(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】金属-リガンド錯体、これを含むエチレン系重合体製造用の触媒組成物およびこれを用いたエチレン系重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07F 7/00 20060101AFI20241219BHJP
C07C 39/06 20060101ALI20241219BHJP
C08F 10/02 20060101ALI20241219BHJP
C08F 210/16 20060101ALI20241219BHJP
C08F 4/64 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C07F7/00 A CSP
C07C39/06
C08F10/02
C08F210/16
C08F4/64
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539342
(86)(22)【出願日】2022-12-28
(85)【翻訳文提出日】2024-08-06
(86)【国際出願番号】 IB2022062827
(87)【国際公開番号】W WO2023126844
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0190680
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0180789
(32)【優先日】2022-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520060977
【氏名又は名称】サビック エスケー ネクスレン カンパニー ピーティーイー. エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】SABIC SK NEXLENE COMPANY PTE. LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】シン ドンチョル
(72)【発明者】
【氏名】キム ミジ
(72)【発明者】
【氏名】キム ミンジ
(72)【発明者】
【氏名】オ イェノック
【テーマコード(参考)】
4H006
4H049
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB84
4H049VN06
4H049VP01
4H049VQ92
4H049VU33
4H049VW01
4J100AA02P
4J100AA19Q
4J100CA01
4J100CA04
4J100DA13
4J100DA14
4J100DA42
4J100FA10
4J100FA19
4J100FA28
4J128AA01
4J128AC27
4J128AE06
4J128BA02B
4J128BB01B
4J128BC12B
4J128BC15B
4J128EB02
4J128EB07
4J128EC02
4J128FA02
4J128GA05
4J128GA08
4J128GB01
(57)【要約】
本発明は、特定の官能基を導入することにより、酸素や水分といった不純物に対する触媒の抵抗性および安定性が増大し、著しく向上した高温活性を有する金属-リガンド錯体、これを含むエチレン系重合体製造用の触媒組成物およびこれを用いるエチレン系重合体の製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される、金属-リガンド錯体。
【化1】
(前記化学式1中、
Mは、周期表上第4族の遷移金属であり、
Ar1およびAr2は、互いに独立して、C6-C20アリールであり、前記Ar1およびAr2のアリールは、C1-C20アルキルでさらに置換されてもよく、
R1~R4は、互いに独立して、C1-C20アルキル、C6-C20アリールまたはC6-C20アリールC1-C20アルキルであり、
R5およびR6は、互いに独立して、C1-C20アルキルであり、
R7およびR8は、互いに独立して、ハロゲンまたはC1-C20アルキルであり、
a、b、c、d、eおよびfは、互いに独立して、0~4の整数であり、
mは、2~5の整数である。)
【請求項2】
前記Ar1およびAr2は、互いに独立して、C6-C20アリールまたはC1-C20アルキルC6-C20アリールであり、
R1~R4は、互いに独立して、C1-C20アルキルであり、
R7およびR8は、互いに独立して、ハロゲンまたはC1-C20アルキルであり、
a、b、c、d、eおよびfは、互いに独立して、1~3の整数であり、
mは、3~5の整数である、請求項1に記載の金属-リガンド錯体。
【請求項3】
下記化学式2-1または化学式2-2で表される、請求項1に記載の金属-リガンド錯体。
【化2】
(前記化学式2-1および2-2中、
Mは、チタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、
Ar1およびAr2は、互いに独立して、C6-C20アリールまたはC1-C20アルキルC6-C20アリールであり、
R1~R4は、互いに独立して、C1-C20アルキルであり、
R5およびR6は、互いに独立して、C1-C20アルキルであり、
X1およびX2は、互いに独立して、ハロゲンであり、
R’およびR’’は、互いに独立して、水素またはC1-C20アルキルであり、
mは、3~5の整数である。)
【請求項4】
前記Ar1およびAr2は、互いに独立して、C6-C12アリールまたはC1-C20アルキルC6-C12アリールであり、
R1~R4は、互いに独立して、C1-C10アルキルであり、
R5およびR6は、互いに独立して、C1-C10アルキルであり、
R’およびR’’は、互いに独立して、水素またはC1-C10アルキルである、請求項3に記載の金属-リガンド錯体。
【請求項5】
下記化学式3-1または化学式3-2で表される、請求項1に記載の金属-リガンド錯体。
【化3】
(前記化学式3-1および3-2中、
Mは、ジルコニウムまたはハフニウムであり、
Arは、C6-C12アリールまたはC1-C20アルキルC6-C12アリールであり、
R11は、C1-C5アルキルであり、
R12は、C1-C10アルキルであり、
X11は、フルオロまたはクロロであり、
R’’’は、水素またはC1-C10アルキルであり、
nは、1~3の整数である。)
