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特表2024-547136神経刺激治療のための支援プログラミングシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】神経刺激治療のための支援プログラミングシステム
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20241219BHJP
   A61N 1/05 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A61N1/36
A61N1/05
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538442
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-06-24
(86)【国際出願番号】 AU2022051556
(87)【国際公開番号】W WO2023115132
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】2021904237
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513144730
【氏名又は名称】サルーダ・メディカル・ピーティーワイ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・マーロン・ウィリアムズ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ジョン・パーカー
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル・ニコラス・ギルバート
(72)【発明者】
【氏名】ディーン・マイケル・カラントニス
(72)【発明者】
【氏名】エパラワッテゲ・スダム・ニマンサ・ディアス
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053CC10
4C053JJ01
4C053JJ02
4C053JJ03
4C053JJ04
4C053JJ05
4C053JJ18
4C053JJ27
(57)【要約】
臨床医が特定の患者のために神経調節装置を効率的にプログラムするのを支援するように構成された、神経調節装置用の自動プログラミングシステムが開示される。特に、支援プログラミングシステムは、患者が制御装置と対話し続ける限り、神経刺激の強度を経時的に上昇させるように構成された刺激ユーザインタフェース制御を備える。患者が制御装置との対話を停止する刺激強度の値は、支援プログラミングワークフローの後続のステップが基づく有意な知覚マーカとして記録される。このユーザインタフェース設計は、人間の引込め反射を利用し、それにより、患者は、不快な刺激を受けたときに感覚的にボタンを解放する可能性が高い。したがって、設計は、支援プログラミングシステムを使用する際に患者に課される訓練負荷を最小限に抑える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経刺激システムであって、
神経刺激を制御可能に送達するための神経刺激装置であって、前記神経刺激装置は、
複数の埋め込み型電極と、
前記複数の埋め込み型電極のうちの選択された電極を介して患者の神経経路に神経刺激を送達するように構成された刺激源と、
刺激強度パラメータに従って各神経刺激を送達するように前記刺激源を制御するように構成された制御ユニットと、
を含む、神経刺激装置と、
前記神経刺激装置と通信する外部コンピューティング装置であって、前記外部コンピューティング装置は、
ディスプレイと、
プロセッサであって、
前記刺激強度パラメータを初期化し、
刺激制御を前記ディスプレイにレンダリングし、
ユーザによる前記刺激制御の活性化を受信すると、前記刺激強度パラメータの値をランプさせる一方で、前記制御ユニットに、前記刺激強度パラメータの前記ランプ値に従って、神経刺激を送達するために前記刺激源を制御するように命令し、
前記刺激制御の非活性化を受信すると、前記刺激強度パラメータの前記値のランプを停止する、
ように構成される、プロセッサと、
を含む、外部コンピューティング装置と、
を備える、神経刺激システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記非活性化を受信すると、前記刺激強度パラメータの前記値を下降させる一方で、前記制御ユニットに、前記刺激強度パラメータの前記下降ランプ値に従って前記神経刺激を送達するように前記刺激源を制御するよう命令するように更に構成されている、請求項1に記載の神経刺激システム。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記非活性化を受信すると、前記刺激源に、前記神経刺激の送達を停止するよう命令するように更に構成されている、請求項1に記載の神経刺激システム。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記非活性化を受信すると、前記刺激強度パラメータの前記値を前記選択された電極の不快感閾値として記録するように更に構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の神経刺激システム。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記刺激強度パラメータの前記記録された値を使用して、神経刺激を前記患者に送達するように、前記神経刺激装置をプログラムするように更に構成されている、請求項4に記載の神経刺激システム。
【請求項6】
前記刺激制御は、
前記ユーザが前記刺激制御と対話すると活性化されるようになり、
前記ユーザが前記刺激制御と対話し続ける限り、活性化されたままであり、
前記ユーザが前記刺激制御との対話を停止するとすぐに非活性化されるように構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の神経刺激システム。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記刺激制御をアニメーション化して、前記制御の前記活性化からの経過時間を示すように構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の神経刺激システム。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記刺激強度が神経反応閾値に達したことを示すように前記刺激制御をアニメーション化するように構成されている、請求項7に記載の神経刺激システム。
【請求項9】
前記プロセッサは、前記神経刺激装置からの通信を受信してから第1のタイムアウト期間が満了すると、前記刺激強度パラメータの前記値のランプを停止するように更に構成されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の神経刺激システム。
【請求項10】
前記プロセッサは、前記神経刺激装置から通信を受信することなく、前記第1のタイムアウト期間の前記満了から第2のタイムアウト期間が満了すると、前記刺激強度パラメータの前記値を下降させる一方で、前記制御ユニットに、前記刺激強度パラメータの前記下降ランプ値に従って、前記神経刺激を送達するために前記刺激源を制御するよう命令するように更に構成されている、請求項9に記載の神経刺激システム。
【請求項11】
神経刺激装置と通信する外部コンピューティング装置を使用して、神経刺激を送達するように神経刺激装置を制御する自動化方法であって、前記方法は、
前記外部コンピューティング装置のプロセッサによって、前記外部コンピューティング装置のディスプレイ上に刺激制御をレンダリングすることと、
前記プロセッサによって、ユーザによる前記刺激制御の活性化を受信すると、刺激強度パラメータの値をランプする一方で、前記神経刺激装置に、複数の埋め込み型電極のうちの選択された電極を介して、前記刺激強度パラメータの前記ランプ値に従って、前記神経刺激を送達するよう命令することと、
前記プロセッサによって、前記刺激制御の非活性化を受信すると、前記刺激強度パラメータの前記値をランプさせることを停止させることと、
を含む、方法。
【請求項12】
前記プロセッサによって、前記非活性化を受信すると、前記刺激強度パラメータの前記値を下降させる一方で、前記神経刺激装置に、前記選択された電極を介して、前記刺激強度パラメータの前記下降ランプ値に従って前記神経刺激を送達するよう命令することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記プロセッサによって、前記刺激強度パラメータが所定の条件を満たすと、前記刺激強度パラメータの前記値をゼロに下降させる一方で、前記神経刺激装置に、前記選択された電極を介して、前記刺激強度パラメータの前記下降ランプ値に従って、前記神経刺激を送達するよう命令することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記所定の条件は、ハードシーリングに達する前記刺激強度パラメータを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記刺激強度パラメータの前記下降ランプ値は、所定の減少レートを有する線形プロファイルに従う、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記線形プロファイルのレートは、前記刺激強度パラメータが所定の間隔の後にゼロに達するように選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記刺激強度パラメータの前記下降ランプ値は、ECAP閾値によってパラメータ化された閾値ランプに従う、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ランプが時間に対して線形である、請求項11~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記線形ランプのランプ率が予め決定される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ランプは、ECAP閾値によってパラメータ化された閾値ランプである、請求項11~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記プロセッサによって、前記非活性化を受信すると、前記神経刺激装置に、前記神経刺激の送達を停止するよう命令することを更に含む、請求項11~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記非活性化を受信すると、前記刺激強度パラメータの前記値を、前記複数の埋め込み型電極の前記選択された電極の不快感閾値として記録することを更に含む、請求項11~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記プロセッサによって、前記複数の埋め込み型電極のうちの更に選択された電極の前記ランプ及び前記命令並びに前記停止を繰り返すことを更に含む、請求項11~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記刺激強度パラメータは、刺激電流パルスの振幅である、請求項11~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記刺激制御をアニメーション化して、前記制御の前記活性化からの経過時間を示すことを更に含む、請求項11~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記アニメーション化は、前記刺激強度が神経反応閾値に達したことを示す、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記神経刺激装置から通信を受信してから第1のタイムアウト期間が経過すると、前記刺激強度パラメータの前記値のランプを停止することを更に含む、請求項11~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記神経刺激装置から通信を受信することなく、前記第1のタイムアウト期間の前記満了から第2のタイムアウト期間が満了すると、前記刺激強度パラメータの前記値を下降させる一方で、前記プロセッサによって、前記神経刺激装置に、前記刺激強度パラメータの前記下降ランプ値に従って、前記神経刺激を送達するよう命令する、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経刺激治療に関し、特に、特定の患者のニーズに合うように神経刺激治療システムをプログラムするための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
神経機能を変化させるために神経刺激を加えることが望ましい様々な状況があり、このプロセスは神経調節として知られている。例えば、神経調節は、慢性神経障害性疼痛、パーキンソン病、及び片頭痛を含む様々な障害を治療するために使用される。神経調節システムは、治療効果を生み出すために、電気パルス(刺激)を神経組織(線維、又は神経細胞)に印加する。一般に、神経調節システムによって生成された電気刺激は、神経線維の活動電位として知られる神経応答を誘発し、これはその後、抑制性効果又は興奮性効果のいずれかを有する。抑制性効果は、疼痛の伝達などの望ましくないプロセスを調節するために使用することができ、又は興奮性効果は、筋肉の収縮などの所望の効果を引き起こすために使用することができる。
【0003】
体幹及び四肢に由来する神経障害性疼痛を軽減するために使用される場合、電気パルスが脊髄の後柱(DC)に印加され、これは脊髄刺激(SCS)と呼ばれる手順である。そのようなシステムは、典型的には、埋め込み型電気パルス発生器と、誘導伝達などの無線手段によって経皮的に再充電可能であり得るバッテリなどの電源とを備える。電極アレイは、パルス発生器に接続され、脊髄の目標神経線維に隣接して、典型的には後柱の上の脊髄硬膜外空間内に埋め込まれる。刺激電極によって目標神経線維に印加された十分な強度の電気パルスは、線維内の神経細胞の脱分極を引き起こし、次に線維内に活動電位を発生させる。活動電位は、順行(頭部に向かって、又は吻側)及び逆行方向(尾部に向かって、又は尾側)に線維に沿って伝播する。このようにして刺激された線維は、目標神経線維によって神経支配された身体の領域(皮膚分節)から脳への疼痛の伝達を抑制する。疼痛緩和効果を持続させるために、例えば30Hz~100Hzの範囲の周波数で刺激が繰り返し加えられる。
【0004】
効果的で快適な神経調節のために、刺激強度を動員閾値より上に維持することが必要である。動員閾値を下回る刺激は、治療効果を有する活動電位を生成するのに十分な神経細胞を動員することができない。ほとんど全ての神経調節用途において、単一クラスの線維からの応答が望まれるが、使用される刺激波形は、望ましくない副作用を引き起こす他のクラスの線維における活動電位を誘発することがある。したがって、疼痛緩和では、不快感閾値未満の強度の刺激を適用することが必要であり、それを超えると、Aβ線維の過剰動員に起因して不快感又は疼痛の知覚が生じる。動員が大きすぎると、Aβ線維は不快な感覚を生じる。高強度の刺激は、鋭い痛み、冷たさ及び圧迫の感覚に関連する感覚神経線維であるAδ線維を動員することさえあり得る。したがって、刺激強度を、動員閾値と不快感閾値との間の治療範囲内に維持することが望ましい。
【0005】
適切な神経動員を維持するタスクは、電極移動(経時的な位置の変化)及び/又はインプラント受容者(患者)の姿勢変化によってより困難になり、そのいずれも所与の刺激から生じる神経動員、したがって治療範囲を有意に変化させる可能性がある。硬膜外空間には電極アレイが移動する余地があり、移動又は姿勢変化からのそのようなアレイ移動は、電極-線維間距離、したがって所与の刺激の動員効率を変化させる。更に、脊髄自体は、硬膜に対して脳脊髄液(CSF)内を移動することができる。姿勢変化中、CSFの量及び/又は脊髄と電極との間の距離は有意に変化し得る。この効果は非常に大きいため、姿勢変化だけでも、快適で効果的な刺激法が、効果的でないもの又は痛みのあるものになることがある。
