(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】腕時計及び腕時計用のエネルギー貯蔵装置
(51)【国際特許分類】
G04B 1/10 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
G04B1/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537892
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-07-31
(86)【国際出願番号】 EP2022086364
(87)【国際公開番号】W WO2023117761
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599091346
【氏名又は名称】ロレックス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラスティグ,マールテン ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーケ,シブレン レナード
(72)【発明者】
【氏名】ジュフリー,エオラ ジェシカ
(72)【発明者】
【氏名】ヘルビッヒ,レーマー ミヒール
(72)【発明者】
【氏名】ダニング,アルジェ ヘルト
(57)【要約】
フレーム(4)を有するエネルギー貯蔵装置(3)が設けられる本体(2)を備える腕時計(1)であって、エネルギー貯蔵装置(3)は、シャフト(10)と、シャフト(10)をフレーム(4)に対して運動させるための駆動力をもたらす1つ又は複数のばね(11)と、を備え、エネルギー貯蔵装置(3)は、駆動部(12)を備え、駆動部(12)は、1つ又は複数のばね(11)とシャフト(10)とを接続する、腕時計(1)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム(4)を有するエネルギー貯蔵装置(3)が設けられる本体(2)を備える腕時計(1)であって、
前記エネルギー貯蔵装置(3)は、シャフト(10)と、前記シャフト(10)及び/又は前記フレーム(4)を互いに対して運動させるための駆動力をもたらす1つ又は複数の板ばね(11)と、を備え、
前記エネルギー貯蔵装置(3)は、駆動部(12)を備え、前記駆動部(12)は、前記1つ又は複数のばね(11)と前記シャフト(10)とを接続する、腕時計(1)において、前記1つ又は複数のばね(11)が、前記ばね(11)に張力をかけることによってエネルギーを貯蔵し放出するように装備されることを特徴とする、腕時計(1)。
【請求項2】
前記シャフト(10)が前記腕時計(1)の前記本体(2)に対して回転可能となるように、前記フレーム(4)が、前記腕時計(1)の前記本体(2)に対して回転運動しないことを特徴とする、請求項1に記載の腕時計。
【請求項3】
前記フレーム(4)が前記腕時計(1)の前記本体(2)に対して回転可能となるように、
前記シャフト(10)が、前記腕時計(1)の前記本体(2)に対して回転運動しないことを特徴とする、請求項1に記載の腕時計。
【請求項4】
発振器(8)がさらに設けられる前記腕時計において、前記エネルギー貯蔵装置(3)が、前記発振器(8)の振動を維持するように配置されるバレルとして具現化されることを特徴とする、請求項2又は3に記載の腕時計。
【請求項5】
前記バレルが、ギアトレイン(6)を介して前記発振器(8)を駆動することを特徴とする、請求項4に記載の腕時計。
【請求項6】
前記1つ又は複数のばね(11)が、前記ばね(11)に張力をかけることに加え曲げる及び/又は圧縮することによってエネルギーを貯蔵し放出するように装備されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の腕時計。
【請求項7】
前記1つ又は複数のばね(11)を備える前記エネルギー貯蔵装置(3)に接続する前記駆動部(12)が、1:1、好ましくは少なくとも5:1、さらにより好ましくは少なくとも10:1より高い伝達比を有し、それにより、前記1つ又は複数のばね(11)が緩和することによって、前記フレーム(4)に対する対応する前記シャフト(10)の運動が前記駆動部(12)によってより大きくなることを可能にすること特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の腕時計。
