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特表2024-547119分布帰還型レーザおよびそのようなレーザを製造する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】分布帰還型レーザおよびそのようなレーザを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/12 20210101AFI20241219BHJP
【FI】
H01S5/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538113
(86)(22)【出願日】2022-12-15
(85)【翻訳文提出日】2024-08-14
(86)【国際出願番号】 EP2022086243
(87)【国際公開番号】W WO2023117718
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】21306920.6
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523164067
【氏名又は名称】アルメ テクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドゥブレジェ,エレーヌ
(72)【発明者】
【氏名】カララ,ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】ドゥブロヴィナ,ナタリア
(72)【発明者】
【氏名】ベラセーヌ,ソフィアン
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AA26
5F173AA47
5F173AB13
5F173AH02
5F173AH12
(57)【要約】
分布帰還型レーザおよびそのようなレーザを製造する方法
第1の態様によれば、本開示は、分布帰還型(DFB)レーザ(100)であって、平面基板(101)と、前面(111)と、前記平面基板(101)とほぼ平行であるが前記平面基板と同一平面上になく、前記前面(111)を通して光を放出するように構成された活性層(102)と、前記活性層(102)とほぼ平行であるが前記活性層と同一平面上にない平面層に、前記活性層(102)の前記平面基板(101)と反対側に、配置された第1ブラッグ格子(115)と、を含むレーザセクション(110)と、前記レーザセクション(110)に光学的に結合されたミラーセクション(120)であって、前記前面(111)に向かって光を反射するように構成された第2ブラッグ格子(125)を含む前記ミラーセクション(120)と、を備え、前記第2ブラッグ格子(125)は、前記活性層(102)と同一平面上の平面層に配置されるレーザに関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の中心波長を中心とする発光スペクトルの光を放出するための分布帰還型(DFB:distributed feedback)レーザ(100)であって、
平面基板(101)と、
前面(111)と、前記平面基板(101)とほぼ平行であるが前記平面基板と同一平面上になく、前記前面(111)を通して光を放出するように構成された活性層(102)と、前記活性層(102)とほぼ平行であるが前記活性層(102)と同一平面上にない平面層に、前記活性層(102)の前記平面基板(101)と反対側に、配置された第1ブラッグ格子(115)と、を含むレーザセクション(110)と、
前記レーザセクション(110)に光学的に結合されたミラーセクション(120)であって、前記前面(111)に向かって光を反射するように構成された第2ブラッグ格子(125)を含む前記ミラーセクション(120)と、
を備え、
前記第2ブラッグ格子(125)は、前記活性層(102)と同一平面上の平面層に配置され、前記第2ブラッグ格子は、前記発光スペクトルの前記中心波長を含む反射率スペクトルを有する、
分布帰還型(DFB:distributed feedback)レーザ(100)。
【請求項2】
請求項1に記載のDFBレーザであって、
前記第1ブラッグ格子および前記第2ブラッグ格子は、均一ブラッグ格子であり、同じピッチを有する、
DFBレーザ。
【請求項3】
請求項1~2のいずれかに記載のDFBレーザであって、
前記ミラーセクションは、透明材料を含む補助導波路を含み、前記補助導波路は、前記活性層(102)に光学的に結合され、
前記第2ブラッグ格子(125)は、前記補助導波路の少なくとも一部を通してエッチングされる、
DFBレーザ。
【請求項4】
請求項3に記載のDFBレーザであって、
前記補助導波路はパッシブ導波路である、
DFBレーザ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のDFBレーザであって、
前記レーザセクション(110)の前記第1ブラッグ格子(115)と前記ミラーセクション(120)の前記第2ブラッグ格子(125)との間隔は、前記第1ブラッグ格子(115)から前記第2ブラッグ格子(125)に伝搬する光が約π/2に等しい位相シフトを得るように導入される、
DFBレーザ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のDFBレーザであって、
前記ミラーセクション(120)は、光伝搬の方向に沿った長さが約200マイクロメートル未満の、
DFBレーザ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のDFBレーザであって、
かかるDFBレーザは、直接変調レーザとして構成される、
DFBレーザ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の少なくとも第1DFBレーザ(100)と、
前記DFBレーザ(100)によって放出された光を受けるように構成された少なくとも第1補助セクションと、
を含む、フォトニック集積回路。
【請求項9】
請求項8に記載のフォトニック集積回路であって、
前記少なくとも第1補助セクションは、前記少なくとも第1DFBレーザによって放出された前記光の位相および振幅の少なくとも一方を変調するように構成された変調セクションである、
フォトニック集積回路。
【請求項10】
請求項8に記載のフォトニック集積回路であって、
前記少なくとも第1補助セクションは、前記少なくとも第1DFBレーザによって放出された前記光を導くように構成された透明セクションである、
