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▶ バイオサイトジェン ファーマシューティカルズ (ベイジン) カンパニー リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】抗TNFR2抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/24 20060101AFI20241219BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241219BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241219BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20241219BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241219BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20241219BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20241219BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C07K16/24 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61P35/00
A61P35/02
A61K47/68
A61K39/395 E
A61K39/395 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538148
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 CN2022140958
(87)【国際公開番号】W WO2023116813
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/140487
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521213200
【氏名又は名称】バイオサイトジェン ファーマシューティカルズ (ベイジン) カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100227592
【弁理士】
【氏名又は名称】孔 詩麒
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ヨンフェイ
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ シューツェン
(72)【発明者】
【氏名】チャン チン
(72)【発明者】
【氏名】シャオ チョー
(72)【発明者】
【氏名】チアン シュエユアン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA05
4B065AA92X
4B065AB05
4B065AC14
4B065BA08
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C085AA13
4C085BB31
4C085CC22
4C085DD61
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA72
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
抗TNFR2(腫瘍壊死因子受容体2)抗体、抗原結合断片、及びこれらの使用を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TNFR2に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、
相補性決定領域(CDR)1、2、及び3を含む重鎖可変領域(VH)であって、前記VH CDR1領域は、選択されたVH CDR1アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、前記VH CDR2領域は、選択されたVH CDR2アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、前記VH CDR3領域は、選択されたVH CDR3アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、前記重鎖可変領域と、
CDR1、2、及び3を含む軽鎖可変領域(VL)であって、前記VL CDR1領域は、選択されたVL CDR1アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、前記VL CDR2領域は、選択されたVL CDR2アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、前記VL CDR3領域は、選択されたVL CDR3アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、前記軽鎖可変領域と、を含み、
前記選択されたVH CDR1、2、及び3アミノ酸配列、並びに、前記選択されたVL CDR1、2、及び3アミノ酸配列は、以下:
(1)前記選択されたVH CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号6、7、8に記載され、前記選択されたVL CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号9、10、11に記載され、
(2)前記選択されたVH CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号12、13、14に記載され、前記選択されたVL CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号15、16、17に記載され、
(3)前記選択されたVH CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号18、19、20に記載され、前記選択されたVL CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号21、22、23に記載され、
(4)前記選択されたVH CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号24、25、26に記載され、前記選択されたVL CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号27、28、29に記載され、
(5)前記選択されたVH CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号30、31、32に記載され、前記選択されたVL CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号33、34、35に記載され、
(6)前記選択されたVH CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号42、43、44に記載され、前記選択されたVL CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号45、46、47に記載され、
(7)前記選択されたVH CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号48、49、50に記載され、前記選択されたVL CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号51、52、53に記載され、
(8)前記選択されたVH CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号54、55、56に記載され、前記選択されたVL CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号57、58、59に記載され、
(9)前記選択されたVH CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号60、61、62に記載され、前記選択されたVL CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号63、64、65に記載され、又は
(10)前記選択されたVH CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号66、67、68に記載され、前記選択されたVL CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号69、70、71に記載される、
のうちの1つである、
抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
Kabatの付番に従い、前記VHは、それぞれ、配列番号6、7、及び8に記載されるアミノ酸配列を有するCDR1、2、3を含み、前記VLは、それぞれ、配列番号9、10、及び11に記載されるアミノ酸配列を有するCDR1、2、3を含む、
請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
Kabatの付番に従い、前記VHは、それぞれ、配列番号12、13、及び14に記載されるアミノ酸配列を有するCDR1、2、3を含み、前記VLは、それぞれ、配列番号15、16、及び17に記載されるアミノ酸配列を有するCDR1、2、3を含む、
請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
Kabatの付番に従い、前記VHは、それぞれ、配列番号18、19、及び20に記載されるアミノ酸配列を有するCDR1、2、3を含み、前記VLは、それぞれ、配列番号21、22、及び23に記載されるアミノ酸配列を有するCDR1、2、3を含む、
請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
Kabatの付番に従い、前記VHは、それぞれ、配列番号24、25、及び26に記載されるアミノ酸配列を有するCDR1、2、3を含み、前記VLは、それぞれ、配列番号27、28、及び29に記載されるアミノ酸配列を有するCDR1、2、3を含む、
請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
Kabatの付番に従い、前記VHは、それぞれ、配列番号30、31、及び32に記載されるアミノ酸配列を有するCDR1、2、3を含み、前記VLは、それぞれ、配列番号33、34、及び35に記載されるアミノ酸配列を有するCDR1、2、3を含む、
請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
前記抗体又は抗原結合断片は、ヒトTNFR2に特異的に結合する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項8】
前記抗体又は抗原結合断片は、ヒト抗体又はその抗原結合断片(例えば、ヒトIgG1抗体)である、
請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項9】
前記抗体又は抗原結合断片は、一本鎖可変断片(scFv)である、
請求項1~8のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項10】
ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸であって、
(1)それぞれ、配列番号6、7、及び8に記載されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)1、2、及び3を含む重鎖可変領域(VH)を含む、免疫グロブリン重鎖又はその断片であって、前記VHは、配列番号37に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)と対形成する際に、TNFR2に結合する、免疫グロブリン重鎖又はその断片、
(2)それぞれ、配列番号9、10、及び11に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含むVLを含む、免疫グロブリン軽鎖又はその断片であって、前記VLは、配列番号36に記載されるアミノ酸配列を含むVHと対形成する際に、TNFR2に結合する、免疫グロブリン軽鎖又はその断片、
(3)それぞれ、配列番号12、13、及び14に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含む重鎖可変領域(VH)を含む、免疫グロブリン重鎖又はその断片であって、前記VHは、配列番号39に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)と対形成する際に、TNFR2に結合する、免疫グロブリン重鎖又はその断片、
(4)それぞれ、配列番号15、16、及び17に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含むVLを含む、免疫グロブリン軽鎖又はその断片であって、前記VLは、配列番号38に記載されるアミノ酸配列を含むVHと対形成する際に、TNFR2に結合する、免疫グロブリン軽鎖又はその断片、
(5)それぞれ、配列番号18、19、及び20に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含む重鎖可変領域(VH)を含む、免疫グロブリン重鎖又はその断片であって、前記VHは、配列番号41に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)と対形成する際に、TNFR2に結合する、免疫グロブリン重鎖又はその断片、
(6)それぞれ、配列番号21、22、及び23に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含むVLを含む、免疫グロブリン軽鎖又はその断片であって、前記VLは、配列番号40に記載されるアミノ酸配列を含むVHと対形成する際に、TNFR2に結合する、免疫グロブリン軽鎖又はその断片、
(7)それぞれ、配列番号24、25、及び26に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含む重鎖可変領域(VH)を含む、免疫グロブリン重鎖又はその断片であって、前記VHは、配列番号73に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)と対形成する際に、TNFR2に結合する、免疫グロブリン重鎖又はその断片、
(8)それぞれ、配列番号27、28、及び29に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含むVLを含む、免疫グロブリン軽鎖又はその断片であって、前記VLは、配列番号72に記載されるアミノ酸配列を含むVHと対形成する際に、TNFR2に結合する、免疫グロブリン軽鎖又はその断片、
(9)それぞれ、配列番号30、31、及び32に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含む重鎖可変領域(VH)を含む、免疫グロブリン重鎖又はその断片であって、前記VHは、配列番号75に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)と対形成する際に、TNFR2に結合する、免疫グロブリン重鎖又はその断片、あるいは
(10)それぞれ、配列番号33、34、及び35に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含むVLを含む、免疫グロブリン軽鎖又はその断片であって、前記VLは、配列番号74に記載されるアミノ酸配列を含むVHと対形成する際に、TNFR2に結合する、免疫グロブリン軽鎖又はその断片、
を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸。
【請求項11】
前記核酸は、それぞれ、配列番号6、7、及び8に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含むVHを含む、免疫グロブリン重鎖又はその断片を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、
請求項10に記載の核酸。
【請求項12】
前記核酸は、それぞれ、配列番号9、10、及び11に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含むVLを含む、免疫グロブリン軽鎖又はその断片を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、
請求項10に記載の核酸。
【請求項13】
前記核酸は、それぞれ、配列番号12、13、及び14に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含むVHを含む、免疫グロブリン重鎖又はその断片を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、
請求項10に記載の核酸。
【請求項14】
前記核酸は、それぞれ、配列番号15、16、及び17に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含むVLを含む、免疫グロブリン軽鎖又はその断片を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、
請求項10に記載の核酸。
【請求項15】
前記核酸は、それぞれ、配列番号18、19、及び20に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含むVHを含む、免疫グロブリン重鎖又はその断片を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、
請求項10に記載の核酸。
【請求項16】
前記核酸は、それぞれ、配列番号21、22、及び23に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含むVLを含む、免疫グロブリン軽鎖又はその断片を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、
請求項10に記載の核酸。
【請求項17】
前記核酸は、それぞれ、配列番号24、25、及び26に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含むVHを含む、免疫グロブリン重鎖又はその断片を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、
請求項10に記載の核酸。
【請求項18】
前記核酸は、それぞれ、配列番号27、28、及び29に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含むVLを含む、免疫グロブリン軽鎖又はその断片を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、
請求項10に記載の核酸。
【請求項19】
前記核酸は、それぞれ、配列番号30、31、及び32に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含むVHを含む、免疫グロブリン重鎖又はその断片を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、
請求項10に記載の核酸。
【請求項20】
前記核酸は、それぞれ、配列番号33、34、及び35に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含むVLを含む、免疫グロブリン軽鎖又はその断片を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、
請求項10に記載の核酸。
【請求項21】
前記VHは、VLと対形成する際に、ヒトTNFR2に特異的に結合するか、又は、前記VLは、VHと対形成する際に、ヒトTNFR2に特異的に結合する、
請求項10~20のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項22】
前記免疫グロブリン重鎖又はその断片は、ヒト免疫グロブリン重鎖又はその断片であり、前記免疫グロブリン軽鎖又はその断片は、ヒト免疫グロブリン軽鎖又はその断片である、
請求項10~21のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項23】
前記核酸は、一本鎖可変断片(scFv)をコードする、
請求項10~22のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項24】
前記核酸はcDNAである、
請求項10~23のいずれか1項に記載の核酸。
【請求項25】
請求項10~24のいずれか1項に記載の核酸の1つ以上を含む、
ベクター。
【請求項26】
請求項10~24のいずれか1項に記載の核酸の2つを含むベクターであって、前記ベクターは、共にTNFR2に結合する前記VH領域及び前記VL領域をコードする、
ベクター。
【請求項27】
一対のベクターであって、各ベクターは、請求項10~24のいずれか1項に記載の核酸の1つを含み、前記一対のベクターと共に、共にTNFR2に結合する前記VH領域及び前記VL領域をコードする、
一対のベクター。
【請求項28】
請求項25若しくは26に記載のベクター、又は請求項27に記載の一対のベクター、を含む、
細胞。
【請求項29】
前記細胞はCHO細胞である、
請求項28に記載の細胞。
【請求項30】
請求項10~24のいずれか1項に記載の核酸の1つ以上を含む、
細胞。
【請求項31】
請求項10~24のいずれか1項に記載の核酸の2つを含む、
細胞。
【請求項32】
前記2つの核酸は共に、共にTNFR2に結合する前記VH領域及び前記VL領域をコードする、
請求項31に記載の細胞。
【請求項33】
抗体又はその抗原結合断片の産生方法であって、
(a) 請求項28~32のいずれか1項に記載の細胞を、前記細胞に対して、前記抗体又は前記抗原結合断片を産生するのに十分な条件下で培養することと、
(b) 前記細胞により産生される前記抗体又は前記抗原結合断片を収集することと、
(c) を含む、方法。
【請求項34】
TNFR2に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、
選択された重鎖可変領域(VH)配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むVHと、選択された軽鎖可変領域(VL)配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むVLと、を含み、前記選択されたVH配列、及び前記選択されたVL配列は、以下:
(1)前記選択されたVH配列は配列番号36であり、前記選択されたVL配列は配列番号37であり、
(2)前記選択されたVH配列は配列番号38であり、前記選択されたVL配列は配列番号39であり、
(3)前記選択されたVH配列は配列番号40であり、前記選択されたVL配列は配列番号41であり、
(4)前記選択されたVH配列は配列番号72であり、前記選択されたVL配列は配列番号73であり、又は
(5)前記選択されたVH配列は配列番号74であり、前記選択されたVL配列は配列番号75である、
のうちの1つである、
前記抗体又はその抗原結合断片。
【請求項35】
前記VHは配列番号36の配列を含み、前記VLは配列番号37の配列を含む、
請求項34に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項36】
前記VHは配列番号72の配列を含み、前記VLは配列番号73の配列を含む、
請求項34に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項37】
前記VHは配列番号38の配列を含み、前記VLは配列番号39の配列を含む、
請求項34に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項38】
前記VHは配列番号40の配列を含み、前記VLは配列番号41の配列を含む、
請求項34に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項39】
前記VHは配列番号74の配列を含み、前記VLは配列番号75の配列を含む、
請求項34に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項40】
前記抗体又は抗原結合断片は、ヒトTNFR2に特異的に結合する、
請求項34~39のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項41】
前記抗体又は抗原結合断片は、ヒト抗体又はその抗原結合断片である、
請求項34~40のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項42】
前記抗体又は抗原結合断片は、一本鎖可変断片(scFv)である、
請求項34~41のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項43】
請求項1~9、及び34~42のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片と交差競合する、
抗体又はその抗原結合断片。
【請求項44】
TNFR2に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、
選択された重鎖可変領域(VH)配列のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3と同一のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含むVH、並びに
選択された軽鎖可変領域(VL)配列のVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3と同一のVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含むVLを含み、前記選択されたVH配列、及び前記選択されたVL配列は、以下:
(1)前記選択されたVH配列は配列番号36であり、前記選択されたVL配列は配列番号37であり、
(2)前記選択されたVH配列は配列番号38であり、前記選択されたVL配列は配列番号39であり、
(3)前記選択されたVH配列は配列番号40であり、前記選択されたVL配列は配列番号41であり、
(4)前記選択されたVH配列は配列番号72であり、前記選択されたVL配列は配列番号73であり、又は
(5)前記選択されたVH配列は配列番号74であり、前記選択されたVL配列は配列番号75である、
のうちの1つである、
前記抗体又はその抗原結合断片。
【請求項45】
治療剤に共有結合した、請求項1~9、及び34~44のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片を含む、
抗体薬物コンジュゲート。
【請求項46】
前記治療剤は、細胞毒性剤又は細胞増殖抑制剤である、
請求項45に記載の抗体薬物コンジュゲート。
【請求項47】
癌を有する対象の治療方法であって、前記方法は、治療に有効な量の、請求項1~9、及び34~44のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片、又は、請求項45若しくは46に記載の抗体薬物コンジュゲートを含む組成物を、前記対象に投与することを含む、
方法。
【請求項48】
前記対象は、結腸直腸癌、卵巣癌、急性骨髄性白血病、ルイス肺癌、乳癌、肝細胞癌、神経系癌、神経膠腫、及び大腸癌を有する、
請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記対象は、腎細胞癌、多発性骨髄腫、大腸癌、卵巣癌、神経膠腫、又は皮膚T細胞リンパ腫を患う、
