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特表2024-547151遷移金属化合物、これを含む触媒組成物およびこれを用いるオレフィン重合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】遷移金属化合物、これを含む触媒組成物およびこれを用いるオレフィン重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 17/00 20060101AFI20241219BHJP
   C07F 7/00 20060101ALI20241219BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20241219BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C07F17/00
C07F7/00 A CSP
C08F10/00
C08F4/6592
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539345
(86)(22)【出願日】2022-12-28
(85)【翻訳文提出日】2024-08-06
(86)【国際出願番号】 IB2022062828
(87)【国際公開番号】W WO2023126845
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0190585
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0180458
(32)【優先日】2022-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520060977
【氏名又は名称】サビック エスケー ネクスレン カンパニー ピーティーイー. エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】SABIC SK NEXLENE COMPANY PTE. LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】シン ドンチョル
(72)【発明者】
【氏名】オ イェノック
(72)【発明者】
【氏名】キム ミンジ
(72)【発明者】
【氏名】キム ミジ
(72)【発明者】
【氏名】チョン サン ペ
(72)【発明者】
【氏名】パク ドン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】シム チュン シク
(72)【発明者】
【氏名】チョン ミンホ
(72)【発明者】
【氏名】シン デ ホ
【テーマコード(参考)】
4H049
4H050
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4H049VN06
4H049VP01
4H049VQ08
4H049VV02
4H049VW02
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB40
4H050AC90
4H050BB11
4J100AA02P
4J100AA03Q
4J100AA04Q
4J100AA07Q
4J100AA15Q
4J100AA16Q
4J100AA17Q
4J100AA19Q
4J100AS01R
4J100AS02R
4J100AS03R
4J100AS04R
4J100CA01
4J100CA04
4J100CA05
4J100FA10
4J100FA19
4J128AA01
4J128AC01
4J128AC10
4J128AC20
4J128AC28
4J128AD08
4J128AD11
4J128AD13
4J128BA00A
4J128BA01B
4J128BB00A
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4J128BC12B
4J128BC13B
4J128BC14B
4J128BC15B
4J128BC16B
4J128BC17B
4J128BC24B
4J128BC25B
4J128BC27B
4J128EA01
4J128EB01
4J128EB02
4J128EB03
4J128EB04
4J128EB05
4J128EB08
4J128EB09
4J128EB10
4J128EB11
4J128EB15
4J128EB16
4J128EB17
4J128EB18
4J128EC02
4J128FA02
4J128FA04
4J128FA07
4J128GA05
4J128GA08
(57)【要約】
本発明は、遷移金属化合物、これを含む触媒組成物およびこれを用いるオレフィン重合体の製造方法を提供し、特定の位置に特定の官能基が導入された本発明の遷移金属化合物は、溶解度および触媒活性が高く、これを用いるオレフィン重合体の製造方法は、単純な工程で、優れた物性を有するオレフィン重合体を容易に製造することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される、遷移金属化合物。
【化1】
[前記化学式1中、
Mは、周期表上第4族の遷移金属であり、
Aは、炭素またはケイ素であり、
R1~R4は、互いに独立して、水素またはC1-C20アルキルであり、
R5~R12は、互いに独立して、水素、C1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アリールC1-C20アルキル、C1-C20アルキルC6-C20アリール、トリC1-C20アルキルシリルまたはトリC6-C20アリールシリルであるか、前記R5~R12は、隣接した置換体と縮合環を含むか含まないC3-C12アルキレンまたはC3-C12アルケニレンで連結されて脂環族環を形成するか、単環または多環の芳香族環を形成してもよく、
R13およびR14は、互いに独立して、C6-C20アリールであり、
Xは、共役または非共役C4-C20ジエンであり、
前記ジエンは、C1-C20アルキル、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アリールC1-C20アルキル、C1-C20アルキルC6-C20アリール、C1-C20アルコキシ、C6-C20アリールオキシ、トリC1-C20アルキルシリルおよびトリC6-C20アリールシリルからなる群から選択される一つまたは二つ以上の置換基でさらに置換されてもよく、
前記ジエンは、中心金属Mとπ-錯体を形成している。]
【請求項2】
前記化学式1のMは、周期表上第4族の遷移金属であり、
Aは、炭素またはケイ素であり、
R1~R4は、互いに独立して、水素またはC1-C10アルキルであり、
R5~R12は、互いに独立して、水素、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C3-C10シクロアルキル、C6-C10アリール、C6-C10アリールC1-C10アルキル、C1-C10アルキルC6-C10アリール、トリC1-C10アルキルシリルまたはトリC6-C10アリールシリルであるか、前記R5~R12は、隣接した置換体と縮合環を含むか含まないC3-C12アルキレンまたはC3-C12アルケニレンで連結されて脂環族環を形成するか、単環または多環の芳香族環を形成してもよく、
R13およびR14は、互いに独立して、C6-C10アリールであり、
Xは、共役または非共役C4-C10ジエンであり、
前記ジエンは、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C10アリール、C6-C10アリールC1-C10アルキル、C1-C10アルキルC6-C10アリール、C1-C10アルコキシ、C6-C10アリールオキシ、トリC1-C10アルキルシリルおよびトリC6-C10アリールシリルからなる群から選択される一つまたは二つ以上の置換基でさらに置換されてもよく、
前記ジエンは、中心金属Mとπ-錯体を形成している、請求項1に記載の遷移金属化合物。
【請求項3】
前記化学式1のMは、Ti、ZrまたはHfであり、
Aは、炭素またはケイ素であり、
R1~R4は、互いに独立して、水素またはC1-C4アルキルであり、
R5~R12は、互いに独立して、水素、C1-C4アルキルまたはC1-C4アルコキシであり、
R13およびR14は、互いに独立して、C6-C10アリールであり、
Xは、共役または非共役C4-C7ジエンであり、
前記ジエンは、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C10アリール、C6-C10アリールC1-C10アルキル、C1-C10アルキルC6-C10アリール、C1-C10アルコキシ、C6-C10アリールオキシ、トリC1-C10アルキルシリルおよびトリC6-C10アリールシリルからなる群から選択される一つまたは二つ以上の置換基でさらに置換されてもよく、
前記ジエンは、中心金属Mとπ-錯体を形成している、請求項1に記載の遷移金属化合物。
【請求項4】
前記遷移金属化合物は、下記化学式2で表される、請求項1に記載の遷移金属化合物。
【化2】
[前記化学式2中、
Mは、Ti、ZrまたはHfであり、
Aは、炭素またはケイ素であり、
R1~R4は、互いに独立して、水素またはC1-C4アルキルであり、
R13およびR14は、互いに独立して、C6-C10アリールであり、
Xは、
【化3】
であり、
R21~R27は、互いに独立して、水素、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C10アリール、C6-C10アリールC1-C10アルキル、C1-C10アルキルC6-C10アリール、C1-C10アルコキシ、C6-C10アリールオキシ、トリC1-C10アルキルシリルまたはトリC6-C10アリールシリルであり、
mは、1~3の整数であり、
前記Xは、中心金属Mとπ-錯体を形成している。]
【請求項5】
下記化合物から選択される、請求項1に記載の遷移金属化合物。
【化4】
【請求項6】
メチルシクロヘキサンに対する溶解度が、25℃で、5重量%以上である、請求項1に記載の遷移金属化合物。
【請求項7】
下記化学式1で表される遷移金属化合物と、
助触媒とを含むエチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィン共重合体の製造用の遷移金属触媒組成物。
【化5】
[前記化学式1中、
Mは、周期表上第4族の遷移金属であり、
Aは、炭素またはケイ素であり、
R1~R4は、互いに独立して、水素またはC1-C20アルキルであり、
R5~R12は、互いに独立して、水素、C1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アリールC1-C20アルキル、C1-C20アルキルC6-C20アリール、トリC1-C20アルキルシリルまたはトリC6-C20アリールシリルであるか、前記R5~R12は、隣接した置換体と縮合環を含むか含まないC3-C12アルキレンまたはC3-C12アルケニレンで連結されて脂環族環を形成するか、単環または多環の芳香族環を形成してもよく、
R13およびR14は、互いに独立して、C6-C20アリールであり、
Xは、共役または非共役C4-C20ジエンであり、
前記ジエンは、C1-C20アルキル、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アリールC1-C20アルキル、C1-C20アルキルC6-C20アリール、C1-C20アルコキシ、C6-C20アリールオキシ、トリC1-C20アルキルシリルおよびトリC6-C20アリールシリルからなる群から選択される一つまたは二つ以上の置換基でさらに置換されてもよく、
前記ジエンは、中心金属Mとπ-錯体を形成している。]
【請求項8】
前記助触媒は、アルミニウム化合物助触媒、ホウ素化合物助触媒またはこれらの混合物である、請求項7に記載の遷移金属化合物。
【請求項9】
下記化学式1で表される遷移金属化合物、助触媒および非芳香族炭化水素溶媒の存在下で、エチレンおよびα-オレフィンから選択される一つまたは二つ以上のモノマーを溶液重合してオレフィン重合体を得るステップを含む、オレフィン重合体の製造方法。
【化6】
[前記化学式1中、
Mは、周期表上第4族の遷移金属であり、
Aは、炭素またはケイ素であり、
R1~R4は、互いに独立して、水素またはC1-C20アルキルであり、
R5~R12は、互いに独立して、水素、C1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アリールC1-C20アルキル、C1-C20アルキルC6-C20アリール、トリC1-C20アルキルシリルまたはトリC6-C20アリールシリルであるか、前記R5~R12は、隣接した置換体と縮合環を含むか含まないC3-C12アルキレンまたはC3-C12アルケニレンで連結されて脂環族環を形成するか、単環または多環の芳香族環を形成してもよく、
