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特表2024-547146熱拡散用クランプ式熱分解グラファイトシート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】熱拡散用クランプ式熱分解グラファイトシート
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20241219BHJP
   H01L 23/473 20060101ALI20241219BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H01L23/46 Z
H05K7/20 F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539260
(86)(22)【出願日】2023-01-12
(85)【翻訳文提出日】2024-06-27
(86)【国際出願番号】 US2023010663
(87)【国際公開番号】W WO2023137096
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】17/576,437
(32)【優先日】2022-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524059674
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【弁理士】
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】ピッツ,アンドリュー ジェイ.
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA11
5E322FA04
5F136BC04
5F136BC07
5F136CB06
5F136FA23
5F136FA82
5F136GA12
(57)【要約】
熱拡散要素が設けられている。熱拡散要素には、圧縮性熱分解グラファイトシートと、圧縮性熱分解グラファイトシートとインターリーブされた剛性熱分解グラファイトシートが含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱拡散要素であって、
圧縮性熱分解グラファイトシートと、
前記圧縮性熱分解グラファイトシートとインターリーブされる剛性熱分解グラファイトシートと、を含む、
熱拡散要素。
【請求項2】
前記圧縮性熱分解グラファイトシート及び前記剛性熱分解グラファイトシートのうち少なくとも1つは、約1000W/m-Kを超える面内熱伝導率を示し、
前記圧縮性熱分解グラファイトシート及び前記剛性熱分解グラファイトシートの密度は、銅の密度の約10%未満である、
請求項1に記載の熱拡散要素。
【請求項3】
前記圧縮性熱分解グラファイトシートと前記剛性熱分解グラファイトシートが、インターリーブ方向に共に圧縮されている、請求項1に記載の熱拡散要素。
【請求項4】
前記圧縮性熱分解グラファイトシートと前記剛性熱分解グラファイトシートが、前記インターリーブ方向にクランプされている、請求項3に記載の熱拡散要素。
【請求項5】
ヒートスプレッダであって、
圧縮性熱分解グラファイトシートと、
熱の伝達と前記熱の拡散を実現する熱拡散要素を形成する、前記圧縮性熱分解グラファイトシートとインターリーブされる剛性熱分解グラファイトシートと、
前記熱拡散要素をクランプし、前記圧縮性熱分解グラファイトシート及び前記剛性熱分解グラファイトシートを前記熱が前記伝達する方向に圧縮するためのクランプと、を含む、
ヒートスプレッダ。
【請求項6】
前記圧縮性熱分解グラファイトシート及び前記剛性熱分解グラファイトシートのうち少なくとも1つは、約1000W/m-Kを超える面内熱伝導率を示し、
前記圧縮性熱分解グラファイトシート及び前記剛性熱分解グラファイトシートの密度は、銅の密度の約10%未満である、
請求項5に記載のヒートスプレッダ。
【請求項7】
前記熱が前記伝達する前記方向は、前記圧縮性熱分解グラファイトシートと前記剛性熱分解グラファイトシートとのインターリーブ方向である、請求項5に記載のヒートスプレッダ。
