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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】パッド調整ブラシ
(51)【国際特許分類】
   B24B 53/017 20120101AFI20241219BHJP
   B24B 53/12 20060101ALI20241219BHJP
   B24B 29/00 20060101ALI20241219BHJP
   B24D 13/14 20060101ALI20241219BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
B24B53/017 A
B24B53/12 Z
B24B29/00 J
B24D13/14 A
H01L21/304 622M
H01L21/304 622F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539432
(86)(22)【出願日】2022-12-28
(85)【翻訳文提出日】2024-06-28
(86)【国際出願番号】 US2022054106
(87)【国際公開番号】W WO2023129567
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】63/295,582
(32)【優先日】2021-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/477,242
(32)【優先日】2022-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ラグデュ,ウマ ラメス クリシュナ
(72)【発明者】
【氏名】ジェーブド,サマド
(72)【発明者】
【氏名】ホッブス,テリー アール.
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー,スティーブン アール.
(72)【発明者】
【氏名】ドヴォルシャク,ジェレミー ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】リューク,ブライアン ダブリュ.
【テーマコード(参考)】
3C047
3C063
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C047AA15
3C047AA18
3C047AA34
3C047EE11
3C047EE18
3C063AA07
3C063AB05
3C063EE01
3C063FF30
3C158AA07
3C158AA19
3C158CB01
3C158CB10
3C158DA12
5F057AA31
5F057DA03
5F057EB13
5F057EB27
5F057FA39
5F057GA29
(57)【要約】
パッド調整ブラシが記載される。詳細には、キャリア層と、キャリア層から延びる、複数の研磨粒子を含まないブラシ剛毛とを含むパッド調整ブラシが記載される。キャリア層及び複数のブラシ剛毛は、単一体を形成する。このようなブラシは、従来の調整ディスクと比較して優れた性能を提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア層と、
前記キャリア層から延びる複数のブラシ剛毛と
を備えた、パッド調整ブラシであって、
前記複数のブラシ剛毛が、研磨粒子を含まず、
前記キャリア層及び前記複数のブラシ剛毛が、単一体を形成し、
20ショアAの硬度を有する化学機械研磨パッドをテクスチャ加工するのに十分な剛性を有する、
パッド調整ブラシ。
【請求項2】
前記複数のブラシ剛毛が延びるキャリア層の面によって画定される作業面を有し、前記作業面が、金属を含まない、請求項1に記載のパッド調整ブラシ。
【請求項3】
前記複数のブラシ剛毛が、第1の材料と、前記第1の材料を少なくとも部分的に覆う第2の材料とを含み、前記第2の材料が、前記第1の材料よりも硬い、請求項1に記載のパッド調整ブラシ。
【請求項4】
複数のブラシ剛毛が、親水性である、請求項1に記載のパッド調整ブラシ。
【請求項5】
80ショアAの硬度を有する化学機械研磨パッドをテクスチャ加工するのに十分な剛性を有する、請求項1に記載のパッド調整ブラシ。
【請求項6】
65ショアDの硬度を有する化学機械研磨パッドをテクスチャ加工するのに十分な剛性を有する、請求項6に記載のパッド調整ブラシ。
【請求項7】