【0006】
本出願人による国際公開第2012/155188号パンフレットに記載されている方法を使用するなど、フィードバック又は閉ループ制御によってそのような問題に対処する試みがなされてきた。フィードバック制御は、実質的に一定の神経動員を維持するように送達される刺激の強度を制御することによって相対的な神経/電極の移動を補償しようとする。刺激によって誘発される神経応答の強度は、神経動員の量を表すフィードバック変数として使用することができる。神経応答を表す信号は、動員された神経線維と電気的に通信している測定電極によって生成され、フィードバック変数を取得するために処理され得る。応答強度に基づいて、適用される刺激の強度を調整して、応答強度を治療範囲内に維持することができる。
【0007】
したがって、刺激によって誘発される神経応答の強度及び他の特性を正確に測定することが望ましい。刺激和による多数の線維の脱分極によって生成された活動電位は、誘発複合活動電位(ECAP)として知られる測定可能な信号を形成する。したがって、ECAPは、多数の単線維活動電位からの応答の合計である。同様の線維群の脱分極から生成されるECAPは、測定電極で、正のピーク電位、次いで負のピーク、続いて第2の正のピークとして測定され得る。この形態は、活動電位が個々の線維に沿って伝播するときに測定電極を通過する活性化領域によって引き起こされる。
【0008】
神経応答測定値を得るために提案されたアプローチは、本出願人によって国際公開第2012/155183号パンフレットに記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0009】
しかしながら、神経応答測定は、測定された応答における観察されたCAP信号成分が典型的にはマイクロボルトの範囲内の最大振幅を有するので、困難なタスクであり得る。対照的に、CAPを誘発するために加えられる刺激は、典型的には数ボルトであり、測定された応答においてその大きさのクロストークとして現れる。更に、刺激は、一般に、刺激の終了後に数ミリボルト程度の減衰出力として測定された応答に現れる電極アーチファクトをもたらす。CAP信号は刺激クロストーク及び/又は刺激アーチファクトと同時であり得るので、CAP測定は測定増幅器設計の困難な課題を提示する。例えば、5Vの刺激クロストークの存在下で1μVの分解能を有する10μVのCAPを分解するには、134dBのダイナミックレンジを有する増幅器が必要であり、埋め込み型装置では実用的ではない。実際には、回路の多くの理想的ではない側面はアーチファクトをもたらし、これらの側面はほとんどが正極性又は負極性の時間減衰アーチファクト波形をもたらすので、それらの識別及び除去は面倒であり得る。
【0010】
閉ループ神経刺激治療は、治療を実施するために値を割り当てなければならないいくつかのパラメータによって支配される。治療の有効性は、治療を受けている患者に対する割り当てられたパラメータ値の適合性に大きく依存する。患者はその生理学的特性が著しく異なるため、パラメータ値の割り当てへの「1つのサイズが全てに合う」アプローチは、大部分の患者に無効な治療をもたらす可能性が高い。したがって、神経調節装置が患者に埋め込まれると、重要な予備タスクは、装置がその特定の患者に送達する治療の有効性を最大にする治療パラメータに値を割り当てることである。このタスクは、装置のプログラミング又はフィッティングとして知られている。プログラミングは、一般に、装置を介して特定の試験刺激を適用し、応答を記録し、記録された応答に基づいて、患者の最も有効なパラメータ値を推測又は計算することを含む。結果として得られたパラメータ値は、その後の治療を管理するために装置にロードされ得る「プログラム」に形成される。記録された応答のいくつかは、試験刺激によって誘発された神経応答であってもよく、これは、患者から誘発された主観的応答と共に分析され得る客観的な情報源を提供する。効果的なプログラミングシステムでは、分析される応答が多いほど、最終的に割り当てられるパラメータ値はより効果的であるべきである。
【0011】
しかしながら、プログラミングは、不必要に長くなると、費用がかかり、時間がかかる可能性がある。したがって、治療パラメータの割り当てられた値を生成するために、適用される試験刺激の数、並びに記録及び分析される情報の量を最小限に抑える動機がある。特に、治療パラメータ探索空間のサイズは、治療パラメータの全ての可能な組み合わせを試験することが実際的ではないようなサイズである。
【0012】
更に、プログラミングワークフローは、一般に、患者の主観的な言語応答を解釈することによって患者とプログラミングシステムとの間を仲介する訓練された臨床医又はエンジニアによって実行される。しかしながら、この仲介は、特に患者が試験刺激中に感じている感覚を表現する能力を欠いている場合に問題となり得る。更に、患者の主観的応答は、明確に表現されていても、患者に対する装置の効果への信頼できるガイドであるとは限らない。これは、非効率的なプログラミングをもたらし、最悪の場合、治療パラメータに割り当てられた値が無効になる可能性がある。
【0013】
本明細書に含まれている文書、文献、資料、装置、記事などの任意の論述は、単に、本発明に関する文脈を与える目的のものにすぎない。任意の又は全てのこれらの事項が従来技術の基礎の一部を成すこと、又は本出願の各請求項の優先日の前に存在していた本発明に関係する分野の一般的な知識であることを認めているものとみなすべきではない。
【0014】
本明細書を通じて、語「備える」又はその語形変化は、指定される要素、整数、若しくはステップ、又は要素、整数、若しくはステップの群の包含を意味するが、任意の他の要素、整数、若しくはステップ、又は要素、整数、若しくはステップの群の除外は意味しないものと理解されたい。
【0015】
本明細書では、要素がオプションのリストの「少なくとも1つ」であり得るという記述は、要素がリストされたオプションのいずれか1つであり得るか、又はリストされたオプションの2つ以上の任意の組み合わせであり得ることを意味すると理解されるべきである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本明細書では、臨床医が特定の患者のために神経調節装置を効率的にプログラムするのを支援するように構成された、神経調節装置用の自動プログラミングシステムが開示される。特に、支援プログラミングシステムは、患者が制御装置と対話し続ける限り、神経刺激の強度を経時的に上昇させるように構成された刺激ユーザインタフェース制御を備える。患者が制御装置との対話を停止する刺激強度の値は、支援プログラミングワークフローの後続のステップが基づく有意な知覚マーカとして記録される。このユーザインタフェース設計は、人間の引込め反射を利用し、それにより、患者は、不快な刺激を受けたときに感覚的にボタンを解放する可能性が高い。したがって、設計は、支援プログラミングシステムを使用する際に患者に課される訓練負荷を最小限に抑える。
【0017】
本技術の第1の態様によれば、神経刺激システムであって、
-神経刺激を制御可能に送達するための神経刺激装置であって、神経刺激装置は、
-複数の埋め込み型電極と、
-複数の埋め込み型電極のうちの選択された電極を介して患者の神経経路に神経刺激を送達するように構成された刺激源と、
-刺激強度パラメータに従って各神経刺激を送達するように刺激源を制御するように構成された制御ユニットと、
を含む、神経刺激装置と、
-神経刺激装置と通信する外部コンピューティング装置であって、外部コンピューティング装置は、
-ディスプレイと、
-プロセッサであって、
-刺激強度パラメータを初期化し、
-刺激制御をディスプレイにレンダリングし、
-ユーザによる刺激制御の活性化を受信すると、刺激強度パラメータの値を上昇させる一方で、制御ユニットに、刺激強度パラメータのランプ値に従って、神経刺激を送達するために刺激源を制御するように命令し、
-刺激制御の非活性化を受信すると、刺激強度パラメータの値の上昇を停止する、
ように構成される、プロセッサと、
を含む、外部コンピューティング装置と、
を備える、神経刺激システムが提供される。
【0018】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、非活性化を受信すると、刺激強度パラメータの値を下降させる一方で、制御ユニットに、刺激強度パラメータの下降ランプ値に従って神経刺激を送達するように刺激源を制御するよう命令するように更に構成されてもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、非活性化を受信すると、刺激源に、神経刺激の送達を停止するよう命令するように更に構成されていてもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、非活性化を受信すると、刺激強度パラメータの値を選択された電極の不快感閾値として記録するように更に構成されていてもよい。プロセッサは、刺激強度パラメータの記録された値を使用して、神経刺激を患者に送達するように、神経刺激装置をプログラムするように更に構成されていてもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、刺激制御は、
-ユーザが刺激制御と対話すると活性化されるようになり、
-ユーザが刺激制御と対話し続ける限り、活性化されたままであり、
-ユーザが刺激制御との対話を停止するとすぐに非活性化されるように構成されていてもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、刺激制御をアニメーション化して、制御の活性化からの経過時間を示すように構成されていてもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、刺激強度が神経反応閾値に達したことを示すように刺激制御をアニメーション化するように構成されていてもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、神経刺激装置からの通信を受信してから第1のタイムアウト期間が満了すると、刺激強度パラメータの値の上昇を停止するように更に構成されていてもよい。プロセッサは、神経刺激装置から通信を受信することなく、第1のタイムアウト期間の満了から第2のタイムアウト期間が満了すると、刺激強度パラメータの値を下降させる一方で、制御ユニットに、刺激強度パラメータの下降ランプ値に従って、神経刺激を送達するために刺激源を制御するよう命令するように更に構成されていてもよい。
【0025】
本技術の第2の態様によれば、神経刺激装置と通信する外部コンピューティング装置を使用して、神経刺激を送達するように神経刺激装置を制御する自動化方法であって、方法は、
-外部コンピューティング装置のプロセッサによって、外部コンピューティング装置のディスプレイ上に刺激制御をレンダリングすることと、
-プロセッサによって、ユーザによる刺激制御の活性化を受信すると、刺激強度パラメータの値を上昇させる一方で、神経刺激装置に、複数の埋め込み型電極のうちの選択された電極を介して、刺激強度パラメータのランプ値に従って、神経刺激を送達するよう命令することと、
-プロセッサによって、刺激制御の非活性化を受信すると、刺激強度パラメータの値を上昇させることを停止させることと、
を含む、方法が提供される。
【0026】
いくつかの実施形態は、プロセッサによって、非活性化を受信すると、刺激強度パラメータの値を下降させる一方で、神経刺激装置に、選択された電極を介して、刺激強度パラメータの下降ランプ値に従って神経刺激を送達するよう命令することを更に含み得る。
【0027】
いくつかの実施形態は、プロセッサによって、刺激強度パラメータが所定の条件を満たすと、刺激強度パラメータの値をゼロに下降させる一方で、神経刺激装置に、選択された電極を介して、刺激強度パラメータの下降ランプ値に従って、神経刺激を送達するよう命令することを更に含み得る。いくつかの実施形態では、所定の条件は、ハードシーリングに達する刺激強度パラメータを含み得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、刺激強度パラメータの下降ランプ値は、所定の減少レートを有する線形プロファイルに従ってもよい。線形プロファイルのレートは、刺激強度パラメータが所定の間隔の後にゼロに達するように選択され得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、刺激強度パラメータの下降ランプ値は、ECAP閾値によってパラメータ化された閾値ランプに従ってもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、ランプは時間と共に線形であってもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、線形ランプのランプ率は予め決定されてもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、ランプは、ECAP閾値によってパラメータ化された閾値ランプであってもよい。
【0033】
いくつかの実施形態は、プロセッサによって、非活性化を受信すると、神経刺激装置に、神経刺激の送達を停止するよう命令することを更に含み得る。
【0034】
いくつかの実施形態は、非活性化を受信すると、刺激強度パラメータの値を、複数の埋め込み型電極の選択された電極の不快感閾値として記録することを更に含み得る。
【0035】
いくつかの実施形態は、プロセッサによって、複数の埋め込み型電極のうちの更に選択された電極のランプ及び命令並びに停止を繰り返すことを更に含み得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、刺激強度パラメータは、刺激電流パルスの振幅であり得る。
【0037】
いくつかの実施形態は、刺激制御をアニメーション化して、制御の活性化からの経過時間を示すことを更に含み得る。アニメーション化は、刺激強度が神経反応閾値に達したことを示してもよい。
【0038】
いくつかの実施形態は、神経刺激装置から通信を受信してから第1のタイムアウト期間が経過すると、刺激強度パラメータの値の上昇を停止することを更に含み得る。いくつかの実施形態は、神経刺激装置から通信を受信することなく、第1のタイムアウト期間の満了から第2のタイムアウト期間が満了すると、刺激強度パラメータの値を下降させる一方で、プロセッサによって、神経刺激装置に、刺激強度パラメータの下降ランプ値に従って、神経刺激を送達するよう命令してもよい。
【0039】
本明細書における推定、決定、比較などへの言及は、記載された推定、決定、及び/又は比較ステップを実行するのに適し予め定義された手順を実行するように動作するプロセッサによってデータに対して実行される自動化プロセスを指すと理解されるべきである。本明細書で開示される技術は、ハードウェア(例えば、デジタル信号プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を使用する)、又はソフトウェア(例えば、データ処理システムに本明細書に記載のステップを実行させるために、非一時的コンピュータ可読媒体に有形に記憶された命令を使用する)、又はハードウェアとソフトウェアの組み合わせで実装され得る。開示された技術は、コンピュータ可読媒体上のコンピュータ可読コードとして具現化することもできる。コンピュータ可読媒体は、その後にコンピュータシステムによって読み取ることができるデータを記憶することができる任意のデータ記憶装置を含むことができる。コンピュータ可読媒体の例は、読み出し専用メモリ(「ROM」)、ランダムアクセスメモリ(「RAM」、磁気テープ、光データ記憶装置、フラッシュ記憶装置、又は任意の他の適切な記憶装置を含む。コンピュータ可読媒体はまた、コンピュータ可読コードが分散して記憶及び/又は実行されるように、ネットワーク結合コンピュータシステム上に分散させることもできる。
【0040】
次に、本発明の1つ以上の実装形態を、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本技術の一実装形態による、埋め込み型脊髄刺激装置を概略的に示す図である。
図2図1の刺激装置のブロック図である。
図3図1の埋め込み型刺激装置と神経との対話を示す概略図である。