【請求項8】
前記熱拡散要素及び前記クランプの少なくとも一方またはその周囲への水分の浸入を防止するシールをさらに備える、請求項5に記載のヒートスプレッダ。
【請求項9】
前記熱拡散要素は、前記熱拡散要素の残りの部分に対して横方向に配向された圧縮性かつ剛性熱分解グラファイトシートを含む横断部をさらに備える、請求項5に記載のヒートスプレッダ。
【請求項10】
モジュールと、
コールドプレートと、をさらに含み、
前記熱拡散要素は、前記モジュールと前記コールドプレートとの間に介在され、前記モジュールから前記コールドプレートへの第1方向の前記熱の伝達を実現し、前記第1方向に対して横方向の第2方向に前記熱を拡散し、
前記クランプは、前記熱拡散要素を前記モジュールと前記コールドプレートとの間にクランプし、前記圧縮性熱分解グラファイトシート及び前記剛性熱分解グラファイトシートを前記第1方向に圧縮するように配置及び構成されている、
請求項5に記載のヒートスプレッダ。
【請求項11】
前記モジュールは、前記熱を発生する電子要素を備える、請求項10に記載のヒートスプレッダ。
【請求項12】
前記第1方向は、前記圧縮性熱分解グラファイトシートと前記剛性熱分解グラファイトシートとのインターリーブ方向である、請求項10に記載のヒートスプレッダ。
【請求項13】
前記クランプは、前記圧縮性熱分解グラファイトシート及び前記剛性熱分解グラファイトシートを圧縮して熱的能力を最適化するように調整されている、請求項10に記載のヒートスプレッダ。
【請求項14】
前記熱拡散要素及び前記クランプの少なくとも一方またはその周囲への水分の浸入を防止するシールをさらに備える、請求項10に記載のヒートスプレッダ。
【請求項15】
前記熱拡散要素と共に、前記モジュールと前記コールドプレートとの間に介在するモノリシック金属要素をさらに備える、請求項10に記載のヒートスプレッダ。
【請求項16】
前記圧縮性熱分解グラファイトシートは、前記モジュール、前記モノリシック金属要素、前記剛性熱分解グラファイトシート、及び前記コールドプレート間のCTE不一致コンプライアンスを設ける、請求項15に記載のヒートスプレッダ。
【請求項17】
前記モノリシック金属要素は、前記熱拡散要素が使い捨てられるポケットを画定し、
前記ポケットの高さは、前記圧縮性熱分解グラファイトシート及び前記剛性熱分解グラファイトシートが圧縮される前の熱拡散要素の高さよりも低い、
請求項15に記載のヒートスプレッダ。
【請求項18】
ヒートスプレッダを組み立てる方法であって、
熱の伝達と前記熱の拡散を実現する熱拡散要素を形成するよう、圧縮性熱分解グラファイトシートと剛性熱分解グラファイトシートをインターリーブすることと、
前記圧縮性熱分解グラファイトシートと前記剛性熱分解グラファイトシートを前記熱が前記伝達する方向に圧縮することと、を含む、
方法。
【請求項19】
前記方法が、前記熱拡散要素を、モジュールとコールドプレートとの間に介在させ、前記モジュールから前記コールドプレートへの第1方向の前記熱の伝達を実現し、前記第1方向に対して横方向の第2方向に前記熱を拡散することをさらに含み、
前記圧縮することが、前記モジュールと前記コールドプレートの間に前記熱拡散要素をクランプして、前記圧縮性熱分解グラファイトシートと前記剛性熱分解グラファイトシートを前記第1方向に圧縮すること、を含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記熱拡散要素と共に、前記モジュールと前記コールドプレートとの間にモノリシック金属要素を介在させること、をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本出願は、2022年1月14日に出願された米国非仮特許出願第17/576,437号に対する優先権を主張するものであり、この文献は、その全体において参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
(技術分野)
本開示は、熱の拡散に関し、特に、クランプされた熱分解グラファイトシート(PGS)を備えたヒートスプレッダに関する。
