(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】広視野静的ライダ
(51)【国際特許分類】
G01S 7/4865 20200101AFI20241219BHJP
G01S 17/10 20200101ALI20241219BHJP
G01S 17/931 20200101ALI20241219BHJP
【FI】
G01S7/4865
G01S17/10
G01S17/931
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538151
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-07-19
(86)【国際出願番号】 EP2022086416
(87)【国際公開番号】W WO2023117778
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514255523
【氏名又は名称】サントレ ナティオナル ド ラ ルシェルシェ シアンティフィク
(71)【出願人】
【識別番号】520179305
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ パリ-サクレー
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS-SACLAY
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】クロミエール,ジャン-ポール
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA02
5J084AA03
5J084AA05
5J084AB01
5J084AC02
5J084AC04
5J084AC07
5J084AD01
5J084BA04
5J084BA36
5J084CA03
5J084CA19
5J084CA26
5J084DA08
5J084EA22
(57)【要約】
本発明は、ライダからの信号を処理するための方法(100)に関し、この方法は、増幅済み電気信号(
【数24】
)をデジタル化するステップAと、処理済み信号(sf(t))を生成するために、デジタル化した増幅済み電気信号に対して、少なくとも1つの、補正フィルタ(C
e(t))と呼ばれる時間補正関数を適用するステップBであって、補正フィルタ(C
e(t))は、インパルス応答およびあらかじめ決められた時間解析関数に基づいて決定され、解析関数は不連続部分と呼ばれる少なくとも1つの非ゼロ値(a0、a1、a2)を、不連続部分の時間(td0、td1、td2)と呼ばれる所与の時間において有し、不連続部分周辺において実質的にゼロ値への戻りを伴う、ステップBと、処理済み信号に基づいて少なくとも1つの要素(Ei)の距離(di)を決定するステップCと、を包含する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライダからの信号を処理するための方法(100)であって、前記ライダは、飛行時間測定を行い、5°以上の角度でシーンの方向に光パルスを放射するように構成される放射装置と、受信装置とを包含し、前記受信装置は、インパルス応答(hr(t))を呈し、前記シーンの少なくとも1つの要素(Ei)によって反射または後方散乱されたパルスを受信するように構成される光検出器と、増幅済み電気信号(s
0(t))を生成するように構成される増幅回路(CA)とを包含し、前記方法は、
前記増幅済み電気信号(s
0
e(t))をデジタル化するステップAと、
処理済み信号(sf(t))を生成するために、前記デジタル化した増幅済み電気信号に対して、少なくとも1つの、補正フィルタ(C
e(t))と呼ばれる時間補正関数を適用するステップBであって、
前記補正フィルタ(C
e(t))は、前記インパルス応答およびあらかじめ決められた時間解析関数に基づいて決定され、前記解析関数は、不連続部分と呼ばれる少なくとも1つの非ゼロ値(a0、a1、a2)を、不連続部分の時間(td0、td1、td2)と呼ばれる所与の時間において有し、前記不連続部分周辺において実質的にゼロ値への戻りを伴う、ステップBと、
前記処理済み信号に基づいて前記少なくとも1つの要素(Ei)の距離(di)を決定するステップCと、
を包含する、ライダからの信号を処理するための方法(100)。
【請求項2】
前記補正フィルタを適用することは、前記時間補正関数を用いて前記デジタル化された増幅済み電気信号を畳み込むことからなり、前記補正フィルタは、前記あらかじめ決められた解析関数による前記インパルス応答の逆畳み込みによって決定される、請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
前記シーン内の前記少なくとも1つの要素の存在が、前記処理済み信号の極大値に対応し、関連付けされた前記距離は、前記極大値の時間的な位置から決定される、請求項1または請求項2に記載の処理方法。
【請求項4】
前記インパルス応答は、時間t
m-impに最大値を有し、前記解析関数の少なくとも1つの前記不連続部分の時間は、前記時間t
m-impの近傍に時間的に位置する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項5】
前記解析関数は、少なくとも1つの前記不連続部分の外側においてゼロ値を有する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項6】
前記解析関数は、単一の不連続部分(A0)、または2つの不連続部分、または3つの不連続部分のうちのいずれかを有し、それぞれは、時間的に近接した不連続部分の時間に位置する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項7】
複数の関連付けされた処理済み信号(sfj(t))を生成するために、複数の解析関数(hcj(t))から決定された複数の補正フィルタ(Cj(t))が適用され、前記シーン内の前記少なくとも1つの要素の前記距離が、複数の前記処理済み信号から決定される、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項8】
複数の前記補正フィルタは、もっとも近い障害物に対応する距離の決定が最終的な処理済み信号により可能になるまで反復処理を介して適用される、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項9】
前記反復処理は、前記解析関数の非ゼロ値である不連続部分を修正することにある、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項10】
単一の不連続部分(A0)を伴う解析関数に対応する補正フィルタが最初に適用され、それに続いて、2つの不連続部分または3つの不連続部分を伴う解析関数が適用されて前記不連続部分は反復的に修正される、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項11】
飛行時間型ライダ・システム(10)であって、
5°以上の角度でシーンに向けて光パルスを放射するように構成される放射装置(DE)と、
インパルス応答(hr(t))を有する受信装置(DR)であって、
前記シーン内の少なくとも1つの要素(Ei)によって反射または後方散乱されたパルス(Ir)を受信し、前記パルスを電気信号に変換するように構成される光検出器(PD)と、
前記電気信号を増幅するように構成される増幅回路(CA)と、を包含する受信装置(DR)と、
前記増幅済み電気信号(s
0
e(t))をデジタル化する処理ユニット(UT)であって、
処理済み信号(sf(t))を生成するために、前記デジタル化した増幅済み電気信号に対して、少なくとも1つの、補正フィルタ(C
e(t))と呼ばれる時間補正関数を適用するように構成される前記増幅済み電気信号の処理ユニット(UT)と、
前記補正フィルタ(C