前記複数のブラシ剛毛が、ポリマー、耐衝撃性改良剤、及び補剛繊維を含む複合材を含む、請求項1に記載のパッド調整ブラシ。
【請求項8】
前記ポリマーが、脂肪族ポリアミドを含む、請求項7に記載のパッド調整ブラシ。
【請求項9】
前記補剛繊維が、メタアラミド繊維又は炭素繊維のうちの少なくとも1つを含む、請求項7に記載のパッド調整ブラシ。
【請求項10】
前記複数のブラシ剛毛が、規則的な形状を有する剛毛を含む、請求項1に記載のパッド調整ブラシ。
【請求項11】
前記複数のブラシ剛毛が、円筒形、円錐形、又は四面体形状を有する剛毛を含む、請求項10に記載のパッド調整ブラシ。
【請求項12】
前記複数のブラシ剛毛が、不規則な形状を有する剛毛を含む、請求項1に記載のパッド調整ブラシ。
【請求項13】
前記複数のブラシ剛毛が、形状の組み合わせを有する剛毛を含む、請求項1に記載のパッド調整ブラシ。
【請求項14】
前記複数のブラシ剛毛が、1.5:1~10:1のアスペクト比を有する剛毛を含む、請求項1に記載のパッド調整ブラシ。
【請求項15】
前記複数のブラシ剛毛が、各々1.5:1より大きいアスペクト比を有する、請求項1に記載のパッド調整ブラシ。
【請求項16】
キャリア層と、
前記キャリア層から延びる複数のブラシ剛毛と
を備えた、パッド調整ブラシであって、
前記複数のブラシ剛毛が、研磨粒子を含まず、
前記キャリア層及び前記複数のブラシ剛毛が、単一体を形成し、
前記複数のブラシ剛毛が、ポリマー及び耐衝撃性改良剤を含む複合材を含む、
パッド調整ブラシ。
【請求項17】
化学機械研磨パッドを調整する方法であって、
化学機械研磨パッドを提供することと、
請求項1に記載のパッド調整ブラシを提供することと、
前記パッド調整ブラシを前記化学機械研磨パッドに接触させることと、
前記化学機械研磨パッドをテクスチャ加工することと
を含む、方法。
【請求項18】
前記化学機械研磨パッドが、20ショアA~75ショアDの硬度を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記パッド調整ブラシを前記化学機械研磨パッドに接触させることが、スラリーの存在下で行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
化学機械研磨パッドを調整する方法であって、
金属を含まず、研磨粒子を含まない、単一作業面を含むパッドコンディショナを提供することと、
化学機械研磨パッドを提供することと、
前記パッドコンディショナを前記化学機械研磨パッドに接触させることと、
前記化学機械研磨パッドをテクスチャ加工することと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ブラシを使用して、場合によっては化学機械研磨用パッドを含む、所望の表面を穏やかに研磨することができる。パッド調整のこのプロセスはウエハ平坦化の重要な構成要素であり、パッド調整によって導入された欠陥はウエハの最終状態に影響を及ぼす可能性がある。
【発明の概要】
【0002】
一態様では、本明細書は、パッド調整ブラシに関する。パッド調整ブラシは、キャリア層と、キャリア層から延びる複数のブラシ剛毛とを含む。複数のブラシ剛毛は、研磨粒子を含まず、キャリア層及び複数のブラシ剛毛は単一体を形成する。パッド調整ブラシは、20ショアAの硬度を有する化学機械研磨パッドをテクスチャ加工するのに十分な剛性を有する。
【0003】
別の態様では、本明細書は、化学機械研磨パッドを調整する方法に関する。この方法は、化学機械研磨パッドを提供することと、パッド調整ブラシを提供することと、パッド調整ブラシを化学機械研磨パッドに接触させることと、化学機械研磨パッドをテクスチャ加工することとを含む。パッド調整ブラシは、キャリア層と、キャリア層から延びる複数のブラシ剛毛とを含む。複数のブラシ剛毛は、研磨粒子を含まず、キャリア層及び複数のブラシ剛毛は単一体を形成する。パッド調整ブラシは、20ショアAの硬度を有する化学機械研磨パッドをテクスチャ加工するのに十分な剛性を有する。
【0004】
なおも別の態様では、本明細書は、化学機械研磨パッドを調整する方法に関する。この方法は、金属を含まず、研磨粒子を含まない、単一作業面を含むパッドコンディショナを提供することと、化学機械研磨パッドを提供することと、パッドコンディショナを化学機械研磨パッドに接触させることと、化学機械研磨パッドをテクスチャ加工することとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】パッド調整ブラシの概略上面図である。
図2】パッド調整ブラシの概略側面断面図である。
