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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】生分解性使い捨て物品
(51)【国際特許分類】
   C08L 1/00 20060101AFI20241219BHJP
   C08B 16/00 20060101ALI20241219BHJP
   C08B 37/14 20060101ALI20241219BHJP
   C08B 37/06 20060101ALI20241219BHJP
   B09B 3/40 20220101ALI20241219BHJP
   C08L 5/00 20060101ALI20241219BHJP
   C08L 97/00 20060101ALI20241219BHJP
   A47G 19/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C08L1/00
C08B16/00
C08B37/14
C08B37/06
B09B3/40
C08L5/00
C08L97/00
A47G19/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538081
(86)(22)【出願日】2022-12-21
(85)【翻訳文提出日】2024-08-19
(86)【国際出願番号】 AU2022051551
(87)【国際公開番号】W WO2023115127
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】2021904175
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524235038
【氏名又は名称】テラセーフ マテリアルズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 玲恵
(72)【発明者】
【氏名】エピファニ,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】グプタ,シャファリ
【テーマコード(参考)】
3B001
4C090
4D004
4J002
【Fターム(参考)】
3B001AA11
3B001CC36
4C090AA04
4C090AA08
4C090BA24
4C090BA50
4C090BA81
4C090BC01
4C090BD41
4C090CA04
4C090CA05
4C090DA21
4D004AA04
4D004BA10
4D004CA04
4D004CA22
4D004CA40
4D004CA42
4D004CA45
4D004DA06
4D004DA07
4D004DA10
4J002AB01X
4J002AB04X
4J002AD00X
4J002AD03X
4J002AH00Y
4J002GG01
4J002GG02
(57)【要約】
本発明は、約5重量%~約70重量%の範囲のセルロースまたはヘミセルロース、約80重量%未満の炭水化物および少なくとも約2重量%のリグニンを含む非修飾および天然由来の食品廃棄物を含む生分解性使い捨て物品であって、食品廃棄物が、少なくとも5000kg/cmの圧力下および少なくとも150℃の温度で成形される前に、任意に脱水および/または任意に撹拌されて粒子状固体材料を形成する、生分解性使い捨て物品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約5重量%~約70重量%の範囲のセルロースまたはヘミセルロース、約80重量%未満の炭水化物、および少なくとも約2重量%のリグニンを含む、非修飾および天然由来の食品廃棄物を含む生分解性使い捨て物品であって、
前記食品廃棄物が、少なくとも約5000kg/cmの圧力下および少なくとも150℃の温度で成形される前に、任意に脱水および/または撹拌されて、粒子状固体材料を形成する、生分解性使い捨て物品。
【請求項2】
生分解性使い捨て物品を形成する方法であって、
約5重量%~約70重量%の範囲のセルロースおよび/またはヘミセルロース、約80重量%未満の炭水化物、ならびに少なくとも約2重量%のリグニンを含む、非修飾および天然由来の食品廃棄物を回収するステップと、
任意に、前記食品廃棄物を加熱および/または脱水して、脱水または乾燥した食品廃棄物を得るステップと、
任意に、前記乾燥した食品廃棄物を撹拌または微粉砕して、粒子状固体材料を形成するステップと、
前記粒子状固体材料を金型に配置するステップであって、前記金型が少なくとも150℃の温度にさらされ、少なくとも20kg/cmの圧力が前記金型に加えられるステップと