e(t))は、前記インパルス応答(hr(t))およびあらかじめ決められた時間解析関数に基づいて決定され、前記解析関数は、不連続部分と呼ばれる少なくとも1つの非ゼロ値(a0、a1、a2)を、不連続部分の時間(td0、td1、td2)と呼ばれる所与の時間において有し、前記不連続部分周辺において実質的にゼロ値への戻りを伴い、
前記処理済み信号に基づいて前記少なくとも1つの要素(Ei)の距離(di)を決定するように構成される、処理ユニット(UT)と、
を包含する、飛行時間型ライダ・システム(10)。
【請求項12】
前記増幅回路(CA)は、トランスインピーダンス増幅器(TIA)と、一次側および二次側を包含するトランスと、キャパシタ(C)とを包含し、前記トランスの前記一次側が前記光検出器のアノードに接続され、前記二次側がキャパシタに接続され、前記キャパシタが前記トランスインピーダンス増幅器の入力に接続される、請求項11に記載のライダ・システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行時間(time-of-flight(TOF))型ライダの分野に関し、より詳細には、5°より広い視野を伴ったライダに関する。ここでは、低消費電力で小型かつ低コストの静的ライダ(機械的可動部分を持たない)に焦点を当てる。このタイプのライダは、たとえば障害物検出に応用される。
【背景技術】
【0002】
ライダ(光検出および測距:Light Detection And Ranging)は、光パルスの飛行時間を測定することにより距離を測定するために使用される装置である。
【0003】
この装置は、高パワー、短時間(通常、数ナノ秒)の光パルスを放射し、その後に遅れて障害物からの反射/後方散乱パルスを回収する。光の伝播速度がわかれば、飛行時間と呼ばれるこの遅延時間から距離が推測される。その距離は、次の式に従って計算される。
【0004】
【0005】
式中、c=3.108m/sは、光の速度であり、Rは、発信機と障害物の間の距離dに起因する遅延時間である。したがって、1m離れた障害物の場合には、この遅延時間が6.67ナノ秒と見なされる。
【0006】
ライダは、
マイクロプロセッサまたはマイクロコントローラまたはFPGA等の論理構成要素によってコントロールされる光パルス放射器(レーザー・ダイオードまたは発光ダイオード)と、
特に測定の信号対雑音比(S/N)を最大化することによって測定品質を維持しつつ反射パルスを電気信号に変換する役割を担う光電子受信機と、
受信機によって供給された電気信号を処理して障害物までの距離を推測するための装置と、
からなる。この装置は、時間-距離変換器(TDC)、またはマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラもしくはFPGAに基づくデジタル信号処理システムとすることができる。
【0007】
通常、ダイオード・レーザー放射器を使用するときには、数ナノ秒の期間にわたって放射される光パワーを数十ワットに至るまで高くすることが可能である。エコーから受け取られるパワーの大きさは、通常、数ナノワットから数百ミリワットの範囲となる。光出力は、完全な闇のゼロから直射日光下の1kW/m2(120klux)まで変化することが可能である。5×5mm2のシリコン・フォトダイオードを照明する平均的な人工光に対応する10W/m2の照度は、約500μAの光発生電流を発生し、直射日光は、約20mAの電流を発生する。
【0008】
ライダは、測距、表面のマッピング、および物体を検出するために使用される。ライダにはいくつかのタイプがある。
【0009】
1Dライダは、しばしば視野が狭い、小開口を用いて放射される光パルス・ビームを特徴とする(狭視野(FOV)ライダ)。これは、物体が置かれている正確な点からの距離を測定する。光電子構成要素(ビーム放射ダイオード、受信フォトダイオード)が、この場合は、ビームをコリメートして焦点を合わせるためにしばしば光学構成要素(レンズ、フィルタ等)と組み合わされる。これらの狭視野(通常、3°未満)短距離1Dライダは、ドローンまたはもっとも広い意味でのロボット(自動掃除機、芝刈り機、障害物検出付き無線コントロール移動体等)といった自動または半自動移動物体のための軽量用途における障害物検出応用に向けて市場に出されている。これらは、その視野が遙かに広く、っその最初に検出される障害物が正確にわからない伝統的な超音波距離測定器に取って代わった。
【0010】
1Dライダは、比較的コンパクトで高価でないという利点を有するが、それらの視野が狭く、3°に満たないという主要な欠点を有する(Safran(サフラン)LRF3013、Benewake(ベネウェイク)TF02)。
【0011】
障害物検出が広い視野を必要とすることから、現在のところこの役割は、走査テクノロジを使用する3Dライダによって満たされている。そのパルス・ビームもまた小開口を有するが、機械的走査システムと結合されて空間部分の全体を照射する。マップの生成には異なる場所に指向される複数のビームが必要とされる。3Dライダは、多様な複雑性の機械的システムまたはMEMS(微小電気機械システム)を使用して環境の正確なマッピングを可能にする。これは効果的であるが、次に挙げる点から見て軽量用途にとってオーバーサイズであるという欠点を有する。
- データ量:正確なマッピングは、データの広範囲にわたる処理を必要とするが、それらすべての処理を期待することは可能でない。
- 物理的フォームファクタが大きい。
- 消費電力が高い(殆どの場合は1Wを超える)。
- 測定リフレッシュ・レートが低い(数十Hz)。
【0012】
これが、広い視野で障害物を検出することを必要とするリバースレーダの分野において、ライダよりはむしろカメラ・ベースの装置の方が超音波センサに取って代わるか、または補助となっている理由である。衝突回避のためには、広視野を走査するためにターンテーブル上に搭載する必要のある伝統的な3Dライダより超音波センサの広い視野は有利である。超音波センサは、電磁波と比べて音波の伝播速度が低く、これはエコー時間が遙かに長く、測定しやすいことを意味するが、そのせいでより使いやすいこともある。これらは、車両衝突回避やロボット工学、および物体または生物の存在の検出等の広範な応用に使用される。
【0013】
しかしながら、音波の波長および伝播速度の特性は、超音波センサが次のような根本的な短所を有することを意味する。
- 大気および環境状態、すなわち湿度、雨、温度、雑音に対する感度が高く、これらの気候状態下で妥当な感度で1メートルを超える検出範囲を得ることが難しい。
- 測定野内に誤検出のリスクを伴う寄生二次ローブが存在する。
- 高い発生率で見られる低粗度表面(ミリメートル未満)に対して無感応である(全反射が検出を妨げる)。
- 微細物体、小寸法または表面の検出が困難である。
- 測定の遅さが、センサと相対的に移動する障害物の検出に不利である。
【0014】
超音波センサの広視野特性を伴うライダ、すなわち5°を超える、あるいは10°または20°さえ超える円錐角でシーンを照明するライダは、空間の大きな部分を走査し、単一パルス(走査を必要とすることのない)の可能性とともにシーン内または観察野内に存在する種々の要素/障害物からのエコーを検出することが可能である。さらには、高湿度および/または雨に実質的に影響されず、かつ発生率の高い塗装された滑らかな表面を検出することが可能な広視野FOVライダは、いまだに超音波のために取り置かれている衝突防止応用における競争力のある利点を有することになるであろう。ロボットまたはドローンの自律移動にそれを使用することも可能である。
【0015】