図3】比較例1、実施例1、及び実施例2の、ブラシなしのパッド上のスラリーの残留濃度を示すグラフである。
図4】比較例1、実施例1、及び実施例2の、ブラシ上のスラリーの残留濃度を示すグラフである。
図5】実施例3~5のパッド摩耗率及び剛毛摩耗率を示すグラフである。
図6】セリア研磨プロセス中の、比較例2、実施例6、及び実施例7についての200枚のウエハにわたる酸化物除去速度を示すグラフである。
図7】セリア研磨プロセス後の、比較例2、実施例6、及び実施例7についての200枚のウエハにわたる欠陥率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
バルク研磨材料を含むものなどの従来のパッドコンディショナは、ウエハ研磨プロセスが、構成要素によって導入される損傷又はエラーに対して耐性が低くなるので、特定の課題を有する。例えば、砥粒(ダイヤモンドなど)は、パッドコンディショナが摩耗するにつれて緩くなる可能性があり、それらの非常に硬い粒子を研磨システム全体に堆積させる可能性がある。特に、化学機械研磨(chemical-mechanical polishing、CMP)パッドが調整され、同時にウエハを研磨するインサイチュのプロセスでは、異物を導入することは下流の影響を有する可能性がある。例えば、それはスラリーに入り、ウエハと接触する研磨システムの一部となり得る。ウエハ研磨機構は非常に慎重に制御される必要があるが、異物の研磨物の導入は、スクラッチを引き起こすか、又はそうでなければプロセスに欠陥を導入する可能性がある。従来のパッドコンディショナ中の金属イオンはまた、他の研磨システム構成要素と反応して、汚染又は他の下流欠陥をもたらし得る。
【0007】
あるいは、フロック加工プロセス又は剛毛が接着剤によってブラシキャリアの表面に取り付けられる他の方法によって作製されたブラシは、研磨プロセスにおいても同様に有用性を有する。剛毛の材料、寸法、及び密度は、広範囲の所望のパラメータを達成するように調整されてもよく、軟質パッドに特に好適であり得る。しかしながら、従来の研磨パッド調整ディスクと同様に、剛毛は、調整ブラシの表面から分離することになり、ウエハと接触して研磨システムに入る可能性がある。これはまた、そうでなければ研磨されたウエハ上にスクラッチ又は他の欠陥をもたらし得る。
【0008】
本明細書に記載のパッド調整ブラシは、驚くべきことに、従来のブラシの利点のうちの多くを提供する一方で、研磨システム中で使用されるときに欠陥率を大幅に低減することができる。驚くべきことに、これらのブラシは、いくつかの実施形態では研磨粒子を含まず、いくつかの実施形態では金属イオンを含まない(この説明の目的のために、金属イオンを含まないとは、1ppm未満の微量金属が存在することを意味する)が、従来のパッドコンディショナと同等に化学機械研磨パッドをテクスチャ加工するのに十分な剛性を依然として示す。また、パッド調整ブラシが単一体(キャリア層及び剛毛を含む)であることは、剛毛が層間剥離又は接着不良のために脱落しないことを意味し、かつ多くの実施形態では、破損した剛毛又は分離した剛毛がウエハと接触している研磨システムに入るリスクを大幅に低減することを意味する。
【0009】
図1は、パッド調整ブラシの概略上面図である。パッド調整ブラシ100は、上面120を有するキャリア層110を含む。剛毛122は、キャリア層110の上面120から延びる。パッド調整ブラシ100は、任意の全体形状及びサイズであってもよい。典型的には、パッドコンディショナのサイズは、使用中の特定の研磨システムによって規定され得る。いくつかの実施形態では、パッド調整ブラシは、直径が約3~6インチであってもよい。いくつかの実施形態では、パッド調整ブラシは、直径が3.75、4、又は4.25インチであってもよい。いくつかの実施形態では、パッド調整ブラシは、高回転速度における非対称性又は振動を回避するために、実質的に円形の形状を有してもよい。これらは現在のパッドコンディショナの典型的な形状及びサイズであるが、パッド調整ブラシの形状及びサイズは特に限定されない。明示的に図示されていないが、パッド調整ブラシは、パッド調整ブラシをパッド調整アームにしっかりと取り付けるための機械的手段を含む、好適な研磨装置に取り付けるための機構を含むことができ、取り付け点、保持リング、又は接着剤を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、パッド調整ブラシは、キャリア層が取り付けられる剛性バックプレーンを含んでもよい。このバックプレーンは、任意の好適な材料から形成されてもよく、キャリア層と共に、特定の用途に応じて、例えば、より重い従来の調整ディスクと容易に置換するために、任意の好適な寸法を有してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、パッド調整ブラシは、バックプレーンとしてステンレス鋼フレームを含んでもよい。キャリア層は、バックプレーンに、接着されてもよく又は他の方法(機械的嵌合又は摩擦嵌合を含む)で取り付けられてもよい。キャリア層又はバックプレーンのいずれかは、剛性、熱伝導率、又は耐薬品性のような1つ以上の機械的特性又は材料特性について選択されてもよい。
