(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】薄層機能スタックを備えた透明基板
(51)【国際特許分類】
C03C 17/36 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
C03C17/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537898
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-07-25
(86)【国際出願番号】 EP2022086262
(87)【国際公開番号】W WO2023117725
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン-ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】ギマール,ドゥニ
(72)【発明者】
【氏名】デルベック,セシル
(72)【発明者】
【氏名】ルラルジュ,アンヌ
(72)【発明者】
【氏名】イヴェ,ロマン
【テーマコード(参考)】
4G059
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AB11
4G059AC06
4G059DA01
4G059DB02
4G059EA01
4G059EA04
4G059EA07
4G059EA12
4G059EB03
4G059EB04
4G059GA02
4G059GA04
4G059GA14
(57)【要約】
少なくとも一方の面(1000a、1000b)上に薄層の機能スタック(1001)を備えた透明基板(1000)において、前記機能スタック(1001)が、基板(1000)から出発して、
- 2つの薄層誘電体モジュール(1002、1004)の間に設置された少なくとも1つの金属機能層(1003)と、酸化タングステン層(1002a、1004a)を含む少なくとも1つの薄層誘電体モジュール(1002、1004)を含み、酸化タングステンが、IUPAC命名法に準ずる第1族の化学元素の中から選択された少なくとも1つのドーピング元素を含んでいる、透明基板(1000)。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の面(1000a、1000b)上に薄層の機能スタック(1001)を備えた透明基板(1000)において、前記機能スタック(1001)が、基板(1000)から出発して、
- 2つの薄層誘電体モジュール(1002、1004)の間に設置された少なくとも1つの金属機能層(1003)と、酸化タングステン層(1002a、1004a)を含む少なくとも1つの薄層誘電体モジュール(1002、1004)を含み、酸化タングステンが、IUPAC命名法に準ずる第1族の化学元素の中から選択された少なくとも1つのドーピング元素を含んでいる、透明基板(1000)。
【請求項2】
酸化タングステン層(1002a、1003a)の光屈折率が、350nmにおける2.4超の最大値から、600nm~900nmの間の最小値に至るまで波長と共に単調に減少して、最大値と最小値の間の差が0.8超、好ましくは1.0超、さらには1.4超であるようになっている、請求項1に記載の基板(1000)。
【請求項3】
酸化タングステン層(1002a、1004a)の消光係数が、500nmで0.2未満であり、1200nmで2未満である、請求項1または2に記載の基板(1000)。
【請求項4】
酸化タングステン層(1002a、1004a)が、ドーピング元素または複数のドーピング元素を、タングステンに対する前記元素のモル比またはタングステンに対する各元素のモル比の総和が、0.01~0.4、好ましくは0.01~0.2、さらには0.01~0.1となるような割合で含んでいる、請求項1から3のいずれか一つに記載の基板(1000)。
【請求項5】
酸化タングステン層(1002a、1004a)が、水素、リチウム、ナトリウム、カリウムおよびセシウムの中から選択された少なくとも1つのドーピング元素を含んでいる、請求項1から4のいずれか一つに記載の基板(1000)。
【請求項6】
酸化タングステン層(1002a、1004a)が、ドーピング元素としてセシウムを含み、タングステンに対するセシウムのモル比が0.01~0.2、好ましくは0.01~0.1である、請求項2に記載の基板。
【請求項7】
酸化タングステン層(1002a)が、前記基板(1000)と前記金属機能層(1003)の間で、金属機能層(1003)の下に位置する層の誘電体モジュール(1002)内に含まれている、請求項1から3のいずれか一つに記載の基板(1000)。
【請求項8】
各誘電体モジュール(1002、1004)の層が、1つの酸化タングステン層(1002a、1004a)を含む、請求項1から3のいずれか一つに記載の基板(1000)。
【請求項9】
単数または複数の酸化タングステン層(1002a、1004a)の物理的厚みが2nm~50nm、詳細には5nm~30nm、好ましくは5nm~20nmである、請求項1から5のいずれか一つに記載の基板(1000)。
【請求項10】
機能スタック(1001)の層がさらに、金属機能層(1003)の上方でこの金属機能層と接触して位置する、好ましくはニッケルとクロムの合金をベースとする上部金属遮断層(6001)、および/または金属機能層(1003)の下方でこの金属機能層と接触して位置する、好ましくはニッケルとクロムの合金をベースとする下部金属遮断層(6002)を含んでいる、請求項1から6のいずれか一つに記載の基板(1000)。
