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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/042 20140101AFI20241219BHJP
【FI】
H01L31/04 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538476
(86)(22)【出願日】2022-12-21
(85)【翻訳文提出日】2024-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2022087344
(87)【国際公開番号】W WO2023131535
(87)【国際公開日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】CH000016/2022
(32)【優先日】2022-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522275418
【氏名又は名称】ギスラー, マルクス
【氏名又は名称原語表記】GISLER, Markus
【住所又は居所原語表記】Haldenweg 18, 4704 Niederbipp Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギスラー, マルクス
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251JA03
5F251JA06
5F251JA13
(57)【要約】
本開示は、基本的に平坦な太陽電池層に配置された少なくとも1つの太陽電池セルを含む太陽電池モジュールに関する。太陽電池層は、太陽電池モジュールの前面と背面との間に配置され、前面に対する所定の範囲の視野角に対して、少なくとも1つの太陽電池セルの視認性を角度に応じて低下させるための加飾層を提供する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池モジュール(1)であって、
a. 前記太陽電池モジュール(1)の前面(4)と背面(5)との間に配置されている基本的に平坦な太陽電池層(3)に配置された少なくとも1つの太陽電池セル(2)と、
b. 前記少なくとも1つの太陽電池セル(2)の前方に配置されており、前記前面(4)に対する視野角の所定の範囲において、前記少なくとも1つの太陽電池セル(2)の視認性を角度に応じて低下させるための加飾層(6)と、を備え、
前記加飾層(6)は、
i. 前記太陽電池層(3)の前方の第1層(8)に配置され、本質的に半透明な材料の第1基板層(9)により前記太陽電池層(3)から離間された第1パターン加飾要素(7)と、
ii. 前記第1層(8)の前方の第2層(11)に配置され、本質的に半透明の材料の第2基板層(12)により前記第1層(8)から離間された第2パターン加飾要素(10)と、を含み、
iii. 前記第1パターン加飾要素(7)は、前記第2パターン加飾要素(10)に対して、前記第1層(8)および前記第2層(11)の延在方向に平行な第1方向(x)へ、所定のオフセット(13)だけシフトして配置されており、それにより、視野角に応じて、前記少なくとも1つの太陽電池セル(2)の視認性が低下する、
太陽電池モジュール(1)。
【請求項2】
前記加飾部品(14)は、前記第1基板層(9)および/または前記第2基板層(12)よりも低い光透過率を有する、請求項1に記載の太陽電池モジュール(1)。
【請求項3】
前記加飾部品(14)は、基本的に二次元である、請求項1に記載の太陽電池モジュール(1)。
【請求項4】
前記第1パターン加飾要素(7)および/または前記第2パターン加飾要素(10)は、ドットパターン、ストライプパターン、多角形パターン、ハニカムパターン、またはそれらの組み合わせとして形成される、請求項1に記載の太陽電池モジュール(1)。
【請求項5】
前記ストライプパターンのストライプは、前記第1層(8)または前記第2層(11)の延在方向と平行であって、特に前記第1方向(x)に対して基本的に垂直な第2方向(y)へ延在する、請求項4に記載の太陽電池モジュール(1)。
【請求項6】
