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特表2024-547126ホイールハブ駆動装置、特にタンブラ駆動装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ホイールハブ駆動装置、特にタンブラ駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 7/00 20060101AFI20241219BHJP
   B60T 1/06 20060101ALI20241219BHJP
   F16D 55/40 20060101ALI20241219BHJP
   F16D 65/18 20060101ALI20241219BHJP
   F16D 55/36 20060101ALI20241219BHJP
   B60K 17/14 20060101ALI20241219BHJP
   B62D 55/125 20060101ALI20241219BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20241219BHJP
   H02K 7/102 20060101ALI20241219BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20241219BHJP
   F16D 121/06 20120101ALN20241219BHJP
   F16D 121/16 20120101ALN20241219BHJP
【FI】
B60K7/00
B60T1/06 F
F16D55/40 A
F16D65/18
F16D55/36
B60K17/14
B62D55/125
H02K7/116
H02K7/102
H02K9/19
F16D121:06
F16D121:16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538166
(86)(22)【出願日】2022-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 EP2022082941
(87)【国際公開番号】W WO2023117273
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】102021134281.3
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523451233
【氏名又は名称】ベアンヴァート ヴェルショフ
【氏名又は名称原語表記】Bernward Welschof
【住所又は居所原語表記】Roseggerstrasse 2a, 63762 Grossostheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ベアンヴァート ヴェルショフ
【テーマコード(参考)】
3D042
3D235
3J058
5H607
5H609
【Fターム(参考)】
3D042AA06
3D042AA07
3D042AB10
3D042BE01
3D235AA24
3D235BB18
3D235BB45
3D235CC12
3D235CC42
3D235GA02
3D235GA13
3D235GA34
3J058AA44
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA58
3J058AA77
3J058AA88
3J058BA67
3J058CC72
3J058CC78
3J058FA17
5H607BB01
5H607BB14
5H607CC03
5H607EE07
5H607EE33
5H607GG08
5H609BB12
5H609PP02
5H609PP06
5H609PP10
5H609QQ05
5H609RR26
5H609RR36
5H609RR37
5H609RR40
5H609RR42
5H609RR46
(57)【要約】
本発明は、ホイールハブ駆動装置(1)、特にタンブラ駆動装置であって、駆動モータ(2)と、この駆動モータ(2)により駆動される減速機(3)と、この減速機(3)により駆動されるハブ(6)と、特にタンブラホイール(4)と、ハブ支持体(5)と、ブレーキ装置(150)とを備える、ホイールハブ駆動装置(1)に関する。駆動モータ(2)は、減速機(3)の入力軸(11)に対して同軸に配置された被駆動軸(16)を有する。ブレーキ装置(150)は、軸線方向で駆動モータ(2)と減速機(3)との間にかつ半径方向でホイールハブ支持体(5)の内部に配置されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールハブ駆動装置(1)、特にタンブラ駆動装置であって、
駆動モータ(2)と、
前記駆動モータ(2)により駆動される減速機(3)と、
前記減速機(3)により駆動されるハブ(6)と、特にタンブラホイール(4)と、
ハブ支持体(5)と、
ブレーキ装置(150)と
を備える、ホイールハブ駆動装置(1)において、
前記駆動モータ(2)は、前記減速機(3)の入力軸(11)に対して同軸に配置された被駆動軸(16)を有し、前記ブレーキ装置(150)は、軸線方向で前記駆動モータ(2)と前記減速機(3)との間にかつ半径方向でホイールハブ支持体(5)の内部に配置されていることを特徴とする、ホイールハブ駆動装置(1)。
【請求項2】
前記減速機(3)は多段式の遊星歯車装置(3a,3b,3c)として形成されており、
前記減速機(3)の前記入力軸(11)は、入力遊星歯車装置(3a)の太陽歯車軸(S1)として形成されており、
前記ブレーキ装置(150)は、少なくとも1つのステータ摩擦板(151)と少なくとも1つのロータ摩擦板(152)とを有する多板ブレーキとして形成されており、
前記少なくとも1つのステータ摩擦板(151)は、前記ホイールハブ支持体(5)に相対回動不能にかつ軸線方向に移動可能に配置されており、