【請求項8】
前記駆動部(12)が、並進運動を回転運動に変換するように装備されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の腕時計。
【請求項9】
前記駆動部(12)が、変形によるエネルギーを回転運動で具現化されたエネルギーに変換するように装備されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の腕時計。
【請求項10】
前記駆動部(12)がラックアンドピニオン駆動装置を備えることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の腕時計。
【請求項11】
前記ピニオンが前記シャフト(10)に取り付けられ、前記ラックに前記1つ又は複数のばね(11)が装着されることを特徴とする、請求項10に記載の腕時計。
【請求項12】
前記ラックが中立位置を有し、前記ラックの中立位置からの変位によって前記1つ又は複数のばね(11)に張力がかかることを特徴とする、請求項10又は11に記載の腕時計。
【請求項13】
前記1つ又は複数のばね(11)が前記ラックと前記フレーム(4)とを接続し、それにより、前記ラックが第1の方向へ移動すると前記1つ又は複数のばね(11)に張力がかかり、前記ラックが前記第1の方向とは反対の第2の方向へ移動すると前記1つ又は複数のばね(11)が緩和することを可能にすることを特徴とする、請求項10から12のいずれか一項に記載の腕時計。
【請求項14】
前記ラックには円の切片の形をした体(13)が組み入れられ、前記体は、前記シャフト(10)上の前記ピニオンと接触する部分的に円形の輪郭を有する外面(13´)を有することを特徴とする、請求項10から13のいずれか一項に記載の腕時計。
【請求項15】
前記ラックには2つ以上の別個の体(13)が組み入れられ、各体は、円の切片の形をし、各体は、前記シャフト(10)上の前記ピニオンと接触する部分的に円形の輪郭を有する外面(13´)が設けられることを特徴とする、請求項14に記載の腕時計。
【請求項16】
前記ラックの前記体(13)が、前記シャフト(10)上の前記ピニオンの周りに円周方向に位置付けられることを特徴とする、請求項15に記載の腕時計。
【請求項17】
前記ラックの各体(13)には、前記フレーム(4)に接続される少なくとも1つのばね(11)が装着されることを特徴とする、請求項15又は16に記載の腕時計。
【請求項18】
前記ラックの各体(13)に関して、前記体の少なくとも1つのばね(11)が、前記ラックの前記体(13)に回転可能に接続されるベース部(14´、14")に接続されることを特徴とする、請求項17に記載の腕時計。
【請求項19】
前記ラックの各体(13)に関して、前記ラックの前記体(13)に回転可能に接続される第1及び第2の相互に直交するベース部(14´、14")に接続する複数のばね(11)があることを特徴とする、請求項17又は18に記載の腕時計。
【請求項20】
前記ラックが、内向きの連続した輪郭表面(13´)が設けられた中央が開口した切片(13")を有する体(13)として具現化されることを特徴とする、請求項10から13のいずれか一項に記載の腕時計。
【請求項21】
前記体(13)が、たわみ部(15)と前記ばね(11)とで前記フレーム(4)に接続することを特徴とする、請求項20に記載の腕時計。
【請求項22】
腕時計(1)に取り付けるために装備されるフレーム(4)を有するエネルギー貯蔵装置(3)であって、
前記エネルギー貯蔵装置(3)は、シャフト(10)と、前記シャフト(10)及び/又は前記フレーム(4)を互いに対して運動させるための駆動力をもたらす1つ又は複数のばね(11)と、を備え、