前記オフセット(13)は、前記第1方向(x)における加飾部品(14)の幅(15)と組み合わせて、特に、前記第1方向および前記第2方向に対して垂直な第3方向における前記第1層(8)と前記第2層(11)との間の距離と組み合わせて、前記少なくとも1つの太陽電池セル(2)の視認性を最も低下させる視野角の範囲を画定する、請求項5に記載の太陽電池モジュール(1)。
【請求項7】
前記加飾層(6)は、本質的に半透明な材料の少なくとも1枚のフィルム(16)および/または少なくとも1枚の板ガラス(17)を含んでおり、それらは加飾部品(14)を担持する、請求項1に記載の太陽電池モジュール(1)。
【請求項8】
前記加飾層(6)が、
a. 2つの対向する面(18)に加飾部品(14)が付加された、前記少なくとも1枚のフィルム(16)および/もしくは少なくとも1枚の板ガラス(17)、ならびに/または、
b. 本質的に半透明な材料の少なくとも2枚のフィルム(16)または少なくとも2枚の板ガラス(17)のそれぞれが、少なくとも1つの面(18)に加飾部品(14)を付加されており、前記少なくとも2枚のフィルム(16)が、断面視において互いの上面に配置されている、請求項7に記載の太陽電池モジュール(1)。
【請求項9】
前記加飾部品(14)は、印刷、縁取り、サンドブラスト、積層、および接着によって、少なくとも1枚のフィルム(16)または板ガラス(17)の面(18)に付加される、請求項8に記載の太陽電池モジュール(1)。
【請求項10】
前記加飾部品(14)は、少なくともその一部が、着色顔料、織物、金属、またはそれらの組み合わせからなる、請求項1に記載の太陽電池モジュール(1)。
【請求項11】
前記第1パターン加飾要素(7)および前記第2パターン加飾要素(10)は、少なくとも複数の領域において、特に前記第1方向(x)および/または前記第2方向(y)に対して、基本的に等しい空間周期を有する、請求項5に記載の太陽電池モジュール(1)。
【請求項12】
前記加飾部品(14)は、基本的に前記太陽電池モジュール(1)の全体にわたって拡がっている、請求項5に記載の太陽電池モジュール(1)。
【請求項13】
前記加飾部品(14)は、波長および/または入射角に応じて入射光を反射するように構成された部分反射コーティングを少なくとも部分的に備えた、請求項1に記載の太陽電池モジュール(1)。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか一項に記載の太陽電池モジュール(1)の製造方法であって、
a. 垂直方向(z)に積層された積層体(19)を提供するステップと、
b. 前記積層体(19)をラミネートして太陽電池モジュール(1)を形成するステップと、を備え、前記積層体(19)は、
i. 少なくとも1つの太陽電池セル(2)を含む太陽電池層(3)と、
ii. 前記太陽電池層(3)の上面に配置された本質的に半透明な材料の第1基板層(9)と、
iii. 前記第1基板層(9)の上面に配置された第1パターン加飾要素(7)を有する第1層(8)と、
iv. 前記第1層(8)の上面に配置された本質的に半透明な材料の第2基板層(12)と、
v. 第2基板層(12)の上面に配置された第2パターン加飾要素(10)を有する第2層(11)であって、前記第2パターン加飾要素(10)は、前記第1パターン加飾要素(7)に対して、前記第1層(8)および前記第2層(11)の延在方向に平行な第1方向(x)へ所定のオフセット(13)だけシフトして配置された第2層(11)と、を含む、製造方法。
【請求項15】
a. 本質的に半透明な材料のフィルム(16)または板ガラス(17)の第1面(18)に前記加飾部品(14)の少なくとも1つのパターンを印刷するステップであって、前記フィルム(16)または前記板ガラス(17)は、前記第1層(8)と前記第1基板層(9)との組み合わせとして、または前記第2層(11)と前記第2基板層(12)との組み合わせとして機能する、ステップ、および/または、
b. フィルム(16)または板ガラス(17)の第1面(18)に第1パターン加飾要素(7)を印刷し、前記フィルム(16)または前記板ガラス(17)の第2面(18)に第2パターン加飾要素(10)を印刷するステップであって、前記フィルム(16)または前記板ガラス(17)は、前記第1層(8)、前記第2層(11)およびそれらの間の前記第2基板層(12)の組み合わせとして機能する、ステップ、を備える請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
