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特表2024-547104放射線照射システム及び載置台制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】放射線照射システム及び載置台制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
A61N5/10 M
A61N5/10 P
A61N5/10 T
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537884
(86)(22)【出願日】2022-12-19
(85)【翻訳文提出日】2024-07-25
(86)【国際出願番号】 CN2022139954
(87)【国際公開番号】W WO2023116612
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】202111579574.5
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202111579834.9
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520417207
【氏名又は名称】中硼(厦▲門▼)医▲療▼器械有限公司
【氏名又は名称原語表記】Neuboron Therapy System Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.2060 Wengjiao West Road, Haicang District Xiamen, Fujian Provance, 361026 P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】▲貢▼秋平
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼渊豪
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AA01
4C082AC07
4C082AE01
4C082AL06
4C082AN02
(57)【要約】
本発明は放射線照射システム及び載置台制御方法を提供する。放射線照射システムは、放射線生成装置と、制御装置と、シミュレーション位置決め室と、照射室と、それぞれシミュレーション位置決め室、照射室内に設置された同じ第1、第2載置台と、第1、第2載置台を支持する同じ第1、第2載置台位置決め装置とを含み、被照射体は、第1、第2載置台上に同じセットアップを有し、シミュレーション位置決め室内には、第1載置台位置決め装置により第1載置台のシミュレーション位置決め位置を決定し、照射室内に、制御装置は、第2載置台位置決め装置が第2載置台をシミュレーション位置決め位置に移動させるように制御し、第2載置台の照射位置を決定し、第2載置台上の被照射体は、照射位置でビームの照射を受ける。シミュレーション位置決め室内のシミュレーション位置決めにより、照射室で被照射体を位置決めする時間を節約し、照射室の利用率を向上させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線生成装置と、制御装置と、シミュレーション位置決め室と、照射室と、それぞれ前記シミュレーション位置決め室、照射室内に設置された同じ第1、第2載置台とを含み、前記放射線生成装置は、ビームを生成し、ビーム出口を有し、前記ビーム出口は、前記照射室内に位置し、前記シミュレーション位置決め室内には、前記ビーム出口と同じシミュレーションビーム出口が設置された放射線照射システムであって、前記シミュレーション位置決め室及び前記照射室内には、それぞれ、前記第1、第2載置台を支持することができる第1、第2載置台位置決め装置が更に設置され、前記第1、第2載置台位置決め装置により、それぞれ、前記第1、第2載置台及び前記第1、第2載置台上の被照射体のシミュレーション位置決め及び照射位置決めを行い、前記第1、第2載置台位置決め装置は、それぞれ、前記シミュレーション位置決め室、前記照射室内に同じ設置を有し、前記シミュレーションビーム出口、前記ビーム出口に対して同じ位置関係を有し、前記制御装置は、それぞれ、前記第1、第2載置台位置決め装置に接続され、前記被照射体は、前記第1、第2載置台上に同じセットアップを有し、前記シミュレーション位置決め室内には、前記第1載置台位置決め装置により前記第1載置台のシミュレーション位置決め位置を決定し、前記照射室内に、前記制御装置は、前記第2載置台位置決め装置が前記第2載置台を前記シミュレーション位置決め位置に移動させるように制御し、前記第2載置台の照射位置を決定し、前記第2載置台上の前記被照射体は、前記照射位置で前記ビームの照射を受ける、ことを特徴とする放射線照射システム。
【請求項2】
前記放射線照射システムは、治療計画装置を更に含み、前記治療計画装置で作成された治療計画データに基づいて前記シミュレーション位置決め室内の前記第1載置台上の前記被照射体のセットアップを決定し、前記治療計画装置又は前記制御装置は、前記治療計画データ及び前記被照射体のセットアップに基づいて前記第1載置台の治療計画座標を計算し、前記制御装置は、前記第1載置台位置決め装置により前記第1載置台を前記治療計画座標から決定された治療計画位置に移動させ、前記第1載置台の前記シミュレーション位置決め位置を決定する、ことを特徴とする請求項1に記載の放射線照射システム。
【請求項3】
前記シミュレーション位置決め室及び前記照射室内には、それぞれ、同じでかつ同様の位置関係を有するレーザ位置決め装置が設置され、前記被照射体には、前記レーザ位置決め装置で発生したレーザが前記被照射体に当たる位置に対応するマークが設置され、前記マークに基づいて、前記被照射体が前記シミュレーション位置決め室及び前記照射室内に同じ位置を有することを決定することができる、ことを特徴とする請求項2に記載の放射線照射システム。
【請求項4】
前記シミュレーション位置決め室及び前記照射室内には、それぞれ、同じでかつ同様の位置関係を有する光学検証装置が設置され、前記光学検証装置は、前記載置台の位置及び前記被照射体の画像を収集し、データを前記制御モジュールに伝送して前記治療計画データと比較することができる、ことを特徴とする請求項1に記載の放射線照射システム。
【請求項5】
前記放射線照射システムは、転送トロリー及び転送トロリー位置決め装置を更に含み、前記第1、第2載置台は、同一の載置台であり、前記転送トロリーによって前記載置台を支持し、位置決めし、前記シミュレーション位置決め室から前記照射室に転送することができ、前記転送トロリーは、前記転送トロリー位置決め装置によって前記シミュレーション位置決め室及び前記照射室内にそれぞれ同じ開始位置に固定される、ことを特徴とする請求項1に記載の放射線照射システム。
【請求項6】
前記放射線照射システムは、載置台ロック機構を更に含み、前記同じ開始位置に、前記制御装置は、前記第1、第2載置台位置決め装置を制御してそれぞれ前記載置台に接続させ、前記載置台ロック機構により前記載置台にそれぞれロックさせることができる、ことを特徴とする請求項5に記載の放射線照射システム。
【請求項7】
前記放射線照射システムは、中性子捕捉療法システムであり、前記放射線生成装置は、中性子生成装置及びビーム整形体を含み、前記ビーム整形体は、前記中性子生成装置で生成された中性子線を所定のビーム品質に調整することができ、前記中性子生成装置で生成された中性子線は、前記ビーム整形体により前記照射室内の前記載置台上の前記被照射体に照射される、ことを特徴とする請求項1に記載の放射線照射システム。
【請求項8】
前記中性子生成装置は、加速器及びターゲットを含み、前記加速器によって加速して生成された荷電粒子線は、前記ターゲットと作用して中性子線を生成し、前記ビーム整形体は、反射体、減速体、熱中性子吸収体、放射遮蔽体及びビーム出口を含み、前記減速体は、前記ターゲットから生成された中性子を熱外中性子エネルギー領域に減速させ、前記反射体は、前記減速体を囲み、逸脱した中性子を前記減速体に導いて熱外中性子ビームの強度を向上させ、前記熱中性子吸収体は、治療時に浅層正常組織に対する余計な線量となることを回避するために、熱中性子を吸収し、前記放射遮蔽体は、前記ビーム出口以外の部分からしみ出る中性子及び光子を遮蔽する、ことを特徴とする請求項7に記載の放射線照射システム。
【請求項9】
放射線生成装置と、治療計画装置と、シミュレーション位置決め室と、照射室と、それぞれ前記シミュレーション位置決め室、照射室内に設置された同じ第1、第2載置台とを含む放射線照射システムの載置台制御方法であって、前記シミュレーション位置決め室及び前記照射室内には、それぞれ、前記第1、第2載置台を支持することができる第1、第2載置台位置決め装置が設置され、前記第1、第2載置台位置決め装置は、それぞれ、前記シミュレーション位置決め室及び前記照射室内に同じ設置及び同じ位置関係を有し、前記載置台制御方法は、
前記治療計画装置で作成された治療計画データに基づいて被照射体を前記第1載置台にセットアップして固定し、前記治療計画データ及び前記被照射体のセットアップに基づいて前記第1載置台の治療計画位置を計算するステップと、
前記第1載置台位置決め装置が前記第1載置台を前記治療計画位置に移動させるように制御し、シミュレーション位置決め位置を決定するステップと、
前記第1載置台と同じように前記被照射体を前記第2載置台にセットアップし、前記第2載置台位置決め装置が前記第2載置台を前記シミュレーション位置決め位置に移動させるように制御し、照射位置を決定し、前記照射位置で前記第2載置台上の前記被照射体に対して前記放射線生成装置で生成されたビームを照射するステップとを含む、ことを特徴とする載置台制御方法。
【請求項10】
前記放射線照射システムは、転送トロリー及び転送トロリー位置決め装置を更に含み、前記第1、第2載置台は、同一の載置台であり、前記載置台制御方法は、
前記被照射体を前記載置台にセットアップする前に、
前記転送トロリー位置決め装置により前記転送トロリーを前記シミュレーション位置決め室内に固定し、前記載置台を前記転送トロリーに配置して位置決めすることにより、前記載置台を初期位置に位置させるステップと、
前記シミュレーション位置決め室内に前記第1載置台位置決め装置を前記載置台に接続し、前記載置台にロックするステップと、
前記シミュレーション位置決め位置を決定した後に、
前記載置台を前記初期位置に移動させ、前記転送トロリーによって支持するステップと、
前記第1載置台位置決め装置と前記載置台とのロックを解除し、前記載置台及び前記載置台上の被照射体を前記照射室に移動させるステップと、
前記照射室内に前記転送トロリー位置決め装置により前記載置台を前記初期位置に位置させ、前記第2載置台位置決め装置を前記載置台に接続し、前記載置台にロックするステップとを更に含む、請求項9に記載の載置台制御方法。
【請求項11】