図4a】神経刺激を受けている患者の1つの姿勢に対する理想化された活性化プロットを示す図である。
図4b】患者の姿勢の変化に伴う活性化プロットの変化を示す図である。
図5】本技術の一実装形態による、閉ループ神経刺激システムの要素及び入力を示す概略図である。
図6】健常者の電気誘発複合活動電位(ECAP)の典型的な形態を示す図である。
図7】本技術の一実装形態による、図1の埋め込み型刺激装置を含む神経刺激治療システムのブロック図である。
図8】本技術の一実装形態による支援プログラミングアプリケーションによって実施される支援プログラミングワークフローを表すフローチャートである。
図9】本技術の一実装形態による6つの候補測定電極構成における記録電極及び基準電極の場所を示す図である。
図10】本技術の一実装形態による、図8のワークフローの患者制御刺激ランプ段階中のユーザインタフェースディスプレイの画面を示す図である。
図11a】本技術の一実装形態による、図8のワークフローの患者制御刺激ランプ段階中にAPM及び装置によって実行されるデータ収集及び分析方法を示すフローチャートである。
図11b】本技術の代替的な実装形態による、図8のワークフローの患者制御刺激ランプ段階中にAPM及び装置によって実行されるデータ収集及び分析方法を示すフローチャートである。
図12】本技術の一実装形態による、図8のワークフローのカバレッジ調査段階中のユーザインタフェースディスプレイの画面を示す図である。
図13】刺激電流振幅及びECAP振幅の値対のセットに対する当てはめられたロジスティック成長曲線モデルを、同じ値対に当てはめる区分的線形モデルと共に示す。
図14】本技術の一実装形態による閾値ランプを示す図である。
図15】本技術の一実装形態による、図8のワークフローのカバレッジ選択段階中のユーザインタフェースディスプレイの画面を示す図である。
図16】本技術の一実装形態による、図8のワークフローの測定最適化段階中のユーザインタフェースディスプレイの画面を示す図である。
図17】本技術の一実装形態による、図8のワークフローの測定最適化段階中にAPM及び装置によって実行されるデータ収集及び分析方法を示すフローチャートを含む。
図18a】本技術の一実装形態による刺激強度のランプ及び下降ランプを示す。
図18b】本技術の一実装形態による刺激強度のランプ及び下降ランプを示す。
図18c】本技術の一実装形態による刺激強度のランプ及び下降ランプを示す。
図18d】本技術の一実装形態による刺激強度のランプ及び下降ランプを示す。
図18e】本技術の一実装形態による刺激強度のランプ及び下降ランプを示す。
図18f】本技術の一実装形態による刺激強度のランプ及び下降ランプを示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、本技術の一実装形態による、患者108内の埋め込み型脊髄刺激装置100を概略的に示す図である。刺激装置100は、適切な場所に埋め込まれた電子機器モジュール110を備える。一実装形態では、刺激装置100は、患者の下腹部領域又は後上臀部領域に埋め込まれる。他の実装形態では、電子機器モジュール110は、わき腹又は鎖骨下部などの他の場所に埋め込まれる。刺激装置100は、硬膜外空間に埋め込まれ、適切なリード線によってモジュール110に接続された電極アレイ150を更に備える。電極アレイ150は、パドルリード上の電極パッド、リードの本体を取り囲む円形(例えば、リング)電極、適合可能な電極、カフ電極、セグメント化された電極、又は刺激及び測定のための単極、双極又は多極の電極構成を形成することができる任意の他の種類の電極などの、1つ以上の電極を含むことができる。電極は、組織自体に直接穿刺又は固定することができる。
【0043】
埋め込み型刺激装置100の動作の多くの態様は、臨床医又は患者108などのユーザによって動作可能であり得る、外部コンピューティング装置192によってプログラム可能であり得る。更に、埋め込み型刺激装置100は、データ収集の役割を果たし、収集されたデータは、経皮的通信チャネル190を介して外部装置192に通信される。通信チャネル190は、実質的に連続的に、周期的な間隔で、非周期的な間隔で、又は外部装置192からの要求に応じてアクティブであってもよい。したがって、外部装置192は、埋め込み型刺激装置100をプログラムし、埋め込み型刺激装置100に記憶されたデータを回復するように構成された臨床インタフェースを提供することができる。この構成は、臨床プログラミングアプリケーション(CPA)と総称され、臨床インタフェースの命令メモリに記憶されたプログラム命令によって達成される。
【0044】
図2は、刺激装置100のブロック図である。電子機器モジュール110は、バッテリ112及び遠隔測定モジュール114を含む。本技術の実装形態では、赤外線(IR)、高周波(RF)、容量性及び/又は誘導伝達などの任意の適切なタイプの経皮的通信チャネル190は、通信チャネル190を介して電子機器モジュール110との間で電力及び/又はデータを伝送するために遠隔測定モジュール114によって使用されてもよい。モジュール制御装置116は、臨床データ120、臨床設定121、制御プログラム122などのうちの1つ以上を記憶する関連付けられたメモリ118を有する。制御装置116は、臨床設定121及び制御プログラム122に従って、パルスの形態などの刺激を生成するようにパルス発生器124を制御する。電極選択モジュール126は、選択された電極を取り囲む組織にパルスを送達するために、生成されたパルスを電極アレイ150の選択された電極に切り替える。増幅器及び/又はアナログ-デジタル変換器(ADC)を含むことができる測定回路128は、電極選択モジュール126によって選択された電極アレイ150の測定電極で感知された神経応答を含む信号を処理するように構成される。
【0045】
図3は、埋め込み型刺激装置100と患者108の神経180との対話を示す概略図である。図3に示す実装形態では、神経180は脊髄に位置してもよいが、代替的な実装形態では、刺激装置100は、末梢神経、内臓神経、副交感神経又は脳構造を含む任意の所望の神経組織に隣接して配置されてもよい。電極選択モジュール126は、パルス発生器124から、神経180を含む周囲組織にパルスを送達するための電極アレイ150の刺激電極2を選択する。パルスは、1つ以上の位相を含むことができ、例えば、二相刺激パルス160は、2つの相を含む。電極選択モジュール126はまた、ゼロ正味電荷移動を維持するために、各相における刺激電流戻りのための電極アレイ150の戻り電極4を選択する。電極は、完全な多相刺激パルスにわたって刺激電極及び戻り電極の両方として作用することができる。このようにして各刺激位相で電流を送達及び戻すために2つの電極を使用することは、双極刺激と呼ばれる。代替実施形態は、他の形態の双極刺激を適用してもよく、又はより多数の刺激及び/又は戻り電極、例えば三極刺激用の3つの電極を使用してもよい。刺激電極及び戻り電極のセットは、刺激電極構成(SEC)と呼ばれる。電極選択モジュール126は、パルス発生器124のグランド130に接続して、戻り電極4を介して刺激電流を戻すことができるように示されている。しかしながら、他の実装形態では、電荷回収のための他の接続が使用されてもよい。
【0046】
電極2及び4から神経180への適切な刺激の送達は、伝導速度として知られるレートで示されるように神経180に沿って伝播する誘発複合活動電位(ECAP)を含む神経応答170を誘発する。ECAPは、慢性疼痛のための脊髄刺激装置の場合には所望の場所に知覚異常を生じさせることであり得る治療目的のために誘発され得る。この目的のために、電極2及び4は、治療上適切な任意の周波数、例えば30Hzで周期的に刺激を送達するために使用されるが、kHz範囲の周波数を含む他の周波数が使用されてもよい。代替的な実装形態では、刺激は、患者108に適したバーストなどの非周期的な方法で、又は散発的に送達されてもよい。刺激装置100を患者108にプログラムするために、臨床医は、刺激装置100に、ユーザが知覚異常として体感する感覚を生成しようとする様々な構成の刺激を送達させることができる。痛みの影響を受ける患者の身体の領域と一致する場所及びサイズで、知覚異常を誘発させる刺激電極構成(SEC)が見出された場合、臨床医は継続的な使用のためにその構成を指定する。治療パラメータは、臨床設定121として刺激装置100のメモリ118にロードすることができる。
【0047】
図6は、システムグランド130を基準とする単一の測定電極で記録される、健常者のECAP 600の典型的な形態を示す。図6に示すECAP 600の形状及び持続時間は、刺激に応答して活動電位(AP)を脱分極及び生成する線維の集合体によって生成されるイオン電流の結果であるため、予測可能である。多数の線維間で同期して発生した誘発活動電位(EAP)の合計がECAP 600を形成する。同様の線維群の同期脱分極から生成されたECAP 600は、正のピークP1、次いで負のピークN1、続いて第2の正のピークP2を含む。この位相は、活動電位が個々の線維に沿って伝播するときに測定電極を通過する活性化領域によって引き起こされる。
【0048】
ECAPは、図3に示すように、2つの測定電極を使用して別個に記録することができる。記録の極性に応じて、差動ECAPは、図6に示す形態とは逆の形態、すなわち、2つの負のピークN1及びN2と、1つの正のピークP1とを有する形態をとることができる。或いは、2つの測定電極間の距離に応じて、差動ECAPは、ECAP 600の時間微分、又はより一般的にはECAP 600とその時間遅延コピーとの間の差に類似し得る。
【0049】
ECAP 600は、その一部が図6に示されている任意の適切な特性によって特徴付けられてもよい。正のピークP1の振幅はApであり、時間Tpで発生する。正のピークP2の振幅はApであり、時間Tpで発生する。負のピークP1の振幅はAnであり、時間Tnで発生する。ピークツーピーク振幅はAp+Anである。記録されたECAPは、典型的には、マイクロボルトの範囲内の最大ピークツーピーク振幅及び2~3msの持続時間を有する。
【0050】
刺激装置100は、そのようなECAPが電極2及び4からの刺激によって誘発されるか、又は他の方法で誘発されるかにかかわらず、神経180に沿って伝播するECAP 170の強度を測定するように更に構成される。この目的のために、アレイ150の任意の電極を電極選択モジュール126によって選択して測定電極6及び測定基準電極8として機能させることができ、それによって電極選択モジュール126は選択された電極を測定回路128の入力に選択的に接続する。したがって、それぞれの刺激に続いて測定電極6及び8によって感知された信号は、図3に示すように、差動増幅器及びアナログ-デジタル変換器(ADC)を備えることができる測定回路128に渡される。測定回路128は、例えば、上述の国際公開第2012/155183号パンフレットの教示に従って動作することができる。
【0051】
測定電極6、8によって感知され、測定回路128によって処理された信号は、制御プログラム122によって構成された制御装置116内に実装されたECAP検出器によって更に処理されて、神経180に加えられた刺激の効果に関する情報を取得する。いくつかの実装形態では、感知された信号は、感知された信号に含まれる各誘発神経応答又は誘発神経応答のグループからの1つ以上の特性を測定及び記憶する方法で、ECAP検出器によって処理される。そのような一実装形態では、特性は、マイクロボルト(μV)単位のピークツーピークECAP振幅を含む。例えば、感知された信号は、本出願人による国際公開第2015/074121号パンフレットの教示に従ってピークツーピークECAP振幅を決定するためにECAP検出器によって処理されてもよく、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。ECAP検出器の代替的な実装形態は、神経応答から代替特性を測定及び記憶してもよく、又は神経応答から2つ以上の特性を測定及び記憶してもよい。
【0052】
刺激装置100は、数日、数週間、又は数ヶ月などの潜在的に長期間にわたって刺激を加え、この間に、神経応答の特性、刺激設定、知覚異常目標レベル、及び他の動作パラメータをメモリ118に記憶することができる。適切なSCS治療を行うために、刺激装置100は、1日に数時間、毎秒数十、数百、更には数千の刺激を送達することができる。各神経応答又は応答群は、神経応答の強度の尺度などの1つ以上の特性を生成する。したがって、刺激装置100は、数十Hz又は数百Hz、更にはkHzのレートでそのようなデータを生成することができ、数時間又は数日にわたって、このプロセスは、メモリ118に記憶することができる大量の臨床データ120をもたらす。しかしながら、メモリ118は必然的に容量が限られており、したがって、メモリ118への記憶のためのコンパクトなデータ形式を選択するために注意が必要であり、データが外部装置192によって無線で取得されると予想される時間の前にメモリ118が使い果たされないことを確実にし、これは1日に一回又は二回、又はそれ以下しか起こり得ない。
【0053】
活性化プロット又は成長曲線は、刺激強度(例えば、電流パルス160の振幅)と、刺激から生じる神経応答170の強度(例えば、ECAPピークツーピーク振幅)との間の関係の近似値である。図4aは、患者108の1つの姿勢に対する理想化された活性化プロット402を示す。活性化プロット402は、ECAP閾値と呼ばれる閾値404を超える刺激強度値に対するECAP振幅の線形増加を示す。ECAP閾値は、線維動員のバイナリ特性のために存在する。電界強度が低すぎる場合、線維は動員されない。しかしながら、電界強度が閾値を超えると、線維が動員され始め、それらの個々の誘発活動電位は電界の強度とは無関係である。したがって、ECAP閾値404は、かなりの数の線維が動員され始める電界強度を反映し、ECAP閾値を超える刺激強度による応答強度の増加は、動員される線維の数の増加を反映する。ECAP閾値404未満では、ECAP振幅はゼロであるとみなすことができる。ECAP閾値404を超えると、活性化プロット402は、刺激強度とECAP振幅との間の線形関係を示す正のほぼ一定の傾きを有する。そのような関係は、以下のようにモデル化することができる。
【数1】
ここで、sは刺激強度、yはECAP振幅、TはECAP閾値、Sは活性化プロットの傾き(本明細書では患者感度と呼ぶ)である。傾きS及びECAP閾値Tは、活性化プロット402の重要なパラメータである。ECAP閾値は、生理学的閾値の一例である。
【0054】
図4aはまた、不快感閾値408を示し、これは、患者108が不快又は痛みのある刺激を受ける刺激強度である。図4はまた、知覚閾値410を示す。知覚閾値410は、患者が知覚可能なECAP振幅に対応する刺激強度である。患者の姿勢を含む、知覚閾値410の位置に影響を及ぼし得るいくつかの要因がある。知覚閾値410は、患者108が低レベルの神経活性化を知覚しない場合、図4aに示すように、ECAP閾値404よりも大きい刺激強度であり得る。逆に、知覚閾値410は、患者がECAPで検出できるよりも低いレベルの神経活性化に対する高い知覚感度を有する場合、又はECAPの信号対ノイズ比が低い場合、ECAP閾値404未満の刺激強度であってもよい。不快感閾値408及び知覚閾値410は、患者108の知覚マーカの例である。
【0055】
刺激装置100などの埋め込み型神経調節装置の効果的且つ快適な動作のために、刺激強度を治療範囲内に維持することが望ましい。治療範囲412内の刺激強度は、ECAP閾値404を上回り、不快感閾値408を下回る。原則として、これらの限界を測定し、厳密に制御され得る刺激強度が常に治療範囲412内に入ることを確実にすることは容易であろう。しかしながら、活性化プロット、したがって治療範囲412は、患者108の姿勢によって変化する。
【0056】
図4bは、患者の姿勢の変化に伴う活性化プロットの変化を示す図である。患者の姿勢の変化は、電極-組織界面のインピーダンスの変化又は電極と神経細胞との間の距離の変化を引き起こす可能性がある。図4bには、502、504及び506の3つの姿勢のみの活性化プロットが示されているが、任意の所与の姿勢の活性化プロットは、姿勢に応じて連続的に変化するベースで、示されている活性化プロットの間又は外側にあり得る。その結果、患者の姿勢が変化するにつれて、ECAP閾値は、それぞれの活性化プロット502、504、506のECAP閾値508、510、512によって示されるように変化する。更に、患者の姿勢が変化するにつれて、活性化プロット502、504、506の変化する傾きによって示されるように、活性化プロットの傾きも変化する。一般に、刺激電極と脊髄との間の距離が増加するにつれて、ECAP閾値は増加し、活性化プロットの傾きは減少する。したがって、活性化プロット502、504、及び506は、刺激電極と脊髄との間の距離の増加、及び患者の感受性の減少に対応する。
