(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】冷却システム内を循環する誘電性液体の圧力を制御する方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/633 20140101AFI20241219BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20241219BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20241219BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20241219BHJP
B60L 58/26 20190101ALI20241219BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20241219BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20241219BHJP
【FI】
H01M10/633
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6568
B60L58/26
B60L58/12
B60L3/00 S
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538047
(86)(22)【出願日】2022-12-12
(85)【翻訳文提出日】2024-08-14
(86)【国際出願番号】 EP2022085319
(87)【国際公開番号】W WO2023117522
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524017168
【氏名又は名称】アンペア エス.ア.エス.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ルビー, ステファーヌ
【テーマコード(参考)】
5H031
5H125
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031BB03
5H031BB10
5H031HH06
5H031KK08
5H125AA01
5H125AC12
5H125CD06
5H125EE27
5H125FF24
(57)【要約】
本発明は、少なくとも部分的に電気で推進される車両の少なく1つのバッテリセルの冷却システム内を循環する誘電性液体の圧力を制御する方法に関し、当該冷却システムは、誘電性液体が循環する回路を備え、当該バッテリセルは、誘電性液体に浸漬されており、冷却システムは、回路内の誘電性液体を加圧するための手段を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的に電気的な車両のバッテリ(4)の少なくとも1つのセル(16)を冷却するための冷却システム(1)内を循環する誘電性液体の圧力を制御する方法であって、
前記冷却システム(1)は、前記誘電性液体により完全に満たされている回路(6)であって、当該誘電性液体が循環する回路(6)を備え、
前記バッテリ(4)の前記セル(16)は、前記誘電性液体に浸漬されており、
前記冷却システム(1)は、前記回路(6)内にある前記誘電性液体を加圧するための加圧手段(12)と、前記回路(6)内にある前記誘電性液体の圧力を検知するための検知部材(14)とを備え、
当該制御方法は、少なくとも以下の工程:
・前記バッテリ(4)の前記セル(16)を充電するための準備をする第1の工程であって、誘電性液体加圧手段(12)が、前記回路(6)内の圧力を第1の圧力(44)にする、第1の工程、
・前記バッテリ(4)の前記セル(16)を充電する第2の工程であって、前記加圧手段(12)が、前記回路(6)内の前記第1の圧力(44)を維持する、第2の工程、
・前記バッテリ(4)の前記セル(16)を放電するための準備をする第3の工程であって、前記誘電性液体加圧手段(12)が、前記回路(6)内の圧力を第2の圧力(42)にする、第3の工程、
・前記バッテリ(4)の前記セル(16)を放電する第4の工程であって、前記加圧手段(12)が、前記回路(6)内の前記第2の圧力(42)を維持する、第4の工程