しかし、広視野は、ライダ本来の領域ではない。これは、小さい物体に対して後方散乱される光束の距離(d)に伴う減衰が、狭視野についてd-2に至る減衰ではなく、d-4に至るものとなるためであり、そのことがその検出範囲を制限する。その相違は、入射光の強度の密度にある。いわゆる『狭』視野においては、すべての入射エネルギが障害物の表面上に含まれること(言い換えると、その立体角で照明される表面積より障害物の表面積の方が大きいこと)が仮定される:障害物は、発信機からのすべてのエネルギを受け取る。続いて障害物上の各点が、受信機に向けてエネルギをd-2則に従って後方散乱させる。広視野の場合には、照明円錐がその中に障害物を完全に含む:障害物は、d-2則に従う発信機のエネルギの一部だけを受け取り、同じくd-2則に従って受信機に向けてこのエネルギを後方散乱させ、受信機における総エネルギは、発信機のエネルギのd-4となる。
【0016】
加えて、後述する理由から背景内の大きな物体に前景内の小さい物体が紛れてしまう。センチメートル分解能は、より達成が困難であり、超音波センサより高コストである。
【0017】
通常、受信機は、測定または計算によって決定される既知のインパルス応答hr(t)を有する。ライダ信号を処理する1つの従来技術方法は、フーリエ空間で演算することである。受信機出力における信号がデジタル化され、そのフーリエ変換が計算され、その後、hr(t)のフーリエ変換の逆数に近似の伝達関数のフィルタF0(f)が適用される。
【0018】
F0(f)=1/Hr(f)
式中、Hr(f)は、hr(t)のフーリエ変換である。
【0019】
これらの方法は、一般に白色化フィルタを通じたスペクトル白色化と呼ばれ、広く文献に記述されているが、多くの安定性および複雑性の問題が持ち上がっている。殆どの場合、単純かつ低電力のオンボード・マイクロプロセッサでは届かない高レベルの演算パワーを必要する。また、雑音の存在がゼロによる除算を計算に持ち込むため処理上の問題も引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、照明されたシーン内に存在する要素/障害物を区別してそれらの距離の決定をすべて単一のレーザー・ショットの中で可能にする広視野TOFライダのためのライダ信号処理方法を提案することによって上に述べた欠点のいくつかを克服することを1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、ライダからの信号を処理するための方法を目的とし、上記ライダは、飛行時間測定を行い、5°以上の角度でシーンの方向に光パルスを放射するように構成される放射装置と、受信装置とを包含し、この受信装置は、インパルス応答を呈し、シーンの少なくとも1つの要素によって反射または後方散乱されたパルスを受信するように構成される光検出器と、増幅済み電気信号を生成するように構成される増幅回路とを包含し、この方法は、
上記増幅済み電気信号をデジタル化するステップAと、
処理済み信号を生成するために、上記デジタル化した増幅済み電気信号に対して、少なくとも1つの、補正フィルタと呼ばれる時間補正関数を適用するステップBであって、
上記補正フィルタは、インパルス応答およびあらかじめ決められた時間解析関数に基づいて決定され、解析関数は、不連続部分と呼ばれる少なくとも1つの非ゼロ値を、不連続部分の時間と呼ばれる所与の時間において有し、不連続部分周辺において実質的にゼロ値への戻りを伴う、ステップBと、
処理済み信号に基づいて上記少なくとも1つの要素(Ei)の距離(di)を決定するステップCと、
を包含する。
【0022】
1つの実施態様によれば、補正フィルタを適用することが、上記時間補正関数を用いてデジタル化された増幅済み電気信号を畳み込むことからなり、上記補正フィルタは、上記あらかじめ決められた解析関数による上記インパルス応答の逆畳み込みによって決定される。
【0023】
1つの実施態様によれば、上記シーン内の上記少なくとも1つの要素の存在が上記処理済み信号の極大値に対応し、上記関連付けされた距離が、前記極大値の時間的な位置から決定される。
【0024】
1つの実施態様によれば、上記インパルス応答は時間tm-impに最大値を有し、解析関数の上記少なくとも1つの不連続部分の時間は、前記時間tm-impの近傍に時間的に位置する。
【0025】
1つの実施態様において、解析関数は、上記少なくとも1つの不連続部分の外側においてゼロ値を有する。
【0026】
1つの実施態様によれば、解析関数は、単一の不連続部分、または2つの不連続部分、または3つの不連続部分のうちのいずれかを有し、それぞれは、時間的に近接した不連続部分の時間に位置する。
【0027】
1つの実施態様によれば、複数の関連付けされた処理済み信号を生成するために、複数の解析関数から決定された複数の補正フィルタが適用され、シーン内の上記少なくとも1つの要素の上記距離が、上記複数の処理済み信号から決定される。
【0028】
1つの実施態様において、上記複数の補正フィルタは、もっとも近い障害物に対応する距離の決定が最終的な処理済み信号により可能になるまで反復処理を介して適用される。
【0029】
1つの実施態様において、反復処理は、不連続部分、すなわち上記解析関数の非ゼロ値を修正することにある。
【0030】
1つの実施態様において、単一の不連続部分を伴う解析関数に対応する補正フィルタが最初に適用され、それに続いて、2つの不連続部分または3つの不連続部分を伴う解析関数が適用されて、上記不連続部分は反復的に修正される。
【0031】
別の態様によれば、本発明は、飛行時間型ライダ・システムに関し、前記システムは、
5°以上の角度でシーンに向けて光パルスを放射するように構成される放射装置と、
インパルス応答を有する受信装置であって、
シーン内の少なくとも1つの要素によって反射または後方散乱されたパルスを受信し、上記パルスを電気信号に変換するように構成される光検出器と、
上記電気信号を増幅するように構成される増幅回路と、を包含する受信装置と、
上記増幅済み電気信号をデジタル化する処理ユニットであって、
処理済み信号(sf(t))を生成するために、上記デジタル化した増幅済み電気信号に対して、少なくとも1つの、補正フィルタと呼ばれる時間補正関数を適用するように構成される上記増幅済み電気信号の処理ユニットと、
前記補正フィルタは、インパルス応答およびあらかじめ決められた時間解析関数に基づいて決定され、解析関数は、不連続部分と呼ばれる少なくとも1つの非ゼロ値を、不連続部分の時間と呼ばれる所与の時間において有し、不連続部分周辺において実質的にゼロ値への戻りを伴い、
処理済み信号に基づいて上記少なくとも1つの要素の距離を決定するように構成される、処理ユニットと、
を包含する。
【0032】
1つの実施態様によれば、増幅回路は、トランスインピーダンス増幅器と、一次側および二次側を包含するトランスと、キャパシタとを包含し、トランスの一次側が光検出器のアノードに接続され、二次側がキャパシタに接続され、上記キャパシタは上記トランスインピーダンス増幅器の入力に接続される。
【0033】
以下の説明には、本発明の装置のいくつかの例が示されているが、これらの例は、本発明の範囲を限定するものではない。これらの例の実施態様は、本発明の本質的な特徴をはじめ、考察した実施態様に関連する追加の特徴の両方を提示する。
【0034】
本発明は、以下の詳細な説明と、非限定的な例として与えられている添付図面を参照することによって、それのより良好な理解が得られ、またその他の特徴、目的、および利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1A】本発明に従ったライダを示した説明図である。
【
図1B】着陸の過程にある従来技術に従った1Dライダが装備されたドローンを示した説明図である。
【
図1C】着陸の過程にある本発明に従ったライダが装備されたドローンを示した説明図である。
【
図2】
図1に示されている状況についての4つの時間値の畳み込みにおける変化を示したグラフである。
【
図3】受信機出力において取得されるs
0(t)信号を示した波形図である。
【
図4】架空障害物のコンセプトを示した説明図である。
【
図5】多様な注目信号の経時的な変化を示した波形図である。
【
図6】本発明に従ったライダ信号処理方法を示したフローチャートである。
【
図7】測定および処理の連鎖を示したブロック図である。
【
図8】インパルス応答の補正を示したブロック図である。
【
図9】受信機の未処理インパルス応答をあらかじめ決められた解析関数に変換するタイミング法を示したグラフである。
