(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】リチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20241219BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20241219BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20241219BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20241219BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0567
H01M4/505
H01M10/0568
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538149
(86)(22)【出願日】2022-12-14
(85)【翻訳文提出日】2024-08-13
(86)【国際出願番号】 EP2022085898
(87)【国際公開番号】W WO2023117634
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524170522
【氏名又は名称】サイエンスコ エスアー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ブライダ, マルク-ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】リー, ジョンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】リー, ヒョンチョル
(72)【発明者】
【氏名】ウォン, ジヘ
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ06
5H029AK03
5H029AL03
5H029AL07
5H029AL12
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ02
5H050BA17
5H050CA09
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB12
5H050HA02
(57)【要約】
本発明は、カソード電気活性材料としてのリチウム-マンガン-リッチ層状酸化物を含むカソードと、少なくとも1種のフッ素化非環状カーボネートを含む液体電解質とを含むリチウム二次電池に関する。本発明は、サイクル性能を改善するための、リチウム二次電池における少なくとも1種のフッ素化非環状カーボネートを含む液体電解質の使用であって、リチウム二次電池が、本発明によるリチウム-マンガン-リッチ層状酸化物をカソード電気活性材料として含むカソードを含む、液体電解質の使用にも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム二次電池であって、
a)下記式(I)
Li
[(2x+2)/(x+2)]Mn
[2x/(x+2)]M
[(2-2x)/(x+2)]O
2 (I)
(式中、0<x<1であり、Mは一般式(II)
(Ni
aMn
bCo
c)
1-dM’
d (II)
で表される元素の組み合わせであり、a+b+c=1であり、0≦c≦0.1であり、0≦d≦0.1であり、M’は、Sc、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Mg、Al、Sn、B、Ga、Sr、Ca、In、Si、Zr、La、P、Nb、及びGeからなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む)
で表されるリチウム遷移金属酸化物をカソード電気活性材料として含むカソードと、
b)式(III)
R
1-OC(O)O-R
2 (III)
(式中、R
1及びR
2は、それぞれアルキル基を表し;R
1及びR
2のいずれかの中の炭素原子の合計は2~7であり;R
1及び/又はR
2の中の少なくとも1個の水素はフッ素で置換されている)
で表される少なくとも1種のフッ素化非環状カーボネートを含む液体電解質と、
を含むリチウム二次電池。
【請求項2】
0.1≦x≦0.7、好ましくは0.3≦x≦0.55である、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項3】
cが0である、請求項1又は2に記載のリチウム二次電池。
【請求項4】
a*(1-d)<[2x/(x+2)]+b*(1-d)である、請求項1~3のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項5】
前記リチウム遷移金属酸化物が、Li
1.09Mn
0.91O
2、Li
1.25Mn
0.625Ni
0.125O
2、Li
1.15Mn
0.56Ni
0.29O
2、及びLi
1.17Mn
0.54Ni
0.28O
2を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項6】
R
1及びR
2がCH
2F-基も-CHF-基も含まない、請求項1~5のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項7】
前記フッ素化非環状カーボネートが、CH
3-OC(O)O-CH
2CF
2H(メチル2,2-ジフルオロエチルカーボネート)、CH
3-OC(O)O-CH
2CF
3(メチル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート)、CH
3-OC(O)O-CH
2CF
2CF
2H(メチル2,2,3,3-テトラフルオロプロピルカーボネート)、CF
2HCH
2-OC(O)O-CH
2CF
3(2,2-ジフルオロエチル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート)、CH
3CH
2-OC(O)O-CH
2CF
2H(エチル2,2-ジフルオロエチルカーボネート)、CF
3CH
2-OC(O)O-CH
2CH
3(エチル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート)、又はそれらの混合物を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項8】
前記フッ素化非環状カーボネートが、前記液体電解質の総重量を基準として10~50重量%(wt%)、好ましくは10~40重量%、より好ましくは10~30重量%の量である、請求項1~7のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項9】
b)前記液体電解質が、式(IV)
R
3-C(O)O-R
4 (IV)
(式中、R
3及びR
4は、それぞれアルキル基を表し;R
3及びR
4の炭素原子の合計は、2~7であり;且つR
3及び/又はR
4の少なくとも1個の水素は、フッ素によって置換されている)
で表される少なくとも1種のフッ素化非環状カルボン酸エステルをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項10】
b)前記液体電解質が、式(V)
R
5-O-R
6-O-R
7 (V)
(式中、R
5及びR
7は、それぞれフッ素化された直鎖アルキル基を表し;R
6は、任意選択的にフッ素化された直鎖アルキル基を表し;R
5、R
6、及びR
7の中の炭素原子の合計は、5~8、好ましくは6である)
で表される少なくとも1種のフッ素化非環状ジエーテルをさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項11】
b)前記液体電解質が、4-フルオロエチレンカーボネート(4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン)、4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジフルオロ-4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジフルオロ-4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4,5-トリフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-フルオロメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、テトラフルオロエチレンカーボネート、4-(2,2-ジフルオロエトキシ)エチレンカーボネート、4-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エチレンカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ジメチルビニレンカーボネート、エチルプロピルカーボネート、シクロヘキセンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、並びにそれらの混合物からなる群から選択される、フッ素化環状カーボネート、非フッ素化環状カーボネート、及び非フッ素化非環状カーボネートを含む少なくとも1種の有機カーボネートを、前記液体電解質の総重量を基準として10~80重量%、好ましくは20~60重量%、より好ましくは25~50重量%の量でさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項12】
