いられる;この任意選択の工程f)の終結の際に得られた水リッチ蒸留物は、残留量のDMSO、好ましくは1重量%未満、好適には0.1重量%未満のDMSOを含有してもよい。
【0066】
逆抽出工程d)の終結の際に、水性逆抽出物(11)に相当する、5-HMFを含んでいる水溶液、および抽出溶媒を含んでいる有機流出物が得られる。本発明による方法は、このように、高純度の5-HMFの水溶液を生じさせ、、すなわち、非常に少量のフミン類を痕跡で含んでいるか、またはさらにはフミン類を含まない。
【0067】
工程d)において生じた水性逆抽出物(11)は、有利には、全体的にまたは部分的に、任意選択の濃縮工程e)に送られてよい。有機流出物は、次は、全体的にまたは部分的に抽出工程b)にリサイクルされてよく、抽出溶媒流(4)の少なくとも一部分を形成する。
【0068】
(任意選択の逆抽出濃縮工程e))
有利には、水性逆抽出物(11)は、水性流出物(13)の除去によって5-HMFの濃縮済み水溶液(12)に濃縮されてよい。
【0069】
有利には、水溶液の濃縮、すなわち、水性流出物(13)の除去は、当業者に知られている任意の方法によって行われ、例えば、蒸発または蒸留あるいはほかに逆浸透等がある。
【0070】
有利には、任意選択の工程e)の終結の際に得られた5-HMFの濃縮済み水溶液(12)は、30重量%以上、好ましくは40重量%以上、好適には50重量%以上の含有率で5-HMFおよび水を含む。好ましくは、任意選択の工程e)の終結の際に得られた5-HMFの水溶液(12)は、90重量%以下の5-HMF、好ましくは85重量%以下の5-HMF、好適には80重量%以下の5-HMFを含み、100%までの残部は、非常に有利には本質的に水である。任意選択の工程e)の終結の際に得られた5-HMFの水溶液(12)は、したがって、大いに好ましくは最低10重量%の水、好ましくは最低15重量%の水、好適には最低20重量%の水、かつ、大いに好ましくは最大70重量%の水、より特定的には最大50重量%の水、とりわけ最大30重量%の水を含む。好適には、濃縮済み水溶液(12)のDMSO含有率は、非常に低く、5-HMFの重量に相対して、好ましくは0.1重量%未満、より好ましくは500重量ppm未満、好適には100重量ppm未満である。
【0071】
任意選択の濃縮工程e)の終結の際に得られた水性流出物(13)は、好ましくは、本質的に水からなり、好ましくは95重量%超の水、好ましくは98重量%超の水を含有する(100%が最大である)。水性流出物(13)は、有利には、逆洗工程c)および/または逆抽出工程d)にリサイクルされてよい。
【0072】
(水-DMSO混合物を処理する任意選択の工程f))
本発明による方法は、本発明による方法の工程によって発生した水-DMSO混合物を処理する任意選択の工程f)を含んでよく、処理済み水性流出物(蒸留物としても知られる)を生じさせ、これは、全体的に若しくは部分的に逆洗工程c)においておよび/または逆抽出工程d)において用いられてよい。この工程は、DMSOリッチ流れおよび不純物流を生じさせる場合もある。
【0073】
任意選択の工程f)の終結の際に生じた処理済み水性流出物中のDMSOの残留量は、すべて、より少なくなる。蒸留が当業者の知識に従って効率的な態様で実行されるからである。
【0074】
本方法によって発生した水-DMSO混合物は、特に、工程b)において生じた水性ラフィネート(5)、および、本方法が糖類の5-HMFへの脱水の任意選択の工程を組み込む場合には、そのような工程から得られた水-DMSO混合物を示す。
【0075】
本方法によって発生した水-DMSO混合物は、特に、工程b)において生じた水性ラフィネート(5)、および場合によっては、本方法が糖類の5-HMFへの脱水の任意選択の工程を組み込む場合には、そのような工程から得られた水-DMSO混合物を示す。
【0076】
好ましくは、水-DMSO混合物を処理する任意選択の工程f)は、水-DMSO混合物を蒸発させて、任意の不純物、特に、重質不純物、例えば、フミン類を除去するためのセクションを含み、蒸留セクションによって続けられる。
【0077】
蒸発セクションは、好ましくは80~120℃、優先的には100~110℃の温度、および好ましくは0.002~0.020MPa、優先的には0.005MPa~0.010MPaの圧力で操作される。好ましくは、蒸発セクションは、薄膜エバポレータ(Thin Film Evaporator:TFE)を用いる。
【0078】