放射線生成装置及び載置台を含み、前記放射線生成装置は、ビームを生成し、ビーム出口を有し、前記ビームは、前記ビーム出口から出て前記載置台上の被照射体に照射される放射線照射システムであって、載置台位置決め装置及び制御装置を更に含み、前記制御装置は、前記載置台位置決め装置に接続され、前記載置台は、前記載置台位置決め装置によって支持され、照射位置及び終了位置を有し、前記被照射体は、前記載置台に前記照射位置で前記ビームの照射を受け、前記載置台は、前記終了位置で前記ビーム出口から離れ、前記制御装置は、前記ビームの照射が終了した後に、前記載置台位置決め装置が前記載置台を前記照射位置から前記終了位置に移動させるように制御することができる、ことを特徴とする放射線照射システム。
【請求項12】
前記載置台位置決め装置は、ロボットアームを含み、前記載置台は、前記ロボットアームに接続され、前記ロボットアームによって支持され、前記制御装置は、前記ビームの照射が終了した後に、前記ロボットアームを制御して、照射位置にある時の前記載置台の地面に対する高さに比べて、前記載置台の地面に対する高さを変化させることができる、ことを特徴とする請求項1に記載の放射線照射システム。
【請求項13】
前記載置台位置決め装置は、リニア軸を更に含み、前記ロボットアームは、前記リニア軸と載置台との間に設置され、前記載置台を前記ロボットアームにより前記リニア軸に接続し、前記載置台をロボットアームと共に前記リニア軸に沿って平行移動させることができ、前記制御装置は、前記ビームの照射が終了した後に、前記リニア軸を制御して前記載置台を前記リニア軸に平行な延在方向に沿って前記照射位置から前記ビーム出口に対して離れて移動させるか又は前記ロボットアームを制御して前記載置台を前記載置台の延在方向が前記リニア軸の延在方向とほぼ平行となる位置まで移動させる、ことを特徴とする請求項2に記載の放射線照射システム。
【請求項14】
前記終了位置では、前記載置台から前記ビーム出口の中心が位置するビーム方向に垂直な平面までの最小距離が、2500mm以上であり、前記載置台の載置面から地面までの高さが、600mm未満である、ことを特徴とする請求項1に記載の放射線照射システム。
【請求項15】
前記制御装置は、ユーザインタフェース、システム制御モジュール及び位置決め制御モジュールを含み、前記ユーザインタフェースは、前記システム制御モジュールに接続され、前記システム制御モジュールは、前記位置決め制御モジュール、前記放射線生成装置に接続され、前記位置決め制御モジュールは、前記載置台位置決め装置に接続され、前記載置台位置決め装置の移動を制御することができ、予め決定された照射時間に達した後、前記システム制御モジュールは、前記放射線生成装置が前記被照射体へのビームの照射を停止するように制御することができ、情報を前記ユーザインタフェースに伝送して治療終了の状態指示を行うことができ、前記システム制御モジュールは、治療終了後に命令を前記位置決め制御モジュールに送信して、前記載置台位置決め装置が前記載置台を前記照射位置から前記終了位置に移動させるように制御することができる、ことを特徴とする請求項1に記載の放射線照射システム。
【請求項16】
前記放射線照射システムは、中性子捕捉療法システムであり、前記放射線生成装置は、中性子生成装置及びビーム整形体を含み、前記ビーム整形体は、前記中性子生成装置で生成された中性子線を所定のビーム品質に調整することができ、前記中性子生成装置で生成された中性子線は、前記ビーム整形体により前記載置台上の被照射体に照射される、ことを特徴とする請求項1に記載の放射線照射システム。
【請求項17】
前記中性子生成装置は、加速器及びターゲットを含み、前記加速器によって加速して生成された荷電粒子線は、前記ターゲットと作用して中性子線を生成し、前記ビーム整形体は、反射体、減速体、熱中性子吸収体、放射遮蔽体及びビーム出口を含み、前記減速体は、前記ターゲットから生成された中性子を熱外中性子エネルギー領域に減速させ、前記反射体は、前記減速体を囲み、逸脱した中性子を前記減速体に導いて熱外中性子ビームの強度を向上させ、前記熱中性子吸収体は、治療時に浅層正常組織に対する余計な線量となることを回避するために、熱中性子を吸収し、前記放射遮蔽体は、前記ビーム出口以外の部分からしみ出る中性子及び光子を遮蔽する、ことを特徴とする請求項6に記載の放射線照射システム。
【請求項18】
放射線生成装置及び載置台を含み、前記放射線生成装置は、ビームを生成し、ビーム出口を有し、前記ビームは、前記ビーム出口から出て前記載置台上の被照射体に照射される放射線照射システムの載置台制御方法であって、前記放射線照射システムは、載置台位置決め装置を更に含み、前記載置台は、前記載置台位置決め装置によって支持され、初期位置、照射位置及び終了位置を有し、前記載置台制御方法は、
前記初期位置で前記載置台位置決め装置を、前記被照射体が載置された前記載置台に接続し、ロックするステップと、
前記載置台位置決め装置が前記載置台を前記照射位置に移動させるように制御し、前記被照射体への前記ビームの照射を開始するステップと、
前記被照射体への前記ビームの照射を停止した後に、前記載置台位置決め装置が前記載置台を前記終了位置に移動させるように制御し、前記載置台が前記終了位置で前記ビーム出口から離れるステップとを含む、ことを特徴とする載置台制御方法。
【請求項19】
前記載置台位置決め装置は、リニア軸及びロボットアームを含み、前記載置台位置決め装置が前記載置台を前記終了位置に移動させるように制御するステップは、
前記リニア軸を制御して前記載置台を前記リニア軸の延在方向に沿って前記ビーム出口から離れて移動させるステップと、
前記ロボットアームを制御して前記載置台を前記載置台の延在方向が前記リニア軸の延在方向とほぼ平行となる位置まで移動させるステップと、
前記ロボットアームを制御して、照射位置にある時の前記載置台の地面に対する高さに比べて、前記載置台の地面に対する高さを変化させるステップとを含む、ことを特徴とする請求項8に記載の載置台制御方法。
【請求項20】
前記載置台制御方法は、
前記被照射体への前記ビームの照射が開始した後に、予め決定された照射時間に基づいて、前記放射線生成装置が前記被照射体へのビームの照射を停止するように制御し、治療終了の状態指示を行い、治療終了後に前記載置台位置決め装置が前記載置台を前記照射位置から前記終了位置に移動させるように制御するステップを更に含む、ことを特徴とする請求項8に記載の載置台制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、放射線照射システムに関し、本発明の別の態様は、放射線照射システムの載置台制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子科学の発展に従って、コバルト60、線形加速器、電子ビームなどの放射線療法は、既にがん治療の主な手段の1つとなった。しかしながら、従来の光子又は電子療法は、放射線そのものの物理的条件の制限で腫瘍細胞を殺すとともに、ビーム経路上の数多くの正常組織に損傷を与え、また、腫瘍細胞の放射線に対する感受性の度合いが異なるため、従来の放射線療法では、放射線耐性の高い悪性腫瘍(例えば、多形神経膠芽腫(glioblastoma multiforme)、黒色腫(melanoma))に対する治療効果が高くない。
【0003】
腫瘍の周囲の正常組織への放射線損傷を低減するために、化学療法(chemotherapy)における標的療法の構想が、放射線療法に適用され、また、放射線耐性の高い腫瘍細胞に対し、現在では、陽子線治療、重粒子治療、中性子捕捉療法などの、生物学的効果比(relative biological effectiveness、RBE)の高い放射線源が積極的に開発されている。このうち、中性子捕捉療法は、上記の2つの構想を結びつけたものである。例えば、ホウ素中性子捕捉療法では、ホウ素含有薬物が腫瘍細胞に特異的に集まり、高精度な中性子ビームの制御と合わせることで、従来の放射線と比べて、より良いがん治療オプションを提供する。
【0004】
放射線療法において治療台位置決め装置によりビームを治療台上の被照射体の体内の腫瘍細胞と位置合わせすることにより、高精度な治療を実施すると共に、被照射体の腫瘍細胞の周囲の正常組織に対する放射線損傷を最大限に抑える。中性子捕捉療法の過程において、治療台及び被照射体をどのように迅速かつ正確に位置決めするかは、療法の効果及び患者の治療快適度に関わる一方、中性子捕捉療法の過程において、治療台がビーム出口の付近に位置し、照射が終了した後にもビーム出口の付近に依然として大量の放射線が残留し、治療台をタイムリーに移さないと、余分な放射線量が与えられる。
【0005】
したがって、上記問題を解決するために、新たな技術手段を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明の一態様に係る放射線照射システムは、放射線生成装置と、制御装置と、シミュレーション位置決め室と、照射室と、それぞれ前記シミュレーション位置決め室、照射室内に設置された同じ第1、第2載置台とを含み、前記放射線生成装置は、ビームを生成し、ビーム出口を有し、前記ビーム出口は、前記照射室内に位置し、前記シミュレーション位置決め室内には、前記ビーム出口と同じシミュレーションビーム出口が設置され、前記シミュレーション位置決め室及び前記照射室内には、それぞれ、前記第1、第2載置台を支持することができる第1、第2載置台位置決め装置が更に設置され、前記第1、第2載置台位置決め装置により、それぞれ、前記第1、第2載置台及び前記第1、第2載置台上の被照射体のシミュレーション位置決め及び照射位置決めを行い、前記第1、第2載置台位置決め装置は、それぞれ、前記シミュレーション位置決め室、前記照射室内に同じ設置を有し、前記シミュレーションビーム出口、前記ビーム出口に対して同じ位置関係を有し、前記制御装置は、それぞれ、前記第1、第2載置台位置決め装置に接続され、前記被照射体は、前記第1、第2載置台上に同じセットアップを有し、前記シミュレーション位置決め室内には、前記第1載置台位置決め装置により前記第1載置台のシミュレーション位置決め位置を決定し、前記照射室内に、前記制御装置は、前記第2載置台位置決め装置が前記第2載置台を前記シミュレーション位置決め位置に移動させるように制御し、前記第2載置台の照射位置を決定し、前記第2載置台上の前記被照射体は、前記照射位置で前記ビームの照射を受ける。シミュレーション位置決め室内のシミュレーション位置決めにより、照射室で被照射体を位置決めする時間を節約し、照射室の利用率を向上させ、シミュレーション位置決め室及び照射室で同じ載置台位置決め装置を用いることにより、照射位置決めがより便利、迅速、正確になる。
【0007】