【請求項6】
下記化学式4-1または化学式4-2で表される、請求項5に記載の金属-リガンド錯体。
【化4】
(前記化学式4-1および4-2中、
Mは、ジルコニウムまたはハフニウムであり、
Rは、水素またはC8-C20アルキルであり、
R12は、C1-C10アルキルであり、
X11は、フルオロまたはクロロであり、
R’’’は、水素またはC1-C10アルキルであり、
nは、1~3の整数である。)
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の金属-リガンド錯体と、
助触媒とを含む、エチレン系重合体製造用の触媒組成物。
【請求項8】
前記助触媒は、アルミニウム化合物助触媒、ホウ素化合物助触媒、またはこれらの混合物である、請求項7に記載のエチレン系重合体製造用の触媒組成物。
【請求項9】
前記助触媒は、金属-リガンド錯体1モルに対して0.5~10,000モル使用される、請求項7に記載のエチレン系重合体製造用の触媒組成物。
【請求項10】
請求項7に記載のエチレン系重合体製造用の触媒組成物の存在下で、エチレンまたはエチレンとα-オレフィンを重合してエチレン系重合体を製造するステップを含む、エチレン系重合体の製造方法。
【請求項11】
前記重合は、100~250℃で行われる、請求項10に記載のエチレン系重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属-リガンド錯体、これを含むエチレン系重合体製造用の触媒組成物およびこれを用いたエチレン系重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エチレンとα-オレフィンの共重合体またはエチレンとオレフィン-ジエンの共重合体といったエチレン系重合体の製造には、一般的に、チタンまたはバナジウム化合物の主触媒成分とアルキルアルミニウム化合物の助触媒成分で構成されるいわゆるチーグラー・ナッタ触媒系が使用されてきた。
【0003】
米国特許第3,594,330号および第3,676,415号に、改善したチーグラー・ナッタ触媒について開示しているが、チーグラー・ナッタ触媒系は、エチレン重合に対して高活性を示すが、不均一な触媒活性点のため、一般的に生成される重合体は、分子量分布が広く、特に、エチレンとα-オレフィンの共重合体においては、組成分布が均一でないというデメリットがあった。
【0004】
その後、単一種の触媒活性点を有する均一系触媒として、既存のチーグラー・ナッタ触媒系に比べて分子量分布が狭く、組成分布が均一なポリエチレンを製造することができるジルコニウム、ハフニウムなど、周期表第4族遷移金属のメタロセン化合物と、助触媒であるメチルアルミノキサン(methylaluminoxane)で構成されるメタロセン触媒系に関する様々な研究がなされてきた。
【0005】
例えば、ヨーロッパ公開特許第320,762号、第372,632号では、Cp2TiCl2、Cp2ZrCl2、Cp2ZrMeCl、Cp2ZrMe2、エチレン(IndH4)2ZrCl2などにおいて、メタロセン化合物を助触媒メチルアルミノキサンで活性化することにより、エチレンを高活性で重合して、分子量分布(Mw/Mn)が1.5~2.0の範囲であるポリエチレンを製造することができることを発表している。
【0006】
しかし、前記触媒系では、高分子量の重合体を得ることが困難である。
【0007】
すなわち、高温で実施される溶液重合法に適用する場合、重合活性が急激に減少し、β-水素脱離反応が優勢であり、高分子量重合体を製造するには好適ではないことが知られている。
【0008】
一方、有機金属触媒は、製造ステップの難易度が高く、複雑であり、高価の製造費用がかかることが多い。また、製造過程や保管および移送時に、触媒が空気中に露出することが発生する可能性があり、この際、触媒の活性が大きく低下するか、最悪の場合、使用できず廃棄しなければならない状況を引き起こし得る。触媒の製造会社や触媒の使用会社としての立場で、空気中の酸素や水分に対して安定した触媒は、大きなメリットを有しているに違いない。
【0009】
したがって、化学産業では依然として求められる向上した特性を有する触媒および触媒前駆体が必要な状況である。したがって、優れた安定性、高温活性、高級α-オレフィンとの反応性および高い分子量の重合体の製造能力などの特性を有する競争力のある触媒に関する研究が切実に必要な状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明は、前記の問題を改善するために、特定の官能基を有する金属-リガンド錯体およびこれを含む触媒組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は、本発明の触媒組成物を用いるエチレン系重合体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、特定の官能基を導入することにより、酸素や水分といった不純物に対する触媒の抵抗性および高温での安定性が増大して著しく向上した高温活性を有する金属-リガンド錯体を提供し、本発明の金属-リガンド錯体は、下記化学式1で表される。
【化1】
(前記化学式1中、
Mは、周期表上第4族の遷移金属であり、
Ar1およびAr2は、互いに独立して、C6-C20アリールであり、前記Ar1およびAr2のアリールは、C1-C20アルキルでさらに置換されてもよく、
R1~R4は、互いに独立して、C1-C20アルキル、C6-C20アリールまたはC6-C20アリールC1-C20アルキルであり、
R5およびR6は、互いに独立して、C1-C20アルキルであり、
R7およびR8は、互いに独立して、ハロゲンまたはC1-C20アルキルであり、
a、b、c、d、eおよびfは、互いに独立して、0~4の整数であり、
mは、2~5の整数である。)
【0013】
また、本発明は、本発明の金属-リガンド錯体および助触媒を含むエチレン系重合体製造用の触媒組成物を提供する。
【0014】
また、本発明は、本発明のエチレン系重合体製造用の触媒組成物の存在下で、エチレンまたはエチレンとα-オレフィンを重合してエチレン系重合体を製造するステップを含むエチレン系重合体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の金属-リガンド錯体は、特定の官能基を導入することにより、錯体の安定性が著しく向上し、高温の重合温度で、触媒活性の低下なく重合を促進することができる。