を含み、前記第1の圧力(44)は、前記第2の圧力(42)より高い、制御方法。
【請求項2】
前記冷却システムが、前記回路(6)内の前記誘電性液体を循環させるための少なくとも1つの循環手段(10)を備える、請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記第1の工程、前記第2の工程、前記第3の工程、及び前記第4の工程が、複数回繰り返されるサイクルを形成する、請求項1又は2に記載の制御方法。
【請求項4】
前記加圧手段(12)が、少なくとも1つのピストン(32)を備え、当該少なくとも1つのピストンは、前記誘電性液体と接触しているとともに、電動アクチュエータ(26)によって移動するものであり、前記ピストン(32)を移動させることにより、前記第1の圧力(44)が前記第2の工程の間、維持されるか、又は前記第2の圧力(42)が前記第4の工程の間、維持される、請求項1から3のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項5】
前記第1の圧力(44)が、前記第2の工程の間、前記ピストン(32)を後退させることによって維持される、請求項4に記載の制御方法。
【請求項6】
前記第2の圧力(42)が、前記第4の工程の間、前記ピストン(32)を前方に移動させることによって維持される、請求項4に記載の制御方法。
【請求項7】
前記加圧手段(12)の移動が、前記検知部材(14)により検知される圧力に応じてなされる、請求項1から6のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項8】
前記第1の工程から前記第4の工程のいずれかの前に、前記回路(6)に真空を適用する工程が行われる、請求項1から7のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項9】
前記第1の工程の前に、前記加圧手段(12)が、前記誘電性液体を大気圧から、前記バッテリ(4)の前記セル(16)の充電状態に相応しい圧力にする、請求項7又は8に記載の制御方法。
【請求項10】
前記冷却システムが、前記誘電性液体に存在する熱エネルギーを、外部環境へと放出するように構成された少なくとも1つの熱交換器(8)を備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項11】
少なくとも部分的に電気的な自動車のバッテリ(4)の少なくとも1つのセル(16)を冷却するための冷却システム(1)であって、当該冷却システム(1)は、誘電性液体により完全に満たされている回路(6)であって、当該誘電性液体が循環する回路(6)を備え、
前記バッテリ(4)の前記セル(16)は、前記誘電性液体に浸漬されており、
前記冷却システム(1)は、
前記回路(6)内にある前記誘電性液体を加圧するための少なくとも1つの加圧手段(12)、
前記回路(6)内にある前記誘電性液体を循環させるための循環手段(10)、
前記回路(6)内にある前記誘電性液体の圧力を検知するための検知部材(14)、及び
前記誘電性液体に存在する熱エネルギーを、外部環境へと放出するように構成された少なくとも1つの熱交換器(8)
を備え、
前記加圧手段(12)が前記誘電性液体を大気圧より高く維持しつつ、前記循環手段(10)が、前記回路(6)内の前記誘電性液体を循環させる、冷却システムにおいて、
前記加圧手段(12)が、電気モータ(27)及び機械的システム(28)から構成された電動アクチュエータ(26)であって、前記電気モータ(27)の回転を並進移動に変換するための電動アクチュエータ(26)を備える、
ことを特徴とする、冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車又は完全な電気自動車のためのバッテリモジュールを冷却する分野に関する。本発明はより具体的には、冷却システムを適切な稼働条件のもとに保つように構成された圧力制御方法に関する。
【0002】
自動車メーカーは、電気自動車のバッテリの性能及び航続距離の改善を目指している。これらのメーカーは、このような自動車のバッテリ充電に必要な時間の削減も目指している。これらの改善により、バッテリに例えば以下のような新たな制約が課される可能性がある:
・より迅速なバッテリ充電を可能にするためには、かなりの冷却が必要