好ましくは、前記放射線照射システムは、治療計画装置を更に含み、前記治療計画装置で作成された治療計画データに基づいて前記シミュレーション位置決め室内の前記第1載置台上の前記被照射体のセットアップを決定し、前記治療計画装置又は前記制御装置は、前記治療計画データ及び前記被照射体のセットアップに基づいて前記第1載置台の治療計画座標を計算し、前記制御装置は、前記第1載置台位置決め装置により前記第1載置台を前記治療計画座標から決定された治療計画位置に移動させ、前記第1載置台の前記シミュレーション位置決め位置を決定する。載置台の治療計画位置の座標を自動的に計算し、載置台位置決め装置により載置台を治療計画位置に移動させるように自動的に制御することにより、位置決めの精度が高く、速度が速くなる。
【0008】
更に、前記シミュレーション位置決め室及び前記照射室内には、それぞれ、同じでかつ同様の位置関係を有するレーザ位置決め装置が設置され、前記被照射体には、前記レーザ位置決め装置で発生したレーザが前記被照射体に当たる位置に対応するマークが設置され、前記マークに基づいて、前記被照射体が前記シミュレーション位置決め室及び前記照射室内に同じ位置を有することを決定することができる。レーザ位置決め装置を設置することにより、位置決めがより便利で迅速になる。
【0009】
好ましくは、前記シミュレーション位置決め室及び前記照射室内には、それぞれ、同じでかつ同様の位置関係を有する光学検証装置が設置され、前記光学検証装置は、前記載置台の位置及び前記被照射体の画像を収集し、データを前記制御モジュールに伝送して前記治療計画データと比較し、結果に応じてリアルタイムに調整するか又は他の治療制御を実行することができる。
【0010】
好ましくは、前記放射線照射システムは、転送トロリー及び転送トロリー位置決め装置を更に含み、前記第1、第2載置台は、同一の載置台であり、前記転送トロリーによって前記載置台を支持し、位置決めし、前記シミュレーション位置決め室から前記照射室に転送することができ、前記転送トロリーは、前記転送トロリー位置決め装置によって前記シミュレーション位置決め室及び前記照射室内にそれぞれ同じ開始位置に固定される。
【0011】
更に、前記放射線照射システムは、載置台ロック機構を更に含み、前記同じ開始位置に、前記制御装置は、前記第1、第2載置台位置決め装置を制御してそれぞれ前記載置台に接続させ、前記載置台ロック機構により前記載置台にそれぞれロックさせることができる。
【0012】
好ましくは、前記放射線照射システムは、中性子捕捉療法システムであり、前記放射線生成装置は、中性子生成装置及びビーム整形体を含み、前記ビーム整形体は、前記中性子生成装置で生成された中性子線を所定のビーム品質に調整することができ、前記中性子生成装置で生成された中性子線は、前記ビーム整形体により前記照射室内の前記載置台上の前記被照射体に照射される。
【0013】
更に、前記中性子生成装置は、加速器及びターゲットを含み、前記加速器によって加速して生成された荷電粒子線は、前記ターゲットと作用して中性子線を生成し、前記ビーム整形体は、反射体、減速体、熱中性子吸収体、放射遮蔽体及びビーム出口を含み、前記減速体は、前記ターゲットから生成された中性子を熱外中性子エネルギー領域に減速させ、前記反射体は、前記減速体を囲み、逸脱した中性子を前記減速体に導いて熱外中性子ビームの強度を向上させ、前記熱中性子吸収体は、治療時に浅層正常組織に対する余計な線量となることを回避するために、熱中性子を吸収し、前記放射遮蔽体は、前記ビーム出口以外の部分からしみ出る中性子及び光子を遮蔽する。
【0014】
本発明の第2態様に係る放射線照射システムの載置台制御方法において、前記放射線照射システムは、放射線生成装置と、治療計画装置と、シミュレーション位置決め室と、照射室と、それぞれ前記シミュレーション位置決め室、照射室内に設置された同じ第1、第2載置台とを含み、前記シミュレーション位置決め室及び前記照射室内には、それぞれ、前記第1、第2載置台を支持することができる第1、第2載置台位置決め装置が設置され、前記第1、第2載置台位置決め装置は、それぞれ、前記シミュレーション位置決め室及び前記照射室内に同じ設置及び同じ位置関係を有し、前記載置台制御方法は、前記治療計画装置で作成された治療計画データに基づいて被照射体を前記第1載置台にセットアップして固定し、前記治療計画データ及び前記被照射体のセットアップに基づいて前記第1載置台の治療計画位置を計算するステップと、前記第1載置台位置決め装置が前記第1載置台を前記治療計画位置に移動させるように制御し、シミュレーション位置決め位置を決定するステップと、前記第1載置台と同じように前記被照射体を前記第2載置台にセットアップし、前記第2載置台位置決め装置が前記第2載置台を前記シミュレーション位置決め位置に移動させるように制御し、照射位置を決定し、前記照射位置で前記第2載置台上の前記被照射体に対して前記放射線生成装置で生成されたビームを照射するステップとを含む。シミュレーション位置決め室内のシミュレーション位置決めにより、照射室で被照射体を位置決めする時間を節約し、照射室の利用率を向上させ、載置台の治療計画位置の座標を自動的に計算し、シミュレーション位置決め室及び照射室で同じ載置台位置決め装置を用いて載置台の移動を自動的に制御することにより、照射位置決めがより便利、迅速、正確になる。
【0015】
好ましくは、前記放射線照射システムは、転送トロリー及び転送トロリー位置決め装置を更に含み、前記第1、第2載置台は、同一の載置台であり、前記制御方法は、前記被照射体を前記載置台にセットアップする前に、前記転送トロリー位置決め装置により前記転送トロリーを前記シミュレーション位置決め室内に固定し、前記載置台を前記転送トロリーに配置して位置決めすることにより、前記載置台を初期位置に位置させるステップと、前記シミュレーション位置決め室内に前記第1載置台位置決め装置を前記載置台に接続し、前記載置台にロックするステップと、前記シミュレーション位置決め位置を決定した後に、前記載置台を前記初期位置に移動させ、前記転送トロリーによって支持するステップと、前記第1載置台位置決め装置と前記載置台とのロックを解除し、前記載置台及び前記載置台上の被照射体を前記照射室に移動させるステップと、前記照射室内に前記転送トロリー位置決め装置により前記載置台を前記初期位置に位置させ、前記第2載置台位置決め装置を前記載置台に接続し、前記載置台にロックするステップとを更に含む。
【0016】
本発明の放射線照射システム及びその載置台制御方法によれば、シミュレーション位置決め室内のシミュレーション位置決めにより、照射室で被照射体を位置決めする時間を節約し、照射室の利用率を向上させ、シミュレーション位置決め室及び照射室で同じ載置台位置決め装置を用いることにより、照射位置決めがより便利、迅速、正確になる。
【0017】
本発明の第3態様に係る放射線照射システムは、放射線生成装置及び載置台を含み、前記放射線生成装置は、ビームを生成し、ビーム出口を有し、前記ビームは、前記ビーム出口から出て前記載置台上の被照射体に照射され、前記放射線照射システムは、載置台位置決め装置及び制御装置を更に含み、前記制御装置は、前記載置台位置決め装置に接続され、前記載置台は、前記載置台位置決め装置によって支持され、照射位置及び終了位置を有し、前記被照射体は、前記載置台に前記照射位置で前記ビームの照射を受け、前記載置台は、前記終了位置で前記ビーム出口から離れ、前記制御装置は、前記ビームの照射が終了した後に、前記載置台位置決め装置が前記載置台を前記照射位置から前記終了位置に移動させるように制御することができる。照射が終了した後に載置台をビーム出口から離れる位置まで移動させることにより、被照射体が治療終了後に残りの放射線の照射を受け続けることを回避し、不必要な放射線量を低減することができる。
【0018】
好ましくは、前記載置台位置決め装置は、ロボットアームを含み、前記載置台は、前記ロボットアームに接続され、前記ロボットアームによって支持され、前記制御装置は、前記ビームの照射が終了した後に、前記ロボットアームを制御して、照射位置にある時の前記載置台の地面に対する高さに比べて、前記載置台の地面に対する高さを変化させることができる。
【0019】
更に、前記載置台位置決め装置は、リニア軸を更に含み、前記ロボットアームは、前記リニア軸と載置台との間に設置され、前記載置台を前記ロボットアームにより前記リニア軸に接続し、前記載置台をロボットアームと共に前記リニア軸に沿って平行移動させることができ、前記制御装置は、前記ビームの照射が終了した後に、前記リニア軸を制御して前記載置台を前記リニア軸に平行な延在方向に沿って前記照射位置から前記ビーム出口に対して離れて移動させるか又は前記ロボットアームを制御して前記載置台を前記載置台の延在方向が前記リニア軸の延在方向とほぼ平行となる位置まで移動させる。
【0020】
好ましくは、前記終了位置では、前記載置台から前記ビーム出口の中心が位置するビーム方向に垂直な平面までの最小距離が、2500mm以上であり、大線量の残りの放射線の照射を受けないことを確保し、前記載置台の載置面から地面までの高さが、600mm未満であり、被照射体又は載置台の移転を容易にする。
【0021】
好ましくは、前記制御装置は、ユーザインタフェース、システム制御モジュール及び位置決め制御モジュールを含み、前記ユーザインタフェースは、前記システム制御モジュールに接続され、前記システム制御モジュールは、前記位置決め制御モジュール、前記放射線生成装置に接続され、前記位置決め制御モジュールは、前記載置台位置決め装置に接続され、前記載置台位置決め装置の移動を制御することができ、予め決定された照射時間に達した後、前記システム制御モジュールは、前記放射線生成装置が前記被照射体へのビームの照射を停止するように制御することができ、情報を前記ユーザインタフェースに伝送して治療終了の状態指示を行うことができ、前記システム制御モジュールは、治療終了後に命令を前記位置決め制御モジュールに送信して、前記載置台位置決め装置が前記載置台を前記照射位置から前記終了位置に移動させるように制御することができる。
【0022】
好ましくは、前記放射線照射システムは、中性子捕捉療法システムであり、前記放射線生成装置は、中性子生成装置及びビーム整形体を含み、前記ビーム整形体は、前記中性子生成装置で生成された中性子線を所定のビーム品質に調整することができ、前記中性子生成装置で生成された中性子線は、前記ビーム整形体により前記載置台上の被照射体に照射される。
【0023】
更に、前記中性子生成装置は、加速器及びターゲットを含み、前記加速器によって加速して生成された荷電粒子線は、前記ターゲットと作用して中性子線を生成し、前記ビーム整形体は、反射体、減速体、熱中性子吸収体、放射遮蔽体及びビーム出口を含み、前記減速体は、前記ターゲットから生成された中性子を熱外中性子エネルギー領域に減速させ、前記反射体は、前記減速体を囲み、逸脱した中性子を前記減速体に導いて熱外中性子ビームの強度を向上させ、前記熱中性子吸収体は、治療時に浅層正常組織に対する余計な線量となることを回避するために、熱中性子を吸収し、前記放射遮蔽体は、前記ビーム出口以外の部分からしみ出る中性子及び光子を遮蔽する。
【0024】