【背景技術】
【0003】
ヒートスプレッダは、電子デバイスまたはモジュールによって生成された熱を電子デバイスまたはモジュールから第1方向に伝達し、その熱を第2方向に拡散するために使用されるアセンブリである。場合によっては、ヒートスプレッダには、モジュール、コールドプレートまたは熱交換器、及びモジュールとコールドプレートの間に介在された熱拡散要素が含まれる。熱拡散要素は、モジュールによって生成された熱をコールドプレートに伝達し、その際に熱を拡散する。
【0004】
従来のヒートスプレッダでは、熱拡散要素はモノリシック銅スプレッダによって設けられていた。これらのモノリシック銅スプレッダは重くなる傾向がある。そのため、モノリシック銅スプレッダを含む従来型のヒートスプレッダも重くなる傾向がある。
【発明の概要】
【0005】
本開示の態様によれば、熱拡散要素が提供される。熱拡散要素には、圧縮性熱分解グラファイトシートと、圧縮性熱分解グラファイトシートとインターリーブされた剛性熱分解グラファイトシートが含まれる。
【0006】
追加または代替の実施形態によれば、圧縮性熱分解グラファイトシート及び剛性熱分解グラファイトシートの少なくとも一方は、約1000W/m-Kを超える面内熱伝導率を示し、圧縮性熱分解グラファイトシート及び剛性熱分解グラファイトシートの密度は、銅の密度の約10%未満である。
【0007】
追加または代替の実施形態によれば、圧縮性熱分解グラファイトシートと剛性熱分解グラファイトシートは、インターリーブ方向に一緒に圧縮される。
【0008】
追加または代替の実施形態によれば、圧縮性熱分解グラファイトシートと剛性熱分解グラファイトシートは、インターリーブ方向にクランプされる。
【0009】
本開示の態様によれば、ヒートスプレッダが設けられて、圧縮性熱分解グラファイトシート、熱の伝達と熱の拡散を実現する熱拡散要素を形成する、圧縮性熱分解グラファイトシートとインターリーブされる剛性熱分解グラファイトシート、及び熱拡散要素をクランプし、圧縮性熱分解グラファイトシート及び剛性熱分解グラファイトシートを熱が伝達する方向に圧縮するためのクランプ、を含む。
【0010】
追加または代替の実施形態によれば、圧縮性熱分解グラファイトシート及び剛性熱分解グラファイトシートの少なくとも一方は、約1000W/m-Kを超える面内熱伝導率を示し、圧縮性熱分解グラファイトシート及び剛性熱分解グラファイトシートの密度は、銅の密度の約10%未満である。
【0011】
追加または代替の実施形態によれば、熱が伝達する方向は、圧縮性熱分解グラファイトシートと剛性熱分解グラファイトシートのインターリーブ方向である。
【0012】
追加または代替の実施形態によれば、シールにより、熱拡散要素及びクランプの少なくとも一方またはその周囲への水分の浸入が防止される。
【0013】
追加または代替の実施形態によれば、熱拡散要素は、熱拡散要素の残りの部分に対して横方向に配向された圧縮性かつ剛性熱分解グラファイトシートを含む横断部をさらに含む。
【0014】
追加または代替の実施形態によれば、ヒートスプレッダは、モジュール及びコールドプレートをさらに含む。熱拡散要素は、モジュールとコールドプレートとの間に介在され、モジュールからコールドプレートへの第1方向の熱の伝達を実現し、第1方向に対して横方向の第2方向に熱を拡散する。クランプは、熱拡散要素をモジュールとコールドプレートとの間にクランプし、圧縮性熱分解グラファイトシート及び剛性熱分解グラファイトシートを第1方向に圧縮するように配置及び構成されている。
【0015】
追加または代替の実施形態によれば、モジュールには熱を発生する電子要素が含まれる。
【0016】
追加または代替の実施形態によれば、第1方向は、圧縮性熱分解グラファイトシートと剛性熱分解グラファイトシートのインターリーブ方向である。
【0017】
追加または代替の実施形態によれば、クランプは、圧縮性熱分解グラファイトシート及び剛性熱分解グラファイトシートを圧縮して熱的能力を最適化するように調整される。
【0018】
追加または代替の実施形態によれば、シールにより、熱拡散要素及びクランプの少なくとも一方またはその周囲への水分の浸入が防止される。