フォトニック集積回路。
【請求項11】
少なくとも2つの異なる波長で光を放出するように構成された、請求項1~7のいずれかに記載の少なくとも2つのDFBレーザを含む、
集積レーザアレイ。
【請求項12】
DFBレーザを製造する方法であって、
平面基板(101)と、前記平面基板(101)とほぼ平行であるが前記平面基板と同一平面上にない活性層(102)と、前記活性層(102)とほぼ平行であるが前記活性層(102)と同一平面上にない平面層に配置され、前記活性層(102)の前記平面基板(101)と反対側に配置された、格子層(103)と、を提供するステップと、
前記平面基板(101)と、前記活性層(102)と、前記格子層(103)とで作られた集合体の第1セクションを、マスクで覆うステップであって、前記第1セクション(110)は、レーザセクション(110)を作ることを意図する、前記ステップと、
前記平面基板(101)と、前記活性層(102)と、前記格子層(103)とで作られた前記集合体の第2セクション(120)において、少なくとも前記格子層(103)を除去するステップであって、前記第2セクションは、ミラーセクション(120)を作ることを意図する、前記ステップと、
単一のステップで、少なくとも部分的に前記第1セクション(110)と少なくとも部分的に前記第2セクション(120)とを覆う格子マスクを、提供するステップであって、かかる格子マスクは、前記第1セクション(110)に第1ブラッグ格子(115)を、前記第2セクション(120)に第2ブラッグ格子(125)を画成するように構成される、前記ステップと、
前記格子マスクを使用して、前記第1セクション(110)の前記格子層(103)に、前記第1ブラッグ格子(115)を、前記活性層(102)と同一平面上にある前記第2セクション(120)の平面層に、前記第2ブラッグ格子(125)を、作るステップと、
を含む、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、
前記第1ブラッグ格子(115)および前記第2ブラッグ格子(125)は、単一のステップで、前記格子マスクを使用して作られる、
方法。
【請求項14】
請求項12~13のいずれかに記載の方法であって、
前記第2セクションにおいて少なくとも前記格子層(103)を除去するステップの後に、補助導波路層(132)が前記レーザセクション(110)の前記活性層(102)に結合されるように、前記補助導波路層(132)を含む各半導体層の集合体(130)を、前記ミラーセクションに集積するステップであって、前記第2ブラッグ格子(125)は、前記補助導波路(132)の少なくとも一部に作られる、前記ステップ
をさらに含む、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、
前記活性層(102)と前記補助導波路(132)とは、バットカップリング、エバネッセントカップリング、選択的領域成長、または、インターミキシングを通じて、結合される、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、分布帰還型レーザに関する。さらに、本明細書は、そのようなレーザを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光を放出するように構成された半導体素子は、光センシングおよび光通信など多くの技術分野において使用される。分布帰還型(DFB:Distributed feedback)レーザは、例えば量子井戸の集合体または多重量子井戸(MQW:multi‐quantum‐wells)などの、光を放出するように構成された活性層と、放出された光の中心波長を選択するように構成されたブラッグ格子とを含むレーザセクションを有する、特定のタイプの半導体素子である。ブラッグ格子は、前記活性層と平行な平面層に配置される。さらに、そのような素子において、レーザセクションは前面と後面との間に配置され、前面を通して素子から外に光が放出される。
【0003】
ほとんどの用途では、レーザのシングルモード動作、すなわち放出された光が、単一の波長を主に中心とする帯域幅を有する場合が、一般的に好ましい。しかし、従来のDFBレーザでは、レーザセクションにブラッグ格子が存在するため、レーザのストップバンドと呼ばれるスペクトル範囲により分離された、2つの異なる波長での光の放出(デュアルモード動作)が一般に好都合である。
【0004】
ストップバンドは、DFBレーザの「単位長さあたりの反射率」として定義されcm-1で表される結合強度とも呼ばれるレーザセクションの結合係数(κ)と、レーザセクションの長さ(L)と、の積に依存する。
【0005】
デュアルモード動作を回避するために、一方では、後面に高反射(HR:highly reflective)コーティングからなるミラーセクションと、他方では、前面に反射防止(AR:anti‐reflection)コーティングとを加えることにより、DFBレーザに非対称性が一般に導入される。HR/AR DFBレーザと呼ばれる前記機構では、動作時の2つのモードのうちの一方が他方のモードよりも好都合である。さらに、後面を通して光がほとんど放出されないため、前面で放出される光の光パワーはコーティングなしのDFBレーザと比較してほぼ2倍になる。
【0006】
しかし、主に製造上の制約により、ブラッグ格子に対する後面の厳密な位置を制御することは一般に不可能である。その結果、レーザセクションにおける前後伝搬およびHRコーティング上の反射時に、活性層で生成された光が「ランダム位相状態」とも呼ばれる予測できない位相シフトを得る。そのようなランダム位相状態は、出力パワーの変動およびストップバンド内の放出光の波長の変動など、異なるDFBレーザ間での可変的性能につながる。特に、放出光の波長はストップバンド内よりも良好に制御されない可能性があり、シングルモードイールド、すなわちDFBレーザがシングルモードで光を放出する確率は、一般的に80~90%に低減され、それにより特定の伝送チャネルが使用される波長分割多重(WDM:wavelength division multiplexing)などの用途では、DFBレーザの試験および選択が課される。
【0007】