【0057】
患者の姿勢が変化するときに適用される刺激強度を治療範囲内に維持するために、いくつかの実装形態では、刺激装置100などの埋め込み型神経調節装置は、1つ以上の測定されたECAP特性から決定されるフィードバック変数に基づいて、適用される刺激強度を調整することができる。一実装形態では、装置は、刺激強度を調整して、測定されたECAP振幅を目標応答強度に維持することができる。例えば、装置は、目標ECAP振幅と測定ECAP振幅との間の誤差を計算し、スケーリングされた誤差を現在の刺激強度に加えるなどして、適用される刺激強度を調整して誤差を可能な限り低減することができる。測定されたECAP特性に基づいて印加刺激強度を調整することによって動作する神経調節装置は、閉ループモードで動作していると言われ、閉ループ神経刺激(CLNS)装置とも呼ばれる。図4bに示すECAP目標520など、測定されたECAP振幅を適切な目標応答強度に維持するために適用される刺激強度を調整することにより、CLNS装置は一般に、患者の姿勢が変化するにつれて刺激強度を治療範囲内に維持する。
【0058】
CLNS装置は、刺激強度値を取得し、所定の刺激パターンに従って電気パルスのシーケンスを含む神経刺激に変換する刺激装置を備える。刺激パターンは、刺激振幅、パルス幅、位相の数、位相の順序、刺激電極の極数(2つは双極性、3つは三極性などである)、及び刺激レート又は周波数を含む複数の刺激パラメータによってパラメータ化される。刺激パラメータの少なくとも1つ、例えば刺激振幅は、フィードバックループによって制御される。
【0059】
例示的なCLNSシステムでは、ユーザ(例えば、患者又は臨床医)が目標応答強度を設定し、CLNS装置は比例積分微分(PID)制御を実行する。いくつかの実装形態では、差分寄与は無視され、CLNS装置は一次積分フィードバックループを使用する。刺激装置は、刺激強度パラメータに従って刺激を生成し、刺激は、患者の神経応答を誘発する。誘発神経応答(例えば、ECAP)の強度をCLNS装置によって測定し、目標応答強度と比較する。
【0060】
測定された神経応答強度、及び目標応答強度からのその偏差は、フィードバックループによって、神経応答を目標強度に維持するための刺激強度パラメータに対する可能な調整を決定するために使用される。目標強度が適切に選択される場合、患者は、姿勢変化及び刺激/応答挙動に対する他の摂動を通じて一貫して快適な治療の刺激を受ける。
【0061】
図5は、本技術の一実装形態による、閉ループ神経刺激システム(CLNS)300の要素及び入力を示す概略図である。システム300は、所定の刺激パラメータのセットに従って、刺激強度パラメータ(例えば、刺激電流振幅)を、刺激電極(図5には示されていない)上の一連の電気パルスを含む神経刺激に変換する刺激装置312を備える。一実装形態によれば、所定の刺激パラメータは、位相の数及び順序、刺激電極の極数、パルス幅、並びに刺激レート又は周波数を含む。
【0062】
発生した刺激は、電極から脊髄まで交差し、これは図5において破線のボックス308によって表されている。ボックス309は、上記のような刺激による神経応答yの誘発を表す。ボックス311は、刺激強度及び他の刺激パラメータ、並びに測定電極の電気的環境に依存するアーチファクト信号aの誘発を表す。誘発応答が測定される前に、50Hzの商用電源、装置によってではなく、末梢知覚入力、EEG、EMG、及び測定回路318からの電気ノイズなどの他の原因によって誘発される神経応答などの身体によって生成される電気的障害などの外部源からの電気的ノイズを含む、様々なノイズ源nが加算要素313で誘発応答yに追加され得る。
【0063】
刺激から生じる神経動員は、姿勢変化、歩行、呼吸、心拍などを含む機械的変化の影響を受ける。機械的変化は、インピーダンス変化、又は電極アレイに対する神経線維の場所及び向きの変化を引き起こし得る。上記のように、誘発応答の強度は、刺激されている線維の動員の尺度を提供する。一般に、刺激が強いほど、動員が多くなり、誘発応答が強くなる。誘起応答は、典型的には、マイクロボルトの範囲内の最大振幅を有するが、応答を誘発するために印加される刺激から生じる電圧は、典型的には数ボルトである。
【0064】
測定回路318は、測定回路128で識別することができ、感知された信号rを増幅し(誘発された神経応答、アーチファクト、及びノイズを含む)、増幅された感知された信号rをサンプリングして、増幅された感知された信号rの所定数のサンプルを含む「信号窓」を捕捉する。ECAP検出器320は、信号窓を処理し、測定された神経応答強度dを出力する。一実装形態では、神経応答強度はECAP振幅を含む。測定された応答強度dは、フィードバック制御装置310に入力される。フィードバック制御装置310は、測定された応答強度dを目標ECAP制御装置304によって設定された目標ECAP振幅と比較し、測定された応答強度dと目標ECAP振幅との差の指示を提供する比較器324を備える。この差が誤差値eである。
【0065】
フィードバック制御装置310は、測定された応答強度dを目標ECAP振幅に等しく維持する目的で、調整された刺激強度パラメータsを計算する。したがって、フィードバック制御装置310は、誤差値eを最小にするように刺激強度パラメータsを調整する。一実装形態では、制御装置310は、刺激強度パラメータsに適切な調整を提供するために、利得要素336及び積分器338を使用して一次積分関数を利用する。そのような実装形態によれば、現在の刺激強度パラメータsは、以下のようにフィードバック制御装置310によって計算することができる。
s=∫Kedt(2)
ここで、Kは利得要素336の利得(制御装置利得)である。この関係は、以下のように表すこともできる。
δs=Ke
ここで、δsは、現在の刺激強度パラメータsに対する調整である。
【0066】
目標ECAP振幅は、目標ECAP制御装置304を介して比較器324に入力される。一実施形態では、目標ECAP制御装置304は、特定の目標ECAP振幅の指示を提供する。別の実施形態では、目標ECAP制御装置304は、現在の目標ECAP振幅を増加又は減少させる指示を提供する。目標ECAP制御装置304は、神経刺激装置への入力を含んでもよく、これを介して患者又は臨床医は目標ECAP振幅又はその指示を入力できる。目標ECAP制御装置304は、目標ECAP振幅が記憶され、そこから目標ECAP振幅がフィードバック制御装置310に提供されるメモリを備えてもよい。
【0067】
臨床設定制御装置302は、利得要素336の利得K及び刺激装置312の刺激パラメータを含む治療パラメータをシステムに提供する。臨床設定制御装置302は、フィードバックループを患者の感受性に適合させるために利得要素336の利得Kを調整するように構成されてもよい。臨床設定制御装置302は、神経刺激装置への入力を含むことができ、それを介して患者又は臨床医は治療パラメータを調整することができる。臨床設定制御装置302は、治療パラメータが記憶され、システム300の構成要素に提供されるメモリを備えることができる。
【0068】
いくつかの実装形態では、2つのクロック(図示せず)が使用され、刺激周波数で動作する刺激クロック(例えば60Hz)と、測定された応答rをサンプリングするためのサンプルクロック(例えば、10kHzのサンプリング周波数で動作する)である。ECAP検出器320は線形であるため、刺激クロックのみがCLNSシステム300の力学に影響を及ぼす。刺激装置312は、次の刺激クロックサイクルにおいて、調整後の刺激強度sに応じた刺激を出力する。したがって、誤差値eに照らして刺激強度が更新される前に、1刺激クロックサイクルの遅延が存在する。
【0069】
図7は、神経刺激システム700のブロック図である。神経刺激システム700は、神経調節装置710を中心としている。一例では、神経調節装置710は、患者(図示せず)内に埋め込まれた図1の刺激装置100として実装されてもよい。神経調節装置710は、遠隔制御装置(RC)720に無線接続されている。遠隔制御装置720は、以下の機能、すなわち、刺激の有効化又は無効化、刺激強度又は目標応答強度の調整、神経調節装置710に記憶された制御プログラムからの刺激制御プログラムの選択、のうちの1つ以上を含む、神経調節装置710の機能の制御を可能にすることによって、在宅環境での刺激の制御を患者に提供するポータブルコンピューティング装置である。
【0070】
充電器750は、神経調節装置710の充電式電源を再充電するように構成される。充電は、図7では無線として示されているが、代替的な実装形態では有線であってもよい。
【0071】
神経調節装置710は、臨床システムトランシーバ(Clinical System Transceiver、CST)730に無線で接続される。無線接続は、図1の経皮的通信チャネル190として実施されてもよい。CST 730は、CST 730が接続されている神経調節装置710と臨床インタフェース(CI)740との間の媒介として機能する。有線接続が図7に示されているが、他の実装形態では、CST 730とCI 740との間の接続は無線である。
【0072】
CI 740は、図1の外部コンピューティング装置192として実装されてもよい。CI 740は、神経調節装置710をプログラムし、神経調節装置710に記憶されたデータを回復するように構成される。この構成は、臨床プログラミングアプリケーション(CPA)と総称され、CI 740の命令メモリに記憶されたプログラム命令によって達成される。
【0073】
CPAは、CI 740のユーザインタフェース(UI)を利用する。UIは、ユーザに情報を表示するための装置(例えば、ディスプレイ)と、タッチ画面、カーソル(マウス)を制御する可動ポインティング装置、キーボード、ジョイスティック、タッチパッド、トラックボールなどのユーザからの入力を受信するための装置とを備えることができる。タッチ画面の例では、入力装置はディスプレイと組み合わせることができる。或いは、入力装置のCI 740のUIは、ディスプレイとは別個であってもよい。
【0074】
支援プログラミングシステム
上述したように、閉ループ神経刺激治療のプログラミング中に患者の感覚に関する患者フィードバックを取得することは重要であるが、訓練された臨床エンジニアによる仲介は高価で時間がかかる。したがって、患者が自分自身の埋め込み型装置をプログラムすることができるか、又は臨床医からの何らかの支援によってプログラムすることができれば有利であろう。しかしながら、現在のプログラミングシステムのインタフェースは直感的ではなく、技術的性質のために患者による直接使用には一般に適していない。したがって、CPAは、患者への不快感を回避しながら、非技術的ユーザにとって可能な限り直感的である必要がある。
【0075】
本技術による支援プログラミングシステム(APS)の実装形態は、一般に、上記の必要性を満たすように構成される。いくつかの実装形態では、APSは、CPAの一部を形成する支援プログラミングモジュール(APM)と、電子機器モジュール110の制御装置116によって実行される制御プログラム122の一部を形成する支援プログラミングファームウェア(APF)との2つの要素を備える。患者から得られたデータは、主観的及び客観的の両方で、APMによって分析され、刺激装置100によって送達される神経刺激治療の臨床設定を決定する。APFは、特定の刺激を患者に送達するためにCST 730を介して刺激装置100にAPMによって発行されたコマンドに応答し、送達された刺激に対する神経応答の測定値をCST 730を介して返すことによって、APMの動作を補完するように構成される。
【0076】
APSは、CST 730を介して装置710に信号窓を捕捉してCI 740に返すように命令する。そのような実装形態では、装置710は、測定回路128を使用して信号窓を取り込み、ECAP検出器320をバイパスし、取り込まれた信号窓を表すデータを分析のためにAPSに送信する前に生信号窓を表すデータをメモリ118に一時的に記憶する。
【0077】
図8は、本技術の一実装形態による、高レベルでAPMによって実施される支援プログラミングワークフロー800を表すフローチャートである。支援プログラミングワークフロー800において、CI 740の制御は、ワークフロー全体についてAPMと対話するユーザ、例えば患者に渡される。いくつかの実装形態では、患者は、ワークフロー全体を通して固定された所定の姿勢のままである。刺激に対する主観的応答を臨床医を介して伝達する必要がないため、患者が直接関与することにより、より速いフィードバックが可能になる。しかしながら、ワークフロー800は、APMの可能な一実装形態にすぎず、支援プログラミングシステムの任意の部分が直接的な患者関与を含むことに対する正式な要件はないことに留意されたい。
【0078】
ワークフロー800は、いくつかの段階、すなわち、患者制御刺激ランプ(PCSR)段階810、(任意選択の)カバレッジ調査段階815、カバレッジ選択段階820、及び測定最適化(MO)段階830を有する。
【0079】
PCSR段階810は、徐々に増加する強度の刺激を送達し、1つ以上の候補刺激電極構成(SEC)の各々に対する刺激強度の最大値(「Max」値)に関する患者からの主観的入力を受けるように構成される。Max値は、図4aの不快感閾値408で識別することができる。一方、APMは、感知された信号を記録し、記録されたデータ、並びに患者のSECごとのMax値を分析して、各SECのECAP閾値を計算するように構成される。PCSR段階810については、以下でより詳細に説明する。
【0080】
カバレッジ調査段階815は、快適な刺激強度で各候補SECを介して送達される刺激に応答して、患者の感覚に関する入力を受信するように構成され得る。快適刺激強度は、PCSR段階810で導出された最大及び/又はECAP閾値に基づいて、各候補SECについて予測される。患者入力に基づいて、各SECにおける快適な刺激強度を調整することができる。更に、任意の候補SECを介して送達される刺激が身体の領域内の患者に不快感を与える場合、候補SEC自体を調整することができ、調整されたSECについてPCSR段階810が繰り返される。カバレッジ調査段階815については、以下でより詳細に説明する。
【0081】
カバレッジ選択段階820は、カバレッジ調査段階815によって行われた任意の調整後に、患者から入力を受信して候補SECのうちの1つ以上を選択するように構成される。各候補SECを介して送達される快適刺激強度は、PCSR段階810でそのSECについて導出され、場合によってはカバレッジ調査段階815で調整された快適刺激強度に基づく。患者は、保持するものを選択する前に、SECの様々な組み合わせを試験することができる。カバレッジ選択段階820については、以下でより詳細に説明する。
【0082】
測定最適化(MO)段階830は、選択されたSECの一次SECから徐々に増加する強度の刺激を送達し、一次SECについて複数の測定電極構成(MEC)の各々で感知された信号データを記録するように構成される。次いで、MO段階830は、応答データに基づいて一次SECに最適なMECを選択し、患者の生理学的特性を計算し、一次SEC/最適なMECの組み合わせに最適な治療パラメータを選択するように構成される。一次SEC、最適なMEC、及び最適な治療パラメータを含む選択されたSECは、決定されたプログラムと呼ばれる。測定最適化段階830については、以下でより詳細に説明する。
【0083】
ワークフロー800に続いて、成功した場合、APSは、決定されたプログラムを装置710にロードして、後続の神経刺激治療を管理することができる。一実装形態では、プログラムは、臨床設定制御装置302によって神経調節装置710に入力されるか、又は記憶される、治療パラメータとも呼ばれる臨床設定121を含む。その後、患者は、上述のように遠隔制御装置720を使用して、決定されたプログラムに従って治療を送達するように装置710を制御することができる。決定されたプログラムはまた、又は代替として、検証及び修正のためにCPAにロードされてもよい。決定されたプログラムの検証及び修正は、APS自体によって実行されてもよい。失敗した場合、装置710は手動でプログラムされてもよい。