前記エネルギー貯蔵装置(3)は、駆動部(12)を備え、前記駆動部は、前記1つ又は複数のばね(11)と前記シャフト(10)とを接続する、エネルギー貯蔵装置(3)において、前記1つ又は複数のばね(11)が、前記ばね(11)に張力をかけることによってエネルギーを貯蔵し放出するように装備されることを特徴とする、エネルギー貯蔵装置(3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレームを有するエネルギー貯蔵装置が設けられる本体、特に時計のムーブメントを備える腕時計に関し、エネルギー貯蔵装置は、シャフトと、シャフト及び/又はフレームを互いに対して運動させるための駆動力をもたらす1つ又は複数の板ばねと、を備え、エネルギー貯蔵装置は、駆動部を備え、駆動部は、1つ又は複数のばねとシャフトとを接続する。本発明はまた、腕時計に取り付けるために調整される別個のエネルギー貯蔵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機械式時計は、巻き上げ機構と、巻き上げエネルギーを貯蔵するためのエネルギー貯蔵装置と、エネルギー貯蔵装置から、最終的に腕時計の針を動かすために使用されるエスケープメント及び発振器の機構にエネルギーを伝えるためのギアトレインと、を備えることが知られている。
【0003】
特許文献1及び特許文献2にはそれぞれ、エネルギーを貯蔵し放出するために曲げられるばねを採用する機構が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許第145729号明細書
【特許文献2】欧州特許第3483660号明細書
【発明の概要】
【0005】
本発明は、プリアンブルによる機械式腕時計のエネルギー貯蔵装置の性能を改善すること、主に、エネルギー貯蔵装置の寸法を著しく増加させることなく、貯蔵することができるエネルギー量を増加させることを目的とする。換言すれば、目的は、単位体積当たりに貯蔵することができるエネルギー量の比を改善すること、すなわち、エネルギー密度を改善することである。
【0006】
本発明の目的を促進するために、添付の特許請求の範囲の1つ又は複数の特徴を有する腕時計及び腕時計用のエネルギー貯蔵装置が提案される。
【0007】
本発明の腕時計とエネルギー貯蔵装置に共通する特徴は、ばねに張力をかけることによってエネルギーを貯蔵し放出するように、1つ又は複数のばねが装備されることである。ばねに張力をかけるとは、ばねに加えられた力によって引っ張り応力又は引張応力が生じ、それにより、ばねに張力がかかることを意味する。曲げ又は座屈によるのではなく、ばねに張力をかけることによってエネルギーを貯蔵し放出し、それにより、エネルギー密度を改善することを可能にする、すなわち、特定の体積に貯蔵し放出することができるエネルギー量が大きくなることを見出した。したがって、エネルギーを貯蔵し放出するための変位は、ばねの曲げ又は座屈による変位よりも小さく、それにより、1つ又は複数のばねを備えるエネルギー貯蔵装置に接続する駆動部が、1:1、好ましくは少なくとも5:1、さらにより好ましくは少なくとも10:1より高い伝達比を有することが有利になり、その結果、1つ又は複数のばねが緩和することによって、フレームに対する対応するシャフトの運動が駆動部によってより大きくなることを可能にする。したがって、本発明によるすべての実施形態で、伝達比は1:1より高くなければならない。シャフトは少なくとも複数回(一般に約7~10回)回転するものであり、ほとんどの実施形態における駆動部は最大で180度回転することができる。したがって、伝達比は、5:1よりも高く、好ましくは10:1よりも高いことが好ましい。
【0008】
本発明の範囲内で、本発明の腕時計を実装するためのいくつかの選択肢がある。第1の選択肢では、シャフトが腕時計の本体に対して回転可能となるように、フレームは腕時計の本体に対して回転運動しない。別の選択肢では、フレームが腕時計の本体に対して回転可能となるように、シャフトは腕時計の本体に対して回転運動しない。
【0009】
既に述べたように、機械式腕時計には、従来、発振器が組み入れられている。本発明の好ましい態様では、エネルギー貯蔵装置は、発振器の振動を維持するように配置されるバレルとして具現化される。
【0010】
有利には、バレルは、ギアトレインを介して発振器を駆動する。
【0011】
エネルギーを貯蔵し放出するには、ばねが張力をかけられ、任意選択でばねをさらに曲げる及び/又は圧縮することが不可欠である。
【0012】