【0019】
追加または代替の実施形態によれば、モノリシック金属要素が、熱拡散要素を備えたモジュールとコールドプレートとの間に介在される。
【0020】
追加または代替の実施形態によれば、圧縮性熱分解グラファイトシートは、モジュール、モノリシック金属要素、剛性熱分解グラファイトシート、及びコールドプレート間のCTE不一致コンプライアンスを設ける。
【0021】
追加または代替の実施形態によれば、モノリシック金属要素は、熱拡散要素が使い捨てられるポケットを画定し、ポケットの高さは、圧縮性熱分解グラファイトシート及び剛性熱分解グラファイトシートが圧縮される前の熱拡散要素の高さよりも低い。
【0022】
本開示の態様によれば、ヒートスプレッダを組み立てる方法が設けられて、熱の伝達と熱の拡散を実現する熱拡散要素を形成するよう、圧縮性熱分解グラファイトシートと剛性熱分解グラファイトシートをインターリーブすること、及び圧縮性熱分解グラファイトシートと剛性熱分解グラファイトシートを熱が伝達する方向に圧縮すること、を含む。
【0023】
追加または代替の実施形態によれば、この方法は、熱拡散要素を、モジュールとコールドプレートとの間に介在させ、モジュールからコールドプレートへの第1方向の熱の伝達を実現し、第1方向に対して横方向の第2方向に熱を拡散することをさらに含み、圧縮することが、モジュールとコールドプレートの間に熱拡散要素をクランプして、圧縮性熱分解グラファイトシートと剛性熱分解グラファイトシートを第1方向に圧縮することを含む。
【0024】
追加または代替の実施形態によれば、方法は、熱拡散要素と共に、モジュールとコールドプレートとの間にモノリシック金属要素を介在させることをさらに含む。
【0025】
さらなる特徴及び利点が、本開示の技術を通して実現される。他の実施形態及び本開示の態様は、本明細書において詳細に記載され、請求された技術的概念の一部であると判断される。利点及び特徴を伴う本開示をより良く理解するために、説明及び図面を参照されたい。
本開示をより完全に理解するために、ここで、添付の図面及び詳細な説明に関連して以下の簡単な説明を参照する。ここでは、同様の参照記号は同様の部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施形態に従った熱拡散要素の概略的な側面図である。
図2】実施形態に従った熱拡散要素を備えるヒートスプレッダの概略的な側面図である。
図3】実施形態に従った図2のヒートスプレッダと熱拡散要素のアセンブリのグラフィック図である。
図4】実施形態に従った熱拡散要素及び横断部を備えるヒートスプレッダの概略的な側面図である。
図5】実施形態に従った熱拡散要素を備えるヒートスプレッダの概略的な側面図である。
図6】実施形態に従った熱拡散要素を備えるヒートスプレッダの概略的な側面図である。
図7】実施形態に従った熱拡散要素を備えるヒートスプレッダの概略的な側面図である。
図8】実施形態に従った熱拡散を組み立てる方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に説明するように、高伝導性と軽量性を備えた材料がヒートスプレッダにおいて使用され、モノリシック銅スプレッダと同等かそれより優れたヒートスプレッダの能力を付与しているが、はるかに軽量である。場合によっては、高伝導性と軽量性を備えた材料が、圧縮性及び非圧縮性、あるいは剛性のPGS材料のクランプ層として設けられる。材料を共に固定することで、さらなる軽量化の可能性が得られる。
【0028】
図1を参照すると、熱拡散要素101が設けられ、圧縮性熱分解グラファイトシート110と剛性熱分解グラファイトシート120とを含む。剛性熱分解グラファイトシート120は、圧縮性熱分解グラファイトシート110とインターリーブされる。圧縮性熱分解グラファイトシート110及び剛性熱分解グラファイトシート120のうち少なくとも1つは、約1000W/m-Kを超える面内熱伝導率を示す。圧縮性熱分解グラファイトシート110及び剛性熱分解グラファイトシート120は、銅などの金属材料よりも密度がはるかに低い。例えば、剛性熱分解グラファイトシート120の密度は、金属材料の密度の約10%未満とすることができる。