【0016】
特に、本発明の金属-リガンド錯体は、酸素や水分といった不純物に対する抵抗性が相対的に優れており、高い重合温度で高分子量のエチレン系重合体を製造できるというメリットを有する。
【0017】
すなわち、エチレン系重合体、すなわち、エチレン単独重合体またはエチレンとアルファオレフィンの共重合体の製造時に、本発明の金属-リガンド錯体を含む触媒組成物を用いる場合、220℃以上の高い重合温度で、優れた触媒活性により、高分子量のエチレン単独重合体またはエチレンとアルファオレフィンの共重合体を効率的に製造することができる。
【0018】
これは、本発明による金属-リガンド錯体の構造的特徴によることであり、本発明による金属-リガンド錯体は、不純物に対する抵抗性および熱安定性に優れることから、高温でも高い触媒活性を維持し、且つオレフィン類との共重合反応性が良く、高分子量のエチレン系重合体を高い収率で製造できるというメリットを有する。
【0019】
したがって、本発明の金属-リガンド錯体およびこれを含む触媒組成物は、優れた物性を有するエチレン系重合体の製造に非常に有効に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の金属-リガンド錯体、これを含むエチレン系重合体製造用の触媒組成物およびこれを用いるエチレン系重合体の製造方法について詳述するが、ここで使用される技術用語および科学用語において他の定義がない限り、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が通常理解している意味を有し、下記の説明から本発明の要旨を不明瞭にし得る公知の機能および構成に関する説明は省略する。
【0021】
本明細書で使用されている下記の用語は、以下のように定義されるが、これは、単に例示的なものに過ぎず、本発明、出願または用途を限定するものではない。
【0022】
本明細書の用語「置換基(substituent)」、「ラジカル(radical)」、「基(group)」、「グループ(group)」、「部分(moiety)」、および「断片(fragment)」は、互いに変えて使用することができる。
【0023】
本明細書の用語「CA-CB」は、「炭素数がA以上であり、B以下」であるものを意味する。
【0024】
本明細書の用語「アルキル」は、炭素および水素原子だけで構成された直鎖または分岐鎖の飽和炭化水素1価ラジカルを意味する。前記アルキルは、1~20個の炭素原子、1~10個の炭素原子、1~5個の炭素原子、5~20個の炭素原子、8~20個の炭素原子または8~15個の炭素原子を有することができるが、これに限定されない。前記アルキルの具体的な例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、ペンチル、i-ペンチル、メチルブチル、n-ヘキシル、t-ヘキシル、メチルペンチル、ジメチルブチル、ヘプチル、エチルペンチル、メチルヘキシル、ジメチルペンチル、n-オクチル、t-オクチル、ジメチルヘキシル、エチルヘキシル、n-デシル、t-デシル、n-ドデシル、t-ドデシルなどを含むが、これに限定されない。
【0025】
本明細書の用語「アリール」は、一つの水素除去によって芳香族炭化水素から誘導された1価の有機ラジカルであり、各環に、適切には4~7個、好ましくは5または6個の環原子を含む単一または縮合環系を含み、多数個のアリールが単結合で連結されている形態まで含む。前記アリールの具体的な例としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フルオレニル、フェナントレニル、アントラセニル、トリフェニレニル、ピレニル、クリセニル、ナフタセニルなどを含むが、これに限定されない。
【0026】
本明細書の用語「アルキルアリール」は、少なくとも一つのアルキルで置換されたアリールラジカルを意味し、ここで「アルキル」および「アリール」は、前記定義したとおりである。前記アルキルアリールの具体的な例としては、トリルなどを含むが、これに限定されない。
【0027】
本明細書の用語「アリールアルキル」は、少なくとも一つのアリールで置換されたアルキルラジカルを意味し、ここで、「アルキル」および「アリール」は、前記定義したとおりである。前記アリールアルキルの具体的な例としては、ベンジルなどを含むが、これに限定されない。
【0028】
本発明は、特定の官能基を有する金属-リガンド錯体に関し、下記化学式1で表される金属-リガンド錯体を提供する。
【0029】
【0030】
(前記化学式1中、
Mは、周期表上第4族の遷移金属であり、
Ar1およびAr2は、互いに独立して、C6-C20アリールであり、前記Ar1およびAr2のアリールは、C1-C20アルキルでさらに置換されてもよく、
R1~R4は、互いに独立して、C1-C20アルキル、C6-C20アリールまたはC6-C20アリールC1-C20アルキルであり、
R5およびR6は、互いに独立して、C1-C20アルキルであり、
R7およびR8は、互いに独立して、ハロゲンまたはC1-C20アルキルであり、
a、b、c、d、eおよびfは、互いに独立して、0~4の整数であり、
mは、2~5の整数である。)
【0031】
一実施形態による金属-リガンド錯体は、脱離基として特定の官能基であるアリールオキシ基を導入することで、酸素や水分といった不純物に対する触媒の抵抗性を増加させて、中心遷移金属とリガンドとの強い結合を維持することにより、錯体の安定性を著しく向上させることができる。
【0032】
また、一実施形態による金属-リガンド錯体は、脱離基としてメチル基ではなく、アリールオキシ基の導入により、有機溶媒に対する溶解度が著しく改善し、重合工程をより効率的に改善することができる。
【0033】
上述の構造的特徴により、前記金属-リガンド錯体は、炭化水素溶媒に対して著しく向上した溶解度だけでなく、不純物に対して相対的に高い抵抗性と優れた熱安定性を有することから、高温でも高い触媒活性を維持し、且つ他のオレフィン類との重合反応性が良く、高分子量のエチレン系重合体を高い収率で製造することができ、周知のメタロセンおよび非メタロセン系単一活性点触媒に比べて、商業的な実用性が高い。
【0034】