前記少なくとも1つのロータ摩擦板(152)は、前記入力遊星歯車装置(3a)の前記太陽歯車軸(S1)または前記入力遊星歯車装置(3a)の遊星枠(P1)に相対回動不能にかつ軸線方向に移動可能に配置されていることを特徴とする、請求項1記載のホイールハブ駆動装置。
【請求項3】
前記ブレーキ装置(150)はスプリングブレーキとして形成されており、該スプリングブレーキは、ばね装置(160)によって制動位置の方向に加圧されていて、解除アクチュエータ(161)によって解除位置の方向に加圧されていることを特徴とする、請求項1または2記載のホイールハブ駆動装置。
【請求項4】
前記スプリングブレーキは、前記解除位置へと液圧的に加圧可能であり、前記解除アクチュエータ(161)は、制動解除圧室(163)内に生じた作動用の制動解除圧によって解除位置の方向に加圧されている制動ピストン(162)として形成されていることを特徴とする、請求項3記載のホイールハブ駆動装置。
【請求項5】
前記制動ピストン(162)は、前記減速機(3)の前記入力軸(11)に対して同軸に配置されていることを特徴とする、請求項4記載のホイールハブ駆動装置。
【請求項6】
前記駆動モータ(2)は、前記ホイールハブ支持体(5)にモータハウジングカバー(24)によって取り付けられており、前記解除アクチュエータ(161)は前記モータハウジングカバー(24)内に配置されていることを特徴とする、請求項3から5までのいずれか1項記載のホイールハブ駆動装置。
【請求項7】
前記モータハウジングカバー(24)は、前記制動ピストン(162)が長手方向移動可能に配置された長手方向孔(164)を備え、該長手方向孔(164)と前記制動ピストン(162)との間に前記制動解除圧室(163)が形成されていることを特徴とする、請求項6記載のホイールハブ駆動装置。
【請求項8】
前記駆動モータ(2)のモータハウジング(13)に、制動解除圧を案内する制動圧管路(165)が配置されており、該制動圧管路(165)は、前記制動解除圧室(163)から、前記モータハウジング(13)に設けられた制動ポート(166)に案内されていることを特徴とする、請求項7記載のホイールハブ駆動装置。
【請求項9】
前記解除アクチュエータ(161)は前記ホイールハブ支持体(5)内に配置されていることを特徴とする、請求項3から5までのいずれか1項記載のホイールハブ駆動装置。
【請求項10】
前記ホイールハブ支持体(5)は、前記制動ピストン(162)が長手方向移動可能に配置された長手方向孔(180)を備え、該長手方向孔(180)と前記制動ピストン(162)との間に前記制動解除圧室(163)が形成されていることを特徴とする、請求項9記載のホイールハブ駆動装置。
【請求項11】
前記ホイールハブ支持体(5)に、制動解除圧を案内する制動圧管路(190)が配置されており、該制動圧管路(190)は、前記制動解除圧室(163)から、前記ホイールハブ支持体(5)に設けられた接続ポート(191)に案内されていることを特徴とする、請求項10記載のホイールハブ駆動装置。
【請求項12】
前記ホイールハブ支持体(5)の前記接続ポート(191)に、前記駆動モータ(2)の前記モータハウジング(13)に配置された制動圧管路(200)が接続されており、該制動圧管路(200)は、前記モータハウジング(13)に設けられた制動ポート(201)に案内されていることを特徴とする、請求項11記載のホイールハブ駆動装置。
【請求項13】
前記ばね装置(160)は少なくとも1つの皿ばね(220;221,222)によって形成されていることを特徴とする、請求項3から12までのいずれか1項記載のホイールハブ駆動装置。
【請求項14】
前記駆動モータ(2)は電動モータ(12)として形成されており、該電動モータ(12)は、冷却のために、冷却流体回路を備えた液体冷却装置を備えることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載のホイールハブ駆動装置。
【請求項15】
前記電動モータ(12)の液体冷却装置は被駆動軸冷却装置を有し、該被駆動軸冷却装置は、前記被駆動軸(16)に設けられた軸線方向通路(50)を有し、該軸線方向通路(50)は、前記液体冷却装置の冷却流体、特にオイル用の冷媒通路として形成されていて、冷却流体入口(60)と冷却流体出口(61)とに接続されていることを特徴とする、請求項14記載のホイールハブ駆動装置。
【請求項16】
前記軸線方向通路(50)は、前記被駆動軸(16)に中央の盲孔として形成されており、該盲孔内に管(52)が同心的に配置されており、該管(52)と前記盲孔との間に環状間隙(53)が形成されており、該環状間隙(53)に管内室が流れ接続されており、前記管(52)は、前記冷却流体回路の前記冷却流体入口(60)に接続されており、前記環状間隙(53)は、前記冷却流体回路の前記冷却流体出口(61)に接続されていることを特徴とする、請求項15記載のホイールハブ駆動装置。
【請求項17】
電動モータ(12)の液体冷却装置は、モータハウジング(13)内に配置されたステータ(14)のステータ冷却装置を有することを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項記載のホイールハブ駆動装置。
【請求項18】
前記モータハウジング(13)は、前記ステータ(14)に沿って延在する、前記液体冷却装置の冷却流体、特にオイル用の冷媒通路(110)を備えることを特徴とする、請求項17記載のホイールハブ駆動装置。
【請求項19】
前記冷媒通路(110)は、前記ステータ(14)の第1のコイルエンド(14a)から前記ステータ(14)の第2のコイルエンド(14b)に延在していることを特徴とする、請求項18記載のホイールハブ駆動装置。
【請求項20】
前記冷媒通路(110)は、前記モータハウジング(13)に配置された冷却流体入口(100)と、前記モータハウジング(13)に配置された冷却流体出口(101)とに接続されていることを特徴とする、請求項18または19記載のホイールハブ駆動装置。