注目すべき特徴はさらに、使用時に駆動部が並進運動を回転運動に変換することである。より具体的には、駆動部は、1つ又は複数のばねの並進運動をシャフトの回転運動に変換する。
【0013】
さらに別の注目すべき特徴は、使用時に駆動部が変形によるエネルギーを回転性の動的な運動で具現化されたエネルギーに変換することである。
【0014】
駆動部がラックアンドピニオン駆動装置を備えることが好ましいことを見出した。この特徴は、多くの実施形態の骨格を形成し得る。
【0015】
一実施形態では、ピニオンがシャフトに取り付けられ、ラックに1つ又は複数のばねが装着される。
【0016】
ラックは、中立位置を有し、ラックの中立位置からの変位によって1つ又は複数のばねに張力がかかることが好ましい。
【0017】
別の好ましい特徴は、1つ又は複数のばねがラックとフレームとを接続し、それにより、ラックが第1の方向へ移動すると1つ又は複数のばねに張力がかかり、ラックが第1の方向とは反対の第2の方向へ移動すると1つ又は複数のばねが緩和することを可能にすることである。
【0018】
ラックには円の切片の形をした体が組み入れられ、この体は、アウトプットシャフト上のピニオンと接触する部分的に円形の輪郭を有する外面を有する実施形態がある。
【0019】
好ましくは、ラックには2つ以上の別個の体が組み入れられ、各体は、円の切片の形をし、各体は、アウトプットシャフト上のピニオンと接触する部分的に円形の輪郭を有する外面が設けられる。
【0020】
適切な配置では、ラックの体は、アウトプットシャフト上のピニオンの周りに円周方向に位置付けられる。
【0021】
有利には、ラックの各体には、フレームに接続される少なくとも1つのばねが装着される。
【0022】
別の実施形態では、ラックの各体に関して、体の少なくとも1つのばねが、ラックの体に回転可能に接続されるベース部に接続されるという特徴が適用される。
【0023】
ラックの各体に関して、ラックの体に回転可能に接続される第1及び第2の相互に直交するベース部に接続する複数のばねがあることが好ましい。
【0024】
さらに別の実施形態では、ラックは、アウトプットシャフトと接触する内向きのつながった輪郭が設けられた中央が開口した切片を有する体として具現化される。
【0025】
特に、この実施形態では、体は、たわみ部とばねとでフレームに接続する。
【0026】
以下、添付の特許請求の範囲を限定しない本発明による腕時計及びエネルギー貯蔵装置の例示的な実施形態の図面を参照して、本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】本発明による腕時計に使用されるエネルギー貯蔵装置の異なる実施形態の概略図である。
【
図3】本発明による腕時計に使用されるエネルギー貯蔵装置の異なる実施形態の概略図である。
【
図4】本発明による腕時計に使用されるエネルギー貯蔵装置の異なる実施形態の概略図である。
【0028】
図面において同じ参照番号が付されている場合は常に、これらの番号は同じ部分を指す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、エネルギー貯蔵装置3が設けられるムーブメント又は本体2を備える機械式腕時計1を概略的に示す。エネルギー貯蔵装置は、エネルギーを貯蔵するための特徴を有しており、これらの特徴は、腕時計1の本体2の外部から内部に到達する巻き芯5を介して、ユーザにより充電することができる。あるいは、これらの特徴は、当業者に知られているように自動巻きモジュール等のエネルギーによる巻き上げシステムによって装着することができる。
【0030】
エネルギーを貯蔵するための上記の特徴は、以下でさらに詳述される。しかしながら、明確にするために、
図1を参照し、エネルギー貯蔵装置3は、エネルギーをエネルギー貯蔵装置3から、最終的に腕時計1の針(図示せず)を動かすために使用されるエスケープメント7及び発振器8に伝えるためのギアトレイン6を駆動することを最初に示す。通常、エネルギー貯蔵装置3は、ギアトレイン6を介して発振器8の振動を維持するように配置されるバレルとして具現化される。
【0031】
以下、
図2~