【0011】
キャリア層110は、図1において上面120によって表される少なくとも1つの主面を有する。キャリア層110から(特に、上面120から)突出又は延びているのは、剛毛122である。いくつかの実施形態では、キャリア層110及び剛毛122は、同じプロセスから形成され、同じ材料から形成される。いくつかの実施形態では、キャリア層110及び剛毛122は、同じ材料から形成される。いくつかの実施形態では、剛毛は、キャリア層の両方の主表面上にある。剛毛122は、任意の好適な形状、サイズ、及び上面120上の分布を有してもよい。いくつかの実施形態では、剛毛122は、上面120の平面内の1つ以上の方向に沿って、それらのサイズ、形状、及び密度のうちの1つ以上を変化させてもよい。例えば、剛毛122のサイズは、パッド調整ブラシ100の中心からの距離の関数として変化してもよい。変化は、滑らかであってもよいし、段階的であってもよいし、更には擬似ランダムであってもよい。いくつかの実施形態では、パッド調整ブラシ100は複数のゾーンに分割可能であり、各ゾーンは特定の共通の特性を有する剛毛を含む。ゾーンは、円弧の部分(例えば、パイ形若しくはくさび形セグメント)、内側半径及び外側半径によって境界付けられたゾーン(例えば、リング若しくは環状セクション)、又は更には各々の組合せなど、任意の形状であってもよい。いくつかの実施形態では、パッド調整ブラシ100の最も外側のセクションの近くのゾーンは、より高い剛毛を含むことができる。これらの剛毛は、高さがパッド調整ブラシ上の他の剛毛と同じになるようにこれらの剛毛が摩耗するまで、慣らし期間中にパッドと優先的に相互作用することができる。いくつかの実施形態では、剛毛を実質的に含まないパッド調整ブラシ100の1つ以上のセクションが存在してもよい。これらの領域は、パッド調整ブラシの他の機能部分(例えば、スピンドルを収容するための中心孔)を収容するために、剛毛が実質的にないままであってもよい。いくつかの実施形態では、1000本を超える剛毛がパッド調整ブラシ上に存在する。いくつかの実施形態では、1500本を超える剛毛がパッド調整ブラシ上に存在する。いくつかの実施形態では、2000本を超える剛毛がパッド調整ブラシ上に存在する。いくつかの実施形態では、2500本を超える剛毛がパッド調整ブラシ上に存在する。いくつかの実施形態では、3000本を超える剛毛がパッド調整ブラシ上に存在する。
【0012】
いくつかの実施形態では、キャリア層110及び剛毛122は、単一体を形成する。いくつかの実施形態では、キャリア層及び剛毛は、同じ射出成形プロセス中又は更にはステップ中に、形成される。いくつかの実施形態では、キャリア層及び剛毛は、互いに付着したままである接着剤を実質的に含有しない。
【0013】
剛毛122の好適な寸法及び形状の範囲は、図2の概略側面断面図と併せてより完全に説明される。図2は、キャリア層210と、パッド調整ブラシの上面220から延びる剛毛222とを含むパッド調整ブラシ200を示す。各剛毛は、キャリア層210の上面(剛毛を含まない)から剛毛の先端ピークまで延びる、図2に示す高さhを有するものとして大まかに特徴付けることができる。図2の剛毛は、平坦な切頭頂部を有するものとして示されているが、無数の幾何学的形状及び先端形状が考えられる。例えば、剛毛は、鋭いピーク、複数の先端のピーク、傾斜したピーク、丸みを帯びたピーク、正方形のピーク、傾斜したピーク、粗いピークなどを含んでもよい。いくつかの実施形態では、剛毛は、キャリア層の上面から離れる方向に先細になっている。いくつかの実施形態では、このテーパは、(円錐又は角錐におけるような)直線テーパであり、いくつかの実施形態では、このテーパは、より複雑であり、その形状に組み込まれた非線形テーパ又は2°以上のテーパを有する。
【0014】