R13およびR14は、互いに独立して、C6-C20アリールであり、
Xは、共役または非共役C4-C20ジエンであり、
前記ジエンは、C1-C20アルキル、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アリールC1-C20アルキル、C1-C20アルキルC6-C20アリール、C1-C20アルコキシ、C6-C20アリールオキシ、トリC1-C20アルキルシリルおよびトリC6-C20アリールシリルからなる群から選択される一つまたは二つ以上の置換基でさらに置換されてもよく、
前記ジエンは、中心金属Mとπ-錯体を形成している。]
【請求項10】
前記非芳香族炭化水素溶媒は、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、n-ヘキサン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、n-オクタン、イソオクタン、ノナン、デカンおよびドデカンから選択される一つまたは二つ以上である、請求項9に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項11】
前記非芳香族炭化水素溶媒に対する前記遷移金属化合物の溶解度が、25℃で、5重量%以上である、請求項9に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項12】
前記助触媒は、アルミニウム化合物助触媒、ホウ素化合物助触媒、またはこれらの混合物である、請求項9に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項13】
前記ホウ素化合物助触媒は、下記化学式11~14で表される化合物である、請求項12に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
[前記化学式11~14中、
Bは、ホウ素原子であり、
R31は、フェニルであり、前記フェニルは、フッ素原子、C1-C20アルキル、フッ素原子により置換されたC1-C20アルキル、C1-C20アルコキシおよびフッ素原子により置換されたC1-C20アルコキシから選択される3~5個の置換基でさらに置換されてもよく、
R32は、C5-C7芳香族ラジカル、C1-C20アルキルC6-C20アリールラジカルまたはC6-C20アリールC1-C20アルキルラジカルであり、
Zは、窒素またはリン原子であり、
R33は、C1-C20アルキルラジカルまたは窒素原子とともに2個のC1-C10アルキルで置換されたアニリニウムラジカルであり、
R34は、C5-C20アルキルであり、
R35は、C5-C20アリールまたはC1-C20アルキルC6-C20アリールであり、
pは、2または3の整数である。]
【請求項14】
前記アルミニウム化合物助触媒は、下記化学式15~19で表される化合物である、請求項12に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
[前記化学式15~19中、
R41およびR42は、互いに独立して、C1-C20アルキルであり、
rおよびsは、互いに独立して、5~20の整数であり、
R43およびR44は、互いに独立して、C1-C20アルキルであり、
Eは、水素またはハロゲンであり、
tは、1~3の整数であり、
R45は、C1-C20アルキルまたはC6-C30アリールである。]
【請求項15】
前記溶液重合は、100~220℃で行われる、請求項9に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遷移金属化合物、これを含む触媒組成物およびこれを用いるオレフィン重合体の製造方法に関し、より詳細には、制御された特定の官能基を導入することで溶解度が改善した遷移金属化合物、これを含む触媒組成物およびこれを用いるオレフィン重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エチレンの単独重合体またはα-オレフィンとの共重合体の製造には、一般的に、チタンまたはバナジウム化合物の主触媒成分とアルキルアルミニウム化合物の助触媒成分で構成される、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒系が使用されてきた。
【0003】
しかし、チーグラー・ナッタ触媒系は、エチレン重合に対して高活性を示すものの、不均一な触媒活性点のため、一般的に生成重合体の分子量分布が広く、特に、エチレンとα-オレフィンの共重合体において組成分布が均一でないというデメリットがある。
【0004】
最近、チタン、ジルコニウム、ハフニウムなど周期表第4族遷移金属のメタロセン化合物と助触媒であるメチルアルミノキサン(methylaluminoxane)で構成される、いわゆるメタロセン触媒系が開発されている。メタロセン触媒系は、単一種の触媒活性点を有する均一系触媒であることから、既存のチーグラー・ナッタ触媒系に比べて分子量分布が狭く、組成分布が均一なポリエチレンを製造できることを特徴とする。
【0005】
具体的な一例として、Cp2TiCl2、Cp2ZrCl2、Cp2ZrMeCl、Cp2ZrMe2、エチレン(IndH4)2ZrCl2などのメタロセン化合物を助触媒であるメチルアルミノキサンで活性化することにより、高活性でエチレンを重合して、狭い分子量分布(Mw/Mn)を有するポリエチレンを製造できるようになった。
【0006】
しかし、メタロセン触媒系では高分子量の重合体を得ることが難しい。特に、100℃以上の高温で実施される溶液重合法に適用する場合、重合活性が急激に低下し、β-水素脱離反応が優勢であり、重量平均分子量(Mw)が高い高分子量の重合体を製造するには適しないというデメリットがある。
【0007】
一方、100℃以上の溶液重合条件で、エチレン単独重合またはエチレンとα-オレフィンとの共重合で高い触媒活性と高分子量の重合体を製造することができる触媒として遷移金属を環状に連結した、いわゆる幾何拘束型(geometrically constrained)ANSA-typeメタロセン系触媒が使用され得ることが開示されている。ANSA-typeメタロセン系触媒は、メタロセン触媒に比べて、オクテン-注入および高温活性が著しく改善する。それにもかかわらず、従来知られているほとんどのANSA-typeメタロセン系触媒は、Cl官能基を含んでいるかメチル基などを含んでいるため、溶液工程に使用するには改善しなければならない問題が存在する。
【0008】
触媒に置換されたCl官能基は、工程設備の材質によっては腐食などの原因になることがあり、Clによる腐食の問題を避けるために、ジメチルで置換したANSA-typeメタロセン系触媒について研究されているが、これも溶解度が良好でなく、重合工程に触媒を注入することが困難である。これらの溶解度が低い触媒を溶解させるためにトルエンやキシレンなどを使用することはできるが、食品に接触する可能性がある製品を生産する場合、トルエンやキシレンなどの芳香族溶媒の使用が問題になっている。
【0009】
したがって、優れた溶解度、高温活性、高級α-オレフィンとの反応性および高い分子量の重合体の製造能力などの特性を有する競争力のある触媒に関する研究が切実に求められている状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の問題を改善するために制御された特定の官能基が導入された遷移金属化合物およびこれを含む触媒組成物を提供することを目的とする。
【0011】
本発明は、本発明の遷移金属化合物を触媒として用いるオレフィン重合体の製造方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、非芳香族炭化水素に対する溶解度が著しく改善した遷移金属化合物を提供するものであり、本発明の遷移金属化合物は、下記化学式1で表される。
【化1】
[前記化学式1中、
Mは、周期表上第4族の遷移金属であり、
Aは、炭素またはケイ素であり、
R1~R4は、互いに独立して、水素またはC1-C20アルキルであり、
R5~R12は、互いに独立して、水素、C1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アリールC1-C20アルキル、C1-C20アルキルC6-C20アリール、トリC1-C20アルキルシリルまたはトリC6-C20アリールシリルであるか、前記R5~R12は、隣接した置換体と縮合環を含むか含まないC3-C12アルキレンまたはC3-C12アルケニレンで連結されて脂環族環を形成するか、単環または多環の芳香族環を形成してもよく、
R13およびR14は、互いに独立して、C6-C20アリールであり、
Xは、共役または非共役C4-C20ジエンであり、
前記ジエンは、C1-C20アルキル、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アリールC1-C20アルキル、C1-C20アルキルC6-C20アリール、C1-C20アルコキシ、C6-C20アリールオキシ、トリC1-C20アルキルシリルおよびトリC6-C20アリールシリルからなる群から選択される一つまたは二つ以上の置換基でさらに置換されてもよく、
前記ジエンは、中心金属Mとπ-錯体を形成している。]
【0013】
好ましくは、本発明の一実施形態による前記化学式1のMは、周期表上第4族の遷移金属であり、Aは、炭素またはケイ素であり、R1~R4は、互いに独立して、水素またはC1-C10アルキルであり、R5~R12は、互いに独立して、水素、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C3-C10シクロアルキル、C6-C10アリール、C6-C10アリールC1-C10アルキル、C1-C10アルキルC6-C10アリール、トリC1-C10アルキルシリルまたはトリC6-C10アリールシリルであるか、前記R5~R12は、隣接した置換体と縮合環を含むか含まないC3-C12アルキレンまたはC3-C12アルケニレンで連結されて脂環族環を形成するか、単環または多環の芳香族環を形成してもよく、R13およびR14は、互いに独立して、C6-C10アリールであり、Xは、共役または非共役C4-C10ジエンであり、前記ジエンは、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C10アリール、C6-C10アリールC1-C10アルキル、C1-C10アルキルC6-C10アリール、C1-C10アルコキシ、C6-C10アリールオキシ、トリC1-C10アルキルシリルおよびトリC6-C10アリールシリルからなる群から選択される一つまたは二つ以上の置換基でさらに置換されてもよく、前記ジエンは、中心金属Mとπ-錯体を形成している。
【0014】
より好ましくは、本発明の一実施形態による前記化学式1のMは、Ti、ZrまたはHfであり、Aは、炭素またはケイ素であり、R1~R4は、互いに独立して、水素またはC1-C4アルキルであり、R5~R12は、互いに独立して、水素、C1-C4アルキルまたはC1-C4アルコキシであり、R13およびR14は、互いに独立して、C6-C10アリールであり、Xは、共役または非共役C4-C7ジエンであり、前記ジエンは、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C10アリール、C6-C10アリールC1-C10アルキル、C1-C10アルキルC6-C10アリール、C1-C10アルコキシ、C6-C10アリールオキシ、トリC1-C10アルキルシリルおよびトリC6-C10アリールシリルからなる群から選択される一つまたは二つ以上の置換基でさらに置換されてもよく、前記ジエンは、中心金属Mとπ-錯体を形成している。
【0015】
本発明の一実施形態において、遷移金属化合物は、下記化学式2で表されることができる。
【化2】
[前記化学式2中、
Mは、Ti、ZrまたはHfであり、
Aは、炭素またはケイ素であり、
R1~R4は、互いに独立して、水素またはC1-C4アルキルであり、
R13およびR14は、互いに独立して、C6-C10アリールであり、
Xは、
【化3】
R21~R27は、互いに独立して、水素、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C10アリール、C6-C10アリールC1-C10アルキル、C1-C10アルキルC6-C10アリール、C1-C10アルコキシ、C6-C10アリールオキシ、トリC1-C10アルキルシリルまたはトリC6-C10アリールシリルであり、
mは、1~3の整数であり、
前記Xは、中心金属Mとπ-錯体を形成している。]
【0016】
具体的には、本発明の一実施形態において、遷移金属化合物は、下記化合物から選択されてもよい。
【化4】
【0017】
本発明の一実施形態による遷移金属化合物は、メチルシクロヘキサンに対する溶解度が、25℃で、5重量%以上であってもよい。