【請求項11】
機能スタックの層がさらに、金属機能層(1003)の上方で、好ましくはこの金属機能層と接触して位置する上部酸化チタン層(7001)を含み、前記上部層が好ましくは少なくとも5nmの物理的厚みを有する、請求項1から7のいずれか一つに記載の基板(1000)。
【請求項12】
機能スタック(1001)の層が、550nmで2.45未満の屈折率の層を含み、前記層が、基板(1000)から出発して機能スタック(1001)の上部部分を形成する層の誘電体モジュール(1004)内に含まれている、請求項1から8のいずれか一つに記載の基板(1000)。
【請求項13】
金属機能層(1003)が銀ベースの層である、請求項1から12のいずれか一つに記載の基板(1000)。
【請求項14】
少なくとも2つの透明基板を含むグレージングにおいて、基板の1つは、請求項1から13のいずれか一つに記載の基板であり、機能スタックの層が前記グレージングの面2および/または面3に位置するような形で配置されている、グレージング。
【請求項15】
酸化タングステン層が、IUPAC命名法に準ずる第1族の化学元素の中から選択された1つの化学元素を用いてドープされた酸化タングステンのターゲットを使用したマグネトロンスパッタリング法によって堆積される、請求項1から13のいずれか一つに記載の透明基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄層機能スタックを備えた透明基板に関する。
【背景技術】
【0002】
薄層機能スタックは、グレージングに対し断熱および/または日射保護機能を提供するために一般的に使用されている。これらのグレージングは、建物または車両に装備することができる。それらの第1の利点は、過度の過熱を回避し(いわゆる「日射制御」グレージング)および/または外部に消散されるエネルギー量を減少させる(いわゆる「低放射」グレージング)ことによって、空調力を削減できるという点にある。
【0003】
特に使用されている薄層機能スタックの1つのタイプは、電磁放射線、特に赤外線の一部の反射を可能にする特に銀ベースの金属機能層を含む。
【0004】
金属機能層は、概して可視領域内における反射および屈折の光学的効果を無効化するために、誘電体モジュールとも呼ばれる2つの誘電体アセンブリの間に配置されている。これらの誘電体モジュールは、例えば窒化ケイ素または窒化アルミニウムなどの窒化物タイプおよび/または、例えば酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化スズなどの酸化物タイプの単数または複数の誘電体薄層を含むことができる。
【0005】
強い日照レベルにさらされる可能性の高いグレージングのためには、日射制御機能が求められている。透過する光エネルギー量を制限するグレージングの能力は、グレージング表面またはグレージングを通って内部に向かって透過する総エネルギーと入射日射エネルギーの比率である日射透過率gによって定義される。日射透過率gの値が低くなればなるほど、太陽放射に対する保護効果は高くなる。
【0006】
1996年1月16日公開の特開平08-12378号公報[日産自動車株式会社]は、2つの誘電体層の間に配置された酸化タングステン層を含む「日射制御」機能スタックについて記載している。スタックは、詳細には銀ベースである金属機能層を含むスタックに比べて表面電気抵抗を削減し、電波透過性を増大させることができる。
【0007】
2010年8月19日公開の特開2010-180449号公報[住友金属鉱山株式会社]は、水素、アルカリ、アルカリ土類および希土類の中から選択された化学元素を含む酸化タングステンのターゲットを用いたスパッタリングによって堆積させられた酸化タングステンベースの層について記載している。この層は、近赤外線の吸収力が強いために、「日射制御」機能を有する。
【0008】
2020年7月29日発行の欧州特許出願公開第3686312号明細書[住友金属鉱山株式会社]は、セシウムでドープされた酸化タングステンベースの層およびスパッタリングによるこのような層の堆積方法について記載している。この層は、電波透過性および、特にその高い赤外線吸収度による「日射制御」機能を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8-12378号公報
【特許文献2】特開2010-180449号公報
【特許文献3】欧州特許出願公開第3686312号明細書
【特許文献4】国際公開第2012/093238号
【特許文献5】国際公開第2017/00602号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
例えば建物および建築の市場における一部の利用分野については、屋内の十分かつ快適な自然照明を保証すると同時に住宅内の人工照明装置の使用を削減することを目的として、機能スタックが、可視光内での高い光透過率TL、特に67%超、さらには77%超のTLを有することが望ましい。
【0011】
機能スタックは、3つの要件、すなわち高い光透過率、低い日射透過率の値および低い放射率の値を満たした場合に、このような利用分野にふさわしい機能スタックであると認定される。したがって、機能スタックは、高い日射透過率と低い放射率に対する光透過率の比として定義される、選択度sの値を表す場合に、ふさわしいものである。
【0012】
機能スタックの中で機能層として赤外線吸収層のみを使用することからなる技術的現状の解決法は、さらに高い放射率を有することから、例えば住宅市場での利用分野とは相容れず、適さない。
【0013】