【請求項21】
前記冷媒通路(110)は、半径方向で前記ステータ(14)と前記モータハウジング(13)との間に配置されたスリーブ(115)に形成された螺旋溝として形成されていることを特徴とする、請求項18から20までのいずれか1項記載のホイールハブ駆動装置。
【請求項22】
請求項1から21までのいずれか1項記載の少なくとも1つのホイールハブ駆動装置(1)を備えるクローラ車両。
【請求項23】
前記ホイールハブ駆動装置(1)の電動モータにトラクションバッテリが電気エネルギーを供給する電動式、特にバッテリ電動式の駆動システムを有することを特徴とする、請求項22記載のクローラ車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールハブ駆動装置、特にタンブラ駆動装置であって、駆動モータと、この駆動モータにより駆動される減速機と、この減速機により駆動されるハブと、特にタンブラホイールと、ハブ支持体と、ブレーキ装置とを備える、ホイールハブ駆動装置に関する。
【0002】
タンブラ駆動装置として形成されたホイールハブ駆動装置は、クローラ車両もしくは無限軌道車両、例えば移動式の建設機械、一例として掘削機、ブルドーザ、移動式のクローラ式高所作業車、移動式のクローラ式ボーリングマシンまたはダンプトラックに使用される。
【0003】
クローラ車両用のタンブラ駆動装置として形成されたホイールハブ駆動装置は、従来、駆動モータとして液圧モータを有している。液圧モータとして形成された駆動モータを備えたタンブラ駆動装置によって、液圧モータの高い出力密度と、液圧モータのコンパクトな寸法とに基づき、無限軌道車両の高い最低地上高さと、クローラ車両もしくは無限軌道車両の左右のタンブラ駆動装置の間の相応の通過幅とが可能となる。高い最低地上高さと、クローラ車両もしくは無限軌道車両の左右のタンブラ駆動装置の間の相応に大きな通過幅とは、建設現場および不整地で使用される移動式の建設機械として形成されたクローラ車両もしくは無限軌道車両の場合、良好な不整地易動性に基づき必然的に必要となる。
【0004】
所要出力が制限されて、時間的に限られて都市部で使用される小型のクローラ車両もしくは無限軌道車両、例えばミニ掘削機またはミニダンプトラックまたは小型の移動式のクローラ式高所作業車または小型の移動式のクローラ式ボーリングマシンでは、排ガス規制が高まっていることに基づき、内燃機関式の駆動装置の代わりに、電動式、特にバッテリ電動式の駆動装置を使用することが所望されている。バッテリ電動式の駆動装置を備えた小型のクローラ車両もしくは無限軌道車両では、最低地上高さと、クローラ車両もしくは無限軌道車両の左右のタンブラ駆動装置の間の通過幅とに課される要求を満たすために、電気的に駆動される液圧ポンプにより圧力媒体が供給される駆動モータとしての液圧モータを備えたコンパクトなタンブラ駆動装置を使用することが可能である。しかしながら、このようなバッテリ電動式の駆動コンセプトは、高い構造手間を招いてしまう。
【0005】
冒頭に記載したホイールハブ駆動装置では、軸線方向で減速機と反対側で駆動モータに配置されていて、この駆動モータの被駆動軸に作用するブレーキ装置を設けることが知られている。しかしながら、このようにブレーキ装置を駆動モータの、減速機と反対側の端部に配置することによって、ホイールハブ駆動装置の軸線方向の構造長さが増加し、これによって、クローラ車両もしくは無限軌道車両の左右のホイールハブ駆動装置の間の通過幅が減じられてしまう。
【0006】
本発明の根底にある課題は、コンパクトな寸法を有する、クローラ車両もしくは無限軌道車両用のホイールハブ駆動装置を提供することである。
【0007】
この課題は、本発明によれば、駆動モータが、減速機の入力軸に対して同軸に配置された被駆動軸を有し、ブレーキ装置が、軸線方向で駆動モータと減速機との間にかつ半径方向でホイールハブ支持体の内部に配置されていることによって解決される。ブレーキ装置を軸線方向で駆動モータと減速機との間にかつ半径方向でホイールハブ支持体の内部に組み込むことによって、ブレーキ装置が、駆動モータと減速機との間のホイールハブ支持体の内部の構成スペースを利用するため、ブレーキ装置によって、ホイールハブ駆動装置の軸線方向の構造長さが増加させられず、クローラ車両もしくは無限軌道車両の左右のホイールハブ駆動装置の間の大きな通過幅が得られるという利点が得られる。
【0008】
本発明の有利な実施形態によれば、減速機は多段式の遊星歯車装置として形成されており、減速機の入力軸は、入力遊星歯車装置の太陽歯車軸として形成されており、ブレーキ装置は、少なくとも1つのステータ摩擦板と少なくとも1つのロータ摩擦板とを有する多板ブレーキとして形成されており、少なくとも1つのステータ摩擦板は、ホイールハブ支持体に相対回動不能にかつ軸線方向に移動可能に配置されており、少なくとも1つのロータ摩擦板は、入力遊星歯車装置の太陽歯車軸または入力遊星歯車装置の遊星枠に相対回動不能にかつ軸線方向に移動可能に配置されている。少なくとも1つのステータ摩擦板がホイールハブ支持体に相対回動不能にかつ軸線方向に移動可能に配置された多板ブレーキは、駆動モータと減速機との間でホイールハブ支持体の内部に簡単に組み込むことができる。この場合、少なくとも1つのロータ摩擦板は、入力遊星歯車装置の太陽歯車軸に相対回動不能にかつ軸線方向に移動可能に配置されていてもよい。これによって、ロータ摩擦板が、太陽歯車軸として形成された減速機の入力軸の回転数で回転する高速回転型の多板ブレーキが得られる。代替的には、少なくとも1つのロータ摩擦板が、入力遊星歯車装置の遊星枠に相対回動不能にかつ軸線方向に移動可能に配置されていてもよい。これによって、ロータ摩擦板が、太陽歯車軸として形成された減速機の入力軸の回転数よりも少ない入力遊星歯車装置の遊星枠の回転数で回転する中速回転型の多板ブレーキが得られる。このような中速回転型の多板ブレーキでは、高速回転型の多板ブレーキと比べて、減速機の減速機オイル内に浸漬させられたロータ摩擦板の減じられた回転数に基づき、減じられた撹拌損失を達成することができ、ひいては、ホイールハブ駆動装置の高い効率を達成することができる。さらに、中速回転型の多板ブレーキでは、ブレーキ装置の付加的な冷却を省くことができる。