【
図10】あらかじめ決められた解析関数によるインパルス応答の逆畳み込みによって計算された補正関数の係数を示したグラフである。
【
図11】Ir信号上に単一の不連続部分を伴う解析関数の効果を示した説明図である。
【
図12】Ir信号上に特定の幅の単一の不連続部分を伴う解析関数の限界を示した説明図である。
【
図13】単一の不連続部分を伴う解析関数を示した説明図である。
【
図14】2つの不連続部分を伴う解析関数を示した説明図である。
【
図15】補正フィルタが反復的に適用される本発明に従った方法の変形を示したブロック図である。
【
図16】3つの障害物の第1の構成についての生信号および処理済み信号を示した波形図である。
【
図17】シングル・ディラック解析関数(A)の一例およびデュアル・ディラック解析関数(B)の一例を示した説明図である。
【
図18】3つの障害物の第2の構成についての処理済み信号を示した波形図である。
【
図19】3つの障害物の第3の構成についての処理済み信号を示した波形図である。
【
図20】デュアル・ディラック解析関数によって反復的に処理された第3の構成についての処理済み信号を示した波形図である。
【
図21】従来技術に従ったライダ受信装置を示した回路図である。
【
図22】本発明に従ったライダの変形に従った受信装置を示した回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1Aに、本発明に従った広FOVのTOFライダ10を示す。このライダは、5°、好ましくは10°以上の角度(FOV)でシーンに向けて光パルスを放射するように構成した放射装置DEを包含する。放射素子は、たとえばレーザー・ダイオードまたは発光ダイオードである。本発明に従ったライダのための波長の選択は、狭視野ライダの場合より広く、これは、目の安全性のために、広視野を使用することでリスクが大幅に制限されることによる。好ましくは、受信を最適化するために、検出器の最大感度に近い照明波長が選択される。
【0037】
ライダ10はまた、シーンの少なくとも1つの要素(Ei;iは要素のインデクス)によって反射または後方散乱されたパルスを受信してその反射パルスを電気信号に変換するように構成した光検出器PDと、その電気信号を増幅するように構成した増幅回路CAを包含する受信装置DR(または、受信機)も含む。従来的に、受信機(光検出器および増幅回路)は、測定および/または計算することが可能なインパルス応答hr(t)を有する。
【0038】
処理ユニットUTが、通常、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、またはFPGAタイプの論理構成要素を介して放射をコントロールし、増幅済み電気信号をデジタル化し、かつそれを処理して検出視野の要素の存在およびそれぞれの距離といった有用な情報を抽出する。本発明に従ったライダの処理ユニットUTは、後述する本発明に従った特定の処理方法を実施する。
【0039】
図1Aに示される例において、それぞれをポールPおよび車Vとする2つの要素E1およびE2が検出視野にある。時間t=0において、初期パルスIiが放射され、光検出器が、時間t1において、ポールPの後方散乱からの第1のパルスIr1を、また時間t2において、車Vの後方散乱からの第2のパルスIr2を受け取る。検出器は、日光等の周囲光も受け取り得る。写真1は、車Vに搭載されている本発明に従ったリバースライダの例として、車V上のライダによって照明されたシーンを示す。概して、本発明に従ったライダは、車、ドローン、ロボット、視覚障害者の歩行杖等の任意の移動物体に搭載することが可能である。それが適切に働くためには、ライダが、車Vからの後方散乱によって妨げられることなく、ポールPの存在を検出してその距離d1を決定しなければならない。
【0040】
別の例によれば、ライダは静的であり、静止または移動している物体の存在を検出する。
【0041】
図1に示されるような本発明に従った広視野近接ライダの使用は、測定の特殊性と困難性を伴う。検出視野が広いということは、その中に複数の障害物が含まれ得ることを意味する。このことは、特定のコリメーション光学系の追加によって発信機の開口角が縮小されて解析視野に単一の障害物が存在することになる多くの他のライダ応用とは異なる。
【0042】
図1Bは、不整地の上を下降中の従来技術に従った1Dライダ2を装備したドローンDを示す。障害物検出は、狭視野に起因して不確かである。
【0043】
図1Cは、本発明に従ったライダ10を装備した同じドローンを示しているが、広視野および本発明に従った信号処理のおかげで障害物の正確な検出が可能である。
【0044】
視野を広げることによる第1の結果は、放射されるエネルギの空間的な分散であり、障害物の照明の減少を導き、そのことが次にエコーの減少をもたらし、これらが、焦点を絞った、あるいはコリメートしたビーム放射の場合より測定することを困難にする。この点は、目の安全性に資するが、測定信号対雑音比の問題を提起する。
【0045】
検出視野を広げることによる第2の結果は、太陽等の強い放射源を見つけ出す可能性がより高くなることである。
【0046】
最後に、障害物の近接は、エコー時間が短いこと、したがって高速な検出エレクトロニクスが必要になることを意味する。
【0047】
この明細書の残りの部分において、放射器は、完全に位置特定される次のディラック関数タイプの光パルスを供給するものと仮定する。
Ii(t)=δ(t)
【0048】
距離d1にある障害物が、エコーと呼ばれる、このパルスのエネルギの一部を反射して受信機に返す。エコーは、次に示す関係によって記述することが可能である。
Ir1(t)=a1δ(t-R)
ただし、
【0049】
【0050】
式中、cは光の速度であり、a1は振幅、R1は発信機と障害物の間の距離d1によって生じる遅延である。
【0051】
検出視野にN個の障害物が存在する場合に受信機は、エコーの合計からなる光信号を測定する。
【0052】
【0053】
これらの情報担持光信号に加えて、ここでは一定またはわずかに変化すると見なされる照明された背景A0(周囲光、太陽)があり、全体的な光信号を結果としてもたらす。
【0054】
【0055】
従来的に、受信機による光信号Igl(t)の回収とその後の増幅システムを用いた増幅済み電気信号
【0056】
【0057】
への変換は、信号に対する特定の修正を伴う。増幅は、測定雑音
【0058】
【数6】
の追加および帯域幅の制限と必然的に関連付けされる。この制限が、結果として、パルスの畳み込みと検出器-増幅器アセンブリ(受信機)のインパルス応答h
r(t)によって各反射パルスを時間的に広げる。
【数7】
【0059】
雑音の直接的な結果は、エコー・パルスが戻る瞬間の時間的な位置における誤差であり、パルスが雑音の中に引き込まれた場合には、検出が不可能となることさえある。
【0060】
増幅器の限られた帯域幅によって、互いが近すぎるエコー・パルスの間の区別は、不可能でないとしても困難になる。実際、受信機(検出器および増幅回路)のインパルス応答hr(t)は、その周波数応答と、したがってその帯域幅と直接リンクされる。線形システム(ここでは受信機)のフーリエ解析理論の結果によれば、低帯域幅から長いインパルス応答が導かれる。
【0061】
理解を期するために、ここで*で示される畳み込み演算子が次に示す一般的な数学的表現を有することを想起されたい。
【0062】
【0063】
以下において、雑音および照明の連続的な成分を無視する。式(5)において、入力変数は光強度Irであり、出力変数は電圧s0(t)であり、hr(t)は、光検出器と増幅器アセンブリのインパルス応答である。
【0064】
2つのエコーを伴うシーンの例を考える。
Ir(t)=Ir1(t)+Ir2(t)=I1(t-R1)+I2(t-R2)
ただし、I1およびI2は、それぞれa1およびa2(式(2))に比例する。
【0065】
実例として、
図2は、
図1に示されている状況におけるt´
1からt´