したがって、住宅市場における「日射制御」の利用分野にふさわしい、すなわち高い選択度および特に放射率に関して適応した全体的なエネルギー性能を有する機能スタックに対するニーズがなおも存在している。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様によると、請求項1に記載されている通りの薄層機能スタックの備わった透明基板が提供されており、従属する請求項は有利な実施形態である。
【0015】
本発明の第2の態様によると、本発明の第1の態様に係る透明基板を含むグレージングが提供されている。
【0016】
本発明の第3の態様によると、本発明の第1の態様に係る透明基板の製造方法が提供されている。
【0017】
本発明の第1の利点は、それが特に建物および建築市場における利用分野にふさわしい「日射制御」機能スタックを提供するという点にある。この機能スタックは、高い光透過率、低い日射透過率の値および低い放射率という3つの要件を満たすものである。この機能スタックは、高い選択度および適応された全体的なエネルギー性能を有する。
【0018】
一例として、本発明の第1の態様に基づく機能スタックの備わった透明基板は、従来の機能スタックと比較して、少なくとも2%、さらには少なくとも4%低い日射透過率の値、そして少なくとも1%、さらには少なくとも2%高い等価光透過率を有する。
【0019】
第2の利点は、酸化タングステン層が、従来の機能スタックと比較してスタックの色に対し影響を全く、またはわずかしか及ぼさないという点にある。したがって色の観点から見た仕様は、このような層が既存の機能スタック内に導入された場合でもつねに遵守される。
【0020】
本発明の別の利点は、酸化タングステン層が、特に酸化タングステンのターゲットを用いたマグネトロンスパッタリング法により堆積可能である、という点にある。薄層機能スタックは概してマグネトロンスパッタリング法によって堆積されることから、既存の方法をより容易に適応させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1の態様の第1の実施形態の概略図である。
【
図2】本発明の第1の態様の第2の実施形態の概略図である。
【
図3】セシウムでドープされた酸化タングステン層の複数の例の波長に応じた消光係数の推移を表わしている。
【
図4】セシウムでドープされた酸化タングステン層の複数の例の波長に応じた光屈折率の推移を表わしている。
【
図5】本発明の第1の態様の第3の実施形態の概略図である。
【
図6】本発明の第1の態様の第4の実施形態の概略図である。
【
図7】本発明の第1の態様の第5の実施形態の概略図である。
【
図8】本発明の第1の態様の第6の実施形態の概略図である。
【
図9】本発明の第2の態様に係るグレージングの第1の実施形態の概略図である。
【
図10】本発明の第2の態様に係るグレージングの第2の実施形態の概略図である。
【
図11】本発明に係る17のグレージング例および4つの反対例についての光透過率および日射透過率のグラフである。
【
図12】本発明に係る17のグレージング例および4つの反対例についての内部面および外部面における光反射のグラフである。
【
図13】本発明に係る17のグレージング例および4つの反対例についての透過、内部反射および外部反射における色パラメータa
*およびb
*のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の定義および慣例が使用される。
【0023】
層または層アセンブリの位置を形容し別の層または別のアセンブリの位置との関係において定義されるそれぞれ「~の上方」、「~の下方」なる用語は、前記層または前記層アセンブリが、それぞれ基板からより近いか、より遠いことを意味している。これら2つの用語、「~の上方」および「~の下方」は、それらが形容する層または層アセンブリおよびそれらが定義される基準となる別の層または別の層アセンブリが接触していることを意味するものでは全くない。これらの用語は、これら2つの層の間の他の中間層の存在を排除しない。「~と接触」なる表現は、明示的に、他のいかなる層も間に配置されないことを示すために使用される。
【0024】
いかなる詳細も修飾も無く、層について使用される「厚み」なる用語は、前記層の実際のまたは幾何学的な物理的厚みeに対応する。この厚みはナノメートル単位で表現される。
【0025】
「誘電体モジュール」なる表現は、全体的に誘電体の層アセンブリを形成する互いに接触した単数または複数の層を表わす。すなわち、これは、金属機能層の機能を有していない。誘電体モジュールが複数の層を含む場合、これらの層はそれ自体誘電体であり得る。層誘電体モジュールの実際のまたは幾何学的な物理的厚みは、このモジュールを構成する層各々の実際のまたは幾何学的な物理的厚みの総和に対応する。
【0026】
本明細書においては、材料または層をそれが含有するものに関して形容するために使用される「~の層」または「~ベースの層」なる表現は、同等に使用されている。これらの表現は、この材料または層が含んでいる構成要素の質量分率が、少なくとも50%、詳細には少なくとも70%、好ましくは少なくとも90%であることを意味している。詳細には、少数の元素またはドーピング元素の存在は排除されない。
【0027】
基板を形容するために使用される「透明」なる用語は、基板が好ましくは、光の吸収を最小限に抑えこうして可視電磁スペクトル内での最大光透過率を保つ目的で、不透明でなく半透明でない無色のものであることを意味している。
【0028】
「光透過率」とは、EN410規格の第4.2節において定義され測定されているTLと記される光透過率を意味する。
【0029】