を含む、方法。
【請求項3】
セルロースが60%未満、約5%~約50%、約5%~約30%、約5%~約25%、約8%~約26%、または約5%~約22%の範囲で存在する、請求項1に記載の生分解性使い捨て物品または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
炭水化物が、ペクチンを含む可溶性炭水化物である、前記請求項のいずれか一項に記載の生分解性使い捨て物品または方法。
【請求項5】
可溶性炭水化物が、約30%未満、約1%~約30%の範囲で存在する、前記請求項のいずれか一項に記載の生分解性使い捨て物品または方法。
【請求項6】
可溶性炭水化物が、約1%~約10%、または約3%~約8%の範囲で存在する、前記請求項のいずれか一項に記載の生分解性使い捨て物品または方法。
【請求項7】
可溶性炭水化物が、約10%~約30%、約14%~約25%、約15%~約30%、または約15%~約27%の範囲で存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の生分解性使い捨て物品または方法。
【請求項8】
リグニンが、約1%~30%、約1%~約26%、約1%~約25%、約2%~約7%、または約3%~約6%の範囲で存在する、前記請求項のいずれか一項に記載の生分解性使い捨て物品または方法。
【請求項9】
前記食品廃棄物が、約1%~約20%の範囲のタンパク質をさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の生分解性使い捨て物品または方法。
【請求項10】
前記食品廃棄物が、約1%~約10%、約2%~約10%、または約3%~約10%の範囲のタンパク質をさらに含む、請求項7に記載の生分解性使い捨て物品または方法。
【請求項11】
前記食品廃棄物が、約10%~約20%、または約13%~約19%の範囲のタンパク質をさらに含む、請求項6に記載の生分解性使い捨て物品または方法。
【請求項12】
前記食品廃棄物が、少なくとも1%、約1%~約15%、約1%~約12%、または約1%~約11%の範囲の脂肪をさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の生分解性使い捨て物品または方法。
【請求項13】
前記食品廃棄物が、約1%~約5%、または約1%~約4%の範囲の脂肪をさらに含む、請求項7または10に記載の生分解性使い捨て物品または方法。
【請求項14】
前記食品廃棄物が、約4%~約12%、約4%~約11%の範囲の脂肪をさらに含む、請求項6または11に記載の生分解性使い捨て物品または方法。
【請求項15】
前記食品廃棄物が、少なくとも約9%、または少なくとも約10%、約10%~約50%、約10%~約25%、約10%~約20%、または約40%~50%のADF含有量を有する、前記請求項のいずれか一項に記載の生分解性使い捨て物品または方法。
【請求項16】
前記粒子状固体材料が、少なくとも150℃の温度に加熱される予熱金型に配置される、前記請求項のいずれか一項に記載の生分解性使い捨て物品または方法。
【請求項17】
前記食品廃棄物が、約60%未満、約50%未満、または約40%未満、約0%~約60%、約20%~約60%、約25%~約60%、または約10%~約40%の量のヘミセルロースを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の生分解性使い捨て物品または方法。
【請求項18】
前記粒子状固体材料が、約5000kg/cm~約1000000kg/cm、約5000kg/cm~約100000kg/cm、約20000kg/cm~約1000000kg/cm、または約20000kg/cm~約100000kg/cmの範囲の圧力下で成形される、前記請求項のいずれか一項に記載の生分解性使い捨て物品または方法。
【請求項19】
前記粒子状固体材料が、150℃~約300℃の範囲、または約200℃~約300℃の範囲の温度で成形される、前記請求項のいずれか一項に記載の生分解性使い捨て物品または方法。
【請求項20】
前記粒子状固体材料が、少なくとも1秒間、および好ましくは少なくとも10秒間成形される、前記請求項のいずれか一項に記載の生分解性使い捨て物品または方法。
【請求項21】
前記天然由来の食品廃棄物が、以下:オレンジ果皮およびレモン果皮を含む柑橘類果皮、アボカド種子、パイナップル皮、パイナップル上部、小麦ふすま、コーヒー豆の殻、使用済みコーヒー粉、ならびに大麦糠のうちの1つまたは複数を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の生分解性使い捨て物品または方法。