b)前記液体電解質が、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)、過塩素酸リチウム(LiClO
4)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF
6)、ヘキサフルオロアンチモン酸リチウム(LiSbF
6)、ヘキサフルオロタンタル酸リチウム(LiTaF
6)、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl
4)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF
4)、クロロホウ酸リチウム(Li
2B
10Cl
10)、フルオロホウ酸リチウム(Li
2B
10F
10)、Li
2B
12F
xH
12-x(式中、x=0~12である);LiPF
x(R
F)
6-x及びLiBF
y(R
F)
4-y(式中、R
Fは、全フッ素化C
1~C
20アルキル基又は全フッ素化芳香族基を表し、x=0~5であり、y=0~3である)、LiBF
2[O
2C(CX
2)
nCO
2]、LiPF
2[O
2C(CX
2)
nCO
2]
2、LiPF
4[O
2C(CX
2)
nCO
2](式中、Xは、H、F、Cl、C
1~C
4アルキル基及びフッ素化アルキル基からなる群から選択され、n=0~4である)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF
3SO
3)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドLi(FSO
2)
2N(LiFSI)、LiN(SO
2C
mF
2m+1)(SO
2C
nF
2n+1)及びLiC(SO
2C
kF
2k+1)(SO
2C
mF
2m+1)(SO
2C
nF
2n+1)(式中、k=1~10であり、m=1~10であり、n=1~10である)、LiN(SO
2C
pF
2pSO
2)並びにLiC(SO
2C
pF
2pSO
2)(SO
2C
qF
2q+1)(式中、p=1~10であり、q=1~10である)又はそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のリチウム塩をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項13】
b)前記液体電解質が、1,3,2-ジオキサチオラン-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチアン-2,2-ジオキシド、1,3-プロパンスルトン、エチレンサルファイト及びプロパ-1-エン-1,3-スルトンを含む硫黄化合物;ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン(スルホランとしても知られる)、エチルメチルスルホン及びイソプロピルメチルスルホンを含むスルホン誘導体;スクシノニトリル、アジポニトリル、及びグルタロニトリルを含むニトリル誘導体;並びに硝酸リチウム(LiNO
3);リチウムジフルオロオキサラトボレート(LiDFOB)、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiB(C
2O
4)
2;LiBOB)、リチウムフルオロマロナト(ジフルオロ)ボレート(LiB(O
2CCHFCO
2)
2;LiFMDFB)、リチウムビス(マロナト)ボレート[LiB(O
2CCH
2CO
2)
2]、リチウムビス(ジフルオロマロナト)ボレート[LiB(O
2CCF
2CO
2)
2]、リチウム(マロナトオキサラト)ボレート[LiB(C
2O
4)(O
2CCH
2CO
2)]、リチウム(ジフルオロマロナトオキサラト)ボレート[LiB(C
2O
4)(O
2CCF
2CO
2)]を含むホウ素誘導体塩;リチウムトリス(オキサラト)ホスフェート[LiP(C
2O
4)
3]、リチウムトリス(ジフルオロマロナト)ホスフェート[LiP(O
2CCF
2CO
2)
3]、リチウムジフルオロホスフェート(LiPO
2F
2)、酢酸ビニル、ビフェニルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、トリス(トリメチルシリル)ホスフェート、トリフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィナイト、トリエチルホスファイト、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスファイト、無水マレイン酸、セシウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(CsTFSI)、フッ化セシウム(CsF)、並びにそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の膜形成添加剤をさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のリチウム二次電池。
【請求項14】
サイクル性能を改善するための、リチウム二次電池における式(III)
R
1-OC(O)O-R
2 (III)
(式中、R
1及びR
2は、それぞれアルキル基を表し;R
1及びR
2のいずれかの中の炭素原子の合計は2~7であり;R
1及び/又はR
2の中の少なくとも1個の水素はフッ素で置換されている)
で表される少なくとも1種のフッ素化非環状カーボネート含む液体電解質の使用であって、
式(I)
Li
[(2x+2)/(x+2)]Mn
[2x/(x+2)]M
[(2-2x)/(x+2)]O
2 (I)
(式中、0<x<1であり、Mは一般式(II)
(Ni
aMn
bCo
c)
1-dM’
d (II)
で表される元素の組み合わせであり、a+b+c=1であり、0≦c≦0.1であり、0≦d≦0.1であり、M’は、Sc、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Mg、Al、Sn、B、Ga、Sr、Ca、In、Si、Zr、La、P、Nb、及びGeからなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む)
で表されるリチウム遷移金属酸化物をカソード電気活性材料として含む、液体電解質の使用。
【請求項15】
前記フッ素化非環状カーボネートが、CH
3-OC(O)O-CH
2CF
3(メチル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート)である、請求項14に記載の液体電解質の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年12月23日出願の欧州特許出願第21217536.8号に対する優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、カソード電気活性材料としてのリチウム-マンガン-リッチ層状酸化物を含むカソードと、少なくとも1種のフッ素化非環状カーボネートを含む液体電解質とを含むリチウム二次電池に関する。本発明は、サイクル性能を改善するための、リチウム二次電池における少なくとも1種のフッ素化非環状カーボネートを含む液体電解質の使用であって、リチウム二次電池が、本発明によるリチウム-マンガン-リッチ層状酸化物をカソード電気活性材料として含むカソードを含む、使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
リチウム二次電池は、軽量であり、適度なエネルギー密度を有し、且つ良好なサイクル寿命を有することなどの多くの利点のため、充電式エネルギー貯蔵デバイスの市場で支配的な地位を維持してきた。
【0004】
歴史的には、リチウム二次電池は、LixCoO2(0<x≦1)が比較的高いエネルギー密度と良好なサイクル安定性を有することがGoodenough et al.(Materials Research Bulletin 1980,Vol.15,pp.783-789)によって初めて実証されて以来、大きな注目を集めており、その後、1990年代の初頭にソニー株式会社によってカソード電気活性材料として商業化された。この発見は、リチウム二次電池のパラダイムを変えた。