【0018】
また、本発明は、本発明の遷移金属化合物を含むエチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィン共重合体の製造のための遷移金属触媒組成物を提供し、本発明の遷移金属触媒組成物は、下記化学式1で表される遷移金属化合物と、助触媒とを含む。
【化5】
[前記化学式1中、
Mは、周期表上第4族の遷移金属であり、
Aは、炭素またはケイ素であり、
R1~R4は、互いに独立して、水素またはC1-C20アルキルであり、
R5~R12は、互いに独立して、水素、C1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アリールC1-C20アルキル、C1-C20アルキルC6-C20アリール、トリC1-C20アルキルシリルまたはトリC6-C20アリールシリルであるか、前記R5~R12は、隣接した置換体と縮合環を含むか含まないC3-C12アルキレンまたはC3-C12アルケニレンで連結されて脂環族環を形成するか、単環または多環の芳香族環を形成してもよく、
R13およびR14は、互いに独立して、C6-C20アリールであり、
Xは、共役または非共役C4-C20ジエンであり、
前記ジエンは、C1-C20アルキル、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アリールC1-C20アルキル、C1-C20アルキルC6-C20アリール、C1-C20アルコキシ、C6-C20アリールオキシ、トリC1-C20アルキルシリルおよびトリC6-C20アリールシリルからなる群から選択される一つまたは二つ以上の置換基でさらに置換されてもよく、
前記ジエンは、中心金属Mとπ-錯体を形成している。]
【0019】
前記遷移金属触媒組成物に含まれる助触媒は、アルミニウム化合物助触媒、ホウ素化合物助触媒またはこれらの混合物であってもよい。
【0020】
また、本発明は、本発明の遷移金属化合物を用いるオレフィン重合体の製造方法を提供する。
【0021】
前記オレフィン重合体の製造方法は、前記化学式1で表される遷移金属化合物、助触媒および非芳香族炭化水素溶媒の存在下で、エチレンおよびα-オレフィンから選択される一つまたは二つ以上のモノマーを溶液重合してオレフィン重合体を得るステップを含む。
【0022】
前記非芳香族炭化水素溶媒は、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、n-ヘキサン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、n-オクタン、イソオクタン、ノナン、デカンおよびドデカンから選択される一つまたは二つ以上であってもよく、非芳香族炭化水素溶媒に対する本発明の一実施形態による遷移金属化合物の溶解度が、25℃で、5重量%以上であってもよい。
【0023】
好ましくは、本発明の一実施形態によるオレフィン重合体の製造方法において、助触媒は、アルミニウム化合物助触媒、ホウ素化合物助触媒、またはこれらの混合物であってもよく、具体的には、ホウ素化合物助触媒は、下記化学式11~14で表される化合物から選択される一つまたは二つ以上の混合物であってもよく、前記アルミニウム化合物助触媒は、下記化学式15~19で表される化合物から選択される一つまたは二つ以上の混合物であってもよい。
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
[前記化学式11~14中、
Bは、ホウ素原子であり、
R31は、フェニルであり、前記フェニルは、フッ素原子、C1-C20アルキル、フッ素原子により置換されたC1-C20アルキル、C1-C20アルコキシおよびフッ素原子により置換されたC1-C20アルコキシから選択される3~5個の置換基でさらに置換されてもよく、
R32は、C5-C7芳香族ラジカル、C1-C20アルキルC6-C20アリールラジカルまたはC6-C20アリールC1-C20アルキルラジカルであり、
Zは、窒素またはリン原子であり、
R33は、C1-C20アルキルラジカルまたは窒素原子とともに2個のC1-C10アルキルで置換されたアニリニウムラジカルであり、
R34は、C5-C20アルキルであり、
R35は、C5-C20アリールまたはC1-C20アルキルC6-C20アリールであり、
pは、2または3の整数である。]
【0024】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
[前記化学式15~19中、
R41およびR42は、互いに独立して、C1-C20アルキルであり、
rおよびsは、互いに独立して、5~20の整数であり、
R43およびR44は、互いに独立して、C1-C20アルキルであり、
Eは、水素またはハロゲンであり、
tは、1~3の整数であり、
R45は、C1-C20アルキルまたはC6-C30アリールである。]
【0025】
好ましくは、本発明の一実施形態によるオレフィン重合体の製造において、溶液重合は、100~220℃で行われてもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の遷移金属化合物は、制御された特定の官能基を導入することにより、非芳香族炭化水素溶媒に対する溶解度が著しく改善し、触媒活性が高く、溶液重合時に、触媒活性が低下せず、維持されることができる。
【0027】
それだけでなく、本発明の遷移金属化合物は、特定の位置に特定の官能基を導入することにより、溶液工程時に、遷移金属化合物の注入および移動などが容易であり、重合工程を著しく改善し、商業化に非常に有利である。
【0028】
また、本発明の遷移金属化合物は、非芳香族炭化水素溶媒に対して溶解度に優れ、オレフィン類との反応性に優れることから、オレフィンの重合が非常に容易であり、オレフィン重合体の収率が高く、本発明の一実施形態による遷移金属化合物を含む触媒組成物は、優れた物性を有するオレフィン重合体の製造方法において産業的に非常に有効に使用されることができる。
【0029】
本発明のオレフィン重合体の製造方法は、非芳香族炭化水素溶媒に対する溶解度に優れた本発明の遷移金属化合物を触媒として使用することにより、触媒の移送、注入などが容易であり、より環境にやさしく、効率的にオレフィン重合体を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の遷移金属化合物、これを含む触媒組成物およびこれを用いるオレフィン重合体の製造方法について詳細に説明する。
【0031】
本明細書で使用される単数形態は、文脈で特別な指示がない限り、複数形態も含むことを意図することができる。
【0032】
本明細書に記載の「含む」は、「備える」、「含有する」、「有する」または「特徴とする」などの表現と等価の意味を有する開放型記載であり、さらに挙げられていない要素、材料または工程を排除しない。
【0033】
本明細書の用語「置換基(substituent)」、「ラジカル(radical)」、「基(group)」、「グループ(group)」、「部分(moiety)」、および「断片(fragment)」は、互いに変えて使用することができる。
【0034】
本明細書の用語「CA-CB」は、「炭素数がA以上であり、B以下」であるものを意味する。
【0035】
本明細書で使用されている用語「アルキル」は、炭素数が特に限定されない場合、炭素数1~20を有する飽和された直鎖状または分岐状の非環式炭化水素を意味する。代表的な飽和直鎖状アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニルとn-デシルを含み、一方、飽和分岐状アルキルは、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、イソペンチル、2-メチルヘキシル、3-メチルブチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、2-メチルヘキシル、3-メチルヘキシル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、2-メチルヘキシル、3-メチルヘキシル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシル、2,3-ジメチルブチル、2,3-ジメチルペンチル、2,4-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルヘキシル、2,4-ジメチルヘキシル、2,5-ジメチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,2-ジメチルヘキシル、3,3-ジメチルペンチル、3,3-ジメチルヘキシル、4,4-ジメチルヘキシル、2-エチルペンチル、3-エチルペンチル、2-デチルヘキシル、3-エチルヘキシル、4-エチルヘキシル、2-メチル-2-エチルペンチル、2-メチル-3-エチルペンチル、2-メチル-4-エチルペンチル、2-メチル-2-エチルヘキシル、2-メチル-3-エチルヘキシル、2-メチル-4-エチルヘキシル、2,2-ジエチルペンチル、3,3-ジエチルヘキシル、2,2-ジエチルヘキシル、および3,3-ジエチルヘキシルを含む。
【0036】
本明細書に記載の「アルケニル」は、2~10個、好ましくは2~10の炭素原子、好ましくは2~5の炭素原子および少なくとも一つの炭素-炭素の二重結合を含む飽和された直鎖状または分岐状非-環炭化水素を意味する。代表的な直鎖状および分岐状C2-C10アルケニルは、ビニル、アリル、1-ブテニル、2-ブテニル、イソブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-メチル-1-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル、2,3-ジメチル-2-ブテニル、1-ヘキセニル(hexenyl)、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、1-ヘプテンニル、2-ヘプテンニル、3-ヘプテニル、1-オクテニル、2-オクテニル、3オクテニル、1-ノネニル(nonenyl)、2-ノネニル、3-ノネニル、1-ジセニル、2-ジセニル、および3-ジセニルを含む。アルケニルはシスおよびトランス配向、または代案的に、EおよびZ配向を有するラジカルを含む。
【0037】
本明細書に記載の「アルコキシ」は、-OCH3、-OCH2CH3、-O(CH2)2CH3、-O(CH2)3CH3、-O(CH2)4CH3、-O(CH2)5CH3、およびこれと類似するものを含む-O-アルキルを意味し、ここで、アルキルは、上記で定義したとおりである。
【0038】
本明細書に記載の「アルキレン」および「アルケニレン」は、それぞれ「アルキル」および「アルケニル」から一つの水素の除去によって誘導された2価有機ラジカルを意味し、前記アルキルおよびアルケニルのそれぞれの定義にしたがう。
【0039】
本明細書で使用された用語「シクロアルキル」は、炭素および水素原子を有し、炭素-炭素多重結合を有していない単環式(monocyclic)または多環式(polycyclic)飽和環を意味する。シクロアルキルグループの例は、C3-C10シクロアルキルであり、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルを含むが、これに限定されるものではない。一実施形態において、シクロアルキルグループは、単環式または二環式(bicyclic)環である。
【0040】
本明細書に記載の「アリール」は一つの水素の除去によって芳香族炭化水素から誘導された有機ラジカルであり、各環に、適切には、4~7個、好ましくは5または6個の環原子を含む単一または縮合環系を含み、多数個のアリールが単一結合で連結されている形態まで含む。縮合環系は、飽和または部分的に飽和された環のような脂肪族環を含めてもよく、必ず一つ以上の芳香族環を含んでいる。また、前記脂肪族環は、窒素、酸素、硫黄、カルボニルなどを環内に含めてもよい。前記アリールラジカルの具体的な例としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、インデニル(indenyl)、フルオレニル、フェナントレニル、アントラセニル、トリフェニレニル、ピレニル、クライセニル、ナフタセニル、9,10-ジヒドロアントラセニルなどを含むが、これに限定されるものではない。
【0041】
本明細書の用語「アルキルアリール」は、少なくとも一つのアルキルで置換されたアリールラジカルを意味し、ここで「アルキル」および「アリール」は、前記定義したとおりである。前記アルキルアリールの具体的な例としては、トリルなどを含むが、これに限定されない。
【0042】
本明細書の用語「アリールアルキル」は、少なくとも一つのアリールで置換されたアルキルラジカルを意味し、ここで、「アルキル」および「アリール」は、前記定義したとおりである。前記アリールアルキルの具体的な例としては、ベンジルなどを含むが、これに限定されない。