そのような制限に対処するために、ブラッグ格子の中央にブラッグ格子の周期の4分の1に等しい位相シフトを含むレーザセクションと、後面上および前面上の両方の反射防止コーティングとによって非対称性が導入されるDFBレーザを作ることが知られており、例えば[参考文献1]を参照されたい。そのようなDFBレーザは、1/4波長(λ/4)位相シフトDFBレーザと呼ばれ、本来ストップバンドの中心にある中心波長の光を放出する。したがって、そのような解決策によって、100%のシングルモードイールドおよび放出波長の正確な制御が提供される。しかし、λ/4位相シフトDFBレーザは後面および前面の両方で光を放出し、HR/AR DFBレーザと比較して1つの面からの放出パワーの50%低減を引き起こす。
【0008】
あるいは、[参考文献2]では、ミラーセクションがレーザセクションの片側に配置され、そのようなミラーセクションが第2ブラッグ格子を有する分布ブラッグ反射器(DBR:distributed Bragg reflector)を備えたDFBレーザが提案される。前記第2ブラッグ格子は、活性層と平行であり、レーザセクションの第1ブラッグ格子の平面層と同一平面上にある平面層に、配置される。
【0009】
そのような機構では、DFBレーザの製造中に、同じエッチングマスクを用いてレーザセクションの第1ブラッグ格子およびミラーセクションの第2ブラッグ格子をエッチングすることが可能である。したがって、第1格子と第2格子の間隔は、前記エッチングマスクによって精密に画成される。故に、レーザセクションの第1ブラッグ格子からミラーセクションの第2ブラッグ格子への伝搬時に、光により得られる位相シフトを正確に制御し、これにより高いシングルモードイールドおよび放出光の波長の正確な制御の両方を達成することが可能である。
【0010】
しかし、[参考文献2]の機構では、ミラーセクションの反射率は、ミラーセクションの結合強度とミラーセクションの長さとの積に依存する。特に、ミラーセクションの結合強度が低いように思われる(およそ200cm-1に等しい)ため、ミラーセクションの満足な反射率を得るために長いミラーセクション、特に300マイクロメートル~480マイクロメートルの間の長さが必要である。さらに、そのような低い結合強度はミラーセクションの狭い反射率スペクトルを引き起こし、それによりレーザセクションの屈折率とミラーセクションの屈折率との差に厳しい制約が課される。特に、そのような低い結合強度により、多くの用途に適合しない単一の量子井戸を含む非常に特殊な垂直構造を持つレーザセクションおよびミラーセクションが課される。
【0011】
したがって、短いミラーセクションを保ちながら従来技術よりも高い結合強度を有するミラーセクションを有する代替的な分布帰還型レーザが必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下では、「備える」という用語は、「含む」および「包含する」の同義語(同じ意味)であり、包括的かつオープンであり、他の非引用要素を排除しない。さらに、本開示において、数値に言及するときには、「約」および「ほぼ」という用語は、その数値の80%~120%の間、好ましくは90%~110%の間に含まれる範囲の同義語(同じ意味)である。
【0013】
第1の態様によれば、本明細書は、所定の中心波長を中心とする発光スペクトルの光を放出するための分布帰還型(DFB:distributed feedback)レーザであって、
‐平面基板と、
‐前面と、前記平面基板とほぼ平行であるが前記平面基板と同一平面上になく、前記前面を通して光を放出するように構成された活性層と、前記活性層とほぼ平行であるが前記活性層と同一平面上にない平面層に、前記活性層の前記平面基板と反対側に、配置された第1ブラッグ格子と、を含むレーザセクションと、
‐前記レーザセクションに光学的に結合されたミラーセクションであって、前記前面に向かって光を反射するように構成された第2ブラッグ格子を含む前記ミラーセクションと、を備え、
前記第2ブラッグ格子は、前記活性層と同一平面上の平面層に配置され、前記第2ブラッグ格子は、前記発光スペクトルの前記中心波長を含む反射率スペクトルを有する、
分布帰還型(DFB:distributed feedback)レーザに関する。
【0014】
本明細書において、発光スペクトルの中心波長は、放出出力パワーが最大となる、例えば、他のキャビティモードと比較して約40dBを超えるサイドモード抑制比を有する、DFBレーザのキャビティモードの波長として、理解される。
【0015】
本明細書において、シングルモードDFBレーザは、単一の中心波長を主に中心とする発光スペクトルの光を放出するDFBレーザである。したがって、そのようなシングルモードDFBレーザは、いくつかの波長を中心とする発光スペクトルを有する光を放出するマルチモードDFBレーザとは異なる。
【0016】
本明細書において、同一平面上にある2つの平面層とは、2つの平面層のうちの第1平面層の上面が、2つの平面層のうちの第2平面層の上面から最大距離未満の所定距離にあり、前記最大距離は約50ナノメートル以下、例えば約20ナノメートル以下、であることを意味する。
【0017】
逆に、前記所定距離が前記最大距離を上回るときには、2つの平面層は同一平面上にない。
【0018】
そのような構成により、活性層における導波光学光と前記第2ブラッグ格子との間のオーバーラップが従来技術の機構と比較して改善され、そのためミラーセクションは従来技術において開示されるミラーセクションよりも高い結合強度を有する。したがって、従来技術よりも短いミラーセクションで満足な反射率を得ることが可能である。続いて、DFBレーザの長さも従来技術に比べて低減され、これは設置面積およびコスト低減に有益である。
【0019】
さらに、ミラーセクションの高い結合強度のおかげで、そのような構成は、活性層における光学モードの閉じ込め度が高いDFBレーザに特に適する。特に、そのような構成は、高速直接変調レーザ(DML:directly modulated lasers)を形成するように構成されたDFBレーザ、および高速外部変調レーザ(EML:externally modulated lasers)を形成するように構成されたフォトニック集積回路の一部であるDFBレーザに有利に適する。
【0020】
さらに、ミラーセクションの高い結合強度のおかげで、ミラーセクションの反射率スペクトルは従来技術よりも広く、これによりレーザセクションの屈折率とミラーセクションの屈折率との差に関する従来技術の制約が克服される。したがって、そのような機構は、特にレーザセクションおよびミラーセクションで使用される材料の点で、多種多様なDFBレーザ構造に適合する。
【0021】