4までのtの4つの値についての畳み込みの進展を示しており、より多くのエコー(Ir2)を返す車Vの正面に置かれた細いポールPは、殆どエコー(Ir1)を返さない。
(a)t=t
1:パルスlr1のみがインパルス応答h
rと相互作用する。パルスとインパルス応答の間の共通領域が小さく、そのために出力信号も小さいが、緩やかに増加し始める。
(b)t=t
2:2つのパルスIr1およびIr2がインパルス応答h
rと相互作用する。2つのパルスとインパルス応答の相互作用に起因して共通表面が増加し、出力信号が増加する。
(c)t=t
3:2つのパルスがh
rと相互作用して効果が最大となる。共通表面が最大となり、出力信号もそれに従う。
(d)t=t
4:最初にパルスIr1、続いてパルスIr2という順に両方のパルスが緩やかにインパルス応答h
rから離れる。共通表面が緩やかに減少し、出力信号が緩やかに低下する。
【0066】
図3は、受信機出力において得られる信号s
0(t)を示す。
【0067】
障害物の存在を検出するための受信機からの信号の標準的な処理は、検出するべき障害物のエコー、したがって遅延Rに対応すると見なされる最大値および関連付けされる時間tmを検索することによって実行される。その後、式(1)を使用して障害物までの距離が決定され、tmは、その距離にリンクされる遅延である(飛行時間)。
【0068】
図2および
図3は、受信機からの出力信号がサイクルの始めまたは終わりのみにおける2つのパルスのうちの1つとの相互作用の結果であることを示しており、それにおいてはインパルス応答がもっとも漸進的、すなわち出力信号がもっとも緩やかに増加または減少する。結局は、観察される出力信号s
0(t)が、殆ど常に受信機の2つのパルスとの相互作用の結果となり、一方または他方の効果の間に明確な区別はない。たとえば、2つのパルスを離し、またとりわけ互いに近づけることの効果によっても出力信号に殆ど違いが生じない。したがって、時間の区別は可能でない。
【0069】
s
0(t)の最大値は、2つのエコー・パルスそれぞれの振幅および遅延(ai、ti)の関数としての重心と言ってもよく、結局は2つの実際の障害物ではなく、架空の障害物に対応する。標準的な処理は、
図4に示されるとおり、距離d1とd2にある2つの障害物ではなく、距離dfに対応するt‘3における架空障害物Ofを識別する。この架空障害物は、複数のエコーの存在を考慮に入れることなく、常にもっとも近い障害物よりも遠くの位置で突き止められる。例として、1つの障害物がd
1=1mに見つけられ、別の1つがそれより遠いd
2=3mに見つけられる。ダミー障害物は、それらの間の位置で突き止められる(d
1≦ダミー障害物≦d
2)。振幅比a
1/a
2が低いほど、それはd
1から遠くなる。
【0070】
畳み込み効果のおかげで、広いインパルス応答と相互作用する2つの近いエコー・パルスが同時にこのインパルス応答に完全に含まれ、それらの間を区別することは可能でない。したがって、増幅回路の出力において標準的な処理を行う従来的なライダLは、視野の近接した2つの障害物の間を区別することが可能でない。
【0071】
図5に、上の解析を要約して多様な注目信号の時間的進展を示す。t=0において初期パルスIiが送信され、R1においてパルスIr1(ポール)が受信され、R2においてパルスIr2(車両)が受信される。信号s
01(t)は、ポールのみの存在に対する増幅回路の(雑音なし)応答に対応し、信号s
02(t)は、車両のみの存在に対する増幅回路の(雑音なし)応答に対応し、信号s
0(t)は、さらに測定雑音を考慮に入れた両方の障害物の存在に対する増幅回路の応答に対応する。s
0(t)から2つの障害物の間を区別することは可能でない。
【0072】
図6に示されている本発明に従ったライダ10の処理ユニットは、受信信号を処理するための方法100を実施して障害物が区別されないという前述の問題を解決する。
【0073】
本発明の別の態様は、静止または移動物体上に搭載されたライダに適用してそのライダの正面の障害物の検出を可能にするライダ信号処理方法100に関する。
【0074】
この方法は、増幅済み電気信号s0(t)をデジタル化する最初のステップAを包含する。ここでは、このデジタル化後の信号を
【0075】
【数9】
として、またサンプリング周波数をFeとして表す。デジタル・システムは、アナログ・システムと比較した場合に、サンプリングの瞬間
【0076】
【数10】
の情報だけを知るという点で異なる。ここでは、多様な処理から結果として生じる信号についてのデジタル情報の指定を指数eによって示す。
【0077】
ステップBにおいて、補正フィルタCe(t)と呼ばれる少なくとも1つの時間補正関数がデジタル化された増幅済み信号
【0078】
【0079】
【数12】
が生成される。好ましくは、デジタル化された増幅済み電気信号
【0080】
【数13】
を同様にデジタル化された時間補正関数C(t)を用いて畳み込むことによって補正フィルタが適用される。
【0081】
【0082】
受信装置の出力における信号s
0(t)は、従来的に、DRのインパルス応答hr(t)を用いて入力光パルスIr(t)を畳み込むことによって決定される(式(5))。
図7に測定と処理の連鎖を示した。
【0083】
フィルタCe(t)は、時間ドメインで直接
【0084】
【数15】
に作用し、フーリエ空間への変換はない。適用されるフィルタC
e(t)フィルタは、障害物を区別すべく検出の時間的分解能を向上するように設計される。C
e(t)は、サンプリングされたインパルス応答h
r
e(t)とあらかじめ決められた(望ましい)時間解析関数h
c
e(t)から決定される。これは、補正器C(t)の働きにより、
図8および次の式(7)に示されるように、あたかも応答hr(t)が補正後のインパルス応答hc(t)によって置換されたかのような形になる。解析関数(下記参照)に不連続性を導入する目的は、傾斜の切れ目を用いて障害物の識別を可能にする補正後のインパルス応答を取得することである。
hc(t)=(hr*C)(t) (7)
【0085】
したがって、本発明に従った方法100を実施するためには、デジタル化され保存済みのインパルス応答hr(t)(測定および/またはシミュレーション)を知る必要がある。
【0086】
初期インパルス応答hrから望ましいインパルス応答hcへの変換は、時間ベースの方法を使用して行われる。
【0087】
これらの関数のデジタル化された値に対しては、
図9に示されるように当然のことながら多様な計算が行われる。ここでは、次に示す項が使用された。
- h0、h1、h2・・・:サンプリング時間t0、t1、t2・・・におけるインパルス応答hr(t)の多様なデジタル化済みの値。
- c0、c1、c2・・・:サンプリング時間t0、t1、t2・・・における補正関数C(t)の多様なデジタル化済みの値。
- a0、a1、a2・・・:サンプリング時間t0、t1、t2・・・における解析関数hc(t)の多様なデジタル化済みの値(この例において、解析関数が2つの連続するサンプリング時間t6とt7に2つの不連続部分を有し、それぞれ値a6とa7を伴うが、その他の値はゼロになる)。
【0088】
補正フィルタCは、解析関数hcによるインパルス応答hrの逆畳み込みによって決定される。
C(t)=(hr*-1hc)(t) (8)
【0089】
デジタル化済みの値に適用し、次に示す式を使用して補正器の係数ckが決定される。
【0090】
【0091】
なお、補正係数の計算はh0による除算が必要になるが、そのことは、h0が非常に低いか、あるいはゼロ値となる場合、数値的な問題をもたらす可能性がある。1つの解決策は、インパルス応答全体に定数を加算して係数を計算することである。その定数の値は、係数の収束値に達するまで、連続的な反復によって増加される。
【0092】
【0093】
本発明者らによって明らかにされたこのあらかじめ決められた解析関数は、不連続部分の時間td0と呼ぶ所与の時間において不連続部分と呼ぶ少なくとも1つの非ゼロ値A0を有し、上記不連続部分周辺において実質的なゼロ値への戻りを伴う。この戻りは、好ましくは迅速である。解析関数は、サンプリング・ポイントにおいてデジタル化され(