a. 本質的に半透明な材料のフィルム(16)または板ガラス(17)の第1面(18)に、気相堆積プロセスにより加飾部品(14)の少なくとも1つのパターンを付加するステップであって、前記フィルム(16)または前記板ガラス(17)は、前記第1層(8)と前記第1基板層(9)との組み合わせとして、または前記第2層(11)と前記第2基板層(12)との組み合わせとして機能する、ステップ、および/または、
b. 第1パターン加飾要素(7)を、気相堆積プロセスによりフィルム(16)または板ガラス(17)の第1面(18)に付加し、第2パターン加飾要素(10)を前記フィルム(16)または前記板ガラス(17)の第2面(18)に付加するステップであって、前記フィルム(16)または前記板ガラス(17)が、前記第1層(8)、前記第2層(11)、およびそれらの間の前記第2基板層(12)の組み合わせとして機能する、ステップと、を備える請求項14に記載の製造方法。
【請求項17】
少なくとも1つの請求項1から13までのいずれか一項に記載の太陽電池モジュール(1)と、前記太陽電池モジュール(1)を建物の壁に取り付けるための取付部品と、を備える部品キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、太陽電池モジュールに関し、特に、太陽電池セルの視認性を低下させた太陽電池モジュール、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、従来技術から公知であり、通常、前面シートと後面シートとの間に配置された太陽電池セルの層を含む。前面シートは、通常、太陽光が太陽電池セルに到達するように均一で光学的に半透明な材料からなる。これにより、非常に高い効率の太陽電池モジュールが実現されるが、建築または設計の観点では、半透明の前面シートを通して太陽電池セルが完全に視認できることは、しばしば、障害になるとみなされる。太陽電池モジュールのその視覚的外観のため、外側から見えない建物表面、例えば、平屋根にそれらの配置が限定されることが多い。したがって、太陽電池モジュールは、高い効率を可能な限り維持しながら、外観を改善するように構築されることが求められている。
【0003】
従来技術からいくつかの試みが知られており、以下に簡単に説明する。テスラ社およびソーラーシティ社が出願人であり、2018年5月に公開された米国特許出願公開第2018/0130921号明細書は、観察者にとって、外観が美しくて継ぎ目がないように見える太陽電池パネルを含む建物一体型の太陽光発電(BIPV)システムを開示する。マイクロルーバー構造が太陽電池(PV)積層体に組み込まれているため、埋め込まれたPV積層体に入射して太陽電池セルで反射された光は、通常の観察者が、太陽電池アレイが設置されたPV積層体または屋根を見る角度で外側には向けられない。
【0004】
テスラ社が出願人であり、2018年9月に公開された米国特許出願公開第2018/0269824号明細書は、太陽電池層が被覆されている太陽電池タイルを開示する。太陽電池タイルは、後面シート層を含む。太陽電池タイルは、後面シート層に隣接する底部封止層を含む。太陽電池タイルは、多孔性ルーバーを有するルーバー層を含む。上部封止層は、1つ以上の太陽電池セルに隣接して設けられる。上部封止層は、1つ以上の太陽電池セルの側面からの視界を遮断するために、複数のルーバーがその中に構築されている。太陽電池タイルは、上部封止層に隣接する上部層もさらに含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
傾斜した屋根および特にファサードでは、建物所有者および建築家などがより受容しやすいように、視覚的に魅力的な太陽電池モジュールが好ましい。したがって、高効率で容易に製造可能であり、その太陽電池セルを加飾する太陽電池モジュールが開示される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様は、基本的に平坦な太陽電池層に配置された少なくとも1つの太陽電池セルを含む太陽電池モジュールに関する。太陽電池層は、太陽電池モジュールの前面と背面との間に配置されている。そして、少なくとも1つの太陽電池セルの前方に加飾層を配置して、前面に対する所定の視野角の範囲で、少なくとも1つの太陽電池セルの視認性を角度に応じて低下させる。これにより、太陽光がその入射角により効率的に吸収され得ることを維持する一方で、建物の外側の地上レベルの観察者には、太陽電池セルが視認しにくいか、あるいは視認されないように、太陽電池モジュールを建物に設置することが可能になる。