【0009】
本発明の好適な実施形態によれば、ブレーキ装置はスプリングブレーキとして形成されており、このスプリングブレーキは、ばね装置によって制動位置の方向に加圧されていて、解除アクチュエータによって解除位置の方向に加圧されている。このようなスプリングブレーキは、好適には、車両の静止状態でのみ操作されるパーキングブレーキとして使用される。パーキングブレーキとして働くこのようなスプリングブレーキは、少ない入熱を伴うと共にほぼ摩耗なしに働くので、このようなスプリングブレーキは、軸線方向で駆動モータと減速機との間のかつ半径方向でホイールハブ支持体の内部の、アクセス性が良いとは云えない箇所に配置することもできる。
【0010】
スプリングブレーキは、解除位置へと電気的に、例えば磁石によって加圧可能に形成されていてもよい。本発明の有利な構成形態によれば、スプリングブレーキは、解除位置へと液圧的に加圧可能であり、解除アクチュエータは、制動解除圧室内に生じた作動用の制動解除圧によって解除位置の方向に加圧されている制動ピストンとして形成されている。解除位置へと液圧的に加圧可能なスプリングブレーキによって、制動ピストン用の所要構成スペースが減じられ、駆動モータと減速機との間へのかつホイールハブ支持体の内部への配置が簡単に可能となる。
【0011】
構成スペースを節約した制動ピストンの組込みに関して、本発明の有利な構成形態によれば、制動ピストンが、減速機の入力軸に対して同軸に配置されていると、利点が得られる。
【0012】
本発明の有利な実施形態によれば、駆動モータは、ホイールハブ支持体にモータハウジングカバーによって取り付けられており、解除アクチュエータはモータハウジングカバー内に配置されている。これによって、特別な利点が得られる。なぜならば、駆動モータのモータハウジングカバーと、ブレーキ装置の解除アクチュエータとが、ホイールハブ支持体に対して簡単に着脱することができるユニットを形成しているからである。
【0013】
有利には、モータハウジングカバーは、制動ピストンが長手方向移動可能に配置された長手方向孔を備え、この長手方向孔と制動ピストンとの間に制動解除圧室が形成されている。このような長手方向孔によって、制動ピストンをモータハウジングカバー内に簡単に配置することができ、制動解除圧室を形成することができる。
【0014】
有利には、駆動モータの、モータハウジングカバーを含むモータハウジングに、制動解除圧を案内する制動圧管路が配置されており、この制動圧管路は、制動解除圧室から、モータハウジングに設けられた制動ポートに案内されている。モータハウジングに形成されたこのような制動圧管路によって、制動解除圧を制動解除圧室に簡単に案内することができる。
【0015】
本発明の代替的なかつ同じく有利な実施形態によれば、解除アクチュエータはホイールハブ支持体内に配置されている。
【0016】
有利には、ホイールハブ支持体は、制動ピストンが長手方向移動可能に配置された長手方向孔を備え、この長手方向孔と制動ピストンとの間に制動解除圧室が形成されている。このような長手方向孔によって、制動ピストンをホイールハブ支持体内に簡単に配置することができ、制動解除圧室を形成することができる。
【0017】
有利には、ホイールハブ支持体に、制動解除圧を案内する制動圧管路が配置されており、この制動圧管路は、制動解除圧室から、ホイールハブ支持体に設けられた接続ポートに案内されている。ホイールハブ支持体に形成されたこのような制動圧管路によって、制動解除圧を制動解除圧室に簡単に案内することができる。
【0018】
本発明の改良形態によれば、ホイールハブ支持体の接続ポートに、駆動モータのモータハウジングに配置された制動圧管路が接続されており、この制動圧管路が、モータハウジングに設けられた制動ポートに案内されていると、制動解除圧を、モータハウジングに配置された制動ポートから制動解除圧室に案内することができる。
【0019】
本発明の有利な構成形態によれば、ばね装置は少なくとも1つの皿ばねによって形成されている。皿ばねは、軸線方向でコンパクトな寸法を有していて、したがって、ホイールハブ駆動装置の少ない軸線方向の構造長さに関して更なる利点を可能にする。少なくとも2つの皿ばねが設けられている場合、これらの皿ばねは、好適には直列重ねで配置されている。これによって、ブレーキ装置の開放位置での多板ブレーキの摩擦板の開放ストロークひいてはクリアランスを共により大きくする、より大きなばね変位を得ることができる。これによって、減速機の減速機オイル内で回転するロータ摩擦板の減じられた撹拌損失を達成することができる。
【0020】
本発明の有利な実施形態によれば、駆動モータは電動モータとして形成されており、この電動モータは、冷却のために、冷却流体回路を備えた液体冷却装置を備える。したがって、ホイールハブ駆動装置の駆動モータとして、冷却流体回路を備えた液体冷却装置を備える液体冷却式の電動モータが使用される。冷却流体回路は、好適には、冷却流体をポンプと熱交換器との間で循環させる。冷却流体回路を備えた液体冷却装置により冷却される電動モータは、高い電流で作動させられることがある。したがって、液体冷却装置によって、電動モータの持続トルクを高めることが可能となる。液体冷却装置によって、周辺への熱導出はもはや、空気冷却装置のように、内部の熱伝導/熱放射/熱伝達を介して電動モータの通気されにくい表面で行われるのではなく、冷却液体の物質輸送による著しく効果的な熱輸送を介して実現されるので、著しく高められた電流密度にもかかわらず、電動モータにおいて、許容可能な不変温度を保証することができる。したがって、液体冷却装置によって、ホイールハブ駆動装置の電動モータの寸法を縮小し、寸法、特に軸線方向および/または半径方向の寸法に関してコンパクトな電動モータによって、高いトルクを発生させることが可能となる。