そのような適合性は、ミラーセクションが、ミラーセクション以外の目的に一般に使用される構造、例えば、外部変調型レーザの変調セクション、または、パッシブ導波路、カプラ、フィルタ、もしくはマルチプレクサにおいて使用される構造、の層のスタックを備えるDFBレーザの場合に、特に有利である。
【0022】
さらに、そのような構成では、レーザセクションの第1ブラッグ格子とミラーセクションの第2ブラッグ格子との間隔が確定的であり、第1ブラッグ格子から第2ブラッグ格子に伝搬する光が所定の位相シフトを得る。したがって、確定的な性能を有するDFBレーザを得ることが可能である。
【0023】
特に、光が前面で放出される光のパワーを増加させるために適した位相シフトを得るように、レーザセクションの第1ブラッグ格子とミラーセクションの第2ブラッグ格子との間隔を選択することが可能であり、これは低線幅および高パワーの少なくとも一方のレーザに有益である。
【0024】
1つまたはさらなるいくつかの実施形態によれば、レーザセクションの第1ブラッグ格子とミラーセクションの第2ブラッグ格子との間隔は、第1ブラッグ格子から第2ブラッグ格子に伝搬する光が、すなわち光が1つのセクションから他方のセクションへの伝送において伝搬するときに、約π/2に等しい位相シフトを得るように導入される。したがって、反射において評価されるとき、すなわち2つのセクション間を前後に伝搬するときには、前記位相シフトはおよそπに等しい。
【0025】
そのような位相シフトにより、放出光は、ストップバンド内を中心とする波長スペクトルおよびストップバンドを有することが可能である。
【0026】
1つまたはさらなるいくつかの実施形態によれば、第1ブラッグ格子および第2ブラッグ格子の少なくとも一方は、均一ブラッグ格子である。
【0027】
本明細書において、均一ブラッグ格子とは、光屈折率の均一な周期的変動を有する材料を含むブラッグ格子である。例えば、均一ブラッグ格子は、交互する高屈折率領域および低屈折率領域と、前記交互する高屈折率領域と低屈折率領域との間の一定の距離(ピッチ)とを備える。したがって、均一ブラッグ格子は、異なるピッチのいくつかのブラッグ格子、または、交互する高屈折率領域および低屈折率領域の配列が位相シフトを生成するブラッグ格子、例えば交互する高屈折率領域および低屈折率領域の配列において高屈折率領域および低屈折率領域が局所的に欠失したブラッグ格子を含まない。
【0028】
1つまたはさらなるいくつかの実施形態によれば、前記第1ブラッグ格子および前記第2ブラッグ格子は、同じピッチを有する。
【0029】
1つまたはさらなるいくつかの実施形態によれば、前記活性層は前記ミラーセクションに延び、前記第2ブラッグ格子は、前記ミラーセクションの前記活性層の少なくとも一部を通してエッチングされる。
【0030】
そのような構成により、DFBレーザの簡単な設計が提供され、同じ活性層がレーザセクションで光を放出するためと、ミラーセクションで第2ブラッグ格子の領域を形成するためと、の両方に、使用される。
【0031】
1つまたはさらなるいくつかの実施形態によれば、前記ミラーセクションは、透明材料を含む補助導波路を含み、前記補助導波路は、前記活性層に光学的に結合され、前記第2ブラッグ格子は、前記補助導波路の少なくとも一部を通してエッチングされる。
【0032】
本明細書において、透明材料とは、DFBレーザの活性層により放出されるように構成された光の波長に対応するエネルギーを上回るエネルギーバンドギャップを有する材料である。
【0033】
そのような構成では、補助導波路は、例えばバットカップリング技術、エバネッセントカップリング、選択的領域成長、または、インターミキシングを用いて、レーザセクションに結合される。したがって、例えば変調セクションにおいて、カプラにおいて、またはマルチプレクサにおいて使用される構造のように、ミラーセクションにおける以外の目的に一般的に使用される構造、を含む多種多様な補助導波路構造を、ミラーセクションにおいて使用することが可能である。
【0034】
1つまたはさらなるいくつかの実施形態によれば、前記補助導波路はパッシブ導波路であって、パッシブ導波路は、光を生成するように構成された活性材料を含まない導波路である。
【0035】
そのような構成は、パッシブであり、したがって、電流または電圧パワーを要しないミラーセクションを提供する。したがって、そのような構成は、アクティブミラーセクションを備える構成よりもパワー消費量が低い。
【0036】
1つまたはさらなるいくつかの実施形態によれば、前記ミラーセクションは、光伝搬の方向に沿った長さが約200マイクロメートル未満である。
【0037】
1つまたはさらなるいくつかの実施形態によれば、前記DFBレーザは、直接変調レーザとして構成される。
【0038】
第2態様によれば、本開示は、第1態様に記載の少なくとも第1DFBレーザと、前記DFBレーザによって放出された光を受けるように構成された少なくとも第1補助セクションと、を含む、フォトニック集積回路に関する。そのような補助セクションの例は、位相または振幅変調器を含み、その場合、フォトニック集積回路は外部変調レーザである。
【0039】
ミラーセクションの高い結合強度のおかげで、そのようなDFBレーザは、多種多様な構造を含む様々な補助セクションと集積され得る。
【0040】
1つまたはさらなるいくつかの実施形態によれば、前記少なくとも第1補助セクションは、前記少なくとも第1DFBレーザによって放出された前記光の位相および振幅の少なくとも一方を変調するように構成された変調セクションである。
【0041】
1つまたはさらなるいくつかの実施形態によれば、前記少なくとも第1補助セクションは、前記少なくとも第1DFBレーザによって放出された前記光を導くように構成された透明セクションである、例えば、カプラ、マルチプレクサ、デマルチプレクサ、または、フィルタ。
【0042】
第3態様によれば、本開示は、第1態様に記載の少なくとも2つのDFBレーザを含む集積レーザアレイに関する。1つまたはさらなるいくつかの実施形態によれば、前記少なくとも2つのDFBレーザは、少なくとも2つの異なる波長で光を放出するように構成される。
【0043】
そのような構成により、従来技術の集積レーザアレイよりも高い出力パワーおよび小さなサイズを提供しながら放出光の波長を制御することが可能になる。
【0044】
第4態様によれば、本開示は、第1態様のいずれかの実施形態において開示されるような分布帰還型レーザを製造する方法に関する。
さらに一般的には、本開示は、DFBレーザを製造する方法であって、