図4を参照して、エネルギー貯蔵装置3の異なる実施形態について説明する。これらすべての実施形態において共通しているのは、エネルギー貯蔵装置3が、シャフト10と、エネルギー貯蔵装置3のフレーム4に対してシャフト10を運動させるための駆動力をもたらす1つ又は複数のばね11と、を備えることである。したがって、本発明のエネルギー貯蔵装置3は、駆動部12を備え、駆動部12は、1つ又は複数のばね11とシャフト10とを接続する。
【0032】
一般的に言えば、エネルギー貯蔵装置3は、腕時計1の本体2内で数通りで動作することができる。1つの可能な動作では、シャフト10が腕時計1の本体2に対して回転可能となるように、エネルギー貯蔵装置3のフレーム4は、腕時計1の本体2に対して回転運動しない。別の可能な動作では、フレーム4が腕時計1の本体2に対して回転可能となるように、シャフト10は、腕時計1の本体2に対して回転運動しない。
【0033】
前段落で説明した2つの選択肢は、同じエネルギー貯蔵装置3に一緒に実装することができ、異なる時期又は同時に動作可能である。例えば、2つの選択肢のうちの一方は、巻き上げ機構の動作中に動作可能になることができ、2つの選択肢のうちの他方は、駆動トルク又は駆動エネルギーがギアトレイン6を介して時計1のエスケープメント7及び発振器8の機構に伝えられるときに動作可能になることができる。
【0034】
あるいは、フレーム4とシャフト10の機能を逆にして、次いでシャフト10は、巻き上げ機構からのインプットとして機能して追加のエネルギーをエネルギー貯蔵装置3に貯蔵し、フレーム4はアウトプットとして機能し、ギアトレイン6を張力下に維持して、時計のムーブメント2の針及び発振器8を駆動することができる。実際、通常の時計のムーブメントでは、バレル又はエネルギー貯蔵装置3はフレーム4を介して(例えば、バレルの円筒形部の外側の歯車装置を介して)ゼンマイがほどけ、エネルギー貯蔵装置3はシャフト10を介して(手動で作動させる巻き芯5又は自動モジュールを介して)同時に巻き上げることができる。
【0035】
ここで、
図2に示すエネルギー貯蔵装置3の第1の実施形態を参照すると、この実施形態は、固定されたフレーム4に対して回転可能な2つの回転体13の形態の駆動部12を備える。シャフト10は、半径が小さく、体13の回転軸から比較的大きな距離をおいて回転体13に連結される。伸張性のあるばね11は、回転体13の回転中心に対して僅かな距離をおいて接続される。ばね11は、ばね11に張力をかけることによって、任意選択でさらにばね11を圧縮することによってエネルギーを貯蔵し放出するように装備される。この組合せによって、運動が大幅に増幅し、それにより、ばね11の小さな並進運動をシャフト10の大きな回転運動に変換することを可能にする。これに応じて、エネルギーを貯蔵するばね11は、ごく僅かに引っ張ることによって伸長することができ、回転体13は大きな回転運動を受け、それにより、シャフト10が複数回回転する。したがって、回転体13が組み入れられた駆動部12は、並進運動を回転運動に変換し、駆動部12は、好ましくは1:1より高い伝達比を有し、それにより、1つ又は複数のばね11が緩和することによって、フレーム4に対する対応するシャフト10の運動が駆動部12によってより大きくなることを可能にする。複数の機構を中央の駆動シャフトの周りに並列に設置して、駆動シャフトに作用する力のバランスをとることができる。また、複数の機構を、好ましくは中央の駆動シャフトの周りに、直列又は並列に組んで接続することができ、それにより、エネルギー貯蔵容量をより大きくすることを可能にする。
【0036】
本質的に、
図2が示すものは、駆動部12がラックアンドピニオン駆動装置を備え、ピニオンがシャフト10に設けられ、ラックが回転体13によって形成される、ということである。本発明によれば、回転体13によって形成されたラックには、1つ又は複数のばね11が装着される。
図2を参照して説明した実施形態が、回転体13によって形成されたラックが中立位置を有し、ラックが中立位置から離れるように変位すると、1つ又は複数のばね11に張力がかかる、という特徴を有することは、当業者にとって明らかであろう。1つ又は複数のばね11が回転体13によって形成されたラックとフレーム4とを接続し、それにより、ラックが第1の方向へ移動すると1つ又は複数のばね11に張力がかかり、ラック12が第1の方向とは反対の第2の方向へ移動すると1つ又は複数のばね11が緩和することを可能にすることは、当業者にとって明らかであろう。