このようなコンパクトな液体冷却式の電動モータは被駆動軸でもって、ホイールハブ駆動装置の減速機の入力軸に対して同軸に配置することができるため、駆動モータとして液体冷却式の電動モータを備えたホイールハブ駆動装置によって、高い最低地上高さと、車両の左右のホイールハブ駆動装置の間の大きな通過幅とが可能となる。トラクションバッテリから電動モータへの給電のためには、ただ1つのコントローラもしくはコンバータしか必要とならないので、全体として、コンパクトな寸法および少ない構成手間を有する、電動式、特にバッテリ電動式に運転されるクローラ車両もしくは無限軌道車両用の電動式のホイールハブ駆動装置を提供することができるため、本発明に係る電動式のホイールハブ駆動装置によって、電動式、特にバッテリ電動式に運転されるクローラ車両もしくは無限軌道車両において、最低地上高さと、左右のホイールハブ駆動装置の間の通過幅とに課される要求を満たすことができる。
【0021】
本発明の有利な実施形態によれば、電動モータの液体冷却装置は被駆動軸冷却装置を有し、この被駆動軸冷却装置は、被駆動軸に設けられた軸線方向通路を有し、この軸線方向通路は、液体冷却装置の冷却流体、特にオイル用の冷媒通路として形成されていて、冷却流体入口と冷却流体出口とに接続されている。電動モータのこのような被駆動軸冷却装置は、電動モータの中央におけるヒートシンクを成している。このヒートシンクによって、特に、コイルエンドの熱放射、回転子損失および固有の回転損失により温度に関するリスクに曝されている、電動モータの被駆動軸の軸受と、電動モータの被駆動軸に設けられた軸封リングとを的確に冷却することができる。したがって、このような被駆動軸冷却装置によって、電動モータの、高い温度が発生する軸・ロータ群を的確に冷却することができる。冷却流体、例えばオイルでの液体冷却によって、少ない手間で高い冷却性能が可能となる。
【0022】
本発明の有利な構成形態によれば、軸線方向通路は、被駆動軸に中央の盲孔として形成されており、この盲孔内に管が同心的に配置されており、この管と盲孔との間に環状間隙が形成されており、この環状間隙に管内室が流れ接続されており、管は、冷却流体回路の冷却流体入口に接続されており、環状間隙は、冷却流体回路の冷却流体出口に接続されている。これによって、冷却流体回路の冷却流体を管の管内室を介して供給することができ、管を取り囲む環状間隙を介して再び導出することができる。これによって、被駆動軸の効果的な冷却が達成される。
【0023】
本発明の好適な構成形態によれば、代替的または付加的に、電動モータの液体冷却装置が、モータハウジング内に配置されたステータのステータ冷却装置を有する。このようなステータ冷却装置によって、電動モータの、高い温度が発生するステータを的確に冷却することができる。冷却流体、例えばオイルでの液体冷却によって、少ない手間で高い冷却性能が可能となる。
【0024】
本発明の有利な実施形態によれば、モータハウジングは、ステータに沿って延在する、液体冷却装置の冷却流体、特にオイル用の冷媒通路を備える。モータハウジングに形成されていて、ステータに沿って延びる、冷却流体用の冷媒通路によって、ステータの冷却の更なる改善が可能となる。
【0025】
冷媒通路が、ステータの第1のコイルエンドからステータの第2のコイルエンドに延在していると、ステータをその全長にわたって、ステータの軸線方向の端部におけるコイルエンドを含めて効果的に冷却することができる。
【0026】
好ましくは、冷媒通路は、モータハウジングに配置された冷却流体入口と、モータハウジングに配置された冷却流体出口とに接続されている。これによって、冷媒通路を冷却流体回路に簡単に接続することができる。
【0027】
本発明の有利な構成形態によれば、冷媒通路は、半径方向でステータとモータハウジングとの間に配置されたスリーブに形成された螺旋溝として形成されている。モータハウジング内に適切に取り付けられた、例えば圧入された、螺旋溝を備えたこのようなスリーブによって、ステータに沿って延在する冷媒通路をモータハウジング内に簡単に製作することができる。
【0028】
本発明は、さらに、本発明に係る少なくとも1つのホイールハブ駆動装置を備えるクローラ車両に関する。
【0029】
本発明の有利な実施形態によれば、クローラ車両は、ホイールハブ駆動装置の電動モータにトラクションバッテリが電気エネルギーを供給する電動式、特にバッテリ電動式の駆動システムを有する。ブレーキ装置および電動モータの液体冷却装置の配置に基づきコンパクトな構造形態を有する本発明に係る電動式のホイールハブ駆動装置によって、電動式、特にバッテリ電動式に運転されるクローラ車両もしくは無限軌道車両において、高い最低地上高さと、無限軌道車両の左右のホイールハブ駆動装置の間の大きな通過幅とを生じさせる、コンパクトな寸法と少ない構造手間とを有する電動式のホイールハブ駆動装置を提供することが可能となる。本発明に係る電動式のホイールハブ駆動装置は、特に、小型のクローラ車両もしくは無限軌道車両、例えばミニ掘削機、ミニダンプトラック、小型の移動式のクローラ式高所作業車または小型の移動式のクローラ式ボーリングマシンに適している。
【0030】
本発明は一連の利点を提供する。
【0031】
ブレーキ装置を軸線方向で駆動モータと減速機との間にかつ半径方向でホイールハブ支持体の内部に配置して組み込むことによって、ブレーキ装置が、駆動モータと減速機との間のホイールハブ支持体の内部の構成スペースを最適に利用するため、軸線方向でのホイールハブ駆動装置のコンパクトな寸法を得ることできるという利点が得られる。
【0032】
ブレーキ装置がパーキングブレーキとして形成されている場合、このパーキングブレーキはほぼ摩耗なしの作動を伴うため、ブレーキ装置は、駆動モータと減速機との間のホイールハブ支持体の内部の、アクセス性が良いとは云えない領域に配置することもできる。
【0033】