【0007】
少なくとも1つの太陽電池セルの前方の加飾層は、通常、第1パターン加飾要素と第2パターン加飾要素とを含む。第1パターン加飾要素は、太陽電池層の前方の第1層に配置され、本質的に半透明の材料の第1基板層により太陽電池層から離間される。第2パターン加飾要素は、第1層より前方の第2層に配置され、本質的に半透明の材料の第2基板層により第1層から離間される。少なくとも1つの太陽電池セルの視認性を角度に応じて低下させるために、第1パターン加飾要素は、第2パターン加飾要素に対して、第1層および第2層の延在方向に平行な第1方向へ、所定のオフセットだけシフトして配置されている。
【0008】
2つ以上のパターンの加飾要素を2つの離間した層に配置することが可能である。ただし、通常は5つ未満、つまり、互いの上方に配置されて、加飾要素の隣接するパターンに対してそれぞれが第1方向へオフセットされる加飾要素は、3パターンあるいは4パターンである。
【0009】
加飾部品が第1基板層および/または第2基板層よりも低い光透過率を有するとき、良好な結果が得られる。加飾部品は、0から0.9まで、好ましくは0.1から0.5までの透過率を有し得る。加飾部品の透過率を低くすることは、吸収および/または散乱により実現し得る。用途に応じて光透過率は、それぞれの第1パターン加飾要素またはそれぞれの第2パターン加飾要素について同一にできる。ただし、加飾部品の光透過率は、複数の飾部品のパターン内で、および/または複数の第2パターン加飾要素で異なり得るし、または個々の加飾部品内で異なり得る。加飾部品は、(例えば、互いに接続されていない平行なストライプまたはドットのように)第1層内または第2層内で分離され得る。ただし、(例えば、ハニカムパターンのような)連続パターンも可能であり、加飾部品は、連続パターンが(周期的に)繰り返し発生する部品として観察し得る。
【0010】
加飾部品は基本的に二次元であることが好ましい。二次元とは、太陽電池層に平行な延在方向を有し、太陽電池層に対して垂直な方向の加飾部品の延伸部の数倍にもなると理解し得る。これにより、従来の積層プロセスを適用できるので、3次元の被覆手段を有する先行技術のものと比較して、太陽電池モジュールの製造がより簡単になる。
【0011】
好ましい変形例では、第1パターン加飾要素および/または第2パターン加飾要素は、ドットパターン、ストライプパターン、多角形パターン、ハニカムパターン、またはそれらの組み合わせとして形成される。ただし、設計に応じて、ランダム化されたパッチパターンなどの他のパターンも考え得る。ストライプパターンの複数のストライプは、第1層の延在方向または第2層の延在方向に平行であり、特に、それらの延在方向が第1方向に対して垂直である第2の方向へ延在することが好ましい。加飾部品は、基本的に(第2方向へ)太陽電池モジュール全体にわたって拡がり得る。
【0012】
オフセットは、第1方向の基底加飾部品の幅と組み合わせて、通常、少なくとも1つの太陽電池セルの視認性を最も低下させる視野角の範囲を画定する。これらの視野角では、オフセットした加飾部品の平行投影が、少なくとも1つの太陽電池セルを最大限にカバーして、その視認性を最小限に抑制する。視野角は、特に、第1方向および第2方向に対して垂直な第3方向における第1層と第2層との間の距離と組み合わせて画定される。第1方向の加飾部品の幅および第1パターン加飾要素と第2パターン加飾要素との間のオフセットは、好ましくは、第1方向に対して90度から45度、特に85度から50度の視野角で視認性が最も低下するように選択される。
【0013】
それぞれのパターンの加飾要素の幅Wに対する第1層と第2層との間のオフセットOおよび距離Dは、視認性が低下する視野角αの不等式として表し得る。
【0014】
【数1】
【0015】
例えば、45度の視野角が、視認性が低下する下限であるとき、オフセット、距離、および幅の間の関係は、
となる。幅とオフセットとの差は、第3方向から見た第1層および第2層の加飾部品の重なりとして理解され得る。
【0016】