圧縮性熱分解グラファイトシート110の密度は、金属材料の密度の約10%未満、場合によっては、約5%未満とすることができる。圧縮性熱分解グラファイトシート110及び剛性熱分解グラファイトシート120は、例えば、クランプ130によって、インターリーブ方向Aに一緒に圧縮することができる。この圧縮により、圧縮性熱分解グラファイトシート110及び剛性熱分解グラファイトシート120の面内熱伝導性が効果的に活性化され、熱拡散要素101は、第1方向(つまり、インターリーブ方向A)に熱を伝達でき、第2方向(つまり、面内方向B)に熱を拡散できる。
【0029】
実施形態によれば、剛性熱分解グラファイトシート120は、密度が約1200~1300kg/m3であり得、圧縮性熱分解グラファイトシート110は、密度が約400~500kg/m3のスポンジ状の性質を有することができる。
【0030】
図2を参照すると、ヒートスプレッダ201が設けられ、動作中に熱を発生する電子機器211を含むモジュール210、電子機器211によって発生した熱を吸収及び放散するように構成された熱交換器またはコールドプレート(以下、「コールドプレート」と称する)220、熱拡散要素230、及びクランプ240を含む。熱拡散要素230には、圧縮性熱分解グラファイトシート231と、圧縮性熱分解グラファイトシート231とインターリーブされた剛性熱分解グラファイトシート232が含まれる。圧縮性熱分解グラファイトシート231及び剛性熱分解グラファイトシート232のうち少なくとも1つは、約1000W/m-Kを超える面内熱伝導率を示す。圧縮性熱分解グラファイトシート231及び剛性熱分解グラファイトシート232は、銅などの金属材料よりも密度がはるかに低い。例えば、剛性熱分解グラファイトシート120の密度は、金属材料の密度の約10%未満とすることができる。圧縮性熱分解グラファイトシート110の密度は、金属材料の密度の約10%未満、場合によっては、約5%未満とすることができる。
【0031】
上述のように、実施形態によれば、剛性熱分解グラファイトシート232は、密度が約1200~1300kg/m3であり得、圧縮性熱分解グラファイトシート231は、密度が約400~500kg/m3のスポンジ状の性質を有することができる。
【0032】
熱拡散要素230は、モジュール210とコールドプレート220の間に介在されており、電子機器211によって生成された熱をモジュール210からコールドプレート220に第1方向(つまり、圧縮性熱分解グラファイトシート231と剛性熱分解グラファイトシート232のインターリーブ方向に対するインターリーブ方向A)に伝達する。熱拡散要素230は、第1方向に対して横方向の第2方向(つまり、圧縮性熱分解グラファイトシート231及び剛性熱分解グラファイトシート232の面内方向B)にも熱を拡散する。クランプ240には、少なくともコールドプレート220と係合してコールドプレート220をモジュール210に向かって引き寄せることができるネジ241を含めることができる。クランプ240は、コールドプレート220をモジュール210に向かって引き寄せる役割を果たす様々な他の構成を代替的に含む、または設けることができる。いずれの場合も、クランプ240は、熱拡散要素230をモジュール210とコールドプレート220の間に挟み込み、圧縮性熱分解グラファイトシート231と剛性熱分解グラファイトシート232を第1方向またはインターリーブ方向Aに圧縮する役割を果たす(図3では、圧縮性熱分解グラファイトシート231のみが圧縮されているように図示されているが、これはわかりやすくするためであり、必ずそうであるわけではない)。圧縮性熱分解グラファイトシート231及び剛性熱分解グラファイトシート232のこの圧縮により、圧縮性熱分解グラファイトシート231及び剛性熱分解グラファイトシート232の面内熱伝導性が効果的に活性化される。
【0033】
実施形態によれば、クランプ240は、圧縮性熱分解グラファイトシート231と剛性熱分解グラファイトシート232を圧縮して、圧縮性熱分解グラファイトシート231と剛性熱分解グラファイトシート232との間の接触抵抗を調整するために使用することができる。これにより、熱拡散要素230の熱的能力を全体的に最適化し、圧縮性熱分解グラファイトシート231及び剛性熱分解グラファイトシート232の熱的能力及び面内熱伝導率を最適化することができる。