さらに、電動モータの付加的な液体冷却装置によって、電動モータのコンパクトな寸法ひいてはコンパクトな寸法を有する電動式のホイールハブ駆動装置が提供される。さらに、電動モータの付加的な液体冷却装置によって、規定の熱導出により、電動モータをより高い電流密度で作動させ、ひいては、より高いトルクを発生させることが可能となる。これによって、電動モータの利用が高められる(出力がより大きくなる)。ホイールハブ駆動装置に向かってかつホイールハブ駆動装置から離れる方向で安全なチューブ内に敷設された、電動モータの規定の液体冷却装置によって、最深の不整地内、例えば泥内、水内、泥濘内でも、ホイールハブ駆動装置が有効に冷却され、過熱されないことが確保される。
【0034】
本発明の更なる利点および詳細を、概略図に示した実施例に基づき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明に係るホイールハブ駆動装置の第1の実施形態の縦断面図である。
図2図1のホイールハブ駆動装置の改良形態の縦断面図である。
図3】本発明に係るホイールハブ駆動装置の第2の実施形態の縦断面図である。
図4】本発明に係るホイールハブ駆動装置の第3の実施形態の縦断面図である。
図5】本発明に係るホイールハブ駆動装置の第4の実施形態の縦断面図である。
【0036】
図1図5には、クローラ車両または無限軌道車両用のそれぞれ1つの本発明に係るホイールハブ駆動装置1が示してある。このホイールハブ駆動装置1は電動式のタンブラ駆動装置として形成されている。図中、同一の構成部材には同一の参照符号が付してある。クローラ車両または無限軌道車両は、好適には、電動式、例えばバッテリ電動式の駆動システムを有している。
【0037】
図1図5に示した本発明に係るホイールハブ駆動装置1は、駆動モータ2と、この駆動モータ2により駆動される減速機3と、この減速機3により駆動されるハブ6とを有している。このハブ6には、クローラ車両のクローラまたは無限軌道車両のゴムクローラを駆動するために設けられたタンブラホイール(図示せず)が取り付けられてもよい。
【0038】
ホイールハブ駆動装置1は、クローラ車両または無限軌道車両の車両フレーム(図示せず)に取り付けられたハブ支持体5を有している。このハブ支持体5には、ハブ6が、図示の実施例では転がり軸受により形成された支承部材7によって回転軸線Dを中心として回転可能に支承されている。
【0039】
ハブ支持体5とハブ6とは歯車装置組込み室10を形成しており、この歯車装置組込み室10内に減速機3が配置されている。この減速機3は、図示の実施例では多段式の遊星歯車装置として形成されている。
【0040】
減速機3の入力軸11は、減速機3の入力遊星歯車装置3aの太陽歯車軸S1によって形成されている。入力遊星歯車装置3aの遊星枠P1は遊星歯車PR1を支持している。この遊星歯車PR1は、太陽歯車軸S1とハブ支持体5の内歯歯車歯列Hとに噛み合っている。遊星枠P1は中間遊星歯車装置3bの太陽歯車軸S2を駆動する。中間遊星歯車装置3bの遊星枠P2は遊星歯車PR2を支持している。この遊星歯車PR2は、太陽歯車軸S2とハブ支持体5の内歯歯車歯列Hとに噛み合っている。遊星枠P2は出力遊星歯車装置3cの太陽歯車軸S3を駆動する。出力遊星歯車装置3cの遊星枠P3は、ホイールハブ支持体5の内歯歯車歯列Hに相対回動不能に支持されていて、遊星歯車PR3を支持している。この遊星歯車PR3は、太陽歯車軸S3と、駆動されるハブ6の内歯歯車歯列H1とに噛み合っていて、太陽歯車軸S3とハブ6とを駆動する。
【0041】
太陽歯車軸S1として形成された入力軸11は、回転軸線Dに対して同軸に配置されている。さらに、太陽歯車軸S2,S3は、回転軸線Dに対して同軸に配置されている。
【0042】
図示の実施例では、駆動モータ2が電動モータ12として形成されている。この電動モータ12は、ハブ支持体5に取り付けられたモータハウジング13を有している。このモータハウジング13内には、電動モータ12のステータ14が取り付けられている。このステータ14は、図示の実施例では、軸線方向の両方の端部にそれぞれコイルエンド14a,14bを備えている。モータハウジング13内には、さらに、電動モータ12のロータ15が配置されている。このロータ15は、駆動モータ2の回転可能な被駆動軸16に取り付けられている。
【0043】
駆動モータ2の回転可能な被駆動軸16は、減速機3の入力軸11に対して同軸ひいては回転軸線Dに対して同軸に配置されている。
【0044】
被駆動軸16は、減速機3側の第1の端部で減速機3の入力軸11に相対回動不能に連結されている。
【0045】
被駆動軸16は、モータハウジング13において、第1の端部の領域で第1の支承部材20によってモータハウジング13内に回転可能に支承されていて、第1の端部と反対側の第2の端部の領域で第2の支承部材21によってモータハウジング13内に回転可能に支承されている。支承部材20,21は、図示の実施例では転がり軸受によって形成されている。
【0046】
モータハウジング13は、図示の実施例では、ステータ14が内部に取り付けられた管状のハウジング部分23を有している。このハウジング部分23には、第1の支承部材20が内部に配置されたブラケットを備えた第1の端面側のモータハウジングカバー24が取り付けられている。ハウジング部分23には、さらに、第2の支承部材21が内部に配置されたブラケットを備えた第2の端面側のモータハウジングカバー25が取り付けられている。ハウジング部分23は両方のモータハウジングカバー24,25と共にロータ組込み室27を形成しており、このロータ組込み室27内に電動モータ12の回転するロータ15が配置されている。
【0047】
端面側のモータハウジングカバー24は、ホイールハブ支持体5の一方の端面に取り付けられている。
【0048】
被駆動軸16の第1の端部の領域には、第1の支承部材20に隣り合って、被駆動軸16とモータハウジングカバー24との間に、ロータ組込み室27を歯車装置組込み室10に対して密封する軸封装置40が配置されている。
【0049】
被駆動軸16の第2の端部の領域には、第2の支承部材21に隣り合って、被駆動軸16とモータハウジングカバー25との間に軸封装置41が配置されている。