好ましくは、一実施形態による化学式1中、Ar1およびAr2は、互いに独立して、C6-C20アリールまたはC1-C20アルキルC6-C20アリールであり、R1~R4は、互いに独立して、C1-C20アルキルであり、R7およびR8は、互いに独立して、ハロゲンまたはC1-C20アルキルであり、a、b、c、d、eおよびfは、互いに独立して、1~3の整数であり、mは、3~5の整数であってもよく、より好ましくは、Ar1およびAr2は、互いに独立して、C6-C12アリールまたはC1-C20アルキルC6-C12アリールであり、R1~R4は、互いに独立して、C1-C10アルキルであり、R5およびR6は、互いに独立して、C1-C10アルキルであり、R7およびR8は、互いに独立して、ハロゲンまたはC1-C10アルキルであり、a、b、c、d、eおよびfは、互いに独立して、1または2の整数であり、mは、3~5の整数であってもよい。
【0035】
一具体例において、前記Mは、チタン、ジルコニウムまたはハフニウムであってもよい。
【0036】
一具体例において、前記Ar1およびAr2は、互いに独立して、C1-C20アルキルで置換または非置換のアリールであり、ここで、アリールは、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、ピレニル、フェナントレニルまたはテトラセニルであってもよい。
【0037】
一具体例において、前記R1~R4は、互いに独立して、分岐鎖のC3-C10アルキルであってもよいか、分岐鎖のC3-C7アルキルであってもよいか、分岐鎖のC3-C4アルキルであってもよい。
【0038】
より向上した抵抗性、熱安定性および優れた触媒活性を有するための面で、好ましくは、一実施形態による金属-リガンド錯体は、下記化学式2-1または化学式2-2で表されることができる。
【0039】
【0040】
【0041】
(前記化学式2-1および2-2中、
Mは、チタン、ジルコニウムまたはハフニウムであり、
Ar1およびAr2は、互いに独立して、C6-C20アリールまたはC1-C20アルキルC6-C20アリールであり、
R1~R4は、互いに独立して、C1-C20アルキルであり、
R5およびR6は、互いに独立して、C1-C20アルキルであり、
X1およびX2は、互いに独立して、ハロゲンであり、
R’およびR’’は、互いに独立して、水素またはC1-C20アルキルであり、
mは、3~5の整数である。)
【0042】
一実施形態による化学式2-1および2-2中、前記Ar1およびAr2は、互いに独立して、C6-C12アリールまたはC1-C20アルキルC6-C12アリールであり、R1~R4は、互いに独立して、C1-C10アルキルであり、R5およびR6は、互いに独立して、C1-C10アルキルであり、R’およびR’’は、互いに独立して、水素またはC1-C10アルキルであってもよく、より好ましくは、前記Ar1およびAr2は、互いに同一であり、C6-C12アリールまたはC1-C20アルキルC6-C12アリールであり、R1~R4は、互いに同一であり、C1-C10アルキルであり、R5およびR6は、互いに同一であり、C1-C10アルキルであり、R’およびR’’は、互いに同一であり、水素またはC1-C10アルキルであってもよい。
【0043】
一具体例において、前記R1~R4は、互いに独立して、分岐鎖のC3-C10アルキルであってもよいか、分岐鎖のC3-C7アルキルであってもよいか、分岐鎖のC3-C4アルキルであってもよい。
【0044】
より好ましくは、一実施形態による金属-リガンド錯体は、下記化学式3-1または化学式3-2で表されることができる。
【0045】
【0046】
【0047】
(前記化学式3-1および3-2中、
Mは、ジルコニウムまたはハフニウムであり、
Arは、C6-C12アリールまたはC1-C20アルキルC6-C12アリールであり、
R11は、C1-C5アルキルであり、
R12は、C1-C10アルキルであり、
X11は、フルオロまたはクロロであり、
R’’’は、水素またはC1-C10アルキルであり、
nは、1~3の整数である。)
【0048】
一実施形態による化学式3-1および3-2中、前記Arは、C6-C12アリールまたはC8-C20アルキルC6-C12アリールであり、R11は、C3-C5アルキルであり、R12は、C1-C10アルキルであり、X11は、フルオロまたはクロロであり、R’’’は、水素またはC1-C5アルキルであり、nは、1~3の整数であってもよい。
【0049】
一具体例において、前記R11は、分岐鎖のC3-C4アルキル、具体的には、t-ブチルであってもよい。
【0050】
高温安定性、触媒活性およびオレフィン類との反応性をより向上させるための点から、好ましくは、一実施形態による金属-リガンド錯体は、下記化学式4-1または化学式4-2で表されてもよい。
【0051】
【0052】
【0053】
(前記化学式4-1および4-2中、
Mは、ジルコニウムまたはハフニウムであり、
Rは、水素またはC8-C20アルキルであり、
R12は、C1-C10アルキルであり、
X11は、フルオロまたはクロロであり、
R’’’は、水素またはC1-C10アルキルであり、
nは、1~3の整数である。)
【0054】
一具体例において、前記Rは、水素であってもよい。
【0055】
一具体例において、前記Rは、直鎖または分岐鎖のC8-C20アルキルであってもよく、具体的には、n-オクチル、t-オクチル、n-ノニル、t-ノニル、n-デシル、t-デシル、n-ウンデシル、t-ウンデシル、n-ドデシル、t-ドデシル、n-トリデシル、t-トリデシル、n-テトラデシル、t-テトラデシル、n-ペンタデシルまたはt-ペンタデシルであってもよい。
【0056】
一具体例において、前記R’’’は、水素またはC1-C5アルキルであってもよく、具体的には、水素またはメチルであってもよい。
【0057】
具体的には、一実施形態による金属-リガンド錯体は、下記構造から選択される化合物であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0058】
【化9】
(前記化合物中、Mは、ジルコニウムまたはハフニウムである。)
【0059】
また、本発明は、本発明の金属-リガンド錯体および助触媒を含む、エチレン単独重合体およびエチレンとアルファオレフィンの共重合体から選択されるエチレン系重合体製造用の触媒組成物を提供する。
【0060】
一実施形態による助触媒は、ホウ素化合物助触媒、アルミニウム化合物助触媒およびこれらの混合物であってもよい。
【0061】
一実施形態による助触媒は、金属-リガンド錯体1モルに対して0.5~10,000モル含まれてもよいが、これに制限されない。