請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記癌は大腸癌、神経膠腫、又は卵巣癌である、
請求項47に記載の方法。
【請求項51】
腫瘍増殖速度を低減する方法であって、
腫瘍細胞を、有効量の、請求項1~9、及び34~44のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片、又は、請求項45若しくは46に記載の抗体薬物コンジュゲートを含む組成物と接触させることを含む、
方法。
【請求項52】
腫瘍細胞の殺傷方法であって、
腫瘍細胞を、有効量の、請求項1~9、及び34~44のいずれか1項に記載の前記抗体又はその抗原結合断片、又は、請求項45若しくは46に記載の抗体薬物コンジュゲートを含む組成物と接触させることを含む、
方法。
【請求項53】
請求項1~9、及び34~44のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合断片と、薬学的に許容される担体と、を含む、
医薬組成物。
【請求項54】
請求項45又は46に記載の抗体薬物コンジュゲートと、薬学的に許容される担体と、を含む、
医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2021年12月22日に出願された国際出願番号第PCT/CN2021/140487号の利益を主張する。上述の内容全体が参照により、本明細書に組み込まれている。
【0002】
(技術分野)
本開示は、抗TNFR2(腫瘍壊死因子受容体2)抗体、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
癌は現在、人間の死亡率が最も高い疾患の一つである。世界保健機関の統計データによると、2012年には、世界での癌の発病率、及び死亡症例の数は、それぞれ1400万件、及び820万件に達した。中国では、新しく診断された癌症例は307万件であり、死亡者数は220万人である。
【0004】
最近の、抗癌抗体の臨床的及び商業的成功によって、抗体ベース療法に多大な関心が寄せられている。癌、又は自己免疫疾患を治療するための、様々な抗体ベース治療法で用いるための抗体の開発が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、抗TNFR2抗体、その抗原結合断片、及びその使用に関する。
【0006】
一態様では、本開示は、相補性決定領域(CDR)1、2、及び3を含む重鎖可変領域(VH)であって、上記VH CDR1領域は、選択されたVH CDR1アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、上記VH CDR2領域は、選択されたVH CDR2アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、上記VH CDR3領域は、選択されたVH CDR3アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域と、CDR1、2、及び3を含む軽鎖可変領域(VL)であって、上記VL CDR1領域は、選択されたVL CDR1アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、上記VL CDR2領域は、選択されたVL CDR2アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、上記VL CDR3領域は、選択されたVL CDR3アミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域と、を含み、上記選択されたVH CDR1、2、及び3アミノ酸配列、並びに上記選択されたVL CDR1、2、及び3アミノ酸配列は、以下:
(1)上記選択されたVH CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号6、7、8に記載され、上記選択されたVL CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号9、10、11に記載され、
(2)上記選択されたVH CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号12、13、14に記載され、上記選択されたVL CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号15、16、17に記載され、
(3)上記選択されたVH CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号18、19、20に記載され、上記選択されたVL CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号21、22、23に記載され、
(4)上記選択されたVH CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号24、25、26に記載され、上記選択されたVL CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号27、28、29に記載され、
(5)上記選択されたVH CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号30、31、32に記載され、上記選択されたVL CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号33、34、35に記載され、
(6)上記選択されたVH CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号42、43、44に記載され、上記選択されたVL CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号45、46、47に記載され、
(7)上記選択されたVH CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号48、49、50に記載され、上記選択されたVL CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号51、52、53に記載され、
(8)上記選択されたVH CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号54、55、56に記載され、上記選択されたVL CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号57、58、59に記載され、
(9)上記選択されたVH CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号60、61、62に記載され、上記選択されたVL CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号63、64、65に記載され、又は、
(10)上記選択されたVH CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号66、67、68に記載され、上記選択されたVL CDR1、2、3アミノ酸配列はそれぞれ、配列番号69、70、71に記載される、
のうちの1つである、
TNFR2に結合する抗体又はその抗原結合断片に関する。
【0007】
いくつかの実施形態において、Kabatの付番に従い、VHは、それぞれ、配列番号6、7、及び8に記載されるアミノ酸配列を有するCDR1、2、3を含み、及びVLは、それぞれ、配列番号9、10、及び11に記載されるアミノ酸配列を有するCDR1、2、3を含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、Kabatの付番に従い、VHは、それぞれ、配列番号12、13、及び14に記載されるアミノ酸配列を有するCDR1、2、3を含み、及びVLは、それぞれ、配列番号15、16、及び17に記載されるアミノ酸配列を有するCDR1、2、3を含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、Kabatの付番に従い、VHは、それぞれ、配列番号18、19、及び20に記載されるアミノ酸配列を有するCDR1、2、3を含み、及びVLは、それぞれ、配列番号21、22、及び23に記載されるアミノ酸配列を有するCDR1、2、3を含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、Kabatの付番に従い、VHは、それぞれ、配列番号24、25、及び26に記載されるアミノ酸配列を有するCDR1、2、3を含み、及びVLは、それぞれ、配列番号27、28、及び29に記載されるアミノ酸配列を有するCDR1、2、3を含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、Kabatの付番に従い、VHは、それぞれ、配列番号30、31、及び32に記載されるアミノ酸配列を有するCDR1、2、3を含み、及びVLは、それぞれ、配列番号33、34、及び35に記載されるアミノ酸配列を有するCDR1、2、3を含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、ヒトTNFR2に特異的に結合する。
【0013】
いくつかの実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、ヒト抗体又はその抗原結合断片(例えば、ヒトIgG1抗体)である。
【0014】
いくつかの実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、一本鎖可変断片(scFv)である。
【0015】
一態様では、本開示は、
(1)それぞれ、配列番号6、7、及び8に記載されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)1、2、及び3を含む重鎖可変領域(VH)を含む、免疫グロブリン重鎖又はその断片であって、上記VHは、配列番号37に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)と対形成する際に、TNFR2に結合する、免疫グロブリン重鎖又はその断片、
(2)それぞれ、配列番号9、10、及び11に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含むVLを含む、免疫グロブリン軽鎖又はその断片であって、上記VLは、配列番号36に記載されるアミノ酸配列を含むVHと対形成する際に、TNFR2に結合する、免疫グロブリン軽鎖又はその断片、
(3)それぞれ、配列番号12、13、及び14に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含む重鎖可変領域(VH)を含む、免疫グロブリン重鎖又はその断片であって、上記VHは、配列番号39に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)と対形成する際に、TNFR2に結合する、免疫グロブリン重鎖又はその断片、
(4)それぞれ、配列番号15、16、及び17に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含むVLを含む、免疫グロブリン軽鎖又はその断片であって、上記VLは、配列番号38に記載されるアミノ酸配列を含むVHと対形成する際に、TNFR2に結合する、免疫グロブリン軽鎖又はその断片、
(5)それぞれ、配列番号18、19、及び20に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含む重鎖可変領域(VH)を含む、免疫グロブリン重鎖又はその断片であって、上記VHは、配列番号41に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)と対形成する際に、TNFR2に結合する、免疫グロブリン重鎖又はその断片、
(6)それぞれ、配列番号21、22、及び23に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含むVLを含む、免疫グロブリン軽鎖又はその断片であって、上記VLは、配列番号40に記載されるアミノ酸配列を含むVHと対形成する際に、TNFR2に結合する、免疫グロブリン軽鎖又はその断片、
(7)それぞれ、配列番号24、25、及び26に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含む重鎖可変領域(VH)を含む、免疫グロブリン重鎖又はその断片であって、上記VHは、配列番号73に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)と対形成する際に、TNFR2に結合する、免疫グロブリン重鎖又はその断片、
(8)それぞれ、配列番号27、28、及び29に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含むVLを含む、免疫グロブリン軽鎖又はその断片であって、上記VLは、配列番号72に記載されるアミノ酸配列を含むVHと対形成する際に、TNFR2に結合する、免疫グロブリン軽鎖又はその断片、
(9)それぞれ、配列番号30、31、及び32に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含む重鎖可変領域(VH)を含む、免疫グロブリン重鎖又はその断片であって、上記VHは、配列番号75に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)と対形成する際に、TNFR2に結合する、免疫グロブリン重鎖又はその断片、あるいは、
(10)それぞれ、配列番号33、34、及び35に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含むVLを含む、免疫グロブリン軽鎖又はその断片であって、上記VLは、配列番号74に記載されるアミノ酸配列を含むVHと対形成する際に、TNFR2に結合する、免疫グロブリン軽鎖又はその断片、
を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸に関する。
いくつかの実施形態において、核酸は、それぞれ、配列番号6、7、及び8に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含むVHを含む、免疫グロブリン重鎖又はその断片を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、核酸は、それぞれ、配列番号9、10、及び11に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含むVLを含む、免疫グロブリン軽鎖又はその断片を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、核酸は、それぞれ、配列番号12、13、及び14に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含むVHを含む、免疫グロブリン重鎖又はその断片を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、核酸は、それぞれ、配列番号15、16、及び17に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含むVLを含む、免疫グロブリン軽鎖又はその断片を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、核酸は、それぞれ、配列番号18、19、及び20に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含むVHを含む、免疫グロブリン重鎖又はその断片を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、核酸は、それぞれ、配列番号21、22、及び23に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含むVLを含む、免疫グロブリン軽鎖又はその断片を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、核酸は、それぞれ、配列番号24、25、及び26に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含むVHを含む、免疫グロブリン重鎖又はその断片を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、核酸は、それぞれ、配列番号27、28、及び29に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含むVLを含む、免疫グロブリン軽鎖又はその断片を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、核酸は、それぞれ、配列番号30、31、及び32に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含むVHを含む、免疫グロブリン重鎖又はその断片を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、核酸は、それぞれ、配列番号33、34、及び35に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、2、及び3を含むVLを含む、免疫グロブリン軽鎖又はその断片を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、VHは、VLと対形成する際に、ヒトTNFR2に特異的に結合するか、又は、VLは、VHと対形成する際に、ヒトTNFR2に特異的に結合する。
【0026】
いくつかの実施形態において、免疫グロブリン重鎖又はその断片は、ヒト免疫グロブリン重鎖又はその断片であり、及び免疫グロブリン軽鎖又はその断片は、ヒト免疫グロブリン軽鎖又はその断片である。
【0027】
いくつかの実施形態において、核酸は、一本鎖可変断片(scFv)をコードする。
【0028】
いくつかの実施形態において、核酸はcDNAである。
【0029】
一態様では、本開示は、本明細書に記載する核酸の1つ以上を含むベクターに関する。
【0030】
一態様では、本開示は、本明細書に記載する核酸のうちの2つを含むベクターに関し、ベクターは、共にTNFR2に結合するVH領域及びVL領域をコードする。
【0031】
一態様では、本開示は、一対のベクターに関し、各ベクターは、本明細書に記載する核酸のうちの1つを含み、一対のベクターと共に、共にTNFR2に結合するVH領域及びVL領域をコードする。
【0032】
一態様では、本開示は、本明細書に記載するベクター、又は、本明細書に記載する一対のベクターを含む、細胞に関する。いくつかの実施形態において、細胞はCHO細胞である。
【0033】
一態様では、本開示は、本明細書に記載する核酸の1つ以上を含む細胞に関する。
【0034】
一態様では、本開示は、本明細書に記載される核酸のうちの2つを含む細胞に関する。いくつかの実施形態において、2つの核酸は共に、共にTNFR2に結合するVH領域及びVL領域をコードする。
【0035】
一態様では、本開示は、抗体又はその抗原結合断片の産生方法であって、(a)本明細書に記載する細胞を、当該細胞が、抗体又は抗原結合断片を産生するのに十分な条件下で培養することと、(b)上記細胞により産生される抗体又は抗原結合断片を収集することと、を含む、上記方法に関する。
【0036】
一態様では、本開示は、選択された重鎖可変領域(VH)配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むVHと、選択された軽鎖可変領域(VL)配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含むVLと、を含み、上記選択されたVH配列、及び上記選択されたVL配列は、以下:
(1)上記選択されたVH配列は配列番号36であり、上記選択されたVL配列は配列番号37であり、
(2)上記選択されたVH配列は配列番号38であり、上記選択されたVL配列は配列番号39であり、
(3)上記選択されたVH配列は配列番号40であり、上記選択されたVL配列は配列番号41であり、
(4)上記選択されたVH配列は配列番号72であり、上記選択されたVL配列は配列番号73であり、又は、
(5)上記選択されたVH配列は配列番号74であり、上記選択されたVL配列は配列番号75である、
のうちの1つである、TNFR2に結合する抗体又はその抗原結合断片に関する。
【0037】
いくつかの実施形態において、VHは配列番号36の配列を含み、VLは配列番号37の配列を含む。
【0038】
いくつかの実施形態において、VHは配列番号72の配列を含み、VLは配列番号73の配列を含む。
【0039】
いくつかの実施形態において、VHは配列番号38の配列を含み、VLは配列番号39の配列を含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、VHは配列番号40の配列を含み、VLは配列番号41の配列を含む。
【0041】
いくつかの実施形態において、VHは配列番号74の配列を含み、VLは配列番号75の配列を含む。
【0042】
いくつかの実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、ヒトTNFR2に特異的に結合する。
【0043】
いくつかの実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、ヒト抗体又はその抗原結合断片である。
【0044】
いくつかの実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、一本鎖可変断片(scFv)である。
【0045】
一態様では、本開示は、本明細書に記載する抗体又はその抗原結合断片と交差競合する、抗体又はその抗原結合断片に関する。
【0046】
一態様では、本開示は、選択されたVH配列のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3と同一のVH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに、選択されたVL配列のVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3と同一のVL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、TNFR2に結合する抗体又はその抗原結合断片に関し、上記選択されたVH配列、及び上記選択されたVL配列は、以下:
(1)上記選択されたVH配列は配列番号36であり、上記選択されたVL配列は配列番号37であり、
(2)上記選択されたVH配列は配列番号38であり、上記選択されたVL配列は配列番号39であり、
(3)上記選択されたVH配列は配列番号40であり、上記選択されたVL配列は配列番号41であり、
(4)上記選択されたVH配列は配列番号72であり、上記選択されたVL配列は配列番号73であり、又は、
(5)上記選択されたVH配列は配列番号74であり、上記選択されたVL配列は配列番号75である、
のうちの1つである。
【0047】
一態様では、本開示は、治療剤に共有結合した、本明細書に記載する抗体又はその抗原結合断片を含む抗体薬物コンジュゲートに関する。いくつかの実施形態において、治療剤は、細胞毒性剤又は細胞増殖抑制剤である。
【0048】
一態様では、本開示は、癌を有する対象の治療方法であって、上記方法は、治療に有効な量の、本明細書に記載する抗体若しくはその抗原結合断片を含む組成物、又は、本明細書に記載する抗体薬物コンジュゲートを投与することを含む、上記方法に関する。
【0049】
いくつかの実施形態において、対象は、結腸直腸癌、卵巣癌、急性骨髄性白血病、ルイス肺癌、乳癌、肝細胞癌及び大腸癌、神経膠腫を患う。いくつかの実施形態において、対象は、腎細胞癌、多発性骨髄腫、大腸癌、卵巣癌、神経膠腫、又は皮膚T細胞リンパ腫を患う。いくつかの実施形態において、癌は、大腸癌、神経膠腫、又は卵巣癌である。
【0050】
一態様では、本開示は、腫瘍増殖速度を低減する方法であって、上記方法は、腫瘍細胞を、有効量の、本明細書に記載する抗体若しくはその抗原結合断片を含む組成物、又は、本明細書に記載する抗体薬物コンジュゲートと接触させることを含む、上記方法に関する。
【0051】
一態様では、本開示は、腫瘍細胞の殺傷方法であって、上記方法は、腫瘍細胞を、有効量の、本明細書に記載する抗体若しくはその抗原結合断片を含む組成物、又は、本明細書に記載する抗体薬物コンジュゲートと接触させることを含む、上記方法に関する。
【0052】
一態様では、本開示は、本明細書に記載する抗体又はその抗原結合断片と、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物に関する。
【0053】
一態様では、本開示は、本明細書に記載する抗体薬物コンジュゲートと、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物に関する。
【0054】
本明細書で使用する場合、「癌」という用語は、自律増殖能を有する細胞を意味する。このような細胞の例としては、細胞増殖の急速な増殖を特徴とする、異常な状態又は条件を有する細胞が挙げられる。この用語は、組織変化の種類又は侵襲性のステージに関係なく、癌性増殖、例えば、腫瘍、発癌性プロセス、転移性組織、及び悪性形質転換細胞、組織、又は器官を含むことを意味する。様々な器官系、例えば、頭頸、呼吸器、心臓血管、腎、生殖、血液、神経系、肝、胃腸、及び内分泌系の悪性腫瘍、加えて、大部分の大腸癌、腎細胞癌、前立腺癌及び/又は精巣腫瘍、肺の非小細胞癌、小腸癌、神経膠腫、及び小腸癌もまた、含まれる。「自然に発生する」癌としては、対象に癌細胞を移植することによって実験的に誘発されない任意の癌が挙げられ、例えば、自然に生じる癌、患者を発癌性物質に曝露することで引き起こされる癌、トランスジェニック癌遺伝子の挿入、又は癌抑制遺伝子のノックアウトにより生じる癌、及び感染症、例えば、ウイルス感染症により引き起こされる癌が挙げられる。「癌腫」という用語は、当該技術分野で認識されており、上皮又は内分泌腺組織の悪性腫瘍を意味する。この用語は、癌性及び肉腫性組織で構成される悪性腫瘍を含む癌肉腫もまた含む。「腺癌」とは、腺組織に由来する癌腫、又は、腫瘍細胞が認識可能な腺構造を形成する癌腫を意味する。「肉腫」という用語は当該技術分野において認知されており、間葉由来の悪性腫瘍を意味する。「造血性腫瘍性疾患」という用語は、造血性由来の過形成/新生細胞を伴う疾患を含む。造血腫瘍性疾患は、骨髄、リンパ系、若しくは赤血球リネージ、又はこれらの前駆細胞から生じる可能性がある。血液癌は、骨髄などの血液形成組織、又は、免疫系の細胞にて開始する癌である。血液癌の例としては、例えば、白血病、リンパ腫、及び多発性骨髄腫などが挙げられる。
【0055】
本明細書で使用する場合、「抗体」という用語は、少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、又は6つ)の相補性決定領域(CDR)(例えば、免疫グロブリン軽鎖由来の3つのCDRのいずれか、又は、免疫グロブリン重鎖由来の3つのCDRのいずれか)を含有し、エピトープに特異的に結合可能な、任意の抗原結合分子を意味する。抗体の非限定例としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異的抗体(二重特異的抗体)、一本鎖抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、及びヒト化抗体が挙げられる。いくつかの実施形態において、抗体は、ヒト抗体のFc領域を含有することができる。抗体という用語は、誘導体、例えば、抗体断片から形成される、二重特異的抗体、一本鎖抗体、ダイアボディ、線状抗体、及び多重特異的抗体もまた含む。
【0056】
本明細書で使用する場合、「抗原結合断片」という用語は、全長抗体の一部を意味し、抗体の当該部分は、抗原に特異的に結合可能である。いくつかの実施形態において、抗原結合断片は、少なくとも1つの可変ドメイン(例えば、重鎖の可変ドメイン、又は、軽鎖の可変ドメイン)を含有する。抗体断片の非限定例としては、例えば、Fab、Fab’、F(ab)、及びFv断片が挙げられる。