剛毛はまた、基部幅を有するものとして特徴付けられてもよい。図2にwとして示される基部幅は、最大範囲を有する剛毛の寸法として説明され得る。円形又は実質的に円形の形状では、これは剛毛の直径に等しくてもよい。より複雑な楕円形又は多角形の形状では、基部幅は、その基部における形状の等価円直径(例えば、剛毛の実際の基部と同じ面積を有する円の直径)に等しくなくてもよいが、それによって近似されてもよい。高さ、基部幅、及びこれら2つの間の比(剛毛のアスペクト比と呼ばれる)のうちの各々は、所望の用途及び性能に応じて適切な幾何学的形状を設計及び選択する際に重要である。いくつかの実施形態では、剛毛は、基部幅の代わりにアスペクト比の基準として使用され得る先端幅(すなわち、テーパ形状における最小幅)を有する。いくつかの実施形態では、基部幅と先端幅との間の平均が、アスペクト比の基礎として使用されてもよい。いくつかの実施形態では、剛毛の最大アスペクト比は、その幅(すなわち、テーパ形状、典型的には先端における幅)のいずれかについて使用されてもよい。アスペクト比は、機械的特性及び製造可能性(特に、剛毛が製造中に壊れるか又は他の方法で成形不可能である傾向、アスペクト比が高いほど困難性が高い)を測定するためのパラメータとして使用され得るので、比の定義は、特定の用途及び要件に依存し得る。いくつかの実施形態では、剛毛の高さは1mm~10mmであってもよい。いくつかの実施形態では、剛毛の高さは1mm~5mmであってもよい。いくつかの実施形態では、剛毛の高さは2mm~4mmであってもよい。いくつかの実施形態では、剛毛の高さは3~4mmであってもよい。いくつかの実施形態では、剛毛の好適なアスペクト比は、1.5:1より大きくてもよい。いくつかの実施形態では、剛毛の好適なアスペクト比は、1.5:1~8:1であってもよい。いくつかの実施形態では、剛毛の好適なアスペクト比は、1:1~10:1であってもよい。いくつかの実施形態では、剛毛の好適なアスペクト比は、1:1~20:1であってもよい。
【0015】
射出成形プロセスでは、剛毛の特定の幾何形状及び設計は、実用上の考慮事項によって制限され得る。例えば、キャリア層の上面に向かって先細になる剛毛設計は、摩擦のない金型及び接着がないと仮定しても、成形された特徴の完全性及び忠実度を著しく損なうことなく、従来の成形技法を用いて除去することが困難又は不可能であり得る。当業者はまた、金型を充填する材料がキャビティの全体積を確実に充填しない場合があるため、いくつかの金型設計が高い再現性を有しない場合があることを認識するであろう。特定の特徴は、理論的には可能であるが、商業的には非実用的であり得る:例えば、成形された部品を解放するために分解され得る複数部品金型。
【0016】
全体として、剛毛は、円筒形、円錐形、四面体、又は多角形断面を含む他の形状を含む規則的な形状を有してもよい。いくつかの実施形態では、剛毛は、不規則な形状を有してもよく、又は形状の組み合わせ(剛毛ごとに、又は単一の剛毛内のいずれか)を含んでもよい。例えば、剛毛は、湾曲部分と直線部分との両方を有する断面を含むことができる。
【0017】
射出成形プロセスを使用して、剛毛及びキャリア層は、任意の好適な材料から形成されてもよい。いくつかの実施形態では、材料は熱可塑性材料を含む。いくつかの実施形態では、材料は熱硬化性又はエラストマー材料を含む。いくつかの実施形態では、材料は疎水性である。いくつかの実施形態では、材料は親水性である。いくつかの実施形態では、材料はポリオレフィンを含む。いくつかの実施形態では、材料はポリプロピレンを含む。いくつかの実施形態では、材料はポリスチレンを含む。いくつかの実施形態では、材料はポリウレタンを含む。いくつかの実施形態では、材料はポリフェニレンスルフィドを含む。いくつかの実施形態では、材料はポリアリールエーテルケトンを含む。いくつかの実施形態では、材料はポリエーテルエーテルケトンを含む。いくつかの実施形態では、材料はポリエステルを含む。いくつかの実施形態では、材料はポリエチレンを含む。いくつかの実施形態では、材料はポリエチレンテレフタレートを含む。いくつかの実施形態では、材料はポリアミドを含む。いくつかの実施形態では、材料は脂肪族ポリアミドを含む。いくつかの実施形態では、材料はナイロンを含む。いくつかの実施形態では、材料はフッ素化ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、剛毛は、第1の材料を少なくとも部分的に覆う第2の材料を含む。これらの構成は、第2の材料が摩耗して下にある第1の材料を露出させる、パッド調整ブラシによる慣らし期間を提供するのに有用であり得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、射出成形プロセスのための材料は、そのレオロジー特性、加工特性、及び/又は最終機械特性のために選択されてもよい。