・バッテリセルの耐用年数及び性能、そしてユーザの安全性を改善するために、バッテリセルに対して、かなりの圧力を常にかける必要がある
・連続的な充電及び放電稼働の間に、及び/又はバッテリセルの老化につれて、バッテリセルの体積変動を管理する必要がある。
【0003】
従来技術は、バッテリセルにかかる圧力及び温度を管理するように構成された、特定の冷却システムを含む。しかしながら、このようなシステムは、最良の条件で利用されず、電気自動車のバッテリの耐用年数及び性能に悪影響を及ぼす。充電及び放電工程は予測されず、これらのシステム内の圧力は、バッテリについて最良の耐用年数及び性能を得るために正しく管理されていない。
【0004】
特に、独国特許出願第102018215477号(DE102018215477)は、バッテリモジュールにおいて、冷却流体の圧力を制御するために、電気化学セルが部分的に浸漬された、ピストンシステム、ポンプ及び圧力センサを使用することを記載している。流体回路が膨張容器を備えるため、実質的に大気圧になる。よってこの流体は、ポンプにより加圧される。ピストンは、セルの体積変動を補償するためだけに存在するからである。ポンプは、回路における液圧ヘッド損失により上昇した非常に高い圧力(セルが圧縮されるべき圧力に等しい)を常に発生させなければならず、これは例えば、全圧で約3barである。このようなポンプが存在すると仮定すれば、このようなポンプは重く、かさばり、高価である。
【0005】
本発明は、以下の動作モード、特に充電又は放電フェーズに従って冷却回路内で圧力を適合させるための圧力制御方法をもたらす。このような方法により、車両を運転するために使用される電気化学セルのライフサイクルの様々な工程をより良好に考慮することが可能になる。
【0006】
よって、本発明の主な目的は、少なくとも部分的に電気的な車両のバッテリの少なくとも1つのセルを冷却するための冷却システム内を循環する誘電性液体の圧力を制御する方法であって、
冷却システムは、誘電性液体により完全に満たされている回路であって、当該誘電性液体が循環する回路を備え、
バッテリのセルは、誘電性液体に浸漬されており、
冷却システムは、回路内にある誘電性液体を加圧するための加圧手段と、回路内にある誘電性液体の圧力を検知するための検知部材とを備え、
当該制御方法は、少なくとも以下の工程:
・バッテリのセルを充電するための準備をする第1の工程であって、誘電性液体加圧手段が、回路内の圧力を、例えば上昇又は低下させて、第1の圧力にする、第1の工程、
・バッテリのセルを充電する第2の工程であって、加圧手段が、回路内の第1の圧力を維持する、第2の工程、
・バッテリのセルを放電するための準備をする第3の工程であって、誘電性液体加圧手段が、回路内の圧力を、例えば上昇又は低下させて、第2の圧力にする、第3の工程、
・バッテリのセルを放電する第4の工程であって、加圧手段が、回路内の第2の圧力を維持する、第4の工程
を含む。
【0007】
冷却システムは、誘電性流体が循環する回路を備え、バッテリのセルは、誘電性液体に浸漬されている。
【0008】
誘電性液体とは、短絡を起こすことなく、様々な電気部材と接触するように設計された液体である。
【0009】
冷却システムは、回路内の誘電性液体を加圧するための加圧手段を備え、当該加圧手段は、電気的に制御されるピストンであり得る。このようなシステムにより、例えば4barの圧力を発生させることが可能になり、これにより、充電及び放電のサイクルにかけられたときに、性能、耐久性及び安全性という観点で最適な条件において、セルを機能させることが可能になる。
【0010】
第1の準備工程の間に適用される圧力により、セルを充電するのに必要な時間を減らすために、またセルの耐用年数を最大化するために、回路内で必要な圧力が確立される。
【0011】
第2の工程では、加圧手段が、加圧手段のピストンに作用する電動アクチュエータの位置を適切に合わせることによって、回路における第1の圧力を維持する。
【0012】
第3の工程(バッテリのセルの放電を準備する工程に相当)では、誘電性液体加圧手段が、回路内の当該液体の圧力を、例えば低下させて、第2の圧力(セルの放電を最適化するために、またこのバッテリセルの耐用年数を最大化するために、回路内で必要な圧力に相応しい圧力)にする。
【0013】