【0057】
本明細書で使用する場合、「ヒト抗体」という用語は、ヒトに由来する内因性核酸(例えば、再配置されたヒト免疫グロブリン重鎖又は軽鎖座位)によりコードされる抗体を意味する。いくつかの実施形態において、ヒト抗体は、ヒトから回収されるか、又は、ヒト細胞培養液中(例えば、ヒトハイブリドーマ細胞内)で産生される。いくつかの実施形態において、ヒト抗体は、非ヒト細胞(例えば、マウス又はハムスター細胞株)内で産生される。いくつかの実施形態において、ヒト抗体は、細菌細胞又は酵母菌細胞内で産生される。いくつかの実施形態において、ヒト抗体は、再配列されていない、又は、再配列されたヒト免疫グロブリン座位(例えば、重鎖又は軽鎖ヒト免疫グロブリン座位)を含有するトランスジェニック非ヒト動物(例えば、ウシ)で産生される。
【0058】
本明細書で使用する場合、「キメラ抗体」という用語は、少なくとも2つの異なる種に存在する配列を含有する抗体(例えば、ヒト及びマウス抗体など、2つの異なる哺乳動物種由来の抗体)を意味する。キメラ抗体の非限定例は、非ヒト(例えば、マウス)抗体の、可変ドメイン配列(例えば、軽鎖及び/又は重鎖可変ドメイン配列の全て又は一部)、並びに、ヒト抗体の定常ドメインを含有する抗体である。キメラ抗体の更なる例は、本明細書に記載され、当該技術分野において周知である。
【0059】
本明細書で使用する場合、「ヒト化抗体」という用語は、非ヒト(例えば、マウス)免疫グロブリンに由来する最小配列を含有し、かつ、ヒト免疫グロブリンに由来する配列を含有する、非ヒト抗体を意味する。非限定例では、ヒト化抗体は、レシピエント抗体の超可変(例えば、CDR)領域の残基が、非ヒト抗体(例えば、ドナー抗体)、例えば、所望の特異性、親和性、及び能力を有する、マウス、ラット、又はウサギ抗体の超可変(例えば、CDR)領域の残基により置き換えられている、ヒト抗体(レシピエント抗体)である。いくつかの実施形態において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト(例えば、マウス)免疫グロブリン残基により置き換えられている。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体は、レシピエント抗体、又はドナー抗体にて発見されない残基を含有することができる。これらの修飾を行うことによって、抗体の性能を更に洗練することができる。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体は、ほぼ全ての少なくとも1つ、及び、典型的には2つの可変ドメインを含有し、超可変ループ(CDR)の全て又は実質的に全てが、非ヒト(例えば、マウス)免疫グロブリンの超可変ループに対応し、フレームワーク領域の全て又は実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的には、ヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部分もまた含有することができる。ヒト化抗体は、当該技術分野において周知の分子生物学法を用いて産生することができる。ヒト化抗体を生成する方法の非限定例は、本明細書に記載される。
【0060】
本明細書で使用する場合、「一本鎖抗体」という用語は、抗原に特異的に結合可能な、少なくとも2つの免疫グロブリン可変ドメイン(例えば、哺乳動物免疫グロブリン重鎖又は軽鎖の可変ドメイン)を含有する、単一のポリペプチドを意味する。一本鎖抗体の非限定例は、本明細書に記載される。
【0061】
本明細書で使用する場合、「多量体抗体」という用語は、4つ以上(例えば、6つ、8つ、又は10個)の免疫グロブリン可変ドメインを含有する抗体を意味する。
【0062】
本明細書で使用する場合、「対象」及び「患者」という用語は、明細書を通して同じ意味で用いられ、本発明の方法に従った治療が提供される動物、ヒト、又は非ヒトを表す。獣医学的及び非獣医学的用途が、本開示では想到される。ヒト患者は、成人のヒト又は若年のヒト(例えば、18歳未満のヒト)であることができる。ヒトに加えて、患者としては、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、フェレット、ネコ、イヌ、及び霊長類が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、非ヒト霊長類(例えば、サル、チンパンジー、ゴリラなど)、齧歯類(例えば、ラット、マウス、スナネズミ、ハムスター、フェレット、ウサギ)、ウサギ科動物、ブタ科動物(例えば、ブタ、ミニブタ)、ウマ科動物、イヌ科動物、ネコ科動物、ウシ科動物、並びに、他の家庭用、家畜用、及び動物園用動物が挙げられる。
【0063】
本明細書で使用する場合、抗体を言及する際に、「特異的に結合する(specifically binding)」、及び「特異的に結合する(specifically binds)」という語句は、相互作用が、標的分子に特定の構造(即ち、抗原決定基又はエピトープ)が存在することに依存するために、換言すれば、試薬が、一般的に、全分子よりも、特定の構造を含む分子を認識し、これに結合するために、抗体が、好ましくは他の分子よりも、その標的分子(例えば、TNFR2)と相互作用することを意味する。標的分子に特異的に結合する抗体は、標的特異的抗体と呼ばれることも可能である。例えば、TNFR2分子に特異的に結合する抗体は、TNFR2特異的抗体、又は、抗TNFR2抗体と呼ばれることも可能である。
【0064】
本明細書で使用する場合、「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、同じ意味で用いられ、少なくとも2つのアミノ酸の、任意の長さのアミノ酸のポリマーを意味する。
【0065】
本明細書で使用する場合、「ポリヌクレオチド」、「核酸分子」、及び「核酸配列」という用語は、本明細書では同じ意味で用いられ、少なくとも2つのヌクレオチドの、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを意味し、限定されるものではないが、DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド、及びこれらの修飾物が挙げられる。
【0066】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本発明で使用するための方法及び材料が、本明細書に記載される;他の好適な、当該技術分野において既知の方法及び材料もまた使用することができる。材料、方法、及び例は、例示に過ぎず、限定的であることは意図されない。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリ、及び他の参考文献は、参照によりその全体が援用される。矛盾する場合には、定義を含めて本明細書が優先する。
【0067】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1】MC38癌細胞を注射し、対照としてのPBS(リン酸塩緩衝生理食塩水)(G1)、抗hTNFR2抗体BC-1F4-IgG1(G2)、BC-3B7-IgG1(G3)、BC-1F10-IgG(G4)、14-1B3-hHvKv-IgG1(G5)、BC-1A8-IgG1(G6)、BC-1C3-IgG1(G7)、14-4A9-hHvKv-IgG1(G8)、及び抗mPD-1(G9)で治療したマウスにおける、経時的な腫瘍サイズを示すグラフである。
図2】MC38癌細胞を注射し、対照としてのPBS(G1)、抗体BC-1A8-IgG1(G2)、BC-1F10-IgG1(G3)、BC-1F4-IgG1(G4)、抗mPD-1(G5)、抗mCTLA4(G6)で治療したマウスにおける、経時的な腫瘍サイズを示すグラフである。
図3】MC38癌細胞を注射し、対照としてのPBS(G1)、抗体BC-1C3-lgG1(G2)、抗mPD-1(G3)、抗mCTLA4(G4)で治療したマウスにおける、経時的な腫瘍サイズを示すグラフである。
図4】MC38癌細胞を注射し、対照としてのPBS(G1)、抗体BC-1A8-IgG1(G2)、BC-1C3-lgG1(G3)、BC-1F10-lgG1(G4)、BC-1F4-lgG1(G5)、BC-1B6-lgG1(G6)で治療したマウスにおける、経時的な腫瘍サイズを示すグラフである。
図5】MC38癌細胞を注射し、対照としてのPBS(G1)、BC-1A8-IgG1(G2)、BC-1C3-IgG1(G3)、BC-1F10-IgG1(G4)、BC-1F4-IgG1(G5)、BC-1B6-IgG1(G6)で治療したマウスにおける、経時的な腫瘍サイズを示すグラフである。
図6】MC38癌細胞を注射し、対照としてのPBS(G1)、BC-1C3-lgG1(G2)、抗mPD-1(G3)で治療したhTNFα/hTNFR2マウスにおける、経時的な腫瘍サイズを示すグラフである。
図7A-7B】群を割り当てた5日後(D5)での、マウスの末梢血中での、血液生化学指標(AST、ALT)の試験結果を示す。
図8】抗hTNFR2抗体間での、エピトープ相関を示す。
図9】BC-1C3-IgG1、BC-1C3-IgG1-SI、BC-1C3-IgG1-LALA、及びヒトIgG1に対する細胞毒性データを示す。
図10】異なる抗体薬剤を注射した後の、ヒト化TNFR2マウスの血清中における抗体薬剤の濃度変化を示す薬剤の濃度-時間曲線である。
図11A】レポーター細胞(Jurkat-GFP-TNFR2細胞)の活性化を示す蛍光シグナルを示す。
図11B】レポーター細胞(Jurkat-GFP-TNFR2細胞)の活性化を示す蛍光シグナルを示す。TNFαは表示していない。
図12】レポーター細胞(Jurkat-GFP-TNFR2細胞)の活性化を示す蛍光シグナルを示す。
図13A-13B】マウスの末梢血中での、血液生化学指標(AST、ALT)の試験結果を示す。
図14】Kabatの付番スキームにより定義される、抗TNFR2抗体BC-1A8(「1A8」)、BC-1B6(「1B6」)、BC-1C3(「1C3」)、BC-1F4(「1F4」)、BC-1F10(「1F10」)のCDR配列を列挙する。
図15】Chothiaの付番スキームにより定義される、抗TNFR2抗体BC-1A8(「1A8」)、BC-1B6(「1B6」)、BC-1C3(「1C3」)、BC-1F4(「1F4」)、BC-1F10(「1F10」)のCDR配列を列挙する。
図16】抗TNFR2抗体(1A8、1B6、1C3、1F4、及び1F10)の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列を列挙する。
図17】ある特定の、関連するアミノ酸配列を列挙する。
図18】MC38癌細胞を注射し、PBS(G1)、BC-1C3-lgG1(G2)、抗mPD-1(G3)、BC-1C3-lgG1と抗mPD1の組み合わせ(G4)、アテゾリズマブアナログ(G5)、又は、BC-1C3-lgG1とアテゾリズマブアナログの組み合わせ(G6)で治療したマウスにおける、経時的な腫瘍サイズを示すグラフである。
図19】GL261癌細胞を注射し、PBS(G1)、1mg/kgのBC-1C3-IgG1(G2)、3mg/kgのBC-1C3-IgG1(G3)、10mg/kgのBC-1C3-IgG1(G4)、又は抗mPD-1(G5)で治療したマウスにおける、経時的な腫瘍サイズを示すグラフである。
図20】MC38癌細胞を注射し、PBS(G1)、BC-1C3-lgG1(G2)、BI-1808アナログ(G3)、h600-25-108アナログ(G4)、又はHFB3-1hz6-hG1アナログ(G5)で治療したマウスにおける、経時的な腫瘍サイズを示すグラフである。
図21】MC38癌細胞を注射し、PBS(G1)、BC-1C3-lgG1(G2)、又はh600-25-71アナログ(G3)で治療したマウスにおける、経時的な腫瘍サイズを示すグラフである。
図22】フローサイトメトリーにより測定される、hCD8a+T細胞の増殖を示すグラフである。
図23】フローサイトメトリーにより測定される、hCD8a+T細胞の増殖を示すグラフである。
図24A】ヒトIL12の放出を示すグラフである。
図24B】ヒトIFNγの放出を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0069】
腫瘍壊死因子(TNF)は一般に、主要な炎症誘発性サイトカインと考えられる(Al-Hatamleh et al.「A perspective review on the role of nanomedicine in the modulation of TNF-TNFR2 axis in breast cancer immunotherapy.」Journal of oncology 2019(2019))。炎症性プロセス(癌微小環境を含む)の間、TNFは、最初に分泌されて産生される、ある炎症性メディエーターである。それは、サイトカインカスケードの生成を支え、他の炎症性メディエーター(例えば、転写因子、インターロイキン(IL)-1、IL-6)の産生を促進する。細胞表面に局在する、2種類のTNF受容体(TNFR1及びTNFR2)が存在する。TNFR2は、TNFR1よりも優先して上方制御され、抗TNFモノクローナル抗体による治療は、腫瘍の数及びサイズを低減したことが、炎症関連癌の実験から明らかとなった。したがって、TNF-TNFR2軸が、免疫応答の抑制において示唆され、腫瘍の進行及び転移に影響を及ぼす。
【0070】
本開示は、TNFR2(腫瘍壊死因子受容体2)に結合する、抗体、その抗原結合断片の例を提供する。
TNFR2及び癌
T細胞は、これらが、CD8+エフェクターT細胞(Teff)としてもまた知られている、CD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)である場合に、腫瘍細胞を直接殺傷する能力故に、癌免疫療法の重要な焦点となってきている。しかし、Treg細胞は、Teff細胞を抑制することができ、それによって、腫瘍を取り除く適切な宿主免疫応答が停止される。したがって、抑制性Treg細胞の阻害、及び、細胞毒性CD8+Teffの、同時の活性化は、癌を治療するための潜在的な戦略であることができる(Vanamee,Eva S.,et al.「TNFR2:a novel target for cancer immunotherapy.」Trends in molecular medicine 23.11(2017):1037~1046)。
【0071】
TNFR2は、TNFRスーパーファミリー(TNFRSF)のメンバーであり、TNFにより活性化される。これは、細胞の生残及び増殖を制御する、細胞表面受容体であり、この受容体を標的とすることが、潜在的な次世代癌治療アプローチとして現れている。ある特定のヒト腫瘍細胞は、異常にTNFR2を発現する可能性があり、腫瘍浸潤は、高度に抑制性のTNFR2+Treg細胞により支配されている。
【0072】
TNFR2は主に、免疫系の細胞、特に、制御性T(Treg)細胞内に、及び、内皮細胞により発現され、優先的に、膜貫通TNF(tmTNF)に結合する。TNFR1及びTNFR2は、4つのシステインリッチモチーフで構成される、主に細胞外ドメインに28%の相同性を有する、1回膜貫通糖タンパク質である。しかし、TNF受容体の細胞内ドメインはほぼ無関係であり、相同配列を欠いており、このことは、異なるシグナル伝達機能が、2つの異なる受容体に由来することを示唆している。TNFR1は、主に、細胞死のシグナル伝達に関与する、Fas関連細胞死ドメイン(FADD)のTNFR1関連細胞死ドメインタンパク質(TRADD)に結合する、細胞内細胞死ドメイン(DD)を含有する。TNFR2は細胞質DDを含有しないが、TNF関連因子2(TRAF2)と相互作用し、主に、細胞生残をもたらす。TNFR2のシグナル伝達回路網は、他のTNFRのTNFR2回路網とは異なる。TNFR1は、細胞内細胞死ドメインを含有し、アポトーシス又は炎症性経路のいずれかを活性化することができる一方で、TNFR2は、TNF受容体関連因子(TRAF)に結合し、古典的及び非古典的NF-κΒ経路の両方を活性化し、ヒト及びマウスの両方において、細胞生残及び増殖を制御することができる。
【0073】
TNFR2は、461個のアミノ酸を有し、アミノ酸1~22はシグナルペプチドであり、アミノ酸23~257は細胞外ドメインであり、アミノ酸258~287は膜貫通ドメインであり、アミノ酸288~461は、TRAF2結合部位を有する細胞質ドメインである。TRAF2は、アポトーシスタンパク質1の阻害剤(cIAP1)、及び、アポトーシスタンパク質2の阻害剤(cIAP2)である、TRAF1、TRAF3に結合することができる。
【0074】
アンタゴニスト性抗TNFR2抗体は、休止(非シグナル伝達)逆平行二量体配置において、リガンド結合を遮断し、膜受容体をロックすることができる一方で、アゴニスト性架橋抗体は、平行TNF-TNFR2複合体を安定させることができる、即ち、活性シグナル伝達ネットワークの構造的な安定化をもたらすことができる。更に、TNFR2は、炎症性環境において、CD4+Foxp3+Treg表現型の安定化に寄与することが、ここで十分に認識されている。
【0075】
TNFR2及びその機能の詳細な説明は、例えば、Al-Hatamleh, et al.「A perspective review on the role of nanomedicine in the modulation of TNF-TNFR2 axis in breast cancer immunotherapy.」Journal of oncology 2019(2019)、Vanamee, et al.「TNFR2:a novel target for cancer immunotherapy.」Trends in molecular medicine 23.11(2017):1037~1046、Orti-Casan, et al.「Targeting TNFR2 as a novel therapeutic strategy for Alzheimer’s disease.」Frontiers in neuroscience 13(2019):49、Chen,et al.「Interaction of TNF with TNF receptor type 2 promotes expansion and function of mouse CD4+CD25+T regulatory cells.」The Journal of Immunology 179.1(2007):154~161、に見出すことができ、これらそれぞれの全体が参照により組み込まれている。
【0076】
本開示は、抗TNFR2抗体、その抗原結合断片、並びに、これらの抗TNFR2抗体及び抗原結合断片を用いて、腫瘍増殖を阻害し、例えば、癌を含む、様々な疾患を治療する方法を提供する。
抗TNFR2抗体及び抗原結合断片
本開示は、TNFR2(例えば、ヒトTNFR2)に特異的に結合する抗体及びその抗原結合断片を提供する。本明細書に記載する抗体及び抗原結合断片は、TNFR2に結合可能である。いくつかの実施形態において、これらの抗体は、TNFR2シグナル伝達経路を遮断し、したがって、免疫応答を増大させることができる。いくつかの実施形態において、これらの抗体は、補体依存性細胞傷害(CMC)、又は抗体依存性細胞傷害(ADCC)を開始することができる。
【0077】
本開示は、例えば、抗TNFR2抗体BC-1A8(「1A8」)、BC-1B6(「1B6」)、BC-1C3(「1C3」)、BC-1F4(「1F4」)、BC-1F10(「1F10」)、BC-3B7(「3B7」)、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、及びヒト抗体を含む、これらの修飾抗体を提供する。
【0078】
1A8、及び1A8由来の抗体(例えば、ヒト化抗体)に対するCDR配列としては、Kabatの付番により定義される、重鎖可変ドメインのCDR、配列番号6、7、8、及び、軽鎖可変ドメインのCDR、配列番号9、10、11が挙げられる。CDRは、Chothiaシステムによってもまた定義することができる。Chothiaの付番の下では、重鎖可変ドメインのCDR配列は、配列番号42、43、44に記載され、軽鎖可変ドメインのCDR配列は、配列番号45、46、47に記載される。
【0079】
1B6、及び1B6由来の抗体に対するCDR配列としては、Kabatの付番により定義される、重鎖可変ドメインのCDR、配列番号12、13、14、及び、軽鎖可変ドメインのCDR、配列番号15、16、17が挙げられる。Chothiaの付番の下では、重鎖可変ドメインのCDR配列は、配列番号48、49、50に記載され、軽鎖可変ドメインのCDRは、配列番号51、52、53に記載される。
【0080】
1C3、及び1C3由来の抗体に対するCDR配列としては、Kabatの付番により定義される、重鎖可変ドメインのCDR、配列番号18、19、20、及び、軽鎖可変ドメインのCDR、配列番号21、22、23が挙げられる。Chothiaの付番の下では、重鎖可変ドメインのCDR配列は、配列番号54、55、56に記載され、軽鎖可変ドメインのCDRは、配列番号57、58、59に記載される。
【0081】
1F4、及び1F4由来の抗体に対するCDR配列としては、Kabatの付番により定義される、重鎖可変ドメインのCDR、配列番号24、25、26、及び、軽鎖可変ドメインのCDR、配列番号27、28、29が挙げられる。Chothiaの付番の下では、重鎖可変ドメインのCDR配列は、配列番号60、61、62に記載され、軽鎖可変ドメインのCDRは、配列番号63、64、65に記載される。
【0082】
1F10、及び1F10由来の抗体に対するCDR配列としては、Kabatの付番により定義される、重鎖可変ドメインのCDR、配列番号30、31、32、及び、軽鎖可変ドメインのCDR、配列番号33、34、35が挙げられる。Chothiaの付番の下では、重鎖可変ドメインのCDR配列は、配列番号66、67、68に記載され、軽鎖可変ドメインのCDRは、配列番号69、70、71に記載される。
【0083】
1A8抗体の重鎖可変領域に対するアミノ酸配列は、配列番号36に記載される。1A8抗体の軽鎖可変領域に対するアミノ酸配列は、配列番号37に記載される。
【0084】
1B6抗体の重鎖可変領域に対するアミノ酸配列は、配列番号38に記載される。1B6抗体の軽鎖可変領域に対するアミノ酸配列は、配列番号39に記載される。
【0085】
1C3抗体の重鎖可変領域に対するアミノ酸配列は、配列番号40に記載される。1C3抗体の軽鎖可変領域に対するアミノ酸配列は、配列番号41に記載される。
【0086】
1F4抗体の重鎖可変領域に対するアミノ酸配列は、配列番号72に記載される。1F4抗体の軽鎖可変領域に対するアミノ酸配列は、配列番号73に記載される。
【0087】
1F10抗体の重鎖可変領域に対するアミノ酸配列は、配列番号74に記載される。1F10抗体の軽鎖可変領域に対するアミノ酸配列は、配列番号75に記載される。
【0088】
修飾抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域に対するアミノ酸配列もまた提供する。いくつかの実施形態において、重鎖可変領域は、配列番号36、38、40、72又は74と、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一である。いくつかの実施形態において、軽鎖可変領域は、配列番号37、39、41、73又は75と、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一である。重鎖可変領域配列を、対応する軽鎖可変領域配列と対形成することができ、これらは共に、TNFR2に結合する。
【0089】
ヒト化割合とは、国際免疫遺伝情報システム(IMGT)データベースのヒト抗体配列と比較した、重鎖又は軽鎖可変領域配列の同一性割合を意味する。上位ヒットは、重鎖又は軽鎖可変領域配列が、他の種よりも、特定の種に近いことを意味する。例えば、ヒトに対する上位ヒットとは、配列が、他の種よりも、ヒトに近いことを意味する。ヒト及びカニクイザルに対する上位ヒットとは、配列が、ヒト配列及びカニクイザル配列に対して、同じ同一性割合を有し、これらの同一性割合が、他の種の配列と比較して最も高いことを意味する。いくつかの実施形態において、ヒト化割合は、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、又は95%を超える。ヒト化割合の決定方法、及び、上位ヒットの決定方法に関する詳細な説明は、当該技術分野において周知であり、例えば、Jones,et al.「The INNs and outs of antibody nonproprietary names.」MAbs.Vol.8.No.1.Taylor&Francis、2016において記載されており、その全体が本明細書に参照により組み込まれている。高いヒト化割合は、多くの場合、様々な利点を有する、例えば、ヒトにおいてより安全であり、より効果的である、ヒト対象によって認容される可能性がより高い、及び/又は、副作用を有する可能性が低い。いくつかの実施形態において、可変領域は完全にヒトである、例えば、ヒト重鎖免疫グロブリン座位配列(例えば、ヒトIGHV、IGHD、及びIGHJ遺伝子の組み合わせ)、並びに/又は、ヒトκ鎖免疫グロブリン座位配列(例えば、ヒトIGKV及びIGKJ遺伝子の組み合わせ)に由来する。
【0090】
更に、いくつかの実施形態において、本明細書に記載する抗体又はその抗原結合断片は、配列番号6~8、配列番号12~14、配列番号18~20、配列番号24~26、及び配列番号30~32(Kabatの付番)からなる群から選択される、1、2、又は3つの重鎖可変領域CDR、並びに/又は、配列番号9~11、配列番号15~17、配列番号21~23、配列番号27~29、及び配列番号33~35(Kabatの付番)からなる群から選択される、1、2、又は3つの軽鎖可変領域CDRもまた含有することができる。
【0091】
いくつかの実施形態において、抗体は、相補性決定領域(CDR)1、2、3を含む重鎖可変領域(VH)を有することができ、上記CDR1領域は、選択されたVH CDR1アミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、又は95%同一であるアミノ酸配列を含み、又はそれからなり、上記CDR2領域は、選択されたVH CDR2アミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、又は95%同一であるアミノ酸配列を含み、又はそれからなり、上記CDR3領域は、選択されたVH CDR3アミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、又は95%同一であるアミノ酸配列を含む、又はそれからなる。いくつかの実施形態において、抗体は、CDR1、2、3を含む軽鎖可変領域(VL)を有することができ、上記CDR1領域は、選択されたVL CDR1アミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、又は95%同一であるアミノ酸配列を含み、又はそれからなり、上記CDR2領域は、選択されたVL CDR2アミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、又は95%同一であるアミノ酸配列を含み、又はそれからなり、上記CDR3領域は、選択されたVL CDR3アミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、又は95%同一であるアミノ酸配列を含む、又はそれからなる。選択されたVH CDR1、2、3アミノ酸配列、及び、選択されたVL CDR1、2、3アミノ酸配列は、図14(KabatのCDR)、及び、図15(ChothiaのCDR)に示される。
【0092】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載する抗体又は抗原結合断片は、0、1又は2個のアミノ酸挿入、欠失、又は置換を有する配列番号6、0、1又は2個のアミノ酸挿入、欠失、又は置換を有する配列番号7、0、1又は2個のアミノ酸挿入、欠失、又は置換を有する配列番号8のCDRの、1つ、2つ、又は3つを含有する重鎖可変ドメインを含有することができる。
【0093】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載する抗体又は抗原結合断片は、0、1又は2個のアミノ酸挿入、欠失、又は置換を有する配列番号12、0、1又は2個のアミノ酸挿入、欠失、又は置換を有する配列番号13、0、1又は2個のアミノ酸挿入、欠失、又は置換を有する配列番号14のCDRの、1つ、2つ、又は3つを含有する重鎖可変ドメインを含有することができる。