【0043】
本明細書に記載の「アリールオキシ」は、-O-アリールラジカルを意味し、ここで、「アリール」は、前記定義されたとおりである。
【0044】
本明細書に記載の「アルキルシリル」および「アリールシリル」の具体的な例としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t-ブチルジメチルシリル、プロピルジメチルシリル、トリフェニルシリル、ジフェニルシリル、フェニルシリルなどを含むが、これに限定されるものではない。
【0045】
本明細書に使用されている用語「ジエン」は、炭素と炭素との結合において二重結合が2つであることを意味し、s-トランス(trans)-1,3-ブタジエン(butadiene)、s-シス(cis)-1,3-ブタジエン(butadiene)、2,4-ペンタジエン(pentadiene)、シクロペンタジエン(cyclopentadiene)、1,3-シクロヘキサジエン(cyclohexadiene)、1,4-シクロヘキサジエン(cyclohexadiene)およびビシクロ(bicyclo)[2.2.1]ヘプタ(hepta)-1,3-ジエン(diene)から選択される化合物またはその誘導体であってもよい。例えば、s-トランス(trans)-n4-1,4-ジフェニル(diphenyl)-1,3-ブタジエン(butadiene)、s-トランス(trans)-n4-3-メチル(methyl)-1,3-ペンタジエン(pentadiene);s-トランス(trans)-n4-1,4-ジベンジル(dibenzyl)-1,3-ブタジエン(butadiene)、s-トランス(trans)-n4-1,3-ペンタジエン(pentadiene)、s-トランス(trans)-n4-2,4-ヘキサジエン(hexadiene)、s-トランス(trans)-n4-1,4-ジトリル(ditolyl)-1,3-ブタジエン(butadiene)、s-トランス(trans)-n4-1,4-ビス(トリメチルシリル)((bis(trimethylsilyl))-1,3-ブタジエン(butadiene)、s-シス(cis)-n4-1,4-ジフェニル(diphenyl)-1,3-ブタジエン(butadiene)、s-シス(cis)-n4-3-メチル(methyl)-1,3-ペンタジエン(pentadiene)、s-シス(cis)-n4-1,4-ジベンジル(dibenzyl)-1,3-ブタジエン(butadiene)、s-シス(cis)-n4-1,3-ペンタジエン(pentadiene)、s-シス(cis)-n4-2,4-ヘキサジエン(hexadiene)、s-シス(cis)-n4-1,4-ジトリル(ditolyl)-1,3-ブタジエン(butadiene)、またはs-シス(cis)-n4-1,4-ビス(トリメチルシリル)(bis(trimethylsilyl))-1,3-ブタジエン(butadiene)であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0046】
本明細書で使用されている用語「オレフィン重合体」は、当業者が認識可能な範囲のオレフィンを用いて製造された重合体を意味する。具体的には、オレフィン単独重合体またはオレフィンの共重合体をすべて含み、オレフィン単独重合体またはオレフィンとα-オレフィンの共重合体を意味する。
【0047】
本発明は、共役または非共役ジエン官能基を導入することで溶解度が改善し、熱安定性に優れることから、オレフィン重合に非常に有効に使用されることができる、下記化学式1で表される遷移金属化合物を提供する。
【0048】
【化15】
【0049】
[前記化学式1中、
Mは、周期表上第4族の遷移金属であり、
Aは、炭素またはケイ素であり、
R1~R4は、互いに独立して、水素またはC1-C20アルキルであり、
R5~R12は、互いに独立して、水素、C1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アリールC1-C20アルキル、C1-C20アルキルC6-C20アリール、トリC1-C20アルキルシリルまたはトリC6-C20アリールシリルであるか、前記R5~R12は、隣接した置換体と縮合環を含むか含まないC3-C12アルキレンまたはC3-C12アルケニレンで連結されて脂環族環を形成するか、単環または多環の芳香族環を形成してもよく、
R13およびR14は、互いに独立して、C6-C20アリールであり、
Xは、共役または非共役C4-C20ジエンであり、
前記ジエンは、C1-C20アルキル、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アリールC1-C20アルキル、C1-C20アルキルC6-C20アリール、C1-C20アルコキシ、C6-C20アリールオキシ、トリC1-C20アルキルシリルおよびトリC6-C20アリールシリルからなる群から選択される一つまたは二つ以上の置換基でさらに置換されてもよく、
前記ジエンは、中心金属Mとπ-錯体を形成している。]
【0050】
本発明の一実施形態による遷移金属化合物は、前記化学式1で表され、化学式1中、Xとして、炭素数4~20の共役または非共役ジエンを導入することにより、非芳香族炭化水素溶媒に対する溶解度が著しく改善し、触媒活性が非常に高く、単純な工程で、環境にやさしいオレフィン重合体の製造が可能である。
【0051】
具体的には、本発明のANSA-type触媒である本発明の遷移金属化合物は、特定の位置にジエン官能基を導入することにより、非芳香族炭化水素溶媒に対する溶解度を増加させて、触媒活性を維持し、且つ溶液工程で容易にオレフィン重合体を製造することができる。
【0052】
好ましくは、本発明の一実施形態による前記化学式1のMは、周期表上第4族の遷移金属であり、Aは、炭素またはケイ素であり、R1~R4は、互いに独立して、水素またはC1-C10アルキルであり、R5~R12は、互いに独立して、水素、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C3-C10シクロアルキル、C6-C10アリール、C6-C10アリールC1-C10アルキル、C1-C10アルキルC6-C10アリール、トリC1-C10アルキルシリルまたはトリC6-C10アリールシリルであるか、前記R5~R12は、隣接した置換体と縮合環を含むか含まないC3-C12アルキレンまたはC3-C12アルケニレンで連結されて脂環族環を形成するか、単環または多環の芳香族環を形成してもよく、R13およびR14は、互いに独立して、C6-C10アリールであり、Xは、共役または非共役C4-C10ジエンであり、前記ジエンは、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C10アリール、C6-C10アリールC1-C10アルキル、C1-C10アルキルC6-C10アリール、C1-C10アルコキシ、C6-C10アリールオキシ、トリC1-C10アルキルシリルおよびトリC6-C10アリールシリルからなる群から選択される一つまたは二つ以上の置換基でさらに置換されてもよく、前記ジエンは、中心金属Mとπ-錯体を形成している。
【0053】
より好ましくは、本発明の一実施形態による前記化学式1のMは、Ti、ZrまたはHfであり、Aは、炭素またはケイ素であり、R1~R4は、互いに独立して、水素またはC1-C4アルキルであり、R5~R12は、互いに独立して、水素、C1-C4アルキルまたはC1-C4アルコキシであり、R13およびR14は、互いに独立して、C6-C10アリールであり、Xは、共役または非共役C4-C7ジエンであり、前記ジエンは、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C10アリール、C6-C10アリールC1-C10アルキル、C1-C10アルキルC6-C10アリール、C1-C10アルコキシ、C6-C10アリールオキシ、トリC1-C10アルキルシリルおよびトリC6-C10アリールシリルからなる群から選択される一つまたは二つ以上の置換基でさらに置換されてもよく、前記ジエンは、中心金属Mとπ-錯体を形成している。
【0054】
本発明の一実施形態において、遷移金属化合物は、下記化学式2で表されることができる。
【0055】
【化16】
【0056】
[前記化学式2中、
Mは、Ti、ZrまたはHfであり、
Aは、炭素またはケイ素であり、
R1~R4は、互いに独立して、水素またはC1-C4アルキルであり、
R13およびR14は、互いに独立して、C6-C10アリールであり、
Xは、
【化17】
であり、
R21~R27は、互いに独立して、水素、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C10アリール、C6-C10アリールC1-C10アルキル、C1-C10アルキルC6-C10アリール、C1-C10アルコキシ、C6-C10アリールオキシ、トリC1-C10アルキルシリルまたはトリC6-C10アリールシリルであり、
mは、1~3の整数であり、
前記Xは、中心金属Mとπ-錯体を形成している。]
【0057】
具体的には、本発明の一実施形態において、遷移金属化合物は、下記化合物から選択されてもよい。
【0058】
【化18】
【0059】
本発明の一実施形態による遷移金属化合物は、メチルシクロヘキサンに対する溶解度が、25℃で、5重量%以上であってもよく、好ましくは、5.5~50重量%であってもよい。
【0060】
また、本発明は、本発明の遷移金属化合物を含むエチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィン共重合体の製造のための遷移金属触媒組成物を提供し、本発明の遷移金属触媒組成物は、下記化学式1で表される遷移金属化合物と、助触媒とを含む。
【0061】
【化19】
【0062】
[前記化学式1中、
Mは、周期表上第4族の遷移金属であり、
Aは、炭素またはケイ素であり、
R1~R4は、互いに独立して、水素またはC1-C20アルキルであり、
R5~R12は、互いに独立して、水素、C1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アリールC1-C20アルキル、C1-C20アルキルC6-C20アリール、トリC1-C20アルキルシリルまたはトリC6-C20アリールシリルであるか、前記R5~R12は、隣接した置換体と縮合環を含むか含まないC3-C12アルキレンまたはC3-C12アルケニレンで連結されて脂環族環を形成するか、単環または多環の芳香族環を形成してもよく、
R13およびR14は、互いに独立して、C6-C20アリールであり、
Xは、共役または非共役C4-C20ジエンであり、
前記ジエンは、C1-C20アルキル、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アリールC1-C20アルキル、C1-C20アルキルC6-C20アリール、C1-C20アルコキシ、C6-C20アリールオキシ、トリC1-C20アルキルシリルおよびトリC6-C20アリールシリルからなる群から選択される一つまたは二つ以上の置換基でさらに置換されてもよく、
前記ジエンは、中心金属Mとπ-錯体を形成している。]
【0063】
前記遷移金属触媒組成物に含まれる助触媒は、アルミニウム化合物助触媒、ホウ素化合物助触媒またはこれらの混合物であってもよい。
【0064】
また、本発明は、本発明の遷移金属化合物を用いるオレフィン重合体の製造方法を提供する。
【0065】
前記オレフィン重合体の製造方法は、前記化学式1で表される遷移金属化合物、助触媒および非芳香族炭化水素溶媒の存在下で、エチレンおよびα-オレフィンから選択される一つまたは二つ以上のモノマーを溶液重合してオレフィン重合体を得るステップを含む。
【0066】
前記非芳香族炭化水素溶媒は、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、n-ヘキサン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、n-オクタン、イソオクタン、ノナン、デカンおよびドデカンから選択される一つまたは二つ以上であってもよく、非芳香族炭化水素溶媒に対する本発明の一実施形態による遷移金属化合物の溶解度が、25℃で、5重量%以上であってもよく、好ましくは、5.5~50重量%であってもよい。
【0067】
好ましくは、本発明の一実施形態によるオレフィン重合体の製造方法において、助触媒は、アルミニウム化合物助触媒、ホウ素化合物助触媒、またはこれらの混合物であってもよく、遷移金属化合物:助触媒のモル比は、1:0.5~10,000であってもよい。
【0068】
具体的には、前記ホウ素化合物助触媒は、下記化学式11~14で表される化合物から選択される一つまたは二つ以上の混合物であってもよい。