可視スペクトル内の光透過率TL、日射透過率gおよび選択度s、可視スペクトル内の内部反射Rintおよび外部反射Rext、ならびにそれらの測定および/または計算様式は、EN410規格、ISO9050規格およびISO10292規格中で定義されている。
【0030】
IUPAC命名法によると、化学元素の第1族は、水素およびアルカリ元素、すなわちリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムおよびフランシウムを含む。
【0031】
「光屈折率」および「消光係数」なる表現は、技術分野において、特に著書である、「Forouhi & Bloomer,Handbook of Optical Constants of Solids II,Palik,E.D.(ed.),Academic Press,1991」の第7章中に記載されているForouhi & Bloomerモデルにしたがって定義されるような光屈折率nおよび消光係数kを意味するものと理解される。
【0032】
本発明の第1の態様によると、[
図1]および[
図2]を参照して、少なくとも一方の面(1000a、1000b)上に薄層の機能スタック(1001)を備えた透明基板(1000)において、前記機能スタック(1001)が、基板(1000)から出発して:
- 2つの薄層誘電体モジュール(1002、1004)の間に設置された少なくとも1つの金属機能層(1003)と
酸化タングステン層(1002a、1004a)を含む少なくとも1つの薄層誘電体モジュール(1002、1004)を含み、
酸化タングステンが、IUPAC命名法に準ずる第1族の化学元素の中から選択された少なくとも1つのドーピング元素を含んでいる、透明基板(1000)が提供されている。
【0033】
意外にも、IUPAC命名法に準ずる第1族の元素によって選択されたドーピング元素を含む酸化タングステン層は、特に電磁放射線の波長に応じた消光係数および屈折率の推移に関して予想外の光学特性を有する。金属機能層の存在と組合わされたこれらの特性は、選択度の増大に対し相乗効果を有する。
【0034】
例示的かつ説明的例として、3つの堆積条件にしたがってソーダ石灰ガラス製の基板上にスパッタリングにより堆積されたセシウムでドープされた酸化タングステン層についての、消光係数kおよび光屈折率nの推移は、それぞれ[
図3]および[
図4]に表現されているが、本発明は、これらの例と密接不可分の関係にあるとみなされてはならない。タングステンに対するセシウムのモル比は、約0.05~0.06である。
【0035】
層C1、C2およびC3は、予め厚み約5nmの窒化ケイ素ベースの第1の層が上に堆積されているソーダ石灰ガラス製基板上に堆積された。これらの層は、その後、厚み約5nmの窒化ケイ素ベースの第2の層で被覆された。換言すると、各層C1、C2およびC3は、窒化ケイ素ベースの2つの層の間に封止されている。
【0036】
2つの窒化ケイ素ベースの層による層C1、C2およびC3の封止の役目は、過度の酸化および/または構造内での過度の酸素拡散による層C1、C2およびC3の劣化を予防することにある。窒化ケイ素の代りに、例えば窒化ジルコニウムなどの適応された他のあらゆるタイプの窒化物を使用することが可能である。
【0037】
層C1は、4mTorrの圧力で25%の二酸素を含む雰囲気下で、層C2は、4mTorrの圧力で20%の二酸素を含む雰囲気下で、そして層C3は10mTorrの圧力下で5%の二酸素を含む雰囲気下で堆積されている。
【0038】
層C1、C2およびC3を含むこのようにして得たスタックは、堆積後10分間650℃で焼きなましされた。
【0039】
消光係数および屈折率は、実験的測定からモデリングによって計算された。測定値は分光光度計Perkin Elmer Lambda900、およびエリプソメーターVASE M-2000XI J.A.Wollamを用いて得られた。
【0040】
[
図3]を参照すると、層C1、C2、またはC3の如何に関わらず、消光係数は、300nmで1未満の値から単調に減少して約400nm~550nmの間で0.1未満の最小水平部に達し、その後単調に増大して、1200nmあたりで1.2超の値に達する。層C1、C2およびC3は、近赤外線において強い吸収を、そして電磁スペクトルの可視領域において一定の透明度を有する。
【0041】
[
図4]を参照すると、層C1、C2またはC3の如何に関わらず、光屈折率は、300nmで3に近い値から単調に減少して、約800nm~1100nmの間で1.8未満さらには1.6未満の最小水平部に達し、その後、単調に増大して1300~1400nmあたりで1.8超さらには2超の値に達する。光屈折率および消光係数の推移は、3つの層C1、C2およびC3の間で一定の変動を有する。この非常に穏やかな可変性はおそらく、堆積条件に起因するものであり、本発明の利点を得る上で有害なものではない。
【0042】
他の好ましい実施形態によると、酸化タングステン層(1002a、1004a)の光屈折率は、350nmにおける2.4超の最大値から、600nm~900nmの間の最小値に至るまで波長と共に単調に減少して、最大値と最小値の間の差が0.8超、好ましくは1.0超、さらには1.4超であるようになっている。
【0043】
換言すると、光屈折率の値は、350nmで2.4超の最大値と600nm~900nmの間の最小値の間で、少なくとも0.8、好ましくは少なくとも1.0、さらには少なくとも1.4だけ単調な形で減少する。一例として、光屈折率の値は、350nmでの2.4超の最大値と、600nm~900nmの間の、特に800nmと900nmの間で2.3未満の最小値との間で、少なくとも0.8、好ましくは少なくとも1.0、さらには少なくとも1.4だけ単調な形で減少し得る。