【0094】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載する抗体又は抗原結合断片は、0、1又は2個のアミノ酸挿入、欠失、又は置換を有する配列番号18、0、1又は2個のアミノ酸挿入、欠失、又は置換を有する配列番号19、0、1又は2個のアミノ酸挿入、欠失、又は置換を有する配列番号20のCDRの、1つ、2つ、又は3つを含有する重鎖可変ドメインを含有することができる。
【0095】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載する抗体又は抗原結合断片は、0、1又は2個のアミノ酸挿入、欠失、又は置換を有する配列番号24、0、1又は2個のアミノ酸挿入、欠失、又は置換を有する配列番号25、0、1又は2個のアミノ酸挿入、欠失、又は置換を有する配列番号26のCDRの、1つ、2つ、又は3つを含有する重鎖可変ドメインを含有することができる。
【0096】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載する抗体又は抗原結合断片は、0、1又は2個のアミノ酸挿入、欠失、又は置換を有する配列番号30、0、1又は2個のアミノ酸挿入、欠失、又は置換を有する配列番号31、0、1又は2個のアミノ酸挿入、欠失、又は置換を有する配列番号32のCDRの、1つ、2つ、又は3つを含有する重鎖可変ドメインを含有することができる。
【0097】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載する抗体又は抗原結合断片は、0、1又は2個のアミノ酸挿入、欠失、又は置換を有する配列番号9、0、1又は2個のアミノ酸挿入、欠失、又は置換を有する配列番号10、0、1又は2個のアミノ酸挿入、欠失、又は置換を有する配列番号11のCDRの、1つ、2つ、又は3つを含有する軽鎖可変ドメインを含有することができる。
【0098】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する抗体又は抗原結合断片は、0、1又は2個のアミノ酸挿入、欠失、又は置換を有する配列番号15、0、1又は2個のアミノ酸挿入、欠失、又は置換を有する配列番号16、0、1又は2個のアミノ酸挿入、欠失、又は置換を有する配列番号17のCDRの、1つ、2つ、又は3つを含有する軽鎖可変ドメインを含有することができる。
【0099】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載する抗体又は抗原結合断片は、0、1又は2個のアミノ酸挿入、欠失、又は置換を有する配列番号21、0、1又は2個のアミノ酸挿入、欠失、又は置換を有する配列番号22、0、1又は2個のアミノ酸挿入、欠失、又は置換を有する配列番号23のCDRの、1つ、2つ、又は3つを含有する軽鎖可変ドメインを含有することができる。
【0100】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載する抗体又は抗原結合断片は、0、1又は2個のアミノ酸挿入、欠失、又は置換を有する配列番号27、0、1又は2個のアミノ酸挿入、欠失、又は置換を有する配列番号28、0、1又は2個のアミノ酸挿入、欠失、又は置換を有する配列番号29のCDRの、1つ、2つ、又は3つを含有する軽鎖可変ドメインを含有することができる。
【0101】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載する抗体又は抗原結合断片は、0、1又は2個のアミノ酸挿入、欠失、又は置換を有する配列番号33、0、1又は2個のアミノ酸挿入、欠失、又は置換を有する配列番号34、0、1又は2個のアミノ酸挿入、欠失、又は置換を有する配列番号35のCDRの、1つ、2つ、又は3つを含有する軽鎖可変ドメインを含有することができる。
【0102】
挿入、欠失、及び置換は、CDR配列内、又は、CDR配列の片方若しくは両方の末端に存在することができる。いくつかの実施形態において、CDRは、Kabatの付番スキームに基づき決定される。いくつかの実施形態において、CDRは、Chothiaの付番スキームに基づき決定される。いくつかの実施形態において、CDRは、KabatとChothiaの付番スキームの組み合わせに基づき決定される。
【0103】
本開示は、TNFR2に結合する抗体又はその抗原結合断片もまた提供する。抗体又はその抗原結合断片は、選択された重鎖可変領域(VH)配列と少なくとも80%、85%、90%、又は95%同一であるアミノ酸配列を含む、又はそれからなるVH、及び、選択された軽鎖可変領域(VL)配列と少なくとも80%、85%、90%、又は95%同一であるアミノ酸配列を含む、又はそれからなるVLを含有する。いくつかの実施形態において、選択されたVH配列は配列番号36であり、選択されたVL配列は配列番号37である。いくつかの実施形態において、選択されたVH配列は配列番号38であり、選択されたVL配列は配列番号39である。いくつかの実施形態において、選択されたVH配列は配列番号40であり、選択されたVL配列は配列番号41である。いくつかの実施形態において、選択されたVH配列は配列番号72であり、選択されたVL配列は配列番号73である。いくつかの実施形態において、選択されたVH配列は配列番号74であり、選択されたVL配列は配列番号75である。
【0104】
2つのアミノ酸配列、又は、2つの核酸配列の同一性パーセントを測定するために、最適に比較するために配列をアライメントする(例えば、比較するために、最適にアライメントするように第1及び第2のアミノ酸又は核酸配列の1つ又は両方にギャップを導入してもよく、非相同配列を無視してもよい)。比較のためにアラインされる参照配列の長さは、参照配列の長さ少なくとも80%であり、いくつかの実施形態において、少なくとも90%、95%、又は100%である。続いて、対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置にあるアミノ酸残基又はヌクレオチドを比較する。第1の配列の位置が第2の配列の対応する位置のアミノ酸残基又はヌクレオチドと同じものによって占められている場合、分子はその位置で同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列を最適にアライメントするために導入される必要のあるギャップの数及び各ギャップの長さを考慮して、配列に共有される同一の位置の数の関数である。例えば、2つの配列間の配列比較及び同一性パーセントの測定は、ギャップペナルティ12、ギャップ伸長ペナルティ4、及び、フレームシフトギャップペナルティ5の、Blossum62スコアリングマトリックスを用いて実施することができる。
【0105】
本開示は、免疫グロブリン重鎖又は免疫グロブリン軽鎖を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸もまた提供する。免疫グロブリン重鎖又は免疫グロブリン軽鎖は、図14若しくは図15に示されるCDRを含むか、又は、図16に示される配列を有する。ポリペプチドが、対応するポリペプチド(例えば、対応する重鎖可変領域、又は、対応する軽鎖可変領域)と対形成される場合、対形成されるポリペプチドは、TNFR2に結合する。
【0106】
抗TNFR2抗体及び抗原結合断片はまた、抗体又は抗体断片の抗体変異体(誘導体及びコンジュゲートを含む)、並びに、多重特異的(例えば、二重特異的)抗体又は抗体断片であることも可能である。本明細書により提供される追加の抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、多量体、多重特異的(例えば、二重特異的)、ヒト抗体、キメラ抗体(例えば、ヒト-マウスキメラ)、一本鎖抗体、細胞内で製造された抗体(即ち、イントラボディ)、及び、それらの抗原結合断片である。抗体又はその抗原結合断片は、任意のタイプ(例えばIgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、クラス(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はサブクラスであることができる。いくつかの実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、IgG抗体又はその抗原結合断片である。
【0107】
抗体の断片は、それらが、全長抗体の所望の親和性及び特異性を保持する限り、提供される方法での使用に好適である。したがって、TNFR2に結合する抗体の断片は、TNFR2に結合する能力を保持する。Fv断片は、完全な抗原認識及び結合部位を含有する、抗体断片である。この領域は、1個の重鎖可変ドメインと、1個の軽鎖可変ドメインが密接に会合した二量体で構成され、これは、本質的には、例えば、scFvにおいて、共有結合であることができる。この構成においては、各可変ドメインの3つのCDRが相互作用し、VH-VL二量体の表面上で、抗原結合部位を画定する。全体的に、6つのCDR又はそれらのサブセットはまとまって、抗体に対する抗原結合特異性を付与する。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は、ある抗原に特異的なCDRを3つのみ含むFvの半分)でさえも、抗原を認識してそれに結合する能力を有することができるが、通常は、結合部位全体よりも親和性が低い。一本鎖Fv又は(scFv)抗体断片は、抗体のVH及びVLドメイン(又は領域)を含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖内に存在する。一般に、scFvポリペプチドはVHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーを更に含み、それはscFvが抗原結合のための望ましい構造を形成することを可能にする。
【0108】
本開示はまた、本明細書に記載する任意の抗体又はその抗原結合断片と交差競合する、抗体又はその抗原結合断片を提供する。交差競合アッセイは、当該技術分野において周知であり、例えば、Moore et al.,「Antibody cross-competition analysis of the human immunodeficiency virus type 1 gp120 exterior envelope glycoprotein.」Journal of virology 70.3(1996):1863~1872に記載されており、その全体が、参照により本明細書に組み込まれている。一態様では、本開示は、本明細書に記載される任意の抗体又は抗原結合断片と同じエピトープ又は領域に結合する、抗体又はその抗原結合断片もまた提供する。エピトープ結合アッセイは、当該技術分野において周知であり、例えば、Estep et al.「High throughput solution-based measurement of antibody-antigen affinity and epitope binning.」MAbs.Vol.5.No.2.Taylor&Francis,2013に記載されており、その全体が本明細書に参照により組み込まれている。
抗体及び抗原結合断片
本開示は、本明細書に記載される抗TNFR2抗体に由来する、様々な抗体及びその抗原結合断片を提供する。一般的に、抗体(免疫グロブリンとも呼ばれる)は、2つのクラスのポリペプチド鎖、軽鎖、及び重鎖で構成される。本開示の抗体の非限定例は、2つの重鎖と2つの軽鎖とを含む、インタクトな4つの免疫グロブリン鎖抗体であることができる。抗体の重鎖は、IgM、IgG、IgE、IgA、若しくはIgDを含む任意のアイソタイプ、又は、IgG1、IgG2、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgG4、IgE1、IgE2などを含むサブアイソタイプであることができる。軽鎖は、κ軽鎖又はλ軽鎖であることができる。抗体は、2つの同一のコピーの軽鎖、及び、2つの同一のコピーの重鎖を含むことができる。それぞれが、1個の可変ドメイン(又は可変領域、V)、及び、複数の定常ドメイン(又は定常領域)を含有する重鎖は、それらの定常ドメイン内で、ジスルフィド結合を介して互いに結合し、抗体の「幹」を形成する。それぞれが1個の可変ドメイン(又は、可変領域、V)、及び、1個の定常ドメイン(又は、定常領域)を含有する軽鎖は、それぞれ、ジスルフィド結合を介して、1個の重鎖に結合する。各軽鎖の可変領域を、それが結合する重鎖の可変領域とアラインする。軽鎖及び重鎖の両方の可変領域は、より保存されたフレームワーク領域(FR)どうしの間に挟まされた、3つの超可変領域を含有する。
【0109】
相補性決定領域(CDR)として知られる超可変領域は、抗体の抗原結合表面を含むループを形成する。4つのフレームワーク領域は、βシート構造にほとんど適応し、CDRは、βシート構造を接続するループを形成し、場合によってはβシート構造の一部を形成する。各鎖のCDRはフレームワーク領域に近接して保持され、かつ、他の鎖のCDRと共に、抗原結合領域の形成に寄与している。
【0110】
抗体のアミノ酸配列を分析することにより、抗体のCDR領域を識別する方法は周知であり、いくつかのCDRの定義が、一般的に用いられる。Kabatの定義は配列の変動性に基づき、Chothiaの定義は、構造ループ領域の位置に基づく。これらの方法及び定義は、例えば、Martin、「Protein sequence and structure analysis of antibody variable domains、」Antibody engineering、Springer Berlin Heidelberg、2001.422~439、Abhinandan, et al.「Analysis and improvements to Kabat and structurally correct numbering of antibody variable domains、」Molecular immunology 45.14(2008):3832~3839、Wu,T.T.and Kabat,E.A.(1970)J.Exp.Med.132:211~250、Martin et al.、Methods Enzymol.203:121-53(1991)、Morea et al.、Biophys Chem.68(1-3):9-16(Oct. 1997)、Morea et al.、J Mol Biol.275(2):269-94(Jan .1998)、Chothia et al.、Nature 342(6252):877-83(Dec.1989)、Ponomarenko and Bourne、BMC Structural Biology 7:64(2007)、に記載されており、これらそれぞれの全体が、本明細書に参照により組み込まれている。
【0111】
CDRは、抗原のエピトープを認識するのに重要である。本明細書で使用される場合、「エピトープ」とは、抗体の抗原結合ドメインにより、特異的に結合されることが可能な、標的分子の最小部分である。エピトープの最小サイズは、約3、4、5、6、又は7個のアミノ酸であり得るが、エピトープは、抗原の二次及び三次構造に基づいて、抗原の3次元構造に依存し得るため、これらのアミノ酸は、抗原の一次構造の、連続した直鎖状配列にある必要はない。
【0112】
いくつかの実施形態において、抗体は、インタクトな免疫グロブリン分子(例えば、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgM、IgD、IgE、IgA)である。IgGサブクラス(IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4)は、高度に保存されており、その定常領域、特に、ヒンジ及び上部CH2ドメインが異なっている。IgGサブクラスの配列及び違いは、当該技術分野において周知であり、例えば、Vidarsson,et al、「IgG subclasses and allotypes: from structure to effector functions.」Frontiers in immunology 5(2014)、Irani,et al.「Molecular properties of human IgG subclasses and their implications for designing therapeutic monoclonal antibodies against infectious diseases.」Molecular immunology 67.2(2015):171~182、Shakib,Farouk,ed.The human IgG subclasses:molecular analysis of structure、function and regulation.Elsevier、2016、に記載されており、これらそれぞれの全体が、本明細書に参照により組み込まれている。
【0113】
抗体はまた、任意の種(例えば、ヒト、齧歯類、マウス、ラクダ)に由来する免疫グロブリン分子であることもできる。本明細書で開示する抗体としては、ポリクローナル、モノクローナル、単一特異的、多重特異的抗体、及び、別のポリペプチドに融合した免疫グロブリン結合ドメインを含むキメラ抗体が挙げられるが、これらに限定されない。「抗原結合ドメイン」又は「抗原結合断片」という用語は、インタクトな抗体の特異的結合活性を保持する抗体の一部、即ち、インタクトな抗体の標的分子上のエピトープに特異的に結合可能な抗体の、任意の部分である。これは、例えば、これらの断片のFab、Fab’、F(ab’)2、及び変異体を含む。したがって、いくつかの実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、例えば、scFv、Fv、Fd、dAb、二重特異的抗体、二重特異的scFv、ダイアボディ、線状抗体、一本鎖抗体分子、抗体断片から形成される多重特異的抗体、及び、抗体結合ドメインである結合ドメイン、又はこれと相同である結合ドメインを含む、任意のポリペプチドであってもよい。抗原結合ドメインの非限定例としては、例えば、インタクトな抗体の重鎖及び/若しくは軽鎖CDR、インタクトな抗体の重鎖及び/若しくは軽鎖可変領域、インタクトな抗体の全長重鎖若しくは軽鎖、又は、インタクトな抗体の重鎖若しくは軽鎖のいずれかに由来する個別のCDRが挙げられる。
【0114】
本明細書に記載の方法で用いるのに好適な抗体の断片もまた、提供する。Fab断片は、軽鎖の可変及び定常ドメイン、並びに、重鎖の可変ドメイン及び1番目の定常ドメイン(CH1)を含有する。F(ab’)2抗体断片は、これらの間のヒンジシステインにより、一般に、カルボキシ末端付近で共通結合した、Fab断片の対を含む。抗体断片の他の化学的結合は、当該技術分野において周知である。
【0115】
ダイアボディは、2つの抗原結合部位を含む小さな抗体断片であり、この断片は、同じポリペプチド鎖内に、VLに接続したVH(VH及びVL)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間での対形成を可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、ドメインを別の鎖の相補的ドメインと対形成させ、2つの抗原結合部位を生成することができる。
【0116】
線状抗体は、相補性軽鎖ポリペプチドと共に、一対の抗原結合領域を形成する、一対のタンデムFdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む。線状抗体は、二重特異的又は単一特異的であってもよい。
【0117】
本開示の抗体及び抗体断片を、Fc領域内で修飾し、所望のエフェクター機能又は血清半減期を付与することができる。
【0118】
抗体の多量体化は、抗体の自然な凝集により、又は、当該技術分野において周知の、化学的若しくは組み換え結合技術により、達成することができる。例えば、精製された抗体調製物(例えば、精製されたIgG分子)の何パーセントかは、自然に、抗体ホモダイマーと、他の高次抗体多量体とを含有する、タンパク質アグリゲートを形成する。
【0119】
あるいは、抗体ホモダイマーは、当該技術分野において周知の化学結合技術により形成することができる。例えば、SMCC(スクシンイミジル 4-(マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート)、及びSATA(N-スクシンイミジル S-アセチルチオ-アセテート)を含むがこれらに限定されないヘテロ二官能性架橋剤を使用して、抗体多量体を形成することができる。抗体ホモ二量体を形成するための例示的な手順は、Ghetie et al.(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.94:7509-7514,1997)に記載されている。ペプシン消化によって、抗体ホモ二量体を、Fab’ホモ二量体に転換することができる。抗体ホモ二量体を形成する別の方法は、Zhao et al.(J.Immunol.25:396-404,2002)に記載されている、自己好性autophilic)T15ペプチドを使用することである。
【0120】
いくつかの実施形態において、多重特異的抗体は、二重特異的抗体である。一対の抗体分子の間の界面を組み換えて、組み換え細胞培養液から回収したヘテロ二量体の割合を最大化することにより、二重特異的抗体を製造することができる。例えば、界面は、少なくとも、抗体定常ドメインのCH3ドメインの一部を含有することができる。この方法では、第1の抗体分子の界面からの1つ以上の小さいアミノ酸側鎖が、より大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)で置き換えられる。大きなアミノ酸側鎖を小さいもの(例えばアラニン又はトレオニン)で置き換えることにより、大きな側鎖と同じ又は同様のサイズの代償性「キャビティ」を、第2の抗体分子の界面に作り出す。これにより、ホモ二量体などの不要の他の最終産物よりも、ヘテロ二量体の収率を増大させるメカニズムが提供される。本方法は、例えば、WO 96/27011に記載されており、その全体が参照により組み込まれている。
【0121】
二重特異的抗体としては、架橋型、又は「ヘテロコンジュゲート」抗体が挙げられる。例えば、ヘテロコンジュゲート内の抗体の一方をアビジンに、そして、他方をビオチンに、結合させることができる。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の便利な架橋法を用いてもまた、製造することができる。好適な架橋剤及び架橋技術が、当該技術分野において周知であり、米国特許第4,676,980号に開示されており、その全体が本明細書に参照により組み込まれている。
【0122】
本明細書に記載する抗体又は抗原結合断片のいずれかを、安定化分子(例えば、対象内で、又は溶液中で、抗体又はその抗原結合断片の半減期を増大させる分子)とコンジュゲートすることができる。安定化分子の非限定例としては、ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)、又はタンパク質(例えば、ヒト血清アルブミンなどの血清アルブミン)が挙げられる。安定化分子のコンジュゲーションにより、インビトロで(例えば、組織培養液中で、若しくは、医薬組成物として貯蔵した際に)、又は、インビボで(例えば、ヒトにおいて)、抗体又は抗原結合断片の半減期を増大させることができる、又は、この生物活性を延長することができる。
【0123】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載する抗体又は抗原結合断片を、治療剤とコンジュゲートすることができる。抗体又はその抗原結合断片を含む抗体薬物コンジュゲートは、治療剤に共有、又は非共有結合することができる。いくつかの実施形態において、治療剤は、細胞毒性又は細胞増殖抑制剤(例えば、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラセン、メイタンシノイド(DM-1及びDM-4など)、ジオン、マイトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン、エピルビシン、並びにシクロホスファミド、並びにアナログ)である。
【0124】
いくつかの実施形態において、抗原結合断片は、キメラ抗原受容体(CAR)の一部を形成することができる。いくつかの実施形態において、キメラ抗原受容体は、CD3ζ膜貫通及びエンドドメインに融合した、本明細書に記載する一本鎖可変断片(scFv)の融合物である。いくつかの実施形態において、キメラ抗原受容体は、様々な共刺激性タンパク質受容体(例えば、CD28、41BB、ICOS)由来の細胞内シグナル伝達ドメインもまた含む。いくつかの実施形態において、キメラ抗原受容体は、効力を増大させるための、複数のシグナル伝達ドメイン、例えば、CD3z-CD28-41BB、又はCD3z-CD28-OX40を含む。したがって、一態様では、本開示は、本明細書に記載するキメラ抗原受容体を発現する細胞(例えば、T細胞)を更に提供する。
【0125】
いくつかの実施形態において、scFvは、重鎖可変ドメインを1つ、及び、軽鎖可変ドメインを1つ有する。いくつかの実施形態において、scFvは、重鎖可変ドメインを2つ、及び、軽鎖可変ドメインを2つ有する。
抗体の特性
本明細書に記載する抗体又はその抗原結合断片は、TNFR2とTNFR2リガンドの間の結合を遮断することができる。いくつかの実施形態において、TNFR2に結合することにより、抗体は、TNFR2シグナル伝達経路を阻害することができる。いくつかの実施形態において、抗体は、免疫応答を上方制御することができる。いくつかの実施形態において、抗体は、TNFR2を発現する細胞を有する動物での腫瘍体積を低減することができる。
【0126】
いくつかの実施態様において、抗体(又はその抗原結合断片)は、TNFR2(ヒトTNFR2、マウスTNFR2、サルTNFR2、イヌTNFR2、キメラTNFR2)に、0.1s-1未満、0.01s-1未満、0.001s-1未満、0.0001s-1未満、又は、0.00001s-1未満の解離速度(koff)で特異的に結合する。いくつかの実施形態において、解離速度(koff)は、0.01s-1超、0.001s-1超、0.0001s-1超、0.00001s-1超、又は、0.000001s-1超である。
【0127】
いくつかの実施形態において、運動会合速度(kon)は、1×10/Ms超、1×10/Ms超、1×10/Ms超、1×10/Ms超、又は、1×10/Ms超である。いくつかの実施形態において、運動会合速度(kon)は、1×10/Ms未満、1×10/Ms未満、又は、1×10/Ms未満である。
【0128】
親和性を、運動速度定数の商から推定することができる(KD=koff/kon)。いくつかの実施形態において、KDは、1×10-6M未満、1×10-7M未満、1×10-8M未満、1×10-9M未満、又は、1×10-10M未満である。いくつかの実施形態において、KDは、50nM、30nM、20nM、15nM、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、2nM、又は1nM未満である。いくつかの実施形態において、KDは、1×10-7M超、1×10-8M超、1×10-9M超、1×10-10M超、1×10-11M超、又は、1×10-12M超である。
【0129】
抗原に対する抗体の親和性を測定する一般的な技術としては、例えば、ELISA、RIA、及び表面プラズモン共鳴(SPR)が挙げられる。いくつかの実施形態において、抗体は、ヒトTNFR2(配列番号1)、マウスTNFR2(例えば、配列番号2)、サルTNFR2(例えば、配列番号3)、イヌTNFR2(配列番号4)、及び/又は、キメラTNFR2(配列番号5)に結合する。いくつかの実施形態において、抗体は、サルTNFR2、イヌTNFR2、キメラTNFR2、及び/又はマウスTNFR2に結合しない。
【0130】
TNFR2は、4つのシステインリッチドメイン(CRD)を有する。CRD1は、配列番号1の39aa~76aaであり、CRD2は、配列番号1の77aa~118aaであり、CRD3は、配列番号1の119aa~162aaであり、CRD4は、配列番号1の168aa~196aaである。いくつかの実施形態において、抗体(又はその抗体結合断片)は、CRD1、CRD2、CRD3、及び/又はCRD4に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、エピトープは、CRD3とCRD4の接合部に位置する。