本発明の第4態様に係る放射線照射システムの載置台制御方法において、前記放射線照射システムは、放射線生成装置及び載置台を含み、前記放射線生成装置は、ビームを生成し、ビーム出口を有し、前記ビームは、前記ビーム出口から出て前記載置台上の被照射体に照射され、前記放射線照射システムは、載置台位置決め装置を更に含み、前記載置台は、前記載置台位置決め装置によって支持され、初期位置、照射位置及び終了位置を有し、前記載置台制御方法は、前記初期位置で前記載置台位置決め装置を、前記被照射体が載置された前記載置台に接続し、ロックするステップと、前記載置台位置決め装置が前記載置台を前記照射位置に移動させるように制御し、前記被照射体への前記ビームの照射を開始するステップと、前記被照射体への前記ビームの照射を停止した後に、前記載置台位置決め装置が前記載置台を前記終了位置に移動させるように制御し、前記載置台が前記終了位置で前記ビーム出口から離れるステップとを含む。照射が終了した後に載置台をビーム出口から離れる位置まで移動させることにより、被照射体が治療終了後に残りの放射線の照射を受け続けることを回避し、不必要な放射線量を低減することができる。
【0025】
好ましくは、前記載置台位置決め装置は、リニア軸及びロボットアームを含み、前記載置台位置決め装置が前記載置台を前記終了位置に移動させるように制御するステップは、前記リニア軸を制御して前記載置台を前記リニア軸の延在方向に沿って前記ビーム出口から離れて移動させるステップと、前記ロボットアームを制御して前記載置台を前記載置台の延在方向が前記リニア軸の延在方向とほぼ平行となる位置まで移動させるステップと、前記ロボットアームを制御して、照射位置にある時の前記載置台の地面に対する高さに比べて、前記載置台の地面に対する高さを変化させるステップとを含む。
【0026】
好ましくは、前記載置台制御方法は、前記被照射体への前記ビームの照射が開始した後に、予め決定された照射時間に基づいて、前記放射線生成装置が前記被照射体へのビームの照射を停止するように制御し、治療終了の状態指示を行い、治療終了後に前記載置台位置決め装置が前記載置台を前記照射位置から前記終了位置に移動させるように制御するステップを更に含む。
【0027】
本発明の放射線照射システム及びその載置台制御方法によれば、照射が終了した後に載置台をビーム出口から離れる位置まで移動させることにより、被照射体が治療終了後に残りの放射線の照射を受け続けることを回避し、不必要な放射線量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施例に係る中性子捕捉療法システムの概略構成図である。
図2】本発明の実施例に係る中性子捕捉療法システムの治療台位置決めの概略図である。
図3】本発明の実施例に係る中性子捕捉療法システムの治療台位置決め装置の概略構成図である。
図4図3の別の方向から見た概略図である。
図5】本発明の実施例に係る中性子捕捉療法システムのモジュールの概略図である。
図6】本発明の実施例に係る中性子捕捉療法システムの治療台転送トロリー及び転送トロリー位置決め機構の概略図である。
図7】本発明の実施例に係る中性子捕捉療法システムの治療台位置決め装置が異なる位置にある場合の状態概略図である。
図8図7の地面に平行な方向における平面図である。
図9図8のOO平面における断面図である。
図10】本発明の実施例に係る中性子捕捉療法システムの治療台制御方法の流れ図である。
図11】本発明の実施例に係る中性子捕捉療法システムの治療台をビーム出口から離れるように制御する方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を更に詳細に説明することにより、当業者は明細書の文字を参照して実施することができる。
【0030】
図1に示すように、好ましくは、本実施例における放射線照射システムは、ホウ素中性子捕捉療法システム100であり、中性子生成装置10、ビーム整形体20、コリメータ30及び治療台40を含む。中性子生成装置10は、加速器11とターゲットTを含み、加速器11は、荷電粒子(例えば陽子、デューテリウム核等)を加速し、陽子線のような荷電粒子線Pを生成し、荷電粒子線Pは、ターゲットTに照射して、ターゲットTと作用して中性子線(中性子ビーム)Nを生成し、ターゲットTは、好ましくは金属ターゲットである。必要な中性子収率及びエネルギー、提供可能な加速した荷電粒子のエネルギー及び電流の大きさ、金属ターゲットの物理化学的性質等の特性に応じて、適切な核反応を選択し、常に討論された核反応は、Li(p,n)Be及びBe(p,n)Bがあり、この2種の反応はいずれも吸熱反応である。2種の原子核反応は、エネルギー閾値がそれぞれ1.881MeVと2.055MeVであり、ホウ素中性子捕捉療法の理想的な中性子源がkeVエネルギーレベルの熱外中性子であるため、理論的には、エネルギーが閾値よりわずかに高い陽子を金属リチウムターゲットに衝撃させることで、比較的低いエネルギーの中性子を生成することができ、あまり多くの減速処理を必要とせずに臨床的に使用することができるが、金属リチウム(Li)及び金属ベリリウム(Be)の2種のターゲットは、閾値エネルギーの陽子と作用する断面が高くなく、十分に大きな中性子束を発生させるために、一般的に比較的高いエネルギーを持つ陽子を選択して原子核反応を引き起こす。理想的なターゲットは、中性子収率が高く、生成した中性子のエネルギー分布が熱外中性子エネルギー領域(以下、詳細に説明する)に近く、強い透過性を有する放射線をあまり多く生成せず、安全で、安価で、操作しやすく、かつ耐高温などの特性を有するが、実際には全ての要件を満たす核反応を見つけることは不可能であり、本発明の実施例において金属リチウムで製造されたターゲットを使用する。当業者に周知のように、ターゲットTは、リチウム、ベリリウム以外の金属材料で製造されてもよく、例えば、タンタル(Ta)又はタングステン(W)などで形成され、ターゲットTは、円板状であってもよく、他の固体形状であってもよく、液体材料(液体金属)を使用してもよい。加速器11は、線形加速器、サイクロトロン、シンクロトロン、シンクロサイクロトロンであってもよく、中性子生成装置10は、加速器及びターゲットを使用せずに、原子炉であってもよい。ホウ素中性子捕捉療法の中性子源の由来は原子炉又は加速器荷電粒子とターゲットとの核反応によるものに関わらず、生成したのは実際にすべて混合放射線場であり、即ちビームは、低エネルギーから高エネルギーまでの中性子、光子を含む。深部腫瘍のホウ素中性子捕捉療法について、熱外中性子を除き、他の放射線の含有量が多ければ多いほど、正常組織での非選択的線量沈着を引き起こす割合も大きくなるため、これらの不必要な線量を引き起こす放射線をできる限り低減する必要がある。また、被照射体の正常組織について、様々な放射線が多すぎ、同様に不必要な線量沈着を引き起こすことを回避すべきである。
【0031】
中性子生成装置10で生成された中性子ビームNは、順次ビーム整形体20とコリメータ30を経過して治療台40上の被照射体200に照射される。ビーム整形体20は、中性子生成装置10で生成された中性子ビームNのビーム品質を調整することができ、コリメータ30は、中性子ビームNを集め、中性子ビームNに治療過程中に高い標的性を備えさせる。治療台40及び被照射体200の位置を調整することにより、ビームを被照射体200の体内の腫瘍細胞Mに位置合わせしてもよく、これらの調整は、手動で操作してもよく、一連の制御機構により自動的に実現してもよい(以下に詳述する)。理解できるように、本発明では、コリメータを備えず、ビームがビーム整形体20から出た後に治療台40上の被照射体200に直接的に照射されてもよい。
【0032】
ビーム整形体20は、反射体21、減速体22、熱中性子吸収体23、放射遮蔽体24及びビーム出口25を更に含み、中性子生成装置10で生成された中性子のエネルギースペクトルが広いため、治療ニーズを満たす熱外中性子の以外、他の種類の中性子及び光子の含有量を可能な限り減らして操作者又は被照射体に傷害を引き起こすことを回避する必要があるため、中性子生成装置10から出た中性子は、減速体22を通して中性子中の高速中性子エネルギー(>40keV)を熱外中性子エネルギー領域(0.5eV~40keV)に調整し、熱中性子(<0.5eV)を可能な限り減らす必要があり、減速体22は、高速中性子との作用断面が大きく、熱外中性子との作用断面が小さい材料で製造され、好ましい実施例として、減速体22は、DO、AlF、Fluental(登録商標)、CaF、LiCO、MgF及びAlのうちの少なくとも1種で製造され、反射体21は、減速体22を囲み、かつ減速体22を通過して周辺へ拡散した中性子を中性子ビームNに反射して中性子の利用率を向上させ、中性子反射能力が高い材料で製造され、好ましい実施例として、反射体21は、Pb又はNiのうちの少なくとも1種で製造され、減速体22は、後部に熱中性子吸収体23を有し、熱中性子との作用断面が大きい材料で製造され、好ましい実施例として、熱中性子吸収体23は、Li-6で製造され、減速体22を通過した熱中性子を吸収して中性子ビームNにおける熱中性子の含有量を減少させ、治療時に浅層正常組織に対する余計な線量となることを回避し、理解できるように、熱中性子吸収体は、減速体と一体であってもよく、減速体の材料にLi-6が含まれ、放射遮蔽体24は、ビーム出口25以外の部分からしみ出る中性子及び光子を遮蔽し、放射遮蔽体24の材料は、光子遮蔽材料と中性子遮蔽材料のうちの少なくとも1種を含み、好ましい実施例として、放射遮蔽体24の材料は、光子遮蔽材料の鉛(Pb)と中性子遮蔽材料のポリエチレン(PE)を含む。コリメータ30がビーム出口25の後部に設置され、コリメータ30から出た熱外中性子ビームは、被照射体200に照射され、浅層正常組織を通した後に熱中性子に減速されて腫瘍細胞Mに到着する。理解できるように、ビーム整形体20は、更にその他の構造であってもよく、治療に必要な熱外中性子ビームを取得すればよく、説明しやすいために、コリメータ30が設置される場合、コリメータ30の出口は、後述するビーム出口25と見なすこともできる。
【0033】
被照射体200は、ホウ素(B-10)含有薬物を服用するか又は注射された後、ホウ素含有薬物が腫瘍細胞Mに選択的に集まり、次にホウ素(B-10)含有薬物が熱中性子に対して高い捕捉断面積を有するという特性を利用して、10B(n,α)Li中性子捕捉及び核分裂反応により、He及びLiという2種の重荷電粒子を生成する。2種の荷電粒子は、平均エネルギーが約2.33MeVであり、高い線エネルギー付与(Linear Energy Transfer、LET)及び短い飛程という特徴を有し、α粒子の線エネルギー付与と飛程は、それぞれ150keV/μm、8μmであり、Li重荷電粒子の線エネルギー付与と飛程は、175keV/μm、5μmであり、2種の粒子の総飛程が約1つの細胞のサイズに相当するため、生体への放射線損傷が細胞レベルに抑えられ、正常組織に大きな損傷を与えない前提で、腫瘍細胞を部分的に殺すという目的を達成することができる。
【0034】