【0084】
ワークフロー800において、APMは、ある特定の治療パラメータの所定の値を使用し得る。一実装形態では、これらのパラメータ及び値は以下の通りである:
・刺激周波数:40Hz
・パルス幅:240マイクロ秒
・相間ギャップ:200マイクロ秒
・パルス形状:三相性、陽極相が最初
・信号窓長:60サンプル
・サンプリング周波数:16kHz
・刺激間間隔:5ms
【0085】
ワークフロー800の一実装形態では、4つの候補刺激電極構成(SEC)が定義される。各SECは三極性であり、主にカソードとして作用する刺激電極を備え、刺激電流を下げ、刺激電極の両側の2つの隣接する戻り電極は主にアノードとして作用し、戻り電流を供給する。三極刺激電極構成は、本出願人による国際公開第2017/219096号パンフレットに更に詳細に記載されており、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0086】
いくつかの実装形態では、APMは、1つのリード線について図1に示すように、電極アレイ150が患者の正中線の左右に(患者の背後から見て)ほぼ対称的に埋め込まれた2つのリード線からなると仮定する。一実装形態では、各リードは12個の接点(電極)を備え、ゼロの接点インデックスがリードの最上部(吻側)の接点であり、接点インデックス11がリードの最下部(尾側)の接点であるように番号付けされる。4つの候補SECの各々の刺激電極は、左上(接点インデックス1、左リード)、右上(接点インデックス1、右リード)、左下(接点インデックス10、左リード)、及び右下(接点インデックス10、右リード)のように定義される。各リード線に異なる数の接点を有する他の実装形態では、左下及び右下刺激電極は、それぞれのリード線上の2番目に最も後方の接点であるように定義される。
【0087】
他の実装形態では、APMは、電極アレイ150のための他の構成を想定する。そのような構成の1つはパドルリードである。そのような実装形態では、4つの候補SECの各々の刺激電極は、パドルリード上の左上、右上、左下、及び右下の電極として定義され得る。
【0088】
各SECについて、APMは複数の測定電極構成(MEC)を定義する。図3に示すように、測定電極構成は、差動ECAP記録用の2つの電極を備える。測定回路318の正端子に接続された測定電極を記録電極と呼び、測定回路318の負端子に接続された測定電極を基準電極と呼ぶ。図9は、本技術の一実装形態による6つの候補MEC内の記録電極及び基準電極の場所を示す図である。各候補MECは、表900の一行において、12接点リードのグラフィカル表現910の下に表される。各行のRec及びRefとラベル付けされた電極は、対応するMEC内の記録電極及び基準電極である。S及びRとラベル付けされた電極は、リード線の一端に上述のように配置された三極SECの刺激電極及び戻り電極である。
【0089】
本技術の代替的な実装形態では、APMは、段階810から820以外の手段によって患者の選択されたSECを備える。そのような実装形態では、APMは、測定最適化段階830のみを含むワークフローを実装する。
【0090】
患者制御刺激ランプ段階
PCSR段階810の一実装形態では、APMは、図10に示すように、CI 740のUIディスプレイ上に画面1000をレンダリングする。画面1000は、刺激制御1010(仮想ボタンとして示されている)、命令1020、進捗バー1050、及び次の制御1040を備える。刺激制御1010は、一旦有効にされると、患者が例えば仮想ボタンを「押し続ける」ことによってそれと対話し続ける限り、活性化されたままであるように構成される。PCSR段階810の他の実装形態では、刺激制御1010及び/又は次の制御1040は、CI 740のUIの一部を形成するがディスプレイとは別個のままであるボタンなどのハードウェア制御である。
【0091】
刺激制御1010が有効になると、命令1020は、患者に、刺激制御1010を活性化させるように命令するように構成される。刺激制御1010が活性化されると、APMは、徐々に増加する又は「上昇する」強度で候補SECのうちの第1のものを介して刺激を送達するように装置710に命令する。刺激制御1010は、例えば図10に示すようなアニメーション化された「パイ」表示によって、制御の活性化からの経過時間を示すようにアニメーション化されてもよい。この例では、経過時間を表すセクタ1060は、刺激制御1010の残りの部分とは異なる方法で満たされる。刺激制御1010が活性化されている間、セクタ1060は、刺激制御1010全体を包含するまで経過時間に比例して広くなる。このアニメーションは、患者がすぐに刺激を感じない場合でも(刺激強度が知覚閾値を下回るため)、制御1010を活性化させると何かが起こっていることを患者に示す。アニメーションはまた、刺激強度の増加レートを患者に伝える。アニメーションはまた、臨床医又は他の熟練したユーザに刺激強度を示す。アニメーションはまた、命令1020を強化する。すなわち、患者が刺激を感じることができる前であっても、患者は、セクタ1060が制御1010を活性化させるときに増加し、制御1010を非活性化させるときに減少するのを見ることができる。
【0092】
いくつかの実装形態では、候補SECでの刺激制御1010の第1の活性化は、「プレランプ」(後述する)を開始する。プレランプは、後述するように、候補SECのECAP閾値Ithreshを推定するために使用される。そのような実装形態では、同じ候補SECでのプレランプ及び/又は後続の刺激ランプ中に、アニメーションは、刺激強度がECAP閾値に達したときを示すことができる。アニメーションは、例えば色を変えることによって、又はディスプレイ上にレンダリングすることによってこれを示すことができる。
【0093】
APMは、患者が刺激制御1010を活性化し続ける限り、刺激強度を上昇し続ける。刺激ランプの一実装形態では、強度の増加は、所定のランプ率で時間と共に線形である。所定のランプ率は、不快な刺激のリスクを最小限に抑えるために、400マイクロアンペア/秒に設定され得る。
【0094】
例えば仮想ボタンを解放することによって、患者が刺激制御1010を非活性化させると、APMは解放時の刺激強度を現在のSECのMax値として記録する。次いで、APMは刺激強度を低下させる。一実装形態では、強度の下降ランプは、所定の間隔、例えば3秒後に強度がゼロに達するように選択されたレートで線形プロファイルに従う。
【0095】
命令1020は、患者が快適である限り刺激制御1010を活性化し続け、刺激の強度が不快に感じ始めたときにのみ活性化を停止するように促す。このユーザインタフェース設計は、人間の引込め反射を利用し、それにより、患者は、不快な刺激を受けたときに感覚的にボタンを解放する可能性が高い。したがって、段階810の設計は、APMを使用する際に患者に課される訓練負荷を最小限に抑える。刺激強度がハードシーリング(例えば、一実装形態では36mAのパルス振幅)に達する前に患者が刺激制御1010の活性化を停止しない場合、APMは刺激ランプを停止し、下降ランプを開始する。刺激ランプを停止した時点での刺激強度は、そのSECに対する患者の不快感閾値(Max)値として記録される。
【0096】
進捗バー1050は、ワークフロー800を通じたおおよその定量的進捗を示す。一実装形態では、記入されている進捗バー1050の部分は、ワークフロー800に従って以前の患者の支援プログラミングから得られた、ワークフロー800を完了するのにかかる平均時間に対するワークフロー800の開始からの経過時間の現在の比率を表す。
【0097】
各刺激ランプの前及び間に、APMは、以下に記載されるようにデータを収集及び分析する。刺激ランプ(以下に定義)の成功に続いて、次の制御1040が有効にされる。次の制御1040の活性化時に、次の候補SECに対して新たな刺激ランプが実行される。このサイクルは、候補SECごとに1回発生する。全ての候補SECが刺激ランプに使用されると、次の制御1040の活性化は、ワークフロー800をカバレッジ選択段階820に移動させる。
【0098】
PCSR段階810内の各刺激ランプは、APMからランプコマンドを受信するとAPFによって実施される。ランプコマンドは、ランプ方向(上又は下)、ランプ率(単位時間当たりの強度の絶対変化)、及び終点強度を指定する。一実装形態では、ランプコマンドがAPFによって受信されると、制御装置116は上昇を開始し、患者が刺激制御1010を解放するか、APMからの停止コマンドによってAPFにシグナリングされるか、又は終点強度に達するまで上昇を継続する。終点に到達すると、APMは、刺激強度を下降するためのランプ下降コマンドをAPFに送信する。ランプの目的は患者のMax値を決定することであるため、終点強度は意図的に高く設定され、すなわち最高の予想Max値を上回る(一実装形態では36mAに等しい)。これは、何らかの理由でAPFとAPMとの間の通信が中断された場合、刺激制御1010の非活性化はAPFに伝達されないことを意味するので、この実装形態によれば、患者は、APFが刺激強度を再び低下させるまで不快なほど強い刺激を受ける可能性がある。
【0099】
別の実装形態では、制御装置116は、APFが第1のタイムアウト期間内にAPAから通信を受信しない場合、ランプを中断する。次いで、制御装置116は、第2のタイムアウト期間内にAPAからの通信が継続して存在しない場合に強度を下げるように下降することができる。この実装形態では、APFとAPMとの間の通信が中断された場合、患者は不快な刺激を受ける可能性が低い。
【0100】
図18a~18fは、本実装形態の動作を示す。図18aにおいて、刺激強度対時間のランプ1800は、星印1805によって示されるランプコマンドのAPFによる受信時に開始される。ランプ1800は、通信1810(図8において塗りつぶされていない星印によって示されている)がAPFによって受信され続ける限り継続する。(通信1810は、PCSRに関連するだけでなく、任意の目的のためのものであり得る)ランプ1800は、APFがAPMからバツ印1815によって示される休止コマンドを受信すると停止する。ランプ1800はまた、終点強度に達すると停止する(図示せず)。
【0101】
図18bのランプ1820は、通信が中断されたときに発生する。ランプコマンド及び通信1825が受信された後、第1のタイムアウト期間1830が経過し、それ以上の通信はAPFによって受信されない。一実装形態では、第1のタイムアウト期間は1秒である。したがって、ASPFはランプ1820を停止させる。停止してから第2のタイムアウト期間1835が満了した後、APFは、下降ランプ中に更なる通信、例えば通信1837が受信されるかどうかにかかわらず、強度をゼロに下降する。一実装形態では、第2のタイムアウト期間は0.5秒である。
【0102】
図18cのランプ1840は、図18bと同じ理由で早期に停止される。しかしながら、第2タイムアウト期間が満了する前に通信1845が受信されるため、下降ランプは行われない。
【0103】
図18dでは、ランプ1850は、第1のタイムアウト期間1855の満了に起因して早期に停止される。図18bのように、第2のタイムアウト期間1860の満了後、APFは、APMからの通信が存在しないかどうかにかかわらず、強度をゼロまで下げる。
【0104】
図18eは、APMから下降ランプコマンド1875を受信したときのAPFによる強度の下降ランプ1870を示す。下降ランプ1870は、更なる通信、例えば通信1880が下降ランプ1870の間に受信されるかどうかにかかわらず、強度がゼロになり続ける。
【0105】
図18fの下降ランプ1890は、下降ランプ1870と同様に、下降ランプ1890の間にAPMからの通信がないかどうかにかかわらず、ゼロ強度になり続ける。
【0106】
PCSR段階中のデータ分析
図11aは、APMの一実装形態による、PCSR段階810の間にAPM及び装置710によって実行されるデータ収集及び分析方法1100を示すフローチャートである。方法1100は、SECごとに刺激ランプごとに実行される。方法1100は、ステップ1110及び1115で開始する。ステップ1110、1115、及び1125は、APMが刺激制御1010を有効にする前、したがって任意の刺激が適用される前に行われる。ステップ1110は、各MECに対して活性化プロット(AP)ビルダをインスタンス化し、一方、ステップ1115は、各MECに対してノイズ逸脱検出器(NDD)をインスタンス化する。APビルダ及びNDDについては、以下でより詳細に説明する。
【0107】
ステップ1125において、APMは、各MECについて複数の「ゼロ電流」信号窓を捕捉するように装置710に命令する。一実装形態では、装置710は、測定回路128を使用して信号窓を単に取り込み、ECAP検出器320をバイパスし、生の信号窓を一時的にメモリ118に記憶してから、データをAPMに送信する。このデータが捕捉されてAPMに返されると、ステップ1125は、これらの「ゼロ電流」信号窓を処理して各NDDインスタンスを較正する。
【0108】
次いで、方法1100はステップ1120に進み、これにより、刺激制御1010は、上述したように患者が現在のSECに対して刺激ランプを開始することを可能にする。刺激ランプの間、APMは、刺激電流振幅sごとに各MECで信号窓を捕捉して戻すように装置710に命令する。各MECについて返された信号窓は、各信号窓から検出されたECAP振幅dを抽出する対応するAPビルダによって分析される。刺激制御1010が非活性化されると、依然としてステップ1120において、各APビルダは、ロジスティック成長曲線(LGC)と呼ばれるモデルを、各MECの(s,d)値対のセットに当てはめる。次いで、各APビルダは、ステップ1130において、当てはめられた各LGCの成長曲線品質インデックス(GCQI)を計算する。LGCモデルフィッティング及びAPビルダによるGCQIの計算は、以下でより詳細に説明される。
【0109】
次いで、ステップ1135は、最大のGCQIをもたらしたMECを選択する。次いで、ステップ1140は、選択されたMECに対応する当てはめられたLGCからECAP閾値を計算する。ステップ1140は、以下でより詳細に説明される。
【0110】
次いで、ステップ1145は、当てはめられたLGCが特定の包含基準を満たすかどうかを試験する。
・当てはめられたLGCは、所定数(s,d)を超える値対、例えば12個の値対に基づく。
・GCQIは、閾値、例えば10dBよりも大きい。
・LGCから計算されたECAP閾値は0より大きく、刺激ランプの終了時に現在のSECに対して記録されたMax値より小さい。
【0111】
包含基準のいずれかが満たされない場合(「N」)、当てはめられたLGCは無視され、ステップ1150におけるAPMは、刺激ランプの終わりに現在のSECについて記録されたMax値ImaxからECAP閾値Ithreshを予測する。一実装形態では、ステップ1150は、線形予測モデルを使用する。
thresh=m・Imax(3)
ここで、mは、過去の患者データから導出され得る相関パラメータである。一実装形態では、mは0.5~1.0の値をとる。別の実装形態では、mは、0.6~0.9の値をとる。一実装形態では、mは0.65~0.8の値をとる。ステップ1150は、知覚マーカ(不快感閾値、最大)からの生理学的閾値(ECAP閾値)の予測の一例である。次いで、APMは、予測されたECAP閾値を使用してステップ1155に進む。
【0112】
ステップ1145で試験した全ての包含基準が満たされた場合(「Y」)、APMは、当てはめられたLGCモデルからステップ1140で得られたECAP閾値を使用してステップ1155に進む。
【0113】
ステップ1155において、APMは、NDDを使用して、刺激強度の全範囲にわたってステップ1135で選択されたMECの検出率を計算する。一実装形態では、全範囲は、ECAP閾値の1.1倍とMax値との間の刺激強度を意味する。検出率は、NDDが50%を超えて戻る全範囲にわたる刺激強度値の割合である。ステップ1155は、選択されたMECの刺激ランプ中に返された信号窓を使用することができる。次に、ステップ1160は、検出率が異常であるかどうかを試験する。一実装形態では、異常検出率は、所定の割合、例えば20%未満の検出率を意味する。この試験の目的は、患者が早期に刺激制御1010を非活性化させたかどうかを識別することである。これは、患者がAPMに不慣れである場合、又は患者が制御を誤って非活性化させた場合に起こり得る。