【0034】
さらなる実施形態または代替実施形態によれば、圧縮性熱分解グラファイトシート231及び剛性熱分解グラファイトシート232は、1:1の順序で互いにインターリーブされる必要はなく、他の構成も可能であることを理解されたい。これらには、圧縮性熱分解グラファイトシート231のみが設けられた構成、及び/または複数の圧縮性熱分解グラファイトシート232が単一の剛性熱分解グラファイトシート232とインターリーブされた構成が含まれる。
【0035】
図2に示すように、ヒートスプレッダ201は、熱拡散要素230を備えたモジュール210とコールドプレート220との間に介在するモノリシック金属要素250も含むことができる。モノリシック金属要素250は、銅または他の適切な金属または金属合金などの金属材料で形成できる。モノリシック金属要素250は、様々な構成で設けることができるが、一般には、熱拡散要素230を配置できるポケット251を画定するように形成された単一の一体型要素として設けられる。この意味で、モノリシック金属要素250はまた、クランプ240と係合することも、クランプ240によって係合されることもできる。
【0036】
図2を引き続き参照すると、ヒートスプレッダ201にはシール245も含まれ得る。シール245は、ヒートスプレッダ201で使用するために任意のサイズ、形状、及び寸法をとることができる。すべての場合ではないが、一部の場合に、シール245は、熱拡散要素230への水分の侵入を防ぐように配置及び構成できる。いくつかの他の場合に、シール245は、湿気がクランプ240の周囲に流れ込み、その後熱拡散要素230に侵入するのを防ぐように配置及び構成することもできる。
【0037】
図3を参照すると、実施形態によれば、圧縮性熱分解グラファイトシート231及び剛性熱分解グラファイトシート232が圧縮される前のポケット251の高さH1は、熱拡散要素230の高さH2よりも低くすることができる。したがって、上記のように、ポケット251の高さH1をクランプ240と共に調整して、圧縮性熱分解グラファイトシート231と剛性熱分解グラファイトシート232を圧縮し、熱拡散要素230の熱的能力を最適化することができる。つまり、圧縮性熱分解グラファイトシート231と剛性熱分解グラファイトシート232がポケット251の高さH2から高さH1まで圧縮されると、この圧縮の度合いによって熱拡散要素230の熱的能力が最適化される。
【0038】
実施形態によれば、圧縮の度合いは高さH2の約5~60%となり得る。
【0039】
圧縮性熱分解グラファイトシート231の圧縮性により、モジュール210、モノリシック金属要素250、剛性熱分解グラファイトシート232、及びコールドプレート220のうち少なくとも2つ以上の間で熱膨張係数(CTE)不一致コンプライアンスを設けることができる。
【0040】
図4を参照し、またさらなる実施形態によれば、図2及び図3の熱拡散要素230は、ハイブリッド化された構成、配置及びフォーメーションで設けられ得る。例えば、図4に示すように、熱拡散要素230は、圧縮性熱分解グラファイトシート231及び剛性熱分解グラファイトシート232ならびに横断部401を含むことができる。この横断部401は、熱拡散要素230の内部に設けることもできるが、必ずしも設ける必要はなく、圧縮性熱分解グラファイトシート231と剛性熱分解グラファイトシート232を含むことができる。横断部401の圧縮性熱分解グラファイトシート231及び剛性熱分解グラファイトシート232は、熱拡散要素230の残りの部分に対して横方向または垂直方向に配向または回転される。このようにして、横断部401は、(圧縮性熱分解グラファイトシート231及び剛性熱分解グラファイトシート232の面内熱拡散に加えて)貫通厚さ方向の熱の拡散のためのビアのように機能することができる。横断部401の圧縮性熱分解グラファイトシート231及び剛性熱分解グラファイトシート232は圧縮可能であり(つまり、熱拡散要素230の残りの部分によって)、したがって、モジュール210とコールドプレート220の間で高度な面内熱伝導を実現できる。この横断部401は、モジュール210のホットスポットまたはその近くに配置できる。