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

[前記化学式11~14中、
Bは、ホウ素原子であり、
R31は、フェニルであり、前記フェニルは、フッ素原子、C1-C20アルキル、フッ素原子により置換されたC1-C20アルキル、C1-C20アルコキシおよびフッ素原子により置換されたC1-C20アルコキシから選択される3~5個の置換基でさらに置換されてもよく、
R32は、C5-C7芳香族ラジカル、C1-C20アルキルC6-C20アリールラジカルまたはC6-C20アリールC1-C20アルキルラジカル、例えば、トリフェニルメチリウム(triphenylmethylium)ラジカルであり、
Zは、窒素またはリン原子であり、
R33は、C1-C20アルキルラジカルまたは窒素原子とともに2個のC1-C10アルキルで置換されたアニリニウム(anilinium)ラジカルであり、
R34は、C5-C20アルキルであり、
R35は、C5-C20アリールまたはC1-C20アルキルC6-C20アリールであり、
pは、2または3の整数である。]
【0069】
前記ホウ素化合物助触媒は、例えば、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4,5-テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3、4-トリフルオロフェニル)ボラン、ビス(ペンタフルオロフェニル)(フェニル)ボランなどから選択される一つまたは二つ以上であってもよい。
【0070】
前記ホウ素化合物助触媒は、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,4,5-テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,2,4-トリフルオロフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(フェニル)ボレートおよびテトラキス(3,5-ビストリフルオロメチルフェニル)ボレートから選択されるボレートアニオンを有する一つまたは二つ以上のホウ素化合物であってもよい。
【0071】
前記ホウ素化合物助触媒は、トリフェニルメチリウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリ(n-ブチル)アンモニウム、N,N-ジメチルアニリニウム、N,N-ジエチルアニリニウム、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウム、ジイソプロピルアンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウム、トリフェニルホスホニウム、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムおよびトリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムから選択されるカチオンを有する一つまたは二つ以上のホウ素化合物であってもよい。
【0072】
具体的には、前記ホウ素化合物助触媒は、トリフェニルメチリウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリ(n-ブチル)アンモニウム、N,N-ジメチルアニリニウム、N,N-ジエチルアニリニウム、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウム、ジイソプロピルアンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウム、トリフェニルホスホニウム、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムおよびトリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムから選択されるカチオンを有し、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,4,5-テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,2,4-トリフルオロフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(フェニル)ボレートおよびテトラキス(3,5-ビストリフルオロメチルフェニル)ボレートから選択されるカチオンを有する一つまたは二つ以上のホウ素化合物であってもよい。
【0073】
より具体的には、前記ホウ素化合物助触媒は、トリフェニルメチリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルメチリニウムテトラキス(3,5-ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5-ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5-ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジイソプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、およびトリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートから選択される一つまたは二つ以上であってもよく、より好ましくは、トリフェニルメチリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、およびトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランから選択される一つまたは二つ以上であってもよい。
【0074】
具体的には、前記アルミニウム化合物助触媒は、下記化学式15または16のアルミノキサン化合物、化学式17の有機アルミニウム化合物または化学式18または化学式19の有機アルミニウムアルキルオキシドまたは有機アルミニウムアリールオキシド化合物から選択される一つまたは二つ以上の混合物であってもよい。