【0044】
本発明の効果を得るために特に必要とされるわけではないが、これらの光屈折率の値は、それでも、建物および建築市場における利用分野にとっては色の観点から見て仕様の遵守に関して有利であり得る。詳細には、これらの値は、中間色を得ることを可能にする。
【0045】
いくつかの好ましい補足的実施形態によると、酸化タングステン層1002a、1004aの消光係数は、500nmで0.2未満、さらには0.1未満であり得、1200nmで2未満、さらには1.5未満であり得る。こうして、選択度は有利にも、さらに増大し得る。
【0046】
消光係数および光回析率は、IUPAC命名法に準ずる第1族の元素の中から選択される単数または複数のドーピング元素の性質および数量に応じて変動し得る。これらは、特に、[
図3]および[
図4]の例示的および説明的例の枠内で先に説明したものとは異なる挙動を有し得る。しかしながら、現在、単数または複数のドーピング元素の性質および/または数量に応じた消光係数および屈折率の一般的挙動の法則を確立することは困難である。
【0047】
いくつかの特定の実施形態によると、酸化タングステン層1002a、1004aは、ドーピング元素Xまたは複数のドーピング元素X1、X2...を、タングステンWに対する前記元素のモル比X/Wまたはタングステンに対する各元素のモル比の総和(X1+X2+...)/Wが、0.01~0.4、好ましくは0.01~0.2、さらには0.01~0.1となるような割合で含んでいる。これらのモル比の値は有利には、ドーピング元素の数量を制限しながら先の実施形態において説明した消光係数および屈折率の値を得ることを可能にすることができる、ということが確認された。さらに、ドーピング元素のための鉱物資源利用を節約し、かつコストを削減することを結果としてもたらすことが、場合によって可能である。
【0048】
いくつかの実施形態によると、酸化タングステン層1002a、1004aは、水素、リチウム、ナトリウム、カリウムおよびセシウムの中から選択された少なくとも1つのドーピング元素を含んでいる。第1族の元素の中でも、これらの特定の元素は、求められている技術的効果にとって最適な消光係数および屈折率の値を得ることを可能にする。
【0049】
とりわけ好ましい形態によると、酸化タングステン層1002a、1004aは、ドーピング元素としてセシウムを含み、タングステンに対するセシウムのモル比は0.01~0.2、好ましくは0.01~0.1である。これらの実施形態は、選択度の増大、中間色の保存、およびコストの節約に関して最高の性能を得ることを可能にする。
【0050】
透明基板1000は、好ましくは平坦であってよく、有機または無機、剛性または可撓性のものであり得る。詳細には、透明基板はミネラルガラス、例えばソーダ石灰ガラスであってよい。
【0051】
本発明の実施のために有利に使用可能である有機基板の例は、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミドなどのポリマー材料であり得る。これらのポリマーは、フッ素含有ポリマーであってよい。
【0052】
本発明の実施のために有利に使用可能である鉱物基板の例は、ミネラルガラスまたは結晶化ガラスのシートであり得る。ガラスは、好ましくは、ソーダ石灰、ホウケイ酸塩、アルミノケイ酸塩さらにはアルミノホウケイ酸タイプのガラスであり得る。本発明の好ましい一実施形態によると、透明基板1000は、ソーダ石灰ミネラルガラスシートである。
【0053】
[
図1]を参照して、有利な実施形態によると、酸化タングステン層1002aは、前記基板1000と前記金属機能層1003の間で、金属機能層1003の下に位置する層の誘電体モジュール1002内に含まれていてよい。金属機能層1003の下に位置する層の誘電体モジュール1002内の酸化タングステン層1002aの存在は、日射透過率の値を削減しおよび/または光透過率を増大させることを同時に可能にする。
【0054】
[
図5]を参照して、好ましい実施形態によると、各誘電体モジュールの層1002、1004は、1つの酸化タングステン層1002a、1004aを含む。各誘電体モジュール1002、1004内の酸化タングステン層1002a、1004aの存在は、日射透過率のさらに大幅な削減および光透過率の最大の増加を可能にする。
【0055】
いくつかの有利な実施形態によると、単数または複数の酸化タングステン層1002a、1004aの物理的厚みは、2nm~50nm、詳細には5nm~30nm、好ましくは5nm~20nmであり得る。これらの厚み範囲は、本発明の第1の形態の注目すべき利点を得るのに十分である。
【0056】
[
図6]を参照して、実施形態によると、機能スタック1001の層はさらに、金属機能層1003の上方でこの金属機能層と接触して位置する、好ましくはニッケルとクロムの合金をベースとする上部金属遮断層6002、および/または金属機能層1003の下方でこの金属機能層と接触して位置する、好ましくはニッケルとクロムの合金をベースとする下部金属遮断層6001を含んでいる。
【0057】
上部金属遮断層6002および/または下部金属遮断層6001の存在により、例えばブラッシングまたはスクラッチに対する機械的強度の観点から見たスタックの耐久性を有利にも増大させることができる。この存在により同様に、後続する層の堆積の際および/または熱処理の際における金属機能層の、例えば酸化による劣化を、特に隣接する層からの或る種の化学元素の拡散および/または酸素の拡散を制限することによって回避することが可能となる。
【0058】
[