【0050】
図1図5では、さらに、ハブ支持体5に、駆動モータ2のモータハウジング13が内部に位置する保護管46が取り付けられている。
【0051】
高い最低地上高さと、クローラ車両もしくは無限軌道車両の左側のホイールハブ駆動装置と右側のホイールハブ駆動装置との間の大きな通過幅とを可能にする、電動モータ12の軸線方向および半径方向のコンパクトな寸法を得るために、電動モータ12はその冷却のために、冷却流体回路を備えた液体冷却装置を備えている。
【0052】
図1図5では、電動モータ12の液体冷却装置が被駆動軸16の被駆動軸冷却装置を有している。この被駆動軸冷却装置は、被駆動軸16に設けられた軸線方向通路50を有している。この軸線方向通路50は、液体冷却装置の冷却流体、特にオイル用の冷媒通路として形成されていて、冷却流体入口60と冷却流体出口61とに接続されている。この冷却流体入口60と冷却流体出口61とはモータハウジングカバー25に配置されている。
【0053】
軸線方向通路50は、被駆動軸16が減速機3の入力軸11に連結された第1の端部と反対側の被駆動軸16の第2の端部から被駆動軸16内に延在している。
【0054】
図1図5では、軸線方向通路50は、被駆動軸16の軸線方向で被駆動軸16の第2の端部の端面51から第2の支承部材21、ロータ15を越えて第1の支承部材20の領域にまで延在している。
【0055】
軸線方向通路50は、被駆動軸16に設けられた中央の盲孔として形成されている。この中央の盲孔は端面51から被駆動軸16に加工されている。中央の盲孔内には、モータハウジングカバー25に取り付けられた管52が同心的に配置されている。管52と盲孔との間には、環状間隙53が形成されている。この環状間隙53には、管52の管内室が流れ接続されている。
【0056】
管52は、被駆動軸16の、減速機3と反対側の第2の端部の領域において、冷却流体回路の、モータハウジングカバー25に配置された冷却流体入口60に接続されていて、被駆動軸16の第1の端部の領域において、少なくとも1つの切欠きによって環状間隙53に接続されている。この環状間隙53は冷却流体回路の冷却流体出口61に接続されている。
【0057】
軸封装置41は、ロータ組込み室27に対して接続室62を密封している。この接続室62には、環状間隙53が開口していて、冷却流体回路の、モータハウジングカバー25に配置された冷却流体出口61が接続されている。
【0058】
図1図5では、管52は、被駆動軸16における第1の端部の領域内に自由に突き出して配置されている。切欠きは、管52の内側の端部に開放端面66として形成されている。この開放端面66によって、管52の管内室が環状間隙53に流れ接続されている。
【0059】
図1図5の被駆動軸冷却装置は以下のように働く。
【0060】
冷却流体入口60を介して、低温の冷却流体が第1の端部で管52の管内部に導入される。低温の冷却流体は、管52を軸線方向に通流し、管52の開放端面66を介して環状間隙53に流入する。この環状間隙53内では、冷却流体が被駆動軸16の端面51に逆向きに流れる。これによって、被駆動軸16と、両方の支承部材20,21と、両方の軸封装置40,41とが冷却される。被駆動軸冷却装置によって、電動モータ12は内部から体積流対流によって冷却される。被駆動軸16の端面51から、加熱された圧力媒体が接続室62に流入し、この接続室62から冷却流体出口61に導出される。この冷却流体出口61に接続された熱交換器において、冷却流体は再び冷却され、冷却流体入口60に供給されてもよい。
【0061】
図1図5では、電動モータ12の液体冷却装置が、さらに、モータハウジング13に配置されたステータ14のステータ冷却装置を有している。
【0062】
図1図5では、ステータ冷却装置用に、モータハウジング13が、ステータ14に沿って延在する、液体冷却装置の冷却流体、特にオイル用の冷媒通路110を備えている。この冷媒通路110は、ステータ14の第1のコイルエンド14aからステータ14の第2のコイルエンド14bに延在していて、モータハウジング13に配置された冷却流体入口100と、モータハウジング13に配置された冷却流体出口101とに接続されている。
【0063】
冷媒通路110は、好適には螺旋溝として形成されている。この螺旋溝は、半径方向でステータ14とモータハウジング13との間に配置されたスリーブ115に形成されている。このスリーブ115の内壁には、ステータ14が配置されている。スリーブ115の外壁には、螺旋溝が加工されている。スリーブ115は、好適には、モータハウジング13の管状のハウジング部分23内に圧入されており、これによって、スリーブ115の外壁とハウジング部分23の内壁との間に冷媒通路110が形成される。
【0064】
図1図5のステータ冷却装置は以下のように働く。
【0065】
図1図5では、冷却流体入口100を介して、低温の冷却流体が、冷却流体入口100を介して第1のコイルエンド14aの領域で冷媒通路110内に導入され、この冷媒通路110を通流する。これによって、ステータ14とそのコイルエンド14a,14bとが冷却される。加熱された冷却流体が、第2のコイルエンド14bの領域で冷却流体出口101に導出される。この冷却流体出口101に接続された熱交換器において、冷却流体は再び冷却され、冷却流体入口100に供給されてもよい。
【0066】
図1図5の本発明に係るホイールハブ駆動装置1では、このホイールハブ駆動装置1の軸線方向で駆動モータ2と減速機3との間にかつ半径方向でホイールハブ支持体5の内部にブレーキ装置150が配置されている。これによって、ホイールハブ駆動装置1を軸線方向でコンパクトな寸法に関してさらに最適化することができ、クローラ車両もしくは無限軌道車両の左側のホイールハブ駆動装置と右側のホイールハブ駆動装置との間の大きな通過幅を得ることができる。
【0067】