【0005】
新規な高性能且つ低コストのカソード電気活性材料の探索は、この分野において常に挑戦的なテーマであった。電気化学的エネルギー貯蔵技術の開発は、家電製品から電気自動車(EV)に至る様々な用途の進歩にとってのみならず、天然資源の有効且つ制御可能な利用にとっても重要である。
【0006】
したがって、より高いエネルギー密度を有する新規なカソード電気活性材料を開発するために、複数のアプローチが行われてきた。特に、カソード電気活性材料はアノード電気活性材料よりも高コストであることから、常にカソード電気活性材料に焦点が当てられてきた。
【0007】
この目的のために、式LiMO2(M=Co、Mn、及び/又はNi)を有する様々な層状酸化物、並びにスピネル型LiMn2O4及びオリビン型LiFePO4が検討された。しかしながら、スピネル型LiMn2O4及びオリビン型LiFePO4はエネルギー密度が低いため、特に大スケールのEV及びエネルギー貯蔵分野での用途が制限されることが判明した。
【0008】
その後、LiCoO2は、実容量が低く、Coが比較的高コストであるなどの欠点を有することが判明したため、代替案として層状LiNiO2が提案された。しかしながら、LiNiO2は熱安定性が不十分であり、特にNi含有量が高い値に増えると、Liの拡散性、サイクル安定性、最初のサイクル効率、及び全体的な電極性能に悪影響が生じるため、八面体サイトでのLi/Ni交換の結果Li/Niがディスオーダーになることに起因して、その製造が困難であることが判明した。したがって、LiNiO2はLiCoO2と比較して低コストで再充電可能な容量が大きいにもかかわらず、別の解決手段が必要であった。
【0009】
したがって、他の層状酸化物、例えばLiNiO2とLiMnO2の間の固溶体であるLiNi0.5Mn0.5O2などの二元酸化物や、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2などの三元酸化物がさらに研究されてきた。これらの中でもLiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2は、高い可逆容量で最も優れた電気化学的性能を示し、高出力リチウム二次電池用の有望なカソード電気活性材料となった。
【0010】
それにもかかわらず、商業化されたリチウムイオン電池の比エネルギー密度は、EV、ハイブリッド電気自動車(HEV)、グリッドエネルギー貯蔵などの高出力用途で増加し続けている実用上の需要を依然として満たすことができていない。
【0011】
そのような増加し続けている需要を満たす代替案を見出すための多様な研究努力の1つとして、Jiangらは、Molecular Systems Desigh&Engineering,2018,Vol.3,pp.748-803(“Li- and Mn-rich layered oxide cathode materials for lithium-ion batteries:a review from fundamentals to research progress and applications”)の中で、x[Li2MnO3]・(1-x)[LiMO2](M=Co、Ni、Mn、Fe、Crなど)で表されるLi-及びMn-リッチ層状酸化物(「LMRO」)カソード電気活性材料を提案した。これは、2つの相、すなわち三方晶系のLiMO2相(空間群R3m)と単斜晶系のLi2MnO3相(空間群C2/m)とから構成される。このLi2MnO3相は、最初のサイクル後に活性LiMnO2相に変換されるため、カソードの電気化学容量を高めることができる。要するに、前記2つの相の間に相乗効果が存在するため、それがカソード電気活性材料のより高い電気化学的性能に寄与する。さらに、LMROカソード電気活性材料は経済競争力及び環境適合性も有している。しかし、商業化するためには、不明確な結晶構造、曖昧な反応メカニズム、速い電圧低下、及び不十分なレート能力など、いくつかの問題や課題は依然として克服する必要がある。
【0012】
そのため、安定性、信頼性、低コストなどを含む改善されたサイクル性能を有するリチウム二次電池に対する継続的なニーズが存在しており、これには、上で紹介したような新規なカソード電気活性材料、新規なアノード電気活性材料、新たに設計された電気活性材料に適合する液体電解質配合物などを使用することによって応えることができるであろう。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、
a)下記式(I)
Li[(2x+2)/(x+2)]Mn[2x/(x+2)]M[(2-2x)/(x+2)]O2 (I)
(式中、0<x<1であり、Mは一般式(II)
(NiaMnbCoc)1-dM’d (II)
で表される元素の組み合わせであり、a+b+c=1であり、0≦c≦0.1であり、0≦d≦0.1であり、M’は、Sc、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Mg、Al、Sn、B、Ga、Sr、Ca、In、Si、Zr、La、P、Nb、及びGeからなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む)
で表されるリチウム遷移金属酸化物をカソード電気活性材料として含むカソードと、
b)式(III)
R1-OC(O)O-R2 (III)
(式中、R1及びR2は、それぞれアルキル基を表し;R1及びR2のいずれかの中の炭素原子の合計は2~7であり;R1及び/又はR2の中の少なくとも1個の水素はフッ素で置換されている)
で表される少なくとも1種のフッ素化非環状カーボネートを含む液体電解質と、
を含むリチウム二次電池に関する。
【0014】
本発明によるカソード電気活性材料は、リチウム-マンガン-リッチ層状遷移金属酸化物に対応する。
【0015】
本発明は、サイクル性能を改善するための、リチウム二次電池における少なくとも1種のフッ素化非環状カーボネートを含む液体電解質の使用であって、リチウム二次電池が、本発明によるリチウム-マンガン-リッチ層状遷移金属酸化物をカソード電気活性材料として含むカソードを含む、使用にも関する。
【0016】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明によるリチウム-マンガン-リッチ遷移金属酸化物を有するカソードと、少なくとも1種のフッ素化非環状カーボネートを含む液体電解質との特定の組み合わせを使用することによって、上述した技術的課題を解決できることを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
本明細書の全体にわたり、文脈上他の意味に解すべき場合を除いて、用語「含む(comprise)」若しくは「包含する(include)」又は「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「包含する(includes)」、「包含している(including)」などの変形は、述べられた要素若しくは方法工程又は要素若しくは方法工程の群の包含を意味するが、任意の他の要素若しくは方法工程又は要素若しくは方法工程の群の排除を意味しないと理解されるであろう。好ましい実施形態によれば、用語「含む」及び「包含する」並びにそれらの変形は、「のみからなる」を意味する。
【0018】
本明細書において用いる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈がそうでないと明確に示さない限り、複数態様を包含する。用語「及び/又は」は、意味「及び」、「又は」及びまたこの用語と関係した要素の他の可能な組み合わせを全て包含する。
【0019】
用語「~」は、限界点を含むと理解されるべきである。
【0020】
用語「アルキル」は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなどの直鎖アルキル基;シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルなどの環状アルキル基(又は「シクロアルキル」若しくは「脂環式」若しくは「炭素環式」基);イソプロピル、tert-ブチル、sec-ブチル、及びイソブチルなどの分岐鎖アルキル基;並びにアルキル置換シクロアルキル基及びシクロアルキル置換アルキル基などのアルキル置換アルキル基を含む、1個以上の炭素原子を有する飽和炭化水素を意味することを意図する。
【0021】
用語「脂肪族基」は、1~18個の炭素原子を典型的に有する、直鎖又は分岐鎖を特徴とする有機部分を包含する。複雑な構造において、鎖は、分岐、橋架け又は架橋され得る。脂肪族基には、アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基が含まれる。