図9参照)、本来のゼロ値に対する迅速な戻りが、少数のサンプリング・ポイントにわたって生じる減少として定義される。ゼロに戻るときの最大ポイント数は、Feや物体の間の距離、エコーの振幅等に依存する。つまり、分離性能は、少数のサンプリング・ポイントにわたって減少が生じるときに向上するが、解析関数がインパルス応答の傾きよりも大きい傾きを1つ以上有するときには、わずかであっても常に利得がある。
【0094】
重要なことは、この減少がhr(t)の緩やかな変動に関する不連続性(傾きの切れ目)として働くことである。通常、この下降は、数個から多くとも約10個のサンプリング・ポイントにわたって生じる。
【0095】
最後にステップCにおいて、処理済みの信号
【0096】
【数17】
から要素Ei(i番目の障害物)までの距離diが決定される。この決定は、
【0097】
【数18】
の極大値およびこの極大値に対応する時間tmiを特定することからなる処理70によって実行される。極大値のこの時間的位置tmiは、関連付けされる障害物Eiについての遅延または飛行時間Riに対応し、すなわち、tmi=Riであり、障害物の距離diは、式(1)を使用してこの瞬間tmiから推測される。
【0098】
極大値は、応用および/または何を見つけ出そうとしているかに応じた注目する時間範囲で検索される。とりわけ注目されるものは、ライダが搭載された物体にもっとも近い障害物およびライダからそれまでの距離である。注目する距離、すなわちライダの正面のシーンの探索距離は、応用に応じて異なる。
【0099】
例として、
図11は、2つのパルスIr1およびIr2を包含する信号Ir上に単一の不連続部分(ここでの不連続は、ゼロに近い値への戻りを伴う最大値を意味する)を伴うときのガウス解析関数hc(u)の効果を示す。AからDの曲線は、種々の畳み込み時間を図解している。
t=t
1:いずれのパルスも補正後のインパルス応答hcと相互作用していない。
t=t
2:パルスlr1は補正後のインパルス応答h
cと相互作用しているが、パルスlr2は相互作用していない。
t=t
3:パルスlr1はh
cともはや相互作用しなくなり、その結果として、共通領域、したがって出力信号におけるの正味の減少がもたらされる。
t=t
5:続いてパルスlr2がh
cともはや相互作用しなくなり、出力信号におけるさらなる正味の減少がもたらされる。
【0100】
曲線Fは、畳み込み処理hc*Irの結果を示している。
hc*Ir=Ir*hc=Ir*hr*C=s0*C=sp
【0101】
少なくとも1つの不連続性の導入は、いずれかのポイントにおいて2つのパルスのインパルス応答との相互作用を分離することを可能にし、エコーの到達時間を明確に識別可能にすることができる。
【0102】
このようにして本発明に従ったライダは、角度のある滑らかな壁といった、より大きな障害物の正面にある小さな障害物を検出することが可能である。
【0103】
本発明に従ったライダは、超音波センサでは得られない利点を提供し、したがってロボットの衝突回避におけるそれらのセンサに置き換わることが可能である。このライダは、次に挙げる強化された特徴を提供する。
- 天候状態に対する感度:雨または高湿度に対して敏感でない。
- 検出視野:5°または10°または20°または30°台の幅である。
- 検出能力:細いか、または反射の乏しい物体を検出する。
- 障害物の分離:増幅回路の低い帯域幅にもかかわらず、間隔の近い障害物を識別し、幅の広い物体の正面にある細い物体を検出し、近接した複数のエコーを検出する。
- 取得:フラッシュ・ライダ、「シングル・ショット」システム(1回のレーザー・ショット=1つの結果)が可能である。
- リフレッシュ・レート:高い、10kHzを超える。
【0104】
ポータブルなオンボード応用のために設計され、興味深い統合特徴も提供する。
- 低消費電力(シングル・ショット):バッテリ給電が可能である。
- 小寸法:数cm3が可能である。
- 低質量:数グラムが可能である。
- 低コストである。
【0105】
適応可能:光学系の追加は、エコー識別能力を維持しつつ範囲を拡大する。
【0106】
これらの特性は、ライダがロボット工学、ドローン、自律移動、衝突防止等の分野で使用可能であることを意味する。
【0107】
複数の近隣エコーの検出により、とりわけ次のことが可能になる。
【0108】
周囲の地形のより良好な理解を提供し、より良好な軌道予測を可能にすることと、
【0109】
大きな障害物より近くに小さな障害物が置かれていることに起因する弱いエコーを検出し、かつ考慮に入れることと、
【0110】
都市部または森林等の密な環境におけるドローンまたはロボットの動きを向上させること。
【0111】
本発明に従った信号処理は、低い演算パワーを用いて複数のエコーの識別を可能にし、その他の反射測定、ソナー等の分野における飛行時間を測定する機器や、施設の監視にも有意義であるとみられる。
【0112】
また単軸設計は、ライダをよりディスクリート(discreet)にする。
【0113】
サンプリング周波数Feは、サンプリング周期Te、すなわちデジタル・システムがそれの情報を再計算するまでの時間に対応する。サンプリング周期は、測定の時間分解能、すなわちライダの場合は空間識別分解能に対応する。
【0114】
現在の時間分解能Teは、Te/6.67nsの空間分解能に対応する。具体的に言えば、サンプリング周波数は、使用されるアナログ・デジタル変換器(ADC)の基準によって設定され、障害物の間の空間識別分解能を決定する。たとえば:
【0115】
Fe=200MHzの場合には75cm。
【0116】
Fe=400MHzの場合には37.5cm。
【0117】
Fe=3000MHzの場合には5.5cm。
【0118】
処理連鎖のインパルス応答の中に1つ以上の不連続部分を生成することによって、識別能力が受信機の帯域幅とはもはやリンクしなくなり、それがデジタル・システムのサンプリング周波数になる。本発明に従った信号処理は、高い識別能力から利益を得つつ、感度およびS/N(信号対雑音)比の品質のための低帯域幅の受信機の使用を可能にする。
【0119】
感度の向上のために、少なくとも1つの不連続部分の時間td0が、好ましくは、tm-impと呼ばれる最大インパルス応答hr(t)の瞬間の近傍で選択される。tm-impの近傍は、tm-impの周りの時間間隔に位置する瞬間であって、この瞬間と関連付けされたインパルス応答hrの振幅が、hrの最大振幅の非ゼロ分数以上、好ましくは最大振幅を4により除した値以上となるような瞬間を意味するものと解釈される。好ましくは、少なくとも1つの不連続部分の時間td0は、tm-impと一致する。
【0120】
図12は、所与の幅の不連続部分を1つだけ伴う解析関数の使用の限界を示している。左側の曲線は、
図5の雑音のない曲線に等しく、未処理のインパルス応答hrとの畳み込みの結果の図解である。右側の曲線は、ガウス解析関数を用いた畳み込みの図解である。曲線AおよびBは、それぞれ、2つの異なる時間によって分離された2つのパルスIr1およびIr2に対応し、より正確には、Aはより遠い障害物に、Bはより近い障害物に対応する。エコー・パルスが充分に(ガウス分布の幅に関して)離れているときは、良好な分離が得られる(Aの場合)。Bの場合の分離の質は平均的である。特定の幅の解析関数(例ではガウス関数)は、障害物の分離を達成するに充分となり得るが、その非ゼロ幅により、その分離はディラック関数(無限に狭い不連続部分)より効率が低くなる。
【0121】
本発明者らは、組み合わせにおいて使用する場合に特に関連性のある3つのタイプの解析関数を特定した。
【0122】
第1のタイプは、
図13に示されており、すでに述べたが、単一の不連続部分(A0、td0)を伴う解析関数である。左側の関数Aは、非ゼロ値A0と各側のサンプリング・ポイント(十字)におけるゼロ値への戻りに対応する。
【0123】
最良の結果は、A0の不連続部分の外側でゼロ値を有する、単純ディラックとしても知られる右側のBに示されるような関数を用いて得られた。この場合、不連続部分が可能な限り急峻になる。好ましくは、td0=tm-impとなる。