【0041】
図4では、横断部401が圧縮性熱分解グラファイトシート231と剛性熱分解グラファイトシート232との間に挟まれているように示されているが、これは必須ではなく、他の実施形態も可能であることを理解されたい。例えば、横断部401は、コールドプレート220及びモノリシック金属要素250の一方または両方と直接接触することができる。
【0042】
図5図7を参照すると、さらなる実施形態によれば、モノリシック金属要素250は、ポケット251が複数の異なる構成を有することができるように形成することができる。例えば、図2及び図3のポケット251はコールドプレート220に隣接しているが、ポケット251がモジュール210に隣接し得る(図5参照)、ポケット251がモノリシック金属要素250の部分601によって両側で挟まれ得る(図6参照)、またはポケット251がモジュール210とコールドプレート220との間の距離全体にわたって延びることができる(図7参照)。
【0043】
図8を参照すると、上述のヒートスプレッダ201のようなヒートスプレッダを組み立てる方法が提示されている。図8に示すように、この方法は、熱の伝達と熱の拡散を実現する熱拡散要素を形成するために、剛性熱分解グラファイトシートと圧縮性熱分解グラファイトシートとをインターリーブすること(ブロック801)、及び圧縮性熱分解グラファイトシートと剛性熱分解グラファイトシートを熱が伝達する方向に圧縮すること(ブロック802)を含む。実施形態によれば、この方法は、さらに、モジュールとコールドプレートとの間に熱拡散要素を介在させて、モジュールからコールドプレートへの第1方向の熱の伝達を実現し、第1方向に対して横方向の第2方向に熱を拡散させることを含むことができる(ブロック803)。さらに、圧縮には、モジュールとコールドプレートの間に熱拡散要素をクランプして、圧縮性熱分解グラファイトシートと剛性熱分解グラファイトシートを第1方向に圧縮すること(ブロック804)が含まれ得る。この方法は、さらに、熱拡散要素を備えたモジュールとコールドプレートとの間にモノリシック金属要素を介在させることを含み得る(ブロック805)。
【0044】
本開示の技術的効果及び利点は、コールドプレートの用途においてPGSを設けることであり、PGSは平面で非常に導電性が高く(>1000W/m-K)、一般的な高導電性材料に対する密度が約10%以下である。その結果、熱拡散能力は少なくとも銅製ヒートスプレッダと同等になり、重量も大幅に軽減され得る(一般的な銅製設計に比べて少なくとも約20~30%)。PGSを一緒にクランプすることで、PGS間でのエポキシベースの材料の必要性がなくなる。これにより、さらなる重量の軽減が実現し、熱的能力も向上する。
【0045】
以下の特許請求の範囲における全てのミーンズまたはステッププラスファンクション要素の対応する構造、材料、行為、及び均等物は、具体的に特許請求された他の特許請求される要素と組み合わせて機能を実施するための任意の構造、材料、または行為を含むことが意図されている。本開示の記載は、例証及び記載の目的のために提示されているが、開示される形態における技術的概念に対して網羅的であるかまたは限定されことは意図されない。多くの修正及び変形が、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者には明らかとなるであろう。実施形態の選択及び説明は、本開示の原理及び実際の応用を最良に説明するために、及び他の当業者が、意図した特定の用途に適した様々な修正と共に様々な実施形態に対して、本開示を理解できるようにするために行った。
【0046】
本開示に対する好ましい実施形態について説明してきたが、当業者が、現在及び将来の両方において、以下の特許請求の範囲に含まれる種々の改善及び強化を行い得ることを理解されたい。これらの特許請求の範囲は、最初に説明した開示に対する適切な保護を維持するものと解釈すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】