‐平面基板と、前記平面基板とほぼ平行であるが前記平面基板と同一平面上にない活性層と、前記活性層とほぼ平行であるが前記活性層と同一平面上にない平面層に配置され、前記活性層の前記平面基板と反対側に配置された、格子層と、を提供するステップと、
‐前記平面基板と、前記活性層と、前記格子層とで作られた集合体の第1セクションを、マスクで覆うステップであって、前記第1セクションは、レーザセクションを作ることを意図する、前記ステップと、
‐前記平面基板と、前記活性層と、前記格子層とで作られた前記集合体の第2セクションにおいて、少なくとも前記格子層を除去するステップであって、前記第2セクションは、ミラーセクションを作ることを意図する、前記ステップと、
‐単一のステップで、少なくとも部分的に前記第1セクションと少なくとも部分的に前記第2セクションとを覆う格子マスクを、提供するステップであって、かかる格子マスクは、前記第1セクションに第1ブラッグ格子を、前記第2セクションに第2ブラッグ格子を画成するように構成される、前記ステップと、
‐前記格子マスクを使用して、前記第1セクションの前記格子層に、前記第1ブラッグ格子を、前記活性層と同一平面上にある前記第2セクションの平面層に、前記第2ブラッグ格子を、作るステップと、を含む、方法に関する。
【0045】
1つまたはさらなるいくつかの実施形態によれば、前記第1ブラッグ格子および前記第2ブラッグ格子は、単一のステップで、前記格子マスクを使用して作られる。
【0046】
第3態様による方法により、簡単なプロセスを保ちながら従来技術よりも高い結合強度を有するミラーセクションを備えたDFBレーザを作ることが可能であり、したがって、レーザセクションおよびミラーセクションにおいて使用される層のタイプおよび構造の制約が解除される。特に、そのような方法は、分布帰還型レーザ、直接変調レーザ、および、外部変調レーザの、異なる構造に適合する。
【0047】
さらに、第3態様による方法により、第1ブラッグ格子および第2ブラッグ格子が単一のステップで単一の格子マスクを使用して画成され得る。したがって、前記第1ブラッグ格子と前記第2ブラッグ格子との間の伝搬時に光によって得られる位相シフトを選択するために、第1ブラッグ格子と第2ブラッグ格子との間隔を精密に制御することが、可能である。
【0048】
さらに、レーザセクションおよびミラーセクションに沿った光子分布を制御し、ミラーセクションの光子濃度を低減することによりパワー分布を均質化するために、位相シフトが制御され得る。特に、これにより放出光の波長の精密な制御、空間的ホールバーニング効果の低減、および、前面で放出されるパワーの増加が、可能になり、これは、低線幅および高パワーの少なくとも一方のレーザに、有益である。
【0049】
1つまたはさらなるいくつかの実施形態によれば、第2ブラッグ格子は、ミラーセクションに延びる前記活性層の少なくとも一部に作られる。
【0050】
そのような実施形態により、DFBレーザの簡単な設計が提供され、活性層が、レーザセクションで光を放出するためと、ミラーセクションで第2ブラッグ格子の領域を形成するためと、の両方に使用される。
【0051】
1つまたはさらなるいくつかの実施形態によれば、第2ブラッグ格子は、前記活性層の厚さの全部にわたってではなく、前記活性層の厚さの一部のみを通して作られる。
【0052】
1つまたはさらなるいくつかの実施形態によれば、前記活性層の一部は、約50ナノメートル~約200ナノメートルの間、好ましくは約50ナノメートル~約120ナノメートルの間の厚さを有する。
【0053】
1つまたはさらなるいくつかの実施形態によれば、第2ブラッグ格子は、第1セクションの活性層に結合される補助導波路の少なくとも一部に、作られる。
【0054】
1つまたはさらなるいくつかの実施形態によれば、前記第2セクションにおいて少なくとも前記格子層を除去するステップの後に、前記方法は、前記補助導波路層が前記レーザセクションの前記活性層に結合されるように、前記補助導波路層を含む各半導体層の集合体を、前記ミラーセクションに集積するステップであって、前記第2ブラッグ格子は、前記補助導波路の少なくとも一部に作られる、前記ステップをさらに含む。
【0055】
1つまたはさらなるいくつかの実施形態によれば、前記活性層と前記補助導波路とは、バットカップリング、エバネッセントカップリング、選択的領域成長、または、インターミキシングを通じて、結合される。
【0056】
1つまたはさらなるいくつかの実施形態によれば、第2ブラッグ格子は、補助導波路層の厚さの一部のみを通して作られ、前記補助導波路層の厚さの全部にわたって作られるわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
本発明の他の利点および特徴は、以下の図によって示される説明を読めば明らかになるであろう。
図1】いくつかの実施形態による光伝搬の方向に沿ったDFBレーザの断面図を表す。
図2A】一実施形態によるDFBレーザを製造する方法のステップを表す。
図2B】一実施形態によるDFBレーザを製造する方法のステップを表す。
図2C】一実施形態によるDFBレーザを製造する方法のステップを表す。
図3A】別の実施形態によるDFBレーザを製造する方法のステップを表す。
図3B】別の実施形態によるDFBレーザを製造する方法のステップを表す。
図3C】別の実施形態によるDFBレーザを製造する方法のステップを表す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1は、本開示によるDFBレーザ100における光の伝搬の方向に沿った当該DFBレーザ100の一例の断面図を表す。DFBレーザ100は、光を放出するように構成されたレーザセクション110と、レーザセクション110によって放出された光を反射するように構成されたミラーセクション120とを備える。
【0059】
レーザセクション110は、平面基板101と、平面基板101の上の活性層102と、活性層102の上の格子層103を通してエッチングされた第1ブラッグ格子115とを備える。上部層105が、第1ブラッグ格子103の上に配置される。図1に示される例では、任意のコンタクト層109が上部層105の上に配置される。
【0060】
動作時には、活性層102は、所定の中心波長を中心とする発光スペクトルの光を放出し、前記光をミラーセクション120に向かって導くように構成される。活性層102は、各半導体層の集合体、例えばInGaAsPもしくはInGaAlAsまたは他の三元もしくは四元材料に基づく多重量子井戸を含み得る。
【0061】