【0022】
本発明において、用語「カットオフ電圧」は、放電が完了したと考えられる所定の下限電圧を意味することを意図する。カットオフ電圧は、通常、電池の最大有効容量が達成されるように選択される。カットオフ電圧は、電池ごとに異なり、電池のタイプ、例えばカソート又はアノードのタイプに高度に依存する。
【0023】
本発明において、用語「アノード」は、放電中に酸化が起こる電気化学セルの電極を特に意味することを意図する。
【0024】
本発明において、用語「カソード」は、放電中に還元が起こる電気化学セルの電極を特に意味することを意図する。
【0025】
本発明において、「集電体」の種類は、それによって提供される電極がカソード又はアノードのいずれであるかに依存する。本発明の電極がカソードである場合、集電体は、典型的には、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)及びそれらの合金からなる群から選択される少なくとも1種の金属、好ましくはAlを含み、好ましくはそれらから構成される。本発明の電極がアノードである場合、集電体は、典型的には、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、銅(Cu)及びそれらの合金からなる群から選択される少なくとも1種の金属、好ましくはCuを含み、好ましくはそれらから構成される。
【0026】
本発明において、用語「電気活性材料」は、電池の充電段階及び放電段階中にリチウムイオンをその構造中に組み入れるか又は挿入し、そこから実質的に放出することができる電気活性材料を意味することを意図する。電気活性材料の性質は、それがカソードを形成するために使用されるかアノードを形成するために使用されるかに依存するであろう。したがって、電気活性材料は、カソード電気活性材料及びアノード電気活性材料から選択することができる。
【0027】
本明細書で用いる場合、有機基に関する専門用語「(Cn~Cm)」(式中、n及びmは、それぞれ整数である)は、この基が1つの基当たりn個の炭素原子~m個の炭素原子を含有し得ることを示す。
【0028】
比、濃度、量及び他の数値データは、本明細書では、範囲形式で示され得る。そのような範囲形式は、単に便宜上及び簡潔さのために用いられること並びに範囲の限界点として明示的に列挙された数値を包含するのみならず、各数値及び部分範囲が明示的に列挙されるかのように、その範囲内に包含される個々の数値又は部分範囲を全て包含すると柔軟に解釈されるべきであることが理解されるべきである。例えば、約120℃~約150℃の温度範囲は、約120℃~約150℃の明示的に列挙された限界点のみならず、125℃~145℃、130℃~150℃等などの部分範囲並びに例えば122.2℃、140.6℃及び141.3℃などの明記された範囲内の小数点数などの個々の量も包含すると解釈されるべきである。
【0029】
別段の明記がない限り、本発明との関係おいて、組成物中の成分の量は、成分の体積と組成物の総体積との比率に100を掛けたもの、すなわち体積%(vol%)、又は成分の重量と組成物の総重量との比率に100を掛けたもの、すなわち重量%(wt%)として示される。前述の概要及び以下の詳細な説明の両方は、例示であり、特許請求される本発明のさらなる説明を提供することを意図していることが理解されるべきである。したがって、本明細書に記載される様々な変更形態及び修正形態は、当業者に明らかであろう。さらに、周知の機能及び構造の説明は、明確にするために且つ簡潔にするために省略されている場合がある。
【0030】
本発明は、
a)下記式(I)
Li[(2x+2)/(x+2)]Mn[2x/(x+2)]M[(2-2x)/(x+2)]O2 (I)
(式中、0<x<1であり、Mは一般式(II)
(NiaMnbCoc)1-dM’d (II)
で表される元素の組み合わせであり、a+b+c=1であり、0≦c≦0.1であり、0≦d≦0.1であり、M’は、Sc、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Mg、Al、Sn、B、Ga、Sr、Ca、In、Si、Zr、La、P、Nb、及びGeからなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む)
で表されるリチウム遷移金属酸化物をカソード電気活性材料として含むカソードと、
b)式(III)
R1-OC(O)O-R2 (III)
(式中、R1及びR2は、それぞれアルキル基を表し;R1及びR2のいずれかの中の炭素原子の合計は2~7であり;R1及び/又はR2の中の少なくとも1個の水素はフッ素で置換されている)
で表される少なくとも1種のフッ素化非環状カーボネートを含む液体電解質と、
を含むリチウム二次電池に関する。
【0031】
好ましい実施形態では、0.1≦x≦0.7である。
【0032】
より好ましい実施形態では、0.3≦x≦0.55である。
【0033】
本発明によるカソード電気活性材料は、リチウム-マンガン-リッチ層状酸化物に対応する。
【0034】
一実施形態では、本発明によるカソード電気活性材料はCoを含まない。すなわちcはゼロである。
【0035】
別の実施形態では、カソード電気活性材料は、ニッケルよりもマンガンを多く含み、a*(1-d)<[x/(1-x)]+b(1-d)である。
【0036】
本発明による適切なカソード電気活性材料の非限定的な例としては、特に以下のものが挙げられる:
Li1.09Mn0.91O2(0.2[Li2MnO3]・0.8[LiMnO2]と同一)、Li1.25Mn0.625Ni0.125O2、Li1.15Mn0.56Ni0.29O2、及びLi1.17Mn0.54Ni0.28O2。
【0037】
好ましい実施形態では、カソード電気活性材料は、Li1.15Mn0.56Ni0.29O2及びLi1.17Mn0.54Ni0.28O2からなる群から選択される。
【0038】
一実施形態では、R1及びR2は、CH2F-基も-CHF-基も含有しない。
【0039】
一実施形態では、式(III)におけるR1の中の炭素原子の数は、1、2、3、4、又は5である。好ましい実施形態では、式(III)におけるR1の中の炭素原子の数は1である。
【0040】
別の特定の実施形態では、R1及びR2は、独立して、2~7個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル基を表し、少なくとも2つの水素がフッ素で置換されている。すなわち、R1の中の少なくとも2つの水素がフッ素で置換されているか、又はR2の中の少なくとも2つの水素がフッ素で置換されているか、又はR1の中の少なくとも2つの水素及びR2の中の少なくとも2つの水素がフッ素で置換されている。
【0041】
本発明による好適なフッ素化非環状カーボネートの非限定的な例としては、とりわけ、以下のものが挙げられる:
CH3-OC(O)O-CH2CF2H(メチル2,2-ジフルオロエチルカーボネート)、CH3-OC(O)O-CH2CF3(メチル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート)、CH3-OC(O)O-CH2CF2CF2H(メチル2,2,3,3-テトラフルオロプロピルカーボネート)、CF2HCH2-OC(O)O-CH2CF3(2,2-ジフルオロエチル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート)、CH3CH2-OC(O)O-CH2CF2H(エチル2,2-ジフルオロエチルカーボネート)、CF3CH2-OC(O)O-CH2CH3(エチル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート)、CF3CH2-OC(O)O-CH2CF3(ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート)、CF2HCH2-OC(O)O-CH2CF2H(ビス(2,2-ジフルオロエチル)カーボネート)、CF3-OC(O)O-CF3、CFH2-OC(O)O-CH3、CF3CHF-OC(O)O-CF3、CH3CH2-OC(O)O-CHFCH3、CH3CHF-OC(O)O-CHFCH3、CH3CHF-OC(O)O-CH2CF3、CH3CHF-OC(O)O-CH2CH2CH3、及びそれらの混合物。
【0042】
好ましい実施形態では、フッ素化非環状カーボネートは、CH3-OC(O)O-CH2CF2H(メチル2,2-ジフルオロエチルカーボネート)、CH3-OC(O)O-CH2CF3(メチル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート)、CH3-OC(O)O-CH2CF2CF2H(メチル2,2,3,3-テトラフルオロプロピルカーボネート)、CF2HCH2-OC(O)O-CH2CF3(2,2-ジフルオロエチル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート)、CH3CH2-OC(O)O-CH2CF2H(エチル2,2-ジフルオロエチルカーボネート)、CF3CH2-OC(O)O-CH2CH3(エチル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート)、又はそれらの混合物を含む。