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

[前記化学式15~19中、
R41およびR42は、互いに独立して、C1-C20アルキルであり、
rおよびsは、互いに独立して、5~20の整数であり、
R43およびR44は、互いに独立して、C1-C20アルキルであり、
Eは、水素またはハロゲンであり、
tは、1~3の整数であり、
R45は、C1-C20アルキルまたはC6-C30アリールである。]
【0075】
前記アルミノキサン化合物は、例えば、メチルアルミノキサン、修飾された(modified)メチルアルミノキサン、テトライソブチルアルミノキサンなどがあり、有機アルミニウム化合物の例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、およびトリヘキシルアルミニウムを含むトリアルキルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジプロピルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライド、およびジヘキシルアルミニウムクロライドを含むジアルキルアルミニウムクロライド、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、プロピルアルミニウムジクロライド、イソブチルアルミニウムジクロライド、およびヘキシルアルミニウムジクロライドを含むアルキルアルミニウムジクロライド、ジメチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジプロピルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドおよびジヘキシルアルミニウムハイドライドを含むジアルキルアルミニウムハイドライド、メチルジメトキシアルミニウム、ジメチルメトキシアルミニウム、エチルジエトキシアルミニウム、ジエチルエトキシアルミニウム、イソブチルジブトキシアルミニウム、ジイソブチルブトキシアルミニウム、ヘキシルジメトキシアルミニウム、ジヘキシルメトキシアルミニウムおよびジオクチルメトキシアルミニウムを含むアルキルアルコキシアルミニウムが挙げられる。
【0076】
好ましくは、メチルアルミノキサン、修飾されたメチルアルミノキサン、テトライソブチルアルミノキサン、トリアルキルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムまたはこれらの混合物であってもよく、より好ましくは、メチルアルミノキサン、修飾されたメチルアルミノキサンまたはトリアルキルアルミニウム、詳細には、トリエチルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムであってもよい。
【0077】
本発明の一実施形態による触媒組成物において、前記アルミニウム化合物を助触媒として使用する場合、本発明の遷移金属化合物と助触媒との比の好ましい範囲は、遷移金属(M):アルミニウム原子(Al)の比がモル比基準に1:10~1,000の範囲であってもよく、具体的には、1:25~500の範囲であってもよい。
【0078】
本発明の一実施形態による触媒組成物において、前記アルミニウム化合物およびホウ素化合物を同時に助触媒として使用する場合、本発明の遷移金属化合物と助触媒との比の好ましい範囲は、遷移金属(M):ホウ素原子(B):アルミニウム原子(Al)の比が、モル比を基準に、1:0.1~100:10~1,000の範囲であってもよく、具体的には、1:0.5~5:25~500の範囲であってもよい。本発明の遷移金属化合物と助触媒との比率が前記範囲内であるときに、オレフィン重合体を製造するための優れた触媒活性を示し、反応の純度に応じて比率の範囲が変化する。
【0079】
本発明の一実施形態によるさらに他の面として、前記遷移金属化合物を用いたオレフィン重合体の製造方法は、非芳香族炭化水素溶媒の存在下で、前記の遷移金属化合物、助触媒、および、エチレン、または、必要に応じて、ビニル系共単量体を接触して行われることができる。ここで、遷移金属化合物および助触媒成分は、別に反応器内に投入するか、または各成分を予め混合して反応器に投入してもよく、投入順序、温度または濃度などの混合条件は、特に制限されない。
【0080】
前記製造方法に使用可能な好ましい有機溶媒は、非芳香族炭化水素溶媒であってもよく、具体的には、炭素数3~20の非芳香族炭化水素であり、例えば、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどが挙げられる。
【0081】
具体的には、エチレンとα-オレフィンの共重合体を製造する場合には、エチレンとともに、コモノマーとして炭素数3~18のα-オレフィンを使用することができ、好ましくは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-ヘキサデセン、および1-オクタデセンから選択される一つまたは二つ以上であってもよい。より具体的には、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、または1-デセンとエチレンを共重合してもよく、好ましいエチレンの圧力は、1~1,000気圧、さらに好ましくは、10~150気圧であってもよい。
【0082】
また、本発明の一実施形態によるオレフィン重合体の製造において、溶液重合は、100~220℃で行われることができ、好ましくは100~200℃、より好ましくは100~150℃で行われてもよい。
【0083】
本発明の方法にしたがって製造された共重合体は、エチレン50~99重量%を含有することができ、具体的には、60~99重量%のエチレンを含めてもよい。
【0084】
本発明の一実施形態によるオレフィン重合体の製造方法において、コモノマーとして炭素数4~10のα-オレフィンを使用して製造された直鎖状低密度ポリエチレンLLDPEは、0.940g/cc以下の密度領域を有し、0.900g/cc以下の密度領域を有する超低密度ポリエチレンであるVLDPE、ULDPEまたはオレフィンエラストマーまで拡張が可能である。また、本発明によるエチレン共重合体の製造時に、分子量を調節するために、水素を分子量調節剤として使用してもよく、製造された共重合体は、80,000~500,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有する。
【0085】
本発明の一実施形態による触媒組成物により製造されるオレフィン-ジエン共重合体の具体的な例として、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体は、エチレン含有量が30~80重量%であり、プロピレンの含有量が20~70重量%であり、ジエンの含有量が0~15重量%であるエチレン-プロピレン-ジエン共重合体を製造してもよい。本発明において使用可能なジエンモノマーは、二重結合が2個以上のものであり、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,5-ヘプタジエン、1,6-ヘプタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、1,7-ノナジエン、1,8-ノナジエン、1,8-デカジエン、1,9-デカジエン、1,12-テトラデカジエン、1,13-テトラデカジエン、3-メチル-1,4-ヘキサジエン、3-メチル-1、5-ヘキサジエン、3-エチル-1,4-ヘキサジエン、3-エチル-1、5-ヘキサジエン、3、3-ジメチル-1,4-ヘキサジエン、3,3-ジメチル-1,5-ヘキサジエン、5-ビニル-2-ノルボルネン、2,5-ノルボルナジエン、7-メチル-2,5-ノルボルナジエン、7-エチル-2,5-ノルボルナジエン、7-プロピル-2,5-ノルボルナジエン、7-ブチル-2,5-ノルボルナジエン、7-フェニル-2,5-ノルボルナジエン、7-ヘキシル-2,5-ノルボルナジエン、7,7-ジメチル-2,5-ノルボルナジエン、7-メチル-7-エチル-2,5-ノルボルナジエン、7-クロロ-2,5-ノルボルナジエン、7-ブロモ-2,5-ノルボルナジエン、7-フルオロ-2,5-ノルボルナジエン、7,7-ジクロロ-2,5-ノルボルナジエン、1-メチル-2,5-ノルボルナジエン、1-エチル-2,5-ノルボルナジエン、1-プロピル-2,5-ノルボルナジエン、1-ブチル-2,5-ノルボルナジエン、1-クロロ-2,5-ノルボルナジエン、1-ブロモ-2,5-ノルボルナジエン、5-イソプロピル-2-ノルボルネン、1,4-シクロヘキサジエン、ビシクロ[2,2,1]ヘプタ-2,5-ジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、ビシクロ[2,2,2]オクタ-2,5-ジエン、4-ビニル-1-シクロヘキセン、ビシクロ[2,2,2]オクタ-2,6-ジエン、1,7,7-トリメチルビシクロ[2,2,1]ヘプタ-2,5-ジエン、ジシクロペンタジエン、フェニルテトラヒドロインデン、5-フェニルビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン、1,5-シクロオクタジエン、1,4-ジフェニルベンゼン、ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ブタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、2,4-ジメチル-1,3-ペンタジエンおよび3-エチル-1,3-ペンタジエンから選択される一つまたは二つ以上であってもよく、好ましくは、5-エチリデン-2-ノルボルネン、ジシクロペンタジエンまたはこれらの混合物であってもよい。前記ジエンモノマーは、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体の加工特性に応じて選択てもよい。
【0086】
本発明の一実施形態により製造されたエチレン-オレフィン-ジエン共重合体は、全重量に対して、エチレンの含有量は30~80重量%であり、オレフィンの含有量は20~70重量%であり、ジエンの含有量は0~15重量%であってもよい。
【0087】
一般的に、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体を製造する場合、プロピレンの含有量を増加させると共重合体の分子量が低下する現象が現れるが、本発明の一実施形態によるエチレン-プロピレン-ジエン共重合体の製造の場合、プロピレンの含有量が50重量%まで増加しても、分子量の減少がなく相対的に高い分子量の製品を製造できる。
【0088】
本発明で提示されている触媒組成物は、重合反応器内で均一な形態で存在することから、当該重合体の溶融点以上の温度で実施する溶液重合工程に適用することが好ましい。しかし、米国特許第4,752,597号に開示されているように、多孔性金属オキシド支持体に前記遷移金属化合物および助触媒を支持して得られる非均一触媒組成物の形態でスラリー重合や気相重合工程に用いられてもよい。
【0089】
以下、具体的な実施例を参照して、本発明による新規な遷移金属化合物、これを含む触媒組成物およびこれを用いるオレフィン重合体の製造方法についてより詳細に説明する。
【0090】
別に言及する場合を除き、すべての遷移金属化合物の合成実験は、窒素雰囲気下で、標準シュレンク(Schlenk)またはグローブボックス技術を用いて行われ、反応に使用される有機溶媒は、ナトリウム金属とベンゾフェノン下で還流して水分を除去し、使用直前に蒸留して使用した。合成された遷移金属化合物の1H-NMR分析は、常温で、Bruker400または500MHzを使用して行った。
【0091】
重合溶媒であるノルマルヘプタンは、分子篩5Åと活性アルミナが充填された管を通過させ、高純度の窒素でバブリングして、水分、酸素およびその他の触媒毒物質を十分に除去してから使用した。重合された重合体は、下記に説明されている方法により分析した。
【0092】
1.溶融流動指数MI
ASTM D1238分析法に準じて、190℃で、2.16kgの荷重で測定した。
【0093】
2.密度
ASTM D792分析法に準じて測定した。
【0094】
3.分子量および分子量分布
3段の混合カラムで構成されているゲルクロマトグラフィにより測定した。この時に使用した溶媒は1,2,4-卜リクロロベンゼンであり、測定温度は120℃であった。
【0095】
[実施例1]化合物1の合成
【化29】
【0096】
窒素雰囲気で、250mL丸底フラスコに、9-フルオレニル-1-ジフェニルメチルシクロペンタジエニルジルコニウムジクロライド(S-PCI社製、10.0g、18.0mmol)をトルエン100mLに溶解した。-15℃に温度を下げた後、1,3-ペンタジエン(シス-、トランス-混合物、3.7g、54.0mmol)と1.6Mブチルリチウム(22.5mL、35.9mmol)を徐々に注入した後、常温に温度を上げて5時間攪拌した。溶媒を真空下で除去し、濃縮液をメチルシクロヘキサン200mLに溶かした後、乾燥したセライト(celite)で満たしたフィルタで濾過し、固形分を除去した。濾液の溶媒をすべて除去し、赤色の化合物1を得た(9.98g、収率95.0%)。