【0131】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載する抗体又はその抗原結合断片は、Treg細胞によるCD8+T細胞の増殖の阻害を、遮断することができる。
【0132】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載する抗体又はその抗原結合断片は、CD8+T細胞の増殖を促進することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載する抗体又はその抗原結合断片は、CD8+T細胞の増殖を、10%超、15%超、20%超、25%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、又は80%超促進することができる。
【0133】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載する抗体又はその抗原結合断片は、CD8+T細胞によるサイトカイン放出を向上させることができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載する抗体又はその抗原結合断片は、CD8+T細胞によるIL-2の放出を向上させることができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載する抗体又はその抗原結合断片は、CD8+T細胞によるIL-2の放出を、10%超、15%超、20%超、25%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、又は80%超向上することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載する抗体又はその抗原結合断片は、CD8+T細胞によるIFN-γの放出を向上させることができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載する抗体又はその抗原結合断片は、CD8+T細胞によるIFN-γの放出を、10%超、15%超、20%超、25%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、又は80%超向上することができる。
【0134】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載する抗体又はその抗原結合断片は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、又は200%超の、腫瘍増殖阻害割合(TGITV%)を有する。いくつかの実施形態において、抗体は、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、又は200%未満の、腫瘍増殖阻害割合を有する。TGITV%は、例えば、治療の開始の3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、若しくは30日後、又は治療の開始の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、若しくは12ヶ月後に、測定することができる。本明細書で使用する場合、腫瘍増殖阻害割合(TGITV%)は、以下の式を用いて計算される:
TGITV(%)=[1-(Ti-T0)/(Vi-V0)]×100%
Tiは、i日目における、治療群での平均腫瘍体積である。T0は、0日目における、治療群での平均腫瘍体積である。Viは、i日目における、対照群での平均腫瘍体積である。V0は、0日目における、対照群での平均腫瘍体積である。
【0135】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載する抗体又はその抗原結合断片は、例えば、TNFR2を発現する細胞に対する細胞毒性を有する。細胞毒性の測定方法は、当該技術分野において周知である。いくつかの実施形態において、細胞毒性は、以下の式により計算される:
【0136】
【数1】
【0137】
式中、実験とは、実験区(エフェクター細胞+標的細胞+試験産物)の吸光度の値を意味し、エフェクターとは、エフェクター細胞(エフェクター細胞のみ)の吸光度の値を意味する。標的とは、標的細胞(標的細胞のみ)の吸光度の値を意味する。自然放出量とは、細胞培養培地(細胞培養培地のみ、エフェクター細胞、標的細胞なし)の自己蛍光の、吸光度の値を意味する。標的最大値とは、標的細胞(標的細胞+細胞溶解物)の、吸光度の最大値を意味する。自然放出量*とは、細胞培養培地体積対照ウェル(培地のみ+細胞溶解物)の吸光度の値を意味する。EC50もまた、計算することができる。いくつかの実施形態において、EC50は、200、150、100、90、80、70、60、50、40、30、20、又は10μg/mL未満である。
【0138】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される抗体又はその抗原結合断片は、TNFR2アンタゴニストである。いくつかの実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、TNFR2を発現する標的細胞(例えば、TregなどのT細胞)内で、TNFR2シグナル形質導入を低減する。
【0139】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される抗体又はその抗原結合断片は毒性がない。いくつかの実施形態において、例えば、0.3mg/kg、1mg/kg、10mg/kg、又は25mg/kgにおいて、治療群と対照群との間で、体重の有意差を観察することはできない。
【0140】
いくつかの実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、TNFR2を発現する腫瘍細胞に結合することができる。いくつかの実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、補体依存性細胞傷害(CMC)及び/又は抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘発し、腫瘍細胞を殺傷することができる。
【0141】
いくつかの実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、機能的Fc領域を有する。いくつかの実施形態において、機能的Fc領域のエフェクター機能は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)である。いくつかの実施形態において、機能的Fc領域のエフェクター機能はファゴサイトーシスである。いくつかの実施形態において、機能的Fc領域のエフェクター機能はADCC及びファゴサイトーシスである。
【0142】
いくつかの実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、補体媒介性細胞傷害(CMC)を誘発することができる。
【0143】
いくつかの実施形態において、Fc領域は、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、又はヒトIgG4である。いくつかの実施形態において、抗体は、ヒトIgG1抗体である。
【0144】
いくつかの実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、機能的Fc領域を有しない。例えば、抗体又は抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片である。いくつかの実施形態において、Fc領域は、LALA変異(EUの付番におけるL234A及びL235A変異)、又は、LALA-PG変異(EUの付番におけるL234A、L235A、P329G変異)を有する。
【0145】
いくつかの実施形態において、Fcは、SI変異(EUの付番におけるS239D及びI332E変異)を有する。
抗TNFR2抗体の製造方法
ヒトTNFR2の単離された断片(例えば、細胞外領域)を、免疫原として使用し、ポリクローナル及びモノクローナル抗体調製のための標準的な技術を用いて抗体を生成することができる。ポリクローナル抗体は、抗原ペプチド又はタンパク質を複数回注射(例えば、皮下又は腹腔内注射)することにより、動物で生じさせることができる。いくつかの実施形態において、抗原ペプチド又はタンパク質は、少なくとも1つのアジュバントと共に注射される。いくつかの実施形態において、抗原ペプチド又はタンパク質は、免疫化される種において免疫原性である薬剤とコンジュゲートすることができる。動物には、抗原ペプチド又はタンパク質を2回以上(例えば、2回、3回、又は4回)注射することができる。
【0146】
全長ポリペプチド又はタンパク質を用いることができるか、あるいは、その抗原ペプチド断片を、免疫原として用いることができる。タンパク質の抗原ペプチドは、TNFR2のアミノ酸配列の、少なくとも8(例えば、少なくとも10、15、20、又は30)個のアミノ酸残基を含み、ペプチドに対して生成された抗体が、タンパク質との特異的な免疫複合体を形成するように、タンパク質のエピトープを包含する。前述したように、ヒトTNFR2の全長配列は、当該技術分野において周知である(配列番号1)。いくつかの実施形態において、Fcタグ化ヒトTNFR2タンパク質(Fc融合タンパク質は、配列番号1の位置23~257に、ヒトTNFR2細胞外ドメインを含有する)を、免疫原として使用する。
【0147】
免疫原は典型的には、好適な対象(例えば、少なくとも1つのヒト免疫グロブリン座位を発現するヒト又はトランスジェニック動物)を免疫付与することによる抗体の調製のために使用される。適切な免疫原性調製物は、例えば、組み換えにより発現した、又は、化学的に合成されたポリペプチド(例えば、ヒトTNFR2の断片)を含有することができる。調製物は、フロイント完全若しくは不完全アジュバントなどのアジュバント、又は、同様の免疫刺激剤を更に含むことができる。
【0148】
好適な対象に、TNFR2ポリペプチド、又は、その抗原ペプチド(例えば、細胞外領域などの、TNFR2の一部)を免疫原として免疫付与することにより、上述の通りにポリクローナル抗体を調製することができる。不動化されたTNFR2ポリペプチド又はペプチドを用いる、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などの標準的な技術により、免疫付与された対象における抗体力価を、経時的にモニタリングすることができる。所望する場合、抗体分子を哺乳動物から(例えば、血液から)単離し、タンパク質GクロマトグラフィーのプロテインAなど、周知の技術により更に精製して、IgG画分を入手することができる。免疫付与後の適切な時期、例えば、特異的抗体の力価が最大となる時期において、抗体産生細胞を対象から入手し、これを用いて、Kohler et al.(Nature 256:495-497,1975)により元々記載されているハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor et al.,Immunol.Today 4:72,1983)、及び、EBV-ハイブリドーマ技術(Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.,pp.77-96,1985)、又はトリオーマ技術などの、標準的な技術により、モノクローナル抗体を調製することができる。ハイブリドーマを産生する技術は周知である(一般的には、Current Protocols in Immunology,1994,Coligan et al.(Eds.),John Wiley&Sons,Inc.,New York,NY)を参照されたい)。例えば、標準的なELISAアッセイを用い、対象となるポリペプチド又はエピトープに結合する抗体用のハイブリドーマ培養上清液をスクリーニングすることにより、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞が検出される。
【0149】
適切なヌクレオチドの変化を、ヒト、ヒト化、若しくはキメラ抗体、又は、本明細書に記載する抗体若しくはその抗原結合断片をコードするDNAに導入することにより、あるいは、ペプチド合成により本明細書に記載する抗体又は抗原結合断片の変異体を調製することができる。このような変異体としては、例えば、抗体の抗原結合部位又は抗原結合ドメインを製造する配列のアミノ酸内での、残基の欠失、挿入、又は置換が挙げられる。このような変異体の集団において、一部の抗体又は抗原結合断片は、標的タンパク質、例えば、TNFR2に対する親和性が増大する。欠失、挿入、及び/又は組み合わせの任意の組み合わせを、標的に対して結合親和性が増大した、抗体又はその抗原結合断片において実現することができる。グリコシル化部位の数の変化(例えば、増加若しくは減少)、グリコシル化部位の種類の変化(例えば、異なる糖が、細胞内に存在する酵素により結合されるように、アミノ酸配列を変化させること)、又は、新規のグリコシル化部位を導入することなどの、抗体又は抗原結合断片に導入したアミノ酸の変化によって、抗体又は抗原結合断片を変化させる、又は、抗体又は抗原結合断片に、新規の翻訳後修飾を導入することができる。
【0150】
本明細書で開示する抗体は、哺乳動物を含む、動物の任意の種に由来することができる。天然抗体の非限定例としては、ヒト、霊長類、例えば、サル及び類人猿、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ラクダ科動物(例えば、ラクダ及びラマ)、ニワトリ、ヤギ、並びに、ヒト抗体を産生するように遺伝子組み換えされたトランスジェニック齧歯類を含む、齧歯類(例えば、ラット、マウス、ハムスター、及びウサギ)に由来する抗体が挙げられる。
【0151】
ヒト及びヒト化抗体としては、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する(又は、これに由来するものと同じアミノ酸配列を有する)可変及び定常領域を有する抗体が挙げられる。ヒト抗体としては、例えばCDR内に、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列(例えば、インビトロでのランダム若しくは部位特異的突然変異誘発、又はインビボでの体細胞突然変異により導入された変異)によりコードされないアミノ酸残基を挙げることができる。
【0152】
ヒト化抗体は、典型的には、非ヒトCDRが移植されたヒトフレームワーク(FR)を有する。したがって、ヒト化抗体は、非ヒトである源からヒトに導入された、1つ以上のアミノ酸配列を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は多くの場合、「インポート」残基と呼ばれ、典型的には、これは、「インポート」可変ドメインから取得される。ヒト化は、本質的には、例えば、齧歯類のCDR又はCDR配列を、ヒト抗体の対応する配列で置換することにより実施することができる。これらの方法は、例えば、Jones et al.「Replacing the complementarity-determining regions in a human antibody with those from a mouse.」Nature 321.6069(1986):522、Riechmann et al.「Reshaping human antibodies for therapy.」Nature 332.6162(1988):323、Dall’Acqua et al.「Antibody humanization by framework shuffling.」Methods 36.1(2005):43-60、に記載されており、これらそれぞれの全体が、本明細書に参照により組み込まれている。したがって、「ヒト化」抗体とは、実質的に、インタクトなヒトVドメイン未満が、非ヒト種に由来する、対応する配列により置換されている、キメラ抗体である。実際には、ヒト化抗体は、典型的には、いくつかのCDR残基、及び、いくつかのFR残基が、ヒト抗体内の類似の部位に由来する残基により置換されている、マウス抗体である。
【0153】
ヒト化抗体の製造で用いるヒトVH及びVLドメインの選択は、免疫原性を低減するために非常に重要である。いわゆる「ベストフィット」法に従うと、マウス抗体のVドメインの配列を、既知のヒトドメイン配列のライブラリー全体に対してスクリーニングする。次に、マウスの配列に最も近いヒト配列を、ヒト化抗体用のヒトFRとして受け入れる(Sims et al.「A humanized CD18 antibody can block function without cell destruction.」The Journal of Immunology 151.4(1993):2296-2308;Chothia,et al.,「Canonical structures for the hypervariable regions of immunoglobulins.」Journal of molecular biology 196.4(1987):901-917)。
【0154】
更に、抗原に対する高い特異性及び親和性、並びに、他の好ましい生物学的性質を保持したまま、抗体をヒト化することが重要である。この目標を達成するために、親及びヒト化配列の3次元モデルを使用する、親配列及び様々な概念的なヒト化生成物の分析プロセスにより、ヒト化抗体を調製することができる。3次元免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能であり、当業者によく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の、可能性のある3次元立体構造を図示して表示することができるコンピュータプログラムが、利用可能である。これらの表示を観察することで、候補免疫グロブリン配列の機能化における残基が取り得る役割の分析、即ち候補免疫グロブリンの、その抗原との結合能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、FR残基を、レシピエント及びインポート配列から選択して組み合わせることができ、所望の抗体特性、例えば、標的抗原に対する親和性の増大が達成される。
【0155】
通常、ヒト、ヒト化、又はキメラ抗TNFR2抗体のアミノ酸配列変異体は、元の抗体の軽鎖又は重鎖に存在する配列と、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性パーセントを有するアミノ酸配列を含有する。
【0156】
いくつかの実施形態において、ヒト化重鎖免疫グロブリン座位、及び、ヒト化κ鎖免疫グロブリン座位を有するマウス(例えば、RenMabマウス)を使用して、抗体を生成する。重鎖免疫グロブリン座位とは、抗体の重鎖に対する遺伝子を含有する、染色体上の領域である。座位は、例えば、ヒトIGHV(可変)遺伝子、ヒトIGHD(多様性)遺伝子、ヒトIGHJ(結合)遺伝子、及び、マウス重鎖定常ドメイン遺伝子を含むことができる。κ鎖免疫グロブリン座位とは、抗体の軽鎖(κ鎖)をコードする遺伝子を含有する、染色体上の領域である。κ鎖免疫グロブリン座位としては、例えば、ヒトIGKV(可変)遺伝子、ヒトIGKJ(結合)遺伝子、及び、マウス軽鎖定常ドメイン遺伝子を挙げることができる。RenMabマウスに関する詳細な説明は、PCT/CN2020/075698に見出すことができ、その全体が本明細書に参照により組み込まれている。マウスにより生成される抗体は、完全ヒトVH、完全ヒトVL、及び、マウス定常領域を有する。いくつかの実施形態において、ヒトVH及びヒトVLは、ヒトIgG定常領域(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4)に結合する。いくつかの実施形態において、定常領域は、配列番号76、77、78、又は90と、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一である配列を有する。
【0157】
元の配列に対する同一性又は相同性とは、通常、配列をアラインして、必要な場合、ギャップを導入し、最大のパーセント配列同一性を達成した後に、配列同一性の一部としての保存的置換を考慮しない、ヒト、ヒト化、又はキメラ抗TNFR2抗体又は断片内に存在する配列と同一である候補配列内に存在する、アミノ酸残基の割合である。
【0158】
抗TNFR2抗体又は抗原結合断片に、更なる修飾を加えることができる。例えば、システイン残基をFc領域に導入して、この領域内での、鎖間ジスルフィド結合形成を可能にすることができる。このように生成されたホモ二量体抗体は、なんらかの、増大したインビトロ及び/又はインビボ半減期を有し得る。例えば、Wolff et al.Wolff et al.(「Monoclonal antibody homodimers:enhanced antitumor activity in nude mice.」Cancer research 53.11(1993):2560-2565)に記載されているヘテロ二官能性架橋剤を用いてもまた、インビトロ及び/又はインビボ半減期が増大したホモ二量体抗体を調製することができる。あるいは、二重Fc領域を有する抗体を改変することができる。
【0159】
いくつかの実施形態において、抗TNFR2抗体又はその抗原結合断片に、共有結合修飾を加えることができる。これらの共有結合修飾は、化学若しくは酵素合成により、又は、酵素又は化学切断により加えることができる。抗体又は抗体断片の、他の種類の共有結合修飾を、抗体又は断片の標的とされたアミノ酸残基を、選択された側鎖、又は、N若しくはC末端残基と反応可能な、有機誘導体化剤と反応させることにより、分子に導入する。
【0160】
いくつかの実施形態において、Fc領域に(直接又は間接的に)結合したフコースを欠く炭水化物構造を有する抗体変異体を提供する。例えば、そのような抗体組成物におけるフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%、又は20%~40%であってもよい。フコースの量は、例えば、WO 2008/077546に記載のMALDI-TOF質量分析によって測定される、Asn297に結合した全ての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッド、及び高マンノース構造)の合計に対する、Asn297での糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定される。Asn297は、Fc領域内の位置297(Fc領域残基のEuの付番、又は、Kabatの付番における位置314)に位置するアスパラギン残基を指し、しかし、Asn297はまた、抗体における微小な配列変動に起因して、位置297から約±3アミノ酸の上流又は下流、即ち、位置294~位置300の間に位置してもよい。そのようなフコシル化変異体は、改善されたADCC機能を有し得る。いくつかの実施形態において、グリカンの不均質性を低減するために、抗体のFc領域を更に組み換え、位置297におけるアスパラギンをアラニンで置き換える(N297A)。
【0161】
いくつかの実施形態において、Fab-アーム交換を避けることで産生効率を促進するために、抗体のFc領域を更に組み換え、IgG4の位置228(EUの付番)におけるセリンを、プロリンで置き換える(S228P)。S228変異に関する詳細の説明は、例えば、Silva et al.「The S228P mutation prevents in vivo and in vitro IgG4 Fab-arm exchange as demonstrated using a combination of novel quantitative immunoassays and physiological matrix preparation.」Journal of Biological Chemistry 290.9(2015):5462-5469で説明されており、その全体が参照により組み込まれている。
組み換えベクター
本開示はまた、本明細書で開示される単離ポリヌクレオチド(例えば、本明細書で開示されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド)を含む組み換えベクター(例えば、発現ベクター)、組み換えベクターが導入された宿主細胞(即ち、当該宿主細胞が、ポリヌクレオチド、及び/又は、ポリヌクレオチドを含むベクターを含有するように)、並びに、組み換え技術による、組み換え抗体ポリペプチド又はその断片の産生を提供する。
【0162】
本明細書で使用する場合、「ベクター」とは、ベクターが宿主細胞に導入されたときに、宿主細胞に、対象となる1つ以上のポリヌクレオチドを送達することができる、任意のコンストラクトである。「発現ベクター」は、対象となる1つ以上のポリヌクレオチドを、発現ベクターが導入されている宿主細胞内で、コードされたポリペプチドとして送達し、発現することが可能である。したがって、発現ベクター内では、対象となるポリヌクレオチドが、発現ベクターと共に導入された宿主細胞内で翻訳されるように、対象となるポリヌクレオチドの組み込み部位において、又はこの付近で、又はこれに隣接して、ベクター内、又は宿主細胞のゲノムのいずれかにて、プロモーター、エンハンサー、及び/又はポリAテールなどの制御エレメントと作動可能に結合されることにより、ベクター内での発現のために、対象となるポリヌクレオチドが配置される。
【0163】
当該技術分野において周知の方法、例えば、電気穿孔法、化学トランスフェクション(例えば、DEAE-デキストラン)、形質転換、トランスフェクション、並びに、感染及び/又は形質導入(例えば、組み換えウイルスによる)により、ベクターを宿主細胞に導入することができる。したがって、ベクターの非限定例としては、ウイルスベクター(組み換えウイルスを生成するために使用可能なもの)、ネイキッドDNA又はRNA、プラスミド、コスミド、ファージベクター、及び、カチオン性縮合剤と会合したDNA又はRNA発現ベクターが挙げられる。
【0164】
いくつかの実施態様において、本明細書で開示されるポリヌクレオチド(例えば、本明細書で開示されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド)を、ウイルス発現系(例えば、痘疹若しくは他のポックスウイルス、レトロウイルス、又はアデノウイルス)を用いて導入し、これには、非病原性(欠損型)の複製可能なウイルスの使用を伴う場合があるか、又は、複製不能ウイルスを用いる場合がある。後者の場合、ウイルス増殖は一般的に、補完的なウイルスパッケージング細胞においてのみ生じる。例えば、Fisher-Hoch et al.,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:317-321、Flexner et al.,1989,Ann.N.Y.Acad Sci.569:86-103、Flexner et al.,1990,Vaccine,8:17-21、米国特許第4,603,112号、同第4,769,330号、及び同第5,017,487号、WO 89/01973、米国特許第4,777,127号、GB 2,200,651、EP 0,345,242、WO 91/02805、Berkner-Biotechniques,6:616-627,1988;Rosenfeld et al.,1991,Science,252:431-434;Kolls et al.,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91:215-219;Kass-Eisler et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:11498-11502;Guzman et al.,1993,Circulation,88:2838-2848;and Guzman et al.,1993,Cir.Res.,73:1202-1207において、好適なシステムが開示されている。DNAを、このような発現系に組み込む技術は、当業者に周知である。DNAはまた、例えば、Ulmer et al.,1993,Science,259:1745-1749,and Cohen,1993,Science,259:1691-1692に記載されているように、「ネイキッド」であってもよい。DNAを、細胞に効率的に輸送される生分解性ビーズにコーティングすることにより、ネイキッドDNAの取り込みを増大させることができる。