【請求項22】
前記食品廃棄物が、約2%未満、または0.1%~約1%の含水量を有する、前記請求項のいずれか一項に記載の生分解性使い捨て物品または方法。
【請求項23】
食品廃棄物が、
約5%~約30%の量のセルロース、
約1%~約30%の量の、ペクチンを含む可溶性炭水化物、
約1%~約20%の量のタンパク質、
約1%~約15%の量の脂肪
を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の生分解性使い捨て物品または方法。
【請求項24】
食品廃棄物が、
約5%~約25%の量のセルロース、
約10%~約30%の量の、ペクチンを含む可溶性炭水化物、
約1%~約10%の量のタンパク質、
約1%~約5%の量の脂肪
を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の生分解性使い捨て物品または方法。
【請求項25】
食品廃棄物が、
約5%~約26%の量のセルロース、
約1%~約10%の量の、ペクチンを含む可溶性炭水化物、
約10%~約20%の量のタンパク質、
約4%~約11%の量の脂肪
を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の生分解性使い捨て物品または方法。
【請求項26】
生分解性使い捨て物品を形成する方法であって、
約5重量%~約70重量%の範囲のセルロースおよび/またはヘミセルロース、約80重量%未満の炭水化物、ならびに少なくとも約2重量%のリグニンを含む、非修飾および天然由来の食品廃棄物を回収するステップと、
任意に、前記食品廃棄物を加熱および脱水して、脱水または乾燥した食品廃棄物を得るステップと、
前記粒子状固体材料を金型に配置するステップであって、前記金型が少なくとも約150℃の温度にさらされ、少なくとも20kg/cmの圧力が前記金型に加えられる、ステップと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性使い捨て物品および生分解性使い捨て物品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術の方法、装置または文献に対するいかなる言及も、共通の一般的知識の一部を形成したか、またはそれを形成する何らかの証拠または承認を構成すると解釈されるべきではない。
【0003】
標準的な使い捨てプラスチック食器、用具および使い切りプラスチック物品は数多くの欠点を有する。これらの物品は典型的には生分解性ではなく、非生分解性プラスチック(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンおよびポリウレタン)から製造される。これらの非生分解性プラスチックは現在、多くの用途の金属および紙製品、とりわけコスト、耐久性、製造の容易性、材料の利用可能性および利便性が主に考慮されるものの代わりに広く用いられている。しかし、これらのプラスチックは、もしあるとしても分解速度が非常に低いため、処分がこれらの最大の問題の一つである。
【0004】
ごく最近になって、生分解性ポリマーが、使い捨て食器、用具および使い切りプラスチック物品を製造するために開発された。これらの生分解性ポリマーは、酵素的または加水分解的に分解する。いくつかのより一般的に知られる生分解性ポリマーとしては、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)およびそのコポリマー、ポリカプロラクトン、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、デンプン、ならびにセルロースが挙げられる。しかし、使い捨て用具および食器などの用途へのこれらの材料の使用に関する主な問題の一つは、これらの生分解性ポリマーの製造に関連するコストが高いことである。場合によっては、使い捨て食器および用具の製造における使用のためにこれらの生分解性ポリマーの機械的特性を調整することも難しい。これらの問題は、包装材にも同様に当てはまる。
【0005】
したがって、用具および食器のような生分解性成形品の製造コストを潜在的に低減する、使い捨て用具および食器を製造するための生分解性食品廃棄物などの代替源の使用を考察することは望ましい。
【0006】
上記の課題のうちの1つまたは複数に対処すること、および/または少なくとも有用なまたは商業的代替物を消費者に提供することは有利である。
【発明の概要】
【0007】