1H NMR (500 MHz, Chloroform-d): δ = 8.23 (d, 2H), 7.88 (dd, 4H), 7.45 (m, 4H), 7.31 (m, 4H), 7.01 (m, 2H), 6.42 (m, 4H), 5.64 (m, 2H), 4.01 (dd, J = 9.3, 7.3 Hz, 1H), 3.86 (ddd, J = 13.2, 9.3, 8.9 Hz, 1H), 2.98 (dd, J = 8.9, 8 Hz, 1H), 2.13 (m, 1H), 1.90 (d, J = 5.5 Hz, 3H), 1.76 (dd, J = 13.2, 7.3 Hz, 1H)
【0097】
[比較例1]
【化30】
【0098】
S-PCI社から購入して使用した。
【0099】
[比較例2]
【化31】
【0100】
窒素雰囲気で、250mL丸底フラスコに、9-フルオレニル-1-ジフェニルメチルシクロペンタジエニルジルコニウムジクロライド(S-PCI社製、10.0g、18.0mmol)をトルエン100mLに溶解した。-15℃に温度を下げた後、1.5Mメチルリチウム(24.0mL、35.9mmol)を徐々に注入した後、常温に温度を上げて3時間攪拌した後、乾燥したセライト(celite)で満たしたフィルタで濾過し、固形分を除去した。濾過の後、濾液の溶媒をすべて除去し、黄色の比較例2の化合物を得た(8.5g、収率91.4%)。

1H NMR (500 MHz, Chloroform-d): δ = 8.20 (d, 2H), 7.85 (dd, 4H), 7.41 (m, 4H), 7.28 (m, 4H), 6.89 (m, 2H), 6.28 (m, 4H), 5.54 (m, 2H), -1.69 (s, 6H).
【0101】
[実験例1]製造された遷移金属化合物の溶解度の測定
25℃、窒素雰囲気で、遷移金属化合物1gを下記表1に記載のそれぞれの溶媒4gに溶かして飽和溶液を製造した後、0.45μmフィルタで固形物を除去した。溶媒をすべて除去して残っている触媒の重量を測定し、これより触媒の溶解度を計算し、下記表1に示した。
【0102】
【表1】
【0103】
表1に示したように、本発明の実施例1で製造された遷移金属化合物が、比較例1および2に比べて炭化水素溶媒に対する溶解度が非常に高く、特に、非芳香族炭化水素溶媒において驚くほど向上した溶解度を示すことが分かる。
【0104】
[実施例2]連続溶液重合工程によるエチレンと1-オクテンとの共重合
機械式攪拌機が取り付けられた温度調節が可能な連続重合反応器で、エチレンと1-オクテンとの共重合を行った。
【0105】
触媒として、実施例1の遷移金属化合物を下記表2に記載の量で使用し、溶媒は、ノルマルヘプタンを使用し、助触媒としては、修飾されたメチルアルミノキサン(20wt%、Nouryon)を使用した。触媒は、トルエンにそれぞれ0.2g/Lの濃度で溶解して注入し、コモノマーとして1-オクテンを使用して重合を実施した。反応器の転化率は、それぞれの反応条件で一つの重合体に重合する時の反応条件および反応器内の温度勾配から推測することができた。分子量は、単一活性点触媒の場合、反応器の温度および1-オクテンの含有量の関数で制御し、下記表2に重合条件およびその結果を記載した。
【0106】
[比較例3]
触媒として、実施例1の遷移金属化合物の代わりに比較例2の遷移金属化合物を使用した以外は、実施例2の過程を同様に行った。
【0107】
【表2】
-Zr:触媒中のZrを意味する。
-Al:助触媒の修飾されたメチルアルミノキサン(20重量%、Nouryon)のAlを意味する。
【0108】
表2に示したように、本発明の遷移金属化合物を触媒として使用した実施例2は、比較例2の遷移金属化合物を使用した比較例3に比べて、減少した触媒使用量にもかかわらず、優れた活性を維持しており、これより、既存の触媒よりも触媒活性が著しく向上したことが分かる。
【0109】
本発明の一実施形態による遷移金属化合物は、特定の位置にジエン官能基を導入することにより、非芳香族炭化水素溶媒に対する溶解度を著しく増加させ、減少した触媒使用量にもかかわらず、優れた物性の重合体を製造することができる触媒の活性を維持および向上させ、且つ溶液工程でオレフィン重合体を容易に製造することができ、これを利用すると、産業的な工程で経済的な節減効果をもたらすことができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される、遷移金属化合物。
【化1】
[前記化学式1中、
Mは、周期表上第4族の遷移金属であり、
Aは、炭素またはケイ素であり、
R1~R4は、互いに独立して、水素またはC1-C20アルキルであり、
R5~R12は、互いに独立して、水素、C1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アリールC1-C20アルキル、C1-C20アルキルC6-C20アリール、トリC1-C20アルキルシリルまたはトリC6-C20アリールシリルであるか、前記R5~R12は、隣接した置換体と縮合環を含むか含まないC3-C12アルキレンまたはC3-C12アルケニレンで連結されて脂環族環を形成するか、単環または多環の芳香族環を形成してもよく、R13およびR14は、互いに独立して、C6-C20アリールであり、
Xは、共役または非共役C4-C20ジエンであり、
前記ジエンは、C1-C20アルキル、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アリールC1-C20アルキル、C1-C20アルキルC6-C20アリール、C1-C20アルコキシ、C6-C20アリールオキシ、トリC1-C20アルキルシリルおよびトリC6-C20アリールシリルからなる群から選択される一つまたは二つ以上の置換基でさらに置換されてもよく、
前記ジエンは、中心金属Mとπ-錯体を形成している。]
【請求項2】
前記化学式1のMは、周期表上第4族の遷移金属であり、
Aは、炭素またはケイ素であり、
R1~R4は、互いに独立して、水素またはC1-C10アルキルであり、
R5~R12は、互いに独立して、水素、C1-C10アルキル、C1-C10アルコキシ、C3-C10シクロアルキル、C6-C10アリール、C6-C10アリールC1-C10アルキル、C1-C10アルキルC6-C10アリール、トリC1-C10アルキルシリルまたはトリC6-C10アリールシリルであるか、前記R5~R12は、隣接した置換体と縮合環を含むか含まないC3-C12アルキレンまたはC3-C12アルケニレンで連結されて脂環族環を形成するか、単環または多環の芳香族環を形成してもよく、R13およびR14は、互いに独立して、C6-C10アリールであり、
Xは、共役または非共役C4-C10ジエンであり、
前記ジエンは、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C10アリール、C6-C10アリールC1-C10アルキル、C1-C10アルキルC6-C10アリール、C1-C10アルコキシ、C6-C10アリールオキシ、トリC1-C10アルキルシリルおよびトリC6-C10アリールシリルからなる群から選択される一つまたは二つ以上の置換基でさらに置換されてもよく、
前記ジエンは、中心金属Mとπ-錯体を形成している、請求項1に記載の遷移金属化合物。
【請求項3】
前記化学式1のMは、Ti、ZrまたはHfであり、
Aは、炭素またはケイ素であり、
R1~R4は、互いに独立して、水素またはC1-C4アルキルであり、
R5~R12は、互いに独立して、水素、C1-C4アルキルまたはC1-C4アルコキシであり、
R13およびR14は、互いに独立して、C6-C10アリールであり、
Xは、共役または非共役C4-C7ジエンであり、
前記ジエンは、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C10アリール、C6-C10アリールC1-C10アルキル、C1-C10アルキルC6-C10アリール、C1-C10アルコキシ、C6-C10アリールオキシ、トリC1-C10アルキルシリルおよびトリC6-C10アリールシリルからなる群から選択される一つまたは二つ以上の置換基でさらに置換されてもよく、
前記ジエンは、中心金属Mとπ-錯体を形成している、請求項1に記載の遷移金属化合物。
【請求項4】
前記遷移金属化合物は、下記化学式2で表される、請求項1に記載の遷移金属化合物。
【化2】