【0165】
発現のために、本明細書で開示する、抗体をコードする、又は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むDNAインサートを、いくつかの例を挙げると、ファージλPLプロモーター、大腸菌lac、trp及びtacプロモーター、SV40初期及び後期プロモーター、並びに、レトロウイルス型LTRのプロモーターなどの適切なプロモーター(例えば、異種プロモーター)に作動可能に連結することができる。他の好適なプロモーターが、当業者には既知である。いくつかの実施形態において、プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターである。発現コンストラクトは更に、転写開始及び終了のための部位、並びに、転写領域内に、翻訳のためのリボソーム結合部位を含有することができる。コンストラクトにより発現した成熟転写物のコード部分は、先頭に翻訳開始、及び翻訳されるポリペプチドの末端部におおよそ配置される終止コドン(UAA、UGAまたはUAG)を含むことができる。
【0166】
示したように、発現ベクターは、少なくとも1つの選択可能なマーカーを含むことができる。このようなマーカーとしては、真核細胞培養のためのジヒドロ葉酸レダクターゼ、又はネオマイシン耐性、並びに大腸菌及び他の細菌培養のためのテトラサイクリン又はアンピシリン耐性遺伝子が挙げられる。適切な宿主の代表例としては、大腸菌、ストレプトミセス、及びネズミチフス菌細胞などの細菌細胞、酵母細胞などの真菌細胞、ショウジョウバエS2及びハスモンヨトウSf9細胞などの昆虫細胞、CHO、COS、Bowes黒色腫、及びHK 293細胞などの動物細胞、並びに、植物細胞が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載する宿主細胞に対する、適切な培養培地及び条件は、当該技術分野において周知である。
【0167】
細菌で用いるための非限定的なベクターとしては、Qiagenから入手可能なpQE70、pQE60及びpQE-9、Stratageneから入手可能なpBSベクター、Phagescriptベクター、Bluescriptベクター、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A;及び、Pharmaciaから入手可能なptrc99a、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、pRIT5が挙げられる。非限定的な真核細胞ベクターとしては、Stratageneから入手可能なpWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXT1、及びpSG、並びに、Pharmaciaから入手可能なpSVK3、pBPV、pMSG、及びpSVLが挙げられる。他の好適なベクターは、当業者には容易に明らかであろう。
【0168】
使用に好適な、非限定的な細菌プロモーターとしては、大腸菌lacI及びlacZプロモーター、T3及びT7プロモーター、gptプロモーター、λPR及びPLプロモーター、並びにtrpプロモーターが挙げられる。好適な真核細胞プロモーターとしては、CMV前初期プロモーター、HSVチミジンキナーゼプロモーター、初期及び後期SV40プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)のものなどの、レトロウイルス型LTRのプロモーター、及び、マウスメタロチオネイン-Iプロモーターなどのメタロチオネインプロモーターが挙げられる。
【0169】
酵母菌サッカロマイセス・セレヴィシエにおいて、アルファ因子、アルコールオキシダーゼ、及びPGHなどの、体質性又は誘導性プロモーターを含有する、いくつかのベクターを使用することができる。
【0170】
コンストラクトの宿主細胞への導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介性トランスフェクション、カチオン性脂質媒介性トランスフェクション、電気穿孔法、形質導入、感染、又は他の方法により行うことができる。このような方法は、Davis et al.,Basic Methods In Molecular Biology(1986)などの、多くの標準的な実験室用マニュアルに記載されており、その全体が本明細書に参照により組み込まれている。
【0171】
より多くの真核生物による、本開示の抗体をコードするDNAの転写は、エンハンサー配列をベクターに挿入することで増大させることができる。エンハンサーは、通常、所与の宿主細胞型において、プロモーターの転写活性を増大させる役割を果たす、約10~300bpの、DNAのcis作用型エレメントである。エンハンサーの例としては、塩基対100~270において、複製起点の後ろ側に位置する、SV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後ろ側のポリオーマエンハンサー、及び、アデノウィルスエンハンサーが挙げられる。
【0172】
翻訳されたタンパク質を、小胞体の内腔、ペリプラズム空間、又は、細胞外環境に分泌させるために、適切な分泌シグナルを、発現したポリペプチドに組み込むことができる。シグナルは、ポリペプチドに対して内因性であることができる、又は、シグナルは、異種シグナルであることができる。
【0173】
ポリペプチド(例えば、抗体)は、融合タンパク質(例えば、GST融合物)などの修飾形態で、又は、ヒスチジンタグにより発現することができ、分泌シグナルだけでなく、追加の異種機能領域もまた含むことができる。例えば、追加のアミノ酸、特に、荷電アミノ酸の領域を、ポリペプチドのN末端に付加して、精製中に、又は、その後の取り扱い及び貯蔵の間に、宿主細胞での安定性及び耐久力を改善することができる。また、ペプチド部分をポリペプチドに付加して、精製を促進することができる。このような領域は、ポリペプチドの最終調製前に取り除くことができる。ペプチド部分をポリペプチドに付加して、とりわけ、分泌又は排泄を生じさせ、安定性を改善し、精製を促進することは、周知かつ日常的な当該技術である。
治療方法
本開示の抗体又はその抗原結合断片を、様々な治療目的のために使用することができる。
【0174】
一態様では、本開示は、対象における癌の治療方法、対象における腫瘍体積の増加速度を、経時的に下げる方法、転移が生じるリスクを軽減する方法、又は、対象において更なる転移が生じるリスクを軽減する方法を提供する。いくつかの実施形態において、治療によって、癌の進行を中断させる、遅くする、阻止する、又は阻害することができる。いくつかの実施形態において、治療によって、対象における癌の1つ以上の症状の数、重症度、及び/又は持続期間の軽減をもたらすことができる。
【0175】
一態様では、本開示は、治療に有効な量の、本明細書で開示される抗体又はその抗原結合断片を、必要とする対象(例えば、癌、例えば、乳癌(例えば、トリプルネガティブ乳癌)、カルチノイド癌、子宮頸癌、子宮体癌、神経系癌、頭頸癌、肝癌、肺癌、小細胞肺癌、リンパ腫、黒色腫、卵巣癌、膵癌、前立腺癌、腎癌、結腸直腸癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、膀胱癌、尿道癌、又は悪性血液疾患を有する、又は、これを有すると同定若しくは診断された対象)に投与することを含む方法に関する。いくつかの実施形態において、癌は、切除不能な黒色腫若しくは転移性黒色腫、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞肺癌(SCLC)、膀胱癌、又は、転移性ホルモン不応性前立腺癌である。いくつかの実施形態において、対象は、充実性腫瘍を患う。いくつかの実施形態において、癌は、頭頸部の扁平上皮細胞癌(SCCHN)、腎細胞癌(RCC)、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、又は結腸癌である。いくつかの実施形態において、対象はホジキンリンパ腫を患う。いくつかの実施形態において、対象は、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、胃癌、尿路上皮癌、メルケル細胞癌、又は頭頸癌を患う。いくつかの実施形態において、癌は、黒色腫、膵臓癌、中皮腫、神経膠腫、血液悪性腫瘍、特に、非ホジキンリンパ腫、リンパ腫、慢性リンパ性白血病、又は進行性充実性腫瘍である。
【0176】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される組成物及び方法を、癌のリスクを有する患者の治療に用いることができる。癌を患う患者は、当該技術分野において周知の様々な方法で同定することができる。
【0177】
いくつかの態様において、本開示は、自己免疫疾患又は炎症の治療方法であって、上記方法は、上記対象に、有効量の本明細書に記載される抗体又はその抗原結合断片、又は、本明細書に記載される抗体薬物コンジュゲートを含む組成物を投与することを含む、方法に関する。
【0178】
一態様では、本開示は、例えば、Tregの機能に影響を及ぼすことによる、異常な、又は望ましくない免疫応答、例えば、自己免疫疾患と関連する障害の治療、予防、又は、この発症リスクの軽減方法を提供する。これらの自己免疫疾患としては、円形脱毛症、狼瘡、強直性脊椎炎、メニエール病、抗リン脂質症候群、混合性結合織疾患、自己免疫性アジソン病、多発性硬化症、自己免疫性溶血性貧血、重症筋無力症、自己免疫性肝炎、尋常天疱瘡、ベーチェット病、悪性貧血、水疱性類天疱瘡、結節性多発性関節炎、心筋症、多発軟骨炎、腹腔スプルー皮膚炎、多腺性症候群、慢性疲労症候群(CFIDS)、リウマチ性多発筋痛、慢性炎症性脱髄、多発性筋炎及び皮膚筋炎、慢性炎症性多発神経障害、原発性無ガンマグロブリン血症、チャーグ・ストラウス症候群、原発性胆汁性肝硬変、瘢痕性類天疱瘡、乾癬、クレスト症候群、レイノー現象、寒冷凝集素疾患、ライター症候群、クローン病、リウマチ熱、円板状ループス、関節リウマチ、寒冷グロブリン血症サルコイドーシス、線維筋痛、強皮症、グレーブス病、シェーグレン症候群、ギラン・バレー、スティッフマン症候群、橋本甲状腺炎、高安動脈炎、特発性肺胞線維症、側頭動脈炎/巨細胞動脈炎、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、潰瘍性大腸炎、IgA腎症、ぶどう膜炎、糖尿病(例えば、I型)、血管炎、扁平苔癬、及び白斑が挙げられるが、これらに限定されない。抗TNFR2抗体又はその抗原結合断片をまた、対象に投与して、細胞、組織、又は臓器移植と関連する異常な、又は望ましくない免疫応答と関連する障害、例えば、腎臓、肝臓、及び心臓移植、例えば、移植片対宿主拒絶反応(GVHD)を治療、予防する、又は、それが進行するリスクを軽減することができる、あるいは同種移植片拒絶を予防することができる。いくつかの実施形態において、対象は、クローン病、潰瘍性大腸炎、又は1型糖尿病を患う。いくつかの実施形態において、抗体又は抗原結合断片を用いて、炎症を治療することができる。
【0179】
いくつかの実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、TNFR2アゴニストである。
【0180】
いくつかの態様において、本開示は、対象における免疫応答の阻害方法であって、上記方法は、上記対象に、有効量の本明細書に記載される抗体又はその抗原結合断片、又は、本明細書に記載される抗体薬物コンジュゲートを含む組成物を投与することを含む、方法に関する。いくつかの実施形態において、対象は、自己免疫疾患を患う。
【0181】
本明細書で使用される場合、「有効量」とは、疾患、例えば、癌の進行を中断する、遅らせる、阻止する、又は阻害することを含む、有益な、又は所望の結果をもたらすのに十分な量又は用量を意味する。有効量は、例えば、抗体、抗原結合断片、抗体をコードするポリヌクレオチド、そのポリヌクレオチドを含むベクター、及び/又はその組成物が投与される対象の年齢及び体重、症状の重症度、並びに投与経路に応じて変化し、故に、投与は、個別に決定することができる。
【0182】
有効量は、1回以上の投与で投与することができる。例えば、有効量の抗体又は抗原結合断片とは、患者における自己免疫疾患若しくは癌の進行を緩和する、停止する、安定させる、逆転させる、阻害する、遅くする、及び/若しくは遅延させるのに十分な量、又は、インビトロで、細胞(例えば、生検細胞、本明細書に記載される癌細胞のいずれか、若しくは細胞株(例えば、癌細胞株))の増殖を緩和する、停止する、安定させる、逆転させる、遅くする、及び/若しくは遅延させるのに十分な量である。当該技術分野において理解されるように、有効量の抗体又は抗原結合断片は、とりわけ、患者の病歴、加えて、用いた抗体の種類(及び/又は用量)などの、他の因子に応じて変化する場合がある。
【0183】
本明細書で開示される抗体、抗体をコードするポリヌクレオチド、及び/又は組成物を投与するための有効量及びスケジュールは、実験によって決定することができ、このような決定を行うことは、当業者の範囲内である。当業者は、投与される必要がある用量は、例えば、本明細書で開示される抗体、抗体をコードするポリヌクレオチド、及び/若しくは組成物を受ける哺乳動物、投与経路、抗体の具体的な種類、抗体をコードするポリヌクレオチド、抗原結合断片、並びに/又は、使用される、本明細書で開示される組成物、及び、哺乳動物に投与される他の薬剤に応じて変化することを理解するであろう。
【0184】
有効量の抗体の、典型的な日用量は、0.01mg/kg~100mg/kg(患者の体重1kg当たりのmg)である。いくつかの実施形態において、用量は、100mg/kg、50mg/kg、40mg/kg、30mg/kg、25mg/kg、20mg/kg、10mg/kg、9mg/kg、8mg/kg、7mg/kg、6mg/kg、5mg/kg、4mg/kg、3mg/kg、2mg/kg、1mg/kg、0.5mg/kg、0.3mg/kg、又は0.1mg/kg未満であることができる。いくつかの実施形態において、用量は、50mg/kg、40mg/kg、30mg/kg、20mg/kg、10mg/kg、9mg/kg、8mg/kg、7mg/kg、6mg/kg、5mg/kg、4mg/kg、3mg/kg、2mg/kg、1mg/kg、0.5mg/kg、0.3mg/kg、0.1mg/kg、0.05mg/kg、又は0.01mg/kg超であることができる。いくつかの実施形態において、用量は、約50mg/kg、40mg/kg、30mg/kg、25mg/kg、20mg/kg、10mg/kg、9mg/kg、8mg/kg、7mg/kg、6mg/kg、5mg/kg、4mg/kg、3mg/kg、2mg/kg、1mg/kg、0.9mg/kg、0.8mg/kg、0.7mg/kg、0.6mg/kg、0.5mg/kg、0.4mg/kg、0.3mg/kg、0.2mg/kg、又は0.1mg/kgである。
【0185】
本明細書に記載される方法のいずれかでは、少なくとも1つの抗体、その抗原結合断片、又は医薬組成物(例えば、本明細書に記載する抗体、抗原結合断片、又は医薬組成物のいずれか)、並びに、任意選択的に、少なくとも1つの追加の治療剤を、対象に、少なくとも週に1回(例えば、週に1回、週に2回、週に3回、週に4回、1日1回、1日2回、又は1日3回)投与することができる。いくつかの実施形態において、少なくとも2つの異なる抗体及び/又は抗原結合断片は、同じ組成物(例えば、液体組成物)で投与される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの抗体又は抗原結合断片、及び、少なくとも1つの追加の治療剤は、同じ組成物(例えば、液体組成物)で投与される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの抗体又は抗原結合断片、及び、少なくとも1つの追加の治療剤は、2つの異なる組成物(例えば、少なくとも1つの抗体又は抗原結合断片を含有する液体組成物、及び、少なくとも1つの追加の治療剤を含有する固体口腔用組成物)で投与される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の治療剤は、丸薬、錠剤、又はカプセルとして投与される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの追加の治療剤は、徐放性経口製剤で投与される。
【0186】
いくつかの実施形態において、1つ以上の追加の治療剤を、少なくとも1つの抗体、抗原結合抗体断片、又は医薬組成物(例えば、本明細書に記載される抗体、抗原結合抗体断片、又は医薬組成物のいずれか)を投与する前、又は、投与した後に、対象に投与することができる。いくつかの実施形態において、1つ以上の追加の治療剤、及び、少なくとも1つの抗体、抗原結合抗体断片、又は医薬組成物(例えば、本明細書に記載される抗体、抗原結合抗体断片、又は医薬組成物のいずれか)は、対象内で、1つ以上の追加の治療剤の生物活性期間と、少なくとも1つの抗体又は抗原結合断片(例えば、本明細書に記載される抗体又は抗原結合断片のいずれか)の生物活性期間に、重なりが生じるように、対象に投与される。
【0187】
いくつかの実施形態において、長期間にわたり(例えば、少なくとも1週間、2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、1年、2年、3年、4年、又は5年の期間にわたり)、少なくとも1つの抗体、抗原結合抗体断片、又は医薬組成物(例えば、本明細書に記載する抗体、抗原結合抗体断片、又は医薬組成物のいずれか)を、対象に投与することができる。熟練した医療専門家は、治療の有効性を診断する、又は追跡する(例えば、癌の少なくとも1つの症状を観察する)ために、本明細書に記載の方法のいずれかを用いて治療期間の長さを決定することができる。本明細書に記載されるように、熟練した医療専門家はまた、対象に投与される抗体若しくは抗原結合抗体断片(及び/又は、1つ以上の追加の治療剤)の同一性及び数を変化させる(例えば、増加又は減少させる)ことができ、また、(例えば、本明細書に記載の、及び、当該技術分野において周知の方法のいずれかを用いる)治療の有効性の評価に基づき、対象への、少なくとも1つの抗体若しくは抗原結合抗体断片(及び/又は、1つ以上の追加の治療剤)の投与用量又は頻度を調整する(例えば、増加又は減少させる)ことができる。
【0188】
いくつかの実施形態において、1つ以上の追加の治療剤を、対象に投与することができる。追加の治療剤は、B-Rafの阻害剤、EGFR阻害剤、MEKの阻害剤、ERKの阻害剤、K-Rasの阻害剤、c-Metの阻害剤、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)の阻害剤、ホスファチジルイノシトール 3-キナーゼ(PI3K)の阻害剤、Aktの阻害剤、mTORの阻害剤、二重PI3K/mTOR阻害剤、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害剤、並びに、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ1(IDH1)及び/又はイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2(IDH2)の阻害剤からなる群から選択される1つ以上の阻害剤を含むことができる。いくつかの実施形態において、追加の治療剤は、インドールアミン 2,3-ジオキシゲナーゼ-1(IDO1)の阻害剤(例えば、エパカドスタット)である。
【0189】
いくつかの実施形態において、追加の治療剤は、HER3の阻害剤、LSD1の阻害剤、MDM2の阻害剤、BCL2の阻害剤、CHK1の阻害剤、活性化ヘッジホッグシグナル伝達経路の阻害剤、及び、エストロゲン受容体を選択的に分解する薬剤からなる群から選択される1つ以上の阻害剤を含むことができる。
【0190】
いくつかの実施形態において、追加の治療剤は、トラベクテジン、nab-パクリタキセル、トレバナニブ、パゾパニブ、セディラニブ、パルボシクリブ、エベロリムス、フルオロピリミジン、IFL、レゴラフェニブ、レオリシン、アリムタ、ジカイダ、スーテント、テムシロリムス、アキシチニブ、エベロリムス、ソラフェニブ、ヴォトリエント、パゾパニブ、IMA-901、AGS-003、カボザンチニブ、ビンフルニン、Hsp90阻害剤、Ad-GM-CSF、テモゾロミド、IL-2、IFNa、ビンブラスチン、サロミド、ダカルバジン、シクロホスファミド、レナリドマイド、アザシチジン、レナリドマイド、ボルテゾミブ、アムルビシン、カルフィルゾミブ、プララトレキサート、及びエンザスタウリンからなる群から選択される1つ以上の治療剤を含むことができる。
【0191】
いくつかの実施形態において、追加の治療剤は、アジュバント、TLRアゴニスト、IL-1、HMGB1、IL-10アンタゴニスト、IL-4アンタゴニスト、IL-6アンタゴニスト(例えば、IL-6受容体)、IL-13アンタゴニスト、IL-17アンタゴニスト、HVEMアンタゴニスト、ICOSアゴニスト、CX3CL1を標的とする治療、CXCL9を標的とする治療、CXCL10を標的とする治療、CCL5を標的とする治療、LFA-1アゴニスト、ICAM1アゴニスト、及びセレクチンアゴニストからなる群から選択される1つ以上の治療剤を含むことができる。
【0192】
いくつかの実施形態において、カルボプラチン、nab-パクリタキセル、パクリタキセル、シスプラチン、ペメトレキセド、ゲムシタビン、FOLFOX、又はFOLFIRIが、対象に投与される。
【0193】
いくつかの実施形態において、追加の治療剤は、抗OX40抗体、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗PD-L2抗体、抗LAG-3抗体、抗TIGIT抗体、抗BTLA抗体、抗CTLA-4抗体、抗GITR抗体、抗TIM-3抗体、又は抗CD40抗体である。
医薬組成物及び投与経路
本明細書に記載される抗体又は抗原結合断片のいずれかの、1つ以上(例えば、1、2、3、又は4つ)が、任意の組み合わせで、医薬組成物に存在することができる。本明細書に記載される抗体又は抗原結合断片のいずれかの、2つ以上(例えば、2、3、又は4つ)が、任意の組み合わせで、医薬組成物に存在することができる。医薬組成物は、当該技術分野において周知の任意の様式で、製剤化することができる。
【0194】
医薬組成物は、その意図する投与経路(例えば、静脈内、動脈内、筋肉内、皮内、皮下、又は腹腔内)と適合性を有するように、製剤化される。組成物は、無菌希釈剤(例えば、無菌水若しくは生理食塩水)、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶剤、抗菌若しくは抗カビ剤(例えば、ベンジルアルコール若しくはメチルパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなど)、酸化防止剤(アスコルビン酸若しくは亜硫酸水素ナトリウムなど)、キレート剤(エチレンジアミン四酢酸など)、緩衝剤(アセテート、シトレート、若しくはホスフェートなど)、及び、等張剤(例えば、糖類(例えば、デキストロース)、ポリアルコール(例えば、マンニトール若しくはソルビトール)、若しくは塩類(例えば、塩化ナトリウム))、又はこれらの任意の組み合わせを含むことができる。リポソーム懸濁液もまた、薬学的に許容される担体として使用可能である。組成物の調製物は、アンプル、使い捨てシリンジ、又は複数回投与用バイアルに製剤化し、封入することができる。必要な場合(例えば、注射可能な製剤におけるように)、適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング、又は界面活性剤を用いることにより、維持することができる。吸収を遅らせる剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン)を含めることにより、抗体又はその抗原結合断片の吸収を長くすることができる。あるいは、徐放は、インプラント及びマイクロカプセル化デリバリーシステムによって達成することができ、これらとしては、生分解性・生体適合性ポリマー(例えば、エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸)を挙げることができる。
【0195】
本明細書に記載される抗体又は抗原結合断片のいずれかの1つ以上を含有する組成物は、単位剤形(即ち、投与を容易にし、用量を均一にするための、所定量の活性化合物を含有する、物理的に別個の単位)で、非経口(例えば、静脈内、動脈内、筋肉内、皮内、皮下、又は腹腔内)投与のために製剤化することができる。
【0196】
非経口投与のための医薬組成物は、好ましくは滅菌されており、実質的に等張性であり、グッドマニュファクチャリングプラクティス(GMP)条件の下で製造される。医薬組成物は、単位剤形(即ち、単回投与のための用量)で提供され得る。医薬組成物は、1つ以上の生理学的に許容される担体、希釈物質、賦形剤、又は補助剤を使用して製剤化することができる。製剤化は、選ばれた投与経路に依存する。注射のために、抗体は、水溶液中で、好ましくは、生理学的に適合性の緩衝液中で製剤化し、注射部位における不快感を軽減することができる。溶液は、懸濁化剤、安定化剤、及び/又は分散剤などの配合剤を含有することができる。あるいは、抗体は、使用前に、好適なビヒクル、例えば、無菌のパイロジェンフリーの水と共に構築するための、凍結乾燥形態であることができる。
【0197】
組成物の毒性及び治療効果は、細胞培養液又は実験用動物(例えば、サル)における、標準的な薬学的手順により決定することができる。例えば、LD50(集団の50%に対して致死性の用量)、及び、ED50(集団の50%において治療に有効な用量)を決定することができ、治療指数は、LD50:ED50の比率である。高い治療指数を示す薬剤が好ましい。薬剤が、望ましくない副作用を示す場合、損害の可能性を最低限に抑える(即ち、望ましくない副作用を軽減する)ためのケアを取る必要がある。毒性及び治療効果は、他の標準的な薬学的手順により決定することができる。
【0198】
細胞培養アッセイ及び動物研究から入手したデータを、対象(例えば、ヒト)で用いるための、任意の所与の剤の適切な用量の製剤化において使用することができる。治療に有効な量の、1つ以上の(例えば、1、2、3、又は4つ)の抗体又はその抗原結合断片(例えば、本明細書に記載される抗体又は抗体断片のいずれか)は、対象(例えば、癌を有すると同定されたヒト対象)、又は、疾患を発症するリスクがあると同定された対象(例えば、以前に癌を発症したが、現在は治癒している対象)において、対象の疾患を治療する(例えば、癌細胞を殺傷する)量、対象(例えば、ヒト)における、疾患の1つ以上の症状の重症度、頻度、及び/又は持続時間を低減する量である。本明細書に記載される抗体又は抗原結合断片のいずれかの有効性及び投与は、当該技術分野において周知の方法を使用して、健康管理の専門家又は獣医学の専門家により、加えて、対象(例えば、ヒト)における疾患の1つ以上の症状を観察することにより、決定することができる。ある特定の因子は、対象を効果的に治療するのに必要な用量及びタイミング(例えば、疾患又は障害の重症度、以前の治療、対象の総体的な健康及び/又は年齢、並びに、他の疾患の存在)に影響を及ぼし得る。
【0199】
例示的な用量としては、対象の体重1キログラム当たりの、本明細書に記載される抗体又は抗原結合断片のいずれかの量(ミリグラム又はマイクログラム)(例えば、約1μg/kg~約500mg/kg、約100μg/kg~約500mg/kg、約100μg/kg~約50mg/kg、約10μg/kg~約5mg/kg、約10μg/kg~約0.5mg/kg、約1μg/kg~約50μg/kg、約0.3mg/kg~約25mg/kg、約1mg/kg~約10mg/kg、又は、約1mg/kg~約5mg/kg)が挙げられる。これらの用量は広範囲をカバーしているものの、抗体及びその抗原結合断片を含む治療剤は、これらの効能、及び有効量を、当該技術分野において周知の方法により決定することができることを、当業者は理解するであろう。典型的には、比較的低用量をまず投与し、担当の健康管理の専門家若しくは獣医学の専門家(治療用途の場合)、又は、研究者(依然として開発段階で働いている場合)が続けて、及び徐々に、適切な応答が得られるまで、用量を増大させることができる。加えて、任意の特定の対象に対する、具体的な用量レベルは、用いる具体的な化合物の活性、対象の年齢、体重、総体的な健康、性別、及び食事、投与時間、投与経路、排泄速度、並びに、インビボでの抗体又は抗体断片の半減期を含む様々な因子に依存すると理解されている。