図7]を参照して、他の実施形態によると、薄層機能スタック1001はさらに、金属機能層1003の上方で、好ましくはこの金属機能層1003と接触して位置する上部酸化チタン層7001を含んでいてよく、前記上部層4000は、好ましくは少なくとも5nmの物理的厚みを有する。上部酸化チタン層7001は、選択度を増大させることができる。
【0059】
[
図8]を参照して、特定の実施形態によると、機能スタック1001の層は、550nmで2.45未満の屈折率の層8001を含み、前記層は、基板1000から出発して機能スタック1001の上部部分を形成する誘電体モジュールの層1004内に含まれている。好ましくは、前記層8001は、誘電体モジュール1004の最終層である。
【0060】
最終誘電体モジュール1004内の550nmで2.45未満の屈折率の層と第1および/または第2の誘電体モジュール1002、1004内の酸化タングステン層1002a、1004aの組合せによって、隣接層からの酸素などの元素の偶発的拡散による単数または複数の酸化タングステン層1002a、1004aの構造的劣化をことごとく予防することができる。
【0061】
他の特定に実施形態によると、機能スタック1001の層は、550nmで2.45未満の屈折率の層を含み、前記層は、基板1000から出発して機能スタック1001の下部部分を形成する層の誘電体モジュール1002内に含まれている。
【0062】
好ましい実施形態によると、機能スタック1001の層は、550nmで2.45未満の屈折率の第1の層であって、基板1000から出発して機能スタック1001の下部部分を形成する層の誘電体モジュール1002内に含まれている第1の層と、550nmで2.45未満の屈折率の第2の層であって、基板1000から出発して機能スタック1001の上部部分を形成する層の誘電体モジュール1004内に含まれている第2の層と、を含む。
【0063】
550nmで2.45未満の屈折率の単数または複数の層は、好ましくは、ケイ素、ジルコニウム、チタン、さらにはスズおよび亜鉛の酸化物または窒化物をベースとする。一例として、これらの層は、窒化ケイ素、酸化ケイ素、窒化ジルコニウムまたは酸化亜鉛および酸化スズをベースとしていてよい。
【0064】
金属機能層1003の役目は、赤外線および/または太陽放射の一部分を反射することにある。この層は、例えば金ベースまたは銀ベースの任意の適切な金属であり得る。金属機能層1003の厚みは、典型的には、2nm~25nm、好ましくは10nm~20nmであり得る。
【0065】
好ましい実施形態によると、金属機能層1003は銀ベースの層である。
【0066】
誘電体モジュールは、例えば酸化亜鉛、亜鉛とスズの混合酸化物、窒化ケイ素、酸化ケイ素、窒化ジルコニウム、酸化チタン、酸化スズおよび酸窒化ケイ素などの金属元素および/または金属合金の酸化物および/または窒化物の単数または複数の層を含み得る。
【0067】
基板、特にガラス基板上への薄層堆積方法は、業界において周知の方法である。一例として、ガラス基板上への薄層スタックの堆積は、所与の薄層を堆積するために適応された一連の堆積セルを横切ってガラス基板を通過させることによる前記スタックの各薄層の連続的堆積によって実現される。
【0068】
堆積セルは、磁場支援型スパッタリング(マグネトロンスパッタリングとも呼ばれる)、イオンビーム蒸着(IBAD)、蒸発、化学気相成長(CVD)、プラズマ化学気相成長(PECVD)、低圧化学気相成長(LPCVD)などの堆積方法を使用することができる。
【0069】
磁場支援型スパッタリングによる堆積方法が、特に使用される。層堆積条件は、例えば国際公開第2012/093238号および国際公開第2017/00602号中など、文献中で広く考証されている。
【0070】
本発明の第2の態様は、上述の実施形態のいずれか1つに記載の透明基板を含むグレージング、詳細にはシングル、ダブルまたはトリプルグレージングに関する。
【0071】
モノリシックグレージングは、唯一の基板、詳細にはミネラルガラスシートを含む。これはシングルグレージングであり得る。モノリシックグレージングとして本発明に係る基板が使用される場合、薄膜機能スタックは、好ましくは、グレージングが壁上に設置される建物の部屋の内部に向かって配置された基板の面上に堆積させられる。このような構成の場合、適切な手段を用いて物理的または化学的劣化に対して第1の層そして場合によっては薄層機能スタックを保護することが有利であり得る。
【0072】
マルチグレージングは、少なくとも2つの基板、詳細には、断熱ガスギャップによって分離された平行なミネラルガラスシートを含む。大部分のマルチグレージングは、ダブルまたはトリプルグレージングである、すなわち、それぞれ2枚または3枚のグレージングを含む。本発明に係る基板がマルチグレージングの要素として使用される場合、薄層機能スタックは、好ましくは断熱ガスと接触して内部に向かって配置されたガラスシートの面上に堆積させられる。この配置には、外部環境による化学的または物理的劣化からスタックを保護するという利点がある。
【0073】
[
図9]および[
図10]を参照して、好ましい実施形態によると、グレージングは、グレージング9000、10000の面2および/または面3に機能スタック1001の層が位置するような形で配置された前述のいくつかの実施形態のうちの1つに係る透明基板1000を含むダブルグレージング9000、10000である。図中、(E)はグレージングが設置される施設の外部に対応し、(I)は施設の内部に対応する。
【0074】
[