活性層102と第1ブラッグ格子115とは、DFBレーザを製造する際の従来技術において標準的であるスペーサ層104によって、分離され得る。そのようなスペーサ層104は、活性層と第1ブラッグ格子との間の距離を制御するように構成される。
【0062】
複数の実施形態によれば、スペーサ層104と上部層105とは、そのような層間の境界がDFBレーザにおいて不可視であるように同じ材料を含む。
【0063】
平面基板101は、NドープInPなどのNドープ材料を含み得る。平面基板101は、半絶縁性InPも含み得る。
【0064】
スペーサ層104、格子層103、および、上部層105は、Pドープ材料を含み得る。例えば、スペーサ層104および上部層105はPドープInPを含み得、格子層はPドープInGaAsなどのPドープ四元材料を含み得る。
【0065】
あるいは、いくつかの実施形態によれば、上部層105、スペーサ層104、および格子層103がNドープ材料を含む一方で、平面基板101がPドープ材料を含むように、PドーピングとNドーピングとが逆転され得る。
【0066】
第1ブラッグ格子115は、格子層103を通してエッチングされ、所定の第1格子ピッチで離された高屈折率領域と低屈折率領域を交互に備える。第1ブラッグ格子は、一定のピッチの均一な格子であり得る。第1格子ピッチは放出光の波長に依存し、約1270ナノメートル~約1580ナノメートルの間に含まれる遠隔通信波長では、例えば、約190ナノメートル~約250ナノメートルの間に含まれ得る。図1に示される例では、第1ブラッグ格子115の高屈折率領域は格子層103の一部から作られる一方で、第1ブラッグ格子115の低屈折率領域は上部層105に含まれる材料と同じ材料を含む。
【0067】
レーザセクション110は、上部層105と平面基板101との間、または、上部層105および平面基板101と電気的に接続された各材料の間に、電圧または電流が印加されたときに、光を放出するように構成され得る。
【0068】
レーザセクション110は、層101、102、103、104、105の積層方向に対して垂直に配置された前面111を備える。前面111は、DFBレーザ100から外に光を伝送するように構成される。
【0069】
いくつかの実施形態によれば、前面111は、例えば遠隔通信波長などの所定の波長の光の伝送を促進するように構成された反射防止コーティングを、備える。特に、前面111は、前面111上の所定の波長の光の反射率が約5%以下であるように、反射防止コーティングを備え得る。いくつかの実施形態によれば、反射防止コーティングは、一層のTiOと一層のSiOとの一組の層、またはそのような層を複数組備える。
【0070】
ミラーセクション120は、平面基板101と、平面基板101の上に配置された第2ブラッグ格子125と、上部層105と後面112とを備える。
【0071】
後面112は、後面112によって起こり得る光の反射が、レーザセクション110に向かうミラーセクション120内の光の反射を妨害しないように、反射防止コーティングを備え得る。
【0072】
第2ブラッグ格子125は、レーザセクションの発光スペクトルの中心波長を含む反射率スペクトルを有する。第2ブラッグ格子125は、所定の第2格子ピッチで離された高屈折率領域と低屈折率領域を交互に備える。第2格子ピッチは一般に、遠隔通信波長で約190ナノメートル~約250ナノメートルの間に含まれる。第2ブラッグ格子は、一定のピッチの均一な格子であり得る。1つまたはさらなるいくつかの実施形態によれば、第2格子ピッチは第1格子ピッチと等しい。
【0073】
図1に示されるように、レーザセクション110およびミラーセクション120は、例えばDFBレーザが光を放出するようにDFBレーザに電圧または電流を印加するために、上部層105にオーム接点を提供するように構成されたコンタクト層109によって少なくとも部分的に覆われ得る。コンタクト層109は、例えばPt、Ti、または、Auなどの金属材料を含み得る。
【0074】
第2ブラッグ格子125は、活性層102と同一平面上の平面層内に配置される。レーザセクション110の活性層102で生成された光は、部分的にミラーセクション120に向かって伝搬し、第2ブラッグ格子125を通って伝搬するとレーザセクション110に向かって反射される。
【0075】
レーザセクション110からミラーセクション120に伝搬する際に、光は、第1ブラッグ格子103と第2ブラッグ格子125との距離に関係する所定の位相シフトを得る。
【0076】
第1実施形態によれば、活性層102はミラーセクション120にわたって延在し、第2ブラッグ格子125は、ミラーセクション120内にある活性層102の少なくとも一部に作られる。
【0077】
第2ブラッグ格子125が活性層102に作られる場合、第2ブラッグ格子125を通る伝搬時の光の吸収を減少させるために、電圧または電流が注入され得る。そのような注入は、例えば、図1に示されるようにコンタクト層109をミラーセクション120の上方に延在させることによって容易に行われ得る。
【0078】
DFBレーザの1つまたはさらなるいくつかの実施形態によれば、活性層102はミラーセクション120にわたって延在しない。そのようないくつかの実施形態では、第2ブラッグ格子125は、透明材料、すなわちレーザセクションによって放出される光子のエネルギーよりも大きいエネルギーバンドギャップを持つ材料、を含む補助導波路層に、作られる。そのような透明材料は、例えば、量子井戸またはバルク材料のエネルギーバンドギャップがレーザセクション110によって放出される光子のエネルギーよりも大きい、障壁によって分離された複数の量子井戸のスタックまたはバルク材料を含み得る。
【0079】
第2ブラッグ格子125が透明材料を含む補助導波路層に作られる場合、電気的制御を必要とせず、低い吸収係数、例えば約15cm-1未満の吸収係数を本来的に有する。
【0080】
本出願人らは、図1を参照して記載されるような実施形態において、光がミラーセクション120を伝搬するときに導波光モードが従来技術の設計に比べて改善された第2ブラッグ格子125とのオーバーラップを有することに起因して、ミラーセクション120の反射率が約200cm-1を超え得ることを示している。
【0081】
図2A図2Cは、第1実施形態によるDFBレーザを製造する方法のステップを表す。特に、図2A図2Cは、DFBレーザの製造方法の異なるステップ(a)~(e)をそれぞれいくつかの断面図(A‐A’、B‐B’、CC’)で示す。断面図A‐A’は、レーザセクション110における層の積層を示す。断面図B‐B’は、ミラーセクション120における層の積層を示す。断面図C‐C’は、DFBレーザ内の光伝搬の方向に沿った、すなわちレーザセクション110およびミラーセクション120全体にわたる層の積層を示す。