第4の工程(バッテリのセルを放電する工程に相当)では、加圧手段が、回路内で第2の圧力を、特に先の電動アクチュエータの位置を適切に合わせることによって、維持する。
【0014】
圧力制御方法が、少なくとも2つの圧力閾値を使用することが有利であり、第1の圧力閾値は、充電のために設計されたものであるのに対して、第2の閾値圧力は、放電のために設計されたものである。このような制御方法の設定により、バッテリセルの老化を遅らせること、その性能を最適化すること、及び/又はバッテリセルからの熱損失を制限することが可能になる。
【0015】
1つの特徴によれば、冷却システムは、回路内で当該誘電性液体を循環させるための循環手段を少なくとも1つ、備える。本発明によれば、循環手段(特にポンプ形態の場合)及び誘電性液体加圧手段(特にシリンダ形態の場合)は、回路内の圧力(例えば第1の圧力又は第2の圧力)を確立するため、相互に協同する。
【0016】
本発明の別の特徴によれば、第1の工程、第2の工程、第3の工程、及び第4の工程が、複数回繰り返されるサイクルを形成する。
【0017】
本発明の別の特徴によれば、加圧手段は、少なくとも1つのピストンを備え、当該ピストンは、誘電性液体と接触するとともに、電動アクチュエータにより移動されるものであり、ピストンを移動させることによって、第1の圧力が第2の工程の間、維持されるか、又は第2の圧力が第4の工程の間、維持される。
【0018】
第1のシナリオでは、ピストンにより行われる移動が、ピストンをその同軸に沿って前方又は後方に移動させることによって圧力を維持するための、軸方向の並進移動であり得る。
【0019】
第2のシナリオでは、ピストンにより行われる移動が、回転移動であってよく、誘電性液体により満たされるピストン及びチャンバの形状が、冷却システム内の誘電性液体を圧縮するように、また冷却システム内の誘電性液体への圧力を緩和するように、構成されている。
【0020】
本発明の別の特徴によれば、第1の圧力は、第2の工程の間、ピストンを後退させることによって、すなわち、誘電性液体で生じる力をピストンで解放することにより、維持される。第1の圧力は、第2の工程の間、セルが充電されて体積が増加するにつれて誘電性液体のへの圧力を緩和するピストンによって、維持される。
【0021】
本発明の別の特徴によれば、第2の圧力が、第4の工程の間、ピストンを前方に移動させることにより、すなわち、誘電液体に対してピストンにより生じる力を増大させることによって、維持される。第2の圧力は、第4の工程の間、セルが放電してその体積を減少させるにつれて誘電性液体を圧縮するピストンによって、維持される。
【0022】
この例では、第1の圧力が、第2の圧力よりも高いことに、留意すべきである。
【0023】
本発明の別の特徴によれば、加圧手段の移動は、検知部材により検知される圧力に応じて、行われる。
【0024】
圧力検知部材は、圧力センサと同じであってよく、回路における圧力情報は、セルの受電又は放電に応答して、圧力を制御するために、ピストン位置の変更を制御するコンピュータに送られる。
【0025】
本発明の別の特徴によれば、第1から第4の工程のいずれかの前に、回路に真空を適用する工程が行われる。
【0026】
真空は、回路における気体の存在を最小にするために、適用される。
【0027】
本発明の別の特徴によれば、回路は、誘電性液体により完全に満たされている。これは、通常稼働の間、回路の部分のいずれも、誘電性液体以外の流体と接触しないこと意味すると理解される。
【0028】
本発明の別の特徴によれば、第1の工程の前に、加圧手段が誘電性液体を大気圧から、バッテリセルの充電状態に相応しい圧力に、例えば第1の圧力、第2の圧力、又はその他の圧力にする。
【0029】
冷却システムが初めて起動されるとき、又は冷却システムに作業が行われるとき、回路は誘電性液体により満たされており、大気圧で密閉されている。続いて、加圧手段の第1の移動によって誘電性液体を、バッテリの充電レベルに必要な圧力にする。
【0030】
本発明の別の特徴によれば、冷却システムは、誘電性液体に存在する熱エネルギーを外部環境に放出するように構成された熱交換器を少なくとも1つ、備える。
【0031】