【0114】
検出率が異常でない場合(「N」)、現在のSECは成功としてマークされ、方法1100はステップ1165で終了し、そこで次の制御1040が有効にされる。そうでない場合(「Y」)、ステップ1170は、最大繰り返し回数に達したかどうかを試験する。そうでない場合(「N」)、ステップ1175でAPMは繰り返し回数を増分し、現在の候補SECについて方法1100を再開する。そうである場合(「Y」)、現在のSECは失敗としてマークされ、方法1100はステップ1165で終了し、そこで次の制御1040が有効にされる。上述したように、次の制御1040の活性化は、次の候補SECについて方法1100を繰り返すか、又は全ての候補SECが試験された場合にPCSR段階810を終了する。
【0115】
PCSR段階810の結果は、成功とマークされた各候補SECについてのMax値及びECAP閾値である。
【0116】
PCSR段階810の他の実装形態では、
・刺激制御1010の活性化中の刺激ランプのプロファイルは、線形でなくてもよい。そのような一実装形態は「閾値ランプ」であり、閾値は、(ステップ1150からのように)予測された、又は(ステップ1140からのように)当てはめられたECAP閾値である。閾値ランプについては、以下で詳細に説明する。
・刺激制御1010の非活性化は、刺激強度を線形ではなく指数関数的に減少させることができる。これは、刺激の知覚が患者を始動させ、患者に刺激制御1010を意図せずに解放させるシナリオに対処する。そのような実装形態では、画面1000は、制御されたランプ内で刺激強度を完全にゼロに戻し、患者がMax値を「ロックイン」することを可能にする追加のユーザ制御を含むことができ、その結果、方法1100の繰り返しを処理することができる。別の実装形態では、閾値ランプが下降ランプに使用され、閾値は、(ステップ1150からのように)予測された、又は(ステップ1140からのように)当てはめられたECAP閾値である。閾値ランプについては、以下で詳細に説明する。
・刺激ランプ率は、患者がSECの間刺激ランプを繰り返す場合、刺激制御非活性化点に基づいて増加及び減少されてもよい。
・MECの探索空間は、図9に示すものから拡張されてもよい。
・「早期解放」及び「欠落ECAP」障害シナリオを区別し、それぞれに対して異なる応答を定義することができる。例えば、患者は、偶然にボタンを解放したかどうかを尋ねられ、方法1100は、そのシナリオで必要な回数だけ繰り返されてもよい。
・後期応答の検出などの1つ以上の除外基準をステップ1145で試験し、真であることが判明した場合、当てはめられたLGCを除外するために使用することができる。
・ステップ1170で試験される最大繰り返し回数は存在しなくてもよい。代わりに、ステップ1160における「Y」は、そのままステップ1175に進む。ステップ1155における計算が、候補SECに対して異常な検出率を繰り返しもたらす場合、方法1100が何回繰り返されても、次の制御1040は、その候補SECに対して有効化されない。そのような状況では、次の制御1040を押し続けると、候補SECが失敗としてマークされ、次の候補SECに対して方法1100を繰り返すか、全ての候補SECが試験された場合にPCSR段階810を終了する。
【0117】
図11bは、APMの一実装形態による、PCSR段階810の間にAPM及び装置710によって実行されるデータ収集及び分析方法1100aを示すフローチャートである。方法1100aは、SECごとに刺激ランプごとに実行される。方法1100aは、方法1100と同様であり、2つの方法で同じステップは同様のラベルを有し、したがって以下では説明しない。主な違いは、方法1100aの途中でMECがそのGCQIに基づいて選択されないことである。代わりに、各MECに対して全ての量が計算され、計算された量が特定の基準を満たすMECの数がカウントされる。カウントが1を超える場合、いくつかの他の基準と共に、次の制御が有効化される。したがって、例えば、ステップ1155aにおいて、ステップ1155におけるように、選択されたMECについてのみ検出率を計算する代わりに、候補MECのリスト内の現在のMECについて検出率が計算される。また、ステップ1130aにおいて、現在のMECのAPビルダは、ステップ1120で当てはめられたLGCの成長曲線品質インデックス(GCQI)を計算する。次いで、ステップ1145aは、当てはめられたLGCが特定の包含基準を満たすかどうかを試験する。ステップ1145の包含基準の目的は、LGCに当てはめられたパラメータが信頼できることを確認することである。包含基準は以下の通りである。
・GCQIは、閾値、例えば6dBよりも大きい。
・LGCから計算されたECAP閾値は、LGCのパラメータフィッティングが行われたECAP閾値の境界に近すぎない。
・LGCから算出される感度は正である。
・計算された感度の標準偏差は、閾値未満、例えば計算された感度の0.5倍である。
【0118】
当てはめられたLGCが包含基準を満たさない場合(ステップ1145aで「N」)、方法1100aは、ステップ1163で次の候補MECを取得し、ステップ1110及びステップ1115に戻る。
【0119】
当てはめられたLGCが包含基準を満たす場合(ステップ1145aで「Y」)、方法1100aは、ステップ1160aで、ステップ1160と同じ意味で、ステップ1155aで現在のMECについてNDDによって返された検出率が異常であるかどうかをチェックする。検出率が異常ではない(ステップ1160で「N」)か、又はGCQIが10dBより大きい場合、MECは「良好」とみなされてもよい。ステップ1162は、ステップ1163において「良好な」MECの数を増分し、方法1100aは、ステップ1163において次の候補MECを取得し、ステップ1110及びステップ1115に戻る。検出率が異常であり(ステップ1160で「Y」)、GCQIが10dB以下である場合、方法1100aはステップ1163に直接進む。
【0120】
全ての候補MECがステップ1163によって使い果たされると、ステップ1168は、「良好な」MECの数が1よりも大きいかどうか、及びMax値が閾値、例えば1mAよりも大きいかどうかを試験する。そうである場合(「Y」)、方法1100aは、ステップ1165において次の制御を有効にすることによって終了する。そうでない場合(「N」)、ステップ1180は、ユーザが方法1100aを終了するために次の制御を「長押しする」(所定の間隔の間押下する)のを待つ。方法1100aがこのように終了する場合、現在の候補SECは失敗としてマークされ、ワークフロー800にそれ以上関与しないことを意味する。
【0121】
カバレッジ調査段階
カバレッジ調査段階815の一実装形態では、APMは、図12に示すように、CI 740のUIディスプレイ上に画面1200をレンダリングする。画面1200は、刺激制御1210と、命令1220と、オプション1230と、次の制御1240と、進捗バー1250とを備える。カバレッジ調査段階815の他の実装形態では、刺激制御1210及び/又は次の制御1240は、CI 740のUIの一部を形成するがディスプレイとは別個のままであるボタンなどのハードウェア制御である。
【0122】
画面1200は、PCSR段階810からの成功した各候補SECについて少なくとも一度レンダリングされ、そのSECのカバレッジ調査を実施する。刺激制御1210は、ユーザによる活性化時に現在の候補SECを介して刺激のオン/オフを切り替えるタイルの形態である。カバレッジ調査段階815の一実装形態では、刺激は、PCSR段階810で推定されるように、現在の候補SECに対して快適な刺激強度への閾値ランプ及び現在の候補SECからの閾値勾配によって現在の候補SECでオン及びオフになる。閾値ランプの閾値は、PCSR段階810で推定される現在の候補SECのECAP閾値である。閾値ランプについては後述する。
【0123】
各候補SECの初期快適刺激強度は、PCSR段階810で候補SECについて推定されたMax値Imax及びECAP閾値Ithreshから、その候補SECのカバレッジ調査の開始時に予測することができる。一実装形態では、快適刺激強度Icomfは、候補SECについてのIthreshとImaxとの間の間隔の固定割合として計算することができる。
comf=Ithresh+k(Imax-Ithresh)(4)
ここで、kは0~1の所定の定数である。この予測は、生理学的閾値(ECAP閾値)からの知覚マーカ(快適刺激強度)の予測の一例である。
【0124】
代替的な実装形態では、ECAP閾値Ithreshは、「プレランプ」(後述)を使用してPCSR段階810で候補SECについて推定される。快適刺激強度Icomfは、式(3)の線形モデルを反転して、Max値Imaxの代わりに式(4)に代入することによって、Ithreshから直接計算することができる。そのような実装形態では、Max値Imaxは、PCSR段階中に決定される必要はない。
【0125】
命令1220は、刺激制御1210を活性化し、ユーザの感覚に関するフィードバックを提供するためにオプション1230のうちの1つ以上を選択するようにユーザに命令する。各オプション1230は、円形制御の隣のテキスト行に対応する。次いで、APMは、患者がオプション1230のうちの1つ以上を選択し、次の制御1240を活性化するのを待つ。刺激が試験され、少なくとも1つのオプションが選択されるまで、次の制御1240は無効にされる。オプションは、そのテキストの隣の制御を活性化することによって選択又は選択解除することができる。
【0126】
いくつかの実装形態では、各候補SECについて、オプション1230は、ユーザがそのSECに対応する刺激制御を活性化するまで表示されない。
【0127】
画面1200の下部にある進捗バー1250は、進捗バー1050と同様に、ワークフロー800全体のおおよその定量的な進捗を示す。
【0128】
次の制御1240が活性化されると、APMは、表1に従って選択された「緩和」を用いて現在の候補SECに対して選択されたオプションに応答する。表1の列の「1」はその列に対応するオプションの選択を表し、「0」は非選択を表し、「X」はオプションが選択されたか否かを意味する(オプションの選択は選択された緩和に影響しない)。
【0129】
【表1】
【0130】
快適な刺激強度を増加及び減少させる緩和は、一実装形態では0.05×(Imax-Ithresh)に等しい少量だけ緩和する。しかしながら、緩和の減少及び増加は、快適な刺激強度を[Imax、Ithresh]として定義される治療範囲外に移動させることを許容されない。快適な刺激強度がこれらの緩和策に従って調整される場合、次いで、調整された快適な刺激強度についてカバレッジ調査段階815を繰り返すことができる。
【0131】
現在の候補SECを移動させるための緩和は、リードの中央に向かって1つの電極によって行われる。現在の候補SECがこの緩和策に従って移動される場合、(上述した)PCSRが移転された候補SECに対して繰り返されてもよい。次いで、移転された候補SECについてカバレッジ調査段階815が繰り返される。
【0132】
いくつかの実装形態では、各候補SECについて、「弱すぎる」及び/又は「良いと感じる」オプションは、刺激強度が快適な刺激強度に上昇するのに十分に長い間、制御1210が活性化されるまで有効にされない。これにより、患者が不完全な情報でカバレッジ調査に応答することが防止される。
【0133】
候補SECに対してカバレッジ調査が繰り返される場合、APMは、表2に従って選択された緩和策でその候補SECの選択に応答する。表1のように、表2の列の「1」はその列に対応するオプションの選択を表し、「0」は非選択を表し、「X」はオプションが選択されたか否かを意味する(オプションの選択は選択された緩和に影響しない)。
【0134】
【表2】
【0135】
ワークフロー800のいくつかの実装形態では、PCSRは、移転されたSECでPCSRを繰り返し受けなければならない患者の負担を軽減するために、任意の候補SECに対して一度だけ繰り返されてもよい(すなわち、2回反復される)。
【0136】
その候補SECについてのカバレッジ調査の第2の繰り返しにおいて、患者がその候補SECについての特定の領域において依然として不快感がある場合、その候補SECについての快適刺激強度は(表2の最終行に従って)減少する。代替的な実装形態では、その候補SECは失敗としてマークされる。その候補SECについては、カバレッジ調査は繰り返さない。
【0137】
カバレッジ調査段階815は、成功した候補SECのセット及びそれらのそれぞれの概念的快適刺激強度で終了する。カバレッジ調査段階815の第2の繰り返し後に患者が候補SECに対して特定の領域で依然として不快感がある場合、患者はカバレッジ選択段階820中にその候補SECを破棄する機会を得る。
【0138】
ノイズ逸脱検出器(NDD)
NDDは、信号窓内のECAPの存在の統計的検出器である。信号窓に対するNDDの動作には、好ましくは、信号窓からアーチファクトを除去する「アーチファクトスクラバ」が先行する。そのようなアーチファクトスクラバの1つは、国際公開第2020/124135号パンフレットに開示されており、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。NDDは、信号窓内に存在する予想ノイズとの統計的に異常な差を検出することによって機能し、この差は信号窓内のECAPの存在に起因する。
【0139】
例えば方法1100のステップ1125の間に行われる、MECに対応するNDDインスタンスの較正は、誘発された神経応答を含まないことが知られている、そのMECを介して捕捉された1つ以上の信号窓に対して実行されてもよい。一実装形態では、そのような信号窓は、刺激が印加されていない間隔から捕捉される「ゼロ電流」信号窓であり、アーチファクトのためにスクラブされていることが好ましく、したがってノイズのみを含むものとして扱うことができる。較正は、1つ以上の「ゼロ電流」信号窓内のサンプルから所定の「ノイズモデル」(統計的分散)のパラメータの推定値を形成することを含む。一実装形態では、ノイズモデルはガウス分布であり、パラメータはサンプルの平均
【数2】
及び標準偏差
【数3】
である。
【0140】
較正されると、信号窓内の外れ値の数
【数4】
、すなわちノイズモデルから著しく逸脱する信号窓内のサンプルの数をカウントすることによって、(方法1100のステップ1155のように)NDDインスタンスを信号窓に適用することができる。ガウスノイズモデルの場合、NDDは、平均推定値
【数5】
と標準偏差推定値
【数6】
のn倍を超えて異なるサンプルの数
【数7】
をカウントし、nは小さい整数である。外れ値の数
【数8】
は、信号窓が平均
【数9】
及び標準偏差
【数10】
を有するノイズのみからなる場合に発生すると予想されるサンプルの数kと比較される。
【数11】
とkとの差を信号窓内のサンプル数Nで除算して、ノイズモデルに従う信号窓内の外れ値の予想される比に対する信号窓内に存在する外れ値の比を定量化するメトリックrを得る。
【0141】
ガウスノイズモデルの場合、NDDはメトリックrを以下のように推定することができることが示され得る。
【数12】
ここで、Φは標準正規累積分布関数である。
【0142】
メトリックrの負又はゼロの値は、ノイズモデルと一致する信号窓を示し、rの正の値は、ノイズモデルからの逸脱を示す。そのような逸脱は、信号窓内のECAPの存在に起因すると考えられる。
【0143】
NDDの一実装形態では、nは3に設定される。nの値が小さいほど、NDDがより敏感になり、ノイズからの逸脱がより容易になり、タイプIエラー(偽陽性)のレートが増加することを示す。逆に、nの高い値は、rがノイズ逸脱を示す前に大きな外れ値を必要とし、タイプIIエラー(偽陰性)のレートを増加させる。
【0144】
NDDの一実装形態では、シグモイド関数を生メトリックrに適用して、メトリックrを間隔[0,1]内の品質インジケータQNDDにマッピングすることができる。
【数13】
ここで、γは、タイプI及びタイプII誤差をバランスさせるパラメータである。品質インジケータQNDDは自然な解釈を有し、QNDD<0.5はr≦0に対応し、信号窓がノイズである可能性が最も高いことを示す。逆に、QNDD>0.5は、ECAPを表すと考えられるノイズモデルからの逸脱を示す。一実装形態では、γは50に設定される。
【0145】