【0043】
より好ましい実施形態では、フッ素化非環状カーボネートは、CH3-OC(O)O-CH2CF3(メチル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート)である。
【0044】
一実施形態では、フッ素化非環状カーボネートは、液体電解質の総重量を基準として10~50重量%(wt%)、好ましくは10~40重量%、より好ましくは10~30重量%の量である。
【0045】
別の実施形態では、b)液体電解質は、式(IV)
R3-OC(O)O-R4 (IV)
(式中、R3及びR4は、それぞれアルキル基を表し、R3及びR4の中の炭素原子の合計は2~7であり、R3はフッ素を含まず、R4は少なくとも1つのフッ素を含む)
で表されるフッ素化非環状カルボン酸エステルをさらに含む。
【0046】
特定の実施形態では、R3及びR4は、CH2F-基も-CHF-基も含まない。
【0047】
別の特定の実施形態では、R3及びR4は、独立して、2~7個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル基を表し、少なくとも2つの水素がフッ素で置換されている。すなわち、R4における少なくとも2つの水素はフッ素によって置き換えられる。
【0048】
本発明による好適なフッ素化非環状カーボネートの非限定的な例としては、とりわけ、以下のものが挙げられる:
CH3-C(O)O-CH2CF2H、CH3-C(O)O-CF2H、CH3-C(O)O-CF2CF3、CH3-C(O)O-CH2CF3、CH3-C(O)O-CF3、CH3-C(O)O-CF2CF2CF3、(CH3)2CH-C(O)O-CF3、CH3CH2-C(O)O-CF2H、CH3CH2-C(O)O-CF3、CH3CH2-C(O)O-CF2CH3、CH3-C(O)O-CH(CF3)CH3、CH3CH2-C(O)O-CH2CF2H、CH3-C(O)O-CH2CH2CF2H、CH3-C(O)O-CH2CF2CF2H、CH3CH2-C(O)O-CH2CH2CF2H、CH3-C(O)O-CF2CF2H、CH3-C(O)O-CF2CF2CF2CF2H、CH3CH2CH2-C(O)O-CH2CF3、CH3-C(O)O-CH2CH2CH2CF2CF3、(CH3)2CH-C(O)O-CH2CF2H、CH3CH2CH2-C(O)O-CF2H、(CH3)2CH-C(O)O-CF2H、CH3CH2-C(O)O-CH2CF3、及びこれらの混合物。
【0049】
好ましい実施形態では、フッ素化非環状カーボネートは、CH3-C(O)O-CH2CF2H(2,2-ジフルオロエチルアセテート)である。
【0050】
別の実施形態では、b)液体電解質は、式(V)
R5-O-R6-O-R7 (V)
(式中、R5及びR7は、それぞれフッ素化された直鎖アルキル基を表し;R6は、任意選択的にフッ素化された直鎖アルキル基を表し;R5、R6、及びR7の中の炭素原子の合計は、5~8、好ましくは6である)
で表される少なくとも1種のフッ素化非環状ジエーテルをさらに含む。
【0051】
一実施形態では、フッ素化非環状ジエーテルの沸点は、少なくとも80℃、好ましくは80℃~160℃、より好ましくは120℃~160℃である。
【0052】
一実施形態では、フッ素化非環状ジエーテルにおけるモル比F/Hは、1.3~13.0、好ましくは2.5~6.0である。
【0053】
好ましい実施形態では、フッ素化非環状ジエーテルは、6個の炭素原子を含む。
【0054】
より好ましい実施形態では、フッ素化非環状ジエーテルは、CHF2CF2-O-CH2CH2-O-CF2CF2Hである。
【0055】
本発明による適切なフッ素化非環状ジエーテルの非限定的な例としては、特に以下のものが挙げられる:
CF3CH2-O-CF2CHF-O-CF3、CHF2CH2-O-CF2CF2-O-CF3、CF3CF2-O-CHFCHF-O-CHF2、CHF2CF2-O-CHFCHF-O-CF3、CF3CHF-O-CHFCF2-O-CHF2、CF3CHF-O-CF2CHF-O-CHF2、CH3CF2-O-CF2-O-CF2CF3、CFH2CHF-O-CF2-O-CF2CF3、CF3CF2-O-CHF-O-CHFCHF2、CF3CH2-O-CF2CF2-O-CF3、CHF2CHF-O-CF2CF2-O-CF3、CH2FCF2-O-CF2CF2-O-CF3、CF3CF2-O-CHFCHF-O-CF3、CF3CF2-O-CF2CH2-O-CF3、CF3CF2-O-CH2CF2-O-CF3、CF3CF2-O-CF2CFH-O-CHF2、CF3CHF-O-CHFCF2-O-CF3、CF3CHF-O-CF2CHF-O-CF3、CHF2CF2-O-CF2CHF-O-CF3、CHF2CF2-O-CHFCF2-O-CF3、CHF2CF2-O-CF2CF2-O-CHF2、CF3CHF-O-CF2CF2-O-CHF2、CF3CF2-O-CF2-O-CHFCF3、CF2HCF2-O-CF2-O-CF2CF3、CF3CHF-O-CF2-O-CF2CF3、CF3CF2-O-CHF-O-CF2CF3、CF3CF2-O-CF2-O-CF2CHF2、CF2HCF2-O-CF2CH2-O-CF2CF2H、CF3CF2-O-CH2CH2-O-CF2CF3、CF2HCF2-O-CHFCHF-O-CF2CF2H、CF3CF2-O-CHFCH2-O-CF2CF2H、CF3CF2-O-CH2CHF-O-CF2CF2H、CF3-O-CHFCF2CH2-O-CF2CF2H、CF2HCF2-O-CF2CF2-O-CF2CF2H、CF3CF2-O-CF2CHF-O-CF2CF2H、CF3CF2-O-CHFCF2-O-CF2CF2H、CF3CF2-O-CF2CH2-O-CF2CF3、CF3CF2-O-CHFCHF-O-CF2CF3、及びこれらの混合物。
【0056】
別の実施形態では、フッ素化非環状ジエーテルは、7個の炭素原子を含む。
【0057】
別の実施形態では、フッ素化非環状ジエーテルは、8個の炭素原子を含む。
【0058】
一実施形態では、b)本発明による液体電解質は、非フッ素化エーテルもフッ素化モノエーテルも含まない。
【0059】
本発明において、用語「非フッ素化エーテル」は、フッ素原子が存在しない、エーテル化合物を意味することを意図する。
【0060】
本発明において、用語「フッ素化モノエーテル」は、少なくとも1個の水素原子がフッ素によって置換されている、モノエーテル化合物を意味することを意図する。1つ、2つ、3つ又はそれを超える数の水素原子がフッ素で置換され得る。
【0061】
本発明による液体電解質は、フッ素化環状カルボン酸エステル、例えば1-オキサシクロアルカン-2-オン構造を含むフッ素化ラクトンを含まない。
【0062】
一実施形態では、b)液体電解質は、少なくとも1種の有機カーボネートをさらに含む。
【0063】
本発明において、有機カーボネートには、フッ素化環状カーボネート、非フッ素化環状カーボネート、及び非フッ素化非環状カーボネートが含まれる。
【0064】
本発明による有機カーボネートの非限定的な例としては、特に以下のものが挙げられる:
4-フルオロエチレンカーボネート(4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン)、4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジフルオロ-4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジフルオロ-4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4,5-トリフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-フルオロメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、テトラフルオロエチレンカーボネート、4-(2,2-ジフルオロエトキシ)エチレンカーボネート、4-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エチレンカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ジメチルビニレンカーボネート、エチルプロピルカーボネート、シクロヘキセンカーボネート、ビスフェノールA、B、及びFカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、並びにそれらの混合物。
【0065】