図9]を参照して、第1の実施形態によると、グレージング9000は、内側表面1000aと外側表面1000bを伴う第1の透明ガラスシート1000、内側表面9001aと外側表面9001bを伴う第2の透明ガラスシート9001、断熱ガスギャップ9002、スペーサ9003およびシール接合部9004を含む。
【0075】
ガラスシート1000は、断熱ガスギャップ9002のガスと接触するその内部表面1000b上でかつそれに接触した状態で、本発明の第1の態様に係る機能スタック1001を含む。機能アセンブリ1001は、好ましくは、透明基板1000のシートの外側表面1000bとは反対側のその外側表面がグレージングを使用する施設、例えば建物の内部(I)に向かうような形で配置される。換言すると、機能スタック1001は、外部(E)から出発してグレージングの面2に配置される。
【0076】
[
図10]を参照して、別の実施形態によると、グレージングは、内側表面1000aと外側表面1001bを伴う第1の透明ガラスシート1000、内側表面1001aと外側表面1001bを伴う第2の透明ガラスシート10001、断熱ガスギャップ10004、スペーサ10003およびシール接合部10004を含むダブルグレージング10000である。
【0077】
ガラスシート1000は、断熱ガスギャップ9004のガスと接触するその内部表面1000aの上でかつそれに接触した状態で、本発明の第1の態様に係る機能スタック1001を含む。機能アセンブリ1001は、好ましくは、透明基板1000のシートの外側表面1000aとは反対側のその外側表面が施設の外部(E)に向かうような形で配置される。換言すると、機能スタック(1001)は、外部(E)から出発してグレージングの面3に配置される。
【0078】
本発明の第3の態様によると、本発明の第1の態様に係る透明基板の製造方法において、酸化タングステン層がIUPAC命名法に準ずる第1族の化学元素の中から選択された1つの化学元素を用いてドープされた酸化タングステンのターゲットを使用したマグネトロンスパッタリング法によって堆積される方法が提供されている。
【0079】
酸化タングステンのターゲットは、特に、本発明の第1の態様のいくつかの実施形態においてドープされた酸化タングステン層について説明された割合で、単数または複数のドーピング元素を含有することができる。
【0080】
単数または複数のタングステン層は、1~15mTorr、好ましくは3~10mTorrの圧力下で、0%~50%、好ましくは5%~25%の二酸素を含む雰囲気下で上述のターゲットを用いたスパッタリングによって堆積され得る。好ましくは、堆積は、基板については冷間で、すなわち100℃未満、特に20℃~60℃の温度で実施され得る。
【0081】
本発明の第1のまたは第2の態様のいずれに関するものであれ、説明された実施形態は全て、特別な修正または適応無しで、互いに組合せ可能である。これらの組合せの1つの使用に際し万一技術的不適合が生じた場合には、特に研究プログラムの使用によって、過度の労力を必要とすることなく当業者は自らの知識を用いてそれらを解決することができる。
【実施例】
【0082】
本発明の特徴および利点は、以下で説明する実施例および反対例によって例示される。
【0083】
本発明に係る17の実施例E1~E17が表1、2および3中に記載されており、これらの表は、異なる層の組成およびナノメートルで表わした厚みを示している。最初の2欄の中の数字は、図の参照番号に対応する。
【0084】
CWOと記された、セシウムでドープされた酸化タングステン層。タングステンに対するセシウムのモル比は、約0.05~0.06である。
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
実施例E1~E5、E7、E9~E12、E15およびE16は、第1の誘電体モジュール1002内に1層のドープされた酸化タングステン層1002aしか含まない。実施例E6、E8、E13~E14およびE17は、第1の誘電体モジュール1002および第2の誘電体モジュール1004内に位置する2層のドープされた酸化タングステン層1002a、1004aを含む。対応する反対例は、反対例CE1およびCE3である。
【0089】
実施例E9~E11および実施例E15~E17は、酸化チタンベースの層7001が金属機能層1003の上方でかつこの金属機能層と接触した状態で位置している、いくつかの有利な実施形態に係る実施例である。対応する反対例は、反対例CE2およびCE4である。
【0090】
表4中には4つの反対例CE1~CE4が記載されており、この表は異なる層の組成およびナノメートル単位で表わした厚みを示している。
【0091】
【0092】
17の実施例E1~E17および反対例CE1~CE4の薄層スタックは、磁場支援型スパッタリング(マグネトロン法)により堆積されており、この方法の特徴は、例えば国際公開第2012/093238号および国際公開第2017/00602といった特許出願の文献中で広く考証されている。基板1000は、厚み4mmのソーダ石灰ミネラルガラスである。堆積後に、基板は、650℃で10分間、熱処理を受けている。
【0093】
実施例E1~E17および反対例CE1~CE4の使用されたターゲットの性質および堆積条件は、表5にまとめられている。
【0094】
【0095】
[
図9]中で例示されているようなダブルグレージングに組立てられた実施例E1~E17および反対例CE1~CE4の各基板について、日射透過率g、選択度s、光透過率Tl、内部面での光反射Rintおよび外部面での光反射Rext、ならびに内部面および外部面での透過色を測定した。第2のガラスシート9001は、厚み4mmのソーダ石灰ミネラルガラスである。エアギャップ9002の厚みは16mmである。スタックは、面2、つまり基板1000の面1001b上に配置されている。