第1の態様において、それが唯一のまたは実際に最も広い態様である必要はないが、本発明は、約5重量%~約70重量%の範囲のセルロースまたはヘミセルロース、約80重量%未満の炭水化物、および少なくとも約2重量%のリグニンを含む、非修飾および天然由来の食品廃棄物を含む生分解性使い捨て物品であって、食品廃棄物が、少なくとも約5000kg/cmの圧力下および少なくとも150℃の温度で成形される前に、任意に脱水および/または撹拌されて、粒子状固体材料を形成する、生分解性使い捨て物品に属する。
【0008】
一実施形態において、セルロースは、60%未満、約5%~約50%、約5%~約30%、約5%~約25%、約8%~約26%、または約5%~約22%の範囲で存在する。
【0009】
ある特定の実施形態において、炭水化物は、ペクチンを含む可溶性炭水化物である。一実施形態において、可溶性炭水化物は、約30%未満、約1%~約30%の範囲で存在する。実施形態において、可溶性炭水化物は、約1%~約10%、または約3%~約8%の範囲で存在する。ある特定の実施形態において、可溶性炭水化物は、約10%~約30%、約14%~約25%、約15%~約30%、または約15%~約27%の範囲で存在する。
【0010】
実施形態において、リグニンは、約1%~30%、約1%~約26%、約1%~約25%、約2%~約7%、または約3%~約6%の範囲で存在する。
【0011】
一部の実施形態において、食品廃棄物は、約1%~約20%の範囲のタンパク質をさらに含む。一実施形態において、タンパク質は、約1%~約10%、約2%~約10%、または約3%~約10%の範囲で存在する。ある特定の実施形態において、タンパク質は、約10%~約20%、または約13%~約19%の範囲で存在する。
【0012】
実施形態において、食品廃棄物は、少なくとも1%、約1%~約15%、約1%~約12%、または約1%~約11%の範囲の脂肪をさらに含む。一実施形態において、脂肪は、約1%~約5%、または約1%~約4%の範囲で存在する。一実施形態において、脂肪は、約4%~約12%、約4%~約11%の範囲で存在する。一実施形態において、脂肪は粗脂肪である。
【0013】
実施形態において、食品廃棄物は、少なくとも約9%または少なくとも約10%、約10%~約50%、約10%~約25%、約10%~約20%、または約40%~約50%のADF含有量を有する。
【0014】
実施形態において、粒子状固体材料は、少なくとも150℃の温度に加熱される予熱金型に配置される。
【0015】
実施形態において、食品廃棄物は、少なくとも約5重量%未満、約60%未満、約50%未満または約40%未満、約0%~約60%、約20%~約60%、約25%~約60%、または約10%~約40%の量のヘミセルロースを含む。
【0016】
実施形態において、粒子状固体材料は、約5000kg/cm~約1000000kg/cm、約5000kg/cm~約100000kg/cm、約20000kg/cm~約1000000kg/cm、または約20000kg/cm~約100000kg/cmの範囲の圧力下で成形される。
【0017】
実施形態において、粒子状固体材料は、少なくとも1秒間および好ましくは少なくとも10秒間成形される。
【0018】
実施形態において、粒子状固体材料は約150℃~約300℃の範囲、または約200℃~約300℃の範囲の温度で成形される。
【0019】
実施形態において、天然由来の食品廃棄物は、以下:柑橘類果皮、アボカド種子、パイナップル皮、パイナップル上部、小麦ふすま、コーヒー豆の殻、使用済みコーヒー粉、および大麦糠のうちの1つまたは複数を含む。実施形態において、柑橘類果皮は、オレンジ果皮および/またはレモン果皮を含む。
【0020】
実施形態において、食品廃棄物は、約2%未満または0.1%~約1%の含水量を有する。一実施形態において、食品廃棄物は、約2%未満、または0.1%~約1%の含水量を有するように脱水される。
【0021】
一部の実施形態において、食品廃棄物は、
約5%~約30%の量のセルロース、
約1%~約30%の量の、ペクチンを含む可溶性炭水化物、
約1%~約20%の量のタンパク質、
約1%~約15%の量の脂肪
を含む。
【0022】
ある特定の実施形態において、食品廃棄物は、
約5%~約25%の量のセルロース、
約10%~約30%の量の、ペクチンを含む可溶性炭水化物、
約1%~約10%の量のタンパク質、
約1%~約5%の量の脂肪
を含む。
【0023】
実施形態において、食品廃棄物は、
約5%~約26%の量のセルロース、
約1%~約10%の量の、ペクチンを含む可溶性炭水化物、
約10%~約20%の量のタンパク質、
約4%~約11%の量の脂肪
を含む。
【0024】
第2の態様において、本発明は、
約5重量%~約70重量%の範囲のセルロースおよび/またはヘミセルロース、約80重量%未満の炭水化物、ならびに少なくとも約2重量%のリグニンを含む、非修飾および天然由来の食品廃棄物を回収するステップと、