特定の好ましい実施形態では、有機カーボネートは、フルオロエチレンカーボネートと、プロピレンカーボネートと、エチレンカーボネートとの混合物である。
【0066】
別の特定の実施形態では、有機カーボネートは、フルオロエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの混合物である。
【0067】
本発明において、少なくとも1種の有機カーボネートの総量は、液体電解質の総重量に対して0~90重量%、好ましくは0~80重量%、より好ましくは0~60重量%、最も好ましくは0~50重量%である。
【0068】
本発明の液体電解質中に少なくとも1種の有機カーボネートが含まれる場合、その総量は、液体電解質の総重量に対して10~80重量%、好ましくは20~60重量%、より好ましくは25~50重量%である。
【0069】
一実施形態では、b)液体電解質は、少なくとも1種のリチウム塩をさらに含む。
【0070】
本発明によるリチウム塩の非限定的な例としては、とりわけ、以下のものが挙げられる:
ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF6)、ヘキサフルオロアンチモン酸リチウム(LiSbF6)、ヘキサフルオロタンタル酸リチウム(LiTaF6)、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl4)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、クロロホウ酸リチウム(Li2B10Cl10)、フルオロホウ酸リチウム(Li2B10F10)、Li2B12FxH12-x(式中、x=0~12である)、LiPFx(RF)6-x及びLiBFy(RF)4-y(式中、RFは、全フッ素化C1~C20アルキル基又は全フッ素化芳香族基を表し、x=0~5であり、y=0~3である)、LiBF2[O2C(CX2)nCO2]、LiPF2[O2C(CX2)nCO2]2、LiPF4[O2C(CX2)nCO2](式中、Xは、H、F、Cl、C1~C4アルキル基及びフッ素化アルキル基からなる群から選択され、n=0~4である)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(Li(FSO2)2N(LiFSI)、LiN(SO2CmF2m+1)(SO2CnF2n+1)及びLiC(SO2CkF2k+1)(SO2CmF2m+1)(SO2CnF2n+1)(式中、k=1~10であり、m=1~10であり、n=1~10である)、LiN(SO2CpF2pSO2)及びLiC(SO2CpF2pSO2)(SO2CqF2q+1)(式中、p=1~10であり、q=1~10である)並びにそれらの混合物。
【0071】
一実施形態では、リチウム塩は、リチウムビス(トリフルオロスルホニル)イミド(LiN(CF3SO2)2;LiTFSI)である。
【0072】
別の実施形態では、リチウム塩は、LiPF6である。
【0073】
別の実施形態では、リチウム塩はLiFSIである。
【0074】
一実施形態では、本発明による液体電解質中のリチウム塩のモル濃度(M)は、1M~8M、好ましくは1M~4M、より好ましくは1M~2Mである。
【0075】
本発明によるリチウム塩は、イミダゾールなどの複素環上に窒素原子を有するリチウム塩、例えばリチウム2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノイミダゾール(LiTDI)を含まない。
【0076】
一実施形態によれば、本発明による液体電解質は、電極表面上に溶媒を予め反応させることによって負極表面での固体電解質界面(SEI)層の形成を促進する、少なくとも1種の膜形成添加剤をさらに含む。SEI層に関して、主成分は、そのため、Li2CO3、リチウムアルキルカーボネート、リチウムアルキルオキシド、及びLiPF6ベースの電解質のためのLiFなどの他の塩部分を含み得る電解質溶媒及び塩の分解生成物を含む。別の実施形態によれば、膜形成添加剤は、とりわけ高電圧下において、正極の構造変化を防ぐことによって正極表面でのカソード電解質界面(CEI)層を安定させる。通常、膜形成添加剤の還元電位は、反応が負極表面で起こるときの溶媒の還元電位よりも高く、膜形成添加剤の酸化電位は、反応が正極側で起こるときの溶媒の酸化電位よりも低い。
【0077】
本発明において、膜形成添加剤はリチウム塩とは異なる。
【0078】
特定の実施形態では、本発明による膜形成添加剤は、1,3,2-ジオキサチオラン-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチオラン-4-エチニル-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチオラン-4-エテニル-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチオラン-4,5-ジエテニル-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチオラン-4-メチル-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチオラン-4,5-ジメチル-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチアン-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチアン-4-エチニル-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチアン-5-エチニル-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチアン-4-エテニル-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチアン-5-エテニル-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチアン-4,5-ジエテニル-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチアン-4,6-ジエテニル-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチアン-4,5,6-トリエテニル-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチアン-4-メチル-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチアン-5-メチル-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチアン-4,5-ジメチル-2,2-ジオキシド、ジオキサチアン-4,6-ジメチル-2,2-ジオキシド、ジオキサチアン-4,5,6-トリメチル-2,2-ジオキシド;1,3-プロパンスルトン、1-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、2-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、3-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、3-フルオロ-1,4-ブタンスルトン、4-フルオロ-1,4-ブタンスルトン、5-フルオロ-1,4-ブタンスルトン、6-フルオロ-1,4-ブタンスルトン、好ましくは1,3,2-ジオキサチオラン-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチアン-2,2-ジオキシド、1,2-オキサチオラン-2,2-ジオキシド(1,3-プロパンスルトン)、1,3,2-ジオキサチオラン-2-オキシド(エチレンサルファイト)及びプロパ-1-エン-1,3-スルトン、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン(スルホランとしても知られる)、エチルメチルスルホン及びイソプロピルメチルスルホンを含む硫黄化合物;スクシノニトリル、アジポニトリル、及びグルタロニトリルを含むニトリル誘導体;硝酸リチウム(LiNO3);リチウムジフルオロオキサラトボレート(LiDFOB)、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiB(C2O4)2;LiBOB)、リチウムフルオロマロナト(ジフルオロ)ボレート(LiB(O2CCHFCO2)2;LiFMDFB)、リチウムビス(マロナト)ボレート[LiB(O2CCH2CO2)2]、リチウムビス(ジフルオロマロナト)ボレート[LiB(O2CCF2CO2)2]、リチウム(マロナトオキサラト)ボレート[LiB(C2O4)(O2CCH2CO2)]、リチウム(ジフルオロマロナトオキサラト)ボレート