【0124】
第2のタイプは、
図14に示されているが、第1の不連続部分の時間td1の第1の不連続部分A1および不連続部分の時間td2の第2の不連続部分A2の2つの不連続部分を伴う解析関数であり、ここでの目的が近いエコー・パルスを分離することであることからtd1とtd2は、少数のサンプリング・ポイントにより分離されているが、時間的に近い。
【0125】
左側の関数Aは、非ゼロ値A1およびA2に対応し、(例として)両方の不連続部分について各側の1つのサンプリング・ポイントにおいてゼロ値への戻りを伴う。再び例として、時間td1とtd2の間には3つのサンプリング・ポイントが存在する。好ましくは、関数のより良好な効率のために、1つは正の値の不連続部分とし、もう1つは負の値の不連続部分とする符号の異なる2つの不連続部分を選択する。例において、A1>0、A2<0である。たとえば、td1をtm-impに置いたが、それをtd2にすること、またはtd1とtd2の間にtm-impを置くことも可能である。重要なことは、td1とtd2がtm-impの近傍に位置することである。
【0126】
最良の結果は、最小可能に分離されている、すなわちサンプリング・ポイントがない不連続部分A1およびA2の外側にゼロ値を有する、デュアル・ディラックとしても知られる右側のBに示されているような関数を用いて得られた。ここで、ゼロへの戻りが1サンプリング・ポイント未満で達成され、2つの不連続部分の間の傾斜は可能な限り急峻である。たとえば、td1をtm-impに置いたが、それをtd2にすることも可能である。
【0127】
第3のタイプは、互いに時間的に近い3つの不連続部分を伴う解析関数である。
【0128】
1つの実施態様において、本発明者らは、これらのタイプの関数が組み合わされたときに処理の向上が提供されることを明らかにした。これは、計算プロセスの単純性によって可能になる。したがって、この変形によれば、複数の関連付けされた相補的な処理済み信号sfj(t)を生成するように、複数のあらかじめ定義済み解析関数hcj(t)からあらかじめ計算された複数の補正フィルタCj(t)(jはフィルタのインデクス)が適用される。
【0129】
シーンの要素Eiの距離は、複数の処理信号から、極大値を検出し、かつ種々の処理済み信号におけるそれぞれの位置を比較することによって決定される。
【0130】
1つの例は、ライダにもっとも近い障害物の検出である。1つの実施態様においては、そのもっとも近い障害物が検出される注目時間範囲を特定するために第1のタイプの解析関数が使用される。続いて、A1および/またはA2についての種々の値を用いて第2のタイプの解析関数から決定された補正フィルタを適用することにより、エコーの、たとえば非常に振幅が小さく、かつより大きな他のエコーに紛れたそれの存在を局所的に精査することが可能になり、その注目する時間範囲におけるこのもっとも近い障害物の最終的な位置特定が可能になる。実際、本発明者らは、不連続部分が単一の解析関数が注目する空間の完全な走査(ただし、精度を欠くことがあり得る)を可能にする一方、不連続部分が2つの解析関数が、もっとも近い障害物に近似する「拡大鏡」の機能を果たすことを明らかにした(以下の例参照)。
【0131】
たとえば、A2=-A1の場合には、提示される解析関数が、一般的に関数または信号の局所的な検討に使用される導関数と等しい。その結果として、上記解析関数は、エコーの和の導関数を提供し、それらの位置に関する追加情報を提供する。
【0132】
別の例によれば、たとえばそれぞれが+1、-2、および+1に等しい3つの不連続部分を伴う関数は、2階導関数に等しい。
【0133】
当然のことながら、以下に述べる3つのタイプの、すなわちモノ、バイ、トリ・ディラック関数は、単なる可能な解析関数の例である。放射されたパルスに固有の、エコー検出を精密にする他の解析関数も企図可能である。
【0134】
1つの変形において、
図15に示すとおり、最終的な処理済み信号によって所望の障害物、通常はもっとも近い障害物に対応する距離の決定が可能になるまで反復処理を介して複数の補正フィルタが適用される。この場合には、ループ内において、取得された結果、すなわち処理された信号spj(t)、より詳細には極大値の位置に従って係数c0、および/またはc1/c2、および/またはc1、c2、およびc3を再計算することによってフィルタが漸進的に決定される。反復処理は、不連続部分、すなわち上記解析関数の非ゼロ値を修正することにある。オプションの分岐15は、受信装置のインパルス応答を測定する。1つの実施態様において、本発明に従った方法の実施の間にこの測定が規則的に実行される。
【0135】
反復ループは、この場合にもっとも近いものとする注目の障害物の最大値の時間的位置が変動しなくなったときに停止し、これはこの障害物が他の障害物から分離されたことを意味する。
【0136】
反復処理の1つの実施態様によれば、最初に単一の不連続部分A0を伴う解析関数に対応する補正フィルタが、続いて時間的に近接する2つの不連続部分の時間(td1、td2)における第1および第2の不連続部分(A1、A2)を伴う解析関数、および/または時間的に近接する3つの不連続部分の時間における3つの不連続部分を伴う解析関数が、反復的に修正される不連続部分に適用される。
【0137】
本発明に従ったライダのシミュレーションが実行された。また実験による測定も実行され、シミュレーションの結果に近い実験結果から計算の妥当性が実証された。ここでは、第1の構成の3つの障害物を伴う状況において、もっとも近い障害物までの距離を求めている。
【0138】
障害物1:d=0.7m ‐ 振幅:1
【0139】
障害物2:d=1.7m ‐ 振幅:1
【0140】
障害物3:d=6m ‐ 振幅:5
【0141】
シミュレーション・パラメータは次のとおりである。
【0142】
サンプリング周波数Fe=400MHz(2.5ナノ秒毎に1ポイント)、10ビットのサンプリング
【0143】
増幅回路:R=300kΩ、帯域幅:2.7MHz
【0144】
hr(t)の時間幅は200ナノ秒、すなわち80サンプリング・ポイントとする。
【0145】
図16は、3つの状況についての生のライダ信号および処理済みのそれを示している。
すなわち、(1):障害物1のみ、(2):障害物1および2、(3):シーン内の障害物1、2、3である。
【0146】
直線D1、D2、D3は、ずれのある3つの障害物の正確な位置を表す。
【0147】
左側の曲線は、
図5に示されているような受信機出力における生の信号s
0(t)を図解している。右側の曲線は、時間量子(サンプリング・ポイント)すなわち2.5ナノ秒に対応する(2.5/6.67=37.5cmの距離量子に対応する)X軸を用いて処理済み信号s
p
e(t)を図解している。
【0148】
最初の障害物の位置は、X軸の10にあり、言い換えると遅延が25ナノ秒である。これは、解析関数のディラック位置に直接依存する完全に理解されている時間オフセットが存在することから、直接、最初の障害物の位置とは対応しない。
【0149】
シミュレーションは、
図17-A(単一の不連続性)に示されているとおり、時間td0=20nsのサンプリング・ポイントにおける振幅をA0=1とし、その他の時間をゼロ値とした第1の単純ディラック・タイプの解析関数hcを用いて実行される。
【0150】
なお、この障害物の構成において、第1のタイプの解析関数が3つの障害物を識別し、それらを分離する。
【0151】
図18は、次に示す第2の障害物構成について、以前と同じ解析関数を用いて処理された信号を示している。
【0152】
障害物1:d=0.7m ‐ 振幅:1
【0153】
障害物2:d=1.7m ‐ 振幅:10
【0154】
障害物3:d=6m ‐ 振幅:5
【0155】
ここでは、障害物2のエコーが遙かに大きい。なお、最初の障害物に関連付けされたピークが曲線上にまだ見えてはいるがより弱い。障害物が近すぎる場合および/または強い2番目の障害物を伴う場合について、単純ディラック関数の限界が明らかになる。