良好な性能を達成するために、加飾層は、加飾部品を担持する本質的に半透明な材料の少なくとも1枚のフィルムおよび/または少なくとも1枚の板ガラスを含む。好ましくは、加飾層は、2つの対向する面の両方に加飾部品が付加された少なくとも1枚のフィルムおよび/または少なくとも1枚の板ガラスを含む。加飾層は、代替としてまたはさらに、それぞれが少なくとも1つの面に加飾部品が付加された本質的に半透明の材料である少なくとも2枚のフィルムまたは少なくとも2枚の板ガラスを含み得る。少なくとも2枚のフィルムは、断面視において互いの上面に配置される。2枚のフィルムまたは2枚の板ガラスは、その上面に付加された加飾部品が同一のパターンを有し得、それらの間のオフセットは、太陽電池モジュールの製造中に2枚のフィルムおよび/または2枚の板ガラスを位置合わせすることで実現される。
【0017】
太陽電池モジュールの上面を形成するフィルムまたは板ガラスは、個別に設計可能である。特に、平滑なガラスと同様に、その表面に加飾部品を付加可能な構造化ガラス形態を使用可能である。ガラスおよびその構造にしたがって加飾部品を位置決めすることにより、加飾部品により光が実質的に遮断されることなく太陽電池セルに入射するという効果が実現される。そして、観察者の目には依然として、例えば着色されたファサード部品のように見える。
【0018】
用途に応じて、加飾部品は、印刷、縁取り、積層、サンドブラストおよび/または接着によって、少なくとも1枚のフィルムまたは板ガラスの面に付加される。好ましくは、加飾部品は、少なくともその一部が、着色顔料、織物、金属、またはそれらの組み合わせからなる。これにより、本開示の太陽電池モジュールの外観の多様化が可能となり、したがって、その用途が拡がる。
【0019】
加飾部品は、代替としてまたはさらに、入射光をその波長および/または入射角に応じて反射するように構成された部分反射コーティングを少なくとも部分的に備える。これにより、視野角に応じた太陽電池モジュールの色印象の実現が可能となる。部分反射コーティングは、例えば、あらかじめ定義可能な波長または波長範囲の光を反射し、干渉効果により他の波長の透過が可能である。これにより、少なくとも1つの太陽電池セルの視認性の低下を特定の視野角に対して維持しながら、太陽電池セルにおいて利用可能な光量を増加させることができる。適用分野に応じて、コーティングは1つ以上の層、特に異なる屈折率の交互の層を含み、好ましくはブラッグフィルタを形成する。
【0020】
好ましい変形例では、第1パターン加飾要素および第2パターン加飾要素は、少なくとも一部の領域で、特に第1方向および/または第2方向へ、基本的に等しい空間周期を有する。空間周期は、個々の加飾部品間の距離として理解され得る。言い換えれば、第1パターン加飾要素および第2パターン加飾要素は、少なくとも一部の領域で規則的なパターンを形成する。
【0021】
いくつかの変形例では、本質的に半透明な材料のフィルムまたは板ガラスの第1面にコーティングが配置され、そのフィルムまたは板ガラスは、第1層と第1基板層との組み合わせとして、または第2層と第2基板層との組み合わせとして機能する。コーティングは、波長および/またはその入射角に応じて入射光を反射するように構成された部分反射コーティングであることが好ましい。コーティングは、このようにして、特に特定の視野角に対して、太陽電池モジュールの色印象を生成し得る。コーティングの例として、光フィルタとして機能するいわゆる薄膜コーティングがある。設計に応じて、コーティングは、前面と加飾層との間に配置される。
【0022】
本開示の第2態様は、前述した太陽電池モジュールの製造方法に関する。この方法は、通常、垂直方向に積層された積層体を提供するステップと、この積層体をラミネートして太陽電池モジュールを形成するステップと、を含む。
【0023】
積層体は、通常、少なくとも1つの太陽電池セルを含む太陽電池層と、太陽電池層の上面に配置された本質的に半透明の材料の第1基板層と、第1基板層の上面に配置された第1パターン加飾要素を有する第1層とを含む。本質的に半透明な材料の第2基板層が第1層の上面に配置され、第2パターン加飾要素を有する第2層が第2基板層の上面に配置され、第1層および第2層の延在方向に平行な第1方向へ、第1パターン加飾要素に対して所定のオフセットだけシフトして配置される。
【0024】
あるいは、状況に応じて、積層体の層を逆の順序で配置することも可能である。
【0025】
好ましい変形例では、この方法は、本質的に半透明な材料のフィルムまたは板ガラスの第1面に少なくとも1つの加飾部品のパターンを印刷するステップを含み、そのフィルムまたは板ガラスは、第1層と第1基板層との組み合わせとして、または第2層と第2基板層との組み合わせとして機能する。この方法は、代替としてまたはさらに、フィルムまたは板ガラスの第1面に第1パターン加飾要素を印刷して、フィルムまたは板ガラスの第2面に第2パターン加飾要素を印刷するステップを含み、フィルムまたは板ガラスは、第1層、第2層、およびそれらの間の第2基板層の組み合わせとして機能する。