本実施例において、被照射体200とビーム出口25との間には、ビーム出口25から出たビームによる被照射体の正常組織への放射を遮蔽する放射遮蔽装置50が更に設置され、理解できるように、放射遮蔽装置50を設置しなくてもよい。ホウ素中性子捕捉療法システム100は、コンクリート構造の建築物内に全体的に収容され、具体的には、ホウ素中性子捕捉療法システム100は、照射室101と荷電粒子ビーム生成室102を更に含み、治療台40上の被照射体200は、照射室101内に中性子ビームN照射による治療を受け、荷電粒子ビーム生成室102は、加速器11を少なくとも部分的に収容し、ビーム整形体20は、照射室101と荷電粒子ビーム生成室102の仕切り壁103内に少なくとも部分的に収容される。理解できるように、仕切り壁103は、照射室101と荷電粒子ビーム生成室102を完全に隔てるものであってもよく、照射室101と荷電粒子ビーム生成室102とを部分的に隔てるものであってもよく、照射室101と荷電粒子ビーム生成室102とが連通する。ターゲットTは、1つ又は複数であってもよく、荷電粒子線Pは、選択的にそのうちの1つ又はいくつかのターゲットTと作用するか又は同時に複数のターゲットTと作用して、1つ又は複数の治療用中性子ビームNを生成する。ターゲットTの数に応じて、ビーム整形体20、コリメータ30及び治療台40は、1つ又は複数であってもよく、複数の治療台は、同一の照射室内に設置されてもよく、各治療台に個別の照射室が設置されてもよい。照射室101と荷電粒子ビーム生成室102は、コンクリート壁W(仕切り壁103を含む)で囲まれた空間であり、コンクリート構造は、ホウ素中性子捕捉療法システム100の動作過程において漏れた中性子及び他の放射線を遮蔽することができる。ホウ素中性子捕捉療法システム100は、準備室、制御室及び治療を補助する他の空間(図示せず)を更に含んでもよい。各照射室には、照射治療の前にホウ素含有薬を注射し、治療計画をシミュレーションするなどの準備仕事を行うための1つの準備室が配置されてもよい。制御室は、加速器、ビーム輸送部、治療台位置決め装置などを制御し、照射過程全体を制御して管理し、管理者は、制御室内に複数の照射室を同時に監視することができる。ホウ素中性子捕捉療法システム100は、照射治療の前に被照射体200のシミュレーション位置決めを行うためのシミュレーション位置決め室104(以下に詳述する)を更に含んでもよく、シミュレーション位置決め室104内にビーム出口25と同じシミュレーションビーム出口25’が設置され、照射室101で被照射体200を位置決めするための時間を節約し、照射室101の利用率を向上させ、理解できるように、シミュレーション位置決め室は、準備室として使用されてもよい。
【0035】
図2に示すように、中性子捕捉療法システム100は、治療台位置決め装置60及び制御装置70を更に含み、治療台40及び治療台40上の被照射体200は、治療台位置決め装置60によって支持され、制御装置70は、治療台位置決め装置60に接続され、治療台位置決め装置60を制御することができ、制御装置70はまた、中性子生成装置10に接続され、中性子生成装置10が治療台40上の被照射体200に中性子ビームNを照射するように制御することができる。本実施例において、照射室101及びシミュレーション位置決め室104は、内部にそれぞれ同じ治療台位置決め装置60、60’が設置され、ビーム出口25及びシミュレーションビーム出口25’と同じ位置関係を有し、即ち照射室101及びシミュレーション位置決め室104内に治療台40及び治療台位置決め装置60、60’に対して同じ運動座標系XYZが定義され、中性子ビームNの方向に沿ってビーム出口25、シミュレーションビーム出口25’の中心から一定の距離離れる箇所の基準点を座標原点とし、治療台位置決め装置60、60’により、それぞれ、治療台40及び治療台40上の被照射体200のシミュレーション位置決め及び照射位置決めを行い、同じ治療台位置決め装置が使用されるため、照射位置決めがより便利、迅速、正確になる。説明しやすいために、以下、照射室101内の治療台位置決め装置60の構造のみについて具体的に説明する。
【0036】
図3図5に示すように、一実施例において、治療台位置決め装置60は、位置決め機構61を含み、位置決め機構61は、リニア軸611及びロボットアーム612を含み、ロボットアーム612がリニア軸611と治療台40との間に設置されることにより、治療台40をロボットアーム612によりリニア軸611に接続し、治療台40をロボットアーム612と共にリニア軸611に沿って平行移動させることができる。本実施例において、リニア軸611は、照射室101の天井1011に取り付けられ、ロボットアーム612全体は、照射室101の床1012に向かって延在し、理解できるように、リニア軸611は、他の表面、例えば壁又は床に取り付けられてもよく、リニア軸611は、天井1011に固定されたスライドレール6111、及びロボットアーム612に接続されたブラケット6112で構成され、ブラケット6112は、スライドレール6111に沿って摺動し、理解できるように、他の構造であってもよい。リニア軸は、天井1011に直接的に固定され、リニア軸固定機構、例えば、鋼構造ガントリーを別途設置せず、照射室内の鋼の使用量を減少させ、固定機構が中性子によって活性化されて二次放射が発生することを回避する。ロボットアーム612は、ブラケット6112と治療台40とを接続する多軸ロボットアームであり、治療台位置決め装置60は、リニア軸611及びロボットアーム612の移動を駆動する駆動機構62を更に含み、制御装置70は、駆動機構62を制御する。リニア軸611の延在方向6113は、ビーム出口25から出て該治療台40上の被照射体に照射された中性子ビームNの方向に平行であり、このように、治療台の位置決め過程において、ロボットアーム612全体は、中性子ビームNの方向に平行な方向に沿って平行移動し、ロボットアームの大部分は、スライドレールと中性子ビームの出口との間の空間に位置し、ロボットアームの各部材が中性子によって活性化されて発生した放射性、及び引き起こされた耐用年数の短縮を抑える。スライドレール6111とブラケット6112との摺動表面Sからビーム出口25の中心までの、摺動表面Sに垂直な方向における距離H1は、2メートルより小さく、治療台位置決め装置60に十分な操作空間を提供し、治療台40をビーム出口40に対して所望の位置に位置決めする。本実施例において、摺動表面Sは、天井が位置する平面に平行であり、理解できるように、治療台位置決め装置60は、更に他の設置を有してもよく、例えば、リニア軸611を含まないで、治療台40がロボットアーム612に接続され、ロボットアーム612によって支持され、或いは、ロボットアーム612がより多く又はより少ないアームを含む。
【0037】
治療台40又は治療台位置決め装置60にセンサー80が設置されてもよく、図5に示すように、センサー80は、位置決め機構61及び治療台40に設置され、一実施例において、センサー80は、治療台40及びロボットアーム612に設置された衝突防止センサーであり、治療台又はロボットアームの縁部が他の物体に接触するか又は他の物体がセンサーの設定範囲に到達すると、センサーが信号を送信して制御装置70に伝送するようにトリガーされ、制御装置70は、駆動機構62が位置決め機構61の移動を駆動することを停止するように制御し、即ち治療台40の移動を停止するように制御する。衝突防止センサーは、機械センサー、光電センサー、レーダセンサー、超音波センサー、レーザ距離計などであってもよく、理解できるように、衝突防止センサーは、更に人感知信号を送信することができ、操作者は、感知された信号に基づいて手動で駆動機構の駆動を停止するように制御することができ、治療台の移動を停止するように制御するのではなく、他の安全操作を実行し、例えば、衝突前の逆向き移動を行ってもよい。
【0038】
制御装置70は、操作者が治療台位置決め装置60に対話してその制御に介入することを可能にする少なくとも1つのユーザインタフェース71を含む。制御装置70は、システム制御モジュール72及び位置決め制御モジュール73を更に含み、ユーザインタフェース71はシステム制御モジュール72に接続され、システム制御モジュール72は位置決め制御モジュール73に接続され、位置決め制御モジュール73は駆動機構62に接続され、駆動機構62を制御する。システム制御モジュール72は、ユーザインタフェース71から送信された命令を受信すると、命令を位置決め制御モジュール73に伝送し、位置決め制御モジュール73によって位置決め機構61の移動を自動的に制御し、位置決め機構61の位置情報は、位置決め制御モジュール73によってシステム制御モジュール72にフィードバックされ、ユーザインタフェース71に伝送されて状態指示を行うことができる。駆動機構62の運転状態又はデータも位置決め制御モジュール73によりシステム制御モジュール72にフィードバックされ、システム制御モジュール72又は位置決め制御モジュール73は、これらの情報に基づいて駆動機構62を制御し、システム制御モジュール72は、これらの情報をユーザインタフェース71に伝送して状態指示を行うこともできる。センサー80もシステム制御モジュール72に接続され、システム制御モジュール72は、センサー80の信号を受信した後に位置決め制御モジュール73に命令を送信して治療台位置決め装置60の移動を制御し、センサー80の信号をユーザインタフェース71に伝送して状態指示を行う。理解できるように、システム制御モジュール72と位置決め制御モジュール73は、一体に統合されてもよく、他のハードウェア構成を有してもよい。
【0039】
中性子捕捉療法システム100は、治療計画装置90を更に含み、治療計画装置90は、中性子生成装置10で生成された治療用中性子ビームNのパラメータ及び被照射部位の医用画像データに基づいて線量シミュレーション計算を行い、(例えばモンテカルロシミュレーションプログラムにより)治療計画を作成し、治療計画に基づいて照射治療時の中性子生成装置10に対する被照射部位の位置及び対応する照射時間を決定することができる。制御装置70(システム制御モジュール71)は、治療計画装置90に接続され、治療計画データを受信することにより、治療計画データに基づいて治療台位置決め装置60、60’の移動及び中性子生成装置10で生成された中性子ビームNを制御する。
【0040】