循環手段は、回路内の誘電性液体を循環させるためのポンプと同じであってよく、当該循環を行うことにより、ポンプは冷却システムにおける流体ヘッド損失を克服するとともに、システムを一定の圧力に維持する際の補助となる。システムにおける流体ヘッド損失は、およそ0.5barである。この加圧手段により、回路における静圧がおよそ3.5barの値に上昇するのである。これらの圧力値は例示的なものであるが、比率を説明している。よってポンプについて、その大きさと重量を減らすことができ、また従来技術のシステムと比較して、消費量も低下させることができ、したがって、電気自動車の電気的な航続距離を改善することができる。
【0032】
熱交換器は、回路の一部を形成し、バッテリセルの加熱によって誘電性液体に蓄積された熱エネルギーを、外部環境へと放出することを可能にする。
【0033】
本発明はまた、少なくとも部分的に電気的な自動車のバッテリの少なくとも1つのセルを冷却するための冷却システムを目的としており、当該冷却システムは、誘電性液体により完全に満たされている回路であって、当該誘電性液体が循環する回路を備え、
バッテリのセルは、誘電性液体に浸漬されており、
冷却システムは、
回路内にある誘電性液体を加圧するための少なくとも1つの加圧手段、
回路内にある誘電性液体を循環させるための循環手段、
回路内にある誘電性液体の圧力を検知するための検知部材、及び
誘電性液体に存在する熱エネルギーを、外部環境へと放出するように構成された少なくとも1つの熱交換器
を備え、
加圧手段が誘電性液体を大気圧より高く維持しつつ、循環手段が、回路内の誘電性液体を循環させる、ことを特徴とする。
【0034】
本文書において、「セル」という用語は、1つのセル、及びバッテリを形成するセルのセットの双方を表すために使用され、相互に近接して組み立てられた複数のバッテリは、バッテリパック、又はバッテリモジュールと呼ぶ。
【0035】
その他の特徴、詳細、及び本発明の利点は、一方では以下の説明を読むことから、他方では添付図面を参照して、非限定的であることが示された例示的な実施形態から、より明確に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】バッテリパックを冷却するための冷却システムを概略的に示す。
【
図2】
図1の冷却システムに適用される、本発明による圧力制御方法を示す。
【0037】
本発明の特徴、変形例、及び異なる実施形態は、相互に不適合であるか、又は相互に排他的でない限り、様々な組み合わせで相互に組み合わせることができる。特に、以下に記載される特徴の選択のみを有する本発明の変形例は、当該特徴の選択が、技術的な利点を提供するのに、かつ/又は従来技術からの発明と差異化するために充分であれば、記載された他の特徴から切り離して想定することが可能である。
【0038】
図1は、バッテリパック2を冷却するための冷却システム1を示す。
【0039】
バッテリ4は、電気エネルギーを、少なくとも、冷却システムを備える車両を駆動させるためのエンジンに供給することが意図された、電気貯蔵要素である。
【0040】
よって、
図1に示した冷却システム1は、誘電性流体が内部を循環する複数のバッテリ4を備える。冷却システムはまた、冷却システム1の各要素の間に誘電性液体を流す役割を果たす回路6を備える。
【0041】
冷却システム1はさらに、熱交換器8、及び誘電性液体循環手段10を備え、当該回路、熱交換器8、循環手段10及びバッテリ4が閉ループを形成し、その内部で誘電性流体が循環する。
【0042】
冷却システム1はさらに、回路内部で誘電性液体を加圧するための加圧手段12と、回路6内部で誘電性液体の圧力を検知するための検知部材14とを備える。
【0043】
図1に示した冷却システムは例えば、6つのバッテリ4を有し、当該バッテリはそれぞれ、複数のセル16を収容する。バッテリ4は、誘電性液体により満たされた体積18を規定するチャンバ17を備え、当該チャンバの内部では、セル16が、誘電性液体に完全に浸されている、すなわち、全体が浸漬されている。よって回路6内には、空気が無い。
【0044】
誘電性液体回路6は、6つのバッテリ4のそれぞれを接続し、破線で示した配管20を備え、各バッテリ4のために冷却された誘電性流体のための入口を形成する。バッテリ4内でセル16に沿って循環する誘電性液体は、各セル16によって放散される熱エネルギーを集め、加熱されたこの誘電性液体は、パイプ22を通して熱交換器8へと送られる(
図1の実線参照)。
【0045】