【0062】
前記助触媒として使用可能なホウ素化合物は、米国特許第5,198,401号に開示されたホウ素化合物が挙げられ、具体的には、下記の化学式A~Cで表される化合物から選択される一つまたは二つ以上の混合物であってもよい。
【0063】
【0064】
【0065】
【化12】
(前記化学式A~化学式C中、
Bは、ホウ素原子であり、R21は、フェニルであり、前記フェニルは、フッ素原子、C1-C20アルキル、フッ素原子で置換されたC1-C20アルキル、C1-C20アルコキシおよびフッ素原子で置換されたC1-C20アルコキシから選択される3~5個の置換基でさらに置換されてもよく、R22は、C5-C7芳香族ラジカルまたはC1-C20アルキルC6-C20アリールラジカル、C6-C20アリールC1-C20アルキルラジカル、例えば、トリフェニルメチリウム(triphenylmethylium)ラジカルであり、Zは、窒素またはリン原子であり、R23は、C1-C20アルキルラジカルまたは窒素原子とともに2個のC1-C10アルキルで置換されたアニリニウム(Anilinium)ラジカルであり、qは、2または3の整数である。)
【0066】
前記ホウ素系助触媒は、例えば、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4,5-テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4-トリフルオロフェニル)ボラン、フェニルビス(ペンタフルオロフェニル)ボランなどから選択される一つまたは二つ以上であってもよい。
【0067】
前記ホウ素系助触媒は、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2、3,5、6-テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,4,5-テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,2,4-トリフルオロフェニル)ボレート、フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレートおよびテトラキス(3,5-ビストリフルオロメチルフェニル)ボレートから選択されるボレートアニオンを有する一つまたは二つ以上のホウ素化合物であってもよい。
【0068】
前記ホウ素系助触媒は、トリフェニルメチリウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリ(n-ブチル)アンモニウム、N,N-ジメチルアニリニウム、N,N-ジエチルアニリニウム、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウム、ジイソプロピルアンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウム、トリフェニルホスホニウム、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムおよびトリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムから選択されるカチオンを有する一つまたは二つ以上のホウ素化合物であってもよい。
【0069】
具体的には、前記ホウ素系助触媒は、トリフェニルメチリウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリ(n-ブチル)アンモニウム、N,N-ジメチルアニリニウム、N,N-ジエチルアニリニウム、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウム、ジイソプロピルアンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウム、トリフェニルホスホニウム、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムおよびトリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムから選択されるカチオンを有し、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,4,5-テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,2,4-トリフルオロフェニル)ボレート、フェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ボレートおよびテトラキス(3,5-ビストリフルオロメチルフェニル)ボレートから選択されるボレートアニオンを有する一つまたは二つ以上のホウ素化合物であってもよい。
【0070】
より具体的には、前記ホウ素系助触媒は、トリフェニルメチリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルメチリウムテトラキス(3,5-ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5-ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5-ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジイソプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、およびトリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートから選択される一つまたは二つ以上であってもよく、より好ましくは、トリフェニルメチリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートおよびトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランから選択されるいずれか一つまたは二つ以上であってもよい。
【0071】
本発明の一実施形態による触媒組成物において、助触媒として使用可能なアルミニウム化合物の一例としては、化学式DまたはEのアルミノキサン化合物、化学式Fの有機アルミニウム化合物または化学式Gまたは化学式Hの有機アルミニウムアルキルオキシドまたは有機アルミニウムアリールオキシド化合物が挙げられる。