ブレーキ装置150は、図示の実施例では、少なくとも1つのステータ摩擦板151と少なくとも1つのロータ摩擦板152とを有する多板ブレーキとして形成されている。図1図5では、少なくとも1つのステータ摩擦板151が、ホイールハブ支持体5に相対回動不能にかつ軸線方向に移動可能に配置されている。図1図3では、少なくとも1つのロータ摩擦板152が、入力遊星歯車装置3aの遊星枠P1に相対回動不能にかつ軸線方向に移動可能に配置されている。したがって、図1図3の多板ブレーキは、少なくとも1つのロータ摩擦板152が遊星枠P1の回転数で回転する中速回転型の多板ブレーキとして形成されている。図4および図5では、少なくとも1つのロータ摩擦板152が、入力遊星歯車装置3aの太陽歯車軸S1に相対回動不能にかつ軸線方向に移動可能に配置されている。したがって、図4および図5の多板ブレーキは、少なくとも1つのロータ摩擦板152が、減速機3の、太陽歯車軸S1として形成された入力軸11の回転数で回転する高速回転型の多板ブレーキとして形成されている。
【0068】
図1図5では、ブレーキ装置150がスプリングブレーキとして形成されている。このスプリングブレーキは、ばね装置160によって制動位置の方向に加圧されていて、解除アクチュエータ161によって解除位置の方向に加圧されている。
【0069】
図1図5では、スプリングブレーキは、解除位置へと液圧的に加圧可能である。このために、解除アクチュエータ161は、制動解除圧室163内に生じた作動用の制動解除圧によって解除位置の方向に加圧されている制動ピストン162として形成されている。
【0070】
代替的には、スプリングブレーキは、解除位置へと電気的に、例えば磁石によって加圧可能に形成されていてもよい。
【0071】
図1図5では、制動ピストン162は、減速機3の入力軸11に対して同軸に配置されている。
【0072】
図1図2および図4では、解除アクチュエータ161は、駆動モータ2をホイールハブ支持体5に取り付けるモータハウジングカバー24内に配置されている。
【0073】
このために、モータハウジングカバー24は、段付きピストンとして形成された制動ピストン162が長手方向移動可能に配置された段付けられた長手方向孔164を備えている。この長手方向孔164と制動ピストン162との間には、さらに、制動解除圧室163が形成されている。
【0074】
制動解除圧室163を制動解除圧によって加圧するために、駆動モータ2のモータハウジング13には、制動解除圧を案内する制動圧管路165が配置されている。この制動圧管路165は、制動解除圧室163から、モータハウジング13に設けられた制動ポート166に案内されている。図1図2および図4では、この制動ポート166はモータハウジングカバー25に配置されている。制動圧管路165は、制動解除圧室163に接続された、モータハウジングカバー24に半径方向で配置された孔170と、この孔170に接続された、ハウジング部分23に軸線方向で配置された孔171と、この孔171と制動ポート166とに接続された、モータハウジングカバー25に設けられ孔172とによって形成されている。
【0075】
図3および図5では、解除アクチュエータ161はホイールハブ支持体5内に配置されている。
【0076】
このために、ホイールハブ支持体5は、段付きピストンとして形成された制動ピストン162が長手方向移動可能に配置された段付けられた長手方向孔180を備えている。この長手方向孔180と制動ピストン162との間には、制動解除圧室163が形成されている。
【0077】
制動解除圧室163を制動解除圧によって加圧するために、ホイールハブ支持体5には、制動解除圧を案内する制動圧管路190が配置されている。この制動圧管路190は、制動解除圧室163から、ホイールハブ支持体5に設けられた接続ポート191に案内されている。この接続ポート191は、図3および図5の実施例では、ホイールハブ支持体5の、モータハウジングカバー24の側の端面に配置されている。
【0078】
ホイールハブ支持体5の接続ポート191には、駆動モータ2のモータハウジング13に配置された制動圧管路200が接続されている。この制動圧管路200は、モータハウジング13に設けられた制動ポート201に案内されている。図3および図5では、制動ポート201はモータハウジングカバー25に配置されている。制動圧管路200は、接続ポート191に接続された、モータハウジングカバー24に半径方向で配置された孔202と、この孔202に接続された、ハウジング部分23に軸線方向で配置された孔203と、この孔203と制動ポート201とに接続された、モータハウジングカバー25に設けられた孔204とによって形成されている。
【0079】
図1図2および図4では、ブレーキ装置150の摩擦板は、ブレーキ装置150の制動位置で当接ディスク210に支持されている。この当接ディスク210は、制動ピストン162に向かい合って配置されていて、ホイールハブ支持体5内に相対回動不能にかつ軸線方向で位置固定されて取り付けられている。
【0080】
図3および図5では、ブレーキ装置150の摩擦板は、ブレーキ装置150の制動位置で当接面215に支持されている。この当接面215は、制動ピストン162に向かい合って配置されていて、ホイールハブ支持体5に形成されている。
【0081】
図1図3図5では、制動ピストン162を制動位置へと操作するばね装置160が、ただ1つの皿ばね220によって形成されている。このためには、この皿ばね220がモータハウジングカバー24に支持されていて、制動ピストン162を図1図3図5で見て右向きに制動位置へと加圧している。
【0082】
図2では、制動ピストン162を制動位置へと操作するばね装置160が、直列重ねで配置された複数の皿ばね221,222、図示の実施例では2つの皿ばねによって形成されている。このためには、皿ばね221がモータハウジングカバー24に支持されており、皿ばね221に支持された皿ばね22が、制動ピストン162を図2で見て右向きに制動位置へと加圧している。
【0083】
図2に示した複数の皿ばねは、図3図5の実施形態でも使用されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】