よって回路6は、供給部20(熱交換器8の出口で始まり、少なくとも1つのバッテリ4の入口で終わる)と、収集部22(少なくとも1つのバッテリ4の出口で始まり、熱交換器8の入口で終わる)とから構成される。
【0046】
熱交換器8は、誘電性液体に存在する熱エネルギーを、外部環境へと放出することが意図された構成要素であり、これは例えば、熱交換器8又は別の熱交換液体を通る空気流であり得る。熱交換器8は、セル16で回収された熱エネルギーを迅速に排出可能にするため、バッテリ4のすぐ下流に、回路6内の誘電性液体の循環方向に置かれる。
【0047】
循環手段10は、回路6に、熱交換器8のすぐ下流で配置される。1つの例示的な実施形態によれば、循環手段10は、電気モータにより起動されるポンプである。このポンプの役割は、回路6内部、バッテリ4内部、及び熱交換器8内部で誘電性液体を循環させて、閉鎖回路を形成することである。
【0048】
加圧手段12は、回路6の外部にあるアーム24(当該アームは、回路6に接続されている)によって、例えば循環手段10の出口と少なくとも1つのバッテリ4の入口との間で、本発明の範囲内に入る回路へと接続するその他のいずれかの位置で、回路6に接続されている。
【0049】
加圧手段12は、電気モータ27で構成された電動アクチュエータ26と、電動モータ27の回転を並進移動に変換するための機械的システム28とを備える。この並進移動により、ピストン32のピン30を移動させること、ひいては、ピストン32を本体34内へと移動させることが可能になる。ピストン32は、誘電性液体と接触している。本体34、ピストン32、及びピン30は、シリンダ31を形成する。
【0050】
加圧手段12の役割は、サイクルの充電又は放電フェーズに従い、回路6全体を均質で連続的な圧力条件に維持することである。誘電性液体はそもそも、それほど圧縮可能ではないので、回路6を適切に機能させるために必要な圧力にするため、ピストン32の移動が減少する。
【0051】
本発明によれば、加圧手段12は、回路6内の静圧を担うのに対して、循環手段10は、回路内で誘電性液体を循環させるために必要な動圧を担う。このような設計では、より単純でより安価な循環手段を使用することが可能になり、また本発明における電気消費削減が可能になることによって車両の電気的な航続距離を増加させることができるので、有利である。
【0052】
図2は、冷却システムにおける圧力を制御するための方法を示す。このような制御方法によって、バッテリパック2について、より良好な耐用年数及びより良好な性能のために、回路6内の圧力を適合させることが可能になる。
【0053】
図2に示した圧力制御方法は、3つのグラフ36,38,40に示されており、これらの各グラフの時間軸は同じである。
【0054】
第1のグラフ36は、シリンダ31の本体34におけるピストン32の位置を縦軸で、時間を横軸で示す。第2のグラフ38は、セルの充電レベル(%)を縦軸で、時間を横軸で示す。
図2の最後のグラフ40は、回路6における圧力(bar)を縦軸で、時間を横軸で示す。
【0055】
図2の3つのグラフ36,38,40は、横軸が同じスケールで同じ瞬間から始まる時間を表すという意味で、時系列的に互いにリンクしている。
【0056】
これらの3つのグラフ36,38,40の曲線は、バッテリ2の充電又は放電に応じて、ピストン32の位置、及び回路6における圧力とともに経時的に変化する。3つのグラフ36,38,40における破線は、圧力の変化、充電のレベル若しくはサイクルの変化、又は加圧手段12の位置の変化、又は2つのアクティブ工程の間(例えばEとFとの間)の中間的な待機工程を示す。
【0057】
圧力制御方法は、FとGとの間に、バッテリパック2の放電を準備する工程を含む。この準備は、ピストン32の移動によって特徴づけられ、これにより、回路6における圧力を緩和して、第2の圧力(セルの放電工程前に確立された圧力に相応しい圧力)にすることが可能になる。
【0058】
第3のグラフ40からは、例示的な実施形態により、第2の圧力(バッテリパック2の放電圧力42とも呼ぶ)が、第1の圧力(充電圧力44とも呼ぶ)よりも低いことが分かる。
【0059】
点GとHとの間では、特にバッテリパックが車両を駆動するためのエンジンに電気エネルギーを供給するという事実に基づき、バッテリパック2が放電される。ここでは、電気自動車が走行フェーズにあることが理解される。
【0060】