【0082】
ステップ(a)で、層101、102、103、104、105の集合体が提供される。そのような集合体は、Nドープ平面基板101と、光を放出するように構成された活性材料を含む活性層102と、Pドープスペーサ層104と、Pドープ格子層103と、Pドープ上部層105とを備える。
【0083】
製造プロセスの開始時、ステップ(a)では、上部層105は非常に薄い厚さ、例えば約20ナノメートルの厚さを有し、これは、上部層105の厚さを約2~3マイクロメートルまで増加させるためにエピタキシャル再成長が行われている図1に示されるDFBレーザの上部層105の厚さよりも比較的薄い。
【0084】
いくつかの実施形態によれば、活性層102は、例えば光を放出するように構成された多重量子井戸を含み得る。
【0085】
いくつかの実施形態によれば、格子層103はInGaAsP材料を含み得る。格子層103は、約20ナノメートル~約80ナノメートルの間に含まれる厚さを有し得る。
【0086】
いくつかの実施形態によれば、スペーサ層104は、約70ナノメートル~120ナノメートルの間に含まれる厚さを有し得る。
【0087】
ステップ(b)で、層101、102、103、104、105の集合体の第1セクション110上にマスク(図2A図2Cには表されない)が堆積され、層の集合体の残部が第2セクション120を画成する。このようなマスクは、スペーサ層104を露出するために前記第2セクション120の格子層103を完全にエッチングするために使用される。第1セクション110は、光が生成されるレーザセクションを形成することが意図され、第2セクション120は、第1セクション110によって生成された光を前記第1セクション110に向かって反射するように構成されたミラーセクションを形成することが意図される。したがって、本明細書では、第1セクション110はレーザセクション110と呼び、第2セクション120はミラーセクション120と呼ぶ。
【0088】
さらに、図2Cに示されるように、ステップ(b)では、活性層102の上面の近くに到達し、活性層102内へのエッチング深さを増加させるために、エッチングがスペーサ層104の所定の厚さを除去するようにさらに構成され得る。そのような増加したエッチング深さは、本明細書による方法により得られるDFBレーザのミラーセクションにおける結合強度を改善する。特に、本明細書に示されない実施形態によれば、エッチング深さを最大化するために、エッチングがミラーセクションのスペーサ層104の厚さ全体を除去するように構成される。
【0089】
ステップ(c)では、第1セクション110および第2セクション120の両方の上に格子マスク(図2A図2Cには表されない)が堆積される。それから、そのような格子マスク上に、例えば電子ビーム、ホログラフィまたは当業者から知られる他の技術による格子マスクの構造化によって、第1および第2ブラッグ格子(115、125)が同時に画成される。
【0090】
さらに、前記格子マスクを使用して第1セクションおよび第2セクションをそれぞれ部的にエッチングすることによって、このような第1および第2ブラッグ格子(115、125)が作られる。格子マスクは、エッチングの後に所定の距離だけ離された第1ブラッグ格子115および第2ブラッグ格子125を作るように構成される。例えば、約0ナノメートル~約10マイクロメートルの間に含まれる距離である。
【0091】
いくつかの実施形態によれば、第1ブラッグ格子115のエッチングと第2ブラッグ格子125のエッチングは単一のステップで行われ得る。他の実施形態によれば、第1ブラッグ格子115のエッチングと第2ブラッグ格子125のエッチングとは2つの異なるステップで行われ得る。
【0092】
第1ブラッグ格子115は、上部層105および格子層103を通してエッチングすることにより、第1セクション110に作られる。さらに、図2Cに示されるように、レーザセクション110において格子層103の全ての厚さがエッチングされていることを確実にし、レーザセクションのエッチング深さに対するレーザセクションの結合強度の感度を低減するために、スペーサ層104の所定の厚さもエッチングされることが可能である。
【0093】
第2ブラッグ格子125は、ステップ(b)のエッチングの後に残ったスペーサ層104を通して、および活性層102を通してエッチングすることにより、ミラーセクション120に作られる。さらに、図2Cに示される例とは異なり、ミラーセクション120において活性層102の全ての厚さがエッチングされていることを確実にし、可能な限り高い格子強度に達し、活性層102のエッチング深さに対するミラーセクション120の結合強度の感度を低減するために、平面基板101の一部もエッチングされ得る。
【0094】
ステップ(d)では、エッチングによって引き起こされたミラーセクション120の溝が、例えば上部層105に含まれる材料と同じ材料などのPドープ材料による、エピタキシャル再成長を用いて埋められる。さらに、このような再成長は、レーザセクション110およびミラーセクション120の上面を平坦化することを目的としている。この再成長は、例えば、200ナノメートル~500ナノメートルの、PドープInPなどのPドープ材料を、加えることを、含み得る。
【0095】
ステップ(e)では、光導波路を作るために最終エッチングが行われる。図2A図2Cに示される例では、導波路は埋め込み導波路である。導波路は、PドープまたはInPなどの半絶縁性材料にさらに埋め込まれることも可能である。
【0096】
あるいは、ステップ(d)は、例えば約2マイクロメートルまでの、または、約3マイクロメートルまでの、Pドープ材料のより厚い再成長を、含むことも可能である。
【0097】
例えば、ステップ(e)では、浅いリッジ導波路を作るために、厚いPドープ材料(すなわち層105、103、104)を通してのみ最終エッチングが行われることも可能である。
【0098】
別の例として、ステップ(e)では、深いリッジ導波路を作るために、Pドープ材料(すなわち層105、103、104)を通して、および、活性層102を通して、最終エッチングが行われることも可能である。
【0099】
ステップ(e)の後に、完成されたDFBレーザを得るために、当業者に知られる追加のステップが行われ得る。
【0100】