【0026】
この方法は、代替としてまたはさらに、気相堆積プロセスを使用して、第1パターン加飾要素および第2パターン加飾要素のうちの少なくとも一方を付加し得る。気相堆積プロセスは、化学的気相堆積法(CVD)または物理的気相堆積法(PVD)であることが好ましい。マスクがフィルムまたは板ガラスの第1面に一時的に設置され、加飾部品の材料を本質的に均一な堆積をする間に第1パターン加飾要素および/または第2パターン加飾要素が形成されることが好ましい。気相堆積プロセスの使用することで、パターンを付加する精度が向上してパターンの品質向上が可能である。その結果、例えば、空間周期の短縮が可能となる。適用分野に応じて、2つ以上の材料層、特に屈折率が異なる層が交互に付加されてコーティングが形成される。コーティングを形成する層は、1nmから500nm(ナノメートル)までの、特に100nmから200nmまでの厚さを有する薄層であることが好ましい。
【0027】
好ましい変形例では、この方法は、本質的に半透明な材料のフィルムまたは板ガラスの第1面に気相堆積プロセスによって加飾部品の少なくとも1つのパターンを付加するステップを含み、前記フィルムまたは板ガラスは、第1層と第1基板層との組み合わせとして、または第2層と第2基板層との組み合わせとして機能する。この方法は、代替としてまたはさらに、フィルムまたは板ガラスの第1面に気相堆積プロセスによって第1パターン加飾要素を付加して、フィルムまたは板ガラスの第2面に第2パターン加飾要素を付加するステップを含み、そのフィルムまたは板ガラスは、第1層、第2層、およびそれらの間の第2基板層の組み合わせとして機能する。
【0028】
いくつかの変形例では、この方法は、本質的に半透明な材料のフィルムまたは板ガラスの第1面にコーティング、特に薄膜コーティングを付加するステップを含み、前記フィルムまたは板ガラスは、第1層と第1基板層との組み合わせとして、または第2層と第2基板層との組み合わせとして機能する。コーティングは、CVDまたはPVDプロセスを使用して付加されることが好ましい。
【0029】
本開示の第3態様は、前述の少なくとも1つの太陽電池モジュールと、その太陽電池モジュールを建物の表面、特に建物の壁に取り付けるための取付部品と、を備える部品キットに関する。
【0030】
前述の概要および以下の詳細な説明は両方とも実施形態を提示しており、本開示の性質および特徴を理解するための概要または枠組みを提供することを意図していることを理解されたい。添付の図面は、さらなる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれてその一部を構成する。図面は、さまざまな実施形態を示しており、説明とともに、開示された概念の原理および動作を説明するのに役立つ。
【0031】
本明細書に記載の開示は、本明細書の以下の詳細な説明および添付の図面から、より完全に理解されるであろうが、添付の請求項に記載の開示を限定するものとみなされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、本開示の太陽電池モジュールの第1変形例の断面図である。
図2図2は、図1の第1変形例を観察者の視野角とともに示す図である。
図3図3は、図1の第1変形例を太陽光の入射角とともに示す図である。
図4図4は、本開示の太陽電池モジュールの第2変形例の断面図である。
図5図5は、本開示の太陽電池モジュールの第3変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。
【0034】
ここで、特定の実施形態について詳細に言及する。これらの実施形態の例は、添付の図面に示されており、図面にはいくつかの特徴が示されているが、その全部が示されているわけではない。実際、本明細書に開示されている実施形態は、さまざまな形態で具体化され得、本明細書に記載されている実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、この開示が適用される法的要件を満たすように提供される。同様の構成要素または部品については、可能な限り同様の参照番号が使用される。
【0035】