一実装形態では、NDDは、信号対ノイズ比を改善するためにそれらが一緒に平均化された後に複数の信号窓に適用され得る。そのような一実装形態では、平均化された信号窓の数は8である。そのような実装形態では、ノイズモデルのパラメータは、平均化される信号窓の数に応じて調整することができる。ガウスノイズモデルでは、標準偏差
【数14】
は、平均化された信号窓の数の平方根で除算されるべきである。
【0146】
NDDは、ECAP閾値を推定するために使用され得る。そのような一実装形態では、ECAP閾値は、NDDが50%(0.5)の品質インジケータを返す、すなわちNDDが処理された信号窓の50%でECAPを検出する刺激強度である。一実装形態では、ECAP閾値は、品質インジケータQNDDを監視しながら、刺激強度のランプ中に位置することができる。品質インジケータQNDDが一貫して50%を超えるとすぐに、ECAP閾値に到達した。
【0147】
ECAP閾値を推定するためのNDDのこの使用は、ステップ1150の代替的な実装形態で採用されてもよい。
【0148】
NDDのこの使用は、PCSR段階810の代替的な実装形態でも採用され得る。そのような代替的な実装形態では、刺激制御1010が活性化されている間の刺激強度のランプ率は予め決定されておらず、「プレランプ」の結果から計算される。刺激制御1010が活性化されたときに始まるプレランプの間、NDDは、上述のようにECAP閾値を推定するために使用される。プレランプは、刺激強度をゼロまで減少させることによって終了する。その後、Maxの値は、プレランプ中に推定されたECAP閾値から予測される。生理学的閾値からの知覚マーカの予測の一例であるこの予測ステップは、式(3)の線形モデルを反転することによって実施することができる。その後、患者制御刺激ランプが所定時間後にMaxの予測値に達するようにランプ率が計算される。次いで、計算されたランプ率は、刺激制御1010の次の活性化時に上述のように行われる患者制御刺激ランプに使用される。
【0149】
APビルダ
上述したように、APビルダは、例えば方法1100のステップ1120で使用されるように、ロジスティック成長曲線(LGC)と呼ばれるモデルを(s,d)値対のセットに当てはめ、ここでdは信号窓からの測定されたECAP振幅であり、sは対応する刺激電流振幅である。APビルダはまた、例えば、方法1100のステップ1130において、当てはめられたLGCの成長曲線品質インデックス(GCQI)を計算することができる。
【0150】
APビルダの重要な部分は、信号窓からECAP振幅dを返すECAP検出器である。一実装形態では、上述の国際公開第2020/124135号パンフレットに記載されているECAP検出器は、信号窓内のECAPの振幅dを測定するためにAPビルダによって使用され得る。或いは、上述の国際公開第2015/074121号パンフレットに記載されているECAP検出器をAPビルダが使用して、信号窓内のECAPの振幅dを測定してもよい。どちらの場合も、ECAP検出器は、その相関遅延と、その長さ(又は同等にその周波数)の2つのパラメータを有する。ECAP検出器の他の実装形態は、他の調整可能なパラメータを有してもよい。これらのパラメータの最適値は、信号窓を生じさせたSEC及びMECに依存し、したがって、APビルダの各インスタンス、例えば方法1100のステップ1110でインスタンス化された6つのインスタンスに対して調整されるべきである。一実装形態では、APビルダは、刺激電流振幅sの最大値に対応する10個の信号窓を平均することによって得られた平均信号窓上で、ECAP検出器パラメータを調整することができる。一実装形態では、上述のNDDは、平均信号窓に組み込む前に各信号窓に最初に適用されてもよい。NDDが、信号窓が神経応答を含まなかったことを示す場合、信号窓は破棄される。
【0151】
ECAP検出器は、相関行列を形成するために、相関遅延及び長さの実現可能な値ごとに平均信号窓に適用される。ECAP検出器のパラメータを調整する一例では、相関行列内の測定されたECAP振幅を最大にする相関遅延及び長さの値が、APビルダのそのインスタンスに最適であるとして選択される。刺激ランプの間、刺激電流が増加するにつれて、APビルダは、最新の平均信号窓を使用して相関遅延及び長さの最適値を動的に更新することができる。APビルダは、現在の最適値を使用して、現在の刺激ランプの開始以降に捕捉された全ての信号窓のECAP振幅を遡及的に再計算することができる。
【0152】
ECAP検出器が調整され、(s,d)値対のセットが得られると、APビルダは、(s,d)値対のセットにLGCモデル(シグモイド関数とも呼ばれる)を当てはめることに進む。一実装形態では、LGCモデルは4パラメータ関数である。
【数15】
ここで、4つのパラメータは、
・A、最小値(刺激がない場合の検出されたECAP振幅)
・K、最大値(飽和が起こる検出されたECAP振幅、すなわち刺激強度の増加は、検出されたECAP振幅を増加させない)
・M、AとKとの中間点における電流振幅
・Bは、LGCの急峻度であり、これは、AとKとの間の中間点における勾配に比例する。
【0153】
他の実装形態では、より少ないパラメータ、例えば最小値Aが同一にゼロであるLGCモデルが、LGCモデルに使用されてもよい。更に他の実装形態では、他のパラメータ化された関数が、APビルダによって(s,d)値対のセットに当てはめられ得る。
【0154】
LGCに当てはめるために、パラメータA、K、M、及びBは、感知可能な開始点A、K、M、及びBに初期化され得る。一実装形態では、これらの値は以下のように設定され得る:
・A:最低のいくつかの刺激電流振幅から得られたECAP振幅の平均。
・K:最大のいくつかの刺激電流振幅から得られたECAP振幅の平均。
・M:AとKの中間点における刺激電流振幅
・B:中間点の勾配mから計算することができ、中間点の近くで取得された値対の局所線形回帰から得られ、B=m*4/(K-A)である。
【0155】
次いで、信頼領域反射(TRF)などの最適化アルゴリズムを使用して、4つのパラメータA、K、M、及びBをそれらの開始点A、K、M、及びBから最適化することができる。
【0156】
図13は、同じデータに当てはめられた区分的線形モデル1320と並んで、(s,d)値対のセットに当てはまるLGCモデル1310を示す。低刺激電流振幅及び高刺激電流振幅の両方におけるデータに対するLGCモデルの優れたフィッティングは明らかである。
【0157】
APビルダはまた、例えば、方法1100のステップ1130において、当てはめられたLGCモデルの成長曲線品質インデックス(GCQI)を計算することができる。GCQIは、当てはめられたLGCの信号対ノイズ比(SNR)を示す。一実装形態では、APビルダは、当てはめられたLGCのピークツーピーク振幅(例えば、図13において矢印1330によって示されるように)を、当てはめられたLGCの残りの標準偏差で割ることによって、GCQIを計算し得る。
【0158】
当てはめられたLGCは、方法1100のステップ1140又は方法1700のステップ1740(後述)のように、ECAP閾値Ithreshを推定するために使用されてもよい。一実装形態では、傾きBを有する当てはめられたLGCの中間点Mを通る線が構築される。ECAP閾値Ithreshは、構築された線が最小値Aと交差する刺激電流振幅sとして推定されてもよい。結果として得られるECAP閾値Ithreshは、以下によって与えられることが示されてもよい。
【数16】
【0159】
方法1700のステップ1740のように、当てはめられたLGCを使用して患者の感受性を推定することができる。一実装形態では、患者感度Sは、その中間点Mにおける当てはめられたLGCの傾きであり、これは、急峻度Bから以下のように計算することができる。
【数17】
【0160】
当てはめられたLGCは、生理学的閾値からの知覚マーカ(不快感閾値、最大)の予測の別の例において、不快感閾値Maxを推定するために使用され得る。この例では、生理学的閾値は、LGCモデルが飽和する刺激電流振幅、すなわち飽和閾値である。一実装形態では、d(s)がA+U(K-A)に達したときに飽和が生じたと言うことができ、ここでUは1未満である。飽和閾値の対応する値ssatは、以下のように計算することができる。
【数18】
【0161】
次いで、不快感閾値Maxを、線形予測モデルによって飽和閾値から推定することができる。
【0162】
閾値ランプ
閾値ランプは、所定の閾値を上回る刺激強度値を横切るよりも速いレートで所定の閾値を下回る刺激強度値を横切る、上昇又は下降のいずれかの刺激強度のランプである。
【0163】
刺激強度を上昇させるとき、急峻ではなく緩やかに感じることが患者にとって好ましい。しかしながら、一般に、患者に反応すると感じるユーザインタフェースを生成することも望ましい。例えば、PCSR段階810の間、患者は刺激制御1010を非活性化させ、刺激をオフにすることができる。不快な刺激に応答してそのように行う場合、ユーザインタフェースの応答性が重要である。患者は、不快感を生じさせることなく刺激が急速に下降する場合、快適性の限界で実験することをより好むであろう。
【0164】
ECAP閾値未満の刺激強度は、一般に患者が知覚できない。したがって、サブECAP閾値強度を介して上昇しても患者の漸進性の感覚は改善されず、実際には、不必要な時間をとることによって患者の応答性の感覚を損なう可能性がある。したがって、閾値ランプは、上り方向又は下り方向のいずれかでほとんどのサブECAP閾値刺激強度をスキップすることができる。
【0165】
図14は本技術の一実装形態による閾値ランプを示す図である。プロファイル1400は、目標電流振幅1410までの閾値上昇による刺激電流振幅の時間経過を表す。点線のプロファイル1420は、ゼロから目標電流振幅1410までの従来の線形ランプによる刺激電流振幅の時間経過を表す。瞬間1430は、例えば刺激制御1010の活性化によってランプが開始された時間(t=0)を表す。間隔1440は、目標電流振幅1410に達するために従来の線形ランプによって、例えば3秒かかったであろう所定の時間を表す。従来の線形ランププロファイル1420のランプ率は、刺激強度が間隔1440の終わりに目標電流振幅1410に達するように計算される。対照的に、閾値ランプは、閾値電流振幅1460に対して比較的急速に(例えば、垂直)ステップする。次いで、間隔1450の間、閾値ランプは、従来の線形ランプと同じレートで刺激電流振幅を線形に増加させる。したがって、間隔1450の長さ、すなわち総ランプ時間は、間隔1440の所定の時間よりも大幅に短い。したがって、閾値ランプは、患者に対してより応答性があるように見える。更に、閾値電流振幅1460がECAP閾値をわずかに下回るように設定されている場合、患者は閾値電流振幅1460を下回る刺激電流振幅を知覚することができないため、閾値ランプは従来の線形ランプよりも急激には見えない。
【0166】
一実装形態では、閾値電流振幅1460は、ECAP閾値を0.9倍にスケーリングすることによって取得されてもよい。このスケーリング係数は、より速い全体的なランプ時間を有することと、知覚可能な電流振幅に対するステップの可能性を低く保つこととの間のバランスを提供する。
【0167】
一実装形態による閾値下降ランプは、図14に示す閾値ランプのプロファイル1400の時間反転バージョンである。言い換えれば、開始電流振幅からの閾値下降ランプは、所定の間隔1440にわたって従来の線形下降ランプと同等のレートで電流振幅を線形に減少させる。刺激電流振幅が閾値電流振幅1460に達すると、刺激電流振幅は比較的急速に(例えば、垂直)ゼロにステップする。
【0168】
閾値ランプの他の実装形態では、刺激電流振幅のプロファイルは、図14のように区分的に線形ではない。代わりに、刺激強度の代替プロファイルを使用してもよい。代替プロファイルはまた、閾値によってパラメータ化される。そのような一実装形態では、プロファイルは、ゼロから、閾値から計算される中間点まで滑らかに指数関数的に上昇し、刺激電流振幅が目標電流振幅に近づくにつれて減速する上記のようなシグモイド関数に従う。別のそのような実装形態は、閾値を下回る指数プロファイルと、それに続く閾値を上回る線形プロファイルである。線形プロファイルのランプ率は、指数プロファイルの平均ランプ率よりも小さくなるように選択される。
【0169】
いくつかの実装形態では、患者制御刺激ランプ段階810に関連して上述したように、APFが第1のタイムアウト期間内にAPAから通信を受信しない場合、閾値ランプを中断することができる。次いで、制御装置116は、第2のタイムアウト期間内にAPAからの通信が継続して存在しない場合に強度を下げるように下降することができる。閾値ランプのそのような実装形態の例示的なプロファイルが図18a~図18cに示されている。そのような実装形態では、APFとAPMとの間の通信が中断された場合、患者は不快な刺激を受ける可能性が低い。
【0170】
カバレッジ選択段階
上述したように、カバレッジ選択段階820は、患者から入力を受信して、その候補SECの最大閾値及びECAP閾値に基づいて、カバレッジ調査段階815から成功した候補SECのうちの1つ以上を選択するように構成される。患者は、保持するものを選択する前に、候補SECの様々な組み合わせを試験することができる。
【0171】
カバレッジ選択段階820の一実装形態では、APMは、図15に示すように、CI 740のUIディスプレイ上に画面1500をレンダリングする。画面1500は、最大4つのトグルタイル、例えば1510a、1510b、及び1510c、最大4つのトグルスイッチ、例えば1520b及び1520c、次の制御1540、進捗バー1550、及び全て無効化制御1560を含む制御を備える。
【0172】
トグルスイッチ1520b及び1520cは、それぞれのトグルタイル1510b及び1510cに関連付けられている。しかしながら、図15では、トグルタイル1510aにはトグルスイッチが関連付けられていない。これは、タイルに対応するスイッチは、タイルが一度活性化されるまでレンダリングされないためである。図15に示すカバレッジ選択段階830の状態では、タイル1510aはまだ活性化されていないので、タイル1510aにはスイッチが関連付けられていない。しかしながら、タイル1510b及び1510cは活性化されているので、タイル1510b及び1510cは関連するスイッチ1520b及び1520cを有する。
【0173】
カバレッジ選択段階820の他の実装形態では、制御のうちの1つ以上は、CI 740のUIの一部を形成するがディスプレイとは別個のままである、ボタン又はスイッチなどのハードウェア制御である。UIはまた、命令1530を含む。
【0174】
各トグル制御対、例えばタイル1510b及びスイッチ1520bは、カバレッジ調査段階815の後の成功した候補SECのうちの1つに対応する。(一例として、第4の候補SECがPCSR段階810の間に失敗としてマークされたので、図15には3つの制御対のみが示されている)4つの(タイル、スイッチ)制御対は、独立して活性化及び非活性化され得る。SEC上の刺激の状態(オン又はオフ)は、対応するトグルスイッチの状態(活性化又は非活性化)に対応する。所与の時間における全ての「オン」のSECからの刺激パルスは、刺激間間隔だけ時間的にずらして、所定の時間順序でインターリーブされる。
【0175】
各トグルタイルは、患者が例えばトグルタイルを「押し続ける」ことによってそれと対話し続ける限り活性化されたままであるように構成され、患者がトグルタイルとの対話を停止すると、例えばトグルタイルを「解放する」ことによって非活性化される。トグルタイルは、例えば異なる色で塗りつぶされることによって、起動されると異なる外観を呈する。対照的に、各トグルスイッチは「押し下げる」ことはできないが、患者がトグルスイッチと対話するたびにその状態を非活性から活性に、又は活性から非活性に反転する。トグルスイッチは、例えばトグルスイッチを表すディスクを埋めることによって、活性化されると異なる外観を呈する。
【0176】
一実装形態では、トグルタイルは反転挙動を有し、それによってトグルタイルが活性化されている限り、例えば押し下げられている限り、トグルスイッチの状態によって常に示される刺激の状態が反転される。例えば、トグルスイッチが活性化されている場合、対応するタイルを活性化すると、トグルスイッチが非活性化されて刺激が停止され、タイルを非活性化すると、トグルスイッチが活性化されて刺激が再開される。逆に、トグルスイッチが非活性化されている場合、対応するタイルを押し続けるとトグルスイッチが活性化されて刺激が開始され、タイルを解放するとトグルスイッチが非活性化されて刺激が停止される。刺激は、スイッチが起動されている場合は常にオンであり、スイッチが非活性化されている場合は常にオフである。したがって、トグルスイッチの外観は、対応するSEC上の刺激の状態を示す視覚的キューを提供する。