例えば、射出成形プロセスのための材料は、材料が適切に操作及び成形され得るように、十分に低いガラス転移温度(そのバルクにおいて)又は融点を有し得る。いくつかの実施形態では、射出成形プロセスのための材料は、0.1GPa~5.0GPaの曲げ弾性率を有する。いくつかの実施形態では、射出成形プロセスのための材料は、0.1GPa~2GPaの曲げ弾性率を有する。いくつかの実施形態では、射出成形プロセスのための材料は、0.2GPa~1.8GPaの曲げ弾性率を有する。いくつかの実施形態では、射出成形プロセスのための材料は、少なくとも30ショアAの硬度を有する。いくつかの実施形態では、射出成形プロセスのための材料は、少なくとも50ショアAの硬度を有する。いくつかの実施形態では、射出成形プロセスのための材料は、少なくとも75ショアAの硬度を有する。いくつかの実施形態では、射出成形プロセスのための材料は、少なくとも100ショアAの硬度を有する。いくつかの実施形態では、射出成形プロセスのための材料は、50ショアA~100ショアDの硬度を有する。いくつかの実施形態では、射出成形プロセスのための材料は、50ショアA~150 HRR(ロックウェル硬度、Rスケール)の硬度を有する。
【0019】
射出成形のための適切かつ好適な金型の形成は限定されず、任意の従来のプロセスを通じて行われてもよい。例えば、エッチング、機械加工、アブレーション、微細複製、放電加工、焼結、成形、エンボス加工などが使用されてもよい。3D印刷などの付加製造プロセスも使用することができる。金型の材料は特に限定されないが、成形される材料のプロセス要件に適合するように選択されるべきである。いくつかの実施形態では、金型寿命を助け、離型も助けるために、各部品の形成時又は成型前に、完成した金型の表面に処理が施される。表面エネルギーを低減する射出成形部品のための好適な離型剤及び処理としては、ポリテトラフルオロエチレンコーティング、ニッケルホウ素めっき、ポリフルオロポリエーテルシランコーティング、ワックス、電気めっき処理、シリコーンコーティング、硝酸クロムコーティング、プラズマ処理及び他の表面改質プロセス、並びにこれらの組み合わせを含む任意の他の好適な処理及びコーティングを挙げることができる。
【0020】
射出成形プロセスに使用される材料は、1つ以上の耐衝撃性改良剤を含んでもよい。これらの耐衝撃性改良剤は、得られるキャリア層及び剛毛の機械的特性を改良することができる。任意の好適な耐衝撃性改良剤が使用されてもよく、EPDM(ethylene propylene diene monomer、エチレンプロピレンジエンモノマー)ゴム、無水マレイン酸変性EPDMターポリマーを含む変性EPDM、又はポリエチレンオクテンコマレイン酸などのエラストマー又はゴムを含んでもよい。いくつかの実施形態では、耐衝撃性改良剤は、材料全体の5~10重量%で存在してもよい。いくつかの実施形態では、耐衝撃性改良剤は、材料全体の5~70重量%で存在してもよい。
【0021】
射出成形プロセスに使用される材料は、顔料又は着色剤を含むことができる。マルチショット射出成形プロセスでは、異なる色を有する材料を使用して、1つの顔料の色がすり減って別の色又は透明度/不透明度のレベルが下に見えるようになるので、表面摩耗の視覚的表示を与えることができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、射出成形プロセスに使用される材料は、1つ以上の補剛繊維を含んでもよい。これらの補剛繊維は、それらが含まれるベース樹脂よりも高い弾性率を有する繊維である。これらの繊維は、例えば、アラミド繊維又は炭素繊維のうちの1つ以上を含んでもよい。いくつかの実施形態では、補剛繊維はメタアラミド繊維を含んでもよい。いくつかの実施形態では、補剛繊維はパラアラミド繊維を含んでもよい。いくつかの実施形態では、補剛繊維は、ポリ(p-フェニレン-2,6-ベンゾビスオキサゾール)繊維を含んでもよい。これらの繊維は、任意の好適な寸法を有してもよく、任意の好適な密度で提供されてもよい。いくつかの実施形態では、材料は、10~20重量パーセントの補剛繊維を含んでもよい。いくつかの実施形態では、材料は、10~50重量パーセントの補剛繊維を含んでもよい。いくつかの実施形態では、材料は、15~20重量パーセントの補剛繊維を含んでもよい。いくつかの実施形態では、補剛繊維は、直径が100マイクロメートル未満であってもよい。いくつかの実施形態では、補剛繊維は、直径が50マイクロメートル未満であってもよい。いくつかの実施形態では、補剛繊維は、直径が30マイクロメートル未満であってもよい。いくつかの実施形態では、補剛繊維は、直径が20マイクロメートル未満であってもよい。短繊維片又は長繊維片が、用途に応じて、適切であり得る(「短」は、この文脈において、0.5mmより短いことを意味し、「長」は、0.5mmより大きいことを意味する)。繊維と、材料の残りの部分との間に十分に強い界面を達成するために、接着促進剤を繊維上に、又は射出成形に使用される材料内に使用することができる。剛毛の幾何形状の設計に加えて、材料の選択は、所望の性能特性に達するように変更及び調整することができる。