照射治療を開始する前に、まず、シミュレーション位置決め室104内で、治療計画装置90で予め作成された治療計画に基づいて被照射体200に対してシミュレーション位置決めを行う。まず、治療台位置決め装置60’を治療台40に接続し、図6に示すように、本実施例において、治療台40を治療台転送トロリー401に配置し、シミュレーション位置決め室104(照射室101)内で転送トロリー位置決め機構402により転送トロリー401を位置決めし、シミュレーション位置決め室104(照射室101)の地面に少なくとも2つの孔4021(図示せず)を設置し、転送トロリー401に少なくとも2つのピン4022を対応して設置し、ピン4022を孔4021に挿入することで位置決めし、理解できるように、他の方式で転送トロリー401を位置決めしてもよい。転送トロリー401に治療台40を配置する相対位置も決定されるものであり、例えば、位置制限機構403(例えば転送トロリーに設置されたボス部)により治療台40の位置を制限するため、治療台40を位置決めされた転送トロリー401に配置する場合、シミュレーション位置決め室104(照射室101)に対する位置が決定される。このとき、治療台40は、シミュレーション位置決め室104内で初期位置Aに配置され(照射室101と同じ位置関係を有する)、制御装置70は、シミュレーション位置決め室104内の治療台位置決め装置60’が治療台40に接続できる位置まで移動するように制御し、ロック機構404が治療台位置決め装置60’と治療台40とをロックするように制御し、ロック機構404(チャックアセンブリ)の具体的な構造について、本明細書において詳述せず、2021年5月4日に開示され、公開番号がCN112741967Aで、発明の名称が「中性子捕捉療法システム」である特許出願を参照でき、その内容全体は、本明細書に組み込まれるものとする。
【0041】
次に、被照射体200を治療台40に載せ、予め作成された治療計画に基づいて決定された被照射部位の照射治療時の中性子生成装置10に対する位置で被照射体200をセットアップして固定し、治療計画装置90又は制御装置70によって、この時のセットアップに基づいて治療計画で決定された治療台40の座標位置を計算し、CT、光学走査などでセットアップされた被照射体及び治療台を走査して被照射体及び治療台の相対位置を決定することにより、治療計画で決定された被照射部位の照射治療時の中性子生成装置10に対する位置に基づいて治療計画で決定された治療台の座標を計算することができ、理解できるように、他の方式で治療台40の座標位置を計算してもよい。
【0042】
制御装置70は、計算された座標に基づいて、治療台位置決め装置60’が治療台40を初期位置Aから座標位置(治療計画位置B)に移動するように自動的に制御する。治療台40を座標位置(治療計画位置B)に移動させた後、必要に応じて操作者は、更に、ユーザインタフェース71により更に調整し、即ちシミュレーション位置決め位置Cを決定してもよく、治療台40及び治療台位置決め装置60’の移動過程においてエラーが発生すると、戻って治療台位置決め装置60’の移動経路を改めて計算するか又は戻って治療計画を改めて作成する。治療台の治療計画位置の座標を自動的に計算し、治療台位置決め装置により治療台の治療計画位置への移動を自動的に制御することにより、位置決めの精度が高く、速度が速くなる。
【0043】
次に、ユーザインタフェース71によりシミュレーション位置決めが完成したという命令を送信し、制御装置70によって、このときの座標位置(シミュレーション位置決め位置C)を記録し、治療台位置決め装置60を制御して治療台40を初期位置Aに戻し(治療台40がちょうど位置決めされた転送トロリー401に配置される)、制御装置70によって、ロック機構403がロックを解除し、治療台40を解放するように制御し、治療台位置決め装置60が治療ベッド40から離れた位置に移動するように制御し、転送トロリー位置決め機構402を解放し、転送トロリー401で治療台40及び被照射体200を照射室101に転送する。
【0044】
照射室101に転送した後に照射位置決めを行い、転送トロリー401に関して照射室101内にシミュレーション位置決め室104内と同じ転送トロリー位置決め機構402が設置され、即ち照射室内でシミュレーション位置決め室104内と同じ固定位置に応じて転送トロリー位置決め機構402で転送トロリー401を位置決めすることができ、その後に照射室101内の治療台位置決め装置60が治療台40に接続できる位置(初期位置A)に移動するように制御し、ロック機構403が治療台位置決め装置60と治療台40とをロックするように制御する。制御装置70は、シミュレーション位置決めで決定された座標位置に基づいて、治療台40がシミュレーション位置決め位置Cに移動するように制御し、必要に応じて、更に、ユーザインタフェース71により更に調整し、所定の位置に調整した後に照射位置Dが決定され、操作者は、照射室101から退出し、転送トロリー位置決め機構402を解放して転送トロリー401を搬出する。シミュレーション位置決め室104内のシミュレーション位置決めは、照射室101内で照射治療を行う前に被照射体200を位置決めする作業時間を減少させ、シミュレーション位置決めを行うと共に別の被照射体に対して照射治療を行うことができ、装置の利用率を向上させる。一実施例において、治療台位置決め装置60、60’と治療台40とをロックして接続した後に、治療台40を初期位置Aから移動させる必要がある場合、治療台位置決め装置60、60’を制御して、まず治療台40を引き上げ、次に転送トロリー位置決め機構402を解放して転送トロリー401を搬出してから治療台位置決め装置60、60’の更なる移動を制御し、治療台位置決め装置60、60’と転送トロリー401との間に位置干渉が発生することを防止してもよい。
【0045】
一実施例において、照射室101及びシミュレーション位置決め室104内には、いずれも、同じでかつ同じ位置関係を有するレーザ位置決め装置601、601’が設置され、操作者は、レーザ位置決め装置で発生したレーザが被照射体200に当たる位置で被照射体200にマークを付け、付けられたマークに基づいて被照射体200のシミュレーション位置決め室104及び照射室101での位置を調整又は検証することにより、被照射体200がシミュレーション位置決め室104及び照射室101内で同じ位置にあることを確保することができる。レーザ位置決め装置を設置することにより、位置決めがより便利で迅速になる。
【0046】
レーザ位置決め装置601、601’で発生したレーザにより、ビーム出口25、25’の中心軸線X、X’と一致する位置を更に決定することができ、図2に示すように、レーザ位置決め装置60、60’で発生したレーザが被照射体200に当たる位置は、ビーム出口25、25’から出たビーム中心軸線が被照射体200に入射する位置を表し、治療計画によってシミュレーションされたビーム中心軸線のボクセルプロテーゼ組織モデルへの入射点に基づいて被照射体200にマークを付けることにより、シミュレーション位置決め及び照射治療を行う場合に決定されたビーム入射位置がより正確になる。
【0047】
照射室101及びシミュレーション位置決め室104内には、同じでかつ同じ位置関係を有する光学検証装置602、602’が更に設置されてもよく、光学検証装置602、602’は、治療台40の位置及び被照射体200の画像を収集し、データをシステム制御モジュール72に伝送し、治療計画などの情報と比較し、結果に基づいて調整するか又は他の治療制御を実行する。システム制御モジュール72は更に、他のデータ情報、例えば中性子生成装置のデータ、被照射体の情報などを受信し、中性子生成装置などの他の装置を制御してもよい。
【0048】
治療台40及び被照射体200を正確に調整した後に、この場合、治療台40は、照射位置Dを有し、操作者は、ユーザインタフェース71により照射を開始するという命令を送信し、システム制御モジュール72は、照射を開始する条件を満たすと判断した後に、中性子生成装置10が中性子ビームNを生成して治療台40上の被照射体200に対して照射治療を行うように制御する。予め決定された照射時間(例えば、治療計画データに基づいて決定された照射時間)に達した後に、システム制御モジュール72は、中性子生成装置10が治療台40上の被照射体200への中性子ビームNの照射を停止するように制御し、情報をユーザインタフェース71に伝送して治療終了の状態指示を行い、システム制御モジュール72は、治療終了後に位置決め制御モジュール73に命令を送信して、治療台位置決め装置60が治療台40を照射位置Dから終了位置Eに移動させ、治療台40をビーム出口25から離れさせるように制御する。中性子ビームNの照射を停止した後にビーム出口25に依然として大量の放射線が残留し、治療台40をビーム出口25から離れる位置に移動させることにより、被照射体200が治療終了後に残りの放射線の照射を受け続けることを回避し、不必要な放射線量を低減することができる。図7図9に示すように、治療終了後に、治療台40及び治療台位置決め装置60が異なる位置にある場合の状態概略図である。治療終了後に、まず、リニア軸611を制御して、治療台40をリニア軸611に平行な延在方向6113に沿って照射位置Dからビーム出口25に対して離れて第1中間位置Fに移動させることにより、治療台40がビーム出口25から迅速に離れることを実現し、治療終了後に被照射体200が残りの放射線の照射を受け続けることを最大程度に回避し、次に、ロボットアーム612を制御して、治療台40を治療台40の延在方向41がリニア軸611の延在方向6113にほぼ平行となる第2中間位置Gに移動させることにより、治療台40などが終了位置Eで転送ベッドなどの位置と干渉するか又は照射室101の遮蔽扉の出口を遮蔽することを防止し、後に被照射体200が照射室101から離れるのに便利を提供し、最後に、ロボットアーム612を制御して、治療台40を地面に近づけて第2中間位置Gから終了位置Eに移動させ、地面に近づけることにより、被照射体200が照射室101から離れやすい。被照射体200が離れた後に、更にロック機構403がロックを解除するように制御し、治療台40をシミュレーション位置決め室104に送り返し、又は、まずロック機構403がロックを解除するように制御し、被照射体200を治療台40と共に照射室101から搬出し、被照射体200が治療台40から離れた後に、治療台40を例えば転送トロリー401によりシミュレーション位置決め室104に送り返してもよく、このとき、終了位置Eは、初期位置Aと同じであってもよく、転送トロリー401も、照射室101内で転送トロリー位置決め機構402により位置決めされ、ロボットアーム612は、治療台40を、治療台40がちょうど転送トロリー401に配置される初期位置A(終了位置E)に移動させる。終了位置Eでは、治療台40からビーム出口25の中心が位置する中性子ビームN方向に垂直な平面までの最小距離H2が、2500mm以上であり、大線量の残りの放射線の照射を受けないことを確保し、終了位置Eでは、治療台40の載置面42から地面までの高さH3が、600mm未満であり、被照射体200又は治療台40の移転を容易にする。
【0049】
治療終了後に、システム制御モジュール72は、照射時間に達した信号又は中性子ビームNの照射を停止する信号に基づいて、治療台40がビーム出口25から離れるように自動的に制御してもよく、操作者は、ユーザインタフェース71における治療終了の状態指示に基づいて、例えばヒューマンコンピュータインタラクション制御インタフェース713における対応するボタンをクリックすることにより、ユーザインタフェース71において治療台がビーム出口から離れるという命令を入力し、その後にシステム制御モジュール72は、該命令に基づいて治療台40がビーム出口25から離れるように制御してもよい。
【0050】