[前記化学式2中、
Mは、Ti、ZrまたはHfであり、
Aは、炭素またはケイ素であり、
R1~R4は、互いに独立して、水素またはC1-C4アルキルであり、
R13およびR14は、互いに独立して、C6-C10アリールであり、
Xは、
【化3】

であり、
R21~R27は、互いに独立して、水素、C1-C10アルキル、C3-C10シクロアルキル、C6-C10アリール、C6-C10アリールC1-C10アルキル、C1-C10アルキルC6-C10アリール、C1-C10アルコキシ、C6-C10アリールオキシ、トリC1-C10アルキルシリルまたはトリC6-C10アリールシリルであり、
mは、1~3の整数であり、
前記Xは、中心金属Mとπ-錯体を形成している。]
【請求項5】
下記化合物から選択される、請求項1に記載の遷移金属化合物。
【化4】
【請求項6】
メチルシクロヘキサンに対する溶解度が、25℃で、5重量%以上である、請求項1に記載の遷移金属化合物。
【請求項7】
下記化学式1で表される遷移金属化合物と、
助触媒とを含むエチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィン共重合体の製造用の遷移金属触媒組成物。
【化5】

[前記化学式1中、
Mは、周期表上第4族の遷移金属であり、
Aは、炭素またはケイ素であり、
R1~R4は、互いに独立して、水素またはC1-C20アルキルであり、
R5~R12は、互いに独立して、水素、C1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アリールC1-C20アルキル、C1-C20アルキルC6-C20アリール、トリC1-C20アルキルシリルまたはトリC6-C20アリールシリルであるか、前記R5~R12は、隣接した置換体と縮合環を含むか含まないC3-C12アルキレンまたはC3-C12アルケニレンで連結されて脂環族環を形成するか、単環または多環の芳香族環を形成してもよく、R13およびR14は、互いに独立して、C6-C20アリールであり、
Xは、共役または非共役C4-C20ジエンであり、
前記ジエンは、C1-C20アルキル、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アリールC1-C20アルキル、C1-C20アルキルC6-C20アリール、C1-C20アルコキシ、C6-C20アリールオキシ、トリC1-C20アルキルシリルおよびトリC6-C20アリールシリルからなる群から選択される一つまたは二つ以上の置換基でさらに置換されてもよく、
前記ジエンは、中心金属Mとπ-錯体を形成している。]
【請求項8】
前記助触媒は、アルミニウム化合物助触媒、ホウ素化合物助触媒またはこれらの混合物である、請求項7に記載の遷移金属触媒組成物
【請求項9】
下記化学式1で表される遷移金属化合物、助触媒および非芳香族炭化水素溶媒の存在下で、エチレンおよびα-オレフィンから選択される一つまたは二つ以上のモノマーを溶液重合してオレフィン重合体を得るステップを含む、オレフィン重合体の製造方法。
【化6】

[前記化学式1中、
Mは、周期表上第4族の遷移金属であり、
Aは、炭素またはケイ素であり、
R1~R4は、互いに独立して、水素またはC1-C20アルキルであり、
R5~R12は、互いに独立して、水素、C1-C20アルキル、C1-C20アルコキシ、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アリールC1-C20アルキル、C1-C20アルキルC6-C20アリール、トリC1-C20アルキルシリルまたはトリC6-C20アリールシリルであるか、前記R5~R12は、隣接した置換体と縮合環を含むか含まないC3-C12アルキレンまたはC3-C12アルケニレンで連結されて脂環族環を形成するか、単環または多環の芳香族環を形成してもよく、R13およびR14は、互いに独立して、C6-C20アリールであり、
Xは、共役または非共役C4-C20ジエンであり、
前記ジエンは、C1-C20アルキル、C3-C20シクロアルキル、C6-C20アリール、C6-C20アリールC1-C20アルキル、C1-C20アルキルC6-C20アリール、C1-C20アルコキシ、C6-C20アリールオキシ、トリC1-C20アルキルシリルおよびトリC6-C20アリールシリルからなる群から選択される一つまたは二つ以上の置換基でさらに置換されてもよく、
前記ジエンは、中心金属Mとπ-錯体を形成している。]
【請求項10】
前記非芳香族炭化水素溶媒は、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、n-ヘキサン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、n-オクタン、イソオクタン、ノナン、デカンおよびドデカンから選択される一つまたは二つ以上である、請求項9に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項11】
前記非芳香族炭化水素溶媒に対する前記遷移金属化合物の溶解度が、25℃で、5重量%以上である、請求項9に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項12】
前記助触媒は、アルミニウム化合物助触媒、ホウ素化合物助触媒、またはこれらの混合物である、請求項9に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項13】
前記ホウ素化合物助触媒は、下記化学式11~14で表される化合物である、請求項12に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【化7】
【化8】

【化9】

【化10】

[前記化学式11~14中、
Bは、ホウ素原子であり、
R31は、フェニルであり、前記フェニルは、フッ素原子、C1-C20アルキル、フッ素原子により置換されたC1-C20アルキル、C1-C20アルコキシおよびフッ素原子により置換されたC1-C20アルコキシから選択される3~5個の置換基でさらに置換されてもよく、
R32は、C5-C7芳香族ラジカル、C1-C20アルキルC6-C20アリールラジカルまたはC6-C20アリールC1-C20アルキルラジカルであり、
Zは、窒素またはリン原子であり、
R33は、C1-C20アルキルラジカルまたは窒素原子とともに2個のC1-C10アルキルで置換されたアニリニウムラジカルであり、
R34は、C5-C20アルキルであり、
R35は、C5-C20アリールまたはC1-C20アルキルC6-C20アリールであり、
pは、2または3の整数である。]
【請求項14】
前記アルミニウム化合物助触媒は、下記化学式15~19で表される化合物である、請求項12に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

[前記化学式15~19中、
R41およびR42は、互いに独立して、C1-C20アルキルであり、
rおよびsは、互いに独立して、5~20の整数であり、
R43およびR44は、互いに独立して、C1-C20アルキルであり、は、水素またはハロゲンであり、
tは、1~3の整数であり、
R45は、C1-C20アルキルまたはC6-C30アリールである。]
【請求項15】
前記溶液重合は、100~220℃で行われる、請求項9に記載のオレフィン重合体の製造方法。

【国際調査報告】