任意に、食品廃棄物を加熱および脱水して、脱水または乾燥した食品廃棄物を得るステップと、
前記粒子状固体材料を金型に配置するステップであって、金型が少なくとも150℃の温度にさらされ、少なくとも20kg/cmの圧力が金型に加えられるステップと
を含む、生分解性使い捨て物品を形成する方法に属する。
【0025】
一実施形態において、方法は、任意に、乾燥した食品廃棄物を撹拌または微粉砕して、粒子状固体材料を形成するステップをさらに含む。実施形態において、方法は、乾燥した食品廃棄物を撹拌または微粉砕して、粒子状固体材料を形成するステップをさらに含む。
【0026】
第3の態様において、本発明は、
約5重量%~約70重量%の範囲のセルロースまたはヘミセルロース、約80重量%未満の炭水化物、および少なくとも約2重量%のリグニンを含む、非修飾および天然由来の食品廃棄物を回収するステップと、
任意に、食品廃棄物を加熱および脱水して、脱水または乾燥した食品廃棄物を得るステップと、
乾燥した食品廃棄物を撹拌または微粉砕して、粒子状固体材料を形成するステップと、
前記粒子状固体材料を金型に配置するステップであって、金型が少なくとも150℃の温度にさらされ、少なくとも5000kg/cmの圧力が金型に加えられるステップ
を含む、生分解性使い捨て物品を形成する方法に属する。
【0027】
第2および第3の態様に記載される方法、ならびに食品廃棄物およびその成分は、第1の態様について実質的に記載した通りである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】単純デンプンとセルロースを示す。
図2】多糖類における単量体の結合を示す。
図3】リグニン。
図4】ペクチン。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施形態は、生分解性使い捨て物品に主として属する。したがって、物品および方法のステップは、図面において簡潔な図式の形態で例示されおり、本説明の利点を有する当業者には容易に明らかになるであろう過剰な詳細により開示を不明瞭にしないように、本発明の実施形態を理解するのに必要な特定の詳細のみを示す。
【0030】
食品廃棄物の一部を形成する多糖系材料は、本発明の新規な方法によって利用された。多糖を含有する食品廃棄物は、連続する疎水性多糖相および分散した親水性の非修飾多糖の不連続相、またはその両方の双連続相を有する。これらの材料は、実質的に生分解性および熱可塑性であり、したがって使用後環境下で分解する様々な製造物品に成形されてもよい。
【0031】
用語「多糖」は、式(C10の材料を指す。用語「デンプン」は、アミローズおよび/またはアミロペクチンを含有する植物によって生成される炭水化物に典型的には適用される。アミローズは、α-1,4結合のグルコース残基から一般になる、主に非分岐型のデンプンである。アミロペクチンは、分岐形態であり、30個のα-1,4結合ごとに約1個のα-1,6結合を有する。アミローズとアミロペクチンはいずれも、α-アミラーゼと呼ばれる酵素によって急速に加水分解される。デンプンは、多くの植物細胞において様々な大きさの組織化されたもしくは構造的な顆粒または標識として生じ、いくつかの形態のデキストリンおよびグルコースに加水分解する。
【0032】
本明細書で使用する「熱可塑性」は、加熱すると軟化し、冷却すると硬化する材料を指し、「溶融処理」は、その軟化した状態の熱可塑性材料の有用な物品への処理を指す。
【0033】
「含む(comprises)」または「含む(includes)」などの単語は、要素のリストを含む処理、方法、物品または装置がこれらの要素だけを含むのではなく、このような処理、方法、物品または装置に固有の要素を含む明確に列挙されていない他の要素を含むことができるように非排他的な包含を定義することが意図される。
【0034】
本明細書で使用する用語「約」は、量が名目上用語「約」に続く数字であることを意味するが、実際の量は、この正確な数から重要でない程度まで様々であってよい。
【0035】
本明細書で使用する用語「疎水性」は、周囲条件下で水に浸漬したとき、その重量の5%以下の水を吸収する材料を指す。本明細書で使用する用語「親水性」は、周囲条件下で水に浸漬したとき、5%超の水を吸収する材料を指す。
【0036】
本明細書で使用する「%」は、別段の指示がない限り重量%を指す。
【0037】
本発明は、少なくとも、好適な生分解性使い捨て物品が、食品組成物から形成できるという知見を前提とする。説明の簡易化のために、本説明は、食品廃棄物に関して記載されている。しかし、非食品廃棄物の組成物が本発明で利用できることが理解されるであろう。実施形態において、食品廃棄物は非修飾および天然由来の食品廃棄物である。実施形態において、方法は、乾燥した食品廃棄物を撹拌または微粉砕して、粒子状固体材料を形成するステップをさらに含む。