[LiB(C2O4)(O2CCF2CO2)]を含むホウ素誘導体塩;リチウムトリス(オキサラト)ホスフェート[LiP(C2O4)3]、リチウムトリス(ジフルオロマロナト)ホスフェート[LiP(O2CCF2CO2)3]、リチウムジフルオロホスフェート(LiPO2F2)、酢酸ビニル、ビフェニルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、トリス(トリメチルシリル)ホスフェート、トリフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィナイト、トリエチルホスファイト、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスファイト、無水マレイン酸、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、セシウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(CsTFSI)、ヘキサフルオロリン酸セシウム(CsPF6)、フッ化セシウム(CsF)、トリメチルボロキシン(TMB)、ホウ酸トリブチル(TBB)、2-(2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロポキシ)-1,3,2-ジオキサホスホラン(PFPOEPi)、2-(2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロポキシ)-4-(トリフルオロメチル)-1,3,2-ジオキサホスホラン(PFPOEPi-1CF3)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、硝酸銀(AgNO3)、ヘキサフルオロリン酸銀(AgPF6)、トリス(トリメチルシリル)ホスフィン(TMSP)、1,6-ジビニルパーフルオロヘキサン、並びにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0079】
好ましい実施形態では、膜形成添加剤は、1,3,2-ジオキサチオラン-2,2-ジオキシド、1,3,2-ジオキサチアン-2,2-ジオキシド、1,3-プロパンスルトン、エチレンサルファイト及びプロパ-1-エン-1,3-スルトンを含む硫黄化合物;ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン(スルホランとしても知られる)、エチルメチルスルホン及びイソプロピルメチルスルホンを含むスルホン誘導体;スクシノニトリル、アジポニトリル、及びグルタロニトリルを含むニトリル誘導体;並びに硝酸リチウム(LiNO3);リチウムジフルオロオキサラトボレート(LiDFOB)、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiB(C2O4)2;LiBOB)、リチウムフルオロマロナト(ジフルオロ)ボレート(LiB(O2CCHFCO2)2;LiFMDFB)、リチウムビス(マロナト)ボレート[LiB(O2CCH2CO2)2]、リチウムビス(ジフルオロマロナト)ボレート[LiB(O2CCF2CO2)2]、リチウム(マロナトオキサラト)ボレート[LiB(C2O4)(O2CCH2CO2)]、リチウム(ジフルオロマロナトオキサラト)ボレート[LiB(C2O4)(O2CCF2CO2)]を含むホウ素誘導体塩;リチウムトリス(オキサラト)ホスフェート[LiP(C2O4)3]、リチウムトリス(ジフルオロマロナト)ホスフェート[LiP(O2CCF2CO2)3]、リチウムジフルオロホスフェート(LiPO2F2)、酢酸ビニル、ビフェニルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、トリス(トリメチルシリル)ホスフェート、トリフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィナイト、トリエチルホスファイト、トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホスファイト、無水マレイン酸、セシウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(CsTFSI)、フッ化セシウム(CsF)、並びにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0080】
より好ましい実施形態では、本発明による膜形成添加剤はLiBOBである。
【0081】
別のより好ましい実施形態では、本発明による膜形成添加剤はLiDFOBである。
【0082】
特定の実施形態では、本発明による膜形成添加剤はイオン液体である。
【0083】
本明細書で用いられる用語「イオン液体」は、正に帯電したカチオンと、負に帯電したアニオンとを含む化合物であって、大気圧下で100℃以下の温度で液体状態である化合物を指す。水などの通常の液体は、主に電気的に中性の分子からできている一方、イオン液体は、大部分がイオン及び短寿命のイオン対からできている。本明細書で用いる場合、用語「イオン液体」は、溶媒を含まない化合物を示す。
【0084】
本発明によるイオン液体の非限定的な例としては、特に、N-メチル-N-プロピルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(PYR13FSI)、N-ブチル-N-メチルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(PYR14FSI)、N-メチル-N-プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(PYR13TFSI)、及びN-ブチル-N-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(PYR14TFSI)が挙げられる。
【0085】
本発明において、膜形成添加剤の総量は、液体電解質の総重量に対して0~10重量%、好ましくは0~8重量%、より好ましくは0~5重量%であり得る。
【0086】
本発明の液体電解質に膜形成添加剤が含まれる場合、その総量は、液体電解質の総重量に対して0.05~5.0重量%、好ましくは0.05~3.0重量%である。
【0087】
特定の実施形態では、膜形成添加剤の総量は、液体電解質の少なくとも1.0重量%を占める。
【0088】
一実施形態によれば、本発明による液体電解質は、少なくとも1種のHF捕捉剤をさらに含み得る。例えばLiPF6などのリチウム塩の加水分解によって生成するHFは、カソードと電解質との間の界面の遷移金属成分を溶解する可能性があり、繰り返しのサイクル時に電極を保護するSEI層の安定性に悪影響を及ぼし、SEI成分の浸出を促進し、反応電極における電解質の分解を促進する。これにより、最終的にカソード電気活性材料のサイクル寿命が不十分になる。
【0089】
特に、Siベースのアノードの場合、HFの生成はSiベースのアノード表面上のSEI層の信頼性に悪影響を及ぼすため、高性能電池を得るにはHF捕捉剤の存在がより重要になる。
【0090】
好ましい実施形態では、HF捕捉剤は、ニトリル化合物、例えばアジポニトリル(AN)、スクシノニトリル(SN)、ヘキサントリシアニド(1,3,6-HTCN)などである。
【0091】
リチウム二次電池のためのアノードを形成する場合、アノード電気活性材料は、特に限定されず、
- リチウムをホストする粉末、フレーク、繊維又は球体(例えば、メソカーボンマイクロビーズ)などの形態で典型的には存在する、リチウムを挿入することができる黒鉛炭素;
- リチウム金属;
- とりわけ米国特許第6203944号明細書(3M Innovative Properties Co.)及び国際公開第2000/03444号パンフレット(Minnesota Mining&Manufacturing Co.)において記載されたものなどのリチウム合金組成物;
- 一般に式Li4Ti5O12によって表されるリチウムチタネート(これらの化合物は、移動性イオン、すなわちLi+を吸収したときに低いレベルの物理膨張を有する「ゼロ-歪み」挿入材料と一般に考えられる);
- 高いLi/Si比のケイ化リチウムとして一般的に知られるリチウム-ケイ素合金、特に式Li4.4Siのケイ化リチウム;
- 式Li4.4Geの結晶相を含むリチウム-ゲルマニウム合金;
- ケイ素;並びに
- ケイ素-炭素複合材料;
を含み得る。
【0092】
一実施形態では、アノードは、アノード電気活性材料としてケイ素又はケイ素-炭素複合材料を含む。
【0093】
本発明は、サイクル性能を改善するための、リチウム二次電池における式(III)
R1-OC(O)O-R2 (III)
(式中、R1及びR2は、それぞれアルキル基を表し;R1及びR2のいずれかの中の炭素原子の合計は2~7であり;R1及び/又はR2の中の少なくとも1個の水素はフッ素で置換されている)