蒸留セクションは、有利には、蒸留塔またはいくつかの分離機器を用いる。好ましくは、任意選択の工程f)の蒸留セクションは、有利には、蒸留塔において操作され、その際の塔頂温度は、好ましくは25~60℃、優先的には45~55℃、例えば約50℃であり、その際の塔底温度は、好ましくは80~120℃、優先的には105~115℃、例えば約110℃であり、その際の圧力は、好ましくは0.001~0.05MPa、優先的には0.005~0.02MPa、より好ましくは0.008~0.012MPaであり、これに伴う環流比は、好ましくは0.01~0.50、より好ましくは0.05~0.10である。
【0079】
それ故に、工程b)において生じかつ水およびDMSOを含んでいる水性ラフィネート(5)と、場合による、任意選択の脱水工程において回収された水-DMSO混合物とは、蒸発させられ、次いで、気相は、回収され、蒸留され、好ましくは減圧下に蒸留され、一方でのDMSOリッチ残渣と、他方での水リッチ蒸留物(処理済み水性流出物に相当する)とを生じさせる。用語「リッチ」は、ここでは、95重量%超、好ましくは98重量%超を意味する。水リッチ蒸留物、または処理済み水性流出物の一部または全部は、有利には、水性溶媒として工程c)にリサイクルされて逆洗工程を実行し、および/または水性流として逆抽出工程d)にリサイクルされてよい。水リッチ蒸留物は、全体的にまたは部分的に工程a)に導入される水としてリサイクルされてもよい。
【0080】
DMSOリッチ残渣は、有利には、直接的にまたは蒸留の後にかのどちらかで任意選択の脱水工程に導入されてよく、蓄積する可能性がある任意の重質生成物が除去されることを可能にする。
【0081】
下記の実施例および添付図面は、本発明を例示するが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0082】
(図面のリスト)
図1は、本発明による方法の実施形態を図示する。5-HMF、DMSOおよびフミン類を含有している供給原料(1)は、混合工程a)に送られ、工程c)からの中間水性逆抽出物(9)と接触状態に置かれ、その後、析出したフミン類(2)は、液-固のろ過によって混合物から除去される。工程a)の終結の際に得られた水性混合物(3)は、抽出工程b)に送られ、工程d)からリサイクルされた抽出溶媒(4)と接触状態に置かれ、抽出溶媒を用いて水性混合物から5-HMFを抽出し、水性ラフィネート(5)と、中間有機抽出物(6)とを得る。中間有機抽出物(6)は、逆洗工程c)において水性溶媒(7)と接触状態に置かれる。得られた有機ラフィネート(8)は、逆抽出工程d)に送られ、水性流(10)と接触状態に置かれ、水から5-HMFを抽出し、水性流(11)を形成する。水性流(11)は、次いで有利には、工程e)において濃縮され、5-HMFの水溶液(12)と、水性流出物(13)とを得る。
【0083】
(実施例)
(実施例1:本発明に合致する方法)
実施例1は、図1の本発明の実施形態による方法の例によって得られる方法および結果を提示する。
【0084】
酸触媒(メタンスルホン酸)をDMSOと混合し、糖供給原料とのモル比(触媒/糖供給原料)が1モル%となるようにし、それらを120℃の温度とする。フルクトースを、70重量%の糖の水溶液(シロップ)の形態で、DMSO/フルクトースの質量比2.3で導入する。圧力を0.035MPaに維持する。これらの圧力および温度の条件下に、反応媒体は、混合物の泡立ち点よりも上であり、そのため、蒸気相を反応器から取り出すことができ、凝縮し、凝縮物を形成する。供給原料の漸進的な2時間の期間をかけた添加によって糖脱水工程をバッチ式で実行する。添加終了後さらに2時間にわたって、反応媒体を上に指し示された温度および圧力に維持する。
【0085】
脱水工程から得られた流出物は、74重量%のDMSO、21重量%の5-HMFおよび3重量%の水を含有し、関与したフルクトースに相対する5-HMFのモル収率81%を与える。反応媒体中に可溶なポリマー性化合物(フミン類と呼ばれる)を、5重量%の量で形成した。この脱水工程の間に、水-DMSO混合物を蒸気相中に回収する。前記水-DMSO混合物の組成は、DMSO32重量%および水68重量%である。この水-DMSO混合物を減圧下に蒸留して、痕跡量のみのDMSOを含有している水を生じさせる。
【0086】
供給原料(1)に相当する脱水工程からの液状流出物を、室温において水と接触状態に置く工程a)に関与させ、混合物を得、当該混合物のDMSO/水の質量比率は、1に等しい。
【0087】