【0038】
広範な試験および実験を通して、本発明者らは、5重量%~70重量%の範囲のセルロースまたはヘミセルロース、80重量%未満の炭水化物、ならびに少なくとも2重量%のペクチンおよび/またはリグニンを含有する基準を満たす食品廃棄物が、新規な一連の処理ステップに従って処理された場合、生分解性用具に容易に成形されると思われることを驚くべきことに発見した。
【0039】
生分解性使い捨て物品の要件に応じて、本発明者らは、ある特定の基準内に該当する食品廃棄物が、有用な生分解性使い捨て物品に形成できることを見出した。これに関して、広範な試験を通して、結果は、いくつかの食品廃棄物が、液体に利用でき(例えばカップ、ボールなど)、他の食品廃棄物が包装材に使用できる(必ずしも液体を含まない)ことを示唆する。
【0040】
一実施形態において、セルロースは、60%未満、約5%~約50%、約5%~約30%、約5%~約25%、約8%~約26%、または約5%~約22%の範囲で存在する。
【0041】
ある特定の実施形態において、炭水化物は、ペクチンを含む可溶性炭水化物である。一実施形態において、可溶性炭水化物は、約30%未満、約1%~約30%の範囲で存在する。実施形態において、可溶性炭水化物は、約1%~約10%、または約3%~約8%の範囲で存在する。ある特定の実施形態において、可溶性炭水化物は、約10%~約30%、約14%~約25%、約15%~約30%、または約15%~約27%の範囲で存在する。一実施形態において、可溶性炭水化物は、ペクチンを主に含む。一実施形態において、可溶性炭水化物はペクチンである。
【0042】
実施形態において、リグニンは、約1%~30%、約1%~約26%、約1%~約25%、約2%~約7%、または約3%~約6%の範囲で存在する。
【0043】
一部の実施形態において、食品廃棄物は、約1%~約20%の範囲のタンパク質をさらに含む。一実施形態において、タンパク質は、約1%~約10%、約2%~約10%、または約3%~約10%の範囲で存在する。ある特定の実施形態において、タンパク質は、約10%~20%、または約13%~約19%の範囲で存在する。
【0044】
実施形態において、食品廃棄物は、少なくとも1%、約1%~約15%、約1%~約12%または約1%~約11%の範囲の脂肪をさらに含む。一実施形態において、脂肪は、約1%~約5%、または約1%~約4%の範囲で存在する。一実施形態において、脂肪は、約4%~約12%、約4%~約11%の範囲で存在する。実施形態において、脂肪は粗脂肪である。
【0045】
酸性デタージェント繊維(ADF)は、熱い酸性デタージェント溶液による抽出後に残る残留物である。典型的には、ADFはリグニンおよびセルロースを含むが、ヘミセルロースを含有しない。実施形態において、食品廃棄物は、少なくとも約9%または少なくとも約10%、約10%~約50%、約10%~約25%、約10%~約20%、または約40%~50%のADF含有量を有する。
【0046】
中性デタージェント繊維(NDF)は、中性デタージェント溶液による抽出後に残る残留物である。典型的には、NDFはリグニン、セルロースおよびヘミセルロースを含む。NDFとADFの主な違いはヘミセルロース含有量である。
【0047】
実施形態において、粒子状固体材料は、少なくとも150℃の温度に加熱される予熱金型に配置される。
【0048】
実施形態において、食品廃棄物は、少なくとも約5重量%未満、約60%未満、約50%未満または約40%未満、約0%~約60%、約20%~約60%、約25%~約60%、または約10%~約40%の量のヘミセルロースを含む。
【0049】
実施形態において、粒子状固体材料は、約5000kg/cm~約1000000kg/cm、約5000kg/cm~約100000kg/cm、約20000kg/cm~約1000000kg/cm、または約20000kg/cm~約100000kg/cmの範囲の圧力下で成形される。
【0050】
実施形態において、粒子状固体材料は、少なくとも1秒間および好ましくは少なくとも10秒間成形される。
【0051】
実施形態において、粒子状固体材料は、約150℃~約300℃の範囲、または約200℃~約300℃の範囲の温度で成形される。
【0052】
実施形態において、天然由来の食品廃棄物は、以下:柑橘類果皮、アボカド種子、パイナップル皮、パイナップル上部、小麦ふすま、コーヒー豆の殻、使用済みコーヒー粉、および大麦糠のうちの1つまたは複数を含む。実施形態において、柑橘類果皮は、オレンジ果皮および/またはレモン果皮を含む。