で表される少なくとも1種のフッ素化非環状カーボネート含む液体電解質の使用であって、
式(I)
Li[(2x+2)/(x+2)]Mn[2x/(x+2)]M[(2-2x)/(x+2)]O2 (I)
(式中、0<x<1であり、Mは一般式(II)
(NiaMnbCoc)1-dM’d (II)
で表される元素の組み合わせであり、a+b+c=1であり、0≦c≦0.1であり、0≦d≦0.1であり、M’は、Sc、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Mg、Al、Sn、B、Ga、Sr、Ca、In、Si、Zr、La、P、Nb、及びGeからなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む)
で表されるリチウム遷移金属酸化物をカソード電気活性材料として含む、使用に関する。
【0094】
好ましい実施形態では、0.1≦x≦0.7である。
【0095】
より好ましい実施形態では、0.3≦x≦0.55である。
【0096】
一実施形態では、液体電解質は、
- 10~50重量%、好ましくは10~40重量%、より好ましくは10~30重量%のフッ素化非環状カーボネート;及び
- 10~80重量%、好ましくは20~60重量%、より好ましくは25~50重量%の少なくとも1種の有機カーボネート;
を含む。
【0097】
特定の実施形態では、フッ素化非環状カーボネートは、CH3-OC(O)O-CH2CF3(メチル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート)である。
【0098】
一実施形態では、液体電解質は、フッ素化非環状カーボネートと、フッ素化非環状ジエーテルと、有機カーボネートとの混合物を含む。
【0099】
別の実施形態では、液体電解質は、フッ素化非環状カーボネートと、フッ素化非環状カルボン酸エステルと、フッ素化非環状ジエーテルと、有機カーボネートとの混合物を含む。
【0100】
別の実施形態では、液体電解質は、フッ素化非環状カーボネートと、フッ素化非環状カルボン酸エステルと、有機カーボネートとの混合物を含む。
【0101】
好ましい実施形態では、本発明によるリチウム二次電池のための液体電解質は、
- フッ素化非環状カーボネートとしてのCH3-OC(O)O-CH2CF3(メチル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート);
- フッ素化非環状カルボン酸エステルとしてのCH3-C(O)O-CH2CF2H(2,2-ジフルオロエチルアセテート);
- フッ素化非環状ジエーテルとしてのCF2HCF2-O-CH2CH2-O-CF2CF2H;
- 有機カーボネートとしてのPCとFEC及び/又はECとの混合物;
- リチウム塩としての1MのLiPF6;
- HF捕捉剤としてのAN、SN、及び/又は1,3,6-HTCN;並びに
- 膜形成添加剤としてのLiDFOB;
を含む。
【0102】
別の好ましい実施形態では、本発明によるリチウム二次電池のための液体電解質は、
- フッ素化非環状カーボネートとしてのCH3-OC(O)O-CH2CF3(メチル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート);
- フッ素化非環状ジエーテルとしてのCF2HCF2-O-CH2CH2-O-CF2CF2H;
- 有機カーボネートとしてのPCとFEC及び/又はECとの混合物;
- リチウム塩としての1MのLiPF6;
- HF捕捉剤としてのAN、SN、及び/又は1,3,6-HTCN;並びに
- 膜形成添加剤としてのLiDFOB;
を含む。
【0103】
別の好ましい実施形態では、本発明によるリチウム二次電池のための液体電解質は、
- フッ素化非環状カーボネートとしてのCH3-OC(O)O-CH2CF3(メチル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネート);
- フッ素化非環状カルボン酸エステルとしてのCH3-C(O)O-CH2CF2H(2,2-ジフルオロエチルアセテート);
- 有機カーボネートとしてのPCとFEC及び/又はECとの混合物;
- リチウム塩としての1MのLiPF6;
- HF捕捉剤としてのAN、SN、及び/又は1,3,6-HTCN;並びに
- 膜形成添加剤としてのLiDFOB;
を含む。
【0104】
特定の実施形態では、本発明によるリチウム二次電池は、
- アノード電気活性材料としてのケイ素又はケイ素-炭素複合材料;
- 本発明によるカソード電気活性材料としてのリチウム-マンガン-リッチ層状酸化物;
- セパレータ;及び
- 本発明による液体電解質;
を含む。
【0105】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0106】
ここで、以下の実施例に関連して本発明を詳細に説明するが、その目的は、例示的であるにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0107】
原材料
- FEC:4-フルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、Soulbrainから市販;
- EMC:エチルメチルカーボネート、Enchemから市販;
- SA024:メチル2,2,2-トリフルオロエチルカーボネートであるフッ素化非環状カーボネート、すなわちCH3-OC(O)O-CH2CF3、Solvay内で合成;
- LiBOB:膜形成添加剤であるリチウムビス(オキサラト)ボレート、Enchemから市販;
- LiPF6:リチウムヘキサフルオロホスフェートのLi塩、Enchemから市販。
【0108】
A/液体電解質の処方:
本発明の実施例E1及び比較例CE1のための液体電解質を調製した。1MのLiPF6をLi塩として使用し、液体電解質の総重量に対して0.5重量%のLiBOBを膜形成添加剤として配合した。それらの構成成分を以下の表1にまとめる。
【0109】
【0110】
E1の液体電解質を調製する際には、最初に30重量%のFECと、58重量%のEMCと、12重量%のSA024とを撹拌しながら混合して液体溶媒を形成し、続いてマグネチックスターラーを使用して溶液が透明になるまで0.5重量%のLiBOBをこれに導入した。最後に、1MのLiPF6を溶液に溶解させた。
【0111】
SA024を配合しなかったことを除いて、E1と同様にCE1の液体電解質を調製した。
【0112】
全ての電解質調製工程はグローブボックスで行った。
【0113】
B/コインセルの作製
電解質試験のために、カソード、アノード、及びセパレータを準備した。カソード電気活性材料、すなわちLi1.2Ni0.2Mn0.6O2のNM13を共沈法により調製した。カソードは、NM13と、カーボンブラックと、PVDFバインダー(ポリ二フッ化ビニリデン;Solvay Specialty Polymers Italyaから市販されているSOLEF(登録商標)5130)とからなり、比率は95/3/2重量%であった。アノードは、人造黒鉛と、カーボンブラックと、PVDFバインダーとからなり、その比率は90/4/6重量%であった。セパレータにはポリエチレン多孔質フィルムを使用した。
【0114】
電解質試験はコインセルによって行った。CR2032仕様の全てのコイン部品はWellcosから市販されていた。コインセルの試験の構成要素は、カソード電極、アノード電極、及びセパレータであった。各要素を、最初に円盤状に切り出した。円盤サイズは、カソードがΦ15、アノードがΦ16、セパレータがΦ19であった。続いて、要素を真空下で一晩、すなわち電極については100℃、セパレータについては60℃で乾燥した。乾燥後、全ての構成要素をグローブボックスに移し、コインセルを組み立てた。セパレータをカソードとアノードとの間に配置し、電解液はセパレータと共に注入した。密封後、セルを25℃で24時間保管した。WONIKPNE Co.Ltd.のPEBC050.1サイクラーを使用して、セルを25℃で2.0~4.7Vでサイクルさせ、SEIの形成を行った。セルを3サイクルにわたってC/10レートで充放電した。
【0115】
C/セルの評価手順
25℃でのサイクル:NM13を含むセルを25±0.1℃に維持し、2.0~4.7Vで0.33C充電/0.33C放電のサイクルを行った。
【0116】
D/結果
室温(25℃)における液体電解質E1及びCE1のサイクル維持率を以下の表2に示す。
【0117】
【0118】
本発明による液体電解質E1は、25℃でCE1よりもはるかに高い優れたサイクル性能を示した。特に、CE1、すなわちフッ素化非環状カーボネートを含まず有機カーボネートのみを含む液体電解質は、E1よりも劣ったサイクル維持率を示した。
【0119】
一言で言えば、本発明による液体電解質E1は、CE1の液体電解質よりも高い容量維持を提供することが明確に実証された。
【国際調査報告】