図1に、本開示の太陽電池モジュール1の第1変形例の断面図を示す。図2に、図1の第1変形例における観察者の視野角を示し、図3図1の第1変形例における太陽光の入射角を示す。図4には、本開示の太陽電池モジュール1の第2変形例の断面図を示し、図5には、本開示の太陽電池モジュール1の第3変形例の断面図を示す。
【0036】
図1に示す本開示の太陽電池モジュール1は、通常、少なくとも1つの太陽電池セル2を有する基本的に平坦な太陽電池層3を含む。太陽電池層3は、前面4と背面5との間に配置される。背面5は、一般に保護材料の背面シートにより提供される。前面4は、フィルム16、板ガラス17、封止材料層、またはそれらの組み合わせにより提供され得る。前面4と太陽電池層3との間には、前面4に対する所定の視野角20の範囲で、少なくとも1つの太陽電池セル2の視認性を角度に応じて低下させるための加飾層6が配置されている(図2参照)。加飾層6は、前面4の一部を形成し得る。
【0037】
角度に応じた視認性の低下を実現するために、加飾層6は、太陽電池層3の前方の第1層8に配置された第1パターン加飾要素7と、第1層8の前方の第2層11に配置された第2パターン加飾要素10と、を含む。第1層8と太陽電池層3との間には、本質的に半透明な材料からなる第1基板層9が配置されている。第2層11と第1層8との間には、本質的に半透明な材料の第2基板層12が配置される。第1基板層9および第2基板層12は、第1層8を太陽電池層3から、第2層11を第1層8から離間させる。第1パターン加飾要素7は、第2パターン加飾要素10に対して、太陽電池層3に平行な第1方向xにオフセット13だけシフトされることが好ましい。
【0038】
加飾部品14は、基本的に二次元であることが好ましい。それらは、図1から図5において、太陽電池層3に平行な線で示されており、通常、第1基板層9および第2基板層12と比較して光透過率が低くなっている。所望の外観および光透過性に応じて、加飾部品14は、少なくともその一部が、着色顔料、織物、金属、またはそれらの組み合わせで構成可能である。図示された変形例において、加飾部品14は塗料から作られており、通常、第1基板層9および第2基板層12に印刷されている。
【0039】
図1から図3、および図5に示す第1変形例および第3変形例は、2つのパターンの加飾部品14を含む。図4に示すように、第2変形例は、第1変形例および第3変形例と比較して、第3のパターンの加飾部品14が追加されている。第2変形例では、第1変形例および第3変形例と比較して、個々の加飾部品14の幅15を縮小することが可能である。これは、加飾部品14のパターン間のオフセット13が、第1方向xにおける加飾部品14の幅15と組み合わされて、少なくとも1つの太陽電池セル2の視認性を最も低下させる視野角20の範囲を画定するためである。この変形例に示されるパターンは、ストライプパターンであるが、他のパターンも可能である。
【0040】
図5に示す第3変形例では、加飾層は、加飾部品14を担持する板ガラス17を備える。第1パターン加飾要素7は、太陽電池層3に面する側の板ガラス17の面18に付加され、第2パターン加飾要素10は、前面4に面する側の板ガラス17の反対側の面18に付加される。太陽電池層3とは反対側の板ガラス17の面18は、太陽電池モジュール1の前面4の一部を形成可能である。この面18は、平滑なガラスまたは構造化されたガラスであり得る。
【0041】
第2変形例では、図4に示すように、加飾層は、それぞれのフィルム16の1つの面18にそれぞれ付加された加飾部品14を有し、それぞれオフセット13だけ第1方向xに互いにシフトされて配置された3枚のフィルム16を含む。フィルム16は、少なくともその一部が、エチレン酢酸ビニル(EVA)またはポリビニルブチラール(PVB)からなり得る。
【0042】
むしろ、本明細書で使用される用語は、限定ではなく説明の用語であり、本開示の範囲から逸脱することなく様々な変更が行われ得ることが理解される。
【符号の説明】
【0043】
1 太陽電池モジュール
2 太陽電池セル
3 太陽電池層
4 前面
5 背面
6 加飾層
7 第1パターン加飾要素
8 第1層
9 第1基板層
10 第2パターン加飾要素
11 第2層
12 第2基板層
13 オフセット
14 加飾部品
15 幅(加飾部品)
16 フィルム
17 板ガラス
18 (フィルムまたは板ガラスの)面
19 積層体
20 視野角(観察者)
21 入射角(太陽光)
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】