【0156】
図19は、次に示す第3の障害物構成について、以前と同じ解析関数を用いて処理された信号を示している。
【0157】
障害物1:d=0.7m ‐ 振幅:1
【0158】
障害物2:d=1.2m ‐ 振幅:10
【0159】
障害物3:d=6m ‐ 振幅:5
【0160】
障害物2を障害物1のより近くに移動した。なお、最初の2つの障害物が単純ディラック解析関数によって識別されなくなり、処理済み信号が2つの実際の障害物の間にある架空障害物に対応している。
【0161】
この問題を解決し、かつもっとも近い障害物の位置を正確に特定するために、デュアル・ディラック解析関数を、好ましくは反復処理において適用する。
【0162】
図20は、第3の障害物構成について、Aに図解したデュアル・ディラック解析関数を用いて処理した信号を示す。Bは、反復毎に1ずつ増加される、a6の種々の値について取得される種々の処理済み信号を示している。最初の2つの反復のX=1およびX=2と3番目の反復X=3の間においては、最初の障害物の位置が変動して安定していないことがわかる。そのときは、反復を継続する。
【0163】
その後に続く反復においてこの位置が安定する。一旦、最初の障害物の位置が安定した後は、処理を停止することが可能である。
【0164】
なお、デュアル・ディラックの適用時は、最初の障害物の位置のみを考慮に入れる必要がある。その後(時間的に)に起こることは考慮しない。
【0165】
1つの変形において、本発明に従ったライダ10の増幅回路CAが追加の構成要素を特徴とする。
【0166】
古典的にフォトダイオードPDと関連付けされているもっとも適切かつ広く使用されている受信回路は、トランスインピーダンス増幅器(TIA)と呼ばれるものである。それの要素は、専門家に周知である。もっとも基本的な形式においてそれは、
図21に示されるとおり、抵抗R
fおよび演算増幅器Ampからなる。
【0167】
理想的な構成要素を考察する。
- フォトダイオードPDが、光束を光発生電流Iphに変換する。
- TIAが、S=-RfIphの関係に従って電流Iphを電圧に変換する。
- 抵抗Rfの値が増幅器の利得を決定する。この値にTIAの感度がリンクされる。
【0168】
PIN型フォトダイオードは、アバランシェ・フォトダイオード(APD)よりも信頼性があり、かつ運用が単純なことから好ましい。
【0169】
フォトダイオードからの電流は、次に示す関係によって記述することが可能である。
【0170】
【数19】
式中、
Sはフォトダイオードの感度であり、0.6A/W台である。
Φ
e(t)は、受信した光パワーである。
I
0は、フォトダイオードの逆静電流(飽和電流、暗電流)の合計である。
【0171】
【数20】
は、フォトダイオードの固有雑音(主としてショット雑音)の合計を表す。
【0172】
取り込まれた光パワーΦe(t)は、反射パルス等の動的部分φe(t)と、たとえば太陽によって照明された背景Φe0によってもたらされる静的部分から構成される(併せて式(3)およびA0を参照されたい)。その関係は、次のように記述される。
【0173】
【0174】
PINフォトダイオードは、約600mA/Wを発生する。トランスインピーダンス増幅器の利得は、概して所望の帯域幅とセンサの感度(検出能力)間の折衷したものとなる。また、フォトダイオードの逆静的電流の強度によっても制限される可能性がある。
【0175】
センサの感度および測定の信号対雑音比S/Nの点から見ると、高利得(したがって低帯域幅)を導く高い抵抗Rfを使用することが最良である。
【0176】
周囲の明度は、光エコー信号と同じ方法で増幅される。大きさの等級は、エコー・パルスによって発生する電流(通常、数μWのエコーに対して数μA)と周囲の明るさによって誘導される電流(5×5mm2のシリコン・フォトダイオードの場合には、通常、数十mA)の間で大きく異なる。
【0177】
TIAの飽和を導く可能性のある太陽によって誘導される光発生電流を制限するために、従来的にフォトダイオード表面の直上に光学フィルタが配置される。これは、製造者によって提案されているフォトダイオードに統合される着色フィルタ(300nm台の広スペクトル)または干渉フィルタ(10nm台の狭スペクトル - 指向性による大きな欠点を伴う)とすることが可能である。
【0178】
しかしながら、フィルタの存在にもかかわらず、高い抵抗Rfと平均的な周囲の照明(太陽)により、TIA供給電圧(通常5V)より高い出力電圧Sに急速に到達してセンサの飽和に導かれる。
【0179】
その結果として、直射日光下においては、高感度TIAの使用がセンサの性能に逆効果を及ぼす。利得の妥協が必要になる。
- 低エコー反射で障害物を検出するのに必要とされる高S/Nを得る際に高利得(TIA抵抗Rfが高い)が重要である。
- 障害物の識別のために高帯域幅寄りとなるように、低利得(低い値のTIA抵抗Rf)を選択する。
- 直射日光下にセンサを保つために低利得(低い値のTIA抵抗Rf)を選択する。
【0180】
これらの矛盾点は、検出フィールド内に含まれる近接した種々の障害物の間を識別し、かつそれらの距離を特徴付ける一方、もっとも近い障害物を検出する機会を最大化する能力を持った広視野近接ライダの作成が困難であることを例示している。
【0181】
直射日光下にセンサを保つという問題を解決するために、
図22に示されているとおり、本発明に従ったライダ10の受信装置DRは、光検出器PDと増幅器TIAの間にトランスTおよびキャパシタCを含む。トランスの一次巻線が光検出器のアノードに接続され、二次巻線がキャパシタCに接続され、それがトランスインピーダンス増幅器の入力に接続される。
【0182】
トランスは、降圧型(Vout<Vin、Iout>Iin)か、または昇圧型(Vout>Vin、Iout<Iin)とすることも可能である。好ましくは、このトランスを降圧型トランスとし、その変圧比のフォトダイオード電流の増幅を、追加の雑音を加えることなく可能にする。
【0183】
トランスの動作原理は、一次側の電流(ここではフォトダイオード電流
【0184】
【数22】
)を磁界B(t)に変換し、それ自体をまた電界E(t)に、したがってトランスの二次側の電圧s
t(t)(Vout)に再変換することである。
【0185】
電界がiph(t)によって誘導される磁界の導関数となることは周知である。したがって、トランスの電圧および電流は、iph(t)の変化のみに依存する。TIAからの電圧は、次に示されている形になる。
【0186】
【0187】
これにおいては、係数kの特徴によることなく、次に挙げるフォトダイオード電流iph(t)の静的成分のすべてがトランスの二次側において除去されることが成り立つ。
- 寄生固有逆フォトダイオード電流(飽和電流、暗電流)、
- 弱い、または強い(太陽)任意光源に起因する光発生電流。
【0188】
TIAとトランスの間に配置されるキャパシタCの役割は、このキャパシタを伴わないシステムが有することになる利得を最小化することである。実際、このアセンブリは、AOPのオフセット電圧に関して無限の利得を伴う非反転増幅器と類似に動作し、結果として飽和をもたらす。
【0189】
したがって、本発明に従った受信装置DRの構造は、次に示されるように2つの問題を解決する。
- 多様な寄生DC電流が除去されることから、利得抵抗の限界が引き上げられる。非常に高利得のセンサが作り出されて検出能力が向上する。
- センサは、実質的に周囲の照明を無視する。したがって、太陽に面しているときに障害物を検出することが可能である。
【0190】
この構造は、屋外における広視野FOVライダの使用に完全に適している。
【符号の説明】
【0191】
1 写真
2 1Dライダ
10 ライダ
15 分岐
70 処理
100 方法
Amp 演算増幅器
C キャパシタ
CA 増幅器回路
D ドローン
d1、d2 距離
DR 受信装置
E2 要素E1および
P ポール
PD 光検出器、フォトダイオード
T トランス
TIA トランスインピーダンス増幅器
UT 処理ユニット
V 車両
【国際調査報告】