【0037】
回転体13によって形成されたラックは、円の切片の形をし、各体は、シャフト10上のピニオンと接触する部分的に円形の輪郭を有する外面13´を有することが、
図2の実施形態からさらに明らかである。実際、
図2の実施形態では、ラックには2つの別個の体13が組み入れられ、それぞれは円の切片の形をし、それぞれには、シャフト10上のピニオンと接触する部分的に円形の輪郭を有する外面13´が設けられる。実際に適用される体13の数は必須ではない。1つのみであってもよいが、2つ以上であってもよい。
図2の実施形態は単なる一例である。さらに、ラックの体13は、シャフト10上のピニオンの周りに円周方向に位置付けられ、ラックの各体13には、エネルギー貯蔵装置3のフレーム4に接続される少なくとも1つのばね11が装着される。この実施形態では、本明細書に開示されている他のラックアンドピニオンの実施形態と同様に、ラックとピニオンとの間の接続は、ラックとピニオンが噛み合う歯を備えるギアによって実装することができる。あるいは、ラックとピニオンとの間の駆動接触は、ラックとピニオンの表面間の摩擦によって実装することができる。
【0038】
図3は、本発明のエネルギー貯蔵装置3の第2の実施形態を示しており、回転体13の各々は、2つの並進するベース部14´、14"と協働する。並進するベース部14´、14"は、固定されたフレーム4に対してy方向及びx方向にそれぞれ直線並進運動することができる。並進運動は、並進するベース部14´、14"とフレーム4とを接続する可撓性のあるばね11によって可能になる。ばね11は、ばね11に張力をかけることによって、任意選択でさらにばね11を曲げることによってエネルギーを貯蔵し放出するように装備される。回転体13は、並進するベース部14´、14"によって懸架され、フレーム4に直接接続されない。並進するベース部14´、14"と回転体13との接続部に回転関節がある。この構造は1自由度を有する。並進するベース部14´がy方向に並進するとき、他方の並進するベース部14"はx方向に並進し、回転体13は、並進するベース部14´、14"が並進する程度によって決定される角度に応じて回転する。並進するベース部14´が完全な1回の動作分をy方向に並進すると、この運動は回転体13の180°の回転運動に変換され、それにより、シャフト10を駆動する。エネルギーを貯蔵するばね11は、回転体13が回転するときに張力がかけられ、任意選択で並進運動による偏位によってさらに曲げられ、それにより、シャフト10が複数回回転する。また、
図3の実施形態によるこれら複数の機構を駆動シャフトの周りに並列に設置して、駆動シャフトに作用する力のバランスをとることができる。他の実施形態と同様に、複数の機構を、好ましくは駆動シャフトの周りに、直列又は並列に組んで接続することができ、それにより、エネルギー貯蔵容量をより大きくすることを可能にする。
【0039】
本質的に、
図3が示すものは、この実施形態の駆動部12もラックアンドピニオン駆動装置を備え、ピニオンがシャフト10に設けられ、ラックが回転体13によって形成される、ということである。本発明によれば、回転体13によって形成されたラックには、介在する並進するベース部14´、14"を介して1つ又は複数のばね11が装着される。
図3を参照して説明した実施形態が、回転体13によって形成されたラックが中立位置を有し、ラックが中立位置から離れるように変位すると、1つ又は複数のばね11に張力がかかる、という特徴を有することは、当業者にとって明らかであろう。1つ又は複数のばね11が回転体13によって形成されたラックとフレーム4とを並進するベース部14´、14"を介して接続し、それにより、ラックが第1の方向へ移動すると1つ又は複数のばね11に張力がかかり、ラック12が第1の方向とは反対の第2の方向へ移動すると1つ又は複数のばね11が緩和することを可能にすることを示している。
【0040】
回転体13によって形成されたラックは、円の切片の形をし、各体は、シャフト10上のピニオンと接触する部分的に円形の輪郭を有する外面13´を有することが、
図3の実施形態からさらに明らかである。実際、