図10に示すように、簡単に言えば、本実施例に係る治療台制御方法は、以下のステップS10~ステップS50を含む。
【0051】
ステップS10では、シミュレーション位置決め室104内でシミュレーション位置決め室104内の治療台位置決め装置60’を治療台40に接続し、治療台40にロックし、治療計画データに基づいて被照射体200を治療台40にセットアップして固定し、治療計画データ及び被照射体200のセットアップに基づいて治療台40の治療計画座標、即ち治療計画位置Bの座標を計算する。
【0052】
ステップS20では、治療計画座標に基づいて治療台位置決め装置60’が治療台40を治療計画位置Bに移動させるように制御し、更に必要に応じてシミュレーション位置決め位置Cに調整し、シミュレーション位置決め位置Cの座標を記録し、理解できるように、シミュレーション位置決め位置Cは、治療計画位置Bであってもよい。
【0053】
ステップS30では、治療台位置決め装置60’と治療台40とのロックを解除し、治療台40及び治療台40上の被照射体200を照射室101に移動させ、照射室101内の治療台位置決め装置60を治療台40に接続し、治療台40にロックする。
【0054】
ステップS40では、シミュレーション位置決め位置Cの座標に基づいて治療台位置決め装置60が治療台40をシミュレーション位置決め位置Cに移動させるように制御し、更に必要に応じて照射位置Dに調整し、その後に被照射体200に中性子ビームNを照射する治療を開始し、理解できるように、照射位置Dは、シミュレーション位置決め位置Cであってもよい。
【0055】
ステップS50では、治療が終了すると、被照射体200への中性子ビームNの照射を停止した後に、治療台位置決め装置60が治療台40を終了位置Eに移動させるように制御し、即ち治療台40がビーム出口25から離れるように制御する。
【0056】
理解できるように、ステップS20では、治療台40を治療計画位置Bに移動させる過程においてエラーが発生すると、戻って治療台位置決め装置60’の移動経路を改めて計算するか又は戻って治療計画を改めて作成するステップを更に含んでもよい。
【0057】
図11に示すように、具体的には、ステップS50では、治療台40がビーム出口25から離れるように制御する方法は、更に以下のステップS51~ステップS53を含む。
【0058】
ステップS51では、リニア軸611を制御して治療台40をリニア軸611に平行な延在方向6113に沿って照射位置Dからビーム出口25に対して離れて第1中間位置Fに移動させる。
【0059】
ステップS52では、ロボットアーム612を制御して治療台40を治療台40の延在方向41がリニア軸611の延在方向6113にほぼ平行となる第2中間位置Gに移動させる。
【0060】
ステップS53では、ロボットアーム612を制御して治療台40を地面に近づけて第2中間位置Gから終了位置Eに移動させる。
【0061】
ユーザインタフェース71において入力される、治療台がビーム出口から離れるという命令は、1つのボタンによりステップS51~S53を自動的に連続して実行してもよく、又はステップS51~S53にそれぞれ対応する3つのボタンによりステップS51~S53を段階的に実行してもよく、他の設置方式があってもよい。理解できるように、ステップS51及びS53については、まずロボットアーム612を制御して治療台40を地面に近づけるように移動させ、次にリニア軸611を制御して治療台40をリニア軸611に平行な延在方向6113に沿ってビーム出口25から離れるように移動させてもよく、ステップS52は、ステップS53の後であってもよく、或いは、リニア軸611及びロボットアーム612を同時に制御して治療台40を終了位置Eに移動させてもよい。理解できるように、具体的な必要に応じて、終了位置Eにある時の載置台の地面に対する高さは、照射位置Dにある時の載置台の地面に対する高さに比べて変化する他の位置であってもよい。
【0062】
上記位置A~Gは、いずれも治療台40における所定の基準点を基準とし、理解できるように、転送トロリーを設置せず、シミュレーション位置決め室及び照射室内にそれぞれ同じ治療台を設置し、(例えば、治療台に設置された位置決め機構により)被照射体をシミュレーション位置決め室及び照射室内で同じようにセットアップし、(例えば、レーザ位置決め装置により)同じ初期位置を決定してもよい。
【0063】
本実施例におけるコンクリート壁は、厚さが1m以上、密度が3g/c.c.のホウ素含有重晶石コンクリート壁であり、ホウ素含有のコンクリートは、より優れた中性子吸収性能を有し、コンクリートの放射遮蔽効果を向上させる以外に、コンクリート中の金属材料が受ける中性子曝露量を低減することができる。理解できるように、他の厚さ又は密度を有するか、又は他の材料に置換されてもよく、異なる部分のコンクリート壁の厚さ、密度又は材料は異なってもよい。理解できるように、本発明は、更に他のタイプの中性子照射システムに適用することができ、他の放射線照射システム、例えば、陽子療法システム、重イオン療法システムなどに適用することもでき、この場合に中性子生成装置は、他の放射線生成装置に置換されてもよく、コンクリートの材料は、必要に応じて置換されてもよく、治療台は、他の被照射体の載置台であってもよい。
【0064】
以上に本発明の例示的な具体的な実施形態を説明して、当業者が本発明を理解することを容易にするが、明らかに、本発明は具体的な実施形態の範囲に限定されず、当業者にとって、様々な変化が添付の特許請求の範囲で限定かつ決定される本発明の精神及び範囲内にあれば、これらの変化が明らかで、いずれも本発明の特許請求の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-07-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線生成装置と、制御装置と、シミュレーション位置決め室と、照射室と、それぞれ前記シミュレーション位置決め室、照射室内に設置された同じ第1、第2載置台とを含み、前記放射線生成装置は、ビームを生成し、ビーム出口を有し、前記ビーム出口は、前記照射室内に位置し、前記シミュレーション位置決め室内には、前記ビーム出口と同じシミュレーションビーム出口が設置された放射線照射システムであって、前記シミュレーション位置決め室及び前記照射室内には、それぞれ、前記第1、第2載置台を支持することができる第1、第2載置台位置決め装置が更に設置され、前記第1、第2載置台位置決め装置により、それぞれ、前記第1、第2載置台及び前記第1、第2載置台上の被照射体のシミュレーション位置決め及び照射位置決めを行い、前記第1、第2載置台位置決め装置は、それぞれ、前記シミュレーション位置決め室、前記照射室内に同じ設置を有し、前記シミュレーションビーム出口、前記ビーム出口に対して同じ位置関係を有し、前記制御装置は、それぞれ、前記第1、第2載置台位置決め装置に接続され、前記被照射体は、前記第1、第2載置台上に同じセットアップを有し、前記シミュレーション位置決め室内には、前記第1載置台位置決め装置により前記第1載置台のシミュレーション位置決め位置を決定し、前記照射室内に、前記制御装置は、前記第2載置台位置決め装置が前記第2載置台を前記シミュレーション位置決め位置に移動させるように制御し、前記第2載置台の照射位置を決定し、前記第2載置台上の前記被照射体は、前記照射位置で前記ビームの照射を受ける、ことを特徴とする放射線照射システム。
【請求項2】
前記放射線照射システムは、治療計画装置を更に含み、前記治療計画装置で作成された治療計画データに基づいて前記シミュレーション位置決め室内の前記第1載置台上の前記被照射体のセットアップを決定し、前記治療計画装置又は前記制御装置は、前記治療計画データ及び前記被照射体のセットアップに基づいて前記第1載置台の治療計画座標を計算し、前記制御装置は、前記第1載置台位置決め装置により前記第1載置台を前記治療計画座標から決定された治療計画位置に移動させ、前記第1載置台の前記シミュレーション位置決め位置を決定する、ことを特徴とする請求項1に記載の放射線照射システム。
【請求項3】
前記シミュレーション位置決め室及び前記照射室内には、それぞれ、同じでかつ同様の位置関係を有するレーザ位置決め装置が設置され、前記被照射体には、前記レーザ位置決め装置で発生したレーザが前記被照射体に当たる位置に対応するマークが設置され、前記マークに基づいて、前記被照射体が前記シミュレーション位置決め室及び前記照射室内に同じ位置を有することを決定することができる、ことを特徴とする請求項2に記載の放射線照射システム。
【請求項4】
前記シミュレーション位置決め室及び前記照射室内には、それぞれ、同じでかつ同様の位置関係を有する光学検証装置が設置され、前記光学検証装置は、前記載置台の位置及び前記被照射体の画像を収集し、データを前記制御装置に伝送して前記治療計画データと比較することができる、ことを特徴とする請求項に記載の放射線照射システム。
【請求項5】
前記放射線照射システムは、転送トロリー及び転送トロリー位置決め装置を更に含み、前記第1、第2載置台は、同一の載置台であり、前記転送トロリーによって前記載置台を支持し、位置決めし、前記シミュレーション位置決め室から前記照射室に転送することができ、前記転送トロリーは、前記転送トロリー位置決め装置によって前記シミュレーション位置決め室及び前記照射室内にそれぞれ同じ開始位置に固定される、ことを特徴とする請求項1に記載の放射線照射システム。
【請求項6】
前記放射線照射システムは、載置台ロック機構を更に含み、前記同じ開始位置に、前記制御装置は、前記第1、第2載置台位置決め装置を制御してそれぞれ前記載置台に接続させ、前記載置台ロック機構により前記載置台にそれぞれロックさせることができる、ことを特徴とする請求項5に記載の放射線照射システム。
【請求項7】
前記放射線照射システムは、中性子捕捉療法システムであり、前記放射線生成装置は、中性子生成装置及びビーム整形体を含み、前記ビーム整形体は、前記中性子生成装置で生成された中性子線を所定のビーム品質に調整することができ、前記中性子生成装置で生成された中性子線は、前記ビーム整形体により前記照射室内の前記載置台上の前記被照射体に照射される、ことを特徴とする請求項1に記載の放射線照射システム。
【請求項8】
前記中性子生成装置は、加速器及びターゲットを含み、前記加速器によって加速して生成された荷電粒子線は、前記ターゲットと作用して中性子線を生成し、前記ビーム整形体は、反射体、減速体、熱中性子吸収体、放射遮蔽体及びビーム出口を含み、前記減速体は、前記ターゲットから生成された中性子を熱外中性子エネルギー領域に減速させ、前記反射体は、前記減速体を囲み、逸脱した中性子を前記減速体に導いて熱外中性子ビームの強度を向上させ、前記熱中性子吸収体は、治療時に浅層正常組織に対する余計な線量となることを回避するために、熱中性子を吸収し、前記放射遮蔽体は、前記ビーム出口以外の部分からしみ出る中性子及び光子を遮蔽する、ことを特徴とする請求項7に記載の放射線照射システム。
【請求項9】