本明細書による方法では、第2ブラッグ格子125は主に活性層102を通してエッチングされ、そのためミラーセクション120の結合強度は従来技術のDFBのミラーセクションの結合強度を上回る。特に、本明細書による方法を用いて得られるDFBレーザは、結合強度が200cm-1を上回るミラーセクション120を備える。
【0101】
図3A図3Cは、活性層(102)に結合された透明導波路層(132)に作られる第2ブラッグ格子(125)を備えるDFBレーザを製造する方法のステップを表す。図3A図3Cは、DFBレーザの製造方法の異なるステップ(a’)~(f’)をそれぞれいくつかの断面図(A‐A’、B‐B’、CC’)で示す。断面図A‐A’は、レーザセクション110における層の積層を示す。断面図B‐B’は、ミラーセクション120における層の積層を示す。断面図C‐C’は、DFBレーザ内の光伝搬の方向に沿った、すなわちレーザセクション110およびミラーセクション120全体にわたる層の積層を示す。
【0102】
図3A図3Cに示されるように、ステップ(a’)は既に提示されたステップ(a)と同一である。特に、層101、102、103、104、105を含む集合体が提供される。そのような集合体は、Nドープ平面基板101と、光を放出するように構成された活性材料を含む活性層102と、Pドープスペーサ層104と、Pドープ格子層103と、Pドープ上部層105とを備える。
【0103】
ステップ(b’)で、層101、102、103、104、105の集合体の第1セクション110上にマスクが堆積され、層の集合体の残部が第2セクション120を画成する。第1実施形態と同様に、第2実施形態において、第1セクション110は、光が生成されるレーザセクションを形成することが意図され、第2セクション120は、第1セクション110によって生成された光を前記第1セクション110に向けて反射するように構成されたミラーセクションを形成することが意図される。
【0104】
マスクが堆積された後、第2セクション120から最上層105、格子層103、スペーサ層104および活性層102がエッチングされる。
【0105】
さらに、ステップ(b’)で、ミラーセクション120の活性層102における全ての厚さがエッチングされることを確実にするために、エッチングが平面基板101の所定の厚さをさらに除去するように構成され得る。これにより、後続のステップで、活性層102の残りの厚さから開始する再成長と比較して再成長を促進するバッファ層として働く平面基板101から、開始する再成長を、行うことも可能になる。
【0106】
ステップ(c’)で、補助導波路層132を含む各半導体層の集合体130が、レーザセクション110に結合されるようにミラーセクション120に集積される。特に、前記集合体130の補助導波路層132は、レーザセクション110の活性層102に結合される。
【0107】
図3A図3Cでは、ステップ(c’)は、バットカップリング技術に基づく集積を特に示すが、エバネッセントカップリング、選択領域成長、または、インターミキシングなど、他の技術が代替的に使用されることが可能である。当業者は、使用される集積技術に本方法のステップを適応させる方法を、知っているであろう。
【0108】
補助導波路層132は、レーザセクション110に結合されると、前記レーザセクション110によって放出された光を受け導くように構成される。
【0109】
図3A図3Cに示されるように、各半導体層の集合体130は、補助基板層131と補助上部層133とを含み得る。補助基板層131は、平面基板101と同じ材料を含み得る。補助上部層133は、スペーサ層104と同じ材料を含み得る。
【0110】
各半導体層の集合体130は、例えば、変調器、カプラ、または、マルチプレクサにおいて用いられる構造などの、フォトニック集積回路の素子において、用いられる構造を有するのが、有利である。
【0111】
図3A図3Cに示されない実施形態によれば、ステップ(c’)で、集合体130の上面は層102の上面よりはるかに高くてもよく、そのため補助上部層133の少なくとも一部を除去し、補助導波路層132の近くに到達するために、追加のエッチングステップが実施され得る。例えば、図2のステップ(b)と同様のエッチングステップが実施され得る。
【0112】
図3A図3Cに示される例のステップ(d’)、(e’)、(f’)は図2A~2Cに示される例のステップ(c)、(d)、(e)と同様であるが、図3A図3Cに示される例では、活性層102を通したエッチングの代わりに補助導波路層132を通したエッチングによって第2ブラッグ格子125が作られる点が、異なる。
【0113】
図3A図3Cに示される例では、DFBレーザが、カプラ、マルチプレクサ、または、変調器などのセクションを備える、フォトニック集積回路に属する場合には、ミラーセクション120における補助導波路層132の集積が、コストをかけずに行われ得るという利点がある。興味深いことに、そのような場合には、それらのセクションも集積技術を用いて作られ、そのためステップ(b’)および(c’)は既にフォトニック集積回路の製造プロセスの一部である。したがって、本明細書による方法は実施が特に簡単である。
【0114】
本発明が限られた数の実施形態に関して説明されているが、本開示の恩恵を受ける当業者は、本明細書に開示される本発明の精神から逸脱しない他の実施形態が考案され得ることを理解するであろう。したがって、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ制限されるべきである。
【参考文献】
【0115】
[参考文献1]DEBREGEAS, H., FERRARI, C., PAPAZIAN, A. R., et al. High-performance 100Gb/s DWDM transmitter through fully passive assembly of a single-chip array of directly modulated lasers with a SiO2 AWG. In : 2014 International Semiconductor Laser Conference. IEEE, 2014. p. 56-57
[参考文献2]SHIM, J.-I., KOMORI, K., ARAI, S., et al. Lasing characteristics of 1.5 mu m GaInAsP-InP SCH-BIG-DR lasers. IEEE journal of quantum electronics, 1991, vol. 27, no 6, p. 1736-1745)
図1
図2A-2C】
図3A-3C】
【国際調査報告】