図3の実施形態では、ラックには2つの別個の体13が組み入れられ、それぞれは円の切片の形をし、それぞれには、シャフト10上のピニオンと接触する部分的に円形の輪郭を有する外面13´が設けられる。さらに、ラックの体13は、シャフト10上のピニオンの周りに円周方向に位置付けられ、ラックの各体13には、エネルギー貯蔵装置3のフレーム4に接続される複数のばね11が装着される。
【0041】
図2の実施形態を参照して示されているものに対して
図3の第2の実施形態を区別する特徴は、ラックの各体13に関して、体13の少なくとも1つのばね11が、ラックの回転体13に回転可能に接続される並進するベース部14´、14"に接続されることである。ラックの各体13に関して、ラックの体13に回転可能に接続される第1及び第2の相互に直交するベース部14´、14"に接続する複数のばね11があることが、
図3にさらに明確に示されている。
【0042】
図2及び
図3の実施形態を参照して説明する対応する特徴は、
図4に示す第3の実施形態にも存在する。
図4の第3の実施形態は、ラックが、内向きのつながった輪郭表面13´が設けられた中央が開口した切片13"を有する体13として具現化されるという点で、他の実施形態と区別する。体13は、たわみ部15とばね11とでフレーム4に接続する。
【0043】
様々な実施形態におけるばねは、好ましくは板ばねであり、これは、それらが少なくとも1つの羽根又は物質の細長い切れを備え、略矩形断面を有することを意味する。
【0044】
本発明を、本発明の腕時計及びエネルギー貯蔵装置の例示的な実施形態を参照して上述したが、本発明は、本発明から逸脱することなく様々に変更し組み合わせることができるこれらの特定の実施形態に限定されない。したがって、説明した例示的な実施形態は、添付の特許請求の範囲を厳密にそれに従って解釈するために使用されるべきではない。それどころか、実施形態は、添付の特許請求の範囲をこれらの例示的な実施形態に限定することを意図しているのではなく、特許請求の範囲の文言を説明することを意図しているにすぎない。したがって、本発明の保護される範囲は、添付の特許請求の範囲のみに従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の文言に生じ得るあいまいさは、これらの例示的な実施形態を使用して解決されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム(4)を有するエネルギー貯蔵装置(3)が設けられる本体(2)を備える腕時計(1)であって、
前記エネルギー貯蔵装置(3)は、シャフト(10)と、前記シャフト(10)及び/又は前記フレーム(4)を互いに対して運動させるための駆動力をもたらす1つ又は複数の板ばね(11)と、を備え、
前記エネルギー貯蔵装置(3)は、駆動部(12)を備え、前記駆動部(12)は、前記1つ又は複数のばね(11)と前記シャフト(10)とを接続する、腕時計(1)において、前記1つ又は複数のばね(11)が、前記ばね(11)に張力をかけることによってエネルギーを貯蔵し放出するように装備されることを特徴とする、腕時計(1)。
【請求項2】
前記シャフト(10)が前記腕時計(1)の前記本体(2)に対して回転可能となるように、前記フレーム(4)が、前記腕時計(1)の前記本体(2)に対して回転運動しないことを特徴とする、請求項1に記載の腕時計。
【請求項3】
前記フレーム(4)が前記腕時計(1)の前記本体(2)に対して回転可能となるように、
前記シャフト(10)が、前記腕時計(1)の前記本体(2)に対して回転運動しないことを特徴とする、請求項1に記載の腕時計。
【請求項4】
発振器(8)がさらに設けられる前記腕時計において、前記エネルギー貯蔵装置(3)が、前記発振器(8)の振動を維持するように配置されるバレルとして具現化されることを特徴とする、請求項2又は3に記載の腕時計。
【請求項5】
前記バレルが、ギアトレイン(6)を介して前記発振器(8)を駆動することを特徴とする、請求項4に記載の腕時計。
【請求項6】
前記1つ又は複数のばね(11)が、前記ばね(11)に張力をかけることに加え曲げる及び/又は圧縮することによってエネルギーを貯蔵し放出するように装備されることを特徴とする、請求項1
に記載の腕時計。
【請求項7】