【0200】
医薬組成物は、容器、パック、又はディスペンサーに、投与用の取扱説明書と共に含めることができる。本開示は、本明細書に記載される様々な用途のための、抗体又はその抗原結合断片の製造方法もまた提供する。
実施例
本発明を以下の実施例で更に説明し、これらは、特許請求の範囲に記載する本発明の範囲を限定するものではない。

実施例1.抗hTNFR2抗体の生成
ヒトTNFR2(TNFR2、配列番号1)に対する抗体を生成するために、RenMabマウスに、ヒトTNFR2を免疫付与した。後述の方法により、抗TNFR2抗体を製造した。
【0201】
RenMabマウスは、ヒト化重鎖免疫グロブリン座位、及び、ヒト化κ鎖免疫グロブリン座位の両方を有する。重鎖免疫グロブリン座位とは、抗体の重鎖に対する遺伝子を含有する、染色体上の領域である。座位は、IGHV(可変)、IGHD(多様性)、IGHJ(結合)、及び重鎖定常ドメイン遺伝子を含む。κ鎖免疫グロブリン座位とは、抗体の軽鎖(κ鎖)をコードする遺伝子を含有する、染色体上の領域である。κ鎖免疫グロブリン座位は、IGKV(可変)、IGKJ(結合)、及び軽鎖定常ドメイン遺伝子を含む。RenMabマウスに関する詳細な説明は、PCT/CN2020/075698に見出すことができ、その全体が本明細書に参照により組み込まれている。
マウスの免疫付与
RenMabマウスに、Fcタグ化ヒトTNFR2タンパク質を免疫付与した(Fc融合タンパク質は、配列番号1の位置23aa~257aaに、ヒトTNFR2細胞外ドメインを含有する)。Fcタグ化ヒトTNFR2タンパク質をアジュバントで乳化し、マウスの背中の4箇所に注射した。最初の皮下(s.c.)注射のために、希釈した抗原を、等体積の完全フロイントアジュバント(CFA)で乳化した。その後の皮下注射では、タンパク質を、等体積の不完全フロイントアジュバント(IFA)で乳化した。少なくとも4回の注射を、注射2回毎に少なくとも14日の間隔で実施した。3回目の注射、又はブースター免疫付与の7日後に、血液(血清)を収集し、蛍光励起細胞分取(FACS)を用いて、抗体力価を分析した。
【0202】
別の実験では、ヒトTNFR2をコードする発現プラスミドをマウスに注射することにより、マウスを数匹免疫付与した。抗原をコードするプラスミドを、前脛骨筋に注射した(筋肉注射、i.m.注射)。少なくとも4回の注射を、注射2回毎に少なくとも14日の間隔で実施した。最後の免疫付与の7日後に血液(血清)を収集し、ELISAにより、血清の抗体力価を試験した。
【0203】
免疫付与の、少なくとも14日後に、(プラスミドを注射する、又は、タンパク質を注射するいずれかにより)免疫付与を向上させる手順を実施した。表面にTNFR2抗原を発現するCHO細胞を、尾静脈を通してマウスに静脈内注射した。注射の4日後に、免疫系臓器(例えば、骨髄、リンパ節、脾臓など)を収集した。
【0204】
脾臓細胞を収集し、マウス骨髄腫細胞と融合させて、生存能を維持しながらハイブリドーマ細胞株を形成した。ハイブリドーマ細胞をスクリーニングし、選択して、TNFR2特異的抗体を産生した細胞株を同定した。本技術、及び、前述の免疫原を用いて、いくつかの抗TNFR2キメラ抗体(即ち、ヒト可変ドメインとマウス定常ドメインを有する抗体)を入手した。具体的には、刺激免疫付与の後、マウスの免疫臓器を回収し、磁気ビーズにより形質細胞を分離した。ハイブリドーマ融合技術を用いて、抗原特異的モノクローナル抗体を分泌するモノクローナルハイブリドーマ細胞を選別して除外した。選択したモノクローナルハイブリドーマ細胞での逆転写及びPCR配列決定により、抗体の軽鎖及び重鎖V領域配列を入手した。抗体の軽鎖及び重鎖V領域配列を、抗体発現ベクター内で構築し、Expi CHO-STM CELL発現系により検証した。細胞を24ウェル系にトランスフェクトし、血清中で、3日目に、抗体を収集した。FACSを用いて、抗体とTNFR2との間での結合の特異性を検証した。本技術を用いて、いくつかの抗TNFR2キメラ抗体(即ち、ヒト可変ドメインとマウス定常ドメインを有する抗体)を入手した。これらの抗体の定常ドメインを、容易に置き換えて、完全ヒト抗TNFR2抗体(抗hTNFR2抗体)を得ることができる。本方法により入手される例示的な完全ヒト抗体は、以下の通りに名前が付けられる:14-1B3-hHvKv(「14-1B3」又は「1B3」)、及び、14-4A9-hHvKv(「14-4A9」又は「4A9」)。一例として、抗体VH\VLが、IgG1亜型などの、異なる亜型に接続する場合、14-4A9-hHvKvを用いて、抗体は、14-4A9-hHvKv-IgG1と名付けられる。
【0205】
抗原陽性B細胞をまた、骨髄腫細胞との融合を行うことなく、免疫付与したマウスから直接単離した。抗TNFR2抗体を更に、抗原陽性B細胞から単離した。抗体の軽鎖及び重鎖V領域配列を、抗原陽性B細胞から直接単離した。例えば、シングルセル技術(例えば、Beacon(登録商標) Optofluidic System、Berkeley Lights Inc.)を使用して、抗原特異的モノクローナル抗体を分泌する形質細胞をスクリーニングし、発見した。逆転写及びPCR配列決定を用いて、抗体V領域配列を入手した。抗体が発現された。FACSを用いて、抗体とTNFR2との間での結合を検証した。本方法により入手した例示的抗体としては、BC-1A8(「1A8」)、BC-1B6(「1B6」)、BC-1C3(「1C3」)、BC-1F4(「1F4」)、BC-1F10(「1F10」)、BC-3B7(「3B7」)が挙げられる。BC-1F4を例に取ると、抗体VH\VLが、IgG1亜型などの、異なる亜型に接続する場合、抗体は、BC-1F4-IgG1と名付けられる。他の亜型の例は、以下の通りである:BC-1F4-IgG1-SI、BC-1F4-IgG1-LALA。
【0206】
1A8に対する、重鎖及び軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列を、配列番号6~11(Kabatの付番)、又は、配列番号42~47(Chothiaの付番)に示した。抗体のヒト重鎖可変領域及びヒト軽鎖可変領域を、配列番号36又は配列番号37に示した。
【0207】
1B6に対する、重鎖及び軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列を、配列番号12~17(Kabatの付番)、又は、配列番号48~53(Chothiaの付番)に示した。抗体のヒト重鎖可変領域及びヒト軽鎖可変領域を、配列番号38又は配列番号39に示した。
【0208】
1C3に対する、重鎖及び軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列を、配列番号18~23(Kabatの付番)、又は、配列番号54~59(Chothiaの付番)に示した。抗体のヒト重鎖可変領域及びヒト軽鎖可変領域を、配列番号40又は配列番号41に示した。
【0209】
1F4に対する、重鎖及び軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列を、配列番号24~29(Kabatの付番)、又は、配列番号60~65(Chothiaの付番)に示した。抗体のヒト重鎖可変領域及びヒト軽鎖可変領域を、配列番号72又は配列番号73に示した。
【0210】
1F10に対する、重鎖及び軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列を、配列番号30~35(Kabatの付番)、又は、配列番号66~71(Chothiaの付番)に示した。抗体のヒト重鎖可変領域及びヒト軽鎖可変領域を、配列番号74又は配列番号75に示した。
抗体の調製
配列検証ステージの陽性抗体配列を、プラスミド抽出に供し、25mLの系にトランスフェクトした。細胞培養の10~12日後に、発現上清を収集し、親和性クロマトグラフィーに供した。入手した抗体試料を、インビトロ試験及びスクリーニングで用いた。

実施例2.抗TNFR2抗体のインビトロ試験
ヒトTNFR2とTNFαとの結合の遮断
遮断アッセイを実施して、抗TNFR2抗体が、TNFR2と、そのリガンドであるhTNFαとの結合を遮断することができるか否かを判定した。
【0211】
具体的には、ヒトTNF受容体2(TNFR2)を一過的にトランスフェクトした、30μLのCHO細胞(1×10cell)を、プレートの各ウェルに添加した。精製した抗体を、10、2.5、0.625、0.1565、0.039μg/mLの終濃度まで滴定した。滴定した抗体を、4℃で、ウェル当たり30μLにて各ウェルに添加し、30分間インキュベートした。
【0212】
30μLのビオチン-hTNFα(Acro Biosystems、カタログ番号:TNA-H82E1)を、(各ウェル0.5μg/mLの終濃度で)各ウェルに添加した。ビオチン-hTNFαを含む細胞と抗体を、4℃で30分間インキュベートした。
【0213】
リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄した後、50μLの、PE標識及び抗ヒトIgG Fc抗体(PE抗ヒトIgG、Rc、Jackson ImmunoResearch、カタログ番号:109-115-098)の1:100の希釈液、及び、Alexa Fluor(登録商標) 647標識ストレプトアビジン(AF647ストレプトアビジン、Jackson ImmunoResearch カタログ番号:016-600-084)の1:500の希釈液を各ウェルに添加し、15分間4℃でインキュベートした後、PBSで洗浄した。AF647及びPEに対するシグナルを、フローサイトメトリー(Thermo Attune NX)により判定した。
【0214】
以下の表1は、フローサイトメトリー分析において、ストレプトアビジンシグナルを有した試験細胞の割合を示す。抗体濃度が低下する一方で、ストレプトアビジンシグナルを有する試験細胞(AF647)の割合が増加する場合、抗体は、遮断親和性を有する(強力な結合親和性を示す)。データに基づくと、BC-1A8-IgG1、BC-1F4-IgG1、BC-3B7-IgG1、及びBC-1F10-IgG1は、強力な遮断効果を有した。しかし、BC-1B6-IgG1、BC-1C3-IgG1、14-1B3-hHvKv-IgG1、及び14-4A9-hHvKv-IgG1は、TNFR2とTNFαの間の結合を、効果的に遮断することができない。
【表1】
【0215】
抗TNFR2抗体の、ヒトTNFR2及びTNFR1に対する結合親和性
予め不動化されたプロテインAセンサチップを装着した、Biacore(Biacore、INC、Piscataway NJ)8Kバイオセンサーを用いる表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して、抗TNFR2抗体の、ヒトTNFR2及びTNFR1(腫瘍壊死因子受容体1)への結合親和性を測定した。
【0216】
精製した抗TNFR2抗体を1μg/mLまで希釈し、その後、約50秒間、10μL/分で、Biacore 8Kバイオセンサーに注入して、所望のタンパク質密度(例えば、約50応答単位(RU))を達成した。続いて、200、100、50、25、6.25、又は1.56nMの濃度で、Hisタグ化ヒトTNFR1(ヒトTNFR1/CD120a/TNFRSF1Aタンパク質、Hisタグ、Beijing Acrobiosystems CO.LTD.,カタログ番号:TN1-5222)、又は、TNFR2(Human TNFR2/CD120b/TNFRSF1Bタンパク質、Hisタグ、Beijing Acrobiosystems CO.LTD.,カタログ番号:TN2-5227)を、120秒間、30μL/分で注入した。解離を600秒間モニタリングした。各滴定液の最後の注入の後に、チップをグリシンで再生した(pH2.0、30μL/分で30秒間)。
【0217】
Biacore 8K Evaluationソフトウェア3.0を用いて、データ全体を、1:1のラングミュア結合モデル(Karlsson,R.Roos,H.Fagerstam,L.Petersson,B.,1994.Methods Enzymology 6.99-110)に適合させることにより、運動会合速度(kon)及び解離速度(koff)を同時に入手した。親和性を、運動速度定数の商から推定した(KD=koff/kon)。
【0218】
当業者が理解するように、パラメーター(例えば、抗体濃度)を適切に調整した同じ方法を、各試験抗体に対して実施した。試験抗体に対する結果を、以下の表2にまとめる。
【表2】
【0219】
結果は、これらのヒト抗体が、ヒトTNFR2に対して非常に高い結合親和性を有することを示している。8つの抗体(BC-1A8-IgG1、BC-1B6-IgG1、BC-1C3-IgG1、BC-1F4-IgG1、BC-1F10-IgG1、14-1B3-hHvKv-IgG1、及び14-4A9-hHvKv-IgG1)のいずれもが、TNFR1に結合できない。
抗TNFR2抗体の、サルTNFR2に対する結合親和性
上述の結合親和性実験と同様に、抗TNFR2抗体BC-1B6-IgG1、BC-1C3-IgG1、及びBC-1F4-IgG1の、Hisタグ化サル(カニクイザル)のTNFR2(fTNFR2-His、Sino Biological、カタログ番号:90102-C08H)に対する結合親和性を測定した。結果を以下の表3にまとめ、本表は、3つの抗TNFR2抗体全てが、良好な結合親和性でサルTNFR2に結合できることを示している。
【表3】
【0220】
マウス、イヌ科動物、及びサルTNFR2に対する抗TNFR2抗体の交差反応性
各実験において、CHO細胞に、EGFP及びヒトTNFR2(TNFR2、配列番号1)、マウスTNFR2(mTNFR2、配列番号2)、fTNFR2、又はイヌ(イヌ科動物)TNFR2(dTNFR2、配列番号4)をトランスフェクトした。
【0221】
30μLのCHO細胞(1×10cell)を、各ウェルに添加した。30μLの、精製した抗TNFR2抗体(10μg/mL)(表4に列挙する通り)を各ウェルに添加し、4℃で30分間インキュベートした。
【0222】
PBS(1600rmp、6分)で2回洗浄した後、50μLの、Alexa Fluorで標識した抗ヒトIgG Fc抗体(BC-1A8-IgG1、BC-1B6-IgG1、BC-1C3-IgG1、BC-1F4-IgG1、BC-1F10-IgG、BC-3B7-IgG1、14-1B3-hHvKv-IgG1、14-4A9-hHvKv-IgG1)を、各ウェルに、1:500に希釈して添加し、4℃で15分間インキュベートした後、PBSで洗浄した(1200rmp、5分)。AF647に対するシグナルを、フローサイトメトリーにより検出した。
【0223】
試験抗体の、ヒト(TNFR2)、マウス(mTNFR2)、サル(fTNFR2)、及びイヌ(dTNFR2)TNFR2との交差反応性を、下表にまとめる。
【表4】
【0224】
精製抗hTNFR2抗体のエピトープ相関分析
一対の、精製抗TNFR2モノクローナル抗体間での標的タンパク質エピトープの相対位置を、表面プラズモン共鳴(SPR)競合実験により分析した。合計で5つのモノクローナル抗体を用いて、各抗体の、別の抗体:BC-1A8-IgG1、BC-1F4-IgG1、BC-3B7-IgG1、BC-1C3-IgG1、及びBC-1F10-IgG1での、結合阻害(遮断)効果を研究した。HBS-EP+緩衝液(10mMの、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、150mMのNaCl、3mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、及び0.05%のP20(pH7.4))を、実験を通してランニング緩衝液として用いた。抗His抗体を、アミノ基カップリングにより、シリーズSセンサチップCM5の表面で固定し、抗Hisチップ(即ち、CM5-抗-His-チャネル1,8-チップ)を生成した。次に、1Mのエタノールアミン(pH8.5)を注入して、チップ表面の、残りの活性なカルボキシル基を遮断し、その後、HBS-EP+緩衝液を用いて2時間平衡させた。Hisタグとの組み換えヒトTNFR2タンパク質(1μg/mL)を、10μL/分で50秒間、Biacore 8Kバイオセンサーに注入し、抗Hisチップ上で捕捉して、所望のタンパク質密度(即ち、200RU)を達成した。一対の抗体(それぞれ、200nM)を続けて、チップに30μL/分で注入した。注入した第1の抗体(検体1)は、250秒の結合時間を有し、続いて、第2の抗体(検体2)を、250秒の結合時間で注入した。各分析サイクルで抗体を注入した後、グリシン緩衝液で、チップを2回再生した(pH1.7、30秒間、30μL/分)。各モノクローナル抗体が別の抗体と対形成したときに、各対のモノクローナル抗体を、同じ実験ステップに通して、結合阻害データを入手した。
【0225】
各抗体の結合値を、Biacore Insight評価ソフトウェアを用いて入手した。ある抗体の、別の抗体への結合の干渉を定量するために、結合比率を計算し、各対の抗体を比較した。第1の抗体(検体1)の結合値で除した、第2の抗体(検体2)の結合値により、結合比率を定義する。統計ソフトウェアを、クラスター分析のためにもまた用いた。エピトープ相関を分析し、5つの抗hTNFR2抗体を、4つのエピトープクラスターに分類した(図8)。まとめると、1A8及び1F4は、同一の、又は重なり合うエピトープを共有した。3B7、1C3、及びF10は、他の抗体と、エピトープ相関を示さない。
【0226】
TNFR2は、4つのシステインリッチドメイン(CRD)を有する。別の実験では、FACSを用いて、抗hTNFR2抗体の、異なる構造ドメインを有するTNFR2タンパク質への結合を検出した。二次抗体(Alexa Fluor(登録商標) 647 AffiniPure F(ab’)2断片ヤギ抗ヒトIgG、Fcγ断片特異的、Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.、カタログ番号:151524)を使用した。蛍光標識した二次抗体は、抗hTNFR2抗体のFc領域に結合することができることで、ΔCRD細胞に結合した抗hTNFR2抗体が、FACSにより検出することが可能となる。具体的には、ΔCRD1-TNFR2タンパク質(CRD1が欠失)、ΔCRD2-TNFR2タンパク質(CRD2が欠失)、ΔCRD3-TNFR2タンパク質(CRD3が欠失)、又はΔCRD4-TNFR2タンパク質(CRD4が欠失)が、それぞれCHO-S細胞で発現し、その後、細胞と、異なる抗hTNFR2抗体の間での結合が検出された。TNFR2タンパク質を配列番号1に示し、CRD1は、配列の39aa~76aaであり、CRD2は、配列の77aa~118aaであり、CRD3は、配列の119aa~162aaであり、CRD4は、配列の168aa~196aaである。フローサイトメトリー実験の結果を、以下の表5に示す。
【0227】
1A8及び1F4は、CRD3を欠くTNFR2には結合せず、CRD4を欠くTNFR2への結合陽性率もまた著しく低下したことを、結果は示しており、これらは、1A8及び1F4が、ヒトTNFR2に対する同様の結合エピトープを有し、エピトープは、CRD3(クラスIエピトープ)に位置する可能性が高いことを示している。1B6及び1C3は、CRD3又はCRD4を欠くTNFR2に結合せず、これは、1B6及び1C3は、ヒトTNFR2への同様の結合エピトープを有し、エピトープはCRD3及びCRD4(クラスIIIエピトープ)の接合部に位置する可能性が高いことを示している。1F10と、CRD3又はCRD4を欠くTNFR2との結合の陽性率は著しく低下し、これは、1F10に対する結合エピトープは、クラスIエピトープ及びクラスIIIエピトープとは異なる(クラスIVエピトープ属する)ことを示している。結果は、SPRエピトープの特性決定と一致していた。
【表5】
【0228】
インビトロでのADCC検出実験
実験を行い、抗TNFR2抗体のADCC効果を評価した。本実験では、BC-1A8-IgG1、BC-1C3-IgG1、BC-1F4-IgG1、BC-1F10-IgG1、BC-1B6-IgG1、及び、アイソタイプコントロールのヒトIgG1(Crown Bioscience Inc.、C0001-3)を使用した。
【0229】
乳酸脱水素酵素(LDH)とは、多くの異なる細胞型で見出される細胞質酵素であり、原形質膜の負傷後、細胞培養培地に放出される。CyQUANT LDH細胞傷害性検出キット(Invitrogen、カタログ番号:C20301)を使用して、細胞外LDHを正確かつ定量的に測定し、抗体のADCC効果を評価した。
【0230】
抗TNFR2抗体を、最大濃度100μg/mLで、連続希釈(10倍)した。標的細胞(ヒトTNFR2を過剰発現するMC38細胞)を、96ウェルプレート(細胞密度2×10cell/ウェル、100μL)で播種し、37℃で3~4時間インキュベートした。エフェクター細胞(末梢血単核球(PBMC))を蘇生した(細胞密度2×10cell/ウェル)。同体積(100μL)のエフェクター細胞を、10μLの抗体と共に、96ウェルプレートの各ウェルに添加した。上記96ウェルプレートを、37℃で一晩インキュベートした。490nm及び680nmの吸光度値を、マイクロプレートリーダーにより検出し、これを使用し、各群の抗体による、標的細胞の殺傷(細胞毒性%)を計算した。抗体濃度を横軸として、及び、細胞毒性を縦軸として用いる非線形適合を用いて、EC50値を計算した。
【0231】
【数2】
【0232】
上記式では、実験とは、実験区の吸光度の値を意味し、エフェクターとは、エフェクター細胞の吸光度の値を意味する。標的とは、標的細胞の吸光度の値を意味する。自然放出量とは、細胞培養培地の自己蛍光の吸光度の値を意味する。標的最大値とは、標的細胞の吸光度の最大値を意味する。自然放出量*とは、細胞培養培地体積対照ウェルの吸光度の値を意味する。
【0233】
EC50の結果を、表6に示す。アイソタイプコントロールのhIgG1と比較して、抗TNFR2抗体(BC-1A8-IgG1、BC-1C3-IgG1、BC-1F4-IgG1、BC-1F10-IgG1、又はBC-1B6-IgG1)による標的細胞の殺傷(細胞毒性%)は、これらの抗体の用量が増加するにつれ増大し、これは、BC-1A8-IgG1、BC-1C3-IgG1、BC-1F4-IgG1、BC-1F10-IgG1、及びBC-1B6-IgG1が全て、ADCC活性を有することを示している。
【表6】
【0234】
別の同様の実験では、標的細胞(ヒトTNFR2を過剰発現するMC38細胞)、及び、エフェクター細胞(FcR-TANK(CD16a-158V)細胞株、ImmuneOnco Biopharmaceuticals(Shanghai)Co.,Ltd.)の、抗TNFR2抗体(BC-1C3-IgG1、BC-1C3-IgG1-SI、及びBC-1C3-IgG1-LALA)のADCC効果を評価した。
【0235】
細胞毒性データを図9に示す。EC50の結果を、表7に示す。アイソタイプコントロールのhIgG1と比較して、抗hTNFR2抗体(BC-1C3-IgG1及びBC-1C3-IgG1-SI)による、標的細胞の殺傷(細胞毒性%)は、これらの抗体の用量が増加するにつれ増大し、これは、BC-1C3-IgG1-SIが全て、より強力なADCC活性を有することを示している。
【表7】
【0236】
実施例3.抗hTNFR2抗体のインビボ試験
インビボで抗体を試験し、ヒトにおける、これらの抗体の効果を予測するために、ヒト化TNFR2マウスモデルを生成した。ヒト化TNFR2マウスモデルを組み換え、キメラTNFR2タンパク質(配列番号5)を発現させ、ここで、マウスTNFR2タンパク質の細胞外領域は、対応するヒトTNFR2細胞外領域で置き換えた。マウスTNFR2(配列番号2)のアミノ酸残基33~260を、ヒトTNFR2(配列番号1)のアミノ酸残基33~259で置き換えた。
【0237】
ヒト化TNFR2マウスモデル(例えば、B-TNFR2マウス)は、ヒト、及び、マウスTNFR2を発現する通常のマウスにおける臨床的転帰の差を著しく下げることにより、臨床設定において、新規の治療的処置を試験するための新規のツールをもたらす。ヒト化TNFR2マウスモデルに関する詳細の説明は、PCT/CN2020/113618に見出すことができ、その全体が本明細書に参照により組み込まれている。
【0238】
抗hTNFR2抗体を、TNFR2ヒト化マウス(B-TNFR2)で試験し、インビボでの腫瘍増殖におけるこれらの効果を実証した。
MC38を含むB-TNFR2、10mg/kgのインビボ有効性
MC-38腫瘍細胞(結腸腺癌細胞)を、B-TNFR2マウスに皮下注射した。マウスでの腫瘍体積が、100mm~150mmに達したら、腫瘍体積に基づき、マウスをランダムに異なる群に分けた(各群にマウス6匹)。
【0239】
次に、マウスに、対照としてのPBS(G1)、抗hTNFR2抗体BC-1F4-IgG1(G2)、BC-3B7-IgG1(G3)、BC-1F10-IgG(G4)、14-1B3-hHvKv-IgG1(G5)、BC-1A8-IgG1(G6)、BC-1C3-IgG1(G7)、14-4A9-hHvKv-IgG1(G8)、及び抗mPD-1(G9)(BIO X CELL,INC.,カタログ番号BE0146)を注射した。マウスで有効性が示されている抗mPD-1を、陽性対照として使用した。抗体を、3週間にわたり10mg/kgで、腹腔内注射により、各週の1日目及び4日目に与えた(合計で6回の注射)。
【0240】
治療期間全体の間、マウスの体重をモニタリングした。異なる群のマウスの体重は全て増加し、統計的有意差は見られなかった(P>0.05)。群を割り当てた日(0日目、「D0」)に、各群の平均体重は、20.3g~21.4gの範囲であった。実験の終了時(群の割り当てから28日後、D28)に、各群の平均体重は、22.7g~24.7gの範囲であり、体重変化は、107.4%~116.5%の範囲であった。結果は、抗hTNFR2抗体は十分認容され、マウスに対して無毒性であることを示した。
【0241】
腫瘍サイズ(図1)は、抗hTNFR2抗体で治療した群において、有意差を示した。各治療群に対する、28日目(群の割り当てから28日後)におけるTGITV%を、以下の表8に示す。陽性対照(抗mPD-1、G9)は、上述の用量及び頻度の下で、良好な治療効果(TGITV%=78.5%)を示した。BC-1F4-IgG1(G2)、BC-1F10-IgG1(G4)、BC-1A8-IgG1(G6)、BC-1C3-IgG1(G7)を含む複数の抗体は、良好な治療効果を示した(TGITV%>60%)。G3及びG5を除き、TNFR2抗体のTGITV%は、80%超であった。このTGITV%は、陽性対照群(G19/抗mPD-1 TGITV%=78.5%)よりも大きかった。
【表8】
【0242】
MC38を有するB-TNFR2マウス、1mg/kgのインビボ有効性
前述のインビボ薬剤有効性実験と同様に、腫瘍モデルを構築した後に、マウスに対照としてのPBS(G1)、抗hTNFR2抗体の抗体BC-1A8-IgG1(G2)、BC-1F10-IgG1(G3)、BC-1F4-IgG1(G4)、抗mPD-1(G5)、抗-mCTLA4(G6)(BIO X CELL,INC.,カタログ番号:BE0164)を注射した。抗体を、3週間にわたり1mg/kgで、腹腔内注射により、各週の1日目及び4日目に与えた(合計で6回の注射)。
【0243】
マウスの体重を、実験全体を通してモニタリングした。異なる群におけるマウスの体重は全て増加し、群の間で有意差は見られなかった(P>0.05)。群の割り当て時(D0)において、各基の平均体重は、20.4g~20.8gの範囲であった。実験の終了時(群の割り当てから24日後、D24)に、各群の平均体重は、21.6g~23.7gの範囲であり、体重変化は、102.5%~114.7%の範囲であった。以前の実験と同様に、結果は、抗hTNFR2抗体は十分認容され、マウスに対して無毒性であることを示した。
【0244】
腫瘍サイズは、抗TNFR2抗体で治療した群において有意差を示した(図2)。特に、G3、G4、及びG5における腫瘍サイズは、G1よりも有意に小さかった(G3:P=0.005、G7:P=0.001、G8:P=0.011)。各治療群に対する、24日目(群の割り当てから24日後)におけるTGITV%もまた、以下の表9に示すように計算した。G2、G3、及びG4は、陽性対照(G5、G6)と比較して、良好な腫瘍阻害(TGITV%)を示した。
【表9】
【0245】
MC38を有するB-TNFR2マウス、0.3mg/kgのインビボ有効性