【0096】
スタックを備えた透明基板を形容するために使用される「色」なる表現は、特に基準オブザーバについて2°または10°の視野およびD65光源で、ISO規格11664にしたがってL*a*b*CIE1976色空間内で定義されている通りの色を意味する。これは、前記規格にしたがって測定される。
【0097】
可視スペクトル内の光透過率TL、日射透過率gおよび選択度s、ならびに可視スペクトル内の内面反射Rintおよび外面反射Rextは、EN410、ISO9050および/またはISO10292規格にしたがって定義、測定および計算される。
【0098】
日射透過率、選択度、光透過率、内面反射および外面反射の測定値は、表6にまとめられている。透過(a*T、b*T)、外面反射(a*Rext、b*Rext)、および内面反射(a*Rint、b*Rint)における色パラメータa*およびb*の測定値は、表7にまとめられている。
【0099】
【0100】
【0101】
実施例E1~E17(黒丸)および反対例CE1~CE4(白丸)についての光透過率TLおよび日射透過率gの値は、[
図11]中に表現されている。このグラフには、目のためのガイドとして、選択度の閾値s=1.4;s=1.5およびs=1.6も同様に表現されている。
【0102】
[
図11]は、第1の誘電体モジュール1002および第2の誘電体モジュール1004中に位置する2層のドープされた酸化タングステン層1002a、1004aを含む実施例E6、E8、E13~E14およびE17の場合と同様に、第1の誘電体モジュール1002中の1層のドープされた酸化タングステン層1002aしか含まない実施例E1~E5、E7、E9~E12、E15およびE16の場合でも、高い選択度の値が得られることを示している。
【0103】
[
図11]に例示されているように、実施例E1~E17および反対例CE1~CE7は、2つのグループに分割可能である。実施例E1~E11および反対例CE1およびCE2のグループでは光透過率が約70%であり、実施例E12~E17および反対例CE3およびCE4のグループでは、光透過率が78%超である。
【0104】
第1のグループ、すなわち約70%の光透過率を有する実施例および反対例について、[
図11]は、反対例CE1およびCE2に比較した本発明に係る実施例についての日射透過率の減少を明確に示している。詳細には、実施例の選択度は、1.50さらには1.55超である。
【0105】
反対例CE2は、1.50超であるものの1.55未満である選択度を有する。この反対例CE2は、金属機能層の上方でかつこの金属機能層と接触した状態で配置された酸化チタン層を含む。対応する実施例E9~E11は、より低い日射透過率の値、ひいてはより高い選択度を有する。
【0106】
第2のグループ、すなわち約78%超の光透過率を有する実施例および反対例について、[
図11]は、反対例CE3およびCE4に比べた本発明に係る実施例についての日射透過率の減少を明確に示している。詳細には、実施例の選択度は、1.40さらには1.50超である。
【0107】
反対例CE4は、1.40超であるものの1.50未満である選択度を有する。この反対例CE4は、金属機能層の上方でかつこの金属機能層と接触した状態で配置された酸化チタン層を含む。対応する実施例E15~E17は、より低い日射透過率の値、ひいてはより高い選択度を有する。
【0108】
内部面での光反射Rintおよび外部面での光反射Rextの値は、実施例E1~E17(黒丸)および反対例CE1~CE4(白丸)について[
図12]中に表現されている。
【0109】
[
図12]は、本発明に係る実施例が、匹敵する光透過率の値について、反対例のものよりも低いかあるいは等価である内側面および外側面での反射レベルを有することを示している。換言すると、本発明は、同様に、同じ光透過率レベルを保ちながら光反射を削減することも可能にする。
【0110】
色パラメータa
*、b
*の値は、実施例E1~E17(黒色表示)および反対例CE1~CE4(白色表示)について[
図13]中に表現されている。透過での色パラメータa
*T、b
*Tは、丸で表現され、外部面での反射パラメータa
*Rext、b
*Rextは、三角形で表現され、内部面での反射パラメータa
*Rint、b
*Rintは四角形で表現されている。
【0111】
透過において、本発明に係る実施例、詳細には第1の誘電体モジュール1002のドープされた酸化タングステン層1002しか含まない大部分の実施例は、より低い色パラメータb*を有する。反対例は、黄色への色シフトを示している。
【0112】
外面反射において、本発明に係る実施例は、より低い色パラメータa*Rextを有する。第1の誘電体モジュール1002中のドープされた酸化タングステン1002しか含まない実施例は、同様に、より高い、すなわちゼロに近づく色パラメータb*Rextを有する。反対例は、赤色への色シフトを示している。
【0113】
内面反射において、本発明に係る実施例は、より低い色パラメータa*Rintおよびより高い色パラメータb*Rextを有する。反対例は紫色への色シフトを示している。
【0114】
これらの実施例は、本発明の基板の利点を非常に明確に、すなわち、削減された日射透過率、より高い選択度を有し、より中間色に近い色を有するということを示している。
【符号の説明】
【0115】
1000 透明基板
1000a 面
1000b 面
1001 機能スタック
1002 薄層誘電体モジュール
1002a 酸化タングステン層
1003 金属機能層
1004 薄層誘電体モジュール
1004a 酸化タングステン層
【国際調査報告】