【0053】
実施形態において、食品廃棄物は、約2%未満または0.1%~約1%の含水量を有する。一実施形態において、食品廃棄物は、約2%未満または0.1%~約1%の含水量を有するように脱水される。含水量が所望の範囲内である場合、食品廃棄物は、必ずしも脱水されなくてもよいことが理解されるであろう。
【0054】
一部の実施形態において、食品廃棄物は
約5%~約30%の量のセルロース、
約1%~約30%の量の、ペクチンを含む可溶性炭水化物、
約1%~約20%の量のタンパク質、
約1%~15%の量の脂肪
を含む。
【0055】
試験からの結果は、以下のように食品廃棄物から形成された生分解性使い捨て物品が、吸水性に関して極めて有利な特性を有することを示唆する。これに関して、結果は、食品廃棄物から形成された生分解性使い捨て物品が液体での使用に好適であることを示唆する(例えばカップおよびボール)。実施形態において、食品廃棄物は
約5%~約30%の量のセルロース、
約1%~約10%の量の、ペクチンを含む可溶性炭水化物、
約10%~約20%の量のタンパク質、
約4%~約11%の量の脂肪
を含む。
【0056】
好ましい実施形態において、食品廃棄物は
約8%~約26%の量のセルロース、
約3%~約8%の量の、ペクチンを含む可溶性炭水化物、
約13%~約19%の量のタンパク質、
約4%~約11%の量の脂肪
を含む。
【0057】
さらなる実施形態において、食品廃棄物は、約5~約50%、約10%~約40%、または約11%~約40%の量のヘミセルロースをさらに含む。
【0058】
試験からの結果は、以下のように食品廃棄物から形成された生分解性使い捨て物品が、包装材および同様の製品としての使用のための吸水に関して十分な特性を有することを示唆する。実施形態において、食品廃棄物は
約5%~約25%の量のセルロース、
約10%~約30%の量の、ペクチンを含む可溶性炭水化物、
約1%~約10%の量のタンパク質、
約1%~約5%の量の脂肪
を含む。
【0059】
好ましい実施形態において、食品廃棄物は
約5%~約22%の量のセルロース、
約15%~約28%の量の、ペクチンを含む可溶性炭水化物、
約3%~約10%の量のタンパク質、
約1%~約4%の量の脂肪
を含む。
【0060】
さらなる実施形態において、食品廃棄物は、約0%~約60%、約0%~約56%、約25%~約56%、または約25%~約26%の量のヘミセルロースをさらに含む。
【0061】
具体的には、本発明者らは、上述の基準を満たす食品廃棄物が、最初に脱水されて、次いで任意に撹拌または微粉砕のステップにかけられて、脱水した食品廃棄物を粒子状固体材料に分解し、約0.01mm~約1mmの範囲の非限定的な平均粒径を好ましくは得ることを見出した。一実施形態において、脱水した食品廃棄物の平均粒径は、0.01mm~約1mmの範囲、約0.1mm~約1mm、または約0.3mm~約0.5mmの範囲である。何らかの大きい微粒子または凝集物は、篩または何らかの他の関連する方法を使用することにより分離ステップを用いて除去されてもよい。本明細書において、脱水または撹拌方法は、何らかの特定の脱水または撹拌ステップに依存せず、採用された特定の技術は、上述の最初の組成基準を満たす食品廃棄物の特性に依存し得ることが理解されるべきである。
【0062】
任意に、実質的に均一な粒径が撹拌ステップによって得られたら、脱水した食品廃棄物粒子は、少なくとも約150℃の温度に加熱される金型に配置される。先行する例において明白であるように、金型温度は、少なくとも一部の非限定的な実施形態に対して変更および上昇させてもよい。粒子状固体食品廃棄物が予熱金型に配置されたら、粒子は、約5000~約100000kg/cmの範囲の圧力が少なくとも1秒間加えられる金型内で圧縮される。実験では、30秒間などの比較的短期間の圧縮が必要とされた。
【0063】
多糖類は、処理中の食品廃棄物の大部分を構成し、グリコシド結合によって接合された単糖単位の鎖である。多糖類は、炭水化物の最も豊富な形態である。いくつかの最も一般的な種類はセルロース、デンプン、グリコーゲンおよびペクチンである。セルロースのグルコース単位は、β1-4グリコシド結合によって結合され、デンプンのグルコース単位は、α1-4またはα1-6グリコシド結合によって結合される。ペクチンは、果実および野菜に見出される独特の繊維であり、ペクチンは、グリコシド結合によって連結されるガラクツロン酸分子を含有する線状の形状を有する。液体の存在下で加熱されると、現在記載の実施形態の多糖類は、膨張しゲルを形成する。
【0064】
単量体グルコース単位は、様々な種類の多糖類において、様々な様式で連結される。多糖類が水と接触すると、グリコシド結合が破壊される(図2にピンクおよび紫で示す)。酸素原子は水分子と反応し、分子を浸出/分解する。この事象は、先の項に定義したように加水分解と呼ばれる。