【0023】
射出成形は、いくつかの実施形態では、経済的かつ容易に再現可能な製造プロセスであるが、本明細書に説明される剛毛及びパッド調整ブラシを形成するために、他の製造技法及びプロセスが可能である。例えば、3D印刷(若しくは他の付加製造)、圧縮成形、熱成形、真空成形、回転成形、レーザドリル加工、ダイヤモンド旋削、エッチング、機械加工、アブレーション、微細複製、放電加工、焼結、エンボス加工、又は他の好適なプロセスを使用して、本明細書に記載のブラシを形成してもよい。これらのプロセスで使用される材料は、本明細書で説明される射出成形プロセスに好適であるとして説明されるものと同様であるか、又は同様の特性を呈してもよい。
【0024】
本明細書で説明されるようなパッド調整ブラシは、任意の好適なタイプのパッドのために、かつ任意の好適なタイプのスラリーと共に、インサイチュ及びエクスサイチュ研磨機械の両方で使用するのに好適であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のパッド調整ブラシは、セリア系及びコロイド状シリカスラリーを含むプロセスでの使用に好適であり得る。本明細書に記載のパッド調整ブラシは、代替的に又は追加的に、バフ研磨プロセスにおける使用に好適であり得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のパッド調整ブラシは、80ショアAの硬度を有する化学機械研磨パッドをテクスチャ加工するのに十分な剛性を有し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のパッド調整ブラシは、65ショアDの硬度を有する化学機械研磨パッドをテクスチャ加工するのに十分な剛性を有し得る。
【実施例
【0026】
実施例で使用した材料は以下の通りである。
【0027】
【表1】
【0028】
実施例のパッド調整ディスクは、以下の剛毛設計特性で形成した。
【0029】
【表2】
【0030】
射出成形インサート
インサートをT-7075アルミニウムから製造し、剛毛形状をテーパカッターでプランジ加工して、所望のブラシ及び剛毛形状の逆を形成した。機械加工の前又は後に研磨は行わなかった。離型を助けるために、完成したインサート上に離型コーティングを施した。剛毛形体は、先端通気を可能にするために、バッキングプレートと共に射出成形される貫通孔として形成した。
【0031】
パッドからのセリアスラリーの洗浄
市販のパッドブラシ(射出成形されていない)を入手した:PB33A(3M Company(St.Paul,MN)製)(比較例1)。このブラシと比較するために、2つの射出成形パッド調整ブラシを形成した。
実施例1:ナイロン12+50重量パーセントの耐衝撃性改良剤;設計B。
実施例2:ナイロン12+70重量パーセントの耐衝撃性改良剤;設計B。
【0032】
市販のセリアスラリー、AGC Electronic Materials(Tokyo,Japan)製のAGC 333を使用して、ベンチトップBruker CP4ポリッシャ(Billerica,MA)上でSiOウエハを研磨した。30.5’’IC1010パッド(DuPont(Wilmington,DE)から入手可能)を9’’ディスクに切断し、ベンチトップポリッシャ上のパッドとして使用した。3M S122コンディショナを用いて、6ポンドのダウンフォースで30分間慣らし運転を行った。慣らし運転の後、パッドを水で5分間リンスし、次いでTEOSウエハを、2分間スラリーの存在下で、5分間研磨した。スラリー流量は、50mL/分であった。パッドのうちの1つを、「ブラシなし」対照として使用したように、研磨後に脱イオン水でリンスした。パッドを洗浄するために、異なる例示的なブラシ及び比較例のブラシを使用しながら、研磨後DIWリンスを繰り返した。パッド及びブラシを分析して、パッド上に残っているスラリーの濃度を測定した。結果を図3に示す。図から分かるように、ブラシは、従来のブラシと実質的に同じように機能した。