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【化17】
(前記化学式D~H中、
R31は、C1-C20アルキルであり、好ましくは、メチルまたはイソブチルであり、rとsは、互いに独立して、5~20の整数であり、R32およびR33は、互いに独立して、C1-C20アルキルであり、Eは、水素原子またはハロゲン原子であり、tは、1~3の整数であり、R34は、C1-C20アルキルまたはC6-C30アリールである。)
【0077】
前記アルミニウム化合物として使用可能な具体的な例として、アルミノキサン化合物として、メチルアルミノキサン、修飾(modified)メチルアルミノキサン、テトライソブチルジアルミノキサンがあり、有機アルミニウム化合物の例として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、およびトリヘキシルアルミニウムを含むトリアルキルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジプロピルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライド、およびジヘキシルアルミニウムクロライドを含むジアルキルアルミニウムクロライド、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、プロピルアルミニウムジクロライド、イソブチルアルミニウムジクロライド、およびヘキシルアルミニウムジクロライドを含むアルキルアルミニウムジクロライド、ジメチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジプロピルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドおよびジヘキシルアルミニウムハイドライドを含むジアルキルアルミニウムハイドライド、メチルジメトキシアルミニウム、ジメチルメトキシアルミニウム、エチルジエトキシアルミニウム、ジエチルエトキシアルミニウム、イソブチルジブトキシアルミニウム、ジイソブチルブトキシアルミニウム、ヘキシルジメトキシアルミニウム、ジヘキシルメトキシアルミニウム、ジオクチルメトキシアルミニウムを含むアルキルアルコキシアルミニウムが挙げられる。好ましくは、アルミノキサン化合物、トリアルキルアルミニウムおよびこれらの混合物を助触媒として使用してもよく、具体的には、メチルアルミノキサン、修飾メチルアルミノキサン、テトライソブチルジアルミノキサン、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムから選択される単独またはこれらの混合物を使用してもよく、より好ましくは、テトライソブチルジアルミノキサン、トリイソブチルアルミニウムまたはこれらの混合物を使用してもよい。
【0078】
好ましくは、本発明の一実施形態による触媒組成物において、前記アルミニウム化合物を助触媒として使用する場合、本発明の金属-リガンド錯体と助触媒との比率の好ましい範囲は、アルミニウム化合物助触媒は遷移金属(M):アルミニウム原子(Al)の比が、モル比を基準に、1:10~10,000の範囲であってもよい。
【0079】
好ましくは、本発明の一実施形態による触媒組成物において、前記アルミニウム化合物およびホウ素化合物を同時に助触媒として使用する場合、本発明の金属-リガンド錯体と助触媒との比率の好ましい範囲は、モル比を基準に、遷移金属(M):ホウ素原子(B):アルミニウム原子(Al)の比が、1:0.1~200:10~10,000の範囲であってもよく、より好ましくは、1:0.5~100:25~5,000の範囲であってもよい。
【0080】
本発明の金属-リガンド錯体と助触媒との比率が前記範囲内であるときに、エチレン系重合体を製造するための優れた触媒活性を示し、反応の純度に応じて比率の範囲が変化する。
【0081】
本発明の一実施形態によるさらに他の側面として、前記エチレン系重合体製造用の触媒組成物を用いたエチレン系重合体の製造方法は、適切な有機溶媒の存在下で、前記の金属-リガンド錯体、助触媒、および、エチレン、または、必要時にコモノマーを接触して行われてもよい。この際、金属-リガンド錯体である前触媒と助触媒成分は、別に反応器内に投入するか、または各成分を予め混合して反応器に投入してもよく、投入順序、温度または濃度などの混合条件は、特に制限されない。
【0082】
前記製造方法に使用可能な好ましい有機溶媒は、C3-C20の炭化水素であり、その具体的な例としては、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
【0083】
具体的には、エチレン単独重合体の製造時には、単量体としてエチレンを単独で使用し、エチレンとアルファオレフィンの共重合体を製造する場合には、エチレンとともに、コモノマーとしてC3~C18のα-オレフィンを使用してもよい。前記C3~C18のα-オレフィンの具体的な例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセンなどがある。本発明では、エチレンに、前記C3~C18のα-オレフィンを単独重合するか、2種以上のオレフィンを共重合してもよく、より好ましくは、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、または1-デセンとエチレンを共重合してもよい。
【0084】
エチレンの圧力は、1~1000気圧であり、さらに好ましくは、5~100気圧であってもよい。また、重合反応は、80℃以上、好ましくは100℃以上、さらに好ましくは、160℃~250℃の温度で行われることが効果的である。前記重合ステップの温度および圧力条件は、適用しようとする反応の種類および反応器の種類に応じて、重合反応の効率を考慮して決定されてもよい。
【0085】
一般的に、溶液重合工程は、上記のような高温で実施する場合、温度の上昇に伴い触媒の変形や劣化が発生して触媒の活性が低くなって、所望の物性の重合体を取得し難いが、本発明による触媒組成物を用いてエチレン系重合体を製造する場合、高温の重合温度で安定した触媒活性を示す。
【0086】