この放電フェーズ又は放電工程の間に、セル16の体積が低下する。この体積低下は、回路6における誘電性液体の圧力低下として現れる。この場合、この圧力低下は、圧力検知部材14によって捕捉され、当該圧力検知部材は、制御システムを実行する制御モジュールにより、加圧手段に対して、回路6内で第2の圧力を一定に保つように指示する。1つの例によれば、ピストン32が前方に移動し、誘電性液体に対する力を、連続的に、またバッテリセルで起こる放電に比例して保つ。こうして、セルへの圧力が放電フェーズの間中、一定になることが保証される。
【0061】
圧力制御方法は、点IとJとの間に、バッテリパック2のセル16の充電を準備する工程を含む。この準備は、ピストン32の移動により特徴づけられ、これによって、ピストンが誘電性液体にかける力が増大することにより、回路6を圧縮すること、また充電圧力44にすることが可能になる。
【0062】
第3のグラフ40からは、例示的な実施形態によれば、バッテリパック2の充電圧力44が、放電圧力42よりも高いことが分かる。
【0063】
第1の工程及び第3の工程と呼ばれる準備工程は、誘電性流体に対して、当該準備工程のすぐ後の工程に相応しい圧力を与えることと、準備工程のすぐ後に続く充電又は放電フェーズを予測することとの双方を目的としたフェーズである。
【0064】
点JとKとの間で、バッテリパック2のセルが充電される。ここでは例えば、電気自動車が、充電端子に接続された駐車状態であることが理解される。
【0065】
ここで充電されている間、バッテリ4のセル16の体積は、増大する。この体積増加により、回路6における圧力が増大し、この圧力増大は、圧力検知部材14によって捕捉される。加圧手段は、回路6内で一定の第1の圧力を保つように移動する。よって、ピストン32は後退し、これによって、この充電工程の間に、回路6において一定の圧力を保つために、当該ピストンが誘電性液体にかける負荷が減少する。
【0066】
工程FG,GH,IJ及びJKはサイクルを形成し、バッテリパック2の耐用年数を通じて、繰り返される。このサイクルは、回路6内の2つの圧力閾値、すなわち、バッテリ又はバッテリパックのバッテリについて、セルの充電圧力44に相応しい第1の圧力閾値、及びセルの放電圧力に相応しい第2の圧力閾値を含む。
【0067】
点AとBとの間で、バッテリ4は、大気圧の誘電性流体によって満たされている。回路内に空気が存在することを避けるため、回路6には、事前に真空が適用される。
【0068】
図2の第3のグラフ40は、点Bから点Cに移行したときに、回路6が、第1の圧力にされることを示している。回路6は、充電圧力44に設定される。この特定の場合では、ここに示されているように、バッテリパック2が30%、充電されているからである。よって次のフェーズは、バッテリパック2を充電する工程になるだろう。大気圧から第1の圧力への変更(点BからCへの移行に相当)は、誘電性流体へとかける力を増大させる加圧手段により実現される。
【0069】
別の使用例では、バッテリパック2が充電されていてよく、回路6がまず、第2の圧力(つまり、放電圧力42)にされることになる。
【0070】
工程AB及び工程BCが行われるのは、本発明による冷却システムが、最初に開始されるとき、及び/又はバッテリパック2のメンテナンス作業の間である。
【0071】
バッテリパック2が100%充電されたら、充電が停止し、よってピストン32が移動しなくなり、回路6における圧力は、一定のままになる。
【0072】
点CとDとの間、点EとFとの間、及び点HとIとの間のフェーズは、充電工程又は放電工程の前の待機フェーズである。
【0073】
いま記載したように本発明は、上述の目的を実際に達成し、バッテリにとって2つの必須フェーズ(つまり、バッテリの充電フェーズ及び放電フェーズ)の間に誘電性液体の圧力が一定に保たれる、バッテリパックを冷却するための冷却システムを提供することを可能にする。本発明によれば、圧力の管理が、圧力手段によって予測される。本冷却システムは特に、単純で、安価で、エネルギー効率が良い循環手段を使用することが可能になる点で、魅力的である。ポンプは、設定圧力について追加的なヘッド損失(回路の静圧を形成)ではなく、回路における液圧ヘッド損失のみを克服するからである。ここに記載されていない変法は、本発明の文脈から離れることなく、本発明にしたがって制御方法を行う限りにおいて、実行することができる。
【国際調査報告】