【0033】
ブラシはまた、ブラシ上に残っているスラリーの濃度を決定するために測定した。パッドを清掃しながらブラシを清潔に保つことは有用な属性である。デブリがパッド上に再堆積して戻る(最終的にウエハに接触する)リスクは比較的高く、したがってウエハ上の欠陥の可能性が高まる。結果を図4に示す。図から分かるように、射出成形ブラシは、従来のブラシよりも良好に機能した。
【0034】
剛毛及びパッドの摩耗率
3つの射出成形パッド調整ブラシを形成した。
実施例3:ナイロン6,10+5重量パーセントの耐衝撃性改良剤;設計B
実施例4:ナイロン6,10+10重量パーセントの耐衝撃性改良剤及び15重量パーセントのアラミド繊維;設計B。
実施例5:ナイロン6,10+10重量パーセントの耐衝撃性改良剤及び19重量パーセントの炭素繊維;設計B。
【0035】
30.5’’IC1010パッド(DuPont(Wilmington,DE)から入手可能)を9’’ディスクに切断し、ベンチトップBruker CP4ポリッシャ(Billerica,MA)上のパッドとして使用した。各ブラシを、3時間の間、6ポンドのダウンフォースで作動させた。プラテン及びブラシの回転速度は、それぞれ57rpm及び61rpmに設定した。脱イオン水の流量を30mL/分に設定した。
【0036】
パッド摩耗は、CP4ポリッシャ上の高さセンサを使用して測定し、剛毛摩耗は、KEYENCE VR5200(Itasca,IL)構造化光学顕微鏡を使用して、試験前後の剛毛高さを測定することによって特徴付けた。結果を図5に示す。図から分かるように、補剛繊維を含まない実施例は、補剛繊維を含む実施例とほぼ同じパッド摩耗率を有していたが、剛毛率は、補剛繊維を含む実施例の各々について、はるかに低かった。特に、炭素繊維含有実施例は、最も低い剛毛摩耗率を示した。
【0037】
セリア研磨プロセス
市販のダイヤモンド研磨材を入手した:3M S122 Diamond Pad Conditioner(3M Company(St.Paul,MN)から入手可能)(比較例2)。このコンディショナと比較するために、2つの射出成形パッド調整ブラシを形成した。
実施例6:ナイロン6,10+10重量パーセントの耐衝撃性改良剤及び15重量パーセントのアラミド繊維;設計C。
実施例7:ナイロン6,10+10重量パーセントの耐衝撃性改良剤及び19重量パーセントの炭素繊維;設計C。
【0038】
市販のセリアスラリー、AGC Electronic Materials(Tokyo,Japan)製のAGC 333を使用して、APPLIED MATERIALS REFLEXION LK CMPポリッシャ(Applied Materials(Santa Clara, CA)から入手可能)上でSiOウエハを研磨した。30.5’’IC1010パッド(DuPont(Wilmington,DE)から入手可能)を使用した。全てのコンディショナは、6ポンドのダウンフォースで100%インサイチュで作動させた。パッドを、6ポンドのダウンフォースで30分間慣らし運転を行った。研磨中、プラテン及びヘッド速度を、それぞれ87rpm及び93rpmに設定した。ウエハの平均ダウンフォースは3psiであり、持続時間は1分間であった。このプロセスを200枚のウエハについて継続し、研磨速度を各ウエハの後に記録した。除去速度を図6に示す。
【0039】
図から分かるように、実施例7は、比較例2のダイヤモンドに匹敵する除去速度を有し、実施例6は、より高い酸化物除去速度を有した。各実施例の研磨速度は、200枚のウエハの作動にわたって比較的安定していた(比較例2よりも不安定ではなかった)。
【0040】
ウエハ1枚当たりの欠陥発生率も、SP2欠陥検査システム(KLA Corporation(Milpitas,CA)から入手可能)を使用して、120nmの閾値で測定した。結果を図7に示す。図から分かるように、実施例7は、比較例2のダイヤモンドパッドコンディショナに匹敵する欠陥率を有していたが、実施例6は、はるかに低い欠陥数を有していた。実施例6の性能は、同じ試験期間にわたって実証された酸化物除去速度の増加を考慮すると、更に驚くべきことである。
【0041】
本明細書に記載のパッド調整ブラシは、プロセスパラメータの柔軟性を可能にすることができる。例えば、従来の調整オプションよりも優れた酸化物除去速度を可能にすることは、ダウンフォースなどの他のパラメータが低減されることを可能にし、相対的な性能を放棄することなく構成要素の寿命を延ばすことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】