前記エチレン系重合体は、エチレン単独重合体またはエチレンとアルファオレフィンの共重合体であり、前記エチレンとアルファオレフィンの共重合体は、エチレン50重量%以上を含有し、好ましくは、60重量%以上のエチレンを含み、さらに好ましくは、60~99重量%の範囲でエチレンを含めてもよい。
【0087】
上記のように、コモノマーとしてC4~C10のアルファオレフィンを使用して製造された直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、0.940g/cc以下の密度領域を有し、0.900g/cc以下の超低密度ポリエチレン(VLDPEまたはULDPE)またはオレフィンエラストマー領域まで拡張が可能である。また、本発明によるエチレン共重合体の製造時に、分子量を調節するために、水素を分子量調節剤として使用することができ、通常、80,000~500,000範囲の重量平均分子量(Mw)を有する。
【0088】
本発明で提示されている触媒組成物は、重合反応器内で均一な形態で存在することから、当該重合体の溶融点以上の温度で実施する溶液重合工程に適用することが好ましい。しかし、米国特許第4,752,597号に開示されているように、多孔性金属オキシド支持体に、前記金属-リガンド錯体である前触媒および助触媒を支持して得られる非均一触媒組成物の形態でスラリー重合や気相重合工程に用いられてもよい。
【0089】
以下、実施例を参照して、本発明を具体的に説明するが、下記の実施例によって本発明の範疇が本発明を限定するものではない。
【0090】
別に言及する場合を除き、すべてのリガンドおよび触媒の合成実験は、窒素雰囲気下で、標準シュレンク(Schlenk)またはグローブボックス技術を用いて行われ、反応に使用される有機溶媒は、ナトリウム金属とベンゾフェノン下で還流して水分を除去し、使用直前に蒸留して使用した。合成されたリガンドおよび触媒の1H-NMR分析は、常温で、Bruker 400または500MHzを使用して行った。
【0091】
重合溶媒であるメチルシクロヘキサンおよびn-ヘプタンは、分子篩5Åと活性アルミナが充填された管を通過させ、高純度の窒素でバブリングして、水分、酸素およびその他の触媒毒物質を十分に除去した後、使用した。
【0092】
【0093】
KR10-2018-0048728AおよびKR10-2019-0075778Aにしたがって、4-tert-オクチルフェノール(octylphenol)および3,6-di-tert-ブチル(butyl)-9H-カルバゾール(carbazole)を用いて前触媒C1を製造した。
【0094】
【0095】
反応は、窒素大気下で、グローブボックス内で行った。100mlフラスコに前触媒C1(1.17g、0.87mmol)およびトルエン(40mL)を投入し、これに3-ペンタデシルフェノール(pentadecylphenol)(0.53g、1.74mmol)を添加し、常温で2時間攪拌した後、溶媒を除去した。これをノルマルヘキサン50mLに溶かた後、乾燥したセライト(celite)で満たしたフィルタで濾過し、固形分を除去した。濾過した溶液は、真空で乾燥し、白色固体の前触媒C2を得た(1.52g、91%)。
【0096】
1H NMR (CDCl3): δ 8.40 (s, 2H), 8.28 (s, 2H), 7.53-7.00 (m, 14H), 6.72 (m, 2H), 6.64 (m, 2H), 6.36 (m, 2H), 5.89 (m, 2H), 5.60 (s, 2H), 4.99 (m, 2H), 4.70 (m, 2H), 4.12 (m, 2H), 3.65 (m, 2H), 2.32(m, 4H), 1.73 (s, 4H) 1.59-0.81 (124H).
【0097】
【0098】
前記比較例1で、4-tert-オクチルフェノール(octylphenol)の代わりに4-メチルフェノール(methylphenol)を使用した以外は、比較例1と同様に実施して前触媒Aを製造した。
【0099】
1H NMR (CDCl3): δ 8.30 (s, 2H), 8.07 (s, 2H), 7.47-7.00 (m, 16H), 6.27 (m, 2H), 4.60 (m, 2H), 3.80 (m, 2H), 3.40 (m, 2H), 2.34 (s, 6H), 1.54 (s, 18H), 1.38 (s, 18H), -1.50 (s, 6H).
【0100】
前記実施例1で、前触媒C1の代わりに前触媒Aを使用した以外は、実施例1と同様に実施して前触媒C3を製造した(白色固体、1.36g、90%)。
【0101】
1H NMR (CDCl3): δ 8.36 (s, 2H), 8.25 (s, 2H), 7.44-7.00 (m, 14H), 6.72 (m, 2H), 6.60 (m, 2H), 6.33 (m, 2H), 5.85 (m, 2H), 5.58 (s, 2H), 4.94 (m, 2H), 4.67 (m, 2H), 4.15 (m, 2H), 3.69 (m, 2H), 2.32 (s, 6H), 2.30(m, 4H), 1.56-1.26 (m, 52H), 1.51 (s, 18H), 1.40 (s, 18H), 0.90 (m, 6H).
【0102】
【0103】
前記比較例1で、4-tert-オクチルフェノール(octylphenol)の代わりに4-メチルフェノール(methylphenol)を使用し、3、6-di-tert-ブチル(butyl)-9H-カルバゾール(carbazole)の代わりに2,7-di-tert-ブチル(butyl)-9H-カルバゾール(carbazole)を使用した以外は、比較例1と同様に実施して前触媒Bを製造した。
【0104】
前記実施例1で、前触媒C1の代わりに前触媒Bを使用した以外は、実施例1と同様に実施して前触媒C4を製造した(白色固体、0.58g、70%)。
【0105】
1H NMR (CDCl3): δ 8.31 (d, 2H), 8.25 (s, 2H), 7.44-7.00 (m, 8H), 6.98-6.96 (m, 2H), 6.92-6.91 (m, 2H), 6.75 (m, 4H), 6.51 (m, 2H), 5.84 (m, 2H), 5.38 (m, 2H), 5.23 (m, 2H), 4.84 (m, 2H), 4.24-4.22 (m, 2H), 3.81-3.80 (m, 2H), 2.32 (s, 6H), 1.94-1.93(m, 2H), 1.51 (m, 92H), 1.08 (m, 6H).