工程a)からの混合物を、細孔サイズが10μmであるポリプロピレンガーゼフィルタを備えたブフナーフィルター上で液-固分離工程に供する。この液-固分離工程を室温で実行する。液-固分離工程の間に、ろ過された混合物の重量(kg)当たり7.5gの「フミン類」固体残渣を、水性混合物(3)に相当する均質な液相と共に回収する。水性混合物(3)は、43重量%のDMSO、12重量%の5-HMF、43重量%の水から構成され、および不純物(約2重量%のフミン類)を含む。
【0088】
工程a)から得られた水性混合物(3)を、撹拌ガラスカラム(ECRまたはKeuhniタイプ)における向流液-液抽出工程b)に供する。当該撹拌ガラスカラムは、高さ225mmおよび内径32mmの8個のセクションを含み、下方デカンタおよび上方デカンタも含んでいる。有効高さは、約1.8mであり、および合計のカラム高さは、2.60mである。合計容積は、約3リットルである。有機抽出溶媒は、メチルイソブチルケトン(methyl isobutyl ketone:MIBK)である。水性混合物(3)をデバイスの上部に導入し、上方に向かう有機相中に分散させる。カラム入り口流量を、DMSO-水相について2.2kg/hおよび有機抽出溶媒について4.1kg/hに設定する。MIBK溶媒の割合(重量/重量)は、工程b)から得られた水性混合物(3)に相対して1.9である。温度は、20℃であり、撹拌速度は、300rpmである。
【0089】
工程b)の終結の際に、5-HMF枯渇水性ラフィネート(5)と、フラン化合物に富んだ中間有機抽出物(6)とを回収する。この5-HMF枯渇水性ラフィネート(5)は、約48重量%の水、48.5重量%のDMSO、0.4重量%の5-HMF、1.8重量%のMIBK、およびフミン不純物を含有し、中間有機抽出物(6)は、2.8重量%のDMSO、5.9重量%の5-HMF(5-HMF/DMSO重量比:約68/32)および91.3重量%のMIBKを含有する。抽出収率は、5-HMFについて97%、およびDMSOについて13%である。
【0090】
液-液抽出工程b)から得られた中間有機抽出物(6)を、同じタイプの抽出デバイス(ECRまたはKuehniタイプの撹拌カラム)における逆洗工程c)に供する。前記有機抽出物を21.5℃で下降純水相中に分散させる。カラム入り口流量を、有機抽出物について5kg/hおよび水性相について1.5kg/hに設定する。水性逆洗溶媒として導入された水の中間有機抽出物に相対する割合(重量/重量)は、0.3である。
【0091】
逆洗工程c)の終結の際に、DMSO富化中間水性逆抽出物(9)と、有機ラフィネート(8)とを回収する。このDMSO富化中間水性逆抽出物(9)は、86重量%の水、7重量%のDMSO、5重量%の5-HMFおよび2重量%のMIBKを含有し、有機ラフィネート(8)は、0.092重量%のDMSO、4.3重量%の5-HMF(すなわち、5-HMFの重量に相対して2.1重量%のDMSO)および88重量%のMIBKを含有し、逆洗収率:5-HMFについて27重量%およびDMSOについて95重量%を与える。
【0092】
逆洗工程c)から得られた有機ラフィネート(8)を、同じタイプの抽出デバイス(ECRまたはKuehniタイプ撹拌カラム)において液-液逆抽出工程d)に供する。前記有機ラフィネート(8)を、21.5℃および300rpmで下降純水相中に分散させる。カラム入り口流量を、有機ラフィネートについて2.2kg/h、水性相について4.4kg/hに設定する。工程d)において導入される水の有機ラフィネート(8)に相対する割合(重量/重量)は2である。
【0093】
逆抽出工程d)の終結の際に、以下が回収される:5-HMFが枯渇した有機ラフィネートおよび5-HMFに富んだ水溶液(11);当該有機ラフィネートは、0重量%のDMSO、0.15重量%の5-HMFおよび96重量%のMIBKを含有しており、当該水溶液(11)は、0.045重量%のDMSO、2.0重量%の5-HMF、1.6重量%のMIBKおよびおおよそ96.4重量%の水を含有している。抽出収率は、5-HMFについて97%である。水溶液(11)は、フミン類を含まないかまたはそれらを(液体クロマトグラフィーまたはHPLCによって検出されない)痕跡の形態でのみ含む。
【0094】
水溶液(11)は、その後、蒸留によって濃縮されて、78重量%の5-HMFを含んでいる濃縮済み水溶液(12)と、水性流出物(13)とを与える。
【図面の簡単な説明】
【0095】
図1】本発明による方法の実施形態を図示する。
図1
【国際調査報告】