別の同様の実験では、試験する抗hTNFR2抗体の用量を、0.3mg/kgまで減らした。マウスの腫瘍体積が、100±50mmに達したときに、(MC38腫瘍を有する)マウスを、異なる群にランダムに割り当てた(各群にマウス6匹)。
【0246】
次に、マウスに、対照としてのPBS(G1)、抗hTNFR2抗体のBC-1C3-lgG1(G2)、抗mPD-1(G3)、抗-mCTLA4(G4)を注射した。抗体を、3週間にわたり0.3mg/kgで、腹腔内注射により、各週の1日目及び4日目に与えた(合計で6回の注射)。
【0247】
マウスの体重を、実験を通してモニタリングした。異なる群におけるマウスの体重は全て増加し、群の間で有意差は見られなかった(P>0.05)。群の割り当て時(D0)における各群の平均体重は、19.5g~19.8gの範囲であった。実験の終了時(群の割り当てから25日後、D25)に、平均体重は21.6g~23.3gの範囲であり、体重変化は、108.9%~118.2%の範囲であった。以前の結果と同様に、結果は、抗TNFR2抗体は十分認容され、マウスに対して無毒性であることを示した。
【0248】
腫瘍サイズ(図3)は、抗hTNFR2抗体で治療した群において、有意差を示した。各治療群に対する、25日目(群の割り当てから25日後)におけるTGITV%は、以下の表10に示すように計算した。BC-1C3-IgG1(G2)は、本用量で最も良い有効性を示し、有効性は、陽性対照(G3、G4)よりも良好であった。
【表10】
【0249】
B16F10を有するB-TNFR2マウス、10mg/kgのインビボ有効性
B16F10腫瘍細胞(黒色腫細胞)を、B-TNFR2マウスに皮下注射した。マウスでの腫瘍体積が、100±50mmに達したら、腫瘍体積に基づき、マウスをランダムに異なる群に割り当てた(各群にマウス6匹)。
【0250】
次に、マウスに、対照としてのPBS(G1)、抗hTNFR2抗体のBC-1A8-IgG1(G2)、BC-1C3-lgG1(G3)、BC-1F10-lgG1(G4)、BC-1F4-lgG1(G5)、BC-1B6-lgG1(G6)を注射した。抗体を、2週間にわたり10mg/kgで、腹腔内注射により、各週の1日目及び4日目に与えた(合計で3回の注射)。
【0251】
マウスの体重を、実験を通してモニタリングした。異なる群におけるマウスの体重は全て増加し、群の間で差は見られなかった(P>0.05)。群の割り当て時(D0)において、各基の平均体重は、19.2g~19.7gの範囲であった。群の割り当ての10日後(D10)において、各群の平均体重は、22.1g~24.5gの範囲であり、体重変化は、114.3%~126.8%の範囲であった。結果は、抗hTNFR2抗体は十分認容され、マウスに対して無毒性であることを示した。
【0252】
腫瘍サイズは、抗TNFR2抗体で治療した群において有意差を示した(図4)。BC-1A8-IgG1(G2)、BC-1C3-IgG1(G3)、BC-1F10-lgG1(G4)、及びBC-1B6-lgG1(G6)は全て、B16F10黒色腫モデルにおいて、抗腫瘍有効性を示した。各治療群に対する、10日目(グループ分けから10日後)におけるTGITV%を、以下の表11に示す。
【表11】
【0253】
MC38を有するB-TNFR2マウス、25mg/kgのインビボ有効性及び毒性
別の同様の実験では、試験する抗hTNFR2抗体の用量を、25mg/kgに調整して、インビボ有効性及び毒性を試験した。MC38癌腫瘍細胞(結腸腺癌細胞)を、B-TNFR2マウスに皮下注射した。マウスでの腫瘍体積が、100±50mmに達したら、腫瘍体積に基づき、マウスをランダムに異なる群に割り当てた(各群にマウス4匹)。
【0254】
次に、マウスに、対照としてのPBS(G1)、抗hTNFR2抗体のBC-1A8-IgG1(G2)、BC-1C3-IgG1(G3)、BC-1F10-IgG1(G4)、BC-1F4-IgG1(G5)、BC-1B6-IgG1(G6)を注射した。25mg/kgの腹腔内注射で、抗体を、群の割り当て日(D0)、及び、群の割り当てから3日後(D3)に投与した(合計で2回の注射)。
【0255】
マウスの体重を、実験を通してモニタリングした。異なる群におけるマウスの体重は全て増加し、群の間で有意差は見られなかった。各群の平均体重は、群の割り当て時において、18.5g~19.2gの範囲であった。実験の終了時(群の割り当てから21日後、D21)に、各群の平均体重は、21.1g~23.3gの範囲であり、体重変化は、110.0%~122.7%であった。群の割り当ての5日後(D5)において、マウスの末梢血を採取し、血液の生化学的指標(AST、ALT)を試験した。D5における、生化学的指数試験の結果(図7A~7B)は、対照と比較して、ALT及びASTは有意に変化しなかったことを示した。以前の結果と同様に、結果は、25mg/kgの抗hTNFR2抗体は十分認容され、マウスに対して無毒性であることを示した。
【0256】
腫瘍サイズ(図5)は、抗TNFR2抗体で治療した群において、有意差を示した。対照群G1と比較して、腫瘍体積は、抗hTNFR2抗体のBC-1A8-IgG1(G2)、BC-1C3-IgG1(G3)、BC-1F10-IgG1(G4)、BC-1F4-IgG1(G5)、及びBC-1B6-IgG1(G6)で治療した治療群において、有意に低下した。TGITV%は、81.6%~98.4%であり、明白な腫瘍抑制効果を示す。各治療群に対する、21日目(群の割り当てから21日後)におけるTGITV%もまた、以下の表12に示すように計算した。
【表12】
【0257】
MC38を有するhTNFα/hTNFR2マウス、3mg/kgのインビボ有効性及び毒性
ヒト化TNFαマウスモデルを、ヒトTNFαタンパク質(配列番号79)を発現するように組み換え、ここでは、マウスTNFR2タンパク質のコード配列を、対応するヒトコード配列で置き換えた。TNFαヒト化マウスを、TNFR2ヒト化マウスと交差させることによって、二重ヒト化TNFα/TNFR2マウスモデル(B-hTNFα/hTNFR2マウス)もまた生成した。ヒト化TNFαマウスモデルに関する詳細の説明は、PCT/CN2020/072714に見出すことができ、その全体が本明細書に参照により組み込まれている。
【0258】
以前のインビボ薬剤有効性実験と同様に、これらの抗hTNFR2抗体の、二重ヒト化TNFα/TNFR2マウスモデルにおける、インビボ腫瘍増殖での効果について試験した。各群において、二重ヒト化TNFα/TNFR2マウスに、腹腔内(i.p.)投与によって、リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS、G1)、BC-1C3-IgG1(G2)、及び抗mPD-1(G3)を注射した。3mg/kgで、腹腔内注射により、抗体を週に2回、3週間投与した(合計で6回の注射)。
【0259】
体重及び腫瘍サイズを、実験を通してモニタリングした。異なる群におけるマウスの体重は全て増加し、群の間で有意差は見られなかった(P>0.05)。群の割り当て時(D0)における各群の平均体重は、20.0g~20.6gの範囲であった。実験の終了時(D28)に、平均体重は23.5g~25.1gの範囲であり、体重変化は、115.7%~127.2%の範囲であった。以前の結果と同様に、結果は、抗hTNFR2抗体は十分認容され、マウスに対して無毒性であることを示した。
【0260】
腫瘍サイズ(図6)は、抗hTNFR2抗体で治療した群において、有意差を示した。各治療群に対する、D28におけるTGITV%を、以下の表13に示す通りに計算した。BC-1C3-IgG1(G2)は、本用量で最も良い有効性を示し、有効性は、陽性対照(G3)よりも良好であった。
【表13】
【0261】
MC38を有するB-TNFR2マウス、3mg/kgのインビボ有効性
前述のインビボ薬剤有効性実験と同様に、MC38癌腫瘍細胞を、B-TNFR2マウスに皮下注射した。マウスでの腫瘍体積が、100mmに達したら、腫瘍体積に基づき、マウスをランダムに異なる群に割り当てた(各群にマウス6匹)。マウスに、対照としてのPBS(G1)、3mg/kgのBC-1C3-IgG1(G2)、3mg/kgの抗mPD-1(G3)、3mg/kgのBC-1C3-lgG1と3mg/kgの抗mPD-1の組み合わせ(g4)、3mg/kgのアテゾリズマブアナログ(G5)、又は、3mg/kgのBC-1C3-IgG1と3mg/kgのアテゾリズマブアナログの組み合わせ(G6)を注射した。投与頻度は、週に2回(合計で6回の投与)であった。
【0262】
アテゾリズマブは、Genentechにより開発された、ヒト化抗PD-L1モノクローナル抗体(VH 配列番号80、VL 配列番号81)である。
【0263】
体重及び腫瘍サイズを、実験を通してモニタリングした。異なる群におけるマウスの体重は全て増加し、群の間で有意差は見られなかった(P>0.05)。群の割り当て時(D0)における各群の平均体重は、18.9g~19.3gの範囲であった。実験の終了時(D24)に、平均体重は22.4g~24.2gの範囲であり、体重変化は、118.6%~125.3%の範囲であった。以前の結果と同様に、結果は、抗hTNFR2抗体は十分認容され、マウスに対して無毒性であることを示した。
【0264】
抗体で治療した群の腫瘍サイズを、図18に示す。各治療群に対する、D24におけるTGITV%を、以下の表14に示す通りに計算した。対照群と比較して、治療群における腫瘍増殖は、異なる程度まで阻害された。治療群の間では、抗PD-1抗体と抗hTNFR2抗体の組み合わせ(G4)が、優れた有効性で腫瘍増殖を阻害した。同様に、抗PD-L1抗体アテゾリズマブアナログと、抗hTNFR2抗体の組み合わせ(G6)もまた、抗hTNFR2抗体(G2)、及び抗PD-L1抗体アテゾリズマブアナログ(G5)よりも、優れた腫瘍増殖阻害を示した。
【表14】
【0265】
GL261を有するB-TNFR2マウス、1~10mg/kgのインビボ有効性
GL261腫瘍細胞(神経膠芽腫細胞)を、B-TNFR2マウスに皮下注射した。マウスでの腫瘍体積が、約80mmに達したら、腫瘍体積に基づき、マウスをランダムに異なる群に分けた(各群にマウス6匹)。
【0266】
次に、マウスに、対照としてのPBS(G1)、1mg/kgのBC-1C3-IgG1(G2)、3mg/kgのBC-1C3-IgG1(G3)、10mg/kgのBC-1C3-IgG1(G4)、又は1mg/kgの抗mPD-1(G5)を注射した。抗体を、3週間にわたり、腹腔内注射により、各週の1日目及び4日目に与えた(合計で6回の注射)。
【0267】
治療期間全体の間、マウスの体重をモニタリングした。異なる群のマウスの体重は全て増加し、統計的有意差は見られなかった(P>0.05)。群を割り当てた日(0日目、「D0」)に、各群の平均体重は、19.9g~20.6gの範囲であった。実験の終了時(群の割り当てから24日後、D24)に、各群の平均体重は、22.5g~24.2gの範囲であり、体重変化は、109.4%~118.3%の範囲であった。結果は、抗hTNFR2抗体は十分認容され、マウスに対して無毒性であることを示した。
【0268】
抗体で治療した群の腫瘍サイズデータを、図19に示す。各治療群に対する、D24におけるTGITV%を、以下の表15に示す通りに計算した。BC-1C3-IgGは、1mg/kgの用量において、抗mPD-1抗体よりも良好な抗腫瘍効果を示した。加えて、BC-1C3-IgG1は、用量依存性の抗腫瘍効果を示した(用量レベルが高いほど、抗腫瘍効果がより優れる)。
【表15】
【0269】
MC38を有するB-TNFR2マウス、3mg/kgのインビボ有効性
BI-1808(VH 配列番号82、VL 配列番号83)は、BioInventにより開発された、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー1B(TNFR2)を標的とするモノクローナル抗体である。本製品は、単剤として、及び、ペムブロリズマブと組み合わせて、充実性腫瘍及び皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)を治療するために、初期の臨床開発段階にある。
【0270】
h600-25-108(VH 配列番号84、VL 配列番号85)は、Apexigenにより開発された、ヒト化抗TNFR2モノクローナル抗体である。
【0271】
HFB3-1hz6-hG1(VH 配列番号86、VL 配列番号87)は、進行性充実性腫瘍を治療するための、HiFiBiO Therapeutics製の、第I相臨床試験でのモノクローナル抗TNFR2アゴニスト抗体である。
【0272】
前述のインビボ薬剤有効性実験と同様に、MC38腫瘍細胞を、B-TNFR2マウスに皮下注射した。腫瘍体積が、100mmに達したら、腫瘍体積に基づき、マウスをランダムに異なる群に分けた(各群にマウス6匹)。マウスに、PBS(G1)、3mg/kgのBC-1C3-lgG1(G2)、3mg/kgのBI-1808アナログ(G3)、3mg/kgのh600-25-108アナログ(G4)、又は3mg/kgのHFB3-1hz6-hG1アナログ(G5)を注射した。投与頻度は、週に2回(合計で6回の投与)であった。
【0273】
体重及び腫瘍サイズを、実験を通してモニタリングした。異なる群におけるマウスの体重は全て増加し、群の間で有意差は見られなかった(P>0.05)。群の割り当て時(D0)における各群の平均体重は、20.1g~20.4gの範囲であった。実験の終了時(D28)に、平均体重は22.9g~24.9gの範囲であり、体重変化は、113.2%~122.4%の範囲であった。以前の結果と同様に、結果は、抗hTNFR2抗体は十分認容され、マウスに対して無毒性であることを示した。
【0274】
腫瘍サイズを、図20に示す。各治療群に対する、D28におけるTGITV%を、以下の表16に示す通りに計算した。結果は、BC-1C3-IgG1抗体(G2)は、同じ用量レベルにおいて、BI-1808アナログ(G3)、h600-25-108アナログ(G4)、又はHFB3-1hz6-hG1アナログ(G5)よりも、有意に良好なインビボ有効性を示したことを示した。
【表16】
【0275】
MC38を有するB-hTNFa/hTNFR2、3mg/kgのインビボ有効性
h600-25-71(VH 配列番号88、VL 配列番号89)は、Apexigenにより開発された、ヒト化抗TNFR2モノクローナル抗体である。
【0276】
前述のインビボ薬剤有効性実験と同様に、MC38腫瘍細胞を、B-hTNFa/hTNFR2マウスに皮下注射した。腫瘍体積が、100mmに達したら、腫瘍体積に基づき、マウスをランダムに異なる群に分け(各群にマウス6匹)、PBS(G1)、3mg/kgのBC-1C3-lgG1(G2)、又は3mg/kg h600-25-71アナログ(G3)を注射した。投与頻度は、週に2回(合計で6回の投与)であった。
【0277】
体重及び腫瘍サイズを、実験を通してモニタリングした。異なる群におけるマウスの体重は全て増加し、群の間で有意差は見られなかった(P>0.05)。群の割り当て時(D0)における各群の平均体重は、21.0g~21.1gの範囲であった。実験の終了時(D24)に、平均体重は23.8g~24.8gの範囲であり、体重変化は、113.3%~117.5%の範囲であった。以前の結果と同様に、結果は、抗hTNFR2抗体は十分認容され、マウスに対して無毒性であることを示した。
【0278】
腫瘍サイズを、図21に示す。各治療群の値に対する、D24におけるTGITV%を、以下の表17に示す。結果は、BC-1C3-IgG1は、h600-25-71アナログよりも、有意に良好なインビボ有効性を示したことを示した。
【表17】
【0279】
実施例4.PK及びTILS分析
MC38モデルを有するB-TNFR2マウス、10mg/kg、PK分析
抗TNFR2抗体の薬物動態クリアランス率を、ヒト化TNFR2マウスで測定した。MC38細胞(5×10)を、ヒト化TNFR2マウスに皮下注射し、腫瘍が300mmまで増殖したら、マウスを8つの群(n=4)に分けた。10mg/kgの、BC-1C3-IgG1(G2)、BC-1F4-IgG1(G3)、BC-1B6-IgG1(G4)、BC-1C3-IgG1-SI(G5)、BC-1F4-IgG1-SI(G6)、BC-1B6-IgG1-SI(G7)、又はアイソタイプコントロールIgG1(G1)を、静脈内注射により投与した。血液試料を、投与の15分後、6時間後、24時間後、3日後、5日後、及び7日後に収集した。
【0280】
ヒト抗体の血清レベルを、サンドイッチELISA酵素結合イムノアッセイにより測定した。簡単に言えば、ヤギポリクローナル抗ヒトIgG(Fc特異的)キャプチャー抗体(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号:109-036-098)を、0.1Mの炭酸塩緩衝液(pH9.6)で、終濃度2.0μg/mLまで希釈し、100μL/ウェルで、96ウェルプレート(ELISAプレート)に添加して、4℃で一晩インキュベートした。次に、200μLのブロッキング緩衝液(2% BSA)を各ウェルに添加した。ウェルを密封し、室温で1時間インキュベートした。プレートをプレート洗浄機で洗浄した後、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート化ヤギポリクローナル抗ヒトIgG(Fc特異的)抗体(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号:109-005-088)を、ELISAプレートの各ウェルに100μL/ウェルで添加し、37℃で1時間インキュベートした。プレートを洗浄した後、テトラメチルベンジジン(TMB)溶液を、100μL/ウェルで96ウェルプレートに、基質として添加し、HRPと反応させた。暗所で室温にてインキュベートした後、100μLの停止溶液(Beyotime、カタログ番号:P0215)を各ウェルに添加した。マイクロプレートリーダーを用いて、450nm及び630nmの波長にて、各ウェルの吸光度の値を読み取った。データ解析ソフトウェアGen5を用いて、データを分析した。各試験生成物により調整した較正試料の吸光度の値、及び対応する濃度を用いて、4つのパラメーターを持つ標準曲線を製造した。そして、標準曲線を用いて、各血清試料の抗体濃度を計算した。薬剤濃度-時間曲線を、各時点における、計算した試料濃度を用いて製造した。Phoenix winnolin 8.3を用いて、薬物動態パラメーターを計算した。結果を以下の表18に示す。
【表18】
【0281】
上記結果は、異なる抗体の注射後に、TNFR2ヒト化マウスの血清中での抗体濃度は、時間と共に低下し(図10を参照されたい)、これは、薬物動態の特徴と一致することを示す。マウスにおける、BC-1C3-IgG1(G2)抗体の最も長い半減期は、2.99日であった。マウスにおける、BC-1B6-IgG1-SI(G7)の最も短い半減期は、0.86日であった。マウスにおける、他の抗体の半減期は、1.69日~2.38日の範囲に収まり、比較的近接していた。サンプリングの7日目の終了時までに、BC-1C3-IgG1(G2)抗体の薬剤濃度-時間曲線の、曲線下面積(AUC)は250.93時間*μg/mLであり、これは、他の抗体のAUC(AUC0-7day 77.90~168.89時間*μg/mL)よりも長かった。BC-1C3-IgG1(G2)抗体のクリアランス率(CL)は、28.85mL/時間/kgであり、他の抗体のCLは、47.07~61.19mL/時間/kgの範囲であった。結果は、他の抗体と比較して、BC-1C3-IgG1(G2)は、低いクリアランス効率を有し、マウスでのBC-1C3-IgG1(G2)抗体の代謝は、遅かったことを示した。
実施例5.レポーター細胞活性及び結合アッセイ
レポーター細胞での活性化効果
実験を行い、抗TNFR2抗体がTNFR2経路を活性化可能であるか否かを試験した。
【0282】
ヒトTNFαタンパク質(Sino Biological Inc.,カタログ番号:10602-HNAE)を、陽性対照として、10ng/mLの最大濃度で連続希釈した(3倍)。抗TNFR2抗体のBC-1F4-IgG1、BC-1C3-IgG1、BC-1B6-IgG1、及びBC-1F10-IgG1を、60μg/mLの最大濃度で連続希釈した(3倍)。Jurkat-GFP-TNFR2細胞を、96ウェルプレートに播種し(細胞密度は1×10cell/ウェル、ウェル当たり100μL)、その後、100μLのヒトTNFαタンパク質、又は、100μLの抗TNFR2抗体を各ウェルに添加し、37℃で一晩インキュベートした。インキュベーション後、プレートを取り出し、96ウェルプレートに移した。各ウェルを150μLのPBSで洗浄した。上清は廃棄した。100μLのPBSを各ウェルに添加し、細胞を再懸濁した。次に、プレートをルミネセンス検出器に配置し、蛍光シグナルを検出した。抗体がTNFR2を活性化できる場合、レポーター細胞はGFPシグナルを報告する。
【0283】
図11Aに示すように、抗TNFR2抗体のBC-1F4-IgG1、BC-1C3-IgG1、BC-1B6-IgG1、及びBC-1F10-IgG1が存在する場合、蛍光シグナルは検出されなかった。一方で、BC-1C3-IgG1は弱いレポーター細胞活性化を示した(図11B)。
レポーター細胞での遮断効果
実験を行い、抗TNFR2抗体が、TNFR2と、そのリガンドのTNFαとの結合を遮断できるか否かを試験した。
【0284】
レポーターJurkat-GFP-TNFR2細胞を、96ウェルプレートに播種した(細胞密度は1×10cell/ウェル)。TNFαタンパク質を、1ng/mLまで希釈した。抗TNFR2抗体のBC-1F4-IgG1、BC-1C3-IgG1、BC-1B6-IgG1、及びBC-1F10-IgG1を、10μg/mLの最大濃度で、連続希釈した(3倍)。50μLのヒトTNFαタンパク質、及び、50μLの抗体を各ウェルに添加し、37℃で24時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを取り出し、96ウェルプレートに移した。各ウェルを150μLのPBSで洗浄した。上清は廃棄した。100μLのPBSを各ウェルに添加し、細胞を再懸濁した。GFPに対するシグナルを、フローサイトメトリーにより測定した。
【0285】
図12に示すように、抗TNFR2抗体のBC-1F10-IgG1及びBC-1F4-IgG1の濃度が増大した際、GFPシグナル(TNFαに結合する細胞を示す)は低下し(y軸)、これは、ヒトTNFαとTNFR2の間の結合が、抗TNFR2抗体のBC-1F10-IgG1及びBC-1F4-IgG1により遮断されたことを示唆している。
実施例6.インビボ毒性実験(腫瘍を有しないモデル)
TNFR2ヒト化マウス(6~8週齢)を、それらの体重に従い、対照群と治療群(各群に4匹のマウス)に、ランダムに分けた。対照群に等体積のPBSを注射し、投与群に、抗hTNFR2抗体(BC-1C3-IgG1、BC-1F4-IgG1、若しくはBC-1B6-IgG1)、又はCTLA4抗体(抗mCTLA4)を注射する。抗hTNFR2抗体及びCTLA4抗体の注射用量は、30mg/kg又は100mg/kgである。投与頻度は週に1回で、合計4回の投与である。投与の特定の用量、様式、及び頻度を、以下の表19に示す。実験では、体重の変化、及び、何らかの異常をモニタリングした。群の割り当てから1日後、8日後、15日後、22日後、及び28日後に、血液生化学的指標をモニタリングした。血液生化学的指標としては、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アルカリホスファターゼ(ALP)、クレアチンキナーゼ(CK)、アルブミン(ALB)、総タンパク質(TP)、アミラーゼ(AMY)、尿素(UREA)、クレアチニン(CREA)、グルコース(GLU)、トリグリセリド(TG)、総コレステロール(TC)、高密度リポタンパク質コレステロール(HDL-C)、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)、カルシウム(Ca)、無機リン(P)が挙げられる。群の割り当てから28日後に、血液の日常的試験を実施した。血液ルーチン検査としては、白血球数(WBC)、赤血球(RBC)、ヘモグロビン(HGB)、ヘマトクリット(HTC)、赤血球の平均体積(MCV)、赤血球ヘモグロビンの平均含有量(MCH)、赤血球ヘモグロビンの平均濃度(MCHC)、PLT(血小板数)、リンパ球(LYMPH#)、リンパ球割合(LYMPH%)、単球(MONO#)、単球の割合(MONO%)、好中球の割合(NEUT%)での試験が挙げられる。実験の終了時に、マウスの心臓、肝臓、脾臓、肺、腎臓、及び腸を、HE染色のためにホルマリンに浸け、肝臓、脾臓、及び腎臓の重量を測定した。
【表19】
【0286】
結果は、対照群及び治療群のマウス全ての体重が、実験期間を通して上昇傾向を示し、群の間で、体重の変化に有意差はなかったことを示した。血液生化学的指標試験結果(28日目における、例示的な血液生化学的指標に関しては、図13A~13Bを参照されたい)、及び、血液の日常的試験結果は、対照と比較して、有意差を示さなかった。以前の結果と同様に、インビボ毒性結果は、抗hTNFR2抗体が十分認容され、マウスに対して無毒性であることを、示した。
実施例7.TNFR2抗体は、Treg細胞によるCD8+T細胞の増殖阻害を遮断する
ヒトIgG1(対照)及び抗TNFR2抗体BC-1C3-IgG1及びHFB3-1hz6-hG1アナログを、20ng/mLの終濃度まで希釈した。抗CD3抗体(CD3、Acro Biosystems、カタログ番号:CDE-M120a)を使用して、4℃にて、96ウェルプレート(10μg/mL、ウェル当たり100μL)を一晩コーティングした。CFSE(CellTraceTM CFSE Cell Proliferation Kit、Thermo Fisher、カタログ番号:CDE-M120a)で標識した100μLのPBMC細胞(AllCells、カタログ番号:PB003F-C)、及び50μLのTreg細胞(OriCell、カタログ番号:FPB009-4F-2)を、各ウェルに添加した。40μLのBC-1C3-IgG1、40μLのヒトIgG1、又は40μLのHFB3-1hz6-hG1アナログを各ウェルに添加し、37℃、5% COで120時間インキュベートした。48時間のインキュベーション後に、10μLのIL-2(Acro Biosystems、カタログ番号:IL-2-H4113)を各ウェルに添加した。インキュベーションの120時間後に、細胞を収集し、hCD8+細胞をフローサイトメトリーにより測定した。
【0287】
図22に示すように、BC-1C3-IgG1は、Treg細胞によるCD8+T細胞の増殖阻害を遮断した。
実施例8.CD8+T細胞活性化アッセイ
ヒトIgG1(対照)、抗TNFR2抗体BC-1C3-IgG1及びHFB3-1hz6-hG1アナログを、0.1μg/mL、1μg/mL、及び10μg/mLまで連続希釈した。抗CD3抗体及び抗TNFR2抗体を使用して、4℃で、96ウェルプレートを一晩コーティングした。CFSE(CellTraceTM CFSE Cell Proliferation Kit、Thermo Fisher、カタログ番号:CDE-M120a)で標識したCD8+T細胞(OriCell)を、各ウェル(1×10cell/ウェル、ウェルあたり100μL)に添加し、hCD28(BioXcell、カタログ番号:BE0248)を各ウェルに添加し(1μg/mL、ウェルあたり100μL)、37℃、5% COで72時間インキュベートした。上清を収集して、ヒトIL2及びヒトIFNγの分泌レベルを検出し、ペレット内の細胞をフローサイトメトリーにより検出した。
【0288】
図23に示すように、抗TNFR2抗体のBC-1C3-IgG1の濃度が増加するにつれ、CD8+T細胞は増加した。図24A~24Bは、抗TNFR2抗体を添加した後の、ヒトIL2及びIFNγの分泌が増大したことを示す。上記結果は、BC-1C3-IgG1が、CD8+T細胞の増殖及び活性化を促進することができることを示している。
他の実施形態
本発明をその詳細な説明と併せて説明してきたが、上記の説明は例示を目的とするものであり、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。他の態様、利点、及び修正は、以下の特許請求の範囲内である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13A-13B】
図14
図15
図16
図17-1】
図17-2】
図17-3】
図17-4】
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24A-24B】
【配列表】
2024547122000001.xml
【国際調査報告】