【0177】
表2は、カバレッジ選択段階820のこの実装形態による対応する候補SECからの刺激に対するトグルタイル及びトグルスイッチの活性化及び非活性化の効果を要約している。空白のセルは、発生し得ない動作を表す。
【0178】
【表3】
【0179】
別の実装形態では、トグルスイッチが活性化されている場合、対応するタイルを活性化するとトグルスイッチが非活性化されて刺激が停止され、タイルを非活性化しても刺激の状態はそれ以上変化しない。逆に、トグルスイッチが非活性化されている場合、対応するタイルを押し続けるとトグルスイッチが活性化されて刺激が開始され、タイルを解放するとトグルスイッチが非活性化されて刺激が停止される。表4は、カバレッジ選択段階820のこの実装形態による対応する候補SECからの刺激に対するトグルタイル及びトグルスイッチの活性化及び非活性化の効果を要約している。
【0180】
【表4】
【0181】
表4に要約された実装形態の下では、刺激制御が非活性化されたとき、PCSR及びカバレッジ調査段階中のように刺激を停止する挙動が維持される。
【0182】
進捗バー1550は、進捗バー1050及び1250と同様に、ワークフロー800全体のおおよその定量的な進捗を示す。
【0183】
全て無効化制御1560は、全ての刺激を無効にし、全てのトグルスイッチ1520bなどを非活性化する。
【0184】
命令1530は、トグルタイルを活性化させる(「押し続ける」)と、4つの場所のうちの1つで刺激を感じることを患者に知らせる。
【0185】
カバレッジ選択段階820の代替的な実装形態では、トグルタイルはなく、トグルスイッチのみがある。
【0186】
カバレッジ選択段階820の一実装形態では、刺激は、カバレッジ調査段階815から得られた候補SECの快適刺激強度との間の閾値ランプによって候補SECでオン及びオフになる。閾値ランプの閾値は、PCSR段階810で推定された候補SECのECAP閾値である。閾値ランプについて上述した。
【0187】
次の制御1540は、少なくとも1つのトグルスイッチが活性化されている限り有効である。いくつかの実装形態では、次の制御1540を有効にするための追加の基準は、最終的に選択されたカバレッジによる刺激が最小期間、例えば5秒間活性である必要があることである。患者が次の制御1540を活性化すると、APMは現在活性化されている候補SECを選択されたSECとして記録し、刺激は全てのSECで停止される。
【0188】
カバレッジ選択段階820の代替的な実装形態では、トグルスイッチはなく、トグルタイルのみが存在する。
【0189】
そのような実装形態では、少なくとも1つのトグルタイルが活性化されている限り、次の制御1540が有効にされる。患者が次の制御1540を活性化すると、APMは現在活性化されている候補SECを選択されたSECとして記録し、刺激は全てのSECで停止される。
【0190】
測定最適化段階
上述したように、測定最適化(MO)段階830は、選択されたSECの一次SECから徐々に増加する強度の刺激を送達し、一次SECについて複数の測定電極構成の各々で感知された信号データを記録するように構成される。次いで、MO段階830は、一次SECに最適なMECを選択し、最適なMECを介して記録された信号窓から抽出された神経応答に基づいて患者の生理学的特性を計算し、一次SEC/最適なMECの組み合わせに最適な治療パラメータを選択するように構成される。
【0191】
決定されたプログラムにおける一次SECは、上記のようにシステム300に従って、一次SECの刺激電流振幅を調整するためにフィードバックループを駆動するために神経応答が測定される選択されたSECである。非一次選択SECによって誘発された神経応答は記録も分析もされない。代わりに、非一次SECの刺激電流振幅は、一次SECの刺激電流振幅と一定の比率のままであるように、制御装置116によって調整される。非一次選択SECが固定される比率は、一次SECの快適刺激強度に対するそれぞれの快適刺激強度の比率として決定されたプログラムに保存されてもよい。
【0192】
MO段階830の一実装形態では、APMは、図16に示すように、CI 740のUIディスプレイ上に画面1600を表示する。画面1600は、いくつかの情報1620と、進捗バー1650と、刺激停止制御1610とを備える。画面1600は、いくらかの神経刺激が送達されている間に表示され、収集された信号窓は、以下に説明するように分析される。一実装形態では、MO段階中の任意の時点で刺激停止制御1610を活性化すると、刺激が停止する。次いで、画面1600は、手動プログラミングが必要であることを患者に知らせる出口画面(図示せず)に置き換えられる。MO段階830は終了し、その後、APMは装置710にプログラムをロードすることなく停止する。
【0193】
進捗バー1650は、進捗バー1050、1250、及び1550と同様に、ワークフロー800全体のおおよその定量的な進捗を示す。
【0194】
MO段階830のデータ収集及び分析が完了すると、APMは、データ分析の成功に応じて二画面のうちの一方を表示する。データ分析が成功した場合、画面は仕上げ制御を含む。画面上の命令は、プログラミングが成功したことを患者に知らせる。患者が仕上げ制御を開始すると、MO段階830は終了する。
【0195】
データ分析が失敗した場合、画面は仕上げ制御を含む。画面上の命令は、プログラミングが失敗したこと、及び手動プログラミングが必要であることを患者に知らせる。患者が仕上げ制御を活性化すると、MO段階830は終了し、APMは装置710にプログラムをロードすることなく停止する。
【0196】
MO段階中のデータ分析
図17は、APMの一実装形態による、MO段階830の間にAPM及び装置710によって実行されるデータ収集及び分析方法1700を示すフローチャートを含む。方法1700は、ステップ1715で開始し、APMは、カバレッジ選択段階820から選択されたSECの中から一次SECを選択する。一実装形態では、ステップ1715は、最も小さい快適刺激強度を有する残りの選択されたSEC(もしあれば)を一次SECとして選択する。一方、ステップ1710は、ステップ1110と同様に、現在の一次SECに対応する各MECに対してAPビルダをインスタンス化する。1つのSECに対応するMECを図9に示す。次のステップ1725において、APMは、装置710に、現在の一次SECのための刺激ランプを開始するように命令する。刺激ランプは、ゼロの刺激強度で始まり、ステップ1715で選択された一次SECのMax値によって決定される最大刺激強度まで離散ステップを介して増加する。一実装形態では、一次SECのMax値の90%である最大刺激強度まで10の等間隔のステップがある。
【0197】
ステップ1725の代替的な実装形態では、装置710は、一定の比率のステップで刺激強度を増加させることができ、すなわち、各増分は、前の刺激電流振幅に一定の比率を乗算することを含む。これは、線形プロファイルではなく指数関数的なランプに相当する。指数ランプでは、離散ステップは、最大刺激強度に近づくにつれてより広く離間される。一例では、上述のようにECAP閾値がMax値の0.7倍に設定されている場合、1.025の一定の比は、ECAP閾値とMaxの90%との間に10段階の指数関数的増加を提供する。
【0198】
ステップ1725の代替的な実装形態では、ランプを使用するのではなく、装置710は、刺激強度をゼロと最大刺激強度との間で非単調に変化させることができる。例えば、ばらつきはランダムであってもよい。このようなアプローチは、APビルダによる当てはめられたLGCへのより速い収束をもたらし得る。
【0199】
刺激ランプの間、ステップ1720において、APMは、各MECにおける各刺激電流振幅sの信号窓を捕捉して戻すように装置710に命令する。各MECについて返された信号窓は、ステップ1720で対応するAPビルダによって分析され、各信号窓から検出されたECAP振幅dを抽出する。一実装形態では、ランプ中の各刺激電流振幅sで各MECに対して複数の信号窓(例えば16)が分析される。各APビルダは、上述のように捕捉された信号窓を使用して、ステップ1720の間にそのECAP検出器のパラメータ、例えば長さ及び相関遅延を調整する。
【0200】
ステップ1720を完了するために、各APビルダは、上述したように、対応するMECの(s,d)値対のセットにLGCを当てはめる。一方、ステップ1745において、APMは、刺激強度を下げるように装置710に命令する。一実装形態では、ステップ1745は、ECAP閾値を閾値ランプの閾値として使用して、上述のように閾値ランプを使用する。
【0201】
次いで、ステップ1730において、各APビルダは、上述したように、対応するMECに当てはまるLGCのGCQIを計算する。ステップ1735で、APMは、GCQIが最も高い当てはめられたLGCに対応するMECを選択する。次いで、ステップ1740において、APMは、上述のように当てはめられたLGCからECAP閾値及び患者感受性Sを計算する。
【0202】
次に、ステップ1750は、選択されたMECが低品質を示す特定の除外基準を満たすかどうかを判定する。一実装形態では、除外基準は以下の通りである。
・選択されたGCQIは、閾値未満、例えば10dBである。
・算出されたECAP閾値は、所定の範囲外である。一実装形態では、範囲は、既存の患者データから得られたECAP閾値の分散の第1のパーセンタイルから第99のパーセンタイルまでである。
・算出された感度は、所定の範囲外である。一実装形態では、範囲は、既存の患者データから得られた患者感度の分散の第1のパーセンタイルから第99のパーセンタイルまでである。
【0203】
除外基準のいずれかが満たされている場合(「Y」)、現在の一次SECは失敗としてマークされる。ステップ1760で、APMは、試験されていない残りの選択されたSECがあるかどうかを判定する。そうである場合(「Y」)、ステップ1770は方法1700を再開する。そうでない場合(「N」)、最終ステップ1780はMO段階830を終了し、ワークフロー800は失敗したとみなされる。
【0204】
ステップ1750で試験された除外基準のいずれも満たされない場合(「N」)、現在の一次SECはプログラムの一次SECとしてマークされ、選択されたMECは一次SECに最適なMECとしてマークされる。次に、ステップ1755は、ステップ1740で計算された患者感度Sからシステム300の利得要素336の利得Kを計算する。一実装形態では、ステップ1755は、以下のように利得Kを計算する。
【数19】
式中、
【数20】
であり、fはループカットオフ周波数であり、fは刺激周波数である。一実装形態では、ループカットオフ周波数は、ノイズの減衰と心拍などの姿勢外乱の減衰とのバランスをとるために3Hzに設定される。
【0205】
ステップ1765は、CLNSシステム300の他の治療パラメータを計算する。一実装形態では、治療パラメータは、
・目標ECAP振幅。これは、快適刺激強度s=Icomfに対応する当てはめられたLGC上のECAP振幅dの値として式(7)を使用して計算することができる。
・最大刺激強度。これは、一次SECのMax値に設定することができる。
・最大目標ECAP振幅。これは、一次SECのMax値に対応する当てはめられたLGC上のECAP振幅dの値に設定され得る。
【0206】
ステップ1775は、一次SEC、最適MEC、Max、ECAP閾値、及び感度、並びに計算された治療パラメータを含む、選択されたSECを含む決定されたプログラムを保存する。MO段階830は終了し、ワークフロー800は成功したとみなされる。
【0207】
MO段階830の代替的な実装形態では、一次SECは存在しない。代わりに、選択された各SECは、十分な品質のMECが発見され得ると仮定して、それ自体の専用MECを介してそれ自体の独立したフィードバックループを実行する。修正された方法1700は、選択されたSECごとに実行される。修正された方法1700は、ステップ1715を有さず、ステップ1760及び1770も有さない。代わりに、ステップ1750で除外基準の一方が満たされた場合、修正された方法1700は、ステップ1780で失敗して終了する。
【0208】
当業者であれば、広く説明されている本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、特定の実施形態に示されているように本発明に対して多数の変形及び/又は修正を行うことができることを理解するであろう。したがって、本実施形態は、あらゆる点で例示的であり、限定的又は制限的ではないと考えられるべきである。
【0209】
【表5】
【0210】
【表6】
【符号の説明】
【0211】
2 刺激電極
4 電極
6 測定電極
8 測定基準電極
10 接点インデックス
11 接点インデックス
100 型脊髄刺激装置
108 患者
110 電子機器モジュール
110 モジュール
112 バッテリ
114 遠隔測定モジュール
116 モジュール制御装置
116 制御装置
118 メモリ
120 臨床データ
121 臨床設定
122 制御プログラム
124 パルス発生器
126 電極選択モジュール
128 測定回路
130 グランド
130 システムグランド
150 電極アレイ
150 アレイ
160 二相刺激パルス
160 電流パルス
170 神経応答
180 神経
190 経皮的通信チャネル
190 通信チャネル
192 外部コンピューティング装置
300 閉ループ神経刺激システム(CLNS)
302 臨床設定制御装置
304 目標ECAP制御装置
310 フィードバック制御装置
310 制御装置
312 刺激装置
313 加算要素
318 測定回路
320 ECAP検出器
324 比較器
336 利得要素
338 積分器
402 活性化プロット
404 閾値
404 ECAP閾値
408 不快感閾値
410 知覚閾値
412 治療範囲
502、504、506 活性化プロット
508、510、512 ECAP閾値
520 ECAP目標
600 ECAP
700 神経刺激システム
710 神経調節装置
720 遠隔制御装置(RC)
730 臨床システムトランシーバ(Clinical System Transceiver、CST)
740 臨床インタフェース(CI)
750 充電器
800 支援プログラミングワークフロー
810 患者制御刺激ランプ(PCSR)段階
815 (任意選択の)カバレッジ調査段階
820 カバレッジ選択段階
820 段階
830 測定最適化(MO)段階
910 グラフィカル表現
1000 画面
1010 刺激制御
1010 制御
1020 命令
1040 制御
1050、1250 進捗バー
1060 セクタ
1100 分析方法
1200 画面
1210 刺激制御
1220 命令
1230 オプション
1240 制御
1250 進捗バー
1310 LGCモデル
1320 区分的線形モデル
1330 矢印
1400 プロファイル
1410 目標電流振幅
1420 プロファイル
1420 線形ランププロファイル
1430 瞬間
1440 間隔
1450 間隔
1460 閾値電流振幅
1500 画面
1510 トグルタイル
1510 タイル
1520 トグルスイッチ
1520 スイッチ
1530 命令
1540 制御
1550 進捗バー
1560 無効化制御
1600 画面
1610 刺激停止制御
1620 情報
1650 進捗バー
1800 ランプ
1805 星印
1810 通信
1815 バツ印
1820 ランプ
1825 通信
1830 第1のタイムアウト期間
1835 第2のタイムアウト期間
1837 通信
1840 ランプ
1845 通信
1850 ランプ
1855 第1のタイムアウト期間
1860 第2のタイムアウト期間
1870 下降ランプ
1875 下降ランプコマンド
1880 通信
1890 下降ランプ
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11a
図11b
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18a
図18b
図18c
図18d
図18e
図18f
【国際調査報告】