前記1つ又は複数のばね(11)を備える前記エネルギー貯蔵装置(3)に接続する前記駆動部(12)が、1:1、好ましくは少なくとも5:1、さらにより好ましくは少なくとも10:1より高い伝達比を有し、それにより、前記1つ又は複数のばね(11)が緩和することによって、前記フレーム(4)に対する対応する前記シャフト(10)の運動が前記駆動部(12)によってより大きくなることを可能にすること特徴とする、請求項1
に記載の腕時計。
【請求項8】
前記駆動部(12)が、並進運動を回転運動に変換するように装備されることを特徴とする、請求項1
に記載の腕時計。
【請求項9】
前記駆動部(12)が、変形によるエネルギーを回転運動で具現化されたエネルギーに変換するように装備されることを特徴とする、請求項1
に記載の腕時計。
【請求項10】
前記駆動部(12)がラックアンドピニオン駆動装置を備えることを特徴とする、請求項1
に記載の腕時計。
【請求項11】
前記ピニオンが前記シャフト(10)に取り付けられ、前記ラックに前記1つ又は複数のばね(11)が装着されることを特徴とする、請求項10に記載の腕時計。
【請求項12】
前記ラックが中立位置を有し、前記ラックの中立位置からの変位によって前記1つ又は複数のばね(11)に張力がかかることを特徴とする、請求項10
に記載の腕時計。
【請求項13】
前記1つ又は複数のばね(11)が前記ラックと前記フレーム(4)とを接続し、それにより、前記ラックが第1の方向へ移動すると前記1つ又は複数のばね(11)に張力がかかり、前記ラックが前記第1の方向とは反対の第2の方向へ移動すると前記1つ又は複数のばね(11)が緩和することを可能にすることを特徴とする、請求項10
に記載の腕時計。
【請求項14】
前記ラックには円の切片の形をした体(13)が組み入れられ、前記体は、前記シャフト(10)上の前記ピニオンと接触する部分的に円形の輪郭を有する外面(13´)を有することを特徴とする、請求項10から13のいずれか一項に記載の腕時計。
【請求項15】
前記ラックには2つ以上の別個の体(13)が組み入れられ、各体は、円の切片の形をし、各体は、前記シャフト(10)上の前記ピニオンと接触する部分的に円形の輪郭を有する外面(13´)が設けられることを特徴とする、請求項14に記載の腕時計。
【請求項16】
前記ラックの前記体(13)が、前記シャフト(10)上の前記ピニオンの周りに円周方向に位置付けられることを特徴とする、請求項15に記載の腕時計。
【請求項17】
前記ラックの各体(13)には、前記フレーム(4)に接続される少なくとも1つのばね(11)が装着されることを特徴とする、請求項15
に記載の腕時計。
【請求項18】
前記ラックの各体(13)に関して、前記体の少なくとも1つのばね(11)が、前記ラックの前記体(13)に回転可能に接続されるベース部(14´、14")に接続されることを特徴とする、請求項17に記載の腕時計。
【請求項19】
前記ラックの各体(13)に関して、前記ラックの前記体(13)に回転可能に接続される第1及び第2の相互に直交するベース部(14´、14")に接続する複数のばね(11)があることを特徴とする、請求項17
に記載の腕時計。
【請求項20】
前記ラックが、内向きの連続した輪郭表面(13´)が設けられた中央が開口した切片(13")を有する体(13)として具現化されることを特徴とする、請求項10
に記載の腕時計。
【請求項21】
前記体(13)が、たわみ部(15)と前記ばね(11)とで前記フレーム(4)に接続することを特徴とする、請求項20に記載の腕時計。
【請求項22】
腕時計(1)に取り付けるために装備されるフレーム(4)を有するエネルギー貯蔵装置(3)であって、
前記エネルギー貯蔵装置(3)は、シャフト(10)と、前記シャフト(10)及び/又は前記フレーム(4)を互いに対して運動させるための駆動力をもたらす1つ又は複数のばね(11)と、を備え、
前記エネルギー貯蔵装置(3)は、駆動部(12)を備え、前記駆動部は、前記1つ又は複数のばね(11)と前記シャフト(10)とを接続する、エネルギー貯蔵装置(3)において、前記1つ又は複数のばね(11)が、前記ばね(11)に張力をかけることによってエネルギーを貯蔵し放出するように装備されることを特徴とする、エネルギー貯蔵装置(3)。
【国際調査報告】