【0106】
[実施例4]製造された遷移金属化合物の酸素敏感度の測定のためのエチレンと1-オクテンの共重合
実施例1で製造された前触媒C2 10μmolを22.1℃、湿度31%の大気中に約1時間露出してから、トルエン10mlに溶かして飽和溶液を製造した後、回分式重合装置を用いて、以下のように、エチレンと1-オクテンとの共重合を行った。
【0107】
十分に乾燥した後、窒素で置換した1500mL容量のステンレス鋼反応器にメチルシクロヘキサン600mLと1-オクテン50mLを入れた後、トリイソブチルアルミニウム1.0Mヘキサン溶液2mLを反応器に投入した。次に、反応器の温度を100℃に加熱した後、前触媒C2の飽和溶液1ml(すなわち、トルエン1mlの中に前触媒C2 1.0μmolを含む飽和溶液)とトリフェニルメチリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート40μmolを順に投入した後、エチレンで反応器内の圧力を20barまで満たした後、連続して供給して重合させた。5分間反応を行った後、回収された反応生成物を40℃の真空オーブンで8時間乾燥した。重合結果を下記表1に記載した。
【0108】
[実施例5]
大気中に露出していない前触媒C2(実施例1)を使用した以外は、実施例4の方法と同様にエチレンと1-オクテンの共重合を実施した。重合反応条件および重合結果を下記表1に示した。
【0109】
[比較例2]
前触媒C2(実施例1)の代わりに前触媒C1(比較例1)を使用した以外は、実施例4の方法と同様にエチレンと1-オクテンの共重合を実施した。重合反応条件および重合結果を下記表1に示した。
【0110】
[比較例3]
前触媒C2(実施例1)の代わりに大気中に露出していない前触媒C1(比較例1)を使用した以外は、実施例4の方法と同様にエチレンと1-オクテンの共重合を実施した。重合反応条件および重合結果を下記表1に示した。
【0111】
【0112】
エチレンと1-オクテンの重合時に触媒として使用される実施例1の前触媒C2および比較例1の前触媒C1の大気中への露出有無による温度変化(ΔT)を観察した結果を表1に記載し、これより、実施例1の前触媒C2は、大気中に露出したか否かに関係なく、重合時に所定の温度変化を示すのに対し、比較例1の前触媒C1は、大気中に露出するにつれて著しく減少した温度変化を示したことを確認することができる。
【0113】
具体的には、前記表1の重合結果から、本発明の前触媒C2(実施例1)は、メチルのようなアルキル系の脱離基が導入された前触媒C1(比較例1)とは異なり、ペンタデシルのようなアルキルが置換されたフェノキシ系の脱離基が導入された構造であり、大気中の酸素や水分といった不純物に相対的に敏感ではなく、それによる活性低下、すなわち、反応中に現れ得る不純物に対する影響が相対的に少なく、触媒の安定性に優れることから、商業的な工場への適用時に利点を示すことができる。
【0114】
以上で説明したように、重合触媒の構造により、酸素や水分といった不純物による抵抗性と触媒安定度および活性が著しく変化することを確認することができる。
【0115】
[実施例6~8比較例4]連続溶液重合工程による高温でのエチレンと1-オクテンの共重合
機械式攪拌機が取り付けられた温度調節が可能な連続重合反応器でエチレンと1-オクテンとの共重合を行った。
【0116】
触媒として、実施例1、2、3および比較例1で製造された前触媒C2、C3、C4およびC1を使用し、溶媒は、n-ヘプタンを使用し、助触媒としては、修飾メチルアルミノキサン(20wt%、Nouryon)を使用した。触媒の使用量は、下記表2に記載したとおりである。各触媒は、トルエンに、それぞれ0.2g/Lの濃度で溶解して注入し、コモノマーとして1-オクテンを使用して重合を実施した。反応器の転化率は、それぞれの反応条件で一つの重合体に重合する時の反応条件および反応器内の温度勾配から推測することができた。分子量は、単一活性点触媒の場合、反応器の温度および1-オクテン含有量の関数で制御し、下記表2にその条件と結果を記載した。
【0117】
溶融流動指数(MI、melt index):ASTM D1238分析法に準じて、190℃で、2.16kgの荷重で測定した。
【0118】
密度:ASTM D792分析法で測定した。
【0119】
【0120】
前記表2の重合結果から、本発明の前触媒C2(実施例1)と前触媒C3(実施例2)、前触媒C4(実施例3)を重合触媒として使用する実施例6、実施例7および実施例8の場合、公知の前触媒C1(比較例1)を使用した比較例4の場合に比べて、220℃の高温で減少した触媒の使用量にもかかわらず、優れた活性を維持し、既存の触媒よりも触媒活性が著しく向上したことが分かる。
【0121】
したがって、本発明による金属-リガンド錯体は、特定の官能基を導入した構造的特性により、高温でも驚くほど優れた触媒活性および安定性を有して高分子量のエチレンとアルファオレフィンの共重合体を効果的に製造することができることが分かる。
【国際調査報告】