放射線生成装置と、治療計画装置と、シミュレーション位置決め室と、照射室と、それぞれ前記シミュレーション位置決め室、照射室内に設置された同じ第1、第2載置台とを含む放射線照射システムの載置台制御方法であって、前記シミュレーション位置決め室及び前記照射室内には、それぞれ、前記第1、第2載置台を支持することができる第1、第2載置台位置決め装置が設置され、前記第1、第2載置台位置決め装置は、それぞれ、前記シミュレーション位置決め室及び前記照射室内に同じ設置及び同じ位置関係を有し、前記載置台制御方法は、
前記治療計画装置で作成された治療計画データに基づいて被照射体を前記第1載置台にセットアップして固定し、前記治療計画データ及び前記被照射体のセットアップに基づいて前記第1載置台の治療計画位置を計算するステップと、
前記第1載置台位置決め装置が前記第1載置台を前記治療計画位置に移動させるように制御し、シミュレーション位置決め位置を決定するステップと、
前記第1載置台と同じように前記被照射体を前記第2載置台にセットアップし、前記第2載置台位置決め装置が前記第2載置台を前記シミュレーション位置決め位置に移動させるように制御し、照射位置を決定し、前記照射位置で前記第2載置台上の前記被照射体に対して前記放射線生成装置で生成されたビームを照射するステップとを含む、ことを特徴とする載置台制御方法。
【請求項10】
前記放射線照射システムは、転送トロリー及び転送トロリー位置決め装置を更に含み、前記第1、第2載置台は、同一の載置台であり、前記載置台制御方法は、
前記被照射体を前記載置台にセットアップする前に、
前記転送トロリー位置決め装置により前記転送トロリーを前記シミュレーション位置決め室内に固定し、前記載置台を前記転送トロリーに配置して位置決めすることにより、前記載置台を初期位置に位置させるステップと、
前記シミュレーション位置決め室内に前記第1載置台位置決め装置を前記載置台に接続し、前記載置台にロックするステップと、
前記シミュレーション位置決め位置を決定した後に、
前記載置台を前記初期位置に移動させ、前記転送トロリーによって支持するステップと、
前記第1載置台位置決め装置と前記載置台とのロックを解除し、前記載置台及び前記載置台上の被照射体を前記照射室に移動させるステップと、
前記照射室内に前記転送トロリー位置決め装置により前記載置台を前記初期位置に位置させ、前記第2載置台位置決め装置を前記載置台に接続し、前記載置台にロックするステップとを更に含む、請求項9に記載の載置台制御方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
好ましくは、前記シミュレーション位置決め室及び前記照射室内には、それぞれ、同じでかつ同様の位置関係を有する光学検証装置が設置され、前記光学検証装置は、前記載置台の位置及び前記被照射体の画像を収集し、データを前記制御装置に伝送して前記治療計画データと比較し、結果に応じてリアルタイムに調整するか又は他の治療制御を実行することができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
中性子捕捉療法システム100は、治療計画装置90を更に含み、治療計画装置90は、中性子生成装置10で生成された治療用中性子ビームNのパラメータ及び被照射部位の医用画像データに基づいて線量シミュレーション計算を行い、(例えばモンテカルロシミュレーションプログラムにより)治療計画を作成し、治療計画に基づいて照射治療時の中性子生成装置10に対する被照射部位の位置及び対応する照射時間を決定することができる。制御装置70(システム制御モジュール72)は、治療計画装置90に接続され、治療計画データを受信することにより、治療計画データに基づいて治療台位置決め装置60、60’の移動及び中性子生成装置10で生成された中性子ビームNを制御する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0043
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0043】
次に、ユーザインタフェース71によりシミュレーション位置決めが完成したという命令を送信し、制御装置70によって、このときの座標位置(シミュレーション位置決め位置C)を記録し、治療台位置決め装置60を制御して治療台40を初期位置Aに戻し(治療台40がちょうど位置決めされた転送トロリー401に配置される)、制御装置70によって、ロック機構404がロックを解除し、治療台40を解放するように制御し、治療台位置決め装置60が治療40から離れた位置に移動するように制御し、転送トロリー位置決め機構402を解放し、転送トロリー401で治療台40及び被照射体200を照射室101に転送する。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
照射室101に転送した後に照射位置決めを行い、転送トロリー401に関して照射室101内にシミュレーション位置決め室104内と同じ転送トロリー位置決め機構402が設置され、即ち照射室内でシミュレーション位置決め室104内と同じ固定位置に応じて転送トロリー位置決め機構402で転送トロリー401を位置決めすることができ、その後に照射室101内の治療台位置決め装置60が治療台40に接続できる位置(初期位置A)に移動するように制御し、ロック機構404が治療台位置決め装置60と治療台40とをロックするように制御する。制御装置70は、シミュレーション位置決めで決定された座標位置に基づいて、治療台40がシミュレーション位置決め位置Cに移動するように制御し、必要に応じて、更に、ユーザインタフェース71により更に調整し、所定の位置に調整した後に照射位置Dが決定され、操作者は、照射室101から退出し、転送トロリー位置決め機構402を解放して転送トロリー401を搬出する。シミュレーション位置決め室104内のシミュレーション位置決めは、照射室101内で照射治療を行う前に被照射体200を位置決めする作業時間を減少させ、シミュレーション位置決めを行うと共に別の被照射体に対して照射治療を行うことができ、装置の利用率を向上させる。一実施例において、治療台位置決め装置60、60’と治療台40とをロックして接続した後に、治療台40を初期位置Aから移動させる必要がある場合、治療台位置決め装置60、60’を制御して、まず治療台40を引き上げ、次に転送トロリー位置決め機構402を解放して転送トロリー401を搬出してから治療台位置決め装置60、60’の更なる移動を制御し、治療台位置決め装置60、60’と転送トロリー401との間に位置干渉が発生することを防止してもよい。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0046
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0046】
レーザ位置決め装置601、601’で発生したレーザにより、ビーム出口25、25’の中心軸線X、X’と一致する位置を更に決定することができ、図2に示すように、レーザ位置決め装置601、601’で発生したレーザが被照射体200に当たる位置は、ビーム出口25、25’から出たビーム中心軸線が被照射体200に入射する位置を表し、治療計画によってシミュレーションされたビーム中心軸線のボクセルプロテーゼ組織モデルへの入射点に基づいて被照射体200にマークを付けることにより、シミュレーション位置決め及び照射治療を行う場合に決定されたビーム入射位置がより正確になる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
治療台40及び被照射体200を正確に調整した後に、この場合、治療台40は、照射位置Dを有し、操作者は、ユーザインタフェース71により照射を開始するという命令を送信し、システム制御モジュール72は、照射を開始する条件を満たすと判断した後に、中性子生成装置10が中性子ビームNを生成して治療台40上の被照射体200に対して照射治療を行うように制御する。予め決定された照射時間(例えば、治療計画データに基づいて決定された照射時間)に達した後に、システム制御モジュール72は、中性子生成装置10が治療台40上の被照射体200への中性子ビームNの照射を停止するように制御し、情報をユーザインタフェース71に伝送して治療終了の状態指示を行い、システム制御モジュール72は、治療終了後に位置決め制御モジュール73に命令を送信して、治療台位置決め装置60が治療台40を照射位置Dから終了位置Eに移動させ、治療台40をビーム出口25から離れさせるように制御する。中性子ビームNの照射を停止した後にビーム出口25に依然として大量の放射線が残留し、治療台40をビーム出口25から離れる位置に移動させることにより、被照射体200が治療終了後に残りの放射線の照射を受け続けることを回避し、不必要な放射線量を低減することができる。図7図9に示すように、治療終了後に、治療台40及び治療台位置決め装置60が異なる位置にある場合の状態概略図である。治療終了後に、まず、リニア軸611を制御して、治療台40をリニア軸611に平行な延在方向6113に沿って照射位置Dからビーム出口25に対して離れて第1中間位置Fに移動させることにより、治療台40がビーム出口25から迅速に離れることを実現し、治療終了後に被照射体200が残りの放射線の照射を受け続けることを最大程度に回避し、次に、ロボットアーム612を制御して、治療台40を治療台40の延在方向41がリニア軸611の延在方向6113にほぼ平行となる第2中間位置Gに移動させることにより、治療台40などが終了位置Eで転送ベッドなどの位置と干渉するか又は照射室101の遮蔽扉の出口を遮蔽することを防止し、後に被照射体200が照射室101から離れるのに便利を提供し、最後に、ロボットアーム612を制御して、治療台40を地面に近づけて第2中間位置Gから終了位置Eに移動させ、地面に近づけることにより、被照射体200が照射室101から離れやすい。被照射体200が離れた後に、更にロック機構404がロックを解除するように制御し、治療台40をシミュレーション位置決め室104に送り返し、又は、まずロック機構404がロックを解除するように制御し、被照射体200を治療台40と共に照射室101から搬出し、被照射体200が治療台40から離れた後に、治療台40を例えば転送トロリー401によりシミュレーション位置決め室104に送り返してもよく、このとき、終了位置Eは、初期位置Aと同じであってもよく、転送トロリー401も、照射室101内で転送トロリー位置決め機構402により位置決めされ、ロボットアーム612は、治療台40を、治療台40がちょうど転送トロリー401に配置される初期位置A(終了位置E)に移動させる。終了位置Eでは、治療台40からビーム出口25の中心が位置する中性子ビームN方向に垂直な平面までの最小距離H2が、2500mm以上であり、大線量の残りの放射線の照射を受けないことを確保し、終了位置Eでは、治療台40の載置面42から地面までの高さH3が、600mm未満であり、被照射体200又は治療台40の移転を容易にする。
【国際調査報告】