【0065】
COH(カルボキシル基)の存在により、ペクチンは酸であり、リグニンはアルコールである。酸としてのペクチンは、アルコールより反応性が高い。リグニンは追加のアルキル鎖を有し、これはアルファ、ベータ、ガンマ基によって強調された以下の画像から明らかである。リグニンが水および熱と接触したとき、アルキル鎖のヒドロキシル基の存在は、デンプンおよびセルロースと共にそれをより安定したものにする。この作用により、コーヒー豆の殻、コーヒー粉、および小麦ふすまを含有する食品廃棄物が本発明の新規な方法に従って処理された場合、生分解性物品は非常に安定し、水との反応性が低く、使い捨ての生分解性用具としての使用に好適なものになる。
【0066】
少なくとも2重量%の量のペクチン(図4)またはリグニン(図3)いずれかの存在が重要である。ペクチンとリグニンとの間の類似性は、それらのヒドロキシル基がデンプンおよびセルロースと同様の方式で反応することである。
【0067】
以下の実施例は、5重量%~70重量%の範囲のセルロースおよび/またはヘミセルロース、80重量%未満の炭水化物、ならびに少なくとも2重量%のペクチンおよび/またはリグニンを含む、上述の基準を満たす特定の種類の食品廃棄物の処理を詳述する。
【実施例
【0068】
[実施例1]
環境に優しい生分解性食器をコーヒー豆の殻、コーヒー粉、パイナップル上部、パイナップル皮、アボカド種子、およびレモン果皮から製造する。
【0069】
7種類の異なる有機食品廃棄物製品を以下のように処理した(表1に示す)。
【0070】
処理ステップは、以下:廃棄物を水で洗浄するステップと、それをグラインダーでスライスするステップと、次いでそれを脱水機で70℃で乾燥するステップのうちの1つまたは複数を含む。
【0071】
【表1】
【0072】
[実施例2]
環境に優しい生分解性の食べられる食器を小麦ふすまから製造する。
手順:小麦ふすま(WB)を、供給業者から調達し、32,000RPMで2分間粉砕した。次いで、粉末を金型に配置し、50000kg/cmの圧力で30秒間圧縮した。得られた物品を調べ、以下に記載するように試験した。
電子レンジ耐性試験:450Wで1分間
オーブン対応試験:100℃で1分間
半液体試験:2時間
水試験:40分間
【0073】
【表2】
【0074】
上に詳述したように、一部の実験において、ジャグリーを結合剤として添加した。金型温度は200℃から300℃まで様々であった。
【0075】
実施例2からの結果は、小麦ふすまから形成された生分解性用具が、結合材料と組み合わされない限り電子レンジおよびオーブン対応であることを認める。トマトソースを使用して、用具の浸出性を試験し、浸出が最大2時間観察されなかった。水では、用具は20~35分後に分解し始め、250℃で圧縮した試料3が最も長く持ちこたえた。乾物および濃厚なスープなどの半液体材料による使用については、実施例1に概説したステップに従って成形した用具が使用に適していることが明らかである。
【0076】
[実施例3]
必要な場合、原料を結合材料と混合し、32,000RPMで2分間粉砕した。
この実験の一部として、30gの粉末を、150~300℃の予熱金型に配置し、50000kg/cmの圧力で30秒間圧縮し、次いで得られた用具および食器を調べ、以下の条件下で試験した:
電子レンジ耐性試験:450Wで1分間
オーブン対応試験:100℃で1分間
半液体試験:2時間
水試験:40分間
【0077】
【表3】
【0078】
この実験中に試験した様々な有機食品廃棄物材料は、様々な組成を有する様々な量の多糖からなっていたにもかかわらず、これらはすべて、熱および圧力下でその形状を変形および再形成することが可能であることが見出された。
【0079】
表4は、先の項で考察された実施例において使用した主な食品廃棄物材料の組成特性を示す。
【0080】
【表4】
【0081】
吸水時間および半液体浸出時間は、物品の厚さに依存することが理解されるであろう。これに関して、物品が厚ければ厚いほど、構造的完全性を喪失するまでにより長い時間枠で水および半液体に耐えることができる。
【0082】
本明細書に記載される手段は、本発明を実施するのに好ましい形態を含むので、本発明が示されたか、または記載された特定の特徴に限定されないことが理解されるべきである。
【0083】
したがって、本発明は、当業者によって適当に解釈される添付の特許請求の範囲の適切な範囲内でその形態または改変のいずれかで特許請求される。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】